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紬「私、今、眼鏡橋の下に住んでるの…」梓「えっ!?」

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/26(水) 18:50:25.20 ID:hSva00mI0 [1/46]
最近、ムギ先輩の様子が変だ…みんなと話してるときはいつものムギ先輩だけど

誰も話し掛けていないときは、俯き加減で暗い顔をしている。

唯「ねぇねぇ、ムギちゃん!今日のケーキは何?」

紬「ごめんね、今日はケーキ持って来れなかったの…」

唯「そうかぁ…残念だな」

紬「本当にごめんなさい…」

澪「ムギ、そんなに謝らなくても良いって!それにその分、練習に時間使えるから私は気にしない」

紬「ありがとう、澪ちゃん…」

でも…やっぱり…ムギ先輩の様子は変だ…大丈夫だろうか…


2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/26(水) 18:53:56.49 ID:hSva00mI0 [2/46]
ー数日後ー

唯「えっ!?今日もケーキないの?ムギちゃん…」

紬「ごめんね…ホントにごめんね…」

澪「ちょ!唯!ムギだって善意でケーキ持ってきてくれてるんだぞ?催促するのはおかしいだろ!」

唯「ごめんなさい…」

紬「ごめんなさい…ごめんなさい…」

梓「ムギ先輩、そんなに謝らないで下さい!じゃあ、みなさん練習しましょう!」

最近のムギ先輩はやっぱり変だ…

あんなに綺麗だった髪の毛もなんだかボサボサだし顔色も悪い…

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/26(水) 18:58:04.75 ID:hSva00mI0
紬「あの…」

律「どうした?ムギ?」

紬「あの…みんなに聞いて欲しい事があるの…」

澪「ムギ?」

俯き加減でそう言った、ムギ先輩を見た私達はムギ先輩のただならぬ雰囲気で

部室の空気が重たくなるのが分かった。

そして、私達はいつもの席に座った。

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/26(水) 19:00:16.97 ID:hSva00mI0
紬「あのね…もう、ケーキとか持って来れないと思う・・・」

唯「えっ!?えーーーーっ!」

律「唯!ちょっと黙ってなさい」

紬「ごめんね、唯ちゃん…あのね、お父さんの会社が倒産してしまったの…
だから、もうケーキとか持って来れないの」

律「倒産って…ムギは大丈夫なのか?」

澪「そうだ、ムギは大丈夫なのか?」

紬「家とか色々差し押さえられちゃって…今までの家にも帰れなくなって…」

梓「そ、、、そんな…じゃあ、ムギ先輩、今どこにいるんですか?」

紬「うん…今は眼鏡橋の下で暮らしてるんだ…」

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/26(水) 19:02:28.72 ID:hSva00mI0
澪「ちょっ…眼鏡橋の下って…ムギ、冗談だよな?」

紬「本当の事なの…」

律「マジか…」

唯「でも、ムギちゃん学校来てるよね?」

紬「学校はね、お父さんが高校は卒業しなさいって…それに、今は高校無償化だから…」

澪「でも…ご飯とかどうしてるんだ?」

紬「うん…一応、家出るときにね、お父さんが家にあったお金集めて、私に渡してくれたの…」

梓「でも…ちゃんとご飯食べてるんですか?」

紬「パン屋さんからパンの耳貰ったり、スーパーで半額のお弁当買ったりして、なんとか食べてる…」

律「そうか…でも、なんで眼鏡橋の下なんだ?」

紬「そんなにお金ないし、アパートとか借りるなら保証人とかいるでしょ?
保証人になってくれる人いないし…」


16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/26(水) 19:06:04.87 ID:hSva00mI0
澪「そんな…じゃあ、さわ子先生に保証人になって貰って…」

紬「駄目!さわ子先生に迷惑掛けたくない」

律「だよな…でも、女の子が橋の下に住んでたら、変な事が起こったりしたら大変な事になる」

紬「隣にね、ホームレスのお爺ちゃんが住んでて守ってくれてるから」

澪「そうか、でも、やっぱり橋の下に住むのは駄目だ!それだったら、私達の家に泊まりに来いよ!」

紬「みんなに迷惑掛けたくない…」

律「迷惑って…私達、けいおん部のメンバーで友達で…親友で…」

紬「みんなの気持ちは嬉しいけど、気持ちだけ貰っておくね」

梓「でも、、でも、、やっぱり駄目です…橋の下なんて…」

紬「梓ちゃん…」

そして、その日の部活は終わりました。

帰り道、唯先輩が両親がいないから泊まりに来ないかと誘いましたが

ムギ先輩は断りました。

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/26(水) 19:10:06.84 ID:hSva00mI0
ー眼鏡橋の下ー

紬「お爺ちゃんただいま」

おじ「ただいま、ん?なんだか今日は明るい顔してるねぇ」

紬「うん、学校の友達に全部話したの。そしたらね、なんだか心が少し軽くなって」

おじ「そうかい」

そうして、私は段ボールとかビニールシートで括られた小屋に入りました。

ここに来て、どれくらい経つのかな…2週間ぐらいかな…

だいぶ、ここの生活にも慣れてきたかな…

紬「寒い…もうすぐ冬か…」

帰り道の街路樹も段々と紅葉が始まってきてる…

頑張って、冬を乗り越えないと…

そして、私は小屋の外に出た。

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/26(水) 19:14:44.94 ID:hSva00mI0
おじ「ん?お出かけかい?」

紬「うん。今日はパン屋さんに行って、パンの耳貰ってこようかと思って。お爺ちゃんの分も貰ってくるね」

おじ「それは、ありがたいねぇ」

紬「じゃあ、行ってくるね」

おじ「いってらっしゃい」

そして、私はパン屋さんに向かって歩き出した…回りを気にしながら…

こんな姿、やっぱり知り合いには見られたくない…

パン屋さんからパンの耳を貰って、お店の外に出ると空気はとても冷たくなっていた…

紬「はぁ…寒い…」

口から息を吐くと、昼間とは違い白い塊が風に流されていく…


23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/26(水) 19:15:56.68 ID:hSva00mI0
橋の下に着くと、お爺ちゃんが晩ご飯の準備をしてました。

おじ「おかえり」

紬「ただいま、お爺ちゃん。パンの耳、いっぱい貰ってきたよ」

おじ「そうかい、ありがとうね。寒かったろ?これでも飲んで暖まりな」

紬「良いの?お爺ちゃん」

おじ「ああ、お飲み。パンの耳のお返しだ」

紬「ありがとう、お爺ちゃん」

お爺ちゃんも生きてくのに大変なのに気遣いがととても嬉しい…

お爺ちゃんがいなかったら、多分、今生きてはいないだろう

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/26(水) 19:20:06.53 ID:hSva00mI0
ー数日後ー

梓「もう!お母さんたら、用事があるとか言ってたのに!結局、私に手伝いさせたいだけだったなんて」

私は自転車で近所のスーパーで買い物を終えて帰りを急いでいた。

この時間ても、冬が近いのかとても寒い。

自転車の漕ぐ足を速めたとき、遠くにムギ先輩の姿が見えた。

梓「ムギ先輩?」

紬「え!?あ、梓ちゃん?」

梓「はい!ムギ先輩、何やってるんですか?」

紬「うん…私の住んでる橋近くだから…」

梓「あ…ごめんなさい」

紬「んーん、良いの。気にしないで」

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/26(水) 19:23:12.26 ID:hSva00mI0
梓「はい…どこか行く途中ですか?」

紬「うん。今日は体育があったから銭湯に行こうと思って。お風呂我慢しても良いんだけど、
流石に汗臭かったら回りに迷惑掛かるし…」

梓「…」

紬「あっ、気にしないでね。梓ちゃん」

梓「はい。あの…私の家にお風呂入りに来ませんか?」

紬「えっ…でも、駄目だよ…いきなり行ったら迷惑掛かっちゃう…」

梓「迷惑だなんて思いませんよ!このまま別れたら、気になって夜も眠れません!そっちの方が迷惑です!」

紬「ありがとう…梓ちゃん」

そうして、私はムギ先輩を強引に家へと連れて帰った。

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/26(水) 19:26:01.75 ID:hSva00mI0
梓「ただいま!お母さん!」

梓母「おかえり、梓。あれ、お友達?」

梓「学校の先輩。家のお風呂壊れて銭湯行く途中だから、うちに連れてきちゃった!」

梓母「そうなんだ。じゃあ、お風呂入って貰って」

梓「うん!ムギ先輩、こっちです」

紬「梓ちゃん…ありがとう…ありがとう…」

梓「何ってるんですか!さあ、お風呂はこっちですよ!」

そうして私はムギ先輩をお風呂へと案内した。

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/26(水) 19:31:24.75 ID:hSva00mI0
ーお風呂場ー

紬「暖かい…」

どれぐらいぶりだろ…家のお風呂に入るのは…

梓「ムギ先輩!ちゃんと暖まって下さいね!」

紬「うん…ホントにありがとうね」

私は湯船を汚さないように、念入りに体を洗った。

髪の毛も念入りに…

そうして、お風呂を上がると梓ちゃんが話し掛けてきた。

梓「ムギ先輩、ご飯食べていきますよね?」

紬「えっ!?それは駄目だよ…いきなり来てお風呂頂いて、ご飯まで…」

梓「食べて貰わないと困るんです!お母さん、一杯作り過ぎちゃったから」

紬「梓ちゃん…」

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/26(水) 19:36:24.28 ID:hSva00mI0
梓「決まりです!お母さん、ムギ先輩のご飯もお願いね!」

梓母「はーい!」

そうして私は、梓ちゃんの家で晩ご飯を頂く事にした。

梓ちゃんの優しさが心に響く…

梓「ムギ先輩!口に合いますか?」

紬「うん…とっても美味しい」

梓「良かった!」

暖かいご飯…お味噌汁…体に染み渡る…

梓「ムギ先輩?」

気がつくと、私は涙を流していました。

紬「ごめんなさい…梓ちゃん…」

梓「もう!お母さんあまり料理上手じゃないですけど、いつでも来て下さい!」

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/26(水) 19:41:12.78 ID:hSva00mI0
紬「ありがとうね…ホントありがとうね…梓ちゃん」

梓「鼻出てますよ。はい、ティシュッです」

紬「ありがとう…ありがとう…」

私はムギ先輩に泊まっていかないかと言いましたが、ムギ先輩は流石にそこまで甘えられないと良い

帰って行きました。でも…やっぱり、ムギ先輩が凄く心配だ…

あの泪の意味を考えると、高校生の女の子が一人で橋の下に住むのはとても大変な事なんだろう思う…

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/26(水) 19:48:55.83 ID:hSva00mI0
ー数日後ー

純「おーい!おはよう!梓!」

梓「おはよう、純」

純「なんだか天気悪いよね」

梓「そだね。天気予報だと夕方から大荒れだって」

純「ねー、この時期に大雨とかありえないよ」

梓「うん」

純と話していて、ふとムギ先輩の事が頭を過ぎった。

確か、橋の下に住んでるって言ってたけど、大雨降ったら増水とか大丈夫なのかな。

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/26(水) 19:55:55.52 ID:hSva00mI0
ー放課後ー

部活に行くと、ムギ先輩はいなかった。

正確にはムギ先輩が私達に眼鏡橋の下で生活してるって話してくれてから

あまり、部活に来なくなってしまった。

多分、ムギ先輩なりに私達に気を遣ってくれてるのだろう。

澪「おっ、梓、お疲れ!」

梓「お疲れ様です。今日も、ムギ先輩来てませんね」

澪「ああ、変に気使わなくて良いのにな」

梓「ですよね…」

律「そうだな…よし!明日は無理矢理でも連れてくる!決めた!」

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/26(水) 20:00:00.61 ID:hSva00mI0
澪「そうだな!」

梓「ですね!」

律「それにしても天気悪いな。こりゃ荒れるかもな」

澪「雨降る前に帰るか?」

律「だな。おーい!唯、帰るぞ!」

唯「あーい!」

そうして、私達は帰る事にした。

帰り道、段々と空は暗くなり重い雲が空を覆っていく…

ムギ先輩大丈夫かな…心配だ。

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/26(水) 20:03:12.21 ID:hSva00mI0
家に着いてしばらくすると、外から雨の音がしてくる。

雨音は外が暗くなってくるのと比例するかのように段々と強くなってきた。

窓に打ち付ける雨の音・・・私はふとムギ先輩の顔が浮かんだ。

テレビを付けると、画面には大雨警報が出たとテロップが流れている。

梓「ムギ先輩・・・」

雨の音は滝が流れるかの様な音に変わっている・・・胸騒ぎがする…

梓「お母さん、ちょっと出かけてくる!」

梓母「梓!外は凄い雨よ?」

梓「うん、分かってる!でも、ちょっと行ってくる」

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/26(水) 20:06:23.46 ID:hSva00mI0
私はお母さんにそう答えると外に飛び出しました。

外に出ると凄い雨だ…ちょっと先も雨でよく見えない。

梓「ムギ先輩…大丈夫かな…」

胸騒ぎが止まらない…私は傘を差して走り出しました。

私とムギ先輩が会った辺りの橋と言えば、あの眼鏡橋しかない。

河川敷に近づくと、川からは凄い音がする。

河川敷の横の道を走りながら、横目で川を見ると水位は凄い事になっている。

私は一心不乱で走りました。もう、服はビチョビチョです。

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/26(水) 20:09:44.30 ID:hSva00mI0
そして、眼鏡橋に差し掛かったときです。

ムギ先輩が橋の下から荷物を運び出していました。

梓「ムギ先輩!」

紬「あ!梓ちゃん」

梓「ムギ先輩、大丈夫ですか?無事ですか?」

紬「うん!お爺さんが川が氾濫するかもしれないから避難しなさいって」

梓「そうですか」

紬「まだ、荷物あるから行ってくるね」

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/26(水) 20:13:00.84 ID:hSva00mI0
その時です、上流からサイレンの音がしました。

サイレンが鳴り終わらないうちに、上流からゴゴゴゴゴッと音がしたと思うと

一気に川の水位が上がりました。

紬「いけない…荷物取ってこないと…」

ムギ先輩は土手を下って残りの荷物を取りに行こうとします。

梓「ムギ先輩!危ないです!もう諦めましょう」

紬「駄目!駄目なの!荷物持ってこないと!」

梓「でも、まずいですよ!ムギ先輩に何かあったら大変です!」

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/26(水) 20:16:01.21 ID:hSva00mI0
私はムギ先輩の手を掴みました。ムギ先輩はその手を振り解こうとします。

梓「ムギ先輩!駄目です!」

紬「いやっ!駄目なの!取ってこないと駄目なの!」

梓「でも、危険です!ムギ先輩!」

紬「もう死んでも良いの!でも、あれは私の大事な思い出なの!大事な物なの!だからお願い!」

梓「でも、でも、駄目です!」

私はムギ先輩が橋の下に行かないように、腕を必死に掴んでいたときです。

さっきよりも大きな音が上流からしてきました。

その時です。濁流が橋の下を激しく流れていきました。

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/26(水) 20:20:12.23 ID:hSva00mI0
紬「いやーーーっ…私の…私の思い出…行かないで…」

梓「ムギ先輩…」

私達はしばらく川を見つめていました。

ムギ先輩に掛ける言葉もない…何を話したら良いのか分からない…

川の轟音だけが聞こえる中、ムギ先輩が話し始めました。

紬「梓ちゃん、それじゃあ私行くね…」

梓「えっ!?行くってどこにですか?」

紬「うん…公園のトイレにでも非難しようと思う…」

梓「駄目ですよ!危険ですよ!」

紬「でも…他に行くとこないから…」

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/26(水) 20:25:01.53 ID:hSva00mI0
梓「だったら、うちに来ませんか?」

紬「駄目!それだけは駄目!梓ちゃんに迷惑掛かっちゃう…」

梓「迷惑だなんて…迷惑だなんて思ってません!」

紬「梓ちゃんが迷惑じゃないかもしれないけど、梓ちゃんの両親が迷惑だと思ってたら困る…」

梓「そんな事無いです!そんな事思う親なら、私は家出します!だから、うちに来てください!ムギ先輩!」

紬「でも…」

梓「駄目です!じゃあ、行きますよ!ムギ先輩!」

そうして私はムギ先輩の荷物を持つと、私の家に向かって歩き始めました。

その後ろをムギ先輩は黙って着いてきます。

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/26(水) 20:28:15.64 ID:hSva00mI0
そして私の家の前に着きました。後ろを見るとムギ先輩はオドオドとしてる。

梓「ムギ先輩!入りますよ!」

私は家のドアを開けました。

お母さんが血相を変えて玄関にやってきました。

梓母「梓!心配したのよ!ニュースで川が増水してるとか言っているし」

梓「ごめんなさい。あのお母さん?」

梓母「何?」

梓「友達連れてきたの」

梓母「ん?あっ、この前の紬ちゃん」

梓「うん。泊めてあげて良いかな?」

梓母「何言ってるの!早く入って。もう二人とも雨でビチョビチョ」

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/26(水) 20:30:01.74 ID:hSva00mI0
紬「おじゃまします…」

梓母「入って入って!まあこんなに濡れちゃって!」

紬「すいません…」

梓母「良いのよ!梓、タオル持ってきて」

梓「うん!ムギ先輩、ちょっと待ってて下さいね」

紬「うん…」

そうして、どうにかこうにかムギ先輩を家に入れる事が出来ました。

58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/26(水) 20:34:12.50 ID:hSva00mI0
雨で冷え切ったムギ先輩にお風呂を勧めて私はお母さんと話しました。

梓「あのね、、、お母さん…」

梓母「ん?なに?」

梓「ムギ先輩の事なんだけど…」

梓母「良いわよ!居てもらっても」

梓「えっ!?怒ならないの?」

梓母「起こる理由なんて無いわよ!それに、なんとなく理由も分かるしね」

そうだ…ムギ先輩のお父さんの会社が無くなってしばらくしてから、大々的にニュースでやってたっけ…

60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/26(水) 20:36:03.21 ID:hSva00mI0
梓母「それに、梓は心配なんでしょ?紬ちゃんの事」

梓「うん…」

梓母「良いわよ。居てもらっても」

梓「あ、ありがとうお母さん!」

その時でした。ムギ先輩がお風呂から上がってきました。

梓「ムギ先輩!喜んで下さい!ずっとうちにいても良いですよ!」

紬「えっ!?駄目だよ…」

梓「お母さんが居ても良いっていってくれたんです!だから、ずっと居て下さい!」

紬「でも…でも…」

梓母「紬ちゃん。良いのよ、居てもらっても。困ったときはお互い様だし。
それに駄目って言ったら、梓が何するか分からないし…ふふふっ」

62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/26(水) 20:39:10.99 ID:hSva00mI0
紬「あの…あの…ホントに良いんですか?迷惑じゃないんですか?」

梓母「うーん…じゃあ、紬ちゃんが大人になったら少しずつで良いから返してくれたらそれで良いわ…」

紬「あの、なんて言ったら良いのか…ありがとうございます…」

私はムギ先輩に抱きつきました。もうどこにも行かないで下さい…

そんな気持ちで一杯でした…

梓母「じゃあ、梓は早くお風呂に入ってきなさい!」

梓「うん!」

私は急いでお風呂に入ってきました。お風呂から出てリビングに行くとムギ先輩はなんだか堅くなってソファーに座っています。

梓「ムギ先輩?なんだかガチガチですよ?」

紬「だって…私…」

梓「リラックスですよ!じゃあ、私の部屋に行きましょうか?」

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/26(水) 20:43:52.00 ID:hSva00mI0
紬「うん…」

私の部屋に行くと、ベットの下にお布団が敷いてありました。

多分、お母さんが敷いてくれたんだろう。

梓「今日からここがムギ先輩の蒲団です」

紬「うん…梓ちゃん…ホントに良いの?私、梓ちゃんの家にいて…」

梓「もう!またその話ですか?良いです!居て下さい!私、ムギ先輩みたいなお姉ちゃんが欲しかったんです」

紬「梓ちゃん…ありがとう…」

梓「ムギ先輩、今日は一緒に寝ませんか?」

紬「うん…」

私とムギ先輩は私のベットで一緒に寝る事にした。

私はベットに入るとムギ先輩に抱きました。

68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/26(水) 20:47:00.85 ID:hSva00mI0
紬「梓ちゃん?」

梓「ムギ先輩、どこにも行っちゃ嫌ですよ?」

紬「うん…安心して、どこにも行かないから…」

そうして私達は一緒に眠りました。

ムギ先輩は私の家にいることになりました。

ムギ先輩は最初こそ緊張していましたが、段々とお母さんやお父さんとも仲良くなっていきました。

けいおん部にも来るようになり、昔のムギ先輩のように元気になっていきました。

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/26(水) 20:51:05.60 ID:hSva00mI0
そうして、年が明け…段々と暖かくなり、ムギ先輩達の卒業式がやってきました。

梓「今日は卒業式ですね!ムギ先輩!」

紬「うん…ありがとうね、これも梓ちゃんのおかげだよ」

梓「そんな事無いですよ!卒業できるのはムギ先輩がちゃんと勉強とかしたからです!
私は、唯先輩が卒業できる事の方が不思議です!」

紬「もう、梓ちゃんたら。唯ちゃんに言いつけちゃうぞ!」

梓「あーっ、駄目です!秘密にしといて下さい」

紬「うん!」

梓「へへへっ」

リビングに行くと、お母さんとお父さんがいました。

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/26(水) 20:54:28.51 ID:hSva00mI0
梓母「おめでとう、紬ちゃん!」

梓父「おめでとう」

紬「あ、あの…なんて言ったら良いのか…ありがとうございます」

ムギ先輩は両親の言葉で泣きそうになりました。

梓「ムギ先輩?泣いちゃ駄目ですよ!泪は卒業式まで取っておかないと!」

梓母「そうよ?今泣いちゃったら、卒業式の時に流す泪なくなっちゃうわよ?」

紬「はい…ありがとうございます…」

そうして、私達はみんなで朝食を取りました。

そして私達は、卒業式が行われる学校へと向かいました。

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/26(水) 20:58:04.85 ID:hSva00mI0
梓「あーあ、こうやってムギ先輩と学校に行くのは今日で最後なのか…」

紬「そうだね…ありがとね…梓ちゃん…」

梓「もう、また暗い顔してますよ?今日は卒業式なんですよ!お祝いなんですよ!」

紬「うん、、、そうだね」

梓「だから、暗い顔したムギ先輩なんて見たくないです!」

紬「ごめんね…」

梓「あの…ムギ先輩…」

紬「何?梓ちゃん」

梓「その、手繋いでも良いですか?」

紬「うん、、、良いよ」

私はムギ先輩と手を繋ぎました…ムギ先輩の手はとっても温かい…

私はずっとずっとムギ先輩と一緒にいたいと思いました。

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/26(水) 21:02:45.30 ID:hSva00mI0
学校に着き、ムギ先輩と別れました。

そうして、時間は過ぎて卒業式が始まりました。

私は先輩達と過ごしたけいおん部での2年間と、ムギ先輩と一緒に暮らした半年間の事を思い出し泣きそうになりました。

卒業式が終わり、私達は教室へと戻りました。

純「梓はけいおん部に行くの?」

梓「うん!ムギ先輩と帰りたいし」

純「先輩達も卒業かぁ・・・会えなくなるんだね・・・」

卒業式が終わっても私はムギ先輩と一緒の家に帰り、ずっと一緒だ

なんだか優越感を感じる。


76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/26(水) 21:04:33.22 ID:hSva00mI0
純「じゃあ、私、ジャズ研に行くわ!」

梓「じゃあね、純!」

私はけいおん部の部室へ向かう事にした。

家に帰ったら、ムギ先輩の卒業パーティーをしよう・・・

ムギ先輩とはずっと一緒だ・・・なんだか、心が躍るのが分かる。

私はけいおん部の部室の前に着き、呼吸を整えるために大きく深呼吸をして。

そして、部室のドアを開けます。

77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/26(水) 21:08:48.53 ID:hSva00mI0
梓「みなさん!卒業おめでとうございます!!」

でも、、、そこには、、、

あれ??ムギ先輩の姿がない・・・いつもの席にムギ先輩がいない・・・

梓「あ・・・あの、、、ムギ先輩は・・・?」

律「ムギなんだけど・・・なんだか用事があるとかでな・・・」

意味が分からない・・・用事って何?ムギ先輩の用事って何?

澪「梓?」

嫌な予感がする・・・

唯「あずにゃん・・・落ち着いて!」

震えが止まらなくなる・・・

梓「す、すいません・・・私も用事が出来ました・・・失礼します・・・」

80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/26(水) 21:14:47.13 ID:hSva00mI0
私は部室を飛び出すと走り出しました。

嫌だ・・・ムギ先輩がいなくなるなんて嫌だ・・・

ずっと一緒にいたい・・・ムギ先輩とずっと一緒に・・・

家までどうやって帰ってきたのか分からなかった。

家の前で呼吸を整えていると、膝は擦りむいてるしコートもドロドロだ。

私は家のドアを開けました。

梓「お母さん!ムギ先輩わ!」

梓母「紬ちゃん?さっき帰ってきて、ちょっと出かけるって!」

私は自分の部屋へと急いだ。ムギ先輩がうちに来てから一緒にすごした自分の部屋へ

部屋のドアを開けて、部屋の中を見渡すとムギ先輩の荷物が無くなっている・・・

やっぱり、私の嫌な予感が当たってしまった・・・

81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/26(水) 21:18:47.69 ID:hSva00mI0
梓「嫌だよ・・・いなくならないでよ・・・ムギ先輩・・・」

泪が溢れ出す・・・心に大きな暗い空道が出来ていくのが分かる・・・

梓「嫌だよ・・・嫌だよ・・・ムギ先輩・・・ムギお姉ちゃん・・・」

私はずっとムギ先輩と一緒にいれると思っていました。

ムギ先輩みたいなお姉ちゃんが欲しかった・・・でも、、、もう、その夢は叶わない・・・

梓「えっ・・・ぐえっ・・・お姉ちゃん・・・」

私は泪で霞む目を机に向けると、可愛い封筒が目に入りました。

その封筒を手に取り中を見てみると手紙が入っていました。

82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/26(水) 21:23:19.57 ID:hSva00mI0
『梓ちゃん・・・黙って出て行く事を許して下さい。梓ちゃんのおかげで無事に高校を卒業することが出来ました。

ホントに梓ちゃんと梓ちゃんのお母さん、お父さんになんてお礼を言ったら分かりません。

ずっと梓ちゃんと一緒にいたいけど、これ以上甘えるわけにはいかないと思って出て行く事にしました。

最後に梓ちゃんに会ったら決心が鈍りそうだったので、黙って出て行く事にしました。

本当にごめんなさい・・・

梓ちゃん、ホントに今までありがとうね。なんだか妹が出来たみたいでとっても嬉しかった』

ムギ先輩も私と同じ気持ちだったんだ・・・でも、居てくれないと・・・ずっと一緒に居てくれないと・・・

私は階段を下りて、急いで玄関へと向かいました。

87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/26(水) 21:30:06.26 ID:hSva00mI0
玄関で靴を履いてるときです、お母さんが話し掛けてきました。

梓母「梓!紬ちゃんの気持ちも考えてあげなさい!」

私は振り返ります。

梓「でも、でも・・・嫌だよ・・・ずっと一緒にいたいよ・・・」

お母さんは深い溜息を一つ着きました。

梓母「今、紬ちゃんを追ったら梓の我が儘で紬ちゃんをただ困らせる事になるんだよ!」

梓「でも、でも、でも・・・」

私はお母さんの言葉で玄関で泣き崩れる事しかできませんでした・・・

ーおしまいー

96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/26(水) 21:40:40.01 ID:hSva00mI0
ーエピローグー

私は高校3年生になりました。

桜が散る頃、私はお母さんとお父さんに呼ばれました。

梓「何?お父さん、お母さん・・・」

ムギ先輩がいなくなってから、私は両親と上手くいってない・・・

梓父「そこにちょっと座りなさい・・・」

梓「話す事なんて無い・・・」

梓母「良いから、座りなさい!」

私は渋々席に着く。

100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/26(水) 21:44:59.80 ID:hSva00mI0
梓母「紬ちゃんの事なんだけどね」

えっ!?ムギ先輩の事??どういうこと?

梓「紬ちゃんなら、ちゃんと生活してるわよ」

えっ!?ホント?でも、どうして・・・?

梓母「梓、ごめんね。紬ちゃんはちゃんと働いて生活してるから」

梓「分かんない・・・どうして今更教えるのよ・・・」

梓母「だって、あの時に梓に言っても聞いてくれなかったでしょ?
ちゃんと話しても、紬ちゃん連れ戻したでしょ?」

確かに・・・私はムギ先輩とずっと一緒にいたかった・・・だから、ムギ先輩を見つけて連れ戻すつもりだった。

101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/26(水) 21:49:36.25 ID:hSva00mI0
梓「うん・・・」

梓母「だからね、あの時は言わなかったの・・・ごめんね、梓」

梓「お母さん・・・」

その後、お母さんとお父さんからムギ先輩の話を聞いた。

家も借りて、ちゃんと働いて頑張ってる。

実は、ムギ先輩が借りた部屋の保証人にもなってるらしい・・・

梓「お母さん、ムギ先輩に会いたいよ・・・」

梓母「うーん、それは、紬ちゃんに任せましょう?ね?」

梓「でも・・・」

梓母「大丈夫!紬ちゃんはちゃんと梓に会いに来ると思うから。
ただ今は、生活するのに大変なんだと思うよ?
紬ちゃんに余裕が出来たら、必ず梓に最初に会いに来ると思うよ?ね?」

梓「うん・・・」

105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/26(水) 21:56:10.38 ID:hSva00mI0 [46/46]
そうかもしれない・・・今、ムギ先輩に会ったら私はムギ先輩とまた一緒にいたくなる・・・

それはただ、ムギ先輩を困らせる事になる。

だから今は待とう・・・ムギ先輩が私に会いに来てくれるその日まで・・・

それまで、私は少しでも大人になるように頑張ろう・・・

次、ムギ先輩に会ったときは、新しいけいおん部の事とか唯先輩達の事とか一杯話そう・・・

ーほんとにおしまいー

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