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女「わたしメイビー」

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 10:17:53.64 ID:MoStqxNj0 [1/49]
男「・・・」

男「・・・あ」

男(制服だ)

女「あ、男。今帰り?」

男「ああ、うん。そんなとこ」

女「そっか」

男「うん」

女「どこに行ってたの」

男「コンビニに。腹、減ったから」

女「そう」

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 10:26:33.75 ID:MoStqxNj0 [2/49]
女「また学校さぼったの」

男「どうして」

女「手ぶらで学校行く?」

男「行くかもしれない」

女「行かないでしょう」

男「は、はい」

女「ごめんね。わたしのせいかな」

男「何が」

女「学校さぼるの、男って高校の時までそんなことしなかったよね」

男「関係、ないよ」

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 10:32:19.17 ID:MoStqxNj0
女「わたしはよくさぼるから」

男「ああ」

女「その影響かと」

男「違うよ。違う」

女「そう。なら、いいんだけど」

男「うん」

女「さぼるのも大概にね」

男「お前もな」

女「それをいわれると、苦しいんだけど」

男「だろうな」

女「うん」

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 10:38:35.01 ID:MoStqxNj0
女「どうしてさっきからにやついてるの」

男「俺か?」

女「うん」

男「別に。何でもないよ」

女「そう?」

男「ああ、そう」

女「それにしては随分気持ち悪いよ」

男「いってくれるな」

女「鏡みてきたら」

男「いや、いいよ」

女「何でもないわりには変な笑い方をするね」

男「どうも」

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 10:43:45.74 ID:MoStqxNj0
女「まさかわたしの制服姿に見とれてたりして」

男(あたり)

女「そうなの」

男「いや」

女「なら、いいんだけど」

男「どうして」

女「わたし制服嫌いだから」

男「ああ」

女「好きだといわれると、ずっと着ていたくなるから」

男「ふうん」

女「あなたがそうしてほしいというなら、まんざらでもないけどね」

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 10:50:40.86 ID:MoStqxNj0
女「あの人は」

男「ん」

女「まだ帰ってこないんだ」

男「そう、だな」

女「随分と長い帰省だね」

男「居心地がいいんだって。ごはんも出てくるし」

女「ハルさんも、まだ子どもなんだね」

男「うーん。そうかな」

女「お父さんとも仲直りしたの」

男「いや、そういうことでもないらしい」

女「そう」

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 11:00:08.86 ID:MoStqxNj0
女「こんなものを預かってるんだけど」

男「お前もか。俺も」

女「合鍵を渡すなんて、不用心だよね」

男「信頼してくれてるんじゃないの」

女「なら、うれしいんだけど」

男「結局一度も使ってないけど」

女「さすがにね」

男「今日、行ってみる?」

女「ふうん。いや、いいよ。あんまり人に部屋に上がられるのは、いい気分しないから」

男「そう」

女「うん」

男「秘密基地感覚で使ってくれって」

女「気持ちはありがたいんだけど」

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 11:10:52.30 ID:MoStqxNj0
女「じゃあ、後で行くから。着替えてね」

男「別に見とれてたわけじゃ」

女「ふふ。そう」

男「うん」

女「なら安心して着替えられるよ」

男「ああ、そうして」

女「なんか、注文ある?」

男「なんの」

女「服装の、出来る範囲で答えてあげるよ」

男「いや、お前の好きに」

女「わかった。楽しみにね」

男「ああ」

女「バイバイ」

男(意気地がないのは変わらないか)

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 11:20:02.95 ID:MoStqxNj0
女「で」

男「ああ、うん」

女「何しようか」

男「何しよう」

女「やることないよね」

男「ゲームする?」

女「それならわたしの家に行こうか」

男「うーん。それはそれで」

女「尻込みする」

男「そうだな」

女「まあ、そうだろうね」

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 12:25:16.00 ID:MoStqxNj0
女「わたしはいいんだよ。これで」

男「前もそんな会話したな」

女「あなたが暇そうだから」

男「ああ、すまん」

女「別に謝らなくても」

男「うん」

女「彼女としては不甲斐無い限りだよ」

男「そんなものか」

女「あなたがどこかへ行ってしまうと考えたら、いやだもの」

男「そんなこと、あるわけないだろ。ないよ」

女「冗談だよ」

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 12:32:00.75 ID:MoStqxNj0
女「来週あなたの大学で演劇祭があるんだって」

男「そうだったな」

女「他人事なの」

男「というかなんで知ってるの」

女「宇深さんに訊いたよ」

男「ああ、そう」

女「学部対抗で演劇をするなんて、面白そうじゃない」

男「まあ」

女「わたしも行っていい」

男「別に、いいけど」

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 12:36:21.24 ID:MoStqxNj0
女「その準備があるからって、昨日連絡しなかったんだけど」

男「ふうん」

女「行ってないの」

男「い、行ってない」

女「そうなの」

男「うん」

女「仕様がないといいたいんだけれど」

男「はあ」

女「わたしも人のこといえないからね」

男「理解があって助かる」

女「でも、次からは行ってあげてね」

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 12:46:13.83 ID:MoStqxNj0
女「じゃあ、来週はそれで」

男「ふん」

女「楽しみだね」

男「そう」

女「演劇といえば男が小学六年のときにやった」

男「いいよ、別に。思い出さなくても」

女「面白かったよ。脚本家になれるよ」

男「昔のことだから、いいんだ」

女「ふふ。期待してるよ」

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 12:55:00.34 ID:MoStqxNj0
女「そうだ。わかった」

男「何が」

女「わたし、一旦家に戻るから」

男「はあ」

女「寒くない格好で迎えに来て」

男「それってどの程度」

女「エベレストに放り出されても生還できるくらい」

男「無理だろ・・・」

女「まあ、とりあえず、出来る限りの格好をしてきて」

男「わかったけど。どうした、突然」

女「面白いことをしようと思って」

男「面白いこと」

女「うん。じゃあね」

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 13:03:25.26 ID:MoStqxNj0
男「ごめんください」

女「ちょっと、もう少し待ってて」

男「いいけど」

女「悪いね」

男「寒いよ」

女「中に入ってて」

男「あー、いいや。お母さんいるだろ」

女「お母さんに聞こえてるよ」

男「すみません」

女「いいって。寒くない格好してきた?」

男「この天気じゃ、どうしたって寒いよ」

女「そう。わかった」

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 13:14:11.27 ID:MoStqxNj0
女「お待たせ」

男「すごいな」

女「どうしても寒いというから」

男「そうだけど」

女「もう少しかわいい格好でいてほしかったんだ」

男「別に」

女「ふふ。なら、いいでしょう」

男「ふん」

女「じゃあ、行こうよ。こんなところに突っ立ってないで」

男「どこに行くの」

女「そこ。そこの空き地」

男「え、ああ」

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 13:17:12.74 ID:MoStqxNj0
女「寒そうだね」

男「寒いよ」

女「だからいったのに」

男「まさかお前が、そんな格好で来るとは思わなかったし」

女「おかげで全然寒くないよ」

男「そう。よかった」

女「ありがとう」

男「どういたしまして」

女「それ、口癖?」

男「どちらかというと、皮肉だな」

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 13:19:55.49 ID:MoStqxNj0
男「で、こんなところで何するの」

女「かまくらを」

男「はい?」

女「かまくらを、つくろうと思って」

男「はあ、かまくら」

女「うん」

男「どうして急に」

女「暇なんでしょう」

男「まあ、そうだけど」

女「お願いします」

男「別に、いいんだけどさ」

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 13:22:35.41 ID:MoStqxNj0
女「通学のバスに乗っていたら」

男「うん」

女「かまくらの話をしていた女の子がいたから」

男「今時」

女「うん。多分わたしより一つ、年上だけどね」

男「はあ」

女「高校生なら、全員年下のように思えるよ」

男「まあ、そうだろうな」

女「うん」

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 13:26:30.35 ID:MoStqxNj0
女「弟とかまくらをつくったら」

男「うん」

女「数日して除雪機に轢かれたんだって」

男「俺たちのもそうなりそうだけどな」

女「まあ、いいじゃない」

男「うん」

女「それにしてもかまくらって」

男「何」

女「鎌倉でいいのかな」

男「いいんじゃないの」

女「そっか。もっとそれっぽい字があるんだと思ってたけど」

男「案外、なんでも適当なんだよ」

女「そう、みたいだね」

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 14:44:27.46 ID:MoStqxNj0
男「ここだって一応所有地だから、すぐに壊されると思うぞ」

女「いいの。別に。つくったのなら」

男「そう」

女「昔憧れてた」

男「かまくらに?」

女「そう。なかなか、つくるのも大変そうだったから」

男「まあな」

女「つくったとしても、人一人も入れないような小さなものだったり」

女「だから、やってみたいんだ」

男「お好きに。いつでも協力するよ」

女「ありがとう」

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 14:53:33.59 ID:MoStqxNj0
女「小学生の時とか」

男「ん?」

女「何やっても楽しかったよね」

男「そうか?」

女「うん。近所の神社で午後を潰したよ」

男「なんででも遊べたから」

女「それが今では、彼女といても暇だというんだから」

男「ごめん」

女「ジョークだって」

男「うん」

女「こうしてかまくらつくったりするのも、たまには悪くないんじゃないかな」

男「ああ、そうだな」

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 14:56:25.84 ID:MoStqxNj0
男「でも、寒いよ」

女「なんか、すごい雪になってきたね」

男「うう、さむ」

女「えい」

男「痛」

女「だから、厚着してきてっていったのに」

男「そんな氷みたいな雪玉投げるなよ」

女「ふふ。ごめん」

男「まったく」

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 15:00:28.24 ID:MoStqxNj0
女「歳をとるとさ、滅多なことじゃ楽しいと思わないよね」

男「例えば」

女「あなたが今、高林くんとチャンバラしたって、むなしいだけでしょう」

男「してみないとなんともいえないけど」

女「チャンバラしようとも思わないよね」

男「この歳だから」

女「そういう、何にしても無関心になることが大人になることだったら」

男「うん」

女「大人になんかなりたくないよね」

男「・・・そう」

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 15:28:47.21 ID:MoStqxNj0
女「わたしから見るとあなたたちはすごく大人なんだ」

男「そうか」

女「ハルさんは、手伝ってくれるかな」

男「かまくらを?」

女「うん」

男「そりゃあ手伝うだろ。お前が喜ぶなら」

女「わたしが関係なかったら」

男「さあ。まあ、あの人なら一人で黙々とつくってそうだけど」

女「そう、かな」

男「そうだよ。きっと一晩で城が出来上がってるよ」

女「ふふ。傑作」

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 15:35:04.37 ID:MoStqxNj0
女「かまくらというのは山をつくって穴を空けるのかな。それとも穴ができるようにして積むのかな」

男「山を掘った方が頑丈にできそうだけど」

女「でも本当は氷のブロックを積んでたりするよね」

男「氷のブロックはないし、俺はここに住む気もない」

女「じゃあ、掘ろうか」

男「雪、もってきて」

女「そこらじゅうにあるよ」

男「俺、手袋してないし」

女「今からしてきて」

男「はいはい」

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 15:41:28.10 ID:MoStqxNj0
男「随分積んだな」

女「これで二人、入れるかな」

男「充分だろ」

女「じゃあ、これで穴掘ってくれる。周りを固めるから」

男「ああ」

女「雪もひどくなってきたし、早くしないと」

男「鼻水出てるよ」

女「そういうことはこっそり教えて」

男「だって俺たちしかいないだろ」

女「そうだけれど」

男「かわいいやつ」

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 15:54:04.08 ID:MoStqxNj0
男「ほら。これでいいか」

女「うん。ありがとう」

男「これって崩れたりしないの」

女「崩れたら、その時はその時」

男「いやだよ」

女「だよね。まあ、一応崩れないように固めてるつもり」

男「随分いい仕事だな」

女「ふふ。どうも」

男「それになんだか、楽しそう」

女「そう?」

男「うん」

それはきっとあなたといるからだよ

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 16:15:40.23 ID:MoStqxNj0
女「出来た」

男「うん」

女「けっこう、すごいんじゃない」

男「うん。すごい」

女「早速入ってみようよ」

男「崩れたりしないだろうな」

女「だいじょうぶだって。ほら」

男「ああ、うん」

女「見た目より広いよ」

男「それは俺の仕事を褒めてほしいな」

女「さすがだね」

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 16:30:32.30 ID:MoStqxNj0
男「けっこう」

女「いいでしょう」

男「うん。丈夫そう」

女「つくった甲斐、あったね」

男「すごいな」

女「少なくともわたしの人生で最もよくできたかまくらだね」

男「そんなにかまくらつくったの」

女「ううん。二、三個」

男「じゃあ、比較にならないじゃないか」

女「でも完成したのはこれが初めてかな」

男「そう」

女「でも、いいじゃない。わたしが満足しているんだから」

男「ああ、うん。そうだな」

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 16:37:46.02 ID:MoStqxNj0
男「で、つくったのはいいけど」

女「ああ、うん。ちょっと待ってて」

男「こんなところに置き去りにするのか」

女「少し、我慢して」

男「まあ、いいけど」

女「それとも少し小芝居打とうか」

男「どうぞ」

女「いいか、男。寝るんじゃないぞ。寝たら終わりだ」

男「あー、うん。いいよ。行ってきて」

女「じゃあ、待っててね」

男「ああ。早くな」

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 18:25:54.01 ID:MoStqxNj0
女「お待たせ」

男「なに。何持って来たの」

女「カセットコンロとアルコールランプ」

男「見ればわかるけど」

女「どっちの方が勝手がいいのかわからなかったから」

男「それにしたって」

女「おもちでも、焼こうと思って」

男「おもち」

女「憧れだから」

男「まあ、好きにすればいいけど」

女「好きに、するよ」

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 18:30:52.25 ID:MoStqxNj0
女「まずアルコールランプ」

男「それじゃあ、餅は焼けないだろ」

女「違うよ。これは明り」

男「はあ」

女「カセットコンロを明りにするのは、なんだかそっけないから」

男「そうか?」

女「そうだよ」

男「この間の、あのろうそくはどうした」

女「ああ、忘れてた。あれを持って来ればよかったね」

男「あの人が泣くよ」

女「今度からはあれにするね」

男「今度はないと思うけどな」

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 18:35:42.19 ID:MoStqxNj0
女「お腹空いてる?」

男「空いてるよ。コンビニ弁当も食いそびれたし」

女「じゃあ、早速焼こうか」

男「なんでアルコールランプで焼こうとしてるの」

女「この子の限界を試してみようと思って」

男「いいよ。いい。最初からコンロで焼いて」

女「案外いけるかもよ?」

男「無理だよ。というかこの子って」

女「けっこう愛着あるんだ。このランプ」

男「そんなものに愛着もつなよ」

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 18:47:11.39 ID:MoStqxNj0
女「冗談はさておいてね」

男「そう」

女「昔こうして、髪の毛を導火線にして遊んでる子、いなかった?」

男「いないよ。そんな、変な奴」

女「わたしのクラスにいたんだ。その時はちょっと馬鹿にしたけど、実際面白いと思った」

男「ふうん」

女「あるよね。そういう、素直になれないことって」

男「ある、かな」

女「わたしは、よくあった。よくあってそれでも素直になれなかった」

男「うん」

女「別に素直でいることが、いいことではないんだけどね」

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 18:54:01.24 ID:MoStqxNj0
女「やっぱりアルコールランプじゃ、きついね」

男「わかってたことだろ」

女「そうだけど。じゃあ、カセットコンロにチェンジ」

男「お腹減ったよ」

女「チョコレートなら持ってる」

男「くれ」

女「はい。それにしてもすごい、吹雪みたくなってきたね」

男「帰れないなんて勘弁だからな」

女「さすがに、それはないよ。うちまで徒歩一分だしね」

男「でも、寒いよ」

女「でもまあ、まんざらでもないんだけどね」

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 19:04:13.99 ID:MoStqxNj0
女「はい。焼けたよ」

男「何かつけるものはないの」

女「さすがにそこまでは持ってこられなかった」

男「まあ、いいけど」

女「おもちだけで食べるのは味気ないか」

男「腹減ってるし、背に腹は代えられない」

女「遭難してるみたいだね」

男「近いだろ」

女「もう少し晴れてる日にすればよかったか」

男「いや、いいんだ。別に」

女「ふふ。ありがとう」

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 19:14:08.44 ID:MoStqxNj0
男「お前は、食べないの」

女「うん。何もつけない餅は、さすがに」

男「俺がこうして食ってるのに」

女「ごめんね。わたしの憧れは焼く、までなんだ」

男「じゃあ、これももらうぞ」

女「どうぞ」

男「・・・」

女「・・・」

女「おいしい?」

男「ああ、うん。まあおいしいよ」

女「そう。よかった」

男「うん」

女「結婚したら、こんな感じなのかな」

男「何を突然」

女「冗談」

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/24(月) 21:46:12.58 ID:MoStqxNj0 [47/49]
男「結婚して、遭難するの」

女「したら?」

男「いやだよ」

女「うん。そうだよね」

男「結婚するの」

女「するといったら」

男「返事は5年後じゃなかった」

女「段々恐くなってきて」

男「何が」

女「あなたが、わたしと離れてしまうかもって」

男「そう」

女「そう」

68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/25(火) 01:44:48.67 ID:Mu7tJuZR0 [2/26]
男「冗談だって、いってなかった」

女「冗談だと思った?」

男「お前がいうから」

女「いったよ」

男「よくよく考えたら、お前が今結婚してくれるといっても、実際するのはもっと後なんだ」

女「まあ、そうだね」

男「だから、いいよ」

女「何が」

男「結婚してくれるって、無理にいってくれなくても」

女「そう」

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/25(火) 02:27:44.09 ID:Mu7tJuZR0 [3/26]
女「アルコールランプでも随分暖かくなるね」

男「ほとんどさっきのガスコンロだけどな」

女「こうして温めてもかまくらは融けないんだ」

男「外から温めるのと中からじゃ、違うんじゃないの」

女「そう、かな」

男「多分」

女「中から温めると融けないのかしら」

男「わからないけど、外から温めたらすぐに崩れそうな気がする」

女「まあ、確かに」

男「というか、本当に大丈夫だろうな」

女「ここで崩れるのは、さすがにいやだね」

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/25(火) 02:30:31.08 ID:Mu7tJuZR0 [4/26]
>>69
合ってる。同じ口ぶりだな

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/25(火) 02:38:12.84 ID:Mu7tJuZR0 [5/26]
女「じゃあ、こうして」

男「あ」

女「手を握るのは」

男「あ、ああ」

女「中から、それとも外から」

男「これは」

女「うん」

男「中からだよ」

女「そっか」

女「融けないんだ」

男「融けない、多分」

女「多分?」

男「いや、絶対」

女「そう」

74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/25(火) 02:58:23.25 ID:Mu7tJuZR0 [6/26]
女「少し汗ばんでるね」

男「ここ、暑いから」

女「本当?」

男「お前だって」

女「恥ずかしいことしてるって自覚はあるよ」

男「恥ずかしいよ。すごく」

女「でも、もう少し。後少しでいいから、こうしていさせてください」

女「融けないで、ください」

男「・・・うん」

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/25(火) 03:01:41.78 ID:Mu7tJuZR0 [7/26]
女「ありがとう」

男「ああ、うん」

女「かまくらをつくったのは、実はこういう理由」

男「こういう」

女「その、手をつなぎたかったんだ」

男「そんなの、いつでもすればいいのに」

女「恥ずかしいよ」

男「まあ」

女「男だって、いやでしょう」

男「いや、別に・・・」

77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/25(火) 03:18:44.88 ID:Mu7tJuZR0 [9/26]
男「意外とあっさり」

女「もっとつないでいてほしかった?」

男「欲をいえば」

女「ふふ。また今度ね」

男「融けないで、というのは」

女「うん?」

男「前から考えてたの」

女「決め台詞みたいに?」

男「そう」

女「いや、今考えるとすごく恥ずかしいことをいったかな」

男「録音しておけばよかった」

女「そう。いってよかった」

87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/25(火) 14:30:37.72 ID:Mu7tJuZR0 [12/26]
女「寒いね」

男「寒いよ、寒い」

女「帰ろうか」

男「今何時」

女「さあ。携帯も置いてきちゃったし」

男「そう」

女「もう8時近いんじゃないかな。作り始めたの、5時過ぎだったしね」

男「そう考えると意外と短いんだな」

女「じゃあ、もっとここにいる?」

男「いや、いいよ。帰ろう」

女「ふふ」

88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/25(火) 14:34:30.94 ID:Mu7tJuZR0 [13/26]
女「同級生に」

男「ん?」

女「同級生にさ、ああいう話をすると」

男「ああいう話って」

女「ほら、大人がうんたらって」

男「ああ、うん」

女「馬鹿にされる」

男「ふん」

女「というか、うざがられる」

女「そうじゃない」

男「そう、かな」

女「あなたやハルさんとしか、あんな話はできない」

女「あなたは内心、うざがっているのかもしれない」

89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/25(火) 14:37:34.23 ID:Mu7tJuZR0 [14/26]
女「だから、いってね」

男「何」

女「そういう話、聞くのいやだったら」

女「わたし、あなたに嫌われるのが、一番恐いんだ」

男「・・・」

男「俺は人に気を遣うお前なんていやだよ」

女「そう」

男「うん」

女「ありがとう」

男「うん」

90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/25(火) 14:54:47.39 ID:Mu7tJuZR0 [15/26]
女「ほら、手」

男「ああ、うん」

女「よいしょ」

男「こういうことは俺がするべきなんじゃないか」

女「別にわたしは、あなたに引っ張り上げられたいわけじゃないから」

男「そう」

女「荷物は、また明日にでも取りに来る」

男「ああ、うん」

女「星とか、見る?」

男「たまに。たまたま夜に外出て、晴れていたら」

女「そっか」

91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/25(火) 15:06:51.23 ID:Mu7tJuZR0 [16/26]
女「今日は目が見えてないから」

男「うん」

女「星、見える?」

男「まあ、ぼちぼち」

女「ぼちぼちか」

男「ああ」

女「あなたが見える以上に星というのは、あるんだ」

男「まあ、そうだろうな」

女「殆ど見えていないわたしと、あなたじゃ大差ないように思えない」

男「そうかもしれない」

女「でも、見えてるだけいいよね」

92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/25(火) 15:10:27.34 ID:Mu7tJuZR0 [17/26]
女「昔こういう児童絵本があって」

男「どういう」

女「空にはてはあるのか、ないのか」

男「ふうん」

女「その本では、はてがあるから夜空は暗いって、そういう落ちだったけど」

男「うん」

女「本当は遠い星は暗くて見えないだけなんだよね」

男「そうなの」

女「うん」

女「まあ、宇宙に始まりがあるからって、そういう理由もあるけど」

女「ここらへんは、男の子なら詳しいんじゃない」

男「まあ、ちょっと」

93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/25(火) 15:39:56.29 ID:Mu7tJuZR0 [18/26]
女「わたしには見えていなくても、あなたに見えているのなら」

女「それでいいんじゃないかって」

男「コンタクトつければいいのに」

女「ロマンがないなあ」

男「ごめん」

女「ま、いいんだけどさ」

男「いいの」

女「うん。いい。帰ろう?」

男「ああ、うん」

男「明日、片付け手伝いにくるから」

女「そう。ありがとう」

94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/25(火) 15:45:02.09 ID:Mu7tJuZR0 [19/26]
男「あの、女」

女「ん?何」

男「その、いってなかったことが」

女「何」

男「いってなかったって、お前から聞いて。俺はずっといったものだと思ってた」

女「うん」

男「好きです」

女「そう」

男「今までも、これからも」

女「・・・臭いよ。臭い」

女「でもその言葉を、ずっと待ってた」

女「行こう」

男「うん・・・」

95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/25(火) 15:52:09.29 ID:Mu7tJuZR0 [20/26]
晴「で、どうだった」

男「何、何が」

晴「私のいない間、お楽しみだったんじゃないの」

女「お楽しみ」

晴「やったんでしょう」

女「やってません」

晴「うそだあ。部屋に証拠があったよ」

女「あなたの部屋に一度も入ってないし、あなたの処理物じゃないんですか」

晴「処理物て」

男「生臭いイントネーションだな」

晴「それは本当にそう思ってるの」

男「あなたの判断にお任せします」

96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/25(火) 15:59:48.71 ID:Mu7tJuZR0 [21/26]
女「せっかくさみしかった、帰ってきてよかったといおうと思ったのに」

晴「何、その永遠に帰ってこない感じは」

女「さあ」

晴「まあ、なんだか。君たちといる方が落ち着くよ」

男「俺たちはそうでもなかったりして」

晴「邪魔だったらいってね」

女「意地悪いわないの」

晴「けっこう疲れたよ」

女「その割に長い帰省だったね」

晴「まあね。妹共もうるさいし」

男「妹共」

97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/25(火) 16:04:37.27 ID:Mu7tJuZR0 [22/26]
女「お土産は」

晴「お土産っていうほどでもないけど」

男「何、これ」

晴「コンドーム」

女「あう・・・」

晴「嘘うそ。お菓子だよ」

男「てっきり男ができたのかと思った」

晴「私にできると思う」

男「いや」

晴「ちょっと」

男「自分で突っ込むんだ」

晴「自分しか庇ってくれない」

女「大変だね」

98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/25(火) 16:08:53.38 ID:Mu7tJuZR0 [23/26]
晴「代わりに私がいなかった間のことを話してもらおう」

男「なんかあった?」

女「ない、かな。ただ日常が過ぎていった感じ」

晴「またまたそんなこといって」

女「もういいよ」

晴「飽きられたよ」

男「まあ、難しい女だから」

女「そんな風に思ってるの」

晴「お、喧嘩かい」

男「お、思ってないよ。冗談じょうだん」

女「そう」

99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/25(火) 16:12:05.89 ID:Mu7tJuZR0 [24/26]
女「男に」

晴「なに?」

女「好きっていってもらえた」

晴「おお、やるなあ。このこの~」

男「ちょっと。わかったから」

女「それだけかな。後、かまくらつくった」

晴「へえ、かまくら」

女「うん」

晴「いいなあ」

男「いいの」

晴「うん。憧れだよね」

女「そう。憧れ」

100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/25(火) 16:18:29.40 ID:Mu7tJuZR0 [25/26]
晴「その、つくったかまくらはどうしたの」

女「翌日荷物を取りに行ったら」

晴「うん」

女「荷物だけ丁寧に取り出されてて、取り壊されてた」

晴「ああ」

晴「そう」

女「うん」

晴「私もつくりたいなあ」

男「ほらな」

女「そうだね」

晴「何が」

女「ううん。またハルさんもつくろうね。かまくら」

晴「え。ああ、うん」

女「ふふ」

おわり

101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/25(火) 16:23:15.19 ID:Mu7tJuZR0 [26/26]
終わりです
保守してくれた人、ありがとう

なんだか山も、落ちもない気がするけどごめんなさい


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