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金田一「また七不思議っすか・・・」
1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 03:20:09.89 ID:/h0oKKJW0
美雪「ほら、校庭の隅っこにイチョウの木が1本あるでしょ?」
美雪「あれが不動高校七不思議のひとつ、『首吊り大イチョウ』よ」
美雪「昔、雨の降る日にあの木でイジメを苦にした男子生徒が首を吊って以来、雨の夜に木の下を通ると………」
美雪「男子生徒の霊が出てきて、ムリヤリ首を吊られちゃうんだって!」
玲香「きゃあっ!!」
はじめ「おい美雪、やりすぎだぞ。玲香ちゃん怖がってんじゃん」
美雪「ごめんなさい。まさかそんなに驚くなんて……」
玲香「大丈夫よ、七瀬さん。私こそごめんなさい」
はじめ「玲香ちゃん、七不思議なんてただのウワサだから。怖がることないって」
玲香「ありがとう金田一くん。わかったからそのつかんだ手、離して?」
はじめ「 」
美雪「ほら、校庭の隅っこにイチョウの木が1本あるでしょ?」
美雪「あれが不動高校七不思議のひとつ、『首吊り大イチョウ』よ」
美雪「昔、雨の降る日にあの木でイジメを苦にした男子生徒が首を吊って以来、雨の夜に木の下を通ると………」
美雪「男子生徒の霊が出てきて、ムリヤリ首を吊られちゃうんだって!」
玲香「きゃあっ!!」
はじめ「おい美雪、やりすぎだぞ。玲香ちゃん怖がってんじゃん」
美雪「ごめんなさい。まさかそんなに驚くなんて……」
玲香「大丈夫よ、七瀬さん。私こそごめんなさい」
はじめ「玲香ちゃん、七不思議なんてただのウワサだから。怖がることないって」
玲香「ありがとう金田一くん。わかったからそのつかんだ手、離して?」
はじめ「 」
2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 03:21:50.37 ID:/h0oKKJW0
ここは昼下がりの不動高校の教室。
玲香の出るドラマのロケが偶然にも(?)不動高校で行われており、はじめと美雪はエキストラとして出演している。
今はちょうど休憩中で、3人はたわいもない話に花を咲かせていた。
玲香「楽しみね、今夜の肝だめし」
はじめ「あ、あ、あぁ……」
肝だめし、というのは玲香とエキストラの高校生たちで行うイベント。
もちろん撮影スタッフには内緒で。
美雪「7時に視聴覚室集合だから、よろしくね」
玲香「うん!」
6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 03:24:45.07 ID:/h0oKKJW0
~夜~
はじめ「おい美雪、まだ6時半前だぜ?こんな早くに来なくても……」
美雪「いつも遅刻してるんだからたまにはいいじゃない」
はじめ「んだよそれ…」
はじめ「ってかお前なんで傘なんか持ってんだよ?こんな晴れてんのに」
美雪「天気予報で言ってたでしょ。7時頃から雨が降るって」
美雪「ええっと…確か……この窓だっけ?」
美雪が手をかけると、昼間にカギを外しておいた窓がガラガラと音を立てて開く。
美雪「さ、行くわよ」
はじめ「性格変わったな、お前」
美雪「何言ってんの、はじめちゃんのせいでしょ」
特に気にする様子もなく美雪が校舎の中へ入っていく。
はじめ「はいはいすみませ……イッテェッ!!」
続けて入ろうとしたはじめの頭に、窓枠がきれいにヒットした。
7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 03:29:17.20 ID:/h0oKKJW0
~視聴覚室~
美雪「さすがにまだ誰も来てないわね」
はじめ「たりめぇだろ。待っとこうぜ」
はじめがドカッと机に腰を降ろす。
美雪「そうね。……あら?もう雨が降ってきたわ」
はじめ「あ、ホントだ。まだ小雨だけど……玲香ちゃん、ダイジョーブかな」
美雪「ね?早く来て正解だったでしょ」
はじめ「へえへえ」
2人がそんな会話をしているうちに、玲香や他のエキストラが集まってくる。
今回はじめと美雪の他に参加するエキストラは5人。
桜木、流川、宮城、三井、赤木という、湘北高校の生徒だ。
8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 03:31:11.67 ID:/h0oKKJW0
そして時計の針が7時を指した。
美雪「全員そろった?……あ、流川くんがまだみたい」
玲香「ホントだ」
桜木「ハハハハハ!あのキツネ、怖くて逃げやがったな!!」
桜木「さっさと始めちまおうぜ!な、玲香ちゅわんっ!!」
玲香「え、ええ、そ、そうね……でももう少し待ってみましょ?きっとすぐ来るわ」
赤木「ああ、まだあせるような時間じゃない」
10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 03:34:54.96 ID:/h0oKKJW0
しかし5分、10分と待ってみても流川は来ない。
玲香「流川くん、来れなくなったのかな……?」
玲香「どうしたらいいと思う?」
宮城「どーします?ダンナ」
赤木「う~ん……、そうだな、玲香ちゃ…玲香さんにまかせる」
玲香「………」
桜木「さあさあ玲香ちゃん!あんなヤローはほっといてさっさと始めちゃいまs」
三井「ダメだ」
桜木「ミッチー?」
三井「オレたちはチームだ。どんなときも結束してなきゃなんねぇ」
玲香「……そうね、まだ全然小雨だし、もう少し待ってみましょうよ」
桜木「はい!玲香ちゃんがそう言うならっ!!」
12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 03:40:46.19 ID:/h0oKKJW0
一同は流川を待った。
次第に雨も本降りになってくる。
しかし7時半になってもついに流川は現れなかった。
宮城「流川、どーしたんスかね」
桜木「だから怖じ気づいたんだって!!さ、さ、始めましょ、玲香ちゃん!」
玲香「でも…」
三井「……しゃーねーか、こんだけ待ったんだ、遅れる方が悪い」
玲香「…そうね、やってるうちに来るかもしれないし」
玲香「みんな、始めてもいいかな?」
桜木「ハイッ!!」
13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 03:42:55.57 ID:/h0oKKJW0
結局満場一致で先に始めることになった。
今回行う肝だめしは視聴覚室を出発して、美雪の作った地図を見ながら七不思議の舞台をすべて巡って帰ってくるというもの。
それを1人ずつ行うのだ。
美雪「順番はどうやって決めよう?」
宮城「まあブナンにじゃんけんとかで……」
三井「あっ、オレ紙持ってるから、クジ作ろうぜ」
三井がカバンから取り出した赤点のテスト用紙を破いて番号を書き、コンビニの袋に入れた。
三井「『1』から『7』まで書いたから」
桜木「じゃあまずは玲香ちゃんどうぞっ!!」
玲香「ふふっ、ありがと………やだ、1番っ!?」
14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 03:47:05.04 ID:/h0oKKJW0
その後も各自がクジを引いていく。
美雪「あたしは5番」
桜木「テンサイ桜木2番っ!」
はじめ「4番か」
宮城「6番」
赤木「……3番だ」
三井「となると残った俺が、っと……7番ってワケね」
宮城「じゃあ始めますか!」
はじめ「玲香ちゃん、ファイト!」
美雪「頑張って!」
桜木「玲香ちゃん、もしよければこの桜木花道がご一緒に……」
玲香「ありがと、大丈夫よ!……じゃ、行ってくるね」
玲香は少し笑いながら、懐中電灯を手に出て行った。
15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 03:50:21.23 ID:/h0oKKJW0
視聴覚室ではその後和やかな会話が行われた。
彼らの所属する湘北高校バスケ部は来週からインターハイを控えていること。
今回のエキストラは玲香の熱烈なファンである赤木が練習そっちのけで応募したことなど。
…………しかし。
きゃああああああぁぁぁぁっっっ!!!!!
赤木「今の声……玲香ちゃんッ!?」
三井「でも…一体どこから」
はじめ「玲香ちゃんが出てってからまだ5分くらいしか経ってない」
はじめ「七不思議の舞台で最初に回ることになってたのは……」
美雪「『首吊り大イチョウ』よ!!」
はじめ「よし、行くぞ!」
言うが早いかはじめが部屋を飛び出す。
16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 03:53:56.85 ID:/h0oKKJW0
宮城「おいっ、もっと速く走れねーのかよっ!」
運動オンチのはじめがバスケ部のメンバーにかなうわけがない。
しかし彼らは大イチョウの場所がわからないので、先導をはじめにまかせるしかないのだ。
はじめ「はぁ…はぁ…ここを曲がって……いた!玲香ちゃん!!」
廊下の奥、手洗い場の近くに座りこんでいる玲香が見えた。
すかさず湘北のメンバーがダッシュで駆け寄る。
宮城「玲香ちゃん、大丈夫かっ!?」
赤木「れ、れ、玲香ちゃん、しっかり……」
三井「何があったんだ!?」
三井の問いに玲香は震えながら窓を指差した。
それはちょうど大イチョウの一番近くにあるものだ。
17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 03:56:45.48 ID:/h0oKKJW0
桜木「別にナンも変わったところは……ん?」
一同の視線が何かに気づいて止まる。
大イチョウの根元に、何かある。
人が、倒れている。
宮城「なあ、アレって……」
三井「流川!?」
赤木「流川ァッッ!!」
赤木が窓を開けて外に飛び出す。
すぐに流川に駆け寄り、背負って戻ってきた。
それを中の者が手伝って校舎に入れる。
三井「おい流川ッどうした!?」
宮城「返事しろよ!!」
桜木「マジ、かよ……」
流川の頭からは血が流れている。
はじめ「美雪!救急車!!」
美雪「うん!!」
18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 03:57:39.98 ID:/h0oKKJW0
はじめ「玲香ちゃん、大丈夫?」
玲香「ありがと、金田一くん。……うん、だいぶ落ち着いたみたい」
はじめ「安心して。犯人は俺が必ず捕まえてみせるから」
はじめ「ジッチャンの名にかけて!」
警察が来た後、7人は視聴覚室に集められていた。
流川は病院に運ばれた。
後頭部を鈍器で一撃されており、まだ息はあるものの、きわめて深刻な状態らしい。
凶器は流川のそばに落ちていたハンマーと判明。
ありふれたもので、犯人の特定には役立ちそうにない。
19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 03:59:04.39 ID:/h0oKKJW0
剣持「ったく。ガキが夜中にバカなことやっとるからだぞ!だいたい警備員は何しとるんだ」
美雪「前の警備員さんがちょっと問題起こしてやめちゃって」
剣持「問題?」
美雪「人を刺しちゃって」
剣持「新しい警備員は」
美雪「まだ来てません」
剣持「セコムしてますか?」
美雪「してません」
剣持「いったいどうなっとるんだ、この高校の危機管理は」
20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 04:00:32.10 ID:/h0oKKJW0
宮城「な、なぁ、美雪ちゃん」
美雪「ん?」
宮城「何かすごいね、あんなコトがあったのに……その、堂々としてるっていうか。アヤちゃんみたい」
美雪「アヤちゃん?」
宮城「ああ、うちのマネージャー。すっげェかわいいんだぜ、コレが」
美雪「へえ。……まぁ、事件は慣れちゃってるから」
宮城「へ?」
美雪「不動高校の名物みたいなものよ。殺したり、殺されたり」
三井「マジか……」
赤木「で、でも玲香ちゃ、玲香さんは怖かったですよね?本当に大丈夫ですか?」
桜木「心配いりません。玲香ちゃんは俺が守ってみせますよ」
玲香「あたし、人がアタマをオノでかち割られるの見たことあるし」
赤木・桜木「えっ」
三井「ハモッてんじゃねえよ」
21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 04:01:56.35 ID:/h0oKKJW0
剣持「ゴホン!!……では、事件までのみんなの行動を聞かせてもらえるかな」
宮城「ちょっ、オレたち疑ってんのかよッ!?」
剣持「まあまあ、そう怒るな。一応だ、一応。」
ここで剣持が聞いた結果をまとめると下のようになる。
6時30分:はじめと美雪が視聴覚室に到着
35分:小雨が降り始める
40分:玲香と三井到着
45分:赤木到着
55分:宮城到着
58分:桜木到着
7時15分:雨が本降りになってくる
30分:肝だめしスタート
35分:玲香が出て行く
40分:玲香の悲鳴
43分:美雪から通報
※家から一緒に来たはじめと美雪以外は前後のアリバイなし。
22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 04:03:38.73 ID:/h0oKKJW0
剣持「1、2分の誤差はあるだろうがこんなところか」
はじめ「で、オッサン。犯人見つかりそう?」
剣持「まぁな。……で?7時15分以降に誰か部屋を出た者はいるか?」
はじめ「えっと、桜木と赤木が連れションに行ってたな」
桜木「ああ」
剣持「時間は」
赤木「20分過ぎです」
はじめ「2人とも2分くらいで戻ってきたぜ。一緒に」
剣持「ふむ」
23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 04:04:39.09 ID:/h0oKKJW0
玲香「あとあたしも…」
剣持「肝だめしのことかな?」
玲香「はい…」
剣持「他には?」
はじめ「いや、そんだけだぜ?」
剣持「はぁッ!?そんなワケあるか!」
はじめ「え、でも……なあ、美雪」
美雪「うん……」
宮城「オレもそう思う」
三井「間違いないぜ」
剣持「バんなそカな…」
はじめ「どうかしたのか?」
剣持「あ、あぁ。金田一、七瀬くん、ちょっと来てくれ」
24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 04:05:41.19 ID:/h0oKKJW0
剣持は2人を隣のパソコン室に呼び出した。
剣持が気にしているのは大イチョウの周りに残された足跡だった。
剣持「残されていた足跡は全部で3組」
剣持「まず窓から大イチョウまで、片道の足跡が1組。被害者が履いていた靴と一致した」
剣持「次に往復の足跡が2組。ひとつは窓のそばに捨ててあったスリッパのものだった」
はじめ「それが犯人のだろうな」
剣持「おそらくそうだろう」
はじめ「で、もう1組が流川を助けに行った赤木のってコトか」
剣持「ああ」
はじめ「たしかに。そりゃオッサンが困るわけだ」
25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 04:06:54.90 ID:/h0oKKJW0
美雪「え?何で?」
はじめ「考えてみろよ、美雪。足跡が付くほどに雨が本降りになったのが7時15分頃」
はじめ「それ以降、俺たちの誰にも大イチョウまで行く時間がなかった」
美雪「あっ。あたしたちの中に犯人はいないってことになるのね」
はじめ「ああ」
不動高校の校舎は上から見るとHの形をしている。
東が新校舎、西が旧校舎で、間に渡り廊下。
門は新校舎の東側にあり、カギを開けておいた窓は新校舎の北端、視聴覚室はその真上の3階だ。
問題の大イチョウは旧校舎南端の廊下の西側。
その間はどんなに走っても片道2分はかかる。
26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 04:08:35.63 ID:/h0oKKJW0
美雪「でもさ…犯人の足跡、校舎に戻ってきてたんだよね?」
美雪「もしかしてまだどこかに隠れてるんじゃ……!」
剣持「今、シラミ潰しに探してるところだ」
はじめ「もしくは、俺たちの誰かが視聴覚室に居ながらにして大イチョウの下の流川を殴ったってことさ」
美雪「そんな…」
剣持「赤木ってヤツが駆け寄ったときに殴ったとか」
はじめ「そんな素振りはなかったよ。あれだけの人数の目の前だ、ごまかせない」
剣持「うーむ……」
はじめ「……なあ、美雪」
美雪「何?はじめちゃん」
28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 04:09:55.35 ID:/h0oKKJW0
はじめ「前に桜樹センパイがまとめてくれた七不思議の資料データ、あるか?」
美雪「うん、このパソコンからログインしたら見れるけど……」
はじめ「ちょっと、見せてくれ」
美雪「わかった。ちょっと待っててね」
剣持「そうだ金田一。流川の持ち物、見とくか?」
はじめ「ああ、一応頼むよ」
言ってはじめがメモを受け取る。
『ズボンのポケットに家と自転車のカギ』
『そばに落ちていたカバンに財布、携帯電話、折りたたみ傘、懐中電灯、コンビニのパン、バスケットボール』
『現金などに触れられた形跡なし。周りに他に落ちていたものも凶器以外特になし』
29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 04:11:04.32 ID:/h0oKKJW0
美雪「はじめちゃん、出たわよ!」
はじめ「お?おお、サンキュ」
美雪「それで、どの話が見たいの?『首吊り大イチョウ』?」
はじめ「ああ、頼む」
美雪がカチカチとマウスを操作する。
『首吊り大イチョウ』
『昔、不動高校の男子生徒がイジメを苦にして校庭の大イチョウで首を吊って自殺した。』
『それ以来、夜にその木の下を通ると』
『自殺した生徒の姿が浮かび上がるらしい。』
『大イチョウは校庭の隅にある、卍のキズが付いた木だ。』
30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 04:12:11.39 ID:/h0oKKJW0
美雪「……あれ?こんな話だっけ?」
はじめ「………」
剣持「まったく、わけのわからん事件だ」
美雪「それでもはじめちゃんなら……」
美雪「はじめちゃんなら、きっとなんとかしてくれる」
32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 04:13:34.59 ID:/h0oKKJW0
はじめ「………」
はじめは脳をフル稼働させる。
いくつかの引っかかる点……
それらをいかにつなげるか?
それがきっと真相につながるはずだ。
…………ゃん……
…じ…ち…………
美雪「はじめちゃんッ!!」
はじめ「うわあぁッッ!な、なんだよおどかすなよ美雪」
美雪「お…お願いがあるんだけど……」
はじめ「お願い?」
34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 04:14:50.16 ID:/h0oKKJW0
はじめ「ったく!!トイレぐらい1人で行けよな」
美雪「はじめちゃんは、そこで待っててね」
はじめ「はいはい」
ガチャッ……
美雪「きゃああああッッ!」
はじめ「美雪ッ!?どうしたッッ!?」
35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 04:16:00.07 ID:/h0oKKJW0
はじめが駆け寄る。
美雪「あっ、ごめん、はじめちゃん。間違えて掃除用具入れ開けちゃって」
美雪「モップが人に見えたの」
はじめ「はぁ?」
美雪「ごめんね」
はじめ「人騒がせな……」
言いながらはじめの目にあるモノが飛びこんできた。
そしてその瞬間、頭の中のジグソーパズルが完成される。
はじめ「わかったぜ美雪……」
美雪「はじめちゃん?」
はじめ「謎は……」
はじめ「謎はすべて解けた!!」
44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 04:55:23.29 ID:/h0oKKJW0
~会議室~
ガラッ
???「よぅ、金田一。他はまだ誰も来てねえみたいだな」
はじめ「………」
はじめ「誰も来ないぜ」
???「えっ?」
はじめ「オッサンと美雪に頼んでアンタだけ呼び出してもらったんだ」
???「なんでそんなこと……」
はじめ「流川を殴ったのは、アンタだ」
???「………」
45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 04:57:34.87 ID:/h0oKKJW0
???「なんだよそれ。話がそれだけなら帰るぜ」
はじめ「待てよ」
???「あんだよっ!!そもそも俺はお前らとずっと一緒にいたじゃねーかッッ!!」
はじめ「ああ」
???「ほれみろ。俺にはアリバイが……」
はじめ「ただし、雨が降ったあとは、だけどな」
はじめ「流川が、雨が降るより前に殴られていたとしたら?」
???「はぁッ!?お前見てねーのかよ、あの足跡」
???「雨が降ってねーとあんな足跡は付かねえ」
???「つまり流川が殴られたのはそれより後ってことだろーが!」
はじめ「そんなことないぜ」
46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 04:59:11.56 ID:/h0oKKJW0
???「あ?」
はじめ「足跡くらい、雨が降ってなくても付けれる……これを使えば」
言ってはじめが取り出したのはゴムホースだった。
はじめ「トイレの掃除用具入れにあったんだ」
???「ッッ………!」
はじめ「……犯人は、雨が降る前に流川を大イチョウの下で殴った」
はじめ「それから手洗い場の蛇口にこのホースをつないで、窓から大イチョウまでの地面を濡らしたんだ」
はじめ「それからまずスリッパで『犯人が往復した足跡』を付ける」
はじめ「次に流川の靴を履いて『窓から大イチョウまで歩いた足跡』を付けて……」
はじめ「流川に再びその靴を履かせ、乾いた地面を歩いて校舎に戻ってきたんだ」
はじめ「あとは予報通り雨が降るのを待てばいい」
はじめ「まるで雨の中2人が歩いた足跡の出来上がりってワケさ」
47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 05:02:37.65 ID:/h0oKKJW0
はじめ「肝だめしに流川がなかなか来なくて、先に始めようって流れに1回なりかけた時、アンタ止めたよな?」
はじめ「あれはこのトリックのためだったんだ」
はじめ「あの時はまだ小雨だったから、地面に足跡が残るような状態じゃなかった」
はじめ「肝だめしを始められたら、不自然な足跡だけが見つかってトリックがオジャンになっちまう」
はじめ「だからアンタは『オレたちはチーム』だの『結束』だのと言って雨が降るまで時間を稼いだんだ」
はじめ「そうだろ?…………三井」
三井「………」
はじめ「流川を殴ったのはアンタだ、三井寿」
50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 05:06:16.00 ID:/h0oKKJW0
はじめ「アンタは頭がいい。このトリックには様々な下準備があった」
はじめ「まず『首吊り大イチョウ』のウワサ。雨の夜に木の下に行くと首を吊られるってやつ」
はじめ「あのせいで俺たちは雨が降ってる最中に流川が殴られたと思いこんでしまったんだ」
はじめ「でも、そもそもあの話に雨の設定なんてなかった。殺される設定も」
はじめ「あれはこの心理トリックのためにアンタがそれとなく流したものだったんだろ?」
はじめ「ウワサ話なんて所詮はそんなモンだしね」
51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 05:07:41.60 ID:/h0oKKJW0
はじめ「次に肝だめしの順番を決めたクジ」
はじめ「いくら足跡を付けても、自分がトップバッターになるとアリバイがなくなっちまう」
はじめ「だからアンタはあの時自分がクジを作るのを提案した」
はじめ「作ったうち『7』のクジは袋に入れずに持ってたんだろ?」
はじめ「最後にそれを引くフリだけすれば、トップバッター回避ってワケさ」
はじめ「まぁ前の人が流川を見落とすことも考えて、一応ラストにしたってとこかな?」
52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 05:09:08.99 ID:/h0oKKJW0
三井「ちょっと待てよ」
三井「お前さっきから流川が殴られたのは雨の前だって言い張ってるけどよ……」
三井「そんな証拠あんのかよ?」
三井「もしかしたら殴られたのはやっぱ雨の後で、犯人はまだ校舎に隠れてるってことも……」
はじめ「証拠ならあるぜ」
三井「なにッ!?」
はじめ「流川の持ち物。カバンの中に入ってたんだよ」
三井「な、なにが……」
はじめ「折りたたみ傘さ」
三井「ッ!」
53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 05:10:48.12 ID:/h0oKKJW0
はじめ「そう。雨が降った後に校舎から出たんなら傘がカバンに入ったままのハズがない」
はじめ「つまり流川が殴られたとき、雨はまだ小雨か降ってなかったってことさ」
三井「でも……でもよおっ!そんなの、オレじゃなくても、誰でもできるぜ?」
三井「ホースがありゃいいんだろ?カンタンじゃねーか!!」
はじめ「でもクジは……」
三井「細工なんてしてねーよ!!あの順番はたまたまだ!!」
はじめ「そこまで言うなら見せてやるよ、アンタが犯人だっていう決定的な証拠」
三井「何…だと……!?」
54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 05:12:45.51 ID:/h0oKKJW0
はじめ「正確に言えば見せてくれよ、かな」
はじめ「なあ三井サン、アンタのカバンの中、見せてくれないか?」
三井「!!!」
はじめ「ずっと不思議だったんだ。ウワサまで流して七不思議に見立てたのに、なぜ殴ったあと流川を木に吊るさなかったのか」
はじめ「殴り方からしても殺す気がなかったワケじゃなさそうだし、吊るした方が心理トリックにも有利だ」
三井「………」
はじめ「アンタにとって予想外だったのは、予報よりもかなり早く小雨が降り出したことだった」
55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 05:15:10.02 ID:/h0oKKJW0
はじめ「おそらく足跡のトリックをしてる最中か直後に小雨が降ってきたんじゃないかな?」
はじめ「アンタは焦った。このまま流川を吊るしてるうちに雨が本降りになったら?」
はじめ「アリバイがオジャンになるどころか、ヘタしたら自分の足跡が残っちまう」
はじめ「だからアンタは流川を木に吊るさず、大急ぎで視聴覚室のみんなと合流したんだ」
はじめ「そうなると……まだ残ってるハズだぜ?」
はじめ「使い損ねたロープが、アンタのカバンの中に!!」
はじめ「捨てたり隠したりするヒマもなかっただろうしね」
三井「………」
三井「………オレの負け、だな」
56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 05:19:22.45 ID:/h0oKKJW0
はじめ「………」
三井「オレと流川は、愛し合ってる……いや、愛し合ってたんだ」
三井「ま、バスケ部の連中も気づいてないだろうがな」
三井「あいつのプレーを見てるうち、いつの間にか惹かれててよ」
三井「向こうもそうだったみたいでさ、部活後に告られて、付き合うことになったんだ」
三井「幸せだったぜ、毎日毎日。部活も、部活後もあいつと居られて」
三井「周りにちょっとアピールしたくてよ、オレとあいつで部活後に1on1したりとか」
はじめ「それがどうして……」
三井「あいつが裏切ったんだ」
はじめ「裏切った……?」
58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 05:21:07.59 ID:/h0oKKJW0
三井「言ったろ?オレたちの仲を見せつけたくて1on1したことがあるって。それなのに………!」
三井「あいつは……あいつは……仙道なんかと1on1やってやがったんだよ!しかも公園で!!」
三井「偶然通りかかったらすっげえ数のガキどもがフェンス越しに見てるから何かと思ったら……」
三井「あ、あいつと……仙道がっ……」
三井の目から涙がこぼれた。
三井「許せなかった。どうしても、どうしても……!!」
三井「なんでだよ流川……なんで……」
はじめ「三井………」
三井「……オレ、サツ、行かねーとな」
はじめ「…ちょっと待ってくれないか」
59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 05:21:59.60 ID:/h0oKKJW0
はじめ「オッサンには俺から上手く言っとくよ。だから……」
はじめ「だから病院に行ってやれよ」
三井「え……」
はじめ「流川、まだ生きてんだからよ。今1人で戦ってんだ」
はじめ「一番そばにいてやんなきゃいけないのは、アンタじゃないのか?」
三井「でも、よぉ……」
そこで廊下からバタバタと足音が聞こえたかと思うと、乱暴に部屋のドアが開いた。
赤木「行くぞ三井!」
三井「行く…?」
桜木「今刑事のおっさんからOK出てよ」
宮城「病院行ってもいいって!」
三井「………」
赤木「何してる!早くしろ!!」
三井「あ、ああ!!」
はじめが三井の肩を押した。
61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 05:45:52.87 ID:/h0oKKJW0
~病院~
三井「流川……」
病室に入ると、ベッドの上にはコードだらけの流川がいた。
目を閉じた流川の上で、心電図だけが規則的な音を出している。
赤木「頑張ってくれ、流川。ウチにはお前が必要なんだ」
宮城「諦めんなよ。諦めたらそこで試合終了だぞ」
桜木「お前がいねぇと、張り合いなくなっちまうだろーが……」
三井「………」
三井「なぁ流川、オレ……お前に言ってやりてえことが山ほどあんだよ」
三井「死んじまったらそれも伝えられねえ。だから……死なないでくれ。頼む」
それからは沈黙のまま時が流れる。
62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 05:46:45.43 ID:/h0oKKJW0
1時間……2時間……
…………………………
三井「る、かわ…?」
桜木「目が……」
宮城「目が…開いた!!」
赤木「か、看護婦呼んでくる!!」
流川「………待ってください」
赤木「…え……?」
流川「みんなが…来る前に……俺、先輩に言うことが……」
言いながら三井を見る。
三井「えっ……オレ…?」
63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 05:47:24.24 ID:/h0oKKJW0
流川「俺……スンマセン、先輩の気持ち考えずに」
流川「思えば最初からずっと……いつも俺が伝えて、先輩はそれにうなずくだけだった」
流川「だから試したんス、先輩が通る公園に仙道呼んで……」
三井「え……?そ、それ……マジ……?」
流川「………」
三井「…だよな、モチロン」
流川「一度聞いてみたかったんス。先輩の言葉で、先輩の気持ちを……」
64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 05:47:58.52 ID:/h0oKKJW0
赤木「……言ってやれ、三井」
三井「えっ、でも……」
赤木「まさかお前らのこと、俺たちが気づいてないとでも思ってたのか」
三井「えっ……はあぁッ!?」
宮城「わかりやすいもんねえ?」
赤木「ほら、早く」
三井「で、でも、こんな……何かビミョーな流れで……」
宮城「流れは自分で持ってくるもんだろがよ!」
桜木「根性みせろよミッチー!!」
流川「何縮こまってるんスか。らしくないっスよ」
三井「あ………」
三井「オ、オレは……」
赤木「ウホッ!」
おしまい
65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 05:49:47.11 ID:/h0oKKJW0
動機考えてなくて、流れのままに書いてたらトンデモナイ方向に・・・・・・
修正しようとしたけど無理ですた
もし最後まで見てくださった方がいれば、ありがとうございましたノシ
66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 05:52:02.50 ID:ZSK0+BYY0
乙ー
VIPでこういうスレを待ってた
金田一再放送しないかなー
67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 05:56:25.96 ID:/h0oKKJW0
>>66
そう言ってもらえるとすごくうれしい。
トリックとかは一応マジメに考えたつもりだけど、
つじつま合わんとことかあったら教えてちょ。
68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 06:06:14.34 ID:ZSK0+BYY0
程度によるけど雨が本降りになったら逆に足跡消えるんじゃね?
ロープに首絞めた痕跡が残ってる訳でもないのに証拠になるのか?
ってのが気になった
69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 06:13:47.50 ID:/h0oKKJW0
足跡は自分も一回考えたけど、実際見てみると意外と全然消えない。
ロープは・・・・・たしかに証拠になってねぇwwwダメっすね。
自分、証拠ってあんま思いつかないんだ。
あまりにもアカラサマなのもやだしって思うと。
とにかくトンクス。
今度からの参考にさせてもらうわ。
70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 06:23:19.87 ID:ZSK0+BYY0
消えるか消えないかは漫画によっても別れてる様な気がするね
証拠も理想は複線張っとくとおっ!てなるけどそれが難しいよね…
71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 06:27:36.49 ID:/h0oKKJW0
消えるときあるのか・・・・今後気おつける
証拠はマジ鬼門
「知ってるはずないことしゃべっちゃった」だけは認めない。絶対にだ。
まるわかりすぎるんだよ
とにかくこんなのにつきあってくれてありがとう。
今実験終わったしもうウチ帰って寝るわ。
ここは昼下がりの不動高校の教室。
玲香の出るドラマのロケが偶然にも(?)不動高校で行われており、はじめと美雪はエキストラとして出演している。
今はちょうど休憩中で、3人はたわいもない話に花を咲かせていた。
玲香「楽しみね、今夜の肝だめし」
はじめ「あ、あ、あぁ……」
肝だめし、というのは玲香とエキストラの高校生たちで行うイベント。
もちろん撮影スタッフには内緒で。
美雪「7時に視聴覚室集合だから、よろしくね」
玲香「うん!」
6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 03:24:45.07 ID:/h0oKKJW0
~夜~
はじめ「おい美雪、まだ6時半前だぜ?こんな早くに来なくても……」
美雪「いつも遅刻してるんだからたまにはいいじゃない」
はじめ「んだよそれ…」
はじめ「ってかお前なんで傘なんか持ってんだよ?こんな晴れてんのに」
美雪「天気予報で言ってたでしょ。7時頃から雨が降るって」
美雪「ええっと…確か……この窓だっけ?」
美雪が手をかけると、昼間にカギを外しておいた窓がガラガラと音を立てて開く。
美雪「さ、行くわよ」
はじめ「性格変わったな、お前」
美雪「何言ってんの、はじめちゃんのせいでしょ」
特に気にする様子もなく美雪が校舎の中へ入っていく。
はじめ「はいはいすみませ……イッテェッ!!」
続けて入ろうとしたはじめの頭に、窓枠がきれいにヒットした。
7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 03:29:17.20 ID:/h0oKKJW0
~視聴覚室~
美雪「さすがにまだ誰も来てないわね」
はじめ「たりめぇだろ。待っとこうぜ」
はじめがドカッと机に腰を降ろす。
美雪「そうね。……あら?もう雨が降ってきたわ」
はじめ「あ、ホントだ。まだ小雨だけど……玲香ちゃん、ダイジョーブかな」
美雪「ね?早く来て正解だったでしょ」
はじめ「へえへえ」
2人がそんな会話をしているうちに、玲香や他のエキストラが集まってくる。
今回はじめと美雪の他に参加するエキストラは5人。
桜木、流川、宮城、三井、赤木という、湘北高校の生徒だ。
8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 03:31:11.67 ID:/h0oKKJW0
そして時計の針が7時を指した。
美雪「全員そろった?……あ、流川くんがまだみたい」
玲香「ホントだ」
桜木「ハハハハハ!あのキツネ、怖くて逃げやがったな!!」
桜木「さっさと始めちまおうぜ!な、玲香ちゅわんっ!!」
玲香「え、ええ、そ、そうね……でももう少し待ってみましょ?きっとすぐ来るわ」
赤木「ああ、まだあせるような時間じゃない」
10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 03:34:54.96 ID:/h0oKKJW0
しかし5分、10分と待ってみても流川は来ない。
玲香「流川くん、来れなくなったのかな……?」
玲香「どうしたらいいと思う?」
宮城「どーします?ダンナ」
赤木「う~ん……、そうだな、玲香ちゃ…玲香さんにまかせる」
玲香「………」
桜木「さあさあ玲香ちゃん!あんなヤローはほっといてさっさと始めちゃいまs」
三井「ダメだ」
桜木「ミッチー?」
三井「オレたちはチームだ。どんなときも結束してなきゃなんねぇ」
玲香「……そうね、まだ全然小雨だし、もう少し待ってみましょうよ」
桜木「はい!玲香ちゃんがそう言うならっ!!」
12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 03:40:46.19 ID:/h0oKKJW0
一同は流川を待った。
次第に雨も本降りになってくる。
しかし7時半になってもついに流川は現れなかった。
宮城「流川、どーしたんスかね」
桜木「だから怖じ気づいたんだって!!さ、さ、始めましょ、玲香ちゃん!」
玲香「でも…」
三井「……しゃーねーか、こんだけ待ったんだ、遅れる方が悪い」
玲香「…そうね、やってるうちに来るかもしれないし」
玲香「みんな、始めてもいいかな?」
桜木「ハイッ!!」
13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 03:42:55.57 ID:/h0oKKJW0
結局満場一致で先に始めることになった。
今回行う肝だめしは視聴覚室を出発して、美雪の作った地図を見ながら七不思議の舞台をすべて巡って帰ってくるというもの。
それを1人ずつ行うのだ。
美雪「順番はどうやって決めよう?」
宮城「まあブナンにじゃんけんとかで……」
三井「あっ、オレ紙持ってるから、クジ作ろうぜ」
三井がカバンから取り出した赤点のテスト用紙を破いて番号を書き、コンビニの袋に入れた。
三井「『1』から『7』まで書いたから」
桜木「じゃあまずは玲香ちゃんどうぞっ!!」
玲香「ふふっ、ありがと………やだ、1番っ!?」
14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 03:47:05.04 ID:/h0oKKJW0
その後も各自がクジを引いていく。
美雪「あたしは5番」
桜木「テンサイ桜木2番っ!」
はじめ「4番か」
宮城「6番」
赤木「……3番だ」
三井「となると残った俺が、っと……7番ってワケね」
宮城「じゃあ始めますか!」
はじめ「玲香ちゃん、ファイト!」
美雪「頑張って!」
桜木「玲香ちゃん、もしよければこの桜木花道がご一緒に……」
玲香「ありがと、大丈夫よ!……じゃ、行ってくるね」
玲香は少し笑いながら、懐中電灯を手に出て行った。
15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 03:50:21.23 ID:/h0oKKJW0
視聴覚室ではその後和やかな会話が行われた。
彼らの所属する湘北高校バスケ部は来週からインターハイを控えていること。
今回のエキストラは玲香の熱烈なファンである赤木が練習そっちのけで応募したことなど。
…………しかし。
きゃああああああぁぁぁぁっっっ!!!!!
赤木「今の声……玲香ちゃんッ!?」
三井「でも…一体どこから」
はじめ「玲香ちゃんが出てってからまだ5分くらいしか経ってない」
はじめ「七不思議の舞台で最初に回ることになってたのは……」
美雪「『首吊り大イチョウ』よ!!」
はじめ「よし、行くぞ!」
言うが早いかはじめが部屋を飛び出す。
16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 03:53:56.85 ID:/h0oKKJW0
宮城「おいっ、もっと速く走れねーのかよっ!」
運動オンチのはじめがバスケ部のメンバーにかなうわけがない。
しかし彼らは大イチョウの場所がわからないので、先導をはじめにまかせるしかないのだ。
はじめ「はぁ…はぁ…ここを曲がって……いた!玲香ちゃん!!」
廊下の奥、手洗い場の近くに座りこんでいる玲香が見えた。
すかさず湘北のメンバーがダッシュで駆け寄る。
宮城「玲香ちゃん、大丈夫かっ!?」
赤木「れ、れ、玲香ちゃん、しっかり……」
三井「何があったんだ!?」
三井の問いに玲香は震えながら窓を指差した。
それはちょうど大イチョウの一番近くにあるものだ。
17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 03:56:45.48 ID:/h0oKKJW0
桜木「別にナンも変わったところは……ん?」
一同の視線が何かに気づいて止まる。
大イチョウの根元に、何かある。
人が、倒れている。
宮城「なあ、アレって……」
三井「流川!?」
赤木「流川ァッッ!!」
赤木が窓を開けて外に飛び出す。
すぐに流川に駆け寄り、背負って戻ってきた。
それを中の者が手伝って校舎に入れる。
三井「おい流川ッどうした!?」
宮城「返事しろよ!!」
桜木「マジ、かよ……」
流川の頭からは血が流れている。
はじめ「美雪!救急車!!」
美雪「うん!!」
18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 03:57:39.98 ID:/h0oKKJW0
はじめ「玲香ちゃん、大丈夫?」
玲香「ありがと、金田一くん。……うん、だいぶ落ち着いたみたい」
はじめ「安心して。犯人は俺が必ず捕まえてみせるから」
はじめ「ジッチャンの名にかけて!」
警察が来た後、7人は視聴覚室に集められていた。
流川は病院に運ばれた。
後頭部を鈍器で一撃されており、まだ息はあるものの、きわめて深刻な状態らしい。
凶器は流川のそばに落ちていたハンマーと判明。
ありふれたもので、犯人の特定には役立ちそうにない。
19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 03:59:04.39 ID:/h0oKKJW0
剣持「ったく。ガキが夜中にバカなことやっとるからだぞ!だいたい警備員は何しとるんだ」
美雪「前の警備員さんがちょっと問題起こしてやめちゃって」
剣持「問題?」
美雪「人を刺しちゃって」
剣持「新しい警備員は」
美雪「まだ来てません」
剣持「セコムしてますか?」
美雪「してません」
剣持「いったいどうなっとるんだ、この高校の危機管理は」
20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 04:00:32.10 ID:/h0oKKJW0
宮城「な、なぁ、美雪ちゃん」
美雪「ん?」
宮城「何かすごいね、あんなコトがあったのに……その、堂々としてるっていうか。アヤちゃんみたい」
美雪「アヤちゃん?」
宮城「ああ、うちのマネージャー。すっげェかわいいんだぜ、コレが」
美雪「へえ。……まぁ、事件は慣れちゃってるから」
宮城「へ?」
美雪「不動高校の名物みたいなものよ。殺したり、殺されたり」
三井「マジか……」
赤木「で、でも玲香ちゃ、玲香さんは怖かったですよね?本当に大丈夫ですか?」
桜木「心配いりません。玲香ちゃんは俺が守ってみせますよ」
玲香「あたし、人がアタマをオノでかち割られるの見たことあるし」
赤木・桜木「えっ」
三井「ハモッてんじゃねえよ」
21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 04:01:56.35 ID:/h0oKKJW0
剣持「ゴホン!!……では、事件までのみんなの行動を聞かせてもらえるかな」
宮城「ちょっ、オレたち疑ってんのかよッ!?」
剣持「まあまあ、そう怒るな。一応だ、一応。」
ここで剣持が聞いた結果をまとめると下のようになる。
6時30分:はじめと美雪が視聴覚室に到着
35分:小雨が降り始める
40分:玲香と三井到着
45分:赤木到着
55分:宮城到着
58分:桜木到着
7時15分:雨が本降りになってくる
30分:肝だめしスタート
35分:玲香が出て行く
40分:玲香の悲鳴
43分:美雪から通報
※家から一緒に来たはじめと美雪以外は前後のアリバイなし。
22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 04:03:38.73 ID:/h0oKKJW0
剣持「1、2分の誤差はあるだろうがこんなところか」
はじめ「で、オッサン。犯人見つかりそう?」
剣持「まぁな。……で?7時15分以降に誰か部屋を出た者はいるか?」
はじめ「えっと、桜木と赤木が連れションに行ってたな」
桜木「ああ」
剣持「時間は」
赤木「20分過ぎです」
はじめ「2人とも2分くらいで戻ってきたぜ。一緒に」
剣持「ふむ」
23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 04:04:39.09 ID:/h0oKKJW0
玲香「あとあたしも…」
剣持「肝だめしのことかな?」
玲香「はい…」
剣持「他には?」
はじめ「いや、そんだけだぜ?」
剣持「はぁッ!?そんなワケあるか!」
はじめ「え、でも……なあ、美雪」
美雪「うん……」
宮城「オレもそう思う」
三井「間違いないぜ」
剣持「バんなそカな…」
はじめ「どうかしたのか?」
剣持「あ、あぁ。金田一、七瀬くん、ちょっと来てくれ」
24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 04:05:41.19 ID:/h0oKKJW0
剣持は2人を隣のパソコン室に呼び出した。
剣持が気にしているのは大イチョウの周りに残された足跡だった。
剣持「残されていた足跡は全部で3組」
剣持「まず窓から大イチョウまで、片道の足跡が1組。被害者が履いていた靴と一致した」
剣持「次に往復の足跡が2組。ひとつは窓のそばに捨ててあったスリッパのものだった」
はじめ「それが犯人のだろうな」
剣持「おそらくそうだろう」
はじめ「で、もう1組が流川を助けに行った赤木のってコトか」
剣持「ああ」
はじめ「たしかに。そりゃオッサンが困るわけだ」
25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 04:06:54.90 ID:/h0oKKJW0
美雪「え?何で?」
はじめ「考えてみろよ、美雪。足跡が付くほどに雨が本降りになったのが7時15分頃」
はじめ「それ以降、俺たちの誰にも大イチョウまで行く時間がなかった」
美雪「あっ。あたしたちの中に犯人はいないってことになるのね」
はじめ「ああ」
不動高校の校舎は上から見るとHの形をしている。
東が新校舎、西が旧校舎で、間に渡り廊下。
門は新校舎の東側にあり、カギを開けておいた窓は新校舎の北端、視聴覚室はその真上の3階だ。
問題の大イチョウは旧校舎南端の廊下の西側。
その間はどんなに走っても片道2分はかかる。
26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 04:08:35.63 ID:/h0oKKJW0
美雪「でもさ…犯人の足跡、校舎に戻ってきてたんだよね?」
美雪「もしかしてまだどこかに隠れてるんじゃ……!」
剣持「今、シラミ潰しに探してるところだ」
はじめ「もしくは、俺たちの誰かが視聴覚室に居ながらにして大イチョウの下の流川を殴ったってことさ」
美雪「そんな…」
剣持「赤木ってヤツが駆け寄ったときに殴ったとか」
はじめ「そんな素振りはなかったよ。あれだけの人数の目の前だ、ごまかせない」
剣持「うーむ……」
はじめ「……なあ、美雪」
美雪「何?はじめちゃん」
28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 04:09:55.35 ID:/h0oKKJW0
はじめ「前に桜樹センパイがまとめてくれた七不思議の資料データ、あるか?」
美雪「うん、このパソコンからログインしたら見れるけど……」
はじめ「ちょっと、見せてくれ」
美雪「わかった。ちょっと待っててね」
剣持「そうだ金田一。流川の持ち物、見とくか?」
はじめ「ああ、一応頼むよ」
言ってはじめがメモを受け取る。
『ズボンのポケットに家と自転車のカギ』
『そばに落ちていたカバンに財布、携帯電話、折りたたみ傘、懐中電灯、コンビニのパン、バスケットボール』
『現金などに触れられた形跡なし。周りに他に落ちていたものも凶器以外特になし』
29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 04:11:04.32 ID:/h0oKKJW0
美雪「はじめちゃん、出たわよ!」
はじめ「お?おお、サンキュ」
美雪「それで、どの話が見たいの?『首吊り大イチョウ』?」
はじめ「ああ、頼む」
美雪がカチカチとマウスを操作する。
『首吊り大イチョウ』
『昔、不動高校の男子生徒がイジメを苦にして校庭の大イチョウで首を吊って自殺した。』
『それ以来、夜にその木の下を通ると』
『自殺した生徒の姿が浮かび上がるらしい。』
『大イチョウは校庭の隅にある、卍のキズが付いた木だ。』
30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 04:12:11.39 ID:/h0oKKJW0
美雪「……あれ?こんな話だっけ?」
はじめ「………」
剣持「まったく、わけのわからん事件だ」
美雪「それでもはじめちゃんなら……」
美雪「はじめちゃんなら、きっとなんとかしてくれる」
32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 04:13:34.59 ID:/h0oKKJW0
はじめ「………」
はじめは脳をフル稼働させる。
いくつかの引っかかる点……
それらをいかにつなげるか?
それがきっと真相につながるはずだ。
…………ゃん……
…じ…ち…………
美雪「はじめちゃんッ!!」
はじめ「うわあぁッッ!な、なんだよおどかすなよ美雪」
美雪「お…お願いがあるんだけど……」
はじめ「お願い?」
34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 04:14:50.16 ID:/h0oKKJW0
はじめ「ったく!!トイレぐらい1人で行けよな」
美雪「はじめちゃんは、そこで待っててね」
はじめ「はいはい」
ガチャッ……
美雪「きゃああああッッ!」
はじめ「美雪ッ!?どうしたッッ!?」
35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 04:16:00.07 ID:/h0oKKJW0
はじめが駆け寄る。
美雪「あっ、ごめん、はじめちゃん。間違えて掃除用具入れ開けちゃって」
美雪「モップが人に見えたの」
はじめ「はぁ?」
美雪「ごめんね」
はじめ「人騒がせな……」
言いながらはじめの目にあるモノが飛びこんできた。
そしてその瞬間、頭の中のジグソーパズルが完成される。
はじめ「わかったぜ美雪……」
美雪「はじめちゃん?」
はじめ「謎は……」
はじめ「謎はすべて解けた!!」
44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 04:55:23.29 ID:/h0oKKJW0
~会議室~
ガラッ
???「よぅ、金田一。他はまだ誰も来てねえみたいだな」
はじめ「………」
はじめ「誰も来ないぜ」
???「えっ?」
はじめ「オッサンと美雪に頼んでアンタだけ呼び出してもらったんだ」
???「なんでそんなこと……」
はじめ「流川を殴ったのは、アンタだ」
???「………」
45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 04:57:34.87 ID:/h0oKKJW0
???「なんだよそれ。話がそれだけなら帰るぜ」
はじめ「待てよ」
???「あんだよっ!!そもそも俺はお前らとずっと一緒にいたじゃねーかッッ!!」
はじめ「ああ」
???「ほれみろ。俺にはアリバイが……」
はじめ「ただし、雨が降ったあとは、だけどな」
はじめ「流川が、雨が降るより前に殴られていたとしたら?」
???「はぁッ!?お前見てねーのかよ、あの足跡」
???「雨が降ってねーとあんな足跡は付かねえ」
???「つまり流川が殴られたのはそれより後ってことだろーが!」
はじめ「そんなことないぜ」
46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 04:59:11.56 ID:/h0oKKJW0
???「あ?」
はじめ「足跡くらい、雨が降ってなくても付けれる……これを使えば」
言ってはじめが取り出したのはゴムホースだった。
はじめ「トイレの掃除用具入れにあったんだ」
???「ッッ………!」
はじめ「……犯人は、雨が降る前に流川を大イチョウの下で殴った」
はじめ「それから手洗い場の蛇口にこのホースをつないで、窓から大イチョウまでの地面を濡らしたんだ」
はじめ「それからまずスリッパで『犯人が往復した足跡』を付ける」
はじめ「次に流川の靴を履いて『窓から大イチョウまで歩いた足跡』を付けて……」
はじめ「流川に再びその靴を履かせ、乾いた地面を歩いて校舎に戻ってきたんだ」
はじめ「あとは予報通り雨が降るのを待てばいい」
はじめ「まるで雨の中2人が歩いた足跡の出来上がりってワケさ」
47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 05:02:37.65 ID:/h0oKKJW0
はじめ「肝だめしに流川がなかなか来なくて、先に始めようって流れに1回なりかけた時、アンタ止めたよな?」
はじめ「あれはこのトリックのためだったんだ」
はじめ「あの時はまだ小雨だったから、地面に足跡が残るような状態じゃなかった」
はじめ「肝だめしを始められたら、不自然な足跡だけが見つかってトリックがオジャンになっちまう」
はじめ「だからアンタは『オレたちはチーム』だの『結束』だのと言って雨が降るまで時間を稼いだんだ」
はじめ「そうだろ?…………三井」
三井「………」
はじめ「流川を殴ったのはアンタだ、三井寿」
50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 05:06:16.00 ID:/h0oKKJW0
はじめ「アンタは頭がいい。このトリックには様々な下準備があった」
はじめ「まず『首吊り大イチョウ』のウワサ。雨の夜に木の下に行くと首を吊られるってやつ」
はじめ「あのせいで俺たちは雨が降ってる最中に流川が殴られたと思いこんでしまったんだ」
はじめ「でも、そもそもあの話に雨の設定なんてなかった。殺される設定も」
はじめ「あれはこの心理トリックのためにアンタがそれとなく流したものだったんだろ?」
はじめ「ウワサ話なんて所詮はそんなモンだしね」
51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 05:07:41.60 ID:/h0oKKJW0
はじめ「次に肝だめしの順番を決めたクジ」
はじめ「いくら足跡を付けても、自分がトップバッターになるとアリバイがなくなっちまう」
はじめ「だからアンタはあの時自分がクジを作るのを提案した」
はじめ「作ったうち『7』のクジは袋に入れずに持ってたんだろ?」
はじめ「最後にそれを引くフリだけすれば、トップバッター回避ってワケさ」
はじめ「まぁ前の人が流川を見落とすことも考えて、一応ラストにしたってとこかな?」
52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 05:09:08.99 ID:/h0oKKJW0
三井「ちょっと待てよ」
三井「お前さっきから流川が殴られたのは雨の前だって言い張ってるけどよ……」
三井「そんな証拠あんのかよ?」
三井「もしかしたら殴られたのはやっぱ雨の後で、犯人はまだ校舎に隠れてるってことも……」
はじめ「証拠ならあるぜ」
三井「なにッ!?」
はじめ「流川の持ち物。カバンの中に入ってたんだよ」
三井「な、なにが……」
はじめ「折りたたみ傘さ」
三井「ッ!」
53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 05:10:48.12 ID:/h0oKKJW0
はじめ「そう。雨が降った後に校舎から出たんなら傘がカバンに入ったままのハズがない」
はじめ「つまり流川が殴られたとき、雨はまだ小雨か降ってなかったってことさ」
三井「でも……でもよおっ!そんなの、オレじゃなくても、誰でもできるぜ?」
三井「ホースがありゃいいんだろ?カンタンじゃねーか!!」
はじめ「でもクジは……」
三井「細工なんてしてねーよ!!あの順番はたまたまだ!!」
はじめ「そこまで言うなら見せてやるよ、アンタが犯人だっていう決定的な証拠」
三井「何…だと……!?」
54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 05:12:45.51 ID:/h0oKKJW0
はじめ「正確に言えば見せてくれよ、かな」
はじめ「なあ三井サン、アンタのカバンの中、見せてくれないか?」
三井「!!!」
はじめ「ずっと不思議だったんだ。ウワサまで流して七不思議に見立てたのに、なぜ殴ったあと流川を木に吊るさなかったのか」
はじめ「殴り方からしても殺す気がなかったワケじゃなさそうだし、吊るした方が心理トリックにも有利だ」
三井「………」
はじめ「アンタにとって予想外だったのは、予報よりもかなり早く小雨が降り出したことだった」
55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 05:15:10.02 ID:/h0oKKJW0
はじめ「おそらく足跡のトリックをしてる最中か直後に小雨が降ってきたんじゃないかな?」
はじめ「アンタは焦った。このまま流川を吊るしてるうちに雨が本降りになったら?」
はじめ「アリバイがオジャンになるどころか、ヘタしたら自分の足跡が残っちまう」
はじめ「だからアンタは流川を木に吊るさず、大急ぎで視聴覚室のみんなと合流したんだ」
はじめ「そうなると……まだ残ってるハズだぜ?」
はじめ「使い損ねたロープが、アンタのカバンの中に!!」
はじめ「捨てたり隠したりするヒマもなかっただろうしね」
三井「………」
三井「………オレの負け、だな」
56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 05:19:22.45 ID:/h0oKKJW0
はじめ「………」
三井「オレと流川は、愛し合ってる……いや、愛し合ってたんだ」
三井「ま、バスケ部の連中も気づいてないだろうがな」
三井「あいつのプレーを見てるうち、いつの間にか惹かれててよ」
三井「向こうもそうだったみたいでさ、部活後に告られて、付き合うことになったんだ」
三井「幸せだったぜ、毎日毎日。部活も、部活後もあいつと居られて」
三井「周りにちょっとアピールしたくてよ、オレとあいつで部活後に1on1したりとか」
はじめ「それがどうして……」
三井「あいつが裏切ったんだ」
はじめ「裏切った……?」
58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 05:21:07.59 ID:/h0oKKJW0
三井「言ったろ?オレたちの仲を見せつけたくて1on1したことがあるって。それなのに………!」
三井「あいつは……あいつは……仙道なんかと1on1やってやがったんだよ!しかも公園で!!」
三井「偶然通りかかったらすっげえ数のガキどもがフェンス越しに見てるから何かと思ったら……」
三井「あ、あいつと……仙道がっ……」
三井の目から涙がこぼれた。
三井「許せなかった。どうしても、どうしても……!!」
三井「なんでだよ流川……なんで……」
はじめ「三井………」
三井「……オレ、サツ、行かねーとな」
はじめ「…ちょっと待ってくれないか」
59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 05:21:59.60 ID:/h0oKKJW0
はじめ「オッサンには俺から上手く言っとくよ。だから……」
はじめ「だから病院に行ってやれよ」
三井「え……」
はじめ「流川、まだ生きてんだからよ。今1人で戦ってんだ」
はじめ「一番そばにいてやんなきゃいけないのは、アンタじゃないのか?」
三井「でも、よぉ……」
そこで廊下からバタバタと足音が聞こえたかと思うと、乱暴に部屋のドアが開いた。
赤木「行くぞ三井!」
三井「行く…?」
桜木「今刑事のおっさんからOK出てよ」
宮城「病院行ってもいいって!」
三井「………」
赤木「何してる!早くしろ!!」
三井「あ、ああ!!」
はじめが三井の肩を押した。
61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 05:45:52.87 ID:/h0oKKJW0
~病院~
三井「流川……」
病室に入ると、ベッドの上にはコードだらけの流川がいた。
目を閉じた流川の上で、心電図だけが規則的な音を出している。
赤木「頑張ってくれ、流川。ウチにはお前が必要なんだ」
宮城「諦めんなよ。諦めたらそこで試合終了だぞ」
桜木「お前がいねぇと、張り合いなくなっちまうだろーが……」
三井「………」
三井「なぁ流川、オレ……お前に言ってやりてえことが山ほどあんだよ」
三井「死んじまったらそれも伝えられねえ。だから……死なないでくれ。頼む」
それからは沈黙のまま時が流れる。
62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 05:46:45.43 ID:/h0oKKJW0
1時間……2時間……
…………………………
三井「る、かわ…?」
桜木「目が……」
宮城「目が…開いた!!」
赤木「か、看護婦呼んでくる!!」
流川「………待ってください」
赤木「…え……?」
流川「みんなが…来る前に……俺、先輩に言うことが……」
言いながら三井を見る。
三井「えっ……オレ…?」
63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 05:47:24.24 ID:/h0oKKJW0
流川「俺……スンマセン、先輩の気持ち考えずに」
流川「思えば最初からずっと……いつも俺が伝えて、先輩はそれにうなずくだけだった」
流川「だから試したんス、先輩が通る公園に仙道呼んで……」
三井「え……?そ、それ……マジ……?」
流川「………」
三井「…だよな、モチロン」
流川「一度聞いてみたかったんス。先輩の言葉で、先輩の気持ちを……」
64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 05:47:58.52 ID:/h0oKKJW0
赤木「……言ってやれ、三井」
三井「えっ、でも……」
赤木「まさかお前らのこと、俺たちが気づいてないとでも思ってたのか」
三井「えっ……はあぁッ!?」
宮城「わかりやすいもんねえ?」
赤木「ほら、早く」
三井「で、でも、こんな……何かビミョーな流れで……」
宮城「流れは自分で持ってくるもんだろがよ!」
桜木「根性みせろよミッチー!!」
流川「何縮こまってるんスか。らしくないっスよ」
三井「あ………」
三井「オ、オレは……」
赤木「ウホッ!」
おしまい
65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 05:49:47.11 ID:/h0oKKJW0
動機考えてなくて、流れのままに書いてたらトンデモナイ方向に・・・・・・
修正しようとしたけど無理ですた
もし最後まで見てくださった方がいれば、ありがとうございましたノシ
66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 05:52:02.50 ID:ZSK0+BYY0
乙ー
VIPでこういうスレを待ってた
金田一再放送しないかなー
67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 05:56:25.96 ID:/h0oKKJW0
>>66
そう言ってもらえるとすごくうれしい。
トリックとかは一応マジメに考えたつもりだけど、
つじつま合わんとことかあったら教えてちょ。
68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 06:06:14.34 ID:ZSK0+BYY0
程度によるけど雨が本降りになったら逆に足跡消えるんじゃね?
ロープに首絞めた痕跡が残ってる訳でもないのに証拠になるのか?
ってのが気になった
69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 06:13:47.50 ID:/h0oKKJW0
足跡は自分も一回考えたけど、実際見てみると意外と全然消えない。
ロープは・・・・・たしかに証拠になってねぇwwwダメっすね。
自分、証拠ってあんま思いつかないんだ。
あまりにもアカラサマなのもやだしって思うと。
とにかくトンクス。
今度からの参考にさせてもらうわ。
70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 06:23:19.87 ID:ZSK0+BYY0
消えるか消えないかは漫画によっても別れてる様な気がするね
証拠も理想は複線張っとくとおっ!てなるけどそれが難しいよね…
71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/17(金) 06:27:36.49 ID:/h0oKKJW0
消えるときあるのか・・・・今後気おつける
証拠はマジ鬼門
「知ってるはずないことしゃべっちゃった」だけは認めない。絶対にだ。
まるわかりすぎるんだよ
とにかくこんなのにつきあってくれてありがとう。
今実験終わったしもうウチ帰って寝るわ。
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