スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
唯「ムギちゃんのはつこい」
1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 15:05:49.01 ID:Su5flL8x0
澪「さ、今日も練習するぞ」
律「えーもうちょっとだけお茶してようよー」
澪「ばか、学園祭もうすぐだろ。
今練習しないでどうすんだよ」
唯「いーじゃんちょっとくらいー。
ムギちゃーん、紅茶おかわりー」
紬「……」
唯「ムギちゃーん」
紬「……」
唯「ムギちゃん?」
澪「さ、今日も練習するぞ」
律「えーもうちょっとだけお茶してようよー」
澪「ばか、学園祭もうすぐだろ。
今練習しないでどうすんだよ」
唯「いーじゃんちょっとくらいー。
ムギちゃーん、紅茶おかわりー」
紬「……」
唯「ムギちゃーん」
紬「……」
唯「ムギちゃん?」
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 15:09:34.95 ID:Su5flL8x0
紬「……」
唯「ムギちゃん!」ゆさゆさ
紬「はっ! な、何かしら?」
唯「それはこっちのセリフだよ。
ボーッとしちゃって、どうしたの?」
紬「あ、ボーッとしちゃってた……?」
唯「してたよー、すごくしてた。
何度呼んでも返事ないんだもん」
紬「あら、そう……ごめんなさい。
それで、私を呼んだ用件は何?」
澪「練習しようって言ってたんだ」
紬「ああそうね、そろそろしなきゃね」
律「うぉい」
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 15:12:02.00 ID:Su5flL8x0
澪「よし、じゃあ始めるぞっ」
唯「はーい」
紬「いいわよ」
律「いくぞー、ワンツースリフォー」
ジャカジャカージャッカジャカジャカジャカジャカ
澪(……あれ?)
律(なんか……)
唯(……変?)
ジャーン♪
9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 15:16:38.42 ID:Su5flL8x0
澪「……」
律「……」
唯「……」
紬「? どうしたの?」
澪「うーん、ムギ……
キーボードの音、だいぶずれてたぞ」
紬「え、ほ、ホントに? ごめんなさい……」
澪「いやそんな謝んなくてもいいけどさ」
律「でも珍しいな、ムギがこんなミスするなんて」
唯「具合悪いんじゃない?
さっきもボーッとしてたし……」
紬「う、ううん、大丈夫……」
澪「無理することないぞ、
体調悪いんなら遠慮なく休んでくれていいんだから」
紬「ほ、ほんとに大丈夫だから! もう一回やろ、もう一回」
澪「え、うん……」
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 15:22:34.10 ID:Su5flL8x0
しかしその日の演奏は散々なままで終わった。
紬「……ごめんなさい」
澪「いいっていいって、今日はたまたま調子が出なかっただけだろ。
また今度、いつもみたいに上手くやってくれればいいから」
紬「……うん」
律「澪ってムギには甘いよな、
私達の時はすげえ怒るクセに」
唯「日頃の行いの差じゃない?
ていうか『達』ってどういう意味」
紬「あ、私、戸締りしとくから……
みんなは先に帰ってていいわよ」
律「え、ああ、うん」
唯「えー、ムギちゃんも一緒に帰ろうよー」
澪「……ばか、ここは独りにさせてやれ」
律「じゃあな、ムギ」
紬「うん……また明日」
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 15:27:42.36 ID:Su5flL8x0
帰り道。
唯「今日のムギちゃん、おかしかったね」
澪「ああ、そうだなあ」
律「体調悪いようには見えなかったけど……」
澪「とすると、なんか悩みでもあるのか」
唯「悩みかー……」
律「でもムギに悩みごとなんて想像できねえな」
澪「それはムギに失礼だ……」
唯「もし悩みがあるとしたらさ、どんな悩みなんだろ」
澪「うーん……家のこととか?」
律「あー、金持ちの家って複雑そうだよなー」
澪「成績が落ちたとか」
律「それはないだろ、この前のテストでもクラスで上位だったし」
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 15:32:50.20 ID:Su5flL8x0
澪「また太っちゃったとか」
唯「そう? 別に太ったようには見えないけど」
澪「外見からは分からなくても、
1つ2つの数値の上下には過敏に反応してしまうのさ」
律「そうか……それがストレスになって……
太るのを気にするあまり食生活が乱れ……
そして摂食障害……入院……退学……」
澪「いきなり話が飛躍したな、
ていうか真面目に考えろ」
律「考えろっつってもなあ」
唯「ムギちゃんから直接聞かないことには分かんないよ」
澪「まあ、そうだけどさ……」
紬「みんなーっ!」たったった
唯「あ、ムギちゃん」
澪「噂をすれば……」
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 15:40:05.92 ID:Su5flL8x0
紬「はあはあ……唯ちゃん、これ」
唯「あ、携帯!」
紬「部室に忘れてたわよ」
唯「ほんと? ありがとう、ムギちゃん!」
紬「ううん、いいの。気にしないで」
澪(さっきの話は今はしないほうがいいな)
律「なあムギ、なんか悩みごt」
澪「オラァ!!」ボカッ
律「ゲフッ」
紬「? なあに?」
澪「いやーなんでもないなんでもない……
そうだ本屋寄ってかない? 本屋」
唯「お、いいね。確か今日は女性自身の発売日だし」
澪「そんなん読んでんのかよ」
唯「憂がね」
澪「……」
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 15:45:28.86 ID:Su5flL8x0
本屋。
律「澪は何買うんだ」
澪「好きな作家の新刊が出ててさ、それをね」
紬「へえ」
澪「あー、あったあった」
律「ほう、タイトルは……『16歳のはつこい』……
いやあいかにも澪が好きそうな」
澪「う、うるさい……! いいだろ別に」
紬「……」
澪「ん? ムギ?」
紬「……」
律「またボーッとしてら……おい、ムギ」
紬「……はっ!」
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 15:52:06.19 ID:Su5flL8x0
澪「どうしたんだよ、またボーッとしてたぞ」
紬「そ、そうだったかしら、ごめんなさい……
それよりこれ、素敵なタイトルの本ね。
私も買おうかしら」
律「おお、ムギも澪ワールドにハマるか」
澪「なんだ澪ワールドって。
ていうかムギも恋愛小説とか好きなんだな」
紬「好きっていうか、その……
いいかな、って思って」
澪「ふうん」
律「ところで唯はどこいった」
澪「女性自身買ってんじゃないか?
……ん?」
紬「……」
手に取ったハードカバーの表紙をじっと見つめる紬。
澪にはその紬の表情が、何か普通ではないように見えて……。
澪「…………」
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 15:59:26.82 ID:Su5flL8x0
唯「あ、みんないた」
澪「買ったのか、女性自身」
唯「うん」
律「憂ちゃん、そういうの好きなんだな……」
唯「そうなんだよねー。
休日なんかはお煎餅かじりながら
楽しそうにワイドショーの芸能コーナー見てるよ」
律「憂ちゃんの育てかたを見直した方がいいぞ」
澪「じゃあ、私達も会計済ませるか」
紬「え、あ、そうね……」
唯「りっちゃんは何も買わないの?」
律「私はいいや。お金ないし」
唯「ふうん」
その日、3人は本を買い、
あとは何ごともなくそれぞれの家路についた。
26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 16:03:52.43 ID:Su5flL8x0
翌日、放課後。
ガチャ
唯「ちょりーっす」
澪「おう」
律「うぃーっす」
唯「ムギちゃんはまだ来てないの」
澪「うん、まだ」
唯「そういえばさ、
昨日のムギちゃんなんか変だったけど、
どうだった? 今日は」
澪と律と紬は3人とも同じクラス(1年2組)である。
律「今日は今日でまた……なあ」
澪「え? ああ」
唯「えーなになに?」
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 16:10:53.18 ID:Su5flL8x0
澪「昨日ムギが私と同じ小説買ったんだよ。
で、今日は一日中、それを貪るように読んでた。
授業中も、休み時間も」
唯「へえ~」
律「それはそんなに熱中するような本なのか?」
澪「いや、私もまだ最初の方しか読んでないし……
ていうか熱中するかどうかは人それぞれじゃない?」
唯「ふうん……で、それどういう小説なの?」
澪「16歳の女子高生の、初々しい初恋を描いた小説だよ。
引っ込み思案な少女のひたむきな片想いの話……って
あらすじには書いてあった」
律「ほう」
唯「ボーッとしてて、演奏も手につかない……
恋愛小説……片想い……
それに熱中するムギちゃん……
もはや導き出される答えはひとつ!!」
澪「いや唯、それは私も考えたけど……短絡的すぎるぞ」
唯「そうかなあ、これ以外ないと思うけど」
29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 16:14:08.25 ID:Su5flL8x0
澪「何にせよ、ムギの口から直接聞かないことにはさ……」
唯「んー、そっか」
律「なあなあなんだよ、
何を2人で分かった気になってるんだよ、
教えてくれよ」
澪「落ち着け」
唯「でも、どうやって聞き出す?」
澪「うーん……」
ガチャ
紬「遅れてごめんなさい!」
唯「あ、きた」
澪「よ、よう」
紬「今お茶の用意するわね♪」
唯「……なんかゴキゲンだね」
澪「……」
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 16:20:31.20 ID:Su5flL8x0
紬「そうだわ澪ちゃん、この小説とっても面白かった」
紬はカバンから例の小説を取り出した。
澪「ああ……今日一日中それ読んでたよな」
紬「うん、読み出したら止まらなくなっちゃって……
なんていうのかな、
主人公の気持ちに共感できることばっかりで」
澪(共感……)
紬「片想いの切ない気持ちがすっごくリアルで」
唯(切ない……)
紬「最後、想い人と結ばれたときは私まで幸せな気分になったわ」
澪「幸せ……ていうかオチを言うな!
私まだ読んでないのに」
紬「あ、ご、ご、ごめんなさい!
私ったらついテンションが上がっちゃってうっかり……」
澪「ああ、いやまあ、いいんだけどね……」
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 16:26:54.17 ID:Su5flL8x0
律「…………ああ、そういうことか」
紬「? なあに?」
律「ムギ、好きな人いるんだろ!」
澪「こら――――っ!!」
紬「え? え? 好きな人……!?」
澪「あ、ち、違うんだ! 唯に好きな人がいて、な、唯!」
唯「え、ああああ、うん、そうなんだ! 実はね!」
紬「へえ、そうなの」
唯「それで、澪ちゃんに色々とアドバイスもらってたとこなんだー、
あはははは……」
紬「へえー」
澪「律……ちょっとこっちに来なさい」
律「はい……」
33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 16:30:46.05 ID:Su5flL8x0
音楽室の隅っこ。
澪「おい……あんなダイレクトに聞いたらダメだろ」
律「でもそれが一番手っ取り早いじゃん!」
澪「台無しになっちゃうだろ、色々と」
律「何がだよ、気にしすぎだよ」
澪「おまえが気にしなすぎるんだよ」
紬「あの二人は何を話しているのかしら」
唯「さ、さあ……」
紬「ところで、唯ちゃんの好きな人って誰なの?」
唯「え、えーと……えー……
ちゅ、中学の時に同じクラスだった人で……」
紬「へえ」
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 16:37:20.82 ID:Su5flL8x0
唯「い、今は別の高校でサッカーやってて……」
紬「その人とは仲が良いの?」
唯「う、うーん……電話とかメールとかしたり……
あとサッカーの試合観に行ったりとかして……」
紬「そうなんだ。
付き合ったりとかはしないの?」
唯「それを澪ちゃんに相談してたとこだよ、うん」
紬「あら、そうだったの」
唯「でもムギちゃんがこんな話に乗ってくるなんて珍しいね。
まあ興味あるか~、高校生なら誰でも」
紬「え、あ、うん、そうね……」もじもじ
唯「……?」
紬「興味あるっていうか~、その、……」
唯「もしかしてムギちゃん……」
紬「……」
40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 16:41:05.12 ID:Su5flL8x0
唯「ははーん」
紬「……、……」
唯「ムギちゃんも好きな人がいたりして……?」
紬「…………」もじもじ
唯「誰にも言わないから教えて、ね、ね」
紬「でもそんな……いない、いないわよ、うん」
唯「ウソだー、絶対いるでしょー……」
紬「いないってばあ……」
唯「誰にも言わないからさ……
いるかいないかだけ教えて!
それ以上は突っ込まないから!」
紬「ええ……」
唯「いる?」
紬「……」
唯「いるんだよね?」
紬「……………………」こくん
42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 16:45:31.20 ID:Su5flL8x0
唯「!!!!」
紬「だ、誰にも言わないでね……」
唯「う、うん……安心して」
(まさかホントにいるとは思わなかった……)
紬「絶対秘密よ、ねっ」
唯「うん、大丈夫。私、口は堅いから」
紬「そう、ならいいんだけど……」
唯「恋に悩んだときはいつでも言ってね、
相談くらいなら乗るから」
紬「う、うん……ありがとう」
澪「あの二人は何を話しているんだろ」
律「よくは分からないけど
問題の確信に迫るような会話をしている気がする」
43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 16:50:06.87 ID:Su5flL8x0
唯「……」チラチラッ
澪「唯のアイコンタクト……」
律「そろそろテーブルに戻るか……」
律「よ、よう、何の話してたんだ」
唯「なんでもないよー、ね、ムギちゃん」
紬「ええ、なんでもないわ。
りっちゃんと澪ちゃんこそ、隅っこで何の話してたの?」
澪「こっちこそ何でもないよ」
唯「アヤシイね」
澪「なんでもいいだろ、じゃあ早く練習するぞ」
唯「ふぇーい」
紬「あ、ごめんなさい、私その前にお手洗いに……」
律「おう」
紬「すぐ戻るから……」
ガチャ
44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 16:53:48.91 ID:Su5flL8x0
澪「……」
律「……」
澪「……で?」
唯「ムギちゃん、好きな人いるんだって」
律「おお、やっぱりか」
唯「でもそれ以上のことは分からないよ」
澪「いや、それだけでも大手柄だ、唯。
ムギが悩んでたっぽいのはこのことで決まりだな」
律「いやあ、でもムギがねえ、片想いねえ」
澪「想像もつかないな……相手が誰なのか」
唯「うーん……女子校だから男の人とは縁遠いはずなんだけど」
律「校内で男っつったら」
澪「教師?」
45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 16:59:21.78 ID:Su5flL8x0
律「男の教師といえば……」
唯「古典の豊崎先生、物理の日笠先生、英語の佐藤先生、
数学の竹達先生……あとは~」
律「オッサン教師ばっかじゃん」
澪「流石に恋愛対象には……」
唯「あ、生物の米澤先生は?」
澪「えー、あの人は若いけど……
なんかみんなから嫌われてんじゃん。
生徒のこと変な目で見たりさ」
唯「うーん、じゃあダメか」
律「いや……ムギのやつ、マゾっ気があるから……
米澤から変な視線を送られているうち、それが快感に変わり、
恋が芽生え……」
澪「嫌すぎるわ」
48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 17:03:52.88 ID:Su5flL8x0
唯「うーん……あ」
澪「なんだ?」
唯「いやあ……
ムギちゃんって女の子同士の恋愛が好きだから……
そのー」
澪「ムギ自身も女の子が好き……ってことか?」
唯「考えられない?」
澪「可能性としちゃ捨てきれないけど……
同性を好きだった場合、相手は誰になるんだろうな」
唯「……」
律「……」
澪「?」
唯「……」
律「……」
澪「え、私!?」
51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 17:10:28.55 ID:Su5flL8x0
唯「いやあ、だって」
律「澪って、ムギには優しいし」
澪「ええ? でも、優しいっていうかそれは……」
唯「いやいや、りっちゃんや私に対しては厳しいのに、
ムギちゃんにだけ優しいんだよ?
勘違いされても仕方ないよ」
澪「それはちが……」
律「昨日だって、同じ小説を買ったのも」
唯「澪ちゃんと共通の話題を作るため……?」
澪「嘘!? うそだよな、そうだと言ってくれ……」
律「いやあ、でもこうして考えてみると」
唯「真実としか思えなくなってくるよね」
律「全部つじつまが合うもんな」
澪「うそだあああ!」
54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 17:17:26.69 ID:Su5flL8x0
唯「まあまあ、あくまでも仮説だから」
律「ただし現時点でもっとも有力な仮説」
澪「……うう……」
唯「うーん、他にムギちゃんが好きになりそうな人は……」
澪「なんていうか、こんなこと考えても意味ないんじゃ……
ムギの交友関係はよく分かんないし……」
唯「まあそうだねえ、
お金持ちの家には色々と交流があるだろうし」
律「金持ち同士の恋愛か、私らが入れる問題じゃないな」
唯「『ああ紬さん……僕はこんなにも君を愛しているのに……!
僕らには決められた許嫁がいるんだ……!』」
律「『親が決めた結婚なんて無視すれば良いわ……!
私を連れて一緒に逃げてください、地の果てまでも……!』」
唯律「みたいな感じ」
澪「すごい偏見だな」
55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 17:21:37.28 ID:Su5flL8x0
律「でもま、ムギが誰を好きかは
やっぱ本人に聞かないと分かんないか」
澪「そうだなー、そこは唯がムギに……」
ガチャ
紬「私がどうかした?」
律「うおう!」
澪「ななななななななあんでもないですよ!?」
紬「あらそう?
私の名前を呼ばれた気がしたんだけど」
律「いやー違うんだ、
そろそろ田舎では麦を収穫してるのかなってさ、あはは」
紬「ふうん、そうだったの」
唯「あはは……」
澪「じゃあ、れ、練習しようか。うん」
紬「あ、澪ちゃん」
澪「ん?」
56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 17:25:38.93 ID:Su5flL8x0
紬「部活が終わったら……ちょっと残ってもらえないかしら」
唯「!!」
律「!?」
澪「……え?」
紬「話したいことがあって……
あ、時間がないならいいんだけど……」
澪「え、あ、あー、いや大丈夫だ、大丈夫、うん大丈夫」
紬「そう? 良かったわ、じゃあ……よろしくね」
澪「………………うん」
律「あーちょっとトイレ行きたくなっちゃったなー!!
なあ唯!!」
唯「そうだね!! ちょっと紅茶飲みすぎちゃったねー!!」
紬「あら、今日は紅茶だしてないけど」
律「ほらトイレ行こうぜ!! ほら澪も!!」
澪「え、あ、おう!!」
唯「ちょっと待っててねムギちゃん!!」
ガチャ
59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 17:30:53.47 ID:Su5flL8x0
トイレ。
律「おい、どういうことだこれは……」
唯「ムギちゃんが澪ちゃんを……
話があると言って……
部活後に居残らせる……!」
律「急展開! 急展開だぞ!」
澪「ばか、決めつけるのは早すぎる!!
全然関係ない話かも知れないだろ……」
律「フッ……そんなふうに自分に言い聞かせるのはよせ」
唯「どう考えても告白じゃん。
私の仮説は当たってたね」
澪「ええっ、で、でも……」
律「いやーこれは告白だよ、
百人中百人に聞いても告白だと答えるね」
澪「いや確かにそういうシチュエーションかも知れないけどさあ……」
61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 17:35:03.03 ID:Su5flL8x0
律「うん、まあ澪の言うとおりさ、
告白じゃなくて全然関係ない話をしたいだけかも知れないよ」
唯「でも告白という恐れも捨てきれないわけだし」
律「告白された場合にどうするかを決めよう」
澪「どうするか、って……」
唯「告白にOKする……は、ないよね」
澪「そりゃまあ……私は同性は好きじゃないし」
律「とすると、ムギの告白を断る、か……
しかしその場合、ムギをなるべく傷つけず、
部活内での調和が崩れないようにしなければならない!」
澪「ええ、難しいなあ……」
唯「澪ちゃんならできるよ、
口は微妙に達者じゃん」
澪「その褒め方、引っかかるなあ」
65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 17:42:05.93 ID:Su5flL8x0
律「ともかく、なんて断るかだ」
澪「うーん、そうだなあ……まあ無難に……
『ムギの気持ちはうれしいけど、
そういう気持ちで接することはできないよ……ごめん』」
唯「ううん、いいの……気持ちを伝えられただけで満足だから」
澪「うん……でも、ムギは私の大事な友達だから。
友達としてなら……一緒に、いられるから……」
唯「……ありがとう、澪ちゃん……」
律「おー、唯のモノマネ似てるな~!」
唯「でしょでしょー!」
澪「唯のモノマネより私の断り方に対する評価をお願いします」
律「え、ああ、いいんじゃないか?
無難すぎる気はするけど」
唯「まあ及第点って感じかな~」
澪「厳しいなお前ら」
66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 17:47:36.36 ID:Su5flL8x0
律「じゃあ音楽室に戻るか」
澪「そ、そうだな……」どきどき
唯「緊張してるの?」
澪「ああ……告白って、
する側だけじゃなくてされる側も緊張するもんなんだな」
唯「ムギちゃんの方がもっと緊張してるよ」
澪「まあそうなんだろうけど……」
律「おいおい、告白されるとは限らない……って言ってたの澪だろ、
なんでお前が一番その気になってんだよ」
澪「し、仕方ないだろ……!」
3人は音楽室に戻り、
紬とともに練習を始めた。
しかし3人……とくに澪はまったく練習が手につかず、
昨日の紬のように失敗を連発したのであった。
結局一度も完璧な演奏が出来ないまま、
部活の終了時刻を迎えたのであった。
69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 17:53:39.91 ID:Su5flL8x0
律「じゃ、じゃあ……私ら、帰るわ」
唯「頑張ってね」
紬「? うん、また明日ね」
澪「あ、ああ……」
唯「じゃあねー」
ガチャバタン
紬「……」
澪「……」
紬「……」
澪「……」
紬「……」
澪の顔をじいっと見つめる紬。
澪「……ムギ?」
紬「あ……いえ」
70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 17:59:18.62 ID:Su5flL8x0
さっきまで楽器の音に満たされていたとは思えないほどに
音楽室は静まり返っていた。
外はもう暗く、運動部の掛け声も聞こえない。
夜の静寂の中に、ただ2人。
澪「で、ムギ……話って」
紬「あ……うん」
澪「……」
紬「その、恥ずかしい話なんだけど……
笑ったりしないでね……」
澪「わ、笑わないよ。
ムギの真剣な気持ちを、笑うなんて……」
紬「ありがとう……あのね」
澪「……うん」
紬「えっとね」
澪「うん」
72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 18:01:40.83 ID:Su5flL8x0
ちょっと中断
30分後か1時間後か1時間半後に再開します
84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 18:39:52.08 ID:Su5flL8x0
再開
87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 18:46:15.09 ID:Su5flL8x0
紬「何から話せば良いかな……」
澪「……あ、焦らずに話してくれれば良いから」
紬「うん……じゃあ、本題から先に言うわね」
澪「う、うん……」
紬「澪ちゃん……」
澪「はい……」
紬「私に眉の整え方を教えて欲しいの」
澪「ムギの気持ちはうれしいけど、
そういう気持ちで接………………え?」
紬「自分でも調べてみたんだけど、
やり方がよく分からなくって……」
澪「はァ」
紬「澪ちゃんの眉は綺麗だから、
そういうの詳しいかな、って」
澪「まァ」
90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 18:50:07.33 ID:Su5flL8x0
紬「……教えてくれる?」
澪「そ、それはもちろんいいけど。
でもなんでいきなりそんな……
あ、好きな人か……」
紬「!! ……唯ちゃんに聞いたの!?」
澪「あ、いや違うよ、
なんか最近ムギの様子がおかしかったからさ、
悩みとかあんのかな、好きな人でもできたかな、
ってみんなで話してたんだよ、うん」
紬「あ、そ、そうだったの……」
澪「ていうか、図星なんだな」
紬「…………う、うん」もじもじ
澪(可愛い……)
紬「だ、誰にも言わないでね……
唯ちゃんにはいっちゃたけど」
94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 18:56:02.28 ID:Su5flL8x0
澪「うん、まあ誰にも言わないけど……
好きな人ができたから、
おしゃれを頑張ってみようということか」
紬「うん、恥ずかしいけど……
まずは小さいとこからって思って」
澪「そのままでも充分可愛いと思うけど」
紬「え、そ、そんなこと……!」
澪「いやー、可愛いって。
まあムギがやりたいってんなら
教えられる範囲で教えてあげるけどさ」
紬「ありがとう、澪ちゃん」
澪「ところで、ムギの好きな人って誰なんだ?
もしかして軽音部の誰か?」
紬「あはは、何言ってるのよ澪ちゃん。
軽音部には女の子しかいないじゃない」
澪「え? ああ、そ、そうだったな……」
(私がズレてるのか……)
104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 19:04:36.25 ID:Su5flL8x0
紬「じゃあ今日はもう遅いから、
明日か、またお休みの日とかでいいかしら」
澪「そう? 別に今からでも良いけど」
紬「でも私は門限が……
そうだわ、澪ちゃん今からうちに来てくれない?」
澪「いいのか?」
紬「ええ、大丈夫よ。
ついでに晩ご飯も食べていって」
澪(ムギの家の晩ご飯……)
紬「澪ちゃん?」
澪「行かせていただきます」
紬「そう、良かった。
私、お友達を家に招いてご飯食べるの、
夢だったの」
澪「ムギの夢は聞いててときどき悲しくなるよ」
紬「じゃあ、いきましょうか」
澪「うん」
107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 19:08:16.14 ID:Su5flL8x0
琴吹家。
メイド「お帰りなさいませ、お嬢様」
メイド「お帰りなさいませ、お嬢様」
メイド「お帰りなさいませ、お嬢様」
メイド「お帰りなさいませ、お嬢様」
メイド「お帰りなさいませ、お嬢様」
メイド「お帰りなさいませ、お嬢様」
メイド「お帰りなさいませ、お嬢様」
メイド「お帰りなさいませ、お嬢様」
メイド「お帰りなさいませ、お嬢様」
メイド「お帰りなさいませ、お嬢様」
紬「ただいま」
澪「開店してすぐの百貨店に入った時のような気分だ」
113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 19:14:08.35 ID:Su5flL8x0
メイド「お荷物をお持ちいたします」
紬「ありがとう」
メイド「お連れ様も」
澪「え、あ、じゃあお願いします」
紬「私の部屋はこっちよ。
この廊下を真っすぐいって、
3番目の階段を上がって
左に曲がった突き当たりよ」
澪「案内がないと迷いそうだな。
それにしても広い家」
紬「そうかしら?」
澪「うん、充分広いよ」
紬「前に住んでたとこはここの3倍の広さで、
それくらいが私としては調度良かったんだけど」
澪「……」
紬「あ、ここが私の部屋よ」
ガチャ
澪「お邪魔しまーす……」
117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 19:19:20.49 ID:Su5flL8x0
紬の部屋。
紬「どうしたの? 澪ちゃん。
早く入って」
澪「う、うん……」きょろきょろ
(すごい部屋……)
紬「なあに、きょろきょろしちゃって」
澪「あ、いやなんでもないんだ。
ごめんごめん」
紬「晩ご飯は、あと1時間くらいだから。
それまで教えてもらって良いかしら?」
澪「うん、いいよ。
じゃあ鏡台の前に座って……」
紬「はいっ」ビシッ
澪「そんな力いれちゃダメだよ。
リラックスして、特に顔」
紬「うん」
119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 19:26:11.23 ID:Su5flL8x0
澪「ムギの場合、眉が濃いから抜くのが良いかもな」
紬「抜くの? 痛くない?」
澪「大丈夫大丈夫。ほら、これで挟んで……ちょいっと」
紬「あっ……」
澪「ほら、動くな……」
紬「ん……」
澪「……痛いか?」
紬「大丈夫……あん」
澪「こっちの方も……」
紬「……ああっ……」
澪「もっとよく見せて……」
紬「あ……」
澪「とまあこういうふうに」
紬「よく分かったわ」
121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 19:29:12.72 ID:Su5flL8x0
澪「自分でもやってみな」
紬「ええ……」
コンコン
紬「? 誰かしら?」
ガチャ
斉藤「お嬢様、お食事の時間でございます。
お連れ様のぶんもございますので、どうぞ」
澪「あっ、はい、ありがとうございます」
斉藤「……お嬢様、何をしてらっしゃるので?」
紬「あ、貴方には関係の無いことです!
早く下がりなさい!」
斉藤「はい、それでは失礼いたします」
紬「も、もう……」
澪「……」
123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 19:31:53.38 ID:Su5flL8x0
紬「? どしたの?」
澪「あ、いやー……
眉いじるのは食事のあとのほうが良かったかな、
って思って」
紬「ああ、大丈夫よ、前髪で隠れるから」
澪(じゃあ眉整える意味ないんじゃ)
紬「じゃあご飯食べに行きましょ、澪ちゃん」
澪「ん、ああ……」
澪(眉のことなんかどうでも良い……
問題は……さっきの……
執事さんが来た時のムギの反応……!)
126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 19:38:58.10 ID:Su5flL8x0
食事部屋。
澪「……」きょろきょろ
紬「どうしたの、またきょろきょろして」
澪「いや、こんな広いのに、
私達しかいないなんて……」
紬「ああ、ここを使うのは琴吹家の人間だけだから。
メイドたちは違う場所で食べてるわ」
澪「ああ、そう」
ガチャ
斉藤「お嬢様、もういらしていましたか」
紬「おっ……遅いわよ、斉藤……!
こちらには客人もいるんですからね」
斉藤「申し訳ございません」
テーブルの上に食事を並べていく斉藤。
そしてそれを赤い顔で見つめる紬。
澪「……」
135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 19:45:41.92 ID:Su5flL8x0
斉藤「お食事の用意が整いました」
紬「ならもう出ていってちょうだい、
澪ちゃんと二人で食べるから」
斉藤「はい、ではごゆっくり……」
ガチャバタン
紬「ごめんなさいね、うちの執事ったらグズで……」
澪「ああ、いや……」
紬「じゃあ食べましょうか、いただきます」
澪「いただきます」
紬「お口にあうかしら?」
澪「うん、おいしいよ」もぐもぐ
紬「そう、良かった」もぐもぐ
澪「あのさあ」
紬「?」
136 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 19:50:49.40 ID:Su5flL8x0
澪「間違ってたら申し訳ないんだけど」
紬「なあに?」もぐもぐ
澪「ムギの好きな人ってさっきの執事さん?」
紬「ぶーっ!!」
澪「うわ、きたなっ!」
紬「み、澪ちゃんがいきなり変なこと言うからっ!!」
ガチャ
斉藤「どうかなさいましたかお嬢様!」
紬「なんでもないから来ないでっ!」
澪「顔真っ赤だぞ」
紬「うるさいっ!」
斉藤「では失礼いたします」
ガチャ
紬「はあ……」
138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 19:56:16.66 ID:Su5flL8x0
澪「……」
紬「いつ気づいたの」
澪「……ついさっき」
紬「なんで気づいたの」
澪「……見てたら分かった」
紬「そんなに露骨にアレだった?」
澪「アレだった……
ていうかアレじゃあ本人だって気付くんじゃ……」
紬「そ、それは言わないで……」
澪「……でもさあ、なんで執事さんなんだ?
ムギが好きだって言うんならそれで良いんだけどさあ、
歳だって離れてるし……」
紬「だ、だって……」
澪「だって……何?」
145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 20:02:57.90 ID:Su5flL8x0
紬「そりゃ……確かに斉藤はただの執事で、
歳も離れてるけど……」
澪「うん」
紬「昔からお父さんはあんまり家にいないし、
一人っ子だし……
家にいるときはずっと斉藤と一緒にいたの」
澪「うん」もぐもぐ
紬「でもそれも小さい時だけで……
大きくなるにつれて、
だんだんと距離を置くようになって。
こっちからは必要最低限のことしか
話しかけなくなったし、
斉藤の方もそれを察して
私に対してあまり干渉しなくなったわ」
澪「反抗期だね」
紬「まあそんなものね。
で、そんな状態が何年も続いたわ」
澪「ほう」もぐもぐ
150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 20:10:03.72 ID:Su5flL8x0
紬「で、ある日……
ていうか何ヶ月か前なんだけど」
澪「うん」もぐもぐ
紬「ライブでオリジナル曲をやることになったわね」
澪「そうだな」
紬「私は作曲の心得があったから、
曲を書くのを引き受けたけど……
やっぱり一人じゃ上手くできなかったのよ」
澪「もしや、その時に手を貸してくれたのが」
紬「斉藤だったわ」
澪「……」
紬「私は数年ぶりに、
斉藤と必要最低限以上に近づいて……
会話をして……
つきっきりで作曲の手ほどきをしてくれたわ、
夜遅くまで」
澪「それで惚れた?」
153 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 20:18:15.52 ID:Su5flL8x0
紬「まあ、そうね……
斉藤と一緒にいるうち、
昔のこと思い出したりして……
それで、それからも意識するようになって」
澪「ほー」
紬「あとその、
作曲できるとこもすごいなー、なんて……
あ、何いってんだろ私……」
澪「ふうん……
ムギが斉藤さんを好きなのは分かったよ。
でもさ、さっきみたいに冷たくしたりしたらダメじゃんか」
紬「そ、それは分かってるんだけど……
どうにも恥ずかしくて……」
澪「素直になれない、か……分かるよ、うんうん」
紬「澪ちゃんも恋したことあるの?」
澪「ないけど?」
紬「あ、そう……」
156 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 20:24:48.94 ID:Su5flL8x0
澪「それで、ムギは斉藤さんと付き合いたいのか?」
紬「でも恋仲には……
立場が立場だし、歳も……」
澪「じゃあどうしたいんだ?」
紬「……想いを伝えて、
また昔みたいに仲良く出来れば、それでいいわ。
……ううん、昔みたいじゃなくて、
16歳の私と……」
澪「16歳の自分、か……
じゃあ自分が成長したとこを見せないとな」
紬「そうね……
どうすればいいかしら」
澪「うーん……」
ガチャ
斉藤「お嬢様、お食事は済まれましたか?」
紬「は、入るなっていってるでしょお!」
澪「……」
160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 20:31:57.97 ID:Su5flL8x0
澪「……じゃあまあ、
この話はこのへんにしとくか……」
紬「そ、そうね……
ありがとう、聞いてくれて。
やっぱり澪ちゃんって頼りになるわ」
澪「そ、そうかな」
紬「唯ちゃんが恋愛相談するのも分かるわ」
澪(信じてたのか……)
食事の後、
澪はふたたび紬の部屋で
眉の整え方を教えてやり、
おみやげにお菓子をいっぱいもらって
琴吹家を後にした。
163 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 20:38:41.27 ID:Su5flL8x0
翌日、放課後。
ガチャ
唯「ちょりーっす」
律「お、唯」
澪「よう」
紬「こんにちは」
唯「……」
澪「どした?」
唯「…………ああ、ムギちゃんか。
なんか違和感あると思ったら……眉毛が」
紬「似合う?」
唯「うん、可愛いよ。いいんじゃない?」
紬「そう、ありがと」
169 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 20:45:43.90 ID:Su5flL8x0
澪「唯。さっき3人で話てたんだけどな」
唯「なに?」
澪「今度のライブ、絶対成功させような」
唯「そりゃー当然だよ」
澪「軽音部のためだけじゃなく、ムギのためにも」
唯「なんでムギちゃんのため?
ま、まさか……」
澪「そう、そのまさかだ」
唯「ムギちゃんの余命がわずかで、
学園祭までしか生きられないとか……」
澪「本気で言ってるのか」
律「あーもう、ムギの恋を叶えるためってことだよ、唯」
唯「ムギちゃんの恋?」
170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 20:50:51.81 ID:Su5flL8x0
澪「ムギは自分ちの執事の斉藤さんが好きなんだって」
唯「ええっ、そうだったの!?」
紬「…………」こくん
澪「そう、幼いころからムギの面倒を見てきた斉藤さんに、
ライブを通してムギの成長した姿を見せる!
そして想いを伝える……という計画だ。
名づけてラブライブプロジェクト」
律「すげえ言いにくい」
唯「ふうん……
それにしても執事さんかー、
なんかムギちゃんらしいな」
律「まーそのへんの男と恋愛するってイメージはないな」
紬「も、もう、2人とも……」
澪「ほら、そういうことだから、練習するぞ」
唯「よし、やろう!」
律「ムギのためにも!」
紬「みんな……」
171 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 20:59:54.97 ID:Su5flL8x0
唯「私、ムギちゃんのこと応援するから!」
律「私も応援するぞ、絶対いいライブにしような!」
澪「頑張ろう、ムギ」
紬「ありがとう……
みんなで良いライブにしよう」
唯「うん!」
律「よーしいくぞー、
ワン・ツー・スリー・フォー!」
その日から、4人はひたすら練習に打ち込んだ。
ライブを成功させるために。
紬のが想いを伝えられるように。
学園祭が近づくにつれて、
4人の演奏は確実に磨きがかかっていった。
特に紬の技術の向上は目を見張るものがあった。
恋する力はスゴイ、澪はそう思った。
そして時は流れ学園祭当日。
172 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 21:08:11.13 ID:Su5flL8x0
講堂、舞台袖。
唯「おー、お客さんいっぱいいるよ」
律「ほんとだ、こんな大勢の前でやるのか」
唯「ちょっと緊張しちゃうねえ」
律「そうだなあ、流石に」
唯「澪ちゃんは大丈夫? 緊張しない?」
澪「え、ああまあ……
確かに緊張はしてるけど……
私より……」
唯「?」
紬「がくがくがくがくがくがくがくがく」
律「ムギ……」
181 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 21:15:12.16 ID:Su5flL8x0
唯「だ、大丈夫? ムギちゃん」
紬「だだだだだだだだだだだいひょうふひょ」
律「まったく大丈夫そうに見えねえ」
澪「しっかりしろよ、斉藤さん来てるんだろ」
紬「た、た、たぶん」
唯「たぶん?」
紬「うん、今朝スキを見て斉藤のテーブルの上に
招待券を置いといたから、
たぶんそれを見てると思うんだけど……」
律「ば、ばか! なんで手渡しにしなかったんだ!!」
紬「そ、そんなの…………恥ずかしい」
澪「自分を見ているようだ」
律「もう、来てなかったら意味ないじゃないか」
紬「うう……」
184 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 21:23:30.13 ID:Su5flL8x0
唯「大丈夫だよ、ムギちゃん!」
紬「え……」
唯「斉藤さんは昔からずっと
ムギちゃんのこと見ててくれてたんでしょ?」
紬「うん……」
唯「じゃあムギちゃんの考えだって、きっとお見通しだよ。
机の招待券にも気づいて、ここに来てくれてるよ」
紬「そ、そうかしら……」
唯「そうだよ。
信じてあげなきゃ、斉藤さんを。
それから、自分自身を」
紬「自分自身を……そうね。
ありがとう、唯ちゃん」
放送『次は、軽音楽部によるバンド演奏です……』
律「お、きたな」
澪「ようし、ライブラブプロジェクト、最終段階だ!」
唯「ラブライブじゃなかったっけ」
187 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 21:29:06.35 ID:Su5flL8x0
幕が上がり、
客の視線と歓声が4人にぶつけられる。
唯「……」
澪「……」
律「……」
紬「がくがくがくがく」
唯「ムギちゃん」
紬「?」
唯「みんな、ムギちゃんが頑張ってたの知ってるから」
紬「……」
唯「だから、大丈夫だよ!」
紬「……うん」
律「……ワンツースリーフォー!」
190 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 21:37:53.97 ID:Su5flL8x0
ジャカジャカジャージャカジャカジャカ
紬(斉藤……)
ジャンジャカジャカジャカジャンジャカジャカ
紬(ねえ斉藤……)
君を見てるといつもハートドキドキ♪
紬(この講堂のどこかで、私を見ていてくれてるのかしら)
揺れる想いはマシュマロみたいにふわふわ♪
紬(もうあの頃の私じゃないわ)
いつも頑張る 君の横顔♪
紬(何も出来ずに泣いていた、あの頃の私じゃない)
ずっと見てても気づかないよね♪
紬(もうこんなに大きくなって)
夢の中なら二人の距離縮められるのにな♪
紬(できることだってたくさん増えたわ)
192 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 21:38:36.82 ID:Su5flL8x0
やべえ改めて見たら超読みづれえ
198 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 21:45:15.24 ID:Su5flL8x0
――――ああ神様お願い 二人だけのDream timeください
紬(仲間だってたくさんできた。
一人じゃできないことをたくさん知った)
――――お気に入りのうさちゃん抱いて
紬(その仲間たちと半年間一緒に過ごして、
私はうんと大きくなれたわ)
――――今夜もおやすみ
紬(斉藤、私はもうお嬢様じゃなくて)
――――ふわふわ時間 ふわふわ時間
紬(一人の女なのよ)
ジャーン♪
200 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 21:48:30.14 ID:Su5flL8x0
ワアアアアア………
パチパチパチパチパチパチ
紬「…………」
澪「みんな、ありがとー!」
ぐいっ
澪「ひゃっ……!」
どたん
澪「あたたたたー……」
紬「あ」
律「いっ」
唯「う……」
澪「えっ!?」
斉藤「Oh......」
202 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 21:55:32.42 ID:Su5flL8x0
――――
――――――――
――――――――――――
――――――――――――――――
音楽室。
澪「…………」
紬「…………」
澪「…………」
紬「…………」
澪「…………」
紬「…………」
唯「……どうする?」
律「どうにもならんだろ……」
205 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 22:02:37.61 ID:Su5flL8x0
澪はライブ終了時にすっ転んで
客にパンツを晒してヘコみ、
そして紬はそのせいで
ライブが台無しになってヘコんでいる。
唯「ま、まあ、元気だしてよ、2人とも……」
澪「……」
律「澪もムギも、立ち直れよ」
澪「……無理だよそんなの……」
律「いいじゃないか、
別に下着くらいさ、減るもんじゃなし」
澪「そういう問題じゃない!
私のせいでライブをダメにしてしまったんだ、
せっかくのライブを……」
紬「……」
澪「ごめんムギ、本当にごめん!!」がばっ
律「もー、何百回土下座すれば気が済むんだよ」
澪「それを決めるのはムギだよ……
ムギに許してもらうまでは何度でもやる」
208 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 22:07:58.60 ID:Su5flL8x0
紬「……」
唯「ほらムギちゃんもさ」
紬「……」
唯「澪ちゃんがこんなに真剣に謝ってるんだから、
いつまでもへそ曲げてないで」
紬「……」
唯「過去のことを気にしても仕方ないよ、
これからのことを考えよう」
律「お、良いこと言うなあ唯」
紬「コレカラノコト……?」
唯「そうだよ、告白するんでしょ?
斉藤さんに」
律「そうそう」
紬「無理よ、そんなの……相手は執事よ、
告白することさえ許されないわ」
律「自身をすっかり失ってらっしゃる……」
209 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 22:16:42.33 ID:Su5flL8x0
紬「そうよ、最初から無理だったのよ……
ライブも……告白も……
私に恋なんて……
人が生きる意味は……
地球ができて46億年……
そう人生など塵でしかない……」
澪「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」ガンガンガン
律「床に頭を打ち付けるのはやめろ」
唯「はあ、どうしよ……」
律「うーん……
ムギの気が収まるまで待つしか……」
コンコン
唯「? はーい、どうぞお」
ガチャ
斉藤「軽音楽部、でよろしかったでしょうか」
澪「さ、斉藤さん」
唯「え、この人が?」
212 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 22:23:13.24 ID:Su5flL8x0
律(オジイサンじゃないか……)
唯(ムギちゃんこういう趣味だったのか)
斉藤「お嬢様……」
紬「こ、来ないでちょうだい……
今の私は貴方に合わせる顔はないわ……」
澪「すみませんすみません私のせいで」ガンガンガン
斉藤「そんなことはございません、お嬢様。
私、お嬢様の演奏を客席から拝見しておりました」
紬「……」
斉藤「確かにライブにはハプニングがございましたが、
それも予期できなかった事故、
この方が悪いと言うわけではございませぬ」
澪「ありがとうございますありがとうございます」ガンガン
紬「私は完璧なライブを見て欲しかったのよ……」
斉藤「私にとっては完璧なライブでございました」
紬「嘘……」
214 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 22:30:41.76 ID:Su5flL8x0
斉藤「嘘ではございません。
お嬢様が、あんな大勢の前で
立派に演奏をこなされたのです。
それ以上に何を望みましょう」
紬「……」
斉藤「それに、演奏された曲は
お嬢様がお書きになった曲でしょう」
紬「……斉藤も書いたでしょう」
斉藤「私はお嬢様の書いた曲を
バンド音楽向けに編曲しただけでございます。
あれは正真正銘、お嬢様の曲ですよ」
紬「……」
斉藤「聴衆は皆、お嬢様の曲に聞き惚れておりました。
私もその一人でございます」
紬「……」
斉藤「お嬢様はライブを成功させたのですよ」
紬「……」
216 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 22:37:57.88 ID:Su5flL8x0
斉藤「お嬢様……」
紬「……」
斉藤「どうか機嫌を……」
紬「……」
澪「すみませんすみません」ガンガン
斉藤「私は……どうすれば」
唯「それは斉藤さんが一番よく知ってるはずです!」
斉藤「!」
律「唯……!」
唯「だって、斉藤さんは昔からずっと
ムギちゃんの一番側に居たんですから」
斉藤「……そう……そうですね。
ありがとうございます、お嬢さん」
唯「はいっ」
218 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 22:42:56.58 ID:Su5flL8x0
紬に歩み寄る斉藤。
斉藤「お嬢様」
紬「……、…………!!」
そして斉藤は、
そっと紬を抱きよせて
頭を優しく撫でたのであった。
唯「おお……」
律「ダイタンだな」
紬「ななななななななななにをするんですか斉藤!!」
斉藤「昔より、お嬢様が拗ねられた際には
こうしておりました」
紬「わ、私はっ……拗ねてなんか……!
とにかく離しなさい!!」
律「顔真っ赤だぞー」
紬「うるさいっ!」
223 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 22:52:14.05 ID:Su5flL8x0
斉藤「知らないうちに大きくなられましたな」
紬「や、やめっ……」
斉藤「いや……大きくなったのは知っておりました。
しかし目で見るのと、こうして触れ合うのとでは
また印象が違うものですね」
紬「何を言って……」
斉藤「そして……目で見ても肌に触れても
分からないであろうお嬢様の成長が、
今日は感じることができました」
紬「……!」
斉藤「素晴らしいライブでしたよ、お嬢様」
紬「……」
斉藤「……大人になられましたな」ぎゅっ
紬「……っ」
唯律澪(私達はここにいて良いんだろうか)
226 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 22:58:37.31 ID:Su5flL8x0
斉藤「もう機嫌は直られましたかな」
紬「ええ……もういいわ」
斉藤「かしこまりました」
斉藤は紬を離した。
紬「……」
斉藤「お嬢様、皆様に言わねばならないことがあるでしょう」
紬「ええ。ごめんね、みんな……
特に澪ちゃん、ほんとは澪ちゃんが悪いわけじゃないのに……
その、私……」
澪「いやいいんだよ、気にしないでくれ」
律「デコから血がドバドバ出てるぞ」
紬「ありがとう、澪ちゃん……
あと、素敵なライブにしてくれて、ありがとう」
律「どういたしまして」
唯「こっちこそありがとうだよ、ムギちゃん」
227 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 23:03:49.55 ID:Su5flL8x0
斉藤「良い仲間を持たれましたな」
紬「ええ」
唯「それよりー、ムギちゃんこそ
斉藤さんに言うことがあるんじゃないのー?」
斉藤「ほう」
紬「ちょ、ゆ、唯ちゃん……!」
唯「ほらほらー言っちゃいなよー」
律「おい唯~そういうのやめろよぉ~」
澪「そうだぞ~かわいそーだろ~」
紬「すごく嬉しそうな顔してるわねみんな」
斉藤「お嬢様、私に言いたいこととは?」
紬「っ……」
唯「言っちゃえムギちゃん!」
229 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 23:09:31.44 ID:Su5flL8x0
澪「私達は外にでてようか」
律「そうだな。ほら唯」
唯「えー」
紬「ここにいてくださいお願いします」
澪「ムギって意外と意気地なしだな……」
紬「…………」
斉藤「…………」
紬「…………」
斉藤「……お嬢様?」
紬「えっと、その……」
斉藤「はい」
紬「私、斉藤が……」
唯「おっ」
232 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 23:16:22.47 ID:Su5flL8x0
紬「斉藤が……斉藤に……」
唯「お?」
紬「斉藤に……
もう、お嬢様って呼ばれるのは、嫌だわ」
斉藤「……」
唯「……」
澪「……」
律「なんだそりゃ」
紬「もう私お嬢様じゃないわ」
斉藤「そうでございますね」
紬「だから……
名前で、呼んで」
斉藤「かしこまりました、紬さま」
紬「……、…………ありがとう」
236 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 23:22:26.01 ID:Su5flL8x0
斉藤「これでよろしいのですか、紬さま」
紬「ええ…………充分よ」
斉藤「そうでございますか。
では私は、家の仕事がございますので、
これで失礼いたします」
紬「ええ」
斉藤「では」
ガチャバタン
唯「……」
澪「……」
律「てっきり告白するのかと思ったのに」
唯「そうだよ、拍子抜けだよ」
紬「いいのよ、今はあれで……
それに愛の告白なんてする気はなかったわ。
私がもう子供じゃないってことを、
一人の女性だってことを分かってもらえれば、
それで良かったの」
唯「ふうん……?」
239 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 23:30:42.45 ID:Su5flL8x0
紬「今はスッキリしてるわ。
素直に仲良くなれそうな気がする」
唯「そっか、良かったね。ムギちゃん」
律「ええ話や……なあ澪」
澪「……そうだな」
唯「いーなー、私も恋とかしたいなー」
律「お、恋に恋するお年頃てやつか」
紬「ふふ、唯ちゃんならきっと素敵な恋ができるわよ」
唯「ほんとにー?」
紬「ええ……って、唯ちゃん好きな人いるんじゃ?
同じ中学だったサッカー部の」
唯「あっ」
お わ り
241 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 23:31:32.34 ID:Su5flL8x0
これでおしまい
前に斉藤→紬で書いたので
今度は紬→斉藤にした
オチは許せよ
244 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 23:34:11.55 ID:Su5flL8x0
>>243
斉藤「はあはあ、紬お嬢様っ……うっ!!」ドピュドピュ
紬「……」
唯「ムギちゃん!」ゆさゆさ
紬「はっ! な、何かしら?」
唯「それはこっちのセリフだよ。
ボーッとしちゃって、どうしたの?」
紬「あ、ボーッとしちゃってた……?」
唯「してたよー、すごくしてた。
何度呼んでも返事ないんだもん」
紬「あら、そう……ごめんなさい。
それで、私を呼んだ用件は何?」
澪「練習しようって言ってたんだ」
紬「ああそうね、そろそろしなきゃね」
律「うぉい」
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 15:12:02.00 ID:Su5flL8x0
澪「よし、じゃあ始めるぞっ」
唯「はーい」
紬「いいわよ」
律「いくぞー、ワンツースリフォー」
ジャカジャカージャッカジャカジャカジャカジャカ
澪(……あれ?)
律(なんか……)
唯(……変?)
ジャーン♪
9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 15:16:38.42 ID:Su5flL8x0
澪「……」
律「……」
唯「……」
紬「? どうしたの?」
澪「うーん、ムギ……
キーボードの音、だいぶずれてたぞ」
紬「え、ほ、ホントに? ごめんなさい……」
澪「いやそんな謝んなくてもいいけどさ」
律「でも珍しいな、ムギがこんなミスするなんて」
唯「具合悪いんじゃない?
さっきもボーッとしてたし……」
紬「う、ううん、大丈夫……」
澪「無理することないぞ、
体調悪いんなら遠慮なく休んでくれていいんだから」
紬「ほ、ほんとに大丈夫だから! もう一回やろ、もう一回」
澪「え、うん……」
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 15:22:34.10 ID:Su5flL8x0
しかしその日の演奏は散々なままで終わった。
紬「……ごめんなさい」
澪「いいっていいって、今日はたまたま調子が出なかっただけだろ。
また今度、いつもみたいに上手くやってくれればいいから」
紬「……うん」
律「澪ってムギには甘いよな、
私達の時はすげえ怒るクセに」
唯「日頃の行いの差じゃない?
ていうか『達』ってどういう意味」
紬「あ、私、戸締りしとくから……
みんなは先に帰ってていいわよ」
律「え、ああ、うん」
唯「えー、ムギちゃんも一緒に帰ろうよー」
澪「……ばか、ここは独りにさせてやれ」
律「じゃあな、ムギ」
紬「うん……また明日」
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 15:27:42.36 ID:Su5flL8x0
帰り道。
唯「今日のムギちゃん、おかしかったね」
澪「ああ、そうだなあ」
律「体調悪いようには見えなかったけど……」
澪「とすると、なんか悩みでもあるのか」
唯「悩みかー……」
律「でもムギに悩みごとなんて想像できねえな」
澪「それはムギに失礼だ……」
唯「もし悩みがあるとしたらさ、どんな悩みなんだろ」
澪「うーん……家のこととか?」
律「あー、金持ちの家って複雑そうだよなー」
澪「成績が落ちたとか」
律「それはないだろ、この前のテストでもクラスで上位だったし」
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 15:32:50.20 ID:Su5flL8x0
澪「また太っちゃったとか」
唯「そう? 別に太ったようには見えないけど」
澪「外見からは分からなくても、
1つ2つの数値の上下には過敏に反応してしまうのさ」
律「そうか……それがストレスになって……
太るのを気にするあまり食生活が乱れ……
そして摂食障害……入院……退学……」
澪「いきなり話が飛躍したな、
ていうか真面目に考えろ」
律「考えろっつってもなあ」
唯「ムギちゃんから直接聞かないことには分かんないよ」
澪「まあ、そうだけどさ……」
紬「みんなーっ!」たったった
唯「あ、ムギちゃん」
澪「噂をすれば……」
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 15:40:05.92 ID:Su5flL8x0
紬「はあはあ……唯ちゃん、これ」
唯「あ、携帯!」
紬「部室に忘れてたわよ」
唯「ほんと? ありがとう、ムギちゃん!」
紬「ううん、いいの。気にしないで」
澪(さっきの話は今はしないほうがいいな)
律「なあムギ、なんか悩みごt」
澪「オラァ!!」ボカッ
律「ゲフッ」
紬「? なあに?」
澪「いやーなんでもないなんでもない……
そうだ本屋寄ってかない? 本屋」
唯「お、いいね。確か今日は女性自身の発売日だし」
澪「そんなん読んでんのかよ」
唯「憂がね」
澪「……」
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 15:45:28.86 ID:Su5flL8x0
本屋。
律「澪は何買うんだ」
澪「好きな作家の新刊が出ててさ、それをね」
紬「へえ」
澪「あー、あったあった」
律「ほう、タイトルは……『16歳のはつこい』……
いやあいかにも澪が好きそうな」
澪「う、うるさい……! いいだろ別に」
紬「……」
澪「ん? ムギ?」
紬「……」
律「またボーッとしてら……おい、ムギ」
紬「……はっ!」
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 15:52:06.19 ID:Su5flL8x0
澪「どうしたんだよ、またボーッとしてたぞ」
紬「そ、そうだったかしら、ごめんなさい……
それよりこれ、素敵なタイトルの本ね。
私も買おうかしら」
律「おお、ムギも澪ワールドにハマるか」
澪「なんだ澪ワールドって。
ていうかムギも恋愛小説とか好きなんだな」
紬「好きっていうか、その……
いいかな、って思って」
澪「ふうん」
律「ところで唯はどこいった」
澪「女性自身買ってんじゃないか?
……ん?」
紬「……」
手に取ったハードカバーの表紙をじっと見つめる紬。
澪にはその紬の表情が、何か普通ではないように見えて……。
澪「…………」
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 15:59:26.82 ID:Su5flL8x0
唯「あ、みんないた」
澪「買ったのか、女性自身」
唯「うん」
律「憂ちゃん、そういうの好きなんだな……」
唯「そうなんだよねー。
休日なんかはお煎餅かじりながら
楽しそうにワイドショーの芸能コーナー見てるよ」
律「憂ちゃんの育てかたを見直した方がいいぞ」
澪「じゃあ、私達も会計済ませるか」
紬「え、あ、そうね……」
唯「りっちゃんは何も買わないの?」
律「私はいいや。お金ないし」
唯「ふうん」
その日、3人は本を買い、
あとは何ごともなくそれぞれの家路についた。
26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 16:03:52.43 ID:Su5flL8x0
翌日、放課後。
ガチャ
唯「ちょりーっす」
澪「おう」
律「うぃーっす」
唯「ムギちゃんはまだ来てないの」
澪「うん、まだ」
唯「そういえばさ、
昨日のムギちゃんなんか変だったけど、
どうだった? 今日は」
澪と律と紬は3人とも同じクラス(1年2組)である。
律「今日は今日でまた……なあ」
澪「え? ああ」
唯「えーなになに?」
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 16:10:53.18 ID:Su5flL8x0
澪「昨日ムギが私と同じ小説買ったんだよ。
で、今日は一日中、それを貪るように読んでた。
授業中も、休み時間も」
唯「へえ~」
律「それはそんなに熱中するような本なのか?」
澪「いや、私もまだ最初の方しか読んでないし……
ていうか熱中するかどうかは人それぞれじゃない?」
唯「ふうん……で、それどういう小説なの?」
澪「16歳の女子高生の、初々しい初恋を描いた小説だよ。
引っ込み思案な少女のひたむきな片想いの話……って
あらすじには書いてあった」
律「ほう」
唯「ボーッとしてて、演奏も手につかない……
恋愛小説……片想い……
それに熱中するムギちゃん……
もはや導き出される答えはひとつ!!」
澪「いや唯、それは私も考えたけど……短絡的すぎるぞ」
唯「そうかなあ、これ以外ないと思うけど」
29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 16:14:08.25 ID:Su5flL8x0
澪「何にせよ、ムギの口から直接聞かないことにはさ……」
唯「んー、そっか」
律「なあなあなんだよ、
何を2人で分かった気になってるんだよ、
教えてくれよ」
澪「落ち着け」
唯「でも、どうやって聞き出す?」
澪「うーん……」
ガチャ
紬「遅れてごめんなさい!」
唯「あ、きた」
澪「よ、よう」
紬「今お茶の用意するわね♪」
唯「……なんかゴキゲンだね」
澪「……」
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 16:20:31.20 ID:Su5flL8x0
紬「そうだわ澪ちゃん、この小説とっても面白かった」
紬はカバンから例の小説を取り出した。
澪「ああ……今日一日中それ読んでたよな」
紬「うん、読み出したら止まらなくなっちゃって……
なんていうのかな、
主人公の気持ちに共感できることばっかりで」
澪(共感……)
紬「片想いの切ない気持ちがすっごくリアルで」
唯(切ない……)
紬「最後、想い人と結ばれたときは私まで幸せな気分になったわ」
澪「幸せ……ていうかオチを言うな!
私まだ読んでないのに」
紬「あ、ご、ご、ごめんなさい!
私ったらついテンションが上がっちゃってうっかり……」
澪「ああ、いやまあ、いいんだけどね……」
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 16:26:54.17 ID:Su5flL8x0
律「…………ああ、そういうことか」
紬「? なあに?」
律「ムギ、好きな人いるんだろ!」
澪「こら――――っ!!」
紬「え? え? 好きな人……!?」
澪「あ、ち、違うんだ! 唯に好きな人がいて、な、唯!」
唯「え、ああああ、うん、そうなんだ! 実はね!」
紬「へえ、そうなの」
唯「それで、澪ちゃんに色々とアドバイスもらってたとこなんだー、
あはははは……」
紬「へえー」
澪「律……ちょっとこっちに来なさい」
律「はい……」
33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 16:30:46.05 ID:Su5flL8x0
音楽室の隅っこ。
澪「おい……あんなダイレクトに聞いたらダメだろ」
律「でもそれが一番手っ取り早いじゃん!」
澪「台無しになっちゃうだろ、色々と」
律「何がだよ、気にしすぎだよ」
澪「おまえが気にしなすぎるんだよ」
紬「あの二人は何を話しているのかしら」
唯「さ、さあ……」
紬「ところで、唯ちゃんの好きな人って誰なの?」
唯「え、えーと……えー……
ちゅ、中学の時に同じクラスだった人で……」
紬「へえ」
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 16:37:20.82 ID:Su5flL8x0
唯「い、今は別の高校でサッカーやってて……」
紬「その人とは仲が良いの?」
唯「う、うーん……電話とかメールとかしたり……
あとサッカーの試合観に行ったりとかして……」
紬「そうなんだ。
付き合ったりとかはしないの?」
唯「それを澪ちゃんに相談してたとこだよ、うん」
紬「あら、そうだったの」
唯「でもムギちゃんがこんな話に乗ってくるなんて珍しいね。
まあ興味あるか~、高校生なら誰でも」
紬「え、あ、うん、そうね……」もじもじ
唯「……?」
紬「興味あるっていうか~、その、……」
唯「もしかしてムギちゃん……」
紬「……」
40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 16:41:05.12 ID:Su5flL8x0
唯「ははーん」
紬「……、……」
唯「ムギちゃんも好きな人がいたりして……?」
紬「…………」もじもじ
唯「誰にも言わないから教えて、ね、ね」
紬「でもそんな……いない、いないわよ、うん」
唯「ウソだー、絶対いるでしょー……」
紬「いないってばあ……」
唯「誰にも言わないからさ……
いるかいないかだけ教えて!
それ以上は突っ込まないから!」
紬「ええ……」
唯「いる?」
紬「……」
唯「いるんだよね?」
紬「……………………」こくん
42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 16:45:31.20 ID:Su5flL8x0
唯「!!!!」
紬「だ、誰にも言わないでね……」
唯「う、うん……安心して」
(まさかホントにいるとは思わなかった……)
紬「絶対秘密よ、ねっ」
唯「うん、大丈夫。私、口は堅いから」
紬「そう、ならいいんだけど……」
唯「恋に悩んだときはいつでも言ってね、
相談くらいなら乗るから」
紬「う、うん……ありがとう」
澪「あの二人は何を話しているんだろ」
律「よくは分からないけど
問題の確信に迫るような会話をしている気がする」
43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 16:50:06.87 ID:Su5flL8x0
唯「……」チラチラッ
澪「唯のアイコンタクト……」
律「そろそろテーブルに戻るか……」
律「よ、よう、何の話してたんだ」
唯「なんでもないよー、ね、ムギちゃん」
紬「ええ、なんでもないわ。
りっちゃんと澪ちゃんこそ、隅っこで何の話してたの?」
澪「こっちこそ何でもないよ」
唯「アヤシイね」
澪「なんでもいいだろ、じゃあ早く練習するぞ」
唯「ふぇーい」
紬「あ、ごめんなさい、私その前にお手洗いに……」
律「おう」
紬「すぐ戻るから……」
ガチャ
44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 16:53:48.91 ID:Su5flL8x0
澪「……」
律「……」
澪「……で?」
唯「ムギちゃん、好きな人いるんだって」
律「おお、やっぱりか」
唯「でもそれ以上のことは分からないよ」
澪「いや、それだけでも大手柄だ、唯。
ムギが悩んでたっぽいのはこのことで決まりだな」
律「いやあ、でもムギがねえ、片想いねえ」
澪「想像もつかないな……相手が誰なのか」
唯「うーん……女子校だから男の人とは縁遠いはずなんだけど」
律「校内で男っつったら」
澪「教師?」
45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 16:59:21.78 ID:Su5flL8x0
律「男の教師といえば……」
唯「古典の豊崎先生、物理の日笠先生、英語の佐藤先生、
数学の竹達先生……あとは~」
律「オッサン教師ばっかじゃん」
澪「流石に恋愛対象には……」
唯「あ、生物の米澤先生は?」
澪「えー、あの人は若いけど……
なんかみんなから嫌われてんじゃん。
生徒のこと変な目で見たりさ」
唯「うーん、じゃあダメか」
律「いや……ムギのやつ、マゾっ気があるから……
米澤から変な視線を送られているうち、それが快感に変わり、
恋が芽生え……」
澪「嫌すぎるわ」
48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 17:03:52.88 ID:Su5flL8x0
唯「うーん……あ」
澪「なんだ?」
唯「いやあ……
ムギちゃんって女の子同士の恋愛が好きだから……
そのー」
澪「ムギ自身も女の子が好き……ってことか?」
唯「考えられない?」
澪「可能性としちゃ捨てきれないけど……
同性を好きだった場合、相手は誰になるんだろうな」
唯「……」
律「……」
澪「?」
唯「……」
律「……」
澪「え、私!?」
51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 17:10:28.55 ID:Su5flL8x0
唯「いやあ、だって」
律「澪って、ムギには優しいし」
澪「ええ? でも、優しいっていうかそれは……」
唯「いやいや、りっちゃんや私に対しては厳しいのに、
ムギちゃんにだけ優しいんだよ?
勘違いされても仕方ないよ」
澪「それはちが……」
律「昨日だって、同じ小説を買ったのも」
唯「澪ちゃんと共通の話題を作るため……?」
澪「嘘!? うそだよな、そうだと言ってくれ……」
律「いやあ、でもこうして考えてみると」
唯「真実としか思えなくなってくるよね」
律「全部つじつまが合うもんな」
澪「うそだあああ!」
54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 17:17:26.69 ID:Su5flL8x0
唯「まあまあ、あくまでも仮説だから」
律「ただし現時点でもっとも有力な仮説」
澪「……うう……」
唯「うーん、他にムギちゃんが好きになりそうな人は……」
澪「なんていうか、こんなこと考えても意味ないんじゃ……
ムギの交友関係はよく分かんないし……」
唯「まあそうだねえ、
お金持ちの家には色々と交流があるだろうし」
律「金持ち同士の恋愛か、私らが入れる問題じゃないな」
唯「『ああ紬さん……僕はこんなにも君を愛しているのに……!
僕らには決められた許嫁がいるんだ……!』」
律「『親が決めた結婚なんて無視すれば良いわ……!
私を連れて一緒に逃げてください、地の果てまでも……!』」
唯律「みたいな感じ」
澪「すごい偏見だな」
55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 17:21:37.28 ID:Su5flL8x0
律「でもま、ムギが誰を好きかは
やっぱ本人に聞かないと分かんないか」
澪「そうだなー、そこは唯がムギに……」
ガチャ
紬「私がどうかした?」
律「うおう!」
澪「ななななななななあんでもないですよ!?」
紬「あらそう?
私の名前を呼ばれた気がしたんだけど」
律「いやー違うんだ、
そろそろ田舎では麦を収穫してるのかなってさ、あはは」
紬「ふうん、そうだったの」
唯「あはは……」
澪「じゃあ、れ、練習しようか。うん」
紬「あ、澪ちゃん」
澪「ん?」
56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 17:25:38.93 ID:Su5flL8x0
紬「部活が終わったら……ちょっと残ってもらえないかしら」
唯「!!」
律「!?」
澪「……え?」
紬「話したいことがあって……
あ、時間がないならいいんだけど……」
澪「え、あ、あー、いや大丈夫だ、大丈夫、うん大丈夫」
紬「そう? 良かったわ、じゃあ……よろしくね」
澪「………………うん」
律「あーちょっとトイレ行きたくなっちゃったなー!!
なあ唯!!」
唯「そうだね!! ちょっと紅茶飲みすぎちゃったねー!!」
紬「あら、今日は紅茶だしてないけど」
律「ほらトイレ行こうぜ!! ほら澪も!!」
澪「え、あ、おう!!」
唯「ちょっと待っててねムギちゃん!!」
ガチャ
59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 17:30:53.47 ID:Su5flL8x0
トイレ。
律「おい、どういうことだこれは……」
唯「ムギちゃんが澪ちゃんを……
話があると言って……
部活後に居残らせる……!」
律「急展開! 急展開だぞ!」
澪「ばか、決めつけるのは早すぎる!!
全然関係ない話かも知れないだろ……」
律「フッ……そんなふうに自分に言い聞かせるのはよせ」
唯「どう考えても告白じゃん。
私の仮説は当たってたね」
澪「ええっ、で、でも……」
律「いやーこれは告白だよ、
百人中百人に聞いても告白だと答えるね」
澪「いや確かにそういうシチュエーションかも知れないけどさあ……」
61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 17:35:03.03 ID:Su5flL8x0
律「うん、まあ澪の言うとおりさ、
告白じゃなくて全然関係ない話をしたいだけかも知れないよ」
唯「でも告白という恐れも捨てきれないわけだし」
律「告白された場合にどうするかを決めよう」
澪「どうするか、って……」
唯「告白にOKする……は、ないよね」
澪「そりゃまあ……私は同性は好きじゃないし」
律「とすると、ムギの告白を断る、か……
しかしその場合、ムギをなるべく傷つけず、
部活内での調和が崩れないようにしなければならない!」
澪「ええ、難しいなあ……」
唯「澪ちゃんならできるよ、
口は微妙に達者じゃん」
澪「その褒め方、引っかかるなあ」
65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 17:42:05.93 ID:Su5flL8x0
律「ともかく、なんて断るかだ」
澪「うーん、そうだなあ……まあ無難に……
『ムギの気持ちはうれしいけど、
そういう気持ちで接することはできないよ……ごめん』」
唯「ううん、いいの……気持ちを伝えられただけで満足だから」
澪「うん……でも、ムギは私の大事な友達だから。
友達としてなら……一緒に、いられるから……」
唯「……ありがとう、澪ちゃん……」
律「おー、唯のモノマネ似てるな~!」
唯「でしょでしょー!」
澪「唯のモノマネより私の断り方に対する評価をお願いします」
律「え、ああ、いいんじゃないか?
無難すぎる気はするけど」
唯「まあ及第点って感じかな~」
澪「厳しいなお前ら」
66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 17:47:36.36 ID:Su5flL8x0
律「じゃあ音楽室に戻るか」
澪「そ、そうだな……」どきどき
唯「緊張してるの?」
澪「ああ……告白って、
する側だけじゃなくてされる側も緊張するもんなんだな」
唯「ムギちゃんの方がもっと緊張してるよ」
澪「まあそうなんだろうけど……」
律「おいおい、告白されるとは限らない……って言ってたの澪だろ、
なんでお前が一番その気になってんだよ」
澪「し、仕方ないだろ……!」
3人は音楽室に戻り、
紬とともに練習を始めた。
しかし3人……とくに澪はまったく練習が手につかず、
昨日の紬のように失敗を連発したのであった。
結局一度も完璧な演奏が出来ないまま、
部活の終了時刻を迎えたのであった。
69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 17:53:39.91 ID:Su5flL8x0
律「じゃ、じゃあ……私ら、帰るわ」
唯「頑張ってね」
紬「? うん、また明日ね」
澪「あ、ああ……」
唯「じゃあねー」
ガチャバタン
紬「……」
澪「……」
紬「……」
澪「……」
紬「……」
澪の顔をじいっと見つめる紬。
澪「……ムギ?」
紬「あ……いえ」
70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 17:59:18.62 ID:Su5flL8x0
さっきまで楽器の音に満たされていたとは思えないほどに
音楽室は静まり返っていた。
外はもう暗く、運動部の掛け声も聞こえない。
夜の静寂の中に、ただ2人。
澪「で、ムギ……話って」
紬「あ……うん」
澪「……」
紬「その、恥ずかしい話なんだけど……
笑ったりしないでね……」
澪「わ、笑わないよ。
ムギの真剣な気持ちを、笑うなんて……」
紬「ありがとう……あのね」
澪「……うん」
紬「えっとね」
澪「うん」
72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 18:01:40.83 ID:Su5flL8x0
ちょっと中断
30分後か1時間後か1時間半後に再開します
84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 18:39:52.08 ID:Su5flL8x0
再開
87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 18:46:15.09 ID:Su5flL8x0
紬「何から話せば良いかな……」
澪「……あ、焦らずに話してくれれば良いから」
紬「うん……じゃあ、本題から先に言うわね」
澪「う、うん……」
紬「澪ちゃん……」
澪「はい……」
紬「私に眉の整え方を教えて欲しいの」
澪「ムギの気持ちはうれしいけど、
そういう気持ちで接………………え?」
紬「自分でも調べてみたんだけど、
やり方がよく分からなくって……」
澪「はァ」
紬「澪ちゃんの眉は綺麗だから、
そういうの詳しいかな、って」
澪「まァ」
90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 18:50:07.33 ID:Su5flL8x0
紬「……教えてくれる?」
澪「そ、それはもちろんいいけど。
でもなんでいきなりそんな……
あ、好きな人か……」
紬「!! ……唯ちゃんに聞いたの!?」
澪「あ、いや違うよ、
なんか最近ムギの様子がおかしかったからさ、
悩みとかあんのかな、好きな人でもできたかな、
ってみんなで話してたんだよ、うん」
紬「あ、そ、そうだったの……」
澪「ていうか、図星なんだな」
紬「…………う、うん」もじもじ
澪(可愛い……)
紬「だ、誰にも言わないでね……
唯ちゃんにはいっちゃたけど」
94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 18:56:02.28 ID:Su5flL8x0
澪「うん、まあ誰にも言わないけど……
好きな人ができたから、
おしゃれを頑張ってみようということか」
紬「うん、恥ずかしいけど……
まずは小さいとこからって思って」
澪「そのままでも充分可愛いと思うけど」
紬「え、そ、そんなこと……!」
澪「いやー、可愛いって。
まあムギがやりたいってんなら
教えられる範囲で教えてあげるけどさ」
紬「ありがとう、澪ちゃん」
澪「ところで、ムギの好きな人って誰なんだ?
もしかして軽音部の誰か?」
紬「あはは、何言ってるのよ澪ちゃん。
軽音部には女の子しかいないじゃない」
澪「え? ああ、そ、そうだったな……」
(私がズレてるのか……)
104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 19:04:36.25 ID:Su5flL8x0
紬「じゃあ今日はもう遅いから、
明日か、またお休みの日とかでいいかしら」
澪「そう? 別に今からでも良いけど」
紬「でも私は門限が……
そうだわ、澪ちゃん今からうちに来てくれない?」
澪「いいのか?」
紬「ええ、大丈夫よ。
ついでに晩ご飯も食べていって」
澪(ムギの家の晩ご飯……)
紬「澪ちゃん?」
澪「行かせていただきます」
紬「そう、良かった。
私、お友達を家に招いてご飯食べるの、
夢だったの」
澪「ムギの夢は聞いててときどき悲しくなるよ」
紬「じゃあ、いきましょうか」
澪「うん」
107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 19:08:16.14 ID:Su5flL8x0
琴吹家。
メイド「お帰りなさいませ、お嬢様」
メイド「お帰りなさいませ、お嬢様」
メイド「お帰りなさいませ、お嬢様」
メイド「お帰りなさいませ、お嬢様」
メイド「お帰りなさいませ、お嬢様」
メイド「お帰りなさいませ、お嬢様」
メイド「お帰りなさいませ、お嬢様」
メイド「お帰りなさいませ、お嬢様」
メイド「お帰りなさいませ、お嬢様」
メイド「お帰りなさいませ、お嬢様」
紬「ただいま」
澪「開店してすぐの百貨店に入った時のような気分だ」
113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 19:14:08.35 ID:Su5flL8x0
メイド「お荷物をお持ちいたします」
紬「ありがとう」
メイド「お連れ様も」
澪「え、あ、じゃあお願いします」
紬「私の部屋はこっちよ。
この廊下を真っすぐいって、
3番目の階段を上がって
左に曲がった突き当たりよ」
澪「案内がないと迷いそうだな。
それにしても広い家」
紬「そうかしら?」
澪「うん、充分広いよ」
紬「前に住んでたとこはここの3倍の広さで、
それくらいが私としては調度良かったんだけど」
澪「……」
紬「あ、ここが私の部屋よ」
ガチャ
澪「お邪魔しまーす……」
117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 19:19:20.49 ID:Su5flL8x0
紬の部屋。
紬「どうしたの? 澪ちゃん。
早く入って」
澪「う、うん……」きょろきょろ
(すごい部屋……)
紬「なあに、きょろきょろしちゃって」
澪「あ、いやなんでもないんだ。
ごめんごめん」
紬「晩ご飯は、あと1時間くらいだから。
それまで教えてもらって良いかしら?」
澪「うん、いいよ。
じゃあ鏡台の前に座って……」
紬「はいっ」ビシッ
澪「そんな力いれちゃダメだよ。
リラックスして、特に顔」
紬「うん」
119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 19:26:11.23 ID:Su5flL8x0
澪「ムギの場合、眉が濃いから抜くのが良いかもな」
紬「抜くの? 痛くない?」
澪「大丈夫大丈夫。ほら、これで挟んで……ちょいっと」
紬「あっ……」
澪「ほら、動くな……」
紬「ん……」
澪「……痛いか?」
紬「大丈夫……あん」
澪「こっちの方も……」
紬「……ああっ……」
澪「もっとよく見せて……」
紬「あ……」
澪「とまあこういうふうに」
紬「よく分かったわ」
121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 19:29:12.72 ID:Su5flL8x0
澪「自分でもやってみな」
紬「ええ……」
コンコン
紬「? 誰かしら?」
ガチャ
斉藤「お嬢様、お食事の時間でございます。
お連れ様のぶんもございますので、どうぞ」
澪「あっ、はい、ありがとうございます」
斉藤「……お嬢様、何をしてらっしゃるので?」
紬「あ、貴方には関係の無いことです!
早く下がりなさい!」
斉藤「はい、それでは失礼いたします」
紬「も、もう……」
澪「……」
123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 19:31:53.38 ID:Su5flL8x0
紬「? どしたの?」
澪「あ、いやー……
眉いじるのは食事のあとのほうが良かったかな、
って思って」
紬「ああ、大丈夫よ、前髪で隠れるから」
澪(じゃあ眉整える意味ないんじゃ)
紬「じゃあご飯食べに行きましょ、澪ちゃん」
澪「ん、ああ……」
澪(眉のことなんかどうでも良い……
問題は……さっきの……
執事さんが来た時のムギの反応……!)
126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 19:38:58.10 ID:Su5flL8x0
食事部屋。
澪「……」きょろきょろ
紬「どうしたの、またきょろきょろして」
澪「いや、こんな広いのに、
私達しかいないなんて……」
紬「ああ、ここを使うのは琴吹家の人間だけだから。
メイドたちは違う場所で食べてるわ」
澪「ああ、そう」
ガチャ
斉藤「お嬢様、もういらしていましたか」
紬「おっ……遅いわよ、斉藤……!
こちらには客人もいるんですからね」
斉藤「申し訳ございません」
テーブルの上に食事を並べていく斉藤。
そしてそれを赤い顔で見つめる紬。
澪「……」
135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 19:45:41.92 ID:Su5flL8x0
斉藤「お食事の用意が整いました」
紬「ならもう出ていってちょうだい、
澪ちゃんと二人で食べるから」
斉藤「はい、ではごゆっくり……」
ガチャバタン
紬「ごめんなさいね、うちの執事ったらグズで……」
澪「ああ、いや……」
紬「じゃあ食べましょうか、いただきます」
澪「いただきます」
紬「お口にあうかしら?」
澪「うん、おいしいよ」もぐもぐ
紬「そう、良かった」もぐもぐ
澪「あのさあ」
紬「?」
136 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 19:50:49.40 ID:Su5flL8x0
澪「間違ってたら申し訳ないんだけど」
紬「なあに?」もぐもぐ
澪「ムギの好きな人ってさっきの執事さん?」
紬「ぶーっ!!」
澪「うわ、きたなっ!」
紬「み、澪ちゃんがいきなり変なこと言うからっ!!」
ガチャ
斉藤「どうかなさいましたかお嬢様!」
紬「なんでもないから来ないでっ!」
澪「顔真っ赤だぞ」
紬「うるさいっ!」
斉藤「では失礼いたします」
ガチャ
紬「はあ……」
138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 19:56:16.66 ID:Su5flL8x0
澪「……」
紬「いつ気づいたの」
澪「……ついさっき」
紬「なんで気づいたの」
澪「……見てたら分かった」
紬「そんなに露骨にアレだった?」
澪「アレだった……
ていうかアレじゃあ本人だって気付くんじゃ……」
紬「そ、それは言わないで……」
澪「……でもさあ、なんで執事さんなんだ?
ムギが好きだって言うんならそれで良いんだけどさあ、
歳だって離れてるし……」
紬「だ、だって……」
澪「だって……何?」
145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 20:02:57.90 ID:Su5flL8x0
紬「そりゃ……確かに斉藤はただの執事で、
歳も離れてるけど……」
澪「うん」
紬「昔からお父さんはあんまり家にいないし、
一人っ子だし……
家にいるときはずっと斉藤と一緒にいたの」
澪「うん」もぐもぐ
紬「でもそれも小さい時だけで……
大きくなるにつれて、
だんだんと距離を置くようになって。
こっちからは必要最低限のことしか
話しかけなくなったし、
斉藤の方もそれを察して
私に対してあまり干渉しなくなったわ」
澪「反抗期だね」
紬「まあそんなものね。
で、そんな状態が何年も続いたわ」
澪「ほう」もぐもぐ
150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 20:10:03.72 ID:Su5flL8x0
紬「で、ある日……
ていうか何ヶ月か前なんだけど」
澪「うん」もぐもぐ
紬「ライブでオリジナル曲をやることになったわね」
澪「そうだな」
紬「私は作曲の心得があったから、
曲を書くのを引き受けたけど……
やっぱり一人じゃ上手くできなかったのよ」
澪「もしや、その時に手を貸してくれたのが」
紬「斉藤だったわ」
澪「……」
紬「私は数年ぶりに、
斉藤と必要最低限以上に近づいて……
会話をして……
つきっきりで作曲の手ほどきをしてくれたわ、
夜遅くまで」
澪「それで惚れた?」
153 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 20:18:15.52 ID:Su5flL8x0
紬「まあ、そうね……
斉藤と一緒にいるうち、
昔のこと思い出したりして……
それで、それからも意識するようになって」
澪「ほー」
紬「あとその、
作曲できるとこもすごいなー、なんて……
あ、何いってんだろ私……」
澪「ふうん……
ムギが斉藤さんを好きなのは分かったよ。
でもさ、さっきみたいに冷たくしたりしたらダメじゃんか」
紬「そ、それは分かってるんだけど……
どうにも恥ずかしくて……」
澪「素直になれない、か……分かるよ、うんうん」
紬「澪ちゃんも恋したことあるの?」
澪「ないけど?」
紬「あ、そう……」
156 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 20:24:48.94 ID:Su5flL8x0
澪「それで、ムギは斉藤さんと付き合いたいのか?」
紬「でも恋仲には……
立場が立場だし、歳も……」
澪「じゃあどうしたいんだ?」
紬「……想いを伝えて、
また昔みたいに仲良く出来れば、それでいいわ。
……ううん、昔みたいじゃなくて、
16歳の私と……」
澪「16歳の自分、か……
じゃあ自分が成長したとこを見せないとな」
紬「そうね……
どうすればいいかしら」
澪「うーん……」
ガチャ
斉藤「お嬢様、お食事は済まれましたか?」
紬「は、入るなっていってるでしょお!」
澪「……」
160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 20:31:57.97 ID:Su5flL8x0
澪「……じゃあまあ、
この話はこのへんにしとくか……」
紬「そ、そうね……
ありがとう、聞いてくれて。
やっぱり澪ちゃんって頼りになるわ」
澪「そ、そうかな」
紬「唯ちゃんが恋愛相談するのも分かるわ」
澪(信じてたのか……)
食事の後、
澪はふたたび紬の部屋で
眉の整え方を教えてやり、
おみやげにお菓子をいっぱいもらって
琴吹家を後にした。
163 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 20:38:41.27 ID:Su5flL8x0
翌日、放課後。
ガチャ
唯「ちょりーっす」
律「お、唯」
澪「よう」
紬「こんにちは」
唯「……」
澪「どした?」
唯「…………ああ、ムギちゃんか。
なんか違和感あると思ったら……眉毛が」
紬「似合う?」
唯「うん、可愛いよ。いいんじゃない?」
紬「そう、ありがと」
169 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 20:45:43.90 ID:Su5flL8x0
澪「唯。さっき3人で話てたんだけどな」
唯「なに?」
澪「今度のライブ、絶対成功させような」
唯「そりゃー当然だよ」
澪「軽音部のためだけじゃなく、ムギのためにも」
唯「なんでムギちゃんのため?
ま、まさか……」
澪「そう、そのまさかだ」
唯「ムギちゃんの余命がわずかで、
学園祭までしか生きられないとか……」
澪「本気で言ってるのか」
律「あーもう、ムギの恋を叶えるためってことだよ、唯」
唯「ムギちゃんの恋?」
170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 20:50:51.81 ID:Su5flL8x0
澪「ムギは自分ちの執事の斉藤さんが好きなんだって」
唯「ええっ、そうだったの!?」
紬「…………」こくん
澪「そう、幼いころからムギの面倒を見てきた斉藤さんに、
ライブを通してムギの成長した姿を見せる!
そして想いを伝える……という計画だ。
名づけてラブライブプロジェクト」
律「すげえ言いにくい」
唯「ふうん……
それにしても執事さんかー、
なんかムギちゃんらしいな」
律「まーそのへんの男と恋愛するってイメージはないな」
紬「も、もう、2人とも……」
澪「ほら、そういうことだから、練習するぞ」
唯「よし、やろう!」
律「ムギのためにも!」
紬「みんな……」
171 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 20:59:54.97 ID:Su5flL8x0
唯「私、ムギちゃんのこと応援するから!」
律「私も応援するぞ、絶対いいライブにしような!」
澪「頑張ろう、ムギ」
紬「ありがとう……
みんなで良いライブにしよう」
唯「うん!」
律「よーしいくぞー、
ワン・ツー・スリー・フォー!」
その日から、4人はひたすら練習に打ち込んだ。
ライブを成功させるために。
紬のが想いを伝えられるように。
学園祭が近づくにつれて、
4人の演奏は確実に磨きがかかっていった。
特に紬の技術の向上は目を見張るものがあった。
恋する力はスゴイ、澪はそう思った。
そして時は流れ学園祭当日。
172 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 21:08:11.13 ID:Su5flL8x0
講堂、舞台袖。
唯「おー、お客さんいっぱいいるよ」
律「ほんとだ、こんな大勢の前でやるのか」
唯「ちょっと緊張しちゃうねえ」
律「そうだなあ、流石に」
唯「澪ちゃんは大丈夫? 緊張しない?」
澪「え、ああまあ……
確かに緊張はしてるけど……
私より……」
唯「?」
紬「がくがくがくがくがくがくがくがく」
律「ムギ……」
181 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 21:15:12.16 ID:Su5flL8x0
唯「だ、大丈夫? ムギちゃん」
紬「だだだだだだだだだだだいひょうふひょ」
律「まったく大丈夫そうに見えねえ」
澪「しっかりしろよ、斉藤さん来てるんだろ」
紬「た、た、たぶん」
唯「たぶん?」
紬「うん、今朝スキを見て斉藤のテーブルの上に
招待券を置いといたから、
たぶんそれを見てると思うんだけど……」
律「ば、ばか! なんで手渡しにしなかったんだ!!」
紬「そ、そんなの…………恥ずかしい」
澪「自分を見ているようだ」
律「もう、来てなかったら意味ないじゃないか」
紬「うう……」
184 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 21:23:30.13 ID:Su5flL8x0
唯「大丈夫だよ、ムギちゃん!」
紬「え……」
唯「斉藤さんは昔からずっと
ムギちゃんのこと見ててくれてたんでしょ?」
紬「うん……」
唯「じゃあムギちゃんの考えだって、きっとお見通しだよ。
机の招待券にも気づいて、ここに来てくれてるよ」
紬「そ、そうかしら……」
唯「そうだよ。
信じてあげなきゃ、斉藤さんを。
それから、自分自身を」
紬「自分自身を……そうね。
ありがとう、唯ちゃん」
放送『次は、軽音楽部によるバンド演奏です……』
律「お、きたな」
澪「ようし、ライブラブプロジェクト、最終段階だ!」
唯「ラブライブじゃなかったっけ」
187 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 21:29:06.35 ID:Su5flL8x0
幕が上がり、
客の視線と歓声が4人にぶつけられる。
唯「……」
澪「……」
律「……」
紬「がくがくがくがく」
唯「ムギちゃん」
紬「?」
唯「みんな、ムギちゃんが頑張ってたの知ってるから」
紬「……」
唯「だから、大丈夫だよ!」
紬「……うん」
律「……ワンツースリーフォー!」
190 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 21:37:53.97 ID:Su5flL8x0
ジャカジャカジャージャカジャカジャカ
紬(斉藤……)
ジャンジャカジャカジャカジャンジャカジャカ
紬(ねえ斉藤……)
君を見てるといつもハートドキドキ♪
紬(この講堂のどこかで、私を見ていてくれてるのかしら)
揺れる想いはマシュマロみたいにふわふわ♪
紬(もうあの頃の私じゃないわ)
いつも頑張る 君の横顔♪
紬(何も出来ずに泣いていた、あの頃の私じゃない)
ずっと見てても気づかないよね♪
紬(もうこんなに大きくなって)
夢の中なら二人の距離縮められるのにな♪
紬(できることだってたくさん増えたわ)
192 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 21:38:36.82 ID:Su5flL8x0
やべえ改めて見たら超読みづれえ
198 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 21:45:15.24 ID:Su5flL8x0
――――ああ神様お願い 二人だけのDream timeください
紬(仲間だってたくさんできた。
一人じゃできないことをたくさん知った)
――――お気に入りのうさちゃん抱いて
紬(その仲間たちと半年間一緒に過ごして、
私はうんと大きくなれたわ)
――――今夜もおやすみ
紬(斉藤、私はもうお嬢様じゃなくて)
――――ふわふわ時間 ふわふわ時間
紬(一人の女なのよ)
ジャーン♪
200 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 21:48:30.14 ID:Su5flL8x0
ワアアアアア………
パチパチパチパチパチパチ
紬「…………」
澪「みんな、ありがとー!」
ぐいっ
澪「ひゃっ……!」
どたん
澪「あたたたたー……」
紬「あ」
律「いっ」
唯「う……」
澪「えっ!?」
斉藤「Oh......」
202 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 21:55:32.42 ID:Su5flL8x0
――――
――――――――
――――――――――――
――――――――――――――――
音楽室。
澪「…………」
紬「…………」
澪「…………」
紬「…………」
澪「…………」
紬「…………」
唯「……どうする?」
律「どうにもならんだろ……」
205 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 22:02:37.61 ID:Su5flL8x0
澪はライブ終了時にすっ転んで
客にパンツを晒してヘコみ、
そして紬はそのせいで
ライブが台無しになってヘコんでいる。
唯「ま、まあ、元気だしてよ、2人とも……」
澪「……」
律「澪もムギも、立ち直れよ」
澪「……無理だよそんなの……」
律「いいじゃないか、
別に下着くらいさ、減るもんじゃなし」
澪「そういう問題じゃない!
私のせいでライブをダメにしてしまったんだ、
せっかくのライブを……」
紬「……」
澪「ごめんムギ、本当にごめん!!」がばっ
律「もー、何百回土下座すれば気が済むんだよ」
澪「それを決めるのはムギだよ……
ムギに許してもらうまでは何度でもやる」
208 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 22:07:58.60 ID:Su5flL8x0
紬「……」
唯「ほらムギちゃんもさ」
紬「……」
唯「澪ちゃんがこんなに真剣に謝ってるんだから、
いつまでもへそ曲げてないで」
紬「……」
唯「過去のことを気にしても仕方ないよ、
これからのことを考えよう」
律「お、良いこと言うなあ唯」
紬「コレカラノコト……?」
唯「そうだよ、告白するんでしょ?
斉藤さんに」
律「そうそう」
紬「無理よ、そんなの……相手は執事よ、
告白することさえ許されないわ」
律「自身をすっかり失ってらっしゃる……」
209 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 22:16:42.33 ID:Su5flL8x0
紬「そうよ、最初から無理だったのよ……
ライブも……告白も……
私に恋なんて……
人が生きる意味は……
地球ができて46億年……
そう人生など塵でしかない……」
澪「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」ガンガンガン
律「床に頭を打ち付けるのはやめろ」
唯「はあ、どうしよ……」
律「うーん……
ムギの気が収まるまで待つしか……」
コンコン
唯「? はーい、どうぞお」
ガチャ
斉藤「軽音楽部、でよろしかったでしょうか」
澪「さ、斉藤さん」
唯「え、この人が?」
212 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 22:23:13.24 ID:Su5flL8x0
律(オジイサンじゃないか……)
唯(ムギちゃんこういう趣味だったのか)
斉藤「お嬢様……」
紬「こ、来ないでちょうだい……
今の私は貴方に合わせる顔はないわ……」
澪「すみませんすみません私のせいで」ガンガンガン
斉藤「そんなことはございません、お嬢様。
私、お嬢様の演奏を客席から拝見しておりました」
紬「……」
斉藤「確かにライブにはハプニングがございましたが、
それも予期できなかった事故、
この方が悪いと言うわけではございませぬ」
澪「ありがとうございますありがとうございます」ガンガン
紬「私は完璧なライブを見て欲しかったのよ……」
斉藤「私にとっては完璧なライブでございました」
紬「嘘……」
214 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 22:30:41.76 ID:Su5flL8x0
斉藤「嘘ではございません。
お嬢様が、あんな大勢の前で
立派に演奏をこなされたのです。
それ以上に何を望みましょう」
紬「……」
斉藤「それに、演奏された曲は
お嬢様がお書きになった曲でしょう」
紬「……斉藤も書いたでしょう」
斉藤「私はお嬢様の書いた曲を
バンド音楽向けに編曲しただけでございます。
あれは正真正銘、お嬢様の曲ですよ」
紬「……」
斉藤「聴衆は皆、お嬢様の曲に聞き惚れておりました。
私もその一人でございます」
紬「……」
斉藤「お嬢様はライブを成功させたのですよ」
紬「……」
216 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 22:37:57.88 ID:Su5flL8x0
斉藤「お嬢様……」
紬「……」
斉藤「どうか機嫌を……」
紬「……」
澪「すみませんすみません」ガンガン
斉藤「私は……どうすれば」
唯「それは斉藤さんが一番よく知ってるはずです!」
斉藤「!」
律「唯……!」
唯「だって、斉藤さんは昔からずっと
ムギちゃんの一番側に居たんですから」
斉藤「……そう……そうですね。
ありがとうございます、お嬢さん」
唯「はいっ」
218 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 22:42:56.58 ID:Su5flL8x0
紬に歩み寄る斉藤。
斉藤「お嬢様」
紬「……、…………!!」
そして斉藤は、
そっと紬を抱きよせて
頭を優しく撫でたのであった。
唯「おお……」
律「ダイタンだな」
紬「ななななななななななにをするんですか斉藤!!」
斉藤「昔より、お嬢様が拗ねられた際には
こうしておりました」
紬「わ、私はっ……拗ねてなんか……!
とにかく離しなさい!!」
律「顔真っ赤だぞー」
紬「うるさいっ!」
223 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 22:52:14.05 ID:Su5flL8x0
斉藤「知らないうちに大きくなられましたな」
紬「や、やめっ……」
斉藤「いや……大きくなったのは知っておりました。
しかし目で見るのと、こうして触れ合うのとでは
また印象が違うものですね」
紬「何を言って……」
斉藤「そして……目で見ても肌に触れても
分からないであろうお嬢様の成長が、
今日は感じることができました」
紬「……!」
斉藤「素晴らしいライブでしたよ、お嬢様」
紬「……」
斉藤「……大人になられましたな」ぎゅっ
紬「……っ」
唯律澪(私達はここにいて良いんだろうか)
226 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 22:58:37.31 ID:Su5flL8x0
斉藤「もう機嫌は直られましたかな」
紬「ええ……もういいわ」
斉藤「かしこまりました」
斉藤は紬を離した。
紬「……」
斉藤「お嬢様、皆様に言わねばならないことがあるでしょう」
紬「ええ。ごめんね、みんな……
特に澪ちゃん、ほんとは澪ちゃんが悪いわけじゃないのに……
その、私……」
澪「いやいいんだよ、気にしないでくれ」
律「デコから血がドバドバ出てるぞ」
紬「ありがとう、澪ちゃん……
あと、素敵なライブにしてくれて、ありがとう」
律「どういたしまして」
唯「こっちこそありがとうだよ、ムギちゃん」
227 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 23:03:49.55 ID:Su5flL8x0
斉藤「良い仲間を持たれましたな」
紬「ええ」
唯「それよりー、ムギちゃんこそ
斉藤さんに言うことがあるんじゃないのー?」
斉藤「ほう」
紬「ちょ、ゆ、唯ちゃん……!」
唯「ほらほらー言っちゃいなよー」
律「おい唯~そういうのやめろよぉ~」
澪「そうだぞ~かわいそーだろ~」
紬「すごく嬉しそうな顔してるわねみんな」
斉藤「お嬢様、私に言いたいこととは?」
紬「っ……」
唯「言っちゃえムギちゃん!」
229 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 23:09:31.44 ID:Su5flL8x0
澪「私達は外にでてようか」
律「そうだな。ほら唯」
唯「えー」
紬「ここにいてくださいお願いします」
澪「ムギって意外と意気地なしだな……」
紬「…………」
斉藤「…………」
紬「…………」
斉藤「……お嬢様?」
紬「えっと、その……」
斉藤「はい」
紬「私、斉藤が……」
唯「おっ」
232 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 23:16:22.47 ID:Su5flL8x0
紬「斉藤が……斉藤に……」
唯「お?」
紬「斉藤に……
もう、お嬢様って呼ばれるのは、嫌だわ」
斉藤「……」
唯「……」
澪「……」
律「なんだそりゃ」
紬「もう私お嬢様じゃないわ」
斉藤「そうでございますね」
紬「だから……
名前で、呼んで」
斉藤「かしこまりました、紬さま」
紬「……、…………ありがとう」
236 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 23:22:26.01 ID:Su5flL8x0
斉藤「これでよろしいのですか、紬さま」
紬「ええ…………充分よ」
斉藤「そうでございますか。
では私は、家の仕事がございますので、
これで失礼いたします」
紬「ええ」
斉藤「では」
ガチャバタン
唯「……」
澪「……」
律「てっきり告白するのかと思ったのに」
唯「そうだよ、拍子抜けだよ」
紬「いいのよ、今はあれで……
それに愛の告白なんてする気はなかったわ。
私がもう子供じゃないってことを、
一人の女性だってことを分かってもらえれば、
それで良かったの」
唯「ふうん……?」
239 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 23:30:42.45 ID:Su5flL8x0
紬「今はスッキリしてるわ。
素直に仲良くなれそうな気がする」
唯「そっか、良かったね。ムギちゃん」
律「ええ話や……なあ澪」
澪「……そうだな」
唯「いーなー、私も恋とかしたいなー」
律「お、恋に恋するお年頃てやつか」
紬「ふふ、唯ちゃんならきっと素敵な恋ができるわよ」
唯「ほんとにー?」
紬「ええ……って、唯ちゃん好きな人いるんじゃ?
同じ中学だったサッカー部の」
唯「あっ」
お わ り
241 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 23:31:32.34 ID:Su5flL8x0
これでおしまい
前に斉藤→紬で書いたので
今度は紬→斉藤にした
オチは許せよ
244 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/03/07(日) 23:34:11.55 ID:Su5flL8x0
>>243
斉藤「はあはあ、紬お嬢様っ……うっ!!」ドピュドピュ
<<盲目少女「体を重ねると、その男からは良い匂いがしました」 | ホーム | 上条「今日はインデックスの誕生日だ!」>>
コメント
No title
最後のに全部もってかれた
承認待ちコメント
このコメントは管理者の承認待ちです
コメントの投稿
トラックバック
| ホーム |