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女「だから車を」

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/17(木) 14:37:40.68 ID:hYpUCWm40
男 19歳

女 16歳。一昨年暮れから男とつきあう

晴 22歳。去年四月に男の近所に引っ越してくる。男の兄の元カノ?

宇深 20歳。ハルの妹

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/17(木) 14:49:34.57 ID:t+9cGf1k0 [1/30]
晴「手放そうと思って」

男「あんなに大事にしてたのに」

晴「うん」

男「もったいない」

晴「そうだけど」

晴「でも次は、停めるところがないし」

晴「それにけっこうかかるんだよ、維持費」

男「そんなもんか」

晴「君が免許を持っていたら、譲ってあげるんだどね」

男「ただで」

晴「こっちも生活がかかってるからね」

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/17(木) 14:54:35.93 ID:t+9cGf1k0 [2/30]
晴「それにしたって、君はいつだって暇だね」

男「まあ、まあまあ」

晴「今九時だよ」

男「そうだな」

晴「君に合わせて早起きしなきゃいけない私の身にもなってよ」

男「起きてたじゃない」

晴「寝巻だったでしょう」

男「それがどうした」

晴「簡単にレディの寝巻は見るもんじゃないよ」

男「あなたが寝巻で応対したんじゃないか」

晴「まあ、そうですけど」

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/17(木) 15:01:31.17 ID:t+9cGf1k0 [3/30]
晴「女ちゃんは」

男「今日は補習だって」

晴「そう」

男「暇なんだ」

晴「君たち二人と時間を過ごすのもやぶさかじゃないけど」

男「やぶさかいいたいんだろ」

晴「わかる?でも君は女ちゃんと一緒にいるのにやぶさかでないようにしないと」

男「まあ」

晴「女ちゃんはいい子だよ。本当に」

男「知ってるよ」

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/17(木) 15:05:20.65 ID:t+9cGf1k0 [4/30]
男「もう準備は済んだの」

晴「まだ、来月の話だからね」

男「来月なんてすぐだよ」

晴「うん。そうだね」

男「あなたが引っ越してきて、もう十か月なんだ」

晴「早かった?」

男「遅かったよ」

晴「ふふ。そう?」

男「来るのが、遅かったんだよ」

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/17(木) 15:08:18.26 ID:t+9cGf1k0 [5/30]
晴「まあね~。ちょっと手間取っちゃってさ」」

男「そうだろうけど」

晴「どうだった?」

男「何が」

晴「この、三年間」

男「ふうん」

晴「うん」

男「いろいろあったさ」

晴「そうなんだ。いろいろ、あるよね」

男「ほんと、いろいろあったよ」

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/17(木) 15:15:04.55 ID:t+9cGf1k0 [6/30]
晴「じゃあさ、洗車につきあってくれる」

男「洗車」

晴「その洗車じゃなくて」

男「わかってるよ」

晴「つきあってくれる?」

男「話の流れがよくわからないけど」

晴「話に流れなんてないよ。場の空気と一緒で」

男「ふうん。いつもみたくそこでするの」

晴「あれさ、けっこう苦情がきてるんだよね」

男「誰から」

晴「隣のおじいさんから」

男「まあ、誰だって苦情を入れる気がする」

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/17(木) 15:20:10.17 ID:t+9cGf1k0 [7/30]
晴「だから、今回は向こうのガソリンスタンドに行こうと思って」

男「帰りにラーメン食べていこうよ」

晴「奢れとかいうんでしょう」

男「奢ってくれないの」

晴「奢りますよ~。もちろん。日頃のお礼も兼ねて」

男「そうそう。そう来なくちゃ」

晴「骨の髄までしゃぶり尽くさないでよね」

男「しゃぶり尽くしてほしいんだ」

晴「勘弁してよ」

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/17(木) 15:24:22.45 ID:t+9cGf1k0 [9/30]
男「もう行くの」

晴「待って。コーヒー煎れるから」

男「俺紅茶」

晴「女ちゃんはさあ、コーヒー派、それとも紅茶派」

男「どうして」

晴「いいから」

男「というか、もう知ってるだろ」

晴「勘違いしてるかもしれないし」

男「コーヒーだよ」

晴「そっか~。やっぱり気が合うんだ」

男「そうだといいな」

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/17(木) 15:28:39.84 ID:t+9cGf1k0 [11/30]
晴「はい。どうぞ」

男「どうも」

晴「寒いね」

男「寒いよ」

晴「それでもわざわざ来たんだね」

男「暇だから」

晴「実はそんなこといって」

男「お前のことが好きなんだよ」

晴「おお」

男「冗談いや、冗談じゃない、けど」

晴「ふふ。うれしい」

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/17(木) 15:32:51.44 ID:t+9cGf1k0 [12/30]
宇「お隣、いいですか」

女「あ、うん。はい」

宇「偶然だね。学校の帰り?」

女「補習があって」

宇「大変だね」

女「大変ですよ」

宇「そうなんだ」

女「いつもはこのバスじゃないけど、買い物があるから」

宇「ふうん。ついていっても、いいかな」

女「もちろん。お願いします」

宇「ありがとう」

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/17(木) 15:37:33.07 ID:t+9cGf1k0 [14/30]
女「いいなあ。大学生」

宇「そう?」

女「うん」

宇「別に大して、面白くもないよ」

女「中学の時は、高校は楽しいところなんだと思ってた」

宇「どう?」

女「全然。つまらないし、面倒くさいし」

宇「大学だって変わらないよ」

女「そうなんですか」

宇「わたしも大学は面白いかな~と思ってた」

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/17(木) 15:53:59.31 ID:t+9cGf1k0 [15/30]
女「寒いですね」

宇「今晩から雪が降るって」

女「へえ」

宇「男くんと、部屋にこもってるのがいいよ」

女「そうですね。そうします」

宇「するんだ」

女「ジョークです」

宇「わたしも、ジョークだよ」

女「知ってますよ」

宇「かわいげがないな~。このこの」

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/17(木) 15:58:52.04 ID:t+9cGf1k0 [16/30]
晴「ガソリンスタンドのこういうところ、何ていうのか知らないけど」

男「ここ?」

晴「こうして座ってると、なんだか居心地悪いよね」

男「そうか」

晴「私たちはまたこうしてコーヒー飲んでるけど」

晴「ほら。店員さんは忙しなく動いてる」

男「店員」

晴「だって他に呼び方知らないんだもの」

男「スタンダー」

晴「面白いと思っていった?」

男「別に」

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/17(木) 16:03:16.49 ID:t+9cGf1k0 [17/30]
男「仕事だから、それは動くよ」

晴「あんなに一所懸命」

男「自分も動かなきゃいけないんじゃないかって」

晴「そう。そう思ってしまうよね」

晴「私のフリーター生活も、いつまで続くのかな」

男「いつまで続くの」

晴「ちょっと限界見えてきてるよね」

男「最近仕事してるって」

晴「少し、それに不定期だからね」

晴「難しいよ」

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/17(木) 16:17:54.11 ID:t+9cGf1k0 [19/30]
晴「何かいいバイトがあったら教えてよ」

男「そんなこといって、する気もないくせに」

晴「コンビニの店員とかは、ちょっと想像できないけどね」

男「俺にも想像できない」

晴「女ちゃんに貸してもらった小説なんだけど」

男「うん」

晴「主人公が古道具屋で働いてるやつ」

男「ああ、あれ」

晴「読んだの」

男「少し。触りだけ」

晴「そう」

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/17(木) 16:21:12.24 ID:t+9cGf1k0 [20/30]
晴「その古道具屋が、すごくフレンドリーなんだ」

男「フレンドリー」

晴「そう。店主とか、常連さんとか」

晴「そんなところがあったらいいなあって」

男「あるんじゃない」

晴「あるかな」

男「探せば」

晴「探して見つかるなら探すけどね」

男「探すの面倒だからな」

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/17(木) 16:33:57.75 ID:t+9cGf1k0 [22/30]
晴「じゃあ、たとえばガソリンスタンドの店員さん」

男「はあ」

晴「改めてスタンダー」

晴「私がガソリンスタンドで働いたら」

男「いまいちしっくりこないけど」

晴「練習しようか」

男「何の。ガソリンスタンドで働く?」

晴「いらっしゃいませー」

男「声が小さいよ」

晴「さすがの私も、ここでは大声出せない」

男「本物がいるから」

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/17(木) 16:37:01.03 ID:t+9cGf1k0 [23/30]
晴「じゃあ、もう一度」

男「いいよ。わかったから」

晴「吸い殻はありませんか」

男「最近聞かないな、それ」

晴「セルフが多いからね」

晴「でも人がいたら、必ず聞かれるよ」

男「吸い殻はありませんか?」

晴「いえ、ありません」

男「敬語なんだ」

晴「敬語だよ~。一応ね」

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/17(木) 16:47:00.31 ID:t+9cGf1k0 [24/30]
晴「窓を拭いてもらってるとき」

男「それもあんまり」

晴「あれってどういう顔をしていればいいんだろうね」

男「顔?」

晴「気にしてないような顔をすればいいのかな」

男「そんなの、見てないんじゃないの」

晴「私なら、見るよ」

男「あなたはな」

晴「特に私は美人だから」

男「ああ、はいはい」

晴「私は店員さんの顔をじっと見るようにしてるけどね」

男「本当にやってるんじゃないだろうな」

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/17(木) 16:53:30.03 ID:t+9cGf1k0 [25/30]
晴「最近はまあ、セルフが増えたから」

男「俺は車運転できないから」

晴「やってみるといいよ。こうして、じっと見るの」

男「本当にやってる?」

晴「本当にやってる」

男「はあ」

晴「でも大抵は無反応なんだけどね」

男「見てないの」

晴「そうなのかな。見えてないのかもね」

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/17(木) 17:07:39.23 ID:t+9cGf1k0 [26/30]
晴「たまに目が合ったと思うと、すぐに逸らすの」

男「それは逸らすよ」

晴「世の中には実は面白いことがいっぱいあって」

男「いっぱいあって」

晴「こう、ふと視線を下すとじっと見つめている女がいる」

男「滅多にないよ。というか、ないよ」

晴「それで結婚する」

男「どうして」

晴「面白いことに、いっぱい気づけるといいね」

男「そう」

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/17(木) 17:10:41.72 ID:t+9cGf1k0 [27/30]
晴「女ちゃんもいたらよかった」

男「そう?」

晴「ラーメン」

男「ああ」

晴「文句いわれるよ」

男「実は」

晴「ん?」

男「ちょっと喧嘩中」

晴「女ちゃんと?」

男「うん」

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/17(木) 17:17:59.78 ID:t+9cGf1k0 [28/30]
晴「どうして」

男「別に気に障るようなことをいったつもりはないんだ」

晴「難しいお歳頃ってやつ?」

男「さあ。わからない」

晴「16歳だからね」

男「子ども扱いすると怒るよ」

晴「いや、そうじゃなくて」

男「うん」

晴「君が鈍いのが原因かもね」

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/18(金) 00:51:35.82 ID:7nxIuutc0 [2/34]
男「それはどういう」

晴「さあ。どういうことだろうね」

男「おい」

晴「私たちもよく喧嘩したよ。些細なことでね」

男「そうだったけど」

晴「だけど二日を置かずに謝ってくるんだ。それなら最初から喧嘩するなっつうの」

男「ごまかしてるだろ」

晴「何が」

男「何って」

晴「・・・」

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/18(金) 02:47:01.74 ID:7nxIuutc0 [3/34]
晴「まあ、別にいいんだ。大したことじゃないし」

男「気になるよ」

晴「それはそのうちわかる。もしかしたらまったく関係ないかもしれないし」

男「はあ」

晴「とにかく私たちは、喧嘩しても絶対に仲直りした」

晴「だから、君たちも大丈夫」

晴「君たちが私たちみたくなるってわけじゃないけどね」

男「そんなに大喧嘩ってわけじゃないんだ」

晴「だったら、なおさらだよ」

男「そうだといいけど」

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/18(金) 09:24:14.29 ID:7nxIuutc0 [6/34]
晴「でもさ」

晴「思い出せないことは思い出さないんだよ」

男「ああ、うん」

晴「仲直り、できるといいね」

男「どうして」

晴「ん?」

男「どうしてそれでも、こはるは兄貴が好きだったの」

晴「それを訊くんだ」

男「訊くよ」

晴「別に、君が彼女を好きな理由と同じだと思うよ」

男「わからないよ」

晴「そういう、ことだよ」

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/18(金) 09:33:55.66 ID:7nxIuutc0 [7/34]
宇「じゃあ、わたしはこれで」

女「何かあるんですか」

宇「これ、これが待ってるから」

女「これ」

宇「甲斐性ないけどね」

女「今度お会いさせてもらってもいいですか」

宇「もちろん。いじめないであげてよね」

女「ふふ」

宇「そうそう」

女「はい」

宇「男くんのお兄さんと会ったことある?」

女「? ありますけど・・・」

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/18(金) 10:26:07.95 ID:7nxIuutc0 [8/34]
宇「どんな人だった」

女「それは宇深さんのほうが詳しいと思いますけど」

宇「わたしは、よく知らないんだ。お姉ちゃんが恥ずかしがるから」

女「そう、なんですか」

宇「どこにいるんだろうね」

女「何が」

宇「お兄さん。知らない?」

女「え、知ってます、よ」

宇「まあ、わたしが口を出せることではないんだけどね」

女「どこにいるんですか」

宇「それをわたしが訊いてるのに」

74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/18(金) 12:13:40.25 ID:7nxIuutc0 [9/34]
宇「じゃあね。またね」

女「ああ、はい」

宇「別れる挨拶って、するタイミングに気を遣うよね」

女「わかる」

宇「こういうのも、それに困るからなんだけど」

女「わたしに気を遣う必要はないんですよ。ましてや男にも」

宇「ふふ。そうだね」

女「またメールしますね」

宇「そうそう。メールでも電話でも、何でもしてよね」

女「毎日しますよ」

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/18(金) 13:10:50.89 ID:7nxIuutc0 [10/34]
宇「そう、こなくちゃ」

78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/18(金) 13:30:51.99 ID:7nxIuutc0 [11/34]
男「もうこの車は何年?」

晴「三年近いね」

男「ずっと知りたかったんだけど」

晴「何を?」

男「この車、どうしたの」

晴「ああ。いってなかったっけ」

男「まさか自分で買ったんじゃ」

晴「ううん。叔父さんに買ってもらったんだ」

男「ふうん」

晴「中古だけどね」

男「いい車だな」

晴「でしょう。惜しくもなるよね」

86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/18(金) 14:18:02.25 ID:7nxIuutc0 [15/34]
晴「本当は腕時計がほしかったんだ。叔父さんの」

男「俺もほしいよ」

晴「買ってあげようか」

男「いや、いい。女に買ってやれよ」

晴「そうだね。そうする」

男「車売るの、惜しいだろ」

晴「まあね。でもいいんだ」

男「そう」

晴「これは、思い出。君たちとの」

男「それなのに売るんだ」

晴「そうだから、売るんだよ。ちょっと臭いこといったかな」

男「臭いよ。すごく」

88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/02/18(金) 14:27:06.60 ID:7nxIuutc0 [17/34]
兄貴は頭のいい人だった

俺の知識は彼に依るところが大きくて、俺の知らないことを語る彼はとても楽しそうに見えた

彼は受験生になって

勉強をしなければならない、とても苦しんだ。たとえ普段はひょうきんに笑っていても

こはるはそれをとても心配した。もちろん俺も心配した

けれど、こつこつ勉強する俺の存在がそれに拍車をかけたのは、事実だった

彼は受験に失敗した

92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/18(金) 14:32:24.23 ID:7nxIuutc0 [18/34]
晴「今日は、ありがとう」

男「うん、俺も」

晴「早く仲直りするんだよ」

男「わかってる」

晴「あれ。雪、降ってきたね」

男「明日から寒波だって。今年一番の」

晴「先にいってよ。せっかく洗車したのに」

男「悪い」

晴「ま、いいんだけどさ。あれだったら、またつきあってもらうよ」

男「ああ、うん。喜んで」

93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/18(金) 14:43:18.40 ID:7nxIuutc0 [19/34]
晴「それとさ」

男「うん」

晴「女ちゃんのこと、高く買ってるみたいだけど」

晴「あんまり、信じ過ぎたらダメだよ」

男「何」

晴「いや、そうじゃなくてね」

晴「その、喧嘩して、それで彼氏が別の女のところに行っていたら、気分悪いもの」

男「だってお前じゃないか」

晴「そういうところが鈍いんだよ。私がいうのも何だけどね」

晴「とにかく、次に会うのはあなたたちが仲直りしてから」

男「よくわからないけど、わかったよ」

晴「じゃあね。バイバイ」

96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/18(金) 14:52:24.99 ID:7nxIuutc0 [21/34]
男「あ・・・」

女「待ってたよ」

男「雪降ってるのに」

女「だから、迎えにきた」

男「中に入ればよかったのに」

女「ううん。それに、今来たところだから」

男「嘘つくなよ。肩というか、二の腕が濡れてる」

女「ああ、ちょっとしくじったね」

男「凍えてるし」

女「いいんだ、別に。早く帰ろう」

男「ああ・・・、うん」

98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/02/18(金) 15:01:02.32 ID:7nxIuutc0 [23/34]
男「やっぱり、ずっと待ってたんだろ?」

女「どうしてそんなこと気にするの」

男「いや、だって」

女「あなたがハルさん家から出てきて、丁度わたしがいて。それでいいじゃない」

男「お前が風邪ひいたら嫌だから」

女「そう。そっか。でもそんなこと、気にしなくてもいいよ」

女「わたしがしたくてしてることなんだから」

男「そうやって鼻水たらしてたら気にもするよ」

女「だから、そういうことはこっそりいってよ」

男「ごめん」

99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/02/18(金) 15:08:08.08 ID:7nxIuutc0 [24/34]
男「その、まだ怒ってる?」

女「何が」

男「ごめん」

女「どうしてわたしが怒ったか、知ってるの」

男「いや、わからない」

女「知らないなら謝る必要はないよ。わたしにも誰でも」

男「ああ、ごめん」

女「わたしが悪いんだ。あなたは悪くないから」

女「だから、あなたが謝る必要はないんだ」

女「ごめんなさい」

100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/02/18(金) 15:17:52.92 ID:7nxIuutc0 [25/34]
男「そうやって謝られても、俺には何がなんだかわからないよ」

女「それでいいよ」

男「そう」

女「うん。わたしの問題だからね」

男「お前の問題だからって、俺が知らないのはおかしいよ」

女「どうして」

男「その、俺たちは仮にもつきあっているんだから、だから」

女「恥ずかしいことをいうね」

男「本当に思ってる」

女「そうか。そう本当に思っているんだ」

102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/02/18(金) 15:31:27.96 ID:7nxIuutc0 [26/34]
女「わたしはさ、あなたに隠し事をしないでとはいえないんだ」

女「だけど、だけどさ」

男「あの、女」

女「何」

男「何かあった?」

女「別に、何もないよ」

男「いってくれよ。何があったんだよ」

女「その、本当に何でもないんだ」

男「本当に?」

女「いや、大したことじゃない、大したことあるけど」

104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/02/18(金) 16:57:05.38 ID:7nxIuutc0 [27/34]
女「男はハルさんのこと、好きだよね」

男「いきなりどうした」

女「いいから」

男「・・・好きだよ」

女「そうだよね」

男「ああでも、そういう好きじゃなくて。人として」

女「人として?」

男「人間性というか」

女「いいんだ。そうして無理に理由をつけなくても」

男「そう」

女「わたしもハルさん、大好きだからさ」

105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/02/18(金) 17:08:18.70 ID:7nxIuutc0 [28/34]
女「男のお兄さんは、いまどこにいるの」

男「訊いたの」

女「訊いたのかもね」

男「大したことじゃないよ」

女「でもハルさんにとっては、大切なことだよね」

男「そう、だよ」

女「わたしは黙っていたあなたを責められないけど」

女「というか、黙っていたんだよね」

男「俺とこはるでなるべく話さないようにって」

女「そっか」

男「ああ。悪い」

女「謝ってほしいわけじゃないんだ」

女「黙っていてよかったんだ」

106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/02/18(金) 17:25:54.56 ID:7nxIuutc0 [29/34]
女「それもわたしに気を遣わせないようにってことなんだよね」

男「まあ、言い訳になるけど」

女「いいんだ、ありがとう」

女「でも、いい気分はしないよね」

男「ごめん」

女「さっきから謝ってばかりだね」

男「うん・・・」

女「ハルさんたちに何があったのかは知らないし、知りたくもないっていうとひどいけど」

女「わたしは、あなたに全部任せる」

女「だから頑張って」

男「頑張っては野暮だよ」

女「ふふ。そうだったね」

107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/02/18(金) 17:32:56.63 ID:7nxIuutc0 [30/34]
女「じゃあ、わたしはこれで帰るよ」

男「家まで送っていくよ」

女「いい。一人で帰りたい」

女「そうだ」

男「何」

女「男は、どこにも行かないでね」

男「当たり前だろ」

女「それを聞いて安心した」

男「女」

女「何」

男「泣いてるよ」

女「これはその、雪だよ」

男「うそつけ」

女「ふふ。またね」

後あんまり唇噛んでると、血が出るよ

108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/02/18(金) 17:38:52.76 ID:7nxIuutc0 [31/34]
男「こはる」

晴「男くん」

男「泣いてるの」

晴「泣いてないよ」

男「でも涙が出てる」

晴「これは汗だよ」

男「うそ」

晴「男くん」

男「何」

晴「男くんは女の子を不幸にしちゃ、だめだゾ」

男「・・・何をいってるんだよ」

109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/02/18(金) 18:00:00.14 ID:7nxIuutc0 [32/34]
兄貴は浪人して、近所の祖母の家に居候することになった

こはるは殆ど毎日通っていたようだ

ある日寄ってみると兄貴は机に突っ伏していて、こはるは部屋の隅から兄貴を眺めていた

こはるは大学には行かなかった

やりたくもないことをやるのは苦痛だ。特に兄貴のような人間にとっては

あなたのお兄さんは、本当はすごい人なんだよ。そんなこと、とっくの前から知っていた

8月のある日から、兄貴は家に帰ってこなくなった

捜索願いを出すほどでもない。兄貴には貯金があった

それに母は何かを知ったふうだった

それでもこはるは悲しんだ。すごく。想像するのもつらいくらいに

数日たって、こはるは俺の前から姿を消した。三年と、半年前のことだ



おわり

110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/02/18(金) 18:00:37.43 ID:7nxIuutc0 [33/34]
よし。今回は落としてくれ

116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/02/18(金) 18:32:43.44 ID:7nxIuutc0 [34/34]
まあ後二つ、つきあってくれよ

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