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ハルヒ「みんな、ごめんなさい! 本当にごめんなさい!」後半
ハルヒ「みんな、ごめんなさい! 本当にごめんなさい!」前半
の続きです
の続きです
142 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 00:27:02.74 ID:1attf1Pk0 [9/88]
~翌日 水曜日 学校~
キョン(結局ほとんど眠れなかった……)
ハルヒ「3時限目終わったわね! ちょっと行ってくる!」ダッ
キョン(ハルヒは相変わらず休み時間のたびにどこかへ謝りに行ってるな)
キョン(どうやら昨日のダメージは引きずってないようだ。これで無茶もやめてくれればいいが)
キョン(……)
キョン(ハルヒはああやって自分のしてきたことを反省して、いろんな人に謝って周っている)
キョン(そんなハルヒに俺は随分と偉そうなことを言ってきたが……)
キョン(俺自身はどうなんだ? 俺は誰にも迷惑をかけずに生きてきたか?)
キョン(そんなわけないだろう。知らず知らずのうちに周りの人に不快な思いをさせてきたかもしれない)
キョン(長門、朝比奈さん、古泉……この3人には謝らないといけないことがある)
キョン(いや、この3人以外にももっと……)
キョン(ハルヒだけじゃない。俺だって反省しないと。1度自分がやってきたことを振り返ってみるか)
キョン(今までこんなこと考えたこともなかった。きっかけをくれたハルヒには感謝しないとな)
143 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 00:30:00.30 ID:1attf1Pk0 [10/88]
~昼休み~
谷口「ようキョン、一緒に飯食おうぜ」
キョン「ああ、おう」
国木田「涼宮さんは?」
キョン「生徒会長のところに謝りに行ってるよ」
谷口「まーだあいつ謝罪行脚続けてるのか。にしてもアイツにいきなり謝られた時には驚いたぜ」
国木田「そうだね。本当に何があったんだろう? キョンは何か知ってるの?」
キョン「……」
国木田「キョン?」
キョン「え? あ、ああ、何だ?」
谷口「おいおい、何をボーッとしてるんだ。涼宮のせいでお前までおかしくなったのか?」
キョン「まあ、そうだな……なあ2人とも」
国木田「何だいキョン?」
キョン「その、何と言うか…………すまん」
147 名前:新さるさん[] 投稿日:2010/09/20(月) 01:00:05.35 ID:1attf1Pk0 [11/88]
谷口「はあ? 何をいきなり謝ってるんだ?」
国木田「すまんって……キョン、僕達に何かしたっけ?」
キョン「今回のハルヒの件があって、俺もいろいろ考えたんだよ」
キョン「俺も謝らなければいけない人達がたくさんいる、ハルヒのおかげで気づけたんだよ」
谷口「……で、それが何で俺達に謝ることになるんだ?」
谷口「涼宮からは散々被害を受けてるが、お前に何かされた覚えはないぞ?」
キョン「俺もハルヒと同じだよ。お前ら2人をただの人数合わせとしか見てなかった」
キョン「そんな考えだから、お前らに対する扱いもいつもいつも適当だった」
国木田「そうかなぁ? そんなことないと思うんだけど」
キョン「それに……」
谷口「何だ? まだあるのか?」
キョン「映画撮影の時、俺は心の中でお前ら2人のことを『ザコ』と見下してたんだ……」
谷口「……」
国木田「……」
キョン「友達に対して『ザコ』扱いだぞ……本当にひどかったと思う。だから、すまん!!」
149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 01:05:01.05 ID:1attf1Pk0 [12/88]
谷口「う~~~ん……」
国木田「はは、ザコ扱いはひどいなぁ」
キョン「すまん……」
国木田「でもさ、涼宮さんの時も言ったけど、何だかんだで楽しかったからね」
国木田「それに、キョンはちゃんと正直に謝ってくれた。別に言わなければ分からなかったのに」
国木田「だからいいよ。僕は全然気にしていないよ。谷口もそうだろ?」
谷口「む、まあな。お前に誘われたおかげで朝比奈さんや鶴屋さんとお近づきになれたし」
谷口「それによ、お前が気にする必要はまったくない。なぜなら……」
国木田「なぜなら……?」
谷口「俺も密かにお前のこと見下してたからよ!!」
キョン「こんの野郎!」
国木田「あはは」
154 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 01:10:02.58 ID:1attf1Pk0 [13/88]
~放課後 部室~
キョン(他にも謝るべき人は結構いるよな。新川さんに敬語使わなかったり、生徒会長にタメ口聞いたり)
キョン(しかし、まずはSOS団のみんなだな。最初は……)
みくる「あれ? キョンくん、パソコン使うんですか?」
キョン「え、ええ。ちょっとやることがありまして……」
キョン(今部室には俺と朝比奈さんしかいない。好都合だ)
みくる「涼宮さん、今日もバイトなんですよね?」
キョン「ええ、昨日あれだけ言いましたから、もう無茶なことはしてないと思うんですけど」
みくる「そうですね。あ、今お茶を淹れますね」
キョン(俺は朝比奈さんに謝らなければいけないことがある……それは……)カチカチ
キョン(この、mikuruフォルダ……)
キョン(この朝比奈さんの恥ずかしい写真を消さずに残していたことを謝らないと)
みくる「キョンくん、どうかしたんですか? 何だか難しい顔してるけど」
キョン「あ、い、いいえ、何でもないです!」
155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 01:15:02.26 ID:1attf1Pk0 [14/88]
キョン(確かに俺のやったことは悪いことだ。しかし……しかし!)
キョン(果たしてこのまま正直に打ち明けるべきなのか……?)
キョン(打ち明ければ朝比奈さんは間違いなくショックを受ける……)
キョン(そりゃそうだ。とっくに消されたと思ってた自分の恥ずかしい写真が、実はまだ残ってたんだから)
キョン(それもただ単に俺の個人的な理由で……やはりこれは、むしろ知らない方がいいんじゃないか?)
キョン(打ち明けずにフォルダだけ消してしまえば、朝比奈さんはショックを受けずにすむ……)
キョン(わざわざ余計なショックを与えずに、俺の心の中だけにしまっておくべきじゃないのか?)
キョン(そもそも、ここで『謝る』という行為は本当に朝比奈さんに対する反省なのか……?)
キョン(ただ単に「俺はちゃんと謝った」ってことで自己満足したいだけじゃないのか……?)
キョン(そうだよな……世の中知らない方がいいこともある……ここはやはり黙って……)
キョン(いやいやいやいやいや!! 何を考えてるんだよ俺は!!)
キョン(何が黙ってた方がいいだ! それは単に逃げてるだけじゃねえか!)
157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 01:20:01.11 ID:1attf1Pk0 [15/88]
キョン(くそっ! さっきからグダグダと! 自分の都合のいいように考えてるんじゃねえよ!)
みくる「あの、キョンくん? さっきから頭を抱えてるけど大丈夫ですか?」
キョン(悪いことをしたから謝る! それだけのことじゃねえか! よし、謝ろう!)
みくる「キョンくんってばぁ」
キョン(打ち明けたら、俺は確実に嫌われるだろうな。それは自業自得だ、仕方ない)
キョン(しかし、これが原因で俺と朝比奈さんだけでなく、SOS団全体までギクシャクするようになったら……)
キョン(ああああもう!! 謝るって難しい!!)
みくる「もう! キョンくん!」
キョン「はーい!! あ、え? 何でしょう?」
みくる「どうしたんです? 随分悩んでるみたいですけど?」
キョン(どうする……? ええい! いけ!!)
キョン「あ、朝比奈さん!」
みくる「ひゃ! えと、何ですか?」
キョン「俺、朝比奈さんに謝らないといけないことがあります」
160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 01:25:01.83 ID:1attf1Pk0 [16/88]
みくる「え? 謝らないといけないことって……キョンくんがあたしに、ですか?」
キョン「そうです」
みくる「な、何でしょう……?」
キョン「……これです」カチッ
みくる「あ、それってmikuruフォルダですか? 以前見つけて気になってたけど、すっかり忘れてました」
みくる「でも、それがキョンくんの謝りたいこと……?」
キョン「中身は……これなんです」カチカチッ
みくる「あ! これって……以前涼宮さんが撮った……?」
キョン「そうです……消すのが惜しくてこっそり保存してました」
みくる「何で……キョンくんが……」
キョン「すみませんでした! 本当にすみませんでした!」
みくる「…………」
キョン「…………」
キョン(沈黙が……重い……)
162 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 01:30:02.19 ID:1attf1Pk0 [17/88]
キョン「あ、あの……」
みくる「……」スタスタ
キョン「え……?」
みくる「……」コポコポ
キョン「朝比奈さん……?」
みくる「はいキョンくん、お茶が入りましたよ。飲んでください」
キョン「え? えっと、え?」
みくる「飲んでください」
キョン「は、はい! 分かりました!? 飲みます!」
キョン「紫色のお茶……? どんな味が? ズズッ…………はぶしゅ!!」ブバッ!!
キョン「ぐええ! く、口! 口の中が爆発した!?」
みくる「うーん、ちょっと変わったお茶を買ってみたんですけど、やっぱり駄目だったみたいですね」
キョン「えっと、朝比奈さん? これはいったい……?」
みくる「うふふ。キョンくんは正直に謝ってくれましたし、これで許してあげます」
キョン「え……?」
164 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 01:35:01.82 ID:1attf1Pk0 [18/88]
キョン「ほ、本当ですか……」
みくる「確かにちょっとショックでした。でも、そこまで嫌でもないんです。何でかな?」
キョン(散々ハルヒの被害を受けたせいで、変な耐性がついちゃったのか……)
みくる「それに……あたしの方がキョンくんには随分と迷惑をかけていますから……」
みくる「だから……あたしの方こそごめんなさい、キョンくん」
キョン「そんな! 俺は1度だって迷惑だなんて思ったことはないですよ!」
みくる「ありがとうキョンくん。あ、画像は消しておいてくださいね。やっぱり恥ずかしいし」
キョン「はい、勿論です。今すぐに消します」
キョン(よかった……本当によかった……)
キョン(……しかしこれ、本来なら100%嫌悪されるケースだよな)
キョン(天使のような朝比奈さんだからこそ許してくれたんだ。感謝して、本当に反省しないとな)
キョン「これでよし。全部消しましたよ」
みくる「はい、確かに確認しました」
キョン「朝比奈さん、本当に本当にすみませんでした」
168 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 01:40:12.11 ID:1attf1Pk0 [19/88]
古泉「どうも、こんにちは」
長門「……」
みくる「古泉くん、長門さん、こんにちは」
キョン「よう古泉。昨日の閉鎖空間はどうだったんだ?」
古泉「規模はそんなに大きくはありませんでしたので、すぐに処理できました」
古泉「もっともこれを皮切りに、閉鎖空間の発生が増えることはほぼ確実なようですが」
キョン「そう、か……やっぱり超能力者って大変なんだな」
キョン「はあ、何で俺は今まで……」
古泉「……どうかされたのですか? そういえば昨日も少し様子が変でしたが、何かあったのですか?」
キョン「ハルヒがああやって謝ってまわる姿を見て、俺もいろいろと考えたんだよ」
古泉「……」
キョン「……古泉、それから長門。俺はお前らに謝りたいことがある」
長門「……?」
古泉「謝りたいこと、ですか?」
キョン「ああ。聞いてほしい」
170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 01:45:01.74 ID:1attf1Pk0 [20/88]
キョン「古泉、俺は今までお前に対してろくな態度をとっていなかったと思ってな」
古泉「そうですか? そんなことはないと思うのですが」
キョン「いや、俺はお前を最初、すかした態度のいけ好かない奴、気持ち悪い奴だと思ってたんだ」
キョン「それにお前は顔がいいから、さぞ女にモテるんだろうなという僻みもあったのかもしれん」
古泉「……」
キョン「もちろん1年以上も一緒に過ごしてきて、そんな考えもだいぶ変わったさ」
キョン「……ただ、やっぱり心のどこかでそんな気持ちが残ってたんだろうな」
キョン「俺はお前に対して、気を使うということを一切してこなかった……」
キョン「ハルヒのご機嫌取りや閉鎖空間での仕事が忙しいお前に対し、『俺は関係ない』とばかりに冷たい対応しかしてこなかった」
キョン「今考えれば、本当に申し訳ないことをしてきたと思う。だから……すまん!」
古泉「……」
キョン「……」
古泉「……」
キョン「……何でそんな驚愕の表情をしているんだよ」
173 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 01:50:02.20 ID:1attf1Pk0 [21/88]
古泉「あ、いえ、すみません。少し驚いてしまいまして。まさかあなたがそのようなことを言うとは」
キョン「そうか。やっぱり俺はそういう奴だと思われてたんだな。そりゃそうだよな……」
古泉「すみません、そんなつもりではなかったのですが」
キョン「いいんだ。俺が悪かったんだよ……」
古泉「いじけないでくださいよ。ですが、そうですね……」
古泉「あなたは何も悪くありませんし、謝る必要もありません」
古泉「むしろ……謝りたいのは僕の方ですよ」
キョン「どういうことだ……?」
古泉「あなたは涼宮さんに選ばれたとはいえ、本来はただの一般人です。ごくごく平穏な人生を歩めるはずだった」
古泉「それが何度も命の危機に直面したり、世界のために奔走したり……」
古泉「そんな涼宮さん絡みの危険な世界にあなたを巻き込んでしまった。そのことは本当に申し訳ないと思っています」
キョン「……別に俺を巻き込んだのはお前ではないだろう」
175 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 01:55:01.84 ID:1attf1Pk0 [22/88]
キョン「それに、元は一般人なのに巻き込まれたという意味では、お前だってそうだろう?」
キョン「それも俺よりもずっと過酷な……」
古泉「……」
キョン「長門」
長門「……何?」
キョン「お前にも謝りたい。本当にすまなかった」
長門「……」
キョン「お前にはずっと助けられっぱなしだ。それなのに、俺はお前のストレスに気づいてやれなかった」
キョン「あの冬の事件の時、俺は誓った。お前にできるだけ負担をかけないようにしようと」
キョン「しかし、結局は今でも俺はお前に頼りっぱなしだ……」
キョン「おそらく、心のどこかで『いざとなれば長門がいる』という甘い考えを持っていたんだろうな」
長門「気にしなくていい」
キョン「いや! 俺はもっとお前の力になりたい。お前の負担を減らしてやりたい!」
176 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 02:00:02.21 ID:1attf1Pk0 [23/88]
キョン「長門、古泉、朝比奈さん。みんな聞いてほしい」
キョン「俺は今までずっと受け身だった。傍観者だった」
キョン「ハルヒの起こした面倒ごとを解決するために奔走したこともあったが……」
キョン「それも全て『巻き込まれた』と思ってた。自分をずっと『被害者』だと思い込んできた」
キョン「あの冬の事件の時、俺は変わろうと思った。傍観者でいるのはやめようと思った」
キョン「しかしそう決心したものの、結局は変われていなかったんだろうな……」
キョン「あの冬以降の事件にしたって、俺がもっと気を配っていれば防げたものもあったかもしれない」
キョン「だから……これからは、俺は全力を尽くす!」
キョン「事件が起きないように。事件が起こってしまってからも。俺は被害者面せずに全力を尽くす!」
キョン「みんなの負担を減らすためにも。そして、ハルヒのためにも……」
長門「……」
古泉「……」
みくる「……キョンくん」
179 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 02:05:07.09 ID:1attf1Pk0 [24/88]
古泉「我々は立場上、どうしても涼宮さんに強く出ることはできません」
古泉「ですから普段の涼宮さんの対策については、むしろ我々の方があなたに依存してきました」
古泉「そのことに我々は感謝していますし、謝罪をしたいとも思っています」
みくる「……いざと言う時の決断はキョンくんにばかり任せてきましたもんね」
古泉「あなたばかりが負い目を感じる必要はないんです。ですから少し、肩の力を抜きませんか?」
キョン「いいや! 頑張る!」
古泉「ふふ、分かりました」
みくる「あ、あたしだって! あたしだって頑張ります!」
古泉「頑張ることは素晴らしいのですが、あまり気負いすぎないようにしてくださいよ。ねえ長門さん?」
長門「わたしの中に湧き上がってくるもの……これは……何……?」
長門「うまく言語化できない。しかし…………決して悪いものではない」
181 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 02:10:02.98 ID:1attf1Pk0 [25/88]
古泉「さて、こうして絆が深まったことですし……」
キョン「ああ、肝心のハルヒが今どうしてるのかが気になるな」
みくる「昨日あれだけキョンくんに言われましたから、無茶はしていないと思うんですけど」
キョン「それでも気になるものは気になりますし、今日も行くとしますか」
古泉「そうですね。では準備しましょう」
長門「……」
キョン「しかし……」
古泉「どうかしましたか?」
キョン「俺たちの結束がこうして高まったのはいいが、やっぱり俺たちの中心にはハルヒがいないとな」
キョン「毎回事件が起きるたび、アイツだけが蚊帳の外だからなぁ」
古泉「それは仕方がないです。涼宮さんが世界を改変する能力を持っている以上は……」
キョン「まあ、それは分かってるんだが……何だか仲間外れにしてる気分だ」
古泉「ですから事件以外の時は、それを忘れるくらい我々5人で思い切り楽しめばいいんですよ」
みくる「そうですよ。5人揃ってこそのSOS団なんですから」
キョン「……そうですよね。今回の件が解決したら、また5人で遊びに行くとしますか」
204 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 10:30:11.30 ID:1attf1Pk0 [28/88]
~スーパー~
キョン「あれ? ハルヒがいないぞ」
みくる「どこに行ったんでしょうか?」
古泉「あそこに店長さんがいます。聞いてみましょう」
キョン「あの、すみません!」
店長「おや? 君達は確か涼宮さんの」
キョン「そのハルヒはどこにいるんでしょうか? 様子を見に来たんですけど」
店長「ああ、涼宮さんならここにはもういないよ」
キョン「え! どういうことですか! 何かやらかしてクビになったんですか!?」
店長「違うよ。今日は涼宮さん、昨日よりも調子が良くてね。思ったよりも早く風船がなくなったんだ」
店長「それで早めにバイト終了ということにしたんだ。あの子は本当によく頑張ってくれたよ」
キョン「そ、それでハルヒは家に帰ったんですか?」
店長「いや、何か行く所があるとか言ってたよ。バイト代貰うとすぐに走って行っちゃったよ」
キョン「そうですか……ありがとうございました」
205 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 10:35:07.98 ID:1attf1Pk0 [29/88]
みくる「涼宮さん、どこに行ったんでしょう?」
キョン「古泉、機関の監視はどうなってるんだ?」
古泉「今聞いています。しかし、電話がなかなか繋がらなくてですね……」
長門「……」
キョン「電話か。あ、そうか。電話すればいいんだ」ゴソゴソ
ヒーーヒッヒッヒ!! ヒーーヒッヒッヒッヒーー!!!!
みくる「ひゃ! 何ですか今の!?」
キョン「っと、電話だ。ん? ハルヒから? いいタイミングだな」ピッ
キョン「おいハルヒ、お前今どこにいるんだ? みんな捜してるんだぞ」
ハルヒ『キョン……』
キョン「どうした? 何かあったのか?」
ハルヒ『あたし死ぬわ』
キョン「はあ!?」
206 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 10:40:08.58 ID:1attf1Pk0 [30/88]
キョン「おいこら! どういうことだ!」
ハルヒ『あたしは死ぬべきなの……ごめんなさい……』
キョン「何言ってるんだ! 一体何があったんだハルヒ!」
ハルヒ『もう迷惑はかけないから……今までごめんなさい……』
キョン「こっちの話を聞けって! そもそもお前、昨日自殺は絶対しないって言ってたじゃないか!」
ハルヒ『甘かったです。ごめんなさい』
キョン「そんな簡単にすますな!」
ハルヒ『おもしろき こともなき世が いとおかし』
キョン「辞世の句を読むな! しかも少しおかしいし!」
ハルヒ『もう切るわ。さようならキョン』ピッ
キョン「あ! おい! もしもし! くそっ、どうなってるんだ!」
みくる「きょ、きょ、キョンくん! あの、今、自殺がどうのって……」
古泉「どうやら深刻な事態になったようですね」
207 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 10:45:21.82 ID:1attf1Pk0 [31/88]
キョン「……古泉、機関と連絡はとれたのか?」
古泉「ええ。たった今、ようやく」
キョン「ハルヒの居場所は?」
古泉「現在は駅前にいるそうです。ですが……」
キョン「ですが? 何だ?」
古泉「どうしても涼宮さんのいる所へ近づけないそうです。恐らく自殺を邪魔されたくないと思っているからだと」
キョン「何でハルヒはわざわざ俺に電話してきた?」
古泉「心のどこかでは自殺を止めてほしいと思っているのでしょう」
古泉「おそらく、今の涼宮さんに近づくことができるのは……」
キョン「……ええいクソ!!」ダダッ!
みくる「きょ、キョンくん!?」
キョン「ハルヒの所へ行きます! 自転車をぶっ飛ばせばまだ間に合う!」ガチャガチャ
キョン「よし! 待ってろよハルヒ!」
208 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 10:50:08.43 ID:1attf1Pk0 [32/88]
~駅前~
ハルヒ「さて……と。別れは言ったし、死ぬ準備をしないと」
ハルヒ「どうやって死のうかな……あんまり人に迷惑がかかる死に方は駄目よね」
ハルヒ「飛び込み自殺は論外ね。たくさんの人に迷惑をかけてしまうわ」
ハルヒ「人目につくところは避けた方がいいわね。誰もいない所でひっそりと……」
ハルヒ「なるべく身体に傷がつかないほうがいいかな。焼身自殺も入水自殺もやめとこう」
ハルヒ「やっぱり首吊りかしら? ベタだけどそれが1番ね」
ハルヒ「よし決定。あとは場所だけど……樹海ってここから遠いかしら?」
ハルヒ「ひょっとしたらキョン達が来ちゃうかもしれないから、なるべく早く移動しないと」
ダイスーキナヒトガトーオイー♪ トオスギテナキタクナルノー♪
ハルヒ「……誰よ、こんな時に」ピッ
キョン『くおらっ! ハルヒ!!』
ハルヒ「ひゃ! って、キョ、キョン!?」
210 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 10:55:21.08 ID:1attf1Pk0 [33/88]
キョン『今そっちへ向かってるからな! そこを動くな!』
ハルヒ「む、向かってるって……いいわよ来なくて! あたしは一人でひっそりと死にたいの」
キョン『それをさせないために急いでるんだろうが! いいから俺が着くまで待ってろ!』
ハルヒ「何よもう! あたしみたいなクズは死ぬべきなの! 生きてちゃいけないの!」
キョン『死んだらそれまでだろう! 死ぬのは償いにはならん! 生きて償えよ!』
ハルヒ「う……で、でも」
キョン『それに……お前が死ぬのは俺にとって1番の迷惑だ!』
ハルヒ「え? ど、どういうことよ……」
キョン『俺だけじゃない。朝比奈さんも長門も古泉も……みんなお前が死ぬと迷惑するぞ!』
ハルヒ「何でよ……何であたしが死ぬのが迷惑なのよ……?」
キョン『誰もお前の死なんか望んでないってことだ。お前が死んだら誰がSOS団を引っ張っていく?』
ハルヒ「……」
キョン『お前まだ謝ってない人もたくさんいるだろう? 死んだらそれもできなくなるんだぞ』
ハルヒ「……うん」
キョン『まだまだ言いたいことはたくさんある。いいかハルヒ……』
211 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 11:00:07.06 ID:1attf1Pk0 [34/88]
キョン『~~~~で、だな。ん? おい、聞いてるのかハルヒ?』
ハルヒ「う、うん……」
キョン『だから俺が言いたいのはだな……』
ハルヒ「待って待って! もういい! もういいから!」
キョン『ん? もういいってどういうことだ?』
ハルヒ「あれからずーっとネチネチネチネチ言われてもうウンザリよ!」
ハルヒ「分かったわよ。自殺なんてもうしないから。あたしが悪かったわ」
キョン『おお、分かってくれたかハルヒ』
ハルヒ「そりゃあれだけ言われたらね。あんたってあんなに口がうまかったっけ?」
キョン「ふふ、それは……」
???「うおおおお! ハルヒー!! 見つけたぞー!」
ハルヒ「え?」
212 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 11:05:04.15 ID:1attf1Pk0 [35/88]
キョン「はあ、はあ、ぜえ、な、何とか間に合ったみたいだな……」
ハルヒ「あれ? キョン? え、今電話で話して……?」
キョン『おや、彼が到着したようですね。では失礼』ピッ
ハルヒ「あら、電話切れちゃった。どうなってるのよ?」
キョン「何をブツブツ言ってるんだ、お前?」
ハルヒ「あんた、自転車こぎながらあたしに電話してたの?」
キョン「電話? いや俺はしてないぞ? 全力で自転車こいでたんだからそんな余裕ないっての」
ハルヒ「ええ? でも確かにあれはアンタの声……あれぇ?」
キョン「そんなことより! お前自殺なんて馬鹿な真似はやめろ!」
ハルヒ「へ? うん、もうやめたわよ。さっき電話でそう言ったじゃない」
キョン(電話? 電話ねぇ。俺は掛けた覚えはないから当然古泉達の仕業か)
キョン(しかもハルヒのこの様子だと、どうやら俺の声で掛けたみたいだな。長門のあの能力か)
キョン(何で俺の声にしたのかはともかく、古泉達はうまいこと時間稼ぎしてくれたみたいだな)
213 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 11:10:02.55 ID:1attf1Pk0 [36/88]
~スーパー前~
古泉(キョン)「さて、あとは彼がうまくやってくれるでしょう」
みくる「古泉くん、お疲れ様でした」
古泉(キョン)「長門さんのおかげで助かりました。今の涼宮さんには彼の声しか届かなかったでしょうからね」
長門「いい」
古泉(キョン)「しかし自分の声が違うというのはなかなか違和感を感じますね」
みくる「びっくりするくらいキョンくんの声です」
古泉(キョン)「僕はちゃんと彼を演じられていたでしょうか?」
みくる「目を瞑ってたらキョンくんとしか思えないほど上手でしたよ」
古泉(キョン)「はあ、やれやれだ……」
みくる「あ、それ似てます~」
古泉(キョン)「朝比奈さん、好きです」
みくる「ひゃあああ! そそ、その声で言うのやめてくださいぃ~!」
長門「…………」
215 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 11:15:03.16 ID:1attf1Pk0 [37/88]
ハルヒ「ごめんねキョン、心配かけちゃって」
キョン(時間稼ぎだけじゃない。自殺を思いとどまるよう説得まで済ませちまってる)
キョン(何というかさすがだな。俺は焦っちまってそこまで頭がまわらなかった……)
キョン(後で礼を言っておかないとな。さて、今俺がやらなきゃいけないことは……)
キョン「ハルヒ、何でいきなり自殺しようなんて思ったんだ? いったい何があったんだ?」
ハルヒ「……」
キョン「何か理由があるはずだ。話してくれないか?」
ハルヒ「……バイトが思ったよりも早く終わったから、余った時間をどうしようかなと思って」
キョン「ふむ」
ハルヒ「それであたしが東中時代にフッた男たちの中でまだ謝っていない人がいたから……」
キョン「なるほど、そいつのところへ謝りに行ったってわけか」
キョン「……それで、そいつとの間で何かがあったと」
ハルヒ「うん……」
218 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 11:20:04.45 ID:1attf1Pk0 [38/88]
~回想~
ハルヒ「お願い、話を聞いて! あたしは謝らないといけないと思って……」
男「しつこいな! それがうぜーって言ってんだよ! お前の謝罪なんていらねーんだよ!」
男「お前にこっぴどいフラれ方をしたせいで、俺はみんなに笑われて大恥をかいたんだ!」
男「トラウマだったぜあれは。せっかく忘れてたのに……わざわざ思い出させてくれやがって……」
ハルヒ「だから……そのことを謝ろうと……」
男「俺はもうお前の顔なんか見たくなかったんだよ! 何で今さら俺の前に現れるんだよ!
男「ホントお前って人をイラつかせるのがうまいよな。ああもう! うぜぇうぜぇうぜぇ!!」
ハルヒ「……」
男「なあ、お前死ねよ」
ハルヒ「……え?」
男「どうせ今の高校でも他人に迷惑かけまくってんだろ? お前が生きてたって害にしかならねえよ」
男「お前みたいなクズは死ぬべきなんだよ! 死ね! 死ね! 死んじまえ!」
ハルヒ「あたしは……クズ……迷惑……生きてちゃいけない…………死んだ方が……いい」
221 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 11:25:02.01 ID:1attf1Pk0 [39/88]
キョン「なるほど、そんなことがあったのか」
キョン「しかし、いくらなんでも言い過ぎだその男は。なあハルヒ……」
ハルヒ「分かってるわよ。さっきまでのあたしはどうかしてたわ。もう大丈夫よ」
キョン「そ、そうか?」
ハルヒ「そりゃショックだったけどね。でもだからって死んだら何もならないものね」
キョン「そうだぞハルヒ。分かってるんならいいさ。じゃあみんなのところに戻るとするか」
ハルヒ「うん、そうね。みんなにも謝らないと」
キョン「じゃあ行くか。っと、ちょっと待ってくれ。先に電話で連絡しておかないと」ピッ
古泉(キョン)『やぁどうも』
キョン「その声……やっぱり長門の能力か?」
古泉(キョン)『ええ。涼宮さんは無事ですか?』
キョン「ああ、今からそっちに連れて行く」
古泉(キョン)『了解しました。お待ちしています』
キョン「自分の声と会話するというのもなかなか気持ち悪いな。俺が着くまでに元に戻しとけよ」ピッ
キョン「よし、じゃあ行くとするか」
223 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 11:30:05.04 ID:1attf1Pk0 [40/88]
~スーパー前~
キョン「到着っと」キッ
ハルヒ「あ……みんな」
みくる「ああ! す、涼宮さーん!」
ハルヒ「みくるさん……ごめんなさい、心配かけちゃって」
みくる「ううん、いいんです。よかったぁ、無事に戻ってきてくれて」
ハルヒ「有希も古泉くんも……本当にごめんなさい」
古泉「いえ、僕は涼宮さんの強さを信じていましたから」
長門「……」
みくる「涼宮さん! もうこんなことしたら駄目ですよ!」
ハルヒ「はい、ごめんなさい……」
みくる「もう……でも本当によかった……」ギュッ…
ハルヒ「みくるさん……」
225 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 11:35:02.45 ID:1attf1Pk0 [41/88]
キョン「やれやれ、何とか普通に戻ったか」
古泉「どうやら最悪な状態からは脱したようですね」
長門「……」
キョン「いきなり電話してきた時はこの世の終わりみたいな声してたからな」
古泉「そうですね。これでいつもの涼宮さんに戻ってくれれば嬉しいのですが」
ハルヒ「あああーーー!!」
みくる「ど、どうしたんですか涼宮さん!?」
ハルヒ「アリさんの行列を踏んづけちゃった! アリさんごめんなさい! 本当にごめんなさい!」
キョン「……だめだ、相変わらずの状態のようだ」
古泉「そんな甘いことはありませんよね」
長門「振り出しに戻る」
226 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 11:40:00.08 ID:1attf1Pk0 [42/88]
ハルヒ「アリ24さんごめんなさい、アリ25さんごめんなさい……」
古泉「あれではしばらく動きそうにありませんね」
キョン「よし、だったら今のうちに作戦会議だ。この後どうするか相談しよう」
みくる「あ、あたし涼宮さんの傍で見てますね」
キョン「お願いします、朝比奈さん」
みくる「はい。涼宮さーん」タタッ
キョン「さて、あの様子だとまたいつ自殺しようとしてもおかしくないな」
長門「今の涼宮ハルヒはとても不安定な状態」
古泉「何か対策を講じる必要がありますね」
キョン「もう様子見などと悠長なことは言ってられないな」
古泉「しかし、涼宮さんがああなった原因について分からないことには……」
227 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 11:44:59.09 ID:1attf1Pk0 [43/88]
キョン「だよなあ。機関や長門があれだけ調べてもまだ判明してないし……」
古泉「涼宮さん本人に聞いてみますか?」
キョン「え? もう聞いたろ?」
古泉「僕は聞いていません。むやみに刺激するのはよくないと思いましたので」
キョン「そういえば俺も聞いてないような……誰かが聞いてると思って……」
古泉「どうなんでしょう、長門さん?」
長門「涼宮ハルヒがなぜ豹変したのか。そのことを涼宮ハルヒ本人に尋ねた者はいない」
キョン「……」
古泉「……」
キョン「はは、まさかこんな盲点が……」
古泉「とにかく急いで涼宮さんに聞いてみましょう。もっとも素直に話してくれるかは分かりませんが」
キョン「そこは駄目元だ。おーい! ハルヒ! 朝比奈さん!」
ハルヒ「アリ354さんごめんなさい、アリ355さんごめんなさい……」
みくる「アリ211さんごめんなさい、アリ212さんごめんなさい……」
229 名前:早速さるさん[] 投稿日:2010/09/20(月) 12:01:09.66 ID:1attf1Pk0 [44/88]
キョン「何をやってるんですか、朝比奈さん……」
みくる「あひゃわあ!? ごごごめんなさい! ついつられちゃって!」
キョン「はあ。ああいや、それよりハルヒよ、話がある」
ハルヒ「何? まだ全部のアリさんに謝ってないんだけど」
キョン「後にしろ。お前に聞きたいことがあるんだ」
ハルヒ「聞きたいこと?」
キョン「お前……何でここのところみんなに謝ってまわるようになったんだ?」
ハルヒ「それは……今までの自分の行いを反省して……」
キョン「それにしたって行動に移すには何かきっかけがあったはずだ。なあ、何があったんだ?」
ハルヒ「……」
キョン「ハルヒ?」
ハルヒ「言ったって……信じてくれないわよ……」
キョン「いや、信じる」
ハルヒ「え?」
230 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 12:05:07.43 ID:1attf1Pk0 [45/88]
キョン「お前の言うことなら俺は、いや俺達は信じる。それがどんなことでもな」
古泉「そうですよ涼宮さん」
みくる「話してくれませんか?」
長門「……」
ハルヒ「キョン……みんな……」
ハルヒ「……分かったわ。話すわ」
キョン「そうか。ゆっくりでいいからな」
ハルヒ「でもちょっとタンマ」
キョン「うおい! 何でだよ!?」
ハルヒ「トイレよ。さっきからずっと我慢してて……」
キョン「はあ、まったく。しかし今のお前から目を離すわけにはいかん。俺も着いていくぞ」
ハルヒ「アンタ、女子トイレにまで着いてくる気?」
キョン「う……いや、しかし……」
みくる「キョンくん、あたしが着いていきますから」
キョン「そ、そうですか。よろしくお願いします朝比奈さん」
233 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 12:09:58.28 ID:1attf1Pk0 [46/88]
キョン「まったく、緊張感がないというか……」
古泉「そこまでピリピリしても仕方ありません。少し落ち着きましょう」
キョン「だな。しかし、本当に大丈夫か?」
古泉「大丈夫でしょう。目を離すといっても数分ですし朝比奈さんもついてますし」
キョン「そうだよな。たかが数分で事態が急変するわけないよな」
キョン「……遅いな。いくらなんでももう戻ってきてもいいはずだが」
古泉「そうですね、何かあったのでしょうか?」
みくる「きょ、キョンく~ん……」
ハルヒ「……」
古泉「おや、2人ともようやく戻ってきたようです……ね……」
キョン「……なあ古泉、1つ聞いていいか?」
古泉「何でしょう?」
キョン「何でハルヒはあんなドンヨリとしてて、朝比奈さんは泣きそうな顔をしてるんだ?」
234 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 12:15:17.67 ID:1attf1Pk0 [47/88]
ハルヒ「……」ブツブツブツ…
古泉「どうやら只事ではないようですね」
キョン「おいハルヒ! どうした! 何があったんだ!」
ハルヒ「……」ブツブツブツ…
キョン「何だって? 小声でよく聞こえないぞ」スッ
ハルヒ「みんな……ごめんなさい…………本当に……ごめんなさい……」
キョン「ハルヒ……」
古泉「朝比奈さん、一体何があったのですか?」
みくる「あ、あの、それが…………ああ!?」
古泉「ど、どうしましたか!」
みくる「す、涼宮さんが……」
古泉「涼宮さんが?」クルッ
キョン「な……ハルヒが……消えた……目の前でいきなり消えちまった……」
235 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 12:19:59.10 ID:1attf1Pk0 [48/88]
古泉「涼宮さんが消えた……? それは……むっ」
キョン「ど、どうした古泉?」
古泉「涼宮さんがなぜ消えたのかが分かりました」
キョン「なに! なぜなんだ古泉!?」
古泉「閉鎖空間です。巨大な閉鎖空間がたった今発生しました」
キョン「閉鎖空間? どこにだ?」
古泉「ここです」
キョン「ここ?」
古泉「我々が今いるこの地点、ここを中心に急激に閉鎖空間が拡大しています」
キョン「ま、まさかハルヒは……」
古泉「ええ、その閉鎖空間の中にいるようです」
みくる「どうしよう……あたしのせいです……あたしの……」
キョン「朝比奈さん、いったい何があったんですか?」
みくる「それが……」
236 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 12:25:16.71 ID:1attf1Pk0 [49/88]
~回想~
ハルヒ「スッキリした。じゃあ戻りましょうか、みくるさん」
みくる「うん、待たせたら悪いですからね」
ハルヒ「あれ?」
みくる「どうしました、涼宮さん?」
ハルヒ「あそこにいるの、生活指導の先生じゃない?」
みくる「あ、ホントです」
ハルヒ「あたし、あの先生にはまだ謝ってないんですよ」
みくる「え?」
ハルヒ「あたし、ちょっと行って謝ってきます。みくるさんはそこで待っててください」タタッ
みくる「あ! 待ってください! キョン君達が待ってますよ!」
ハルヒ「すぐに済みますからー」
みくる「でもでも、えーと……あ、あたしも行きます! 待ってくださーい!」タタッ
237 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 12:29:59.02 ID:1attf1Pk0 [50/88]
ハルヒ「先生、今までたくさんご迷惑をおかけして本当に申し訳ありませんでした」
先生「他の先生方から話は聞いていたが……お前に謝られる日が来るとは正直思ってなかったよ」
ハルヒ「……」
先生「でもまあ、分かればよろしい。元気なのは結構だがほどほどにな」
ハルヒ「はい、本当にすみませんでした」
先生「もっと周りのことも考えるようにな。口には出さなくても迷惑だと思ってる奴はたくさんいるぞ」
先生「お前のとこの、えーと、SOS団だったか? そこの連中だって本当は迷惑してるかもしれないぞ?」
ハルヒ「え?」
先生「有無を言わさず強引に入部させたんだってな。そこの朝比奈にいたっては書道部までやめたとか」
みくる「え? あ、それはその……」
先生「4人とも他にやりたいことがあったかもしれんのに。可哀想にな」
先生「しかも毎度毎度お前の起こす騒ぎに巻き込まれるわ、お前の悪名で他の部員まで悪く見られるわ」
先生「みんな実際に迷惑してるんだぞ。だからこれからはもっと他の人のことも考えるようにな」
ハルヒ「迷惑……みんなが……あたしのせいで…………」
238 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 12:35:00.94 ID:1attf1Pk0 [51/88]
キョン「はあ、それでハルヒは閉鎖空間を発生させるほどの鬱モードに突入したってわけですか」
古泉「自殺騒動が治まったと思ったらこれですか。一難去ってまた一難ですね」
みくる「本当にごめんなさい! あたしがついていながら……」
古泉「朝比奈さんのせいではありませんよ。涼宮さんのあの様子では遅かれ早かれこうなっていたでしょう」
キョン「それにしても、死ねと罵られた時より『俺達に迷惑だと思われてる』と言われた方がダメージがでかいとはな」
古泉「それだけSOS団が、僕達の存在が大切なものだったということでしょう」
キョン「そう、か」
古泉「それよりも急ぎましょう。事態は一刻を争います」
キョン「む、そうか。ということはやっぱり……?」
古泉「ええ、僕達も閉鎖空間に向かいます。皆さん、僕の身体に触れて目を瞑ってください」
キョン「よし」スッ
みくる「は、はい」スッ
長門「……」スッ
古泉「では……行きます」
240 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 12:40:01.16 ID:1attf1Pk0 [52/88]
古泉「もう目を開けても結構ですよ」
みくる「こ、ここが閉鎖空間ですか。暗くてちょっと怖いですね……」
キョン「俺は何度も来てるからいい加減慣れましたけどね」
キョン「それで古泉、一刻を争う事態ってそんなにやばいのか?」
古泉「ええ、このままでは涼宮さんが自分自身を消滅させてしまう恐れがあります」
キョン「何だと!? 確かにやばいな……」
古泉「急ぎましょう。あっちの方角から涼宮さんの存在を感じます。着いてきてください」
キョン「そういえばこの閉鎖空間、神人が全然いないな」
みくる「神人ってキョンくんが言ってた白くて大きなお化けですか?」
古泉「この閉鎖空間はいつものものとは違う、特別なもののようです」
キョン「特別?」
古泉「見ての通り神人がいません。そしてどうやら他の機関のメンバーは入って来れないようです」
古泉「この閉鎖空間に入ることを許されたのは僕達だけです。恐らく無意識にでしょうが」
キョン「そうか。心のどこかで俺達に止めてほしいと思ってるのかもな」
241 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 12:44:57.66 ID:1attf1Pk0 [53/88]
古泉「要するにこの閉鎖空間は世界を作り変えるためのものではなく……」
古泉「自分自身を消滅させるため。ただそのためだけに作られたものなんですよ」
キョン「ようは壮大な自殺ってことか。自殺ならさっき止めたばかりだというのに」
長門「振り出しに戻る」
キョン「それで古泉、ハルヒの所にはまだ着かないのか?」
古泉「そこです。そこの曲がり角の向こう!」
キョン「なに!? そうか、よし! ハルヒ!」ダッ
ハルヒ「……」ブツブツブツ…
キョン「やっと見つけた。手間かけさせやがって」
キョン「おいハルヒ! しっかりしろ! おい!!」
ハルヒ「…………ん……あれ……キョン……?」
キョン「ハルヒ! お前にいったい何があった? 何でそんなに謝るようになっちまったんだ?」
ハルヒ「……」
242 名前:さるさんの逆襲[] 投稿日:2010/09/20(月) 13:04:55.89 ID:1attf1Pk0 [54/88]
ハルヒ「あたし……夢を見たのよ」
ハルヒ「その夢の中でどことも分からない場所をあたしは歩いていた」
ハルヒ「すると、誰かがあたしの前に現れた」
キョン「誰か? 何者だそいつは?」
ハルヒ「あたしよ」
キョン「は?」
ハルヒ「あたしの前に現れたのは、もう1人のあたしだったの。でも何となく分かったわ」
ハルヒ「コイツはあたしの『偽者』なんかじゃない。コイツも『あたし自身』なんだって」
キョン「何でそんなことが分かったんだ?」
ハルヒ「分かっちゃったんだからしかたないじゃない。なんとなくよ」
ハルヒ「それで、そのもう1人のあたしは言ったわ。『いい加減にしなさい!』と」
ハルヒ「当然あたしは言い返したわ。『何のことよ!』と」
ハルヒ「そしたらそいつは、あたしが今までどんなに悪い事をしてきたか、どれだけ人に迷惑をかけてきたか」
ハルヒ「それはもう徹底的に非難してきたわ。そして言い放ってきた。『全ての人達に謝りなさい!』と」
244 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 13:09:57.45 ID:1attf1Pk0 [55/88]
ハルヒ「最初は言い返したわ。『何でアンタなんかに偉そうに説教なんかされなきゃいけないの!』」
ハルヒ「でもそいつったら全然人の話聞かないの。説教してばっかりで」
キョン「まさしくお前そのものだな」
ハルヒ「うっさいわね。それで埒が明かないと思ってドロップキックかましたの」
キョン「おい」
ハルヒ「でも避けられたわ。逆にカウンターのラリアット喰らっちゃった」
ハルヒ「チョップ喰らわせようとしたらハイキック、ヘッドバット食らわせようとしたらボディブロー」
ハルヒ「もう全部返り討ち。なぜかそいつにはまったく敵わなかったわ」
ハルヒ「そして三角締めを極められた時、あたしは抵抗するのをやめた……」
キョン「……」
ハルヒ「それからもあたしへの非難と説教は延々と続いたわ、最初はあたしも聞く耳を持たなかったんだけど……」
ハルヒ「だんだんあたしの中に『罪悪感』が芽生えてきたの。あいつの言葉って妙に心に響くのよね」
ハルヒ「そして、その『罪悪感』はどんどん大きくなっていった……」
246 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 13:10:56.49 ID:1attf1Pk0 [56/88]
ちょいと中断
252 名前:再開[] 投稿日:2010/09/20(月) 13:29:56.84 ID:1attf1Pk0 [57/88]
ハルヒ「気がついたらあたしは目を覚ましていた。そこはいつものベッドの上……」
ハルヒ「もちろん『もう1人のあたし』はどこにもいなくなってた」
ハルヒ「でもあたしの中に芽生えた『罪悪感』は消えることはなかった……」
ハルヒ「ううん、それどころかどんどんどんどん大きくなっていって……」
ハルヒ「みんなに謝らないと……あたしが今まで生きてきて迷惑をかけた人達みんなに謝らないと……」
ハルヒ「そのことだけが頭を支配して、いてもたってもいられなくなって、家を飛び出して……」
ハルヒ「走って走って走って学校に到着して。その時に気づいたんだけど、その時はもうすでに放課後だった」
ハルヒ「あたしったら随分長く夢を見てたのね。それで教室にはすでに誰もいなかったから部室に行って……」
キョン「それでドアを開けて開口一番、『みんなごめんなさい……』か……」
古泉「なるほど、そういうことだったんですね」
みくる「涼宮さん……」
長門「……」
255 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 13:34:59.55 ID:1attf1Pk0 [58/88]
キョン「しかしもう1人のハルヒか。本人は偽者じゃないと言っているが、どういうことなんだろうな?」
古泉「恐らく涼宮さんの深層意識が具現化した存在なのではないでしょうか」
キョン「深層意識?」
古泉「あくまで仮説ですが……普段の涼宮さんは非常にアグレッシブで常に前に進み続けてきました」
キョン「周りの迷惑も考えずにな」
古泉「しかし、心の奥底ではそのことに対し罪悪感も感じていた。謝りたいと言う思いもあった」
キョン「普段のハルヒを見てると、到底信じられないがな」
古泉「以前も言ったでしょう。涼宮さんは常識的な考えも持っていると」
古泉「ですが、涼宮さんはあのような性格です」
古泉「素直に謝ると言うこともできず、その思いを心の奥底にどんどん蓄積させていった」
古泉「そして積もりに積もったその思いが1つの人格を形成し、具現化してしまった」
キョン「それが夢の中でハルヒを非難した、もう1人のハルヒか?」
古泉「おそらく」
キョン「長門、どうなんだ?」
長門「その仮説でほぼ間違いないと思われる」
258 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 13:39:59.38 ID:1attf1Pk0 [59/88]
キョン「心の奥底では反省していた、か。あのハルヒがな。なかなか信じられないが……」
ハルヒ「ごめんなさい……みんな……ごめんなさい…………」
みくる「涼宮さん! しっかり! しっかりしてくださぁい!」
キョン「あれを見ると、信じざるを得ないよな」
古泉「当然といえば当然です。特殊な能力を持っているとはいえ、涼宮さんだって人間なんですから」
キョン「それで、どうすればいいんだ? どうやったらハルヒを元に戻せる?」
古泉「そうですね。まずはそのもう1人の涼宮さんに出てきてもらう必要がありますね」
キョン「そりゃそうだろうな。で、そのもう1人のハルヒとやらはどこにいる?」
キョン「まさかこの閉鎖空間のどこかにいるんじゃないだろうな? だとしたら探しきれんぞ」
長門「そこにいる」スッ
キョン「え? そこって……」
ハルヒ「ごめんなさい…………ごめんなさい…………」
キョン「いや、あれはもう1人のハルヒじゃなくて本物のハルヒじゃあ……?」
259 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 13:45:00.05 ID:1attf1Pk0 [60/88]
古泉「なるほど。その『もう1人の涼宮さん』もあくまで本物の涼宮さんですからね」
長門「そう。常に共にいる」
キョン「何? どういうことだ?」
長門「……」ブツブツブツ…
キョン「ん? 何をしてるんだ長門…………って!?」
ハルヒ(?)「アンタいい加減にしなさいよね! さっさと死になさいよ!」
ハルヒ「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」
みくる「ひゃああ! す、すす、涼宮さんが2人!?」
キョン「あれが……『もう1人のハルヒ』か……」
古泉「そのようですね」
ハルヒ(?)「アンタなんか生きててもしょうがないの! みんなが迷惑してるの!」
ハルヒ「ごめんなさい……生きててごめんなさい……」
キョン「見かけではまるっきり区別がつかんな。ハルヒ(強)とハルヒ(弱)とでも呼ぶか」
261 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 13:49:59.88 ID:1attf1Pk0 [61/88]
キョン「さて、ともかく接触を試みないことには始まらないな。うまく説得しないと」
キョン「おい、ハルヒ」
ハルヒ(強)「みんなアンタが悪いのよ! 分かってるの!」
ハルヒ(弱)「あたしが悪い……みんな……みんな…………」
キョン「あの、もしもーし?」
ハルヒ(強)「みんなアンタのせいで苦しんできた! その苦しみをアンタも味わいなさい!」
ハルヒ(弱)「あたしも……苦しむべき……」
キョン「聞けよ! 脳内爆弾女!!」
ハルヒ(強)「何ですって!」
ハルヒ(弱)「失礼ね!」
キョン「いや、何でお前まで反応するんだよ!」
ハルヒ(弱)「あ……ご、ごめんなさい、ごめんなさい……」
キョン「あ、しまった……」
262 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 13:54:59.53 ID:1attf1Pk0 [62/88]
古泉「仕方ありません。今はこっちが先決です」
キョン「そうだな。朝比奈さん、そっちのハルヒを見ててもらえませんか?」
みくる「はい。今度こそ任せてください!」
キョン「さて、と。なあハルヒよ」
ハルヒ(強)「何よ?」
キョン「お前はずっとハルヒの傍にいたのか?」
ハルヒ(強)「当然よ。あたしだって『涼宮ハルヒ』なんだから」
キョン「まさか傍にいる間、ずっとああやって罵倒し続けていたのか?」
ハルヒ(強)「そうよ! アイツったらひどいのよ! 自己中心的だし人に迷惑掛けまくるし!」
ハルヒ(強)「あまりにひどいから我慢しかねて、こうしてあたしが説教してやってるのよ!」
キョン(なるほど。こいつはハルヒの罪悪感、謝りたいという気持ちが具現化した存在だったな)
キョン(口こそ悪いが、こいつはハルヒの『良心』とも言えるわけだ。しかしなあ……)
キョン「お前、いくらなんでもきつく言い過ぎだ。見ろ、あんなに落ち込んじまって」
263 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 13:59:59.76 ID:1attf1Pk0 [63/88]
ハルヒ(弱)「死にたい……あたしは……死ぬべき…………」
みくる「そんなことないですよ、涼宮さん!」
ハルヒ(強)「駄目よ! まだまだ言い足りないし、アイツもまだまだ反省が足りないわ!」
ハルヒ(強)「もっとよ! もっともっと謝らないといけないのよ!」
キョン「謝らないとってお前、アイツは散々謝ってきたじゃないか。あとどれぐらい謝ればいいんだよ?」
ハルヒ(強)「これまで生きてきて、関わってきた人達全員によ!」
キョン「そんな無茶な」
ハルヒ(強)「無茶だろうがしなくちゃいけないの!」
キョン「お前な、謝る謝るってむやみやたらに謝ればいいってものじゃないだろう。極端すぎるんだよ」
キョン「事実、謝られて逆に不快感をあらわにした人もいただろう?」
キョン「しかも重りをつけて池に飛び込んだり、ホッカイロ貼って着ぐるみバイトをしたり……」
キョン「そして遂には自殺騒動だ。死んだら何にもならないというのに」
ハルヒ(強)「むぅ…………でもアイツ、生きてる価値あるの? 生きてても迷惑かけるだけよ?」
キョン「お前なぁ……」
264 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 14:04:55.39 ID:1attf1Pk0 [64/88]
キョン「さすがはハルヒ、とことん強情だな。さて、どうしたものか」
古泉「ここはやはり、彼女の出番でしょうね」
キョン「長門、か」
古泉「ええ、今の精神力が弱っている涼宮さんなら、情報操作を施すことも容易なはずです」
キョン「そうなのか、長門?」
長門「そう」
キョン「しかし……できれば情報操作は使ってほしくない。お前に負担をかけたくないんだ」
長門「大丈夫。やる」
キョン「へ? やるって……?」
長門「涼宮ハルヒに情報操作を施し、元の状態に戻す」
キョン「え、いや、しかしだな長門……」
長門「わたしという個体は…………涼宮ハルヒを助けたいと思っている」
キョン「長門……」
長門「……」
キョン「……そうか。分かったよ、長門」
266 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 14:09:57.29 ID:1attf1Pk0 [65/88]
キョン「長門、頼んだぞ」
長門「任せて」
キョン「今度何でも好きなもの奢ってやるからな」
長門「カレー」
キョン「ああ、10杯でも20杯でも好きなだけ食え」
古泉「それで、情報操作を施すと言いましても、具体的にはどうするんですか?」
長門「2人の涼宮ハルヒのうち、どちらか1人を消滅させる」
キョン「はい?」
長門「2人の涼宮ハルヒのうち、どちらか1人を消す」
キョン「いや、そこは言い直さなくてもいい」
キョン「しかしハルヒを消滅させる、か……大丈夫なのか?」
長門「平気。元の涼宮ハルヒに戻るだけ」
キョン「うーん、分かったような分からんような……」
古泉「つまりですね、2つに分裂している人格のうち、片方の涼宮さんの人格を消滅させる」
古泉「そのエネルギーが残ったもう片方の涼宮さんと融合し、元の1人の涼宮さんに戻る」
269 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 14:14:57.41 ID:1attf1Pk0 [66/88]
古泉「どうでしょうか、長門さん?」
長門「その解釈で間違いはない」
キョン「なるほど。消すなんていうから殺す的な意味かと」
古泉「そんなわけないでしょう」
キョン「よし、じゃあ頼んでいいか長門?」
長門「了解。どっち?」
キョン「え? どっちって?」
長門「どちらの涼宮ハルヒを消滅させる?」
キョン「……そうか、どっちも本物の『涼宮ハルヒ』なんだよな」
長門「性格のベースとなる方を決めてほしい」
キョン「性格のベース、か……」
古泉「つまりですね」
キョン「いや、これぐらいは分かる。つまり……」
キョン「ハルヒ(強)を消せば、ハルヒ(弱)を非難する存在がいなくなり、いつもの傲慢なハルヒに戻る」
キョン「ハルヒ(弱)を消せば、傲慢なハルヒが消えて、周りに気を配れる謙虚なハルヒになるってことか」
270 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 14:19:56.74 ID:1attf1Pk0 [67/88]
キョン「元のハルヒに戻すというのは分かる。だが謙虚なハルヒにするというのはどうなんだ?」
キョン「また自殺未遂を起こしたり、いろいろ厄介なことになったりはしないか?」
古泉「それは、今まで原因が一切分からなかったからですよ」
古泉「こうして原因が分かった以上、ある程度対策は立てられます。僕ら機関が全力で何とかします」
古泉「そういう選択肢もあるということを念頭においていただければと。僕からも聞きたいことがあります」
キョン「何だ?」
古泉「あなたこそ本当に元の涼宮さんに戻したいのですか? 日頃涼宮さんの言動には散々不満を漏らしていたではありませんか」
キョン「う……」
古泉「謙虚な涼宮さんになれば、自分勝手な言動で振り回されることはなくなります」
古泉「対策さえ立てれば、騒動を起こすこともなくなるでしょう」
古泉「どうしますか。いつもの涼宮さんか、謙虚な涼宮さんか」
古泉「どちらを選びますか?あなたが決めてください」
275 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 14:24:56.80 ID:1attf1Pk0 [68/88]
キョン「ちょっと待ってくれ! 俺が1人で決めるのか!?」
古泉「ええ、あなたが決めてください。我々はそれに従います」
みくる「そうです。キョンくんが決めてください」
キョン「朝比奈さん、いつの間に……」
みくる「涼宮さんがまた涼宮さんをいびり始めたので……」
古泉「これは別に、あなた1人に決断を押し付けると言うことではありません」
みくる「うん、キョンくんが決めたことならあたし達は納得できます」
長門「……」コクリ
キョン「みんな…………分かった。俺は~~~~~~~~~」
古泉「分かりました」
みくる「あたしも賛成です」
長門「始める。こっちへ来て」
ハルヒ(強)「ん? 何よアンタ達?」
キョン「すまんな。悪く思わないでくれよ」
277 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 14:29:56.77 ID:1attf1Pk0 [69/88]
~翌日 木曜日 放課後の部室~
ハルヒ「やっほー! みんな揃ってるー!」バァン
古泉「どうも」
みくる「こんにちは。今お茶を淹れますね」
長門「……」
キョン「お前は相変わらず元気だな」
ハルヒ「当たり前よ! あたしから元気を取り上げたら何が残るって言うのよ!」
ハルヒ「……いや、結構残るわね。あたしは元気を取り上げられたくらいじゃビクともしないわ!」
キョン「よく言うよ、まったく」
ハルヒ「さあて、今日はっと……」
キョン「なあ古泉、ハルヒは昨日の閉鎖空間での出来事を……?」
古泉「ええ、予想通り夢だったと処理したようですね」
キョン「みんなに謝ってまわったことは?」
古泉「それは覚えていると思いますよ。もっとも今そのことについてどう思ってるかは分かりませんが」
279 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 14:34:57.24 ID:1attf1Pk0 [70/88]
ハルヒ「みんな! 今週の土日はキャンプに行くわよ!」
みくる「キャンプですかぁ。いいですね」
ハルヒ「もちろんただのキャンプじゃないわ! SOS団らしく素晴らしいキャンプにするわよ!」
古泉「どうやら昨日までの暗さはないようですね」
キョン「いつも通りのハルヒだな。あとは……」
ハルヒ「それで土日なんだけど……誰か都合の悪い人いる?」
キョン「あ~ハルヒよ、土日はちょっと用事があってな。行けないんだ」
ハルヒ「そうなの? 他に行けない人は…………どうやらキョンだけみたいね」
ハルヒ「でもキョンが行けないんじゃあ仕方ないわね。来週の土日はどう?」
キョン「ああ、来週なら大丈夫だ」
ハルヒ「みんなも来週は…………OKね! じゃあ日取りは来週の土日で決まり!」
280 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 14:39:57.02 ID:1attf1Pk0 [71/88]
みくる「はい涼宮さん、お茶です」
ハルヒ「ありがと! みくるちゃん!」
みくる「はい」
ハルヒ「うーん……」
みくる「どうかしましたか?」
ハルヒ「やっぱりみくるさんと呼んだほうが……それに敬語も……」
みくる「いいんですよ、いつも通り接してくれれば。あたしもその方が嬉しいですし」
ハルヒ「そうですか……うん! 分かったわ、みくるちゃん!」
古泉「どうやら、うまくいったみたいですね」
キョン「いつもなら他人などおかまいなしにゴリ押しするアイツが……変わるもんだな」
キョン「さっきもちゃんとみんなの予定を聞いてから決めてたし……気配りもできるようになったようだ」
古泉「ふふ」
キョン「何だよ?」
古泉「まさか、あなたがあのような提案をするとは思ってもいませんでしたよ」
281 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 14:45:03.70 ID:1attf1Pk0 [72/88]
~回想 昨日の閉鎖空間~
キョン「みんな、本当にいいんだな?」
古泉「ええ」
みくる「お願いします」
キョン「よし、長門、やってくれ」
長門「分かった」スッ
ハルヒ(強)「え? え? 何? 何をする気なの?」
長門「……」ブツブツ…
ハルヒ(強)「何かよく分からないけどやめて! やめてよ!」
キョン「……すまん長門! ちょっと待った!」
長門「……」ピタッ
みくる「キョンくん?」
古泉「どうかしたのですか?」
キョン「なあ長門。ちょっと考えてみたんだが……かなり突飛な案だが聞いてくれるか?」
282 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 14:50:02.70 ID:1attf1Pk0 [73/88]
長門「何?」
キョン「どちらか片方の存在を全部消すんじゃなくて、お互いの存在を半分ずつ消すことってできないか?」
みくる「半分ずつ、ですか?」
キョン「ええ、半分ずつ消して、残った半分ずつが合体して1人のハルヒになる」
キョン「そうすればいつものハルヒのアグレッシブさと今回のハルヒの謙虚さ、両方を兼ね備えたハルヒになる」
キョン「そう考えたんだが、どうだ?」
古泉「あの、いくらなんでもそれは……」
キョン「そうだよな……こんな子供みたいな考え、うまくいくわけが……」
長門「できる」
キョン「できるの!?」
みくる「できるんですかぁ!?」
古泉「本当ですか! それは何というか、結構な反則技ですね」
キョン「ともかくよかった! それで頼む、長門!」
長門「了解した。半分ずつ消滅させる」
285 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 14:55:04.56 ID:1attf1Pk0 [74/88]
キョン「あっと。たびたび止めてすまんが、ちょっと待ってくれ」
長門「……」
みくる「どうしたんです、キョンくん?」
キョン「いえ、このままさっさと情報操作を施した方が手っ取り早いのは分かってるんですが……」
キョン「半分とはいえ、いきなり消されるのは可哀想ですからね。何とか説得して納得してもらいます」
みくる「……うふふ、優しいんですねキョンくん」
キョン「ところで古泉、2人のハルヒに事情を説明しても大丈夫なのか?」
古泉「ここでの出来事は全て夢として処理するでしょうから、大丈夫だと思われます」
キョン「そうか。安心した。それじゃあ、説得するとしますか」
キョン「おい、ハルヒ」
ハルヒ(強)「何よ?」
キョン「お前ら2人、握手しろ! そして仲直りしろ!」
ハルヒ(強)「はあ? いきなり何言ってるのよ?」
キョン「ああ、実はだな…………」
286 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 15:00:01.52 ID:1attf1Pk0 [75/88]
ハルヒ(強)「ふーん、こいつと1つにねぇ……」
キョン「そうだ。頼む」
ハルヒ(強)「お断りよ! 何であたしがこんな奴と!」
ハルヒ(弱)「あ、あたしもちょっと……」
キョン「お前らが手を結べば全てがうまくいくんだ。どちらか一方の人格を消すのは気が引けるからな」
ハルヒ(強)「嫌よ、消すんならこいつだけを消せばいいじゃない!」
ハルヒ(弱)「うん、あたしだけが消えればいいのよ……」
ハルヒ(強)「みんなだって、こいつのせいで今まで散々迷惑をかけられてきたでしょ!」
ハルヒ(強)「こいつがいなければ、みんなもっと楽しい学校生活が送れていたのに!」
ハルヒ(強)「キョン! こいつに勝手にSOS団に入れられたせいで迷惑したでしょ?」
キョン「はあ。あの時期にどの部活にも入ってなかったことから察しろよ。俺は暇を持て余してたんだ」
キョン「だがお前がSOS団に入れてくれたおかげで、退屈しない楽しい毎日が送れてる」
キョン「迷惑なんかじゃない。むしろ感謝したいくらいさ」
ハルヒ(弱)「……え?」
ハルヒ(強)「何よそれ! 訳わかんない!」
287 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 15:05:01.09 ID:1attf1Pk0 [76/88]
ハルヒ(強)「有希! 有希はもともと文芸部員なのに、勝手にSOS団の部員にされちゃったのよ!」
ハルヒ(強)「しかも部室まで勝手に乗っ取られて! 迷惑だったでしょう?」
長門「文芸部にはわたし1人しかいなかった。あのままではわたし1人でずっと過ごすことになっていたはず」
長門「SOS団のおかげで、わたしは1人ではなくなった。感謝している」
ハルヒ(弱)「有希……」
ハルヒ(強)「みくるさん! あなたは書道部まで辞めさせられて、拉致されて無理矢理入れられたんですよ!」
みくる「最初はびっくりしちゃいましたけど、でも今はとっても楽しいです」
みくる「普通だったらできないような体験もたくさんできましたし、あたしも感謝してますよ」
ハルヒ(強)「古泉くん! あなたは転向初日でいきなり部室に連れてこられて入部させられたのよ!」
ハルヒ(強)「もっと他の部活も見たかったでしょ! ひどいと思ったでしょう!」
古泉「いやぁ、実は転向初日でなかなかクラスに馴染めなかったんですよ」
古泉「おまけにその時は、バイト関係で気持ちが荒んでいたのですよ。しかし涼宮さんのおかげでその気持ちも吹き飛びました」
古泉「ですから涼宮さんには本当に感謝しています。SOS団の副団長であることを誇りに思っていますよ」
288 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 15:10:01.98 ID:1attf1Pk0 [77/88]
ハルヒ(強)「むうう……うーん…………」
キョン「ハルヒ……」
ハルヒ(弱)「みんな……それ……本当なの……?」
古泉「ええ、もちろんです」
みくる「これがあたし達の本心ですよ」
長門「……」コクリ
キョン「これで分かったろ、ハルヒ」
ハルヒ(強)「む……」
キョン「SOS団に入れられたことを迷惑だなんて思ってる奴はいない。みんなお前には感謝してるんだ」
キョン「だからさ、少しだけでいい。自分を誇ってやらないか? 自分を許してやらないか?」
キョン「前向きな心も謙虚な心も、どちらも大切なんだ。だからお前ら2人には仲直りしてほしい」
ハルヒ(強)「……」
ハルヒ(弱)「……」
289 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 15:15:01.86 ID:1attf1Pk0 [78/88]
ハルヒ(強)「分かったわよ…………みんながそこまで言うなら……」
ハルヒ(弱)「あたしも…………頑張ってみる……」
キョン「そうか……ありがとう、2人とも」
古泉「流石ですね」
キョン「俺だけじゃない。みんなのおかげだろ」
みくる「そうですね。みんなの想いが通じたんですよ」
長門「……」
キョン「じゃあ長門……頼む」
長門「了解した…………」ブツブツ…
ハルヒ(強)「ん……」パァァァ…
ハルヒ(弱)「あ……」パァァァ…
キョン「む……これは……」
290 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 15:20:01.54 ID:1attf1Pk0 [79/88]
ハルヒ(強)「あら?」
ハルヒ(弱)「~~~~!」
みくる「ひゃあああ!」
古泉「これは……何とも」
キョン「上半身だけのハルヒと、下半身だけのハルヒか……なかなか見られない光景だな」
キョン「なあ長門、あれ大丈夫なのか?」
長門「大丈夫。死んだわけではない」
ハルヒ(上)「テケテケテケテケ……」ジリジリ…
古泉「あの、涼宮さん……ちょっと怖いです……」
ハルヒ(下)「~~~~♪」タタタタッ
みくる「きゃあああ! 追いかけてこないでくださーい!」
キョン「まあ元気に走り回ってるようだからそれは分かるが、いつまであの状態なんだ?」
長門「直に融合する」
295 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 15:25:01.67 ID:1attf1Pk0 [80/88]
ハルヒ(上)「テケテケ……あれ? 何か身体が光って……?」
ハルヒ(下)「~~~~!!」
みくる「す、涼宮さん?」
古泉「どうやら離れた方がよさそうですね」
パアアアアアアア!!!!
キョン「うわ! 光が大きく……!!」
シュウウウウウウウ……
キョン「ん? どうやら収まってきたようだな。さて、どうなった?」
ハルヒ「スゥ……スゥ……」
みくる「あ……」
古泉「どうやら……」
キョン「ああ。無事、元に戻ったようだな」
296 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 15:30:01.49 ID:1attf1Pk0 [81/88]
長門「まだ」
キョン「え?」
パアアアァァァァァァ!!!!
キョン「わ! またハルヒの身体が光って……!」
長門「先程半分ずつ消滅させたエネルギーが今体内に戻った。これで完全に元通りになった」
キョン「そ、そうか。とにかくよかった」
ハルヒ「スゥ……んん……スゥスゥ……」
キョン「まったく、のんきな寝顔だな」
古泉「ふふ、皆さん、空を見てください」
キョン「空? あ! 空に亀裂が!」
みくる「な、何ですかあれぇ! えええええ!」
古泉「閉鎖空間が消滅するんですよ。慌てなくても大丈夫です」
パキィィィィィィィ……ンン……
297 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 15:35:01.74 ID:1attf1Pk0 [82/88]
みくる「あ……空が元に……」
キョン「もうスッカリ日が暮れてるなぁ……」
長門「……」
キョン「とにかく……ハルヒが無事でよかった」
ハルヒ「ムニュムニュ……スゥ……スゥ……」
キョン「それで、ハルヒの性格はどうなったんだ? うまくいったのか?」
古泉「それは涼宮さんが目を覚ますまで分かりませんよ」
キョン「だよな。今日はもう帰ろう。もうクタクタだ」
古泉「ええ、そうしましょう」
キョン「ハルヒは俺が家まで送り届けよう。よっこらせっと」グイッ
みくる「あ、あたしも行きます」
古泉「僕もご一緒しましょう」
長門「……」
キョン「そうだな。みんなで我らが団長を送り届けるとするか」
キョン「さぁて、ハルヒの家はどこだったっけな?」
298 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 15:40:01.70 ID:1attf1Pk0 [83/88]
古泉「もう一度いいますが、あなたの提案は本当に意外でしたよ」
キョン「自分でも変な案だと思うがそんなにか?」
古泉「あなたは必ず元の性格の涼宮さんに戻すと思っていました。性格を変えるような真似は嫌うかと」
キョン「確かに、これが第3者の干渉によってハルヒの性格が変えられようとしていたのなら、何が何でも阻止しようとしただろうさ」
キョン「しかし今回は、あくまでハルヒ自身の潜在意識によって性格が変わったんだ。自分自身で反省して性格を変えたんだ」
キョン「だからハルヒの、ハルヒの潜在意識の意思を尊重するべきだと思ったんだよ」
古泉「そうですか」
キョン「……」
古泉「……」
古泉「大丈夫ですよ」
キョン「は?」
古泉「本音を言った所で僕は軽蔑したりはしません。むしろ思いは同じだと思いますよ」
キョン「むぅ……そうだな」
299 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 15:45:01.28 ID:1attf1Pk0 [84/88]
キョン「さっきは格好つけたこと言っちまったが……」
キョン「あの性格のハルヒが1番都合が言いと思ったからそうした。そういう気持ちもある」
キョン「アグレッシブ過ぎるハルヒだと、いろいろ振り回されて疲れる」
キョン「謙虚過ぎるハルヒだと、こっちがいろいろ気を使ってしまってこれまた疲れる」
キョン「だったらそれぞれ半々の性格のハルヒならちょうどいい。俺にとってもみんなにとっても都合がいい」
キョン「本音を言えばそんな気持ちがあったのも事実だ」
キョン「みんなには散々あんなに偉そうなことを言ってたくせにな。こんな俺を軽蔑するか?」
古泉「先程も言ったでしょう。僕もあなたと同じ思いだと」
古泉「あの性格の涼宮さんなら閉鎖空間が発生する頻度も確実に減少するでしょう。感謝していますよ」
キョン「……これで良かったのか?」
古泉「あなたも言っていたではありませんか。涼宮さんは自分自身の意思で変わったのです」
古泉「我々は、ほんの少しその手助けをしただけですよ」
キョン「……」
300 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 15:50:02.56 ID:1attf1Pk0 [85/88]
ハルヒ「ねぇみくるちゃん、キャンプの場所なんだけど、ここなんてどうかしら?」
みくる「うーん、あたしはこっちの方が面白そうです」
ハルヒ「有希はどう思う?」
長門「……こっち」
キョン「古泉、あそこにいるのは本当にハルヒなんだよな?」
古泉「紛れもなく涼宮さんですよ。以前よりも少し優しい、ね」
ハルヒ「こらそこの2人! コソコソ2人だけで話してないでこっちに参加しなさい!」
古泉「おっと」
キョン「はいはい、今行くよ」
ハルヒ「みんなで相談して内容を決めていきましょう! 楽しいキャンプにするわよ!」
キョン(そうだよな。ハルヒは変わったんだ、自分自身の力で。いろいろ反省し、悩み抜いた末に)
キョン(俺も今までの自分を振り返ってみよう。そして反省すべきことは反省して……)
キョン(……変わらないとな。ハルヒだって変われたんだ。俺だって)
301 名前:ラスト・オブ・さるさん[] 投稿日:2010/09/20(月) 16:09:50.56 ID:1attf1Pk0 [86/88]
~夕方~
ハルヒ「あら、もうこんな時間。続きは明日にしましょ」
古泉「では、僕はこれで失礼します」
長門「……」
みくる「お疲れ様です。涼宮さん、キョンくん」
ハルヒ「うん。戸締りはあたしがしとくから」
バタン
キョン「お前はまだ帰らないのか?」
ハルヒ「アンタこそ」
キョン「何を見てるんだ?」
ハルヒ「ん、これ」
キョン「七夕の笹か。これがどうかしたのか?」
ハルヒ「あたし、どうしても会いたい人がいるのよね。今はどこにいるのかさっぱり分からないけど」
305 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 16:15:01.76 ID:1attf1Pk0 [87/88]
キョン「会ってどうするんだ?」
ハルヒ「謝りたいのよ。散々面倒なことを手伝わせちゃったから」
キョン「そうか」
キョン「しかし、それだったら『手伝わせてごめんなさい』より『手伝ってくれてありがとう』の方がいいんじゃないか?」
ハルヒ「そうかしら?」
キョン「『ごめんなさい』も大事だが、『ありがとう』の方が言われて嬉しいだろ」
ハルヒ「あんた結構クサいことを平気で言うのね」
キョン「ほっとけ」
ハルヒ「でもそうね、これからはそうするわ」
キョン「そうか」
ハルヒ「ねえキョン」
キョン「何だ?」
ハルヒ「ありがとね」
~おしまい~
307 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 16:17:03.32 ID:1attf1Pk0 [88/88]
何とか無事終了
支援してくれた人
保守してくれた人
本当にありがとう
では
~翌日 水曜日 学校~
キョン(結局ほとんど眠れなかった……)
ハルヒ「3時限目終わったわね! ちょっと行ってくる!」ダッ
キョン(ハルヒは相変わらず休み時間のたびにどこかへ謝りに行ってるな)
キョン(どうやら昨日のダメージは引きずってないようだ。これで無茶もやめてくれればいいが)
キョン(……)
キョン(ハルヒはああやって自分のしてきたことを反省して、いろんな人に謝って周っている)
キョン(そんなハルヒに俺は随分と偉そうなことを言ってきたが……)
キョン(俺自身はどうなんだ? 俺は誰にも迷惑をかけずに生きてきたか?)
キョン(そんなわけないだろう。知らず知らずのうちに周りの人に不快な思いをさせてきたかもしれない)
キョン(長門、朝比奈さん、古泉……この3人には謝らないといけないことがある)
キョン(いや、この3人以外にももっと……)
キョン(ハルヒだけじゃない。俺だって反省しないと。1度自分がやってきたことを振り返ってみるか)
キョン(今までこんなこと考えたこともなかった。きっかけをくれたハルヒには感謝しないとな)
143 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 00:30:00.30 ID:1attf1Pk0 [10/88]
~昼休み~
谷口「ようキョン、一緒に飯食おうぜ」
キョン「ああ、おう」
国木田「涼宮さんは?」
キョン「生徒会長のところに謝りに行ってるよ」
谷口「まーだあいつ謝罪行脚続けてるのか。にしてもアイツにいきなり謝られた時には驚いたぜ」
国木田「そうだね。本当に何があったんだろう? キョンは何か知ってるの?」
キョン「……」
国木田「キョン?」
キョン「え? あ、ああ、何だ?」
谷口「おいおい、何をボーッとしてるんだ。涼宮のせいでお前までおかしくなったのか?」
キョン「まあ、そうだな……なあ2人とも」
国木田「何だいキョン?」
キョン「その、何と言うか…………すまん」
147 名前:新さるさん[] 投稿日:2010/09/20(月) 01:00:05.35 ID:1attf1Pk0 [11/88]
谷口「はあ? 何をいきなり謝ってるんだ?」
国木田「すまんって……キョン、僕達に何かしたっけ?」
キョン「今回のハルヒの件があって、俺もいろいろ考えたんだよ」
キョン「俺も謝らなければいけない人達がたくさんいる、ハルヒのおかげで気づけたんだよ」
谷口「……で、それが何で俺達に謝ることになるんだ?」
谷口「涼宮からは散々被害を受けてるが、お前に何かされた覚えはないぞ?」
キョン「俺もハルヒと同じだよ。お前ら2人をただの人数合わせとしか見てなかった」
キョン「そんな考えだから、お前らに対する扱いもいつもいつも適当だった」
国木田「そうかなぁ? そんなことないと思うんだけど」
キョン「それに……」
谷口「何だ? まだあるのか?」
キョン「映画撮影の時、俺は心の中でお前ら2人のことを『ザコ』と見下してたんだ……」
谷口「……」
国木田「……」
キョン「友達に対して『ザコ』扱いだぞ……本当にひどかったと思う。だから、すまん!!」
149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 01:05:01.05 ID:1attf1Pk0 [12/88]
谷口「う~~~ん……」
国木田「はは、ザコ扱いはひどいなぁ」
キョン「すまん……」
国木田「でもさ、涼宮さんの時も言ったけど、何だかんだで楽しかったからね」
国木田「それに、キョンはちゃんと正直に謝ってくれた。別に言わなければ分からなかったのに」
国木田「だからいいよ。僕は全然気にしていないよ。谷口もそうだろ?」
谷口「む、まあな。お前に誘われたおかげで朝比奈さんや鶴屋さんとお近づきになれたし」
谷口「それによ、お前が気にする必要はまったくない。なぜなら……」
国木田「なぜなら……?」
谷口「俺も密かにお前のこと見下してたからよ!!」
キョン「こんの野郎!」
国木田「あはは」
154 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 01:10:02.58 ID:1attf1Pk0 [13/88]
~放課後 部室~
キョン(他にも謝るべき人は結構いるよな。新川さんに敬語使わなかったり、生徒会長にタメ口聞いたり)
キョン(しかし、まずはSOS団のみんなだな。最初は……)
みくる「あれ? キョンくん、パソコン使うんですか?」
キョン「え、ええ。ちょっとやることがありまして……」
キョン(今部室には俺と朝比奈さんしかいない。好都合だ)
みくる「涼宮さん、今日もバイトなんですよね?」
キョン「ええ、昨日あれだけ言いましたから、もう無茶なことはしてないと思うんですけど」
みくる「そうですね。あ、今お茶を淹れますね」
キョン(俺は朝比奈さんに謝らなければいけないことがある……それは……)カチカチ
キョン(この、mikuruフォルダ……)
キョン(この朝比奈さんの恥ずかしい写真を消さずに残していたことを謝らないと)
みくる「キョンくん、どうかしたんですか? 何だか難しい顔してるけど」
キョン「あ、い、いいえ、何でもないです!」
155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 01:15:02.26 ID:1attf1Pk0 [14/88]
キョン(確かに俺のやったことは悪いことだ。しかし……しかし!)
キョン(果たしてこのまま正直に打ち明けるべきなのか……?)
キョン(打ち明ければ朝比奈さんは間違いなくショックを受ける……)
キョン(そりゃそうだ。とっくに消されたと思ってた自分の恥ずかしい写真が、実はまだ残ってたんだから)
キョン(それもただ単に俺の個人的な理由で……やはりこれは、むしろ知らない方がいいんじゃないか?)
キョン(打ち明けずにフォルダだけ消してしまえば、朝比奈さんはショックを受けずにすむ……)
キョン(わざわざ余計なショックを与えずに、俺の心の中だけにしまっておくべきじゃないのか?)
キョン(そもそも、ここで『謝る』という行為は本当に朝比奈さんに対する反省なのか……?)
キョン(ただ単に「俺はちゃんと謝った」ってことで自己満足したいだけじゃないのか……?)
キョン(そうだよな……世の中知らない方がいいこともある……ここはやはり黙って……)
キョン(いやいやいやいやいや!! 何を考えてるんだよ俺は!!)
キョン(何が黙ってた方がいいだ! それは単に逃げてるだけじゃねえか!)
157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 01:20:01.11 ID:1attf1Pk0 [15/88]
キョン(くそっ! さっきからグダグダと! 自分の都合のいいように考えてるんじゃねえよ!)
みくる「あの、キョンくん? さっきから頭を抱えてるけど大丈夫ですか?」
キョン(悪いことをしたから謝る! それだけのことじゃねえか! よし、謝ろう!)
みくる「キョンくんってばぁ」
キョン(打ち明けたら、俺は確実に嫌われるだろうな。それは自業自得だ、仕方ない)
キョン(しかし、これが原因で俺と朝比奈さんだけでなく、SOS団全体までギクシャクするようになったら……)
キョン(ああああもう!! 謝るって難しい!!)
みくる「もう! キョンくん!」
キョン「はーい!! あ、え? 何でしょう?」
みくる「どうしたんです? 随分悩んでるみたいですけど?」
キョン(どうする……? ええい! いけ!!)
キョン「あ、朝比奈さん!」
みくる「ひゃ! えと、何ですか?」
キョン「俺、朝比奈さんに謝らないといけないことがあります」
160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 01:25:01.83 ID:1attf1Pk0 [16/88]
みくる「え? 謝らないといけないことって……キョンくんがあたしに、ですか?」
キョン「そうです」
みくる「な、何でしょう……?」
キョン「……これです」カチッ
みくる「あ、それってmikuruフォルダですか? 以前見つけて気になってたけど、すっかり忘れてました」
みくる「でも、それがキョンくんの謝りたいこと……?」
キョン「中身は……これなんです」カチカチッ
みくる「あ! これって……以前涼宮さんが撮った……?」
キョン「そうです……消すのが惜しくてこっそり保存してました」
みくる「何で……キョンくんが……」
キョン「すみませんでした! 本当にすみませんでした!」
みくる「…………」
キョン「…………」
キョン(沈黙が……重い……)
162 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 01:30:02.19 ID:1attf1Pk0 [17/88]
キョン「あ、あの……」
みくる「……」スタスタ
キョン「え……?」
みくる「……」コポコポ
キョン「朝比奈さん……?」
みくる「はいキョンくん、お茶が入りましたよ。飲んでください」
キョン「え? えっと、え?」
みくる「飲んでください」
キョン「は、はい! 分かりました!? 飲みます!」
キョン「紫色のお茶……? どんな味が? ズズッ…………はぶしゅ!!」ブバッ!!
キョン「ぐええ! く、口! 口の中が爆発した!?」
みくる「うーん、ちょっと変わったお茶を買ってみたんですけど、やっぱり駄目だったみたいですね」
キョン「えっと、朝比奈さん? これはいったい……?」
みくる「うふふ。キョンくんは正直に謝ってくれましたし、これで許してあげます」
キョン「え……?」
164 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 01:35:01.82 ID:1attf1Pk0 [18/88]
キョン「ほ、本当ですか……」
みくる「確かにちょっとショックでした。でも、そこまで嫌でもないんです。何でかな?」
キョン(散々ハルヒの被害を受けたせいで、変な耐性がついちゃったのか……)
みくる「それに……あたしの方がキョンくんには随分と迷惑をかけていますから……」
みくる「だから……あたしの方こそごめんなさい、キョンくん」
キョン「そんな! 俺は1度だって迷惑だなんて思ったことはないですよ!」
みくる「ありがとうキョンくん。あ、画像は消しておいてくださいね。やっぱり恥ずかしいし」
キョン「はい、勿論です。今すぐに消します」
キョン(よかった……本当によかった……)
キョン(……しかしこれ、本来なら100%嫌悪されるケースだよな)
キョン(天使のような朝比奈さんだからこそ許してくれたんだ。感謝して、本当に反省しないとな)
キョン「これでよし。全部消しましたよ」
みくる「はい、確かに確認しました」
キョン「朝比奈さん、本当に本当にすみませんでした」
168 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 01:40:12.11 ID:1attf1Pk0 [19/88]
古泉「どうも、こんにちは」
長門「……」
みくる「古泉くん、長門さん、こんにちは」
キョン「よう古泉。昨日の閉鎖空間はどうだったんだ?」
古泉「規模はそんなに大きくはありませんでしたので、すぐに処理できました」
古泉「もっともこれを皮切りに、閉鎖空間の発生が増えることはほぼ確実なようですが」
キョン「そう、か……やっぱり超能力者って大変なんだな」
キョン「はあ、何で俺は今まで……」
古泉「……どうかされたのですか? そういえば昨日も少し様子が変でしたが、何かあったのですか?」
キョン「ハルヒがああやって謝ってまわる姿を見て、俺もいろいろと考えたんだよ」
古泉「……」
キョン「……古泉、それから長門。俺はお前らに謝りたいことがある」
長門「……?」
古泉「謝りたいこと、ですか?」
キョン「ああ。聞いてほしい」
170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 01:45:01.74 ID:1attf1Pk0 [20/88]
キョン「古泉、俺は今までお前に対してろくな態度をとっていなかったと思ってな」
古泉「そうですか? そんなことはないと思うのですが」
キョン「いや、俺はお前を最初、すかした態度のいけ好かない奴、気持ち悪い奴だと思ってたんだ」
キョン「それにお前は顔がいいから、さぞ女にモテるんだろうなという僻みもあったのかもしれん」
古泉「……」
キョン「もちろん1年以上も一緒に過ごしてきて、そんな考えもだいぶ変わったさ」
キョン「……ただ、やっぱり心のどこかでそんな気持ちが残ってたんだろうな」
キョン「俺はお前に対して、気を使うということを一切してこなかった……」
キョン「ハルヒのご機嫌取りや閉鎖空間での仕事が忙しいお前に対し、『俺は関係ない』とばかりに冷たい対応しかしてこなかった」
キョン「今考えれば、本当に申し訳ないことをしてきたと思う。だから……すまん!」
古泉「……」
キョン「……」
古泉「……」
キョン「……何でそんな驚愕の表情をしているんだよ」
173 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 01:50:02.20 ID:1attf1Pk0 [21/88]
古泉「あ、いえ、すみません。少し驚いてしまいまして。まさかあなたがそのようなことを言うとは」
キョン「そうか。やっぱり俺はそういう奴だと思われてたんだな。そりゃそうだよな……」
古泉「すみません、そんなつもりではなかったのですが」
キョン「いいんだ。俺が悪かったんだよ……」
古泉「いじけないでくださいよ。ですが、そうですね……」
古泉「あなたは何も悪くありませんし、謝る必要もありません」
古泉「むしろ……謝りたいのは僕の方ですよ」
キョン「どういうことだ……?」
古泉「あなたは涼宮さんに選ばれたとはいえ、本来はただの一般人です。ごくごく平穏な人生を歩めるはずだった」
古泉「それが何度も命の危機に直面したり、世界のために奔走したり……」
古泉「そんな涼宮さん絡みの危険な世界にあなたを巻き込んでしまった。そのことは本当に申し訳ないと思っています」
キョン「……別に俺を巻き込んだのはお前ではないだろう」
175 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 01:55:01.84 ID:1attf1Pk0 [22/88]
キョン「それに、元は一般人なのに巻き込まれたという意味では、お前だってそうだろう?」
キョン「それも俺よりもずっと過酷な……」
古泉「……」
キョン「長門」
長門「……何?」
キョン「お前にも謝りたい。本当にすまなかった」
長門「……」
キョン「お前にはずっと助けられっぱなしだ。それなのに、俺はお前のストレスに気づいてやれなかった」
キョン「あの冬の事件の時、俺は誓った。お前にできるだけ負担をかけないようにしようと」
キョン「しかし、結局は今でも俺はお前に頼りっぱなしだ……」
キョン「おそらく、心のどこかで『いざとなれば長門がいる』という甘い考えを持っていたんだろうな」
長門「気にしなくていい」
キョン「いや! 俺はもっとお前の力になりたい。お前の負担を減らしてやりたい!」
176 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 02:00:02.21 ID:1attf1Pk0 [23/88]
キョン「長門、古泉、朝比奈さん。みんな聞いてほしい」
キョン「俺は今までずっと受け身だった。傍観者だった」
キョン「ハルヒの起こした面倒ごとを解決するために奔走したこともあったが……」
キョン「それも全て『巻き込まれた』と思ってた。自分をずっと『被害者』だと思い込んできた」
キョン「あの冬の事件の時、俺は変わろうと思った。傍観者でいるのはやめようと思った」
キョン「しかしそう決心したものの、結局は変われていなかったんだろうな……」
キョン「あの冬以降の事件にしたって、俺がもっと気を配っていれば防げたものもあったかもしれない」
キョン「だから……これからは、俺は全力を尽くす!」
キョン「事件が起きないように。事件が起こってしまってからも。俺は被害者面せずに全力を尽くす!」
キョン「みんなの負担を減らすためにも。そして、ハルヒのためにも……」
長門「……」
古泉「……」
みくる「……キョンくん」
179 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 02:05:07.09 ID:1attf1Pk0 [24/88]
古泉「我々は立場上、どうしても涼宮さんに強く出ることはできません」
古泉「ですから普段の涼宮さんの対策については、むしろ我々の方があなたに依存してきました」
古泉「そのことに我々は感謝していますし、謝罪をしたいとも思っています」
みくる「……いざと言う時の決断はキョンくんにばかり任せてきましたもんね」
古泉「あなたばかりが負い目を感じる必要はないんです。ですから少し、肩の力を抜きませんか?」
キョン「いいや! 頑張る!」
古泉「ふふ、分かりました」
みくる「あ、あたしだって! あたしだって頑張ります!」
古泉「頑張ることは素晴らしいのですが、あまり気負いすぎないようにしてくださいよ。ねえ長門さん?」
長門「わたしの中に湧き上がってくるもの……これは……何……?」
長門「うまく言語化できない。しかし…………決して悪いものではない」
181 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 02:10:02.98 ID:1attf1Pk0 [25/88]
古泉「さて、こうして絆が深まったことですし……」
キョン「ああ、肝心のハルヒが今どうしてるのかが気になるな」
みくる「昨日あれだけキョンくんに言われましたから、無茶はしていないと思うんですけど」
キョン「それでも気になるものは気になりますし、今日も行くとしますか」
古泉「そうですね。では準備しましょう」
長門「……」
キョン「しかし……」
古泉「どうかしましたか?」
キョン「俺たちの結束がこうして高まったのはいいが、やっぱり俺たちの中心にはハルヒがいないとな」
キョン「毎回事件が起きるたび、アイツだけが蚊帳の外だからなぁ」
古泉「それは仕方がないです。涼宮さんが世界を改変する能力を持っている以上は……」
キョン「まあ、それは分かってるんだが……何だか仲間外れにしてる気分だ」
古泉「ですから事件以外の時は、それを忘れるくらい我々5人で思い切り楽しめばいいんですよ」
みくる「そうですよ。5人揃ってこそのSOS団なんですから」
キョン「……そうですよね。今回の件が解決したら、また5人で遊びに行くとしますか」
204 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 10:30:11.30 ID:1attf1Pk0 [28/88]
~スーパー~
キョン「あれ? ハルヒがいないぞ」
みくる「どこに行ったんでしょうか?」
古泉「あそこに店長さんがいます。聞いてみましょう」
キョン「あの、すみません!」
店長「おや? 君達は確か涼宮さんの」
キョン「そのハルヒはどこにいるんでしょうか? 様子を見に来たんですけど」
店長「ああ、涼宮さんならここにはもういないよ」
キョン「え! どういうことですか! 何かやらかしてクビになったんですか!?」
店長「違うよ。今日は涼宮さん、昨日よりも調子が良くてね。思ったよりも早く風船がなくなったんだ」
店長「それで早めにバイト終了ということにしたんだ。あの子は本当によく頑張ってくれたよ」
キョン「そ、それでハルヒは家に帰ったんですか?」
店長「いや、何か行く所があるとか言ってたよ。バイト代貰うとすぐに走って行っちゃったよ」
キョン「そうですか……ありがとうございました」
205 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 10:35:07.98 ID:1attf1Pk0 [29/88]
みくる「涼宮さん、どこに行ったんでしょう?」
キョン「古泉、機関の監視はどうなってるんだ?」
古泉「今聞いています。しかし、電話がなかなか繋がらなくてですね……」
長門「……」
キョン「電話か。あ、そうか。電話すればいいんだ」ゴソゴソ
ヒーーヒッヒッヒ!! ヒーーヒッヒッヒッヒーー!!!!
みくる「ひゃ! 何ですか今の!?」
キョン「っと、電話だ。ん? ハルヒから? いいタイミングだな」ピッ
キョン「おいハルヒ、お前今どこにいるんだ? みんな捜してるんだぞ」
ハルヒ『キョン……』
キョン「どうした? 何かあったのか?」
ハルヒ『あたし死ぬわ』
キョン「はあ!?」
206 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 10:40:08.58 ID:1attf1Pk0 [30/88]
キョン「おいこら! どういうことだ!」
ハルヒ『あたしは死ぬべきなの……ごめんなさい……』
キョン「何言ってるんだ! 一体何があったんだハルヒ!」
ハルヒ『もう迷惑はかけないから……今までごめんなさい……』
キョン「こっちの話を聞けって! そもそもお前、昨日自殺は絶対しないって言ってたじゃないか!」
ハルヒ『甘かったです。ごめんなさい』
キョン「そんな簡単にすますな!」
ハルヒ『おもしろき こともなき世が いとおかし』
キョン「辞世の句を読むな! しかも少しおかしいし!」
ハルヒ『もう切るわ。さようならキョン』ピッ
キョン「あ! おい! もしもし! くそっ、どうなってるんだ!」
みくる「きょ、きょ、キョンくん! あの、今、自殺がどうのって……」
古泉「どうやら深刻な事態になったようですね」
207 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 10:45:21.82 ID:1attf1Pk0 [31/88]
キョン「……古泉、機関と連絡はとれたのか?」
古泉「ええ。たった今、ようやく」
キョン「ハルヒの居場所は?」
古泉「現在は駅前にいるそうです。ですが……」
キョン「ですが? 何だ?」
古泉「どうしても涼宮さんのいる所へ近づけないそうです。恐らく自殺を邪魔されたくないと思っているからだと」
キョン「何でハルヒはわざわざ俺に電話してきた?」
古泉「心のどこかでは自殺を止めてほしいと思っているのでしょう」
古泉「おそらく、今の涼宮さんに近づくことができるのは……」
キョン「……ええいクソ!!」ダダッ!
みくる「きょ、キョンくん!?」
キョン「ハルヒの所へ行きます! 自転車をぶっ飛ばせばまだ間に合う!」ガチャガチャ
キョン「よし! 待ってろよハルヒ!」
208 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 10:50:08.43 ID:1attf1Pk0 [32/88]
~駅前~
ハルヒ「さて……と。別れは言ったし、死ぬ準備をしないと」
ハルヒ「どうやって死のうかな……あんまり人に迷惑がかかる死に方は駄目よね」
ハルヒ「飛び込み自殺は論外ね。たくさんの人に迷惑をかけてしまうわ」
ハルヒ「人目につくところは避けた方がいいわね。誰もいない所でひっそりと……」
ハルヒ「なるべく身体に傷がつかないほうがいいかな。焼身自殺も入水自殺もやめとこう」
ハルヒ「やっぱり首吊りかしら? ベタだけどそれが1番ね」
ハルヒ「よし決定。あとは場所だけど……樹海ってここから遠いかしら?」
ハルヒ「ひょっとしたらキョン達が来ちゃうかもしれないから、なるべく早く移動しないと」
ダイスーキナヒトガトーオイー♪ トオスギテナキタクナルノー♪
ハルヒ「……誰よ、こんな時に」ピッ
キョン『くおらっ! ハルヒ!!』
ハルヒ「ひゃ! って、キョ、キョン!?」
210 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 10:55:21.08 ID:1attf1Pk0 [33/88]
キョン『今そっちへ向かってるからな! そこを動くな!』
ハルヒ「む、向かってるって……いいわよ来なくて! あたしは一人でひっそりと死にたいの」
キョン『それをさせないために急いでるんだろうが! いいから俺が着くまで待ってろ!』
ハルヒ「何よもう! あたしみたいなクズは死ぬべきなの! 生きてちゃいけないの!」
キョン『死んだらそれまでだろう! 死ぬのは償いにはならん! 生きて償えよ!』
ハルヒ「う……で、でも」
キョン『それに……お前が死ぬのは俺にとって1番の迷惑だ!』
ハルヒ「え? ど、どういうことよ……」
キョン『俺だけじゃない。朝比奈さんも長門も古泉も……みんなお前が死ぬと迷惑するぞ!』
ハルヒ「何でよ……何であたしが死ぬのが迷惑なのよ……?」
キョン『誰もお前の死なんか望んでないってことだ。お前が死んだら誰がSOS団を引っ張っていく?』
ハルヒ「……」
キョン『お前まだ謝ってない人もたくさんいるだろう? 死んだらそれもできなくなるんだぞ』
ハルヒ「……うん」
キョン『まだまだ言いたいことはたくさんある。いいかハルヒ……』
211 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 11:00:07.06 ID:1attf1Pk0 [34/88]
キョン『~~~~で、だな。ん? おい、聞いてるのかハルヒ?』
ハルヒ「う、うん……」
キョン『だから俺が言いたいのはだな……』
ハルヒ「待って待って! もういい! もういいから!」
キョン『ん? もういいってどういうことだ?』
ハルヒ「あれからずーっとネチネチネチネチ言われてもうウンザリよ!」
ハルヒ「分かったわよ。自殺なんてもうしないから。あたしが悪かったわ」
キョン『おお、分かってくれたかハルヒ』
ハルヒ「そりゃあれだけ言われたらね。あんたってあんなに口がうまかったっけ?」
キョン「ふふ、それは……」
???「うおおおお! ハルヒー!! 見つけたぞー!」
ハルヒ「え?」
212 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 11:05:04.15 ID:1attf1Pk0 [35/88]
キョン「はあ、はあ、ぜえ、な、何とか間に合ったみたいだな……」
ハルヒ「あれ? キョン? え、今電話で話して……?」
キョン『おや、彼が到着したようですね。では失礼』ピッ
ハルヒ「あら、電話切れちゃった。どうなってるのよ?」
キョン「何をブツブツ言ってるんだ、お前?」
ハルヒ「あんた、自転車こぎながらあたしに電話してたの?」
キョン「電話? いや俺はしてないぞ? 全力で自転車こいでたんだからそんな余裕ないっての」
ハルヒ「ええ? でも確かにあれはアンタの声……あれぇ?」
キョン「そんなことより! お前自殺なんて馬鹿な真似はやめろ!」
ハルヒ「へ? うん、もうやめたわよ。さっき電話でそう言ったじゃない」
キョン(電話? 電話ねぇ。俺は掛けた覚えはないから当然古泉達の仕業か)
キョン(しかもハルヒのこの様子だと、どうやら俺の声で掛けたみたいだな。長門のあの能力か)
キョン(何で俺の声にしたのかはともかく、古泉達はうまいこと時間稼ぎしてくれたみたいだな)
213 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 11:10:02.55 ID:1attf1Pk0 [36/88]
~スーパー前~
古泉(キョン)「さて、あとは彼がうまくやってくれるでしょう」
みくる「古泉くん、お疲れ様でした」
古泉(キョン)「長門さんのおかげで助かりました。今の涼宮さんには彼の声しか届かなかったでしょうからね」
長門「いい」
古泉(キョン)「しかし自分の声が違うというのはなかなか違和感を感じますね」
みくる「びっくりするくらいキョンくんの声です」
古泉(キョン)「僕はちゃんと彼を演じられていたでしょうか?」
みくる「目を瞑ってたらキョンくんとしか思えないほど上手でしたよ」
古泉(キョン)「はあ、やれやれだ……」
みくる「あ、それ似てます~」
古泉(キョン)「朝比奈さん、好きです」
みくる「ひゃあああ! そそ、その声で言うのやめてくださいぃ~!」
長門「…………」
215 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 11:15:03.16 ID:1attf1Pk0 [37/88]
ハルヒ「ごめんねキョン、心配かけちゃって」
キョン(時間稼ぎだけじゃない。自殺を思いとどまるよう説得まで済ませちまってる)
キョン(何というかさすがだな。俺は焦っちまってそこまで頭がまわらなかった……)
キョン(後で礼を言っておかないとな。さて、今俺がやらなきゃいけないことは……)
キョン「ハルヒ、何でいきなり自殺しようなんて思ったんだ? いったい何があったんだ?」
ハルヒ「……」
キョン「何か理由があるはずだ。話してくれないか?」
ハルヒ「……バイトが思ったよりも早く終わったから、余った時間をどうしようかなと思って」
キョン「ふむ」
ハルヒ「それであたしが東中時代にフッた男たちの中でまだ謝っていない人がいたから……」
キョン「なるほど、そいつのところへ謝りに行ったってわけか」
キョン「……それで、そいつとの間で何かがあったと」
ハルヒ「うん……」
218 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 11:20:04.45 ID:1attf1Pk0 [38/88]
~回想~
ハルヒ「お願い、話を聞いて! あたしは謝らないといけないと思って……」
男「しつこいな! それがうぜーって言ってんだよ! お前の謝罪なんていらねーんだよ!」
男「お前にこっぴどいフラれ方をしたせいで、俺はみんなに笑われて大恥をかいたんだ!」
男「トラウマだったぜあれは。せっかく忘れてたのに……わざわざ思い出させてくれやがって……」
ハルヒ「だから……そのことを謝ろうと……」
男「俺はもうお前の顔なんか見たくなかったんだよ! 何で今さら俺の前に現れるんだよ!
男「ホントお前って人をイラつかせるのがうまいよな。ああもう! うぜぇうぜぇうぜぇ!!」
ハルヒ「……」
男「なあ、お前死ねよ」
ハルヒ「……え?」
男「どうせ今の高校でも他人に迷惑かけまくってんだろ? お前が生きてたって害にしかならねえよ」
男「お前みたいなクズは死ぬべきなんだよ! 死ね! 死ね! 死んじまえ!」
ハルヒ「あたしは……クズ……迷惑……生きてちゃいけない…………死んだ方が……いい」
221 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 11:25:02.01 ID:1attf1Pk0 [39/88]
キョン「なるほど、そんなことがあったのか」
キョン「しかし、いくらなんでも言い過ぎだその男は。なあハルヒ……」
ハルヒ「分かってるわよ。さっきまでのあたしはどうかしてたわ。もう大丈夫よ」
キョン「そ、そうか?」
ハルヒ「そりゃショックだったけどね。でもだからって死んだら何もならないものね」
キョン「そうだぞハルヒ。分かってるんならいいさ。じゃあみんなのところに戻るとするか」
ハルヒ「うん、そうね。みんなにも謝らないと」
キョン「じゃあ行くか。っと、ちょっと待ってくれ。先に電話で連絡しておかないと」ピッ
古泉(キョン)『やぁどうも』
キョン「その声……やっぱり長門の能力か?」
古泉(キョン)『ええ。涼宮さんは無事ですか?』
キョン「ああ、今からそっちに連れて行く」
古泉(キョン)『了解しました。お待ちしています』
キョン「自分の声と会話するというのもなかなか気持ち悪いな。俺が着くまでに元に戻しとけよ」ピッ
キョン「よし、じゃあ行くとするか」
223 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 11:30:05.04 ID:1attf1Pk0 [40/88]
~スーパー前~
キョン「到着っと」キッ
ハルヒ「あ……みんな」
みくる「ああ! す、涼宮さーん!」
ハルヒ「みくるさん……ごめんなさい、心配かけちゃって」
みくる「ううん、いいんです。よかったぁ、無事に戻ってきてくれて」
ハルヒ「有希も古泉くんも……本当にごめんなさい」
古泉「いえ、僕は涼宮さんの強さを信じていましたから」
長門「……」
みくる「涼宮さん! もうこんなことしたら駄目ですよ!」
ハルヒ「はい、ごめんなさい……」
みくる「もう……でも本当によかった……」ギュッ…
ハルヒ「みくるさん……」
225 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 11:35:02.45 ID:1attf1Pk0 [41/88]
キョン「やれやれ、何とか普通に戻ったか」
古泉「どうやら最悪な状態からは脱したようですね」
長門「……」
キョン「いきなり電話してきた時はこの世の終わりみたいな声してたからな」
古泉「そうですね。これでいつもの涼宮さんに戻ってくれれば嬉しいのですが」
ハルヒ「あああーーー!!」
みくる「ど、どうしたんですか涼宮さん!?」
ハルヒ「アリさんの行列を踏んづけちゃった! アリさんごめんなさい! 本当にごめんなさい!」
キョン「……だめだ、相変わらずの状態のようだ」
古泉「そんな甘いことはありませんよね」
長門「振り出しに戻る」
226 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 11:40:00.08 ID:1attf1Pk0 [42/88]
ハルヒ「アリ24さんごめんなさい、アリ25さんごめんなさい……」
古泉「あれではしばらく動きそうにありませんね」
キョン「よし、だったら今のうちに作戦会議だ。この後どうするか相談しよう」
みくる「あ、あたし涼宮さんの傍で見てますね」
キョン「お願いします、朝比奈さん」
みくる「はい。涼宮さーん」タタッ
キョン「さて、あの様子だとまたいつ自殺しようとしてもおかしくないな」
長門「今の涼宮ハルヒはとても不安定な状態」
古泉「何か対策を講じる必要がありますね」
キョン「もう様子見などと悠長なことは言ってられないな」
古泉「しかし、涼宮さんがああなった原因について分からないことには……」
227 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 11:44:59.09 ID:1attf1Pk0 [43/88]
キョン「だよなあ。機関や長門があれだけ調べてもまだ判明してないし……」
古泉「涼宮さん本人に聞いてみますか?」
キョン「え? もう聞いたろ?」
古泉「僕は聞いていません。むやみに刺激するのはよくないと思いましたので」
キョン「そういえば俺も聞いてないような……誰かが聞いてると思って……」
古泉「どうなんでしょう、長門さん?」
長門「涼宮ハルヒがなぜ豹変したのか。そのことを涼宮ハルヒ本人に尋ねた者はいない」
キョン「……」
古泉「……」
キョン「はは、まさかこんな盲点が……」
古泉「とにかく急いで涼宮さんに聞いてみましょう。もっとも素直に話してくれるかは分かりませんが」
キョン「そこは駄目元だ。おーい! ハルヒ! 朝比奈さん!」
ハルヒ「アリ354さんごめんなさい、アリ355さんごめんなさい……」
みくる「アリ211さんごめんなさい、アリ212さんごめんなさい……」
229 名前:早速さるさん[] 投稿日:2010/09/20(月) 12:01:09.66 ID:1attf1Pk0 [44/88]
キョン「何をやってるんですか、朝比奈さん……」
みくる「あひゃわあ!? ごごごめんなさい! ついつられちゃって!」
キョン「はあ。ああいや、それよりハルヒよ、話がある」
ハルヒ「何? まだ全部のアリさんに謝ってないんだけど」
キョン「後にしろ。お前に聞きたいことがあるんだ」
ハルヒ「聞きたいこと?」
キョン「お前……何でここのところみんなに謝ってまわるようになったんだ?」
ハルヒ「それは……今までの自分の行いを反省して……」
キョン「それにしたって行動に移すには何かきっかけがあったはずだ。なあ、何があったんだ?」
ハルヒ「……」
キョン「ハルヒ?」
ハルヒ「言ったって……信じてくれないわよ……」
キョン「いや、信じる」
ハルヒ「え?」
230 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 12:05:07.43 ID:1attf1Pk0 [45/88]
キョン「お前の言うことなら俺は、いや俺達は信じる。それがどんなことでもな」
古泉「そうですよ涼宮さん」
みくる「話してくれませんか?」
長門「……」
ハルヒ「キョン……みんな……」
ハルヒ「……分かったわ。話すわ」
キョン「そうか。ゆっくりでいいからな」
ハルヒ「でもちょっとタンマ」
キョン「うおい! 何でだよ!?」
ハルヒ「トイレよ。さっきからずっと我慢してて……」
キョン「はあ、まったく。しかし今のお前から目を離すわけにはいかん。俺も着いていくぞ」
ハルヒ「アンタ、女子トイレにまで着いてくる気?」
キョン「う……いや、しかし……」
みくる「キョンくん、あたしが着いていきますから」
キョン「そ、そうですか。よろしくお願いします朝比奈さん」
233 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 12:09:58.28 ID:1attf1Pk0 [46/88]
キョン「まったく、緊張感がないというか……」
古泉「そこまでピリピリしても仕方ありません。少し落ち着きましょう」
キョン「だな。しかし、本当に大丈夫か?」
古泉「大丈夫でしょう。目を離すといっても数分ですし朝比奈さんもついてますし」
キョン「そうだよな。たかが数分で事態が急変するわけないよな」
キョン「……遅いな。いくらなんでももう戻ってきてもいいはずだが」
古泉「そうですね、何かあったのでしょうか?」
みくる「きょ、キョンく~ん……」
ハルヒ「……」
古泉「おや、2人ともようやく戻ってきたようです……ね……」
キョン「……なあ古泉、1つ聞いていいか?」
古泉「何でしょう?」
キョン「何でハルヒはあんなドンヨリとしてて、朝比奈さんは泣きそうな顔をしてるんだ?」
234 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 12:15:17.67 ID:1attf1Pk0 [47/88]
ハルヒ「……」ブツブツブツ…
古泉「どうやら只事ではないようですね」
キョン「おいハルヒ! どうした! 何があったんだ!」
ハルヒ「……」ブツブツブツ…
キョン「何だって? 小声でよく聞こえないぞ」スッ
ハルヒ「みんな……ごめんなさい…………本当に……ごめんなさい……」
キョン「ハルヒ……」
古泉「朝比奈さん、一体何があったのですか?」
みくる「あ、あの、それが…………ああ!?」
古泉「ど、どうしましたか!」
みくる「す、涼宮さんが……」
古泉「涼宮さんが?」クルッ
キョン「な……ハルヒが……消えた……目の前でいきなり消えちまった……」
235 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 12:19:59.10 ID:1attf1Pk0 [48/88]
古泉「涼宮さんが消えた……? それは……むっ」
キョン「ど、どうした古泉?」
古泉「涼宮さんがなぜ消えたのかが分かりました」
キョン「なに! なぜなんだ古泉!?」
古泉「閉鎖空間です。巨大な閉鎖空間がたった今発生しました」
キョン「閉鎖空間? どこにだ?」
古泉「ここです」
キョン「ここ?」
古泉「我々が今いるこの地点、ここを中心に急激に閉鎖空間が拡大しています」
キョン「ま、まさかハルヒは……」
古泉「ええ、その閉鎖空間の中にいるようです」
みくる「どうしよう……あたしのせいです……あたしの……」
キョン「朝比奈さん、いったい何があったんですか?」
みくる「それが……」
236 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 12:25:16.71 ID:1attf1Pk0 [49/88]
~回想~
ハルヒ「スッキリした。じゃあ戻りましょうか、みくるさん」
みくる「うん、待たせたら悪いですからね」
ハルヒ「あれ?」
みくる「どうしました、涼宮さん?」
ハルヒ「あそこにいるの、生活指導の先生じゃない?」
みくる「あ、ホントです」
ハルヒ「あたし、あの先生にはまだ謝ってないんですよ」
みくる「え?」
ハルヒ「あたし、ちょっと行って謝ってきます。みくるさんはそこで待っててください」タタッ
みくる「あ! 待ってください! キョン君達が待ってますよ!」
ハルヒ「すぐに済みますからー」
みくる「でもでも、えーと……あ、あたしも行きます! 待ってくださーい!」タタッ
237 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 12:29:59.02 ID:1attf1Pk0 [50/88]
ハルヒ「先生、今までたくさんご迷惑をおかけして本当に申し訳ありませんでした」
先生「他の先生方から話は聞いていたが……お前に謝られる日が来るとは正直思ってなかったよ」
ハルヒ「……」
先生「でもまあ、分かればよろしい。元気なのは結構だがほどほどにな」
ハルヒ「はい、本当にすみませんでした」
先生「もっと周りのことも考えるようにな。口には出さなくても迷惑だと思ってる奴はたくさんいるぞ」
先生「お前のとこの、えーと、SOS団だったか? そこの連中だって本当は迷惑してるかもしれないぞ?」
ハルヒ「え?」
先生「有無を言わさず強引に入部させたんだってな。そこの朝比奈にいたっては書道部までやめたとか」
みくる「え? あ、それはその……」
先生「4人とも他にやりたいことがあったかもしれんのに。可哀想にな」
先生「しかも毎度毎度お前の起こす騒ぎに巻き込まれるわ、お前の悪名で他の部員まで悪く見られるわ」
先生「みんな実際に迷惑してるんだぞ。だからこれからはもっと他の人のことも考えるようにな」
ハルヒ「迷惑……みんなが……あたしのせいで…………」
238 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 12:35:00.94 ID:1attf1Pk0 [51/88]
キョン「はあ、それでハルヒは閉鎖空間を発生させるほどの鬱モードに突入したってわけですか」
古泉「自殺騒動が治まったと思ったらこれですか。一難去ってまた一難ですね」
みくる「本当にごめんなさい! あたしがついていながら……」
古泉「朝比奈さんのせいではありませんよ。涼宮さんのあの様子では遅かれ早かれこうなっていたでしょう」
キョン「それにしても、死ねと罵られた時より『俺達に迷惑だと思われてる』と言われた方がダメージがでかいとはな」
古泉「それだけSOS団が、僕達の存在が大切なものだったということでしょう」
キョン「そう、か」
古泉「それよりも急ぎましょう。事態は一刻を争います」
キョン「む、そうか。ということはやっぱり……?」
古泉「ええ、僕達も閉鎖空間に向かいます。皆さん、僕の身体に触れて目を瞑ってください」
キョン「よし」スッ
みくる「は、はい」スッ
長門「……」スッ
古泉「では……行きます」
240 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 12:40:01.16 ID:1attf1Pk0 [52/88]
古泉「もう目を開けても結構ですよ」
みくる「こ、ここが閉鎖空間ですか。暗くてちょっと怖いですね……」
キョン「俺は何度も来てるからいい加減慣れましたけどね」
キョン「それで古泉、一刻を争う事態ってそんなにやばいのか?」
古泉「ええ、このままでは涼宮さんが自分自身を消滅させてしまう恐れがあります」
キョン「何だと!? 確かにやばいな……」
古泉「急ぎましょう。あっちの方角から涼宮さんの存在を感じます。着いてきてください」
キョン「そういえばこの閉鎖空間、神人が全然いないな」
みくる「神人ってキョンくんが言ってた白くて大きなお化けですか?」
古泉「この閉鎖空間はいつものものとは違う、特別なもののようです」
キョン「特別?」
古泉「見ての通り神人がいません。そしてどうやら他の機関のメンバーは入って来れないようです」
古泉「この閉鎖空間に入ることを許されたのは僕達だけです。恐らく無意識にでしょうが」
キョン「そうか。心のどこかで俺達に止めてほしいと思ってるのかもな」
241 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 12:44:57.66 ID:1attf1Pk0 [53/88]
古泉「要するにこの閉鎖空間は世界を作り変えるためのものではなく……」
古泉「自分自身を消滅させるため。ただそのためだけに作られたものなんですよ」
キョン「ようは壮大な自殺ってことか。自殺ならさっき止めたばかりだというのに」
長門「振り出しに戻る」
キョン「それで古泉、ハルヒの所にはまだ着かないのか?」
古泉「そこです。そこの曲がり角の向こう!」
キョン「なに!? そうか、よし! ハルヒ!」ダッ
ハルヒ「……」ブツブツブツ…
キョン「やっと見つけた。手間かけさせやがって」
キョン「おいハルヒ! しっかりしろ! おい!!」
ハルヒ「…………ん……あれ……キョン……?」
キョン「ハルヒ! お前にいったい何があった? 何でそんなに謝るようになっちまったんだ?」
ハルヒ「……」
242 名前:さるさんの逆襲[] 投稿日:2010/09/20(月) 13:04:55.89 ID:1attf1Pk0 [54/88]
ハルヒ「あたし……夢を見たのよ」
ハルヒ「その夢の中でどことも分からない場所をあたしは歩いていた」
ハルヒ「すると、誰かがあたしの前に現れた」
キョン「誰か? 何者だそいつは?」
ハルヒ「あたしよ」
キョン「は?」
ハルヒ「あたしの前に現れたのは、もう1人のあたしだったの。でも何となく分かったわ」
ハルヒ「コイツはあたしの『偽者』なんかじゃない。コイツも『あたし自身』なんだって」
キョン「何でそんなことが分かったんだ?」
ハルヒ「分かっちゃったんだからしかたないじゃない。なんとなくよ」
ハルヒ「それで、そのもう1人のあたしは言ったわ。『いい加減にしなさい!』と」
ハルヒ「当然あたしは言い返したわ。『何のことよ!』と」
ハルヒ「そしたらそいつは、あたしが今までどんなに悪い事をしてきたか、どれだけ人に迷惑をかけてきたか」
ハルヒ「それはもう徹底的に非難してきたわ。そして言い放ってきた。『全ての人達に謝りなさい!』と」
244 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 13:09:57.45 ID:1attf1Pk0 [55/88]
ハルヒ「最初は言い返したわ。『何でアンタなんかに偉そうに説教なんかされなきゃいけないの!』」
ハルヒ「でもそいつったら全然人の話聞かないの。説教してばっかりで」
キョン「まさしくお前そのものだな」
ハルヒ「うっさいわね。それで埒が明かないと思ってドロップキックかましたの」
キョン「おい」
ハルヒ「でも避けられたわ。逆にカウンターのラリアット喰らっちゃった」
ハルヒ「チョップ喰らわせようとしたらハイキック、ヘッドバット食らわせようとしたらボディブロー」
ハルヒ「もう全部返り討ち。なぜかそいつにはまったく敵わなかったわ」
ハルヒ「そして三角締めを極められた時、あたしは抵抗するのをやめた……」
キョン「……」
ハルヒ「それからもあたしへの非難と説教は延々と続いたわ、最初はあたしも聞く耳を持たなかったんだけど……」
ハルヒ「だんだんあたしの中に『罪悪感』が芽生えてきたの。あいつの言葉って妙に心に響くのよね」
ハルヒ「そして、その『罪悪感』はどんどん大きくなっていった……」
246 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 13:10:56.49 ID:1attf1Pk0 [56/88]
ちょいと中断
252 名前:再開[] 投稿日:2010/09/20(月) 13:29:56.84 ID:1attf1Pk0 [57/88]
ハルヒ「気がついたらあたしは目を覚ましていた。そこはいつものベッドの上……」
ハルヒ「もちろん『もう1人のあたし』はどこにもいなくなってた」
ハルヒ「でもあたしの中に芽生えた『罪悪感』は消えることはなかった……」
ハルヒ「ううん、それどころかどんどんどんどん大きくなっていって……」
ハルヒ「みんなに謝らないと……あたしが今まで生きてきて迷惑をかけた人達みんなに謝らないと……」
ハルヒ「そのことだけが頭を支配して、いてもたってもいられなくなって、家を飛び出して……」
ハルヒ「走って走って走って学校に到着して。その時に気づいたんだけど、その時はもうすでに放課後だった」
ハルヒ「あたしったら随分長く夢を見てたのね。それで教室にはすでに誰もいなかったから部室に行って……」
キョン「それでドアを開けて開口一番、『みんなごめんなさい……』か……」
古泉「なるほど、そういうことだったんですね」
みくる「涼宮さん……」
長門「……」
255 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 13:34:59.55 ID:1attf1Pk0 [58/88]
キョン「しかしもう1人のハルヒか。本人は偽者じゃないと言っているが、どういうことなんだろうな?」
古泉「恐らく涼宮さんの深層意識が具現化した存在なのではないでしょうか」
キョン「深層意識?」
古泉「あくまで仮説ですが……普段の涼宮さんは非常にアグレッシブで常に前に進み続けてきました」
キョン「周りの迷惑も考えずにな」
古泉「しかし、心の奥底ではそのことに対し罪悪感も感じていた。謝りたいと言う思いもあった」
キョン「普段のハルヒを見てると、到底信じられないがな」
古泉「以前も言ったでしょう。涼宮さんは常識的な考えも持っていると」
古泉「ですが、涼宮さんはあのような性格です」
古泉「素直に謝ると言うこともできず、その思いを心の奥底にどんどん蓄積させていった」
古泉「そして積もりに積もったその思いが1つの人格を形成し、具現化してしまった」
キョン「それが夢の中でハルヒを非難した、もう1人のハルヒか?」
古泉「おそらく」
キョン「長門、どうなんだ?」
長門「その仮説でほぼ間違いないと思われる」
258 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 13:39:59.38 ID:1attf1Pk0 [59/88]
キョン「心の奥底では反省していた、か。あのハルヒがな。なかなか信じられないが……」
ハルヒ「ごめんなさい……みんな……ごめんなさい…………」
みくる「涼宮さん! しっかり! しっかりしてくださぁい!」
キョン「あれを見ると、信じざるを得ないよな」
古泉「当然といえば当然です。特殊な能力を持っているとはいえ、涼宮さんだって人間なんですから」
キョン「それで、どうすればいいんだ? どうやったらハルヒを元に戻せる?」
古泉「そうですね。まずはそのもう1人の涼宮さんに出てきてもらう必要がありますね」
キョン「そりゃそうだろうな。で、そのもう1人のハルヒとやらはどこにいる?」
キョン「まさかこの閉鎖空間のどこかにいるんじゃないだろうな? だとしたら探しきれんぞ」
長門「そこにいる」スッ
キョン「え? そこって……」
ハルヒ「ごめんなさい…………ごめんなさい…………」
キョン「いや、あれはもう1人のハルヒじゃなくて本物のハルヒじゃあ……?」
259 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 13:45:00.05 ID:1attf1Pk0 [60/88]
古泉「なるほど。その『もう1人の涼宮さん』もあくまで本物の涼宮さんですからね」
長門「そう。常に共にいる」
キョン「何? どういうことだ?」
長門「……」ブツブツブツ…
キョン「ん? 何をしてるんだ長門…………って!?」
ハルヒ(?)「アンタいい加減にしなさいよね! さっさと死になさいよ!」
ハルヒ「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」
みくる「ひゃああ! す、すす、涼宮さんが2人!?」
キョン「あれが……『もう1人のハルヒ』か……」
古泉「そのようですね」
ハルヒ(?)「アンタなんか生きててもしょうがないの! みんなが迷惑してるの!」
ハルヒ「ごめんなさい……生きててごめんなさい……」
キョン「見かけではまるっきり区別がつかんな。ハルヒ(強)とハルヒ(弱)とでも呼ぶか」
261 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 13:49:59.88 ID:1attf1Pk0 [61/88]
キョン「さて、ともかく接触を試みないことには始まらないな。うまく説得しないと」
キョン「おい、ハルヒ」
ハルヒ(強)「みんなアンタが悪いのよ! 分かってるの!」
ハルヒ(弱)「あたしが悪い……みんな……みんな…………」
キョン「あの、もしもーし?」
ハルヒ(強)「みんなアンタのせいで苦しんできた! その苦しみをアンタも味わいなさい!」
ハルヒ(弱)「あたしも……苦しむべき……」
キョン「聞けよ! 脳内爆弾女!!」
ハルヒ(強)「何ですって!」
ハルヒ(弱)「失礼ね!」
キョン「いや、何でお前まで反応するんだよ!」
ハルヒ(弱)「あ……ご、ごめんなさい、ごめんなさい……」
キョン「あ、しまった……」
262 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 13:54:59.53 ID:1attf1Pk0 [62/88]
古泉「仕方ありません。今はこっちが先決です」
キョン「そうだな。朝比奈さん、そっちのハルヒを見ててもらえませんか?」
みくる「はい。今度こそ任せてください!」
キョン「さて、と。なあハルヒよ」
ハルヒ(強)「何よ?」
キョン「お前はずっとハルヒの傍にいたのか?」
ハルヒ(強)「当然よ。あたしだって『涼宮ハルヒ』なんだから」
キョン「まさか傍にいる間、ずっとああやって罵倒し続けていたのか?」
ハルヒ(強)「そうよ! アイツったらひどいのよ! 自己中心的だし人に迷惑掛けまくるし!」
ハルヒ(強)「あまりにひどいから我慢しかねて、こうしてあたしが説教してやってるのよ!」
キョン(なるほど。こいつはハルヒの罪悪感、謝りたいという気持ちが具現化した存在だったな)
キョン(口こそ悪いが、こいつはハルヒの『良心』とも言えるわけだ。しかしなあ……)
キョン「お前、いくらなんでもきつく言い過ぎだ。見ろ、あんなに落ち込んじまって」
263 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 13:59:59.76 ID:1attf1Pk0 [63/88]
ハルヒ(弱)「死にたい……あたしは……死ぬべき…………」
みくる「そんなことないですよ、涼宮さん!」
ハルヒ(強)「駄目よ! まだまだ言い足りないし、アイツもまだまだ反省が足りないわ!」
ハルヒ(強)「もっとよ! もっともっと謝らないといけないのよ!」
キョン「謝らないとってお前、アイツは散々謝ってきたじゃないか。あとどれぐらい謝ればいいんだよ?」
ハルヒ(強)「これまで生きてきて、関わってきた人達全員によ!」
キョン「そんな無茶な」
ハルヒ(強)「無茶だろうがしなくちゃいけないの!」
キョン「お前な、謝る謝るってむやみやたらに謝ればいいってものじゃないだろう。極端すぎるんだよ」
キョン「事実、謝られて逆に不快感をあらわにした人もいただろう?」
キョン「しかも重りをつけて池に飛び込んだり、ホッカイロ貼って着ぐるみバイトをしたり……」
キョン「そして遂には自殺騒動だ。死んだら何にもならないというのに」
ハルヒ(強)「むぅ…………でもアイツ、生きてる価値あるの? 生きてても迷惑かけるだけよ?」
キョン「お前なぁ……」
264 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 14:04:55.39 ID:1attf1Pk0 [64/88]
キョン「さすがはハルヒ、とことん強情だな。さて、どうしたものか」
古泉「ここはやはり、彼女の出番でしょうね」
キョン「長門、か」
古泉「ええ、今の精神力が弱っている涼宮さんなら、情報操作を施すことも容易なはずです」
キョン「そうなのか、長門?」
長門「そう」
キョン「しかし……できれば情報操作は使ってほしくない。お前に負担をかけたくないんだ」
長門「大丈夫。やる」
キョン「へ? やるって……?」
長門「涼宮ハルヒに情報操作を施し、元の状態に戻す」
キョン「え、いや、しかしだな長門……」
長門「わたしという個体は…………涼宮ハルヒを助けたいと思っている」
キョン「長門……」
長門「……」
キョン「……そうか。分かったよ、長門」
266 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 14:09:57.29 ID:1attf1Pk0 [65/88]
キョン「長門、頼んだぞ」
長門「任せて」
キョン「今度何でも好きなもの奢ってやるからな」
長門「カレー」
キョン「ああ、10杯でも20杯でも好きなだけ食え」
古泉「それで、情報操作を施すと言いましても、具体的にはどうするんですか?」
長門「2人の涼宮ハルヒのうち、どちらか1人を消滅させる」
キョン「はい?」
長門「2人の涼宮ハルヒのうち、どちらか1人を消す」
キョン「いや、そこは言い直さなくてもいい」
キョン「しかしハルヒを消滅させる、か……大丈夫なのか?」
長門「平気。元の涼宮ハルヒに戻るだけ」
キョン「うーん、分かったような分からんような……」
古泉「つまりですね、2つに分裂している人格のうち、片方の涼宮さんの人格を消滅させる」
古泉「そのエネルギーが残ったもう片方の涼宮さんと融合し、元の1人の涼宮さんに戻る」
269 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 14:14:57.41 ID:1attf1Pk0 [66/88]
古泉「どうでしょうか、長門さん?」
長門「その解釈で間違いはない」
キョン「なるほど。消すなんていうから殺す的な意味かと」
古泉「そんなわけないでしょう」
キョン「よし、じゃあ頼んでいいか長門?」
長門「了解。どっち?」
キョン「え? どっちって?」
長門「どちらの涼宮ハルヒを消滅させる?」
キョン「……そうか、どっちも本物の『涼宮ハルヒ』なんだよな」
長門「性格のベースとなる方を決めてほしい」
キョン「性格のベース、か……」
古泉「つまりですね」
キョン「いや、これぐらいは分かる。つまり……」
キョン「ハルヒ(強)を消せば、ハルヒ(弱)を非難する存在がいなくなり、いつもの傲慢なハルヒに戻る」
キョン「ハルヒ(弱)を消せば、傲慢なハルヒが消えて、周りに気を配れる謙虚なハルヒになるってことか」
270 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 14:19:56.74 ID:1attf1Pk0 [67/88]
キョン「元のハルヒに戻すというのは分かる。だが謙虚なハルヒにするというのはどうなんだ?」
キョン「また自殺未遂を起こしたり、いろいろ厄介なことになったりはしないか?」
古泉「それは、今まで原因が一切分からなかったからですよ」
古泉「こうして原因が分かった以上、ある程度対策は立てられます。僕ら機関が全力で何とかします」
古泉「そういう選択肢もあるということを念頭においていただければと。僕からも聞きたいことがあります」
キョン「何だ?」
古泉「あなたこそ本当に元の涼宮さんに戻したいのですか? 日頃涼宮さんの言動には散々不満を漏らしていたではありませんか」
キョン「う……」
古泉「謙虚な涼宮さんになれば、自分勝手な言動で振り回されることはなくなります」
古泉「対策さえ立てれば、騒動を起こすこともなくなるでしょう」
古泉「どうしますか。いつもの涼宮さんか、謙虚な涼宮さんか」
古泉「どちらを選びますか?あなたが決めてください」
275 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 14:24:56.80 ID:1attf1Pk0 [68/88]
キョン「ちょっと待ってくれ! 俺が1人で決めるのか!?」
古泉「ええ、あなたが決めてください。我々はそれに従います」
みくる「そうです。キョンくんが決めてください」
キョン「朝比奈さん、いつの間に……」
みくる「涼宮さんがまた涼宮さんをいびり始めたので……」
古泉「これは別に、あなた1人に決断を押し付けると言うことではありません」
みくる「うん、キョンくんが決めたことならあたし達は納得できます」
長門「……」コクリ
キョン「みんな…………分かった。俺は~~~~~~~~~」
古泉「分かりました」
みくる「あたしも賛成です」
長門「始める。こっちへ来て」
ハルヒ(強)「ん? 何よアンタ達?」
キョン「すまんな。悪く思わないでくれよ」
277 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 14:29:56.77 ID:1attf1Pk0 [69/88]
~翌日 木曜日 放課後の部室~
ハルヒ「やっほー! みんな揃ってるー!」バァン
古泉「どうも」
みくる「こんにちは。今お茶を淹れますね」
長門「……」
キョン「お前は相変わらず元気だな」
ハルヒ「当たり前よ! あたしから元気を取り上げたら何が残るって言うのよ!」
ハルヒ「……いや、結構残るわね。あたしは元気を取り上げられたくらいじゃビクともしないわ!」
キョン「よく言うよ、まったく」
ハルヒ「さあて、今日はっと……」
キョン「なあ古泉、ハルヒは昨日の閉鎖空間での出来事を……?」
古泉「ええ、予想通り夢だったと処理したようですね」
キョン「みんなに謝ってまわったことは?」
古泉「それは覚えていると思いますよ。もっとも今そのことについてどう思ってるかは分かりませんが」
279 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 14:34:57.24 ID:1attf1Pk0 [70/88]
ハルヒ「みんな! 今週の土日はキャンプに行くわよ!」
みくる「キャンプですかぁ。いいですね」
ハルヒ「もちろんただのキャンプじゃないわ! SOS団らしく素晴らしいキャンプにするわよ!」
古泉「どうやら昨日までの暗さはないようですね」
キョン「いつも通りのハルヒだな。あとは……」
ハルヒ「それで土日なんだけど……誰か都合の悪い人いる?」
キョン「あ~ハルヒよ、土日はちょっと用事があってな。行けないんだ」
ハルヒ「そうなの? 他に行けない人は…………どうやらキョンだけみたいね」
ハルヒ「でもキョンが行けないんじゃあ仕方ないわね。来週の土日はどう?」
キョン「ああ、来週なら大丈夫だ」
ハルヒ「みんなも来週は…………OKね! じゃあ日取りは来週の土日で決まり!」
280 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 14:39:57.02 ID:1attf1Pk0 [71/88]
みくる「はい涼宮さん、お茶です」
ハルヒ「ありがと! みくるちゃん!」
みくる「はい」
ハルヒ「うーん……」
みくる「どうかしましたか?」
ハルヒ「やっぱりみくるさんと呼んだほうが……それに敬語も……」
みくる「いいんですよ、いつも通り接してくれれば。あたしもその方が嬉しいですし」
ハルヒ「そうですか……うん! 分かったわ、みくるちゃん!」
古泉「どうやら、うまくいったみたいですね」
キョン「いつもなら他人などおかまいなしにゴリ押しするアイツが……変わるもんだな」
キョン「さっきもちゃんとみんなの予定を聞いてから決めてたし……気配りもできるようになったようだ」
古泉「ふふ」
キョン「何だよ?」
古泉「まさか、あなたがあのような提案をするとは思ってもいませんでしたよ」
281 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 14:45:03.70 ID:1attf1Pk0 [72/88]
~回想 昨日の閉鎖空間~
キョン「みんな、本当にいいんだな?」
古泉「ええ」
みくる「お願いします」
キョン「よし、長門、やってくれ」
長門「分かった」スッ
ハルヒ(強)「え? え? 何? 何をする気なの?」
長門「……」ブツブツ…
ハルヒ(強)「何かよく分からないけどやめて! やめてよ!」
キョン「……すまん長門! ちょっと待った!」
長門「……」ピタッ
みくる「キョンくん?」
古泉「どうかしたのですか?」
キョン「なあ長門。ちょっと考えてみたんだが……かなり突飛な案だが聞いてくれるか?」
282 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 14:50:02.70 ID:1attf1Pk0 [73/88]
長門「何?」
キョン「どちらか片方の存在を全部消すんじゃなくて、お互いの存在を半分ずつ消すことってできないか?」
みくる「半分ずつ、ですか?」
キョン「ええ、半分ずつ消して、残った半分ずつが合体して1人のハルヒになる」
キョン「そうすればいつものハルヒのアグレッシブさと今回のハルヒの謙虚さ、両方を兼ね備えたハルヒになる」
キョン「そう考えたんだが、どうだ?」
古泉「あの、いくらなんでもそれは……」
キョン「そうだよな……こんな子供みたいな考え、うまくいくわけが……」
長門「できる」
キョン「できるの!?」
みくる「できるんですかぁ!?」
古泉「本当ですか! それは何というか、結構な反則技ですね」
キョン「ともかくよかった! それで頼む、長門!」
長門「了解した。半分ずつ消滅させる」
285 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 14:55:04.56 ID:1attf1Pk0 [74/88]
キョン「あっと。たびたび止めてすまんが、ちょっと待ってくれ」
長門「……」
みくる「どうしたんです、キョンくん?」
キョン「いえ、このままさっさと情報操作を施した方が手っ取り早いのは分かってるんですが……」
キョン「半分とはいえ、いきなり消されるのは可哀想ですからね。何とか説得して納得してもらいます」
みくる「……うふふ、優しいんですねキョンくん」
キョン「ところで古泉、2人のハルヒに事情を説明しても大丈夫なのか?」
古泉「ここでの出来事は全て夢として処理するでしょうから、大丈夫だと思われます」
キョン「そうか。安心した。それじゃあ、説得するとしますか」
キョン「おい、ハルヒ」
ハルヒ(強)「何よ?」
キョン「お前ら2人、握手しろ! そして仲直りしろ!」
ハルヒ(強)「はあ? いきなり何言ってるのよ?」
キョン「ああ、実はだな…………」
286 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 15:00:01.52 ID:1attf1Pk0 [75/88]
ハルヒ(強)「ふーん、こいつと1つにねぇ……」
キョン「そうだ。頼む」
ハルヒ(強)「お断りよ! 何であたしがこんな奴と!」
ハルヒ(弱)「あ、あたしもちょっと……」
キョン「お前らが手を結べば全てがうまくいくんだ。どちらか一方の人格を消すのは気が引けるからな」
ハルヒ(強)「嫌よ、消すんならこいつだけを消せばいいじゃない!」
ハルヒ(弱)「うん、あたしだけが消えればいいのよ……」
ハルヒ(強)「みんなだって、こいつのせいで今まで散々迷惑をかけられてきたでしょ!」
ハルヒ(強)「こいつがいなければ、みんなもっと楽しい学校生活が送れていたのに!」
ハルヒ(強)「キョン! こいつに勝手にSOS団に入れられたせいで迷惑したでしょ?」
キョン「はあ。あの時期にどの部活にも入ってなかったことから察しろよ。俺は暇を持て余してたんだ」
キョン「だがお前がSOS団に入れてくれたおかげで、退屈しない楽しい毎日が送れてる」
キョン「迷惑なんかじゃない。むしろ感謝したいくらいさ」
ハルヒ(弱)「……え?」
ハルヒ(強)「何よそれ! 訳わかんない!」
287 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 15:05:01.09 ID:1attf1Pk0 [76/88]
ハルヒ(強)「有希! 有希はもともと文芸部員なのに、勝手にSOS団の部員にされちゃったのよ!」
ハルヒ(強)「しかも部室まで勝手に乗っ取られて! 迷惑だったでしょう?」
長門「文芸部にはわたし1人しかいなかった。あのままではわたし1人でずっと過ごすことになっていたはず」
長門「SOS団のおかげで、わたしは1人ではなくなった。感謝している」
ハルヒ(弱)「有希……」
ハルヒ(強)「みくるさん! あなたは書道部まで辞めさせられて、拉致されて無理矢理入れられたんですよ!」
みくる「最初はびっくりしちゃいましたけど、でも今はとっても楽しいです」
みくる「普通だったらできないような体験もたくさんできましたし、あたしも感謝してますよ」
ハルヒ(強)「古泉くん! あなたは転向初日でいきなり部室に連れてこられて入部させられたのよ!」
ハルヒ(強)「もっと他の部活も見たかったでしょ! ひどいと思ったでしょう!」
古泉「いやぁ、実は転向初日でなかなかクラスに馴染めなかったんですよ」
古泉「おまけにその時は、バイト関係で気持ちが荒んでいたのですよ。しかし涼宮さんのおかげでその気持ちも吹き飛びました」
古泉「ですから涼宮さんには本当に感謝しています。SOS団の副団長であることを誇りに思っていますよ」
288 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 15:10:01.98 ID:1attf1Pk0 [77/88]
ハルヒ(強)「むうう……うーん…………」
キョン「ハルヒ……」
ハルヒ(弱)「みんな……それ……本当なの……?」
古泉「ええ、もちろんです」
みくる「これがあたし達の本心ですよ」
長門「……」コクリ
キョン「これで分かったろ、ハルヒ」
ハルヒ(強)「む……」
キョン「SOS団に入れられたことを迷惑だなんて思ってる奴はいない。みんなお前には感謝してるんだ」
キョン「だからさ、少しだけでいい。自分を誇ってやらないか? 自分を許してやらないか?」
キョン「前向きな心も謙虚な心も、どちらも大切なんだ。だからお前ら2人には仲直りしてほしい」
ハルヒ(強)「……」
ハルヒ(弱)「……」
289 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 15:15:01.86 ID:1attf1Pk0 [78/88]
ハルヒ(強)「分かったわよ…………みんながそこまで言うなら……」
ハルヒ(弱)「あたしも…………頑張ってみる……」
キョン「そうか……ありがとう、2人とも」
古泉「流石ですね」
キョン「俺だけじゃない。みんなのおかげだろ」
みくる「そうですね。みんなの想いが通じたんですよ」
長門「……」
キョン「じゃあ長門……頼む」
長門「了解した…………」ブツブツ…
ハルヒ(強)「ん……」パァァァ…
ハルヒ(弱)「あ……」パァァァ…
キョン「む……これは……」
290 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 15:20:01.54 ID:1attf1Pk0 [79/88]
ハルヒ(強)「あら?」
ハルヒ(弱)「~~~~!」
みくる「ひゃあああ!」
古泉「これは……何とも」
キョン「上半身だけのハルヒと、下半身だけのハルヒか……なかなか見られない光景だな」
キョン「なあ長門、あれ大丈夫なのか?」
長門「大丈夫。死んだわけではない」
ハルヒ(上)「テケテケテケテケ……」ジリジリ…
古泉「あの、涼宮さん……ちょっと怖いです……」
ハルヒ(下)「~~~~♪」タタタタッ
みくる「きゃあああ! 追いかけてこないでくださーい!」
キョン「まあ元気に走り回ってるようだからそれは分かるが、いつまであの状態なんだ?」
長門「直に融合する」
295 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 15:25:01.67 ID:1attf1Pk0 [80/88]
ハルヒ(上)「テケテケ……あれ? 何か身体が光って……?」
ハルヒ(下)「~~~~!!」
みくる「す、涼宮さん?」
古泉「どうやら離れた方がよさそうですね」
パアアアアアアア!!!!
キョン「うわ! 光が大きく……!!」
シュウウウウウウウ……
キョン「ん? どうやら収まってきたようだな。さて、どうなった?」
ハルヒ「スゥ……スゥ……」
みくる「あ……」
古泉「どうやら……」
キョン「ああ。無事、元に戻ったようだな」
296 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 15:30:01.49 ID:1attf1Pk0 [81/88]
長門「まだ」
キョン「え?」
パアアアァァァァァァ!!!!
キョン「わ! またハルヒの身体が光って……!」
長門「先程半分ずつ消滅させたエネルギーが今体内に戻った。これで完全に元通りになった」
キョン「そ、そうか。とにかくよかった」
ハルヒ「スゥ……んん……スゥスゥ……」
キョン「まったく、のんきな寝顔だな」
古泉「ふふ、皆さん、空を見てください」
キョン「空? あ! 空に亀裂が!」
みくる「な、何ですかあれぇ! えええええ!」
古泉「閉鎖空間が消滅するんですよ。慌てなくても大丈夫です」
パキィィィィィィィ……ンン……
297 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 15:35:01.74 ID:1attf1Pk0 [82/88]
みくる「あ……空が元に……」
キョン「もうスッカリ日が暮れてるなぁ……」
長門「……」
キョン「とにかく……ハルヒが無事でよかった」
ハルヒ「ムニュムニュ……スゥ……スゥ……」
キョン「それで、ハルヒの性格はどうなったんだ? うまくいったのか?」
古泉「それは涼宮さんが目を覚ますまで分かりませんよ」
キョン「だよな。今日はもう帰ろう。もうクタクタだ」
古泉「ええ、そうしましょう」
キョン「ハルヒは俺が家まで送り届けよう。よっこらせっと」グイッ
みくる「あ、あたしも行きます」
古泉「僕もご一緒しましょう」
長門「……」
キョン「そうだな。みんなで我らが団長を送り届けるとするか」
キョン「さぁて、ハルヒの家はどこだったっけな?」
298 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 15:40:01.70 ID:1attf1Pk0 [83/88]
古泉「もう一度いいますが、あなたの提案は本当に意外でしたよ」
キョン「自分でも変な案だと思うがそんなにか?」
古泉「あなたは必ず元の性格の涼宮さんに戻すと思っていました。性格を変えるような真似は嫌うかと」
キョン「確かに、これが第3者の干渉によってハルヒの性格が変えられようとしていたのなら、何が何でも阻止しようとしただろうさ」
キョン「しかし今回は、あくまでハルヒ自身の潜在意識によって性格が変わったんだ。自分自身で反省して性格を変えたんだ」
キョン「だからハルヒの、ハルヒの潜在意識の意思を尊重するべきだと思ったんだよ」
古泉「そうですか」
キョン「……」
古泉「……」
古泉「大丈夫ですよ」
キョン「は?」
古泉「本音を言った所で僕は軽蔑したりはしません。むしろ思いは同じだと思いますよ」
キョン「むぅ……そうだな」
299 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 15:45:01.28 ID:1attf1Pk0 [84/88]
キョン「さっきは格好つけたこと言っちまったが……」
キョン「あの性格のハルヒが1番都合が言いと思ったからそうした。そういう気持ちもある」
キョン「アグレッシブ過ぎるハルヒだと、いろいろ振り回されて疲れる」
キョン「謙虚過ぎるハルヒだと、こっちがいろいろ気を使ってしまってこれまた疲れる」
キョン「だったらそれぞれ半々の性格のハルヒならちょうどいい。俺にとってもみんなにとっても都合がいい」
キョン「本音を言えばそんな気持ちがあったのも事実だ」
キョン「みんなには散々あんなに偉そうなことを言ってたくせにな。こんな俺を軽蔑するか?」
古泉「先程も言ったでしょう。僕もあなたと同じ思いだと」
古泉「あの性格の涼宮さんなら閉鎖空間が発生する頻度も確実に減少するでしょう。感謝していますよ」
キョン「……これで良かったのか?」
古泉「あなたも言っていたではありませんか。涼宮さんは自分自身の意思で変わったのです」
古泉「我々は、ほんの少しその手助けをしただけですよ」
キョン「……」
300 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 15:50:02.56 ID:1attf1Pk0 [85/88]
ハルヒ「ねぇみくるちゃん、キャンプの場所なんだけど、ここなんてどうかしら?」
みくる「うーん、あたしはこっちの方が面白そうです」
ハルヒ「有希はどう思う?」
長門「……こっち」
キョン「古泉、あそこにいるのは本当にハルヒなんだよな?」
古泉「紛れもなく涼宮さんですよ。以前よりも少し優しい、ね」
ハルヒ「こらそこの2人! コソコソ2人だけで話してないでこっちに参加しなさい!」
古泉「おっと」
キョン「はいはい、今行くよ」
ハルヒ「みんなで相談して内容を決めていきましょう! 楽しいキャンプにするわよ!」
キョン(そうだよな。ハルヒは変わったんだ、自分自身の力で。いろいろ反省し、悩み抜いた末に)
キョン(俺も今までの自分を振り返ってみよう。そして反省すべきことは反省して……)
キョン(……変わらないとな。ハルヒだって変われたんだ。俺だって)
301 名前:ラスト・オブ・さるさん[] 投稿日:2010/09/20(月) 16:09:50.56 ID:1attf1Pk0 [86/88]
~夕方~
ハルヒ「あら、もうこんな時間。続きは明日にしましょ」
古泉「では、僕はこれで失礼します」
長門「……」
みくる「お疲れ様です。涼宮さん、キョンくん」
ハルヒ「うん。戸締りはあたしがしとくから」
バタン
キョン「お前はまだ帰らないのか?」
ハルヒ「アンタこそ」
キョン「何を見てるんだ?」
ハルヒ「ん、これ」
キョン「七夕の笹か。これがどうかしたのか?」
ハルヒ「あたし、どうしても会いたい人がいるのよね。今はどこにいるのかさっぱり分からないけど」
305 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 16:15:01.76 ID:1attf1Pk0 [87/88]
キョン「会ってどうするんだ?」
ハルヒ「謝りたいのよ。散々面倒なことを手伝わせちゃったから」
キョン「そうか」
キョン「しかし、それだったら『手伝わせてごめんなさい』より『手伝ってくれてありがとう』の方がいいんじゃないか?」
ハルヒ「そうかしら?」
キョン「『ごめんなさい』も大事だが、『ありがとう』の方が言われて嬉しいだろ」
ハルヒ「あんた結構クサいことを平気で言うのね」
キョン「ほっとけ」
ハルヒ「でもそうね、これからはそうするわ」
キョン「そうか」
ハルヒ「ねえキョン」
キョン「何だ?」
ハルヒ「ありがとね」
~おしまい~
307 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/20(月) 16:17:03.32 ID:1attf1Pk0 [88/88]
何とか無事終了
支援してくれた人
保守してくれた人
本当にありがとう
では
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マナケミアのヴェインを思い出した
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