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佐天「嫁にして下さい」一方通行「ゴメン、ちょっと待って」2
佐天「嫁にして下さい」一方通行「ゴメン、ちょっと待って」
続きです
続きです
668 名前:佐天「嫁にして下さい」一方通行「ゴメン、ちょっと待って」2[sage] 投稿日:2010/11/29(月) 21:29:40.94 ID:uFzXNyA0 [2/8]
詳細は聞き取れなかったが、どうやら彼の少年には所謂ステディな関係のおなごがいるらしい。
向かいには「メシウマwwwwww」状態の初春。佐天は一方通行に助けられたその日のうちに初春の下を尋ねた。時刻は日付が変わった頃。
空気読まないにも程がある時間である。一人暮らしの大学生でもいきなり来られるとムッとなる時間帯であったが、夜の住人、ナイトウォーカーの肩書きを持つ初春にとっては放課後に遊びにこられるのと大差は無い時間帯である。禁書スレを超電磁砲スレで乗っ取るという日課をこなしているときに突如尋ねてきた佐天を快く迎え入れた。
初春には佐天涙子という親友のことがよくわかっていた。一見常識知らずなようでその実もっとも常識を弁えている少女。
そんな少女が血相を変えてやって来たのだ、何かがあったと思うのが当然であろう。
『う、ういはるぅ~~私、白い王子様見つけちゃったよぉ~!』
『白い?白馬の王子様じゃなくてですか?』
『うん、白いの。この前初春が言ってた学園都市第一位の……』
『一方通行…ですか?』
『うん!!そう、そのあくせられーたが王子様で、白くて私を助けてくれて、モヒカンが超電磁砲で』
『佐天さん落ち着いて下さい。文章がおかしいです。大体何があったのかわかりますけど』
『ど、どうしよう。お礼も言えなかったし』
『ああ…一目惚れしちゃったんだ…赤い実弾けちゃったんですね、佐天さん』
『ひとッ!?ひ、ひとめ惚れ……そうなのかなぁ…よくわからない』
『で、その報告をする為にこんな時間に来ちゃったんですか?あ、紅茶飲みます?』
『ううん、そういうわけじゃなくてね……紅茶よりコーヒーが欲しいかな?』
『?じゃあどういうつもりで?コーヒーなんてそんなに飲みましたけ』
『あの人の居場所ってわからないかなぁって。連絡先でも住所でもいいんだけど、そういうの街頭カメラとかでわからない?いや、お礼言いたいだけなんだけどね?ホントだよ』
その発想はストーカーです、とは言えなかった。あの能天気な佐天涙子が御坂美琴の如きリアクションを示したのだ、野暮なツッコミなど出来ようハズもない。
第一純愛とストーカーなんて紙一重なのだ、これくらい可愛いものだと初春は親友の為に一肌脱ぐことを決意した。
何よりも面白そうな予感がしたのだ。食いつかない黒春ではない。
「そんな……ようやく見つけたのに、そんな相手がいるなんて」
佐天はうなだれる。具体的にどうやって見つけたのかといえば一方通行と上条の電話を傍受したのだ。初春さんマジパネェ。
「イケメンには既にお手付きなものですよ~」
「他人事だと思って初春~」
「いや、他人事ですし。それで、お目当ての王子様にはお相手がいるようですけどどうするんですか?」
「どうするって……」
「高校生で一人暮らししてて通い妻がいる。佐天さんはようやく中二に上がったばかりの子供。相手にしてもらえるのか怪しいですよね~相手がロリコンなら違うかもしれませんけど」
「うううぅ…わかってるよ、ガキって言われたもん」
意地の悪い事を言っているなぁと自覚しながら初春は渾身の微笑を浮かべる。
悶々として思い悩む佐天をいじる機会など滅多に無いのだ。いじらないはずが無い。
頭を抱えながら佐天は目の前のクリームソーダを睨む。溶けたアイスがソーダの海にゆっくりと沈んでいく。
やがて話が終わったのか、一方通行達が席を立つ。ぴくりと佐天の肩が震える。流石に見るに見かねたのか初春はそっと背を押してやることにする。
669 名前:佐天「嫁にして下さい」一方通行「ゴメン、ちょっと待って」2[sage] 投稿日:2010/11/29(月) 21:33:40.23 ID:uFzXNyA0 [3/8]
「でも佐天さん。お礼を言うんだったら相手がいようといまいと関係ないと思うんですけど?」
「え?」
「お礼を口実にしてアプローチをしろなんて言いませんけど、ただ向こうが一途に慕ってくれる女の子に心変わりしちゃう可能性はゼロではないと思うんですよ」
「そ、そんな。泥棒猫みたいな真似……」
「盗むのは良くないですけど、勝手に心変わりしちゃうのは不可抗力ですよね?」
邪笑。この初春、実に汚い。実に狡い。実に悪い。だがしかし真理だ。少なくとも今の佐天にとって、それは自己を正当化するに足る程の真理を秘めている。
決意の炎が親友の瞳に点るのを満足げに見つめる初春。一つ頷くと、佐天は席を立つ。向かう先は白い少年だろう。
佐天を見送ってから初春はノートパソコンを開く。カタカタとキーを弾くと幾つものウインドウが開く。横断歩道、テラス、駅前、雑貨屋など、様々な映像が浮かぶ中から、一つを選び拡大する。
イヤホンを付け、耳に当てると、道行く人々の会話が雑音交じりながらもはっきりと聞こえる。
映像に映っているのは件の白い少年。相方のツンツン頭の少年とは別れたらしい。にたりと初春、否、黒春が笑う。やがて映像の端に今しがた店を後にしたばかりの親友の姿が映った。
佐天は走る。目の前には華奢な少年の背中。細くて白い、モヤシとか言うな、そんな背中である。
かったるそうに杖を突きながらよたよたと歩く後姿に、学園都市最強とは思えぬその後姿に向かって。
「待ってください、待って…まってください」
聞こえていないのか、一方通行が止まる気配はない。呼びかけていくうちに止まれよコンチクショウ目という気持ちがムクムクと佐天の中に湧き上がる。そして ―――
「待ってって言ってるだろうがごらぁぁ!!!」
「ぐふゥッ!?」
足下からすくい上げるような見事な、いや、美事な佐天の低空タックルが一方通行を捉えた。反射を切った一方通行は平均以下の貧弱少年に過ぎない。十分な加速と体重が乗ったタックルに耐えることも、ましてや巧みにそれを捌く技術も無い。
結果、佐天涙子は学園都市最強の怪物からノゲイラばりのテイクダウンと取ることに成功する。
「てンめェェ……何処の組織の差し金だァ?余程挽き肉にされてェみてェだなァァ」
顔面スライディングをかました一方通行は、すりむいた鼻を押さえながら若干涙目になりながらうなり声を上げる。刺激に対して弱いことに掛けては定評があるのだ。クール(ぶっている)な自分に顔面スライディングを決めさせた愚か者を血祭りに上げるべくチョーカーのスイッチを入れたところで、足下にしがみついているのがセーラー服を着た何処にでもいるようなただの中学生だと気づく。
「あァん?てめェは確か…」
「あ、あの、私、この前貴方に助けてもらったんです。それで、お礼まだ言ってなくて、ずっと言いたくて、たまたま貴方を見つけて」
動揺しつつもさりげなくストーカー行為を偶然に置き換えながら佐天は耳まで真っ赤な顔を一方通行の胸にぐりぐりと押しつける。
「最近の中学生ってなァ礼代わりにタックルかますもんなのかァ?」
「違います。これは誤解で、ただ、ただ私」
貴方とお話してみたかったんです。その言葉が何故か出てこなかった。
助けてくれた恩人への感謝の気持ち。学園都市最強という自分にとってはラピュタのごとき幻想の存在への憧憬。
そして、一目見た瞬間から生まれてしまった言語化困難な感情。会ってまだ一週間しか経っていない相手に対してストーカーまがいの真似までして居場所を突き止めた自分を動かすこの感情を正確に把握するには佐天はまだ若すぎた。どれだけワガママボディを誇っていようとも、所詮は13歳なのだ。一年ちょっと前にはまだ赤いランドセルを背負っていたのだ。だがそんなことを順序立てて説明できるはずもないし、動揺が口から言葉を奪っていく。
結果。
「ひっく…わ、わたし、私、ただ、ひっく…グス…」
佐天は彼女の名前の如く、大粒の涙を流し始めた。
670 名前:佐天「嫁にして下さい」一方通行「ゴメン、ちょっと待って」2[sage] 投稿日:2010/11/29(月) 21:36:34.21 ID:uFzXNyA0 [4/8]
情緒不安定にもほどがある。こんなにも涙脆かったのだろうか自分は、というよりも、どうしてこんな訳の分からない、無茶苦茶な行動に出ているのだ自分は。見てみろ彼を、困惑を通り越して呆然としている。それもそうだ、自分の中でこそこの一週間様々な葛藤があり、思わず「白い王子様」などと言ってしまったりもしたが、一方通行にしてみれば一週間前に助けた女子中学生にいきなりタックルされたと思えば、目の前で突然泣き出されたのだ。なんて迷惑な女だろうか。女というか子供だ。恥ずかしい、穴があったら入りたい、というかシャベルを誰かくれ、今すぐ人一人分が入れる穴を掘って埋まってやる。
佐天がそんな思いで泣き出したのを見ながら、一方通行、彼は彼で静かにテンパっていた。
(えェェッ!?ちょ、え?ちょ、オレなンもしてねェだろうがよォォォォォーーー!!!アレか、オレのツラが怖ェからかァ?だから泣いたのかァ?寧ろオレが泣きてェくらいなんだがよォ)
『おい、見ろよアレ…あれって痴話喧嘩だよな』『如何にも女の子を弄んでそうな顔してるわよね』『あんな可愛くて発育の良い中学生を泣かしてるぜ』『あんなに必死に彼氏に縋りついちゃって…きっと別れ話切り出されたのね』『女子中学生をポイ捨てとか、リア充爆発しろ』『もしかして堕ろせとか言われたんじゃ…』『セロリたんの腋汗ペロペロしたいお』
(おいィィィィィィィィィィィィーーーー!!!光の速さでオレの社会的な生命が潰えようとしてませんかァァァ!?)
周囲から突き刺さる白い視線が実に痛い。社会的な名誉とは程遠い、悪名の方が高い彼であるが、悪名にもピンからキリまである。一方通行は暗部で戦いながら二つのテーマを己に課してきた。
光の世界の人間には手を出さないこと、そしてロリコン疑惑を晴らすこと。最初に言っておくが、彼は打ち止めの事を大切に思っているが、それはあくまでも妹か娘に対する感情、つまりは純粋な「家族愛」である。
しかし、彼の不器用な打ち止めへの思いやり、家族愛はツンデレという彼にとっては忌むべき俗称と共に恋愛感情へと勝手に区分けされてしまった。オイオイ、しまうフォルダ違うんですけどォと言いたくとも、人の噂はベクトル操作できない。そして付いた呼び名は『学園都市最強のロリコン、アクセロリータ』。この屈辱的な汚名を濯ぐ為に、彼は血反吐を吐きながら学園都市の裏側で戦ってきた。
ある時は巨乳アラサー美女を学園都市の闇から助け、またある時は横断歩道で立ち往生しているお婆ちゃんを学園都市の闇から救い、またある時は一方通行って実はババァ好きなんだってよと掲示板に書き込んだりもした。
意識的に結標淡希と行動を共にしておっぱい好きのイメージを付けようという試みも怠らない。幸いだったのは、彼女が快く協力をしてくれたこと。
『頼む、(イメージを変えるために)オレの側にいてくれ。(巨乳好きと思われる為には)お前が必要なんだ。(不測の事態に対処出来る能力を持った)お前じゃねェとダメなんだ!!!』
『!?………ふ、不束者ですが…』
徐々に顔を真っ赤にして俯く彼女を見ながら一方通行は誠意を持って接すれば人は応えてくれるのだという至極まっとうな、人としての理を学んだ。素直であることが如何に大切か、それをもって接すれば自分のような救い難い社会のクズであろうとも、人はこうして手を差し伸べてくれるのだ。
それだというのに、この状況はどうしたことか。
このままでは努力が全て水の泡になってしまう。嫌々ながらも自分につき合ってくれた、結標にも顔向けが出来ないではないか。
671 名前:佐天「嫁にして下さい」一方通行「ゴメン、ちょっと待って」2[sage] 投稿日:2010/11/29(月) 21:40:07.53 ID:uFzXNyA0 [5/8]
「オイ、泣くんじゃねェよ」
「泣いてません!!泣いてませんよぉ…これはただ目から水が出てるだけで」
「それを泣くってンだろうがァ!!」
「グスッ…」
「ああァッ」
明らかに困りきった顔がいけなかった。
佐天は、折角会えた一方通行を困らせてしまっている自分に情けなくなり、今にも消えてしまいたいと、更に涙を流す。
焦る一方通行、泣く佐天。正直ドツボとはこういう状況を言う。
「中学生はなァ…ババァなんだよ」疑惑が解けつつあるというのに、新たに「中学生はなァ…食べごろなんだよォ」疑惑が生じる。学園都市最高の頭脳をフル回転させた一方通行は、そこで一つの答えに辿り着く。
「キャッ!」
能力を解放すると佐天の背中と膝の裏に腕を回す。
思わず一方通行の首に腕を回す佐天。いわゆる「お姫様抱っこ」である。
「舌噛むんじゃねェぞ…」
「ふえッ!?」
言うやいなや、全力全開の能力によって一方通行は飛び上がった。
竜巻を周囲に生み出し、推進剤のように空を飛ぶ。それはさながらアトム。
人相のすこぶる悪い鉄腕アトムである。
「何処に行くんですかッ?」
新幹線の外側のように目まぐるしく流れていく景色を背に、佐天は一方通行の顔を見る。
「オレの部屋だァ!!」
一方通行の導き出した答えは至ってシンプルなものであった。
人目につかないところ、すなわち、自分の部屋にこの腕の中のこまったちゃんを連れていくことであった。一方通行としては、そこでじっくりこの少女の話を聞き、対処法を検討する算段であるのだが、佐天涙子は違っていた。
首に抱きついたまま、息も触れる距離にある端正な顔に胸の鼓動が高まる。
本来ならば目も開けていられない速度のはずなのに、こうして普通に会話が出来るのは、彼がさりげなく佐天の周りの風のベクトルだけを逸らしてくれているからだろう。それだけの状況を把握出来るほどに、彼女は落ち着きを取り戻していた。
(お、お持ち帰りされちゃったよぉ~ど、ど、どうしよう…まだ心の準備が…下着もっと可愛いのにすれば良かったよ~!!)
そして、落ち着いて彼女は錯乱していた。
672 名前:佐天「嫁にして下さい」一方通行「ゴメン、ちょっと待って」2[sage] 投稿日:2010/11/29(月) 21:47:16.12 ID:uFzXNyA0 [6/8]
「さぁって、ここでアイツの嫌いなチンゲン菜を入れてやることで対一方通行嫌がらせ野菜スープが出来上がる。ウケケケケケ、アイツの嫌がる顔を想像するとミサカは笑いを堪えきれないなぁ」
「チンゲン菜は風邪の予防に良いのですね。ビタミンAが風邪の予防には最適だとミサカは耳寄りな情報を口にしつつ番外個体の健気さに若干拍手します」
「ハァ?何でミサカが健気なのさぁ。ミサカはねぇ、アイツの嫌がることをするのが存在意義にして趣味だったりするんだよね。それだけの話」
トントンと小気味良いリズムを立ててチンゲン菜を手ごろなサイズに切り分けると、煮立つ鍋に落とす。
吹き零れないように火を調節するとスープを小皿にとり一舐め。
「うん、ちょっと物足りないくらいの味付けが丁度いいんだよね」
「ああ、あのモヤシは濃い味付けが好みですからね。塩分の取りすぎには注意してあげないと」
「ち、ちちち、ちっげぇーーし。アイツが『オイ、これ味がしねェぞ!!』て怒る姿を見たいだけなんだーての」
「しかし、白菜といい、今は野菜が高いのに、よくもここまで野菜尽くしにしましたねと、ミサカは番外個体の徹底ぶりと料理のレパートリーに女としてのレベルで遅れを取っている現状に危機感を覚えます」
御坂妹ことミサカ10032は憂鬱な溜息を吐く。
偶々スーパーで買い物中の番外個体に出会い、そのまま一方通行の部屋にまで足を運ぶこととなった。意外にも番外個体はシスターズと良好な関係を築いており、一方通行の部屋の合鍵を(勝手に)持っている番外個体に誘われて一方通行の部屋がミサカの溜まり場となることは珍しいことではない。御坂妹はいつエプロン装備の番外個体に呆れた眼差しを向ける。
打ち止めを拾った頃の彼の部屋とは比べ物にならないほどに綺麗にあれた部屋は、掃除の手が隅々まで行き届いているのがひと目でわかる。
「ギャはハハハ、馬鹿言ってやがるこの出来損ないてば。一方通行への負の感情を率先してキャッチしてるミサカくらいになるとね、安易にアイツを馬鹿にしたり罵ったり挑発したりするなんて浅はかな嫌がらせなんてしないんだよ。アイツはシスターにそうやって罵倒されればされるほど罰を受けてる自分に酔って満足するマゾ野郎なわけ。だから、ミサカは逆転の発想でアイツを攻めてるんだよ。アイツはきっとミサカが高い野菜買って自分なんかに食事を作ってることに自己嫌悪するんだよ。しかも部屋の掃除までされちゃあ、きっと『ああァ…俺みたいな野郎の世話をアイツらにさせるなんてよォ…クソったれがァ…』なんつって一人でこっそり落ち込むんだぜ。バッカみてェ~マジ受けるんですけど~」
口角を釣り上げ、下品な笑い声を上げる番外個体。
しかし、御坂妹は彼女の視線が決して鍋から離れていないのに気付いている。
野菜が嫌いだから野菜を食わせると言っては、レシピを研究して栄養バランスの良い野菜料理を作り。
自分の部屋のものを勝手に触られることに気味の悪さを覚えれば良いと言っては部屋の掃除を毎週欠かさない。
独りの快適な空間を邪魔してやれと言っては帰りを出迎える。
そして、寝首を搔かれる恐怖に怯えろと言っては寝床に潜り込む。
673 名前:佐天「嫁にして下さい」一方通行「ゴメン、ちょっと待って」2[sage] 投稿日:2010/11/29(月) 21:48:48.15 ID:uFzXNyA0 [7/8]
「アナタのような人を押しかけ女房と言うのですねと、セロリ派を圧倒的に引き離す番外個体の積極性は見習うべき点が大いにあるとミサカは上条当麻攻略の糸口を探ります」
「に゛ゃっっ!?バッカじゃねぇ?マジ中坊の頭の沸きっぷりにドン引きしちゃうんだけど。大体あのモヤシの押しかけ女房とかあり得ないし。あんな白くてひょろくて中二病のクソセロリ ―――― あ!!」
突然何事か、番外個体がドアへと走っていく。確かめるまでもなく、彼女は一方通行が帰ってきたことにいち早く気付いたのだろう。
「言動が一致しないにも程があるとミサカは番外個体のツンデレっぷりに溜息を禁じえま ――――
『あああああああああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!』
――― って何事でしょうか」
慌ててドアへと駆けつけると、番外個体がこれ以上ないくらいに目を見開き、固まっていた。
彼女の視線の先を辿ると、其処には。
「Oh……セロリは小学生から中学生に鞍替えしたのでしょうか、とミサカは女子中学生をお姫様抱っこする一方通行を指さしながら半笑いで問い掛けます」
「なンでいンだよこんな時に限ってよォォォォ」
佐天涙子をお姫様抱っこした一方通行は顔を引きつらせながら番外個体と御坂妹に問い掛ける。
「随分とお早いお帰りで。今からお楽しみの予定でしたか?とミサカは中学生である自分にもモヤシの毒牙が伸びるのではないかと今更に危機感を抱きます」
「会うなりイキナリいい度胸だなァ人形ォォォ……あん?どうしたンだァお前」
いつもなら真っ先に憎まれ口を叩いてくるはずの番外個体が黙っていることに気付く。
俯いている彼女の表情は一方通行からはわからない。
「う…ッく…」
「オイ…どうした番外個体?」
「ひっく…グス……」
「え、ちょ、番外…個体さン?」
顔を上げた番外個体は目に溢れんばかりの涙を浮かべていた。
「うわぁぁぁぁーーーーん一方通行のバカヤローーーーーーーーー!!!」
「またかよチクショォォォォーーーーーーーーーー!!!!!!!
「ビヤァァァーーーーーーー!!!」
ガン泣きである。
674 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage] 投稿日:2010/11/29(月) 21:51:53.99 ID:uFzXNyA0 [8/8]
以上で投下終了します。
あれ?一方通行と佐天さんのエロ電波話の予定だったのに…何か方向がおかしい具合に…
改行制限回避の為に見づらい仕様になってしまい、申し開きの仕様もございません…
一方さんは上条さん以上に女の子に振り回される姿が似合うと思うんだァ…
詳細は聞き取れなかったが、どうやら彼の少年には所謂ステディな関係のおなごがいるらしい。
向かいには「メシウマwwwwww」状態の初春。佐天は一方通行に助けられたその日のうちに初春の下を尋ねた。時刻は日付が変わった頃。
空気読まないにも程がある時間である。一人暮らしの大学生でもいきなり来られるとムッとなる時間帯であったが、夜の住人、ナイトウォーカーの肩書きを持つ初春にとっては放課後に遊びにこられるのと大差は無い時間帯である。禁書スレを超電磁砲スレで乗っ取るという日課をこなしているときに突如尋ねてきた佐天を快く迎え入れた。
初春には佐天涙子という親友のことがよくわかっていた。一見常識知らずなようでその実もっとも常識を弁えている少女。
そんな少女が血相を変えてやって来たのだ、何かがあったと思うのが当然であろう。
『う、ういはるぅ~~私、白い王子様見つけちゃったよぉ~!』
『白い?白馬の王子様じゃなくてですか?』
『うん、白いの。この前初春が言ってた学園都市第一位の……』
『一方通行…ですか?』
『うん!!そう、そのあくせられーたが王子様で、白くて私を助けてくれて、モヒカンが超電磁砲で』
『佐天さん落ち着いて下さい。文章がおかしいです。大体何があったのかわかりますけど』
『ど、どうしよう。お礼も言えなかったし』
『ああ…一目惚れしちゃったんだ…赤い実弾けちゃったんですね、佐天さん』
『ひとッ!?ひ、ひとめ惚れ……そうなのかなぁ…よくわからない』
『で、その報告をする為にこんな時間に来ちゃったんですか?あ、紅茶飲みます?』
『ううん、そういうわけじゃなくてね……紅茶よりコーヒーが欲しいかな?』
『?じゃあどういうつもりで?コーヒーなんてそんなに飲みましたけ』
『あの人の居場所ってわからないかなぁって。連絡先でも住所でもいいんだけど、そういうの街頭カメラとかでわからない?いや、お礼言いたいだけなんだけどね?ホントだよ』
その発想はストーカーです、とは言えなかった。あの能天気な佐天涙子が御坂美琴の如きリアクションを示したのだ、野暮なツッコミなど出来ようハズもない。
第一純愛とストーカーなんて紙一重なのだ、これくらい可愛いものだと初春は親友の為に一肌脱ぐことを決意した。
何よりも面白そうな予感がしたのだ。食いつかない黒春ではない。
「そんな……ようやく見つけたのに、そんな相手がいるなんて」
佐天はうなだれる。具体的にどうやって見つけたのかといえば一方通行と上条の電話を傍受したのだ。初春さんマジパネェ。
「イケメンには既にお手付きなものですよ~」
「他人事だと思って初春~」
「いや、他人事ですし。それで、お目当ての王子様にはお相手がいるようですけどどうするんですか?」
「どうするって……」
「高校生で一人暮らししてて通い妻がいる。佐天さんはようやく中二に上がったばかりの子供。相手にしてもらえるのか怪しいですよね~相手がロリコンなら違うかもしれませんけど」
「うううぅ…わかってるよ、ガキって言われたもん」
意地の悪い事を言っているなぁと自覚しながら初春は渾身の微笑を浮かべる。
悶々として思い悩む佐天をいじる機会など滅多に無いのだ。いじらないはずが無い。
頭を抱えながら佐天は目の前のクリームソーダを睨む。溶けたアイスがソーダの海にゆっくりと沈んでいく。
やがて話が終わったのか、一方通行達が席を立つ。ぴくりと佐天の肩が震える。流石に見るに見かねたのか初春はそっと背を押してやることにする。
669 名前:佐天「嫁にして下さい」一方通行「ゴメン、ちょっと待って」2[sage] 投稿日:2010/11/29(月) 21:33:40.23 ID:uFzXNyA0 [3/8]
「でも佐天さん。お礼を言うんだったら相手がいようといまいと関係ないと思うんですけど?」
「え?」
「お礼を口実にしてアプローチをしろなんて言いませんけど、ただ向こうが一途に慕ってくれる女の子に心変わりしちゃう可能性はゼロではないと思うんですよ」
「そ、そんな。泥棒猫みたいな真似……」
「盗むのは良くないですけど、勝手に心変わりしちゃうのは不可抗力ですよね?」
邪笑。この初春、実に汚い。実に狡い。実に悪い。だがしかし真理だ。少なくとも今の佐天にとって、それは自己を正当化するに足る程の真理を秘めている。
決意の炎が親友の瞳に点るのを満足げに見つめる初春。一つ頷くと、佐天は席を立つ。向かう先は白い少年だろう。
佐天を見送ってから初春はノートパソコンを開く。カタカタとキーを弾くと幾つものウインドウが開く。横断歩道、テラス、駅前、雑貨屋など、様々な映像が浮かぶ中から、一つを選び拡大する。
イヤホンを付け、耳に当てると、道行く人々の会話が雑音交じりながらもはっきりと聞こえる。
映像に映っているのは件の白い少年。相方のツンツン頭の少年とは別れたらしい。にたりと初春、否、黒春が笑う。やがて映像の端に今しがた店を後にしたばかりの親友の姿が映った。
佐天は走る。目の前には華奢な少年の背中。細くて白い、モヤシとか言うな、そんな背中である。
かったるそうに杖を突きながらよたよたと歩く後姿に、学園都市最強とは思えぬその後姿に向かって。
「待ってください、待って…まってください」
聞こえていないのか、一方通行が止まる気配はない。呼びかけていくうちに止まれよコンチクショウ目という気持ちがムクムクと佐天の中に湧き上がる。そして ―――
「待ってって言ってるだろうがごらぁぁ!!!」
「ぐふゥッ!?」
足下からすくい上げるような見事な、いや、美事な佐天の低空タックルが一方通行を捉えた。反射を切った一方通行は平均以下の貧弱少年に過ぎない。十分な加速と体重が乗ったタックルに耐えることも、ましてや巧みにそれを捌く技術も無い。
結果、佐天涙子は学園都市最強の怪物からノゲイラばりのテイクダウンと取ることに成功する。
「てンめェェ……何処の組織の差し金だァ?余程挽き肉にされてェみてェだなァァ」
顔面スライディングをかました一方通行は、すりむいた鼻を押さえながら若干涙目になりながらうなり声を上げる。刺激に対して弱いことに掛けては定評があるのだ。クール(ぶっている)な自分に顔面スライディングを決めさせた愚か者を血祭りに上げるべくチョーカーのスイッチを入れたところで、足下にしがみついているのがセーラー服を着た何処にでもいるようなただの中学生だと気づく。
「あァん?てめェは確か…」
「あ、あの、私、この前貴方に助けてもらったんです。それで、お礼まだ言ってなくて、ずっと言いたくて、たまたま貴方を見つけて」
動揺しつつもさりげなくストーカー行為を偶然に置き換えながら佐天は耳まで真っ赤な顔を一方通行の胸にぐりぐりと押しつける。
「最近の中学生ってなァ礼代わりにタックルかますもんなのかァ?」
「違います。これは誤解で、ただ、ただ私」
貴方とお話してみたかったんです。その言葉が何故か出てこなかった。
助けてくれた恩人への感謝の気持ち。学園都市最強という自分にとってはラピュタのごとき幻想の存在への憧憬。
そして、一目見た瞬間から生まれてしまった言語化困難な感情。会ってまだ一週間しか経っていない相手に対してストーカーまがいの真似までして居場所を突き止めた自分を動かすこの感情を正確に把握するには佐天はまだ若すぎた。どれだけワガママボディを誇っていようとも、所詮は13歳なのだ。一年ちょっと前にはまだ赤いランドセルを背負っていたのだ。だがそんなことを順序立てて説明できるはずもないし、動揺が口から言葉を奪っていく。
結果。
「ひっく…わ、わたし、私、ただ、ひっく…グス…」
佐天は彼女の名前の如く、大粒の涙を流し始めた。
670 名前:佐天「嫁にして下さい」一方通行「ゴメン、ちょっと待って」2[sage] 投稿日:2010/11/29(月) 21:36:34.21 ID:uFzXNyA0 [4/8]
情緒不安定にもほどがある。こんなにも涙脆かったのだろうか自分は、というよりも、どうしてこんな訳の分からない、無茶苦茶な行動に出ているのだ自分は。見てみろ彼を、困惑を通り越して呆然としている。それもそうだ、自分の中でこそこの一週間様々な葛藤があり、思わず「白い王子様」などと言ってしまったりもしたが、一方通行にしてみれば一週間前に助けた女子中学生にいきなりタックルされたと思えば、目の前で突然泣き出されたのだ。なんて迷惑な女だろうか。女というか子供だ。恥ずかしい、穴があったら入りたい、というかシャベルを誰かくれ、今すぐ人一人分が入れる穴を掘って埋まってやる。
佐天がそんな思いで泣き出したのを見ながら、一方通行、彼は彼で静かにテンパっていた。
(えェェッ!?ちょ、え?ちょ、オレなンもしてねェだろうがよォォォォォーーー!!!アレか、オレのツラが怖ェからかァ?だから泣いたのかァ?寧ろオレが泣きてェくらいなんだがよォ)
『おい、見ろよアレ…あれって痴話喧嘩だよな』『如何にも女の子を弄んでそうな顔してるわよね』『あんな可愛くて発育の良い中学生を泣かしてるぜ』『あんなに必死に彼氏に縋りついちゃって…きっと別れ話切り出されたのね』『女子中学生をポイ捨てとか、リア充爆発しろ』『もしかして堕ろせとか言われたんじゃ…』『セロリたんの腋汗ペロペロしたいお』
(おいィィィィィィィィィィィィーーーー!!!光の速さでオレの社会的な生命が潰えようとしてませんかァァァ!?)
周囲から突き刺さる白い視線が実に痛い。社会的な名誉とは程遠い、悪名の方が高い彼であるが、悪名にもピンからキリまである。一方通行は暗部で戦いながら二つのテーマを己に課してきた。
光の世界の人間には手を出さないこと、そしてロリコン疑惑を晴らすこと。最初に言っておくが、彼は打ち止めの事を大切に思っているが、それはあくまでも妹か娘に対する感情、つまりは純粋な「家族愛」である。
しかし、彼の不器用な打ち止めへの思いやり、家族愛はツンデレという彼にとっては忌むべき俗称と共に恋愛感情へと勝手に区分けされてしまった。オイオイ、しまうフォルダ違うんですけどォと言いたくとも、人の噂はベクトル操作できない。そして付いた呼び名は『学園都市最強のロリコン、アクセロリータ』。この屈辱的な汚名を濯ぐ為に、彼は血反吐を吐きながら学園都市の裏側で戦ってきた。
ある時は巨乳アラサー美女を学園都市の闇から助け、またある時は横断歩道で立ち往生しているお婆ちゃんを学園都市の闇から救い、またある時は一方通行って実はババァ好きなんだってよと掲示板に書き込んだりもした。
意識的に結標淡希と行動を共にしておっぱい好きのイメージを付けようという試みも怠らない。幸いだったのは、彼女が快く協力をしてくれたこと。
『頼む、(イメージを変えるために)オレの側にいてくれ。(巨乳好きと思われる為には)お前が必要なんだ。(不測の事態に対処出来る能力を持った)お前じゃねェとダメなんだ!!!』
『!?………ふ、不束者ですが…』
徐々に顔を真っ赤にして俯く彼女を見ながら一方通行は誠意を持って接すれば人は応えてくれるのだという至極まっとうな、人としての理を学んだ。素直であることが如何に大切か、それをもって接すれば自分のような救い難い社会のクズであろうとも、人はこうして手を差し伸べてくれるのだ。
それだというのに、この状況はどうしたことか。
このままでは努力が全て水の泡になってしまう。嫌々ながらも自分につき合ってくれた、結標にも顔向けが出来ないではないか。
671 名前:佐天「嫁にして下さい」一方通行「ゴメン、ちょっと待って」2[sage] 投稿日:2010/11/29(月) 21:40:07.53 ID:uFzXNyA0 [5/8]
「オイ、泣くんじゃねェよ」
「泣いてません!!泣いてませんよぉ…これはただ目から水が出てるだけで」
「それを泣くってンだろうがァ!!」
「グスッ…」
「ああァッ」
明らかに困りきった顔がいけなかった。
佐天は、折角会えた一方通行を困らせてしまっている自分に情けなくなり、今にも消えてしまいたいと、更に涙を流す。
焦る一方通行、泣く佐天。正直ドツボとはこういう状況を言う。
「中学生はなァ…ババァなんだよ」疑惑が解けつつあるというのに、新たに「中学生はなァ…食べごろなんだよォ」疑惑が生じる。学園都市最高の頭脳をフル回転させた一方通行は、そこで一つの答えに辿り着く。
「キャッ!」
能力を解放すると佐天の背中と膝の裏に腕を回す。
思わず一方通行の首に腕を回す佐天。いわゆる「お姫様抱っこ」である。
「舌噛むんじゃねェぞ…」
「ふえッ!?」
言うやいなや、全力全開の能力によって一方通行は飛び上がった。
竜巻を周囲に生み出し、推進剤のように空を飛ぶ。それはさながらアトム。
人相のすこぶる悪い鉄腕アトムである。
「何処に行くんですかッ?」
新幹線の外側のように目まぐるしく流れていく景色を背に、佐天は一方通行の顔を見る。
「オレの部屋だァ!!」
一方通行の導き出した答えは至ってシンプルなものであった。
人目につかないところ、すなわち、自分の部屋にこの腕の中のこまったちゃんを連れていくことであった。一方通行としては、そこでじっくりこの少女の話を聞き、対処法を検討する算段であるのだが、佐天涙子は違っていた。
首に抱きついたまま、息も触れる距離にある端正な顔に胸の鼓動が高まる。
本来ならば目も開けていられない速度のはずなのに、こうして普通に会話が出来るのは、彼がさりげなく佐天の周りの風のベクトルだけを逸らしてくれているからだろう。それだけの状況を把握出来るほどに、彼女は落ち着きを取り戻していた。
(お、お持ち帰りされちゃったよぉ~ど、ど、どうしよう…まだ心の準備が…下着もっと可愛いのにすれば良かったよ~!!)
そして、落ち着いて彼女は錯乱していた。
672 名前:佐天「嫁にして下さい」一方通行「ゴメン、ちょっと待って」2[sage] 投稿日:2010/11/29(月) 21:47:16.12 ID:uFzXNyA0 [6/8]
「さぁって、ここでアイツの嫌いなチンゲン菜を入れてやることで対一方通行嫌がらせ野菜スープが出来上がる。ウケケケケケ、アイツの嫌がる顔を想像するとミサカは笑いを堪えきれないなぁ」
「チンゲン菜は風邪の予防に良いのですね。ビタミンAが風邪の予防には最適だとミサカは耳寄りな情報を口にしつつ番外個体の健気さに若干拍手します」
「ハァ?何でミサカが健気なのさぁ。ミサカはねぇ、アイツの嫌がることをするのが存在意義にして趣味だったりするんだよね。それだけの話」
トントンと小気味良いリズムを立ててチンゲン菜を手ごろなサイズに切り分けると、煮立つ鍋に落とす。
吹き零れないように火を調節するとスープを小皿にとり一舐め。
「うん、ちょっと物足りないくらいの味付けが丁度いいんだよね」
「ああ、あのモヤシは濃い味付けが好みですからね。塩分の取りすぎには注意してあげないと」
「ち、ちちち、ちっげぇーーし。アイツが『オイ、これ味がしねェぞ!!』て怒る姿を見たいだけなんだーての」
「しかし、白菜といい、今は野菜が高いのに、よくもここまで野菜尽くしにしましたねと、ミサカは番外個体の徹底ぶりと料理のレパートリーに女としてのレベルで遅れを取っている現状に危機感を覚えます」
御坂妹ことミサカ10032は憂鬱な溜息を吐く。
偶々スーパーで買い物中の番外個体に出会い、そのまま一方通行の部屋にまで足を運ぶこととなった。意外にも番外個体はシスターズと良好な関係を築いており、一方通行の部屋の合鍵を(勝手に)持っている番外個体に誘われて一方通行の部屋がミサカの溜まり場となることは珍しいことではない。御坂妹はいつエプロン装備の番外個体に呆れた眼差しを向ける。
打ち止めを拾った頃の彼の部屋とは比べ物にならないほどに綺麗にあれた部屋は、掃除の手が隅々まで行き届いているのがひと目でわかる。
「ギャはハハハ、馬鹿言ってやがるこの出来損ないてば。一方通行への負の感情を率先してキャッチしてるミサカくらいになるとね、安易にアイツを馬鹿にしたり罵ったり挑発したりするなんて浅はかな嫌がらせなんてしないんだよ。アイツはシスターにそうやって罵倒されればされるほど罰を受けてる自分に酔って満足するマゾ野郎なわけ。だから、ミサカは逆転の発想でアイツを攻めてるんだよ。アイツはきっとミサカが高い野菜買って自分なんかに食事を作ってることに自己嫌悪するんだよ。しかも部屋の掃除までされちゃあ、きっと『ああァ…俺みたいな野郎の世話をアイツらにさせるなんてよォ…クソったれがァ…』なんつって一人でこっそり落ち込むんだぜ。バッカみてェ~マジ受けるんですけど~」
口角を釣り上げ、下品な笑い声を上げる番外個体。
しかし、御坂妹は彼女の視線が決して鍋から離れていないのに気付いている。
野菜が嫌いだから野菜を食わせると言っては、レシピを研究して栄養バランスの良い野菜料理を作り。
自分の部屋のものを勝手に触られることに気味の悪さを覚えれば良いと言っては部屋の掃除を毎週欠かさない。
独りの快適な空間を邪魔してやれと言っては帰りを出迎える。
そして、寝首を搔かれる恐怖に怯えろと言っては寝床に潜り込む。
673 名前:佐天「嫁にして下さい」一方通行「ゴメン、ちょっと待って」2[sage] 投稿日:2010/11/29(月) 21:48:48.15 ID:uFzXNyA0 [7/8]
「アナタのような人を押しかけ女房と言うのですねと、セロリ派を圧倒的に引き離す番外個体の積極性は見習うべき点が大いにあるとミサカは上条当麻攻略の糸口を探ります」
「に゛ゃっっ!?バッカじゃねぇ?マジ中坊の頭の沸きっぷりにドン引きしちゃうんだけど。大体あのモヤシの押しかけ女房とかあり得ないし。あんな白くてひょろくて中二病のクソセロリ ―――― あ!!」
突然何事か、番外個体がドアへと走っていく。確かめるまでもなく、彼女は一方通行が帰ってきたことにいち早く気付いたのだろう。
「言動が一致しないにも程があるとミサカは番外個体のツンデレっぷりに溜息を禁じえま ――――
『あああああああああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!』
――― って何事でしょうか」
慌ててドアへと駆けつけると、番外個体がこれ以上ないくらいに目を見開き、固まっていた。
彼女の視線の先を辿ると、其処には。
「Oh……セロリは小学生から中学生に鞍替えしたのでしょうか、とミサカは女子中学生をお姫様抱っこする一方通行を指さしながら半笑いで問い掛けます」
「なンでいンだよこんな時に限ってよォォォォ」
佐天涙子をお姫様抱っこした一方通行は顔を引きつらせながら番外個体と御坂妹に問い掛ける。
「随分とお早いお帰りで。今からお楽しみの予定でしたか?とミサカは中学生である自分にもモヤシの毒牙が伸びるのではないかと今更に危機感を抱きます」
「会うなりイキナリいい度胸だなァ人形ォォォ……あん?どうしたンだァお前」
いつもなら真っ先に憎まれ口を叩いてくるはずの番外個体が黙っていることに気付く。
俯いている彼女の表情は一方通行からはわからない。
「う…ッく…」
「オイ…どうした番外個体?」
「ひっく…グス……」
「え、ちょ、番外…個体さン?」
顔を上げた番外個体は目に溢れんばかりの涙を浮かべていた。
「うわぁぁぁぁーーーーん一方通行のバカヤローーーーーーーーー!!!」
「またかよチクショォォォォーーーーーーーーーー!!!!!!!
「ビヤァァァーーーーーーー!!!」
ガン泣きである。
674 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage] 投稿日:2010/11/29(月) 21:51:53.99 ID:uFzXNyA0 [8/8]
以上で投下終了します。
あれ?一方通行と佐天さんのエロ電波話の予定だったのに…何か方向がおかしい具合に…
改行制限回避の為に見づらい仕様になってしまい、申し開きの仕様もございません…
一方さんは上条さん以上に女の子に振り回される姿が似合うと思うんだァ…
Tag : とあるSS総合スレ
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コメント
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もう番外通行でいいんじゃないかな
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