2ntブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

上條「絡まった運命も変えて行けるから」

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 03:15:00.05 ID:5uJ3b9F7O [1/57]
自慢できるほど何かができるわけじゃない
でも、ヴァイオリンだけは小さい頃からそれなりに続けてきた事だ


「恭ちゃん、次のコンクールも頑張りなさいね!」


少なくとも、誰かに褒められたり、認めてもらいたいとは思わなかった


「君の才能は素晴らしいよ!」


……今になって、ようやく気付く


「あのねっ!きょうすけ! わたし、きょうすけの弾くバイオリンが大好き!」


僕はただ、あの娘に笑っていて欲しかったんだ


3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 03:25:29.00 ID:5uJ3b9F7O [2/57]
コンコン・・・

「うーす」ガラッ

上條「……」

「元気ないなー、上條」

上條「…元気なわけないだろ」

「あはは! それもそうか」

上條「……」

「…やっぱ治んないのかよ、左腕」

上條「ああ。何度も検査したけど、やっぱり駄目だった。どうやったて、もうヴァイオリンは弾けないって言われたよ。……我ながら不幸だな」

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 03:31:48.61 ID:5uJ3b9F7O
「そんなこと言うなよ。まるで本物の上条さんみたいだぞ」

上條「は?」

「ああ、そうそう。退屈そうだから持ってきてやったんだ。ほら、差し入れ」

上條「なんだよこれ……ライトノベル?」

「一日中、ベッドに寝てるだけだと暇じゃないかと思ってさ」

上條「気がきくな」

「なんだ、そのまったく心がこもっていない感謝の言葉は!」

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 03:41:06.72 ID:5uJ3b9F7O
上條「おい、これ一体何巻まであるんだ……」

「22巻だ! まだ完結してないけどな、入院している間は貸してやるよ」

上條「はぁ……」

「ほら、あんま辛気クサい顔すんなよ。美樹に嫌われるぞ……?」

上條「――ッ!! う、うるさいな! もう用がないなら、とっとと帰れよ!」

「はいはい。じゃあな、また来るよ」

上條「ったく……」

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 03:47:21.25 ID:5uJ3b9F7O
上條「……」ペラペラ

さやか「へー……恭介でも本とか読むんだ」

上條「!?」ドキーン

さやか「やっほー。遊びに来たよー♪」

上條「さ、さやか……」

さやか「あ、やばっ……それエロ本?」

上條「ライトノベルだよ! ついでに言っとくけどこれは僕のじゃないからな!」

さやか「ふーん」

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 03:56:08.43 ID:5uJ3b9F7O
さやか「まぁ、いいや。ねぇねぇ!! 手術は順調!?」

上條「……うん」

さやか「そっか。よかった!」

上條「……」

さやか「あのね……へへっ! 実は恭介にプレゼントがあるんだ!」

上條「プレゼント?」

さやか「放課後にまどかと一緒で探しに行ったんだけどさ、恭介は絶対喜んでくれると思って……」

上條「なんだよ」

さやか「じゃじゃーん! CDプレイヤー!」

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 04:06:40.00 ID:5uJ3b9F7O
上條「――っ!!」

さやか「ホントはレコードの方が一番いいんだけどさー」

上條「(……やめろよ)」

さやか「病院だし、そこまで贅沢は言わないでよ? 大丈夫! ちゃんと音質はいいのを選んだから!」

上條「(僕は……)」

さやか「?」

上條「(僕はもう……!!)」ギリッ

さやか「恭介……?」

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 04:13:17.51 ID:5uJ3b9F7O
上條「……」

さやか「…ど、どうしたの急に。どこか具合悪い……?」

上條「……れよ」

さやか「えっ」

上條「はやく帰れよ!!」

さやか「!?」ビクッ

上條「はぁ…はぁ……!」

さやか「…うん。わかった。今日はこれ、渡しに来ただけだから……じゃあね」

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 04:24:25.34 ID:5uJ3b9F7O
それから少し時間がたって


上條「……」


自分のやってしまったことに後悔して


上條「最低だな……さやかに当たるなんて……」


だけど


上條「…まだ、言えないよな」


自由のきかない左腕が


上條「もうヴァイオリンが弾けないなんてさ……!」


重たい現実を突き付ける


上條「くそっ……!」

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 04:43:27.44 ID:5uJ3b9F7O
さやか「おっはよー!まどかー!!」

まどか「きゃっ!」

さやか「おぉ!! なんだか、ええ感じの肉付きになってきたのう!!」

まどか「もうっ! さやかちゃんのエッチ!」

仁美「おはようございます、さやかさん」

さやか「おはようっ!ひとみ! さぁさぁ、諸君。急ぎたまえ!遅刻するぞー!」

まどか「待ってよー」

さやか「あはははは!!」

仁美「……」

まどか「…いつもより変だね」

仁美「そうですわね」

まどか「何かあったのかな、上條くんと」

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 05:03:09.18 ID:5uJ3b9F7O
上條「……ん」


昨日はあれからずっと本を読んで過ごした


上條「もう朝か……」


いかにもお気楽な奴が考えるような話だな、と思った


上條「……」スッ


唯一、持ち上がる右腕を天井に向かって掲げる


上條「……この世界が、神様の作った奇跡のとおりに動いているのなら」


この手に世界を変えることができるほどの力なんて無い


上條「まずは……」


僕はあの主人公みたいにはなれない

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 05:18:40.78 ID:5uJ3b9F7O
ほむら「…ねぇ、アナタは今が幸せ?」

まどか「えっ」

ほむら「家族や友達との時間が大切なら、これ以上なにも望まないことね」

まどか「あの……」

ほむら「それじゃ」

まどか「?」

ほむら「(悪く思わないでね。アナタのためなのよ……まどかっ!)」

まどか「あの人、何言ってんだろ」

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 05:24:24.89 ID:5uJ3b9F7O
さやか「ふぅ……」

仁美「どうだったんです?」

さやか「えっ!……んな、何が!?」

仁美「決まってますわ。上條くんのこと。昨日もお見舞いに行ったのでしょう?」

さやか「それは……」

まどか「ただいまぁ」

さやか「…ま、まどか。転校生どうだった?」

まどか「んー……なんかねー、よくわかんないんだけどー……」

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 05:40:56.43 ID:5uJ3b9F7O
「よぉ」

上條「お前、昨日も来ただろ……」

「そんなこと言って、本当は嬉しいんだろ?」

上條「全然」

「これ面白かったか?」

上條「…まだ一巻しか読んでないよ」

「上条さん、カッコいいだろ」

上條「熱血バカ? なんか古臭いって」

「お前も同じカミジョウなら、スカッと爽やかにクサい台詞の一つでも言ってみろよ」

上條「嫌だ」

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 05:54:56.56 ID:5uJ3b9F7O
たとえば、もし記憶喪失になったとして


「さやかには、泣いてほしくないなって思ったんです」キリッ

上條「うらっ!」ブンッ

「おっと」


大切な人を傷付けないために、笑えるだろうか


「本を投げるな! 破れたら弁償しろよ?」

上條「知るかよ。勝手に持って来たんだろ」


どうせ、僕のことだから今みたいに自分の不幸を嘆いてばかりいるのだろう


「またなー」

上條「もう来るなよ。うっとうしい」


きっと僕はさやかのために笑うことなんて、できやしない

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 06:03:36.09 ID:5uJ3b9F7O
マミ「ティロ・フィナーレッ!!」

――ドドドドドォーン!!

さやか「すっ」

まどか「すごい……」

マミ「私は巴マミ。キュウべぇと契約した魔法少女よ☆」

QB「君たちも魔法少女になってよ!」

まどか「えー」

QB「願い事は、なんでも叶うよ!」

さやか「なんでも……」

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 06:12:03.53 ID:5uJ3b9F7O
ほむら「やめた方がいいわ」

さやか「うるさい!! お前の言うことなんか利くか!」

まどか「キュウべぇ、こっちにおいで!!」

QB「うえーん。まどかー」

ほむら「……」

さやか「帰れ帰れ!」

ほむら「…忠告はしたわよ」

さやか「イーっだ!」

ほむら「……」ジロッ

まどか「(うわぁ……なんかこっち見てるんですけど)」

ほむら「……グス」

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 06:31:02.05 ID:5uJ3b9F7O
「正直言って、残念だけど手の施しようがないね」

上條「そう…ですか……」

「…こんなこと言うのも酷だが、ヴァイオリンは諦めるしかないよ」

上條「はい」

「日常生活に支障がない程度なら回復する可能性もあるが、楽器の演奏となると……」

上條「もう……十分です。ありがとうございました」

「…ふむ。病室まで連れて行ってやりなさい」

「わかりました」

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 06:42:14.69 ID:5uJ3b9F7O
上條「はぁ……」

「シケてんな」

上條「いいだろ。別に」

「そういう時は思いっ切り叫んじまえって、不幸だー!って」

上條「嫌だ」

「不幸だあああああああ!!!」

上條「やめろ」

「お前がやるまで、やめないぞ」

上條「おいおい……」

「不幸だあああああああ!!!」

上條「あー、もう。不幸だあああああああ!!」

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 06:56:02.49 ID:5uJ3b9F7O
マミ「お試し期間ってことで☆」

さやか「わたし、バット持ってきた!!」

まどか「衣装考えてきた!」

QB「オーダーメイドだねっ!魔法少女になってよ!」

まどか「少し考えさせてね」

マミ「それじゃあ……って、あれ?」

さやか「どうしたの、マミさん?」

マミ「変ね。別の娘が倒しても余波はあるはずなのに……」

杏子「!?……またかよ」

ほむら「……魔女の気配が突然消えた」

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 07:16:27.81 ID:5uJ3b9F7O
目の前に壁があるとしよう


上條「まだ8巻……」


この本の主人公はその壁を叩き壊して、まっすぐ突き進んで行く
それがどんなに大きな壁であってもだ


上條「さやか……今日も来ないのかな……」


僕はその真逆。壁を壊すことも、乗り越えることもできずに立ち尽くしている無力な弱者


上條「遂に愛想つかされたか」


方法があるとすれば壁を避けて、横道を歩くことだけ


『…こんなこと言うのも酷だが、ヴァイオリンは諦めるしかないよ』

上條「――ッ!!」


お似合いなんだ。そういう卑怯で、汚い、負け犬みたいな生き方が

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 07:32:04.59 ID:5uJ3b9F7O
まどか「結局、どこにもいなかったね。魔女」

QB「おかしいなぁ……」

さやか「あー!!もー!!わたしはヤル気まんまんだったのにー!!」

マミ「ウフフ……いいじゃない。次があるわ。ほら、ケーキ食べましょう」

さやか「わーい!!」

まどか「いただきまーす!」

マミ「と、リモコンリモコン……」

ピッ

テレビ『今週に入ってから連日で行方不明者の発見が頻発しており、届出にあった失踪者はいずれも―――』

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 07:46:16.83 ID:5uJ3b9F7O
――ヒュン

ほむら「」スタッ

杏子「アンタも魔女を探しているのかい?」

ほむら「……佐倉杏子」

杏子「ん。わたしを知ってんのか……あっ これ食うかい?」

ほむら「アナタと一緒にしないで。私が探しているのは、この時間軸のイレギュラーよ」

杏子「何言ってんのか、よく判らんが……グリフシード目当てじゃないなら、どうでもいいさ。じゃあな」

ほむら「一体、どうなっているの……今までに、こんなことは一度も……」

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 07:53:37.73 ID:5uJ3b9F7O
マミ「じゃあ、気をつけて帰ってね」

さやか「バイバイ、マミさん。また明日っ!」

まどか「さようならー」

マミ「ふふっ……また明日ね☆」

さやか「あ、まどか。先に行ってて。私ちょっと寄るところが……」

まどか「わかった、じゃあね。上條くんにヨロシク」

さやか「うん……」

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 08:00:36.55 ID:5uJ3b9F7O
コンコン

上條「!」

さやか「恭介ぇー……」ガラッ

上條「……」

さやか「ごめんごめん!最近なんだか色々と忙しくってさっ!」

上條「……」

さやか「CDいっぱい持ってきたよ!」

上條「……」

さやか「いやー!わたしがこういう音楽に詳しいの意外らしくってさ、みんな驚いて――」

上條「」ダンッ!!!!

パリーン!!!

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 08:06:20.26 ID:5uJ3b9F7O
上條「うっ!」

さやか「…き、恭介!?」

ポタポタ・・・

さやか「ち、血が……!」

上條「……動かないんだ」

さやか「えっ」

上條「左腕がまったく動かない……僕はもうヴァイオリンが弾けないんだよ、さやか……っ!」

さやか「……」

上條「うっ……!うっ……!」ポロポロ

さやか「…大丈夫だよ」

上條「……えっ」

さやか「大丈夫!!絶対治る!!奇跡も魔法もあるんだよっ!!」

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 08:15:27.72 ID:5uJ3b9F7O
マミ「……」

まどか「さやかちゃん……」

ほむら「…なんて馬鹿なことを」

さやか「えへへっ。ほら、いいでしょ!女剣士ってかんじで!」

QB「まどか、君も魔法少女になってよっ!」

まどか「嫌だぁああアアアッ!!!!」

QB「!?」ビクッ

まどか「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!」

さやか「…ま、まどか。落ち着いて」

まどか「さやかちゃん!!」ブチッ

さやか「ちょっ!なにすん――」

まどか「こんなの駄目ぇええぇえええええ!!!!」ブンッ!!

ほむら「あっ」
QB「あっ」

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 08:26:05.09 ID:5uJ3b9F7O
杏子「がーりが~りくんっ♪ がーりが~りくんっ♪」

ヒュゥゥゥゥゥゥウウウウ

ゴンッ!!!

杏子「あがっ!!」

ポスン

トラック「―――ブーン」

さやか「まどか!!アンタなんてこと!!」

まどか「だってだってだってぇぇぇ!!」

杏子「うぉい!!テメェらぁ!!いきなり何すん……」

さやか「」フッ

まどか「えっ さやかちゃん?さやかちゃん? どうしたの、さやかちゃん?」

ほむら「ハッ!ハッ!ハッ!ハッ!」タッタッタッ

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 08:35:28.48 ID:5uJ3b9F7O
「おっす、上條」

上條「……」

「どうした。腕治ったんだろ? もっと喜べよ」

上條「…僕、さやかに酷いことばかり言っちゃった」

「そうだな。謝ってこい」

上條「さやかは優しいから、それで許してくれるかもしれない……でも、僕に許される権利なんてないんだ」

「お、おい……!待てよ!!ああ、くそ。もうちょっとなのに……」

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 08:40:48.85 ID:5uJ3b9F7O
さやか「……」

まどか「おはよー!ひとみちゃん!」

仁美「あら、まどかさん。さやかさん。えっ ほむらさん?……そちらは」

ほむら「お、おはよう……」

マミ「はじめまして、巴マミです。二年生よ。ヨロシクね☆」

仁美「これはこれは……あら、上條くん?」

さやか「!?」

上條「……」

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 08:44:24.76 ID:5uJ3b9F7O
仁美「退院なさっていたんですのね」

まどか「さやかちゃん、行ってきなよ」

マミ「そうよ、退院おめでとうって言わなくちゃ。なんなら付き添ってあげてもいいわよ?」

さやか「わ、わたしは……その……なんていうか……あははっ!」

まどか「さやかちゃん……」

仁美「……」

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 08:56:59.63 ID:5uJ3b9F7O
仁美「私、以前から上條くんのことお慕いしていましたの」

さやか「…へ、へぇ。仁美がねぇ……」

仁美「上條くんを見つめてきた時間はアナタの方が長いはず。アナタには私の先を越す権利があります」

さやか「仁美ェ……」

仁美「明日まで待ちます。ごめんあそばせ」

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 09:07:11.74 ID:5uJ3b9F7O
さやか「仁美に恭介をとられちゃうよぉ……!」

まどか「さやかちゃん……」

さやか「でも、私こんな身体で抱き締めてなんて言えない!!キスしてなんて言えない!!」

まどか「そうだね」

さやか「もう死んでるんだもん!!」

マミ「……」

さやか「ゾンビなんだもん!!」

ほむら「……」

さやか「うぇええぇ……」

杏子「はぁ……で、これからどうすんだ? 魔女が全滅じゃ、あたしらがいる意味ねぇぞ、おい」

QB「僕にも解らないよ……」

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 09:27:14.81 ID:5uJ3b9F7O
上條「ごめんよ、さやか……」

仁美「上條くん」

上條「…あれ? 志筑さん」

仁美「ごめんあそばせ」

上條「こっちの道だっけ?」

仁美「…いえ、今日は上條くんにお話したいことがありますの」

上條「えっ」

さやか「!?……あれは恭介と仁美……!」

まどか「(えっ なになに?)」

マミ「(告白よ、コクってんのよ、あの娘!!)」

ほむら「(こ、告白……///)」ポッ

さやか「あ、あんたらいつの間に……」

マミ「(しぃっ!!静かに!!)」

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 09:43:35.41 ID:5uJ3b9F7O
仁美「…単刀直入に言います。上條くん……アナタはさやかさんに心を寄せていますね?」

上條「い、いきなり何を……」

仁美「私は真剣です」

上條「うっ……」

仁美「上條くん、アナタは本当の気持ちと向き合えますか?」

上條「志筑さん……」


さやか「(……だ、駄目だ。ここからじゃ遠すぎで聞き取れないよ)」

まどか「(任せて、さやかちゃん!内緒にしてたけど、わたし読唇術ができるの!)」

QB「(すごいや、まどか!やっぱり君には素質がある!是非、魔法少)」

まどか「(うるさい。黙れ)」

QB「(はい)」

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 10:04:23.54 ID:5uJ3b9F7O
まどか「ムーディーブルースッ!!」


仁美『上條さん!!アナタのチェロでわたくしのいやらしい弦を弾いてビブラートを奏でて!!』

上條『仁美……』

仁美『恭介さん……』

上條・仁美『 It's concert 』


まどか「……って、言ってたんだよ!」

さやか「うわああああああああ!!」ダッ

マミ「さやかさん!」

ほむら「美樹さやか!」

QB「まどかを釣る餌!」

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 10:10:39.09 ID:5uJ3b9F7O
ウワアアアアアアアア!!

仁美「さやかさん!?」

上條「さやか!?」

仁美「まさか見られて……急いで!!上條くん!!」

上條「ぼ、僕は……」

仁美「…私はさやかさんのところへ行きます。覚悟が決まったなら、追い付いて来てください」

上條「……」

仁美「ごめんあそばせ!!」ダッ

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 10:26:39.79 ID:5uJ3b9F7O
本当の気持ちだって?
そんなこと言われなくても気付いていたさ


上條「ああ、わかっている……」


だけど追いかけたところで、さやかになんて言えばいい?


上條「あたりまえじゃないか……!!」


今さら好きなんて言えない。愛しているなんて言えない


上條「でも無理なんだよ!!」


彼女には僕なんかよりもっとふさわしい男がいるよ


上條「ごめん、本当にごめんよ……さやか」


どこか遠いところで幸せになってくれ

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 10:30:47.53 ID:5uJ3b9F7O
仁美「まどかさーん!」

まどか「あ、仁美ちゃん」

仁美「さやかさんは!?」

マミ「それが……」

ほむら「見失ったわ」

仁美「そんな……」

まどか「おい」

QB「」ビクッ

まどか「お前、知ってんだろ」

QB「さやかが危ない!追いてきてっ!」

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 10:36:33.96 ID:5uJ3b9F7O
ガタンゴトン・・・ ガタンゴトン・・・・

さやか「……」

DQN1「キャバ嬢がルシのファルシでパージでファーwwwwwww」

DQN2「マジぱねぇっすwwww」


さやか「……ねぇ」

DQN1「あん?」

さやか「……てよ」

DQN2「はあーん!? 聞こえねぇよ!!」

さやか「貸してよ!!」

DQN1「ファー!?」

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 10:41:12.91 ID:5uJ3b9F7O
杏子「~♪ ん?あれは……」


さやか「……」

杏子「おーい。こんなとこで何やってんだ?」

さやか「……ちゃった」

杏子「えっ」

さやか「500円借りちゃった……」

杏子「…お、おい。まさか……」

さやか「住所も……電話番号も……名前すら聞いてないの……」

杏子「借りパクじゃねぇかッ!!!!!」

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 10:47:20.57 ID:5uJ3b9F7O
杏子「…お、おおおおお前いつから、そんな極悪の道に……」ガクブル

さやか「いい人だった……そんな人から、なけなしの500円を……」

杏子「よせ!!まだ間に合う!!」

さやか「ヒーロー失格だよ……」

杏子「よせぇええぇええええええー!!!」

さやか「わたしって……ホント馬鹿……」


カッ


杏子「さやかああああああああああああ!!!!」

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 10:53:46.38 ID:5uJ3b9F7O
ゴゴゴゴゴゴ・・・!


ほむら「!!」

まどか「…な、なんの音?」

マミ「みんな伏せて!!」


魔女「まじょおおおおおおおおお!!!」ドッカーン


仁美「あれは!?」

QB「さやかだよ」

マミ「えっ」

ほむら「どういうこと……?インキュベータ」

まどか「おい……」ギリギリ

QB「魔法少女を略して、魔女。あとは、お察しください。はい」

58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 11:05:55.21 ID:5uJ3b9F7O
借りた本は22巻まで、全部読んだ


上條「はぁ……」


最後の最期で主人公は、敵の要塞と共に行方不明になってしまう


上條「……帰るか」


結局のところ、彼の信念は『不幸』に負けてしまったのだ

上條「……」


あのライトノベルを貸してくれた人は、僕にそういうことを伝えたかったのだろう
自分へのあてつけだ。運命には逆らえない。どれだけ頑張っても無駄―――


「こんなとこで何やってんだ?」


59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 11:15:29.33 ID:5uJ3b9F7O
上條「お前か……」

「美樹のピンチだぞ」

上條「僕には関係のないことだ」

「嘘だな」

上條「お前に何がわかる……!」

「好きじゃなかったのかよ、美樹さやかのことが」

上條「好きに決まってんだろ!!知った口利いてくるな!!」

「……」

上條「いっぱい、いっぱい傷付けてきたんだ!!僕には……僕には……さやかと一緒にいる権利なんてない!!」

「……権利だと? そんなつまんねぇ事はどうでもいい……!!」

上條「なんだと!?」

「たった一つだけ、答えろ!!お前は美樹さやかを助けたくないのかよ!!!?」

62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 11:24:22.40 ID:5uJ3b9F7O
上條「ヒーローはお前だろうが!!お前には凄い力があるんだろ!?だったらお前がさやかを守れよ!!」

「……っ!」

上條「お前みたいなヒーローが最初からさやかの側にいれば、あんなにさやかは苦しまなくてすんだんだよォォおおおおおおお!!!」

「ヒーローである必要なんかねぇだろ!!!」

上條「――ッ!!」

「特別なポジションも、能力も資格もいらない!!守りたいって気持ちがあるなら、たったそれだけで十分じゃねぇか!!」

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 11:37:22.71 ID:5uJ3b9F7O
「お前はいいのかよ!?赤の他人に一番大切な人の命を預けて!!それで満足かよ!?」

上條「うるさああああい!!」

バキッ!!

上條「お前は世界を救った男!!僕はただのヴァイオリンが上手い高校生だ!!」

ゴキッ!!

上條「そんな奴に何ができるんだ!!夢みたいなことばかり言いやがって!!」

「――そんなこと自分で確かめてみればいいだろ……っ!」

上條「っつ!」

「いいぜ……!!てめぇがただのヴァイオリンが上手いだけの高校生で、誰一人守ることができないというのなら……!!」

―――まずはッ!!

上條「!!?」

バキィィイン!!!



65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 11:46:06.65 ID:5uJ3b9F7O
上條「……」

「よぉ、立てるか?」

上條「ああ……」

「いいか? もう一度だけ聞くぞ」

上條「……」

「お前は美樹さやかを助けたくないのか?誰でもない自分の手で守りたいんじゃないのかよ!?」

上條「……行くよ」

「……」

上條「助けに行く……僕がさやかを助けに行くッ!!」

「そうかい。それだけで十分だ」ギュッ

上條「……?」

「俺の力を、ほんの少しだけお前にやる!!優しさでも労りでもない……戦い抜く勇気だ!!」

上條「当麻……」

「行ってこい!!上條恭介ッ!!」



66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 11:52:22.46 ID:5uJ3b9F7O
ゴォォォオオオオオ!!!!


ほむら「ぐっ……!!」

マミ「凄いパワーね……!!」

杏子「わたしたちじゃ歯が立たねぇぜ……!!」

魔女「まじょおおおおおおおおお!!」

QB「まどか!!僕と契約をっ!!」

まどか「しつこいなぁ……でも、仕方ない。いいよキュウべぇ、契や」

仁美「その必要はありませんわ」

まどか「ひとみちゃん?」

仁美「あの人は来ます。必ず……!」


―――パキィン!!

68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 11:56:39.05 ID:5uJ3b9F7O
バリィィィィイイイイン!!!

上條「……」

仁美「上條くん!!来てくれたのですね!!」

QB「……ば、馬鹿な。生身の人間が結界を破って入ってくるなど……!」

上條「……さやか」

魔女「キョウ…ス……ケ………」

上條「今すぐ助けてあげるからねっ!!」ダッ

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 12:03:36.31 ID:5uJ3b9F7O
上條「うおおおおおおおおぉぉぉ!!!」

魔女「まじょおおおおおおおおお!!!」ビーム

バシュゥゥゥ!!

上條「くっ……!!」

まどか「上條くん!!」

ほむら「なんでアナタが……」

上條「そんなことはどうでもいい!!」

ほむら「!?」

上條「今まで待ち焦がれてきたんだろ!?こんな展開を……。なんのために歯を食いしばってきたんだ!!誰もが笑って誰もが望む最高のハッピーエンドってヤツを!!てめぇのその手で掴んでみせるって誓ったんじゃないのかよ!!?」

ほむら「……」

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 12:11:32.07 ID:5uJ3b9F7O
上條「だったらそれは全然終わってねぇ!!」

マミ「……」

上條「始まってすらいねぇ!!」

杏子「……」

上條「ちょっとくらい長いプロローグで絶望してんじゃねぇよ!!!」

まどか「……」

QB「ちっ」

仁美「……上條くん」


上條「いい加減に始めようぜ!! 魔法少女ッ!!」


73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 12:18:47.80 ID:5uJ3b9F7O
杏子「―――Fortis931!!」ジャキン!!

マミ「―――Salvare000!!」ガチャコン!!

QB「!?」

ほむら「行けぇ!!能力者ぁあああ!!」


上條「うぉおおおおおおおおおおお!!!」

魔女「まじょおおおおおおおおお!!」

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 12:26:14.71 ID:5uJ3b9F7O
ここに生きる理由も、この場所で出会う全ても
たとえ、そこが違った世界であったとしても!!


上條「この世界が、神様の作った奇跡のとおりに動いているのなら……っ!!」


誰かを守りたいって気持ちは、負けないんだ!!
絶対に、何があってもこの信念は揺るがない!!


上條「―――まずはッ!!」


残酷な物語、そのすべてを覆せ――ッ!!!


上條「 そ の 幻 想 を ぶ ち 殺 す ッ ! ! ! ! 」


パシュゥウン!!!!


77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 12:32:01.03 ID:5uJ3b9F7O
さやか「恭介ー!」

上條「ん?」

ダキッ

上條「うわあ!」

さやか「遅いぞー!!わたしたち、ずっと待ってたんだから……」

上條「…ごめん、みんな」

まどか「おはよう、上條くん」

仁美「ごきげんよう」

ほむら「おはよう」

マミ「おはよー☆」

杏子「よぉ」

80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 12:39:47.46 ID:5uJ3b9F7O
イマジンブレイカーの力で魔女も魔法少女もいなくなった
もちろん、元々人間だった彼女たちは今では何事もない平和な日常を送っている


上條「……」

さやか「恭介?」


すべて彼のおかげだ
世界中の魔女を一蹴したのも、おそらく彼の仕業だろう
何故、彼がこの世界にやってこれたのか……それはわからない


上條「えっ」

さやか「ぼっーと、しちゃってさ」


ただひとつ、彼がこの世界にやってきた理由だけなら解る
彼は僕たちの住むこの世界を『助けたい』と思ったのだ

81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/28(月) 12:52:38.93 ID:5uJ3b9F7O [57/57]
魔法少女たちの物語は終わったけど
彼の物語はまだ終わっていない
あの世界で彼はまだ行方不明のままだ


さやか「みんなに置いて行かれるよー!!」

上條「ま、待ってよ!!さやか!!」


でも、僕は彼が絶対に死なないと信じている
そんな不幸な結末を認めるような男じゃないと知っているから
どんなに大きな壁が立ち塞がろうとも、その手で道を切り開いていくと知っているから


上條「……ありがとう、上条さん」


僕と同じ名前の、ちょっぴり説教クサいけど、本当にカッコいい少年の物語を
これからも見守り続けたいと思っている



おしまい

コメント

コメントの投稿

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)