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美琴「とある主人公(ヒーロー)の友情物語?」-5

美琴「とある主人公(ヒーロー)の友情物語?」

美琴「とある主人公(ヒーロー)の友情物語?」-2

美琴「とある主人公(ヒーロー)の友情物語?」-3

美琴「とある主人公(ヒーロー)の友情物語?」-4

728 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/01(日) 20:26:33.64 ID:iA2vDl.0 [21/26]

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



上条「―――って……訳なんだ」

禁書「………」




横ヤリ一切入れる事なく、最後まで黙って上条の話を聞いていた禁書目録……。
「要するに、その場しのぎのキープ状態にしやがったなコイツ!!」と、青髪や土御門がこの場に居たら間違いなくそう言うだろうが、
禁書目録の場合は違った。




禁書「とうまは、短髪の事が好きなんだよね?」

上条「あぁ」




禁書目録の質問に、躊躇いなく答える上条だが……禁書目録は更に当然の疑問をぶつけてきた。




禁書「じゃあ……どうしてとうまは、短髪の告白にすぐ『オッケー』しなかったのかな?」

上条「…それは………」




いくら嘘は吐けないと言っても、これは絶対に言うべきではないだろう……。上条は別の理由で答える事にした。

729 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/01(日) 20:29:33.33 ID:iA2vDl.0 [22/26]

上条「……少し、俺自身でも考えたいからだよ。即オッケーなんて軽々しく答えられるか」

禁書「…そっか……そう……だよね…」

上条「アイツは……真剣に告白してくれたんだ。俺も……すぐにパッと浮かんだ答えなんかじゃなくて、もっと真剣に考えてから
   答えを出さないと……アイツに失礼だろ」




どちらかと言えばこれは嘘じゃなく、『更なる事実を隠した』と言う方が正しいか……。上条の今言った事も嘘などでは無いのだから。




上条(あとは……一方通行との問題だ。アイツが美琴の事が好きな以上、すぐに美琴の気持ちに答える訳にはいかねぇ……。
   明日……来るよな?……っていうか、来てくれるよな……?)




心配になった上条は一方通行に連絡してみようと携帯電話を取ろうとするが――――




上条「だぁぁ!?」




―――そうだ、すっかり忘れていた。彼は今、『禁書目録オリジナル縛り』で手足を封じられて身動きが取れないのだった……。




上条「ホ、ホラ! インデックス! もう良いだろ!? 早くこの縄解いてくれよ! 手足の節々に縄が食い込んで痛みが……」

禁書「……あ! ゴ、ゴメンねとうま! すぐ解くから!」




何やらブツブツ呟いていた禁書目録だが、上条の声でハッと正気に戻って上条に駆け寄る。
そのまま縄を解こうと手をかけた。

730 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/01(日) 20:31:18.17 ID:iA2vDl.0 [23/26]

上条(ホッ……何とか分かってくれたみたいだ……やっと自由になれる……)




―――しかし、いっこうにその時は訪れなかった……。




禁書「あれ…? コレ……どうやって………う~ん、こうじゃないかも……あれ?」

上条「イ……インデックスさぁん………」




そのまま何の進展も無いまま三十分が経過した―――。




禁書「あぁもう! わかんないんだよ! 一体どうなってるの!?」

上条「知るか!! 俺が訊きてぇよ!! ってか縛ったのテメェだろ!?」

禁書「全然解けないんだよぉぉ……」

上条「おいおい……頼みますよインデックスさぁぁん……あぁ、さっきから進んでないどころか余計複雑になってる気が……」

禁書「おっかしいなぁ……私が一度縛った縄なんだから、解けるハズなんだけど……」

上条「お前……縛り方は覚えてても、解き方は覚えてねえとか抜かす気じゃねえだろぉな!……ッ」

禁書「あ! それそれ! 多分それで正解なんだよ!」

731 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/01(日) 20:32:34.63 ID:iA2vDl.0 [24/26]

上条「正解なんだよ♪ じゃねぇぇえええええ!!! どーすんだよ!? なんとかしろよ!! 一晩中このままなんて冗談
   じゃねえぞ!! 風呂場で寝るより十倍キツイわーー!!!」


禁書「う~ん………あ、そうだ♪」トテテテ




何故か台所へ向かう禁書目録。




上条「ハッ! 不幸センサーが………」


禁書「これで切ればいいんだよ♪」




やがてすぐに戻ってきた禁書目録は手に包丁を持っていた。不幸センサーは本日も何の支障も無く正常に働いているようだが、上条にとって
それは何の安心にも繋がらない。




上条「ば、馬鹿な真似やめろインデックス!! 今すぐソレ(包丁)を戻してこい!!」




禁書目録の包丁捌きスキルを充分に熟知している上条からは冷や汗が止まらなかった。

732 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/01(日) 20:34:36.83 ID:iA2vDl.0 [25/26]

禁書「むぅぅ……とうま、私を馬鹿にしてるね? 大丈夫なんだよ。ここは私にドーンと任せなさい!」




起伏に乏しい胸を張り、上条に包丁を向ける。向けられた刃先がキラーン、と怪しく光った。




上条「任せられるか!! ていうか、ハサミで良いだろ!? って今ハサミ家になかったっけ!? あぁもう!!」




首を振りながら逃げようと身をよじるも、所詮無駄な抵抗だ。むしろ余計に身体を痛めただけに終わった……。
結局、あっさりと禁書目録に捕まって馬乗りにされたから、いよいよ逃げ場は無い。




禁書「とうま、大人しくしててね! いい? 動いたら危ないんだよ!」チャキーン


上条「」





それから一分後、とある学生寮全域に「あぎゃぁぁぁあああああああ!!!!! 不幸だぁぁぁぁああああああああ!!!!!」
という絶叫が響くのだが、特に反応を示す者は誰もいなかった―――――。

733 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/01(日) 20:38:59.15 ID:iA2vDl.0 [26/26]
ちょっと長くなりましたが、今日は以上です。
続きは明後日に投下します。
お付き合い頂きいつも感謝です。

741 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/03(火) 20:39:02.06 ID:k6IN7sE0 [2/18]

――――――


―――



黄泉川家・一方通行自室




一方通行「―――ちっ、三下の野郎何してやがンだ? 何故電話に出ねェ……」




携帯電話を耳に当てながら苛ついた調子で呟く一方通行。かれこれ七回目のコールをかけているのだが、上条がそれに応じる事はなかった。




一方通行「……もォ寝ちまったのか………まァ良っかァ。明日家に押しかけりゃあイイしな」




さほど電話の必要もない、と判断した一方通行は携帯電話を枕元に放り投げる。その数分後、風呂上りの垣根がスウェット姿で部屋に戻って
きた。




垣根「……お先」

一方通行「あァ」




一方通行は垣根とそれだけの言葉を交わした後、自らも浴室へと向かった―――。

742 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/03(火) 20:41:17.29 ID:k6IN7sE0 [3/18]


一方通行入浴中――――――




一方通行「―――ふゥ………」




風呂から上がった一方通行はいつもの寝巻き姿でリビングへ来た。風呂上りと言えば乳飲料が鉄板なのだが、彼の場合は無糖のコーヒー
なのだ。冷蔵庫から一本取り出し、グイッと飲む。リビングでテレビを見ていた黄泉川や芳川がそんな彼に話しかけてきた。




黄泉川「お、上がったか。お前メシはどうする?」

一方通行「もォ食ってきたから今日はいらねェ」

芳川「デートは楽しかった?」

一方通行「そンなンじゃねェよ。オマエは俺の母親か?」

芳川「失礼ね。まだそんな年じゃないつもりだけど?」

一方通行「あァそォですかァ。っつーか、母親でもそこまでウザくねェぞ…」

芳川「あらら、遠まわしにウザイって言われたわ……」

一方通行「どこが遠まわしなンだよ……」

黄泉川「もうすぐ冬休みも終わって、まーたこれから忙しくなるじゃんよ。一方通行、垣根のことは任せたぞ?」

743 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/03(火) 20:43:25.15 ID:k6IN7sE0 [4/18]

一方通行「はァ? 何だその『任せる』ってのは?」

黄泉川「一緒に学校行ってやんな。どうせ同じ学校なんだろ?」

一方通行「……あのな…俺もアイツもガキじゃねェンだよ」




そう吐いて飲み終わったコーヒーをゴミ箱に入れた後、自室へ戻ろうとする一方通行。




芳川「あら、もう寝るの?」

一方通行「あァ、今日はちィと疲れたからなァ」

黄泉川「うぃ、おやすみ~」

一方通行「おォ」




―――バタン




一方通行「―――よォ、戻った……って、また『ソレ』かよ」




垣根はさっきと全く同じ状態で部屋の隅にいた。目は放心モードに入っている。

744 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/03(火) 20:45:28.77 ID:k6IN7sE0 [5/18]

一方通行「オイ、寝るンならベッド行けよ。今日オマエだろ?」




この二人は一日置きにベッドで寝るという意外としっかりしたルールを作っていた。今日は垣根がベッドを使う日なのだが……。




垣根「いや、いい……おまえがべっどでいいよ……」




口だけを動かしてそう返してきた。まるで喋る人形だ。




一方通行「あァーそォかい。ならソッチの方がありがてェわ」




若干挑発というか、煽りを込めて言ってやったのだが……垣根は「おぉ」とだけ返して後は無反応だった。




一方通行「……………」

垣根「……………」

一方通行「……………なァ」

垣根「………ん…?」

一方通行「………アレから何があったンだ?」

745 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/03(火) 20:50:12.09 ID:k6IN7sE0 [6/18]

垣根「………訊くの、遅くね?」

一方通行「だいたい想像つくから訊かねェつもりだったけどなァ……」

垣根「なら、分かんだろ……お前の想像で多分合ってるよ」

一方通行「………聞いててやっから話してみろよ」

垣根「うっわー、珍しい。明日は大雪だなこりゃ。……どういう風の吹き回しだよ?」

一方通行「るっせェな。自縛霊の住みついた部屋でグースカ寝てられるほど俺は能天気じゃねェンだよ」

垣根「……………」

一方通行「……まァ、話したくねェってンなら、無理にとは言わねェがなァ」

垣根「…………聞いて、くれんのか……?」

一方通行「……別に聞いてどォにかできるって訳でもねェが、それでも喋れば少しは楽になンじゃねェのか?……
     途中で冷やかし入れたりしねェから、喋るンならさっさと喋っちまえよ」

垣根「…悪いな………じゃ、頼むわ」

一方通行「おォ」


垣根「………あの後よぉ、――――――」



――――――


―――


746 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/03(火) 21:00:24.36 ID:k6IN7sE0 [7/18]

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




初春「―――そう言えばカッキーさん……」

垣根「ん? どうした?」




一方通行達と別れてしばらく二人の時間を楽しんだ後、帰り道で初春飾利は隣りを歩く垣根を見上げた。




初春「佐天さんの彼氏………第一位の超能力者さんですよね?」

垣根「なぁ!?」

初春「!――やっぱりそうなんですか!?」

垣根「あ………」




誤魔化す隙はもう無かった……。




初春「特徴や通り名でまさかなぁ、とは思ってたんですけど……」

垣根(………そう言や思いっきり『一方通行』って呼んでたわ……うげぇ失敗したぁ…)

747 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/03(火) 21:03:29.82 ID:k6IN7sE0 [8/18]

初春「カッキーさん、すごい人とお友達なんですね~! 学園都市の頂点に立つ能力者ですよ!?」

垣根「ま、まぁな……」

初春「佐天さんも、そんなすごい事黙ってるなんて……ひどいなぁ…」

垣根「…………俺みてぇな無能力者が何で第一位と仲良いのかは訊かねえの?」

初春「へ?」

垣根(――うわ! アホか俺!? 何いらん事訊いてんだよ!)




気になった事がつい口から出てしまった。
初春はキョトンとしたが、すぐに答える。




初春「別に仲良くなる事にレベルとか関係ないじゃないですか~」

垣根「へ………?」

初春「人同士が友達になるのに、理由とか必要ないと思います」

垣根(あ……そう言えばこの子、御坂(第三位)の友達だった……)

748 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/03(火) 21:06:21.47 ID:k6IN7sE0 [9/18]

初春の言いたい事が理解できた垣根は、一方通行関連で自分の素性がバレたのではないかと冷やした肝を戻す。

そのまま他愛の無い話をしながら夕暮れの並木道を歩く二人……。別れ(懺悔)の時は刻一刻と近づいていた。




初春「カッキーさん……」




初春が立ち止まる。遂にその時は来てしまったようだ。




初春「………私の家、ここです……」




初春の家の前まで送るのを申し出た垣根。その理由には時間稼ぎも含まれていた……。




初春「約束……」




初春は……それ以上何も言わずに垣根を見つめた。




二人の距離は僅か数メートル。垣根は道の中央に、初春は寮の入り口付近に佇んでいる……。




垣根(わかってた……この時が来るってこたぁ、初めからわかってた事じゃねぇか)

749 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/03(火) 21:08:36.24 ID:k6IN7sE0 [10/18]

(何を、恐れてる?)


(この子に恐怖の篭もった目で見られたくないから?)


(もう自分に対する無邪気な顔が見られないから?)




―――――は、ふざけんな……。




俺は……それだけの事をしちまったんじゃねえか……。


同じ陽の下で生きる事すら許されねぇ程に泥を踏んで…今まで生きてきたんだろぉが……。


そうだよ……


俺には……


この少女を、闇に引きずり込むなんて出来ねぇ。


俺と一緒にいたら、この少女まで汚い世界に触れちまう危険がある。

750 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/03(火) 21:13:35.08 ID:k6IN7sE0 [11/18]

―――そんな事は許さねぇ!


ここは……ガッカリされてもスッパリ正体明かして、俺から遠ざけた方が……この子の為なんだ――――!






(―――なのに……手が動かないのは何故だ……?)


(この俺が……『学園都市第二位の垣根帝督』ともあろう者が……未練なんか感じてるってのか…?)


(おいおい、そんな資格なんざねぇだろぉがよ……)


(帽子と……マスク外すだけじゃねぇか……ガキでも出来るぞ)


(早く……しろよ)


(………何…迷ってんだよ!!! 『垣根帝督』!!!!!)




初春「………カッキーさん…」


垣根「……ゴメン………ちょっと……待ってくれ……」




――――クソォ………情けねぇ……今ほど自分が嫌になったことはねぇわ……

751 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/03(火) 21:15:43.79 ID:k6IN7sE0 [12/18]

垣根「ちょっとだけ……」




―――女々しく心の準備かよ……ガラにもねぇ……




垣根「緊張してんだよ………心が落ち着いたら取るから…」




―――結局、俺もただの人間だったってか……これじゃただの『意気地なし』じゃねぇか……




初春「少し、歩きませんか…?」




踏ん切りがつかない垣根の様子を察したのか……初春は優しく笑ってそう言った。




垣根「………あぁ」




歩き出した二人は、気づいていなかった………。後を尾けられていることに――――。




―――――


―――

752 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/03(火) 21:18:29.23 ID:k6IN7sE0 [13/18]

初春寮付近の公園―――




初春「うわぁ~……星が綺麗ですね」




公園内を歩く二人……空を見上げた初春は無垢な顔で白い息を吐いた。




初春「まだ六時にもなってないのに、もうこんな真っ暗ですよ? 冬は陽が落ちるのって早いですよね~」

垣根「あぁ……そうだな」




ふと、釣られるように星を見上げる垣根……。外灯の光と、無数の星が綺麗に輝いていた。




垣根「…………」


初春「あ、私このブランコで昔落ちて怪我したんですよ。いつだったかなぁ~…」


垣根「………」フッ


―――眩しい。


暗部で生きてきた垣根にとっては、『光の世界』で生きる初春飾利という少女が何よりも眩しかった……。

753 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/03(火) 21:20:37.16 ID:k6IN7sE0 [14/18]

初春「カッキーさんは小さい頃の思い出って何かあります?」

垣根「そうだなぁ……」




言葉を交わせば交わすほど……未練は強くなっていくだけだと言うのに……。




(いや……もう手遅れかもな……)




それでも、二人の話は尽きなかった――――。




初春「カッキーさん……『約束』は、また今度でいいですよ」

垣根「え……?」

初春「カッキーさんがどんな顔してるのか……どんな人なのか知りたいですけど、もうどうでも良くなっちゃいました」

垣根「…………」

初春「どんな顔してても、カッキーさんはカッキーさんですから」ニコッ


垣根「……………」




初春の笑顔に……垣根は何も言えなかった。この少女は今日一日一緒にいただけだというのに、すっかり自分を信じている……。

かつて命を奪おうとした男だとも……知らないで……。

754 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/03(火) 21:25:54.55 ID:k6IN7sE0 [15/18]

垣根「……………」



この純粋な少女の抱く幻想を……俺はこの手でブチ壊さなければならないのか……?


残酷だ……。あまりにも………。




(やっぱ………できねえよ………)





初春「―――じゃあ、私……そろそろ帰りますね」

垣根「……送ってくよ…」

初春「大丈夫ですよ。すぐそこですから走って帰ります」

垣根「………そう…か…」

初春「じゃ、また後で連絡しますね―――」

垣根「あ……」




垣根の返事も待たず、少女は駆け出した。おそらく、これ以上垣根を悩ませたくなかったのだろう……。優しい子だ。
胸が痛いほどに―――。




垣根(………俺、本当に最低だな…)

755 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/03(火) 21:30:53.83 ID:k6IN7sE0 [16/18]

遠ざかる初春の背中を見つめる事しかできなかった……。


そして、初春が公園を出ようとしたその時―――――!!!




垣根「――――!!!??」




垣根の自己嫌悪はそこで強制ストップした。目の前で何が起きたのかが一瞬分からなかった。


外で待ち伏せていた数人の男が……初春を連れ去ろうとしたのだ。




垣根「――ッッッ!!!」ダッ




すぐに駆け出す垣根。しかし、男達の行動は早く、初春の口を押さえた大柄の男が彼女を抱えて走り出した。
それに並ぶように、他の男達も走り去る。




垣根「―――ッ……!!」




垣根が公園を出た頃には、男達の姿はもうなかった……。初春の姿も―――。

756 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/03(火) 21:33:49.33 ID:k6IN7sE0 [17/18]

垣根「―――ちくしょうっっ!!!」ダッ




再び勢い良く走り出し、必死に周囲を散策する。




(―――クソったれがぁあ!!! なんで!? なんでこんな!!)


(なんであの子が狙われんだよ!?)


(俺と一緒にいたからか!? ………けどなんで……?)


(チィッ!………とにかく落ち着け。……車が走った気配はなかった。つまりヤツらはそんな遠くには行ってねえハズ……)


(かすかに見た限りじゃ、アイツらは多分スキルアウト………ソイツらが女の子を抱えて走ってたら嫌でも人目に付く……)


(こんな時、連れ込むのは人目に付かない場所が相場だ。つまり、この付近でスキルアウトでも溜まってそうな場所……)




垣根は走りながら混乱した頭を精一杯落ち着かせて初春が連れて行かれた場所を推測した―――。

と、その時―――。




垣根「――ん? アイツら……」




―――――


―――

762 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/04(水) 19:36:50.62 ID:fH34UK60 [2/20]


初春飾利は路灯に照らされた裏路地の行き止まりに連れ込まれていた。
彼女の両腕は手錠で柱に繋がれている。その周りを数人の男が腰を下ろしてタムロしていた。
男達が吸う煙草の紫煙が光によって照らされる。




初春「あなた達……こんな事してただで済むと思ってるんですか? 私は風紀委員ですよ? いったい目的はなんですか?」




繋がれた状態で足が震えているにも関わらず、初春は強気に質問する。男の一人がこう答えた。


「俺らは仲間に頼まれただけだよ」と……。


「え?」と初春が疑問を抱くと同時に、通路の方から更に三人の男が姿を現した……。




初春「あ……!」


「よう、嬢ちゃん。俺らのこと覚えてるかい?」




現れたのは、一週間ほど前に初春を暴行しようとしたあの三人組だった……。初春はその顔を見た途端に戦慄する。




初春「あ……あなた…たち……」

763 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/04(水) 19:41:58.90 ID:fH34UK60 [3/20]

男1「へへへ……悪いな。見かけてから後を尾けさせてもらったぜ。あん時はとんだ邪魔が入ったからよ」

男2「一緒にいたダセェ男は彼氏かい? アイツ、この前邪魔したヤツと背格好が似てたからなぁ。今回は一応仲間に協力
   してもらったのよ」

男3「ソイツさっきこの辺を必死こいて走りまわってたぜ。それとなーく姿見せてやったからもうじきここに来るんじゃねぇか?」

男1「ま、来たとしてもこの人数じゃあフクロにされんのは目に見えてっけどなぁ! ぎゃははは!」




「違ぇねえや!」「ははは!」と、仲間達も一緒に笑い出す。



男1「―――さて、じゃああん時の続きといくかぁ。痛いかもしれねぇが、優しく可愛がってやるよ。へへへ…」



じりじりと、不気味に笑う男達が初春に迫った。



初春「…………ッッ」




初春の目に、うっすらと涙が浮かんだ。………その直後―――




「テメェ等……その子を離せよ」




―――怒りが込められた声が……路上に響いた……。

764 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/04(水) 19:46:11.27 ID:fH34UK60 [4/20]

―――声と同時に闇から姿を見せた垣根が、ゆっくりとコッチに向かって歩いてくる。




初春「カッキーさん!! 来ちゃダメです!!」




初春は叫ぶが、垣根は止まらなかった……マスクと帽子から見える垣根の目は、怒りに満ちている。
男達は足を止めて垣根を見ると、呆れたように笑った。




男3「へっ……本当に来やがったぜ。馬鹿が」

男1「忘れねぇぜ、その目はよぉ……やっぱこないだ邪魔してくれた野郎だなテメェ」

男2「あん時はよくもやってくれたなコラ」




口々に粗野な言葉を飛ばしてくる男達だが、垣根は全く表情を変えずに、もう一度警告する。




垣根「その子を、離せ。今なら愉快な死体にならずに済むぜ……」


男1「ぎゃははは! オメェ馬鹿か!? 一人でこの人数相手にしようってか? 何の能力者か知らねえが、コッチにはレベル4の
  『風力使い(エアロシューター)』もいるんだぜ! 今度はテメェがミンチになる番なんだよボケがぁ!」




『風力使い』らしき男は、男1の後ろでニヤリと笑った……。

765 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/04(水) 19:50:04.60 ID:fH34UK60 [5/20]
垣根は、表情とは裏腹に冷静だった……。冷静に、脳内で思考した。




(チッ、合計八人か……能力無しで何とかなるか……?)


(いや、レベル4がいるんじゃ正直キツイ………)


(ここはいったん退いて助けを呼ぶか………)


(って馬鹿かよ!? そんな事してる間に彼女がどうなっちまうかなんて分かりきってんじゃねえか!)


(しかし……他に方法が……クソ……やっぱり『未元物質』使うしかねえのかよ……)


(彼女の……目の前で…………)グッ




………拳が震える。初春を助けるためには、やはり能力を使うしかなさそうだ。そしてそれが何を意味するのか…………。


垣根の心に、再び迷いが生まれた……が。




初春「逃げてくださいっ!! 私なら、大丈夫ですからっ!!」




初春の、力を籠めた叫びが垣根の脳に響いた―――。




「―――!!!!!」

766 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/04(水) 19:54:43.98 ID:fH34UK60 [6/20]

初春は、自分よりも垣根の身を案じていた……。

『あの時』もそうだった……。

あの時も………自分より、打ち止めの方を彼女は優先していた。

初春は、そういう人間だ……。風紀委員として、人として、強い心を持った人間なのだ。


(……………)


(………この子は、こんな状況でも俺を心配している…)


(それに比べて、何なんだよ俺は……)


(こんな状況でも、テメェの事しか考えてねぇなんて……)




男1「ハッ、逃がすと思ってんのかよ? バーカ!」



男達は、垣根の逃げ道を塞ぐように周囲を取り囲んだ。これでもう、逃げは封じられた。



初春「…………ッッ……!!」



初春の顔が絶望に変わっていく……。

767 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/04(水) 19:59:46.49 ID:fH34UK60 [7/20]
しかし、垣根の選択肢に『逃げ』は存在しなかった。
一瞬閉じた目を、カッ!と力強く開く。





(……ムカつく)


(自分がこんなにムカついたのなんざ初めてだ……)


(何を迷ってたんだよ―――)


(最初っから、何も迷う必要なんて無かったんじゃねえか―――)


(……なぁに、簡単な事だったんだ―――)



垣根の手が動く……。



(俺の素顔がバレて、彼女から怯えた目で見られるか―――)



両手を……顔へと近づける。右手がマスクを、左手が帽子を掴む。

768 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/04(水) 20:01:37.36 ID:fH34UK60 [8/20]

(このままヤツ等が彼女に新たな傷を負わせちまうか―――)



そのまま、自らの顔を隠していたニット帽子とマスクを………



(そのどっちかを天秤にかけるなんてよぉ―――)



振り払うように―――――



(オカシイにも程があんだろうが馬鹿野郎!!!!!!!)パッ



―――――とった………。



初春「――ッッ!!!??」



初春の……目の前で………。



垣根「…………」



外されたマスクと帽子が、地面に落ちる。


素顔を晒した垣根の目から―――


―――迷いは完全に消えていた………。

769 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/04(水) 20:05:25.92 ID:fH34UK60 [9/20]

初春「あ………え…………?」




路灯に照らされた垣根の『素顔』を見たまま、初春は固まった……。言葉が出せていなかった……。

その初春に、垣根はチラッと目を向けると……男達を鋭い眼光で威圧した。




垣根「その子に傷の一つでも負わせてみろよ……」




「―――テメェ等全員、肉片すら残らねえ様にしてやるからな」




重く……低く……それでいて良く響いた声だった。


学園都市第二位、最強に次ぐ超能力者……垣根帝督の姿がそこにあった―――。


男達は、垣根が発する凄まじい気迫に抗うかのように………いっせいに襲い掛かった―――。


全員、自分へと向かってくる―――。『好都合』だった。




垣根「――フッ」ニヤ…

770 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/04(水) 20:08:13.62 ID:fH34UK60 [10/20]

垣根の口端が怪しく上がると同時に、白い翼(未元物質)が背中から生えた。




垣根「来いよ、クズども―――」




「―――愉快なショータイムだ。ハハハッ」




―――――


―――



垣根の言葉を聞いてから……何分、いや……何十秒の間だっただろうか。


初春の視界に映るのは、倒れ伏したまま動かない男達……。そこに立っている人間は、誰もいなかった―――。


―――ただ、一人を除いては……。




初春「………うう……」




目の前の光景が信じられないような顔の初春。目は見開き、足の力が完全に抜けたように座り込んでいた。

771 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/04(水) 20:12:55.11 ID:fH34UK60 [11/20]

垣根「……………」




動かない男達の中心で、翼の生えた背中を初春に向けたまま立ち尽くしていた垣根が……ゆっくりと彼女へ振り向いた。

垣根は、無表情で初春に近づく。
初春を見下ろす位置まで来た垣根は、まず声をかけた。




垣根「大丈夫か? 飾利……」


初春「あ……あぁ……」




返ってきたのは、声にならない声だった……。


―――『怯え』『恐怖』『絶望』


その全てが含まれた初春の表情……。それを見た垣根は、諦めたかのように薄く笑った。
ゆっくりと、翼を彼女に向けた。その行為で初春の表情が更に恐怖で染まっていくのが……垣根にも良く分かった。




(そう………それで、正解だよ……)

(君みたいな光の世界で生きる住人が―――)

(―――闇に汚れちまった俺なんかと……一緒にいたらいけないんだ………)




―――スパッ…と音を立てた翼の先が、初春の心を揺さぶった……。

772 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/04(水) 20:14:44.98 ID:fH34UK60 [12/20]

初春「―――ッ!?」




垣根の翼が切ったのは、柱と手を繋いでいた『手錠』だった。




初春「…………あ…」


垣根「ゴメンな………」




自由になった両手を見つめる初春に垣根はそれだけ言うと、逃げるようにその場から立ち去った―――。


悲しい目を、一瞬だけ彼女に向けて………。



初春は、去っていく垣根の後ろ姿を呆然と見送る事しか出来なかった……。



―――――


―――




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




一方通行「…………」

垣根「―――で、後はよく覚えてねえ内に……ここまで帰ってきてたんだ……」

773 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/04(水) 20:16:31.72 ID:fH34UK60 [13/20]

垣根の話を一方通行は無表情のまま黙って聞いていた。




垣根「まぁ……やっぱお前の言う通りだったって訳だ。こうなるんなら初めっから名乗ってりゃ良かったよな。………そうすりゃ、
   アイツの傷も少しは広がらずに済んだかもしれねえのに……」


一方通行「…………」


垣根「俺がグズグズしてたせいで、余計な思い出を作らせちまった………ホント最低だわ」


一方通行「…………」


垣根「……けど、自業自得ってヤツだな。昔の事とは言えアイツを殺そうとしたのは事実だし、そんな危ねえヤツだなんて知ってたら
   普通は会いになんて行かないだろ……」


一方通行「…………」


垣根「結局、アイツを騙して弄んだあげくに絶望の底へ突き落としちまったって訳だ。ハハハハ、最っ低すぎてもう笑えてくるわ。
   ホラ、お前も笑って良いんだぜ? 遠慮すんなよ」


一方通行「…………」


垣根「つまんねえ話聞かせちまって悪かったな……。こんな時、ルームメイトがいるってのも案外悪くねえモンだわ。お前意外と聞き手
   の才能あんじゃねえか?」


一方通行「…………」


垣根「………オイ、もう黙らなくて良いから……早く笑うなり呆れるなりしろよ。怒ったりしねえからさ」



一方通行「…………」

774 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/04(水) 20:18:27.63 ID:fH34UK60 [14/20]

垣根「………さっきから何なんだよそのツラは? 感情読まれない様に気でも遣ってるつもりかコラ?」


一方通行「…………」




一方通行は、無表情で垣根を見ているだけだった。口が開かれる気配はまだ感じられない。
そんな彼の様子に、垣根は苛立ちを治えられなかった……。




垣根「なんで何も言わねぇんだよ? 同情してるとか言う気じゃねえだろぉな……フザけんなよ。それなら笑って聞いててくれた方がまだ
   マシだぜ。なぁ、頼むから何か言えよ。同情とか以外なら何だって構わねえよ。言いたい事あんなら言えって。何かしらあるだろ?
   『腹痛くて笑いが止まンねェww』とか『馬っ鹿じゃねェのか』とか………もぉ何でも良いから何とか言えよぉぉッッ!!!」――バンッ!!




しんみりした空気を嫌うかのような声を上げて床を叩く垣根に……やっと一方通行は口を開いた。




一方通行「……オマエは何て言って欲しいンだよ?」

垣根「………知らねぇよそんなの……だから何でも良いって言ってんだろ? お前の好きな感想言や良いんだよ……」

一方通行「だったら言ってやるよ。感想は『特にナシ』だ」

垣根「ハ、何だよ……呆れてモノも言えねぇってか…?」

一方通行「そォじゃねェよ。最初に言っただろォが。『聞いたからどォにか出来るモンでもねェ』って。オマエは俺にリアクション
     を求めて、そっからどォしてェンだ?」

775 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/04(水) 20:21:18.40 ID:fH34UK60 [15/20]

垣根「……別に、そこまで考えてねえよ。………強いて言うなら気紛れかな……」

一方通行「つまり、現実逃避してェって事だよな? 生憎だがなァ、そンなのに付き合う気なンざサラサラねェよ。俺は『オマエが
     楽になるンなら話くれェは聞いてやる』とは言ったが、『オマエの現実逃避に付き合ってやる』って言った覚えはねェぞ?」

垣根「………らしくねぇ事言ってんじゃねえよ。いつもみてぇに笑い飛ばしゃ良いじゃねえか」

一方通行「今の話の何処に笑う要素があったのか是非聞きてェモンだなァ。ハッキリ言って全然笑えねェよ」

垣根「……呆れたり、しねえのかよ……?」

一方通行「オマエに呆れてンのは今に始まった事じゃねェしなァ。別に今の話でオマエに呆れたなンて事ァねェから安心しろよ」

垣根「何だよそりゃ……ホントにただ聞くだけってヤツかぁ?」

一方通行「そォ言っただろォ。ンで、どォだ? 大声まで張り上げたからには、ちったァ楽になったンだろォなァ?」

垣根「なる訳ねえよ! 普通、話に何かコメントとかつけるモンじゃねえの?」

一方通行「俺からコメントもらってどォすンだよ? その通りにでもすンのか?」

垣根「そ……そぉは言ってねぇ。……けどよ……」

一方通行「………もォ話は終わりか? なら、とっとと寝ろ」

垣根「テ、テメェ!! こっちは真剣に―――!!」


一方通行「―――俺が何言ったところで、過ぎた時間が巻き戻る訳じゃねェだろォが!!」


垣根「―――ッ!?」

776 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/04(水) 20:23:29.62 ID:fH34UK60 [16/20]

一方通行「こォなるってのは分かってたンだろ!? だったらそれで良いじゃねェか!! オマエがその女をクズどもから無事に救えた
     ってンなら、それ以上何を望むンだよ!? その女が無事に助かった事以上の結果があるってのか!? あげくにオマエは俺
     にまで一体何を求めてンだ!? 俺に慰めて欲しかったとか傷舐めて欲しかったとでも言うつもりかよ!?」


垣根「………………」


一方通行「あァ、そォだな! 確かに名乗ンのはちィっとばかし遅かったかもしンねェよ! けどなァ、オマエはそれと引き換えに大事な
     モンを守れたンだ! 何でソイツを誇れねェ!? 何でそこで満足できねェンだ!?」


垣根「そ、それは………」


一方通行「まだ未練引きずってるからかァ? そこまでふさぎ込むぐれェならずっと誤魔化し続けりゃ良かったじゃねェか! 意地でも隠し
     通してりゃあ良かったンじゃねェのかァ!? 全部覚悟の上で正体明かしたンだろォ? だったらいつまでもウジウジしてンじゃ
     ねェよ! ナニか? テメェで決めた道を三歩も進ンでねェ内に、『やっぱやめときゃ良かった』って後悔かァ? 俺はそォいう
     甘ったれたヤツ見てっと虫唾が走ンだよ!」


垣根「………わかってんだよ。……覚悟してたさ……それでも、感傷に浸るくらい良いだろ……」

一方通行「なら一人で浸れよ。俺は付き合う気はねェ。他人の傷ペロペロ舐めンのなンざ御免だからなァ」

垣根「…………覚悟、決めたんだよ。もう二度とアイツとは逢えないって覚悟したよ……」

一方通行「…………」

垣根「アイツは、『表』の人間だ。足洗ったとは言え、暗部の世界で生きてきた俺等とは住む世界が違うって事も……わかってる」

一方通行「…………」

777 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/04(水) 20:27:00.17 ID:fH34UK60 [17/20]

垣根「だから、俺は……アイツといちゃいけない。今日、一緒にいてそれが良くわかった。アイツの無邪気な顔に……正直言って惹かれてた。
   俺には、アイツが眩しすぎるんだよ……俺の闇を照らす太陽に見えるくらいにな………」

一方通行「テメェが虫けらみてェに殺そうとした女に、すっかり毒気抜かれちまったってかァ?」

垣根「……否定はしねえよ。なんせ、別れの寸前ですら言えなかったんだからなぁ……太陽が消えて、夜になっちまうのを恐れてたんだ」

一方通行「ケッ……」

垣根「実際、恐怖に満ちた目で見られた時……すげぇ悲しくなっちまった。覚悟が甘かったとかじゃねぇ。それ以上に飾利の存在がデカく
   なってたんだ……まともに話してから丸一日も経ってないってのに……ホント不思議な子なんだよな…」

一方通行「…………」

垣根「できるんなら………もう一度逢いてぇ。あの無邪気なツラをもう一度見てぇよ……けど、それはもう叶わねえんだ」

一方通行「……オマエがそォ決めたンなら、それで正解なンだろォよ」

垣根「…………」

一方通行「オマエ以上に汚ェクソ踏ンできた俺が、これ以上どォこォ言える立場じゃねェけどなァ……」

垣根「……悪かった。もう寝るわ」




―――のそのそと、布団に横になった垣根に………一方通行は唐突に言う。




一方通行「オイ、オマエ何処で寝てンだ?」

垣根「は……?」

778 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/04(水) 20:28:24.65 ID:fH34UK60 [18/20]

一方通行「は? じゃねェよ。さっさとどけっつってンだ。俺が寝られねェだろォが」

垣根「いや……」

一方通行「そこで寝られるとすっげェ邪魔なンですけどォ。っつー訳でオラ、早くどけよ」

垣根「……気にしなくて良いから、お前がベッドで寝ろよ」

一方通行「はァ? なァに勘違いしてンだこのボケは? 今日のベッドは何か知ンねェが、寝心地悪いンだよ。床で寝たい気分な
     だけなンだっつの」

垣根「…………悪い…」




垣根は起き上がり、ベッドで横になる。どちらの寝心地が良いのかなんて言うまでもなかった……。




一方通行「ンじゃ、電気消すぞォ」




パチッと明かりが消えて、一方通行が布団に潜り込む音がした。………それからしばらくした後、安らかな寝息だけが聞こえてきた。




垣根「………」

779 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/04(水) 20:30:28.63 ID:fH34UK60 [19/20]

柔らかく沈むような……全てを癒す程の寝心地に、垣根の目もまどろんできた。意識を手放す前に垣根は―――



「ありがと…よ」



―――とだけ口に出した。




一方通行「……Zzz」




返事の代わりに返ってきたのは、寝息だけだった―――。



長い夜が……更けていった―――。



―――――


―――

796 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/06(金) 19:36:04.80 ID:oj5VKQc0 [2/19]

―――翌朝……




一方通行「…………」カツ カツ




朝の冷気に包まれた路上を一人歩く一方通行。コンクリートに杖をつく音が規則正しく響く。




一方通行「……うゥ寒ィ…」




厚着は充分にしているのだが、それでも真冬の朝は脂肪の少ない彼にとって厳しい環境だった。……と言っても、ロシアよりは
マシだが。

一方通行が朝から何故外を歩いているのか……。理由を一言で言うなら、「友達との約束」である。




一方通行(結局、三下から折り返しは無かったな……。来る前に電話しても出ねェしよォ……何してンだっつの)




内心で愚痴りながら歩いている内に、上条の住む寮が見えてきた。ここ最近で一番来慣れた場所だ。




一方通行(しっかし、なンだかンだ言ってすっかりアイツを『ダチ』って思えるよォになっちまったなァ……ホント不思議なモンだ)




口元を歪めながらふとそんな事を思い、寮の入り口へ足を進める。………が、

797 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/06(金) 19:38:18.45 ID:oj5VKQc0 [3/19]

一方通行「―――ァあ?」




思わず声が出てしまったのは、寮の入り口付近のゴミ出し場に誰かいたからだ。それも、一方通行が良く知った顔の……。




土御門「ふー……寒い寒い」


一方通行「…………」




どうやらゴミを捨てに来ていたらしい土御門元春は、ゴミ袋を置いてそそくさと部屋へ戻ろうとする……。が、一方通行はそれを
許さなかった。




一方通行「おはよォ、土御門くゥン」

土御門「へ…のわっ!?」




いきなりぬっと現れた仕事仲間に流石の土御門もたじろいだようだ。




土御門「あ、一方通行か……こんな朝早くからどうしたんだ?」

一方通行「それはコッチのセリフだボケ。けど丁度良かったぜェ。後でオマエにまた電話するつもりだったンだからよォ」

土御門「仕事以外で電話するとは……以前とは比べモノにならない程コミュ力が上がってるにゃー」

798 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/06(金) 19:42:42.57 ID:oj5VKQc0 [4/19]

一方通行「フザけたこと抜かしてっとグラサンかち割ンぞ?」

土御門「冗談だにゃー。……それで、何だ?」

一方通行「何だ?じゃねェよ! オマエ、シスター誘拐したヤツは研究所に送ったっつったよなァ?」

土御門「……あぁ」

一方通行「例のヤツ(仕事指示者)に訊いたら『研究はとっくに終わってる』って聞いたンだよ」

土御門「………」

一方通行「っつー事は、『分かった』って事だよなァ?」

土御門「あぁ」

一方通行「『分かったら教える』とも言ったよな?」

土御門(いや、それは言ったっけ…?)

一方通行「昨日は突然切られた上にコッチもゆっくりしてる時間が無かったからなァ……今日こそ吐いてもらうぜェ」

土御門「ったく、朝っぱらから勘弁して欲しいぜい……そんなに聞きたいのか?」

一方通行「当たり前だろォが。コッチは殺されかけたンだよ」

土御門「……分かった。移動するぞ」

一方通行「……」

799 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/06(金) 19:45:30.63 ID:oj5VKQc0 [5/19]

―――寮の一室(土御門の部屋とは別)




一方通行「―――ここも、オマエの『仕事用』に借りた部屋ってヤツかァ?」

土御門「イエス♪」


一方通行「ンで、『研究』の結果は?」

土御門「もうお前が知る必要ないんだがな………分かった。お前、中国の歴史とかって興味あるか?」

一方通行「は?……ねェよ」

土御門「じゃあ、『気』って言葉は分かるか?」

一方通行「??? オマエ何の話してンだよ?」

土御門「良いから答えろ」

一方通行「……人間なら誰しも持つ力、体内のエネルギー。って事ぐらいしか分かンねェぞ」

土御門「はい正解♪」

一方通行「オイオイ、まさかそれが『研究結果』とか言う気じゃねェだろォな?」

土御門「ん? そうだが?」

一方通行「はァ? フザけてンのかオマエ? 少年漫画じゃあるまいし、ンなモンが実際にある訳…」

土御門「前に可能性の一つとして言っただろう? 忘れたのか?」

一方通行「………けど本当にそンなモノの存在認めろってのが――」

土御門「『魔術』の存在は認めても……か?」

一方通行「………」

800 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/06(金) 19:47:55.45 ID:oj5VKQc0 [6/19]

土御門「セリオスはすでに祖国の監獄に放り込まれた。当然だ、もう『用済み』となったからな」

一方通行「………」

土御門「ある少年漫画に沿って言うが、『気』の力はコントロールすれば空も飛べたりするらしいぞ?」

一方通行「………」

土御門「科学の街にそんな力の存在を認めろと言って、認めると思うか? 魔術もまた然り……」

一方通行「……つまり、もォ学園都市は手を引いた…」

土御門「そういう事だ。科学ではどうしようもない結果に、流石のアレイスターもサジを投げたって訳だ」

一方通行「………なンで黙ってた?」

土御門「こんな肩スカシな結果を、態々お前に言う必要も無いと思ったんだにゃー。それに、お前はそれどころじゃないくらい
    忙しいみたいだし…」

一方通行「……また余計な情報仕入れやがって………」

土御門「で、『ミサカ』ちゃんとはどうすんだ?」

一方通行「オマエにだけは死ンでも言わねェって今決めたわ。このペテン師が」

土御門「『スパイ』と呼んでくれぃ♪」

一方通行「くっだらねェ……くだらな過ぎるわ」




部屋を出ていこうとする一方通行に土御門が声をかける。

801 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/06(金) 19:49:48.31 ID:oj5VKQc0 [7/19]

土御門「あ、一方通行」

一方通行「ンだよ?」

土御門「アレイスターから伝言だにゃー」

一方通行「あァ?」

土御門「『幻想殺しと仲良くね♪』 だそうだにゃー」

一方通行「……アイツ俺の親にでもなったつもりかよ…」

土御門「『学園都市』の親だな」

一方通行「……俺が別に誰とツルもォが、オマエらに関係ねェだろォが」

土御門「お前が学園都市の最強でなかったらな」

一方通行「………」

土御門「諦めろ。これも頂点に君臨する者の宿命ってヤツだ。有名人は辛いにゃー」

一方通行「……チッ」




舌打ちをして、一方通行は部屋から出た。そのまま、上条部屋を目指すが……

802 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/06(金) 19:51:32.71 ID:oj5VKQc0 [8/19]

一方通行「………」カツ カツ

土御門「………」テク テク



一方通行「………」カツ カツ

土御門「………」テク テク


一方通行「………なァ」

土御門「ん? 何?」

一方通行「オマエどこまでついて来る気なンだよ!?」

土御門「いや……どこまでって…」




上条部屋の前まで来たところで我慢の限界を迎えた一方通行がピッタリ後ろを尾けてくる土御門に指摘するが……




土御門「俺の部屋、ココ」クイッ




当然、と言わんばかりに答えて上条部屋の隣りを指さす土御門君。一方通行は数秒ほど『一時停止』した後、自分の声とは
思えない程素っ頓狂な声を朝の学生寮に響かせたのだった……。

803 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/06(金) 19:53:22.52 ID:oj5VKQc0 [9/19]

一方通行「オォイ!! どォいう事だゴラァ!! 聞いてねェぞォ!?」

土御門「あれ? 言ってなかったっけ?」


??「朝からうるさいなー。誰だー?」ガチャ




声と同時に姿を見せたのは、妹の土御門舞夏。服装は勿論いつものメイド服。




一方通行「……あァ?」

舞夏「あ。兄貴ー、ご飯できたぞー。 この白い人は友達かー?」

一方通行「兄貴…だァ?」ジー

土御門「お、悪いな舞夏。コイツはカミやんの友達だ」

舞夏「ほー、そうなのかー」

一方通行「カミやン……だとォ…?」ピクピク

土御門「ま、今度ゆっくりお前の奢りでメシでも食いに行こうぜ。『約束』したろ?」※1スレ目>>169参照

一方通行「あァ!?」

土御門「んじゃ、俺はこれで失礼」

804 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/06(金) 19:55:09.67 ID:oj5VKQc0 [10/19]

一方通行「オ、オイ待て! まだ話は――」

土御門「あ、そうそう。一方通行」

一方通行「……何だよ?」

土御門「家出してカミやん家に転がり込むのは良いが、あんまり夜中に騒ぐなよ? おかげで眠れなかったぜぃ」

一方通行「………ッ!!」




カーッと一方通行が顔を赤らめている内に、土御門兄妹はドアをバタン、と閉めて部屋に戻っていった。
しばらくそのドアを見つめたまま呆然と固まっている一方通行の間抜けな姿がそこにあった。




一方通行「……あのグラサン野郎、いつかぶっ殺してやる……」ブツブツ




気を取り直し、ブツブツ言いながら上条部屋の前に立って呼び鈴を押す……が、応答はない。




一方通行「……まだ寝てンのか?」




ドアノブに手を掛けてみる。……鍵は開いていた。ガチャリとドアが開いて、真っ暗な廊下が視界に入る。

サスペンスドラマならこの後出てくるのは死体が相場だが、まさかな…と思いながら一方通行は部屋へ入った。

805 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/06(金) 19:57:08.93 ID:oj5VKQc0 [11/19]

一方通行「…………」




リビング兼寝室に着いた一方通行は、再度の硬直を余儀なくされた。
目の前に映ったモノはある意味死体より恐ろしいかもしれない……。




一方通行「……三下………か?」




何故疑問系なのか……。答えは簡単だ。上条の顔が見えないからだ。というか全身が見えない。
いや、電気は点けたから姿は見えるのだが……。




一方通行「…………」




ぶっちゃけて言うと、上条は全身顔まで包帯でぐるぐる巻きにされた状態で床に寝かされていた。
呼吸できるように口と鼻はむき出しのままだが、かえって不気味だった……。

そして、ベッドで暢気に眠る禁書目録……。




一方通行「………何を、どォしたら良いンだよ? この場合…」

806 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/06(金) 19:58:42.97 ID:oj5VKQc0 [12/19]

一方通行の質問に答えなど返ってくるハズも無い……。取り敢えず、ミイラ男……いや、上条に手を伸ばす。




一方通行「…………」




生きてはいるようだ。続いて、頭の包帯をゆっくり取っていく……。




上条「……う~ん…」




まるで怖い夢にでも魘されているような、苦痛に満ちた上条の顔が曝け出された。何があったのかは起こして直接聞く事にする。




一方通行「オイ、三下ァ。起きろよ」ペチペチ


上条「んん……?」パチッ


一方通行「お、目ェ覚めたか?」


上条「アクセラ……レータ……?」

807 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/06(金) 20:01:48.03 ID:oj5VKQc0 [13/19]

―――それから数分後




上条「―――いや~、一方通行さんなら必ず来てくださると上条さんは信じてましたよ♪」

一方通行「当ったり前だろォ? この俺が約束を守らないとでも思ったァ?」

上条「まさかぁ。学園都市最高の男、一方通行さんに限ってそんな事思いませんの事よ♪」

一方通行「ハッハァ。そォかそォだろそォだよなァ」

上条「やっぱ持つべき者は友達だぜ」

一方通行「あァ、友達って最高だよなァ。ハハッ」

上条「まぁな! あははっ」

一方通行「ハハハハハ♪」

上条「ははははは♪」

一方通行「……ンじゃ、そろそろ三途の川でも渡ってみるゥ?」カチッ

上条「すみませんでしたホントそれだけは勘弁して下さいマジで勘弁して下さい」ドゲザ

一方通行「………ったく、マジでくたばったかと一瞬思ったじゃねェか。心配させンなっつーの。ただでさえムカついてンのによォ」ボソ…

上条「ん? 何かあったのか?」

一方通行「……気にすンな。っつーか、包丁で右腕切っただけだっつーのに何でオマエは全身ミイラ化してたンだよ?」カチッ…(戻した)

808 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/06(金) 20:06:00.00 ID:oj5VKQc0 [14/19]

上条「ベッドで無邪気に寝てる天邪鬼シスターに訊いてくれ。あ、でもホントに訊こうとすると寝ボケて噛まれるぞ?」

一方通行「……やめとく」

上条「賢明だな」

一方通行「右腕は平気か?」

上条「血は止まったし、後は包帯巻いとけば治るだろ」

一方通行「そォか。ってェか全身巻かれた時抵抗しなかったのは何故だ?」

上条「うーん………あ、そうそう! 思い出した」ポン




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




上条「―――不幸だぁぁぁあああああ!! 畜生! インデックスをホンの少しばかりは信じてみようとか思った俺が馬鹿だった!」パックリ

禁書「あわわ……と、とうま大丈夫!? 手元が狂ったんだよ! 縄を包丁で切るって意外と難しいかも…」

上条「………気づくのがちょーっとだけ遅かったね♪」ドクドク

禁書「……腕、大丈夫?」

上条「うん、大丈夫♪ なワケねぇだろォォ!! と、とりあえず血を止めないと! インデックス、救急箱取って来てくれ!」ドクドク

禁書「任せるんだよ!」



――バタバタ



禁書「とうま、まずは止血するんだよ!」

809 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/06(金) 20:09:06.62 ID:oj5VKQc0 [15/19]

上条「あぁ、分かってる! けどまずは縄を完全に切ってくれ!」ドクドク

禁書「その前に止血なんだよ! このホータイもらうね!」シュルシュル

上条「イ…インデックス……? そんなに使う必要ないんじゃ……? 右腕切っただけだぞ? 結構血は出てるけど……」

禁書「全身の血をまずは止めないと、腕の血も止まらないかも!」

上条「何だその新医学!? も、もういいから腕だけ包帯巻いて早くこの縄を―――」

禁書「あぁーもう! ギャーギャーうるさいんだよ! 少し大人しくしてて!」クビスジ ガブッ

上条「あっ……」カクッ




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




上条「―――ハイ、そこから記憶がありません……」

一方通行「シスターのヤツ……手刀の代わりに歯を使うなンて新技身につけてやがったのかァ……」

上条「いや、どこに感動してんだよ!?」

一方通行「だってよォ、ある意味アイツは手足拘束されても生き残る術持ってンだぜ? まるで軍人みてェになァ……」

810 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/06(金) 20:11:34.49 ID:oj5VKQc0 [16/19]

上条「軍人……インデックスが………ぷっ」

一方通行「サバイバルなンかさせてみろよ。蛇百匹は食うンじゃねェか?」

上条「わ、笑わせんなよ……くくく」プルプル

一方通行「もしかしたら、アイツこそ人類初の『軍人シスター』になれるかもしンねェぞォ」

上条「ぷふっ、だははははははwwwねぇよwwwそりゃねぇってww」

一方通行「あ……」

上条「インデックスが入隊なんかしたら、それこそ食料尽きて全滅すんのがオチだっつーのwwwだはははwww」

一方通行「三下ァ……あのよォ……」

上条「www……え? 何……?」

一方通行「あァー……イヤ……後ろ……」ポリポリ

上条「へ……はっ――!?」クルッ




―――ガブッ……!!




一方通行は静かにその場で黙祷した。十分後、上条の二度寝は待ちくたびれた一方通行の蹴りと、お腹を空かせた禁書目録の
ボディプレスで妨げられる事になる―――。

811 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/06(金) 20:14:06.35 ID:oj5VKQc0 [17/19]

一方通行「じゃ、課題ってのをさっさと終わらせるとすっかァ」

上条「待ってました! 是非とも宜しくお願いします!」

一方通行「ンで、量はどれくらいあンだよ?」

上条「この机の問題集全部……」ズラーッ

一方通行「……………」

上条「…………」

一方通行「………ま、一日ありゃ終わンだろォ…」

上条(だいぶ間があったけど……大丈夫だよな?)

一方通行「仕方ねェ、ちィっとばかしハードに行くかァ……」ボソッ

上条「……え?」




朝食を済ませてひと段落後、ようやく二人は課題に取り組む。禁書目録は朝ドラに熱中しているので、ちょうど良かった。
これで何の邪魔も入らず、ゆっくり打ち込める。なぁに、学園都市最強の頭脳所持者が「一日あれば終わる」と言ったんだ。
よって、戦力外な上条さんは気楽に進めても全然大丈夫!

………な、ハズなのだが。




一方通行「だからァ! その問題はコッチの式から計算すンだよ! 何度言えば分かるンですかァ!?」

上条「うぅ……先生、もっと優しく…」

一方通行「甘えた目を向けてンじゃねェ! オラ、次は問ニだァ! 十秒以内で解けなかったらブチ殺す!」

上条「そ、そんなの無理ぃぃ!」

813 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/06(金) 20:18:43.73 ID:oj5VKQc0 [18/19]

一方通行「馬鹿野郎ォォ!! そンくれェの気持ちでやンなきゃこの量を一日で終わらせンのは到底不可能なンだよォ!! 
     死ぬ気でやれェ!! 無理とかほざく前に手ェ動かせよオラァ!!」ピシィ

上条「――痛ッ!? ど、どっから鞭を……!?」

一方通行「余所見してンじゃねェぞォォ!! 三下がァァ!!」ピシャン ピシャン

上条「――ひいいいいい!!!」スラスラ




―――正直、上条さん的にはこんなハズじゃなかったんだよな……。ホラ、『手伝う』ってのは一緒に別々のをやるって
イメージじゃん?
最初はそのつもりだったんだけど………気づいたら一方通行が俺のやってる所を見ててさ、「違う! 2は引っ掛けだァ!
そンなのも分かンねェのか!?この三下がァ!」って……で、そっから始まったんだ。そう、今や一方通行は上条さんの友人兼
『とっても怖い家庭教師』と化したのさ……。
これなら確かに手は速く動くし、問題解くのも必死だからスラスラ進んでいく。そりゃそうだ。こんな状況ならどんな頭悪いヤツ
でもそうなるだろうぜ。
けど、もう一度あえて言おう。決してこんなつもりじゃなかった……。ページと共に神経がどんどん磨り減っていく……。
これは不幸………なのか?




一方通行「だからそォじゃねェっっつってンだろォがァァ!! 問題よく見てンのかァ!! あァ!? コラァ!!」ビシィ




うん、やっぱり不幸だ♪ そろそろ背中がヒリヒリしてきたぞ。



―――そう、この不幸な少年に甘い展開など…最初から用意されている筈が無かったのだった……。




禁書(うるさいなぁ、ドラマに集中できないんだよ……)




上条(のび太)と一方通行(どらえもン)の共同学習(?)は、この後数時間ほど続く事になる―――。

819 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/07(土) 21:38:14.37 ID:9HYHQ3o0 [2/17]

上条が一方通行にしごかれてヒイヒイ言っている頃―――




「…………朝か…」




ようやく目を覚ました垣根は呟きながら体を起こした。隣りの床布団で寝ていた筈の一方通行がいない事にも気づく。




「……もぉ起きたのか……早起きなヤツ……」




とは言っても、時刻は十時。普段の一方通行生活に比べれば充分垣根も早起きだった。




(……結局、アイツにまですがる様な真似しちまった………顔合わせ辛いな…)




昨夜をの事を思い出して自己嫌悪に走る垣根……。しばらくそうしていたのだが、携帯電話がふと目に入った。
……無意識の内に着信履歴を確認する。履歴の中に『初春飾利』の文字が無いことを知って思わず肩が落ちる……が、




(おい……何ガッカリしてんだ俺は? これで良いんだよ。スッパリ諦めろっての…)


(昨日、俺がそう決めたんだろぉが…)

820 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/07(土) 21:41:34.26 ID:9HYHQ3o0 [3/17]

(テメェでそぉ決めて、あの子の幻想をブチ殺したんだぜ?『カッキー』は、もうあの子の中にいないんだよ……)


(今さら連絡なんて来るワケねえじゃねぇか……。あの子のことはもう忘れろ)




――――――――




垣根「―――オーケー。じゃ、『かざりん』で」


初春「か、かかかかざりん!!?///」


垣根「あれ?友達とかからそう呼ばれねえの?」


初春「よ、呼ばれたことないですよ~!……/////」




――――――――




(ったく……なぁに思い出してんだ馬鹿が……忘れるんだよ……)

821 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/07(土) 21:43:09.71 ID:9HYHQ3o0 [4/17]

――――――――




垣根「―――帰りに見せるよ。それまで、お楽しみってな」


初春「え~! お預けですかぁ?」


垣根「大したツラじゃねえから、あんま期待してんなよ」


初春「でも気になるんですよぉ~……もしかして、カッキーさん……照れ屋なんですかぁ?」ニヤニヤ


垣根「ま、まぁそういう事にしても良いぜ……」




――――――――




(………、忘れろよ………)




――――――――




初春「―――カッキーさん……」

822 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/07(土) 21:44:08.24 ID:9HYHQ3o0 [5/17]

垣根「ん、何だ?」(まだホントは怒ってんのか…? やっぱ無理させちまったかな……)


初春「怖かったですけど……楽しかったです! すごく貴重な体験でした! ……ありがとうございます」ニコッ


垣根「あ、あぁ……///」




――――――――




(忘れろっつってんだろ!!)





―――――どんな顔してても、カッキーさんはカッキーさんですから―――――




「…………………ッ」


(…………ックソ! 駄目だ…)


(ひとりでいると……どうしても思い出しちまう……)

823 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/07(土) 21:46:00.67 ID:9HYHQ3o0 [6/17]

(忘れるなんて………やっぱできねえよ……)


(飾利に………逢いてぇな…)


(逢って、もう一度謝りてぇ………)


(考えてみたら、今まであんな純粋な子と触れ合った事なんて無かったんだよな……)


(って、暗部にいた俺からすりゃ当然か……一般人とあんま親しくなる事なんて、まず無いからな……)





―――――カッキーさん♪―――――




考えるのを止めようとすると、初春の顔が頭に浮かんできてしまう……。いくら押し殺そうとしても、どうにもならなかった。
昨日の今日なので、無理もないが……。




(…………やべぇ、これじゃ直に腐っちまいそうだ)


(外に出よう………)

824 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/07(土) 21:48:45.71 ID:9HYHQ3o0 [7/17]

(打ち止めでも連れて、散歩にでも行こう……)


(―――よし!)




勢いをつけて立ち上がった垣根は部屋を出た。




垣根「―――あれ……打ち止めは?」




リビングで一人朝ドラを見ていた芳川に、垣根は尋ねる。芳川は画面から目を離さずに返答した。




芳川「あぁ、愛穂と出かけたわ。用事でもあったの?」

垣根「いや……別に……一方通行は…?」

芳川「あら、いないの?」

垣根「……えぇ」




それなら仕方ない……一人で行くか、と垣根は玄関へ向かおうとするが、芳川が背中を見せたまま唐突に声をかけた。

825 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/07(土) 21:50:28.37 ID:9HYHQ3o0 [8/17]

芳川「悩みなさい。まだ若いんだから、たくさん悩んだ分だけ優しい人間になれるわ。心も体も……ね」

垣根「え……?」

芳川「私みたいな甘い人間とは違う……本当の意味で優しい人間……」

垣根「芳川さん……?」

芳川「私からはこれしか言えないわ。後は、あなた次第よ」

垣根「………何で……」

芳川「後、もうひとつだけ言えるとしたら、『夜中に大声は出さないで』ってトコかしらね。子供の成長に良くないから…」

垣根「あ……」

芳川「……」クスッ




コッチを振り向いて聖母のように微笑む芳川。が、すぐに顔はまた正面に向いた。




芳川「現実は、このドラマのように甘くはないから……手遅れにならないよう祈ってるわ」


垣根「……ちょっと出てきます…」




何となくその場に居づらくなった垣根は、それだけ言って玄関へと向かった。

826 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/07(土) 21:52:47.10 ID:9HYHQ3o0 [9/17]

垣根(たまに思うけど、芳川さんって……なんで無職続けてんだろぉな……)




疑問は深まるだけだったので、外に出てからは考えるのを止めた。
ブラブラと、垣根はアテもなく歩き出した。
あのまま部屋でふさぎ込んでいるよりはずっとマシだと実感しながら―――。




――――――


―――




「…………」ムクリ




同じく布団から上体を起こした初春は、カーテンから射す光に目を擦った。




「…………」




彼女の目に、光はまだ無かった……。

827 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/07(土) 21:55:13.23 ID:9HYHQ3o0 [10/17]

目が覚めてしばらく経っても彼女の顔が沈んでいるのは、無論彼女が低血圧だからなどと言う理由ではない。
寝ようにも中々寝つけなかった事による寝不足の上、昨日の衝撃がまだ頭に残っていたからだった……。
『カッキー』という……自分の中で特別になりつつあった存在の『素顔』が、あまりに衝撃的だったのだ……。
彼が何故、自分に顔を見せようとしなかったのか……分かってしまった。

ショックを受けたままフラフラと自室に帰ってから、初春はずっと考えていた。

しかし、そう簡単に整理などつく筈も無かった。
彼が学園都市第二位、自分が憧れを抱くあの御坂美琴よりも上に立つ限られた存在……。
そんな人物が何故?
だいいち、彼は自分をゴミのように踏み潰そうとした……。が、その事に対してもう怒ってなどいない。
自分と他愛ない話をしたり、馬鹿みたいな事をして一緒に笑ったりしたのは紛れもなく『彼』なのだ。
その整理は一晩の内に終わった。……当然時間はかかったが。

分からないのは、超能力者である『彼』が何故自分なんかにあそこまで気を遣ってくれていたのか……だった。
垣根の心理や現状など知る由もない初春からすれば、これは当然の疑問だ。
そもそも、最後に会った時の垣根帝督は間違いなく自分の『敵』だったのだから……。
そんな彼が自分を助けた時点ですでに疑問だった。

どういう事なのか彼に電話をして訊こうとも思ったが……結局、通話ボタンを押せずにそのまま意識を手放し今に至る。
再び携帯電話を手にとるも、やっぱり指を動かせなかった。




「カッキー……さん。どうして……ですか?」




発信していない携帯の受話器から返事なんて返って来る筈もない。
なんとなく一人の空間に居たたまれなくなった初春は携帯を指で操作する。
やがて携帯画面に、良く知った人物の名前が表示された。

828 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/07(土) 21:57:50.33 ID:9HYHQ3o0 [11/17]

「………佐天さん、暇かな……」




さっきまでとは違い、今度はすぐに通話ボタンを押した―――。




――――――


―――



―――上条宅




禁書「―――……終わっちゃった……。続きが気になるんだよ。明日まで待てないかも」




テレビ画面はドラマ終了のテロップが流れている。禁書目録は熱中のあまりに上がっていた肩をゆっくりと下げた。




禁書「結局、これからどうなるって訳なんだよー!?」




昨日知り合った少女の口癖をちゃっかりパクって唸るが、次回予告で更に唸るハメになるのはもうお約束だ。

829 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/07(土) 22:02:08.65 ID:9HYHQ3o0 [12/17]
唸る禁書目録の後ろでは―――




一方通行「―――さァ次ィ! こりゃあサービス問題だからすぐ解けンだろォ?」

上条「はっはっは♪ 上条さんの脳を見くびってもらっちゃ困る。いくらサービス問題だからってあっさり解ける程優秀な脳は
   持っていませんのk」

一方通行「困ンのはオマエだけなンだよボケ! しのごの言ってねェでさっさと解けやゴルァ!」ビシッ ビシッ

上条「――オォウ!? す、すいませんでしたぁぁ!!」スラスラスラ…

一方通行「イイか三下ァ、所詮自分はそこまでって考えたらそこで終わりなンだよ。大事なのは『向上心』。テメェの現状に満足
     するよォじゃ駄目ってことだ。別にオマエのためって訳じゃねェンだが、オマエのこの先を考えてみりゃあ決して俺の
     してる事に間違いは(ry」クドクド

上条「すまん一方通行。ようやくコツが分かってきたんだ。少しだけ静かにしてくれないか? 集中したい」スラスラスラ

一方通行「……お……おォ、そォか………悪りィ……」

上条「…………」スラスラスラ

一方通行(……へェ、ちっとはマシなツラになってンじゃねェか。手はまだ遅いが、ミスが無くなってきてやがる。頭が悪いって
     理由で諦めるよォな野郎にはなって欲しくねェから敢えて厳しくしたンだが、どォやら無駄じゃなかったみてェだなァ……)





ひたすら課題を進める上条は、後ろで微笑みを浮かべる一方通行に気づかない程集中していた。
上条の目つきがさっきとは明らかに違う。どうやら真剣に取り組んでるらしい。
『友達とは、相手を想うなら時には厳しく』……黄泉川から請け負ったこの言葉は正解だったようだ。
直後に芳川が「あ、でも私には厳しくしないでね? 優しくして」とか言っていたが、そんなのは三秒で忘れてやった。

830 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/07(土) 22:04:40.21 ID:9HYHQ3o0 [13/17]

この後は上条が行き詰った時に一方通行がヒントを与えたりと、しばらく静かな時間が続いた。




禁書「……とうまたちはまだ構ってくれそうにないし、ヒマだからお外に遊びに行こうっと♪」




トテトテと禁書目録は上条宅を後にするのだが、今の二人がそれに気づく事は無かった……。




――――――


―――




それから更に三十分後―――




一方通行「―――よォし、その辺で一旦休憩にすっかァ」

上条「ハァァ~~~………」グデー

一方通行「ふン、これで半分…ってトコか。よく頑張ったじゃねェか。三下にしちゃあ上出来ってなァ」

上条「今までで一番頭使いましたよ……おかげで疲労度が……」

一方通行「だが見てみろよ。あンな馬鹿みてェにあったヤツが、もォ半分も片付いたンだぜェ? やりゃあ出来ンじゃねェかよ三下ァ」

上条「ああ……ホントだ……すげぇ。気づいたら数学と英語がもう終わってる………」

一方通行「ハッ、気づかない程集中してたってかァ? 頭ってのはなァ、そォやってちょっとずつ良くなっていくモンなンだよ」

831 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/07(土) 22:06:28.62 ID:9HYHQ3o0 [14/17]

上条「お前、学校の先生とか向いてんじゃねえか? ちょっと怖いけど…」

一方通行「ケッ、そンな真っ当な道歩ける訳ねェだろォが」

上条「とにかく、ありがとうな! マジで助かったよ!」

一方通行「まだ終わってねェぞォ? 昼メシ食ったらまた続きだからな。覚悟しとけ」

上条「分かってるって。じゃあ何か食いに行こうぜ? 俺が奢るよ」

一方通行「はァ? 俺にメシ奢るなンざ百年早ェっての。俺が出してやっから気にすンな。頑張った褒美ってヤツだから遠慮s」

上条「いーや! 悪いがそこは譲らねえぞ! 今日は意地でも俺が奢る! 授業料って事にしとけって」

一方通行「……オマエ、金あンのかよ?」

上条「あるとか無いとか関係ねぇ! 俺がそうしなきゃ気が済まねえんだよ! コーヒーだけで済まそうとしたら右手で殴るからな?」

一方通行「……あァ、わァったよ。ンじゃ、そォさせてもらうわ」

上条「よし、決まりだ! じゃあ行こうぜ!」

一方通行「―――ン? オイちょっと待て三下ァ! ………シスターはどこ行った? さっきから姿が見えねェぞ……」



上条「……………へ?」




………外に出る目的がもう一つ増えてしまったようだ。

832 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/07(土) 22:09:11.17 ID:9HYHQ3o0 [15/17]

――――――


―――




禁書「……はぁ……出てきたのは良いけど、また迷子になっちゃったんだよ……」テクテク




呟きながら路上を彷徨う禁書目録。白いフードを被った頭の上には相棒の三毛猫も一緒だ。




禁書「歩いてたらおなか減ってきたね……スフィンクス」

スフィンクス「にゃ~」

禁書「こんなことならとうまにお金もらっとくべきだったかも」




学園都市の地理が未だに把握できていない禁書目録は、帰り道も分からずに大通りをブラブラと歩いていた。
飲食店が視界に入る度に喉がゴクリと鳴る。ついでに腹の虫も鳴く。




禁書目録「ハァ~……」




途方に暮れかけた時だった―ー―。




「―――あれ……インデックス?」

833 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/07(土) 22:11:21.37 ID:9HYHQ3o0 [16/17]

禁書「―――!?」




突然後ろから声をかけられて振り向くと、そこには―――




垣根「……何やってんだ? こんな所で……」




―――垣根帝督が首を傾げて立っていた。




禁書「………これは」

垣根「ん?」


禁書「これは、神サマのお導きかもっっ!!」

垣根「………ハイ?」




言葉の意味を理解するのに遅れた垣根は、更に深く首を傾げざるを得なかった……。




――――――


―――

842 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/08(日) 20:21:47.10 ID:sVcjzAY0 [2/21]

―――とあるファミレス




禁書「―――ぶはァ……おいしかった~♪」ポンポン

垣根「いつ見てもすげぇな……。周りの視線が痛いぜ…」

禁書「前から訊きたかったんだけど、かきねっていつ戦艦に乗ってるの?」

垣根「……は? なんだって?」

禁書「ていとくさんって乗組員の頂点に立つ存在だから、普段は忙しいんじゃないのかな?」

垣根「…………ひとつ訂正があるんだが?」

禁書「ふぇ?」

垣根「いいか? 俺は『提督』じゃない。帝督だ」

禁書「……何言ってるのか分からないんだよ?」

垣根「だからぁ、『ていとく』ってのは俺の名前なの!」

禁書「えぇっ! そうなのぉ!? てっきり私、どこかの戦艦を仕切ってる人なんだとばっかり思ってたんだよ!」

垣根「…………」

禁書「じゃあていとく……は言いづらいからやっぱりかきねで良いや♪」

垣根「どっちでも良いけどよぉ……っつーか……それ言われたのガキん時以来だわ」

禁書「けど珍しい名前だね」

垣根「君には言われたくないな」

843 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/08(日) 20:22:58.80 ID:sVcjzAY0 [3/21]

禁書「それでいて何か偉そうな名前かも…」

垣根「ほっとけ! っつーかさぁ、何でインデックスは一人であんなトコぶらついてた訳よ? 上条は一緒じゃねえの?」

禁書「とうまはお勉強で相手にしてくれないんだよ……。あくせられーたも一緒になって…」

垣根「……一方通行?」

禁書「うん。ふたり揃って私をのけ者にしてるんだよぉ。ひどいと思わない?」

垣根(アイツ、朝っぱらからどこ行ったかと思えば……)

禁書「つまんないから出てきたんだけど、すっかり道が分からなくなっちゃったんだよ……」

垣根「で、そこに偶々俺が通りかかったと……」

禁書「うん♪」

垣根「一応訊くが、上条たちには出かけること言ったのか?」

禁書「ううん、二人とも(主に一方通行)怖くて声がかけられなかったんだよ。だから黙って出てきたの」

垣根「………………」




しばらく考える素振りを見せた垣根は、徐に携帯電話を取り出した。
そのまま指で操作し、どこかへ電話を掛ける……。




垣根(……まだ一緒だよな…? ま、そん時は上条に掛けるか…)


美琴「とある主人公(ヒーロー)の友情物語?」-6
に続きます

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