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土御門「幻想少年!!!!!!!」

324 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga] 投稿日:2010/07/07(水) 23:29:33.72 ID:oRg8/cko [1/17]
おっし、17レスほど貰おうかー

関連
土御門「幻想少年!!」
土御門「幻想少年!!!」 2
土御門「幻想少年!!!!」
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325 名前:土御門「幻想少年!!!!!!!」 1/17[saga] 投稿日:2010/07/07(水) 23:31:11.92 ID:oRg8/cko [2/17]


―――――――――――――――


スレッドは荒れていた。
『一位の子に上条が落とされるかもしれない』

不安、焦り。今日も一位へと繋がる攻略法は全く解明されず。その間もある女の子は上条と仲良く食事している。
苛立ちはやがて暴走に発展していく。


『自分たちも一位に辿り着けば上条を落とせるかもしれない』

どうすれば?

『製作者から直接、聞き出そう』



326 名前:土御門「幻想少年!!!!!!!」 2/17[saga] 投稿日:2010/07/07(水) 23:33:50.80 ID:oRg8/cko [3/17]


―――――――――――――――


(平穏だ……)

教室の窓から見える空は快晴、そよぐ風がツンツン頭の髪をやや揺らす昼休み。
ごく普通の、見た目だけはごく普通の男子高校生は、ぼんやりとそんなことを頭の中で呟いていた。

彼は、上条当麻は、不幸な少年である。

街を歩けば財布を忘れ、足元に注意していてもすっ転ぶ。スプリンクラーの誤作動を一人浴びてずぶ濡れになったり、便をずらして
飛行機に乗ればハイジャックにも遭遇できる。

ギャグのように降りかかるものから、その際限を知らず世界情勢に亀裂を起こすほどの問題に週単位で巻き込まれたりする。
そんなレベルの不幸だ。

「…………。美味しくなかった?」

一つ前の席を借りて向かい合うように座っているクラスメート、姫神秋沙が困った風に言った。

「――あ、ちがうちがう!」

はっとして上条は軽く手を突き出しぶんぶんと振って否定する。

先週からだろうか、上条は自身の運気が上昇し始めたような気がしていた。と言っても不幸プラスプラスが不幸プラスになった程度で
あるのだが、それがいつもの事とあまりにも馬鹿げたところに慣れてしまっているために、それだけでも彼は平穏だと思えてしまうの
だった。

こうして二人で一緒に昼食をとるようになって三日目。今日も姫神は上条にその料理の腕前を披露してくれている。


327 名前:土御門「幻想少年!!!!!!!」 3/17[saga] 投稿日:2010/07/07(水) 23:35:12.03 ID:oRg8/cko [4/17]

「?」

姫神の長い黒髪がほんの少し傾き、じゃあどうして? と疑問を尋ねる目線を送った。

「ええっと、ちょっと幸せだと思ってさ」

そう答えた彼の、ちょっと困ったような笑顔に、ガダンッ!! と彼女は椅子からずり落ちそうになった。

「――――――。ゎ。私………………も…………」

「ど、どうした、姫神? いや昼はいっつも醜い争いに貧相な食事ばっかだからさ、こんな平和的な時間を過ごしてることが……
 ……ん?」

上条はこちらを見ている視線に気付く。

不穏なオーラを発している吹寄制理がこちらを見ていた。吹寄は目が合うとキッ! と睨みつけ、そして『ふんっ!』っと息巻いて
自分の机の上に目を向けた。

(なんか変なこと言ったっけ……。それともまだ怒ってんのか……?)

「…………明日も。作るから」

「あ! いいのか? 俺ばっか味見しちゃってるけど……」

姫神は居住まいを正して、珍しく照れた様子でコクリと頷く。その仕草がまた可愛い。



328 名前:土御門「幻想少年!!!!!!!」 4/17[saga] 投稿日:2010/07/07(水) 23:36:51.52 ID:oRg8/cko [5/17]


(上条さんの生きてきた中でこんなにも平穏な日々があったでしょうか! いや無い!! 記憶喪失で半年そこそこの人生だけど多分
 今までにもなかったであろう!!)

いつも通りのちょっとした不幸は起きていた、無駄な労力を払わされたりもしている。

だが、姫神はお弁当のおかずを恵んでくれ。御坂は何故だか大人しく、会うたびジュースを渡してくるし。御坂妹は待ち構えていたかの
ように買い物を手伝ってきて。面識の薄い女子のクラスメートまでも上条が苦労しているとよく助けてくれ始めた。

(インデックスは相変わらずだが、運気は絶対に上がっている!)

少年はとことん鈍かった。

(わかんないのは吹寄だよな…………、こないだからずーっとあんな感じだし。そういや今朝の小萌先生もなんかおかしかったっけ……)

こないだ、というのはちょうど一週間前の話である。



329 名前:土御門「幻想少年!!!!!!!」 5/17[saga] 投稿日:2010/07/07(水) 23:38:01.44 ID:oRg8/cko [6/17]


―――――――――――――――


「上条当麻!! 貴様という奴はァあああああ!!」

その日も遅刻ギリギリで教室に入ってきた上条に、吹寄は猛牛のような勢いの頭突きを胸部目がけて炸裂させまた廊下へと突き飛ばした。
ここまで全力で走ってきて、さらに止めまで喰らった上条はもう立ち上がる気力を失くし、そのまま倒れた状態で怒鳴りつける吹寄と話す。

「俺が何をしたって言うんだ、吹寄……」

経験上、これを受け入れ、どこか諦めた声で上条は一応尋ねた。ピクピクと震え、さすがに涙目であったが。

「あんなもので金稼ぎをして!! 恥ずかしいとは思わないの!?」

吹寄がずんずんと近づいてきてそんなことを言った。はて? あんなもの……? と一瞬考えたが思い当たるものがあって、

「違う!! あれは土御門が――」


330 名前:土御門「幻想少年!!!!!!!」 6/17[saga] 投稿日:2010/07/07(水) 23:39:20.09 ID:oRg8/cko [7/17]

「何が違うこの馬鹿!!」

それは土御門が発案者であることは間違い無いのだが、仕事をしたのは上条で、既に報酬も貰ってしまった。

「ぎゃァああ!? 踏まっ、踏まないで吹寄さん!! 誤解なんですホントに売れるとか思ってなかったんです上条さんの『声』なんかを
 買う人がいるなんて微塵も思ってなかったんですッ!!」

それを聞いて勝手に納得でもしたのか、彼女は攻撃を一時中断する。

「……あー、そうよね。貴様はそういうやつだったわね、ったく」

「うう……? ふ、吹寄……!? 足どかせっ!」

「何よ? まだ終わっちゃ……?」

踏んづけて見下ろす、つまり股下にいる上条が目線をどっかに向けている。その意味に、その位置関係に吹寄が気付いた時、上条の
意識はしばしの間途絶える事になった。



331 名前:土御門「幻想少年!!!!!!!」 7/17[saga] 投稿日:2010/07/07(水) 23:40:25.32 ID:oRg8/cko [8/17]


―――――――――――――――


回想終わり。

(……まぁ、堅物な吹寄からしてみりゃあんましいい事やってるようにはやっぱ見えないんだろな。そういや昨日も一万振り込まれて
 たし、一体誰が買ってるんだ?)


「あの子は。元気?」

姫神は話題を探してそんなことを訊いた。まだ緊張気味で、よく見たならその顔にほんの少し紅をさしているのがわかる。

「インデックスか? あいつは昨日から小萌先生のウチに泊まりにいってるよ。そういや今日も小萌先生となんか話さなきゃいけない
 ことがあるとかで明日まで帰ってこれないとか言ってたな」

「……じゃあ。上条君は今日は一人なの?」

「うん」

そう、少年はどこまでも鈍かった。



332 名前:土御門「幻想少年!!!!!!!」 8/17[saga] 投稿日:2010/07/07(水) 23:42:56.72 ID:oRg8/cko [9/17]


―――――――――――――――


ムカつくことがある。三バカのうちの二人が作った怪しいゲーム機のことだ。
ふざけた中身、ふざけた値段。買うやつもバカだと思う、……そんなバカがこんなに多かったとは。

(あいつの何がそんなにいいわけ……? 良識を疑うわ……)

姫神さんには悪いけど、不真面目で、皆の邪魔ばかりして、それに人の下着どころか裸まで……、いいとこなんて一つも無いあんな
男のどこが!

ムカつくことはまだある。買った連中のことだ。

「…………」

今日もあいつを覗き見るように集まってる女子達に目を向ける。
彼女達は、月曜日からお昼を一緒過ごし始めた姫神さんに対して、よく聞き取れないがネガティブな言葉を吐いている。だがそんな
ことよりも、

(この一週間で皆の顔色、肌のつやが良くなってきてる…………)

もし原因があのゲームだとしたら? 人一倍の健康意識を持っている吹寄にはそれがとても気になるのだ。

ガダンッ!! と音がして、思わずそちらを振り返ると、姫神さんが慌ててるのが見えた。それからあいつがこっちに気付いて間抜けな
顔をした。ムカつく。

(絶対に買わない……!)

実際に効果があったとしても、あんなもの絶対に買わない! いや、そんな効果なんて元から無い!! あってたまるか!!
家に置いてあるコレクションを全部賭けてやってもいいわ!! 絶対に無い!!



333 名前:土御門「幻想少年!!!!!!!」 9/17[saga] 投稿日:2010/07/07(水) 23:44:53.67 ID:oRg8/cko [10/17]


―――――――――――――――


「なぁ、姫神。今さらだけどホントにいいのか? 今までのお礼ってのはわかったし嬉しいけどさ、別に今日じゃなくてもいいんだぞ?  それにほら、またインデックスがいる日でも……」

「…………。でも。今日じゃないとダメなの。今日を逃したら多分。次はずっと先になるから」

「……? そうなのか?」

「うん。そうなの」

橙色に染まる夕暮れの中、スーパーの買い物袋を両手に提げ、上条は隣を歩く姫神秋沙に聞いた。二人は上条当麻の住む学生寮へと向
かっている。何の話かというと、これから彼女は今晩の上条家の夕食を作りにいくのだ。

ところで、昼休みからの紆余曲折、暴走し始めるクラスメート達を蹴散らし奔走し、吹寄にまで承諾を得る涙ぐましい姫神の物語は
都合上、端折らせていただく。

(よくわかんねぇけど、姫神にも姫神の事情があるんだろうな。……にしても)

さっきから彼女は立ち位置が安定していない。上条にくっ付きそうになったり離れたりと主に横のベクトルでだ。具合でも悪いのかと
ちょっと心配になる。それに気のせいかもしれないがどこか息も荒いような……。

(そういや聞いてなかったけど姫神も一緒にメシ食べてくのかな……)

どうなんだろうかと聞いておこうと思ったその時。歩く二人の前に、道の茂みから二人の少女が現れた。正確にはそのうちの片方は
少女と言うと語弊があるのだが。


334 名前:土御門「幻想少年!!!!!!!」 10/17[saga] 投稿日:2010/07/07(水) 23:46:42.90 ID:oRg8/cko [11/17]

「インデックス? 小萌先生?」

「…………………………。どうして」

「とうま、何か言う事あるんじゃないのかな」

突然現れた上条家の居候シスターは、言葉に怒気を込めてこれまた唐突に尋ねてきた。その後ろにいる小萌先生は彼女の行動に
困り顔でおろおろしてらっしゃる。

「危うく騙されるところだったんだよ、急に焼肉なんて。それに……」

「えーっと、さっぱり何の話かわからないのですが……? それにお前、今日まで小萌先生のとこに泊まってくんじゃなかったのか?」

インデックスは姫神を一睨み。それに合わせて姫神はぷいっとあらぬ方向を向いた。

「…………姦淫は罪なんだよ、とうま。それに! やってることは売春夫と一緒なんだからね」

「かんいん??? ば、ばいしゅん?? 何だそりゃ。あっ、そういや今日のメシは姫神が作ってくれるんだぞ」

「…………これを見てもまだしらを切る!?」

「し、シスターちゃん!! なんで持って来てるんですか!?」



335 名前:土御門「幻想少年!!!!!!!」 11/17[saga] 投稿日:2010/07/07(水) 23:48:22.07 ID:oRg8/cko [12/17]

インデックスは袖から一台のゲーム機、小萌先生の家からこっそりと持ち出してきた幻想少年を取り出し上条に見せつけた。
ちなみにこの幻想少年は、土御門が小萌先生に目を瞑っていただくための賄賂として、タダで渡したものだったりする。

「あいさも買ったんだよね?」

「……………………。」

姫神はそっぽを向き、黙ったままの知らん振り。ただ素早く状況を理解していた。一方、全く理解出来てない上条は……、

「なんだそれ? 弁当箱か?」


上条の返答に、ぷつんっ! とインデックスの中で何かが切れた音がした。

すーっと手を挙げると、少女は箱型ゲーム機を上条に向けて投げつけ、小萌先生はそれを見て小さな悲鳴を上げ、急いで路上に落ちた
それを拾い上げた、殺意を全開にむき出す。

上条は後退りを始める。なんで怒っているのか、今投げつけられたものは何なのか、そんなことはどうだっていい。
彼の直感と肉体が告げている。ともかく逃げろよと。

両手に持っていた買い物袋が落ち、それが火蓋が切って。
少年達の叫び声が街へと響く。

「とうまの…………バカァァあああああああああああああああああああああああッ!!」



336 名前:土御門「幻想少年!!!!!!!」 12/17[saga] 投稿日:2010/07/07(水) 23:50:37.63 ID:oRg8/cko [13/17]


―――――――――――――――


「……………………姫神と小萌先生がいなかったら死んでたな」


今、上条は学生寮の近くにある公園のベンチに座っている。

命からがら、それと二人の手助けで牙地獄から逃げおおせることは出来たものの、ダメージは深刻だ。全身に噛み付かれ傷痕だらけ、
走り続けた足は重く。日も沈みかけ、腹も減った。何もなければ今頃……、家に戻りたいがおそらく無理だろう、これからどうするか。

「よくわかんねぇけど、小萌先生の話だと土御門が悪い!! 悪いらしい!! 電話にもでねぇしあんの野郎――」

「いた。ねぇ、さっき一緒に歩いてた長い髪の子が噂の一位?」

見つけ出してぶん殴って、そう言いかけた言葉は、背後からのよく知った女子中学生の声と、頬の傍を通過した一筋の閃光がかき消した。

嫌な予感が止まらない。そーっと振り向くとそいつは、近づいただけで感電死するのではないかという程の雷を周囲に撒き、一歩、また
一歩とゆっくりとした歩調でこちらへと寄ってくる。


(……神様、上条さんの冒険はここまでですか? あぁ、最近は大人しかったのになぁー……ってあれ?)



337 名前:土御門「幻想少年!!!!!!!」 13/17[saga] 投稿日:2010/07/07(水) 23:52:44.88 ID:oRg8/cko [14/17]


「お姉様、あくまでも保護が最優先です、とミサカは目的の再度確認を――」

「わかってるわよっ!! 今度は逃がさないって……。行くとこないんでしょ? 来なさい」

その後ろに御坂妹が隠れていた。どうやらこっちの事情を知ってる様子なのだが……。

「そ、そんなこと言って上条さんをどうするつもりであらせまするか!?」

「ど、どうもしないわよ!! いいから来なさい!」

「い、いやだ!! なんでそんなハァハァしてるんだ!?」

「お姉様、涎が――」

またしても魂が逃げろと命ずる。危ない、御坂美琴の顔が危ない。捕まれば一体どうなってしまうのか。しかし、駆け出そうにも
今の傷ついた上条の体力では、とても逃げ切れそうに無いのだ。

どうする? 右手を握り締め覚悟を決めようとした時、上条の身体は宙を舞っていた。

「おぁわあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ~~~…………………………!?」

「なっ!? 逃がすかあぁ!!」

上条の絶叫。そして先程とは比較にならない閃光が走り、ドォン!! という音が同時に後方から聞こえて、木が三本ほど吹っ飛んだ。
彼が自分は宙を舞ったのではなく、誰かに抱えられその木の上を跳んでいるのだとわかったのは、もう公園の外へ出た後だった。



338 名前:土御門「幻想少年!!!!!!!」 14/17[saga] 投稿日:2010/07/07(水) 23:54:16.24 ID:oRg8/cko [15/17]


―――――――――――――――


上条はあるビルの屋上で降ろされた。途中で気付いてはいたが、改めて自分を助けた人物を見て上条は驚く。

「神裂!? なんでお前がここに!?」

「…………当麻。……火織と、呼んでください」

二メートルを越す日本刀を、その豊満な胸で抱きしめ、際どく太腿の付け根まで露になった片足で挟みながら、顔を赤らめて俯き気味に
そんなことを言う神裂はエロさがいつもの三割り増しになっている。エロい。だが上条はそれ以上に違和感を覚える。

(…………神裂ってこんなキャラだったっけ? それに下の名前で呼べって……)

またもや彼の何かが囁く。選択肢を誤るなと。

「………………か、火織? ありがとう助かった」

「………………………………はい」

恐る恐るそう言うと、神裂はまた一段と頬を赤らめた。なんだか可愛らしいと上条はそんな風に思った。とりあえず、どこかおかしいが
神裂は敵ではないようだ。少し安心してその場に座り込もうとする。

だが、残念ながら落ち着く暇は彼には無かった。



339 名前:土御門「幻想少年!!!!!!!」 15/17[saga] 投稿日:2010/07/07(水) 23:55:34.93 ID:oRg8/cko [16/17]


「当麻さん!!」

ズンッ! と空から降ってきた何かが沈む様な衝撃とともに、また背後から声をかけられる。今度も聞き覚えのある声だった。振り向く
と、槍を携えた少女の姿が。

「五和……! なんでお前までここうのぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおお!?」

「女教皇様!? 逃がしません!!」

言い切る間も無く、神裂がまた上条を抱きかかえビルの上を跳躍していく。
途中、一段低いビルに飛び降りる時、眼下に数十人のシスターの集団が駆けてくのが見えた。

不幸な少年の長い夜は、まだ終わらない。



340 名前:土御門「幻想少年!!!!!!!」 16/17[saga] 投稿日:2010/07/07(水) 23:57:26.65 ID:oRg8/cko [17/17]


―――――――――――――――


「アビニョンの時よりも!! ハードだぜい……ッ!!」

土御門は追われていた。学校を出てからずっとである。
誰に? わからない、突然に様々な人たちにともかく襲われたからだ。だから、追われている理由すらもまだわからなかった。

(まぁ、思い当たることなんてそこそこの数あるけどにゃー……)

現在、ビルとビルの隙間、その物陰にどうにか隠れている。そこから周囲を偵察すると偶然にもすぐ前の通りに指示を出していると
思われる人物を発見できた。

(建宮斎字……! 変な武器持ってところ構わず襲い掛かってきたのは天草式か!!)

学園都市の日常にとけ込み、姿は隠してはいるが殺気は隠しきれていない。「五和を、五和を取り戻すのよ……」よくわからないことを
周りいるメンバーと思われる者たちと呟き合ってる。しばらく監視していると数人のシスターが建宮に寄ってきた。

(どうなってる!? ランベスにいるはずの元アニェーゼ部隊!! 警備の連中は何やって――)

「いた!?」「こっちにはいないよ!!」「いい? 必ずあのグラサン猫男を見つけ出すのよ!!」

後方から駆けていく音と声。常盤台の制服に、同級生。あれは柵川中学だろうか、白衣を着たものまで。全員が土御門を探しているのだ。
彼女達も皆ごく普通の一般人だったなら土御門はこれほど苦労して逃げ回る必要は無かっただろう。

(ここも危険か。カミやんにも連絡取らないとな……。…………ッ!?)

「お姉様、目標を発見しました、とミサカはここに我々の勝利を確信します」

「土御門ね、余計なことせず大人しくついて来てもらえれば命の保証はするわ……って逃げんなァァああああ!!」

341 名前:土御門「幻想少年!!!!!!!」 17/17[saga] 投稿日:2010/07/08(木) 00:01:16.90 ID:JPVQvkoo [1/4]


―――――――――――――――


(超電磁砲!! 妹達!! あいつらまで俺に一体何のようだッ!!)

逃走の限界を感じる。
この手に関してもエキスパートでもある土御門だが、自信はすり減り、いつ捕まってもおかしくなくなっていた。


「ねぇねぇっ! 助けてあげよっか? ってミサカはミサカはすっごい魅惑的な助け舟を出してみたり!」

「……!! お前達は……!?」

追っ手を撒くため入り込んだ裏路地に、今度は十人ほど、別の妹達が待ち構えていた。彼女達を代表するように、幼いミサカが誇らしげに
先頭に立っている。

「大丈夫、ここにいるミサカはなんにもしないよ、ってミサカはミサカはちゃんと説明してあげてみたり!」

「……助けてくれるのか?」

「うん! でもねー、そ・の・代・わ・り・に……」

肩から斜めにかけていた小さなバッグからごそごそとあるモノを取り出す。

「これ! ここにいるミサカの分と――」

小さな彼女は微笑んだ。

「ミサカにも一つ、あの人で作ったこれが欲しいなっー、ってミサカはミサカはおねだりしてみる!」


                                                         おしまい

Tag : とあるSS総合スレ

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