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一方通行「友達って最高だよなァ」上条「まぁな」
前スレ
一方通行「友達になってやンよ」上条「ハイ?」
一方通行「友達になってやンよ」上条「ハイ?」2
一方通行「足引っ張ンなよ三下ァ」上条「おう!」
上条「ブラック苦ッッ!」一方通行「…」
一方通行「友達になってやンよ」上条「ハイ?」
一方通行「友達になってやンよ」上条「ハイ?」2
一方通行「足引っ張ンなよ三下ァ」上条「おう!」
上条「ブラック苦ッッ!」一方通行「…」
39 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/28(月) 20:07:14.16 ID:ZZXx0.60 [2/12]
―――朝、黄泉川家
「―――……………ン…」
カーテンから覗く陽射しで一方通行は目を覚ます。
眠そうな目を擦り、時計を見た。
「………九時か…」
久々に学生の登校時間を過ぎる時刻に起きた一方通行は、ふと隣りの布団を見る……。
しかし、そこに寝ているはずの居候、垣根帝督の姿はなかった。
(あの野郎……珍しく早起きじゃねェか。どンだけ気合い入ってンだ……今日の『デート』によォ…)
とりあえず起きるか…と一方通行も体を起こした。
垣根が今日ある少女とデート(?)をする事を聞いたのは三日ほど前。
就寝につく直前、別に訊いてもいないのに垣根から勝手に喋り出したのだ。
「オマエの自慢話には興味ねェ」と一蹴したのは勿論だが……どこか不安気なテンションだったのが気になる……。
いや…自慢と言うよりは、相談に近かったかもしれない……。
(確か待ち合わせは午後からだろ?なら別にンな早く起きる必要なンてねェじゃねェか…
まァ、俺の方はちと急がねェとやべェかもな……)
――そう、実はこの日……一方通行もある少女と会う約束をしていたのだ。
当然打ち止めは連れていけない。だが、今日は託児所代わりに使える垣根も出てしまう。
(あのクソガキは……どォすっかな……)
40 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/28(月) 20:10:37.96 ID:ZZXx0.60
この重要な問題について一分ほど考えた一方通行は床に落ちた自身の携帯電話を拾った。
(仕方ねェ……ここはアイツに任せるしかねェか)
それから電話帳を開き、目的の人物のメモリを見つけた後、迷う事なく電話を掛けた。
どうやら数コールで相手は出たらしい。
「おォ、俺だ―――」
―――
――数分前、上条当麻はいつもの浴室兼寝室でゆっくりと目を覚ました。
いつ見ても体に悪そうな体勢だ……。
「………………」
そのまましばしボーッとしていたが、やがて思い出したように立ち上がった。
「――やべぇッッ!!課題やらねえと!」
浴槽から出る時、淵に足の小指をぶつけたりと軽く不幸な目にあうが、今の上条にはそんな事で叫んで
いる余裕などなかった……。
「時間がねぇ!何としてでも今日中に数学は終わらせなきゃならねえのに!クソッ!――」
41 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/28(月) 20:16:23.43 ID:ZZXx0.60
バタバタと机に座り、まるでクイック再生でもしているかのような動きで課題に取り組む上条。
しかし、肝心の問題を解くスピードだけは速くはならなかった。
そんな朝から慌しい上条に反応するかのように、ベッドの上の布団が動いた。
「――うーん……とうま……また『かだい』やってるの?」
少し大きめのパジャマを着た禁書目録がのそりとベッドから起き上がった。
上条は振り返りもせずに――
「起きたか?メシはラップに包んで冷蔵庫に入れてるから、勝手に食べてくれ」
――と、余裕も穏やかさも感じられない声で告げた。
「むぅぅ……とうま、冷たいんだよ…」
少し泣きそうな顔で呟く禁書目録。
いつもならここで噛みつきのひとつでもくれてやるのだが、上条の背中から発する
鬼気迫るオーラがそれを許さなかった。
一昨日も噛みつこうとしたのだが、初めて本気で応戦されてしまってから禁書目録は少し弱気に
なっていた。
当然上条は暴力を振るったり怪我を負わせたりはしないが、ある意味本気の『ヤバイ目』をしていた。
禁書目録はそんな上条に戦慄し、本能に従って引き下がったのだ。
もしあのまましつこく食い下がっていたらと思うとゾッとした。
「……………」カリカリカリ
「……とうまが怖いんだよぉ………」
42 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/28(月) 20:24:02.37 ID:ZZXx0.60
禁書目録はかつて見た事がない程に緊迫している上条にそれ以上言葉が出なかった。
「…………」
冬休み終了まであと四日。それまでにこの机の上にある大量の課題を全て終わらせなければならない。
元々、禁書目録に『自分離れ』をさせようとしていた事もあってか、上条の心は今…鬼と化していた。
……はずなのだが――
「――グスッ、グスッ……うぅぅ…」
「………?」
後ろで鼻を啜る声まで上げられては、流石に心を痛めずにいられなかった。
鬼にしたはずの心は……啜り泣きであっという間に崩された。
所詮、彼は善人である。すぐ近くで泣いている少女を放置する事など、
到底できやしないのだ。
「――……ふぅ……ごめん、インデックス……俺…ちょっとどうかしてたみたいだ……」
ふいに手を止めてそう言いながら振り返った上条の顔は、いつもの優しい顔に戻っていた。
憑りつかれた雰囲気も鬼気迫るオーラも完全に消えていた。
今は何ともバツの悪そうな顔を禁書目録に向けている。
「―――とうまぁ……とうまが戻ってきたぁ!」
――椅子に座ったままの上条に飛び掛るように抱きつく禁書目録。
上条はその体を優しく抱きしめてやった。
43 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/28(月) 20:29:24.67 ID:ZZXx0.60
上条「ははっ、本当に悪かったよ。なかなか進まねえし量多いしで焦っちまってつい……補習も課題も
自業自得なのにインデックスに当たるなんて……最低だ俺…」
禁書「ううん、いいんだよ!私、とうまの邪魔はしないから………だから……ここにいていいかな……?」
上条「馬鹿、当たり前じゃねえか。ここはもうお前の家でもあるんだから」
禁書「うん!ずーっととうまといっしょだよ!」
上条「……………え?」
禁書「ッッ!!!ち、ちが――」
感極まってつい爆弾発言をしてしまった禁書目録は、顔を真っ赤にして取り乱した。と、その時――
――Purrrrrrrr♪と、上条の携帯電話が鳴り出した。
上条「――ん?誰だ?」
禁書(ホッ……たまには良いタイミングで掛かって来るんだね…)
――着信表示は『一方通行』だった。上条はすぐに通話ボタンを押して携帯を耳に当てる。
『――おォ、俺だ』
上条「おう、何か久しぶりな気がするな。っつってもほんの数日くらいか?」
『そォだな。っつかオマエ、あれから超電磁砲に電話したか?』
44 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/28(月) 20:35:49.25 ID:ZZXx0.60
上条「へっ?御坂?……いや、してないけど……」
『やっぱりな……はァ…』
――急に溜息を吐いた一方通行に上条はポカンとした。
上条「は?どういう事だ?メールは返したハズだけど……」
『そのメールがそっけないって怒ってたンだよ。詫びの電話も寄越さないとはどォいう事だって言ってたぞ?』
上条「えぇぇぇ…………マジで?」
『そォいう訳だ。後で電話してやれ』
上条「うわぁ……そう言や結構あん時焦ってたからなぁ……つい適当に返しちまったかも……」
『勘弁して欲しいぜ全くよォ……俺らは超電磁砲の伝言役じゃねェンだぞ。しっかりしやがれっての』
上条「ん?…『俺ら』って?」
『あァ、垣根の野郎にも電話してたぞアイツ』
上条「マ、マジっすかぁあ!?っつーかアイツら番号交換してたのか……って、そう言えばお前も!いったいいつの間に!?」
『ンな事ァどォでも良いだろォが。とにかく超電磁砲からの伝言は確かに伝えたからな?』
上条「あぁ、確かに伝わった……不幸だ……垣根にも後で詫びなきゃな…」
『はァ?あンな非常識のボケナスに詫びなンざいらねェよ』
46 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/28(月) 20:47:31.43 ID:ZZXx0.60
上条「何?また喧嘩したのお前ら。ルームメイトなんだから仲良くやれよ」
『冗談じゃねェ!あの野郎マジでいっぺン死ンだ方がイイわ。ってか、いっそこの手で殺してやりてェわ』
―――そのまま垣根への愚痴が始まり五分が経過した……。
『―――でよォ、あのクソ野郎それから――』
上条「ハイハイ、お前らが仲良いのはよーく分かったからもうその辺にしときましょうね」
『は?オマエちゃンと話聞いてたのかァ!?』
上条「聞いてた上でそう思ったんだから仕方ないだろ。んで?もうないならそろそろ上条さん切りたいんですが…」
『オイ待て、まだ言ってねェ事があったわ。っつかコッチが本題だ』
上条「おう、何だ?」
『クソガキを預かれ。以上』
上条「………ハイ?」
――一瞬、思考が完全にフリーズした。
『っつー訳で、今から行くわ。じゃあな』
――そう言って電話を切ろうとする一方通行を慌てて止める上条。
上条「待て待て切るな一方通行!ちゃんと順を追って説明してくれ」
47 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/28(月) 20:55:13.78 ID:ZZXx0.60
『あ?順を追うも何もねェだろォがよ。もォ少ししたらクソガキをソッチに送るから、今日一日しっかり面倒見てやれ
ってだけの話だ』
上条「……何で?」
『今日は黄泉川も俺も垣根も、珍しい事に芳川までもがいなくなっちまうンだよ。その間、アイツ一人ぼっちじゃねェか』
上条「……イヤ、だからお留守番させれば……」
『はァ!?ありえねェ事ほざいてンじゃねェぞ三下がァ!!打ち止めにそンな危ねェ橋渡らせるってのかァ!?』
上条「危ない橋って……留守番くらいで大げさな…」
『もしテロでも起こったら誰がアイツを守ンだァ!?あるいはアイツ一人の時に火事にでもなったら誰が助けンだァ!?
帰った時にいなくなったりでもしたらオマエどォ責任とってくれるってンだよ!!あァ!?』
上条「わ、悪かった。俺が悪かった。お前の言う通りだよ。だからそんなに怒んなって……」
一方通行が打ち止めに対して過保護だという事をすっかり失念していた上条であった……。
『チッ……まァそォ言うこった。もォ少ししたら家出っから――』
上条「――待った!俺…課題終わらせないとマズイんだよ……だから、その……御坂にでも預けたらどうでしょう?」
『もォそこまで行ってる時間がねェンだよ。あン?まさかイヤだとか抜かす気じゃねェだろォなァ?』
上条「イヤイヤ!そんな事は断じてありません!……けど……こないだも言ったがマジで課題の量が半端ないんだよ……
このままやっても上条さんの頭じゃあと四日で終わるかどうかってくらいなんだ…」
『安心しろォ。今日打ち止めがオマエと一緒にいて『楽しかった』っつったら、俺が明日付きっきりで課題手伝ってやるからよォ』
上条「――え!!?」パァァ
48 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/28(月) 21:05:12.92 ID:ZZXx0.60
上条「そ、それは本当かッッ!?」
『ま、預かり料って事にしとけ。どンだけ量あるか知らねェが、この俺も手伝ってやるってンだから、
一日で終わンだろォ』
上条「……ウソ……マジ…?」
『まァ、それでもイヤだっつーンなら無理強いはしねェけどな。……仕方ねェから他当たるわ――』
上条「――んんやりますッッッ!!!」ビシッ!!!
『………あァ?』
上条「この上条当麻!全力を持って打ち止めに楽しい一日を提供する事をここに宣言しますッッ!!
ていうかやらせて下さい一方通行様ぁ!!」
『………なンつーか……よっぽど切羽詰まってやがったンだなァオマエ……』
上条「分かってくれるか……友よ」
――こうして、交渉は成立した。心の中でガッチリと握手を交わす。
ちなみに、この『即興、打ち止めを楽しませようツアー』にさらなる参加者が増える事を彼はまだ知らない。
『まァ良い、とにかく今から打ち止めをオマエン家まで送りに行く。オマエを信用してねェ訳じゃねェが、
一応言っとくぞ?』
上条「ん?」
49 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/28(月) 21:08:51.99 ID:ZZXx0.60
『手ェ出しやがったりしたら……たとえオマエでも容赦なくぶっ殺すからなァ』
上条「――出さねえよ!!」
『おォ、信じてやる。そンじゃ後でな――』
上条「あぁ、待ってるぞ!じゃあな――」ピッ
一方通行との電話を切り終え、上条は両手をグッと握り喜びを表した。
電話に出る前とは明らかに表情が違っていた。
上条「――よしっ!よぉしっ!!希望が出てきたぜ!これなら何とかなるかも!」
何と言っても学園都市で最高の頭脳を持つ一方通行が協力してくれるのだ。
学校の先生自ら手伝いに来てくれるようなものである。いや、それ以上に強力な助っ人だ。
上条は、「失敗は絶対に許されないぞ!」と自分に気合を入れた。
そんな上条の背後にユラリ…と人の影が――
禁書「………とうまぁぁ……お腹すいたぁぁ」グウーー…
上条「!?――わ、悪いインデックス!待たせちまったな!すぐメシにすっから、もう少しだけ待っててくれ」
禁書「…そうしてくれると嬉しいかも。ところで、電話は誰からだったの?」
上条「あぁ、一方通行だ。実は――」
――上条は電話の内容を禁書目録にザッと説明した。
102 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 02:07:41.22 ID:G6OIvQk0 [3/42]
――禁書目録に説明中――
上条「――って訳だ。打ち止めが来たら三人でどっか遊びに行こうな」
禁書「ホント!?わーい♪……でもとうま、『かだい』は大丈夫なのかな?」
上条「ふっふっふ……安心してくれ。もうその心配はなくなりつつある」(むしろ打ち止めを楽しませるためにも出かける必要がある)
禁書「そうなの……?」
上条「あぁ、という事でメシ食ったら出かける準備だ。今日は思い切り遊ぶぞ!」
禁書「うんっ♪」
元気良く返事を返す禁書目録に背を向け、キッチンに立つ上条。
朝食は夕べの残り物で済ますつもりだったのだが、気が変わったらしい…。
包丁を持ち、すっかり慣れた手つきで野菜を切る上条。
「~~~♪」
鼻唄交じりに料理する上条は昨日とはまるで別人のようだった……。
103 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 02:13:01.02 ID:G6OIvQk0 [4/42]
―――黄泉川家・一方通行部屋
――「………」パタン
一方通行は携帯電話を折りたたみ、立ち上がって杖を持ち自室を出た。
黄泉川は仕事に行き、芳川は研究者だった時の友達と朝から会うと言っていた。そして、垣根は午後から初春と三度目の
対面を控えていた。……もっとも、初春はそれに気づいていない……。
リビングに出ると……打ち止めと垣根が仲良く談笑しながら寛いでいた。その光景に軽くイラッとしたが、
構わず冷蔵庫からいつもの缶コーヒーを取り出し、ソファーに座って飲み始めた。
そんな彼に気づいた二人は声をかける。
垣根「よう、誰と電話してたんだ?」
打ち止め「おはよー!急に怒鳴り声が聞こえてビックリしたよ。ってミサカはミサカは朝から不機嫌なアナタに臆せずに話しかけてみたり」
一方通行「オマエらには関係ねェ」
説明するのも面倒だ。とでも言いたげにコーヒーを啜る。
飲み終えた一方通行は垣根の「うっわ、つまんね」という野次を無視して打ち止めに声をかけた。
一方通行「オイ、とっとと着替えて出かける準備しろ」
打ち止め「えっ?」
一方通行「今日は俺もこのカスも用事があンだ。オマエは三下の所に行くンだよ」
打ち止め「えぇっ!?ってミサカはミサカは驚きを隠せなかったり!」
垣根「さっきの電話、やっぱ上条だったのか…」
一方通行「……まァな、それがどォした?」
104 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 02:21:05.16 ID:G6OIvQk0 [5/42]
垣根「いや…別に…」
打ち止め「なんでもなーい…」
一方通行「あァ?ンだよそのツラァ…」
垣根「……お前、自分が何叫んでたか覚えてねえの?」
一方通行「あ?」
打ち止め「『もしテロでも起こったら誰がアイツを守ンだァ!?あるいはアイツ一人の時に火事にでもなったら誰が助けンだァ!?
帰った時にいなくなったりでもしたらオマエどォ責任とってくれるってンだよォ!!』…ってミサカはミサカはじーん、と
思い出して感動してみたり」
一方通行「……………」
垣根「さっすが学園都市最強♪過保護レベルも第一位ってか?」
打ち止め「あのね、この人ミサカが石に躓いてコケたりするとすぐ消毒液と絆創膏買ってきてくれるんだよ。ってミサカはミサカは
優しいパパを演じる一方通行の武勇伝を報告してみる」
垣根「そこいらの親父より良い親父じゃねえか…」
一方通行「……………」
打ち止め「あとねあとね!ミサカがお鍋のアク取ろうとしたりしたら『火傷すンだろォが!俺がやっからオマエは取り皿構えてろ!』
って言うんだよ!」
垣根「………ぷっ」
一方通行「…………」
打ち止め「この人の武勇伝まだまだあるよ!次はね―――ってイタタタタ!!」
一方通行「グチャグチャ言ってねェでとっとと着替えてこいってンですよォこンのクソガキがァァ」グーリグーリ
打ち止め「ご、ごめんなさぁーーい!!」
垣根(良いなぁ……俺も打ち止めちゃんにグリグリしてみよっかな……けど今そんなことしたら確実に殺されるよな…)
一方通行「オマエも打ち止めも長生きしてェンなら、さっきの話全部忘れとけ。イイな?」ギロリ
――打ち止めに制裁を加えながら垣根を睨んで一方通行はそう言った。
105 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 02:24:36.20 ID:G6OIvQk0 [6/42]
垣根のそんな思考に気づくはずもなく、一方通行と打ち止めは着替えのため自室に戻った。
残された垣根は――
垣根「大丈夫……大丈夫だ。落ち着け、俺よ…」
――と、何やら自分に言い聞かせていた……。
―――
――その頃、常盤台女子寮――
「じゃ、行ってくるわね。黒子」
――常盤台指定のコートに身を包んだ美琴はルームメイトの黒子にそう言った。
「お姉様……上条さんにもご予定があるのですし、やはり連絡をとってから出られた方がよろしいのでは……?」
黒子はすっかり諦めた顔で言葉を返したが、美琴はすでに恋の暴走状態になりつつある……。
こうなった美琴を止められる人間は知らない。
「何言ってんのよ?あの馬鹿、この美琴様にここ数日電話もよこさないばかりか、どう見ても
手抜き丸出しのメールまで返してきたのよ?こうなったら直接乗り込んで一発カマしてやんないと気が
済まないっつーの!」
106 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 02:31:32.01 ID:G6OIvQk0 [7/42]
黒子「やはり……止めても無駄ですのね……」
美琴「無駄よ」キッパリ
黒子「そこまであっさり即答されては……もうわたくしは入り込めませんの…」
美琴「ごめんね…けど、アイツの事だけはいくら黒子でも譲れないの……」
黒子「いいえ、いいんですの。もう諦めましたわ。どうぞわたくしに構わずに行ってらっしゃいませ」
美琴「今度さ、どっか美味しいもの食べに行こ?」
黒子「え!?まさかそれって……お姉様からのデーt」
美琴「当然、初春さんと佐天さんも誘って…ね?」ニコッ
黒子「………ですわよね……勿論ですの」
美琴「うん、ありがと。さて…行くか……じゃあね――」
――バタン、と美琴は部屋を後にした。
黒子は美琴が出て行った後、しばらく経ってからこう呟いた。
黒子「お姉様……わたくしはお姉様自身を『諦めた』とは言ってませんの……いつか、必ず振り向かせてみせますわ……」
――今の段階では、とてもありえない幻想を持ち続ける少女がそこにいた。
こうして美琴はアポ無しで上条宅へ――
107 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 02:36:15.69 ID:G6OIvQk0 [8/42]
――初春宅――
すでに起床して朝食も済ませた初春と佐天。
食後のコーヒーを飲んでいる佐天はどこかソワソワしている初春に気づいた。
初春「………」ソワソワ
佐天「……初春ぅ、さっきから落ち着きないよ?大丈夫?」
初春「だ、大丈夫ですよ!」
佐天「……ま、『初デート』だから無理もないか。待ち合わせって何時からだっけ?」
初春「い…一時頃です…」
佐天「ねぇねぇ、私もついてってやろっか?」
初春「言うと思ってました!絶対駄目です!」
佐天「そんなこと言わずにさ、ちょっとだけ!ひと目見たら帰るから」
初春「駄目です」
佐天「ね~ん♪初春~ん♪」
初春「気持ち悪いです」
佐天「ひどっ!」
初春「甘えたって無駄ですから」
108 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 02:38:27.20 ID:G6OIvQk0 [9/42]
佐天「まだ喋った事怒ってるの?……だから悪かったってば。つい口が滑っちゃったんだって」
初春「…………別に、もう気にしてません」
――そう、美琴や黒子が今日の『初デート』の事を知っていたのは、佐天がうっかり喋ってしまったからだ。
美琴から「デート、上手くいくと良いね」と言われた途端、佐天に口止めをするのをうっかり忘れていた事を後悔した
のは言うまでもない。とは言え、美琴も…そしてなんだかんだで黒子も応援してくれたので、今では良かったと思って
いる。しかし、佐天が調子に乗ってしまったのは事実なので、少しぐらい反省してもらおうと初春が思ってても何ら不思議はない。
初春「佐天さん、先に言っておきますけど……もしついて来たりしたら……絶交しますからね?」
佐天「じょ、冗談だって……行かないから……その代わり、後でちゃんと話聞かせてよ?」
初春「分かってますよぉ。…さて、そろそろ準備しよっかな…」
佐天「え?ちょっと早くない…?まだ十時だよ?」
初春「シャワー浴びるんです」
佐天「頭のお花に水やり?」
初春「……しばきますよ?」
佐天「じゃ、途中まで一緒に行くのは良いっしょ?」
初春「……まぁ、それくらいなら…」
佐天「よっしゃ!」
109 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 02:45:10.85 ID:G6OIvQk0 [10/42]
初春「さ、佐天さん!ついて来たら本当に許しませんからね!絶対ついて来ないって約束してください!」
佐天「分かってるって♪」
初春「………信用しましたよ?」
佐天「うん♪」(フフ…馬鹿め。そんなつまらん約束、この私が守る訳ないでしょ。甘いな、初春よ……)
――そのまま浴室へ行ってしまった初春は、最後まで佐天の不敵な笑みに気づく事はなかった……。
どうやら懲りてはいなかったようだ。
―――
――黄泉川家、自室から出て来た一方通行と打ち止めは玄関へ向かった。
垣根も見送るため、玄関へ――
一方通行「ンじゃあ、行ってくる。オマエもせェぜェ頑張ンだな」
垣根「おう、俺ももう少ししたら出るわ。気ぃつけてな」
打ち止め「行ってきまーす!ってミサカはミサカはお兄ちゃんに手を振ってみたり」
垣根「打ち止め、上条によろしくな」
打ち止め「うん!」
垣根「一方通行も、上手くやれよぉ」ニヤニヤ
110 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 02:49:58.91 ID:G6OIvQk0 [11/42]
一方通行「馬鹿が、そンなンじゃねェっつの。一緒に服買いに行くだけだ」
垣根「それを世間じゃデートって言うのだよ、一方通行くん」
一方通行「オマエが言う世間ほど信用できねェモンはねェなァ」
垣根「ま、お互い頑張りましょうってこった」
一方通行「チッ……オイ、行くぞ打ち止めァ」
打ち止め「あっ、待ってぇー!」
――バタン!
垣根は二人が出た後、すぐに部屋に戻って出かける用意をした。
それから数分ほどで部屋から出てきた垣根の姿は………珍妙だった。
「うしっ!完璧!やっぱ俺って天才だわ♪これで初春さんも俺だと分かんねえだろ」
いつもの着崩したスーツや制服ではなく、革ジャンにニット帽という……まるで缶コーヒーのCMにでも
出てきそうな格好のまま、さらにマスクまで装着した垣根は言った。
一歩間違えれば不審者間違いなしのこの格好……警備員に見つかれば職質確定だ。
「ちょっと…っつかかなり早ぇけど、落ち着かねえし…もう出るか」
「大丈夫!俺の未元物質に不可能はねぇ!」
――明らかに場違いな決め台詞を吐き、そのまま垣根は家を出た。
寒い季節なので特に珍しい格好でもないが、周りから見れば変装している芸能人もしくは不審者だった。
本人はそんな視線に気づく事もなく、駅までの歩を進めていた
112 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 02:54:22.42 ID:G6OIvQk0 [12/42]
――上条宅――
―――ガサゴソ…
上条「………あれぇ……確かここに……んーと…」
禁書「とうま、何探してるの?」
――朝食後、何故か押し入れをゴソゴソと物色し始めた上条に禁書目録は後ろから話しかける。
上条「――んー、確かこの辺にしまったハズなんだが………………お、あったあった!」
押し入れのダンボール箱から一枚の封筒を取り出した上条。
上条「まさか……早くもこのヘソクリを使う事になるとはな……」パッ
そう呟いて封筒から取り出した三枚の輸吉を財布に収めた。
禁書「『へそくり』って…何?」
上条「密かに貯めた非常用の金ってトコかな」
禁書「いいの!?大事なんじゃ…」
上条「なぁに、上条さんの三学期が守られるためなら安いモンさ」
禁書「……?」
113 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 02:56:52.85 ID:G6OIvQk0 [13/42]
キョトン、としている禁書目録を尻目に上条はひとり考え込む。
上条(さぁて……どこに行くか……打ち止めはどこか行きたい所とかあるのかな……?
下手に行き先決めて期待外しちゃったりしたら本末転倒だ……今日は金もあるし、やっぱ打ち止めが
来てから決めた方がいいかもな…………いや、待てよ?)
――アーデモナイ コーデモナイ…
禁書(遊びに行くのにこんな真剣なとうま……初めてかも)
――――
――その頃、上条の寮付近の道では一人の幼女が元気良く走り周り、そのすぐ後ろには杖をついて歩く『過保護な保護者』
がいた。
打ち止め「あ!あの人の家が見えたよ!ってミサカはミサカはアナタの腕を引っ張りながら建物を指さしてみたり」
一方通行「見えてっから引っ張ンなクソガキィ!危ねェっての!」
打ち止め「どこか連れてってくれるのかなぁ?ってミサカはミサカは期待に満ちた目を向けてみたり」
一方通行「俺に向けてどォすンだよ……」
打ち止め「アナタはこの後デートだよね?ってミサカはミサカは確認してみる」
一方通行「だからそォじゃねェってオマエもあの野郎も何度言や分かンだァ!?」
114 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 03:05:24.88 ID:G6OIvQk0 [14/42]
一方通行は否定するが、打ち止めは聞いていないようである……。
打ち止め「……照れてるアナタも可愛い。ってミサカはミサカはからかってみたり」
一方通行「あァ?殺されてェのかオマエ」
打ち止め「ミサカは本当は反対なんだけど、今日は特別だよ!ってミサカはミサカは大人の心を見せたり」
一方通行「何だそりゃあ……」
打ち止め「だから、あの子を泣かせたら許さないんだからね!」
一方通行「もォ何とでも言えェ……。いちいち否定すンのも面倒臭ェわ」
――付き合ってらンねェ。と歩を進める一方通行……。
打ち止め「あぁん、待ってよー!ミサカを置いてかないでー!」
一方通行「………チッ」
――なんだかんだ言いながらも、立ち止まって打ち止めを待ってやる一方通行は
すっかり『保護者』が板についてしまったみたいだ。
自分の中で何が変わったのか分からなかった頃が今では嘘のようである。
一方通行「クソったれが……早く来いよこのクソガキ」
――もっとも、これまでの環境の中で形成された捻くれた性格だけはそう簡単に
直りそうもなかった…。
115 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 03:14:47.31 ID:G6OIvQk0 [15/42]
――上条部屋――
結局、打ち止めが来たら行き先を決める事にした上条は禁書目録と共に出かける用意をしていた。
おそらく、もうそろそろやって来るだろうという時間帯である。
上条と禁書目録はいそいそと出かける準備をしていた。
禁書目録は珍しくいつもの修道服ではなく、可愛い私服に身を包んでいた。
上条はそんな禁書目録に「すげえ似合ってるぞ」と、これまた無自覚にそんな台詞を
吐いていた。
流石は天然のフラグメイカーである……。
顔を赤くして嬉しそうな顔を見せつつ「う…うん…///」と言う禁書目録の仕草に
普通の男子ならKO必死なのだが……。
恐るべし、上条当麻!!
上条「――よしっ!準備完了!インデックスは?」
禁書「――私もOKなんだよ!」
二人が外出準備万端になって十秒もしない内に――
――ピンポーン♪
上条「――おぉ!ナイスタイミング!」
禁書「さすがあくせられーた!空気読めてるかも!」
――ガチャ
ドアの向こうにいたのは、やはり一方通行と打ち止めだった。
上条と禁書目録は揃って二人を出迎える。
116 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 03:22:46.38 ID:G6OIvQk0 [16/42]
――玄関
一方通行「よォ、三下ァ」
上条「おう、待ってたぞ。まぁ上がれよ」
一方通行「折角だが、もォ時間がねェンだ。俺はもォ行くわ」
上条「そうか…」
禁書「らすとおーだーっ!会いたかったよぉ!」
打ち止め「ミサカもー!ってミサカはミサカはミサカも会いたかったぁーって飛びついてみたりぃ!」
横で何故か抱き合う打ち止めと禁書目録……。ほんのニ~三日前上条が課題に勤しんでいたので
黄泉川家に禁書目録を送り込んだ時があったのだが、打ち止めとはその時も会っているはずだが…。
よほど馬が合うのか、会う度に親密になっていく二人の幼女に上条と一方通行は温かい目を向けた。
一方通行「クソガキ、三下にうンと迷惑かけろよ」
打ち止め「もっちろん♪」
上条「オイ!そこは『迷惑かけるな』って言うところじゃないんでせうか?あと打ち止めも乗るな!」
禁書「私はかけないよ!とうまの迷惑になりたくないもん!」
上条「インデックスぅぅ……上条さんは嬉しいぞぉぉ…」
117 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 03:31:18.02 ID:G6OIvQk0 [17/42]
一方通行「――とにかく、任せたぞ。電話でも言ったが……何かあったらぶっ殺す」
上条「おう、大船に乗った気でいろ!お前も頑張れよ!……あと、くれぐれも明日は…」
一方通行「分かってンよォ。このガキが退屈しなかったらの話だがなァ」
打ち止め「え?」
上条「あぁ、任せてくれ!」
禁書「とうま!私を満足させないと許さないかも!」
上条「そのいやらしい言い方は周囲に誤解を生むからやめろ」
打ち止め「……どういう事か分かんないけど、楽しいことならしたいなぁー!ってミサカはミサカはわくわくしてみる」
禁書「とうまは今日太っ腹なんだよ!」
一方通行「あァ?そォなのか?」
上条「と、とにかく一方通行!俺にどーんと任せてくれ!」
一方通行「よし、頼ンだぞ。ンじゃあな――」
禁書「バイバイ、あくせられーた」
打ち止め「…………」
――少し寂しそうな打ち止めの視線が背中に刺さったが、気にせず一方通行は上条宅を後にした。
125 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 16:49:17.43 ID:G6OIvQk0 [20/42]
――――
「…………」カツ カツ カツ
一方通行は黄泉川家とは逆方向に歩いていた。決して道が分からない訳でも間違えた
訳でもない。この先にある公園に向かっていたのだ。
そう、ある『約束』を果たすために―――
―――Piriririri♪
「…………!」
その途中、一方通行の携帯が突然鳴り出した。ズボンのポケットから取り出して表示を確認した彼は、
周囲を見回し、人のいないビルの裏へ移動した。
そして、未だ鳴り続けている携帯の通話ボタンを押し、耳に当てて喋った。
「またオマエかよ。今日は仕事入れるなって言っただろォが」
電話相手は『いつもの指令役』だった。幾度とある暗部組織の中でも彼が所属する『グループ』はアレイスターからも
一目置かれており、その組織力も大きい。仕事の内容は主に『学園都市を脅かすものの排除』や『密輸、密売の阻止』
が大半だ。
例えるなら救急隊員のような仕事だが、一方通行にはそんな事はどうでも良かった。それよりも、今は『約束』の方が
大事である。
127 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 16:55:06.77 ID:G6OIvQk0 [21/42]
「どォせまたつまらねェ仕事だろ?他のヤツに回すンだな。どっちみち、俺は今日は動けねェ。悪いが切るぞ――――何!?」
さっさと切ろうと、携帯から耳を遠ざけようとした一方通行だが……直前に『ある言葉』を聞いた途端、目を見開いて
手を止めた。彼はすぐ電話相手に声を返した。
「そォか………分かったのか……ソイツはご苦労だったなァ」ニヤァ
それだけ言って電話を切ってしまった一方通行は、そのままどこかへ電話を掛けた。
発信して数秒程で『もしもし』と返ってきた返事に向かって一方通行は開口一番に怒鳴り声を上げた。
「オイ!!オマエ一体どォいうつもりだァ!?『土御門』ォ!!」
『……………』
電話相手であるはずの土御門からは中々返事が返ってこなかった。―――
――――
――上条宅
上条、禁書目録、打ち止めは出かける前の小休止をとっていた。
ちなみに、『これからどこへ行くのかを決める会議』も兼ねている。
128 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 17:01:31.75 ID:G6OIvQk0 [22/42]
上条「打ち止め、どこか行きたい所あるか?」
――訊いてみるものの、ここで「どこでもいい」って言われたら非常に困ってしまうこの質問だが、打ち止めは悩むことなく
はっきりと答えてくれた。
打ち止め「『マリンランド』に行きたーい!ってミサカはミサカは即答してみる」
禁書「!――とうま!私もそこが良いかも!」
上条「水族館か……よし、決定だ!」
打ち止め「え、ホントに!?ってミサカはミサカはドキドキしながら訊いてみたり」
上条「当たり前だろ?じゃなきゃ訊いた意味がないからな。デズニーランドに比べたらさほど遠くも
ないし、……上条さんに異論はありませんの事よ。ってことで、もう少し休んだら行くか」
打ち止め「わーい♪イルカさんに会えるー!ってミサカはミサカは喜びの余り飛び跳ねちゃったりー!」
禁書「とうまー!私、すいぞくかんって行くの初めてかも!すっごい楽しみなんだよ!」
上条「ハハハハ、俺も楽しみだ!……っつーか、俺も行った事ねえや」
禁書「え?子供の時とか行かなかったの?」
上条「うーん……近くになかったしな…」(やべぇやべぇ…)
打ち止め「本当はあの人に連れてって欲しかったんだけど、あの人絶対嫌がるから…ってミサカはミサカは
諦めてたり」
上条「そ……そんなことはないんじゃないか?」
打ち止め「え?どうして?」
上条「イヤ……まぁ……その…なんとなくな…」
――何やら思い返すような素振りの上条に禁書目録も打ち止めも不思議な物を見るかのような目で
上条を見上げた。
129 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 17:12:25.01 ID:G6OIvQk0 [23/42]
上条(そりゃ俺もきっとそう思うだろぉな………こないだの事がなければ)
ふと、先週に行ったダブルデートを思い出す上条。
上条(汽車で一方通行に抱きつかれたり……ワニに食われかけたり……御坂と絶叫マシン巡りもしたっけ…………ん?)
何かが気になった上条は、その場で考え込む。
美琴と絶叫マシンに乗りまくって、上条は途中で意識を閉ざしている……。
気づいた時はベンチで美琴の肩にもたれ掛かっていた。
そこからだった……。何かを忘れている……そんな感覚が上条の頭に残っていた。
上条(…………何だ?何かが引っかかる……)
中々思い出せないが……かなり重要な事の気がした。
上条は何としてでも思い出そうと目を閉じて、少ない過去の記憶を脳内で探り出す。
禁書「とうま?どうしたのかな?」
打ち止め「大丈夫…?ってミサカはミサカは心配してみる」
――その時、ついに上条にあるシーンが浮かんだ。
上条「―――!!」
130 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 17:15:13.42 ID:G6OIvQk0 [24/42]
上条の脳裏に、つい先週入院して禁書目録と再会した時の場面が甦る――
――――――――――――――――――――
~~回想~~
「誤魔化したってダメだよ!私見たんだから!とうまと短髪がベンチに仲良く座ってたのを!!」
「――!!」
「……とうま……短髪の肩に頭乗せて『気持ち良さそう』に眠ってたよね……」
「――イ、インデックス!待て!落ち着いて聞いてくれよ。それはだな……」
「……私の記憶能力ナメたらいけないかも……短髪、すごく幸せそうな顔してた事もはっきり覚えてるんだよ」
『――短髪、すごく幸せそうな顔してた事もはっきり覚えてるんだよ――』
――――――――――――――――――――
上条(……………)
『すごく幸せそうな顔をしてた』……あの時、確かに禁書目録はそう言った。
今まですっかり忘れていた。何故このタイミングで彼はその事を思い出したのか……。偶然か必然かは誰にも
分からない。
ただ、これがどういう意味なのかだけは……上条にも分かりつつあった。
131 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 17:21:28.91 ID:G6OIvQk0 [25/42]
自分はあの時、美琴の肩に頭を乗せて寝ていた。(っていうか気絶してた)
美琴は自分が起きた時、特に嬉しそうなそぶりは…………………あった。
あの時は何故こんな自分と手を繋いで歩く程に上機嫌なのか分からなかったが………まさか………まさかである。
鈍感少年上条は……ついに正解を掴みとろうとしていた。
上条(まさか………御坂……アイツが、……俺の事を…?)
禁書「おーい、とうまー?」
打ち止め「石像みたいに固まっちゃったね。ってミサカはミサカは指でつんつんしてみる」
上条「なっ、ないない!そそそ、そんな事……何で御坂が俺みたいなヤツに――」
美琴「え?私がどうかしたの?」
上条「――ぎゃぁぁぁあああああああ!!!??」
美琴「――うわっ!?アンタ何いきなり叫んでんのよ!?……唾飛んだじゃない……ま、良いけど…」クスッ
禁書「短髪!?いつの間に!?」
打ち止め「わー!お姉様だー!おっす♪」
美琴「おっす、鍵開いてたから……きちゃった♪」
上条「………お、脅かすなよ御坂……寿命がニ~三年は縮んだぞ…」
美琴「そんな驚く事ないでしょぉ?っていうかアンタ!」
上条「は、はい?」
美琴「よくもこの美琴様からの有難いメールをシカトしてくれやがったわね!」
――今にも放電しそうな勢いで上条に掴みかかろうとする美琴本人がそこにいた。
132 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 17:24:33.99 ID:G6OIvQk0 [26/42]
上条「おいおい、シカトって……メールは一応返しただろ?」
美琴「あんなのシカトも同じよ!おまけに電話も寄越さないし!普通男の方から掛けるモンでしょうが!
アンタどんだけデリカシーないのよ!?」
上条「い……いや……その…それは…」
美琴「何よ!?何か言いたいことでもある訳!?」バチッ バチッ……
上条「――す、すんませんっしたぁぁ!!」バッ
禁書「おぉ!?久々に見たんだよ!とうまのマル秘奥義『空中土下座』!」
打ち止め「なんていうか……無駄のない動きだね!ってミサカはミサカは評価してみたり」
上条「ど、どうかここでビリビリはご勘弁を!!上条さんの生活用品が!!」
美琴「………まぁ良いわ。今度だけは勘弁してあげる。……ところで、打ち止めがいるのに何で一方通行はいないの?」
上条「へっ…?アイツは今日―――」
―――
――その頃、とある路上では……
警備員「なんでそんな格好してるんですか?ま、まさか貴方!近頃この辺りに出没する通り魔ですね!?」
垣根「イヤ……マジでそんな怪しい者じゃないんで……」
警備員「ちょっとそこ(支部)まで来てもらっていいですか?」
垣根「あの……それはホント勘弁……この後予定あるんすよ…」
――予想通り、不審レベルも5な男は早速職質をくらっていた。
133 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 17:31:49.89 ID:G6OIvQk0 [27/42]
――警備員の格好が似合わないほどの温和な顔をした女性は中々垣根を解放してくれそうもなかった……。
警備員「でも、ここで見逃して事件が起こったらまた黄泉川さんに怒られちゃいます…」
垣根「だから起こしませんって!……っつーか俺、そんな怪しいっすか?軽くショックなんすけど…」
警備員「自覚無しっと…」メモメモ…
垣根「って何メモってんすかぁ!?」(何なんだこの警備員?)
警備員「ささ、詳しい動機などは支部で聞きますので任意で同行してください。拒否は許しません」
垣根「アンタ任意同行の意味分かってねえだろ!!」
警備員「きゃ……む、無駄な抵抗はやめてください!」
垣根「今この時間こそ無駄だ。……もぉいっそ黄泉川さんここに呼んでくれ。アンタの上司なんだろ?」
警備員「何故黄泉川さんを知って……あぁ、なるほど。前科で捕まった時にお世話になったんですね?」
垣根「まさに今現在お世話になってるんだが……」
警備員「まさか……脱獄!?」
垣根「だから違ぇっての!!アンタさっきからどんだけ着眼点ズレてんだよ!?よくそれで警備員になれたな!?」
警備員「私、これでも教師なんですよ♪」
垣根「警備員なら珍しくもねえわ!っつかそれで教師ってのが問題だろ……」
警備員「貴方みたいな反抗期な生徒はたくさんいますよ」
垣根「イヤ、訊いてねぇし……反抗してるつもりはこれっぽっちもありませんが?」
警備員「何でそんな格好してるんですか?」
垣根「風邪ひいてんすよ。あと自分寒がりなんで」
警備員「ふーん……」
垣根「イヤ!そこで疑いの目が出る意味が分かんねえんだけど!?ウソじゃねえし!」
――どうやらますます話がこじれているようだ…。
135 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 17:39:59.48 ID:G6OIvQk0 [28/42]
警備員「………怪しいです。何か身分を証明できる物があったら見せてください」
垣根「あぁもう!なら今学生証見せ―――あれ?」
一刻も早く解放されたかった垣根は財布の中を探るが………ない。
垣根「やっべえ!まだ再発行頼んでなかったわ!」
警備員「?」
垣根「警備員さん、すんませんけど身分証まだ持ってないんで……」
警備員「だと思ってました」
垣根「……は?」
警備員「自作自演は私に通用しませんよ。今の私は足を引っ張っていたあの頃とは違うんです」
垣根「……へ?何言って――」
警備員「と言う訳で、続きは支部でゆっくり聞かせてくださいね?」
垣根「はぁ!?意味分かんねぇ、ってかまたフリダシかよ………なんなのコイツ……もぉイヤ……誰か助けて……」
――この後、三十分近くの拘束を余儀なくされた垣根は待ち合わせ場所まで走るハメになった。
警備員として頑張っている黄泉川の印象も、このおかげで少しマイナスに変わった。
垣根「――っつーか、最初っから帽子とマスク取れば良かった話じゃね?」
そこに気づいたのは解放されてからだった……。
136 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 17:44:16.78 ID:G6OIvQk0 [29/42]
>>134 ご想像にお任せしますww
――上条宅
上条「―――と言う訳なんだが……」
美琴「アイツもデートなのか……そっかぁ………ふーん…」
打ち止め(何この反応……?ってミサカはミサカは新たなライバル登場の気配に危機感を抱いてみたり)
禁書「短髪、どうかしたの?」
美琴「べ、べっつにぃ!そ、それで、アンタらはこれからどうするの?今日は暇だったりするから、私も付き合って
あげても良いけど……」
上条「マリンランドに行こうかと思ってる」
美琴「お、良いわねー♪…で、まだ行かないの?」
上条「そうだな。インデックスに打ち止め、そろそろ行くか?」
禁書「うんっ♪お魚お魚~♪」
打ち止め「はやく行こー!ってミサカはミサカは急かしてみたり」
上条「ははっ、イルカさんは逃げないぞー?……ま、俺も楽しみだし…ほんじゃあ行くとしますか!」
打ち止め「おー!」
美琴「この面子って初めてよね。違和感あるけど何か楽しみだわ」
禁書「ゴーゴー!」
――こうして、上条・美琴・禁書目録・打ち止めの四人は大型水族館へ向けて動きだした。
この先様々なハプニングが待ち構えている事など、この時の彼らにはまだ知る由もなかった……。
137 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 17:48:31.14 ID:G6OIvQk0 [30/42]
―――その頃、上条宅から少し離れた公園
「――時間です。まだでしょうか…とミサカは足を踏み鳴らしてイライラします…」
――常盤台の指定コートを着た少女、検体番号10032号こと御坂妹は待ち合わせ相手が
中々来ない事に苛立っていた。……無論、無表情のまま。
御坂妹「…………」
――そして約十分後、杖の音を響かせながら一人の男が歩いてくるのが見えた。
一瞬嬉しそうな顔をしたが、すぐに無表情に戻る。
一方通行「――よォ、待ったか?」
御坂妹「……十分ほど遅刻です。とミサカは時間にルーズなあなたを睨みます」ジー…
一方通行「悪いな。ちと『取り込ン』じまってよォ」
御坂妹「女性を待たせるなんて良い度胸ですね?とミサカは遠まわしに責めます」
一方通行「どこが遠まわしなンだよ……?」
御坂妹「まぁ良いでしょう。罰として今日はミサカに思う存分付き合ってもらいます。とミサカは会っていきなりの
絶対服従をあなたに求めます」
一方通行「へいへい、最初(ハナ)っからそのつもりだから安心しろォ……ンで、何処行くンだ?セブンスミストか?」
御坂妹「そのつもりだったのですが、実は他に行きたい場所ができてしまったので……。とミサカはプランの変更を告げます」
138 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 17:51:01.09 ID:G6OIvQk0 [31/42]
一方通行「はァ?オマエ今日は服買うンじゃ――」
御坂妹「それはまた『次』にでも行けば良いのです。今はそれより行きたい所があります。とミサカは早くも主導権を
握ります」
一方通行「………まァ良いけどよォ……ンで、何処に行きてェンだ?」
御坂妹「――これを。とミサカはパンフレットをあなたに渡します」
一方通行「またこのパターンかよ……っつか、こォいうの一体どっから手に入れてンだ?」
御坂妹「ミサカの施設(病院)をお忘れですか?とミサカはあなたの痴呆に愕然とします」
一方通行「あァそォでしたねェ……で、なンだこの愉快なイルカの写真はァ?」
御坂妹「……イルカさんはイルカさんですが?とミサカは問い返します」
一方通行「まさかイルカ見に行きたいとか言い出すンじゃねェだろォな?」
――その問いに……御坂妹はハッキリと答えた。
御坂妹「はい。本日のミサカの目的は、イルカさんと一緒に写真を撮ることです。とミサカは胸の内を明かします」
一方通行「またかよ!」
御坂妹「『また』とは心外ですね。とミサカは少しムッとします」
一方通行「……オマエ、ずいぶンとワガママ言うよォになったよなァ」
御坂妹「ミサカの夢は尽きることがありません。それに、あなたもこういうのは好きかと思いました。
とミサカは前回のデートを振り返った上で推測します」
一方通行「…………水族館ねェ……」
――興味が無さそうにも見えて、実はまんざらでも無さそうな……そんな表情で一方通行は差し出された
パンフレットを眺めていた。
139 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 17:53:07.91 ID:G6OIvQk0 [32/42]
――初春宅
「――佐天さん、そろそろ出ますよ?」
玄関ですでに靴まで履いた初春は、急かすように呼びかける。
「――ゴメンゴメン!お待たせ!」
呼ばれた佐天はバタバタと玄関までやって来た。
初春「早く行きますよ!――」
佐天「あぁ、待ってってばぁ!まだ靴ぅ――」
慌しく寮を後にする二人の少女。
佐天はパンフレットを眺めながら歩く初春の顔を覗き込む。
初春「――ひゃあっ!?な、なんですか?」
佐天「……ふーん、水族館かぁ……初デートにしては素敵なチョイスするねぇ初春ぅ」
初春「だ、だからデートじゃなくて……その……お礼っていうか…」
佐天「見苦しいぞ♪いい加減認めちゃえって。前自分で言ってたじゃん?イルカショー見たいって」
初春「た、たまたまですよ!」
140 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 17:55:13.35 ID:G6OIvQk0 [33/42]
佐天「ハイハイ、ごちそーさまな話を期待してますよ。良いな~…私も彼氏欲しいなぁ~…」
初春「さ、佐天さん!?言っときますけどまだ彼氏じゃないですからね!?」
佐天「ほぉう……『まだ』ねぇ…」ニヤァ
初春「――うっ……」(しまった……)
墓穴を掘るという、らしくない振る舞いをしてしまう初春。
どうやら相当浮かれているようだ……。
だが、それも運命的な出会いに憧れる年頃の少女からすれば当然なのかも知れない。
実際ある意味では運命的なのだが……それはまだ彼女の知らない事だった。
佐天「――成功、願ってるよ。初春」
佐天は散々茶化してきたものの、やはり親友の初恋(?)を応援したい気持ちが殆どだった。
初春「……本当にそう思ってます?」
佐天「当たり前じゃ~ん!こやつ、私を信用してないな?スカート捲くっちゃうぞ?」
初春「してもいいですけど、今日ばかりは反撃しますよ?」
佐天「うわぁ……初春が反抗期だぁ……」
初春「同い年でしょ?」
佐天「私はいつだって反抗期だよ♪」
初春「嫌というほど知ってます」
141 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 17:59:08.76 ID:G6OIvQk0 [34/42]
――他愛無い(?)話をしながら、歩く二人。
佐天「じゃ、私コッチだから。頑張んなよ?初春」
初春「はい」
佐天「良い報告を期待してるからね」
初春「勝手に期待しないでください!……っ///」
佐天「あはは、照れるなって」
初春「も、もう!」
佐天「じゃあね、応援してるから――」
初春「……はい、ありがとうございます。佐天さん……じゃ、行ってきますね――」
――最後は親友らしい絆を垣間見せて、二人は別れた。
初春は真っ直ぐ待ち合わせ場所の駅を目指して歩きだした。
一方、佐天も反対方向の自宅へ踵を返した………が。
佐天「…………」
ふと立ち止まり、さっと物陰に隠れてバッグから何かを取り出す佐天。
着ていたコートを脱いでバッグにしまい、取り出した予備のコート(色違い)を羽織った。
さらにニット帽、伊達メガネを装着した佐天は再び路上に戻り、まだ見える後ろ姿を追う様に
歩き出した。
(初春のことだから、どうせ会わせてはくれないだろうと踏んで用意してて正解だったわ…。
ふふふ、さぁて……初春のハートを射止めたのがどんな人なのか、じっくり拝ませてもらおっかな)
初春の十メートル後ろをピタリとマークする様に追跡する佐天……。
スネークも真っ青の無能力者(レベル0)がそこにいた。
(別に冷やかす意味で尾行してる訳じゃない。親友として心配だから……ってことで♪)
何やら自分に言い訳をしているが、伊達メガネから覗くその目は……怪しく光っていた。
145 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 19:07:37.43 ID:G6OIvQk0 [37/42]
※この話は本編とは何ら関係ありません。
―――季節はすっかり変わって秋
私、鉄装綴里(てっそうつづり)は今日も第七学区の学校から警備員の(アンチスキル)の支部へ向かって
走っていた。
一方通行編――
鉄装「あぁーーっっ!!その電車待ってぇぇええ!!!」
勢いよく乗車口へダイブする。今度は何とか間に合いそうだった。
しかし、中から出てきた人と運悪く衝突した。
駆け込みならぬ飛び込み乗車はまたしても失敗に終わったのだった……。
鉄装「――いたたたた……」
「――痛ってェ……ったく、何なンだっつーンだクソォ……」
ぶつかった頭を押さえながら目を開けると、そこには同じように頭を押さえた
細い体型の男が黄色い線の外側にいた。
146 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 19:20:07.32 ID:G6OIvQk0 [38/42]
鉄装「あわわわ、す、すみません!だ、大丈夫ですか!?」
驚いた私は痛みも忘れて男に駆け寄った。
一方通行「……大丈夫な訳ねェだろ。クソったれがァ……」
男は涙目だが、とても恐ろしい目で私を睨んだ。
不良が苦手な私は一瞬たじろいでしまう。
一方通行「どこ見て飛び込ンできてンだオマエはァ!?駆け込むンならまだしも頭から突っ込ンで来るたァどォいう
神経してンだコラァ!!」
鉄装「――ひぃっ……ゴ、ゴメンなさいっ!」
一方通行「ゴメンで済ンだら警備員はいらねェンだよ!」
鉄装「すいません……私、その警備員なんですけど……」
一方通行「……あァ?今なンつった?」
鉄装「とりあえず……ここじゃ邪魔なんで、移動しませんか…?」
乗車口で怒鳴る男に私は精一杯の勇気を込めてそう言った。
一方通行「………チッ」
舌打ちした男は立ち上がり、落ちていた杖を拾ってカツカツと歩き始めた。
鉄装「――あっ!ちょっと!待って下さいぃ!」
148 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 19:31:39.51 ID:G6OIvQk0 [39/42]
無言で改札を出て行こうとする彼を慌てて追いかけた。
一方通行「――なンでついて来ンだよ?」
クルリ、と不機嫌丸出しで男は振り返った。
鉄装「あ、あの……本当にすみませんでした!お、お怪我の方は…?」
一方通行「あ?見て分かンねェのかオマエ」
鉄装「へ……?」
一方通行「重傷だ。二度と呼び止めンじゃねェ」
また、クルリと前を向いて今度こそ彼は切符を改札口に入れようとした……が、私は何を思ったのか彼の腕を強く引いていた。
一方通行「――うおォ!?」
鉄装「――ひゃっ!」
案の定、体重の軽そうな男は私でも簡単に引っ張れ……過ぎた。
そのまま勢いがつき過ぎ、二人そろって冷たい床にひっくり返る。
一方通行「――……ってェ……この野郎ォォ!!オマエ喧嘩売ってンのかァ!!」
鉄装「――ひっ……ゴメンなさい…」
さっきよりも凄い剣幕で怒られてしまった……あぁ、何で私はこんなにドジなんだろう……。
149 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 19:47:07.86 ID:G6OIvQk0 [40/42]
――駅内のカフェ
一方通行「なーンなーンでーすかァー?この展開…」
鉄装「あの……頭大丈夫ですか?」
一方通行「やっぱオマエ俺になンか恨みでもあるンだろ?そォだろ?」
鉄装「い、いえ!そんな!本当にすみませんでした!」
一方通行「はァ……もォイイっての……」
鉄装「ゆ…許してくれるんですか?」
一方通行「そりゃ五十二回も謝られりゃあなァ…コーヒーも奢ってもらったし、これ以上何を望めってンだ?」
鉄装「あ、ありがとうございます……」
一方通行「オマエ本当に警備員かよ?」
鉄装「や…やっぱり……見えませんよね…」
一方通行「俺の知ってるヤツとは…なンつーか、正反対過ぎンだろォ……」
鉄装「私……やっぱり向いてないんですかねぇ……はぁ…」
一方通行「………」
鉄装「いつもヘマやって、先輩に怒られて……それでも、こんな私でも!って思ってるんですけど……
いつも空回りで……」
一方通行「…………」
鉄装「いっそのこと……辞めようかなぁ……とか、何度も思ったんですけど……やっぱり辞められなくて…」
一方通行「……オマエはどォしたいンだ?」
鉄装「…え?」
一方通行「俺に何か言われて背中押されたいンなら、悪いが期待に添える気はねェぞ?」
151 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 20:02:30.19 ID:G6OIvQk0 [41/42]
一方通行「『甘ったれンな』とか『諦めるな』とか言うつもりはねェ。俺はそンなタイプじゃねェからなァ
ただ、これだけは言ってやる。オマエのプラスになるか分っかンねェけどなァ」
鉄装「………?」
一方通行「好きにしろ。どォ行きよォが、どォ選択しよォが全部オマエの自由だ」
鉄装「――!?」
一方通行「そこには間違いもなけりゃ正解もねェ。あるとしたら、それを決めンのもオマエの自由……だろォ」ニヤリ
鉄装「私の……自由……」
一方通行「ンじゃあな。ご馳走さン。あとはせェぜェ頑張ンだな」スクッ
立ち上がって彼はその場を去ろうとする。
私はその背中を呼び止めた。
鉄装「――待ってください!…せめて……お名前だけでも!」
――すると彼は振り返って、
一方通行「ハッ、よせ。悪党の名前なンざ、いちいち覚えとく必要はねェよ」
そう言って、今度こそ…彼は行ってしまった。
しばらくその背中を眺めていた私を現実に引き戻したのは、携帯の着信音だった。
電話に思わず出た私に、雷が落ちんばかりの怒声が飛んだ。
『――コラァーーッッ!!鉄装!!お前どこで油売ってるじゃんよぉぉ!!!』
鉄装「――すすす、すいませぇぇぇええええん!!!」
一方通行編・完 ~続く?~
160 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/02(金) 20:54:51.12 ID:4C2J3zw0 [2/18]
―――学園都市、○○学区にある大型水族館『マリンランド』
――先週訪れたデズニーランド程ではないにしろ、やはりそれでも人の多さは否めなかった。
違いを比べるなら、カップルの比率が目立って見える事くらいだろうか……。
入り口前でチケットを購入した上条達はその集団の中でもひと際目立っていた。
が、本人達は気にも止めずに入園口へ――
――ワイワイ ガヤガヤ…
上条「……しっかし、すげぇカップル率高いな…」
美琴「デズニーランドの時もカップル結構いたわよ?もっとも、それ以外も多かった
から目立たなかったけどね」
禁書「すごいんだよとうま!あの白黒のイルカ!」
打ち止め「わぁ!大きい!ってミサカはミサカは驚いてみる」
――入り口付近のシャチ人形に注目する一同。
161 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/02(金) 21:00:26.27 ID:4C2J3zw0 [3/18]
上条「シャチか……あれ作り物だぞ?」
美琴「実際あんなデカイのかしら?」
上条「お前も見た事ないのか?」
美琴「ま、まあね……」
上条「実は俺も!テレビでしか見た事ないから楽しみだ♪」ニコッ
美琴「///……そ、そう…」
禁書「とうまー!早く中入ろうよー!」
打ち止め「お姉様も早くー!ってミサカはミサカは何か怪しい雰囲気の二人を呼んでみたりー!」
上条「み、御坂。行こうぜ…」(打ち止めの野郎…)
美琴「う…うん」
――どこか気まずい空気を無理矢理押し隠した上条と美琴は、すでに入り口で待っている禁書目録と打ち止めに
呼ばれて歩み始めた。
上条(俺の推測が正しいなら……やっぱそういう事だよなぁ…)
珍しく意識する上条。
それもそうだ。彼はついに隣りを歩く少女が自分に好意を抱いている事に
気づいたのだから……。
しかし、だから今すぐどうこうできる上条でもなかった。
162 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/02(金) 21:03:13.03 ID:4C2J3zw0 [4/18]
―――館内
まず最初に来園者を出迎えるのは、巨大な水槽で目まぐるしく泳ぎ回る白黒のイルカ達だった。
禁書「あ!とうま!シャチなんだよ!……にしてはちょっと小さいかも」
打ち止め「体の模様も少し違うね。ってミサカはミサカは必死に目で追ってみる」
上条「コイツは『イロワケイルカ』だな。別名『パンダイルカ』とも言う」
美琴「へー、可愛いっ♪……ってかアンタ詳しいわね?」
上条「イヤ……そこに書いてあるし」
美琴「あ…ホントだ」
打ち止め「泳ぐの早ーい!ってミサカはミサカは目で追うのがやっとだ!って台詞を引用してみる」
美琴「アニメの見すぎよアンタ…」
禁書「短髪もアニメとか見るの?『カナミン』とか」
美琴「私はゲコt――……ゴメン、あんま見ないわ」
上条(絶対今ゲコ太って言おうとしたな……)
禁書「とうま。このイルカさん、目がないんだよ。どうやって泳いでるのかな?」
打ち止め「目なんて見えなくても気でわかるんだよ。ってミサカはミサカは説明してみたり」
上条「上条さんでも分かる説明をありがとう打ち止め。インデックス、よく見ろ。黒い模様の中に目が
見えるだろ?あれが目だよ」
163 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/02(金) 21:08:44.74 ID:4C2J3zw0 [5/18]
禁書「うーん……速すぎて見えないかも…」
上条「馬鹿め、気の動きをよく探ってみろ。お前以外は皆見えているぞ」
禁書「え?みんな見えてるの?」
美琴「……アンタそれ何のネタよ?」
打ち止め「ミサカも見えないー!」
上条「見えるっ!俺にも見えるぞー!」
美琴「しょっパナからナニこのテンション……」(ってか、なんだかんだ言って結構浮かれてるわねコイツ…)
まだ入り口でこれだけ盛り上がってて最後までもつのか……と美琴は少し不安になったらしい。
―――
美琴「あ、綺麗な熱帯魚がいっぱいいる♪」
禁書「イソギンチャク綺麗~…」
打ち止め「あっ!ウツボはっけーん!ってミサカはミサカは報告してみる」
上条「まるで海の中を再現してるみたいだな。すげぇ……」
美琴「より忠実って感じね。さすが学園都市だわ」
上条「ん?インデックスは………っていたいた」
禁書「コッチは磯辺のお魚さんたちがいるんだよ!こんにちは~」スッ
164 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/02(金) 21:12:27.69 ID:4C2J3zw0 [6/18]
上条「こらインデックス!手を入れちゃいけませんって書いてあるだろ?」
禁書「ひゃっ!?………うぅ……見るだけで我慢するんだよ」
上条「よろしい。―――ぶわっ!?」
――その時、上条の顔面に水鉄砲が飛んだ。
打ち止め「どうしたの!?」
禁書「わ、私じゃないんだよ!」
美琴「……!ははーん……犯人はアイツね」
美琴が指さした先には、水面から顔だけ出した小さな魚がいた。
上条「『テッポウウオ』か……磯辺なのに何故?……何にせよ不幸だ…」
熱烈な歓迎を受けたようだ。
どうやらここでも不幸は尽きないらしい。
―――
上条「お?今度はサメか……すげえな…」
美琴「うわぁ……さっきより綺麗……」ウットリ
165 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/02(金) 21:15:48.60 ID:4C2J3zw0 [7/18]
打ち止め「さっきが浅瀬なら、コッチは沖だね。ってミサカはミサカは見入ってみたり…」
禁書「フカヒレ……」ジュルリ
四人の視線の先にある巨大な水槽では、様々な種類のサメやエイが悠然と泳いでいる。
学園都市一の大型水族館にある名物の一つ、『海景色』である。
まさに、その景色は海の中を忠実に再現していた。
禁書「サメって怖いイメージかも…」
打ち止め「襲ってきたりしないよね?ってミサカはミサカは不安になってみる」
美琴「大丈夫よ。私もアンタも『電気使い』なんだから、水中じゃ無敵でしょ?」
打ち止め「そっかー!さっすがお姉様♪」
上条「だがな御坂。それだと近くに人がいたら巻き込むことになるぞ」
美琴「……あ」
禁書「短髪が海に入ってる時に入りたくないかも……」
上条「ってか一緒に海行くのが怖い」
美琴「だ、大丈夫よ!……多分」
打ち止め「うわ!なにアレ!ってミサカはミサカは変な頭のサメさんを指さしてみたり」
上条「シュモクザメ…別名『ハンマー・ヘッド・シャーク』か……あの部分は脂肪の塊らしいぞ」
美琴「だから何でそんな詳しいのよ…?」
上条「上条さんサメにはちょっと強いぞ。ちなみにお前らサメを怖いイメージでとらえてるかもしれないけど、
実際人を襲うサメなんて全種類の中の一部だけなんだぜ?」
禁書「え、そうなの!?」
打ち止め「ウソー!?ってミサカはミサカは疑ってみたり」
166 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/02(金) 21:20:47.93 ID:4C2J3zw0 [8/18]
上条「ホントホント、実は殆どの種類が大人しいんだよ。そもそもサメは―――」
美琴「はい、長くなりそうだから省略。さっさと次行くわよ」
上条「ひでぇ!……インデックス、涎出てるぞ」
禁書「はっ!?………サ、サメさん、バイバーイ!ほら!とうま、行こ!」
上条(案の定、食う事考えてやがったなコイツ……)
打ち止め(あんな怖い顔なのに無害なんて……まるであの人みたい。ってミサカはミサカは内心でほくそ笑んでみたり)
―――――
―――マリンランド入り口前
――ガヤガヤ…
一方通行「―――ックシュン!」
御坂妹「ずいぶん可愛いくしゃみですね。とミサカは風邪ではないか心配します」
打ち止めに噂されているとは露知らず、一方通行は杖をつきながら空いている手で鼻の頭を擦った。
御坂妹はそんな彼のピッタリ横を歩いている。
その模様は、一見微笑ましいカップルに見えなくもない。
一方通行(……なンでか知らねェが、あのクソガキを急にシメたくなった……)
御坂妹「あ、入り口はここですね。とミサカはあなたの腕をひいて急かします。チケット買いましょう」
168 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/02(金) 21:29:42.66 ID:4C2J3zw0 [9/18]
一方通行「そンな急がなくても魚は逃げたりしねェだろォがよ。……しっかし…」
御坂妹「…はい?」
キョウハタノシイデートニシヨウネ ウン
イルカショータノシミダネ ハイ トミサカハ
ハマヅラ サメトカオソッテコナイカナ? ソントキハオレガマモッテヤルヨ
一方通行「…見事に周りはカップルだらけだなァ……」
御坂妹「ミサカ達もですよ?」
一方通行「やっぱコレって…デートなのか?」
御坂妹「ミサカが相手では……不満でしょうか?とミサカは不安になってみ――ひゃっ!?」
一方通行「誰がンなこと言った?くだらねェ事言ってねェでとっとと行くぞ」ワシャワシャ
御坂妹「あ、頭をかき回さないで下さいぃぃ!とミサカは懇願します」
仲の良さそうな雰囲気のまま、チケットを購入した二人は館内へ入っていった。
―――
一方通行「オイオイ、何だァこりゃあ……シャチかと思ったらやけに小せェじゃねェか」
御坂妹「まるで歓迎してくれているみたいですね。とミサカは手を振って返してみます………が華麗にスルーされました」
169 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/02(金) 21:32:31.84 ID:4C2J3zw0 [10/18]
一方通行「アホ、分かる訳ねェだろォが」
御坂妹「っていうか泳ぐの速いですね。あんなに泳ぎ回って疲れないのでしょうか…とミサカは心配します」
一方通行「マグロとかと一緒なンだろォ。止まると死ぬンじゃねェのか?」
御坂妹「あなたは海洋生物に興味があるのですか?とミサカは尋ねます」
一方通行「イヤ……あンましねェけど、来たからにはそれなりに楽しまねェとなァ。滅多に見ねェし」
御坂妹「………そうですか」
一方通行「なンだその間はァ?っつか、オマエはどォなンだよ?」
御坂妹「ミサカは最近図鑑やテレビなどでで海の生き物達を拝見しました。海はとても興味深いです……。
神秘的というか……未知の世界というか…」
一方通行「まァ地球の大半が海だしなァ。実際海には知られてない生物とかも腐るほどいるンじゃねェか?」
御坂妹「あなたにもロマンのカケラがあったとは……とミサカは笑いを堪えます」
一方通行「あァ?お魚の仲間入りしてェのかァ?なンなら一緒に泳がせてやってもイイぜェ?」
御坂妹「さ、さぁ次に行きましょー♪とミサカは戦略的撤退を図ります」
一方通行「オイ待てコラ」
―――
??「うわぁ……すげぇ……いきなりパンダみてぇなイルカかよ。どうだ、見えるか?滝壺」
??「うん、とても綺麗……はまづらは見える?」
――とある二人の若者も偶然そこにいた。
170 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/02(金) 21:35:22.41 ID:4C2J3zw0 [11/18]
浜面仕上…元『アイテム』の下っ端構成員。戦後、滝壺と交際を始める。基本チンピラ。
滝壺理后…元『アイテム』の構成員。浜面の現彼女。
浜面「あぁ…人多いけど、何とか見えるかな…」
滝壺「ねぇはまづら。私、シャチに……乗れるかな?」
浜面「さすがにそれは―――って、あれ?」
滝壺「どうしたの?はまづら」
浜面「イヤ……前の方に知ってるヤツがいたような……イヤでもまさか…」
滝壺「誰?」
浜面「俺の記憶が確かなら……間違いなく『アイツ』だよなぁ……けど……」
滝壺「確かめてくれば?」
浜面「イヤ、良いよ。折角のデートだしな。それにお前の側から離れたくねえし」
滝壺「……はまづら……馬鹿…///」
浜面「///……よ、よしっ!次行くぞ次!」
滝壺「あ、待ってよはまづら――」
人の多さが功を奏したのか、それとも館内が暗いせいか、距離数メートルまで近づいても
二人の『主人公』同士が気づき合う事はまだ無かった……。
※二人は付き合ってる設定です。
171 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/02(金) 21:40:30.45 ID:4C2J3zw0 [12/18]
上条&美琴&禁書目録&打ち止め――
上条「…………セイウチって、リアルだとこんなデカイのか…?」
美琴「トドとかよりはすごいわね」
打ち止め「………」
禁書「………」
まるで四人を威圧するように佇む巨大なセイウチに少女二人は言葉を失くす。
美琴「――あ、あくびした」
セイウチ「ふぁ~あ……」
上条「うわ、俺の頭が入りそうだ……」
禁書「すごい牙……ちょっと怖いかも」
上条「確かに、ガラス越しって言ってもなぁ……セイウチってアザラシみたいな感じに思ってたんだが、訂正だこりゃ」
禁書「食べようとしたら、逆に食べられそうだよ」
美琴「アンタ……あれでも食べる考えを捨てないってすごい事よ……?」
打ち止め「背中に乗れそうだね。ってミサカはミサカはじーっと見つめてみたり」
美琴「あんまり綺麗な絵じゃないわね…―――!」ブルッ
禁書「ん?どうしたの?短髪」
172 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/02(金) 21:42:12.48 ID:4C2J3zw0 [13/18]
美琴「……チョロっと冷えちゃったみたい……ねぇ、お手洗い近くになかったっけ?」
打ち止め「サメさんの辺りにあったよ。ってミサカはミサカは思い出してみる」
美琴「げ……あそこまで戻んの……けどまぁ仕方ないっか……じゃ、ゴメン。行って来るわ」
上条「じゃあ俺達はこの先にある休憩所にいるよ」
美琴「オーケー、そんじゃ――」
タタタタ……と来た道を引き返していく美琴。
それを見送った上条達は小休止のため、付近にある休憩所へ――
禁書「バイバイ、セイウチさん♪」
上条「さて、椅子もあるし、座ってジュースでも飲むか?」
打ち止め「さんせー♪ってミサカはミサカは自販機へゴー!」
―――
一方通行&御坂妹――
一方通行「――ほォ……コイツは……」
御坂妹「――うわぁ……」
二人の目の前に広がる海の世界―――サメやエイ、イワシの群れやタコなどと言った住人達が自然のままに遊泳していた。
その余りに神秘的な光景に心も癒されていく――。
173 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/02(金) 21:44:37.50 ID:4C2J3zw0 [14/18]
一方通行「まるで海ン中にいるみてェだ…」
御坂妹「潜水艦の窓からの眺めとは、まさにこれでしょうか…?」
一方通行「あァ、確か奥の方にもォ一つでっけェ水槽があンだろ?」
御坂妹「はい、この『海景色』に並ぶ巨大海中トンネル『海散歩』です。とミサカはパンフの知識を生かします」
一方通行「それって何か違うのか?」
御坂妹「ここは海底施設の窓みたいになってますが、ソッチはまるで海の中を歩いているような感覚です。
とミサカは説明します」
一方通行「……そりゃすげェ……最高に面白そォじゃねェか!」イキイキ
御坂妹(ようやく気分が乗ってきたようですね…とミサカは心の中で付け加えます)
――そんな会話をする二人の前を体長三メートルほどのずんぐりとしたサメが横切った。
ギロリとコチラに向けて放たれた眼光が印象的である。
一方通行「お?ついに海のハンターさンのおでましってかァ?」
御坂妹「オオメジロザメですね。とミサカはプロフカードを確認します」
一方通行「サメってのは意外と大人しいのが多いンだよな?確かワニザメとかジンベェザメみてェな…」
御坂妹「残念ながら…あれは雑食ですが、肉も好むようです。人を襲った記録もありますね……
とミサカは恐怖に顔を歪めます」
一方通行「まァ、あの見た目で小魚しか食わないってのも無理があるよなァ」
御坂妹「鯨などもそうですね。その代わり、莫大な量を摂取しますよ?」
一方通行「味より量ってかァ?チビチビ食うなンざ俺には無理だわ」
174 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/02(金) 21:47:29.74 ID:4C2J3zw0 [15/18]
御坂妹「とてもその体型から出る言葉とは思えませんね……とミサカはあなたの体を見つめながら呟きます」
一方通行「……今すぐサメの餌になりてェか?」
御坂妹「やだなぁいつもの冗談ですよ。とミサカは暴力反対を訴えます」
一方通行「しっかし、同じのばっか食ってよく飽きねェよなァコイツらも」
御坂妹「あなたこそ、いつもコーヒーばかり飲んでますよね?とミサカは指摘します」
一方通行「そりゃ好きだからだ。人間なンかは好きなモンと嫌いなモンが人によってバラバラだろ?まァ、コイツらに
好き嫌いの概念ってモンがあンのかどォかは疑問だがなァ。要は別に食う事に幸せを感じたりしねェって訳だ。つっても
根本的に種族が違うンだから、そもそも俺らに理解しろっつーのが無理な話だろォな…」
御坂妹「……まさに生物の不思議ですね。とミサカは同意します」
一方通行「不思議……ねェ…」
一方通行は、だんだんこの目の前の少女が軍用クローンである事を忘れつつあった。
――――
――とある駅前(水族館から割りと近い)
「――そろそろ……時間ですね。何かドキドキしてきました……」
――午後一時前。この駅には待ち合わせによく利用される大きな柱時計がある。
何人かが時計の下で人と待ち合わせている光景が今日も見られる中、初春はどこか
ソワソワしながら柱時計を見上げてそう呟いた。
176 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/02(金) 21:50:24.83 ID:4C2J3zw0 [16/18]
「もうすぐ……会えるんだ……///」
――と思ったら今度は頬を赤く染め、嬉しそうな表情を浮かべている。
本人は違うと言っていたが、どう見てもそれは『恋する乙女』の顔だった。
そんな彼女から少し離れた場所で温かい視線を送っている親友がいるのだが、
完全に『隙』だらけな今の初春は全く気づかなかった。
「おーおー、初春のヤツ嬉しそうな顔しちゃって………一時頃だからそろそろ
来ても良い頃よね……何か私までドキドキしてきた…」
何故か佐天も落ち着きなくソワソワし始めた。
流石にマズイかな…とも思ったが、いまさら引き返すのも面倒だし、帰っても
どうせ暇だ。こうなったら最後まで見届けよう…と、ここまで来てしまった。
―――
それから数分後……初春のところへ真っ直ぐ近づいてくる一人の男が目に入った。
「……………!」
初春はその男にまだ気づかないが、佐天は「お!」とその男を目で追った。
―――数分前
「――ハァ、ハァ……クソッたれが……すげぇ時間喰っちまったじゃねえか」タッタッタッタッ…
垣根帝督は走っていた。
177 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/02(金) 21:52:15.16 ID:4C2J3zw0 [17/18]
「全部あのメガネ警備員のせいだチキショォ……この俺を不審者扱いたぁどぉいう了見だっつーの…
黄泉川さんのケツの穴でも煎じて飲みやがれってんだ…」タッタッタッタッ…
走りながらも愚痴る辺り、流石である。
「だいたい、この格好のナニがそんなにおかしいってんだよ………まぁ怪しいのは自覚してるけどよ……
しょおがねぇだろぉが…」タッタッタッタッ…
―――愚痴って走り続ける事数分、駅前で立ち止まってビルのガラスに映る自分を見てチェックする。
「――よし、完璧!初春さんはもぉ来てんのかな……………お、いたいた」
柱時計の下で待つ初春の姿を確認した垣根は、ゆっくりと歩み寄っていった――。
―――そして………ついにその時は来た。
「あの……初春さん……だよね?」
「―――!」
――声をかけられて振り返った初春の目の前に……彼はいた。
初春「カッキーさん……ですか?」
垣根「あぁ、まぁな」
――初春にとって初対面、垣根にとっては三度目となる対面だった。
212 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/04(日) 00:09:13.86 ID:b2z3MdA0 [2/14]
一方通行&御坂妹―――
二人は巨大水槽『海景色』をしばらく眺め、海の神秘を満喫していた。
彼らにとってはそうとう癒される光景だったのだろう……。しばし無言の二人だったが、
それは気まずい空気が流れているという訳ではない。
悠然と自然のままに泳ぐ魚達から目を離したくなかったのか、いつの間にか会話も忘れて
水槽に見入る一方通行と御坂妹――。
――そしてしばらく経ったところで、ようやく御坂妹が口を開いた。
御坂妹「――あの……」
一方通行「――あ?」
――何故かモジモジしている御坂妹。
御坂妹「お手洗いはどこでしょうか…?とミサカは尋ねます」
少し小さめの声で恥ずかしそうに言う御坂妹だが、一方通行にはハッキリ聞こえた。
彼は後ろを振り返って――
一方通行「お、ちょうどあそこにあるなァ。ここで待っててやっから行ってこいよ」
御坂妹「はい……それでは失礼します――」
215 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/04(日) 00:12:30.36 ID:b2z3MdA0 [3/14]
――すぐ後ろの端にある化粧室に御坂妹は入っていった。
それを見送った一方通行は再び前を向いて海の景色を堪能する。
(こン中は…腐った人間が踏み込ンで良い領域じゃねェよな……)
――そんな事をふと考えながら……。まるで日常を忘れるような光景に彼はすっかり釘付けになっていた。
元々こういう自然の風景を眺める事は嫌いではない。
どうせなら、しっかり目に焼き付けよう。と、一方通行は目の前を通過した巨大なエイを目で追った。
(……………)
一方通行は気づかなかった。いや、今の彼なら気づかなくても仕方ないだろう…。
自分の少し離れた後ろを通過し、化粧室に入っていく見知った少女の姿に……。
美琴(あぁもう!何でこんなに混んでんのよ!?通りにくくてしょーがないっての!)
人混みを掻き分けるようにしながら進んできた美琴は何とか化粧室を見つけて入る。
その際、すぐ近くにいる一方通行に気づく事はなかった…。
美琴(案の定…ってヤツね。全部閉まってる……)
当然、化粧室もそれなりに混んでいた。幸い列ができる程ではなかったが、割りと多めの個室は全部『赤マーク』
だった。美琴は若干イラついた表情になる。
232 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/04(日) 00:46:33.37 ID:b2z3MdA0 [4/14]
>>230 嬉しいお言葉ありがとっす!
美琴(………まだぁ?…誰でも良いから早く出なさいよね…)
――その時、ひとつの個室からザー…と水の流れる音が響く。
どうやらここの人が終わったようだ……。美琴はすぐ入れ替わりで入れるようにさりげなく扉付近で待つ。
そして……ガチャリと扉が開いた―――。
美琴「――――!!?」
御坂妹「――――!!?」
御坂美琴、危うくゴール手前で失禁のピンチ!!
―――――
――柱時計でついに対面する初春飾利と垣根帝督。もっとも、垣根の方はマスクと帽子で顔を隠しているが……。
初春は、そんな垣根の格好に――
(カッキーさんって……寒がりなのかなぁ…)
――と、垣根にとってはありがたい感想を抱いてくれた。
233 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/04(日) 00:47:54.78 ID:b2z3MdA0 [5/14]
垣根「悪いな。待たせちまったかい?」
初春「い、いえ!私も今来たところですから!」
垣根「そうか…なら良かった…」
初春「あ…あのぉ……カッキーさん、本名は?」
垣根「『垣 帝人(かき ていと)だ。今まで通り『カッキー』、もしくは『ていとくん』で良いぞ」
初春「は、はぁ……では……ていとくん…で」
垣根「初春さんは下の名前何て言うの?」
初春「か…飾利です」
垣根「オーケー。じゃ、『かざりん』で」
初春「か、かかかかざりん!!?///」
垣根「あれ?友達とかからそう呼ばれねえの?」
初春「よ、呼ばれたことないですよ!……あの、ていとくんさんは…風邪ですか?」
垣根「オイwwていとくんさんって何だよ?普通にていとくんで良いって」
初春「す…すいません!///つ、つい『さん付け』が癖になってて……///」
垣根「ハハハ、初春さんって面白ぇな。イヤ別に風邪じゃねえけど、元々寒がりでさ……」
初春「そ……そうなんですか…」(顔見えないんですけど……)
垣根「ホント最近は冷えて困るわ。まぁ喉痛めてるし、油断してると風邪こじらせそうだからマスク
つけてっけど気にしないでくれ」
初春「は、はい。すみません……体調悪いのに……あと、この間は本当にありがとうございました」
垣根「気にすんなって……当たり前のことしただけだ」
234 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/04(日) 00:51:17.00 ID:b2z3MdA0 [6/14]
初春「ていとくん…さん…は……///」
垣根「やっぱり『カッキーさん』で良いぞ?」
初春「うぅ……すいません…」
垣根(可愛いなコイツ……頭の花は相変わらず意味不明だけど)
初春「あの、カッキーさんは能力者なんですか?」
垣根「無能力者だ」
初春「………え?ウソ…」
垣根「本当だ。たまたま喧嘩慣れしてるだけだよ」
初春「そ、そうなんですかぁ……」
垣根「がっかりしたか?」
初春「い、いえ!ただ……あの不良達から私を助けたって聞いたから、てっきり能力者なのかなぁって…」
垣根「どうも俺には才能がないらしい。まぁ、能力とかレベルが全てじゃないからな」
初春「そうですよね!同感です!」
垣根「……とりあえず、ここで話しててもあれだし…移動すっか?」
初春「はい!あ…あの…一緒に行きたい場所があるんですけど……」
垣根「ん?ならそこ行くか。先導してくれ」
初春「は、はい。では、行きましょう――」
―――軽く自己紹介も終え、二人は歩き出す。
235 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/04(日) 00:53:25.78 ID:b2z3MdA0 [7/14]
初春はまだ若干緊張しているのか、ぎこちない足取りで歩き始めた。
そのまま二人は駅に向かう。その様子を監視していた佐天涙子も何故か後を追い始めた。
垣根(よし……どうやらバレてねえ様だな。フフ、まぁざっとこんなモンよ)
初春(この人……やっぱりどこかで見た様な……名前もどこか聞き覚えが……うぅ、思い出せない…)
――二十メートル背後
佐天(顔が見えない……コッチ向かないかなぁ……ってか背ぇ高くない?マジでイケメンの予感が……クソォ、初春めぇ~~…)
―――――
――館内・女子トイレ
美琴の膀胱は一気に縮まった……。失禁は辛くも逃れたが、それよりも彼女には気になる事ができてしまった。
ともあれ、まずは用を済ませてからだと個室に入る。
御坂妹(……予想外のハプニングです…とミサカは平静を装いつつも内心動揺を隠せません…)
236 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/04(日) 00:56:10.78 ID:b2z3MdA0 [8/14]
用を済ませて出た途端に美琴と遭遇した事は、彼女にとっても全く予想外の事態だった。
「ちょろーっとそこで待ってなさい」と言われて逃げ道を封じられた御坂妹は静かに佇み、美琴が出てくるのを
待っていた。
――やがて、スッキリした顔で美琴は出てきたが……御坂妹の顔を見た途端、再び引きつった表情に戻って尋ねる。
美琴「ふー…………で、アンタは何でこんなトコにいるのよ?」
御坂妹「ミサカは現在『あの方』と楽しいひと時を満喫中です。とミサカはお姉様の問いに答えます」
美琴「………それって……やっぱり…」
御坂妹「はい、一方通行です。とミサカは躊躇いなく明かします。さらに彼を外で待たせているミサカとしては、
一刻も早くこの場から立ち去りたいのですが?とミサカは許可を求めます」
すでに背を向けて去る気満々の御坂妹。美琴はその背中に声をかける。
美琴「…………待ちなさい」
御坂妹「……んだよ?とミサカは不機嫌な顔で振り向きます」
美琴「アンタ……」
カツ、カツ、カツ、とゆっくり御坂妹に近づく美琴。
御坂妹「な、何ですか……?とミサカは思わず身構えます」
美琴「アンタに……お願いがあるんだけど」ニコォ
御坂妹「………は?」
いきなり怪しい笑みを浮かべる『お姉様』に妹は戦慄した――。
238 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/04(日) 00:58:02.20 ID:b2z3MdA0 [9/14]
―――垣根&初春……+佐天
電車内で、楽しげに会話しているように見える二人に……佐天涙子は何故か新たな野望を抱いていた。
(……何よあの人…………どぉ見てもただの怪しい人じゃない!初春絶対騙されてるよ!)
確かに……真っ先に職質をくらった垣根の風貌は怪しさに満ちていた。
親友として初春を応援する目的が、親友の安全と無事を守る事にすっかり変わってしまった。
いつ初春が連れ込まれて暴行されてもおかしくない。そう考えると、ここで帰る訳には行かないのだった。
(近くに、あの男の仲間がいるかも知れないから……気は抜けない。…初春は私が守らないと!)
―――完全に誤解した少女は、親友から目を離すまい…と決意を固めた。
―――――
――佐天のそんな思惑など知るはずもないお花畑少女初春は、垣根との話に夢中だった。
その表情からは完全に緊張が無くなり、笑顔が溢れていた。
初春「カッキーさんは高校生なんですか?」
垣根「まぁな。つっても、そこいらの馬鹿校だけど。かざりんは何処中?」
239 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/04(日) 01:08:36.20 ID:b2z3MdA0 [10/14]
初春「柵川中学…です///」
まだ「かざりん」と呼ばれるのに慣れないのか、少し照れながらも答える初春。
まさに初々しいとはこの事だろうか…。
初春「高校生かぁ……大人っぽいですね」
垣根「イヤ、そんなことねえよ。ガキっつーか……少なくとも俺の周りは馬鹿ばっかだったしな…」
初春「だった……?」
垣根「あ、いや、今もそぉなんだけどな。ハハハ…」(やべぇ)
初春「カッキーさん…」
垣根「ん……何だ?」ドキドキ
初春「カッキーさんも……やっぱり能力のレベルを上げたいって思いますか…?」
垣根「……えっ?」
初春「あ、すいません!失礼なこと訊いて……」
垣根「イヤ、気にしなくて良いぞ。俺は……そうだな……」
初春「…………」
垣根「やっぱ……せっかく学園都市に来たんだから、そりゃレベル上がったら嬉しい…かな」
初春「幻想御手(レベルアッパー)って…知ってます?」
――訊きづらそうな表情で俯きながらも、しっかり聞こえる声で初春は垣根に尋ねた。
240 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/04(日) 01:14:33.39 ID:b2z3MdA0 [11/14]
垣根「それって……去年流行ったヤツか?」
初春「はい」
垣根(そう言やぁ…去年の夏頃それ使ったヤツにやたら挑まれたな……全員返り討ちにしてやったけど)
――ひとり回想する垣根に初春は続ける。
初春「実は……私の友達にレベル0がいるんですけど、私…その人は自分が無能力者なのを気にしてないと
思ってたんです」
垣根「………」
初春「けど……その友達は幻想御手を使ってて……本当は自分に能力がないのをすごく気にしてたみたいなんです。
私も正直自分のレベル上げたいし……」
垣根「……確か温度を一定に保つ能力だよな?……それ、かなりすげぇんじゃ…」
初春「そ、そんな……こんなの全然何の役にも立ちませんよ。レベルも1ですし…」
垣根「そうか?『自分だけの現実』(パーソナルリアリティ)が組み立てられれば案外強大な力かも知れねえぞ」
初春「そう…ですかね…?」
垣根(俺の未元物質も最初はしょぼかったしなぁ……っつか、レベル0じゃなくて3ぐらいって言っとけば良かった…)
初春「………カッキーさん?」
垣根「え?あぁ悪い。んで、何でその話を?」
初春「いえ……ただ、カッキーさんはどう思ってるのかなぁって…」
垣根「………うーん、あんま気にした事ない…かもな」
初春「?」
垣根「さっきも言ったが、何もレベルだけが全てじゃねえし。そんなモンあったってどぉにもならねえ事だってある」
初春「………」
垣根「レベル0や1が必ずしもレベル5に劣るとは思っちゃいねえし、逆に優れている面もあるかもしれねぇ。それに、レベル
が高けりゃ幸せなんて事もねぇよ。それなりに苦しい思いはしてるだろ……お前の知り合いにはそぉいうヤツいねえのか?」
初春「……います」
241 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/04(日) 01:19:18.56 ID:b2z3MdA0 [12/14]
垣根「ならソイツらにも今度訊いてみな?俺みてぇな無能者の話よりはよっぽど良いと思うぜ?」
初春「す…すいません!何だか私……すごく失礼なこと訊いちゃって…」
垣根「あ、別に怒ってるとかじゃないぞ?……まぁ気持ちは分かるかな……」
初春「けどカッキーさんも……レベル5に知り合いがいるんですか?」
垣根「え?何で…」
初春「さっきの言い方だと、そんな風に聞こえましたから…」
垣根「ま、まぁな……」
初春「どんな人なんですか?」
――垣根は一呼吸置いて、少し恨めしそうに吐いた。
垣根「――ムカつく野郎だ」
それが一方通行か、はたまた自分自身の事なのか……垣根の口調からは読み取れなかった。
そんな二人から離れた座席で――
佐天(――何の話してるんだろ……こっからじゃ遠くて分かんないや。でもこれ以上近くに行ったらバレそうだし…)
――チラ、チラ、と様子を伺う怪しい女に向かい合う乗客は怪訝な顔を浮かべていた。
242 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/04(日) 01:21:34.15 ID:b2z3MdA0 [13/14]
上条&禁書目録&打ち止め―――
――館内休憩所
ジュースも飲み終わった上条達三人はお手洗いに行った美琴の帰りを待っていた。
打ち止め「お姉様遅いなー…ってミサカはミサカは心配してみたり」
上条「こんだけ人がいるからなぁ……きっとトイレも混んでんだろ。まぁ気長に待とうぜ」
禁書「とうま、ジュースおかわり!」
上条「インデックスさん、三杯目ですよ?お前よくトイレ我慢できるな…」
禁書「うるさいんだよ!それよりお昼まだかな?お腹ぺこぺこなんだよ」
打ち止め「ミサカもお腹すいたかも…ってミサカはミサカは空腹をアピールしてみる」
上条「……もう一時過ぎてんのか……確かに、そろそろどっかでメシ食わないとな。んじゃ、御坂が戻って
来たらその辺のレストランでも入るか?」
禁書・打ち止め「さんせー♪」
――と、その時……
打ち止め「――あ!お姉様だ!ってミサカはミサカは発見してみたり!」
禁書「ホントだ!待ちくたびれたんだよ」
上条「お、来たか。――おーい!御坂、コッチコッチ!」
「――お待たせし……お待たせ!とミ……トイレ混んじゃって参ったわよ!」
上条・禁書・打ち止め「?」
ここでスクリプト落ち
続きます
―――朝、黄泉川家
「―――……………ン…」
カーテンから覗く陽射しで一方通行は目を覚ます。
眠そうな目を擦り、時計を見た。
「………九時か…」
久々に学生の登校時間を過ぎる時刻に起きた一方通行は、ふと隣りの布団を見る……。
しかし、そこに寝ているはずの居候、垣根帝督の姿はなかった。
(あの野郎……珍しく早起きじゃねェか。どンだけ気合い入ってンだ……今日の『デート』によォ…)
とりあえず起きるか…と一方通行も体を起こした。
垣根が今日ある少女とデート(?)をする事を聞いたのは三日ほど前。
就寝につく直前、別に訊いてもいないのに垣根から勝手に喋り出したのだ。
「オマエの自慢話には興味ねェ」と一蹴したのは勿論だが……どこか不安気なテンションだったのが気になる……。
いや…自慢と言うよりは、相談に近かったかもしれない……。
(確か待ち合わせは午後からだろ?なら別にンな早く起きる必要なンてねェじゃねェか…
まァ、俺の方はちと急がねェとやべェかもな……)
――そう、実はこの日……一方通行もある少女と会う約束をしていたのだ。
当然打ち止めは連れていけない。だが、今日は託児所代わりに使える垣根も出てしまう。
(あのクソガキは……どォすっかな……)
40 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/28(月) 20:10:37.96 ID:ZZXx0.60
この重要な問題について一分ほど考えた一方通行は床に落ちた自身の携帯電話を拾った。
(仕方ねェ……ここはアイツに任せるしかねェか)
それから電話帳を開き、目的の人物のメモリを見つけた後、迷う事なく電話を掛けた。
どうやら数コールで相手は出たらしい。
「おォ、俺だ―――」
―――
――数分前、上条当麻はいつもの浴室兼寝室でゆっくりと目を覚ました。
いつ見ても体に悪そうな体勢だ……。
「………………」
そのまましばしボーッとしていたが、やがて思い出したように立ち上がった。
「――やべぇッッ!!課題やらねえと!」
浴槽から出る時、淵に足の小指をぶつけたりと軽く不幸な目にあうが、今の上条にはそんな事で叫んで
いる余裕などなかった……。
「時間がねぇ!何としてでも今日中に数学は終わらせなきゃならねえのに!クソッ!――」
41 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/28(月) 20:16:23.43 ID:ZZXx0.60
バタバタと机に座り、まるでクイック再生でもしているかのような動きで課題に取り組む上条。
しかし、肝心の問題を解くスピードだけは速くはならなかった。
そんな朝から慌しい上条に反応するかのように、ベッドの上の布団が動いた。
「――うーん……とうま……また『かだい』やってるの?」
少し大きめのパジャマを着た禁書目録がのそりとベッドから起き上がった。
上条は振り返りもせずに――
「起きたか?メシはラップに包んで冷蔵庫に入れてるから、勝手に食べてくれ」
――と、余裕も穏やかさも感じられない声で告げた。
「むぅぅ……とうま、冷たいんだよ…」
少し泣きそうな顔で呟く禁書目録。
いつもならここで噛みつきのひとつでもくれてやるのだが、上条の背中から発する
鬼気迫るオーラがそれを許さなかった。
一昨日も噛みつこうとしたのだが、初めて本気で応戦されてしまってから禁書目録は少し弱気に
なっていた。
当然上条は暴力を振るったり怪我を負わせたりはしないが、ある意味本気の『ヤバイ目』をしていた。
禁書目録はそんな上条に戦慄し、本能に従って引き下がったのだ。
もしあのまましつこく食い下がっていたらと思うとゾッとした。
「……………」カリカリカリ
「……とうまが怖いんだよぉ………」
42 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/28(月) 20:24:02.37 ID:ZZXx0.60
禁書目録はかつて見た事がない程に緊迫している上条にそれ以上言葉が出なかった。
「…………」
冬休み終了まであと四日。それまでにこの机の上にある大量の課題を全て終わらせなければならない。
元々、禁書目録に『自分離れ』をさせようとしていた事もあってか、上条の心は今…鬼と化していた。
……はずなのだが――
「――グスッ、グスッ……うぅぅ…」
「………?」
後ろで鼻を啜る声まで上げられては、流石に心を痛めずにいられなかった。
鬼にしたはずの心は……啜り泣きであっという間に崩された。
所詮、彼は善人である。すぐ近くで泣いている少女を放置する事など、
到底できやしないのだ。
「――……ふぅ……ごめん、インデックス……俺…ちょっとどうかしてたみたいだ……」
ふいに手を止めてそう言いながら振り返った上条の顔は、いつもの優しい顔に戻っていた。
憑りつかれた雰囲気も鬼気迫るオーラも完全に消えていた。
今は何ともバツの悪そうな顔を禁書目録に向けている。
「―――とうまぁ……とうまが戻ってきたぁ!」
――椅子に座ったままの上条に飛び掛るように抱きつく禁書目録。
上条はその体を優しく抱きしめてやった。
43 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/28(月) 20:29:24.67 ID:ZZXx0.60
上条「ははっ、本当に悪かったよ。なかなか進まねえし量多いしで焦っちまってつい……補習も課題も
自業自得なのにインデックスに当たるなんて……最低だ俺…」
禁書「ううん、いいんだよ!私、とうまの邪魔はしないから………だから……ここにいていいかな……?」
上条「馬鹿、当たり前じゃねえか。ここはもうお前の家でもあるんだから」
禁書「うん!ずーっととうまといっしょだよ!」
上条「……………え?」
禁書「ッッ!!!ち、ちが――」
感極まってつい爆弾発言をしてしまった禁書目録は、顔を真っ赤にして取り乱した。と、その時――
――Purrrrrrrr♪と、上条の携帯電話が鳴り出した。
上条「――ん?誰だ?」
禁書(ホッ……たまには良いタイミングで掛かって来るんだね…)
――着信表示は『一方通行』だった。上条はすぐに通話ボタンを押して携帯を耳に当てる。
『――おォ、俺だ』
上条「おう、何か久しぶりな気がするな。っつってもほんの数日くらいか?」
『そォだな。っつかオマエ、あれから超電磁砲に電話したか?』
44 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/28(月) 20:35:49.25 ID:ZZXx0.60
上条「へっ?御坂?……いや、してないけど……」
『やっぱりな……はァ…』
――急に溜息を吐いた一方通行に上条はポカンとした。
上条「は?どういう事だ?メールは返したハズだけど……」
『そのメールがそっけないって怒ってたンだよ。詫びの電話も寄越さないとはどォいう事だって言ってたぞ?』
上条「えぇぇぇ…………マジで?」
『そォいう訳だ。後で電話してやれ』
上条「うわぁ……そう言や結構あん時焦ってたからなぁ……つい適当に返しちまったかも……」
『勘弁して欲しいぜ全くよォ……俺らは超電磁砲の伝言役じゃねェンだぞ。しっかりしやがれっての』
上条「ん?…『俺ら』って?」
『あァ、垣根の野郎にも電話してたぞアイツ』
上条「マ、マジっすかぁあ!?っつーかアイツら番号交換してたのか……って、そう言えばお前も!いったいいつの間に!?」
『ンな事ァどォでも良いだろォが。とにかく超電磁砲からの伝言は確かに伝えたからな?』
上条「あぁ、確かに伝わった……不幸だ……垣根にも後で詫びなきゃな…」
『はァ?あンな非常識のボケナスに詫びなンざいらねェよ』
46 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/28(月) 20:47:31.43 ID:ZZXx0.60
上条「何?また喧嘩したのお前ら。ルームメイトなんだから仲良くやれよ」
『冗談じゃねェ!あの野郎マジでいっぺン死ンだ方がイイわ。ってか、いっそこの手で殺してやりてェわ』
―――そのまま垣根への愚痴が始まり五分が経過した……。
『―――でよォ、あのクソ野郎それから――』
上条「ハイハイ、お前らが仲良いのはよーく分かったからもうその辺にしときましょうね」
『は?オマエちゃンと話聞いてたのかァ!?』
上条「聞いてた上でそう思ったんだから仕方ないだろ。んで?もうないならそろそろ上条さん切りたいんですが…」
『オイ待て、まだ言ってねェ事があったわ。っつかコッチが本題だ』
上条「おう、何だ?」
『クソガキを預かれ。以上』
上条「………ハイ?」
――一瞬、思考が完全にフリーズした。
『っつー訳で、今から行くわ。じゃあな』
――そう言って電話を切ろうとする一方通行を慌てて止める上条。
上条「待て待て切るな一方通行!ちゃんと順を追って説明してくれ」
47 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/28(月) 20:55:13.78 ID:ZZXx0.60
『あ?順を追うも何もねェだろォがよ。もォ少ししたらクソガキをソッチに送るから、今日一日しっかり面倒見てやれ
ってだけの話だ』
上条「……何で?」
『今日は黄泉川も俺も垣根も、珍しい事に芳川までもがいなくなっちまうンだよ。その間、アイツ一人ぼっちじゃねェか』
上条「……イヤ、だからお留守番させれば……」
『はァ!?ありえねェ事ほざいてンじゃねェぞ三下がァ!!打ち止めにそンな危ねェ橋渡らせるってのかァ!?』
上条「危ない橋って……留守番くらいで大げさな…」
『もしテロでも起こったら誰がアイツを守ンだァ!?あるいはアイツ一人の時に火事にでもなったら誰が助けンだァ!?
帰った時にいなくなったりでもしたらオマエどォ責任とってくれるってンだよ!!あァ!?』
上条「わ、悪かった。俺が悪かった。お前の言う通りだよ。だからそんなに怒んなって……」
一方通行が打ち止めに対して過保護だという事をすっかり失念していた上条であった……。
『チッ……まァそォ言うこった。もォ少ししたら家出っから――』
上条「――待った!俺…課題終わらせないとマズイんだよ……だから、その……御坂にでも預けたらどうでしょう?」
『もォそこまで行ってる時間がねェンだよ。あン?まさかイヤだとか抜かす気じゃねェだろォなァ?』
上条「イヤイヤ!そんな事は断じてありません!……けど……こないだも言ったがマジで課題の量が半端ないんだよ……
このままやっても上条さんの頭じゃあと四日で終わるかどうかってくらいなんだ…」
『安心しろォ。今日打ち止めがオマエと一緒にいて『楽しかった』っつったら、俺が明日付きっきりで課題手伝ってやるからよォ』
上条「――え!!?」パァァ
48 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/28(月) 21:05:12.92 ID:ZZXx0.60
上条「そ、それは本当かッッ!?」
『ま、預かり料って事にしとけ。どンだけ量あるか知らねェが、この俺も手伝ってやるってンだから、
一日で終わンだろォ』
上条「……ウソ……マジ…?」
『まァ、それでもイヤだっつーンなら無理強いはしねェけどな。……仕方ねェから他当たるわ――』
上条「――んんやりますッッッ!!!」ビシッ!!!
『………あァ?』
上条「この上条当麻!全力を持って打ち止めに楽しい一日を提供する事をここに宣言しますッッ!!
ていうかやらせて下さい一方通行様ぁ!!」
『………なンつーか……よっぽど切羽詰まってやがったンだなァオマエ……』
上条「分かってくれるか……友よ」
――こうして、交渉は成立した。心の中でガッチリと握手を交わす。
ちなみに、この『即興、打ち止めを楽しませようツアー』にさらなる参加者が増える事を彼はまだ知らない。
『まァ良い、とにかく今から打ち止めをオマエン家まで送りに行く。オマエを信用してねェ訳じゃねェが、
一応言っとくぞ?』
上条「ん?」
49 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/28(月) 21:08:51.99 ID:ZZXx0.60
『手ェ出しやがったりしたら……たとえオマエでも容赦なくぶっ殺すからなァ』
上条「――出さねえよ!!」
『おォ、信じてやる。そンじゃ後でな――』
上条「あぁ、待ってるぞ!じゃあな――」ピッ
一方通行との電話を切り終え、上条は両手をグッと握り喜びを表した。
電話に出る前とは明らかに表情が違っていた。
上条「――よしっ!よぉしっ!!希望が出てきたぜ!これなら何とかなるかも!」
何と言っても学園都市で最高の頭脳を持つ一方通行が協力してくれるのだ。
学校の先生自ら手伝いに来てくれるようなものである。いや、それ以上に強力な助っ人だ。
上条は、「失敗は絶対に許されないぞ!」と自分に気合を入れた。
そんな上条の背後にユラリ…と人の影が――
禁書「………とうまぁぁ……お腹すいたぁぁ」グウーー…
上条「!?――わ、悪いインデックス!待たせちまったな!すぐメシにすっから、もう少しだけ待っててくれ」
禁書「…そうしてくれると嬉しいかも。ところで、電話は誰からだったの?」
上条「あぁ、一方通行だ。実は――」
――上条は電話の内容を禁書目録にザッと説明した。
102 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 02:07:41.22 ID:G6OIvQk0 [3/42]
――禁書目録に説明中――
上条「――って訳だ。打ち止めが来たら三人でどっか遊びに行こうな」
禁書「ホント!?わーい♪……でもとうま、『かだい』は大丈夫なのかな?」
上条「ふっふっふ……安心してくれ。もうその心配はなくなりつつある」(むしろ打ち止めを楽しませるためにも出かける必要がある)
禁書「そうなの……?」
上条「あぁ、という事でメシ食ったら出かける準備だ。今日は思い切り遊ぶぞ!」
禁書「うんっ♪」
元気良く返事を返す禁書目録に背を向け、キッチンに立つ上条。
朝食は夕べの残り物で済ますつもりだったのだが、気が変わったらしい…。
包丁を持ち、すっかり慣れた手つきで野菜を切る上条。
「~~~♪」
鼻唄交じりに料理する上条は昨日とはまるで別人のようだった……。
103 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 02:13:01.02 ID:G6OIvQk0 [4/42]
―――黄泉川家・一方通行部屋
――「………」パタン
一方通行は携帯電話を折りたたみ、立ち上がって杖を持ち自室を出た。
黄泉川は仕事に行き、芳川は研究者だった時の友達と朝から会うと言っていた。そして、垣根は午後から初春と三度目の
対面を控えていた。……もっとも、初春はそれに気づいていない……。
リビングに出ると……打ち止めと垣根が仲良く談笑しながら寛いでいた。その光景に軽くイラッとしたが、
構わず冷蔵庫からいつもの缶コーヒーを取り出し、ソファーに座って飲み始めた。
そんな彼に気づいた二人は声をかける。
垣根「よう、誰と電話してたんだ?」
打ち止め「おはよー!急に怒鳴り声が聞こえてビックリしたよ。ってミサカはミサカは朝から不機嫌なアナタに臆せずに話しかけてみたり」
一方通行「オマエらには関係ねェ」
説明するのも面倒だ。とでも言いたげにコーヒーを啜る。
飲み終えた一方通行は垣根の「うっわ、つまんね」という野次を無視して打ち止めに声をかけた。
一方通行「オイ、とっとと着替えて出かける準備しろ」
打ち止め「えっ?」
一方通行「今日は俺もこのカスも用事があンだ。オマエは三下の所に行くンだよ」
打ち止め「えぇっ!?ってミサカはミサカは驚きを隠せなかったり!」
垣根「さっきの電話、やっぱ上条だったのか…」
一方通行「……まァな、それがどォした?」
104 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 02:21:05.16 ID:G6OIvQk0 [5/42]
垣根「いや…別に…」
打ち止め「なんでもなーい…」
一方通行「あァ?ンだよそのツラァ…」
垣根「……お前、自分が何叫んでたか覚えてねえの?」
一方通行「あ?」
打ち止め「『もしテロでも起こったら誰がアイツを守ンだァ!?あるいはアイツ一人の時に火事にでもなったら誰が助けンだァ!?
帰った時にいなくなったりでもしたらオマエどォ責任とってくれるってンだよォ!!』…ってミサカはミサカはじーん、と
思い出して感動してみたり」
一方通行「……………」
垣根「さっすが学園都市最強♪過保護レベルも第一位ってか?」
打ち止め「あのね、この人ミサカが石に躓いてコケたりするとすぐ消毒液と絆創膏買ってきてくれるんだよ。ってミサカはミサカは
優しいパパを演じる一方通行の武勇伝を報告してみる」
垣根「そこいらの親父より良い親父じゃねえか…」
一方通行「……………」
打ち止め「あとねあとね!ミサカがお鍋のアク取ろうとしたりしたら『火傷すンだろォが!俺がやっからオマエは取り皿構えてろ!』
って言うんだよ!」
垣根「………ぷっ」
一方通行「…………」
打ち止め「この人の武勇伝まだまだあるよ!次はね―――ってイタタタタ!!」
一方通行「グチャグチャ言ってねェでとっとと着替えてこいってンですよォこンのクソガキがァァ」グーリグーリ
打ち止め「ご、ごめんなさぁーーい!!」
垣根(良いなぁ……俺も打ち止めちゃんにグリグリしてみよっかな……けど今そんなことしたら確実に殺されるよな…)
一方通行「オマエも打ち止めも長生きしてェンなら、さっきの話全部忘れとけ。イイな?」ギロリ
――打ち止めに制裁を加えながら垣根を睨んで一方通行はそう言った。
105 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 02:24:36.20 ID:G6OIvQk0 [6/42]
垣根のそんな思考に気づくはずもなく、一方通行と打ち止めは着替えのため自室に戻った。
残された垣根は――
垣根「大丈夫……大丈夫だ。落ち着け、俺よ…」
――と、何やら自分に言い聞かせていた……。
―――
――その頃、常盤台女子寮――
「じゃ、行ってくるわね。黒子」
――常盤台指定のコートに身を包んだ美琴はルームメイトの黒子にそう言った。
「お姉様……上条さんにもご予定があるのですし、やはり連絡をとってから出られた方がよろしいのでは……?」
黒子はすっかり諦めた顔で言葉を返したが、美琴はすでに恋の暴走状態になりつつある……。
こうなった美琴を止められる人間は知らない。
「何言ってんのよ?あの馬鹿、この美琴様にここ数日電話もよこさないばかりか、どう見ても
手抜き丸出しのメールまで返してきたのよ?こうなったら直接乗り込んで一発カマしてやんないと気が
済まないっつーの!」
106 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 02:31:32.01 ID:G6OIvQk0 [7/42]
黒子「やはり……止めても無駄ですのね……」
美琴「無駄よ」キッパリ
黒子「そこまであっさり即答されては……もうわたくしは入り込めませんの…」
美琴「ごめんね…けど、アイツの事だけはいくら黒子でも譲れないの……」
黒子「いいえ、いいんですの。もう諦めましたわ。どうぞわたくしに構わずに行ってらっしゃいませ」
美琴「今度さ、どっか美味しいもの食べに行こ?」
黒子「え!?まさかそれって……お姉様からのデーt」
美琴「当然、初春さんと佐天さんも誘って…ね?」ニコッ
黒子「………ですわよね……勿論ですの」
美琴「うん、ありがと。さて…行くか……じゃあね――」
――バタン、と美琴は部屋を後にした。
黒子は美琴が出て行った後、しばらく経ってからこう呟いた。
黒子「お姉様……わたくしはお姉様自身を『諦めた』とは言ってませんの……いつか、必ず振り向かせてみせますわ……」
――今の段階では、とてもありえない幻想を持ち続ける少女がそこにいた。
こうして美琴はアポ無しで上条宅へ――
107 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 02:36:15.69 ID:G6OIvQk0 [8/42]
――初春宅――
すでに起床して朝食も済ませた初春と佐天。
食後のコーヒーを飲んでいる佐天はどこかソワソワしている初春に気づいた。
初春「………」ソワソワ
佐天「……初春ぅ、さっきから落ち着きないよ?大丈夫?」
初春「だ、大丈夫ですよ!」
佐天「……ま、『初デート』だから無理もないか。待ち合わせって何時からだっけ?」
初春「い…一時頃です…」
佐天「ねぇねぇ、私もついてってやろっか?」
初春「言うと思ってました!絶対駄目です!」
佐天「そんなこと言わずにさ、ちょっとだけ!ひと目見たら帰るから」
初春「駄目です」
佐天「ね~ん♪初春~ん♪」
初春「気持ち悪いです」
佐天「ひどっ!」
初春「甘えたって無駄ですから」
108 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 02:38:27.20 ID:G6OIvQk0 [9/42]
佐天「まだ喋った事怒ってるの?……だから悪かったってば。つい口が滑っちゃったんだって」
初春「…………別に、もう気にしてません」
――そう、美琴や黒子が今日の『初デート』の事を知っていたのは、佐天がうっかり喋ってしまったからだ。
美琴から「デート、上手くいくと良いね」と言われた途端、佐天に口止めをするのをうっかり忘れていた事を後悔した
のは言うまでもない。とは言え、美琴も…そしてなんだかんだで黒子も応援してくれたので、今では良かったと思って
いる。しかし、佐天が調子に乗ってしまったのは事実なので、少しぐらい反省してもらおうと初春が思ってても何ら不思議はない。
初春「佐天さん、先に言っておきますけど……もしついて来たりしたら……絶交しますからね?」
佐天「じょ、冗談だって……行かないから……その代わり、後でちゃんと話聞かせてよ?」
初春「分かってますよぉ。…さて、そろそろ準備しよっかな…」
佐天「え?ちょっと早くない…?まだ十時だよ?」
初春「シャワー浴びるんです」
佐天「頭のお花に水やり?」
初春「……しばきますよ?」
佐天「じゃ、途中まで一緒に行くのは良いっしょ?」
初春「……まぁ、それくらいなら…」
佐天「よっしゃ!」
109 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 02:45:10.85 ID:G6OIvQk0 [10/42]
初春「さ、佐天さん!ついて来たら本当に許しませんからね!絶対ついて来ないって約束してください!」
佐天「分かってるって♪」
初春「………信用しましたよ?」
佐天「うん♪」(フフ…馬鹿め。そんなつまらん約束、この私が守る訳ないでしょ。甘いな、初春よ……)
――そのまま浴室へ行ってしまった初春は、最後まで佐天の不敵な笑みに気づく事はなかった……。
どうやら懲りてはいなかったようだ。
―――
――黄泉川家、自室から出て来た一方通行と打ち止めは玄関へ向かった。
垣根も見送るため、玄関へ――
一方通行「ンじゃあ、行ってくる。オマエもせェぜェ頑張ンだな」
垣根「おう、俺ももう少ししたら出るわ。気ぃつけてな」
打ち止め「行ってきまーす!ってミサカはミサカはお兄ちゃんに手を振ってみたり」
垣根「打ち止め、上条によろしくな」
打ち止め「うん!」
垣根「一方通行も、上手くやれよぉ」ニヤニヤ
110 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 02:49:58.91 ID:G6OIvQk0 [11/42]
一方通行「馬鹿が、そンなンじゃねェっつの。一緒に服買いに行くだけだ」
垣根「それを世間じゃデートって言うのだよ、一方通行くん」
一方通行「オマエが言う世間ほど信用できねェモンはねェなァ」
垣根「ま、お互い頑張りましょうってこった」
一方通行「チッ……オイ、行くぞ打ち止めァ」
打ち止め「あっ、待ってぇー!」
――バタン!
垣根は二人が出た後、すぐに部屋に戻って出かける用意をした。
それから数分ほどで部屋から出てきた垣根の姿は………珍妙だった。
「うしっ!完璧!やっぱ俺って天才だわ♪これで初春さんも俺だと分かんねえだろ」
いつもの着崩したスーツや制服ではなく、革ジャンにニット帽という……まるで缶コーヒーのCMにでも
出てきそうな格好のまま、さらにマスクまで装着した垣根は言った。
一歩間違えれば不審者間違いなしのこの格好……警備員に見つかれば職質確定だ。
「ちょっと…っつかかなり早ぇけど、落ち着かねえし…もう出るか」
「大丈夫!俺の未元物質に不可能はねぇ!」
――明らかに場違いな決め台詞を吐き、そのまま垣根は家を出た。
寒い季節なので特に珍しい格好でもないが、周りから見れば変装している芸能人もしくは不審者だった。
本人はそんな視線に気づく事もなく、駅までの歩を進めていた
112 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 02:54:22.42 ID:G6OIvQk0 [12/42]
――上条宅――
―――ガサゴソ…
上条「………あれぇ……確かここに……んーと…」
禁書「とうま、何探してるの?」
――朝食後、何故か押し入れをゴソゴソと物色し始めた上条に禁書目録は後ろから話しかける。
上条「――んー、確かこの辺にしまったハズなんだが………………お、あったあった!」
押し入れのダンボール箱から一枚の封筒を取り出した上条。
上条「まさか……早くもこのヘソクリを使う事になるとはな……」パッ
そう呟いて封筒から取り出した三枚の輸吉を財布に収めた。
禁書「『へそくり』って…何?」
上条「密かに貯めた非常用の金ってトコかな」
禁書「いいの!?大事なんじゃ…」
上条「なぁに、上条さんの三学期が守られるためなら安いモンさ」
禁書「……?」
113 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 02:56:52.85 ID:G6OIvQk0 [13/42]
キョトン、としている禁書目録を尻目に上条はひとり考え込む。
上条(さぁて……どこに行くか……打ち止めはどこか行きたい所とかあるのかな……?
下手に行き先決めて期待外しちゃったりしたら本末転倒だ……今日は金もあるし、やっぱ打ち止めが
来てから決めた方がいいかもな…………いや、待てよ?)
――アーデモナイ コーデモナイ…
禁書(遊びに行くのにこんな真剣なとうま……初めてかも)
――――
――その頃、上条の寮付近の道では一人の幼女が元気良く走り周り、そのすぐ後ろには杖をついて歩く『過保護な保護者』
がいた。
打ち止め「あ!あの人の家が見えたよ!ってミサカはミサカはアナタの腕を引っ張りながら建物を指さしてみたり」
一方通行「見えてっから引っ張ンなクソガキィ!危ねェっての!」
打ち止め「どこか連れてってくれるのかなぁ?ってミサカはミサカは期待に満ちた目を向けてみたり」
一方通行「俺に向けてどォすンだよ……」
打ち止め「アナタはこの後デートだよね?ってミサカはミサカは確認してみる」
一方通行「だからそォじゃねェってオマエもあの野郎も何度言や分かンだァ!?」
114 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 03:05:24.88 ID:G6OIvQk0 [14/42]
一方通行は否定するが、打ち止めは聞いていないようである……。
打ち止め「……照れてるアナタも可愛い。ってミサカはミサカはからかってみたり」
一方通行「あァ?殺されてェのかオマエ」
打ち止め「ミサカは本当は反対なんだけど、今日は特別だよ!ってミサカはミサカは大人の心を見せたり」
一方通行「何だそりゃあ……」
打ち止め「だから、あの子を泣かせたら許さないんだからね!」
一方通行「もォ何とでも言えェ……。いちいち否定すンのも面倒臭ェわ」
――付き合ってらンねェ。と歩を進める一方通行……。
打ち止め「あぁん、待ってよー!ミサカを置いてかないでー!」
一方通行「………チッ」
――なんだかんだ言いながらも、立ち止まって打ち止めを待ってやる一方通行は
すっかり『保護者』が板についてしまったみたいだ。
自分の中で何が変わったのか分からなかった頃が今では嘘のようである。
一方通行「クソったれが……早く来いよこのクソガキ」
――もっとも、これまでの環境の中で形成された捻くれた性格だけはそう簡単に
直りそうもなかった…。
115 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 03:14:47.31 ID:G6OIvQk0 [15/42]
――上条部屋――
結局、打ち止めが来たら行き先を決める事にした上条は禁書目録と共に出かける用意をしていた。
おそらく、もうそろそろやって来るだろうという時間帯である。
上条と禁書目録はいそいそと出かける準備をしていた。
禁書目録は珍しくいつもの修道服ではなく、可愛い私服に身を包んでいた。
上条はそんな禁書目録に「すげえ似合ってるぞ」と、これまた無自覚にそんな台詞を
吐いていた。
流石は天然のフラグメイカーである……。
顔を赤くして嬉しそうな顔を見せつつ「う…うん…///」と言う禁書目録の仕草に
普通の男子ならKO必死なのだが……。
恐るべし、上条当麻!!
上条「――よしっ!準備完了!インデックスは?」
禁書「――私もOKなんだよ!」
二人が外出準備万端になって十秒もしない内に――
――ピンポーン♪
上条「――おぉ!ナイスタイミング!」
禁書「さすがあくせられーた!空気読めてるかも!」
――ガチャ
ドアの向こうにいたのは、やはり一方通行と打ち止めだった。
上条と禁書目録は揃って二人を出迎える。
116 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 03:22:46.38 ID:G6OIvQk0 [16/42]
――玄関
一方通行「よォ、三下ァ」
上条「おう、待ってたぞ。まぁ上がれよ」
一方通行「折角だが、もォ時間がねェンだ。俺はもォ行くわ」
上条「そうか…」
禁書「らすとおーだーっ!会いたかったよぉ!」
打ち止め「ミサカもー!ってミサカはミサカはミサカも会いたかったぁーって飛びついてみたりぃ!」
横で何故か抱き合う打ち止めと禁書目録……。ほんのニ~三日前上条が課題に勤しんでいたので
黄泉川家に禁書目録を送り込んだ時があったのだが、打ち止めとはその時も会っているはずだが…。
よほど馬が合うのか、会う度に親密になっていく二人の幼女に上条と一方通行は温かい目を向けた。
一方通行「クソガキ、三下にうンと迷惑かけろよ」
打ち止め「もっちろん♪」
上条「オイ!そこは『迷惑かけるな』って言うところじゃないんでせうか?あと打ち止めも乗るな!」
禁書「私はかけないよ!とうまの迷惑になりたくないもん!」
上条「インデックスぅぅ……上条さんは嬉しいぞぉぉ…」
117 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 03:31:18.02 ID:G6OIvQk0 [17/42]
一方通行「――とにかく、任せたぞ。電話でも言ったが……何かあったらぶっ殺す」
上条「おう、大船に乗った気でいろ!お前も頑張れよ!……あと、くれぐれも明日は…」
一方通行「分かってンよォ。このガキが退屈しなかったらの話だがなァ」
打ち止め「え?」
上条「あぁ、任せてくれ!」
禁書「とうま!私を満足させないと許さないかも!」
上条「そのいやらしい言い方は周囲に誤解を生むからやめろ」
打ち止め「……どういう事か分かんないけど、楽しいことならしたいなぁー!ってミサカはミサカはわくわくしてみる」
禁書「とうまは今日太っ腹なんだよ!」
一方通行「あァ?そォなのか?」
上条「と、とにかく一方通行!俺にどーんと任せてくれ!」
一方通行「よし、頼ンだぞ。ンじゃあな――」
禁書「バイバイ、あくせられーた」
打ち止め「…………」
――少し寂しそうな打ち止めの視線が背中に刺さったが、気にせず一方通行は上条宅を後にした。
125 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 16:49:17.43 ID:G6OIvQk0 [20/42]
――――
「…………」カツ カツ カツ
一方通行は黄泉川家とは逆方向に歩いていた。決して道が分からない訳でも間違えた
訳でもない。この先にある公園に向かっていたのだ。
そう、ある『約束』を果たすために―――
―――Piriririri♪
「…………!」
その途中、一方通行の携帯が突然鳴り出した。ズボンのポケットから取り出して表示を確認した彼は、
周囲を見回し、人のいないビルの裏へ移動した。
そして、未だ鳴り続けている携帯の通話ボタンを押し、耳に当てて喋った。
「またオマエかよ。今日は仕事入れるなって言っただろォが」
電話相手は『いつもの指令役』だった。幾度とある暗部組織の中でも彼が所属する『グループ』はアレイスターからも
一目置かれており、その組織力も大きい。仕事の内容は主に『学園都市を脅かすものの排除』や『密輸、密売の阻止』
が大半だ。
例えるなら救急隊員のような仕事だが、一方通行にはそんな事はどうでも良かった。それよりも、今は『約束』の方が
大事である。
127 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 16:55:06.77 ID:G6OIvQk0 [21/42]
「どォせまたつまらねェ仕事だろ?他のヤツに回すンだな。どっちみち、俺は今日は動けねェ。悪いが切るぞ――――何!?」
さっさと切ろうと、携帯から耳を遠ざけようとした一方通行だが……直前に『ある言葉』を聞いた途端、目を見開いて
手を止めた。彼はすぐ電話相手に声を返した。
「そォか………分かったのか……ソイツはご苦労だったなァ」ニヤァ
それだけ言って電話を切ってしまった一方通行は、そのままどこかへ電話を掛けた。
発信して数秒程で『もしもし』と返ってきた返事に向かって一方通行は開口一番に怒鳴り声を上げた。
「オイ!!オマエ一体どォいうつもりだァ!?『土御門』ォ!!」
『……………』
電話相手であるはずの土御門からは中々返事が返ってこなかった。―――
――――
――上条宅
上条、禁書目録、打ち止めは出かける前の小休止をとっていた。
ちなみに、『これからどこへ行くのかを決める会議』も兼ねている。
128 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 17:01:31.75 ID:G6OIvQk0 [22/42]
上条「打ち止め、どこか行きたい所あるか?」
――訊いてみるものの、ここで「どこでもいい」って言われたら非常に困ってしまうこの質問だが、打ち止めは悩むことなく
はっきりと答えてくれた。
打ち止め「『マリンランド』に行きたーい!ってミサカはミサカは即答してみる」
禁書「!――とうま!私もそこが良いかも!」
上条「水族館か……よし、決定だ!」
打ち止め「え、ホントに!?ってミサカはミサカはドキドキしながら訊いてみたり」
上条「当たり前だろ?じゃなきゃ訊いた意味がないからな。デズニーランドに比べたらさほど遠くも
ないし、……上条さんに異論はありませんの事よ。ってことで、もう少し休んだら行くか」
打ち止め「わーい♪イルカさんに会えるー!ってミサカはミサカは喜びの余り飛び跳ねちゃったりー!」
禁書「とうまー!私、すいぞくかんって行くの初めてかも!すっごい楽しみなんだよ!」
上条「ハハハハ、俺も楽しみだ!……っつーか、俺も行った事ねえや」
禁書「え?子供の時とか行かなかったの?」
上条「うーん……近くになかったしな…」(やべぇやべぇ…)
打ち止め「本当はあの人に連れてって欲しかったんだけど、あの人絶対嫌がるから…ってミサカはミサカは
諦めてたり」
上条「そ……そんなことはないんじゃないか?」
打ち止め「え?どうして?」
上条「イヤ……まぁ……その…なんとなくな…」
――何やら思い返すような素振りの上条に禁書目録も打ち止めも不思議な物を見るかのような目で
上条を見上げた。
129 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 17:12:25.01 ID:G6OIvQk0 [23/42]
上条(そりゃ俺もきっとそう思うだろぉな………こないだの事がなければ)
ふと、先週に行ったダブルデートを思い出す上条。
上条(汽車で一方通行に抱きつかれたり……ワニに食われかけたり……御坂と絶叫マシン巡りもしたっけ…………ん?)
何かが気になった上条は、その場で考え込む。
美琴と絶叫マシンに乗りまくって、上条は途中で意識を閉ざしている……。
気づいた時はベンチで美琴の肩にもたれ掛かっていた。
そこからだった……。何かを忘れている……そんな感覚が上条の頭に残っていた。
上条(…………何だ?何かが引っかかる……)
中々思い出せないが……かなり重要な事の気がした。
上条は何としてでも思い出そうと目を閉じて、少ない過去の記憶を脳内で探り出す。
禁書「とうま?どうしたのかな?」
打ち止め「大丈夫…?ってミサカはミサカは心配してみる」
――その時、ついに上条にあるシーンが浮かんだ。
上条「―――!!」
130 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 17:15:13.42 ID:G6OIvQk0 [24/42]
上条の脳裏に、つい先週入院して禁書目録と再会した時の場面が甦る――
――――――――――――――――――――
~~回想~~
「誤魔化したってダメだよ!私見たんだから!とうまと短髪がベンチに仲良く座ってたのを!!」
「――!!」
「……とうま……短髪の肩に頭乗せて『気持ち良さそう』に眠ってたよね……」
「――イ、インデックス!待て!落ち着いて聞いてくれよ。それはだな……」
「……私の記憶能力ナメたらいけないかも……短髪、すごく幸せそうな顔してた事もはっきり覚えてるんだよ」
『――短髪、すごく幸せそうな顔してた事もはっきり覚えてるんだよ――』
――――――――――――――――――――
上条(……………)
『すごく幸せそうな顔をしてた』……あの時、確かに禁書目録はそう言った。
今まですっかり忘れていた。何故このタイミングで彼はその事を思い出したのか……。偶然か必然かは誰にも
分からない。
ただ、これがどういう意味なのかだけは……上条にも分かりつつあった。
131 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 17:21:28.91 ID:G6OIvQk0 [25/42]
自分はあの時、美琴の肩に頭を乗せて寝ていた。(っていうか気絶してた)
美琴は自分が起きた時、特に嬉しそうなそぶりは…………………あった。
あの時は何故こんな自分と手を繋いで歩く程に上機嫌なのか分からなかったが………まさか………まさかである。
鈍感少年上条は……ついに正解を掴みとろうとしていた。
上条(まさか………御坂……アイツが、……俺の事を…?)
禁書「おーい、とうまー?」
打ち止め「石像みたいに固まっちゃったね。ってミサカはミサカは指でつんつんしてみる」
上条「なっ、ないない!そそそ、そんな事……何で御坂が俺みたいなヤツに――」
美琴「え?私がどうかしたの?」
上条「――ぎゃぁぁぁあああああああ!!!??」
美琴「――うわっ!?アンタ何いきなり叫んでんのよ!?……唾飛んだじゃない……ま、良いけど…」クスッ
禁書「短髪!?いつの間に!?」
打ち止め「わー!お姉様だー!おっす♪」
美琴「おっす、鍵開いてたから……きちゃった♪」
上条「………お、脅かすなよ御坂……寿命がニ~三年は縮んだぞ…」
美琴「そんな驚く事ないでしょぉ?っていうかアンタ!」
上条「は、はい?」
美琴「よくもこの美琴様からの有難いメールをシカトしてくれやがったわね!」
――今にも放電しそうな勢いで上条に掴みかかろうとする美琴本人がそこにいた。
132 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 17:24:33.99 ID:G6OIvQk0 [26/42]
上条「おいおい、シカトって……メールは一応返しただろ?」
美琴「あんなのシカトも同じよ!おまけに電話も寄越さないし!普通男の方から掛けるモンでしょうが!
アンタどんだけデリカシーないのよ!?」
上条「い……いや……その…それは…」
美琴「何よ!?何か言いたいことでもある訳!?」バチッ バチッ……
上条「――す、すんませんっしたぁぁ!!」バッ
禁書「おぉ!?久々に見たんだよ!とうまのマル秘奥義『空中土下座』!」
打ち止め「なんていうか……無駄のない動きだね!ってミサカはミサカは評価してみたり」
上条「ど、どうかここでビリビリはご勘弁を!!上条さんの生活用品が!!」
美琴「………まぁ良いわ。今度だけは勘弁してあげる。……ところで、打ち止めがいるのに何で一方通行はいないの?」
上条「へっ…?アイツは今日―――」
―――
――その頃、とある路上では……
警備員「なんでそんな格好してるんですか?ま、まさか貴方!近頃この辺りに出没する通り魔ですね!?」
垣根「イヤ……マジでそんな怪しい者じゃないんで……」
警備員「ちょっとそこ(支部)まで来てもらっていいですか?」
垣根「あの……それはホント勘弁……この後予定あるんすよ…」
――予想通り、不審レベルも5な男は早速職質をくらっていた。
133 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 17:31:49.89 ID:G6OIvQk0 [27/42]
――警備員の格好が似合わないほどの温和な顔をした女性は中々垣根を解放してくれそうもなかった……。
警備員「でも、ここで見逃して事件が起こったらまた黄泉川さんに怒られちゃいます…」
垣根「だから起こしませんって!……っつーか俺、そんな怪しいっすか?軽くショックなんすけど…」
警備員「自覚無しっと…」メモメモ…
垣根「って何メモってんすかぁ!?」(何なんだこの警備員?)
警備員「ささ、詳しい動機などは支部で聞きますので任意で同行してください。拒否は許しません」
垣根「アンタ任意同行の意味分かってねえだろ!!」
警備員「きゃ……む、無駄な抵抗はやめてください!」
垣根「今この時間こそ無駄だ。……もぉいっそ黄泉川さんここに呼んでくれ。アンタの上司なんだろ?」
警備員「何故黄泉川さんを知って……あぁ、なるほど。前科で捕まった時にお世話になったんですね?」
垣根「まさに今現在お世話になってるんだが……」
警備員「まさか……脱獄!?」
垣根「だから違ぇっての!!アンタさっきからどんだけ着眼点ズレてんだよ!?よくそれで警備員になれたな!?」
警備員「私、これでも教師なんですよ♪」
垣根「警備員なら珍しくもねえわ!っつかそれで教師ってのが問題だろ……」
警備員「貴方みたいな反抗期な生徒はたくさんいますよ」
垣根「イヤ、訊いてねぇし……反抗してるつもりはこれっぽっちもありませんが?」
警備員「何でそんな格好してるんですか?」
垣根「風邪ひいてんすよ。あと自分寒がりなんで」
警備員「ふーん……」
垣根「イヤ!そこで疑いの目が出る意味が分かんねえんだけど!?ウソじゃねえし!」
――どうやらますます話がこじれているようだ…。
135 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 17:39:59.48 ID:G6OIvQk0 [28/42]
警備員「………怪しいです。何か身分を証明できる物があったら見せてください」
垣根「あぁもう!なら今学生証見せ―――あれ?」
一刻も早く解放されたかった垣根は財布の中を探るが………ない。
垣根「やっべえ!まだ再発行頼んでなかったわ!」
警備員「?」
垣根「警備員さん、すんませんけど身分証まだ持ってないんで……」
警備員「だと思ってました」
垣根「……は?」
警備員「自作自演は私に通用しませんよ。今の私は足を引っ張っていたあの頃とは違うんです」
垣根「……へ?何言って――」
警備員「と言う訳で、続きは支部でゆっくり聞かせてくださいね?」
垣根「はぁ!?意味分かんねぇ、ってかまたフリダシかよ………なんなのコイツ……もぉイヤ……誰か助けて……」
――この後、三十分近くの拘束を余儀なくされた垣根は待ち合わせ場所まで走るハメになった。
警備員として頑張っている黄泉川の印象も、このおかげで少しマイナスに変わった。
垣根「――っつーか、最初っから帽子とマスク取れば良かった話じゃね?」
そこに気づいたのは解放されてからだった……。
136 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 17:44:16.78 ID:G6OIvQk0 [29/42]
>>134 ご想像にお任せしますww
――上条宅
上条「―――と言う訳なんだが……」
美琴「アイツもデートなのか……そっかぁ………ふーん…」
打ち止め(何この反応……?ってミサカはミサカは新たなライバル登場の気配に危機感を抱いてみたり)
禁書「短髪、どうかしたの?」
美琴「べ、べっつにぃ!そ、それで、アンタらはこれからどうするの?今日は暇だったりするから、私も付き合って
あげても良いけど……」
上条「マリンランドに行こうかと思ってる」
美琴「お、良いわねー♪…で、まだ行かないの?」
上条「そうだな。インデックスに打ち止め、そろそろ行くか?」
禁書「うんっ♪お魚お魚~♪」
打ち止め「はやく行こー!ってミサカはミサカは急かしてみたり」
上条「ははっ、イルカさんは逃げないぞー?……ま、俺も楽しみだし…ほんじゃあ行くとしますか!」
打ち止め「おー!」
美琴「この面子って初めてよね。違和感あるけど何か楽しみだわ」
禁書「ゴーゴー!」
――こうして、上条・美琴・禁書目録・打ち止めの四人は大型水族館へ向けて動きだした。
この先様々なハプニングが待ち構えている事など、この時の彼らにはまだ知る由もなかった……。
137 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 17:48:31.14 ID:G6OIvQk0 [30/42]
―――その頃、上条宅から少し離れた公園
「――時間です。まだでしょうか…とミサカは足を踏み鳴らしてイライラします…」
――常盤台の指定コートを着た少女、検体番号10032号こと御坂妹は待ち合わせ相手が
中々来ない事に苛立っていた。……無論、無表情のまま。
御坂妹「…………」
――そして約十分後、杖の音を響かせながら一人の男が歩いてくるのが見えた。
一瞬嬉しそうな顔をしたが、すぐに無表情に戻る。
一方通行「――よォ、待ったか?」
御坂妹「……十分ほど遅刻です。とミサカは時間にルーズなあなたを睨みます」ジー…
一方通行「悪いな。ちと『取り込ン』じまってよォ」
御坂妹「女性を待たせるなんて良い度胸ですね?とミサカは遠まわしに責めます」
一方通行「どこが遠まわしなンだよ……?」
御坂妹「まぁ良いでしょう。罰として今日はミサカに思う存分付き合ってもらいます。とミサカは会っていきなりの
絶対服従をあなたに求めます」
一方通行「へいへい、最初(ハナ)っからそのつもりだから安心しろォ……ンで、何処行くンだ?セブンスミストか?」
御坂妹「そのつもりだったのですが、実は他に行きたい場所ができてしまったので……。とミサカはプランの変更を告げます」
138 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 17:51:01.09 ID:G6OIvQk0 [31/42]
一方通行「はァ?オマエ今日は服買うンじゃ――」
御坂妹「それはまた『次』にでも行けば良いのです。今はそれより行きたい所があります。とミサカは早くも主導権を
握ります」
一方通行「………まァ良いけどよォ……ンで、何処に行きてェンだ?」
御坂妹「――これを。とミサカはパンフレットをあなたに渡します」
一方通行「またこのパターンかよ……っつか、こォいうの一体どっから手に入れてンだ?」
御坂妹「ミサカの施設(病院)をお忘れですか?とミサカはあなたの痴呆に愕然とします」
一方通行「あァそォでしたねェ……で、なンだこの愉快なイルカの写真はァ?」
御坂妹「……イルカさんはイルカさんですが?とミサカは問い返します」
一方通行「まさかイルカ見に行きたいとか言い出すンじゃねェだろォな?」
――その問いに……御坂妹はハッキリと答えた。
御坂妹「はい。本日のミサカの目的は、イルカさんと一緒に写真を撮ることです。とミサカは胸の内を明かします」
一方通行「またかよ!」
御坂妹「『また』とは心外ですね。とミサカは少しムッとします」
一方通行「……オマエ、ずいぶンとワガママ言うよォになったよなァ」
御坂妹「ミサカの夢は尽きることがありません。それに、あなたもこういうのは好きかと思いました。
とミサカは前回のデートを振り返った上で推測します」
一方通行「…………水族館ねェ……」
――興味が無さそうにも見えて、実はまんざらでも無さそうな……そんな表情で一方通行は差し出された
パンフレットを眺めていた。
139 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 17:53:07.91 ID:G6OIvQk0 [32/42]
――初春宅
「――佐天さん、そろそろ出ますよ?」
玄関ですでに靴まで履いた初春は、急かすように呼びかける。
「――ゴメンゴメン!お待たせ!」
呼ばれた佐天はバタバタと玄関までやって来た。
初春「早く行きますよ!――」
佐天「あぁ、待ってってばぁ!まだ靴ぅ――」
慌しく寮を後にする二人の少女。
佐天はパンフレットを眺めながら歩く初春の顔を覗き込む。
初春「――ひゃあっ!?な、なんですか?」
佐天「……ふーん、水族館かぁ……初デートにしては素敵なチョイスするねぇ初春ぅ」
初春「だ、だからデートじゃなくて……その……お礼っていうか…」
佐天「見苦しいぞ♪いい加減認めちゃえって。前自分で言ってたじゃん?イルカショー見たいって」
初春「た、たまたまですよ!」
140 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 17:55:13.35 ID:G6OIvQk0 [33/42]
佐天「ハイハイ、ごちそーさまな話を期待してますよ。良いな~…私も彼氏欲しいなぁ~…」
初春「さ、佐天さん!?言っときますけどまだ彼氏じゃないですからね!?」
佐天「ほぉう……『まだ』ねぇ…」ニヤァ
初春「――うっ……」(しまった……)
墓穴を掘るという、らしくない振る舞いをしてしまう初春。
どうやら相当浮かれているようだ……。
だが、それも運命的な出会いに憧れる年頃の少女からすれば当然なのかも知れない。
実際ある意味では運命的なのだが……それはまだ彼女の知らない事だった。
佐天「――成功、願ってるよ。初春」
佐天は散々茶化してきたものの、やはり親友の初恋(?)を応援したい気持ちが殆どだった。
初春「……本当にそう思ってます?」
佐天「当たり前じゃ~ん!こやつ、私を信用してないな?スカート捲くっちゃうぞ?」
初春「してもいいですけど、今日ばかりは反撃しますよ?」
佐天「うわぁ……初春が反抗期だぁ……」
初春「同い年でしょ?」
佐天「私はいつだって反抗期だよ♪」
初春「嫌というほど知ってます」
141 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 17:59:08.76 ID:G6OIvQk0 [34/42]
――他愛無い(?)話をしながら、歩く二人。
佐天「じゃ、私コッチだから。頑張んなよ?初春」
初春「はい」
佐天「良い報告を期待してるからね」
初春「勝手に期待しないでください!……っ///」
佐天「あはは、照れるなって」
初春「も、もう!」
佐天「じゃあね、応援してるから――」
初春「……はい、ありがとうございます。佐天さん……じゃ、行ってきますね――」
――最後は親友らしい絆を垣間見せて、二人は別れた。
初春は真っ直ぐ待ち合わせ場所の駅を目指して歩きだした。
一方、佐天も反対方向の自宅へ踵を返した………が。
佐天「…………」
ふと立ち止まり、さっと物陰に隠れてバッグから何かを取り出す佐天。
着ていたコートを脱いでバッグにしまい、取り出した予備のコート(色違い)を羽織った。
さらにニット帽、伊達メガネを装着した佐天は再び路上に戻り、まだ見える後ろ姿を追う様に
歩き出した。
(初春のことだから、どうせ会わせてはくれないだろうと踏んで用意してて正解だったわ…。
ふふふ、さぁて……初春のハートを射止めたのがどんな人なのか、じっくり拝ませてもらおっかな)
初春の十メートル後ろをピタリとマークする様に追跡する佐天……。
スネークも真っ青の無能力者(レベル0)がそこにいた。
(別に冷やかす意味で尾行してる訳じゃない。親友として心配だから……ってことで♪)
何やら自分に言い訳をしているが、伊達メガネから覗くその目は……怪しく光っていた。
145 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 19:07:37.43 ID:G6OIvQk0 [37/42]
※この話は本編とは何ら関係ありません。
―――季節はすっかり変わって秋
私、鉄装綴里(てっそうつづり)は今日も第七学区の学校から警備員の(アンチスキル)の支部へ向かって
走っていた。
一方通行編――
鉄装「あぁーーっっ!!その電車待ってぇぇええ!!!」
勢いよく乗車口へダイブする。今度は何とか間に合いそうだった。
しかし、中から出てきた人と運悪く衝突した。
駆け込みならぬ飛び込み乗車はまたしても失敗に終わったのだった……。
鉄装「――いたたたた……」
「――痛ってェ……ったく、何なンだっつーンだクソォ……」
ぶつかった頭を押さえながら目を開けると、そこには同じように頭を押さえた
細い体型の男が黄色い線の外側にいた。
146 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 19:20:07.32 ID:G6OIvQk0 [38/42]
鉄装「あわわわ、す、すみません!だ、大丈夫ですか!?」
驚いた私は痛みも忘れて男に駆け寄った。
一方通行「……大丈夫な訳ねェだろ。クソったれがァ……」
男は涙目だが、とても恐ろしい目で私を睨んだ。
不良が苦手な私は一瞬たじろいでしまう。
一方通行「どこ見て飛び込ンできてンだオマエはァ!?駆け込むンならまだしも頭から突っ込ンで来るたァどォいう
神経してンだコラァ!!」
鉄装「――ひぃっ……ゴ、ゴメンなさいっ!」
一方通行「ゴメンで済ンだら警備員はいらねェンだよ!」
鉄装「すいません……私、その警備員なんですけど……」
一方通行「……あァ?今なンつった?」
鉄装「とりあえず……ここじゃ邪魔なんで、移動しませんか…?」
乗車口で怒鳴る男に私は精一杯の勇気を込めてそう言った。
一方通行「………チッ」
舌打ちした男は立ち上がり、落ちていた杖を拾ってカツカツと歩き始めた。
鉄装「――あっ!ちょっと!待って下さいぃ!」
148 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 19:31:39.51 ID:G6OIvQk0 [39/42]
無言で改札を出て行こうとする彼を慌てて追いかけた。
一方通行「――なンでついて来ンだよ?」
クルリ、と不機嫌丸出しで男は振り返った。
鉄装「あ、あの……本当にすみませんでした!お、お怪我の方は…?」
一方通行「あ?見て分かンねェのかオマエ」
鉄装「へ……?」
一方通行「重傷だ。二度と呼び止めンじゃねェ」
また、クルリと前を向いて今度こそ彼は切符を改札口に入れようとした……が、私は何を思ったのか彼の腕を強く引いていた。
一方通行「――うおォ!?」
鉄装「――ひゃっ!」
案の定、体重の軽そうな男は私でも簡単に引っ張れ……過ぎた。
そのまま勢いがつき過ぎ、二人そろって冷たい床にひっくり返る。
一方通行「――……ってェ……この野郎ォォ!!オマエ喧嘩売ってンのかァ!!」
鉄装「――ひっ……ゴメンなさい…」
さっきよりも凄い剣幕で怒られてしまった……あぁ、何で私はこんなにドジなんだろう……。
149 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 19:47:07.86 ID:G6OIvQk0 [40/42]
――駅内のカフェ
一方通行「なーンなーンでーすかァー?この展開…」
鉄装「あの……頭大丈夫ですか?」
一方通行「やっぱオマエ俺になンか恨みでもあるンだろ?そォだろ?」
鉄装「い、いえ!そんな!本当にすみませんでした!」
一方通行「はァ……もォイイっての……」
鉄装「ゆ…許してくれるんですか?」
一方通行「そりゃ五十二回も謝られりゃあなァ…コーヒーも奢ってもらったし、これ以上何を望めってンだ?」
鉄装「あ、ありがとうございます……」
一方通行「オマエ本当に警備員かよ?」
鉄装「や…やっぱり……見えませんよね…」
一方通行「俺の知ってるヤツとは…なンつーか、正反対過ぎンだろォ……」
鉄装「私……やっぱり向いてないんですかねぇ……はぁ…」
一方通行「………」
鉄装「いつもヘマやって、先輩に怒られて……それでも、こんな私でも!って思ってるんですけど……
いつも空回りで……」
一方通行「…………」
鉄装「いっそのこと……辞めようかなぁ……とか、何度も思ったんですけど……やっぱり辞められなくて…」
一方通行「……オマエはどォしたいンだ?」
鉄装「…え?」
一方通行「俺に何か言われて背中押されたいンなら、悪いが期待に添える気はねェぞ?」
151 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/30(水) 20:02:30.19 ID:G6OIvQk0 [41/42]
一方通行「『甘ったれンな』とか『諦めるな』とか言うつもりはねェ。俺はそンなタイプじゃねェからなァ
ただ、これだけは言ってやる。オマエのプラスになるか分っかンねェけどなァ」
鉄装「………?」
一方通行「好きにしろ。どォ行きよォが、どォ選択しよォが全部オマエの自由だ」
鉄装「――!?」
一方通行「そこには間違いもなけりゃ正解もねェ。あるとしたら、それを決めンのもオマエの自由……だろォ」ニヤリ
鉄装「私の……自由……」
一方通行「ンじゃあな。ご馳走さン。あとはせェぜェ頑張ンだな」スクッ
立ち上がって彼はその場を去ろうとする。
私はその背中を呼び止めた。
鉄装「――待ってください!…せめて……お名前だけでも!」
――すると彼は振り返って、
一方通行「ハッ、よせ。悪党の名前なンざ、いちいち覚えとく必要はねェよ」
そう言って、今度こそ…彼は行ってしまった。
しばらくその背中を眺めていた私を現実に引き戻したのは、携帯の着信音だった。
電話に思わず出た私に、雷が落ちんばかりの怒声が飛んだ。
『――コラァーーッッ!!鉄装!!お前どこで油売ってるじゃんよぉぉ!!!』
鉄装「――すすす、すいませぇぇぇええええん!!!」
一方通行編・完 ~続く?~
160 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/02(金) 20:54:51.12 ID:4C2J3zw0 [2/18]
―――学園都市、○○学区にある大型水族館『マリンランド』
――先週訪れたデズニーランド程ではないにしろ、やはりそれでも人の多さは否めなかった。
違いを比べるなら、カップルの比率が目立って見える事くらいだろうか……。
入り口前でチケットを購入した上条達はその集団の中でもひと際目立っていた。
が、本人達は気にも止めずに入園口へ――
――ワイワイ ガヤガヤ…
上条「……しっかし、すげぇカップル率高いな…」
美琴「デズニーランドの時もカップル結構いたわよ?もっとも、それ以外も多かった
から目立たなかったけどね」
禁書「すごいんだよとうま!あの白黒のイルカ!」
打ち止め「わぁ!大きい!ってミサカはミサカは驚いてみる」
――入り口付近のシャチ人形に注目する一同。
161 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/02(金) 21:00:26.27 ID:4C2J3zw0 [3/18]
上条「シャチか……あれ作り物だぞ?」
美琴「実際あんなデカイのかしら?」
上条「お前も見た事ないのか?」
美琴「ま、まあね……」
上条「実は俺も!テレビでしか見た事ないから楽しみだ♪」ニコッ
美琴「///……そ、そう…」
禁書「とうまー!早く中入ろうよー!」
打ち止め「お姉様も早くー!ってミサカはミサカは何か怪しい雰囲気の二人を呼んでみたりー!」
上条「み、御坂。行こうぜ…」(打ち止めの野郎…)
美琴「う…うん」
――どこか気まずい空気を無理矢理押し隠した上条と美琴は、すでに入り口で待っている禁書目録と打ち止めに
呼ばれて歩み始めた。
上条(俺の推測が正しいなら……やっぱそういう事だよなぁ…)
珍しく意識する上条。
それもそうだ。彼はついに隣りを歩く少女が自分に好意を抱いている事に
気づいたのだから……。
しかし、だから今すぐどうこうできる上条でもなかった。
162 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/02(金) 21:03:13.03 ID:4C2J3zw0 [4/18]
―――館内
まず最初に来園者を出迎えるのは、巨大な水槽で目まぐるしく泳ぎ回る白黒のイルカ達だった。
禁書「あ!とうま!シャチなんだよ!……にしてはちょっと小さいかも」
打ち止め「体の模様も少し違うね。ってミサカはミサカは必死に目で追ってみる」
上条「コイツは『イロワケイルカ』だな。別名『パンダイルカ』とも言う」
美琴「へー、可愛いっ♪……ってかアンタ詳しいわね?」
上条「イヤ……そこに書いてあるし」
美琴「あ…ホントだ」
打ち止め「泳ぐの早ーい!ってミサカはミサカは目で追うのがやっとだ!って台詞を引用してみる」
美琴「アニメの見すぎよアンタ…」
禁書「短髪もアニメとか見るの?『カナミン』とか」
美琴「私はゲコt――……ゴメン、あんま見ないわ」
上条(絶対今ゲコ太って言おうとしたな……)
禁書「とうま。このイルカさん、目がないんだよ。どうやって泳いでるのかな?」
打ち止め「目なんて見えなくても気でわかるんだよ。ってミサカはミサカは説明してみたり」
上条「上条さんでも分かる説明をありがとう打ち止め。インデックス、よく見ろ。黒い模様の中に目が
見えるだろ?あれが目だよ」
163 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/02(金) 21:08:44.74 ID:4C2J3zw0 [5/18]
禁書「うーん……速すぎて見えないかも…」
上条「馬鹿め、気の動きをよく探ってみろ。お前以外は皆見えているぞ」
禁書「え?みんな見えてるの?」
美琴「……アンタそれ何のネタよ?」
打ち止め「ミサカも見えないー!」
上条「見えるっ!俺にも見えるぞー!」
美琴「しょっパナからナニこのテンション……」(ってか、なんだかんだ言って結構浮かれてるわねコイツ…)
まだ入り口でこれだけ盛り上がってて最後までもつのか……と美琴は少し不安になったらしい。
―――
美琴「あ、綺麗な熱帯魚がいっぱいいる♪」
禁書「イソギンチャク綺麗~…」
打ち止め「あっ!ウツボはっけーん!ってミサカはミサカは報告してみる」
上条「まるで海の中を再現してるみたいだな。すげぇ……」
美琴「より忠実って感じね。さすが学園都市だわ」
上条「ん?インデックスは………っていたいた」
禁書「コッチは磯辺のお魚さんたちがいるんだよ!こんにちは~」スッ
164 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/02(金) 21:12:27.69 ID:4C2J3zw0 [6/18]
上条「こらインデックス!手を入れちゃいけませんって書いてあるだろ?」
禁書「ひゃっ!?………うぅ……見るだけで我慢するんだよ」
上条「よろしい。―――ぶわっ!?」
――その時、上条の顔面に水鉄砲が飛んだ。
打ち止め「どうしたの!?」
禁書「わ、私じゃないんだよ!」
美琴「……!ははーん……犯人はアイツね」
美琴が指さした先には、水面から顔だけ出した小さな魚がいた。
上条「『テッポウウオ』か……磯辺なのに何故?……何にせよ不幸だ…」
熱烈な歓迎を受けたようだ。
どうやらここでも不幸は尽きないらしい。
―――
上条「お?今度はサメか……すげえな…」
美琴「うわぁ……さっきより綺麗……」ウットリ
165 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/02(金) 21:15:48.60 ID:4C2J3zw0 [7/18]
打ち止め「さっきが浅瀬なら、コッチは沖だね。ってミサカはミサカは見入ってみたり…」
禁書「フカヒレ……」ジュルリ
四人の視線の先にある巨大な水槽では、様々な種類のサメやエイが悠然と泳いでいる。
学園都市一の大型水族館にある名物の一つ、『海景色』である。
まさに、その景色は海の中を忠実に再現していた。
禁書「サメって怖いイメージかも…」
打ち止め「襲ってきたりしないよね?ってミサカはミサカは不安になってみる」
美琴「大丈夫よ。私もアンタも『電気使い』なんだから、水中じゃ無敵でしょ?」
打ち止め「そっかー!さっすがお姉様♪」
上条「だがな御坂。それだと近くに人がいたら巻き込むことになるぞ」
美琴「……あ」
禁書「短髪が海に入ってる時に入りたくないかも……」
上条「ってか一緒に海行くのが怖い」
美琴「だ、大丈夫よ!……多分」
打ち止め「うわ!なにアレ!ってミサカはミサカは変な頭のサメさんを指さしてみたり」
上条「シュモクザメ…別名『ハンマー・ヘッド・シャーク』か……あの部分は脂肪の塊らしいぞ」
美琴「だから何でそんな詳しいのよ…?」
上条「上条さんサメにはちょっと強いぞ。ちなみにお前らサメを怖いイメージでとらえてるかもしれないけど、
実際人を襲うサメなんて全種類の中の一部だけなんだぜ?」
禁書「え、そうなの!?」
打ち止め「ウソー!?ってミサカはミサカは疑ってみたり」
166 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/02(金) 21:20:47.93 ID:4C2J3zw0 [8/18]
上条「ホントホント、実は殆どの種類が大人しいんだよ。そもそもサメは―――」
美琴「はい、長くなりそうだから省略。さっさと次行くわよ」
上条「ひでぇ!……インデックス、涎出てるぞ」
禁書「はっ!?………サ、サメさん、バイバーイ!ほら!とうま、行こ!」
上条(案の定、食う事考えてやがったなコイツ……)
打ち止め(あんな怖い顔なのに無害なんて……まるであの人みたい。ってミサカはミサカは内心でほくそ笑んでみたり)
―――――
―――マリンランド入り口前
――ガヤガヤ…
一方通行「―――ックシュン!」
御坂妹「ずいぶん可愛いくしゃみですね。とミサカは風邪ではないか心配します」
打ち止めに噂されているとは露知らず、一方通行は杖をつきながら空いている手で鼻の頭を擦った。
御坂妹はそんな彼のピッタリ横を歩いている。
その模様は、一見微笑ましいカップルに見えなくもない。
一方通行(……なンでか知らねェが、あのクソガキを急にシメたくなった……)
御坂妹「あ、入り口はここですね。とミサカはあなたの腕をひいて急かします。チケット買いましょう」
168 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/02(金) 21:29:42.66 ID:4C2J3zw0 [9/18]
一方通行「そンな急がなくても魚は逃げたりしねェだろォがよ。……しっかし…」
御坂妹「…はい?」
キョウハタノシイデートニシヨウネ ウン
イルカショータノシミダネ ハイ トミサカハ
ハマヅラ サメトカオソッテコナイカナ? ソントキハオレガマモッテヤルヨ
一方通行「…見事に周りはカップルだらけだなァ……」
御坂妹「ミサカ達もですよ?」
一方通行「やっぱコレって…デートなのか?」
御坂妹「ミサカが相手では……不満でしょうか?とミサカは不安になってみ――ひゃっ!?」
一方通行「誰がンなこと言った?くだらねェ事言ってねェでとっとと行くぞ」ワシャワシャ
御坂妹「あ、頭をかき回さないで下さいぃぃ!とミサカは懇願します」
仲の良さそうな雰囲気のまま、チケットを購入した二人は館内へ入っていった。
―――
一方通行「オイオイ、何だァこりゃあ……シャチかと思ったらやけに小せェじゃねェか」
御坂妹「まるで歓迎してくれているみたいですね。とミサカは手を振って返してみます………が華麗にスルーされました」
169 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/02(金) 21:32:31.84 ID:4C2J3zw0 [10/18]
一方通行「アホ、分かる訳ねェだろォが」
御坂妹「っていうか泳ぐの速いですね。あんなに泳ぎ回って疲れないのでしょうか…とミサカは心配します」
一方通行「マグロとかと一緒なンだろォ。止まると死ぬンじゃねェのか?」
御坂妹「あなたは海洋生物に興味があるのですか?とミサカは尋ねます」
一方通行「イヤ……あンましねェけど、来たからにはそれなりに楽しまねェとなァ。滅多に見ねェし」
御坂妹「………そうですか」
一方通行「なンだその間はァ?っつか、オマエはどォなンだよ?」
御坂妹「ミサカは最近図鑑やテレビなどでで海の生き物達を拝見しました。海はとても興味深いです……。
神秘的というか……未知の世界というか…」
一方通行「まァ地球の大半が海だしなァ。実際海には知られてない生物とかも腐るほどいるンじゃねェか?」
御坂妹「あなたにもロマンのカケラがあったとは……とミサカは笑いを堪えます」
一方通行「あァ?お魚の仲間入りしてェのかァ?なンなら一緒に泳がせてやってもイイぜェ?」
御坂妹「さ、さぁ次に行きましょー♪とミサカは戦略的撤退を図ります」
一方通行「オイ待てコラ」
―――
??「うわぁ……すげぇ……いきなりパンダみてぇなイルカかよ。どうだ、見えるか?滝壺」
??「うん、とても綺麗……はまづらは見える?」
――とある二人の若者も偶然そこにいた。
170 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/02(金) 21:35:22.41 ID:4C2J3zw0 [11/18]
浜面仕上…元『アイテム』の下っ端構成員。戦後、滝壺と交際を始める。基本チンピラ。
滝壺理后…元『アイテム』の構成員。浜面の現彼女。
浜面「あぁ…人多いけど、何とか見えるかな…」
滝壺「ねぇはまづら。私、シャチに……乗れるかな?」
浜面「さすがにそれは―――って、あれ?」
滝壺「どうしたの?はまづら」
浜面「イヤ……前の方に知ってるヤツがいたような……イヤでもまさか…」
滝壺「誰?」
浜面「俺の記憶が確かなら……間違いなく『アイツ』だよなぁ……けど……」
滝壺「確かめてくれば?」
浜面「イヤ、良いよ。折角のデートだしな。それにお前の側から離れたくねえし」
滝壺「……はまづら……馬鹿…///」
浜面「///……よ、よしっ!次行くぞ次!」
滝壺「あ、待ってよはまづら――」
人の多さが功を奏したのか、それとも館内が暗いせいか、距離数メートルまで近づいても
二人の『主人公』同士が気づき合う事はまだ無かった……。
※二人は付き合ってる設定です。
171 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/02(金) 21:40:30.45 ID:4C2J3zw0 [12/18]
上条&美琴&禁書目録&打ち止め――
上条「…………セイウチって、リアルだとこんなデカイのか…?」
美琴「トドとかよりはすごいわね」
打ち止め「………」
禁書「………」
まるで四人を威圧するように佇む巨大なセイウチに少女二人は言葉を失くす。
美琴「――あ、あくびした」
セイウチ「ふぁ~あ……」
上条「うわ、俺の頭が入りそうだ……」
禁書「すごい牙……ちょっと怖いかも」
上条「確かに、ガラス越しって言ってもなぁ……セイウチってアザラシみたいな感じに思ってたんだが、訂正だこりゃ」
禁書「食べようとしたら、逆に食べられそうだよ」
美琴「アンタ……あれでも食べる考えを捨てないってすごい事よ……?」
打ち止め「背中に乗れそうだね。ってミサカはミサカはじーっと見つめてみたり」
美琴「あんまり綺麗な絵じゃないわね…―――!」ブルッ
禁書「ん?どうしたの?短髪」
172 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/02(金) 21:42:12.48 ID:4C2J3zw0 [13/18]
美琴「……チョロっと冷えちゃったみたい……ねぇ、お手洗い近くになかったっけ?」
打ち止め「サメさんの辺りにあったよ。ってミサカはミサカは思い出してみる」
美琴「げ……あそこまで戻んの……けどまぁ仕方ないっか……じゃ、ゴメン。行って来るわ」
上条「じゃあ俺達はこの先にある休憩所にいるよ」
美琴「オーケー、そんじゃ――」
タタタタ……と来た道を引き返していく美琴。
それを見送った上条達は小休止のため、付近にある休憩所へ――
禁書「バイバイ、セイウチさん♪」
上条「さて、椅子もあるし、座ってジュースでも飲むか?」
打ち止め「さんせー♪ってミサカはミサカは自販機へゴー!」
―――
一方通行&御坂妹――
一方通行「――ほォ……コイツは……」
御坂妹「――うわぁ……」
二人の目の前に広がる海の世界―――サメやエイ、イワシの群れやタコなどと言った住人達が自然のままに遊泳していた。
その余りに神秘的な光景に心も癒されていく――。
173 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/02(金) 21:44:37.50 ID:4C2J3zw0 [14/18]
一方通行「まるで海ン中にいるみてェだ…」
御坂妹「潜水艦の窓からの眺めとは、まさにこれでしょうか…?」
一方通行「あァ、確か奥の方にもォ一つでっけェ水槽があンだろ?」
御坂妹「はい、この『海景色』に並ぶ巨大海中トンネル『海散歩』です。とミサカはパンフの知識を生かします」
一方通行「それって何か違うのか?」
御坂妹「ここは海底施設の窓みたいになってますが、ソッチはまるで海の中を歩いているような感覚です。
とミサカは説明します」
一方通行「……そりゃすげェ……最高に面白そォじゃねェか!」イキイキ
御坂妹(ようやく気分が乗ってきたようですね…とミサカは心の中で付け加えます)
――そんな会話をする二人の前を体長三メートルほどのずんぐりとしたサメが横切った。
ギロリとコチラに向けて放たれた眼光が印象的である。
一方通行「お?ついに海のハンターさンのおでましってかァ?」
御坂妹「オオメジロザメですね。とミサカはプロフカードを確認します」
一方通行「サメってのは意外と大人しいのが多いンだよな?確かワニザメとかジンベェザメみてェな…」
御坂妹「残念ながら…あれは雑食ですが、肉も好むようです。人を襲った記録もありますね……
とミサカは恐怖に顔を歪めます」
一方通行「まァ、あの見た目で小魚しか食わないってのも無理があるよなァ」
御坂妹「鯨などもそうですね。その代わり、莫大な量を摂取しますよ?」
一方通行「味より量ってかァ?チビチビ食うなンざ俺には無理だわ」
174 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/02(金) 21:47:29.74 ID:4C2J3zw0 [15/18]
御坂妹「とてもその体型から出る言葉とは思えませんね……とミサカはあなたの体を見つめながら呟きます」
一方通行「……今すぐサメの餌になりてェか?」
御坂妹「やだなぁいつもの冗談ですよ。とミサカは暴力反対を訴えます」
一方通行「しっかし、同じのばっか食ってよく飽きねェよなァコイツらも」
御坂妹「あなたこそ、いつもコーヒーばかり飲んでますよね?とミサカは指摘します」
一方通行「そりゃ好きだからだ。人間なンかは好きなモンと嫌いなモンが人によってバラバラだろ?まァ、コイツらに
好き嫌いの概念ってモンがあンのかどォかは疑問だがなァ。要は別に食う事に幸せを感じたりしねェって訳だ。つっても
根本的に種族が違うンだから、そもそも俺らに理解しろっつーのが無理な話だろォな…」
御坂妹「……まさに生物の不思議ですね。とミサカは同意します」
一方通行「不思議……ねェ…」
一方通行は、だんだんこの目の前の少女が軍用クローンである事を忘れつつあった。
――――
――とある駅前(水族館から割りと近い)
「――そろそろ……時間ですね。何かドキドキしてきました……」
――午後一時前。この駅には待ち合わせによく利用される大きな柱時計がある。
何人かが時計の下で人と待ち合わせている光景が今日も見られる中、初春はどこか
ソワソワしながら柱時計を見上げてそう呟いた。
176 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/02(金) 21:50:24.83 ID:4C2J3zw0 [16/18]
「もうすぐ……会えるんだ……///」
――と思ったら今度は頬を赤く染め、嬉しそうな表情を浮かべている。
本人は違うと言っていたが、どう見てもそれは『恋する乙女』の顔だった。
そんな彼女から少し離れた場所で温かい視線を送っている親友がいるのだが、
完全に『隙』だらけな今の初春は全く気づかなかった。
「おーおー、初春のヤツ嬉しそうな顔しちゃって………一時頃だからそろそろ
来ても良い頃よね……何か私までドキドキしてきた…」
何故か佐天も落ち着きなくソワソワし始めた。
流石にマズイかな…とも思ったが、いまさら引き返すのも面倒だし、帰っても
どうせ暇だ。こうなったら最後まで見届けよう…と、ここまで来てしまった。
―――
それから数分後……初春のところへ真っ直ぐ近づいてくる一人の男が目に入った。
「……………!」
初春はその男にまだ気づかないが、佐天は「お!」とその男を目で追った。
―――数分前
「――ハァ、ハァ……クソッたれが……すげぇ時間喰っちまったじゃねえか」タッタッタッタッ…
垣根帝督は走っていた。
177 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/02(金) 21:52:15.16 ID:4C2J3zw0 [17/18]
「全部あのメガネ警備員のせいだチキショォ……この俺を不審者扱いたぁどぉいう了見だっつーの…
黄泉川さんのケツの穴でも煎じて飲みやがれってんだ…」タッタッタッタッ…
走りながらも愚痴る辺り、流石である。
「だいたい、この格好のナニがそんなにおかしいってんだよ………まぁ怪しいのは自覚してるけどよ……
しょおがねぇだろぉが…」タッタッタッタッ…
―――愚痴って走り続ける事数分、駅前で立ち止まってビルのガラスに映る自分を見てチェックする。
「――よし、完璧!初春さんはもぉ来てんのかな……………お、いたいた」
柱時計の下で待つ初春の姿を確認した垣根は、ゆっくりと歩み寄っていった――。
―――そして………ついにその時は来た。
「あの……初春さん……だよね?」
「―――!」
――声をかけられて振り返った初春の目の前に……彼はいた。
初春「カッキーさん……ですか?」
垣根「あぁ、まぁな」
――初春にとって初対面、垣根にとっては三度目となる対面だった。
212 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/04(日) 00:09:13.86 ID:b2z3MdA0 [2/14]
一方通行&御坂妹―――
二人は巨大水槽『海景色』をしばらく眺め、海の神秘を満喫していた。
彼らにとってはそうとう癒される光景だったのだろう……。しばし無言の二人だったが、
それは気まずい空気が流れているという訳ではない。
悠然と自然のままに泳ぐ魚達から目を離したくなかったのか、いつの間にか会話も忘れて
水槽に見入る一方通行と御坂妹――。
――そしてしばらく経ったところで、ようやく御坂妹が口を開いた。
御坂妹「――あの……」
一方通行「――あ?」
――何故かモジモジしている御坂妹。
御坂妹「お手洗いはどこでしょうか…?とミサカは尋ねます」
少し小さめの声で恥ずかしそうに言う御坂妹だが、一方通行にはハッキリ聞こえた。
彼は後ろを振り返って――
一方通行「お、ちょうどあそこにあるなァ。ここで待っててやっから行ってこいよ」
御坂妹「はい……それでは失礼します――」
215 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/04(日) 00:12:30.36 ID:b2z3MdA0 [3/14]
――すぐ後ろの端にある化粧室に御坂妹は入っていった。
それを見送った一方通行は再び前を向いて海の景色を堪能する。
(こン中は…腐った人間が踏み込ンで良い領域じゃねェよな……)
――そんな事をふと考えながら……。まるで日常を忘れるような光景に彼はすっかり釘付けになっていた。
元々こういう自然の風景を眺める事は嫌いではない。
どうせなら、しっかり目に焼き付けよう。と、一方通行は目の前を通過した巨大なエイを目で追った。
(……………)
一方通行は気づかなかった。いや、今の彼なら気づかなくても仕方ないだろう…。
自分の少し離れた後ろを通過し、化粧室に入っていく見知った少女の姿に……。
美琴(あぁもう!何でこんなに混んでんのよ!?通りにくくてしょーがないっての!)
人混みを掻き分けるようにしながら進んできた美琴は何とか化粧室を見つけて入る。
その際、すぐ近くにいる一方通行に気づく事はなかった…。
美琴(案の定…ってヤツね。全部閉まってる……)
当然、化粧室もそれなりに混んでいた。幸い列ができる程ではなかったが、割りと多めの個室は全部『赤マーク』
だった。美琴は若干イラついた表情になる。
232 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/04(日) 00:46:33.37 ID:b2z3MdA0 [4/14]
>>230 嬉しいお言葉ありがとっす!
美琴(………まだぁ?…誰でも良いから早く出なさいよね…)
――その時、ひとつの個室からザー…と水の流れる音が響く。
どうやらここの人が終わったようだ……。美琴はすぐ入れ替わりで入れるようにさりげなく扉付近で待つ。
そして……ガチャリと扉が開いた―――。
美琴「――――!!?」
御坂妹「――――!!?」
御坂美琴、危うくゴール手前で失禁のピンチ!!
―――――
――柱時計でついに対面する初春飾利と垣根帝督。もっとも、垣根の方はマスクと帽子で顔を隠しているが……。
初春は、そんな垣根の格好に――
(カッキーさんって……寒がりなのかなぁ…)
――と、垣根にとってはありがたい感想を抱いてくれた。
233 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/04(日) 00:47:54.78 ID:b2z3MdA0 [5/14]
垣根「悪いな。待たせちまったかい?」
初春「い、いえ!私も今来たところですから!」
垣根「そうか…なら良かった…」
初春「あ…あのぉ……カッキーさん、本名は?」
垣根「『垣 帝人(かき ていと)だ。今まで通り『カッキー』、もしくは『ていとくん』で良いぞ」
初春「は、はぁ……では……ていとくん…で」
垣根「初春さんは下の名前何て言うの?」
初春「か…飾利です」
垣根「オーケー。じゃ、『かざりん』で」
初春「か、かかかかざりん!!?///」
垣根「あれ?友達とかからそう呼ばれねえの?」
初春「よ、呼ばれたことないですよ!……あの、ていとくんさんは…風邪ですか?」
垣根「オイwwていとくんさんって何だよ?普通にていとくんで良いって」
初春「す…すいません!///つ、つい『さん付け』が癖になってて……///」
垣根「ハハハ、初春さんって面白ぇな。イヤ別に風邪じゃねえけど、元々寒がりでさ……」
初春「そ……そうなんですか…」(顔見えないんですけど……)
垣根「ホント最近は冷えて困るわ。まぁ喉痛めてるし、油断してると風邪こじらせそうだからマスク
つけてっけど気にしないでくれ」
初春「は、はい。すみません……体調悪いのに……あと、この間は本当にありがとうございました」
垣根「気にすんなって……当たり前のことしただけだ」
234 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/04(日) 00:51:17.00 ID:b2z3MdA0 [6/14]
初春「ていとくん…さん…は……///」
垣根「やっぱり『カッキーさん』で良いぞ?」
初春「うぅ……すいません…」
垣根(可愛いなコイツ……頭の花は相変わらず意味不明だけど)
初春「あの、カッキーさんは能力者なんですか?」
垣根「無能力者だ」
初春「………え?ウソ…」
垣根「本当だ。たまたま喧嘩慣れしてるだけだよ」
初春「そ、そうなんですかぁ……」
垣根「がっかりしたか?」
初春「い、いえ!ただ……あの不良達から私を助けたって聞いたから、てっきり能力者なのかなぁって…」
垣根「どうも俺には才能がないらしい。まぁ、能力とかレベルが全てじゃないからな」
初春「そうですよね!同感です!」
垣根「……とりあえず、ここで話しててもあれだし…移動すっか?」
初春「はい!あ…あの…一緒に行きたい場所があるんですけど……」
垣根「ん?ならそこ行くか。先導してくれ」
初春「は、はい。では、行きましょう――」
―――軽く自己紹介も終え、二人は歩き出す。
235 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/04(日) 00:53:25.78 ID:b2z3MdA0 [7/14]
初春はまだ若干緊張しているのか、ぎこちない足取りで歩き始めた。
そのまま二人は駅に向かう。その様子を監視していた佐天涙子も何故か後を追い始めた。
垣根(よし……どうやらバレてねえ様だな。フフ、まぁざっとこんなモンよ)
初春(この人……やっぱりどこかで見た様な……名前もどこか聞き覚えが……うぅ、思い出せない…)
――二十メートル背後
佐天(顔が見えない……コッチ向かないかなぁ……ってか背ぇ高くない?マジでイケメンの予感が……クソォ、初春めぇ~~…)
―――――
――館内・女子トイレ
美琴の膀胱は一気に縮まった……。失禁は辛くも逃れたが、それよりも彼女には気になる事ができてしまった。
ともあれ、まずは用を済ませてからだと個室に入る。
御坂妹(……予想外のハプニングです…とミサカは平静を装いつつも内心動揺を隠せません…)
236 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/04(日) 00:56:10.78 ID:b2z3MdA0 [8/14]
用を済ませて出た途端に美琴と遭遇した事は、彼女にとっても全く予想外の事態だった。
「ちょろーっとそこで待ってなさい」と言われて逃げ道を封じられた御坂妹は静かに佇み、美琴が出てくるのを
待っていた。
――やがて、スッキリした顔で美琴は出てきたが……御坂妹の顔を見た途端、再び引きつった表情に戻って尋ねる。
美琴「ふー…………で、アンタは何でこんなトコにいるのよ?」
御坂妹「ミサカは現在『あの方』と楽しいひと時を満喫中です。とミサカはお姉様の問いに答えます」
美琴「………それって……やっぱり…」
御坂妹「はい、一方通行です。とミサカは躊躇いなく明かします。さらに彼を外で待たせているミサカとしては、
一刻も早くこの場から立ち去りたいのですが?とミサカは許可を求めます」
すでに背を向けて去る気満々の御坂妹。美琴はその背中に声をかける。
美琴「…………待ちなさい」
御坂妹「……んだよ?とミサカは不機嫌な顔で振り向きます」
美琴「アンタ……」
カツ、カツ、カツ、とゆっくり御坂妹に近づく美琴。
御坂妹「な、何ですか……?とミサカは思わず身構えます」
美琴「アンタに……お願いがあるんだけど」ニコォ
御坂妹「………は?」
いきなり怪しい笑みを浮かべる『お姉様』に妹は戦慄した――。
238 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/04(日) 00:58:02.20 ID:b2z3MdA0 [9/14]
―――垣根&初春……+佐天
電車内で、楽しげに会話しているように見える二人に……佐天涙子は何故か新たな野望を抱いていた。
(……何よあの人…………どぉ見てもただの怪しい人じゃない!初春絶対騙されてるよ!)
確かに……真っ先に職質をくらった垣根の風貌は怪しさに満ちていた。
親友として初春を応援する目的が、親友の安全と無事を守る事にすっかり変わってしまった。
いつ初春が連れ込まれて暴行されてもおかしくない。そう考えると、ここで帰る訳には行かないのだった。
(近くに、あの男の仲間がいるかも知れないから……気は抜けない。…初春は私が守らないと!)
―――完全に誤解した少女は、親友から目を離すまい…と決意を固めた。
―――――
――佐天のそんな思惑など知るはずもないお花畑少女初春は、垣根との話に夢中だった。
その表情からは完全に緊張が無くなり、笑顔が溢れていた。
初春「カッキーさんは高校生なんですか?」
垣根「まぁな。つっても、そこいらの馬鹿校だけど。かざりんは何処中?」
239 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/04(日) 01:08:36.20 ID:b2z3MdA0 [10/14]
初春「柵川中学…です///」
まだ「かざりん」と呼ばれるのに慣れないのか、少し照れながらも答える初春。
まさに初々しいとはこの事だろうか…。
初春「高校生かぁ……大人っぽいですね」
垣根「イヤ、そんなことねえよ。ガキっつーか……少なくとも俺の周りは馬鹿ばっかだったしな…」
初春「だった……?」
垣根「あ、いや、今もそぉなんだけどな。ハハハ…」(やべぇ)
初春「カッキーさん…」
垣根「ん……何だ?」ドキドキ
初春「カッキーさんも……やっぱり能力のレベルを上げたいって思いますか…?」
垣根「……えっ?」
初春「あ、すいません!失礼なこと訊いて……」
垣根「イヤ、気にしなくて良いぞ。俺は……そうだな……」
初春「…………」
垣根「やっぱ……せっかく学園都市に来たんだから、そりゃレベル上がったら嬉しい…かな」
初春「幻想御手(レベルアッパー)って…知ってます?」
――訊きづらそうな表情で俯きながらも、しっかり聞こえる声で初春は垣根に尋ねた。
240 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/04(日) 01:14:33.39 ID:b2z3MdA0 [11/14]
垣根「それって……去年流行ったヤツか?」
初春「はい」
垣根(そう言やぁ…去年の夏頃それ使ったヤツにやたら挑まれたな……全員返り討ちにしてやったけど)
――ひとり回想する垣根に初春は続ける。
初春「実は……私の友達にレベル0がいるんですけど、私…その人は自分が無能力者なのを気にしてないと
思ってたんです」
垣根「………」
初春「けど……その友達は幻想御手を使ってて……本当は自分に能力がないのをすごく気にしてたみたいなんです。
私も正直自分のレベル上げたいし……」
垣根「……確か温度を一定に保つ能力だよな?……それ、かなりすげぇんじゃ…」
初春「そ、そんな……こんなの全然何の役にも立ちませんよ。レベルも1ですし…」
垣根「そうか?『自分だけの現実』(パーソナルリアリティ)が組み立てられれば案外強大な力かも知れねえぞ」
初春「そう…ですかね…?」
垣根(俺の未元物質も最初はしょぼかったしなぁ……っつか、レベル0じゃなくて3ぐらいって言っとけば良かった…)
初春「………カッキーさん?」
垣根「え?あぁ悪い。んで、何でその話を?」
初春「いえ……ただ、カッキーさんはどう思ってるのかなぁって…」
垣根「………うーん、あんま気にした事ない…かもな」
初春「?」
垣根「さっきも言ったが、何もレベルだけが全てじゃねえし。そんなモンあったってどぉにもならねえ事だってある」
初春「………」
垣根「レベル0や1が必ずしもレベル5に劣るとは思っちゃいねえし、逆に優れている面もあるかもしれねぇ。それに、レベル
が高けりゃ幸せなんて事もねぇよ。それなりに苦しい思いはしてるだろ……お前の知り合いにはそぉいうヤツいねえのか?」
初春「……います」
241 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/04(日) 01:19:18.56 ID:b2z3MdA0 [12/14]
垣根「ならソイツらにも今度訊いてみな?俺みてぇな無能者の話よりはよっぽど良いと思うぜ?」
初春「す…すいません!何だか私……すごく失礼なこと訊いちゃって…」
垣根「あ、別に怒ってるとかじゃないぞ?……まぁ気持ちは分かるかな……」
初春「けどカッキーさんも……レベル5に知り合いがいるんですか?」
垣根「え?何で…」
初春「さっきの言い方だと、そんな風に聞こえましたから…」
垣根「ま、まぁな……」
初春「どんな人なんですか?」
――垣根は一呼吸置いて、少し恨めしそうに吐いた。
垣根「――ムカつく野郎だ」
それが一方通行か、はたまた自分自身の事なのか……垣根の口調からは読み取れなかった。
そんな二人から離れた座席で――
佐天(――何の話してるんだろ……こっからじゃ遠くて分かんないや。でもこれ以上近くに行ったらバレそうだし…)
――チラ、チラ、と様子を伺う怪しい女に向かい合う乗客は怪訝な顔を浮かべていた。
242 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/07/04(日) 01:21:34.15 ID:b2z3MdA0 [13/14]
上条&禁書目録&打ち止め―――
――館内休憩所
ジュースも飲み終わった上条達三人はお手洗いに行った美琴の帰りを待っていた。
打ち止め「お姉様遅いなー…ってミサカはミサカは心配してみたり」
上条「こんだけ人がいるからなぁ……きっとトイレも混んでんだろ。まぁ気長に待とうぜ」
禁書「とうま、ジュースおかわり!」
上条「インデックスさん、三杯目ですよ?お前よくトイレ我慢できるな…」
禁書「うるさいんだよ!それよりお昼まだかな?お腹ぺこぺこなんだよ」
打ち止め「ミサカもお腹すいたかも…ってミサカはミサカは空腹をアピールしてみる」
上条「……もう一時過ぎてんのか……確かに、そろそろどっかでメシ食わないとな。んじゃ、御坂が戻って
来たらその辺のレストランでも入るか?」
禁書・打ち止め「さんせー♪」
――と、その時……
打ち止め「――あ!お姉様だ!ってミサカはミサカは発見してみたり!」
禁書「ホントだ!待ちくたびれたんだよ」
上条「お、来たか。――おーい!御坂、コッチコッチ!」
「――お待たせし……お待たせ!とミ……トイレ混んじゃって参ったわよ!」
上条・禁書・打ち止め「?」
ここでスクリプト落ち
続きます
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