スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
実乃梨「とらP?」
1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/23(金) 23:35:11.57 ID:bq7E3B00O [1/6]
た
た
2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/23(金) 23:36:29.44 ID:bq7E3B00O [2/6]
目が覚めたらそこは知らない場所で
少し固いベッドの上で私は天井を見上げていた
なんだろう、この感じ…ふわふわしてて
起きたばかりだというのになんだか眠い
「知らない天井だ…」
ふと、そんな言葉を無意識に呟く
なんで私、こんなこと言ったんだろう、わかんないや
「櫛枝!…櫛枝…よかった」
そんな私の声が聞こえたのか突然開いたドアから
ッ!…思わず悲鳴をあげる所だった
世にも恐ろしい顔をした鬼般若がそこにいた
3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/23(金) 23:39:06.66 ID:bq7E3B00O
その鬼般若、もといその少年はたぶん
私の事を心配、しているんだと思う
だが肩で息をしているその少年の姿ははたからみればまるで私をこれから…んん、まあいいかそれは
とにかく
ここは薬品の、とくにアルコールのニオイがすごいし、ベッドは白くて清潔で
窓の外を見渡せば、何をいってるのかサッパリな掛け声とともに走りこむスポーツ少年達が見える
たぶん、ここは保健室
うん、思い出した!ここは私が通う高校の保健室だ
だからこの人は私を心配してるんだ
でも、この人は誰だろう、思い出せない
ーそれが何故かー
こんな恐ろしくて、確実に2、3人殺っちゃってそうな顔で、そんでもって
こんなに優しい目をした人を思い出せないなんて
ー何故だかとても、悲しくてたまらないー
4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/23(金) 23:43:24.30 ID:bq7E3B00O
「櫛枝、大丈夫か?まだ痛むか?頭」
少年は言う
頭?…げ、こぶ!しかもでか!
言われてさすってみると確かに腫れて押さえると痛い
これってもしかして…
「こ、ここは何処?私は誰?状態…か?」
「ま、まじかよ櫛枝…って、おう!?なんだ?なんかすげぇ違和感が…はっ」
何だ!?どうした!?
なんかマズった?
これは後で聞いた話、普段の私なら
こんなおいしいシチュエーションで「ここは誰?私はどこ?」必ず言うはずだったらしい…
7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/23(金) 23:49:04.41 ID:bq7E3B00O
それはほんの一時間もしないくらい前の事
今日は日曜日、他校のソフト部との練習試合の最中だった
「おらおらかっ飛ばすぜ今日はかっ飛ばすぜ~」
私のそんな声に外野を守る(おそらく)一年生諸君は素直に一歩、また一歩と後ろへ下がる
ヘイ、カマッ!とバットを構えてタイミングをはかる
相手のピッチャーが豪快なウィンドミルでボールを放つ
おっと、これはボールだぜよ!
スパン、と小気味の良い音がすぐ後ろで聞こえた
「ヘイ櫛枝!ピッチャービビってるぞ!」
そんな声がもっと後ろ、バックネットの裏で聞こえた
誰だ誰だ?…おっとイカン、試合中!横目で振り返るとそこには北村君、と…………
「…高須、君」
櫛枝!前!北村君が慌てて叫ぶ
そして私も慌てて振り返る
「ひゃあ!…ッんへぇい!」
間抜けな声と軌道で振られたバットは、間抜けな音を発して間抜けな打球を打ち上げる
た、高須君のせいだかんな!……ビックリさせやがってもう
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/23(金) 23:56:23.09 ID:bq7E3B00O
「あーれまー…」
そんな打球はキャッチャーフライ一直線、ワンナウト確定
格好悪いとこ見せちまったぜ、なんてバカな事を考えながらその打球の行方をアホ面さげて見守る
「ど、ドンマイだ!櫛枝!」
と、そんな声が聞こえた、北村君じゃない方から
そういえばなんで学校にいるんだろう?日曜だよな今日は
北村君は生徒会…だよね、たしか
高須君は…んーわっかんねぇや、なんで?
そんな高須君は高須君で何故か私に向かって万歳をして…ん?
頭?頭がどうしたの?ああ、ヘルメット?
とりあえずヘルメットを外すと高須君は…、うひー…その顔はやばいぜ高須ボーイ
「なんだよ高須君!それなんのジェスチャークイズ?わかんねーって、んがッ!!」
これが最後の言葉、最後の思考
櫛枝実乃梨、ここに倒れる
…とまあ
12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 00:04:31.47 ID:+nAxmNUSO [1/28]
「…とまあ、こんな感じだ」
と言うのは高須竜児君、私のクラスメイトで友達、みたい
「へ~ドジだなみのりんは~…って私か!ははは面目ねー、櫛枝がご心配おかけしたようで」
櫛枝実乃梨、それが私の名前、みたい
「おう他人事かよ!…なあ櫛枝、お前本当に何も覚えてねぇのか?…その…ほら、クリスマスパーティー…とか」
ードクンー
『それ、いいクマだね、高須君』
なんだ!?何だ今の…いっ
「どうした?なんか思い出したか?」
「つつ…いや、なんだろ?なんか……たんこぶが今頃痛むんだ、はははー痛てぇなこのこぶ野郎」
「そ、そうか…いや、いいんだ…おう、ゆっくり一つずつ思い出していけば」
「…ごめんな、高須くん」
「おう、気にすんな」
本当にごめん、何かひっかかってるのはなんとなくわかるんだよな
一瞬だけ、君の着ぐるみ姿が浮かんだんだ、でもそれだけ
でもさ、なんとなくだけど、君の事は思い出さなきゃいけない気がするんだ、ちゃんと自分で、絶対に。
だから、少しだけ待っててくれるかな
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 00:13:30.80 ID:+nAxmNUSO [2/28]
練習試合はもう終わっちゃって撤収済み
だからあとはこれから家に帰るだけ、なんだけど
「っかぁ~!…家どこだよ!」
「おう、それなら心配すんな。北村がちゃんとお前ん家の住所知ってるから」
「…北村?」
「ああそっか…えーっと北村ってのは」
「呼んだか!?高須。」
おう!?やべ、うつった
この人が北村君?
目で高須君に合図すると彼も頷く
「おお櫛枝気がついたか!よかったよかった」
「…君はだれ?ここは何処?」
「…おい櫛枝っ…はっ!…ふふ、ははは騙されんぞ俺は!なんせ二年の付き合い……ん?なにか違和感が…」
割愛
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 00:22:06.43 ID:+nAxmNUSO [3/28]
高須君と別れて私は北村君に案内をしてもらう
高須君は最後までついてこようとしてくれたけど、もう日も暮れてるし
北村君の「確か今日は日曜だからスーパーかのう屋が」の一言も決め手になってか、諦めて帰っていった
なんて優しい人って、思う
「あのさー北村君」
「なんだ?俺のプロフィールか?スリーサイズ以外なら全て答えてやるぞ?」
「……なんでもねーべ」
この眼鏡君の顔をみてると何か思い出せそうだな…
「あのさ北村君、何かしゃべってみてくれないか?なんでもいいんだ高須君のこととかソフト部のこととか」
あれ、なんで1番に高須君?あれ?
まあいいか、さっきまで一緒だったから当たり前か…?
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 00:39:51.42 ID:+nAxmNUSO [4/28]
「そうだな…おっ」
北村君は急にたちどまり眼鏡をクイっとあげる。WOW…知的だぜベリークール
「スリーサイズは上から」
「耳が腐るわい!」
前言撤回!さっきの取り消しな!この人バカだ! 思わず裏手で突っ込みを入れてしまったぜ
ん?突っ込んだ拍子で北村君の胸ポケットから何かが落ちた
これは…生徒手帳?
「おっといけない、やはりここだとすぐに落ちてしまうな」
「生徒手帳…あ!」
ートクンー
『やめるやめるやめるやめる全部!やめゆーーーーーっ!!!』
頭の中であの一件がフラッシュバックした
駒送りで再生される場面には
・・・
金髪頭の北村君
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 00:48:04.05 ID:+nAxmNUSO [5/28]
「ってなにやってんだ北村オイ!」
「痛っ!どうした櫛枝、時間差二度突っ込みとは斬新だぞ………まさか、なにか思い出したのか!?」
「うん!北村君!そうだよ北村君だ!うおお!完全に思い出したぜーーうーっはっはっは!」
「おお!なにやらよくわからんがよかったな!わっはっはっ」
北村君の事、北村君との思い出。全部、全部思い出せた
何だかいやに簡単な、まあいっか
この調子でもっとたくさん思い出してい
ードクンー
か、なきゃ…ってあれ?
ードクンー
『アンタのその弱さが!臆病さが!北村君を傷付けたんだ!』
い、痛い…痛いよ…なんだよこれ…
誰、なんだよ…この声…
26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 00:51:00.23 ID:+nAxmNUSO [6/28]
「だ、大丈夫か櫛枝!」
しゃがみこんだ私の顔を覗きこむ北村君
こういうときはふざけないで本当に心配する
-そう、そういう人なんだよね北村君は-
「なんでもないさー!たんこぶの野郎がさー」
-だから私は弱気をかっ飛ばすんだぜ?-
…でも本当に誰だったんだろう?
私、もしかして大事な何かを、誰かを、忘れてるのか?
駄目だ、…これ以上何も思い出せないや
29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 01:05:35.09 ID:+nAxmNUSO [7/28]
ここからが試練だぜ櫛枝実乃梨!
北村君に聞いた私の家族構成は父親、母親、私に弟
弟は野球の名門校に寮から通っているらしいから、とりあえずは三人暮しというわけだな…よし!
「ただいまー」
自然に、ナチュラルに、溶け込むように
「誰?……あ、実乃梨…どうしたの普通に『ただいま』なんて、体の調子でも悪いの?」
そりゃないぜママン…ますます私という人間がわからない、櫛枝実乃梨はただいまの度に何か一発ギャグをかますような人間だったなんて…
でも、なんだろ
この人がお母さん、なんだよね
ートクンー
なんだか、あったかくて高須君とも北村君とも違う安心感、みたいな…
「あ!」
「何?どうしたの急に」
「ううん、みどりの奴は次いつ帰ってくるの?半殺しにするって約束なんだ」
思い出した、やべ…泣きそう…でも、泣かねー
この家で育って、弟にも、誰にも負けたくなくて、叶えたい夢があって…
ートクンー
「ああーっ!バイト!バイト忘れてたあああっ!」
31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 01:15:56.90 ID:+nAxmNUSO [8/28]
俺のターン!喰らえいっ北村君直伝の!
土下寝!
「はははもういいから、櫛枝さんが遅刻なんて、初めてだよね?本当にいいから着替えてホールでてよ、ね?今回はお咎めなしって事で」
「すんませんっしたあっ!失礼します!」
おお~よかった、クビになんなくて
このファミレスでの仕事も思い出したし…なんか調子でてきたぜ!
「いらっしゃいませ!お客様、何名様ですか?」
「よ!櫛枝、日曜の夜に大変だね~」
「ふふ、三人だよ櫛枝、お疲れ様」
おう?美女二人に声かけられちまった、櫛枝も隅にはおけぬ…
「あ~寒い寒い、って暑っつ!暖房効き過ぎなんじゃね?ってゆ~か人多いし、あみちゃん待つの嫌いなんだけど~あ、みのりちゃんやっほ~」
おうおうおう絶世の美女じゃねぇかこりゃ!どうなってんだぁっ?
33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 01:28:15.46 ID:+nAxmNUSO [9/28]
「やっほ~」
どうするべどうするべさコレ…
私のこと知ってる雰囲気だし、友達…なんだよなこの子たち
「ほらほら櫛枝、案内してよ!亜美ちゃんキレちゃうよ~?」
「何言ってんの摩耶ちゃんそんなことでキレたりしないよ~ねぇ奈々子ちゃん?」
「ん~まあまあ、ふふ」
「も~う、否定してよ!」
はははーってうわーお、ギャル!って感じがぷんぷんするぜ~
「え~じゃああちらのお好きなお席へどうぞ~」
この子がマヤちゃん、このセクスィ黒子がナナコちゃんね、ふむふむそんで
ードクンー
ん?なんだぁ?妙な胸騒ぎが…
「どうかしたの?実乃梨ちゃん?」
「いやいやなんでもないぜあーみん!………?」
あーみん?ん~~?
34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 01:38:29.59 ID:+nAxmNUSO [10/28]
咄嗟に口を着いたけど、あーみんって呼び方はさっきされてなかったよな…
あの亜美って子の事…ふむ、何かニオイますなぁ
「ご注文は以上でよろしいですか?」
「はぁ~い」
「…」
見れば見るほど…う~む、惚れちまいそうだぜ
しかしなんでかな、なんとなく黒いオーラ的な物を感じるけれど
その亜美ちゃんはけだるそうに頬杖をついたまま私の熱い視線に気付いたようで
?と片眉をあげるようにして
「実乃梨ちゃん?私の顔何かついてる?」
そういえばさっきから私に対しての言葉は全部、どこか棒読みって感じがして気にかかる
「いや、あーみんってモデルみたいだなーって、おっとつい本音がでちまった!…あれ?」
なんでみんなしてポカーンなの?
35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 01:44:39.34 ID:+nAxmNUSO [11/28]
ードクンー
「モデルみたいって…何言ってんの?櫛枝」とマヤちゃん
「みたいっていうかモデルだよ?」とナナコちゃん
ードクンー
「はぁ?…それ、ってさ、嫌味?」
ードクン!ー
『-罪悪感は、なくなった?』
ザザァッ、と…とある日の記憶が砂嵐がかかったみたいにぼんやりと脳裏をよぎる
またしても頭痛…なんなんだよこれは…ッ!
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/24(土) 01:49:35.36 ID:+nAxmNUSO [12/28]
「あ~あなんか亜美ちゃん気分わるくなっちゃった~…ごめん、二人とも、私帰る」
そう言い残して店を出る亜美ちゃん
「あ、亜美ちゃん!」
残された二人も後を追って店をでる
「櫛枝さん!?」
あまりにも頭痛が激しくその場にしゃがみこんでしまった私を店長が支えて事務所へ連れていってくれる
39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 02:00:06.00 ID:+nAxmNUSO [13/28]
事務所の椅子に崩れるように座る
店長は「調子わるかったなら言ってよ?休んでて無理そうだったら今日はもういいから」と、私に熱さましの冷却シートをくれた
ドアの向こうからややくぐもった忙しそうな声や物音が聞こえてくる
申し訳ないです、と心の中で呟く
おかしい、いままではすぐに頭痛も胸騒ぎも収まったのに…
「いっ!…つつ…」
ードクンー
『ほんと、いい面の皮してる』
これは…そうだ修学旅行…あーみん、そうか私たち喧嘩を…ッ!
ザザァッ
『はあ?こっちが水に流してやったのに-』
これは、私か…はは確かに酷い面…
ザザァッ
キラッと一面真っ白な雪景色のなかで何かが光を放ってる
私はそれがなにか、知っている
とても大切な、大切な物だってわかっているのに…なんで大切なのか、誰に貰ったものなのか…
40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 02:08:26.05 ID:+nAxmNUSO [14/28]
「今日ぐらい、休んだっていいのよ?」
そうは言われても、学校には行かなくちゃ
行かないと何も進まないから
私の忘れている大切な何かを思いださないと…多分、もっと大事なものを失ってしまう事になる
昨夜は結局、いつのまにか事務所で眠ってしまって起きる気配のない私のために店長が私の家に連絡をしてくれたみたいで
学校へとむかう途中、ふとたちどまる
通学路がわからないってわけじゃない、それは朝起きた時には思い出していた
・・・
そうじゃなくて、-このいつもゅ交差点で-
いつもの…?私は、ここで何をしてたの?
なんで立ち止まるの?まるで、誰かを待っているみたいに…
41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/24(土) 02:09:59.03 ID:+nAxmNUSO [15/28]
>>40
ずれたw
・・・
いつも
で
42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 02:18:42.12 ID:+nAxmNUSO [16/28]
「おう、おはよう櫛枝!気分はどうだ?」
「高須君、一人?」
一人?なんで私は高須君が一人って事が気になったの?
高須君は一瞬だけ、悲しそうな顔をして、でもすぐに笑う
「おう、一人だ!…行くか、遅刻しちまう」
「…そうだね」
この時の私はどんな顔をしてたのだろうか
少し歩いた所で高須君が口を開く
「その…ど、どうだ調子は、なんか思い出したか?」
私の元気があまりないことがわかったんだろう
隠していたつもりだったのになあ
「うん、北村君でしょ?あーみんも!う…私、あーみんと喧嘩してたんだわ、はは、衝撃の真実だよね」
「あ…そうだったな…いやまあ、大丈夫だろ」
43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 02:28:03.03 ID:+nAxmNUSO [17/28]
あまり大丈夫な気がしない
「なんで!?私は全然、第一、高須君の事だってまだちゃんと思い出せてない!まだ他にもたくさん………ごめん、逆ギレだよな」
「いや…でも、大丈夫だ」
「ッ!…だから、何が大丈夫なんだよ…ちっとも私には、大丈夫なんて…おも…」
しまった、油断した
泣かないって決めてたのに
あ、くそ…女の子だもん…って言いそびれた
「…思えないよ、そんな風に…怖いんだ忘れてたものが少しずつだけどぼんやり浮かびあがってきてさ…パズルみたいに思い出したことを一つ一つ嵌めていったら」
「…」
「外側のピースばっかりが埋まって…真ん中がぽっかりぬけてるんだぜ?…でもそれがどんなものなのか少しずつ…怖いんだっ…高須、君」
ードクン!ー
「『…直る!』」
45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 02:38:31.72 ID:+nAxmNUSO [18/28]
クリスマスの少し前
櫛枝実乃梨は、恋をした
いや、多分違う
もっと、ずっと前から
…私は…
『時間がねえんだよ。おまえはおまえでちゃんとやれ。俺は俺で、おまえを手伝うんじゃなくて、俺のために、やってくから。』
あの時の星も、今の私の記憶のかけらも
ーそうだー
『…高須、くん…』
『おう』
『…高須くん、高須くん…』
『聞いてるよ』
『高須くん…』
『いるよ』
ちゃんと答えてくれた、全部に答えてくれた
臆病な私が恐る恐る差し出した手を、彼は
ちゃんと握り返してくれた
ー高須くんが、私は高須竜児に、恋をしていたー
47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 02:47:55.90 ID:+nAxmNUSO [19/28]
思いだした…そう、だったんだ
私は…私は…
『ほら。見ろよ、綺麗だろ。壊れたってちゃんと直るんだ。だから元気だせよな』
『…元通りには、ならないよ…』
『でもちゃんと光ってる』
『…な、直るかどうか、私には、…わからない…っ』
『直る』
ーそうだ…大丈夫ー
『大丈夫。-直るんだ、何度でも』
ー大丈夫!ー
48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 02:53:57.91 ID:+nAxmNUSO [20/28]
「高須、くん…」
「おう」
「へへ…高須くん…」
思いだしたよ。私、思い出したんだ
高須君の事ちゃんと
記憶のパズルが一気に埋まってくみたい
真ん中のぽっかりあいた穴が全部、埋まってく
「高須くん、私ね…」
ーズキンー
49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 03:06:19.57 ID:+nAxmNUSO [21/28]
何かがずっとひっかかる
私はそれに気付かない
ちがう、気付かないフリをした
ううん違う!高須君を思い出す前の私は
多分無意識に心の中でブレーキをかけたみたいに…
そうだよ、1番に思い出さなきゃ駄目なのに、よりによって最後なんだよ…
せっかく思い出したのに、好きだって思い出せたのに…
ーズキンー
『竜児は私のだぁあああああっ!誰も触るんじゃなぁあああああああああいっ!!』
大、河…
50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 03:15:07.20 ID:+nAxmNUSO [22/28]
クリスマスイブ、パーティーのあった日の夜
私は、そうだ…私はあの日確信したんだ
自分の予想は外れてなかったって
ー大河も、高須君の事がー
『…竜児ぃぃぃぃぃーーーっっっ!』
泣きながら彼の名を叫ぶ親友をこの目で見たのだ
それはもう疑いようのない事実で
ごまかしようのない現実で
私は選択したんだ
大河のために、なにより自分のために
51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 03:23:52.94 ID:+nAxmNUSO [23/28]
『それ、いいクマだね、高須くん』
『言いたいことばっか言ってごめん。…櫛枝は、これで帰ります』
大河みたいに泣きだしそうなのを我慢して
でも、それでもやっぱり我慢できなくて
ニットキャップで腕で必死に顔を隠して
私は…高須君を拒絶することを選んだ
「おい、おい櫛枝!」
「…ッ」
「痛むのか?」
まいった…ショックでかすぎて、声でねぇや…
格好悪いったらないよな…
確かに直ったよ高須くん…
一度壊れてもう一度直して…わかった
やっぱり、私には幽霊も、UFOも見えない方がいいみたい
52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 03:33:36.15 ID:+nAxmNUSO [24/28]
「とにかく落ち着け櫛枝!ほら、深呼吸だ」
「すー、はー…あーあー、こちら櫛枝」
「おう、俺は高須だ」
「うん、思い出したよ……全部」
「そうか、よかった…本当に」
「大河の事も…大河は、学校?」
「おう、だろうな、そうそう弁当忘れていきやがったんだよアイツ」
そういいながら高須くんは手にさげたお弁当箱の入った袋を二つ見せる
そっか、なんでいなんでい、よろしくやってんじゃねーか!
「…妬けちゃうね」
「おう、だよな…思い出したか?」
だよな…って…ん?話がイマイチ噛み合ってない?
53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 03:36:34.36 ID:+nAxmNUSO [25/28]
「何をいってるんだい?高須くん?」
「あれ?思い出したんだろ?大河と、---北村のこと---」
へ?
え、えぇぇぇーーっっっ!??
54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 03:47:15.66 ID:+nAxmNUSO [26/28]
その時のショックで私は全てを
修学旅行のあの一件
大河を命懸けで救った北村君に大河がコロリとやられちまったこと
先に崖に下りた高須くんは転んで滑って落ちて全治二週間の捻挫プラス、インフルエンザ再度襲来、またも入院一週間
その間に何がおきたのやら高須君は知らないけど
私は知っている、お正月の大河の失恋大明神への祈りの真意をしった北村君は
大河に猛烈なアタック、そしてゴールイン
そんでもってあまりもの二人…
「あのさーあのさー高須くん」
「おう?」
「きっと大河は北村君と学食だと思うからその大河の分のお弁当私にくれないか?」
「お、おう!食おう…一緒に」
55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 03:57:13.70 ID:+nAxmNUSO [27/28]
---この世界の誰一人、見たことがないものがある。
それは優しくて、とても甘い。
多分、見ることができたなら、誰もがそれを欲しがるはずだ。
だから、そう簡単には手に入れられないように、世界はそれを隠したのだ。
だけどいつかは、誰かがみつける。
手に入れるべきたった一人が、ちゃんとそれを見つけられる。
そういうふうになっている---
おしまい
59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 08:04:21.97 ID:+nAxmNUSO [28/28]
駄文にお付き合いどうもでした
目が覚めたらそこは知らない場所で
少し固いベッドの上で私は天井を見上げていた
なんだろう、この感じ…ふわふわしてて
起きたばかりだというのになんだか眠い
「知らない天井だ…」
ふと、そんな言葉を無意識に呟く
なんで私、こんなこと言ったんだろう、わかんないや
「櫛枝!…櫛枝…よかった」
そんな私の声が聞こえたのか突然開いたドアから
ッ!…思わず悲鳴をあげる所だった
世にも恐ろしい顔をした鬼般若がそこにいた
3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/23(金) 23:39:06.66 ID:bq7E3B00O
その鬼般若、もといその少年はたぶん
私の事を心配、しているんだと思う
だが肩で息をしているその少年の姿ははたからみればまるで私をこれから…んん、まあいいかそれは
とにかく
ここは薬品の、とくにアルコールのニオイがすごいし、ベッドは白くて清潔で
窓の外を見渡せば、何をいってるのかサッパリな掛け声とともに走りこむスポーツ少年達が見える
たぶん、ここは保健室
うん、思い出した!ここは私が通う高校の保健室だ
だからこの人は私を心配してるんだ
でも、この人は誰だろう、思い出せない
ーそれが何故かー
こんな恐ろしくて、確実に2、3人殺っちゃってそうな顔で、そんでもって
こんなに優しい目をした人を思い出せないなんて
ー何故だかとても、悲しくてたまらないー
4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/23(金) 23:43:24.30 ID:bq7E3B00O
「櫛枝、大丈夫か?まだ痛むか?頭」
少年は言う
頭?…げ、こぶ!しかもでか!
言われてさすってみると確かに腫れて押さえると痛い
これってもしかして…
「こ、ここは何処?私は誰?状態…か?」
「ま、まじかよ櫛枝…って、おう!?なんだ?なんかすげぇ違和感が…はっ」
何だ!?どうした!?
なんかマズった?
これは後で聞いた話、普段の私なら
こんなおいしいシチュエーションで「ここは誰?私はどこ?」必ず言うはずだったらしい…
7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/23(金) 23:49:04.41 ID:bq7E3B00O
それはほんの一時間もしないくらい前の事
今日は日曜日、他校のソフト部との練習試合の最中だった
「おらおらかっ飛ばすぜ今日はかっ飛ばすぜ~」
私のそんな声に外野を守る(おそらく)一年生諸君は素直に一歩、また一歩と後ろへ下がる
ヘイ、カマッ!とバットを構えてタイミングをはかる
相手のピッチャーが豪快なウィンドミルでボールを放つ
おっと、これはボールだぜよ!
スパン、と小気味の良い音がすぐ後ろで聞こえた
「ヘイ櫛枝!ピッチャービビってるぞ!」
そんな声がもっと後ろ、バックネットの裏で聞こえた
誰だ誰だ?…おっとイカン、試合中!横目で振り返るとそこには北村君、と…………
「…高須、君」
櫛枝!前!北村君が慌てて叫ぶ
そして私も慌てて振り返る
「ひゃあ!…ッんへぇい!」
間抜けな声と軌道で振られたバットは、間抜けな音を発して間抜けな打球を打ち上げる
た、高須君のせいだかんな!……ビックリさせやがってもう
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/23(金) 23:56:23.09 ID:bq7E3B00O
「あーれまー…」
そんな打球はキャッチャーフライ一直線、ワンナウト確定
格好悪いとこ見せちまったぜ、なんてバカな事を考えながらその打球の行方をアホ面さげて見守る
「ど、ドンマイだ!櫛枝!」
と、そんな声が聞こえた、北村君じゃない方から
そういえばなんで学校にいるんだろう?日曜だよな今日は
北村君は生徒会…だよね、たしか
高須君は…んーわっかんねぇや、なんで?
そんな高須君は高須君で何故か私に向かって万歳をして…ん?
頭?頭がどうしたの?ああ、ヘルメット?
とりあえずヘルメットを外すと高須君は…、うひー…その顔はやばいぜ高須ボーイ
「なんだよ高須君!それなんのジェスチャークイズ?わかんねーって、んがッ!!」
これが最後の言葉、最後の思考
櫛枝実乃梨、ここに倒れる
…とまあ
12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 00:04:31.47 ID:+nAxmNUSO [1/28]
「…とまあ、こんな感じだ」
と言うのは高須竜児君、私のクラスメイトで友達、みたい
「へ~ドジだなみのりんは~…って私か!ははは面目ねー、櫛枝がご心配おかけしたようで」
櫛枝実乃梨、それが私の名前、みたい
「おう他人事かよ!…なあ櫛枝、お前本当に何も覚えてねぇのか?…その…ほら、クリスマスパーティー…とか」
ードクンー
『それ、いいクマだね、高須君』
なんだ!?何だ今の…いっ
「どうした?なんか思い出したか?」
「つつ…いや、なんだろ?なんか……たんこぶが今頃痛むんだ、はははー痛てぇなこのこぶ野郎」
「そ、そうか…いや、いいんだ…おう、ゆっくり一つずつ思い出していけば」
「…ごめんな、高須くん」
「おう、気にすんな」
本当にごめん、何かひっかかってるのはなんとなくわかるんだよな
一瞬だけ、君の着ぐるみ姿が浮かんだんだ、でもそれだけ
でもさ、なんとなくだけど、君の事は思い出さなきゃいけない気がするんだ、ちゃんと自分で、絶対に。
だから、少しだけ待っててくれるかな
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 00:13:30.80 ID:+nAxmNUSO [2/28]
練習試合はもう終わっちゃって撤収済み
だからあとはこれから家に帰るだけ、なんだけど
「っかぁ~!…家どこだよ!」
「おう、それなら心配すんな。北村がちゃんとお前ん家の住所知ってるから」
「…北村?」
「ああそっか…えーっと北村ってのは」
「呼んだか!?高須。」
おう!?やべ、うつった
この人が北村君?
目で高須君に合図すると彼も頷く
「おお櫛枝気がついたか!よかったよかった」
「…君はだれ?ここは何処?」
「…おい櫛枝っ…はっ!…ふふ、ははは騙されんぞ俺は!なんせ二年の付き合い……ん?なにか違和感が…」
割愛
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 00:22:06.43 ID:+nAxmNUSO [3/28]
高須君と別れて私は北村君に案内をしてもらう
高須君は最後までついてこようとしてくれたけど、もう日も暮れてるし
北村君の「確か今日は日曜だからスーパーかのう屋が」の一言も決め手になってか、諦めて帰っていった
なんて優しい人って、思う
「あのさー北村君」
「なんだ?俺のプロフィールか?スリーサイズ以外なら全て答えてやるぞ?」
「……なんでもねーべ」
この眼鏡君の顔をみてると何か思い出せそうだな…
「あのさ北村君、何かしゃべってみてくれないか?なんでもいいんだ高須君のこととかソフト部のこととか」
あれ、なんで1番に高須君?あれ?
まあいいか、さっきまで一緒だったから当たり前か…?
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 00:39:51.42 ID:+nAxmNUSO [4/28]
「そうだな…おっ」
北村君は急にたちどまり眼鏡をクイっとあげる。WOW…知的だぜベリークール
「スリーサイズは上から」
「耳が腐るわい!」
前言撤回!さっきの取り消しな!この人バカだ! 思わず裏手で突っ込みを入れてしまったぜ
ん?突っ込んだ拍子で北村君の胸ポケットから何かが落ちた
これは…生徒手帳?
「おっといけない、やはりここだとすぐに落ちてしまうな」
「生徒手帳…あ!」
ートクンー
『やめるやめるやめるやめる全部!やめゆーーーーーっ!!!』
頭の中であの一件がフラッシュバックした
駒送りで再生される場面には
・・・
金髪頭の北村君
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 00:48:04.05 ID:+nAxmNUSO [5/28]
「ってなにやってんだ北村オイ!」
「痛っ!どうした櫛枝、時間差二度突っ込みとは斬新だぞ………まさか、なにか思い出したのか!?」
「うん!北村君!そうだよ北村君だ!うおお!完全に思い出したぜーーうーっはっはっは!」
「おお!なにやらよくわからんがよかったな!わっはっはっ」
北村君の事、北村君との思い出。全部、全部思い出せた
何だかいやに簡単な、まあいっか
この調子でもっとたくさん思い出してい
ードクンー
か、なきゃ…ってあれ?
ードクンー
『アンタのその弱さが!臆病さが!北村君を傷付けたんだ!』
い、痛い…痛いよ…なんだよこれ…
誰、なんだよ…この声…
26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 00:51:00.23 ID:+nAxmNUSO [6/28]
「だ、大丈夫か櫛枝!」
しゃがみこんだ私の顔を覗きこむ北村君
こういうときはふざけないで本当に心配する
-そう、そういう人なんだよね北村君は-
「なんでもないさー!たんこぶの野郎がさー」
-だから私は弱気をかっ飛ばすんだぜ?-
…でも本当に誰だったんだろう?
私、もしかして大事な何かを、誰かを、忘れてるのか?
駄目だ、…これ以上何も思い出せないや
29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 01:05:35.09 ID:+nAxmNUSO [7/28]
ここからが試練だぜ櫛枝実乃梨!
北村君に聞いた私の家族構成は父親、母親、私に弟
弟は野球の名門校に寮から通っているらしいから、とりあえずは三人暮しというわけだな…よし!
「ただいまー」
自然に、ナチュラルに、溶け込むように
「誰?……あ、実乃梨…どうしたの普通に『ただいま』なんて、体の調子でも悪いの?」
そりゃないぜママン…ますます私という人間がわからない、櫛枝実乃梨はただいまの度に何か一発ギャグをかますような人間だったなんて…
でも、なんだろ
この人がお母さん、なんだよね
ートクンー
なんだか、あったかくて高須君とも北村君とも違う安心感、みたいな…
「あ!」
「何?どうしたの急に」
「ううん、みどりの奴は次いつ帰ってくるの?半殺しにするって約束なんだ」
思い出した、やべ…泣きそう…でも、泣かねー
この家で育って、弟にも、誰にも負けたくなくて、叶えたい夢があって…
ートクンー
「ああーっ!バイト!バイト忘れてたあああっ!」
31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 01:15:56.90 ID:+nAxmNUSO [8/28]
俺のターン!喰らえいっ北村君直伝の!
土下寝!
「はははもういいから、櫛枝さんが遅刻なんて、初めてだよね?本当にいいから着替えてホールでてよ、ね?今回はお咎めなしって事で」
「すんませんっしたあっ!失礼します!」
おお~よかった、クビになんなくて
このファミレスでの仕事も思い出したし…なんか調子でてきたぜ!
「いらっしゃいませ!お客様、何名様ですか?」
「よ!櫛枝、日曜の夜に大変だね~」
「ふふ、三人だよ櫛枝、お疲れ様」
おう?美女二人に声かけられちまった、櫛枝も隅にはおけぬ…
「あ~寒い寒い、って暑っつ!暖房効き過ぎなんじゃね?ってゆ~か人多いし、あみちゃん待つの嫌いなんだけど~あ、みのりちゃんやっほ~」
おうおうおう絶世の美女じゃねぇかこりゃ!どうなってんだぁっ?
33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 01:28:15.46 ID:+nAxmNUSO [9/28]
「やっほ~」
どうするべどうするべさコレ…
私のこと知ってる雰囲気だし、友達…なんだよなこの子たち
「ほらほら櫛枝、案内してよ!亜美ちゃんキレちゃうよ~?」
「何言ってんの摩耶ちゃんそんなことでキレたりしないよ~ねぇ奈々子ちゃん?」
「ん~まあまあ、ふふ」
「も~う、否定してよ!」
はははーってうわーお、ギャル!って感じがぷんぷんするぜ~
「え~じゃああちらのお好きなお席へどうぞ~」
この子がマヤちゃん、このセクスィ黒子がナナコちゃんね、ふむふむそんで
ードクンー
ん?なんだぁ?妙な胸騒ぎが…
「どうかしたの?実乃梨ちゃん?」
「いやいやなんでもないぜあーみん!………?」
あーみん?ん~~?
34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 01:38:29.59 ID:+nAxmNUSO [10/28]
咄嗟に口を着いたけど、あーみんって呼び方はさっきされてなかったよな…
あの亜美って子の事…ふむ、何かニオイますなぁ
「ご注文は以上でよろしいですか?」
「はぁ~い」
「…」
見れば見るほど…う~む、惚れちまいそうだぜ
しかしなんでかな、なんとなく黒いオーラ的な物を感じるけれど
その亜美ちゃんはけだるそうに頬杖をついたまま私の熱い視線に気付いたようで
?と片眉をあげるようにして
「実乃梨ちゃん?私の顔何かついてる?」
そういえばさっきから私に対しての言葉は全部、どこか棒読みって感じがして気にかかる
「いや、あーみんってモデルみたいだなーって、おっとつい本音がでちまった!…あれ?」
なんでみんなしてポカーンなの?
35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 01:44:39.34 ID:+nAxmNUSO [11/28]
ードクンー
「モデルみたいって…何言ってんの?櫛枝」とマヤちゃん
「みたいっていうかモデルだよ?」とナナコちゃん
ードクンー
「はぁ?…それ、ってさ、嫌味?」
ードクン!ー
『-罪悪感は、なくなった?』
ザザァッ、と…とある日の記憶が砂嵐がかかったみたいにぼんやりと脳裏をよぎる
またしても頭痛…なんなんだよこれは…ッ!
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/24(土) 01:49:35.36 ID:+nAxmNUSO [12/28]
「あ~あなんか亜美ちゃん気分わるくなっちゃった~…ごめん、二人とも、私帰る」
そう言い残して店を出る亜美ちゃん
「あ、亜美ちゃん!」
残された二人も後を追って店をでる
「櫛枝さん!?」
あまりにも頭痛が激しくその場にしゃがみこんでしまった私を店長が支えて事務所へ連れていってくれる
39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 02:00:06.00 ID:+nAxmNUSO [13/28]
事務所の椅子に崩れるように座る
店長は「調子わるかったなら言ってよ?休んでて無理そうだったら今日はもういいから」と、私に熱さましの冷却シートをくれた
ドアの向こうからややくぐもった忙しそうな声や物音が聞こえてくる
申し訳ないです、と心の中で呟く
おかしい、いままではすぐに頭痛も胸騒ぎも収まったのに…
「いっ!…つつ…」
ードクンー
『ほんと、いい面の皮してる』
これは…そうだ修学旅行…あーみん、そうか私たち喧嘩を…ッ!
ザザァッ
『はあ?こっちが水に流してやったのに-』
これは、私か…はは確かに酷い面…
ザザァッ
キラッと一面真っ白な雪景色のなかで何かが光を放ってる
私はそれがなにか、知っている
とても大切な、大切な物だってわかっているのに…なんで大切なのか、誰に貰ったものなのか…
40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 02:08:26.05 ID:+nAxmNUSO [14/28]
「今日ぐらい、休んだっていいのよ?」
そうは言われても、学校には行かなくちゃ
行かないと何も進まないから
私の忘れている大切な何かを思いださないと…多分、もっと大事なものを失ってしまう事になる
昨夜は結局、いつのまにか事務所で眠ってしまって起きる気配のない私のために店長が私の家に連絡をしてくれたみたいで
学校へとむかう途中、ふとたちどまる
通学路がわからないってわけじゃない、それは朝起きた時には思い出していた
・・・
そうじゃなくて、-このいつもゅ交差点で-
いつもの…?私は、ここで何をしてたの?
なんで立ち止まるの?まるで、誰かを待っているみたいに…
41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/24(土) 02:09:59.03 ID:+nAxmNUSO [15/28]
>>40
ずれたw
・・・
いつも
で
42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 02:18:42.12 ID:+nAxmNUSO [16/28]
「おう、おはよう櫛枝!気分はどうだ?」
「高須君、一人?」
一人?なんで私は高須君が一人って事が気になったの?
高須君は一瞬だけ、悲しそうな顔をして、でもすぐに笑う
「おう、一人だ!…行くか、遅刻しちまう」
「…そうだね」
この時の私はどんな顔をしてたのだろうか
少し歩いた所で高須君が口を開く
「その…ど、どうだ調子は、なんか思い出したか?」
私の元気があまりないことがわかったんだろう
隠していたつもりだったのになあ
「うん、北村君でしょ?あーみんも!う…私、あーみんと喧嘩してたんだわ、はは、衝撃の真実だよね」
「あ…そうだったな…いやまあ、大丈夫だろ」
43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 02:28:03.03 ID:+nAxmNUSO [17/28]
あまり大丈夫な気がしない
「なんで!?私は全然、第一、高須君の事だってまだちゃんと思い出せてない!まだ他にもたくさん………ごめん、逆ギレだよな」
「いや…でも、大丈夫だ」
「ッ!…だから、何が大丈夫なんだよ…ちっとも私には、大丈夫なんて…おも…」
しまった、油断した
泣かないって決めてたのに
あ、くそ…女の子だもん…って言いそびれた
「…思えないよ、そんな風に…怖いんだ忘れてたものが少しずつだけどぼんやり浮かびあがってきてさ…パズルみたいに思い出したことを一つ一つ嵌めていったら」
「…」
「外側のピースばっかりが埋まって…真ん中がぽっかりぬけてるんだぜ?…でもそれがどんなものなのか少しずつ…怖いんだっ…高須、君」
ードクン!ー
「『…直る!』」
45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 02:38:31.72 ID:+nAxmNUSO [18/28]
クリスマスの少し前
櫛枝実乃梨は、恋をした
いや、多分違う
もっと、ずっと前から
…私は…
『時間がねえんだよ。おまえはおまえでちゃんとやれ。俺は俺で、おまえを手伝うんじゃなくて、俺のために、やってくから。』
あの時の星も、今の私の記憶のかけらも
ーそうだー
『…高須、くん…』
『おう』
『…高須くん、高須くん…』
『聞いてるよ』
『高須くん…』
『いるよ』
ちゃんと答えてくれた、全部に答えてくれた
臆病な私が恐る恐る差し出した手を、彼は
ちゃんと握り返してくれた
ー高須くんが、私は高須竜児に、恋をしていたー
47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 02:47:55.90 ID:+nAxmNUSO [19/28]
思いだした…そう、だったんだ
私は…私は…
『ほら。見ろよ、綺麗だろ。壊れたってちゃんと直るんだ。だから元気だせよな』
『…元通りには、ならないよ…』
『でもちゃんと光ってる』
『…な、直るかどうか、私には、…わからない…っ』
『直る』
ーそうだ…大丈夫ー
『大丈夫。-直るんだ、何度でも』
ー大丈夫!ー
48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 02:53:57.91 ID:+nAxmNUSO [20/28]
「高須、くん…」
「おう」
「へへ…高須くん…」
思いだしたよ。私、思い出したんだ
高須君の事ちゃんと
記憶のパズルが一気に埋まってくみたい
真ん中のぽっかりあいた穴が全部、埋まってく
「高須くん、私ね…」
ーズキンー
49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 03:06:19.57 ID:+nAxmNUSO [21/28]
何かがずっとひっかかる
私はそれに気付かない
ちがう、気付かないフリをした
ううん違う!高須君を思い出す前の私は
多分無意識に心の中でブレーキをかけたみたいに…
そうだよ、1番に思い出さなきゃ駄目なのに、よりによって最後なんだよ…
せっかく思い出したのに、好きだって思い出せたのに…
ーズキンー
『竜児は私のだぁあああああっ!誰も触るんじゃなぁあああああああああいっ!!』
大、河…
50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 03:15:07.20 ID:+nAxmNUSO [22/28]
クリスマスイブ、パーティーのあった日の夜
私は、そうだ…私はあの日確信したんだ
自分の予想は外れてなかったって
ー大河も、高須君の事がー
『…竜児ぃぃぃぃぃーーーっっっ!』
泣きながら彼の名を叫ぶ親友をこの目で見たのだ
それはもう疑いようのない事実で
ごまかしようのない現実で
私は選択したんだ
大河のために、なにより自分のために
51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 03:23:52.94 ID:+nAxmNUSO [23/28]
『それ、いいクマだね、高須くん』
『言いたいことばっか言ってごめん。…櫛枝は、これで帰ります』
大河みたいに泣きだしそうなのを我慢して
でも、それでもやっぱり我慢できなくて
ニットキャップで腕で必死に顔を隠して
私は…高須君を拒絶することを選んだ
「おい、おい櫛枝!」
「…ッ」
「痛むのか?」
まいった…ショックでかすぎて、声でねぇや…
格好悪いったらないよな…
確かに直ったよ高須くん…
一度壊れてもう一度直して…わかった
やっぱり、私には幽霊も、UFOも見えない方がいいみたい
52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 03:33:36.15 ID:+nAxmNUSO [24/28]
「とにかく落ち着け櫛枝!ほら、深呼吸だ」
「すー、はー…あーあー、こちら櫛枝」
「おう、俺は高須だ」
「うん、思い出したよ……全部」
「そうか、よかった…本当に」
「大河の事も…大河は、学校?」
「おう、だろうな、そうそう弁当忘れていきやがったんだよアイツ」
そういいながら高須くんは手にさげたお弁当箱の入った袋を二つ見せる
そっか、なんでいなんでい、よろしくやってんじゃねーか!
「…妬けちゃうね」
「おう、だよな…思い出したか?」
だよな…って…ん?話がイマイチ噛み合ってない?
53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 03:36:34.36 ID:+nAxmNUSO [25/28]
「何をいってるんだい?高須くん?」
「あれ?思い出したんだろ?大河と、---北村のこと---」
へ?
え、えぇぇぇーーっっっ!??
54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 03:47:15.66 ID:+nAxmNUSO [26/28]
その時のショックで私は全てを
修学旅行のあの一件
大河を命懸けで救った北村君に大河がコロリとやられちまったこと
先に崖に下りた高須くんは転んで滑って落ちて全治二週間の捻挫プラス、インフルエンザ再度襲来、またも入院一週間
その間に何がおきたのやら高須君は知らないけど
私は知っている、お正月の大河の失恋大明神への祈りの真意をしった北村君は
大河に猛烈なアタック、そしてゴールイン
そんでもってあまりもの二人…
「あのさーあのさー高須くん」
「おう?」
「きっと大河は北村君と学食だと思うからその大河の分のお弁当私にくれないか?」
「お、おう!食おう…一緒に」
55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 03:57:13.70 ID:+nAxmNUSO [27/28]
---この世界の誰一人、見たことがないものがある。
それは優しくて、とても甘い。
多分、見ることができたなら、誰もがそれを欲しがるはずだ。
だから、そう簡単には手に入れられないように、世界はそれを隠したのだ。
だけどいつかは、誰かがみつける。
手に入れるべきたった一人が、ちゃんとそれを見つけられる。
そういうふうになっている---
おしまい
59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 08:04:21.97 ID:+nAxmNUSO [28/28]
駄文にお付き合いどうもでした
<<ヤンダ「小岩井さん、よつばを俺に下さいよ」 | ホーム | 女「手が使えないんじゃ私が全部してあげないとだねっ!」>>
コメント
コメントの投稿
トラックバック
| ホーム |