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女「手が使えないんじゃ私が全部してあげないとだねっ!」

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 01:27:50.97 ID:iiQQnW/B0 [1/23]
「触れない…だと…、」

何が起こったか意味が分からなかった。

朝起きると手元が触れているはずの布団と混ざっている様な、変な感覚に襲われた。

立ちあがって、時計を触ろうとするが手に残るのは空を切る感触のみだ。

目がぼやけているから照準が合わないのだと自分に言い聞かせ、何度か瞬きをすると視界がはっきりしてきた。

もう1度時計を掴もうとするが、やはり触れない。

それどころかすり抜けた。

寝起きの頭でなくても理解できそうに無い事態だった。

皮膚と長円系の手の平と同じくらいのサイズの時計の境目はジリジリとモザイクがかったように何か細かいものがざわついている。

「父さん!父さんっ!」

「どうした、朝っぱらからでかい声出して。」

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 01:29:38.85 ID:iiQQnW/B0
「触れないんだ!」

「はぁ?」

「物に触れられないんだ。見てくれ!」

そう言って俺は近くにあった箸を握ろうとして見せた。

「!」

「これ、これどういう事だよ!」

「わ、わからん…。いつからだ。」

「今朝起きたらなってた。」

ちょっと待ってろと言って父はPCの画面を立ち上げ何か検索し始めた。
しばらくして画面を見る様促した。

"先日物に触れない、少女が発見された。少女が物に触れようとすると体が物を通過する。
 この症状を専門家は体を構成する分子が不安定な状態で結合しきらず、一時的に他の物体の分子と混ざりあい通過してしまうのではないかと述べている。"

「そんな…。それで、この子は治ったのか。」

「確か2週間くらいで自然と治ったんじゃなかったかなぁ。」

「いい加減だな…。それにしても、これじゃ飯も食えないじゃないか。」

「手以外も物体が通過するのか。」

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 01:32:14.37 ID:iiQQnW/B0
「ずっと家に居るわけにもいかないだろ!学生は学校行け!」

「なんつーか、子供の一大事に…。まぁいいや行ってくるわ。」

父に半分呆れながらも俺は部屋に戻った。着替えて学校に行くか、と思い壁にかけてある制服のブレザーに手を伸ばしたがブレザーに手がかからない。

「あー…もうっ!父さーん!制服着れねええええええ。」

結局父に手伝ってもらい着替えを済ませ、鞄は肩にかけて家を出た。


登校途中、学校の近くで急に後ろから誰かに押されて視界がぶれた。

「おっはよー、あと1分で予鈴なるよー。」

女か、2年から同じクラスになって席が隣になった事もあり、割とよく話せる方の女子だ。

「ってぇ…、なんだ予鈴前か。余裕じゃん。」

「5分前行動は常識であります!」

女は手刀を額に当てて敬礼のポーズをとると、くるっと前を向いて校門の方へと走って行った。
門前の教師に元気よく挨拶をして校舎に入っていく単発の女子生徒を眺めながら校舎に入った。

教室に入って自分の席につこうとすると隣の女がニヤニヤしながらこちらを見上げている。

「なんだよ…。」

「私の勝ち~っ。ってことで今日は男君のおごりで!」

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 01:37:40.91 ID:iiQQnW/B0
「いや、聞いてねーし。っていうか勝手に決めんなよ…。」

「冗談冗談。ところでカバンを下ろさないのかい?」

「あ、んっと。コレちょっとみてくれよ。」

肩から鞄の持ち手をずらし腕あたりまでおろしてくる。このへんまではひっかかっているが

ドサッ

「ええっ」

本来なら手首にひっかかるはずのところで鞄は音をたてて床に落ちた。

「今朝起きたら手があるんだけどなくなってた。」

「なんだいそれは…。起きたら万国ビックリ人間ショーだったってかい。」

お前のツッコミに年代のズレを感じるとつっこもうとするとガラガラっという音と共に担任が入ってきた。

「おはようございます。今日は午後1で全校集会あるからなー。5時間目の5分前には体育館に集合しとくようにー。
 学級委員まかせたからなー。」

教壇に立った担任は用件だけ一気に伝えるとすぐに出て行った。
入れ違いに入ってきた教師は白髪に禿げあがったじいさんだ。この人はいつも誰に向かって授業してるのかよくわからない話方をする。

「はい、じゃぁ今日はベクトルの続きから…。」

相変わらず視線は教室最後部の何もないところを泳いでいる。

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 01:49:27.93 ID:iiQQnW/B0
耳が遠いせいか、生徒が騒いでいても席を立って暴れたりしない限り、滅多に注意しないスタンスのおかげで、この授業中は終始ざわついている。

「ねぇねぇ、何でそんな風になっちゃったの?」

隣から女が身を乗り出して俺の手元を覗きこんできた。

「朝起きて、時計止めようと思ったら、すりぬけた。」

「原因は?それなおるの?」

「まったくもってわからん。同じような状態になった子は2週間くらいで治ったらしいぞ。」

自分の椅子に体重を戻して、少し考える格好をした女は数秒後に何かを閃いたようにこちらに向きなおした。

「手が使えないんじゃ私が全部してあげないとだねっ!」

「は?」


13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 01:58:55.27 ID:iiQQnW/B0
「と、いうことで私、女が男君の手が治るまで男君の手となり、足となってしんぜようと言ってるんじゃないか!」

「いや、足はあるから…。まぁ、助かるけど…。女、自分の事は大丈夫なのかよ。」

「平気平気ーっ。案外私って器用なんだよー。」

そう言いながら両腕をジャカジャカジャンケンばりに胸の前でグルグルしている。

「器用の例えがそのジェスチャーじゃちょっと心配なんだが。他の奴にまた説明するのも面倒くさいしな…。」

「うんうん、人の厚意は素直に受け取らないとねー。皆助け合って生きているのさ。」

リアクションに困って少しの間の後

「で、男君は何を御所望だい?」

「んー…。形によるけど一つのものなら手首からは感触あるし両腕で挟めばなんとかなりそうだしな。治ってからノート写させてもらえたらありがたいくらいかな。」

「御箸とか持てないよね?」

「だな、パンにするかー。」

「じゃぁ私のと一緒に買っといてあげるよー。どうせ財布からお金も出せないってオチでしょ?」

確かにそうだ。

「じゃぁ金後で渡すから金額教えろよ。」

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 02:08:26.30 ID:iiQQnW/B0
「りょーかいっ。」

「おう、んじゃ板書と飯たのむわ。」

そこからの授業は非常に退屈なものだった。板書もできない、教師は生徒に対してじゃなくて壁に授業やってるし、真剣に聞く気にもなれない。
窓の外を見ると体操服を来た同い年の高校生達がサッカーをしている。
日に手をかざしてみるが、太陽の光を遮断し俺の顔に影を作った。常人ならこれで物が触れないなんて微塵も考えられない。
右隣を見ると女が真剣に板書を写している。小学校の時にならった見本の姿勢の写真のように背筋を伸ばしたまま机に向かっているな。
そんな事を思いながら、化粧っけのない横顔を眺めていたらチャイムが鳴った。

午前中の授業は長く感じたが、外を眺めたり、教室の中を客観的に観察していたらいつの間にか終わっていた。
4時間目終了のチャイムと同時に女が財布をもって立ちあがった。

「よーし、じゃぁパパっと買ってくるねー。今日天気良いから屋上で食べようよ。先にいっててー。」

「わかった。悪いな。」

短いやり取りを終えると彼女は小走りで教室を出て行った。
残り香が鼻をくすぐる。

扉が閉まって少し間を置いて俺も席を立った。もちろん手ぶらで。

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 02:22:51.62 ID:iiQQnW/B0
>>16
すいません、規制解除されてると思わなかったもので…

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屋上への扉を開こうとしたが空振り。忘れていた。
見えてるもんを無いと思うなんてそんな器用な事はできないんだ。

パタパタと音をたてながら女が階段を上がってきた。

「お待たせー。あれ?何で入ってないの?」

「いやほら、これ。」

ドアノブを往復ビンタするようにして見せてやる。

「ああ、なるほどね。」

はじめて苦笑いを漏らした。女が扉を開きそれに続いて屋上にあがった。
逆エスコートなんてちょっと情けないな。

屋上は風もあまりなく本当に今日は良い天候だ。
フェンスの傍に腰を下ろすと女がパンを差し出してきた。

「坊主…カツ丼食うか…。」

「取り調べか。っていうかそれカツサンドだからな。」

ボケるくせにツッコむと気まずそうな顔をする。面倒くさいやつだ。
受け取ろうと思うがまたも空振り。両手首で挟んで受け取るが、包装しているビニールがはがせない。

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 02:29:16.78 ID:iiQQnW/B0

「ごめんごめん、ほら貸して。ベリベリーっとね。はい。」

口元にカツサンドの端を差し出してきた。少し恥ずかしさもあって躊躇していたが、誰も見てないし良いだろう。

「男君っておいしそうに食べるよねー。食べさせておいてなんだけどさ。」

「そうか?」

「うん、カツサンド食べたくなっちゃった。もらっていい…よね。私が買って来たんだし。」

有無を言わさず俺のカツサンドにかぶりつく。こういう時って反対側をかじるもんじゃないのか。


「んー、やっぱ購買のは冷めてるからそこまでおいしくないか。はい、ありがとー。」

女の歯型のついたカツサンドを前に反射的に生唾を呑みそうになった。童貞乙。
関節キスなんて俺が言っても気持ち悪いだけなので気にしていないフリを装う。

「はい、関節キスー。」

むせた。

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 02:37:17.87 ID:iiQQnW/B0

「おおう、すまんすまん。牛乳飲むかい。」

テキパキとストローを紙パックに刺して差し出す女。
口を湿らせる程度に口に含んで固形物を喉から流し落とした。

「しかしアレだね。男君はうぶじゃの。フフフ。」

「どこのオッサンだ。お前は。」

「まぁ良いじゃないの。今時流行りの草食系って事で。」

いまいち草食系に結び付けられる事に納得いかないが反論する気も起きないのでスルーしておいた。

「話が変わって一つ提案なんだけどさ。明日土曜日で学校休みじゃん?」

パンをもった手を俺の口元で固定し、空いた手で自分のパンを器用に取り出しながら視線をこちらに向けている。

「うん?」

「家に居ても本も読めないし、退屈だろうから。一日介護してあげようというのはどうだい。」

「ん?」

「だから、明日一日暇つぶしに付き合ってあげるよー、ってこと。」

照れ隠しなのかカツサンドの残り4分の1ほどを口に押し込まれた。



25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 02:50:17.52 ID:iiQQnW/B0
>>17
すみませんでした。次回があれば気をつけます。
テスト程度に書きかけのものを投下してみました。
書いてる途中で支援、感想をいただけると励みになるっていう甘えがある事は否定できません。

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「どう?」

さっきむせた時と同じ一連の動作を終えると再度聞き直してきた。

「良いけど、何するんだよ。」

「デート?」

「あほか。」

「じゃぁ、とりあえずお昼すぎに呼びに行くね。」

「へいへい。」

不自由な食事を終え、細かい動作はできないものの特に問題をなく一日を終えて無事に家に帰りついた。

「ただいまー。」

家の中はガランとしている。親父はまだ仕事のようだ。
PCの前に座ったが考えてみたら、電源はつけられてもまともに操作なんてできない。
これじゃオナニーも満足にできないじゃないか。
悶々としたままベッドに横になってぼーっとしていると、睡魔に襲われ眠りに落ちてしまった。


26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 03:11:06.27 ID:iiQQnW/B0
>>17じゃなくて>>22の方ですね。安価ミスりました。

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気付くと窓の外が白んでいた。時計を見ると5:20と表示されている。
リビングに行くとテーブルの上にラップをかけられた焼きおにぎりがあった。
皿の下にはさまれたチラシの裏に何か殴り書きしてある。

「父は寝る。にぎりめしならなんとか食えるだろ。大変だろうけど父はもっと忙しい。自分の事は自分でなんとかしろ。」

四苦八苦しながらも焼きおにぎりを食べて、一息ついたところで部屋に戻り着替えをもって風呂に入った。
要するにドラ●もんみたいな手になったって考えれば良いんだ。

風呂で指を使うことはあまりなかったので何とかなった。
結局着替えたりなんだりで時間がかかってしまい部屋に戻った時には8時を過ぎていた。
外は完全に明るくなっている。どこの家かしらんが鶏の鳴き声まで聞こえてくる始末だ。

清々しいはずなのに、体がダルい。
土曜出勤の親父と入れ替わりで部屋に戻った。
部屋でニュースを見ているとチャイムが鳴った。
玄関を開けると白のカットソーにデニムのワンピース姿の女がニヤニヤしながら立っていた。

「やぁやぁ御機嫌うるわしゅう。ヘルパーさんのお出ましだよ。」

制服姿しか見たことなかったからか、妙に新鮮に感じる。

心なしか目元もいつもよりパッチリしているように見える。

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 03:28:05.24 ID:iiQQnW/B0
「んで…ヘルパーさん。今日は何するんですか。」

「デートって言ったじゃんー。とりあえず外行こー。」

相変わらずアクティブな奴だ。財布をポケットに入れて鍵を両腕で挟んで玄関に戻る。

「わりい、鍵かけて。」

「はいはーい。」

鍵をかけて歩き始める。少し距離が近い。

「そっか、手、つなげないんだ。」

そう言われて視線を落とすと、手元で女の手がフラフラと何度も俺の手を往復している。

「繋ぎたかったの?」

「んー。デートだし?」

「じゃぁ腕組めばいいんじゃね。」

「なるほどねー。あったま良いー。」

話のノリで口をついて出てきた言葉に後から赤面する。
臆面もなく女は腕を絡めてきた。いつもすれ違いざまに感じる香りが嗅覚を侵していく。

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 03:48:24.69 ID:iiQQnW/B0

「どうしようねー。手使えないと割と出来ない事多いなぁ。」

「自信あり気だったから何か計画立ててるのかと思ったんだけど…。」

「何も考えてないよー?」

「あ、そう…。」

ボーリング?もろだめだな…。漫画喫茶。いや頁めくれないからな…。
喫茶で食事っていうのも、この状態じゃもろ周りに見られるだろうからな…。
俺が思考を巡らせている横で女が何か思いついたようにこちらを見上げた。

「よし、ホテルに行こう!」

「は?何しに?京都じゃなくて?」

「決まってるじゃん、私の口から言わせる気?」

「いや、そりゃ想像はつくけど付き合ってもないのにs…」

俺の言葉を遮って女が口を開く。

「じゃぁ付き合おうよ。私は男君好きだよ。だから今日もこうして一緒に居るんだけど?」

すこし語気が荒い。様々な疑問が浮かんでは消えるが、女の香りに酔ってうまく思考がつながらない。
自分の下半身は突然の提案に熱を持ち始めている。

「何で今なんだよ。いきなりすぎだろ。」


34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 03:57:27.96 ID:iiQQnW/B0
「言いたくなったんだもん。しょうがないでしょ。男君は私じゃだめなの?」

前前から悪くはないと思ってたし、気にはしていた。
断る理由がまずない。ありがたくも童貞を奪ってくれると言ってくださってるんだ。

「断る理由がないし、良いよ。こちらこそお願いします。でもさ、付き合っていきなりその…そういうことするのってどうなの?手つないだりさ。」

「大丈夫、今手はつなげなくても、今から順番にすればいいんだよ、キスも全部。」

「はぁ…。」

キスという単語に反応したのかすれ違いざまに思いっきり見られた気がしたが気にしない。
それにしてもカップル成立というのに淡々とした受け答えはどこか味気ない気がするが、
女は少し頬が上気しているようにも見える。

「ってことで、ホテルに向かいます。」

これ以上の反論は互いの盛り上がりを下げることになるだろうし、もう良いだろう。

「意義なし。」

家から少し歩くと国道を挟んだ向こう側にラブホテルが見える。
制服を着た従業員が営業スマイルで客の対応に努めているのを横目にAUショップの横を通りすぎ、ホテルの正面に立った。
昼間から学生が何してんだか…。

初めて入るラブホテルのロビーはひどく滑稽な雰囲気に思えた。
受付もいない、壁際には周りから見えないようカーテンの設置された待機室。
反対側の壁には部屋の写真の載ったパネルがテカテカと怪しげな光を放っている。

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 04:11:24.15 ID:iiQQnW/B0
「どれにすんの?」

「お金ないし安いところで良いよ。」

上下左右にパネルを見渡して女が言った。

「んじゃコレでいっか。休憩な。」

ボタンを押そうとすると、女の手が俺の腕を掴んだ。

「なんでよ。今日一日介護って言ったでしょ。」

そう言って宿泊の方のボタンを押す。何時間居るつもりだよ。

女は小学校にあった黒板消しクリーナーのような機械から吐き出されたカードキーを改札を通るように引きぬいて、
俺の腕を引いてエレベーターに乗り込んだ。

今まで乗った中でも1,2位を誇る狭さのエレベーターの中で女が上目遣いに体を密着させてくる。

「キス、しようよ。」

触れられない事はわかっていても反射的に頬から顎にかけてのラインに手を添え、そっと唇を重ねた。
初めて振れる女の唇。若干の湿度と軟らかさを一生懸命感じ取った。
潤んだ女の瞳は今までのあっけらかんとした性格からは想像のつかないほど色っぽく思えた。

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 04:30:00.32 ID:iiQQnW/B0
余韻に浸る暇もなくエレベーターの扉は到着を知らせるベルを鳴らし扉を開いた。
部屋に入ると内装の綺麗さに少し戸惑った。
普段外から見るコンクリートむき出しのビルとは思えない内装だ。

「こういう時ってどうするんだろうね。」

「とりあえず、シャワー?俺はさっき入ったばっかりだから良いけど。」

「そっか、じゃぁ私は一風呂浴びさせていただくとしようかね。」

はいはい、と返事をするとカーテンの向こうへと消えていった。
暇なので部屋を物色させていただくことにしよう。
ベッドの頭の上には大きなパネルがあってエアコンや音楽のリモコンになっているようだ。
その隣には避妊具のゴム袋が4枚綴りで銀の小皿に乗っている。
イチイチ小洒落ているのがおかしかったが、こんなところで一人でクスクスしているのも自分で気持ち悪いので散策を続ける。

大型の液晶テレビ。モノクロ調のガラス張りのテーブル。
テーブルの下の段に何かノートが入っている。ピンクのA4サイズのノートで表紙に恋人ノートと書いてある。
中には「彼、彼女との関係」などそれっぽい事や「今まで行ったホテルで好印象のところ」などアンケート的な質問。
パラパラ眺めているとふざけてウンコの絵が書いてあるページもあったが、まじめに「不倫関係の詳細」を書いているページもあった。
毎回手が地面にめり込む様は気持ちわるいので、なるべく面積のある紙を捲る時は肘を使う事にした。

恋人ノートを眺めていると、女がシャワールームから出る音がした。
どの位置で待てば良いかわからず、所在無さ気にソファに手を広げて座ってポージングして固まってしまった。


45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 04:46:36.34 ID:iiQQnW/B0

ザッとカーテンが開いてバスローブに身を包んだ女が部屋に入ってきた。

「そんなのどこにあったんだよ。」

バスローブ…。

「流しの下に入ってたよー。お風呂の中にもテレビがあってビックリしちゃったよー。
 で、なんでそんなところで変な格好してんの。」

ふいに突っ込まれて返す言葉が見当たらない。テンパるってのはこういう時に使うのか。

「まぁいいや、こっちおいでよ。」

ベッドに腰掛けて自分の横をポンポンと叩いている。
最初に変なポジショニングをすると後々ずっと格好悪いんだなと、しみじみ思った。
おずおずと腰掛ける俺は「童貞ここに極まれり」と言われてもしかたないだろう。

ローブの隙間からチラチラと見える女の胸元に目がいってしまう。うっすらと汗をかいた肌は艶めかしい。
いつも制服の下に隠れている女の肌がいやらしく目の前に露呈されていると思うと胸が熱くなった。
ジーンズに愚息がつっかえて少し息苦しい。

俺の下半身が息巻いていることに気づいたのか、女の手が俺の胸に伸びてくる。
胸に手を置きゆっくりと、手のひらを体に合わせて這い、すこしずつ下に。
ジーンズのポケットに入った他人の手はひどくくすぐったく、
ズボンの上から極部をなでられた瞬間にはパイプが爆発するんじゃないかと思った。

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 05:02:44.14 ID:iiQQnW/B0

変な声でももれたのだろうか、女はくすくすと笑っている。
自身ではもう何が起きているのか沸騰した頭では考えられない処まで来ている。

「すごいね、脈打ってるのが服の上からでもわかる。苦しそう。出してあげるよ。」

ジッパーを下ろす時の微妙な振動だけでも限界に達してしまいそうだ。
余裕のできたウェストから手を滑りこませ太ももに手をはわせジーンズを脱がされる。
吐息が鼻先に当たる。首を傾け唇を重ねたまま肩で女を押し倒す。

お互いの息が荒くなり。息が、唾液が混ざり合う。
混沌の中に迷いこんでいく。

鎖骨に触れようとするが、体に手が埋もれる。
目をつぶってもう少し思い切って手をいれると手首が鎖骨に触れる感触があった。
横にスライドしてローブを脱がせる。

「あ…。」

離れた口元から声が漏れ肩が強張る。俺の極部に当たっていた女の手がより強く押し当てられた。
もっと深く女の体を感じたい。しかし、手の触感が無い。
本能的に思いついた事をそのまま試してみることにした。

舌を顎から首筋から這わせて肩へ、鎖骨へと泳がせる。

「はぁああ…。」

ひときわ大きな吐息が耳を愛撫し、全身の毛が逆立った。

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 05:26:10.80 ID:iiQQnW/B0
ひときわ大きな吐息が耳を愛撫し、全身の毛が逆立った。

一度体を起こし、唇を重ね、舌を絡ませながら腰から内腿へ手首で撫で進んだ。
秘部に少し近づくとビクンと女の体が反り跳ね、大きいとは言えないが形の良い胸が波打った。

「もっと…一緒に…。」

ずっと撫でていた手をギュッと握って自分の秘部へと近づけてくる。
ゆっくりと、ゆっくりと割れ目に竿を押し込んで行く。

「イ…ツッ…。」

「大丈夫?」

「平気。思ってたより…。」

汗の滲んだ額をぬぐって俺の顎を撫で、キスをするようにせがむ。
衣擦れの音と唾液の弾ける音だけがホテルの一室を支配していく。

「い…きそ…。」

女の一言を合図に徐々にピストン運動をペースアップさせてゆく。
喘ぎ声がアルトからソプラノへと跳ね上がる。
不規則な喘ぎ声が続き、声もすこしずつでなくなり二人の吐息だけが空間を構成していた。


52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/24(土) 05:39:40.13 ID:iiQQnW/B0
果てた二人は大の字になってベッドに倒れ込んだ。
このまま布団に埋もれて眠れるような気がした。

「気持ちよかったぁ。こんな良いものならもっと早く誘えばよかったなぁ。」

「こっちは手首軸で正直バランス取るので必死だったけどな。」

「あはは、男君は本当やさしく触れてくれて溶けちゃうかと思ったよ。手なくても大丈夫じゃない?」

少し悪意の隠った笑みを浮かべながら女が言った。

「冗談じゃねーよ。」

「だよね、手も繋ぎたいもん…。」

「うん…。」

打ッち切り

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