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上条「ブラック苦ッッ!」一方通行「…」
6 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/09(水) 18:27:36.04 ID:nXtaVV.0 [3/11]
――あらすじ
・一方通行、上条と夜の街で再会
・美琴と和解、上条と友好を築く
・皆で晩御飯、上条宿泊
・ていとくん復活、一方通行と激突
・一方通行、半日入院
・ていとくん、転がり込む
・一方通行、家出して上条宅へ
・一方通行帰宅
・一方通行、上条、美琴、御坂妹でダブルデート
・禁書目録さらわれる
関連
一方通行「友達になってやンよ」上条「ハイ?」
一方通行「友達になってやンよ」上条「ハイ?」2
一方通行「足引っ張ンなよ三下ァ」上条「おう!」
――あらすじ
・一方通行、上条と夜の街で再会
・美琴と和解、上条と友好を築く
・皆で晩御飯、上条宿泊
・ていとくん復活、一方通行と激突
・一方通行、半日入院
・ていとくん、転がり込む
・一方通行、家出して上条宅へ
・一方通行帰宅
・一方通行、上条、美琴、御坂妹でダブルデート
・禁書目録さらわれる
関連
一方通行「友達になってやンよ」上条「ハイ?」
一方通行「友達になってやンよ」上条「ハイ?」2
一方通行「足引っ張ンなよ三下ァ」上条「おう!」
12 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/09(水) 18:54:00.74 ID:nXtaVV.0
―――上条達がダブルデートから帰宅中、姿を消した禁書目録が謎の男にさらわれ、上条達の前にももうひとりの謎の男が現れた。
この二人はグルらしい……男達の目的は『禁書目録』と『幻想殺し』。理由は『戦争の後始末』との事だが、詳しくは不明…。
上条、垣根、一方通行は『元魔術師』と名乗るもうひとりの男と交戦。男は『破光』を使っているらしいが、それは一体何なのかも不明。
最強三人組に男は未知の力を使うものの、あっさりと敗北。そして、現在に至る――
――科学と魔術が交差した後も、物語は終わらない――
―――??学区のビル
ビルの最上階、27階にその男はいた。
広い講堂となっているその部屋は殺風景な造りになっている……。
男は隣の小部屋にあるベッドに禁書目録を寝かせ、講堂の奥に置かれているソファーに座り、ワインを嗜んでいた。
部屋事態は殺風景だが、後ろはガラス張りのため学園都市の夜景が堪能できる。
その中で優雅にワインを嗜む男はふと外を見る…。そして――
「――もうすぐ……もうすぐで、我々は戦う必要がなくなるのだ……」
――と、一言ボツリと呟いた……。
13 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/09(水) 19:14:49.97 ID:nXtaVV.0
――公園――
一方通行「――やンのかコラァァあああ!!!」カチッ
垣根「――上等だテメェェェええええ!!!」バサッ
上条「――テメェら何マジモードになってんだぁぁあああ!!!やめろ!!やめないと打ち止めが泣いちゃうぞ!!!」
一方通行・垣根「――!!?」クルッ
打ち止め「――うっ、うっ…」(ってミサカはミサカは泣き真似をしてみたり)
一方通行「………チッ、今日は勘弁してやらァ。堕天使」
垣根「……コッチの台詞だ白野菜」
上条・打ち止め「ホッ……」
「――……うーん………はっ!」
――男が目を覚ましたようだ。しかし、両手足縛られているため身動きがとれない…。
一方通行「お?よォやくお目覚めかァ。四下ァ」
垣根「何だその四下って……?」
一方通行「あァ?三下は二人もいらねェだろォが」
垣根「はぁ……?」
いらない会話をする二人を後ろにし、上条は男の前に立つ。
上条「……テメェに訊きたい事は山ほどある。知ってる事全部喋ってもらうぞ…」
15 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/09(水) 19:52:34.04 ID:nXtaVV.0
「――……フッ、…良いでしょう……教えてあげますよ。私の知ってる限りで良ければ…」
黙秘するか殺せと言われる事を予想していたが、男はあっさり自白を認めた。
すでに禁書目録の捕獲に成功し、後は『幻想殺し』を持つ上条だけだ。ここで全て話せば…きっと上条は禁書目録を助けに向かうはずと
男は予想した……。
それはこちらにとっても好都合だ。特に機密に触れる事さえ喋らなければ……後は『あの方』が何とかしてくれる……。
男はそう確信していた。
上条「テメェらが俺達を狙う理由は何だ?…『戦争の後始末』ってのは…どういう意味だ?」
「……言葉の通りですよ…。学園都市とロシアを発端に開戦した第三次世界大戦は世界各地で今も続いている………あなた達は知らないかも
しれませんが、我が国『ギリシャ』はある国と一触即発だった……。しかし、第三次世界大戦をきっかけについに戦争が始まってしまったのです……」
上条「………第三次世界大戦に……お前も……」
一方通行「………それで、どォなったンだ?」
「……戦争は終わりました……敵国の勝利でね……ギリシャは現在…その国に従っている状態です………そして、つい最近……
ギリシャで内乱が起きました………降伏を決定した王軍と降伏反対派だった国民の間で……」
「その時の国民達のリーダーに立っていたのが『セリオス』……禁書目録をさらったのは彼です。そして私はその側近でした…」
上条「……そのセリオスってヤツは、何で俺と禁書目録に目を付けた?」
「『魔術』は……交渉にとって良い材料になるんですよ。『十二万三千冊の魔道書』ならなおさらね……そして、その魔術を消せる『幻想殺し』も……」
上条「……何で……その事を…?」
16 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/09(水) 20:15:06.86 ID:nXtaVV.0
「…以前、セリオスとイギリスにいた時期がありましてね……魔術の修練もその時に積んだのです。……もっとも、今はその力は『我々』には
ありません……あなた達は第三次世界大戦の『負の遺産』についてご存知ですか?」
上条「…あぁ?」
一方通行「……負の遺産…だとォ?」
垣根「……イヤ…何だよそれ…?」
「!………なるほど……やはり、学園都市では機密扱いでしたか……今のは忘れて下さい」
一方通行「オイ、ふざけンな。知ってンなら話せよ」
「………ダメです。内乱もようやく終わり、後は敵国に交渉材料を持ち帰るだけだというのに……学園都市まで敵に回す訳には
いきませんからね…戦争が終わったばかりの我々の国には……戦力がありません」
上条「機密とか…そんなの俺にはどうでもいい。インデックスはどこにいる?」
「○○学区にある○○ビルの最上階です……。大切な交渉材料ですから、殺したりはしませんよ…」
一方通行「○○ビルか……」
上条「知ってるのか?」
一方通行「学園都市の暗部組織が昔よく使ってたビルだ。…ハッ!いかがわしい事するにはうってつけって訳だァ」
「もう、良いですか?なら……縄を解いて下さい…戦うつもりはもうありませんよ……」
一方通行「最後に教えろ。オマエがさっき叫ンでた『破光』ってのは…何だ?オマエの力と関係あンのか?」
「…あの力は……―――グフッ!!!」――パァン!
上条「―――!!?」
17 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/09(水) 20:43:59.09 ID:nXtaVV.0
―――突然……どこからか銃声の音が聞こえ、男が声を上げて突っ伏した。……男の側頭部に穴があり、そこから大量の血が
噴出していた……。男は即死だった。
「!!………ク……ク……クッソぉぉぉぉおおおおおッッ!!!!」
吼えた上条は周りを見るが……どこにも人影はない。
打ち止め「………あ……あ……」
一方通行「チッ……どっか俺達の見えねェ場所から殺りやがったな……」
バッ!と打ち止めの目を塞ぎ、庇うようにしながら一方通行は呟く。
垣根「……何てヤツらだよ……とりあえず通報だけして場所変えようぜ。場所は分かったんだ。ここに長居する意味はねぇ……」
上条「………あぁ…」
一方通行「……イヤ、場所が割れたンなら俺はそのまま行く。オマエらは帰ってろ」
上条「おい……ふざけんなよテメェ……俺も行くに決まってんだろ!」
一方通行「……分かってるよ。三下はイイとして、オマエらは先に帰れ」
垣根「はぁ!?俺も――」
一方通行「――分かンねェのかァ?オマエまで来るっつったら、このガキはどォすンだよ?」
垣根「――!!」
一方通行「コイツを連れてく訳にはいかねェ。夜の道を一人で帰らせる訳にもいかねェだろォが」
垣根「……それは…確かに…」
一方通行「垣根ェ、オマエに打ち止めを任せる。死ンでも守れ」
18 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/09(水) 21:06:01.46 ID:nXtaVV.0
一方通行はまだ震えている打ち止めを垣根に譲る。
垣根「……わかった。打ち止めちゃんは引き受ける。黄泉川さんや芳川さんには適当に言っとくよ」
一方通行「…あァ、頼ンだぞ。今度こそ目ェ離すな」
垣根「おう!……上条、すまねえな……俺が目を離したばっかりによ…」
上条「いや、気にすんな垣根。悪いのは……俺だ。今度、どっか遊びに行こうぜ!」
垣根「あ、あぁ!」
――そして、一方通行はカチッと電極のスイッチを入れて収縮させたつえをしまった。
一方通行「オイ三下ァ、そろそろ行くぞ。ここからじゃ距離があるから、一気に飛ンで行く。肩につかまれ」
上条「お、おう!」ガシッ
打ち止め「……気をつけてね…ってミサカは…ミサカは―――うわっ!」
一方通行「無理に喋ンな。なァに、すぐ帰ってくっから心配すンなよ」
ワシワシと打ち止めの頭を撫でて、背を向けた。
垣根「……インデックスちゃんを、頼むぞ」
一方通行「…任せとけ。――っしゃァ!行くぞ三下ァ!舌噛むンじゃねェぞォ!!」
上条「あ、あぁ――ってうわぁぁ!!?」
――ギュン!!と一方通行と上条はものすごい勢いでその場を飛び去っていった……。
19 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/09(水) 21:43:54.85 ID:nXtaVV.0
――上条と一方通行が去った後、残された垣根は警備員に通報だけして打ち止めと家に向かって歩き出した。
打ち止め「………大丈夫かなぁ…」
垣根「……心配かい?」
打ち止め「………」コクリ
垣根「大丈夫さ。あいつはこの俺に唯一勝ったヤツなんだぜ?んな簡単にくたばりゃしねえよ」
打ち止め「……そう、だよね…」
垣根「……それに、上条も一緒なんだしよ?何でか知らねえけど、『あいつがついてりゃ大丈夫!』って気になるんだよな……ホント、
不思議なヤツだよ……一見そこいらのヤツと同じに見えるのに、何かそこいらのヤツとは違うんだよな……って、右手の能力あんだから
すでに違うか。…ハハハ」
打ち止め「………」
垣根「……信じて、待とうぜ?」
打ち止め「……うん…」
(……無理もねえよな…いきなり目の前で人が頭ぶち抜かれるなんて、こんな小さい女の子には刺激が強すぎんぜ……)
――まだ、どこか元気のない打ち止めを見てそう思った垣根は、隣を歩く打ち止めの頭を撫でる。
(……とっととインデックスちゃん助けて戻ってこいよ、一方通行。この子をまた笑顔にしてやれんのは……お前だけなんだからよ……)
――黄泉川や芳川にどう言い訳しようか考えながら、垣根と打ち止めは家路に着いた。
33 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/10(木) 20:55:30.15 ID:maz3ydo0 [2/8]
―――??学区のビル・講堂内
――パリィィィン!!
「――ナルスめ………しくじりおったか……」
砕けたワイングラスを片手にワナワナと震えるセリオス……。
「いや……『幻想殺し』ひとりならヤツで充分とタカをくくった俺のミスか……まぁいい、どの道向こうから出向いてくる……」
呟きながら捕獲失敗の報告を受け、切ったばかりの携帯電話をどこかにつなぐ。
「――間もなく『幻想殺し』を持つ少年が『友人』を連れてここに来る。『出迎え』の準備をしておけ」
『…その友人は……?』
「脅して帰らん様なら………殺せ」
『了解(ラジャー)!』
――それだけ言ってピッと電話を切る。
「フフフフ……早く来い!『幻想殺し』よ!お前と『禁書目録』には最高の働き場所を用意してあるのだ!!」
――セリオスの声は、広い講堂に高く響いた。
34 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/10(木) 21:28:51.17 ID:maz3ydo0 [3/8]
―――別の学区の某ビル、土御門はひとりの少女と密会していた。
少女はいつものヘソの出たピンクのサラシのようなものを胸に巻き、その上に制服を羽織るだけといった格好……ではなく、
セーターを着込んでいた。土御門は早速その格好にツッコむ。
「――……お前、そんな普通の格好もするんだな?」
「――はぁ?当たり前でしょ。人をお洒落のカケラもないみたいに言わないでくれる?」
結標淡希…『座標移動(ムーブポイント)』という強大な能力を持つ。『グループ』の構成員。ショタコン。
結標「――ちちちょっと!?だだだだ、だぁれがショタコンよ!!移すわよ!?」
土御門「?……俺は何も言ってないぜぃ?」
結標「……絶対誰か言ったわ……」
土御門「…まぁいい。で、今までの話を聞いた感想は?」
結標「……あの一方通行にトモダチねぇ……信じられないわ。そいつもよっぽど頭イカレてんのかしら?」
土御門「オイオイ、その友達は俺の友達でもあるんだからあまり悪く言わないで欲しいにゃー」
結標「…そう、別にどうでも良いけど……んで、何?」
土御門「は?」
結標「トボけないでよこのシスコン。まさか、そんな話をするためにこんな人気を一切閉ざすような部屋借り切ってまで私をここに呼んだ
んじゃないでしょうね?」
土御門「…流石、賢いな」
結標「どぉせ本命は『仕事』なんでしょ。…一方通行や海原は?」
土御門「一方通行は一足先に『現場』へ向かってる。……海原ももうじき来るハズだ。ヤツが来れば出発できる」
結標「……何でいつもの集合場所じゃないわけ?」
土御門「……『仕事』に出る前にお前達に話す事があるからだ。これは『学園都市』の機密事項も含まれるから、万が一にも外部へ漏らす
訳にはいかない」
土御門はいつの間にか仕事口調になっていたが、結標はそこに突っ込まなかった。
35 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/10(木) 21:52:30.49 ID:maz3ydo0 [4/8]
結標「いったい……何だってのよ?」
土御門「今後、その『機密事項』のおかげで『グループ』は忙しくなりそうなんでな……お前や海原、一方通行は知っておいた方が良い」
結標「……他の暗部組織は…?」
土御門「知らない。アレイスターは『グループ』を直々に指名した」(と言うより、俺がそう仕向けた)
結標「…戦争も終わったってのに、いったい今度は何を―――!?」
その時、ドアがガチャリと開いた。
「――お待たせしました」
入ってきたのが海原だったので、結標は安堵の息を吐く。
結標「ノックとかしなさいよ!心臓止まりかけたわ!」
海原「すいません。急いで来たもので……あれ?ひとりまだ来てませんが…?」
土御門「ヤツとは後で嫌でも合流する。……さて、『仕事』の前に話しておく事がある」
海原「……それは今日の『仕事』と関係あるのですか?」
土御門「まぁあると言えばあるが、もっとこの先の話だ。お前達も今から知ってた方が動きやすい」
海原「………」
結標「………」
――そして土御門は語り始めた……。
今の世界が抱えている問題とその裏と…学園都市に迫るかもしれない脅威を……。
土御門が話しを終えた時、二人はどこか現実味がない…といった表情をしていた。
37 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/10(木) 22:23:06.69 ID:maz3ydo0 [5/8]
――上条と一方通行は、聞き出したビルの前に降りていた。
一気に飛んできたのでかかった時間はニ分ほどだったが、上条にとっては地獄の二分間だった…。
一方通行「――ここだな」ストン
上条「――うぅ……今のは今日乗ったアトラクションを全てゴボウ抜きしました…」
一方通行「ブツクサ言ってねェで行くぞ」
伸縮させたつえを伸ばし、チョーカーのスイッチを切る。能力使用時間節約のためだ。
すでに今日は十分近く消費している。充電しなければあと二十分しか彼は最強でいられないのだ…。
そして、二人はゆっくりと一見オフィスのようなビルへと入っていった……。
上条「……誰もいない…?」
一方通行「貸しビルだからなァ。今の時間に借りてるヤツはいねェンだろ。『ヤツ』以外は」
上条「………」ゴクリ
今から禁書目録を助ける。それは変わらないが、やはり緊張はしていた。
相手の正体は分かっているが、相手の力が分からないのだ……。あの男の『破光』という謎の力は右手が通用したが……。
魔術とも超能力とも違う『何か』があの力から感じられた。
その正体が分からない……。そしてそれを訊こうとした直後、男は殺されてしまった。
おそらくセリオスの指示だろう。……自分の側近だった者をあっさり殺してしまう程非情な相手だ。話し合いで解決するのは困難なはず。
この先、一切油断はできない……。上条は無理矢理頭の中で気合を入れなおした。
(――……考えたって仕方ねぇ!俺はインデックスを助けるんだ!……待ってろよ!インデックス!)
――表情にも気合が入る。
38 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/10(木) 22:56:34.36 ID:maz3ydo0 [6/8]
一方通行と上条はエレベーターを見つけた。ボタンを押して到着を待つ…。
一方通行「……油断すンなよ三下。すでに俺達が来る事をヤツらは知ってるハズだからな」
上条「え…?」
一方通行「分からねェか?あの男があっさり白状したのはオマエをここにおびき出すためだ。そして、『あのタイミング』で撃たれたって事は、
ハナっから俺達を監視していたとしか思えねェ」
上条「そ、そうか…」
一方通行「入り口にも……あそこにもカメラがついてやがる。…どォせ正当に学園都市に入れた訳じゃねェだろォし、そンな危ねェ橋渡ってる
よォなヤツが、『誰がアジトに来たか分からねェ』なンてヘマはしねェハズだ。入り口の時点で分かってるだろォな」
上条「………確かに……けどお前、ずいぶんこういう状況に慣れてないか…?」
一方通行「……俺にも『色々』とあンだよ。お、来たか…」
――そこへエレベーターが到着し、二人は乗り込む。
最上階のボタンを押して、エレベーターは動き出した。
一方通行「――エレベーター出た辺りで待ち伏せされてンだろォな。いきなり撃ってくるこたァねェだろォが、気ィ抜くなよ」
上条「あ、あぁ……」
――いつも以上に落ち着いている一方通行。上条は一方通行が暗部組織の構成員だという事を知らないので無理もないのだろうが、
そんな様子を少し不思議に思った。上条は魔術サイドには大きく関わってはいるが、科学サイドの方は深く関わってはいない。
闇について知っているのも、漠然とした『存在』だけだ。実際そんな事は一般人でも知ってるレベルである。
そういう意味では、この一方通行は上条のまだ知らない一方通行とも言えるのかもしれない……。
そして、それについて考える暇もなく……エレベーターは最上階に到着した。
上条「――!!」
41 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/10(木) 23:21:10.64 ID:maz3ydo0 [7/8]
一方通行「――…ホラな」
……一方通行の予想は見事に的中した。
エレベーターのドアが開いた途端、上条達の目に映ったのは…広い通路から包囲するようにエレベーターを取り囲む
黒服の男達だった。数は二十人程だろうか……。皆拳銃をコチラに向けて構えている。
一方通行「お待ちかねって訳だ。予想通り過ぎて拍子抜けだな」
ニヤリと笑う一方通行。予想していた状況とは言え上条の表情も引き締まる。
そして、真ん中にいた外国人の黒服男が流暢な日本語で喋った。
「幻想殺しは…どっちだ?」
上条「俺だ。インデックスは返してもらう」
間髪入れずに答える上条。一方通行が自分だと言おうか迷う内に言ってしまった……。
上条も無意識にそれを感じとったかは定かではないが……すぐに声を出した。
「貴様は一緒に来てもらう。ご友人にはお引取り願おう」
一方通行「オイオイ、そりゃねェだろ。せっかく態々足運ンでやったンだからコーヒーくらい出したってイインじゃねェの?」
ふざけた調子の一方通行に外国人の黒服男は眉間にしわをよせる。
「もう一度だけ警告する。すぐに帰った方が身の為だ。……さもなくば……分かるな?」チャキ…
43 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/10(木) 23:38:43.92 ID:maz3ydo0 [8/8]
上条「一方通行、ここからは俺一人で――」
一方通行「黙ってろ三下ァ。……オイ、オマエら誰に向かって口利いてるのか分かってンのか?」
「……貴様など知らん。これが最後だ。幻想殺しを置いて今すぐエレベーターで引き返せ。でなければ死んでもらう」
一方通行「……そォか、オマエら……本当に気の毒なヤツらだなァ。心底同情するぜ。そンな『オモチャ』で
この俺を追い返そォだなンてさァ………憐れ過ぎて笑えてきたわ」カチッ
調子を崩さずチョーカーにスイッチを入れ、つえを縮めた一方通行に対してついに発砲許可が下りる。
「―――殺れ」
―――パパパパパパパァァァンンン!!!┣¨┣¨┣¨┣¨ドド!!!
上条「――!!」
一方通行「――ひゃは」
――ギィィィィイイイイン!!
数秒後、黒服の男達は一人残らず地面に倒れ伏した……。
44 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/11(金) 00:05:14.61 ID:BybWHGA0 [1/15]
「……グゥゥゥッッ……」「……ゥゥゥ……」
『反射』させた銃弾は全て返したが、全て器用に致命傷を外す辺り流石の一方通行である。
通路に出た上条と一方通行はその惨状を見ながら進む。一方通行が傷の比較的浅そうな男に訊いた。
「――オイ、セリオスって野郎はどこだ?答えりゃオマエの寿命は延びる。拒否すりゃここで終わりだ。どっちがイイか分かるよなァ?」
悪魔のような表情で男を脅す。
完全にビビッた男は「こ、この通路の奥にある講堂です」とあっさり白状した。
「――ご苦労。後はどこででも目覚めな」
そう言って男を気絶させ、二人は奥へ進み始めた。歩きながら会話する。
上条「――しかし、意外だったな」
一方通行「あ?何がだよ?」
上条「あんな状況だったのに誰も殺してないお前がだよ。トドメを刺そうとしたら止めるつもりだったんだが、取り越し苦労だったか…」
一方通行「……人の命になンざ興味ねェよ。奪って喜ぶヤツなンて一人もいねェだろォが」
上条「……すまん」
一方通行「何謝ってンだ?」
上条「………イヤ、何でもねぇ!ありがとな!」
一方通行「…はァ?急に謝ったと思ったら今度は礼って……オマエ、マジで分っかンねェ…」
――巻き込んだ事を謝ろうとしたのだが、それは違うと思って感謝に切り替えた上条の心理に
一方通行が気づいたのかは定かではない。
47 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/11(金) 16:53:42.17 ID:BybWHGA0 [3/15]
―――土御門達は車でとあるビルへ向かっていた。
結標「――…ねぇ土御門。行くのは良いけど私達はそこで何をするの?」
土御門「言ってなかったかにゃー?今からする仕事は不法侵入者の捕獲ぜよ」
海原「……我々が出る必要もない気がしますが…」
土御門「じゃあ言い換える。『捕獲』ではなく『回収』だにゃー」
結標「私達が着く頃には終わってるって事ね……けど『標的』が殺されたら?」
海原「彼に電話くらいはしておいた方が…」
土御門「……イヤ、大丈夫だぜぃ。アイツはたとえ仕事でも、もう誰ひとり殺しはしないだろう」
結標「……そうね」
海原(そう言えば、御坂さんを助けてくれた礼を言うの忘れてました……)
土御門「――さて。着くまで暇だし、面白い話があるんだが…聞くか?」
結標「あんた……どんだけネタ豊富なのよ?」
海原「…これ以上大きな話があるのですか?」
土御門「あー、そんなんじゃない。単なるネタ話だにゃー♪題して、『第一位と第二位がまさかの同居!?』」
海原(……何そのタイトル……センスねぇなコイツ)
結標「『題』じゃなくてオチ言ってんじゃない……けど面白そうだから聞かせてくれる?」
土御門は容赦なかった。一方通行が家出して友達の家に転がり込んだ事まで容赦なく喋ってしまった。
しばらく車内には笑い声が響いたそうだ。
48 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/11(金) 17:15:31.11 ID:BybWHGA0 [4/15]
一方通行と上条は広い通路を歩いていた。通路には足音とつえの音が響く。――
一方通行「――ッ!」ブルルッ
上条「――ん、どうした?」
突然身震いした一方通行を上条は不審な目で見た。
一方通行「…………イヤ、何でもねェ」(何だこの寒気は?……何か知らねェが…すげェ嫌な事が起きてる気がする……しかもすげェムカつく事が…)
上条「……やっぱり、戦いは避けられねえのかな?」
一方通行「その甘い考えは捨てた方がイイな。ヤツらもそれなりに覚悟して来たンだろォし、腕ずくでもオマエとシスターを連れて帰るつもり
だからな」
上条「………そう、だよな。仕方ねえよな…」
一方通行「……オマエに言っても無駄かもしれねェが…変に相手に同情はするな」
上条「……あぁ」
――わかっている……相手にどんな理由があるとは言え、禁書目録や自分を無理矢理巻き込んで良い理屈はない。
けど、セリオスはただ戦争後に支配された母国を救いたいだけなんだとしたら……。
勿論、だからと言ってこんなやり方は許されないが……きっかけが本当にそれだとしたら……
根っからの善人である上条はそこで悩んでいた。
そんな上条の様子に気づかない一方通行ではない。
一方通行「…オイ三下。オマエはアイツらの国を救うために、シスターは犠牲になってもイイなンて思ってねェよな?」
上条「――!!」
49 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/11(金) 17:33:33.08 ID:BybWHGA0 [5/15]
上条「――そ、そんな訳ねえだろ!」
一方通行「……なら、イイ」
一方通行はあえてそれ以上追求しなかった。上条の優しい性格は相手の武器にもなってしまう。
釘を刺す意味で言ったのだが……一方通行は信じた。
それにもし上条が間違いを犯したら、その時は自分がフォローすればいい。かつて上条が自分にそうしてくれたように……。
一方通行「――着いたぜ。多分、ここだ」
上条「……よし、行くぞ」
ギィィ…と、映画館の入り口のような扉を開く。
中は照明が点いており、明るい。広さは本当に映画館として使えそうな程広い講堂だった。
今は使われていない感じがしたが、奥には熱帯魚の入った水槽やソファー、テレビといった物が置かれ、そこだけ生活感が出ていた。
そして……中央奥のソファーに、『男』はいた。
その姿を確認した二人は、ゆっくりと奥へ進む。
禁書目録を目だけで探すが…姿はない。別の部屋に監禁しているのだろうか。
講堂の真ん中ほどまで来た所で、『男』は声を出す。
「―――よく来たな。待っていたぞ、『幻想殺し』」
低くて渋い声だが、よく響く声だった。
50 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/11(金) 17:54:56.25 ID:BybWHGA0 [6/15]
「……………」ピタッ
声を聞き、立ち止まる二人……。
上条「……お前が『セリオス』か?」
「いかにもそうだ。そして君の方から来てくれるのは分かっていた……今日は素晴らしい日だよ。これで私の計画は――」
「――ふざけんじゃねえッッ!!!」
上条が男の言葉を遮って叫ぶ。
上条「公園で俺達といた男を殺したのはテメェだろッ!!何で殺した!?テメェの側近だったんじゃねえのかよ!!?」
「……必要のなくなった駒は切り捨てるのが私のやり方でね。『ナルス』には本当に良く働いてもらったよ。――だが、もう必要ない」
上条「この――!!!?」
一方通行「それがオマエのやり方だっつーンなら、それを否定する気はねェ。俺らの目的はその『ナルス』ってヤツの仇討ちなンかじゃねェからな」
今にも飛び掛りそうな上条を片手で制しながらセリオスを真っ直ぐ見る一方通行。
一方通行「……俺らの目的はひとつ、『シスター』を連れて帰るだけだァ――」
そう言ってニヤリと笑った。
51 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/11(金) 18:12:19.80 ID:BybWHGA0 [7/15]
いつの間にか冷静になった上条も続く。
上条「そうだ!インデックスはどこにやった!?返してもらうぞ!!」
「……ハァ」
セリオスは溜息を吐いて呆れた目を向ける。
「――悪い事は言わない……大人しく一緒にギリシャへ来るんだ。禁書目録と一緒にいたいなら、君も来れば良い」
上条「ふざけんなよ!!俺もインデックスも、今は平和に暮らしてるんだ!!テメェらにいいように利用されてたまっかよ!!」
一方通行「――だそォだ、諦めな」
「……良いのか?国じゅうの人間を君は見殺しにするとでも?」
上条「――!!?」
「君達が協力してさえくれれば、多くのギリシャ人の命が救われるのだぞ?君はそれでも協力したくないと……?」
上条「……そ、それは……でも、こんな拉致みたいなやり方……」
「我々も手段は選んでられなかったんだよ…なにしろ不法侵入だからね。しかし、全ては我が国の為なんだ」
上条「………」
言葉を失くし、俯き考える上条。しかし……一方通行はセリオスの口元がいやらしく歪んだのを見逃さなかった。
あの顔は……紛れもなく自分と同じ『悪党』の顔だった。
「――騙されンな、三下ァ」
54 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/11(金) 18:35:50.24 ID:BybWHGA0 [8/15]
「――えっ?」
上条は急に口を出した一方通行に目を向ける。
一方通行「……くだらねェ話は終わりって意味だ。オイ、とっととシスター出せ。俺らはもォ帰るからよ」
上条「一方通行………?」
「……くだらないだと…?国民を救う事がくだらないと……君はそう言うのか?」
一方通行「あァ、くだらねェな。それで本当に『救える』ンなら別だけどよォ…」
「……何だと?」
一方通行「最初っからキナ臭ェと思ってたが、オマエの面ァ見て確信した。『全部嘘』だってなァ」
上条「…嘘……?」
一方通行「もォ正直になれよ。『幻想殺し』と『禁書目録』は自分が世界を乗っ取るための足掛かりだってな」
「――!!」
上条「なん……だって…?」
一方通行「すぐに他人を信用してンじゃねェぞ三下ァ。コイツはハナっからオマエとシスターを敵国とやらに差し出す気はねェらしい…」
「……何故そう思う?」
一方通行「ハッ。ガキなら簡単に騙せるとでも思ったのか?…まず、オマエらの『暗部じみたやり方』の時点で疑問だったンだよ。
国の為なら手段を選ばねェってオマエは言ったが、そォいうヤツに限って腹ン中じゃ自分の欲望しかねェのを俺はよく知ってるからな。
それに、オマエの『表情』がそォ言ってる」
「………」
56 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/11(金) 18:57:56.21 ID:BybWHGA0 [9/15]
一方通行「『国の為』って聞こえのイイ理由を作り、三下やシスターをたぶらかして……研究報酬で大儲け、後はせェぜェ魔術大国相手に
利用するだけ利用する……オマエの『チンケな欲望』なンて、どォせこンなトコだろ?」
「………」ギリギリ…
セリオスの表情がみるみる険しくなっていくが……お構いなしに畳み掛ける。
一方通行「まァ、仮にオマエの言ってる事が本当だとしても、コイツらはこンな方法で来るオマエらになンざ手は貸さねェよ。
本当に国を救いてェンなら、『外しちゃいけねェ道』ってのがある。不法侵入に拉致監禁までしている『小悪党』なオマエに、
今さら一国を救うなンて大それた台詞は全く似合わねェンだよ」
上条も『一方通行に同意』、と言った目をセリオスに向ける。
一方通行「――それに、コイツらを利用する事はこの俺が許さねェ。なンたって俺の『ダチ』だからなァ。…残念でした」ニヤリ
上条「……インデックスを返せ。俺達はテメェの私利私欲に付き合う気はねえぜ?」ニヤリ
「―――……フ、フフ……」
上条・一方通行「?」
「――ふざっっっけんじゃねえぞォォおおお!!!!ガキどもがァァァああああああ!!!!!」
――ガシャァァァン!!!
57 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/11(金) 19:22:56.35 ID:BybWHGA0 [10/15]
――セリオスは完全に『仮面』を取った。
荒々しく立ち上がり、恐ろしい形相で二人を睨む。叫んだと同時に近くにあったテレビやソファーは吹き飛び、水槽は割れて
地面を熱帯魚がピチピチと跳ねる。
「――大人しく俺についてくりゃぁちったぁ優しくしてやろうと思ったのによォォ!!クソ生意気なガキが好き勝手ほざきやがって!!
テメエら生きて帰れっと思うなよクソがァァああ!!!」
一方通行「……ソイツが本性か。まァ予想してたがなァ」カチッ
上条「――来るぞ!!」
「死にさらせやァァァあああああ!!!!」―――ボォォッッ!!!
「――チィッッ!!」――バッ!
右手から赤い光が二人に向かって放出される。チョーカーにスイッチを入れた一方通行は上条の腕を掴み飛び上がって避けた。
――ボゴォォォオオオンン!!!
赤い光が壁に激突した途端、上条達の後ろは大爆発を起こした。一方通行は上条を掴んだまま爆風に乗るように、そのまま飛び上がって離れる。
上条「――……サンキュー、一方通行……っつーか、何て威力だよ…」
一方通行「あの『男』と力の原理は一緒か……どっちみちその『原理』が分からなきゃ反射は出来ねェ。三下ァ、一気にいくぞ!
間違っても右手で俺に触れンなよ!」
上条「お、おう!」
58 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/11(金) 19:42:35.74 ID:BybWHGA0 [11/15]
――上条の左腕を掴んだまま、一方通行は空中からセリオスに向かって直滑降に飛ぶ。
セリオスはそれを確認する様に見上げたまま左手に光を集める。
「――ハハハハァ!!!面白ぇ『お友達』だなぁ『幻想殺し』よぉ!!だがなぁ、俺の『破光』はナルスのボケなんぞたぁ訳が違うぜぇ!!」
――ギュゥゥゥン!!と猛スピードで突っ込む一方通行に向かってセリオスは左手をかざす。
「―――こぉんな事もできるってなぁ。ギャハハハハ!!!」
――瞬間!!
セリオスの左手から雨のような数の赤い玉が散弾銃の様に放出される。
「――!!?」
「――くッッ!!!」――バッ!
上条は咄嗟に右手を前に突き出したが、凄まじい数の光に二人はセリオスに届く前に吹き飛ばされる。
「――ぐっ……」
スタン、と二人は空中で体勢を立て直し、離れた場所に着地するが……まるで茨の道に飛び込んだ様にところどころ傷を負っていた。
一方通行「……ハァ……クソったれが…」
上条「……ぐぅ……野郎、あんな事もできんのかよ…」
59 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/11(金) 20:05:31.06 ID:BybWHGA0 [12/15]
「――『幻想殺し』に『破光』が有効なのはちっと驚いたがなぁ!!テメェらをブチのめす方法なんざいくらでもあんだよ!それと――」
そこまで喋って一方通行に目を向ける。
「――テメェ、ただの『お友達』じゃねえな?聞いたぜぇ?確かこのボーヤには『勢力』があったんだよな。テメェもその仲間か何かかよ?」
一方通行「……はァ?何だその『勢力』ってのは…?」
上条「コイツはそんなんじゃねぇ!!俺の『友達』だ!!」
「ほぉ……にしても、『破人』でもねえのにその力は普通じゃねえ。まさか『能力者』とでも言うんじゃねえだろうな?」
一方通行「あン?……能力者だったら何だっつーンだよ?」
「ハハハハ!!冗談こいてんじゃねえぞ!?『学園都市』の能力開発なんざ魔術の劣化版みてぇなモンじゃねえか!火だの水だの、
俺からすりゃ『単なる遊び芸』だぜ!!テメェみてぇな力がこんなチンケな街が生んだ『能力』だってのか!?ふざけた寝言はくたばって
から言えってんだよォ!!」
一方通行「……………ほォ…」
上条「………この野郎……」グッ…
――怒りに震える上条の前に一方通行は立った。……そして、かつてない程邪悪な表情でセリオスに言う。
「―――ンなら教えてやるよ。『チンケな街が生んだ能力』ってのを………毎晩夢に出て魘されるくらいになァァ!!!」
60 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/11(金) 20:26:30.64 ID:BybWHGA0 [13/15]
上条「一方通行ッッ!!」
――上条が叫んだ時、一方通行はすでにセリオスに凄まじいスピードで飛び掛っていた。
一方通行「――チンケな街が生ンだこの力ァ、捻じ伏せてみろよォォ!!」
――ギュン!と高速で動く一方通行の顔面にセリオスの放ったカウンターの右ストレートが決まる。
一方通行「グッ、ハァ!!?」
吹っ飛ばされた一方通行はそのまま背中から地面に叩きつけられる。
「ハハハ!!馬鹿が!!『俺ら』の力も分かってねえくせに突っ込むたぁ、テメェは本物の馬鹿だなぁ!!まぁ、ソイツを知る前に
ナルスをぶっ殺した俺が言えた事じゃねえけどなぁ!!」
一方通行「………ぐゥッ……どォなってやがンだ……何故『反射』しねェ…?」
かつて木原との戦いが頭をよぎるが……あの技は一方通行の能力開発に携わっていた木原だからこそ成せる技だ。
一方通行の「能力」を全く知らないはずのセリオスに出来る訳がない。
まさか、上条の様な『イレギュラーな力』でも持っているというのか……。
「オラ、どうした?『チンケな能力』について教えてくれるんじゃなかったのかぁ?」
セリオスは見下すように倒れている一方通行に声をかける。
61 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/11(金) 20:44:25.82 ID:BybWHGA0 [14/15]
――ムクリと体を起こす一方通行……だが、まだダメージが抜けておらず、立ち上がれない。
血の出る鼻を手で押さえてセリオスを睨む。
一方通行「……野郎ォ…」
「ケッ、動き回るだけならハエと変わんねえんだよ。……まぁ、俺の目的は『幻想殺し』と『禁書目録』だけだ。テメェになんざ興味はねぇ…」
――右手が赤く光を放つ。
「――興味はねえが……あんまし飛び回られんのもうぜぇからな。……消えちまえよ――」
――ボウッッ!!と一方通行に向けて光を放つ。
一方通行「――クソがァァッッ!!」
避けきれない!――その時、一方通行の前に立ちはだかる姿が――
一方通行「!?―――三下ァァッッ!!!」
受け止めきれるか分からない程の威力を持つ赤い塊に、上条は臆する事なく右手を構える。
上条「――うおォォォォおおおおおおッッッッ!!!!!」
――バシュゥゥゥウウウウウウ!!!!
もの凄い衝撃が辺りを包んだ……。
93 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/12(土) 17:47:24.29 ID:CHjF2aw0 [2/13]
上条「――うおォォォォおおおおおおッッッッ!!!!!」
――バシュゥゥゥウウウウウウ!!!!
右手が触れた瞬間、もの凄い衝撃が辺りを包んだ……。 そして……光が消える。
一方通行「―――ッッ!!!」
上条「…………」
上条は、立っていた……右手を前に突き出したまま……。そして、顔を上げてセリオスを睨む。
「――チッ!!ったく忌々しい力だなぁオイ!!いってぇどうなってやがんだその右手はよぉ!!!」
セリオスは苦虫を潰したような顔で上条に叫ぶが、すぐに薄気味悪い笑みを浮かべた。
「……まぁいいけどよ!それでこそ利用しがいがあるってなぁ!!まずはうっとおしいその右手、封じてやらぁ!!!」
――ブォォォンン……
セリオスは左手を上にかざし、上条の体が入る程度の赤く光る輪っかを上に作った。
そして、フリスビーを投げるように上条目掛けて飛ばした。
「―――そらよッッ!!!」――ブンッ!!
94 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/12(土) 17:59:51.11 ID:CHjF2aw0 [3/13]
上条「――!!」
赤い輪は上条に一直線に向かってくる。
一方通行「――三下ァ!!右手でソイツに触れ!!!」
「――させっかよ、バァカ」ニヤ…
セリオスがクンッと指を振る。すると、それに乗じて赤い輪も大きく曲がる。
上条が振り下ろした右手は空振りに終わった……。
上条「何ッ!!?」
そのままセリオスは赤い輪を遠隔操作で操る。
目の前を飛び回る輪っかに上条は右手で触れようとするが……全く当たらない。まるで遊ばれている。
上条(――畜生!埒があかねぇ……こうなったら、この輪っかみてぇなのは無視して、セリオスを――)
痺れを切らし、上条がセリオスに飛びかかろうと足を踏み出した時だった…。
一方通行「―――三下!!上だァ!!!」
上条「――!!?」
「目ぇ離してんじゃねえよ。バァーカ」
96 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/12(土) 18:17:03.00 ID:CHjF2aw0 [4/13]
上条「―――し、しまった!!!」
気づいた時には遅かった……。
上条の体は、赤い輪にすっぽりとハマッてしまった……。まるで鉄の輪のような感覚に身動きも取れなかった。
両手はこれで封じられてしまった。何とか赤い輪に触ろうと右手を動かそうとするが……無駄だった。
「――ガハハハハハ!!!とんだ間抜けだなテメェはよぉ!!!まんまと引っかかってくれちゃって……それじゃもう右手は使えねえな!!」
上条「――クソッッッ!!!」
「さて、このままお前を絞め殺しても良いんだが……それじゃ俺が危険冒してまでここ(学園都市)まで来た意味がなくなっちまう……
とりあえず、死なねえ程度に痛めつけてやっか――」
――カツン、カツン……と上条に歩みよるセリオス。………上条は赤い輪に両腕を封じられたまま立ち上がる。
上条「………おい、セリオス。……一つ訊かせろ」
「――あぁ?何だよ?」
上条「テメェは……本当に自分の国の人達を見捨てようってのか?」
「………」ピタ
上条「本当は………違うんじゃないのか?……本当は……本気で国を救いたいだけなんじゃないのか!!?」
――立ち止まるセリオスに上条の叫びが響く……。
97 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/12(土) 18:34:20.98 ID:CHjF2aw0 [5/13]
上条「――お前は!!誰よりも自分の国を想っていた!!!違うのかよ!!?」
「――…………………プッ」
上条「――!?」
「――ブワッッハハハハハハハハハ!!!!!……ハハハハハ……や、やめろバカが!!笑い死にさせる気かよ!!あぁー面白ぇ」
腹を抱えて笑い出すセリオスに……上条は呆然とする。
一方通行「……三下ァ!!これで分かったろォ!……コイツは、根っから性根が腐ってやがンだ!」
上条「…………何が………おかしいんだよ?」
一方通行の声に見向きもしない上条は………セリオスにゆっくりと尋ねる。
「―――あぁ?そりゃおかしいだろうがよ?何が国の為だっつの。俺ぁな、テメエさえ良けりゃ誰がどうなろうが知ったこっちゃねえんだよ。
人がどんだけ死のうが、建モン幾つぶっ壊れようが、最終的に俺が笑えりゃ全てオッケーなの!それなのに、テメェときたら………何?俺が
無理して悪役を買って出てるとでも思ったワケ?……プッ、これで笑えねえワケねえだろっつーの……ププッ――」
上条「……………………ふざ……けんな……」
「――ハイ?」
上条「―――ふざけんなっつったんだよォォおお!!!!こんのぉクソ野郎がァァああああああ!!!!!!」――ダッ!
98 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/12(土) 18:50:30.72 ID:CHjF2aw0 [6/13]
怒りで我を忘れた上条は両手が使えないにも関わらず、セリオスに飛び掛る。
上条「――だァァあああああああ!!!!」
勢いのついたままセリオスに向けて飛び蹴りを放つ。
「バカが」
と一言漏らしたセリオスは飛び蹴りをかわし、着地した上条の腹部に拳を入れた。
上条「――グフッッ!!!」
石で突き刺されたような衝撃を受けて後ろに飛ばされる上条。
しかし、すぐに立ち上がり……セリオスに向かって行く。
一方通行「―――三下ァァ!!!クソッ!!」――フラ…
立ち上がろうとするが……先ほどのダメージが抜けていないのか、足に力が入らない。
上条は何度も向かっていってはセリオスに殴り飛ばされる……が……それでも………彼は立ち上がる。
上条「ハァ……ハァ……」ヨロッ…
体はもうボロボロで、至る所から血を流している上条………。一方通行はそのフラフラな上条の様子に……。
「――やめろ三下………もォ立つな…」
99 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/12(土) 19:13:59.94 ID:CHjF2aw0 [7/13]
(――……何してンだ俺は?………目の前で『ダチ』が死にそォになってンじゃねェか………何で……何で体が動かねェンだ……?)
――上条が何度も殴り飛ばされながら立ち向かっていく姿に……一方通行はその場に凍りついたかのように動けなかった。
(―――俺は………何怯えてンだ……このまま三下が死ぬかもしれねェ事に怯えてるとでも言うのか………『ダチ』失う事を恐れてるってのか?
オイ…だったら………だったらなおさら動かなきゃダメだろ……今動いて助けなきゃダメだろォ………なのに………何で………何でこの体は動いてくれねェ……?)
上条「ハァ……ハァ………くっ…」
「……チッ、まだ立つのかよ……右手以外はただのガキかと思ったが、なかなかしぶてぇじゃねえか。……仕方ねぇ。加減はするが、
ちっと派手にやるか……ま、死にはしねえだろ。もし死んだとしても、とりあえず禁書目録がいれば何とかならなくもねえしな………
俺ぁしつけぇガキは嫌いなんだよ」
―――ブゥゥゥウウウウン………
セリオスが赤い光を右手に集める。……まさか!
(――!!!オイ!!冗談じゃねェぞ!!!アイツは手封じられてっから防げねェンだぞ!!?)
一方通行「――………やめろ」
「―――眠りな、ガキが」――ボウッッ!!
無防備な上条に………容赦なく赤い光が放射された。
「――やめろ、やめろやめろ…………やめろォォォおおおおおおおおおおおおおッッッッ!!!!!!」
103 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/12(土) 19:31:40.26 ID:CHjF2aw0 [8/13]
―――上条は……意識を失う直前、確かに見た。
自分が赤い光に当たる寸前……遮るように目の前に現れた『黒い物質』を……。
―――ブァァァァァアアアアアッッ!!!!!!
―――――
「――………オイ……何だよそりゃ……?」
驚いたように声を出すのはセリオスだった………。セリオスは戦慄を覚えた。……上条目掛けて放ったはずの光は瞬く間に消え、
意識を失い倒れた上条を…守るかのように立ちはだかる『悪魔』に―――
――背中から黒い翼を生やし、完全にブチ切れた一方通行がそこにいた。
「………テメェ………何者だ?」
セリオスの問いに反応した一方通行は……黒い翼に似合う笑みを浮かべて答えた。
「―――俺は一方通行……学園都市最強の能力者だ。……そして――」
「―――クソッたれの『悪党』さ…」
104 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/12(土) 19:54:24.84 ID:CHjF2aw0 [9/13]
「――ほぉ………テメェがこの街の『最強』か……」
――セリオスは再び右手に光を集める……。
「……どおりで強ぇワケだぁ………けどよ、所詮『山のボス猿』レベルだ。人間様にたて突くにぁ千年早ぇんだよ!!!」――バッ!
――ボォウッッッ!!!!
一方通行「……………」
今までで最も強力な光が一方通行に向かって照射される…………が、
―――バシュゥゥゥウウウウウ……!!!
赤い光は黒い翼を盾に難なくかき消されてしまった……。
「―――……なっっっ!!!!?」
黒い翼をどかせ、姿を見せる一方通行……その顔は、さっきと変わらぬ『悪魔の笑み』のままだった……。
「―――………ク、……ク、ク、クソがァァあああああああああ!!!!!!」――シュゥゥゥンン……
―――ボボボボボボゥゥッッッ!!!!
まるで動揺を隠すかのように…セリオスは両手に集めた赤い光を連続で放つ。
………その攻撃で辺り一面、凄まじい爆風と衝撃に包まれた。―――
105 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/12(土) 20:11:00.65 ID:CHjF2aw0 [10/13]
「―――………ハァ、ハァ、ハァ……」
一方通行の体は爆風でまだ見えないが、セリオスは肩で息をしながら叫んだ。
「………ハ、ハハ、ハハハハハハハハハッッッッ!!!!思い知ったかボス猿!!!所詮この俺に、テメエなんかが敵うワケがねえんだ!!!」
高笑いし、未だ晴れない爆風に向かって叫ぶ。
「――側にいた幻想殺しも死んじまったかぁ?……まぁいいさ、禁書目録は手に入ったんだ!どうにでも―――ッッ!!?な、な!!?」
―――ブォォォオオオオオ!!!……と独り言の最中に衝撃が走る。
一方通行は、爆風を一気に吹き飛ばし………再びセリオスにその姿を見せた。………黒い翼を生やしたまま、全くの無傷で……。
「―――……バ、バカな……バカなバカなバカなぁぁッッッッ!!!!!」
一方通行「――………俺が『お山のボス猿』なら………オマエは『水槽の魚』ってかァ?―――ぎゃは」ニヤ…
「………あ……あ……」
――セリオスの脳裏に……はっきりと『恐怖』が芽生えた瞬間だった……。
107 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/12(土) 20:39:11.24 ID:CHjF2aw0 [11/13]
――カツ……カツ……
ゆっくり…ゆっくりとセリオスに向かって歩みよる一方通行……。
「………あ……あぁ…」ペタン
一方通行の威圧感と押し寄せてくる恐怖に完全に縛られたセリオスは………腰を抜かしてその場に座り込んでしまった。
一方通行は、セリオスの前まで来て立ち止まり……笑みを浮かべたまま見下ろす。
一方通行「―――やっぱ、気分イイよなァ。『弱者』を見下ろすってのはよォ」
「――ひ、ひぃぃっっ!!」ガタガタ…
一方通行の一言にさえ動揺し、ガタガタと震えながら見上げるセリオスの目に……もはや戦意はなかった。
その目に映る今の一方通行の顔はまさに―――
―――『狂気』
完全に『悪党』に立ち戻った一方通行は……セリオスに黒い翼をゆっくりと向けた。………[ピーーー]気だ。
紛れもない『殺意』が一方通行の目に宿っていた………。
「……た、……助けて…」ブルブル…
108 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/12(土) 20:53:33.26 ID:CHjF2aw0 [12/13]
「――あァ?」
「助けて下さい許して下さい命だけはどうか許して下さいぃぃぃぃいいいいいい!!!!!!」
その場に膝をつき、必死に命乞いをするセリオス……憐れなその姿に、一方通行は『悪魔の笑み』をさらに強めた。
「―――死ぬのがそンなに怖いか?」
コクコクと何度も首を縦に振るセリオス。
「――そォか、悪いな。俺ァ『悪党』だからよ。未練がましくこの世の岸にすがりついてるヤツ見ると……蹴落としたくなンだわ」
「い、いやだぁぁああ!!!し、し、死にたくないぃぃいいいい!!!!!」
「――…喚くなよ、みっともねェ。すぐに殺してやるから心配すンな」ニタ…
「ひぃぃぃイイイイイイイイ!!!!!!!―――」
―――黒い翼を………セリオスに向け容赦なく振り下ろす!―――と、その時一方通行の後ろから叫び声が響く。
「―――やめろぉぉぉおおおおおおお!!!!!!一方通行ぁぁぁああああああああッッ!!!!!!」
「――!!!?」
673 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/13(日) 20:05:21.93 ID:wXv4avA0 [2/13]
―――意識を戻した上条が目にしたのは……『闇』に憑りつかれた友の姿だった……。
「―――…ん……!?」
目を覚まし、周りに目を向ける上条。
「………痛ッ……」
体を起こそうにも、軋む痛みが体に走り起き上がれない。
骨は………何本かイッたか…。
「………う……どうなった…んだ……?」チラ…
なにやら音のする方を向く……その目に映ったのは―――
「―――!!?」
―――黒い翼を背中から生やし、座り込むセリオスの前に立つ『一方通行』の後ろ姿だった……。
674 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/13(日) 20:16:19.86 ID:wXv4avA0 [3/13]
「―――な………何だよあれ……一方通行……?」
――翼だけじゃない。一方通行の体全体が黒い瘴気のようなもので覆われていた……。
「~~~~~……」
一方通行が何か喋っているようだが、ここからでは遠くて聞こえなかった。
「……………」
セリオスの表情は……完全に怯えているように見えた。
そして……上条は首だけ一方通行に向けたまま、息が詰まりかける。
一方通行が………セリオスを殺そうとしていたからだ。
離れた場所にいても伝わってきた一方通行から発する強烈な『殺意』――
「―――やめろォォォおおおおおお!!!!一方通行ァァああああああ!!!!!」
上条は『殺意』を感じ取った瞬間、思いっきり叫んでいた………。
676 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/13(日) 20:28:40.00 ID:wXv4avA0 [4/13]
―――ピタッ………。
――直前で止まる黒い羽………セリオスは泡を吹いてパタリと倒れ、気を失った……。
「………殺…すな……一方…通行」フラ…
痛みを堪え、立ち上がる上条。……声が聞こえ、上条に向いた一方通行の目に光が戻っていく。
「――三下………」
――シュゥゥゥゥン……
黒い翼は消え、体を覆っていた瘴気のようなものも消えていた……。
「……へ…へへ」
ヨロヨロと足を引きずりながらコチラに歩いてくる上条は、笑っていた。
そして……一方通行の正面まで来た。
「それで………良いん……だ…」―――フラ…
―――そのままドサリと床に倒れ、上条は再び意識を失った……。
677 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/13(日) 20:41:36.58 ID:wXv4avA0 [5/13]
「―――オ、オイ!三下!!」
倒れた上条に駆け寄る一方通行……。
――息はある……どうやら気を失っただけのようだ。セリオスが気絶したからか、上条を拘束していた赤い輪も消えていた……。
「………ったく――」
上条の頭を腕で抱えて言う……。
「――こンなボロボロになりやがって………笑えねェだろォがよ………三下がァ」
少し悲しそうな…それでいて嬉しそうな表情を浮かべる一方通行……。
「―――!そォだ、シスターを…」
禁書目録を助けだそう……そう思い、上条をそっと地面に寝かせて立ち上がる一方通行。
「……オマエはそこで休ンでろ……さて、シスターは―――?」
しかしその時、後ろから聞きなれた声がした。
「――その必要はないにゃー」
678 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/13(日) 20:58:38.91 ID:wXv4avA0 [6/13]
「――土御門?……何でオマエが……っつーか、何で『オマエ等』がここにいンだよ?」
振り返った一方通行の視線の先には……『闇』の世界でお馴染みの面子が揃っていた。
土御門 元春
結標 淡希
海原 光貴
そして…一方通行
暗部組織『グループ』が久しぶりに集結した瞬間だった…。
土御門「――詳しい話は後だ。おい、回収班!」
ザザザッ……と『グループ』の回収班がセリオスと上条を担架に乗せて運んでいった……。
土御門「カミや……上条当麻は『いつものトコ』で、セリオスは…研究所だ。迅速に運べ」
回収班に指示を飛ばし、土御門は一方通行に向き直る。
土御門「――禁書目録もすでに救出済みだにゃー。とりあえず、人目のつかない別室へ行くぜよ」
一方通行「――あァ?ここで話せねェのか?」
土御門「俺達四人だけの……『内緒話』だにゃー」ニヤリ
一方通行「………?」
679 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/13(日) 21:24:44.15 ID:wXv4avA0 [7/13]
―――同ビル内・別室
一方通行、土御門、結標、海原は完全に閉め切った小部屋へ来ていた。
土御門「――さて、まずは一言。お仕事ご苦労だにゃー♪」
一方通行「――オイ、ふざけンなよ。俺は何も聞いてねェぞ」
土御門「ま、目的は違えど結果的に任務達成には変わりない。相変わらず仕事が速いにゃー」
一方通行「あ?任務達成だァ?………まさか『不法侵入』の件か…?」
土御門「イエース♪」グッ
一方通行(相変わらずふざけやがって……マジで埋めるかコイツ…)
結標「――ハァ……ま、それはそうと久しぶりね一方通行」
一方通行「あン?誰だオマエ?」
結標「………ほぉー……二ヶ月ぶりの第一声がそれ?身ぐるみ全部剥いでやろうかしら……?」ピクピク…
一方通行「あァー、結標か。悪ィ悪ィ、サラシに制服じゃねェから分かンなかったわ」
結標「…な、あなたまで!?私の特徴は服装だけかぁぁッッ!!!」
土御門「そりゃ、あんな格好じゃ嫌でもイメージつくぜぃ」
一方通行「流石にこの時期にあンな格好はねェけどな……イヤ、っつか普段でもねェわ」
土御門「ハハハハ!言えてるにゃー♪」
結標「――キサマらーーッッ!!!」ガタン!!
――ワイワイ…
海原(……久しぶりともあって皆さん相当浮かれてますねぇ……自分の喋る隙がないくらいに……)
680 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/13(日) 21:42:41.90 ID:wXv4avA0 [8/13]
結標「――このロリコン!!」
一方通行「――ンだと?このショタコン!」
結標「だ!?誰がショタコンですってえ!?」
一方通行「オマエしかいねェだろ?自覚しろよ」
結標「は、ロリコンよりマシよ!そっちのが今問題になってんでしょうが!」
一方通行「このアマ…俺はロリコンじゃねェって何度も言ってンだろォが!またボコられてェのか?」
結標「やれるもんならやってみなさいよ!!」
土御門「――…ロリもショタも、どっちもどっちだにゃー」
一方通行・結標「――黙れシスコン!」
土御門「ハグゥゥッッ!!」グサッ
海原「――まぁまぁ皆さん、再会のじゃれあいはそのくらいに……」
一方・土御門・結標「――ストーカーは引っ込ん(ン)でろ(でなさい)!!!」
海原「…………………」
―――数分後、ようやく収拾がついた……。
土御門「――んじゃ、そろそろ本題に入るかにゃー」
一方通行「さっさとそォしろ」
結標「私らは黙ってた方が良い?」
土御門「あぁ、俺が話すから楽にしてろ」
海原(お礼……結局言いそびれました……まぁいっか)
681 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/13(日) 22:27:42.73 ID:wXv4avA0 [9/13]
土御門「―――さて、じゃあまずはサクッと『機密』について話すかにゃー」
結標「サクッて……」
一方通行「…………」
土御門「学園都市には表世界には公けにされてない『機密事項』がいくつもある。我々のような『暗部組織』もその一つ…」
一方通行「………」
土御門「機密事項にもレベルがある……そのレベルの違いは、『知っている人間の数が少ない』事と『世界への脅威度』が主な基準だ」
海原「………」
土御門「これから話すのは……その二つを基準にしたらトップクラス、つまり今一番公表してはならない内容だ…」
結標(確かにそうね……NASAが極秘で捕らえた宇宙人を公表しないのと同じようなもんだわ……)
土御門「一方通行、たとえ『友達』にもこの話は他言無用だぞ?」
一方通行「俺がンなペラペラ喋るよォなヤツに見えンのか?」
土御門「ま……それもそうか、んじゃ話すぞ。第三次世界大戦終了後の国では今、『不思議な力』を持った人間が増えている…」
一方通行「…不思議な力ァ?……何だそりゃあ?」
土御門「その人間達の共通点は………『魔術』について関わっている…これだけだ」
一方通行「……魔術…」
海原「……………」
土御門「現役から引退者まで、魔術を過去に一度でも使った人間は全て『対象』になる事が現在分かっている。おそらく、『力』の正体は
その人間が持つ『魔翌力』が根源だと推測されているが……真実はまだ分かっていない。アレイスターが予測するには、第三次世界大戦の
影響で時空が歪み…『魔術』というこの世の『イレギュラー』な存在に何かが混ざってしまったらしいが……結局のところは確信に至っていない」
一方通行「…………オイ……って事は…」
土御門「正解。セリオス、そして殺されたナルスはその『力』を持った連中と全く同じだ」
一方通行「!?」
683 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/13(日) 23:01:23.98 ID:wXv4avA0 [10/13]
土御門「不思議な力を持った連中は『力』の事を『破光』と呼び、『破光』を持つ人間を『破人』と言っているらしい……。
誰が名づけたのかは知らないが、様々な術式や詠唱で多種多様な魔術に比べて全くそういった必要がないらしい……『面倒を省く』つまり
『破る』と言う意味だろうが、そんな事はどうでもいい。大事なのは、そういう『厄介な人間』が増えているという現実だ」
一方通行「……魔翌力ってのと、どォ違うンだ?」
土御門「今も言ったが、魔術との違いは術式や詠唱、発動条件が一切ない事。そして元々ソイツが持っている魔翌力の違いなのか分からんが
個人差もある。わかりやすく言えば『体内のエネルギー』を直接使用しているらしい」
一方通行「能力とも…違うってか?」
土御門「魔術よりむしろ『科学』に近いかもしれんが、『開発』なんてものは当然免除。まぁレベルがソイツの『力』次第ってのは類似
しているがな。そもそもあの力に『脳』が必要なのかが疑問だ」
一方通行「……あンな力持ったヤツが増えてるってのか……それも世界で…」
土御門「――ま、『学園都市』自体は今現在特に影響はないから、あまり考えるな。だが、『破人』とやらがこの先どんな行動を起こす
のか分からない以上、早めに知っておいた方が良いっちゃ良い」
一方通行「…今は平気って事か?」
土御門「あぁ、大半の『破人』はケタ違いな力にビビって出頭している。『学園都市』でもその力について研究したいところだが…
出頭した連中は各国一般に手の届かない場所に隔離、学園都市に研究対象(サンプル)を差し出す国はゼロ……だったが…」ニヤ
一方通行「……まさか、オマエらが来た目的ってのは…」
土御門「――そう、研究対象(サンプル)としてセリオスを確保する事だにゃー♪表向きは『不法侵入者の確保』になってるがな」
結標「……最初はまんまと騙されたわよ。この詐欺師」
土御門「褒め言葉だぜぃ」
一方通行「……くっだらねェ。それで、俺にどォしろってンだ?」
土御門「『今』は何もしなくて良い。まだ出頭していない『怖い破人』が世界征服でも企まない限りは……安全だにゃー」
一方通行「…………」
684 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/13(日) 23:27:50.18 ID:wXv4avA0 [11/13]
一方通行「…………本当か?……ソイツは……」
土御門「事実だ。だが、今我々……いや、『学園都市』に出来る事は何もない。まだ様子見の段階だからな」
結標「――流石のあなたも…驚いたみたいね」
一方通行「その力ってのを体験したからなァ。あンなのがこの先増えるンじゃ、その中に『バカ』が混じってもおかしくねェ……」
土御門「だからトップクラスの機密なんだにゃー。近い未来の脅威ってヤツだ。近い内、学園都市で大地震が起こるかもしれないって
予測しているようなもんだにゃー」
一方通行「………」
土御門「…それに、研究対象(サンプル)も手に入った。これで少しは良い情報が加わるだろう」
海原「……未来は神のみぞ知る…ってヤツですね」
一方通行「あァ?海原、オマエいたのか?」
海原「ずっと黙ってたからって忘れないで下さい……」
――――
――黄泉川家前
一方通行「………」
上条と禁書目録を見舞いに病院へ行こうとも思ったが、時間も時間である。
見舞いは明日にして、まずは帰らねばと思った一方通行は黄泉川宅(自分の家)の前まで来た。
今日は色々な事が起こり過ぎた。帰路の間、土御門の話を頭で何度も思い返す。が、現状で何か出来る問題でもない。
とりあえず普段通りの生活に戻ろう…と一方通行は決めて、合鍵で家に入る。
――ガチャ
689 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/14(月) 00:33:30.66 ID:SSHuJfQ0 [1/15]
―――黄泉川家
一方通行「――………」バタン
垣根「――……よぉ、遅かったな」
最初に出迎えたのは垣根だった。
一方通行「……おォ、クソガキは?」
垣根「もう夜の12時だぜ?とっくに寝かせたよ」
一方通行「そォか、ご苦労さン」
リビングへ向かう一方通行。しかし、誰もいなかった。
一方通行「――黄泉川や芳川は?」
垣根「黄泉川さんは仕事行っちまったよ。警備員ってホント大変だよな……芳川さんは知らねぇ。帰ったらいなかった」
一方通行「……チッ、またどっかで飲ンでやがるな」
垣根「……上条やインデックスちゃんは?」
一方通行「…病院だ……」
垣根「大丈夫なのか?」
一方通行「あァ、無事だ。三下はちっと怪我しちまったけどなァ。明日見舞いに行く」
垣根「俺も行くわ」
一方通行「……好きにしろ」
690 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/14(月) 00:59:29.76 ID:SSHuJfQ0 [2/15]
垣根「何か元気ねえな……何かあったのかよ?」
一方通行「別にィ。いつもこンな感じだろ」
垣根「……相手強かったのか?」
一方通行「……ハッ、所詮雑魚だ。三下が無茶して怪我しながらもヤツの『訳分かンねェ力』防いで、俺がベクトル変換させてハイ終ゥー了ォー。ってなァ」
垣根「………そっか、まぁ無事なら良いんだけどよ……打ち止めちゃん心配してたから、明日頼むぞ?」
一方通行「あァ?」
垣根「元気づけてやれってこった。さて、風呂温まってっから入ってこいよ」
一方通行「………母親かオマエ。勝手に入るっつの…」
垣根「パジャマとパンツ、脱衣所に置いとくぞー」
一方通行「やめろってンだよ!気色悪ィ!」
―――カポーン…
(……俺がいたのに、三下を怪我させちまった……いくら相手の力の得体が知れなかったからって言っても、そンなのは言い訳にしかならねェ。
ましてや…今回は『グループ』の仕事に三下達を巻き込ンだ様なモンだ。いくらシスター攫われたっつっても、知らなかったっつっても…
事実は変わらねェだろォがよ……それより……何よりも許せねェのは!―――)
(――三下が傷ついてた時……何で俺は動かなかったンだ!!クソったれ!!!……もォ少し遅かったら……俺は…アイツを見殺しにしてたかも
しれねェ…)
――風呂場で湯船に浸かりながら、一人葛藤する一方通行がいた……。
691 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/14(月) 01:55:33.07 ID:SSHuJfQ0 [3/15]
―――翌日……
「………ン…」
一方通行は布団からのそりと起き上がった。
横のベッドには片足はみ出したまま爆睡する垣根がいた。
基本、どこでも眠れるのだが、最近はベッドの寝心地に慣れきってしまった為、違和感がある。
一方通行は眠そうな目つきで垣根を見る……。
結局、昨日は「疲れた」と言って早く寝てしまった。空気を読んだのか、垣根はうざい口を開く事なく、「おやすみ」の
一言で寝息を立てた。
今日は上条の見舞いに行く予定である。
昨日帰る途中土御門から電話が入り、「打撲を負ったもののニ、三日の入院」で済んだらしい。
すでに意識も取り戻したと聞いた時、心底安堵したのを覚えている。
時計は7時半を指していた。もう少し寝ようかと思ったが、目も覚めてきたので仕方なく起き上がる……と、そこへ――
――バタンッッ!!
「――おかえりー!ってミサカはミサカは昨日言えなかった事を思い切り言いつつアナタへダーイブ!!」バッ
「――ぐおォ!!」ボフッ
――すっかり元気になった打ち止めが一方通行目掛けて飛び込んできた。
692 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/14(月) 02:21:02.06 ID:SSHuJfQ0 [4/15]
一方通行「――こンのクソガキィィ!!いきなり飛びついて来ンじゃねェよ!危ねェだろォが!それと、重いから早くどけ!」
打ち止め「――だってー!昨日は帰って来るまで起きてるつもりだったんだもん!ってミサカはミサカはぶーたれてみたり!」
一方通行「夜更かしは体に悪ィンだよ!ガキは早く寝て正解だっつの!」
打ち止め「何だよー!せっかく心配したのにぃー!ってミサカはミサカは―――」
垣根「――……うっせえなぁ……日曜くれぇゆっくり寝かせろよ……ったく…」
一方通行「……ってコイツも寝起き悪ィンじゃねェかよ…」
打ち止め「今日確か火曜日だよ?ってミサカはミサカは寝言にツッコミを入れてみる」
垣根「――…んぁ?……その声、打ち止めちゃんか?……おはよぉ…」
打ち止め「おっはよー!ってミサカはミサカは元気に挨拶しつつお兄ちゃんにもボディプレース♪」バッ
垣根「――ふぎゅぅッッ!!?」
打ち止め「おーにーいーちゃーんー?朝だよー?ってミサカはミサカは布団に潜り込んだアナタの顔を覗き込んでみたり」
垣根「………あー、ギブっす……起きますよぉっと……ふぁあ…」ムク
一方通行(…………俺もクソガキに起こされてる時は端から見たらあンな感じなのか…?自分で見て気持ち悪くなるくれェ微笑ましいじゃねェか…)
―――起きた三人は仲良く(?)リビングへ――
黄泉川「――お、三人ともおはよう。朝飯出来てるよ。さっさと食べな」
垣根「――おはよーございやす。そしていただきますっと」
打ち止め「――おはよーヨミカワ!ってミサカはミサカは挨拶と同時にテーブルについていっただっきまーす♪」
一方通行「――おォ、芳川どォした……って訊くまでもねェか。飯、いただくわ」
黄泉川「んじゃ、あたしは寝るじゃん。さっき帰ったから眠くてもう限界…ふぁあ……おやすみ」――バタン
693 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/14(月) 02:45:32.69 ID:SSHuJfQ0 [5/15]
――黄泉川は眠そうにあくびをし、寝室へ消えて行った。
垣根「――夜勤明けだってのに飯まで作ってくれて……ホント良い人だよなぁ黄泉川さんって……マジ尊敬するわ」
一方通行「――オマエが人を敬う姿ってすげェ違和感あるな…」
垣根「うるせぇ!良いだろぉが!こちとらお前と違って捻くれてねえんだよ!」
一方通行「…朝から星になりてェのかオマエはァ?」
垣根「うっわー、すぐ暴力かよ。やめてくんねぇ?暴力にすぐ訴えるのは頭悪い証拠なんだぜ。の○太くんでも知ってるぞ」
一方通行「オマエがの○太なら俺はジャイ○ンだなァ。オラの○太、コーヒー買ってこいよ。オマエのモノも俺のモノってなァ!」
垣根「テメェ!誰がの○太だコラァ!!溶かすぞ!」
一方通行「垣根のくせに偉そォな口利くからそォなンだよ。身の程を知れボケが」
垣根「テンメェェ……こーなったらテメェのウィンナー横取りだ!――――って何ィ!?避けやがった!?」
一方通行「バカじゃねェのか?何度も同じ手喰らうかよ。……コレなーンだ?」ブラ…
垣根「――あぁっ!それ俺のプチトマト!テメェいつの間に!?」
一方通行「こンな健康的なのオマエに似合わねェっつの。ミートボールの恨みだァ。コイツは俺が食ってやらァ」パク
垣根「あぁぁぁーーーーー!!!!俺のプチトマトーーーー!!!テメェよくもォォおお!!!」
打ち止め「お兄ちゃん!うるさい!!ってミサカはミサカは行儀悪いお兄ちゃんを叱ってみたり!」
垣根「――ゴメンナサイ。一方通行テメェ後で覚えてろ」
一方通行(今日は勝ったな……)ニヤ
694 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/14(月) 03:15:47.17 ID:SSHuJfQ0 [6/15]
――洗面所・何故か三人一緒に…
打ち止め「――狭いよー!ってミサカはミサカは文句つけてみる!」
一方通行「――っつーか何で一緒に来てンだオマエらァ!」
垣根「――俺は食ったらすぐ歯ぁ磨かなきゃダメなんだよ!おい、一方通行、狭ぇからもっと端行けよ」
一方通行「居候のくせしやがって何ほざいてンですかァ?オマエがずれろ」
打ち止め「ぎゅうう……苦しい…ってミサカはミサカは二人に挟まれながら必死に歯を磨いたり…っていうかアナタも居候だよね?」
一方通行「オマエもな。オイ、居候の下っ端ァ。タオルよこせ。目開けらンねェから見えねェ」
垣根「何?お前まさか水ん中で目開けられないタイプ?うわぁ、ダセェ……っつか何だ居候の下っ端って……?」
一方通行「うるせェ!!さっさとよこせったらよこせ!!」
垣根「……ったく、ほらよ」パサ
一方通行「…ふゥ……最初から素直に渡しゃァイインだよ」フキフキ
打ち止め「シャンプー目に入っただけで涙ぐんでたもんね。ってミサカはミサカは思い出してみたり」
垣根「……シャンプーハットが何故置いてあるのかやっと分かったわ…」
一方通行「日常で満足な『反射』が出来なくなっちまったンだから免疫ねェンだよ!悪いかァ!?……オイ、誰が涙ぐんだンだァ?言ってみろこのクソガキ」グリグリ
打ち止め「――イタタタ!!狭い中で器用にグリグリしないでー!!ってミサカはミサカは懇願してみるーっ!!」
垣根「っつってももう半年近く経ってんだろ?慣れろよそろそろ…」
一方通行「苦手なンだよ。水とか目に入るとすぐ目が赤くなっちまう」
垣根「………元々赤いじゃん」
一方通行「」
695 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/14(月) 04:06:45.12 ID:SSHuJfQ0 [7/15]
一方通行「そ、そりゃァ瞳の色だろォがァ!白目部分の事言ってンだよ俺はァ!」
垣根「……目全体が赤……なんとも不気味だなそりゃあ…」
打ち止め「一瞬予想外なツッコミ入れられて焦ったね?ってミサカは――あいたっ!!」ズビシ
一方通行「オイ、そこの歯磨き粉取ってくれ」
垣根「ったく……人使い荒ぇなぁ。ほらよ」パッ
打ち止め「……うぅ…そのまま無視かよ…ってミサカはミサカはチョップされた頭をさすりながら愚痴ってみたり…」スリスリ
一方通行「オイ、打ち止めァ。この後三下の見舞いに病院行くンだがよォ……オマエも来るか?」シャカシャカ
打ち止め「――え!?あの人また入院したの!?ってミサカはミサカは驚いてみる」
垣根「『また』って……アイツそんなしょっちゅう入院してんのか?」
打ち止め「あの人専用の個室があるよ♪ってミサカはミサカは暴露してみる。そんで、その隣がこの人の―――ご、ごめんなさい……何でもないです…」
一方通行「(ギロリ)………ンで、行くの?行かねェの?」
打ち止め「行くー!ってミサカはミサカは二つ返事でOK!」
垣根「見舞いなら手ぶらじゃマズイよな……途中何か菓子でも買ってくか。インデックスちゃんにも」
一方通行「…あァ、イインじゃねェのォ?」
打ち止め「ミサカもお菓子ー♪」バシャバシャ
一方通行「わっ、また水が目に……こンのクソガキがァァ!!水飛ばすンじゃねェって何度言ったら分かンだゴルァァあああ!!!」
――こうして三人は身支度を済ませ、仲良く(?)外へ――
698 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/14(月) 18:07:44.67 ID:SSHuJfQ0 [8/15]
>>696 正解っす。PCついたまま飛んでましたwwwwww
少ないですが、投下再開します。
700 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/14(月) 18:36:32.24 ID:SSHuJfQ0 [9/15]
――黄泉川宅付近の商店街――
打ち止めを真ん中に手を繋ぎ歩く学園都市のツートップ。
今、最も誘拐される可能性の低い少女は間違いなく打ち止めだろう……。
――花屋
垣根「やっぱ見舞いに花は欠かせねえな」
打ち止め「キレイー…ってミサカはミサカは色とりどりのチューリップに目をうっとりさせてみたり…」
一方通行「オマエら見舞い相手考えろよ。病弱少女じゃねェンだぞ?花なンてどォでもイイだろォが」
垣根「んだよ、花は世界のシンボルだぜ?もらって喜ばねえヤツはいねえだろ」
一方通行「あの三下が、俺やオマエから花もらって喜ぶかァ?っつかオマエが花持って歩く姿がなンかムカつく……クソガキならまだしも…」
打ち止め「じゃあミサカが持つ!ってミサカはミサカは立候補!コレが良いなぁ…」
垣根「……打ち止めちゃん……それ菊………縁起でもねえって…」
一方通行「嫌がらせにも程があンだろ……コレなンてどォだ?」
垣根「カーネーションってお前、母の日かよ!」
一方通行「うっせェなァ、じゃァオマエは何がイインだよ?」
垣根「やっぱコレだろ」ニヤ
打ち止め「……紅一点な程真っ赤だね…ってミサカはミサカは痛そうな棘に目を細めてみたり」
一方通行「ねェ!一番ねェわ!なンだそのデート使用でしか使わねェ様な薔薇はァ!ンなのもらってどォすンだよ!?」
垣根「綺麗な薔薇には棘があるのさ……ってね」キリッ
一方通行「咥えてマンダム決めてンじゃねェよ!!本当にキメェ!棘に刺されて流血しろ!」
垣根「んだとコラ。喰らえ!『薔薇の鞭(ローズウィップ)』!!」ヒュバッ
一方通行「イヤそれ『未元物質』だろ?異物を薔薇に入れて誤魔化してンじゃねェよ。そしてその絵面全く似合ってねェぞ」
701 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/14(月) 18:55:30.57 ID:SSHuJfQ0 [10/15]
垣根「いっぺんやってみたかったんだよぉぉ!!」
一方通行「あァーもォめンどくせェ!っつか何で花屋なンだよ!?そこいらの菓子屋で充分だろォ?」
打ち止め「ねーねー、この花買って良い?ってミサカはミサカはアナタの手をクイクイ引いてみる」クイクイ
一方通行「あァ?勝手にしろよ。小遣い渡したろ?ソイツで好きに買え」
打ち止め「うわーい♪ってミサカはミサカはレジまでダッシュ!」
一方通行「オイ!コケっから走ンな!」
垣根「とりあえず、コレでいっか…」
一方通行「なンの花だよそれ……」
垣根「『ハエトリグサ』だってよ」
一方通行「………もォイイやそれで」
――花屋の戦利品『ハエトリ草』
――オモチャ屋
一方通行「――…………何故?」
垣根「いや、上条プラモ好きかなぁって………おっ!すげぇ!!ズゴック安い!!」
一方通行「……オマエが寄りたかっただけだよなァ?そォだよなァ!?」
打ち止め「あっ、この人形可愛いー!ねぇ、どうコレ?」
一方通行「………オマ……それ」
垣根「日本人形……何でガンプラが並ぶ中にそんなモノが……?」
打ち止め「………?」
一方通行「……今すぐそれ返してこい。夜中魘されたくなかったらな…」
打ち止め「えぇー!買いたい!ってミサカはミサカは――」
一方・垣根「ダ メ で す!」
702 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/14(月) 19:16:44.01 ID:SSHuJfQ0 [11/15]
打ち止め「――ウルウル…」
垣根「あ…ゴメン打ち止めちゃん!けど……それは…」
打ち止め「……ダメ?ってミサカはミサカは目をウルウルさせながら上目遣い…」
垣根「///……ダメだ、一方通行。俺コレには勝てねえわ……買ってやろうぜ?」
一方通行「///………チッ、仕方ねェなァ」
打ち止め「わーい!やったー!」(ってミサカはミサカはフフ…ちょろいモンよ。と内心でほくそ笑んでみたり)
一方通行「ただし、置いた場所から動いたり髪が伸びたりしたらすぐ捨ててこいよ。ついでにお祓いにも行け」
打ち止め「?……これ、あの人のお見舞い用だよ?ってミサカはミサカはキョトンとしてみる」
一方・垣根「…………………」
―――三下ァ……言っとくが俺らは一応止めたンだからなァ……恨むンならクソガキを恨め……
――オモチャ屋の戦利品『日本人形』
――菓子屋
一方通行「――ったく……つまらねェ時間食っちまったじゃねェか。オマエが訳分かンねェプラモに夢中になってたからだぞォ!」
垣根「テメェ!ガンプラ馬鹿にしやがったら承知しねえぞ!……ってか、何で俺が日本人形持ってんの?こんなん持って歩きたくねえよ…」
一方通行「クソガキにそンな不気味なモン持たせる訳に行くかよ」
垣根「じゃあテメェが持てよ!って事で、パス」サッ
一方通行「………」カツカツカツ…
垣根「スルーしてんじゃねぇぇえええ!!!」
703 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/14(月) 19:50:12.26 ID:SSHuJfQ0 [12/15]
垣根「おいぃ!!ハエトリ草も俺が持ってんだぞぉ!?この俺を『荷物持ち』で使うなんざ良い度胸じゃねえか!!」
一方通行「ごっちゃごちゃうるせェぞ格下ァ。俺は菓子持ってやるンだし、ガキは自分で買った花持ってンだ。何か文句あンのかァ?」
垣根「大アリだこのクソボケ!!何で俺が『グロ担当』なんだよ!?俺が菓子持つっつうの!」
一方通行「逆に考えてみろ。そンな『危険物』を持てるのは、オマエしかいねェ……違うか?」
垣根「………そりゃ……確かに……そうだよ、こんな危ねえモンを所持出来んのは……やっぱこの俺様だけだよなぁ?」ニヤリ
一方通行(……ナンバー2がこンな馬鹿じゃ、学園都市も末だな…)
打ち止め「…ねぇ、お兄ちゃんの笑顔が不気味なんだけど……?」
一方通行「……人形に憑りつかれたンだろ……放っとけ。さっさとクッキーでも買って病院行くぞ」
打ち止め「あ、待ってよー!」
――菓子屋の戦利品『まともなクッキー』『インデックス用のホールケーキ』
垣根「――……おれの……だぁく…またぁに……じょうし…きは……」ブツブツ…
打ち止め「………お兄ちゃん、目の焦点合ってないよ?……顔色も何か悪いし……」
一方通行(オイオイ……マジで憑りつかれちまったのかよォ……)
――Pririri♪
一方通行「――ン?」
打ち止め「アナタのケータイだね」
一方通行「……メールか……どれ」パカッ
垣根「――………だぁく……そぉ………だあくなんだよ…ひへへ………のろいは……とけねぇぞぉ………くひひ」
704 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/14(月) 20:05:00.16 ID:SSHuJfQ0 [13/15]
――メールは美琴からだった。
from:超電磁砲 件名:昨日はお疲れ♪
本文
よっ。昨日は楽しかったわ!色々気を遣わしちゃってゴメンね…
ところでさ、アイツの携帯繋がらないんだけど…アンタ何か知らない?
何か知ってたら返事ちょうだいね♪
―――
一方通行「………」ピ・ポ・パ…
打ち止め「メール誰から?」
一方通行「オマエにゃ関係ねェ」ピ・ピ・ピ…
垣根「………へへへ………おまえも………めいどの…りょこう……しゃぁぁあ……ひはっ」
打ち止め「……ねぇ、お兄ちゃんがマジでヤバイかも…ってミサカはミサカはのんびりメール打ってる場合じゃないよ?ってアナタに訊いてみたり…」
一方通行「………あァ?病院置いてくりゃァ何とかなンだろ……送信っと」――ピッ
705 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/14(月) 20:31:22.06 ID:SSHuJfQ0 [14/15]
―――常盤台女子寮
――Pipipi♪
美琴「――お、来た来た」パカ
from:一方通行 件名:RE
本文
三下なら病院だァ。昨日別れたあと絡まれたンだとよ。怪我は大した事ねェらしいから心配すンな。
俺らももォすぐ病院着くからオマエも来れば?
―――
美琴「――…ウソ!?あの馬鹿またぁ!?」
黒子「――……先ほどから誰にメールしてますの?」
美琴「え?一方通行よ」
黒子「また殿方と……いったいいつの間に……」プルプル…
美琴「……まだ昨日の事怒ってんの?うっかり忘れてたんだからゴメンって――」
黒子「――それはよろしいんですの!放置プレイもまた快感ですわ♪」
美琴「………アンタってヤツは………って、こうしちゃいられないわ!――」バタバタ
黒子「――!?お、お姉様どこへ?」
美琴「――決まってんでしょ!病院よ!」
黒子「ま、待って下さいましーー!!」ドタバタ…
715 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/15(火) 17:59:44.82 ID:FV4u/6Y0 [2/14]
――病院・上条専用個室
上条はベッドから体を起こし、ぼんやりと窓の外を見ていた。
「………」
夜中に一度目覚め、カエル顔の医者から禁書目録の無事を聞かされた上条はそのまま安堵し、再び眠りに落ちた。
そしてつい先ほど目を覚ましたという訳だ。
体じゅうがまだ少し痛むが、今回は打撲で済んだらしい。右腕を切り落とされたり、後方のアックアにやられたりした時に比べれば大した事のない
怪我だった。
それよりも、一方通行や禁書目録の顔を早く見て安心したい……それが上条の本音だった。
イヤな言い方だが…入院するのはもう慣れた。
「………インデックス…」
まずは……禁書目録に謝りたかった。
――早く会いたい――
―――その時、病室のドアがガチャリと開いた。
「――!」
禁書「――………」
716 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/15(火) 18:10:46.08 ID:FV4u/6Y0 [3/14]
「――……イン…デックス…」
禁書「………」
開いたドアの向こうに居たのは……今会いたいと思っていた禁書目録だった。
彼女は無表情だった……。
禁書「………」ズカズカ
無言に無表情のまま、禁書目録は部屋に入り…上条の目の前まで来た。
上条「……インデックス。体は…大丈夫か?」
禁書「……平気だよ…」
そっけなく答え、すぐに上条に問い返す。
禁書「とうま……私に何か言う事は?」
上条「………」
一瞬迷ったが……上条はその姿勢のまま頭ごと上半身を禁書目録に向けて下げた。
上条「―――本当に悪かった!嘘吐いちまって……ゴメン!」ガバッ
禁書「…………」
718 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/15(火) 18:24:18.56 ID:FV4u/6Y0 [4/14]
上条「――俺が悪かった!好きなだけ噛み付いてくれて良い!もう絶対騙したりしないから……だから許してくれ!インデックス!」
必死に謝罪する上条……禁書目録は「ハァ…」と溜息を吐いて上条に笑顔を見せる。
禁書「……もう、良いんだよ。とうま」
上条「――え……?」
禁書「嘘を吐いた事はもう許してあげる。私が来たら迷惑だったんだよね?」
上条「そ、そういう訳じゃ…」
禁書「ううん、良いの。危険な事に巻き込まれるよりよっぽど良い……けど」
上条「けど……何だ?」
禁書「……とうまが幸せになれるんなら……たとえ相手が短髪でも私は我慢するよ?だから、もう少し…私をとうまの家に置いて欲しいかも」
上条「……………………は?」
――その時の上条は……まるで一時停止している映像のように動きが止まっていた。
そして、数秒の停止の後…目を丸くさせて疑問を顔じゅうに表すのだった。
719 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/15(火) 18:44:46.36 ID:FV4u/6Y0 [5/14]
上条「…………インデックス…?……今の、どーゆー事デスか?」
禁書「とぼけなくて良いんだよ。とうま、短髪と『つきあって』るんでしょ?」
上条「………『短髪』ってのは……御坂…だよな?」
禁書「そうとも言うね」
上条「………はぁぁああああああ!!!?」
禁書「――うわっ!?と、とうま…?」
上条「インデックス!お前何勘違いしてんだ!?俺と御坂が付き合ってるぅ!!?ないない!!付き合ってなんかいません!!」
禁書「えぇ!?じ、じゃあ『アレ』はいったいどういう事かな!?」
上条「……アレ?何だよアレって…」
禁書「誤魔化したってダメだよ!私見たんだから!とうまと短髪がベンチに仲良く座ってたのを!!」
上条「――!!」
禁書「……とうま……短髪の肩に頭乗せて『気持ち良さそう』に眠ってたよね……」
上条「――イ、インデックス!待て!落ち着いて聞いてくれよ。それはだな……」
禁書「……私の記憶能力ナメたらいけないかも……短髪、すごく幸せそうな顔してた事もはっきり覚えてるんだよ」
上条「だ、だからインデックス!――」
禁書「とうま……さっき『好きなだけ噛んで良い』って言ったよね?………お言葉に甘えさせてもらうんだよ…」――ギラッ
上条「」
720 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/15(火) 19:09:19.31 ID:FV4u/6Y0 [6/14]
―――病院前
「――やっと着いたねー!ってミサカはミサカは一番乗り♪」
打ち止めが病院に一目散に走っていく。
その後ろに、杖をついていない方の手で垣根の肩を抱き、ゆっくりと歩く一方通行の姿があった。
心底ウザそうに舌打ちをして――
一方通行「――ったく……手間掛けさせやがってこの野郎…歩きにくくてしょォがねェ……なンで俺がこンな事しなきゃなンねェンだクソが……」ブツブツ
垣根「にへへ……たけのうち……まろは…ここじゃ………ぐひら」
一方通行「……あのクソガキ……もォ見えねェトコまでさっさと走りやがって………おらメルヘン、病院着いたぞ。いつまでも夢見てねェで自分で歩けコラ」ユサユサ
垣根「………くはぁ………ぎゅう……にゅう……ぐへ」グラグラ
一方通行「…………ダメだこりゃァ……アイツの右手でダメだったらかなり面倒くせェぞ……っつか三下の野郎起きてンだろォな…?―――ン?」
――トウマノバカーーー!!! ガブリ
ンギャアーーーーー!!! フコーーウダアーーーーー!!!
一方通行「……………余計な心配だったみてェだな…」
垣根「ぎはは」
――シスター、三下にはまだ『重大な仕事』が残ってる。息の根は止めンじゃねェぞ……。
未だラリ状態の垣根を横目でみながらそう思った…。
722 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/15(火) 19:24:20.78 ID:FV4u/6Y0 [7/14]
―――上条病室
上条「………インデックス……俺…一応怪我人なんデスけど……」ボロボロ
禁書「とうまが悪いんだよ」プンスカ
――上条は…嘘は不幸体質のせいですぐバレるという事に今ごろ気づいた。
もう二度と吐くまい…と固く誓った。今度は本当に骨まで食われるかもしれない。
何とか誤解は解けたが、無自覚で鈍感な上条の性格を良く知っている禁書目録にとっては同じ事だった。
禁書目録にとって美琴はライバルのようなもの……いつか美琴が想いを告げたら…この少年はどうするのだろう…。
しかし、禁書目録にとって今はそれよりも――
――ぐぎゅるるるる………
「……おなかへった……」
―――――
黒子「――お姉様、バス来ましたわ」
美琴「――やっとか、ずいぶん待たされたわね…」
――駅には、病院前まで向かうバスに乗り込む常盤台中学の制服女子二人の姿があった。
724 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/15(火) 19:46:29.14 ID:FV4u/6Y0 [8/14]
>>721少なくとも一方通行はそう思ってる設定でお願いします。
―――バス内
黒子「――……それにしても、あの殿方も懲りませんわね…」
美琴「全くよ!人の気も知らないで………」
黒子(……切なそうなお姉様の表情……けれど、その対象はあの『類人猿』に……こうしてお見舞いの品をダッシュで買いに行く辺り、
もうわたくしの入り込む余地はありませんの…?)
美琴とは違う意味で切ない表情をする黒子に美琴は声をかける。
美琴「――何かゴメンね?付き合わせちゃって…」
黒子「とんでもございませんの!この白井黒子、お姉様の行く所ならどこまでもついて行きますわ」
美琴「……ほんと、ゴメン」
黒子「…昨日の事ならもうよろしいですの。楽しかったのでしょう?お姉様が楽しんでこられたのなら、わたくしはそれで充分嬉しいですの」
美琴「…ありがと。今度さ、初春さんや佐天さんと行こ?すごく楽しいわよあそこ♪帰るの嫌になるくらい」
黒子「そうですわね。わたくしも行った事ありませんので、楽しみにしてますの」
美琴「フフッ」
黒子「?……どうしたんですの?お姉様…」
美琴「……クスッ……あーダメだ。思い出したら笑えてきた……ププッ……喋っちゃおっかなぁ……でも怒るだろうな……」
黒子「……お姉様…?」
美琴「ダメ、我慢できないわ。ゴメン一方通行!………黒子、実はね―――」
――昨日のダブルデートでの『一方通行』について容赦なく語る美琴……バス内は女子学生二人の笑い声に包まれた……。
725 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/15(火) 20:02:59.96 ID:FV4u/6Y0 [9/14]
―――女子中学生二人にネタにされている事などつゆ知らず、一方通行、打ち止め、憑依垣根は上条の部屋を訪れた。
――コンコン
禁書「?――とうま、誰か来たかも」
上条「はーい、どうぞー」
――ガチャ
打ち止め「――こんにちはー!お見舞いに来たよ!ってミサカはミサカは一番に挨拶してみたり」
一方通行「――……よォ、生きてたか」
垣根「――にへら」
上条「おう、打ち止めに一方通行に……垣根……だよなぁ?」
禁書「こんにちは、らすとおーだーにあくせられーたに……かきね?……何か顔が変かも…」
一方通行「……事情を話したい所だが、めンどくせェ。三下ァ、コイツの頭に手を置け。まずはそれからだ」
上条「………ハイ?」
垣根「へらへら……ちよぉ……すてたもりけり………くへ」
上条「………バイオハザードですか?」
一方通行「この状態で羽でも出されたらさらにめンどくせェ。早くコイツの幻想ぶっ殺してくれ。ってかコイツ殺してくれ」
上条「……何かよく分かんないけど……そげぶ」ポン…
垣根「にへ―――……はっ……あれ?」
726 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/15(火) 20:22:29.03 ID:FV4u/6Y0 [10/14]
垣根「――あ、あれ?俺……一体…」
打ち止め「わーい!お兄ちゃんが元に戻ったー!ってミサカはミサカは飛び跳ねてみたり!」
垣根「……何でもう病室来てんの?やべ、分かんねぇっつか思い出せねぇ……オモチャ屋出た辺りまで覚えてんだが…」
一方通行「……ふゥ…これで一安心だな。クソガキ、オマエがこンなモン見つけてくっから…」
打ち止め「……ミサカが……悪いの」ヒックヒック…
垣根「あ!一方通行、テメェ打ち止めちゃん泣かしてんじゃねえよ!」
禁書「何かよく分かんないけどひどいんだよ!あくせられーた!」
一方通行「――!?オ、オイ。お、俺が悪かったから泣くンじゃねェ!」アタフタ
打ち止め「……あとで鯛焼き買ってくれる…?」ヒックヒック…
一方通行「ンなモン好きなだけ買ってやるから泣き止めェ!」
打ち止め「――うわーい!鯛焼きー♪」ケロッ
一方通行「……あァ?」
上条「……まんまとやられたな」クスッ
垣根「……お前もそんなテンパるのな…」クスッ
禁書「あくせられーた可愛いかも」クスクス
一方通行「……チ、チ、チックショォォォおおおお!!!」
禁書「あ、私も鯛焼き食べたい!おなかぺこぺこなんだよ」
一方通行「好きなだけ食えクソったれ!!」
垣根「お、マジで?ラッキー♪」
一方通行「オマエはダメ」
上条「………俺は?」
727 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/15(火) 20:42:39.20 ID:FV4u/6Y0 [11/14]
――鯛焼き買出し組・一方通行、垣根帝督
――病院付近の鯛焼き屋
垣根「――なぁ、何で俺まで行かなきゃなんねえの?」
一方通行「――今にも旅立ちそォなオマエを病院まで連れて来てやったのは誰だと思ってンだ?あァ?」
垣根「………苦労かけたな」
一方通行「分かりゃァイイ。さっさと買って戻ンぞ」
垣根「おう、んでさ。お前、こしあんと白あんどっち?」
一方通行「俺はいらねェ。甘いモンは好きじゃねェンだよ」
垣根「……人生の半分は損してるぞ」
一方通行「別に構わねェっての。っつかコーヒーくれェ苦い菓子とかねェのかよ」
垣根「菓子って基本甘いよな。お、出来たっぽいぞ」
――アリガトウゴザイマシター
垣根「――ずいぶん買ったなオイ」
一方通行「シスターいるから余ることはねェだろ」
垣根「……最もで」
一方通行「お、ちょっとコレ持ってろ。自販でコーヒー買ってくる。ビニール袋もらうぞ?」
垣根「へいへい…」
―――ビニール袋から鯛焼き入りの紙袋を出し、ビニール袋を持って自販機へ歩く一方通行。数分後、ジュース入りのビニール袋をぶら下げて戻って来た。
垣根「――……打ち止めちゃん達のも買ってきたのか。気が利いてんな。っつか、何でブラックコーヒー2本あんの?」
一方通行「………三下用だァ」
729 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/15(火) 21:16:02.56 ID:FV4u/6Y0 [12/14]
垣根「……上条、ブラック飲むのか?」
一方通行「さァな」
垣根「…嫌がらせ?」
一方通行「違ェよ馬鹿!気に入るかもしンねェだろォ?」
垣根「……それはねえと思う。っつか、自分の好きなモン人に押し付けんの良くねえぞ?」
一方通行「別に押し付けたりしねェよ。飲ンでみるまで分からねェだろォが。俺が好ンでる味が三下に合わない保障はねェ」
垣根「………俺のジュースは?」
一方通行「あァ?ねェよ」
垣根「」
―――病室――
上条「インデックス!俺のお菓子まで食うな!」
禁書「欲しかったらここまでおーいで♪はい、らすとおーだーにはあげる」
打ち止め「わーい♪ポッキーおいしい」ポリポリ
上条「テメェらぁ………ん、何?この不気味な植物?」
禁書「それは…ハエトリ草だね。何でここにあるのかな?」
打ち止め「あの人とお兄ちゃんがお見舞い用にだって…」ポリポリ
上条「ハエを食べるってヤツか……ってか、何故にコレ?」
打ち止め「さあ……ってミサカはミサカは知らん顔」
―――病院前
美琴「――着いたわね。降りるわよ」
黒子「――お腹苦しくて……動けませんの」
730 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/15(火) 21:33:54.09 ID:FV4u/6Y0 [13/14]
美琴「アンタ、笑い過ぎ……プフッ」
黒子「お姉様こそ…顔が引きつってますわよ?けど傑作ですわ。是非わたくしも見たかったですの。第一位様の間抜けっぷりを」
美琴「バレたら多分殺されるから内緒よ?」
黒子「心得ておきますわ」
――美琴と黒子は談笑しながら上条の病室へ向かっていた。
上条「――おわっ!何だその不気味な人形は!?」
打ち止め「さっきまでお兄ちゃんに憑りついてたんだよ。ってミサカはミサカはお見舞いの品をアナタにプレゼント♪」ズイ
上条「………垣根に……ってマジで呪いの人形じゃねえか!何でこれだけ科学が発展した学園都市にそんなモンがあるんだよ!?」
打ち止め「オモチャ屋さんにあったよ?ってミサカはミサカは早く受け取るよう催促してみたり」ズイズイ
上条「…あ、ありがとう打ち止め。遠慮なくもらうよ…」(…………不幸だ)
禁書「大丈夫だよ。とうまには右手があるから」
上条「……呪いにも有効なのかこの右手は……知らなかった……」(ダメだ……どう考えても不幸な予感しかしない…けど返す訳にもいかないし……)
――コン、コン
禁書「――ん?あくせられーた達かな?」
上条「……早いな、どうぞー」
――ガチャ
「―――よっ、来てやったわよ!」
「―――お邪魔しますのー」
737 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/16(水) 19:00:32.26 ID:QoYoMck0 [2/12]
「―――よっ、来てやったわよ!」
「―――お邪魔しますのー」
そう言って入室してきた常盤台制服姿の二人の女子に上条、禁書目録、打ち止めは注目する。
上条「――おう、御坂に……白井も来てくれたのか」
禁書「……短髪……おっす」
打ち止め「お姉さまに黒子お姉さんだー!おっす!」
美琴「打ち止めもシスターもおっす!あれ?一方通行は?」
上条「あいつなら鯛焼き買いに行ったぞ」
美琴「ウソ!私も食べたいなぁ……もっと早く来れば良かったわ」
黒子「帰りにでも行けばよろしいですの。上条さん、粗品ですがお見舞い品ですの」ズイ
上条「お、サンキュー。わざわざ悪いな」パッ
黒子「いいえ、お姉様からの品ですから気になさらないで下さいな」
美琴「……ねぇ、怪我は平気なの?っていうか何があったわけ?」
上条「い、いや……たいした事じゃないんだ……か、階段から落ちたんだよ。なはは、間抜けだよなぁ」
美琴「え………?」(どういう事?一方通行と言ってた事が……)
禁書「短髪のお菓子もらっていいかな?」
上条「イ、インデックス!俺にもよこせ!っつーかテメェさっきから食いすぎだぞ!」
打ち止め「それはいつもの事なんじゃ…ってミサカはミサカはつっこんでみたり」
美琴「量ならあるから大丈夫よ」
黒子「……確か第一位様は鯛焼きを買いに行ってるんですのよね……それまで食べるんですの?」
禁書「とーぜん♪」パクパク
全員「…………」
738 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/16(水) 19:23:56.75 ID:QoYoMck0 [3/12]
―――その頃、一方通行と垣根は病院付近の裏路地にいた……。彼等二人の足元には、十人程の若者達が地面に倒れもがいていた。
ウーン イテエヨオー…
マジバケモノカヨ…
一方通行「――オイ」
垣根「ハイ、ナンデショウカ?」
一方通行「『コッチの方が近道だ』って言ったよなァ?」
垣根「うーん……言ったような言ってないような…」
一方通行「言っただろコラァ!何なンだァさっきから!思いっきり馬鹿共の溜まり場じゃねェか!これで絡まれンの三回目だぞォ!
鯛焼き覚めちまうだろがァ!!」
垣根「ま、良いじゃねえか。どうせ誰に絡まれようが負けるハズがねえんだし。むしろ絡んでくるヤツが気の毒過ぎるよな」
一方通行「………もォ二度とオマエを当てにしねェ……最初から来た時の道から帰りゃ良かった…」
垣根「まぁ方向的には合ってんだからこのまま行こうぜ」
一方通行「はァ?ふざけンな、戻るぞ。これ以上絡まれて時間食ってらンねェ。マジで鯛焼きが冷めちまう」
垣根「なぁに言ってんだ。今から戻る方が時間かかんだろ?このまま行った方が絶対早ぇって」
一方通行「じゃァオマエ一人でこの先の集団でも相手にしてろ。俺は戻る。おら袋よこせ、ンでジュース持て」パッ サッ
垣根「あっ、テメさりげなくトレードしてんじゃねえよ!そして踵返してんじゃねえよ!オイ!」
一方通行「………」カツカツカツ
垣根「オーイ!……分かったよぉ。戻るよ戻りゃぁ良いんだろ!?だから待てってこのやろ」タッタッタ
740 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/16(水) 19:39:39.64 ID:QoYoMck0 [4/12]
垣根「――っつーか、なんだかんだ言ってお前俺のジュースも買ってくれてんのな」
一方通行「……くっだらねェ」
垣根「けどお前、よく俺が『パインココア』好きなの知ってたな。教えたっけ…?」
一方通行「知ってる訳ねェだろォが。……嫌がらせのつもりで買ったンだよ」
垣根「だよなぁ♪ってオイ!」
一方通行「そンなのが好きとか………オマエの味覚はどォなってンだ?」
垣根「俺の味覚に常識は通用しねえ」キリッ
一方通行「………してやったりって顔してンじゃねェよタコ。置いてくぞ」
垣根「ま、待てコラ!」
―――病室
上条「あいつら遅いな……」
美琴「『あいつら』……一方通行と誰か一緒なの?」
上条「(しまった!)い……いや、俺の友達と一緒に行ったんだよ…」アタフタ
打ち止め・禁書「……?」
美琴「?…ふーん……」
黒子「それにしても、少し遅すぎでは?鯛焼き屋は近くにあるあそこですわよね?」
打ち止め「うん、多分……そこしかないと思うけど…」
黒子「わたくしがテレポートで様子を見てまいりましょうか?」スクッ
上条(――マズイ!!)
743 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/16(水) 20:04:22.74 ID:QoYoMck0 [6/12]
上条「――し、白井!大丈夫だって!なんたって一方通行だぜ?もうすぐ戻って来るから!」ワタワタ
黒子「……さっきから貴方、挙動不審ですわよ…?」ジロー
美琴「………アンタ……何か隠してるわね?」ジロー
上条「べ、別に何も隠してマセンガ……」
美琴・黒子「怪しい(ですの)……」ジー
上条(オウ、ピーンチ!!)
美琴「……ねぇ、アンタ達何か知ってる?」
禁書(……何かとうまが必死で口が出せないんだよ……)
打ち止め(……ミサカの勘が口を開くなって言ってる……ってミサカはミサカは黙秘権行使)
上条(言うな……言うなー!!)パチッ パチッ
禁書・打ち止め「……さあ、知らない」
上条(グッジョブ!!)
黒子「………まぁ良いですわ」
美琴「……そうね、もう少ししたら帰って来るんでしょ?」
上条「あ、あぁ勿論!……ところで、お二人はそろそろ帰らなくて平気か…?」
美琴「一方通行が帰って来るまでいるわよ。顔見せときたいし」ニヤリ
黒子「わたくしも風紀委員の仕事は午後からですが、第一位様にご挨拶しておきますわ」ニヤリ
上条(Ohー Shit………orz)
美琴「何……ウチらがいると何かマズイのかしら?」
上条「めめめ、滅相もございません!!」(マジでどうしよ……)
744 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/16(水) 20:31:56.16 ID:QoYoMck0 [7/12]
―――病院前
垣根「――おし、やっと着いたな」
一方通行「『やっと着いたな』じゃねェよボケ!三十分近くかかっちまったじゃねェか!なンでか言えたらこのまま手術室直行は勘弁してやる」
垣根「テメェが間抜けだから。はい以上。病室戻んぞ」
一方通行「一名様入りまァす」カチッ
垣根「イテ!イテ!い、石飛ばしてくんな!危ねえだろぉが!」バサッバサッ
一方通行「翼で防ぐな。大人しく喰らえ。そして入院しろ。ご臨終も可」 ゴスッゴスッ
垣根「不可に決まってんだろぉぉ!!――って、うわ!馬鹿テメ、ベンチは無し――!!?」バサア バシッ ゴシャアアアン
一方通行「めンどくせェから一言で言うぞ?――死ね」
垣根「お断りだボケ!テメェが死ねっ!」
――ドカーン ボカーン ボオオオオオン
ハイニナレヤアアアアア
スミクズニシテヤラアアアアアアア
黒子「………ん?何やら表が騒がしいですわね」
上条「――こ、工事!近くで工事してんじゃないか!?」アタフタ
746 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/16(水) 20:51:49.18 ID:QoYoMck0 [8/12]
美琴「イヤどう考えても工事の音じゃないでしょこれは!?」
黒子「まさか能力者の喧嘩では!?それならばわたくしが――」
上条「――俺が行くッッ!!」スクッ
禁書「と、とうま!?」
美琴「ば!アンタ何立ち上がってんのよ!?体は――」
上条「――美琴ぉ!」
美琴「――ハ、ハイ!?///」(み、みこと!?///)
上条「……皆を頼むぞ。安心してくれ、危険はない。誰も病室から出すな。白井もだぞ?わかったな!」キリッ
美琴「///……わ、わかった……わ」
上条「信じてるからな。美琴―――」ガチャ バタン タッタッタッタ…
禁書「とうま……行っちゃったよ…」
黒子「無茶過ぎですの!すぐわたくしも――!?」
――ガシッ!
黒子「――お、お姉様!?は、離して下さいまし!よろしいんですの!?このままでは上条さんが――」
美琴「ゴメンね、黒子……けど…悪いけど、誰もここから出す訳にはいかないわ」ユラ…
打ち止め「おや……お姉さまの様子が…ってミサカはミサカは久々に口を開いてみたり…」
黒子「お姉様、離すんですの!」ジタバタ
美琴「ダメよ、どうしても行くんなら……私を倒してからにして」
747 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/16(水) 21:04:27.08 ID:QoYoMck0 [9/12]
黒子(……こうなったら、お姉様もろとも――)
美琴「――先に言っておくけど、私と一緒にテレポートしたりしたら、アンタともう一生口利かないからね?」
黒子「――!!!?」
美琴「……ね、大人しくして」ニコッ
黒子「…………ハイ…ですの……」
美琴「それで良いのよ。誰も部屋から出ちゃダメだから」
打ち止め「……あ、あの……ミサカはトイr」
美琴「ダメ。アイツが戻るまで我慢しなさい」
禁書「……うぅ…短髪がいつもの三倍怖いんだよ…」
―――
上条「―――んで、何か言う事は?」
垣根「――足痺れた。正座もうやめていい?」モゾモゾ
一方通行「――さっきから石が脛に当たって痛ェ……」モゾモゾ
上条「ちっがぁぁぁうだろぉぉおおおお!!!」クワッ
一方通行・垣根「――ゴメンナサイ、ハンセイシテイマス」
750 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/16(水) 21:21:47.66 ID:QoYoMck0 [10/12]
――病院前、仁王立ちの無能力者の前に正座する二人の超能力者がそこにいた。
上条「――お前ら!!自分達の立場ってモンをちゃんと自覚してんのか?あぁ!?よりにもよって病院の前で戦争まがいの乱闘起こしやがって!
お前ら二人にとってはじゃれあいのつもりでも、周りからすれば国と国との戦争クラスなんだぞ!?喧嘩するなとは言わないが、時と場所を
考えろ!!」ガミガミ
一方通行「……オマエのせェだ」
垣根「いやテメェのせいだ」
上条「ふ た り と も で す!!!」
一方・垣根「……………」
上条「………まぁ、幸い犠牲者は出てないみたいだからもう良い。立ちなさい」
一方・垣根「スクッ―――!!うぉっ!足が痺れ――――!!!?」フラ…
―――合 体! (足がもつれて抱き合う二人)
一方通行「……………オイ」
垣根「…………んだよ?」
一方通行「離せ」
垣根「テメェが離せ。気色悪ぃ」
一方通行「……今離したらコケンだよ」ガクガク
垣根「ならそうしてやろうか?……と言いたい所だが、俺も離したらコケる」ガクガク
上条「……………」
751 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/16(水) 21:46:14.14 ID:QoYoMck0 [11/12]
足の痺れがとれるまで肩を組む二人。端から見たらまるで親友―――
一方通行「――ンな訳ねェだろクソがァァあああ!!!」
垣根「――うわっ!テメェいきなり何叫んでんだよ!?ビックリしただろぉが!」
一方通行「あァ?何でもねェよタコ。っつかイイ加減離せコラ。マジで気持ち悪ィ」
垣根「『お互い様』って言葉知ってる?テメェこそ腕に力入れてんじゃねえか!」
一方通行「ただでさえ足が不自由なンだよ俺はァ!っつかオマエでけェンだよこのノッポ」
垣根「んだと、この虚弱体質のチビ野郎!」
一方通行「――なッッ!!こ、この野郎ォォ!!」
垣根「やるかこの!――」
上条「肩組んだまま喧嘩すんなお前らぁぁあああ!!!」
一方通行「………最悪だチクショォ……」
垣根「全くだコンチクショォ……」
上条「ったくお前らは……」
一方通行「っつか三下ァ。オマエ出てきて平気なのかよ?」
上条「誰のせいだと思ってるんですか?だ れ の?」
一方通行「ケッ、オマエが出てこなくてもこンなメルヘン野郎なンざァすぐに手術室行きに出来ンだよ」
垣根「ほぉう、それは是非やってもらいたいもんだなぁ…」
一方通行「あァ?」ギロリ
垣根「お?」ジロリ
上条「大概にしとかないと、そろそろ上条さんマジでキレますよ?」
757 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/17(木) 21:38:00.40 ID:8jQ9VPE0 [2/8]
一方通行、垣根、上条は病室には戻らずに何故か中庭に来ていた。
ちなみに、すでに二人は肩を組んでいない。
―――
一方通行「――ったくよォ……こンなヤツと一時的とは言え二人三脚しちまうなンて……クソったれが」
垣根「――コッチもだ。体系だけなら悪くねえが、中身がよりによってコイツとは……もっかい人生やり直してぇ」
一方通行「………」――ギュウウウ
垣根「イッッ!!テ、テメェ足踏みやがったな!この!」――ギュウウウ
一方通行「ッッ!!やりやがったなこの野郎ォ!!ウラァ!」――ギュウ ギュウ
垣根「イテテテ!!ま、負けるかクソがぁ!!ウリウリィ!」――ギュウウウウ
オイ イマスグソノキタネエアシヲドケロ
ハ? テメエガドケロヨケガラワシイ
上条「………お前ら……」ググッ
―――ゴンッ! ゴンッ!
上条「――いいか?お前達に重大なお知らせがある。俺の話をよく聞けよ?」
垣根「重大なお知らせぇ?」タンコブ
一方通行「……何だソイツァ…つーか早く部屋戻らねェのか?」タンコブ
上条「……実は……御坂達が今その部屋に来てるんだよ」
一方通行「あァ!」タンコブ
垣根「………御坂って……まさか第三位か!?ってかどうした?一方通行」タンコブ
760 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/17(木) 22:04:36.68 ID:8jQ9VPE0 [3/8]
一方通行「……そォ言や超電磁砲にオマエが入院したってメールしといたンだった……すっかり忘れてたわ」
垣根「上条お前……第三位とも仲良いのか?」
上条「……まぁ、友達っつーか戦友っつーか……って今はそんなことどうでも良いんだよ!垣根!お前には消えてもらいたい」
垣根「あ?テメェ喧嘩売ってんの?」
上条「イ、イヤすまん!言い間違えた!お前は御坂と会うの気まずいだろ?だから…その……しばらくどっかで時間潰してきて欲しいんだ……」
一方通行(……気まずいねェ……三下ァ、コイツが一番気まずかったハズの俺と今同じ部屋に住ンでるの忘れてねェか?)
垣根「………確かに……今会うのは気まずいかもな」
上条「……だろ?お前はともかく、御坂はキレると周りが見えなくなるし、もし部屋で暴れられた日にはたまったモンじゃないからな……」
垣根「そうだな……俺短気だから喧嘩売られると買っちまうかもしんねえし、上条には迷惑かけらんねえ」
一方通行「………はァ?」
垣根「よし、分かった。どっかで適当に時間潰してくるわ」
上条「すまない垣根。そうしてくれると助かるよ!」
垣根「気にすんなって。んじゃ、後でな」
上条「おう」
意外にあっさりと、垣根は去っていった……。
一方通行(どォいう事だコイツァ……アイツがあンなもの分かりイイ訳ねェ……っつーかあンな空気読めるヤツじゃねェ………何か企ンでやがンのか……)
上条「――ふぅ…さーて、部屋戻るか。ん?どうしたんだ?一方通行」
一方通行「!――な、何でもねェよ。行くぞ」カツカツ
上条「…?」
761 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/17(木) 22:23:35.25 ID:8jQ9VPE0 [4/8]
―――病院内通路
上条「――お、鯛焼きずいぶん買ってきたな!しかもジュースまで……悪いな」
一方通行「別に大した事じゃねェよ。…しっかしあのメルヘン、やけにあっさりしてたと思わねェか?」
上条「…え?そうか?空気読める良いヤツじゃん」
一方通行「オマエはアイツがどンだけウゼェか知らねェからそンな事言えンだよ」
上条「……俺から見ると仲の良い親友同士にしか見えないな。喧嘩するほど相手を想うって言うだろ?」
一方通行「……オマエ本気で言ってンのか?お、あそこに霊安室があるなァ。こりゃ丁度イイ」ニタア
上条「ちっとも良くありません!!スミマセンでしたぁッッ!!」
一方通行「………ったく」(喧嘩するほど相手を想うって……超電磁砲の想いに全く気づいてねェコイツが言っても説得力ねェよなァ…)
上条「鯛焼き美味そー♪……けどちょっと冷めてるな…」
一方通行「温められねェの?」
上条「……鯛焼きってレンジ入れて大丈夫なのか?」
一方通行「生卵じゃあるまいし、平気だろォ」
上条「そうか……――」
―――上条個室ドアの前
上条「――いいか?垣根の事は…」
一方通行「あァ、分かってンよ」
――ガチャ
762 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/17(木) 22:41:24.60 ID:8jQ9VPE0 [5/8]
美琴「――あ!帰ってきた!……一方通行も一緒だったの?」
黒子「――お帰りなさいませ。第一位様、ご無沙汰しておりますの」ペコリ
一方通行「……おォ」
上条「遅くなっちまって悪いな。一方通行が買ってきた鯛焼き、温めて食おうぜ」
禁書「待ってましたーー♪鯛焼き鯛焼きぃぃ♪」
打ち止め「わーい♪ってミサカはミサカはシスターちゃんと一緒に飛び跳ねてみたり!……あれ?ところでおn」
一方通行「………」ギロリ
打ち止め「ひっ……な、何でもなかったり……」
美琴「外で暴れてたのって、アンタだったの?」
一方通行「まァな、馬鹿なゴロツキ共に絡まれてたンだよ。いつもの事だ」(半分はホントだしな…)
黒子「……なら、態々貴方が部屋から出る必要もなかったのでは?」
上条「そ、そうだな。出たは良いけど、もう終わってたし…上条さんの出番無しですよ。ハハハ」
美琴「ホント良かった……心配しちゃったわよ。馬鹿」
上条「悪いな。けどありがとな御坂、皆を見ててくれて…」
美琴「い、良いのよそんな……べ、別に……」(『御坂』に戻ってる………ズーン)
上条(あれ…何かへコんでる……?)
一方通行(アホ……)
―――こうして、上条病室ではささやかな『鯛焼きパーティー』が行われた。
763 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/17(木) 23:01:30.90 ID:8jQ9VPE0 [6/8]
美琴「――あれ?一方通行。アンタ、コイツの友達と一緒だったんじゃないの?」ハムハム…
一方通行「飲み込ンでから喋れお嬢様。途中で用があるっつったから帰ったンだよ」
美琴「ふーん…」
黒子「貴方のお友達と言いますと、あの青い髪の殿方と金髪サングラスの方ですの?」
上条「ま、まぁな……」(そう言えば最近つるんでないな……青ピはともかく土御門は忙しいっつってたし…)
禁書「3匹目ーー!」
上条「インデックス!ペース速すぎ!」
一方通行「大漁だから心配すンな」
美琴「おいしー♪」
打ち止め「んぐ……喉詰まった」
一方通行「急いで食うからだろォ。……ったく、ホラ水」
打ち止め「ゴク……ぶはー生き返った!ありがとー!ってミサカはミサカは感謝してみる」
黒子「飲み物わたくしも頂きますわ」
美琴「私もー。アンタ気が利いてるわよね。流石第一位」
一方通行「そォいう時だけ持ち上げンな」
禁書「とうまー、私にもジュース取って欲しいかも!」
上条「ハイハイ……んじゃ俺も………ってあれ?」ゴソゴソ
一方通行「あン、どォした?」
上条「……イヤ、俺の飲み物は?」
一方通行「あるじゃねェか」
上条「え?あとブラックコーヒー2本だけなんだけど……これお前のじゃ…」
一方通行「一本はオマエのだよ」
上条「…………ハイ?」
766 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/17(木) 23:19:54.31 ID:8jQ9VPE0 [7/8]
一方通行「遠慮すンな、ジュースぐれェ奢ってやンよ。まァ飲め」
上条「イ……イヤその…」
一方通行「あァン?俺のコーヒーが飲めねェってのかァ?」ギロ
上条「ブ、ブラックって飲んだ事ないんだよなぁ……」
一方通行「安心しろ、病み付きになる程美味ェからさァ」ゴク…
そう言って一本取り、美味しそうに飲む一方通行を見て、上条もタブを開ける。
上条「――んじゃあ……頂きます!」――ゴクッ
一方通行「ンな栄養ドリンクみてェに飲むモンじゃねェぞ?」
美琴「うわ、アンタもチャレンジャーねぇ……」
黒子「わたくし達には少し早いですわ……」
打ち止め「ミサカも……何が美味しいのか分かんない」
一方通行「ガキには分かんなくてイインだよ。……どォだ?美味いだろォ三下」
上条「……………一方通行」
一方通行「あン?」
上条「―――ブラック苦ッッ!!」
一方通行「……………」
上条「良くこんなの飲めるよなお前!……なんつーの、薬とかとはまた違う感じの苦味が…何とも……」
一方通行「………ま、まァそォだよなァ!お子様なオマエらにはまだコイツの旨みってモノが分っかンねェよなァ!別に好みは人それぞれだし
気にすンなよ三下ァ!」
上条「………なんか…ゴメン」
一方通行「別にィ……」
771 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/17(木) 23:46:04.65 ID:8jQ9VPE0 [8/8]
―――その頃、垣根は近くのカフェででも時間を潰そうと駅周辺をぶらついていた。
ガヤガヤ…
垣根「――……ちっ、また満席かよ……いくら冬休みっつっても人多すぎなんだよったく……」ブラブラ
垣根「あー…暇だ。何か面白ぇ事でも起こんねえかな……」ブラブラ
垣根「やっぱ………気まずいよなぁ……一方通行はムカつく野郎だから気なんて遣う必要ねぇって思えたが……お嬢様だと訳が違うもんなぁ…」
垣根「……けど、いつまでも逃げるみてぇに避け続けるなんてのは性に合わねえし……やっぱ俺から謝んねえとダメだよなぁ…」
垣根「………にしても、上条のヤツ…仮にも学園都市の一位と二位の喧嘩に物怖じせずに割り込んでくるとは……考えてみたらすげぇ事じゃね?」
垣根「いくら右手があるって言っても、なかなか出来ねえよ……しかも説教入ると動けねぇし……あいつ本当に無能力者かよ……心理操作系
の能力でも使ってねえだろうな…?」
垣根「なんつーのか……『ヤンチャしてるのに母親には逆らえない』みたいな…?よく分かんねえけどそれに似たプレッシャーを感じたな……
ホント不思議―――」
―――ブツブツブツ………と、一人ごちりながらブラブラと歩く垣根……。と、その時―――
「――や、やめてください!!私はジャッジメントですよ!?あなたたち……こんな事してただで済むと―――」
垣根「――……ん?」
774 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/18(金) 00:01:04.78 ID:UT0pPEc0 [1/6]
垣根「………何だぁ?……今あっちの路地裏から何か聞こえたような……」
声のした裏道に入って行く垣根……するとそこに――
「――いやッッ!!!やめて!!やめてくださ―――」
垣根「――!?……裏連れ込んでレイプかよ……別にどうでも良いが、発見しちまった以上放っておくのも後味悪いよなぁ……仕方ねぇ」ズイッ
「――た、助けて!!誰か―――!!?」
「ちっ……うるせぇなコイツ、静かにしろや!コラァ!」ドスッ
「――うっ!!………」ガクッ
――三人の男が少女一人を押さえつけていた。暴れる少女に業を煮やした男が少女の腹を殴る。
少女が気を失い、無抵抗になっていよいよとニヤける男達の耳に声が聞こえた。
垣根「――女一人相手に三人がかりかよ。ダッセェな」
「―――!!?」
――振り返った男達のすぐ後ろには……面倒臭そうな表情の垣根の姿があった。
776 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/18(金) 00:14:19.93 ID:UT0pPEc0 [2/6]
「――な、何だテメェは!?」
垣根「――外道に名乗る名なんてねえよ。悪い事ぁ言わねえからすぐ消えろ」
「んだとコラぁ!!」
「殺すぞぉ!!」
「オイ!女押さえとけ!」
ナイフを取り出し立ち上がる不良達……しかし、垣根には何の脅しにもならない。
垣根「……ハァ…馬鹿が……俺に楯突ける身分でもねえってのによ。怪我しねえ内に帰れってのが分かんねえの?ガキ共」
「うるせぇぇえええ!!!」バッ
「死ねやぁぁぁあああ!!!」バッ
垣根「……………ハァ……」
――――
「――ひ、ひぃっ……」
垣根「コイツら連れてとっとと消えろ」 ファサ
「――ハ、ハイッッ!!」ピューーー
垣根「………『連れてけ』っつってんのに置いて行きやがった…まぁ良いか」ファサッ
778 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/18(金) 00:31:45.35 ID:UT0pPEc0 [3/6]
――あっという間に不良達を撃退して、うつ伏せで気絶している少女に歩み寄る。
垣根「――……ん?……この花飾り……まさか……」
ふと、少女の頭に目を止める。うつ伏せなので顔は分からないが、垣根は少女の頭に咲いている大量の花に見覚えがあった。
というか、見たのはこれで三度目だ。
垣根「…………ウソだろ?」
そっ…と少女を仰向けにする……。
垣根「………………」
「…………ん………」
―――曝け出されたのは、間違いなく垣根にとっては美琴以上に気まずい存在なはずの初春飾利の顔だった。
一瞬苦しそうな声を出すものの、起きる気配はなかった。もっとも、垣根からすれば今起きられては困る。
垣根「……………どうしよ?」
785 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/20(日) 19:29:31.57 ID:SaOE1Jc0 [2/9]
垣根「――……参ったねぇ、コイツは…」
よりによってコイツかよ。とでも言いたげに溜息を吐く垣根。
それは彼のすぐ横で眠る少女、初春飾利に向けて吐かれたものである。
初春「…………」
垣根「……ここに置いてく訳にはいかねえよな……しょうがねぇ。よっと」
初春を抱き上げ、そのまま歩き出す。
とりあえず交番でもどこでもいい。彼女を預けられる所へ――
お姫様抱っこのまま、垣根は人目も気にせず歩き回った。
初春は未だ起きる気配がない…。
垣根「………クソ…何で俺がこんな事…」
ブツブツ文句を言ってはいるが、人助けそのものはまんざらでもない、といった表情だ。
そして、歩き続けた垣根は『ある場所』に辿り着いた。
垣根「―――ここは……」
786 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/20(日) 19:45:41.75 ID:SaOE1Jc0 [3/9]
垣根「――ここ、ジャッジメントの支部だよなぁ……んーと……『第一七七支部』か……」
初春を抱いたまま垣根は偶然彼女が所属する風紀委員支部を発見してしまった。
当然、初春の所属支部は知らないが……腕には腕章がついているし、とりあえずここに預ければ何とかなるだろう。
そう思い、垣根は支部へと入っていった。
垣根「…………」
ドアの前で初春を抱いたまま、何故か垣根は立ち止まっていた。
手が塞がっているからノックが出来ないのか……いや、違う。
垣根「………何て言うべきだ……うーん……」
『初めての場所は緊張する』。面接などでよく聞く言葉だが、似た心境を垣根も今味わっていた。
ここに来たは良いが、どう言って預けるか……交番などで落としモノを届けた事など一度もない。
無難に『路地で絡まれてたんで助けてここまで連れて来ましたー』で良いだろう……。
垣根「――あぁークソ!こんなん俺のキャラじゃねえっての!うし!」
――何故か気合いの入ったような顔で、垣根は初春を一旦壁に寄りかからせてノックをした。
――コン、コン
「―――はーい」
788 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/20(日) 20:05:45.69 ID:SaOE1Jc0 [4/9]
垣根「――あのー、すんません。『届け物』しに来たんすけど」
――返ってきた若い女の声にドア越しで答える垣根。
「はいはい、今出ますので…」
――ガチャ
その声の約十秒後にドアが開き、眼鏡をかけた高校生の少女が姿を見せた。
「――お待たせしました」
垣根「あ……ども」
「…?」
固法美偉…透視能力を持つ。黒子や初春の先輩。好物はむさしの牛乳。巨乳。
固法「――…あの、それで用件は…?」
垣根「――えっ?…あ、そうでした。この子を…」
固法の容姿に見とれていた垣根は慌てて壁に寄りかかって眠る初春に目を向ける。
その視線に固法も目を移す。
789 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/20(日) 20:19:47.86 ID:SaOE1Jc0 [5/9]
固法「――う、初春さん!」
驚いた顔で彼女に駆け寄る固法に、垣根はさらに慌てる。
垣根「だ、大丈夫っすよ。気絶してるだけっぽいんで……奥で寝かせてやって下さい。じゃ、俺はこれで――」
――どうやらコイツの知ってる人らしい。ならもう大丈夫だろう……。
そう思った垣根は初春の目が覚める前に早くこの場から立ち去ろうとするが、その腕をガシッと掴まれる。
垣根「――!」
固法「――待って」
いつの間にか初春から離れた固法は垣根の腕を掴んだまま上目遣いで尋ねる。
固法「いったい何があったの?」
垣根「……イヤ……大した事は…」
固法の放つフェロモンのような魅力と角度的に危うい胸元に、垣根の思考が止まる。
それを勘違いしたのか……固法の目が鋭くなる。
790 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/20(日) 20:29:05.98 ID:SaOE1Jc0 [6/9]
固法「…とりあえず…中で話を聞かせて下さいね?……拒否権はありませんよ」
垣根「え…あ、その!…俺この後用事が――」
固法「問答無用です!」ピシャリ!
垣根「………」
――垣根、あえなく御用…
―――風紀委員一七七支部
来客用の応接室に垣根はいた……。向かいの椅子に固法もいる。
初春は隣の個室で寝かせているらしい。
固法からそれを聞き、とりあえず安堵の息を零す。
固法「―――では、あなたが初春さんを不良から助けてくれたんですか……?」
垣根「え、えぇまぁ……けど大した事ないっすよ。たまたま通りかかっただけなんで……別に感謝とかは――」
固法「――そうはいきません!」
垣根「――!?」
791 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/20(日) 20:44:24.62 ID:SaOE1Jc0 [7/9]
固法「もしあなたが駆けつけてくれていなかったら……初春さんは今頃…」
垣根「駆けつけたなんてそんな…大げさっすから……」
固法「とにかく、ありがとうございました!あの子の先輩として、改めて今度お礼させて下さい」ペコリ
垣根「……い、いや…ホントいいですから……頭上げてくれません…?」(でないと胸が……)
胸元を気にも留めずに頭を下げる固法に垣根は目を明後日の方向へ向ける……が、チラチラ見てしまうのはご愛嬌。
垣根「――あ、あの!俺この後用事あるんで……もう帰っていいっすか?」
固法「え?えぇ…。そうね、時間とらせちゃってゴメンなさい……」
垣根「だぁあ!謝るのナシッ!また胸………イヤ、何でも…」
固法「……?」
垣根「じ、じゃあこれで。ホント時間ないんで…」スクッ
固法「あ!ちょっと待って!せめて連絡先だけでも…――」
垣根「………」
――携帯番号だけ書いた紙を固法に渡し、垣根は足早に支部を去っていった…。
792 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/20(日) 21:04:47.10 ID:SaOE1Jc0 [8/9]
―――路上
垣根は病院までの道をトボトボと歩いていた。
精神的に少し疲れた顔で――
垣根「――……ハァ……何か疲れた」トボトボ
垣根「まさか……偶然助けたのがよりによってあの花娘とは…」トボトボ
垣根「…災難っつーか……これなら一緒に病室戻った方がまだマシだったかもな……」
垣根「………イヤ、どっちもどっちか……」
垣根「それにしても………あの眼鏡の女……」
垣根「なんつーか……やべえ」
垣根「ついダミー用じゃなくてマジ番号教えちまった……もしかしてあのコからかかってくんのかな……?」
垣根「って何期待してんだ俺……けど『今度礼させて』っつってたし……」
垣根「うは、マジかよぉ……やっぱそぉいう展開!?……やっべ、どぉしよっかなぁ……くはぁ、参ったねこりゃ。俺どぉすりゃいいんだコレ?」ニヤニヤ
―――体と表情は正直だった…。通り過ぎる通行人の不審な目など、垣根にとってお構いなしだ。
頭を抱えたり、にやけたり、ぼやいたりと忙しい第二位はさっきの疲れなど完全に忘れていた…。
800 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/21(月) 19:34:53.44 ID:9hTbrJ20 [2/10]
―――病院
――鯛焼き完食後(大半は禁書目録)、室内は談笑に包まれていた。
上条の不幸エピソードだったり美琴の少女趣味だったり一方通行の純粋ぶりだったりと、話題が尽きる事はなかった。
打ち止めと禁書目録は途中から別室で仲良くお昼寝中である。
そして、午後一時になろうかという時…黒子が慌てだした。
黒子「――!もうこんな時間ですの!?」
美琴「あ、そっか。そう言えばアンタ午後出勤だったわね」
上条「冬休み中だってのに大変だな」
黒子「何を仰ってますの?むしろ長期休暇期間こそジャッジメントが最も忙しい時期ですのよ」
上条「そっか……警察みたいなもんか」
一方通行「テレポート使えばすぐだろ?」
黒子「そうですわね……あまり気は進みませんが、遅刻は避けたいですの。お姉様、申し訳ありませんが…」
美琴「私は良いわよ。もう少し居たら帰るから」
黒子「では、慌しくて恐縮ですがわたくしはこれで。失礼しますの――」
――その言葉の一秒後、ヒュン!と音を立てたと同時に黒子の姿は消えた。
801 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/21(月) 19:48:22.04 ID:9hTbrJ20 [3/10]
美琴「――行っちゃったか……ジャッジメントも大変よね……今更だけど」
一方通行「学生共が休ンでンなら、事件なンざ腐る程増えンだろォな」
上条「すっかり時間忘れちまったな……白井、間に合うと良いけど…」
美琴「ま、大丈夫でしょ。……それでさ、さっきの話だけど――」
一方通行「オイ、超電磁砲」
美琴「ん?何よ?」
一方通行「あのツインテール、やたら俺のツラ見てニヤケてたンだが……オマエ心当たりあるか?」
美琴「(ぎくっ!)……さ、さぁ……知らない」
一方通行「まさかとは思うが、オマエ何か余計な事吹き込ンだりしてねェだろォなァ?」ジロ…
美琴「ナ、ナンノコトデスカー?ワタシはナンニモシリマセンケドー」
上条(気持ち悪っ!)
一方通行「………」(あとでツインテールに吐かせるか……結果によっちゃァ、スクラップだな)
――別室
打ち止め「――Zzz……もう、アナタぁ……ダメだってぇ……Zzz」
禁書「――Zzz……むにゃ……もう食べられないよぉ……Zzz」
802 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/21(月) 20:00:34.07 ID:9hTbrJ20 [4/10]
―――風紀委員一七七支部
「――………ん」
ベッドで眠っていたひとりの少女、初春飾利が目を覚ました。
「――ここは……」
むくりと体を起こし、辺りをキョロキョロと見回す。
見覚えがある………というか、徹夜明け用の仮眠室だった。
徹夜仕事の多いポジションの初春にとっては見慣れた部屋だった。
「…………?」
何故ここに……と最初はキョトンとしていたが……除々に記憶が戻ってくる。
そうだ。自分は確か、とベッドから下りた初春はいつもの仕事場へ急ぐ。
「―――私、どうなったの……?」
男に殴られてからの記憶が全くない。
あの後どうなったのか……確認出来る人物はすぐ近くにいた。
「――固法先輩ッ!」バタン!
803 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/21(月) 20:12:37.26 ID:9hTbrJ20 [5/10]
固法は突然開いたドアにビックリし、飲んでいた牛乳を吹き出しそうになる。
固法「――ブッ!……う、初春さん?……気がついたの」
初春「――先輩!私、……その……」
何となく訊き辛さにどもってしまう初春……。固法はそんな彼女を察し、天使の様な微笑みを向ける。
固法「……初春さん、安心して。貴方は何もされてないわ」
初春「………え?」
固法「貴方、不良に怯む事なく注意しようとしたんでしょ?」
初春「は……はい……たまたま恐喝現場を目撃して……注意したら……裏に連れ込まれて………」
思い出したのか、震えながら話す初春。それを見て固法は――
固法「――いいのよ、無理して喋る事はないわ。貴方は何も間違っちゃいないんだから」
初春「………はい」
804 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/21(月) 20:21:39.96 ID:9hTbrJ20 [6/10]
初春は力強く笑って固法に返事を返す。
見た目と違い、多くの修羅場を経験している彼女の精神はやわではなかった。
――――
固法「……どう、落ち着いた?」
初春「はい」ズズーッ
固法「やっぱりこの時期は『ムサシノ・ホット』に限るわね」
初春「ふふっ…何ですかぁソレ。でも、落ち着きますね…」
固法「でしょう?」
――時間はお昼休み。二人はティータイムならぬミルクタイムを満喫していた。
初春「――そう言えば…」
固法「ん?」
初春「私……あの後どうなったんですか……?」
805 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/21(月) 20:36:03.61 ID:9hTbrJ20 [7/10]
固法「………」
初春「……情けないですけど、殴られて意識が飛んで……そこから覚えてないんです。固法先輩が助けてくれたんですか?」
固法「………しまった……名前訊くのすっかり忘れてたわ……私としたことが…」
初春「先輩……?」
突然頭痛でも来たかのように頭を押さえる固法に初春は疑問を抱く。
固法「…ま、連絡先は知ってるからいっか……初春さん」
初春「…はい?」
固法「貴方を助けて、ここまで運んできてくれた人がいるの…」
初春「え?……誰ですか?」
固法「ごめんなさい……彼、時間なかったみたいでさっさと帰っちゃったから、詳しく訊けなかったのよ…」
初春「……男の人…ですか?」
固法「…えぇ、服装は…何ていうか……ホスト風で、髪型は茶髪で……背は結構高かったわ…」
初春「私に乱暴しようとした人に……そんな人はいませんでした…」
固法「たまたま通りかかっただけって言ってたわ。ごめんなさい…せめて名前は訊いとくべきだった…」
初春「い、いいんですよ。……けど、私……その人に一度会って…お礼したい…」
806 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/21(月) 20:43:51.88 ID:9hTbrJ20 [8/10]
固法「連絡先……っていうか携帯の番号は聞いたんだけど…」
初春「!…貸して下さい」
固法「え…?あ…」
固法が見せた番号の書かれた数字をふんだくるように奪い取る初春。
固法「――う、初春さん?今かけるの…?」
初春「当然です」
即答しながら自分の携帯を取り出し、番号を入力する。
そして、本当にすぐ……彼女はその番号に電話をかけた―――
―――路地
垣根「―――…さぁて、そろそろ病院戻るか。もう第三位帰ったろ…」
807 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/21(月) 20:59:40.44 ID:9hTbrJ20 [9/10]
ブラブラしていた垣根は、携帯で時計を確認するとそう呟いた。
ちなみに今彼がいるのは病院付近。歩いてる内に近くまで戻ってきたようだ。
垣根「――腹減ったな……ヤツら今頃鯛焼きで腹いっぱいなんだろぉな……何かムカつく」ブラブラ
垣根「…っつーか、よく考えたら何でこの俺が席外さなきゃなんねえ訳さ?……おかしくね?」ブラブラ
垣根「第三位如きに気を遣っちまうなんて、やっぱ今日の俺どうかしてるわ……殺そうとした女は助けちまうし……ガラじゃねぇっての…」
垣根「どうせ戻っても俺の鯛焼きねえんだろ?インデックスちゃんは大食いだし、一方通行はイジワルだし……」
垣根「どぉ考えても鯛焼き生存率はゼロだよな……」
垣根「クッソ、マジ腹立つ!こうなったら何か復讐でも…………ん?」
~~~♪
垣根「あぁ?………人がムカついてる時に……誰だよ?」
――パッと着メロを鳴らす携帯をポケットから取り出す。
垣根「………登録されてねえ番号か……はっ!もしかして……あの眼鏡の姉ちゃんかも!」ピッ
すぐに期待に満ちた顔になって通話ボタンを押した。
818 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/23(水) 23:28:47.45 ID:8NrCuZw0 [2/4]
垣根「――もしもし」
『―――あのぉ……すみません』
垣根(……あれ?こんなしおらしい声してたっけ……?)
『……私…初春飾利といいます。あの……私を助けて支部まで送ってくれた方…ですよね?』
垣根「………」
―――マジかよぉ……どうするどうするどうすっぺ!?
悩んだ末、垣根が返した言葉は――
垣根「――あぁ、そうだけど」シレッ
初春『――あ、あ、あの!本当になんてお礼を言ったら良いか…』
垣根「気にするな。たまたま通りかかっただけだ。礼なんて言われる程の事はしてねえよ」
初春『いいえっ!そういう訳にはいきません!是非お礼させてください!』
垣根「いや……だかr」
初春『明日とか空いてますか?もしお暇でしたら、会えませんか?』
垣根「………はぁ?」
819 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/23(水) 23:46:39.36 ID:8NrCuZw0 [3/4]
垣根「……ちょっと待て」
初春『はい?……あ、明日は都合悪いですか?なら――』
垣根「そうじゃねぇ。……あのな、さっきも言ったが礼なんか良い。それに――」
初春『……?』
垣根「会うのは……ダメだ。君が後悔する事になr」
初春『却下です』
垣根「………あ?」
初春『一度会ってお礼しないと私の気が済みません。どうしてもイヤだって言うんなら、家調べてでも会いに行きますよ?』
垣根(……そうだよ……この女はこういう強引なトコあんだよな……流石俺に屈さなかっただけの事はある。芯が強いってか……
しかし、どうする……?会うなんて出来るか?つーか、会った瞬間また気絶でもされるのがオチな気がする……)
初春『もしもーし?聞いてますかー?』
垣根「――あ、あぁ悪い。最近は忙しいから……いつ暇になるかは分からないな」
初春『えー……じゃあ、また電話しますよ。空けられそうな日は空けといてください。一週間以内で無理なら住所調べて勝手に会いに行き――』
垣根「よし、じゃ一週間後な」
初春「はい♪」
垣根(このコ……もしかして意外と黒いんじゃ……)
821 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/23(水) 23:55:56.75 ID:8NrCuZw0 [4/4]
初春『では、またかけますね♪……あ、そうでした』
垣根「……?」
初春『お名前、教えてください』
垣根「……………か」
初春『か?』
垣根「カッキー……です///」
初春『カッキー……さんですか……?あの、本名は?』
垣根「そ、それは会った時に教えるよ…」
初春『…わかりました。約束ですよ?では、カッキーさん。また電話しますね。それじゃ――』プツッ ツー ツー…
垣根「……………」ピッ
―――どうして……どうしてこうなった…?
ひとり路上で携帯片手に立ち尽くす垣根帝督がそこにいた。
822 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/24(木) 00:11:49.85 ID:9fJXNhs0 [1/17]
―――病院・上条個室
一方通行「――………」スクッ
――話が弾み、しばしの沈黙になった所で一方通行はいきなり立ち上がった。
上条「――ん、どうした?」
一方通行「……ガキ共の様子見るついでに散歩でもしてくる」チラッ
美琴「…そ、そう……」(まさか……また気を遣って……)
一方通行「………」カツ カツ バタン
美琴に一瞬目をやり、後は無言で杖をつき病室から出て行った一方通行。
特に気にしない上条だが、美琴の様子がおかしいのは気になったようだ。
上条「…御坂?どうしたんだ?そわそわしてるぞ……」
美琴「……わ、私もチョローっとお花摘み行ってくるわ!す、すぐ戻るから!――」タッタッタッタ バタン
上条「………?」
―――院内通路
一方通行「………」カツン カツン カツン
美琴「――ねぇ、ちょっと待ちなさいよ」
824 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/24(木) 00:29:13.05 ID:9fJXNhs0 [2/17]
一方通行「……あァ?」クルリ
――振り返ると、そこには美琴が腕を組んで立っていた。
しかも彼女は少し呆れたような視線を自分に向けている気がする……。
一方通行「オイオイ、何オマエまで出て来てンだよ?人が折角いなくなったってのに……三下ンとこにいなくてイイのかァ?」
美琴「……やっぱり…」ハァ
一方通行「……?」
美琴「あのねぇ、そういうの……なんて言うの……う、嬉しいんだけどさ………良いのよ?そんな気なんか遣わなくて…」
一方通行「気なンて遣ってる訳じゃねェ。オマエの目が『二人っきりになりたい』って言ってたンだっての…空気読むなンざガラじゃねェけどなァ…」
美琴「……な、何よ?」
一方通行「オマエら見てるとイラつくンだよ。あの野郎の鈍感ぶりもイラつくが、オマエがいざって時に素直になれてねェのもイラっとする」
一方通行「……くっつくンならとっととくっつけっての。俺はオマエらお似合いだと思うけどなァ」
美琴「………そりゃあ……私だって…」
一方通行「振られンのが怖ェのか?」
美琴「………」コクリ
828 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/24(木) 00:45:48.15 ID:9fJXNhs0 [3/17]
下を向いて俯いてしまった美琴……。
一方通行は何を思ったのか、美琴に近づき……彼女の頭にポンと手を置いた。
美琴「………あ…」
一方通行「安心しろ。オマエがもし振られたら、俺が拾ってやる」キリッ
美琴「……え…///」
一方通行「なンてなァ…」ニヤ
美琴「……?」
一方通行「まァ、オマエが振られる事ァ多分ねェよ。だから……何つーかさァ………ンな悲しそォなツラ見せンな」ポン ポン
美琴「……うぅ…子供扱いすんな…」
一方通行「ハッ、俺から見りゃあまだまだガキだ。オマエもあの三下もなァ!」
美琴「……フフッ、そんな事言って良いのかにゃー♪」
一方通行「…あン?」
美琴「コレ、何でしょうかー?」ピラーン
一方通行「――!!?オ、オマ…何でソイツを…?」
831 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/24(木) 00:58:23.02 ID:9fJXNhs0 [4/17]
――美琴が一方通行に見せびらかすように見せたのは……おそらく彼が今最も焼却処分したいものであろう、『汽車で上条にしがみつく一方通行』が写った写真だった。
一方通行「――な、な、何でオマエがそれを持ってンだァ!?」
美琴「私も買ったのよ?アンタがあの時妹と戯れてる間にね」ニヤァ
一方通行「………」
美琴「………」
一方通行「悪い事は言わねェ。今すぐそれをコッチに渡s」
美琴「イヤ」
一方通行「………そォか、そォかァ。なら仕方ねェ……」ユラァ
美琴「あはは!ばーーか♪誰がこんな面白いネタ渡すかっての!」タッタッタッタッタ…
一方通行「待ァァあああてェェェえええやァァああああ!!!」カチッ ビューン
「―――病院内ではお静かに!!!とミサカは大声で呼びかけます」
834 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/24(木) 01:23:39.85 ID:9fJXNhs0 [5/17]
――美琴は病院内を走り回った。『鬼』から逃げるために…。
しかし、その顔にはさっきまでの暗さがなく、むしろ晴れやかだった。
一方通行があからさまに自分に気を遣う事に最初は喜んだ美琴も、だんだん気が重くなっていったのだ。元々他人に気を遣われる
事を嫌う性格だ。それに、一方通行の自分に対する行為には『償い』も込められているのではないか……。
折角、こうして一緒に遊びに行ける仲にもなれたのに、一方通行の中にはまだ自分に対する『後ろめたさ』があるのではないか……。
咄嗟にそう思い、こうして上条とのツーショットを蹴ってまで追いかけて来た美琴だが、今は逆に自分が追いかけられている。
結局訊きたかった事は訊けなかったが、走っている内にすっきりしてしまい、どうでもよくなってしまった。
――しかし、忘れてはならないのが……ここは病院だ。広い高原でも砂浜でもない。
すっきりするまで走って良い場所とは程遠い……当然、注意が飛ぶ。
「――病院内を走るのはやめて下さい!この馬鹿姉!とミサカは身内の失態に頭を悩ませます」
美琴「――あぁ?……アンタ……何でそんな格好してんの?」
一方通行「――追いついたァァああ!!―――…って、オ、オマエはァ!?」ピタッ
「ミサカの検体番号(シリアルナンバー)は20000号です。いわゆるブービーというヤツでしょうか?とミサカは首をかしげます――」
「――そしてお姉様の質問に答えるなら、ミサカはココ(病院)で看護士として研修中である事を告げます――」
「―――お久しぶりです、『セロリさん』。是非ミサカにその額の汗をナメ…いや、拭き取らせて下さい」ジリ…
一方「」
美琴「」
835 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/24(木) 01:48:20.31 ID:9fJXNhs0 [6/17]
20000号「ここは病院、そしてミサカは研修中と言えど看護士。ここはミサカの領域(テリトリー)です。とミサカは観念するように告げます」ジリ…
一方通行「オ、オイ!近寄ンなァ!オマエがそォやってゆっくり近づいてくるだけでトラウマが……」
20000号「フフフ…ご安心を。今は採血道具を所持していません。怖くありませんから……ミサカが近づく度に後ずさりしないで下さい」ジリジリ…
一方通行「イヤ!俺の第六感がオマエに捕まったら何もかも終わりだって告げてンだよォ!……チクショォ、覚えてやがれ超電磁砲!」ダッ
美琴「――あっ!逃げた…」
20000号「フン、ここはミサカの庭です。逃げられる訳がないでしょう。ちょうどいい機会です……あの邪魔なクソガキはお昼寝中。
今ならあのセロリを調教するまたとないチャンス!とミサカは追跡を開始します!ではお姉様、失礼します――」ダッ
美琴「………何かよく分かんないけど、アイツ『走るな』って言ってなかった?……」ポツーン
―――
一方通行「――チクショォォおお!!く、くるなよ!!くンなァァあああ!!!」ダダダダ…
20000号「無駄ですよ!せいぜい逃げられるだけ逃げるんですね。とミサカは追跡を続けます」ダダダダ…
一方通行(誰か……誰でもイイから……この天使の皮被った悪魔から俺を助けろォォ!!)
836 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/24(木) 02:01:37.22 ID:9fJXNhs0 [7/17]
一方通行「――!!?」
20000号「残念でした。ソッチは行き止まりですよ。もう逃げられませんね」ジリ…
一方通行「……オイ、俺捕まえてどォする気だァ?」
20000号「ミサカ色に染め上げます。とミサカは即答します」
一方通行「………訊いた俺が馬鹿だったわ」
20000号「さぁ、ミサカの部屋へ行きましょう。まずは……へへへ」
――舌なめずりをしながらゆっくり近づいてくるナース服のミサカ。
壁を背にした一方通行に逃げ場はなかった……。
一方通行(クソォ……これまでか……っつーかミサカ色って何だよォ…)
覚悟して目を閉じたその時――
20000号「――!!?」……ドサッ
一方通行「………?」
目を開けると、目を回してその場に倒れている20000号の姿が……そして、その後ろには――
「――ふぅ、……どうやら間に合いましたね」
841 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/24(木) 19:38:37.53 ID:9fJXNhs0 [10/17]
―――『安心しろ。オマエがもし振られたら、俺が拾ってやる』
――美琴は先ほど一方通行に言われたその言葉が頭から離れないまま、通路を歩いていた。
「………あの馬鹿……まさか本気じゃ…ないでしょうね……///」テク テク
何故か顔が赤くなる。
そして、何故かその時の一方通行の顔が脳内に残っている。
「……ち、違うから。ありえないから。アイツは私を元気づけるために冗談言ってるだけなんだから……」
ブツブツと否定的な独り言は呟きながら、美琴は上条のいる病室に戻っていた。ちょうどその頃、美琴とは違う意味で独り言を呟きながら
上条の病室へ戻るもう一人の男がいた。―――
「―――……やべぇ……マジでどぉすっか……あえて想像しなかった結果だぜこりゃあ……一方通行に相談………できっかよ…」ブツブツ
美琴の五十メートル前方から、垣根は殆ど前を見ずに歩いてきていた。
842 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/24(木) 19:49:10.35 ID:9fJXNhs0 [11/17]
美琴「――私、何考えてんのよ……私が好きなのは………『上条当麻』なのに……」ブツブツ
垣根「――ハァ……何で眼鏡の方じゃねえんだよぉ……って助けたのは花の方だから仕方ねえのか……」ブツブツ
――下を向いたまま呟き歩く二人は互いの距離がどんどん近くなっている事に気づいていない……。
そして、上条がいる病室のドアノブに二人の手が………重なった。
垣根「――へ?」
美琴「――なっ!!?」
キョトンとする垣根、ビックリして咄嗟に置いた手を下げる美琴。
両者の反応は……対していた。
845 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/24(木) 20:08:37.95 ID:9fJXNhs0 [12/17]
――「間に合ってよかった……もう安心ですよ。とミサカは壁の隅で小さくなって震えている野ウサギを元気づけます」
倒れている20000号のすぐ横に立っていたのは、常盤台中の制服を着た『同じ顔』だった。
彼女は首に『いつものネックレス』をつけていたので、一方通行はすぐに検体番号を特定出来た。
一方通行「――…オマエか。……オイ、壁の隅で小さくなって震えている野ウサギってのは誰の事ですかァ?」
御坂妹「おや?助けた恩人に向ける視線ではありませんね。とミサカは驚きのポーズを取ります」
一方通行「うるせェ。それよりそこに転がってるヤツ……どォしたンだ?」
御坂妹「え?背後から当て身を――」
一方通行「そォじゃねェ。ソイツの『人格』だ。もはや個性なンて生やさしいモンじゃねェぞ?脳まるごと取っ替えるべきだ」
御坂妹「あぁ、ご心配なく。コイツはコイツだからコイツなので…とミサカは足で頭を踏んでみます」グリグリ
20000号「」
一方通行(……今さらだけどよォ……実験中止が本当にコイツらの幸せだったのかァ?いっそ皆殺しの方がマシなンじゃねェか…?妹達がどンどン歪ンでいく…)
846 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/24(木) 20:22:15.03 ID:9fJXNhs0 [13/17]
御坂妹「――ところで、良いのですか?」
一方通行「あァ?何が――」
御坂妹「先ほど第二位こと『カッキーさん』を病院入り口で目撃しました。このままではお姉様と鉢合わせですが…」
一方通行「何ィ!?あのクソメルヘンもォ帰って……ってオイ、オマエ何で知ってン―――!?」
―――ドォォオオオオオオオンン!!!!!
御坂妹「……外からですね……とミサカは修羅場を予想して立ち去ります」
一方通行(……俺も立ち去りてェ)
御坂妹「さぁ、行きましょう。とミサカは項垂れているあなたに手を差し出します」
一方通行「……あァ?行くってどこに?」
御坂妹「決まってるじゃないですか。修羅場を見に行くんですよ。とミサカは――」
一方通行「オイ、オマエ立ち去るンじゃなかったか?」
御坂妹「はい。ですからこの場を『立ち去って』お姉様を……どうかしたのですか?」
一方通行「はァ………行けばイインでしょォ、行けば…」
847 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/24(木) 20:34:27.52 ID:9fJXNhs0 [14/17]
――爆音の数分前
美琴「――ア、アンタは……」
垣根「――…ウソ…お前まだいたの…?」
即座に距離をとり警戒に満ちた目で垣根を睨む美琴。
対する垣根は心底不幸そうな顔で額に手をやる。
垣根「………ハァ、これなら最初っからココにいた方が良かったんじゃねえか……こういうの……不幸っての……」
美琴「……?」
一人で愚痴り始めた垣根に一瞬疑問を抱いたが、すぐに目つきを鋭くして問いかける。
美琴「――何でココにいるのよ………『第二位』!」
――病室内
――ナンデココニイルノヨ ダイニイ!
上条「………寝たフリしてやり過ごすのは……やっぱダメだよな………不幸だ」ハァ…
848 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/24(木) 20:47:08.35 ID:9fJXNhs0 [15/17]
垣根「――まぁ……気持ちは分かるが、とりあえず落ち着け第三位。俺は今悩んでんだ。精神的余裕がねぇっつーか…」
美琴「質問に答えなさい!……アンタまた一方通行を狙って………まさか!?」
――上条の病室を一緒に開けようとしたのを思い出す。
美琴「……そういう事ね…」
垣根「は?」
美琴「一方通行に敵わないからって、仲間(上条)を狙うって訳!?この卑怯者!」
垣根「あぁ?何訳分かんねえ事ぬかしてんだ?」
美琴「それだけは絶対に許さないわ!アンタみたいな卑怯者にアイツを殺らせたりなんかしない!死んでも止めてやる!」ザッ
垣根「………誰が」
美琴「………?」
垣根「だぁれが卑怯者だゴルァァああああ!!!」ブァサッッ
美琴「―――ひっ…」ビクッ
850 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/24(木) 20:58:39.05 ID:9fJXNhs0 [16/17]
垣根「――もうアッタマきたぞこのクソアマがァァああ!!!表出ろやぁ!!」バサ バサ
美琴「………じ、上等…じゃない…」
――外
垣根「まぁた泣かされてぇのかぁ!?あぁ!!今度ぁ容赦しねえぞコラ!」ブァサ ブァサ
美琴(何でコイツこんなキレてんの…?こ、怖い)
垣根「来ねえんならコチラから行くぞぉ!!」ブァッ
美琴「こ、このぉぉッッ!!!」バリバリバリッ バシューーーー!!!
垣根「――効くかボケがぁ!!」ブァサッ ギィーーン!!!
―――ドォォオオオオオオオンン!!!!!
「―――二人ともやめろぉぉおおおおおお!!!!!」
857 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/25(金) 18:52:54.84 ID:cQDFnmI0 [2/10]
――上条病室
窓から外を眺める二つの影――
「――おォおォ……三下も大変だねェ。……っつかアイツ自分が怪我人だっての忘れてンじゃねェか?」
一方通行は窓淵に肘を掛け、下を眺めながら呟いた。
すぐ隣にいる御坂妹はその言葉に反応する。
「――しかし、あの方は今まで幾度となく重傷を負ってきました。あの程度の怪我は彼の中では怪我の内に入らないのでは?とミサカは推測します」
――二人の視線の先、つまり下の広場には距離があるせいでよりいっそう小さく見える第二位と第三位(正座中)、
そして、その二人の前でまるで子を叱る母親のように立ち振舞う上条の姿があった。
上条はジェスチャーも交えて何やら二人に語りかけているが、どうせいつものお説教だろう……。
二人ともお寺で修行しているかのように一寸たりとも動いていない。
一方通行は共感するような目でその光景を御坂妹と共に上条の病室から眺めていた。
「……こンなことなら、最初っから連れて来るンだったぜ……結局バレてりゃ世話ねェっつの…」
858 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/25(金) 19:04:44.34 ID:cQDFnmI0 [3/10]
「三下の野郎が変に気ィ遣うからだァ。ったく…」
――御坂妹は独り言とも取れる呟きにも反応し、応える。
「……おや、あなたも同罪ですよ?とミサカは責任逃れを阻止します」
「あァ?分かってンだよンな事ァ。」
チッと舌打ちしてソッポを向く一方通行。
御坂妹は何故か微笑みを浮かべて一方通行を見ている。
「なァにムカつく顔でコッチ見てンだオマエ?」
「いえ、ただ……」
「?」
一呼吸おいて、御坂妹は口を開く。
「――あなたも、そんな子供っぽい顔もするんだなぁって……」
「……はァ?」
859 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/25(金) 19:22:11.22 ID:cQDFnmI0 [4/10]
一方通行「オイオイ、俺が子供っぽいたァ言ってくれンじゃねェの。頭飛ばされてェのか?」
御坂妹「いえ、それは嫌です!忘れて下さい!とミサカは慌てて取り繕います」
一方通行「……っつーかさァ」
御坂妹「?」
一方通行「オマエ、『今回の件』どこまで知ってンだ?」
御坂妹「……それはどういう―ー」
一方通行「三下が入院した訳も訊いてこねェのは何故だ?あのクソガキ経由で、大体の事ァ分かってンだろ?」
御坂妹「……その事ですか。ミサカは残念ながらあなたの希望には応えられません。ミサカが知っているのは上位個体の体験までです。
ミサカにも何がなんだか分かりません………逆に、シスターを攫った方は何者だったのですか?と訊いたら、あなたは答えてくれますか?」
一方通行「……どっかのマニアック集団だろ…」
御坂妹「では、あの『能力とは信じ難い妙な光』は……?」
一方通行「『訳分かンねェ力』だろォ。……結局何なのかは分からなかったがなァ。シスターも無事取り返したンだ。どォでもイイさ」
御坂妹「……そう…ですか…」
一方通行「…何浮かねェ顔してンだ?」
860 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/25(金) 19:36:59.33 ID:cQDFnmI0 [5/10]
御坂妹「………あなたや、あの方が無事に戻ってきてさえくれれば……ミサカは何も望みません…」
一方通行「………」
御坂妹「ですが……あなたやあの方が危険に足を踏み入れる事はもっと望みません」
一方通行「…………」
御坂妹「このネックレスは……あの方から貰った大事なもの…」
御坂妹「そして……あなたからも大事なものを貰っています」
御坂妹「ミサカは……危険を顧みず突っ走っていくあなた達二人がとても心配です……」
御坂妹「『上条当麻』、『一方通行』……あなた達二人は一見対称的ですが、中身はあまりに似過ぎています…」
御坂妹「………どちらも失う事は……ミサカには耐え―――!?」
一方通行「…………」
――言葉を打ち切るように、御坂妹の頭に手を置く。
そして、いつも打ち止めにしているようにワシャワシャと乱暴に撫でる。
御坂妹「――っ!?――や、やめてください………とミサカは懇願します」
861 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/25(金) 19:52:58.17 ID:cQDFnmI0 [6/10]
一方通行「――こンな三下臭ェ事、本当は言いたくねェンだがなァ……」ワシャワシャ
御坂妹「――?」
一方通行「――俺も三下も、オマエの前からいなくならねェ。だからオマエは笑ってろ」
御坂妹「――!?」
一方通行「オマエがそォやって考え込む必要なンざどこにもねェンだ」
御坂妹「…………///」
一方通行「何も心配するな。オマエはいつものオマエのままでいろ……アイツだったら、多分そォ言うぜ?」
御坂妹「………あなたという人は……本当に……ずるい」ボソッ
一方通行「?」
御坂妹「そう言えば……」
一方通行「あァ?」
御坂妹「あなたは、ミサカに服を買ってくれる約束をしましたが……まだ果たされてませんね。とミサカは思い出します」
一方通行「……そォだったな。結局何もオマエに買ってやってなかったわ」
御坂妹「……約束…しましたよね…」
一方通行「勿論果たすに決まってンだろ?俺を誰だと思ってンだ?」
御坂妹「……それなら…出来れば今度は……二人きりで――」
862 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/25(金) 20:06:00.95 ID:cQDFnmI0 [7/10]
――ガチャッ!
一方・御坂妹「――!!?」
上条「――あれ?一方通行に…御坂妹じゃないか。戻って来てたのか」
垣根「――うー、また足痺れちまった……あれ?…何かお邪魔…?」
美琴「――もう、アンタのせいで私まで……って…何してんのアンタら?」
一方通行「……………」(御坂妹の頭に手を置いたまま硬直)
御坂妹「……ミ、ミサカはこれで失礼しますっ!とミサカは慌てて走り去ります!――」
――バタン!
顔を両手で覆い、まるで告白に失敗して泣きながら走り去るように御坂妹は病室を出ていった……。
それを見た三人は、一方通行へ振り返る。
――何故か三人とも敵意に満ちた目で……
一方通行「………は?」
863 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/25(金) 20:26:49.26 ID:cQDFnmI0 [8/10]
上条「……一方通行……お前、人の病室で何してたんだ?」ジロー
美琴「アンタ……あの子に何したのよ?」ジロー
垣根「テメェ……見損なったぞ……人が正座されて足痺れさせてる間に女と密会かぁオイ」ジロー
一方通行「はァあ!?…オイ、オマエら何勘違いしてンだァ!?俺は何も――」
美琴「嘘言ってんじゃないわよ!あの子、泣いてたじゃないの!」
上条「一方通行……女の子を泣かすのは上条さん関心しませんねぇ……」
一方通行「何オマエまで疑ってンだコラァ!だからそォじゃねェっつの!俺はアイツを――……」
――その先を言えるはずがなかった。
垣根「ムキになって否定するのは肯定と一緒だぜ?一方通行よぉ!女の敵は俺の敵だぁ!大人しくお縄につけオラァ!」
一方通行「何ほざいてンだこのイカロスもどき!そこの女とさっきまで敵だった分際で吠えてンじゃねェぞ!」
垣根「さっきまでな。もう違う」
一方通行「く!…このォ」
美琴「私はこれでもアイツの姉……妹を傷つけるヤツは誰だろうと許せないわ!」
一方通行「だァかァら傷つけてねェっつってンだろォがァ!!」
上条「……一方通行、友として……お前の幻想をブチ殺させてもらうぞ……まさか親友に拳をぶつけなければならないなんて……お前、本当ついてねえな」
一方通行「イヤイヤ!散々ぶつけられてンですけどォ!?」
上条「ええい、うるさい!皆の者!かかれーー!!」バッ
垣根・美琴「おぉーーー!!!」バッ
一方通行「」
………俺、三下より不幸になってねェか?
864 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/25(金) 20:33:25.24 ID:cQDFnmI0 [9/10]
これで一応完結……のつもりだったんですが……
後日談はどうしましょ?
880 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/27(日) 01:44:56.60 ID:njpJ8sc0 [2/32]
―――『禁書目録誘拐事件』解決から一週間後―――
――冬の夜空に無数の星が輝く学園都市……すっかり冷えきった気温のせいか、通行人の息は皆白い。
夜の街は『学生服の姿』がない。なぜなら、まだ学生達は冬休みだ。
少なくとも制服を着て夜の街で遊び回る学生は滅多にいないだろう。
第十五学区は科学の発展した学園都市の中でも流行の最先端を行く地域だ。
テレビ局に賭博場といった、表から裏まで様々な施設がこの学区にはある。
そんな第十五学区内にあるこれまた一見普通のゲームセンター……実はこの地下では密入された銃器が密売されている。
どこにでもある裏家業のひとつだ。一般人に縁がないのは勿論のこと、特定のパスワードを入力しないと入れない上に、
来店時はボディチェックまであると言った少々厳重なこの店に、今夜も『客』が階段を下りる音が響いた。
――カツン、カツン……
金属のような音がするという事は、今宵の『客』は杖をついているか義足か……。
まともな客は来れないこの店にとっては珍しい事ではない。少し小太りで坊主頭な武器屋の店主はさして気にも止めなかった。
そして、予約時に伝えたパスワードが入力され……入り口の扉が自動で開いた。客は『前者』の方だった……。
来店した『客』は現代風のデザインをした杖を右手でつき、左手に鍵のついた鞄を持っていた。
「――いらっしゃいませ。お客さん、ウチは初めてだね?」
商人にありがちな怪しい笑みに『客』は「あァ」と一言だけ返し、店内を物色しだした。商品が並んだ棚を徘徊するように回る。
棚には拳銃から短機関銃(サブ・マシンガン)まで割りと幅広い銃器が豊富に並んでいる。手書きの値札が何とも印象的だ……。
そしてざっと一通り見渡した後、『客』は店主に――
「これで全部か?」
――と、尋ねる。
881 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/27(日) 01:51:06.99 ID:njpJ8sc0 [3/32]
「あぁ、最近は厳しくてね。なかなか客の注文する武器は手に入らなくなっちまったよ……」
忌々しそうな口調の店主の言葉に『客』は――
「……へェ」
――と興味なさげに返した。
「ー―んで、お客さんは一体どんなのが欲しいんだい?」
店主の質問に『客』は近くに置いてあった商品の拳銃を一丁手に取る。
「最近持ってる銃がどォも調子悪くてよォ。使えそうなヤツを探しに来たンだが……コレなンてどォよ?」
「イタリア製『ベレッタ8000』か……『M92FS』よりは扱いやすいだろうが……そんなんで良いのかい?戦闘に使えなくもないが、
せいぜい護身用の範囲だぜ?」
「なァに、構わねェよ。いざって時の『護身』になる事には変わりねェからな」
そう言いながら、銃をクルクルと回してニヤリと笑う『客』。
その不気味さに店主は一瞬たじろぐ。
「ま、まぁウチとしては商売になるんなら文句はないが……で、購入はそれだけで良いのか?」
「あァ。コイツで良い……なァ、コイツ試し撃ちとか出来ねェのか?」
「ん?あぁ、出来るよ。コッチに試し撃ち用の防音部屋がある」
店主の答えに『客』は――
「へェ、至れり尽くせり…ってヤツか。こりゃ好都合だな」
――そう呟いて歩き始めた店主の後についていった……。
882 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/27(日) 01:58:10.49 ID:njpJ8sc0 [4/32]
「――どうだい?気にいったか?」
何発か試し撃ちをした『客』に店主は後ろから尋ねる。
「――装弾数は15発か……まァ、悪くねェ。思ったより無難だが、今使ってンのよりはマシだろ」
振り返らずに銃を見ながらそう返す『客』。
「無難ねぇ……拳銃タイプならそういうのが一番良いと俺は思うがな。重量も手ごろだし……だが、『裏』の仕事で使うんなら、
もっと良いのがいくらでもあるぞ?どうせお客さんも暗部の人間なんだろう?」
店主はさらに購入を勧めてみる……が、
「……確かに、『普通の下っ端』にはコイツだけじゃ正直言って心許ねェだろォな。だが心配はねェ。どンな武器を使おうが、
結局生き残るのはソイツの実力と意思次第だ。銃の性能なンてのはあくまでその付属に過ぎねェ」
と、一蹴して店内へ戻る。
「っつー事で『清算』だ。ま、安く頼むわ」
「………チッ」
店主は『客』に聞こえないように舌打ちし、一緒に店内へ戻った……。
―――
「――お、おい……お客さん…」
「あ?何だよ?」
883 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/27(日) 02:05:48.25 ID:njpJ8sc0 [5/32]
「安くするどころか……定価でもこれはち……ちょっと多すぎるぜ」
「はァ?」
――清算時、店主は何の躊躇いもなくポンと札束を放る『客』に驚きを隠せなかった。一番高い品物の値段よりも明らかに多い。
だが、当の『客』は顔に「?」を浮かべている。
「こんなに金持っ来てるんなら、他の商品も買ってかないのかい……?」
店主の再度に渡る勧めも――
「必要ねェ」
――と、一言で切り捨てた。
「ま……まぁ、ウチとしては有難いけどね……フフ…」
額に若干の汗を掻きながらも、やはり欲望は隠せないらしい。……下衆な笑顔の店主に対して『客』は思い出したように口を開いた。
「――あァ、そォ言や試し撃ちした部屋に忘れモンしちまった。悪いが一緒に来てくれるか?」
店主は一瞬キョトン、としたがすぐに「あ、あぁ」と返事をして立ち上がった。
―――
店主と『客』は商品試し撃ち用の防音部屋へ戻ってきた。
部屋は店主が持っている鍵がないと開かないので、自然と二人で戻る形となった。
部屋に入っても探し物をする素振りを見せない『客』に店主は疑問を抱いた。
885 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/27(日) 02:17:26.64 ID:njpJ8sc0 [6/32]
「――オイ、最後にもう一発だけ『試し撃ち』してェ。ドア閉めろ」
「へ?あぁ、その銃はもうお客さんのだから好きに使いな。弾も買ったし…」
店主の言葉に『客』は不思議そうな顔をして尋ねる。
「は?オイ、何でこの銃は『もう俺の』なンだ?」
「……何言ってんだ?お客さんがその銃買ったんだろうが。すでに清算も済んでるから、もう返品は受け付けないよ」
店主にとっては至極当然な言い分だが……『客』は何故かひとりで納得した顔をしていた。
「あァー……そォか。いやァ悪い悪い。何か勘違いさせちまったよォだな」
「――え?」
訳が分からない…という顔をしている店主に、『客』……いや…学園都市最強の超能力者、一方通行は一気に薄ら笑いを浮かべた。
「清算代金は、銃と『オマエ』込みなンだよ」
「―――!!!?」
――ドォン!………と、防音部屋で最後の『試し撃ち』が行われた……。
―――
一方通行「………」
887 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/27(日) 02:29:38.41 ID:njpJ8sc0 [7/32]
「――ぎゃああああああああああッッ!!!が、がぁぁ!!…テ、テメェ何を…――」
一方通行「ギャアギャアうっせェンだよ豚がァ。豚は豚らしくブーブー言ってろっての……」
いきなり足を撃たれてのたうち回る店主と銃口を向けたまま見下ろす一方通行。
一方通行「まァ、運が悪かったと思って諦めンだな……」
「ひ、ひぃいっっ!!!や、やめろ!!テメェまさか警備員か!?――」
一方通行「ハッ。ンな真っ当に生きちゃいねェから安心しろ。………冥土の土産ってヤツだ。俺の『忘れモン』が何だったのか、
最後に教えてやるよ」
「―――ッッッ!!!ま、まさか…おい、やめ――」
一方通行「はァいご名答ォ。正解は…オ マ エ……ってなァ」ニヤァ
――ドォン! ドォン!
店主が最後に見た一方通行の顔は、『悪魔』の笑いに歪んでいた……。
―――
一方通行「――ちっ、くっだらねェ…」
888 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/27(日) 02:36:34.63 ID:njpJ8sc0 [8/32]
一方通行「はい清算終了ォ、これでこの銃は晴れて俺のモンってなァオイ……って聞こえてねェか」
――そう言って銃をしまう一方通行。
――ブクブク…と泡を吹き気絶している店主を尻目に一方通行は鞄の鍵を開け、さらに鞄の底を外した。
ボディチェックと持ち物検査をカモフラージュするためだ。
鞄の底から取り出したのは何枚かの紙だった……。おそらく何かの資料だろう。
一方通行はその紙を持って商品棚を端から順に見て回る。紙と棚を交互に見ながら店内を一周し、紙を鞄に戻してどこかに電話を掛けた。――
「おォ、終わったぞ。またつまンねェ仕事押し付けやがって。こンなの俺が態々出るまでもねェだろォがよ。…あ?コイツに
書かれてた銃は全部あったぞ。回収すンならとっとと回収班よこせ。ついでに外でおやすみ中の雑魚二匹、あと店内で泡吹いて
ノビてる豚も一匹いるから、ソイツらもオマエ達で勝手にどォとでもするンだな。…っつーか、いちいち鞄に細工する意味
なンてなかっただろォが。どォせ中身をチェックするヤツらも、どの道お寝ンねさせるンだからよォ。
あァ?あとは何もねェ。そンじゃ、俺はもォ帰っからなァ。豚が目覚めてトンズラこく前に早く来た方がイイぜ」――ピッ
言うだけ言って、さっさと電話を切る一方通行。未だ気絶状態から目を覚まさない店主に向かって「チッ」と一回舌打ちし、店から出て行く。
階段を上って、外に出る……入る時に片付けた二人の門番は倒れたままだが、一方通行はそれに目もくれずに夜の闇へと姿を消した……。
―――
891 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/27(日) 02:48:57.22 ID:njpJ8sc0 [10/32]
――黄泉川家
「――おーい、垣根!あの馬鹿は?」
リビングで食事を並べながら、風呂から上がった垣根帝督に声をかけたのは家主の黄泉川愛穂。
垣根はスウェット姿でタオルを首に巻いたままリビングにやってきた。
リビングには黄泉川の他に打ち止めと芳川桔梗もいた。
垣根「あれ?……まだ帰ってきてねえのアイツ…」
黄泉川「昼過ぎに出て行ったきりじゃんよ。どこほっつき歩いてんだか…まったく……」
打ち止め「あ!そう言えばあの人からさっきメールが来たよ。『ちょっと遅くなるから先にメシ食ってろ』だって。ってミサカはミサカは報告してみる」
芳川「あら、上条君と夜遊びでもしてるのかしら?」
黄泉川「それは感心しないね……帰ったらとっちめてやるじゃん」
垣根「うーわ、俺知らねっと……」
黄泉川「アイツの分はラップでもしといて、先に食べるじゃん。一応連絡は来たんだし、その内帰って来るだろ」
芳川「そうね、お腹すいたわ」
黄泉川「アンタ何もしてないじゃん。ま……今に始まった事じゃないけどね」
打ち止め「ご飯ご飯ー!いっただっきまーす!ってミサカはミサカは手を合わせてみたり」
垣根「俺も、そうだ!打ち止め、メシ食ったら『アレ』やろうぜ?」
打ち止め「うん、いいよー!ってミサカはミサカは快諾してみたり」
芳川「……私も良い?」
垣根「え?えぇ、勿論っすよ。黄泉川さんは?」
黄泉川「あたしは遠慮しとく…」
893 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/27(日) 03:06:44.54 ID:njpJ8sc0 [11/32]
――同時刻、上条家
ごく普通の学生寮、学生は冬休み期間だが……この寮の一室に住む高校生、上条当麻には休む暇などなかった。
何故なら、彼は今必死に終わらせなければならない事がある。
……そう、冬休みの課題だ。
何故、上条が冬休みの後半にこれほど必死こいて課題に取り組んでいるのか……その理由は単純だった。
彼は一週間前、急遽入院を強いられた。ニ、三日で退院したものの、その間当然補習は受けられずに全て『課題』として返ってきたのだ。
ただでさえ多い通常の課題に補習分の課題が加わり、上条の頭ではどう考えても終わらないであろう程の量となったのだ。
そのため、彼は一方通行や美琴と退院してから会っていない。
というか、会いたくても会えない。
一日中缶詰状態で課題に取り組む上条の姿は例えて言うなら、五浪してもう後がない受験生といったところか……。
そんな上条の横ではふくれっ面の同居人シスター、禁書目録がひとり愚痴っていた。
禁書「……とうまぁ…」
上条「…………」カリカリ
禁書「ご飯、まだなのかな?」
上条「…………」カリカリ
禁書「……私の話、聞いてる?」
上条「…………」カリカリ
禁書「とうまぁぁ……」プルプル
上条「…………」カリカリ
禁書「とうまってば!!さっきからずーーっと話しかけてるのに、シカトぶっこくなんて非道いかもっっ!!」
上条「…………」ピタッ
禁書「……とうま…?」
894 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/27(日) 03:30:11.84 ID:njpJ8sc0 [12/32]
――禁書目録は、突然動きを止めた上条に怪訝な目を向ける。
上条「……良いか、インデックス。よく聞け」
禁書「な、なに?」
上条「上条さんは今、史上最大のピンチを迎えている。そして、状況は最悪に近い」
禁書「だ、だから?」
上条「しばらく俺に話しかけるな」
禁書「そっ、そんなぁ!!私のご飯はどうするの!?」
上条「夕食は三十分前に食べただろ?忘れたのか?」
禁書「え……?」
上条「証拠は後ろのテーブルを見れば一目瞭然だ。お前は俺の邪魔をする前にするべき事があるだろう?」
禁書「うぅ……あれっぽっちじゃ足りないんだよ…」
上条「あれが一般的な食事量だ。ましてお前は女の子なんだから、本当はもっと少ないくらいがちょうど良いんだぞ?」
禁書「で……でもぉ」
上条「でもじゃねぇ。俺は今、マジで焦っている。これ以上俺をイラつかせるな」
禁書「とうま……何でそんな無表情で淡々と喋るの?怖いよ……」
上条「何度も言わすな。風呂は沸いてるから勝手に入ってこい。そして、マジでしばらく俺に話しかけるな。さもないと――」チャキ
――ボールペンの先を禁書目録に向ける上条。
その時、久々に正面から上条の顔を見た禁書目録は……戦慄した。
上条の頬はすっかり痩せ、目の焦点が合っていない……。据わった目には禁書目録が映っているのかすら分からなかった。
禁書「――ひっ!?」
上条「………これ以上、邪魔をするなら……容赦はしない。わかったな?」
禁書「は、はいっっ!!お片づけしますっ!!」
――慌てて立ち上がり、食器を片付けていく禁書目録。
上条はそれを見て少し微笑み、再び膨大な量の課題に挑んでいくのだった……。
963 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/27(日) 18:03:07.31 ID:njpJ8sc0 [16/32]
―――常盤台女子寮
――この洒落た造りをした寮の208号室には学園都市第三位の超能力者、通称『超電磁砲』こと御坂美琴と、風紀委員に所属する
大能力者、『空間移動』の能力者である白井黒子が住んでいる。
美琴はベッドに寝転がりながら緑のデザインをした携帯電話のディすプレイを眺めている。その横のベッドでは白井黒子がお風呂から
上がったばかりなのか、濡れた髪をくしで梳きながら腰掛けていた。無論、いつものツインテールではない彼女の髪型は
外でしか彼女を見ない人間にとっては新鮮であったが、同室の美琴にすれば見慣れたものである。
それよりも美琴には気になる事があった。その答えは携帯の画面に表示されている『上条当麻』の名前が教えている。
美琴「…………」
黒子「お姉様?そんなに気になるんでしたら、どうぞ黒子に遠慮せずに掛けたらどうですの?」
後は通話ボタンを押すだけで上条に繋がるのだが……美琴はボタンを押せずに直前の画面を見たまま悩んでいた。
それに見かねた黒子がくしを動かしながら口を出すが、やはり上条に電話を掛ける事ができずにいた……。
美琴「うーん……やっぱダメ。アイツ、メールで『忙しい』って言ってたし……」
黒子「お姉様とお話する暇もないんですの?どうせまた『宿題』とやらが片付いていないだけなんでしょう」
――図星である。
美琴「だったら、私手伝ってやれるのになぁ……」
黒子「上条さんにもなけなしのプライドというものがあるのなら……それは多分望んでおりませんわよ?
っていうか、気になるのでしたら電話を掛ければ――」
美琴「でもでも!アイツ、いつもよりメールが冷たいっていうか……何かそっけなかったのよ。電話してもし……怒らせて嫌われたりしたら……」
964 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/27(日) 18:15:07.42 ID:njpJ8sc0 [17/32]
黒子「その時はわたくしがお姉様を慰めて差し上げますわ。体の隅から隅まで――」
美琴「それ以上言ったら電気椅子よ?」ジロリ
黒子「照れなくてもよろしいですのに……」
美琴「照れてねぇっつーの!っていうか、アンタよく言葉に出せるわね?普通心の中にでも留めておくモンでしょ?」
黒子「あら、生憎わたくしはお姉様に嘘や隠し事などは一切しない主義ですの」
美琴(よく言うわ……)
――結標淡希との一件を思い出しながら心中でツッコミを入れる美琴。
黒子「で、結局今日は掛けませんの?」
美琴「あ、明日!明日アイツん家に行ってみよっかなー…って思っちゃったり…」
黒子「あら……お姉様も明日は忙しいんですのね………それにしてもここ最近、犯罪も増えてますの。わたくしも明日は忙しくなりそうですわ」
美琴「え、何でよ?」
黒子「お忘れですの?明日は初春が休みですのよ。ったく、この忙しい時期にあの花畑が…」
美琴「そうだったわね。黒子、初春さんも念願の『初デート』なんだから大目に見てやんなさいよ」
黒子「殿方にうつつを抜かしているようではジャッジメントは務まりませんわ」
美琴「それ……単にアンタが男嫌いなだけでしょうが」
黒子「お姉様。わたくしは殿方が嫌いな訳ではありませんの。その何倍もの魅力を放つお姉様以外見てないだけですの」
美琴「ハイハイ、どーもありがとねー。んじゃ、私もう寝るから――」
黒子「それにしても今日は寒いですわね……お姉様、もしよろしければわたくしとベッドの上で体をあたt」
美琴「もうそれ寝る前の『おやすみ』ぐらい日常的よね…」
「却下に決まってんでしょ、馬鹿」と付け足して、美琴は眠りについた……。
明日は数日ぶりに上条に会える……それだけで幸せな夢が見れる気がした。―――
965 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/27(日) 18:27:52.43 ID:njpJ8sc0 [18/32]
―――黄泉川家
――夕食から約三十分に帰って来た一方通行は自室に入って愕然とした。
いや、完全に呆気に取られてしまって声が出なかったと言う方が正しい。
彼が開いた口を閉じられないのには三つの要素があった。
まず、一つ目……一方通行の部屋にはテレビがない。というか、寝具とクローゼット以外殆ど何もない。垣根が
「つまんねえ部屋だな」と、初めて入った時に口走っていたが……その感想は適切だった。
前に垣根が「テレビ部屋に置こうぜ」と言った時、一方通行は「狭くなンだろォがよ。見たけりゃリビング行って勝手に見てろ」
と冷たく返した。
次に二つ目……一方通行の部屋にはテレビがないので、当然ゲーム機なんて物も置いていない。
以前、上条家で盛り上がってた所を見ると、ゲーム自体嫌いではないらしいが……態々部屋に置きたいとも
思わなかった。これについても前に垣根が「んだよお前、『FF14』やってねえの?」と訊いてきた。
一方通行はその時「何ですかそりゃあ……???」と訊き返したが、垣根から二言目に「お前だいぶ人生損してるぞ」と
返されて最終的にキレかけたそうだ……。
最後に三つ目……この自室の状況である。
六畳半程の部屋の奥に置かれたテレビとゲーム機。そしてテレビ画面に集中する三人の同居人の後ろ姿。
思いのほか盛り上がっているのか、三人とも一方通行の帰宅にはまだ気づいていないようだ。
芳川と垣根がコントローラーを握ってプレイに熱中している。打ち止めは観戦し、二人の攻防に見入っていた。
リビングにある古いファミコンで打ち止めがプレイしているのを何度か見た事はあるが、今部屋にある
ゲーム機本体は割と最近発売された物だ。一方通行はプレイ中の画面に見覚えがあった。当然だ。これはつい
この前に上条宅でやった事がある。その時は御坂妹に完膚なきまでに敗北したという、忌まわしい記憶もついでに甦ってきた……。
しばらく画面を呆然と眺める一方通行……。
垣根「――くっ、うぉ!何すかそのコンボ!?」ガチャ ガチャ
芳川「――ふふっ、伊達に暇人やってないのよ」ガチャ ガチャ
打ち止め「ヨシカワすごーい!ってミサカはミサカはすごく驚いてみたり。お兄ちゃんしっかりー!」
966 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/27(日) 18:33:51.14 ID:njpJ8sc0 [19/32]
垣根「く、くそぉ…」
芳川「これで終わりね」
――you win
打ち止め「――あぁー、お兄ちゃん負けちゃった…ってミサカはミサカはヨシカワの上手さに興奮を隠せなかったり」
垣根「ば……ばかな……俺の未元物質が…」
芳川「詰めが甘いわ。けど貴方もなかなかやるじゃないの。さすが『無職同盟』の構成員なだけの事はあるわね」
垣根「いや……俺、入った覚えないんすけど……っつーか、まだ長点に籍あったし…」
芳川「あら、そうなの?じゃあ冬休み終わったら復学するのね」
垣根「まぁそのつもりっす」
打ち止め「長点って事は、あの人と同じ学校だね。ってミサカはミサカは安堵してみたり。あの人と学校で仲良くしてあげて?」
垣根「いやぁ……アイツも俺も普通の学校生活は送れてねえから、多分学校じゃ会う事はねえと思うぜ?」
打ち止め「えぇ、そうなんだー……」
芳川「レベル5も良い事ばかりじゃないのよ…」
――ペチャ クチャ
一方通行「――っつーかオマエら、イイ加減気づけよ」
三人「!」――クルリ
打ち止め「あぁーっ!アナタ帰ってたの!?ってミサカはミサカは背後にいつの間にかいるアナタにビックリしてみる!」
芳川「あ……おかえり。遅かったわね」
垣根「何だよ、帰ってたんならそう言えよ。驚いただろぉが」
一方通行「……ンで、なァにやってンですかァ?人の部屋で」
967 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/27(日) 18:39:52.86 ID:njpJ8sc0 [20/32]
垣根「え?『鉄拳6』だけど……?」
一方通行「そンなの見りゃ分かンだよタコ。なンで俺の部屋でやってンだ?ってか、どっから持ってきた?
前にテレビは置かねェっつったよなァ?すげェ狭っ苦しいンですけどォ?」
垣根「一気にまくし立てるなよ。……いや、買ってきたに決まってんじゃん」
一方通行「だからなンでだよ?今日俺が出かける前まで無かったよなァ?」
垣根「退院した後、上条ん家でハマってさぁ……我慢できなくてつい買っちゃった。てへ♪」
一方通行「てへ、じゃねンだよきめェうぜェホントくたばれ。何が『我慢できなくて』だこのクソボケ!」
垣根「な……言ったなこのぉ!」
一方通行「お?言ったがどォした?」
垣根「――勝負ッッ!!」ビシッ
一方通行「ハッ、笑わせンな!オマエ俺に勝てるとでも思ってンのかァ?夢見ンのも程々にしとけ」
芳川「貴方もできるの……意外ね」
打ち止め「あの人の家に同じのあったよ。ってミサカはミサカは思い出してみる」
垣根「今日一日で鍛えに鍛えた俺様の実力見せてやんよ」
一方通行「馬鹿が。今芳川との試合軽く観てたが、動きが明らかに初心者じゃねェか。相手になるかよ」
垣根「うるせぇえ!!さっさと剣(コントローラー2P)取れやぁぁ!!」
一方通行「ハイハイ、軽く返り討ちにしてやンよ」
垣根「言い忘れたが、俺の本気キャラはコイツじゃないんだぜ?」
一方通行「どォせ『デビル仁』だろ?」
垣根「な……なんで知ってんだテメェ!?」
一方通行「………オマエ、本当は自覚してねェンじゃねェの?」
垣根「あ、何をだよ?」
一方通行「………やっぱ何でもねェ。忘れろ」
968 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/27(日) 18:45:24.91 ID:njpJ8sc0 [21/32]
―――デビルジン デビルジン
垣根「――おい、何故にテメェもデビル仁?」
一方通行「心優しい俺からせめてものハンデだ。同キャラで完膚なきまでにぶっ倒して、格の違いを思い知らせてやる。感謝しろ」
垣根「するかボケぇぇ!!ナメんのも大概にしろよ!!テメェに恐怖を教えてやらぁ!!」
一方通行「なら俺も教えてやる」
――キョウフヲオシエテヤロウ キョウフヲオシエテヤロウ
――ラウンド1 ファイッ!!
打ち止め「同キャラだと同じ台詞なんだ……」
芳川「黒い方はカラスみたいな羽ね……」
意図的なのか偶然か……黒い翼の仁が一方通行、白い翼の仁が垣根だった。
垣根「喰らいやがれ!ビーム!」ビィーー
一方通行「アホか」サッ サッ
垣根「なっ!何だそりゃあ!?どうやって…」
一方通行「オマエ横移動も知らねェのか?てンで話になンねェな。とっととくたばれ」ダッ
垣根「させっか馬鹿!」ブァサッ
一方通行「チッ、ぴょンぴょン飛び回ってンじゃねェぞ!」
垣根「クソッ、すぐ落ちやがる……これなら俺自身で飛んだ方が良いんじゃねえか…っつか、自分の見慣れたせいか翼がしょぼく見える…」
一方通行「オイ、それ言ったらおしまいだろ?俺だってこンなカラスみてェな羽より、テメェで生やした方が遥かにマシな気がすンぜェ」
打ち止め「二人とも飛び跳ねて……何か喜んでるみたいに見えるよ?ってミサカはミサカは実況してみたり」
一方通行「おらクソメルヘン。いつまでも跳ねてねェで、決着つけンぞ。かかって来い」
垣根「上等だぁ!地獄に落ちて絶望しやがれぇ!!」
―――結果は……言うまでもなく、垣根の惨敗に終わった。
969 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/27(日) 18:52:57.33 ID:njpJ8sc0 [22/32]
――初春の部屋
遅い時間にも関わらず、初春飾利はまだ起きていた……。初春の隣りにはストレートで長めな黒髪の少女、佐天涙子もいた。
佐天は学校の休みを利用して初春の家に泊まりに来ていたのだ。
建前は『遊び』だが、本音は『宿題』を一緒にやるためである。
初春は意外と厳しく、素直に「宿題見せて」と言っても断られるおそれがある。
だが、「遊びに来た」と言って彼女の家にお邪魔すればコッチのものだ。直接拝み倒せば初春という少女は脆いのである。
それでも少しは抵抗するだろう。と佐天は予測していた……。しかし、どういう訳か――
「初春、宿題見せて。お願いっ!」
「もう、しょうがないですね……良いですよ」
――と、一言であっさり済んでしまったのだ。
彼女の親友という立場の佐天もこれにはかなり驚かされた。絶対最初は渋るが、なんだかんだで最後はOKしてくれるのが
初春なのに……。
いや、それ以前に……今日の初春はやけに機嫌が良い。
が、佐天はすぐに思い当たった。
(そっか……初春の『初デート』、明日なんだっけ。そりゃ浮かれるハズだわ)
待ち合わせは午後かららしいので、佐天が泊まりに来る事に関しては問題ない。むしろ一人では落ち着かないので
来てもらうのが有難かったぐらいだ。
970 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/27(日) 18:59:57.28 ID:njpJ8sc0 [23/32]
その後――
二人は宿題をざっと切り上げ、布団に入り寝ようとするが……初春はなかなか寝つけずにいた。
そんな頭の中もいわばお花畑状態な初春が考えている事は勿論、明日の『デート』だった。――
(……やっと会えるんだ……『カッキー』さんかぁ……いったいどんな人なんだろう……)
――まだ見ぬ人物『カッキー』に想像を膨らませていた……。
―――――
―――時は遡り数日前
――初春は風紀委員の仕事を終えて佐天と共に帰宅していた。
佐天は風紀委員ではないのだが……黒子や固法ともだいぶ親しくなったせいか、未だに時々入り浸っている。
その度に固法から「ここは溜まり場じゃないのよ?」と言われ続けていたが、最近はもう諦めたのか、
何のお咎めもない。
普段の下校時刻より少し遅いくらいの時間に仕事が片付いたので、未だ始末書と格闘している黒子に
笑顔で別れを告げた二人は、揃って支部を後にした。
初春・佐天「――では白井さん、お先でーす♪」
黒子「――佐天さんはともかく初春、あとで屋上ですの」ジロ…
――その日最後に見た黒子の顔は般若に近かった……。
始末書を片付ける時の黒子はだいたいいつもこんな感じである。
971 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/27(日) 19:06:57.83 ID:njpJ8sc0 [24/32]
――支部を出た二人は通り慣れた街路樹を歩いていた。
初春は正式な風紀委員なので制服姿だが、佐天は一般学生なので私服姿だった。
初春「あぁー……肩凝っちゃいました」グルン グルン
佐天「あはは、オヤジ臭いよ初春」
初春「パソコン使ってるとホント凝るんですよ……」
佐天「なんなら揉んでやろっか?」ニギ ニギ
初春「い、いいですよぅ……佐天さんこそオヤジ臭いです!」
佐天「む、言ってくれるねぇ初春ぅ……」
初春「さ、佐天さんが先に言ったんですよ?」
佐天「ハイハイ、……ねぇ、ところで何か甘いモノ食べたくない?久々にカフェ行こ」
初春「え……?まぁ、少しなら……いいですけど…」
佐天「ん?」
てっきり乗ってくると思ったのに、何故か歯切れの悪い初春を佐天は不審な目で見据えた。
佐天「……うーいはるぅ」
初春「は、はい?」
佐天「まさかとは思うけど……太るから、なぁんてぬかす気じゃないよねぇ…?」
初春「――ッッ!!?な…」
佐天「ありゃ?ひょっとしてビンゴ?」
――本当に分かりやすい子だ。と佐天は心中で思いながらさらなる追求を試みる。
もっとも、女の子が急に体型を気にし始める理由など…だいたい相場が決まっている……。
意外と勘の鋭い佐天はあえてストレートに訊いた。
972 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/27(日) 19:12:54.16 ID:njpJ8sc0 [25/32]
佐天「で、いったい初春が惚れるような男はどんな人なのかなー?良かったら聞かせてくれる?」
初春「は、はいい!!?な、何言ってるんですかぁ!?」
佐天「トボけない、トボけない。いやー、まさに『初春』ってヤツだね。初春に初めての春ってか♪」
初春「ちっとも面白くありません!!」
佐天「……うん、我ながら寒かったな今の………んで、相手って誰なの?年上?」
初春「はぁ……多分年上――って何言わすんですかぁぁ!!///」
佐天(ほんとチョロイなー……)
―――
――喫茶店
初春は佐天の誘導尋問にまんまと引っかかった。
そして観念したのか、不良に襲われた事から助けられた経緯や、番号も知ってて一度だけ電話で話はした事、
約一週間後に会う約束をした事と…全てを自供した。実は今日辺りにでも電話しようと思っていた事まで
うっかり喋ってしまったが、これについて後悔するのはもう少しだけ先である。
一通り話し終えた初春は最後にこう付け加えた。――
「べ、別にただ…助けてもらったお礼がしたいだけで、すす、好きとかそういうんじゃないですからね!!」
――佐天はその言葉にだけ聞こえないフリをした。
初春の話し方や反応を見る限り、その『カッキーさん』という男が相当気になっているのは明らかだった。
さらに彼女はこんな事も言った。
初春「……気のせいかもしれないですけど……私、カッキーさんの声…どこかで聞いたような気がするんです」
佐天「え?それって知り合いだったり?」
初春「いえ、多分違うと思います……けど、確かに聞き覚えがある声なんですよ。誰なのかは分かりませんけど…」
973 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/27(日) 19:26:51.93 ID:njpJ8sc0 [26/32]
佐天「………ねぇ、ひょっとしたら芸能人とか!?」
初春「ま、まさかぁ……いくら何でもそれは…」
佐天「分かんないよ~。そのまさかかも…」
初春「な…ないですって…」
佐天「じゃあさ、かっこ良かったらその人紹介して」
初春「えぇ!?」
佐天「だって初春はその気じゃないんでしょ?だったら、私が」
初春「だ、駄目です!そんなつもりで会う訳じゃぁないんですからね!」
佐天「えぇ~良いじゃん?その人も、もしかしたら彼女いないかもしんないし」
初春「駄 目 で す!」クアッ
佐天「おっと…」(たまにすごい怖いんだよなぁ初春……これがなければ可愛いのに)
初春「佐天さん!!」プンスカ
佐天「ゴメンゴメン、ちょっと悪ノリしちゃった…」
初春「し過ぎです!」
佐天「でもさ、正直嬉しいよ……やっぱ友達の恋の応援って良いモンだね!頑張ってよ初春!私応援してるから!」
初春「さ、佐天さん……」
佐天「だからさ、もっと色々聞かせなよ~」
初春「え、えぇ!?もう全部話しましたよ!?」
佐天「まだまだ!デートへの心境とか、ゆくゆくはどうなりたいかとか、聞きたい事は山ほどあるんだから!
ここまで来たら観念して全部言っちゃいなよ」
初春「デ、デデデ…デートぉ!?///あ、あの佐天さん……だからそんなんじゃ…」
佐天「照れんな照れんな――」
――その後、しつこく冷やかしてくる佐天を何とかかわし切って自室に戻った初春は、
ふぅ…と一呼吸置いてから予定通り垣根に電話を掛けた。
974 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/27(日) 19:29:39.76 ID:njpJ8sc0 [27/32]
―――初春が自宅に着いたちょうどその頃、垣根は一方通行と遊歩道を歩いていた。黄泉川に食材や
日用品の買い出しを頼まれたのである。何故この二人なのかは疑問だが、当の二人は気にしていないようだ……。
スーパーのビニールを持って歩く学園都市のトップ2………実にシュールだった。
一方通行「――オイ、垣根ェ」
垣根「――ん、何だ?」
一方通行「何で俺が重い方持ってンだァ?コッチ杖つきなンだけどォ」
垣根「そりゃお前が……最強だから?」
一方通行「意味分かンねェンすけどォ」
垣根「俺はぁ…ほら!今日のメイン持ってるだろ?見ろよ、お前の好きな肉!」
一方通行「クソガキ用のお菓子はまァ良いとしてだ。何でオマエの寝巻きやら下着やらを俺が
持たなきゃいけねェンだ?コイツはどォ考えてもオマエが持つべきだろ」
垣根「同じ袋で、中身はパッと見分かんねえから気にすんなよ」
一方通行「先に二階の方行くンじゃなかったぜェ…ったくよォ」
垣根「なぁ……」
一方通行「あァ?ンだよ?」
垣根「お前の……っつーか、もう俺とお前の部屋か。せめてテレビくらい置こうぜぇ。マジ物無さ過ぎ」
一方通行「大きなお世話だっつの。それにテレビなンて置いたら部屋が狭くなンだろォがよ。そンなに
見たけりゃリビング行って勝手に黄泉川やクソガキとチャンネル争いでもしてろ」
975 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/27(日) 19:41:49.48 ID:njpJ8sc0 [28/32]
垣根「いや……あぁまで何もねえと何か落ち着かねえってか…」
一方通行「俺は狭いところが落ち着かねェンだよ」
垣根「お前ももっと色々興味持てよ」
一方通行「間に合ってますゥ。っつかオマエ、さりげなく自分の部屋とか言ってンじゃねェよ。
あそこは俺の部屋で、オマエはただの居候。この常識は覆さないでくれますかァ?」
垣根「ちょっと待て。お前も居候だろ……?」
一方通行「居候にもランクってのがあンだよ。俺は『亭主』クラスでオマエは『下っ端』クラス」
垣根「イヤイヤイヤ!亭主っておかしいだろぉ!?っつーか居候じゃねえぞソレ!」
一方通行「……オイ、ところでよォ…こンなの買い物リストにあったか?」
垣根「あ…」
――垣根の目に一方通行が袋から取り出した整髪料(ワックス)が映る。
一方通行「これくらい自分で買えよ。分からねェ様にどさくさ紛れでカゴに入れたンだろォが、バレバレだっつの」
垣根「……黄泉川さんには内緒で頼む」
一方通行「態度次第だなァ」ニヤ…
垣根「お前にも使う権利を与えよう」
一方通行「いらねェよボケ。整髪料とか俺には必要ないンですゥ」
976 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/27(日) 19:44:53.81 ID:njpJ8sc0 [29/32]
垣根「―――ん?誰だ?」
――Piriririri♪
――突然、垣根の携帯電話が鳴り出した。
垣根「――この表示……まさか…」
登録していない番号だが見覚えがあった……嫌な予感がする。
一方通行「……何してンだよ?出ねェのか?」
垣根「あ、あぁ……悪いが先行っててくんね?」
一方通行「チッ、長話になンなよ――」
一方通行を先に行かせた垣根は電話に出た。
通話口から聞こえてきた声は、やはり予想と同じだった。
『――あの……すみません。初春飾利です。カッキーさんですか……?』
垣根「……あぁ。どうも…ご無沙汰」
『いえ、コチラこそ。今、大丈夫ですか?』
垣根「あぁ。平気だよ」
977 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/27(日) 19:47:24.29 ID:njpJ8sc0 [30/32]
『――それでお礼の件なんですけど、来週の月曜とか……どうですか?』
垣根「月曜か…俺は良いけど…」
『じゃあ決まりですね♪時間は……えーと、午後からで良いですか?』
垣根「おう、その方が助かるかな…」
『では一時に○○駅前でどうでしょう?私はそこで待ってますので見つけたら声をかけてください』
垣根「あぁ、了解した…」
『でっ、では……来週、待ってますんで、絶対来てくださいね?もし来なかったら――』
垣根「必ず行くから何も心配せずに待っててくれ」
『クス……では、楽しみにしてますね♪』
垣根「お…おう」
『それじゃ――』
垣根「……………」ピッ
垣根「なんつーか………身代金の受け渡しに行く誘拐された息子の親…みてぇな心境だな…」
よく分からない独り言を呟きながら、垣根は一方通行の後を足早に追った。―――
―――そして、ついにその日がやって来てしまった!
続きます
―――上条達がダブルデートから帰宅中、姿を消した禁書目録が謎の男にさらわれ、上条達の前にももうひとりの謎の男が現れた。
この二人はグルらしい……男達の目的は『禁書目録』と『幻想殺し』。理由は『戦争の後始末』との事だが、詳しくは不明…。
上条、垣根、一方通行は『元魔術師』と名乗るもうひとりの男と交戦。男は『破光』を使っているらしいが、それは一体何なのかも不明。
最強三人組に男は未知の力を使うものの、あっさりと敗北。そして、現在に至る――
――科学と魔術が交差した後も、物語は終わらない――
―――??学区のビル
ビルの最上階、27階にその男はいた。
広い講堂となっているその部屋は殺風景な造りになっている……。
男は隣の小部屋にあるベッドに禁書目録を寝かせ、講堂の奥に置かれているソファーに座り、ワインを嗜んでいた。
部屋事態は殺風景だが、後ろはガラス張りのため学園都市の夜景が堪能できる。
その中で優雅にワインを嗜む男はふと外を見る…。そして――
「――もうすぐ……もうすぐで、我々は戦う必要がなくなるのだ……」
――と、一言ボツリと呟いた……。
13 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/09(水) 19:14:49.97 ID:nXtaVV.0
――公園――
一方通行「――やンのかコラァァあああ!!!」カチッ
垣根「――上等だテメェェェええええ!!!」バサッ
上条「――テメェら何マジモードになってんだぁぁあああ!!!やめろ!!やめないと打ち止めが泣いちゃうぞ!!!」
一方通行・垣根「――!!?」クルッ
打ち止め「――うっ、うっ…」(ってミサカはミサカは泣き真似をしてみたり)
一方通行「………チッ、今日は勘弁してやらァ。堕天使」
垣根「……コッチの台詞だ白野菜」
上条・打ち止め「ホッ……」
「――……うーん………はっ!」
――男が目を覚ましたようだ。しかし、両手足縛られているため身動きがとれない…。
一方通行「お?よォやくお目覚めかァ。四下ァ」
垣根「何だその四下って……?」
一方通行「あァ?三下は二人もいらねェだろォが」
垣根「はぁ……?」
いらない会話をする二人を後ろにし、上条は男の前に立つ。
上条「……テメェに訊きたい事は山ほどある。知ってる事全部喋ってもらうぞ…」
15 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/09(水) 19:52:34.04 ID:nXtaVV.0
「――……フッ、…良いでしょう……教えてあげますよ。私の知ってる限りで良ければ…」
黙秘するか殺せと言われる事を予想していたが、男はあっさり自白を認めた。
すでに禁書目録の捕獲に成功し、後は『幻想殺し』を持つ上条だけだ。ここで全て話せば…きっと上条は禁書目録を助けに向かうはずと
男は予想した……。
それはこちらにとっても好都合だ。特に機密に触れる事さえ喋らなければ……後は『あの方』が何とかしてくれる……。
男はそう確信していた。
上条「テメェらが俺達を狙う理由は何だ?…『戦争の後始末』ってのは…どういう意味だ?」
「……言葉の通りですよ…。学園都市とロシアを発端に開戦した第三次世界大戦は世界各地で今も続いている………あなた達は知らないかも
しれませんが、我が国『ギリシャ』はある国と一触即発だった……。しかし、第三次世界大戦をきっかけについに戦争が始まってしまったのです……」
上条「………第三次世界大戦に……お前も……」
一方通行「………それで、どォなったンだ?」
「……戦争は終わりました……敵国の勝利でね……ギリシャは現在…その国に従っている状態です………そして、つい最近……
ギリシャで内乱が起きました………降伏を決定した王軍と降伏反対派だった国民の間で……」
「その時の国民達のリーダーに立っていたのが『セリオス』……禁書目録をさらったのは彼です。そして私はその側近でした…」
上条「……そのセリオスってヤツは、何で俺と禁書目録に目を付けた?」
「『魔術』は……交渉にとって良い材料になるんですよ。『十二万三千冊の魔道書』ならなおさらね……そして、その魔術を消せる『幻想殺し』も……」
上条「……何で……その事を…?」
16 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/09(水) 20:15:06.86 ID:nXtaVV.0
「…以前、セリオスとイギリスにいた時期がありましてね……魔術の修練もその時に積んだのです。……もっとも、今はその力は『我々』には
ありません……あなた達は第三次世界大戦の『負の遺産』についてご存知ですか?」
上条「…あぁ?」
一方通行「……負の遺産…だとォ?」
垣根「……イヤ…何だよそれ…?」
「!………なるほど……やはり、学園都市では機密扱いでしたか……今のは忘れて下さい」
一方通行「オイ、ふざけンな。知ってンなら話せよ」
「………ダメです。内乱もようやく終わり、後は敵国に交渉材料を持ち帰るだけだというのに……学園都市まで敵に回す訳には
いきませんからね…戦争が終わったばかりの我々の国には……戦力がありません」
上条「機密とか…そんなの俺にはどうでもいい。インデックスはどこにいる?」
「○○学区にある○○ビルの最上階です……。大切な交渉材料ですから、殺したりはしませんよ…」
一方通行「○○ビルか……」
上条「知ってるのか?」
一方通行「学園都市の暗部組織が昔よく使ってたビルだ。…ハッ!いかがわしい事するにはうってつけって訳だァ」
「もう、良いですか?なら……縄を解いて下さい…戦うつもりはもうありませんよ……」
一方通行「最後に教えろ。オマエがさっき叫ンでた『破光』ってのは…何だ?オマエの力と関係あンのか?」
「…あの力は……―――グフッ!!!」――パァン!
上条「―――!!?」
17 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/09(水) 20:43:59.09 ID:nXtaVV.0
―――突然……どこからか銃声の音が聞こえ、男が声を上げて突っ伏した。……男の側頭部に穴があり、そこから大量の血が
噴出していた……。男は即死だった。
「!!………ク……ク……クッソぉぉぉぉおおおおおッッ!!!!」
吼えた上条は周りを見るが……どこにも人影はない。
打ち止め「………あ……あ……」
一方通行「チッ……どっか俺達の見えねェ場所から殺りやがったな……」
バッ!と打ち止めの目を塞ぎ、庇うようにしながら一方通行は呟く。
垣根「……何てヤツらだよ……とりあえず通報だけして場所変えようぜ。場所は分かったんだ。ここに長居する意味はねぇ……」
上条「………あぁ…」
一方通行「……イヤ、場所が割れたンなら俺はそのまま行く。オマエらは帰ってろ」
上条「おい……ふざけんなよテメェ……俺も行くに決まってんだろ!」
一方通行「……分かってるよ。三下はイイとして、オマエらは先に帰れ」
垣根「はぁ!?俺も――」
一方通行「――分かンねェのかァ?オマエまで来るっつったら、このガキはどォすンだよ?」
垣根「――!!」
一方通行「コイツを連れてく訳にはいかねェ。夜の道を一人で帰らせる訳にもいかねェだろォが」
垣根「……それは…確かに…」
一方通行「垣根ェ、オマエに打ち止めを任せる。死ンでも守れ」
18 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/09(水) 21:06:01.46 ID:nXtaVV.0
一方通行はまだ震えている打ち止めを垣根に譲る。
垣根「……わかった。打ち止めちゃんは引き受ける。黄泉川さんや芳川さんには適当に言っとくよ」
一方通行「…あァ、頼ンだぞ。今度こそ目ェ離すな」
垣根「おう!……上条、すまねえな……俺が目を離したばっかりによ…」
上条「いや、気にすんな垣根。悪いのは……俺だ。今度、どっか遊びに行こうぜ!」
垣根「あ、あぁ!」
――そして、一方通行はカチッと電極のスイッチを入れて収縮させたつえをしまった。
一方通行「オイ三下ァ、そろそろ行くぞ。ここからじゃ距離があるから、一気に飛ンで行く。肩につかまれ」
上条「お、おう!」ガシッ
打ち止め「……気をつけてね…ってミサカは…ミサカは―――うわっ!」
一方通行「無理に喋ンな。なァに、すぐ帰ってくっから心配すンなよ」
ワシワシと打ち止めの頭を撫でて、背を向けた。
垣根「……インデックスちゃんを、頼むぞ」
一方通行「…任せとけ。――っしゃァ!行くぞ三下ァ!舌噛むンじゃねェぞォ!!」
上条「あ、あぁ――ってうわぁぁ!!?」
――ギュン!!と一方通行と上条はものすごい勢いでその場を飛び去っていった……。
19 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/09(水) 21:43:54.85 ID:nXtaVV.0
――上条と一方通行が去った後、残された垣根は警備員に通報だけして打ち止めと家に向かって歩き出した。
打ち止め「………大丈夫かなぁ…」
垣根「……心配かい?」
打ち止め「………」コクリ
垣根「大丈夫さ。あいつはこの俺に唯一勝ったヤツなんだぜ?んな簡単にくたばりゃしねえよ」
打ち止め「……そう、だよね…」
垣根「……それに、上条も一緒なんだしよ?何でか知らねえけど、『あいつがついてりゃ大丈夫!』って気になるんだよな……ホント、
不思議なヤツだよ……一見そこいらのヤツと同じに見えるのに、何かそこいらのヤツとは違うんだよな……って、右手の能力あんだから
すでに違うか。…ハハハ」
打ち止め「………」
垣根「……信じて、待とうぜ?」
打ち止め「……うん…」
(……無理もねえよな…いきなり目の前で人が頭ぶち抜かれるなんて、こんな小さい女の子には刺激が強すぎんぜ……)
――まだ、どこか元気のない打ち止めを見てそう思った垣根は、隣を歩く打ち止めの頭を撫でる。
(……とっととインデックスちゃん助けて戻ってこいよ、一方通行。この子をまた笑顔にしてやれんのは……お前だけなんだからよ……)
――黄泉川や芳川にどう言い訳しようか考えながら、垣根と打ち止めは家路に着いた。
33 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/10(木) 20:55:30.15 ID:maz3ydo0 [2/8]
―――??学区のビル・講堂内
――パリィィィン!!
「――ナルスめ………しくじりおったか……」
砕けたワイングラスを片手にワナワナと震えるセリオス……。
「いや……『幻想殺し』ひとりならヤツで充分とタカをくくった俺のミスか……まぁいい、どの道向こうから出向いてくる……」
呟きながら捕獲失敗の報告を受け、切ったばかりの携帯電話をどこかにつなぐ。
「――間もなく『幻想殺し』を持つ少年が『友人』を連れてここに来る。『出迎え』の準備をしておけ」
『…その友人は……?』
「脅して帰らん様なら………殺せ」
『了解(ラジャー)!』
――それだけ言ってピッと電話を切る。
「フフフフ……早く来い!『幻想殺し』よ!お前と『禁書目録』には最高の働き場所を用意してあるのだ!!」
――セリオスの声は、広い講堂に高く響いた。
34 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/10(木) 21:28:51.17 ID:maz3ydo0 [3/8]
―――別の学区の某ビル、土御門はひとりの少女と密会していた。
少女はいつものヘソの出たピンクのサラシのようなものを胸に巻き、その上に制服を羽織るだけといった格好……ではなく、
セーターを着込んでいた。土御門は早速その格好にツッコむ。
「――……お前、そんな普通の格好もするんだな?」
「――はぁ?当たり前でしょ。人をお洒落のカケラもないみたいに言わないでくれる?」
結標淡希…『座標移動(ムーブポイント)』という強大な能力を持つ。『グループ』の構成員。ショタコン。
結標「――ちちちょっと!?だだだだ、だぁれがショタコンよ!!移すわよ!?」
土御門「?……俺は何も言ってないぜぃ?」
結標「……絶対誰か言ったわ……」
土御門「…まぁいい。で、今までの話を聞いた感想は?」
結標「……あの一方通行にトモダチねぇ……信じられないわ。そいつもよっぽど頭イカレてんのかしら?」
土御門「オイオイ、その友達は俺の友達でもあるんだからあまり悪く言わないで欲しいにゃー」
結標「…そう、別にどうでも良いけど……んで、何?」
土御門「は?」
結標「トボけないでよこのシスコン。まさか、そんな話をするためにこんな人気を一切閉ざすような部屋借り切ってまで私をここに呼んだ
んじゃないでしょうね?」
土御門「…流石、賢いな」
結標「どぉせ本命は『仕事』なんでしょ。…一方通行や海原は?」
土御門「一方通行は一足先に『現場』へ向かってる。……海原ももうじき来るハズだ。ヤツが来れば出発できる」
結標「……何でいつもの集合場所じゃないわけ?」
土御門「……『仕事』に出る前にお前達に話す事があるからだ。これは『学園都市』の機密事項も含まれるから、万が一にも外部へ漏らす
訳にはいかない」
土御門はいつの間にか仕事口調になっていたが、結標はそこに突っ込まなかった。
35 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/10(木) 21:52:30.49 ID:maz3ydo0 [4/8]
結標「いったい……何だってのよ?」
土御門「今後、その『機密事項』のおかげで『グループ』は忙しくなりそうなんでな……お前や海原、一方通行は知っておいた方が良い」
結標「……他の暗部組織は…?」
土御門「知らない。アレイスターは『グループ』を直々に指名した」(と言うより、俺がそう仕向けた)
結標「…戦争も終わったってのに、いったい今度は何を―――!?」
その時、ドアがガチャリと開いた。
「――お待たせしました」
入ってきたのが海原だったので、結標は安堵の息を吐く。
結標「ノックとかしなさいよ!心臓止まりかけたわ!」
海原「すいません。急いで来たもので……あれ?ひとりまだ来てませんが…?」
土御門「ヤツとは後で嫌でも合流する。……さて、『仕事』の前に話しておく事がある」
海原「……それは今日の『仕事』と関係あるのですか?」
土御門「まぁあると言えばあるが、もっとこの先の話だ。お前達も今から知ってた方が動きやすい」
海原「………」
結標「………」
――そして土御門は語り始めた……。
今の世界が抱えている問題とその裏と…学園都市に迫るかもしれない脅威を……。
土御門が話しを終えた時、二人はどこか現実味がない…といった表情をしていた。
37 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/10(木) 22:23:06.69 ID:maz3ydo0 [5/8]
――上条と一方通行は、聞き出したビルの前に降りていた。
一気に飛んできたのでかかった時間はニ分ほどだったが、上条にとっては地獄の二分間だった…。
一方通行「――ここだな」ストン
上条「――うぅ……今のは今日乗ったアトラクションを全てゴボウ抜きしました…」
一方通行「ブツクサ言ってねェで行くぞ」
伸縮させたつえを伸ばし、チョーカーのスイッチを切る。能力使用時間節約のためだ。
すでに今日は十分近く消費している。充電しなければあと二十分しか彼は最強でいられないのだ…。
そして、二人はゆっくりと一見オフィスのようなビルへと入っていった……。
上条「……誰もいない…?」
一方通行「貸しビルだからなァ。今の時間に借りてるヤツはいねェンだろ。『ヤツ』以外は」
上条「………」ゴクリ
今から禁書目録を助ける。それは変わらないが、やはり緊張はしていた。
相手の正体は分かっているが、相手の力が分からないのだ……。あの男の『破光』という謎の力は右手が通用したが……。
魔術とも超能力とも違う『何か』があの力から感じられた。
その正体が分からない……。そしてそれを訊こうとした直後、男は殺されてしまった。
おそらくセリオスの指示だろう。……自分の側近だった者をあっさり殺してしまう程非情な相手だ。話し合いで解決するのは困難なはず。
この先、一切油断はできない……。上条は無理矢理頭の中で気合を入れなおした。
(――……考えたって仕方ねぇ!俺はインデックスを助けるんだ!……待ってろよ!インデックス!)
――表情にも気合が入る。
38 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/10(木) 22:56:34.36 ID:maz3ydo0 [6/8]
一方通行と上条はエレベーターを見つけた。ボタンを押して到着を待つ…。
一方通行「……油断すンなよ三下。すでに俺達が来る事をヤツらは知ってるハズだからな」
上条「え…?」
一方通行「分からねェか?あの男があっさり白状したのはオマエをここにおびき出すためだ。そして、『あのタイミング』で撃たれたって事は、
ハナっから俺達を監視していたとしか思えねェ」
上条「そ、そうか…」
一方通行「入り口にも……あそこにもカメラがついてやがる。…どォせ正当に学園都市に入れた訳じゃねェだろォし、そンな危ねェ橋渡ってる
よォなヤツが、『誰がアジトに来たか分からねェ』なンてヘマはしねェハズだ。入り口の時点で分かってるだろォな」
上条「………確かに……けどお前、ずいぶんこういう状況に慣れてないか…?」
一方通行「……俺にも『色々』とあンだよ。お、来たか…」
――そこへエレベーターが到着し、二人は乗り込む。
最上階のボタンを押して、エレベーターは動き出した。
一方通行「――エレベーター出た辺りで待ち伏せされてンだろォな。いきなり撃ってくるこたァねェだろォが、気ィ抜くなよ」
上条「あ、あぁ……」
――いつも以上に落ち着いている一方通行。上条は一方通行が暗部組織の構成員だという事を知らないので無理もないのだろうが、
そんな様子を少し不思議に思った。上条は魔術サイドには大きく関わってはいるが、科学サイドの方は深く関わってはいない。
闇について知っているのも、漠然とした『存在』だけだ。実際そんな事は一般人でも知ってるレベルである。
そういう意味では、この一方通行は上条のまだ知らない一方通行とも言えるのかもしれない……。
そして、それについて考える暇もなく……エレベーターは最上階に到着した。
上条「――!!」
41 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/10(木) 23:21:10.64 ID:maz3ydo0 [7/8]
一方通行「――…ホラな」
……一方通行の予想は見事に的中した。
エレベーターのドアが開いた途端、上条達の目に映ったのは…広い通路から包囲するようにエレベーターを取り囲む
黒服の男達だった。数は二十人程だろうか……。皆拳銃をコチラに向けて構えている。
一方通行「お待ちかねって訳だ。予想通り過ぎて拍子抜けだな」
ニヤリと笑う一方通行。予想していた状況とは言え上条の表情も引き締まる。
そして、真ん中にいた外国人の黒服男が流暢な日本語で喋った。
「幻想殺しは…どっちだ?」
上条「俺だ。インデックスは返してもらう」
間髪入れずに答える上条。一方通行が自分だと言おうか迷う内に言ってしまった……。
上条も無意識にそれを感じとったかは定かではないが……すぐに声を出した。
「貴様は一緒に来てもらう。ご友人にはお引取り願おう」
一方通行「オイオイ、そりゃねェだろ。せっかく態々足運ンでやったンだからコーヒーくらい出したってイインじゃねェの?」
ふざけた調子の一方通行に外国人の黒服男は眉間にしわをよせる。
「もう一度だけ警告する。すぐに帰った方が身の為だ。……さもなくば……分かるな?」チャキ…
43 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/10(木) 23:38:43.92 ID:maz3ydo0 [8/8]
上条「一方通行、ここからは俺一人で――」
一方通行「黙ってろ三下ァ。……オイ、オマエら誰に向かって口利いてるのか分かってンのか?」
「……貴様など知らん。これが最後だ。幻想殺しを置いて今すぐエレベーターで引き返せ。でなければ死んでもらう」
一方通行「……そォか、オマエら……本当に気の毒なヤツらだなァ。心底同情するぜ。そンな『オモチャ』で
この俺を追い返そォだなンてさァ………憐れ過ぎて笑えてきたわ」カチッ
調子を崩さずチョーカーにスイッチを入れ、つえを縮めた一方通行に対してついに発砲許可が下りる。
「―――殺れ」
―――パパパパパパパァァァンンン!!!┣¨┣¨┣¨┣¨ドド!!!
上条「――!!」
一方通行「――ひゃは」
――ギィィィィイイイイン!!
数秒後、黒服の男達は一人残らず地面に倒れ伏した……。
44 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/11(金) 00:05:14.61 ID:BybWHGA0 [1/15]
「……グゥゥゥッッ……」「……ゥゥゥ……」
『反射』させた銃弾は全て返したが、全て器用に致命傷を外す辺り流石の一方通行である。
通路に出た上条と一方通行はその惨状を見ながら進む。一方通行が傷の比較的浅そうな男に訊いた。
「――オイ、セリオスって野郎はどこだ?答えりゃオマエの寿命は延びる。拒否すりゃここで終わりだ。どっちがイイか分かるよなァ?」
悪魔のような表情で男を脅す。
完全にビビッた男は「こ、この通路の奥にある講堂です」とあっさり白状した。
「――ご苦労。後はどこででも目覚めな」
そう言って男を気絶させ、二人は奥へ進み始めた。歩きながら会話する。
上条「――しかし、意外だったな」
一方通行「あ?何がだよ?」
上条「あんな状況だったのに誰も殺してないお前がだよ。トドメを刺そうとしたら止めるつもりだったんだが、取り越し苦労だったか…」
一方通行「……人の命になンざ興味ねェよ。奪って喜ぶヤツなンて一人もいねェだろォが」
上条「……すまん」
一方通行「何謝ってンだ?」
上条「………イヤ、何でもねぇ!ありがとな!」
一方通行「…はァ?急に謝ったと思ったら今度は礼って……オマエ、マジで分っかンねェ…」
――巻き込んだ事を謝ろうとしたのだが、それは違うと思って感謝に切り替えた上条の心理に
一方通行が気づいたのかは定かではない。
47 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/11(金) 16:53:42.17 ID:BybWHGA0 [3/15]
―――土御門達は車でとあるビルへ向かっていた。
結標「――…ねぇ土御門。行くのは良いけど私達はそこで何をするの?」
土御門「言ってなかったかにゃー?今からする仕事は不法侵入者の捕獲ぜよ」
海原「……我々が出る必要もない気がしますが…」
土御門「じゃあ言い換える。『捕獲』ではなく『回収』だにゃー」
結標「私達が着く頃には終わってるって事ね……けど『標的』が殺されたら?」
海原「彼に電話くらいはしておいた方が…」
土御門「……イヤ、大丈夫だぜぃ。アイツはたとえ仕事でも、もう誰ひとり殺しはしないだろう」
結標「……そうね」
海原(そう言えば、御坂さんを助けてくれた礼を言うの忘れてました……)
土御門「――さて。着くまで暇だし、面白い話があるんだが…聞くか?」
結標「あんた……どんだけネタ豊富なのよ?」
海原「…これ以上大きな話があるのですか?」
土御門「あー、そんなんじゃない。単なるネタ話だにゃー♪題して、『第一位と第二位がまさかの同居!?』」
海原(……何そのタイトル……センスねぇなコイツ)
結標「『題』じゃなくてオチ言ってんじゃない……けど面白そうだから聞かせてくれる?」
土御門は容赦なかった。一方通行が家出して友達の家に転がり込んだ事まで容赦なく喋ってしまった。
しばらく車内には笑い声が響いたそうだ。
48 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/11(金) 17:15:31.11 ID:BybWHGA0 [4/15]
一方通行と上条は広い通路を歩いていた。通路には足音とつえの音が響く。――
一方通行「――ッ!」ブルルッ
上条「――ん、どうした?」
突然身震いした一方通行を上条は不審な目で見た。
一方通行「…………イヤ、何でもねェ」(何だこの寒気は?……何か知らねェが…すげェ嫌な事が起きてる気がする……しかもすげェムカつく事が…)
上条「……やっぱり、戦いは避けられねえのかな?」
一方通行「その甘い考えは捨てた方がイイな。ヤツらもそれなりに覚悟して来たンだろォし、腕ずくでもオマエとシスターを連れて帰るつもり
だからな」
上条「………そう、だよな。仕方ねえよな…」
一方通行「……オマエに言っても無駄かもしれねェが…変に相手に同情はするな」
上条「……あぁ」
――わかっている……相手にどんな理由があるとは言え、禁書目録や自分を無理矢理巻き込んで良い理屈はない。
けど、セリオスはただ戦争後に支配された母国を救いたいだけなんだとしたら……。
勿論、だからと言ってこんなやり方は許されないが……きっかけが本当にそれだとしたら……
根っからの善人である上条はそこで悩んでいた。
そんな上条の様子に気づかない一方通行ではない。
一方通行「…オイ三下。オマエはアイツらの国を救うために、シスターは犠牲になってもイイなンて思ってねェよな?」
上条「――!!」
49 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/11(金) 17:33:33.08 ID:BybWHGA0 [5/15]
上条「――そ、そんな訳ねえだろ!」
一方通行「……なら、イイ」
一方通行はあえてそれ以上追求しなかった。上条の優しい性格は相手の武器にもなってしまう。
釘を刺す意味で言ったのだが……一方通行は信じた。
それにもし上条が間違いを犯したら、その時は自分がフォローすればいい。かつて上条が自分にそうしてくれたように……。
一方通行「――着いたぜ。多分、ここだ」
上条「……よし、行くぞ」
ギィィ…と、映画館の入り口のような扉を開く。
中は照明が点いており、明るい。広さは本当に映画館として使えそうな程広い講堂だった。
今は使われていない感じがしたが、奥には熱帯魚の入った水槽やソファー、テレビといった物が置かれ、そこだけ生活感が出ていた。
そして……中央奥のソファーに、『男』はいた。
その姿を確認した二人は、ゆっくりと奥へ進む。
禁書目録を目だけで探すが…姿はない。別の部屋に監禁しているのだろうか。
講堂の真ん中ほどまで来た所で、『男』は声を出す。
「―――よく来たな。待っていたぞ、『幻想殺し』」
低くて渋い声だが、よく響く声だった。
50 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/11(金) 17:54:56.25 ID:BybWHGA0 [6/15]
「……………」ピタッ
声を聞き、立ち止まる二人……。
上条「……お前が『セリオス』か?」
「いかにもそうだ。そして君の方から来てくれるのは分かっていた……今日は素晴らしい日だよ。これで私の計画は――」
「――ふざけんじゃねえッッ!!!」
上条が男の言葉を遮って叫ぶ。
上条「公園で俺達といた男を殺したのはテメェだろッ!!何で殺した!?テメェの側近だったんじゃねえのかよ!!?」
「……必要のなくなった駒は切り捨てるのが私のやり方でね。『ナルス』には本当に良く働いてもらったよ。――だが、もう必要ない」
上条「この――!!!?」
一方通行「それがオマエのやり方だっつーンなら、それを否定する気はねェ。俺らの目的はその『ナルス』ってヤツの仇討ちなンかじゃねェからな」
今にも飛び掛りそうな上条を片手で制しながらセリオスを真っ直ぐ見る一方通行。
一方通行「……俺らの目的はひとつ、『シスター』を連れて帰るだけだァ――」
そう言ってニヤリと笑った。
51 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/11(金) 18:12:19.80 ID:BybWHGA0 [7/15]
いつの間にか冷静になった上条も続く。
上条「そうだ!インデックスはどこにやった!?返してもらうぞ!!」
「……ハァ」
セリオスは溜息を吐いて呆れた目を向ける。
「――悪い事は言わない……大人しく一緒にギリシャへ来るんだ。禁書目録と一緒にいたいなら、君も来れば良い」
上条「ふざけんなよ!!俺もインデックスも、今は平和に暮らしてるんだ!!テメェらにいいように利用されてたまっかよ!!」
一方通行「――だそォだ、諦めな」
「……良いのか?国じゅうの人間を君は見殺しにするとでも?」
上条「――!!?」
「君達が協力してさえくれれば、多くのギリシャ人の命が救われるのだぞ?君はそれでも協力したくないと……?」
上条「……そ、それは……でも、こんな拉致みたいなやり方……」
「我々も手段は選んでられなかったんだよ…なにしろ不法侵入だからね。しかし、全ては我が国の為なんだ」
上条「………」
言葉を失くし、俯き考える上条。しかし……一方通行はセリオスの口元がいやらしく歪んだのを見逃さなかった。
あの顔は……紛れもなく自分と同じ『悪党』の顔だった。
「――騙されンな、三下ァ」
54 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/11(金) 18:35:50.24 ID:BybWHGA0 [8/15]
「――えっ?」
上条は急に口を出した一方通行に目を向ける。
一方通行「……くだらねェ話は終わりって意味だ。オイ、とっととシスター出せ。俺らはもォ帰るからよ」
上条「一方通行………?」
「……くだらないだと…?国民を救う事がくだらないと……君はそう言うのか?」
一方通行「あァ、くだらねェな。それで本当に『救える』ンなら別だけどよォ…」
「……何だと?」
一方通行「最初っからキナ臭ェと思ってたが、オマエの面ァ見て確信した。『全部嘘』だってなァ」
上条「…嘘……?」
一方通行「もォ正直になれよ。『幻想殺し』と『禁書目録』は自分が世界を乗っ取るための足掛かりだってな」
「――!!」
上条「なん……だって…?」
一方通行「すぐに他人を信用してンじゃねェぞ三下ァ。コイツはハナっからオマエとシスターを敵国とやらに差し出す気はねェらしい…」
「……何故そう思う?」
一方通行「ハッ。ガキなら簡単に騙せるとでも思ったのか?…まず、オマエらの『暗部じみたやり方』の時点で疑問だったンだよ。
国の為なら手段を選ばねェってオマエは言ったが、そォいうヤツに限って腹ン中じゃ自分の欲望しかねェのを俺はよく知ってるからな。
それに、オマエの『表情』がそォ言ってる」
「………」
56 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/11(金) 18:57:56.21 ID:BybWHGA0 [9/15]
一方通行「『国の為』って聞こえのイイ理由を作り、三下やシスターをたぶらかして……研究報酬で大儲け、後はせェぜェ魔術大国相手に
利用するだけ利用する……オマエの『チンケな欲望』なンて、どォせこンなトコだろ?」
「………」ギリギリ…
セリオスの表情がみるみる険しくなっていくが……お構いなしに畳み掛ける。
一方通行「まァ、仮にオマエの言ってる事が本当だとしても、コイツらはこンな方法で来るオマエらになンざ手は貸さねェよ。
本当に国を救いてェンなら、『外しちゃいけねェ道』ってのがある。不法侵入に拉致監禁までしている『小悪党』なオマエに、
今さら一国を救うなンて大それた台詞は全く似合わねェンだよ」
上条も『一方通行に同意』、と言った目をセリオスに向ける。
一方通行「――それに、コイツらを利用する事はこの俺が許さねェ。なンたって俺の『ダチ』だからなァ。…残念でした」ニヤリ
上条「……インデックスを返せ。俺達はテメェの私利私欲に付き合う気はねえぜ?」ニヤリ
「―――……フ、フフ……」
上条・一方通行「?」
「――ふざっっっけんじゃねえぞォォおおお!!!!ガキどもがァァァああああああ!!!!!」
――ガシャァァァン!!!
57 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/11(金) 19:22:56.35 ID:BybWHGA0 [10/15]
――セリオスは完全に『仮面』を取った。
荒々しく立ち上がり、恐ろしい形相で二人を睨む。叫んだと同時に近くにあったテレビやソファーは吹き飛び、水槽は割れて
地面を熱帯魚がピチピチと跳ねる。
「――大人しく俺についてくりゃぁちったぁ優しくしてやろうと思ったのによォォ!!クソ生意気なガキが好き勝手ほざきやがって!!
テメエら生きて帰れっと思うなよクソがァァああ!!!」
一方通行「……ソイツが本性か。まァ予想してたがなァ」カチッ
上条「――来るぞ!!」
「死にさらせやァァァあああああ!!!!」―――ボォォッッ!!!
「――チィッッ!!」――バッ!
右手から赤い光が二人に向かって放出される。チョーカーにスイッチを入れた一方通行は上条の腕を掴み飛び上がって避けた。
――ボゴォォォオオオンン!!!
赤い光が壁に激突した途端、上条達の後ろは大爆発を起こした。一方通行は上条を掴んだまま爆風に乗るように、そのまま飛び上がって離れる。
上条「――……サンキュー、一方通行……っつーか、何て威力だよ…」
一方通行「あの『男』と力の原理は一緒か……どっちみちその『原理』が分からなきゃ反射は出来ねェ。三下ァ、一気にいくぞ!
間違っても右手で俺に触れンなよ!」
上条「お、おう!」
58 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/11(金) 19:42:35.74 ID:BybWHGA0 [11/15]
――上条の左腕を掴んだまま、一方通行は空中からセリオスに向かって直滑降に飛ぶ。
セリオスはそれを確認する様に見上げたまま左手に光を集める。
「――ハハハハァ!!!面白ぇ『お友達』だなぁ『幻想殺し』よぉ!!だがなぁ、俺の『破光』はナルスのボケなんぞたぁ訳が違うぜぇ!!」
――ギュゥゥゥン!!と猛スピードで突っ込む一方通行に向かってセリオスは左手をかざす。
「―――こぉんな事もできるってなぁ。ギャハハハハ!!!」
――瞬間!!
セリオスの左手から雨のような数の赤い玉が散弾銃の様に放出される。
「――!!?」
「――くッッ!!!」――バッ!
上条は咄嗟に右手を前に突き出したが、凄まじい数の光に二人はセリオスに届く前に吹き飛ばされる。
「――ぐっ……」
スタン、と二人は空中で体勢を立て直し、離れた場所に着地するが……まるで茨の道に飛び込んだ様にところどころ傷を負っていた。
一方通行「……ハァ……クソったれが…」
上条「……ぐぅ……野郎、あんな事もできんのかよ…」
59 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/11(金) 20:05:31.06 ID:BybWHGA0 [12/15]
「――『幻想殺し』に『破光』が有効なのはちっと驚いたがなぁ!!テメェらをブチのめす方法なんざいくらでもあんだよ!それと――」
そこまで喋って一方通行に目を向ける。
「――テメェ、ただの『お友達』じゃねえな?聞いたぜぇ?確かこのボーヤには『勢力』があったんだよな。テメェもその仲間か何かかよ?」
一方通行「……はァ?何だその『勢力』ってのは…?」
上条「コイツはそんなんじゃねぇ!!俺の『友達』だ!!」
「ほぉ……にしても、『破人』でもねえのにその力は普通じゃねえ。まさか『能力者』とでも言うんじゃねえだろうな?」
一方通行「あン?……能力者だったら何だっつーンだよ?」
「ハハハハ!!冗談こいてんじゃねえぞ!?『学園都市』の能力開発なんざ魔術の劣化版みてぇなモンじゃねえか!火だの水だの、
俺からすりゃ『単なる遊び芸』だぜ!!テメェみてぇな力がこんなチンケな街が生んだ『能力』だってのか!?ふざけた寝言はくたばって
から言えってんだよォ!!」
一方通行「……………ほォ…」
上条「………この野郎……」グッ…
――怒りに震える上条の前に一方通行は立った。……そして、かつてない程邪悪な表情でセリオスに言う。
「―――ンなら教えてやるよ。『チンケな街が生んだ能力』ってのを………毎晩夢に出て魘されるくらいになァァ!!!」
60 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/11(金) 20:26:30.64 ID:BybWHGA0 [13/15]
上条「一方通行ッッ!!」
――上条が叫んだ時、一方通行はすでにセリオスに凄まじいスピードで飛び掛っていた。
一方通行「――チンケな街が生ンだこの力ァ、捻じ伏せてみろよォォ!!」
――ギュン!と高速で動く一方通行の顔面にセリオスの放ったカウンターの右ストレートが決まる。
一方通行「グッ、ハァ!!?」
吹っ飛ばされた一方通行はそのまま背中から地面に叩きつけられる。
「ハハハ!!馬鹿が!!『俺ら』の力も分かってねえくせに突っ込むたぁ、テメェは本物の馬鹿だなぁ!!まぁ、ソイツを知る前に
ナルスをぶっ殺した俺が言えた事じゃねえけどなぁ!!」
一方通行「………ぐゥッ……どォなってやがンだ……何故『反射』しねェ…?」
かつて木原との戦いが頭をよぎるが……あの技は一方通行の能力開発に携わっていた木原だからこそ成せる技だ。
一方通行の「能力」を全く知らないはずのセリオスに出来る訳がない。
まさか、上条の様な『イレギュラーな力』でも持っているというのか……。
「オラ、どうした?『チンケな能力』について教えてくれるんじゃなかったのかぁ?」
セリオスは見下すように倒れている一方通行に声をかける。
61 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/11(金) 20:44:25.82 ID:BybWHGA0 [14/15]
――ムクリと体を起こす一方通行……だが、まだダメージが抜けておらず、立ち上がれない。
血の出る鼻を手で押さえてセリオスを睨む。
一方通行「……野郎ォ…」
「ケッ、動き回るだけならハエと変わんねえんだよ。……まぁ、俺の目的は『幻想殺し』と『禁書目録』だけだ。テメェになんざ興味はねぇ…」
――右手が赤く光を放つ。
「――興味はねえが……あんまし飛び回られんのもうぜぇからな。……消えちまえよ――」
――ボウッッ!!と一方通行に向けて光を放つ。
一方通行「――クソがァァッッ!!」
避けきれない!――その時、一方通行の前に立ちはだかる姿が――
一方通行「!?―――三下ァァッッ!!!」
受け止めきれるか分からない程の威力を持つ赤い塊に、上条は臆する事なく右手を構える。
上条「――うおォォォォおおおおおおッッッッ!!!!!」
――バシュゥゥゥウウウウウウ!!!!
もの凄い衝撃が辺りを包んだ……。
93 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/12(土) 17:47:24.29 ID:CHjF2aw0 [2/13]
上条「――うおォォォォおおおおおおッッッッ!!!!!」
――バシュゥゥゥウウウウウウ!!!!
右手が触れた瞬間、もの凄い衝撃が辺りを包んだ……。 そして……光が消える。
一方通行「―――ッッ!!!」
上条「…………」
上条は、立っていた……右手を前に突き出したまま……。そして、顔を上げてセリオスを睨む。
「――チッ!!ったく忌々しい力だなぁオイ!!いってぇどうなってやがんだその右手はよぉ!!!」
セリオスは苦虫を潰したような顔で上条に叫ぶが、すぐに薄気味悪い笑みを浮かべた。
「……まぁいいけどよ!それでこそ利用しがいがあるってなぁ!!まずはうっとおしいその右手、封じてやらぁ!!!」
――ブォォォンン……
セリオスは左手を上にかざし、上条の体が入る程度の赤く光る輪っかを上に作った。
そして、フリスビーを投げるように上条目掛けて飛ばした。
「―――そらよッッ!!!」――ブンッ!!
94 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/12(土) 17:59:51.11 ID:CHjF2aw0 [3/13]
上条「――!!」
赤い輪は上条に一直線に向かってくる。
一方通行「――三下ァ!!右手でソイツに触れ!!!」
「――させっかよ、バァカ」ニヤ…
セリオスがクンッと指を振る。すると、それに乗じて赤い輪も大きく曲がる。
上条が振り下ろした右手は空振りに終わった……。
上条「何ッ!!?」
そのままセリオスは赤い輪を遠隔操作で操る。
目の前を飛び回る輪っかに上条は右手で触れようとするが……全く当たらない。まるで遊ばれている。
上条(――畜生!埒があかねぇ……こうなったら、この輪っかみてぇなのは無視して、セリオスを――)
痺れを切らし、上条がセリオスに飛びかかろうと足を踏み出した時だった…。
一方通行「―――三下!!上だァ!!!」
上条「――!!?」
「目ぇ離してんじゃねえよ。バァーカ」
96 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/12(土) 18:17:03.00 ID:CHjF2aw0 [4/13]
上条「―――し、しまった!!!」
気づいた時には遅かった……。
上条の体は、赤い輪にすっぽりとハマッてしまった……。まるで鉄の輪のような感覚に身動きも取れなかった。
両手はこれで封じられてしまった。何とか赤い輪に触ろうと右手を動かそうとするが……無駄だった。
「――ガハハハハハ!!!とんだ間抜けだなテメェはよぉ!!!まんまと引っかかってくれちゃって……それじゃもう右手は使えねえな!!」
上条「――クソッッッ!!!」
「さて、このままお前を絞め殺しても良いんだが……それじゃ俺が危険冒してまでここ(学園都市)まで来た意味がなくなっちまう……
とりあえず、死なねえ程度に痛めつけてやっか――」
――カツン、カツン……と上条に歩みよるセリオス。………上条は赤い輪に両腕を封じられたまま立ち上がる。
上条「………おい、セリオス。……一つ訊かせろ」
「――あぁ?何だよ?」
上条「テメェは……本当に自分の国の人達を見捨てようってのか?」
「………」ピタ
上条「本当は………違うんじゃないのか?……本当は……本気で国を救いたいだけなんじゃないのか!!?」
――立ち止まるセリオスに上条の叫びが響く……。
97 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/12(土) 18:34:20.98 ID:CHjF2aw0 [5/13]
上条「――お前は!!誰よりも自分の国を想っていた!!!違うのかよ!!?」
「――…………………プッ」
上条「――!?」
「――ブワッッハハハハハハハハハ!!!!!……ハハハハハ……や、やめろバカが!!笑い死にさせる気かよ!!あぁー面白ぇ」
腹を抱えて笑い出すセリオスに……上条は呆然とする。
一方通行「……三下ァ!!これで分かったろォ!……コイツは、根っから性根が腐ってやがンだ!」
上条「…………何が………おかしいんだよ?」
一方通行の声に見向きもしない上条は………セリオスにゆっくりと尋ねる。
「―――あぁ?そりゃおかしいだろうがよ?何が国の為だっつの。俺ぁな、テメエさえ良けりゃ誰がどうなろうが知ったこっちゃねえんだよ。
人がどんだけ死のうが、建モン幾つぶっ壊れようが、最終的に俺が笑えりゃ全てオッケーなの!それなのに、テメェときたら………何?俺が
無理して悪役を買って出てるとでも思ったワケ?……プッ、これで笑えねえワケねえだろっつーの……ププッ――」
上条「……………………ふざ……けんな……」
「――ハイ?」
上条「―――ふざけんなっつったんだよォォおお!!!!こんのぉクソ野郎がァァああああああ!!!!!!」――ダッ!
98 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/12(土) 18:50:30.72 ID:CHjF2aw0 [6/13]
怒りで我を忘れた上条は両手が使えないにも関わらず、セリオスに飛び掛る。
上条「――だァァあああああああ!!!!」
勢いのついたままセリオスに向けて飛び蹴りを放つ。
「バカが」
と一言漏らしたセリオスは飛び蹴りをかわし、着地した上条の腹部に拳を入れた。
上条「――グフッッ!!!」
石で突き刺されたような衝撃を受けて後ろに飛ばされる上条。
しかし、すぐに立ち上がり……セリオスに向かって行く。
一方通行「―――三下ァァ!!!クソッ!!」――フラ…
立ち上がろうとするが……先ほどのダメージが抜けていないのか、足に力が入らない。
上条は何度も向かっていってはセリオスに殴り飛ばされる……が……それでも………彼は立ち上がる。
上条「ハァ……ハァ……」ヨロッ…
体はもうボロボロで、至る所から血を流している上条………。一方通行はそのフラフラな上条の様子に……。
「――やめろ三下………もォ立つな…」
99 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/12(土) 19:13:59.94 ID:CHjF2aw0 [7/13]
(――……何してンだ俺は?………目の前で『ダチ』が死にそォになってンじゃねェか………何で……何で体が動かねェンだ……?)
――上条が何度も殴り飛ばされながら立ち向かっていく姿に……一方通行はその場に凍りついたかのように動けなかった。
(―――俺は………何怯えてンだ……このまま三下が死ぬかもしれねェ事に怯えてるとでも言うのか………『ダチ』失う事を恐れてるってのか?
オイ…だったら………だったらなおさら動かなきゃダメだろ……今動いて助けなきゃダメだろォ………なのに………何で………何でこの体は動いてくれねェ……?)
上条「ハァ……ハァ………くっ…」
「……チッ、まだ立つのかよ……右手以外はただのガキかと思ったが、なかなかしぶてぇじゃねえか。……仕方ねぇ。加減はするが、
ちっと派手にやるか……ま、死にはしねえだろ。もし死んだとしても、とりあえず禁書目録がいれば何とかならなくもねえしな………
俺ぁしつけぇガキは嫌いなんだよ」
―――ブゥゥゥウウウウン………
セリオスが赤い光を右手に集める。……まさか!
(――!!!オイ!!冗談じゃねェぞ!!!アイツは手封じられてっから防げねェンだぞ!!?)
一方通行「――………やめろ」
「―――眠りな、ガキが」――ボウッッ!!
無防備な上条に………容赦なく赤い光が放射された。
「――やめろ、やめろやめろ…………やめろォォォおおおおおおおおおおおおおッッッッ!!!!!!」
103 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/12(土) 19:31:40.26 ID:CHjF2aw0 [8/13]
―――上条は……意識を失う直前、確かに見た。
自分が赤い光に当たる寸前……遮るように目の前に現れた『黒い物質』を……。
―――ブァァァァァアアアアアッッ!!!!!!
―――――
「――………オイ……何だよそりゃ……?」
驚いたように声を出すのはセリオスだった………。セリオスは戦慄を覚えた。……上条目掛けて放ったはずの光は瞬く間に消え、
意識を失い倒れた上条を…守るかのように立ちはだかる『悪魔』に―――
――背中から黒い翼を生やし、完全にブチ切れた一方通行がそこにいた。
「………テメェ………何者だ?」
セリオスの問いに反応した一方通行は……黒い翼に似合う笑みを浮かべて答えた。
「―――俺は一方通行……学園都市最強の能力者だ。……そして――」
「―――クソッたれの『悪党』さ…」
104 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/12(土) 19:54:24.84 ID:CHjF2aw0 [9/13]
「――ほぉ………テメェがこの街の『最強』か……」
――セリオスは再び右手に光を集める……。
「……どおりで強ぇワケだぁ………けどよ、所詮『山のボス猿』レベルだ。人間様にたて突くにぁ千年早ぇんだよ!!!」――バッ!
――ボォウッッッ!!!!
一方通行「……………」
今までで最も強力な光が一方通行に向かって照射される…………が、
―――バシュゥゥゥウウウウウ……!!!
赤い光は黒い翼を盾に難なくかき消されてしまった……。
「―――……なっっっ!!!!?」
黒い翼をどかせ、姿を見せる一方通行……その顔は、さっきと変わらぬ『悪魔の笑み』のままだった……。
「―――………ク、……ク、ク、クソがァァあああああああああ!!!!!!」――シュゥゥゥンン……
―――ボボボボボボゥゥッッッ!!!!
まるで動揺を隠すかのように…セリオスは両手に集めた赤い光を連続で放つ。
………その攻撃で辺り一面、凄まじい爆風と衝撃に包まれた。―――
105 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/12(土) 20:11:00.65 ID:CHjF2aw0 [10/13]
「―――………ハァ、ハァ、ハァ……」
一方通行の体は爆風でまだ見えないが、セリオスは肩で息をしながら叫んだ。
「………ハ、ハハ、ハハハハハハハハハッッッッ!!!!思い知ったかボス猿!!!所詮この俺に、テメエなんかが敵うワケがねえんだ!!!」
高笑いし、未だ晴れない爆風に向かって叫ぶ。
「――側にいた幻想殺しも死んじまったかぁ?……まぁいいさ、禁書目録は手に入ったんだ!どうにでも―――ッッ!!?な、な!!?」
―――ブォォォオオオオオ!!!……と独り言の最中に衝撃が走る。
一方通行は、爆風を一気に吹き飛ばし………再びセリオスにその姿を見せた。………黒い翼を生やしたまま、全くの無傷で……。
「―――……バ、バカな……バカなバカなバカなぁぁッッッッ!!!!!」
一方通行「――………俺が『お山のボス猿』なら………オマエは『水槽の魚』ってかァ?―――ぎゃは」ニヤ…
「………あ……あ……」
――セリオスの脳裏に……はっきりと『恐怖』が芽生えた瞬間だった……。
107 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/12(土) 20:39:11.24 ID:CHjF2aw0 [11/13]
――カツ……カツ……
ゆっくり…ゆっくりとセリオスに向かって歩みよる一方通行……。
「………あ……あぁ…」ペタン
一方通行の威圧感と押し寄せてくる恐怖に完全に縛られたセリオスは………腰を抜かしてその場に座り込んでしまった。
一方通行は、セリオスの前まで来て立ち止まり……笑みを浮かべたまま見下ろす。
一方通行「―――やっぱ、気分イイよなァ。『弱者』を見下ろすってのはよォ」
「――ひ、ひぃぃっっ!!」ガタガタ…
一方通行の一言にさえ動揺し、ガタガタと震えながら見上げるセリオスの目に……もはや戦意はなかった。
その目に映る今の一方通行の顔はまさに―――
―――『狂気』
完全に『悪党』に立ち戻った一方通行は……セリオスに黒い翼をゆっくりと向けた。………[ピーーー]気だ。
紛れもない『殺意』が一方通行の目に宿っていた………。
「……た、……助けて…」ブルブル…
108 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/12(土) 20:53:33.26 ID:CHjF2aw0 [12/13]
「――あァ?」
「助けて下さい許して下さい命だけはどうか許して下さいぃぃぃぃいいいいいい!!!!!!」
その場に膝をつき、必死に命乞いをするセリオス……憐れなその姿に、一方通行は『悪魔の笑み』をさらに強めた。
「―――死ぬのがそンなに怖いか?」
コクコクと何度も首を縦に振るセリオス。
「――そォか、悪いな。俺ァ『悪党』だからよ。未練がましくこの世の岸にすがりついてるヤツ見ると……蹴落としたくなンだわ」
「い、いやだぁぁああ!!!し、し、死にたくないぃぃいいいい!!!!!」
「――…喚くなよ、みっともねェ。すぐに殺してやるから心配すンな」ニタ…
「ひぃぃぃイイイイイイイイ!!!!!!!―――」
―――黒い翼を………セリオスに向け容赦なく振り下ろす!―――と、その時一方通行の後ろから叫び声が響く。
「―――やめろぉぉぉおおおおおおお!!!!!!一方通行ぁぁぁああああああああッッ!!!!!!」
「――!!!?」
673 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/13(日) 20:05:21.93 ID:wXv4avA0 [2/13]
―――意識を戻した上条が目にしたのは……『闇』に憑りつかれた友の姿だった……。
「―――…ん……!?」
目を覚まし、周りに目を向ける上条。
「………痛ッ……」
体を起こそうにも、軋む痛みが体に走り起き上がれない。
骨は………何本かイッたか…。
「………う……どうなった…んだ……?」チラ…
なにやら音のする方を向く……その目に映ったのは―――
「―――!!?」
―――黒い翼を背中から生やし、座り込むセリオスの前に立つ『一方通行』の後ろ姿だった……。
674 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/13(日) 20:16:19.86 ID:wXv4avA0 [3/13]
「―――な………何だよあれ……一方通行……?」
――翼だけじゃない。一方通行の体全体が黒い瘴気のようなもので覆われていた……。
「~~~~~……」
一方通行が何か喋っているようだが、ここからでは遠くて聞こえなかった。
「……………」
セリオスの表情は……完全に怯えているように見えた。
そして……上条は首だけ一方通行に向けたまま、息が詰まりかける。
一方通行が………セリオスを殺そうとしていたからだ。
離れた場所にいても伝わってきた一方通行から発する強烈な『殺意』――
「―――やめろォォォおおおおおお!!!!一方通行ァァああああああ!!!!!」
上条は『殺意』を感じ取った瞬間、思いっきり叫んでいた………。
676 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/13(日) 20:28:40.00 ID:wXv4avA0 [4/13]
―――ピタッ………。
――直前で止まる黒い羽………セリオスは泡を吹いてパタリと倒れ、気を失った……。
「………殺…すな……一方…通行」フラ…
痛みを堪え、立ち上がる上条。……声が聞こえ、上条に向いた一方通行の目に光が戻っていく。
「――三下………」
――シュゥゥゥゥン……
黒い翼は消え、体を覆っていた瘴気のようなものも消えていた……。
「……へ…へへ」
ヨロヨロと足を引きずりながらコチラに歩いてくる上条は、笑っていた。
そして……一方通行の正面まで来た。
「それで………良いん……だ…」―――フラ…
―――そのままドサリと床に倒れ、上条は再び意識を失った……。
677 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/13(日) 20:41:36.58 ID:wXv4avA0 [5/13]
「―――オ、オイ!三下!!」
倒れた上条に駆け寄る一方通行……。
――息はある……どうやら気を失っただけのようだ。セリオスが気絶したからか、上条を拘束していた赤い輪も消えていた……。
「………ったく――」
上条の頭を腕で抱えて言う……。
「――こンなボロボロになりやがって………笑えねェだろォがよ………三下がァ」
少し悲しそうな…それでいて嬉しそうな表情を浮かべる一方通行……。
「―――!そォだ、シスターを…」
禁書目録を助けだそう……そう思い、上条をそっと地面に寝かせて立ち上がる一方通行。
「……オマエはそこで休ンでろ……さて、シスターは―――?」
しかしその時、後ろから聞きなれた声がした。
「――その必要はないにゃー」
678 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/13(日) 20:58:38.91 ID:wXv4avA0 [6/13]
「――土御門?……何でオマエが……っつーか、何で『オマエ等』がここにいンだよ?」
振り返った一方通行の視線の先には……『闇』の世界でお馴染みの面子が揃っていた。
土御門 元春
結標 淡希
海原 光貴
そして…一方通行
暗部組織『グループ』が久しぶりに集結した瞬間だった…。
土御門「――詳しい話は後だ。おい、回収班!」
ザザザッ……と『グループ』の回収班がセリオスと上条を担架に乗せて運んでいった……。
土御門「カミや……上条当麻は『いつものトコ』で、セリオスは…研究所だ。迅速に運べ」
回収班に指示を飛ばし、土御門は一方通行に向き直る。
土御門「――禁書目録もすでに救出済みだにゃー。とりあえず、人目のつかない別室へ行くぜよ」
一方通行「――あァ?ここで話せねェのか?」
土御門「俺達四人だけの……『内緒話』だにゃー」ニヤリ
一方通行「………?」
679 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/13(日) 21:24:44.15 ID:wXv4avA0 [7/13]
―――同ビル内・別室
一方通行、土御門、結標、海原は完全に閉め切った小部屋へ来ていた。
土御門「――さて、まずは一言。お仕事ご苦労だにゃー♪」
一方通行「――オイ、ふざけンなよ。俺は何も聞いてねェぞ」
土御門「ま、目的は違えど結果的に任務達成には変わりない。相変わらず仕事が速いにゃー」
一方通行「あ?任務達成だァ?………まさか『不法侵入』の件か…?」
土御門「イエース♪」グッ
一方通行(相変わらずふざけやがって……マジで埋めるかコイツ…)
結標「――ハァ……ま、それはそうと久しぶりね一方通行」
一方通行「あン?誰だオマエ?」
結標「………ほぉー……二ヶ月ぶりの第一声がそれ?身ぐるみ全部剥いでやろうかしら……?」ピクピク…
一方通行「あァー、結標か。悪ィ悪ィ、サラシに制服じゃねェから分かンなかったわ」
結標「…な、あなたまで!?私の特徴は服装だけかぁぁッッ!!!」
土御門「そりゃ、あんな格好じゃ嫌でもイメージつくぜぃ」
一方通行「流石にこの時期にあンな格好はねェけどな……イヤ、っつか普段でもねェわ」
土御門「ハハハハ!言えてるにゃー♪」
結標「――キサマらーーッッ!!!」ガタン!!
――ワイワイ…
海原(……久しぶりともあって皆さん相当浮かれてますねぇ……自分の喋る隙がないくらいに……)
680 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/13(日) 21:42:41.90 ID:wXv4avA0 [8/13]
結標「――このロリコン!!」
一方通行「――ンだと?このショタコン!」
結標「だ!?誰がショタコンですってえ!?」
一方通行「オマエしかいねェだろ?自覚しろよ」
結標「は、ロリコンよりマシよ!そっちのが今問題になってんでしょうが!」
一方通行「このアマ…俺はロリコンじゃねェって何度も言ってンだろォが!またボコられてェのか?」
結標「やれるもんならやってみなさいよ!!」
土御門「――…ロリもショタも、どっちもどっちだにゃー」
一方通行・結標「――黙れシスコン!」
土御門「ハグゥゥッッ!!」グサッ
海原「――まぁまぁ皆さん、再会のじゃれあいはそのくらいに……」
一方・土御門・結標「――ストーカーは引っ込ん(ン)でろ(でなさい)!!!」
海原「…………………」
―――数分後、ようやく収拾がついた……。
土御門「――んじゃ、そろそろ本題に入るかにゃー」
一方通行「さっさとそォしろ」
結標「私らは黙ってた方が良い?」
土御門「あぁ、俺が話すから楽にしてろ」
海原(お礼……結局言いそびれました……まぁいっか)
681 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/13(日) 22:27:42.73 ID:wXv4avA0 [9/13]
土御門「―――さて、じゃあまずはサクッと『機密』について話すかにゃー」
結標「サクッて……」
一方通行「…………」
土御門「学園都市には表世界には公けにされてない『機密事項』がいくつもある。我々のような『暗部組織』もその一つ…」
一方通行「………」
土御門「機密事項にもレベルがある……そのレベルの違いは、『知っている人間の数が少ない』事と『世界への脅威度』が主な基準だ」
海原「………」
土御門「これから話すのは……その二つを基準にしたらトップクラス、つまり今一番公表してはならない内容だ…」
結標(確かにそうね……NASAが極秘で捕らえた宇宙人を公表しないのと同じようなもんだわ……)
土御門「一方通行、たとえ『友達』にもこの話は他言無用だぞ?」
一方通行「俺がンなペラペラ喋るよォなヤツに見えンのか?」
土御門「ま……それもそうか、んじゃ話すぞ。第三次世界大戦終了後の国では今、『不思議な力』を持った人間が増えている…」
一方通行「…不思議な力ァ?……何だそりゃあ?」
土御門「その人間達の共通点は………『魔術』について関わっている…これだけだ」
一方通行「……魔術…」
海原「……………」
土御門「現役から引退者まで、魔術を過去に一度でも使った人間は全て『対象』になる事が現在分かっている。おそらく、『力』の正体は
その人間が持つ『魔翌力』が根源だと推測されているが……真実はまだ分かっていない。アレイスターが予測するには、第三次世界大戦の
影響で時空が歪み…『魔術』というこの世の『イレギュラー』な存在に何かが混ざってしまったらしいが……結局のところは確信に至っていない」
一方通行「…………オイ……って事は…」
土御門「正解。セリオス、そして殺されたナルスはその『力』を持った連中と全く同じだ」
一方通行「!?」
683 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/13(日) 23:01:23.98 ID:wXv4avA0 [10/13]
土御門「不思議な力を持った連中は『力』の事を『破光』と呼び、『破光』を持つ人間を『破人』と言っているらしい……。
誰が名づけたのかは知らないが、様々な術式や詠唱で多種多様な魔術に比べて全くそういった必要がないらしい……『面倒を省く』つまり
『破る』と言う意味だろうが、そんな事はどうでもいい。大事なのは、そういう『厄介な人間』が増えているという現実だ」
一方通行「……魔翌力ってのと、どォ違うンだ?」
土御門「今も言ったが、魔術との違いは術式や詠唱、発動条件が一切ない事。そして元々ソイツが持っている魔翌力の違いなのか分からんが
個人差もある。わかりやすく言えば『体内のエネルギー』を直接使用しているらしい」
一方通行「能力とも…違うってか?」
土御門「魔術よりむしろ『科学』に近いかもしれんが、『開発』なんてものは当然免除。まぁレベルがソイツの『力』次第ってのは類似
しているがな。そもそもあの力に『脳』が必要なのかが疑問だ」
一方通行「……あンな力持ったヤツが増えてるってのか……それも世界で…」
土御門「――ま、『学園都市』自体は今現在特に影響はないから、あまり考えるな。だが、『破人』とやらがこの先どんな行動を起こす
のか分からない以上、早めに知っておいた方が良いっちゃ良い」
一方通行「…今は平気って事か?」
土御門「あぁ、大半の『破人』はケタ違いな力にビビって出頭している。『学園都市』でもその力について研究したいところだが…
出頭した連中は各国一般に手の届かない場所に隔離、学園都市に研究対象(サンプル)を差し出す国はゼロ……だったが…」ニヤ
一方通行「……まさか、オマエらが来た目的ってのは…」
土御門「――そう、研究対象(サンプル)としてセリオスを確保する事だにゃー♪表向きは『不法侵入者の確保』になってるがな」
結標「……最初はまんまと騙されたわよ。この詐欺師」
土御門「褒め言葉だぜぃ」
一方通行「……くっだらねェ。それで、俺にどォしろってンだ?」
土御門「『今』は何もしなくて良い。まだ出頭していない『怖い破人』が世界征服でも企まない限りは……安全だにゃー」
一方通行「…………」
684 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/13(日) 23:27:50.18 ID:wXv4avA0 [11/13]
一方通行「…………本当か?……ソイツは……」
土御門「事実だ。だが、今我々……いや、『学園都市』に出来る事は何もない。まだ様子見の段階だからな」
結標「――流石のあなたも…驚いたみたいね」
一方通行「その力ってのを体験したからなァ。あンなのがこの先増えるンじゃ、その中に『バカ』が混じってもおかしくねェ……」
土御門「だからトップクラスの機密なんだにゃー。近い未来の脅威ってヤツだ。近い内、学園都市で大地震が起こるかもしれないって
予測しているようなもんだにゃー」
一方通行「………」
土御門「…それに、研究対象(サンプル)も手に入った。これで少しは良い情報が加わるだろう」
海原「……未来は神のみぞ知る…ってヤツですね」
一方通行「あァ?海原、オマエいたのか?」
海原「ずっと黙ってたからって忘れないで下さい……」
――――
――黄泉川家前
一方通行「………」
上条と禁書目録を見舞いに病院へ行こうとも思ったが、時間も時間である。
見舞いは明日にして、まずは帰らねばと思った一方通行は黄泉川宅(自分の家)の前まで来た。
今日は色々な事が起こり過ぎた。帰路の間、土御門の話を頭で何度も思い返す。が、現状で何か出来る問題でもない。
とりあえず普段通りの生活に戻ろう…と一方通行は決めて、合鍵で家に入る。
――ガチャ
689 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/14(月) 00:33:30.66 ID:SSHuJfQ0 [1/15]
―――黄泉川家
一方通行「――………」バタン
垣根「――……よぉ、遅かったな」
最初に出迎えたのは垣根だった。
一方通行「……おォ、クソガキは?」
垣根「もう夜の12時だぜ?とっくに寝かせたよ」
一方通行「そォか、ご苦労さン」
リビングへ向かう一方通行。しかし、誰もいなかった。
一方通行「――黄泉川や芳川は?」
垣根「黄泉川さんは仕事行っちまったよ。警備員ってホント大変だよな……芳川さんは知らねぇ。帰ったらいなかった」
一方通行「……チッ、またどっかで飲ンでやがるな」
垣根「……上条やインデックスちゃんは?」
一方通行「…病院だ……」
垣根「大丈夫なのか?」
一方通行「あァ、無事だ。三下はちっと怪我しちまったけどなァ。明日見舞いに行く」
垣根「俺も行くわ」
一方通行「……好きにしろ」
690 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/14(月) 00:59:29.76 ID:SSHuJfQ0 [2/15]
垣根「何か元気ねえな……何かあったのかよ?」
一方通行「別にィ。いつもこンな感じだろ」
垣根「……相手強かったのか?」
一方通行「……ハッ、所詮雑魚だ。三下が無茶して怪我しながらもヤツの『訳分かンねェ力』防いで、俺がベクトル変換させてハイ終ゥー了ォー。ってなァ」
垣根「………そっか、まぁ無事なら良いんだけどよ……打ち止めちゃん心配してたから、明日頼むぞ?」
一方通行「あァ?」
垣根「元気づけてやれってこった。さて、風呂温まってっから入ってこいよ」
一方通行「………母親かオマエ。勝手に入るっつの…」
垣根「パジャマとパンツ、脱衣所に置いとくぞー」
一方通行「やめろってンだよ!気色悪ィ!」
―――カポーン…
(……俺がいたのに、三下を怪我させちまった……いくら相手の力の得体が知れなかったからって言っても、そンなのは言い訳にしかならねェ。
ましてや…今回は『グループ』の仕事に三下達を巻き込ンだ様なモンだ。いくらシスター攫われたっつっても、知らなかったっつっても…
事実は変わらねェだろォがよ……それより……何よりも許せねェのは!―――)
(――三下が傷ついてた時……何で俺は動かなかったンだ!!クソったれ!!!……もォ少し遅かったら……俺は…アイツを見殺しにしてたかも
しれねェ…)
――風呂場で湯船に浸かりながら、一人葛藤する一方通行がいた……。
691 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/14(月) 01:55:33.07 ID:SSHuJfQ0 [3/15]
―――翌日……
「………ン…」
一方通行は布団からのそりと起き上がった。
横のベッドには片足はみ出したまま爆睡する垣根がいた。
基本、どこでも眠れるのだが、最近はベッドの寝心地に慣れきってしまった為、違和感がある。
一方通行は眠そうな目つきで垣根を見る……。
結局、昨日は「疲れた」と言って早く寝てしまった。空気を読んだのか、垣根はうざい口を開く事なく、「おやすみ」の
一言で寝息を立てた。
今日は上条の見舞いに行く予定である。
昨日帰る途中土御門から電話が入り、「打撲を負ったもののニ、三日の入院」で済んだらしい。
すでに意識も取り戻したと聞いた時、心底安堵したのを覚えている。
時計は7時半を指していた。もう少し寝ようかと思ったが、目も覚めてきたので仕方なく起き上がる……と、そこへ――
――バタンッッ!!
「――おかえりー!ってミサカはミサカは昨日言えなかった事を思い切り言いつつアナタへダーイブ!!」バッ
「――ぐおォ!!」ボフッ
――すっかり元気になった打ち止めが一方通行目掛けて飛び込んできた。
692 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/14(月) 02:21:02.06 ID:SSHuJfQ0 [4/15]
一方通行「――こンのクソガキィィ!!いきなり飛びついて来ンじゃねェよ!危ねェだろォが!それと、重いから早くどけ!」
打ち止め「――だってー!昨日は帰って来るまで起きてるつもりだったんだもん!ってミサカはミサカはぶーたれてみたり!」
一方通行「夜更かしは体に悪ィンだよ!ガキは早く寝て正解だっつの!」
打ち止め「何だよー!せっかく心配したのにぃー!ってミサカはミサカは―――」
垣根「――……うっせえなぁ……日曜くれぇゆっくり寝かせろよ……ったく…」
一方通行「……ってコイツも寝起き悪ィンじゃねェかよ…」
打ち止め「今日確か火曜日だよ?ってミサカはミサカは寝言にツッコミを入れてみる」
垣根「――…んぁ?……その声、打ち止めちゃんか?……おはよぉ…」
打ち止め「おっはよー!ってミサカはミサカは元気に挨拶しつつお兄ちゃんにもボディプレース♪」バッ
垣根「――ふぎゅぅッッ!!?」
打ち止め「おーにーいーちゃーんー?朝だよー?ってミサカはミサカは布団に潜り込んだアナタの顔を覗き込んでみたり」
垣根「………あー、ギブっす……起きますよぉっと……ふぁあ…」ムク
一方通行(…………俺もクソガキに起こされてる時は端から見たらあンな感じなのか…?自分で見て気持ち悪くなるくれェ微笑ましいじゃねェか…)
―――起きた三人は仲良く(?)リビングへ――
黄泉川「――お、三人ともおはよう。朝飯出来てるよ。さっさと食べな」
垣根「――おはよーございやす。そしていただきますっと」
打ち止め「――おはよーヨミカワ!ってミサカはミサカは挨拶と同時にテーブルについていっただっきまーす♪」
一方通行「――おォ、芳川どォした……って訊くまでもねェか。飯、いただくわ」
黄泉川「んじゃ、あたしは寝るじゃん。さっき帰ったから眠くてもう限界…ふぁあ……おやすみ」――バタン
693 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/14(月) 02:45:32.69 ID:SSHuJfQ0 [5/15]
――黄泉川は眠そうにあくびをし、寝室へ消えて行った。
垣根「――夜勤明けだってのに飯まで作ってくれて……ホント良い人だよなぁ黄泉川さんって……マジ尊敬するわ」
一方通行「――オマエが人を敬う姿ってすげェ違和感あるな…」
垣根「うるせぇ!良いだろぉが!こちとらお前と違って捻くれてねえんだよ!」
一方通行「…朝から星になりてェのかオマエはァ?」
垣根「うっわー、すぐ暴力かよ。やめてくんねぇ?暴力にすぐ訴えるのは頭悪い証拠なんだぜ。の○太くんでも知ってるぞ」
一方通行「オマエがの○太なら俺はジャイ○ンだなァ。オラの○太、コーヒー買ってこいよ。オマエのモノも俺のモノってなァ!」
垣根「テメェ!誰がの○太だコラァ!!溶かすぞ!」
一方通行「垣根のくせに偉そォな口利くからそォなンだよ。身の程を知れボケが」
垣根「テンメェェ……こーなったらテメェのウィンナー横取りだ!――――って何ィ!?避けやがった!?」
一方通行「バカじゃねェのか?何度も同じ手喰らうかよ。……コレなーンだ?」ブラ…
垣根「――あぁっ!それ俺のプチトマト!テメェいつの間に!?」
一方通行「こンな健康的なのオマエに似合わねェっつの。ミートボールの恨みだァ。コイツは俺が食ってやらァ」パク
垣根「あぁぁぁーーーーー!!!!俺のプチトマトーーーー!!!テメェよくもォォおお!!!」
打ち止め「お兄ちゃん!うるさい!!ってミサカはミサカは行儀悪いお兄ちゃんを叱ってみたり!」
垣根「――ゴメンナサイ。一方通行テメェ後で覚えてろ」
一方通行(今日は勝ったな……)ニヤ
694 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/14(月) 03:15:47.17 ID:SSHuJfQ0 [6/15]
――洗面所・何故か三人一緒に…
打ち止め「――狭いよー!ってミサカはミサカは文句つけてみる!」
一方通行「――っつーか何で一緒に来てンだオマエらァ!」
垣根「――俺は食ったらすぐ歯ぁ磨かなきゃダメなんだよ!おい、一方通行、狭ぇからもっと端行けよ」
一方通行「居候のくせしやがって何ほざいてンですかァ?オマエがずれろ」
打ち止め「ぎゅうう……苦しい…ってミサカはミサカは二人に挟まれながら必死に歯を磨いたり…っていうかアナタも居候だよね?」
一方通行「オマエもな。オイ、居候の下っ端ァ。タオルよこせ。目開けらンねェから見えねェ」
垣根「何?お前まさか水ん中で目開けられないタイプ?うわぁ、ダセェ……っつか何だ居候の下っ端って……?」
一方通行「うるせェ!!さっさとよこせったらよこせ!!」
垣根「……ったく、ほらよ」パサ
一方通行「…ふゥ……最初から素直に渡しゃァイインだよ」フキフキ
打ち止め「シャンプー目に入っただけで涙ぐんでたもんね。ってミサカはミサカは思い出してみたり」
垣根「……シャンプーハットが何故置いてあるのかやっと分かったわ…」
一方通行「日常で満足な『反射』が出来なくなっちまったンだから免疫ねェンだよ!悪いかァ!?……オイ、誰が涙ぐんだンだァ?言ってみろこのクソガキ」グリグリ
打ち止め「――イタタタ!!狭い中で器用にグリグリしないでー!!ってミサカはミサカは懇願してみるーっ!!」
垣根「っつってももう半年近く経ってんだろ?慣れろよそろそろ…」
一方通行「苦手なンだよ。水とか目に入るとすぐ目が赤くなっちまう」
垣根「………元々赤いじゃん」
一方通行「」
695 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/14(月) 04:06:45.12 ID:SSHuJfQ0 [7/15]
一方通行「そ、そりゃァ瞳の色だろォがァ!白目部分の事言ってンだよ俺はァ!」
垣根「……目全体が赤……なんとも不気味だなそりゃあ…」
打ち止め「一瞬予想外なツッコミ入れられて焦ったね?ってミサカは――あいたっ!!」ズビシ
一方通行「オイ、そこの歯磨き粉取ってくれ」
垣根「ったく……人使い荒ぇなぁ。ほらよ」パッ
打ち止め「……うぅ…そのまま無視かよ…ってミサカはミサカはチョップされた頭をさすりながら愚痴ってみたり…」スリスリ
一方通行「オイ、打ち止めァ。この後三下の見舞いに病院行くンだがよォ……オマエも来るか?」シャカシャカ
打ち止め「――え!?あの人また入院したの!?ってミサカはミサカは驚いてみる」
垣根「『また』って……アイツそんなしょっちゅう入院してんのか?」
打ち止め「あの人専用の個室があるよ♪ってミサカはミサカは暴露してみる。そんで、その隣がこの人の―――ご、ごめんなさい……何でもないです…」
一方通行「(ギロリ)………ンで、行くの?行かねェの?」
打ち止め「行くー!ってミサカはミサカは二つ返事でOK!」
垣根「見舞いなら手ぶらじゃマズイよな……途中何か菓子でも買ってくか。インデックスちゃんにも」
一方通行「…あァ、イインじゃねェのォ?」
打ち止め「ミサカもお菓子ー♪」バシャバシャ
一方通行「わっ、また水が目に……こンのクソガキがァァ!!水飛ばすンじゃねェって何度言ったら分かンだゴルァァあああ!!!」
――こうして三人は身支度を済ませ、仲良く(?)外へ――
698 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/14(月) 18:07:44.67 ID:SSHuJfQ0 [8/15]
>>696 正解っす。PCついたまま飛んでましたwwwwww
少ないですが、投下再開します。
700 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/14(月) 18:36:32.24 ID:SSHuJfQ0 [9/15]
――黄泉川宅付近の商店街――
打ち止めを真ん中に手を繋ぎ歩く学園都市のツートップ。
今、最も誘拐される可能性の低い少女は間違いなく打ち止めだろう……。
――花屋
垣根「やっぱ見舞いに花は欠かせねえな」
打ち止め「キレイー…ってミサカはミサカは色とりどりのチューリップに目をうっとりさせてみたり…」
一方通行「オマエら見舞い相手考えろよ。病弱少女じゃねェンだぞ?花なンてどォでもイイだろォが」
垣根「んだよ、花は世界のシンボルだぜ?もらって喜ばねえヤツはいねえだろ」
一方通行「あの三下が、俺やオマエから花もらって喜ぶかァ?っつかオマエが花持って歩く姿がなンかムカつく……クソガキならまだしも…」
打ち止め「じゃあミサカが持つ!ってミサカはミサカは立候補!コレが良いなぁ…」
垣根「……打ち止めちゃん……それ菊………縁起でもねえって…」
一方通行「嫌がらせにも程があンだろ……コレなンてどォだ?」
垣根「カーネーションってお前、母の日かよ!」
一方通行「うっせェなァ、じゃァオマエは何がイインだよ?」
垣根「やっぱコレだろ」ニヤ
打ち止め「……紅一点な程真っ赤だね…ってミサカはミサカは痛そうな棘に目を細めてみたり」
一方通行「ねェ!一番ねェわ!なンだそのデート使用でしか使わねェ様な薔薇はァ!ンなのもらってどォすンだよ!?」
垣根「綺麗な薔薇には棘があるのさ……ってね」キリッ
一方通行「咥えてマンダム決めてンじゃねェよ!!本当にキメェ!棘に刺されて流血しろ!」
垣根「んだとコラ。喰らえ!『薔薇の鞭(ローズウィップ)』!!」ヒュバッ
一方通行「イヤそれ『未元物質』だろ?異物を薔薇に入れて誤魔化してンじゃねェよ。そしてその絵面全く似合ってねェぞ」
701 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/14(月) 18:55:30.57 ID:SSHuJfQ0 [10/15]
垣根「いっぺんやってみたかったんだよぉぉ!!」
一方通行「あァーもォめンどくせェ!っつか何で花屋なンだよ!?そこいらの菓子屋で充分だろォ?」
打ち止め「ねーねー、この花買って良い?ってミサカはミサカはアナタの手をクイクイ引いてみる」クイクイ
一方通行「あァ?勝手にしろよ。小遣い渡したろ?ソイツで好きに買え」
打ち止め「うわーい♪ってミサカはミサカはレジまでダッシュ!」
一方通行「オイ!コケっから走ンな!」
垣根「とりあえず、コレでいっか…」
一方通行「なンの花だよそれ……」
垣根「『ハエトリグサ』だってよ」
一方通行「………もォイイやそれで」
――花屋の戦利品『ハエトリ草』
――オモチャ屋
一方通行「――…………何故?」
垣根「いや、上条プラモ好きかなぁって………おっ!すげぇ!!ズゴック安い!!」
一方通行「……オマエが寄りたかっただけだよなァ?そォだよなァ!?」
打ち止め「あっ、この人形可愛いー!ねぇ、どうコレ?」
一方通行「………オマ……それ」
垣根「日本人形……何でガンプラが並ぶ中にそんなモノが……?」
打ち止め「………?」
一方通行「……今すぐそれ返してこい。夜中魘されたくなかったらな…」
打ち止め「えぇー!買いたい!ってミサカはミサカは――」
一方・垣根「ダ メ で す!」
702 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/14(月) 19:16:44.01 ID:SSHuJfQ0 [11/15]
打ち止め「――ウルウル…」
垣根「あ…ゴメン打ち止めちゃん!けど……それは…」
打ち止め「……ダメ?ってミサカはミサカは目をウルウルさせながら上目遣い…」
垣根「///……ダメだ、一方通行。俺コレには勝てねえわ……買ってやろうぜ?」
一方通行「///………チッ、仕方ねェなァ」
打ち止め「わーい!やったー!」(ってミサカはミサカはフフ…ちょろいモンよ。と内心でほくそ笑んでみたり)
一方通行「ただし、置いた場所から動いたり髪が伸びたりしたらすぐ捨ててこいよ。ついでにお祓いにも行け」
打ち止め「?……これ、あの人のお見舞い用だよ?ってミサカはミサカはキョトンとしてみる」
一方・垣根「…………………」
―――三下ァ……言っとくが俺らは一応止めたンだからなァ……恨むンならクソガキを恨め……
――オモチャ屋の戦利品『日本人形』
――菓子屋
一方通行「――ったく……つまらねェ時間食っちまったじゃねェか。オマエが訳分かンねェプラモに夢中になってたからだぞォ!」
垣根「テメェ!ガンプラ馬鹿にしやがったら承知しねえぞ!……ってか、何で俺が日本人形持ってんの?こんなん持って歩きたくねえよ…」
一方通行「クソガキにそンな不気味なモン持たせる訳に行くかよ」
垣根「じゃあテメェが持てよ!って事で、パス」サッ
一方通行「………」カツカツカツ…
垣根「スルーしてんじゃねぇぇえええ!!!」
703 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/14(月) 19:50:12.26 ID:SSHuJfQ0 [12/15]
垣根「おいぃ!!ハエトリ草も俺が持ってんだぞぉ!?この俺を『荷物持ち』で使うなんざ良い度胸じゃねえか!!」
一方通行「ごっちゃごちゃうるせェぞ格下ァ。俺は菓子持ってやるンだし、ガキは自分で買った花持ってンだ。何か文句あンのかァ?」
垣根「大アリだこのクソボケ!!何で俺が『グロ担当』なんだよ!?俺が菓子持つっつうの!」
一方通行「逆に考えてみろ。そンな『危険物』を持てるのは、オマエしかいねェ……違うか?」
垣根「………そりゃ……確かに……そうだよ、こんな危ねえモンを所持出来んのは……やっぱこの俺様だけだよなぁ?」ニヤリ
一方通行(……ナンバー2がこンな馬鹿じゃ、学園都市も末だな…)
打ち止め「…ねぇ、お兄ちゃんの笑顔が不気味なんだけど……?」
一方通行「……人形に憑りつかれたンだろ……放っとけ。さっさとクッキーでも買って病院行くぞ」
打ち止め「あ、待ってよー!」
――菓子屋の戦利品『まともなクッキー』『インデックス用のホールケーキ』
垣根「――……おれの……だぁく…またぁに……じょうし…きは……」ブツブツ…
打ち止め「………お兄ちゃん、目の焦点合ってないよ?……顔色も何か悪いし……」
一方通行(オイオイ……マジで憑りつかれちまったのかよォ……)
――Pririri♪
一方通行「――ン?」
打ち止め「アナタのケータイだね」
一方通行「……メールか……どれ」パカッ
垣根「――………だぁく……そぉ………だあくなんだよ…ひへへ………のろいは……とけねぇぞぉ………くひひ」
704 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/14(月) 20:05:00.16 ID:SSHuJfQ0 [13/15]
――メールは美琴からだった。
from:超電磁砲 件名:昨日はお疲れ♪
本文
よっ。昨日は楽しかったわ!色々気を遣わしちゃってゴメンね…
ところでさ、アイツの携帯繋がらないんだけど…アンタ何か知らない?
何か知ってたら返事ちょうだいね♪
―――
一方通行「………」ピ・ポ・パ…
打ち止め「メール誰から?」
一方通行「オマエにゃ関係ねェ」ピ・ピ・ピ…
垣根「………へへへ………おまえも………めいどの…りょこう……しゃぁぁあ……ひはっ」
打ち止め「……ねぇ、お兄ちゃんがマジでヤバイかも…ってミサカはミサカはのんびりメール打ってる場合じゃないよ?ってアナタに訊いてみたり…」
一方通行「………あァ?病院置いてくりゃァ何とかなンだろ……送信っと」――ピッ
705 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/14(月) 20:31:22.06 ID:SSHuJfQ0 [14/15]
―――常盤台女子寮
――Pipipi♪
美琴「――お、来た来た」パカ
from:一方通行 件名:RE
本文
三下なら病院だァ。昨日別れたあと絡まれたンだとよ。怪我は大した事ねェらしいから心配すンな。
俺らももォすぐ病院着くからオマエも来れば?
―――
美琴「――…ウソ!?あの馬鹿またぁ!?」
黒子「――……先ほどから誰にメールしてますの?」
美琴「え?一方通行よ」
黒子「また殿方と……いったいいつの間に……」プルプル…
美琴「……まだ昨日の事怒ってんの?うっかり忘れてたんだからゴメンって――」
黒子「――それはよろしいんですの!放置プレイもまた快感ですわ♪」
美琴「………アンタってヤツは………って、こうしちゃいられないわ!――」バタバタ
黒子「――!?お、お姉様どこへ?」
美琴「――決まってんでしょ!病院よ!」
黒子「ま、待って下さいましーー!!」ドタバタ…
715 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/15(火) 17:59:44.82 ID:FV4u/6Y0 [2/14]
――病院・上条専用個室
上条はベッドから体を起こし、ぼんやりと窓の外を見ていた。
「………」
夜中に一度目覚め、カエル顔の医者から禁書目録の無事を聞かされた上条はそのまま安堵し、再び眠りに落ちた。
そしてつい先ほど目を覚ましたという訳だ。
体じゅうがまだ少し痛むが、今回は打撲で済んだらしい。右腕を切り落とされたり、後方のアックアにやられたりした時に比べれば大した事のない
怪我だった。
それよりも、一方通行や禁書目録の顔を早く見て安心したい……それが上条の本音だった。
イヤな言い方だが…入院するのはもう慣れた。
「………インデックス…」
まずは……禁書目録に謝りたかった。
――早く会いたい――
―――その時、病室のドアがガチャリと開いた。
「――!」
禁書「――………」
716 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/15(火) 18:10:46.08 ID:FV4u/6Y0 [3/14]
「――……イン…デックス…」
禁書「………」
開いたドアの向こうに居たのは……今会いたいと思っていた禁書目録だった。
彼女は無表情だった……。
禁書「………」ズカズカ
無言に無表情のまま、禁書目録は部屋に入り…上条の目の前まで来た。
上条「……インデックス。体は…大丈夫か?」
禁書「……平気だよ…」
そっけなく答え、すぐに上条に問い返す。
禁書「とうま……私に何か言う事は?」
上条「………」
一瞬迷ったが……上条はその姿勢のまま頭ごと上半身を禁書目録に向けて下げた。
上条「―――本当に悪かった!嘘吐いちまって……ゴメン!」ガバッ
禁書「…………」
718 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/15(火) 18:24:18.56 ID:FV4u/6Y0 [4/14]
上条「――俺が悪かった!好きなだけ噛み付いてくれて良い!もう絶対騙したりしないから……だから許してくれ!インデックス!」
必死に謝罪する上条……禁書目録は「ハァ…」と溜息を吐いて上条に笑顔を見せる。
禁書「……もう、良いんだよ。とうま」
上条「――え……?」
禁書「嘘を吐いた事はもう許してあげる。私が来たら迷惑だったんだよね?」
上条「そ、そういう訳じゃ…」
禁書「ううん、良いの。危険な事に巻き込まれるよりよっぽど良い……けど」
上条「けど……何だ?」
禁書「……とうまが幸せになれるんなら……たとえ相手が短髪でも私は我慢するよ?だから、もう少し…私をとうまの家に置いて欲しいかも」
上条「……………………は?」
――その時の上条は……まるで一時停止している映像のように動きが止まっていた。
そして、数秒の停止の後…目を丸くさせて疑問を顔じゅうに表すのだった。
719 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/15(火) 18:44:46.36 ID:FV4u/6Y0 [5/14]
上条「…………インデックス…?……今の、どーゆー事デスか?」
禁書「とぼけなくて良いんだよ。とうま、短髪と『つきあって』るんでしょ?」
上条「………『短髪』ってのは……御坂…だよな?」
禁書「そうとも言うね」
上条「………はぁぁああああああ!!!?」
禁書「――うわっ!?と、とうま…?」
上条「インデックス!お前何勘違いしてんだ!?俺と御坂が付き合ってるぅ!!?ないない!!付き合ってなんかいません!!」
禁書「えぇ!?じ、じゃあ『アレ』はいったいどういう事かな!?」
上条「……アレ?何だよアレって…」
禁書「誤魔化したってダメだよ!私見たんだから!とうまと短髪がベンチに仲良く座ってたのを!!」
上条「――!!」
禁書「……とうま……短髪の肩に頭乗せて『気持ち良さそう』に眠ってたよね……」
上条「――イ、インデックス!待て!落ち着いて聞いてくれよ。それはだな……」
禁書「……私の記憶能力ナメたらいけないかも……短髪、すごく幸せそうな顔してた事もはっきり覚えてるんだよ」
上条「だ、だからインデックス!――」
禁書「とうま……さっき『好きなだけ噛んで良い』って言ったよね?………お言葉に甘えさせてもらうんだよ…」――ギラッ
上条「」
720 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/15(火) 19:09:19.31 ID:FV4u/6Y0 [6/14]
―――病院前
「――やっと着いたねー!ってミサカはミサカは一番乗り♪」
打ち止めが病院に一目散に走っていく。
その後ろに、杖をついていない方の手で垣根の肩を抱き、ゆっくりと歩く一方通行の姿があった。
心底ウザそうに舌打ちをして――
一方通行「――ったく……手間掛けさせやがってこの野郎…歩きにくくてしょォがねェ……なンで俺がこンな事しなきゃなンねェンだクソが……」ブツブツ
垣根「にへへ……たけのうち……まろは…ここじゃ………ぐひら」
一方通行「……あのクソガキ……もォ見えねェトコまでさっさと走りやがって………おらメルヘン、病院着いたぞ。いつまでも夢見てねェで自分で歩けコラ」ユサユサ
垣根「………くはぁ………ぎゅう……にゅう……ぐへ」グラグラ
一方通行「…………ダメだこりゃァ……アイツの右手でダメだったらかなり面倒くせェぞ……っつか三下の野郎起きてンだろォな…?―――ン?」
――トウマノバカーーー!!! ガブリ
ンギャアーーーーー!!! フコーーウダアーーーーー!!!
一方通行「……………余計な心配だったみてェだな…」
垣根「ぎはは」
――シスター、三下にはまだ『重大な仕事』が残ってる。息の根は止めンじゃねェぞ……。
未だラリ状態の垣根を横目でみながらそう思った…。
722 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/15(火) 19:24:20.78 ID:FV4u/6Y0 [7/14]
―――上条病室
上条「………インデックス……俺…一応怪我人なんデスけど……」ボロボロ
禁書「とうまが悪いんだよ」プンスカ
――上条は…嘘は不幸体質のせいですぐバレるという事に今ごろ気づいた。
もう二度と吐くまい…と固く誓った。今度は本当に骨まで食われるかもしれない。
何とか誤解は解けたが、無自覚で鈍感な上条の性格を良く知っている禁書目録にとっては同じ事だった。
禁書目録にとって美琴はライバルのようなもの……いつか美琴が想いを告げたら…この少年はどうするのだろう…。
しかし、禁書目録にとって今はそれよりも――
――ぐぎゅるるるる………
「……おなかへった……」
―――――
黒子「――お姉様、バス来ましたわ」
美琴「――やっとか、ずいぶん待たされたわね…」
――駅には、病院前まで向かうバスに乗り込む常盤台中学の制服女子二人の姿があった。
724 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/15(火) 19:46:29.14 ID:FV4u/6Y0 [8/14]
>>721少なくとも一方通行はそう思ってる設定でお願いします。
―――バス内
黒子「――……それにしても、あの殿方も懲りませんわね…」
美琴「全くよ!人の気も知らないで………」
黒子(……切なそうなお姉様の表情……けれど、その対象はあの『類人猿』に……こうしてお見舞いの品をダッシュで買いに行く辺り、
もうわたくしの入り込む余地はありませんの…?)
美琴とは違う意味で切ない表情をする黒子に美琴は声をかける。
美琴「――何かゴメンね?付き合わせちゃって…」
黒子「とんでもございませんの!この白井黒子、お姉様の行く所ならどこまでもついて行きますわ」
美琴「……ほんと、ゴメン」
黒子「…昨日の事ならもうよろしいですの。楽しかったのでしょう?お姉様が楽しんでこられたのなら、わたくしはそれで充分嬉しいですの」
美琴「…ありがと。今度さ、初春さんや佐天さんと行こ?すごく楽しいわよあそこ♪帰るの嫌になるくらい」
黒子「そうですわね。わたくしも行った事ありませんので、楽しみにしてますの」
美琴「フフッ」
黒子「?……どうしたんですの?お姉様…」
美琴「……クスッ……あーダメだ。思い出したら笑えてきた……ププッ……喋っちゃおっかなぁ……でも怒るだろうな……」
黒子「……お姉様…?」
美琴「ダメ、我慢できないわ。ゴメン一方通行!………黒子、実はね―――」
――昨日のダブルデートでの『一方通行』について容赦なく語る美琴……バス内は女子学生二人の笑い声に包まれた……。
725 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/15(火) 20:02:59.96 ID:FV4u/6Y0 [9/14]
―――女子中学生二人にネタにされている事などつゆ知らず、一方通行、打ち止め、憑依垣根は上条の部屋を訪れた。
――コンコン
禁書「?――とうま、誰か来たかも」
上条「はーい、どうぞー」
――ガチャ
打ち止め「――こんにちはー!お見舞いに来たよ!ってミサカはミサカは一番に挨拶してみたり」
一方通行「――……よォ、生きてたか」
垣根「――にへら」
上条「おう、打ち止めに一方通行に……垣根……だよなぁ?」
禁書「こんにちは、らすとおーだーにあくせられーたに……かきね?……何か顔が変かも…」
一方通行「……事情を話したい所だが、めンどくせェ。三下ァ、コイツの頭に手を置け。まずはそれからだ」
上条「………ハイ?」
垣根「へらへら……ちよぉ……すてたもりけり………くへ」
上条「………バイオハザードですか?」
一方通行「この状態で羽でも出されたらさらにめンどくせェ。早くコイツの幻想ぶっ殺してくれ。ってかコイツ殺してくれ」
上条「……何かよく分かんないけど……そげぶ」ポン…
垣根「にへ―――……はっ……あれ?」
726 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/15(火) 20:22:29.03 ID:FV4u/6Y0 [10/14]
垣根「――あ、あれ?俺……一体…」
打ち止め「わーい!お兄ちゃんが元に戻ったー!ってミサカはミサカは飛び跳ねてみたり!」
垣根「……何でもう病室来てんの?やべ、分かんねぇっつか思い出せねぇ……オモチャ屋出た辺りまで覚えてんだが…」
一方通行「……ふゥ…これで一安心だな。クソガキ、オマエがこンなモン見つけてくっから…」
打ち止め「……ミサカが……悪いの」ヒックヒック…
垣根「あ!一方通行、テメェ打ち止めちゃん泣かしてんじゃねえよ!」
禁書「何かよく分かんないけどひどいんだよ!あくせられーた!」
一方通行「――!?オ、オイ。お、俺が悪かったから泣くンじゃねェ!」アタフタ
打ち止め「……あとで鯛焼き買ってくれる…?」ヒックヒック…
一方通行「ンなモン好きなだけ買ってやるから泣き止めェ!」
打ち止め「――うわーい!鯛焼きー♪」ケロッ
一方通行「……あァ?」
上条「……まんまとやられたな」クスッ
垣根「……お前もそんなテンパるのな…」クスッ
禁書「あくせられーた可愛いかも」クスクス
一方通行「……チ、チ、チックショォォォおおおお!!!」
禁書「あ、私も鯛焼き食べたい!おなかぺこぺこなんだよ」
一方通行「好きなだけ食えクソったれ!!」
垣根「お、マジで?ラッキー♪」
一方通行「オマエはダメ」
上条「………俺は?」
727 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/15(火) 20:42:39.20 ID:FV4u/6Y0 [11/14]
――鯛焼き買出し組・一方通行、垣根帝督
――病院付近の鯛焼き屋
垣根「――なぁ、何で俺まで行かなきゃなんねえの?」
一方通行「――今にも旅立ちそォなオマエを病院まで連れて来てやったのは誰だと思ってンだ?あァ?」
垣根「………苦労かけたな」
一方通行「分かりゃァイイ。さっさと買って戻ンぞ」
垣根「おう、んでさ。お前、こしあんと白あんどっち?」
一方通行「俺はいらねェ。甘いモンは好きじゃねェンだよ」
垣根「……人生の半分は損してるぞ」
一方通行「別に構わねェっての。っつかコーヒーくれェ苦い菓子とかねェのかよ」
垣根「菓子って基本甘いよな。お、出来たっぽいぞ」
――アリガトウゴザイマシター
垣根「――ずいぶん買ったなオイ」
一方通行「シスターいるから余ることはねェだろ」
垣根「……最もで」
一方通行「お、ちょっとコレ持ってろ。自販でコーヒー買ってくる。ビニール袋もらうぞ?」
垣根「へいへい…」
―――ビニール袋から鯛焼き入りの紙袋を出し、ビニール袋を持って自販機へ歩く一方通行。数分後、ジュース入りのビニール袋をぶら下げて戻って来た。
垣根「――……打ち止めちゃん達のも買ってきたのか。気が利いてんな。っつか、何でブラックコーヒー2本あんの?」
一方通行「………三下用だァ」
729 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/15(火) 21:16:02.56 ID:FV4u/6Y0 [12/14]
垣根「……上条、ブラック飲むのか?」
一方通行「さァな」
垣根「…嫌がらせ?」
一方通行「違ェよ馬鹿!気に入るかもしンねェだろォ?」
垣根「……それはねえと思う。っつか、自分の好きなモン人に押し付けんの良くねえぞ?」
一方通行「別に押し付けたりしねェよ。飲ンでみるまで分からねェだろォが。俺が好ンでる味が三下に合わない保障はねェ」
垣根「………俺のジュースは?」
一方通行「あァ?ねェよ」
垣根「」
―――病室――
上条「インデックス!俺のお菓子まで食うな!」
禁書「欲しかったらここまでおーいで♪はい、らすとおーだーにはあげる」
打ち止め「わーい♪ポッキーおいしい」ポリポリ
上条「テメェらぁ………ん、何?この不気味な植物?」
禁書「それは…ハエトリ草だね。何でここにあるのかな?」
打ち止め「あの人とお兄ちゃんがお見舞い用にだって…」ポリポリ
上条「ハエを食べるってヤツか……ってか、何故にコレ?」
打ち止め「さあ……ってミサカはミサカは知らん顔」
―――病院前
美琴「――着いたわね。降りるわよ」
黒子「――お腹苦しくて……動けませんの」
730 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/15(火) 21:33:54.09 ID:FV4u/6Y0 [13/14]
美琴「アンタ、笑い過ぎ……プフッ」
黒子「お姉様こそ…顔が引きつってますわよ?けど傑作ですわ。是非わたくしも見たかったですの。第一位様の間抜けっぷりを」
美琴「バレたら多分殺されるから内緒よ?」
黒子「心得ておきますわ」
――美琴と黒子は談笑しながら上条の病室へ向かっていた。
上条「――おわっ!何だその不気味な人形は!?」
打ち止め「さっきまでお兄ちゃんに憑りついてたんだよ。ってミサカはミサカはお見舞いの品をアナタにプレゼント♪」ズイ
上条「………垣根に……ってマジで呪いの人形じゃねえか!何でこれだけ科学が発展した学園都市にそんなモンがあるんだよ!?」
打ち止め「オモチャ屋さんにあったよ?ってミサカはミサカは早く受け取るよう催促してみたり」ズイズイ
上条「…あ、ありがとう打ち止め。遠慮なくもらうよ…」(…………不幸だ)
禁書「大丈夫だよ。とうまには右手があるから」
上条「……呪いにも有効なのかこの右手は……知らなかった……」(ダメだ……どう考えても不幸な予感しかしない…けど返す訳にもいかないし……)
――コン、コン
禁書「――ん?あくせられーた達かな?」
上条「……早いな、どうぞー」
――ガチャ
「―――よっ、来てやったわよ!」
「―――お邪魔しますのー」
737 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/16(水) 19:00:32.26 ID:QoYoMck0 [2/12]
「―――よっ、来てやったわよ!」
「―――お邪魔しますのー」
そう言って入室してきた常盤台制服姿の二人の女子に上条、禁書目録、打ち止めは注目する。
上条「――おう、御坂に……白井も来てくれたのか」
禁書「……短髪……おっす」
打ち止め「お姉さまに黒子お姉さんだー!おっす!」
美琴「打ち止めもシスターもおっす!あれ?一方通行は?」
上条「あいつなら鯛焼き買いに行ったぞ」
美琴「ウソ!私も食べたいなぁ……もっと早く来れば良かったわ」
黒子「帰りにでも行けばよろしいですの。上条さん、粗品ですがお見舞い品ですの」ズイ
上条「お、サンキュー。わざわざ悪いな」パッ
黒子「いいえ、お姉様からの品ですから気になさらないで下さいな」
美琴「……ねぇ、怪我は平気なの?っていうか何があったわけ?」
上条「い、いや……たいした事じゃないんだ……か、階段から落ちたんだよ。なはは、間抜けだよなぁ」
美琴「え………?」(どういう事?一方通行と言ってた事が……)
禁書「短髪のお菓子もらっていいかな?」
上条「イ、インデックス!俺にもよこせ!っつーかテメェさっきから食いすぎだぞ!」
打ち止め「それはいつもの事なんじゃ…ってミサカはミサカはつっこんでみたり」
美琴「量ならあるから大丈夫よ」
黒子「……確か第一位様は鯛焼きを買いに行ってるんですのよね……それまで食べるんですの?」
禁書「とーぜん♪」パクパク
全員「…………」
738 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/16(水) 19:23:56.75 ID:QoYoMck0 [3/12]
―――その頃、一方通行と垣根は病院付近の裏路地にいた……。彼等二人の足元には、十人程の若者達が地面に倒れもがいていた。
ウーン イテエヨオー…
マジバケモノカヨ…
一方通行「――オイ」
垣根「ハイ、ナンデショウカ?」
一方通行「『コッチの方が近道だ』って言ったよなァ?」
垣根「うーん……言ったような言ってないような…」
一方通行「言っただろコラァ!何なンだァさっきから!思いっきり馬鹿共の溜まり場じゃねェか!これで絡まれンの三回目だぞォ!
鯛焼き覚めちまうだろがァ!!」
垣根「ま、良いじゃねえか。どうせ誰に絡まれようが負けるハズがねえんだし。むしろ絡んでくるヤツが気の毒過ぎるよな」
一方通行「………もォ二度とオマエを当てにしねェ……最初から来た時の道から帰りゃ良かった…」
垣根「まぁ方向的には合ってんだからこのまま行こうぜ」
一方通行「はァ?ふざけンな、戻るぞ。これ以上絡まれて時間食ってらンねェ。マジで鯛焼きが冷めちまう」
垣根「なぁに言ってんだ。今から戻る方が時間かかんだろ?このまま行った方が絶対早ぇって」
一方通行「じゃァオマエ一人でこの先の集団でも相手にしてろ。俺は戻る。おら袋よこせ、ンでジュース持て」パッ サッ
垣根「あっ、テメさりげなくトレードしてんじゃねえよ!そして踵返してんじゃねえよ!オイ!」
一方通行「………」カツカツカツ
垣根「オーイ!……分かったよぉ。戻るよ戻りゃぁ良いんだろ!?だから待てってこのやろ」タッタッタ
740 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/16(水) 19:39:39.64 ID:QoYoMck0 [4/12]
垣根「――っつーか、なんだかんだ言ってお前俺のジュースも買ってくれてんのな」
一方通行「……くっだらねェ」
垣根「けどお前、よく俺が『パインココア』好きなの知ってたな。教えたっけ…?」
一方通行「知ってる訳ねェだろォが。……嫌がらせのつもりで買ったンだよ」
垣根「だよなぁ♪ってオイ!」
一方通行「そンなのが好きとか………オマエの味覚はどォなってンだ?」
垣根「俺の味覚に常識は通用しねえ」キリッ
一方通行「………してやったりって顔してンじゃねェよタコ。置いてくぞ」
垣根「ま、待てコラ!」
―――病室
上条「あいつら遅いな……」
美琴「『あいつら』……一方通行と誰か一緒なの?」
上条「(しまった!)い……いや、俺の友達と一緒に行ったんだよ…」アタフタ
打ち止め・禁書「……?」
美琴「?…ふーん……」
黒子「それにしても、少し遅すぎでは?鯛焼き屋は近くにあるあそこですわよね?」
打ち止め「うん、多分……そこしかないと思うけど…」
黒子「わたくしがテレポートで様子を見てまいりましょうか?」スクッ
上条(――マズイ!!)
743 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/16(水) 20:04:22.74 ID:QoYoMck0 [6/12]
上条「――し、白井!大丈夫だって!なんたって一方通行だぜ?もうすぐ戻って来るから!」ワタワタ
黒子「……さっきから貴方、挙動不審ですわよ…?」ジロー
美琴「………アンタ……何か隠してるわね?」ジロー
上条「べ、別に何も隠してマセンガ……」
美琴・黒子「怪しい(ですの)……」ジー
上条(オウ、ピーンチ!!)
美琴「……ねぇ、アンタ達何か知ってる?」
禁書(……何かとうまが必死で口が出せないんだよ……)
打ち止め(……ミサカの勘が口を開くなって言ってる……ってミサカはミサカは黙秘権行使)
上条(言うな……言うなー!!)パチッ パチッ
禁書・打ち止め「……さあ、知らない」
上条(グッジョブ!!)
黒子「………まぁ良いですわ」
美琴「……そうね、もう少ししたら帰って来るんでしょ?」
上条「あ、あぁ勿論!……ところで、お二人はそろそろ帰らなくて平気か…?」
美琴「一方通行が帰って来るまでいるわよ。顔見せときたいし」ニヤリ
黒子「わたくしも風紀委員の仕事は午後からですが、第一位様にご挨拶しておきますわ」ニヤリ
上条(Ohー Shit………orz)
美琴「何……ウチらがいると何かマズイのかしら?」
上条「めめめ、滅相もございません!!」(マジでどうしよ……)
744 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/16(水) 20:31:56.16 ID:QoYoMck0 [7/12]
―――病院前
垣根「――おし、やっと着いたな」
一方通行「『やっと着いたな』じゃねェよボケ!三十分近くかかっちまったじゃねェか!なンでか言えたらこのまま手術室直行は勘弁してやる」
垣根「テメェが間抜けだから。はい以上。病室戻んぞ」
一方通行「一名様入りまァす」カチッ
垣根「イテ!イテ!い、石飛ばしてくんな!危ねえだろぉが!」バサッバサッ
一方通行「翼で防ぐな。大人しく喰らえ。そして入院しろ。ご臨終も可」 ゴスッゴスッ
垣根「不可に決まってんだろぉぉ!!――って、うわ!馬鹿テメ、ベンチは無し――!!?」バサア バシッ ゴシャアアアン
一方通行「めンどくせェから一言で言うぞ?――死ね」
垣根「お断りだボケ!テメェが死ねっ!」
――ドカーン ボカーン ボオオオオオン
ハイニナレヤアアアアア
スミクズニシテヤラアアアアアアア
黒子「………ん?何やら表が騒がしいですわね」
上条「――こ、工事!近くで工事してんじゃないか!?」アタフタ
746 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/16(水) 20:51:49.18 ID:QoYoMck0 [8/12]
美琴「イヤどう考えても工事の音じゃないでしょこれは!?」
黒子「まさか能力者の喧嘩では!?それならばわたくしが――」
上条「――俺が行くッッ!!」スクッ
禁書「と、とうま!?」
美琴「ば!アンタ何立ち上がってんのよ!?体は――」
上条「――美琴ぉ!」
美琴「――ハ、ハイ!?///」(み、みこと!?///)
上条「……皆を頼むぞ。安心してくれ、危険はない。誰も病室から出すな。白井もだぞ?わかったな!」キリッ
美琴「///……わ、わかった……わ」
上条「信じてるからな。美琴―――」ガチャ バタン タッタッタッタ…
禁書「とうま……行っちゃったよ…」
黒子「無茶過ぎですの!すぐわたくしも――!?」
――ガシッ!
黒子「――お、お姉様!?は、離して下さいまし!よろしいんですの!?このままでは上条さんが――」
美琴「ゴメンね、黒子……けど…悪いけど、誰もここから出す訳にはいかないわ」ユラ…
打ち止め「おや……お姉さまの様子が…ってミサカはミサカは久々に口を開いてみたり…」
黒子「お姉様、離すんですの!」ジタバタ
美琴「ダメよ、どうしても行くんなら……私を倒してからにして」
747 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/16(水) 21:04:27.08 ID:QoYoMck0 [9/12]
黒子(……こうなったら、お姉様もろとも――)
美琴「――先に言っておくけど、私と一緒にテレポートしたりしたら、アンタともう一生口利かないからね?」
黒子「――!!!?」
美琴「……ね、大人しくして」ニコッ
黒子「…………ハイ…ですの……」
美琴「それで良いのよ。誰も部屋から出ちゃダメだから」
打ち止め「……あ、あの……ミサカはトイr」
美琴「ダメ。アイツが戻るまで我慢しなさい」
禁書「……うぅ…短髪がいつもの三倍怖いんだよ…」
―――
上条「―――んで、何か言う事は?」
垣根「――足痺れた。正座もうやめていい?」モゾモゾ
一方通行「――さっきから石が脛に当たって痛ェ……」モゾモゾ
上条「ちっがぁぁぁうだろぉぉおおおお!!!」クワッ
一方通行・垣根「――ゴメンナサイ、ハンセイシテイマス」
750 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/16(水) 21:21:47.66 ID:QoYoMck0 [10/12]
――病院前、仁王立ちの無能力者の前に正座する二人の超能力者がそこにいた。
上条「――お前ら!!自分達の立場ってモンをちゃんと自覚してんのか?あぁ!?よりにもよって病院の前で戦争まがいの乱闘起こしやがって!
お前ら二人にとってはじゃれあいのつもりでも、周りからすれば国と国との戦争クラスなんだぞ!?喧嘩するなとは言わないが、時と場所を
考えろ!!」ガミガミ
一方通行「……オマエのせェだ」
垣根「いやテメェのせいだ」
上条「ふ た り と も で す!!!」
一方・垣根「……………」
上条「………まぁ、幸い犠牲者は出てないみたいだからもう良い。立ちなさい」
一方・垣根「スクッ―――!!うぉっ!足が痺れ――――!!!?」フラ…
―――合 体! (足がもつれて抱き合う二人)
一方通行「……………オイ」
垣根「…………んだよ?」
一方通行「離せ」
垣根「テメェが離せ。気色悪ぃ」
一方通行「……今離したらコケンだよ」ガクガク
垣根「ならそうしてやろうか?……と言いたい所だが、俺も離したらコケる」ガクガク
上条「……………」
751 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/16(水) 21:46:14.14 ID:QoYoMck0 [11/12]
足の痺れがとれるまで肩を組む二人。端から見たらまるで親友―――
一方通行「――ンな訳ねェだろクソがァァあああ!!!」
垣根「――うわっ!テメェいきなり何叫んでんだよ!?ビックリしただろぉが!」
一方通行「あァ?何でもねェよタコ。っつかイイ加減離せコラ。マジで気持ち悪ィ」
垣根「『お互い様』って言葉知ってる?テメェこそ腕に力入れてんじゃねえか!」
一方通行「ただでさえ足が不自由なンだよ俺はァ!っつかオマエでけェンだよこのノッポ」
垣根「んだと、この虚弱体質のチビ野郎!」
一方通行「――なッッ!!こ、この野郎ォォ!!」
垣根「やるかこの!――」
上条「肩組んだまま喧嘩すんなお前らぁぁあああ!!!」
一方通行「………最悪だチクショォ……」
垣根「全くだコンチクショォ……」
上条「ったくお前らは……」
一方通行「っつか三下ァ。オマエ出てきて平気なのかよ?」
上条「誰のせいだと思ってるんですか?だ れ の?」
一方通行「ケッ、オマエが出てこなくてもこンなメルヘン野郎なンざァすぐに手術室行きに出来ンだよ」
垣根「ほぉう、それは是非やってもらいたいもんだなぁ…」
一方通行「あァ?」ギロリ
垣根「お?」ジロリ
上条「大概にしとかないと、そろそろ上条さんマジでキレますよ?」
757 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/17(木) 21:38:00.40 ID:8jQ9VPE0 [2/8]
一方通行、垣根、上条は病室には戻らずに何故か中庭に来ていた。
ちなみに、すでに二人は肩を組んでいない。
―――
一方通行「――ったくよォ……こンなヤツと一時的とは言え二人三脚しちまうなンて……クソったれが」
垣根「――コッチもだ。体系だけなら悪くねえが、中身がよりによってコイツとは……もっかい人生やり直してぇ」
一方通行「………」――ギュウウウ
垣根「イッッ!!テ、テメェ足踏みやがったな!この!」――ギュウウウ
一方通行「ッッ!!やりやがったなこの野郎ォ!!ウラァ!」――ギュウ ギュウ
垣根「イテテテ!!ま、負けるかクソがぁ!!ウリウリィ!」――ギュウウウウ
オイ イマスグソノキタネエアシヲドケロ
ハ? テメエガドケロヨケガラワシイ
上条「………お前ら……」ググッ
―――ゴンッ! ゴンッ!
上条「――いいか?お前達に重大なお知らせがある。俺の話をよく聞けよ?」
垣根「重大なお知らせぇ?」タンコブ
一方通行「……何だソイツァ…つーか早く部屋戻らねェのか?」タンコブ
上条「……実は……御坂達が今その部屋に来てるんだよ」
一方通行「あァ!」タンコブ
垣根「………御坂って……まさか第三位か!?ってかどうした?一方通行」タンコブ
760 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/17(木) 22:04:36.68 ID:8jQ9VPE0 [3/8]
一方通行「……そォ言や超電磁砲にオマエが入院したってメールしといたンだった……すっかり忘れてたわ」
垣根「上条お前……第三位とも仲良いのか?」
上条「……まぁ、友達っつーか戦友っつーか……って今はそんなことどうでも良いんだよ!垣根!お前には消えてもらいたい」
垣根「あ?テメェ喧嘩売ってんの?」
上条「イ、イヤすまん!言い間違えた!お前は御坂と会うの気まずいだろ?だから…その……しばらくどっかで時間潰してきて欲しいんだ……」
一方通行(……気まずいねェ……三下ァ、コイツが一番気まずかったハズの俺と今同じ部屋に住ンでるの忘れてねェか?)
垣根「………確かに……今会うのは気まずいかもな」
上条「……だろ?お前はともかく、御坂はキレると周りが見えなくなるし、もし部屋で暴れられた日にはたまったモンじゃないからな……」
垣根「そうだな……俺短気だから喧嘩売られると買っちまうかもしんねえし、上条には迷惑かけらんねえ」
一方通行「………はァ?」
垣根「よし、分かった。どっかで適当に時間潰してくるわ」
上条「すまない垣根。そうしてくれると助かるよ!」
垣根「気にすんなって。んじゃ、後でな」
上条「おう」
意外にあっさりと、垣根は去っていった……。
一方通行(どォいう事だコイツァ……アイツがあンなもの分かりイイ訳ねェ……っつーかあンな空気読めるヤツじゃねェ………何か企ンでやがンのか……)
上条「――ふぅ…さーて、部屋戻るか。ん?どうしたんだ?一方通行」
一方通行「!――な、何でもねェよ。行くぞ」カツカツ
上条「…?」
761 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/17(木) 22:23:35.25 ID:8jQ9VPE0 [4/8]
―――病院内通路
上条「――お、鯛焼きずいぶん買ってきたな!しかもジュースまで……悪いな」
一方通行「別に大した事じゃねェよ。…しっかしあのメルヘン、やけにあっさりしてたと思わねェか?」
上条「…え?そうか?空気読める良いヤツじゃん」
一方通行「オマエはアイツがどンだけウゼェか知らねェからそンな事言えンだよ」
上条「……俺から見ると仲の良い親友同士にしか見えないな。喧嘩するほど相手を想うって言うだろ?」
一方通行「……オマエ本気で言ってンのか?お、あそこに霊安室があるなァ。こりゃ丁度イイ」ニタア
上条「ちっとも良くありません!!スミマセンでしたぁッッ!!」
一方通行「………ったく」(喧嘩するほど相手を想うって……超電磁砲の想いに全く気づいてねェコイツが言っても説得力ねェよなァ…)
上条「鯛焼き美味そー♪……けどちょっと冷めてるな…」
一方通行「温められねェの?」
上条「……鯛焼きってレンジ入れて大丈夫なのか?」
一方通行「生卵じゃあるまいし、平気だろォ」
上条「そうか……――」
―――上条個室ドアの前
上条「――いいか?垣根の事は…」
一方通行「あァ、分かってンよ」
――ガチャ
762 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/17(木) 22:41:24.60 ID:8jQ9VPE0 [5/8]
美琴「――あ!帰ってきた!……一方通行も一緒だったの?」
黒子「――お帰りなさいませ。第一位様、ご無沙汰しておりますの」ペコリ
一方通行「……おォ」
上条「遅くなっちまって悪いな。一方通行が買ってきた鯛焼き、温めて食おうぜ」
禁書「待ってましたーー♪鯛焼き鯛焼きぃぃ♪」
打ち止め「わーい♪ってミサカはミサカはシスターちゃんと一緒に飛び跳ねてみたり!……あれ?ところでおn」
一方通行「………」ギロリ
打ち止め「ひっ……な、何でもなかったり……」
美琴「外で暴れてたのって、アンタだったの?」
一方通行「まァな、馬鹿なゴロツキ共に絡まれてたンだよ。いつもの事だ」(半分はホントだしな…)
黒子「……なら、態々貴方が部屋から出る必要もなかったのでは?」
上条「そ、そうだな。出たは良いけど、もう終わってたし…上条さんの出番無しですよ。ハハハ」
美琴「ホント良かった……心配しちゃったわよ。馬鹿」
上条「悪いな。けどありがとな御坂、皆を見ててくれて…」
美琴「い、良いのよそんな……べ、別に……」(『御坂』に戻ってる………ズーン)
上条(あれ…何かへコんでる……?)
一方通行(アホ……)
―――こうして、上条病室ではささやかな『鯛焼きパーティー』が行われた。
763 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/17(木) 23:01:30.90 ID:8jQ9VPE0 [6/8]
美琴「――あれ?一方通行。アンタ、コイツの友達と一緒だったんじゃないの?」ハムハム…
一方通行「飲み込ンでから喋れお嬢様。途中で用があるっつったから帰ったンだよ」
美琴「ふーん…」
黒子「貴方のお友達と言いますと、あの青い髪の殿方と金髪サングラスの方ですの?」
上条「ま、まぁな……」(そう言えば最近つるんでないな……青ピはともかく土御門は忙しいっつってたし…)
禁書「3匹目ーー!」
上条「インデックス!ペース速すぎ!」
一方通行「大漁だから心配すンな」
美琴「おいしー♪」
打ち止め「んぐ……喉詰まった」
一方通行「急いで食うからだろォ。……ったく、ホラ水」
打ち止め「ゴク……ぶはー生き返った!ありがとー!ってミサカはミサカは感謝してみる」
黒子「飲み物わたくしも頂きますわ」
美琴「私もー。アンタ気が利いてるわよね。流石第一位」
一方通行「そォいう時だけ持ち上げンな」
禁書「とうまー、私にもジュース取って欲しいかも!」
上条「ハイハイ……んじゃ俺も………ってあれ?」ゴソゴソ
一方通行「あン、どォした?」
上条「……イヤ、俺の飲み物は?」
一方通行「あるじゃねェか」
上条「え?あとブラックコーヒー2本だけなんだけど……これお前のじゃ…」
一方通行「一本はオマエのだよ」
上条「…………ハイ?」
766 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/17(木) 23:19:54.31 ID:8jQ9VPE0 [7/8]
一方通行「遠慮すンな、ジュースぐれェ奢ってやンよ。まァ飲め」
上条「イ……イヤその…」
一方通行「あァン?俺のコーヒーが飲めねェってのかァ?」ギロ
上条「ブ、ブラックって飲んだ事ないんだよなぁ……」
一方通行「安心しろ、病み付きになる程美味ェからさァ」ゴク…
そう言って一本取り、美味しそうに飲む一方通行を見て、上条もタブを開ける。
上条「――んじゃあ……頂きます!」――ゴクッ
一方通行「ンな栄養ドリンクみてェに飲むモンじゃねェぞ?」
美琴「うわ、アンタもチャレンジャーねぇ……」
黒子「わたくし達には少し早いですわ……」
打ち止め「ミサカも……何が美味しいのか分かんない」
一方通行「ガキには分かんなくてイインだよ。……どォだ?美味いだろォ三下」
上条「……………一方通行」
一方通行「あン?」
上条「―――ブラック苦ッッ!!」
一方通行「……………」
上条「良くこんなの飲めるよなお前!……なんつーの、薬とかとはまた違う感じの苦味が…何とも……」
一方通行「………ま、まァそォだよなァ!お子様なオマエらにはまだコイツの旨みってモノが分っかンねェよなァ!別に好みは人それぞれだし
気にすンなよ三下ァ!」
上条「………なんか…ゴメン」
一方通行「別にィ……」
771 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/17(木) 23:46:04.65 ID:8jQ9VPE0 [8/8]
―――その頃、垣根は近くのカフェででも時間を潰そうと駅周辺をぶらついていた。
ガヤガヤ…
垣根「――……ちっ、また満席かよ……いくら冬休みっつっても人多すぎなんだよったく……」ブラブラ
垣根「あー…暇だ。何か面白ぇ事でも起こんねえかな……」ブラブラ
垣根「やっぱ………気まずいよなぁ……一方通行はムカつく野郎だから気なんて遣う必要ねぇって思えたが……お嬢様だと訳が違うもんなぁ…」
垣根「……けど、いつまでも逃げるみてぇに避け続けるなんてのは性に合わねえし……やっぱ俺から謝んねえとダメだよなぁ…」
垣根「………にしても、上条のヤツ…仮にも学園都市の一位と二位の喧嘩に物怖じせずに割り込んでくるとは……考えてみたらすげぇ事じゃね?」
垣根「いくら右手があるって言っても、なかなか出来ねえよ……しかも説教入ると動けねぇし……あいつ本当に無能力者かよ……心理操作系
の能力でも使ってねえだろうな…?」
垣根「なんつーのか……『ヤンチャしてるのに母親には逆らえない』みたいな…?よく分かんねえけどそれに似たプレッシャーを感じたな……
ホント不思議―――」
―――ブツブツブツ………と、一人ごちりながらブラブラと歩く垣根……。と、その時―――
「――や、やめてください!!私はジャッジメントですよ!?あなたたち……こんな事してただで済むと―――」
垣根「――……ん?」
774 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/18(金) 00:01:04.78 ID:UT0pPEc0 [1/6]
垣根「………何だぁ?……今あっちの路地裏から何か聞こえたような……」
声のした裏道に入って行く垣根……するとそこに――
「――いやッッ!!!やめて!!やめてくださ―――」
垣根「――!?……裏連れ込んでレイプかよ……別にどうでも良いが、発見しちまった以上放っておくのも後味悪いよなぁ……仕方ねぇ」ズイッ
「――た、助けて!!誰か―――!!?」
「ちっ……うるせぇなコイツ、静かにしろや!コラァ!」ドスッ
「――うっ!!………」ガクッ
――三人の男が少女一人を押さえつけていた。暴れる少女に業を煮やした男が少女の腹を殴る。
少女が気を失い、無抵抗になっていよいよとニヤける男達の耳に声が聞こえた。
垣根「――女一人相手に三人がかりかよ。ダッセェな」
「―――!!?」
――振り返った男達のすぐ後ろには……面倒臭そうな表情の垣根の姿があった。
776 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/18(金) 00:14:19.93 ID:UT0pPEc0 [2/6]
「――な、何だテメェは!?」
垣根「――外道に名乗る名なんてねえよ。悪い事ぁ言わねえからすぐ消えろ」
「んだとコラぁ!!」
「殺すぞぉ!!」
「オイ!女押さえとけ!」
ナイフを取り出し立ち上がる不良達……しかし、垣根には何の脅しにもならない。
垣根「……ハァ…馬鹿が……俺に楯突ける身分でもねえってのによ。怪我しねえ内に帰れってのが分かんねえの?ガキ共」
「うるせぇぇえええ!!!」バッ
「死ねやぁぁぁあああ!!!」バッ
垣根「……………ハァ……」
――――
「――ひ、ひぃっ……」
垣根「コイツら連れてとっとと消えろ」 ファサ
「――ハ、ハイッッ!!」ピューーー
垣根「………『連れてけ』っつってんのに置いて行きやがった…まぁ良いか」ファサッ
778 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/18(金) 00:31:45.35 ID:UT0pPEc0 [3/6]
――あっという間に不良達を撃退して、うつ伏せで気絶している少女に歩み寄る。
垣根「――……ん?……この花飾り……まさか……」
ふと、少女の頭に目を止める。うつ伏せなので顔は分からないが、垣根は少女の頭に咲いている大量の花に見覚えがあった。
というか、見たのはこれで三度目だ。
垣根「…………ウソだろ?」
そっ…と少女を仰向けにする……。
垣根「………………」
「…………ん………」
―――曝け出されたのは、間違いなく垣根にとっては美琴以上に気まずい存在なはずの初春飾利の顔だった。
一瞬苦しそうな声を出すものの、起きる気配はなかった。もっとも、垣根からすれば今起きられては困る。
垣根「……………どうしよ?」
785 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/20(日) 19:29:31.57 ID:SaOE1Jc0 [2/9]
垣根「――……参ったねぇ、コイツは…」
よりによってコイツかよ。とでも言いたげに溜息を吐く垣根。
それは彼のすぐ横で眠る少女、初春飾利に向けて吐かれたものである。
初春「…………」
垣根「……ここに置いてく訳にはいかねえよな……しょうがねぇ。よっと」
初春を抱き上げ、そのまま歩き出す。
とりあえず交番でもどこでもいい。彼女を預けられる所へ――
お姫様抱っこのまま、垣根は人目も気にせず歩き回った。
初春は未だ起きる気配がない…。
垣根「………クソ…何で俺がこんな事…」
ブツブツ文句を言ってはいるが、人助けそのものはまんざらでもない、といった表情だ。
そして、歩き続けた垣根は『ある場所』に辿り着いた。
垣根「―――ここは……」
786 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/20(日) 19:45:41.75 ID:SaOE1Jc0 [3/9]
垣根「――ここ、ジャッジメントの支部だよなぁ……んーと……『第一七七支部』か……」
初春を抱いたまま垣根は偶然彼女が所属する風紀委員支部を発見してしまった。
当然、初春の所属支部は知らないが……腕には腕章がついているし、とりあえずここに預ければ何とかなるだろう。
そう思い、垣根は支部へと入っていった。
垣根「…………」
ドアの前で初春を抱いたまま、何故か垣根は立ち止まっていた。
手が塞がっているからノックが出来ないのか……いや、違う。
垣根「………何て言うべきだ……うーん……」
『初めての場所は緊張する』。面接などでよく聞く言葉だが、似た心境を垣根も今味わっていた。
ここに来たは良いが、どう言って預けるか……交番などで落としモノを届けた事など一度もない。
無難に『路地で絡まれてたんで助けてここまで連れて来ましたー』で良いだろう……。
垣根「――あぁークソ!こんなん俺のキャラじゃねえっての!うし!」
――何故か気合いの入ったような顔で、垣根は初春を一旦壁に寄りかからせてノックをした。
――コン、コン
「―――はーい」
788 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/20(日) 20:05:45.69 ID:SaOE1Jc0 [4/9]
垣根「――あのー、すんません。『届け物』しに来たんすけど」
――返ってきた若い女の声にドア越しで答える垣根。
「はいはい、今出ますので…」
――ガチャ
その声の約十秒後にドアが開き、眼鏡をかけた高校生の少女が姿を見せた。
「――お待たせしました」
垣根「あ……ども」
「…?」
固法美偉…透視能力を持つ。黒子や初春の先輩。好物はむさしの牛乳。巨乳。
固法「――…あの、それで用件は…?」
垣根「――えっ?…あ、そうでした。この子を…」
固法の容姿に見とれていた垣根は慌てて壁に寄りかかって眠る初春に目を向ける。
その視線に固法も目を移す。
789 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/20(日) 20:19:47.86 ID:SaOE1Jc0 [5/9]
固法「――う、初春さん!」
驚いた顔で彼女に駆け寄る固法に、垣根はさらに慌てる。
垣根「だ、大丈夫っすよ。気絶してるだけっぽいんで……奥で寝かせてやって下さい。じゃ、俺はこれで――」
――どうやらコイツの知ってる人らしい。ならもう大丈夫だろう……。
そう思った垣根は初春の目が覚める前に早くこの場から立ち去ろうとするが、その腕をガシッと掴まれる。
垣根「――!」
固法「――待って」
いつの間にか初春から離れた固法は垣根の腕を掴んだまま上目遣いで尋ねる。
固法「いったい何があったの?」
垣根「……イヤ……大した事は…」
固法の放つフェロモンのような魅力と角度的に危うい胸元に、垣根の思考が止まる。
それを勘違いしたのか……固法の目が鋭くなる。
790 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/20(日) 20:29:05.98 ID:SaOE1Jc0 [6/9]
固法「…とりあえず…中で話を聞かせて下さいね?……拒否権はありませんよ」
垣根「え…あ、その!…俺この後用事が――」
固法「問答無用です!」ピシャリ!
垣根「………」
――垣根、あえなく御用…
―――風紀委員一七七支部
来客用の応接室に垣根はいた……。向かいの椅子に固法もいる。
初春は隣の個室で寝かせているらしい。
固法からそれを聞き、とりあえず安堵の息を零す。
固法「―――では、あなたが初春さんを不良から助けてくれたんですか……?」
垣根「え、えぇまぁ……けど大した事ないっすよ。たまたま通りかかっただけなんで……別に感謝とかは――」
固法「――そうはいきません!」
垣根「――!?」
791 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/20(日) 20:44:24.62 ID:SaOE1Jc0 [7/9]
固法「もしあなたが駆けつけてくれていなかったら……初春さんは今頃…」
垣根「駆けつけたなんてそんな…大げさっすから……」
固法「とにかく、ありがとうございました!あの子の先輩として、改めて今度お礼させて下さい」ペコリ
垣根「……い、いや…ホントいいですから……頭上げてくれません…?」(でないと胸が……)
胸元を気にも留めずに頭を下げる固法に垣根は目を明後日の方向へ向ける……が、チラチラ見てしまうのはご愛嬌。
垣根「――あ、あの!俺この後用事あるんで……もう帰っていいっすか?」
固法「え?えぇ…。そうね、時間とらせちゃってゴメンなさい……」
垣根「だぁあ!謝るのナシッ!また胸………イヤ、何でも…」
固法「……?」
垣根「じ、じゃあこれで。ホント時間ないんで…」スクッ
固法「あ!ちょっと待って!せめて連絡先だけでも…――」
垣根「………」
――携帯番号だけ書いた紙を固法に渡し、垣根は足早に支部を去っていった…。
792 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/20(日) 21:04:47.10 ID:SaOE1Jc0 [8/9]
―――路上
垣根は病院までの道をトボトボと歩いていた。
精神的に少し疲れた顔で――
垣根「――……ハァ……何か疲れた」トボトボ
垣根「まさか……偶然助けたのがよりによってあの花娘とは…」トボトボ
垣根「…災難っつーか……これなら一緒に病室戻った方がまだマシだったかもな……」
垣根「………イヤ、どっちもどっちか……」
垣根「それにしても………あの眼鏡の女……」
垣根「なんつーか……やべえ」
垣根「ついダミー用じゃなくてマジ番号教えちまった……もしかしてあのコからかかってくんのかな……?」
垣根「って何期待してんだ俺……けど『今度礼させて』っつってたし……」
垣根「うは、マジかよぉ……やっぱそぉいう展開!?……やっべ、どぉしよっかなぁ……くはぁ、参ったねこりゃ。俺どぉすりゃいいんだコレ?」ニヤニヤ
―――体と表情は正直だった…。通り過ぎる通行人の不審な目など、垣根にとってお構いなしだ。
頭を抱えたり、にやけたり、ぼやいたりと忙しい第二位はさっきの疲れなど完全に忘れていた…。
800 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/21(月) 19:34:53.44 ID:9hTbrJ20 [2/10]
―――病院
――鯛焼き完食後(大半は禁書目録)、室内は談笑に包まれていた。
上条の不幸エピソードだったり美琴の少女趣味だったり一方通行の純粋ぶりだったりと、話題が尽きる事はなかった。
打ち止めと禁書目録は途中から別室で仲良くお昼寝中である。
そして、午後一時になろうかという時…黒子が慌てだした。
黒子「――!もうこんな時間ですの!?」
美琴「あ、そっか。そう言えばアンタ午後出勤だったわね」
上条「冬休み中だってのに大変だな」
黒子「何を仰ってますの?むしろ長期休暇期間こそジャッジメントが最も忙しい時期ですのよ」
上条「そっか……警察みたいなもんか」
一方通行「テレポート使えばすぐだろ?」
黒子「そうですわね……あまり気は進みませんが、遅刻は避けたいですの。お姉様、申し訳ありませんが…」
美琴「私は良いわよ。もう少し居たら帰るから」
黒子「では、慌しくて恐縮ですがわたくしはこれで。失礼しますの――」
――その言葉の一秒後、ヒュン!と音を立てたと同時に黒子の姿は消えた。
801 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/21(月) 19:48:22.04 ID:9hTbrJ20 [3/10]
美琴「――行っちゃったか……ジャッジメントも大変よね……今更だけど」
一方通行「学生共が休ンでンなら、事件なンざ腐る程増えンだろォな」
上条「すっかり時間忘れちまったな……白井、間に合うと良いけど…」
美琴「ま、大丈夫でしょ。……それでさ、さっきの話だけど――」
一方通行「オイ、超電磁砲」
美琴「ん?何よ?」
一方通行「あのツインテール、やたら俺のツラ見てニヤケてたンだが……オマエ心当たりあるか?」
美琴「(ぎくっ!)……さ、さぁ……知らない」
一方通行「まさかとは思うが、オマエ何か余計な事吹き込ンだりしてねェだろォなァ?」ジロ…
美琴「ナ、ナンノコトデスカー?ワタシはナンニモシリマセンケドー」
上条(気持ち悪っ!)
一方通行「………」(あとでツインテールに吐かせるか……結果によっちゃァ、スクラップだな)
――別室
打ち止め「――Zzz……もう、アナタぁ……ダメだってぇ……Zzz」
禁書「――Zzz……むにゃ……もう食べられないよぉ……Zzz」
802 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/21(月) 20:00:34.07 ID:9hTbrJ20 [4/10]
―――風紀委員一七七支部
「――………ん」
ベッドで眠っていたひとりの少女、初春飾利が目を覚ました。
「――ここは……」
むくりと体を起こし、辺りをキョロキョロと見回す。
見覚えがある………というか、徹夜明け用の仮眠室だった。
徹夜仕事の多いポジションの初春にとっては見慣れた部屋だった。
「…………?」
何故ここに……と最初はキョトンとしていたが……除々に記憶が戻ってくる。
そうだ。自分は確か、とベッドから下りた初春はいつもの仕事場へ急ぐ。
「―――私、どうなったの……?」
男に殴られてからの記憶が全くない。
あの後どうなったのか……確認出来る人物はすぐ近くにいた。
「――固法先輩ッ!」バタン!
803 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/21(月) 20:12:37.26 ID:9hTbrJ20 [5/10]
固法は突然開いたドアにビックリし、飲んでいた牛乳を吹き出しそうになる。
固法「――ブッ!……う、初春さん?……気がついたの」
初春「――先輩!私、……その……」
何となく訊き辛さにどもってしまう初春……。固法はそんな彼女を察し、天使の様な微笑みを向ける。
固法「……初春さん、安心して。貴方は何もされてないわ」
初春「………え?」
固法「貴方、不良に怯む事なく注意しようとしたんでしょ?」
初春「は……はい……たまたま恐喝現場を目撃して……注意したら……裏に連れ込まれて………」
思い出したのか、震えながら話す初春。それを見て固法は――
固法「――いいのよ、無理して喋る事はないわ。貴方は何も間違っちゃいないんだから」
初春「………はい」
804 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/21(月) 20:21:39.96 ID:9hTbrJ20 [6/10]
初春は力強く笑って固法に返事を返す。
見た目と違い、多くの修羅場を経験している彼女の精神はやわではなかった。
――――
固法「……どう、落ち着いた?」
初春「はい」ズズーッ
固法「やっぱりこの時期は『ムサシノ・ホット』に限るわね」
初春「ふふっ…何ですかぁソレ。でも、落ち着きますね…」
固法「でしょう?」
――時間はお昼休み。二人はティータイムならぬミルクタイムを満喫していた。
初春「――そう言えば…」
固法「ん?」
初春「私……あの後どうなったんですか……?」
805 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/21(月) 20:36:03.61 ID:9hTbrJ20 [7/10]
固法「………」
初春「……情けないですけど、殴られて意識が飛んで……そこから覚えてないんです。固法先輩が助けてくれたんですか?」
固法「………しまった……名前訊くのすっかり忘れてたわ……私としたことが…」
初春「先輩……?」
突然頭痛でも来たかのように頭を押さえる固法に初春は疑問を抱く。
固法「…ま、連絡先は知ってるからいっか……初春さん」
初春「…はい?」
固法「貴方を助けて、ここまで運んできてくれた人がいるの…」
初春「え?……誰ですか?」
固法「ごめんなさい……彼、時間なかったみたいでさっさと帰っちゃったから、詳しく訊けなかったのよ…」
初春「……男の人…ですか?」
固法「…えぇ、服装は…何ていうか……ホスト風で、髪型は茶髪で……背は結構高かったわ…」
初春「私に乱暴しようとした人に……そんな人はいませんでした…」
固法「たまたま通りかかっただけって言ってたわ。ごめんなさい…せめて名前は訊いとくべきだった…」
初春「い、いいんですよ。……けど、私……その人に一度会って…お礼したい…」
806 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/21(月) 20:43:51.88 ID:9hTbrJ20 [8/10]
固法「連絡先……っていうか携帯の番号は聞いたんだけど…」
初春「!…貸して下さい」
固法「え…?あ…」
固法が見せた番号の書かれた数字をふんだくるように奪い取る初春。
固法「――う、初春さん?今かけるの…?」
初春「当然です」
即答しながら自分の携帯を取り出し、番号を入力する。
そして、本当にすぐ……彼女はその番号に電話をかけた―――
―――路地
垣根「―――…さぁて、そろそろ病院戻るか。もう第三位帰ったろ…」
807 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/21(月) 20:59:40.44 ID:9hTbrJ20 [9/10]
ブラブラしていた垣根は、携帯で時計を確認するとそう呟いた。
ちなみに今彼がいるのは病院付近。歩いてる内に近くまで戻ってきたようだ。
垣根「――腹減ったな……ヤツら今頃鯛焼きで腹いっぱいなんだろぉな……何かムカつく」ブラブラ
垣根「…っつーか、よく考えたら何でこの俺が席外さなきゃなんねえ訳さ?……おかしくね?」ブラブラ
垣根「第三位如きに気を遣っちまうなんて、やっぱ今日の俺どうかしてるわ……殺そうとした女は助けちまうし……ガラじゃねぇっての…」
垣根「どうせ戻っても俺の鯛焼きねえんだろ?インデックスちゃんは大食いだし、一方通行はイジワルだし……」
垣根「どぉ考えても鯛焼き生存率はゼロだよな……」
垣根「クッソ、マジ腹立つ!こうなったら何か復讐でも…………ん?」
~~~♪
垣根「あぁ?………人がムカついてる時に……誰だよ?」
――パッと着メロを鳴らす携帯をポケットから取り出す。
垣根「………登録されてねえ番号か……はっ!もしかして……あの眼鏡の姉ちゃんかも!」ピッ
すぐに期待に満ちた顔になって通話ボタンを押した。
818 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/23(水) 23:28:47.45 ID:8NrCuZw0 [2/4]
垣根「――もしもし」
『―――あのぉ……すみません』
垣根(……あれ?こんなしおらしい声してたっけ……?)
『……私…初春飾利といいます。あの……私を助けて支部まで送ってくれた方…ですよね?』
垣根「………」
―――マジかよぉ……どうするどうするどうすっぺ!?
悩んだ末、垣根が返した言葉は――
垣根「――あぁ、そうだけど」シレッ
初春『――あ、あ、あの!本当になんてお礼を言ったら良いか…』
垣根「気にするな。たまたま通りかかっただけだ。礼なんて言われる程の事はしてねえよ」
初春『いいえっ!そういう訳にはいきません!是非お礼させてください!』
垣根「いや……だかr」
初春『明日とか空いてますか?もしお暇でしたら、会えませんか?』
垣根「………はぁ?」
819 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/23(水) 23:46:39.36 ID:8NrCuZw0 [3/4]
垣根「……ちょっと待て」
初春『はい?……あ、明日は都合悪いですか?なら――』
垣根「そうじゃねぇ。……あのな、さっきも言ったが礼なんか良い。それに――」
初春『……?』
垣根「会うのは……ダメだ。君が後悔する事になr」
初春『却下です』
垣根「………あ?」
初春『一度会ってお礼しないと私の気が済みません。どうしてもイヤだって言うんなら、家調べてでも会いに行きますよ?』
垣根(……そうだよ……この女はこういう強引なトコあんだよな……流石俺に屈さなかっただけの事はある。芯が強いってか……
しかし、どうする……?会うなんて出来るか?つーか、会った瞬間また気絶でもされるのがオチな気がする……)
初春『もしもーし?聞いてますかー?』
垣根「――あ、あぁ悪い。最近は忙しいから……いつ暇になるかは分からないな」
初春『えー……じゃあ、また電話しますよ。空けられそうな日は空けといてください。一週間以内で無理なら住所調べて勝手に会いに行き――』
垣根「よし、じゃ一週間後な」
初春「はい♪」
垣根(このコ……もしかして意外と黒いんじゃ……)
821 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/23(水) 23:55:56.75 ID:8NrCuZw0 [4/4]
初春『では、またかけますね♪……あ、そうでした』
垣根「……?」
初春『お名前、教えてください』
垣根「……………か」
初春『か?』
垣根「カッキー……です///」
初春『カッキー……さんですか……?あの、本名は?』
垣根「そ、それは会った時に教えるよ…」
初春『…わかりました。約束ですよ?では、カッキーさん。また電話しますね。それじゃ――』プツッ ツー ツー…
垣根「……………」ピッ
―――どうして……どうしてこうなった…?
ひとり路上で携帯片手に立ち尽くす垣根帝督がそこにいた。
822 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/24(木) 00:11:49.85 ID:9fJXNhs0 [1/17]
―――病院・上条個室
一方通行「――………」スクッ
――話が弾み、しばしの沈黙になった所で一方通行はいきなり立ち上がった。
上条「――ん、どうした?」
一方通行「……ガキ共の様子見るついでに散歩でもしてくる」チラッ
美琴「…そ、そう……」(まさか……また気を遣って……)
一方通行「………」カツ カツ バタン
美琴に一瞬目をやり、後は無言で杖をつき病室から出て行った一方通行。
特に気にしない上条だが、美琴の様子がおかしいのは気になったようだ。
上条「…御坂?どうしたんだ?そわそわしてるぞ……」
美琴「……わ、私もチョローっとお花摘み行ってくるわ!す、すぐ戻るから!――」タッタッタッタ バタン
上条「………?」
―――院内通路
一方通行「………」カツン カツン カツン
美琴「――ねぇ、ちょっと待ちなさいよ」
824 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/24(木) 00:29:13.05 ID:9fJXNhs0 [2/17]
一方通行「……あァ?」クルリ
――振り返ると、そこには美琴が腕を組んで立っていた。
しかも彼女は少し呆れたような視線を自分に向けている気がする……。
一方通行「オイオイ、何オマエまで出て来てンだよ?人が折角いなくなったってのに……三下ンとこにいなくてイイのかァ?」
美琴「……やっぱり…」ハァ
一方通行「……?」
美琴「あのねぇ、そういうの……なんて言うの……う、嬉しいんだけどさ………良いのよ?そんな気なんか遣わなくて…」
一方通行「気なンて遣ってる訳じゃねェ。オマエの目が『二人っきりになりたい』って言ってたンだっての…空気読むなンざガラじゃねェけどなァ…」
美琴「……な、何よ?」
一方通行「オマエら見てるとイラつくンだよ。あの野郎の鈍感ぶりもイラつくが、オマエがいざって時に素直になれてねェのもイラっとする」
一方通行「……くっつくンならとっととくっつけっての。俺はオマエらお似合いだと思うけどなァ」
美琴「………そりゃあ……私だって…」
一方通行「振られンのが怖ェのか?」
美琴「………」コクリ
828 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/24(木) 00:45:48.15 ID:9fJXNhs0 [3/17]
下を向いて俯いてしまった美琴……。
一方通行は何を思ったのか、美琴に近づき……彼女の頭にポンと手を置いた。
美琴「………あ…」
一方通行「安心しろ。オマエがもし振られたら、俺が拾ってやる」キリッ
美琴「……え…///」
一方通行「なンてなァ…」ニヤ
美琴「……?」
一方通行「まァ、オマエが振られる事ァ多分ねェよ。だから……何つーかさァ………ンな悲しそォなツラ見せンな」ポン ポン
美琴「……うぅ…子供扱いすんな…」
一方通行「ハッ、俺から見りゃあまだまだガキだ。オマエもあの三下もなァ!」
美琴「……フフッ、そんな事言って良いのかにゃー♪」
一方通行「…あン?」
美琴「コレ、何でしょうかー?」ピラーン
一方通行「――!!?オ、オマ…何でソイツを…?」
831 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/24(木) 00:58:23.02 ID:9fJXNhs0 [4/17]
――美琴が一方通行に見せびらかすように見せたのは……おそらく彼が今最も焼却処分したいものであろう、『汽車で上条にしがみつく一方通行』が写った写真だった。
一方通行「――な、な、何でオマエがそれを持ってンだァ!?」
美琴「私も買ったのよ?アンタがあの時妹と戯れてる間にね」ニヤァ
一方通行「………」
美琴「………」
一方通行「悪い事は言わねェ。今すぐそれをコッチに渡s」
美琴「イヤ」
一方通行「………そォか、そォかァ。なら仕方ねェ……」ユラァ
美琴「あはは!ばーーか♪誰がこんな面白いネタ渡すかっての!」タッタッタッタッタ…
一方通行「待ァァあああてェェェえええやァァああああ!!!」カチッ ビューン
「―――病院内ではお静かに!!!とミサカは大声で呼びかけます」
834 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/24(木) 01:23:39.85 ID:9fJXNhs0 [5/17]
――美琴は病院内を走り回った。『鬼』から逃げるために…。
しかし、その顔にはさっきまでの暗さがなく、むしろ晴れやかだった。
一方通行があからさまに自分に気を遣う事に最初は喜んだ美琴も、だんだん気が重くなっていったのだ。元々他人に気を遣われる
事を嫌う性格だ。それに、一方通行の自分に対する行為には『償い』も込められているのではないか……。
折角、こうして一緒に遊びに行ける仲にもなれたのに、一方通行の中にはまだ自分に対する『後ろめたさ』があるのではないか……。
咄嗟にそう思い、こうして上条とのツーショットを蹴ってまで追いかけて来た美琴だが、今は逆に自分が追いかけられている。
結局訊きたかった事は訊けなかったが、走っている内にすっきりしてしまい、どうでもよくなってしまった。
――しかし、忘れてはならないのが……ここは病院だ。広い高原でも砂浜でもない。
すっきりするまで走って良い場所とは程遠い……当然、注意が飛ぶ。
「――病院内を走るのはやめて下さい!この馬鹿姉!とミサカは身内の失態に頭を悩ませます」
美琴「――あぁ?……アンタ……何でそんな格好してんの?」
一方通行「――追いついたァァああ!!―――…って、オ、オマエはァ!?」ピタッ
「ミサカの検体番号(シリアルナンバー)は20000号です。いわゆるブービーというヤツでしょうか?とミサカは首をかしげます――」
「――そしてお姉様の質問に答えるなら、ミサカはココ(病院)で看護士として研修中である事を告げます――」
「―――お久しぶりです、『セロリさん』。是非ミサカにその額の汗をナメ…いや、拭き取らせて下さい」ジリ…
一方「」
美琴「」
835 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/24(木) 01:48:20.31 ID:9fJXNhs0 [6/17]
20000号「ここは病院、そしてミサカは研修中と言えど看護士。ここはミサカの領域(テリトリー)です。とミサカは観念するように告げます」ジリ…
一方通行「オ、オイ!近寄ンなァ!オマエがそォやってゆっくり近づいてくるだけでトラウマが……」
20000号「フフフ…ご安心を。今は採血道具を所持していません。怖くありませんから……ミサカが近づく度に後ずさりしないで下さい」ジリジリ…
一方通行「イヤ!俺の第六感がオマエに捕まったら何もかも終わりだって告げてンだよォ!……チクショォ、覚えてやがれ超電磁砲!」ダッ
美琴「――あっ!逃げた…」
20000号「フン、ここはミサカの庭です。逃げられる訳がないでしょう。ちょうどいい機会です……あの邪魔なクソガキはお昼寝中。
今ならあのセロリを調教するまたとないチャンス!とミサカは追跡を開始します!ではお姉様、失礼します――」ダッ
美琴「………何かよく分かんないけど、アイツ『走るな』って言ってなかった?……」ポツーン
―――
一方通行「――チクショォォおお!!く、くるなよ!!くンなァァあああ!!!」ダダダダ…
20000号「無駄ですよ!せいぜい逃げられるだけ逃げるんですね。とミサカは追跡を続けます」ダダダダ…
一方通行(誰か……誰でもイイから……この天使の皮被った悪魔から俺を助けろォォ!!)
836 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/24(木) 02:01:37.22 ID:9fJXNhs0 [7/17]
一方通行「――!!?」
20000号「残念でした。ソッチは行き止まりですよ。もう逃げられませんね」ジリ…
一方通行「……オイ、俺捕まえてどォする気だァ?」
20000号「ミサカ色に染め上げます。とミサカは即答します」
一方通行「………訊いた俺が馬鹿だったわ」
20000号「さぁ、ミサカの部屋へ行きましょう。まずは……へへへ」
――舌なめずりをしながらゆっくり近づいてくるナース服のミサカ。
壁を背にした一方通行に逃げ場はなかった……。
一方通行(クソォ……これまでか……っつーかミサカ色って何だよォ…)
覚悟して目を閉じたその時――
20000号「――!!?」……ドサッ
一方通行「………?」
目を開けると、目を回してその場に倒れている20000号の姿が……そして、その後ろには――
「――ふぅ、……どうやら間に合いましたね」
841 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/24(木) 19:38:37.53 ID:9fJXNhs0 [10/17]
―――『安心しろ。オマエがもし振られたら、俺が拾ってやる』
――美琴は先ほど一方通行に言われたその言葉が頭から離れないまま、通路を歩いていた。
「………あの馬鹿……まさか本気じゃ…ないでしょうね……///」テク テク
何故か顔が赤くなる。
そして、何故かその時の一方通行の顔が脳内に残っている。
「……ち、違うから。ありえないから。アイツは私を元気づけるために冗談言ってるだけなんだから……」
ブツブツと否定的な独り言は呟きながら、美琴は上条のいる病室に戻っていた。ちょうどその頃、美琴とは違う意味で独り言を呟きながら
上条の病室へ戻るもう一人の男がいた。―――
「―――……やべぇ……マジでどぉすっか……あえて想像しなかった結果だぜこりゃあ……一方通行に相談………できっかよ…」ブツブツ
美琴の五十メートル前方から、垣根は殆ど前を見ずに歩いてきていた。
842 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/24(木) 19:49:10.35 ID:9fJXNhs0 [11/17]
美琴「――私、何考えてんのよ……私が好きなのは………『上条当麻』なのに……」ブツブツ
垣根「――ハァ……何で眼鏡の方じゃねえんだよぉ……って助けたのは花の方だから仕方ねえのか……」ブツブツ
――下を向いたまま呟き歩く二人は互いの距離がどんどん近くなっている事に気づいていない……。
そして、上条がいる病室のドアノブに二人の手が………重なった。
垣根「――へ?」
美琴「――なっ!!?」
キョトンとする垣根、ビックリして咄嗟に置いた手を下げる美琴。
両者の反応は……対していた。
845 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/24(木) 20:08:37.95 ID:9fJXNhs0 [12/17]
――「間に合ってよかった……もう安心ですよ。とミサカは壁の隅で小さくなって震えている野ウサギを元気づけます」
倒れている20000号のすぐ横に立っていたのは、常盤台中の制服を着た『同じ顔』だった。
彼女は首に『いつものネックレス』をつけていたので、一方通行はすぐに検体番号を特定出来た。
一方通行「――…オマエか。……オイ、壁の隅で小さくなって震えている野ウサギってのは誰の事ですかァ?」
御坂妹「おや?助けた恩人に向ける視線ではありませんね。とミサカは驚きのポーズを取ります」
一方通行「うるせェ。それよりそこに転がってるヤツ……どォしたンだ?」
御坂妹「え?背後から当て身を――」
一方通行「そォじゃねェ。ソイツの『人格』だ。もはや個性なンて生やさしいモンじゃねェぞ?脳まるごと取っ替えるべきだ」
御坂妹「あぁ、ご心配なく。コイツはコイツだからコイツなので…とミサカは足で頭を踏んでみます」グリグリ
20000号「」
一方通行(……今さらだけどよォ……実験中止が本当にコイツらの幸せだったのかァ?いっそ皆殺しの方がマシなンじゃねェか…?妹達がどンどン歪ンでいく…)
846 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/24(木) 20:22:15.03 ID:9fJXNhs0 [13/17]
御坂妹「――ところで、良いのですか?」
一方通行「あァ?何が――」
御坂妹「先ほど第二位こと『カッキーさん』を病院入り口で目撃しました。このままではお姉様と鉢合わせですが…」
一方通行「何ィ!?あのクソメルヘンもォ帰って……ってオイ、オマエ何で知ってン―――!?」
―――ドォォオオオオオオオンン!!!!!
御坂妹「……外からですね……とミサカは修羅場を予想して立ち去ります」
一方通行(……俺も立ち去りてェ)
御坂妹「さぁ、行きましょう。とミサカは項垂れているあなたに手を差し出します」
一方通行「……あァ?行くってどこに?」
御坂妹「決まってるじゃないですか。修羅場を見に行くんですよ。とミサカは――」
一方通行「オイ、オマエ立ち去るンじゃなかったか?」
御坂妹「はい。ですからこの場を『立ち去って』お姉様を……どうかしたのですか?」
一方通行「はァ………行けばイインでしょォ、行けば…」
847 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/24(木) 20:34:27.52 ID:9fJXNhs0 [14/17]
――爆音の数分前
美琴「――ア、アンタは……」
垣根「――…ウソ…お前まだいたの…?」
即座に距離をとり警戒に満ちた目で垣根を睨む美琴。
対する垣根は心底不幸そうな顔で額に手をやる。
垣根「………ハァ、これなら最初っからココにいた方が良かったんじゃねえか……こういうの……不幸っての……」
美琴「……?」
一人で愚痴り始めた垣根に一瞬疑問を抱いたが、すぐに目つきを鋭くして問いかける。
美琴「――何でココにいるのよ………『第二位』!」
――病室内
――ナンデココニイルノヨ ダイニイ!
上条「………寝たフリしてやり過ごすのは……やっぱダメだよな………不幸だ」ハァ…
848 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/24(木) 20:47:08.35 ID:9fJXNhs0 [15/17]
垣根「――まぁ……気持ちは分かるが、とりあえず落ち着け第三位。俺は今悩んでんだ。精神的余裕がねぇっつーか…」
美琴「質問に答えなさい!……アンタまた一方通行を狙って………まさか!?」
――上条の病室を一緒に開けようとしたのを思い出す。
美琴「……そういう事ね…」
垣根「は?」
美琴「一方通行に敵わないからって、仲間(上条)を狙うって訳!?この卑怯者!」
垣根「あぁ?何訳分かんねえ事ぬかしてんだ?」
美琴「それだけは絶対に許さないわ!アンタみたいな卑怯者にアイツを殺らせたりなんかしない!死んでも止めてやる!」ザッ
垣根「………誰が」
美琴「………?」
垣根「だぁれが卑怯者だゴルァァああああ!!!」ブァサッッ
美琴「―――ひっ…」ビクッ
850 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/24(木) 20:58:39.05 ID:9fJXNhs0 [16/17]
垣根「――もうアッタマきたぞこのクソアマがァァああ!!!表出ろやぁ!!」バサ バサ
美琴「………じ、上等…じゃない…」
――外
垣根「まぁた泣かされてぇのかぁ!?あぁ!!今度ぁ容赦しねえぞコラ!」ブァサ ブァサ
美琴(何でコイツこんなキレてんの…?こ、怖い)
垣根「来ねえんならコチラから行くぞぉ!!」ブァッ
美琴「こ、このぉぉッッ!!!」バリバリバリッ バシューーーー!!!
垣根「――効くかボケがぁ!!」ブァサッ ギィーーン!!!
―――ドォォオオオオオオオンン!!!!!
「―――二人ともやめろぉぉおおおおおお!!!!!」
857 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/25(金) 18:52:54.84 ID:cQDFnmI0 [2/10]
――上条病室
窓から外を眺める二つの影――
「――おォおォ……三下も大変だねェ。……っつかアイツ自分が怪我人だっての忘れてンじゃねェか?」
一方通行は窓淵に肘を掛け、下を眺めながら呟いた。
すぐ隣にいる御坂妹はその言葉に反応する。
「――しかし、あの方は今まで幾度となく重傷を負ってきました。あの程度の怪我は彼の中では怪我の内に入らないのでは?とミサカは推測します」
――二人の視線の先、つまり下の広場には距離があるせいでよりいっそう小さく見える第二位と第三位(正座中)、
そして、その二人の前でまるで子を叱る母親のように立ち振舞う上条の姿があった。
上条はジェスチャーも交えて何やら二人に語りかけているが、どうせいつものお説教だろう……。
二人ともお寺で修行しているかのように一寸たりとも動いていない。
一方通行は共感するような目でその光景を御坂妹と共に上条の病室から眺めていた。
「……こンなことなら、最初っから連れて来るンだったぜ……結局バレてりゃ世話ねェっつの…」
858 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/25(金) 19:04:44.34 ID:cQDFnmI0 [3/10]
「三下の野郎が変に気ィ遣うからだァ。ったく…」
――御坂妹は独り言とも取れる呟きにも反応し、応える。
「……おや、あなたも同罪ですよ?とミサカは責任逃れを阻止します」
「あァ?分かってンだよンな事ァ。」
チッと舌打ちしてソッポを向く一方通行。
御坂妹は何故か微笑みを浮かべて一方通行を見ている。
「なァにムカつく顔でコッチ見てンだオマエ?」
「いえ、ただ……」
「?」
一呼吸おいて、御坂妹は口を開く。
「――あなたも、そんな子供っぽい顔もするんだなぁって……」
「……はァ?」
859 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/25(金) 19:22:11.22 ID:cQDFnmI0 [4/10]
一方通行「オイオイ、俺が子供っぽいたァ言ってくれンじゃねェの。頭飛ばされてェのか?」
御坂妹「いえ、それは嫌です!忘れて下さい!とミサカは慌てて取り繕います」
一方通行「……っつーかさァ」
御坂妹「?」
一方通行「オマエ、『今回の件』どこまで知ってンだ?」
御坂妹「……それはどういう―ー」
一方通行「三下が入院した訳も訊いてこねェのは何故だ?あのクソガキ経由で、大体の事ァ分かってンだろ?」
御坂妹「……その事ですか。ミサカは残念ながらあなたの希望には応えられません。ミサカが知っているのは上位個体の体験までです。
ミサカにも何がなんだか分かりません………逆に、シスターを攫った方は何者だったのですか?と訊いたら、あなたは答えてくれますか?」
一方通行「……どっかのマニアック集団だろ…」
御坂妹「では、あの『能力とは信じ難い妙な光』は……?」
一方通行「『訳分かンねェ力』だろォ。……結局何なのかは分からなかったがなァ。シスターも無事取り返したンだ。どォでもイイさ」
御坂妹「……そう…ですか…」
一方通行「…何浮かねェ顔してンだ?」
860 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/25(金) 19:36:59.33 ID:cQDFnmI0 [5/10]
御坂妹「………あなたや、あの方が無事に戻ってきてさえくれれば……ミサカは何も望みません…」
一方通行「………」
御坂妹「ですが……あなたやあの方が危険に足を踏み入れる事はもっと望みません」
一方通行「…………」
御坂妹「このネックレスは……あの方から貰った大事なもの…」
御坂妹「そして……あなたからも大事なものを貰っています」
御坂妹「ミサカは……危険を顧みず突っ走っていくあなた達二人がとても心配です……」
御坂妹「『上条当麻』、『一方通行』……あなた達二人は一見対称的ですが、中身はあまりに似過ぎています…」
御坂妹「………どちらも失う事は……ミサカには耐え―――!?」
一方通行「…………」
――言葉を打ち切るように、御坂妹の頭に手を置く。
そして、いつも打ち止めにしているようにワシャワシャと乱暴に撫でる。
御坂妹「――っ!?――や、やめてください………とミサカは懇願します」
861 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/25(金) 19:52:58.17 ID:cQDFnmI0 [6/10]
一方通行「――こンな三下臭ェ事、本当は言いたくねェンだがなァ……」ワシャワシャ
御坂妹「――?」
一方通行「――俺も三下も、オマエの前からいなくならねェ。だからオマエは笑ってろ」
御坂妹「――!?」
一方通行「オマエがそォやって考え込む必要なンざどこにもねェンだ」
御坂妹「…………///」
一方通行「何も心配するな。オマエはいつものオマエのままでいろ……アイツだったら、多分そォ言うぜ?」
御坂妹「………あなたという人は……本当に……ずるい」ボソッ
一方通行「?」
御坂妹「そう言えば……」
一方通行「あァ?」
御坂妹「あなたは、ミサカに服を買ってくれる約束をしましたが……まだ果たされてませんね。とミサカは思い出します」
一方通行「……そォだったな。結局何もオマエに買ってやってなかったわ」
御坂妹「……約束…しましたよね…」
一方通行「勿論果たすに決まってンだろ?俺を誰だと思ってンだ?」
御坂妹「……それなら…出来れば今度は……二人きりで――」
862 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/25(金) 20:06:00.95 ID:cQDFnmI0 [7/10]
――ガチャッ!
一方・御坂妹「――!!?」
上条「――あれ?一方通行に…御坂妹じゃないか。戻って来てたのか」
垣根「――うー、また足痺れちまった……あれ?…何かお邪魔…?」
美琴「――もう、アンタのせいで私まで……って…何してんのアンタら?」
一方通行「……………」(御坂妹の頭に手を置いたまま硬直)
御坂妹「……ミ、ミサカはこれで失礼しますっ!とミサカは慌てて走り去ります!――」
――バタン!
顔を両手で覆い、まるで告白に失敗して泣きながら走り去るように御坂妹は病室を出ていった……。
それを見た三人は、一方通行へ振り返る。
――何故か三人とも敵意に満ちた目で……
一方通行「………は?」
863 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/25(金) 20:26:49.26 ID:cQDFnmI0 [8/10]
上条「……一方通行……お前、人の病室で何してたんだ?」ジロー
美琴「アンタ……あの子に何したのよ?」ジロー
垣根「テメェ……見損なったぞ……人が正座されて足痺れさせてる間に女と密会かぁオイ」ジロー
一方通行「はァあ!?…オイ、オマエら何勘違いしてンだァ!?俺は何も――」
美琴「嘘言ってんじゃないわよ!あの子、泣いてたじゃないの!」
上条「一方通行……女の子を泣かすのは上条さん関心しませんねぇ……」
一方通行「何オマエまで疑ってンだコラァ!だからそォじゃねェっつの!俺はアイツを――……」
――その先を言えるはずがなかった。
垣根「ムキになって否定するのは肯定と一緒だぜ?一方通行よぉ!女の敵は俺の敵だぁ!大人しくお縄につけオラァ!」
一方通行「何ほざいてンだこのイカロスもどき!そこの女とさっきまで敵だった分際で吠えてンじゃねェぞ!」
垣根「さっきまでな。もう違う」
一方通行「く!…このォ」
美琴「私はこれでもアイツの姉……妹を傷つけるヤツは誰だろうと許せないわ!」
一方通行「だァかァら傷つけてねェっつってンだろォがァ!!」
上条「……一方通行、友として……お前の幻想をブチ殺させてもらうぞ……まさか親友に拳をぶつけなければならないなんて……お前、本当ついてねえな」
一方通行「イヤイヤ!散々ぶつけられてンですけどォ!?」
上条「ええい、うるさい!皆の者!かかれーー!!」バッ
垣根・美琴「おぉーーー!!!」バッ
一方通行「」
………俺、三下より不幸になってねェか?
864 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/25(金) 20:33:25.24 ID:cQDFnmI0 [9/10]
これで一応完結……のつもりだったんですが……
後日談はどうしましょ?
880 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/27(日) 01:44:56.60 ID:njpJ8sc0 [2/32]
―――『禁書目録誘拐事件』解決から一週間後―――
――冬の夜空に無数の星が輝く学園都市……すっかり冷えきった気温のせいか、通行人の息は皆白い。
夜の街は『学生服の姿』がない。なぜなら、まだ学生達は冬休みだ。
少なくとも制服を着て夜の街で遊び回る学生は滅多にいないだろう。
第十五学区は科学の発展した学園都市の中でも流行の最先端を行く地域だ。
テレビ局に賭博場といった、表から裏まで様々な施設がこの学区にはある。
そんな第十五学区内にあるこれまた一見普通のゲームセンター……実はこの地下では密入された銃器が密売されている。
どこにでもある裏家業のひとつだ。一般人に縁がないのは勿論のこと、特定のパスワードを入力しないと入れない上に、
来店時はボディチェックまであると言った少々厳重なこの店に、今夜も『客』が階段を下りる音が響いた。
――カツン、カツン……
金属のような音がするという事は、今宵の『客』は杖をついているか義足か……。
まともな客は来れないこの店にとっては珍しい事ではない。少し小太りで坊主頭な武器屋の店主はさして気にも止めなかった。
そして、予約時に伝えたパスワードが入力され……入り口の扉が自動で開いた。客は『前者』の方だった……。
来店した『客』は現代風のデザインをした杖を右手でつき、左手に鍵のついた鞄を持っていた。
「――いらっしゃいませ。お客さん、ウチは初めてだね?」
商人にありがちな怪しい笑みに『客』は「あァ」と一言だけ返し、店内を物色しだした。商品が並んだ棚を徘徊するように回る。
棚には拳銃から短機関銃(サブ・マシンガン)まで割りと幅広い銃器が豊富に並んでいる。手書きの値札が何とも印象的だ……。
そしてざっと一通り見渡した後、『客』は店主に――
「これで全部か?」
――と、尋ねる。
881 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/27(日) 01:51:06.99 ID:njpJ8sc0 [3/32]
「あぁ、最近は厳しくてね。なかなか客の注文する武器は手に入らなくなっちまったよ……」
忌々しそうな口調の店主の言葉に『客』は――
「……へェ」
――と興味なさげに返した。
「ー―んで、お客さんは一体どんなのが欲しいんだい?」
店主の質問に『客』は近くに置いてあった商品の拳銃を一丁手に取る。
「最近持ってる銃がどォも調子悪くてよォ。使えそうなヤツを探しに来たンだが……コレなンてどォよ?」
「イタリア製『ベレッタ8000』か……『M92FS』よりは扱いやすいだろうが……そんなんで良いのかい?戦闘に使えなくもないが、
せいぜい護身用の範囲だぜ?」
「なァに、構わねェよ。いざって時の『護身』になる事には変わりねェからな」
そう言いながら、銃をクルクルと回してニヤリと笑う『客』。
その不気味さに店主は一瞬たじろぐ。
「ま、まぁウチとしては商売になるんなら文句はないが……で、購入はそれだけで良いのか?」
「あァ。コイツで良い……なァ、コイツ試し撃ちとか出来ねェのか?」
「ん?あぁ、出来るよ。コッチに試し撃ち用の防音部屋がある」
店主の答えに『客』は――
「へェ、至れり尽くせり…ってヤツか。こりゃ好都合だな」
――そう呟いて歩き始めた店主の後についていった……。
882 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/27(日) 01:58:10.49 ID:njpJ8sc0 [4/32]
「――どうだい?気にいったか?」
何発か試し撃ちをした『客』に店主は後ろから尋ねる。
「――装弾数は15発か……まァ、悪くねェ。思ったより無難だが、今使ってンのよりはマシだろ」
振り返らずに銃を見ながらそう返す『客』。
「無難ねぇ……拳銃タイプならそういうのが一番良いと俺は思うがな。重量も手ごろだし……だが、『裏』の仕事で使うんなら、
もっと良いのがいくらでもあるぞ?どうせお客さんも暗部の人間なんだろう?」
店主はさらに購入を勧めてみる……が、
「……確かに、『普通の下っ端』にはコイツだけじゃ正直言って心許ねェだろォな。だが心配はねェ。どンな武器を使おうが、
結局生き残るのはソイツの実力と意思次第だ。銃の性能なンてのはあくまでその付属に過ぎねェ」
と、一蹴して店内へ戻る。
「っつー事で『清算』だ。ま、安く頼むわ」
「………チッ」
店主は『客』に聞こえないように舌打ちし、一緒に店内へ戻った……。
―――
「――お、おい……お客さん…」
「あ?何だよ?」
883 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/27(日) 02:05:48.25 ID:njpJ8sc0 [5/32]
「安くするどころか……定価でもこれはち……ちょっと多すぎるぜ」
「はァ?」
――清算時、店主は何の躊躇いもなくポンと札束を放る『客』に驚きを隠せなかった。一番高い品物の値段よりも明らかに多い。
だが、当の『客』は顔に「?」を浮かべている。
「こんなに金持っ来てるんなら、他の商品も買ってかないのかい……?」
店主の再度に渡る勧めも――
「必要ねェ」
――と、一言で切り捨てた。
「ま……まぁ、ウチとしては有難いけどね……フフ…」
額に若干の汗を掻きながらも、やはり欲望は隠せないらしい。……下衆な笑顔の店主に対して『客』は思い出したように口を開いた。
「――あァ、そォ言や試し撃ちした部屋に忘れモンしちまった。悪いが一緒に来てくれるか?」
店主は一瞬キョトン、としたがすぐに「あ、あぁ」と返事をして立ち上がった。
―――
店主と『客』は商品試し撃ち用の防音部屋へ戻ってきた。
部屋は店主が持っている鍵がないと開かないので、自然と二人で戻る形となった。
部屋に入っても探し物をする素振りを見せない『客』に店主は疑問を抱いた。
885 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/27(日) 02:17:26.64 ID:njpJ8sc0 [6/32]
「――オイ、最後にもう一発だけ『試し撃ち』してェ。ドア閉めろ」
「へ?あぁ、その銃はもうお客さんのだから好きに使いな。弾も買ったし…」
店主の言葉に『客』は不思議そうな顔をして尋ねる。
「は?オイ、何でこの銃は『もう俺の』なンだ?」
「……何言ってんだ?お客さんがその銃買ったんだろうが。すでに清算も済んでるから、もう返品は受け付けないよ」
店主にとっては至極当然な言い分だが……『客』は何故かひとりで納得した顔をしていた。
「あァー……そォか。いやァ悪い悪い。何か勘違いさせちまったよォだな」
「――え?」
訳が分からない…という顔をしている店主に、『客』……いや…学園都市最強の超能力者、一方通行は一気に薄ら笑いを浮かべた。
「清算代金は、銃と『オマエ』込みなンだよ」
「―――!!!?」
――ドォン!………と、防音部屋で最後の『試し撃ち』が行われた……。
―――
一方通行「………」
887 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/27(日) 02:29:38.41 ID:njpJ8sc0 [7/32]
「――ぎゃああああああああああッッ!!!が、がぁぁ!!…テ、テメェ何を…――」
一方通行「ギャアギャアうっせェンだよ豚がァ。豚は豚らしくブーブー言ってろっての……」
いきなり足を撃たれてのたうち回る店主と銃口を向けたまま見下ろす一方通行。
一方通行「まァ、運が悪かったと思って諦めンだな……」
「ひ、ひぃいっっ!!!や、やめろ!!テメェまさか警備員か!?――」
一方通行「ハッ。ンな真っ当に生きちゃいねェから安心しろ。………冥土の土産ってヤツだ。俺の『忘れモン』が何だったのか、
最後に教えてやるよ」
「―――ッッッ!!!ま、まさか…おい、やめ――」
一方通行「はァいご名答ォ。正解は…オ マ エ……ってなァ」ニヤァ
――ドォン! ドォン!
店主が最後に見た一方通行の顔は、『悪魔』の笑いに歪んでいた……。
―――
一方通行「――ちっ、くっだらねェ…」
888 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/27(日) 02:36:34.63 ID:njpJ8sc0 [8/32]
一方通行「はい清算終了ォ、これでこの銃は晴れて俺のモンってなァオイ……って聞こえてねェか」
――そう言って銃をしまう一方通行。
――ブクブク…と泡を吹き気絶している店主を尻目に一方通行は鞄の鍵を開け、さらに鞄の底を外した。
ボディチェックと持ち物検査をカモフラージュするためだ。
鞄の底から取り出したのは何枚かの紙だった……。おそらく何かの資料だろう。
一方通行はその紙を持って商品棚を端から順に見て回る。紙と棚を交互に見ながら店内を一周し、紙を鞄に戻してどこかに電話を掛けた。――
「おォ、終わったぞ。またつまンねェ仕事押し付けやがって。こンなの俺が態々出るまでもねェだろォがよ。…あ?コイツに
書かれてた銃は全部あったぞ。回収すンならとっとと回収班よこせ。ついでに外でおやすみ中の雑魚二匹、あと店内で泡吹いて
ノビてる豚も一匹いるから、ソイツらもオマエ達で勝手にどォとでもするンだな。…っつーか、いちいち鞄に細工する意味
なンてなかっただろォが。どォせ中身をチェックするヤツらも、どの道お寝ンねさせるンだからよォ。
あァ?あとは何もねェ。そンじゃ、俺はもォ帰っからなァ。豚が目覚めてトンズラこく前に早く来た方がイイぜ」――ピッ
言うだけ言って、さっさと電話を切る一方通行。未だ気絶状態から目を覚まさない店主に向かって「チッ」と一回舌打ちし、店から出て行く。
階段を上って、外に出る……入る時に片付けた二人の門番は倒れたままだが、一方通行はそれに目もくれずに夜の闇へと姿を消した……。
―――
891 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/27(日) 02:48:57.22 ID:njpJ8sc0 [10/32]
――黄泉川家
「――おーい、垣根!あの馬鹿は?」
リビングで食事を並べながら、風呂から上がった垣根帝督に声をかけたのは家主の黄泉川愛穂。
垣根はスウェット姿でタオルを首に巻いたままリビングにやってきた。
リビングには黄泉川の他に打ち止めと芳川桔梗もいた。
垣根「あれ?……まだ帰ってきてねえのアイツ…」
黄泉川「昼過ぎに出て行ったきりじゃんよ。どこほっつき歩いてんだか…まったく……」
打ち止め「あ!そう言えばあの人からさっきメールが来たよ。『ちょっと遅くなるから先にメシ食ってろ』だって。ってミサカはミサカは報告してみる」
芳川「あら、上条君と夜遊びでもしてるのかしら?」
黄泉川「それは感心しないね……帰ったらとっちめてやるじゃん」
垣根「うーわ、俺知らねっと……」
黄泉川「アイツの分はラップでもしといて、先に食べるじゃん。一応連絡は来たんだし、その内帰って来るだろ」
芳川「そうね、お腹すいたわ」
黄泉川「アンタ何もしてないじゃん。ま……今に始まった事じゃないけどね」
打ち止め「ご飯ご飯ー!いっただっきまーす!ってミサカはミサカは手を合わせてみたり」
垣根「俺も、そうだ!打ち止め、メシ食ったら『アレ』やろうぜ?」
打ち止め「うん、いいよー!ってミサカはミサカは快諾してみたり」
芳川「……私も良い?」
垣根「え?えぇ、勿論っすよ。黄泉川さんは?」
黄泉川「あたしは遠慮しとく…」
893 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/27(日) 03:06:44.54 ID:njpJ8sc0 [11/32]
――同時刻、上条家
ごく普通の学生寮、学生は冬休み期間だが……この寮の一室に住む高校生、上条当麻には休む暇などなかった。
何故なら、彼は今必死に終わらせなければならない事がある。
……そう、冬休みの課題だ。
何故、上条が冬休みの後半にこれほど必死こいて課題に取り組んでいるのか……その理由は単純だった。
彼は一週間前、急遽入院を強いられた。ニ、三日で退院したものの、その間当然補習は受けられずに全て『課題』として返ってきたのだ。
ただでさえ多い通常の課題に補習分の課題が加わり、上条の頭ではどう考えても終わらないであろう程の量となったのだ。
そのため、彼は一方通行や美琴と退院してから会っていない。
というか、会いたくても会えない。
一日中缶詰状態で課題に取り組む上条の姿は例えて言うなら、五浪してもう後がない受験生といったところか……。
そんな上条の横ではふくれっ面の同居人シスター、禁書目録がひとり愚痴っていた。
禁書「……とうまぁ…」
上条「…………」カリカリ
禁書「ご飯、まだなのかな?」
上条「…………」カリカリ
禁書「……私の話、聞いてる?」
上条「…………」カリカリ
禁書「とうまぁぁ……」プルプル
上条「…………」カリカリ
禁書「とうまってば!!さっきからずーーっと話しかけてるのに、シカトぶっこくなんて非道いかもっっ!!」
上条「…………」ピタッ
禁書「……とうま…?」
894 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/27(日) 03:30:11.84 ID:njpJ8sc0 [12/32]
――禁書目録は、突然動きを止めた上条に怪訝な目を向ける。
上条「……良いか、インデックス。よく聞け」
禁書「な、なに?」
上条「上条さんは今、史上最大のピンチを迎えている。そして、状況は最悪に近い」
禁書「だ、だから?」
上条「しばらく俺に話しかけるな」
禁書「そっ、そんなぁ!!私のご飯はどうするの!?」
上条「夕食は三十分前に食べただろ?忘れたのか?」
禁書「え……?」
上条「証拠は後ろのテーブルを見れば一目瞭然だ。お前は俺の邪魔をする前にするべき事があるだろう?」
禁書「うぅ……あれっぽっちじゃ足りないんだよ…」
上条「あれが一般的な食事量だ。ましてお前は女の子なんだから、本当はもっと少ないくらいがちょうど良いんだぞ?」
禁書「で……でもぉ」
上条「でもじゃねぇ。俺は今、マジで焦っている。これ以上俺をイラつかせるな」
禁書「とうま……何でそんな無表情で淡々と喋るの?怖いよ……」
上条「何度も言わすな。風呂は沸いてるから勝手に入ってこい。そして、マジでしばらく俺に話しかけるな。さもないと――」チャキ
――ボールペンの先を禁書目録に向ける上条。
その時、久々に正面から上条の顔を見た禁書目録は……戦慄した。
上条の頬はすっかり痩せ、目の焦点が合っていない……。据わった目には禁書目録が映っているのかすら分からなかった。
禁書「――ひっ!?」
上条「………これ以上、邪魔をするなら……容赦はしない。わかったな?」
禁書「は、はいっっ!!お片づけしますっ!!」
――慌てて立ち上がり、食器を片付けていく禁書目録。
上条はそれを見て少し微笑み、再び膨大な量の課題に挑んでいくのだった……。
963 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/27(日) 18:03:07.31 ID:njpJ8sc0 [16/32]
―――常盤台女子寮
――この洒落た造りをした寮の208号室には学園都市第三位の超能力者、通称『超電磁砲』こと御坂美琴と、風紀委員に所属する
大能力者、『空間移動』の能力者である白井黒子が住んでいる。
美琴はベッドに寝転がりながら緑のデザインをした携帯電話のディすプレイを眺めている。その横のベッドでは白井黒子がお風呂から
上がったばかりなのか、濡れた髪をくしで梳きながら腰掛けていた。無論、いつものツインテールではない彼女の髪型は
外でしか彼女を見ない人間にとっては新鮮であったが、同室の美琴にすれば見慣れたものである。
それよりも美琴には気になる事があった。その答えは携帯の画面に表示されている『上条当麻』の名前が教えている。
美琴「…………」
黒子「お姉様?そんなに気になるんでしたら、どうぞ黒子に遠慮せずに掛けたらどうですの?」
後は通話ボタンを押すだけで上条に繋がるのだが……美琴はボタンを押せずに直前の画面を見たまま悩んでいた。
それに見かねた黒子がくしを動かしながら口を出すが、やはり上条に電話を掛ける事ができずにいた……。
美琴「うーん……やっぱダメ。アイツ、メールで『忙しい』って言ってたし……」
黒子「お姉様とお話する暇もないんですの?どうせまた『宿題』とやらが片付いていないだけなんでしょう」
――図星である。
美琴「だったら、私手伝ってやれるのになぁ……」
黒子「上条さんにもなけなしのプライドというものがあるのなら……それは多分望んでおりませんわよ?
っていうか、気になるのでしたら電話を掛ければ――」
美琴「でもでも!アイツ、いつもよりメールが冷たいっていうか……何かそっけなかったのよ。電話してもし……怒らせて嫌われたりしたら……」
964 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/27(日) 18:15:07.42 ID:njpJ8sc0 [17/32]
黒子「その時はわたくしがお姉様を慰めて差し上げますわ。体の隅から隅まで――」
美琴「それ以上言ったら電気椅子よ?」ジロリ
黒子「照れなくてもよろしいですのに……」
美琴「照れてねぇっつーの!っていうか、アンタよく言葉に出せるわね?普通心の中にでも留めておくモンでしょ?」
黒子「あら、生憎わたくしはお姉様に嘘や隠し事などは一切しない主義ですの」
美琴(よく言うわ……)
――結標淡希との一件を思い出しながら心中でツッコミを入れる美琴。
黒子「で、結局今日は掛けませんの?」
美琴「あ、明日!明日アイツん家に行ってみよっかなー…って思っちゃったり…」
黒子「あら……お姉様も明日は忙しいんですのね………それにしてもここ最近、犯罪も増えてますの。わたくしも明日は忙しくなりそうですわ」
美琴「え、何でよ?」
黒子「お忘れですの?明日は初春が休みですのよ。ったく、この忙しい時期にあの花畑が…」
美琴「そうだったわね。黒子、初春さんも念願の『初デート』なんだから大目に見てやんなさいよ」
黒子「殿方にうつつを抜かしているようではジャッジメントは務まりませんわ」
美琴「それ……単にアンタが男嫌いなだけでしょうが」
黒子「お姉様。わたくしは殿方が嫌いな訳ではありませんの。その何倍もの魅力を放つお姉様以外見てないだけですの」
美琴「ハイハイ、どーもありがとねー。んじゃ、私もう寝るから――」
黒子「それにしても今日は寒いですわね……お姉様、もしよろしければわたくしとベッドの上で体をあたt」
美琴「もうそれ寝る前の『おやすみ』ぐらい日常的よね…」
「却下に決まってんでしょ、馬鹿」と付け足して、美琴は眠りについた……。
明日は数日ぶりに上条に会える……それだけで幸せな夢が見れる気がした。―――
965 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/27(日) 18:27:52.43 ID:njpJ8sc0 [18/32]
―――黄泉川家
――夕食から約三十分に帰って来た一方通行は自室に入って愕然とした。
いや、完全に呆気に取られてしまって声が出なかったと言う方が正しい。
彼が開いた口を閉じられないのには三つの要素があった。
まず、一つ目……一方通行の部屋にはテレビがない。というか、寝具とクローゼット以外殆ど何もない。垣根が
「つまんねえ部屋だな」と、初めて入った時に口走っていたが……その感想は適切だった。
前に垣根が「テレビ部屋に置こうぜ」と言った時、一方通行は「狭くなンだろォがよ。見たけりゃリビング行って勝手に見てろ」
と冷たく返した。
次に二つ目……一方通行の部屋にはテレビがないので、当然ゲーム機なんて物も置いていない。
以前、上条家で盛り上がってた所を見ると、ゲーム自体嫌いではないらしいが……態々部屋に置きたいとも
思わなかった。これについても前に垣根が「んだよお前、『FF14』やってねえの?」と訊いてきた。
一方通行はその時「何ですかそりゃあ……???」と訊き返したが、垣根から二言目に「お前だいぶ人生損してるぞ」と
返されて最終的にキレかけたそうだ……。
最後に三つ目……この自室の状況である。
六畳半程の部屋の奥に置かれたテレビとゲーム機。そしてテレビ画面に集中する三人の同居人の後ろ姿。
思いのほか盛り上がっているのか、三人とも一方通行の帰宅にはまだ気づいていないようだ。
芳川と垣根がコントローラーを握ってプレイに熱中している。打ち止めは観戦し、二人の攻防に見入っていた。
リビングにある古いファミコンで打ち止めがプレイしているのを何度か見た事はあるが、今部屋にある
ゲーム機本体は割と最近発売された物だ。一方通行はプレイ中の画面に見覚えがあった。当然だ。これはつい
この前に上条宅でやった事がある。その時は御坂妹に完膚なきまでに敗北したという、忌まわしい記憶もついでに甦ってきた……。
しばらく画面を呆然と眺める一方通行……。
垣根「――くっ、うぉ!何すかそのコンボ!?」ガチャ ガチャ
芳川「――ふふっ、伊達に暇人やってないのよ」ガチャ ガチャ
打ち止め「ヨシカワすごーい!ってミサカはミサカはすごく驚いてみたり。お兄ちゃんしっかりー!」
966 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/27(日) 18:33:51.14 ID:njpJ8sc0 [19/32]
垣根「く、くそぉ…」
芳川「これで終わりね」
――you win
打ち止め「――あぁー、お兄ちゃん負けちゃった…ってミサカはミサカはヨシカワの上手さに興奮を隠せなかったり」
垣根「ば……ばかな……俺の未元物質が…」
芳川「詰めが甘いわ。けど貴方もなかなかやるじゃないの。さすが『無職同盟』の構成員なだけの事はあるわね」
垣根「いや……俺、入った覚えないんすけど……っつーか、まだ長点に籍あったし…」
芳川「あら、そうなの?じゃあ冬休み終わったら復学するのね」
垣根「まぁそのつもりっす」
打ち止め「長点って事は、あの人と同じ学校だね。ってミサカはミサカは安堵してみたり。あの人と学校で仲良くしてあげて?」
垣根「いやぁ……アイツも俺も普通の学校生活は送れてねえから、多分学校じゃ会う事はねえと思うぜ?」
打ち止め「えぇ、そうなんだー……」
芳川「レベル5も良い事ばかりじゃないのよ…」
――ペチャ クチャ
一方通行「――っつーかオマエら、イイ加減気づけよ」
三人「!」――クルリ
打ち止め「あぁーっ!アナタ帰ってたの!?ってミサカはミサカは背後にいつの間にかいるアナタにビックリしてみる!」
芳川「あ……おかえり。遅かったわね」
垣根「何だよ、帰ってたんならそう言えよ。驚いただろぉが」
一方通行「……ンで、なァにやってンですかァ?人の部屋で」
967 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/27(日) 18:39:52.86 ID:njpJ8sc0 [20/32]
垣根「え?『鉄拳6』だけど……?」
一方通行「そンなの見りゃ分かンだよタコ。なンで俺の部屋でやってンだ?ってか、どっから持ってきた?
前にテレビは置かねェっつったよなァ?すげェ狭っ苦しいンですけどォ?」
垣根「一気にまくし立てるなよ。……いや、買ってきたに決まってんじゃん」
一方通行「だからなンでだよ?今日俺が出かける前まで無かったよなァ?」
垣根「退院した後、上条ん家でハマってさぁ……我慢できなくてつい買っちゃった。てへ♪」
一方通行「てへ、じゃねンだよきめェうぜェホントくたばれ。何が『我慢できなくて』だこのクソボケ!」
垣根「な……言ったなこのぉ!」
一方通行「お?言ったがどォした?」
垣根「――勝負ッッ!!」ビシッ
一方通行「ハッ、笑わせンな!オマエ俺に勝てるとでも思ってンのかァ?夢見ンのも程々にしとけ」
芳川「貴方もできるの……意外ね」
打ち止め「あの人の家に同じのあったよ。ってミサカはミサカは思い出してみる」
垣根「今日一日で鍛えに鍛えた俺様の実力見せてやんよ」
一方通行「馬鹿が。今芳川との試合軽く観てたが、動きが明らかに初心者じゃねェか。相手になるかよ」
垣根「うるせぇえ!!さっさと剣(コントローラー2P)取れやぁぁ!!」
一方通行「ハイハイ、軽く返り討ちにしてやンよ」
垣根「言い忘れたが、俺の本気キャラはコイツじゃないんだぜ?」
一方通行「どォせ『デビル仁』だろ?」
垣根「な……なんで知ってんだテメェ!?」
一方通行「………オマエ、本当は自覚してねェンじゃねェの?」
垣根「あ、何をだよ?」
一方通行「………やっぱ何でもねェ。忘れろ」
968 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/27(日) 18:45:24.91 ID:njpJ8sc0 [21/32]
―――デビルジン デビルジン
垣根「――おい、何故にテメェもデビル仁?」
一方通行「心優しい俺からせめてものハンデだ。同キャラで完膚なきまでにぶっ倒して、格の違いを思い知らせてやる。感謝しろ」
垣根「するかボケぇぇ!!ナメんのも大概にしろよ!!テメェに恐怖を教えてやらぁ!!」
一方通行「なら俺も教えてやる」
――キョウフヲオシエテヤロウ キョウフヲオシエテヤロウ
――ラウンド1 ファイッ!!
打ち止め「同キャラだと同じ台詞なんだ……」
芳川「黒い方はカラスみたいな羽ね……」
意図的なのか偶然か……黒い翼の仁が一方通行、白い翼の仁が垣根だった。
垣根「喰らいやがれ!ビーム!」ビィーー
一方通行「アホか」サッ サッ
垣根「なっ!何だそりゃあ!?どうやって…」
一方通行「オマエ横移動も知らねェのか?てンで話になンねェな。とっととくたばれ」ダッ
垣根「させっか馬鹿!」ブァサッ
一方通行「チッ、ぴょンぴょン飛び回ってンじゃねェぞ!」
垣根「クソッ、すぐ落ちやがる……これなら俺自身で飛んだ方が良いんじゃねえか…っつか、自分の見慣れたせいか翼がしょぼく見える…」
一方通行「オイ、それ言ったらおしまいだろ?俺だってこンなカラスみてェな羽より、テメェで生やした方が遥かにマシな気がすンぜェ」
打ち止め「二人とも飛び跳ねて……何か喜んでるみたいに見えるよ?ってミサカはミサカは実況してみたり」
一方通行「おらクソメルヘン。いつまでも跳ねてねェで、決着つけンぞ。かかって来い」
垣根「上等だぁ!地獄に落ちて絶望しやがれぇ!!」
―――結果は……言うまでもなく、垣根の惨敗に終わった。
969 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/27(日) 18:52:57.33 ID:njpJ8sc0 [22/32]
――初春の部屋
遅い時間にも関わらず、初春飾利はまだ起きていた……。初春の隣りにはストレートで長めな黒髪の少女、佐天涙子もいた。
佐天は学校の休みを利用して初春の家に泊まりに来ていたのだ。
建前は『遊び』だが、本音は『宿題』を一緒にやるためである。
初春は意外と厳しく、素直に「宿題見せて」と言っても断られるおそれがある。
だが、「遊びに来た」と言って彼女の家にお邪魔すればコッチのものだ。直接拝み倒せば初春という少女は脆いのである。
それでも少しは抵抗するだろう。と佐天は予測していた……。しかし、どういう訳か――
「初春、宿題見せて。お願いっ!」
「もう、しょうがないですね……良いですよ」
――と、一言であっさり済んでしまったのだ。
彼女の親友という立場の佐天もこれにはかなり驚かされた。絶対最初は渋るが、なんだかんだで最後はOKしてくれるのが
初春なのに……。
いや、それ以前に……今日の初春はやけに機嫌が良い。
が、佐天はすぐに思い当たった。
(そっか……初春の『初デート』、明日なんだっけ。そりゃ浮かれるハズだわ)
待ち合わせは午後かららしいので、佐天が泊まりに来る事に関しては問題ない。むしろ一人では落ち着かないので
来てもらうのが有難かったぐらいだ。
970 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/27(日) 18:59:57.28 ID:njpJ8sc0 [23/32]
その後――
二人は宿題をざっと切り上げ、布団に入り寝ようとするが……初春はなかなか寝つけずにいた。
そんな頭の中もいわばお花畑状態な初春が考えている事は勿論、明日の『デート』だった。――
(……やっと会えるんだ……『カッキー』さんかぁ……いったいどんな人なんだろう……)
――まだ見ぬ人物『カッキー』に想像を膨らませていた……。
―――――
―――時は遡り数日前
――初春は風紀委員の仕事を終えて佐天と共に帰宅していた。
佐天は風紀委員ではないのだが……黒子や固法ともだいぶ親しくなったせいか、未だに時々入り浸っている。
その度に固法から「ここは溜まり場じゃないのよ?」と言われ続けていたが、最近はもう諦めたのか、
何のお咎めもない。
普段の下校時刻より少し遅いくらいの時間に仕事が片付いたので、未だ始末書と格闘している黒子に
笑顔で別れを告げた二人は、揃って支部を後にした。
初春・佐天「――では白井さん、お先でーす♪」
黒子「――佐天さんはともかく初春、あとで屋上ですの」ジロ…
――その日最後に見た黒子の顔は般若に近かった……。
始末書を片付ける時の黒子はだいたいいつもこんな感じである。
971 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/27(日) 19:06:57.83 ID:njpJ8sc0 [24/32]
――支部を出た二人は通り慣れた街路樹を歩いていた。
初春は正式な風紀委員なので制服姿だが、佐天は一般学生なので私服姿だった。
初春「あぁー……肩凝っちゃいました」グルン グルン
佐天「あはは、オヤジ臭いよ初春」
初春「パソコン使ってるとホント凝るんですよ……」
佐天「なんなら揉んでやろっか?」ニギ ニギ
初春「い、いいですよぅ……佐天さんこそオヤジ臭いです!」
佐天「む、言ってくれるねぇ初春ぅ……」
初春「さ、佐天さんが先に言ったんですよ?」
佐天「ハイハイ、……ねぇ、ところで何か甘いモノ食べたくない?久々にカフェ行こ」
初春「え……?まぁ、少しなら……いいですけど…」
佐天「ん?」
てっきり乗ってくると思ったのに、何故か歯切れの悪い初春を佐天は不審な目で見据えた。
佐天「……うーいはるぅ」
初春「は、はい?」
佐天「まさかとは思うけど……太るから、なぁんてぬかす気じゃないよねぇ…?」
初春「――ッッ!!?な…」
佐天「ありゃ?ひょっとしてビンゴ?」
――本当に分かりやすい子だ。と佐天は心中で思いながらさらなる追求を試みる。
もっとも、女の子が急に体型を気にし始める理由など…だいたい相場が決まっている……。
意外と勘の鋭い佐天はあえてストレートに訊いた。
972 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/27(日) 19:12:54.16 ID:njpJ8sc0 [25/32]
佐天「で、いったい初春が惚れるような男はどんな人なのかなー?良かったら聞かせてくれる?」
初春「は、はいい!!?な、何言ってるんですかぁ!?」
佐天「トボけない、トボけない。いやー、まさに『初春』ってヤツだね。初春に初めての春ってか♪」
初春「ちっとも面白くありません!!」
佐天「……うん、我ながら寒かったな今の………んで、相手って誰なの?年上?」
初春「はぁ……多分年上――って何言わすんですかぁぁ!!///」
佐天(ほんとチョロイなー……)
―――
――喫茶店
初春は佐天の誘導尋問にまんまと引っかかった。
そして観念したのか、不良に襲われた事から助けられた経緯や、番号も知ってて一度だけ電話で話はした事、
約一週間後に会う約束をした事と…全てを自供した。実は今日辺りにでも電話しようと思っていた事まで
うっかり喋ってしまったが、これについて後悔するのはもう少しだけ先である。
一通り話し終えた初春は最後にこう付け加えた。――
「べ、別にただ…助けてもらったお礼がしたいだけで、すす、好きとかそういうんじゃないですからね!!」
――佐天はその言葉にだけ聞こえないフリをした。
初春の話し方や反応を見る限り、その『カッキーさん』という男が相当気になっているのは明らかだった。
さらに彼女はこんな事も言った。
初春「……気のせいかもしれないですけど……私、カッキーさんの声…どこかで聞いたような気がするんです」
佐天「え?それって知り合いだったり?」
初春「いえ、多分違うと思います……けど、確かに聞き覚えがある声なんですよ。誰なのかは分かりませんけど…」
973 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/27(日) 19:26:51.93 ID:njpJ8sc0 [26/32]
佐天「………ねぇ、ひょっとしたら芸能人とか!?」
初春「ま、まさかぁ……いくら何でもそれは…」
佐天「分かんないよ~。そのまさかかも…」
初春「な…ないですって…」
佐天「じゃあさ、かっこ良かったらその人紹介して」
初春「えぇ!?」
佐天「だって初春はその気じゃないんでしょ?だったら、私が」
初春「だ、駄目です!そんなつもりで会う訳じゃぁないんですからね!」
佐天「えぇ~良いじゃん?その人も、もしかしたら彼女いないかもしんないし」
初春「駄 目 で す!」クアッ
佐天「おっと…」(たまにすごい怖いんだよなぁ初春……これがなければ可愛いのに)
初春「佐天さん!!」プンスカ
佐天「ゴメンゴメン、ちょっと悪ノリしちゃった…」
初春「し過ぎです!」
佐天「でもさ、正直嬉しいよ……やっぱ友達の恋の応援って良いモンだね!頑張ってよ初春!私応援してるから!」
初春「さ、佐天さん……」
佐天「だからさ、もっと色々聞かせなよ~」
初春「え、えぇ!?もう全部話しましたよ!?」
佐天「まだまだ!デートへの心境とか、ゆくゆくはどうなりたいかとか、聞きたい事は山ほどあるんだから!
ここまで来たら観念して全部言っちゃいなよ」
初春「デ、デデデ…デートぉ!?///あ、あの佐天さん……だからそんなんじゃ…」
佐天「照れんな照れんな――」
――その後、しつこく冷やかしてくる佐天を何とかかわし切って自室に戻った初春は、
ふぅ…と一呼吸置いてから予定通り垣根に電話を掛けた。
974 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/27(日) 19:29:39.76 ID:njpJ8sc0 [27/32]
―――初春が自宅に着いたちょうどその頃、垣根は一方通行と遊歩道を歩いていた。黄泉川に食材や
日用品の買い出しを頼まれたのである。何故この二人なのかは疑問だが、当の二人は気にしていないようだ……。
スーパーのビニールを持って歩く学園都市のトップ2………実にシュールだった。
一方通行「――オイ、垣根ェ」
垣根「――ん、何だ?」
一方通行「何で俺が重い方持ってンだァ?コッチ杖つきなンだけどォ」
垣根「そりゃお前が……最強だから?」
一方通行「意味分かンねェンすけどォ」
垣根「俺はぁ…ほら!今日のメイン持ってるだろ?見ろよ、お前の好きな肉!」
一方通行「クソガキ用のお菓子はまァ良いとしてだ。何でオマエの寝巻きやら下着やらを俺が
持たなきゃいけねェンだ?コイツはどォ考えてもオマエが持つべきだろ」
垣根「同じ袋で、中身はパッと見分かんねえから気にすんなよ」
一方通行「先に二階の方行くンじゃなかったぜェ…ったくよォ」
垣根「なぁ……」
一方通行「あァ?ンだよ?」
垣根「お前の……っつーか、もう俺とお前の部屋か。せめてテレビくらい置こうぜぇ。マジ物無さ過ぎ」
一方通行「大きなお世話だっつの。それにテレビなンて置いたら部屋が狭くなンだろォがよ。そンなに
見たけりゃリビング行って勝手に黄泉川やクソガキとチャンネル争いでもしてろ」
975 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/27(日) 19:41:49.48 ID:njpJ8sc0 [28/32]
垣根「いや……あぁまで何もねえと何か落ち着かねえってか…」
一方通行「俺は狭いところが落ち着かねェンだよ」
垣根「お前ももっと色々興味持てよ」
一方通行「間に合ってますゥ。っつかオマエ、さりげなく自分の部屋とか言ってンじゃねェよ。
あそこは俺の部屋で、オマエはただの居候。この常識は覆さないでくれますかァ?」
垣根「ちょっと待て。お前も居候だろ……?」
一方通行「居候にもランクってのがあンだよ。俺は『亭主』クラスでオマエは『下っ端』クラス」
垣根「イヤイヤイヤ!亭主っておかしいだろぉ!?っつーか居候じゃねえぞソレ!」
一方通行「……オイ、ところでよォ…こンなの買い物リストにあったか?」
垣根「あ…」
――垣根の目に一方通行が袋から取り出した整髪料(ワックス)が映る。
一方通行「これくらい自分で買えよ。分からねェ様にどさくさ紛れでカゴに入れたンだろォが、バレバレだっつの」
垣根「……黄泉川さんには内緒で頼む」
一方通行「態度次第だなァ」ニヤ…
垣根「お前にも使う権利を与えよう」
一方通行「いらねェよボケ。整髪料とか俺には必要ないンですゥ」
976 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/27(日) 19:44:53.81 ID:njpJ8sc0 [29/32]
垣根「―――ん?誰だ?」
――Piriririri♪
――突然、垣根の携帯電話が鳴り出した。
垣根「――この表示……まさか…」
登録していない番号だが見覚えがあった……嫌な予感がする。
一方通行「……何してンだよ?出ねェのか?」
垣根「あ、あぁ……悪いが先行っててくんね?」
一方通行「チッ、長話になンなよ――」
一方通行を先に行かせた垣根は電話に出た。
通話口から聞こえてきた声は、やはり予想と同じだった。
『――あの……すみません。初春飾利です。カッキーさんですか……?』
垣根「……あぁ。どうも…ご無沙汰」
『いえ、コチラこそ。今、大丈夫ですか?』
垣根「あぁ。平気だよ」
977 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/06/27(日) 19:47:24.29 ID:njpJ8sc0 [30/32]
『――それでお礼の件なんですけど、来週の月曜とか……どうですか?』
垣根「月曜か…俺は良いけど…」
『じゃあ決まりですね♪時間は……えーと、午後からで良いですか?』
垣根「おう、その方が助かるかな…」
『では一時に○○駅前でどうでしょう?私はそこで待ってますので見つけたら声をかけてください』
垣根「あぁ、了解した…」
『でっ、では……来週、待ってますんで、絶対来てくださいね?もし来なかったら――』
垣根「必ず行くから何も心配せずに待っててくれ」
『クス……では、楽しみにしてますね♪』
垣根「お…おう」
『それじゃ――』
垣根「……………」ピッ
垣根「なんつーか………身代金の受け渡しに行く誘拐された息子の親…みてぇな心境だな…」
よく分からない独り言を呟きながら、垣根は一方通行の後を足早に追った。―――
―――そして、ついにその日がやって来てしまった!
続きます
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