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黒子「……好きにすれば、いいですの」-2
黒子「……好きにすれば、いいですの」
の続き。
の続き。
184 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/18(水) 00:59:36.05 ID:QONzfrqDo [1/16]
「おや、外出か御坂」
「はい、ちょっと学校まで」
常盤台中学校学生寮、玄関。
外出しようとした美琴は寮監に呼び止められて脚を止めた。
休日の昼下がり。出かける生徒は多いが、それでも美琴は目立つ存在だ。おまけに白井と共に、割と問題行動もある。
気をつけろ、と寮の玄関を出る者たちに告げる寮監が、ふと呼び止めてしまうのも自然なことだ。
とはいえ呼び止めた当人にも美琴にも、後ろ暗い様子はない。
美琴から見れば寮監は怖い対象でもあるが、生徒に愛情を注いでいるのはわかっている。そして寮監にして見れば、第三位の美琴も、手のかかる娘、の一人なのだから。
「学校に? 今日は休日だぞ?」
「そうなんですけど、研究所以外じゃ、学校くらいしか私の訓練場所がないので」
『超電磁砲』の出力は、そんじょそこらの電撃使いの比ではない。全力を出せば、周辺一帯の停電すら招くほどの大規模なものだ。
大袈裟と思うなかれ。
なにしろ前科あり。
疑いない。
そんなわけで、彼女が能力の訓練をしようと思えば、電撃使い専用の研究所か、発電所か、『超電磁砲』のための施設を持つ常盤台中学しかないのである。
185 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/18(水) 01:00:36.49 ID:QONzfrqDo [2/16]
「休日に訓練とは熱心で感心なことだが、どうしたんだ急に」
美琴が努力の人だとは承知しているが、休日には年相応に遊ぶことの方が多かったはずだが。
「あはは、ちょっと最近、思うところがありまして」
「ふむ?」
心配そうな顔を浮かべる寮監。
「あ、違うんです。えー、と……」
言っていいかなぁ、と美琴は少し考えてから、
「黒子が最近、努力してるんですよ。何に、というか、全般的に。だから私も、ちょっと頑張ろうかなって思いまして」
あのカフェでの衝撃の発言から一週間。
確かに白井は、いわゆる淑女になろうとしているらしい。
普段のシャンとした態度は変わりなく、しかし日常での気遣いや、いままで悩まされてきたセクハラ紛いの言動は影を潜めている。
今日も、風紀委員の非番だと言うのに、何やらマナーの復習にいく、とどこかに出かけていた。
美琴としては少し無理をしているようにも思えたし、こういう休日に遊びにいけないのは少し寂しい。セクハラ紛いの言動も、なくなればなくなったで物足りないものだ。
しかし、白井が頑張っているのは素直に尊敬する。
そしてその原動力が、『御坂美琴が笑顔でいられるように』と言うのだから、嬉しくもあり、気恥ずかしくもあり、
(私も黒子が笑っていてほしいと思えるような人にならないとね)
何よりも、自分への刺激となった。
186 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/18(水) 01:01:30.25 ID:QONzfrqDo [3/16]
「ふむ。よい方向への刺激のようだから、詳しくは聞かないこととしよう」
野暮だからな、という寮監の言葉に美琴は微苦笑。
休日でもスーツ姿な寮監が、野暮という言葉を使ったのが、どこかミスマッチで可笑しかったのだ。
「じゃあ失礼します」
「ああ、気をつけてな」
頷く寮監に軽く一礼して、門をくぐる。
外に出て空を見ると、抜けるような晴天だ。
(……気をつけて、かー)
第三位の自分が気をつける相手など、それこそ両手で数えるほどしかいない。
しかしそれは、まだまだ自分より上がいるということ。
「一方通行に勝てるくらいにはならないと、ね」
小さく口に出す。
それは壮大というよりも、無謀なこと。物理現象である電撃は、ベクトル操作に通用しない。
だが美琴が言う勝つとは、ある意味ではその無謀を指し、ある意味では違う。
187 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/18(水) 01:02:20.25 ID:QONzfrqDo [4/16]
右手ひとつで、一方通行に立ち向かった少年。
彼が持っていたあの意思を、自分でも体現できるように。そして、今度こそ大切なモノを護れるように。
そう、せめて、
(あのカフェの時の黒子みたいな『決意の顔』ができなくちゃ、愛想尽かされるわ)
目指すは、少年と後輩。
御坂美琴は軽い足取りで、彼女の目標に踏み出した。
188 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/18(水) 01:02:54.42 ID:QONzfrqDo [5/16]
「あぐっ! ああっ! はうっ!」
土下座でもするように顔を枕に埋め、尻を高くあげられた白井が、途切れることなく声を上げ続けている。
涙を流し、辛そうに――痛みのせいではなく――顔を歪める少女の口から漏れるのは、苦鳴にも似た意味なき言葉。
背後から腰をたたき付けられる度に響くグチッ、グチッ、と言う鈍い水音が、その言葉を艶めいたモノに塗り替えていた。
彼はワイシャツもズボンも脱いでいない。それがゆえに、屈辱的な声と音は、ダイレクトにその源泉――白井に届いている。
「ああんっ! あんっ、あっ、ああっ、あはぁっ!」」
しかし白井はそれを抑えることができない。
一定の速度を保った腰は、事が早く終わることを予想させず、口は閉じるどころか、後ろから前に通り抜ける快楽を喘ぎとして吐き出すことに終始していた。
そう、喘ぎだ。
「うんっ! あっ、あっ、あっ、き、気持ちいっ、あっ、んんっ、なっ、なぜっ、ですのぉ!?」
意思どおりに動かない唇は、内心にだけにしておきたい言葉を、なぜかよく外に吐く。
辛うじて言い切ることだけは耐える白井だが、誰が見ても彼女が快楽を得ているのがわかるだろう有様だ。
呼吸するためか、枕に顎だけを乗せた彼女。
眉を顰め、涙を流し、喘ぎを止めようと歯を食いしばっている。
しかし。
189 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/18(水) 01:04:00.60 ID:QONzfrqDo [6/16]
「あっ! くふっ! はぁっ!」
眉の角度は甘く垂れ、
「んはぁっ! あっ! あうんっ!」
涙濡れる頬は紅く、
「んんんっ! んあっ! うぅんっ!」
食いしばったがために篭る力は返って締付けを強くしてしまう。前後する快楽を、より身体に響かせてしまう。
「んはあっ!」
彼の両手が、まだ芯の残るやや固めの尻を、それぞれ左右外向きにこね始めた。
肉は薄くとも、そこは溶けたオンナの身体。
広げれば、剛直が突きこまれている肛門周辺はより剥き出され、閉じれば肉棒の幹部分を挟むほどには、尻たぶが寄る。
「くあっ! ああんっ! すごっ……くっ、ちがっ、んんん! ふあっ! ううんっ!」
中だけではなく、入り口周辺までペニスで擦られた白井の声が、より高くに変化した。
彼からも、白井自身も見えない太ももの内側。
しかし秘裂から溢れた白濁の蜜は、高い粘性ゆえに白井に太ももを流れているのを感じさせ、その量ゆえに彼のズボンを濡らして彼にそれを悟らせてしまっていた。
190 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/18(水) 01:05:24.24 ID:QONzfrqDo [7/16]
「ああっ! んんんっ! いやですのっ! わたくしぃっ!」
彼に何か言われるよりも先に、白井が強く首を振った。
枕を支点にしているため、それにあわせて尻が左右に揺れているのにも気がついていない。
いやそれはむしろ無意識か。
後ろ手に縛られた白井は、そうすることで身体を、乳房をシーツに擦り付け、肛門以外からの快楽を得ようとしているのだ――自分が濡れているのは肛姦ではないと、言いたいがために。
「あうっ! あんっ! あっ! あっ! んはぁっ」
白井が膝をつかい、自ずから腰を上下に揺らし、あるいは、彼の動きにあわせて左右に振り始めた。
重力の助けを得て、お椀形になった乳房。小さく揺れるその硬くとがった先端は、シーツに掠るか掠らないかのところを、行ったり来たりしている。
乳首への刺激ゆえに濡れている。
そう言うかのように、白井は積極的に腰を振る。尻を上下に動かす。彼が突きこむのにあわせて後ろに突き出し、抜くにあわせて前に引く。
「うぅんっ! あっ! あっ! ああんっ! んあああっ!」
喘ぎも、水音も、尻がズボンにあたる布の音も、どんどん大きくなっていった。
191 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/18(水) 01:06:29.01 ID:QONzfrqDo [8/16]
「……」
彼はそこまできてもなお、白井に声をかけない。
揶揄することもなく、許す言葉をかけるでもない。
挿入から今まで。
彼は無言のまま、速度を変えないまま、ただ尻をこねる手だけを変化させ、律動を繰り返していた。
それは彼女に情けをかけているのではない。
逆だ。
ここで、白井に無理に何かを言う必要はないからだった。
今日の白井の精神の変化は、彼にとっては明白かつ、予想通りの反応である。
白井は強い。
それは彼女のレベルが高いから、というそんな一面的なものでは、もちろんなかった。
彼女と同年齢で、彼女ほど聡明で、誇り高く、心の芯に折れないモノを持ち、しかしそれに寄りかからない確たる己を持つ者は、まずいないだろう。
事実、彼女はこんな目に遭って二週間、それを誰にも悟らせていないのだ。
御坂美琴と信頼しあう友人で、同室であるにも関わらず、だ。
それほどの彼女は、だが残念なことに、聡明すぎて、誇り高すぎて、芯が強すぎた。確たる自分を、持ちすぎていた。
192 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/18(水) 01:07:22.84 ID:QONzfrqDo [9/16]
聡明だから、薬の影響で周囲に露見しないよう、自ずから自慰を行う。
いくら美琴を想って行為しようとしても、実体験は強烈な彼のとの一件だけ。
そうなれば、それを思い出すのは当たり前だ。よかれわるかれ、それは強い思い出なのだから。
誇りが高いから、自分の弱さを認めなかった。
いくら強くあろうとも、彼女はまだ中学生になったばかりなのだ。
どんなに取り繕うとも、汚される恐怖に、その想像に、その現実に、耐えられるわけがない。
しかし彼女はそれを認めない。自分は強くあり、美琴を護ることを誇りとし、他の誰も巻き込まないと決めている。
だから、ただただ強い自分のままで、耐えるしかない。
芯が強いから、彼に屈服しない。屈服しない以外の選択肢が、存在しない。
快楽を与えられば抵抗する。羞恥心を煽れば抵抗する。免罪符を与えれば抵抗する。
肛姦でイカされようとすれば、抵抗する。
そしていま、腕を縛られ、能力も封じられ、薬で性感を高められた彼女は、抵抗している。
自分で快楽を得ることで、尻穴でイカされるという事実に、抵抗しようとしている。
結果的に、自分から尻を擦り付けているという事実に、目を瞑って。
193 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/18(水) 01:08:16.63 ID:QONzfrqDo [10/16]
今日が終わっても、彼女は変わらない。変わることが出来ない。
薬を与えれば今日のことを思い出して自分を慰める。そして自己嫌悪すると同時に『陵辱の記憶に美琴への想いが負けた』という観念に囚われ、自涜をやめることができないだろう。
美琴を見れば折れかけた今日の自分を思い出すだろう。次は折れないと決意し、折れかけた自分を恥じて、そして心を磨耗させていくだろう。
鏡の前では、今日を乗り越えたことに安堵するだろう。尻でイカなかったというだけで、快楽を得たことに違いがないことに、目を向けないまま。
そして何より、それらのことをすぐに自覚するだろう。確たる己を持つがゆえに。
なんのことはない。
194 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/18(水) 01:09:22.26 ID:QONzfrqDo [11/16]
白井を追い詰めるのは、白井自身だ。
195 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/18(水) 01:10:03.75 ID:QONzfrqDo [12/16]
「ふあっ! ああんっ! あはっ! あっ、あっ、あっ、はぁんっ!」
そんな彼の視線に気がつくことなく、白井の声が早くなる。高くなる。
腰の動きが――彼女の今の意思の中では乳首への刺激が――大きく、強くなる。
ぐっ、とこね続けていた彼の手が、逆に尻を強く掴んだ。そのまま、白井の動きに逆にあわせ、激しく前後に揺さぶった。
グポッ、グポッ、と音が響く。乳首が強くシーツに擦れる。
「ああっ!」
一気に快感が強くなり、白井が強く首を振った。
汗を吸った髪がバサバサと、吐息の混じった空気を大きく揺らす。
「あはあっ! あぅんっ! あ、当たってるますのっ! ああんっ!」
完全に白濁した愛液が、白井のふとももにも彼のズボンにも触れることなく、珠となって股間から垂れ落ちた。
強くたたきつけられる腰により、それ以外の蜜が、飛沫となってシーツに散る。
「ああっ! いやあっ! だめですっ! そんな強くっ、だ、だめですのぉっ!」
言葉は拒絶。しかし声は甘く蕩け。
「あっ! ああんっ! はぁっ! もうっ! もうっ! あっ! ああああっ!」
両足の指先が、くっ、と力を入れて曲がる。
汗の浮いた白い背中が、ぐぐっ、と仰け反った。
そこに、彼が一際強く腰を突きこんだ。
196 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/18(水) 01:10:48.46 ID:QONzfrqDo [13/16]
「はうっ!?」
白井が大きく目を見開き、ヒクヒクと震えた肛門が、根元まで突きこまれたペニスを、ぎゅう、と締付ける。
その瞬間。
ドクン、と白井の中で、大きな拍動が響いた。
熱いものが直腸の奥に叩きつけられる。
同時に彼が唐突に白井に覆いかぶさり、いままで尻を掴んでいた両手で、乳首を、きゅう、と抓り上げた。
「!」
胸から響く、痺れるような快感。
(あっ――)
白井の中で、ギリギリまで高まっていた性感が、爆発した。
「ああっ! ああああっ! イ、イクっ、イキますのぉっ! ああっ! イクっ!」
手を縛る布を千切れんばかりに動かし、絶頂する白井。
視界が真っ白に染まり、甘く痺れる電撃が、全身を駆け巡る。
197 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/18(水) 01:12:17.32 ID:QONzfrqDo [14/16]
「っ! っ! っ! っ!」
グリグリと尻を押し付け、膝でシーツを蹴るように、何度も何度も痙攣した。
背を覆う彼を押しのけるように限界まで身を反らし、身体を震わせる。
「っ!」
そして彼の歯を食いしばる音が一度だけ響き、身体の中で震える剛直が、最後の一滴までを吐き出したのと、時を同じくして。
「あっ――あぁ、あっ、あ……ぁ……あぁ……」」
白い意識の極みに達していた少女が、ようやく降りてきて、がくり、とベッドに身を沈めた。
「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ……」
目を閉じ、肩で息をする白井。ピクン、ピクン、と肩が震えている。
意識があるのか定かではない状態の彼女の口元。
そこには、この部屋に入ってきたときとは考えられないような、蕩けた笑みが、確かに浮かんでいた。
207 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/01/26(木) 20:35:08.62 ID:nAI/Ynsfo [1/11]
肩まで湯に浸かった白井は、脱力感に任せて、バスタブにもたれかかった。
ちゃぷっ、と湯気をたてる水面が揺れる。入浴剤を落とした湯は、赤く、そして薔薇の香り。
バスタブは、白井が脚を伸ばしてちょうどという程度の大きさだ。
ここは、彼と会うホテルではない。寮とは逆方向の、小さなビジネスホテルである。
彼と別れ、すぐに駆け込み、シャワーを浴び、湯舟に沈んだ。
「……」
背もたれながらも、俯いている白井。
投げ出した脚と、太股の間にだらりと下げた腕。そして頭だけが、かくんと落ちたような姿勢は、まるで疲労という言葉をを体言しているかのようだ。
解いて垂れた髪で、少女の表情は伺えない。
「……。……」
しかし覗く唇が、何事かの繰り言を紡ぎ続けている。
208 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/01/26(木) 20:36:01.08 ID:nAI/Ynsfo [2/11]
大丈夫ですの。
耐えられます。
お姉様。
209 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/01/26(木) 20:37:32.93 ID:nAI/Ynsfo [3/11]
湯舟に浸かってから身じろぎひとつしていない彼女の周りに響くのは、その繰り言のみ。ちゃぷ、と水音もたっていない。
壁にかけられたシャワーヘッドも、確かに使った形跡がありながら、もう垂れるような水滴が残っていなかった。
どのくらい、ここでこうしているのか。
それは白井にも、わかっていないのだろう。
「……。……」
そんな、終わろうとしない彼女の声を途中で途切れさせたのは、ほんの小さな音だった。
心地よい温度の湯。そこから立ち上る湯気は天井に集まり、液体に戻る。
設計上のミスではなく、使用劣化によって小さく凸凹のできた天井は、その僅かに集積した水気を、いつしか水滴に変えていた。
音は、それが落ちて、バスタブを叩いたもの。
小さな小さな、水音だ。
しかしそれが何かの契機になったのか。
――よう。起きたか
「っ!」
白井の耳に、彼の声が甦った。
210 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/01/26(木) 20:38:41.84 ID:nAI/Ynsfo [4/11]
――大丈夫か? 悪かったな、いきなりシちまって。我慢できなかったんだよ
目が覚めたとき。
ベッドの中で、彼は服をきたまま、自分は全裸のまま。
左隣に寝転ぶ、彼。
シーツから、そして俯せた自分に重ねるように置かれた彼の右腕から伝わる、人肌の温もり。
驚き、力が入った拍子に、尻からゴプリと音をたてて漏れたモノ。
すべて、克明に思い出せてしまう白井。
振り払う前に次の声と記憶が響く。
――そうだ、参考までに教えてくれよ
そう問う彼の顔には、なんの色もない。ただ『気になったから』というだけの視線。
彼の唇が、質問を吐き出そうとする。
「っ!」
白井は強く首を振った。
だが頭の中の映像は止まらない。
残酷な台詞は、気軽投げ掛けられた。
211 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/01/26(木) 20:39:38.91 ID:nAI/Ynsfo [5/11]
――処女より先に尻を犯されるのって、どんな気分なんだ?
212 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/01/26(木) 20:40:14.67 ID:nAI/Ynsfo [6/11]
「うぅぅぅっ!」
喉の奥から絞り出すような声をあげ、ぎゅっ、と両腕で己を抱きしめる白井。
バスタブから背を離す。
顔をさらに俯かせる。
歯を食いしばる。
あまりに強く噛み締めた奥歯が、ミシリ、と軋む。
それでもなお、心の慟哭は治まらない。
「……っ」
白井の喉が震え、言葉が溢れようとした。
彼女は腕に爪が食い込むほど強く力をこめる。
耐える。
耐える。
耐えた。
だが。
「っ!」
そうして力をこめた少女の神経が、ズキリと痛みを知覚した。
彼女にとっては、この二週間で馴染みのある痛み。
指、ビーズ、バイブをはじめて使ってから、それに慣れるまでは感じていたものである。
今日はそれよりも大きなものだったから、痛んでもおかしくはない。
処女より先に――
治まりかけた衝動が再び白井に襲い掛かった。
213 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/01/26(木) 20:41:36.92 ID:nAI/Ynsfo [7/11]
「っ!」
白井は身を折って、顔を湯に浸けた。浮かんだ髪がゆらりと拡がる。
声は水中では形にならない。
彼女の顔の左右で、ボコボコと泡が咲く。
太股の間で、両拳が湯圧ゆえに緩やかに、バスタブの底を何度も殴った。
屈辱、嫌悪、悔恨、恐怖、怨嗟。
負の感情がないまぜになった中、白井は何度も声をあげ、泡を咲かせる。
美琴に助けを求めようとした自分が情けなかった。
尻を犯された直後に、泣き叫んだ自分が悔しかった。
何よりも、そんな中で快楽に喘いでしまった自分が哀しかった。
いっそ、折れてしまった方が楽なのかもしれない。
彼との『契約』は、満足させることだ。スルことさえスレば、美琴の安全は保証してくれるはずだ。
いやむしろ、そういう風に積極的に、従順になった方が、彼も喜ぶかもしれない。
それもまた、美琴を護る手段なのかもしれない。
(あぁ……)
ミシミシと、心が悲鳴をあげ、胸の奥に再び、あの時自分に囁きかけてきた黒点が拡がっていく。ジクリ、と甘い毒が、心に滲んだ気がした。
214 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/01/26(木) 20:42:41.40 ID:nAI/Ynsfo [8/11]
しかしそれを止めたのは、
――黒子
やはり、瞼の裏に焼き付いた、美琴の笑顔。
折れた自分がその笑顔を向けられて、自分を恥じないでいられるのか?
「っ!!!」
白井は一気に顔をあげた。
「ぷはっ! はっ――はあっ、はあっ、はあっ、はあっ」
いつの間にか限界以上に息をとめていたらしい。機関銃のように呼吸を繰り返す。
顎先と髪先からポタポタと水滴が落ち、震える肩とともに、湯の水面が小さく波立った。
「……」
いずれ必ず純潔を。
今日の経験で、それは予想ではなく、想像のつく確信と変わっていた。
犬のように這い、固いモノを押し当てられ、一気に貫かれる。
それを明確に想像した白井の背筋に悪寒が走り、
「――っ」
パン、と両の頬を叩く白井。
215 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/01/26(木) 20:43:39.86 ID:nAI/Ynsfo [9/11]
「しっかりしなさい白井黒子! お姉様を護るのでしょう!」
撫で回された身体は、シャワーで清めた。
奥に出された白濁は、慣れてしまった手順で洗浄した。
目を覚めました瞬間に不覚にも温かく感じた彼の体温は、湯の熱で拭い去った。
「わたくしが護ってみせますの……!」
もう大丈夫だ。
もう折れたりしない。
絶対に御坂美琴の幻想を、殺させはしない。
――この動画撮った場所、使えそうだよな。
――今度から行く前に連絡しろよ。大丈夫だったら俺も行くから。
別れ際に告げられた言葉。
明日からは、自涜ではなく、彼からの行為が日常になる。
その日常を繰り返した先にあるのは、貪り尽くされた自分自身と、美琴の笑顔だ。
彼のことを話す時は白井が嫉妬してしまうほどかわいらしい、笑顔だけだ。
「……」
それでも――いや、それだけで、どこまで浅ましく、汚らわしく、惨めに堕ちたとしても、耐えられる。
湯を含んで、簾のように垂れた前髪。
その向こう側にある瞳には、再び決意の光が灯っていた。
216 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/01/26(木) 20:44:35.77 ID:nAI/Ynsfo [10/11]
……決意に囚われ、決意にすがりついた光が、宿っていた。
242 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/01(水) 02:18:39.58 ID:UCBx2BnAo [1/16]
「ん~っ」
バスから降りて美琴は大きく伸びをした。
夕暮れの空気が、胸に染み込んでいく。
「ぷはー」
肺いっぱいの空気を吐き出すと、美琴は身体の中にあった淀みのようなものが消えたことを実感できた。
学園の園から出ている巡回バスは、施設としての居心地はよいものの、美琴にはあまり落ち着ける空間ではない。それは乗客の少ない休日で同様である。
常盤台も、学園の園も、そこから出ているバスも、どうにも学校という感覚がついてまわるせいだ。
彼女は超電磁砲。学校が纏われば、どうしたってそこに行き着く。
もちろん能力自体は美琴の誇りなのだが、肩書というのは往々にして肩を凝らせてくるもの。そして美琴はそういうのが苦手なのである。
「さて」
ポケットから携帯を取り出して、時刻を確認。
今日は休日なので普段より門限が遅い。まだ余裕があった。
美琴は携帯とは逆のポケットを探り、食事券と書かれたチケットを取り出した。
以前、何かの取材協力の時に正規の報酬とは別に渡されたものである。なんでもスタッフの親類が開店しているものらしい。
243 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/01(水) 02:19:53.42 ID:UCBx2BnAo [2/16]
(みんなを誘って、これに行ってみようかな)
有効期限が近い。それに、訓練での疲労もある。
せっかく出てきたのだし、いつものメンバーと連絡をとって夕食というのも悪くない。
(黒子の復習ってのも、もう終わっただろうしね)
朝から出掛けていたのだから、まぁ大丈夫だろう。
そう思って、とりあえず待ち合わせ場所になりそうなカフェにでも、と顔をあげる美琴。
踏み出しかけたその脚が、
「あ……」
目の前の交差点を見て、とまった。
美琴の口元に、本人も無自覚であろう喜びの微笑みが浮かぶ。
赤信号待ち歩行者の群れ。
その中に、見覚えのあるツンツン頭の姿があった。
244 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/01(水) 02:21:22.40 ID:UCBx2BnAo [3/16]
「ほんとによかったのか? 別に上条さんだって、餓死するほど貧しくはないのですよ?」
「だから良いって言ってんでしょうが! 何回言わせんのよアンタ」
「いやでもやっぱり、年下に奢って貰うというのはですね」
「食事券自体がもらいもんなんだから奢るも奢らないもないわよ」
交差点まで走って捕まえてうっかりビリビリしそうになるところを何とか抑えて。
夕食の食材を買いに行くという上条を強引に誘った、その帰りである。
そもそも奢り、というか食事券があるということで誘ったというのに、この男は店に入った当初から支払いのことばかり。
(なんでコイツ、バーゲンバーゲン言う割に、そういうところだけは気にするのかしら)
かなり緊張しながら誘ったのに。
照れ隠しで喧嘩腰にならないように一生懸命我慢したのに。
せめて料理を楽しんでくれたら食事の好みも知れようものだが。
救いらしい救いと言えば、すべて食べ終わった後に、
「すげぇ美味かった。誘ってくれてありがとうな、御坂」
と真正面から告げてくれたことくらいだろう。
そこまで思い出した美琴の頬が、かあぁっ、と染まった。
(な、なんだってコイツ、ああも真っ直ぐ人の目を見られるのかしら。そんな、たいしたことしてないのに。ま、まぁ、そういうところも好……き、きらいじゃないけどさ)
みょうな言葉がするりと頭に浮かびかけて、美琴は慌てて首を振った。
しかし抑えきれなかった何かが電撃に変わり、ビリビリと前髪を鳴らす。
245 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/01(水) 02:22:55.11 ID:UCBx2BnAo [4/16]
「あ、あの御坂さん?」
「ななななな、なによ!?」
「いえ、なんでいきなりビリビリしてんでしょーか、と」
「なんでもいいでしょ!? アンタには関係ないでしょーが!」
隣で高圧電流を流されて関係ないもないが、まぁそこは乙女理論。感情は理屈は凌駕するものである。
普段であればここから美琴が突っ掛かり、恒例の追いかけっこが始まるところなのだ。
だが、美琴は、はっ、とした表情を一瞬だけ浮かべて、さらに続こうとする乱暴な言葉を止めた。
(って、だめよ御坂美琴! 素直になるって決めたじゃない!)
白井の、あの決意の顔を見たあとに、自分で決めた小さな決まり事。
彼女のように凛とした目標ではないものの、どうしてか自分の中で、一番に変えなくちゃ、と思った事柄だった。
美事は背筋を伸ばし、ゆっくりと深呼吸。。ジジジ、と電気が納まっていく。
「ご、ごめん。ちょっと、驚いちゃってさ」
努めて冷静に、美琴が言った。
しかし、
「……おい、御坂。大丈夫なのか? どこか具合が悪いのか? 熱でもあるんじゃないんだろうな」
極めて真剣な上条の口調と表情。
「あ、アンタねぇ……」
ヒクヒクと口の端がひくつる美琴であった。
こうなれば、抑えた努力は無意味だ。いくら決意しても、短期間で人は変われない。
美琴が(言葉で)噛み付こうと口を開け――
246 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/01(水) 02:23:42.32 ID:UCBx2BnAo [5/16]
――ぴと、と額にちょっと硬くて、柔らかい感触。
247 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/01(水) 02:24:58.15 ID:UCBx2BnAo [6/16]
「え……」
「別に熱くはないけど、でも、引きはじめだったらやばいよな」
視界には大きく、彼の右手。
自分を救ってくれた、感謝してもし足りない男性の、右手だ。
「……」
「うーん」
「……」
「って、あれ? なんかだんだん熱くなって……」
「ああああああアンタなにやってんのよ!」
のけ反って顔を離そうとする美琴。
「わ、ばか動くなって。よくわからないだろ?」
しかし上条は、さらに近づいて右手を押し当ててくる。
「ぁ……」
見えた彼の目は、真剣なそのもの。
本気で心配してくれているのだ。
――素直にならなくちゃ
小さな決意が聞こえてくる。
248 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/01(水) 02:26:39.42 ID:UCBx2BnAo [7/16]
「……」
美琴の脚が一瞬だけ、後ろに下がるかどうか迷い、
「……だ、大丈夫よ、熱なんか、ないから」
その場に留まった。
半端に持ち上げた両手はゆっくりと降ろされ、そのまま腰の後ろに。
手指を組んで、居心地悪そうに、しかしどこか柔らかな雰囲気で、もじもじと。
「そうなのか? でもなんかやけに熱いんだけど」
「だい、じょうぶ。それ、風邪なんかじゃないから」
美琴はそこで言葉を切り、小さく、本当に小さな声で、続けた。
「……お医者様でも草津の湯でも、治せない病気だけど」
「ん? なんか言ったか?」
「……なんでもない」
「?」
首を傾げる上条。
「まぁ、大丈夫ならいいけど、無理すんなよ?」
「わ、わかってるわよ」
彼が右手を離す。
「……」
すうっ、と体温がなくなっていくことを寂しく感じてしまう。
249 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/01(水) 02:28:21.88 ID:UCBx2BnAo [8/16]
(ん……?)
そんな中、彼の右手が掻き交ぜた空気に、ふと、かぎなれた香り。
赤くなっていた美琴が、訝しげに眉をひそめた。
かなり薄くて、気のせいかとも思ったそれは、
(黒子の香水?)
自身と白井の部屋にいつも香っているものだ。
元々、常盤台は化粧が禁止だ。同様の理由で香水もアウトだが、そこは常盤台の伝統。『気のせいかと思うほどほんのりと』香水を振る技術も確立されていた。
この香りは美琴にとって、馴染み深いゆえに気がつきにくく、逆に気がつけば間違いないと確信が持てる。
(……なんでコイツから?)
上条が自分からつけているとは初めから考えない。そもそもこれは女性用だ。
もちろん市販品なので、彼の周りの誰かがつけていて、それが移ったということも考えられる。
美琴の付けているものは制汗スプレー程度であって香りが違うし、白井は上条のことをそれほど好んでいない。会ったとしても肌に触れさせることはないだろう。
「……」
上条にだって女友達はいるだろう。そうでなくとも学生だ。クラスメイトの半分は女子に違いない。
休日なのだから、誰かと会って、その時に移ったのだ。少なくとも、どこかに遊びに出掛けていて移るにしては、弱すぎる香りである。
要するに、深い意味はない。この香りは、たんなる偶然だ。
そうとしか考えられない。
「……」
考えられないのだが、どうしても、そうだとは思えない。
理屈じゃなかった。これもまた、乙女の理論。
いわゆるヤキモチからの疑問である。
世界はそれを女の勘と呼ぶ。
250 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/01(水) 02:29:32.48 ID:UCBx2BnAo [9/16]
「ね、ちょっと」
「?」
「……まさかとは思うけど、アンタ、香水なんて付けてないわよね?」
「は?」
「香水よ、香水」
「んなの、つけてるわけないだろ? 上条さんちにはそんな金銭的余裕はありません」
「……そう、よね」
予想通り。
支払いを気にしまくってる男なのだから、というかそれ以上に、美琴の知る上条は、そんな風な気をつかえるタイプではない。
(だったらやっぱり誰かから移った?)
さっき、誰かと会っていたのか。
そう問おうとして、美琴は一度だけ言い淀んだ。
もし、誰かと会っていたら。
もしそれが、友人というカテゴリー以上の相手だったら。
しかし、美琴がその内心に何かのケリをつけるよりも先に、上条が「あー……」と漏らした。
失敗した、と、言うような声色である。
「……なによその顔。アンタ、なんか私に隠してることでもあるんじゃないでしょうね」
というか、何か隠している態度だ。
乙女のなんやかんやもそうだが、彼があからさまに隠し事をしている態度に、苛立ってしまう。
すっ、と美琴の両目が細まった。
251 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/01(水) 02:30:23.58 ID:UCBx2BnAo [10/16]
「あいや、その」
「……私には、言えないこと?」
次に、声に険と、寂しさが混じった。
彼には隠し事が多い。それはなんとなく、わかっている。
彼がそれを言わないのはきっと、それだけの理由があるのだろうし、きっと、美琴への配慮であるに違いない。
しかしやはり、隠し事をされると言うのは、寂しく、辛いものだ。
それが、自分の信頼している相手であれば、なおのこと。
「……」
上条も美琴の内心がわかるのか、ガリガリと頭を掻いた。
「……」
それ以上何も言わない美琴の眼差しを見て、ひとつ、ため息。
それから、
「いや、実はさっき」
ポリポリと。
気まずそうな顔で。
「白井と会ってたんだ」
と、上条は言った。
252 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/01(水) 02:31:32.68 ID:UCBx2BnAo [11/16]
「ただいまー」
言いながらドアを開け、美琴は自室に入った。
「お帰りなさいまし、お姉様」
勉強机についた白井が、振り返って応える。
机に拡げられているのは、参考書か何かだろうか。
「アンタも帰ってたのね。お疲れ様。マナー講座? だっけ。どうだったの?」
「普通、ですの。基本の復習のようなものでしたわ。もっとも、それが一番大切で、難しいのですけど」
微笑を浮かべて返す白井。
返ってきてシャワーを浴びたのか、髪はどこかしっとりとしている。
美琴は「そう」と簡単に返事。クローゼットを開け、ハンガーを取り出した。
「……それより、黒子?」
上着をハンガーにかけ、今度はクローゼットにしまいながら、美琴が言った。
位置関係的に、美琴も白井も、お互いに背を向けた形。
「何ですの?」
いつもどおりの様子で、白井が問い返す。
サラサラとシャープペンシルが線を書く音は、淀みない。まるで適当に落書きでもしているかのように。
「アンタさ」
「はい」
253 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/01(水) 02:32:13.68 ID:UCBx2BnAo [12/16]
「今日、アイツと会ったんですってね?」
254 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/01(水) 02:33:02.48 ID:UCBx2BnAo [13/16]
「――!?」
ビクンッ! と白井が震えた。
アイツ――美琴がそんな呼称をする相手など決まっている。
しかも、ただ問われただけではない。
美琴の声は、いつもよりも低く、僅かに怒気の混じったものだったのだ。
「なっ、えっ、そっ、なっ……?」
ひくっ、ひくっ、と喉が痙攣するように動き、白井は言葉を作れない。
錆びたネジを回すように、ぎこちなく巡らした首。
背後の美琴は、クローゼットに上着をかけた姿勢で、白井に背を向けている。
「今日、たまたま偶然、アイツと街で会って。……それで聞いたのよ」
「……、……」
声の調子は変わらない。呼吸のとまった白井は、次の声も発せられない。
しかし美琴が振り返る気配。
「っ」
白井は弾かれたように、顔を前に戻した。
「……」
トン、トン、と美琴が床を歩く音がする。
その音が白井に近づいてきていた。
「……。……」
その音一回一回に、身を震わせ、カタカタと歯を鳴らす白井。
とても振り向けない。とても美琴の顔を見ることができない。
やがて足音が真後ろで止まる。
白井の震える右手から、ポロリと、シャープペンシルが零れた。
255 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/01(水) 02:34:12.94 ID:UCBx2BnAo [14/16]
「ねぇ、黒子」
「……」
返事もできない。
しかし美琴は、そんな様子に構う事なく、言葉を続けた。
「聞いたわよ? アンタ、疲れて公園で倒れかけたんですって?」
「え……」
それは、無茶を叱る柔らかい声。
「黒子には黒子の目標とかあるんだろうし、その努力をやめろなんて言わないけど……それにしたって限度を考えなさい」
「……」
「ここんとこ、毎日何かの訓練してるんですって? そんなんじゃ、身体を壊しちゃうわ」
「……」
「アンタの目標の一部に私がいるのは嬉しいし、それを目指すのはいいんだけど……身体壊すんだったら、私は嬉しくなんかないわよ?」
「……は、はい、ですの」
白井がぎこちなく頷く。
「まぁ、よりによってたまたま通り掛かったアイツに介抱してもらった上に、倒れた理由まで聞き出されたなんて、言いづらいのはわかるけど」
くすり、と美琴が苦笑した。
淑女になろうとは言え、中々今までの癖を拭い去るのは難しい。
それこそ、美琴が素直になろうとしているように。
白井の上条嫌いは、結構な深度だ。
上条相手に弱みを見せたとあれば、美琴への口止めをさせるのも頷ける話である。
しかしここで美琴から告げてしまったのだから、次に上条と白井が会えば、きっと彼は痛い目に遭うだろう。
(ま、これくらいはいいわよね)
いくら白井が相手とは言え、他の女性の香りをつけて自分の前に立った罰だ。
美琴は、自分の小さな決意――素直になること――を自分自身に少しだけ実行し、小さく笑みを漏らした。
256 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/01(水) 02:35:21.15 ID:UCBx2BnAo [15/16]
背中越しに、美琴が幸せそうに微笑する気配。
白井は、美琴に決して気がつかれないように唇を噛み締め、
「……」
胸に、そっと、右手を当てた。
267 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/04(土) 22:36:00.15 ID:/akQKQv+o [1/13]
学園都市のビジネスホテルが賑わうのは、もっぱら夜からである。
それは利用者の多くが、遅くなりすぎて『家に帰る手段をなくした』大人たちであるからだ。
何しろここは(少なくとも名目上は)学生のための街だ。最終下校時刻以降の外出を防止するため、日が落ちると公共交通機関は激減する。
そのため、まだ夕刻である今は、ホテルの廊下にひと気はない。
しかし不意に誰かが部屋から出てくるとも限らない。
私服姿に着替え、髪を解いた白井は、足早に部屋に入った。
「……」
パタリ、と背中でドアが閉まると、入室を感知したセンサーが自動的に明かりを点ける。
間取りは確認する必要もない。今まで数回、『拡張』時に利用しているのだ。
5歩分しかない、カーペット敷きの通路。窓際に並ぶテレビや、スタンド。部屋の6割の面積を占めるベッド。通路の途中で右手側にあるドアは、中でさらに左右に入口を持っており、浴室とトイレがある。
標準的なビジネスホテルだ。
白井は故意に事務的な動きで通路を抜け、クローゼットの扉を開けた。
ハンガーだけがかかっているそこに、常盤台の制服を入れたスーツバッグをしまい込む。
今日は風紀委員の準勤務日。
警ら等の通常業務はないが、事件があれば呼び出される、いわゆる待機の日だ。こうしている間にも呼び出されるかもしれない。
制服を持ち歩かないわけにはいかないが、少しでも部屋の空気に晒したくない――特に腕章をそうすることは、避けたかった。
268 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/04(土) 22:37:53.19 ID:/akQKQv+o [2/13]
(運が悪ければ、ここから出動することになりますわね)
白井の瞳が、不安そうに揺れる。
呼び出されるということ――つまり、余剰人員すら投入する事件が起こるということは、一刻の余裕もないということに等しい。
そんな中、のんびりとシャワーを浴びることなどできはしない。
情事のニオイを纏わり付かせたまま、出動することになるのだ。
「……」
いや、ことによると。
自分は出動することが、できないかもしれない。
彼が、許してくれなかったら。
「……」
白井は唇を噛みながら、丁寧にクローゼットを閉めた。
しかしどうしようもない。本当に出動がかかれば、なんとか説得するしかないのだ。
そう、たとえば、
(次はきちんと満足をさせますから、とでも言って……?)
――ズクッ、と白井の下腹の奥で、何かが動いた。
269 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/04(土) 22:42:42.18 ID:/akQKQv+o [3/13]
「っ!」
即座に首を振り、息を止め、右手を胸に当てる。その右手を左手で包み込み、目を閉じて俯いた。
告げられる恐怖を、意識的に思い出す。
『今日、アイツと会ったんですってね』
「!!!」
あの時感じた凍つくような感覚が背筋をかけあがり、白井はぶるりと身を震わせた。
「――はっ」
悪寒を吐き出すように一息。頬が強張っているのが、自覚できる。
その時にはもう、腹の奥で動いたはずのナニカは、恐怖に凍らされていた。
「……」
(ごめんなさいお姉様……)
続いて襲い掛かってくるのは、とてつもない罪悪感だ。
美琴を護るため。
その思いと彼への嫌悪で表面化していなかった感情は皮肉にも、自分を心配してくれる美琴によって形持たされていた。
事情はどうあれ。
白井は美琴を裏切っているのだから。
「……」
白井が胸の痛みを庇うように右手と、それを包む左手に、きゅっ、と力をこめる。
それとほぼ、同時に。
トントン、と部屋のドアがノックされた。
271 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/04(土) 22:44:36.26 ID:/akQKQv+o [5/13]
「すげぇよな、こんなところを気安く借りられるんだから。やっぱ空間系の高レベルって、奨学金や実験報酬が多いのか?」
「……ええ、それなりには」
ベッドに腰掛け、物珍しそうに室内を見回す彼に、白井は押さえ付けた平坦さを持つ声で答えた。
三日前の、あの日。美琴がシャワーに入ってから。
どういうつもりか、と電話で問うた白井に対し、彼の返答は「手を出さなきゃいいんだろ?」というものだった。
白井としては、自分がこうしている以上、美琴と接触はしてほしくもない。ましてや、自分たちが会っているという情報など、たとえ冗談でも伝わってほしくないのだ。
現実問題、前者については今までも美琴の側から接触する形だったのでなんともできないが、後者はどうとでもなる。ましてや今回のように、身体に触れた、と明確にわかる話をするなど、言語道断だった。
しかし今の彼を見る限り、その一件はまったく気にしていないようだ。
不機嫌そうな白井を見上げる視線は「まぁいつものことか」くらいの色である。
「じゃあ先にシャワー浴びてこいよ」
ひとしきり観察の終わった彼が、ベッドに腰掛けながら、シャワールームへの入口を指した。
「……何をなさるつもりですの?」
今日は、いつものような洗浄器具は持ってきていない。今からホテルに行く、と彼にメールを送ったとき、そう指示されたからだ。
「そんな警戒するなって。別に覗いたり、乱入したりしねぇよ。ただのレディファーストさ」
「紳士的で何よりですの」
皮肉を込めて、白井が言う。彼はその言葉に苦笑した。
272 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/04(土) 22:46:38.12 ID:/akQKQv+o [6/13]
昨日も、一昨日も、『拡張』は続けさせられている。ビデオメールも同様だ。
しかし、そのどちらにも、彼は来ていない。
流石に、彼も女子トイレに侵入するのは控えたいようで、ホテルに入る時だけでいい、とのことであった。
「では、お言葉に甘えさせていただきますの」
ツインテールを靡かせて、バスルームに向かう白井。
どうせ逃れられないし、そもそも逃れるという選択肢もない。ならば早く済ませるのが上策だ。
「ああ、ゆっくりでいいぜ? 俺はこのベッドの感触をもう少し味わってたいからさ」
「……」
子供のようにクッションを確かめる彼から視線を外し、白井はドアをあけ、中に入った。
入ってすぐに洗面台があり、左右に再びドアがある。左はトイレで、右はバスルーム。
真正面の洗面台に映る表情は、硬く、嫌悪の表情が覗いている。
勤務日は公衆トイレを。待機はホテルを。
なんでトイレとホテルを使い分けてたんだ、という彼の問いに、ばか正直に答えたのは失敗だった。
公衆トイレがいっぱいだったから、とでも言っておけば、彼を呼ぶようなことにはならなかったかもしれないのに。
(……いえ、それは甘い考えですわね)
白井は首を振り、その思考を打ち消した。
そうなれば、もっと見つかる危険のある状況を強制されたに違いない。
己の裁量がある今の方が、まだマシだろう。
273 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/04(土) 22:47:56.75 ID:/akQKQv+o [7/13]
(……それよりも、)
今日は何をするつもりなのか。
『器具』を持ってきていないのだから、洗浄もできるわけがない。
てっきりまた、前のように――
――尻を高くあげ、後ろ手に縛られ、肛門を犯され――
――ズクッ、と再び下腹の奥でナニカが動いた。
「っ!」
慌てて首を振る白井。
再び『恐怖』で払拭しようとするが、今度は上手くいかない。
生々しい行為の方が、より強く思い出されたからだ。
激しく、貫かれた記憶。
(か、身体が驚いているだけですの。あんな激しいこと、普通ではありませんから……)
ただそれだけですの。
そう頭の中で呟き、動くナニカから目を逸らし、白井は右手側のドアを開けた。
脱衣所は、当然のごとく利用者を待ち構えている。
ここで服を脱ぎ、身体を清めれば、彼の前に出なければならない。
274 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/04(土) 22:49:01.66 ID:/akQKQv+o [8/13]
(だとすれば、やはり、やっぱり……)
そろり、と右手で、スカート越しにソコを押さえた。
カチカチ、と奥歯が鳴りはじめる
それはすぐに全身に伝播をはじめて、
「っ!!!」
白井は奥歯を強く噛み合わせた。
ガチン、と音が響き、震えが止まる。
「わたくししかおりませんの。わたくしだけが護れるんですの。わたくしが護りたいんですの」
それは白井の唇から奏でられた。
何度も唱え続けて、もはや言葉や声ではなく、呼吸の一部のように、淀みなく。
「わたくしさえ我慢すれば、お姉様は笑っていられるんですの……!」
それは、まるで呪文のようだった。
275 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/04(土) 22:50:32.32 ID:/akQKQv+o [9/13]
「寒くないか?」
「だ、大丈夫、ですの」
彼の言葉に、白井は横を向いたまま言った。
彼女の口調がやけに素直なのは、理由がある。
素裸。
ベッドの上。
身体に浴びせられる視線。
いずれも、忌まわしいことに初めてではない。
ただひとつ異なったのが、
「そんなに恥ずかしいか?」
仰向けに寝転んだ彼も、その三要素を満たしているということだ。
彼の両脚の間に正座し、身体を前に倒した白井。
それこそ土下座のような恰好の彼女の目の前にあるのは、隆々とそそり立っている、彼のペニスだ。
いや正確には、嫌悪と羞恥で顔を逸らしている彼女の右頬の前に、か。
276 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/04(土) 22:51:28.30 ID:/akQKQv+o [10/13]
「あ、当たり前ですの!」
まったく見たことがないわけではない。何年も前に父親と風呂に入ったこともあるし、保健の授業では写真入りの教材だってある。
こういう風に立ち上がった状態だって、風紀委員の仕事でその手の変態を取り締まった時に目撃していた。望んだわけではなかったが。
望んでいないことは今も同じだが、状況が違いすぎる。ここまで間近では初めてであったし、
(こ、こんなものを、本当に、口で……?)
血管の浮いたそれを目の端で捉えながら、白井は彼の要求を頭の中で繰り返した。
彼は交わりではなく、口淫を望んできた。
こういう行為があるのは当然知っている。いずれ必ず、させられるということは予測していた。
しかし実際に間近で見た白井は、とても直視することができないでいる。
赤黒く、ヒクヒクに震え、熱を持ち。
(わたくしを、あんなに激しく貫いたモノ……)
すぼまりを出入りした、あの感触。
手を触れていない今でも、その硬度は想像できた。
277 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/04(土) 22:52:43.94 ID:/akQKQv+o [11/13]
「さ、観察はもういいだろ? そろそろ始めてくれないか?」
「っ」
はっきり言って醜悪としか思えないペニスにキスをし、口内に含み、舌を絡め、唇で扱き、そして吐き出される汚濁を受け止めなければならない。
想像するだけで、吐き気を催す。
そもそもの彼への嫌悪感に加えて、このペニスは三日前には己の肛門に突き込まれていたモノだ。
彼も入浴しているだろうし、いまさっきシャワーを浴びている。
それでもその意識は消えてくれない。
しかし、彼の促しは、命令のようなものだ。
おずおず、と白井の手が伸びた。
「っ」
白魚のように細く綺麗な指が巻き付き、ピクリと震える彼。
(硬い……ですの)
それは想像どおりの硬さがあった。
血液の流れが指先ではっきりとわかるほど、内側から張り詰めている。
(熱い……ですの)
そしてそれは、想像以上に熱をもっていた。
シャワーによるほてりなどでは決してない、人肌よりも確実に高い体温。
278 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/04(土) 22:53:56.04 ID:/akQKQv+o [12/13]
「……」
ちらり、と彼を見上げる白井。
怒張の向こうから投げ掛けられる彼の瞳には、期待はあっても、侮蔑はない。
「は、始めますの」
自分を後押しするために、声に出し、顔を寄せる白井。
近づくにつれて、怒張からの熱を頬に感じる。
いま、自分は。
(こんなこと、たいしたことではありませんの)
土下座するように身を縮めて、男の股に、顔を埋めようとしているのだ。
(お姉様のためですの)
精液を吐き出すところを、舐めしゃぶろうと言うのだ。
(純潔より先にお尻を犯されたことに比べたら、このくらい……)
そして。
「んっ……」
唇の間から差し出された舌先が、ペニスの表面に触れる。
307 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/12(日) 17:44:28.18 ID:LTTmuyHpo [1/20]
てろ、てろ、てろ、と。
指が緩く絡んだペニスの裏筋中ほどからカリ首までを、白井の舌が舐め上げる。
動きはゆっくりと。
左肘で上体を支え、右手指をペニスに緩く絡ませた白井の首と口が痛まない程度の早さで。
「んっ……んん……」
探り探りと戸惑い、さらには嫌悪の雰囲気が見て取れる白井の動きだが、しかしそれでもただ上下するだけでもなかった。
時に裏筋を、時に舌先でカリ首の溝を、時に赤く充血した亀頭を、舐め、なぞり、ねぶる。
「とりあえずはアイスとかを舐める感じだよ」
舌先をペニスに当てたまではいいものの、そこから20秒ほど動けなかった白井に、彼がかかけた言葉である。
「そのくびれてるところとか、縫い目みたいなところ。あとは先っぽのところとかを重点的にな」
彼のモノを舐める。
その状況に吐き気を耐えていた部分もあったのだが、何をどうすればいいのかわからなかったのも事実。
ありがたいとは決して思わない指示指導に従っての動きは、忌ま忌ましいことにそれなりの効果があるらしい。
起立はますます硬度を増し、僅かだが生臭いニオイ――性臭を臭わせ始めていた。
鼻を抜ける生臭さにえずくのを辛うじて堪えながら、顔を右に傾けて幹部分に舌を這わせる。
「んぅ……ふ……ん」
その拍子に、解いた髪が一房、パサリと頬にかかった。
308 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/12(日) 17:45:40.83 ID:LTTmuyHpo [2/20]
「ん……」
恥羞によって朱に染まった少女の頬。そこにかかる黒髪とのコントラスト。
白井はそれを左手で掻き上げ、邪魔にならないように耳にかける。
ふわりと、己の髪の香りが、性臭と混ざったのがわかった。
「……」
彼から、何やら含みのある気配。
「……なんですの?」
白井は口を離して問うた。
「ああ、いや」
険しい視線に彼は苦笑し、
「今の仕種、艶っぽいなって思ったんだよ」
と、てらてらと唾液に光るペニスの向こう側の、その彼女の瞳を見ながら言った。
309 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/12(日) 17:47:00.52 ID:LTTmuyHpo [3/20]
「……」
虚を突かれ、ぽかんと言葉を失う白井。
だがすぐに眉を潜め、続いて彼の視線から逃れるように、舌の動きを再開させる。
誉められたのかもしれないが、相手と状況が悪すぎた。
かけられた言葉を無視するように、あえて舌の動きを早める。
唾液がそれを生み出した舌に絡まり、ピチャ、ピチュ、と音をたてた。
彼は、やれやれ、と一息
「じゃあ次は、唇かな。キスしてみたり、くっつけて横に滑らせたり、吸ってみたりしてみてくれ」
「っ!」
キス。
その単語に、白井は心がギシッ、と軋むのを感じた。
過剰な神聖さを抱いているわけではなかったが、それでも白井は、ただ舐めるということに比べてキスというものを、どこか大事なモノのように感じてしまうのを止められない。
(……)
無意識に舌がペニスから離れる。
美琴のことを思って大切にしていた。目の前の男に契約代わりと奪われた。そしていま、ただ性の道具として使う。
「わかりました、の」
白井は一度だけ、ぎゅっ、と目を閉じてから薄く開き、
「んっ……」
瑞々しい唇が、醜悪な剛直に押し当てられた。
310 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/12(日) 17:47:50.95 ID:LTTmuyHpo [4/20]
「んんっ……ちゅっ、ちゅぶ……」
押し当て、離し、押し当て、滑らせる。吸った拍子に、少しだけ冷えた唾液が性臭をとともに口の中に入ってくる。
「ああ、あと舐めるのも一緒にな?」
「……はい」
右手に僅かに力がこもり、しかし指示に従う白井。
舐めるときと同様、うずくまった姿勢から膝で身体を持ち上げて顔を寄せた。
「んっ、んぅ……ちゅぷ、ちゅ、ちゅる……んぅ、れろ……」
キスの雨を降らせ、その合間に舌がてろてろとペニスを濡らす。
時折頬にペニスが当たり、唾液が頬を彩った。
舐め、接吻し、吸いつき、滑らせ、頬を掠め。
小さな水音だけが、ビジネスホテルの室内にただ響く。
311 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/12(日) 17:48:55.46 ID:LTTmuyHpo [5/20]
(どんどん、熱くなって……)
唇と舌と頬から、その脈動と熱が伝わってくる。
充血したペニスは、もう褐色と言っていい色に。
白井はもう何度目かわからないループを繰り返すため、顔をやや下げ、その根本に舌を当てた。
たっぷりと唾液を乗せた舌の腹で、先端までを、ぬろおっ、と舐め上げる。
唾液を増やしているのはその方が滑りがよくて楽だと気がついたためだ。
ゆっくりと言うには若干勢いよく動いた舌が亀頭から離れ、移りきらなかった唾液が糸をひく。
「っ……白井、次はくわえてくれ。歯をたてないようにな」
次の指示。
白井の動きが止まり、その眉がひそめられた。
「……」
しかし次の瞬間、白井の顔は無表情に変わる。
そのまま口の中で何事かを呟いた後――ぐっ、と身体をやや前に乗り出した。
「んっ」
大きく開けた唇を剛直の先端を被せる。
赤黒い亀頭が、口内に沈んでいった。
312 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/12(日) 17:50:27.25 ID:LTTmuyHpo [6/20]
「ん……んんん……」
先端だけでは終わらない。
どうせ命じられるのなら――まるでそう言うかのように、白井は自ずから顔を下げ、深くペニスを口に収めていく。
カリ首が歯の間を通り、先端が口腔上部に触れた。反り返ったペニスはその角度ではそれ以上飲み込めない。
だからさらに身体を前に傾ける。
正座のように踵に触れていた尻が浮き、動いた空気がいつかのように――尻を犯される直前に感じたように、尻たぶの間、秘裂と肛門を撫でていった。
「んぐ……んんぶ……」
しかしそれでも、物理的な限界というものがある。
小柄な白井の口に収まったのは、結局全体の半分程度。これ以上くわえこもうとすれば、それこそ喉まで使わなければならない。
ディープスロート、と言う単語は知っているが、とても無理だった。いまでも苦しくて、目の端に涙が浮かんでしまっているのである。
「そこまででいい。無理すんなよ」
ちょうどそのタイミングで、彼が白井の頬を撫でた。
「そのまま顔を動かすんだけど、いまみたいに限界まで飲み込まなくてもいいからさ。それよりも唇で扱くみたいにして、後は口の中で舐めるんだ。ペースは白井に任せる」
「んん……」
鼻だけで息をしながら、白井は頬に添えられた彼の手を払った。
頭を動かすのに邪魔だと言うことと、何より、気遣われたくなどなかったのだ。
開き気味に投げ出した彼の脚の間で、少女の頭が上下を始めた。
313 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/12(日) 17:51:20.17 ID:LTTmuyHpo [7/20]
「んっ、んぅっ、んんっ、んっ」
剛直が出入りし、ぐちゅぐちゅと音をたてる。
口内に満ちる性臭が、直接鼻に抜ける。
口の周りが唾液にまみれ、おとがいに向けて垂れていく。
長く、ウェーブのかかった白井の髪がその白い背中を撫でるように揺れる。
舐めるときより、キスするときよりも激しい運動と、鼻でしか呼吸のできない状況に、白井の息がふーっ、ふーっ、荒くなっていく。
「……?」
それに伴い、ペニスの向こう側から響く彼の吐息も、徐々に乱れ始めた。
水音と己の呼吸音。
その間に混じる彼の吐息の調子に、白井は覚えがあった。
(気持ち、いいんですの……?)
それは白井が自涜のとき、声を漏らさないためのものだ。
「……」
試しに顔を前後させながら舌先だけを幹に当てて小刻みに動かしてみる。
すると、彼の脚が小さく震えるのが二の腕から伝わってきた。
快楽を、得ているのだ。
314 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/12(日) 17:53:39.02 ID:LTTmuyHpo [8/20]
(では、こうすればもっと……)
浅くくわえ、カリ首をぐるりと刺激する。
先ほどよりも大きく、震えが響いた。
自分の攻めで、彼が追い詰められている。
自分を蹂躙するだけだった、彼が。
自分が。
(……)
「っ?」
と、彼の呼吸に僅かな戸惑いが混じる。
いきなり白井の動きが変わったせいだ。
「んんっ、んぐっ、んぶっ、んふぅ」
歯が当たらないように口はあけたまま、しかし幹は唇で締める。
裏筋に添えるように当てた舌はときおり左右に動き、あるいは舌先が横側を舐めた。
口腔の上側で先端をこすり、あるいは頬の内側に埋める。
浅くくわえて、カリ首を唇でやわやわと圧迫した。
時折故意に唇を緩めて、グポッグポッと出入りの音を響かせる。
315 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/12(日) 17:55:06.66 ID:LTTmuyHpo [9/20]
「んんふっ、んぶっ、んっ、んんんっ」
白井は口淫など初めてだ。
だが、能力的に複雑怪奇な演算をこなし、また、常盤台の先進的な授業についていける頭脳である。
開始してから今まで。
指示されて行った行為と偶然行った行為の中で、彼が同様の反応を示した動きを思い返してトレース、あるいは組み合わせ、そしてまたあるいは予測し、実行する。
性感帯は概ね決まっている。
ならば後はそこをどう刺激するか――どう興奮を高めるかがポイントなのだ。
「んぐっ、んふっ、んんんっ、んむんっ」
「っ……っ……っ……」
じゅる、じゅる、と音が響く。
己が行為に効果があったのは、彼の呼吸がさらに早まったことと、伝わる震えが大きくなったことと、脈打つペニスからの性臭が強くなったことで確認できた。
上下する視界の端で、彼が拳を握りしめるのが見えた。
ぐぐっ、とペニスの根本から、ナニカが競り上がってくるのを唇に感じる。
近い。
316 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/12(日) 17:56:50.47 ID:LTTmuyHpo [10/20]
「んんっ」
白井はさらに頭を大きく、早く動かし、唇を締めた。
それはしゃぶるというよりも口で扱くという表現が相応しい。
自分が飲み込めるギリギリまで彼の股間に顔を埋め、亀頭から離れる寸前まで顔を引き、また埋める。
「うあっ」
彼が初めて声らしい声をあげた。
「んふっ」
それがどこかおかしく、くぐもった笑いが漏れた。だがそれはねばついた水音に遮られて、彼の耳にも、彼女の耳にも、彼女の心にも届くことなく、消える。
だから白井は同じように、前後抽送を繰り返した。
頭の動きが大きくなった分、持ち上げられた尻がゆらゆらと揺れる。
運動量が増え、頬に、首に、背中にうっすらと汗が浮いた。
「んぷっ、じゅるっ、んんんんっ、んちゅっ」
一往復ごとに、ナニカが上にあがってくる。
根本、幹半ば、カリ首。
そしてついに、ナニカが先端に。
317 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/12(日) 17:58:02.50 ID:LTTmuyHpo [11/20]
「んんっ!」
そのタイミングをもって、白井は顔をひき、舌の裏側で亀頭の先端――尿道を、ぬるりと横に撫でた。
「くっ! 出すぞ白井っ」
彼が歯を食いしばり、そう宣言した。
口内の亀頭が一層膨れあがり、次の瞬間。
「!」
ペニスが鳴動し、大量の白濁が白井の舌を、口腔を、喉の入口にたたき付けられた。
「んぐっ、ぬぶっ、んんんっ」
ビクンビクンと何度も震えるペニス。
奥に向けて射精されているとはいえ、量が問題だった。白井の小さな口はすぐに一杯になってしまう。
苦み、辛み、生臭さ。
とても飲み込むことができず、白井はペニスを口から引き抜いた。
「ぶぱっ、えぶっ、うえっ――げほっ、げほっ、かはっ!」
目からは浮いた涙が零れ、口からはどろどろの白濁が漏れる。
「はあっ、はあっ、けほっ、はあっ、はあっ」
阻まれていた呼気を取り戻すかのように、肩を上下される白井。
ゆるく開いた唇の端から垂れた唾液は、白濁まじりゆえに粘性に富み、ぬるりと糸を引いて、正座をした白井の膝に落ちた。
318 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/12(日) 18:00:09.13 ID:LTTmuyHpo [12/20]
「……では、これでお暇いたしますの」
シャワーを浴び、私服に着替え、制服の入ったバッグを持ち。
白井は、制服姿でベッドに腰掛けたままの彼に言った。
ここはビジネスホテル。その気になれば明日の朝10時まではチェックインしていられる。
もちろん白井にはそんなつもりはない。業務でやむ終えなくならばともかく、宿泊など常盤台が許さない。
そもそもこんなことの後に、泊まりたいとも思わなかったが。
「俺はもう少し休憩していくよ。これ、カードをフロントに返せばそれでいいんだよな? 料金とか、とられないよな?」
「……清算はチェックイン時に済ませているので大丈夫ですの。冷蔵庫の飲み物を飲んだり、有料のチャンネルを見れば別ですが」
彼の口調とその内容に若干の情けなさを感じながら、一応はありのままを告げる。
冷静に考えればここの代金を請求してもいい気もするが、ここを選んだのは白井だ。彼に任せたら、それこそどこで何をされるかわからない。
「では、これで」
背を向け、ドアに向かおうとする白井。
そこを、
「あ、ちょっと待てよ」
彼が呼び止めた。
319 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/12(日) 18:01:43.16 ID:LTTmuyHpo [13/20]
「……っ」
これ以上何かするつもりなのか。
踏み出しかけた脚を止め、白井の肩が僅かに震える。
ゆっくりと、嫌味のような動きで振り向いた先にあったのは、ひょい、と放り投げられた紙袋。
「え」
思わず、という調子で受け止めてしまう白井。
ガサリ、と乾いた音が、腕の中で響く。
中に何か入っている。
「それやるよ。練習するときと、それから拡張……ああ、いまは維持かな? それと、オナニーするときは必ずそれを咥えてやるようにな?」
「……」
彼の言葉に何が入っているのかを概ね推測しながら、紙袋を開く。
バイブレータ。
それも、大きさは先ほどまで咥えていたものに、近い。
「流石に俺のと同じ形じゃないぜ? でもバカにしたもんじゃなくてさ。臭いや味は本物に近いらしい」
確認したわけじゃないけどな、と彼は言葉を追加。
「……」白井は俯いたまま返事もしない。
彼はそれを気にしなかった。
ニヤリと酷薄な笑みを浮かべる。
「今日は、ずいぶん積極的だったよな。次もああいう感じで頼むぜ?」
320 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/12(日) 18:03:17.93 ID:LTTmuyHpo [14/20]
部屋を出て、乱暴にドアを閉める。
バタンという音も置き去りに、白井は廊下を歩き始めた。
先ほど受け取ったバイブは、忌々しいことに、制服を入れたバッグの中にある。
誇りある常盤台の制服とこんなものを同梱することに抵抗はあったが、いまはそれよりも、脳裏に響く彼の言葉の方が白井にとっては心の枷になっていた。
321 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/12(日) 18:05:00.28 ID:LTTmuyHpo [15/20]
――今日はずいぶん積極的だったよな
322 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/12(日) 18:06:59.65 ID:LTTmuyHpo [16/20]
「……」
確かに、今日の自分は少しおかしかった。
特に後半の、自分は。
その考えは、口の中に思う様に出された後に、シャワーを浴びながら考えていたことだ。
……あんなに、自分が積極的に、彼に奉仕するなどと。
(早く終わらせるためですの)
白井はそう思う。強く思う。
シャワーを浴びながら結論づけた、自分の口淫――特に後半の、積極的な自分の動きについて、そう思っている。
技巧に長ければ、それだけ早く終わる。
屈辱でも彼が悦べば、美琴の危険は減っていく。
(……それだけ、ですの)
白井は廊下を強く踏みしめ、歩く。
足音で、己の心の中にある感情を、払拭するかのように。
323 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/12(日) 18:09:43.33 ID:LTTmuyHpo [17/20]
「……」
誰もいない室内で、彼は口元に歪んだ笑みを浮かべた。
思考するは、口淫の途中、彼女が急に技巧を凝らし始めたこと。
白井は、どちらかと言えば従属的ではない。
心酔する相手に対しては献身的な態度を取るが、それはあくまで、彼女からの積極的な献身だ。相手に全てを委ねる従属とは異なる。
しかし今日。
従属するしかないはずが、部分的にではあっても攻勢に出ることのできる手法を意識した。
そのことは、彼女にどう影響を与えるか。
どう、転ぶのか。
「……」
彼は笑う。
彼は音も無く、笑い続ける。
327 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/12(日) 18:26:02.43 ID:LTTmuyHpo [19/20]
「……優しくして、ほしんだよ」
そう言って、白い少女はベッドに横たわり、覆いかぶさる男を見上げた。
その言葉にも関わらず、彼女の顔に不安はない。
彼が――ステイルが、ただ自分に優しく、ただ自分を愛し、ただ自分を抱きたいと思っているということを、知っているからだ。
「インデックス。僕は……」
赤い神父は、この期に及んで迷っている。
愛を。
欲を。
この目の前の少女にぶつけるべきかを、迷っていた。
だからインデックスは指を持ち上げる。
いくじのない彼の唇に、人差し指をそっと押し当てる。
言葉は不要。
必要なのは、心と身体。
「……」
たったそれだけの仕草でインデックスの言いたいことを読み取ったのか。
赤い神父――ステイルの中から、迷いが消える。
浅ましい欲望が、己の中にある。
しかしそれでもなお、それを圧する愛情が、確かにある。
「愛してる」
告げる。
飾り気のない、ありふれた、使いまわされた言葉を。
「……うん。私も、愛してる」
しかし白い少女は、幸せそうに目を閉じた。
ステイルは、手を伸ばす。
絶対の防御を持つ『歩く教会』は、なぜか容易くその結び目を緩ませた。
――知っているのだ。そこにあるのが、欲望であっても、無上の愛であることに。
夜は更ける。
蝋燭は短くなる。
しかし、彼らの時は、まだ、永く。
341 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/19(日) 00:31:27.52 ID:r21hA3c5o [1/10]
パタリ、と背中でドアが閉まると、流水の音はほぼ聞こえなくなった。
場末のビジネスホテルといえども、素材は学園都市製。『外』とは数十年レベルで差のある技術で造られた建材は防音効果も密閉効果も高い。
ドア一枚隔てただけで浴室内の音も何も、ほとんど通さないレベルである。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
バスルームから出てきた白井は、一糸纏わぬ身体を右腕で抱きしめて――左手には何かを包んだバスタオルを持っている――座り込みそうになるのを必死で耐えた。
彼女の瞳は潤み、頬やうなじが、否、全身が赤く上気している。吐息さえすでに熱く、甘く濡れていた。
今しがた終えた『拡張』で使うローション。それに混ぜられた媚薬は、もう三週間使い続けているにも関わらず、薬物耐性による効果逓減がない。
いやむしろ身体に馴染んでいくかの、性感が開花させられているようにも思える。
「んぅ……はぁ………はぁ……」
現実にいま。
ドアが閉じた際に起こった風が肌に当たるだけで、甘く疼くような感覚を得てしまうのだ。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
今日も待機の日。
昨夜、三日前の口淫を思い出さないようにしながら送ったメールへの回答は「補習があるから行けない」というやや情けないものだった。
しかし彼が来ないとは言え、何もしないという選択はできない。
動画撮影は続けるように言われており、さらに今日は、返信メールで指示のあったことを実行しなければならないのだ。
342 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/19(日) 00:32:10.28 ID:r21hA3c5o [2/10]
「んんぅ……ふぅん……」
身体を廻る欲望と衝動をなんとか押さえた白井は、ぼう、と霞がかった視線をベッドに向けた。
ほんの数歩で行ける距離。
しかしそれは、普段浴室で拡張を済ませ、そのままそこで薬が抜けるまで自らを慰めている白井にとっては、遠くすら感じてしまう。
しかも今日は、準備しなければならないことがあった。
「はぁ、はぁ、はぁ」
ふらふらと覚束さい足取りで、白井はベッドの横を素通りし、備え付けのテレビの前に立った。
左手に持ったバスタオルを開くと、その中には携帯電話、彼に手渡されたバイブレーターと、そしてなんに使うのか、ポータブルHDDが入っていた。
白井はまずHDDを取り上げ、テレビに接続して電源を入れる。テレビは瞬時に内部のデータを読み出し、DVDよろしく画面に再生チャプターを表示させた。
3×3のサムイネルは、すべて裸の女性がひざまづき、男性の股間に顔を埋めている静止画像だ。圧縮されているためか、ぼんやりとしか写っていないが、何をしているのかなど見ればわかる。
口淫の映像ばかりだ。
データの中身は、昨夜の返信メールに記載されていたURLからダウンロードしたもの。
『これを見ながらヤれば、上達もはやいんじゃないか?』
彼のメールに記載されていた言葉が、幻聴となって耳に響く。
343 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/19(日) 00:33:04.70 ID:r21hA3c5o [3/10]
「っ」と、白井。
唇をかみ締めようとするがしかし、早くなった呼吸がそれを許さない。
白井は一度首を振り、次にテレビの横に携帯電話を置いた。
撮影用のカメラがある先端をベッドに向け、小さなボタンを操作する。
手の動きは淀みない。
自分を汚す姿を撮影する準備にも、慣れてしまっていた。
「はぁ、はぁ、はぁ」
撮影に、凌辱されることに慣れる。
その事実は相変わらず、胸の奥に昏い感情を呼び起こしている。
モードに切り替わり、撮影開始を示すLEDが点る。
「あんっ」
と同時に、背筋がブルリと震える。
震わせたのは、紛れも無い期待の感情。
ついさきほど――尻をほぐし、アナルバイブを突っ込む行為をする直前にも感じたものと、同じだった。
(……まるでパブロフの犬、ですわね)
自嘲する白井。
身体が覚えてしまったのだ。
準備が終われば快楽を得られるということに。
344 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/19(日) 00:34:39.19 ID:r21hA3c5o [4/10]
――もっと欲しい
「っ」
不意に耳に響く声。
ゾクリ、と先ほどより強く、痺れが駆け抜けた。
語りかけてきたのは、心に染みついた、黒い点――白井自身の、浅ましい欲望だ。
――気持ち良くなりたい
――我慢したくない
――身を任せたい
「んっ、ふぅっ、んんっ」
黒点が、いつかのように誘惑を囁いてくる。
345 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/19(日) 00:35:36.98 ID:r21hA3c5o [5/10]
己を抱きしめる右手に、さらに力をこめる白井。
だが呼吸がさらに早くなり、吐息は室内でなお白くなりそうなほど、熱を持ち始める。
しかめられた眉も、苦しげというよりはむしろ、もどかしさを顕しているように見えた。
(流されたのでは、だめですの……)
言い訳を作ってはならない。
一度言い訳をしてしまえば、それ以降は容易く快楽へと流され、屈服する鍵となる。
それはわかっている。
しかし。
「ふぁっ、んぁっ、んあぁ……」
もじもじと膝を、太ももを擦り合わせる白井。ジワリと小さな快楽が湧き上がり、僅かに尻を後ろに突き出してしまう。その乳房の先端は、触れてもいないのに、固く自己主張をしていた。
(身体の方はずいぶん素直にさせられてしまったようで。……完全に抵抗するのは難しそうですわね)
軋む理性の中で、僅かに存在する冷静な自分が分析する。
346 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[] 投稿日:2012/02/19(日) 00:36:29.25 ID:r21hA3c5o [6/10]
――薬のせいなのでしょう? 彼も言っていたではありませんか
――それに口でしてさしあげたときのことを思い出してくださいまし。積極的だった方が彼も喜んでいたはずですの
――彼が満足すれば、お姉様も護れますのよ?
「んふっ、んんっ……」
声に導かれるように、白井の表情がとろけていく。
擦りあわされ続けている太もも。その内側に、とろりとした感触。
蜜が溢れ出していた。
(……ここまで変えられてしまったら、感じないように努力することよりも、感じても理性を失わないことに力を注ぐ方が得策と言えそうですの)
性交渉は何もすべてが実である必要はないのだ。
特に男性側は、ある程度の結果が出れば満足するし、構造的に回数の限界がある。
しかし彼が限界を迎えるまでに、己を見失ってしまっては、それこそ本当に言い訳に流されてしまうかもしれない。
彼に促されて承諾したのでは、おそらくもう戻れない。妥協はどんどん大きくなり、どこまで彼の言いなりになってしまうのか、わからなくなる。
ならば今のうちに、己でそれを制御できるようになれば。
347 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/19(日) 00:37:38.18 ID:r21hA3c5o [7/10]
(わたくしが積極的になった方が事も早く終わり、満足もするのも事実)
擦り合わせられる脚。
流れ落ちた蜜は肌を滑り、もう膝にまで。
(……ここでこんなことをするのもそのため。そう考えれば、まだ気分的にマシですの)
そう結論付けた白井の指先がもどかしそうに持ち上がり、タッチパネル式の画面を適当につついた。即座に選択された動画の再生が始まる。
ダウンロードした段階でサムネイルまでは確認しているが、再生させるのは初めてだ。
一切の修正がなく、また、画質もそれほどよくない。
おそらく非合法に撮影されたものだろう。風紀委員の立場からすれば、この映像だけで調査を開始するべきものである。
映し出されたのは赤毛の女性と線の細い男性。いや、年齢だけを見れば10代半ばと言えるかもしれない。
「っ!」
(お姉様!?)
女性――少女を見た白井の息が一瞬止まり、目が見開かれる。
(い、いえ、違う……違い、ますのね……)
だがアップになった少女の顔を見て、白井は胸を撫でおろした。
348 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/19(日) 00:38:45.49 ID:r21hA3c5o [8/10]
とてもよく似ている、容姿のみならず雰囲気も。
実際、アップにしなければ白井にもわからなかったほどだ。
しかしよく見れば少女の髪はやや長く、年齢的にも美琴よりも少し上くらいか。
年齢が下ならば白井の心配は完全に晴れなかったかもしれないが、上であれば美琴という線は消える。学園都市ではいまだ完全な未来視能力者もいなければ、それを映像に残せる技術も存在しないのだから。
(でも、本当にそっくりですの……)
思わずマジマジとアップになった少女の顔を見る。
だがテレビの中の彼女が不意に妖艶に微笑み、右手で画面外からフレームインした『それ』を掴んだ瞬間。
「!」
一瞬だけ忘れていた性衝動が、再び燃え上がった。
「ああっ」
白井は思わず、両手で身体を抱きしめた。
取り落としたバスタオルが、中に包まったままのバイブレーターごと床に落ちる。
『んっ……』
その音に連動するように、画面内の少女がゆっくりとペニスに唇を寄せた。
「――っ」
お姉様。
潤み、霞んだ白井の目には、それはそうとしか映らなかった。
一気に情欲の火が燃え上がる。
「んんんっ! もうっ、だめですのぉっ」
白井はふらりとよろけ、そのまま背後にあるベッドに腰を落とした。
ゆるく開けた膝の間に右手が滑り込む。
水音と、嬌声は、一秒もたたずに部屋に満ちていく。
364 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/25(土) 12:14:12.70 ID:e3Y7s9Iro [1/15]
「ふぁっ、んんあっ、あっ、ああんっ」
白井があられもない喘ぎを零し、未成熟な身体を震わせる。
そのスイッチとなっているのは、細い指先の、小さな動きひとつひとつだ。
乳房の先の固くなった部分を人差し指と親指が摘み、クリクリと弄ぶ。
秘裂上部の、もう顔を出しかけた性感の豆粒を指の腹で包むようにしてやわやわと揉み揺する。
たったそれだけが、白井の身体に蕩けるような快楽を提供した。その繰り返しが、白井の秘裂から溢れる蜜を白濁した、粘度の高いものに変えていった。
(わ、わたくしは何を……これを、コントロールするつもりで……)
思考を体言するように、ベッドに腰掛けた白井は胸の痛みに耐えているかのような姿勢で背を丸めている。
だが、
「ああっ、お姉様、お姉様ぁっ」
想いとは裏腹に、赤い頬を持つ顔は俯くことがない。
視線はテレビから離れようとせず、展開されている口淫の映像を凝視し続けていた。
敬愛する相手の痴態。
興奮が視神経から直接性感覚に響いているようで、白井は己が指を止めることが叶わない。
365 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/25(土) 12:15:01.20 ID:e3Y7s9Iro [2/15]
(このままでは、このまま流されてしまったら……)
自ら抑制する、という理由で始めた行為だ。
それを『言い訳』にしないためには、身体が訴える渇望を理性側で制御しなくてはならない。
そうでなければ負けたも同然。『言い訳』を自分で作ったことになってしまう。
「はぁっ、あっ、ああんっ!」
(止まって……いえ、止まらずとも、勝手に動くのをやめてくださいまし!)
必死に指の動きを御しようとする。
薬で目覚めさせられた身体をまさぐるのは、紛れも無い自身の手指。
だがそれは他人に――彼にサレている時とは異なって、全てが己の心に依ると同時に、己の最も心地よいタイミングと強さを提供できることと同義であった。
そしていま、その指先を支配しているのは、心に染み付いた黒点の方だ。
「んんっ、んっ、んあっ、んっ、んんっ、んんんっ!」
白井に出来たことは、せめてもの抵抗とでも言うように、喘ぎ声を抑えることのみ。
しかしそれも、やがて身体の作用に侵食され始める。
366 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/25(土) 12:17:53.63 ID:e3Y7s9Iro [3/15]
――我慢せずに声を出せばいいじゃありませんの
――いまここにはわたくししかいませんのよ?
――公衆トイレのように、自室のように、彼に弄ばれている時のように、声を聞く人なんかいないんですのよ?
――彼に動画を見られる? ああ、そのようなもの、
(後で編集すればいいのではありませんか……?)
この一連のことを素直に送信する必要などない。
淫らに振舞っても、わかる者などいない。
我慢の必要はないのだ。
367 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/25(土) 12:21:38.69 ID:e3Y7s9Iro [4/15]
「っ!」
(だめ、ですの……こんなことを考えては……!)
いつのまにか心の声に迎合していた。
甘い誘惑を、白井は首を強く振ることで振り払おうと試みる。
だが。
「ひあっ!?」
乳房の先端を、自らの左手に強く摘まれて、仰け反る白井。
声への拘束はあっさりと打ち破られた。
「んふあっ、はあんっ、んんやあっ」
すぐさま振り払った誘惑を取り戻そうとするように、両手が動きを変えた。
左手が乳首を弄るのをやめ、掌全体を胸に押し当てる。
厚みに乏しい膨らみを撫でるようにこねまわし、五指の間を渡らせて乳首に刺激を与え、そうかと思えば、手首を浮かし、指先だけを触れるか触れないかの拍子を保ちながら、つつっ、と首筋から顎先まで逆になぞりあげ、同じ道をゆっくりと戻る。
一方の右手は、あえて動きを連動させない。
喉元に指が滑り間は強い刺激を味わえるよう、白濁の蜜を陰核に塗り付け、滑らせることでプルンと揺らす。
胸をこねまわす間は、陰唇の両内側を指紋で削るように、じっとりとなぞり回した。
それらの動きは、紛れも無く彼にそうされたことを、そのままなぞってのもの。
368 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/25(土) 12:24:11.92 ID:e3Y7s9Iro [5/15]
「ふあっ、あっ、あっ、ああんっ、ああっ!」
廻る刺激に耐えきれないように首を横に振る白井。
ビクビクと脚が震え、その拍子に、爪先が何かに当たった。
床に広がるバスタオル。その上のバイブレーター。
つい先ほど『拡張』時に口にくわえて舐め回した、張型の性具だ。
昨日も、一昨日も、風紀委員の休憩時間にトイレで咥えていた模擬男性器。
彼の言ったとおりの、本物に近い味と性臭が記憶から喚起され、味覚と嗅覚に香る。
『ん、ぷはぁ』
「!」
続いて響いた少女の声に、引っ張られて、白井はテレビに目を移した。
少女が口を離し、張り詰めたペニスをうっとりと見つめている。
『……ふふっ、おっきぃ』
淫蕩で、肉欲にまみれた笑みが、白井のよく知る顔に浮かび上がっていた。
ペニスの先端と少女の唇の間にかかった唾液の橋がプツリと切れ、再び少女が少年の股間に顔を埋めていく。
369 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/25(土) 12:24:42.52 ID:e3Y7s9Iro [6/15]
(お姉様……!)
美琴に似た少女の舌が張り詰めた起立に絡み、亀頭を弄び、唇が先端に被さる。
その美麗な横顔は、時折内側からペニスの先端に押し上げられてプクリと膨らみ、また、吸い上げる際にはひょっとこのように凹んだ。
(ああ、お姉様……お姉様が、あんな……)
情けなさすら感じる表情。
しかしそれを見る白井の唇は胡乱に開き、覗く舌先は少女の動きを追うように艶かしくのたうち、円を描き、口内に溜まった唾液を撹拌した。
「んはぁっ!」
左手が再び、右の頂を強く摘みあげる。パンパンに固く膨れた陰核を右手人差し指と中指が挟みこみ、小刻みにすり潰した。
もはやその刺激を、驚きではなく快感として受け止められるほど、白井は昂ぶっている。
トクトクと溢れ出す愛液は指を濡らし、太股を流れ、シーツに染み込む限界を超えて水溜まりと化していた。
「あっ、あっ、あっ、あっ」
目の前がチカチカとする。
声を抑えられない。抑えるという発想まで思考が動かない。
370 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/25(土) 12:25:11.89 ID:e3Y7s9Iro [7/15]
心の天秤が揺れる。
このまま溺れてしまえばいい。
黒点が囁きかける。
淫らになれば、彼はきっと満足する。
美琴を護ることができる。
自分も、いまよりずっと気持ち良くなれる。
371 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/25(土) 12:25:43.30 ID:e3Y7s9Iro [8/15]
――楽に、なれる。
372 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/25(土) 12:30:40.29 ID:e3Y7s9Iro [9/15]
「いやぁっ、あっ、あうっ、いやですのぉ!」
しかし。
このまま淫らに溺れてしまっていいのか、と理性が叫ぶ。
堕ちればもう、美琴の前に立つことはできなくなる。
欲望に折れた自分が恥ずかしくて、顔を見ることができなくなる。
彼に身体を許し、それを喜々とする己が許せなくて、笑いあうこともできなくなってしまう。
「あっ、くるっ、ああっ、あっ、ふぁあっ」
(だめです、だめです、だめです、だめですの)
股間から快感が突き上げてくる。
肩が震え出すのがわかった。口の端から唾液が零れたのがわかった。両足爪先が、ぎゅっ、と曲がるのがわかった。陰唇がパクパクと開閉し、ゴプリと蜜を吐き出したのがわかった。
「ああっ! あああっ! ああああっ」
折れないと誓ったはずだった。
もう大丈夫だと思ったはずだった。
それなのに、心とはこうも、弱いものか。
こんなにも、身体に引きづられてしまいものなのか。
目の前は真っ暗になった。
抵抗をやめない心を、黒い染みが支配していく。
そしてもはや抵抗をやめた身体は、決壊の絶頂に手をかけていた。
373 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/25(土) 12:31:51.50 ID:e3Y7s9Iro [10/15]
「もうっ、もうっ、わたくし、もうっ……!」
(だめっ、このままイったら、わたくしは……)
折れる。
(お姉様……!)
助けを求めるためではなく、己を支えるため。
目を閉じた白井の瞼の裏側。
望んだのは、今まで何度も折れそうになった白井を救った、美琴の笑顔。
だがいま浮かび上がったそれは、映像の少女が浮かべていた、淫らな笑み。
「!」
ギシ、と心にヒビが入る音がした。
願い虚しく快楽を紡ぐ手指が、そのヒビを押し広げる。
(あ……)
そして最後の快楽を押し込もうと、陰核にかかった指が――
374 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/25(土) 12:32:29.27 ID:e3Y7s9Iro [11/15]
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
375 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/25(土) 12:33:03.48 ID:e3Y7s9Iro [12/15]
(……んー)
最近お気に入りの喫茶店で読書をしていた美琴は、ふと、目の端に見慣れた人影が通った気がして顔をあげた。
しかしそこにいたのは、思い浮かべた白井ではなく、背格好の似通った同じ常盤台中学の女子生徒だ。
見慣れたように感じたのは、その女子生徒が茶色のツインテールで、さらには風紀委員の腕章をしていたからだろう。
「……」
(黒子は確か今日、非番だったわよね)
頭の中で後輩のスケジュールを思い起こしながら、携帯電話を取り出す美琴。
今日も白井は何か教養を入れているのか、学校が終わると同時にどこかに行ってしまっていた。
(また無理してなきゃいいけど)
三日前にも、公園で気を失ったばかりだ。
それにも関わらず、昨日も一昨日も彼女は風紀委員の仕事に出ている。
(……習い事終わったら、ちょっとお茶でもできるかな?)
同室の先輩で、かつ、もっとも親しい友人でもある。
体調は心配だ。
それに加えて、最近はちょっと付き合いが悪いようにも思う。
(淑女もいいけど、ちょっとはこっちにも気を回しなさいっての)
認めたくはないが、美琴としてもちょっと寂しいのである。
376 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/25(土) 12:33:42.44 ID:e3Y7s9Iro [13/15]
「お、わ、っ、た、ら、お、ちゃ、で、も、い、か、な、い、? ……と」
カチカチとメールを打つ。
そして送信ボタンを押そうとしたところで、
「……んー」
(もし静かにしないといけない教養だったら、メールはまずいかなぁ)
白井は風紀委員だ。役職上、そういう場でも携帯電話の電源を切らないでおくことが許容される立場にある。
マナーモードにしているのはしているのだろうが、もしも設定を忘れていたら、あまりいい顔はされないだろう。
知らないのであればともかく、習い事参加中ということを知っていながら緊急ではない連絡をするのもどうなんだ、という気もした。
(さて、どうしよっか)
414 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/26(日) 20:42:47.49 ID:dIrsxvoso [2/12]
「……」
結局、美琴は送信ボタンを押さなかった。
(黒子の邪魔しちゃ悪いしね)
未送信のメールは削除し、携帯をテーブルの上に置きなおす。
自慢の後輩ががんばっているのに、それを自分の我侭混じりで邪魔するわけにはいかない。
心配なのも本当であるが、それならお茶に誘うよりも部屋でゆっくりさせた方がいいだろう。
「ま、私もがんばりますかー」
一口、紅茶を飲んでから美琴は読書に戻った。
読んでいるのはAIMに関する研究の、基礎となる本。
基礎的な内容を高度に研究した『上級者向けの基本』を記したものである。
美琴は他のレベル5と異なり、レベル1から5まで上り詰めた存在だ。
それを考えれば、能力向上に基礎の習熟は重要な部分と言えた。
(私も負けらんないしね)
もう何度目かわからない言葉を苦笑とともに思い浮かべながら、美琴は読書を再開する。
415 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/26(日) 20:44:17.54 ID:dIrsxvoso [3/12]
――そして。
白井の下に、救いは来なかった。そんなものは、幻想でしかなかった。
蜜にまみれた指が、絶妙な強さを持って、陰核を圧迫した。
「あ――」
息を呑み、白井が一瞬だけ硬直する。
直後。
真っ暗だった目の前が、一気に白く染まり、
「ああっ! イクっ! イきますっ! あああああぁーっ!」
仰け反り、ベッドに倒れ、白井は声をあげた。
左手は右胸を掴み。右手は秘裂を掻き。
背筋を仰け反らせ。両爪先だけを床につけ。
大きく開いた膝の間の、その最奥から射精のように蜜を飛ばし。
光を失った瞳から、大粒の泪を零し。
「っ! っ! っ! っ!」
白井は腰を突き上げるように、何度も、何度も痙攣した。
その痙攣の度に絶頂した。
そして絶頂の度に、実感した。
416 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/26(日) 20:44:50.07 ID:dIrsxvoso [4/12]
「あぁぁぁ……」
白井が白い世界から降りてくる。
シーツから浮き上がっていた尻が、ベチャリと、蜜の泉に着地した。
「ああぁぁぁ……ああああぁぁぁぁ……あああぁぁぁぁぁぁぁ……」
続いて力の抜けた身体がベッドに沈む。
そのまま、白井は動かない。
蜜は、快楽の余韻を示すように、まだトクトクと漏れている。
しかし泪は止まっていた。
光を失った瞳は、泪を流すことすら許さない絶望に染まっていた。
「わた、くし…………わたく……し…………」
白井は実感していた。
自分は、自分で自分を折ったのだと。
彼に命令されたから。
美琴を護るためだから。
自分の大事なものを失わないためだから。
そう言った理由もなく、ただ、快楽を貪った。
それも、初めから最後まで、誰も介在しない、自分の意思で。自身の、欲望で。
「わたくし……うそつき……ですのね……」
何も映していない白井の瞳。
頬に張り付き、唇にかかった髪一筋に、とろりと、唾液が絡んだ。
417 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/26(日) 20:46:09.23 ID:dIrsxvoso [5/12]
ノックの後、数秒の間をとってから、部屋のドアが開いた。
「黒子?」
美琴はそろそろ読み終わろうとしている基礎本から顔をあげ、音のした方に目を向ける。
口調は疑問系だが、声の響きには確信しかない。
ノックの調子だけで白井か否かはわかる程度には、付き合いが深いのだ。
「ただいま戻りましたの」
と、白井が軽く頭を下げた。
「おかえり黒子。今日はどうだったの?」
相変わらず、どこか堅苦しさの抜けない白井に、美琴は苦笑しつつ問うた。
何の気のない、ただの質問。今日は非番だから、どこぞの教養に顔を出す。
そう聞いていたからこそのもの。
しかし。
「っ!」
白井は肩をビクリと震わせ、うつむいた。
「黒子?」
その様子に美琴が眉を顰めた。
今の質問に、何かおかしなことがあっただろうか?
418 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/26(日) 20:47:34.65 ID:dIrsxvoso [6/12]
「……」
だが白井はうつむいたまま応えない。
その様子は、何かを耐えているような、そんな雰囲気だ。
「どうしたのよ?」
本を置き、立ち上がる美琴。
「お、お姉様……わたくし、わたくし……」
白井は、なんとか、という様子で美琴を呼んだ。
名前でも、苗字でも、二つ名でもない、しかし彼女にとって、それこそが御坂美琴を顕す呼び方で。
「!」
そこで美琴は気がついた。
白井が、肩を小刻みに震わせていることに。
(え、黒子、泣いて……?)
「黒子? ちょ、ちょっとどうしたのよアンタ」
美琴が白井に近づいた。
常盤台の寮室はそこそこに広い。
だが美琴の位置からドア近くの白井の場所までは10歩も進めば十分だ。
そして美琴が進み、己のベッドの近くまで来た途端、
「わたくし、もう我慢できませんのー!」
白井がいきなり美琴に跳びかかった。
419 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/26(日) 20:48:45.83 ID:dIrsxvoso [7/12]
「はあっ!?」
いきなりのことで咄嗟過ぎて反応できず、ルパンダイブよろしく、美琴はベッドに押し倒された。
「ああ! お姉様お姉様お姉様! この声この香りこの温もり! 久しぶりのお姉様ですのー!」
「ちょっ、な、こら、やめっ」
両手を美琴の両腕の外側に突き、顔を近づけて髪の香りをスンスンと嗅ぐ白井。
「ああ、なんと甘美な! なんと恍惚なのでしょう! お姉様ー!」
「こ、この、」
美琴が大きく息を吸い込んだ。
前髪に紫電が走る。
「淑女の話はどうしたー!!!!!!!」
空気を切り裂く音が室内に響いた。
420 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/26(日) 20:49:27.72 ID:dIrsxvoso [8/12]
「ったく……少し見直した、と思ったら」
美琴はシャワールームに入り、入浴のために服を脱ぎながらため息をついた。
白井を焦げ焦げにしてから、改めて狼藉の理由を聞いてみたところ、返ってきたのは「禁断症状がでましたの……」というふざけた言葉だった。
とりあえず電撃で動けなくなった白井はそのままに、先にシャワーを浴びてしまおうとしたのであるが。
「禁断症状って、薬物中毒かっつの」
ぶつくさ言いながらも、美琴の顔には僅かな微笑みが浮かんでいる。
いわゆる、あれが今までの、いつもの白井だったのだ。
ここ最近のおとなしさはそれはそれでありがたかったが、やはりああいうやり取りもどこか嬉しいものなのである。
もっとも、実際に何かされるとなると話は別であるが。
(お風呂出たら回復してるでしょうし、ご飯でも食べにいこっかな)
そんなことを思いながら、美琴は機嫌よくシャワールームに入った。
変わるのはいいことだと思う。
だが、自分にもっとも馴染み深い白井がきちんといることに、美琴は安心感と、嬉しさを禁じえないのであった。
421 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/26(日) 20:50:26.64 ID:dIrsxvoso [9/12]
「……」
シャワールームから水音が聞こえてきた。
それを確認してから。
白井は身を起こして、自分のベッドに腰掛けた。
胸に手を当て、そこにある痛みに耐える。
口元に浮かんでいるのは、哀しそうな、力のない、諦観の笑み。
うまくいった。
美琴は、いつもの自分だと、思ってくれたはずだ。
いつもの自分を、演じることができたはずだ。
――快楽に折れた情けない白井黒子だとは、気がつかなかったはずだ。
(これが……これしか、ないんですの)
美琴の前に立てない。立つ資格はない。
それでも現実問題、白井は常盤台中学校在籍であり、美琴と同室であり、何より美琴ともっとも親しい友人であるのだ。
会わないですむ選択肢はない。それに、仮に転校などしたところで、付き合いは続いていく。
美琴の性格上、それでさよなら、などとはならないだろう。
422 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/26(日) 20:54:32.04 ID:dIrsxvoso [10/12]
何より、
(……お姉様を、悲しませたくないですの」
折れた自分が、彼女を護ろうと考えるのは、おこがましい。そんな恥知らずなことなど、もう思えない。
それでも、美琴を敬愛する気持ちが、なくなるわけではないのだ。
哀しませたくは、ないのだ。
「……」
だったら、こうして『白井黒子』の仮面を被ればいい。
今後も、ずっと。彼女とつながり続けている限り。
そう、
(……彼と会うときと、同じように)
仮面を被ることで、身を汚されることを耐えていたときのように。
美琴の前で、自分を偽り続ければいいだけの話だ。
「……」
これからも、彼の相手をしなければならない。
彼の前で『御坂美琴を護る白井黒子』を演じなければならない。
これからも、美琴のパートナーでいなければならない。
美琴の前で『いつもの白井黒子』を演じなければならない。
「わたくし、うそつき、ですもの」
俯き、ポツリと呟く白井。
だから、出来る。
泪は、こぼれなかった。
447 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/03/10(土) 04:43:22.49 ID:V/cxlbTdo [1/40]
朝。
「おはようございます、お姉様」
「おはよう黒子」
起床し、身支度を調え、朝食をとって学校に向かう。
今日は月曜日。週初めということもあってか、登下校する生徒たちの雰囲気はどこか重苦しい。
「昨日は楽しかったわねー。またみんなで行きたいわ」
しかし美琴の機嫌は上々だ。
昨日、久しぶりに四人で外出したのが、よほど楽しかったようだ。
「ですわね。四人揃うのは、久しぶりでしたの」
「次に休みが合うのって、いつだったっけ? あんたと初春さん」
「来週と、再来週は同じですが、」
白井は言葉を一瞬だけ切ってから、
「……来週はわたくし、用事が」
「そっかー。じゃあ再来週にしようかな?」
「再来週、どこかに?」
448 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/03/10(土) 04:43:57.59 ID:V/cxlbTdo [2/40]
「次は4人で買い物に行きたいなって思ってさ。学校帰りに見てもいいけど、やっぱりみんなで行った方が楽しいもの」
「あら? お姉様はわたくしだけではご不満ですの?」
「不満というか不安というか」
「なっ、ひ、ひどいですのお姉様!」
「あんた一昨日の自分を省みてごらんなさい」
「あ、あれはっ……」
「なによ」
「……っ」
「黒子?」
「い、いえ……あれはただの間違い、ただの気の迷いですの。ちょっとした、そう、つい魔がさしたんですのよ」
「魔がさしたって言葉と禁断症状って言葉は同居しないと思うわ」
「お、お姉様。そろそろバス停ですの。降りる準備をなさったほうが」
「あんたねぇ……まぁ、いいけどさ」
449 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/03/10(土) 04:45:04.38 ID:V/cxlbTdo [3/40]
夕刻、風紀委員活動中、休憩時間。
公衆トイレ。
便座に座った白井の目の前で、洗浄に使ったカテーテルが揺れている。
「んんんっ!」
両膝を持ち上げ、M字に開いた脚の付け根で、白井の右手が前後に動いていた。
ラバー製の器具が、柔らかく解れた後ろ側を出入りする。その度に、ぐちゅ、ぐちゅ、と音をたて、
「ふぅぅんっ! んんんんっ! んふぅんっ!」
白井がくぐもった声をあげる。
スカートと下着は洗浄の前に脱いでしまう。身につけているのは淡い青色のブラウスと、ふくらはぎ半ばまでの靴下と、スニーカーだ。
しかしブラウスは裾を大きくまくりあげられ、口にくわえられていた。その下のブラジャーは薄い膨らみに辛うじてひっかかる形で上にずりあげられている。
ほぼ露出した上半身前側。ぴん、と立った乳首を左指が摘み、しごき、押し潰す
。乳房を揉み、撫で回せば、小ささゆえにダイレクトに性感を刺激した。
「ふぅんっ! んんふぁっ! んんんっ!」
右手首のスナップはリズミカル。
器具が肛門を入り出る一往復が一往復が、白井の背筋に快感を流し、全身に熱を廻らせていく。
450 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/03/10(土) 04:45:55.73 ID:V/cxlbTdo [4/40]
(こんなっ、なぜっ……前よりっ、気持ちいいっ……!?)
身体に響く快楽は、一昨日の同じ行為よりずっと強い。
そのことに白井は混乱しながらも、うっすらと汗の浮いた肢体は素直に反応を返した。
もう異物の挿入に抵抗を示さないすぼまりの上。いまだ純潔を保っている秘裂は、そうであると思わせないそぶりでパクパクとひとりでに開閉し、白濁した蜜を吐く。
どろりとしたそれは蟻の門渡りを通って肛門に達し、新たなローションとして機能した。
「んんんんっ! んんんんんっ! んんんんんんっ!」
ツン、とどこか甘酸っぱい性臭が己の股から鼻先に届き、白井は身体がさらに高ぶったのを自覚。爛れた欲情に油を注ぐかのように、右手のスナップの角度が深くなり、左手は強く乳首をすり潰し、そして何度もそれは繰り返される。
(いやらしいですのっ、はしたないですのっ……わたくし、こんなにお尻で……胸も固くなって……こんなにも、ここを濡らして……)
ほんの一月前の自分の常識では有り得ない肛虐の魔楽を自覚し、白井はゾクゾクと身を震わせた。
無意識はそのことを危機感として訴えるものの、
(ああっ! すごっ、気持ちいっ、お尻、気持ちいいですの……! わたくし、こんなに淫らで、情けない……!)
だめだ、という言葉は浮かんでこない。
口にくわえた裾のせいで満足に呼吸ができず、思考力の低下した白井は、それを自覚することができなかった。
ただ求める欲望と自虐の思いがそのまま言葉として頭に満ちる。
451 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/03/10(土) 04:46:44.13 ID:V/cxlbTdo [5/40]
「ああっ!?」
サーモンピンクの乳首を、人差し指と親指の爪が、きゅっ、と抓った。
軽い痛み。それを数倍する快感。
あからさまな喘ぎが、思わず裾を離した白井の口からあがった。
両手は塞がっている。ぺちゃっ、と無駄な肉のない腹に落ちた裾部分が唾液の音をたてた。
手の形にもりあがった服の下でモゾモゾと指がうごめき、そのもりあがりに邪魔されて尻を犯す右手の動きが見えなくなった。
「ああっ、んんあっ、あああっ、あはあっ」
見えなくなった――視覚による興奮を得られなくなった白井の身体は、それをさらなる動きで代用しようとした。
ぐぽっ、ぐぽっ、と尻が音をたてる。空気の出入りを自覚して、白井の胸に羞恥がわき、
「だめぇっ! わたくし、あぅんっ、恥ずかしっ、あっ! ああっ! ああああっ!」
羞恥は瞬く間に自虐の快楽に変わった。
アナルバイブが引き抜かれるごとに、押し込まれるごとに空気の音が響き、あわせてグイグイと絶頂までの水域があがっていく。
何も考えられない――考えなくていい、真っ白の世界が見えてくる。
452 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/03/10(土) 04:47:32.89 ID:V/cxlbTdo [6/40]
「あぁっ! だめですのっ! ああんっ! 声っ! だめっ! ひああっ!」
声が抑えられない。
それだけは、と微かに残った理性が、自制を叫ぶ。
白井の無意識はそれを拾い、頭の片隅に置くことを許した。
しかしそれは、外向きへは防衛意識であったが、内向きへは違っていた。
無意識の選択は、危険の自覚。味を覚えはじめた、別の快楽の火種。
声が個室から漏れてしまう。
トイレに響いてしまう。
誰かに聞かれてしまう。
人に、気がつかれてしまう。
453 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/03/10(土) 04:48:28.52 ID:V/cxlbTdo [7/40]
こんな自分を、見られてしまう。
454 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/03/10(土) 04:49:30.38 ID:V/cxlbTdo [8/40]
「――ふあっ!」
ゾクゾクゾクッ、と今までで最大の痺れが背中を撫でた。
「あっ、あっ、あっ、あっ」
グポグポと。クリクリと。
口元からよだれを垂らし、白井は霞んだ瞳で前を見る。
目の前にはドア。カテーテルのかかったドアは開いていない。
だが、白井の瞳には、立っている誰かが見えた。
ここを開けた誰かの驚いた顔。
次の瞬間に浮かぶだろう戸惑いの顔。
そして最後に浮かぶであろう、軽蔑の顔。
その顔は――
「っ!」
白井がそれが誰なのかを認識した瞬間、左手が乳首をつねりあげた。右手がアナルバイブを根本まで肛門に突きこんだ。
右手の親指が掬い上げるように動いて、包皮から完全に外に出た、グミのように固くなった陰核を、ぴん、と弾いた。
手の届きかけた絶頂が、転がり落ちてくる。
反射的な動きで上半身は身を縮め、M字の脚は限界まで引き寄せられた。
「イクっ! イクっ! あああああっ!」
顎をあげ、嬌声をあげる白井。
舌先から跳ねた唾液が、動きに引っ張られて、円弧の軌跡を描いた。
455 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/03/10(土) 04:50:33.93 ID:V/cxlbTdo [9/40]
そして、休憩時間は、あと20分。
今から後始末をすれば、余裕をもって仕事に復帰できる時間だ。
こんなことで、焦らずにすむ時間だった。
だが。
「こんなの、だめですの」
「こんなの、あの人に見せられないですの」
「我慢できなかったことがわかってしまいますの」
「……」
「……これをくわえてもいませんし」
「……くわえてたら、声はたちませんの。彼に、ばれませんの」
「……消して、もう一度撮り直せば……」
「……もう、一度」
黒子「……好きにすれば、いいですの」-3
「おや、外出か御坂」
「はい、ちょっと学校まで」
常盤台中学校学生寮、玄関。
外出しようとした美琴は寮監に呼び止められて脚を止めた。
休日の昼下がり。出かける生徒は多いが、それでも美琴は目立つ存在だ。おまけに白井と共に、割と問題行動もある。
気をつけろ、と寮の玄関を出る者たちに告げる寮監が、ふと呼び止めてしまうのも自然なことだ。
とはいえ呼び止めた当人にも美琴にも、後ろ暗い様子はない。
美琴から見れば寮監は怖い対象でもあるが、生徒に愛情を注いでいるのはわかっている。そして寮監にして見れば、第三位の美琴も、手のかかる娘、の一人なのだから。
「学校に? 今日は休日だぞ?」
「そうなんですけど、研究所以外じゃ、学校くらいしか私の訓練場所がないので」
『超電磁砲』の出力は、そんじょそこらの電撃使いの比ではない。全力を出せば、周辺一帯の停電すら招くほどの大規模なものだ。
大袈裟と思うなかれ。
なにしろ前科あり。
疑いない。
そんなわけで、彼女が能力の訓練をしようと思えば、電撃使い専用の研究所か、発電所か、『超電磁砲』のための施設を持つ常盤台中学しかないのである。
185 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/18(水) 01:00:36.49 ID:QONzfrqDo [2/16]
「休日に訓練とは熱心で感心なことだが、どうしたんだ急に」
美琴が努力の人だとは承知しているが、休日には年相応に遊ぶことの方が多かったはずだが。
「あはは、ちょっと最近、思うところがありまして」
「ふむ?」
心配そうな顔を浮かべる寮監。
「あ、違うんです。えー、と……」
言っていいかなぁ、と美琴は少し考えてから、
「黒子が最近、努力してるんですよ。何に、というか、全般的に。だから私も、ちょっと頑張ろうかなって思いまして」
あのカフェでの衝撃の発言から一週間。
確かに白井は、いわゆる淑女になろうとしているらしい。
普段のシャンとした態度は変わりなく、しかし日常での気遣いや、いままで悩まされてきたセクハラ紛いの言動は影を潜めている。
今日も、風紀委員の非番だと言うのに、何やらマナーの復習にいく、とどこかに出かけていた。
美琴としては少し無理をしているようにも思えたし、こういう休日に遊びにいけないのは少し寂しい。セクハラ紛いの言動も、なくなればなくなったで物足りないものだ。
しかし、白井が頑張っているのは素直に尊敬する。
そしてその原動力が、『御坂美琴が笑顔でいられるように』と言うのだから、嬉しくもあり、気恥ずかしくもあり、
(私も黒子が笑っていてほしいと思えるような人にならないとね)
何よりも、自分への刺激となった。
186 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/18(水) 01:01:30.25 ID:QONzfrqDo [3/16]
「ふむ。よい方向への刺激のようだから、詳しくは聞かないこととしよう」
野暮だからな、という寮監の言葉に美琴は微苦笑。
休日でもスーツ姿な寮監が、野暮という言葉を使ったのが、どこかミスマッチで可笑しかったのだ。
「じゃあ失礼します」
「ああ、気をつけてな」
頷く寮監に軽く一礼して、門をくぐる。
外に出て空を見ると、抜けるような晴天だ。
(……気をつけて、かー)
第三位の自分が気をつける相手など、それこそ両手で数えるほどしかいない。
しかしそれは、まだまだ自分より上がいるということ。
「一方通行に勝てるくらいにはならないと、ね」
小さく口に出す。
それは壮大というよりも、無謀なこと。物理現象である電撃は、ベクトル操作に通用しない。
だが美琴が言う勝つとは、ある意味ではその無謀を指し、ある意味では違う。
187 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/18(水) 01:02:20.25 ID:QONzfrqDo [4/16]
右手ひとつで、一方通行に立ち向かった少年。
彼が持っていたあの意思を、自分でも体現できるように。そして、今度こそ大切なモノを護れるように。
そう、せめて、
(あのカフェの時の黒子みたいな『決意の顔』ができなくちゃ、愛想尽かされるわ)
目指すは、少年と後輩。
御坂美琴は軽い足取りで、彼女の目標に踏み出した。
188 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/18(水) 01:02:54.42 ID:QONzfrqDo [5/16]
「あぐっ! ああっ! はうっ!」
土下座でもするように顔を枕に埋め、尻を高くあげられた白井が、途切れることなく声を上げ続けている。
涙を流し、辛そうに――痛みのせいではなく――顔を歪める少女の口から漏れるのは、苦鳴にも似た意味なき言葉。
背後から腰をたたき付けられる度に響くグチッ、グチッ、と言う鈍い水音が、その言葉を艶めいたモノに塗り替えていた。
彼はワイシャツもズボンも脱いでいない。それがゆえに、屈辱的な声と音は、ダイレクトにその源泉――白井に届いている。
「ああんっ! あんっ、あっ、ああっ、あはぁっ!」」
しかし白井はそれを抑えることができない。
一定の速度を保った腰は、事が早く終わることを予想させず、口は閉じるどころか、後ろから前に通り抜ける快楽を喘ぎとして吐き出すことに終始していた。
そう、喘ぎだ。
「うんっ! あっ、あっ、あっ、き、気持ちいっ、あっ、んんっ、なっ、なぜっ、ですのぉ!?」
意思どおりに動かない唇は、内心にだけにしておきたい言葉を、なぜかよく外に吐く。
辛うじて言い切ることだけは耐える白井だが、誰が見ても彼女が快楽を得ているのがわかるだろう有様だ。
呼吸するためか、枕に顎だけを乗せた彼女。
眉を顰め、涙を流し、喘ぎを止めようと歯を食いしばっている。
しかし。
189 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/18(水) 01:04:00.60 ID:QONzfrqDo [6/16]
「あっ! くふっ! はぁっ!」
眉の角度は甘く垂れ、
「んはぁっ! あっ! あうんっ!」
涙濡れる頬は紅く、
「んんんっ! んあっ! うぅんっ!」
食いしばったがために篭る力は返って締付けを強くしてしまう。前後する快楽を、より身体に響かせてしまう。
「んはあっ!」
彼の両手が、まだ芯の残るやや固めの尻を、それぞれ左右外向きにこね始めた。
肉は薄くとも、そこは溶けたオンナの身体。
広げれば、剛直が突きこまれている肛門周辺はより剥き出され、閉じれば肉棒の幹部分を挟むほどには、尻たぶが寄る。
「くあっ! ああんっ! すごっ……くっ、ちがっ、んんん! ふあっ! ううんっ!」
中だけではなく、入り口周辺までペニスで擦られた白井の声が、より高くに変化した。
彼からも、白井自身も見えない太ももの内側。
しかし秘裂から溢れた白濁の蜜は、高い粘性ゆえに白井に太ももを流れているのを感じさせ、その量ゆえに彼のズボンを濡らして彼にそれを悟らせてしまっていた。
190 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/18(水) 01:05:24.24 ID:QONzfrqDo [7/16]
「ああっ! んんんっ! いやですのっ! わたくしぃっ!」
彼に何か言われるよりも先に、白井が強く首を振った。
枕を支点にしているため、それにあわせて尻が左右に揺れているのにも気がついていない。
いやそれはむしろ無意識か。
後ろ手に縛られた白井は、そうすることで身体を、乳房をシーツに擦り付け、肛門以外からの快楽を得ようとしているのだ――自分が濡れているのは肛姦ではないと、言いたいがために。
「あうっ! あんっ! あっ! あっ! んはぁっ」
白井が膝をつかい、自ずから腰を上下に揺らし、あるいは、彼の動きにあわせて左右に振り始めた。
重力の助けを得て、お椀形になった乳房。小さく揺れるその硬くとがった先端は、シーツに掠るか掠らないかのところを、行ったり来たりしている。
乳首への刺激ゆえに濡れている。
そう言うかのように、白井は積極的に腰を振る。尻を上下に動かす。彼が突きこむのにあわせて後ろに突き出し、抜くにあわせて前に引く。
「うぅんっ! あっ! あっ! ああんっ! んあああっ!」
喘ぎも、水音も、尻がズボンにあたる布の音も、どんどん大きくなっていった。
191 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/18(水) 01:06:29.01 ID:QONzfrqDo [8/16]
「……」
彼はそこまできてもなお、白井に声をかけない。
揶揄することもなく、許す言葉をかけるでもない。
挿入から今まで。
彼は無言のまま、速度を変えないまま、ただ尻をこねる手だけを変化させ、律動を繰り返していた。
それは彼女に情けをかけているのではない。
逆だ。
ここで、白井に無理に何かを言う必要はないからだった。
今日の白井の精神の変化は、彼にとっては明白かつ、予想通りの反応である。
白井は強い。
それは彼女のレベルが高いから、というそんな一面的なものでは、もちろんなかった。
彼女と同年齢で、彼女ほど聡明で、誇り高く、心の芯に折れないモノを持ち、しかしそれに寄りかからない確たる己を持つ者は、まずいないだろう。
事実、彼女はこんな目に遭って二週間、それを誰にも悟らせていないのだ。
御坂美琴と信頼しあう友人で、同室であるにも関わらず、だ。
それほどの彼女は、だが残念なことに、聡明すぎて、誇り高すぎて、芯が強すぎた。確たる自分を、持ちすぎていた。
192 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/18(水) 01:07:22.84 ID:QONzfrqDo [9/16]
聡明だから、薬の影響で周囲に露見しないよう、自ずから自慰を行う。
いくら美琴を想って行為しようとしても、実体験は強烈な彼のとの一件だけ。
そうなれば、それを思い出すのは当たり前だ。よかれわるかれ、それは強い思い出なのだから。
誇りが高いから、自分の弱さを認めなかった。
いくら強くあろうとも、彼女はまだ中学生になったばかりなのだ。
どんなに取り繕うとも、汚される恐怖に、その想像に、その現実に、耐えられるわけがない。
しかし彼女はそれを認めない。自分は強くあり、美琴を護ることを誇りとし、他の誰も巻き込まないと決めている。
だから、ただただ強い自分のままで、耐えるしかない。
芯が強いから、彼に屈服しない。屈服しない以外の選択肢が、存在しない。
快楽を与えられば抵抗する。羞恥心を煽れば抵抗する。免罪符を与えれば抵抗する。
肛姦でイカされようとすれば、抵抗する。
そしていま、腕を縛られ、能力も封じられ、薬で性感を高められた彼女は、抵抗している。
自分で快楽を得ることで、尻穴でイカされるという事実に、抵抗しようとしている。
結果的に、自分から尻を擦り付けているという事実に、目を瞑って。
193 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/18(水) 01:08:16.63 ID:QONzfrqDo [10/16]
今日が終わっても、彼女は変わらない。変わることが出来ない。
薬を与えれば今日のことを思い出して自分を慰める。そして自己嫌悪すると同時に『陵辱の記憶に美琴への想いが負けた』という観念に囚われ、自涜をやめることができないだろう。
美琴を見れば折れかけた今日の自分を思い出すだろう。次は折れないと決意し、折れかけた自分を恥じて、そして心を磨耗させていくだろう。
鏡の前では、今日を乗り越えたことに安堵するだろう。尻でイカなかったというだけで、快楽を得たことに違いがないことに、目を向けないまま。
そして何より、それらのことをすぐに自覚するだろう。確たる己を持つがゆえに。
なんのことはない。
194 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/18(水) 01:09:22.26 ID:QONzfrqDo [11/16]
白井を追い詰めるのは、白井自身だ。
195 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/18(水) 01:10:03.75 ID:QONzfrqDo [12/16]
「ふあっ! ああんっ! あはっ! あっ、あっ、あっ、はぁんっ!」
そんな彼の視線に気がつくことなく、白井の声が早くなる。高くなる。
腰の動きが――彼女の今の意思の中では乳首への刺激が――大きく、強くなる。
ぐっ、とこね続けていた彼の手が、逆に尻を強く掴んだ。そのまま、白井の動きに逆にあわせ、激しく前後に揺さぶった。
グポッ、グポッ、と音が響く。乳首が強くシーツに擦れる。
「ああっ!」
一気に快感が強くなり、白井が強く首を振った。
汗を吸った髪がバサバサと、吐息の混じった空気を大きく揺らす。
「あはあっ! あぅんっ! あ、当たってるますのっ! ああんっ!」
完全に白濁した愛液が、白井のふとももにも彼のズボンにも触れることなく、珠となって股間から垂れ落ちた。
強くたたきつけられる腰により、それ以外の蜜が、飛沫となってシーツに散る。
「ああっ! いやあっ! だめですっ! そんな強くっ、だ、だめですのぉっ!」
言葉は拒絶。しかし声は甘く蕩け。
「あっ! ああんっ! はぁっ! もうっ! もうっ! あっ! ああああっ!」
両足の指先が、くっ、と力を入れて曲がる。
汗の浮いた白い背中が、ぐぐっ、と仰け反った。
そこに、彼が一際強く腰を突きこんだ。
196 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/18(水) 01:10:48.46 ID:QONzfrqDo [13/16]
「はうっ!?」
白井が大きく目を見開き、ヒクヒクと震えた肛門が、根元まで突きこまれたペニスを、ぎゅう、と締付ける。
その瞬間。
ドクン、と白井の中で、大きな拍動が響いた。
熱いものが直腸の奥に叩きつけられる。
同時に彼が唐突に白井に覆いかぶさり、いままで尻を掴んでいた両手で、乳首を、きゅう、と抓り上げた。
「!」
胸から響く、痺れるような快感。
(あっ――)
白井の中で、ギリギリまで高まっていた性感が、爆発した。
「ああっ! ああああっ! イ、イクっ、イキますのぉっ! ああっ! イクっ!」
手を縛る布を千切れんばかりに動かし、絶頂する白井。
視界が真っ白に染まり、甘く痺れる電撃が、全身を駆け巡る。
197 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/18(水) 01:12:17.32 ID:QONzfrqDo [14/16]
「っ! っ! っ! っ!」
グリグリと尻を押し付け、膝でシーツを蹴るように、何度も何度も痙攣した。
背を覆う彼を押しのけるように限界まで身を反らし、身体を震わせる。
「っ!」
そして彼の歯を食いしばる音が一度だけ響き、身体の中で震える剛直が、最後の一滴までを吐き出したのと、時を同じくして。
「あっ――あぁ、あっ、あ……ぁ……あぁ……」」
白い意識の極みに達していた少女が、ようやく降りてきて、がくり、とベッドに身を沈めた。
「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ……」
目を閉じ、肩で息をする白井。ピクン、ピクン、と肩が震えている。
意識があるのか定かではない状態の彼女の口元。
そこには、この部屋に入ってきたときとは考えられないような、蕩けた笑みが、確かに浮かんでいた。
207 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/01/26(木) 20:35:08.62 ID:nAI/Ynsfo [1/11]
肩まで湯に浸かった白井は、脱力感に任せて、バスタブにもたれかかった。
ちゃぷっ、と湯気をたてる水面が揺れる。入浴剤を落とした湯は、赤く、そして薔薇の香り。
バスタブは、白井が脚を伸ばしてちょうどという程度の大きさだ。
ここは、彼と会うホテルではない。寮とは逆方向の、小さなビジネスホテルである。
彼と別れ、すぐに駆け込み、シャワーを浴び、湯舟に沈んだ。
「……」
背もたれながらも、俯いている白井。
投げ出した脚と、太股の間にだらりと下げた腕。そして頭だけが、かくんと落ちたような姿勢は、まるで疲労という言葉をを体言しているかのようだ。
解いて垂れた髪で、少女の表情は伺えない。
「……。……」
しかし覗く唇が、何事かの繰り言を紡ぎ続けている。
208 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/01/26(木) 20:36:01.08 ID:nAI/Ynsfo [2/11]
大丈夫ですの。
耐えられます。
お姉様。
209 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/01/26(木) 20:37:32.93 ID:nAI/Ynsfo [3/11]
湯舟に浸かってから身じろぎひとつしていない彼女の周りに響くのは、その繰り言のみ。ちゃぷ、と水音もたっていない。
壁にかけられたシャワーヘッドも、確かに使った形跡がありながら、もう垂れるような水滴が残っていなかった。
どのくらい、ここでこうしているのか。
それは白井にも、わかっていないのだろう。
「……。……」
そんな、終わろうとしない彼女の声を途中で途切れさせたのは、ほんの小さな音だった。
心地よい温度の湯。そこから立ち上る湯気は天井に集まり、液体に戻る。
設計上のミスではなく、使用劣化によって小さく凸凹のできた天井は、その僅かに集積した水気を、いつしか水滴に変えていた。
音は、それが落ちて、バスタブを叩いたもの。
小さな小さな、水音だ。
しかしそれが何かの契機になったのか。
――よう。起きたか
「っ!」
白井の耳に、彼の声が甦った。
210 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/01/26(木) 20:38:41.84 ID:nAI/Ynsfo [4/11]
――大丈夫か? 悪かったな、いきなりシちまって。我慢できなかったんだよ
目が覚めたとき。
ベッドの中で、彼は服をきたまま、自分は全裸のまま。
左隣に寝転ぶ、彼。
シーツから、そして俯せた自分に重ねるように置かれた彼の右腕から伝わる、人肌の温もり。
驚き、力が入った拍子に、尻からゴプリと音をたてて漏れたモノ。
すべて、克明に思い出せてしまう白井。
振り払う前に次の声と記憶が響く。
――そうだ、参考までに教えてくれよ
そう問う彼の顔には、なんの色もない。ただ『気になったから』というだけの視線。
彼の唇が、質問を吐き出そうとする。
「っ!」
白井は強く首を振った。
だが頭の中の映像は止まらない。
残酷な台詞は、気軽投げ掛けられた。
211 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/01/26(木) 20:39:38.91 ID:nAI/Ynsfo [5/11]
――処女より先に尻を犯されるのって、どんな気分なんだ?
212 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/01/26(木) 20:40:14.67 ID:nAI/Ynsfo [6/11]
「うぅぅぅっ!」
喉の奥から絞り出すような声をあげ、ぎゅっ、と両腕で己を抱きしめる白井。
バスタブから背を離す。
顔をさらに俯かせる。
歯を食いしばる。
あまりに強く噛み締めた奥歯が、ミシリ、と軋む。
それでもなお、心の慟哭は治まらない。
「……っ」
白井の喉が震え、言葉が溢れようとした。
彼女は腕に爪が食い込むほど強く力をこめる。
耐える。
耐える。
耐えた。
だが。
「っ!」
そうして力をこめた少女の神経が、ズキリと痛みを知覚した。
彼女にとっては、この二週間で馴染みのある痛み。
指、ビーズ、バイブをはじめて使ってから、それに慣れるまでは感じていたものである。
今日はそれよりも大きなものだったから、痛んでもおかしくはない。
処女より先に――
治まりかけた衝動が再び白井に襲い掛かった。
213 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/01/26(木) 20:41:36.92 ID:nAI/Ynsfo [7/11]
「っ!」
白井は身を折って、顔を湯に浸けた。浮かんだ髪がゆらりと拡がる。
声は水中では形にならない。
彼女の顔の左右で、ボコボコと泡が咲く。
太股の間で、両拳が湯圧ゆえに緩やかに、バスタブの底を何度も殴った。
屈辱、嫌悪、悔恨、恐怖、怨嗟。
負の感情がないまぜになった中、白井は何度も声をあげ、泡を咲かせる。
美琴に助けを求めようとした自分が情けなかった。
尻を犯された直後に、泣き叫んだ自分が悔しかった。
何よりも、そんな中で快楽に喘いでしまった自分が哀しかった。
いっそ、折れてしまった方が楽なのかもしれない。
彼との『契約』は、満足させることだ。スルことさえスレば、美琴の安全は保証してくれるはずだ。
いやむしろ、そういう風に積極的に、従順になった方が、彼も喜ぶかもしれない。
それもまた、美琴を護る手段なのかもしれない。
(あぁ……)
ミシミシと、心が悲鳴をあげ、胸の奥に再び、あの時自分に囁きかけてきた黒点が拡がっていく。ジクリ、と甘い毒が、心に滲んだ気がした。
214 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/01/26(木) 20:42:41.40 ID:nAI/Ynsfo [8/11]
しかしそれを止めたのは、
――黒子
やはり、瞼の裏に焼き付いた、美琴の笑顔。
折れた自分がその笑顔を向けられて、自分を恥じないでいられるのか?
「っ!!!」
白井は一気に顔をあげた。
「ぷはっ! はっ――はあっ、はあっ、はあっ、はあっ」
いつの間にか限界以上に息をとめていたらしい。機関銃のように呼吸を繰り返す。
顎先と髪先からポタポタと水滴が落ち、震える肩とともに、湯の水面が小さく波立った。
「……」
いずれ必ず純潔を。
今日の経験で、それは予想ではなく、想像のつく確信と変わっていた。
犬のように這い、固いモノを押し当てられ、一気に貫かれる。
それを明確に想像した白井の背筋に悪寒が走り、
「――っ」
パン、と両の頬を叩く白井。
215 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/01/26(木) 20:43:39.86 ID:nAI/Ynsfo [9/11]
「しっかりしなさい白井黒子! お姉様を護るのでしょう!」
撫で回された身体は、シャワーで清めた。
奥に出された白濁は、慣れてしまった手順で洗浄した。
目を覚めました瞬間に不覚にも温かく感じた彼の体温は、湯の熱で拭い去った。
「わたくしが護ってみせますの……!」
もう大丈夫だ。
もう折れたりしない。
絶対に御坂美琴の幻想を、殺させはしない。
――この動画撮った場所、使えそうだよな。
――今度から行く前に連絡しろよ。大丈夫だったら俺も行くから。
別れ際に告げられた言葉。
明日からは、自涜ではなく、彼からの行為が日常になる。
その日常を繰り返した先にあるのは、貪り尽くされた自分自身と、美琴の笑顔だ。
彼のことを話す時は白井が嫉妬してしまうほどかわいらしい、笑顔だけだ。
「……」
それでも――いや、それだけで、どこまで浅ましく、汚らわしく、惨めに堕ちたとしても、耐えられる。
湯を含んで、簾のように垂れた前髪。
その向こう側にある瞳には、再び決意の光が灯っていた。
216 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/01/26(木) 20:44:35.77 ID:nAI/Ynsfo [10/11]
……決意に囚われ、決意にすがりついた光が、宿っていた。
242 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/01(水) 02:18:39.58 ID:UCBx2BnAo [1/16]
「ん~っ」
バスから降りて美琴は大きく伸びをした。
夕暮れの空気が、胸に染み込んでいく。
「ぷはー」
肺いっぱいの空気を吐き出すと、美琴は身体の中にあった淀みのようなものが消えたことを実感できた。
学園の園から出ている巡回バスは、施設としての居心地はよいものの、美琴にはあまり落ち着ける空間ではない。それは乗客の少ない休日で同様である。
常盤台も、学園の園も、そこから出ているバスも、どうにも学校という感覚がついてまわるせいだ。
彼女は超電磁砲。学校が纏われば、どうしたってそこに行き着く。
もちろん能力自体は美琴の誇りなのだが、肩書というのは往々にして肩を凝らせてくるもの。そして美琴はそういうのが苦手なのである。
「さて」
ポケットから携帯を取り出して、時刻を確認。
今日は休日なので普段より門限が遅い。まだ余裕があった。
美琴は携帯とは逆のポケットを探り、食事券と書かれたチケットを取り出した。
以前、何かの取材協力の時に正規の報酬とは別に渡されたものである。なんでもスタッフの親類が開店しているものらしい。
243 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/01(水) 02:19:53.42 ID:UCBx2BnAo [2/16]
(みんなを誘って、これに行ってみようかな)
有効期限が近い。それに、訓練での疲労もある。
せっかく出てきたのだし、いつものメンバーと連絡をとって夕食というのも悪くない。
(黒子の復習ってのも、もう終わっただろうしね)
朝から出掛けていたのだから、まぁ大丈夫だろう。
そう思って、とりあえず待ち合わせ場所になりそうなカフェにでも、と顔をあげる美琴。
踏み出しかけたその脚が、
「あ……」
目の前の交差点を見て、とまった。
美琴の口元に、本人も無自覚であろう喜びの微笑みが浮かぶ。
赤信号待ち歩行者の群れ。
その中に、見覚えのあるツンツン頭の姿があった。
244 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/01(水) 02:21:22.40 ID:UCBx2BnAo [3/16]
「ほんとによかったのか? 別に上条さんだって、餓死するほど貧しくはないのですよ?」
「だから良いって言ってんでしょうが! 何回言わせんのよアンタ」
「いやでもやっぱり、年下に奢って貰うというのはですね」
「食事券自体がもらいもんなんだから奢るも奢らないもないわよ」
交差点まで走って捕まえてうっかりビリビリしそうになるところを何とか抑えて。
夕食の食材を買いに行くという上条を強引に誘った、その帰りである。
そもそも奢り、というか食事券があるということで誘ったというのに、この男は店に入った当初から支払いのことばかり。
(なんでコイツ、バーゲンバーゲン言う割に、そういうところだけは気にするのかしら)
かなり緊張しながら誘ったのに。
照れ隠しで喧嘩腰にならないように一生懸命我慢したのに。
せめて料理を楽しんでくれたら食事の好みも知れようものだが。
救いらしい救いと言えば、すべて食べ終わった後に、
「すげぇ美味かった。誘ってくれてありがとうな、御坂」
と真正面から告げてくれたことくらいだろう。
そこまで思い出した美琴の頬が、かあぁっ、と染まった。
(な、なんだってコイツ、ああも真っ直ぐ人の目を見られるのかしら。そんな、たいしたことしてないのに。ま、まぁ、そういうところも好……き、きらいじゃないけどさ)
みょうな言葉がするりと頭に浮かびかけて、美琴は慌てて首を振った。
しかし抑えきれなかった何かが電撃に変わり、ビリビリと前髪を鳴らす。
245 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/01(水) 02:22:55.11 ID:UCBx2BnAo [4/16]
「あ、あの御坂さん?」
「ななななな、なによ!?」
「いえ、なんでいきなりビリビリしてんでしょーか、と」
「なんでもいいでしょ!? アンタには関係ないでしょーが!」
隣で高圧電流を流されて関係ないもないが、まぁそこは乙女理論。感情は理屈は凌駕するものである。
普段であればここから美琴が突っ掛かり、恒例の追いかけっこが始まるところなのだ。
だが、美琴は、はっ、とした表情を一瞬だけ浮かべて、さらに続こうとする乱暴な言葉を止めた。
(って、だめよ御坂美琴! 素直になるって決めたじゃない!)
白井の、あの決意の顔を見たあとに、自分で決めた小さな決まり事。
彼女のように凛とした目標ではないものの、どうしてか自分の中で、一番に変えなくちゃ、と思った事柄だった。
美事は背筋を伸ばし、ゆっくりと深呼吸。。ジジジ、と電気が納まっていく。
「ご、ごめん。ちょっと、驚いちゃってさ」
努めて冷静に、美琴が言った。
しかし、
「……おい、御坂。大丈夫なのか? どこか具合が悪いのか? 熱でもあるんじゃないんだろうな」
極めて真剣な上条の口調と表情。
「あ、アンタねぇ……」
ヒクヒクと口の端がひくつる美琴であった。
こうなれば、抑えた努力は無意味だ。いくら決意しても、短期間で人は変われない。
美琴が(言葉で)噛み付こうと口を開け――
246 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/01(水) 02:23:42.32 ID:UCBx2BnAo [5/16]
――ぴと、と額にちょっと硬くて、柔らかい感触。
247 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/01(水) 02:24:58.15 ID:UCBx2BnAo [6/16]
「え……」
「別に熱くはないけど、でも、引きはじめだったらやばいよな」
視界には大きく、彼の右手。
自分を救ってくれた、感謝してもし足りない男性の、右手だ。
「……」
「うーん」
「……」
「って、あれ? なんかだんだん熱くなって……」
「ああああああアンタなにやってんのよ!」
のけ反って顔を離そうとする美琴。
「わ、ばか動くなって。よくわからないだろ?」
しかし上条は、さらに近づいて右手を押し当ててくる。
「ぁ……」
見えた彼の目は、真剣なそのもの。
本気で心配してくれているのだ。
――素直にならなくちゃ
小さな決意が聞こえてくる。
248 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/01(水) 02:26:39.42 ID:UCBx2BnAo [7/16]
「……」
美琴の脚が一瞬だけ、後ろに下がるかどうか迷い、
「……だ、大丈夫よ、熱なんか、ないから」
その場に留まった。
半端に持ち上げた両手はゆっくりと降ろされ、そのまま腰の後ろに。
手指を組んで、居心地悪そうに、しかしどこか柔らかな雰囲気で、もじもじと。
「そうなのか? でもなんかやけに熱いんだけど」
「だい、じょうぶ。それ、風邪なんかじゃないから」
美琴はそこで言葉を切り、小さく、本当に小さな声で、続けた。
「……お医者様でも草津の湯でも、治せない病気だけど」
「ん? なんか言ったか?」
「……なんでもない」
「?」
首を傾げる上条。
「まぁ、大丈夫ならいいけど、無理すんなよ?」
「わ、わかってるわよ」
彼が右手を離す。
「……」
すうっ、と体温がなくなっていくことを寂しく感じてしまう。
249 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/01(水) 02:28:21.88 ID:UCBx2BnAo [8/16]
(ん……?)
そんな中、彼の右手が掻き交ぜた空気に、ふと、かぎなれた香り。
赤くなっていた美琴が、訝しげに眉をひそめた。
かなり薄くて、気のせいかとも思ったそれは、
(黒子の香水?)
自身と白井の部屋にいつも香っているものだ。
元々、常盤台は化粧が禁止だ。同様の理由で香水もアウトだが、そこは常盤台の伝統。『気のせいかと思うほどほんのりと』香水を振る技術も確立されていた。
この香りは美琴にとって、馴染み深いゆえに気がつきにくく、逆に気がつけば間違いないと確信が持てる。
(……なんでコイツから?)
上条が自分からつけているとは初めから考えない。そもそもこれは女性用だ。
もちろん市販品なので、彼の周りの誰かがつけていて、それが移ったということも考えられる。
美琴の付けているものは制汗スプレー程度であって香りが違うし、白井は上条のことをそれほど好んでいない。会ったとしても肌に触れさせることはないだろう。
「……」
上条にだって女友達はいるだろう。そうでなくとも学生だ。クラスメイトの半分は女子に違いない。
休日なのだから、誰かと会って、その時に移ったのだ。少なくとも、どこかに遊びに出掛けていて移るにしては、弱すぎる香りである。
要するに、深い意味はない。この香りは、たんなる偶然だ。
そうとしか考えられない。
「……」
考えられないのだが、どうしても、そうだとは思えない。
理屈じゃなかった。これもまた、乙女の理論。
いわゆるヤキモチからの疑問である。
世界はそれを女の勘と呼ぶ。
250 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/01(水) 02:29:32.48 ID:UCBx2BnAo [9/16]
「ね、ちょっと」
「?」
「……まさかとは思うけど、アンタ、香水なんて付けてないわよね?」
「は?」
「香水よ、香水」
「んなの、つけてるわけないだろ? 上条さんちにはそんな金銭的余裕はありません」
「……そう、よね」
予想通り。
支払いを気にしまくってる男なのだから、というかそれ以上に、美琴の知る上条は、そんな風な気をつかえるタイプではない。
(だったらやっぱり誰かから移った?)
さっき、誰かと会っていたのか。
そう問おうとして、美琴は一度だけ言い淀んだ。
もし、誰かと会っていたら。
もしそれが、友人というカテゴリー以上の相手だったら。
しかし、美琴がその内心に何かのケリをつけるよりも先に、上条が「あー……」と漏らした。
失敗した、と、言うような声色である。
「……なによその顔。アンタ、なんか私に隠してることでもあるんじゃないでしょうね」
というか、何か隠している態度だ。
乙女のなんやかんやもそうだが、彼があからさまに隠し事をしている態度に、苛立ってしまう。
すっ、と美琴の両目が細まった。
251 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/01(水) 02:30:23.58 ID:UCBx2BnAo [10/16]
「あいや、その」
「……私には、言えないこと?」
次に、声に険と、寂しさが混じった。
彼には隠し事が多い。それはなんとなく、わかっている。
彼がそれを言わないのはきっと、それだけの理由があるのだろうし、きっと、美琴への配慮であるに違いない。
しかしやはり、隠し事をされると言うのは、寂しく、辛いものだ。
それが、自分の信頼している相手であれば、なおのこと。
「……」
上条も美琴の内心がわかるのか、ガリガリと頭を掻いた。
「……」
それ以上何も言わない美琴の眼差しを見て、ひとつ、ため息。
それから、
「いや、実はさっき」
ポリポリと。
気まずそうな顔で。
「白井と会ってたんだ」
と、上条は言った。
252 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/01(水) 02:31:32.68 ID:UCBx2BnAo [11/16]
「ただいまー」
言いながらドアを開け、美琴は自室に入った。
「お帰りなさいまし、お姉様」
勉強机についた白井が、振り返って応える。
机に拡げられているのは、参考書か何かだろうか。
「アンタも帰ってたのね。お疲れ様。マナー講座? だっけ。どうだったの?」
「普通、ですの。基本の復習のようなものでしたわ。もっとも、それが一番大切で、難しいのですけど」
微笑を浮かべて返す白井。
返ってきてシャワーを浴びたのか、髪はどこかしっとりとしている。
美琴は「そう」と簡単に返事。クローゼットを開け、ハンガーを取り出した。
「……それより、黒子?」
上着をハンガーにかけ、今度はクローゼットにしまいながら、美琴が言った。
位置関係的に、美琴も白井も、お互いに背を向けた形。
「何ですの?」
いつもどおりの様子で、白井が問い返す。
サラサラとシャープペンシルが線を書く音は、淀みない。まるで適当に落書きでもしているかのように。
「アンタさ」
「はい」
253 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/01(水) 02:32:13.68 ID:UCBx2BnAo [12/16]
「今日、アイツと会ったんですってね?」
254 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/01(水) 02:33:02.48 ID:UCBx2BnAo [13/16]
「――!?」
ビクンッ! と白井が震えた。
アイツ――美琴がそんな呼称をする相手など決まっている。
しかも、ただ問われただけではない。
美琴の声は、いつもよりも低く、僅かに怒気の混じったものだったのだ。
「なっ、えっ、そっ、なっ……?」
ひくっ、ひくっ、と喉が痙攣するように動き、白井は言葉を作れない。
錆びたネジを回すように、ぎこちなく巡らした首。
背後の美琴は、クローゼットに上着をかけた姿勢で、白井に背を向けている。
「今日、たまたま偶然、アイツと街で会って。……それで聞いたのよ」
「……、……」
声の調子は変わらない。呼吸のとまった白井は、次の声も発せられない。
しかし美琴が振り返る気配。
「っ」
白井は弾かれたように、顔を前に戻した。
「……」
トン、トン、と美琴が床を歩く音がする。
その音が白井に近づいてきていた。
「……。……」
その音一回一回に、身を震わせ、カタカタと歯を鳴らす白井。
とても振り向けない。とても美琴の顔を見ることができない。
やがて足音が真後ろで止まる。
白井の震える右手から、ポロリと、シャープペンシルが零れた。
255 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/01(水) 02:34:12.94 ID:UCBx2BnAo [14/16]
「ねぇ、黒子」
「……」
返事もできない。
しかし美琴は、そんな様子に構う事なく、言葉を続けた。
「聞いたわよ? アンタ、疲れて公園で倒れかけたんですって?」
「え……」
それは、無茶を叱る柔らかい声。
「黒子には黒子の目標とかあるんだろうし、その努力をやめろなんて言わないけど……それにしたって限度を考えなさい」
「……」
「ここんとこ、毎日何かの訓練してるんですって? そんなんじゃ、身体を壊しちゃうわ」
「……」
「アンタの目標の一部に私がいるのは嬉しいし、それを目指すのはいいんだけど……身体壊すんだったら、私は嬉しくなんかないわよ?」
「……は、はい、ですの」
白井がぎこちなく頷く。
「まぁ、よりによってたまたま通り掛かったアイツに介抱してもらった上に、倒れた理由まで聞き出されたなんて、言いづらいのはわかるけど」
くすり、と美琴が苦笑した。
淑女になろうとは言え、中々今までの癖を拭い去るのは難しい。
それこそ、美琴が素直になろうとしているように。
白井の上条嫌いは、結構な深度だ。
上条相手に弱みを見せたとあれば、美琴への口止めをさせるのも頷ける話である。
しかしここで美琴から告げてしまったのだから、次に上条と白井が会えば、きっと彼は痛い目に遭うだろう。
(ま、これくらいはいいわよね)
いくら白井が相手とは言え、他の女性の香りをつけて自分の前に立った罰だ。
美琴は、自分の小さな決意――素直になること――を自分自身に少しだけ実行し、小さく笑みを漏らした。
256 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/01(水) 02:35:21.15 ID:UCBx2BnAo [15/16]
背中越しに、美琴が幸せそうに微笑する気配。
白井は、美琴に決して気がつかれないように唇を噛み締め、
「……」
胸に、そっと、右手を当てた。
267 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/04(土) 22:36:00.15 ID:/akQKQv+o [1/13]
学園都市のビジネスホテルが賑わうのは、もっぱら夜からである。
それは利用者の多くが、遅くなりすぎて『家に帰る手段をなくした』大人たちであるからだ。
何しろここは(少なくとも名目上は)学生のための街だ。最終下校時刻以降の外出を防止するため、日が落ちると公共交通機関は激減する。
そのため、まだ夕刻である今は、ホテルの廊下にひと気はない。
しかし不意に誰かが部屋から出てくるとも限らない。
私服姿に着替え、髪を解いた白井は、足早に部屋に入った。
「……」
パタリ、と背中でドアが閉まると、入室を感知したセンサーが自動的に明かりを点ける。
間取りは確認する必要もない。今まで数回、『拡張』時に利用しているのだ。
5歩分しかない、カーペット敷きの通路。窓際に並ぶテレビや、スタンド。部屋の6割の面積を占めるベッド。通路の途中で右手側にあるドアは、中でさらに左右に入口を持っており、浴室とトイレがある。
標準的なビジネスホテルだ。
白井は故意に事務的な動きで通路を抜け、クローゼットの扉を開けた。
ハンガーだけがかかっているそこに、常盤台の制服を入れたスーツバッグをしまい込む。
今日は風紀委員の準勤務日。
警ら等の通常業務はないが、事件があれば呼び出される、いわゆる待機の日だ。こうしている間にも呼び出されるかもしれない。
制服を持ち歩かないわけにはいかないが、少しでも部屋の空気に晒したくない――特に腕章をそうすることは、避けたかった。
268 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/04(土) 22:37:53.19 ID:/akQKQv+o [2/13]
(運が悪ければ、ここから出動することになりますわね)
白井の瞳が、不安そうに揺れる。
呼び出されるということ――つまり、余剰人員すら投入する事件が起こるということは、一刻の余裕もないということに等しい。
そんな中、のんびりとシャワーを浴びることなどできはしない。
情事のニオイを纏わり付かせたまま、出動することになるのだ。
「……」
いや、ことによると。
自分は出動することが、できないかもしれない。
彼が、許してくれなかったら。
「……」
白井は唇を噛みながら、丁寧にクローゼットを閉めた。
しかしどうしようもない。本当に出動がかかれば、なんとか説得するしかないのだ。
そう、たとえば、
(次はきちんと満足をさせますから、とでも言って……?)
――ズクッ、と白井の下腹の奥で、何かが動いた。
269 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/04(土) 22:42:42.18 ID:/akQKQv+o [3/13]
「っ!」
即座に首を振り、息を止め、右手を胸に当てる。その右手を左手で包み込み、目を閉じて俯いた。
告げられる恐怖を、意識的に思い出す。
『今日、アイツと会ったんですってね』
「!!!」
あの時感じた凍つくような感覚が背筋をかけあがり、白井はぶるりと身を震わせた。
「――はっ」
悪寒を吐き出すように一息。頬が強張っているのが、自覚できる。
その時にはもう、腹の奥で動いたはずのナニカは、恐怖に凍らされていた。
「……」
(ごめんなさいお姉様……)
続いて襲い掛かってくるのは、とてつもない罪悪感だ。
美琴を護るため。
その思いと彼への嫌悪で表面化していなかった感情は皮肉にも、自分を心配してくれる美琴によって形持たされていた。
事情はどうあれ。
白井は美琴を裏切っているのだから。
「……」
白井が胸の痛みを庇うように右手と、それを包む左手に、きゅっ、と力をこめる。
それとほぼ、同時に。
トントン、と部屋のドアがノックされた。
271 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/04(土) 22:44:36.26 ID:/akQKQv+o [5/13]
「すげぇよな、こんなところを気安く借りられるんだから。やっぱ空間系の高レベルって、奨学金や実験報酬が多いのか?」
「……ええ、それなりには」
ベッドに腰掛け、物珍しそうに室内を見回す彼に、白井は押さえ付けた平坦さを持つ声で答えた。
三日前の、あの日。美琴がシャワーに入ってから。
どういうつもりか、と電話で問うた白井に対し、彼の返答は「手を出さなきゃいいんだろ?」というものだった。
白井としては、自分がこうしている以上、美琴と接触はしてほしくもない。ましてや、自分たちが会っているという情報など、たとえ冗談でも伝わってほしくないのだ。
現実問題、前者については今までも美琴の側から接触する形だったのでなんともできないが、後者はどうとでもなる。ましてや今回のように、身体に触れた、と明確にわかる話をするなど、言語道断だった。
しかし今の彼を見る限り、その一件はまったく気にしていないようだ。
不機嫌そうな白井を見上げる視線は「まぁいつものことか」くらいの色である。
「じゃあ先にシャワー浴びてこいよ」
ひとしきり観察の終わった彼が、ベッドに腰掛けながら、シャワールームへの入口を指した。
「……何をなさるつもりですの?」
今日は、いつものような洗浄器具は持ってきていない。今からホテルに行く、と彼にメールを送ったとき、そう指示されたからだ。
「そんな警戒するなって。別に覗いたり、乱入したりしねぇよ。ただのレディファーストさ」
「紳士的で何よりですの」
皮肉を込めて、白井が言う。彼はその言葉に苦笑した。
272 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/04(土) 22:46:38.12 ID:/akQKQv+o [6/13]
昨日も、一昨日も、『拡張』は続けさせられている。ビデオメールも同様だ。
しかし、そのどちらにも、彼は来ていない。
流石に、彼も女子トイレに侵入するのは控えたいようで、ホテルに入る時だけでいい、とのことであった。
「では、お言葉に甘えさせていただきますの」
ツインテールを靡かせて、バスルームに向かう白井。
どうせ逃れられないし、そもそも逃れるという選択肢もない。ならば早く済ませるのが上策だ。
「ああ、ゆっくりでいいぜ? 俺はこのベッドの感触をもう少し味わってたいからさ」
「……」
子供のようにクッションを確かめる彼から視線を外し、白井はドアをあけ、中に入った。
入ってすぐに洗面台があり、左右に再びドアがある。左はトイレで、右はバスルーム。
真正面の洗面台に映る表情は、硬く、嫌悪の表情が覗いている。
勤務日は公衆トイレを。待機はホテルを。
なんでトイレとホテルを使い分けてたんだ、という彼の問いに、ばか正直に答えたのは失敗だった。
公衆トイレがいっぱいだったから、とでも言っておけば、彼を呼ぶようなことにはならなかったかもしれないのに。
(……いえ、それは甘い考えですわね)
白井は首を振り、その思考を打ち消した。
そうなれば、もっと見つかる危険のある状況を強制されたに違いない。
己の裁量がある今の方が、まだマシだろう。
273 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/04(土) 22:47:56.75 ID:/akQKQv+o [7/13]
(……それよりも、)
今日は何をするつもりなのか。
『器具』を持ってきていないのだから、洗浄もできるわけがない。
てっきりまた、前のように――
――尻を高くあげ、後ろ手に縛られ、肛門を犯され――
――ズクッ、と再び下腹の奥でナニカが動いた。
「っ!」
慌てて首を振る白井。
再び『恐怖』で払拭しようとするが、今度は上手くいかない。
生々しい行為の方が、より強く思い出されたからだ。
激しく、貫かれた記憶。
(か、身体が驚いているだけですの。あんな激しいこと、普通ではありませんから……)
ただそれだけですの。
そう頭の中で呟き、動くナニカから目を逸らし、白井は右手側のドアを開けた。
脱衣所は、当然のごとく利用者を待ち構えている。
ここで服を脱ぎ、身体を清めれば、彼の前に出なければならない。
274 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/04(土) 22:49:01.66 ID:/akQKQv+o [8/13]
(だとすれば、やはり、やっぱり……)
そろり、と右手で、スカート越しにソコを押さえた。
カチカチ、と奥歯が鳴りはじめる
それはすぐに全身に伝播をはじめて、
「っ!!!」
白井は奥歯を強く噛み合わせた。
ガチン、と音が響き、震えが止まる。
「わたくししかおりませんの。わたくしだけが護れるんですの。わたくしが護りたいんですの」
それは白井の唇から奏でられた。
何度も唱え続けて、もはや言葉や声ではなく、呼吸の一部のように、淀みなく。
「わたくしさえ我慢すれば、お姉様は笑っていられるんですの……!」
それは、まるで呪文のようだった。
275 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/04(土) 22:50:32.32 ID:/akQKQv+o [9/13]
「寒くないか?」
「だ、大丈夫、ですの」
彼の言葉に、白井は横を向いたまま言った。
彼女の口調がやけに素直なのは、理由がある。
素裸。
ベッドの上。
身体に浴びせられる視線。
いずれも、忌まわしいことに初めてではない。
ただひとつ異なったのが、
「そんなに恥ずかしいか?」
仰向けに寝転んだ彼も、その三要素を満たしているということだ。
彼の両脚の間に正座し、身体を前に倒した白井。
それこそ土下座のような恰好の彼女の目の前にあるのは、隆々とそそり立っている、彼のペニスだ。
いや正確には、嫌悪と羞恥で顔を逸らしている彼女の右頬の前に、か。
276 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/04(土) 22:51:28.30 ID:/akQKQv+o [10/13]
「あ、当たり前ですの!」
まったく見たことがないわけではない。何年も前に父親と風呂に入ったこともあるし、保健の授業では写真入りの教材だってある。
こういう風に立ち上がった状態だって、風紀委員の仕事でその手の変態を取り締まった時に目撃していた。望んだわけではなかったが。
望んでいないことは今も同じだが、状況が違いすぎる。ここまで間近では初めてであったし、
(こ、こんなものを、本当に、口で……?)
血管の浮いたそれを目の端で捉えながら、白井は彼の要求を頭の中で繰り返した。
彼は交わりではなく、口淫を望んできた。
こういう行為があるのは当然知っている。いずれ必ず、させられるということは予測していた。
しかし実際に間近で見た白井は、とても直視することができないでいる。
赤黒く、ヒクヒクに震え、熱を持ち。
(わたくしを、あんなに激しく貫いたモノ……)
すぼまりを出入りした、あの感触。
手を触れていない今でも、その硬度は想像できた。
277 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/04(土) 22:52:43.94 ID:/akQKQv+o [11/13]
「さ、観察はもういいだろ? そろそろ始めてくれないか?」
「っ」
はっきり言って醜悪としか思えないペニスにキスをし、口内に含み、舌を絡め、唇で扱き、そして吐き出される汚濁を受け止めなければならない。
想像するだけで、吐き気を催す。
そもそもの彼への嫌悪感に加えて、このペニスは三日前には己の肛門に突き込まれていたモノだ。
彼も入浴しているだろうし、いまさっきシャワーを浴びている。
それでもその意識は消えてくれない。
しかし、彼の促しは、命令のようなものだ。
おずおず、と白井の手が伸びた。
「っ」
白魚のように細く綺麗な指が巻き付き、ピクリと震える彼。
(硬い……ですの)
それは想像どおりの硬さがあった。
血液の流れが指先ではっきりとわかるほど、内側から張り詰めている。
(熱い……ですの)
そしてそれは、想像以上に熱をもっていた。
シャワーによるほてりなどでは決してない、人肌よりも確実に高い体温。
278 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/04(土) 22:53:56.04 ID:/akQKQv+o [12/13]
「……」
ちらり、と彼を見上げる白井。
怒張の向こうから投げ掛けられる彼の瞳には、期待はあっても、侮蔑はない。
「は、始めますの」
自分を後押しするために、声に出し、顔を寄せる白井。
近づくにつれて、怒張からの熱を頬に感じる。
いま、自分は。
(こんなこと、たいしたことではありませんの)
土下座するように身を縮めて、男の股に、顔を埋めようとしているのだ。
(お姉様のためですの)
精液を吐き出すところを、舐めしゃぶろうと言うのだ。
(純潔より先にお尻を犯されたことに比べたら、このくらい……)
そして。
「んっ……」
唇の間から差し出された舌先が、ペニスの表面に触れる。
307 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/12(日) 17:44:28.18 ID:LTTmuyHpo [1/20]
てろ、てろ、てろ、と。
指が緩く絡んだペニスの裏筋中ほどからカリ首までを、白井の舌が舐め上げる。
動きはゆっくりと。
左肘で上体を支え、右手指をペニスに緩く絡ませた白井の首と口が痛まない程度の早さで。
「んっ……んん……」
探り探りと戸惑い、さらには嫌悪の雰囲気が見て取れる白井の動きだが、しかしそれでもただ上下するだけでもなかった。
時に裏筋を、時に舌先でカリ首の溝を、時に赤く充血した亀頭を、舐め、なぞり、ねぶる。
「とりあえずはアイスとかを舐める感じだよ」
舌先をペニスに当てたまではいいものの、そこから20秒ほど動けなかった白井に、彼がかかけた言葉である。
「そのくびれてるところとか、縫い目みたいなところ。あとは先っぽのところとかを重点的にな」
彼のモノを舐める。
その状況に吐き気を耐えていた部分もあったのだが、何をどうすればいいのかわからなかったのも事実。
ありがたいとは決して思わない指示指導に従っての動きは、忌ま忌ましいことにそれなりの効果があるらしい。
起立はますます硬度を増し、僅かだが生臭いニオイ――性臭を臭わせ始めていた。
鼻を抜ける生臭さにえずくのを辛うじて堪えながら、顔を右に傾けて幹部分に舌を這わせる。
「んぅ……ふ……ん」
その拍子に、解いた髪が一房、パサリと頬にかかった。
308 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/12(日) 17:45:40.83 ID:LTTmuyHpo [2/20]
「ん……」
恥羞によって朱に染まった少女の頬。そこにかかる黒髪とのコントラスト。
白井はそれを左手で掻き上げ、邪魔にならないように耳にかける。
ふわりと、己の髪の香りが、性臭と混ざったのがわかった。
「……」
彼から、何やら含みのある気配。
「……なんですの?」
白井は口を離して問うた。
「ああ、いや」
険しい視線に彼は苦笑し、
「今の仕種、艶っぽいなって思ったんだよ」
と、てらてらと唾液に光るペニスの向こう側の、その彼女の瞳を見ながら言った。
309 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/12(日) 17:47:00.52 ID:LTTmuyHpo [3/20]
「……」
虚を突かれ、ぽかんと言葉を失う白井。
だがすぐに眉を潜め、続いて彼の視線から逃れるように、舌の動きを再開させる。
誉められたのかもしれないが、相手と状況が悪すぎた。
かけられた言葉を無視するように、あえて舌の動きを早める。
唾液がそれを生み出した舌に絡まり、ピチャ、ピチュ、と音をたてた。
彼は、やれやれ、と一息
「じゃあ次は、唇かな。キスしてみたり、くっつけて横に滑らせたり、吸ってみたりしてみてくれ」
「っ!」
キス。
その単語に、白井は心がギシッ、と軋むのを感じた。
過剰な神聖さを抱いているわけではなかったが、それでも白井は、ただ舐めるということに比べてキスというものを、どこか大事なモノのように感じてしまうのを止められない。
(……)
無意識に舌がペニスから離れる。
美琴のことを思って大切にしていた。目の前の男に契約代わりと奪われた。そしていま、ただ性の道具として使う。
「わかりました、の」
白井は一度だけ、ぎゅっ、と目を閉じてから薄く開き、
「んっ……」
瑞々しい唇が、醜悪な剛直に押し当てられた。
310 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/12(日) 17:47:50.95 ID:LTTmuyHpo [4/20]
「んんっ……ちゅっ、ちゅぶ……」
押し当て、離し、押し当て、滑らせる。吸った拍子に、少しだけ冷えた唾液が性臭をとともに口の中に入ってくる。
「ああ、あと舐めるのも一緒にな?」
「……はい」
右手に僅かに力がこもり、しかし指示に従う白井。
舐めるときと同様、うずくまった姿勢から膝で身体を持ち上げて顔を寄せた。
「んっ、んぅ……ちゅぷ、ちゅ、ちゅる……んぅ、れろ……」
キスの雨を降らせ、その合間に舌がてろてろとペニスを濡らす。
時折頬にペニスが当たり、唾液が頬を彩った。
舐め、接吻し、吸いつき、滑らせ、頬を掠め。
小さな水音だけが、ビジネスホテルの室内にただ響く。
311 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/12(日) 17:48:55.46 ID:LTTmuyHpo [5/20]
(どんどん、熱くなって……)
唇と舌と頬から、その脈動と熱が伝わってくる。
充血したペニスは、もう褐色と言っていい色に。
白井はもう何度目かわからないループを繰り返すため、顔をやや下げ、その根本に舌を当てた。
たっぷりと唾液を乗せた舌の腹で、先端までを、ぬろおっ、と舐め上げる。
唾液を増やしているのはその方が滑りがよくて楽だと気がついたためだ。
ゆっくりと言うには若干勢いよく動いた舌が亀頭から離れ、移りきらなかった唾液が糸をひく。
「っ……白井、次はくわえてくれ。歯をたてないようにな」
次の指示。
白井の動きが止まり、その眉がひそめられた。
「……」
しかし次の瞬間、白井の顔は無表情に変わる。
そのまま口の中で何事かを呟いた後――ぐっ、と身体をやや前に乗り出した。
「んっ」
大きく開けた唇を剛直の先端を被せる。
赤黒い亀頭が、口内に沈んでいった。
312 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/12(日) 17:50:27.25 ID:LTTmuyHpo [6/20]
「ん……んんん……」
先端だけでは終わらない。
どうせ命じられるのなら――まるでそう言うかのように、白井は自ずから顔を下げ、深くペニスを口に収めていく。
カリ首が歯の間を通り、先端が口腔上部に触れた。反り返ったペニスはその角度ではそれ以上飲み込めない。
だからさらに身体を前に傾ける。
正座のように踵に触れていた尻が浮き、動いた空気がいつかのように――尻を犯される直前に感じたように、尻たぶの間、秘裂と肛門を撫でていった。
「んぐ……んんぶ……」
しかしそれでも、物理的な限界というものがある。
小柄な白井の口に収まったのは、結局全体の半分程度。これ以上くわえこもうとすれば、それこそ喉まで使わなければならない。
ディープスロート、と言う単語は知っているが、とても無理だった。いまでも苦しくて、目の端に涙が浮かんでしまっているのである。
「そこまででいい。無理すんなよ」
ちょうどそのタイミングで、彼が白井の頬を撫でた。
「そのまま顔を動かすんだけど、いまみたいに限界まで飲み込まなくてもいいからさ。それよりも唇で扱くみたいにして、後は口の中で舐めるんだ。ペースは白井に任せる」
「んん……」
鼻だけで息をしながら、白井は頬に添えられた彼の手を払った。
頭を動かすのに邪魔だと言うことと、何より、気遣われたくなどなかったのだ。
開き気味に投げ出した彼の脚の間で、少女の頭が上下を始めた。
313 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/12(日) 17:51:20.17 ID:LTTmuyHpo [7/20]
「んっ、んぅっ、んんっ、んっ」
剛直が出入りし、ぐちゅぐちゅと音をたてる。
口内に満ちる性臭が、直接鼻に抜ける。
口の周りが唾液にまみれ、おとがいに向けて垂れていく。
長く、ウェーブのかかった白井の髪がその白い背中を撫でるように揺れる。
舐めるときより、キスするときよりも激しい運動と、鼻でしか呼吸のできない状況に、白井の息がふーっ、ふーっ、荒くなっていく。
「……?」
それに伴い、ペニスの向こう側から響く彼の吐息も、徐々に乱れ始めた。
水音と己の呼吸音。
その間に混じる彼の吐息の調子に、白井は覚えがあった。
(気持ち、いいんですの……?)
それは白井が自涜のとき、声を漏らさないためのものだ。
「……」
試しに顔を前後させながら舌先だけを幹に当てて小刻みに動かしてみる。
すると、彼の脚が小さく震えるのが二の腕から伝わってきた。
快楽を、得ているのだ。
314 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/12(日) 17:53:39.02 ID:LTTmuyHpo [8/20]
(では、こうすればもっと……)
浅くくわえ、カリ首をぐるりと刺激する。
先ほどよりも大きく、震えが響いた。
自分の攻めで、彼が追い詰められている。
自分を蹂躙するだけだった、彼が。
自分が。
(……)
「っ?」
と、彼の呼吸に僅かな戸惑いが混じる。
いきなり白井の動きが変わったせいだ。
「んんっ、んぐっ、んぶっ、んふぅ」
歯が当たらないように口はあけたまま、しかし幹は唇で締める。
裏筋に添えるように当てた舌はときおり左右に動き、あるいは舌先が横側を舐めた。
口腔の上側で先端をこすり、あるいは頬の内側に埋める。
浅くくわえて、カリ首を唇でやわやわと圧迫した。
時折故意に唇を緩めて、グポッグポッと出入りの音を響かせる。
315 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/12(日) 17:55:06.66 ID:LTTmuyHpo [9/20]
「んんふっ、んぶっ、んっ、んんんっ」
白井は口淫など初めてだ。
だが、能力的に複雑怪奇な演算をこなし、また、常盤台の先進的な授業についていける頭脳である。
開始してから今まで。
指示されて行った行為と偶然行った行為の中で、彼が同様の反応を示した動きを思い返してトレース、あるいは組み合わせ、そしてまたあるいは予測し、実行する。
性感帯は概ね決まっている。
ならば後はそこをどう刺激するか――どう興奮を高めるかがポイントなのだ。
「んぐっ、んふっ、んんんっ、んむんっ」
「っ……っ……っ……」
じゅる、じゅる、と音が響く。
己が行為に効果があったのは、彼の呼吸がさらに早まったことと、伝わる震えが大きくなったことと、脈打つペニスからの性臭が強くなったことで確認できた。
上下する視界の端で、彼が拳を握りしめるのが見えた。
ぐぐっ、とペニスの根本から、ナニカが競り上がってくるのを唇に感じる。
近い。
316 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/12(日) 17:56:50.47 ID:LTTmuyHpo [10/20]
「んんっ」
白井はさらに頭を大きく、早く動かし、唇を締めた。
それはしゃぶるというよりも口で扱くという表現が相応しい。
自分が飲み込めるギリギリまで彼の股間に顔を埋め、亀頭から離れる寸前まで顔を引き、また埋める。
「うあっ」
彼が初めて声らしい声をあげた。
「んふっ」
それがどこかおかしく、くぐもった笑いが漏れた。だがそれはねばついた水音に遮られて、彼の耳にも、彼女の耳にも、彼女の心にも届くことなく、消える。
だから白井は同じように、前後抽送を繰り返した。
頭の動きが大きくなった分、持ち上げられた尻がゆらゆらと揺れる。
運動量が増え、頬に、首に、背中にうっすらと汗が浮いた。
「んぷっ、じゅるっ、んんんんっ、んちゅっ」
一往復ごとに、ナニカが上にあがってくる。
根本、幹半ば、カリ首。
そしてついに、ナニカが先端に。
317 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/12(日) 17:58:02.50 ID:LTTmuyHpo [11/20]
「んんっ!」
そのタイミングをもって、白井は顔をひき、舌の裏側で亀頭の先端――尿道を、ぬるりと横に撫でた。
「くっ! 出すぞ白井っ」
彼が歯を食いしばり、そう宣言した。
口内の亀頭が一層膨れあがり、次の瞬間。
「!」
ペニスが鳴動し、大量の白濁が白井の舌を、口腔を、喉の入口にたたき付けられた。
「んぐっ、ぬぶっ、んんんっ」
ビクンビクンと何度も震えるペニス。
奥に向けて射精されているとはいえ、量が問題だった。白井の小さな口はすぐに一杯になってしまう。
苦み、辛み、生臭さ。
とても飲み込むことができず、白井はペニスを口から引き抜いた。
「ぶぱっ、えぶっ、うえっ――げほっ、げほっ、かはっ!」
目からは浮いた涙が零れ、口からはどろどろの白濁が漏れる。
「はあっ、はあっ、けほっ、はあっ、はあっ」
阻まれていた呼気を取り戻すかのように、肩を上下される白井。
ゆるく開いた唇の端から垂れた唾液は、白濁まじりゆえに粘性に富み、ぬるりと糸を引いて、正座をした白井の膝に落ちた。
318 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/12(日) 18:00:09.13 ID:LTTmuyHpo [12/20]
「……では、これでお暇いたしますの」
シャワーを浴び、私服に着替え、制服の入ったバッグを持ち。
白井は、制服姿でベッドに腰掛けたままの彼に言った。
ここはビジネスホテル。その気になれば明日の朝10時まではチェックインしていられる。
もちろん白井にはそんなつもりはない。業務でやむ終えなくならばともかく、宿泊など常盤台が許さない。
そもそもこんなことの後に、泊まりたいとも思わなかったが。
「俺はもう少し休憩していくよ。これ、カードをフロントに返せばそれでいいんだよな? 料金とか、とられないよな?」
「……清算はチェックイン時に済ませているので大丈夫ですの。冷蔵庫の飲み物を飲んだり、有料のチャンネルを見れば別ですが」
彼の口調とその内容に若干の情けなさを感じながら、一応はありのままを告げる。
冷静に考えればここの代金を請求してもいい気もするが、ここを選んだのは白井だ。彼に任せたら、それこそどこで何をされるかわからない。
「では、これで」
背を向け、ドアに向かおうとする白井。
そこを、
「あ、ちょっと待てよ」
彼が呼び止めた。
319 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/12(日) 18:01:43.16 ID:LTTmuyHpo [13/20]
「……っ」
これ以上何かするつもりなのか。
踏み出しかけた脚を止め、白井の肩が僅かに震える。
ゆっくりと、嫌味のような動きで振り向いた先にあったのは、ひょい、と放り投げられた紙袋。
「え」
思わず、という調子で受け止めてしまう白井。
ガサリ、と乾いた音が、腕の中で響く。
中に何か入っている。
「それやるよ。練習するときと、それから拡張……ああ、いまは維持かな? それと、オナニーするときは必ずそれを咥えてやるようにな?」
「……」
彼の言葉に何が入っているのかを概ね推測しながら、紙袋を開く。
バイブレータ。
それも、大きさは先ほどまで咥えていたものに、近い。
「流石に俺のと同じ形じゃないぜ? でもバカにしたもんじゃなくてさ。臭いや味は本物に近いらしい」
確認したわけじゃないけどな、と彼は言葉を追加。
「……」白井は俯いたまま返事もしない。
彼はそれを気にしなかった。
ニヤリと酷薄な笑みを浮かべる。
「今日は、ずいぶん積極的だったよな。次もああいう感じで頼むぜ?」
320 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/12(日) 18:03:17.93 ID:LTTmuyHpo [14/20]
部屋を出て、乱暴にドアを閉める。
バタンという音も置き去りに、白井は廊下を歩き始めた。
先ほど受け取ったバイブは、忌々しいことに、制服を入れたバッグの中にある。
誇りある常盤台の制服とこんなものを同梱することに抵抗はあったが、いまはそれよりも、脳裏に響く彼の言葉の方が白井にとっては心の枷になっていた。
321 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/12(日) 18:05:00.28 ID:LTTmuyHpo [15/20]
――今日はずいぶん積極的だったよな
322 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/12(日) 18:06:59.65 ID:LTTmuyHpo [16/20]
「……」
確かに、今日の自分は少しおかしかった。
特に後半の、自分は。
その考えは、口の中に思う様に出された後に、シャワーを浴びながら考えていたことだ。
……あんなに、自分が積極的に、彼に奉仕するなどと。
(早く終わらせるためですの)
白井はそう思う。強く思う。
シャワーを浴びながら結論づけた、自分の口淫――特に後半の、積極的な自分の動きについて、そう思っている。
技巧に長ければ、それだけ早く終わる。
屈辱でも彼が悦べば、美琴の危険は減っていく。
(……それだけ、ですの)
白井は廊下を強く踏みしめ、歩く。
足音で、己の心の中にある感情を、払拭するかのように。
323 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/12(日) 18:09:43.33 ID:LTTmuyHpo [17/20]
「……」
誰もいない室内で、彼は口元に歪んだ笑みを浮かべた。
思考するは、口淫の途中、彼女が急に技巧を凝らし始めたこと。
白井は、どちらかと言えば従属的ではない。
心酔する相手に対しては献身的な態度を取るが、それはあくまで、彼女からの積極的な献身だ。相手に全てを委ねる従属とは異なる。
しかし今日。
従属するしかないはずが、部分的にではあっても攻勢に出ることのできる手法を意識した。
そのことは、彼女にどう影響を与えるか。
どう、転ぶのか。
「……」
彼は笑う。
彼は音も無く、笑い続ける。
327 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2012/02/12(日) 18:26:02.43 ID:LTTmuyHpo [19/20]
「……優しくして、ほしんだよ」
そう言って、白い少女はベッドに横たわり、覆いかぶさる男を見上げた。
その言葉にも関わらず、彼女の顔に不安はない。
彼が――ステイルが、ただ自分に優しく、ただ自分を愛し、ただ自分を抱きたいと思っているということを、知っているからだ。
「インデックス。僕は……」
赤い神父は、この期に及んで迷っている。
愛を。
欲を。
この目の前の少女にぶつけるべきかを、迷っていた。
だからインデックスは指を持ち上げる。
いくじのない彼の唇に、人差し指をそっと押し当てる。
言葉は不要。
必要なのは、心と身体。
「……」
たったそれだけの仕草でインデックスの言いたいことを読み取ったのか。
赤い神父――ステイルの中から、迷いが消える。
浅ましい欲望が、己の中にある。
しかしそれでもなお、それを圧する愛情が、確かにある。
「愛してる」
告げる。
飾り気のない、ありふれた、使いまわされた言葉を。
「……うん。私も、愛してる」
しかし白い少女は、幸せそうに目を閉じた。
ステイルは、手を伸ばす。
絶対の防御を持つ『歩く教会』は、なぜか容易くその結び目を緩ませた。
――知っているのだ。そこにあるのが、欲望であっても、無上の愛であることに。
夜は更ける。
蝋燭は短くなる。
しかし、彼らの時は、まだ、永く。
341 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/19(日) 00:31:27.52 ID:r21hA3c5o [1/10]
パタリ、と背中でドアが閉まると、流水の音はほぼ聞こえなくなった。
場末のビジネスホテルといえども、素材は学園都市製。『外』とは数十年レベルで差のある技術で造られた建材は防音効果も密閉効果も高い。
ドア一枚隔てただけで浴室内の音も何も、ほとんど通さないレベルである。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
バスルームから出てきた白井は、一糸纏わぬ身体を右腕で抱きしめて――左手には何かを包んだバスタオルを持っている――座り込みそうになるのを必死で耐えた。
彼女の瞳は潤み、頬やうなじが、否、全身が赤く上気している。吐息さえすでに熱く、甘く濡れていた。
今しがた終えた『拡張』で使うローション。それに混ぜられた媚薬は、もう三週間使い続けているにも関わらず、薬物耐性による効果逓減がない。
いやむしろ身体に馴染んでいくかの、性感が開花させられているようにも思える。
「んぅ……はぁ………はぁ……」
現実にいま。
ドアが閉じた際に起こった風が肌に当たるだけで、甘く疼くような感覚を得てしまうのだ。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
今日も待機の日。
昨夜、三日前の口淫を思い出さないようにしながら送ったメールへの回答は「補習があるから行けない」というやや情けないものだった。
しかし彼が来ないとは言え、何もしないという選択はできない。
動画撮影は続けるように言われており、さらに今日は、返信メールで指示のあったことを実行しなければならないのだ。
342 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/19(日) 00:32:10.28 ID:r21hA3c5o [2/10]
「んんぅ……ふぅん……」
身体を廻る欲望と衝動をなんとか押さえた白井は、ぼう、と霞がかった視線をベッドに向けた。
ほんの数歩で行ける距離。
しかしそれは、普段浴室で拡張を済ませ、そのままそこで薬が抜けるまで自らを慰めている白井にとっては、遠くすら感じてしまう。
しかも今日は、準備しなければならないことがあった。
「はぁ、はぁ、はぁ」
ふらふらと覚束さい足取りで、白井はベッドの横を素通りし、備え付けのテレビの前に立った。
左手に持ったバスタオルを開くと、その中には携帯電話、彼に手渡されたバイブレーターと、そしてなんに使うのか、ポータブルHDDが入っていた。
白井はまずHDDを取り上げ、テレビに接続して電源を入れる。テレビは瞬時に内部のデータを読み出し、DVDよろしく画面に再生チャプターを表示させた。
3×3のサムイネルは、すべて裸の女性がひざまづき、男性の股間に顔を埋めている静止画像だ。圧縮されているためか、ぼんやりとしか写っていないが、何をしているのかなど見ればわかる。
口淫の映像ばかりだ。
データの中身は、昨夜の返信メールに記載されていたURLからダウンロードしたもの。
『これを見ながらヤれば、上達もはやいんじゃないか?』
彼のメールに記載されていた言葉が、幻聴となって耳に響く。
343 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/19(日) 00:33:04.70 ID:r21hA3c5o [3/10]
「っ」と、白井。
唇をかみ締めようとするがしかし、早くなった呼吸がそれを許さない。
白井は一度首を振り、次にテレビの横に携帯電話を置いた。
撮影用のカメラがある先端をベッドに向け、小さなボタンを操作する。
手の動きは淀みない。
自分を汚す姿を撮影する準備にも、慣れてしまっていた。
「はぁ、はぁ、はぁ」
撮影に、凌辱されることに慣れる。
その事実は相変わらず、胸の奥に昏い感情を呼び起こしている。
モードに切り替わり、撮影開始を示すLEDが点る。
「あんっ」
と同時に、背筋がブルリと震える。
震わせたのは、紛れも無い期待の感情。
ついさきほど――尻をほぐし、アナルバイブを突っ込む行為をする直前にも感じたものと、同じだった。
(……まるでパブロフの犬、ですわね)
自嘲する白井。
身体が覚えてしまったのだ。
準備が終われば快楽を得られるということに。
344 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/19(日) 00:34:39.19 ID:r21hA3c5o [4/10]
――もっと欲しい
「っ」
不意に耳に響く声。
ゾクリ、と先ほどより強く、痺れが駆け抜けた。
語りかけてきたのは、心に染みついた、黒い点――白井自身の、浅ましい欲望だ。
――気持ち良くなりたい
――我慢したくない
――身を任せたい
「んっ、ふぅっ、んんっ」
黒点が、いつかのように誘惑を囁いてくる。
345 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/19(日) 00:35:36.98 ID:r21hA3c5o [5/10]
己を抱きしめる右手に、さらに力をこめる白井。
だが呼吸がさらに早くなり、吐息は室内でなお白くなりそうなほど、熱を持ち始める。
しかめられた眉も、苦しげというよりはむしろ、もどかしさを顕しているように見えた。
(流されたのでは、だめですの……)
言い訳を作ってはならない。
一度言い訳をしてしまえば、それ以降は容易く快楽へと流され、屈服する鍵となる。
それはわかっている。
しかし。
「ふぁっ、んぁっ、んあぁ……」
もじもじと膝を、太ももを擦り合わせる白井。ジワリと小さな快楽が湧き上がり、僅かに尻を後ろに突き出してしまう。その乳房の先端は、触れてもいないのに、固く自己主張をしていた。
(身体の方はずいぶん素直にさせられてしまったようで。……完全に抵抗するのは難しそうですわね)
軋む理性の中で、僅かに存在する冷静な自分が分析する。
346 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[] 投稿日:2012/02/19(日) 00:36:29.25 ID:r21hA3c5o [6/10]
――薬のせいなのでしょう? 彼も言っていたではありませんか
――それに口でしてさしあげたときのことを思い出してくださいまし。積極的だった方が彼も喜んでいたはずですの
――彼が満足すれば、お姉様も護れますのよ?
「んふっ、んんっ……」
声に導かれるように、白井の表情がとろけていく。
擦りあわされ続けている太もも。その内側に、とろりとした感触。
蜜が溢れ出していた。
(……ここまで変えられてしまったら、感じないように努力することよりも、感じても理性を失わないことに力を注ぐ方が得策と言えそうですの)
性交渉は何もすべてが実である必要はないのだ。
特に男性側は、ある程度の結果が出れば満足するし、構造的に回数の限界がある。
しかし彼が限界を迎えるまでに、己を見失ってしまっては、それこそ本当に言い訳に流されてしまうかもしれない。
彼に促されて承諾したのでは、おそらくもう戻れない。妥協はどんどん大きくなり、どこまで彼の言いなりになってしまうのか、わからなくなる。
ならば今のうちに、己でそれを制御できるようになれば。
347 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/19(日) 00:37:38.18 ID:r21hA3c5o [7/10]
(わたくしが積極的になった方が事も早く終わり、満足もするのも事実)
擦り合わせられる脚。
流れ落ちた蜜は肌を滑り、もう膝にまで。
(……ここでこんなことをするのもそのため。そう考えれば、まだ気分的にマシですの)
そう結論付けた白井の指先がもどかしそうに持ち上がり、タッチパネル式の画面を適当につついた。即座に選択された動画の再生が始まる。
ダウンロードした段階でサムネイルまでは確認しているが、再生させるのは初めてだ。
一切の修正がなく、また、画質もそれほどよくない。
おそらく非合法に撮影されたものだろう。風紀委員の立場からすれば、この映像だけで調査を開始するべきものである。
映し出されたのは赤毛の女性と線の細い男性。いや、年齢だけを見れば10代半ばと言えるかもしれない。
「っ!」
(お姉様!?)
女性――少女を見た白井の息が一瞬止まり、目が見開かれる。
(い、いえ、違う……違い、ますのね……)
だがアップになった少女の顔を見て、白井は胸を撫でおろした。
348 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/19(日) 00:38:45.49 ID:r21hA3c5o [8/10]
とてもよく似ている、容姿のみならず雰囲気も。
実際、アップにしなければ白井にもわからなかったほどだ。
しかしよく見れば少女の髪はやや長く、年齢的にも美琴よりも少し上くらいか。
年齢が下ならば白井の心配は完全に晴れなかったかもしれないが、上であれば美琴という線は消える。学園都市ではいまだ完全な未来視能力者もいなければ、それを映像に残せる技術も存在しないのだから。
(でも、本当にそっくりですの……)
思わずマジマジとアップになった少女の顔を見る。
だがテレビの中の彼女が不意に妖艶に微笑み、右手で画面外からフレームインした『それ』を掴んだ瞬間。
「!」
一瞬だけ忘れていた性衝動が、再び燃え上がった。
「ああっ」
白井は思わず、両手で身体を抱きしめた。
取り落としたバスタオルが、中に包まったままのバイブレーターごと床に落ちる。
『んっ……』
その音に連動するように、画面内の少女がゆっくりとペニスに唇を寄せた。
「――っ」
お姉様。
潤み、霞んだ白井の目には、それはそうとしか映らなかった。
一気に情欲の火が燃え上がる。
「んんんっ! もうっ、だめですのぉっ」
白井はふらりとよろけ、そのまま背後にあるベッドに腰を落とした。
ゆるく開けた膝の間に右手が滑り込む。
水音と、嬌声は、一秒もたたずに部屋に満ちていく。
364 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/25(土) 12:14:12.70 ID:e3Y7s9Iro [1/15]
「ふぁっ、んんあっ、あっ、ああんっ」
白井があられもない喘ぎを零し、未成熟な身体を震わせる。
そのスイッチとなっているのは、細い指先の、小さな動きひとつひとつだ。
乳房の先の固くなった部分を人差し指と親指が摘み、クリクリと弄ぶ。
秘裂上部の、もう顔を出しかけた性感の豆粒を指の腹で包むようにしてやわやわと揉み揺する。
たったそれだけが、白井の身体に蕩けるような快楽を提供した。その繰り返しが、白井の秘裂から溢れる蜜を白濁した、粘度の高いものに変えていった。
(わ、わたくしは何を……これを、コントロールするつもりで……)
思考を体言するように、ベッドに腰掛けた白井は胸の痛みに耐えているかのような姿勢で背を丸めている。
だが、
「ああっ、お姉様、お姉様ぁっ」
想いとは裏腹に、赤い頬を持つ顔は俯くことがない。
視線はテレビから離れようとせず、展開されている口淫の映像を凝視し続けていた。
敬愛する相手の痴態。
興奮が視神経から直接性感覚に響いているようで、白井は己が指を止めることが叶わない。
365 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/25(土) 12:15:01.20 ID:e3Y7s9Iro [2/15]
(このままでは、このまま流されてしまったら……)
自ら抑制する、という理由で始めた行為だ。
それを『言い訳』にしないためには、身体が訴える渇望を理性側で制御しなくてはならない。
そうでなければ負けたも同然。『言い訳』を自分で作ったことになってしまう。
「はぁっ、あっ、ああんっ!」
(止まって……いえ、止まらずとも、勝手に動くのをやめてくださいまし!)
必死に指の動きを御しようとする。
薬で目覚めさせられた身体をまさぐるのは、紛れも無い自身の手指。
だがそれは他人に――彼にサレている時とは異なって、全てが己の心に依ると同時に、己の最も心地よいタイミングと強さを提供できることと同義であった。
そしていま、その指先を支配しているのは、心に染み付いた黒点の方だ。
「んんっ、んっ、んあっ、んっ、んんっ、んんんっ!」
白井に出来たことは、せめてもの抵抗とでも言うように、喘ぎ声を抑えることのみ。
しかしそれも、やがて身体の作用に侵食され始める。
366 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/25(土) 12:17:53.63 ID:e3Y7s9Iro [3/15]
――我慢せずに声を出せばいいじゃありませんの
――いまここにはわたくししかいませんのよ?
――公衆トイレのように、自室のように、彼に弄ばれている時のように、声を聞く人なんかいないんですのよ?
――彼に動画を見られる? ああ、そのようなもの、
(後で編集すればいいのではありませんか……?)
この一連のことを素直に送信する必要などない。
淫らに振舞っても、わかる者などいない。
我慢の必要はないのだ。
367 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/25(土) 12:21:38.69 ID:e3Y7s9Iro [4/15]
「っ!」
(だめ、ですの……こんなことを考えては……!)
いつのまにか心の声に迎合していた。
甘い誘惑を、白井は首を強く振ることで振り払おうと試みる。
だが。
「ひあっ!?」
乳房の先端を、自らの左手に強く摘まれて、仰け反る白井。
声への拘束はあっさりと打ち破られた。
「んふあっ、はあんっ、んんやあっ」
すぐさま振り払った誘惑を取り戻そうとするように、両手が動きを変えた。
左手が乳首を弄るのをやめ、掌全体を胸に押し当てる。
厚みに乏しい膨らみを撫でるようにこねまわし、五指の間を渡らせて乳首に刺激を与え、そうかと思えば、手首を浮かし、指先だけを触れるか触れないかの拍子を保ちながら、つつっ、と首筋から顎先まで逆になぞりあげ、同じ道をゆっくりと戻る。
一方の右手は、あえて動きを連動させない。
喉元に指が滑り間は強い刺激を味わえるよう、白濁の蜜を陰核に塗り付け、滑らせることでプルンと揺らす。
胸をこねまわす間は、陰唇の両内側を指紋で削るように、じっとりとなぞり回した。
それらの動きは、紛れも無く彼にそうされたことを、そのままなぞってのもの。
368 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/25(土) 12:24:11.92 ID:e3Y7s9Iro [5/15]
「ふあっ、あっ、あっ、ああんっ、ああっ!」
廻る刺激に耐えきれないように首を横に振る白井。
ビクビクと脚が震え、その拍子に、爪先が何かに当たった。
床に広がるバスタオル。その上のバイブレーター。
つい先ほど『拡張』時に口にくわえて舐め回した、張型の性具だ。
昨日も、一昨日も、風紀委員の休憩時間にトイレで咥えていた模擬男性器。
彼の言ったとおりの、本物に近い味と性臭が記憶から喚起され、味覚と嗅覚に香る。
『ん、ぷはぁ』
「!」
続いて響いた少女の声に、引っ張られて、白井はテレビに目を移した。
少女が口を離し、張り詰めたペニスをうっとりと見つめている。
『……ふふっ、おっきぃ』
淫蕩で、肉欲にまみれた笑みが、白井のよく知る顔に浮かび上がっていた。
ペニスの先端と少女の唇の間にかかった唾液の橋がプツリと切れ、再び少女が少年の股間に顔を埋めていく。
369 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/25(土) 12:24:42.52 ID:e3Y7s9Iro [6/15]
(お姉様……!)
美琴に似た少女の舌が張り詰めた起立に絡み、亀頭を弄び、唇が先端に被さる。
その美麗な横顔は、時折内側からペニスの先端に押し上げられてプクリと膨らみ、また、吸い上げる際にはひょっとこのように凹んだ。
(ああ、お姉様……お姉様が、あんな……)
情けなさすら感じる表情。
しかしそれを見る白井の唇は胡乱に開き、覗く舌先は少女の動きを追うように艶かしくのたうち、円を描き、口内に溜まった唾液を撹拌した。
「んはぁっ!」
左手が再び、右の頂を強く摘みあげる。パンパンに固く膨れた陰核を右手人差し指と中指が挟みこみ、小刻みにすり潰した。
もはやその刺激を、驚きではなく快感として受け止められるほど、白井は昂ぶっている。
トクトクと溢れ出す愛液は指を濡らし、太股を流れ、シーツに染み込む限界を超えて水溜まりと化していた。
「あっ、あっ、あっ、あっ」
目の前がチカチカとする。
声を抑えられない。抑えるという発想まで思考が動かない。
370 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/25(土) 12:25:11.89 ID:e3Y7s9Iro [7/15]
心の天秤が揺れる。
このまま溺れてしまえばいい。
黒点が囁きかける。
淫らになれば、彼はきっと満足する。
美琴を護ることができる。
自分も、いまよりずっと気持ち良くなれる。
371 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/25(土) 12:25:43.30 ID:e3Y7s9Iro [8/15]
――楽に、なれる。
372 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/25(土) 12:30:40.29 ID:e3Y7s9Iro [9/15]
「いやぁっ、あっ、あうっ、いやですのぉ!」
しかし。
このまま淫らに溺れてしまっていいのか、と理性が叫ぶ。
堕ちればもう、美琴の前に立つことはできなくなる。
欲望に折れた自分が恥ずかしくて、顔を見ることができなくなる。
彼に身体を許し、それを喜々とする己が許せなくて、笑いあうこともできなくなってしまう。
「あっ、くるっ、ああっ、あっ、ふぁあっ」
(だめです、だめです、だめです、だめですの)
股間から快感が突き上げてくる。
肩が震え出すのがわかった。口の端から唾液が零れたのがわかった。両足爪先が、ぎゅっ、と曲がるのがわかった。陰唇がパクパクと開閉し、ゴプリと蜜を吐き出したのがわかった。
「ああっ! あああっ! ああああっ」
折れないと誓ったはずだった。
もう大丈夫だと思ったはずだった。
それなのに、心とはこうも、弱いものか。
こんなにも、身体に引きづられてしまいものなのか。
目の前は真っ暗になった。
抵抗をやめない心を、黒い染みが支配していく。
そしてもはや抵抗をやめた身体は、決壊の絶頂に手をかけていた。
373 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/25(土) 12:31:51.50 ID:e3Y7s9Iro [10/15]
「もうっ、もうっ、わたくし、もうっ……!」
(だめっ、このままイったら、わたくしは……)
折れる。
(お姉様……!)
助けを求めるためではなく、己を支えるため。
目を閉じた白井の瞼の裏側。
望んだのは、今まで何度も折れそうになった白井を救った、美琴の笑顔。
だがいま浮かび上がったそれは、映像の少女が浮かべていた、淫らな笑み。
「!」
ギシ、と心にヒビが入る音がした。
願い虚しく快楽を紡ぐ手指が、そのヒビを押し広げる。
(あ……)
そして最後の快楽を押し込もうと、陰核にかかった指が――
374 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/25(土) 12:32:29.27 ID:e3Y7s9Iro [11/15]
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
375 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/25(土) 12:33:03.48 ID:e3Y7s9Iro [12/15]
(……んー)
最近お気に入りの喫茶店で読書をしていた美琴は、ふと、目の端に見慣れた人影が通った気がして顔をあげた。
しかしそこにいたのは、思い浮かべた白井ではなく、背格好の似通った同じ常盤台中学の女子生徒だ。
見慣れたように感じたのは、その女子生徒が茶色のツインテールで、さらには風紀委員の腕章をしていたからだろう。
「……」
(黒子は確か今日、非番だったわよね)
頭の中で後輩のスケジュールを思い起こしながら、携帯電話を取り出す美琴。
今日も白井は何か教養を入れているのか、学校が終わると同時にどこかに行ってしまっていた。
(また無理してなきゃいいけど)
三日前にも、公園で気を失ったばかりだ。
それにも関わらず、昨日も一昨日も彼女は風紀委員の仕事に出ている。
(……習い事終わったら、ちょっとお茶でもできるかな?)
同室の先輩で、かつ、もっとも親しい友人でもある。
体調は心配だ。
それに加えて、最近はちょっと付き合いが悪いようにも思う。
(淑女もいいけど、ちょっとはこっちにも気を回しなさいっての)
認めたくはないが、美琴としてもちょっと寂しいのである。
376 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/25(土) 12:33:42.44 ID:e3Y7s9Iro [13/15]
「お、わ、っ、た、ら、お、ちゃ、で、も、い、か、な、い、? ……と」
カチカチとメールを打つ。
そして送信ボタンを押そうとしたところで、
「……んー」
(もし静かにしないといけない教養だったら、メールはまずいかなぁ)
白井は風紀委員だ。役職上、そういう場でも携帯電話の電源を切らないでおくことが許容される立場にある。
マナーモードにしているのはしているのだろうが、もしも設定を忘れていたら、あまりいい顔はされないだろう。
知らないのであればともかく、習い事参加中ということを知っていながら緊急ではない連絡をするのもどうなんだ、という気もした。
(さて、どうしよっか)
414 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/26(日) 20:42:47.49 ID:dIrsxvoso [2/12]
「……」
結局、美琴は送信ボタンを押さなかった。
(黒子の邪魔しちゃ悪いしね)
未送信のメールは削除し、携帯をテーブルの上に置きなおす。
自慢の後輩ががんばっているのに、それを自分の我侭混じりで邪魔するわけにはいかない。
心配なのも本当であるが、それならお茶に誘うよりも部屋でゆっくりさせた方がいいだろう。
「ま、私もがんばりますかー」
一口、紅茶を飲んでから美琴は読書に戻った。
読んでいるのはAIMに関する研究の、基礎となる本。
基礎的な内容を高度に研究した『上級者向けの基本』を記したものである。
美琴は他のレベル5と異なり、レベル1から5まで上り詰めた存在だ。
それを考えれば、能力向上に基礎の習熟は重要な部分と言えた。
(私も負けらんないしね)
もう何度目かわからない言葉を苦笑とともに思い浮かべながら、美琴は読書を再開する。
415 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/26(日) 20:44:17.54 ID:dIrsxvoso [3/12]
――そして。
白井の下に、救いは来なかった。そんなものは、幻想でしかなかった。
蜜にまみれた指が、絶妙な強さを持って、陰核を圧迫した。
「あ――」
息を呑み、白井が一瞬だけ硬直する。
直後。
真っ暗だった目の前が、一気に白く染まり、
「ああっ! イクっ! イきますっ! あああああぁーっ!」
仰け反り、ベッドに倒れ、白井は声をあげた。
左手は右胸を掴み。右手は秘裂を掻き。
背筋を仰け反らせ。両爪先だけを床につけ。
大きく開いた膝の間の、その最奥から射精のように蜜を飛ばし。
光を失った瞳から、大粒の泪を零し。
「っ! っ! っ! っ!」
白井は腰を突き上げるように、何度も、何度も痙攣した。
その痙攣の度に絶頂した。
そして絶頂の度に、実感した。
416 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/26(日) 20:44:50.07 ID:dIrsxvoso [4/12]
「あぁぁぁ……」
白井が白い世界から降りてくる。
シーツから浮き上がっていた尻が、ベチャリと、蜜の泉に着地した。
「ああぁぁぁ……ああああぁぁぁぁ……あああぁぁぁぁぁぁぁ……」
続いて力の抜けた身体がベッドに沈む。
そのまま、白井は動かない。
蜜は、快楽の余韻を示すように、まだトクトクと漏れている。
しかし泪は止まっていた。
光を失った瞳は、泪を流すことすら許さない絶望に染まっていた。
「わた、くし…………わたく……し…………」
白井は実感していた。
自分は、自分で自分を折ったのだと。
彼に命令されたから。
美琴を護るためだから。
自分の大事なものを失わないためだから。
そう言った理由もなく、ただ、快楽を貪った。
それも、初めから最後まで、誰も介在しない、自分の意思で。自身の、欲望で。
「わたくし……うそつき……ですのね……」
何も映していない白井の瞳。
頬に張り付き、唇にかかった髪一筋に、とろりと、唾液が絡んだ。
417 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/26(日) 20:46:09.23 ID:dIrsxvoso [5/12]
ノックの後、数秒の間をとってから、部屋のドアが開いた。
「黒子?」
美琴はそろそろ読み終わろうとしている基礎本から顔をあげ、音のした方に目を向ける。
口調は疑問系だが、声の響きには確信しかない。
ノックの調子だけで白井か否かはわかる程度には、付き合いが深いのだ。
「ただいま戻りましたの」
と、白井が軽く頭を下げた。
「おかえり黒子。今日はどうだったの?」
相変わらず、どこか堅苦しさの抜けない白井に、美琴は苦笑しつつ問うた。
何の気のない、ただの質問。今日は非番だから、どこぞの教養に顔を出す。
そう聞いていたからこそのもの。
しかし。
「っ!」
白井は肩をビクリと震わせ、うつむいた。
「黒子?」
その様子に美琴が眉を顰めた。
今の質問に、何かおかしなことがあっただろうか?
418 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/26(日) 20:47:34.65 ID:dIrsxvoso [6/12]
「……」
だが白井はうつむいたまま応えない。
その様子は、何かを耐えているような、そんな雰囲気だ。
「どうしたのよ?」
本を置き、立ち上がる美琴。
「お、お姉様……わたくし、わたくし……」
白井は、なんとか、という様子で美琴を呼んだ。
名前でも、苗字でも、二つ名でもない、しかし彼女にとって、それこそが御坂美琴を顕す呼び方で。
「!」
そこで美琴は気がついた。
白井が、肩を小刻みに震わせていることに。
(え、黒子、泣いて……?)
「黒子? ちょ、ちょっとどうしたのよアンタ」
美琴が白井に近づいた。
常盤台の寮室はそこそこに広い。
だが美琴の位置からドア近くの白井の場所までは10歩も進めば十分だ。
そして美琴が進み、己のベッドの近くまで来た途端、
「わたくし、もう我慢できませんのー!」
白井がいきなり美琴に跳びかかった。
419 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/26(日) 20:48:45.83 ID:dIrsxvoso [7/12]
「はあっ!?」
いきなりのことで咄嗟過ぎて反応できず、ルパンダイブよろしく、美琴はベッドに押し倒された。
「ああ! お姉様お姉様お姉様! この声この香りこの温もり! 久しぶりのお姉様ですのー!」
「ちょっ、な、こら、やめっ」
両手を美琴の両腕の外側に突き、顔を近づけて髪の香りをスンスンと嗅ぐ白井。
「ああ、なんと甘美な! なんと恍惚なのでしょう! お姉様ー!」
「こ、この、」
美琴が大きく息を吸い込んだ。
前髪に紫電が走る。
「淑女の話はどうしたー!!!!!!!」
空気を切り裂く音が室内に響いた。
420 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/26(日) 20:49:27.72 ID:dIrsxvoso [8/12]
「ったく……少し見直した、と思ったら」
美琴はシャワールームに入り、入浴のために服を脱ぎながらため息をついた。
白井を焦げ焦げにしてから、改めて狼藉の理由を聞いてみたところ、返ってきたのは「禁断症状がでましたの……」というふざけた言葉だった。
とりあえず電撃で動けなくなった白井はそのままに、先にシャワーを浴びてしまおうとしたのであるが。
「禁断症状って、薬物中毒かっつの」
ぶつくさ言いながらも、美琴の顔には僅かな微笑みが浮かんでいる。
いわゆる、あれが今までの、いつもの白井だったのだ。
ここ最近のおとなしさはそれはそれでありがたかったが、やはりああいうやり取りもどこか嬉しいものなのである。
もっとも、実際に何かされるとなると話は別であるが。
(お風呂出たら回復してるでしょうし、ご飯でも食べにいこっかな)
そんなことを思いながら、美琴は機嫌よくシャワールームに入った。
変わるのはいいことだと思う。
だが、自分にもっとも馴染み深い白井がきちんといることに、美琴は安心感と、嬉しさを禁じえないのであった。
421 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/26(日) 20:50:26.64 ID:dIrsxvoso [9/12]
「……」
シャワールームから水音が聞こえてきた。
それを確認してから。
白井は身を起こして、自分のベッドに腰掛けた。
胸に手を当て、そこにある痛みに耐える。
口元に浮かんでいるのは、哀しそうな、力のない、諦観の笑み。
うまくいった。
美琴は、いつもの自分だと、思ってくれたはずだ。
いつもの自分を、演じることができたはずだ。
――快楽に折れた情けない白井黒子だとは、気がつかなかったはずだ。
(これが……これしか、ないんですの)
美琴の前に立てない。立つ資格はない。
それでも現実問題、白井は常盤台中学校在籍であり、美琴と同室であり、何より美琴ともっとも親しい友人であるのだ。
会わないですむ選択肢はない。それに、仮に転校などしたところで、付き合いは続いていく。
美琴の性格上、それでさよなら、などとはならないだろう。
422 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/02/26(日) 20:54:32.04 ID:dIrsxvoso [10/12]
何より、
(……お姉様を、悲しませたくないですの」
折れた自分が、彼女を護ろうと考えるのは、おこがましい。そんな恥知らずなことなど、もう思えない。
それでも、美琴を敬愛する気持ちが、なくなるわけではないのだ。
哀しませたくは、ないのだ。
「……」
だったら、こうして『白井黒子』の仮面を被ればいい。
今後も、ずっと。彼女とつながり続けている限り。
そう、
(……彼と会うときと、同じように)
仮面を被ることで、身を汚されることを耐えていたときのように。
美琴の前で、自分を偽り続ければいいだけの話だ。
「……」
これからも、彼の相手をしなければならない。
彼の前で『御坂美琴を護る白井黒子』を演じなければならない。
これからも、美琴のパートナーでいなければならない。
美琴の前で『いつもの白井黒子』を演じなければならない。
「わたくし、うそつき、ですもの」
俯き、ポツリと呟く白井。
だから、出来る。
泪は、こぼれなかった。
447 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/03/10(土) 04:43:22.49 ID:V/cxlbTdo [1/40]
朝。
「おはようございます、お姉様」
「おはよう黒子」
起床し、身支度を調え、朝食をとって学校に向かう。
今日は月曜日。週初めということもあってか、登下校する生徒たちの雰囲気はどこか重苦しい。
「昨日は楽しかったわねー。またみんなで行きたいわ」
しかし美琴の機嫌は上々だ。
昨日、久しぶりに四人で外出したのが、よほど楽しかったようだ。
「ですわね。四人揃うのは、久しぶりでしたの」
「次に休みが合うのって、いつだったっけ? あんたと初春さん」
「来週と、再来週は同じですが、」
白井は言葉を一瞬だけ切ってから、
「……来週はわたくし、用事が」
「そっかー。じゃあ再来週にしようかな?」
「再来週、どこかに?」
448 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/03/10(土) 04:43:57.59 ID:V/cxlbTdo [2/40]
「次は4人で買い物に行きたいなって思ってさ。学校帰りに見てもいいけど、やっぱりみんなで行った方が楽しいもの」
「あら? お姉様はわたくしだけではご不満ですの?」
「不満というか不安というか」
「なっ、ひ、ひどいですのお姉様!」
「あんた一昨日の自分を省みてごらんなさい」
「あ、あれはっ……」
「なによ」
「……っ」
「黒子?」
「い、いえ……あれはただの間違い、ただの気の迷いですの。ちょっとした、そう、つい魔がさしたんですのよ」
「魔がさしたって言葉と禁断症状って言葉は同居しないと思うわ」
「お、お姉様。そろそろバス停ですの。降りる準備をなさったほうが」
「あんたねぇ……まぁ、いいけどさ」
449 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/03/10(土) 04:45:04.38 ID:V/cxlbTdo [3/40]
夕刻、風紀委員活動中、休憩時間。
公衆トイレ。
便座に座った白井の目の前で、洗浄に使ったカテーテルが揺れている。
「んんんっ!」
両膝を持ち上げ、M字に開いた脚の付け根で、白井の右手が前後に動いていた。
ラバー製の器具が、柔らかく解れた後ろ側を出入りする。その度に、ぐちゅ、ぐちゅ、と音をたて、
「ふぅぅんっ! んんんんっ! んふぅんっ!」
白井がくぐもった声をあげる。
スカートと下着は洗浄の前に脱いでしまう。身につけているのは淡い青色のブラウスと、ふくらはぎ半ばまでの靴下と、スニーカーだ。
しかしブラウスは裾を大きくまくりあげられ、口にくわえられていた。その下のブラジャーは薄い膨らみに辛うじてひっかかる形で上にずりあげられている。
ほぼ露出した上半身前側。ぴん、と立った乳首を左指が摘み、しごき、押し潰す
。乳房を揉み、撫で回せば、小ささゆえにダイレクトに性感を刺激した。
「ふぅんっ! んんふぁっ! んんんっ!」
右手首のスナップはリズミカル。
器具が肛門を入り出る一往復が一往復が、白井の背筋に快感を流し、全身に熱を廻らせていく。
450 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/03/10(土) 04:45:55.73 ID:V/cxlbTdo [4/40]
(こんなっ、なぜっ……前よりっ、気持ちいいっ……!?)
身体に響く快楽は、一昨日の同じ行為よりずっと強い。
そのことに白井は混乱しながらも、うっすらと汗の浮いた肢体は素直に反応を返した。
もう異物の挿入に抵抗を示さないすぼまりの上。いまだ純潔を保っている秘裂は、そうであると思わせないそぶりでパクパクとひとりでに開閉し、白濁した蜜を吐く。
どろりとしたそれは蟻の門渡りを通って肛門に達し、新たなローションとして機能した。
「んんんんっ! んんんんんっ! んんんんんんっ!」
ツン、とどこか甘酸っぱい性臭が己の股から鼻先に届き、白井は身体がさらに高ぶったのを自覚。爛れた欲情に油を注ぐかのように、右手のスナップの角度が深くなり、左手は強く乳首をすり潰し、そして何度もそれは繰り返される。
(いやらしいですのっ、はしたないですのっ……わたくし、こんなにお尻で……胸も固くなって……こんなにも、ここを濡らして……)
ほんの一月前の自分の常識では有り得ない肛虐の魔楽を自覚し、白井はゾクゾクと身を震わせた。
無意識はそのことを危機感として訴えるものの、
(ああっ! すごっ、気持ちいっ、お尻、気持ちいいですの……! わたくし、こんなに淫らで、情けない……!)
だめだ、という言葉は浮かんでこない。
口にくわえた裾のせいで満足に呼吸ができず、思考力の低下した白井は、それを自覚することができなかった。
ただ求める欲望と自虐の思いがそのまま言葉として頭に満ちる。
451 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/03/10(土) 04:46:44.13 ID:V/cxlbTdo [5/40]
「ああっ!?」
サーモンピンクの乳首を、人差し指と親指の爪が、きゅっ、と抓った。
軽い痛み。それを数倍する快感。
あからさまな喘ぎが、思わず裾を離した白井の口からあがった。
両手は塞がっている。ぺちゃっ、と無駄な肉のない腹に落ちた裾部分が唾液の音をたてた。
手の形にもりあがった服の下でモゾモゾと指がうごめき、そのもりあがりに邪魔されて尻を犯す右手の動きが見えなくなった。
「ああっ、んんあっ、あああっ、あはあっ」
見えなくなった――視覚による興奮を得られなくなった白井の身体は、それをさらなる動きで代用しようとした。
ぐぽっ、ぐぽっ、と尻が音をたてる。空気の出入りを自覚して、白井の胸に羞恥がわき、
「だめぇっ! わたくし、あぅんっ、恥ずかしっ、あっ! ああっ! ああああっ!」
羞恥は瞬く間に自虐の快楽に変わった。
アナルバイブが引き抜かれるごとに、押し込まれるごとに空気の音が響き、あわせてグイグイと絶頂までの水域があがっていく。
何も考えられない――考えなくていい、真っ白の世界が見えてくる。
452 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/03/10(土) 04:47:32.89 ID:V/cxlbTdo [6/40]
「あぁっ! だめですのっ! ああんっ! 声っ! だめっ! ひああっ!」
声が抑えられない。
それだけは、と微かに残った理性が、自制を叫ぶ。
白井の無意識はそれを拾い、頭の片隅に置くことを許した。
しかしそれは、外向きへは防衛意識であったが、内向きへは違っていた。
無意識の選択は、危険の自覚。味を覚えはじめた、別の快楽の火種。
声が個室から漏れてしまう。
トイレに響いてしまう。
誰かに聞かれてしまう。
人に、気がつかれてしまう。
453 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/03/10(土) 04:48:28.52 ID:V/cxlbTdo [7/40]
こんな自分を、見られてしまう。
454 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/03/10(土) 04:49:30.38 ID:V/cxlbTdo [8/40]
「――ふあっ!」
ゾクゾクゾクッ、と今までで最大の痺れが背中を撫でた。
「あっ、あっ、あっ、あっ」
グポグポと。クリクリと。
口元からよだれを垂らし、白井は霞んだ瞳で前を見る。
目の前にはドア。カテーテルのかかったドアは開いていない。
だが、白井の瞳には、立っている誰かが見えた。
ここを開けた誰かの驚いた顔。
次の瞬間に浮かぶだろう戸惑いの顔。
そして最後に浮かぶであろう、軽蔑の顔。
その顔は――
「っ!」
白井がそれが誰なのかを認識した瞬間、左手が乳首をつねりあげた。右手がアナルバイブを根本まで肛門に突きこんだ。
右手の親指が掬い上げるように動いて、包皮から完全に外に出た、グミのように固くなった陰核を、ぴん、と弾いた。
手の届きかけた絶頂が、転がり落ちてくる。
反射的な動きで上半身は身を縮め、M字の脚は限界まで引き寄せられた。
「イクっ! イクっ! あああああっ!」
顎をあげ、嬌声をあげる白井。
舌先から跳ねた唾液が、動きに引っ張られて、円弧の軌跡を描いた。
455 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/03/10(土) 04:50:33.93 ID:V/cxlbTdo [9/40]
そして、休憩時間は、あと20分。
今から後始末をすれば、余裕をもって仕事に復帰できる時間だ。
こんなことで、焦らずにすむ時間だった。
だが。
「こんなの、だめですの」
「こんなの、あの人に見せられないですの」
「我慢できなかったことがわかってしまいますの」
「……」
「……これをくわえてもいませんし」
「……くわえてたら、声はたちませんの。彼に、ばれませんの」
「……消して、もう一度撮り直せば……」
「……もう、一度」
黒子「……好きにすれば、いいですの」-3
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