2ntブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

唯「ふわふわ!」

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/18(日) 22:20:23.45 ID:ApXBGwOv0 [1/18]
老紳士は悔いる

ふとしたことから渡してしまった その未来の兵器

女子高生が持つものでは・・・

―――――――――――――――――――――

じめじめした梅雨が過ぎて あったかい初夏がやってきました

夏休みも近づき 心もぽかぽか浮かび上がるこの季節

私と軽音部のみんなは、学校の中庭に集合しています

「んで、・・なんだっけソレ?」

律っちゃんは私の持ってるストローを見つめて言う

この前道で助けたお爺さんに貰ったストロー

見た目じゃどこが凄いのかわかんないよね

「ぐんよーすいほーへきせいせーストロー・・だよ!」

「ぐ・・軍用・・?」

その単語を聞いた澪ちゃんは ブルブル震えてうずくまる

怖がり過ぎな気もするけど、子犬さんみたいで可愛いよぉ

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/18(日) 22:23:11.27 ID:ApXBGwOv0
「これに息を吹き込むと、凄いおっきなシャボン玉が作れるんだよ!」

ストローを咥えたまま ぷーっと息を吐くと

先っぽに透明のシャボン玉・・みたいのが現れて

少しづつ大きくなっていく

「・・・・・・えー」

でも、それを見てるあずにゃんとりっちゃんの視線は・・

なんというか・・・ 馬鹿にしてる・・!?

「それだけですか・・?」

「ただのシャボン玉ストローじゃん」

違うよあずにゃん!これは凄いんだよ!

「そ、そうなのか・・・?」

あぁ 澪ちゃんまで安心しだしたよぉ・・


「唯ちゃん・・私、シャボン玉見るの初めてなの!凄いわ!」

「むぅ・・・」

シャボン玉はどんどん大きくなっていきます

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/18(日) 22:29:21.42 ID:ApXBGwOv0
足元に広がる 踏み心地抜群の芝生には私達5人の影が写ってて

透けてるシャボン玉の影が 私の影の半分程の大きさになったところで吹くのをやめました

「おぉ・・これ かなりでかいな・・」

「ほら、スゴイでしょ?いくらでも大きくなるんだよ!」

えっへん でもまだスゴイとこがあるんだよねぇ

「このシャボン玉 浮かばないんですか?」

「地面に置いても割れてない・・」

ほぉ と関心してる澪ちゃんを尻目に

私はヘアピンを一つ外して シャボン玉に押し込みます

ヘアピンはシャボン玉の中心にふわふわと漂って

なんだかお魚みたいです

「って・・なんだよそれ!?」

みんなが驚いてる・・へっへへー

だから言ったじゃん 凄いシャボン玉だって

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/18(日) 22:35:13.53 ID:ApXBGwOv0
―――――――――――――――――――

未来の戦争中 猛威を奮ったのは特殊水泡壁だった

一兵士でも容易に精製できるそれは まず兵器の運搬に役立った

大量の凶悪な無人兵器を水泡で包み

敵地へ放つ

水泡は 銃弾では決して割れない

レーダーにも写らず 夜間は視認も難しい

老紳士は悔いる

「あぁ恐ろしい・・あんな凶悪なものを持ったら、彼女たちは何を包むことやら・・」

――――――――――――――――――――――

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/18(日) 22:38:50.36 ID:ApXBGwOv0
「これは色んな物をふわふわできるふわふわシャボン玉なのです!」

そして更に! 巨大シャボン玉を軽く下から突き上げると!

「浮いた・・・」

「へぇ・・・」

緑の香りを孕んだ

ふわふわな風に乗って  ふわふわと飛んで行きました

「どう?どう?ねぇねぇ?」

ニヤニヤせずにはいられないんだよぉ

「不思議だけど、こんなものどうしたんだ?」

「えっへへー 内緒だよー」

「それより唯先輩、ヘアピンどうするんですか?」

「え」

しまった・・!何も考えずにヘアピン包んじゃったよぉ・・・

空を見ると 淡く光る太陽と 逞しそうな白い雲が ふわふわ浮いてて

遥か遠くに私のヘアピン入りシャボン玉も 呑気にふわふわしてるのでした・・・

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/18(日) 22:44:10.59 ID:ApXBGwOv0
―――――――――――――――――

未来の戦争中 猛威を奮ったのは特殊水泡壁だった

一兵士でも容易に精製できるそれは まず歩兵の一掃に役立った

水泡は人間に触れると 全身の肉を破裂させ絶命させる

空一面を包む水泡は 兵士の畏怖の対象となった

老紳士は悔いる

「あぁ恐ろしい・・あんな空はもう見たくない・・」

―――――――――――――――――

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/18(日) 22:46:57.46 ID:ApXBGwOv0
「これ遊べそうだな!」

律っちゃんがはしゃぎ始める

こういうのは三度のおやつよりも大好きなんだよね

「唯、ちょっと貸してくれないか?」

そんな律っちゃんを見て元気が出たのか

澪ちゃんは楽しそうにストローを吹き始めた

ほんの少し膨らませて ぽとりと掌にシャボン玉を落としたよ

「これでお花を入れてさ・・」

「あら素敵・・!」

風に乗って 小さなシャボンが飛んでいく

澪ちゃんとムギちゃんが 他にもいくつか飛ばしてみると

まるでお空に 花畑ができたみたい

「メルヘンだなー・・」

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/18(日) 22:51:59.83 ID:ApXBGwOv0
でも律っちゃんはそんな雰囲気が苦手みたいで

1つ提案をしたんだ

「これって超デッカイのつくって、人が入ったりできないかな?」


「あ、危なくないか・・?」

澪ちゃんが不安そうに言う

いつも元気な律っちゃんに励まされてるけど 心配もいっぱいしてるんだよね

でもでも 大丈夫なんだよ

「あ、これは生き物は入れないって言ってたよぉ」

「マジで・・?」

少し落ち込む律っちゃんと 少しホッとした澪ちゃん

おもろい・・

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/18(日) 22:58:38.89 ID:ApXBGwOv0


―――――――――――――――――――

未来の戦争中 猛威を奮ったのは特殊水泡壁だった

一兵士でも容易に精製できるそれは まず超質量兵器として利用された

水泡は内側からの圧力には弱い

一定時間触れられなければ 内部の爆弾が炸裂する

水泡は 大きささえ合えば どんな質量の物体でも内包し浮遊する

時には山のような巨岩も浮遊していた

老紳士は悔いる

「あぁ恐ろしい・・・悪魔の水泡に何を詰め込むのだろうか・・」

―――――――――――――――――――

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/18(日) 23:02:57.45 ID:ApXBGwOv0
「ま、いっか。私も何か入れてみよーっと」

何回か試してみて

1つのシャボンに 超いっぱい物が入ることがわかると

律っちゃんは鞄からいろんな物を取り出した

使いかけのリップ 食べかけのお菓子 飲みかけのペットボトル・・

「何してるんですか?」

「いやー 福袋的な・・」

「使いかけの物ばっかりじゃないですか・・」

というか入れ過ぎだよ律っちゃん・・!

なんだか不気味な福袋シャボンはふわふわと浮かんで行き

やがて見えなくなりました

「あー!?」

「どしたの律っちゃん!?」

「財布も入れちゃった・・・」

御愁傷様・・・

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/18(日) 23:05:09.00 ID:ApXBGwOv0
律っちゃんはハッとしたように言う

「あれって地面に置いても割れないけど、ちゃんと割れるのかな」

「一回浮かんだあとは 生き物が触ると割れるようになるんだってー」

それ以外じゃ絶対割れないとかなんとか  凄いですなー

流石スーパーシャボン玉っ



その後もめいっぱい遊んで 

お空が私達のプリクラだらけになったり

5人全員入ってしまいそうな大きなシャボンを作ったり

遊んで遊んで遊びました

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/18(日) 23:14:07.04 ID:ApXBGwOv0

「いやー楽しかったなー」

「結構いろんなことやりましたね」

「あ!」

私がシャボンを膨らませていると ムギちゃんが突然叫んだ

「これって、生き物じゃなければ なんでも入るのよね・・?」



―――――――――――――――――――

未来の戦争中 猛威を奮ったのは特殊水泡壁だった

一兵士でも容易に精製できるそれは まず化学兵器として利用された

凶悪な無人兵器と共に 危険な毒ガスを詰め込み

有無を言わさず一気に敵地を制圧する

「あぁ恐ろしい・・・どんな毒ガスを詰め込むのだろう・・・」

―――――――――――――――――――

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/18(日) 23:22:24.00 ID:ApXBGwOv0
老紳士はタイムマシンに乗り 唯達の時代へ戻る

やはりあのような戦争の遺物は 礼に困っても渡すべきではなかったのだ

取り返さねば

そう思って学校へ向かっていると 老紳士は空に無数の水泡を見た

戦争の恐怖が思い出される

しかし 身構えたその時 

中に見えたのは小さなコスモス

老紳士は拍子抜けする

「・・・?」

しかし空を包む花畑は 

何でも揃う未来でも見たことの無い程 美しかった

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/18(日) 23:28:11.16 ID:ApXBGwOv0
空を眺めながら その華やかさに感心しながらも

老紳士は警戒を怠ることなく道を行く

触れると命はないのだ

その時 前方で遊んでいる子供たちを見付けた

空の水泡に興味を示しているようだ

老紳士の背筋が凍る 

それに触れてはいけない

制止しようと近づく間もなく 子供は水泡に飛び付いた





思わず目を背けたが 何の悲鳴も音も無い

何かおかしい

「・・・・?」

子供は笑いながら中のコスモスを取り出している

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/18(日) 23:35:35.53 ID:ApXBGwOv0


どうやら彼女達の肺活量では 協力な水泡を作るに至らなかったようだ

老紳士は拍子抜けする

しかし水泡で遊ぶ子供の顔は

何でも揃う未来でも見たことの無い程 幸せそうだった

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/18(日) 23:37:34.35 ID:ApXBGwOv0
またしばらく歩いていると

老紳士は 自分が影に包まれるのがわかった

頭上に何か 巨大な物が浮遊している

割れたらそれまで

基地1つ壊滅させることだってあり得る 強力な質量兵器が


しかし おそるおそる上を見ると

ガラクタが詰まった水泡が浮かんでいるだけだった

老紳士は拍子抜けする

「・・・・?」

しかし水泡に詰まったガラクタの数々は

何でも揃う未来でも見たことの無い程 楽しそうだった

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/18(日) 23:45:37.69 ID:ApXBGwOv0
その後も 幾度となく水泡を見ることになったが

何一つ悲劇は起こらない


未来において 水泡を見ることは死を意味している


自身の抱いてきた不安と恐怖はなんだったのかと

呆れながら歩いていると

今度は何も入っていない水泡が飛んできた

ひょっとしたら 目に見えない危険な物質が入っているかもしれない

割れたら自分だけでなく、周りの人々もただでは済まない

老紳士は袋を取り出し それに水泡を誘導する

こうすれば安全に対処できる

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/18(日) 23:55:59.89 ID:ApXBGwOv0
空気より軽いこの物体は 時折予想だにしない動きを見せる

それがある種の強みであり、脅威の1つでもあった

風が吹き

軌道を変えた水泡が 老紳士の腕に触れる

「・・・!」

水泡が割れ 中から見えない何かが跳び出す

心臓がひっくり返りそうな恐怖に襲われたが

身体に大きな異常は無い

あるとすれば

耳に残るわずかな音だけだ

小さな音は次第に大きくなって 幾つも重なりながら

1つの曲になった

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/19(月) 00:05:32.97 ID:Wic3szf+0 [1/4]
「・・・・・」

あぁそうか

水泡は一応 一応だが メッセージの伝達にも利用されていたのだ

占領が完了しただの 戦術を変えろだの

そんな指令が飛ぶとこはあったが 

そんなもの無線ですればいいということで 音を入れるものは殆どいなかった

しかし水泡に詰まったその演奏は

何でも揃う未来でも聴いたことの無い程 素晴らしいものだ





老紳士は道を引き返す

酷く哀しくなったのだ 

兵器を扱ってばかりの時代に生まれた自分が 何と哀れなことか

何をするにも 争いのことしか考えていない

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/19(月) 00:15:51.89 ID:Wic3szf+0 [2/4]
未来へ変える直前に 老紳士はもう一度空を見た

やたら大きい水泡の中に 

小さなヘアピンが入っている

無害だろうし 流しておこう

――――――――――――――――



財布を飛ばした律っちゃんをみんな慰める帰り道

今日したことを話し合った

「あのストロー、結局何処が軍用だったのかな・・?」

澪ちゃんは首を傾げる

「うーん・・ただの遊ぶ道具にしか思えなかったけど・・」

「むしろどうやったら軍用にできるのか さっぱりわからないよねぇ」

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/19(月) 00:27:17.96 ID:Wic3szf+0 [3/4]
茜色の空に 

どこかで見たようなでっかいシャボン玉が浮いている

「あー!」

間違い無い 私のヘアピン・・!

「あーホントだ・・取りに行くか?」

「ぅーん・・ いいよ・・あのままで」

律っちゃんは不思議そうな顔で 私を見てる

でもいいんだ

あのままで

私のヘアピン入れたまま飛ばしておけば

きっとこのシャボン玉は 

いつまでも シャボン玉のままでいられるんだ


終わり

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/19(月) 00:29:48.81 ID:Wic3szf+0 [4/4]
いつもみたいに ごちゃごちゃしないのにしたかった



あと

原作は読んでるよ

和が一番

コメント

コメントの投稿

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)