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唯「死ぬとどうなっちゃうの?」
3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/07/12(月) 00:29:52.08 ID:3CaqZmDzP [1/42]
朝、登校中にて。
唯「あ、あずにゃんだー」
梓「唯先輩じゃないですか。おはようございます」
唯「うんおはよーあずにゃん」
梓「今日は憂一緒じゃないんですか?」
唯「それがお恥ずかしいんですが……昨日ちょっとケンカしちゃって」
梓「もー。また怒らせちゃったんですか」
唯「ち、違うよ。……多分。そう、だと思いたいけど……」
梓(あやしい)
朝、登校中にて。
唯「あ、あずにゃんだー」
梓「唯先輩じゃないですか。おはようございます」
唯「うんおはよーあずにゃん」
梓「今日は憂一緒じゃないんですか?」
唯「それがお恥ずかしいんですが……昨日ちょっとケンカしちゃって」
梓「もー。また怒らせちゃったんですか」
唯「ち、違うよ。……多分。そう、だと思いたいけど……」
梓(あやしい)
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 00:35:23.41 ID:3CaqZmDzP
唯「ねえあずにゃん」
梓「なんですか?」
唯「死ってなんだと思う?」
梓「シ? 音階の話ですか?」
唯「んもう違うよー。カタカナでタヒって書く方の死だよ」
梓「なんかそこはかとなく分かりにくい表現ですね……」
唯「まあまあそれはいいとして、ね?」
梓「はあ」唯「ねえあずにゃん」
梓「なんですか?」
唯「死ってなんだと思う?」
梓「シ? 音階の話ですか?」
唯「んもう違うよー。カタカナでタヒって書く方の死だよ」
梓「なんかそこはかとなく分かりにくい表現ですね……」
唯「まあまあそれはいいとして、ね?」
梓「はあ」
7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/07/12(月) 00:42:29.18 ID:3CaqZmDzP
唯「で、どう?」
梓「どうって……そりゃあ人生の終わり、ですかね」
唯「ふむふむ。ふぃにっしゅってことだね」
梓「はい。その人がその生き方をゴールするというか、クリアするというか」
唯「要するに始まり、誕生と対になるポイントってことだね?」
梓「そうですね。それはとっても悲しいことだと思います」
唯「え? 悲しいことなのかな」
梓「悲しいですよ。おじいちゃんが死んじゃった時も、私悲しくて悲しくて涙が止まりませんでしたましたもん」
唯「あ、ごめんね?」
梓「いやもう大丈夫です。乗り越えましたから、多分」
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 00:48:24.60 ID:3CaqZmDzP
唯「じゃああずにゃんはさ、自分が死にそうになったら悲しい?」
梓「悲しいです、いや悔しいかな?」
唯「く、悔しいの?!」
梓「だってもっと生きていたいじゃないですか。多分何歳になってもそう考えてると思います」
唯(強欲だなぁ)
梓「好きな人と結婚して、子供ができて、孫ができて。自分の生きた証が活躍してるところなんかを見ていたいですね」
唯「ほえー。なんかリアリストさんだね、あずにゃんって」
梓「えへへ」
唯(若干混じった侮蔑に気がついてないのかな)
9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/07/12(月) 00:55:17.15 ID:3CaqZmDzP
唯「じゃあ次の質問です。人間ってさ、死ぬとどうなると思う?」
梓「なんなんですか? さっきから変ですよ」
唯「いいからいいから。で、あずにゃんはどう思うの?」
梓「そうですねー。やっぱり無に帰るとかじゃないんですか」
唯「無? 無って?」
梓「うーん。うまく言えませんけど……意識は消えちゃって、それで何も分からなくなって……」
唯「ああ、だからあずにゃん死ぬのは悔しいんだ」
梓「ええ。何時までも生きてたいです」
唯「なんだかおばあさんみたいだねぇ」
梓「よ、余計なお世話ですっ」
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 00:58:31.37 ID:3CaqZmDzP
唯「じゃあねあずにゃん。お話ししてくれてありがとね」
梓「え。あ、はい」
あずにゃんは死ぬのがいやなんだね。
確かに同意できるところもあったけど、ちょっと欲が強すぎるね。
まあそんなあずにゃんも可愛いけどねっ。
学校、ついちゃった。
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 01:05:02.92 ID:3CaqZmDzP
朝、授業開始前にて
唯「りっちゃんおはよー」
律「おーっす唯」
唯「一時間目ってなんだっけ」
律「化学だよん。唯ちゃんと宿題やってきたかー?」
唯「う。うう。……忘れてたよぉ~」
律「だと思ったよ。ほれ写してしまいなされ!」
唯「りっちゃんまじ天使! ありがとー」
律「ふぉっふぉっふぉ、何かあったらこの律様になんでも言うとよいぞよ」
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 01:13:40.25 ID:3CaqZmDzP
唯「え。じゃあはいはーい!」
律「はい平沢唯さん!」
唯「死ってなんだと思いますか!」
律「……へ?」
唯「死だよ死! deadだよdieだよ」
律「どうでもいいけどなかなか発音いいのな」
唯「受験勉強の賜物です!」
律「いや唯の学部にスピーキングなんか無いだろ……」
唯「しまった!」
律(うんだめだこりゃ)
18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 01:20:55.38 ID:3CaqZmDzP
唯「じゃなくてだよ」
律「え?」
唯「死についてだよー。さありっちゃんの意見聞かせて?」
律「そうだなぁ……。やっぱり救いじゃないか?」
唯「救い? saveとかrescueの?」
律「そーそ。それよそれ」
律(rescueって若干意味違うよな)
唯(英単語がスラスラでてきたんだからちょっとは驚いて欲しいなぁ)フンス
律「本で読んだんだ。幸福は一種類しかないけど、不幸は千差万別。幸福とは寓話であり不幸とは物語である、ってね」
唯「寓話? 物語? うーん。よくわかんないや」
律「そうか?」
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 01:29:34.24 ID:3CaqZmDzP
律「じゃあ簡単に説明するぞ。わからくなったら手を上げろよ」
唯「了解ですりっちゃん隊長!」
律「幸福そうにしてる人はみんなワンパターンに見える。お金を持ってて、難しい気苦労もなくて」
律「逆に不幸はあれだ、お金が無い、いやお金があっても心労が耐えない、いや毎日楽しいけどお金がなくて死んじゃいそう」
律「幸福と不幸って対称みたいにみえるけど、それはぜんぜん違うんだ。つまるところ幸福なんて理想でしかナイって事だな」
唯「はい!」
律「はい唯さん!」
唯「日本語でお願いします!」
律「……うんごめんね」
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 01:37:22.30 ID:3CaqZmDzP
律「じゃあ極論だけどちょー簡単に言うぞ」
唯(最初からそうしてよ……)
律「幸福なんて存在しないんだよ、この世にはな」
唯「え?」
律「まあ納得してくれなくてもいいよ、あたしの持論だしな」
唯「あ、うん。じゃあとりあえず保留ということで……」
律「おし。じゃあ話を戻すぞ。死は救いだってことな」
唯「やっと本題にもどってこれたね!」
律「いや一応さっきの話も関連してるんだけど……」
22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 01:44:12.57 ID:3CaqZmDzP
律「つまり人間は逃げたいんだよ、そういう常々ついて回る不幸からな」
唯「それわかるよー。私も勉強したくないし、アイスは取りに行きたくないし、朝早く起きたくないもん」
律(ずれてる気もするけどあえて触れないでおこう……)
律「えー、でだ。そっから逃げたい逃げたいと思うだろ? でも逃げ切れ無いんだよなー残念ながら」
唯「お日様はいつも同じ様に登ってきちゃうもんね。ほんとたまにはお寝坊してくれたっていいのにさ」フンス
律「そう、だからさ。死のうと思うんだよ、人間って奴は。逃げたいがゆえに。極論だけどな」
唯「うーん確かに」
律「だから救い。現実の痛みから逃げ切れる最後の手段だからな」
唯「なんかりっちゃんが大人に見えるよ……」
律「ふ。あたしも遂にあだるてぃな女になってしまったか」
唯「りっちゃんかっこいー!」
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 01:48:49.43 ID:3CaqZmDzP
律「てかもう授業始まるけど宿題写し終わったのか?」
唯「――ああっ」
結局写し終える前に先生が来ちゃって、私の奮闘むなしく忘れ物となりました。
りっちゃんが難しい話するからだもん。りっちゃんのせいだもん。
26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 01:55:57.85 ID:3CaqZmDzP
>>24
このキャラならこう言いそうっていうオナニー
一応しょぼい伏線は引っ張るつもり
朝、古典のあと数学の前にて。
唯「ううう、まさか今日指される日だったとは……」
澪「でもなんとか答えられてたじゃないか。唯にしては頑張ったと思うぞ」
唯「澪ちゃんそれひどくなーい? 答えも惜しかったけど間違ってたし」
澪「まあまあ。進歩は見られてるってことで」
唯「ぶう。……あ、澪ちゃん」
澪「なんだ? 課題なら見せないぞ?」
唯「ちがうよー! 第一、課題ならもう半分くらいやったもん」
澪「唯もやっと受験意識するようになったんだな、感心感心」
唯「みおちゃーん……」
27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 02:05:08.70 ID:3CaqZmDzP
澪「ごめんごめん。素直に褒めたことなくてさ。その、照れくさかったんだ」
唯「あらあら、素直になれないなんていわゆるツンデレってやつですかな~」
澪「なっ、違うぞ!」
唯(かわ唯……じゃなかった、かわゆいなぁ澪ちゃん)
唯「ねえねえ澪ちゃん」
澪「どうした?」
唯「突然なんだけど。死ぬってさ、どういうことなのかな」
澪「死ぬ? ば、お前死のうとか思ってるのか? そんなことしたら憂ちゃんが悲し――」
唯「憂は悲しませたりしないよ。それは絶対大丈夫」
澪「あ、ああそうか。……そうだよな、うんごめん」
29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 02:13:48.77 ID:3CaqZmDzP
唯「憂は世界で一番大切な人だもん」
澪「今日はやけに惚気るな、唯」
唯「でへへそうかな。でも澪ちゃんだっていつもりっちゃんがどうとか、りっちゃん可愛いとか惚気けてくるじゃん」
澪「あ、いやあれはだな。惚気とかじゃなくてその」
唯「――わかってるよ。澪ちゃんりっちゃんが好きなんでしょ?」
澪「え、ええっ。いやあの……」
唯「隠さなくたっていいじゃん。好きな人を好きって言えることは世界で一番素敵なことらしいよ?」
澪「うう。そう、かな」
唯「そうそう。だから澪ちゃんも当たって砕けろだよ!」
澪「いやいや砕けたくない」
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 02:25:32.28 ID:3CaqZmDzP
唯「で、本題についてなんですが」
澪「本題?」
唯「もー、死ぬことについてだってば」フンス
澪「あーあー、ごめんごめんそうだったな」
唯「で、どうなの澪ちゃん的にはさ」
澪「お星様だな」
唯(なんなのこの子)
唯「えっと……。つまりどういうことだってばよ」
澪「だからさ。お星様になっちゃうことなんだよ、死ぬことって言うのは」
31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 02:37:26.21 ID:3CaqZmDzP
唯「ふ、ふーん。お星様ね」
澪「そうそう。昔さ、私がまだ小学生だった頃の話なんだけど」
唯(どんなメルヘンな話が飛び出すのだろうであろうか、今の私には一片の想像さえつかないのであった)
澪「ハムスター飼ってたんだよ。ジャンガリアンでさ、設備投資も安くて当時の私のお小遣いでも手が届いたんだ」
澪「結局3年くらいで死んじゃったんだけど、当時の私は律の次くらいに大切な友達だったんだ。いや初めの方は唯一と言ってもいいくらいの」
唯「なんか澪ちゃんペットとかすんごい大事にしそうだよね」
澪「思ってるとおりだと思うぞ。夜とかずっと一方的に喋りかけたりしてたし。今思うとちょっと恥ずかしいけどな」
唯「そんなことないよー。お友達とおしゃべりするのは普通だよ?」
澪「ありがとな。……それでその子が死んじゃったあと、私はそれこそ大荒れで。学校をさぼったのもあれが初めてかもしれない」
澪「その時ママが言ってくれたんだ。『この子はお星様になって澪をずっと見守ってくれるし、時には励ましてくれるのよ』ってね」
唯「ロマンチックだね」
澪「うん。でも本当にそんな気がするんだ。今でも星空を見上げると、なんだか私は護られてるなぁなんて気が湧いてくる」
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 02:46:50.96 ID:3CaqZmDzP
唯「そんなことがあったんだ」
澪「……なんだか話し終えて恥ずかしくなってきた」
唯「それはまた今更だねー。じゃあちょっと質問変えるけど、澪ちゃんも死んだらお星様になるの?」
澪「どうだろうな。でもなってみたい気もするよ」
唯「どうして?」
澪「私にだって好きな人、尽くしてあげたい人の一人や二人はいるからな。今だったら、まあ律、だし。これから生きていけば変わってしまうかもしれないけど」
澪「死んでしまってからもそういう人の背中をさすってあげて、勇気づけてあげたいって思うのは普通じゃないか?」
唯「でも相手が気づかないんじゃない? ほら、せっかく澪ちゃんが星になって見守ってあげてもさ。鈍感で気づかなかったりして」
澪「それは……やだな。少しでもいいから気づいて欲しいよ」
唯「だったらやっぱり生前に言っとかなきゃね。『私死んだら星になってあなたを見守るし応援もします』って」
澪「そういうことって言ってもいいのかな……? いやでも、あえて言っておいた方がいいのかも」
33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 02:50:36.05 ID:3CaqZmDzP
唯「とりあえず当面はりっちゃんに、だね」ニヤニヤ
澪「ばっ……ううう」//
照れる澪ちゃんも可愛いよね。
澪ちゃんを見てるとなんだか他のことなんか忘れられそうで。
死ぬことを難しく考えるのが馬鹿らしくもなってきそうだけれど。
残念ながら私は考えることを放棄できないんだよね。
そう。ほんとにそれは、残念なことだけど。
53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 17:01:45.08 ID:3CaqZmDzP
昼休み、部室にて。
唯「あ、ムギちゃんさんではないですか!」
紬「唯ちゃんさんではないですか~」
唯「これはこれは」
紬「どうもご親切に♪」
唯「――っていうかムギちゃんどうして部室にいるの?」
紬「それがね。キーボードの調子悪くてちょっと見に来てたとこなの」
唯「そっかー。じゃあ私と似たようなもんだね」
紬「唯ちゃんもレスポールの様子見に来たの?」
唯「うん。いや別に調子は悪くないんだけどさ~……。時々もーれつに見たくなることがあるんです」デヘヘ
紬「本当にギー太が好きなのね、唯ちゃんって」
54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 17:10:13.12 ID:3CaqZmDzP
唯「好きだよー! まだ添い寝してるもん」フンス
紬「あらあら。それじゃあ憂ちゃんも嫉妬しちゃってるんじゃない?」
唯「あ、ああうん。でも憂は分かってくれてるから……」
紬(ほんのりと地雷臭がするわね。ケンカでもしたのかしら)
紬「そんなことより唯ちゃん。今日のお菓子はベルギーから届いた本場のチョコレートよ!」
唯「あっ、ごめん。今日ちょっと用事あって部活来れないんだ」
紬「あら……。そうなの?」
唯「うん。ほんとにごめんね。でも大事な用事だから……」
紬「そう。じゃあ唯ちゃんの分のチョコレートは明日にとっとくわね」
唯「あ、ムギちゃんありがとね」
55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 17:19:41.36 ID:3CaqZmDzP
唯「ねぇねぇムギちゃん」
紬「なあに?」
唯「ムギちゃんはさ、死ぬことって何だと思う?」
紬「死ぬこと? それは人がってことよね?」
唯「うん。人って死んじゃうとどうなるのかなとか、そもそも死って人間にとってなんなのかなって」
紬「それは私の持論でいいのよね? ちょっと長くなっちゃうけど聞いてくれる?」
唯「うん。聞かせて聞かせて」
紬「それじゃあまずは、死について人が思うことについて」
唯「うん」
唯(なんだかムギちゃんいつになく真剣だなぁ)
紬「人間は死にたがってるって、どこかで聞いたことがない?」
56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 17:26:43.53 ID:3CaqZmDzP
唯「うーん聞いたこと無いような」
紬「そっか。じゃあ説明するね。昔フロイトっていう高名な人がいたんだけど、その人は死への衝動、欲動をこう定義付けたの」
紬「『最も根が深くにある感情で、それは抗いがたい生命の破壊衝動である』」
唯「ちょっと難しいなぁ……」
紬「うーん。これ以上噛み砕くのも難しいんだけど、簡単にしていうと死にたがってるってことだと思うの。生きたいっていう欲求よりもね」
唯「え? じゃあみんなは何で生きてるの? 生きたいっていう意志よりそれが強いんだったらみんな自殺しちゃうはずだよね?」
紬「難しいところね。私はひとたび現れたら収拾がつかなくなるっていう考えなんだけど」
唯「普段は抑えられてるってこと?」
紬「そう。ちょっと補足すると、普段はそういう思いを色々な行動で発散してるんだと思う」
唯「行動……。スポーツとかは、凄く頑張ると何も考えずにいられるとか聞いたことあるよ」
紬「うん。スポーツも確かに発散できる行動のうちの一つね」
57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 17:35:59.18 ID:3CaqZmDzP
紬「でもそれだけじゃないわ。サディズム、マゾヒズム。色々なコンプレックス。ドラッグ。自傷行為に見える行動でも、それは死への感情であるデストルドーを抑える為のものなの」
唯「デ、デストルドーって言うの?」
紬「精神分析学の用語なんだけど……。ごめんね、難しくなっちゃったね。一応、ギリシャ神話から転じたタナトスも同義で使われてるわ」
唯「ほえー。昔からそういうのって研究されてるんだね……」
紬「そうね。半ば自我、精神哲学の本質とも言える議題だからかもしれないけど」
唯「ふむふむ。じゃあまとめると、人間の精神っていうのは死にたがる感情を、生きたがる感情が押さえてるんだね」
紬「概ねそんな感じだと思う。唯ちゃんはまとめるのが上手いのね~」
唯「でへへ、天才ですから」
紬(唯ちゃんかわいい……)
紬「ごほん。じゃあ次は死後についてなんだけど」
唯「うんうん。続けて続けて」
59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 17:43:49.27 ID:3CaqZmDzP
紬「唯ちゃん、今日はやけに積極的なのね。お勉強みたいなものなのに」
唯「うん。なんか興味があることは結構頭回る気がするよ!」
紬(興味持って話を聞いてもらえるのは嬉しいけど、なんだか複雑な気分……。地雷なのはわかってるけど聞いてみようかしら)
紬「唯ちゃん、どうして突然そんなことに興味が湧いたの?」
唯「え? えっと……。いやその、そう年頃だからだよ! そういうこと考えちゃう時期っていうか」ハハハ
紬「あやしい」ボソッ
唯「え? なにー?」
紬「な、何でも無いの。水をさしてごめんなさい。続けるわね」
唯「うん。ムギちゃん先生お願いします!」
60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 17:54:50.06 ID:3CaqZmDzP
紬「唯ちゃんは死んだらどうなると思う?」
唯「えっと、質問を質問で返すのは反則だってりっちゃんが言ってたよ?」
紬「うふふ、ごめんね。でも一応聞いておきたくて」
唯「うー。天国とか地獄とかに行くのかなぁ」
紬「唯ちゃんは仏教徒さんかヒンドゥー教徒さんってことになるわね」
唯「い、いきなり宗教の話になるの……?」
紬「うーん。一概には言い切れ無いけど、死後の世界を語る上で宗教は欠かせない存在だと思うわ」
唯「そうなんだ。で、さっきの仏教徒とかはどうして判断したの?」
紬「天国とか地獄に行くという考えが仏教とヒンドゥー教にしか無いからよ」
唯「そうなの?!」
61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 18:04:23.22 ID:3CaqZmDzP
ご飯いてくるすぐもどるよ
唯「私てっきりキリスト教とかかと思ってたんだけど」
紬「ええキリスト教やイスラム教にも確かに天国や地獄に似たものはあるわ」
唯「ムギちゃんさっきと言ってること違うー!」
紬「ごめんなさい。でもこの場合ちょっと違うのよ」
紬「キリスト教やイスラム教には審判の日っていう日があってね。この日にすべての人間は善か悪かで裁かれて、天国か地獄に送られるっていう感じなんだけど」
唯「審判の日とかは聞いたことあるねー」
紬「うん。よく映画とかのキーワードに使われるわね」
唯「ターミネーター面白かったなぁ」
紬「……続けるね?」
67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 18:54:27.95 ID:3CaqZmDzP
紬「で、審判の日っていうのは世界の終わりの日に行われるんだけど、その日までキリスト教の人達は待ってる状態。つまり仮死状態みたいなものなのね」
唯「お墓の中で待ってるってこと?」
紬「そのとおり。キリスト圏で土葬が行われるのもその為よ」
唯「なるほどねぇ。じゃあキリスト教の人達とかは死んでもずっと待ってなきゃいけないんだね」
紬「一説によれば人類が滅びるのは10万年後らしいから結構待つことになるのよね♪」
唯「キリストさんもなかなか焦らすんだねぇ……」
紬「ね。――さて、話を戻すわね。仏教とヒンドゥー教の話だったかしら」
唯「待たずに天国と地獄にいける宗教の話だね」
紬「実はそれにも若干の語弊があるんだ……」
唯「ムギちゃん~。情報の後出しが多すぎるよ!」
紬「上手く説明できなくてごめんね。前後しちゃうことが多くて」
68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 19:04:58.71 ID:3CaqZmDzP
紬「仏教の世界観では死んだから天国に行くとかじゃなくて、天国がある世界に輪廻するっていう見方なのね」
唯「りんね? ってどういうことなの?」
紬「生まれ変わる、が近いのかしら。この世で一度死ぬと、その生き方に応じて天国とか地獄とかで生まれ変わるって感じなんだけど」
唯「それってわざわざ言い換えないと何か困ることあるのかな?」
紬「分かりにくいんじゃないのかしら。いわゆる死後の世界じゃないってことが」
唯「ああ。天国がゴールじゃなくて、あくまでコースチェンジをしただけってことだね」
紬「唯ちゃんすごいわ! その通りなの。天国や地獄でも生まれ変わりが起こって、この世にコースチェンジすることもあるそうだから」
唯「でも宗教も結構深くまで考えてるもんなんだね」
紬「そうね。それだからこそ人々の心の拠り所に成りうるのだろうけど」
唯「まぁ私は無信教なんだけどねー」
紬「奇遇ね。うちもなの」
69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 19:10:02.50 ID:3CaqZmDzP
キーンコーンカーンコーン
唯「予鈴だー」
紬「お話はとりあえずお開きね。続きも聞きたかったらまた明日」
そう言ってムギちゃんは行きましょう、とウィンクをしてくれた。
それに伴われて私も走りだす。
続きはまた明日――。
聞きたいな。
やっぱり世界は不条理だよねりっちゃん。
71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 19:26:51.91 ID:3CaqZmDzP
放課後。
律「唯とムギのやつなにやってんだー? お茶も練習もできないとなるといよいよあたしは死んじゃいそうだぜ」
澪「ムギはトイレに入るの見たぞ。多分そろそろ来ると思うけど」
ガチャ
紬「遅れてごめんなさい~」
澪「うわさをすれば、なんとやらだな」
梓「あのムギ先輩、唯先輩知りません?」
紬「ああ。唯ちゃんなら今日部活休むそうよ」
梓「で、でもギターはここに置いてあるのに……」
律「唯にしちゃあ珍しいな、置いて帰るなんて」
紬「とりあえずお茶にする? 今日のお菓子はベルギーのチョコレートなの~」
72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/07/12(月) 19:37:03.28 ID:3CaqZmDzP
唯「はぁ、はぁ、はぁ。走ると、つかれちゃうよぉ……」
唯「っと。ただいま、憂」
唯「……返事はない、か」
――
唯「とりあえず荷物置いちゃおう。……ってギー太忘れちゃったよぉ」
唯「急いできちゃったからりっちゃんにも休むこと言ってないし」
唯「メールで、って電池切れてるし……」
唯「麦茶でも飲もうかなぁ」
――
とてとて
唯「ふぅ、美味しい……」
憂「おかえりお姉ちゃん。ずいぶん遅かったね」
73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/07/12(月) 19:46:38.94 ID:3CaqZmDzP
唯「ごめんね。……遅かった、よね」
憂「うん。遅かった。ひどいよぉお姉ちゃん」
唯「走ってはきたんだけど、ほんとにごめんね憂」
憂「うん。許しちゃう。お姉ちゃんだから、大好きだから」
唯「あ、ありがとね。――んっ」
憂「ぁ……ちゅ、ぅ。ねえ、お姉ちゃん」
唯「な、なぁに? いきなりチューとかしちゃだめって言ったよね?」
憂「もうそんなこといいじゃん。だって決心してくれたんだよね?」
唯「え、えと。まあその――」
憂「してくれたんだよね? 愛してくれてるんだよね?」
75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/07/12(月) 19:59:40.40 ID:3CaqZmDzP
唯「うん。愛してるよ、大好きだよ」
憂「うれしいな。ありがとねお姉ちゃん、私もだよ」
憂「だからさ、死んでくれるんだよね――?」
憂「死んで、私とひとつになってくれるんだよねっ?」
唯「憂……」
憂「お姉ちゃん……っ」
唯「今日、さ。みんなに聞いてみたんだ」
憂「……?」
唯「あずにゃんはね、あんまり死にたくないみたい。ずっと生きていたいんだって」
唯「りっちゃんは死を肯定してた。それは救いにもなるって。私も共感できた」
唯「澪ちゃんはちょっとメルヘンチックだったけど、好きな人のためになりたいって、言ってた」
唯「ムギちゃんだって、死に世界のいろんな知識を教えてくれて。とっても面白くて……」
77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/07/12(月) 20:06:55.98 ID:3CaqZmDzP
唯「でもね。まだ分かんないままなの。死んだらどうなるとか、大好きな人の為にしねるか、とか」
唯「わたし、ばかだから」
憂「お姉ちゃんはバカなんかじゃないよっ!」
唯「もういいんだよ、うい」
唯「その左の手首だって、もうまともにカサブタができないくらいぐちゃぐちゃになってるんでしょ?」
憂「ち、ちがっ……。これは――」
唯「憂にとって私は、この上なくタナトスを刺激する存在だったのかもしれないね」
唯「憂、殺して?」
78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/07/12(月) 20:13:44.48 ID:3CaqZmDzP
憂「うう、う――」
憂「っ……ごめんね」
グサッ
唯「――っ、ばかなわたしだけど」
グサッ、グサッ、グサッ、グサッ、グサッ
唯「やっとわかったよ」
グサッ、グサッ、グサッ、グサッ、グサッ
唯「ういのね、そのかお、そのかおがたまらなく――」
「わたしのタナトスを刺激するの!」
ドサッ
END
79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 20:17:22.51 ID:3CaqZmDzP
終わり方よくわかんないけど一応終わり
もっと陳腐じゃない感じにしたかったけど会話形式ってすんごく難しいね
保守と代理スレ立て感謝
おつかれさまでした
質問とかあったらどうぞ
84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 20:34:49.89 ID:C+V/Sp6g0
憂が唯を殺す動機
87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 20:43:01.35 ID:3CaqZmDzP [42/42]
>>84
一応それが伏線のつもりだった
一番初めに憂とケンカしたっていうのは憂に死んでくれと迫られたから
その時唯は覚悟なんてできていなかったから喧嘩腰でスルー
憂は誰かを刺してしまいそうなくらい殺気立っていたから唯が家においてきた
そのかわりに憂が唯に早く帰ってきてほしいことを伝えてたってわけ
だから部活もやらずに帰ってきた唯を憂は遅いって罵った
っていうねわろす
唯「ねえあずにゃん」
梓「なんですか?」
唯「死ってなんだと思う?」
梓「シ? 音階の話ですか?」
唯「んもう違うよー。カタカナでタヒって書く方の死だよ」
梓「なんかそこはかとなく分かりにくい表現ですね……」
唯「まあまあそれはいいとして、ね?」
梓「はあ」唯「ねえあずにゃん」
梓「なんですか?」
唯「死ってなんだと思う?」
梓「シ? 音階の話ですか?」
唯「んもう違うよー。カタカナでタヒって書く方の死だよ」
梓「なんかそこはかとなく分かりにくい表現ですね……」
唯「まあまあそれはいいとして、ね?」
梓「はあ」
7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/07/12(月) 00:42:29.18 ID:3CaqZmDzP
唯「で、どう?」
梓「どうって……そりゃあ人生の終わり、ですかね」
唯「ふむふむ。ふぃにっしゅってことだね」
梓「はい。その人がその生き方をゴールするというか、クリアするというか」
唯「要するに始まり、誕生と対になるポイントってことだね?」
梓「そうですね。それはとっても悲しいことだと思います」
唯「え? 悲しいことなのかな」
梓「悲しいですよ。おじいちゃんが死んじゃった時も、私悲しくて悲しくて涙が止まりませんでしたましたもん」
唯「あ、ごめんね?」
梓「いやもう大丈夫です。乗り越えましたから、多分」
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 00:48:24.60 ID:3CaqZmDzP
唯「じゃああずにゃんはさ、自分が死にそうになったら悲しい?」
梓「悲しいです、いや悔しいかな?」
唯「く、悔しいの?!」
梓「だってもっと生きていたいじゃないですか。多分何歳になってもそう考えてると思います」
唯(強欲だなぁ)
梓「好きな人と結婚して、子供ができて、孫ができて。自分の生きた証が活躍してるところなんかを見ていたいですね」
唯「ほえー。なんかリアリストさんだね、あずにゃんって」
梓「えへへ」
唯(若干混じった侮蔑に気がついてないのかな)
9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/07/12(月) 00:55:17.15 ID:3CaqZmDzP
唯「じゃあ次の質問です。人間ってさ、死ぬとどうなると思う?」
梓「なんなんですか? さっきから変ですよ」
唯「いいからいいから。で、あずにゃんはどう思うの?」
梓「そうですねー。やっぱり無に帰るとかじゃないんですか」
唯「無? 無って?」
梓「うーん。うまく言えませんけど……意識は消えちゃって、それで何も分からなくなって……」
唯「ああ、だからあずにゃん死ぬのは悔しいんだ」
梓「ええ。何時までも生きてたいです」
唯「なんだかおばあさんみたいだねぇ」
梓「よ、余計なお世話ですっ」
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 00:58:31.37 ID:3CaqZmDzP
唯「じゃあねあずにゃん。お話ししてくれてありがとね」
梓「え。あ、はい」
あずにゃんは死ぬのがいやなんだね。
確かに同意できるところもあったけど、ちょっと欲が強すぎるね。
まあそんなあずにゃんも可愛いけどねっ。
学校、ついちゃった。
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 01:05:02.92 ID:3CaqZmDzP
朝、授業開始前にて
唯「りっちゃんおはよー」
律「おーっす唯」
唯「一時間目ってなんだっけ」
律「化学だよん。唯ちゃんと宿題やってきたかー?」
唯「う。うう。……忘れてたよぉ~」
律「だと思ったよ。ほれ写してしまいなされ!」
唯「りっちゃんまじ天使! ありがとー」
律「ふぉっふぉっふぉ、何かあったらこの律様になんでも言うとよいぞよ」
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 01:13:40.25 ID:3CaqZmDzP
唯「え。じゃあはいはーい!」
律「はい平沢唯さん!」
唯「死ってなんだと思いますか!」
律「……へ?」
唯「死だよ死! deadだよdieだよ」
律「どうでもいいけどなかなか発音いいのな」
唯「受験勉強の賜物です!」
律「いや唯の学部にスピーキングなんか無いだろ……」
唯「しまった!」
律(うんだめだこりゃ)
18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 01:20:55.38 ID:3CaqZmDzP
唯「じゃなくてだよ」
律「え?」
唯「死についてだよー。さありっちゃんの意見聞かせて?」
律「そうだなぁ……。やっぱり救いじゃないか?」
唯「救い? saveとかrescueの?」
律「そーそ。それよそれ」
律(rescueって若干意味違うよな)
唯(英単語がスラスラでてきたんだからちょっとは驚いて欲しいなぁ)フンス
律「本で読んだんだ。幸福は一種類しかないけど、不幸は千差万別。幸福とは寓話であり不幸とは物語である、ってね」
唯「寓話? 物語? うーん。よくわかんないや」
律「そうか?」
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 01:29:34.24 ID:3CaqZmDzP
律「じゃあ簡単に説明するぞ。わからくなったら手を上げろよ」
唯「了解ですりっちゃん隊長!」
律「幸福そうにしてる人はみんなワンパターンに見える。お金を持ってて、難しい気苦労もなくて」
律「逆に不幸はあれだ、お金が無い、いやお金があっても心労が耐えない、いや毎日楽しいけどお金がなくて死んじゃいそう」
律「幸福と不幸って対称みたいにみえるけど、それはぜんぜん違うんだ。つまるところ幸福なんて理想でしかナイって事だな」
唯「はい!」
律「はい唯さん!」
唯「日本語でお願いします!」
律「……うんごめんね」
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 01:37:22.30 ID:3CaqZmDzP
律「じゃあ極論だけどちょー簡単に言うぞ」
唯(最初からそうしてよ……)
律「幸福なんて存在しないんだよ、この世にはな」
唯「え?」
律「まあ納得してくれなくてもいいよ、あたしの持論だしな」
唯「あ、うん。じゃあとりあえず保留ということで……」
律「おし。じゃあ話を戻すぞ。死は救いだってことな」
唯「やっと本題にもどってこれたね!」
律「いや一応さっきの話も関連してるんだけど……」
22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 01:44:12.57 ID:3CaqZmDzP
律「つまり人間は逃げたいんだよ、そういう常々ついて回る不幸からな」
唯「それわかるよー。私も勉強したくないし、アイスは取りに行きたくないし、朝早く起きたくないもん」
律(ずれてる気もするけどあえて触れないでおこう……)
律「えー、でだ。そっから逃げたい逃げたいと思うだろ? でも逃げ切れ無いんだよなー残念ながら」
唯「お日様はいつも同じ様に登ってきちゃうもんね。ほんとたまにはお寝坊してくれたっていいのにさ」フンス
律「そう、だからさ。死のうと思うんだよ、人間って奴は。逃げたいがゆえに。極論だけどな」
唯「うーん確かに」
律「だから救い。現実の痛みから逃げ切れる最後の手段だからな」
唯「なんかりっちゃんが大人に見えるよ……」
律「ふ。あたしも遂にあだるてぃな女になってしまったか」
唯「りっちゃんかっこいー!」
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 01:48:49.43 ID:3CaqZmDzP
律「てかもう授業始まるけど宿題写し終わったのか?」
唯「――ああっ」
結局写し終える前に先生が来ちゃって、私の奮闘むなしく忘れ物となりました。
りっちゃんが難しい話するからだもん。りっちゃんのせいだもん。
26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 01:55:57.85 ID:3CaqZmDzP
>>24
このキャラならこう言いそうっていうオナニー
一応しょぼい伏線は引っ張るつもり
朝、古典のあと数学の前にて。
唯「ううう、まさか今日指される日だったとは……」
澪「でもなんとか答えられてたじゃないか。唯にしては頑張ったと思うぞ」
唯「澪ちゃんそれひどくなーい? 答えも惜しかったけど間違ってたし」
澪「まあまあ。進歩は見られてるってことで」
唯「ぶう。……あ、澪ちゃん」
澪「なんだ? 課題なら見せないぞ?」
唯「ちがうよー! 第一、課題ならもう半分くらいやったもん」
澪「唯もやっと受験意識するようになったんだな、感心感心」
唯「みおちゃーん……」
27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 02:05:08.70 ID:3CaqZmDzP
澪「ごめんごめん。素直に褒めたことなくてさ。その、照れくさかったんだ」
唯「あらあら、素直になれないなんていわゆるツンデレってやつですかな~」
澪「なっ、違うぞ!」
唯(かわ唯……じゃなかった、かわゆいなぁ澪ちゃん)
唯「ねえねえ澪ちゃん」
澪「どうした?」
唯「突然なんだけど。死ぬってさ、どういうことなのかな」
澪「死ぬ? ば、お前死のうとか思ってるのか? そんなことしたら憂ちゃんが悲し――」
唯「憂は悲しませたりしないよ。それは絶対大丈夫」
澪「あ、ああそうか。……そうだよな、うんごめん」
29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 02:13:48.77 ID:3CaqZmDzP
唯「憂は世界で一番大切な人だもん」
澪「今日はやけに惚気るな、唯」
唯「でへへそうかな。でも澪ちゃんだっていつもりっちゃんがどうとか、りっちゃん可愛いとか惚気けてくるじゃん」
澪「あ、いやあれはだな。惚気とかじゃなくてその」
唯「――わかってるよ。澪ちゃんりっちゃんが好きなんでしょ?」
澪「え、ええっ。いやあの……」
唯「隠さなくたっていいじゃん。好きな人を好きって言えることは世界で一番素敵なことらしいよ?」
澪「うう。そう、かな」
唯「そうそう。だから澪ちゃんも当たって砕けろだよ!」
澪「いやいや砕けたくない」
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 02:25:32.28 ID:3CaqZmDzP
唯「で、本題についてなんですが」
澪「本題?」
唯「もー、死ぬことについてだってば」フンス
澪「あーあー、ごめんごめんそうだったな」
唯「で、どうなの澪ちゃん的にはさ」
澪「お星様だな」
唯(なんなのこの子)
唯「えっと……。つまりどういうことだってばよ」
澪「だからさ。お星様になっちゃうことなんだよ、死ぬことって言うのは」
31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 02:37:26.21 ID:3CaqZmDzP
唯「ふ、ふーん。お星様ね」
澪「そうそう。昔さ、私がまだ小学生だった頃の話なんだけど」
唯(どんなメルヘンな話が飛び出すのだろうであろうか、今の私には一片の想像さえつかないのであった)
澪「ハムスター飼ってたんだよ。ジャンガリアンでさ、設備投資も安くて当時の私のお小遣いでも手が届いたんだ」
澪「結局3年くらいで死んじゃったんだけど、当時の私は律の次くらいに大切な友達だったんだ。いや初めの方は唯一と言ってもいいくらいの」
唯「なんか澪ちゃんペットとかすんごい大事にしそうだよね」
澪「思ってるとおりだと思うぞ。夜とかずっと一方的に喋りかけたりしてたし。今思うとちょっと恥ずかしいけどな」
唯「そんなことないよー。お友達とおしゃべりするのは普通だよ?」
澪「ありがとな。……それでその子が死んじゃったあと、私はそれこそ大荒れで。学校をさぼったのもあれが初めてかもしれない」
澪「その時ママが言ってくれたんだ。『この子はお星様になって澪をずっと見守ってくれるし、時には励ましてくれるのよ』ってね」
唯「ロマンチックだね」
澪「うん。でも本当にそんな気がするんだ。今でも星空を見上げると、なんだか私は護られてるなぁなんて気が湧いてくる」
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 02:46:50.96 ID:3CaqZmDzP
唯「そんなことがあったんだ」
澪「……なんだか話し終えて恥ずかしくなってきた」
唯「それはまた今更だねー。じゃあちょっと質問変えるけど、澪ちゃんも死んだらお星様になるの?」
澪「どうだろうな。でもなってみたい気もするよ」
唯「どうして?」
澪「私にだって好きな人、尽くしてあげたい人の一人や二人はいるからな。今だったら、まあ律、だし。これから生きていけば変わってしまうかもしれないけど」
澪「死んでしまってからもそういう人の背中をさすってあげて、勇気づけてあげたいって思うのは普通じゃないか?」
唯「でも相手が気づかないんじゃない? ほら、せっかく澪ちゃんが星になって見守ってあげてもさ。鈍感で気づかなかったりして」
澪「それは……やだな。少しでもいいから気づいて欲しいよ」
唯「だったらやっぱり生前に言っとかなきゃね。『私死んだら星になってあなたを見守るし応援もします』って」
澪「そういうことって言ってもいいのかな……? いやでも、あえて言っておいた方がいいのかも」
33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 02:50:36.05 ID:3CaqZmDzP
唯「とりあえず当面はりっちゃんに、だね」ニヤニヤ
澪「ばっ……ううう」//
照れる澪ちゃんも可愛いよね。
澪ちゃんを見てるとなんだか他のことなんか忘れられそうで。
死ぬことを難しく考えるのが馬鹿らしくもなってきそうだけれど。
残念ながら私は考えることを放棄できないんだよね。
そう。ほんとにそれは、残念なことだけど。
53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 17:01:45.08 ID:3CaqZmDzP
昼休み、部室にて。
唯「あ、ムギちゃんさんではないですか!」
紬「唯ちゃんさんではないですか~」
唯「これはこれは」
紬「どうもご親切に♪」
唯「――っていうかムギちゃんどうして部室にいるの?」
紬「それがね。キーボードの調子悪くてちょっと見に来てたとこなの」
唯「そっかー。じゃあ私と似たようなもんだね」
紬「唯ちゃんもレスポールの様子見に来たの?」
唯「うん。いや別に調子は悪くないんだけどさ~……。時々もーれつに見たくなることがあるんです」デヘヘ
紬「本当にギー太が好きなのね、唯ちゃんって」
54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 17:10:13.12 ID:3CaqZmDzP
唯「好きだよー! まだ添い寝してるもん」フンス
紬「あらあら。それじゃあ憂ちゃんも嫉妬しちゃってるんじゃない?」
唯「あ、ああうん。でも憂は分かってくれてるから……」
紬(ほんのりと地雷臭がするわね。ケンカでもしたのかしら)
紬「そんなことより唯ちゃん。今日のお菓子はベルギーから届いた本場のチョコレートよ!」
唯「あっ、ごめん。今日ちょっと用事あって部活来れないんだ」
紬「あら……。そうなの?」
唯「うん。ほんとにごめんね。でも大事な用事だから……」
紬「そう。じゃあ唯ちゃんの分のチョコレートは明日にとっとくわね」
唯「あ、ムギちゃんありがとね」
55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 17:19:41.36 ID:3CaqZmDzP
唯「ねぇねぇムギちゃん」
紬「なあに?」
唯「ムギちゃんはさ、死ぬことって何だと思う?」
紬「死ぬこと? それは人がってことよね?」
唯「うん。人って死んじゃうとどうなるのかなとか、そもそも死って人間にとってなんなのかなって」
紬「それは私の持論でいいのよね? ちょっと長くなっちゃうけど聞いてくれる?」
唯「うん。聞かせて聞かせて」
紬「それじゃあまずは、死について人が思うことについて」
唯「うん」
唯(なんだかムギちゃんいつになく真剣だなぁ)
紬「人間は死にたがってるって、どこかで聞いたことがない?」
56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 17:26:43.53 ID:3CaqZmDzP
唯「うーん聞いたこと無いような」
紬「そっか。じゃあ説明するね。昔フロイトっていう高名な人がいたんだけど、その人は死への衝動、欲動をこう定義付けたの」
紬「『最も根が深くにある感情で、それは抗いがたい生命の破壊衝動である』」
唯「ちょっと難しいなぁ……」
紬「うーん。これ以上噛み砕くのも難しいんだけど、簡単にしていうと死にたがってるってことだと思うの。生きたいっていう欲求よりもね」
唯「え? じゃあみんなは何で生きてるの? 生きたいっていう意志よりそれが強いんだったらみんな自殺しちゃうはずだよね?」
紬「難しいところね。私はひとたび現れたら収拾がつかなくなるっていう考えなんだけど」
唯「普段は抑えられてるってこと?」
紬「そう。ちょっと補足すると、普段はそういう思いを色々な行動で発散してるんだと思う」
唯「行動……。スポーツとかは、凄く頑張ると何も考えずにいられるとか聞いたことあるよ」
紬「うん。スポーツも確かに発散できる行動のうちの一つね」
57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 17:35:59.18 ID:3CaqZmDzP
紬「でもそれだけじゃないわ。サディズム、マゾヒズム。色々なコンプレックス。ドラッグ。自傷行為に見える行動でも、それは死への感情であるデストルドーを抑える為のものなの」
唯「デ、デストルドーって言うの?」
紬「精神分析学の用語なんだけど……。ごめんね、難しくなっちゃったね。一応、ギリシャ神話から転じたタナトスも同義で使われてるわ」
唯「ほえー。昔からそういうのって研究されてるんだね……」
紬「そうね。半ば自我、精神哲学の本質とも言える議題だからかもしれないけど」
唯「ふむふむ。じゃあまとめると、人間の精神っていうのは死にたがる感情を、生きたがる感情が押さえてるんだね」
紬「概ねそんな感じだと思う。唯ちゃんはまとめるのが上手いのね~」
唯「でへへ、天才ですから」
紬(唯ちゃんかわいい……)
紬「ごほん。じゃあ次は死後についてなんだけど」
唯「うんうん。続けて続けて」
59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 17:43:49.27 ID:3CaqZmDzP
紬「唯ちゃん、今日はやけに積極的なのね。お勉強みたいなものなのに」
唯「うん。なんか興味があることは結構頭回る気がするよ!」
紬(興味持って話を聞いてもらえるのは嬉しいけど、なんだか複雑な気分……。地雷なのはわかってるけど聞いてみようかしら)
紬「唯ちゃん、どうして突然そんなことに興味が湧いたの?」
唯「え? えっと……。いやその、そう年頃だからだよ! そういうこと考えちゃう時期っていうか」ハハハ
紬「あやしい」ボソッ
唯「え? なにー?」
紬「な、何でも無いの。水をさしてごめんなさい。続けるわね」
唯「うん。ムギちゃん先生お願いします!」
60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 17:54:50.06 ID:3CaqZmDzP
紬「唯ちゃんは死んだらどうなると思う?」
唯「えっと、質問を質問で返すのは反則だってりっちゃんが言ってたよ?」
紬「うふふ、ごめんね。でも一応聞いておきたくて」
唯「うー。天国とか地獄とかに行くのかなぁ」
紬「唯ちゃんは仏教徒さんかヒンドゥー教徒さんってことになるわね」
唯「い、いきなり宗教の話になるの……?」
紬「うーん。一概には言い切れ無いけど、死後の世界を語る上で宗教は欠かせない存在だと思うわ」
唯「そうなんだ。で、さっきの仏教徒とかはどうして判断したの?」
紬「天国とか地獄に行くという考えが仏教とヒンドゥー教にしか無いからよ」
唯「そうなの?!」
61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 18:04:23.22 ID:3CaqZmDzP
ご飯いてくるすぐもどるよ
唯「私てっきりキリスト教とかかと思ってたんだけど」
紬「ええキリスト教やイスラム教にも確かに天国や地獄に似たものはあるわ」
唯「ムギちゃんさっきと言ってること違うー!」
紬「ごめんなさい。でもこの場合ちょっと違うのよ」
紬「キリスト教やイスラム教には審判の日っていう日があってね。この日にすべての人間は善か悪かで裁かれて、天国か地獄に送られるっていう感じなんだけど」
唯「審判の日とかは聞いたことあるねー」
紬「うん。よく映画とかのキーワードに使われるわね」
唯「ターミネーター面白かったなぁ」
紬「……続けるね?」
67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 18:54:27.95 ID:3CaqZmDzP
紬「で、審判の日っていうのは世界の終わりの日に行われるんだけど、その日までキリスト教の人達は待ってる状態。つまり仮死状態みたいなものなのね」
唯「お墓の中で待ってるってこと?」
紬「そのとおり。キリスト圏で土葬が行われるのもその為よ」
唯「なるほどねぇ。じゃあキリスト教の人達とかは死んでもずっと待ってなきゃいけないんだね」
紬「一説によれば人類が滅びるのは10万年後らしいから結構待つことになるのよね♪」
唯「キリストさんもなかなか焦らすんだねぇ……」
紬「ね。――さて、話を戻すわね。仏教とヒンドゥー教の話だったかしら」
唯「待たずに天国と地獄にいける宗教の話だね」
紬「実はそれにも若干の語弊があるんだ……」
唯「ムギちゃん~。情報の後出しが多すぎるよ!」
紬「上手く説明できなくてごめんね。前後しちゃうことが多くて」
68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 19:04:58.71 ID:3CaqZmDzP
紬「仏教の世界観では死んだから天国に行くとかじゃなくて、天国がある世界に輪廻するっていう見方なのね」
唯「りんね? ってどういうことなの?」
紬「生まれ変わる、が近いのかしら。この世で一度死ぬと、その生き方に応じて天国とか地獄とかで生まれ変わるって感じなんだけど」
唯「それってわざわざ言い換えないと何か困ることあるのかな?」
紬「分かりにくいんじゃないのかしら。いわゆる死後の世界じゃないってことが」
唯「ああ。天国がゴールじゃなくて、あくまでコースチェンジをしただけってことだね」
紬「唯ちゃんすごいわ! その通りなの。天国や地獄でも生まれ変わりが起こって、この世にコースチェンジすることもあるそうだから」
唯「でも宗教も結構深くまで考えてるもんなんだね」
紬「そうね。それだからこそ人々の心の拠り所に成りうるのだろうけど」
唯「まぁ私は無信教なんだけどねー」
紬「奇遇ね。うちもなの」
69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 19:10:02.50 ID:3CaqZmDzP
キーンコーンカーンコーン
唯「予鈴だー」
紬「お話はとりあえずお開きね。続きも聞きたかったらまた明日」
そう言ってムギちゃんは行きましょう、とウィンクをしてくれた。
それに伴われて私も走りだす。
続きはまた明日――。
聞きたいな。
やっぱり世界は不条理だよねりっちゃん。
71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 19:26:51.91 ID:3CaqZmDzP
放課後。
律「唯とムギのやつなにやってんだー? お茶も練習もできないとなるといよいよあたしは死んじゃいそうだぜ」
澪「ムギはトイレに入るの見たぞ。多分そろそろ来ると思うけど」
ガチャ
紬「遅れてごめんなさい~」
澪「うわさをすれば、なんとやらだな」
梓「あのムギ先輩、唯先輩知りません?」
紬「ああ。唯ちゃんなら今日部活休むそうよ」
梓「で、でもギターはここに置いてあるのに……」
律「唯にしちゃあ珍しいな、置いて帰るなんて」
紬「とりあえずお茶にする? 今日のお菓子はベルギーのチョコレートなの~」
72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/07/12(月) 19:37:03.28 ID:3CaqZmDzP
唯「はぁ、はぁ、はぁ。走ると、つかれちゃうよぉ……」
唯「っと。ただいま、憂」
唯「……返事はない、か」
――
唯「とりあえず荷物置いちゃおう。……ってギー太忘れちゃったよぉ」
唯「急いできちゃったからりっちゃんにも休むこと言ってないし」
唯「メールで、って電池切れてるし……」
唯「麦茶でも飲もうかなぁ」
――
とてとて
唯「ふぅ、美味しい……」
憂「おかえりお姉ちゃん。ずいぶん遅かったね」
73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/07/12(月) 19:46:38.94 ID:3CaqZmDzP
唯「ごめんね。……遅かった、よね」
憂「うん。遅かった。ひどいよぉお姉ちゃん」
唯「走ってはきたんだけど、ほんとにごめんね憂」
憂「うん。許しちゃう。お姉ちゃんだから、大好きだから」
唯「あ、ありがとね。――んっ」
憂「ぁ……ちゅ、ぅ。ねえ、お姉ちゃん」
唯「な、なぁに? いきなりチューとかしちゃだめって言ったよね?」
憂「もうそんなこといいじゃん。だって決心してくれたんだよね?」
唯「え、えと。まあその――」
憂「してくれたんだよね? 愛してくれてるんだよね?」
75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/07/12(月) 19:59:40.40 ID:3CaqZmDzP
唯「うん。愛してるよ、大好きだよ」
憂「うれしいな。ありがとねお姉ちゃん、私もだよ」
憂「だからさ、死んでくれるんだよね――?」
憂「死んで、私とひとつになってくれるんだよねっ?」
唯「憂……」
憂「お姉ちゃん……っ」
唯「今日、さ。みんなに聞いてみたんだ」
憂「……?」
唯「あずにゃんはね、あんまり死にたくないみたい。ずっと生きていたいんだって」
唯「りっちゃんは死を肯定してた。それは救いにもなるって。私も共感できた」
唯「澪ちゃんはちょっとメルヘンチックだったけど、好きな人のためになりたいって、言ってた」
唯「ムギちゃんだって、死に世界のいろんな知識を教えてくれて。とっても面白くて……」
77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/07/12(月) 20:06:55.98 ID:3CaqZmDzP
唯「でもね。まだ分かんないままなの。死んだらどうなるとか、大好きな人の為にしねるか、とか」
唯「わたし、ばかだから」
憂「お姉ちゃんはバカなんかじゃないよっ!」
唯「もういいんだよ、うい」
唯「その左の手首だって、もうまともにカサブタができないくらいぐちゃぐちゃになってるんでしょ?」
憂「ち、ちがっ……。これは――」
唯「憂にとって私は、この上なくタナトスを刺激する存在だったのかもしれないね」
唯「憂、殺して?」
78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/07/12(月) 20:13:44.48 ID:3CaqZmDzP
憂「うう、う――」
憂「っ……ごめんね」
グサッ
唯「――っ、ばかなわたしだけど」
グサッ、グサッ、グサッ、グサッ、グサッ
唯「やっとわかったよ」
グサッ、グサッ、グサッ、グサッ、グサッ
唯「ういのね、そのかお、そのかおがたまらなく――」
「わたしのタナトスを刺激するの!」
ドサッ
END
79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 20:17:22.51 ID:3CaqZmDzP
終わり方よくわかんないけど一応終わり
もっと陳腐じゃない感じにしたかったけど会話形式ってすんごく難しいね
保守と代理スレ立て感謝
おつかれさまでした
質問とかあったらどうぞ
84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 20:34:49.89 ID:C+V/Sp6g0
憂が唯を殺す動機
87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 20:43:01.35 ID:3CaqZmDzP [42/42]
>>84
一応それが伏線のつもりだった
一番初めに憂とケンカしたっていうのは憂に死んでくれと迫られたから
その時唯は覚悟なんてできていなかったから喧嘩腰でスルー
憂は誰かを刺してしまいそうなくらい殺気立っていたから唯が家においてきた
そのかわりに憂が唯に早く帰ってきてほしいことを伝えてたってわけ
だから部活もやらずに帰ってきた唯を憂は遅いって罵った
っていうねわろす
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No title
憂いいぃぃぃぃ
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