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垣根「……なんで生きてんだ、俺」
それじゃあプロットのような投げ遣りを投下するかね。
繋ぎにもならんだろうが。
初めに言っておく――期待はするな。
未完成だし、マジで最初しか書いてないヤツだから。
それでも良いなら、時間つぶしにヨロシク。
ちなみにメインは垣根ね。それでは、どうぞ。
――衝撃が、世界を蹂躙していた。
吹き荒れる暴虐の嵐は地を裂き、天を別つ。
比喩ではない。少なくとも、地下街という閉鎖された空間に於いては。
地に向けて放たれた打撃は各階層を隔てる地盤を割り、天に伸びた斬撃は天井に裂傷を刻む。
無骨な棍棒が。流麗な白翼が。
交差する度。破壊の爪痕は徐々に範囲を拡大していく。
「オラァ!!」
「むん!!」
気勢と共に振るわれた棍棒と白翼は、一際強烈な衝撃波を辺りに撒き散らした。
僅かな均衡の後、それを担う者達は互いを振り払うかのように距離を取った。
28 名前:垣根「……なんで生きてんだ、俺」[] 投稿日:2010/05/03(月) 00:46:43.50 ID:Ia9Kyzk0 [3/17]
「――なるほど。手強い。天使を模しているだけはある」
不意に。無骨な男の声が場を満たした。
バチバチと紫電を散らし、弱々しく点滅する外灯。
薄らと照らされた暗がりの先には、大柄な人間の影があった。
「だが、模造品如きに敗れる私では無いのである。所詮は人間。扱える『天使の力(テレズマ)』の総量など高が知れている」
男は絶対の自信を以って語りながら、手に携えた棍棒を肩に担ぐ。
それだけの動作で、ビキリ……ッ! と男の足場が罅割れた。
当然だ。男の担ぐ棍棒の正体、それは全長五メートルを超える鉄塊である。
その総重量は、どんなに低く見積もっても数百キロはくだらない。
小枝のように軽々しく振り回す男こそが異常なのだ。
それでも。
「――ったく、さっきから天使天使って喧しいんだよ。
人のコンプレックスを刺激しまくりやがって。そんなに無残な死に様を晒したいんですかぁ?」
対峙する少年に、恐れは微塵も無かった。
30 名前:垣根「……なんで生きてんだ、俺」[] 投稿日:2010/05/03(月) 00:50:05.78 ID:Ia9Kyzk0 [4/17]
学生服を着崩す姿は、凄惨な戦場には似つかわしくない。
しかし、その背中に生える六枚の純白の翼は、正しく少年を天使に昇華していた。
尤も、眉を思い切り顰め、見るからに不機嫌な少年の面持ちは、慈愛の象徴である天使には程遠いが。
「ふん。己がどういった存在であるかも知らず……いや、科学に浸かっている人間に何を言っても無駄であるか」
「はいはい、そうですか。いい加減、戯言は聞き飽きた。だからさ。さっさと[ピーーー]よ」
予備動作も無く、肥大化した白翼が男に襲い掛かる。
音速を超える必滅の一撃は、無造作に振り切られた棍棒によって撃退された。
その結果に少年は苦々しく舌打ちする。
「チッ……面倒臭い野郎だぜ。身体強化系統の能力者なんざ学園都市には腐るほどいるけどよ。
まさか『外』に超能力者クラスの野郎がいるとは思わなかった。それも俺と戦闘が成立する程とはな」
「それは此方も同じである。私と渡り合える能力者が学園都市に存在するとは夢想だにしなかった」
共に各勢力を代表する絶対戦力の一人であるからこそ、対峙する相手の異常性が際立つのだろう。
眼光は鋭く、互いを見据えている。
31 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/03(月) 00:51:57.60 ID:Ia9Kyzk0 [5/17]
適当に分けてるけど、たぶん15ぐらいかなぁ?
次から入れる。スマンね。
33 名前:垣根「……なんで生きてんだ、俺」 4/15[] 投稿日:2010/05/03(月) 00:54:44.19 ID:Ia9Kyzk0 [6/17]
「――不毛だな」
緊迫した空気の最中、不意に男は呟いた。
「あ?」
「これまでの言動を省みるに、貴様は現状を何一つ理解していないようである。
学園都市から派遣された訳でも無く、場に居合わせただけの者に構っているほど暇ではない」
男は至極つまらそうに言い捨てる。
「此処で退くなら見逃す。だが、あくまで向かって来るのなら障害として排除するのである」
「――なんだ、それ」
明らかな格下扱いに少年の相貌が歪む。
ズキッと。今は無き右腕の幻痛が少年を苛んだ。
34 名前:垣根「……なんで生きてんだ、俺」 5/15[] 投稿日:2010/05/03(月) 00:56:41.23 ID:Ia9Kyzk0 [7/17]
それが、これ以上なく少年の癪にさわる。
「ムカついた。一方通行のクソ野郎並みのムカつき具合だ。粉々にしてやるよ、オッサン」
「……忠告はした。彼我の実力差すら分からないのなら、もう語ることは無いのである」
殺伐とした空気が、じんわりと広がっていく。
「――潰えろ、能力者」
「――消し飛べ、侵入者」
ローマ正教『神の右席』の一人、後方のアックア。
学園都市第二位『未元物質(ダークマター)』の垣根帝督。
各勢力を代表する戦力は、再び激突した。
時刻は半日ほど遡る。
35 名前:垣根「……なんで生きてんだ、俺」 6/15[] 投稿日:2010/05/03(月) 00:59:14.39 ID:Ia9Kyzk0 [8/17]
「――何で生きてんだ、俺」
それが、深い眠りから目覚めた垣根帝督の第一声だった。
眼前に広がる純白の天井を不思議そうに眺めながら、垣根は自身がベッドに横たわっている事に気付く。
聡明な頭脳は本来の役割を果たさずに空転を繰り返し、自らの発言の意味すら失わせた。
不意に。ガチャッと扉が開く音が横合いから響いた。
「おや? もう目が覚めたのかね?」
垣根が視線を向けた先には、恰幅の良い老人が扉を開けた体勢で佇んでいた。
横に間延びした顔つきは、どこと無くカエルに似ている。
「やれやれ、最近の患者は随分と頑丈だね。それとも君達が特別なのかな?」
老人は呟きながら扉を閉め、ゆっくりとした足取りで垣根に近づいた。
「さて、調子はどうだね? 何処か痛む箇所はあるかい?」
「……何処だ、ココ」
老人の質問には答えず、垣根は訊いた。
その態度は褒められたものではなかったが、老人は些かも気分を損ねない。
36 名前:垣根「……なんで生きてんだ、俺」 7/15[] 投稿日:2010/05/03(月) 01:02:08.55 ID:Ia9Kyzk0 [9/17]
「僕の格好を見て分からないかね?」
僅かな微笑を浮かべながら老人はその場で一回転する。
気持ち悪い。垣根は嫌そうに顔を歪めるが、お陰で頭は冴えてきた。
現状を認識。解答を導き出す。
「白衣、ねぇ……研究所か? ハッ、今からモルモットにでもされんのか?」
「聞いた手前アレだけど、随分な物言いだね」
老人は心外だと言わんばかりにワザとらしく嘆息する。
「此処は真っ当な病院だよ。そんな怪しげな所と一緒にしないで欲しいね」
「病院……だと?」
「そうさ。何を驚いているんだい? 怪我人が病院にいるのは当然だろう?」
当然の事のように語る老人の言葉に虚偽は見当たらない。
怪我をして。病院に運ばれて。治療されて。寝かされていた。
おかしくはない。おかしくはないが。
37 名前:垣根「……なんで生きてんだ、俺」 8/15[] 投稿日:2010/05/03(月) 01:04:43.22 ID:Ia9Kyzk0 [10/17]
「――ちょっと、待て」
だからこそ、垣根帝督は待ったを掛けた。
カチリと歯車が噛み合う。途端に記憶が濁流のように流れ込んだ。
学園都市への反逆。アイテムとの抗争。一方通行との殺し合い。
そして、その結果も。それ故に垣根は理解できなかった。
「――どうして、俺は生きてんだ?」
再度、垣根は自問する。今度は確かな疑念を込めて。
あの時。あの瞬間。確かに垣根は死に体だった。
それで生きているのは、明らかに矛盾している。
「ふむ。その様子だと自分がどういった様態だったのかは理解しているようだね?」
その様子に僅かな感嘆を抱きながら、老人は当時の様子を反芻する。
「君が此処に運び込まれた時の状態は酷いものだったよ。
内臓は軒並み破裂していて、全身の骨は軟体動物みたいにグニャグニャでね。
生きているのが不思議なくらいだった。けど――それでも君は生きていた。
生きているのなら、必ず救ってみせるのが僕の信条でね。まあ、もっとも――」
老人は言葉を切り、垣根の体のとある部分を見やった。
釣られて垣根も視線を向ける。
38 名前:垣根「……なんで生きてんだ、俺」 9/15[] 投稿日:2010/05/03(月) 01:07:07.90 ID:Ia9Kyzk0 [11/17]
「流石の僕も、あそこまで損傷した腕を繋ぎ合わせる事はできなかったけどね」
右腕が無い。
肩先から綺麗に。影も。形も。何もかもが消え去っていた。
けれど、垣根は欠片も喪失感を抱かなかった。
それよりも。何よりも。胸中に飛来するコレは。
ドロドロとして。モヤモヤとして。何より息苦しいコレは。
「……負けた。惨敗だ、チクショウ。あんなに息巻いといて結果がこれかよ。格好悪ぃな、俺」
どうしようもないほどの敗北感。
自らの存在を根本から否定されたかのような――そんな虚無感だった。
残った左腕で目元を力無く覆い隠す垣根は、今にも泣き出しそうな子供に見えた。
老人はジッと垣根を見やる。慰めの言葉は掛けない。そんなものには意味がないと分かっているからだ。
沈黙が室内を重く包む。垣根も。老人も。一言も発さぬまま時間だけが過ぎていった。
だが、何時までもこうしている訳にはいかない。
「……さて」
静寂を破り、口火を切ったのは老人だ。
39 名前:垣根「……なんで生きてんだ、俺」 10/15[] 投稿日:2010/05/03(月) 01:10:53.21 ID:Ia9Kyzk0 [12/17]
「何があって大怪我をしたのかは知らないし、聞く気も無いけど、暫らくは絶対安静だよ?
補った内臓が馴染むまで時間が掛かるし、全身の骨は急速に成長させた反動で脆くなっているからね。
無理に酷使すると簡単に折れちゃうから気を付けてね。まあ、一ヶ月ぐらいベッドに寝てれば問題ないよ」
医者として最低限の注意を述べた後、老人は踵を返した。
「これでも僕は多忙でね。そろそろ失礼するよ。何かあったらナースコールするといい。
此処のナースさん達は美人揃いだから、恥ずかしい要望をドンドン言うといいね。
それじゃあ、しっかり治すんだよ」
おどけた風に言いながら老人は扉の取っ手を握る。
その背中に、
「ハッ……治して、それから俺はどうなるんだ?」
暗い。何処までも暗い嘲笑が浴びせられた。
「…………」
老人が肩越しに振り返った先。
そこには酷薄な笑みを口元に刻み付けた垣根が、ドブ河のような眼で、真っ直ぐに老人を射抜いていた。
40 名前:垣根「……なんで生きてんだ、俺」 11/15[] 投稿日:2010/05/03(月) 01:14:27.49 ID:Ia9Kyzk0 [13/17]
「吹かしてんじゃねぇぞ。スプラッタ映画の死体役も真っ青な死に様を晒してた俺を此処まで復元したインチキ野郎が。
そんな野郎が偶然、学園都市に反逆した第二位を治療しました? ふざけんな。そんなフィクションなんざ信じられるか。
誰の差し金かは知らないが、こんな死に損ないに何のようがあるんだ?」
殺意すら滲む垣根の眼光は、常人ならば腰を抜かすほどに壮絶だ。
しかし、老人は意にも介さず、尚も軽い調子で答える。
「……ふむ。いつもの彼なら、素直に僕の言葉を鵜呑みにしてくれるんだけどね。
とりあえず誤解だけは解いておくけど、少なくとも僕は君の起こした件とは無関係だよ。
君が患者として運ばれてきた。だから僕は治療した。僕と君の関係は本当にそれだけだ。
僕が吐いた嘘は『君が大怪我をした経緯を知らない』というところぐらいだね」
「――ふざけているのか?」
ざわり、と。病室の空気が変質した。
錯覚ではない。正しく世界は、別の異界へと変貌している。
老人も察知したのだろう。ほんの僅かに目を細めた。
41 名前:垣根「……なんで生きてんだ、俺」 12/15[] 投稿日:2010/05/03(月) 01:15:36.77 ID:Ia9Kyzk0 [14/17]
「本心だよ。もっとも、信じる信じないは君の勝手だけどね。
まあ、此処にいる間は上層部からの介入は無いから安心するといい」
「なんだそりゃ。両生類みてぇ顔して、てめぇは理事会より上の立場ってか?」
「理事会? そんなものは知らないね。僕は医者だよ? 患者を救ってこその存在さ」
「…………」
余りにも不遜に返され、垣根の追求が途切れる。
いつの間にか、病室を覆う異界の法則は消え去っていた。
「話は終わりかね? なら、そろそろ本当に失礼するよ」
「……待てよ。最後に一つだけ聞かせろ」
「まだ何かあるのかね? 手短にしてくれよ」
言葉とは裏腹に老人の態度は真摯だ。
老人の視線は、優しく言葉の先を催促している。
42 名前:垣根「……なんで生きてんだ、俺」 13/15[] 投稿日:2010/05/03(月) 01:17:26.68 ID:Ia9Kyzk0 [15/17]
「…………」
垣根は、今までの気丈な様子とは一変して逡巡する。
老人から視線を逸らし、体に掛けられた純白のシーツを無意識のうちに握り締めた。
短くない沈黙の後、垣根は搾り出すかのように声を発した。
「あの野郎は……一方通行はどうなった」
一方通行。学園都市の頂点に君臨する最強の超能力者。
――垣根帝督を殺した筈の人間。
あの一方的な虐殺を実行した化物は、一体どうなったのか。
しかし、肩を竦めた老人の口から語られる言葉は、垣根の求めるものではなかった。
「さあね。救急車に乗せられて何処かに運ばれたらしいけど……詳細が知りたいなら彼女達を訪ねるんだね」
「彼女達?」
垣根は訝しげに眉を潜めた。
「ああ、君なら知っているかもね。あの子達は――」
43 名前:垣根「……なんで生きてんだ、俺」 14/15[] 投稿日:2010/05/03(月) 01:20:15.34 ID:Ia9Kyzk0 [16/17]
立派な外観の割かし大規模な大学病院。
中高生が中心に住む第七学区に建っている為か、行き交う人々は若者が多い。
閑寂な待合室には患者達がイスに腰掛けて診察の順番を待ち、看護師が忙しそうに歩き回る。
極々普通の病院の風景。
何らおかしな箇所は無い。
少なくとも、表面上は。
病院の奥深く。
一般の来客は立入禁止の区画には、いわゆる訳アリの患者が入院している。
かくいう垣根も訳アリの患者の一人だが、それ以上に機密性の高い患者が此処にはいた。
「――それでミサカ達を訪ねて来たのですか、とミサカ10032号は警戒を隠しもせずに問い掛けます」
「文句ならカエル顔に言え。あいつが紹介したんだからな」
憮然とした面持ちで垣根は告げる。
右腕が無くなったことで重心のバランスに苦慮しているのか、左腕には現代的なデザインの杖が握られていた。
心成しか一方通行の持っていた杖に似ており、それが垣根の不機嫌の要因にもなっている。
44 名前:垣根「……なんで生きてんだ、俺」 15/15[] 投稿日:2010/05/03(月) 01:24:54.41 ID:Ia9Kyzk0 [17/17]
「しかし、まさか最終信号以外の個体が学園都市に残っていたとはな。
用済み扱いで世界中に左遷されたって聞いてたぜ?」
「左遷ではなく調整の為です、とミサカ19090号は不服も露に訂正します」
「調整ねぇ……それこそ今さらな気もするけどな。さっさと廃棄処分した方が手っ取り早いだろうに」
「貴方は喧嘩を売りに来たのですか、とミサカ13577号は胸中でシャドーボクシングをしながら詰問します」
「生憎と人形遊びに興味はない。用が済んだら大人しく病室に戻るさ」
「ミサカ達は人形ではありません、とミサカ19090号は毅然と反論します」
「それで一方通行は俺を殺し損ねた後はどうなった? お前達は知っているらしいが」
「聞いちゃいませんねコイツ、とミサカ10032号は似非ホスト野郎を軽蔑します」
「とんだ人でなしです、とミサカ13577号は分かりきった事を口に出して強調します」
「あれだけの怪我から一週間程度で復活する辺り本当に人類なのか疑わしいですけどね、とミサカ19090号は言い捨てます」
「……ウゼェ。何がウゼェって同じ顔が三つ並んで戯言を無表情に捲くし立てるのがウゼェ。
同じ無表情キャラだった『アイテム』の電波女だって、もう少し起伏があったぞ」
抑揚に富んだ会話を好む垣根にとって、妹達の淡々とした語り口に付き合うのは苦痛でしかなかった。
とりあえず現在、投下できるのはココまで。
これ以上はプロットの変更を予定しているから投下不可能。
まあ、場繋ぎ程度にはなったかな? なってたらいいなぁ。
Tag : とあるSS総合スレ
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