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姉「あ、やっと起きた」
1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/11(日) 21:46:32.12 ID:YhGXO9YqO [1/10]
姉「おはよ」
男「……なにしてんの」
姉「なにが?」
男「いや……なんでいんの」
姉「覚えてないの?」
男「……しらない」
姉「そっか……」
男「なに、なんなの……頭いてぇ」
姉「だいじょぶ? お水もってくるね」
男「……いやなんで服着てねーの」
姉「ほんとに覚えてないんだ」
男「……いやいやまさか嘘だろ」
姉「あんなに激しかったのに?」
姉「おはよ」
男「……なにしてんの」
姉「なにが?」
男「いや……なんでいんの」
姉「覚えてないの?」
男「……しらない」
姉「そっか……」
男「なに、なんなの……頭いてぇ」
姉「だいじょぶ? お水もってくるね」
男「……いやなんで服着てねーの」
姉「ほんとに覚えてないんだ」
男「……いやいやまさか嘘だろ」
姉「あんなに激しかったのに?」
3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/11(日) 21:57:25.85 ID:YhGXO9YqO [2/10]
男「は……」
姉「かわいい顔してけっこうすごいんだね」
男「普段からばかみたいなことやってるけど、こういうネタはタブーだろう」
姉「ネタでこんな格好しないって」
男「……いやいや」
姉「まあかなり酔ってたみたいだから覚えてないのも当たり前か」
男「……うそだろ」
姉「ほんとだって」
男「……あー」
姉「頭いたい?」
男「いろんな意味で頭いたい」
姉「お水もってくるよ。スウェット借りるね」
男「……ああ」
姉「ぶかぶか」
男「あー。ああ」
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/11(日) 22:12:40.31 ID:YhGXO9YqO
姉「はい、お水」
男「……どうも」
姉「だいじょぶ?」
男「……あんまり」
姉「まだ寝ててもいいよ」
男「いや、そういうんじゃなくて」
姉「なに?」
男「俺は本当にやってしまったのか」
姉「うん」
男「酔っていたからか」
姉「かもしれないね」
男「そんなに酔っていたのか」
姉「いつもはあんなに酔わないのにね」
男「ああ。あー。酒はおそろしいな」
姉「昨日みたいにいっぱい飲むのはあたしの前だけにしてね」
男「いや……何より自分がいちばんおそろしい」
9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/11(日) 22:27:17.97 ID:YhGXO9YqO
姉「ふふっ、なにそれ。へんなの」
男「男とはなぜこんなにも醜い生き物なのだろうか」
姉「酔ってたんだから仕方ないんじゃない?」
男「俺は自分ではそんな生き物ではないしそんなものにはならないと思っていたが、違ったようだ」
姉「もしかして、けっこう後悔してる?」
男「穴があったら埋めてほしい。姉ちゃんは後悔してないのか」
姉「後悔するのって女の子に対して失礼だと思うけど」
男「あいにく俺はそんな簡単な作りには出来ていないらしい」
姉「……そっか」
男「死んでしまいたい。むしろ初めから生まれてこなければよかったのに」
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/11(日) 22:39:52.40 ID:YhGXO9YqO
姉「そんなこと言わないで……」
男「まさか自分がこんな生き物だったなんて。酒に酔って姉を襲うなど、誰が許すものか」
姉「あたしは怒ってないから……」
男「俺自身が許せない。死んで罪を償うべき」
姉死ぬなんて、言わないでよ……」
男「しかし」
姉「もう、やめて。……そうやって、後悔されるの、つらい……」
男「ああ。……ごめん」
姉「あたしは、大丈夫だから気にしないで。ね?」
男「大丈夫……」
姉「うんっ。大丈夫、大丈夫だから」
男「大丈夫」
14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/11(日) 22:55:21.61 ID:YhGXO9YqO
姉「あんまり深く考えちゃだめだよ。責任感が強いのは知ってるけど、そこまで自分を貶めちゃだめ」
男「ん……責任……」
姉「どした?」
男「俺、どこに出した? いやその前にイッた?」
姉「……えと、おなか、かな」
男「ゴム付けてた? あぁ、ある訳ねーか……じゃあ生だったのか、ああ……お腹の上に出したの?」
姉「う、うん。……でも大丈夫だよ」
男「いや念のためアフターピル飲んだ方がいい、病院いこう」
姉「きょう日曜だから診察しないと思うよ」
男「なんてこった」
姉「……それに、安全日だから平気だよ、大丈夫」
男「でもな……じゃあ明日病院いこう」
17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/11(日) 23:12:43.23 ID:YhGXO9YqO
姉「けっこー男らしいとこ見せてくれるじゃん」
男「男はこうあるべきだろ。たぶん大丈夫つっても、100パー大丈夫じゃねーんだから」
姉「かっくいー」
男「生でやって放っておく奴は男じゃねーよ」
姉「……あたしは、女の子らしいかな」
男「なに言ってんだよこんなときに」
姉「気になったんだもん。ね、女の子らしい? あたし」
男「……そうなんじゃねーの」
姉「むー。じゃあどういうのが女の子らしいって思う?」
男「んー……」
姉「言ってよー」
男「なんつうか、こう……優しいとか、脆かったり少し我が儘だったり、でも黙って後ろ付いてきたりとか」
姉「ふーん」
男「あと料理できるとか、甘えてきたりとかな」
姉「なるほどねー」
男「つーかこんなの聞いてどうする」
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/11(日) 23:26:00.39 ID:YhGXO9YqO
姉「参考にしようと思って」
男「なんのだよ。好きな男でもいるのか?」
姉「……」
男「どした?」
姉「いや、ちょっとね……」
男「どうした」
姉「んー……えいっ」
男「……いきなり胸に頭突きとか、いつからジダンになったんだ」
姉「うりゃっ! ていやっ!」
男「ぐりぐりするなよ、なにがしたいんだ」
姉「んふふー、黙ってぐりぐりされなさい」
男「ハゲるぞ。ジダンの如く」
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/11(日) 23:41:07.14 ID:YhGXO9YqO
姉「ひどいよー、えーんえーん」
男「いったいなにを企んでいる」
姉「少しは女の子らしいって思うかなって」
男「なんじゃそりゃ」
姉「我が儘で、脆くて、甘えてみた」
男「納得したことにしておく」
姉「で、どうだった?」
男「どうと言われても」
姉「言ってよー」
男「まぁ女の子らしかったんじゃないか?」
姉「なによそれー」
男「姉ちゃんは姉ちゃんということで」
姉「……そっか」
男「あ、地雷踏んじゃった?」
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/11(日) 23:57:38.93 ID:YhGXO9YqO [10/10]
姉「踏んだよ、地雷。すごい地雷。ずぅーんって。めちゃくちゃ。こっぱみじん。ぐちゃぐちゃ。爆死してる。色んなものが飛び出て突き刺さって、大変」
男「は……」
姉「……なんでもない」
男「いや、ごめん。……でもどうした、なにが、ごめん、わかんない」
姉「……いいよべつに」
男「よくない、教えてよ」
姉「いいよ……あたしは……あたしは、お姉ちゃんなんだよ」
男「は……」
姉「…………ばか」
男「……ごめん」
姉「ばか……ばかぁ……」
男「ごめん」
34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/12(月) 00:11:21.38 ID:AgEQI/BQO [1/40]
姉「ばかぁ……うぅ……」
男「ごめん……」
姉「なんで……うっ……謝るの……」
男「……」
姉「なんで……うぅ、ひくっ。うぅう……」
男「……ごめん」
姉「うっ……なんで……くぅ、んう……」
男「ごめん」
姉「なんで……ひくっ、うぅう。……気付いてよ、うぅ」
男「は……」
姉「うぅう……くぅ。気付いてよ……ひくっ、なんで……気付いて、くれない、の……うっ」
男「……ごめん」
姉「うっ……ふぅう、ひくっ。……んぅう……」
男「……ほら、ティッシュ」
姉「……」
男「いらないのか?」
姉「………………んっ!」
男「うえっ」
姉「はあ……はあ……」
35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/12(月) 00:29:20.90 ID:AgEQI/BQO [2/40]
男「まさか押し倒されるとは思わなかったな、ははは、はは、は……」
姉「はあ……はあ……あぁ……」
男「あの……」
姉「ふあ……はあ……んう、はあぁ……はあ……」
男「……」
姉「……気付いて、くれた?」
男「……」
姉「好きじゃなかったら、エッチなんてしないよ……」
男「……」
姉「お酒の力借りなくても、チューとか、したいんだよ……」
男「それって……」
姉「……酔ってたのをいいことに、あたしから誘ったの」
男「……」
姉「だから、悪いのはあたし」
男「自分を責めるなよ」
姉「弟を好きになったのもあたし。女の子らしさを見せたかったのもあたし。ひとりの女の子として見てほしかったのもあたし」
男「……」
姉「気持ちを抑えられなくて爆発したのもあたし」
男「……」
姉「でも、あたしはお姉ちゃん」
38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/12(月) 00:43:33.80 ID:AgEQI/BQO [3/40]
男「……」
姉「悪いお姉ちゃんだね……勝手に好きになって、勝手にちょっと期待なんかして、泣き出して、押し倒して……ばかみたい」
男「……」
姉「お墓まで持っていくつもりだったのに我慢できなくて。ほんとばかみたい」
男「ねえ」
姉「黙って聞いてくれてありがとう。おもいきり泣いて、言いたいこと言ったら、なんかすっきりした」
男「ねえ」
姉「あたし、この家出てくね」
男「なに言ってんだよ」
姉「弟を好きになった悪い姉はいなくなるべきなのです」
男「バカ言うなよ」
姉「だってばかだもん」
41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/12(月) 00:56:38.95 ID:AgEQI/BQO [4/40]
男「……はあ」
姉「弟に愛想をつかれた悪いばかな姉は今すぐ出ていくべきなのです」
男「……ああ、たしかにバカだ、大バカヤローだよ、まったく」
姉「なによ、それ」
男「人の気も知らないで出ていこうするなんでバカだろうよ」
姉「……」
男「まず俺は姉ちゃんには、あんたには家を出ていってほしくない」
姉「……」
男「そんで、誰を好きになろうがそれは仕方ない。感情はどうすることも出来ないだろうが」
姉「……」
男「これからはひとりの女の子として接するから。さっきの頭突きとか、その……かわいかったし」
姉「……」
44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/12(月) 01:03:37.28 ID:AgEQI/BQO [5/40]
男「だからさ、出ていってほしくない訳で」
姉「……うん」
男「姉としてもだけど、俺にとっては大切な人だから」
姉「……うん、うん」
男「その、なんだ……ふたりが納得できる答えを見つけるまでは、いなくなるなよ」
姉「うん、ありがと……」
男「ところで」
姉「なに?」
男「そろそろ降りてくんね?」
46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/12(月) 01:08:34.18 ID:AgEQI/BQO [6/40]
姉「あ、そうだね、ごめん。重かった?」
男「ぜんぜん。ちゃんと食ってんのか?」
姉「食べてるよ、心配性なんだから。そだ、ご飯にしよ、お腹空いたでしょ」
男「そういえばそうだな」
姉「ご飯作ってくるね、愛情込めて」
男「仕事が早いなー」
姉「でもその前に」
男「なんだ?」
姉「名前、呼んで?」
49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/12(月) 01:15:50.41 ID:AgEQI/BQO [7/40]
男「……なんか恥ずかしいな」
姉「じゃあご飯作らないよ」
男「それは困った」
姉「なら名前呼んで、ね?」
男「今度じゃだめか?」
姉「だーめ、今がいいの!」
男「すんげー恥ずかしいんですけど」
姉「顔真っ赤だよー? かわいー」
男「うそつけ」
姉「うそじゃないもん。だから早く名前、名前」
男「くそう。じゃあ1回だからな、ちゃんと聞いてろよ?」
姉「うん」
男「名前呼ぶのにこんなに勇気がいるとはな。じゃあ呼ぶよ、――」
姉「っふふ」
50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/12(月) 01:23:43.45 ID:AgEQI/BQO [8/40]
男「……は」
姉「んくくくく、ふふっ、あはは! あはははは!」
男「なんだよう」
姉「あはははははは! ははは、ごめ、んふふ、はははは!」
男「なにが起こった」
姉「あははは! ごめ、ちょっと待って、ははは! くくく、ふふっ、あははははは!」
男「……」
姉「あははー、はははははー、はあはあ、ごめん、ふふふ。ごめんね、んくくく」
男「は?」
姉「いやごめん! ふふっ、ほんとごめん!」
男「なにが?」
姉「いや、だからその、んくくくく、おもしろくて」
男「なんだよ」
姉「ごめん。だから、その、ね? ちょっとしたネタってこと、ふふふっ」
男「は……」
52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/12(月) 01:31:39.62 ID:AgEQI/BQO [9/40]
姉「ごめんね、ほんと。女っ気のない弟に素晴らしい姉からのプレゼントってことで、えへへへ」
男「……えへへじゃねーよ」
姉「ごめんごめん。でも嬉しかったなー、けっこうあたしのこと大切に思ってるんだ」
男「俺の頭の中にテッテレーっていうドッキリ大成功の音楽が流れた」
姉「『あんたには家を出ていってほしくない』。かっくいー!」
男「うわあ……」
姉「『誰を好きになろうがそれは仕方ない。感情はどうすることも出来ないだろうが』」
男「たすけてくれ」
54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/12(月) 01:40:10.67 ID:AgEQI/BQO [10/40]
姉「『さっきの頭突きとかかわいかったし』。くくくー!」
男「待てそれ以上は言うな」
姉「『俺にとっては大切な人だから、ふたりが納得できる答えを見つけるまではいなくなるよ』」
男「穴があったら埋めてほしい」
姉「いやー泣かせてもらった! こんなに感動するとは思わなかったよー!」
男「初めから生まれてこなければよかったのに……」
姉「生まれてこなければあたしの幸せがなくなるじゃん!」
男「くぅ……俺のかっこいい台詞を返せ」
姉「あはははは!」
男「俺のプライドを返せ!」
56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/12(月) 01:49:32.22 ID:AgEQI/BQO [11/40]
姉「そんなに感動しないでよ、実際嬉しかったくせに。んふふー」
男「ふざくんなコノヤロー! お前なんか、くそう! お前なんか! お前なんか、どちくしょうが!」
姉「まあまあ、落ち着いて。ご飯にしよ? あたし作るからさ。愛情込めてね?」
男「もう出ていけ! いなくなってしまえ! スウェットも返せ!」
姉「うわー、実の姉に服を脱げって言ってるー、この人へんたーい」
男「くそがっ! 誰もお前なんざ見ねえよ! 俺のプライドを今すぐ返せ!」
姉「あはは! じゃねー」
しかし数週後、姉は妊娠して本当に家を出た。
64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/12(月) 02:22:40.11 ID:AgEQI/BQO [12/40]
―――
姉「で、彼女とは上手くいってんのー?」
男「ああ、けっこう前に別れた」
姉「うそっ、初耳ー。その後は? 新しい彼女は?」
男「なんもねーよ」
姉「そっかー、それは残念だったねー!」
男「ぜんぜん残念そうに見えない」
姉「気のせい! で、なんで別れたの?」
男「好きな人できたって」
姉「そっかそっか」
男「ほんと意味わかんねーよな女って。俺はあんだけ尽くしたのによ」
姉「そうだね」
男「家賃払えねーから金貸してーだの、バイト先まで送ってーだの、夜中に長電話してきたりよ」
姉「うん、うん」
男「意味わかんねーとこで怒るし、なのに俺謝って、なんなんだろーな」
姉「うん、うん」
男「芯のあるとこは尊敬できたけど、あれは我が儘が過ぎるよ」
姉「そうだね」
男「はーあ。あー、酒がねーや」
姉「けっこう飲んだし、そろそろやめたら?」
男「足りねーよ、酒らあ、酒もってこい」
姉「飲み過ぎだって。もうやめよ?」
男「女なんざ黙って後ろついてくりゃいいんだよ、バカヤロー」
姉「……」
67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/12(月) 02:34:24.02 ID:AgEQI/BQO [13/40]
男「はーあ、女ってのはどいつもこいつもよ、ふざけんじゃねーよって」
姉「そろそろ寝よ? あたし片付けておくから。ベッド入って?」
男「ああ、はいはい、ベッドねー。すみませんねー、と。姉ちゃんはいーい女だよなー、優しくて」
姉「……」
男「姉ちゃん彼氏いんのー」
姉「……いないよ」
男「そっかー。いつから? さびしくねーの? 俺はさびしくてさびしくて凍え死んでしまうよ、くそが」
姉「……さびしい、よ。それは」
男「さびしいかー、そうかー。こんなにいい女を放っておく世の男どもはなに考えてんのかねー」
姉「……」
男「そう考えたらなんか俺までさびしくなってきたわ。くくく」
姉「……さびしい?」
男「うん、さびしい。誰か俺様もハートを暖めてくれませんかねー? 誰もいないか、くくく、はははは!」
69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/12(月) 02:50:34.06 ID:AgEQI/BQO [14/40]
姉「ね」
男「あんじゃ?」
姉「ベッド、入ってきて」
男「おー、我が素晴らしき姉よ。俺様のために布団を温めてくれたか、なんて優しい姉だろうか」
姉「……布団だけじゃなくて」
男「は……」
姉「……こころも、温めてあげよっか?」
男「なんじゃそりゃ」
姉「……あたしもさびしいから、一緒に慰め合お?」
男「なんじゃそりゃ」
姉「こういう、こと……ん」
男「んっ」
ちゅ……くちゅ……
姉「はあはあ……」
男「……誘ってんのか」
姉「しよ?」
男「ゴムねーけど」
姉「なくて、いい。その方が……」
男「あんじゃ?」
姉「……なんでもない。きょうだけでいいから」
男「なに?」
姉「犯して」
70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/12(月) 02:59:17.85 ID:AgEQI/BQO [15/40]
男「俺とまんねーからな」
姉「あたしだって……」
ちゅ……ちゅぷ……くちゅ ちゅる
男「はあ……はあ……」
姉「とまんない」
ちゅる ちゅ くちゅ ちゅぱ
男「はあ……」
姉「チュー、上手だね、えへへへ」男「普通だろ」
姉「あたしは?」
男「上手い、と思う」
姉「だよね」
男「なんだよそれ」
姉「だって……」
男「なに」
71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/12(月) 03:09:13.36 ID:AgEQI/BQO [16/40]
姉「立ってる」
男「そりゃまあ」
姉「服、脱がすね」
男「ああ」
姉「……おっきい」
男「普通じゃね」
姉「おっきいよ、すごく」
男「あんま見んなよ」
ちゅ ちろちろ ちゅる ちゅ
男「うぇ」
姉「どお? あむ」
ちゅぷ ちゅ ちゅるちゅる くちゅ
姉「はあはあ……おっきいから、口つかれる」
ちゅぷ ちゅる ちゅっ ちゅる ちゅぶ ぐちゅ
男「すげーきもちい」
姉「そお? うれしひ……んっ、んむ、んっ、んっ」
ちゅぶっ くちゅっ ぢゅっ ぢゅぷ ぢゅる ぢゅっ
73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/12(月) 03:17:14.14 ID:AgEQI/BQO [17/40]
ぢゅっぢゅっぢゅる ぢゅぽっ ぢゅるっ ぐちゅっ ぢゅりゅっ
姉「はあ……」
男「休んでんじゃねーよ」
姉「はい……んっ、んっ、んむ、んふっ、んぅ」
ぐちゅっぢゅっぢゅぷぢゅぷぢゅるぢゅりゅっぢゅっ
姉「んあっ、はあはあ。なんで、髪の毛、引っ張るの……」
男「好きか?」
姉「え……?」
男「舐めんの」
姉「……好き、です」
男「聞こえねーな」
姉「舐めるの、好きです」
男「聞こえねー」
姉「お……うぅ、恥ずかしい」
男「じゃあやめる?」
姉「やだ……言うから、やめないで」
男「じゃあ言えよ」
姉「お、弟くんの……おちんちん舐めるの、好きでしゅ」
74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/12(月) 03:25:25.19 ID:AgEQI/BQO [18/40]
男「……かわい」
姉「あうぅ」
男「舐めねーのか?」
ぢゅっぢゅっぢゅっぢゅるっぢゅぷっぢゅるぢゅぷっぢゅっぢゅるっ
ぢゅりゅっぢゅぽっぢゅっぢゅっぢゅっぢゅるぢゅぽぢゅりゅっ
ぢゅるっぢゅっぢゅりゅっぢゅっぢゅっぢゅぽっぢゅぽっぢゅぽっ
姉「やっ、はあはあ……髪、引っ張らないで……はうぁ……」
男「聞こえね」
姉「おちんちん舐めさせてくだしゃい」
男「聞こえねー」
姉「舐めさせて、おちんちん舐めたい、舐めさせてくだしゃい」
んぢゅっぢゅるっぢゅぷっぢゅる
姉「はあはあ……んむ、んっ、んっんぅ、んはぁ……はあ……おちんちんおいひいれしゅ、あむ、んっんぅ」
77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/12(月) 03:37:54.50 ID:AgEQI/BQO [19/40]
男「どこにほしい」
姉「んっんっんあっむっ、くちの、んっ、んむっ、なか、んっんっんぅう」
男「なに言ってんのか分かんねーよ」
姉「はあはあ、んっ、くちのなかに、あむ、だひて、んっんっ、弟くんのみるく、んっんぅ、飲ませて、くだしゃ、んっ」
ぐちゅっぢゅぷっぢゅぷっぢゅるっぢゅぽっぢゅぽっぢゅっぢゅっぢゅるっぢゅっぢゅりゅっ
男「出すぞ」
姉「はひ、んっんっんぅくちのなか、んっんっ飲ませて、んっんっんっんっんぅ、んんっ! んぅ、んく、んく、んはぁ、はあ、はあ」
男「飲んだか?」
姉「しゅごく、濃くて、おいひ、かたでしゅ」
78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/12(月) 03:50:54.36 ID:AgEQI/BQO [20/40]
男「疲れた?」
姉「だいじょぶ……はあ……はあ……服、脱ぐね」
男「けっこう胸あるんだな」
姉「えへへへ」
男「パンツと糸引いてるんだけど」
姉「興奮、しちゃったからかな……」
男「舐めてただけで?」
姉「……うん」
男「俺には自分で弄ってるように見えたけど」
姉「あうぅ……」
男「……かわい」
姉「入れて、いい?」
男「ほんとにいいのか?」
姉「……だってとまんない」
男「ほんとに入った……」
姉「えへへ……いれちゃった」
男「なんだよそれ」
80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/12(月) 04:00:50.51 ID:AgEQI/BQO [21/40]
姉「動くね」
男「ん」
姉「んん、ふぅ、んっ、ふっ、んっ、はあぅ」
男「自分から腰振るなんてね」
姉「はっ、だって、はぁあ、きもちい、んんっ、今までで、はう、いちばん、きもちい、あっ」
男「すげー締まる」
姉「だって、はあっ、おっきいから、あっ、奥の、きもちいとこ、はあっ、当たって、あっ、もっと、んっ、ほしくなる、はあっ」
姉「あっあっはあっんっあっはあっ弟、くんっ、あっあっはあっあっきもち、い、あっはあっあっ」
姉「はあっあっ奥の、はっあっあっここ、きもちい、あっあっはあっあっあっあっはあっあっ」
82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/12(月) 04:10:09.90 ID:AgEQI/BQO [22/40]
男「どした?」
姉「はあ……はあっああ……軽く、イッた、かも……」
男「イキやすい?」
姉「ぜんぜん……中でイッたの、初めて、はあ……ふう、弟くんまだイッてないから、はあはあ……動くね」
男「今度は俺が動くよ、下んなって」
姉「うん……ありがと」
男「降りれる?」
姉「……やだ、離したくない、もっと繋がってたい」
男「じゃあそのまま倒れて」
83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/12(月) 04:24:13.91 ID:AgEQI/BQO [23/40]
姉「ん……よいしょ、んっ。ふう、よいしょ、んぅ」
男「痛い?」
姉「ううん、きもちいの。おっきいから、少し動くだけで、色んなとこ当たっちゃう」
男「ほんとに痛くない?」
姉「だいじょぶ。だから犯して?」
男「いいんだな?」
姉「優しいね。でも、たまには強引なとこも見せてほし、んあっあっはあっあっあっああ」
姉「急に、あああっ、動いちゃあああっはあっあっああっ激し、あっはああっああっあっはっ」
姉「おくっ、あっはああっおくの、あっきもちい、あっああっはっあああっはあっ」
姉「弟、くんっ、はあっ弟くんっあっあっはっあああっはあっ、あっああっしゅきっあっしゅきだよぅあっはっあああっ」
姉「好きっ、すきぃっ、あああっはあっ大好き、なの、あっああっ弟くんと、エッチ、はあっあっんあっしてゆ、あっ」
85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/12(月) 04:32:37.55 ID:AgEQI/BQO [24/40]
姉「あっあっあっ、弟くんっあっあっはあっ、ぎゅって、して、あっあっああっ」
姉「しゅき、だよぅ弟くんっ大好き、あっあっどこにも、はあっ行かないで、あっあっ離れ、ないでっはあっ」
男「イキそ」
姉「いいよっあっあっ中に出してっあっあっあっおねがい、はあっあっんくっあっ中、中に、あっんあっおねがいっ」
姉「あっあっはあっ出して出して、中に、はあっあっおねがいっあっあっあぁっあぁあぁあぁあああっ!」
87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/12(月) 04:41:25.14 ID:AgEQI/BQO [25/40]
姉「はあっはあ……っあ、はあ、はあ……ん、はあ……」
姉「……ついに、はあはあ……しちゃった……はあ……」
姉「中、いっぱい……えへへ」
姉「弟くん、弟くん」
男「んあ」
姉「眠い? ちょっと起きて」
男「あんじゃあ?」
姉「ぎゅって、して?」
男「ん、こんど、ねうい」
姉「……」
男「すかーすかー」
姉「起こすのも、かわいそうか。おやすみ、ごめんね」
ぎゅう
姉「(やっちゃったんだ、あたし)」
姉「(中に、いっぱい……)」
姉「(確かきょう)」
姉「(危険日)」
106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/12(月) 17:53:08.98 ID:AgEQI/BQO [29/40]
―――
あれからしばらくたった。やっぱりごまかさなければよかったと何度も思った。本当は、本当にやっちゃったんだって言いたかった。
弟くんはやさしかったし、私をひとりの女の子として見てくれるって言ったし、そこに甘えたかった。
でも、そうしたらきっと両親や親戚、まわりの友達だって白い目で見るだろうし、それがいちばんつらいのは弟くんだと思った。
酒に酔って姉を襲うなんて、たとえ私から誘ったと言っても、すべての矛先は弟くんへ向かうだろう。
弟くんはやさしすぎるから、きっと自分が悪いって言って私を守ろうとしただろう。他のなにもかもを犠牲にして。悪いのは私なのに。
私は、悪い女だ。
本当にばかな女だ。
だから私はもう弟くんのそばにいてはいけない。一緒に暮らしてはいけない。私がいるだけで、弟くんの笑顔を奪っていくから。
このどす黒くて重い十字架を背負って、一人で生きていくんだ。そう思って家を飛び出してからちょうど一週間になる。
弟くんは、どうしているだろうか。ご飯ちゃんと食べてるかな。風邪とか引いてないかな。元気に笑っているかな。
そればかりが頭の中でまるで自分の尻尾をくわえた蛇のようにぐるぐると回りだして私を縛り上げる。
私は誓った。この罪を一生かけて償っていくと。
私の中で眠るもう一人の命へ誓った。
108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/12(月) 18:33:04.99 ID:AgEQI/BQO [30/40]
検査薬を買った。陽性だった。何度も試してみたけど何度も陽性だった。これでもうあとには戻れない。
できればこの子を産みたい。できれば弟くんと一緒に育てたい。できれば三人で暮らしたい。できれば、もう一人、ほしい。
だけど、それは過ぎた贅沢だ。そんなことできるはずがない。きっと誰も認めてくれない。私だけでなく弟くんにも迷惑をかけてしまう。
なのに私はずっと自分の幸せだけを考えている。いけないことだとわかっていても、思考が、心が、どうやってお腹の子を育てていくかということにしか向かわない。
この家にはいられない。部屋を借りなきゃ。出産費用はいくらだろうか。仕事も休まなきゃ。会社の人にはなんて説明する? 貯金いくらあったっけ。
……だめだ。
普通は堕ろすべきなのに、私はもう産むことを決めている。だって私の子だけでなく、弟くんの子でもあるから。
家を出よう。でも住むところがない。友達の家にずっと泊めて訳にもいかない。家を出た理由なんて言えるはずがない。
そこまで考えて、ある人物を思い出した。
高校生のときの友達、親戚のお兄さんと出来ちゃった結婚した友達。彼女なら、もしかしたらわかってくれるかもしれない。
気付いたときにはもう私は彼女に電話をかけていた。
111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/12(月) 19:11:06.59 ID:AgEQI/BQO [31/40]
実を言うと彼女には弟が好きだということは伝えてあった。彼女が妊娠したとき、私はいちばんの相談役になっていたと思う。
互いに身内を好きになっていたから彼女とはなんでも話せた。結婚の報告を最初に聞いたのは私だったし、それをいちばんに喜んだのも私だった。
大丈夫。彼女なら認めてくれる。そう信じて現在の私の状態とこれからの予定を伝えた。
今でも弟が好きだということ。先日やってしまったこと。お腹に弟との子がいること。どうしても産みたいこと。
迷惑かけないから部屋を借りるまで、しばらく泊めてもらいたいこと。包み隠さずすべてを伝えた。
返事はこうだった。
世間の目は想像以上に厳しいこと。自分たちは結婚できたけどきょうだいでは結婚できないこと。
女ひとりで出産や子育て、仕事をこなすことは大変なんてものじゃないこと。
最後に、それでも本当にいいの? ということだった。
私は、すべて覚悟していると伝えた。
あんたには世話になったからね、あたしも出来る限り協力するよと彼女はやさしく言い、電話を切った。
私は急いで家出の準備を始め、しばらく泣いた。
112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/12(月) 19:18:30.16 ID:AgEQI/BQO [32/40]
飯おち
122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/12(月) 21:03:41.66 ID:AgEQI/BQO [33/40]
そういえばなんか家が空っぽっていうか静かっていう感じがしたのはこのところ姉と会っていないからだった。
たまに家をあけることはあったけど五日も帰ってこないので母親に聞いたところ
なんか家出っていうか自分探しっていう訳わかんねーことを始めたらしい。
いつもばかみたいなとこやってるけどやはり姉はばかだったらしい、自分なんか探さなくてもそこにあるじゃんね。
それでも俺にはなにも言わずに出ていくのはちょっとばかりさびしい部分もあって妙な気分がしばらく続いた。
それで現在俺は姉の部屋におじゃましているのだが部屋主のいないこの空間で一体なにをしたいのか自分でもよくわからなかった。
たぶん姉と一緒に出ていったであろう彼女の悪戯心を見つけたかったのかもしれない。
留守中、勝手に部屋に入った弟への罰としてびっくり箱的な何かがあると思い部屋を見回したんだけど
残念ながらそういうのは一切なかったので俺はさっさと部屋を出た。
このとき、もう少しよく見ていればよかったと思う。
124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/12(月) 21:19:34.78 ID:AgEQI/BQO [34/40]
家を出てから一ヶ月たった。
今はまだ彼女の家にいるが来週からついに一人暮らしを始める。
まだ家にいてもいいと言う彼女とその旦那だったが、いきなり知らない女が住み着いては
子供の教育上よくないと思ったので私は出来るだけ早く一人暮らしをしたかったのだ。
それでも私のことが気がかりなようで、借りる部屋は彼女の家からそう遠くなく、病院や駅も近い場所だった。
たぶん私のために一生懸命探してくれたんだと思う。二人には頭があがらない。
この家に来てから、困ったらいつでも頼りなよ、が彼女の口癖になった。本当にありがとう。
あと、実家に手紙を出した。元気だから心配しないでと書いた。念のためこの家の住所は書いてない。
……弟くん。
私のことは早く忘れて幸せになってください。
なんて。書けないよね。
元気かなあ。
127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/12(月) 21:40:45.01 ID:AgEQI/BQO [35/40]
姉から手紙がくることがときどきあった。
住所は書かれてないけど、消印からそう遠くないところで投函された模様。なにを考えているのやら。
まあこんな両親だから仕方ないのかもしれない、家出した娘をあまり心配してい様子だった。
父親にいたっては、いつまでも家にいるお前よりマシだと言い放つ始末であった。少し痛いところを突いてくる。
母親の、あんたも少しはお姉ちゃんを見習って自分のことを考えなさいという追撃の小言から
俺はジダンのマルセイユルーレットよろしくといったスルー技術により自室へと戦略的撤退を遂行させた。
このときの俺ならトラックに轢かれそうな子供を抱えて道路脇へ逃げ込む華麗なフットワークを見せたに違いない。
たぶん。
姉の手紙が待ち遠しい。
130 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/12(月) 22:03:15.79 ID:AgEQI/BQO [36/40]
一人暮らしを初めて二ヶ月ほどたった。
行動が制限されるような気がして、お腹の中のもう一つの命が宿っていると改めて実感させられる。
そんな私の心を知ってか知らずか、彼女は子供を連れてよく遊びにくる。
遊びにくる、というのは言い訳で実際は私の世話をしに来るのだった。
来る度にちょっとした掃除したり料理したり、生活用品を買ってくる。いいって言ってるのに。
また実家に手紙を送った。他愛ない平凡な内容。これについて彼女はいつも「助言」をしてくる。
弟には本当のこと言わないの?
うん。
そう決めたんだから。
ひとりで育てるって。
がんばれ私。
132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/12(月) 22:24:59.43 ID:AgEQI/BQO [37/40]
姉が俺の脳内から出ていかないのは、思えばあの日からだった。あの訳わかんねー悪戯をしたあの日。
あのせいで俺はおそらく姉を女として見始めていた。だからいろいろと好都合だった。
あのまま姉が家にいたら俺はいつかきっと本当に姉を襲うことになったと思う。それはないか、俺だもんな。
つーかだいたいあんなことされたら余計意識するっつーの。脳内で何度犯したことか。
……。
きもちわりいな、俺。
あーでも姉なら俺のこの抑圧された性衝動を本能に従いぶつけてもきっとありのままの俺として受け止めて
あんあんだめよ、きょうだいでこんなこと、いやっ、そこ弱いの、だめなの、あーれー
などと思ってもみないことを口にしてしまった。
長期休暇のせいで脳髄が腐り始めたということにした。
姉ちゃん元気かなあ。
僕は息子ともども元気です。
……
死ねっ!
139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/12(月) 22:47:53.34 ID:AgEQI/BQO [38/40]
家を出てから季節がふたつくらい変わったと思う。
お腹もすっかり大きくなり、けれど生活は彼女のおかげでだいぶ楽だった。いつか恩返ししたい。
そんな矢先、私の体に異変が起こる。
お腹が痛い。まかさ陣痛? でもまだ九ヶ月もたっていない。もしかしたら早産になるかもしれない。
一応彼女に連絡をとった。病院に送ってくれるとのこと。本当に助かる。
まだ出てきちゃだめよ。もうちょっと中にいてね。いい子だからもうちょっと我慢してね。
お母さんもがんばるから。
弟くん、元気な赤ちゃんを産みます。がんばります。
145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/12(月) 23:24:16.96 ID:AgEQI/BQO [39/40]
俺は流行に敏感な生物である。男たるもの常に最先端を生きるものであれ。
そう。俺はまさに今若者の間で大流行している例のアレである。ニー、じゃなくて
Not in Education,Employment,or Trainingである。穀潰しじゃないぜ、プータローでもないぜ。
……
言い訳させてもらおうか。なぜこの俺様が社会に出ないかを。
すべては姉のせいなのである。あの悪戯を機に、俺様は実の姉を性の対象として見てしまうようになってしまった。
ココ重要、なってしまったのね。けして俺の意志じゃないから。ホント、信じて。
察しのいい皆様はもうお分かりのことだろう。俺が社会に出ないのはつまり変態だからである。
姉に欲情する変態は社会に出てはいけない。そう思うのだ。責任感が人一倍強い俺様は社会の為にニートのフリをしているのだ。
……
ええ、ええ、はいはい、わかってますよ言われなくても。
姉が出ていって心がすっかりぽっかりすっからかんになったのでございますよ。ええ、ええ。
僕という不安定なコマを回すには姉が必要だったということですよ、はいはい仰るとおりでございますよまったく。
不安定なコマが社会に出たら弾かれますよね? みんながベイブレードで戦っているのに僕は画鋲なんです。
画鋲をコマみたいに回して遊んだでしょ? アレなんですよ僕は。薄っぺらのひょろひょろですよ僕は。
ああごめんなさい、姉上さま。社会にひとり立ち向かう貴女にあわせる顔がありません。
今の僕など貴女の親指で簡単に押し潰せますよ。
潰してください、こんな僕を。初めて僕だけに宛てた手紙を読む勇気のない僕を。
149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/12(月) 23:47:31.59 ID:AgEQI/BQO [40/40]
病院に連れていってもらい、念のため入院することになった。
たぶん大丈夫だと思うけど、彼女が許してくれなかった。
このまま帰して、あんたや赤ちゃんにもしものことがあったらどうするの。
この言葉に従ったことを、私は忘れないだろう。
病院で初めて迎えた朝、また陣痛らしきものが起こった。
それで、そのまま出産。女の子。
初めて抱いたときは本当にちっちゃくて壊れそうで、かわいかった。彼女に写真を撮ってもらった。
元気そうに見えたけど未熟児だから別室で検査するとのこと。私も疲れていたのですぐに眠ってしまった。
起きてから手紙を書いた。弟くん宛てにもう一枚書いた。
彼女が書け書けといつも以上に助言してくれたから。写真も添えた。
……ごめんね。
でも、がんばります。
151 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 00:11:31.77 ID:AHYFZxLAO [1/31]
読みます、手紙。
勇気を振り絞って読みます。背骨が折れるほど絞ります。むしろこんな背骨折ってください。
きれいに三つ折りにされた手紙は俺の背骨なんかよりずっと強かに見えた。
端の方が少し歪んでるけど。
手紙の中に写真が入っていた。
少し疲れ気味の姉と、ちっさな赤ちゃん。
手紙を読んだ。
こんにちは。お久しぶりです。写真みました?
この度、出産いたしました。女の子です。目元が父親に似ていてかわいいです。
急に家を出たのはこのためです。今まで黙っていてごめんなさい。
でも母子ともども元気です。そちらはどうですか?
ちゃんとご飯食べていますか? 風邪とか引いてないですか?
恋人は、できましたか? 余計なお世話ですね、ごめんなさい。
私はちゃんとこの子を育てていきますから、心配しないでください。
最後に、この事は両親にはまだ言わないでください。
いずれ私の口から直接言いますので。
それでは、また。お元気で。
意味がわかんないまま泣いた。
152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 00:34:51.51 ID:AHYFZxLAO [2/31]
姉が、出産? なにそれ聞いてねーよ。そりゃそうか、黙ってたんだから。
父親誰よ、彼氏か。いたっけ? いたんだろ。へっ。いないとか言ってたくせによ。意味わかんねーよくそ。なに?
なんなの、ねえ。なんなのさ? どういうこと? あの姉ちゃんが? ありえねー。いつから? 十ヶ月前って何日?
いま何月? 俺いつからニート? 姉ちゃん出てって何ヵ月だよコラァ。八? 九? なにそれ。
どういうこと? なんなの?
そういうことをぐるぐる考えていた俺は家中をぐるぐる回った結果、姉の部屋に来ていた。
なんなのよ、姉ちゃんよ。なにしてんのあんた。俺がこの数ヶ月どんな思いで過ごしたかわかってんの。
何故かイライラして、一周回って、沈んだ。
もうやだ、しにたい。なんなの、それ。
姉の化粧台の前に立った。引き出しを開けてがさごそとひっくり返します。
へへへ、ありましたありました、カミソリ。眉毛剃るのに使うんですよねカミソリ。へへへへへ。
しかもこのカミソリ、安全装置みたいな、皮膚を切らないようにするギザギザがないんですよ。うふふふふ。
うふふふへ。きれいだなあ。まっかまっか。ふは。なんかハイになってきたぞ。
うひゃひゃ。うでまっか! ひゃは! ぜんぶ染まってしまえ! まっか! うひゃひゃひゃひゃ!
せかいをまっかにしてしまえ!
154 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 00:42:19.09 ID:AHYFZxLAO [3/31]
あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ! うひゃひゃ!
ふっは! あははは! もっとあかくそまれ! あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!
破壊だ破壊! こわれてしまえ! しゅぱーん! ざくーん! うひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!
ああああー、ぼたぼた、まっかにぼたぼた、ひゃは! たまんねーな!
たまんねー! たりねーよ! あかがたりねー! みんなみんなそまれ! あかになれ!
うひゃひゃひゃひゃひゃ! あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!
ぼったぼった! ぶしゅうー! あははははははははははは!
もっとながれろ! この部屋を真っ赤に染めろ! ひゃははは! はっ! はは……ははは。
は……?
155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 00:50:43.30 ID:AHYFZxLAO [4/31]
なにこれ。
真っ赤に染まった箱を取り上げる。血を無造作に拭き取る。
妊娠検査薬? おーおー、こんなときにこんなもんを見つけてしまうとはね。ご丁寧にレシートまであらーな。
いったいいつ頃買ったものなんでごさいましょうかねー? うひゅひゅ。
……
………………
姉が出ていく数日前だ。まぁだからどうしたって話。俺には関係ねー。死ねカス。死ね俺。
はっはー。この部屋で死んでやらーな。死ね俺死ねっ! ぜんぶ関係ねーな!
しらねーよハハッ! 来客だかなんだかしらねー! 俺は死ぬんだからこの家にゃあ誰もいませーん、ひゃははは!
156 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 01:03:04.30 ID:AHYFZxLAO [5/31]
「なにしてんの!」
部屋に入ってきた人物が叫ぶ。うるさい邪魔するな。
「あんたそんなんしてないで一緒に来なさい!」
誰だよ。どこにも行かねーよ。
「お姉さんに会いなさい!」
おめーの姉なんざしらねーよ。
「あたしの姉じゃなくてあんたの姉! ほら早く!」
おれのあね? なんで? なんでおれがあうの?
「訳は途中で話すから、早く!」
知るかよ姉なんざ。俺は今ここで死ぬんだ。
「もー、ホントにあんたたち不器用なんだから!」
そう言うとその人物は早口でいろいろ話し始めた。もうホント早口。
息継ぎしてないんじゃねーのってくらい早口。少しは落ち着け。
「あの子はあんたが好きなの! 写真の赤ちゃんはあんたの子なの!」
158 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 01:15:02.73 ID:AHYFZxLAO [6/31]
何を根拠に信じればいい、そんなトンデモ話。昼ドラじゃないんだから。
姉ちゃんが俺を好きで、写真の赤ちゃんは俺の子だって? 意味わかんねーよ。
だいたい……
そこまで考えて、妙な疑問が浮かぶ。
あの写真、旦那が写ってなかった。
あの手紙、「私はちゃんとこの子を育てていきますから――」。
私たち、じゃなくて、私。
今までにないほど俺の脳はハイスピードに回転しはじめ、光速の域にまで達しようとしていた。
「姉は今どこに?」
「病院、来て!」
その人物に連れられて家を出たときには出血は収まっていた。
160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 01:29:16.49 ID:AHYFZxLAO [7/31]
その人物の車で病院へむかう。めっちゃ飛ばしてる。今何キロ? 本当に飛ぶんじゃねーのこのカブトムシ。
「写真だと元気そうに見えるけどね、その赤ちゃん、早産だった」
「早産……」
「それでね、今朝、急に……」
「言わなくていいです。わかりました」
きっと死んだんだ。
「……あんたまで死んだら許さないから」
「はい」
「あの子、ショックで倒れた。もうあんた以外の人じゃ助けられない」
「はい」
しかし速いなこのカブトムシ。どんなエンジン積んでるんだ? すげぇ、お馬さん追い越したよ。
162 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 01:37:21.43 ID:AHYFZxLAO [8/31]
―――
「え、はは……だめんなっちゃった……」
「強がらなくていい、あたしがそばにいるから」
「……もうだめだあたし、生きるいみないよ」
「そんなことない、大丈夫」
「……もうあたしには、なにものこってない」
「大丈夫だよ、大丈夫」
「は、はは……だめだ……なにも、ははは……ない、よ……」
「大丈夫、大丈夫だから」
「……」
「寝ちゃった、のかな」
「お前、この子ん家わかるだろ。弟くん連れてこい」
「え、でも……」
「いま出来るのはそれくらいだ。俺たちは医者やカウンセラーじゃない」
「……わかった」
「頼んだぞ」
「まかせて」
163 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 01:49:51.20 ID:AHYFZxLAO [9/31]
「着いた、こっちだよ来て」
カブトムシから降りて病院に入る。あの特徴のあるアルコールの匂いが漂ってくる。
「八階だからエレベーターで行くよ」
運よく1階に降りてきたエレベーターに乗り込む。八階行きのボタンを押す。
「これ、お守り。持っていって」
なんだか妙なキーホルダーをもらった。蛇が輪っかになっている。「今のあんたたちには劇薬だけどね。でも期待してるよ、がんばりな?」
男っぽいセリフだけど、口調はとてもやさしかった。
「はい」
「エレベーター出てまっすぐ行って突き当たりを右、その廊下の突き当たりの左の部屋」
「はい」
俺はここにきてようやく靴をしっかり履いた。八階に到着。ドアが開く。
ここは病院なのに俺はウサイン・ボルトよろしくといった全力疾走で姉の病室へむかった。
164 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 02:05:36.61 ID:AHYFZxLAO [10/31]
エレベーターからダッシュする瞬間、その人物が何か言ったような気がしたけど今はそれどころではない。
この先に姉ちゃんがいる。
俺が好きな姉ちゃんが。
急げ。走れ。体が重い。
看護師だ。どけ。
俺のマルセイユルーレットをなめるなよ。
それにしても遅い。廊下はそんなに長くないのに病室まで一向に距離が縮まらない。
こんなに走ってんのに。くそ。加速しろ加速加速。
病室まであと五メートルか? 三メートルか? あと少し。あとちょっと。
「おふっ」
本当にあとちょっとだったのに俺は物凄い勢いで盛大に転倒した。
あの人物はカブトムシで俺はテントウムシかよ。
外の異変に気付いたのか、病室の扉が開き医者と知らない男と知ってる女が出てきた。
166 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 02:19:52.36 ID:AHYFZxLAO [11/31]
医者数名と知らない男と知ってる女と、あとから来たあの人物たちに俺は見下ろされていた。
このとき俺の顔は真っ赤だったに違いない
「弟、くん?」
「お、おふぅ」
気の抜けた返事に看護師さんがひとり吹き出した。
「なんで、ここに……どうして」
「呼ばれた気がした」
「え……でも、だって」
医者数名が病室に戻る。知らない男と知ってる女とあの人物に見下ろされる俺。
「ぴーす」
蛇の輪をぶらさげてピースサイン。決まったね、コレ。
反応はいまいちだったけど。
167 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 02:27:25.80 ID:AHYFZxLAO [12/31]
「え、なに? どうなってるの?」
どぎまぎしてる姉はホントかわいい。なにこれ、めっちゃかわいい。両手を口元に持っていくとか反則だろ。
「俺、テントウムシだから」
間違えた。思ってもみないことを口走ってしまった。どうしよう。
「なんで、テントウムシ?」
「ええと、ホラ、見事な大転倒、ね?」
自分でも意味がわからない。幸いここは病室だ、誰かロボトミー手術してくれ。
「えと……その前に」
「なんじゃ?」
「起きたら?」
ひっくり返ったままの俺に、姉は言った。
169 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 02:35:56.42 ID:AHYFZxLAO [13/31]
しかしここで素直に立ち上がるのは俺じゃねーよな?
「でも俺、テントウムシだから」
「起きてよ、あたしが恥ずかしい……」
「あ、はい」
今度は素直に立ち上がる。だって姉が困ってるからね。女を困らせるのは男じゃねーよな?
「……どうして?」
OOPS! 姉はどうやら困った様子。なのに俺はなんだかハイ。久しぶりに姉と会ったからだな、きっと。
「体、大丈夫?」
質問には答えず、逆に質問する。
「……うん、体はだいじょぶ」
「どっか痛くない? 動いても平気?」
「……心が、ちょっと痛い」
気付いたら俺は姉を抱いていた。
171 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 02:55:28.21 ID:AHYFZxLAO [14/31]
「う……うう……ふっ、うっ、うぅっ」
なんか姉が俺の腕の中で痙攣している。しかし大丈夫だ。なにせここは病院だからな。痙攣も治してやるぜ。医者が。
「ふうっ、ひくっ、うぅっ、うう……うっ、くぅ」
大変だ。姉が泣いている。これはまずい。女を泣かせるのは男じゃねーよな? 姉を解放する。
「あぁ、ごめん。痛かった?」
「ひくっ……うっ、んう……くぅ、うっ、んく」
喋れないらしく、代わりに頭をうんうんと何度も縦に振る。どうやら相当痛かったらしい。
「ごめん、大丈夫? まだ痛い?」
「うくっ、だいじょぶじゃ、うう、ない、よ……ひくっ、くっ、いだい、よぉ……くぅ」
誰かこの中にお医者さまはいませんか? いや妖精はいませんか?
泣いてる人に杖を一振り笑顔をあげてください。
姉が俺の胸にしがみ付いて呻く。
「だんで、くっ、だんで、きだの、よぉ、ひっく、うぐ、ふぅう……だんで、ぎだの……んくぅ」
涙と鼻水と涎できれいなお顔がぐちゃぐちゃ。みっともないったらありゃしない。
でもこういうのも、いいか。
172 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 03:10:10.79 ID:AHYFZxLAO [15/31]
「あんで、うぐう……きだ、ひぐ、うぅっ、うっ、うぅう、なんべ、うっ、なん、べ、うぅっう」
なんで来た、と言いたいらしい。鼻が詰まってまともに喋れないのね。
「なんでって、そりゃあここの医者に大切な女を任せられないからね、俺じゃなきゃなおせないから」
「ううぅう、うぅ、うぅう」
大変だ。さらに泣いてしまった。ここは一発ボケて笑わすしかあるまい。
「おお、そんなに泣くほど感動してくれたのかべいびぃ。いいんだよ俺の胸で泣きなさい」
頭を撫でてやった。ザマァミロ。これには流石の姉も
「うんっ、うぅ、うんっ、うんっ、うぅうう、ううう、うんっ」
誰か助けてくれ。この女はもしかしたら本当に感動して泣いているのかもしれない。
視線をあげてあの人物に助けてを求めるが、もう誰もいなかった。
173 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 03:21:01.48 ID:AHYFZxLAO [16/31]
病院の廊下で男女が二人きり。ただ泣く女とただ抱く男。歌丸です。
この際歌丸でもいいから助けてくれ。この女を泣きやむ方法を教えてくれ。
「うっく、ううう、ひっく、あ、あいだ、かた、あいたかた、よぉ、うっ、うぅう」
「まぁ立ち話もあれだ。他の患者さんにも迷惑だから病室戻ろうか?」
「んぐ、うぅ、うんっ、うっ、あいたかた、ううう、あいたかた、あいたかたぁ、うぅう」
三歳児くらいの日本語しか使えないこの女はべったり張りついてしっかり捕まっててっきり蝉になったのではないかと思った。
……ちゃっかり俺の服で顔中から出た色んな液体を拭い付けていた。
175 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 03:32:25.31 ID:AHYFZxLAO [17/31]
病室に入った。誰もいない。がらんとしている。
俺は蝉をベッドに座らせようと思ったけどこの蝉、一向に離す気はないらしい。
一緒にベッドに横たわる体制になってしまった。
「うぐ、くう……うぅう、うぅ……ふぅ……」
ようやく落ち着いたらしい。でも手は離さないんだな。
「ひく、うぅ……ふぅ……んう……」
What's happened! 眠ってしまったようだ。それを見たら俺もなんか急に疲れた。眠い。
今日は色んなことがあり過ぎた。寝てもいいよね? 君も寝てるんだし。
176 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 03:42:43.73 ID:AHYFZxLAO [18/31]
夢を見た。変な夢。
海から出てきた蛇が自分のしっぽを食べる夢。
反対側を見ると実家が燃えていた。
すごい炎。
だけど家の中には人がいる。
それは誰か知っている
助けにいかなきゃ。
だって助けられるのは自分だけだから。
燃え盛る火炎の中に突っ込んでいった。
177 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 03:45:01.19 ID:AHYFZxLAO [19/31]
寝る。
落としてもいいよ。
残ってたら書くかも。
遅くなるけどね。
192 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 13:09:01.00 ID:AHYFZxLAO [20/31]
不快感に襲われて目が覚めた。
そんな俺とは逆にこの不快感の作り主は心地よさそうに寝息をたてている。
起こさないように離れる。服を脱ぎたい。
素晴らしい不快感である。色んな液体でぐちゃぐちゃになった服が醸し出す豪華な不快感。
ベッドから降りて上着を脱いだ。不快感の全貌が明らかになる。ずいぶんと汚したもんだ。
右腕から脱ぎ始める。次は頭。
少し迷って、左腕を一気に引き剥がした。赤と黒の肌色の左腕が現れた。
乾いた血は汚い。そう思う。だからどうしたって話だけど。
見つかる前に処分したい。ごみ箱に捨てる訳にもいかないしなあ。どうしよう。
病室の扉が開く。入ってきた人物と目が合う。そいつは、しかし慌てることもなく俺の手から不快感を奪い取り
代わりにどこかで買ってきたであろう新品のシャツを渡してきた。
そいつは自分の袖を捲り上げた。白い筋がいくつも見える。
道理で腕をざくざく切っている俺を見ても驚かないわけだ。
「起きる前に着替えた方がいいよ」
194 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 13:16:22.96 ID:AHYFZxLAO [21/31]
落ちる
210 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 19:01:28.04 ID:AHYFZxLAO [22/31]
「どーも」
もらったシャツを着る。傷が痛いけど気にしない。
そいつが俺の腕を見ている。
「あんなナマクラじゃ死ねないことくらいわかってますよ」
「そうでもないよ」
俺よりもたくさんの傷が付いていると思われる腕を軽く抑えてそいつは言う。
「動脈、平行に長く切ればちゃんと死ねる」
へー。
上着を着る。ポケットに異物があることに気付く。蛇の輪だ。
「これ、なんなんすか?」
「さあね」
うそつけ、知ってるくせに。
背後で何かが動いた。
「んあ、寝てた……」
「おはよ。じゃ、あとはがんばって」
そいつは病室から出ていった。俺はがんばらなきゃいけないらしい。
「なに話してたの?」
「この蛇。教えてくんなかったけど」
「みせて」
蛇を渡す。まじまじと蛇を観察する姿は初めて見るものすべてに興味を示す五歳児に見えた。
「どこが始まりでどこが終わりかわかんないね」
親指と人差し指で作った輪の中に蛇を飼った五歳児は言う。
「終わったと思ったらまた始まる」
妙なことをいう五歳児である。
212 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 19:22:52.44 ID:AHYFZxLAO [23/31]
「あたしは、もう、終わったのにね」
最近の五歳児はずいぶんと哲学的らしい。お腹を撫でながら五歳児は続ける。
「終わったんだ。なにもかも、終わったんだ」
蛇の飼い主だった女が男とともに病室に入ってきた。
「具合はどう?」
「うん、大丈夫。……あんまり」
五歳児の手に気付き、蛇の飼い主だった女が蛇みたいな目で睨んできた。
蛇も俺を睨んでいた。
「終わっちゃったね……」
現在の蛇の飼い主が蛇みたいに細い声で呟いた。終わりのない蛇が怒っている。
蛇女もまた怒っているようだ。ただ彼女の髪型はショートカットだったので俺は石にされずに済んだ。
「……」
石みたいに固まっているけどね。蛇に睨まれているからということにした。
217 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 20:01:48.84 ID:AHYFZxLAO [24/31]
この石みたいに重い空気をどうにかする方法を俺は知っていた。ただそれを行動に移すのが怖かった。
蛇がやれと睨む。こわい。
それにメデューサとおそらくリバイアサンの化身と思われる男もいるのだ。こわすぎる。
「この蛇には終わりがないのにね……」
「終わりじゃないさ」
俺は恐怖にも敏感な男である。生き残りたければ恐怖に従うべきである。
この場合、黙っている恐怖が行動に移す恐怖を勝っていただけに過ぎない。
「そんなこと……」
「次が、あるさ」
俺はひとりの人間でもある。この神々を前にして落ち着いてなどいられない。
だから言っても仕方ないことを、まったく意味を持たないこと言ってしまうことだってある。
「次なんて」
「あるよ」
石化の解けた俺はこの後いろいろ自分でも訳わかんねーことをべらべらべらべらべらべらべらべら
一方的に言い続けるのだが、それをすべて記すには、この余白はあまりにも少なすぎる。
いや書こうと思えば書けるんだけど、その言葉はあの場にいた俺以外の人間だけのものだ。あしからず。
220 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 20:24:44.47 ID:AHYFZxLAO [25/31]
「……それって、それって」
俺以外の人間が口を開く。若干、涙声だ。
「まぁ、つまりそういうことで」
んで、その人間に抱き付かれたって話。抱きつかれついでに唇もくっ付いたって話。
おー神よ神よ神様よ、この時間がずっと続けばいいのになんで君たちはいつもいつも邪魔するのか。
「あたしたちいるの、忘れてない?」
おのれメデューサ。
222 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 20:25:47.08 ID:AHYFZxLAO [26/31]
風呂おち
235 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 21:51:27.57 ID:AHYFZxLAO [27/31]
病院での一件からもうふた月も経つ。現在、俺は二人暮らしを満喫している。大変なこともあるけど気にしない。
俺は器の大きい男である。そうでありたい。二人暮らしをするにいたって、いろいろ決めた。
家事は分担、家賃も分担、食費も分担(ただし家主は俺よりも食う)、光熱費などは俺が全額負担(割に合わない)。
他には夜間の仕事禁止。これは家主が決めた。夜間の方が給料もいいんだけど
恥ずかしい話、夜の営みが少なくなるから。繰り返すがこれは家主が決めた。
あと互いに気を使いすぎないこととか、名前で呼び合うとか、夕ご飯は一緒に食べるとか、
お風呂は一緒に入るとか。そうそう、なぜか腕の傷はばれてた。教えてもらったのかもしれない。
それから、月命日には二人一緒に墓参り。いろいろ大変である。
中でもいちばん大変だったのは両親を説得すること。説得できなかったから俺も家出したってのは言うまでもない。
240 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 22:16:37.50 ID:AHYFZxLAO [28/31]
さらっと言ってるけどけっこう大変。でもこれでいいのだ。どんなことでも耐えられる。
だって好きな女と同棲だからね。ふはは。舞い上がっている俺であった。
でもこの部屋の家主であり好きな女である俺の嫁の方が舞い上がっていると思う。つーか燃え上がっている。
色んな意味で。いやひとつの意味で。これ以上は名誉毀損になるから言えない。
とにかく。
俺はたぶん世界で二番目に幸せであった。いちばんは嫁ね。異論は認めない。
いやいちばんは自分だよという人がいるなら名乗り出ていただきたい。叩き潰してやるから。
以上の惚気話しを述べるにあたって、俺は微塵も良心の呵責を覚えてはいない。
ふはは。
抱くことできず死んでいった我が子の分も嫁を幸せにし続ける所存である。
248 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 22:51:38.82 ID:AHYFZxLAO [29/31]
時間の経過は早いもので、私が家を飛び出してから二つ目の冬が来ようとしています。
手編みのマフラーを作ろうかと思いましたが、それよりも体で暖めてくれと旦那さんが言うので
本当に体で暖めようと押し倒したら、ごめん嘘、嘘、と慌てていました。相変わらずおかしな人です。
ふふっ。
おかしな人ですが、私はこの人が本当に好きなんですね。肌寒くなってきた今、それをしみじみ思います。
一緒に布団に入るとその温かさがいっそう増したように感じられます。
本当に、ありがとう。
なんて。口には出せないけど、いつもいつも思ってますよ。
輪になった蛇に祈ります。
この幸せがずっと続きますように。
255 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 23:15:33.80 ID:AHYFZxLAO [30/31]
親について本気出して考えてみた。
親というもの、なにがあっても子を信じるものであれ。
親というもの、なにがあっても子の味方であれ。
親というもの、なにがあっても子を見捨てることなかれ。
親というもの、子の責任をすべて負うものであれ。
まぁなんだ。子供をつくるのは親のエゴだと思う。子供をつくる親がいちばん子供のこと考えてないと思う。
だから親ってのはそーとー罪深い生き物。
ひとつの生をつくるってことはひとつの死をつくるってことだからね。
そこら辺ちゃんとしようぜ。
出来たから産みますって奴は死んだ方がいい。それか堕ろせよって思う。
子供だってそんな親に育てられたくねーと思うのよ。
そんな俺に数ヶ月後、二人目の子供が生まれる。出来ちゃったじゃないぜ、望んでつくったんだぜ。
だからその子はなにがあっても守っていく所存。
嫁ともども幸せにしてやる所存。
259 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 23:39:00.07 ID:AHYFZxLAO [31/31]
今までいろいろありました。
本当にたくさん、数多くの出来事が私の頭の中を駆け巡ります。
中学生になったのを機に、ひとりでお風呂に入るようになったこと。
身内を好きになり、その気持ちを二人で慰めあっていた高校時代。
就職先を地元にしたのは、一人暮らしの費用を節約するためでなく実家に残るため。
私の記憶のすべてには、必ずある人が関わっていました。
あれも、これも、それも、どれも、すべて。
もう死んじゃってもいいくらい私は幸せです。だけどまだまだ死ねません。
だって。
あなたを残して死ねないですから。えへへ。
この子のためにも私は死ねません。
一足先にがんばってきます。今度は大丈夫です。安心してください。
だけどすぐに来てね。だから少し待っててね。
262 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/14(水) 00:00:24.80 ID:+JIoeVJeO [1/5]
生まれました、女の子。元気です。ほんと元気。
抱こうとする俺を蹴りつける様は寝相の悪かった君を彷彿させます。
まったく、泣けてくるぜ。ほんと泣けてくる。
だって見ろよこのほっぺた。このぷにぷに加減。ああ、見てもわからないか、ごめんごめん。
でもほんとすごいね、女の子ってすごい。お疲れさまでした。
すごい感動してる、俺。ほんとやばい。涙やばすぎ。
いや嘘、泣いてないって。泣く訳ないじゃんこの俺が。ははは……泣かねーよ。
いやしかしほんとすごい。生命って。ほんと生きてる。めっちゃ生きてるこの子。
だから言ったろ? 終わりじゃないって。そうだよ、終わりじゃないんだよ。
終わりかと思ってもまた始まるんだ。それの繰り返しだ。ほんとまじ終わりじゃねーぜ。終わらせねーよ。
わかってるって。俺のこたぁ気にすんな。疲れたろ、ちっと休めよ。ああ、おやすみ。
とまぁこれで俺も親になった。
ひとつの生をつくったのでひとつの死をつくったことになる。
でもその繰り返しだと思うのよ。だって終わりはねーんだから。
がんばれ俺。
子供は元気です。なのになんで今度は君が死ぬのかな。
おしまい
266 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/14(水) 00:06:40.35 ID:loYk0XnP0 [1/2]
姉退院したあと弟と同棲、親に相談、そのあとまたヤって子供ができる、
で、姉弟の過去の回想、出産。
でおk?
メモ帳にまとめようと思ったら>>1のID変わりすぎてめんどくさい
270 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/14(水) 00:12:12.72 ID:+JIoeVJeO [2/5]
ハッピーエンドなんてクソ食らえ!
>>266
そんなでいいんじゃね。俺もしらん
267 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/14(水) 00:07:16.19 ID:VVWszezb0
蛇は指輪でおk?
272 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/14(水) 00:15:46.54 ID:+JIoeVJeO [3/5]
>>267
ウロボロスでググレカス
別に指輪でもキーホルダーでもなんでもよかった
ちなみにセクロス編以降は全部蛇足な。蛇だけにな。
275 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/14(水) 00:41:48.53 ID:+JIoeVJeO [4/5]
そんなにハッピーエンドを望んでいたのか?
276 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/14(水) 00:48:48.74 ID:/BtQPZpS0
このままハッピーエンドで終わってたら、結局gdgd状態で続いてただけだったから、
話の流れ的には最後の締めで良かったと思う。
ただ、ストーリー的に最後なんかなぁああっぁぁぁあぁぁあぁぁ!!!!!ってなるww
280 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/14(水) 01:01:39.65 ID:+JIoeVJeO [5/5]
>>276
死ぬとこ詳しく描写するよりあっさり殺してそういう不快感を与えたかったのよ
ハッピーエンドのSSはいっぱいあるだろ。俺くらいバッドエンドにさせてくれ
男「は……」
姉「かわいい顔してけっこうすごいんだね」
男「普段からばかみたいなことやってるけど、こういうネタはタブーだろう」
姉「ネタでこんな格好しないって」
男「……いやいや」
姉「まあかなり酔ってたみたいだから覚えてないのも当たり前か」
男「……うそだろ」
姉「ほんとだって」
男「……あー」
姉「頭いたい?」
男「いろんな意味で頭いたい」
姉「お水もってくるよ。スウェット借りるね」
男「……ああ」
姉「ぶかぶか」
男「あー。ああ」
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/11(日) 22:12:40.31 ID:YhGXO9YqO
姉「はい、お水」
男「……どうも」
姉「だいじょぶ?」
男「……あんまり」
姉「まだ寝ててもいいよ」
男「いや、そういうんじゃなくて」
姉「なに?」
男「俺は本当にやってしまったのか」
姉「うん」
男「酔っていたからか」
姉「かもしれないね」
男「そんなに酔っていたのか」
姉「いつもはあんなに酔わないのにね」
男「ああ。あー。酒はおそろしいな」
姉「昨日みたいにいっぱい飲むのはあたしの前だけにしてね」
男「いや……何より自分がいちばんおそろしい」
9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/11(日) 22:27:17.97 ID:YhGXO9YqO
姉「ふふっ、なにそれ。へんなの」
男「男とはなぜこんなにも醜い生き物なのだろうか」
姉「酔ってたんだから仕方ないんじゃない?」
男「俺は自分ではそんな生き物ではないしそんなものにはならないと思っていたが、違ったようだ」
姉「もしかして、けっこう後悔してる?」
男「穴があったら埋めてほしい。姉ちゃんは後悔してないのか」
姉「後悔するのって女の子に対して失礼だと思うけど」
男「あいにく俺はそんな簡単な作りには出来ていないらしい」
姉「……そっか」
男「死んでしまいたい。むしろ初めから生まれてこなければよかったのに」
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/11(日) 22:39:52.40 ID:YhGXO9YqO
姉「そんなこと言わないで……」
男「まさか自分がこんな生き物だったなんて。酒に酔って姉を襲うなど、誰が許すものか」
姉「あたしは怒ってないから……」
男「俺自身が許せない。死んで罪を償うべき」
姉死ぬなんて、言わないでよ……」
男「しかし」
姉「もう、やめて。……そうやって、後悔されるの、つらい……」
男「ああ。……ごめん」
姉「あたしは、大丈夫だから気にしないで。ね?」
男「大丈夫……」
姉「うんっ。大丈夫、大丈夫だから」
男「大丈夫」
14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/11(日) 22:55:21.61 ID:YhGXO9YqO
姉「あんまり深く考えちゃだめだよ。責任感が強いのは知ってるけど、そこまで自分を貶めちゃだめ」
男「ん……責任……」
姉「どした?」
男「俺、どこに出した? いやその前にイッた?」
姉「……えと、おなか、かな」
男「ゴム付けてた? あぁ、ある訳ねーか……じゃあ生だったのか、ああ……お腹の上に出したの?」
姉「う、うん。……でも大丈夫だよ」
男「いや念のためアフターピル飲んだ方がいい、病院いこう」
姉「きょう日曜だから診察しないと思うよ」
男「なんてこった」
姉「……それに、安全日だから平気だよ、大丈夫」
男「でもな……じゃあ明日病院いこう」
17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/11(日) 23:12:43.23 ID:YhGXO9YqO
姉「けっこー男らしいとこ見せてくれるじゃん」
男「男はこうあるべきだろ。たぶん大丈夫つっても、100パー大丈夫じゃねーんだから」
姉「かっくいー」
男「生でやって放っておく奴は男じゃねーよ」
姉「……あたしは、女の子らしいかな」
男「なに言ってんだよこんなときに」
姉「気になったんだもん。ね、女の子らしい? あたし」
男「……そうなんじゃねーの」
姉「むー。じゃあどういうのが女の子らしいって思う?」
男「んー……」
姉「言ってよー」
男「なんつうか、こう……優しいとか、脆かったり少し我が儘だったり、でも黙って後ろ付いてきたりとか」
姉「ふーん」
男「あと料理できるとか、甘えてきたりとかな」
姉「なるほどねー」
男「つーかこんなの聞いてどうする」
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/11(日) 23:26:00.39 ID:YhGXO9YqO
姉「参考にしようと思って」
男「なんのだよ。好きな男でもいるのか?」
姉「……」
男「どした?」
姉「いや、ちょっとね……」
男「どうした」
姉「んー……えいっ」
男「……いきなり胸に頭突きとか、いつからジダンになったんだ」
姉「うりゃっ! ていやっ!」
男「ぐりぐりするなよ、なにがしたいんだ」
姉「んふふー、黙ってぐりぐりされなさい」
男「ハゲるぞ。ジダンの如く」
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/11(日) 23:41:07.14 ID:YhGXO9YqO
姉「ひどいよー、えーんえーん」
男「いったいなにを企んでいる」
姉「少しは女の子らしいって思うかなって」
男「なんじゃそりゃ」
姉「我が儘で、脆くて、甘えてみた」
男「納得したことにしておく」
姉「で、どうだった?」
男「どうと言われても」
姉「言ってよー」
男「まぁ女の子らしかったんじゃないか?」
姉「なによそれー」
男「姉ちゃんは姉ちゃんということで」
姉「……そっか」
男「あ、地雷踏んじゃった?」
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/11(日) 23:57:38.93 ID:YhGXO9YqO [10/10]
姉「踏んだよ、地雷。すごい地雷。ずぅーんって。めちゃくちゃ。こっぱみじん。ぐちゃぐちゃ。爆死してる。色んなものが飛び出て突き刺さって、大変」
男「は……」
姉「……なんでもない」
男「いや、ごめん。……でもどうした、なにが、ごめん、わかんない」
姉「……いいよべつに」
男「よくない、教えてよ」
姉「いいよ……あたしは……あたしは、お姉ちゃんなんだよ」
男「は……」
姉「…………ばか」
男「……ごめん」
姉「ばか……ばかぁ……」
男「ごめん」
34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/12(月) 00:11:21.38 ID:AgEQI/BQO [1/40]
姉「ばかぁ……うぅ……」
男「ごめん……」
姉「なんで……うっ……謝るの……」
男「……」
姉「なんで……うぅ、ひくっ。うぅう……」
男「……ごめん」
姉「うっ……なんで……くぅ、んう……」
男「ごめん」
姉「なんで……ひくっ、うぅう。……気付いてよ、うぅ」
男「は……」
姉「うぅう……くぅ。気付いてよ……ひくっ、なんで……気付いて、くれない、の……うっ」
男「……ごめん」
姉「うっ……ふぅう、ひくっ。……んぅう……」
男「……ほら、ティッシュ」
姉「……」
男「いらないのか?」
姉「………………んっ!」
男「うえっ」
姉「はあ……はあ……」
35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/12(月) 00:29:20.90 ID:AgEQI/BQO [2/40]
男「まさか押し倒されるとは思わなかったな、ははは、はは、は……」
姉「はあ……はあ……あぁ……」
男「あの……」
姉「ふあ……はあ……んう、はあぁ……はあ……」
男「……」
姉「……気付いて、くれた?」
男「……」
姉「好きじゃなかったら、エッチなんてしないよ……」
男「……」
姉「お酒の力借りなくても、チューとか、したいんだよ……」
男「それって……」
姉「……酔ってたのをいいことに、あたしから誘ったの」
男「……」
姉「だから、悪いのはあたし」
男「自分を責めるなよ」
姉「弟を好きになったのもあたし。女の子らしさを見せたかったのもあたし。ひとりの女の子として見てほしかったのもあたし」
男「……」
姉「気持ちを抑えられなくて爆発したのもあたし」
男「……」
姉「でも、あたしはお姉ちゃん」
38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/12(月) 00:43:33.80 ID:AgEQI/BQO [3/40]
男「……」
姉「悪いお姉ちゃんだね……勝手に好きになって、勝手にちょっと期待なんかして、泣き出して、押し倒して……ばかみたい」
男「……」
姉「お墓まで持っていくつもりだったのに我慢できなくて。ほんとばかみたい」
男「ねえ」
姉「黙って聞いてくれてありがとう。おもいきり泣いて、言いたいこと言ったら、なんかすっきりした」
男「ねえ」
姉「あたし、この家出てくね」
男「なに言ってんだよ」
姉「弟を好きになった悪い姉はいなくなるべきなのです」
男「バカ言うなよ」
姉「だってばかだもん」
41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/12(月) 00:56:38.95 ID:AgEQI/BQO [4/40]
男「……はあ」
姉「弟に愛想をつかれた悪いばかな姉は今すぐ出ていくべきなのです」
男「……ああ、たしかにバカだ、大バカヤローだよ、まったく」
姉「なによ、それ」
男「人の気も知らないで出ていこうするなんでバカだろうよ」
姉「……」
男「まず俺は姉ちゃんには、あんたには家を出ていってほしくない」
姉「……」
男「そんで、誰を好きになろうがそれは仕方ない。感情はどうすることも出来ないだろうが」
姉「……」
男「これからはひとりの女の子として接するから。さっきの頭突きとか、その……かわいかったし」
姉「……」
44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/12(月) 01:03:37.28 ID:AgEQI/BQO [5/40]
男「だからさ、出ていってほしくない訳で」
姉「……うん」
男「姉としてもだけど、俺にとっては大切な人だから」
姉「……うん、うん」
男「その、なんだ……ふたりが納得できる答えを見つけるまでは、いなくなるなよ」
姉「うん、ありがと……」
男「ところで」
姉「なに?」
男「そろそろ降りてくんね?」
46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/12(月) 01:08:34.18 ID:AgEQI/BQO [6/40]
姉「あ、そうだね、ごめん。重かった?」
男「ぜんぜん。ちゃんと食ってんのか?」
姉「食べてるよ、心配性なんだから。そだ、ご飯にしよ、お腹空いたでしょ」
男「そういえばそうだな」
姉「ご飯作ってくるね、愛情込めて」
男「仕事が早いなー」
姉「でもその前に」
男「なんだ?」
姉「名前、呼んで?」
49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/12(月) 01:15:50.41 ID:AgEQI/BQO [7/40]
男「……なんか恥ずかしいな」
姉「じゃあご飯作らないよ」
男「それは困った」
姉「なら名前呼んで、ね?」
男「今度じゃだめか?」
姉「だーめ、今がいいの!」
男「すんげー恥ずかしいんですけど」
姉「顔真っ赤だよー? かわいー」
男「うそつけ」
姉「うそじゃないもん。だから早く名前、名前」
男「くそう。じゃあ1回だからな、ちゃんと聞いてろよ?」
姉「うん」
男「名前呼ぶのにこんなに勇気がいるとはな。じゃあ呼ぶよ、――」
姉「っふふ」
50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/12(月) 01:23:43.45 ID:AgEQI/BQO [8/40]
男「……は」
姉「んくくくく、ふふっ、あはは! あはははは!」
男「なんだよう」
姉「あはははははは! ははは、ごめ、んふふ、はははは!」
男「なにが起こった」
姉「あははは! ごめ、ちょっと待って、ははは! くくく、ふふっ、あははははは!」
男「……」
姉「あははー、はははははー、はあはあ、ごめん、ふふふ。ごめんね、んくくく」
男「は?」
姉「いやごめん! ふふっ、ほんとごめん!」
男「なにが?」
姉「いや、だからその、んくくくく、おもしろくて」
男「なんだよ」
姉「ごめん。だから、その、ね? ちょっとしたネタってこと、ふふふっ」
男「は……」
52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/12(月) 01:31:39.62 ID:AgEQI/BQO [9/40]
姉「ごめんね、ほんと。女っ気のない弟に素晴らしい姉からのプレゼントってことで、えへへへ」
男「……えへへじゃねーよ」
姉「ごめんごめん。でも嬉しかったなー、けっこうあたしのこと大切に思ってるんだ」
男「俺の頭の中にテッテレーっていうドッキリ大成功の音楽が流れた」
姉「『あんたには家を出ていってほしくない』。かっくいー!」
男「うわあ……」
姉「『誰を好きになろうがそれは仕方ない。感情はどうすることも出来ないだろうが』」
男「たすけてくれ」
54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/12(月) 01:40:10.67 ID:AgEQI/BQO [10/40]
姉「『さっきの頭突きとかかわいかったし』。くくくー!」
男「待てそれ以上は言うな」
姉「『俺にとっては大切な人だから、ふたりが納得できる答えを見つけるまではいなくなるよ』」
男「穴があったら埋めてほしい」
姉「いやー泣かせてもらった! こんなに感動するとは思わなかったよー!」
男「初めから生まれてこなければよかったのに……」
姉「生まれてこなければあたしの幸せがなくなるじゃん!」
男「くぅ……俺のかっこいい台詞を返せ」
姉「あはははは!」
男「俺のプライドを返せ!」
56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/12(月) 01:49:32.22 ID:AgEQI/BQO [11/40]
姉「そんなに感動しないでよ、実際嬉しかったくせに。んふふー」
男「ふざくんなコノヤロー! お前なんか、くそう! お前なんか! お前なんか、どちくしょうが!」
姉「まあまあ、落ち着いて。ご飯にしよ? あたし作るからさ。愛情込めてね?」
男「もう出ていけ! いなくなってしまえ! スウェットも返せ!」
姉「うわー、実の姉に服を脱げって言ってるー、この人へんたーい」
男「くそがっ! 誰もお前なんざ見ねえよ! 俺のプライドを今すぐ返せ!」
姉「あはは! じゃねー」
しかし数週後、姉は妊娠して本当に家を出た。
64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/12(月) 02:22:40.11 ID:AgEQI/BQO [12/40]
―――
姉「で、彼女とは上手くいってんのー?」
男「ああ、けっこう前に別れた」
姉「うそっ、初耳ー。その後は? 新しい彼女は?」
男「なんもねーよ」
姉「そっかー、それは残念だったねー!」
男「ぜんぜん残念そうに見えない」
姉「気のせい! で、なんで別れたの?」
男「好きな人できたって」
姉「そっかそっか」
男「ほんと意味わかんねーよな女って。俺はあんだけ尽くしたのによ」
姉「そうだね」
男「家賃払えねーから金貸してーだの、バイト先まで送ってーだの、夜中に長電話してきたりよ」
姉「うん、うん」
男「意味わかんねーとこで怒るし、なのに俺謝って、なんなんだろーな」
姉「うん、うん」
男「芯のあるとこは尊敬できたけど、あれは我が儘が過ぎるよ」
姉「そうだね」
男「はーあ。あー、酒がねーや」
姉「けっこう飲んだし、そろそろやめたら?」
男「足りねーよ、酒らあ、酒もってこい」
姉「飲み過ぎだって。もうやめよ?」
男「女なんざ黙って後ろついてくりゃいいんだよ、バカヤロー」
姉「……」
67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/12(月) 02:34:24.02 ID:AgEQI/BQO [13/40]
男「はーあ、女ってのはどいつもこいつもよ、ふざけんじゃねーよって」
姉「そろそろ寝よ? あたし片付けておくから。ベッド入って?」
男「ああ、はいはい、ベッドねー。すみませんねー、と。姉ちゃんはいーい女だよなー、優しくて」
姉「……」
男「姉ちゃん彼氏いんのー」
姉「……いないよ」
男「そっかー。いつから? さびしくねーの? 俺はさびしくてさびしくて凍え死んでしまうよ、くそが」
姉「……さびしい、よ。それは」
男「さびしいかー、そうかー。こんなにいい女を放っておく世の男どもはなに考えてんのかねー」
姉「……」
男「そう考えたらなんか俺までさびしくなってきたわ。くくく」
姉「……さびしい?」
男「うん、さびしい。誰か俺様もハートを暖めてくれませんかねー? 誰もいないか、くくく、はははは!」
69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/12(月) 02:50:34.06 ID:AgEQI/BQO [14/40]
姉「ね」
男「あんじゃ?」
姉「ベッド、入ってきて」
男「おー、我が素晴らしき姉よ。俺様のために布団を温めてくれたか、なんて優しい姉だろうか」
姉「……布団だけじゃなくて」
男「は……」
姉「……こころも、温めてあげよっか?」
男「なんじゃそりゃ」
姉「……あたしもさびしいから、一緒に慰め合お?」
男「なんじゃそりゃ」
姉「こういう、こと……ん」
男「んっ」
ちゅ……くちゅ……
姉「はあはあ……」
男「……誘ってんのか」
姉「しよ?」
男「ゴムねーけど」
姉「なくて、いい。その方が……」
男「あんじゃ?」
姉「……なんでもない。きょうだけでいいから」
男「なに?」
姉「犯して」
70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/12(月) 02:59:17.85 ID:AgEQI/BQO [15/40]
男「俺とまんねーからな」
姉「あたしだって……」
ちゅ……ちゅぷ……くちゅ ちゅる
男「はあ……はあ……」
姉「とまんない」
ちゅる ちゅ くちゅ ちゅぱ
男「はあ……」
姉「チュー、上手だね、えへへへ」男「普通だろ」
姉「あたしは?」
男「上手い、と思う」
姉「だよね」
男「なんだよそれ」
姉「だって……」
男「なに」
71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/12(月) 03:09:13.36 ID:AgEQI/BQO [16/40]
姉「立ってる」
男「そりゃまあ」
姉「服、脱がすね」
男「ああ」
姉「……おっきい」
男「普通じゃね」
姉「おっきいよ、すごく」
男「あんま見んなよ」
ちゅ ちろちろ ちゅる ちゅ
男「うぇ」
姉「どお? あむ」
ちゅぷ ちゅ ちゅるちゅる くちゅ
姉「はあはあ……おっきいから、口つかれる」
ちゅぷ ちゅる ちゅっ ちゅる ちゅぶ ぐちゅ
男「すげーきもちい」
姉「そお? うれしひ……んっ、んむ、んっ、んっ」
ちゅぶっ くちゅっ ぢゅっ ぢゅぷ ぢゅる ぢゅっ
73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/12(月) 03:17:14.14 ID:AgEQI/BQO [17/40]
ぢゅっぢゅっぢゅる ぢゅぽっ ぢゅるっ ぐちゅっ ぢゅりゅっ
姉「はあ……」
男「休んでんじゃねーよ」
姉「はい……んっ、んっ、んむ、んふっ、んぅ」
ぐちゅっぢゅっぢゅぷぢゅぷぢゅるぢゅりゅっぢゅっ
姉「んあっ、はあはあ。なんで、髪の毛、引っ張るの……」
男「好きか?」
姉「え……?」
男「舐めんの」
姉「……好き、です」
男「聞こえねーな」
姉「舐めるの、好きです」
男「聞こえねー」
姉「お……うぅ、恥ずかしい」
男「じゃあやめる?」
姉「やだ……言うから、やめないで」
男「じゃあ言えよ」
姉「お、弟くんの……おちんちん舐めるの、好きでしゅ」
74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/12(月) 03:25:25.19 ID:AgEQI/BQO [18/40]
男「……かわい」
姉「あうぅ」
男「舐めねーのか?」
ぢゅっぢゅっぢゅっぢゅるっぢゅぷっぢゅるぢゅぷっぢゅっぢゅるっ
ぢゅりゅっぢゅぽっぢゅっぢゅっぢゅっぢゅるぢゅぽぢゅりゅっ
ぢゅるっぢゅっぢゅりゅっぢゅっぢゅっぢゅぽっぢゅぽっぢゅぽっ
姉「やっ、はあはあ……髪、引っ張らないで……はうぁ……」
男「聞こえね」
姉「おちんちん舐めさせてくだしゃい」
男「聞こえねー」
姉「舐めさせて、おちんちん舐めたい、舐めさせてくだしゃい」
んぢゅっぢゅるっぢゅぷっぢゅる
姉「はあはあ……んむ、んっ、んっんぅ、んはぁ……はあ……おちんちんおいひいれしゅ、あむ、んっんぅ」
77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/12(月) 03:37:54.50 ID:AgEQI/BQO [19/40]
男「どこにほしい」
姉「んっんっんあっむっ、くちの、んっ、んむっ、なか、んっんっんぅう」
男「なに言ってんのか分かんねーよ」
姉「はあはあ、んっ、くちのなかに、あむ、だひて、んっんっ、弟くんのみるく、んっんぅ、飲ませて、くだしゃ、んっ」
ぐちゅっぢゅぷっぢゅぷっぢゅるっぢゅぽっぢゅぽっぢゅっぢゅっぢゅるっぢゅっぢゅりゅっ
男「出すぞ」
姉「はひ、んっんっんぅくちのなか、んっんっ飲ませて、んっんっんっんっんぅ、んんっ! んぅ、んく、んく、んはぁ、はあ、はあ」
男「飲んだか?」
姉「しゅごく、濃くて、おいひ、かたでしゅ」
78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/12(月) 03:50:54.36 ID:AgEQI/BQO [20/40]
男「疲れた?」
姉「だいじょぶ……はあ……はあ……服、脱ぐね」
男「けっこう胸あるんだな」
姉「えへへへ」
男「パンツと糸引いてるんだけど」
姉「興奮、しちゃったからかな……」
男「舐めてただけで?」
姉「……うん」
男「俺には自分で弄ってるように見えたけど」
姉「あうぅ……」
男「……かわい」
姉「入れて、いい?」
男「ほんとにいいのか?」
姉「……だってとまんない」
男「ほんとに入った……」
姉「えへへ……いれちゃった」
男「なんだよそれ」
80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/12(月) 04:00:50.51 ID:AgEQI/BQO [21/40]
姉「動くね」
男「ん」
姉「んん、ふぅ、んっ、ふっ、んっ、はあぅ」
男「自分から腰振るなんてね」
姉「はっ、だって、はぁあ、きもちい、んんっ、今までで、はう、いちばん、きもちい、あっ」
男「すげー締まる」
姉「だって、はあっ、おっきいから、あっ、奥の、きもちいとこ、はあっ、当たって、あっ、もっと、んっ、ほしくなる、はあっ」
姉「あっあっはあっんっあっはあっ弟、くんっ、あっあっはあっあっきもち、い、あっはあっあっ」
姉「はあっあっ奥の、はっあっあっここ、きもちい、あっあっはあっあっあっあっはあっあっ」
82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/12(月) 04:10:09.90 ID:AgEQI/BQO [22/40]
男「どした?」
姉「はあ……はあっああ……軽く、イッた、かも……」
男「イキやすい?」
姉「ぜんぜん……中でイッたの、初めて、はあ……ふう、弟くんまだイッてないから、はあはあ……動くね」
男「今度は俺が動くよ、下んなって」
姉「うん……ありがと」
男「降りれる?」
姉「……やだ、離したくない、もっと繋がってたい」
男「じゃあそのまま倒れて」
83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/12(月) 04:24:13.91 ID:AgEQI/BQO [23/40]
姉「ん……よいしょ、んっ。ふう、よいしょ、んぅ」
男「痛い?」
姉「ううん、きもちいの。おっきいから、少し動くだけで、色んなとこ当たっちゃう」
男「ほんとに痛くない?」
姉「だいじょぶ。だから犯して?」
男「いいんだな?」
姉「優しいね。でも、たまには強引なとこも見せてほし、んあっあっはあっあっあっああ」
姉「急に、あああっ、動いちゃあああっはあっあっああっ激し、あっはああっああっあっはっ」
姉「おくっ、あっはああっおくの、あっきもちい、あっああっはっあああっはあっ」
姉「弟、くんっ、はあっ弟くんっあっあっはっあああっはあっ、あっああっしゅきっあっしゅきだよぅあっはっあああっ」
姉「好きっ、すきぃっ、あああっはあっ大好き、なの、あっああっ弟くんと、エッチ、はあっあっんあっしてゆ、あっ」
85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/12(月) 04:32:37.55 ID:AgEQI/BQO [24/40]
姉「あっあっあっ、弟くんっあっあっはあっ、ぎゅって、して、あっあっああっ」
姉「しゅき、だよぅ弟くんっ大好き、あっあっどこにも、はあっ行かないで、あっあっ離れ、ないでっはあっ」
男「イキそ」
姉「いいよっあっあっ中に出してっあっあっあっおねがい、はあっあっんくっあっ中、中に、あっんあっおねがいっ」
姉「あっあっはあっ出して出して、中に、はあっあっおねがいっあっあっあぁっあぁあぁあぁあああっ!」
87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/12(月) 04:41:25.14 ID:AgEQI/BQO [25/40]
姉「はあっはあ……っあ、はあ、はあ……ん、はあ……」
姉「……ついに、はあはあ……しちゃった……はあ……」
姉「中、いっぱい……えへへ」
姉「弟くん、弟くん」
男「んあ」
姉「眠い? ちょっと起きて」
男「あんじゃあ?」
姉「ぎゅって、して?」
男「ん、こんど、ねうい」
姉「……」
男「すかーすかー」
姉「起こすのも、かわいそうか。おやすみ、ごめんね」
ぎゅう
姉「(やっちゃったんだ、あたし)」
姉「(中に、いっぱい……)」
姉「(確かきょう)」
姉「(危険日)」
106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/12(月) 17:53:08.98 ID:AgEQI/BQO [29/40]
―――
あれからしばらくたった。やっぱりごまかさなければよかったと何度も思った。本当は、本当にやっちゃったんだって言いたかった。
弟くんはやさしかったし、私をひとりの女の子として見てくれるって言ったし、そこに甘えたかった。
でも、そうしたらきっと両親や親戚、まわりの友達だって白い目で見るだろうし、それがいちばんつらいのは弟くんだと思った。
酒に酔って姉を襲うなんて、たとえ私から誘ったと言っても、すべての矛先は弟くんへ向かうだろう。
弟くんはやさしすぎるから、きっと自分が悪いって言って私を守ろうとしただろう。他のなにもかもを犠牲にして。悪いのは私なのに。
私は、悪い女だ。
本当にばかな女だ。
だから私はもう弟くんのそばにいてはいけない。一緒に暮らしてはいけない。私がいるだけで、弟くんの笑顔を奪っていくから。
このどす黒くて重い十字架を背負って、一人で生きていくんだ。そう思って家を飛び出してからちょうど一週間になる。
弟くんは、どうしているだろうか。ご飯ちゃんと食べてるかな。風邪とか引いてないかな。元気に笑っているかな。
そればかりが頭の中でまるで自分の尻尾をくわえた蛇のようにぐるぐると回りだして私を縛り上げる。
私は誓った。この罪を一生かけて償っていくと。
私の中で眠るもう一人の命へ誓った。
108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/12(月) 18:33:04.99 ID:AgEQI/BQO [30/40]
検査薬を買った。陽性だった。何度も試してみたけど何度も陽性だった。これでもうあとには戻れない。
できればこの子を産みたい。できれば弟くんと一緒に育てたい。できれば三人で暮らしたい。できれば、もう一人、ほしい。
だけど、それは過ぎた贅沢だ。そんなことできるはずがない。きっと誰も認めてくれない。私だけでなく弟くんにも迷惑をかけてしまう。
なのに私はずっと自分の幸せだけを考えている。いけないことだとわかっていても、思考が、心が、どうやってお腹の子を育てていくかということにしか向かわない。
この家にはいられない。部屋を借りなきゃ。出産費用はいくらだろうか。仕事も休まなきゃ。会社の人にはなんて説明する? 貯金いくらあったっけ。
……だめだ。
普通は堕ろすべきなのに、私はもう産むことを決めている。だって私の子だけでなく、弟くんの子でもあるから。
家を出よう。でも住むところがない。友達の家にずっと泊めて訳にもいかない。家を出た理由なんて言えるはずがない。
そこまで考えて、ある人物を思い出した。
高校生のときの友達、親戚のお兄さんと出来ちゃった結婚した友達。彼女なら、もしかしたらわかってくれるかもしれない。
気付いたときにはもう私は彼女に電話をかけていた。
111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/12(月) 19:11:06.59 ID:AgEQI/BQO [31/40]
実を言うと彼女には弟が好きだということは伝えてあった。彼女が妊娠したとき、私はいちばんの相談役になっていたと思う。
互いに身内を好きになっていたから彼女とはなんでも話せた。結婚の報告を最初に聞いたのは私だったし、それをいちばんに喜んだのも私だった。
大丈夫。彼女なら認めてくれる。そう信じて現在の私の状態とこれからの予定を伝えた。
今でも弟が好きだということ。先日やってしまったこと。お腹に弟との子がいること。どうしても産みたいこと。
迷惑かけないから部屋を借りるまで、しばらく泊めてもらいたいこと。包み隠さずすべてを伝えた。
返事はこうだった。
世間の目は想像以上に厳しいこと。自分たちは結婚できたけどきょうだいでは結婚できないこと。
女ひとりで出産や子育て、仕事をこなすことは大変なんてものじゃないこと。
最後に、それでも本当にいいの? ということだった。
私は、すべて覚悟していると伝えた。
あんたには世話になったからね、あたしも出来る限り協力するよと彼女はやさしく言い、電話を切った。
私は急いで家出の準備を始め、しばらく泣いた。
112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/12(月) 19:18:30.16 ID:AgEQI/BQO [32/40]
飯おち
122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/12(月) 21:03:41.66 ID:AgEQI/BQO [33/40]
そういえばなんか家が空っぽっていうか静かっていう感じがしたのはこのところ姉と会っていないからだった。
たまに家をあけることはあったけど五日も帰ってこないので母親に聞いたところ
なんか家出っていうか自分探しっていう訳わかんねーことを始めたらしい。
いつもばかみたいなとこやってるけどやはり姉はばかだったらしい、自分なんか探さなくてもそこにあるじゃんね。
それでも俺にはなにも言わずに出ていくのはちょっとばかりさびしい部分もあって妙な気分がしばらく続いた。
それで現在俺は姉の部屋におじゃましているのだが部屋主のいないこの空間で一体なにをしたいのか自分でもよくわからなかった。
たぶん姉と一緒に出ていったであろう彼女の悪戯心を見つけたかったのかもしれない。
留守中、勝手に部屋に入った弟への罰としてびっくり箱的な何かがあると思い部屋を見回したんだけど
残念ながらそういうのは一切なかったので俺はさっさと部屋を出た。
このとき、もう少しよく見ていればよかったと思う。
124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/12(月) 21:19:34.78 ID:AgEQI/BQO [34/40]
家を出てから一ヶ月たった。
今はまだ彼女の家にいるが来週からついに一人暮らしを始める。
まだ家にいてもいいと言う彼女とその旦那だったが、いきなり知らない女が住み着いては
子供の教育上よくないと思ったので私は出来るだけ早く一人暮らしをしたかったのだ。
それでも私のことが気がかりなようで、借りる部屋は彼女の家からそう遠くなく、病院や駅も近い場所だった。
たぶん私のために一生懸命探してくれたんだと思う。二人には頭があがらない。
この家に来てから、困ったらいつでも頼りなよ、が彼女の口癖になった。本当にありがとう。
あと、実家に手紙を出した。元気だから心配しないでと書いた。念のためこの家の住所は書いてない。
……弟くん。
私のことは早く忘れて幸せになってください。
なんて。書けないよね。
元気かなあ。
127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/12(月) 21:40:45.01 ID:AgEQI/BQO [35/40]
姉から手紙がくることがときどきあった。
住所は書かれてないけど、消印からそう遠くないところで投函された模様。なにを考えているのやら。
まあこんな両親だから仕方ないのかもしれない、家出した娘をあまり心配してい様子だった。
父親にいたっては、いつまでも家にいるお前よりマシだと言い放つ始末であった。少し痛いところを突いてくる。
母親の、あんたも少しはお姉ちゃんを見習って自分のことを考えなさいという追撃の小言から
俺はジダンのマルセイユルーレットよろしくといったスルー技術により自室へと戦略的撤退を遂行させた。
このときの俺ならトラックに轢かれそうな子供を抱えて道路脇へ逃げ込む華麗なフットワークを見せたに違いない。
たぶん。
姉の手紙が待ち遠しい。
130 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/12(月) 22:03:15.79 ID:AgEQI/BQO [36/40]
一人暮らしを初めて二ヶ月ほどたった。
行動が制限されるような気がして、お腹の中のもう一つの命が宿っていると改めて実感させられる。
そんな私の心を知ってか知らずか、彼女は子供を連れてよく遊びにくる。
遊びにくる、というのは言い訳で実際は私の世話をしに来るのだった。
来る度にちょっとした掃除したり料理したり、生活用品を買ってくる。いいって言ってるのに。
また実家に手紙を送った。他愛ない平凡な内容。これについて彼女はいつも「助言」をしてくる。
弟には本当のこと言わないの?
うん。
そう決めたんだから。
ひとりで育てるって。
がんばれ私。
132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/12(月) 22:24:59.43 ID:AgEQI/BQO [37/40]
姉が俺の脳内から出ていかないのは、思えばあの日からだった。あの訳わかんねー悪戯をしたあの日。
あのせいで俺はおそらく姉を女として見始めていた。だからいろいろと好都合だった。
あのまま姉が家にいたら俺はいつかきっと本当に姉を襲うことになったと思う。それはないか、俺だもんな。
つーかだいたいあんなことされたら余計意識するっつーの。脳内で何度犯したことか。
……。
きもちわりいな、俺。
あーでも姉なら俺のこの抑圧された性衝動を本能に従いぶつけてもきっとありのままの俺として受け止めて
あんあんだめよ、きょうだいでこんなこと、いやっ、そこ弱いの、だめなの、あーれー
などと思ってもみないことを口にしてしまった。
長期休暇のせいで脳髄が腐り始めたということにした。
姉ちゃん元気かなあ。
僕は息子ともども元気です。
……
死ねっ!
139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/12(月) 22:47:53.34 ID:AgEQI/BQO [38/40]
家を出てから季節がふたつくらい変わったと思う。
お腹もすっかり大きくなり、けれど生活は彼女のおかげでだいぶ楽だった。いつか恩返ししたい。
そんな矢先、私の体に異変が起こる。
お腹が痛い。まかさ陣痛? でもまだ九ヶ月もたっていない。もしかしたら早産になるかもしれない。
一応彼女に連絡をとった。病院に送ってくれるとのこと。本当に助かる。
まだ出てきちゃだめよ。もうちょっと中にいてね。いい子だからもうちょっと我慢してね。
お母さんもがんばるから。
弟くん、元気な赤ちゃんを産みます。がんばります。
145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/12(月) 23:24:16.96 ID:AgEQI/BQO [39/40]
俺は流行に敏感な生物である。男たるもの常に最先端を生きるものであれ。
そう。俺はまさに今若者の間で大流行している例のアレである。ニー、じゃなくて
Not in Education,Employment,or Trainingである。穀潰しじゃないぜ、プータローでもないぜ。
……
言い訳させてもらおうか。なぜこの俺様が社会に出ないかを。
すべては姉のせいなのである。あの悪戯を機に、俺様は実の姉を性の対象として見てしまうようになってしまった。
ココ重要、なってしまったのね。けして俺の意志じゃないから。ホント、信じて。
察しのいい皆様はもうお分かりのことだろう。俺が社会に出ないのはつまり変態だからである。
姉に欲情する変態は社会に出てはいけない。そう思うのだ。責任感が人一倍強い俺様は社会の為にニートのフリをしているのだ。
……
ええ、ええ、はいはい、わかってますよ言われなくても。
姉が出ていって心がすっかりぽっかりすっからかんになったのでございますよ。ええ、ええ。
僕という不安定なコマを回すには姉が必要だったということですよ、はいはい仰るとおりでございますよまったく。
不安定なコマが社会に出たら弾かれますよね? みんながベイブレードで戦っているのに僕は画鋲なんです。
画鋲をコマみたいに回して遊んだでしょ? アレなんですよ僕は。薄っぺらのひょろひょろですよ僕は。
ああごめんなさい、姉上さま。社会にひとり立ち向かう貴女にあわせる顔がありません。
今の僕など貴女の親指で簡単に押し潰せますよ。
潰してください、こんな僕を。初めて僕だけに宛てた手紙を読む勇気のない僕を。
149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/12(月) 23:47:31.59 ID:AgEQI/BQO [40/40]
病院に連れていってもらい、念のため入院することになった。
たぶん大丈夫だと思うけど、彼女が許してくれなかった。
このまま帰して、あんたや赤ちゃんにもしものことがあったらどうするの。
この言葉に従ったことを、私は忘れないだろう。
病院で初めて迎えた朝、また陣痛らしきものが起こった。
それで、そのまま出産。女の子。
初めて抱いたときは本当にちっちゃくて壊れそうで、かわいかった。彼女に写真を撮ってもらった。
元気そうに見えたけど未熟児だから別室で検査するとのこと。私も疲れていたのですぐに眠ってしまった。
起きてから手紙を書いた。弟くん宛てにもう一枚書いた。
彼女が書け書けといつも以上に助言してくれたから。写真も添えた。
……ごめんね。
でも、がんばります。
151 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 00:11:31.77 ID:AHYFZxLAO [1/31]
読みます、手紙。
勇気を振り絞って読みます。背骨が折れるほど絞ります。むしろこんな背骨折ってください。
きれいに三つ折りにされた手紙は俺の背骨なんかよりずっと強かに見えた。
端の方が少し歪んでるけど。
手紙の中に写真が入っていた。
少し疲れ気味の姉と、ちっさな赤ちゃん。
手紙を読んだ。
こんにちは。お久しぶりです。写真みました?
この度、出産いたしました。女の子です。目元が父親に似ていてかわいいです。
急に家を出たのはこのためです。今まで黙っていてごめんなさい。
でも母子ともども元気です。そちらはどうですか?
ちゃんとご飯食べていますか? 風邪とか引いてないですか?
恋人は、できましたか? 余計なお世話ですね、ごめんなさい。
私はちゃんとこの子を育てていきますから、心配しないでください。
最後に、この事は両親にはまだ言わないでください。
いずれ私の口から直接言いますので。
それでは、また。お元気で。
意味がわかんないまま泣いた。
152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 00:34:51.51 ID:AHYFZxLAO [2/31]
姉が、出産? なにそれ聞いてねーよ。そりゃそうか、黙ってたんだから。
父親誰よ、彼氏か。いたっけ? いたんだろ。へっ。いないとか言ってたくせによ。意味わかんねーよくそ。なに?
なんなの、ねえ。なんなのさ? どういうこと? あの姉ちゃんが? ありえねー。いつから? 十ヶ月前って何日?
いま何月? 俺いつからニート? 姉ちゃん出てって何ヵ月だよコラァ。八? 九? なにそれ。
どういうこと? なんなの?
そういうことをぐるぐる考えていた俺は家中をぐるぐる回った結果、姉の部屋に来ていた。
なんなのよ、姉ちゃんよ。なにしてんのあんた。俺がこの数ヶ月どんな思いで過ごしたかわかってんの。
何故かイライラして、一周回って、沈んだ。
もうやだ、しにたい。なんなの、それ。
姉の化粧台の前に立った。引き出しを開けてがさごそとひっくり返します。
へへへ、ありましたありました、カミソリ。眉毛剃るのに使うんですよねカミソリ。へへへへへ。
しかもこのカミソリ、安全装置みたいな、皮膚を切らないようにするギザギザがないんですよ。うふふふふ。
うふふふへ。きれいだなあ。まっかまっか。ふは。なんかハイになってきたぞ。
うひゃひゃ。うでまっか! ひゃは! ぜんぶ染まってしまえ! まっか! うひゃひゃひゃひゃ!
せかいをまっかにしてしまえ!
154 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 00:42:19.09 ID:AHYFZxLAO [3/31]
あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ! うひゃひゃ!
ふっは! あははは! もっとあかくそまれ! あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!
破壊だ破壊! こわれてしまえ! しゅぱーん! ざくーん! うひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!
ああああー、ぼたぼた、まっかにぼたぼた、ひゃは! たまんねーな!
たまんねー! たりねーよ! あかがたりねー! みんなみんなそまれ! あかになれ!
うひゃひゃひゃひゃひゃ! あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!
ぼったぼった! ぶしゅうー! あははははははははははは!
もっとながれろ! この部屋を真っ赤に染めろ! ひゃははは! はっ! はは……ははは。
は……?
155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 00:50:43.30 ID:AHYFZxLAO [4/31]
なにこれ。
真っ赤に染まった箱を取り上げる。血を無造作に拭き取る。
妊娠検査薬? おーおー、こんなときにこんなもんを見つけてしまうとはね。ご丁寧にレシートまであらーな。
いったいいつ頃買ったものなんでごさいましょうかねー? うひゅひゅ。
……
………………
姉が出ていく数日前だ。まぁだからどうしたって話。俺には関係ねー。死ねカス。死ね俺。
はっはー。この部屋で死んでやらーな。死ね俺死ねっ! ぜんぶ関係ねーな!
しらねーよハハッ! 来客だかなんだかしらねー! 俺は死ぬんだからこの家にゃあ誰もいませーん、ひゃははは!
156 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 01:03:04.30 ID:AHYFZxLAO [5/31]
「なにしてんの!」
部屋に入ってきた人物が叫ぶ。うるさい邪魔するな。
「あんたそんなんしてないで一緒に来なさい!」
誰だよ。どこにも行かねーよ。
「お姉さんに会いなさい!」
おめーの姉なんざしらねーよ。
「あたしの姉じゃなくてあんたの姉! ほら早く!」
おれのあね? なんで? なんでおれがあうの?
「訳は途中で話すから、早く!」
知るかよ姉なんざ。俺は今ここで死ぬんだ。
「もー、ホントにあんたたち不器用なんだから!」
そう言うとその人物は早口でいろいろ話し始めた。もうホント早口。
息継ぎしてないんじゃねーのってくらい早口。少しは落ち着け。
「あの子はあんたが好きなの! 写真の赤ちゃんはあんたの子なの!」
158 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 01:15:02.73 ID:AHYFZxLAO [6/31]
何を根拠に信じればいい、そんなトンデモ話。昼ドラじゃないんだから。
姉ちゃんが俺を好きで、写真の赤ちゃんは俺の子だって? 意味わかんねーよ。
だいたい……
そこまで考えて、妙な疑問が浮かぶ。
あの写真、旦那が写ってなかった。
あの手紙、「私はちゃんとこの子を育てていきますから――」。
私たち、じゃなくて、私。
今までにないほど俺の脳はハイスピードに回転しはじめ、光速の域にまで達しようとしていた。
「姉は今どこに?」
「病院、来て!」
その人物に連れられて家を出たときには出血は収まっていた。
160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 01:29:16.49 ID:AHYFZxLAO [7/31]
その人物の車で病院へむかう。めっちゃ飛ばしてる。今何キロ? 本当に飛ぶんじゃねーのこのカブトムシ。
「写真だと元気そうに見えるけどね、その赤ちゃん、早産だった」
「早産……」
「それでね、今朝、急に……」
「言わなくていいです。わかりました」
きっと死んだんだ。
「……あんたまで死んだら許さないから」
「はい」
「あの子、ショックで倒れた。もうあんた以外の人じゃ助けられない」
「はい」
しかし速いなこのカブトムシ。どんなエンジン積んでるんだ? すげぇ、お馬さん追い越したよ。
162 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 01:37:21.43 ID:AHYFZxLAO [8/31]
―――
「え、はは……だめんなっちゃった……」
「強がらなくていい、あたしがそばにいるから」
「……もうだめだあたし、生きるいみないよ」
「そんなことない、大丈夫」
「……もうあたしには、なにものこってない」
「大丈夫だよ、大丈夫」
「は、はは……だめだ……なにも、ははは……ない、よ……」
「大丈夫、大丈夫だから」
「……」
「寝ちゃった、のかな」
「お前、この子ん家わかるだろ。弟くん連れてこい」
「え、でも……」
「いま出来るのはそれくらいだ。俺たちは医者やカウンセラーじゃない」
「……わかった」
「頼んだぞ」
「まかせて」
163 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 01:49:51.20 ID:AHYFZxLAO [9/31]
「着いた、こっちだよ来て」
カブトムシから降りて病院に入る。あの特徴のあるアルコールの匂いが漂ってくる。
「八階だからエレベーターで行くよ」
運よく1階に降りてきたエレベーターに乗り込む。八階行きのボタンを押す。
「これ、お守り。持っていって」
なんだか妙なキーホルダーをもらった。蛇が輪っかになっている。「今のあんたたちには劇薬だけどね。でも期待してるよ、がんばりな?」
男っぽいセリフだけど、口調はとてもやさしかった。
「はい」
「エレベーター出てまっすぐ行って突き当たりを右、その廊下の突き当たりの左の部屋」
「はい」
俺はここにきてようやく靴をしっかり履いた。八階に到着。ドアが開く。
ここは病院なのに俺はウサイン・ボルトよろしくといった全力疾走で姉の病室へむかった。
164 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 02:05:36.61 ID:AHYFZxLAO [10/31]
エレベーターからダッシュする瞬間、その人物が何か言ったような気がしたけど今はそれどころではない。
この先に姉ちゃんがいる。
俺が好きな姉ちゃんが。
急げ。走れ。体が重い。
看護師だ。どけ。
俺のマルセイユルーレットをなめるなよ。
それにしても遅い。廊下はそんなに長くないのに病室まで一向に距離が縮まらない。
こんなに走ってんのに。くそ。加速しろ加速加速。
病室まであと五メートルか? 三メートルか? あと少し。あとちょっと。
「おふっ」
本当にあとちょっとだったのに俺は物凄い勢いで盛大に転倒した。
あの人物はカブトムシで俺はテントウムシかよ。
外の異変に気付いたのか、病室の扉が開き医者と知らない男と知ってる女が出てきた。
166 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 02:19:52.36 ID:AHYFZxLAO [11/31]
医者数名と知らない男と知ってる女と、あとから来たあの人物たちに俺は見下ろされていた。
このとき俺の顔は真っ赤だったに違いない
「弟、くん?」
「お、おふぅ」
気の抜けた返事に看護師さんがひとり吹き出した。
「なんで、ここに……どうして」
「呼ばれた気がした」
「え……でも、だって」
医者数名が病室に戻る。知らない男と知ってる女とあの人物に見下ろされる俺。
「ぴーす」
蛇の輪をぶらさげてピースサイン。決まったね、コレ。
反応はいまいちだったけど。
167 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 02:27:25.80 ID:AHYFZxLAO [12/31]
「え、なに? どうなってるの?」
どぎまぎしてる姉はホントかわいい。なにこれ、めっちゃかわいい。両手を口元に持っていくとか反則だろ。
「俺、テントウムシだから」
間違えた。思ってもみないことを口走ってしまった。どうしよう。
「なんで、テントウムシ?」
「ええと、ホラ、見事な大転倒、ね?」
自分でも意味がわからない。幸いここは病室だ、誰かロボトミー手術してくれ。
「えと……その前に」
「なんじゃ?」
「起きたら?」
ひっくり返ったままの俺に、姉は言った。
169 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 02:35:56.42 ID:AHYFZxLAO [13/31]
しかしここで素直に立ち上がるのは俺じゃねーよな?
「でも俺、テントウムシだから」
「起きてよ、あたしが恥ずかしい……」
「あ、はい」
今度は素直に立ち上がる。だって姉が困ってるからね。女を困らせるのは男じゃねーよな?
「……どうして?」
OOPS! 姉はどうやら困った様子。なのに俺はなんだかハイ。久しぶりに姉と会ったからだな、きっと。
「体、大丈夫?」
質問には答えず、逆に質問する。
「……うん、体はだいじょぶ」
「どっか痛くない? 動いても平気?」
「……心が、ちょっと痛い」
気付いたら俺は姉を抱いていた。
171 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 02:55:28.21 ID:AHYFZxLAO [14/31]
「う……うう……ふっ、うっ、うぅっ」
なんか姉が俺の腕の中で痙攣している。しかし大丈夫だ。なにせここは病院だからな。痙攣も治してやるぜ。医者が。
「ふうっ、ひくっ、うぅっ、うう……うっ、くぅ」
大変だ。姉が泣いている。これはまずい。女を泣かせるのは男じゃねーよな? 姉を解放する。
「あぁ、ごめん。痛かった?」
「ひくっ……うっ、んう……くぅ、うっ、んく」
喋れないらしく、代わりに頭をうんうんと何度も縦に振る。どうやら相当痛かったらしい。
「ごめん、大丈夫? まだ痛い?」
「うくっ、だいじょぶじゃ、うう、ない、よ……ひくっ、くっ、いだい、よぉ……くぅ」
誰かこの中にお医者さまはいませんか? いや妖精はいませんか?
泣いてる人に杖を一振り笑顔をあげてください。
姉が俺の胸にしがみ付いて呻く。
「だんで、くっ、だんで、きだの、よぉ、ひっく、うぐ、ふぅう……だんで、ぎだの……んくぅ」
涙と鼻水と涎できれいなお顔がぐちゃぐちゃ。みっともないったらありゃしない。
でもこういうのも、いいか。
172 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 03:10:10.79 ID:AHYFZxLAO [15/31]
「あんで、うぐう……きだ、ひぐ、うぅっ、うっ、うぅう、なんべ、うっ、なん、べ、うぅっう」
なんで来た、と言いたいらしい。鼻が詰まってまともに喋れないのね。
「なんでって、そりゃあここの医者に大切な女を任せられないからね、俺じゃなきゃなおせないから」
「ううぅう、うぅ、うぅう」
大変だ。さらに泣いてしまった。ここは一発ボケて笑わすしかあるまい。
「おお、そんなに泣くほど感動してくれたのかべいびぃ。いいんだよ俺の胸で泣きなさい」
頭を撫でてやった。ザマァミロ。これには流石の姉も
「うんっ、うぅ、うんっ、うんっ、うぅうう、ううう、うんっ」
誰か助けてくれ。この女はもしかしたら本当に感動して泣いているのかもしれない。
視線をあげてあの人物に助けてを求めるが、もう誰もいなかった。
173 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 03:21:01.48 ID:AHYFZxLAO [16/31]
病院の廊下で男女が二人きり。ただ泣く女とただ抱く男。歌丸です。
この際歌丸でもいいから助けてくれ。この女を泣きやむ方法を教えてくれ。
「うっく、ううう、ひっく、あ、あいだ、かた、あいたかた、よぉ、うっ、うぅう」
「まぁ立ち話もあれだ。他の患者さんにも迷惑だから病室戻ろうか?」
「んぐ、うぅ、うんっ、うっ、あいたかた、ううう、あいたかた、あいたかたぁ、うぅう」
三歳児くらいの日本語しか使えないこの女はべったり張りついてしっかり捕まっててっきり蝉になったのではないかと思った。
……ちゃっかり俺の服で顔中から出た色んな液体を拭い付けていた。
175 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 03:32:25.31 ID:AHYFZxLAO [17/31]
病室に入った。誰もいない。がらんとしている。
俺は蝉をベッドに座らせようと思ったけどこの蝉、一向に離す気はないらしい。
一緒にベッドに横たわる体制になってしまった。
「うぐ、くう……うぅう、うぅ……ふぅ……」
ようやく落ち着いたらしい。でも手は離さないんだな。
「ひく、うぅ……ふぅ……んう……」
What's happened! 眠ってしまったようだ。それを見たら俺もなんか急に疲れた。眠い。
今日は色んなことがあり過ぎた。寝てもいいよね? 君も寝てるんだし。
176 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 03:42:43.73 ID:AHYFZxLAO [18/31]
夢を見た。変な夢。
海から出てきた蛇が自分のしっぽを食べる夢。
反対側を見ると実家が燃えていた。
すごい炎。
だけど家の中には人がいる。
それは誰か知っている
助けにいかなきゃ。
だって助けられるのは自分だけだから。
燃え盛る火炎の中に突っ込んでいった。
177 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 03:45:01.19 ID:AHYFZxLAO [19/31]
寝る。
落としてもいいよ。
残ってたら書くかも。
遅くなるけどね。
192 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 13:09:01.00 ID:AHYFZxLAO [20/31]
不快感に襲われて目が覚めた。
そんな俺とは逆にこの不快感の作り主は心地よさそうに寝息をたてている。
起こさないように離れる。服を脱ぎたい。
素晴らしい不快感である。色んな液体でぐちゃぐちゃになった服が醸し出す豪華な不快感。
ベッドから降りて上着を脱いだ。不快感の全貌が明らかになる。ずいぶんと汚したもんだ。
右腕から脱ぎ始める。次は頭。
少し迷って、左腕を一気に引き剥がした。赤と黒の肌色の左腕が現れた。
乾いた血は汚い。そう思う。だからどうしたって話だけど。
見つかる前に処分したい。ごみ箱に捨てる訳にもいかないしなあ。どうしよう。
病室の扉が開く。入ってきた人物と目が合う。そいつは、しかし慌てることもなく俺の手から不快感を奪い取り
代わりにどこかで買ってきたであろう新品のシャツを渡してきた。
そいつは自分の袖を捲り上げた。白い筋がいくつも見える。
道理で腕をざくざく切っている俺を見ても驚かないわけだ。
「起きる前に着替えた方がいいよ」
194 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 13:16:22.96 ID:AHYFZxLAO [21/31]
落ちる
210 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 19:01:28.04 ID:AHYFZxLAO [22/31]
「どーも」
もらったシャツを着る。傷が痛いけど気にしない。
そいつが俺の腕を見ている。
「あんなナマクラじゃ死ねないことくらいわかってますよ」
「そうでもないよ」
俺よりもたくさんの傷が付いていると思われる腕を軽く抑えてそいつは言う。
「動脈、平行に長く切ればちゃんと死ねる」
へー。
上着を着る。ポケットに異物があることに気付く。蛇の輪だ。
「これ、なんなんすか?」
「さあね」
うそつけ、知ってるくせに。
背後で何かが動いた。
「んあ、寝てた……」
「おはよ。じゃ、あとはがんばって」
そいつは病室から出ていった。俺はがんばらなきゃいけないらしい。
「なに話してたの?」
「この蛇。教えてくんなかったけど」
「みせて」
蛇を渡す。まじまじと蛇を観察する姿は初めて見るものすべてに興味を示す五歳児に見えた。
「どこが始まりでどこが終わりかわかんないね」
親指と人差し指で作った輪の中に蛇を飼った五歳児は言う。
「終わったと思ったらまた始まる」
妙なことをいう五歳児である。
212 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 19:22:52.44 ID:AHYFZxLAO [23/31]
「あたしは、もう、終わったのにね」
最近の五歳児はずいぶんと哲学的らしい。お腹を撫でながら五歳児は続ける。
「終わったんだ。なにもかも、終わったんだ」
蛇の飼い主だった女が男とともに病室に入ってきた。
「具合はどう?」
「うん、大丈夫。……あんまり」
五歳児の手に気付き、蛇の飼い主だった女が蛇みたいな目で睨んできた。
蛇も俺を睨んでいた。
「終わっちゃったね……」
現在の蛇の飼い主が蛇みたいに細い声で呟いた。終わりのない蛇が怒っている。
蛇女もまた怒っているようだ。ただ彼女の髪型はショートカットだったので俺は石にされずに済んだ。
「……」
石みたいに固まっているけどね。蛇に睨まれているからということにした。
217 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 20:01:48.84 ID:AHYFZxLAO [24/31]
この石みたいに重い空気をどうにかする方法を俺は知っていた。ただそれを行動に移すのが怖かった。
蛇がやれと睨む。こわい。
それにメデューサとおそらくリバイアサンの化身と思われる男もいるのだ。こわすぎる。
「この蛇には終わりがないのにね……」
「終わりじゃないさ」
俺は恐怖にも敏感な男である。生き残りたければ恐怖に従うべきである。
この場合、黙っている恐怖が行動に移す恐怖を勝っていただけに過ぎない。
「そんなこと……」
「次が、あるさ」
俺はひとりの人間でもある。この神々を前にして落ち着いてなどいられない。
だから言っても仕方ないことを、まったく意味を持たないこと言ってしまうことだってある。
「次なんて」
「あるよ」
石化の解けた俺はこの後いろいろ自分でも訳わかんねーことをべらべらべらべらべらべらべらべら
一方的に言い続けるのだが、それをすべて記すには、この余白はあまりにも少なすぎる。
いや書こうと思えば書けるんだけど、その言葉はあの場にいた俺以外の人間だけのものだ。あしからず。
220 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 20:24:44.47 ID:AHYFZxLAO [25/31]
「……それって、それって」
俺以外の人間が口を開く。若干、涙声だ。
「まぁ、つまりそういうことで」
んで、その人間に抱き付かれたって話。抱きつかれついでに唇もくっ付いたって話。
おー神よ神よ神様よ、この時間がずっと続けばいいのになんで君たちはいつもいつも邪魔するのか。
「あたしたちいるの、忘れてない?」
おのれメデューサ。
222 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 20:25:47.08 ID:AHYFZxLAO [26/31]
風呂おち
235 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 21:51:27.57 ID:AHYFZxLAO [27/31]
病院での一件からもうふた月も経つ。現在、俺は二人暮らしを満喫している。大変なこともあるけど気にしない。
俺は器の大きい男である。そうでありたい。二人暮らしをするにいたって、いろいろ決めた。
家事は分担、家賃も分担、食費も分担(ただし家主は俺よりも食う)、光熱費などは俺が全額負担(割に合わない)。
他には夜間の仕事禁止。これは家主が決めた。夜間の方が給料もいいんだけど
恥ずかしい話、夜の営みが少なくなるから。繰り返すがこれは家主が決めた。
あと互いに気を使いすぎないこととか、名前で呼び合うとか、夕ご飯は一緒に食べるとか、
お風呂は一緒に入るとか。そうそう、なぜか腕の傷はばれてた。教えてもらったのかもしれない。
それから、月命日には二人一緒に墓参り。いろいろ大変である。
中でもいちばん大変だったのは両親を説得すること。説得できなかったから俺も家出したってのは言うまでもない。
240 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 22:16:37.50 ID:AHYFZxLAO [28/31]
さらっと言ってるけどけっこう大変。でもこれでいいのだ。どんなことでも耐えられる。
だって好きな女と同棲だからね。ふはは。舞い上がっている俺であった。
でもこの部屋の家主であり好きな女である俺の嫁の方が舞い上がっていると思う。つーか燃え上がっている。
色んな意味で。いやひとつの意味で。これ以上は名誉毀損になるから言えない。
とにかく。
俺はたぶん世界で二番目に幸せであった。いちばんは嫁ね。異論は認めない。
いやいちばんは自分だよという人がいるなら名乗り出ていただきたい。叩き潰してやるから。
以上の惚気話しを述べるにあたって、俺は微塵も良心の呵責を覚えてはいない。
ふはは。
抱くことできず死んでいった我が子の分も嫁を幸せにし続ける所存である。
248 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 22:51:38.82 ID:AHYFZxLAO [29/31]
時間の経過は早いもので、私が家を飛び出してから二つ目の冬が来ようとしています。
手編みのマフラーを作ろうかと思いましたが、それよりも体で暖めてくれと旦那さんが言うので
本当に体で暖めようと押し倒したら、ごめん嘘、嘘、と慌てていました。相変わらずおかしな人です。
ふふっ。
おかしな人ですが、私はこの人が本当に好きなんですね。肌寒くなってきた今、それをしみじみ思います。
一緒に布団に入るとその温かさがいっそう増したように感じられます。
本当に、ありがとう。
なんて。口には出せないけど、いつもいつも思ってますよ。
輪になった蛇に祈ります。
この幸せがずっと続きますように。
255 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 23:15:33.80 ID:AHYFZxLAO [30/31]
親について本気出して考えてみた。
親というもの、なにがあっても子を信じるものであれ。
親というもの、なにがあっても子の味方であれ。
親というもの、なにがあっても子を見捨てることなかれ。
親というもの、子の責任をすべて負うものであれ。
まぁなんだ。子供をつくるのは親のエゴだと思う。子供をつくる親がいちばん子供のこと考えてないと思う。
だから親ってのはそーとー罪深い生き物。
ひとつの生をつくるってことはひとつの死をつくるってことだからね。
そこら辺ちゃんとしようぜ。
出来たから産みますって奴は死んだ方がいい。それか堕ろせよって思う。
子供だってそんな親に育てられたくねーと思うのよ。
そんな俺に数ヶ月後、二人目の子供が生まれる。出来ちゃったじゃないぜ、望んでつくったんだぜ。
だからその子はなにがあっても守っていく所存。
嫁ともども幸せにしてやる所存。
259 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/13(火) 23:39:00.07 ID:AHYFZxLAO [31/31]
今までいろいろありました。
本当にたくさん、数多くの出来事が私の頭の中を駆け巡ります。
中学生になったのを機に、ひとりでお風呂に入るようになったこと。
身内を好きになり、その気持ちを二人で慰めあっていた高校時代。
就職先を地元にしたのは、一人暮らしの費用を節約するためでなく実家に残るため。
私の記憶のすべてには、必ずある人が関わっていました。
あれも、これも、それも、どれも、すべて。
もう死んじゃってもいいくらい私は幸せです。だけどまだまだ死ねません。
だって。
あなたを残して死ねないですから。えへへ。
この子のためにも私は死ねません。
一足先にがんばってきます。今度は大丈夫です。安心してください。
だけどすぐに来てね。だから少し待っててね。
262 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/14(水) 00:00:24.80 ID:+JIoeVJeO [1/5]
生まれました、女の子。元気です。ほんと元気。
抱こうとする俺を蹴りつける様は寝相の悪かった君を彷彿させます。
まったく、泣けてくるぜ。ほんと泣けてくる。
だって見ろよこのほっぺた。このぷにぷに加減。ああ、見てもわからないか、ごめんごめん。
でもほんとすごいね、女の子ってすごい。お疲れさまでした。
すごい感動してる、俺。ほんとやばい。涙やばすぎ。
いや嘘、泣いてないって。泣く訳ないじゃんこの俺が。ははは……泣かねーよ。
いやしかしほんとすごい。生命って。ほんと生きてる。めっちゃ生きてるこの子。
だから言ったろ? 終わりじゃないって。そうだよ、終わりじゃないんだよ。
終わりかと思ってもまた始まるんだ。それの繰り返しだ。ほんとまじ終わりじゃねーぜ。終わらせねーよ。
わかってるって。俺のこたぁ気にすんな。疲れたろ、ちっと休めよ。ああ、おやすみ。
とまぁこれで俺も親になった。
ひとつの生をつくったのでひとつの死をつくったことになる。
でもその繰り返しだと思うのよ。だって終わりはねーんだから。
がんばれ俺。
子供は元気です。なのになんで今度は君が死ぬのかな。
おしまい
266 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/14(水) 00:06:40.35 ID:loYk0XnP0 [1/2]
姉退院したあと弟と同棲、親に相談、そのあとまたヤって子供ができる、
で、姉弟の過去の回想、出産。
でおk?
メモ帳にまとめようと思ったら>>1のID変わりすぎてめんどくさい
270 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/14(水) 00:12:12.72 ID:+JIoeVJeO [2/5]
ハッピーエンドなんてクソ食らえ!
>>266
そんなでいいんじゃね。俺もしらん
267 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/14(水) 00:07:16.19 ID:VVWszezb0
蛇は指輪でおk?
272 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/14(水) 00:15:46.54 ID:+JIoeVJeO [3/5]
>>267
ウロボロスでググレカス
別に指輪でもキーホルダーでもなんでもよかった
ちなみにセクロス編以降は全部蛇足な。蛇だけにな。
275 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/14(水) 00:41:48.53 ID:+JIoeVJeO [4/5]
そんなにハッピーエンドを望んでいたのか?
276 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/04/14(水) 00:48:48.74 ID:/BtQPZpS0
このままハッピーエンドで終わってたら、結局gdgd状態で続いてただけだったから、
話の流れ的には最後の締めで良かったと思う。
ただ、ストーリー的に最後なんかなぁああっぁぁぁあぁぁあぁぁ!!!!!ってなるww
280 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/04/14(水) 01:01:39.65 ID:+JIoeVJeO [5/5]
>>276
死ぬとこ詳しく描写するよりあっさり殺してそういう不快感を与えたかったのよ
ハッピーエンドのSSはいっぱいあるだろ。俺くらいバッドエンドにさせてくれ
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