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美琴「とある主人公(ヒーロー)の友情物語?」-4

美琴「とある主人公(ヒーロー)の友情物語?」

美琴「とある主人公(ヒーロー)の友情物語?」-2

美琴「とある主人公(ヒーロー)の友情物語?」-3

607 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/27(火) 19:39:41.85 ID:pUiQhqI0 [2/18]
――――――


――――



「――ちょっとぉ! 待てっつってんでしょ!」




声と同時に雷撃が飛ぶ。打ち止めと禁書目録の捜索活動で頭がいっぱいになっている上条当麻の後ろ姿目がけて一直線に―――。



「――いぃっ!!?」



振り返った上条は自分に迫る雷撃に一瞬驚く。…が、もはや条件反射となっているのか……躊躇う事なく右手を翳した。



―――バシュゥゥ……



右手で正確に触れたかは定かではないが、上条を襲う筈だった雷の乱撃は跡形も無く全て消滅していた。
この一見して冷や汗モノのやりとりを、いったい何度二人は繰り返したのだろうか……。
おそらく当の本人達でも回答に困るだろう。




上条「あ…あっぶねえじゃねーか! いきなり何すんだよ!?」

美琴「『何すんだ』じゃないわよ! 人が待ってって何回も何回も言ってんのに、結局アンタは言うだけ言って後はスルー
   決め込むってかぁ!? ざけんなっつーの!」




雷を飛ばした張本人、御坂美琴も負けじと言い返す。すでにいつもの調子を取り戻した彼女がそこにいた。

608 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/27(火) 19:42:02.81 ID:pUiQhqI0

上条「仕方ねえだろ!? 俺には今、重大な使命があるんだ! グダグダやってる内にあいつらに何かあったらどーすんだよ!?」

美琴「だからぁぁ……、私も一緒に捜すの手伝うって言ってんでしょうがぁ!!」

上条「なにっ!? それを早く言え!」

美琴「……ハァ、アンタ本当に聞いてなかったのね…」




肩透かしをくらってしまった美琴は溜息を吐く。




上条「よしっ! 俺はアッチを捜すから、お前もアッチを捜してくれ! じゃあ後で――」

美琴「落ち着けぇ! 同じ方向さしてどぉすんのよ!? ひとまず落ち着け! っていうか、何でそんな慌ててんのアンタ?」




上条が何故これほど必死に捜索活動を遂行しようとしているのか……。その理由は二つあるのだが、美琴は生憎どちらも
知らないのだ。よって、上条の異常に血走った目に疑問を抱くのも当然と言えば当然である。




上条「この捜索に上条さんの明日が懸かってるんだ。これ以上は話せん! 察してくれ」

美琴「……は?」




察してくれと言うには漠然とし過ぎている……。だが、それ以上は言ってくれそうにないのでとりあえず納得する事にした。

609 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/27(火) 19:44:56.08 ID:pUiQhqI0

美琴「まぁ……別に良いけど、あの子たち多分外にはいないわよ?」

上条「なぬっ!?」

美琴「っていうかアンタ、人捜しのエキスパートであるこの美琴サマをスルーしてくれるなんて大したモンよね」

上条「――!?」

美琴「………忘れてたでしょ?」

上条「ははーっ! この上条さん、時代が時代なら切腹も免れないほどの過ちを犯してしまいました! ……どうか、
   どうかここは慈悲の心でお力添えをーっ!」

美琴「まったく……」




美琴を大仏のように信仰し始めた無能力者……。拝まれている方は呆れた顔をするしかなかった。




美琴「わかったからもう祈るのやめなさい。人とかもう普通に歩いてんだから、見られちゃうじゃないの…」




上条を立たせ、打ち止めの電波を探す。


……やがて、一分も経たない内に少女達の居場所が判明した。

610 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/27(火) 19:48:51.21 ID:pUiQhqI0

美琴「―――アッチに見える建物の中にいるみたいね…」

上条「あいつら……外にいないと思ったら屋内に入ったのか」

美琴「どおりで外にいないハズだわ……アンタ何で目ぇ離したのよ?」ジトー

上条「あぁ……言い訳はしないさ……意識を狩りとられたぐらいじゃ言い訳にもならねえって事は上条さんでも
   重々承知してるさ……」

美琴「……なに低い声でボソボソ言ってんの? ホラ、とっとと行くわよ」

上条「お、おう!」




―――こうして、二人は『B館』へ……。この先、二人にとって因縁のある者達が禁書目録、打ち止めと一緒にいる
事など、上条と美琴がまだ知る筈もなかった。




――――――


―――




禁書「ごちそーさま♪」

打ち止め「ミサカはすでに食べ終わってるけど、一緒にごちそーさま♪」

611 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/27(火) 19:50:51.60 ID:pUiQhqI0

麦野「お粗末……なんてレベルじゃないわね……」

フレンダ「……この子……大食いのチャンピオン……?」

絹旗「超胃袋ってヤツですか…?」

滝壺「………」

浜面「オラ腹いっぱいだぞぉ……」




元アイテム勢はテーブルの上に乗った食器の山を見て各々の感想を漏らした。
浜面に至っては『某ヒーロー』が乗り移っていた……。




禁書「おなかいっぱい食べたのひっさびさ、っていうか初めてかも」




脹れていない腹を撫でてそんなことを言う禁書目録……。いつもお腹一杯食べていたら上条はとっくに今ごろはホームレス
になっていただろう……。




打ち止め「これがシスターちゃんの本気なんだね! ってミサカはミサカは超ビックリ!」

禁書「うん。いつもは半分もいけないんだけど、今日は本気出したんだよ。ちょっとおなか苦しいかな…」

絹旗「………」




いつの間にか口調を真似されていることに絹旗は気づかなかった……。その目は大量の食器に釘付けだった。
周りの客は勿論、店員も驚きを隠せずにコチラを凝視している。

612 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/27(火) 19:52:25.74 ID:pUiQhqI0

そして、禁書目録の『本気』を出した結果の数値は、テーブルの隅でくしゃくしゃになっていた伝票が教えてくれた。




店員「五十三万八千六百四十円に……なります……」


麦野「………これで」スッ


店員「カードでのお支払いになります。……ありがとうございましたー」




麦野沈利は、自分がレベル5である事に初めて心の底から感謝した。
周りからの視線にいたたまれなくなった一同は、そそくさと退店した。



―――――


―――




禁書「おいしかった~♪ ありがと。しずり」

麦野「いいけど……あんた何者?」

禁書「私はインデックスだよ?」

絹旗「どう見ても日本人じゃないですよね? 留学生ですか?」

禁書「ふぇ? りゅーがくせい?……よく分かんないけど、ちょっと違うかな」

613 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/27(火) 19:55:32.44 ID:pUiQhqI0

打ち止め「あのね、このコはシスターさんなんだよ。ってミサカはミサカは説明してみたり」

浜面「シスター?」

フレンダ「シスターって……あの教会とかにいる?」

禁書「うん」

麦野「そういう類の学生…ってこと?」

禁書「う~ん、ごめんね。あんまり詳しくは言えないんだ」(とうまに『魔術』の事は人に言うなって言われてるし…)

絹旗「けど超うらやましいですねぇ。あれだけ食べたのにお腹出てないなんて……」

フレンダ「胃にブラックホールでも入ってんじゃないの?」サワサワ

禁書「あふっ……く、くすぐったいんだよぉ……やめ…ひゃっ!?」

麦野「……」プニプニ

絹旗「…つるつるですね。余計うらやましいです……」ナデナデ

禁書「は……あ、や…やめて……ほしいかもぉぉ……ふぅっ…///」ビクン


滝壺「………」サッ

打ち止め「わっ!? 急に目が見えなくなったのはどうして!? ってミサカはミサカはじたばたもがいてみるけどやっぱり見えないーっ!!」

滝壺「……子供は見ちゃダメ…」

614 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/27(火) 19:58:39.95 ID:pUiQhqI0

浜面「……何なんだこのエロい光景は…」タラー…

滝壺「はまづら……」ギロッ

浜面「み、見てない! 俺は何も見てないぞ!」

滝壺「鼻血…」

浜面「こ、これは違うんだって! 興奮すると鼻血とかねーから! だいいち俺はロリコンじゃねぇ!」




必死に弁明するが、滝壺の温かく冷めた視線は浜面に突き刺さったままだった……。

そんなこんなでしばらくじゃれ合った後、元アイテム一同は禁書目録と打ち止めの保護者捜しに付き合うことにした。




――――――


―――




「――大変申し訳ありませんでした。とミサカは取り乱したことに恥を覚えつつ謝罪します」




そう言ってペコリと可愛らしく頭を下げた御坂妹。頭が冷えたのか、叫びまくってすっきりしたのか……。
いずれにしろ、ほんの数分前までバーサーカーと化していた少女の姿はとっくに消え失せていた。

615 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/27(火) 20:00:53.74 ID:pUiQhqI0

一方通行「まァ……もォ良いから、頭上げろ」

垣根「しかしよぉ……死ぬかと思ったぜホント…」




バッテリーに能力使用できるほどの電力が残されていない一方通行と、初春の前で能力使用はできない垣根帝督は
御坂妹の謝罪を受け入れるも、まだ背中の汗が乾いていなかった。




御坂妹「危うくこの手を血で染めてしまうところでした……とミサカは猛省します」


初春「…………この人が、御坂さんの妹さんですか?」

佐天「みたい……けどホントそっくりだよね…」




後ろの方でコソコソ会話する佐天涙子と初春飾利。やがて初春は御坂妹に近づき尋ねた。




初春「あの……妹さんも常盤台なんですか…?」

御坂妹「いえ。詳しくは話せません……それより、先ほどは大変失礼しました。とミサカは再度謝罪します」ペコリ

初春「あ、いえそんな……私なら大丈夫ですから…」

佐天「あの~……わ、私は…?」




あとから近づいてきた佐天を御坂妹は睨んだ。

616 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/27(火) 20:03:19.03 ID:pUiQhqI0

御坂妹「あなたには絶対に謝りません。とミサカは敵視します」キッ

佐天「………」

初春「佐天さん……妹さんに何かしたんですか?」

佐天「い、いやぁ…さっぱり……」(マズイなぁ……完全に誤解されちゃった……妹さんの目がすごく怖い…)

御坂妹「後でツラをお借りしてもよろしいですか? とミサカは呼び出しをかけます」

佐天「お、お断りしますっ!!」(マジでヤバイかも……何とかして誤解を解かないと帰りが危ない)

初春「……?」(どうなってるのかサッパリです……佐天さんと妹さんに一体何が…?)


一方通行「オイ、そろそろ行くぞ。いつまでもここにいたって仕方ねェだろ?」

御坂妹「はい。とミサカはあなたと腕を絡めてd」

佐天「そうだね! 行こっか! あ~くん♪」ガシッ


一方通行「―――…ン?」




右腕に御坂妹、左腕に佐天涙子、一方通行両手に花状態で棒立ち、……の図が完成した。




一方通行「………」




目の焦点が合わなくなった一方通行の真横で二人の少女が火花を散らせている…。

617 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/27(火) 20:21:22.11 ID:pUiQhqI0

佐天(ゴメンなさい妹さん! けど、ここは譲れないんです! 私の誇りと名誉に懸けてでも!!)

御坂妹(この人は一方通行の正式な恋人……しかし、今日、彼の相手はこのミサカです。よってここは引けません!
    とミサカは眼で威嚇します!)


一方通行(オイオイ……一体いつまで続くンだァ? この面倒極まりない状況はァァ……)




どちらも一方通行の腕を大切な宝物のように手放そうとしないで睨み合っている……。
そして、ついに佐天が口撃を仕掛けた。




佐天「……私のあ~くんから手を離してくれません?」

御坂妹「あなたの方こそ離して下さい。恋人だか何だか知りませんが、今日はミサカがこの方と約束をしたのです。とミサカは
    反論します」


初春(え? それって……つまり、佐天さんの彼氏は二股してるってことですか!?)

垣根(やべぇ……面白くなってきた。こりゃ見ものだわ。どうする? 一方通行…)


佐天「何ですかぁそれ? あ~くんは今日ずっと私と一緒にいるんですよ?」

御坂妹「は? あなたは何を言っているのですか? 一緒にいたのはミサカの方ですよ? とミサカは意味不明な言動に首を
    傾げます」

佐天(うっ……けど、もう後戻りはできないっ!!)

618 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/27(火) 20:23:26.03 ID:pUiQhqI0

佐天「馬鹿言ってんのはソッチじゃないですか? だいたいあなた、あ~くんの何なんですか?」

御坂妹「『何』…ですか。確かにそれを言われると若干胸に痛みを感じますが、確かに今日は彼と会う約束をし、正当な
    手続きをとって一緒にこの場所まで来ました。したがって、今の彼はミサカの所有物です。とミサカは答えます」

佐天「なっ……」

一方通行「」

初春「し…所有物って……///」

垣根(一方通行よ……男はつらいな……心なしかいつもより真っ白に見えるぜ…)

御坂妹「と、言う訳です。さぁ、その手を離して下さい。これ以上食い下がるのでしたら武力をもってでも制しますよ?
    とミサカは警告します」

佐天(や…やばい……力ずくで来られたら確実に負ける……ここは何とか穏便に。って無理だよねぇ………どうしたら…)

御坂妹「………」

佐天(ええい! かくなる上はっっ!!)




思考の末、佐天は―――




佐天「あ~くん! 私がいるのにこの人とも約束してたの!? 信じらんない!」(ごめんなさい一方通行さん!)


一方通行「………はァ?」




―――助けを一方通行(彼氏)に求めたのだった……恐るべし佐天涙子!

619 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/27(火) 20:27:32.93 ID:pUiQhqI0

御坂妹「……この方は本当にあなたの恋人なんですか? とミサカは呆然としているあなたに問います」

一方通行「……イヤ…これには深い訳があってよォ…」

佐天「ひどいよあ~くん! 浮気者!」(助けて一方通行さん!)

御坂妹「仲違いはミサカにとって好都合です。さ、こんなキチガイ女は放っておいて、デートの続きをしましょう。
    とミサカはあなたの腕を引いて急かします」グイ グイ

佐天「んな……ッ! キチガイ……? ッ……言ってくれんじゃないの……いくら御坂さんの妹でも今のはちょーっと
   聞き捨てなりませんねぇ……」 

御坂妹「……お姉様もお友達に恵まれていないようですね…」

佐天「どーいう意味よっ!?」

御坂妹「そのままの意味です。あなたが彼と恋仲であることに関してミサカがとやかく言う筋合いではありませんが、
    さっきも言ったように、彼と今日会う約束をしているのはミサカなんですよ? この方があなたまで誘ったり
    するとは思えません。つまり、あなたは嘘を吐いているという事になります。違うのでしょうか?」


佐天「………ッッ」(ムカつく! 確かに悪いのは私だけどさぁ! そこまで言うことないじゃん! 何なのよこの人!?
           こんな言い方されたら御坂さんじゃなくてもキレるわ!)

一方通行(あ、語尾が無くなってやがる……こりゃまたマズイ展開に転ぶパターンだな……)

佐天「………」

御坂妹「もう言いたい事はありませんか? ではそろそろ行きましょう一方通行。全くとんだ邪魔が入ってしまいました」

一方通行「……え? あ、あァ…」

620 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/27(火) 20:32:55.51 ID:pUiQhqI0

佐天「ダメッ!! 行かないであ~くんっ!!」ギュッ

一方通行(なァーンなーンでーすかァー!?)

御坂妹「」イラッ

佐天(負けたくないっ!! こんな人になんか負けたくないっ!! たとえ返り討ちにあっても絶対に引くもんかッッ!!)

一方通行(どォすりゃ良いンだよォ………もォこの際メルヘンでも良い! 俺を助けろォ!)チラッ


垣根(すまん、俺には無理だ……がんばれ一方通行。応援してる)




ルームメイトに目で助けを求めるが、返ってきた答えは生暖かい目で「NO」と告げていた……。




一方通行(クッソ役立たずがァァァ!!)


御坂妹「……しつこいですね。あまりミサカを怒らせない方が賢明ですよ? とミサカは再三に渡り警告します」

佐天「あなたこそ、いい加減離れてくれません? この人は私の彼氏なんですから……ッッ!」グイッ

一方通行「――うおォ!?」

御坂妹「あっ! テメ、この……何度も言わせないで下さいとミサカ……はぁッ!」グイッ

一方通行「――ァあ!?」




右へ左へと一方通行の体が揺れる。

621 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/27(火) 20:35:19.79 ID:pUiQhqI0

佐天「ん……離せ……このッ!」グイグイ

御坂妹「そっちこそ……ぉッ!」グイグイ

一方通行「―――痛デデデデ!! さ、裂ける裂けるゥ!! やめろォ!! ひ、引っ張ンなオマエらァァ!!!」


垣根(おぉ、アレはきつい……大岡越前かよ…)

初春(なんて言うか……醜い争いですね……)


佐天「離してくださいっ! あ~くんが苦しんでるじゃないですかぁ!」グイグイグイッ

御坂妹「ならあなたが離せば良いでしょお!? っと、ミサカは断固拒否……ぃッ!」グイグイグイッ


一方通行「―――ストップ!! やめろ!! シャレ抜きで痛ェ!! 千切れっからァ!! オイ!?」




一方通行の悲痛な叫びは少女達に届かなかった……。
まるで綱引きのように一方通行を引っ張り合う二人の目は、激しく互いを見据えていた。
そんな彼女達の醜い争いに、一方通行の華奢な体が耐えきれるハズもなかった……。両腕を広げられたまま痛みにもがく
その姿は、垣根ですら気の毒に思うほどだ。絵的には組み体操の『三人扇』に近いが、さすがにこのままだと本当に一方
通行の体が引きちぎられかねない。その内「ボキッ!」とか言いそうだ……。




初春「痛そうですね……カッキーさん。助けなくて良いんですか?」

622 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/27(火) 20:37:48.27 ID:pUiQhqI0

垣根「ん、おぉ……しゃあねぇ……。そろそろ助けてやるか……」




見かねた垣根が動こうとする。……が、




一方通行「―――だァクソォ!! わかったァ!! ならこォすりゃイイだろォ!! ひとまずオマエら二人とも俺から手を放せェ!!」




一方通行の唐突な叫び…というか訴えに、全員の動きが止まった―――。




垣根(お? 苦し紛れか……?)

初春(どうする……んでしょう?)


御坂妹「…………」

佐天「…………」




御坂妹と佐天は引っ張るのを止めるものの腕から手を放そうとはせずに、無言で一方通行を見上げた。
痛みで歪んでいた顔に引きつった笑みを浮かべた一方通行は、口元をピクピクさせながらこの先の流れについてこう希望した。




一方通行「今日のところはもォ喧嘩とかそンなンは一切無しでみンな一緒に仲良く楽しく愉快に遊ぶのがイイと思うンですがァ……」




これ以上の醜い争いを心から望まない男が口にした最高の本音だった。

632 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/28(水) 23:23:04.42 ID:3yEdre60 [2/10]
――――――


―――




一方通行は美琴の事が好き………


美琴はおそらく……たぶん…俺の事が好き……なのかもしれない


それに対する俺の気持ちは……まだ分からない…


一方通行は面と向かって美琴を誘えないから御坂妹とデートしている……




(一方通行がもし美琴に告白でもしたら………いったいどうなるんだ?)


(仮に俺の推測が当たってるとなると、きっと美琴は断るだろうな…)


(その後、美琴が俺に……なんて事になったら、俺はどうすれば良い?)


(美琴の事は……嫌いじゃない。嫌いじゃないんだ……)


(付き合いたい気持ちが無い訳じゃない……)


(けど………それで良いのか? 一方通行は許してくれるのか?)

634 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/28(水) 23:29:23.58 ID:3yEdre60 [3/10]

(『妹達』……『ロシア』……そして『あの日』から今まで、あいつとはなんだかんだ言って上手くやってきた……)

(今は一方通行も俺の立派な『友達』だ)

(……最悪、それが全部終わっちまうかもしれないのか? 折角仲良くやって来れたのに……)

(………ふざけんな…)

(俺は……どぉすりゃ良いんだよぉぉおお!!!)



―――――


―――




「――ンタ………ちょっとアンタ!!」


「――!? へ……?」



美琴「へ?じゃないわよ! 『綺麗よねぇ……』って訊いてるのにさっきから無視してくれちゃってさぁ!」

上条「あ……あぁ、悪い」

美琴「……何考えてたの?」

上条「いや……インデックスと打ち止めは無事かなぁ。ってさ」

635 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/28(水) 23:44:26.52 ID:3yEdre60 [4/10]
>>633 お待たせしてゴメンなさい! 試験ガンバ!





美琴「どこにいるかはもう分かってるんだし、そんな焦ることなんてないでしょ? ていうか、アンタこの壮大な世界に
   対して何かコメントとかない訳?」


上条「え……―――」




ここは『B館』内―――


上条と美琴は人が若干薄れた水中トンネルを歩いていた。……そこでやっと上条は周りに広がる外の光景に気づいた。




上条「―――うわぁ……すげぇ。まるで海の中歩いてるみたいだ……」




『海景色』に匹敵するもうひとつの名物『海散歩』である。
全長二百メートルは続く海中トンネルの外では、ジンベエザメやマンタなど、普段は決してお目にかかれない海洋生物達
が悠然と泳いでいた。
上条の目はトンネルの外に釘付けになる。



ジンベエザメ「………」スイー


上条「デケェ……世界で一番デカイ魚ってアレなんだろ?」

美琴「そうみたいね……顔がちょっと可愛いと思わない?」

上条「思わない」

636 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/28(水) 23:46:19.26 ID:3yEdre60 [5/10]

美琴「ハァ……アンタって分かってないわよねぇ…」

上条「…………」




どう考えてもテメェの趣味がマニアックなだけだろ! と言いたかったのだが、水族館の中は美琴のテリトリーと言っても
過言ではない。上条の『幻想殺し』は美琴の電撃なら防げるが、それによって割れたガラスから流れ込んでくる大量の海水
には何の効果も持たないのだ。…したがって、ここで彼女を怒らせる言動を安易に口走ってしまうのはとてもマズイ事態に
なりかねない。いつになく冷静に、上条は先の展開を予測したのだった。




美琴「あ、マグロの群れ♪」

上条「……メチャクチャ速いな。アレって疲れたりしねえのか?」

美琴「マグロとかサメって泳ぐの止めると死ぬんじゃなかったっけ? 確か…」

上条「え? サメは知ってるけど……マグロもそうなのか?」

美琴「多分ね。けど辛くないのかな……死ぬまで泳ぎ続けなきゃならないのって……残酷よね」

上条「人間に直すと死ぬまで寝れないようなモンなのかな……うわ、なんか俺の不幸が可愛く思えてきた」

美琴「別に不幸とかじゃないと思うけど……」

上条「お? アッチにはマンタか。………しかしすご過ぎだろ。こんなデカイ生き物ばっかりよく飼育できるよなぁ……」

美琴「学園都市の科学力の凄さには呆れるわね」

上条「もう海中歩いてるとしか思えなくなってきたぜ。その内クジラとかも加入しそうだな……」

637 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/28(水) 23:48:59.84 ID:3yEdre60 [6/10]

美琴「それはさすがにどうかしら……」

上条「オイオイ、そう簡単に幻想を捨てんなよ。『水族館で巨大なクジラを見る』ってのは人類の夢じゃねえか」

美琴「アンタだけだっつの! ってか、人の幻想壊せるアンタが言うな!」

上条「たまに思うんだ……この右手が人の幻想を作りだせるとしたらどんなに素晴らしいんだろうってさ……」

美琴「くっだらねぇ」




美琴が発した言葉と同時に上条達の体は海中トンネル出口を潜った。




上条「お、一方通行に似てたぞ今の……」

美琴「あァ? 別に似てても嬉しくなンかねェンだよォ! ……こんな感じ?」

上条「ぶふっ……そっくり! お前才能あるんじゃねえか?」

美琴「………二度とやらないわ」




上条も美琴もいつの間にか楽しんでいた。言ってみれば『良い雰囲気』である。
シチュエーションも手伝っているせいか、二人ともデートを楽しむカップルにしか周りからは見えないだろう。
上条も、悩むのは一旦中止してこの状況を楽しむ事にした。どうせ今考えたって碌な結果が出ない。
しかし、それでも忘れてはならない事がある―――。




上条「さて……インデックスと打ち止めを早く見つけないとな。御坂、アイツら今どの辺にいるんだ?」

638 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/28(水) 23:51:19.45 ID:3yEdre60 [7/10]

美琴「ん、上の方にいるみたい……どっかに移動してるわね」

上条「そうか。まったくアイツら……心配かけやがって」




二人は海洋生物達に別れを告げて、上階を目指す。
禁書目録と打ち止めが通った道を確かに二人も通っていた―――。




――――――


―――




元アイテムリーダー麦野沈利、構成員の絹旗最愛、フレンダ、滝壺理后、下っ端(パシリ)の浜面仕上。
………に、何故か禁書目録と打ち止めを交えた七人は、館内のショッピングモールをのんびりと歩いていた。
禁書目録はさっき散々弄くり回されたお腹をさすっている―――。




禁書「はぁ……何か大事なモノを失った気がするんだよ……」

フレンダ「シスターちゃんのお腹が結構良い感触だったって訳だけど……麦野はどうかn」スッ

麦野「って、さりげなく人の腹に手ぇ伸ばしてんじゃないっ!」ペシッ

フレンダ「あぅっ!」

639 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/28(水) 23:53:57.51 ID:3yEdre60 [8/10]

絹旗「フレンダが一番いやらしい触り方してましたよね」

フレンダ「……もしかして私、テクニシャン?」

麦野「知らないわよそんなこと」

禁書「どうしようさいあい……私、何かに目覚めそうかも」

絹旗「超かわいそうに………汚れてしまったんですね」ナデナデ

麦野「イヤあんただって途中から胸揉もうとしたくせに、何蚊帳の外ぶってんのよ?」

絹旗「ち、違いますよ! 私はただ……自分と比べてみようかなぁって……超……じゃなくてちょっと思っただけで…」

禁書「私はシスターなんだから、汚れちゃったりしたらマズイんだよぉ……」

フレンダ「……私よりはさすがにないよね…」モミモミ

絹旗「フ、フレンダ! 何自分の揉んでるんですか!?」

麦野「自分のと比べてんだろどーせ」

フレンダ「………よし」

絹旗「何が!? コッチ見て『よし』とか超言わないで下さい!」

禁書(とうまも……胸大きい人の方が良いのかなぁ……だとしたら、しずりが大ピンチかも!)




新たな犠牲者が生まれる事に危惧する禁書目録だが……果たして?


一方、その数メートル後ろでは―――

640 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/28(水) 23:57:12.12 ID:3yEdre60 [9/10]


滝壺「―――ごめんね。痛くなかった?」

打ち止め「平気だよ。けどなんでミサカの目を塞いだのかな? ってミサカはミサカは質問してみたり」

滝壺「あなたには、まだ早いから」

打ち止め「?……よく分からないけど分かった。ってミサカはミサカはとりあえず納得してみる」

浜面「うぅ……やっと鼻血止まった。にしても、なんであんなタイミングで……っつーか前もあんなことあったよなぁ…」

滝壺「はまづら、大丈夫?」

浜面「あぁ、もう止まったよ」

打ち止め「ねぇねぇ、大人になったら分かるのかなぁ。ってミサカはミサカは訊いてみる」

浜面「は? 何が?」

滝壺「さっきの……」

浜面「あー、アレか。そうそう、大人になったら分かるから今は知らなくて良いんだよ。てか、今知っちゃったらマズイだろ……」

打ち止め「そうなの?」

浜面「おう。アイツらは君の成長の妨害になりかねんから、なるべく関わんねえ方が良いぞ」

打ち止め「でも、いつかはあの背の高いお姉さんみたいになりたい! ってミサカはミサカは熱望してみたり」

浜面「外面はそれでいい。が、内面だけは絶対に真似るな。君のためだ」

打ち止め「え? そうなんだ……」

641 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/28(水) 23:59:07.45 ID:3yEdre60 [10/10]

浜面「それにしても、ファインプレーだったぜ。滝壺」

滝壺「はまづら……」

浜面「下衆な痴女達の蛮行でこの子の目が汚れたら一大事だからな。グッジョブ滝壺!………ん? どうした?」

滝壺「……はまづら。後ろ…」

浜面「え? うし―――!?」




前を向いて歩く滝壺や打ち止めと向かい合うように後ろ歩きをしていた浜面は、滝壺の言葉で後ろ……もとい前を向く。
その直後、すぐ目の前でニンマリとしながらコチラを見る三人の女子達に浜面は戦慄した。




麦野「はーまづらぁ………」

フレンダ「結局、丸聞こえって訳よぉ……」

絹旗「……私も超含まれてるって事で良いんですよねぇ……。死刑確定です」


浜面「」


滝壺「………」サッ

打ち止め「あれ? また目が見えなくなったーっ! ってミサカはミサカは再びジタバタともがいてみたり!」

642 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/29(木) 00:02:33.78 ID:1/xec6Q0 [1/16]

滝壺「これはさっきより見ちゃダメ……」


麦野「とりあえず、ここじゃアレだし……裏行こっかぁ…」ガシ

絹旗「大丈夫ですよ。時間はとらせませんから……」グワシ

フレンダ「オラ、とっとと歩けって訳よ」ゲシッ


浜面「」




怒りを通り越したような笑いを浮かべる麦野達にどこかへと連れて行かれてしまった哀れな無能力者を、残された三人は
静かに黙祷した。
次に三人が見た浜面仕上の姿が、とても文章で表せるようなモノではなかったのは言うまでもない。




―――――


―――




佐天(なんとか初春にバレなくて済んだ……一方通行さんには後で何か奢りますからね~)

御坂妹(この方に免じて不本意ながらここは一時休戦とします。とミサカはいつものチャーミングな状態に戻ります)

643 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/29(木) 00:04:23.45 ID:1/xec6Q0 [2/16]

今の彼等には一つのルールがある。


それは、『喧嘩禁止』(無論建前だが……)



一方通行の訴えが少女達に届いた……のかは定かではないが、ひとまずは折角来たんだし、皆で仲良く行こう。という
事でまとまった。
御坂妹は「この次こそは二人きりですからね?」と一方通行に耳打ちして刀をしまい、佐天も元々初春を尾行していた
事がバレたくないがために吐いた嘘から始まっていたので特に異論は無かったが、御坂妹への悪印象は残ったままだ。
こうなるのなら、初春に本当の事を話した方が良かったんじゃないか。と佐天は思ったが、すでに後の祭りである―――。


さて、この辺りはイルカやシャチ、アシカなどのショーが行われる水族館の鉄則とも言える場所だが……人々にはショー
以外にも注目したい光景がそこにはあった。
両サイドに女二人をはべらせている男……。それが鍛え抜かれた黒人とかならまだ分からなくもないが、白人も真っ白の
痩せた少年なのだから、違和感で思わず凝視してしまう周りの人達の気持ちも分かる。
しかし忘れてはならないのが、彼がこの街で最強の男だということと、凶悪面に相応しいほどの『悪党』だということだ。
ギロリと周囲に眼光を放っただけで、人々は目を逸らした……。


そして、後ろの他人なのか仲間なのか良く分からない距離を保ったカップルも……ある意味目立ってはいた。
理由は言わずもがな……だ。




佐天「あ~くん。シャチのショー見に行こ?」

一方通行「………」

644 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/29(木) 00:08:57.46 ID:1/xec6Q0 [3/16]

御坂妹「何を言っているのでしょうか? まずはイルカから攻めるのが常識では? とミサカは異議を唱えます」

佐天「じゃあ妹さん一人で行ってくれば良いじゃないですか」

御坂妹「……あなたはこの方の意見を無視するのですか? うわ、ねーよコイツ……とミサカは鼻で笑います」フッ

佐天「ムッ………あ~くんはシャチから見たいですよね~?」クイ

御坂妹「いえいえ、イルカに決まってます。そうですよね? とミサカは対抗します」クイ クイ

一方通行(すげェどっちでもイイわ……)

佐天「ムムムムム……」バチバチ

御坂妹「ぐぬぬぬぬ……」バチバチ


一方通行「あァ……ンじゃあイルカで」


御坂妹「おっしゃあ! っとミサカはガッツポーズをとります」

佐天「な……なんでよ!? あ~くんっ!」

一方通行「……どっちにしろ、同じ事じゃねェか。シャチは後で見りゃイイだろ?」

佐天「で、でもぉ!」

御坂妹「見苦しいんですよ、この負け犬。とミサカは勝ち誇ります」

佐天「!! こ、この――」

645 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/29(木) 00:10:48.87 ID:1/xec6Q0 [4/16]

一方通行「やめろ。オマエも挑発すンな。こっから行くンならイルカの方が近いからソッチ選ンだだけだっつの」

佐天「…………」ギュッ

一方通行「い!?」




佐天にいきなり足を踏まれたため、思わず痛みで顔を歪める一方通行。




一方通行「オマ……ッ! ナニすン…」

佐天「知りませんっ!」(一方通行さんの馬鹿ッ! やっぱ奢ってやんないっ!)プンプン





垣根「………なんつーか……不憫だな…」

初春「佐天さん、いつになく闘志むき出しですね……」




何故か微妙に距離をとった位置にいる垣根と初春は、温かい視線を彼等に送り続けていた。
もはや半分冷やかしである。




初春「カッキーさんは二股ってどう思いますか?」

垣根「最低。男の風上にも置けねぇ。それ以外に言い様がねえな」

646 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/29(木) 00:12:59.56 ID:1/xec6Q0 [5/16]

初春「うわ……意外とまともな……」

垣根(アレ見りゃ誰でもそう思うだろうよ……)

初春「けど、私達……いいんですかねぇ…」

垣根「え? 何が?」

初春「いや……なんか尾けてるみたいになってません……?」

垣根「大丈夫だって。俺らは俺らで楽しくやろうや。たまたまアイツらと一緒の方向だったって事にしとこうぜ」

初春「……そうですね」

垣根「だいたい、かざりんはアイツらがどうなんのか気になんねえか?」

初春「そりゃあ勿論気になります」

垣根「んじゃあ何の問題もねぇ。アイツらの行く末をイルカショーと共に見物しようぜ」

初春「……はい」

垣根「いざとなったら他人のフリだ」

初春「はい」

垣根「そんじゃあ後でジンベエザメに餌をあげy」

初春「それはイヤですっ! あんまり調子に乗らないでくださいっ!」





―――そんなこんなで一方通行達ご一行(?)、まずはイルカショーへとやって来た。………この後もただでは済まなさそうな
予感がビンビンなのだが、一方通行はもう深く考えない事にした………。今日の彼はきっとグッスリ眠れるだろう。

652 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/29(木) 19:29:20.10 ID:1/xec6Q0 [8/16]
―――イルカショー開始直前



ザワザワ ガヤガヤ




ショー間近ということもあってか、程よい具合に人が集まってきて席に着いていく。
一方通行は両端に二人の少女を座らせ、自分はその真ん中に座った。中央よりやや後ろの席である。
プールでは、すでに無数のイルカ達が時折ジャンプを混ぜながら元気に泳ぎ回っていた。





一方通行「―――ずいぶンと人が集まってきやがったなァ……」

御坂妹「もうすぐ始まる時間ですから。とミサカは周囲の視線に物怖じせずに相づちを打ちます」

佐天「なんか……すげぇ見られてないウチら?」




大半が準備運動(ウォームアップ)中のイルカ達に注目している中、両手に花状態の一方通行への視線も周りの至る
ところから刺さってきた。




オイオイ フタマタカ? 

カノジョナノ? ホゴシャジャネ?



一方通行「………ほっとけよ。ショーが始まりゃ皆ソッチに注目すンだろォ」

653 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/29(木) 19:31:54.06 ID:1/xec6Q0 [9/16]

佐天「そ、そうですよね! さすがあ~くん♪」

一方通行(うぜェな……)

御坂妹(うぜぇ)


一方通行「……オマエさァ、イイ加減あ~くンって呼ぶのやめてくンない?」

佐天「………なんで?」

一方通行「イヤなンでって……俺にンな可愛いあだ名が似合うと思うか?」


御坂妹「思いません。とミサカは即答します。それより右天さんでしたっけ? もう少し離れては? 公共の場所で人目も
    気にせずにベタベタするのはどうかと思いますが」

佐天「佐天ですっ! ってか人の事言えないでしょ? 人の彼氏にあんまりくっくかないでくれます?」

御坂妹「は? そのようなつもりは全くありませんが?」ムギュ


一方通行(思いっきり胸当たってンですけどォ…)


佐天「ホント常識ないですね。御坂さんの妹とは思えません。少しは姉を見習ったらどうですか?」

御坂妹「あ?」

佐天「な……何よ。メンチなんか切って……チンピラじゃあるまいし…」

御坂妹「何を怯えているのですか? ミサカが恐いなら楯突かなければよろしいのでは? とミサカは助言します」

654 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/29(木) 19:33:51.74 ID:1/xec6Q0 [10/16]

佐天「……恐くなんかないですよ。そんなんでビビるとか思わないで下さい」ギュウウウ

一方通行「オイ、痛ェ。腕に力込めンな」

御坂妹「良い度胸ですね。では後でミサカとタイマン張りますか?」

佐天「何でも暴力で解決するのは良くないと思いま~す」

御坂妹「暴力ではありません。粛清です」

佐天「同じです! 屁理屈女!」

御坂妹「黙りなさい貧弱狐が」


一方通行「オイ、オマエら喧嘩は…」



「「引っ込んでてくださいっっ!!」」クワッ



一方通行(こ……怖ェ。この俺が動けないだと……? これが女の怖さってヤツかよ……)ガタガタ




―――怯んだ一方通行に目もくれず、二人の少女は周囲お構いなしで口論を続けた。

655 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/29(木) 19:36:45.28 ID:1/xec6Q0 [11/16]

佐天「この泥棒ネコ!」

御坂妹「ミサカはネコが好きなので褒め言葉として受け取っておきます」

佐天「魔性娘!」

御坂妹「無能少女に何を言われようとミサカに影響はありません」

佐天「む、無能って言った!?」

御坂妹「言いましたが、それが何か? ミサカはあなたのくだらない戯言とは違い、事実しか言っておりませんが?」


佐天「…………この貧乳っっ!!」


御坂妹「―――ッッッ!!!!!」ガーン


一方通行「あァ……?」

御坂妹「よくも……よくもミサカが一番気にしていることを………」プルプル

一方通行「へ?」

佐天「お♪ 手応え………ちょっとあり過ぎた?」




―――佐天涙子、まさかの逆転KO。

656 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/29(木) 19:39:10.27 ID:1/xec6Q0 [12/16]

垣根と初春はさらに後ろの席にいた。面白い様子が丸見えの場所キープに成功である。




垣根「おや?……ミサカ妹の様子が……」

初春「真っ赤になって震えてますね。なんか嫌な予感……」




会話まではさすがに聞こえなかったが、罵り合っているのはよく分かった……。



―――――




御坂妹「……ちょっとばかり成長が早いからといってイイ気にならないで下さい」

佐天「はぁ? 妬んでるんですか? 残念ですが負け犬の遠吠えにしか聞こえませんね~」

御坂妹「この……」

一方通行(コイツの体は超電磁砲ベースで出来てるって事をこの女が知らねェとは言え……超電磁砲も悪いダチ持ったよなァ
     遠まわしにボロクソ言われてンぞ……)

佐天「あれ? もう言う事は終わりですか? さ、そろそろショー始まっちゃいますから前見よう? あ~くん♪」

一方通行(引き際極めてやがる……この年でかよ……。っつーか、妹が怖くて凝視できねェンだが…)

御坂妹(この◆◆が……絶対に○○して×××してやる……)ゴゴゴ…

657 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/29(木) 19:40:49.69 ID:1/xec6Q0 [13/16]

―――そんなこんなでショースタート




係員の元気な挨拶と共にショーは開始された。
一方通行の思惑通り全員前を向いたため、もはや周囲の目も気にならない。




御坂妹(っと。ここは怒りを静めて見物モードへ移行しましょう。ミサカの念願がついに叶うのです! ……状況にかなりの
    不満はありますが……)チラッ

佐天「わぁ! すごい! ねぇあ~くん見て! 可愛くないですか~!?」ヤケクソ

一方通行(一気に三倍ウザくなった……)

御坂妹(ガキみてぇにハシャイでんじゃねーよ。とミサカは侮蔑………したいですが、どうしましょう? ミサカも、ハシャギ
    たい気持ちが高まってきました……)ウズウズ


一方通行(妹は妹で崩れかけた無表情必死に保とうとしてやがるしよォ……まァ良い。俺もイルカの素敵な姿をガン見して、
     この溜まったストレスを少しでも癒すとしましょうかァ…)




イルカ、ジャンプでボールにタッチ!




佐天「うわ~! すご~い♪」

御坂妹「わぁぁ……とミサカは感動的シーンを目に焼き付けます」

658 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/29(木) 19:42:56.25 ID:1/xec6Q0 [14/16]

一方通行(あァ……海の生き物ってのは、何でこォも癒されンだろォな……コイツら見てっといかに人間が汚れてンのかよく
     分かるわ……)

イルカ「キュイ♪ キュイ♪」ザブーン

一方通行(オイオイ、見ろよあのイキイキとしたツラァ……何の汚れも知らない顔ってのァまさにあンな顔なンだろォなァ……)

佐天「あ~くんホラ! 輪っか潜りますよ!?」

一方通行(…………馬鹿そォなツラしてンのに、知能が高ェときたもンだ。人間なら腹黒いってイメージしかつかねェのによォ……)

御坂妹「あ! 成功しました♪ とミサカは………どうしたのですか?」

一方通行(すげェ……すげェよイルカ………人間如きに飼われてンのが馬鹿馬鹿しくなっちまうぐれェになァ!)

御坂妹「もしもし? とミサカは硬直しているあなたの目の前で手を振ります」

佐天「……あ~くん? 何さっきからボーッとしてるんですか?」

一方通行「……よし、逃がそォ」

佐天・御坂妹「は?」

一方通行「は?」



――――



垣根「うおー! すげえジャンプ力だなオイ! あんな高いボールによく届くなぁ」

初春「すごいですね~! あ、コッチ見てます! 可愛い♪」

659 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/29(木) 19:43:44.77 ID:1/xec6Q0 [15/16]

垣根「ん……? 何やってんだアイツら?」

初春「彼氏さんがいきなり立ち上がったせいで後ろの人からヒンシュク買ってますよ……」

垣根「ショーの最中に立ち上がるとか……アイツどんだけ非常識なんだよ? 映画の上映中に立ち上がんのと同レベルだぞ…」

初春「あれ? 前の席に移動するんでしょうか? なんか下に降りてますけど……」

垣根「はぁ? 目の前で見てぇから前行くって……ガキかアイツぁ…」

初春「佐天さんと妹さん、和解したんでしょうか……? 力を合わせて止めてますね……。しかも息ピッタリに…」

垣根「さぁ、分かんねぇ……。あ、結局元の席に座らされてやんの。ダッセェ」

初春「彼氏さん力無さそうですもんね。ヒョロイし」

垣根(ホントたまに黒いよなこの子……)

初春「二人がかりとは言え女の子に取り押さえられるのは情けないです」

垣根(あ、まだ黒かった……)

垣根「一方通行達、なんか大人しくなったな」

初春「多分、ショーに熱中してるんじゃないですか? あっ! 輪っか潜り成功した♪」

垣根「おお! すげぇ! やるじゃねえかドルフィンよぉ!」





―――何か起こりかけた気がしなくもないが、取り敢えずショーは無事に終了した。

679 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/31(土) 20:34:55.83 ID:Tb71plg0 [2/22]
――――――


―――




私は……やっぱりコイツの事が好き。


一方通行は、それを知ってて私のわがままに付き合ってくれた。


最低……ホントに最低じゃない。………私。


結局、妹の言う通りなんだ………。


私は……子供―――。



(コイツは、何も知らない……。私の想いにも、当然気づいてないのよね……)


(もし伝えたら、どんな反応するんだろう……)


(もう、嫌だ……。これ以上私の勝手に他の人を付き合わせるなんて……)


(でも……それも全部私のせい。コイツに……当麻に『好き』って言えなかった私のせい……)



全部私の自業自得……。

680 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/31(土) 20:37:34.05 ID:Tb71plg0 [3/22]

―――デートにすら上手く誘えない。思っている事と常に裏の態度をとってしまう。
いつまで経っても自分を相手にアピールする事も出来ない。これを『お子様』ではなく、一体何と呼べば良いのでしょうか?――――



(わかってる……)



―――本当は、自分が素直になれないのをあの少年(上条)のせいにして、一方通行に逃げようとしていただけではないのですか?―――



(わかってるわよ……)



―――お姉様は現実から逃げたかっただけ………けど側には一方通行しかいなかったから……
結局は彼を都合よく利用しただけに過ぎないのです―――



(全部……アンタの言う通りよ)



―――何を思ったのかは知りませんが、彼(一方通行)を巻き込むのはやめて貰えないでしょうか?―――



(そう………私の勝手に一方通行は巻き込まれただけ……)




――――――少なくとも、今のようにフラフラしたお姉様相手では絶対にあの方は振り向いてくれませんね――――――




(………………そうよ……)

681 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/31(土) 20:41:47.28 ID:Tb71plg0 [4/22]

(たとえ受け入れてくれなかったとしても………もう、フラフラしてちゃ駄目なんだ)


(自分の気持ちは、もう分かってるんだから……)


(このままじゃ、私のわがままに振り回された一方通行にも失礼よ)





決着………つけなきゃ―――――。




~~~~~~





「―――御坂? 急に立ち止まったりして、どうしたんだ………?」


美琴「……………」




―――上条当麻、御坂美琴が歩いていたのは上階フロアの人工樹が並んだ屋外……。周りの空はオレンジ色に広がっていた。
つまり、もう夕方である。


美琴が無意識に立ち止まった辺りは、偶然か必然か………カップル達の憩いの場と化していた。

682 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/31(土) 20:43:32.60 ID:Tb71plg0 [5/22]

上条「……御坂…?」




突然俯いて立ち止まった美琴を見て「?」を浮かべる上条。

だが、間もなく少女は顔を上げる――。

――何やら意を決した表情で。




美琴「あ……あのね」


上条「ん?」


美琴「私……アンタに………伝えたいことがあるの」


上条「?…………!!」




美琴の表情で、上条は何かを悟った……。この展開は、まさか―――



――――やめろ………まだ………まだ待ってくれ!

683 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/31(土) 20:46:06.05 ID:Tb71plg0 [6/22]

そう口に出そうとしたのだが………唇が動かなかった。




美琴「わ、私………私は……ッッ!」




美琴は、上条の何か言いたそうな顔に気づいたが………コチラももう引けなかった。
目をギュッと瞑り、聞き違える事は決してありえない声で――――





「――――私は、アンタが好きっっ!!!!!」





吐き出した――――。



ずっと抱いていた想いを………たった一言に詰めて―――。



―――瞬間、その空間だけ………二人のいる空間だけ、時が止まったように感じた。




――――――



―――

684 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/31(土) 20:47:59.19 ID:Tb71plg0 [7/22]

同時刻、同所付近―――




麦野「――おーいシスターちゃ~ん? あなたのツレってのは何処にいるのかにゃ~ん?」

絹旗「さすがに超歩きつかれました~」

禁書「とうまたち……どこに行っちゃったのかな…」

打ち止め「むむっ! アッチにお姉さまの反応が近い気がする! ってミサカはミサカは電波を感じとってみたり!」

麦野「あんた、センサー働くの? だったらそれ最初っからやってれば良かったじゃない……」

打ち止め「う~ん……実はさっきようやく感じとれるようになったんだよ。ってミサカはミサカは答えてみる」

絹旗「さっきの雷のせいじゃないですか?」

麦野「あ~、なるほどね…」

フレンダ「ねぇねぇ。結局、浜面はあのままで良かった訳?」

麦野「んぁ? 心配ないでしょ。滝壺も一緒なんだし」

禁書「……しあげ、生きてるの?」

麦野「あぁ、あの馬鹿なら大丈夫。アレくらいじゃ死なないわよ」

絹旗「そうですよ。なんせゴキブリみたいに超しぶといですからね」

フレンダ「レベルは0なのに、悪運だけは強いしね」

685 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/31(土) 20:49:56.94 ID:Tb71plg0 [8/22]

禁書(どうやったらあそこまで無残な姿になるのか訊きたいけど訊けないんだよ……)

打ち止め「あ、外に出たよ! 夕やけキレイ~♪ ってミサカはミサカは久方ぶりに外の空気でハシャイでみたり」

麦野「うわ……ってか何よここ……カップルの巣じゃないの…」

絹旗「浜面や滝壺さんと別れて超正解でしたね……」

フレンダ「うん。絶対アイツらイチャつくわ……仕方ない。麦野、ここは私らも―――へブシ!?」ボグッ

麦野「フン。何が『仕方ない』よ……」

打ち止め「あ! いた~! ってミサカはミサカは指さしてみる~!」




打ち止めが指さした方向に上条と美琴の姿が見えた。結構距離があるせいか、アッチは気づいていないらしい……。




禁書「ホントだー! とうまもいる~♪」


麦野「んじゃ、私らの役目はここで終わりね……行こ。絹旗、フレンダ」

絹旗「超御意です!」

フレンダ「ささ、とっととズラかるって訳よ」

686 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/31(土) 20:54:00.43 ID:Tb71plg0 [9/22]

打ち止め「ありがとう、お姉ちゃん達! ってミサカはミサカはお礼の言葉を述べてみる」

禁書「ごちそーしてくれてありがとう! あなた達の幸福を祈ってるよ。しあげやりこうにもよろしくね!」


麦野「はは、最後にシスターらしいとこ見せちゃって……とっとと行きなさい。もう迷子になんじゃないよ」

絹旗「バイバ~イ!」

フレンダ「じゃあね~!」




禁書目録と打ち止めは、麦野達に手を振ってお別れを告げると、真っ直ぐに上条と美琴の元へと走っていった。




麦野「……ふぅ、行ったか」

絹旗「じゃ、浜面と滝壺の様子でも超見物しに行きますか?」

麦野「いや、悪いけど私はもう帰るわ。アイツらのイチャつきぶりは精神上良くないし」

フレンダ「あ、私も~。ってことで一緒に帰ろ? 麦野」

麦野「ひっつくなっての…」

絹旗「わ、私も超帰ります~!」




麦野沈利、フレンダ、そして絹旗最愛は二人の元気な少女達を見送った後、仲良く家路へと着いたのだった……。
結局レストランでの話を聞きそびれた事を帰宅中指摘する少女達に麦野は―――



麦野「またの機会にね」



―――とだけ言った。

687 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/31(土) 20:55:30.68 ID:Tb71plg0 [10/22]

――――――


―――




滝壺「はまづら……起きて? そろそろ帰ろ?」ツンツン

浜面「」

滝壺「もう帰らないと……時間遅くなるよ?」

浜面「」

滝壺「終点だよ? はまづら」

浜面「」

滝壺「はーまづらぁ」ユサユサ

浜面「」

滝壺「返事がない。ただのしかばねのようだ……」

浜面「」

688 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/31(土) 20:58:14.03 ID:Tb71plg0 [11/22]

――――――


―――




禁書「とぉーうーまぁーーー!!」ガキン

上条「へ?……う、おわっ!!」サッ




突然飛び掛かってきた禁書目録の『噛みつき』を辛うじて避ける上条。
禁書目録の鋭い歯が空を噛んだ。




打ち止め「お姉さまー! お久しぶり! ってミサカはミサカは再会を喜んでみちゃったり」

美琴「ア、アンタら……今まで何処行ってたのよ?」

打ち止め「お姉ちゃん達に遊んでもらってたの♪」

美琴「お姉さん達…?」


上条「インデックス! テメェいきなり何すんだ!?」

禁書「うるさいうるさい!! 人を放ったらかしにするなんてヒドイんだよとうま!! ずーっとさがしてたんだから!!」

689 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/31(土) 21:03:55.86 ID:Tb71plg0 [12/22]

上条「………悪かったよ。けど、無事で良かった。一体何処行ってたんだ?」

禁書「親切なお姉さん達にごちそうしてもらってたんだよ♪」

上条「……へ?」

禁書「おかげでおなかいっぱい♪ あ、けどまたおなか空いてきたかも……」

上条「…………で、その方々は?」

禁書「さっきまで一緒にさがしてくれてたんだよ。けど、もう行っちゃったみたいだね…」

上条「……そうか。……ちゃんとお礼言ったか?」

禁書「もちろん!」

上条「………」




誰だか知らないけどありがとう! そして本当にゴメンなさい! と、上条は誰もいなくなった方を向いて手を合わせた。
この少女から『おなかいっぱい』という言葉を吐かせるほどの出費を負った『親切なお姉さん達』に上条は心から敬意を
示したのだった……。




禁書「とうまとうま、もう外が暗くなってきたよ?」

上条「ん、あぁ……そうだな。んじゃあそろそろ帰りますか…良いよな美琴?」

美琴「そ、そうね……///」ジーッ

690 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/31(土) 21:06:16.44 ID:Tb71plg0 [13/22]

打ち止め「……お姉さま? 何かあったの?」

禁書「なんか……様子が変かも」

美琴「う、ううん、何も! じゃ、そういう訳だから帰りましょっか!」

禁書・打ち止め「???」




少女と幼女でも分かる程に挙動不審な美琴と、たまに美琴の方をチラチラと意識している上条……。

家路の途中、打ち止めは美琴が送って行くとのことになったので、二人と別れた。しかし、意外にもあっさりと別れた事が禁書目録
的には引っかかる。




禁書(オカシイかも……いつものとうまなら……『送って行くよ』って絶対に言うハズなのに……)




これは美琴との間に何かあったな。という結論に至るまで数分とかからなかった。




禁書(帰ってご飯食べたらたっぷり『ジンモン』しなきゃ!)




返答次第で食後のデザート確定ルートが上条を待ち受けていた……。




――――――


―――

691 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/31(土) 21:09:33.06 ID:Tb71plg0 [14/22]

垣根「んじゃ、俺らはこの辺で別れっから。じゃあな」

初春「えっと……さようなら。ではまた…」




イルカショー後、シャチやアシカのショーも見物してひと段落中にその言葉を残し、垣根帝督と初春飾利は去っていく……。
時計を見ると、もう夕日が見えてもおかしくない時間だった。




一方通行「ン……じゃあな」

佐天「じゃあね~初春。仲良くやんなよ」

御坂妹「さよなら~。とミサカは手を振ります」




垣根と初春に別れの言葉を送った後……





佐天「ふぅ………もう良っかな……」

御坂妹「……?」




突然そう言って一方通行から離れた佐天涙子に御坂妹は怪訝な顔を向ける。

692 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/31(土) 21:12:03.28 ID:Tb71plg0 [15/22]

佐天「―――ゴメンなさいっっ!!」




今度はいきなり頭を深く下げて謝罪する佐天……御坂妹はそれに対してキョトン、とするしかない。




御坂妹「???………」

佐天「実は………―――――」




こうして、やっと誤解は解けたのだった……。


佐天は全てを自供した。親友が心配でここまで尾けて来た事も、一方通行を『彼氏』として仕立て上げた事とその理由も……。




一方通行「―――……やれやれ」

佐天「ホントにすみませんでした!」ペコペコ




初春がいなくなって、もう演技の必要もなくなった佐天はとにかく二人(主に一方通行)に頭を下げる。
もっとも、途中からは違った意味で演技ではなかったのだが……それを今言う必要はない。と佐天は謝りながら判断した。

693 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/31(土) 21:15:19.83 ID:Tb71plg0 [16/22]

御坂妹「事情は把握しました。つまり、あなたは一方通行と正式な恋仲ではない…という事でよろしいのですね? とミサカは
    確認を取ります」

佐天「………はい」

御坂妹「では、ミサカに異様なまでの挑発を仕掛けたのもやむを得なかった……という事ですね。とミサカは再度確認します」

佐天「はい。そうです……」(挑発したのはソッチな気がするけど……まぁ良っか)

御坂妹「……それならミサカとあなたが争う理由はもうどこにもありません。あなたさえよろしければ、和解していただけない
    でしょうか? とミサカは仲直りの握手を求めてみます」スッ

佐天「あ……はい」ギュッ




御坂妹から差し出された手に戸惑いつつも……しっかりと握手を返した佐天。しばらく手を握り合った二人の少女は、やがて
微笑みを交わしてゆっくりと手を離した。




一方通行(『雨降って字固まる』ってヤツか………イヤ、コイツらの場合『雷』かァ…)




元凶のくせに何故か蚊帳の外的な立ち位置で二人の和解を見守った一方通行は、そんな暢気な事を考えていた。




佐天「―――じゃ、私はもう行きますね。お邪魔しちゃってホントにすいませんでした」

御坂妹「いえ。ミサカの方こそ、失礼な事を言って申し訳ありませんでした」

694 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/31(土) 21:18:31.73 ID:Tb71plg0 [17/22]

佐天「ははっ、お互い様ですよ。よかったら今度……一緒にご飯でも食べにいきません?」

御坂妹「はい。喜んで」

佐天「じゃ、携帯交換しよ♪」


一方通行(さっきまで『犬猿』状態だったってのに……やっぱ女ってのァよく分っかンねェわ…)




先ほどの醜さが嘘のように笑いながら携帯交換している二人を見て、一方通行はそう思ったそうな……。





佐天「それじゃ、ミサカさん。後でメールするね!」

御坂妹「はい、お待ちしています。佐天さんはもう帰るのですか?」

佐天「はい。もう充分楽しんだから、……疲れちゃいました」

一方通行「だろォな……。ま、気ィつけて帰れよ」

佐天「はい♪ 一方通行さんも、ありがとうございました」

一方通行「ケッ、礼言われるよォな事した覚えはねェけどなァ……」

御坂妹「あ、気にしないで下さいね。この方は照れてるだけですから。とミサカは説明します」

695 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/31(土) 21:23:53.97 ID:Tb71plg0 [18/22]
一方通行「照れてねェっつの」

佐天「ははは、分かってますよぉ。じゃ、またね? あ~くん」

一方通行「オマエその呼び方イイ加減やめろ! 次呼ンだらマジで殺すぞ!」

佐天「お~コワ……じゃ、さよなら~♪」




―――手を振って可愛い笑顔を見せた後、佐天は二人に背を向けてその場から去っていった。




御坂妹「………また友達が増えました。とミサカは悦に浸ります」

一方通行「あァ……まァ、良かったじゃねェか」

御坂妹「はい♪ とミサカはとびきりの可愛い笑顔をあなたに向けます♪」

一方通行「は、テメェで言ってりゃ世話ねェよ…」

御坂妹「さぁ、それではデートの続き……と行きたいところですが、もう時間も遅いですし……今日のところは帰りませんか? 
    とミサカは提案します」

一方通行「……良いのか?」

御坂妹「はい、何も今日で最後という訳ではありませんし、ミサカも少し疲れました。とミサカは疲労感を漂わせます」

696 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/31(土) 21:28:08.75 ID:Tb71plg0 [19/22]

御坂妹「と言うことで、行きましょうか。あ、『約束』はまだ有効ですからね? とミサカは釘を刺しておきます」

一方通行「あァ? 服欲しいンなら帰りにでも……」

御坂妹「いえ、また今度が良いです。とミサカは希望します」

一方通行「………?」

御坂妹(あなたと会う『口実』ができないじゃないですか。馬鹿……とミサカは意外と鈍感なあなたを非難します)

一方通行「ンまァ……良いかそンでもよォ。じゃあ俺も疲れたし、今日は帰るとすっかァ」

御坂妹「はい」

一方通行(コイツ、俺のバッテリー残量に気ィ遣ってくれたってのかよ……チッ、何かくすぐってェな……)






―――――そして……二人はゆっくりと歩き出す。


夕日に照らされた二人の影は、寄り添うように……繋がっていた―――。




――――――


―――

697 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/31(土) 21:29:56.65 ID:Tb71plg0 [20/22]

―――黄泉川家(19:30)





一方通行「………」ガチャ


黄泉川「おぉ、おかえり~。遅かったじゃんか?」

芳川「おかえり。あらあら、えらく疲れてるわね……」

一方通行「おォ……」





同居人に適当な挨拶を返し、自室へ行こうとする一方通行。まずはバッテリー切れ寸前の電極を充電させねば。………しかし、それを
小さい影が阻んだ。お風呂場から飛び出してきた『それ』は濡れた髪をキラキラと輝かせて一方通行に向け、まっしぐらに飛び込んで
来た。





打ち止め「あ! やっと帰ってきた~! おかえり~! ってミサカはミサカは弱ったアナタならイケル♪とばかりに飛びついて
     みたりぃ!」バッ

一方通行「おっと」ヒラリ

打ち止め「……ム~、なんで避けるかなぁ~? この照れ屋さんはぁ……ってミサカはミサカはプンプンしてみるんだけどそんな
     アナタも可愛いって大人の対応にチャレンジしてみたり」

698 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/31(土) 21:36:57.79 ID:Tb71plg0 [21/22]

キーキーとうるさい打ち止めに構ってる暇はないが、それでも確認しなければならない事が一方通行にはあった。





一方通行「オイ、打ち止めァ」

打ち止め「ん? なに?」

一方通行「今日は、どォだった?」

打ち止め「え? ってミサカはミサカは首を傾げてみる」

一方通行「今日は楽しかったのか? って訊いてンだ」

打ち止め「うん! とっても楽しかったよ~♪ ってミサカはミサカは満足気な顔で一日を振り返ってみる」

一方通行「………そォか」

打ち止め「……でもそれがどうしたの? ってミサカはミサカは生まれた疑問の解明を求めてみたり」

一方通行「イヤ、何でもねェよ」

打ち止め「変なアナタ」

一方通行「うるせェ。それよりちゃンとドライヤーで髪乾かしとけよ。風邪引くだろォが」

打ち止め「はーい、でもその前に牛乳~♪ ってミサカはミサカはリビングへダーッシュ!」トテテテ

一方通行「………」フッ




打ち止めに見えないように口角を上げる一方通行。とりあえず、明日の予定はこの時点で決まってしまった……。
と言っても、打ち止めが楽しい思い出を一つでも増やせたのなら一方通行にとっては安いものである。上条への連絡は充電の後に
すると決めた一方通行は、ガチャリと自室のドアを開けた―――。

708 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/01(日) 19:25:39.86 ID:iA2vDl.0 [2/26]
一方通行「…………」




自室の部屋に入って最初にする事と言えば、まず明かりを点ける事である。
一方通行も当然真っ暗だった部屋のドアを開けた後、ドア付近にあるスイッチを押して明かりを点けた。
そして蛍光灯が輝いた時、一方通行は言葉を失った……。いや、驚きを通り越して逆に反応ができなかった。

まだ帰っていないとばかり思っていたルームメイト(垣根帝督)が、足を肩幅ほど開いた三角座りで部屋の隅っこに居たからだ。
目はどこか虚ろで、憔悴しきった顔だった……。その顔は『全てが終わった』と無言で語っているように見えた。




垣根「…………」




一方通行が帰って来ても垣根は全く反応しなかった。
垣根がいつ戻って来たのかは知らないが、一方通行が帰って来るまでの間ずっと真っ暗な部屋に一人で居たという事は……。




一方通行(………あァ……やっぱ、ダメだったか……)




事情を知っている一方通行は、それだけでおおよその見当を付けた。そして、敢えて何も訊くまい…と決めて、部屋に入った。

充電器を装着し、ついでに携帯電話の充電もしておく…と、その時…隅っこに居る垣根が生気の無い声で話しかけてきた。

710 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/01(日) 19:28:04.87 ID:iA2vDl.0 [3/26]

垣根「よぉ……帰ってたのか」

一方通行「…遅ェよ」




ベッドに座ったまま電極の充電完了を待つ一方通行はそれだけ答えるが、どうやら垣根の方が喋りたいらしい……。




垣根「―――どぉだった? あの後……」

一方通行「別に何もねェよ。フツーにそのまましばらく居て、妹を送って帰ってきただけだっつの……」

垣根「そぉか………妹と上手くいってんだな。……良かったじゃねえか」

一方通行「『上手く』ねェ……そォいうつもりじゃねェンだがなァ…」

垣根「で、付き合うの?」

一方通行「は? 何でそォなンだよ?」

垣根「だってよ………あのサテンってコはともかく………妹はお前にゾッコンな目してやがったぜ。気づいてんだろ?」

一方通行「ずいぶンと古い言い回しだなァオイ………っつーか、気づいてるも何もよォ……」

垣根「……何? あ、もしかしてもう告られた……?」

一方通行「……………」

711 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/01(日) 19:30:38.68 ID:iA2vDl.0 [4/26]





―――――ミサカは………一方通行を恋愛対象として意識しています―――――




一方通行(ありゃあ……俺の聞き違いとかじゃねェよなァやっぱ……)




御坂妹は少なくとも自分に好意を持っている………。だが何故?
打ち止めの時と全く同じ……いや、それ以上に不可解だった。もはや理解が出来なかった。
何故自分なのか……本当なら、妹に…いや、『妹達』にとって自分はその対象からは一番遠い位置に居る筈だ。そうでなければオカシイ。
恨みや憎しみの対象なら分かるが、よりによって自分に対して『好意』を抱くとはどういう事なのか……。
まだその答えを理解するには時間がかかりそうだ。





一方通行(ありえねェ。ホントありえねェわ……。好意なンて向けられて良いよォな人間じゃねェだろ俺は………)



垣根「………オイ、どぉした?」

一方通行「!……イヤ…何でもねェ」

垣根「んで、妹とはどぉすんの…?」

一方通行「…さァな……分かンねェよ……今は」

712 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/01(日) 19:36:40.77 ID:iA2vDl.0 [5/26]

垣根「だよな……んな簡単に決めらんねえよなぁ………」




実験の事、一方通行と妹の立場を一応把握している垣根はそれ以上追及してこなかった。




一方通行「……っつーかよォ…オマエ、もォ風呂入ったのか? 俺は後で良いから、入ンならさっさと入ってこいよ」

垣根「……あぁ」




スクッと重そうな身体で立ち上がった垣根は、寝巻きとタオルを持って部屋を出ていった……。




――――――


―――



―――常盤台女子寮




美琴「……………」




ベッドにうつ伏せで横になり、枕に顎を埋めてボーッ………帰って来てからずっとこの調子である。
部屋に着いた途端気が抜けてしまったのか……。多分、今は彼女の中で時が進んでいないのだろう。

713 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/01(日) 19:39:34.62 ID:iA2vDl.0 [6/26]

そんな美琴の様子を見て、ルームメイトの白井黒子が放っておける筈もなかった。




黒子「………お姉様。帰ってから…いったいどうなさったんですの?」

美琴「あ……黒子、帰ってたの…」

黒子「先ほどからおりますわ。……それで、どうなされたんですの? 電気も点けないで……」

美琴「……………」




黒子が風紀委員の仕事を終えて帰宅したのはつい先ほどだが、まず彼女は部屋の明かりが消えていた事から美琴の不在を予測して
いた。ところが点けた途端、愛しのお姉様はそこに居たのだから驚きだ。思わず叫びそうにすらなった程だ。
だが、そこは美琴崇拝者代表の白井黒子、美琴の様子を常人離れした洞察力で逸早く察し、すぐに声をかけずにいた。……が、所詮
それが長く続かないのはもはや誰かが指摘するまでも無い事だった。




黒子「お姉様……わたくしで良ければ相談に乗りますわよ?」

美琴「………聞いて…くれるの?」

黒子「――!?」




意外な美琴の反応に再度驚かされる黒子。てっきり「ゴメン……少しそっとしといて。心配しなくて良いから」とか言われると思って
いたのだが……。しかし、よく見ると美琴の顔からは悲しそうな気配が感じられない。どちらかと言えば、大量の問題集を何ヶ月間も
かけてようやく終わらせた直後のような……達成感と疲労感が混ざった顔をしていた。それプラス若干の不安も感じられるが、悲しみ
で絶望している風には見えなかった。

714 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/01(日) 19:42:19.35 ID:iA2vDl.0 [7/26]

黒子(これは……少なくとも、悪い話では無さそうですわね)




憧れのお姉様に何か悪い事が起きた訳では無い、そう確信した黒子は内心で胸を撫で下ろした。




美琴「実はさ―――」

黒子「はい」


美琴「私、アイツに告白したんだ」


黒子「」




即座に黒子は前言を撤回した。


確かに美琴にとって悪い話では無かったのかもしれないが、『自分』にとってはこの上ないほど最悪な話だった。




美琴「黒子……?」

黒子「へ……あ……今、なんと…?」

美琴「だから……私ね? とうとうアイツに言ったの。『好き』って……///」

黒子「………」




何度聞いても、現実は変わらなかった。

715 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/01(日) 19:48:01.12 ID:iA2vDl.0 [8/26]

黒子「お…お姉様……是非続きを伺っても……」ピクピク

美琴「う…うん」(何震えてんだろ?)



―――そして、数分後




黒子「あんの猿野郎がァァァァああああああああああッッッ!!!!!」

美琴「――ひゃっ!?」ビリッ




全てを聞き終えた黒子がまず最初に発したのがこの叫び声だった……。彼女に残ったのは上条への憎しみだけだったのだが、
その感情すらも美琴が防衛本能で思わず放った電撃で意識の底へと消え去ってしまった。




黒子「bbbbbbbbbbbbbb!!!………フシュ~…」バタッ




つまり、黒子は美琴が絶叫に驚いて咄嗟に放った電撃をもろに浴びて失神した。……ただそれだけの事である。




―――バタン!




寮監「白井ぃ……性懲りも無くまた大声を上げるとは……。御坂もぉ…寮内で能力は使用禁止だと何度言ったら……」プルプル


美琴「」

黒子「」

716 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/01(日) 19:51:02.39 ID:iA2vDl.0 [9/26]

寮監「フンッ!」ドスッ

黒子「―――あぎゅぼ∽Ω◆☆Δ~~~!!??」

美琴「ひぃっ……」




黒子へのトドメは額に青筋をたてた寮監のハイヒールが刺してくれた。
結局、翌日の日程は寮内の罰掃除で埋まってしまったのだった………。




――――――


―――



―――上条宅




上条「あの……インデックス…………………さん?」

禁書「………」ジー

上条「………何で上条さんはぁ―――」

717 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/01(日) 19:53:33.85 ID:iA2vDl.0 [10/26]

「―――縛られてるんでせうか!?」




―――う~ん……アレだ。上条さん的に今の現状を説明するとだな……。

御坂や打ち止めと別れた後、スーパーに寄って、帰って、メシ作って、インデックスの胃袋指数を何割か満たして俺もメシ食って………。
いや、そこまではいつも通りだったんだよ。
んで、メシ片付けたらインデックスが「話があるんだよ」とか言ってきたのが始まりだったんだ……――――。




禁書「とうまー、ちょっとそこに座るんだよ」

上条「んー? 何だよ、どうした? 俺今洗い物で忙s」

禁書「そんなの後でいいから早く!」

上条「そんなのって……ったく。ハイハイわかったよわかりましたよ」



仕方なく、俺は洗い物途中でリビング戻って何故か座布団にチョコン、と座っているインデックスの正面に座ったんだ……。



禁書「とうま。私の目をじっと見て!」



何だかインデックスの雰囲気が怖いので目を逸らしたら一喝されてしまった……。



上条「な、何だよ話って……?」

718 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/01(日) 19:57:35.50 ID:iA2vDl.0 [11/26]

禁書「………とうま……正直に答えて」



と思ったら、今度はどこかしおらしい感じになって俺にこう訊いてきたんだ。



禁書「私達と離れてる間に、短髪と何があったの?」

上条「!………」



こぉいうのを蛇に睨まれた蛙…って言うのかな。インデックスの全てを見透かそうとする目に俺は動けなかった……。



禁書「とうま!」

上条「(ビクッ)な…何だよ……?」

禁書「訊いてるのは私の方なんだよ?」

上条「いや……な…何もないって――」


禁書「―――嘘だっ!!」


上条「!!?」




インデックスに………何かこう、別のキャラが乗り移ったかのような……なんとなくそんな感じがした。

719 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/01(日) 19:59:45.85 ID:iA2vDl.0 [12/26]

禁書「とうま……短髪と最近妙に仲良いよね? 遊園地の時もそうだったけど……何でかな?」

上条「イ、インデックス? お前……何言ってんだよ? 御坂は友達っていうか戦友っていうか……」

禁書「どうして嘘吐くのかなぁ……?」



ホッ……もう一回「かな?」って続いてたらどうしようかと……って今はそんな場合じゃねえよな!
とにかく、今インデックスに話すのは何かマズイ気がしたんだ……。だから俺は―――



上条「嘘なんか………」



その場はひとまず誤魔化そうとした……けど―――



禁書「とうま……『また』、私に嘘吐くの?」

上条「―――!!!」



って、そうだよ……。ったく何やってんだろうな、俺は……。

ついこないだもそうやって誤魔化そうとして………そのあと後悔したばっかじゃねーか…。

また俺は、取り返しのつかない事をしそうになっていたんだ……。こんなんじゃいけねえよな……。



………よし決めた。やっぱり、正直に話そう。

720 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/01(日) 20:03:11.80 ID:iA2vDl.0 [13/26]

分かってもらえなくても良い。憎まれても……仕方ねぇ。そう思って俺は口を開いた。………が―――



上条「インデ―――ッ!?」




―――そこで俺の意識は途絶えたんだ。

最後に見えたのは……インデックスの見慣れた口内と白い歯だったっけ……。ハハ、どうやら出遅れちまったらしい。

覚悟を決めて正直に話そうと思った矢先に入れ違いなんて………ホント不幸だよな。


んで、その後目を覚ました俺が自分の現状に気づいて今に至ると……。

まぁそういう訳で、上条さんからは以上! あー…この後不幸な予感しかしねえ……。




――――――


―――




上条「インデックス、テメェ……。今すぐこの縄解け! っつーかお前、縛んの下手すぎ! 身体の各パーツの機動部分に
   食い込んでてすげぇ痛いんですけど!?」




一見亀甲縛りだが……よく見ると全然違う。模様が滅茶苦茶だ。おそらく、途中で適当に巻いたんだろう……。
というか、どういう縛り方をしたらこうなるのかが理解不能だった。

721 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/01(日) 20:06:21.22 ID:iA2vDl.0 [14/26]

禁書「とうまがさっさと喋らないから悪いんだよ! 言っておくけど、ホントの事言うまでずっとそのままなんだからね!」

上条「ハァァ……」




盛大に溜息を吐く上条。これは早く喋ってしまった方が良さそうだ……。しかし、喋った後で禁書目録が許してくれるのか……。




上条(だいたい、俺をこのままにしたらお前のメシはどーすんだよ? ……やれやれ、やっぱりインデックスはインデックスだな……)

禁書「む……そこはかとなく馬鹿にした目が気に入らないかも…」

上条「……してねーよ。とにかく、これ解いてくれ。何があったのか言うからさ……」

禁書「………話が終わったら解いてあげる」

上条「……わかった」




身体を動かそうとすると痛いが、喋るだけなら問題ない。
上条は再び覚悟を決めて、禁書目録や打ち止めと離れていた間の事を話した。………と言っても、姉妹喧嘩の事は言う必要も無いので省いたが。





~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~





美琴「――――私は、アンタが好きっっ!!!!!」

上条「……………」

722 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/01(日) 20:10:16.18 ID:iA2vDl.0 [15/26]

いつからだろう……。


いつからこの少女は……こんな不幸な自分を好きになってくれたのだろう……。


誤魔化したり、茶化したり……そんなモノは一切許されない少女の言葉……。


驚きは、思っていた程ではなかった。


気づいて……いたから……。


いや、本当はもっと前から……無意識に気づいていたのかもしれない。


そして、今は……まだ聞きたくなかった。


意識して気づいたのが遅かったから……。


突然だったから……。


友と少女との狭間で……気持ちが揺れているから……。


いや、それ以前にこの少女への自分の気持ちが―――




――――まだ、分からないから―――――。

723 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/01(日) 20:13:52.54 ID:iA2vDl.0 [16/26]

美琴「…………/////」




彼女が相当勇気を出したのは見れば分かる……。耳まで真っ赤にし、目は固く瞑られたまま……自分の答えを今や遅しと待っている……。




上条「………ッ……ッッ…」




言葉が―――上手く出てこない……。


待たせてはいけない……。早く何か答えなければ……その気持ちがかえって邪魔になっている。


初めての『告白』に……不幸少年は答えを必死に模索した。




上条「み……美琴…」


美琴「ッ!?///」




名前を呼ばれただけで、少女はビクッと震えてしまう……。上条はその様子を可愛らしく思った。



可愛らしい―――?

724 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/01(日) 20:16:15.16 ID:iA2vDl.0 [17/26]
(――――そうか……)



そこでようやく……分かったのだ。



(そうか……俺も……俺も美琴が……)




強がっていても……学園都市の上位に立つ超能力者でも……中身はこんなに普通の女の子。


それでいて……強い心を持った、優しい女の子……。


すぐ怒って電撃飛ばしてくるし、自分に無茶するなって言っておきながら自分ひとりで背負い込むし……


けど、それでも……こんな不幸な自分と……笑いあってくれる。いつも素でぶつかり合える。


そして何より―――。




―――美琴と一緒にいると、心が安らぐ……。





(馬鹿野郎………俺ってヤツは、何にも気づいて無かったんじゃねえか………)


(俺は――――)

725 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/01(日) 20:18:20.68 ID:iA2vDl.0 [18/26]

(――――美琴の事が……こんなにも好きなんじゃねえか!!)




(なんで……今まで気づかなかったんだよ………)


(なんで……今このタイミングで気づくんだよ……)


(神ってのがいるんだとしたら……今ほど呪いたいと思った事はねえよ!)


(俺は……どうすりゃ良いんだよ……)




………長い葛藤の末、上条は―――




上条「ありがとう、美琴。……すげぇ嬉しいよ。……………けど……」

美琴「………ッ」




『けど』の言葉で美琴の表情が曇っていくのが分かったが、上条は続けた。

726 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/01(日) 20:20:55.96 ID:iA2vDl.0 [19/26]

上条「返事は、もう少しだけ……待ってくれないか?」

美琴「え……?」

上条「いい加減な答えを出したくないんだ。…………少し、時間が欲しい。必ず返事はする―――」




美琴の開かれた目を、上条は真剣に見つめた…………。




上条「―――だから、少し……ほんの少しだけ待っててくれ!」


美琴「…………」コクリ




沈黙の後………美琴は、ゆっくりと頷いた。


これで、想いを伝える事が出来た。


まだ答えはもらっていないが……自分に出来ることはやったのだ。


今まで出来なかった事を……ついにやり遂げたのだ。



美琴は……笑った。

727 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/01(日) 20:23:24.41 ID:iA2vDl.0 [20/26]

この少年なら……きっと真剣に考えて答えを出してくれるだろう。


たとえ結果、成就しなかったとしても―――――


―――――少女に、悔いはない。





美琴「……わかった! 待ってるから……」

上条「ありがとう……本当にゴメンな」

美琴「謝んないでよ。あ、もしダメだった場合でも、謝んないでいいからね?」

上条「あぁ……」

美琴「……あと、そんな顔もしないで。アンタはいつも通り笑ってなさいよ」

上条「あ、あぁ。……ハハハ」

美琴「フフフ…」




美琴の笑顔に連動されたのか、上条の顔にも笑顔が戻る……。今の美琴にしてやれる事はこれくらいしかないのかもしれないが、
近い内に必ず答えは出す。上条は美琴と笑いあいながら改めてそう決心した。





禁書目録の歯が上条に襲い掛かったのは、その僅か三分後の事だった―――。

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