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エイラ「ぬいぐるみに…ナル」

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:09:12.37 ID:L2drWImB0 [1/57]
わたしのサーニャの部屋にあるぬいぐるみ達

窓側に置かれていて陽の光を浴びている

いや、ぬいぐるみなんてわたしの趣味じゃない

うん、全部、サーニャのなんだ

その中でもサーニャが一番大切にしている熊のぬいぐるみがある

所謂、テディーベアと言うヤツだ


2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:09:55.35 ID:L2drWImB0 [2/57]
サーニャの隣で寄り添うようにいたり、サーニャが抱えている所を見る

そんなヤツにわたしはいい気分がしない

ぬいぐるみと言えどもサーニャと一番近い存在になるかもしれないのだ

いや、もしかしたら距離的にも精神的にもサーニャと一番近いかもしれない


3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:10:26.06 ID:L2drWImB0
わたしはとうとうヤツのこをサーニャに聞いた

エイラ「そ、その、いつも持ってるぬいぐみは…」

サーニャ「コレ?」

そうだよ、サーニャに抱きかかえられているあんちきしょうのことだ

エイラ「うん、ソレダ」

サーニャ「これはね、エイラ、お父様に貰ったのよ」

エイラ「ふ~ん、そうなのカ…」

サーニャ「どうしたの?」

エイラ「なんでもナイ」

そこで、お父様がでるのは反則だったが

サーニャが大切にしている理由がわかった

それなら仕方ない


4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:11:29.53 ID:L2drWImB0
でも、ある日のことだった

エイラ「サーニャが!?」

宮藤「はい…今は医務室に……」

昼間、少しわたしが目を離した隙にサーニャは部屋で倒れていたらしい

わたしはそれを聞かされたとき死ぬ程焦ったが、どうやら熱が原因だった

命に別状は無かったのだ

それで、わたしが医務室に入って綺麗な寝息を立てるサーニャの傍に行くと

ぬいぐるみ「…」

エイラ「…お前の方が早かったか」


5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:12:51.23 ID:L2drWImB0
宮藤「さっき、サーニャちゃんが一回起きてぬいぐるみが欲しいって」

ぬいぐるみは自慢げに洋服のボタンの瞳でわたしを見つめる

エイラ「…くっそぉ」

宮藤「…?」

リーネ「今夜の夜間哨戒はエイラさんらしいですよ~、さっきミーナさんが」

エイラ「え?」

おい、サーニャが熱のときくらい傍にいてやりたいのに…

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:13:53.07 ID:L2drWImB0
宮藤「大丈夫ですよ!サーニャちゃんの看病はわたしたちが…」

リーネ「そうですよ!お粥とかも作りますから!」

いや、そういうことじゃなくてだな…

でも、まぁ中佐の言う事だから仕方ないか

そんなことを考えていると


7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:15:02.83 ID:L2drWImB0
エーリカ「サーニャ~ 大丈夫か?」

ゲルト「そもそも、体調管理を徹底してないからだ」

と二人が入って来た

宮藤「あ、二人とも」

エーリカ「いーもの、持って来たんだよ~」

ゲルト「うむ、カールスラントに伝わるリンデンの薬だ」

リーネ「リンデンってハーブの?」

ゲルト「そうだ 紅茶にするのも悪く無いがこうやって薬にしたほうが良く効くんだ」

リーネ「に、苦いんじゃ…」

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:15:40.43 ID:L2drWImB0
ゲルト「良薬、口に苦しだ 軍人ならこのくらい余裕で…」

エーリカ「そんなこと言って、トゥルーデもその薬苦いから嫌だって言ってたじゃん」

ゲルト「ちょ、ハルトマン…!」

宮藤・リーネ「ハハハ」

エイラ「…あ」


9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:16:14.85 ID:L2drWImB0
その会話を聞いててわたしは特にサーニャのためになんか持って来てなかったことに気付く

宮藤「エ、エイラさん!」

わたしはなにか持ってくるものを探しに医務室を飛び出した

と扉を開けた瞬間

エイラ「…うぐ」

柔らかいものにぶつかる

シャーリー「うわ、なんだよ エイラか」

ルッキーニ「なになに?」

シャーリーの胸だった その大きさが良いクッションになって二人とも尻餅をせずに済んだわけだが

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:17:31.66 ID:L2drWImB0
エイラ「ご、ごめん…」

と、わたしはシャーリーが手に何か瓶を持っている事に気付く

エイラ「それは…?」

シャーリー「あぁ、コレか?これはな、コーラだ」

エイラ「コーラ?」

シャーリー「糖分と水分が一気に摂取できるんだぜ?すごいだろ?」

ルッキーニ「炭酸がプチプチ口の中ではじけるんだよ~」

シャーリー「サーニャが熱を出したって聞いてね、倉庫から持って来たんだ…っておい」

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:18:11.56 ID:L2drWImB0
わたしはシャーリーの言葉を最後まで聞かずに走り出した

あの二人までサーニャのために…

わたしもなにかしなきゃ…

焦って外を見つめる

下には花壇とハーブ園が広がっていた

ハーブなんか採って来てはどうだろう

うん、なんか効くだろうし

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:18:44.86 ID:L2drWImB0
エイラ「うぅ…」

しかし、ハーブ園に着いたのはいいものの

なにを採ればいいかわからない

どうしよう…

そうしていると草の間から眼鏡がひょっこり顔を出した


15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:19:40.25 ID:L2drWImB0
エイラ「ん、眼鏡…」

ペリーヌ「ちょ、私にはペリーヌ・クロステルマンという名前が…」

エイラ「そのカゴのハーブは?」

ペリーヌ「べ、別に…サーニャさんのためにハーブを採っているわけじゃ…」

そこまで言うと眼鏡は顔を真っ赤にした

ペリーヌ「お、お先に失礼しますわ」

とカゴいっぱいのハーブを抱えて走っていた

エイラ「なんだかんだ、良いヤツだな…」

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:20:21.95 ID:L2drWImB0
エイラ「…」

部屋に戻る

結局、わたしがしてやれることは無いのだ

あのクッションだって、宮藤が買って来たもんだし…

はぁ…

涙が出る

わたしにはなにもできることがない

本当に…


17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:21:27.38 ID:L2drWImB0
今までも、なにかしてあげれたかな

寄り添ったり、傍にいたりはした

でも、最近はあのぬいぐるみに採られている気がするし…

なんなんだ、わたしは…

死神「じゃあ、そのぬいぐるみになっちまえばいいのさ」

エイラ「へ?」


19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:22:23.44 ID:L2drWImB0
うつむくわたしの目の前にはタロットカードの13番目、死神がいた

死神「ぬいぐるみになって、一番近くでサーニャを守れば良いんじゃないか?」

エイラ「な、なれるわけ…」

死神「なれるとしたら?」

エイラ「…」

わたしは考えた


21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:23:35.03 ID:L2drWImB0
サーニャの一番傍でサーニャを守ることはわたしの使命だと思う

死んでも守るし、それこそぬいぐるみになったって守ってみせる

それにサーニャはわたしよりもぬいぐるみのほうが抱きかかえられるし

持ち運びも簡単だ

死神「サーニャとは会話はできないが、半永久的な命は手に入れられる 死も生も一つに解ける」

エイラ「…そうか」

死神「…迷ってるな 明日のこの時間までに決めてくれ」

そう言うと死神はゆっくりと消えた


22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:24:36.71 ID:L2drWImB0
間哨戒から戻って来たわたしは寝ているだろうサーニャに会うためにそっと医務室の扉を開けた

サーニャ「エ、エイラ…?」

エイラ「サ、サーニャ、起きていたのカ」

サーニャ「うん、昨日いっぱい寝ちゃったし もう眠く無いの」

エイラ「そっか…」


23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:25:16.37 ID:L2drWImB0
サーニャはやっぱりぬいぐるみを抱いている

サーニャ「さっき、夢を見たの」

エイラ「夢…?」

サーニャ「うん、男の子と女の子がね二人で家出をするの」

エイラ「家出か…」

サーニャ「そうよ、二人は結婚したいって言ったのに周りの大人は大反対」

エイラ「ふーん」

わたしはこのときなんとなくその二人をわたしとサーニャに置き換えていた

サーニャ「逃げて、逃げて、逃げて、逃げて…二人はトロッコに乗るのね」

エイラ「うん」

サーニャ「暗い線路をひた走るの」

エイラ「うん」

サーニャ「どこまで行くと思う?」


24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:26:20.34 ID:L2drWImB0
エイラ「う~ん…」

もう脳の中ではわたしとサーニャだ

だからきっとハッピーエンドに違いない

エイラ「小さな街でひっそりと二人は暮らすんダ 貧乏だけど幸せって感じノ」

サーニャ「…」

あれ?おかしいな、サーニャが黙ってる

間違ったかな…

エイラ「じゃ、じゃぁ、元の街に戻って大人達は成長した二人を…」

サーニャ「きっと、地獄よ」

エイラ「…え?」

サーニャ「二人は地獄に向かったの」


25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:26:58.86 ID:L2drWImB0
エイラ「…サーニャ」

サーニャ「人の一生って儚いのね いつか消えてなくなってしまうんですもの」

サーニャ「でも…エイラだけはわたしの近くにいてくれるわよね?」

エイラ「勿論ダ サーニャの一番近くにこれから居続ける」

わたしは決断した

サーニャの周りの不幸と戦い、その存在を否定することを

だから、わたしは…


26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:27:43.43 ID:L2drWImB0
死神「本当にいいのかぃ?」

エイラ「ウン」

死神「もう、戻れないかもしれないんだぜ」

エイラ「いい、サーニャを守るためなら」

死神「そっか じゃあ、俺から情けでお前の存在を消そう」

エイラ「存在を…?」

死神「そうさ、お前って言う概念をこの世界から消す 誰も悲しまないぞ」

エイラ「…」

死神「サーニャもお前のことは忘れてしまうんだ、そっちのほうが安心するだろ」

エイラ「わかっタ」

死神「ふふ…なら目を瞑れ」

わたしは目を瞑った

暗黒の中、サーニャの笑顔が明かりのように浮かんだ

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:28:53.39 ID:L2drWImB0
エイラ「…」

死神「オーケーだ もうお前はぬいぐるみだ」

死神の声が遠くに聞こえる

エイラ「…ん」

死神「餞別の剣だ これで戦ぇ…………」

わたしはそっと目を開けた

サーニャ「…すぅ」

エイラ「…!」

目の前にサーニャの顔があった

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:29:36.89 ID:L2drWImB0
それもすごく大きい

そうか…本当にぬいぐるみになったんだ

手を見る

綿が沢山つまった丸い手 しかもタオル地

瞳は洋服のボタンだ

顔には二本の縫い目がある

指は大きな三本

銃はこのサイズじゃ握れない


29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:30:11.83 ID:L2drWImB0
だから剣なのか

隣に置いてあったおもちゃのような剣を取ってみる

一応は本物らしい

でも、小さいぞ…

というか、喋れない…肌の感覚も無いな…

ちょっと後悔するが、目の前のサーニャの寝顔を見て

わたしはサーニャの一番近くにいることを実感する

そして、そっと、その顔にフェルトの指を置いた

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:30:44.31 ID:L2drWImB0
わたしの存在は本当に無くなっていた

基地もわたし無しで機能している

ウィッチ全員、いつも通りで安心した

サーニャ「さぁ、今日も行ってくるよ」

エイラ「…」

サーニャは夜間哨戒に行く度にわたしに声をかけてくれた

いってらっしゃい、サーニャ

とわたしは心の中で言うのであった

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:31:15.25 ID:L2drWImB0
そんなある日だ

サーニャが独りだけの部屋に戻ってくる少し前に

部屋にはねずみがいた

ドブネズミだ

人間のときのわたしなら尻尾でも持って外に投げていたところだが

今は違う

大きい強敵だ

でも、こいつはサーニャの周りの不幸なのだ

だからこいつを倒さないと

床にジャンプして降りる

どうやら、サーニャが見ていない間は動けるらしい


32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:32:00.29 ID:L2drWImB0
そんなある日だ

サーニャが独りだけの部屋に戻ってくる少し前に

部屋にはねずみがいた

ドブネズミだ

人間のときのわたしなら尻尾でも持って外に投げていたところだが

今は違う

大きい強敵だ

でも、こいつはサーニャの周りの不幸なのだ

だからこいつを倒さないと

床にジャンプして降りる

どうやら、サーニャが見ていない間は動けるらしい


33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:32:40.37 ID:L2drWImB0
まるで、おもちゃ箱の童謡みたいだ

ネズミはベッドの下にいた

エイラ「持ってろよ~」

わたしは剣を持って暗いベッドの下に入る

ネズミ「チィッ!」

エイラ「うわ!」

急にネズミが飛びかかって来た

慌てて剣を振るが空回り

その間にネズミはわたしの腕を噛む

エイラ「いててて…」

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:33:31.41 ID:L2drWImB0
綿がはみ出た、糸もほつれる、布も破れる

でも、わたしは…

エイラ「おりゃ!」

ネズミ「キュー」

腕を一本犠牲にして剣を振った

ネズミはわたしの腕ごと真っ二つになった

よっしゃ、サーニャを不幸から守ったぞ!

でも、痛いな…腕


36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:34:31.52 ID:L2drWImB0
ん、でも、そろそろサーニャが帰ってくる時間だぞ

わたしは慌てて腕を持ってベッドの枕元にそっと寝転ぶ

少し経った後

サーニャ「ただいま…!」

サーニャが帰って来て腕の取れたわたしを発見した

だらりと身体はサーニャの手に抱かれる

サーニャ「あら、可哀想に…すぐに直すわ」

と裁縫箱から縫い針と糸を出してわたしを直すのだった

少し痛いけどそんなサーニャを見ている時が一番幸せだった

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:35:55.06 ID:L2drWImB0
サーニャ「ねぇ、こんなお話があるのよ」

サーニャはぬいぐるみのわたしにそっと語りかける

でも、わたしは頷く事も相槌すら出来ない

それでもわたしにサーニャは語る


38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:37:00.39 ID:L2drWImB0
サーニャ「二人の女の子が夜の空を飛んでいるの」

サーニャ「二人はお互い無くてはならない存在で大切な…本当に大切な二人」

サーニャ「一人の女の子がこう言うわ『夜の空はあなたと二人だけの世界みたいで嬉しい』って」

サーニャ「そして、もう一人の女の子がこう答えるの『もし、わたしが幽霊ならこんな暗闇は怖く無いのかしら』」

エイラ「…」

サーニャ「もしやって思って女の子が隣にいる女の子を見るとね…消えているの」

サーニャ「幽霊だったのね…って話」


39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:37:39.34 ID:L2drWImB0
まるで、わたしとサーニャみたいだ

わたしはサーニャと一緒に飛んでいる最中に消えて今はぬいぐるみになってサーニャを守っている

それでいいのだ

それで…

そうして、サーニャは毎日、毎日色んな話をわたしに聞かせた

どれも決まって二人の女の子が出てくるのだった


40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:38:55.85 ID:L2drWImB0
ある話では二人で地獄に堕ちたり、別の話では教会の前で再会したり

そして、またある話ではただ二人でサウナに入ったり買い物に行くだけの話もあった

まるで、架空の話というよりはわたしとサーニャの思い出話にしか聞こえないそれをサーニャは語り続けた

ぬいぐるみのわたしに


41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:39:36.21 ID:L2drWImB0
そして、とうとうある夜のことだった

サーニャ「ねぇ、わたしは大切な人の存在を忘れているみたい…」

エイラ「…!」

サーニャ「芳佳ちゃんに聞いても、色んな人に聞いても覚えてないし、わたしも思い出せないの…」

サーニャはわたしに語りかける

サーニャ「いつでも、わたしの傍にいてくれてわたしをいつも笑わせたり、怒らせたり…」

エイラ「…」


42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:41:16.99 ID:L2drWImB0
サーニャ「でも、一緒にいるだけで嬉しくって楽しくって…そんな大切な人をわたしは忘れてしまったの」

エイラ「…」

サーニャ「エ、エイラ…!そうよ、エイラ!エイラはどこ!?ねぇ!」

サーニャはわたしの存在を思い出した

死神の魔法はどうやら切れてしまったらしい

サーニャ「エイラ!エイラ!」


43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:41:51.68 ID:L2drWImB0
サーニャはまるで迷子の子供のように泣きながらわたしを探す

わたしは今すぐにでも元に戻ってサーニャに抱きつきたかった

わたしの存在をなによりも大切だと言ってくれたサーニャの暖かい頬を撫でて、細い腰に腕を回したい

そして柔らかな髪を撫で上げてサーニャのほんのり紅くなった顔を見つめるんだ…!

でも、でも…


44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:42:37.44 ID:L2drWImB0
ぬいぐるみのわたしにはなにもできない

サーニャの見ていない所でしか動けないし、綿の詰まった身体やタオル地の肌じゃサーニャのぬくもりは感じられない

そっか…わたしはぬいぐるみになって、永遠の命を手に入れて、サーニャの一番近くで守っているつもりでいた

でも…人間のわたしのほうがサーニャの近くにいたのか

うん…サーニャのぬくもりを感じられる人間に…

わたしは、戻りたい


45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:43:46.22 ID:L2drWImB0
サーニャ「ねぇ…エイラはどこにいったの?すぐ近くにいて欲しいのに、エイラの存在を近くで感じたいのに…」

サーニャ「それだけで、わたしの周りから不幸の存在は無くなるのよ……!」

サーニャ「だから、エイラ戻って来て…!」

月明かりにサーニャの涙が輝く

そうか、わたしはサーニャの近くにいるだけで良かったんだ

わたしも…サーニャもお互いがお互いを必要としていた

なんだ…簡単なことじゃないか…ハハ


47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:44:41.88 ID:L2drWImB0
サーニャ「…!」

とサーニャがぬいぐるみのわたしを見つめる

ポツッ……

ん?

見るとタオル地の腹が濡れている

水が落ちて来たのか…?

サーニャ「ねぇ…泣いているの?」

え…?わたしが泣いているの…?

サーニャ「縫い目に沿って、洋服のボタンから涙が出てるわ…」

わたしは泣いているのか?ぬいぐるみの身体で泣けるのか…?

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:45:51.34 ID:L2drWImB0
サーニャ「ねぇ、エイラなんでしょ?」

うん、そうだよ わたしだよ、サーニャ

サーニャ「どうして、ぬいぐるみになったの?」

永遠にサーニャを守るために サーニャを襲う不幸と永久に戦うためさ

サーニャ「フフ、エイラ バカみたいよ」

え…?

サーニャ「エイラはエイラのままでいいの 何もしてなくても、もし何も出来なくても…わたしの傍にいて欲しいな」


サーニャ「まるで、神父様と聖書みたいに、ピアニストと楽譜みたく…抱いて、わたしを溶かして」




49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:47:02.92 ID:L2drWImB0
周りが光る、時間は止まって、夜空に魚が泳いでいる、わたしたちは星座に囲まれた

そんな景色が目の前に現れては消えて、やがてわたしはサーニャと同じ目線になった

サーニャ「お帰り、エイラ」

エイラ「ただいま、サーニャ」

サーニャ「ぬいぐるみの気分はどうだった?」

エイラ「最悪サ」

サーニャ「そう…」

エイラ「うん、やっぱこのままでイイヤ」

わたし達は抱き合った

そのままどろりとまるで半田のように溶ける

死も生も溶かし、ねじ式になって金属みたく

わたし達は一つに…

一つに溶ける

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:47:35.44 ID:L2drWImB0


……

………

サーニャ「エ…ラ………エイラ!起きて!」

エイラ「…ん?」


51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:49:00.40 ID:L2drWImB0
重いまぶたを開けると目の前にサーニャの顔があった

エイラ「うわ…!」

サーニャ「エイラったら、わたしのお見舞いに来たんじゃないの?」

夜の医務室

わたしはサーニャのベッドに腕を組んで寝ていた

エイラ「え?」

あれ、わたしはぬいぐみになって後悔してまた人間に戻った筈じゃ…

え…?まさか夢?嘘?


52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:49:47.48 ID:L2drWImB0
え…?まさか夢?嘘?

サーニャ「もう…エイラったら」

エイラ「…うぅ」

サーニャ「エイラ!?」

わたしは泣いてしまった

そうだ、あんだけ色々悩んで後悔して…

でもサーニャとまた会えたんだ

泣かないわけにいられないだろう……

嬉しいような、悲しいような


54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:50:37.47 ID:L2drWImB0
サーニャ「…どうして、泣いているのエイラ?」

エイラ「うぅ…サ、サーニャはわたしのことどう思ってル?」

サーニャ「エイラのこと…?」

エイラ「うん」

サーニャ「大好きよ、エイラ」

エイラ「…!」

わたしはまた泣いてしまった

そんなことを目の前で言われたら…


56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:51:28.03 ID:L2drWImB0
サーニャ「歌でも歌う?」

エイラ「へ?」

鼻声のわたし

サーニャ「わたしとエイラの二人で二人の歌を歌うの」

エイラ「ど、どんな歌ダ?」

サーニャ「ラブソング」

エイラ「ラブ?」

サーニャ「うん、良いでしょ?」


57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:53:03.47 ID:L2drWImB0
エイラ「そ、そしたら、世界中のラブソングをサーニャにあげてヤル!」

サーニャ「…え?」

エイラ「夜空の星よりも多く、海を泳いでいる魚よりもずっと多い愛の歌をサーニャだけ二…」

サーニャ「…うん、でも一つ約束して」

エイラ「や、約束?」

サーニャ「わたしの傍にいてね、エイラ」

エイラ「…あ、当たり前だろ!」


58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 22:54:02.29 ID:L2drWImB0
サーニャ「ふふ」

エイラ「ハハ」

長い旅が終わったでもこれから始まる

二人だけの物語と二人だけのラブソングが始まるんだ




Sweet Duet...

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 23:01:08.86 ID:L2drWImB0
今回は特撮から
「戦え!ヌイグルマー」
筋少からは
「サンフランシスコ・10イヤーズ・アフター」「夜歩くプラネタリウム人間」
「小さな恋のメロディ」「夜歩く」「世界中のラブソングが君を」
「境目のない世界」
でした

>>45
この前がどれかわかんないけども
エイラ「そうか…死ぬのか」
エイラ「サーニャがネウロイに…!?」

これは自分

62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 23:06:16.52 ID:L2drWImB0
最後に
読んでくれた人ありがとう
またどこかで

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