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黒子「……好きにすれば、いいですの」

1 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県)[sage saga] 投稿日:2011/11/26(土) 01:07:31.14 ID:Cp32iA0do [1/35]
           _
         ,r'"= ニ三`ヽ-=-、)'゙ヽ  r、
        ////,r=三ミヾヽヾ} }'ヽ ノソッ
        /,////,r'" == ミヾヽ 川 l l./ /"リッ
      // /// ///,r三 ミヾ.l リ /ツ/ ノ/ノ ノ
      l l/// /////,r = ミヾ ノノ/ /,r"'"")
      f/// // / //,r`ヾ∨/,,.r''´/,r="ノ
     ノ// // / /// / /ヾ''""ヾ'、'r''''''r=''))     最初にこんなことを言うのもなんだが
      ノ// // / /l l l l l       l.lll   レソ/       このSSは18禁です。
.    ////〃 / / l l l l |     リリ   |//      18歳以上の男性が読むといいと思います。
   //// / / ノ―-ヽトトl、   v-"---ッリノ        さらに純愛スキーさんは回れ右を推奨します。
.  //// / /,ィl | F〒tテ‐〉  f:r〒tテッ l゙l |       気が向いたら投下する形式なので、
  l 川 / / f{ {l゙|  ´´ ̄''"   {゙`' ̄゛` |,リ    スピードは期待しないでください。
  |川 〃/ハヽヾ|         l:}     l'ト|、       最後に、僕はジョジョが好きなのですが
  |.ll l / / ヾi`゙l       ヾ_フ    l l゙ト\   AAは内容に一切関係ありません。
  |ll l l /   'il l',    _______  /'|.l | ヽo
  |l l l l    l.l.lヽ.  ''ニニニニ'' / |.l.l  ゙o
  |l l l |     | |  \      /  |リ
  | l l ll       l.|   ヽ____/   リ
  l l l,リ     f==r,===========l
  //./      |r┐ll: : : r―‐┐ : : : : : : : : |
 /.ノ        || .| ||: : : |    |: : : : : : : : : :|_
       _.. -‐|l._| ||: : : |  __|: : : : : : : : : :|: :":'':ー---_-=
-―-‐:'':": : : : ::ヽ、 ||: : : : ̄: : :_:.: :-‐: : :_:.: :-‐:'':": : ,r'": : :
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※このSSの登場人物は18歳以上です
2 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県)[sage saga] 投稿日:2011/11/26(土) 01:09:12.03 ID:Cp32iA0do [2/35]
上条「俺のことが好きなんだろ?」

美琴「そ、そんなわけないでしょ!?///」

上条「正直じゃないな、顔赤くして否定しても無駄だぜ?」

美琴「んもうバカ!あんまり調子に乗ると・・・」

上条「そうなのか・・・俺の幻想だったのか・・・俺、美琴のこと好きだったのになぁ」

美琴「ちょっ・・・い、今なんて?///」

上条「ん?美琴のことが好きだって言ってんの。二回も言わせないでくださいよ(キリッ」

3 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県)[sage saga] 投稿日:2011/11/26(土) 01:09:39.52 ID:Cp32iA0do
「ふにゃ!? すすすすすすす!?」

顔を赤く染めた美琴が、カチリと硬直する。

上条は、彼にしてとても珍しい、いわゆる「女性を愛でる」笑みを浮かべ、右手を持ち上げた。

「美琴」

そっ、と右手が、幻想殺しが、桃のような少女の左頬に添えられた。 

「ふにゃ、にゃ、にゃぁ……」

ぷしゅー、と美琴の頭から湯気が噴出した。

学園都市第3位。

つまり学園と、都市で3番目に聡明と言って過言ではない彼女の頭脳は、頬の丸みと柔らかさを楽しむように動く、上条の右手に侵食され、、完璧に停止した。

無理もない。

恩と、感謝と、それらを全て圧倒する恋心。

若干14歳の彼女が受け止めるには、それら感情の複合体は、あまりにも大きすぎたのだ。

「美琴」

上条が、頬に添えた指を僅かに動かし、少女の名を呼ぶ。

「は、はい……」

夢見心地。
 
あの実験場の夜から、昨夜まで。

夢の中で何度も見た光景が、いま目の前にあるのだ。

美琴はもはや、何も考えることができない。

何も、考えたくはない。

ただいまこの瞬間が、泡のごとく消えないことを、祈るのみだ。


5 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県)[sage saga] 投稿日:2011/11/26(土) 01:10:52.92 ID:Cp32iA0do
真剣な表情の上条。

彼の右手がほんの少しだけ動く。

それはただ、親指がうごいただけ。

彼の親指が、半ば開いたまま震えていた美琴の唇に触れたのだ。

「…いいか?」

問う声は静か。

「……ぁ」

美琴は何も返せない。うなずくこともできない。

視線を返すのが精一杯だった。

不安と期待に潤んだ眼差しを、返すのが。

「……」

上条の顔が、すっ、と近づいた。

空気が動き、かすかに彼のにおいを感じる。

いま自分はどんな顔をしているのだろう。

思考停止の中、僅かだけ残った理性は嘘のように冷静にそんなことを思った。

その間にも、上条の顔は、唇は、近づいていた。

何か言わなければ。

せめて、たった一言、それよりも先に言いたい言葉が。

唇が重なるよりさきに、言ってほしい言葉がある。

しかしそんな想いが少女の吐息を言葉に変える前に。

「ぁ……」

ふわり、と羽毛が大地に落ちるがごとく。

やわらかく、自然に、瞼が、降りた。

6 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県)[sage saga] 投稿日:2011/11/26(土) 01:12:04.62 ID:Cp32iA0do
「っ」
 
目を開くと、天井が見えた。

見慣れた天井。

しかし一瞬、ここがどこだかわからなくなる。

「……」

続いて耳に響いた微かな雀の声で、美琴はようやく状況を理解した。

「ゆ、め……?」

掛け布団を力いっぱい握り締めていた両手を自覚しながら、呟く美琴。

「うぅん……」

「っ」

タイミングよく、隣から響いた声で、ようやく現実に引き戻された。

反射的に見た隣のベッドには、長い髪を身に纏わせた白井がいる。

「――っは、はっ、は……はぁ~」

白井の、どこか強張っている寝顔を0.5秒だけ見てから、美琴は大きくため息をついた。

肺から息が抜けていき、身体が弛緩する。

そうなってからようやく、自分がどれくらい身体を硬直させていたのかが自覚できた。

(そう、だよね。そんな、アイツが、あんな風なわけ、ないわよね)

右手を持ち上げて自分の目の前にかざす。

白く細い指先は、緊張からの解放を示すように、小刻みに震えていた。

7 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県)[sage saga] 投稿日:2011/11/26(土) 01:12:55.63 ID:Cp32iA0do
「はぁ」

美琴は公園のベンチに座り、ため息をついた。

憂鬱というよりも、何かの感情を吐き出したような呼気は、両手で握ったヤシノミサイダーの飲み口に触れて、消えていく。

いつもの公園。

ちぇいさー、といったところなのだが、出てきたのはこの一本だけ。やはり、今日は、どこか調子が狂っている。

今朝あれから、ベッドで悶々とすること、気がつけば一時間。

休日とはいえ起床が少々遅くなったことに気がついた美琴は、気分転換に街に出ていた。

服装はいつもどおりの常盤台の制服だが、髪にはトレードマークとも言える髪飾りはつけられていない。

髪が乾いていないせいだ。

ドライヤーは音が大きい。

美琴がベッドから身を起こしたとき、白井はまだ眠っていた。

いつもなら美琴とほぼ同じ時間帯(つまり今朝よりはずいぶん早い時間)に起きるのだが、今日はベッドに沈んでいたのである。

昨夜は風紀委員の仕事がずいぶん忙しかったらしい。やけに遅く帰ってきたと思ったら、すぐにシャワーを浴びて寝てしまった。顔色も悪かったし、今朝心配になって覗き込んでみたら、どうにも疲労が抜けきっていない様子だったのだ。

そんなわけで美琴はいま、髪を乾かしがてら、暇つぶしの散歩に興じている。

自然の風に晒してしまうのは傷みが心配であるし、何よりそんな頭を人に見られたくはない。

そう思っていたら、脚はいつの間にか、いつもの公園に向かっていた。

(なんて夢見ちゃったのよ、私ったら……)

ぽわり、と、己の手元を見る視界に、夢の中で見た上条の真剣な眼差しが浮かぶ。

彼はゆっくりと顔を近づけてきていた。そして右手は自分の頬。

目を覚まさなければ、あの後どんな光景になっていたかなど、考えるまでもない。

(わ、わたし、あ、アイツと、き、き、キ……)

ぷっしゅー! と美琴の顔から、本日二回目の湯気が噴出した。

(そ、そりゃ私だってアイツには感謝してるし、それこそ恩だってあるし、でもだって、そんな私がそんな……で、でも夢は願望だって言うし……が、願望?)

視界に、上条の真剣な表情が――

ぷっしゅー! と三度、美琴の顔から湯気があがった。

8 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県)[sage saga] 投稿日:2011/11/26(土) 01:14:53.89 ID:Cp32iA0do
(あう、あう……)

頬といわず耳といわず、首元まで真っ赤に染まった少女。抱え込むようにして缶を握る両手の人差し指が、ツンツンと、モジモジと先端を絡ませあう。

もう完全に、視界に浮かんだ幻想以外に何も見えていない。

だから気がつかなかったのだろう。

やや俯き加減の少女の前に、人影が立ったことに。

「美琴? こんなところで何してんだよ、お前」

「!?!?!?!?!?」

がばっ! と顔を上げる。

つい今しがたまで、目の前に浮かんでいた幻想が、現実となってそこに現われていた。

「?」

幻想とは違って、真剣な眼差しではない。

だが、そんなことは少女には関係がなかった。

ぷっしゅー!

本日四回目の湯気が、まだしんなりした赤毛から立ち上ったのだった。

9 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県)[sage saga] 投稿日:2011/11/26(土) 01:16:58.26 ID:Cp32iA0do
常盤台中学校寮。その一室。

シャワールームから、ずいぶん長く水音が響いていた。

「……」

長い髪を身に纏わせ、頭からシャワーを浴びているのは、白井黒子だ。

美琴が部屋を出て行って、戻ってこないことを確認してからすぐシャワールームに入ったため、もう一時間近くにもなる。

やや熱目の湯を、長時間。しかしにも関わらず、彼女の顔は冷水でも浴びているかのように、青ざめていた。

――おまえが条件を呑むんなら、美琴には手を出さないぜ?

脳裏に浮かぶのは、普段からは想像もつかないような、酷薄な笑み。

いつも美琴とじゃれているときの顔は幻想だと言わないばかりの、下卑たモノだった。

歪んだ、彼の唇。

「っ……!」

ゾクリ、と身体が震え、白井は己の身体を両腕で抱え込んだ。瑞々しい唇が、強く噛み締められる。

昨夜、そこに重ねられた感触を思い出してしまったせいだ。

(……本当に、下衆な……)

美琴のため。

そう覚悟を決めた自分をあざ笑うかのように、唇だけが奪われた。

それ以上は、明日だ。

彼の言葉。すなわち、今日である。

勢いというものがある。短慮とも言えるが、決断を下すときや、覚悟を決めるときには、大きな後押しになるものだ。

だがそれも、こうして時間を空けられてしまえば、文字通り勢いを失わせてしまう。

決意は鈍り、覚悟は揺らぐ。

間違いなく、自分がこうして葛藤することを見越してのことだろう。

10 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県)[sage saga] 投稿日:2011/11/26(土) 01:18:50.13 ID:Cp32iA0do
(……お姉様)

きゅっ、と両手を握る。

敬愛する存在。彼女のためなら、命すら惜しくないほどの。

きっと美琴は、このことを知れば哀しむだろう。いや、それだけでは済まないかもしれない。

心を失い、下手をすれば……

「っっっ」

最悪の想像に行き当たり、白井は今度こそ背筋を凍らせた。

だめだ。

そんなこと、させるわけにはいかない。

彼の本性も、自分の身に今から起こることも、絶対に隠し通してみせる。

しかしその悪寒が、揺れかけていた覚悟を、再び決然と固める要因となった。

お姉様は、わたしくが護ってみせる。

白井はシャワーを止める。

ポタポタと水滴の落ちる前髪の奥で、悲壮な決意の灯った瞳が、ここにはいない彼を睨み付けていた。

約束の時間まで、後、2時間。

11 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県)[sage saga] 投稿日:2011/11/26(土) 01:20:22.22 ID:Cp32iA0do
「大丈夫か?」

「う、うん」

 左隣に腰掛けた上条の問いに、美琴は赤い頬のまま頷いた。

 基本的に休日に遭遇することがなかったせいで、完璧に油断していた。

 その上に今朝の夢である。

(し、静まりなさいって、この・・・)

 ドキドキと胸は鳴り止まないが、それを悟られるのも恥ずかしい。

 美琴は膝の上に缶ジュースを持った姿勢のまま、静かに深呼吸を繰り返した。

「……」

 ちらり、と目だけ動かして上条の方を伺う。

 上条は背中をベンチに預けながらもこちらを見ていたらしい。

 目があった。

「!」

 ひゅぼっ! と美琴の顔が燃え上がり、またも俯いてしまう。

(なななななな、なんでこっち向いてんのよ!)

 頭の中では威勢のいい言葉が出るが、口はまったく動いてくれない。

 それというのも、唇を意識してしまっているからだ。

「……」

 上条が首を傾げる気配がする。

 周囲の気配に敏感になってしまう電撃使いの特性。しかも、学園都市最高の敏感さが、いまは物凄く恨めしい。

(な、何か言わないと。何か……)

 えーとえーと、と話題を探して頭の中をひっくり返すが、普段は明晰な頭脳もこの時ばかりはうまく動いてくれない。

(話題話題話題……きょ、今日はいい天気ねー……って、そんなの絶対変に思われる! コイツのことだから思わないかもだけど、もおおおおお!)

 支離滅裂もいいところの自問自答。いや、混乱と言ってもいい。

12 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県)[sage saga] 投稿日:2011/11/26(土) 01:21:55.88 ID:Cp32iA0do
「なぁ美琴」

「ひゃい!?」

 変な声が出た。

(て、わわわわたし、ひゃいって! ひゃいって何!?)

 色々な恥ずかしさが極まり、さらに顔が熱くなる。

 普段は平気で睨みつけることのできる彼を、まったく見ることができない。

「な、なんか調子悪そうだけど……ほんとに平気か?」

「わ、私のどこが変だって言うのよ!?」

 上条の言葉に噛み付く形で、癖が出た。

 反射的に上条に顔を向け――身長差から、彼の唇が目に跳びこんできた。

「――――っ!」

 ひゅぼん! と音をさせて再び顔を俯ける。

「いや、そういうところが、なんだけど……」

 辛うじて視界の端で捕らえている上条が、頬を掻いている。

「……」

 美琴はもう、色々といっぱいいっぱいで言葉を返す余裕もない。

 缶を持つ指が小さく震えて、前髪が僅かに漏電しているのがわかった。

 

 プルルルル



「!?」

 いきなりの携帯電話の音。

 身体がベンチから浮くほど驚く。

13 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県)[sage saga] 投稿日:2011/11/26(土) 01:23:24.82 ID:Cp32iA0do
「わっ、俺か。誰だろ」

 原因は上条だった。

 彼はポケットからボロボロの携帯を取り出すと、パカッ、と開いた。

 ボタン操作をしているところを見ると、メールらしい。

 上条が携帯を見ている隙に、深呼吸をこっそりと。

 そうこうしているうちに、読み終わったらしい。上条が携帯電話をポケットに戻した。

(よ、よし……落ち着いたわ。普通に、普通にしゃべればいいのよ、御坂美琴)

 いつの間にか胸に当てていた右手には未だ激しい動悸を感じるが、無理やり気のせいだと思い込む。

 しかし、今こそ美琴が顔を上げようとした瞬間に、

「あ、ごめん美琴。ちょっと俺、行かなくちゃいけなくなった」

 上条が立ち上がった。

「え……」

「いやー、なんか友達に呼ばれちゃってさ。土御門と青髪。ほら、お前も前に会っただろ?」

 そんなことを言われても、気合一発さぁ会話! という出鼻を挫かれた美琴の耳には、うまく言葉が入ってこない。

 上条はそんな美琴の沈黙を肯定と解釈したらしい。

 じゃーな。体調、気をつけろよ? とあっさりと背を向け、走っていってしまった。

「あ……」

 大混乱から上条さん不意の退場まで、美琴の中ではめまぐるしく変わった状況についていけず、中途半端に手をあげて見送ってしまう。

「……」

 そして、そのまま、たっぷり一分。

 はー、と美琴が大きくため息をついた。

 寂しさと、自分を置いて言った彼への苛立ち。

「しゃべれなかった、な」

 ポツリと呟く。

 自分が悪いのはわかっている。

 一人で盛り上がって、彼の気遣いも無視して、その結果のこったのは、八つ当たりっぽい彼への感情だ。

 でも……

「……ばか」

 胸からあふれそうになった切なさが、彼への罵倒となって、唇からこぼれた。

14 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県)[sage saga] 投稿日:2011/11/26(土) 01:25:25.45 ID:Cp32iA0do
指定された部屋に入って15分が経過した。

スキルアウトの溜り場として風紀委員も警戒している区域。そこにあるホテルの一室だ。

ホテル、と言ってもそう上等なところではない。いわゆる、ビジネスホテルよりは少しマシ、というところか。施設も、衛生も、普通レベルといえる。

違うのは、設えられたベッドがやけに大きなことと、壁が高機能防音性を持っていること。そして一度入ると、管理者か借主でなければドアの鍵をあけられないことだ。

よく観察しないとわからないが、そこかしこに巧妙に隠された撮影用の器具と、簡易AIMジャマー。

今は機能していない――どうもいまここを借受けて指定してきた彼はその料金までは払わなかったようだ――それらと、脱出できない部屋。何をする場所なのかは押して知るべきである。

もちろん、ジャマーが機能していない今、部屋に立つ白井には脱出など容易なことだ。

彼は当然、白井の能力を知っている。それでもないジャマーを機能させないのは、こちらが逃げないことを確信しているからだろう。

「……」

そして忌々しいことに、その確信は正しかった。

ふと、視線を動かした白井の目に、ベッドの枕元に置かれた、ラバー製の『器具』たちがとびこんできた。

「――っ!!!」

白井の背筋を、凍るような悪寒が駆け上がる。

小一時間の後には自分の身に起こるだろうことを想像してしまったせいだ。

汚される。

あの男の指で。

あの男の舌で。

そして、あの男の――

「っ!」

叫びだしそうになり、白井は両手で己が口を押さえた。

防音のこの部屋から、悲鳴は出て行かない。しかし、そうすることは彼女の矜持に反していた。

そう、自分は美琴を守る為にここにきた。

何が起こるのかは、とうに覚悟してきたはずだ。

声を飲み込む。動機を抑える。剥がれかけた決意の仮面を、改めて付け直す。

しっかりと、しっかりと、しっかりと。

白井にして、数十秒。

辛うじて平静を取り戻した彼女の背後で、


ガチャ


「!」

音がした。

15 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県)[sage saga] 投稿日:2011/11/26(土) 01:27:13.61 ID:Cp32iA0do
ガチャガチャ

鍵が開く音。

ギィ、バタン

扉が開く音。

カキン

再び鍵がかかる音。

そして、

「よお。本当に来たんだな。どれだけ美琴が好きなんだよお前」
 
彼の声と、彼の足音。

白井は一息、呼気の呑む。

それから背を正し、振り向いた。

顔に浮かぶは、いつものような澄ました表情。そのまま、ふぁさっ、と髪を掻き揚げた。

「呼び出しておきながらレディを待たせるなんて……本当に最悪ですのね」

「そうか? むしろ良心的だと思うぜ? ちゃんとここに来て、取引を成立させてやったんだからな」

そう言って、彼が笑った。

彼にとっての宴が、白井にとっての悪夢が、始まろうとしている。

16 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県)[sage saga] 投稿日:2011/11/26(土) 01:30:30.13 ID:Cp32iA0do
寝転がったベッドは、存外に心地よい感触だった。

纏う制服を全て脱ぎ捨てた白井の身体を、やわらかく受け止めるベッド。清潔な白いシーツに、少女を中心とした放射状の皺が刻まれた。

中学生。未発達の肢体。

瑞々しい肌を彩るは、年齢にそぐわない薄い下着と、小さな震えだ。

寒いわけので、もちろんない。

恥ずかしいのだ。

当たり前である。肌を晒しているのだ。それも、男性の前に。

想い人であっても――白井には男性を好きになった経験は無いが――恥ずかしいだろう状況。

しかしいま彼女の身体を見るのは、そういった感情とはほぼ対極の位置にいる相手だ。

恥ずかしさと、さらに言えば、怒り。震えの要因は、その二つだった。

「…………」

んくっ、と唾を飲みこむ。

嘗め回すような彼の視線。まるで物理的な感触を伴っているようだ。

「……へぇ」

彼はひとしきり、少女の肢体を鑑賞してから、声を漏らした。

それは賞賛の響きを帯びた声。
 
しかし白井にしてみれば、おぞましい感覚を呼び込むだけのものだ。

「……なんですの。おっしゃりたいことがあるなら、きちんと言葉にしてくださいまし」
 
身体に続いて震えそうになる声を抑えこみ、平静を装う。

「いや、ちょっと驚いたんだよ」

「な、何がですか?」

「白井ってバランスいい身体してるよな、ってさ」

まぁ胸は小さいけど。

「っ」

余計な一言に、思わず噛み付きそうになるが、言葉は口から漏れなかった。

再び彼の視線が、肌を這い回ったからだ。

ふともも、腰まわり、腹、そしてつい今しがた小さいと言われた胸。

ぬるり、ぬるり、とナメクジが這い回るかのような視線は、決意したはずの少女の背筋に悪寒を走らせるには、十分すぎるものだ。


17 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県)[sage saga] 投稿日:2011/11/26(土) 01:32:06.65 ID:Cp32iA0do

「や、約束」

震える唇が言う。

「ん?」

「約束は、本当に、守ってくれますの?」

「ああ、いいぜ。でも白井こそ、本当にいいんだな?」

自分がなんでもするから美琴には手を出すな。

そう持ちかけたときと同じ、そして美琴と接しているときでは考えられそうもないような軽薄そうな顔をして、彼が笑う。

「……好きにすれば、いいですの」

こたえながら、白井は目を閉じた。

彼が、夜の街で幾人もの女性と不適切な関係にある。

風紀委員の仕事で、偶然耳にした情報。

その真偽を問いただした白井に、あっさりとそれを認めた彼。

美琴に近づくな、という要求は、拒否された。

力づくという選択肢は、美琴が哀しむというカードを切られ、封じられた。

風紀委員の権力は、まるで見えない誰かに阻まれたかのように、彼に対して一切、行使できなかった。

残されていたのは彼との個人的な取引だけだった。

「じゃあ、さっそく始めるか」

彼が近づいてくる気配。続いて、ベッドの端が、ギシと音をたてて、僅かに傾いた。

ギリ、と身体が強張るのを、白井はとめることができない。 

そして、彼の右手に―――能力を封ずる右手に肩を捕まれ、

「あっ……」

引き寄せられた。

18 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県)[sage saga] 投稿日:2011/11/26(土) 01:33:32.36 ID:Cp32iA0do
「んっ……ふっ……」

 湿った音が、室内に響く。

 寝具の上に、半裸の男女。

 閉められたカーテンを透かす陽光にシルエットは、両人の頭がある一点をもって重なっていた。

「んんっ!」

 ぐっ、と頭を後ろから押さえつけられ、白井は思わず身を硬めた。

 口付けが深くなる。

 驚きに見開いた目と同様、半ば開いてしまった唇を、彼の舌先がこじ開ける。

 今まで唇の表面を這うだけだった舌は、一息に口腔内の、ちょうど歯の裏くらいまで侵入してきた。

「んんっ!? んんんっ! んんんんっ!」

 首を振り、顔を離そうとする。己の舌先で、彼の舌を堰き止めようと努力する。

 辛うじて歯を立てなかったのは、彼を思いやったのではなく、彼の機嫌を損ねたとき、美琴の身に振るかかることを恐れたからだ。

 しかし、唇は離れることなく、舌はとまらない。

「んううっ!?」

 逆に口の中で壁を作るようにしていた舌を巧みに絡めとられた。
 
 まるで対極図のように絡んだ舌は、今度はもう外れない。

 でたらめに動かし、はずそうと試みるが、その動きすらも逆手にとられ、より強く舌同士が絡み合う

 両腕を突っ張り、カッターシャツはおろかインナー代わりにTシャツを脱いだ彼の裸の胸を必死に押すが、そちらもまったく無意味だった。

 彼の腕力は強い。

 特別鍛えているという風情ではないが、荒事は豊富と聞いていた。おそらく、自然についた筋肉なのだろう。

 荒事の経験としなやかな筋肉は、格闘技経験がないにも関わらず、白井が紀委員として修めた格闘の技術も封じてしまっている。
 
 結論として。

 空間移動を封じられた今、白井がどんなに抵抗しても、無駄なのだ。

「…………」

 いや、そもそも。

 自分の身を捧げると決めた時点で、抵抗などする選択肢はなかったのだった。

 白井の胸中にある種の諦観が生まれる。

 それは彼女から抗う力を奪い、状況を受け入れる隙間へと変化した。

 少女の唇が、舌が、抵抗をやめ。

彼を受け入れる。

「んっ……んぅ……んふ……」

 うねうねと動く舌が自分のそれを絡み取り、唾液を攪拌するように動く。

 粘質な水音が大きくなり、時折角度を変えて重なる唇の端から、とろりと唾液がこぼれた。

 そして、つぅっ、と糸をひいた唾液が、ポトリとシーツに染みを作った時。

「っ!」

 彼の左手。

 頭を抱える右手と逆に、自由に動く彼の左手が。

 つつ、と白井の肩に触れ――胸覆う布の、肩紐を、するりと外側にずらした。

19 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県)[sage saga] 投稿日:2011/11/26(土) 01:35:02.87 ID:Cp32iA0do
特に理由はない。

一歩も引かないやつ、とも言われる。

勇敢だ、とも言われる。

向こう見ず、とも言われる。

そうするのは、結局、理由がないからだ。

ただ、そこにいて、そんな状況があって、そうなった、だけだ。

そのときの言葉も嘘じゃない。

逆に、その言葉が信念じゃない。

そう思って、言っている。それだけだ。

きっと、そのときと、その状況が違えば、逆にことを言っていただろう。

図書館を救ったのも、きっとそういうことだ。

誘引物質を助けたのも、そういうことだ。

御坂美琴を護ったのも、そういうことだ。

そのような状況だった、だけだ。

そしていま。

腕の中で、涙を流しながら唇を噛み締める少女がいる。

御坂美琴を、慕うもの。

夜の街で適当な相手を探すのも、生理的な欲求に過ぎなかった。

それが御坂美琴の何かに繋がるかなんて、考えはなかった。

彼女が持ちかけてきた取引に応じたのも、夜にわざわざ街を徘徊する必要がなくなるから、というのが主な理由だ。

だが――。

「っ! ぅうっ! んんっ!」

口から漏れる声を必死に抑える少女を見ていると、興味が湧いてくる。

彼女のは、どう乱れるだろう。

彼女は、どう変わるであろう。

舌を絡める前に、口の中で溶かしておいた媚薬。

嫌悪を伴う相手と同衾するのだ。何をしても『濡れる』わけがない。

そのままでは、とても無理だろう。かといって、潤滑油に頼るのもつまらない。

薬は、用意に生理的反応を助長する。

本来ならば、もう十分だ。

だが、だめだ。興味がわいた。

彼女はどう変わるのか。御坂美琴と、どう接するのか。

少女の背中に舌を這わせ、彼は思う。

そこにいて、そんな状況があって、そうなった。

この娘は、どんなことになるだろう。

20 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県)[sage saga] 投稿日:2011/11/26(土) 01:36:01.93 ID:Cp32iA0do
パァーン、と、破裂音にも似た高い音がコンビニに響いた。

周囲にいた客と、カウンターに立つ店員が何事かと視線を向ける。

雑誌コーナーに立つ、常盤台中学校の制服。

美琴だ。

「・・・・・・」

図らずも注目を集めることになった彼女であるが、そっちの方にはまるっきり意識を払えない。

無論、自分に集まる視線は把握しているが、ちょっとそちらに回す余裕がなかった。

落ち込んだ気分は晴れることなく、ついいつもの習慣で入ったいつものコンビニ。

いつものように立ち読みしようとして、いつもの雑誌を手にとって、いつものように開いた瞬間。

目に飛び込んできたのは、見開き一杯のキスシーンであった。

(ふにゃにゃにゃにゃ……)

妙な声を頭の中で繰り返す。

声に出さないあたりは、辛うじてここがコンビニだという自覚はあるらしい。

それでもタイミングがよすぎた。いや、悪すぎた。

美琴は反射的に閉じた本を、内心で「ふにゃふにゃ」言いながら小脇に抱え、浮き足立った様子でレジに一直線。

その動きにあわせて他の客と店員の視線が動き、結局、会計を済ませて店を出る前、奇妙な空気は継続されることとなった。



結局、元の公園に舞い戻った。

ふにゃふにゃ言う自分に気がつかないまま、再び「ちぇいさー」とミドルキック。

自販機もまさか一日二回もけられるとは思わなかったらしい。ヤシノミサイダーを、3本もはく羽目になった。

(きゃー! きゃー! きゃー!)

一方の美琴は、先ほどからベンチに腰掛け、雑誌を開いてはパーン! 開いてはパーン! を繰り返している。

正直怖いが、怖い人に声をかける者はそうはいない。

何より、違法行為が何もないのだ。通報することはできても、連衡するには無理がある。

その上、彼女は第3位だ。風紀委員もアンチスキルも、うかつに手は出せない。

(えっ!? そ、そこまでするの!? いいの!? これ、普通の雑誌なのに!?)

続きをめくって、美琴の顔はさらに赤くなる。

読んでいるのは、いつも立ち読みしている雑誌でも、お気に入りの漫画だ。

ツンツンした少女と、鈍感だがまっすぐな少年のドタバタラブコメディ。

そんなどこかで聞いたような、というか、思いっきり自分を重ね合わせることのできるストーリー。

先週のラストから、いよいよ主人公とヒロインが心を通わせる山場に突入するのは、美琴にもわかっていた。

しかし実際に、絵としてみると破壊力が違う。何より、自分の心持が違う。

美琴の脳裏に、漫画と連動して、妙な想像――世間様ではそれを妄想と呼ぶ――が浮かぶ。

21 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県)[sage saga] 投稿日:2011/11/26(土) 01:37:40.01 ID:Cp32iA0do

――美琴、俺、実はさ

――な、なによ、真剣な顔して

――真剣にもなるさ。一大決心なんだからな

――な、あ、う、な、なによそれは。お金なら貸さないわよ!?

――…真剣なんだ。聞いてくれ。

――う、あ、う、うん。

――ありがとう。……美琴、実は俺、お前のことが……

(だ、だめよだめだめだめ! 私はまだ中学生なのよ!? そ、そりゃアンタは高校生かもしれないけど、そんな、こんなところで……)

妄想の中ですら、一足飛び以上に展開が飛んでいるが、恋する乙女に常識は通用しない。

イヤンイヤン、と首を振る美琴の前髪からは、バリバリと紫電が漏れまくっている。

ベンチの隣に三段重ねで置かれたヤシノミサイダーは、温度差ゆえに汗をかいていたが――美琴にあきれているようにも、見えた。

結局、彼女が正気を取り戻すためには、一時間ほど後に偶然通りがかった彼女の友人である、飾利と涙子の登場を待たねばならないのだった。


22 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県)[sage saga] 投稿日:2011/11/26(土) 01:39:51.98 ID:Cp32iA0do
「んんんっ!」

ビクッ、と白井が背を仰け反らせた。

彼の指が、尾てい骨から背中中ほどまでを逆になぞったからだ。

シーツを握る手に力が入り、放射状のシワがさらに増える。

「はぁ、はぁ、はぁ」

背中から指が離れ、瞬間的な刺激から解放された白井が頭を枕の上に落とす。

うつ伏せた少女。

下腹部を覆う布はそのままの彼女は、ほんの刹那だけ息を吐いた。

だが、彼はそれで許してはくれない。

「あっ?」

左ひじを彼の右手がつかみ、そのまま、ぐいっ、と背中側に引っ張られた。

抵抗すれば筋を痛めてしまう。いや、それ以前に、どういうわけか力が入らない。

そうなれば、身体は素直だ。

身体を痛めないよう、無意識に、しかし自ら仰向けに転がった。

僅かな稜線しかない膨らみが、ふる、と揺れる。

すぐさま、彼が覆いかぶさってくる。

「うぅんっ!」

胸の先端から、甘く痺れる感覚。

左胸は彼の指で。右胸は彼の舌で。

ゆるりと左右に動く指。親指を除く四本の指の間に間で、ポツポツと飛び石のように刺激される。

対照的に小刻みに動く舌。ソフトクリームでも舐めるかのように、舌の腹が頂を這い回る。

「あっ、んぅっ…ぅあっ、あっ…まって……まってくださいま…あっ」

柔らかな愛撫に晒された頂は、反発するように――否、刺激をねだるように、硬くしこり立っていた。

(な、なぜ、わたくし、こんなにっ)

どうしても漏れそうになる喘ぎを無理やり飲み込みながら、白井は思う。

男性経験は、もちろんない。

だが、一人で慰める経験は、ある。

快楽を知るのが年齢的に早いかと言われれば、そんなことはないだろう。女と言うものは総じて男子よりも成長が早く、耳も早い。

美琴を想っての行為は、回数だけならばむしろ多かったかもしれなかった。

身体は、快楽を知っている。

しかし、いまは状況が異なりすぎるのだ。

悪寒と嫌悪しか感じないはずの、男性との行為。

それなのに、身体は忠実に、快楽を神経に乗せている。心とは裏腹に、欲望の熱を溜めていく。

もともと、空間転移能力者は触感というものに秀でていた。

年齢にそぐわない薄手の下着を身に着けているのも、衣類の感触で演算を狂わせないため。

それほどに、自分は、敏感なのだ。

「ああんっ!」

不意に頂から強い刺激。背が仰け反り、白井の顎が上がる。

彼が唇で桃色の先端を挟み、クニクニと弄んだせいだ。

23 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県)[sage saga] 投稿日:2011/11/26(土) 01:41:35.10 ID:Cp32iA0do
「あっ、あっ、あっ、あっ」

刺激はそれだけにとどまらない。

彼の口内。唇から僅かに内側に入った部分に顔を出した頂を、彼の舌先が掠めるようにくすぐり続ける。

片や左側の頂では、いままで参加していなかった親指が先端をこね、あるいは、トントン、とノックする。

自己の指だけでは味わえない刺激と、慣れた指での刺激。

交互に、同時に入力される快感が、いよいよ下腹部にとろとろとした火をつけ始めた。

@@@@

「っ、っ、あっ、あ、はぁっ」

 頂から稜線をとおり、僅かに浮き出た鎖骨へと。

 再び稜線を上り、頂へと。

 彼の舌により繰り返される、緩やかな刺激。

 唇を噛み締め、漏れようとする声を抑えていた白井だったが、都合7回目の頂への愛撫によって、ついに堤防が決壊した。

「ああっ、ああっ、あっ、ああっ、あうっ! だ、だめですのっ。それ以上は、だめですのぉっ」

 薄い厚みの上にある、桃色の乳首。

 ツン、とごまかせないほどにしこり立ったその根元を、くるりくるりと彼の舌先がくすぐり、そうかと思えば、上下の唇が挟み、ふにふにと甘く噛む。

 その度に白井の背筋を蕩けるような小波が駆け上り、耐えようとする理性を揺さぶっていく。

「あんっ! ああぁんっ! あうんっ! ああぅっ!」

 彼の舌と唇と指が動くたび、細い白井の肢体が小刻みに跳ねる。

 その様は活きのよい魚が自ずから暴れているようにも、料理人にその鮮度を確かめるために暴れさせられているようにも、見えた。

「我慢せずに、声を聞かせてくれよ白井。どうせここには、誰も来ないんだからよ」

「ふ、ふざけ……んんんっ!」

 抗弁しようとした唇が、彼の唇に塞がれる。

 ぬめぬめとした舌が即座に進入し、白井の口内で粘度を増した唾液を絡めり、吸い上げる。

「んー?! んんー?!」

 吸い取られていく唾液。それは彼は己の物とブレンドしてから、再度白井の中に絡め戻してくる。

 ほぼ反射的に彼の両肩を押しのけようとするが、快楽に火照っている身体は、嘘のように力が入らない。

 唯一動く首だけをイヤイヤと振るものの、結局は、舌の絡み合いを助長するだけだった。

「んっ、んっ、んっ、んんんっ」

(こんな……こんな……)

 頬の裏、歯茎、口の上側、舌の裏。

 無遠慮に、しかし的確な彼の口内愛撫。想定外の刺激に、徐々に白井の目が霞がかり始めた。

「んふっ……んんん……はぁぁ、んんっ……んむぅ……」

(わた……くし……)

 阻害された呼吸がさらにそれを後押しし、やがて白井の両腕からは力が、瞳からは意思が消え去っていく。

「……」

 至近距離も至近距離でそれを覗き込む彼の目が、笑みの形に変わる。

 そして。

「んんぁ、はあっ、はあっ、はあっ……」

 つつっ、と糸を引きながら、二人の唇が離れた。

 解放された白井が、くたりとベッドに横たわる。

24 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県)[sage saga] 投稿日:2011/11/26(土) 01:43:11.21 ID:Cp32iA0do
「はぁぁ……あ……」

 しかしもう、白井は動こうとしない。

 ぼんやりとした眼差しを、中空に這わせているだけだった。

「……」

 彼が、ずっと少女の右胸を愛撫していた左手で、少女の頬を撫でた。

「あ……ぁ……あぁ……」

 白井が熱く、甘い吐息を漏らす。

 抵抗らしい抵抗も、瞳に浮かぶ意思も、ない。

「……回ったな」

 薬。

 彼が、今度は確実に笑みを浮かべ、少女の肌に右手を伸ばした。

 着地する場所は、先ほどまでの、上半身では、ない。

 薄い布に人差し指が触れる。

 十分に水気を吸った下着が湿り気のある音を返した。

「くぅんっ」

 同時に白井が顎をあげ、背筋を逸らした。

「あっ、はぁ…」

 とろん、とした表情で彼を見上げる。

 薄く浮かぶ笑みは、いまの感覚を悦んでいる証だ。

 ニヤリと笑う彼は、ただ触れただけの指先を、上下に。

「あぁ……」

 張り付き、その向こうにある肉の割れ目をなぞる動きに、意思の大半を眠らされた少女は素直に反応を返した。

 鼻にかかる吐息と喘ぎを漏らしながら、投げ出された両手はシーツを握り、細い腰は指にあわせて緩やかに揺れる。

「んっ……んんっ……ん……ん……」

 繰り返される桃色の呼吸音の間で水音が大きくなっていく。

 零れていくような音ではない。

 ちょうど粘土に多量の水を混ぜこんだような、柔らかな粘りの音。

「はぁ……はあぁ……ぅあんっ……あぁん……あんっ……あんっ……」

 指先が上に向かう。

 なぞる動きの中で戯れるようにくるりと円を描き、さらに上へ。

「んんん……」

 布地の向こうで、僅かだけ顔を出した肉芽が、刺激を予想して震える。

 だが、

「……」

 そこに到達するより先に、彼は指にかける圧力を緩めた。

 触れるか触れないか。

 ギリギリの空間を持って――さきほど乳房の頂をくすぐった時のように――肉芽の直近で円を描かせた。

25 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県)[] 投稿日:2011/11/26(土) 01:44:55.12 ID:Cp32iA0do
「ぅうん…やぁん……」

 小さくなった快楽と、与えられると予想した快楽。

 原始の欲望を求めて腰が指を追う。

 だが彼はそれを与えない。

 むしろ白井の動きにあわせ、ギリギリの触感をキープしながら、指を運び続けた。

「やぁ……やぁ……」

 むずかる声と、強くなるシーツを握る力。

 子供のような仕草に、彼が苦笑する。

 しかし彼の所作に変化はない。

 指はゆっくりと円を描き、白井の腰もまた、ゆっくりと円を描く。

「あぅ……だめです……やぁ……あ……だめ、ですのぉ……ああぁん……あっ、あっ、あっ!」

 刺激は一定。

 だが入力される快楽は、長い時間をかけて川の底に泥が溜まるように、白井の未成熟な身体に蓄積され続けていく。

「あぁ……もう、もう……」

「どうしたんだ、白井」

 彼が、わかりきった問いを放つ。

 白井は答えるしかなかった。

「もう、もう許して……許してくださいまし……もうわたくし……我慢できませんのぉ……」

 無意識に出たであろう言葉。無意識にでた、懇願の言葉。

 しかしそれを聞いた彼の指は、

「だめだぜ、白井」

 すっ、と湿地から離された。

「ああぁぁ…」

 哀願の声が響く。

 自分で触れようとするだけの思考も停止しているのか、ただ腰だけが、独立した生物であるかのように、クネクネと動いていた。

「もっとしてほしいか?」と、彼が瞳を覗き込んだ。

「は……」

 唐突な問いに、一瞬だけ白井の返事が遅れ――しかしすぐに白痴のような笑みを浮かべた。

「はい……してほしい、ですのぉ」

 トロリ、と、白井の口の端から、涎が零れる。

「……」

「してください……もっと、気持ちよく……」

 はぁはぁと、犬のように軽く舌を出し、荒い呼吸が重なる。

「それじゃあ、」

 彼が白井の耳元に口を寄せた。

「四つん這いになるんだ」

 ふっ、と白井の耳に息を吹き掛け、続けた。

「犬みたいにな。そうすれば、続けてやるよ」

26 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県)[sage saga] 投稿日:2011/11/26(土) 01:46:14.61 ID:Cp32iA0do
「はぁ、夢見が悪かった、ですか」

「そ、そうそうそうなの! ちょっと、とんでもない夢みちゃって!」

 公園。

 美琴から渡されたヤシノミサイダーを手に、飾利がオウム返しに言った。

「それって、どんな夢だったんです?」

 問うたのは涙子。彼女の手にも飾利と同じ経緯で、サイダーがある。

「ふえっ!?」

 ピリッ、と稲光が漏れた。

「ちょ、ちょっと佐天さん」と、飾利。

「えー、でも気になるじゃん。第3位すらも動揺させる夢! どーんな内容なのかなーって」

 歌うように言いながら、横目で美琴を見る。

 件の電気娘は、「ふにゃふにゃ」と赤くなり始めた。

 これは恋話だ。ゴシップだ。からかいのネタだ。

 そういう話が大好物の涙子が、見逃す手はない。

「そ、それはその…」

 飾利としても気にならないわけではないが、美琴はさっきまでベンチを中心として同心円状5メートルに無差別落雷をさせていたのである。命をかけてまで聞きたいとは思わない。

「御坂さーん」

「にゃにゃにゃにゃに!?」

「好きな人の夢ですよね?」

 初太刀からおもいっきりいった。正に単刀直入。

「に”ゃ!?」と美琴。前髪で電撃が弾ける。

「ひゃ!」と飾利。頭上で花が一輪焦げた。

「あのいつも一緒にいる、黒ツンツン髪の高校生さんですよね?」

 さらに斬りこんだ。これぞ一刀両断。

「ふぎゃ!?」と美琴。襟首がパリッと鳴った。

「ひょえ!」と飾利。今度は三輪まとめて焦げた。

「しょ、しょれは、しょの……」

 美琴は完璧に真っ赤。ほんの数時間前と同じように、サイダーを持ちながらツンツンと指先をあわせる。

27 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県)[sage saga] 投稿日:2011/11/26(土) 01:47:12.44 ID:Cp32iA0do
「さ、佐天さんその辺で……」

 対象的に真っ青になった飾利が、サイダーを持っていない方の手でクイクイと涙子の袖を引っ張る。

 しかしそれは、あまりにも控えめすぎる行為だ。

 調子に乗りすぎて周りが見えていない涙子が、美琴の顔を覗き込む。

「にっひっひー。御坂さぁ~ん、もしかして、夢でキスとかしちゃったんですか?」

「!」

 ヒュボッ! と音をたてて美琴の耳はおろか、首筋までが染まった。

「!」

 ヒュボッ! と音をたてて、飾利の花飾りがすべて焦げた。

 そこまで来ても、涙子は気がつかない。

「そ・れ・と・も」

 まだ何か言うのか!?

 あせりに満ちた飾利が次の言葉をつむぐ前に、

「エッチなこと、だったりします?」

「!!!!」

 半径10メートルに落雷が発生した。

28 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県)[sage saga] 投稿日:2011/11/26(土) 01:48:38.03 ID:Cp32iA0do
「んあっ! あっ、はっ、あっ、ああんっ!」

 白井が身をよじる度、シーツに皺と水滴が刻まれていく。

 俯せた姿勢から、たてた両膝。

 高く上げられた下半身とは裏腹に、力抜けた両腕は上半身をささえきれない。

 結果的に白井は、桃のような尻を、彼に突き出した姿勢になっていた。

「ああぁっ! あんっ! あっ、あーっ!」

 喘ぎの他で部屋に響くは、粘質の高い液の音。

 ベッドの下端、ギリギリに位置する白井の膝。その内側から両腕を差し入れ、そのまま外側から腰を掴む。

 ベッドに接するほど近づけた部屋備え付けの椅子に座り、そのまま引き寄せれば、顔が埋まる場所は決まっていた。

 薬によって敏感になった秘裂を、彼の舌が上下になぞる。

 左側の陰唇を舌先が左右に動きながらゆっくりと下り、陰核の傍まで達する。

 かたくしこりたったソコを、ツン、と刺激してから、今度は舌を押し付けるようにして、右側の陰唇を舐め上げた。

 速度は速くない。ゆっくりと、じっくりと、ねっとりと上下する彼の顔は、白井の分泌した蜜によって、口元といわず鼻といわず、べっとりと濡れていた。

 彼の舌が陰唇を嬲るたびに、ピチャピチャと音がする。彼の鼻が秘孔を掠めるたびに、クチュリクチュリと音がたつ。 

 それは白井が、もう隠しようもないほど濡れていることを、誰でもない彼女自身に知らしめていた。

「すげぇな白井。洪水だぜ」

「あんっ、やあんっ!」

 彼の言葉に白井が強く首を振る。しかしそれは否定ではない。

 もどかしかったからだ。話しかけるために離れた彼の舌が。

 彼女はさらに尻を後ろに突き出し、小刻みに左右に振った。

 思考を奪われた少女は、羞恥心も、自制心も何もない。ただ与えられる快楽を逃したくないという衝動だけで動いている。

 彼は、やれやれ、と苦笑。薄く唇を開けると、やや顔を下側にずらした。

 顔の中で前に突き出た鼻が、じゅくじゅくと白濁の蜜を溢れさせる膣口に埋まる。そして、

「んひぃんっ!」

 がくんと、と白井が背を仰け反らせた。

「あ、あぁんっ! あっ! ああっ! あっ! あーっ! あーっ!」

 口の端から涎を零しながら、さきほど口腔愛撫をねだったとき以上に首を振る。

 彼が目だけで笑った。

 包皮から顔を出し、十分に硬くしこりたった陰核。それが唇で挟まれ、あまつさえ、ふにふにと甘噛みされている。

 形態としては乳首にされていたことと変わらないが、身体を貫く悦楽は、その比ではなかった。

「あぁんっ! あっ、あああっ! 駄目ですのっ! そんなの、駄目ですのぉ!」

 普段は理知的な瞳は完全に熱に浮かされ、凛とした表情は溶ろけてしまい、見る影もない。

 唇から漏れる否定の言葉。しかし、彼女の腰は、もっともっととねだるように、さらに彼の顔に尻を押し付けた。

「んぷっ」

 ソレを咥えている口は元より、鼻までがスライムのように柔らかくなった淫肉に埋もれた。

 呼吸ができない。しかし、彼はまったくとまらなかった。

 陰核を咥えたまま、唇を小さく左右に動かす。顔を小刻みに上下させ、埋もれた鼻先で白井の入り口を刺激する。腰をつかんでいた両手は、やや位置を後ろにさげ、あまやかな丸い曲線を、やわやわと揉みしだいた。

29 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県)[sage saga] 投稿日:2011/11/26(土) 01:51:01.94 ID:Cp32iA0do
「あっ! あっ! あっ! あっ!」

 白井の声が、単音に、高音に変わっていく。

 快楽の頂きが、見えてくる。

 背筋は仰け反ったまま、力が入らないはずの両腕は、シーツを強く掴み、ピン、と伸ばされた。

 首が強く振られ、ツインテールを留めていたリボンが解けた。軽くウェーブのかかった髪が、彼女の背中に広がっていく。

 その髪の感触すら刺激になったのか、尻の動きが左右から、円を描くものに変化する。

 口元から、粘度の高い唾液が、つつっ、とこぼれ、糸を引いてシーツに垂れた。秘裂から溢れた蜜が、彼の顎をとおり、白い水滴として、糸を残してシーツに染みを残す。

 そして、その瞬間がやってくる。

「あっ! あっ! あっ! あはあっ! もうっ! もうっ!」

 白井の瞳から、ポロリ、と涙が零れ、同時に、じゅるりと彼の唇が、蜜ごと強く陰核を吸った。

「!」

 理性のない意識が、完璧な白で染め上げられ、

「んあああっ! イクっ! イキますのっ! あああああっ! イクーっ!」

 ビクビクッ、と全身を痙攣させ、白井が絶頂に達する。

「っ! っ! っ! っ!」

 背骨が折れるのではないかと言うほど身体を仰け反らせ、大きな痙攣を、四度。

 その度に、彼が鼻を埋めた膣口から、ぴゅっ、ぴゅっ、と蜜が噴出していく。

 酸素を求めるように舌を突き出した彼女は、最後の身震いの後、半秒だけストップモーション。

「あ、ああぁ、あああぁぁぁぁぁ……ああぁぁぁぁ…………」

 直後、かくりと力を失い、投げ出すようにベッドに突っ伏す。

 そのまま彼女は、白い闇の中に、意識を投げ出していった。

30 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県)[sage saga] 投稿日:2011/11/26(土) 01:52:44.58 ID:Cp32iA0do
「……」

 常盤台中学、寮。

 出かけた時には持っていなかった手提げ袋を右手に、白井が自分の部屋のドアを開けた。

 美琴の姿はない。

 普段であれば門限の時刻は過ぎているが、休日はそれもやや緩くなる。美琴が帰ってくるのは、一時間後、と言うところだろうか。

「……」

 白井は、室内に美琴がいないことに、安堵の吐息を漏らした。

 いまもし、自分が敬愛する彼女の顔を見たら――――もしかしたら、泣いてしまったかもしれないからだ。

 右手の荷物。

 薬で狂わされ、快楽に屈し、気を失い、目が覚めた後。

 結局、それ以上は何もしなかった彼から手渡された、一式の器具が、納められてる。

「……」

 彼は、次に呼び出す日はいつがいいか、と問うてきた。

「貴方の好きにすればいい」と伝えたら、「怪しまれないほうがいいだろ?」などと、言ってきた。

 休日を彼のために空けるのは屈辱だ。しかし美琴に感づかれるわけにはいかない。

 結局、週に一回はある非番の日の、さらにそのひとつ向こう。二週間後の非番日を伝えることとなった。

 毎週じゃ男が出来たと思われるだろう、とは彼の弁だ。

 その主張は正しいと思うし、そう言った気遣いをしたことに、陵辱に恨みを置いておけば、感謝すべきことなのかもしれなかった。

 そう。

 帰り際に手提げ袋に詰まった、肛姦の準備をするための道具を手渡されなければ、だが。

「……」

 震える身体をそのままに、己のベッドに腰掛け、手提げ袋を開けた。

 カテーテル。

 注入する液体容積を量ることのできる、ビニール袋。

 カテーテルを肛門に挿入するため際に使う、また、洗浄の後にソコをいじる時に塗りこむ、媚薬入りのローション。

 快楽を導くための、アナルビーズ細身のアナルバイブ。

 何よりも屈辱なのは、それらをどう使えばよいのかと言う、彼手製の説明書だ。

 別れ際。

 この一式を渡してきた時の彼の声がよみがえる。

 彼は今日、奪わなかった。

 唇は、彼の唇で蹂躙された。

 身体は、彼の指と舌で汚された。

 しかし、もっとも奪われたくないものは、奪われなかった。

「……」

 それはただの気まぐれか、それとも、いまのこの葛藤を見越してのことか。

31 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県)[sage saga] 投稿日:2011/11/26(土) 01:55:18.42 ID:Cp32iA0do
「……」

 白井は携帯電話をベッドに置き、立ち上がる。

 脚が向かう先は、各部屋ごとに設えられた、化粧室。

 ポケットから、携帯電話を取り出す。

 待ち受けには、メールが一件。

 美琴からのもの。内容は『門限ギリギリになる』旨の一文。

 約一時間後だ。

「……」

 白井は携帯電話をベッドに置き、立ち上がる。

 脚が向かう先は、各部屋ごとに設えられた、化粧室。

 本当は、いやだ。

 知識としては知っているが、そんなところでスルと思うと、怖気で脚が竦む。

 しかし。

(……お姉さま)

 その想いが、彼の言葉を無視することを、許さない。

(わたくしがいくら汚されそうとも。わたくしがどんなに辱められようとも)

 美琴だけは。

 先に待つのがなんであろうと、白井はその想いだけを胸に、破滅に進む。

 美琴が帰ってくるまで、あと一時間。

32 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県)[sage saga] 投稿日:2011/11/26(土) 02:00:43.56 ID:Cp32iA0do
 涙子ともども飾利に連れて行かれた風紀委員の詰め所(公園放電でたいそう叱られた)からの帰り道。

「あれ、こんなところで何してるんだよ、美琴」

「ひゃ!?」

 背後からかけられた、数時間前と同じ台詞と同じ声に、ビクリと美琴は背筋を震わせ、振り向いた。

 立っていたのは、会いたくて会いたくない、件のツンツン頭だ。

「ああああああああ、アンタ! なんでこんなところにいるのよ!?」

 上条の寮は、ここからかなり離れている。

 今日はもう会うことはないのだろうな、と一抹の寂寥感を味わいながら歩いていたところなのである。

 幸い、さきほど思いっきり注意を受けたところなので、辛うじて自制心が働いてくれたらしく、放電まではしていない。

 それでも、頬が赤く熱くなるのを止められなかった。

「ん? ああ、俺は土御門たちと遊んで、今から帰るところだけど?」

 対照的にフラットな表情で返答する上条。

 ガリガリ、と後ろ頭を掻く仕草に、動揺の色は一切ない。

 思わず反射的に「私もよ! なんか文句あるの!?」と言い返しかけた美琴だったが、その直前に、ピタリ、と動きが止まった。

「アンタ、どうしたのよそれ」

「へ?」

「その、肘。引っかき傷なの、それ」

 頭を掻く上条の右手。その右手首の内側辺りに、赤い三本の線が走っている。

 いや、それははっきりと、引っかき傷だった。それも自分で掻いたような軽いものではない。皮膚は削れ、まだ血も滲んでいる状態だ。

「ああ、これ? いや、さっきちょっと」

「……アンタ、またなんかに巻き込まれてるんじゃないでしょうね」

 美琴の瞳に、心配と不安が浮かんだ。

 彼は記憶を失うまで、幾度も戦いに赴いている。

 それを知る美琴にとって、彼が怪我をしているという事実は、大きな不安の種となる。

「んな、たいしたことじゃねえよ。さっき土御門たちと、ちょっと取っ組み合いをしたんだ」

 いつものじゃれあいだ、と上条。

「……ほんとに?」

「こんなことでお前に嘘なんかつかねえって」

「っ」

 その言いように、美琴の頬が再度熱くなる。

(こ、コイツ、相変わらず……) 

 そういうことを、簡単に言う。

 その癖、本人にはそのつもりはまるっきりないのだ。

「……」

 それが悔しくて、美琴は僅かに俯いて、唇を噛んだ。

33 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県)[sage saga] 投稿日:2011/11/26(土) 02:03:12.52 ID:Cp32iA0do
「……ね、ちょっと」

「?」

「ちょっと、手、出しなさい」

「あ、ああ」

「違う。左じゃなくて、こっち」

 ぐい、と美琴は上条の右手を引っ張った。もちろん、引っかき傷のところには触らずに。

「美琴?」

「いいから。じっとしてなさい。どうせ消毒もしてないんでしょ?」

「いやそりゃしてないけど、そんな大げさな傷じゃあ……」

「馬鹿。引っかき傷を甘く見ると、ひどいことになるわよ」

 近くで見ると、その傷はずいぶんと深いものだった。遊びで引っかくと言うレベルではなく、それこそ思いっきり爪を立てないとできないような傷跡だ。

 そう、まるで。

 意識を失うような刺激を受けた人物が、苦し紛れに握り締めた時に、できるかのような。

「消毒っても、コンビニくらいしか、今は開いてないぜ? それにこう言っちゃなんだけど、上条さんにはコンビニで買い物する余裕なんかありませんですよ?」

「んなことわかってるわよ。だ、だから……」

 言葉を切ると同時に、美琴は上条の手首――その傷に、唇を寄せた。

「しょ、消毒、したげるわ」



「ただいまー……」

 門限ギリギリで寮に戻った美琴が、己の部屋のドアをあけた。

 中に入り、閉めたドアに内側からもたれかかって、大きく息を吐く。

(や、やっちゃった……)

 頬に両手を当てる。

 手のひらに伝わる体温は、熱く、熱い。

(アイツ、変に思わなかったかな……い、いやじゃ、なかったかな……)

 右手がすべり、唇に。

 瑞々しい唇は、小さく小さく震えている。それは触れた指先も同じこと。

 思い出すのは、面食らったような彼の顔。

 遠慮して(というか大慌てで)手を引こうとしたが、絶対にやめるつもりはなかった。

(いやじゃなかった、よね? だって、最後にはさせてくれたんだし……)

 何度かの引っ張り合いの後、結局彼は好きなようにさせてくれた。

 その上、舐め終わったあと、照れくさそうに頬を掻きながら、

「さんきゅ、美琴」

 と言ってくれたのである。

「えへ、えへへへへ」

 いささか気味の悪い笑い声が口から漏れるが、美琴は、イヤンイヤン、と顔を振るだけで、自分の声に気がつかない。

 そして一しきり「きゃーきゃー」言った後で、ふと、気がついた。

 いつもならイの一番に「何があったんですのどうされたんですの何を赤くなってらっしゃるんですのあの類人猿ですの!?」と挑みかかってくる白井が、何も言ってこない。

37 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県)[sage saga] 投稿日:2011/11/26(土) 08:22:06.10 ID:Cp32iA0do
 もう寮の門限は過ぎているし、風紀委員は非番のはず。

 大きな事件でもあれば別だが、寮監は特に何も言っていなかった。

 部屋にいないはずが……。

 そう思って視線を走らせると、並んだベッドの片方――白井のベッドが膨らんでいるのが見えた。

「あ……」

 もう寝てたのか。

 抜き足差し足で歩を進めれば、白井はこちらに背中を向ける形で、横になっていた。

 解いた髪は幾分しっとりとしており、シャワーを浴びたであろうことを思わせる。朝から寝続けているわけでは、なさそうだ。

(んー……)

 美琴は音をたてないように注意しつつ、ベッドの反対側に回り込み、白井の顔を覗き込んだ。

 半ば頭まで被るようにしている掛け布団から覗く彼女の耳と首筋は、妙に赤く色づいている。また、静かな部屋の中に響く彼女の呼吸音は、まるで何かを我慢しているかのように、少しだけ荒い。

(風邪、かな? そういえば、朝もちょっと体調悪そうだったし……)

 どこか苦しげだった寝姿を思い出す。

「……」

 ぼふっ、と美琴の顔がまたも赤くなった。

 朝に見た白井を思い出し、そして、白井よりも早く起きることとなった原因に思考が行き着いたせいだ。

(お、お風呂。私も、お風呂に入ろっと)

 美琴は顔を振り、なるべく音をたてないように、バスルームに急いだ。

 熱い頬に、浮き立つ胸。

 その熱をシャワーで洗い流さなければ、恋心とはまた別の、身体の火照りとなるような、そんな気がしたせいだった。

34 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県)[sage saga] 投稿日:2011/11/26(土) 02:10:10.66 ID:Cp32iA0do
 パタン、と美琴がバスルームに入った音がした。

 しばらくしてから、水の音と、微かな鼻歌が聞こえてくる。

「ぁ……ぅん……んぅ……」

 それに隠れるように、吐息と、くちゅりくちゅり、と言うシャワーではない水の音が響き始める。

 洗浄と、拡張。そのための、媚薬入りのローション。

 疼き、塗りこんだ薬のせい。

 塗りこんだのは、美琴のため。

 だが身体を弄る指と快楽は、すべて自分のせいで、自分のためだ。

 最初は指から。

 そう書いてあった、彼のメモ。

 前に回った白井の右手。

 後ろに回った白井の左手。

「こんな……あぁ……いや……うぅん……ですのぉ……」

 右手は、秘裂を掻き。

 左手は、肛門をくすぐる。

 口から漏れるは拒絶の言葉と、確実に甘い吐息。

 シャワーの音が響く。

 美琴の鼻歌が響く。

 粘質の音が、響く。

 そして白井の泣き声と。

「あっ、あっ、あああぁ……」

 喘ぎが、響く。

49 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県)[sage saga] 投稿日:2011/12/02(金) 02:12:45.44 ID:jJrU1Uyyo [1/6]
 夕刻。

 最終下校時刻が近づき、学園都市から人通りが少なくなりはじめる時間帯に、白井は第四学区からやや外れた公衆トイレの個室にいた。

 風紀委員も、常時稼働しているわけではない。

 緊急事態があれば別だが、時間を区切って休憩時間はある。そしてその休憩中をどのように過ごすかは、各々に委ねられていた。ハメを外しすぎるのは駄目が、食事や多少の娯楽程度は問題ない。

 だから白井がここ数日、自分の受け持ち学区から外れた公衆トイレに、わざわざ目立たない私服に着替え、トレードマークのツインテールも解いた上で篭っていようとも、何か言われるわけでもなかった。

「・・・・・・」

 個室に入り、確実に施錠の上、白井は右手に持っていた手提げ鞄を、ドア内側上部の上着かけに引っ掛けた。

 そしてしばらく耳を澄ませる。

 一応、他のすべての個室に人がいないことを確認しているものの、こうして密室に入ってしまうと、どうしても確認したくなるのだ。

 約十秒。

 それだけ待ってから、ようやく白井は閉じていた目を開く。

 その瞳に浮かぶのは、嫌悪と、悔しさと、使命感だ。

50 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県)[sage saga] 投稿日:2011/12/02(金) 02:13:57.77 ID:jJrU1Uyyo [2/6]
 すうっ、と息を吸い込む。

 悪臭はしない。

 学園都市の公衆トイレは、公衆といえども機械による掃除が行き届いている。その上、この場所はつい先程、機械が通ったところ。場所柄を考えれば衛生的と言えるだろう。

 白井は故意に事務的な動きで、胸の前ほどの高さにある手提げ鞄を開いた。



 ―――中に入っているのは、あの日、彼に渡された、洗浄器具一式だ。



 それらをひとつひとつ取り出し、便座の蓋の上に、落ちないように置いていく。

 ウェーブのかかった黒髪と、淡い青色のブラウスと、白いスカート。そんな清潔感のある私服とはまるで似合わない器具たち。

 だが白井にとっては、これらの器具も、この校則違反である服装も、結局は同じ忌々しさしかない。解いた黒髪は、ある種自慢のひとつではあるが、「なぜ解いているのか」を考えれば、とても気分のよいものではなかった。

 何しろこれから、洗浄器具を使い、自分自身で不浄の穴を拡張しなければならないのだ。

 あの、初めて呼び出された日の、次の日。

 彼に強制的に教えることとなったアドレスに、入っていたメール。



『今日から一日一回は必ず拡張して、その様子を動画でこのアドレスに送ってくれ。お前の携帯だって動画撮影くらいできるだろ? ああ、『出してる』ところは映さなくていいぜ? 洗ってるところはいるけどな』



 その文面を思い出しながら、洗浄の器具を組む白井の手に、力が篭った。

 それでも、もうここでこうするのも5回目だ。自室で行った一回を含めれば、6回目の作業。手馴れてしまっている。

 洗浄液の粉末をカップにいれ、魔法瓶からほどほどに冷めた湯を注ぐ。人肌程度までさらに冷ましてから、コックつきのスリムエネマに注ぎ込んだ。

 スリムエネマは水道に引っ掛け、チューブの先端が地面につかないように保持する。

 そこまで準備を整えてから、白井は己のスカートに手をかけた。

51 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県)[sage saga] 投稿日:2011/12/02(金) 02:14:37.27 ID:jJrU1Uyyo [3/6]
「……」

 一瞬だけ迷ってから、ゆっくりとスカートを下ろしていく。

 能力を使って、転移はさせない。

 風紀委員には、AIMを探査する機械も存在した。

 こんなところで、学園都市でも珍しい転移能力の痕跡を残したくはない。

 美琴にこのことが露見する可能性は、極力排する。

 このトイレに転移することなく、変装してまで歩いてくるのも、すべてはそのためだ。

 スカートの下端が床に接触する前に、白井は順々に脚を上げて、スカートの輪から抜け出ていく。

「……」

 腕の中で皺がよらない程度に畳み、個室に入って右手側にある、手荷物置き場に置いた。次に、能力のために極々薄くしている、シルクの下着に指をかける。

 指を動かすと、下着の布が肌から浮き上がり、するり、と滑るように降りていく。

 指が太もも半ばを過ぎたこと、あたかも抵抗を示すように閉じあわされた両の脚のその根元――股間部分を覆うクロッチが、肌から離れた。

「っ」

 ぐっ、と目を閉じ、先ほどと同じように、下着から脚を抜く。

 すべての布を失った股間。そこに僅かに存在する茂みが、脱いだ拍子の空気の流れに晒され、微かだが動いた。

52 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県)[sage saga] 投稿日:2011/12/02(金) 02:15:54.60 ID:jJrU1Uyyo [4/6]
「……」

 手の中にある、頼りない感触の下着。それを、覚悟を決めるように、やや強くスカートの上に置く。

 それから白井は、ブラウスの胸ポケットに入れていた、棒状の、いわゆる『口紅のような』携帯電話を、その下着の上に、上部先端が自分を向くようにして、設置する。

 そう、それは設置だ。

 彼女の携帯電話は、その先端部分で、動画を撮影するのだから。

 口紅を使うときのように、くるっ、と本体を捻る。これで、撮影が始まったはずだ。

 映っている。録画されている。

 髪を解き、薄手のブラウスを着て、膝半ばまでの靴下に、茶色のパンプス。

 それなのに。

 スカートも下着もなく。

 白い太ももと、薄い丸みを帯びた尻を丸出しにした、自分の姿が。

 トイレの個室の中とはいえ、ある種の倒錯を持つだろう光景。

「っ」

 白井の奥歯が、再び鳴る。それから、一度大きく、深呼吸。

「では、は、始めますの。よく、見て、くださいまし……」

 二回目の動画を送信した後、必ず言うように注文された言葉を、憎憎しげに紡ぎながら。

 細い指が、スリムエネマのチューブ部分に、かかった。

61 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県)[sage saga] 投稿日:2011/12/06(火) 22:47:37.38 ID:MLQAajnUo [1/5]
「んっ……んん……ふぅん……」

 白く、清潔感を演出したトイレの個室に、押し殺した喘ぎが響いていた。

 洋式の便座に腰かけた白井。彼女の目の前には、もう空になったスリムエネマと、そこから伸びた細い注入管が垂れ下がっている。

 その力なく揺れる様は、都合4回、排出液が透明になるまで洗浄を行った白井の精神を代わりに現しているかのように頼りない。

「んんっ……ああっ……はぁ……ぁ……ぁぁ……」

 背を丸め、頭を垂れた彼女の右手は、背中側に回っている。

 その指が行き着く先は尻の割れ目の間――その中心とも言える窄まりだった。

 右手指は濡れ、ぬめぬめと光っている。

 指を通り、手の甲を滑り、内側にやや曲げた手首からぬらりと水洗トイレの中に落ちるのは、拡張用に彼が同梱した媚薬入りのローションだ。

 その潤滑力は、ここ数日で拡げられた白井の「そこ」を、人差し指が通過することに一役買っていた。

 その催淫性は、「そこ」から神経に流れる刺激を、不快から切り離すことに成功していた。

「んっ……ふあっ……んぅううっ」

 人差し指が上下に動き続け、それに応じて、口から漏れる声があからさまになりはじめる。

 第二関節。

 固いゴムのように締め付ける入口から、その僅か数センチ奥まで。

 指で机をトントンと叩くような一定のリズムで出入りする指から響く感覚は、決して痛みなどではなかった。

62 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県)[sage saga] 投稿日:2011/12/06(火) 22:48:37.54 ID:MLQAajnUo [2/5]
「あうっ、あっ、はあっ、あっ、あっ、あっ」

 白井はその感覚がなんなのか、知っている。

 背筋を駆け上がるその痺れが、自分の中でどういう風に受け止められているのか、わかっている。

 頬が熱い。

 吐息が甘い。

 首筋に浮かぶ汗は、艶という名の色を帯びている。

(わたくし……わたくし……っ!)

 はぁ、はぁ、と己にも香る温い呼気。視界が、熱で霞みがかり始めた。

 溜まっていっている。

 自分を狂わせる感覚が、確実に、自分の身体へと。

「んふっ、ふぅっ、んんっ、ふーっ、ふーっ、ふーっ」

 やがて白井の中に蓄積したその感覚は、己の指の制御までを奪いはじめた。

(だめですのっ、そんなっ、奥にはっ、まだっ)

 指の出入りが早くなり、ローションが肛門と指の間で泡をたてる。

 第二関節までしか出入りしていなかった人差し指が、徐々にその埋没の幅を深めていく。

 指先が円を描き、入口を、そして奥を、くるくると刺激する。

63 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県)[] 投稿日:2011/12/06(火) 22:49:34.25 ID:MLQAajnUo [3/5]
「んあっ、んんんんっ、ふぅぅぅっ、ふくんんんっ」

 根本まで入り込んだ指が、腸壁をくすぐった。口からあからさまな喘ぎが漏れる。

 予想外に大きく響いた声に、慌てて左腕の袖を噛む白井。

 少しでもその『感覚』を抑えようとするがしかし、それがために篭めた力は、逆に指への締め付けを強めただけだった。

 それはそのまま、肛門への刺激に変換される。

 ジンジンと響く熱にも似た『感覚』が、全身に広がり、熱に浮かされた瞳から、徐々に、徐々に意思の強さが消えていく。

(ああぁぁ……)

 モジモジと少女の肉付きの薄い腰が、小刻みに動き始めた。

 口元で握り締められていた左手が、何かを求めるように、ゆるく開き、また、閉じる。

「んんんっ! んんんんっ! んふぅんっ!」 

 二度、三度。

 迷うように左手指がさ迷い、そして、

(し、しかたないんですの……治めなければ、仕事にならないのですから……)

 口から、袖が離れた。

64 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(岡山県)[sage saga] 投稿日:2011/12/06(火) 22:50:19.58 ID:MLQAajnUo [4/5]
 代わりに摘みあげたブラウスの襟を噛み締める。

 そうして空いた左手が、そろり、と下方に動いた。

(これは薬のせい……薬のせいですの……それに、こっちなら……)

 ゆっくりと下げられた左手が、緩く開かれた両膝の間に差し込まれ、

「んんっ!」

 クチ、と小さな、別の水音が響いた。

「ふぅんっ!」

 一気に跳ね上がった快楽に白井の身体がビクビクと跳ね、座っている便座がカタカタと揺れる。

「んむっ、んんっ、んんんっ! んむんっ!」

(こっちなら、感じたって仕方がないんですの。感じるのが、当たり前なんですから……)

 溢れようとする唾液を、たっぷりと含んだブラウスの襟。

 呼気を吸い込んだ拍子に、じゅるっ、と、唾液が三つ目の水音をたてた。

77 名前:SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)[sage saga] 投稿日:2011/12/13(火) 22:05:05.21 ID:vibqcCDUo [1/6]
「どうしたんですか御坂さん、ぼーっとしちゃって」

「へっ?」

 涙子に声をかけられ、美琴は、はっ、と顔を戻した。

 夕刻のカフェテラス。

 ストリートに面した屋外テーブルで向かい側に座る涙子が、不思議そうな顔をして美琴を見ていた。

「え、あ、ごめん。なんでもないの」

 放課後にいつものごとくブラブラしていたところで、こちらも飾利が風紀委員で忙しいらしくてやることなかった涙子と出会い、お互いに暇だから、ということで、前から気になっていたこのカフェに来たのである。

 紅茶やらコーヒーを注文し、なんくれとなく、いわゆるおしゃべりをしていた、その話題の切れ目だった。

「何かあったんですか? ……もしかして、気になる人が通ったとか?」

 ニヤリ、と笑みを浮かべる涙子。

 公園での一件は忘れていないが、その程度で色恋話を逃す手はない。

 案の定、美琴は即座に「んなっ!?」と顔を赤くした。

「そ、そんなんじゃなくてっ」

「またまたー、そんな赤い顔で否定した駄目ですって。で、どの人なんですか? 御坂さんが懸想する人って」

 涙子が背伸びするようにしてストリートを覗き見た。

「け、懸想……って、違う違う、そうじゃなくって!」

「えー、じゃあなんなんです?」

 そのまま美琴を見る涙子。

 いい顔である。

 対照的に、美琴はやや気まずそうに視線を逸らすと、

「いやその……最近、黒子がちょっと」

 と、言った。

78 名前:SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)[sage saga] 投稿日:2011/12/13(火) 22:05:50.38 ID:vibqcCDUo [2/6]
「え、白井さんですか?」

 意外な人物の名前だ。

 美琴が続ける。

「うん。なんかあの子、最近元気がなくて。さっきそこに風紀委員の腕章つけた娘がいたから、ちょっと」

 もう一度ストリートをちらりと見る美琴の横顔には、僅かな憂いが浮かんでいた。

 さっきはそれを恋患いかと思ったのだが、どうも違う方向だったようだ。

「そ、そうだったんですか。すみません、茶化したりなんかして」

 ぺこりと頭を下げる涙子。

 美琴がパタパタと手を振った。

「あ、ううん、私こそごめん。暗い顔なんかしちゃって」

「……でも、白井さんどんな様子なんですか?」

 それがね、と美琴は前置きしてから、

「いつもだったら私がシャワー浴びてるときに中に入ろうとしてきたり下着漁ろうとしたり寝ようとしたら先に裸でベッドに入ってたり掛け布団を空間移動させたりそうでなくても不意にヨダレ垂らしながら飛び掛かってくるんだけど」

「……」

「最近は全然そんなことないのよ。学校帰りにお店に行っても普通に買い物するだけだし、早くに家に帰ってきても、普通に話とかするだけだし。一体全体どうしちゃったのかしら」

 心配そうにため息をつく美琴。

79 名前:SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)[sage saga] 投稿日:2011/12/13(火) 22:06:25.03 ID:vibqcCDUo [3/6]

「……いえ、世間一般では、いまの方が正常なんだと思いますけど」

 対する涙子は若干引き気味だ。

 今までの言動が言動だったので、見る目が変わると言うほどでもないが…いや、やっぱ駄目だ変わる。

「本人にもちょっと水を向けてみたんだけど、素直に言う娘じゃないし」

「あはは、そうかもしれませんね」

「……やっぱ風紀委員関係かなぁ」

「んー…初春からは特に何も聞いてないんですけど。最近ちょっと忙しい、とは言ってましたが」

「確かに疲れてるっぽいんだけど……それにしては変なのよねぇ」

「…やっぱり、本人に聞くのが一番じゃないですか?」

「でも、さっきも言ったけど、素直に言う娘じゃ……」

「いえ、今です」

「え?」

「ほら、あそこ」

 涙子が美琴の顔の脇を通すように、ストリートを指差した。

 振り返る。

「あ、黒子」

 そこには、何か考え事でもしているのか、らしくなくボンヤリとした表情でこちらに歩いて来ている、白井の姿があった。

80 名前:SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)[sage saga] 投稿日:2011/12/13(火) 22:07:47.51 ID:vibqcCDUo [4/6]

「……そうだったんですの。お姉様が、わたくし、お姉様に心配をかけてしまっていたのですね」

 美琴が最近の白井を心配していたこと。

 テーブルにつき、その事実を聞かされた白井は、ゆっくりと俯いた。

 その肩が小さく震え、

(くるか!?)(きますか!?)

 心配して頂けるなんて黒子感激ですのお姉様ー! とくることを予想して身構える美琴と、注文した飲み物をしっかりと確保する涙子。

 だが、

「申し訳ありません、お姉様。お気を遣わせてしまったようで。佐天さんも、わたくしは何ともありませんので、お気になさらないでください」

 と、白井は頭を下げた。

「あ、あれ?」「おおっとぉ!?」

 まさに肩透かし。

 対抗電撃を用意していた美琴の前髪で、バリッと小さな紫電が弾け、勢い余った涙子が、逆にすっ転びかける。

「ど、どうしたんですのお二人とも」

 顔をあげた白井は、驚いた顔で二人を見る――――驚という感情以外まるで見えない完璧な仕草で。 

「あんたこそどうしたってのよ!?」

「そうですよ! どうしちゃったんですか白井さん!?」

「な、何がですの?!」

「あんたがあの流れで飛び掛る仕草もなしで、しかも可憐に優雅に頭を下げるなんて考えられないわ! 『心理掌握』辺りになんかされたんじゃないでしょうね!?」

「白井さんまさか……おのれ魔術師!」

「……」

 はぁ、と白井がため息をついた。

 さっきよりも俯き、深く、深く、わざとらしいほど。

81 名前:SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)[sage saga] 投稿日:2011/12/13(火) 22:09:54.49 ID:vibqcCDUo [5/6]


「お姉様たちがわたくしのことをどう見ていたか、よぉく理解いたしました」

「い、いや、だって、ねぇ?」

 同意を求める美琴に、こくこくと頷く涙子。

「まぁ確かに、少し以前までのわたくしを考えれば、仕方のないことなのかもしれませんが」

((自覚あったんだ……))

「でも最近、ちょっと淑女と言うものを考え直してみることにしましたの」

 白井は言葉を切って、美琴を真正面から見た。

「……あのようにしていても、お姉様は笑ってくださらない、と思いまして」

 どこか儚さすら匂わせて、微笑む。

「……」と、美琴。

「……」と、涙子。

「…、…」と、白井。

 数秒してから、はぁー、と美琴がため息をついた。

「……見直したわ、黒子」

「ええ、正直ちょっといま、ドキドキしちゃいましたもん。あ、そういう意味じゃなくて、ほんとに綺麗で」

「そ、そうですか?」

「そうよ! 今までのあんたじゃ考えられない笑顔してたもの!」

「ですよねぇ。なんだか”決意の表情”って感じでした!」

「っ!」白井の顔が僅かに強張る。

 しかし美琴と涙子は、彼女たちの胸中に目がいっており、それに気がつかない。

 そして白井がその強張りを完璧に消すより先に、さらに美琴と涙子がその強張りに気がつくより前に。

「お待たせしました」

 店員が、白井の注文したストレートティーを持ってきた。

「あ、きたわよ黒子。はい」

「ぁ――、ありがとうございます、の」

 美琴が受け取り、白井に差し出す。

 ティーカップを受け取ろうとした白井は、

「……」

 美琴に右手が触れないよう、慎重に受け取った。

 紅茶の水面に立つ波。

 それはきっと、店員に運ばれていたせいで、小さく、震えていた。

95 名前:SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)[sage saga] 投稿日:2011/12/17(土) 16:20:07.97 ID:Tim059+Uo [1/13]
 テレビに、うつ伏せた白井が映っている。

 全裸に、解いた髪。

 波打った長い黒髪と珠のような肌は、水滴を称えて濡れていた。

 画質はよくない。

 どうやら、携帯電話で撮影した動画であるらしい。

 それでも、映っている場所がシャワールームであるということは、はっきりとわかった。

 どこか適当なホテルのシャワールームなのか、少なくとも、常盤台の学園や寮ではなさそうである。

96 名前:SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)[sage saga] 投稿日:2011/12/17(土) 16:21:59.61 ID:Tim059+Uo [2/13]
 膝をたて、左手で身体を支えながら、右手を太ももの間に入れている。

 ちょうど、初めて彼の要求に従った時のような、尻を突き上げた姿勢。

 異なるのはそこにいるのが白井一人だと言うことと、その尻の間から垂れた、大きな数珠のような物体だった。

『はぁ、はぁ、はぁ……』

 数珠のように見えたのは、彼に渡された、俗にアナルビーズと呼ばれる拡張用器具である。

 全長20センチほどの球の連なりは、いまはその半分ほどが、白井の中に埋まり込んでいた。

 いや、その表現は正確ではなかったか。

 なぜなら、いま外に出ている連なりは、端の丸い金具――――取っ手部分を持った右手で、引っ張り出したものなのだから。

『くっ……うっ……』

 右手はゆっくりと引く動きを続けていた。

 内側に収まった球は、それに応じて外界に姿を現していく。

 ココア色の窄まりが徐々に広がり、白い球体が顔を出した。

 肛門が盛り上がり、球が半ばまで出たところは、則ちもっとも広がっているところ。

 そのタイミングで、白井はほんの僅かだけ右手に力を篭める。

97 名前:SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)[sage saga] 投稿日:2011/12/17(土) 16:23:42.87 ID:Tim059+Uo [3/13]
『あんっ』

 ぴくんと、と頭をあげ、口から息とも声ともつかない音が漏れた。

 同時に、つるん、とゆで卵の殻を剥くように、また一つ球が外にまろびでる。

『はぁー、はぁー、はぁー』

 負担のかかる体勢に、通常ありえない行為。白井の肩が上下に揺れる。

 床を見る白井の顔に浮かんでいるのは、いままで彼に送信された動画と同じ、嫌悪と屈辱と、それからもうひとつ。

『こんなところで……なぜ……』

 思わず、という感じで漏れた己の言葉に、はっ、とする白井。

 驚きのような表情は一瞬。すぐにそれは戸惑いに変わり、慌てた様子で左手を、右手とおなじように太ももの間に差し入れた。

『―――くあんっ』

 左手の着地点は、今だ半分近く連なりが埋まったままの肛門ではなく、取っ手を持つ右手でもなく、じっとりと熱を孕んだ自身の秘裂。

 僅かに開いた陰唇の奥。そこから滲み出ていた蜜を指で集めるようにして、左手指を動かしはじめた。

『あああっ、あ、あううっ』

 突くべき手がなくなり、床に当たる頬。濡れた髪の一筋が張り付き、口元にかかっていた。

『あっ、あはっ、あうっ、んあぁぁ!』

 口内にある髪の先端を気にする様子もなく、指の動きは早くなっていく。

 それに応じて白井の口からは、ひっきりなしに喘ぎが漏れた。

 あからさまにも思えるそれは、あたかも自分は自慰によって感じているのだと、示すかのようだった。

98 名前:SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)[] 投稿日:2011/12/17(土) 16:24:18.51 ID:Tim059+Uo [4/13]

「……」

 そこまで見てから、彼は手元の携帯電話を持ち上げ、二つ折りのそれをパカリと開いた。

 携帯は、テレビとケーブルで結ばれている。保存されている動画をテレビ側に映すためだ。

 ”右手が塞がっている”彼は左手の指先でそれを操作する。

 次の動画が、画面に表示された。

99 名前:SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)[sage saga] 投稿日:2011/12/17(土) 16:26:05.58 ID:Tim059+Uo [5/13]
 トイレの個室。

 ブラウスだけを纏い、スカートも、下着も脱いだ状態の白井が、便座に腰掛けている。

『んっ、んく……んふっ……』

 解いた髪がくすぐるのは、真っ赤に染まった赤い頬。

 潤んだ瞳は、ドアの上着掛けにひっかかって揺れるスリムエネマを見ているようで、見ていない。 

『だ、駄目ですのぉ……』

 捲り上げたブラウスの端を唇で挟み、顕になった胸は、開いた左手によって交互にまさぐられていた。

 浅い稜線は荒い呼吸に上下し、その頂を指先がクリクリとこねまわす。

 そして緩く開いた両膝の間に差し込まれた白井の右手。

 股間の後ろ側まで潜り込んでいる手は、スムーズに、そしてやや激しく上下を繰り返していた。

『んっ・・・・・・んぅうっ・・・・・・んんんんっ・・・・・・』

 荒い呼吸と、漏れ出る喘ぎと、粘質の水音が、個室に響いている。

 異なりのは、動きのスムーズさだけではない。

『んうっ!』

 白井がビクリと震え、便座から腰を浮かせた。

 浮いた尻と便座の隙間から、左手の形が見える。

 揃えられた人差し指と中指。さらにその対面に位置する親指。それらは三本とも、テラテラと濡れている。

 関節の構造上、どちらがどこに入っていたのかは明らかだった。

 そして、その深度も。

100 名前:SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)[sage saga] 投稿日:2011/12/17(土) 16:26:37.42 ID:Tim059+Uo [6/13]

 親指は、先端から滑り落ちたような濡れ方だ。むらがあり、垂れていない場所は当然濡れてもいない。

 しかし人差し指と中指は、明らかにその根元までを『濡れた場所』に突っ込んだように、均一に湿っていた。

 いったんは跳ね上がった白井の身体が、重力に引かれて再び便座に落ちる。

 それを同時に、右手が動いていた。

 タイミングを合わせて、ぐっ、と上に向かって突き上げられた右手――――揃えた二本の指が半ばまで尻に埋まるところまでを、携帯のカメラが捉えている。

 そこまで捉えた瞬間、落ちた尻によってその隙間は隠された。

『ああんっ』

 白井の顎が、かくっ、とあがる。強い刺激に、目が見開かれた。

 右手の高さは変わらない。それは、根元まで埋まったことを意味している。

 右手は動き続ける。

 人差し指と中指が上下する。その動きを土台として、親指が陰核を押しこみ、こねまわす。

 さらにその押す力の反動を、人差し指と中指の動きに――――

『あっ、あふぅっ あはっ、ああっ、ふあぁっ』

 開かれていた目は、すぐに霧に覆われたように、ぼう、としたものに変わった。

 胸をまさぐる左手の勢いが、強くなる。呼吸が激しくなり、喘ぎが高くなる。

 いまの彼女は、二本の指が窄まりを通り抜けることに苦痛と感じている様子は、まったく見受けられない。

 いまの彼女は、喘ぎがもう個室の外に漏れているということにも、気がつかない。

 いまの彼女は、もうこのトイレでこうすることに手馴れてしまっていることに、気がつけない。

101 名前:SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)[sage saga] 投稿日:2011/12/17(土) 16:28:10.56 ID:Tim059+Uo [7/13]
『ぷはっ、あっ、あっ、ああっ、あはあっ、ああああっ』

 口からブラウスが離れた。

 吸いきれておらず、口内にたまっていた唾液が、布の動きに引っ張られて空中に糸を引いた。

『あっ、あっ、気持ち……んんんっ、ちがっ、違いますのっ! これはっ、あっ、あんんんんっ!』

 その続きを口走りかけて、白井は強く首を振った。

 それだけは、絶対に、言葉にしない。

 そう言うかのような強い拒絶。

 だがその言葉とは裏腹に。

『あうっ、あうううっ、、あっ、あっ、あっ、んはぁっ』

 親指の動きは激しくならず、人差し指と中指は、強く動く。

 その動きは、明らかに人差し指と中指が早く激しく、親指の方が補助的なものに変わっていた。

102 名前:SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)[sage saga] 投稿日:2011/12/17(土) 16:29:17.87 ID:Tim059+Uo [8/13]
「……」

 そこまで見てから、彼は手元の携帯電話を持ち上げ、再びパカリと開いた。

 左手で操作しながら、別の動画を呼び出す。同時に右手で、硬く立ち上がっているピンク色の先端を柔らかく転がした。

「んんっ……んんんっ」

「おいおい、動くなよ白井」

 そう言いながら、彼の左手は決定ボタンを押しこんだ。

 画面が切り替わる。

103 名前:SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)[sage saga] 投稿日:2011/12/17(土) 16:30:09.97 ID:Tim059+Uo [9/13]
 白井は右手に握ったアナルバイブを見ていた。

 こちらも、どこかのホテルだろう。

 白く、ピン、と張られたシーツのベッドで、白井は心臓を下にして、横向きに寝転がっていた。

 両膝を左手で抱え、体育すわりのような姿勢。

 すでに彼女の目元は赤く染まり、揃えられた太ももの間からは、べっとりとした蜜が溢れていた。

 よく見れば、膝を抱える左手も、アナルバイブを持つ右手も、同様の蜜で濡れていた。

 そして、背中側に転がっているのは、球の連なりである、アナルビーズ。

 ビーズの下のシーツには、薄く染みができている。

 もうそれは、使われた後だ。

104 名前:SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)[sage saga] 投稿日:2011/12/17(土) 16:30:56.33 ID:Tim059+Uo [10/13]
『……』

 白井は手の中のラバー製の凶器に、渡されていた潤滑用のローションを塗りつける。

 右手で、丹念に、己の蜜もともに塗り付けられていることも、いとわずに。

 白井の顔には、まだ嫌悪がある。迷いがある。

 しかしそれと同時に、渦巻く欲望も、間違いなく見て取れた。

 始める前までは怒りとに彩られている表情も、一度『昂ぶって』しまえば、それだけに留まり続けることを許されなくなっていた。

『これは薬のせい……薬のせいですの……』

 呪文のように繰り返し、白井は、んくっ、と唾液を飲んだ。

 手の中のアナルバイブ――――通常のバイブよりも若干細身のそれを、じっと見つめる。

 畏れと、それ以外の何か。

 瞳に浮かんだ感情は、なんだったのか。胸中に渦巻くのは、なんなのか。

 その全てを無視して、白井は右手をそろり、と尻に回した。

105 名前:SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)[sage saga] 投稿日:2011/12/17(土) 16:32:19.69 ID:Tim059+Uo [11/13]

 ピッ、とそれ以上見ようとせず、彼は携帯電話を操作し、動画の再生を中止した。

 持ち上げた携帯電話が示す動画ファイルの日付は、今日から三日前のもの。

 二週間で使えるようにして来い。 

 プライドの高い白井に対し、無謀とも無茶とも言える要求だった。

「感心したぜ白井。まさか十日と少しで”使える”ようにしてくるなんて、思わなかったからな」

 実際、彼自身もそこまで期待してなかったのだろう。声には紛れもない賞賛の響きがある。

 だがそんなもの、投げかけられる白井にはなんの価値もない。いや逆に屈辱なだけだ。

「っ!」

 だから白井は、首をひねって、己の背後にいる彼を睨んだ。

 猿轡を噛まされ、後ろ手に手首を縛られ、全裸にされ、ベッドに腰掛けた彼の膝の上に座った彼女には、それしか己の意思を表現する方法がなかったのだ。

 この部屋に入った途端、いまのように拘束され、そしてあろうことか、この二週間で送り続けた自分の動画を見せ付けられたのだ。

 彼はその視線に苦笑。

 ポリポリと左手で頬を掻き、ついでのように右手で、つつっ、と白井の腹を上から下になぞる。

「んぅんっ!」

 それだけで白井は身をビクリと震わせた。この二週間が、空間移動系能力者の体質以上に、身体を快楽に対して鋭敏にしていた。

「今日はもう洗浄してきたか?」

 その事実をはっきりと認識してしまった白井の耳に、彼が問う。

 質問というよりも、確認するような口調だった。

106 名前:SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)[sage saga] 投稿日:2011/12/17(土) 16:33:15.00 ID:Tim059+Uo [12/13]

「……」

 胸中の畏れ――快楽への抵抗力――を隠し、再び彼を睨んだ後、白井はゆっくりと頷いた。

 二週間前、彼と約束した今日。

 指定時間の三時間前に、メールにあった指示を、白井は実行している。

「そうか。じゃあ、はじめるか」

 そう言って、彼は携帯電話を放り投げた。

 ケーブルごと、ベッドの下に落ちる携帯に見向きをせず、彼の両手が白井の胸に添えられる。

「っ!」

 白井の身体が強張る。

 行為の前の、洗浄。 

 それが今日、何をされるものか、想像したために。

 『二日目』が、始まろうとしている。

120 名前:SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b)[sage saga] 投稿日:2011/12/31(土) 15:24:39.29 ID:lMc9h+cLo [1/8]

「んっ……んんっ……」

 白井のくぐもった声が室内に響く。

 ベッドに腰掛けた彼の、その両腕にすっぽりと収まったような格好。胸を這う両手は、背中側から回されている。

 それは真正面から押し当てられる場合と比して自慰をするときに近い感覚でありーーゆえに、声が漏れることを押さえきれない。

 薄いと自分でも理解している乳房を、彼の両手が包み込んでいた。

 掌全体を使って、温度を分け与えるかのように、ゆっくりと撫で回す。

 揉むのではなく、また、こねるでもないそれは、明確に与えられる刺激よりもずっと

優しく、だからこそ、白井の身体は快楽として受け入れてしまう。

「我慢しなくてもいいんだぜ? まぁ、その猿轡? のせいで出したくても出せないんだろうけど」

 言葉が終わると同時に、彼が、その舌を白井のうなじに押し当てた。

「……っ」

 想定外の刺激にさらに声が漏れそうになり、奥歯を噛み締める白井。

 だが、舌がそこで離れず、動きだしたがために、

「んうっ!」

 その努力は無駄とならざるを得なかった。

121 名前:SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b)[sage saga] 投稿日:2011/12/31(土) 15:25:17.65 ID:lMc9h+cLo [2/8]
 たっぷりと唾液を乗せ、白い肌を蹂躙する彼の舌。

 頭自体を動かし、舌の厚みを以って肌を這うそれは、『嘗める』というよりも『ねぶる』という表現が相応しい。

 うなじから、右肩。ヌルリと下方に転じ、腋ギリギリをとおり、今度は肩甲骨の外をなぞる。

 背骨まで達した後は、舌を左右に動かしながら、じっくりと背筋を嘗めあげてーーいや、ねぶり上げていく。

 その道程で時折、唇を押し当て、あるいは、その場で円を描くように肌を味わう。

「んんんっ……んふっ……んんむうっ……」

 自分を慰める時には絶対に有り得ない、背からの口腔愛撫。

 白井は逃げるように背筋を伸ばすが、それは逆に、彼の両手に胸を押し当てる結果に転ずる。

 意思とは裏腹に立ち上がった桃色の頂きが、胸を覆う彼の指を押し上げた。

「んんっ」

 しかし、彼の両手の動きは変わらない。

 やんわりと、胸の形を歪めることすら忌引するような静かなもの。指の間に入り込んだ乳首を摘むようなことは、気配もみせていない。

 翻って背中側では、背筋からうなじまで戻った彼の舌が、今度は左肩へと移動を開始する。 

 体温の上昇にあわせて立ち上る白井の香りを堪能するように、こちらもまた、じんわりとした動きでしかなかった。

122 名前:SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b)[sage saga] 投稿日:2011/12/31(土) 15:26:05.37 ID:lMc9h+cLo [3/8]

「んんんっ、んふぅっ、んんぅんっ」

 いっそもどかしいとも言えるほのかな愛撫に、白井はピクン、ピクンと身を震わせた。

 彼の手からの熱で温められ、緩やかな動きでほぐされた乳房は血流そのままに快楽を白井に供してくる。

 しかし立ち上がった乳首に刺激はない。グミのように固くなったまま、指の間でほっておかれ、片や背中の舌も、決定的な悦楽にはなりえない。

 背を曲げれば、彼の舌。背を反らせば彼の指。

 ジリジリとあぶるように、白井の身体にナニカが溜まっていく。

 どうしようもない白井の噛む猿轡が、口内に溜まった唾液を吸い、呼吸とともに、じゅるっ、と音をたてた。

 彼が苦笑する気配。

「もう少ししたらその猿轡、外してやるよ。息苦しいだろうしな」

「っ!」

 その言葉に、霞みがかっていた白井の瞳に、理性の光が戻る。

 しかしそれも一瞬。

 まるで理性を取り戻すことを見越したかのように、彼の指が、くい、と乳首を挟み込んだ。

「んふうっ!」

 白井が、ピン、と背筋を伸ばした。視界が再び、ぼう、と霞む。

(だ、だめですの……飲み込まれては……)

 頭ではそう思っても、快楽を引き出すことに慣れた身体は応えてくれない。

 背を反らしては震え、背を丸めては震える。

123 名前:SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b)[sage saga] 投稿日:2011/12/31(土) 15:27:42.34 ID:lMc9h+cLo [4/8]

「……いいんだぜ白井」

 再びうなじまでもどった後、彼が耳元に唇を寄せ、囁いた。

「言ってなかったけど、おまえが噛んでるその猿轡には媚薬が吹き付けてあるんだ。おまえが今まで使ってたローションに混ざってるのと、同じやつな」

「っ!」

 息を呑む白井に、彼は言葉を続ける。

「息してたら、吸い込むだろ? 時間的にもうそろそろ回ってくるころだと思う。……だからいま、おまえは薬のせいで感じてるんだよ。薬のせいだ。おまえが悪いんじゃない」

 いまの快楽は、薬の作用に依るもの。だから、それに溺れてもいいんだ。

 そう言っている彼の言葉に、とろりと白井の表情が溶けかけて、

「っ……!」

 白井は強く首を振った。

 やれやれ、と彼が、三度目の苦笑。

 その気配を感じながら、白井は後ろ手に縛られた両手を握り締める。

 彼の言葉は、きっと真実だ。

 この感覚は、二週間、無理矢理高ぶらされてきたローションを使った後のそれによく似ていた。

 確かに身体は快楽を引き出すことと、受け入れることに慣れ始めている。

 しかし、薬を使った感覚は『異常』として認識が可能だった。

124 名前:SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b)[sage saga] 投稿日:2011/12/31(土) 15:28:09.95 ID:lMc9h+cLo [5/8]



 すくなくとも、まだいまは、だが。





125 名前:SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b)[sage saga] 投稿日:2011/12/31(土) 15:28:46.83 ID:lMc9h+cLo [6/8]


 その状況で彼がこんなことを告げてくる理由は、ただひとつ。

 免罪符。

 「性欲に流されるのは薬のせいだ」と言い訳をつけることで、快楽に屈してもよい、と思わせることが目的に違いない。

「んんうぅっ、うふぅっ、ふぅぅんっ」

 手を強く握り、掌に爪を食い込ませる。

 受け入れるわけにはいかない。

 絶対にその『理由』を心の隙間に挟み込んでは、いけないのだ。

 理由というのは恐ろしい。

 それがあるだけで、楽に流される自分すらも肯定できてしまうモノ。

 白井がいま声を抑えることができないのは、確かに、薬のせいだろう。

 しかしそれを是として、快楽を受け入れてしまえば、きっと戻れない。

 今後、薬を使われたら、絶対にその『理由』を言い訳に、自分を許してしまうに違いなかった。

「ふぅんっ、んんんっ、んんんんんっ」

 背中の舌、胸の指。

 白井は必死に首を振り、誘惑を振り切ろうとする。

 感じてしまうのは、身体の作用だ。

 それでも心は、これを否定する。いかなる理由があろうとも、理由を用意されようとも、これを肯定するわけにはいかないのだ。


126 名前:SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b)[sage saga] 投稿日:2011/12/31(土) 15:30:34.66 ID:lMc9h+cLo [7/8]

「……まぁいいけどな。好きにしろよ」

 言葉とともに、舌の動きが再開される。

 彼の口調からは、白井がいまどんな思考で快楽を否定しているかを、正確に把握していることが伺えた。

 いやもしかするとーー彼はそれを見越して、囁いたのかもしれない。

 肯定や否定と言う確定的な態様ではなく『迷い』という状態に陥れるために。

「んううぅぅぅ……!」

 それがさらに忌ま忌ましさを助長しーーそして、それでも感じてしまうのを止められない自分の身体が、悔しかった。

「んんっ! んんんっ! ふぅうんっ!」

 喘ぐ少女の口元から、猿轡が吸いきれなかった唾液が漏れ、つつっ、と顎を伝う。

 無駄な肉のない、綺麗なラインを滑り落ちた粘性高い唾液は、その下方先端で珠となり、糸をひいて堕ちた。

 太ももに、ミルクの王冠のごとく弾ける唾液。

 それにあわせるように。

「じゃあ、そろそろこっちにいこうか」

 彼が胸から右手を離し。

 先ほどのように、腹を伝って、その下ーーすでに十分に蜜を讃えるに至った、下腹部を目指す。

「っ!」

 期待か、拒否か。

 白井の胸を、ゾクリとナニカが走った。

134 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/05(木) 22:52:36.32 ID:9ws1E6ndo [1/9]
 触れるか触れないか。

 そんな調子を保ちながら、指先が、肌を滑りおりていく。

(……)

 薄桃色の頂きから稜線を下り、僅かに浮いた肋骨を。

(……っ)

 腹部に差し掛かる寸前に内にずれ、形よい臍を擽り、さらに下へ。

(……っ、っ)

 そして下腹に至り、そのまま、肉裂に向かうかと思われた指が。


135 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/05(木) 22:53:17.33 ID:9ws1E6ndo [2/9]


 ふと、止まった。




136 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/05(木) 22:55:40.30 ID:9ws1E6ndo [3/9]

「……?」

 反射的な仕種で、白井は彼を見上げた。

 首を捻った横目は、見方によっては流し目のよう。

 赤く染まった頬。小刻みに震える睫。ほんの僅か開いた唇。

 不思議そうに、彼を見上げている白井。

 その唇から漏れる甘く湿った吐息を一度、香るように吸い込んでから、彼はニヤリと笑った。

「そう焦るなって。すぐに楽しませてやるから」

 と、彼が言った。

 白井の胸に在ったナニカが、ギクリと音をたてる。

「っ!?」

 白井はギュッと目を瞑り、強く首を振った。

 違う。

 いま、胸の中で音をたてたのは、絶対に違う。

 絶対に、落胆だなんて、感じていない。

 イヤイヤするように首を横に振り続ける白井に目を細めてから、彼は止めていた指を動かしはじめた。

 しかしそれは下っていく動きではない。

 生えそろう、とまではいかないが、指に絡むほどには存在する茂み。

 彼はそれを、あたかも幼児の頭に揃いはじめた髪であるかのように、愛でるように撫ではじめたのだ。

137 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/05(木) 22:56:48.71 ID:9ws1E6ndo [4/9]

「……この前も見たんだけど、お前って生えてるんだよな。少し意外だったぜ」

(っ……!)

 カッと白井の頬が赤く染まり、ギッ、と奥歯が鳴った。

 以前見られたというのは、あの我を忘れ、彼に快楽をねだった時のこと。

 しかし、今のように恥毛をただ撫でられて煽られる羞恥心は、下手すれば秘所を弄ばれる以上だ。

 誘惑を振り払うために握り締めていた両手に、別の意味で力が篭る。

「っと、すまん、ちょっとデリカシーなさすぎたな。わりぃ」

 彼が、どういうわけか茶化す様子もなく謝罪した。

 揶揄の反応を予想していた白井の胸に意外感が浮き上がる。だがそれに何か反応するより早く、

「んふっ!?」

 白井がピンと背筋を伸ばした。

 彼の左手が、左胸の先端を刺激したせいだ。

「お詫びに、こっちにもサービスしてやるから、機嫌直してくれ」

 指は止まることなく、白井の身体に流れる痺れも止まらない。

 一定の間隔を持って、親指の先端と人差し指の第一関節とでクリクリと扱き続ける。

138 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/05(木) 22:57:38.27 ID:9ws1E6ndo [5/9]
「ふぅんっ! んんんっ! んゃんっ! ふうっ!」

 そのたびに彼の膝の上で跳ねる白井の身体。

 彼の、まだズボンを履いたままの太ももに、薄いが柔らかい尻の感触が響いてくる。

 解放されていた右の乳首が、片側の刺激で、再びプクリと立ちあがった。

「ふぅぅんっ、んんっ、んんっ、んんっ、んんふぅぅぅ!」 

 胸の刺激から逃れようというのか、それともただ刺激に耐えられないのか、白井が背を曲げて指から逃げようとする。

 しかし彼はそれを許さない。

 少女の耳元に唇を寄せ、耳の裏に舌を這わせた。

「ひぅんっ!」

 白井が肩を竦める。

 行き場をなくした重心が、グリグリと彼の太ももに尻を擦り付けさせた。

 桃のような割れ目を中心に、左右の尻たぶが、むにむにと歪んでいる。

「気がついてるか、白井」

 彼が耳を這わせる中、ついでとばかりに囁いた。

「お前の漏らしたやつで、俺のズボンも、もう濡れてるぜ?」

139 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/05(木) 22:58:21.64 ID:9ws1E6ndo [6/9]
「!?」

 彼の言葉を聞いてはじめて、白井は気がついた。

 快楽から逃れるために――少なくとも白井はそう認識している――はしたなく彼の太ももに擦り付けてしまっていた尻の、そのやや前側から。

 動くたびに、くちゅ、くちゅ、と小さく湿った音が漏れているということに。

 表面はもう粘液でじっとりと湿り、尻の動きで『開かれ』た拍子に、蜜がこぼれ落ちているということに。

 彼が笑う。

「何もしてないのにこんなに濡らすなんて、イヤラシイやつだな。おまけに尻まで振っちまって……美琴がいまのお前を見たら、なんて思うだろうな?」

(これは薬の――!)

 弾かれたように身を捻り、彼を睨み付ける白井。

 だが彼は、耳に唇を寄せたままの、直近からその視線を受け止めた。

 彼が再び笑う。

「わかってるよ、白井」

 言葉が続く。

140 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/05(木) 22:58:56.90 ID:9ws1E6ndo [7/9]


「お前が感じてるのは、薬のせいなんだよな? だから、今からどんなに乱れても、お前は悪くないんだって、俺はわかってるぜ?」



141 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/05(木) 23:00:50.96 ID:9ws1E6ndo [8/9]


「!」

 白井が目を見開いた。

 彼の右手が、触れ続けていた茂みから離れる。

 するっ、と滑るように下る右手。

「んんーっ!」

(待って、待ってくださいまし!)

 白井が視線が、哀願の色に染まる。

 だが彼はそれににっこりと、三度笑い返し、

「んふぅっ!?」

 水音が響いた。

151 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/16(月) 00:25:39.26 ID:m6+FbrP3o [1/25]


「んっ、んうっ……」

 恥毛の根本の、僅か下方。 

 薬の影響か、あるいは身体が順応したせいか――包皮からもう顔を出した陰核に、彼の人差し指と中指、そして薬指が被さるように触れていた。

 そして三本の指も、もちろんただ触れているだけではなかった。

「んっ、んんっ、んふっ、んっ……」

 寒さに震える時よりもなお細かく、彼の右手が動いている。

 微細な振動が快楽の源泉にダイレクトに伝わり、白井は身悶えることを止められない。

「んんんっ……んぅんっ……」

 白井がいまこうしているのは、全て美琴のためだ。

 彼女が哀しまないため。

 彼女がこんな男に弄ばれないため。

 彼女が抱いている幻想を護るために。

 美琴への思慕と使命感。

 白井が彼の戯れを許す理由は、それだけのはずである。

 しかし――

「んんっ……んっ……んんんっ……ぅんっ」

 いま、白井の中で、何かがさざ波立っていた。

 彼の右手が股間で震える度に、ソレは大きくなる。 

 彼の左手が乳房を摩り、その先端を擽る度にソレは輪郭を帯びていく。

(な、なんですの、これは……!?)

 いつの間にかソレは、心の中で、染みのような黒い点に変化した。

 黒点は、胸と股間に響く感覚を糧にして、徐々に徐々にその面積を広げていく。

 だが白井には、それがなんなのかを深く考えるような余裕はなかった。

152 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/16(月) 00:26:46.48 ID:m6+FbrP3o [2/25]

「んんぅっ! んはぁっ! んっ、んっ、んっ、んんんっ!」

 微細な振動が、僅かに強度を増した。

 陰核から生まれる甘美な痺れが腰の奥を突き、背筋を駆け登る。

 触れられる前から解れていた媚肉はもうスライムのように柔らかくなり、陰唇からジワリジワリと滲み出す愛液で、さらに泥のような有様に墜ちていく。

 その上、二週間前と違って意識も理性も削り取られることがない――その程度の薬量なのかあるいは身体が耐性を得たためか――ため、自分を見失うこともできなかった。

「んむっ、ううんっ、んっ、んんうっ!」

 白井は必死に耐える。

 首を振る。

 歯を食いしばる。

 後ろ手に縛られた両手を握り込む。

 だが白井の努力を嘲笑うかのように、口から漏れる喘ぎも、猿轡が吸い取りきれずに漏れ落ちた唾液も、溢れる蜜液も、その量を増していくばかりだった。

「んんっ! んふんっ! んふぅんっ!」

 そして忍耐を繰り返す度に、心の黒点が、風船のように膨らんでいく。

153 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/16(月) 00:27:30.83 ID:m6+FbrP3o [3/25]

 ――もっと欲しい



「――っ!?」



 不意に耳に声が響く。

 

 ――もっと強く



 ――もっと激しく



(わ、わたくしはなにを考えているんですの!?)



 ――気持ち良くなりたい



(そんなことありませんの!)



 ――我慢したくない



(我慢なんかしていません! こんな、汚らわしいこと……!)



 ――身を任せたい



(違います! わたくしはそんなことは!)



「んんんーっ!」

 白井は現実に声をあげ、心の声を打ち消そうとする。

 しかし、

154 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/16(月) 00:28:05.17 ID:m6+FbrP3o [4/25]

 ――お尻でも感じるような変態になったじゃありませんか



(あれはそうなれと言われたからですの!)



 ――彼が望んだらなんでもスルんですの? 気持ち良かったからではありませんの?



(すべてお姉さまを護るためです!)



 ――本当ですの? お尻でシテいる最中、気持ち良くなりたくて前も触っていたのに?



(それは……そ、そっちで感じるなんか、おかしいから、だから、ですの……)



 ――じゃあなんで、お尻でシテ終わった後に、必ずオナニーしていたんですの?



(あ、あれは、疼きをなんとかしなければ……)



 ――薬のせいだから、ですの?



(そう! そうです! あの薬のせいで……) 



 ――嘘ですの



(嘘じゃありません!)



 ――じゃあなんで、

155 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/16(月) 00:29:12.92 ID:m6+FbrP3o [5/25]





 ――なんで、彼にされていることを想像して、シテいたんですの?








156 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/16(月) 00:29:54.37 ID:m6+FbrP3o [6/25]
「!?」

 胸の奥からの言葉に、白井の表情が凍り付いた。

(そ、それは……)

 抗弁しようとする。

 しかし、心の声が告げたことは事実だった。

 風紀委員の休憩時間や美琴のいない自室で『拡張』した後。

 媚薬入りローションで高ぶってしまった己を慰める時に想像していたのは、

 

 ベッドに肘と膝をつき、



 尻を高くあげ、



 彼の手で尻たぶ大きく割り開かれ、



 固くなったペニスの先端を、解れた肛門に添えられた、



 ――お尻を犯されるところを、想像していたではありませんの



(違います!)



 白井は耳に響く己の声に、否定の言葉を投げ付けた。

 首を、外れるかと思うほど強く横に振る。



 ――違いません。だってわたくしは貴女ですのよ?

157 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/16(月) 00:30:57.67 ID:m6+FbrP3o [7/25]

(っ!)



 ――全部、知っていますもの。わたくしが、浅ましく快楽を貪っていたことを。お姉さまのためと言いながら、自涜を辞められなかったことを。



(ち、違うと言ったら違いますの! わたくしは……!)

 ギクリと胸の奥が軋む。

 だが、それをさらに否定するだけの時間を、白井は持ち得なかった。

「苦しそうだな。もう外してやるよ」

 と、彼が含み笑いを込めて、耳元で囁いた。

「!?」

 目を見開く白井。

 彼の言葉は、白井が荒い息を繰り返し、喘ぎを疎外されていることを指したものなのだろう。

 しかし当の彼女には、自分との葛藤を見抜かれているようにしか思えなかった。

(そんな、いまこれを解かれたら……)

 抑えられない。

 声だけではなく、何かが。

(駄目、駄目、駄目、駄目……)

 しかし彼は、口を猿轡の結び目に近づけると、そのまま紐の端をくわえ、スルリと引き解いてしまった。

 部屋に入ってから今まで、一時間近く拘束されていた発声器官が解放される。

「ふはっ!」 

 呼吸が正常に戻る――酸素不足のために、麻痺していた感覚が、完全に復活する。

 同時に、彼の人差し指と薬指が、陰核の両脇を、くっ、と押した。

 包皮が左右に引き延ばされ、半ば顔を出していた陰核が、完全に露出する。

 すかさず中指がそれを押さえ付けた。


158 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/16(月) 00:32:30.76 ID:m6+FbrP3o [8/25]

「!」

 背筋を電撃が駆け上がる。

「あっ、」

 白井の身体がビクリと震え、

「あはぁっ、あっ、あっ、あああっ」

 甘く、溶けるような声が、よだれと共に白井の口から零れた。

 続けて彼の指が、小さく、しかし早く動き出す。

 プルプルと弾かれた陰核が、爆発したような快感を白井に伝達した。

 堪らず、白井の上半身がビクビクと痙攣し、逆に下半身がクネクネと前後し始めた。

「あっ、あんんっ、ううぅん、ううん!」

 必死に口をつぐみ、動く腰を止めようとする白井。

 だが無駄だ。

 坂を転がり落ち始めたボールは、動かしはじめるよりも強い力でなければ止まらない。

 そして動きはじめる力にすら負けた身体が、今もって応えてくれるはずがないのだ。

「素直になれって。おまえだってもう、自分でわかってんだろ?」

 そこに滑り込んでくる彼の声。

 白井の中で、黒点が大きくなる。

「ふぁんっ! ちがっ……ひぅんっ!」

 爪でクリッと刺激され、白井が顔をのけ反らせた。


159 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/16(月) 00:33:21.81 ID:m6+FbrP3o [9/25]

「かっ、はっ、あっ……」

 空気を求めて口をパクパクと開閉し、大きく見開いた目で天井を見る。

「おっと」

 軽く驚きの感情を込めて彼からの攻めが止まった。

 倒れないようにか、彼の左腕が、力の抜けかけた身体をギュッと抱きしめてくる。

「はーっ、はーっ、はーっ」

 ぐにゃりとなった白井は、後頭を彼の左肩に乗せるようにして大きく息をついた。

 霞みがかった瞳が口の端から漏れた唾液と相俟って、まるで白痴のような表情。

 だが暴風のような快楽にさらされつづけ、それを不意に取り上げられた身体は正直だった。

「ふぁぁ、うぅんん……」

 秘所から離れた彼の指を求めて、腰が動く。

 グミのように固くなった乳首は、胸に巻き付いている彼の左腕に押し当てられていた。

「そんなに欲しいのかよ。おまえ、美琴のことなんかもうどうでもいいんじゃねぇのか?」

「な、何を、言って……わたくしは……お姉さまのために……」

 僅かに理性を取り戻した表情で、白井が彼を見る。

「せめて腰を止めてからその台詞言えって」

 彼は苦笑まじりに返事をしながら、右手を下に滑らせた。

「ひぅんっ」

 人差し指が押したのは、この二週間で白井自身が拡張させたすぼまりだ。

 膣口から溢れる白く濁った蜜は、蟻の門渡りを通って肛門にまで達している。

「まぁ、俺はどっちでもいいけどな」

「ああっ! だ、だめですっ! やめっ、あっ、あっ、そこはっ、ああっ、い、いやですのっ」

 指が円を描いてすぼまりの外周をグルグルとなぞった。

 十分な潤滑力のある蜜が肛門の皺に染み込んでいく

160 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/16(月) 00:34:50.58 ID:m6+FbrP3o [10/25]

「何言ってんだよ。今日、ここにどんなことされるかくらい、覚悟してきたんだろ?」

「それはっ、でもっ」

「でもって言われてもなぁ」

 いきなり彼が、ベッドから腰を浮かせ、半ば立ち上がった。

 彼に腰掛ける恰好で、しかも肛門に指を添えられたままの白井も、反射的に脚を伸ばし身体を浮かそうとする。

「よっと」

「っ!」

 それを利用して白井を左腕だけで抱え、ベッドに上がる彼。

 そのまま、後ろ手に縛られた彼女を、枕に顔が埋まるような位置に下ろした。

「――っ」

 俯せ。膝をたてた姿勢。

 後ろ手に縛られている以外は、二週間前と、そして想像の中と同じ恰好。

「あっ!?」

 肛門に、何かが当たる感触。

 慌てて首だけで彼を見る。

 まだYシャツも脱いでいない彼が、人差し指をすぼまりに当てているのが、わかった。

 彼の左手には、歯磨き粉のような、チューブが握られている。

 それはねじ式の口が外れており、そして肛門に感じる指は、どこか冷たく濡れていて――

「待っ、あっ!?

 ぐちゅ、と音がたつ。 

161 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/16(月) 00:36:47.60 ID:m6+FbrP3o [11/25]

「ああああっ!」

「おお、入ってく入ってく。すげぇぜ白井。流石は二週間足らずで自己開発しただけあるな」

 感心しているのがわかる彼の声。

 蜜と、媚薬入り軟膏の補助を得た指は、たいした苦労もなく根本までてズブズブと沈んでいく。

「い、いやっ、だめですのっ! 指、入れないでっ、あっ、あっ、あああっ、だめですっ、動かさないでくださいましっ」

 自分の指とも、器具とも違う、少しゴツゴツした感覚。それが奥を突いたかと思うと、すぐに逆方向に戻っていく。

 いつもと違うのは感触だけではなかった。

 突っ込んでいる側の彼は、白井のペースなど把握していない。

 そして白井が苦痛を訴えない以上、遠慮が入る隙間はないのだ。

「んっ! んんあっ! あはぁっ! あっ、あっ、あっ!」

 無遠慮な前後運動。

 しかしアナルバイブまで飲み込む白井の肛門は、それを苦もなく喘ぎの元へと変換してしまう。

「……これなら指増やしても、ぜんぜん大丈夫そうだな」

「なっ!?」

 一旦抜かれる指。

 広げられていた菊座が、活約筋の作用ですぐにすぼまり、

「はうっ!?」

 ぐぐっ、と再び押し広げられて、尻が前に逃げる。

 だが彼の左手がその丸い曲線に指を食い込ませて、逃がさない。

162 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/16(月) 00:38:28.80 ID:m6+FbrP3o [12/25]
「あっ! がっ! ああっ! あぐっ……!」 

 限界近くまで広げられ、ズブズブと潜り込んでいく感触。

 拘束された両手が握り締められ、背中が反り返っていく。

 無理もなかった。

「ははっ」彼が笑う。

「やっぱり三本でも大丈夫だったな」

 人差し指と、中指と、薬指。

 ぐっ、ぐっ、と。段階的に、揃えられた三つ指が白井の排泄器官に埋没していく。

「っ! っ! っ!」

 完全に息を吐ききった白井は、悲鳴をあげることもできない。

 5回。

 声なき悲鳴をあげて、そこでようやく、挿入が止まった。

 いや、最奥まで到達したのだ。

「……!」

 ガクリ、と白井が頭を枕に落とした。

 そのまま、肩を大きく揺らして、呼吸を繰り返す。

 ジン、ジン、と後ろの穴から、心臓の鼓動にあわせて何かが背筋を駆け上がってくる。

163 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/16(月) 00:40:16.12 ID:m6+FbrP3o [13/25]

(わたくしのお尻、こんなに広がって……)

 荒い息の中、白井は自分が何をされているのか、はっきりとわかった。

 彼女の瞳には酸素不足の陰りはあっても、理性が戻ってきている。あまりの圧迫感で頭から興奮が消え去っていた。

 白井は今まで、指は二本までしか入れたことがなかったし、アナルバイブも、彼女の指三本よりは細かった。

 それに彼に渡された器具でもっとも太いものがアナルバイブだったので、それが入った時点で、拡張は終わりと思っていたのだが。

 幸いにも、自分で拡張した排泄口は、想像よりもずっと頑丈だったらしい。彼の指が三本、根元まで埋まっていても、裂けた様子も、裂ける様子もない。

 そして疲労と圧迫感で動けない白井は、しかし、頭の中は逆にクリアとなっていた。

 なんとなく、どこか他人事に、頭の中に思考が流れていく。

(こんなの、苦しいですの……)

 呼吸はなんとか出来た。

 しかし圧迫感と異物感は、圧倒的だった。

(こんなの、恥ずかしいですの……)

 二週間前は理性を失っていた。いまでも、あの時のことはぼんやりとしか覚えていない。

 しかし今は、彼に全てをさらけ出している。しかも、ある意味は秘所よりも隠しておきたい場所に、指まで突きこまれて、だ。

(こんなの……)

 こくんと、と唾液を飲み込む。

 その拍子に、尻の穴が窄まったのか、ジン、と痺れが響いた。

(こんなの、おかしいですの……)

 今はまだ、耐えていられる。

 しかしこれから、こんな目に遭い続けるのか。

 二週間前に唇は奪われた。

 今日にも肛門を犯される。

 すぐに口も汚されるだろう。

 そして近い将来、純潔も散らされるに違いない。

 いや、それは。

164 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[] 投稿日:2012/01/16(月) 00:42:26.71 ID:m6+FbrP3o [14/25]

 すうっ、と空調によって動かされた空気が、白井の尻の割れ目を通っていく。

 彼の目の前に晒している、女の全て。

 拘束され、能力も封じられた今、抵抗することはできない。


165 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/16(月) 00:42:59.82 ID:m6+FbrP3o [15/25]

 今日、今、これから。

 すべて失くすかもしれないのだ。

「――っ!」

 唐突に背筋に悪寒が走った。

 いつか起こるだろうと覚悟していたこと。

 しかしそのいつかは、すぐにと同義なのだ。



 イマカラ、犯サレル。



(いや……)



(いやですの……)



(こんなの、いやですの……)



(わたくし、こんなのは、いやですのよ……)



(助けて……)



(誰か……)



(誰か……助けてくださいまし……)

 しかしこのホテルに白井がいることを知っているのは、誰もいない。

 助けなど、くるわけがない。

 それでも白井は思う。

 自分の敬愛する御坂美琴ならば、もしかしたら、ここに自分がいることに気がついてくれるかもしれない。

 そう、思い切り叫んだら、もしかしたら。

166 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/16(月) 00:43:35.15 ID:m6+FbrP3o [16/25]

 

 お姉様。





167 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/16(月) 00:48:40.31 ID:m6+FbrP3o [17/25]

 ――黒子。

(!)

 その衝動にしたがって叫びかけた白井の脳裏に、美琴の顔が浮かんだ。

 彼のことを話す美琴の笑顔。彼の愚痴を言う美琴のむくれた顔。彼と会話してきた美琴の晴れ晴れとした顔。彼のことで哀しむ美琴の浮かない顔。

168 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/16(月) 00:49:07.41 ID:m6+FbrP3o [18/25]

 そうだ。

 くじけるな。

 美琴を護る。そのために、決心したではないか。

 たとえ自分がどうなろうとも、美琴さえ、彼の手に落ちなければいいと、そう思ったではないか。

「っ!」

 白井の目に、力が戻る。

 しかしその瞬間。

「動かすぞ?」

 彼の声とともに、指が動き出す。


169 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/16(月) 00:50:04.17 ID:m6+FbrP3o [19/25]

「うあああっ!?」

 ギリギリまで、指が引き抜かれる。

「くふあっ……!」

 すぐにまた、根元まで。

「あああっ!」

 引く。

「ああああっ!」

 押す。

「ひぐぅっ!!」

 抜く

「くあっ!」

 それほど早くない。

 しかし止まらない。

 音がする。

 出入りの度に、グポッ、グポッと、空気と粘液の音が。

「指とか汚れてない。ほんとにきちんと洗浄してるのな。褒めてやるよ」

「いやあっ!? 」

(そんなこと言わないでくださいまし! 思い出させないでくださいまし!)

「いやってなぁ。褒めたんだから素直に喜べって。それに何かついてたほうが、お前もイヤだろ?」

「ふざけっ、くあっ、ああんっ!」

「強情だな……ご褒美にもっと激しくしてやるよ」

 指の出入りが加速する。

「ああっ! あああっ! ああああっ!」

 白井が枕に顔を押し付けたまま首を振った。

 結んだままのツインテールが、バサバサとシーツを叩く。

 やがて、そんな彼女に変化が起こり始めた。

170 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/16(月) 00:51:40.23 ID:m6+FbrP3o [20/25]

「はぁっ! んんっ! うぅんっ!」

 声に、どこか甘い響きが混ざり、

(は、激しいっ、でもっ、これっ、この感じっ……!)

 腰の奥でムズムズとした感覚が燻る。

「んうっ! んくっ! あうんっ! んはあっ!」

 肛門を抉られ、腸壁を擦られる。

 そこに生まれているのは、排泄感にも似た感覚。

 それは、彼に命じられ、拡張をしている最中に感じていたもので、

「あれ? 白井、お前もう感じ始めてるのか? なんか前側から、また白いのが出てきてるぜ?」

(っ!?)

「ちがっ! そんなことっ! 違いますのっ! ああっ! くうんっ!」

「いや流石の俺でも、こんな近くで見てりゃわかるさ。お前のココ、やっぱり濡れてきてる」

「嘘ですの! わたくし、こんなところで感じたりなんか、あっ、あっ、あっ、あああっ!」

「感じてないのか? ぜんぜん?」

「あ、あ、あたり、うあっ、当たり前ですのっ!」

「ふぅん?」

「あっ!? あっ! あっ! あーっ! だめですのっ! だめっ! だめっ! だめぇっ!」

 髪を振り乱す白井。

「……」

 そこで不意に、彼が手の動きを止めた。 

171 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[] 投稿日:2012/01/16(月) 00:53:17.15 ID:m6+FbrP3o [21/25]

「はっ――はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ」

 ポスリ、と再び、白井は枕に顔を埋めた。

「……なぁ白井」

 彼が右手をギリギリまで抜いた状態で止め、左手で尻を掴んだまま、言う。

「もういい加減、認めないか? 大丈夫だって。お前はよく我慢したよ。誰もお前を悪く言わないって。それに言ったろ? 薬のせいだって。そもそも尻の拡張だって俺がお前にやらせたんだ。お前がここで気持ちよくなるのは当たり前なんだよ」

「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ」

(耳を傾けては駄目ですのよ白井黒子……この男の狙いは『わたくしが快楽を選択する』こと自体なのですから……)

「……」

「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」

「……」

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」

「……そうかよ」

「あんっ!?」

 クチュ、と音をたてて、彼が右手を完全に抜いた。

 愛液と腸液と軟膏に塗れ、ぱっくりと開いた肛門が、ゆっくりと、元の形に戻ろうとする。

(抜いた……? いったい何故……)

 白井が疑問に思うと同時に、今しがた抜かれた彼の右手が、左手とは反対側の尻たぶを、ぐっ、と掴んだ。

 続けて、窄まりかけた肛門に、何か硬いモノが押し当てられる。

「え……」

 その体勢と、気配。

 白井が首を後ろに向けかけて――

172 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/16(月) 00:54:38.37 ID:m6+FbrP3o [22/25]



 ズン、と衝撃があった。


174 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/16(月) 00:55:52.34 ID:m6+FbrP3o [23/25]
「ひぐぅっ!?」

 先の三本指より一際太いものが体内に入ってくる官職。

「おっ? 予想よりもずいぶん楽に入ったな。流石は学園都市暗部特製の媚薬だな。柔軟効果もすげぇ」

 そして、彼の声。その内容。

「あっ……?」

 一瞬、何が起こったのか理解できない

 いや、何かが肛門に突き込まれたのはわかる。今までのなによりも、太く、長いモノが。

「しかし、ははっ、こっちもすげぇな。なんか中でぬるぬる絡み付いてくる。普通、こっち側はこんなにならないんだけど」

 尻を掴む彼の両手。

 ふとももの裏に感じる、誰かの脚。

 四つんばい。

 長く、太いもの。

(まさか……まさか……)

 ガクガク、と白井が身を震わせ始める。

「わりぃな、白井」と、彼。「我慢できなかったんだ」

(っ!)

 反射的に後ろを振り返る。

 無許可とかいえ、ここはラブホテル。しかし強姦の撮影に使うことを念頭においているところだ。

 部屋の壁面は、鏡張りになっていた。

 何が起こっているのか、白井は、その両目で見ることになる。

「い、」

 



175 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県)[sage saga] 投稿日:2012/01/16(月) 00:57:04.07 ID:m6+FbrP3o [24/25]


「いやああああああっ!」



 絶望的な声が、室内に響き、防音効果ゆえに、外には一切、漏れなかった。





黒子「……好きにすれば、いいですの」-2

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