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黒子「あっ…当麻さ…ん…気持ちいい…ですのっ」美琴「…」おまけ

黒子「あっ…当麻さ…ん…気持ちいい…ですのっ」美琴「…」
>>85の続きから。

306 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 13:36:35.98 ID:LgIAK/3s0 [23/38]
>>85の続きから

バタン!!!
快感で力が抜けてしまった2人は床に倒れこむ。

白井「はあ、はあ……当麻さん……」

上条「ああ、少し激しすぎたかな」

白井「本当ですの!!少しは反省し!!!」

言い終わる前にその口を上条が塞ぐ。
そのまま数秒。二人はお互いのぬくもりを確認し、そして名残惜しそうに唇を離す。

白井「もうっ!当麻さんったら!!」

上条「いやだったか?」

白井「そんな訳ありませんのっ!!!」

白井「やっぱりいじわるですのね……」

上条「まあそう言うなって、お前も楽しんでたk」

御坂「私はいや!!!!!!!」

二人は床でピロートークを楽しんでいる。
しかしとうとう、そのやり取りを最初から見ていた傍観者の邪魔が入った。


308 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 13:44:07.62 ID:LgIAK/3s0 [24/38]
「お、お姉さま!」

「御坂!?いつからそこに?」

「いつからも何も、最初からいたわ……あんた達が愛を育んでる間ずっと……ね」

「一体どういうことなのか、説明してもらおうじゃない?」

その質問に上条と白井は顔を見合わせ悩む。
そして、部屋を沈黙が支配した。

数秒後。

「ねー。いい加減に説明してもらえない?」

「黙ってるとコレ、ぶっ放すわよ」

御坂の手にはコインが握られている。その表情は笑いの色など微塵も無い。

「おい、御坂。お前こんなとこで撃ったら洒落になんねえぞ」

「そうですわよ、お姉さま」

そんな御坂をなだめようとする二人だが、逆効果だったようだ。

「うっさいってんのよ!!!早く説明しなさい!!!」

彼女の本気の形相に、白井と上条は事情を話す事を決意した。

312 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 13:56:09.00 ID:LgIAK/3s0 [25/38]
「つまり……こういうことですの」

白井が事情を説明しだす。


それは今日の朝のことだった。
白井は用があって少し出掛けていたのだが、そこで偶然上条に出くわした。
外の暑さも手伝い、二人は一緒にジュースでも飲みながら休憩する事にした。

そこまで仲の良い二人ではないから、あまり会話が続かない。
そろそろ休憩も終わりか。というところで白井の口から、本人も思わぬ言葉が飛び出た。

「あの、貴方はお姉さまの事。どう思ってらっしゃいますの?」

「はあ?御坂の事?……どうって言われても…………まあ友人の一人ってとこだな」

上条は少し不審に思いながらも即答した。さらに白井が続ける。

「なにか、他の感情はございませんの?」

「……何言ってんだ、お前?言いたいことが分かんねえよ」

「いいから!!答えてくださいまし!!」

「別に他にはなんとも思ってねえよ!!」

「ってかよ、一体なんでこんなこと聞くんだ?」

「そ、それは……」


313 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 14:13:44.82 ID:LgIAK/3s0 [26/38]
白井黒子は悩んでいた。自分の言動、発言に。
何故自分がこんなことを言っているのか、よく分からない。
こんなこと聞くつもりは無かったのに。
いや、それ以前にこんなこと思っていなかったのに。
どうしてこのような事を言ってしまったのか。
彼女はもう一度最初から考え直す。

(お姉さま……黒子はお姉さまの事、お慕いしておりますの……)
ああ、そうだ。自分は御坂美琴の事を心から尊敬し慕っている。
(お姉さまは……この『上条さん』の事、気になっておられる……)
御坂が上条に好意を持っている。その事は知っていた。
(この方は、お姉さまの事。どう思ってらっしゃるのだろう……)
逆に、上条は御坂の事をどう考えているのだろう。
(ならば。黒子はこの、上条さんの事をどう……)

そこまで考えた時。何かが弾けた。
ああ、そういうことですのね。
彼女は納得した。改めて考え直す事により、自分の気持ちと向き合う事が出来た。
そして、その気持ちを自覚した。

自分は御坂美琴が大好きだ。これは違いない。
その御坂のすべてが好きだ。
子どもっぽい趣味が有るし、自分で抱え込みすぎるし、いろいろ厄介な人ではあるけど、大好きだ。
そんな御坂の事なら何でも愛せる。
そう。御坂が好意を持っている、今目の前にいる上条当麻でさえも。
だが、それは許されない。だって、彼は御坂の想い人なのだから。
しかし。何故か、この気持ちを抑える事が出来なかった。そして気付いた。
ああ、そうか。
お姉さまがどうとか、そんなのは関係なく。自分は彼が好きなのだ。と


315 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 14:27:53.73 ID:LgIAK/3s0 [27/38]
「おい、白井?どうした?」

白井が考え込んでいる間、上条は不思議そうに白井を見つめていた。
それにやっと白井が気付く。
自分の思いを自覚した彼女は少し恥ずかしそうに俯く、そして言った。

「では……私の事は、どう思ってらっしゃいますの?」

「えっ、お前の事?」

「なんでいきなりそんなこと聞くんだよ。さっきの質問といい……なんか変だぞ、お前」

質問に質問を返され、真っ赤になりながら白井はもう一度問う。

「い、いいですから!早く答えてくださいまし!!」

そこで白井が聞いたのは、信じられないような内容だった。

316 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 14:49:50.84 ID:LgIAK/3s0 [28/38]
「……わかったよ……言えばいいんだろ言えば」

そういった後、上条は数秒考えてから再度口を開いた。

「一言で言うとよ。よくわかんないやつだなって思ってる」

「だってよ、お前の行動って、どう見ても変態チックだろ」

「御坂関連だとさ、度が過ぎる事ばかりしてるじゃねえか」

この言葉を聞き、白井はますます恥ずかしくなってしまい、顔を背けようとする。
しかし、それを妨げるように上条の言葉が続く。

「だけどよ、『風紀委員』として頑張ってるお前の姿はさ、なんだか格好良いんだよな」

「『風紀委員』としてってよりかさ、何かを守ろうとしている時の、」

「ああ、そういえばこの前も一人で戦ってた時があったろ?」

「俺としては女の子がああ言う事するのはちょっと良く思わないけどさ」

「って、話がずれたな。まあとにかく、そういうときのお前は……」

上条も少し照れながら続ける。

「すっげえ輝いてる。俺にはそう見える」

「この二つのギャップがあってさ、なんだかよく分かんねえかな」


318 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 15:04:18.57 ID:LgIAK/3s0 [29/38]
まさかこんな答えが返って来るとは思わなかった。
普段の自分の行動を非難されるだけではないかと思っていただけに、
上条が自分の事をこんなに見ていたのだと思うと白井は嬉しくなった。

そして、考えるより先に身体が動いていた。




「え?――――」

上条は一瞬何が起こったか分からなかった。
横に座っていた少女が急に立ち上がったかと思うと、自分のもとへ駆け寄り飛びついてきた。
そのことに驚く間も無く、彼は唇を奪われた。

慌ててその小さな身体を引き離し、表情を見る。
哀しそうな、嬉しそうな、なんともいえない微妙な表情をしていた。

ここで上条当麻も気付く。
こういうことには激しく鈍感な彼だが、ここまで女の子にされて気付かないのは男ではない。
そうか、そういうことなんだな。
白井の想いに気付いた彼は、今度は自分から唇を重ねた。

319 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 15:20:58.42 ID:LgIAK/3s0 [30/38]
突然気持ちが通じ合った。
だが、その割に、通じ合った後の彼らの行動は早かった。

はやる気持ちを抑えながら常盤台女子寮へ。
そして、現在に至る。

「と。いうわけですの」

白井が説明を終える。
一部始終を聞いていた御坂は、ぷるぷる震えながら俯いていた。
次の瞬間、口火を切ったように話し出す。

「大体事情は分かったわ!!!」

「でもね!!!あんた達まだ学生でしょうが!!」

「いきなり、こんな……」

「こんな破廉恥な事してんじゃないわよ!!!」

「黒子も!!!」

「アンタも!!!」

「それにアンタは本当は私が…………」

言いかけたところで言葉が詰まる。
本当は私が狙っていたんだから!!
喉元まで出ていたその言葉を、御坂美琴は言う事が出来なかった。

323 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 15:32:04.47 ID:LgIAK/3s0 [31/38]
「…………」

やはりその言葉は言う事が出来ない。
言う勇気がない訳では無かった。
それも少しはあったのだが、もう一つの理由によるものが大きい。
せっかく、可愛い後輩が幸せをつかんだのだ。
それを。先輩として、認めてあげよう。
そう彼女は思った。
だから、自分の気持ちは言えなかった。

ふと気付く。
目頭が熱い。この感じは、そうだ。涙だ。
涙が今にも溢れそうだ。彼女はそう感じる。
だが、それを強制的に堰き止めた。
こんな所で泣くのは情けない。
そう思っていた。
だがそれ以上に考える。

ここで私が泣いたら、黒子が心配しちゃうじゃない……
黒子は私の気持ちに、私がこいつを好きだったのを気付いているはず……
だから、私が泣いたら黒子は私に気を使っちゃうかもしれない……
ううん。絶対そうする。この子は、そういう子だもん。
だから……だから……


327 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 15:42:00.36 ID:LgIAK/3s0 [32/38]
「アンタ!!絶対黒子のこと幸せにしなさいよ!!!」

「そうしないと、私が許さないんだから!!!」

それだけ言って御坂は部屋を飛び出してしまった。
その姿を上条はただ眺めているだけだった。
しかし、その横の白井は、どこか達観した表情でドアを見つめている。

お姉さま……申し訳ありませんの……
黒子の我侭に付き合っていただいて……ありがとうございます……
黒子は……黒子は…………
絶対に…………
お姉さまの分まで、幸せになってみせますわ!!!

彼女がそんなことを考えているなど知る由もない上条は、白井を不思議そうに見つめる。

「どうした?黒子?」

「……いえ…………なんでもありませんわ」

そういって、白井は上条の手をそっと握るのだった。

終わり。

481 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/15(月) 15:33:07.73 ID:bp0UH+DN0 [1/13]
>>273に至るまでの鬱ストーリーを書いてしまってなんなんだが

今回も鬱展開になります。エロはあまりありません。

よろしければお付き合いください。投下は遅いですが。

自分の得意分野は、ほのぼの恋愛だと思ってたんだが方針転換した方がいいのかな…などと考え中…


本編に入る前に、補足を。

時系列は>>327の数ヵ月後、原作とは違い世界大戦など何も起こらない、平和な平行世界が舞台です。

もう一度言いますが、鬱展開になります。ご了承ください。


482 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/15(月) 15:58:37.66 ID:bp0UH+DN0 [2/13]
「うっ――――」

白井黒子は妙な吐き気を感じ化粧室へと駆け込んでいた。
なんだか最近、このような吐き気を催す事が多い。そう感じながら考える。

風邪はひいていない……それにもし風邪だとしても、ここまで吐き気だけが続くのはおかしい……
では一体、原因は何か――。一つ、心当たりがあった。

いや、でもまさかそんなはずは…………無いとは、言いきれなかった……

最近は、その行為をするときにはきちんとしかるべき物を着けている。
だが数ヶ月前、行為を覚えたての時にはそんなもの着けず、本能のおもむくまま没頭していた。

数ヶ月前のその数回の行為が今になって?まさか、あるわけない。そう思ったが、不安はどんどん膨らんでいく。

増徴する不安を沈めるためには事実を確認するほか無い。
彼女は放課後薬局へ向かった。

「お姉さまはまだ帰ってらっしゃらないようですわね」
御坂美琴が部屋にいないことを確認すると、彼女は先ほど購入したものを使用しようと準備をする。

もし陽性だったらどうすれば良いのか。脳裏を駆け巡るのは将来の不安だった。
まだ中学校1年生の自分がそんなことになったとしたら、きっとこの先いくつもの困難が待ち受けているに違いない。
そう考えると、手が震える。
だが、そんなこと、今考えても仕方がない。結果が出てから考えよう。もしかしたら杞憂で終わるかもしれないし。
どうにかして楽観視しようとした彼女だが、数分後、でてきた検査結果は――
――――陽性。だった

『とある少女の胎教日誌(マタニティブルー)』
始まり。

485 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/15(月) 16:18:58.82 ID:bp0UH+DN0 [3/13]
数日間。誰にも話せないでいた。
本当は真っ先に報告すべき人物がいる。だが、その人物には最近会ってもいない。

話すべき内容は一つ。絶対にいつか話さないといけない。
けれども、どうやって話を切り出そうか。話をして、どう思われるだろうか。
不安が不安を呼び、何も行動することが出来ない。
今日も一人ベッドの上で膝を抱え悩む彼女に、声がかけられた。

「どうしたのよ、黒子?最近元気が無いじゃない、悩みでもあるの?」

「お、お姉さま……そそそ、そんな事ございませんわ。お姉さまの勘違いですわ」

「ふーん……なら良いけど、もし悩みがあるなら私でよければ相談乗るからね」

「え、ええ。その時はお願いしますわ」

咄嗟に誤魔化してしまった。
特に怪しまれる事は言ってなかっただろうか。と振り返って考える。
もし御坂が相談に乗ってくれるならこれ以上心強いことはない。
だが、それに甘える事は白井にはできなかった。

御坂が上条にどんな気持ちを抱いているのか知っておきながら白井は上条と付き合うことになった。
いうなれば略奪愛。そのような形で自分は上条と結ばれた。
だから、この件で御坂に相談するのは絶対にダメだ。彼女はそう考えたのだ。

でもやはり、一人で考えているだけでは何も解決しない。
白井は眠れない夜を過ごした。

487 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/15(月) 16:35:46.41 ID:bp0UH+DN0 [4/13]
翌日。

「どうしたんですか?白井さんらしくないですよ」

そう声をかけるのは初春飾利。白井と同じ『風紀委員一七七支部』に所属している。
支部内でも俯きがちな白井の姿を見てたまらず声をかけていた。

「初春……別に何でもありませんわ、少し考え事をしているだけですの」

「そう……ですか……」

あまり触れて欲しくないのかな。そう思った初春は言葉に詰まる。
だが彼女の隣にいた少女は、白井にさらに言葉を投げかけた。

「全くー。白井さんはアタシ達に抜け駆けして彼氏まで作っちゃったんだから、そういう態度するのは止めてくださいよー」

笑いながら話しているのは佐天涙子。彼女達の共通の友人で、よくこの支部に遊びに来ている快活な少女だ。

「いえ、ですからそんなことありませんって」

「本当ですかーーー?」

「ええ……心配はご無用ですの」

しつこく問いかける彼女に、白井はいつもどおりの笑顔を浮かべ答えた。
ああ。やはり態度に出ていたか……昨日はお姉さま、そして今日はこの二人……。そう思いながら。
普段なら、そんな二人に対し友人として頼もしさを感じるのだが、
今日の白井はそう感じる事はできなかった。

どうにかしないと……その思いだけが彼女の心で空回りしている。

488 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/15(月) 16:59:13.25 ID:bp0UH+DN0 [5/13]
『風紀委員』の仕事も終わり帰路についた時、白井は偶然出会った。
今、最も会いたくなくて、最も会いたい人物――――上条当麻に。

「よお黒子!!久しぶりだな」

「最近会えなかったから、なんか寂しかったぜ。元気か?」

「あ……と、当麻さん…………ええ、元気ですわ」

いい機会だから話そうか……いや、話すべき。そう思うがなかなか言葉が出てこない。
沈黙が空間を支配し、妙な雰囲気を作り出す。
何秒か経った時。上条が驚き言う。

「おい黒子?なんで泣いてるんだよ?」

「え?私が泣いて?…………え?」

突然の言葉に耳を疑いながら手を顔に伸ばす。伸ばした指は冷たく濡れた。
前を見る。目の前の愛しの人は何も言わずにただ心配そうにこちらを見つめていた。

次の瞬間。白井は駆け出していた。

どうして泣いているのか。自分の気持ちが分からない。
どうして逃げ出してしまったのか。それも分からないが、ただ走り続けていた。

気付くと白井は自分の部屋にいた。
部屋に入った時に御坂が何か入っていたような気がするが覚えていない。
制服を着替える事もせず、そのまま布団に入り寝た。
昨日眠れなかったのが嘘のように彼女はすぐ、眠りにおちた。

496 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/15(月) 20:23:25.23 ID:bp0UH+DN0 [6/13]
>>489
興味を持っていただきありがたく思っております。
超電磁砲のOVASSのほうはまだ執筆中ですが、それはまたの機会に…

以前のSSですが
『初春「……」佐天「どうしたの初春?恋でもした?」』
というのを最近では書きました。




497 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/15(月) 20:42:43.47 ID:bp0UH+DN0 [7/13]
翌朝。目を覚ますと隣に御坂は居なかった。時計を見るともう九時を回っている。
遅刻した。と思ったが今日は休日ということをすぐ思い出す。

お姉さまはどこへ出掛けたのだろう。そう思いながらも身支度を済ませ、白井は外出する。
行き先は病院だ。
最近の妊娠検査キットは性能が良くなったとはいえ、きちんとした検査は別にする必要がある。
それに、いざという時頼れる医師に話をつけておくことは心の余裕に繋がる。
そう思い白井は重い足取りで病院へと向かうのだった。

知っている医師といえば、あのカエル顔の人物くらいなのでまずはその病院へ向かう。
受付の看護師に合わせて欲しいという旨を伝えると、以外にもすぐ彼は現れた。

「誰かと思えば君か。今日は何の用なんだね」

「……ええと…………」

そうストレートに聞かれては返事が出来るものも出来ない、彼女が返答に悩んでいると医師の方が続けた。

「ふむ。なるほど、少し場所を移そうか」

白井の表情や態度を見て何かを察した医師が自分の部屋へと案内する。
そこで白井は全てを打ち明けた。

「話は分かったんだね。本来産婦人科は私の担当外なんだが、事情があるようだし、協力するんだね」

「ありがとうございます……先生」

そして検査が始まった。
検査結果はその日のうちに出て白井に伝えられた。

500 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/15(月) 21:18:32.51 ID:bp0UH+DN0 [8/13]
やはり検査結果は変わらなかった。
妊娠経過四ヶ月。自分のお腹の中に新しい命が宿っている事は間違いなかった。

今までこの事を自分だけの秘密にしていた白井は、医師に打ち明けた事で少しだけ胸が軽くなった。
そして同時に思う。
自分の中で育っている新しい命への愛情と、それが上条と自分との間に出来た子だという愛おしさ。
それが彼女の心の中に広がっていた。

そして医師の口から新たな事実が告げられる。

「君のお腹の中にはね、二人いるよ。一人は男の子、もう一人は女の子なんだね」

「双子ということ……ですの?」

少し混乱する。この年で妊娠した事さえ受け止めがたい事実なのに、加えて双子……動揺が隠せない。
その表情を見てか、医師が話を続ける。

「いろいろ心配だとは思うけど、少なくとも、出産までにかかる費用は心配要らないんだね」

医師の言う事はこうだ。
能力開発を受けた人間が妊娠した時、その胎児が能力を持って産まれる可能性がある
そして潜在的に能力の強度が高く産まれる可能性がある、という研究があり
その検体となることで一切の費用を学園都市が負担する。というものだ。

「その検体となるためには父親の同意が必要だが、父親となる人には妊娠の事を話しているかい」

「……いえ。まだ…………」

もう隠す事は出来ない。白井は妊娠結果を受け取り、上条の家へと向かう。

504 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/15(月) 21:43:31.15 ID:bp0UH+DN0 [9/13]
上条の家の鍵は一応もらっていた。もらってはいたのだが何だがいろいろ事情があるらしく
今日まで彼の家を訪問した事は無かった。

「初めての訪問が、妊娠を知らせるものになるなんて……なんだか妙な運命を感じますわね」

少し自嘲気味に笑いながら白井は上条の部屋の前にたどり着く。
さて、入ったらまずは何から話そうか。どう話そうか。と、白井はまた悩む。
でも今日は医師の診断書があるから、何も言わずにこれを見せるという最終手段もある。
いろいろ考えながらチャイムを鳴らす。

「あれ?留守でしょうか……」

何度鳴らしても返事がない。そっとドアノブに手を伸ばし廻してみる。
そうすると意外にも簡単にドアは開いた。
無用心だなと思いながら白井は部屋に入ろうと玄関に一歩足を踏み入れた。
そこで気付く。

「えっ?これは……」

玄関にあったのはよく見覚えのある靴だった。
いやいやまさか、そんな訳あるはずない。
そう思って何度も確認した。
だが、確認すればするほど、その事実はより濃いものとなっていく。
そこにあったのは、御坂美琴の靴だった。

「お姉さま……どうしてここに?」

頭の中が真っ白になる。何も考えられなくなっってしまった。そんな彼女の耳に声が届く。
玄関の外では聞こえなかった音が響く。
その声は残酷に彼女の脳まで響いた。

506 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/15(月) 21:51:01.61 ID:bp0UH+DN0 [10/13]
ちょっとコンビニ行ってきます。

自分で書いてなんなんだが、
ビールでも飲まないと鬱展開に耐えられない…ごめんよ黒子

あと、携帯天気予報によると雪が降る可能性もあるので今日は酔って乗り切る。
途中で寝たらすみません。

509 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/15(月) 22:24:46.38 ID:bp0UH+DN0 [11/13]
少し時間を戻そう。
時間は同日昼前。白井黒子が病院で医師に打ち明けている頃。
舞台はとある街角。
スポットライトは御坂美琴。

「黒子……一体どうしたのかしら」

昨晩、御坂が部屋にいると、ルームメイトの白井が泣きながら帰ってきた。
何も言っても反応は無く、彼女はそのまま寝てしまった。
その事について考えている。

「もしアイツが悪いってんなら、タダじゃおかないわよ!!」

強い決意を胸に、御坂は上条当麻を探し街を歩いていた。
あの時の約束を確かめるために。

――――
白井が上条と初めて結ばれた日、その場所に御坂も居た。
そして彼女は自分の想いを諦め、後輩の幸せを願った。
『アンタ!!絶対黒子のこと幸せにしなさいよ!!!』
そう言い、自分の気持ちを封印したのだ。
――――

いくら走り回っても上条は見当たらなかった。
そろそろ昼になるし、一旦寮に戻ろうか。そう思った時
目当ての人物が現れた。

511 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/15(月) 22:49:10.34 ID:bp0UH+DN0 [12/13]
「ちょっとアンタ!!話があるんだけど」

電気を帯電させながら勢いよく話す彼女に上条は驚く。

「ちょ!!いきなり何なんだよ!!ってか黒子は一緒じゃ無いのか?」

「黒子なら今日は一緒じゃないわ…………って!!その黒子のことで話があるの!!!」

「俺も……黒子のことで話があるんだけど……」

何故だかお互いの目的が一致している。彼らは疑問に思いながらもとりあえず近くのベンチで話す事にした。


「――――――という訳なんだけど、アンタ黒子になんかした?」

御坂は昨日の後輩の様子について上条に心当たりが無いか聞く、
もし心当たりがあるといえば彼の身は無事ではすまないだろう。
だが返ってきた答えは予想外の物だった。

「俺にも……俺にだって…………わかんねえよ」

513 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/15(月) 23:33:35.15 ID:bp0UH+DN0 [13/13]
「俺が……聞きてえぐらいだよ」

「最近あいつ俺と会ってもくれねえし、メールの返事も無かった……」

「なんかあったのかなって思って心配……ずっと心配してた」

「それで昨日偶然会ってさ、そこで聞こうと思ったんだ」

「でもよ……でも…………」

「あいつ……俺の顔を見るなりいきなり泣き出して!!」

「それでそのまま…………逃げちまいやがった……」

御坂は見たことが無かった。目の前で大の男が泣きながら話している。そんなのは初めてだった。
それが彼女の母性本能を激しく刺激し、気付いた時には、その胸に上条を優しく抱いていた。


516 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/16(火) 00:00:04.19 ID:I2L5ITnh0 [1/22]
「俺って……嫌われてるのかな……」

胸の中でうなされるようにつぶやき続ける彼を抱きしめながら
御坂も同じように苦しんでいた。

(ダメよ……こんなことしちゃ……)

(こいつには黒子が……)

(こいつは黒子のなんだから……)

(でも……)

(でも…………)

(今日だけは……)

(今だけは…………)

(素直になっても……)

(いい…………よね…………?)

彼女は腕の中の彼をより強く抱きしめ、そして口付けをした。

(ごめんね……黒子……)


518 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/16(火) 00:26:17.84 ID:I2L5ITnh0 [2/22]
その後二人はどちらからでもなく歩き出し、気付いたら上条の部屋の前まで来ていた。
ドアを開け部屋に入る。ベッドに腰掛ける。

――勢いに任せてこんなことをしては……――
本当は二人とも思っている。だが、もう止められなかった。
かたくお互いを抱きしめあう。そして激しく唇を貪る。
服を乱暴に脱ぎ去るたび、理性が吹き飛んでいく。
そして、彼らが産まれたままの姿になった時、そこにはただの男と女がいた。

部屋の中に激しい吐息と甘美な悲鳴が響いている。
さっきからチャイムが何度か鳴っているが、彼らの耳には入らない。
互いの欲望を満たすため行為に没頭する。

「んっ!!んっ!!気持ちいいよ!!当麻!!」

「ああ、俺もだ黒…………ごめん、御坂……」

いつもの癖で名前を呼んでしまい、ばつが悪そうにする上条に御坂は求めた。

「い、いいのよ……私の事、黒子だと思っていいから……だからもっと激しく抱いて!!!」

「黒子みたいに『当麻さん』って呼ぶから、いつも黒子にしているみたいに……お願いっ!!」

「ああ……」

「黒子……愛してる……」

「私もよ『当麻さん』」

歪んだ愛がそこにあった。

520 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/16(火) 00:44:20.04 ID:I2L5ITnh0 [3/22]
不意に。

ドサッ!!

何かが落ちる音がした。
二人はその方向を見る。
白井黒子が立っていた。

「当麻さん、『黒子』って誰の事ですの?」

「お姉さま、何をしてらっしゃいますの?『当麻さん』って、まるで私みたいに……」

「一体これは何なんですの!!!!」

切実な悲鳴が放たれる。まるで時間が止まってしまうような衝撃が部屋中を駆け巡った。

「黒子……これは……その……」

「その?何ですの??」

「黒子、落ち着いて!落ち着いて聞いて!!」

「ですから落ち着いて、何を聞けばいいんですの?」

言える訳が無い。何も言える訳が無かった。言い訳?弁解?
そんなもので、解決できる次元を超えていた。


523 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/16(火) 01:01:55.08 ID:I2L5ITnh0 [4/22]
二人は白井と目を合わせられずに床を見つめている。
そこで御坂が気付いた。

「ちょっと黒子……何これ、診断書?」

先ほどの、何か落ちた音の正体は、白井が病院でもらってきた診断書の封筒だった。
中身が飛び出ていた。

「く、黒子……これ、ここに書いてあること、本当なのか?」

上条も問いかける。

「ええ、本当ですわ」

「人が一人で悩んで……死ぬほど悩んで、ようやく報告しようとしたらこれですもの」

「馬鹿馬鹿しくなってしまいましたわ」

「ですが。もう……終わりです」

シュン!!と小気味いい音を残して白井の身体が一瞬消える。
そしてまたすぐ同じ所に現れた。

「えっ、黒子何を……?」

何で能力を使ったのか二人は不思議に思ったが、白井の持っているものを見て思わず息をのむ。

その右手には包丁が握られていた。

526 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/16(火) 01:15:01.72 ID:I2L5ITnh0 [5/22]
「おい黒子!!早まるのはよせっ!」

「そうよ黒子!!落ち着いて!!」

必死に制止しようとする二人を尻目に白井は冷静に話す。

「早まる?落ち着く?」

「何を仰ってますの?」

「黒子は至って冷静ですわよ?」

冷静に、冷淡に話す白井に御坂は叫ぶ。

「お願いだから!!だから馬鹿な事はやめて!!」

その叫びにも白井は冷たく返す。

「何を止めろと仰いますの?」

「別に黒子はお二人に危害を加えようなんて思っていませんのよ」

意外な言葉に上条と御坂は目を合わせる、そして再び白井を見る。
白井は左手でお腹をさすりながら二人を見つめ言った。

「そうですわ、『貴方達二人』に危害は加えませんの。……ですが」

「『こちらの二人』は……もう要りませんもの」

そう言って白井は自らの下腹部に、包丁を振り下ろした。

528 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/16(火) 01:28:58.84 ID:I2L5ITnh0 [6/22]
何とも形容できない音が部屋に響く。その音を聞きながら白井黒子は思っていた。
ああ、やっとこの馬鹿馬鹿しい苦しみから解放された。と

だが、違和感に気付く。
自分は自分のお腹を刺したはず、なのに痛みが全然無い。
興奮で変なホルモンが出て痛みが麻痺しているのか。
そうも思ったが完全に痛みがなくなるなんてことはないはずだ。

おそるおそる自分の腹部を見る。
包丁を振り下ろす瞬間からずっと数秒間目を閉じていたが、それから初めて目を開ける。

自分自身の腹部は無傷だった。
だが辺りは血塗れだった。
何故?
今度は視線を包丁に移す。
彼女の右手の包丁、そこに刺さっていたのは上条の背中だった。

「え、なんで?とうまさん?」

「どうしてとうまさんがこんなところに?」

よく部屋を見渡すと、御坂が泣いている。

「ソイツは……あんたを止めようと飛び込んで……」

「えっ?どうしてわたくしをとめようなんて?」

もう一度上条を見つめる。

既に絶命していた。

532 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/16(火) 01:37:20.87 ID:I2L5ITnh0 [7/22]
「えっ……」

「なんで……どうして?」

「とうまさん……」

「いやあああああああああああああああ」

白井の悲鳴が再び部屋中に響いた。

その悲鳴を聞き、ふらっと立ち上がるのは御坂美琴だった。

彼女は上条の顔を一回そっと撫で、背中の包丁を抜き構える。

その様子を白井は呆然と眺めていた。

もう生きていても仕方ない。お姉さまに殺されるのならそれもまたいいかも

そう思いながら。

そして御坂は言う。

「黒子…………もう私も、全てがどうでも良くなっちゃった」

「だから、さよなら」

その瞬間、白井黒子は覚悟した。今度こそ死ねる。そう思い目を閉じる。

だが御坂の持つ包丁が貫いたのは
御坂美琴、彼女自身の喉もとだった。

537 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/16(火) 02:00:35.26 ID:I2L5ITnh0 [8/22]
その数分後、『警備員』が上条当麻宅に踏み込んだ。
近隣住民の通報があったためだ。

そこで彼らが見たのは、鮮血で真っ赤に染まった部屋と二つの遺体だった。
そして彼らの足元には、とある少女の妊娠診断書が転がっていた。
しかし、その少女の姿はどこにも無かった。

その診断書の情報を元に、彼女の知り合いや同僚に情報提供を求めたが
皆、彼女の消息は知らず、足取りは途絶えてしまった。
彼女が妊娠していた事も誰も知っておらず、それを聞いた関係者はたいそう驚いたという。
事件は結局迷宮入りした。

数ヶ月後。
学園都市のとある病院の隔離病棟で、元気な双子の赤ちゃんが誕生した。
以後は、後に発見された資料の情報である。

資料によると、出産した母親の事は詳しく書いてないが
精神を病む前は『風紀委員』もしていた優秀な能力者だったらしい。
なぜ彼女が精神を病んだのか、それもはっきりしないが
とある凄惨な事件現場にいたところを、学園都市暗部の組織に連れ出され
遺伝と能力の因果関係を調べる研究の検体とされたらしい。

精神を病んでいた彼女だったが、出産の時、一時的に正常な意識を取り戻し、子どもに名前を付けたと記録が残っている。
男の子の名前は『当麻』。
女の子の名前は『美琴』。
そう名付けたらしい。
その後、彼女と子ども達がどうなったのかは、分かっていない。

『とある少女の胎教日誌(マタニティブルー)』
終わり。

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