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一方通行「足引っ張ンなよ三下ァ」上条「おう!」

1 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/01(火) 18:20:32.61 ID:Ozs9uTM0 [1/11]
荒されたので、立て直しました。
とりあえず前の続きから投下します。

2 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/01(火) 18:20:51.43 ID:Ozs9uTM0 [2/11]
――黄泉川家・朝


勘違いしたまま外に出た上条が風呂場から起きて数分後、もうひとりの主役がゆっくりと目を覚ました。



一方通行「………もォ朝かよ」



ぼやきながらダルイ体を起こす。横を見ると、枕を抱きしめたまま爆睡している垣根の姿があった。



一方通行(寝相悪すぎだろコイツ…)



垣根の体は布団からはみだしていた。オマケに鼾もうるさい。その鼾のせいで、一方通行はすっかり
目が覚めてしまった。いつ寝たのかは覚えていないが、垣根が喋り疲れて寝てしまうまで寝れなかった一方通行は
若干寝不足の顔だった。元々能力制限された時から彼の眠りは浅くなっていたので、寝ても音には多少敏感になっている。
そして安眠を妨げた当人は無邪気な顔で爆睡こいたままだ。



一方通行(…迷惑な野郎だ)


踏みつけてやろうとも思ったが、起こすと面倒なのでそのまま音を立てずに垣根をまたいで部屋を出る。……渋々布団もかけ直して
やった。



一方通行(……そう言やここンとこ早起きだよなァ…)



などと考えながらモーニング缶コーヒーを飲む。
垣根が起きる前に部屋を出てしまおう。携帯の番号交換はしたが、かかってきたら無視すりゃいい。



一方通行(……三下の野郎、もォ起きてンのかな?)

7 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/01(火) 18:44:30.25 ID:Ozs9uTM0
――常盤台女子寮


――pipipi♪


美琴はアラームの音で目を覚ました。



美琴「……んん」――ノソノソ



起きると同時に今日の素敵なイベント(?)を思い出し、一気に覚醒する。



美琴「――はっ!?」



慌てて時計を見るが、まだ6時半。時間までには大分余裕がある。



美琴「………ホッ」



寝坊と言うあってはならない事態は免れ、安堵する。
昨晩、深夜に騒いで寮監にこってり絞られ、寝た時間が少し遅かったため不安だったが……一安心だ。
隣の黒子はまだ寝ている……。



黒子「zzz……殿中ですの……勘弁ですのぉ……zzz――」



美琴「………」



昨日、寮監に絞られた続きを夢で見ているのだろう…。
美琴は黒子を起こさないように、化粧室へ向かった。

9 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/01(火) 19:11:13.50 ID:Ozs9uTM0
――黄泉川家



時間が余った一方通行は眠気覚ましもかねて珍しく朝シャンしていた。
シャワーから上がり、ドライヤーで髪を乾かしていると、後ろから声がかかる。



垣根「よ!おはよ、っつかお前朝早っ!健康的とか意外過ぎだなオイ!」

一方通行「………」――ブオオオ



…朝からうるせェヤツだな、と思いつつ無言でドライヤーをかける一方通行に垣根は構わず話しかける。



垣根「なに?音でも反射してるつもりぃ?朝なんだから気持ちの良い挨拶から始めようぜ!」


そこまで言われ、ようやくドライヤーを止めて垣根に答える一方通行。


一方通行「……なンですかァ?その熱血教師みてェな台詞はァ。朝っぱらから暑苦しいンだよオマエ」

垣根「…お、このドライヤー俺も前使ってたわ。これちょっと熱いんだよなぁ」

一方通行「…人の話聞いてンのか?……はァ……でもここにはそォいうヤツの方が少ねェか…」

垣根「?……何勝手に悟ってんだ?っつーか、こんな早い時間にどぉしたんだよ?何か予定でもあんの?」

一方通行「……オマエには心底関係ねェから安心しろ。ってかオマエも早いじゃねェか?」

垣根「あぁ、俺寝慣れてない家だと早く目覚めちまうの」

一方通行「…ふーン、訊いといて悪いがどォでも良いわ。ンで、何?オマエもシャワー?」

垣根「いや、黄泉川さんが朝飯作ったから呼んでこいってさ。眉毛なんか整えてないで早く行こうぜ?俺もぉ腹ペコなんだよ」――グイグイ

一方通行「ちょ!!オマ!?やめろ引っ張ンな馬鹿!!変になンだろォが!!」



――二人は仲良く(?)リビングへ。

13 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/01(火) 19:41:46.33 ID:Ozs9uTM0
――リビングには打ち止めがいた。黄泉川は警備員の仕事ですでに出たらしい。芳川は…言うまでもないだろう。


――朝食タイム



打ち止め「二人ともおはよー!ってミサカはミサカは朝から元気良く挨拶してみたり!」

垣根「おはよー、打ち止めちゃん」

一方通行「おォ……ったく、朝からオマエも元気だよなァ」

打ち止め「そういうアナタは最近早起きなくせにいつも不機嫌だよね?ってミサカはミサカは指摘してみたり」

一方通行「……別に不機嫌じゃねェよ。起きてすぐはだるいモンだろォが」

垣根「お前低血圧っぽいもんな。見た感じ」

一方通行「もっかい眠る?気持ち良く寝かせてやろォか?」

垣根「……寒気がするからやめて」

打ち止め「気をつけてねお兄ちゃん。この人寝起きはホントに短気だから。ってミサカはミサカは注意してみたり」

一方通行「……昨日から気になってたンだがよ、なンでコイツが『お兄ちゃん』なワケ?」

打ち止め「え?…お兄ちゃんはお兄ちゃんだから…?ってミサカはミサカはわからなつつも答えてみる」

一方通行「…オマエ俺の事はそォ呼ばねェのか?一応俺も……その…」

垣根「なに?お前もお兄ちゃんって呼ばれたいの?」

一方通行「そ、そォは言ってねェ!」

打ち止め「…呼んであげよっか?ってミサカはミサカは小悪魔みたいにニヤニヤしてみたり」

一方通行「イイ!結構だァ!呼んだらコロス!」

打ち止め「もーう、素直じゃないなぁ。ってミサカはミサカはアナタで遊んでみる」

一方通行「だァあ!ったくよォ!どこでそンなこと覚えたンだァ!?」

打ち止め「え?ミサカの知識は全妹達の記憶と感覚から作られているわけで……ってミサカはミサカはアナタが知ってるはずの事を
また訊いてきたからどうしちゃったのか?って心配してみたり…」

一方通行(……まずは妹からだァ……ジェットコースターであの世に送ってやる……)――ブツブツ

打ち止め「…何をブツブツ言ってるの?ってミサカはミサカは訊いてみる」

垣根(……コイツら見てると飽きねえわ…)――モグモグ

15 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/01(火) 20:12:35.91 ID:Ozs9uTM0
打ち止め「――お兄ちゃん♪」

一方通行「!!……クソガキィ……呼ンだらコロスっつったよなァ…」

垣根(顔が嬉しさを隠せてないぜ……一方通行よ…)――ムシャムシャ

打ち止め「お兄ちゃんっっ♪」――ニコッ

一方通行「///……オ、オイ垣根ェ!オマエさっきから何ジロジロとコッチ見ながら黙々飯食ってンだァ!?このガキ止めろよォ!」

垣根(お、照れ隠しでコッチに振ってきやがった……無視無視…)――パクパク

一方通行「……オイ、目合ったろォ今。何わざとらしくスルーしてンだァ?なァに『我、関せず』みたいな顔してンだァあ!?
だいたいこォなったのも元はと言えばオマエが――」

打ち止め「食事中は静かにした方が良いよ?ってミサカはミサカは注意したり」

垣根「ハイ、打ち止めちゃん正解♪行儀悪いぞ一方通行」

一方通行「………何ナンだろォ…この何とも言えねェ敗北感…」

垣根「お、これ食わねえならもらい♪」―ーパク

一方通行「――あァァ!!!よくも俺のミートボールをォォおおお!!!」








――そして、愉快な朝食タイムも終わり、出かける準備を始める一方通行。
肌着を着た後はいつものウルトラマンみたいな模様の服ではなく、先日買って貰ったインナーと、自ら購入したジャケットを着込む。





垣根と打ち止めがそんなまるでデートに行くみたいにめかし込んでいる一方通行に喰いつかないはずがなかった。

19 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/01(火) 20:40:44.41 ID:Ozs9uTM0
打ち止め「……ミサカは初めて好青年な一方通行を目の当たりにしてみたり…ってミサカはミサカは遠まわしに自分のセンスに
自画自賛してみる」

垣根「……馬子にも衣装ってか…?んで、そんな似合うけど似合わねえ格好してどこ行くのお前?」

一方通行「オマエらには関係ありませン。俺ちょっと出かけてくっから、不本意だがオマエにガキを任せる。
もし打ち止めに変な事しやがったら深海魚の仲間入りにしてやるから覚えとけ」

垣根「…いや、しねえけどさ……え、何?まさかデート?」

一方通行「……ちょっとなァ…」

打ち止め「ミサカも行きたーい!ってミサカはミサカは駄々をこねてみたり!」

一方通行「……シスターが遊びに来るからソイツとどっか遊び行け」

打ち止め「!――シスターちゃん来るの!?わーい!ってミサカはミサカは飛び跳ねたり!」

垣根「……シスターって、何?」

一方通行「すぐに分かる。暴食だから覚悟しとけェ」

垣根「……?」

一方通行「ンじゃ、行ってくる。もォ一度言うが、クソガキ共に何かあったらマジでただじゃおかねェからなァ――」




――バタン、と一方通行はつえを持って出て行った。




垣根「………アイツも女いたのな……意外……っつか意外だらけ……そして何か悔しい……っつーか俺、子守かよ?」



その声は、もう一方通行の耳には届かなかった。



打ち止め「行っちゃった……でもシスターちゃん来るからまぁ良っか♪ってミサカはミサカは気持ちを切り替えてみたり。
ねぇお兄ちゃん。シスターちゃん来たら三人でどっか行こ?ってミサカはミサカはお兄ちゃんの腕を意味もなくグイグイ引っ張る」


垣根「――お、おう……え?いやだからシスターって……?」

23 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/01(火) 21:25:48.00 ID:Ozs9uTM0
――常盤台女子寮




美琴「~~♪」



すでに化粧室に篭もって一時間……。とっくに起きた黒子は「…やっぱり」と溜息を吐いて化粧室を見つめる。



黒子「お姉様……いくら何でも気合入れすぎですの…」




そしてニ十分後、ようやく出てきた美琴。…普段の三倍は輝いていたのは言うまでもない。
飛びついてきた黒子を一蹴し、出かける準備をする。



美琴「…財布良し…携帯良し…ハンカチ良し…ティッシュ良し……リップクリーム良し…ゲコ太のお守り良し…」



バッグの中の物を丁寧に確認する美琴。…無理もない。これは千載一遇のチャンスなのだ。
上条の周りはどういう訳か日に日に女の子が寄ってくる。そろそろこの辺でアタックしておかないと、
本当に他の子に取られかねないのだ。



美琴(今日は……決める!)



何を決めるのかよく分からないが、気合を充分に入れた美琴は部屋を出る。……猿轡をつけられて縛られた監禁状態の黒子を部屋に残したまま…。


――バタン!


黒子「んんんーんん!!んんんんんーーーー!!!」(お姉様!!黒子は諦めませんわーーー!!!)

38 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/02(水) 17:15:57.03 ID:/RtCqCI0 [2/14]
―――待ち合わせ予定の駅前


上条「……うわぁ、すげえ人…」



こういう待ち合わせには遅刻するイメージなのに一足早く駅に着いた上条は人の多さに驚きつつ、集合予定の
噴水前のベンチに腰を降ろした。
大半が学生であるこの街は、学校が休みの日になるとどこも人込みが多い。
かなり大きなこの駅前は特にいつもより人が若干多めだった。



上条「二十分前か……ちょっと早かったかな……」



普段つけない腕時計で時間を確認する上条。
何気なく上を見上げると、いつもの飛行船が何かの宣伝をしながら空中遊覧している。
そんな風景をぼんやりと見ながら、今日の『超電磁通行くっつき作戦』のプランをひとり考える。



上条(一方通行のあの性格じゃあ、まず自分からアタックなんてしないだろうな……御坂はアイツの事どう思ってんだろ……?
他に好きなヤツ……とかいないよな?)



朝から的外れな上条は人の恋路に関わったことがない…。具体的な案も浮かぶはずがなかった。
そして、考えに考え抜いた結論は……。



上条「……あー、もうめんどくせえ!!とりあえず、今日は思いっきり楽しもう!そんで上条さんと御坂妹で途中さりげなく抜ければ良し!
『一方電磁ツーショット大作戦』は以上!解散!」



「――さっきからひとりで何言ってんの?アンタ」



上条「!!」――ビクッ

39 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/02(水) 17:45:14.73 ID:/RtCqCI0 [3/14]
――びっくりして振り返ると、そこには常盤台指定のコートに身を包んだ美琴が立っていた。心なしか、上条に不審な目を
向けているような……。



上条「お、おう御坂!おはよう!」

美琴「……おはよ」



美琴の目は「怪しい」と語っていた。誤魔化すように笑う上条は内心焦る。



上条(やべぇ!聞かれた!?上条さんのプランは実行前に崩壊という不幸なオチですかーー!?)

美琴「……まだ皆来てないのに『解散!』とか叫ぶから何かと思ったけど。まさか自分から誘っといてバックレる気じゃないでしょうね…」

上条「ま、待て!ストップ!そんな、バックレだなんてする訳ないですよ!ただの独り言だから気にするなって!」

美琴「……そう、な、なら良いわ……そ…それより……――///」


「――今日の私どう?」と言おうとしてどもってしまう。


上条(あ…あれ?何かあっさりだな……電撃のひとつぐらい来ると思ったが…)



さっきの独り言は『解散!』以外、美琴には意味が分からなかったらしい。とりあえずホッとする上条だが、
美琴が何かモジモジしてるのが気になった。



上条「……御坂、お前まさかトイレ我慢してるのか?だったら無理しないで行って来いよ」

美琴「!!――///……ア、ア、アンタってヤツはぁぁあああ!!!」――ビリビリ


――シネエ コノバカ ギャー オマ チョット コンナヒトイッパイノトコロデアブネーッテ

ウルサイ アンタガワルインダアアア ウワー アサカラフコウダーー



一方通行「……何やってンだ?アイツら」

40 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/02(水) 18:29:38.09 ID:/RtCqCI0 [4/14]
――こうして、あわや警備員出動になりかけた「痴話喧嘩」は上条の数分にもわたるお説教で何とか収まった。
収まるまで他人のフリをしていた一方通行と、いつの間にかひょっこり現れた御坂妹も合流し、ようやく『ダブルデート』は始まりを告げた。
遊園地を希望した御坂妹について行くように、四人は電車に乗った。行き先は決まっているらしい。


――電車内



上条「――んで、遊園地ってどこの遊園地行くんだ?」

御坂妹「遊園地というよりは巨大テーマパークですね。とミサカは今日の行き先のパンフレットを見せます」――ピラッ

一方通行「あァ?『デズニーランド』だァ?」

美琴「え!うっそ、マジ!?いっぺん行ってみたかったのよねー♪」

上条「…俺は行った事ないな。クラスに行ったヤツがいたけど、スゴイらしいぞ?『退屈な現実に帰ってきちまったー!』とか言ってたしな」

御坂妹「ミサカもこの間テレビで見てから行きたい衝動を抑えられませんでした。とミサカはすでにはやる気持ちが抑えられません」

美琴「最近CMでよく見るわね。なんたって『夢の国』って言われてるくらいだし」

御坂妹「学園都市の最新技術で作られたアトラクションとイベントは是非一度体験したいものです。とミサカはパンフレットを眺めながら想像します」

上条「帰るのが鬱になるって有名だからなー。何か楽しみだぜ!」

一方通行「夢の国……メルヘンねェ……くっだらねェ。こンなの何が楽しいンだ?」

美琴「何よ!名物キャラ『ミルキーラビット』だっているのよ?……ゲコ太には劣るけど(ボソッ)」

一方通行「はァ?ミルキーラビットォ?何だそりゃァ?」

上条「イベントとかの主役だろ?お、ここに園内にもたまに出没するって書いてあるな」

御坂妹「そう。ミルキーラビットを園内で発見し、一緒に写真を撮るのが今日のミサカの最終ミッションです。とミサカは告げます」

一方通行「……ケッ……オイ、パンフレット見せろ。どンな素敵な姿か拝ンでやる」

御坂妹「どうぞ。ちなみにこれがミルキーラビット、通称『ミルキー』です。とミサカはパンフ内に載ってる可愛いウサギのマスコットキャラを指差します」

一方通行「……おォ、どれどれ……――!!!」

上条(…おや?一方通行の様子が……)

43 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/02(水) 18:55:23.62 ID:/RtCqCI0 [5/14]
一方通行「………」

御坂妹「…もしもーし?とミサカはパンフレットを眺めたまま固まっている一方通行に話しかけます」

美琴「……何かすっごい凝視してるわね…」

上条「…見た感じ、真っ白いウサギだからなぁ……何となくお前と他人に見えない気もする…」

一方通行「……/////」

美琴「……何か目の色変わってきた…」

御坂妹「…まさかミルキーの可愛さに魅せられてしまったのでしょうか…?とミサカは心配します」

上条「……俺の目が確かなら……御坂妹が正解な気がする…」

御坂妹「さっきまでのかったるそうな表情はどこへやら…とミサカはすっかり無邪気な少年に戻っている一方通行の顔を保存します」

一方通行「……捜す」

御坂妹「…ハイ?」

一方通行「……見つける」

美琴「……何か言い始めた…」

一方通行「………オイ、コイツは園内のどこに行けばいるンだァ?」

御坂妹「…残念ながら、ミルキーの出没エリアと時間の特定はできません…とミサカは答えます…」

一方通行「……つまり、いつどこに現れるか分からねェってことだな」

御坂妹「……はい、一日に必ずどこかにいるはずですが……」

上条「お前…まさか……」

一方通行「……オイ、妹ォ」

御坂妹「は、はい?何でしょう…?とミサカは少し震えつつ応じます」

美琴(……ヤな予感…)

一方通行「オマエはコイツを見つけたいンだよなァ?」

御坂妹「えぇ……できれば…」

一方通行「喜べ、俺も強力してやンよォ」

御坂妹・美琴・上条「…ハイ?」

一方通行「この俺も『ミルキー捜索作戦』に協力するっつったンだよォ!」

45 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/02(水) 19:25:43.21 ID:/RtCqCI0 [6/14]
御坂妹「な、なんですか?そのありきたりなダサい名前…とミサカは目を丸くします」

上条「……お、お前本気で捜すつもりか?」

一方通行「はァ?あったり前だろォ!こンな愉快な面ァ、是非一度直に見てやらなきゃなァ」

美琴(…どう考えてもミルキーに会いたいだけよね……コイツ動物…ってか可愛いもの好きだったんだ…)

一方通行「お?オイ、コイツは何だァ?」

御坂妹「『ビックリ・サンダー・マウンテン』ですか?汽車で山を走る絶叫アトラクションですね。とミサカは説明します」

一方通行「…ほォ……コレは?」

御坂妹「『リバー・マウンテン』ですね。ファンタジーな世界をボートで移動します。とミサカは実は一番これに乗りたいと言う本音を漏らします」

一方通行「……ほォ……へェ……すげェ……」――ペラペラ

上条「……パンフレット独占だな」

美琴「…目がイキイキしてる…」

御坂妹「…数分前とはまるで別人ですね。とミサカは着いた時の彼の反応が楽しみです。保存データの容量が足りないかもしれません…」

一方通行「……ほら、パンフレット。………まァ、少しは楽しめそォじゃねェか。仕方ねェ、せっかくだから今日は俺も楽しンで
オマエらのハシャぐ姿をこの目に収めてやンよ」

美琴(……うわ、今度はまるで保護者面!)

御坂妹(今さら……よくもまぁ言えたものです…とミサカは心で彼に拍手を送ります)

上条(どう考えても……一番ハシャぎそうなの、お前じゃねえか)




こうして、一方通行もノリ気になった所で電車は目的の駅に着いたのだった。



当然、先頭を歩くのは……一方通行だった。

46 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/02(水) 19:55:48.73 ID:/RtCqCI0 [7/14]
――駅から出てデズニーランドへ向かう途中


――ガヤガヤ ザワザワ…



上条「……しっかし、すげえ人だな。皆俺達と方向一緒だぞ」

一方通行「とりあえず、はぐれねェよォにしねェとなァ」

美琴「…中入れるのかしら?」

上条「――お、入り口が見えてきた……って何だあれ!?すっげえ人並んでんじゃねえか!」

美琴「……うわー……ま、当然よね。冬休みだし…」

一方通行「…オイオイ……入り口からあンな調子かよ。中入るだけで陽が暮れちまうぞォ」

御坂妹「――ふっふっふ…」

上条「?……どうした?御坂妹」

御坂妹「皆さんご安心を。ミサカに抜かりはありません。とミサカはポケットから四枚の最優先ゴールドチケットを取り出します」

美琴「あ!アンタそれ!!入り口もどんなアトラクションも最優先で入れる超レアチケットじゃない!…いったいどうやって…?」

上条「マジかよ!?お前すげえぞ!」

一方通行「?……俺のブラックカードみてェなモンか?なンにしろ、これで余計な待ち時間は省けるってワケだなァ。やるじゃねェかオマエ」

御坂妹「ミサカに不可能はありません!とミサカは起伏の乏しい胸を張ります。さぁ、行きましょう」

美琴「……アンタ…さりげなく悲しくなる発言入れたわね…」

一方通行「よっしゃァ!!とりあえず派手に楽しもうじゃねェかァ!!待ってやがれェ、ミルキー!!」――ダダダダ

上条「……入る前からスイッチ入ったな」

美琴「…つえついてるのに…早っ!」

御坂妹「……いざとなったら能力使用してでもミルキーを捜し出しそうで怖いです…とミサカは最悪のケースを想定します」

一方通行「どォしたァ!?早く行こォぜェ!」

上条(……念のため、いつでも右手出せるようにしとこ…)――グッ

47 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/02(水) 20:28:20.58 ID:/RtCqCI0 [8/14]
――その頃、黄泉川家



――ソファーに座り、打ち止めを膝の上に乗せて仲良く朝の子供用番組を観る学園都市第二位の垣根帝督。
端から見たらすっかり良いお兄さんだった。



打ち止め「――あ!このお兄さんアナタにちょっと似てるー!ってミサカはミサカは顔を見比べてみたり!」

垣根「おいおい、こんな爽やかな兄ちゃんと俺じゃあ似ても似つかねえよ。ま、俺のが良いお兄さんって事実は変わらねえだろうな」

打ち止め「うーん、そう言えばそうかも!ってミサカはミサカは同意してみる」

垣根「ははっ、ホント良い子だなぁ打ち止めちゃんは。……一方通行のやつ、ホント羨ましいぜ(ボソッ)」

打ち止め「ん、何か言ったー?ってミサカはミサカは訊いてみる」

垣根「いんや、何でも――」



――ピンポーン♪


垣根「――お、誰か来たな」

打ち止め「シスターちゃんかも!ってミサカはミサカは玄関へダーッシュ!」

垣根「…よっと」



立ち上がり、打ち止めと玄関へ――



――ガチャ



禁書「――こんにちは!らすとおーだー!遊びに来たんだよ!」

打ち止め「いらっしゃいシスターちゃん!ってミサカはミサカは出迎える」

禁書「お邪魔しまーす♪……そっちのお兄さんは誰かな?」

垣根「……白い…」

49 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/02(水) 20:51:24.98 ID:/RtCqCI0 [9/14]
垣根「――君が、シスターちゃんかい?」

打ち止め「そうだよー♪」

禁書「はじめまして!私の名前は禁書目録(インデックス)っていうんだよ」

垣根「…インデックス……?そうよべば良いのか?」

禁書「うん♪」――ニコッ

垣根「……まぁ、良いか。俺は垣根帝督。よろしくな、インデックスちゃん」

禁書「!――あなたがかきねなんだね!昨日あくせられーたから聞いたよ!」

垣根「え?昨日?……ねぇ、君どこに住んでんの?」

禁書「かみじょうとうまって人の家に住んでるんだよ」

垣根「……上条って…あの不幸な?」

禁書「そうだよ、とうまは不幸なんだよ」

垣根「………」

打ち止め「?…どうしたの?お兄ちゃん。ってミサカはミサカはお兄ちゃんに訊いてみたり」

垣根「あぁ、いや…良いんだけどさ。インデックスちゃんは上条くんと付き……やっぱ何でもない」

禁書「……?」

打ち止め「……変なお兄ちゃん。ってミサカはミサカはついていけなかったり」

垣根(一方通行だけならいざ知らず…上条も天使みたいな幼女と……ゆ、許さん…)


――ひとり何故か燃えている垣根の腕をグイグイと引っ張る禁書目録と打ち止め。


垣根「――ん、あぁ?」

打ち止め「お兄ちゃん!どっか遊び行こーよー。ってミサカはミサカは急かしてみる」

禁書「私もお腹空いたんだよー。おいしいもの食べ放題ってとうまが言ってたかも!」

垣根「……お、おう。んじゃ、行くか」

禁書・打ち止め「わーい♪」


――悪くない……と、垣根は密かに思った。

52 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/02(水) 21:22:32.73 ID:/RtCqCI0 [10/14]
――御坂妹の活躍により、殆ど並ばずに園内に入れた上条達。
園内の中心は西洋風なお城がそびえ立ち、人は多いものの、普段見慣れない人工的な建物や店は彼らのテンションを
上げるのに充分だった。
四人全員来るのは初めてなので、マップを見て移動する。まずはアトラクション豊富なゾーンを目指していた。
前を上条、美琴が並んで歩き、すぐ後ろを一方通行、御坂妹が並んで歩いている。一見、仲睦まじいダブルデートだ。――




一方通行「――……オイ、こりゃァもォ遊園地ってレベルじゃねェぞ?」

御坂妹「さっき『巨大テーマパーク』と修正しましたが?とミサカは電車内での会話を思い出します」

一方通行「…あァ、そォだった……しかし学園都市もよくこンなメルヘンな世界作れるよなァ……」

美琴「あっ、すごい!風船があんなに!」 

上条「あれで空飛べんじゃないかってくらい多いな…」

美琴「後でひとつ買っちゃおうっと♪」

上条「……お、あっちでSL走ってる!」

美琴「――え?あ!ほんとだー!」

一方通行「…オイ、あのSL宙に浮いてンぞ?」

御坂妹「あのSLの正式名称が『銀河鉄道』ですから。とミサカは先ほどパンフから得た知識を披露します」

上条「『絶叫ゾーン』まで行くならあれに乗った方が早そうだな。……乗るか?」

美琴「そうね、乗ってった方が早いんなら当然でしょ。……アンタも良いでしょ?」

一方通行「は、はン!仕っ方ねェなァ。オマエらがそンなに乗りてェンなら、乗ってやってもイイがなァ」――ウズウズ

上条(…うわー、すっごい乗りたそー)

美琴(バレてないつもりだろうけど、チラチラSLの方見てんのバレバレよ……一方通行)

御坂妹(ハイ、今の表情頂きました。とミサカは容赦なく保存します。14510号になら高く売れそうです…)

53 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/02(水) 22:00:30.58 ID:/RtCqCI0 [11/14]
上条達四人は、SL『銀河鉄道』で『絶叫ゾーン』へ移動することにした。
歩いての移動も当然アリだが、広い園内をSLで移動するのはセオリーだ。……もちろん初めて来た上条達はそんなセオリーなど知らない。
SL乗り場は意外とすぐ近くにあったので、上条達はそこからSLに乗り込んだ。
当然決められたコースだが、このSLは空を飛ぶ。窓から見える他のアトラクションや自然、神秘的な風景などは何度乗っても飽きないらしい。



――SL内、窓からの景色に言葉を失くす上条達がいた。



上条「――す、すごいな……」

美琴「……このコース…絶対計算されてるわよねぇ……おいしいとこばっか走ってる」

御坂妹「あ、『ジャングルゾーン』に入りました!……綺麗ですね。とミサカは景色を見ながら言葉を失っている一方通行に同意を求めます」

一方通行「……………」

御坂妹「……聞いちゃいねえやコイツ…とミサカは舌打ちします」

上条「自然を感じるなぁ……お、あそこにワニがいるぞ!」

美琴「うそ!本物!?」

一方通行「――どこだァ?……オイ、いねェじゃねェか三下ァ!」

御坂妹「あ、いつの間にか戻ってきた…」

上条「…あー、水に潜っちまった。けどあれは本物っぽかったぞ」

一方通行「……クソッ、次ァ絶対見つけてやる」

美琴(……また乗る気満々ね)

御坂妹「ジャングルを探索するアトラクションもあるようなので、そちらで見つけては?とミサカはお勧めします」

一方通行「!!――おォし決定!後で行くかァ!」

上条(こんなイキイキしてる一方通行見たことねぇ……)


――ポッポーーッ シュウウウウウウン


上条「――ん?ジャングルを抜けたのか……風景が変わった……お、おい!あれって空飛ぶジュータンじゃないか!?」

御坂妹「この『アラビアンゾーン』を抜ければ到着です。とミサカはガイド気分で説明します」

54 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/02(水) 22:32:12.01 ID:/RtCqCI0 [12/14]
ジャングルゾーン、アラビアンゾーンを抜けたSLは目的の『絶叫ゾーン』へ到着した。その名の通り、
絶叫系アトラクションの宝庫である。
感動が覚めぬまま上条達はSLを降り、最初の標的『ビックリ・サンダー・マウンテン』へ――


――普通に待てば二時間半。最優先チケットのおかげで十分ほどで乗れるらしい。最優先を持ってても待たされる辺り流石人気アトラクションである。



上条「――……しかし、あんなに人が並んでる横を通り抜けるのは……気が引けるな」

一方通行「何言ってンだ三下ァ!俺ァ逆に最高の気分だったねェ。なンでこの一方通行が一般人共と同じよォに並ばなきゃならねェっての」

美琴「…それはともかく、別に良いじゃないの。ズルしてる訳でもないんだし。つっても、妹のおかげだけどね」

御坂妹「よして下さいお姉様、照れます。とミサカは顔を背けます」

上条「ま、そうだな。ラッキーってことにしとくか!ありがとな、御坂妹」

御坂妹「い、いえ…たいしたことは…とミサカは頬を赤らめて俯きます」

一方通行「――お、汽車が見えてきたぞォ」

上条「さっきのSLとはずいぶん違うな…」

美琴「……なんかボロいわね…ほんとに大丈夫なのコレ?」

一方通行「…そォいう設定なンだろォ。キレイな汽車じゃ、雰囲気出ねェってことなンじゃねェか?」

上条「なるほどな」

係員「――お待たせしました。四名様ご一緒ですね?それではご案内します。6番乗り口でお待ち下さい」

上条「――お、ついに来たか…」

御坂妹「少し怖いですね……とミサカは不安を隠せなくなりました」

美琴「――いよいよね……なんかドキドキしてきた」

一方通行「……へェ、怖気づいたンですかァ?ったくだらしねェなァ……こンなン子供騙しだっつの…」――ガクガク…

美琴「……足、震えてるわよ?」

55 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/02(水) 23:01:33.97 ID:/RtCqCI0 [13/14]
――そして、いよいよ最初のアトラクションに乗り込む上条達。


席は御坂妹、美琴が前でその後ろに上条と一方通行が座った。何故そうなったかというと……
実は美琴が上条の隣に行くように一方通行はさりげなく仕向けたのだが、美琴が寸前でビビって無理矢理御坂妹の隣に座ったのだった……。
絶叫系は乗ったことがなく、もしも恐怖で上条に抱きつきでもしたら……という気持ちが美琴をビビらせてしまったという訳だ。
溜息を吐いた一方通行は仕方なく上条の隣に座った。そして一言―――



一方通行「――解せねェ……なンでオマエが隣なンだ?」

上条「……同感。こういう時は、男女隣が普通じゃないか?」



――違和感が消えない……。前の席から「私の意気地なし私の意気地なし私の意気地なし…」という声がブツブツと聞こえてきたが、
それに上条が気づくことはなかった。
乗ってしまったものは仕方ない。出発合図役の係員が不思議そうな目をコッチに向けたが、もうこのまま汽車は発車するしかないのであった…。
係員が腕を上げた途端、出発の合図がなる。―――


――piririririririri♪



一方通行「――お、お、発車すンぜェ。ビ、ビビンなよ三下ァ!」

上条「……どお考えても俺の台詞だろ?それ…」

美琴「――私の意気地なし私の意気地なし私の意気地なし私の意気地なし…」――ブツブツ…

御坂妹「お姉様、もう発車しますよ?とミサカは遠まわしにさっきからブツブツうっせーんだよ、と伝えます」




そして、汽車はゆっくり動き出した…。




―――ガタン、ゴトン……ガタン、ゴトン……―――ゴォォォォォオオオオオオオ―――

75 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/03(木) 13:30:41.53 ID:ELyw2kY0 [1/12]

―――ガッタン、ゴトン……ガタン、ゴトォン……キイィィィイイ……



ゆっくり動き出したボロ汽車こと『ビックリ・サンダー号』は山の岩山の頂上までゆっくり上っていく…。暗いトンネル内を上っているため、
景色はない。山の頂上がトンネルの出口で、あとは山の周りを縦横無尽に回りながら猛スピードで下りていくということだ。――



上条「――最初はゆっくりか……逆に怖ぇな…」

一方通行「――てっぺンまでゆっくりってのは……下りは覚悟しろってかァ?……じ、上等ォ…」

上条「……一方通行。先に言っとくけど、抱きついたりするのはナシな?途中写真撮られるらしいし……絵的にマズイ」

一方通行「はァあ!?なンで俺がオマエに抱きつくンですかァ?意味分かりませンねェ!
オマエこそ振り落とされねェよォに、しっかりシートベルトしとくンだなァ」

上条「……係員さんにやってもらったが……?」

一方通行「…自分の体質忘れてンのか?オマエの席のベルトだけ、壊れっかもしンねェぞォ?」

上条「や、やめて!そんなこと言わないで!リアル過ぎてシャレにならん!」

一方通行「ぎゃはは!さっきの仕返しだァ!せェぜェ頑張りなァ!」

上条「……今の所は大丈夫そうだが、油断しないでおくか……」

一方通行「それが懸命ってなァ。オイ、妹に超電磁砲。これから山ァ駆け下りるワケだが……心境はどォだ?」

御坂妹「――すごく高いです。最高速度は百七十キロ……ミサカに耐えられるでしょうか?」

上条「ひ、百七十キロぉぉ!?……音速旅客機みたいなオチは勘弁だぞ…」

美琴「……景色見る余裕、あるのかな……?気持ち悪くなった時用の袋があるのがリアルよね」

一方通行「……ハッ!面白ェじゃねェか!この俺に叫び声のひとつでも上げさせりゃァたいしたモン―――ン、あれ?
オイ、急に明るくなったぞ………って、うおォォ―――!!!」

上条「――そ、外に出た!!…って、うわぁぁあ―――!!!」

美琴「――うわ、まぶしぃっ!……って、何?急に加速し……あ、あ、きゃぁぁああああ―――!!!」

御坂妹「――お喋りはここまでですね……と、ミサ…カはぁぁぁぁあああああッッ―――!!!」


――逝ってらっしゃーい♪

76 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/03(木) 14:01:46.45 ID:ELyw2kY0 [2/12]
※御坂妹「――すごく高いです」の所を「――すごく怖いです」に訂正でお願いします。




―――外に出ると同時に、『ビックリ・サンダー号』は猛スピードで山を下り始めた。



――ヒュゥゥゥウウン ゴォォォォオオオオオ!!!



上条「―――うわぁぁぁあああああああ!!!!!こ、怖すぎぃぃいいいいいい!!!!!」

一方通行「―――あぎゃァァァあああああ!!!!!な、何だよなンだなンですかァァあああ!!!」

美琴「――きゃぁぁぁああああ!!!は、速い速い速いぃぃいい!!!!!」

御坂妹「――ここまでとは……予想以上ぉぉぉおおお!!!!と、と、ミサカはれ、冷静に分析を続け……きゃぁぁぁああああ!!!!」

一方通行「―――ぎゃァァァァあああああ!!!た、たァすけてェェェえええええ!!!!!」――ガシッ

上条「――う、うおぉ!!?あ、一方通行!!抱きつくなぁぁあ!!!忠告した意味がぁあ!!―――って、今光ったぞ!!?ま、まさか
フラッシュ!!?……ふ、不幸だぁぁぁあああああ!!!!」

御坂妹「――う、後ろがものすごく気になります!!けど振り返る余裕が…ありません!!お、お姉様!?」

美琴「――きゃははははははは♪――なによお!!慣れると楽しいじゃない!!――おぉっ!!!おほぉぉおお♪」

御坂妹「……逞しいですお姉様…けど、ミサカも慣れてきましたぁぁぁあああああ!!!――いやっほぉぉぉおおおお♪」

上条「――不幸だぁぁぁぁああああ!!!!い、いい加減離せ一方通行ぁぁぁあああ!!!!」

一方通行「――イヤだァァァァああああああ!!!!!落ちるゥゥゥゥうううう!!!!」

美琴「――あはははっ!!!すごいすごい♪」

御坂妹「――最高です!とミサカはすっかり慣れたので思いっきり楽しむ事にします!!」

一方通行「――……あはぎゃはっ…」

上条「――あ、一方通行!?」

一方通行「――あはははははっ!!!!ぎゃはははっ!!ひゃはははは!!!はひゃはっ!!!!クカキッ!!!コケッ!!クカカカッ――」

上条「――あ、一方通行が壊れたぁぁぁあああああ!!!」

77 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/03(木) 14:25:25.13 ID:ELyw2kY0 [3/12]
――絶叫が響くなか、ようやく『ビックリ・サンダー号』は失速し、出口へと止まった。



美琴「――あ、やっと終わったわね!…けど面白かったぁ♪あとでもっかい乗ろ?」

御坂妹「――是非ご一緒します!とミサカはドキドキが消えないまま同行を志願します」

上条「――人生初のジェットコースター(?)の思い出が……野郎に抱きつかれて終わるなんて……不幸だ…」

一方通行「…………」

上条「一方通行。もう着いたぞ?そろそろこの腕を離してくれると嬉しいんですが……お、おい!一方通行?」


――グラリ


上条「……き、気絶してる…」

係員「お帰りなさいませお客様。足元に気をつけてお降り下さい」

上条「………不幸だ」





――そして、一方通行を何とか起こし、『ビックリサンダー号』を後にした上条達。




美琴「あ、ここのモニターに私達の写真写ってるわよ?………ぷっ、何これ……」――クスクス…

御坂妹「……これは……なんと……」

上条「……やっぱり撮られたのはあの時か……早く消してもらいたい……ほら、一方通行。わざとらしく明後日の方向いてないで現実を見ろ」

一方通行「…なンだァ、この合成写真はァ?学園都市も味な真似しやがるなァ……おっし、次行くぞ次」

美琴「ちょろっと待ちなさい。この写真、千円で購入できるみたいよ…」――ニヤリ

御坂妹「……安い!安すぎます!とミサカは早くも千円札を手に受付へ向かいます」


上条・一方通行「――!!!!!」

78 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/03(木) 15:00:02.68 ID:ELyw2kY0 [4/12]
―――『ビックリ・サンダー・マウンテン』を出た上条達は『リバー・マウンテン』へ向かっていた。
御坂妹の持つ袋の中には『ビックリ・サンダー号』で両手を上げてハシャぐ美琴、御坂妹。上条の首にしっかり両腕を
回す一方通行と、引き剥がそうと必死な上条の写真が入っていた。

上条、一方通行は何とか購入を阻止しようと奮戦したが…無駄な足掻きに終わった。またひとつ、一方通行の弱みが御坂妹に握られたのだった。




一方通行「……三下ァ。帰るまでにあの袋、何としてでも回収すンぞ…」

上条「…御意」

美琴「――アンタら、なぁにブツブツ言ってんの?――あ、見えてきたわよ?『リバー・マウンテン』」

上条「――お、入り口だ。……うわァ、またすごい人だかりが……優先者ルートは……コッチか」

御坂妹「ここは『ビックリ・サンダー・マウンテン』に匹敵する人気アトラクションです。とミサカは説明します。とても素敵な
夢の国を堪能できるそうです」

一方通行「……なンでそンなアトラクションが、『絶叫ゾーン』にあンだよ?」

上条「……確かに…『ビックリサンダー』の二の舞はもうゴメンだぞ」

美琴「――じ、じゃあ今度は…わ、私が隣に座ってあげても良いけど……」

上条「お、おう。そうだな……じゃ、頼むわ」

美琴(――おしっ!!)――グッ

一方通行「……」

御坂妹「……先に言っておきますが、ドサクサに紛れて変な事をしたら…分かってますね?とミサカはあなたを睨みながら予防線をはります」

一方通行「だ、だからさっきは…イキナリでホンのちょォっとだけ驚いただけだァ!!そ、それに一度慣れりゃァ平気だっつーの!
ってか、だいたい次のはそンなでもねェンだろォ!?」

御坂妹(……夢の国を堪能した後、最後に落下するというオチは伏せておきましょう……っていうかさっきから落ちるボートがチラチラ見えてるのですが…あれが『リバー・マウンテン』だと気づいてはいないようですね。とミサカはほくそ笑みます)





―――こうして、上条達は人だかりを縫うように『リバー・マウンテン』入り口へ入って行った。

80 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/03(木) 15:26:08.88 ID:ELyw2kY0 [5/12]
――待ち時間中



上条「――…三時間の待ち時間がたった二十分って……つくづくすごいな…」

御坂妹「えへん!とミサカは未だ成長の兆しが見込めない胸を――」

美琴「ハイ、ストーップ!ちょろっと言い方変えてんじゃないっつーの!」

一方通行「…しかし、さっきの汽車ンとことはまた違った風景だなァ」

御坂妹「あそこのイメージは乾いた岩山ですから…」

美琴「……至るとこから水が湧いて出てるわね…」

上条「頼むから、こんな所でビリビリだけはしてくれるなよ?」

美琴「し、しないわよ!!」

一方通行「――お、あそこにフクロウ…?みてェな変な鳥が何か喋ってンぞ」

上条「……ほんとだ…本物……?…な訳ないな」

御坂妹「待ち時間中のほんのちょっとした演出ですね。でも、同じ事を何度も言ってるだけなので、すぐ飽きます。とミサカはまるで
来たことがあるかのような発言をします」

美琴「…あ、鳥小屋に戻った…」

上条「……また出てきて語りだしたな……ホントに同じこと言ってる…」

一方通行「……逆にイラつくンじゃねェのか?」

美琴「確かに……あ、何かボートが見えてきた!」

上条「スムーズに進めるって良いなぁ。……ん?…あのボート…どっかで見たような……」

一方通行「……オマエもか?俺もつい最近見た気がするンだが……思い出せねェわ」

美琴「?……何言ってんのよ?さっき入り口で落ちて――むぐっ!?」(御坂妹に口を押さえつけられる美琴)

御坂妹「ストップですお姉様。ここで答えを言っては面白くありません。とミサカは二人に聞こえないように小声でお姉様に告げます」

美琴「……?……ぶは!……何か良く分かんないけど分かったわ」

一方通行・上条「……?」

81 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/03(木) 16:03:13.90 ID:ELyw2kY0 [6/12]
――そして、上条達の番がきた。
予定通り上条の隣に美琴が座り、その後ろに一方通行達が座った。




一方通行「……なンつーの…水の上って、不思議な感覚しねェか?」

御坂妹「ミサカは船に乗ったことがありません…確かに変に揺れますね。とミサカは答えます」

上条「……夢の国堪能するだけなのに、シートベルトするのか?」

美琴(!……ははーん、そういうことね。コイツ最後に落下するの知らないんだ……『リバー・マウンテン』の醍醐味はアレなのに…)

上条「?…どうした?御坂」

美琴「う、ううん、べっつにぃ!…ほ、ほら!触ったりしたらダメだし、水に落ちるかもしれないからでしょ?」

上条「?……あぁ、なるほどね…」

一方通行「……水に濡れたりしねェだろォな…」

御坂妹「……新しい服、着てきたんですね…とミサカは今さらながらあなたの服装に触れてみます」

一方通行「おォ……まァな。…これ、オマエも選ンだンだろ?悪くねェ趣味してンじゃねェか」

御坂妹(……この服がこれから濡れてしまうのは…心苦しい。とミサカは内心胸を押さえます…)

係員「それでは、『夢の国』へ行ってらっしゃいませー♪」



――ガタン



上条「――お、きたきた!」

美琴「――何か……ドキドキするわね…」(二つの意味で)

御坂妹「いよいよ……ミサカの念願が叶います。とミサカはハシャぎたい気持ちを必死に堪えます」

一方通行「別に堪える事はねェだろ?オマエの目的のひとつが叶うってンなら嬉しい事じゃねェか。
俺も一緒に楽しンでやっから、オマエも遠慮しねェで目一杯ハシャぎな」――ウズウズ

御坂妹(……格好良く聞こえますが、あなたが一番ハシャぎたいのでは?とミサカは彼の表情から推測します…)

82 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/03(木) 18:13:38.87 ID:ELyw2kY0 [7/12]
―――上条達は魅せられていた。
目の前に広がる、『非日常の光景』に………。
四人の乗るボートは、見る者を癒すメルヘンな世界をゆったりと移動していた。



一方通行「――……何だ、この垣根も真っ青な世界は……?ここはどこだ?どこなンですかァ?」

御坂妹「――気持ちはわかります…とミサカもこの素敵な光景から現実に戻されたくない事を切に願います」

上条「――癒されるなぁ……あ、主人公が縛られてる!捕まったのか?」

美琴「――……あ、可哀想……次のエリアで助かるかしら?」

一方通行「……お!ワニ!……って、明らかに本物じゃねェよなァ?」

御坂妹「こんな所に本物がいる訳ねーだろ。とミサカは呆れます」

一方通行「わ、わかってンだよ!ンな事ァ!」

御坂妹(…ウソつけよ)

美琴「何か私達に語りかけてるみたいね。可愛い♪」

上条「あぁ。――うわっ!あの馬みたいなヤツ、俺にだけ鼻息当てやがった!」

一方通行「ひゃははは!流石三下だなオイ!」

美琴「私の場合、ラッキーね。あぁもう、ほら、ハンカチ」

上条「……うぅ…ありがとな、御坂」

美琴「///……う、ううん!別に」――プイ

一方通行(……後ろから見てるとコイツら、イラつく程に微笑ましいよなァ)

御坂妹(……次はあの方の隣に座るのはミサカの番です。とミサカは勝手に決めます)




――そして、ストーリーが終わり、ボートは夢の国を後にした。……あとは、勿論―――




一方通行「――ふゥ、メルヘンも悪くなかったな………ン?オイ、何か暗くなったぞ…?」

上条「――あ、あれ?……もう終わりなんじゃ?……って、このボート…上ってねえか?」

84 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/03(木) 18:42:00.33 ID:ELyw2kY0 [8/12]
美琴(お?いよいよね……緊張する…)――ドキドキ

御坂妹(このもやしが抱きついてきても良いように…とミサカはエルボーの練習をします)――シュッシュッ

一方通行「……オマエ何踊ってンだ?」

上条「お、出口か?外が明るく…って…………な、な、何故ぇぇぇぇええええええ―――!!!!!」

一方通行「……き、聞いてねェぞォォおおお!!!うわァァァァああああああ―――!!!!!」

美琴「――いやっほぉぉぉおおおう♪」

御坂妹「良く考えたら一瞬なので抱きつく暇も……ぉぉおおおおおおおおおお――!!!」





―――ザッパァァァァアアアアアアアン!!!………と、勢い良くボートは着水した。




上条「――つ、冷たっ!!な、何が起こったんだ!?」

美琴「あはははは♪アンタまだ気づかないの?これがここの醍醐味なのよ!ま、私も初めて体験したけどね」

上条「……し、知らなかった……まさか落ちるなんてオチがあるとは…」

美琴「……上手い事言ってもびしょ濡れよ?」

上条「テメェ…いつの間にタオルを…ってか、知ってたんなら教えてくれたって良いだろ!」

美琴「…いやー、何となく言わない方が面白いかなって……ハハハ」

上条「………ま、良いか」

御坂妹「――……流石に一瞬でしたね?とミサカは隣で呆然としている一方通行に話しかけます。……まさかまた気絶してないですよね?」

一方通行「………あァ………大丈夫……なンとか……」

御坂妹「……ギリギリかよ」

85 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/03(木) 19:16:17.95 ID:ELyw2kY0 [9/12]
―――上条達はファンタジーな世界からいきなり現実に引き戻された。
出口付近の「簡単乾燥装置」で濡れた服を乾かし移動を始めた。時間はちょうど十二時……。




上条「――なぁ、腹減らないか?どっかで飯にしようぜ」

美琴「賛成♪」

一方通行「そォだな。っつっても時間的にどこも混んでっけど、どォすンだァ?」

御坂妹「ご安心下さい!このチケットは食事も優先できます。とミサカは心配無用な事実を告げます」

上条「……そのチケット、何でもアリなんだな」

美琴「…流石レア度高いだけあるわ」

一方通行「…なンたって金だからなァ。これより上はねェンだろ……」

御坂妹「さて、食事ですが、あそこにちょうどレストランがあるのでそこにしませんか?とミサカは提案します」

美琴「『海賊船』がイメージなのね……私は良いわよ」

上条「あぁ、俺も良いぞ」

一方通行「決まりだなァ。ンじゃ、行くとすっかァ――」




――四人は腹ごしらえに、近くの『海賊船』がイメージのレストランに入った。
とりあえず、午後のプランも兼ねての昼食タイムである。
昼食を食べ終えた上条達は、まったりと午後の予定について話し合った。

86 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/03(木) 19:43:52.29 ID:ELyw2kY0 [10/12]
―――レストラン内


上条「――ふう、食った食った。大満足ですよ」

美琴「海賊船なだけあって、脂っこいの多いわね」

一方通行「あそこに飾ってある剣とか…触ったらダメだよなァ…?」

御坂妹「当たり前です!とミサカは本気であなたが盗んでいかないか危惧します」

上条「……っつーか一方通行が絶叫系ダメとか意外だよなぁ…」

美琴「……そうよね…アンタ空飛んだりしてんじゃないの?」

一方通行「あのなァ……自分の意思で飛ぶのと人に飛ばされンのとじゃ、ワケが違うンだよ。車の運転と一緒だァ。
人の運転で乗るのと自分の運転で乗るのとじゃ、感覚が違うだろォ?」

上条「……いや、運転出来ねえから分かんねーし……お前、運転すんの?」

一方通行「普段しねェが、出来なくもねェな」

美琴「…まぁ、車はともかく、何となくは分かるわね」

御坂妹「さて、午後の一発目はどこにしましょうか?とミサカは話題を変えます」

上条「…飯食った後だから、ハードなヤツは勘弁してもらいたい…」

美琴「では、この『ジャングル・クレイジー』なんてどうですか?とミサカは地図を指さします」

一方通行「……名前からしてすでにイカレてンなァ…」

御坂妹「さっきSL内で言ったと思いますが、ジャングルを遊覧するアトラクションです。もしかしたら、本物のワニが――」

一方通行「――よォし三下ァァ!次そこ行くぞォ!異議は認めねェ!」

上条「イ、イエス…」

美琴「……サー」




――こうして上条達は、『ジャングル・クレイジー』へ……果たして一方通行は本物のワニに会えるのか…。

87 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/03(木) 20:33:26.05 ID:ELyw2kY0 [11/12]
――『ジャングル・クレイジー』は絶叫ゾーンから外れるため、移動に少し時間がかかったが、
途中可愛いキャラクターの気ぐるみが歩いてたり、パレードが通りかかったりと退屈は一切なかった。
そして四人は目的の場所に着く。――



一方通行「――ここかァ。ついに見つけたぜェ」――ニヤリ

上条「――思ったより遠かったな…にしても、さっきのパレードすごかったなぁ…」

美琴「――あれ能力者も混じってんでしょ?」

御坂妹「――とても息の合った演技でした……とミサカは妹達では絶対不可能な連携プレーを見て感動が覚めません」

一方通行「早く進みてェっつーのに……あいつ等邪魔しやがって」

上条「イヤ、お前すげえ興味深く魅入ってたじゃねえか!」

一方通行「……ま、まァ、ちったァ余興にはなったかもなァ。よし、行くぞ」


――ひとり、さっさと歩きだす一方通行。


美琴「…さっさと切り上げるあたり、図星ね」

御坂妹「内心すごくハシャいでたんでしょう。とミサカは何枚目かもはや分からない一方通行の照れ顔を保存します」

上条「……こういう場所とは、一番無縁そうなヤツだもんなぁ」

一方通行「――オイ!なァにしてンだァ!?ワニ……いや、ジャングル探索しねェのかァ!?」

美琴「頭はすでにワニでいっぱいみたいよ……ま、私も見たいし、良っか♪」

上条「……襲われたりしないだろうな…」

御坂妹「あなたは不幸だからありえますね。とミサカは冷静に応じます」

上条「」




――不安を覚えた上条だったが、ワニを前にテンションの上がりきった一方通行を今更止めることなど出来るはずもなかった。
そして、四人は入り口へと向かって行った。

92 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/04(金) 16:42:48.65 ID:J7alKj.0 [1/9]

――入り口にすでに入った一方通行に三人は追いついた。



上条「――やっと追いついた……お前、つえつきなのに何でそんな速いんだよ!」

一方通行「――遅ェぞ、三下共!……へェ、ここはそンなに混ンでねェンだなァ」――キョロキョロ

御坂妹「――ハァ、ハァ……そうですね。午前中のアトラクションより人気度は劣ります。とミサカは肩で息をしながら答えます」

上条「確かに、人が多いっちゃ多いが、さっきの二つは桁違いだったな……。けど、あんな面白いんじゃ並ぶ訳だよ」

美琴「――……ねぇ…あそこ、『ワニ注意』の看板あるけど……」

一方通行「何ィ!?」

御坂妹「……いるんですね……パンフレットには書いてありませんでした。とミサカはデズニーの演出に愕然とします…」

上条「………まさか…やっぱりあれは…」

一方通行「三下の目は節穴じゃなかったってなァ。…イイねェ、イイねェ!そォでなきゃ面白くねェェ!」

美琴「…安全性は保障されてるわよね……?」




―――そこで、三人の視線が上条にジーっと集まった。




上条「……やっぱりだよな……この『不幸の申し子』上条さんの前に『絶対安全』なんて言葉がなんの意味もないということは
重々承知してますよ……だからそんな哀れむ目で俺を見るなぁぁぁあああッッ!!!」

93 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/04(金) 17:21:56.48 ID:J7alKj.0 [2/9]
美琴「……だ、大丈夫よ!学園都市が誇る最大テーマパークよ!?…いくらアンタが不幸でも、そ、そんな急に『後ろからガブッ!』なんて
事はきっとないから平気だって……多分…」

一方通行「……俺はまさに『後ろからガブッ!――不幸だァァああ!!』って三下の構図が簡単に想像出来るンだがなァ…」

御坂妹「言いにくいですが……ミサカもです。とミサカは珍しく一方通行に同意します…」

上条「……自分でその構図が想像出来るって……残酷だよな…」

美琴「………と、とにかくここまで来たんだから行きましょ!レベル5が二人もいるんだから、ワニくらいどうってことないわ!」

上条「そ、そうか!…なんたって『学園都市最強』がついてるんだよな!すっかり忘れてた!」

一方通行「そォいうことだ。ワニに臆してンじゃねェぞ三下がァ!―――お、もォ俺らの番だな……行くぞ」

上条「…もう後には引けないな」


――ゾロゾロ…


係員「――皆さん、お待たせしました♪本日は『ジャングルクレイジー』にお越しいただき、ありがとうございます!
この『クレイジー号』で今から皆さんをジャングルの秘境へとご案内します!私は道中案内役を務めさせていただきますOOと申します!――」



――上条達含む二十人程の乗客が乗る小船は、ゆっくりと岸を離れた。探検家のような制服を着た係員がバスガイドのように立ち振る舞う。
インディアンの住居や、コースから見える名物、作り物(のハズ)の野生動物まで、さまざまなものが紹介されていく……。



美琴「――ねぇ、さっきの人形?にしてはリアル過ぎなかった?」

上条「――俺は本物にしか見えなかったぞ……」

御坂妹「――ミサカには人形にしか見えませんでした。あの方々からは感情が感じられません。とミサカはミサカならではの根拠を述べます。
……ところで、ここには魚がいないのですね……」

一方通行「――あァ?ワニがいる位だからいるンだろォ……イメージがアマゾンなら、ピラニアとかいるかもなァ。オイ三下、ちょっと河に
落ちてみろよ?」――ニヤニヤ

上条「断固拒否します!!」

94 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/04(金) 17:59:33.02 ID:J7alKj.0 [3/9]
御坂妹「――実はピラニアは臆病な性格で人間を襲うどころか逃げて行きますよ?とミサカはこれから飛び込むあなたに助言します」

上条「……お前、だいぶ一方通行に感化されてきたな。一度お前とも『話し合い』が必要かもしれん…」

美琴「あ!私、一度アロワナ見てみたいわ♪」

御坂妹「別名『ドラゴンフィッシュ』ですね。とミサカは補足します。ちなみにミサカは世界最大の淡水魚『ピラルク』が見たいです」

上条「あれって三メートル超えるんだろ?…アマゾン河で釣りとか怖くて出来ねえよな」

一方通行「…今は確か現地じゃァ『幻の魚』って言われてるよなァ……ンな簡単に釣れンのか?」

美琴「最近テレビで見たけど、繁殖に成功してるみたいよ?」

御坂妹「詳しい生息数は分かってませんが、数が減っているのは確かです。南米在住のミサカいわく、『ピラルクの肉はすごく美味しい』
らしいのですが…とミサカはミサカが食すまで絶滅しない事を―――」

上条・美琴・一方通行「――食うのかよ!!!」




――そんなやりとりをしている内に船は進み、終盤が近づいた頃……。



係員「――さて、皆さん!最後にとっておき!この先には……なんと、獰猛なワニが潜んでいます♪本日からということで驚かれる方もいると思いますが、ご安心下さい!我々を襲う事は……多分、ないと思いますので!――」



どうやら、今まではいなかったらしい……。ワニ入りのお知らせはなく、乗る直前に美琴が見つけたネタの様な看板が唯一の宣伝だったのだ。
係員の言葉を聞いた途端、全員の顔が強張った。……が――




一方通行「――ククク……待ちに待ったぜェ……いよいよだな……いよいよ会えるンだなァ……ひゃは」――ウズウズ




――ひとりだけ例外がいた。

96 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/04(金) 18:32:05.64 ID:J7alKj.0 [4/9]
―――ジャングル・クレイジー新名所『ワニの棲み処』……簡単に言えば、ワニのサファリパークだ。


――乗客達は最初こそ不安そうな顔をしたが、係員の余裕な顔を見て幾分安堵したようだ。
しかし、忘れてはならない……この乗客の中に不幸体質の上条が混じっているという事を……。



上条「――いよいよ入ったな………って、うわっ!早速いたっ!!」


ワニ「………」スイーー…


美琴「――きゃっ!!ビックリしたぁ!…って近っ!!……あ、あそこにも!そこにもいる!」

御坂妹「――まさにワニの巣窟ですね……。あ、あっちに来る時乗ってきたSLが見えますよ?とミサカは指差します」

上条「……あそこから俺は見たんだな……しかしすげえ……ワニって意外と大人しいんだな。一匹船と並走してるけど、襲う気配ゼロだ…」

美琴「大口開けてガバッ!て想像してたけど……動物園のワニと変わんないのね」

御坂妹「それよりミサカは、先ほどから意外に静かな一方通行に疑問を持ちます……真っ先に飛び出すかと思ったのに…」

美琴「……そう言えば……一方通行?ワニいるわよ?たくさん」

一方通行「………なァ」

上条「ん?…何だ?」

一方通行「……すげェっつか……言葉がねェよ……ワニって初めて見たけどよォ、こンなでけェンだなァ…」

上条「ま、まぁな……なんたってワニだし…」

一方通行「『クロコダイル』ってのァ……この事なンだな…」

美琴「ク…ロコ…?……何か意味分かんない事言い出したけど…」

御坂妹「……あ、今の顔保存したらデータが……と、ミサカはディスクのクリーンアップを行います」

一方通行「………三下ァ」

上条「……な、何だ?」

一方通行「……触りてェ」

上条「…ハイ?」

97 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/04(金) 18:57:10.61 ID:J7alKj.0 [5/9]
一方通行「あのワニ触りてェンだけどよォ……やっぱダメだよなァ…」

上条「………俺は知らん。係員に訊いてくれ」

一方通行「すンませェン」――スクッ

上条「――っておい!」

美琴「ちょ!?アンタ本気?」

係員「お客様。移動中の立ち上がるのは大変危険ですので…」――アタフタ

一方通行「ワニ触りたいンすけどォ……ダメですかァ?」

上条「……マジで訊きやがったコイツ……他の方々の視線がイタイ…」

美琴「ハァ……ちょっと、アンタも止めなさいよ?」

御坂妹「ミサカはただ今クリーンアップ…もといアルバムの編集中です。とミサカは冷たく応じます」

美琴「………もういいわ」

係員「………」

上条「ほら、座れ一方通行。どうせ無理に決まって――」

係員「良いですよ♪」

上条「――っておーい!!?」

一方通行「――っしゃァ!!話せンじゃねェか姉ちゃン!」――グッ

美琴「………嘘…」


――ワー パチパチ


上条「――え!?」


――何故か他の乗客達は一方通行に拍手を送っていた。


客1「ワニに触りてぇとは根性あんじゃねぇか兄ちゃん!」 客2「気にいった!」 客3「頑張れー!とミサ……ゴホッゴホッ……」


上条「……あぁもう!こーなったらどうにでもなりやがれ!!」

100 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/04(金) 19:30:42.52 ID:J7alKj.0 [6/9]
係員「本当はダメなんですけど、今回だけ特別です。ただし、背中から撫でるようにして下さいね。正面はアウトなんで」



――こうして、ワニタッチの権利を得た一方通行は、客が固唾を呑んで注目する中、並走しているワニに手を伸ばす……。



一方通行「………おォ……硬ェ……ゴリゴリしてやがる……これが『クロコダイル』ってヤツかよオイ…」――サワサワ

美琴「黒…子?……さっきから何言ってんのアイツ…?」

上条「……さぁ…っつかマジで触ってる……いいな……俺もダメかな?」

係員「お友達の方も良ければどうぞ。あ、ワニが止まったので一旦船止めますね」

美琴「え?……良いんですか?」

係員「五分だけなら停止を許可されてますんで、どうぞ」

上条「お、じゃあ俺も♪――」

美琴「あっ!ずるい!私も――」

御坂妹「ミサカも!とミサカは編集を速攻で終えて続きます――」



――オレモ ジャアオレモ ワタシモ ミサカモ…



ワニ「……………」

一方通行「オイ!いっぺンに触ったら怯えンだろォ!二人ずつ順番に並ンで触れ!」

係員「それ私の台詞!」

美琴「――なにこれ!?うっわ!!硬い♪」

上条「――お、おい!このワニ!何で俺が手ぇ伸ばすと動くんだよ!……届かねえクソッ!」

御坂妹「――……硬いです…とミサカはいやらしさを込めて感想を述べます」




――こうして、五分間のワニとの触れ合いを堪能したラッキーな一行は『ジャングル・クレイジー』を後にした。
しかし、ラッキーで終わらなかった者が一人いた。それは勿論……
最後にもうひと触りしようと近づいたら、キレたワニに襲われて引きずり込まれかけた上条以外いないだろう…。

102 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/04(金) 20:16:20.08 ID:J7alKj.0 [7/9]
――『ジャングル・クレイジー』出口



上条「――不幸だ……あのクソワニめ……」

一方通行「オマエらが節操なしにペタペタ触っからだァ。ありゃァキレて当然だな」

美琴「けどホントどうなるかと思ったわ。水の上じゃ電撃ぶっ放す訳にもいかないし……アンタ、一方通行とパンチでワニ吹っ飛ばした
変なお兄さんに感謝しなさいよ」

上条「……したよ。『根性があればワニなど何てことない!』とか言ってたな……あと、一方通行が俺の周りのベクトルを反射してくれた
おかげで助かった……マジ驚いたぞ……いきなり大口開けて振り返りやがって…」

御坂妹「……まぁお約束ですよね…それより乗客の中に一名気になる人がいたような……とミサカは思い出してみますが、やっぱ分かんねーから
どうでもいいや。と諦めます」

一方通行「ンで、次はどォすンだァ?っつーかミルキーはどこにいンだよ?」

美琴「……さすが……覚えてたのね…」

上条(……よし、今こそここで滅びたハズの『一方磁砲ラブラブ大作戦』…だっけか?……とにかく決行っ!!)

一方通行「俺ァミルキーを見つけてェンだよォ!オイ妹ォ、オマエも付き合え。っつーワケで、今から別行動に入るぞ」

上条・美琴「……え?」

御坂妹「……ハァ?」

一方通行「オマエらは二人で好きなもン乗ってきな。集合は……俺から三下に連絡する。適当に時間経ったらまた集合ってことでイイな?」

上条「……え?え?あの…」

美琴(一方通行のヤツ……まさか…)

一方通行「よォし!じゃ、また後でな。仲良くやれ。行くぞ妹ォ」

御坂妹「……よく分かりませんが、目的は一緒なので同行します。では、後ほど。とミサカはお姉様達に手を振り一方通行の後に続きます」



――御坂妹と一方通行はさっさと行ってしまった。美琴が一方通行に心の中で激しく感謝したのは言うまでもない。



上条(……どうなってんだ?……てっきり御坂を誘うと思ったのに?……ま、良いか)

美琴(……一方通行のヤツ…似合わない真似してくれちゃって……一生感謝してやるんだから)

107 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/04(金) 21:14:33.28 ID:J7alKj.0 [8/9]
――御坂妹は先に進む一方通行に追いつき、後ろからさりげなく隣に並んだ。



御坂妹「ミサカを置いてかないで下さい!とミサカは頬を膨らませて抗議します」

一方通行「あァ?オマエが歩くの遅ェンだろ?」

御坂妹「…つえつきのあなたに言われるとは…とミサカはショックで落ち込みそうです…」

一方通行「……ンで、どォする?ただミルキーを捜し回るってのもつまらねェし、ついでに何か乗り物でも乗るか?」

御坂妹「…そうですね。この広いテーマパークでは捜すだけで陽が暮れます。こればかりは運に任せましょう。とミサカは祈ります」

一方通行「仕方ねェな……なァ、ここは何時に閉まるンだ?」

御坂妹「…閉園時間は19時です。とミサカは答えます」

一方通行「…ずいぶン早くねェか?……まァ、学生客が大半だから無理もねェってか…」

御坂妹「閉園前にミルキーが主役のパレードが中央のお城付近で行われるのですが、最後は皆でそれを見て締めませんか?とミサカは提案します」

一方通行「……そォだな。もしミルキーが見つかンなくても、そこで見りゃァイイってこった」

御坂妹「………最近のあなたは、ガラにもない事をよくしますね」

一方通行「あ?何だよ突然」

御坂妹「今日、その服で来たのにも驚きましたが…お姉様に気を遣うなんて………これもあなたなりの贖罪なのですか?とミサカは尋ねます」

一方通行「……別にそンなつもりはねェよ。贖罪とか考えた所で、俺のしてきた過去が変わる訳じゃねェ……引きずるつもりもねェし、
オマエらに許して欲しくてやってる訳でもねェ。昔も今も全部俺がテメェの意思でやってきた事だ」

御坂妹「…つまり…どういう事ですか?とミサカはあなたに明確な答えを求めます」

一方通行「なァに、簡単だ。結局、俺を許そォが憎もォがオマエらの勝手って事だ。ただ、俺は俺のしてェ事をする。オマエらがそンな俺に
対してどォ思うかなンて、俺に決める権利はねェだろ?少なくとも、今の俺はオマエらが皆笑って暮らせるよォに願ってる…これも俺が
勝手に思ってる事だから、オマエらにどォ思って欲しいとかいう気持ちはない」

御坂妹「……ミサカの想いや意思は無視って事ですか?」

一方通行「……俺の勝手にたいしてどォ思ってくれてもイイが、無下に扱うつもりはねェよ。オマエらの想いとやらもしっかりこの耳で
聞いてやる。その上で俺は俺が決めた通りに進むまでだ」

御坂妹「……そう、ですか…」

一方通行「…何沈ンでンだよ?せっかく来たンだから、今日は楽しもォぜ。お、あれに乗らねェか?」

御坂妹「………ハイ!とミサカはあなたの腕を引いて走ります――」グイッ

一方通行「オ、オイ!危ねェっての!―――だ、だから引っ張ンなァ!!上手く歩けねェンだぞコッチはァ!!……ったく―――」タタタタ…


113 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/05(土) 20:19:10.69 ID:OZeP95c0 [1/8]

――ワニに触りまくる乗客達



スゲエカタイ
ゴツイナ
イワミタイデス


ワニ「………」イライラ


係員「――はい、では皆さんそこまで!そろそろ行きましょう!席に着いて下さーい」

乗客達「――ハーイ」ゾロゾロ

上条「ちきしょお!俺殆ど触れてねえ!」

一方通行「ほら三下ァ、早く座れ。係員さン困ってンだろォが」

上条「お、今なら手が届きそうだ!…最後にもっかいだけ――」スッ



――上条がワニに手を伸ばした……その時だった!



ワニ「―――ガァァァァ!!!」

上条「――!!!!?」

全員「――!!!」

117 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/05(土) 20:39:48.56 ID:OZeP95c0 [2/8]
悲劇は起こった……。

あと少しで手が届く……寸での所で、ワニが大口を開けて上条の伸ばされた右腕に食らいついてきたのだ!



上条「――うわぁぁあ!!!」サッ



とっさに伸ばした右腕を引いたので、何とか食いちぎられる事態は避けられたが……不幸はそれで終わらなかった。



ワニ「ガァァア!!!」



暴れ出したワニの振り回す尻尾が船に激突した。大きく揺れる船に全員バランスを崩し、立ち上がれない。
係員は万一に備えて銃を所持していたが、その衝撃にバランスが崩れて銃を河に落としてしまう。
上条も転倒するが、怒り狂ったワニの最も近くにいるのが不運だった。ワニは大きく水から跳ね上がるように上条目掛けて
大口を開けたまま飛び掛った!



上条「――!!!」


一方通行「――チッ!」カチッ



チョーカーのスイッチを『能力使用モード』にした一方通行が一瞬で上条の周りのベクトルを『反射』に設定した。
ワニは上条に食らいつく寸前で仰け反るように弾かれる。


ワニ「――ギャアアア!!!」


上条「――なっ!!!」



そこで上条は一方通行の仕業だと理解するが、ワニの怒りは治まらない。
仰け反った状態から再び上条に倒れ込むように迫ってくる。

118 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/05(土) 21:17:45.34 ID:OZeP95c0 [3/8]
上条「――ッッ!!?」

美琴「――いやぁぁっっ!!!」

御坂妹「――あッッ!!!」

一方通行「――クソがァァッッ!!!」



ワニに圧し掛かられた上条を助けようと三人は動こうとするが、再び大きく揺れた船に足元をすくわれ立ち上がれない。
一方通行は最初の『反射』で吹き飛ばしたつもりだったが、ワニの耐久力を見誤っていた。
しかし、解除した『反射』をもう一度発動させる前に乗客のひとりがワニに向かって拳を繰り出した。


「―――すごいパーンチ!!」


瞬間、ドォン!!!と衝撃音が鳴り響き、ワニは上条の上から強風に飛ばされるように吹っ飛んでいった。
ワニはそのまま三十メートル程離れた場所に着水した。
そして、そのまま逃げるように船から離れていった……。



上条含む全員はしばらく動けなかったが、係員が正気に戻り船を動かした。




一方通行「――立てるか?三下」

上条「――…あ、あぁ。すまねぇ」

美琴「――……アンタ!け、怪我は?」

上条「大丈夫だ。悪いな……」




そして、船は無事に降り口に着いた。船から降りてすぐに上条はワニをぶっ飛ばした客1に礼を言った。――



上条「――さっきはありがとう。あんた、すごいんだな」

客1「――根性があれば、ワニなど何てことはない!気にすんな!」

上条「………はぁ……根性……?」

119 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/05(土) 21:50:52.84 ID:OZeP95c0 [4/8]
昨日の未公開(?)はこんな感じです。では続き投下します。





―――絶叫ゾーンから少し離れた『遊園ゾーン』に一方通行と御坂妹はいた。
お化け屋敷やコーヒーカップ、メリーゴーランドと言った、絶叫マシーン以外の遊園地の乗り物がそこにはある。

ここは優先権が唯一意味のない場所だ。使えたとしても恥ずかしくて使えないだろう。つまり、子供や家族連れが圧倒的に多いのだ。
冬休みなだけあって、学園都市まで子供に会いに来る親も少なくはない。そう考えると納得だった。



一方通行「………」

御坂妹「――さっきから何考え事してるんですか?とミサカは問いかけます」

一方通行「……イヤ……さっきワニぶっ飛ばしたあの暑苦しそォな野郎は何者だったンだろォな……ってよ」

御坂妹「おそらく何かの能力者でしょう。とミサカは推測します……もっとも何の能力かは不明ですが…」

一方通行「……ありゃァただモンじゃなかったな………まァ、もうどォでもイイか……ンで、オマエは何乗りてェンだ?」

御坂妹「……は?ミサカはあなたがあれに乗ろうと言うから連れてきたのですが…とミサカは空中をくるくる回るゾウさんの
乗り物を指さします」

一方通行「………乗りてェのか?」

御坂妹「はい」



――即答。

一方通行的には重くなりかけた雰囲気を変えるため適当に見える乗り物を指したのだが……近くで見るとまるで子供用の乗り物だ。
打ち止めは喜んで乗るだろうが、自分が乗るのは……同い年位のカップルが乗ってはいるが、自分も乗ったらああなるのか…と思うと
寒気がした。だが、御坂妹が「……ダメですか?」と目をウルウルさせて上目遣いになったのを見た途端、その寒気は飛んだ。



「………こォなった以上、足掻いてもカッコ悪ィな……わァかったよォ、乗るよ乗りますよォ!乗ればイインだろォ!!」



―――この時彼は、上条達と離れてて良かった…と心底思ったらしい。

121 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/05(土) 22:38:15.74 ID:OZeP95c0 [5/8]
――ゾウさんの空中メリーゴーランド



一方通行「……椅子狭ェな…やっぱガキ用じゃねェかこれ?っつーかオマエくっつき過ぎ!」

御坂妹「狭いんだから仕方ないでしょう?とミサカは抗議します。……まさか照れてます?」

一方通行「ばっ……ンな訳あるかァァあ!!だァれが照れるかっつーの!」

御坂妹「おやおや、可愛い反応ですね。とミサカはニヤニヤしてあなたに詰め―――きゃ!」ガタン

一方通行「お?動き出したか…………意外と高く上るンだな…」

御坂妹「ちょっと速いですね……軽く酔いそうです。とミサカは口元を押さえます」

一方通行「…大丈夫かオマエ?」

御坂妹「……何のこれしき…とミサカは虚勢を張ります」

一方通行「……確かにちっと速ェ……あのクソガキならこンなのでもハシャいでそォだがな」

御坂妹「…………ウプ」

一方通行「…マジで大丈夫かオイ…?」



――御坂妹が酔ってしまったので、降りた後ベンチでしばし休憩をとった。
自販機でジュースを買ってきた一方通行は御坂妹にオレンジジュースを渡してベンチに座り、コーヒーを飲んだ。



一方通行「――気分はどォだ?…っつーかオマエ、回る系に弱いンだな」

御坂妹「――そうですね。同じところを速く回るのはダメなようです。とミサカは自分についてまたひとつ知れた事を喜びつつ
ジュースを頂きます」

一方通行「……ソイツは良かったなァ。…この辺りは回る系が多いし、何かイマイチだな。……ちょっと休ンだら移動するか?」

御坂妹「…それなら、『トーン・ワールド』に行きたいです。とミサカは進言します」

一方通行「あン?トーン・ワールドォ?…何だそりゃあ」

御坂妹「デズニーキャラの住まいのような所です。場所もさほど遠くありませんし、『ミルキーの家』もあります。
とミサカは簡単に説明します」

一方通行「!……ほォ、面白そォじゃねェか」――ニヤニヤ

御坂妹(……これはもはやファンの領域ですね……こんなファン、イヤだ…)

126 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/05(土) 23:14:02.24 ID:OZeP95c0 [6/8]
一方通行と御坂妹はベンチで一休みし、『トーン・ワールド』を目指し移動していた。
移動中も退屈しない風景に御坂妹は完全に元気を取り戻していた。



一方通行「――っつーかよォ……ミルキーは家に帰ったりしてねェのか?」

御坂妹「…残念ながら、家には殆ど帰ってないそうです。とミサカは事前に調べた情報を伝えます」

一方通行「なンたってスターの家みてェなモンだろォから、常に人がたくさンいやがるンだよなァ……そりゃ帰りにくいだろ…」

御坂妹「その理由が適切かは定かではありませんが……一般客も普通に入れるので、あまり帰る意味はないのでしょうね。
とミサカは推測します」

一方通行「……は?オマエ今なンつった?」

御坂妹「はい?」

一方通行「ミルキーの家に入れるっつったよな?……それホントか?」

御坂妹「……えぇ、そうですが…」

一方通行「……それ不法侵入じゃねェかァ!?…鍵掛かってねェの!?ミルキーは勝手に家に侵入されて怒ンねェのかよ!?」

御坂妹「えっ……た、多分平気だと思いますけど……とミサカは回答に困ります…」

一方通行「ってこたァ、ミルキーが帰る頃には…部屋が荒らされるどころの騒ぎじゃねェぞ!……まさか、ミルキーも前の俺と同じ思いを…」

御坂妹「………あのぉ、もしもし?」

一方通行「……そォかァ……スターってェのも…大変なンだなァ……分かるぜェ…ミルキーよォ…」

御坂妹「ゴメンなさいミサカには何ひとつ分かりません。とミサカはキョトンと首を傾げます…」

一方通行「……オイ妹ォ、ミルキーの部屋ァ…荒らされてたら掃除してやろォぜ。……俺みてェなクソったれの悪党ならまだしもよォ、
スターが荒らされた部屋にひとり帰るなンてのァちっと残酷過ぎンだろォがよ。……オマエがやらねェンなら俺ひとりでも―――」

御坂妹「――さっきからあなたは『ミルキーの家』にどんな幻想を抱いてるんですか?とミサカはあなたの言葉を打ち切ります」

130 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/05(土) 23:53:57.95 ID:OZeP95c0 [8/8]


――変な幻想を持ったまま、一方通行と御坂妹がトーン・ワールドへ移動している頃……上条と美琴は絶叫ゾーンへ戻ってきていた。
絶叫系にすっかりハマってしまった美琴にニ度目のビックリ・サンダーに付き合わされた上条は若干へたっていた。
しかし、心底楽しそうな美琴を見ていると自然と元気になってくるのが上条にとっては不思議だった。



美琴「――ねぇ、次あれ乗らない?」ニコニコ

上条「――お?『スペイシー・マウンテン』か……よしっ、行くか!」

美琴「うん!行こ行こ♪」

上条「わ、わかってるから腕引っ張るなって!」

美琴「~~~♪」

上条(こんな楽しそうな御坂、初めてかもな……ま、無理もないか。ここ前から来たかったって言ってたしな。
……にしても、コイツもこんな風に笑うんだな…)



美琴が楽しんでいるもう一つの理由には全く気づかない上条だった……。
そして、ふたりは『スペイシー・マウンテン』へ――



上条「……何か、宇宙船みたいな通路だな」

美琴「…やたら『リタイヤ用出口』があるわね。そんなすごいのかしら?」

上条「…あのぉ……できれば上条さん、リタイヤで――」

美琴「――超電磁砲千本ノックとこのまま進むのと…どっちが良い?」

上条「……レッツゴー♪」

美琴「おー♪」

上条(………ここから無事に出たい。今はそれだけが俺の望みだ…)


134 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/06(日) 00:24:02.21 ID:zNDEBw60 [2/19]
――上条と美琴は人込みの中離れないように手をつないだ。
流石にまずいと上条は思ったが、美琴に「離して迷子になったらどうすんの!」と言われ、そのまま従った。
別に嫌ではない…むしろ嬉しいのだが……上条はよく分からない感情に悩まされる。
と、その内に順番が回ってきた。



上条「…普通ってか……テレビとかでよく見るジェットコースターっぽいな…」

美琴(隣同士…抱きついても……ヤ、ヤバイヤバイヤバイヤbbbbbbb/////)

上条「?……御坂、もう乗るぞ?奥座るか?」

美琴「おおおおおおお奥!!?……あ、あぁ良い良い!ててて、手前で良いから!!」

上条「……何動揺してんだ?……ま、良いか。…よっと」(バーを下ろす)

美琴「え!?バ、バーなの!?」

上条「は?ジェットコースターなら普通これだろ?」

美琴(う、うそ……これじゃ抱きつけないじゃない!!……な、なんてこった…)ガクッ

上条(…何かへこんでる………あぁそうか、何だかんだ言ってもやっぱり怖いのか。……ったく、強がっちゃって…しょうがねえヤツだなぁ)



そして、時は……ではなくコースターは動き出す。

135 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/06(日) 00:45:02.62 ID:zNDEBw60 [3/19]
―――鈍感少年とおめでた少女を乗せたコースターは、暗闇を超スピードで疾走する。



――ゴォォォオオオオオ!!!



上条「――うおわぁぁぁあああああ!!!!は、は、は、速すぎんだろコレぇぇぇええええ!!!!!」

美琴「――きゃーーははははははは♪♪すっごいすっごいすっごぉぉぉおおおおいいい!!!!」




――ギュィィィィイイイイインン!!!



上条「――だはぁぁぁぁあああああああ!!!!!とめてとめてとめてとめてぇぇぇえええええ!!!!!」

美琴「――うひょぉぉぉぉぉおほほほほほ!!!!いっけぇぇぇぇえええええ!!!!」



――ギャォォォォォォオオオオオオオ!!!!



上条「――し、しぬしぬしぬしぬぅぅぅぅううううう!!!!!たすけてくれぇぇぇえええええええ!!!!!」

美琴「――あはっ、あはははははははははは♪♪なにこれ最っっ高ぉぉぉおおおおおお!!!!!」



―――そして、十分後



上条「…………心底くたばれる…」

美琴「――あー、最高だったわ♪ねぇ、後でもっかい行くわよ?」

上条「………マジデ?」

美琴「…何この世の終わりみたいな顔してんの?当然でしょ?あと五回は乗らないと気が済まないわ!」

上条「…………oh my god…」


二度とコイツと遊園地には行かない、と上条は固く誓った。

140 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/06(日) 02:01:35.08 ID:zNDEBw60 [4/19]
――上条が美琴に振り回されている頃、一方通行と御坂妹はトーン・ワールドへ辿り着いていた。
道中さまざまなキャラクターに会うものの、まだミルキーには会えていない。
まるで西洋の住宅街のような敷地内で、地図を頼りにふたりはミルキーの家を目指した…。



御坂妹「――この辺りはキャラクターが多いですね。あ!あそこに『サティッチ』がいます!とミサカは二番目に好きなキャラを
見つけて駆け出します!」タタタタ…

一方通行「――オイ!……ったく、目的はミルキーだろォが………って何だありゃァ!?宇宙人か?」

御坂妹「正解です、サティッチは宇宙から来たんですよ。とミサカは人だかりの中に紛れつつ答えます」

一方通行「……マジかよ……写真とか撮れねェかな?」

御坂妹「カメラならありますよ?とミサカは用意周到ぶりをアピールします」

一方通行「誰へのアピールかは置いといてやる。……一枚頼むわ」

御坂妹「はい。―――あ!サティッチがコッチに!」

一方通行「――あン?……あァ、握手か」ギュッ



サティッチといきなり握手し、写真も撮れたので、一方通行は肩透かしを食らっていた。



一方通行「――…しっかしよォ、サービス精神っつーか……ンな簡単に写真とかイイのかねェ…?」

御坂妹「何を言ってるのですか?あぁいう方達は客にサービスしてナンボでしょう?とミサカはあなたの発言に疑問を抱きます」

一方通行「……俺にァ理解出来ねェわ。宇宙から来て人のために媚び売って何になるっつーンだか…」

御坂妹「………ハイ?」

一方通行「あ?そォだろ?何しにこンな星に来たンだか知らねェけどよ、結局人に利用されてンじゃねェか…
俺ならそンなの耐えらンねェ」

御坂妹「…あの、訊いても良いですか?とミサカはおそるおそる手をあげます……」

一方通行「あァ?何だよ?」

御坂妹「まさかあなた……デズニーキャラは実在してるとか思ってないですよね?とミサカは訊いてみます」

一方通行「……は?だったら何だよ?」

141 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/06(日) 02:41:22.06 ID:zNDEBw60 [5/19]
御坂妹「ぶふーーーーー!!!!まさかと思ったらやっぱり!?とミサカは驚きのあまり顎が外れかけます!
そしてお前すげえよ。とあなたの肩を叩きます」ポンポン

一方通行「……さっきからおかしいたァ思ってたンだが……やっぱありゃァ着ぐるみ…か?」

御坂妹「あ、気づいてはいたんですね。とミサカは意外な目であなたを見ます」

一方通行「……そりゃァな」

御坂妹「…ということは、来る直前までは信じてたんですか?とミサカは尋ねます」

一方通行「…………べ、別にイイじゃねェか。じゃァオマエは宇宙人が絶対にいないって言い切れンのか?」

御坂妹「……急に壮大な話になってきましたね。とミサカは溜息を吐きます」

一方通行「世の中ってのァ何が起こっても不思議じゃねェだろ?俺ァただ……夢っつーのに浸ってみたかっただけだ……」

御坂妹「…にしても、デズニー実在説はねーよ。とミサカは――」

一方通行「――ここでそれを言うなァァあ!!分かってンだよンなこたァ!!だから気分に浸りたかっただけだっつってンだろォが!」

御坂妹「!………なるほど……つまりあなたはあなたなりに『郷に入っては郷に従え』を実行していたのですね………すみませんでした。
とミサカはミサカの非を認めて謝罪します」

一方通行「……まァイイ。俺もこンなとこ来たことねェからよォ……どォせなら心底楽しンでやろォと思っただけだァ。忘れろ」

御坂妹「……はい。――あ!ミルキーの家が見えて来ました!」

一方通行「――!!」

御坂妹(………この表情は充分に楽しめてますね……とミサカは安堵します)

一方通行「…流石に人が多いな。よォし、スターのお宅拝見ってなァ!」カツカツカツ

御坂妹「あ、つえついて走るなんて荒技はやめて下さい!とミサカは後を追いながら注意します」タタタタ

150 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/06(日) 13:43:37.00 ID:zNDEBw60 [7/19]

――トーン・ワールド『ミルキーの家』


ザワザワ ガヤガヤ…


御坂妹「――すごくお洒落な家ですね。とミサカは外見を評価します。さ、ミサカ達も入りましょう。とミサカはあなたの腕を引きます」グイ

一方通行「――お、おォ……っつーかこれ……本当に家かよ?博物館じゃあるめェし…」カツカツ…


――家の中


一方通行「ほォ、意外と狭いな……家具っつー家具が殆ど見当たらねェ。……やっぱスターの家は違うわ…」

御坂妹「一般公開用の家ですから、生活感は感じられませんね。とミサカは内装について感想を述べます」

一方通行「……ン、お?…あれ?」グイグイ

御坂妹「……何をしているのですか…?とミサカはテーブルに置かれているコップを引っ張っているあなたを不審な目で見ながら尋ねます」

一方通行「イヤ……これ…取れねェぞ?一個ぐれェ記念に持って帰ろォって思ったンだけどよォ……やっぱダメか…」

御坂妹「テーマパークの人気スポットで空き巣行為はやめて下さい!本物じゃないんだから取れる訳ないでしょう。
とミサカは呆れ返ります」

一方通行「…チッ、…ケチ」

御坂妹(こういう表の世界で心底楽しんだ事がないあなたは楽しみ方が少々…いやかなり人とズレているようです。とミサカは内心毒づきます)

一方通行「――さて。だいたい内部は把握したし、そろそろ出るか?」

御坂妹「そうですね。とミサカは同意します」




――子供が増えて居ずらくなったのもあり、ふたりは家を出た。

153 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/06(日) 14:42:23.97 ID:zNDEBw60 [8/19]
――ミルキーの家を出たふたりはトーン・ワールドを歩き回った後、ベンチに腰を下ろして道中買ったポップコーンを食べ始めた。
上条に電話してみたが出なかったので、一方通行は携帯をしまった後にこう推測した。



一方通行「――三下共は絶叫ゾーンにいるとみた」

御坂妹「なるほど。お姉様は絶叫系アトラクションを大変気にいってた様ですし、的を射てますね。とミサカはあなたの鋭さに感心します」

一方通行「まァ、分っかンねェけどなァ。どンな乗り物だろォと、乗ってる間は電話出来ねェし」

御坂妹「確かにそうですが、ミサカもあの人達は絶叫ゾーンにいると思います。とミサカはマナーをしっかり守るあなたに違和感を持ちつつ
同意します」

一方通行「…俺はどっかの常識知らずとは違うンですゥ。……にしてもよォ。アイツ仮にもレベル5の上位だろォが……
ジェットコースターぐれェさして面白くもねェだろォに……やっぱしアイツもガキなンだな」

御坂妹「あ?……どの口が言うんですか?この口かオイ?とミサカはあなたの両頬を抓ります」ギュウウウ

一方通行「――ひててててて!!!は、離せコラァ!………ってェ……何しやがンだこのアマァ!」

御坂妹「そのレベル5の第一位が、ジェットコースターで同姓に抱きつくほど取り乱したのはどういうことですかねぇ……おっと、証拠の
写真もあるのでトボけてもダメですよ。とミサカは抵抗は無駄だと告げます」

一方通行「イヤ……だからよォ……チッ、能力さえ使えりゃァあンなのどォって事ねェンだが…」

御坂妹「たかが遊園地のアトラクション如きで能力を使用する方がもっと情けないのでは?とミサカは指摘します」

一方通行「だろォ?だから我慢したンだよ。…汽車乗ってる間も、正直何度首元に手ェ伸ばしかけたか分かンねェ。
……『生身』のままであンなぶっ飛ぶ事は今まで経験してねェンだよ。……っつか、今まで面倒な事は能力使って
全部何とかしてきたからなァ。あンま言いたくはねェが、能力に頼りきってたって訳だ。…コイツァそのツケってやつか……」

御坂妹「……要するに、今のあなたはリハビリ中の入院患者のようなものですね。そのまま大人になるよりは、
能力制限されている今の方がむしろあなたのためになるのではないでしょうか?とミサカはつまりポジティブにいけよ。とあなたの背中を叩きます」バンバン

一方通行「――痛っ、痛ェっての!コケンだろォが!」

御坂妹「確かに、あなたの体つきに能力無しならそこいらの一般人より耐久力ないですもんね。とミサカは納得します。
風にも飛ばされそうなゴボウ体系ですが、まぁ頑張れよ。とミサカは親指を立てます」

一方通行「………あァ、確かにそォかもなァ……良かったら是非オマエも風に乗って飛ンでみるゥ?」カチッ

御坂妹「……あ、ヤベ…地雷踏んじゃった。とミサカは電極スイッチを入れて邪悪な笑みを浮かべているあなたに後ずさりします…」


――マテコラアアアアア キャー!トミサカハトウボウヲハカリマス


―――数分程、この鬼ごっこは続いた。

154 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/06(日) 15:22:45.57 ID:zNDEBw60 [9/19]
――その頃上条と美琴は『ビックリ・サンダー・マウンテン』ニ回、『スペイシー・マウンテン』五回、『大回転コースター』一回
という戦績をたたき出していた。殆ど待たずに乗れる『ゴールド・チケット』の存在はこの時ばかりは上条にとって皮肉なものだった……。



上条「………もぉ……無理…………」ガクッ



二度目の『大回転コースター』へ向かう所で、ついに上条は力尽きた。
以前、時速七千キロのGを経験したとは言っても、根本的には一般的無能力者な少年の体力はここで限界を迎えたのだった…。



美琴「――何よ、だらしないわねぇ……しょうがない、…よっと」




すでに動かない上条を背負うように担いでてアトラクション通路を引き返す美琴は他の客の視線を集めまくりだったが…
当の本人は上条との思わぬ密着に浮かれて気にもならなかった。
ベンチに上条を座らせ、自分もその隣に座る。そして意識のない上条は美琴の肩に当然もたれかかる。
これで、『ベンチで一休みする恋人同士の絵』が完成する。
上条は青ざめた顔で魘されるように寝言を言っているが、美琴は密着の余韻にまだ浸っていた。




上条「……う~ん……お助けを……フランス上空でポイ捨てだけは……」ブツブツ…

美琴「////………はっ!な、何……フランス?…何言ってんの……?大丈夫かしらコイツ…」


…自分のせいだとはカケラも思わない美琴であった。


(……起きないわよね?……もう少し…このまま……///)


――piriririri♪


「―――わっ!」


突然鳴り出したのは上条の携帯だった。

155 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/06(日) 15:46:15.13 ID:zNDEBw60 [10/19]
美琴「――ちょっと、アンタ!携帯鳴ってるわよ!」ペシペシ

上条「……う~ん…」




思ったより早く幸せな時間をぶち壊されて、少し不機嫌に上条の頬を軽く叩く。
……が、上条は起きない。


「しょうがないわねぇ……ちょっち失礼…」


ゴソゴソと上条の上着ポケットから携帯を取り出す。着信元はやはり『一方通行』だった。
これなら自分が出ても問題ないだろう、と美琴は通話ボタンを押した。



美琴「――もしもし?」

一方通行『――あァ?オイ、何でオマエが出てンだ?』

美琴「…あー、ジェットコースター乗ってたらコイツ倒れちゃってさ……そんで今、ベンチで休んでんのよ」

一方通行『……やっぱそォか。ってことは、今絶叫ゾーンにいるンだな?』

美琴「そうだけど……アンタらは?」

一方通行『トーン・ワールドってとこだ。とりあえず、一時間後にあの…お化け出るとこ……何つーンだァ?』

美琴「『ホーム・デッド・マンション』のこと?」

一方通行『あァ、それ。そこの前に集合でイイか?』

美琴「…そうね。わかった、コイツ起きたら向かうね」

一方通行『おォ、よろしくゥ。ンじゃ』


――ピッ


「……今3時半だから、4時半か……もう少しだけ、コイツを休ませてやるか……へへへ」


――そのまま十分程過ぎたところで上条は目覚めた。

711 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/06(日) 16:24:45.42 ID:zNDEBw60 [11/19]
――上条が美琴の肩の上で意識を取り戻した頃、一方通行と御坂妹は『ホーム・デッド・マンション』のある方角へゆっくり歩いていた。



一方通行「――オイ、今からそこ向かうのか?早すぎンじゃねェの?」

御坂妹「――このまま歩けば三十分ほどかかるのでちょうどいいかと…」

一方通行「…遠っ!!……そンな歩けってかァ?そこまで移動する乗り物とかねェのか?」

御坂妹「そうですね……あ、あのバスに乗っていけば近くまで行けますよ。とミサカは前方のバス停を指さします」

一方通行「歩くのタリィからそれ乗ってくぞォ。ンで、着いたら付近で時間潰しゃァイイだけだ」

御坂妹「了解です。とミサカは―――あ、何かいるみたいですよ?とミサカは右方向の人だかりに注目します」

一方通行「あァ?どォせまた何かのキャ……ラ……?」



人込みから見える『ウサギの耳』を見た途端、一方通行の動きが止まった。



一方通行「……オイ…ありゃァ……まさか」

御坂妹「……ミルキー…では…とミサカは予想――ってちょっと!?」



一方通行はすでに人だかりへ向かって歩き出していた。つえつきとは思えない速度で……。



御坂妹「――ぬ、抜け駆けすんなぁぁ!!待ちやがれこのもやし小僧!!とミサカは急いで後を追います」ドドドド

一方通行「!――間違いねェえ!今ァチラッと姿見えたぞォ!!最終ミッションコンプリートってなァ!!!ひゃはははァ――!!」カツカツカツカツ

御坂妹「――おい!てめ、御坂より先にミルキーに触ったらどうなるか分かってんだろうなぁぁああ!!とミサカは走りながら脅します」ドドドドド

719 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/06(日) 19:23:55.18 ID:zNDEBw60 [13/19]

――御坂妹と一方通行が人を掻き分けミルキーとの接触に成功した頃、上条と美琴は待ち合わせ場所を目指して歩き始めていた。



上条「――なんか、さぁ…」

美琴「――ん、何よ…?」

上条「……い、いや…何で手を繋いだままなのかなーなんて思っちゃったり…」

美琴「な、何?ダメなの?///」

上条「だ、ダメじゃない!ダメなんかじゃありませんからビリビリすんな!……って右手で繋いでるから平気だった…しかし、何で?」

美琴「……な…何となく!何となくなんだから、変な誤解はしないでよ?」

上条「……?」



ここまでされて分からないのはもはや天性だろう……。






――そして、16:30・『ホーム・デッド・マンション』入り口前――



上条「――お、いたいた!おーい!」

一方通行「――あァ?オマエら遅ェぞ!まァ、イイけどな。誤差の範囲内って事で大目に見てやらァ」

御坂妹「――お久しぶりです。とミサカはどこまで進んだんだよオイ、というオヤジ臭い本心を曝け出します」

美琴「――……アンタ達さぁ…何かすごい機嫌良くない?」

720 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/06(日) 19:53:38.92 ID:zNDEBw60 [14/19]
上条「…何かあったのか?」

御坂妹「よくぞ訊いてくれました!とミサカは先ほどの素敵な体験を思い出します」

美琴「……まさか、会えたの?」

一方通行「まァなァ」ニヤリ

上条「ま、マジかよ!?すげえな!」

一方通行「感謝すンぜェ三下ァ。オマエと一緒だったら絶対会えなかっただろォからなァ」

上条「ぐ……事実だけに反論できん…」

美琴「アンタら運良いわねー……良かったじゃない。夢叶って」

御坂妹「はい!とミサカは目的達成の余韻に未だ浸りながら返答します」

一方通行「っつー訳で、コイツがこの幽霊マンションみてェなとこ入りてェンだとよ。オマエらどォする?」

美琴「私は良いわよ」

上条「俺もだ。ちょうどここから出たら最終パレードっぽいし……確か5時半からだよな?」

御坂妹「そうです。これで終わりまでのプランが立ちましたね。とミサカは今日は楽しくてあっという間だったという感想を述べます」

一方通行「何勝手に締めてンだァ?まだ今日は終わっちゃいねェだろォがよ!よォし、入ンぞ。幽霊さァン」――







一方通行達が最後のアトラクションを堪能している頃………広い公園内を走り回るホスト風な男と、見た目十歳程の幼女の姿があった。




垣根「―――ハァ、ハァ、ハァ……クソ!ここにもいねぇ!…いったいどこ行ったんだよぉ!」

打ち止め「シスターちゃぁぁぁん!!!返事してー!!ってミサカはミサカは大声で呼びかける!」



――また嫌な予感がするが、上条達はまだ知らない……。
科学と魔術が交差する時に始まった物語は……まだ終わっていなかった事を―――

721 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/06(日) 20:19:26.77 ID:zNDEBw60 [15/19]
――ホーム・デッド・マンション内


ゾロゾロ…



上条「――人がすごいな。大勢で体感するタイプなのか?」

一方通行「大部屋に集めて何始めンのかねェ…」

美琴「不気味な絵ね……でもこの壁に描かれてる変なメイクの女、どっかで見たような…」

御坂妹「……性格の捻じ曲がってそうな人だというのは何となく伝わってきますね。とミサカは勝手に印象を決めます」



ザワザワ……フッ



上条「おっ、明かりが消えた…」

一方通行「オイ、あのババアの絵が変わってくぞ!」



『―――ガハハハハ!!よぉく来たじゃねぇか、お利口さんな人間共ぉ!あたしがこの館の主、テレスだぁ!せっかく来たのに悪ぃが、
てめぇらはもうここからは逃げられねぇんだよぉぉ!――』



一方通行「何だァ、このドス効いた声はァ?」

上条「怖っ!ってかどっから聞こえてくるんだ?」

御坂妹「おそらく、あの絵が喋っている設定なんでしょう…やはり性格悪そうですねとミサカは人の印象は見た目重視だという根拠を得ます」

美琴「………この声もやっぱりどっかで……あぁ思い出せない!」




『――まぁ、助かりたかったらあたしの言う通りにしてるんだなぁ。てめぇらの運命はあたしの手の中ってなぁ!ギャハハハハ!!――』



一方通行「……なンっつーかよォ……どっかのムカつく野郎を思い出す口っぷりだなァ…」

724 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/06(日) 20:49:20.27 ID:zNDEBw60 [16/19]
『――オラ、正面の扉開けてやっから、その先にある乗り物にでも乗ってとっとと逃げなぁ!
怖気づいたヤツぁ全員その場で首でも吊ってろ!!――』


――ゴゴゴゴゴゴゴ…


一方通行「…お、前の扉が開いたぞ」

上条「要するに、この先にある乗り物に乗れってことか……しかしいくら演出とは言え……客に『首吊れ』って…」

一方通行「あン?そォいう台本なンじゃねェか?」

御坂妹「…いえ、ミサカが思うにあれが本性な気がします……とミサカは何故か自身を持って発言します」

美琴「……誰だったっけなぁ……」ブツブツ

一方通行「オイ超電磁砲。何ブツブツ抜かしてンだ?さっさと行くぞ」

美琴「――え?あ、待ってよ!」


――上条達は乗り物に乗り、幽霊マンションを進む。


美琴「――うわ!何なのあれ?」

一方通行「……半透明なヤツらが踊ってやがる……『立体映像(ホログラム)ってヤツか』?」

上条「リアルだ……本物の幽霊みたいに見える…」

御坂妹「どこか幻想的ですね。とミサカは隣のあなたに同意を求めます」

上条「あ、あぁ…」

一方通行「……おォ?あれあの絵の女じゃねェか?」

美琴「あ……ホントだ……何か喋ってる…」


メイク女『――イチャイチャしてんじゃねぇぞガキ共がぁぁ!!てめぇらなんざどうなろうが、あたしの知ったこっちゃねぇんだよ!
あ?どうだぁ?泣き声のひとつでもあげりゃぁ勘弁してやんぜぇ!せいぜい無駄な命乞いでもしてなぁ!!ギャハハハハ!!――』


上条「………あれ、本人だよな?」

御坂妹「…人形ではありませんね……とミサカは早く通過しないかと願います」

美琴「……やっぱり知り合いな気がする……顔伏せてよっと…」サッ

一方通行「あァ?…オイ?」

725 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/06(日) 21:09:16.83 ID:zNDEBw60 [17/19]
――かつてぶっ飛ばした敵同士は結局再会する事はなかった……。
そして乗り物は無事出口に止まり、上条達はマンションを後にした。外はすでに暗くなっている。



上条「――…怖い姉さんだったな…」

一方通行「……チッ、あのババアのせいでムカつく研究者思い出しちまった…」

美琴「…うーん、もういいや。忘れよう…」

御坂妹「さぁ、こうしてはいられません。急いでお城へ行かないとパレードが始まってしまいます!とミサカは急かします」

一方通行「中央の城なら、俺らがここ来る時使ったバス使えばすぐだったハズだ」

上条「うっし!行こうぜ!――」




――こうして上条達は締めのパレードを満喫した。
最高のイルミネーションと最高の演出に誰もが言葉を失って眺めていた…。
そこに、悪の心を持つ者は誰ひとりいなかった……。
学生達は普段見せない純粋な顔をそのパレードに向けていた。
パレードが終わっても、余韻に浸って動けない人も少なくない。しかし、もう閉園だ。
このまま急いで現実に帰るのも…残酷と言えば残酷なのかもしれない。――




上条「……帰りたくねぇ…」

御坂妹「……はい」

美琴「そうね……」

一方通行「……あァ、全くだ」




――これがパレードが終わった四人の第一声だった。

767 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/06(日) 21:56:33.42 ID:zNDEBw60 [18/19]
――パレードを見た後、土産を買いに行った美琴、御坂妹と合流し、四人は人込みに紛れて流れるようにデズニーランドを出た。
帰りの電車の中は今日の感想を交えた話題で豊富だった。初めて来た彼等にとってはまさに『夢の国』だっただろう…。
名残惜しさが電車内を包む中、朝集合した駅に着いてしまった。――



上条「……本当に送ってかなくて良いのか?」

美琴「うん、平気!今日は…ありがとね。すっごい楽しかった♪それじゃ、またね!――」

御坂妹「では、ミサカもこれで。今日は本当にありがとうございました。とミサカはお二人に別れを告げます。それでは。――」



美琴も御坂妹も本当に楽しんだ顔をしていた。美琴は結局上条に想いを告げられなかったが、「今日が最後じゃないし、焦る事はない」と
勝手に悟ったようである。
駅前で女二人と別れた上条と一方通行は帰路を歩く。



上条「――いやー、すげえ楽しかったなぁ……このいつもの光景が軽く鬱になるぜ…なぁ、一方通行」

一方通行「……まァ、それなりに楽しめたな。たまには悪くねェモンだ」

上条「カッコつけんなよ。御坂妹から聞いたぞ?お前ミルキー見た途端人の中掻き分けて『お、俺と握手して下さァい』っつって
手まで上げたんだってなぁ。見たかったぜ」

一方通行「オイ三下ァ、今すぐそれ忘れろ。でなきゃァ今度ァ天国に送ンぞ?」

上条「わ、忘れた!今すぐ忘れましたぁっ!」

一方通行「チッ…―――あン?」



――pririri♪と一方通行の携帯がなった。表示は『メルヘン野郎』だった。……彼らしい。一回舌打ちをした後で
仕方なく通話ボタンを押して電話に出る。


「――何だよ?……………あァ?何だとォ!?」



最初こそ面倒な顔で応じるが、垣根からの言葉を聞いた途端……一方通行の表情は一気に険しくなった。



『――インデックスちゃんが…いなくなっちまった!!お前、見てねえか!?』と言う言葉を聞いて………。

784 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/07(月) 18:54:43.58 ID:.8ZfNcs0 [2/9]
「――オイ!どォいう事だァ!?」



――電話相手に突然声を荒げた一方通行に上条も只ならぬ予感を感じる。



垣根『――やっぱ見てねえか……。とりあえず会って詳しく話す!お前今どこだ?』

一方通行「…OO公園入り口付近にいる」

垣根『え!?俺らも今そこだ!すぐ行く!』

一方通行「……あァ」



ブツッと電話は切れた…。上条は「何が起こったのか?」という顔で一方通行を見ていた。



上条「……何かあったのか?」

一方通行「………シスターが……いなくなったらしい…」

上条「――え!!?」



上条の表情が驚きに変わる。一方通行は電話の内容と、禁書目録と一緒だった垣根がすぐコッチに来る事を伝えた。



上条「………インデックス……まさか……また魔術師が……こうしちゃいられねぇ!すぐに――」

一方通行「……チッ、落ち着け!とにかく垣根の野郎から話を聞いてからだァ!」

上条「でも!!――ん?」


「―――おーい!!」と声のした方を見ると、垣根と打ち止めがコッチに走って来ていた。
そのまま合流し、ひとまず話を聞くため公園に入る。
そして、上条が垣根に詰め寄った。


「――インデックスは…何があったんだよ!」


胸倉を掴む勢いで迫る上条を一方通行が止める。

785 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/07(月) 19:19:25.50 ID:.8ZfNcs0 [3/9]
「落ち着けっっつったろ三下ァ!………オイ、シスターがいなくなった理由に心当たりはねェのか?」


「……悪いが、全く分からねぇ。いなくなるまでは変わった事もなかったし……もしかしたら誘拐されたのかもしれねぇ」



垣根はそう答えるが、上条にとって禁書目録が狙われた事は過去に何度かあった。もし今回も誘拐だとしたら、目的は禁書目録の頭に詰まった
『十万三千冊の魔道書』以外にないだろう。すぐに捜しに行きたいが、直前まで一緒にいた垣根から詳しく話を聞いた方が良いのは上条にも
わかる。ここは冷静に……と上条は引き下がる。


「ふゥ……とりあえず、今日のあった事全部話せ。どっかにいなくなったヒントがあるかもしれねェ」


一方通行は落ち着いた上条に安堵の息を吐くと、垣根と打ち止めに目を向けてそう告げる。散々走ったのか、二人とも疲れた表情だった。
打ち止めにはいつもの元気さがない。先に喋ったのは打ち止めだった。


「あ、あのね?今日ミサカ達は――」


口を開いた打ち止めを垣根が制す。


「――打ち止めちゃん。俺から話すよ……一方通行が出かけた後―――」


垣根が一方通行が出て行った後すぐに禁書目録が来て、三人で出かけた所から語り始めた。
上条と一方通行は黙って聞く。





――ここで時は遡り、お昼頃……。

786 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/07(月) 19:49:08.67 ID:.8ZfNcs0 [4/9]
――垣根、打ち止め、禁書目録は繁華街にいた。



――ガヤガヤ…


禁書「かきねー、お腹空いたんだよ……まだなの?」

垣根「もう少し歩いたら着くよ。なんたってこの俺が常連だった店だぜ?味は保障する」

打ち止め「あの人も行き着けの店とかないのかなー?ってミサカはミサカは疑問に思ってみたり」

垣根「……俺ならともかく…アイツはそういうタイプじゃねえだろ……強いて言うなら喫茶店なイメージだな。あの野郎コーヒー好きだし」

打ち止め「ブブーッ!あの人いつもコンビニの缶コーヒーだよってミサカはミサカは優雅にコーヒーを飲む一方通行の絵にバツ印を入れてみる」

禁書「……コーヒーは苦くておいしくないよ…あ、でもお風呂上りのコーヒー牛乳は格別かも!」

垣根「お、インデックスちゃん分かってんねぇ♪あれは風呂上りのバニラアイス並に最高だよな!」

禁書「とうまは体が冷えるからアイスはダメだって……とうまのくせに生意気なんだよ!」

打ち止め「あの人甘いの全般ダメなんだよね。ってミサカはミサカはあの人が人生の四割は損をしてるんじゃないかって事実に目を向けてみたり」

垣根「コーヒーばっか飲んでっから舌が狂ってんだよ。アイスねえか冷蔵庫開けてみたらビックリしたぜ」

打ち止め「……この超寒い季節にアイス食べれるなんてお兄ちゃんすごいね。ってミサカはミサカは感心してみる」

垣根「もちろん外じゃ食えねえけどさ……何てのかな…ほら、冬に暑いくらい温まって食うアイスって、ある意味夏食うアイスより美味くね?」

禁書「アイスは夏が一番なんだよ。すぐ溶けるのがちょっと嫌だけど…」

垣根「その点冬のアイスはなかなか溶けねえんだぜ。ちなみに俺は真夏にクーラーガンガンの寒い部屋でおでん食うのが好きだな」

禁書「……うわ、地球に悪いんだよ…」

打ち止め「あ、夜はおでん食べたーい♪ってミサカはミサカは提案してみる」

垣根「お、良いねぇ!―――お、着いた着いた」



行き着けだった中華料理店に久々に来たのだった。
打ち止めと禁書目録を引きつれて店内へ――

787 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/07(月) 20:09:28.25 ID:.8ZfNcs0 [5/9]
――お洒落な感じに少しのボロさの混じった店内…こういう店ほど味は絶品である。
垣根の地雷言は席に着いてメニューを見る二人の幼女に「何でも好きなモン好きなだけ食え」と何気なく言った台詞だった……。



禁書「本当に良いの!?」

垣根「あぁ、遠慮すんな!育ち盛りは沢山食わねえとな!」――



―――数十分後




垣根「――……悪ぃ。前言撤回するわ………」

禁書「――ガツガツ……ぶはぁ!おかわりー♪」

打ち止め「シスターちゃんすごーい!もう八杯目だよ!?ってミサカはミサカはお兄ちゃんの財布の心配をしつつ拍手したり」

垣根「………あのぉ、インデックスさん?あまり無理は……」

禁書「?まだまだイケるよ?」

垣根「……腹八分目って言葉知ってる?」

禁書「!――ならまだ良いよね?だってまだ五分くらいだし♪」




――垣根はそのままべシャァ!とテーブルに突っ伏した。
朝、一方通行に言われた台詞を思い出した時は何もかもが手遅れだった…。




禁書「――ごちそうさま♪すっごく美味しかったんだよ!」




禁書目録の胃袋は……宇宙か?と誰もが思ったそうだ。

788 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/07(月) 20:32:07.55 ID:.8ZfNcs0 [6/9]
――そして、昼食を終えた後ゲーセンや洋服店を回った三人は繁華街を出て広い臨海公園のような場所に来ていた。
遊び回って落ち着いた三人は垣根を真ん中にベンチに腰掛ける。




垣根「――今日は日が出ててそれほど寒くねえな。……二人とも寒くない?」

禁書「平気なんだよ。下に暖かいの着てるから」

打ち止め「ミサカもー!」

垣根「そっか。………そう言えばインデックスちゃん。今日上条くんは?」

禁書「今ごろ補習受けてるよ」

打ち止め「また?」

垣根「……上条くんて馬鹿なの?」

禁書「そうだよ!馬鹿なんだよ!いつもいつも私だけのけ者にして自分は危険な目にあって!」

垣根「ま、まぁまぁ落ち着けって…」

禁書「……ホント……人の気持ちも知らないで……とうまの馬鹿…」

打ち止め「……あの人もそうだよ……ミサカの気も知らないで…いつも一人でどっか行っちゃって……」

垣根「………はぁ」



――この年で異性に強い想いを寄せる二人の女の子に、垣根は言葉もなくただ空を見上げた。



垣根(―――俺もこう言われる立場に立ってみてぇよなぁ……)

789 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/07(月) 21:01:15.08 ID:.8ZfNcs0 [7/9]
――そして、しばらく経って垣根が立ち上がった。



垣根「――そろそろ帰るか?」

打ち止め「うん!今日楽しかったなぁ。ってミサカはミサカはまた遊び行こう!ってお兄ちゃんの腕にしがみつく!今度はあの人も一緒にね!」

垣根「ハハ……そうだな」

禁書「お腹空いた……とうまはまだだよね…」

垣根「あんだけ食って…もう?」

禁書「当然なんだよ♪」

打ち止め「シスターちゃんも家で食べてけば?ってミサカはミサカは提案してみる」

禁書「本当!?じゃあとうまが帰ったら訊いてみるよ!」

垣根「なら俺がその頃に上条くん家まで行くから、インデックスちゃんはこのままウチ来なよ」

禁書「うん、わかった!ありがとう、かきね」




―――そして、帰宅途中



打ち止め「――あ!デズニーランドだー!ってミサカはミサカはビルの大きなテレビを指さしてみる」

垣根「あぁ?パレードの宣伝か何かか…?」

禁書「うわぁ…すごいなぁ…」

打ち止め「いつかあの人に連れてってもらうんだー!ってミサカはミサカは野望を抱いてみたり」

垣根(その野望…俺は叶わないと思う……だって『夢の国』だぜ?いくら何でも似合わな過ぎるだろ……)



――しばし、ビルの大型モニターでデズニーランドの特集生中継番組を見る三人……。

791 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/07(月) 21:22:03.51 ID:.8ZfNcs0 [8/9]
――このビルのモニターには、以前水着姿でハシャぐ美琴が映った事があるのだが…三人は当然そんな事は知らない。



垣根「……『ライブ中』って事は、生中継か?」

禁書「すごい!人がいっぱいいる!とうま、連れてってくれないかな…」

打ち止め「……トイレ行きたくなっちゃった…」

垣根「…あそこのコンビニで借りよう。ついでに俺も行ってくっか…インデックスちゃんは?」

禁書「……私はここで待ってるよ」

垣根「そっか、じゃあ行って来る。すぐ戻るから――」

打ち止め「はやくはやくー!ってミサカはミサカはモジモジしながら急かしたり――」




――禁書目録をその場に残し、垣根と打ち止めはトイレを借りにすぐそこのコンビニへ……。
そして、数分後に戻ってきた時には……そこにすでに禁書目録の姿はなかった。




垣根「――あれ?インデックスちゃん?……おかしいなぁ…どこ行ったんだ……?」キョロキョロ

打ち止め「――……シスターちゃん?」――





―――そして、時は現在へ――




垣根「―――って訳だ。その後打ち止めちゃんと捜し回ったんだが……まだ見つかってねぇ……いったいどこに…」

上条「……お前らが離れてる間に…インデックスに何かあったって事か…」

一方通行「……オイ……待てよ……まさか……」


一方通行は……どうやら禁書目録がいなくなった理由に何か見当がついたようだった。


798 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/08(火) 16:56:13.87 ID:UfeJ/mM0 [2/15]
「……一方通行。どうかしたのか?」



――何かに気づいたような表情の一方通行に上条が問いかける。




一方通行「……オイ三下ァ。今の話聞いてピンとこねェか?」

上条「え……?」

打ち止め「…どういうこと?ってミサカはミサカはアナタに訊いてみる」

一方通行「……俺の推測が確かなら……ちとやべェな…」

垣根「だから何がだよ!分かるように言えって!」

一方通行「…シスターが消える直前、オマエらはデズニーランドの生中継を見てたンだよなァ?……実は…俺らは今日そこにいたンだよ…」

垣根「――何ぃ!?」

打ち止め「――嘘!?」

上条「!!……ま、まさか…」

一方通行「…やっと気づいたか三下ァ」

垣根「……上条。お前も行ったのか……?インデックスちゃんは今日お前は補習って言ってたぞ…?」

上条「………俺も……行った………インデックスには補習って……嘘…吐いたんだ…」



――上条の顔がどんどんと青ざめていく……。
そして、一方通行が結論を悔しそうに険しい表情のまま言った。




「シスターは…オマエらが離れた後にその大型モニターで……三下を見つけちまったンだよ……多分な…」

800 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/08(火) 17:24:38.22 ID:UfeJ/mM0 [3/15]
垣根「……マジ…かよ…」

打ち止め「アナタ……シスターちゃんを騙したの?って…ミサカは…ミサカは……」


「―――本当にごめんッッ!!!」


急に頭を深く下げる上条に、垣根と打ち止めは驚く。一方通行は未だ険しい表情のまま、それを見る…。



上条「俺のせいだッッ!!俺がインデックスに嘘吐いたからッッ!!……あいつは……嘘が嫌いなのを知ってたのに……
初めから正直に言ってれば…こんなことには――」

垣根「………」

打ち止め「………」



上条の激しい後悔に垣根も打ち止めも…言葉が出なかった。その様子に一方通行が口を開く。



「オマエら誤解すンなよ。三下に嘘吐かせたのは俺だ。…それに今回コイツを誘ったのも俺だ。……別にコイツが悪い訳じゃねェ」



一方通行から思わぬ弁護の言葉を聞き、さらに驚いた顔を見せる垣根と打ち止め……。上条は頭を何度も下げて謝罪の言葉を繰り返す。
そして―――


垣根「――……あー…とりあえず頭上げろよ上条。俺らに謝ったってしょうがねえだろ?」

上条「……けど」

打ち止め「アナタはシスターちゃんに謝るべきだよ!ってミサカはミサカは告げてみる」

一方通行「…クソガキの言う通りだ。オラ三下ァ、いつまでも三下くせェ真似してねェでとっととシスター捜すぞ。ショック受けて姿消したンだとしたら、どっかに独りのハズだ。……なァに、後の制裁は俺も一緒に受けてやっから心配すンなよ」

上条「一方通行……」

801 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/08(火) 17:39:35.24 ID:UfeJ/mM0 [4/15]
上条「……あぁ、すまねぇ。一方通行……恩に着る」

垣根「おし!みんなで手分けしようぜ!俺は空から捜す!」――バサッッ!!

一方通行「打ち止めァ、行くぞ」

打ち止め「おー!ってミサカはミサカはどこまでもアナタについて行く♪」

上条「みんな、ありがとう……インデックス、すぐ行くぞ!――」



――ザッ……



四人が公園を出ようとした……その時、他に誰もいない公園に足音が響いた。



「――!?」



四人とも音がした方に目を向ける……。そして、次に聞こえてきたのは若い男の声だった…。




「―――いいえ、それには及びませんよ」




……公園の入り口の方から歩いてきた、黒いマントで全身を覆った謎の人物は…確かにそう言った……。




見るからに怪しいその男に、四人は警戒する。
最初に男に声をかけたは……一方通行だった。




「………誰だ?オマエ……」

803 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/08(火) 18:07:46.56 ID:UfeJ/mM0 [5/15]
――男は頭から足まで真っ黒のマントで、夜に同化していた……顔もフードで覆われているため誰かは分からないが、
おそらく声からすると『若い男性』だろう……。
男は一方通行の問いに冷淡と答える。



「――詳しくは言えませんが……あえて答えるなら……『元・魔術師』…ですかね…――」






―――??学区・?公園




――上条達のいる公園とはかけ離れた別の公園に禁書目録はいた……。


「……ハァ……おなかへった…」


ブランコに座りながら呟く禁書目録。垣根達が戻るのを待ってる間、なんとなく眺めていたモニター…。そこに映った目を疑いたくなる
光景に禁書目録は言葉を失った……。
ほんの数秒程だったが……モニターの向こうに確かに映ったのだった…。


美琴の肩に頭を乗せて、ベンチに仲良さそうに座って眠る上条の姿が……。他人から見たらどう見てもカップルにしか見えないだろう。


禁書目録は、外見だけでなく頭まで真っ白になった……すぐにその場から走り出した。
何かに追われるように、真っ直ぐ…真っ直ぐ走った。途中何度も転びそうになったり、溢れる涙で前が見えなかったりしたが、
彼女は止まらなかった……。ただただ、走った………。


随分と走ったところでついに体力が底を尽き、今いる公園に入った。
涙は乾いたが、喉も渇いた……。こんなに走ったのは生まれて初めてかもしれない。
当然、ブラックホール入りのお腹は新たな吸収物を欲している。……つまり、極度の空腹でもう動くのも億劫だった。



「………とうま……」

861 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/08(火) 18:33:52.70 ID:UfeJ/mM0 [6/15]
「……ここ…どこなんだろ…?」


見覚えのない公園、見覚えのない道路。
禁書目録はいつの間にか相当遠くまで来たらしい…。



「………帰ろう…帰って、とうまと話し合うんだ…」



ゆっくりブランコから立ち上がり、公園を出ようとする。
禁書目録は学園都市に入る時に必要な『ID』を持っていない。黄泉川なら何とかなるかもしれないが、他の警備員に捕まったら
色々面倒だ。


――陽も落ちて、人通りが殆どない公園入り口付近で禁書目録に声をかけた人物はそれよりも厄介な空気を纏っていた。



「――……『禁書目録』だな?」


「――え?」


突然呼ばれて振り返るが、そこには誰もいなかった。


「………?―――ッッ!!?」


瞬間、後ろでバチッ!と音がした。……その音を聞いた途端、禁書目録は意識を失った。


倒れた禁書目録を抱え、『謎の人物』は付近に停めてある車に禁書目録を乗せて動き出した。禁書目録は後部座席でスヤスヤと眠る。
他に車に乗っているのは運転している『人物』だけだった。黒マントで全身覆っているが、背の高さや体格からして男性のようだ。
男は、運転しながらどこかに電話をかけ始めた……。



「――俺だ。…『禁書目録』は回収した。今から戻る……思ったより簡単だったな。………あとは……『幻想殺し』か…」



男の車はそのまましばらく走り、やがてどこかのビルの地下へと入っていった……。

868 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/08(火) 18:46:40.41 ID:UfeJ/mM0 [7/15]
何か挟まれて読み辛くなったのでもっかい投下します。




「――……ここ…どこなんだろ…?」


見覚えのない公園、見覚えのない道路。
禁書目録はいつの間にか相当遠くまで来たらしい…。



「………帰ろう…帰って、とうまと話し合うんだ…」



ゆっくりブランコから立ち上がり、公園を出ようとする。
禁書目録は学園都市に入る時に必要な『ID』を持っていない。黄泉川なら何とかなるかもしれないが、他の警備員に捕まったら
色々面倒だ。


――陽も落ちて、人通りが殆どない公園入り口付近で禁書目録に声をかけた人物はそれよりも厄介な空気を纏っていた。



「――……『禁書目録』だな?」


「――え?」


突然呼ばれて振り返るが、そこには誰もいなかった。


「………?―――ッッ!!?」


瞬間、後ろでバチッ!と音がした。……その音を聞いた途端、禁書目録は意識を失った。


倒れた禁書目録を抱え、『謎の人物』は付近に停めてある車に禁書目録を乗せて動き出した。禁書目録は後部座席でスヤスヤと眠る。
他に車に乗っているのは運転している『人物』だけだった。黒マントで全身覆っているが、背の高さや体格からして男性のようだ。
男は、運転しながらどこかに電話をかけ始めた……。



「――俺だ。…『禁書目録』は回収した。今から戻る……思ったより簡単だったな。………あとは……『幻想殺し』か…」


男の車はそのまましばらく走り、やがてどこかのビルの地下へと入っていった……。

869 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/08(火) 19:05:53.99 ID:UfeJ/mM0 [8/15]
――上条達は、突然現れた黒マントを着た若い男に警戒心を抱く。





上条「元…魔術師だと…?」

垣根「魔術……?」

打ち止め「……なにそれ?ってミサカはミサカはきょとんと首を傾げてみたり」

一方通行「オマエ、『それには及ばない』つったな?そりゃァどォいう意味だ?」

若い男「『禁書目録』を捜す必要がない…という事ですよ」

上条「!!?――テメェ!インデックスをどうしたッ!?」

若い男「先ほど『回収した』と連絡を受けました。そして、『幻想殺し』の少年。あなたも来てもらいます」


――男は上条を指さした。


上条「………テメェ…俺とインデックスに何の用だ…?」

若い男「『戦争の後始末』を手伝ってもらうだけですよ……言っておきますが、あなたに拒否権はありません。
無理にでも来てもらいます」

上条「……断るっつったら?」

若い男「…その時は、痛めつけるまでです―――」


フッと男の姿が消える。


上条「――!!?」


男は一瞬で上条の後ろに移動し、手刀を上条の後ろ首に向けて放つが……男のその手は間に割ってきた『羽』に止められる。



「――!!」

870 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/08(火) 19:33:28.57 ID:UfeJ/mM0 [9/15]
「……おや」と男はさほど驚く様子もなく手を引っ込める。
『羽』の正体は垣根の『未元物質』だった。背中から細長いサーベルのような翼を生やした垣根はしてやったり…と男を見る。


「――何だかよく分かんねえけどよぉ……人を無視して勝手に話進めないでくんねぇ?すげえムカつくから」



男が垣根に目を向けた途端、男の体が吹き飛ぶ。電極スイッチを入れた一方通行が空気のベクトルを変換させ、男を吹き飛ばしたのだ。
そのまま男は離れた雑木林まで吹っ飛び、大木に衝突する。



「――同感だァ。このメルヘンはともかく、この俺の存在忘れてンじゃねェよ。『四下』がァ」



二人の超能力者が上条の前に立ち、肩を並べる。

男はさしてダメージを受けている様子もなく、平然と林から出てきた。


上条「――な!?……全く効いてねえだと…?」

一方通行「ほォ……オイ、打ち止めァ。オマエは離れてろ」

打ち止め「はーい!ってミサカはミサカは緊急退避!」



――打ち止めが安全な場所まで下がり、上条は二人の間に出た。



垣根「野郎…スマシやがって……とりあえず、あいつシメ上げようぜ」

上条「あぁ、インデックスの居場所を吐かせてやる…」

一方通行「……ケッ、足引っ張ンなよ。三下共ォ!――」

上条「おう!――」

垣根「ったりめえだ!――」



――三人は揃って男に向かって飛び出した。

876 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/08(火) 20:05:53.55 ID:UfeJ/mM0 [10/15]
―――向かってきた三人に、男は余裕の笑みを浮かべる。



「用があるのは『幻想殺し』だけです。お友達は引っ込んでてもらいますよ!――」



男はそう言って両手を前に出した。その両手は何やら赤く光り始めた途端、大きな赤い光のかたまりとなって三人を襲った。



一方通行「――ッッ!!何だこりゃあ!?」

垣根「――!!」

上条「――おぉぉぉおおおおッッ!!!」バッ


一方通行と垣根の前に出た上条が咄嗟に男の両手から放出された赤い光の玉に右手を伸ばした。
右手が玉に触れたその瞬間……玉は蒸発したかのように消滅した。



「――!!」



これには流石に驚いたのか、男の余裕の笑みが消える。



「………バカな……『幻想殺し』は魔術と超能力しか消せないのでは……?そ、そんなハズは…」



垣根「――か、上条!?今……どうやって…?」

上条「あぁ……実は――」

一方通行「――説明は後だ三下ァ!」

上条「え?――くっ!?」



男は一気に逆上した。手からは凄まじい量の赤い光を放出している。

878 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/08(火) 20:23:50.57 ID:UfeJ/mM0 [11/15]
「うおおおおおおおおお!!!!――いかに!いかに幻想殺しでもぉぉ!!!我が『破光』が敗れるはずがないぃぃいい!!!!」



上条「………破光…?」

一方通行「…それがあの玉の正体か…」

垣根「あれ……能力じゃ…ねえよな…?」

上条「……魔術でもない……いったいなんなんだ……あれは?」

一方通行「…考えても分かンねェなら、直接訊くしかねェだろ―――来るぞ!!」


「―――!!?」


「うおおおおおおおおおッッ!!!」――バシュゥゥゥウウウウ!!!


男の手から放たれたレーザー光線のように照射された光は三人を飲み込みかけた……が、寸前で上条の突き出した右手が後ろを守った。
さっきと違い、全てを消しきれない。上条は光線を受けつつ、後ずさる……。



「――チィッッ!!」



垣根が未元物質で作った翼を光線を支えている上条の後ろから伸ばす。光線は翼に触れた途端、みるみる押し返されていく。



「――ざぁんねん♪常識知らずな力は俺の専売特許なんだよぉぉお!!!」



そして、一方通行は音速を超えるスピードで横から回り込み、光線を放つ男に一瞬で接近した。



「――ンな危ねェ光撃ってンじゃねェよ。ガキに当たっちまうだろォ」ニヤ…


――ガシッと男の腕を掴む。

883 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/08(火) 20:52:01.92 ID:UfeJ/mM0 [12/15]
「――ぎゃぁぁぁぁああああああ!!!!!」


一方通行「驚くこたァねェだろ?一瞬ちィっと血の流れを止めただけだァ。もげたり逆流させたりしてねェから安心しろよ」



一方通行に腕を掴まれた途端、男の断末魔のような叫びが響く。
光線はその時、一瞬で消え去った。



垣根「――ふぅ…」

上条「――おぉぉぉぉおおおおおッッ!!!!」ダダダダ…



光線が終わり、未元物質を解く垣根の前を上条が走り出す。一方通行は痛みに悶える男の腕を掴んだまま、コッチに走ってくる上条の方を見る。


一方通行「そンなのより、アイツの拳の方がある意味効くぞ。いっぺン喰らってみろよ。ホラ、遠慮すンなって」グイッ


――男を無理矢理立たせる一方通行。


一方通行「歯は食いしばっとけよォ。アイツの一撃は、ちっとどころかかなり響くからよォ――」


上条「――うおぉぉぉぉおおおお!!!」――バキィィイッッ!!!


そして、走り込んだ上条の放つ右ストレートは……綺麗に男の顔面に突き刺さった。



「――グブッッッ!!!!」


垣根「うわぁ……モロ」


一方通行「なァ…効くだろォ。ひゃははははァ!」

885 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/06/08(火) 20:58:02.89 ID:UfeJ/mM0 [13/15]
俺はいいんだが、来た方々が読みにくくなるのが残念……。
ま、埋められたらまた立てるだけですから、スルーで行きます。


892 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/08(火) 21:35:12.29 ID:UfeJ/mM0 [14/15]
>>889 そうなる前に解除したということでお願いします。




――上条達は気絶した男を適当に縛り、話をしていた。内容は、垣根に上条の右手の能力の説明と魔術に関しての説明がメインだった。
といっても上条は魔術師ではないため、体験談をざっと話した程度だが……。



垣根「――すげぇ……にわかには信じがたいな…」

上条「…俺だって最初は信じられなかったよ」

一方通行「っつかよォ、一番信じらンねェのはオマエが羽生やして飛ンでる事じゃねェのか?」

垣根「んだとコラ?未元物質なめんなよテメェ。やっちまうぞ!」

一方通行「オイ、知ってっかァ?そォいうのォ『死亡フラグ』っつーンだぜェ」

垣根「ほぉ……たかだか二回勝ったぐれぇでいい気になりやがって……やっぱテメェムカつく」

一方通行「ケッ、お互い様だボケ!オマエなンか今日も布団で寝てろ」

垣根「あっ!ずりい!今日は俺がベッドだろぉ!?約束が違うじゃねえか!!」

一方通行「はァ?だァれも約束なンてしてませンがァ?」

垣根「うっわ!マジ腹立つ!何今の顔!こんなルームメイトなんて先が思いやられるぜ…」

一方通行「あァ!?激しくコッチの台詞だァァ!!このチンピラ野郎ォ!!――」

垣根「それこそテメェに言われたくねえぞぉ!!何ですかぁその口調!!表は一位で裏はスキルアウトですかぁ!!?――」

打ち止め「まただ…ってミサカはミサカは頭を抱えてみたり……何でこんな仲悪いのこの二人…」



上条「――だぁああもう!!いい加減にしろテメェらぁぁああ!!!」





――男が騒がしさに目覚めるまで、この不毛なやりとりは続いた……。


893 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/08(火) 21:38:09.00 ID:UfeJ/mM0 [15/15]
ここまでにして続きはまた明日!

地上最強VS学園都市最強って面白そうですね!


ここでスクリプト落ちでした
続きます


コメント

No title

ぴぃの人のスレはまとめてない?

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