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佐天「嫁にして下さい」一方通行「ゴメン、ちょっと待って」3
780 名前:佐天「嫁にして下さい」一方通行「ゴメン、ちょっと待って」3[sage] 投稿日:2010/12/01(水) 20:43:54.05 ID:aibL2Rw0 [2/6]
「それでさぁ、一方通行さんたらさぁ。まァ悪かねェな紅茶もよォとか言っちゃってるくせにさ」
「はいはい」
「顔がほわぁって柔らかくなってるのに気づいてなくてね」
「ほうほう」
「その顔が無邪気っていうのかな、いつもみたいに眉間に皺寄せたり、二カァって笑ってる時と全然違ってて凄く可愛いの」
「へぇぇ~」
関連
佐天「嫁にして下さい」一方通行「ゴメン、ちょっと待って」
佐天「嫁にして下さい」一方通行「ゴメン、ちょっと待って」2
「それでさぁ、一方通行さんたらさぁ。まァ悪かねェな紅茶もよォとか言っちゃってるくせにさ」
「はいはい」
「顔がほわぁって柔らかくなってるのに気づいてなくてね」
「ほうほう」
「その顔が無邪気っていうのかな、いつもみたいに眉間に皺寄せたり、二カァって笑ってる時と全然違ってて凄く可愛いの」
「へぇぇ~」
関連
佐天「嫁にして下さい」一方通行「ゴメン、ちょっと待って」
佐天「嫁にして下さい」一方通行「ゴメン、ちょっと待って」2
風気委員の雑務をこなしながら初春飾利は気のない返事ここに極まる。
正直仕事の邪魔、ぶっちゃけうざい。その言葉は親友であるが故にグッと噛み堪えながら親友ののろけじみたテロにも匹敵する言葉の五月雨に耐える。
若干頭の本体さんも元気が無い。
しょぼんと花は萎れ「飾利よ、涙子嬢のコレは一体いつまで続くんだ?」と初春にい問いかけているかのようだ。
初春の精神をガリガリと削り取っている佐天涙子の表情には僅かたりとも罪の意識など垣間見えない。
無自覚の罪って一番罪深いよね何時の時代も。
「最初は頼りになる人かなって思ってたんだけどさ、最初っていうのは助けてもらった時ね。実際に付き合ってみるとむしろその逆っていうか、危なっかしい人なんだよね」
「へぇ~付き合ってるんですか」
「やだなぁ初春。付き合うっていうのはそういう意味じゃないってば。ま、まぁ、私としてはそういう意味になるのも全然オッケーつーか、むしろバッチ来いなんだけどさ。あははははは」
(はっぱでもやってるのかなぁ佐天さん…)
思わずとてつもなく失礼なことを思い浮かべてしまうは、いい加減にして欲しいという初春の限界の顕れ。
手にした「美味しい珈琲への道」をぺらぺらとめくりながら、普段であれば快活さと華やかさの中に凛々しさを秘めたその表情はだらしなく緩んでいる。
どうしてこうなった、と尋ねれば自分のせいであるのだが。最初は面白がって佐天の後押しをしたのは確かであるが、精々適当にはぐらかされて終わりだろうとたかを括っていた。
勿論、佐天が弄ばれるという意味ではなく、子供扱いされて追い出されるものだろうと踏んでいたのだ。彼は自分に表の世界の人間、すなわち自分や佐天のような人間が関わることをよしとしない。
故に、佐天を遠ざけると思っていたのだ。だからこそ楽観的に見ていた。佐天が様々なアプローチを掛けていくのをこっそりカメラにハッキングして覗き見て、普段からかわれている復讐の材料に使うのも良い。
危なくなったら白井と共に助けに駆けつければいい。
初春にとっても命の恩人にあたる一方通行は調べれば調べるほどある単語に集約されていく。
それは『義賊』。御坂美琴がお熱を上げている上条当麻をヒーローとすれば彼は偽悪的もしくは悩むヒーロー。上条当麻がウルトラマンならば一方通行は仮面ライダーであろう。
初春は佐天が深入りなどせずにさっさと切り上げざるを得なくなると予想していた。
しかし実際には異なった。佐天の淹れた珈琲にすっかり気に入ってしまった彼は佐天が訪ねてくることを許容するようになってしまった。
782 名前:佐天「嫁にして下さい」一方通行「ゴメン、ちょっと待って」3[sage] 投稿日:2010/12/01(水) 20:50:51.82 ID:aibL2Rw0 [3/6]
「でも良かったですよね、一週間珈琲淹れる特訓した甲斐がありましたよ」
「ホント、ありがとう~~。初春には感謝してもしたりないよ~~」
「お礼なら寧ろ私達風紀委員の方が言わないといけませんってば。佐天さんの珈琲が徹夜作業の唯一の慰めだっていう人多いんですから」
それから珈琲を淹れてくれる佐天さんの笑顔も、という言葉は言わない。彼女の輝かんばかりの笑顔にこの一週間どれほどの風紀委員が使い物にならなくなったことか。
佐天が来ていないと途端にテンションだだ下がりの牙を抜かれた犬共の存在など露ほども知らずに、佐天は時計を見る。先ほどからちらちらと見ているが、今日もそろそろというわけであろうか。
「おや、もうこんな時間だ。あんまり長居すると迷惑になっちゃうから私は帰るね初春。また来週学校で」
長居しすぎて迷惑だなどと言ったことも無いくせに、最近はすっかり夕方には引き上げていく佐天。彼女の向かう先などわかっている。タイムセールがあるのだろう。
そして向かう先は恩人の部屋。やれやれだなぁと気晴らしに雑務を放り投げPSPのスイッチを入れる。この後帰ってきた白井に大目玉を食らうのは15分後の話である。
「で、結局その佐天さんっていう子が入り浸ってるわけか…あ、欲しい素材あるんだけどさ……まぁ心配する必要もなかったな」
「何だよ、何か言いたげじゃねェか…まだ持ってなかったのかァ?」
午前中で補習を終え、おそらく学園都市最強のコンビであろう二人はいつものごとく、ダラダラと過ごしている。補習を終えた上条が仕事を終えて暇を持て余している一方通行にメールを入れてファミレスで合流するというパターンだ。
「ガンスってムズいだろそれ」
「慣れるまではなァ。コツを掴ンじまえば大したことァねェよ。俺が中学生のガキに何かするとでも思ってたのかァ?」
「いや、そうじゃなくてさ。お前のことだから変な事に巻き込みたく無いって言ってはねのけるんじゃないかって思ってた。俺が心配してたのは、それが手荒じゃなかったのかっていう点だよ」
この不器用さが服を着て歩いているような男は、下手をすれば能力を使って脅しかねない。悪役をやることには慣れきっているのだと、自分で自分を納得させてしまう。
それでは寂しいではないかと、常々上条は思っていた。
「最初はそうするつもりで部屋に呼ンだンだがなァ」
ジョウズニヤケマシタ~♪
「そうしなかったと。何かあったのか?ま、まさかひとめぼれ…流石はアクセロ」
「はり倒すぞォ三下ァァ…」
「すんません」
ロリコン疑惑が再燃し始めているだけに、一方通行は非常に敏感になっている。特にラ行の発音なんかにはピリピリしている。昨日ネットサーフィンをしていたインデックスが発見した書き込みは凄まじい反響であった。確か内容は
【セロリこと一方通行が「中学生はなァ…ババァなンだよ」ではなく
「中学生はなァ…食べごろなンだよ」だった件についてお前等どう思う?
とミ○カはフラグ体質を発現し始めたセロリについて悪意と何故か苛立ちをもって書き込んでみる。】
こういう内容だっただろうか。レスが凄まじい速度で増えていき、中には携帯やデジカメから取った画像や動画をアップする者まであった。
「しかし、お姫様抱っこで空を飛ぶって……ラブコメ系のラノベのキャラでせうか」
「うン、スッゲー今イラッときたンだがァ…チッ、まァ実際みっともネェ真似しちまったのは確かだァ」
「お礼っていうと、やはり上条さん的には色々なピンク色な感じのエロコメイベントを想像するのですが?」
「お前さ、ほンとあのシスターとそういう風になってから頭の湧きっぷりに拍車が掛かったよなァ…そもそもお前が聞きたいのかァそんなことをよォ?日常茶飯事だろうが」
「わかってない、わかってないなあーくん。上条さんのお礼イベントはあくまでも言葉の通り。俺は自覚してるんですよ、そういうイベントは後ろにただしイケメンに限るって付くことを。
故に、無駄な期待はしない。もしかしたら自分に限ってはオイシイラブコメが待っているんじゃ…なんて期待はとうに捨て去りましたともさ」
783 名前:佐天「嫁にして下さい」一方通行「ゴメン、ちょっと待って」3[sage] 投稿日:2010/12/01(水) 20:53:27.53 ID:aibL2Rw0 [4/6]
ちっちっちと指を左右に振る気取った仕草にイラッとする。
その指をへし折るぞと言いたいが、本気でそう思っているようなので、一方通行は黙る。
この男の鈍感さ加減、無自覚なフラグメイカーぶりは伊達じゃない。
「まぁいい…あのガキの話だったな。俺はよ、とりあえず話を聞くだけ聞いてから、部屋からつまみ出そうと思ってたんだ。俺みたいなのにあンなガキが近づいていいはずがねェからなァ。最悪能力使って脅してやってもよかった」
「やっぱり使おうとしたんか…で?」
「珈琲でも飲むかって缶コーヒー出そうとしたら、俺ン家のドリッパー目敏く見つけやがってよ。で、当然淹れて飲まないのかっていう話しになったわけだァ」
「そりゃあ、そうだろう」
袋いっぱいに缶コーヒーを買う男がコーヒー好きじゃないはずがない。
部屋にドリッパーや豆など本格的なものがあれば尚更だ。
それなのに缶コーヒーを奨めるというのは不思議に思うだろう。上条は冷めかけたポテトをかじる。
「正直気が進まねェ。前に淹れてみたら飲めたもんじゃなかった。ンで、この前も淹れてみたら見事に泥水が出来上がったわけだ」
「わお。珍しい。お前料理とかできるのにな。滅多にしないだけで」
「ああ、レシピさえわかってりゃあ大体できる。能力でどうにでもなるしなぁ。けどよ、どうにもああいう技術云々よかコツがいるモンは出来ねェ」
『うめェ…』
思わず口からこぼれた賞賛の言葉。ツンデレキングこと一方通行が素直な賞賛を口にすることなど、青ピーのナンパが成功することに匹敵するほどのレアさである。
番外個体であろうとも、結標淡希であろうとも、彼に手料理を振る舞って素直に美味しいと言われたことなどない。せいぜいが悪くねェ止まりだ。
「好き→嫌いじゃねェ」「なかなか美味しい→食えなくもない」と変換されてしまうのだ。
『ホントですか?良かった~――― 特訓しておいて…』
『何だって?』
『あ、いえいえ、何でもないです。でも一方通行さんて器用な感じがしたんですけど、結構不器用さん?』
『うるせェ。悪いかよォ…』
『ああ、気を悪くしないで下さいよ。でも、珈琲好きなのに、豆があっても美味しく飲めないって結構生殺しじゃないんですか?』
『わ、わかるか?』
密かに己の抱えるジレンマに共感されたことが、一方通行の心をくすぐる。
『お仕事から帰って熱い珈琲を飲みたいなって思ってもコンビニで缶コーヒー買うわけになっちゃうんですよね?』
『お前…わかってンじゃねェかッ。ケッ…ガキのクセになかなか話せる奴だなお前』
友達いない歴が年齢の9割近くを占める一方通行は自分の気持ちに対して理解されることに極端に弱い。ある意味においてメンタルが弱いのだ。
784 名前:佐天「嫁にして下さい」一方通行「ゴメン、ちょっと待って」3[sage] 投稿日:2010/12/01(水) 20:56:52.66 ID:aibL2Rw0 [5/6]
打たれ弱いのではなく、ガードが甘い。悪意に対しての打たれ強さ、ガードは鉄壁であるというのに、そんな長期政権を保有する王者が、好意的な感情を前にすると、とたんにグリーンボーイになってしまう。
悪意はベクトルで操作出来ても、イマイチ好意は操作出来ない一方通行だ。悪意以外自分に向けられる感情など無いとばかりにオート反射スキルは伊達じゃない。
だから上手く反射できない好意は一方通行にとっては「魔法」のようなものなのだった。
『だったら、私が教えてあげましょうか?美味しい珈琲の淹れ方』
『それが礼ってやつかァ?』
『駄目ですか?缶コーヒーの味に飽き飽きしてる一方通行さんの日常に、ひとときの安らぎを!!』
『安らぎ…?』
『そうです。想像してみて下さい。仕事から帰ってきた、今日は大変だった、身も心も疲れている…お仕事ツライでしょう?』
『ああ…仕事はしンどいンだわ、確かに』
『そんな時、熱々の湯を用意する。ゆっくりと湯を注いでいく。ドリッパーから滴り落ちる滴の音、部屋に広がる香ばしい珈琲の香り』
『ああ……』
『一口飲むと口に広がるほろ苦く、深みのある豊かな珈琲の味わい…』
『ごくり…』
『そんな珈琲を淹れられるようになりたくはありませんか?』
『な、なりてェ…』
『教えて欲しくはありませんか?』
『欲しいぜェ…』
『私が教えちゃいます!!』
『た、頼ンじまってもいいのか…?」
『全然オッケーです。だからメアド教えて下さい!!』
『ああ、わかったぜ』
『これで一方通行さんに安らぎの日々をあげられます』
『安らぎ…安らぎかァ…く、くれンのかよォ…?』
『あげいでか。あげますよ。っていうかむしろ私をあげます!!』
『くれンのかァ!?(安らぎを)』
『あげますとも!!(佐天涙子を)』
『マジでかァ…お前…俺みてェな外道にそこまで…』
『お礼ですから』
『お礼ってだけで…くッ…眩しいなァ…これが光の世界の住人って奴か…』
『気にしないで下さい』
『そういう訳にはいかねェよ…でっけェ借りを作っちまったみてェだ』
『だったら、交換条件で通ってもいいですか?』
『ああ、教えてもらうンだからなァ』
『ほ、本当ですか?だ、だったら、合い鍵とか…ほら、入れない時とか困りますし、先に来ちゃって』
『わかったぜ、ホラ、こンなモンでよけりゃァ』
『えっへへへ~~~ありがとうございます!!』
「と、まァそういうやりとりがあってだな。あンなに親切なガキを突っぱねるなンざ俺にはァ出来なかったンだよ。ヘッ、いいぜ?情けないヤロウだって蔑んでくれてもよォ」
「上条さんは今までお前がキャッチセールスに引っかからなかったこと寧ろ感謝したいですよ、ホントに…」
やばい、コイツ思っていた以上にピュアな人だと、上条はドン引きしながらこのいろいろな意味で白い子の今後が心配になった。
785 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/01(水) 20:59:53.73 ID:aibL2Rw0 [6/6]
今日の投下終了~無駄に長くて申し訳ないです。昨日は書いた話が消えて不貞寝してました。
佐天さんの手口が詐欺っぽいのは佐天さんを書き慣れていないだけで佐天さんに下心はありません。
佐天さんは佐天使です。ピュアガールです。ピュアガール・佐天。
一方さんが若干頭の弱い子に見えるのは気のせいです。それではまた。
正直仕事の邪魔、ぶっちゃけうざい。その言葉は親友であるが故にグッと噛み堪えながら親友ののろけじみたテロにも匹敵する言葉の五月雨に耐える。
若干頭の本体さんも元気が無い。
しょぼんと花は萎れ「飾利よ、涙子嬢のコレは一体いつまで続くんだ?」と初春にい問いかけているかのようだ。
初春の精神をガリガリと削り取っている佐天涙子の表情には僅かたりとも罪の意識など垣間見えない。
無自覚の罪って一番罪深いよね何時の時代も。
「最初は頼りになる人かなって思ってたんだけどさ、最初っていうのは助けてもらった時ね。実際に付き合ってみるとむしろその逆っていうか、危なっかしい人なんだよね」
「へぇ~付き合ってるんですか」
「やだなぁ初春。付き合うっていうのはそういう意味じゃないってば。ま、まぁ、私としてはそういう意味になるのも全然オッケーつーか、むしろバッチ来いなんだけどさ。あははははは」
(はっぱでもやってるのかなぁ佐天さん…)
思わずとてつもなく失礼なことを思い浮かべてしまうは、いい加減にして欲しいという初春の限界の顕れ。
手にした「美味しい珈琲への道」をぺらぺらとめくりながら、普段であれば快活さと華やかさの中に凛々しさを秘めたその表情はだらしなく緩んでいる。
どうしてこうなった、と尋ねれば自分のせいであるのだが。最初は面白がって佐天の後押しをしたのは確かであるが、精々適当にはぐらかされて終わりだろうとたかを括っていた。
勿論、佐天が弄ばれるという意味ではなく、子供扱いされて追い出されるものだろうと踏んでいたのだ。彼は自分に表の世界の人間、すなわち自分や佐天のような人間が関わることをよしとしない。
故に、佐天を遠ざけると思っていたのだ。だからこそ楽観的に見ていた。佐天が様々なアプローチを掛けていくのをこっそりカメラにハッキングして覗き見て、普段からかわれている復讐の材料に使うのも良い。
危なくなったら白井と共に助けに駆けつければいい。
初春にとっても命の恩人にあたる一方通行は調べれば調べるほどある単語に集約されていく。
それは『義賊』。御坂美琴がお熱を上げている上条当麻をヒーローとすれば彼は偽悪的もしくは悩むヒーロー。上条当麻がウルトラマンならば一方通行は仮面ライダーであろう。
初春は佐天が深入りなどせずにさっさと切り上げざるを得なくなると予想していた。
しかし実際には異なった。佐天の淹れた珈琲にすっかり気に入ってしまった彼は佐天が訪ねてくることを許容するようになってしまった。
782 名前:佐天「嫁にして下さい」一方通行「ゴメン、ちょっと待って」3[sage] 投稿日:2010/12/01(水) 20:50:51.82 ID:aibL2Rw0 [3/6]
「でも良かったですよね、一週間珈琲淹れる特訓した甲斐がありましたよ」
「ホント、ありがとう~~。初春には感謝してもしたりないよ~~」
「お礼なら寧ろ私達風紀委員の方が言わないといけませんってば。佐天さんの珈琲が徹夜作業の唯一の慰めだっていう人多いんですから」
それから珈琲を淹れてくれる佐天さんの笑顔も、という言葉は言わない。彼女の輝かんばかりの笑顔にこの一週間どれほどの風紀委員が使い物にならなくなったことか。
佐天が来ていないと途端にテンションだだ下がりの牙を抜かれた犬共の存在など露ほども知らずに、佐天は時計を見る。先ほどからちらちらと見ているが、今日もそろそろというわけであろうか。
「おや、もうこんな時間だ。あんまり長居すると迷惑になっちゃうから私は帰るね初春。また来週学校で」
長居しすぎて迷惑だなどと言ったことも無いくせに、最近はすっかり夕方には引き上げていく佐天。彼女の向かう先などわかっている。タイムセールがあるのだろう。
そして向かう先は恩人の部屋。やれやれだなぁと気晴らしに雑務を放り投げPSPのスイッチを入れる。この後帰ってきた白井に大目玉を食らうのは15分後の話である。
「で、結局その佐天さんっていう子が入り浸ってるわけか…あ、欲しい素材あるんだけどさ……まぁ心配する必要もなかったな」
「何だよ、何か言いたげじゃねェか…まだ持ってなかったのかァ?」
午前中で補習を終え、おそらく学園都市最強のコンビであろう二人はいつものごとく、ダラダラと過ごしている。補習を終えた上条が仕事を終えて暇を持て余している一方通行にメールを入れてファミレスで合流するというパターンだ。
「ガンスってムズいだろそれ」
「慣れるまではなァ。コツを掴ンじまえば大したことァねェよ。俺が中学生のガキに何かするとでも思ってたのかァ?」
「いや、そうじゃなくてさ。お前のことだから変な事に巻き込みたく無いって言ってはねのけるんじゃないかって思ってた。俺が心配してたのは、それが手荒じゃなかったのかっていう点だよ」
この不器用さが服を着て歩いているような男は、下手をすれば能力を使って脅しかねない。悪役をやることには慣れきっているのだと、自分で自分を納得させてしまう。
それでは寂しいではないかと、常々上条は思っていた。
「最初はそうするつもりで部屋に呼ンだンだがなァ」
ジョウズニヤケマシタ~♪
「そうしなかったと。何かあったのか?ま、まさかひとめぼれ…流石はアクセロ」
「はり倒すぞォ三下ァァ…」
「すんません」
ロリコン疑惑が再燃し始めているだけに、一方通行は非常に敏感になっている。特にラ行の発音なんかにはピリピリしている。昨日ネットサーフィンをしていたインデックスが発見した書き込みは凄まじい反響であった。確か内容は
【セロリこと一方通行が「中学生はなァ…ババァなンだよ」ではなく
「中学生はなァ…食べごろなンだよ」だった件についてお前等どう思う?
とミ○カはフラグ体質を発現し始めたセロリについて悪意と何故か苛立ちをもって書き込んでみる。】
こういう内容だっただろうか。レスが凄まじい速度で増えていき、中には携帯やデジカメから取った画像や動画をアップする者まであった。
「しかし、お姫様抱っこで空を飛ぶって……ラブコメ系のラノベのキャラでせうか」
「うン、スッゲー今イラッときたンだがァ…チッ、まァ実際みっともネェ真似しちまったのは確かだァ」
「お礼っていうと、やはり上条さん的には色々なピンク色な感じのエロコメイベントを想像するのですが?」
「お前さ、ほンとあのシスターとそういう風になってから頭の湧きっぷりに拍車が掛かったよなァ…そもそもお前が聞きたいのかァそんなことをよォ?日常茶飯事だろうが」
「わかってない、わかってないなあーくん。上条さんのお礼イベントはあくまでも言葉の通り。俺は自覚してるんですよ、そういうイベントは後ろにただしイケメンに限るって付くことを。
故に、無駄な期待はしない。もしかしたら自分に限ってはオイシイラブコメが待っているんじゃ…なんて期待はとうに捨て去りましたともさ」
783 名前:佐天「嫁にして下さい」一方通行「ゴメン、ちょっと待って」3[sage] 投稿日:2010/12/01(水) 20:53:27.53 ID:aibL2Rw0 [4/6]
ちっちっちと指を左右に振る気取った仕草にイラッとする。
その指をへし折るぞと言いたいが、本気でそう思っているようなので、一方通行は黙る。
この男の鈍感さ加減、無自覚なフラグメイカーぶりは伊達じゃない。
「まぁいい…あのガキの話だったな。俺はよ、とりあえず話を聞くだけ聞いてから、部屋からつまみ出そうと思ってたんだ。俺みたいなのにあンなガキが近づいていいはずがねェからなァ。最悪能力使って脅してやってもよかった」
「やっぱり使おうとしたんか…で?」
「珈琲でも飲むかって缶コーヒー出そうとしたら、俺ン家のドリッパー目敏く見つけやがってよ。で、当然淹れて飲まないのかっていう話しになったわけだァ」
「そりゃあ、そうだろう」
袋いっぱいに缶コーヒーを買う男がコーヒー好きじゃないはずがない。
部屋にドリッパーや豆など本格的なものがあれば尚更だ。
それなのに缶コーヒーを奨めるというのは不思議に思うだろう。上条は冷めかけたポテトをかじる。
「正直気が進まねェ。前に淹れてみたら飲めたもんじゃなかった。ンで、この前も淹れてみたら見事に泥水が出来上がったわけだ」
「わお。珍しい。お前料理とかできるのにな。滅多にしないだけで」
「ああ、レシピさえわかってりゃあ大体できる。能力でどうにでもなるしなぁ。けどよ、どうにもああいう技術云々よかコツがいるモンは出来ねェ」
『うめェ…』
思わず口からこぼれた賞賛の言葉。ツンデレキングこと一方通行が素直な賞賛を口にすることなど、青ピーのナンパが成功することに匹敵するほどのレアさである。
番外個体であろうとも、結標淡希であろうとも、彼に手料理を振る舞って素直に美味しいと言われたことなどない。せいぜいが悪くねェ止まりだ。
「好き→嫌いじゃねェ」「なかなか美味しい→食えなくもない」と変換されてしまうのだ。
『ホントですか?良かった~――― 特訓しておいて…』
『何だって?』
『あ、いえいえ、何でもないです。でも一方通行さんて器用な感じがしたんですけど、結構不器用さん?』
『うるせェ。悪いかよォ…』
『ああ、気を悪くしないで下さいよ。でも、珈琲好きなのに、豆があっても美味しく飲めないって結構生殺しじゃないんですか?』
『わ、わかるか?』
密かに己の抱えるジレンマに共感されたことが、一方通行の心をくすぐる。
『お仕事から帰って熱い珈琲を飲みたいなって思ってもコンビニで缶コーヒー買うわけになっちゃうんですよね?』
『お前…わかってンじゃねェかッ。ケッ…ガキのクセになかなか話せる奴だなお前』
友達いない歴が年齢の9割近くを占める一方通行は自分の気持ちに対して理解されることに極端に弱い。ある意味においてメンタルが弱いのだ。
784 名前:佐天「嫁にして下さい」一方通行「ゴメン、ちょっと待って」3[sage] 投稿日:2010/12/01(水) 20:56:52.66 ID:aibL2Rw0 [5/6]
打たれ弱いのではなく、ガードが甘い。悪意に対しての打たれ強さ、ガードは鉄壁であるというのに、そんな長期政権を保有する王者が、好意的な感情を前にすると、とたんにグリーンボーイになってしまう。
悪意はベクトルで操作出来ても、イマイチ好意は操作出来ない一方通行だ。悪意以外自分に向けられる感情など無いとばかりにオート反射スキルは伊達じゃない。
だから上手く反射できない好意は一方通行にとっては「魔法」のようなものなのだった。
『だったら、私が教えてあげましょうか?美味しい珈琲の淹れ方』
『それが礼ってやつかァ?』
『駄目ですか?缶コーヒーの味に飽き飽きしてる一方通行さんの日常に、ひとときの安らぎを!!』
『安らぎ…?』
『そうです。想像してみて下さい。仕事から帰ってきた、今日は大変だった、身も心も疲れている…お仕事ツライでしょう?』
『ああ…仕事はしンどいンだわ、確かに』
『そんな時、熱々の湯を用意する。ゆっくりと湯を注いでいく。ドリッパーから滴り落ちる滴の音、部屋に広がる香ばしい珈琲の香り』
『ああ……』
『一口飲むと口に広がるほろ苦く、深みのある豊かな珈琲の味わい…』
『ごくり…』
『そんな珈琲を淹れられるようになりたくはありませんか?』
『な、なりてェ…』
『教えて欲しくはありませんか?』
『欲しいぜェ…』
『私が教えちゃいます!!』
『た、頼ンじまってもいいのか…?」
『全然オッケーです。だからメアド教えて下さい!!』
『ああ、わかったぜ』
『これで一方通行さんに安らぎの日々をあげられます』
『安らぎ…安らぎかァ…く、くれンのかよォ…?』
『あげいでか。あげますよ。っていうかむしろ私をあげます!!』
『くれンのかァ!?(安らぎを)』
『あげますとも!!(佐天涙子を)』
『マジでかァ…お前…俺みてェな外道にそこまで…』
『お礼ですから』
『お礼ってだけで…くッ…眩しいなァ…これが光の世界の住人って奴か…』
『気にしないで下さい』
『そういう訳にはいかねェよ…でっけェ借りを作っちまったみてェだ』
『だったら、交換条件で通ってもいいですか?』
『ああ、教えてもらうンだからなァ』
『ほ、本当ですか?だ、だったら、合い鍵とか…ほら、入れない時とか困りますし、先に来ちゃって』
『わかったぜ、ホラ、こンなモンでよけりゃァ』
『えっへへへ~~~ありがとうございます!!』
「と、まァそういうやりとりがあってだな。あンなに親切なガキを突っぱねるなンざ俺にはァ出来なかったンだよ。ヘッ、いいぜ?情けないヤロウだって蔑んでくれてもよォ」
「上条さんは今までお前がキャッチセールスに引っかからなかったこと寧ろ感謝したいですよ、ホントに…」
やばい、コイツ思っていた以上にピュアな人だと、上条はドン引きしながらこのいろいろな意味で白い子の今後が心配になった。
785 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage] 投稿日:2010/12/01(水) 20:59:53.73 ID:aibL2Rw0 [6/6]
今日の投下終了~無駄に長くて申し訳ないです。昨日は書いた話が消えて不貞寝してました。
佐天さんの手口が詐欺っぽいのは佐天さんを書き慣れていないだけで佐天さんに下心はありません。
佐天さんは佐天使です。ピュアガールです。ピュアガール・佐天。
一方さんが若干頭の弱い子に見えるのは気のせいです。それではまた。
Tag : とあるSS総合スレ
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