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佐天「嫁にして下さい」一方通行「ゴメン、ちょっと待って」5

910 名前:佐天「嫁にして下さい」一方通行「ゴメン、ちょっと待って」5[sage] 投稿日:2010/12/03(金) 18:25:58.36 ID:JlNGW020 [2/7]
「おかえりなさ~い」
「……お前…また来てやがったのかァ…」

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佐天「嫁にして下さい」一方通行「ゴメン、ちょっと待って」
佐天「嫁にして下さい」一方通行「ゴメン、ちょっと待って」2
佐天「嫁にして下さい」一方通行「ゴメン、ちょっと待って」3
佐天「嫁にして下さい」一方通行「ゴメン、ちょっと待って」4
佐天「嫁にして下さい」一方通行「ゴメン、ちょっと待って」4.5

セーラー服にエプロンという上級コンボを繰り出す少女に、かける言葉の諦観の色が滲んでいる。
既に恒例と化しているやりとりに、受け手の少女佐天涙子はまともに取り合うつもりも無いのか視線を鍋に向けたままだ。

一方通行はコンビニ袋から缶コーヒーを取り出すと順繰りに冷蔵庫に放り込んでいく。

「お前…なに勝手に」

見慣れぬものがいくつか冷蔵庫に見受けられる。
プリンであったり紅茶のケーキであったり、どう見ても自分が食べるものではない。
甘いものが苦手な一方通行でなければ犯人は佐天だろう。

「いいじゃないですか。一方通行さんの分もありますよ」
「俺は甘いものは嫌いなんだよォ…っていうかお前いいのか?」
「何がですか?」
「だからよ…お前らの年だと友達ってのと遊んだりすンだろうが。馬鹿みてェに意味も無く集まっちゃァダベったりすンだろうが」

がしがしと頭をかく。わかっている。
どうにも自分らしくないことを言っている。
その自覚は十分にあるのだ。

「ちゃんと遊んでますよ。心配させちゃってすみません」
「ハッ、馬鹿言ってンじゃねェよクソガキが」
「ちょっとぉ、私には佐天涙子っていう名前があるんですから、ちゃんと呼んで下さいってば」
「わかったわかった、わかったってクソガキ」
「もう!!学園都市第一位ってもっと大人な感じの人だと思ってたのに。こんなに意地悪だなんて」

ぶつぶつ言いながら佐天はできた料理を次々と並べていく。
肉じゃが、インゲンの和え物、サツマイモの味噌汁、鶏のささみとキュウリのサラダ。

「いろいろ文句は言いたいですけど、まずはご飯にしましょう」
「番外個体といい、俺ん家は花嫁修業の場所かァ?楽だからいいけどよォ」

しっかり自分の分まで作っている辺り良い根性をしている。
不思議とその図太さというか、抜け目なさが鼻に付かない。


911 名前:佐天「嫁にして下さい」一方通行「ゴメン、ちょっと待って」5[sage] 投稿日:2010/12/03(金) 18:32:31.61 ID:JlNGW020 [3/7]
「番外個体さんって、あの御坂さんのお姉さんの?」
「……まァな」
クローンであることは伏せ、御坂美琴の姉ということにしておいた。こんな普通に表の世界で生きている少女が知るようなことではない。
「あれから来ねェからなァ、正直お前がこうして飯作ってくれてるのはありがてェ」
結標淡希や番外個体が聞いたらいろいろな意味で卒倒しそうな言葉。彼にしては大盤振る舞いのほめ言葉だ。
「何だか悪いことしちゃいましたね」
「いいンだよ。どうせ暇つぶしに来てたんだろうが。飽きて来なくなるってンならそれに越したこたァねェ」
「…あの人が嫌いなんですか?」
「……いや、そうじゃねェ」

言葉を濁して、一方通行は味噌汁をすする。サツマイモの甘さが心地よい。
番外個体との関係をうまく佐天に伝えられる自信はなかった。
そしてそれ以上に伝える気は起こらなかった。

「まぁ、あんまり俺の存在は教育に良くわねェからなァ」
「あっははは、何ですかそれ。お父さんみたいな台詞ですよそれ」
「みてぇなもンだ。つーか、結局コーヒー淹れてるよかこうして飯食ってる時間の方が長ェな」
「安らぎを与えますって約束したじゃないですか~安らぎません?母の味肉じゃがですよ。
女の子に男の子が惚れる定番料理ですよ」

「馬鹿言ってンじゃねェよ、クソガキ」


安らぎ。確かにそうかもしれない。
こうして温かい食事をしながら穏やかに誰かと言葉を交わすのは久しぶりだ。
結標淡希や番外個体との憎まれ口の叩き合いも存外嫌いではないが、佐天とこうしている時間はまったう別ものだ。学園都市最凶の悪魔と、一方通行ともあろう者が随分と腑抜けたものだ。

「あ…」

佐天の声に我に返る。物思いに浸ってしまっていたようだ。
つくづくどうかしている。佐天は目を丸くして一方通行を見ている。

「なんだァ?」
「い、いえ、なんでもないです、ええ、ほんと、なんでもないですよ!!」
「そ、そうかァ」
佐天は誤魔化すようにご飯をかき込む。
頬を赤くしているのは気のせいであろうか。

「笑ってた…」

ぽそりと、佐天が呟いた声は彼女以外の誰にも届かずに溶けて行く。

912 名前:佐天「嫁にして下さい」一方通行「ゴメン、ちょっと待って」5[sage] 投稿日:2010/12/03(金) 18:39:54.61 ID:JlNGW020 [4/7]
すっかり街は夜の空気を漂わせ、街灯やコンビニの灯りが街の輪郭を浮かび上がらせている。

「すいません。わざわざ送ってもらっちゃって」
「今更だなァ。そう言うならもっと早く帰ろうって思わねェのか?いつもいつも飯食って行きやがって」
「えへへへへ~」
ぺろりと舌を出す佐天に、一方通行は何も言わずに溜め息を吐く。二人は肩を並べて歩く。杖を付く一方通行の歩調に佐天が併せる。月を見上げながら佐天はぽつりとつぶやいた。

「ねぇ、一方通行さん。第一位って…どんな気持ちですか?」

一方通行は僅かに驚く。向けられた質問にではない。
その質問自体はいつか向けられると思っていた。
彼女は無能力者であるのだから。
いつもの佐天の声とは思えないほどに悲痛な声に驚いた。
知り合ってまだ二週間にもならないが、いつも笑い、驚き、明るい彼女は、一方通行からすればひまわりのような少女だ。

「……さァな。俺ァ超電磁砲とは違う。最初から一位だった。だから達成感だとか、努力の秘訣だとか聞かれてもわかンねェ」

佐天はゆっくりと首を振る。

「御坂さんは能力なんて関係ないって言ってました。友達もみんなそう言ってます」

御坂美琴ならそう言うだろう。そういう少女だ。

「今日、能力測定があったんですよ。結果は相変わらずです。わかってたんですよ。それくらい」
けど、やっぱり悔しい。消え入りそうな声でつぶやく。

一方通行は言葉を見つけあぐねる。何となくだが、この少女の胸につかえていることの根本が見えた気がした。
御坂美琴ではその根本を理解しきることができないということもわかった。

「着いたぞ」
「あ…何時の間に」

佐天の部屋のドアが目の前にある。思わず答えを委ねるように一方通行を振り返る。
背を向けた一方通行の裾を握ったのは反射的なものだった。



913 名前:佐天「嫁にして下さい」一方通行「ゴメン、ちょっと待って」5[sage] 投稿日:2010/12/03(金) 18:49:10.57 ID:JlNGW020 [5/7]
「不意打ちが上手ェなァ…お前は」
「待ってください。待って…」
裾を握り締める手が震えていることに、気付かぬフリをする。溜息がひとつ零れた。

「俺に話してどォすんだ。どォして欲しいンだ?」
「………」
佐天がぎゅうっと裾を握る力を強める。
鬱陶しい、そう思っているのは本当なのに。けれども一方通行はその手を不思議と振りほどこうとは思わなかった。

「俺にはわからねェって言っただろう。無能力者の気持ちなんざァよ」
沈黙が、針のように降り注ぐ。頬が、首が、肌という肌が痛い。耳鳴りがする。まるでこの沈黙を拒否しようと呻いているようだ。その不思議な痛みが、大切に思っている人を、心ならずも傷つけようとすることから来る『罪悪感』であると、一方通行にはわからない。

「けどなァ…」
何が彼女にとって最適な言葉であるのかなどわからない。
自分はあの真っ直ぐな電撃姫でもなければ、目を覚ますような痛烈な言葉をぶつける幻想殺しの少年でもないのだ。ただの語るに及ばぬ悪党。
だから、この少女の目の前に広がる霧の存在を察知することは出来ても、晴らしてやることなどできようか。
そう、少なくとも一方通行は思っている。思い込んでいる。
だから、これは、単なる気まぐれだ。優しさなんかじゃ決して無い。
愚図る幼児を、下手に泣かれたら面倒くさいからあやすようなものだ。それ以外であろうはずもない。

「え…?」

不意に頭を撫でられた。白く細長い指が絹のような髪を梳くように、優しく、柔らかに撫でる。とくんと胸の奥が悦びに痛む。

「お前にもきっとわかンねェよ。俺がどんだけ           かをなァ」
     
聞き取れぬほどに小さく絞られた言葉に、佐天は何かを擽られたように過敏に反応した。
呟いた彼の唇が余りにも優しい曲線を描いていたせいなのかもしれない。
俯けていた顔を上げようとすると、乱暴に撫でられる。佐天の行動を見越していた一方通行の方が上手だった。くしゃくしゃと、乱暴に、そして優しさを多分に含んだ撫で方が、彼が打ち止めにしてやるのに似ていた。もっとも、それを佐天が知ろうはずもない。

「じゃあな。くだらねェ話はしまいだ。ガキは夜更かししねェでさっさと寝ろよ」

かかか、と意地悪く笑うと、一方通行は今度こそ踵を返し、階段を降りていく。
佐天は裾を掴んでいた手を、そっと一方通行の撫でてくれた場所にあてる。まだ温もりが残っているように感じた。

愚痴ぐらい言わせてくれてもいいのに。相談にくらい乗ってくれてもいいのに。
アドバイスの一つくらいくれたらいいのに。年上らしさを見せてくれてもいいのに。
言ってやりたい不平不満は山ほどある。山ほどあったのだ。
それなのに佐天に出来ることは彼の放った言葉を反芻することだけだった。

「何なの……もう…わかんないよぅ」

手をあてると、信じられないくらい頬が熱くなっていた。

914 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/03(金) 18:52:00.05 ID:JlNGW020 [6/7]
相変わらず迷走中です。
本当は変態一方通行と痴女っ子佐天の明るいエロギャグを書こうと思ったのが切欠だったのに。
どこで間違ってしまったのでしょうね。
アウレオさんは何気に保育士になってたりしたら嬉しい。

Tag : とあるSS総合スレ

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