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姉「楽しくない……」

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/19(日) 05:28:09.74 ID:DYZseD54O [1/38]
姉「なんかもう、全然楽しくないんだよっ!!」
僕「いや、僕に言われても困るんだけどさ」
姉「お姉ちゃんに娯楽を提供するのが弟の役目でしょー!?」
僕「そんな役目を背負った覚えは無い」
姉「覚えて無いだけだよ、お姉ちゃんに楽しいを提供する弟になりたいって、泣きながら言ってたもん!」
僕「僕になんか利益あんの?」
姉「お姉ちゃんの可愛い笑顔が見れるよ!!」
僕「意味わからんち……」

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/19(日) 05:43:02.03 ID:DYZseD54O [2/38]
姉「とにかく、楽しい事ないの?」
僕「んー……」
姉「ないのっ? ないのっ?」
僕「この前、夢にさぁ……アンパンマンとゴルゴが……」
姉「あ、他人の夢の話しが面白かった試しが無いから、却下ね」
僕「……どうしろと」
姉「ほら、もっとこう、さぁ……」

インターフォン(ピンポーン)

僕「……誰かな?」
姉「お姉ちゃんを狙う悪の組織!」
僕「頭が悪い病気を治すお医者さんじゃない?」
姉「……」
僕「……無言でほっぺたつねるなよ」

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/19(日) 05:50:07.35 ID:DYZseD54O [3/38]
ドア(ガチャン)

宅配便「こんちわっ~すぅ、お届け物です」
僕「あ、どうも……」
宅配便「サイン良いすか?」
僕「あ、はい……。名前は?」
宅配便「え?」
僕「いや、僕のサイン欲しいんでしょ? 色紙は?」
宅配便「あ……えっとですね、こちらに名字だけで結構ですので、書いてもらえますか? きちんと受け取りましたよ、って事で」
僕「……ですよね、すみません」
宅配便「じゃ、どうも、あざーっしたー」

ドア(ガチャン)

姉「くすくす」
僕「……」
姉「通じない上につまらない冗談言っちゃう人ってはっずかしーいっ!!」
僕「うるさいなぁ……」

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/19(日) 06:06:52.33 ID:DYZseD54O
僕「とにかく……これでちょっとは楽しかっただろ? しっしっ」
姉「むぅ……。お姉ちゃんの事、犬か何かだと思ってるの?」
僕「犬より上、チンパンジー以下。そう思ってる」
姉「……!!」
僕「なに?」
姉「威嚇のポーズ!!」
僕「……スペシウム光線の構えじゃん」
姉「細かい男はモテないよ?」
僕「いいよ、別に。僕好きな人居るし……ごにょごにょ……」
姉「ん? なに?」
僕「何でも無い」
姉「そう? ね、何が届いたん?」
僕「さあ……? 通販で何か頼んだ覚えもないし……」
姉「開けてみよ? ……うーん、そうだね」
僕「僕そんなに馬鹿っぽい喋り方してる?」
姉「え? 結構似てると思うけどなぁ」
僕「そ、そっか……」

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/19(日) 06:25:15.71 ID:DYZseD54O
姉「では、早速開封しまぁす!」
僕「いや、ちょっと待って」
僕(ひょっとしたら、エログッズを注文して、忘れていたのかも知れん……)

ガムテープ(バリバリ)

僕「ま、待ってって言ったのに!!」
姉「……? 本?」
僕(しまった! 官能小説かっ!?)
姉「世界の怪奇現象……? 日本の伝説……なに、コレ?」
僕「いや……なに、それ?」
姉「君が買ったんでしょ?」
僕「……うーん……」
姉「あーあ、つまんないな。てっきり卑猥な本がびっしり詰まってると思ったのに」
僕「僕の目をみてごらん」
姉「……?」
僕「卑猥な本を読むなんて、有り得ないほど、澄んだ瞳だろ?」
姉「……」
僕「……」
姉「……」
僕(……こんなにじっと見つめられたら、恥ずかしい)
姉「あ! 逸らした! やっぱりそういうの見るんでしょ」
僕「……いや」
姉「むっつりー!!」

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/19(日) 06:33:42.94 ID:DYZseD54O
僕「だから、違うって! 現にほら」
姉「んー……」
僕「それにしても、何故にこんな……」
姉「変な宗教に影響されちゃった、とか。良くあるよね」
僕「ないない」
姉「じゃあ何? オカルト研究家にでもなるの?」
僕「いや……」
姉「お姉ちゃんは、宇宙飛行士になりたいよ」
僕「知らん」
姉「むぅ……じゃあフランス人になるよ」
僕「ああ、そう……」
姉「……」
僕(これ、発送元が書いて無いけど……)
姉「ふーっ」
僕「ひあぁっ!」
姉「えへへ」
僕「なにすんだよ! いきなり耳に息吹きかけて!!」
姉「お姉ちゃんをないがしろにするからだよ!」
僕「……わかった。とにかくこの荷物は放って置こうか。害があるわけじゃないし」

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/19(日) 06:47:29.24 ID:DYZseD54O
姉「そうだよ! お姉ちゃんと楽しい事しないとね」
僕(何ちゅうか、いやらしい響きだな)
姉「……? なんで顔赤くしたの?」
僕「いや……」
姉「とにかく、ほら、お姉ちゃんを楽しませてよ」
僕(……落ち着け、僕。卑猥な妄想を振り払うんだ……!!)

僕「んー……うん、よし」
姉「なに?」
僕「出かけようか」
姉「どこ? どこに? 遊園地? ハワイ?」
僕「……漫画喫茶」
姉「……」
僕「略してまんきつ、な」
姉「ぜーったいさ」
僕「ん?」
姉「彼女とか、出来ない性格してるよね」
僕「放っとけ」

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/19(日) 07:02:53.94 ID:DYZseD54O
僕「……じゃあさ」
姉「却下だよ」
僕「まだ何も言ってないけど」
姉「どうせお姉ちゃんの期待を裏切るガッカリチョイスな提案でしょ?」
僕「なんだよ、ガッカリチョイスって……」
姉「さあ?」
僕「えーっとさ、DVD借りて来るとかは?」
姉「ん……。ま、70点くらいかな」
僕「ちなみに、漫画喫茶は?」
姉「6点」
僕「……なんで? 結構楽しいじゃん。確かに恋人とデートとかならアレだけどさ」
姉「……お姉ちゃんは、君と二人で何かしたかったの」
僕「……」
姉「ほら、準備開始!」
僕(不覚にもドキドキしちまった。姉ちゃんの中では特に深い意味は無いんだろうけど……)

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/19(日) 07:21:21.33 ID:DYZseD54O
雪の積もった外。


姉「寒いね」
僕「ああ……」
姉「肉まんとか、食べたくなるよね」
僕「……」
姉「……なるよねー! あったかい肉まんをもふもふしながら食べたくなるよね」
僕「……」
姉「お姉ちゃんは食べたいよ!!」
僕「最初から、そう言えば良いのに。コンビニに寄ろうか」
姉「んー……あ、やっぱり帰りにしようよ」
僕「なんで?」
姉「ついでに、DVD見ながら食べるお菓子も買いたいから!」
僕「ああ……。姉ちゃんにしては計画的な考えだな……」
姉「……むぅ。すぐお姉ちゃんの事、馬鹿にして」
僕「え? 馬鹿にしてるって分かるくらいには頭良かったんだ……」
姉「む。服の中に雪入れちゃうよ?」
僕「悪かった。それだけは止めてくれ」

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/19(日) 07:26:32.43 ID:DYZseD54O
姉「ビデオ屋さん……ビデオ屋さん……DVD屋さん……ビデオ屋さん、かぁ」

僕「ついに発病か……」

姉「発病って、なんなん」

僕「なんかブツブツ言ってるし、心の病?」

姉「そんなの患って無いもん!」

僕「じゃあなに?」

姉「ビデオなんて貸し出ししてないのに、やっぱりビデオ屋さんって言い方がしっくり来るな、って」

僕「まあ……確かにそうだな」

姉「ん。なに借りようかなぁ」

僕「ああ……何借りようかな」

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/19(日) 07:29:05.44 ID:DYZseD54O
15分後


僕「借りるの決まった?」

姉「うん、決まったよ!」

僕「……!」

僕(しゃがんだまま、こちらを見上げてにっこりするって、かなり威力の高い攻撃だったんだな……)

姉「どったの?」

僕「いや……」

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/19(日) 07:40:16.43 ID:DYZseD54O
帰り道


姉「ねーねー、どんなの借りたの?」

僕「ハムナプトラ3と遠くの空に消えた、って奴」

姉「……お姉ちゃん、それ知らない」

僕「ハムナプトラは過去作一緒に見たと思うけど……」

姉「エッチなのは借りなくて良かったの?」

僕「どうして僕をそういうキャラにしたがるかな」

姉「だって、全然そういうの興味無さそうなんだもん」

僕「まあ……」
僕(姉ちゃんにしか興味無いからな……)

姉「あ、コンビニ寄ってかないとね!」

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/19(日) 07:43:42.21 ID:DYZseD54O
僕「ああ、そうだな……」

姉「にっくまん♪ にっくまん♪ おいしーねー♪」

僕「楽しそうだな、食欲大魔神め……」

姉「にっくまん♪ にっくまん♪ おいしーねー♪」

僕「聞いてないし……」

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/19(日) 07:56:37.34 ID:DYZseD54O
コンビニに寄ってからの帰り道。

姉「あむあむ……」
僕「美味しい?」
姉「美味しい!」
僕「何ちゅうか……子供か?」
姉「あむあむ……」
僕(まあ、そういうところが可愛いんだけどさ……)
姉「……あと一個なんだけど、食べる?」
僕「んや。姉ちゃんが食べて良いよ」
姉「じゃあ……半分こね」
僕「良いのに」
姉「美味しい物は、二人で食べたらもっと美味しいよ」
僕「……姉ちゃんが太ったら可哀想だしな。もぐもぐ」
姉「素直に受け取れば良いのに」
僕「そうだな。……寒い日の外と、肉まんは悪く無い組み合わせだ」
姉「でしょ? 偉大な発見者たるお姉ちゃんに賞賛の拍手を!!」
僕「……」
姉「ほら、拍手! はく……ふっ……へくちっ」
僕「風邪ひかないように早く帰ろうか」
姉「あ、待ってよ! 拍手してってば!」

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/19(日) 08:16:02.94 ID:DYZseD54O
自宅

姉「ふー……生き返る」
僕「魔法カード、死者蘇生発動! 墓地からブルーアイズを特殊召喚! みたいな?」
姉「なに?」
僕「いや、何でも無い」

姉「さてと……何から見る?」
僕「何からって、ひょっとして連続で見るつもり?」
姉「あったり前でしょ? 明日はお姉ちゃんも君もお休みだもん!」
僕「……マジか」
姉「マジだよ」
僕「変えられ無い定めなのか?」
姉「変えられ無い定めなんだよ! ほら、どれから見る?」
僕「……」

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/19(日) 08:29:43.34 ID:DYZseD54O
八時間後。

僕「こ、これで、全部……?」
姉「んー……もっと借りてくれば良かった?」
僕「い、いや……もう目がしばしばする」
姉「ふっふっふっ」
僕「……?」
姉「お姉ちゃんさ、ラストを飾るに相応しい物を借りて来たんだ。実は」
僕「あー……」
姉「じゃっじゃーん!! のりヒロの眠り3、だよ!」
僕「そのB級ホラー映画、まだ続いてたんだな」
姉「そんな事言ってて、一人でトイレ行けなくなっても知らないよ?」
僕「姉ちゃんこそ、怖がりの癖にそんなの借りて来て……ちびっても知らんよ」
姉「そこまで、こあがりじゃないもん」
僕「怖がり、な」
姉「……こあがり? でしょ?」
僕「言えて無いし……。怖がり、な」

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/19(日) 08:44:41.07 ID:DYZseD54O
映画・序盤

僕「何ちゅうか、期待出来ないオープニングだな」
姉「これから、怖くなるんだよ。多分」
僕「そうだったら良いな。……コアラのマーチ、ラスト一個だ」
姉「あーん」
僕「……ほら」
姉「もぐもぐ」

映画・中盤

僕「おっ……」
姉「ひっ」
僕(……結構怖いじゃないか)
姉「……」
僕(まあ……しがみついて来る姉ちゃんが気になって映画どころじゃ無いけど……)

映画・終盤

姉「……!」
僕「うお……おぉ……」
僕(い、今のは怖かった……。のりヒロの奇声ヤバいな……)
姉「……ぐすっ……すんっ……」
僕(……泣くほど怖いなら、見なきゃ良いのに)

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/19(日) 09:03:26.60 ID:DYZseD54O
僕「……割と、怖かった」
姉「……うん」
僕「……終わってから、結構経ったけど少しは落ち着いた?」
姉「……うん」
僕「……」
姉「……うん」
僕「全然、落ち着いて無いだろ」
姉「……だって」
僕「だって?」
姉「……怖いんだもん」
僕「はあ。……あれは作り物で、現実には有り得ないんだよ」
姉「それくらい、お姉ちゃんだって分かってるもん……」
僕「じゃあ後は何とか気を紛らわせて、寝ちゃえば平気だろ?」
姉「……うん」
僕「って事でさ、目も痛いし僕は寝たいんだけど……」
姉「……うん」
僕「シャツの裾を離して欲しいな」
姉「……うん」
僕「……」
姉「……」

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/19(日) 09:49:38.15 ID:DYZseD54O
僕(母さんは出張だし……心細いのは分かるけど……)
僕(一緒に寝るのは嫌だな。いや、良いんだけどさ。ある意味で嫌と言うか……)

僕「おやすみ」
姉「……うん、おやすみなさい」
僕「……寝れなかったら、声かけてくれ。最近、僕寝付き悪いから、起きてると思うしさ」
姉「……うん。ありがと」

階段(トントントン)
ドア(ガチャン)
僕の自室。

僕(……相変わらず散らかってんな)
僕(まあ、良いや。明日、姉ちゃんに掃除手伝って貰おう……)
僕「……」

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/19(日) 10:48:25.62 ID:DYZseD54O
2時間後。

僕「……ん」
僕(寝てたのか……。まだ、そんなに経って無いな)
僕(今は何時だろう……)

僕「……!」
僕「ね、姉ちゃん……?」
?1「いえ、違いますよ」
僕「……あ、あ、ああ、はい」
?2「だいたい、あんたの姉は一人じゃん」
僕「あ、ああ……あー……」
僕(見知らぬ女の子が2人。これ、夢だな……)
?1「びっくりしたり、しないんですか?」
僕「ん……これ夢なんで。別に……」
?2「夢じゃないんだけど」
僕(夢だって、分かってる状態で見る夢って何て言うんだっけな)
?1「あ、とりあえず自己紹介しておきますね。私がうんです」
?2「めいだよ。宜しく」
うん「2人合わせて運命、です」
僕(ヤン坊、マー坊、みたいな奴らだな……)

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/19(日) 10:51:46.82 ID:DYZseD54O
僕「……」
うん「……」
めい「……」
僕(夢の中で眠ったら、どうなるんだろ……。更に夢を見るのかな……)
僕「……」
うん「寝ないでください!」
僕「……はあ。で、君たち何なの? 夢ならもうちょっと楽しいのが良かった」
うん「運命ですよ」
僕「んー……それは良いとして。何か用なの?」
めい「あんたの運命が変えられ――」

ドア(ガチャッ)

僕「!!」
姉「……良かった、起きてたんだね」
僕「ああ……びっくりした……」
姉「?」
めい「……詳しい話はまた後からかな」
僕「え?」
うん「ではまた。良い夜を」
姉「?」
僕「……姉ちゃん?」
姉「ん? どったの?」

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/19(日) 10:55:00.96 ID:DYZseD54O
僕(姉ちゃんには、見えてなかったのか……。まあ僕の夢だし)
僕(いや、起きてるのに夢……?)
僕(ああ、途中まで夢で、最後のは寝ぼけてたんだな)

僕「……姉ちゃんこそ、どうしたの?」
姉「え? うーん……うーん、えへへ」
僕「ん?」
姉「一緒に寝ようかなぁ……とか……」
僕「そんなに映画怖かった?」
姉「ち、違うよ! その件と、この件は無関係なのである!!」
僕「動揺して変な事言ってるけど」
姉「むぅぅ。とにかく、一緒に寝ようよ!」
僕「……怖く無いんだろ? なんで?」
姉「人恋しい季節でしょ? 冬って。ね?」
僕「まあ、それならそれで良いけどさ」

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/19(日) 10:57:58.94 ID:DYZseD54O
僕「でもちょっと、せま――」
姉「うんうん、人恋しいよね! 押し入れから、お布団出して来るね!」
僕「ああ……」
僕(一緒にベッドとか、じゃないんだな。いや、期待してた訳じゃないぞ?)
僕(なんで一人で言い訳してんだろ……)


僕「ようやく、布団を敷くスペースを確保出来た」
姉「もう。部屋くらい綺麗にしなよ、子供じゃないんだから」
僕「……珍しく、姉ちゃんが年上っぽい事言ってる」
姉「珍しくじゃ無いでしょ!」
僕「明日の天気が怖いな……」

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/19(日) 11:00:40.03 ID:DYZseD54O
僕「電気消すよ? 良い?」
姉「待って、こっち向いて?」
僕「……?」
姉「……」
僕「……」
姉「……うん、良いよ。寝よっか」
僕「ん? わかった」

スイッチ(パチン)

姉「おやすみなさい……って、これ2回目だね」
僕「ああ、そうだな。おやすみ」
姉「……」

僕(……とは言った物の。全然寝付けそうに無いな)
僕(そういえば、さっきの……変な夢だったなぁ)
僕(……ひょっとして姉ちゃんも怖い夢とか見たのかな)

僕「……さっきの映画、怖かったな」
姉「……ん? そ、そう? お姉ちゃん大人だから平気だよ!」

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/19(日) 11:01:58.16 ID:DYZseD54O
僕「へえ、そう。僕は怖かったな。耳を澄ませば、のりヒロの叫び声が聞こえてきそう」
姉「……!」
僕「まあ、姉ちゃんはもう平気なんだろ?」
姉「う……。へ、平気だよ!」
僕「じゃあさ、カーテンきちんと閉めてもらっても良い?」
姉「なんで? 自分で閉めなよ」
僕「カーテンの隙間から、のりヒロが覗いてそうで怖い」
姉「……!」
僕「ついでに窓の鍵もかかってるか確認して欲しいな。怖い、なら良いけどさ」
姉「むぅ……。すぐそうやってお姉ちゃんの事、バカにして!」
僕(かかったな。ふっふっふっ……)
姉「窓の鍵を確認して、カーテン閉めれば良いんでしょ?」

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/19(日) 11:06:48.44 ID:DYZseD54O
姉「それくらい、お姉ちゃんには楽勝だよ」
僕「うん、宜しく」
姉「……」
僕「……」
姉「……」
僕「どうしたの?」
姉「こっ、心の準備だよ!」
僕(良い感じにビビってらっしゃるな……)
姉「スー……ハー……よし……!」
僕(ここでのりヒロの奇声を真似したら、絶対ビビるよぁ……ふっふっふっ)
姉「……」
僕(スー……)
姉「ふふん、何にも居な――」
僕「ま゛あ゛ぁ゛あぁぁぁぁ」
姉「!!」

布団(バサッ)

僕「ふっ、やっぱり姉ちゃん怖いんじゃないか」

布団(もぞもぞ)

姉「馬鹿っ! 馬鹿ああぁっ!!」
僕(……この後笑ってイタズラ大成功の予定だったのに。なぜ僕の布団に逃げ込んで来た)

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/19(日) 11:09:44.28 ID:DYZseD54O
姉「なんでこういう事するのっ!」
僕「いや、ちょっとした冗談のつもりで……」
僕(って言うか、密着しすぎだろ……! 良い匂いするし、柔らかいし暖かいし……!)
姉「むぅぅ……」
僕「ほ、ほら。もうしないからさ、自分の布団に戻りなよ」
姉「ヤダ」
僕「……」
姉「絶対ヤダ!」
僕「って、言ってもこのまま寝るわけにもいかないだろ?」
姉「このまま寝るよ!」
僕「……」
姉「こうやってくっ付いてたら、変な事出来ないでしょ?」
僕(僕の理性とか、色々変な事になりそうだけど……)
姉「……ダメ?」
僕「い、いや……大丈夫」
姉「ん、おやすみなさい」
僕「……3回目だよ、姉ちゃん」
姉「えへへっ」
僕(淡々と調味料を思い浮かべて、気を紛らわせるか……)
僕(コリアンダー……トーチージャン……チキンパウダー……ホワイトペッパ―……)

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/19(日) 11:15:28.84 ID:DYZseD54O
翌日。僕の自室。

姉「……ん……んん」
僕「……」
姉「……? ああ、昨日一緒に寝たんだ……」
姉「ぐっすり寝てる……」
僕「……」
姉「……そうだ! 良いこと思い付いた!」


昼過ぎ。居間。

姉「なかなか起きて来ない。楽しくないな……」
姉「……」

電話(テッ、レッ、フォンッ、テッ、レッ、フォン)

姉「誰からだろ。もしもし?」
電話「あれ? 君が出ちゃうのか……」
姉「はい?」
電話「あ、ううん。君の弟に伝えておいて、ちゃんと本を読め、ってさ」
姉「え? ……どちらさま、ですか?」
電話(ツー……ツー……)
姉「……変なの」

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/19(日) 11:18:28.21 ID:DYZseD54O
僕の自室。夕方前。

僕「……もう夕方かよ」
僕(昨日はなかなか眠れなかったからなぁ。とりあえず、歯磨きして来ようか……)

洗面所。

僕「……!」
僕(……なんで額に姉ちゃんのフルネームが書いてあるんだよ)
僕「……姉ちゃーん?」
姉「んー? どったの?」
僕「……」
姉(にやにや)
僕「何か言う事は?」
姉「無いよっ」
僕「……」
姉「あ、そういえば、電話が来てたよ」
僕「誰から?」
姉「知らない人だよ。友達?」
僕「僕に聞かれても……。なんて?」
姉「本を読め、って」
僕「誰だろ。本借りた覚えは無いし……」
姉「ねえねえ」
僕「ん?」

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/19(日) 11:22:53.99 ID:DYZseD54O
姉「そんなにお姉ちゃんの事、好きなの?」
僕「……えっ!?」
僕(まさか……寝言でそういう系の事を呟いたりしてたのか……?)
姉(にやにや)
僕「な、なんでだよ」
姉「だって、おでこにお姉ちゃんの名前書いちゃうくらいなんだから……。あ、サイン欲しい?」
僕「いらん。はぁ……、まったく」
姉「えへへ、昨日のお返しだよっ」
僕「ああ……なら、許す」
姉「ちなみに、油性マジックで書いたよ」
僕「ごめん。やっぱり許さん」
姉「うっそぴょん。早く顔洗っちゃいなよ、ご飯作ってあるよ」
僕「ああ……。あ、さっきの電話の話しは?」
姉「あれは本当だよ。名前を聞く前に切られちゃったんだ」

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/19(日) 11:27:35.36 ID:DYZseD54O
僕(本ねえ……。本……。そういえば、昨日届いたのも本だ。後で読んで見るか)
僕(良い匂いがする……)

居間。

姉「ロールキャベツだよ」
僕「ロールだな……また、手のかかる物を作ったな」
姉「暇だったからね」
僕「そっか。いただきます」
姉「……美味しくなかったら、ごめんね」
僕「料理はもっと自信持てば良いのに。どうでも良いとこで自信満々なんだから」
姉「好きな事、って一番自信持ち難くない?」
僕「そう?」
姉「うん。もっともっと、って上を目指しちゃうからかなぁ……」
僕「ふぅん……」
姉「ほら、早く食べないと冷めちゃうよ」

73 名前:保守ありがとうございました。[sage] 投稿日:2010/12/19(日) 22:16:55.32 ID:DYZseD54O
僕「ごちそーさま。美味しかったよ」
姉「そう? 良かったぁ」
僕「そういえばさ、昨日届いた本、読んで見ようかなと」
姉「んー……ダメ!」
僕「なんでだよ」
姉「お姉ちゃんね、君が起きるの待ってたんだよ」
僕「……何かあるの?」
姉「何も無くても、お姉ちゃんを楽しませるのが君の役目でしょー?」
僕「またか……。そうそう楽しい事なんて無いだろ」
姉「ないのっ? 本当に無いの?」
僕「……じゃあ一緒に本を読もうよ。面白いかもよ」
姉「んー……んー……」
僕「怖い本かどうか、僕が確認してから、なら?」
姉「別に怖そうだから嫌な訳じゃないもん!」
僕「……とにかく。このままにしとくのも何か気味が悪いし、僕は読むぞ」

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/19(日) 22:33:01.81 ID:DYZseD54O
5分後。

僕「……そんなに怖くないな。実際に体験したら怖いのかも知れないけどさ」
姉「……本当?」
僕「怪談ってよりも、こういう怪談もありますよ、みたいな……紹介文っぽい」
姉「本当に本当に、本当に?」
僕「ああ、ここで変な事言えば、次は油性になりそうだし、本当だ」
姉「嘘だったら、刺繍にするからね!」
僕「それ絶対に途中で起きるって。とにかくほら」
姉「……この表紙の仏像、こっち睨んでない?」
僕「あー……姉ちゃんに一目惚れしたんじゃない。可愛いから」
姉「ん? なになに?」
僕「いや、別に?」
姉「最後の方、聞き取れなかったの。ね、もっかい!」
僕「過去は振り返らない主義なんだ。覚えてない」
姉「むぅぅ……」

76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/19(日) 22:50:19.53 ID:DYZseD54O
20分後。

僕「……」
姉「……」
僕「……」
姉「ねえ、面白い?」
僕「それなりには」
姉「お姉ちゃんはね、面白くないよ!」
僕「そっか……」
姉「ねえ、やっぱりこの仏像に睨まれてる気がする」
僕「呪われてんじゃない?」
姉「さっきと言ってる事違う……!」
僕「気にするな」
姉「むぅぅ。……あれ? これ何だろ?」
僕「だから呪われ――」
姉「違うよ! ほら!」
僕「!!」
僕(い、いきなり急接近して来るのは反則だ……!!)
姉「……?」
僕「……」
姉「……仏像に一目惚れされちゃうくらい可愛いお姉ちゃんを見ていたいのは、分かるけど、本を見て?」
僕「……しっかり聞こえてんじゃん」
姉「君こそ、しっかり覚えてるね」
僕「あ、しまった……」

77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/19(日) 23:10:14.76 ID:DYZseD54O
僕「まさか姉ちゃんに負ける日が来るとは……」
姉「ふっふーん、お姉ちゃんの勝ちー」
僕「百戦一勝くらいの戦績だけどな」
姉「む。これからお姉ちゃんの時代が来るもん」
僕「どうだか……」
姉「それよりほら、これ」
僕「……こっちにもあるのか」
姉「うん?」
僕「いや、落書きかなと思ってたんだけど、僕が読んでる方にもあった」
姉「赤ペンで囲ってあるの?」
僕「そう、似たような話しだったよ」
姉「……んー……なんて書いてあるのか、わかる?」
僕「人面瘡」
姉「じんめんそ……?」
僕「意味は……、読んでみたら?」
姉「……」
僕(なんでこの話しが囲んであるのかな……)
姉「うえっ、気持ち悪いね」
僕「ああ……。人の顔した出来物なんて、気持ち悪いな」

78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/19(日) 23:26:56.68 ID:DYZseD54O [38/38]
姉「喋ったり、なんか食べたりするんでしょ?」
僕「らしいね」
姉「……うえっ」
僕「しかし、何なんだろうね、イタズラ?」
姉「かなぁ」
僕「……まあ、ターゲットが僕っぽくて良かったけどさ」
姉「なんか、怖いね」
僕「恨まれるような事をした覚えは無いんだけどな……」
姉「お姉ちゃんにはいっつも意地悪してるけど?」
僕「それは姉ちゃんだからだろ」
姉「むうぅ……」
僕「仲良くない奴に冗談とか、言わないって事」
姉「それなら、良いけど……や、良くないよ!」
僕「なんでだよ」
姉「仲良しなら普通に仲良しすれば良いもん」
僕「冗談言ったりも普通だろ? 姉ちゃんの普通はどんなのなんだ……」
姉「お姉ちゃん、お姉ちゃん、って言いながら後ろ付いて来るみたいな、可愛いのが良かったの」
僕「この歳でそれは変だろ……」

80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/20(月) 00:39:04.96 ID:sNIpwKWyO [1/14]
夜。居間。

姉「先にお風呂入っても良い?」
僕「ああ、どうぞ」
姉「それとも一緒に入りたい?」
僕「先に入って良いってば」
姉「なんだ、つまんないなぁ……」
僕「……」
姉「……にゃに?」
僕「つまんないって言うから、つまんでみた」
姉「あ、それ良いね。つまんない、って言ったら鼻つまむの」
僕「だろ?」
姉「……やっぱり先に入る?」
僕「なんで?」
姉「君の手、ひんやりしてる」
僕「いつもこんなもんだよ」
姉「そっかな。お姉ちゃんは、ほら」
僕「……姉ちゃんの手は暖かいな」
姉「でしょ? えへへ、お風呂入って来るね!」
僕「……ああ」

83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/20(月) 01:52:06.99 ID:sNIpwKWyO [2/14]
僕「……」
僕(姉ちゃんの手、本当に暖かったな……)
僕「……」
めい「なんか、キモいね」
うん「恋する乙女かよ! です」
僕「……はあ」
僕(ひょっとして僕、頭の病気なのかもな……)
うん「うわぁ……今度はため息ですか」
めい「一昔前の少女漫画じゃあるまいし」
僕「あー……何も聞こえないし、見えないなぁ」
うん「今度は恋は盲目らしいですよ」
僕「いや、そうじゃなくて……」
めい「ふっ。ようやく話す気になった?」
僕(しまった……幻覚に話しかけるようじゃ僕も終わりだ……)
うん「じゃあ良く聞いてくださいね。これから電話がかかって来ますが……絶対に出てはいけません」
僕「電話……。電話にでんわ、ってかい」
うん・めい「……」


89 名前:なるべく、早めに書きます。すみません。[sage] 投稿日:2010/12/20(月) 09:34:07.77 ID:sNIpwKWyO [3/14]
僕「……悪かったから、その目をやめてくれ二人とも」
めい「……とにかく、電話に出ないでよね! あんたの運命が変わっちゃうから」
僕「……運命?」
うん「そうです! ……あなたの大切な人を失う事になります」
僕「……姉ちゃんの事?」
うん「そうですよ」
僕(姉ちゃんを失う……?)
めい「なんでも良いから、とにかく電話に出ちゃダメ!」
僕「そもそも電話がかかって来るのかどうかさえ――」

電話(テッ、レッ、フォン、テッ、レッ、フォン)

僕「……かかって来たな」
うん「出ちゃ駄目ですよ、絶対に絶対です!」
僕(仮に姉ちゃんが取った電話の人間だとしたら……)
僕(そいつは僕に人面瘡について知らせて何がしたいんだ……?)

90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/20(月) 09:42:33.59 ID:sNIpwKWyO [4/14]
僕「……電話一つで変わる運命なんて、後からいくらでも変えられるんじゃないか?」
めい「そうだとしても、取っちゃ駄目って言ってるでしょうが」

電話(テッ、レッ、フォン、テッ、レッ、フォン)

僕「……そもそも、全く関係ない電話かも知れんぞ」
うん「でも取ったら……」
僕「……」
めい「……」
僕「幻聴や幻覚に従う方がおかしいよな」
うん「あっ、駄目!!」
僕「……もしもし?」
電話「やあ、どうも 」
僕「……誰だ?」
電話「君のお姉さんを救いたいんだ。……人面瘡からね」
僕「……救う?」
電話「電話じゃ詳しい事は話せないな。証拠も見せられ無いし」
僕「……どういう事?」
電話「知りたいなら、明日の5時に村中公園に一人でおいで」

91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/20(月) 09:47:55.93 ID:sNIpwKWyO [5/14]
僕(どういう事なんだ……。いつの間にか、あいつらも見えなくなったし)
僕(……とにかく、明日は村中公園に言って見るか。僕一人なら、姉ちゃんには何もないはずだし……)

ドア(ガチャン)

姉「ふー……暖まったぁ」
僕「……姉ちゃんさ」
姉「ん?」
僕「人面瘡とか、出来てない?」
姉「……エッチ」
僕「え?」
姉「僕が確認してやるよ! うえっへっへへっへ、とか言い出すつもりでしょ?」
僕「言わないって……。それに僕、そんな馬鹿っぽい喋り方して無いって」
姉「むぅぅ……スケベだなぁ」
僕「……僕の話し聴いてた?」
姉「人面瘡なんてないよ! お姉ちゃんのお肌スベスベだもん。ほれー」
僕「確かにね……って言うか脚細いな……」
姉「君もけっこう細いでしょ?」
僕「細くてもすね毛のせいでゴボーみたいだぞ?」
姉「確かに……」
僕「フォローとか、して欲しかったな……」

93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/20(月) 10:15:36.24 ID:sNIpwKWyO [6/14]
浴室。

僕(……良く考えたら、やっぱり公園に行くのがベストだな)
僕(んでこのイタズラを止めさせれば良い)
僕(幻覚に関しては……)
僕(酷くなるようなら、病院にでも行こうかな……)
僕「はあ……」

ドア(カチャ)

僕「……!」
うん・めい「……」
僕(……平常心だ、平常心! これは幻覚、幻覚)
うん「公園に行かないって約束してください!」
僕(……何も聞こえない、何も聞こえない!)
めい「約束出来ないなら……」
うん「……パ、パンツをはかせないです」
僕「……は? ……消えた……」
僕(パンツ履かせないってなんだよ……)
僕(……普通に履けるし。まあ当然だけど――)
パンツ(するっ)
僕(!?)

94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/20(月) 10:39:44.94 ID:sNIpwKWyO [7/14]
僕(……ゴムは緩んでないハズなのに)
僕「……」
パンツ(するっ)
僕「……!」
パンツ(するっ)
僕(……僕は負けんぞ。必殺、ノーパンズボン履きだ)
ズボン(するっ)
僕「……なるほど」

僕「行く行かないは別にして、君たちの話しを聞こう。降参だ」
僕「……」
僕(パンツをきちんと履けるのがこんなに幸せな事だとは……)
僕「……姉ちゃんには見えないみたいだし、喋ってる所は見られたくない。筆談で、どう?」
うん「分かりました。約束ですよ?」
僕「あ、ああ……必ずな」
僕(……急に出てこられるとびっくりする)

95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/20(月) 11:00:00.50 ID:sNIpwKWyO [8/14]
居間。

姉「あれ? もう寝ちゃうの?」
僕「ああ……テレビも大して面白く無いし、なんか眠くて」
姉「夕方まで寝てたのに?」
僕「寝過ぎると余計に眠い」
姉「んー……それはわかるけどさ、お姉ちゃんが暇しても良いの?」
僕「良いよ」
姉「お姉ちゃん、寂しくて泣いちゃうよ?」
僕「その時は戻って来て撫でてやる」
姉「それなら良いかなぁ」
僕「良いのか……」
姉「ん。おやすみなさい」
僕「ああ……おやすみ」

僕の自室。

ドア(ガチャン)

僕「さて……」
僕の字(出てこいよ。いるんだろ?)
めい「字が汚い」
うん「で……て、こいよ、いるんだろ。で、合ってますか?」
僕「……」
僕の字(これならどうだ)
めい「まあ……読めなくは無いかな」
僕の字(好きかって言いやがって。お前らはどうなんだよ)
めい「……こんな感じ」
めいの字(かって→勝手。だよ)
僕(とっさに字が出て来ない事だってあるだろ。って言うか……)

96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/20(月) 11:27:58.18 ID:sNIpwKWyO [9/14]
僕の字(お前ら物に触れたの?)
うん「触れますよ、当たり前じゃないですか」
僕(……ひょっとして、幻覚や幻聴じゃないのか?)
めい「それで……、ああ、公園に行かないで欲しいんだよね」
僕の字(その前に詳しい話しを聴かせて欲しい)
うん「……実は詳しい事は私たちも、分からないんです」
僕の字(どういう事だ?)
うん「どういう事でなんでしょう?」
僕の字(知らん)
うん「んー……」
めい「分かってるのは、公園に行くと、私達が消える運命だって事」
うん「あ、そうです、ナイスアシストです」
僕の字(どういう事か良く分からん)
めい「……仮定になるけど、2種類の未来があって、片方は私達の消滅、もう片方が私達の生存、なんだと思う」
僕の字(どちらに進むか決めるのが、公園に行くか行かないか、なのか?)
うん「多分、そうです」
僕の字(……でも何で僕が君達の未来を左右する?)
めい「さあ……? あんたが、なのか、電話の男があんたも含めて私達にも干渉するのか、分からないから」
僕(なるほど)

97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/20(月) 11:49:29.32 ID:sNIpwKWyO [10/14]
僕の字(やっぱり良く分からないし、公園に行く)
うん「どうしてそうなるんですか!」
僕の字(お前らは自分の事知りたくないのか?)
めい「……確かに考えは分かるけど」
うん「めいまで!」
めい「行くのは反対だけど、分からない事ばっかりだし」
僕(……意外とめいの方がしっかりしてるなぁ)
僕の字(それに、最初に近付いて来たのは向こうだろ? 放って置いても、向こうから、せっしょくして来るんじゃないか?)
めいの字(接触)
僕(……どうせ僕は漢字もろくに書けませんよ)

めい「……話しの筋は通ってるけどなぁ」
うん「駄目駄目駄目!!」

僕(……確か、人面瘡から姉ちゃんを救うとか、電話で言ってたよな)
僕(人面瘡に関しては信じられないが……こいつらを見ちゃったら、全否定は出来ないし……待てよ)
僕(あの本に、人面瘡を出来物とする記述もあったけど、妖怪とする物もあった)
僕(こいつらが妖怪なら? 人面瘡から人を救うような奴にやっつけられて、消滅と)
僕(そういう考えも出来るな……)

100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/20(月) 14:45:37.08 ID:sNIpwKWyO [11/14]
翌日。夕方5時頃。

うん「結局、来ちゃいましたね……」
僕「ああ」
僕(冬のせいか、やっぱり人が全然いないな。これなら少しはうんと喋っても大丈夫か)
うん「めいの分も頑張らないといけませんね!」
僕「……まあね」
僕(念のために姉ちゃんを見てるって言ってたけど……)
うん「あ、あそこにある屋根付きのベンチで待ちませんか?」
僕「そうだな」
僕(中立的な意見を言うめいが一番信用出来たけど……)
僕(やっぱり多少は不安だ、なるべく早く帰りたいな)
うん「……どんな人が来るんでしょうね」
僕「さあ……? あ、君って僕以外には見えないよな?」
うん「多分……」
僕「多分か。ちょっと離れててくれないか? 一人で来いって話しだったからな」

102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/20(月) 15:01:37.60 ID:sNIpwKWyO [12/14]
うん「……」
僕「そんなに不満げな顔するなよ。伏兵って事にするから」
うん「ふくへい?」
僕「……分かりやすく言うと、秘密兵器だ」
うん「秘密兵器ですか!」
僕「そうだ。だから、秘密にしとかなきゃいけないだろ?」
うん「そうですね。じゃあ、隠れてます。秘密兵器ですから!」
僕「ああ……」
僕(意外と単純だな……。まあ、ここに来た時点でぐだぐだ言っても仕方ないしな)
僕「……」
僕「ヒクシュンッ。……寒い」

5分後。

僕(……お?)
男「やあ、良く来てくれたね」
僕「……どうも」
僕(びっくりするくらい普通の奴だ……)
男「ちゃんと一人で来てくれたみたいだし」
僕「……なんで僕を一人にさせたんだ?」
男「そりゃあ……」
僕「……」
男(にやり)
僕「……!」

103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/20(月) 15:31:00.30 ID:sNIpwKWyO [13/14]
男「キチガイ扱いはごめんだからね」
僕「……え?」
男「普通の人に、人面瘡がどうとか話たらどう思う?」
僕「ああ……」
男「君もあまり俺の話しを信用してないだろう?」
僕「ああ……まあ……」
僕(びっくりして損した……)
男「さてと……。 電話で話した通り、俺は君の姉を救いたいんだ」
僕「……ああ。それ、どういう事なんだ?」
男「これから、出来ちゃうんだよね、人面瘡がさ」
僕「これから……?」
僕(うんとめいも先の話し、こいつも先の話し。……つじつまは合うな)
男「分かるんだよね、人面瘡が発生しちゃう人間が」
僕「……霊能者か何かか?」
男「いや、そうだったら良かったんだけどねぇ……」
僕「じゃあ何だ?」
僕(こいつも運命とか言い出したら、どうしよ……)
男「同類、ってとこかな」
僕「同類?」
男「……ほら、手の甲にこいつが出来ちゃってね」
僕「人面瘡……」

104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/20(月) 15:45:37.83 ID:sNIpwKWyO [14/14]
僕(確かに顔の形だ……)
僕(……気持ち悪い)
僕(ただでさえ人間の顔のミニチュアなんて気持ち悪いのに……体の一部だなんて……)
僕「……!」
僕(目が開いた! 生きてるのか……?)
僕(……)
僕(……何なんだよ)
僕(気持ち悪いのに……どうしてこんなに……)
僕(目が離せないんだ……)
僕(もぐもぐと動く口も気持ち悪い)
僕(……黒目だけの目も気持ち悪い!)
僕(気持ち悪い……)
僕「……!」
僕(今度は笑ってる……ああ、気持ち悪い……)
僕「……」

僕「……」
うん「……何、してるんですか?」
僕「……」
うん「……もうあの人、行っちゃいましたよっ!」
僕「……」
うん「……本当に、どうしたんですか!!」
僕「……」
うん「……? あれ? 触れなくなってる……?」

109 名前:PCと言うかネカフェから。[sage] 投稿日:2010/12/20(月) 18:52:20.18 ID:g8rsMIc20 [1/21]
同時刻。僕の自宅。

姉「楽しくないなぁ……」
姉「……」

インターフォン(ピンポーン)

姉「帰って来たのかな?」

ドア(ガチャン)

男「……こんばんは」
姉「……?」
男「先日電話した者ですが……」
姉「ああ、あの時の。弟なら、出かけてるよ?」
男「そうなんだ……。急ぎの話があるんだけどなあ……」
姉「……中で待ってる?」
男「良いんですか?」
姉「うん。すぐ帰って来るって言ってたしさ、どーぞ」
男「それじゃあ、お邪魔します」

111 名前:「話」が名詞、「話し」が動詞で合ってる?[sage] 投稿日:2010/12/20(月) 19:01:50.39 ID:g8rsMIc20 [2/21]
僕の自室。今。

姉「てきとうにどっか座ってて? 何か飲むもの持って来るね」
男「すみませんね」
めい「この人……」
姉(そう言えば、誰なんだろ)
男「……」
めい(こっち見てる……?)
男「……」
めい(……電話の人なら、今公園に居るハズだよね)
男「……」
めい(それとは別に、この人見えてるのかな……)
男「……」
姉「あれ? 遠慮しないで、どこでも座って良いのに……。あ、コーヒー飲める? コーヒー」
男「コーヒーなら飲めますよ」
姉「うん、じゃあどうぞ」
男「……」
めい「……」
男「あれ」
めい(やっぱり見えてる!?)
姉「ん?」
男「素敵な柄のカーテンですね」
めい(……なんだ、びっくりした)
姉「そう? ありがと」


113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/20(月) 19:11:42.94 ID:g8rsMIc20 [3/21]
男「中々上品なコーヒーだ。豆はブラジル産かな?」
姉「……」
めい「……」
男「……」
姉「……雪印のコーヒーです」
男「ああ、うん。そうだと思った」
姉「……はあ」
姉(……弟の友達なのかなぁ)

男「……実は、話と言うのがですね」
姉「うん?」
男「少し、見て欲しい物が有って」
姉「見て欲しい物?」
男「これ、なんですけどね」
姉「……それって」
男「ええ、人面瘡です」
めい「……!」
姉「……」
男「気持ち悪いけど、不思議と魅力的でしょう? ……触って見ても良いですよ?」
姉「……」

114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/20(月) 19:25:04.27 ID:g8rsMIc20 [4/21]
村中公園。

僕「……? うん?」
うん「はぁ……。ようやく反応が返って来ましたね」
僕「ようやく? ……あれ? あいつは?」
うん「とっくにどっか行っちゃいましたよ」
僕「……どういう事だ? いや、その前にお前、体どうした?」
うん「こっちが聞きたいです……。半透明になっちゃうし、あなたは全然反応してくれないし……」
僕「……人面瘡を見ていたはずなんだけど」
うん「あの人が立ち去ってからも、ずーっと一点を見つめてましたよ?」
僕「…・・・どういう事だ?」
うん「だから、それはこっちが聞きたいんです!」
僕「……」
うん「……」
僕「急いで家に戻ろう!」

僕の自宅。

僕「はぁ……はぁ……」
うん「……」
僕「着いた……はぁ……」

ドア(ガチャン)

僕「はぁ……はぁ……?」
男「これで……。これで終わりなんだな?」
僕「お前……何してるんだよ!!」

115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/20(月) 19:35:51.82 ID:g8rsMIc20 [5/21]
男「おい……これで俺を開放してくれるんだろ?」
僕「解放? なんの事だよ」
男「おい! なんとか言えよ!!」
僕「……な、なんだよ」
男「人の体ではベラベラ喋りやがって……いい加減にしろよ!!」
僕「……?」
うん「あれって……あなたにじゃなくて、手に向かってないですか?」
僕「手って、人面瘡か?」
うん「多分……」
僕「とりあえず落ち着けよ」
男「離せ! お前には関係無いだろ!!」
僕「勝手に巻き込んで来たのはお前だろう?」
男「俺は……こいつから解放されたいだけなんだよ!」
僕「だから解放って――」
人面瘡「良いだろう」
僕「喋った……?」
人面瘡「お前にもう用は無い」
男「……」
僕「あ、ちょ、ちょっと待てよ!!」
男「……」
僕「少しくらい話を聞かせろ!」
僕(どうなんてるんだよ……!!)

116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/20(月) 19:44:28.12 ID:g8rsMIc20 [6/21]
僕「……おい?」
男「……」
うん「多分、話しかけても駄目なんじゃないですか?」
僕「……」
うん「正気の顔には見えませんでした」
僕「……でも」
うん「それよりも家の中に戻りましょう、何かあったのかも知れません」
僕「あ、ああ!」

僕の自宅。

ドア(ガチャン)
僕「めい……」
めい「どうしよう……」
僕「……?」
めい「お姉さんが……」
僕「ね、姉ちゃんがどうかしたのか?」
めい「……」
僕「……!!」

118 名前:寧ろそういう事を言って貰えるとありがたい[sage] 投稿日:2010/12/20(月) 19:55:07.39 ID:g8rsMIc20 [7/21]
僕の自宅。居間。

僕「……! 姉ちゃん!!」
姉「ん……うぅ……」
僕「だ、大丈夫!?」
僕(まさか……手の甲に……!)
姉「あ、あれ……? 帰って来たんだ……お帰り……」
僕(何もない……。いや、指先が切れてる……?)
僕「なにがあったの?」
姉「んと……。あれ……? なん……だっけ……」
僕「姉ちゃん!!」
姉「……」
僕「姉ちゃん! 姉ちゃん!!」
うん「あの……無理に起こさない方が、良いかなと、思います」
僕「姉ちゃん、大丈夫だよな!?」
うん「それは私にも……」
めい「……詳しく話すから、まずはソファかベッドに移してあげたら?」
僕「……そうだな」

119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/20(月) 20:13:01.07 ID:g8rsMIc20 [8/21]
僕「……それで、いったい何が?」
めい「手の甲に人面瘡がある人が訪ねて来て。その人面瘡にお姉さんが指を噛まれたの」
僕「指を?」
めい「そう。人面瘡に触った途端、ガブっと」
僕「……そうか」
僕(僕もおかしな事になってたし、何かしら惹かせる物があるんだろうな)
めい「それで、お姉さんは倒れちゃうし、私は体が透けちゃうしで……」
僕「……どうすれば良いんだよ」
うん「それは……。どうしたら良いんでしょうか……」
めい「原因を突き止めるのが一番じゃない?」
僕「原因っても……さっぱり分からんぞ」
めい「私だって、検討も付かないけど……。じゃあなに? 病院にでも連れてく?」
僕「……この場合、あんまりに頼りにならない気がするけどな」
めい「でしょう?」
僕「しかし、今更原因を探したところで……」
めい「じゃあ……放っておく? 時々苦しそうにしてるけど……黙ってみてる?」
僕「それは……」

120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/20(月) 20:30:14.91 ID:g8rsMIc20 [9/21]
うん「あのー……」
僕「なんだ?」
うん「人面瘡がもう用はない、って言ってたの聞いてましたか?」
僕「ああ……。それが?」
うん「お姉さんをこういう状態にするのが目的だったなら、やっぱり、なにか仕返し、とかじゃないですか?」
僕「……まったく思い当たる節は無いな」
めい「んー……何かの邪魔だったとか」
僕「何かって何だよ。妖怪やお化けにも都合があるのか?」
めい「さあ? あるんじゃない?」
うん「……まあ、私達にもありますからね」
めい「……」
僕「なんだ、お前らやっぱり妖怪か何かなのか?」
うん「いえ、それは分かりませんけど……体は透けてるし……足はありますけど」
めい「ねえ、私達って、お姉さんの影響受けてない?」
僕「……言われてみればな。姉ちゃんが噛まれてから、体が透けたんだろ?」
めい「だから、あんたの運命が私達ってのは間違いで……」
うん「そうですね! お姉さんの守護霊じゃないですか?」
僕「しゅ、守護霊……?」

僕(なんだか、話がおかしな方に進んでるなぁ……おかしな事が起きてるから、当然っちゃ当然なんだけど……)

121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/20(月) 20:49:39.93 ID:g8rsMIc20 [10/21]
僕「守護霊とかって、普通、爺さんとか曾婆さんとかじゃないの?」
うん「外見が若いだけで、実はお年寄りかも知れませんよ?」
僕「あー……まあ、もう何があっても驚かんな。でも、それで?」
うん「え?」
僕「それで、なんなの?」
うん「う、うーん……」
めい「お姉さんと私達の関係を調べて見るのは、いい考えなんじゃない?」
僕「……まあな」
めい「そもそも、私達は多分こうなる事を避ける為に居た訳だし……きちんとした事が分かれば、なにか出来るかもしれない」
うん「そうですね!」
僕「……関係って言っても姉ちゃんに聞く訳にも行かないし」
うん「家捜しですね」
めい「住んでる人が気づかない盲点もあるかも」
僕「そうだな、他に出来ることもな――」
僕「……姉ちゃん?」
姉「う……くぅ……ここに、いて……?」
僕「……」
めい「出来る事、あったね」
うん「こっちは任せてください」
僕「……分かった。ここに居るよ、姉ちゃん」
姉「ありがと……」

122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/20(月) 21:02:32.85 ID:g8rsMIc20 [11/21]
僕「……姉ちゃん、大丈夫?」
姉「……うん」
僕「……」
僕(喋ってる間も起きてたのかな……。まあ、この際良いか)
姉「なんかね……?」
僕「うん?」
姉「懐かしかった……」
僕「懐かしかった?」
姉「……」
僕「……」
姉「……ん、んん……!」
僕「姉ちゃん……」


僕の自室。

うん「……相変わらず、汚い部屋ですね」
めい「だねえ……探しがい、あるんじゃない?」
うん「……それじゃあ、めいがこっちで!」
めい「はあ……、良いけどさ」
うん「あれ? 体、元に戻ってますね?」
めい「本当だ、どうなってんだろ」
うん「それもきっと分かりますよ! さあ、がんばりましょうか!!」

127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/20(月) 22:01:07.29 ID:g8rsMIc20 [12/21]
めい「さて……なにから始めたら良いのか」
めい「……はあ。地道に物をまとめながら、探して行くしかないか」
めい「……」
めい「ガラクタばっかりじゃん」
めい「はあ……」

姉の部屋。

うん「……同じ姉弟でも凄い違いですね」
うん(片付いてる分、特に目新しい発見も無さそうですが……)
うん(とりあえず、本棚でも漁ってみますか)


居間。

僕(懐かしいって……どういう事だろ?)
僕(昔、姉ちゃんを看病する事でもあったのかな……)
僕(それとも、過去にあいつらと接点でも合ったのか……)
僕「うーん……」
姉「……」
僕「……」
僕(やっぱり、じっとしてられないな……)


129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/20(月) 22:19:31.67 ID:g8rsMIc20 [13/21]
僕「姉ちゃん、あのさ」
姉「……」
僕「僕……。姉ちゃんの笑ってる顔が一番好きなんだ」
僕「だから、ちょっとだけ、離れるよ。すぐ戻ってくる」


母の部屋。

僕(……僕らの部屋は二人が行ったみたいだし、こっちだな)
僕「……」
僕(我が家で部屋を汚く使ってるのは、僕だけか……)
僕(……って言うか、何もねえな)
僕(いや、もしかしたら、何かあるかも知れない)
僕「……」
僕(探すにしても、物が無さ過ぎて、机くらいしかないよなぁ……)

引き出し(ガラッ)

僕(姉ちゃんが使ってた学習机だし……どっかに何か……)

引き出し(ガラッ)

僕(ある順番で引き出しをあけると、隠し引き出しが開くとか……。ないな)

引き出し(ガラッ)

僕(ん? 使い終わった電車の定期券? ずいぶん遠い所だけど……)
僕(良く出張で家を空けるけど……。定期で通ってた事、あるのか?)
僕「……うーん……分からん」
僕(とりあえず戻るか……)

130 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/20(月) 22:34:11.89 ID:g8rsMIc20 [14/21]
居間。

僕「……戻ったよ」
姉「……」
僕「……どうして」
僕(……どうして、姉ちゃん何だろうな)
僕(いや……そんな事、考えるだけ無駄か)
僕(姉ちゃんに原因があったとしても、僕は傍にいるつもりだ)
僕「……」
姉「……」
僕(……仮に姉弟としてでも構わない。姉ちゃんを、守りたい)

ドア(ガチャン)

僕「……何か見つかったか?」
うん「あんまり収穫は、無いです……」
めい「……こっちも」
僕「そっか……、まあ、仕方ないよな」
うん「あ、一応アルバムを持ってきましたよ。何かあるかも知れないじゃないですか」
僕「ああ、それアルバムか……。めいが持ってるのは何だ?」
めい「最初に、ここに居た時、何か落としたりしてないかなと思って。ベッドの周りを探してて見つけた」
僕「……本?」
めい「……だけど、開かない」
僕「見覚えは……無い、なあ」

131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/20(月) 22:47:17.20 ID:g8rsMIc20 [15/21]
僕「……仕方ない。アルバムでも見るか」
うん「三冊あるから、みんなで見れますよ」
僕「そうだな……」

15分後。

僕「なにか、あった?」
めい「特に無しで」
僕「僕も何度か姉ちゃんと見てるからなぁ……」
うん「この人は誰ですか?」
僕「どれだ? ……またずいぶん古い写真だな。姉ちゃんが赤ちゃんの頃か」
めい「普段だったら、ほっぺたつねられてるよ、今の」
僕「え?」
めい「古いって」
僕「ああ……”お姉ちゃんは古くないもん”ってか?」
めい「そうそう」
僕「めいは随分人を観察するのが上手いな」
めい「ん? ……なんとなく、だよ?」
うん「それよりこの人は……」
僕「知らん。誰だ?」
うん「この一枚しか無いんです。……お母さんはこっちの人でしょう?」
僕「そうだな……」
僕(親戚か何かか? ……まったく記憶に無いけど)
めい「なんだか、お姉さんに似てない?」
うん「そうですか?」
僕「うーん……言われて見れば少し――」

電話(テッ、レッ、フォン、テッ、レッ、フォン)

僕「……!!」

132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/20(月) 22:57:12.30 ID:g8rsMIc20 [16/21]
僕「こ、今度は出ちゃ駄目、とか……無いのか?」
うん「特に……そういうのは、ないです」
めい「私も。出ても大丈夫なんじゃないかな?」
僕「……」

電話(テッ、レッ、フォン、テッ、レッ、フォン)

僕(今度は……何も起きないよな……?)

僕「もしもし……?」
電話「あ、もしもし?」
僕「母さん?」
電話「ちゃんと生活してるかなーと思ってねえ」
僕「まあ……それなりには……」
電話「お姉ちゃんと、喧嘩したりしてない?」
僕「子供じゃないんだから……」
電話「それなら良いけど。お姉ちゃんに代わってもらえる?」
僕「姉ちゃんは今ちょっと……」
電話「何かあったの?」
僕「……なんで?」
電話「え?」
僕「いや……」
電話「……お風呂か何か?」
僕「……母さん」
電話「ん?」
僕「今、どこにいるの?」

133 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/20(月) 23:08:38.17 ID:g8rsMIc20 [17/21]
電話「……どうしたの、急に?」
僕「……何か、隠してない?」
電話「……」
僕「……」
電話「どうしたの? 変な事言って」
僕「いや……。ごめん、何でもないよ」
電話「やっぱり……何か、あったの?」
僕「……姉ちゃんが、少し風邪気味」
電話「……風邪?」
僕「そう。寝込んでるから、あんまり起こしたく無いんだ」
電話「それなら良いけど……」
僕「そうだ、一つだけ聞いても良い?」
電話「なに?」
僕「……姉ちゃんが小さい頃に亡くなった親戚っている?」
電話「……」
僕「……」
電話「……なにか、見たんだね」
僕「いや……。ああ、アルバム見てて、一枚しか写真に写って無い人が居てさ」
電話「……今その人の所にいるの」
僕「……うん?」
電話「お母さんの、姉さんだよ」
僕「うん……」
電話「その人がお姉ちゃんの本当のお母さん」
僕「え……?」

135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/20(月) 23:18:46.25 ID:g8rsMIc20 [18/21]
電話「……アンタにだけはいずれ話そうと思ってたの」
僕「……ちょ、ちょっと待って! どういう事? 姉弟じゃないの?」
電話「えーっと……従姉弟になるねえ」
僕「……」
電話「私の姉さん、少しおかしくてね」
僕「……うん」
電話「お姉ちゃんが生まれてすぐに……」
僕「……」
電話「あの子を殺そうとしたの」
僕「……え?」
電話「だから、ウチの事して、育てて来たんだよ」
僕「……」
電話「ああ、お姉ちゃんには、言わないでね。……きっと、悲しむと思うから」
僕「……」
電話「いつか話さなきゃいけないけどねえ……」
僕「……あのさ」
電話「ん?」
僕「どうして殺そうとしたのか、詳しく分からない?」
電話「……なんで?」
僕「……」
電話「まあ良いわ。化け物にするくらいなら、自分で殺すって……」
僕「……」
電話「最近落ち着いてきてたのに、またそういう事言い出して……。それで様子を見に実家に戻ったの」
僕「……そっか」
電話「夕方くらいから、本当に気が狂ったようになってるから、まさかとは思うけど、お姉ちゃんの様子が聞きたくてね」
僕「……そっか。でも姉ちゃんなら大丈夫だよ」
電話「そうみたいね。……それじゃ」
僕「……うん」


136 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/20(月) 23:35:51.13 ID:g8rsMIc20 [19/21]
僕「……」
うん「……」
めい「……」
僕「……聞こえてた?」
うん「……はい」
僕「……どういう事なんだろうな」
うん「人面瘡が人を支配して、化け物にするって事でしょうか……?」
僕「確かにあの男も……そんな感じだった」
うん「私達と、別の未来が……その人の見た……」
僕「姉ちゃんが化け物になる、って話なんだろうな」
うん「でも、その話と私達にどんな関係が……?」
めい「……」
僕「めい? その本……、開いたのか?」
めい「手帳だったみたい……。でも、読まない方が良いかも知れない」
僕「……何が書いてあったんだ?」
めい「全部。私達の事も……何をすれば良いかも……」
僕「……!!」
うん「めい、めい! それは本当ですか?」
めい「本当。……どうして私達が運命なんだろう」
僕「どういう事か分からんが……その本、僕に渡してくれ」
めい「……駄目」
僕「……なんでだよ」
めい「決めるのは、私達じゃなくて……多分、あんたとお姉さん」

138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/20(月) 23:49:05.50 ID:g8rsMIc20 [20/21]
僕「どういう……」
めい「大切な物を奪うのが、私達だったのかも」
うん「めい……?」
僕「姉ちゃんを、か……?」
めい「大切な物が何か、良く考えて。……出来たら、お姉さんとも話してみて」
僕「……」
めい「一瞬の悲しみか、贖う事の出来ない罪か……」
僕「……」
めい「うん。もう行こう」
うん「で、でも……」
めい「もう私達に出来る事は、無いんだよ……」
僕「……」
うん「……」
めい「……」
僕「……消えた……」

僕(一瞬の悲しみか。贖う事の出来ない罪か)
僕「……駄目だ。想像も出来ない。……どうしたら良い?」

139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/20(月) 23:59:09.17 ID:g8rsMIc20 [21/21]
一時間後。

姉「んん……ん……」
僕「……姉ちゃん」
姉「ん……?」
僕「少しだけ、喋っても大丈夫?」
姉「うん……大丈夫、だよ?」
僕「……姉ちゃんの事が好きなんだ」
姉「えへへ……。照れるよ……」
僕「姉弟としてじゃなくて……女の子として、一人の人間として」
姉「……うん」
僕「こんな時に……ごめん……」
姉「んーん……」
僕「……姉ちゃんを、助けたいんだ」
姉「……うん?」
僕「その為に、僕は罪を犯すのかも知れない」
姉「……そんなの駄目だよ」
僕「……でも」
姉「あのね……?」
僕「うん?」
姉「お姉ちゃんも君と同じ……。君が好きなの、だから……駄目だよ」
僕「……」
姉「逆の事、考えて……?」
僕(逆……。僕の為に姉ちゃんが罪を犯す……?)
僕「……駄目だな」
姉「……でしょ? お姉ちゃんなら大丈夫だから……んく……!」
僕「……」

140 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/21(火) 00:15:46.30 ID:Ttz6Ylw/0 [1/5]
姉「……」
僕「……」
僕(……信じてみるか)
僕(僕の気持ちと、姉ちゃんの気持ちは同じくらいだって)
僕(身勝手かも知れないけど、僕はこっちを選ぶよ。ごめん)

手帳(パラパラパラパラ)

僕(押し花……? なにかの粉……? それにこの図……?)
僕(……ひょっとして)

僕(あった……。人面瘡のページ……)
僕「……」
僕(人に噛み付いて増える……それじゃあ、やっぱり姉ちゃんも……)
僕(……編笠百合……の鱗茎……)
僕(……これで……)

手帳(パラ……)

僕「……」
手帳(いつかこれを見るどこかの僕の為にいくつか記して置く)
僕(これ……僕の字……?)
僕(怪異? 退ける? なんだこれ……)
僕(……ん? 姉ちゃんの事……?)
僕「……」
僕「……それじゃあ……あの二人は……」

141 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/21(火) 00:28:51.97 ID:Ttz6Ylw/0 [2/5]
一ヵ月後。母の実家。ベランダ。

僕(……確かに、大切な物は失ったな)
僕(……もう戻れない)
僕「……」
僕(多分、どんどん悪い方向に向かってる)
僕(まあ、でも。好きになった以上、どうしようもないな……)

僕「はあ……」



142 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/21(火) 00:37:58.34 ID:Ttz6Ylw/0 [3/5]
僕(……弱気になっちゃいけないな)
僕(手帳の結末通りにはなりたくない。普通の日常なんて、望んじゃいない)
僕(……僕は姉ちゃんを失いたくないからな)
僕(たとえ……望んだ未来を引寄せる、だなんて事があっても……)
僕(……未だに信じられないけど……実際起こったしな)
僕(怪異も生き物では無い物も……色々見ちゃったし……)

僕「……」

姉「あ、こんなところにいたの?」
僕「うん……。もう、なんでも無いって?」
姉「……うん。大丈夫って。……凄く普通だった」
僕「ん?」
姉「山姥みたいなイメージだったから……」
僕「まあ、殺すだとか、物騒な事言ってたからねえ……」
姉「……でもさ、本当に従姉弟なんだね」
僕「みたいだね」


143 名前:これで終わり。[sage] 投稿日:2010/12/21(火) 00:43:18.87 ID:Ttz6Ylw/0 [4/5]
姉「……なんでそんな冷めてるのっ!」
僕「いや、別に?」
姉「……お姉ちゃんはすっごく嬉しかったのにな」
僕「そっか」
姉「……なにか怒ってる?」
僕「別に?」
姉「むぅぅ。怒ってるでしょ? 目も合わせてくれないもん!」
僕「……あんまり顔、見られたくない」
姉「……なんで?」
僕「多分、凄くにやにやしてて気持ち悪いから」
姉「ふーん……なんで? ねえ? ねえねえ?」
僕「分かってるくせに」
姉「……わからんちー」
僕「……姉ちゃんが傍に居る事が嬉しいから、だよ」
姉「えへへ」

僕(……僕自身が姉ちゃんの笑顔を曇らせるなんて、絶対止めてやる)
僕(……姉ちゃんの為に、日常を捨てた僕を見て、姉ちゃんが悩んで、苦しんで、そして……)

姉「あ、何それ?」
僕「……SF小説」
姉「なんだぁ……つまんないな……」
僕「……」
僕(……これで良いんだよな)
姉「……」
姉「えへへー!」
僕「なんだよ」
姉「大好きだよっ」

144 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/21(火) 00:46:32.09 ID:Ttz6Ylw/0 [5/5]
お疲れ様でした。

なんか最後だけ、漫画ちっくで浮いちゃってる気もするけど。
これで終わりです。

姉の望んだ未来を引寄せるは、望んだ未来の一部、みたいな感じで。
記憶は無いけど、自分の娘を引寄せて、それがうんとめい、みたいな感じで。

あ、あとわからんちを覚えてる人がいて嬉しかったです。
それじゃあ。

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