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一方通行「友達になってやンよ」上条「ハイ?」2
337 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/26(水) 17:10:11.94 ID:BHfYMX.0 [1/13]
―――窓のないビル
アレイスター「……そうか。第一位と幻想殺しが友好条約を…」
アレイスター・クロウリー…学園都市総括理事長。
アレイスターの近くには土御門が立っている。そして、学校では決して見せない顔をアレイスターに向ける。
土御門「……大げさだな。まるで国の話だ…」
アレイスター「いや、科学の街の頂点と世界にひとりしかいない『魔術も科学も消せる力』……
第三次世界大戦開始から三ヶ月……このふたつの力は軽視できない」
土御門「あのふたりと共通の知り合いの俺から言わせてもらうが、利用するつもりならやめておけ」
アレイスター「…ほう?」
土御門「あの戦争も、お前の計画ももう終わったはずだ。……今度は何を企んでいる?」
アレイスター「……いいや。ただ、このまま長い寿命まで隠居というのも退屈でね。それに――」
土御門「……最近起きている『あの件』か?」
アレイスター「ロシアの暗部組織が極秘に調査を進めている。経過は酷いものらしい…」
土御門「……」
アレイスター「科学でも魔術でも立証出来ない。あの大戦の影響で世界の歪んだとしか思えない。……君はどう思う?」
土御門「……さぁな。今の段階じゃ、何を言っても予測にしかならないな」
アレイスター(だが、もしいざとなれば……彼等にも――)
――アレイスターは口に出さなかった。そして、一般的に公開されていない、第三次世界大戦の『負の遺産』は……
学園都市にゆっくり、ゆっくりと歩み寄っていた。
338 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/26(水) 17:42:29.36 ID:BHfYMX.0
――学園都市・郊外
一方通行は、周りに何もない広い荒野をフラフラと辛そうに歩いていた。空は陽が暮れ始めている。
一方通行「ハァ……ハァ………ちっ」
前を向き、舌打ちする。…街まではあと十数kmと言ったところか…
一方通行「クッソ…マジかよ……笑えねェぞ」
一方通行は黄泉川の予想通り、帰りのことを考えていなかった。
能力はもう使えないどころか、バッテリーが切れるのも時間の問題だった。
真冬の夜にこんな何もないところで行動不能になっては、確実に死ぬ。
一方通行「ハァ……ヤベェ…かもな」
目がかすんできた…。
垣根から受けた傷は深くはないものの、浅くもなかった。
血はもう止まったが、応急処置できるものもなく、自然に止まるまで血を流しながらここまで歩いてきた。
流石に…流しすぎたか。と呟き、歩くものの、使い慣れない木の棒をつえ代わりにしているため、
歩みは遅い。このペースでは街につくまで何時間もかかる。出血多量のせいか、頭がクラクラしてきた。
一方通行(クソが……俺は…こンなとこでくたばるワケに行かねェンだ……俺が死ンだら、あのクソガキは誰が守ンだよ……)
飛びそうな意識を無理矢理留めて、前方を向く。
一方通行(打ち止めァ……上条ォ……妹ォ……シスターァ……超電磁砲ン……ツインテールゥ……黄泉川ァ………ついでに芳川ァ…)
もはや足も言うことを聞かなくなっていた。そして――
――ドサッ……ついに力尽き、その場に倒れた。
339 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/26(水) 18:09:13.28 ID:BHfYMX.0
―――倒れて十分後……一方通行はうつ伏せのまま、閉じた目を薄く開いた。ヒンヤリした地面の感触がする。
一方通行(……今ァ…何時だ?…ち、思うように動けねェ…)
――ゴロンと仰向けになり、空を見上げる。暗くなり始め、星が見え僅かに赤み掛かった空には星が見えていた。
一方通行「………」
フゥー…と冷気の混じった息を吐く。貧血のせいか、手足の感覚があまりなかったが、
思考が働くということは、まだバッテリーは切れていないようだ。
一方通行(……綺麗だなァ。空ってあンまじっと見たりしねェしな……悪くねェ…)
血の気がなくなっている顔をふと触る……。
一方通行(冷てェ……し……寒いな)
体も冷え切っている。また意識をなくしたら……もう目覚めないかもしれない……。
一方通行(ハ…学園都市の頂点って呼ばれてるこの俺が……こンな何もねェとこで感傷に浸りながら
お陀仏なンて……笑い話にもなりゃしねェ…)
ふと、今まで関わってきた人達の顔がよぎる。
一方通行(……アイツら……怒っかなァ……妹には必ず帰るっつったのによォ………
って、おいおい……これが走馬灯ってやつかよ……マジでシャレになンねェっつの…)
一方通行は……少年の顔で笑う。その顔は、『悪党』とはかけ離れていた。
一方通行(……もっと、素直ンなってもよかったかもなァ)
340 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/26(水) 18:32:17.71 ID:BHfYMX.0
――走馬灯の最後に浮かんだ顔は、上条当麻だった。
唯一、友達と呼べる存在であり、自分にとってのヒーロー……。
ロシアでは会ったものの、戦争中でまともにのんびり話せなかったし、打ち止めのことでゴタゴタしていたので、
あの出会いは一方通行の中で『無効』にしていた。
平和になったこの先、あまり会うこともないだろう…と思っていた矢先、街で再会し、なんだかんだで
友好的になれた。自分みたいなクズの友達になってくれた。
言葉には絶対出せないが……嬉しかった。
そして…これも普段なら言葉には出せないことを……一方通行は呟いた。
一方通行「俺なンかの友達になってくれて……ありがとよォ……『当麻ァ』」
ボソッと呟くような声だが……確かに言葉に出ていた。
一方通行(……やりゃァ……出来ンじゃねェか………へっ)
静かに笑い、目を閉じる。もう動く気になれなかった。……こんな幸せなまま[ピーーー]るんなら……それもいい…。
ゆっくりと……意識が落ちていく……――
――その時、
一方通行の耳に、車の走る音が届いた。
341 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/26(水) 18:50:16.71 ID:BHfYMX.0
―――ブロロロロロ……
僅かにだが……確かに聴こえる……幻聴じゃない。
その音はだんだんと近づいて来ていた。
一方通行「……あァ?」
意識を覚醒させ、目を開く。力の入らない腕で何とか体を起こす。
一方通行の目に入ったのは……一台のジープだった。こっちに向かって来ている。
一方通行「……こォいうのを『くたばり損ない』ってのかねェ……」
フッ、と笑い、ジープを見つめる。自分を呼ぶ声がはっきり聞こえてきた……友の声だ。
上条「一方通行ぁぁぁぁぁぁあ!!!」
………どうやら、あの世に行くのはまだ先のようだ。
一方通行は、そのままドサっ!と仰向けになる。
両腕を広げ、心底安心した顔のまま目を閉じた。
その顔のまま一言―――
一方通行「――遅ェンだよ。三下がァ…」
そして、そのまま彼の意識は途絶えた…。
344 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/26(水) 19:24:31.68 ID:BHfYMX.0
さて、もうちょいだけ書きます。
――病院
一方通行「………?」
一方通行は病院で目を覚ました。……夏に世話になった部屋だった。
黄泉川「お?気がついたじゃんか?」
一方通行「……黄泉川」
隣に黄泉川が座っていた。
黄泉川は穏やかな顔から一転、怒りの表情で一方通行の頭を叩いた。
黄泉川「このバカ!!」
――スパァァン!!
一方通行「――!!ってェな!!何しやがンだよ!?俺ァ怪我人だぞォ!?」
黄泉川「やかましい!バカに効く薬じゃん!」
――スパァァン!!とまた叩かれる。
一方通行「――痛ってェ!?……クソォ」――スリスリ
黄泉川「……何か言うことは?」
一方通行「……ケッ」――プイ
黄泉川「……ほう……あ、もしもし看護婦さん?注射して欲しいやつがいるんだけど――」
一方通行「ごめンなさいスイマセンでしたァァ!!だからそれだけは勘弁しろォォォ!!!」
黄泉川「よろしい♪」
一方通行「……チクショォ…」
345 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/26(水) 19:54:55.76 ID:BHfYMX.0
一方通行「人の頭ァ二度もブチやがって……オヤジにもブタれたことねェのに…」――ブツブツ
黄泉川「ん?何ブツブツ言ってるじゃん?」
一方通行「なンでもねェよ。……それより今何時だ?外がずいぶん明るいけど…」
黄泉川「午前九時じゃん」
一方通行「ってこたァ、一晩寝てたのか?」
黄泉川「まぁな。昨日はびっくりしたじゃんよ少年少女があんたに必死に声かけてジープまで担ぐ姿は微笑ましかったじゃん」
一方通行「……よく俺の居場所がわかったな?」
黄泉川「病院に電話したじゃんよ」
黄泉川は一方通行の首についてるチョーカーに目をやる。
発信機にもなっているのを忘れていた。
一方通行「……あァ、なるほどねェ…」
黄泉川「とりあえず、あんたが目覚めたら先生呼ぶよう言われてるから、行って来るじゃん」
一方通行「…おォ」
黄泉川「……そこの打ち止めにも謝るじゃんよ?」
一方通行「?――あァ?」
ふと真横を向くと、布団が盛り上がっていた。
……めくると、打ち止めがスヤスヤと寝息を立てていた。
……さっきの騒ぎでよく起きなかったものだ。
黄泉川「さっき寝たからしばらく起きないだろうけど、起きたら謝りな。ずっと心配してたんだから…」
一方通行「……すまねェ」
黄泉川「だから謝るのはその子にじゃん。…じゃ、呼んでくるよ」
――バタン。と黄泉川は出ていった。
346 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/26(水) 20:18:15.67 ID:BHfYMX.0
一方通行は無言で自分の隣で眠る打ち止めを見る。よく見ると、涙の後がある。
きっと一晩中ついててくれたのだろう……。
一方通行「……たいした怪我でもねェってのに…コイツは……夜更かしなンかしてンじゃねェよ」
そして、寝ている打ち止めの頭を撫でる。「う~ん…」と唸るが、起きる気配はない。
一方通行「………」
一瞬魘される顔をしたものの、すぐに気持ち良さそうな表情をして眠っている打ち止めに、一方通行は
微笑みながら頭を撫で続ける。
一方通行「心配かけちまったなァ……起きたら、ちゃンと謝っからよォ…」
打ち止めの顔を見ると安心する。「帰ってきた」と実感する。
一時期、離れ離れだった時は気付かなかったが……今の一方通行にとって打ち止めは何よりも愛しい存在だ。
父親というのは…こんな気分なのかもしれない。
自分はどうなっても、打ち止めには幸せになって欲しい…と、心からそう願った。
――そこに自分はいなかったとしても……
しばらく物思いにふけっていた一方通行の病室のドアがノックの後、バタン。と開く。
黄泉川と……すっかり顔なじみのカエル顔のような医者が室内に入ってきた。
「――やぁ、久しぶりだね。それにしても、君もよっぽどここが好きなようだね?」
347 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/26(水) 20:41:48.19 ID:BHfYMX.0
カエル顔の医師…『冥土返し(ヘブンキャンセラー)』。上条や一方通行を何度も助けてきた、あの世への最後の砦的な存在。
一方通行「……またオマエの世話になるとはなァ」
冥土返し「いや、実を言うと今回僕は何もしてないんだよ。君の怪我そのものはたいしたことはなかったんだ。
出血が少々多かったが、ウチに来ればいくらでも輸血できるしね」
一方通行「………」
冥土返し「まぁ、君がここに来る時はそれなりに重傷のケースが多かったから、医者として言いたくないが、
少し拍子抜けだったよ。当直の夜勤に任せて、僕はさっさと帰ったからね」
すっきりするくらいの笑顔で冥土返しは言った。
一方通行は「ハァ…」と溜息をつき、冥土返しに問いかける。
一方通行「ンで?俺はいつまでいりゃイインだ?」
冥土返し「あぁ、もう帰っていいよ」
一方通行「はァ?」
冥土「もう輸血も終わってるし、傷の手当ても済んだ。これ以上することもないし、無駄に入院費がかかるのも
バカらしいしね」
一方通行「……おい、オマエってそンなヤツだったか?」
冥土返し「ハハハ、冗談だ。今日の夕方には退院できるよ。その子も寝かせてやらないとね?」
一方通行の横で眠る打ち止めを見る冥土返し。
冥土返し「じゃ、僕は患者がいるからこれで。何かあったら呼びなさい」
そう言って、彼は病室を出ていった。
黄泉川「……あの医者も相変わらずじゃん」
一方通行「………掴み所なさすぎだ」
348 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/26(水) 21:06:59.13 ID:BHfYMX.0
打ち止めを起こさないように抱きかかえ、看護婦に許可をもらい、隣の病室に移動させた黄泉川は
一方通行の病室に戻った。
一方通行「……腹ァ、減ったな」
黄泉川「りんごでも剥く?」
一方通行「…おォ、悪ィな」
ムキムキ、シャリシャリ
黄泉川「そう言えば……第二位は?」
一方通行「……殺してねェよ」
黄泉川「……だと思ったじゃん♪」――ナデナデ
一方通行「お、おい!!なァに人の頭撫でてンだ!?ガキじゃねェンだぞ!!」
黄泉川「なに照れてるじゃんよ?」――ナデナデ
一方通行「照れてませンン!!だァ!やめろっての!」
黄泉川「もう……あたしが止める必要もないな」
一方通行「ケッ、俺は『その程度の悪党』じゃねェよ」
黄泉川「!……くー、こいつはぁぁ!嬉しいこと言いやがって!」――ギュッ
一方通行「!!?――な、なに抱きついてンだァ!?痛ェ!っつか離せェェ!!」――ジタバタ
黄泉川「あーもう、暴れるな!こんな美人に抱かれてるんだからもっと喜ぶじゃん!」
一方通行「なンだそりゃァァ!!?意味わかンねェンだよ!だァァ!!やァめェろォォォ!!」――ジタバタ
――バタン
御坂妹「おいーっす!来てやったぞ!とミサ………」
一方通行「」
351 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/26(水) 21:59:58.06 ID:BHfYMX.0
御坂妹「……あなたがロリコンなのは年上好きを隠すためのカモフラージュだったのですね…とミサカは新事実に驚きを隠せません」
一方通行「まず、ババァに興味はねェ。そしてオマエは誤解している。さらに俺はロリコンじゃねェ。オーケェ?」
黄泉川「……ババァってのはあたしのことじゃん?やっぱ注射が必要みたいじゃんね。看護婦さーん!――」
一方通行「!うわァァ!!ごめンなさい勘弁してくださいもォ言いませンから注射はイヤだァァァァ!!!」
御坂妹「なにコイツ?まさか注射が嫌いとか、子供かよ…とミサカは呆れつつ今のセロリの面白映像を保存します」
一方通行「注射の針ナメンなよォ!!先尖ってて危ねェだろォォ!!」
看護婦「病院内ではお静かに!とミサカは……10032号。この騒ぎは何ですか?とミサカは尋ねます」
御坂妹「今面白れーもん保存したから見せてやるよ。とミサカは小悪魔ぶりを発揮します」
一方通行「オマエは俺も真っ青の大悪党だァァ!!いくつ俺の弱み握りゃ気が済むンですかァ!?
っつーかその映像今すぐ消さねェと死なす!!」
御坂妹「こんな笑えるネタ、消すわけねーだろバーカ!とミサカは舌を出して拒否します」
一方通行「この!!………おい、待て看護婦。オマエ手に何持ってンだァ?」
看護婦「……注射器ですが?とミサカは答えます」
黄泉川「看護婦さん。コイツじゃんよ」
看護婦「ハイ、とミサカは入室します」
一方通行「ヨミカワァァァァあ!!!オマエ本当に呼びやがったのかァァァ!!?」
御坂妹「……これは…さらに面白いものがみれそうです。とミサカは録画を始めます」
一方通行「黄泉川さン?腕離してくれませンかね?」
黄泉川「断る」
一方通行「……い、いやだァァァァァァあ!!!!離せェェェェえ!!!」
看護婦「大丈夫。怖くありませんよ。とミサカは笑いながら針を向けて近づきます……へへへ…」
一方通行「―――」
――三下ァ……不幸なのって、辛ェよなァ……今なら俺にもわかるぜェ……いつもこンな不幸と戦ってるオマエを
ちょっとだけ尊敬してやる……絶対口には出さねェけどなァ。―――By一方通行
356 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/27(木) 21:35:23.64 ID:QSFXIRA0 [1/5]
―――十分後
一方通行「……おかしい……なンでだ?……なにかが……おかしい…」――ブツブツ…
御坂妹「目の焦点があってませんよ?とミサカは注射された腕を押さえてブツブツ言ってるあなたに指摘します」
黄泉川は帰り、看護婦は満足そうな顔で出ていったので病室内は御坂妹と一方通行の二人きりだった。
一方通行は、大嫌いな注射を受け涙目である。
一方通行「納得…いかねェ……こォいうのはあの三下の役目だろォ……何故に俺?…――」
御坂妹「おーい、聞いてますかー?とミサカは来る前より重傷になってしまったマダムキラーの顔の前で手を振ります」
一方通行「!――だ、だァれがマダムキラーだァ!?」
御坂妹「お?ようやく戻ってきましたか。とミサカは安堵の息を吐きます」
一方通行「もォ一度わかりやすく言ってやるが、まずババアに興味はねェ。完全対象外。
ガキにも興味はねェし、そもそも女ってのが苦手だ。強いて言うなら同年代がベスト。
何ひとつ曲がってねェ完全ノーマルがこの俺だァ。理解したかァ?」
御坂妹「……そうですね…今のあなたは何ひとつ曲がってない…あの方と同じ……とミサカは…」――ボソボソ
一方通行「オイ。オマエ何ブツブツ言ってンだ?」
御坂妹「!!な、何でもありません…とミサカは答えます…」
一方通行「?……あァ、そォ言やァ…」
御坂妹「ハイ?」
一方通行「買い物途中だったよな?……退院したら、明日にでも行くかァ?」
御坂妹「……覚えててくれたんですね……」
一方通行「はァ?昨日のことじゃねェか。……約束したしよォ。ま、埋め合わせってヤツか」
御坂妹「!……///」(な、何でしょう?不覚にもセロリなんかに…ドキリとしました…)
358 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/27(木) 22:05:29.46 ID:QSFXIRA0 [2/5]
一方通行「……オイ。オマエさっきから変だぞ?ちょうどここは病院だし、診てもらったらどォだ?」
御坂妹「――!……だ、大丈夫です!別にどこも悪くありません!とミサカは慌てて否定します」
一方通行「?…まァ、イイけどよォ……ンで、明日どォする?行きてェか?」
御坂妹「そ、そうですね。暇だし、仕方ねーから付き合ってやるよ。とミサカは了承します」
一方通行「おォ、ンじゃ決まりな」――ニカッ
御坂妹(せ、セロリのくせに……なんて無邪気な笑顔を…この人も、こんな顔をするのですね…///)
一方通行「……オマエ大丈夫か?顔赤いぞ。熱でもあンじゃねェか?」
御坂妹「ね、熱はありません。ミサカの体温は正常です!」
一方通行(なに怒ってンだコイツ…?)
御坂妹(…マジねーよ…あの方ほど鈍感なヤツはそうそういないと思ったらここにもいやがったよ…)
一方通行「……まァイイ。あ、あと明日なンだけどよォ…三下どもも誘って行かねェか?」
御坂妹「…へ?」
一方通行「三下と超電磁砲だよ。アイツらでも誘ってこォぜ?」
御坂妹(ダ……ダブルデート?///)――ボソッ
一方通行「ン?ダブ……なンつった?」
御坂妹「………い、良いと思います…とミサカは同意します…」
一方通行「お、おォ……」
御坂妹「………」
一方通行「………」
御坂妹「………(モジモジ)」
一方通行(……なにこの空気?)
360 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/27(木) 22:40:59.65 ID:QSFXIRA0 [3/5]
……気まずい空気が流れる。
一方通行「……あ、あのよォ…」
御坂妹「!――な、何ですか?」
一方通行「い、いや……オマエどっか行きてェとこあるか?」
御坂妹「……ゆ、遊園地」――ボソッ
一方通行「はァ?遊園地ィ?……うわァ…ガキくせェ…」
御坂妹「い…いけませんか?……あなたが訊いたんじゃないですか。とミサカは非難します」
一方通行「……いけねェとは言ってねェ。――…行くぞ」
御坂妹「…え?」
一方通行「……明日遊園地行くぞって言ったンだ」
御坂妹「ハ……ハイ!」――パアア
一方通行「……オマエもそォやって笑う様になったンだな。ソッチの方が良いぜェ?」
御坂妹「なっ!!何を!とミ―――」
――コンコン
御坂妹「――!!」
一方通行「あァ?」
――バタン
美琴「お邪魔ー!来てやったぞ。ってアレ、アンタも来てたんだ?」
黒子「お邪魔しますのー!……ム、何やらイケナイ空気が流れてますの…」
361 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/27(木) 23:12:21.24 ID:QSFXIRA0 [4/5]
一方通行「……オマエらか」
御坂妹「お、お姉様に黒子さん。おはようございます。とミサカは慌ててお辞儀をします」
美琴「…アンタ何テンパってんの?」
黒子「……怪しいですわね……第一位さん?…貴方、まさか…」
一方通行「は?」
御坂妹「――で、ではミサカはこれで!とミサカは席を立ちます!」――スクッ、タッタッタッタッ
――バタン!――タッタッタッタッ……
一方通行「……?」
美琴「……一方通行…アンタ、アイツに何やった訳?」――ジトー
一方通行「…はイ?」
黒子「……まさか、傷者にしたんですの?…だとしたら、許す訳にはいきませんわね…」
美琴「ほぉ……打ち止めがいながらアンタは人の大事な妹に手を出したと……」――ユラリ
一方通行「ま、待て。オマエら何想像してンだ?俺ァなンもしてねェよ!っつーか何でそこであのガキが出てくンだァ!?」
美琴「……ふーん」――ジリッ
黒子「……」――パキポキ
一方通行「オイ!だから俺の話を――」
美琴・黒子「――問答無用っ!!!」――バッ
一方通行「」
――いやァ、思わず三下の口癖が本気で喉の奥から出かけたよなァ……
367 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/28(金) 00:30:13.98 ID:z5LhD0A0 [1/20]
―――美琴のチョークスリーパーに黒子のドロップキックというコンボから
立ち直った一方通行は何とか二人の誤解を解いた。
一方通行「………あのなァ。ここ病院、俺怪我人。リピートアフタァミー?」
美琴・黒子「ここ病院、アンタ(貴方)怪我人。……ごめんなさい」――ペコ
一方通行「オーケェ。…もォイイから顔上げろ」
黒子「……わたくしとしたことが、飛んだ早とちりでしたの…」
美琴「そうね……私も。アンタには打ち止めがいるんだもんね…」
一方通行「……まァだ誤解は解けきってねェらしいなァ。俺はアイツの『保護者』!それ以上でも以下でもねェ」
美琴「……ま、それで良いわ。ハイ、お見舞い」
黒子「わたくしからもですの」
美琴から包装紙に包まれたクッキー缶を、黒子からフルーツバスケットを受け取る。
一方通行「ン…おォ、ありがとよォ。……けど大げさだなァ。夕方には退院すンだぞ?」
美琴「え?…そうなの?」
黒子「……貴方死にかけましたのよ?」
一方通行「っつっても血ィ流しすぎただけだからなァ。傷はすぐ塞がるだろォし…」
美琴「……あんな何もない所で倒れてるからビックリしたわよ……けっこう血も出てたし、死んじゃったのかと思ったわ…」
一方通行「ンな簡単に死ンでたまっかよ……」
―――本当は最後に死を覚悟したのだが、あの時の事は血の足りてない頭が描いた幻想だと
一方通行は自分に言い聞かせた。
368 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/28(金) 01:00:29.22 ID:z5LhD0A0 [2/20]
――美琴・黒子としばしのひととき
一方通行「それより超電磁砲、オマエは怪我平気なのか?」
美琴「あぁ、私は特に怪我はしてないわ……全然歯が立たなかったから、心の傷は負ったけどね…」
黒子「お姉様は無茶し過ぎですの!格上に正面から挑むなんて…」
一方通行「……オマエってそォいうヤツだよなァ……」
美琴「だ、だってしょうがないじゃない!あの時は……」
黒子「……第一位さんに挑んだ時も怯まなかったそうですわね?」
一方通行「まァな……ってオイ!ツインテール!オマエ知ってンのか?」
黒子「髪型で呼ばないで下さいまし!……実験の事も小さいお姉様の事も全部聞きましたわ…」
美琴「……今なら言ってもいいって思ったから…」
一方通行「………そォか……さぞかし俺が憎いだろ?オマエの大切なオネエサマを死にたくなるほど追い詰めちまったンだからなァ」
無理矢理笑う一方通行……しかし――
黒子「見くびらないで下さいません?わたくしは終わった事をいつまでも引きずる程子供ではありませんの。
確かに貴方のした事は許されないかもしれませんが、今、お姉様は貴方を恨むどころか感謝してますのよ?
わたくしからもお礼を言わせて下さいませ…――」
――黒子は一方通行に頭を下げる。
黒子「――お姉様を助けていただいて、本当に……ありがとうございますのぉっ!!貴方には感謝してもし足りませんわぁぁっっ!!」――ポロポロ
その目からは涙が溢れていた……
美琴「………黒子…」
369 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/28(金) 01:20:37.97 ID:z5LhD0A0 [3/20]
一方通行は、くすぐったさと後ろめたさで返し方に戸惑った。
目の前で自分に感謝しながら号泣する黒子にどう対処して良いのかわからなかった。
そして、頭をかきながら、不器用ながらも考えついた言葉を出す。
一方通行「………泣くンじゃねェよ。……皆無事だったンならそれで良かったじゃねェか」
美琴「――!!!」
一方通行「?」
今度は美琴が驚いた顔で自分を見た。
一方通行(……なンだ?変なこと言ったつもりはねェぞ…?)
そして、美琴は一方通行に笑顔を向ける。
美琴「……フフッ、アンタから『その言葉』が出るとは…予想外も良いところよ……」
一方通行「……あァ?」
顔じゅう?マークの一方通行に美琴は言う。
美琴「――改めてお礼するね。ありがとっ!一方通行!」
さっき以上のくすぐったい気持ちが一方通行を襲う。
一方通行「///……ったく…だから大げさなンだっつーの…」
照れ臭いのか、頭をかいてソッポを向いてしまった一方通行を美琴は『可愛い』と素直に思った。
376 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/28(金) 14:22:14.37 ID:z5LhD0A0 [4/20]
もっと投下する予定だったんだが……寝ちまった。申し訳ない!
――その後、美琴は泣き続ける黒子を慰めるように肩を抱き、
「んじゃ、帰るね」と言って病室を出ていった。
黒子は泣きながらも…最後まで感謝の言葉を一方通行に送っていた。
そして、病室には再び一方通行ひとりになった。――
一方通行「……ふゥ」
息をつき、立ち上がる。…もう頭もクラクラしないし、血の色も戻っていた。体調も悪くない。
外に出ようかとも思ったが、夕方までは大人しくしていることにした。
一方通行「………」
病室の小さな冷蔵庫を開けると、大好きなコーヒーが入っていた。黄泉川の見舞いの物だろう。
一本取り出し、ゆっくり飲み始めた。
感じる苦味は何とも言えない……このために生きてンのかもなァ、と、オヤジ臭い考えにもなる。
飲み終えてベッドに戻ると、隅に置かれた紙袋が目に止まった。
一方通行「……」
昨日厚手のジャケットを買った店の袋だった。
御坂妹に預けていたんだった……さっき持ってきてくれてたのか。
いつの間にか置かれていた袋を手に取り、中身を見ると……昨日のジャケットと、他にも何か入っていた。
一方通行「?……コイツァ……」
377 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/28(金) 14:46:36.05 ID:z5LhD0A0 [5/20]
中にジャケットと一緒に入っていたのは……手袋とインナーだった。
インナーは白く、英文の入ったシンプルなものだったが、ジャケットの下に合う色合わせだった。
手袋は、黒一点でこれもシンプルだが、防寒用として申し分なかった……二つとも当然買った覚えはない。
一方通行「………」
打ち止め、禁書目録、御坂妹の顔が頭に浮かぶ。
一方通行「………アイツら……この俺にサプライズかよ……」
捻くれた口調だが、表情は穏やかだった。
病室には自分ひとり……一方通行は嬉しい気持ちを隠しきれず、入院患者用の服を脱ぎ、早速着替えてみた。
部屋にあったいつものジーンズとインナーとジャケット、手袋もつけてみる。
着替え終わり、鏡を見てみる……悪くない。
けっこう厚いジャケットは防寒性もあった。下にもう一枚着れば外出しても平気だろう。
そして、インナーに書かれている『Peace』という文字に注目した。
一方通行「………『平和』…か」
一方通行は無言でジャケットとインナー、手袋を脱いで丁寧に畳んだ。
袋に戻し、再び寝巻きに戻る。
一方通行(……さて、夕方まですることねェし、寝るか)
一方通行はベッドに横になり、もうひと眠りしようと意識を手放し始める……。そこへ――
―――コン、コン
一方通行「――……ンァ?」
383 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/28(金) 16:52:56.11 ID:z5LhD0A0 [8/20]
――意識が落ちる寸前でノックの音が耳に入り、間抜けな声を出しながら起き上がる一方通行。
ノックの後、バタンと入ってきたのは――
上条「――よう!具合どうだ?」
禁書目録「――お見舞いに来たんだよ!」
――手に見舞いのお菓子を持った上条と禁書目録だった。
上条「あれ?……もしかして寝てた?悪いな」
一方通行「いや……気にすンな。…まァ座れよ」
上条「あ、あぁ」
椅子に座り、お菓子入りの袋を見せる上条。
上条「安物だけど、食う?」
一方通行「……せっかくだが、今ァイイ。シスターに食わせてやりな」
禁書「――!!わーい♪それじゃ、遠慮なく」――ムシャムシャ
上条「……おい、インデックス。ボロボロこぼすな。意地汚いぞ」
禁書「――♪」――ムシャムシャ
上条「……聞いちゃいねぇ……ところで、体はどうだ?」
一方通行「あァ……もォ何ともねェ。夕方には退院できるってよォ」
上条「そうか……けど本当に心配したぞ!あのまま俺達が来なかったらどうなってたか…」
一方通行「……悪かったなァ」
上条「……ま、俺の立場じゃあんまりデカい顔はできないけどな……けど本当に良かった」
一方通行「だからオマエもアイツらも大げさだっつーの!この俺があンなメルヘンに負けるワケねェだろォが」
上条「もしもってのがあるだろ?それに、多分お前は帰りのことは考えてないって黄泉川先生も言ってたしな」
一方通行(……事実なだけに反論できねェ…)
384 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/28(金) 17:14:55.37 ID:z5LhD0A0 [9/20]
上条「……図星、だな?」――ジー
一方通行「………べ、べっつにィ…」――プイ
上条「……まぁ、いいか。――お、そうだ、一方通行」
一方通行「……ン?」
急に立ち上がる上条を不思議そうに見上げる。
上条「――御坂を助けてくれて、ありがとうな!」
一方通行「……さっき本人達からも言われたぞ…別にオマエが感謝することでもねェだろ?」
上条「……いや、あいつも俺にとって大事な友達だからな。お前が助けてくれて、本当に感謝してる」
一方通行(……友達……ねェ…)
一方通行は美琴に少し同情した。……コイツは思ったより厄介かもなァ……と、鈍感ヒーローを見る。
一方通行「……まァ、たまたま俺が間に合っただけだァ。……それより、オマエ明日暇かァ?」
上条「……抜けた分の補習は明後日だから、明日は暇だけど…」
一方通行「……悪ィな」
上条「い、いや!それは俺がしたくてしたんだから、お前は気にすんなよ。んで、明日がどうしたんだ?」
一方通行「………ゆ、――」
上条「…ゆ?」
一方通行「――……遊園地行かねェか?」
上条「……ハイ?」
一瞬、上条の顔が固まった。
387 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/28(金) 17:38:38.39 ID:z5LhD0A0 [10/20]
上条「――ゆ、遊園地ぃ?」
一方通行「……な、なンだよ?」
上条「……い、いや……意外な言葉ってのはこの事かと……に、しても……お前が遊園地って……ぷくく」
一方通行「……わかった。オマエも入院してェンならそォ言えよ」
首筋に手を持っていく一方通行に上条は慌てる。
上条「――う、うそです!うそですからご勘弁を!」
一方通行「……チッ。ンで、明日どォなンだァ?行くか行かねェか、今ここで決めろォ」
上条「……俺は全然良いけど……野郎同士で遊園地ってのは…」
一方通行「それについては同意見だ。……妹と、超電磁砲誘ってくンだよ」
上条「…な、なぁんだ。そうだよな。……っつーことは、御坂と御坂妹と俺とお前で行くってことか?」
一方通行「まァ…そォなるなァ。そこで菓子食うのに夢中で全く聞いてねェシスターはウチでガキと一緒にしときゃァ
問題ねェだろォ」
上条「え?一緒に連れてってやんねーの?大勢いた方が……」
一方通行「……オマエ、マジでわっかンねェのか?」
上条「ん?…何が?」
一方通行(……こりゃダメだわ)
一方通行「…とにかくそォいうことだァ。食いモンでつるなりして明日シスターはウチに来させろ」
上条「?…あ、あぁ。わかった」
一方通行(……ガラにもねェよなァ。この俺が人の恋路の応援なンてよォ…)
上条「んで、二人はもう誘ったのか?まだなら、俺が誘うけど…」
一方通行「妹はオーケェしたが、超電磁砲はまだだァ」
上条「んじゃ、後で誘っとくよ」
一方通行「おォ…頼ンだ」
388 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/28(金) 18:01:41.47 ID:z5LhD0A0 [11/20]
――そして、上条と禁書目録が帰り、またひとりになった一方通行の部屋に再度ノックの音が……
――コンコン
一方通行「――空いてますよォ。……ったく、今度は誰だァ?」
――バタン
垣根「――…よぉ」
一方通行「――!?」
そこにいたのは垣根帝督だった。……一方通行は姿を見た途端表情を変える。
昨日殺し合いをしたばっかりの相手がズカズカ室内に入ってくるので、当然警戒は強まる。
一方通行「……なンの用だ?」
垣根「…別に、どんなザマか見にきただけだ。俺はもう退院するけどな」
一方通行「へェ……寝首でも襲いに来たのかと思ったぜェ。…まァ、その程度で済ンで良かったじゃねェか」
垣根「……テメェのせいでな…」
一方通行「………死にてェンじゃなかったっけ?てっきりどっかで身投げでもしてるかと思ったのによォ」
垣根「……それも考えたんだがな……お前にひとつ訊きたいことがあってよ…」
一方通行「……なンだ?」
――垣根は少し、躊躇いながらも……口を開いた。
垣根「―――何故、俺を殺さなかった?」
390 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/28(金) 18:44:56.21 ID:z5LhD0A0 [12/20]
一方通行「……オマエもしつけェのな。またそれかよ……そンなに死にてェならとっとと屋上にでも行って飛び降りりゃァ
イイだろォ?別に誰も止めたりしねェっつの…」
垣根「…今はそんな気はねぇ。けど、あん時は……マジでそう思った。あの後絶望した俺は……本気で楽になっちまおうって思ったんだ。
……けどお前は、そんな俺を嘲笑った……そん時のテメェの面ぁ思い出したら無性に腹ぁ立ってきてよぉ…死ぬ気が失せちまったんだよ…」
一方通行「ンならそれでイイじゃねェか。今は死にたくねェンだろ?…なら生きりゃァイイ」
垣根「……まだテメェの答えを聞いてねぇ!…自分でいくら考えてもわかんねぇんだよ!何で俺は生きてんのか……その答えを知ってんのは
テメェだけだ!…教えてくれよ……お前は何で『悪党』を名乗ってんだよ……敵も生かしちまうお前が…何で――」
一方通行「――甘ったれンなよ?ボクちゃン」
垣根「!!……テ、テメェ!!」
一方通行「……じゃァ訊くがよ、オマエは[ピーーー]ば必ず楽になれるとでも思ってンのか?」
垣根「――!!」
一方通行「…確かに生きてりゃァ辛ェことばっかりかもしれねェ…いっそ楽ンなりてェ、なンて思うこともあるだろォな――」
垣根「………」
一方通行「――けどよ、ソイツァただの『逃げ』だ。逃げたヤツが行き着く先に『楽』なンてのはありえねェンだよ。
待ってンのは逃げたことへの『後悔』だ。ソイツを一生背負って歩いて……それでも楽ってか?ハン!冗談じゃねェ!
それなら生きて足掻き続ける方がマシだろォ?だってよ、生き続けりゃァ本当の意味で『楽』になれるかもしンねェンだぞ?」
垣根「………」
一方通行「だから俺ァ、無闇に楽になりたいヤツは殺さねェ……楽になりたいンなら生きた方がイイ………俺の『友達』に
とあるひとりの野郎がいてよォ……ソイツは不幸体質で、次から次へと不幸が襲ってくンだ。……普通なら死にたくなる
くらいによォ……けどソイツは……今、笑って生きてる。なンでだかわかるかァ。垣根くゥン?」
垣根「……」
無言で首を横にふる垣根
一方通行「簡単だ。ソイツは知ってンだよ。死ンだところで何ひとつ得しねェってなァ!ソイツは生きて足掻いてでも掴み取れる
『安楽』の方が死ぬより遥かにマシなのを知ってる。………実はよォ、少し前までは俺もオマエみてェな考えだったンだよ…」
391 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/28(金) 19:06:47.39 ID:z5LhD0A0 [13/20]
垣根「……何?」
一方通行「…驚くなよ。自分でも不思議で仕方ねェ……俺みてェなクソッタレが、ちょっと考え変えただけで今を楽しめてンだぜ?
……いつまで続くか分っかンねェけどなァ…」
垣根「………どう変わったんだよ?」
一方通行「……さァなァ…自覚持ったの最近だからよォ……まァ、オマエもそのウチ分かンだろォ…」
垣根「……どう、だろうな……人は変わるって良く言うが……俺にはまだ分かんねぇ…」
一方通行「そォかい。そンならソイツが分かるまでは、生きて足掻き続けなきゃなァ」――ニヤリ
垣根「……あ、あぁ!当たり前だろ!………礼は…言わねぇぞ?」
一方通行「今日は散々言われたからその方が助かるわ……今日だけで鳥肌何度立ったか分かンねェ」
垣根「――フッ………邪魔したな。そろそろ行くわ」
一方通行「……オマエ、これからどォすンだ?」
垣根「……なるようになるだろ。じゃあな」
――バタン
少し寂しそうな背中を見せ、垣根は去っていった。
一方通行「……」
閉じられたドアをしばし無言で見つめていたが……数分後、そのドアはすぐにまた開かれた。
――バタン!
一方通行「――!!?」
打ち止め「おっはよー!ってミサカはミサカはアナタに向かって勢いよくダ~イブ♪」
393 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/28(金) 19:23:32.81 ID:z5LhD0A0 [14/20]
――勢いよく開いたドアから元気に入ってきた打ち止めは、そのまま一方通行に勢いを殺さないまま飛びついてきた。
一方通行「――うおわ!!?」
打ち止め「――やっと起きたんだね!心配しちゃったよ!アナタが病院に運ばれたって聞いて慌てて飛んで来たんだからぁ!って
ミサカはミサカは頬擦りしながら安堵してみたり!」
一方通行「わかった!わかったから頬擦りすンな!くすぐってェンだよォォ!!」
打ち止め「……ミサカに言うことはそれだけ?」
一方通行「………」
――無言で打ち止めを抱きしめ、頭を撫でた。
打ち止め「――わわっ!う、嬉しいけど恥ずかしいよ!ってミサカは…ミサカは……」
一方通行「……悪かったなァ。心配かけてよォ…」
打ち止め「……ううん、いいの。だってアナタは必ず帰って来るもん。ってミサカはミサカは大人になってみる」
一方通行「………大人…ねェ」
打ち止め「な…なんだよその目はー!ってミサカはミサカは腕の中で暴れてみたり!」――バタバタ
一方通行「ハイハイ、オマエは大人ですねェこのクソガキ。暴れンなっての!」
打ち止め「ムキーーー!!」
一方通行は、打ち止めに見られない角度で、穏やかな表情になった。―――
394 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/28(金) 19:44:45.15 ID:z5LhD0A0 [15/20]
―――そんなこんなで夕方
打ち止め「……ねぇ、その服どう?ってミサカはミサカはおそるおそる訊いてみる」
打ち止めは服屋の袋を指差しながら訊いた。
一方通行「……あァ、悪くねェンじゃねェか?」
打ち止め「へへっ♪ミサカと10032号とシスターで選んだんだよ!アナタに似合うかなぁって。ってミサカはミサカは褒め言葉を
遠まわしに要求してみたり」
一方通行「……ありがとォなァ」
打ち止め「……うわ!過保護なアナタは良いけど、素直なアナタは気持ち悪い!ってミサカはミサカはドン引きしてみる」
ンダトコノクソガキガアアアアア キャー オコッターー
――ドアの外
黄泉川「――ん?騒がしいじゃんね」
―――そして黄泉川が迎えに来て、一方通行は身支度を整えた。
黄泉川「――じゃあ行くか。準備出来たじゃん?」
打ち止め「忘れ物はない?ってミサカはミサカはアナタに訊いてみる」
一方通行「……俺は子供じゃないンですよォ?」――グリグリ
打ち止め「――痛い痛い!!ゴメンなさーい!!」
――無事に退院し、家路についた一方通行達。
何故か黄泉川の機嫌が良く、その日の夕食は豪華だった。
395 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/28(金) 20:22:41.43 ID:z5LhD0A0 [16/20]
―――黄泉川家
一方通行「…………」
一方通行は言葉を失くしていた……正確には思考が止まっていた。
電極のスイッチは『通常モード』…充電も終わっている…。
彼の思考が止まったのは、病院から帰りの車に乗り込む時だった。
車には、すでに誰か乗っていた。最初は芳川だろォと思い、ドアに手をかけた。―――
垣根「――よっ♪」
一方通行「」
――この時から今まで……彼は一言も言葉を開かなかった。
打ち止め「――ただいまー!ってミサカはミサカは元気よく靴を脱いでみたり!」
垣根「――お邪魔しまーす。うっわ、広ぇ!玄関広っ!!」
黄泉川「ご飯前にあんたら手洗ってきな。うがいも忘れたらダメじゃんよ」
打ち止め「はーい♪」
垣根「ほいほーい。…なぁ、洗面所ってどっち?」
打ち止め「コッチだよーって、ミサカはミサカはお兄ちゃんの手を引っ張って案内してあげる♪」
垣根「手洗いうがいとかガキん時以来だわ。毎日やってんの?」
打ち止め「そうだよ。あの人も毎日やってるよ。ってミサカはミサカは答えてみる」
垣根「……あいつが…手荒ってうがいって……ダ、ダメだ…想像したら笑えてきた……ププッ」
打ち止め「意外と可愛いとこあるんだよ。ってミサカはミサカは自慢げに言ってみたり」
一方通行「……………オイ」
399 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/28(金) 20:53:15.39 ID:z5LhD0A0 [17/20]
――楽しい食卓(?)
打ち止め「うわー!今日スゴイ豪華だね!ってミサカはミサカは驚いてみる!」
垣根「うおっ!うまそーだなオイ!」
黄泉川「うまいに決まってるじゃん。…ま、たまにはな」
芳川「……また手伝わされた……屈辱だわ…」
黄泉川「あんたいい加減家事くらい手伝わないと叩き出すじゃんよ?」
芳川「あら愛穂、私以上に甘いあなたにそんなことができるかしら?」
黄泉川「時には厳しく。が、あたしのモットーじゃん」
垣根「まぁまぁお姉さん方。……うお!この唐翌揚げうめぇ!ホラ、お嬢さんも――」
打ち止め「――パク……ホントだ!おいしー!」
一方通行「………」
黄泉川「一方通行?箸進んでないじゃん?」
垣根「食わねぇの?ならこの玉子焼きもーらい♪」
一方通行「………ちょっと待てよオイ」
垣根「んだよ。食うならさっさと食えよ。冷めちまうだろ」
一方通行「……そォじゃねェ……いや……っつーか……あァ、頭痛ェ……あァもォ……めンどくせェ…
めンどくせェから一言で言うぞ?」
黄泉川・芳川・打ち止め・垣根「?」
一方通行「なンでオマエがここにいる?」
401 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/28(金) 21:19:16.84 ID:z5LhD0A0 [18/20]
垣根「……なんでって、なぁ?」
打ち止め「うん」
黄泉川「じゃん」
芳川「あなたのお友達でしょ?」
一方通行「……え?…ナニ?なンなの?この俺がおかしいよォな雰囲気は…」
打ち止め「アナタにお友達がまた増えて嬉しいなー!ってミサカはミサカは喜んでみたり♪
カキネお兄ちゃんはしばらくウチにいるんだよね?ってミサカはミサカは確認してみる」
一方通行「………はァァ!!?」
垣根「そうだな。住むとこ見つかるまで世話んなります。黄泉川さん」
黄泉川「別にウチでよければ構わないじゃんよ。今更ひとりぐらい増えても変わんないし」
芳川「4DLKって素晴らしいわね♪」
垣根「まぁ金はあるんで、幾らか納めますよ」
黄泉川「お!良い心構えじゃん!……どっかのバカに見習わせたいじゃんよ…」――ジー
垣根「……なに、お前払ってねぇの?まさかヒモ?……うわぁ……ねぇだろ……ひくわ」
一方通行「――やっぱおかしいだろォォ!!黄泉川ァァ!!コイツに何されたのか忘れたンですかァ!?」
黄泉川「……いや、ちゃんと謝ってきたし……別にもう良いじゃんよ」
一方通行「はァ!?…っつーかオマエはなンで車に乗ってたンだァ!?」
垣根「……行くとこねぇから病院の前で途方に暮れてたら、黄泉川さんに声かけられてよぉ」
黄泉川「そん時謝られたからもう許したじゃん。んで、行くとこないって言うから、一緒に連れてきたって訳」
一方通行「………マジかよォ……部屋はどォすンだ?」
黄泉川「あんたと一緒で良いだろ?」
一方通行「あァ!!?オマエ正気かァ!?」
黄泉川「いつまでもいがみ合ったってしょうがないじゃん。スパッと仲良くやんな」
一方通行「……そォいう問題じゃ!……って、垣根くゥン?オマエ何黙々と人の肉横取りしてンですかァ!?
オマエもなンとか言えェ!!」
403 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/28(金) 21:53:37.46 ID:z5LhD0A0 [19/20]
垣根「モグ…ング……俺は別にどこでも構わねぇけど?」
一方通行「嫌がれよォォ!!俺と一緒なンだぞ!?昨日殺し合いしたこの俺とだぞ!!?キャラ変わり過ぎだろォ!!
っつーか、なンでそンなあっけらかンとしてンだァァァ!!そして俺の肉食うなァァァァあ!!!」
垣根「……いや、終わったことだしなぁ……俺は過去にとらわれない人間なのさ」
一方通行「………嘘だろォ……昨日の戦いや……病院内での俺のセリフは…いったい何だったの……もォいや……泣きそォ…
普通昨日まで敵視してたヤツの家なンか来れねェだろォ……しかも一緒の部屋だァ?………マジでありえねェ…」
打ち止め「……何か隅っこでウジウジし出したけど大丈夫?ってミサカはミサカはアナタを心配してみる」
芳川「ねぇねぇ、ところであなた普段は何やってるの?無職なら、私と『無職同盟(ザ・ニート)』を設立しない?」
垣根「え?……そういや俺……まだ長点に籍あんのかな……」
芳川「……エリートなのね…じゃあ無くなってたら、設立しましょ?」
垣根「……まぁ、考えときますけど……ザ・ニートって何すか?」
芳川「とても素晴らしい組織になるわ。毎日ダラダラゴロゴロ――」
黄泉川「――ハイストーップ!桔梗、引き込もうったってそうはいかないじゃん!」
芳川「……チッ、もう少しだったのに…」
垣根「?……何かよくわかんねぇけどご馳走さんっす。風呂借りていいっすか?」
一方通行「――あァっ!!俺の肉全部残ってねェェ!!あンの野郎ォォ!!」
黄泉川「風呂はあっちじゃんよ。着替えは適当に持っていくから」
垣根「どぉもすんませんね」
一方通行「無視すンなァァ!!」
打ち止め「ミサカもアナタとお風呂入りたーい!ってミサカはミサカは慌ててカキネお兄ちゃんの後を追ってみたり」
垣根「ハハッ、一緒に入るか?お嬢さん」
一方通行「!!?……フ、フ、フザっけンなァァァあ!!!」
――三下ァ……悪ィ。もォ我慢できねェわ……俺ァ叫ぶぜェ。
一方通行「あァもォォ!!不幸だァァァァァァァァあああ!!!!!」
413 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/29(土) 15:37:21.77 ID:lw.1D1s0 [1/11]
――風呂上がり・脱衣所(一方通行ドアの前で盗聴中)
垣根「――ふぅー、良い湯だった……お嬢さん。体拭いてやるからバンザイしな」
打ち止め「ばんざーい♪ってミサカはミサカは両手を上に上げてみる」
一方通行(……ンだとォ!?あのクソガキ……『自分で拭けるからコッチ見ないで!』っつって俺に拭かせた事ねェのに…)
フキフキ
打ち止め「――ひゃっ!くすぐったいよぉ。ってミサカはミサカは身悶えてみたり…ひゃん!」
垣根「がーまーん♪そう言やお嬢さん、名前は?」
打ち止め「打ち止めだよ♪ってミサカはミサカは自己紹介してみたり」
垣根「……それ実験ん時の名称だろ?そのままで良いの?名前つけてもらったりとか……ハイ、次頭」――ワシャワシャ
打ち止め「ぶわ!……うーん、ミサカはこのままで良いかな?会って最初の時よりは呼んでくれるようになったけど、
未だに普段は『ガキ』とか『クソガキ』って呼ばれるし…ってミサカはミサカは頭を拭かれながら……ってお兄ちゃん
実験の事知ってるの!?」
一方通行(………)
垣根「『絶対能力(レベル6)』への進化実験だろ?いちおう俺第二位だし……アイツがやんなきゃ俺がやってたかもしれねぇな…」
打ち止め「……そうだったの…ってミサカはミサカは驚きを隠せなかったり…お兄ちゃんもそういう話来たら…実験してた?」
垣根「……どうだろうな……もしもそうなってたら…以前の俺ならやってたかもな」
打ち止め「じゃああの人と同じだね!あの人も今ならそんな話絶対受けないもん!ってミサカはミサカは確信してみる」
垣根「……一方通行のヤツ……超幸せものじゃねぇか…」
打ち止め「?……あ、お兄ちゃん…お尻くすぐったいからもう拭くのいいよ?ってミサカはミサカはモジモジしてみたり…」
一方通行(――!!!?)
垣根「……何遠慮してんの?じゃああとは足拭い――」
一方通行「――こンの変態野郎がァァァァァァァああ!!!!!」――バタン!!!
414 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/29(土) 16:23:26.97 ID:lw.1D1s0 [2/11]
垣根「――!!?……何してんのお前?…覗き?」
打ち止め「――わ、わぁっ!!急に入って来ないでよぉっ!!てミサカはミサカは慌ててタオルを体に巻きつける!」
一方通行「だァァかァァらァ!!なンでこのメルヘンの前じゃ隠さねェンだよォォォ!!!」
打ち止め「?……だってこの人まともなお兄さんっぽいし……」
一方通行「ンなァ!!!?…………いや、今はショック受けてる場合じゃねェ……覚悟しなァ、猥褻野郎。幼女暴行の現行犯だァ。
警備員が許してもこの俺が許さねェ…」
垣根「?……いや…意味わかんないんだけど…」
打ち止め「…ミサカは暴行されてないよ?ってミサカはミサカは否定してみたり」
一方通行「いィやァ!!盗み聞……いや、たまたま通りかかったらクソガキの悲鳴が聞こえたンだよ!
こンなガキに欲情するたァ落ちたなァ?第二位よォ?情状酌量の余地はねェな。大人しく捕まれ」
垣根「……さっきから訳わかんねぇ事抜かしやがって……もうニ、三日入院するか?妄想癖」
一方通行「ハッ。この期に及んで抵抗するってかァ!イイ度胸だなァ…八台目の炊飯器にしてやろォか?」
垣根「そしたら真っ先にテメェを炊いてやるよ。テメェなんざ2合で充分だ」――ニヤリ
一方通行「上手い事言ったつもりでニヤついてンじゃねェぞ?貧困脳が。あれかァ?新しい脳味噌はプラスチック製ですかァ?」
垣根「テメェのよりは新品って自覚はありますぅ。中古脳味噌にとやかく言われる筋合いはありません」
一方通行「(プチッ)……このォ……人を中古車みてェに……」――プルプル
垣根「あっれぇ?傷ついちゃったぁ?ごめんねぇ。っつーか、早く打ち止めちゃんに服着せてやんねぇと風邪引かせちまうだろ?
着替えさせるからさっさと出てけよ。ったくマジで気の利かねぇ第一位だな」
一方通行「……………」―――バタン!
打ち止め「……あれ?すんなり出ていったね。ってミサカはミサカは不思議そうにしてみたり……いざとなったら演算補助停止させるつもり
だったから良いけど………」
スタスタスタ バタン!
打ち止め「…あれ?あの人外に出ていったのかな?ってミサカはミサカはお兄ちゃんに訊いてみる」
垣根「……ほっとけ。それより服着ないと風邪引くよ。ハイ、パジャマ」
打ち止め「ありがとー♪ってミサカはミサカはお着替え♪」
416 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/29(土) 16:29:40.10 ID:lw.1D1s0 [3/11]
――近所の公園
――スタスタスタ
一方通行「…………オ…――」
――ブアアアアアアアアッ
一方通行「――オォォォおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!!!!」
――その夜、世界の果てまで届きそうな咆哮と、悪魔のようなどす黒い翼が街中に響き渡った。
417 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/29(土) 16:34:53.33 ID:lw.1D1s0 [4/11]
テイク2
――近所の公園
――スタスタスタ
一方通行「…………オ…――」
――ブアアアアアアアアッ
一方通行「――オォォォおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!!!!」
――その夜、世界の果てまで届きそうな咆哮を聞いた者と、悪魔のようなどす黒い翼を目撃した者が後を絶たなかった。
419 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/29(土) 17:52:42.45 ID:lw.1D1s0 [5/11]
――上条宅
――ジャーー バシャバシャ
禁書「――とうま、これで良いかな?」
上条「……うーん、まだ泡がついてるな。もうちょい水でゆすいでくれ」
禁書「うぅ、細かいんだよ…」
上条「家事ってのは難しいだろ?俺の苦労もちっとはわかったか?」
禁書「……わかりたくなかったかも」
上条「…まぁ、最初よりは上達したぞ。皿も割らなくなったしな。ほれ、ご褒美」
禁書「わぁ♪チョコー!」
上条による『禁書目録に餌付けで仕事をさせよう』計画は順調に進んでいた。
明日はポテチで部屋の掃除でもさせようか……などと考えていた上条の携帯にメールが届く。
――pipipi♪
上条は洗い物中の禁書目録に気付かれないようにメールを見る。……差出人は美琴からだった。
一方通行に明日遊園地へ遊びに行かないか誘われたのだが、美琴と御坂妹が一緒らしい。
美琴は上条が誘う事になったのでさっきメールを送ったのだが、その返事だろう。
上条「どれどれ………『OK』か……アイツも暇なんだな。コンビニで立ち読みしてるぐらいだしな…」
鈍感少年はいつも通りである。美琴が震える指でメールを打って送信した後、舞い上がり過ぎて黒子に
ドン引きされた事など知る由もなかった。
421 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/29(土) 18:03:39.79 ID:lw.1D1s0 [6/11]
上条「……さて――」
禁書「とうま!終わったんだよ!」
上条「――っっ!!!……お、おう。お疲れ、インデックス」
禁書「………とうま。今なに隠したのかな?」――ジトー
上条「ナニ言ってるんでせうか?ナニも隠してませんが」――アセアセ
禁書「……怪しいんだよ……その手に持ってるもの見せて欲しいかも!」
――ヤバイ。非常にヤバイ。
禁書目録は連れて行けない。故にこの話は隠し通す必要がある。
上条的には連れて行っても良いのだが、何故かそれをすると後が怖い気がする…。
禁書「……とうま?…早く見せて?」
上条「い、いやだから何も隠してねーって!ほ、ほら。じゃーん!チョコもう一個プレゼント♪」
禁書「……ふっふっふ……とうま、甘いんだよ。いつも食べ物で私を釣ろうったってそうはいかないんだよ!」――パッ
上条「ってチョコ取ってんじゃねえか!!」
禁書「当然もらうんだよ!そして……とうまの悪巧みも暴く!!」
上条「なんじゃそりゃ!?テメェ卑怯だぞ!!」
禁書「問答無用なんだよ」――グアッ
大口開けて禁書目録が迫ってくる。
上条「だぁああ!!―――」
――ピンポーン♪
上条・禁書「――!?」
422 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/29(土) 18:12:33.17 ID:lw.1D1s0 [7/11]
上条「――だ、誰だろうな?」
禁書「……タイミング悪すぎかも…」
ゆっくり開かれた大口を戻す禁書目録。
上条「……っつーか、つい最近もこんな事あったな。誰か知らないが、天の助け♪」
さっさと玄関へ向かう上条。
――トウマー アトデオボエテルンダヨー
上条「…聞こえない、聞こえないっと……どちら様ですかー?」
――ガチャ
一方通行「……よォ」
上条「」
423 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/29(土) 18:33:58.05 ID:lw.1D1s0 [8/11]
ドアの前に立っていたのは……一方通行だった。
上条「……えーっと…とりあえず……どうした?」
一方通行「………今日、泊めてくンねェ?」
気まずそうに下を向きながら喋る一方通行。
上条「……まぁ…なんだ……とりあえず、上がれよ」
一方通行「……おォ…邪魔する」
――上条部屋
禁書「あ、あくせられーた!こんばんは!…こんな時間にどうしたのかな?」
一方通行「……話したくもねェ……」
上条「……なんか……お前、大丈夫か?…すげぇ疲れた顔してるぞ…?コーヒー飲む?」
一方通行「……飲む……砂糖もミルクも無しで頼む…」
上条「ハイハイ…っと」
禁書「……何があったのかな?…私はシスターなんだよ。悩みがあるなら言った方が楽になるんだよ?」
一方通行「――!………聞いて…くれンのか…?」
禁書「もちろんなんだよ!」
上条「当たり前だろ?ダチじゃねぇか!困った時はお互い様だ。……ハイ、コーヒー」
一方通行「……うゥ…ありがとよォ……オマエらァ…」
上条「!!お、お前…泣いてんのか!?」
一方通行「な、泣いてねェェ!!た、ただよォ――」
――人の温かさがちィと目に沁みただけだァ。
426 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/29(土) 19:28:33.61 ID:lw.1D1s0 [9/11]
――黄泉川家
打ちどめと垣根は脱衣所を出てリビングへ
黄泉川「――あれ、あのバカは?」
垣根「あれ?やっぱいないっすか?」
打ち止め「……どこ行ったんだろー?さっき出てっちゃったみたいだし。ってミサカはミサカは心配してみる…」
芳川「コーヒーでも買いに行ったんじゃない?」
垣根「ならすぐ戻ってくんだろ?」
打ち止め「……あの人のつえ……そこにあるけど……って、ミサカはミサカは気付いたり…」
垣根「はぁ?…アイツってつえがねぇと歩けないんじゃ……」
黄泉川「……家出?にしてもつえ持ってかないと意味ないじゃん」
打ち止め「お兄ちゃんがヒドイ事言ったから出てっちゃったんだ!ってミサカはミサカは指摘してみる」
垣根「はぁあ?あんなやりとりぐらいで……まさかマジで傷ついたのか…?つえも忘れるくらいに?……嘘だろ?」
打ち止め「あの人、きっと能力使用モードで出ていったんだ……すぐバッテリー切れちゃうよ…」――ウルウル
垣根「泣くな打ち止めちゃん!お兄ちゃんが探してきてやるから。……黄泉川さん、すいません。ちょっと
あのバカ探してきます」
黄泉川「……わかった。気をつけるじゃんよ」
垣根「はい、そんじゃ!」
打ち止め「ミサカも行くー!ってミサカはミサカは――」
垣根「ダメだ。こんな時間にお嬢さんを外出させる訳には行かねえよ。心配すんな。絶対連れて帰るから」
打ち止め「……お兄ちゃん。絶対だよ?ってミサカはミサカは約束を求めてみる…」
427 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/29(土) 19:39:26.68 ID:lw.1D1s0 [10/11]
垣根「あぁ、約束だ!俺の未元物質に不可能はねぇ!」
――バタン!
新たな名言(?)を残し、垣根帝督は一方通行のつえを持って夜の外へ飛び出していった。
垣根「……ったく、世話焼かせやがって…あのバカ――」
垣根はコンビニや公園など、家出少年が行きそうな場所をしらみつぶしに探した。
垣根「――……チッ、ここにもいねぇか……しかし俺、そんなひでぇ事言ったかな?……どっちかっつったら
俺の方が言われた気がするんだが……けど自覚はあるのについつい言いすぎちまうからなぁ……俺って…」
……その辺じゃ、一方通行も負けていないと思うが?という声が聞こえてきそうな独り言を吐きつつ、
垣根は夜の街を走りまわった。
448 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/30(日) 19:36:08.82 ID:gIn81Ug0 [1/11]
――垣根が必死に一方通行を探しているころ……上条部屋――
一方通行からこれまでの経緯を聞いた上条と禁書目録。
上条「――……あー…つまり、第二位が家に転がり込んできて、自分の居場所がないと…」
禁書「違うんだよとうま!ちゃんと話聞いてたのかな?あくせられーたはかきねって人に悪口言われて傷ついちゃったんだよ!」
一方通行「オマエら二人ともキレイに大ハズレだァァあ!!!居場所もあるし、あンなロリメルヘンに言われた事になンざ傷ひとつつきませン!」
上条・禁書「……あれ?違うの?」
一方通行「……帰る」
上条「待て待て!冗談!冗談だから拗ねんなって!」
一方通行「………」
上条「…要するに、打ち止めがその…自分より垣根ってヤツに懐いてるのが気に入らなかったんだろ?」
禁書「……そうなの?」
上条「…マジでわかんなかったのか?……インデックス…」
一方通行「………」
上条「……で、どうすんだ?一方通行。別にウチ泊まるのは構わねぇけど、きっと皆心配してるぞ?」
一方通行「……帰りたく…ねェ…」
451 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/30(日) 20:21:42.76 ID:gIn81Ug0 [2/11]
上条「……何で?」
一方通行「…さっき言ったこと撤回するけどよォ、やっぱオマエが最初言ったことも間違いじゃねェわ……あそこに今の俺の居場所はねェ…」
上条「………」
一方通行「……確かに気に入らねェよ。いきなりポッと出てきやがった馬の骨みてェな野郎に、打ち止めはすっかり心を許しちまってる……
おかしいだろォ?今までアイツと一緒にいたのは俺だぞォ?」
上条「………」
一方通行「確かに…『長点』に籍置いてて一時期離れて暮らしてはいたけどよォ……それでも俺の方がよっぽど長く一緒にいるンだぜ?
なのになンで初対面の野郎には良くて俺はダメなンだァ?……俺ァもォあのガキが分っかンねェよォ!」
――垣根の前では素っ裸なのに自分の前ではタオルを巻いていたり、体を拭かせなかったり……とは当然言えるはずがないので、
詳細は伏せて話した。
しかし、決定的なショックはその事だけではなかった……。
一方通行は常に打ち止めの体を心配していた。『過保護』なほどに……。そんな彼が最もショックだったのが――
『――っつーか、早く打ち止めちゃんに服着せてやんねぇと風邪引かせちまうだろ?』
と言う垣根の言葉だった。
いつも打ち止め優先で物事を考えていたはずが……うかつだった。
垣根の言ったことは何ひとつ間違っていない。だからショックだったのだ。
『打ち止めが湯冷めをする』という普段なら当たり前に分かっている事をすっかり忘れてしまっていた。
そして、自分と罵り合っていた垣根は自分より早く打ち止めに気を利かせた。
どんな事情があっても、どんなに頭にきていたとしても、それで打ち止めの存在を忘れていい理由にはならないはずだったのに……。
垣根の言葉に傷ついたと言うのも……ある意味正解だ。
結局、自分がムキになって勝手に出て行ったと言えばそれまでだが……これじゃ本当にただの子供だ。
わかってはいるのだが……一方通行は素直になれなかった。
そして…本当の理由を上条達には言えなかった。――
禁書「……あくせられーた!そんなことないんだよ!らすとおーだーは―――」
上条「――インデックス!……悪いが、ちょっと黙ってろ」
禁書「――?……とうま?」
禁書目録を制し、一方通行を真っ直ぐ見る上条。
その目は……真剣だった。
453 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/30(日) 20:46:47.57 ID:gIn81Ug0 [3/11]
一方通行「……?」
上条が放つ重苦しい雰囲気に一方通行も禁書目録も黙り込んでしまう。
上条は無表情とも怒りとも言える顔つきで一方通行を見ている……。
そして……ゆっくりと上条が口を開いた。
上条「……お前…本気でそう思ってんのか?」
一方通行「…な……何がだよ…?」
上条の雰囲気に思わず戸惑う一方通行…。
上条「お前は、『打ち止めは自分の事を何とも思ってない』なんて幻想を本気で抱いてんのか?って訊いてんだ」
一方通行「……は、そォかもなァ。考えてみりゃァ助けたりしたのも俺が勝手にやっただけだしなァ…別にアイツの側にいるのが
必ずしも俺だなンて決まりはねェし……案外アイツは…もォ俺なンかより垣根みたいな『パッと見良いオニイサン』に惹かれてン
だろォ……」
寂しそうに下を向いて諦めた笑いのまま投げやりに言う一方通行。
上条「………」――スクッ
上条はその言葉を聞いた途端、表情を変えずに無言で立ち上がり、一方通行に歩み寄った。そして―――
上条「――ふざけんのも……いい加減にしやがれ!!!」――バキィッッ!!
――強烈な右拳を一方通行の頬に打ちつけた……。
462 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/30(日) 21:19:34.42 ID:gIn81Ug0 [4/11]
一方通行「―――!!?」――ドカッ!
禁書「!!!と、とうま!?」
吹っ飛ばされて本棚に背中から激突する一方通行。殴られた左頬をさすり顔を上げると、自分の前に
仁王立ちの上条が立っていた。
上条「お前は何のために今まで打ち止めと一緒にいたんだ!?何のために打ち止めを守るために命張ったんだ!?
好かれるためか?自分だけに好意を向けて欲しいからか?…そうじゃねえだろ!!」
一方通行「――!!」
上条「勘違いしてんじゃねえぞ!?打ち止めは誰のモンでもねぇ!誰に人生動かされて良いハズもねぇ!
そんなこと、お前が一番良く分かってんだろ!?」
一方通行「………」
上条「ハッキリ言ってやる!お前は、『打ち止めに自分以上好きなヤツが出来ればもう自分は用済み』って言ってるようなモンだ!
お前は本当にそれで良いのか?投げやりになってんじゃねえよ!………違うだろ?お前はお前なりに、打ち止めにしてやれることがあるだろ?
ちょっと良い代打が来たからって、それをあっさり他人に譲ってんじゃねえよ!」
禁書(……始まったんだよ…)
上条「いいか?人には、それぞれの役割ってのがある。お前はそれを途中で放り出すようなヤツじゃないって俺は信じてんだ!
お前は打ち止めを守るって決めたんだろ?だったら最後までまっとうしろ!お前と打ち止めのちょっと長いプロローグは
やっと終わって本編に入った所じゃねえか!最初の壁なんかで絶望してんじゃねぇ!打ち止めの気が誰に向いていようと、
お前はお前の信念を貫けよ!」
一方通行「………三下ァ…」
467 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/30(日) 21:44:40.94 ID:gIn81Ug0 [5/11]
上条「……あとな、打ち止めはお前に気がなくなったりなんかしねえよ。…普段のお前ら見てりゃわかる。
子供だからな。多分見慣れない人間に興味深々なんだろうぜ。……きっと今頃お前の事心配してる…」
一方通行「……そォ……かな?」
上条「打ち止めを信じろ……あの子の事はお前が一番良く知ってんだろ?」
一方通行「………信じちゃいるけどよォ……今さら…」
上条「……いいぜ。お前が今さら打ち止めと向き合う事を気まずいって思うんなら……自分の本当の居場所に素直に戻れないって言うんなら――――」
一方通行「――は?オ、オイ?」
上条「――まずは、そのふざけた幻想をブチ壊す!!!」――バキィィ!!
一方通行「――グボォッッ!!!」(に…二度目…)
禁書「――!?…と、とうまっっ!!いくらなんでも二回殴るのはヒドイかも!!」
上条「――はっ!!し、しまった!頭にきてもう殴ったの忘れてた!だ、大丈夫か!?一方通行!」
――ピクピク…
禁書「……泡吹いてる…」
上条「す、すまん!つい癖で…しっかりしろ一方通行!傷は浅いぞ!」――ユサユサ
――俺、コイツと友達ンなったの…最後の最後だけ少し後悔したぜェ。……だって暴力振るうンだもン…
471 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/30(日) 22:15:20.62 ID:gIn81Ug0 [6/11]
――その頃、垣根
小萌「――はい?もう一度いいですかー?」
垣根「――だから白髪でウルトラマンみてぇな白い服着た細い男だよ!見なかったか?お嬢さん」
小萌「む、先生は大人ですぅー!……でもお嬢さんも…いいのですぅ…///」
垣根「?…ダメだこりゃ――」――タッタッタッタッ……
垣根「――あ、そこの半袖長袖のお嬢さん!ちょっといいっすか?」
??「……はい?私ですか?」
垣根「すいませんが、この辺りで―――」
……昨日とは違う意味で第一位を捜す第二位がそこにいた。
―――黄泉川家
黄泉川と芳川はリビングでのんびり寛いでいた。……が、打ち止めはそわそわしっ放しだった。
打ち止め「……あの人大丈夫かなー?ってミサカはミサカは心配が消えなかったり……」
黄泉川「第二位が行ったんだから大丈夫じゃんよ」
芳川「……捜索願い出す?家出ウサギを捜していますって……プッ……電柱とかに張ってある猫の捜索願いが頭に浮かんで…笑えるわ…クスッ」
黄泉川「……桔梗…プッ……卑怯じゃん……プフッ」
打ち止め「………」
二人の笑いを堪える声も打ち止めには聞こえていなかった。……それほど一方通行を心配していた。
473 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/30(日) 22:36:33.38 ID:gIn81Ug0 [8/11]
――prrrrrr♪
黄泉川「お、電話じゃん。垣根か?」
芳川「迷子が見つかりましたって?……プフッ」
黄泉川「だからやめろって……ハイハイ――」
―――電話から戻った黄泉川の顔は呆れていた。
芳川「どうしたの?愛穂」
黄泉川「……あのバカの居所が判明したじゃん」
打ち止め「――!!ほ、本当ってミサカはミサカは一目散に駆け寄って来たり!あの人はどこにいるの!?」
芳川「落ち着きなさい、打ち止め。愛穂、電話誰からだったの?」
黄泉川「……上条じゃん」
打ち止め「えぇ!なんで?ってミサカはミサカは訊いてみる」
芳川「上条くんの家にいるの?」
黄泉川「……そうみたいじゃん。『すぐ帰すから心配しないで下さい』ってさ」
打ち止め「……良かったぁ…ってミサカはミサカは胸を撫で下ろしてみたり…」
黄泉川「……垣根に電話して迎えに行かせるか…」
芳川「その方が良いわね」
475 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/30(日) 23:05:47.86 ID:gIn81Ug0 [9/11]
――上条部屋
一方通行「――……ン?」
上条「……お?気がついたか!」
禁書「おはよう!あくせられーた!」
一方通行「……おォ」――ムクリ
上条「お、おい。起き上がって平気か?」
一方通行「…問題ねェ。……三下ァ、俺が間違ってたわ」
上条「え?……あ、あぁ。わかったんならもう良いさ」
一方通行「俺はあのガキから見返りが欲しくて一緒にいるンじゃねェ。俺がアイツと一緒にいたいから……
俺がアイツを守り続けたいから一緒にいるンだ」
上条「うん、うん」
一方通行「……確かにくっだらねェ嫉妬しちまったのは認める。俺ァ自分勝手な幻想をいつの間にかつくりあげちまったンだなァ……
三下ァ、またオマエに助けられたなァ。オマエのおかげでクソみてェな幻想は木っ端微塵に消し飛ンじまったよォ……マジで目ェ覚めたわ」
上条「い、良いってことよ!なんたって『幻想殺し』なんだからな!またお前がいらねえ幻想抱いたら、またブチ壊してやるから心配すんな!」
一方通行「世話かけるなァ。ま、そン時は頼む。……ところでよォ――」
上条「ん、な、何だ?」
一方通行「――俺の幻想壊すのに、なンで二度も殴ったンですかねェ?」――ニヤリ
上条「ぎくっ!!……そ、それはその…」
禁書「……わ、私お風呂入って来よーっと♪」――ソソクサ
上条「!イ、インデックスぅぅ……」
一方通行「ねェ、なンでェ?なンでなのかなァ、当麻くゥン?」――カチッ
上条「な…なんで電極スイッチを『能力使用モード』にしてるんでせう?あとなんなんでせうか?その気色の悪い呼び方と笑顔は!?」
一方通行「………お祈りはァ……済ンだァ?」――ニヤニヤ
上条「」
477 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/30(日) 23:31:31.96 ID:gIn81Ug0 [10/11]
――同時刻・上条寮の前
垣根「――んーと……電話で聞いた住所だと……この寮だな」
黄泉川からの電話で上条の寮にたどり着いた垣根はそのまま寮内へ入り、エレベーターで上条の
部屋へ向かう。
垣根「…なんつーか、普通の寮だな……こんなとこに住んでるダチがアイツにいたとは意外だ……うわ、エレベーター狭っ!
ってか、家出してダチん家転がり込むって……マジでガキかよアイツ……仮にも『頂点』だろ…そこいらの反抗期かよ…
まぁ打ち止めちゃんが可哀そうだから、仕方なく謝ってやるけどよぉ……連れて帰るって約束もしちまったしな…」
エレベーター内で独り愚痴る。そうしている内に上条の部屋の階に着いた。
垣根「……しっかし、アイツにも転がり込ませてくれるダチがいたんだな……何よりそれが一番意外だわ。
あ、もしかして病院で言ってた『不幸体質』ってヤツか?―――ん?」
――クタバレサンシタガアアアアア!!! ギャアアアア!!!ヤメテ!ヘヤコワサナイデ!アアモウ、ヤッパリ、フコウダアアアーーー!!!!
垣根「………うん、ビンゴ♪」
自分の勘も捨てたものではない、と垣根は部屋の前で思った。
483 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/31(月) 10:53:48.78 ID:ljamAgE0 [1/18]
――常盤台・女子寮
――208号室には、明日のデート(ダブル)に浮かれてひとりファッションショーをする美琴と、面白くなさそうな顔で
それを見ている黒子がいた。
美琴「~~♪」
黒子「……お姉様…?さっきから鏡の前で何をしていますの?」
美琴「ん?見て分かんないの?……ねぇ黒子。この服の方が良いかな?…それともコッチかな?
ん~、でもコレだとさすがにストッキングないと寒いかなぁ……でも、アイツ生足の方が好きかもしんないし……」
黒子「………」
美琴「…あぁもう!どうしよ!……ねぇ黒子ぉ!どうしたら良いかな!?」
黒子「……お姉様、浮かれてる所大変申しにくいのですが…」
美琴「……何よ?」
黒子「……休日中も制服着用の校則……お忘れで?」
美琴「………」
こうして、美琴の自室ひとりファッションショーはしめやかに幕を下ろした。
この時彼女は、初めて常盤台中学に在籍しているのを少し後悔したらしい……。
484 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/31(月) 11:59:11.64 ID:ljamAgE0 [2/18]
――上条部屋
学園都市最強の能力の犠牲になりかけた上条の部屋は、右手に宿る自身の能力『幻想殺し』によって守られた。
つくづく右手のこの力は不幸中の幸いになっている……もっとも、その不幸を起こしているのがこの右手でもあるのだから皮肉なものだ…。
暴れ狂う一方通行を三度目の鉄拳で制し、倒れたところにマウントをとって右手で押さえつける。
この時点で『最強』は『最弱』まで一気に滑り落ちる。
上条は右手で一方通行を押さえながら、左腕で額の汗を拭った。
上条「――ふぅ……こうして上条さんの部屋の危機は去ったのだった…」
一方通行「なァにシタリ顔で実況こいてンですかァァ!?離せ!離せェェ!!このっ!このォォ!!」――グググ…
上条「やめてよね……能力無しで本気で喧嘩したら、一方通行が俺に敵うハズないだろ?」
一方通行「なンだそりゃァァあ!!……どっかで聞いたセリフだなァオイ!」
上条「ハハ、悪い悪い!いっぺん言ってみたくてさ♪…まぁ、どっかの艦長みたいに二度も殴ったのは確かに悪かったけど、
上条さんの狭い部屋で能力全開とかマジでシャレになりませんの事よ?」
一方通行「……別に部屋壊されるくらいどォってことねェだろォ?」
上条「……お前ね…」
一方通行「…っつか、オマエ三度殴ったよなァ?俺ァ一生忘れねェぞ……」
上条「まぁまぁ、明日何か奢ってやるから機嫌治せって」
一方通行「……コーヒー百本な」
上条「んなっ!!百本んん!?……い、幾らすんだオイ……」
一方通行「…馬鹿か?真に受けてンじゃねェよ……まァ本来なら生き埋めにしても済まさねェとこだがなァ……
『相談料』と『友達割引』で今日だけは勘弁してやらァ」――カチッ
上条「さっすが一方通行!よっ、第一位♪男前♪」
一方通行(……やっぱ殺しとくかコイツ?)
一方通行が『友達割引』の有効期限切れを上条に告げようか迷ったところで呼び鈴がなる。
――ピンポーン♪
485 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/31(月) 12:18:11.23 ID:ljamAgE0 [3/18]
一方通行「?……なァ?こンな時間に誰が来ンだよ?」
上条「……あぁー、黄泉川先生かもなぁ……お前が伸びてる間に電話したんだよ」――ポリポリ
一方通行「ンなっ!?三下ァァ!!オマエ余計なことをォォォ!!」
上条「ハイハーイ!今出ますよーっと♪」――タタタタ
一方通行「ってオイイイ!!」――ズルズル
来客のため玄関に移動する上条の後を這いずるようについて行く一方通行。
――玄関
上条「――ハーイ、どちら様でしょうか?」――ガチャ
垣根「――あー、夜分遅くにすんませんね。ウチの白ウサギ引き取りに来たんすけど…」
上条「……はぁ…白ウサギ…?」
垣根「――お、いたいた!……って、何這いつくばってんのお前?」
一方通行「――!!?」
玄関まで這って来た一方通行は来客を見上げ……固まった。
487 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/31(月) 12:50:20.15 ID:ljamAgE0 [4/18]
垣根「――えーっと……君、『不幸少年』だよね?俺は今日コイツと不本意ながらルームメイトになった垣根帝督だ。宜しく」
一方通行「………待てや」
上条「…不幸少年って……あぁ、俺は上条当麻。一方通行から大体聞いてるよ。第二位なんだろ?」
垣根「上条…か。ん、まぁそうだな。悪いけどそこで這いつくばってる芋虫みたいなヤツ、今日は帰らないといけねえんだわ。
連れて帰って良いか?」
一方通行「………だから待てや」
上条「あぁ、打ち止めが心配してるんだろ?わざわざ迎えに来てもらって悪いな。上がって茶でも飲むか?」
垣根「あー……せっかくなんだが、早く連れて帰ってやんねえと打ち止めちゃん心配してるし、今日はやめとくよ。また今度ゆっくりな」
一方通行「……オイ、オマエ達」
上条「あ、そうか…悪い。んじゃまぁ今度ゆっくりな」
垣根「おう。……オラ、帰んぞ。一方通行」
一方通行「――だァかァらァ待てっつってンだろォが無視すンなやゴラァァァァああああ!!!!」――(上条の肩に捕まり立ち上がる)
上条「――うおわ!!?」
――常盤台女子寮
美琴「――っくしゅん!!」
黒子「お姉様、風邪ですの?……黒子が温めて差し上げましょうか…?」――ハアハア
美琴「そんなんじゃ……って、えぇぇい!布団に潜り込んでくんなぁ!!私は今日は何がなんでも早く寝なくちゃいけないのよぉぉおお!!!」――ゲシゲシ
黒子「あんの類人猿がぁぁあああああ!!!」
美琴「な、何!?その黒い翼!!?く、黒子?アンタ……?」
――バタン!
寮監「……貴様ら…夜中に騒ぐとは良い度胸だな?」
美琴・黒子「」
488 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/31(月) 13:27:44.97 ID:ljamAgE0 [5/18]
垣根「――テ、テメェ夜中に大声出してんじゃねえよ!近所迷惑だろうが!常識ねえのかよ!?」
一方通行「なァァにさっきっからヒトを愉快にスルーしちゃってくれてンですかァァ?どっかのババアとおンなじ扱いは止めてくれますゥ?
…あとオマエにだけは『常識ねェ』とか心の底から言われたくねェわ!」
垣根「……人の肩捕まりながら凄んでもなぁ……足プルプルしてんじゃねえか」
一方通行「…オマエ迎えに来たの?喧嘩売りに来たの?どっち?」
上条「あ、あの!先に言っとくけど、ここで喧嘩するのだけはマジで止めてくれよ!!」
垣根「……まぁ後者って言いてぇところだが、ここは打ち止めちゃんと上条くんに免じて前者ってことにしといてやる」
一方通行「別に後者上等なンですけどォ?ビビッたのかなァ、垣根くゥン?」
垣根「……まぁいい。ほら、つえ持ってきてやったぞ。ったく、打ち止めちゃんに心配かけやがって……」
一方通行「……はァ?」
垣根「まぁ……その、なんだ……さっきは言い過ぎたよ。悪かったな一方通行。まさかお前があんくれぇで傷ついちまうとは思わなくてよ…」
一方通行「……オイ、オマエ何言ってンだ?」
垣根「あ?俺に口で負けてショックで家出したんだろ?端から見たらカワイイモンだが、俺からすりゃ迷惑以外の何物でもねぇっつの…。
打たれ弱いなら最初から言えよ。減らず口叩くからついムキになっちまったろ?」
一方通行「………ン…」
垣根「……ん?」
一方通行「ンなワケあるかァァァあああああああああっっ!!!!!」
垣根「だ、だから大声出すなって!!近所迷惑だっつってんだろぉ!!ホント常識がねえヤツだな!!――」
一方通行「だからオマエにだけは言われたくねェェえええ!!!!――」
上条(……明日、ポスト見るのが怖い………苦情殺到確定だな……不幸だ…)
禁書「……玄関しばらく立ち入り禁止かも……先に寝よーっと♪おいで、スフィンクス」
スフィンクス「にゃー♪」
489 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage][] 投稿日:2010/05/31(月) 14:22:37.95 ID:ljamAgE0 [6/18]
――こうして、一方通行ののびた君より短い『家出事件』は幕を閉じた。
一方通行は終始不機嫌だったが、家出した本当の理由を垣根に言えるはずもなく、
『この際そォいう事にしといてやる』との事で、垣根とともに上条宅をあとにした。
「三下ァ。明日遅れンなよ」と捨て台詞を残して……。
――黄泉川家へ帰宅中
垣根「――さて、黄泉川さんに連絡も済んだし、これで一安心だな。もぉ家出なんかすんなよ?一方通行」
一方通行「……家出じゃねェよ。ちィっと居心地悪かったから出ただけだっつの」
垣根「…それを一般的には『家出』っつうんじゃねえの?」
一方通行「……常識通用しねェヤツが『一般的』なンて言うのかよ?」
垣根「俺の『常識』と『一般常識』は別なんだよ。お前、この世は俺のものだとか思ってんの?」
一方通行「……くっだらねェ……。仮にそォだとしても、それがなンになるンだよ…」
垣根「だろ?…まぁ、そういうこと」
一方通行「っつーかよォ……なンでオマエが迎えに来てンだよ?」
垣根「……打ち止めちゃんとの…約束?」
一方通行「疑問に疑問で応じてンじゃねェよ。……チッ、良かったなァ。クソガキに懐かれてよォ……せェぜェ俺の代わりに
面倒見てやれや。あのガキ手間ァかかるから、さっさと愛想尽かしちまえ」
垣根「………お前さぁ…――」
一方通行「……ンだよ?」
垣根「――まさか妬いてんの?」
一方通行「――!!?」
垣根(……うわぁ…わかりやすっっ!!!)
491 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage][] 投稿日:2010/05/31(月) 14:53:17.05 ID:ljamAgE0 [7/18]
一方通行「――なななな、なァに言ってくれてンのかなァ、垣根くゥン?嫉妬?この俺が?誰に?」
垣根「……いや、打ち止めちゃんと俺に…」
一方通行「プフーー!!ビックリ!!ホントビックリだわ垣根くン!!オマエの頭ン中はメルヘン所の騒ぎじゃねェぞ!?
この一方通行が!あンなオシメも取れてねェガキに!ヤキモチィ!!?面白ェ!面白ェぞオマエ!!最っ高!!」
垣根(……風呂場に来た時点で薄々感じてはいたが……やっぱ言わねえ方が良かったな……何かキョドり始めた…一緒に歩くの恥ずい…)
一方通行「ハハハハ!!実に愉快だねェ!全くの大ハズレとは言え、たいした空想力だァ!全くの大ハズレとは言えなァ!!」
垣根(…二度言うなよ)
一方通行「まァ、その空想力に免じて、この際だから一緒の部屋でも許してやンよォ!よろしくねェ垣根くゥン?
ンでよォ、オマエどこで寝ンだ?ベッドはひとつしかねェから、交代で床に布団でどォだ?」
垣根「(強引に話題変えやがった……もぉ触れねえ方が良さそうだな……)あ…あぁ、俺はそれで良いぜ?
俺は今日布団で良いから、お前ベッド使えよ」
一方通行「オーケェ!なら明日オマエがベッドな?…あァー寒いなァ今日はァ!早く帰ろォぜェ!」――クルクル
垣根(……ついに回り出した……ダメだ…コイツ面白過ぎる……ぷくく……笑うな俺……耐えろぉぉ…)
一方通行「あ!そォ言や俺風呂入ってねェ!帰ったら入ンねェと……お湯まだ抜いてねェだろォな?」
垣根「……あぁ、お前帰るまでは……とっとくってよ……クク…」
一方通行「?……何オマエひとりで思い出し笑いしてンの?」
――そして、帰宅した一方通行と垣根。
打ち止め「――うわーん!!心配したんだからバカーっ!!ってミサカはミサカはアナタの胸をポカポカ叩いたり!」
一方通行「……おォ…悪かった…」
多分、一方通行はもう二度と打ち止めを残して家出なんかしないだろう……多分。
492 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage][] 投稿日:2010/05/31(月) 15:17:31.57 ID:ljamAgE0 [8/18]
一方通行は泣きつく打ち止めをなだめた後、そのまま疲れて寝てしまった打ち止めをベッドまで運んでやり、
リビングに戻ってきた。
垣根「――打ち止めちゃん、良く寝てるか?」
一方通行「……おォ」
黄泉川「あの子本当に心配してたじゃん。もう家出なんかするなよ?出るなら今度は一緒に連れてってやりな」
芳川「…ま、あなたの居場所はここしかないんだから、甘えたくなったらいつでも言いなさい?」
一方通行「ソイツは丁重に断る……が、心配かけたのは反省してンよォ。オマエらも…悪かったな」
垣根「……なにその素直っぷり…?」
黄泉川「……何かお前変わったじゃん…?」
芳川「……上条くん家で何かあったのかしら?……気味が悪いわ…」
一方通行「ヒ、ヒトがたまには素直に謝ってみよォとか思ってみたら今度はそれかァ!?…もォイイ!風呂入ってくる!」
――バタン!
芳川「……やっぱり、変わったわね。あの子への接し方、変えた方が良いかしら?」
黄泉川「今のままで良いじゃんよ。アイツは良い方向に変わってるじゃん。……上条のおかげか…」
垣根「あんな捻くれモンを変えちまうなんて、上条ってそんなすげぇヤツなのか……?ただの人当たり良いヤツにしか見えねえけどな……」
一方通行は心の奥で、『やっぱり俺の居場所はここ』と再認識した。
そして風呂から上がり、明日に備えて寝る。
明日も……長くなりそうだ。
499 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage][] 投稿日:2010/05/31(月) 17:51:12.44 ID:ljamAgE0 [10/18]
――オマケ・就寝前の一方通行と垣根帝督
一方通行「……はァ……何か今日は偉く疲れちまった」
垣根「――おいおい、俺らまだ若いんだぜ?……よっと、布団この辺りで良いか?」
一方通行「……いや、もっと離せよ。近いだろ…起きた瞬間踏まれてェの?」
垣根「あ、そっか…――こんなとこか?」
一方通行「おォ……っつーか好きにしたらァ?……さ、寝るか…」
垣根「…なに?お前もぉ寝んの?……うわぁーつまんねぇー!」
一方通行「……寝る以外何すンだよ?」
垣根「トーク!俺様とのトークを楽しもうぜ!…っつーかお前寝るの早ぇよ!」
一方通行「……俺がオマエと愉快なお喋りできる人間に見えンのか?」
垣根「……見えねぇ。っつーか正直そんなお前は気持ち悪い!」
一方通行「明日無事に目覚めたかったら今すぐその口閉じろ」
垣根「…んだよ、釣れねえな……あ、そうそう!そう言やぁさ!」
一方通行「――あァ、うぜェ!マジうぜェ!オマエ修学旅行とかで絶対寝かせないタイプだろォ!?」
垣根「……よくわかったな?まぁいいや。そんでさ――」
一方通行(……もォイイや、勝手に喋らしとこォ……)
垣根「――お前捜しに出てる時、お前を見かけてねえか色んな人に尋ねたんだけどさ。……いやー、なんつーか…
ここ科学の街なのに不思議多すぎだよな」
一方通行「…はァ?」
500 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage][] 投稿日:2010/05/31(月) 18:30:10.68 ID:ljamAgE0 [11/18]
垣根「――人の多い繁華街捜してたらさ、迷子としか思えない幼女がいてよぉ。話しかけたら『先生は大人』とか
意味の分からないこと言うんだよ。そしたら勝手に自分の世界入り出したから、慌てて俺は回避したね!」
一方通行「……ふーん」
垣根「――んで、そのあとしばらく走ってたら…何か俺好みの姉ちゃんが歩いててさ。ナンパ……いや、お前を見なかったか訊こうと
思って声かけたわけさ。けどその姉ちゃん服装が…なんつーかさ、パンクっつーの?」
一方通行「…そンな変な格好だったのかよ?」
垣根「いや、別に変って訳じゃ…ねえんだが…個性的っつーのか?……何か自分で切ったのか知んねえけど、ジャケット片方袖ねえの!
この時期だぜ?ダメージ系どころじゃねえのマジで!んでさ、よーく見たら…なんと足も片方ねえの!」
一方通行「……はァ!?」
垣根「あ、間違えた。そぉじゃなくて、穿いてるジーンズの片方がねえんだよ!…片足丸出しなの!このクソ寒い時期に片手片足オープンだぜ!?」
一方通行「………なンだそりゃァ」
垣根「な?信じらんねえだろ?んで、俺が『頭も体も真っ白いヤツ見ませんでした?』って聞いたらさ――」
一方通行「――ちょっと待て!オマエそれどォいう意味だァ!?何だよ『頭も体も真っ白』ってよォ!俺ァ北極熊じゃねェンだぞォ!?」
垣根「……いや、特徴言わなきゃ誰捜してんのか分かんねえだろ?」
一方通行「にしても言い方ってのがあンだろォ!?あれか?俺はあし○のジョーですかァ?燃え尽きてねェっての!」
垣根「……また古いネタを……まぁとにかく続き聞けよ。そしたらさ、彼女『あの子に何かあったのですか?』って怖ぇ顔して訊いて
きたんだよ。最初、お前の知り合いなのかと思ったぜ」
一方通行「……そンなファンキーな知り合いはいねェぞ?」
垣根「だろ?俺が『家出したんで捜してるんすよ』っつったらその姉ちゃん『…あの人は何をやって――』とかよく分かんねえ事
ブツブツ言い出してさ……『こんな事してる場合ではありません!では!』とか言ってさっさとどっか行っちまったんだよ」
一方通行「……くっだらねェ。単なる人違いじゃねェか」
垣根「……何か腰に刀までぶら下げてたしなぁ……ありゃあどっかの宗教にいそうな危ないタイプだな…見た目はどストライクだったのによぉ…」
一方通行(……刀って…)
501 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage][] 投稿日:2010/05/31(月) 19:05:13.32 ID:ljamAgE0 [12/18]
垣根「……んでさ、その後――」
一方通行「――ってまだ続くのかァ!?…ってかオマエはいったい何人に声かけたンだよ!?」
垣根「ん?……えーっと……軽く五十人は超えたな。ちなみに全員女♪すげーだろ?どっかのフラグメイカーも真っ青だぜ」
一方通行(……コイツ、絶対俺捜すの口実にしてナンパしてただけだよな……?)
垣根「……そんでその後繁華街出たら何か影も幸も薄そうな巫女服着た女が――」
一方通行「――オイ……まさか声かけた全員分話すつもりかァ?」
垣根「――は?当然だろ?まだこんなモンじゃねえぜ。まだまだネタは――って一方通行!なに布団深く被ってんだよ?夜はこれからだぜぇ?」
一方通行「……寝る。オヤスミ」
垣根「はぁあ!?おいおいおい!そりゃねぇんじゃねぇの一方通行よぉ!まだまだ今夜は寝かせないぜ!俺様とのトーク会はまだ終わりを告げてないぜ!?」
一方通行「………」
垣根「せっかく同室なんだしよぉ!もっと互いを知り合おうじゃねえか!」
一方通行「………わかったから、今日はもォ寝ろ…」
垣根「……いいぜ、そんならテメェの目が覚めるまで喋り続けてやる!『今夜は垣根でオールナイト』だぁ!」
一方通行(……うぜェ……心底うっぜェ……今この時ほど音を『反射』できねェのを悔やんだことはねェわ……っつーか、しばらく毎日こンな調子かよォ……)
垣根「~~~♪」ペラペラ
永遠と喋り続ける垣根。無視して寝ようとしたが、耳障り過ぎて眠れない。……やはりコイツとの同室は受けるべきではなかった。
これならあのクソガキと寝た方がよっぽどマシだ……。
そして、ついに堪忍袋の緒が切れた一方通行は布団を深く被ったままピシャリと声を放つ。
一方通行「寝ろ!!!!!」
502 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage][] 投稿日:2010/05/31(月) 19:34:52.11 ID:ljamAgE0 [13/18]
――上条宅・朝
上条「――……う~ん、腰痛ぇ…」
目覚めて第一声がこれなのには理由がある。
上条は紳士だ。そして禁書目録は手間のかかる居候とは言え女の子、一緒の部屋で寝るのは色々とまずい。
そんな理由で、上条の寝床は乾いた浴槽内である。ちなみに禁書目録は『一緒に寝て良い』と言っているのだが……それはアウトだ。
男はそんな簡単に信用してはいけない。上条でさえ、間違いが起きるのを危惧して離れて寝ているのだ。そして、間違いを起こしたら…
もう引き返せないだろう…。
禁書「――とうま!お腹空いたんだよ!」――ドンドン
上条「……ん…もう朝か……ふぁあ」
このように、空腹に耐えかねた意外と早起きな禁書目録が起こしに来るのがいつものパターンだ。
上条はダルそうに浴室から出た。
上条「……まだ7時か…」
今日の『遊園地でダブルデート』の集合時間は駅前に9時。
まだ時間の余裕が充分ある。
禁書「とうまー!お腹空いたんだよ!ご飯ご飯!」
上条「……へいへい、すぐ作るから待ってなさいっと…」
のそのそと上条はキッチンへ向かった。
503 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage][] 投稿日:2010/05/31(月) 19:48:41.93 ID:ljamAgE0 [14/18]
上条「……に、しても……神裂のやつ…昨日はどうしたのかな……?急にやって来てインデックスを見たら
安心したように帰りやがって……よくわかんねえな…」――ブツブツ
ブツブツぼやきながら朝食の準備をする上条。
と、そこへ禁書目録がキッチンへやって来た。
禁書「とうま!何か手伝うことないかな?」
上条「……ハイ?」
一瞬自分の耳を疑った……。今までこんな事があっただろうか?
上条「……インデックス?」
禁書「チョコ欲しいんだよ!何か手伝うからちょーだい♪」
上条「………」
……何だ、そういうことか…と上条は溜息を吐く。そう言えば、自分が餌付けで家事をさせようとしたんだった。
寝ぼけてすっかり忘れていた。
上条(ってか、『食い物じゃ釣られない』とか言ってなかったか?……しっかり釣られてるじゃねえか)
呆れたが、手伝ってくれるのに悪い気はしない。
上条「……んじゃあ、そこの味噌汁にワカメと豆腐入れといてくれ」
禁書「任せるんだよ!」
504 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage][] 投稿日:2010/05/31(月) 20:07:34.78 ID:ljamAgE0 [15/18]
上条は、朝食の手伝いをする禁書目録に暖かい目を向けた。
色々あったが……彼女も少しずつ変わってきてるのだろう。
今は食べ物に釣られてるだけかもしれないが、その内率先して家事をやってくれるようになるだろう。
もちろん禁書目録だけにやらせるつもりはない。共同が一番理想なのだ。
それに、食っちゃ寝の生活は禁書目録のためにもならない。今は少しずつで良いから自立して欲しい……。
そして……いずれは―――
禁書「――とうま!出来たんだよ!」
上条「――!…お、おう。偉いぞインデックス。ほれ、ご褒美」
禁書「わーい♪」
上条「食べるのは飯食ってからだぞ?」
禁書「わかってるんだよ!早く食べよ?」
上条「おう、んじゃ――」
上条・禁書「――いただきます!」
――平和な朝だが、この後禁書目録を騙さなければならない事に少し心を痛める上条だった。
禁書「――ふぅ、ごちそうさま!」
上条「……ごちそうさま」
禁書「洗い物してくるよ!けっこう上手になったから任せて欲しいかも!」
上条「あ…俺も手伝うよ」
禁書「ううん、今日は私がやる!とうまはゆっくりしてて」
上条「あ、あぁ。じゃあ頼むよ」
禁書「まっかせて!」
505 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage][] 投稿日:2010/05/31(月) 20:27:47.31 ID:ljamAgE0 [16/18]
――皿洗いを終えた禁書目録が戻ってきたと同時に、上条は切り出した。
上条「……インデックス。今日このあと、打ち止めが家に来ないかってさ。おいしいもの食べに行こうって行ってたぞ?」
禁書「――!!ホント!?…とうまも行くんだよね?」
上条「い、いや……今日補習があるからさ…」
禁書「……昨日はないって言ってなかったかな?」
上条「こ、小萌先生から電話もらってさ。課題足りなかったらしくて…」
禁書「……ふーん、そうなんだ。とうま来れないのか…」
上条「いや、でも俺いない分食い放題だぜ?俺の分までたらふく食ってこいよ」
禁書「…うん!わかった!じゃあ行って来るんだよ!ご飯、ご飯♪――」
――バタン!と禁書目録は浮かれながら出て行った。
上条「………許せ…インデックス…」
多少心が痛むが、一方通行が家にやって良いと行ったんだ。何とかなるだろう……。
と、上条は思っていたが……後でこの何気ない嘘を吐いた事を深く後悔する事になるとは、この時の上条にまだ分かるはずもなかった…。
そして、上条は歯を磨き身支度を整える。
いつもより……少しオシャレに決めてみた。
一方通行も一緒とは言え女の子とのお出かけだ。テンションも上がる。
上条「………ん?…これって……まさかダブルデートってヤツか…?」
――今ごろ気づいたか、上条よ……。
512 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/01(火) 17:32:38.48 ID:Ozs9uTM0
――上条はようやく今日は『デート』と言う事に気づいた。しかもダブルで……。
上条「……なるほど、だからインデックスや打ち止めは連れて行けないのか……けど…」
『このデートは……誰得?』
と言う疑問が浮かぶ…。
上条「!!――そ、そうか!」
ついに気づいたか!上条よ。
上条「一方通行のヤツ、御坂に惚れてんだな!……そういうことか…考えてみたらそうだよな……御坂は打ち止めの元なんだもんな…」
………お前というやつは……。
上条「あぁいう性格だからきっと御坂と素直に接せてないんだろうな…それで今日のデートに俺と御坂妹を巻き込んだ訳か…」
ひとりで外れた道をさらに外れまくる少年がここにいた。
上条「あいつあーいうヤツだから、いきなり二人きりは無理って訳だな!……オーケー!この恋愛発掘師と言われる上条さんが一肌脱いでしんぜよう!」――スクッ
ひとりで勝手に決意した勘違い少年は勢いよく立ち上がり、部屋を出て行った。
苦情のお知らせ入りのポストは勿論スルーだ。
ここでスクリプトによってスレ落ち。
次スレへ続きます
―――窓のないビル
アレイスター「……そうか。第一位と幻想殺しが友好条約を…」
アレイスター・クロウリー…学園都市総括理事長。
アレイスターの近くには土御門が立っている。そして、学校では決して見せない顔をアレイスターに向ける。
土御門「……大げさだな。まるで国の話だ…」
アレイスター「いや、科学の街の頂点と世界にひとりしかいない『魔術も科学も消せる力』……
第三次世界大戦開始から三ヶ月……このふたつの力は軽視できない」
土御門「あのふたりと共通の知り合いの俺から言わせてもらうが、利用するつもりならやめておけ」
アレイスター「…ほう?」
土御門「あの戦争も、お前の計画ももう終わったはずだ。……今度は何を企んでいる?」
アレイスター「……いいや。ただ、このまま長い寿命まで隠居というのも退屈でね。それに――」
土御門「……最近起きている『あの件』か?」
アレイスター「ロシアの暗部組織が極秘に調査を進めている。経過は酷いものらしい…」
土御門「……」
アレイスター「科学でも魔術でも立証出来ない。あの大戦の影響で世界の歪んだとしか思えない。……君はどう思う?」
土御門「……さぁな。今の段階じゃ、何を言っても予測にしかならないな」
アレイスター(だが、もしいざとなれば……彼等にも――)
――アレイスターは口に出さなかった。そして、一般的に公開されていない、第三次世界大戦の『負の遺産』は……
学園都市にゆっくり、ゆっくりと歩み寄っていた。
338 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/26(水) 17:42:29.36 ID:BHfYMX.0
――学園都市・郊外
一方通行は、周りに何もない広い荒野をフラフラと辛そうに歩いていた。空は陽が暮れ始めている。
一方通行「ハァ……ハァ………ちっ」
前を向き、舌打ちする。…街まではあと十数kmと言ったところか…
一方通行「クッソ…マジかよ……笑えねェぞ」
一方通行は黄泉川の予想通り、帰りのことを考えていなかった。
能力はもう使えないどころか、バッテリーが切れるのも時間の問題だった。
真冬の夜にこんな何もないところで行動不能になっては、確実に死ぬ。
一方通行「ハァ……ヤベェ…かもな」
目がかすんできた…。
垣根から受けた傷は深くはないものの、浅くもなかった。
血はもう止まったが、応急処置できるものもなく、自然に止まるまで血を流しながらここまで歩いてきた。
流石に…流しすぎたか。と呟き、歩くものの、使い慣れない木の棒をつえ代わりにしているため、
歩みは遅い。このペースでは街につくまで何時間もかかる。出血多量のせいか、頭がクラクラしてきた。
一方通行(クソが……俺は…こンなとこでくたばるワケに行かねェンだ……俺が死ンだら、あのクソガキは誰が守ンだよ……)
飛びそうな意識を無理矢理留めて、前方を向く。
一方通行(打ち止めァ……上条ォ……妹ォ……シスターァ……超電磁砲ン……ツインテールゥ……黄泉川ァ………ついでに芳川ァ…)
もはや足も言うことを聞かなくなっていた。そして――
――ドサッ……ついに力尽き、その場に倒れた。
339 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/26(水) 18:09:13.28 ID:BHfYMX.0
―――倒れて十分後……一方通行はうつ伏せのまま、閉じた目を薄く開いた。ヒンヤリした地面の感触がする。
一方通行(……今ァ…何時だ?…ち、思うように動けねェ…)
――ゴロンと仰向けになり、空を見上げる。暗くなり始め、星が見え僅かに赤み掛かった空には星が見えていた。
一方通行「………」
フゥー…と冷気の混じった息を吐く。貧血のせいか、手足の感覚があまりなかったが、
思考が働くということは、まだバッテリーは切れていないようだ。
一方通行(……綺麗だなァ。空ってあンまじっと見たりしねェしな……悪くねェ…)
血の気がなくなっている顔をふと触る……。
一方通行(冷てェ……し……寒いな)
体も冷え切っている。また意識をなくしたら……もう目覚めないかもしれない……。
一方通行(ハ…学園都市の頂点って呼ばれてるこの俺が……こンな何もねェとこで感傷に浸りながら
お陀仏なンて……笑い話にもなりゃしねェ…)
ふと、今まで関わってきた人達の顔がよぎる。
一方通行(……アイツら……怒っかなァ……妹には必ず帰るっつったのによォ………
って、おいおい……これが走馬灯ってやつかよ……マジでシャレになンねェっつの…)
一方通行は……少年の顔で笑う。その顔は、『悪党』とはかけ離れていた。
一方通行(……もっと、素直ンなってもよかったかもなァ)
340 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/26(水) 18:32:17.71 ID:BHfYMX.0
――走馬灯の最後に浮かんだ顔は、上条当麻だった。
唯一、友達と呼べる存在であり、自分にとってのヒーロー……。
ロシアでは会ったものの、戦争中でまともにのんびり話せなかったし、打ち止めのことでゴタゴタしていたので、
あの出会いは一方通行の中で『無効』にしていた。
平和になったこの先、あまり会うこともないだろう…と思っていた矢先、街で再会し、なんだかんだで
友好的になれた。自分みたいなクズの友達になってくれた。
言葉には絶対出せないが……嬉しかった。
そして…これも普段なら言葉には出せないことを……一方通行は呟いた。
一方通行「俺なンかの友達になってくれて……ありがとよォ……『当麻ァ』」
ボソッと呟くような声だが……確かに言葉に出ていた。
一方通行(……やりゃァ……出来ンじゃねェか………へっ)
静かに笑い、目を閉じる。もう動く気になれなかった。……こんな幸せなまま[ピーーー]るんなら……それもいい…。
ゆっくりと……意識が落ちていく……――
――その時、
一方通行の耳に、車の走る音が届いた。
341 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/26(水) 18:50:16.71 ID:BHfYMX.0
―――ブロロロロロ……
僅かにだが……確かに聴こえる……幻聴じゃない。
その音はだんだんと近づいて来ていた。
一方通行「……あァ?」
意識を覚醒させ、目を開く。力の入らない腕で何とか体を起こす。
一方通行の目に入ったのは……一台のジープだった。こっちに向かって来ている。
一方通行「……こォいうのを『くたばり損ない』ってのかねェ……」
フッ、と笑い、ジープを見つめる。自分を呼ぶ声がはっきり聞こえてきた……友の声だ。
上条「一方通行ぁぁぁぁぁぁあ!!!」
………どうやら、あの世に行くのはまだ先のようだ。
一方通行は、そのままドサっ!と仰向けになる。
両腕を広げ、心底安心した顔のまま目を閉じた。
その顔のまま一言―――
一方通行「――遅ェンだよ。三下がァ…」
そして、そのまま彼の意識は途絶えた…。
344 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/26(水) 19:24:31.68 ID:BHfYMX.0
さて、もうちょいだけ書きます。
――病院
一方通行「………?」
一方通行は病院で目を覚ました。……夏に世話になった部屋だった。
黄泉川「お?気がついたじゃんか?」
一方通行「……黄泉川」
隣に黄泉川が座っていた。
黄泉川は穏やかな顔から一転、怒りの表情で一方通行の頭を叩いた。
黄泉川「このバカ!!」
――スパァァン!!
一方通行「――!!ってェな!!何しやがンだよ!?俺ァ怪我人だぞォ!?」
黄泉川「やかましい!バカに効く薬じゃん!」
――スパァァン!!とまた叩かれる。
一方通行「――痛ってェ!?……クソォ」――スリスリ
黄泉川「……何か言うことは?」
一方通行「……ケッ」――プイ
黄泉川「……ほう……あ、もしもし看護婦さん?注射して欲しいやつがいるんだけど――」
一方通行「ごめンなさいスイマセンでしたァァ!!だからそれだけは勘弁しろォォォ!!!」
黄泉川「よろしい♪」
一方通行「……チクショォ…」
345 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/26(水) 19:54:55.76 ID:BHfYMX.0
一方通行「人の頭ァ二度もブチやがって……オヤジにもブタれたことねェのに…」――ブツブツ
黄泉川「ん?何ブツブツ言ってるじゃん?」
一方通行「なンでもねェよ。……それより今何時だ?外がずいぶん明るいけど…」
黄泉川「午前九時じゃん」
一方通行「ってこたァ、一晩寝てたのか?」
黄泉川「まぁな。昨日はびっくりしたじゃんよ少年少女があんたに必死に声かけてジープまで担ぐ姿は微笑ましかったじゃん」
一方通行「……よく俺の居場所がわかったな?」
黄泉川「病院に電話したじゃんよ」
黄泉川は一方通行の首についてるチョーカーに目をやる。
発信機にもなっているのを忘れていた。
一方通行「……あァ、なるほどねェ…」
黄泉川「とりあえず、あんたが目覚めたら先生呼ぶよう言われてるから、行って来るじゃん」
一方通行「…おォ」
黄泉川「……そこの打ち止めにも謝るじゃんよ?」
一方通行「?――あァ?」
ふと真横を向くと、布団が盛り上がっていた。
……めくると、打ち止めがスヤスヤと寝息を立てていた。
……さっきの騒ぎでよく起きなかったものだ。
黄泉川「さっき寝たからしばらく起きないだろうけど、起きたら謝りな。ずっと心配してたんだから…」
一方通行「……すまねェ」
黄泉川「だから謝るのはその子にじゃん。…じゃ、呼んでくるよ」
――バタン。と黄泉川は出ていった。
346 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/26(水) 20:18:15.67 ID:BHfYMX.0
一方通行は無言で自分の隣で眠る打ち止めを見る。よく見ると、涙の後がある。
きっと一晩中ついててくれたのだろう……。
一方通行「……たいした怪我でもねェってのに…コイツは……夜更かしなンかしてンじゃねェよ」
そして、寝ている打ち止めの頭を撫でる。「う~ん…」と唸るが、起きる気配はない。
一方通行「………」
一瞬魘される顔をしたものの、すぐに気持ち良さそうな表情をして眠っている打ち止めに、一方通行は
微笑みながら頭を撫で続ける。
一方通行「心配かけちまったなァ……起きたら、ちゃンと謝っからよォ…」
打ち止めの顔を見ると安心する。「帰ってきた」と実感する。
一時期、離れ離れだった時は気付かなかったが……今の一方通行にとって打ち止めは何よりも愛しい存在だ。
父親というのは…こんな気分なのかもしれない。
自分はどうなっても、打ち止めには幸せになって欲しい…と、心からそう願った。
――そこに自分はいなかったとしても……
しばらく物思いにふけっていた一方通行の病室のドアがノックの後、バタン。と開く。
黄泉川と……すっかり顔なじみのカエル顔のような医者が室内に入ってきた。
「――やぁ、久しぶりだね。それにしても、君もよっぽどここが好きなようだね?」
347 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/26(水) 20:41:48.19 ID:BHfYMX.0
カエル顔の医師…『冥土返し(ヘブンキャンセラー)』。上条や一方通行を何度も助けてきた、あの世への最後の砦的な存在。
一方通行「……またオマエの世話になるとはなァ」
冥土返し「いや、実を言うと今回僕は何もしてないんだよ。君の怪我そのものはたいしたことはなかったんだ。
出血が少々多かったが、ウチに来ればいくらでも輸血できるしね」
一方通行「………」
冥土返し「まぁ、君がここに来る時はそれなりに重傷のケースが多かったから、医者として言いたくないが、
少し拍子抜けだったよ。当直の夜勤に任せて、僕はさっさと帰ったからね」
すっきりするくらいの笑顔で冥土返しは言った。
一方通行は「ハァ…」と溜息をつき、冥土返しに問いかける。
一方通行「ンで?俺はいつまでいりゃイインだ?」
冥土返し「あぁ、もう帰っていいよ」
一方通行「はァ?」
冥土「もう輸血も終わってるし、傷の手当ても済んだ。これ以上することもないし、無駄に入院費がかかるのも
バカらしいしね」
一方通行「……おい、オマエってそンなヤツだったか?」
冥土返し「ハハハ、冗談だ。今日の夕方には退院できるよ。その子も寝かせてやらないとね?」
一方通行の横で眠る打ち止めを見る冥土返し。
冥土返し「じゃ、僕は患者がいるからこれで。何かあったら呼びなさい」
そう言って、彼は病室を出ていった。
黄泉川「……あの医者も相変わらずじゃん」
一方通行「………掴み所なさすぎだ」
348 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/26(水) 21:06:59.13 ID:BHfYMX.0
打ち止めを起こさないように抱きかかえ、看護婦に許可をもらい、隣の病室に移動させた黄泉川は
一方通行の病室に戻った。
一方通行「……腹ァ、減ったな」
黄泉川「りんごでも剥く?」
一方通行「…おォ、悪ィな」
ムキムキ、シャリシャリ
黄泉川「そう言えば……第二位は?」
一方通行「……殺してねェよ」
黄泉川「……だと思ったじゃん♪」――ナデナデ
一方通行「お、おい!!なァに人の頭撫でてンだ!?ガキじゃねェンだぞ!!」
黄泉川「なに照れてるじゃんよ?」――ナデナデ
一方通行「照れてませンン!!だァ!やめろっての!」
黄泉川「もう……あたしが止める必要もないな」
一方通行「ケッ、俺は『その程度の悪党』じゃねェよ」
黄泉川「!……くー、こいつはぁぁ!嬉しいこと言いやがって!」――ギュッ
一方通行「!!?――な、なに抱きついてンだァ!?痛ェ!っつか離せェェ!!」――ジタバタ
黄泉川「あーもう、暴れるな!こんな美人に抱かれてるんだからもっと喜ぶじゃん!」
一方通行「なンだそりゃァァ!!?意味わかンねェンだよ!だァァ!!やァめェろォォォ!!」――ジタバタ
――バタン
御坂妹「おいーっす!来てやったぞ!とミサ………」
一方通行「」
351 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/26(水) 21:59:58.06 ID:BHfYMX.0
御坂妹「……あなたがロリコンなのは年上好きを隠すためのカモフラージュだったのですね…とミサカは新事実に驚きを隠せません」
一方通行「まず、ババァに興味はねェ。そしてオマエは誤解している。さらに俺はロリコンじゃねェ。オーケェ?」
黄泉川「……ババァってのはあたしのことじゃん?やっぱ注射が必要みたいじゃんね。看護婦さーん!――」
一方通行「!うわァァ!!ごめンなさい勘弁してくださいもォ言いませンから注射はイヤだァァァァ!!!」
御坂妹「なにコイツ?まさか注射が嫌いとか、子供かよ…とミサカは呆れつつ今のセロリの面白映像を保存します」
一方通行「注射の針ナメンなよォ!!先尖ってて危ねェだろォォ!!」
看護婦「病院内ではお静かに!とミサカは……10032号。この騒ぎは何ですか?とミサカは尋ねます」
御坂妹「今面白れーもん保存したから見せてやるよ。とミサカは小悪魔ぶりを発揮します」
一方通行「オマエは俺も真っ青の大悪党だァァ!!いくつ俺の弱み握りゃ気が済むンですかァ!?
っつーかその映像今すぐ消さねェと死なす!!」
御坂妹「こんな笑えるネタ、消すわけねーだろバーカ!とミサカは舌を出して拒否します」
一方通行「この!!………おい、待て看護婦。オマエ手に何持ってンだァ?」
看護婦「……注射器ですが?とミサカは答えます」
黄泉川「看護婦さん。コイツじゃんよ」
看護婦「ハイ、とミサカは入室します」
一方通行「ヨミカワァァァァあ!!!オマエ本当に呼びやがったのかァァァ!!?」
御坂妹「……これは…さらに面白いものがみれそうです。とミサカは録画を始めます」
一方通行「黄泉川さン?腕離してくれませンかね?」
黄泉川「断る」
一方通行「……い、いやだァァァァァァあ!!!!離せェェェェえ!!!」
看護婦「大丈夫。怖くありませんよ。とミサカは笑いながら針を向けて近づきます……へへへ…」
一方通行「―――」
――三下ァ……不幸なのって、辛ェよなァ……今なら俺にもわかるぜェ……いつもこンな不幸と戦ってるオマエを
ちょっとだけ尊敬してやる……絶対口には出さねェけどなァ。―――By一方通行
356 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/27(木) 21:35:23.64 ID:QSFXIRA0 [1/5]
―――十分後
一方通行「……おかしい……なンでだ?……なにかが……おかしい…」――ブツブツ…
御坂妹「目の焦点があってませんよ?とミサカは注射された腕を押さえてブツブツ言ってるあなたに指摘します」
黄泉川は帰り、看護婦は満足そうな顔で出ていったので病室内は御坂妹と一方通行の二人きりだった。
一方通行は、大嫌いな注射を受け涙目である。
一方通行「納得…いかねェ……こォいうのはあの三下の役目だろォ……何故に俺?…――」
御坂妹「おーい、聞いてますかー?とミサカは来る前より重傷になってしまったマダムキラーの顔の前で手を振ります」
一方通行「!――だ、だァれがマダムキラーだァ!?」
御坂妹「お?ようやく戻ってきましたか。とミサカは安堵の息を吐きます」
一方通行「もォ一度わかりやすく言ってやるが、まずババアに興味はねェ。完全対象外。
ガキにも興味はねェし、そもそも女ってのが苦手だ。強いて言うなら同年代がベスト。
何ひとつ曲がってねェ完全ノーマルがこの俺だァ。理解したかァ?」
御坂妹「……そうですね…今のあなたは何ひとつ曲がってない…あの方と同じ……とミサカは…」――ボソボソ
一方通行「オイ。オマエ何ブツブツ言ってンだ?」
御坂妹「!!な、何でもありません…とミサカは答えます…」
一方通行「?……あァ、そォ言やァ…」
御坂妹「ハイ?」
一方通行「買い物途中だったよな?……退院したら、明日にでも行くかァ?」
御坂妹「……覚えててくれたんですね……」
一方通行「はァ?昨日のことじゃねェか。……約束したしよォ。ま、埋め合わせってヤツか」
御坂妹「!……///」(な、何でしょう?不覚にもセロリなんかに…ドキリとしました…)
358 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/27(木) 22:05:29.46 ID:QSFXIRA0 [2/5]
一方通行「……オイ。オマエさっきから変だぞ?ちょうどここは病院だし、診てもらったらどォだ?」
御坂妹「――!……だ、大丈夫です!別にどこも悪くありません!とミサカは慌てて否定します」
一方通行「?…まァ、イイけどよォ……ンで、明日どォする?行きてェか?」
御坂妹「そ、そうですね。暇だし、仕方ねーから付き合ってやるよ。とミサカは了承します」
一方通行「おォ、ンじゃ決まりな」――ニカッ
御坂妹(せ、セロリのくせに……なんて無邪気な笑顔を…この人も、こんな顔をするのですね…///)
一方通行「……オマエ大丈夫か?顔赤いぞ。熱でもあンじゃねェか?」
御坂妹「ね、熱はありません。ミサカの体温は正常です!」
一方通行(なに怒ってンだコイツ…?)
御坂妹(…マジねーよ…あの方ほど鈍感なヤツはそうそういないと思ったらここにもいやがったよ…)
一方通行「……まァイイ。あ、あと明日なンだけどよォ…三下どもも誘って行かねェか?」
御坂妹「…へ?」
一方通行「三下と超電磁砲だよ。アイツらでも誘ってこォぜ?」
御坂妹(ダ……ダブルデート?///)――ボソッ
一方通行「ン?ダブ……なンつった?」
御坂妹「………い、良いと思います…とミサカは同意します…」
一方通行「お、おォ……」
御坂妹「………」
一方通行「………」
御坂妹「………(モジモジ)」
一方通行(……なにこの空気?)
360 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/27(木) 22:40:59.65 ID:QSFXIRA0 [3/5]
……気まずい空気が流れる。
一方通行「……あ、あのよォ…」
御坂妹「!――な、何ですか?」
一方通行「い、いや……オマエどっか行きてェとこあるか?」
御坂妹「……ゆ、遊園地」――ボソッ
一方通行「はァ?遊園地ィ?……うわァ…ガキくせェ…」
御坂妹「い…いけませんか?……あなたが訊いたんじゃないですか。とミサカは非難します」
一方通行「……いけねェとは言ってねェ。――…行くぞ」
御坂妹「…え?」
一方通行「……明日遊園地行くぞって言ったンだ」
御坂妹「ハ……ハイ!」――パアア
一方通行「……オマエもそォやって笑う様になったンだな。ソッチの方が良いぜェ?」
御坂妹「なっ!!何を!とミ―――」
――コンコン
御坂妹「――!!」
一方通行「あァ?」
――バタン
美琴「お邪魔ー!来てやったぞ。ってアレ、アンタも来てたんだ?」
黒子「お邪魔しますのー!……ム、何やらイケナイ空気が流れてますの…」
361 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/27(木) 23:12:21.24 ID:QSFXIRA0 [4/5]
一方通行「……オマエらか」
御坂妹「お、お姉様に黒子さん。おはようございます。とミサカは慌ててお辞儀をします」
美琴「…アンタ何テンパってんの?」
黒子「……怪しいですわね……第一位さん?…貴方、まさか…」
一方通行「は?」
御坂妹「――で、ではミサカはこれで!とミサカは席を立ちます!」――スクッ、タッタッタッタッ
――バタン!――タッタッタッタッ……
一方通行「……?」
美琴「……一方通行…アンタ、アイツに何やった訳?」――ジトー
一方通行「…はイ?」
黒子「……まさか、傷者にしたんですの?…だとしたら、許す訳にはいきませんわね…」
美琴「ほぉ……打ち止めがいながらアンタは人の大事な妹に手を出したと……」――ユラリ
一方通行「ま、待て。オマエら何想像してンだ?俺ァなンもしてねェよ!っつーか何でそこであのガキが出てくンだァ!?」
美琴「……ふーん」――ジリッ
黒子「……」――パキポキ
一方通行「オイ!だから俺の話を――」
美琴・黒子「――問答無用っ!!!」――バッ
一方通行「」
――いやァ、思わず三下の口癖が本気で喉の奥から出かけたよなァ……
367 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/28(金) 00:30:13.98 ID:z5LhD0A0 [1/20]
―――美琴のチョークスリーパーに黒子のドロップキックというコンボから
立ち直った一方通行は何とか二人の誤解を解いた。
一方通行「………あのなァ。ここ病院、俺怪我人。リピートアフタァミー?」
美琴・黒子「ここ病院、アンタ(貴方)怪我人。……ごめんなさい」――ペコ
一方通行「オーケェ。…もォイイから顔上げろ」
黒子「……わたくしとしたことが、飛んだ早とちりでしたの…」
美琴「そうね……私も。アンタには打ち止めがいるんだもんね…」
一方通行「……まァだ誤解は解けきってねェらしいなァ。俺はアイツの『保護者』!それ以上でも以下でもねェ」
美琴「……ま、それで良いわ。ハイ、お見舞い」
黒子「わたくしからもですの」
美琴から包装紙に包まれたクッキー缶を、黒子からフルーツバスケットを受け取る。
一方通行「ン…おォ、ありがとよォ。……けど大げさだなァ。夕方には退院すンだぞ?」
美琴「え?…そうなの?」
黒子「……貴方死にかけましたのよ?」
一方通行「っつっても血ィ流しすぎただけだからなァ。傷はすぐ塞がるだろォし…」
美琴「……あんな何もない所で倒れてるからビックリしたわよ……けっこう血も出てたし、死んじゃったのかと思ったわ…」
一方通行「ンな簡単に死ンでたまっかよ……」
―――本当は最後に死を覚悟したのだが、あの時の事は血の足りてない頭が描いた幻想だと
一方通行は自分に言い聞かせた。
368 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/28(金) 01:00:29.22 ID:z5LhD0A0 [2/20]
――美琴・黒子としばしのひととき
一方通行「それより超電磁砲、オマエは怪我平気なのか?」
美琴「あぁ、私は特に怪我はしてないわ……全然歯が立たなかったから、心の傷は負ったけどね…」
黒子「お姉様は無茶し過ぎですの!格上に正面から挑むなんて…」
一方通行「……オマエってそォいうヤツだよなァ……」
美琴「だ、だってしょうがないじゃない!あの時は……」
黒子「……第一位さんに挑んだ時も怯まなかったそうですわね?」
一方通行「まァな……ってオイ!ツインテール!オマエ知ってンのか?」
黒子「髪型で呼ばないで下さいまし!……実験の事も小さいお姉様の事も全部聞きましたわ…」
美琴「……今なら言ってもいいって思ったから…」
一方通行「………そォか……さぞかし俺が憎いだろ?オマエの大切なオネエサマを死にたくなるほど追い詰めちまったンだからなァ」
無理矢理笑う一方通行……しかし――
黒子「見くびらないで下さいません?わたくしは終わった事をいつまでも引きずる程子供ではありませんの。
確かに貴方のした事は許されないかもしれませんが、今、お姉様は貴方を恨むどころか感謝してますのよ?
わたくしからもお礼を言わせて下さいませ…――」
――黒子は一方通行に頭を下げる。
黒子「――お姉様を助けていただいて、本当に……ありがとうございますのぉっ!!貴方には感謝してもし足りませんわぁぁっっ!!」――ポロポロ
その目からは涙が溢れていた……
美琴「………黒子…」
369 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/28(金) 01:20:37.97 ID:z5LhD0A0 [3/20]
一方通行は、くすぐったさと後ろめたさで返し方に戸惑った。
目の前で自分に感謝しながら号泣する黒子にどう対処して良いのかわからなかった。
そして、頭をかきながら、不器用ながらも考えついた言葉を出す。
一方通行「………泣くンじゃねェよ。……皆無事だったンならそれで良かったじゃねェか」
美琴「――!!!」
一方通行「?」
今度は美琴が驚いた顔で自分を見た。
一方通行(……なンだ?変なこと言ったつもりはねェぞ…?)
そして、美琴は一方通行に笑顔を向ける。
美琴「……フフッ、アンタから『その言葉』が出るとは…予想外も良いところよ……」
一方通行「……あァ?」
顔じゅう?マークの一方通行に美琴は言う。
美琴「――改めてお礼するね。ありがとっ!一方通行!」
さっき以上のくすぐったい気持ちが一方通行を襲う。
一方通行「///……ったく…だから大げさなンだっつーの…」
照れ臭いのか、頭をかいてソッポを向いてしまった一方通行を美琴は『可愛い』と素直に思った。
376 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/28(金) 14:22:14.37 ID:z5LhD0A0 [4/20]
もっと投下する予定だったんだが……寝ちまった。申し訳ない!
――その後、美琴は泣き続ける黒子を慰めるように肩を抱き、
「んじゃ、帰るね」と言って病室を出ていった。
黒子は泣きながらも…最後まで感謝の言葉を一方通行に送っていた。
そして、病室には再び一方通行ひとりになった。――
一方通行「……ふゥ」
息をつき、立ち上がる。…もう頭もクラクラしないし、血の色も戻っていた。体調も悪くない。
外に出ようかとも思ったが、夕方までは大人しくしていることにした。
一方通行「………」
病室の小さな冷蔵庫を開けると、大好きなコーヒーが入っていた。黄泉川の見舞いの物だろう。
一本取り出し、ゆっくり飲み始めた。
感じる苦味は何とも言えない……このために生きてンのかもなァ、と、オヤジ臭い考えにもなる。
飲み終えてベッドに戻ると、隅に置かれた紙袋が目に止まった。
一方通行「……」
昨日厚手のジャケットを買った店の袋だった。
御坂妹に預けていたんだった……さっき持ってきてくれてたのか。
いつの間にか置かれていた袋を手に取り、中身を見ると……昨日のジャケットと、他にも何か入っていた。
一方通行「?……コイツァ……」
377 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/28(金) 14:46:36.05 ID:z5LhD0A0 [5/20]
中にジャケットと一緒に入っていたのは……手袋とインナーだった。
インナーは白く、英文の入ったシンプルなものだったが、ジャケットの下に合う色合わせだった。
手袋は、黒一点でこれもシンプルだが、防寒用として申し分なかった……二つとも当然買った覚えはない。
一方通行「………」
打ち止め、禁書目録、御坂妹の顔が頭に浮かぶ。
一方通行「………アイツら……この俺にサプライズかよ……」
捻くれた口調だが、表情は穏やかだった。
病室には自分ひとり……一方通行は嬉しい気持ちを隠しきれず、入院患者用の服を脱ぎ、早速着替えてみた。
部屋にあったいつものジーンズとインナーとジャケット、手袋もつけてみる。
着替え終わり、鏡を見てみる……悪くない。
けっこう厚いジャケットは防寒性もあった。下にもう一枚着れば外出しても平気だろう。
そして、インナーに書かれている『Peace』という文字に注目した。
一方通行「………『平和』…か」
一方通行は無言でジャケットとインナー、手袋を脱いで丁寧に畳んだ。
袋に戻し、再び寝巻きに戻る。
一方通行(……さて、夕方まですることねェし、寝るか)
一方通行はベッドに横になり、もうひと眠りしようと意識を手放し始める……。そこへ――
―――コン、コン
一方通行「――……ンァ?」
383 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/28(金) 16:52:56.11 ID:z5LhD0A0 [8/20]
――意識が落ちる寸前でノックの音が耳に入り、間抜けな声を出しながら起き上がる一方通行。
ノックの後、バタンと入ってきたのは――
上条「――よう!具合どうだ?」
禁書目録「――お見舞いに来たんだよ!」
――手に見舞いのお菓子を持った上条と禁書目録だった。
上条「あれ?……もしかして寝てた?悪いな」
一方通行「いや……気にすンな。…まァ座れよ」
上条「あ、あぁ」
椅子に座り、お菓子入りの袋を見せる上条。
上条「安物だけど、食う?」
一方通行「……せっかくだが、今ァイイ。シスターに食わせてやりな」
禁書「――!!わーい♪それじゃ、遠慮なく」――ムシャムシャ
上条「……おい、インデックス。ボロボロこぼすな。意地汚いぞ」
禁書「――♪」――ムシャムシャ
上条「……聞いちゃいねぇ……ところで、体はどうだ?」
一方通行「あァ……もォ何ともねェ。夕方には退院できるってよォ」
上条「そうか……けど本当に心配したぞ!あのまま俺達が来なかったらどうなってたか…」
一方通行「……悪かったなァ」
上条「……ま、俺の立場じゃあんまりデカい顔はできないけどな……けど本当に良かった」
一方通行「だからオマエもアイツらも大げさだっつーの!この俺があンなメルヘンに負けるワケねェだろォが」
上条「もしもってのがあるだろ?それに、多分お前は帰りのことは考えてないって黄泉川先生も言ってたしな」
一方通行(……事実なだけに反論できねェ…)
384 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/28(金) 17:14:55.37 ID:z5LhD0A0 [9/20]
上条「……図星、だな?」――ジー
一方通行「………べ、べっつにィ…」――プイ
上条「……まぁ、いいか。――お、そうだ、一方通行」
一方通行「……ン?」
急に立ち上がる上条を不思議そうに見上げる。
上条「――御坂を助けてくれて、ありがとうな!」
一方通行「……さっき本人達からも言われたぞ…別にオマエが感謝することでもねェだろ?」
上条「……いや、あいつも俺にとって大事な友達だからな。お前が助けてくれて、本当に感謝してる」
一方通行(……友達……ねェ…)
一方通行は美琴に少し同情した。……コイツは思ったより厄介かもなァ……と、鈍感ヒーローを見る。
一方通行「……まァ、たまたま俺が間に合っただけだァ。……それより、オマエ明日暇かァ?」
上条「……抜けた分の補習は明後日だから、明日は暇だけど…」
一方通行「……悪ィな」
上条「い、いや!それは俺がしたくてしたんだから、お前は気にすんなよ。んで、明日がどうしたんだ?」
一方通行「………ゆ、――」
上条「…ゆ?」
一方通行「――……遊園地行かねェか?」
上条「……ハイ?」
一瞬、上条の顔が固まった。
387 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/28(金) 17:38:38.39 ID:z5LhD0A0 [10/20]
上条「――ゆ、遊園地ぃ?」
一方通行「……な、なンだよ?」
上条「……い、いや……意外な言葉ってのはこの事かと……に、しても……お前が遊園地って……ぷくく」
一方通行「……わかった。オマエも入院してェンならそォ言えよ」
首筋に手を持っていく一方通行に上条は慌てる。
上条「――う、うそです!うそですからご勘弁を!」
一方通行「……チッ。ンで、明日どォなンだァ?行くか行かねェか、今ここで決めろォ」
上条「……俺は全然良いけど……野郎同士で遊園地ってのは…」
一方通行「それについては同意見だ。……妹と、超電磁砲誘ってくンだよ」
上条「…な、なぁんだ。そうだよな。……っつーことは、御坂と御坂妹と俺とお前で行くってことか?」
一方通行「まァ…そォなるなァ。そこで菓子食うのに夢中で全く聞いてねェシスターはウチでガキと一緒にしときゃァ
問題ねェだろォ」
上条「え?一緒に連れてってやんねーの?大勢いた方が……」
一方通行「……オマエ、マジでわっかンねェのか?」
上条「ん?…何が?」
一方通行(……こりゃダメだわ)
一方通行「…とにかくそォいうことだァ。食いモンでつるなりして明日シスターはウチに来させろ」
上条「?…あ、あぁ。わかった」
一方通行(……ガラにもねェよなァ。この俺が人の恋路の応援なンてよォ…)
上条「んで、二人はもう誘ったのか?まだなら、俺が誘うけど…」
一方通行「妹はオーケェしたが、超電磁砲はまだだァ」
上条「んじゃ、後で誘っとくよ」
一方通行「おォ…頼ンだ」
388 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/28(金) 18:01:41.47 ID:z5LhD0A0 [11/20]
――そして、上条と禁書目録が帰り、またひとりになった一方通行の部屋に再度ノックの音が……
――コンコン
一方通行「――空いてますよォ。……ったく、今度は誰だァ?」
――バタン
垣根「――…よぉ」
一方通行「――!?」
そこにいたのは垣根帝督だった。……一方通行は姿を見た途端表情を変える。
昨日殺し合いをしたばっかりの相手がズカズカ室内に入ってくるので、当然警戒は強まる。
一方通行「……なンの用だ?」
垣根「…別に、どんなザマか見にきただけだ。俺はもう退院するけどな」
一方通行「へェ……寝首でも襲いに来たのかと思ったぜェ。…まァ、その程度で済ンで良かったじゃねェか」
垣根「……テメェのせいでな…」
一方通行「………死にてェンじゃなかったっけ?てっきりどっかで身投げでもしてるかと思ったのによォ」
垣根「……それも考えたんだがな……お前にひとつ訊きたいことがあってよ…」
一方通行「……なンだ?」
――垣根は少し、躊躇いながらも……口を開いた。
垣根「―――何故、俺を殺さなかった?」
390 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/28(金) 18:44:56.21 ID:z5LhD0A0 [12/20]
一方通行「……オマエもしつけェのな。またそれかよ……そンなに死にてェならとっとと屋上にでも行って飛び降りりゃァ
イイだろォ?別に誰も止めたりしねェっつの…」
垣根「…今はそんな気はねぇ。けど、あん時は……マジでそう思った。あの後絶望した俺は……本気で楽になっちまおうって思ったんだ。
……けどお前は、そんな俺を嘲笑った……そん時のテメェの面ぁ思い出したら無性に腹ぁ立ってきてよぉ…死ぬ気が失せちまったんだよ…」
一方通行「ンならそれでイイじゃねェか。今は死にたくねェンだろ?…なら生きりゃァイイ」
垣根「……まだテメェの答えを聞いてねぇ!…自分でいくら考えてもわかんねぇんだよ!何で俺は生きてんのか……その答えを知ってんのは
テメェだけだ!…教えてくれよ……お前は何で『悪党』を名乗ってんだよ……敵も生かしちまうお前が…何で――」
一方通行「――甘ったれンなよ?ボクちゃン」
垣根「!!……テ、テメェ!!」
一方通行「……じゃァ訊くがよ、オマエは[ピーーー]ば必ず楽になれるとでも思ってンのか?」
垣根「――!!」
一方通行「…確かに生きてりゃァ辛ェことばっかりかもしれねェ…いっそ楽ンなりてェ、なンて思うこともあるだろォな――」
垣根「………」
一方通行「――けどよ、ソイツァただの『逃げ』だ。逃げたヤツが行き着く先に『楽』なンてのはありえねェンだよ。
待ってンのは逃げたことへの『後悔』だ。ソイツを一生背負って歩いて……それでも楽ってか?ハン!冗談じゃねェ!
それなら生きて足掻き続ける方がマシだろォ?だってよ、生き続けりゃァ本当の意味で『楽』になれるかもしンねェンだぞ?」
垣根「………」
一方通行「だから俺ァ、無闇に楽になりたいヤツは殺さねェ……楽になりたいンなら生きた方がイイ………俺の『友達』に
とあるひとりの野郎がいてよォ……ソイツは不幸体質で、次から次へと不幸が襲ってくンだ。……普通なら死にたくなる
くらいによォ……けどソイツは……今、笑って生きてる。なンでだかわかるかァ。垣根くゥン?」
垣根「……」
無言で首を横にふる垣根
一方通行「簡単だ。ソイツは知ってンだよ。死ンだところで何ひとつ得しねェってなァ!ソイツは生きて足掻いてでも掴み取れる
『安楽』の方が死ぬより遥かにマシなのを知ってる。………実はよォ、少し前までは俺もオマエみてェな考えだったンだよ…」
391 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/28(金) 19:06:47.39 ID:z5LhD0A0 [13/20]
垣根「……何?」
一方通行「…驚くなよ。自分でも不思議で仕方ねェ……俺みてェなクソッタレが、ちょっと考え変えただけで今を楽しめてンだぜ?
……いつまで続くか分っかンねェけどなァ…」
垣根「………どう変わったんだよ?」
一方通行「……さァなァ…自覚持ったの最近だからよォ……まァ、オマエもそのウチ分かンだろォ…」
垣根「……どう、だろうな……人は変わるって良く言うが……俺にはまだ分かんねぇ…」
一方通行「そォかい。そンならソイツが分かるまでは、生きて足掻き続けなきゃなァ」――ニヤリ
垣根「……あ、あぁ!当たり前だろ!………礼は…言わねぇぞ?」
一方通行「今日は散々言われたからその方が助かるわ……今日だけで鳥肌何度立ったか分かンねェ」
垣根「――フッ………邪魔したな。そろそろ行くわ」
一方通行「……オマエ、これからどォすンだ?」
垣根「……なるようになるだろ。じゃあな」
――バタン
少し寂しそうな背中を見せ、垣根は去っていった。
一方通行「……」
閉じられたドアをしばし無言で見つめていたが……数分後、そのドアはすぐにまた開かれた。
――バタン!
一方通行「――!!?」
打ち止め「おっはよー!ってミサカはミサカはアナタに向かって勢いよくダ~イブ♪」
393 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/28(金) 19:23:32.81 ID:z5LhD0A0 [14/20]
――勢いよく開いたドアから元気に入ってきた打ち止めは、そのまま一方通行に勢いを殺さないまま飛びついてきた。
一方通行「――うおわ!!?」
打ち止め「――やっと起きたんだね!心配しちゃったよ!アナタが病院に運ばれたって聞いて慌てて飛んで来たんだからぁ!って
ミサカはミサカは頬擦りしながら安堵してみたり!」
一方通行「わかった!わかったから頬擦りすンな!くすぐってェンだよォォ!!」
打ち止め「……ミサカに言うことはそれだけ?」
一方通行「………」
――無言で打ち止めを抱きしめ、頭を撫でた。
打ち止め「――わわっ!う、嬉しいけど恥ずかしいよ!ってミサカは…ミサカは……」
一方通行「……悪かったなァ。心配かけてよォ…」
打ち止め「……ううん、いいの。だってアナタは必ず帰って来るもん。ってミサカはミサカは大人になってみる」
一方通行「………大人…ねェ」
打ち止め「な…なんだよその目はー!ってミサカはミサカは腕の中で暴れてみたり!」――バタバタ
一方通行「ハイハイ、オマエは大人ですねェこのクソガキ。暴れンなっての!」
打ち止め「ムキーーー!!」
一方通行は、打ち止めに見られない角度で、穏やかな表情になった。―――
394 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/28(金) 19:44:45.15 ID:z5LhD0A0 [15/20]
―――そんなこんなで夕方
打ち止め「……ねぇ、その服どう?ってミサカはミサカはおそるおそる訊いてみる」
打ち止めは服屋の袋を指差しながら訊いた。
一方通行「……あァ、悪くねェンじゃねェか?」
打ち止め「へへっ♪ミサカと10032号とシスターで選んだんだよ!アナタに似合うかなぁって。ってミサカはミサカは褒め言葉を
遠まわしに要求してみたり」
一方通行「……ありがとォなァ」
打ち止め「……うわ!過保護なアナタは良いけど、素直なアナタは気持ち悪い!ってミサカはミサカはドン引きしてみる」
ンダトコノクソガキガアアアアア キャー オコッターー
――ドアの外
黄泉川「――ん?騒がしいじゃんね」
―――そして黄泉川が迎えに来て、一方通行は身支度を整えた。
黄泉川「――じゃあ行くか。準備出来たじゃん?」
打ち止め「忘れ物はない?ってミサカはミサカはアナタに訊いてみる」
一方通行「……俺は子供じゃないンですよォ?」――グリグリ
打ち止め「――痛い痛い!!ゴメンなさーい!!」
――無事に退院し、家路についた一方通行達。
何故か黄泉川の機嫌が良く、その日の夕食は豪華だった。
395 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/28(金) 20:22:41.43 ID:z5LhD0A0 [16/20]
―――黄泉川家
一方通行「…………」
一方通行は言葉を失くしていた……正確には思考が止まっていた。
電極のスイッチは『通常モード』…充電も終わっている…。
彼の思考が止まったのは、病院から帰りの車に乗り込む時だった。
車には、すでに誰か乗っていた。最初は芳川だろォと思い、ドアに手をかけた。―――
垣根「――よっ♪」
一方通行「」
――この時から今まで……彼は一言も言葉を開かなかった。
打ち止め「――ただいまー!ってミサカはミサカは元気よく靴を脱いでみたり!」
垣根「――お邪魔しまーす。うっわ、広ぇ!玄関広っ!!」
黄泉川「ご飯前にあんたら手洗ってきな。うがいも忘れたらダメじゃんよ」
打ち止め「はーい♪」
垣根「ほいほーい。…なぁ、洗面所ってどっち?」
打ち止め「コッチだよーって、ミサカはミサカはお兄ちゃんの手を引っ張って案内してあげる♪」
垣根「手洗いうがいとかガキん時以来だわ。毎日やってんの?」
打ち止め「そうだよ。あの人も毎日やってるよ。ってミサカはミサカは答えてみる」
垣根「……あいつが…手荒ってうがいって……ダ、ダメだ…想像したら笑えてきた……ププッ」
打ち止め「意外と可愛いとこあるんだよ。ってミサカはミサカは自慢げに言ってみたり」
一方通行「……………オイ」
399 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/28(金) 20:53:15.39 ID:z5LhD0A0 [17/20]
――楽しい食卓(?)
打ち止め「うわー!今日スゴイ豪華だね!ってミサカはミサカは驚いてみる!」
垣根「うおっ!うまそーだなオイ!」
黄泉川「うまいに決まってるじゃん。…ま、たまにはな」
芳川「……また手伝わされた……屈辱だわ…」
黄泉川「あんたいい加減家事くらい手伝わないと叩き出すじゃんよ?」
芳川「あら愛穂、私以上に甘いあなたにそんなことができるかしら?」
黄泉川「時には厳しく。が、あたしのモットーじゃん」
垣根「まぁまぁお姉さん方。……うお!この唐翌揚げうめぇ!ホラ、お嬢さんも――」
打ち止め「――パク……ホントだ!おいしー!」
一方通行「………」
黄泉川「一方通行?箸進んでないじゃん?」
垣根「食わねぇの?ならこの玉子焼きもーらい♪」
一方通行「………ちょっと待てよオイ」
垣根「んだよ。食うならさっさと食えよ。冷めちまうだろ」
一方通行「……そォじゃねェ……いや……っつーか……あァ、頭痛ェ……あァもォ……めンどくせェ…
めンどくせェから一言で言うぞ?」
黄泉川・芳川・打ち止め・垣根「?」
一方通行「なンでオマエがここにいる?」
401 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/28(金) 21:19:16.84 ID:z5LhD0A0 [18/20]
垣根「……なんでって、なぁ?」
打ち止め「うん」
黄泉川「じゃん」
芳川「あなたのお友達でしょ?」
一方通行「……え?…ナニ?なンなの?この俺がおかしいよォな雰囲気は…」
打ち止め「アナタにお友達がまた増えて嬉しいなー!ってミサカはミサカは喜んでみたり♪
カキネお兄ちゃんはしばらくウチにいるんだよね?ってミサカはミサカは確認してみる」
一方通行「………はァァ!!?」
垣根「そうだな。住むとこ見つかるまで世話んなります。黄泉川さん」
黄泉川「別にウチでよければ構わないじゃんよ。今更ひとりぐらい増えても変わんないし」
芳川「4DLKって素晴らしいわね♪」
垣根「まぁ金はあるんで、幾らか納めますよ」
黄泉川「お!良い心構えじゃん!……どっかのバカに見習わせたいじゃんよ…」――ジー
垣根「……なに、お前払ってねぇの?まさかヒモ?……うわぁ……ねぇだろ……ひくわ」
一方通行「――やっぱおかしいだろォォ!!黄泉川ァァ!!コイツに何されたのか忘れたンですかァ!?」
黄泉川「……いや、ちゃんと謝ってきたし……別にもう良いじゃんよ」
一方通行「はァ!?…っつーかオマエはなンで車に乗ってたンだァ!?」
垣根「……行くとこねぇから病院の前で途方に暮れてたら、黄泉川さんに声かけられてよぉ」
黄泉川「そん時謝られたからもう許したじゃん。んで、行くとこないって言うから、一緒に連れてきたって訳」
一方通行「………マジかよォ……部屋はどォすンだ?」
黄泉川「あんたと一緒で良いだろ?」
一方通行「あァ!!?オマエ正気かァ!?」
黄泉川「いつまでもいがみ合ったってしょうがないじゃん。スパッと仲良くやんな」
一方通行「……そォいう問題じゃ!……って、垣根くゥン?オマエ何黙々と人の肉横取りしてンですかァ!?
オマエもなンとか言えェ!!」
403 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/28(金) 21:53:37.46 ID:z5LhD0A0 [19/20]
垣根「モグ…ング……俺は別にどこでも構わねぇけど?」
一方通行「嫌がれよォォ!!俺と一緒なンだぞ!?昨日殺し合いしたこの俺とだぞ!!?キャラ変わり過ぎだろォ!!
っつーか、なンでそンなあっけらかンとしてンだァァァ!!そして俺の肉食うなァァァァあ!!!」
垣根「……いや、終わったことだしなぁ……俺は過去にとらわれない人間なのさ」
一方通行「………嘘だろォ……昨日の戦いや……病院内での俺のセリフは…いったい何だったの……もォいや……泣きそォ…
普通昨日まで敵視してたヤツの家なンか来れねェだろォ……しかも一緒の部屋だァ?………マジでありえねェ…」
打ち止め「……何か隅っこでウジウジし出したけど大丈夫?ってミサカはミサカはアナタを心配してみる」
芳川「ねぇねぇ、ところであなた普段は何やってるの?無職なら、私と『無職同盟(ザ・ニート)』を設立しない?」
垣根「え?……そういや俺……まだ長点に籍あんのかな……」
芳川「……エリートなのね…じゃあ無くなってたら、設立しましょ?」
垣根「……まぁ、考えときますけど……ザ・ニートって何すか?」
芳川「とても素晴らしい組織になるわ。毎日ダラダラゴロゴロ――」
黄泉川「――ハイストーップ!桔梗、引き込もうったってそうはいかないじゃん!」
芳川「……チッ、もう少しだったのに…」
垣根「?……何かよくわかんねぇけどご馳走さんっす。風呂借りていいっすか?」
一方通行「――あァっ!!俺の肉全部残ってねェェ!!あンの野郎ォォ!!」
黄泉川「風呂はあっちじゃんよ。着替えは適当に持っていくから」
垣根「どぉもすんませんね」
一方通行「無視すンなァァ!!」
打ち止め「ミサカもアナタとお風呂入りたーい!ってミサカはミサカは慌ててカキネお兄ちゃんの後を追ってみたり」
垣根「ハハッ、一緒に入るか?お嬢さん」
一方通行「!!?……フ、フ、フザっけンなァァァあ!!!」
――三下ァ……悪ィ。もォ我慢できねェわ……俺ァ叫ぶぜェ。
一方通行「あァもォォ!!不幸だァァァァァァァァあああ!!!!!」
413 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/29(土) 15:37:21.77 ID:lw.1D1s0 [1/11]
――風呂上がり・脱衣所(一方通行ドアの前で盗聴中)
垣根「――ふぅー、良い湯だった……お嬢さん。体拭いてやるからバンザイしな」
打ち止め「ばんざーい♪ってミサカはミサカは両手を上に上げてみる」
一方通行(……ンだとォ!?あのクソガキ……『自分で拭けるからコッチ見ないで!』っつって俺に拭かせた事ねェのに…)
フキフキ
打ち止め「――ひゃっ!くすぐったいよぉ。ってミサカはミサカは身悶えてみたり…ひゃん!」
垣根「がーまーん♪そう言やお嬢さん、名前は?」
打ち止め「打ち止めだよ♪ってミサカはミサカは自己紹介してみたり」
垣根「……それ実験ん時の名称だろ?そのままで良いの?名前つけてもらったりとか……ハイ、次頭」――ワシャワシャ
打ち止め「ぶわ!……うーん、ミサカはこのままで良いかな?会って最初の時よりは呼んでくれるようになったけど、
未だに普段は『ガキ』とか『クソガキ』って呼ばれるし…ってミサカはミサカは頭を拭かれながら……ってお兄ちゃん
実験の事知ってるの!?」
一方通行(………)
垣根「『絶対能力(レベル6)』への進化実験だろ?いちおう俺第二位だし……アイツがやんなきゃ俺がやってたかもしれねぇな…」
打ち止め「……そうだったの…ってミサカはミサカは驚きを隠せなかったり…お兄ちゃんもそういう話来たら…実験してた?」
垣根「……どうだろうな……もしもそうなってたら…以前の俺ならやってたかもな」
打ち止め「じゃああの人と同じだね!あの人も今ならそんな話絶対受けないもん!ってミサカはミサカは確信してみる」
垣根「……一方通行のヤツ……超幸せものじゃねぇか…」
打ち止め「?……あ、お兄ちゃん…お尻くすぐったいからもう拭くのいいよ?ってミサカはミサカはモジモジしてみたり…」
一方通行(――!!!?)
垣根「……何遠慮してんの?じゃああとは足拭い――」
一方通行「――こンの変態野郎がァァァァァァァああ!!!!!」――バタン!!!
414 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/29(土) 16:23:26.97 ID:lw.1D1s0 [2/11]
垣根「――!!?……何してんのお前?…覗き?」
打ち止め「――わ、わぁっ!!急に入って来ないでよぉっ!!てミサカはミサカは慌ててタオルを体に巻きつける!」
一方通行「だァァかァァらァ!!なンでこのメルヘンの前じゃ隠さねェンだよォォォ!!!」
打ち止め「?……だってこの人まともなお兄さんっぽいし……」
一方通行「ンなァ!!!?…………いや、今はショック受けてる場合じゃねェ……覚悟しなァ、猥褻野郎。幼女暴行の現行犯だァ。
警備員が許してもこの俺が許さねェ…」
垣根「?……いや…意味わかんないんだけど…」
打ち止め「…ミサカは暴行されてないよ?ってミサカはミサカは否定してみたり」
一方通行「いィやァ!!盗み聞……いや、たまたま通りかかったらクソガキの悲鳴が聞こえたンだよ!
こンなガキに欲情するたァ落ちたなァ?第二位よォ?情状酌量の余地はねェな。大人しく捕まれ」
垣根「……さっきから訳わかんねぇ事抜かしやがって……もうニ、三日入院するか?妄想癖」
一方通行「ハッ。この期に及んで抵抗するってかァ!イイ度胸だなァ…八台目の炊飯器にしてやろォか?」
垣根「そしたら真っ先にテメェを炊いてやるよ。テメェなんざ2合で充分だ」――ニヤリ
一方通行「上手い事言ったつもりでニヤついてンじゃねェぞ?貧困脳が。あれかァ?新しい脳味噌はプラスチック製ですかァ?」
垣根「テメェのよりは新品って自覚はありますぅ。中古脳味噌にとやかく言われる筋合いはありません」
一方通行「(プチッ)……このォ……人を中古車みてェに……」――プルプル
垣根「あっれぇ?傷ついちゃったぁ?ごめんねぇ。っつーか、早く打ち止めちゃんに服着せてやんねぇと風邪引かせちまうだろ?
着替えさせるからさっさと出てけよ。ったくマジで気の利かねぇ第一位だな」
一方通行「……………」―――バタン!
打ち止め「……あれ?すんなり出ていったね。ってミサカはミサカは不思議そうにしてみたり……いざとなったら演算補助停止させるつもり
だったから良いけど………」
スタスタスタ バタン!
打ち止め「…あれ?あの人外に出ていったのかな?ってミサカはミサカはお兄ちゃんに訊いてみる」
垣根「……ほっとけ。それより服着ないと風邪引くよ。ハイ、パジャマ」
打ち止め「ありがとー♪ってミサカはミサカはお着替え♪」
416 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/29(土) 16:29:40.10 ID:lw.1D1s0 [3/11]
――近所の公園
――スタスタスタ
一方通行「…………オ…――」
――ブアアアアアアアアッ
一方通行「――オォォォおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!!!!」
――その夜、世界の果てまで届きそうな咆哮と、悪魔のようなどす黒い翼が街中に響き渡った。
417 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/29(土) 16:34:53.33 ID:lw.1D1s0 [4/11]
テイク2
――近所の公園
――スタスタスタ
一方通行「…………オ…――」
――ブアアアアアアアアッ
一方通行「――オォォォおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!!!!」
――その夜、世界の果てまで届きそうな咆哮を聞いた者と、悪魔のようなどす黒い翼を目撃した者が後を絶たなかった。
419 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/29(土) 17:52:42.45 ID:lw.1D1s0 [5/11]
――上条宅
――ジャーー バシャバシャ
禁書「――とうま、これで良いかな?」
上条「……うーん、まだ泡がついてるな。もうちょい水でゆすいでくれ」
禁書「うぅ、細かいんだよ…」
上条「家事ってのは難しいだろ?俺の苦労もちっとはわかったか?」
禁書「……わかりたくなかったかも」
上条「…まぁ、最初よりは上達したぞ。皿も割らなくなったしな。ほれ、ご褒美」
禁書「わぁ♪チョコー!」
上条による『禁書目録に餌付けで仕事をさせよう』計画は順調に進んでいた。
明日はポテチで部屋の掃除でもさせようか……などと考えていた上条の携帯にメールが届く。
――pipipi♪
上条は洗い物中の禁書目録に気付かれないようにメールを見る。……差出人は美琴からだった。
一方通行に明日遊園地へ遊びに行かないか誘われたのだが、美琴と御坂妹が一緒らしい。
美琴は上条が誘う事になったのでさっきメールを送ったのだが、その返事だろう。
上条「どれどれ………『OK』か……アイツも暇なんだな。コンビニで立ち読みしてるぐらいだしな…」
鈍感少年はいつも通りである。美琴が震える指でメールを打って送信した後、舞い上がり過ぎて黒子に
ドン引きされた事など知る由もなかった。
421 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/29(土) 18:03:39.79 ID:lw.1D1s0 [6/11]
上条「……さて――」
禁書「とうま!終わったんだよ!」
上条「――っっ!!!……お、おう。お疲れ、インデックス」
禁書「………とうま。今なに隠したのかな?」――ジトー
上条「ナニ言ってるんでせうか?ナニも隠してませんが」――アセアセ
禁書「……怪しいんだよ……その手に持ってるもの見せて欲しいかも!」
――ヤバイ。非常にヤバイ。
禁書目録は連れて行けない。故にこの話は隠し通す必要がある。
上条的には連れて行っても良いのだが、何故かそれをすると後が怖い気がする…。
禁書「……とうま?…早く見せて?」
上条「い、いやだから何も隠してねーって!ほ、ほら。じゃーん!チョコもう一個プレゼント♪」
禁書「……ふっふっふ……とうま、甘いんだよ。いつも食べ物で私を釣ろうったってそうはいかないんだよ!」――パッ
上条「ってチョコ取ってんじゃねえか!!」
禁書「当然もらうんだよ!そして……とうまの悪巧みも暴く!!」
上条「なんじゃそりゃ!?テメェ卑怯だぞ!!」
禁書「問答無用なんだよ」――グアッ
大口開けて禁書目録が迫ってくる。
上条「だぁああ!!―――」
――ピンポーン♪
上条・禁書「――!?」
422 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/29(土) 18:12:33.17 ID:lw.1D1s0 [7/11]
上条「――だ、誰だろうな?」
禁書「……タイミング悪すぎかも…」
ゆっくり開かれた大口を戻す禁書目録。
上条「……っつーか、つい最近もこんな事あったな。誰か知らないが、天の助け♪」
さっさと玄関へ向かう上条。
――トウマー アトデオボエテルンダヨー
上条「…聞こえない、聞こえないっと……どちら様ですかー?」
――ガチャ
一方通行「……よォ」
上条「」
423 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/29(土) 18:33:58.05 ID:lw.1D1s0 [8/11]
ドアの前に立っていたのは……一方通行だった。
上条「……えーっと…とりあえず……どうした?」
一方通行「………今日、泊めてくンねェ?」
気まずそうに下を向きながら喋る一方通行。
上条「……まぁ…なんだ……とりあえず、上がれよ」
一方通行「……おォ…邪魔する」
――上条部屋
禁書「あ、あくせられーた!こんばんは!…こんな時間にどうしたのかな?」
一方通行「……話したくもねェ……」
上条「……なんか……お前、大丈夫か?…すげぇ疲れた顔してるぞ…?コーヒー飲む?」
一方通行「……飲む……砂糖もミルクも無しで頼む…」
上条「ハイハイ…っと」
禁書「……何があったのかな?…私はシスターなんだよ。悩みがあるなら言った方が楽になるんだよ?」
一方通行「――!………聞いて…くれンのか…?」
禁書「もちろんなんだよ!」
上条「当たり前だろ?ダチじゃねぇか!困った時はお互い様だ。……ハイ、コーヒー」
一方通行「……うゥ…ありがとよォ……オマエらァ…」
上条「!!お、お前…泣いてんのか!?」
一方通行「な、泣いてねェェ!!た、ただよォ――」
――人の温かさがちィと目に沁みただけだァ。
426 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/29(土) 19:28:33.61 ID:lw.1D1s0 [9/11]
――黄泉川家
打ちどめと垣根は脱衣所を出てリビングへ
黄泉川「――あれ、あのバカは?」
垣根「あれ?やっぱいないっすか?」
打ち止め「……どこ行ったんだろー?さっき出てっちゃったみたいだし。ってミサカはミサカは心配してみる…」
芳川「コーヒーでも買いに行ったんじゃない?」
垣根「ならすぐ戻ってくんだろ?」
打ち止め「……あの人のつえ……そこにあるけど……って、ミサカはミサカは気付いたり…」
垣根「はぁ?…アイツってつえがねぇと歩けないんじゃ……」
黄泉川「……家出?にしてもつえ持ってかないと意味ないじゃん」
打ち止め「お兄ちゃんがヒドイ事言ったから出てっちゃったんだ!ってミサカはミサカは指摘してみる」
垣根「はぁあ?あんなやりとりぐらいで……まさかマジで傷ついたのか…?つえも忘れるくらいに?……嘘だろ?」
打ち止め「あの人、きっと能力使用モードで出ていったんだ……すぐバッテリー切れちゃうよ…」――ウルウル
垣根「泣くな打ち止めちゃん!お兄ちゃんが探してきてやるから。……黄泉川さん、すいません。ちょっと
あのバカ探してきます」
黄泉川「……わかった。気をつけるじゃんよ」
垣根「はい、そんじゃ!」
打ち止め「ミサカも行くー!ってミサカはミサカは――」
垣根「ダメだ。こんな時間にお嬢さんを外出させる訳には行かねえよ。心配すんな。絶対連れて帰るから」
打ち止め「……お兄ちゃん。絶対だよ?ってミサカはミサカは約束を求めてみる…」
427 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/29(土) 19:39:26.68 ID:lw.1D1s0 [10/11]
垣根「あぁ、約束だ!俺の未元物質に不可能はねぇ!」
――バタン!
新たな名言(?)を残し、垣根帝督は一方通行のつえを持って夜の外へ飛び出していった。
垣根「……ったく、世話焼かせやがって…あのバカ――」
垣根はコンビニや公園など、家出少年が行きそうな場所をしらみつぶしに探した。
垣根「――……チッ、ここにもいねぇか……しかし俺、そんなひでぇ事言ったかな?……どっちかっつったら
俺の方が言われた気がするんだが……けど自覚はあるのについつい言いすぎちまうからなぁ……俺って…」
……その辺じゃ、一方通行も負けていないと思うが?という声が聞こえてきそうな独り言を吐きつつ、
垣根は夜の街を走りまわった。
448 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/30(日) 19:36:08.82 ID:gIn81Ug0 [1/11]
――垣根が必死に一方通行を探しているころ……上条部屋――
一方通行からこれまでの経緯を聞いた上条と禁書目録。
上条「――……あー…つまり、第二位が家に転がり込んできて、自分の居場所がないと…」
禁書「違うんだよとうま!ちゃんと話聞いてたのかな?あくせられーたはかきねって人に悪口言われて傷ついちゃったんだよ!」
一方通行「オマエら二人ともキレイに大ハズレだァァあ!!!居場所もあるし、あンなロリメルヘンに言われた事になンざ傷ひとつつきませン!」
上条・禁書「……あれ?違うの?」
一方通行「……帰る」
上条「待て待て!冗談!冗談だから拗ねんなって!」
一方通行「………」
上条「…要するに、打ち止めがその…自分より垣根ってヤツに懐いてるのが気に入らなかったんだろ?」
禁書「……そうなの?」
上条「…マジでわかんなかったのか?……インデックス…」
一方通行「………」
上条「……で、どうすんだ?一方通行。別にウチ泊まるのは構わねぇけど、きっと皆心配してるぞ?」
一方通行「……帰りたく…ねェ…」
451 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/30(日) 20:21:42.76 ID:gIn81Ug0 [2/11]
上条「……何で?」
一方通行「…さっき言ったこと撤回するけどよォ、やっぱオマエが最初言ったことも間違いじゃねェわ……あそこに今の俺の居場所はねェ…」
上条「………」
一方通行「……確かに気に入らねェよ。いきなりポッと出てきやがった馬の骨みてェな野郎に、打ち止めはすっかり心を許しちまってる……
おかしいだろォ?今までアイツと一緒にいたのは俺だぞォ?」
上条「………」
一方通行「確かに…『長点』に籍置いてて一時期離れて暮らしてはいたけどよォ……それでも俺の方がよっぽど長く一緒にいるンだぜ?
なのになンで初対面の野郎には良くて俺はダメなンだァ?……俺ァもォあのガキが分っかンねェよォ!」
――垣根の前では素っ裸なのに自分の前ではタオルを巻いていたり、体を拭かせなかったり……とは当然言えるはずがないので、
詳細は伏せて話した。
しかし、決定的なショックはその事だけではなかった……。
一方通行は常に打ち止めの体を心配していた。『過保護』なほどに……。そんな彼が最もショックだったのが――
『――っつーか、早く打ち止めちゃんに服着せてやんねぇと風邪引かせちまうだろ?』
と言う垣根の言葉だった。
いつも打ち止め優先で物事を考えていたはずが……うかつだった。
垣根の言ったことは何ひとつ間違っていない。だからショックだったのだ。
『打ち止めが湯冷めをする』という普段なら当たり前に分かっている事をすっかり忘れてしまっていた。
そして、自分と罵り合っていた垣根は自分より早く打ち止めに気を利かせた。
どんな事情があっても、どんなに頭にきていたとしても、それで打ち止めの存在を忘れていい理由にはならないはずだったのに……。
垣根の言葉に傷ついたと言うのも……ある意味正解だ。
結局、自分がムキになって勝手に出て行ったと言えばそれまでだが……これじゃ本当にただの子供だ。
わかってはいるのだが……一方通行は素直になれなかった。
そして…本当の理由を上条達には言えなかった。――
禁書「……あくせられーた!そんなことないんだよ!らすとおーだーは―――」
上条「――インデックス!……悪いが、ちょっと黙ってろ」
禁書「――?……とうま?」
禁書目録を制し、一方通行を真っ直ぐ見る上条。
その目は……真剣だった。
453 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/30(日) 20:46:47.57 ID:gIn81Ug0 [3/11]
一方通行「……?」
上条が放つ重苦しい雰囲気に一方通行も禁書目録も黙り込んでしまう。
上条は無表情とも怒りとも言える顔つきで一方通行を見ている……。
そして……ゆっくりと上条が口を開いた。
上条「……お前…本気でそう思ってんのか?」
一方通行「…な……何がだよ…?」
上条の雰囲気に思わず戸惑う一方通行…。
上条「お前は、『打ち止めは自分の事を何とも思ってない』なんて幻想を本気で抱いてんのか?って訊いてんだ」
一方通行「……は、そォかもなァ。考えてみりゃァ助けたりしたのも俺が勝手にやっただけだしなァ…別にアイツの側にいるのが
必ずしも俺だなンて決まりはねェし……案外アイツは…もォ俺なンかより垣根みたいな『パッと見良いオニイサン』に惹かれてン
だろォ……」
寂しそうに下を向いて諦めた笑いのまま投げやりに言う一方通行。
上条「………」――スクッ
上条はその言葉を聞いた途端、表情を変えずに無言で立ち上がり、一方通行に歩み寄った。そして―――
上条「――ふざけんのも……いい加減にしやがれ!!!」――バキィッッ!!
――強烈な右拳を一方通行の頬に打ちつけた……。
462 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/30(日) 21:19:34.42 ID:gIn81Ug0 [4/11]
一方通行「―――!!?」――ドカッ!
禁書「!!!と、とうま!?」
吹っ飛ばされて本棚に背中から激突する一方通行。殴られた左頬をさすり顔を上げると、自分の前に
仁王立ちの上条が立っていた。
上条「お前は何のために今まで打ち止めと一緒にいたんだ!?何のために打ち止めを守るために命張ったんだ!?
好かれるためか?自分だけに好意を向けて欲しいからか?…そうじゃねえだろ!!」
一方通行「――!!」
上条「勘違いしてんじゃねえぞ!?打ち止めは誰のモンでもねぇ!誰に人生動かされて良いハズもねぇ!
そんなこと、お前が一番良く分かってんだろ!?」
一方通行「………」
上条「ハッキリ言ってやる!お前は、『打ち止めに自分以上好きなヤツが出来ればもう自分は用済み』って言ってるようなモンだ!
お前は本当にそれで良いのか?投げやりになってんじゃねえよ!………違うだろ?お前はお前なりに、打ち止めにしてやれることがあるだろ?
ちょっと良い代打が来たからって、それをあっさり他人に譲ってんじゃねえよ!」
禁書(……始まったんだよ…)
上条「いいか?人には、それぞれの役割ってのがある。お前はそれを途中で放り出すようなヤツじゃないって俺は信じてんだ!
お前は打ち止めを守るって決めたんだろ?だったら最後までまっとうしろ!お前と打ち止めのちょっと長いプロローグは
やっと終わって本編に入った所じゃねえか!最初の壁なんかで絶望してんじゃねぇ!打ち止めの気が誰に向いていようと、
お前はお前の信念を貫けよ!」
一方通行「………三下ァ…」
467 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/30(日) 21:44:40.94 ID:gIn81Ug0 [5/11]
上条「……あとな、打ち止めはお前に気がなくなったりなんかしねえよ。…普段のお前ら見てりゃわかる。
子供だからな。多分見慣れない人間に興味深々なんだろうぜ。……きっと今頃お前の事心配してる…」
一方通行「……そォ……かな?」
上条「打ち止めを信じろ……あの子の事はお前が一番良く知ってんだろ?」
一方通行「………信じちゃいるけどよォ……今さら…」
上条「……いいぜ。お前が今さら打ち止めと向き合う事を気まずいって思うんなら……自分の本当の居場所に素直に戻れないって言うんなら――――」
一方通行「――は?オ、オイ?」
上条「――まずは、そのふざけた幻想をブチ壊す!!!」――バキィィ!!
一方通行「――グボォッッ!!!」(に…二度目…)
禁書「――!?…と、とうまっっ!!いくらなんでも二回殴るのはヒドイかも!!」
上条「――はっ!!し、しまった!頭にきてもう殴ったの忘れてた!だ、大丈夫か!?一方通行!」
――ピクピク…
禁書「……泡吹いてる…」
上条「す、すまん!つい癖で…しっかりしろ一方通行!傷は浅いぞ!」――ユサユサ
――俺、コイツと友達ンなったの…最後の最後だけ少し後悔したぜェ。……だって暴力振るうンだもン…
471 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/30(日) 22:15:20.62 ID:gIn81Ug0 [6/11]
――その頃、垣根
小萌「――はい?もう一度いいですかー?」
垣根「――だから白髪でウルトラマンみてぇな白い服着た細い男だよ!見なかったか?お嬢さん」
小萌「む、先生は大人ですぅー!……でもお嬢さんも…いいのですぅ…///」
垣根「?…ダメだこりゃ――」――タッタッタッタッ……
垣根「――あ、そこの半袖長袖のお嬢さん!ちょっといいっすか?」
??「……はい?私ですか?」
垣根「すいませんが、この辺りで―――」
……昨日とは違う意味で第一位を捜す第二位がそこにいた。
―――黄泉川家
黄泉川と芳川はリビングでのんびり寛いでいた。……が、打ち止めはそわそわしっ放しだった。
打ち止め「……あの人大丈夫かなー?ってミサカはミサカは心配が消えなかったり……」
黄泉川「第二位が行ったんだから大丈夫じゃんよ」
芳川「……捜索願い出す?家出ウサギを捜していますって……プッ……電柱とかに張ってある猫の捜索願いが頭に浮かんで…笑えるわ…クスッ」
黄泉川「……桔梗…プッ……卑怯じゃん……プフッ」
打ち止め「………」
二人の笑いを堪える声も打ち止めには聞こえていなかった。……それほど一方通行を心配していた。
473 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/30(日) 22:36:33.38 ID:gIn81Ug0 [8/11]
――prrrrrr♪
黄泉川「お、電話じゃん。垣根か?」
芳川「迷子が見つかりましたって?……プフッ」
黄泉川「だからやめろって……ハイハイ――」
―――電話から戻った黄泉川の顔は呆れていた。
芳川「どうしたの?愛穂」
黄泉川「……あのバカの居所が判明したじゃん」
打ち止め「――!!ほ、本当ってミサカはミサカは一目散に駆け寄って来たり!あの人はどこにいるの!?」
芳川「落ち着きなさい、打ち止め。愛穂、電話誰からだったの?」
黄泉川「……上条じゃん」
打ち止め「えぇ!なんで?ってミサカはミサカは訊いてみる」
芳川「上条くんの家にいるの?」
黄泉川「……そうみたいじゃん。『すぐ帰すから心配しないで下さい』ってさ」
打ち止め「……良かったぁ…ってミサカはミサカは胸を撫で下ろしてみたり…」
黄泉川「……垣根に電話して迎えに行かせるか…」
芳川「その方が良いわね」
475 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/30(日) 23:05:47.86 ID:gIn81Ug0 [9/11]
――上条部屋
一方通行「――……ン?」
上条「……お?気がついたか!」
禁書「おはよう!あくせられーた!」
一方通行「……おォ」――ムクリ
上条「お、おい。起き上がって平気か?」
一方通行「…問題ねェ。……三下ァ、俺が間違ってたわ」
上条「え?……あ、あぁ。わかったんならもう良いさ」
一方通行「俺はあのガキから見返りが欲しくて一緒にいるンじゃねェ。俺がアイツと一緒にいたいから……
俺がアイツを守り続けたいから一緒にいるンだ」
上条「うん、うん」
一方通行「……確かにくっだらねェ嫉妬しちまったのは認める。俺ァ自分勝手な幻想をいつの間にかつくりあげちまったンだなァ……
三下ァ、またオマエに助けられたなァ。オマエのおかげでクソみてェな幻想は木っ端微塵に消し飛ンじまったよォ……マジで目ェ覚めたわ」
上条「い、良いってことよ!なんたって『幻想殺し』なんだからな!またお前がいらねえ幻想抱いたら、またブチ壊してやるから心配すんな!」
一方通行「世話かけるなァ。ま、そン時は頼む。……ところでよォ――」
上条「ん、な、何だ?」
一方通行「――俺の幻想壊すのに、なンで二度も殴ったンですかねェ?」――ニヤリ
上条「ぎくっ!!……そ、それはその…」
禁書「……わ、私お風呂入って来よーっと♪」――ソソクサ
上条「!イ、インデックスぅぅ……」
一方通行「ねェ、なンでェ?なンでなのかなァ、当麻くゥン?」――カチッ
上条「な…なんで電極スイッチを『能力使用モード』にしてるんでせう?あとなんなんでせうか?その気色の悪い呼び方と笑顔は!?」
一方通行「………お祈りはァ……済ンだァ?」――ニヤニヤ
上条「」
477 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/30(日) 23:31:31.96 ID:gIn81Ug0 [10/11]
――同時刻・上条寮の前
垣根「――んーと……電話で聞いた住所だと……この寮だな」
黄泉川からの電話で上条の寮にたどり着いた垣根はそのまま寮内へ入り、エレベーターで上条の
部屋へ向かう。
垣根「…なんつーか、普通の寮だな……こんなとこに住んでるダチがアイツにいたとは意外だ……うわ、エレベーター狭っ!
ってか、家出してダチん家転がり込むって……マジでガキかよアイツ……仮にも『頂点』だろ…そこいらの反抗期かよ…
まぁ打ち止めちゃんが可哀そうだから、仕方なく謝ってやるけどよぉ……連れて帰るって約束もしちまったしな…」
エレベーター内で独り愚痴る。そうしている内に上条の部屋の階に着いた。
垣根「……しっかし、アイツにも転がり込ませてくれるダチがいたんだな……何よりそれが一番意外だわ。
あ、もしかして病院で言ってた『不幸体質』ってヤツか?―――ん?」
――クタバレサンシタガアアアアア!!! ギャアアアア!!!ヤメテ!ヘヤコワサナイデ!アアモウ、ヤッパリ、フコウダアアアーーー!!!!
垣根「………うん、ビンゴ♪」
自分の勘も捨てたものではない、と垣根は部屋の前で思った。
483 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/31(月) 10:53:48.78 ID:ljamAgE0 [1/18]
――常盤台・女子寮
――208号室には、明日のデート(ダブル)に浮かれてひとりファッションショーをする美琴と、面白くなさそうな顔で
それを見ている黒子がいた。
美琴「~~♪」
黒子「……お姉様…?さっきから鏡の前で何をしていますの?」
美琴「ん?見て分かんないの?……ねぇ黒子。この服の方が良いかな?…それともコッチかな?
ん~、でもコレだとさすがにストッキングないと寒いかなぁ……でも、アイツ生足の方が好きかもしんないし……」
黒子「………」
美琴「…あぁもう!どうしよ!……ねぇ黒子ぉ!どうしたら良いかな!?」
黒子「……お姉様、浮かれてる所大変申しにくいのですが…」
美琴「……何よ?」
黒子「……休日中も制服着用の校則……お忘れで?」
美琴「………」
こうして、美琴の自室ひとりファッションショーはしめやかに幕を下ろした。
この時彼女は、初めて常盤台中学に在籍しているのを少し後悔したらしい……。
484 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/31(月) 11:59:11.64 ID:ljamAgE0 [2/18]
――上条部屋
学園都市最強の能力の犠牲になりかけた上条の部屋は、右手に宿る自身の能力『幻想殺し』によって守られた。
つくづく右手のこの力は不幸中の幸いになっている……もっとも、その不幸を起こしているのがこの右手でもあるのだから皮肉なものだ…。
暴れ狂う一方通行を三度目の鉄拳で制し、倒れたところにマウントをとって右手で押さえつける。
この時点で『最強』は『最弱』まで一気に滑り落ちる。
上条は右手で一方通行を押さえながら、左腕で額の汗を拭った。
上条「――ふぅ……こうして上条さんの部屋の危機は去ったのだった…」
一方通行「なァにシタリ顔で実況こいてンですかァァ!?離せ!離せェェ!!このっ!このォォ!!」――グググ…
上条「やめてよね……能力無しで本気で喧嘩したら、一方通行が俺に敵うハズないだろ?」
一方通行「なンだそりゃァァあ!!……どっかで聞いたセリフだなァオイ!」
上条「ハハ、悪い悪い!いっぺん言ってみたくてさ♪…まぁ、どっかの艦長みたいに二度も殴ったのは確かに悪かったけど、
上条さんの狭い部屋で能力全開とかマジでシャレになりませんの事よ?」
一方通行「……別に部屋壊されるくらいどォってことねェだろォ?」
上条「……お前ね…」
一方通行「…っつか、オマエ三度殴ったよなァ?俺ァ一生忘れねェぞ……」
上条「まぁまぁ、明日何か奢ってやるから機嫌治せって」
一方通行「……コーヒー百本な」
上条「んなっ!!百本んん!?……い、幾らすんだオイ……」
一方通行「…馬鹿か?真に受けてンじゃねェよ……まァ本来なら生き埋めにしても済まさねェとこだがなァ……
『相談料』と『友達割引』で今日だけは勘弁してやらァ」――カチッ
上条「さっすが一方通行!よっ、第一位♪男前♪」
一方通行(……やっぱ殺しとくかコイツ?)
一方通行が『友達割引』の有効期限切れを上条に告げようか迷ったところで呼び鈴がなる。
――ピンポーン♪
485 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/31(月) 12:18:11.23 ID:ljamAgE0 [3/18]
一方通行「?……なァ?こンな時間に誰が来ンだよ?」
上条「……あぁー、黄泉川先生かもなぁ……お前が伸びてる間に電話したんだよ」――ポリポリ
一方通行「ンなっ!?三下ァァ!!オマエ余計なことをォォォ!!」
上条「ハイハーイ!今出ますよーっと♪」――タタタタ
一方通行「ってオイイイ!!」――ズルズル
来客のため玄関に移動する上条の後を這いずるようについて行く一方通行。
――玄関
上条「――ハーイ、どちら様でしょうか?」――ガチャ
垣根「――あー、夜分遅くにすんませんね。ウチの白ウサギ引き取りに来たんすけど…」
上条「……はぁ…白ウサギ…?」
垣根「――お、いたいた!……って、何這いつくばってんのお前?」
一方通行「――!!?」
玄関まで這って来た一方通行は来客を見上げ……固まった。
487 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/31(月) 12:50:20.15 ID:ljamAgE0 [4/18]
垣根「――えーっと……君、『不幸少年』だよね?俺は今日コイツと不本意ながらルームメイトになった垣根帝督だ。宜しく」
一方通行「………待てや」
上条「…不幸少年って……あぁ、俺は上条当麻。一方通行から大体聞いてるよ。第二位なんだろ?」
垣根「上条…か。ん、まぁそうだな。悪いけどそこで這いつくばってる芋虫みたいなヤツ、今日は帰らないといけねえんだわ。
連れて帰って良いか?」
一方通行「………だから待てや」
上条「あぁ、打ち止めが心配してるんだろ?わざわざ迎えに来てもらって悪いな。上がって茶でも飲むか?」
垣根「あー……せっかくなんだが、早く連れて帰ってやんねえと打ち止めちゃん心配してるし、今日はやめとくよ。また今度ゆっくりな」
一方通行「……オイ、オマエ達」
上条「あ、そうか…悪い。んじゃまぁ今度ゆっくりな」
垣根「おう。……オラ、帰んぞ。一方通行」
一方通行「――だァかァらァ待てっつってンだろォが無視すンなやゴラァァァァああああ!!!!」――(上条の肩に捕まり立ち上がる)
上条「――うおわ!!?」
――常盤台女子寮
美琴「――っくしゅん!!」
黒子「お姉様、風邪ですの?……黒子が温めて差し上げましょうか…?」――ハアハア
美琴「そんなんじゃ……って、えぇぇい!布団に潜り込んでくんなぁ!!私は今日は何がなんでも早く寝なくちゃいけないのよぉぉおお!!!」――ゲシゲシ
黒子「あんの類人猿がぁぁあああああ!!!」
美琴「な、何!?その黒い翼!!?く、黒子?アンタ……?」
――バタン!
寮監「……貴様ら…夜中に騒ぐとは良い度胸だな?」
美琴・黒子「」
488 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/31(月) 13:27:44.97 ID:ljamAgE0 [5/18]
垣根「――テ、テメェ夜中に大声出してんじゃねえよ!近所迷惑だろうが!常識ねえのかよ!?」
一方通行「なァァにさっきっからヒトを愉快にスルーしちゃってくれてンですかァァ?どっかのババアとおンなじ扱いは止めてくれますゥ?
…あとオマエにだけは『常識ねェ』とか心の底から言われたくねェわ!」
垣根「……人の肩捕まりながら凄んでもなぁ……足プルプルしてんじゃねえか」
一方通行「…オマエ迎えに来たの?喧嘩売りに来たの?どっち?」
上条「あ、あの!先に言っとくけど、ここで喧嘩するのだけはマジで止めてくれよ!!」
垣根「……まぁ後者って言いてぇところだが、ここは打ち止めちゃんと上条くんに免じて前者ってことにしといてやる」
一方通行「別に後者上等なンですけどォ?ビビッたのかなァ、垣根くゥン?」
垣根「……まぁいい。ほら、つえ持ってきてやったぞ。ったく、打ち止めちゃんに心配かけやがって……」
一方通行「……はァ?」
垣根「まぁ……その、なんだ……さっきは言い過ぎたよ。悪かったな一方通行。まさかお前があんくれぇで傷ついちまうとは思わなくてよ…」
一方通行「……オイ、オマエ何言ってンだ?」
垣根「あ?俺に口で負けてショックで家出したんだろ?端から見たらカワイイモンだが、俺からすりゃ迷惑以外の何物でもねぇっつの…。
打たれ弱いなら最初から言えよ。減らず口叩くからついムキになっちまったろ?」
一方通行「………ン…」
垣根「……ん?」
一方通行「ンなワケあるかァァァあああああああああっっ!!!!!」
垣根「だ、だから大声出すなって!!近所迷惑だっつってんだろぉ!!ホント常識がねえヤツだな!!――」
一方通行「だからオマエにだけは言われたくねェェえええ!!!!――」
上条(……明日、ポスト見るのが怖い………苦情殺到確定だな……不幸だ…)
禁書「……玄関しばらく立ち入り禁止かも……先に寝よーっと♪おいで、スフィンクス」
スフィンクス「にゃー♪」
489 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage][] 投稿日:2010/05/31(月) 14:22:37.95 ID:ljamAgE0 [6/18]
――こうして、一方通行ののびた君より短い『家出事件』は幕を閉じた。
一方通行は終始不機嫌だったが、家出した本当の理由を垣根に言えるはずもなく、
『この際そォいう事にしといてやる』との事で、垣根とともに上条宅をあとにした。
「三下ァ。明日遅れンなよ」と捨て台詞を残して……。
――黄泉川家へ帰宅中
垣根「――さて、黄泉川さんに連絡も済んだし、これで一安心だな。もぉ家出なんかすんなよ?一方通行」
一方通行「……家出じゃねェよ。ちィっと居心地悪かったから出ただけだっつの」
垣根「…それを一般的には『家出』っつうんじゃねえの?」
一方通行「……常識通用しねェヤツが『一般的』なンて言うのかよ?」
垣根「俺の『常識』と『一般常識』は別なんだよ。お前、この世は俺のものだとか思ってんの?」
一方通行「……くっだらねェ……。仮にそォだとしても、それがなンになるンだよ…」
垣根「だろ?…まぁ、そういうこと」
一方通行「っつーかよォ……なンでオマエが迎えに来てンだよ?」
垣根「……打ち止めちゃんとの…約束?」
一方通行「疑問に疑問で応じてンじゃねェよ。……チッ、良かったなァ。クソガキに懐かれてよォ……せェぜェ俺の代わりに
面倒見てやれや。あのガキ手間ァかかるから、さっさと愛想尽かしちまえ」
垣根「………お前さぁ…――」
一方通行「……ンだよ?」
垣根「――まさか妬いてんの?」
一方通行「――!!?」
垣根(……うわぁ…わかりやすっっ!!!)
491 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage][] 投稿日:2010/05/31(月) 14:53:17.05 ID:ljamAgE0 [7/18]
一方通行「――なななな、なァに言ってくれてンのかなァ、垣根くゥン?嫉妬?この俺が?誰に?」
垣根「……いや、打ち止めちゃんと俺に…」
一方通行「プフーー!!ビックリ!!ホントビックリだわ垣根くン!!オマエの頭ン中はメルヘン所の騒ぎじゃねェぞ!?
この一方通行が!あンなオシメも取れてねェガキに!ヤキモチィ!!?面白ェ!面白ェぞオマエ!!最っ高!!」
垣根(……風呂場に来た時点で薄々感じてはいたが……やっぱ言わねえ方が良かったな……何かキョドり始めた…一緒に歩くの恥ずい…)
一方通行「ハハハハ!!実に愉快だねェ!全くの大ハズレとは言え、たいした空想力だァ!全くの大ハズレとは言えなァ!!」
垣根(…二度言うなよ)
一方通行「まァ、その空想力に免じて、この際だから一緒の部屋でも許してやンよォ!よろしくねェ垣根くゥン?
ンでよォ、オマエどこで寝ンだ?ベッドはひとつしかねェから、交代で床に布団でどォだ?」
垣根「(強引に話題変えやがった……もぉ触れねえ方が良さそうだな……)あ…あぁ、俺はそれで良いぜ?
俺は今日布団で良いから、お前ベッド使えよ」
一方通行「オーケェ!なら明日オマエがベッドな?…あァー寒いなァ今日はァ!早く帰ろォぜェ!」――クルクル
垣根(……ついに回り出した……ダメだ…コイツ面白過ぎる……ぷくく……笑うな俺……耐えろぉぉ…)
一方通行「あ!そォ言や俺風呂入ってねェ!帰ったら入ンねェと……お湯まだ抜いてねェだろォな?」
垣根「……あぁ、お前帰るまでは……とっとくってよ……クク…」
一方通行「?……何オマエひとりで思い出し笑いしてンの?」
――そして、帰宅した一方通行と垣根。
打ち止め「――うわーん!!心配したんだからバカーっ!!ってミサカはミサカはアナタの胸をポカポカ叩いたり!」
一方通行「……おォ…悪かった…」
多分、一方通行はもう二度と打ち止めを残して家出なんかしないだろう……多分。
492 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage][] 投稿日:2010/05/31(月) 15:17:31.57 ID:ljamAgE0 [8/18]
一方通行は泣きつく打ち止めをなだめた後、そのまま疲れて寝てしまった打ち止めをベッドまで運んでやり、
リビングに戻ってきた。
垣根「――打ち止めちゃん、良く寝てるか?」
一方通行「……おォ」
黄泉川「あの子本当に心配してたじゃん。もう家出なんかするなよ?出るなら今度は一緒に連れてってやりな」
芳川「…ま、あなたの居場所はここしかないんだから、甘えたくなったらいつでも言いなさい?」
一方通行「ソイツは丁重に断る……が、心配かけたのは反省してンよォ。オマエらも…悪かったな」
垣根「……なにその素直っぷり…?」
黄泉川「……何かお前変わったじゃん…?」
芳川「……上条くん家で何かあったのかしら?……気味が悪いわ…」
一方通行「ヒ、ヒトがたまには素直に謝ってみよォとか思ってみたら今度はそれかァ!?…もォイイ!風呂入ってくる!」
――バタン!
芳川「……やっぱり、変わったわね。あの子への接し方、変えた方が良いかしら?」
黄泉川「今のままで良いじゃんよ。アイツは良い方向に変わってるじゃん。……上条のおかげか…」
垣根「あんな捻くれモンを変えちまうなんて、上条ってそんなすげぇヤツなのか……?ただの人当たり良いヤツにしか見えねえけどな……」
一方通行は心の奥で、『やっぱり俺の居場所はここ』と再認識した。
そして風呂から上がり、明日に備えて寝る。
明日も……長くなりそうだ。
499 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage][] 投稿日:2010/05/31(月) 17:51:12.44 ID:ljamAgE0 [10/18]
――オマケ・就寝前の一方通行と垣根帝督
一方通行「……はァ……何か今日は偉く疲れちまった」
垣根「――おいおい、俺らまだ若いんだぜ?……よっと、布団この辺りで良いか?」
一方通行「……いや、もっと離せよ。近いだろ…起きた瞬間踏まれてェの?」
垣根「あ、そっか…――こんなとこか?」
一方通行「おォ……っつーか好きにしたらァ?……さ、寝るか…」
垣根「…なに?お前もぉ寝んの?……うわぁーつまんねぇー!」
一方通行「……寝る以外何すンだよ?」
垣根「トーク!俺様とのトークを楽しもうぜ!…っつーかお前寝るの早ぇよ!」
一方通行「……俺がオマエと愉快なお喋りできる人間に見えンのか?」
垣根「……見えねぇ。っつーか正直そんなお前は気持ち悪い!」
一方通行「明日無事に目覚めたかったら今すぐその口閉じろ」
垣根「…んだよ、釣れねえな……あ、そうそう!そう言やぁさ!」
一方通行「――あァ、うぜェ!マジうぜェ!オマエ修学旅行とかで絶対寝かせないタイプだろォ!?」
垣根「……よくわかったな?まぁいいや。そんでさ――」
一方通行(……もォイイや、勝手に喋らしとこォ……)
垣根「――お前捜しに出てる時、お前を見かけてねえか色んな人に尋ねたんだけどさ。……いやー、なんつーか…
ここ科学の街なのに不思議多すぎだよな」
一方通行「…はァ?」
500 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage][] 投稿日:2010/05/31(月) 18:30:10.68 ID:ljamAgE0 [11/18]
垣根「――人の多い繁華街捜してたらさ、迷子としか思えない幼女がいてよぉ。話しかけたら『先生は大人』とか
意味の分からないこと言うんだよ。そしたら勝手に自分の世界入り出したから、慌てて俺は回避したね!」
一方通行「……ふーん」
垣根「――んで、そのあとしばらく走ってたら…何か俺好みの姉ちゃんが歩いててさ。ナンパ……いや、お前を見なかったか訊こうと
思って声かけたわけさ。けどその姉ちゃん服装が…なんつーかさ、パンクっつーの?」
一方通行「…そンな変な格好だったのかよ?」
垣根「いや、別に変って訳じゃ…ねえんだが…個性的っつーのか?……何か自分で切ったのか知んねえけど、ジャケット片方袖ねえの!
この時期だぜ?ダメージ系どころじゃねえのマジで!んでさ、よーく見たら…なんと足も片方ねえの!」
一方通行「……はァ!?」
垣根「あ、間違えた。そぉじゃなくて、穿いてるジーンズの片方がねえんだよ!…片足丸出しなの!このクソ寒い時期に片手片足オープンだぜ!?」
一方通行「………なンだそりゃァ」
垣根「な?信じらんねえだろ?んで、俺が『頭も体も真っ白いヤツ見ませんでした?』って聞いたらさ――」
一方通行「――ちょっと待て!オマエそれどォいう意味だァ!?何だよ『頭も体も真っ白』ってよォ!俺ァ北極熊じゃねェンだぞォ!?」
垣根「……いや、特徴言わなきゃ誰捜してんのか分かんねえだろ?」
一方通行「にしても言い方ってのがあンだろォ!?あれか?俺はあし○のジョーですかァ?燃え尽きてねェっての!」
垣根「……また古いネタを……まぁとにかく続き聞けよ。そしたらさ、彼女『あの子に何かあったのですか?』って怖ぇ顔して訊いて
きたんだよ。最初、お前の知り合いなのかと思ったぜ」
一方通行「……そンなファンキーな知り合いはいねェぞ?」
垣根「だろ?俺が『家出したんで捜してるんすよ』っつったらその姉ちゃん『…あの人は何をやって――』とかよく分かんねえ事
ブツブツ言い出してさ……『こんな事してる場合ではありません!では!』とか言ってさっさとどっか行っちまったんだよ」
一方通行「……くっだらねェ。単なる人違いじゃねェか」
垣根「……何か腰に刀までぶら下げてたしなぁ……ありゃあどっかの宗教にいそうな危ないタイプだな…見た目はどストライクだったのによぉ…」
一方通行(……刀って…)
501 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage][] 投稿日:2010/05/31(月) 19:05:13.32 ID:ljamAgE0 [12/18]
垣根「……んでさ、その後――」
一方通行「――ってまだ続くのかァ!?…ってかオマエはいったい何人に声かけたンだよ!?」
垣根「ん?……えーっと……軽く五十人は超えたな。ちなみに全員女♪すげーだろ?どっかのフラグメイカーも真っ青だぜ」
一方通行(……コイツ、絶対俺捜すの口実にしてナンパしてただけだよな……?)
垣根「……そんでその後繁華街出たら何か影も幸も薄そうな巫女服着た女が――」
一方通行「――オイ……まさか声かけた全員分話すつもりかァ?」
垣根「――は?当然だろ?まだこんなモンじゃねえぜ。まだまだネタは――って一方通行!なに布団深く被ってんだよ?夜はこれからだぜぇ?」
一方通行「……寝る。オヤスミ」
垣根「はぁあ!?おいおいおい!そりゃねぇんじゃねぇの一方通行よぉ!まだまだ今夜は寝かせないぜ!俺様とのトーク会はまだ終わりを告げてないぜ!?」
一方通行「………」
垣根「せっかく同室なんだしよぉ!もっと互いを知り合おうじゃねえか!」
一方通行「………わかったから、今日はもォ寝ろ…」
垣根「……いいぜ、そんならテメェの目が覚めるまで喋り続けてやる!『今夜は垣根でオールナイト』だぁ!」
一方通行(……うぜェ……心底うっぜェ……今この時ほど音を『反射』できねェのを悔やんだことはねェわ……っつーか、しばらく毎日こンな調子かよォ……)
垣根「~~~♪」ペラペラ
永遠と喋り続ける垣根。無視して寝ようとしたが、耳障り過ぎて眠れない。……やはりコイツとの同室は受けるべきではなかった。
これならあのクソガキと寝た方がよっぽどマシだ……。
そして、ついに堪忍袋の緒が切れた一方通行は布団を深く被ったままピシャリと声を放つ。
一方通行「寝ろ!!!!!」
502 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage][] 投稿日:2010/05/31(月) 19:34:52.11 ID:ljamAgE0 [13/18]
――上条宅・朝
上条「――……う~ん、腰痛ぇ…」
目覚めて第一声がこれなのには理由がある。
上条は紳士だ。そして禁書目録は手間のかかる居候とは言え女の子、一緒の部屋で寝るのは色々とまずい。
そんな理由で、上条の寝床は乾いた浴槽内である。ちなみに禁書目録は『一緒に寝て良い』と言っているのだが……それはアウトだ。
男はそんな簡単に信用してはいけない。上条でさえ、間違いが起きるのを危惧して離れて寝ているのだ。そして、間違いを起こしたら…
もう引き返せないだろう…。
禁書「――とうま!お腹空いたんだよ!」――ドンドン
上条「……ん…もう朝か……ふぁあ」
このように、空腹に耐えかねた意外と早起きな禁書目録が起こしに来るのがいつものパターンだ。
上条はダルそうに浴室から出た。
上条「……まだ7時か…」
今日の『遊園地でダブルデート』の集合時間は駅前に9時。
まだ時間の余裕が充分ある。
禁書「とうまー!お腹空いたんだよ!ご飯ご飯!」
上条「……へいへい、すぐ作るから待ってなさいっと…」
のそのそと上条はキッチンへ向かった。
503 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage][] 投稿日:2010/05/31(月) 19:48:41.93 ID:ljamAgE0 [14/18]
上条「……に、しても……神裂のやつ…昨日はどうしたのかな……?急にやって来てインデックスを見たら
安心したように帰りやがって……よくわかんねえな…」――ブツブツ
ブツブツぼやきながら朝食の準備をする上条。
と、そこへ禁書目録がキッチンへやって来た。
禁書「とうま!何か手伝うことないかな?」
上条「……ハイ?」
一瞬自分の耳を疑った……。今までこんな事があっただろうか?
上条「……インデックス?」
禁書「チョコ欲しいんだよ!何か手伝うからちょーだい♪」
上条「………」
……何だ、そういうことか…と上条は溜息を吐く。そう言えば、自分が餌付けで家事をさせようとしたんだった。
寝ぼけてすっかり忘れていた。
上条(ってか、『食い物じゃ釣られない』とか言ってなかったか?……しっかり釣られてるじゃねえか)
呆れたが、手伝ってくれるのに悪い気はしない。
上条「……んじゃあ、そこの味噌汁にワカメと豆腐入れといてくれ」
禁書「任せるんだよ!」
504 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage][] 投稿日:2010/05/31(月) 20:07:34.78 ID:ljamAgE0 [15/18]
上条は、朝食の手伝いをする禁書目録に暖かい目を向けた。
色々あったが……彼女も少しずつ変わってきてるのだろう。
今は食べ物に釣られてるだけかもしれないが、その内率先して家事をやってくれるようになるだろう。
もちろん禁書目録だけにやらせるつもりはない。共同が一番理想なのだ。
それに、食っちゃ寝の生活は禁書目録のためにもならない。今は少しずつで良いから自立して欲しい……。
そして……いずれは―――
禁書「――とうま!出来たんだよ!」
上条「――!…お、おう。偉いぞインデックス。ほれ、ご褒美」
禁書「わーい♪」
上条「食べるのは飯食ってからだぞ?」
禁書「わかってるんだよ!早く食べよ?」
上条「おう、んじゃ――」
上条・禁書「――いただきます!」
――平和な朝だが、この後禁書目録を騙さなければならない事に少し心を痛める上条だった。
禁書「――ふぅ、ごちそうさま!」
上条「……ごちそうさま」
禁書「洗い物してくるよ!けっこう上手になったから任せて欲しいかも!」
上条「あ…俺も手伝うよ」
禁書「ううん、今日は私がやる!とうまはゆっくりしてて」
上条「あ、あぁ。じゃあ頼むよ」
禁書「まっかせて!」
505 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします [sage][] 投稿日:2010/05/31(月) 20:27:47.31 ID:ljamAgE0 [16/18]
――皿洗いを終えた禁書目録が戻ってきたと同時に、上条は切り出した。
上条「……インデックス。今日このあと、打ち止めが家に来ないかってさ。おいしいもの食べに行こうって行ってたぞ?」
禁書「――!!ホント!?…とうまも行くんだよね?」
上条「い、いや……今日補習があるからさ…」
禁書「……昨日はないって言ってなかったかな?」
上条「こ、小萌先生から電話もらってさ。課題足りなかったらしくて…」
禁書「……ふーん、そうなんだ。とうま来れないのか…」
上条「いや、でも俺いない分食い放題だぜ?俺の分までたらふく食ってこいよ」
禁書「…うん!わかった!じゃあ行って来るんだよ!ご飯、ご飯♪――」
――バタン!と禁書目録は浮かれながら出て行った。
上条「………許せ…インデックス…」
多少心が痛むが、一方通行が家にやって良いと行ったんだ。何とかなるだろう……。
と、上条は思っていたが……後でこの何気ない嘘を吐いた事を深く後悔する事になるとは、この時の上条にまだ分かるはずもなかった…。
そして、上条は歯を磨き身支度を整える。
いつもより……少しオシャレに決めてみた。
一方通行も一緒とは言え女の子とのお出かけだ。テンションも上がる。
上条「………ん?…これって……まさかダブルデートってヤツか…?」
――今ごろ気づいたか、上条よ……。
512 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/01(火) 17:32:38.48 ID:Ozs9uTM0
――上条はようやく今日は『デート』と言う事に気づいた。しかもダブルで……。
上条「……なるほど、だからインデックスや打ち止めは連れて行けないのか……けど…」
『このデートは……誰得?』
と言う疑問が浮かぶ…。
上条「!!――そ、そうか!」
ついに気づいたか!上条よ。
上条「一方通行のヤツ、御坂に惚れてんだな!……そういうことか…考えてみたらそうだよな……御坂は打ち止めの元なんだもんな…」
………お前というやつは……。
上条「あぁいう性格だからきっと御坂と素直に接せてないんだろうな…それで今日のデートに俺と御坂妹を巻き込んだ訳か…」
ひとりで外れた道をさらに外れまくる少年がここにいた。
上条「あいつあーいうヤツだから、いきなり二人きりは無理って訳だな!……オーケー!この恋愛発掘師と言われる上条さんが一肌脱いでしんぜよう!」――スクッ
ひとりで勝手に決意した勘違い少年は勢いよく立ち上がり、部屋を出て行った。
苦情のお知らせ入りのポストは勿論スルーだ。
ここでスクリプトによってスレ落ち。
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