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唯「放課後てぃーたいむとらべらー」-3

唯「放課後てぃーたいむとらべらー」-2
続きです

426 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/25(土) 23:30:06.34 ID:qiiXSArn0 [183/188]
2010年5月8日

澪「……」

律「……み、お」

澪「ひっ!? ってなんだ律か……なに暗い声だしてるんだ?」

またタイムスリップしてきた。
いつ澪が死んでしまうのか気が気でない。
澪に話しかけることだって今の私には怖かった。

律「帰るの……?」

澪「さっきもそう言ったじゃないか。用があるって」

律「用って? 用ってなんなんだ?」

この用事のせいで澪は帰らなきゃいけなくなるんだ。
澪が死ぬのはこの用事のせいだ。ということはその用事を澪から断てばいいんだ。

澪「律に言う必要ないだろ」

律「教えろっ!!」

澪「!」


427 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/25(土) 23:35:03.91 ID:qiiXSArn0 [184/188]
澪「り、律……怖いよ……」

律「悪かった。ごめん……」

律「でも、教えてくれないか? どうしても知っておきたいんだ」

澪「えー……んん」

律「頼む」

頭を下げて必死に懇願する私。
澪は困ったように私を見て。

澪「別に、大した用じゃないよ」


428 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/25(土) 23:40:06.07 ID:qiiXSArn0 [185/188]
澪の用事は本当に些細なことだった。

髪を切りにいく。

長髪に飽きたというか、イメチェンを図ろうとしていたんだ。

澪「美容院に予約入れといたんだ。だから急いでたんだよ」

律「そんな……」

私にとってこれは些細なことなんかじゃない。
私は澪の長くて艶がある髪が大好きだった。

律「いいじゃんか! 長いままで!」

澪「これが意外と面倒なんだよ。それに昔からずっとこのままだったし」

律「……いつ美容院に予約したんだ?」

澪「一昨日の夜かな。それじゃあ、そろそろ私……」

律「ほ、本当に切っちゃうのか? やめようよ……」

澪「律には関係ないだろ、私の髪のことなんて。それじゃあ」

律「あ……」

私の言うことを適当にあしらって澪は行ってしまった。


429 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/25(土) 23:45:04.87 ID:qiiXSArn0 [186/188]
2010年5月6日

8日からタイムスリップしてきた。もう日も暮れてきている。

部室から出た私はすぐに澪の家へ向かった。
呼び鈴を鳴らすと、しばらくして澪が現れる。

澪「律、どうしたの?」

律「あ、えっと……」

澪「?」

律「わ、私ね……澪の」

澪「私の?」

律「長い髪が……大好き」

澪「はぁ?」


433 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/25(土) 23:50:17.13 ID:qiiXSArn0 [187/188]
澪「とにかく上がりなよ」

何も聞かずに私を家の中へ通してくれる澪。
部屋に着くと私はベッドの上に座った。ここが私のいつものポジションなんだ。

澪「で?」

律「え……?」

澪「さ、さっきの……その、私の髪が……なんたら……」

赤面してもじもじとする澪。
あいかわらず照れ屋だ、澪は。

律「澪、その髪……切る気だろ?」

澪「え!? 律に話したっけ?」

律「あ……その、なんとなく」

澪「?」

律「ほ、ほら! 幼馴染……だし」

澪「……そっか」

一言そう言って、微笑んでくれる澪が眩しかった。


437 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/25(土) 23:59:52.99 ID:qiiXSArn0 [188/188]
律「なにか悩みでもあったのか? し、失恋?」

澪「ううん、別に」

澪「ただイメージ変えてみたいな、って」

澪が話してくれたことはタイムスリップ前に私に言ってくれたこととまったく同じだった。
澪は雑誌を手にとって広げ、私に可愛らしい髪型をしたモデルの写真をにこにこと見せてきた。

律「澪は、こんな髪型が好きなんだ」

澪「いいと思わない? ……似合わないかなぁ」

律「そんなことないよ。澪はなんでも似合うと思う」

言ってからハッとした。これじゃあ髪型を変えることに賛成してるようなものじゃないか。
私からそう言われた澪を満更でもなさそうに喜んでくれた。

澪「律がそう言うなら――――」

律「でも!」

439 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 00:05:08.04 ID:3WFb6kmJ0 [1/163]
澪「え?」

律「でも」

律「私はやっぱり、今の長い髪のが……好きだし、似合ってると思う」

澪「……そう?」

律「……うん」

澪はしばらく、じっと黙って考え、私を見てこう言った。

澪「じゃあこのままにしとくよ」

律「え」

澪「なんだよ、ダメなのか?」

律「ダメとか……いや、その」

律「いいの? 私からそんなこと言われただけでやめちゃうなんて……」

澪「律のセンスに任せるってことだ」

人指し指をピンと立て、そう私に言ってみせる澪。
偉そうにしているその姿がやけに愛らしくて、抱きしめたくなった。

442 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 00:10:02.17 ID:3WFb6kmJ0 [2/163]
律「……澪、お前って」

澪「うん?」

律「かっわいいなっ!」

澪「ななな、なにっ、いきなり!?」

律「でも本当によかったのか?」

澪「しつこいなぁ。いいよ、切らない」

澪「律が切らないで、って言ってるんだし」

律「そっ、か……澪は単純だな!」

澪「なんだと!」

律・澪「……ぷっ」

律・澪「あはははははっ」


448 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 00:15:02.24 ID:3WFb6kmJ0 [3/163]
澪「ほんとに帰っちゃうのか?」

律「うん。もう遅いし。家の人にも迷惑かけちゃうだろ」

澪「そんなことは」

律「それじゃ、澪! おやすみ。また明日な!」

軽く手を振って、その場を後にする。

これで、澪の明後日の用事はなくなった。
一人で帰ることなく、私たちと一緒にいつもの変わらない時間を過ごせる。
助かるはずだ。今度こそ。

律(しっかし……)

律「自分んちに帰るわけにはいかないよな」

この時間には私が二人いることになる。もちろんこの時間から見れば私の存在の方が異端だ。
なにせ未来から来たんだからな。

……つまり、私には今帰る家がない。


450 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 00:18:01.93 ID:3WFb6kmJ0 [4/163]
澪が無事に9日を過ごすことを確認しなきゃ、もとの時間に帰るに帰れない。

律(11日だったよな、元の私がいた時間は)

律「とりあえず9日までどこかに……」

サイフを忘れてきた私にホテルに泊まる、という手段はなかった。
誰かの家に泊めてもらうにしても、もしものことを考えるとそんなことはできない。
とすると……。

律「野宿、か」

そこらの公園に入ると、トンネルが掘られた小山を見つけた。
ここなら雨風も少しは凌げるし、人目にもつかないはず。
トンネルに入って腰を下ろした私は一息ついて、澪の家での出来事を思い出す。

律「澪の笑顔はやっぱり好きだ」

澪の笑顔を思い浮かべると、同時に澪の死に顔も浮かんだ。
それを忘れようと必死に頭を振った。

律「あんなの認めない! 澪は死なないんだ。絶対……」

膝を立てて、体を丸めた私は溢れる涙を止めようと腕に目頭を押さえつける。
漏れる泣き声を押し殺し、涙を静かに流し続ける。止まらないんだ、これが。
この日の夜は流れる時間がとてもゆっくりに感じた。


452 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 00:23:05.11 ID:3WFb6kmJ0 [5/163]
2010年5月9日

私はこの日が来るまで待ち続けた。
澪の運命が決まる日だ。

放課後になったことを見計らって学校にこっそり忍び込み、部室をドアガラスから覗く。
いた……澪がいた。私たちと楽しげに談笑している。
その姿が見れただけでも私は安心することができた。

律(澪……よかった)

すると、中から澪の声が「ちょっとトイレに」
その声を聞くとすぐに私は階段を下り、隠れた。
しばらくすると澪が一人で階段を下りてきて、トイレに向かったのが見えた。
私はこっそり澪の後を追い、トイレの前で待ち伏せた。
出てきた澪を驚かせやろうという魂胆だ。

律(澪のやつ、きっと驚いて腰抜かすぞー。あ、でもショック死したりしないよな……)


453 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 00:28:03.88 ID:3WFb6kmJ0 [6/163]
しばらくして、澪がトイレから出てきた。
水場で手を洗って、部室に戻ろうとしたところを……

律「みーおっ」

澪「律? どうしたの」

律「ちょっとねー」

澪「なんだよ?」

律「えへへ……」

澪「変な律。ほら、部室に戻るぞ」

律「え、ああ、うん」

さすがにこのまま一緒に戻るわけにはいかない。
てきとうなところで逃げだそう。

……よかった、澪が無事で。


454 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 00:33:09.27 ID:3WFb6kmJ0 [7/163]
澪「……」

律「?」

突然澪が立ち止まり、無言になる。
そんな澪の顔を覗き込むと――

澪「っ」

澪が胸を抑えて、こと切れた様にその場で崩れた。
どさっとした音に何が起きたかわからなかった私は唖然とする。

律「澪……?」

澪「  」

律「おい、私を驚かせようってか? 変な冗談はよせよ」

澪「  」

律「もういいって、わかったよ。驚いたって。私の負けだよ」

澪「  」

律「だから……起きてくれ……ねぇ、みおぉ……」


458 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 00:38:08.51 ID:3WFb6kmJ0 [8/163]
澪はまた死んだ。

澪の死を確認した私は朦朧としながら、時間が流れるのをてきとうな教室で待ち、
部室へ戻った。
もちろんまたタイムスリップするためだ。

澪を助けるため、私は何度でも時間を遡って、考えうる手段全てを試した。

……全部だめだった。

澪は助からなかった。

何をしても助かることはなかった。

だけど、何度も澪の死を確認してあることに気がついた。


461 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 00:43:30.53 ID:3WFb6kmJ0 [9/163]
>>460 書いてない

澪が死ぬ時間は決まって16時14分。

これを知ったと同時に私は絶望した。
どうあがいても澪が死ぬ運命に。

律「どうして澪がこんな目に……」

冷たくなった澪をやさしく抱えてすすり泣く。

律(私が今までしてきたことは全部無駄だったのかな)

――Prrr、Prrr

私のポケットの中から着信音が鳴り響く。
携帯を取り出して無意識に通話ボタンを押して、片耳に携帯をあてる。

『もとの時間に一度帰って来なさい。教えることがあるの』

どこか聞き覚えがあるような声だ。
その言葉を頼りに私は私の時間へ跳んだ。


462 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 00:48:01.51 ID:3WFb6kmJ0 [10/163]
2010年5月11日 軽音部室

戻ってきた私を迎えてくれたのは

さわ子「おかえり、りっちゃん」

さわちゃんだった。

律「……なんだよ」

さわ子「よく今まで頑張れたなと思うわ。あなたのこと」

無表情のまま私を見据えて、淡々と喋るさわちゃん。
その姿からはいつものさわちゃんを感じさせられなかった。

さわ子「でもね、そもそもの原因はあなたなの。りっちゃん」

私?

さわ子「あなたが自分で、澪ちゃんが死んでしまう世界へ変えてしまったの」

さわ子「なにもしないで過去から帰ればよかったのに。好奇心に負けてしまったあなたは」

何を言っているかわからない。

さわ子「――ホワイトボードの落書きを消してしまった」

律「!!」


463 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 00:53:03.70 ID:3WFb6kmJ0 [11/163]
思いだした。
あの時……5月4日私はもう一人の私と会った。
そこで言われたことを思い出す。

「落書きを絶対に消すな」

さわ子「あなたがもといた時間と過去で矛盾が生じるとね、その矛盾を消すためにもう一つの世界が生まれるの。そしてその世界へ移る、いわゆるパラレルワールドよ。運が悪かったことにあなたが辿り着いた世界は澪ちゃんが5月9日16時14分に死ぬという運命が存在していたの」

律「た、たった落書きを消すだけの行動ってだけで!?」

さわちゃんは何も言わずにこくりと頷く。

律「それだったら私は――ううん、未来の私だって澪の机の中に落書きを書いた紙を!」

さわ子「もちろん。その行動でだって十分パラレルワールドができるわ。つまり、あなたが何もしなくても未来のあなたがすでに……」

律「そんな……」

さわ子「そして追い打ちにあなたはホワイトボードの落書きを消した」

律「……いや、でもおかしいぞ!」

律「私が落書きを消す前に未来の私が現れたんだ! それはどういうことだよ!?」


464 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 00:56:41.01 ID:3WFb6kmJ0 [12/163]
さわ子「消す前に現れた、ということはもう既にあなたはそれを消すということが確定していたの。だからこの未来のあなたが現れた」

さわ子「すぐにもとの時間へ帰らなかった時点でもう……」

律「あ……ああ……」

なんてことだ。
澪を殺したのは他でもない――

律「――私、だったんだ」

その場に崩れた私は全てを知った様に語るさわちゃんに縋った。

律「助けて、助けて……さわちゃん」

さわちゃんは何も言わずに悲しげに首を横に数回振る。
そして、

さわ子「あなたのせいだなんて言ってごめんなさい。全ては私の責任だった……私がいけなかったのね……」

悲しげにタイムマシン……ギターを見つめ、一筋の涙を流す。

律「……どういうこと、だよ」

さわ子「……」

それ以上さわちゃんが口を開くことはなかった。


465 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 01:00:01.39 ID:3WFb6kmJ0 [13/163]
無言で立ちあがった私は、タイムマシンのもとへ。

さわ子「無駄よ」

無視する。

さわ子「もうやり直せないの」

無視する。

さわ子「落書きを消す自分を止めにいくんでしょう」

律「ちょうど今の時間ぐらいにそうしようとしてたからね」

さわ子「止められないわ。絶対」

律「やってみなきゃわからないだろ!?」

さわ子「わかってるの」

律「うるさい!!」

慣れた手つきで弦を一本、一本鳴らしていく。

ポーン、ポーン、ピーン…

さわちゃんの声が聞こえた。
「ごめんなさい」って。


470 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 01:05:11.70 ID:3WFb6kmJ0 [14/163]
2010年5月4日 軽音部室

「とりあえずホワイトボードの落書き全部消しとくか」

いた、私だ。
なんてバカなことをしようとしているんだ。
それは澪を殺すことなんだぞ。

やめろ……やめろ……

律「やめろ!」

「え?」

何マヌケな声だしてんだ。

「だれ―――――っ!?」

私だよ。

「う、うそだろ……」

うそじゃねーよ。

律「いいか、それを消すなよ……絶対に消すなよ」

「フリ……?」


472 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 01:11:14.69 ID:3WFb6kmJ0 [15/163]
今思い出した、和ちゃん誕生日おめでとう!

「ってそれどころじゃない!」

そうだよ、それどころじゃないんだ。

「お前なんなんだよ!?」

律「……」

こいつっ。

「その顔……」

律「私は未来から来たあんただよ。田井中律」

「うそ……」

律「うそじゃない。それよりも」

律「それを……落書きを絶対に消すな」

ジリジリと過去の私に近づきながら、制止を試みる。

「な、なんだよ……いきなり現れてそんなこと言われても」

うるさい! 黙れ!

律「黙って言うとおりにしてさっさと元の時間に帰れ!」


474 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 01:15:03.18 ID:3WFb6kmJ0 [16/163]
そう言われた過去の私は顔をしかめる
……と思いきや悪だくみでも考えた様な顔で、

「へー、消したらなんかまずいんだ?」

まずい。まずいんだ。

律「……」

「……えいっ」

やつはホワイトボードの落書きの一つをさっと消した。

律「っっ!? や、やめろぉっ!」

飛びかかり、やつとの取っ組み合いの形になる。
ここでこいつを止めなきゃ、澪は……澪は……!

「なんだよっ、落書き消してるだけだろ!? はなせよっ!」

取っ組み合いの末、肉体的にも精神的にも疲れ切っていた私はやつからあっさり突き飛ばされた。
床に思いっきり体を打ちつけると同時、全身に痛みが走る。


477 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 01:20:07.05 ID:3WFb6kmJ0 [17/163]
律「っ!?」

こんな痛みぐらいと体を動かそうとすると、なんでかな。
体の自由がまったく効かなかった。まるで誰かに押さえつけられてるみたいに。

「ぜーんぶ消してやるからな!」

突き飛ばした私を見るやいなや、勝ち誇った顔で落書きを次々と消していった。

消される……澪が…………澪が消される!

律「か、体が……うごかっ……!」

動け、動けよ私の体!
どうしたんだよ!?

澪が……澪が――――

「ほい、ぜんぶ綺麗に消しちゃったぜー」

479 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 01:25:05.44 ID:3WFb6kmJ0 [18/163]
律「なんてこと……してくれてんだよ」

お前は大切な、大好きな、親友を今殺したんだぞ……。
なにへらへら笑ってんだよ……。

律「ああああああああっっ!!」

「ひっ」

まだだ、まだ私はやれる。

澪のためなら、私はまだやれる。

律「もう一度……もう一度戻らなきゃ……」

「お、おい? 未来の私?」

すぐにタイムマシンを手に取った私は御馴染の動作で1日前へ飛ぶ。
先回りして何とかするんだ。大丈夫、なんとかやれるさ……。

律「待ってろよ……かならず、助けるからな……――――――」

480 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 01:30:04.17 ID:3WFb6kmJ0 [19/163]
結果は何度やったって同じだった。

私は私を止めることができなかった。

先回りしたって無駄だった。
どんなことをしたって最終的には私にホワイトボードの落書きを消される。
力づくで止めようとすればまた何かの力に押さえつけられて終わる。

律「……」

疲れた。

もう疲れたよ、澪。

私もうダメだ。何しても無駄みたい。
もういいよね、澪。私、がんばったよね。

律「みお、みお、みお、みお、みお、みお、みお、みお、みお……」

ピーン、ピーン、ポーン


482 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 01:35:03.71 ID:3WFb6kmJ0 [20/163]
2010年5月3日

唯「じゃあね~」

梓「また明日!」

紬「ばいばいー」

律「おー、んじゃ帰ろっか、澪!」

澪「そうだな」

律「……そうだ、忘れてた!」

澪「え?」

律「明日さ、私に勉強教えてくれよ」

澪「あー、テストも近いしなぁ」

澪「それじゃあみんなも呼んで――」

律「いや! 澪と私の二人っきりがいい~」ギュッ

澪「ばか。……まぁ、たまにはいいか」

律「やりぃー!」


486 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 01:40:23.35 ID:3WFb6kmJ0 [21/163]
律「それじゃあ明日頼んだからな~!」

澪「ふふ、うん。わかったから真面目に勉強しろよ?」

律「まっかせとけって!」

澪「不安……じゃあな、律。また明日」

律「おう! じゃあな!」

律「言ったからには真面目にやらないとな。よし、がんばるぞ――」

――ガシッ。

律「!」

「お前はいいよな。そんな風にいられてさ」


487 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 01:45:03.67 ID:3WFb6kmJ0 [22/163]
律「だ、だれ……だよっ?」

問いかけに答えることなく、そのまま人目がない場所へ連れていく。

律「な、なにする気だよ……大声だすぞっ」

強がってそう言っているものの、その声は震えていた。
目にも涙が浮かんできている。
所詮女か。

律「か、顔見せろよっ……卑怯だぞ……」

私は今、深く帽子を被って俯き加減だ。目元ぐらいなら隠せているだろう。

律「あああ、雨も降ってないのになんでレインコートなんて着てるんだよ……!?」

そう、レインコートを羽織っている。安物だけど、汚れから身を守る程度なら十分だ。

律「その……その、手に……持ってるシャベルは……?」

「もうわかってるだろ」

律「ひっ……」

「返せよ、澪の隣は私のもんだ……お前のじゃない。返せよ」

「返せよっ!!」

被っていた帽子が落ち、私の顔が露わになる。


490 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 01:50:48.72 ID:3WFb6kmJ0 [23/163]
律「!!」

律「わ、わたし…………?」

「返せぇっ!」

――ガツンッ。

手に持ったシャベルで頭に一撃。嫌な感触がシャベルを伝って手に伝わった。
「ぐぇ」と短く言葉にすると、その場でふらつきながら地面にへたり込む。

律「やっ、め……」

「私の場所だぁっ!」

――ガツンッ。

もう一撃。
殴られた箇所は赤黒く滲み、じわりと血が垂れる。

「邪魔だぁっ! お前は邪魔だぁっ!」

――ガツンッ、ガツンッ、ガツンッ。

ピクピクと痙攣しているにも関わらず、私はこいつを殴り続けた。

律「あぐ……げ……」

「はぁ、はぁ……」


493 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 02:00:23.23 ID:3WFb6kmJ0 [24/163]
すぐにその場に穴を掘り、こいつを羽織っていたレインコートごと穴の中へ放りこんだ。
レインコートは所々に血がついている。汚いなんてもんじゃない。

律「あ……ああ……」

「もう虫の息ってところだな。どうだよ、自分に殺される気分は」

返事はない。目だけをを朦朧と動かして私を探している。

「……」

私は澪だけじゃなくて、私すら殺してしまうのか。

だけどこいつを殺せば私がホワイトボードの落書きを消すことがなくなる。

「つまり、澪も助かるってわけだ……」

律「み……お……み、お……?」

澪、という単語に反応したのか。
虚ろな状態でこいつは澪と呼び続けた。

「安心しろよ。これからも私が澪と一緒に過ごすからさ……」

土を被せて、埋めていく。
まだ微かに息はあるみたいだけど、しばらくしたらこいつは死ぬだろう。

「あばよ、大バカ」


495 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 02:05:15.35 ID:3WFb6kmJ0 [25/163]
帽子もシャベルもそこらの雑木林に投げ捨てた。
落ちているバッグを拾い、背負う。

「これでよかったんだ。これで――――」

・・・

・・・

・・・

律「あれ、私……」

ふと気がつくと見知らぬ場所に一人でポツンと突っ立っていた。

律「こんなとこで何してんだ?」

携帯で時間を確認するとだいぶ遅い時間だった。

律「げっ、そろそろ帰らないと」

律「……」

この薄暗くて不気味な場所から早く逃げ出したいと思った。
ここは嫌だ、気分が悪くなってくる。

律「……帰ろっと」


500 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 02:10:05.50 ID:3WFb6kmJ0 [26/163]
2010年5月4日 市民図書館

律「澪ー、全然わかんないんだけど」

澪「だから教えてやってるんだろ……いいか、ここは」

律「……えへへ」

目の前にいる澪の長くて綺麗な髪を撫でる。
窓から入る日の光が髪に当たって、とてもキラキラしているように見えた。
澪はばつの悪そうな顔をするけど、黙ってほっぺたを薄ら赤く染めて、私にされるがまま髪を撫でさせた。

澪「……なんだよ」

律「別に~」

私と澪だけのあたたかい時間がゆっくり、ゆっくりと過ぎていく。
そのゆっくりでさえ、私には早く感じてしまうけれど。
このまま時間が止まっちゃえばいいのになぁ。

澪「――――ねぇ、律の手……」

律「え?」




澪「血の匂いがする――――」

BADEND1

506 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 02:19:10.38 ID:3WFb6kmJ0 [27/163]
>>77から続く

2010年5月8日 平沢家

『ドラえもーん!』

『そうだ! タイムマシンを使おう!』

憂「そんなものが本当にあったら便利なのにね」

唯「むふふぅ」

憂「ん?」

唯(それがあるんだなぁ♪ でもみんなには内緒にしろって言われてるから)

憂「どうかした?」

唯「いいえー(ごめんねぇ憂)」

唯「きっとタイムマシン、いつかできると思うよ!」

憂「うふふ、だったらいいなぁ」


509 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 02:23:02.50 ID:3WFb6kmJ0 [28/163]
唯「憂はタイムマシンがあったら何がしたいの?」

憂「一昨日のスーパーのバーゲンセールに行きたいかも」

唯「えー、そんなもん?」

憂「だめかな?」

唯「過去でも未来でも、どこでも行けるんだよ? もっと色々あるって」

憂「じゃあ未来にいってお姉ちゃんの子どもでも見てこよっかな」クスッ

唯「いるかなぁ」

憂「どうだろうね。きっと可愛いと思うよ」

唯「でも私じゃなくて父親のほうに似てたら?」

憂「それでも可愛いよ」

唯「そっかぁー、よかったぁ」


514 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 02:26:49.38 ID:3WFb6kmJ0 [29/163]
・・・

ガチャリ

唯「ふぁ~……憂とお喋りしてたらもうこんな時間になってたとは」

唯「寝ちゃお、寝ちゃお~!」

唯「あ、でも歯磨きちゃんとしておかないと」

唯「虫歯は無視できない、なんちゃってー……」

ガチャリ

シュッ

?「こ、ここは……」

518 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 02:31:11.02 ID:3WFb6kmJ0 [30/163]
申し訳ないが寝させてちょうだい。ごめんね。
早く起きて朝からちょっとやることがあるの
続きは明日の11時あたりには投下する予定です


549 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 11:06:21.75 ID:3WFb6kmJ0 [31/163]
ガチャリ

唯「よし寝るよー!」

「お休みの前に少しお話させてもらってもいいですか」

唯「……え」

梓「……えっと、こんばんは。唯先輩」

唯「あずにゃーん! あーずにゃーん!」ギュッ

梓「ちょ!?」

唯「寝る前にあずにゃんに抱きつけるとは幸せですなぁ、むふふ」

唯「……あれ」

唯「でもなんであずにゃんが今ここにいんの!?」

梓「気づくの……遅いです」


550 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 11:10:06.52 ID:3WFb6kmJ0 [32/163]
唯「まさか窓から忍び込んだとか! えー、うっそー!」

梓「勝手に変な想像しないでくださいよ!」

梓「いいですか? 私は未来から来た中野梓です。タイムスリップして」

唯「未来あずにゃん!?」

梓「……」

梓「話、進めてもいいですか?」

唯「あ、ごめん! どうぞどうぞ!」

梓「……まずはどうしてここに私が現れたのかを説明します」

梓「私の時間のタイムマシンはもうガタがきてて、ていうか壊れちゃったというか……まぁ、よくわかってないんですけど」

梓「年月日に場所と時間、それらが指定できずにランダムに跳ばされてしまう状態なんです」

唯「……へぇー」

梓(絶対この人理解してない)


552 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 11:15:18.16 ID:3WFb6kmJ0 [33/163]
梓「さっき、勝手に申し訳なかったですけど唯先輩の携帯の日付を確認させてもらいました……2010年の5月8日、間違いないですよね?」

唯「もうすぐ9日になるよ」

梓「それはいいから! 間違いないんですよね!?」

唯「えー……うん」

梓「……ここまでたどり着くまで予想外に苦労しませんでしたよ。運よく最初に辿りつた時間がタイムマシンが正常なときでしたから。あとはある程度皆さんがタイムマシンについて知識があった時間に跳んできたんです」

梓(でもおかしいんだよね……あの時間のタイムマシンは確かに正常だったはずなのにどうしてこんな夜に、しかも唯先輩の部屋に来ちゃったのかな)

唯「……もしかして、あずにゃん。とんでもなく危ないことしてたってこと?」

梓「はい。かなりの賭けだったと思います。でもそれぐらいの覚悟は……」

ギュッ

唯「よかったぁ……あずにゃんが無事でよかったぁ……」

梓「また抱きつく……もぉ、唯先輩は変わりませんね……」


553 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 11:20:13.39 ID:3WFb6kmJ0 [34/163]
唯「でも」

唯「そこまでしてタイムスリップしてやりたかったことって何なの?」

梓「……はい」

梓「そもそも、私は未来の私と言ってもそう遠くに存在する中野梓じゃないんです」

梓「2010年5月24日から来ました」

唯「あれ、ほんとにそこまで遠くないかも」

梓「ここからが重要です。ていうか……これから私が話すこと、信じてくれますか」

唯「あずにゃんがここまで来てウソつくはずないもん。信じるよぉ」

梓「……ありがとうございます」

梓「唯先輩。それに、律先輩に澪先輩、ムギ先輩は……」

梓「5月22日に……4人ともそれぞれ死んでしまいます」

唯「はい?」


555 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 11:25:21.47 ID:3WFb6kmJ0 [35/163]
唯・梓「……」

梓「唯先ぱ――」

唯「またまたぁ~あずにゃんったら冗談キツいんだからぁ~」

梓「冗談じゃありませんっ!!!!」ドンッ

唯「!」

梓「……信じてください」

唯「う、うん……」

梓「このままじゃ、先輩方は死んでしまうんです。死因は……もう覚えてません」

唯「覚えてないって?」

梓「何度も何度も救おうと22日にタイムスリップして皆さんの様々な死に方を見てきましたから……」

唯「うげっ……」


557 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 11:30:34.14 ID:3WFb6kmJ0 [36/163]
梓「22日に死ぬことはもう決まった運命みたいなものなんです。だから救いようもない」

唯「じゃ、じゃあ私たちこのまま死んじゃうのを待ってることしかできないの!?」

梓「そうさせないために私がわざわざ苦労してタイムスリップしてきたんですよ。唯先輩」

唯「あ……そっか! じゃあ方法があるんだね!」

梓「ええ。ただ成功するかはわかりませんけど」

唯「ダメじゃん!」

梓「それしか方法がないから仕方がないでしょう!? グダグダ言わないでっ」

唯「ううっ……」

梓「とにかく、やっとこの話をまともに話すことができる時間の先輩に会えたんです。もうやってもらうしかありません」

唯「い、今すぐ?」

梓「ううん。明日、先輩方にまとめてもう一度この話をしてからです。さすがに唯先輩だけに任せるのは不安だから」

唯(このあずにゃん、いつにもましてビシビシ言ってくるよぉ……)


559 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 11:35:51.53 ID:3WFb6kmJ0 [37/163]
梓「……ごめんなさい。急に色々言われたって混乱しちゃいますよね」

唯「まぁ、よくわかんないけど」

唯「あずにゃんが一生懸命私たちのために頑張ってくれてるんだもん! だったら先輩としてちゃんとそれに応えなきゃ」

梓「唯先輩……」

唯「そういえばみんなに会って大丈夫なの? 未来のあずにゃんが」

梓「タイムマシンのことをこちらの皆さんは既に知ってることだし、大丈夫だとは思いますけど」

梓「ていうか今さらそんなこと気にしてられないし……というかこうして唯先輩に会っちゃってるし」

唯「あ」

梓「心配することはありません。もちろんこの時間の私と会うことになるのも覚悟してます」

梓「私ならきっと大丈夫なはず……はず」

唯「自信ないのぉ?」

梓「うーん……」


560 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 11:40:17.29 ID:3WFb6kmJ0 [38/163]
梓「ところで、私しばらくこの家に寝泊まりしても構わないでしょうか?」

梓「このままじゃ帰るにも帰れなくて……」

唯「うん! いいよ! ていうか大歓迎!」

梓「あ、ありがとうございます!」

唯「でも憂に見つかると色々面倒かなぁ」

梓「見つからないようなところで寝ればいいんです。例えばクローゼットの中とか」

唯「そんなのあずにゃんがかわいそうだよ……いい。一緒に寝よう? 憂に見つかったら私がなんとかしてあげるし、憂だって話せばわかってくれるよ」

梓「まぁ、それはそうかも……ていうか一緒に?」

梓「同じベッドの上で……並んで寝るってことですか?」

唯「あったりめーよ!」


561 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 11:45:16.23 ID:3WFb6kmJ0 [39/163]
・・・

梓(けっきょく)

梓(こうなっちゃうか……)

唯「あずにゃーん、すりすり~」

梓「い、いい加減寝てくださいよぉ……」

唯「もちょっと、もちょっとー」

梓「むぅ……」

唯「……ね、あずにゃん」

梓「え?」

唯「今まで寂しい思いさせちゃってごめんね」


562 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 11:50:34.65 ID:3WFb6kmJ0 [40/163]
梓「そんな……別に……。ていうかこっちの時間の唯先輩は関係ないじゃないですか……」

唯「まぁ、それはそうなんだけど……」

唯「あずにゃんは私たちのためにいっぱい頑張ってくれたんだよね。私、よくわかんないけどほんとに嬉しいんだよ?」

梓「……」

唯「ぜったい、ぜったいのぜったい。私は、ううん、私たちは」

梓「……」

唯「あずにゃんを一人ぼっちになんかさせないから、安心して」

梓「……」

梓「あの」

唯「うん?」

梓「……抱きしめて、唯先輩」

唯「うん」ギュッ


565 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 12:00:07.05 ID:3WFb6kmJ0 [41/163]
2010年5月9日

憂「お姉ちゃーん、朝だよ。起きて」

唯「ん、んー……」

憂「ほら、遅刻したら大変だよ?」

唯「あずにゃ……あーずにゃん…………はっ!」

唯「う、憂!」

憂「え?」

唯(もしかして、あずにゃん見つかっちゃったかな)

唯「ねぇ、憂。あずにゃん」

憂「うん?」


566 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 12:05:09.81 ID:3WFb6kmJ0 [42/163]
憂「梓ちゃんがどうかした?」

唯「え、あ……あれ?」ガサ

唯(なにこのメモ?)

―やっぱり憂にバレて色々説明するのも面倒だと思うので、さきに外に出ていますね。どこかで時間を潰そうと思います―

唯「ありゃ」

憂「なに? そのメモ」

唯「な、なんでもない!」

唯「それより朝ご飯食べようよぉ。私、お腹ぺこぺこ!」

憂「そうだね。じゃ、早く起きてきてね」

唯「はーい」


569 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 12:10:01.27 ID:3WFb6kmJ0 [43/163]
2010年5月9日 教室

唯(未来あずにゃん、どこ行ってるのかなぁ)

紬「唯ちゃん?」

唯「ほえ?」

紬「あの、タイムマシンはこれからどうなっちゃうんだろねって」

唯「そうだねぇ……ムギちゃんはどうなってほしいの?」

紬「誰かの幸せのために使えたらなー……なんて」

紬「本当のこと言っちゃえば、全然わかんない」

唯「私もかな、えへへ」

紬「ふふっ」

紬「タイムマシンって……誰が作ったのかしら?」

唯「へ?」


572 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 12:15:05.24 ID:3WFb6kmJ0 [44/163]
澪「唯、ムギ、おはよう」

律「二人でなに話してたー?」

唯「おはよー。えっと、なに話してたんだっけ」

紬「別に大した話じゃないわ」

律「そう? そういやさ、さっき梓に会ったの。あ、学校の外でな」

紬「えっと、それが?」

律「うん。とりあえず声かけたんだけどさ、私と澪の姿見た瞬間すんごい嬉しそうにして」

澪「ふふ、可愛かったな」

唯「まさか!」

律「ん?」

唯「あ、なんでもないっ」


573 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 12:20:02.44 ID:3WFb6kmJ0 [45/163]
律「んでんで、今度は放課後大事な話があるから覚悟しててくださいって、すんごい真面目な顔して言ってきたのよ」

紬「大事な話……何かしらぁ」

澪「最近部活真面目にしてないから、梓怒ってるのかな」

唯「そ、そんなことないと思う!」

澪「そう?」

律「どうだかなぁ。とりあえずその後梓どっかに走ってっちゃって……あいつ、学校サボる気なのかね」

紬「梓ちゃんはそんなことする子だとは思わないけれど」

律「まぁねぇ……なんだったんだろ、梓のやつ」

唯(たぶんそのあずにゃんって未来あずにゃんだよね……?)


574 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 12:25:18.25 ID:3WFb6kmJ0 [46/163]
軽音部室

ガチャリ

梓「あ……」

紬「あら、梓ちゃんが一番だったのね」

律「梓はやいなぁ、気合い十分ってところか」

澪「梓ごめんな。私たち真面目に練習するから」

梓「え?」

唯「あ、あずにゃん!」

梓「はい!?」

唯「あの話、みんなちゃんと信じてくれるかなぁ」ヒソヒソ

梓「は……?」

梓「……あの、皆さん。さっきからいきなりどうしたんですか?」

「え?」


575 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 12:30:30.11 ID:3WFb6kmJ0 [47/163]
澪「大事な話があるとか朝言ってただろ?」

唯「そうだよ! とっても大切な話でしょ!?」

梓「え? えぇ?」

紬「梓ちゃん?」

梓「む、ムギ先輩?」

唯「あーもうっ! 大丈夫だよ! みんなあずにゃんの話、きっちり聞くから!」

梓「えぇー……」

梓(この人たち……私に何を求めているんだろう)

梓(ま、まさか! 私、試されてる!?)

梓「えっと、えっと……」アタフタ

ガチャリ

梓「遅くなっちゃったかな……あ、みんないる」

律・澪「え」

紬「あ、あれ……あれ?」

梓「私!? 私がもう1人!?」


577 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 12:35:11.83 ID:3WFb6kmJ0 [48/163]
・・・

律「つまり」

律「お前は未来の梓なのか」

梓「はい」

澪「ということは私たちが朝会った梓は」

梓「私ですね」

唯「もうっ、紛らわしいよぉ」

梓「でしょうね……ごめんなさい」

紬「そ、それよりこっちの梓ちゃんが」

梓「あわわわわ……」

律「ん? こっちは今の時間の梓でいいんだよね?」

梓「はっ、はい!」

律(本当に紛らわしいな……)


578 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 12:40:02.28 ID:3WFb6kmJ0 [49/163]
唯「そうだ!」

「?」

唯「じゃんじゃじゃーん!」

梓「シールですか?」

紬「それがどうかしたの?」

唯「これを未来あずにゃんのほっぺに貼りつけると……ほら!」

澪・律・紬「おぉ~」

み梓(未来)「わかりやすくなったのはいいですけど、別にシールじゃなくたって」

唯「でも可愛いよぉ~」

律「似合ってるな、たいへんよくできましたシール」

み梓「……」ムカッ

梓「あ、あの、私のこと忘れてませんよね……?」


580 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 12:49:34.60 ID:3WFb6kmJ0 [50/163]
み梓「それで、皆さん」

梓「それって私も含む?」

み梓「うん」

梓「ほっ……」

律「で、なんだよ? あるんだろ? 大事な話が」

唯「う……」

澪「どうした唯?」

み梓「唯先輩には昨日の夜に説明したんです」

梓「唯先輩の家に行ったの!?」

み梓「それも含めて話すから黙って聞いてて」

梓「うっ……」


582 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 13:00:07.16 ID:3WFb6kmJ0 [51/163]
・・・

澪「――わ、私たちが死んじゃうって……冗談はやめてくれよっ」

み梓「冗談だったらわざわざ未来から来ません」

唯「私は信じてるからね!」

み梓「ふふ、昨日も聞きましたよ」

律「梓がウソをつくとは思えないし、私も信じるよ」

紬「私も」

澪「……うん」

み梓「皆さん……」

律「よかったなぁ、梓。普段からいい子にしてたからこんなこと言われてんだぜー?」

梓「な、なんで私に言うんですか!?」

唯「それで、未来あずにゃん。どうやったら私たちは助かるの?」


584 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 13:05:07.73 ID:3WFb6kmJ0 [52/163]
み梓「えっと、ですね。難しい話になりますけど、とりあえず聞いていてください」

唯・律「はーい!」

み梓(大丈夫かな……)

み梓「これはハッキリとわかっていることじゃなんですけど、恐らく、タイムマシンを初めて使ってから過去でみなさんが色々してきたことで、世界が変わったんだと思います」

澪「変わったって?」

み梓「もちろん。22日に先輩方が死んでしまう世界に」

律「過去を変えたら世界が変わるってのはどういうことなんだ?」

み梓「それについては……まぁ、詳しい人がいますから後で教えてもらってください」

律「詳しい人……?」

み梓「とにかく、どう考えても4人がその日にそれぞれで死んでしまうなんて偶然、おかしいんです。……まぁ、私見も入っちゃってますけど」

み梓「だから、今までに行ってきた過去にもう一度行って、世界を変えてしまった原因を取り除いてくるんです。そうすることができればもしかすると助かる、かも……」

587 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 13:10:16.89 ID:3WFb6kmJ0 [53/163]
紬「確証は持てないのね?」

み梓「で、ですけど! これしか方法はないんです!」

律「なら試してみるっきゃない!」

律「黙って何もしないよりはマシだろ? な?」

み梓「は、はい!」

紬「ところで未来の梓ちゃん。その知識はどこから……」

み梓「それは――」

澪「す、すとっぷ!」

唯「どったの澪ちゃん?」

澪「そろそろ過去の私たちがこの時間に来ると思うんだけど……」


590 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 13:15:12.15 ID:3WFb6kmJ0 [54/163]
唯「え、なんで?」

澪「忘れたのか、私たち部室覗きに行っただろ?」

律「そういえば……って、だったらここに梓が二人いたらまずくないか!?」

梓「え?」

紬「梓ちゃんちょっとそこの物置きに隠れて!」グイグイ

梓「ちょ、ちょっと! 私は未来の私じゃ……!」

律「んなのどっちでもいい!」

ガチャリ

紬「ふぅ……」

み梓「な、なんかすいません」

唯「気にしないでいいってー」

律「それよりなんかこれだと不自然だな……みんな! とりあえず席につけ!」


591 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 13:20:09.17 ID:3WFb6kmJ0 [55/163]
唯「……んで?」

澪「とりあえずいつものティータイムみたいな会話をしようっ」

唯「いつも何話してるっけ~」

律「自然体だ! 自然体!」

唯「でもどうするの?」

澪「そうだなぁ」

紬「やっぱり今後の部活の方針を決める会話とか?」

律「いやいやいや」

み梓「こんな感じのグダグダで十分だと思いますよ」


592 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 13:25:03.71 ID:3WFb6kmJ0 [56/163]
・・・

律「も、もういいかな?」

澪「たぶん……」

み梓「さすがに30分も様子見なんてしてないと思いますけど」

紬「とりあえずお茶にしよっか」

唯「さんせー!」

澪「なんか喉渇いちゃったな」

律「お菓子は? 今日のおっかしはー!」

紬「ちゃんとありますよー」

律「いえっす!」

み梓(なんだか……ほっとするなぁ)

梓「誰か忘れてませんか!?」ガチャ

「あ」


594 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 13:30:19.86 ID:3WFb6kmJ0 [57/163]
梓「ひどいですっ、あんまりですっ……」グスン

唯「よしよし、いい子じゃあずにゃん」

澪「しばらくしてからまたあの私たちが戻ってくるからそれまでにはこの部室から離れなきゃな」

唯「なんで?」

澪「なんでって、もとの時間に無事帰らせるために決まってるだろ」

律「そっか。いやー自分たちのこととはいえ、面倒だな」

紬「それで、未来の梓ちゃん。さっきの話の続きなんだけど」

み梓「あ、はい」

み梓「今さっき皆さんに話したことは全てある人から教わったことなんです」

律「ま、まさかタイムマシン太を作った人か!?」

澪「タイムマシン太で定着したのか……」

梓「それで? ある人って? もったいぶらないで早く言ってよ」ムスッ

み梓「さわ子先生」

律・唯「さわちゃん!?」


595 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 13:35:04.95 ID:3WFb6kmJ0 [58/163]
澪「どうしてさわ子先生……まさか」

律・唯「タイムマシン太作ったのはさわちゃん!?」

澪「じゃなくて、あれはさわ子先生の物だったんじゃないか? 梓?」

梓「へ?」

み梓「はい」

梓(あ、そっちか)

み梓「私が過去へ行って先輩たちの死を回避しようと何度も挑戦していたときに先生が話してくれたんです」

み梓「このままでは絶対に助けられないって。そこからタイムマシンのこと、それを所持していた自身のことを話してくれました」

律「びっくり……」

紬「正直、私も……」


597 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 13:40:15.99 ID:3WFb6kmJ0 [59/163]
唯「だったら私たちもさわちゃんから詳しく話聞いたほうがいいよね」

澪「そうだな。なにもわからないよりはマシだし」

さわ子「呼んだ?」ガチャリ

唯・澪「ナイスタイミング……」

さわ子「……うん?」

さわ子「ひー、ふー、みー……ねぇ、うちの部員って何人いるんだっけ?」

律「6人だよ~。忘れちゃったのかよぅ」

紬「り、りっちゃん」

さわ子「ウソおっしゃい。5人でしょ? 人数少ないんだからすぐわかるわよ」

さわ子「……じゃあ、なんでここに6人いるのかしら? ま、まさか……」

澪「あわわわわ……」ガタガタ

律「おい」


598 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 13:45:13.86 ID:3WFb6kmJ0 [60/163]
梓・み梓「あ、あの! 先生!」

さわ子「あらぁ……? 梓ちゃんが二人……」

唯「さて、どっちが本物のあずにゃんでしょう!」

さわ子「よくできたマスクねぇ。ていうか体の大きさもそのまんま」グイグイ

梓「あいてててっ」

さわ子「胸も、むふふ……ぺったんこねぇ……」ペタペタツンツン

み梓「っ!?」バッ

律「エロオヤジいいかげんにせいっ」ペチンッ

さわ子「あぁんっ」

さわ子「……まぁ、冗談はこれぐらいにしておいて」

澪・紬(冗談だったんだ)

さわ子「説明してちょうだい。梓ちゃんが二人いるわけを」


600 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 14:00:03.23 ID:3WFb6kmJ0 [61/163]
さわ子「――なるほどねぇ」

唯「ウソだって思わないの?」

さわ子「例のタイムマシンの話が出てきてしまったんですもの」

さわ子「作り話にしてはできすぎてるしね」

律「まぁ、なぁ……」

さわ子「それで、未来の梓ちゃん。どうして未来の私はあなたと一緒にこっちに来なかったのかしら?」

さわ子「大事な教え子のピンチだっていうのに……」

み梓「これは私が勝手にやってることなんです。だから先生には内緒で来ました」

み梓「どのみち、一緒に来れる確率も低いと思います」

紬「そっか、タイムマシンが壊れていたから……」

さわ子「だとしても……まぁ、そのぶん私がしっかりするしかないか」


603 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 14:05:07.25 ID:3WFb6kmJ0 [62/163]
唯「それにしてもこのタイムマシン、ほんとにさわちゃんのだったんだねぇ」

梓「だからここの物置にしまっていたんですね」

さわ子「まぁ、ね」

さわ子「自宅で保管しておくべきだったわ……」

澪「先生のもとにあった前はタイムマシンはどこに」

さわ子「私の叔父さんがゆずってくれたのよ。まぁ、本人はわかってないで渡したと思うんだけど」

律「その人、一度もあれに触ってないってこと? でもそれって変じゃないか?」

律「普通は一度弾いてみたりしないか?」

唯「大事にしてたんじゃない?」

澪「ギターコレクターとか」

律「うーん……」


604 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 14:10:15.74 ID:3WFb6kmJ0 [63/163]
み梓「今はそんなことは関係ありません。とにかく早くなんとかしなきゃ」

さわ子「そうね」

紬「でも世界が変わってしまった原因がわからなきゃどう動けばいいかわからないんじゃ」

み梓「それは……まぁ」

律「虱潰しに過去へ跳べばいいんじゃないか? それでその時間に跳んできた別の私たちを見張って」

唯「あ、それいいね! りっちゃん隊長さっすがぁ」

律「だろぉ?」

澪「となると、5月4日……からだよな?」

紬「そうね」

梓「あ、でも!」


606 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 14:15:02.68 ID:3WFb6kmJ0 [64/163]
梓「初めてタイムマシンを使ったのって私じゃないですか」

律「あ! ていうことはもっと前の時間で梓か何かしちゃった場合もあるってことか!」

み梓「ま、まさか私が原因で唯先輩たちを……」

唯「そんなことない! そんなことないよっ」

み梓「でも……」

紬「梓ちゃん。行った時間は覚えてる?」

梓「……あのときは何もわからない状態で色々跳んでてたので」

澪「まさか……」

梓「覚えて、ないんです……ごめんなさい」

澪「そんな……」

さわ子「……」

さわ子「……あんな物を私が受け取らなければこんなことは起きなかったのね」

さわ子「そして……」

唯「さわちゃん?」


611 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 14:20:17.84 ID:3WFb6kmJ0 [65/163]
さわ子「私もね、世界を変えてしまったのよ。私の友達が死ぬ世界に」

梓「先生も!?」

さわ子「興味本意で過去でキッカケを作ったのが悪かったのね……許されない罪よ、これは」

律「き、気持ちはわかるよ。こんな物があったら誰だって……」

さわ子「……」

さわ子「少し、お話しましょっか」

唯「さわちゃん……」

澪「そ、その前に一回ここからでませんか? 過去の私と唯と律がそろそろ……」

唯「あ、すっかり忘れてた!」

さわ子「もぉ、空気読めないわねぇ……」


612 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 14:25:35.14 ID:3WFb6kmJ0 [66/163]
「あっちにいきなり戻ったらムギたち驚くだろうな~」

「やめろってば! やっぱり一度電話したほうが」

「もうおそ――――」シュッ

「ば、ばかりつぅ~……」

「澪ちゃーん。次私ね~」シュッ

「ゆ、唯! ま……行っちゃった」

「もういいや……――――」シュッ

…ビリッ、バチバチバチッ…シュ~……

ガチャリ

律「行った……みたいだな。よし、もう入っても大丈夫ー」

唯「ふぃ~……」

梓「それじゃあさっきの先生のお話、聞かせてもらえますか?」

さわ子「ええ」


614 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 14:32:53.60 ID:3WFb6kmJ0 [67/163]
2000年4月28日 教室

紀美「へー、SGかぁ」

さわ子「おじさんがね、譲ってくれて」

紀美「よかったじゃん! これでDEATH DEVIL結成ね」

さわ子「ちょ、ちょっと気が早すぎない?」

紀美「そんなことないって。さぁて、今日からさっそく練習だからねー」

さわ子「ふふっ、はいはい」


615 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 14:37:17.08 ID:3WFb6kmJ0 [68/163]
2000年4月28日 軽音部室

ガチャリ

さわ子「私が一番乗りかぁ」

ガサゴソ、ストッ

さわ子「……ちょっと見てみよっか」

ジィーッ、ピッ

さわ子「よっこいしょ、っと」

さわ子「ふふっ、私のギターだ……」

パサッ…

さわ子「ん? なにこれ、メモ?」ス

さわ子(タイムマシン取扱についての注意……?)


618 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 14:42:01.53 ID:3WFb6kmJ0 [69/163]
さわ子「タイムマシンって……ぷっ」

さわ子「なによそれ。何のこと?」

さわ子(えっと、このギターはタイムマシン。取扱いには注意すること……)

さわ子「……このギターがタイムマシン?」

さわ子(六弦で戻る年数、五弦で……)

さわ子「へー……おじさんも面白いこと考えるわ」

さわ子「試しに昨日へ戻ってみたりして」

ポーン、ポーン、ピーン

さわ子「やだこれ変なお――――」


619 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 14:47:07.29 ID:3WFb6kmJ0 [70/163]
2000年4月27日 軽音部室

さわ子「――と」

さわ子「!!」

さわ子(な、なにいまの変な感じ!?)

ガチャリ

紀美「あれ? さわ子」

さわ子「の、紀美……」

紀美「あんた今日は家の用事あったんじゃなかったっけ? 親戚の家に行くとか」

さわ子「家の、用事?」

紀美「違うの?」

さわ子「ちょ、ちょっと待って紀美……話が」

さわ子「……あれ? ギター」

紀美「え?」


622 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 14:52:20.88 ID:3WFb6kmJ0 [71/163]
さわ子「ね、ねぇ! ギターは!? 私のギターはどこいったの?」

紀美「ギター? あんたギターまだ持ってないじゃない」

さわ子「うそ!? 今日紀美にも見せたじゃない! ほら、SGって……」

紀美「さわ子。あんた大丈夫?」

紀美「ちょっと保健室に……」サ

パシッ

さわ子「私はおかしくないっ」

紀美「さ、さわ子っ」

さわ子「っ……!」

ガチャッ、タタタ…

紀美「あの子、どうしちゃったんだろう?」


623 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 15:00:04.28 ID:3WFb6kmJ0 [72/163]
さわ子(なんなのよ……なんだってのよ……)

さわ子「……なんか、紀美に悪いことしちゃったかな」

ドン

堀込「おっと!」

さわ子「ご、ごめんなさっ……なんだ、先生」

堀込「山中! なんだとは何だ。ちゃんと前向いて歩けよ?」

さわ子「……」

堀込「山中? おーい」

さわ子「先生、今日は何月の何日でしたっけ……」

堀込「うん? 5月27日だが」

さわ子「……え」


624 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 15:05:08.05 ID:3WFb6kmJ0 [73/163]
さわ子「27、ですか?」

堀込「あ、ああ……山中、お前顔色悪いぞ? 大丈夫か?」

さわ子「へ、平気ですっ。なんでもありませんっ」

さわ子「し、失礼します……!」

タタタ…

堀込「お、おい!? ったく……」

さわ子(おかしい! 今日は28日なはずよ? 27日は昨日!)


625 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 15:10:01.70 ID:3WFb6kmJ0 [74/163]
さわ子「教室のカレンダーも27日……」

さわ子「まさか、あのギター本当に……」

さわ子「……」

さわ子(本当に過去に来れたっていうなら、私すごいよね?)

さわ子(だ、だってタイムトラベルしてきたのよ!? よくわからなかったけど……)

さわ子「えっと……あった」ガサゴソ

さわ子(メモ、一応ポケットに突っ込んでおいて正解だったわ)

さわ子(タイムマシンは夜になってから私の部屋にこっそりいけば使えるはず……)

さわ子「……ふふっ!」


626 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 15:15:08.86 ID:3WFb6kmJ0 [75/163]
「あれ、さわ子。なんか嬉しそうじゃん。どうかしたの?」

さわ子「ちょっとね~」

さわ子(どうせなら帰る前に色々しておきましょっか!)

さわ子「ねぇ、○○さん。もし、あなたがタイムマシンで過去へ1日前に行ったら何する?」

「は? なによ急に……」

さわ子「いいから、いいから」

「そう、ねぇ……過去を変えたら未来も変わるよね?」

さわ子「え?」

「だってそうじゃない? 例えば、そこの窓がタイムマシンを使う前は割れてなかったとする」

「で、タイムマシンでそこの窓を割って、もとの時間に戻ってくるとすると……」


628 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 15:20:05.80 ID:3WFb6kmJ0 [76/163]
さわ子「本来割れてなかった窓が割れてる?」

「たぶん」

さわ子「つまり○○さんは過去へ行ったら未来を変えたいってこと?」

「面白そうじゃない?」

さわ子「……そう、ね!」

さわ子「いいかも! ありがと、○○さん!」タタタ…

さわ子(そうね、そういうのも悪くないかもしれない! だったら……!)


629 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 15:23:55.95 ID:3WFb6kmJ0 [77/163]
教室

さわ子「えっと、紀美の机は」

さわ子「あった、あった」

さわ子(さっきは悪いことしちゃったし、なんだか面と向かって謝るのも恥ずかしいから……)カキカキ

さわ子(紀美、ごめんね……っと)

さわ子「ん、これだけじゃちょっと物足りないか。少しつけたして」

さわ子「……by.タイムトラベラーさわ子、っと」カキカキ

さわ子「机にこんなに大きく書いて、紀美怒ったりしないよね?」

さわ子(さて、あとは夜になるまでそのへんでうろつこうかなぁ、ふふっ)


631 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 15:28:19.61 ID:3WFb6kmJ0 [78/163]
2000年4月28日 自室

さわ子「――ぶないっ」

さわ子「あ……無事戻ってこれた?」

さわ子(もう少しで27日の私に見つかるところだったわ……ふぅ)

さわ子(でもメモのとおりにしたら無事に帰ってこれたし)

さわ子「色々不思議だったけど、いい体験にはなったかな」

さわ子「あ! でもこれだったら普通の楽器として使えないじゃない!」

さわ子「あー……もうっ、バイトしてお金貯めようかなぁ」


このときは自分がバカなことをしてきただなんて思いもしなかった。

後悔することになるなんて思いもしなかった。


632 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 15:33:02.85 ID:3WFb6kmJ0 [79/163]
2000年4月29日 軽音部室

紀美「はい、さわ子のギター」

さわ子「ちゃんと保管しててくれたんだ!」

紀美「誰にも指一本触れさせてないから、安心しな」

さわ子「ありがとう紀美!」

紀美「でも昨日はギター放っておいてどこ行ってたのさ? しかも帰ってるし」

さわ子「ちょ、ちょっと急用で……」

紀美「そうなの? じゃあ、しゃーないね。さてとじゃあ……」

さわ子「あ! それと……このギター、やっぱり返さなきゃいけないことになったの」

紀美「えぇ~!? もらって2日で返すの!?」

さわ子(演奏するたびにタイムスリップしてたら……ちょっと、ね)


634 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 15:38:04.75 ID:3WFb6kmJ0 [80/163]
・・・

「それじゃあまた明日~」

「さわ子、紀美! ばいばーい!」

紀美「おーう」

紀美「さて、私らもそろそろ帰るか」

さわ子「うん」

紀美「ところで私の机の上にあれ書いたのってあんた?」

さわ子「あ、わかった?」

紀美「ていうかあんたの名前書いてあったしね。んで、なにがごめんねなの? 謝られる覚えないんだけどな」

さわ子「……あの、ほら、私一昨日、部室で紀美に変なこと言って困らせちゃったじゃない? だから……」

紀美「ん? ……あー! 思いだした! うん、変だったよ! さわ子!」

紀美「ていうかあの日はなんで用事あったのにすぐ帰んなかったのさ?」

さわ子「えっとー……あ!」


635 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 15:43:09.31 ID:3WFb6kmJ0 [81/163]
紀美「どうしたの!?」

さわ子「ギター……部室に忘れてきちゃった」

紀美「こ、ここまで来て今さら気づくかぁ、普通……」

さわ子「あんまりギター背負って帰るのに慣れてなくて、へへへ」

さわ子「ちょっと学校戻るから紀美はさきに帰ってて!」

タタタ…

さわ子(さすがに二日も学校に置きっぱなしにはできないよね……)

…ブゥゥーーン


640 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 16:00:06.69 ID:3WFb6kmJ0 [82/163]
紀美「さわ子っっ!!」

さわ子「え――」

ドン!

さわ子(押された……!?)

キキィーッッ

さわ子(なにが――)

ドンッ

グシャァッ

さわ子「……」

さわ子「のり、み」

さわ子「のりみ……?」ガタガタ



紀美「   」

641 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 16:03:30.29 ID:3WFb6kmJ0 [83/163]
紀美はトラックに撥ねられたその日に死んだわ。
頭を強く打ちつけたのが原因だったのかしらね。

……ううん、原因は私。

私が過去で未来を変えたせいで、紀美が29日に死ぬ運命が待つ世界へと変えてしまった。

偶然だったかもしれない?

そうだとしても、私があのとき紀美を殺してしまったことには変わりはない。
もっと車に気をつけていればよかったのにね……。

紀美はなんであのとき私を庇って助けてくれたのかしら。
私が轢かれていればよかったのに。


644 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 16:06:19.36 ID:3WFb6kmJ0 [84/163]
紀美が亡くなってからしばらくは部屋から出ることができなかったわね。
目の前で人が死んだというショックと友達が死んだというショック。
あの頃の私にはとても重かった。……まぁ、今でも変わりはないけど。

話を戻すわ。

学校に今まで通り通えるようになった頃に、私はタイムマシンの存在を思い出したの。
そして思った。
過去へ戻って紀美を助けることができるんじゃないか、って。
でも未来の梓ちゃんは知っていると思うけれど、一度起きた死はそう簡単に回避することができない。

変えてしまった世界はそう簡単に戻すことができないの。
何も知らないそのときの私は何度も何度も紀美を助けようとした。無駄だということを知らずにね。


646 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 16:09:17.51 ID:3WFb6kmJ0 [85/163]
さすがに繰り返し、親しい人の死を見ると精神的につらかった。

ついには耐えきれなくなった私は紀美を救うことを中断して、おじさんのもとに向かった。
タイムマシンを譲ってくれたのはおじさん。なら、なにか知っているんじゃないかと思ってね。
何かわかれば紀美も救えるかもしれないって。

……何もわからなかった。

それどころかおじさんはタイムマシンのことも知らなかったの。
話を訊いたときはとても笑われたわ。冗談にしてはよくできた話だって。

でもね、おかしいのよ。


648 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 16:14:07.01 ID:3WFb6kmJ0 [86/163]
さわ子「タイムマシンを入れていたケースの中にあったメモはどう見てもおじさんが書いた文字だったの」

紬「似てただけだったとか……」

さわ子「かもしれないと最初は思ったわ。でももう一つのメモを見て確証したの」

梓「もう一つって……使い方を書いたメモ一枚だけじゃなかったんですか?」

さわ子「ええ。あとになって見つけたのだけど……それにはタイムトラベルについての注意とか、今までみんなに説明したようなことが書いてあった」

み梓「パラレルワールドのこと、とか?」

さわ子「そう。そしてそのメモの裏にね、おじさんの名前が書いてあったの」

さわ子「名前と一緒に、゛自分を忘れるな゛という文も添えてね」

律「自分を忘れるな?」

唯「どういう意味?」

澪「自分を見失うな、とかじゃないのかな」


650 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 16:19:04.13 ID:3WFb6kmJ0 [87/163]
律「ていうか、さわちゃんのおじさん。もしかしたらトボケてるだけじゃないの?」

さわ子「そう思うでしょ? でも本当にわかっていない感じなのよ」

唯「ほんとかなぁ」

さわ子「ええ」

み梓「どっちにせよ、まずは先輩たちを救うことが先決です。それができてからこのことについて調べてくれませんか?」

さわ子「……そうね」

さわ子「私が行くわ。私ならもし過去でもう1人の私と会っても説明要らずだし」

律「でもさわちゃんは私たちがしでかしてきたことが何かよくわからないだろ」

律「だったら直接私たちが行ったほうが早いよ」

澪「私も律と同意見です」

さわ子「……言い忘れてたことがあった」

梓「え?」


653 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 16:22:12.44 ID:3WFb6kmJ0 [88/163]
さわ子「紀美の机に字を書いたってのはさっき話したわよね?」

唯「ごめんね、ってでしょ?」

さわ子「あれが世界を変えた原因だと思った私は過去へ行ってあれを消そうとしたの」

紬「原因を取り除くことができれば、もしかしたら紀美さんは死なずにすんだかもしれないからですよね」

さわ子「そう。でもね、消せなかった」

律「は? なんでだよ?」

さわ子「消すことができなかったのよ……。紀美の机に近づけなかった」

律「近づけなかったって……まわりに誰かいたから、とか?」

さわ子「違う。近づこうとすると何かに押し出されるの」

さわ子「実態のない。なにか……よくわからない力、みたいな。なんというか……」

さわ子「何をしようと、どう近づこうと机には近寄れなかった」


654 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 16:27:05.67 ID:3WFb6kmJ0 [89/163]
み梓「原因を取り除くことができなかった……ううん、取り除くことが許されなかった?」

唯「どういうこと?」

み梓「これ、私の時間の先生から聞いた話なんですけど、一度過去で何かを変えてしまうと戻すことが困難になる、みたいなこと言ってたんですよ」

さわ子「困難と言うか、ほぼ無理なのかもしれない」

み梓「え!?」

さわ子「それもおじさんのメモに書かれていた注意事項の一つよ。きっと梓ちゃんを気遣ってそんなこと言ったのね。私は」

み梓「そんな……」

梓「で、でもやってみなきゃわかんないよ!? まだ確定ってわけじゃないかもしれないしっ」

み梓「う、うん……」


655 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 16:32:24.23 ID:3WFb6kmJ0 [90/163]
紬「……世界を変えた原因」

紬「もしかしてっ」

唯「どったのムギちゃん?」

紬「ほら、りっちゃんが澪ちゃんの机の中に落書きを書いた紙を入れてたじゃない!」

澪「あ……ああぁぁ!!」

紬「ほかに私たちの中で過去に行ったのは梓ちゃんが最初のトラブルで過去へ行ったことを除けばりっちゃんしかいないし!」

律「そういえば……」

梓「でもそれが違ったらやっぱり私が過去でなにか……」

紬「それを悔やむのはりっちゃんの落書きをどうにかしてから」

梓「うう……」

梓「もし先輩方を殺してしまったのが私のせいだったら……私……」

唯「大丈夫、大丈夫だよぉ」ギュッ

梓「慰めなんていらないです……」


656 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 16:40:48.79 ID:3WFb6kmJ0 [91/163]
律「ていうか私だって原因作ってたのが私だってのなら……けっこうへこむ」

律「結果的にみんなが死ぬし」

澪「そのときはお前も死んじゃうんだから、気にするな」

律「それは慰め? 慰めてるつもりなのか!?」

梓・み梓「ふふっ……」クスッ

唯「とりあえず! やるだけやってみようよ!」

さわ子「そうね、もしかしたら上手くいくかもしれない」

律「もしかしたらじゃなくて絶対上手くいくの!」

澪「よし、じゃあ原因作ったお前が行ってこい。律」

律「え~……」


665 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 17:16:57.54 ID:3WFb6kmJ0 [92/163]
唯「はい、りっちゃん! タイムマシン太だよ!」ス

律「うおっ、準備いいな……」

律「えっと、たしか4日でいいんだよね?」

紬「そうよ。4日ならここから跳んでも大丈夫ね」

律「部活は休みってことになってたし、誰もいなかったしな」

梓「そういえば前に4日に跳んだときもこの時間帯でしたよね?」

さわ子「じゃあもう1人のりっちゃんに会わないように気をつけてね」

律「へいへい……」

澪「4日には3人の律がいることになるのか……ん?」


666 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 17:20:38.51 ID:3WFb6kmJ0 [93/163]
澪「ねぇ、未来の梓」

み梓「はい?」

澪「梓のときも、こうやって未来から梓が来て、お前みたいに私たちが死んじゃうからなんとかしなきゃ、みたいな話したの?」

み梓「いいえ? ……それがなにか?」

澪「あ、いや……なんでもないよ」

み梓「?」

律「話は済んだぁー? あと、私行くぞー?」

澪「あ、ああ」

唯「りっちゃんファイト!」

梓「しっかり原因取り除いてきてください」

律「わかってるって。……では!」

ポーン、ポーン、ピーン


667 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 17:25:56.39 ID:3WFb6kmJ0 [94/163]
「……」

律「……ん」

律「……」パチクリ

唯「りっちゃん?」

律「な、なんで! 部室に誰もいないはずなのになんでみんないるの!?」

梓「あの、落ち着いて。律先輩」

み梓「ど、どういうことなの……なんで……」

律「え? え?」

律「今日は5月4日だよね? そうなんだろ?」

澪「律……5月9日だ……ていうか」

紬「タイムスリップしてない……?」


668 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 17:30:39.28 ID:3WFb6kmJ0 [95/163]
・・・

ポーン、ポーン、ピーン

唯「……どう!? タイムスリップできた?」

紬「ううん」

唯「だめかぁ」

さわ子「今までにこんなことは?」

律「なかったと思うけど……。なんでだよぉ? さっき過去の私たちが帰るときはちゃんと動いてたじゃんか」

み梓「あの、皆さん聞いてください」

「?」

み梓「もしかしたら、壊れたかもしれません」

梓「タイムマシン?」

み梓「……うん」

澪「う、うんって……」


669 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 17:35:11.75 ID:3WFb6kmJ0 [96/163]
み梓「私の時間のタイムマシンが壊れてて上手く時間を飛び越えることができないって話、しましたよね?」

澪「ああ」

唯「聞いたよー」

み梓「実は壊れたのは先輩たちが死んでから私がその死を回避しようと奮闘してるときなんです。かなり唐突でした」

紬「それってまさか」

み梓「ええ。こんな状況です」

み梓「そのタイムマシンが壊れたのはもっとさきになるんです。9日には一度もこんなことになりませんでした」

さわ子「未来から梓ちゃんが来たことで、壊れるまでの日にちが縮まったのかもしれないわね」

紬「それってまた世界が変わったってことですよね? だったら22日私が死んじゃうって未来がなくなったりは?」

さわ子「そんなことはその日が来るまでわからないわ。もしかしたら助かるかもしれないし、22日の死は回避できずそのままかもしれない」

さわ子「ていうか回避されているのならここにいる未来の梓ちゃんの存在は? 持っている記憶は?」

紬「……」


671 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 17:43:07.51 ID:3WFb6kmJ0 [97/163]
ピーン、ポーン、ピーン

梓「未来にもいけませんね」

律「ああ……ん? ていうか」

律「未来の梓ぁ。なんでタイムマシン壊れてたのにお前は使えたんだよ? 動かなくなったんだろ?」

み梓「……タイムマシンが動かないことに私が苛立ってですね」

み梓「タイムマシンを蹴ったんです」

律「え……」

み梓「あ、でもほんのちょっと。かるーく……そしたら」

澪「にしても蹴るってそんな……」

み梓「つ、続けますよっ」

672 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 17:49:32.58 ID:3WFb6kmJ0 [98/163]
み梓「蹴ったらすぐにタイムマシンが放電したんです」

紬「放電!?」

梓「ちょ、ちょっとそれってまずいんじゃ」

み梓「もちろん私はあんまりにも突然のことにパニックになって……」

澪「梓ぁ……」

み梓「うっ……」

唯「それでどうしたの?」

み梓「しばらくしたら放電は止まって……。恐る恐るタイムマシンを調べて、もしかしたらって過去に跳べるか試すために、弦を鳴らしたら……」

さわ子「できた、と?」

み梓「ですが、跳んだ時間は指定した月日と時間、場所通りじゃなかったんです」

律「それがわかるってことは、変なところに行かなかったんだな」

み梓「……不幸中の幸いですね」


673 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 17:57:23.15 ID:3WFb6kmJ0 [99/163]
澪「結果からいうと、タイムマシン太がおかしく……」

唯「えへへ~」

澪「どうした唯?」

唯「澪ちゃんもタイムマシン太って言ってくれて嬉しいなぁって」

澪「……と、とにかくっ」

律「おかしくなったのは梓のせいだということだな」

澪「まぁ、おかしくする前にもともと壊れてたんだろ」

み梓「……まぁ、私がこうしてここに来ることができたのも蹴ってまた動かしたから」

紬「結果オーライねぇ」

律「……よし、じゃあ私もこれを蹴って」

さわ子「ちょ、ちょっと待ちなさい!」ガシッ


674 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 18:00:42.83 ID:3WFb6kmJ0 [100/163]
律「離せー! 止めるなさわちゃーん!」ジタバタ

さわ子「こっちのタイムマシンまでおかしくさせる必要はないでしょっ」

律「じゃあどうしろってんだよっ」

さわ子「……私のおじさんに会いに行きましょう 」

梓「でも、先生のおじさんは」

さわ子「ダメもとでも何でも、やれることは全部やるべきだわ」

さわ子「もしかしたら……何かわかるかもしれないし、この状況を打破できるかもしれない」

唯「おぉ、さわちゃんが頼もしいよ」

さわ子「それっていつも頼りないってこと!?」

紬「ま、まぁまぁ……」


675 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 18:06:23.23 ID:3WFb6kmJ0 [101/163]
さわ子「というわけだから明日さっそく行くことにしましょう。明日はちょうど土曜日だし」

澪「そうですね」

律「それじゃあ今日は一旦お開きってことで」

唯「色々考えたから頭いっぱいいっぱいだよぉ」

紬「ところで未来の梓ちゃんはどうするの?」

み梓「え?」

紬「帰る家よ」


677 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 18:11:09.16 ID:3WFb6kmJ0 [102/163]
唯「それなら大丈夫だよー。私の家に泊めるから」

み梓「ごめんなさい唯先輩。迷惑かけちゃって」

梓「……」

「いいなぁ、未来の私……唯先輩と一緒に」

律「寝ることができて。あーんなことやこーんなこととかしちゃうのかなぁ!」

澪「おぉ……似てる」

梓「か、勝手に私の声真似で変なこと言わないでくださいっ!!」

律「違いますぅー心読んだだけですぅー」

梓「きーっ!!」



続きます

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