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唯「憂とちゅっちゅしないと生きていけない呪い掛けられた…。」

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/21(金) 17:38:09.05 ID:X/cVYk7b0 [1/33]
―――――
―――
――

唯「ということで、あずにゃんを家で飼うことになりました!」

憂「これでお姉ちゃんが生きていけるね!」

梓「縛らなくてもいいじゃないですか……」

唯「逃げない?」

梓「むしろそのちゅっちゅに混ぜて欲しいくらいです」

憂「縛ってるのも可哀想だし、解いてあげようか?」

唯「うーん、でもあずにゃんがちゅっちゅに参加したらわたしきっと死んじゃうよ、
  あくまでもあずにゃんは傍観者じゃないと」

梓「それでもかまいません! わたしおとなしく見てますから!」

唯「よしよし、なら解いてあげよう」

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/21(金) 17:41:29.03 ID:X/cVYk7b0 [2/33]
唯「はさみで切っちゃっていいよね、あずにゃん、危ないから動かないでね」

梓「はい、わかりました」

バツン

梓「ふう、これで自由の身だ……」

憂「ごめんね、梓ちゃん」

梓「ほら、唯先輩と憂はちゅっちゅしなきゃ、命がかかってるんだから」

唯「あ、そうだね、ういー、ちゅー」

憂「ん……ちゅ///」

梓「もっとやれい」クチュクチュ

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/21(金) 17:45:59.08 ID:X/cVYk7b0
唯「はむ……ぷはっ……はぁ……、これって一日どれぐらいしないといけないんだろ……」

憂「わかんないけど……で、出来るだけたくさんしたほうがいいんじゃないかな?」

唯「えへへ、そうだね……ちゅ」

憂「おねえひゃ……」ぎゅっ

唯「うい、かわいい……」ぐいっ

憂「ちょ、おねえちゃ……!!」

どたーん!

憂「おしたおすなら、いってよ……もう」


梓「もっとやれい」クチュクチュ

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/21(金) 17:55:26.20 ID:X/cVYk7b0

唯「ごめん、つい……んむっ……///」

憂「れろ……ちゅう……///」

唯「はぁ……生きるためにちゅーしてるはずなのに、生きがいになりそうだよう……ういぃ……」

憂「おねえちゃあん……」

唯「ういー……」ぎゅっ

梓「もっとやれいィグッ」ビクンビクッ

―――――
―――
――

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/21(金) 17:59:11.06 ID:X/cVYk7b0
よくじつ!

律「なるほど、唯が憂ちゃんとちゅっちゅしてないと生きていけない呪いをかけられた、と」

憂「はい、そうなんです……んむっ///」

唯「憂、口がお留守だよー」

律「梓、お前はなんだ」

梓「なんか、ふたりのちゅっちゅを見てないとダメらしいです。それも唯先輩の呪いの一部だとか」クチュクチュ

律「そうか、指止めろ」

梓「はい」フキフキ

律「お前その制服クリーニング出して来いよ」

澪「」

紬「あぁ、澪ちゃんが状況についていけてないわ!」

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/21(金) 18:03:25.61 ID:X/cVYk7b0

律「とりあえず呪いってのは、なんだ、どうしてそうなったんだ」

唯憂「ちゅっちゅ」

律「聞いちゃいねえ」

紬「金曜日は普通だったから……土日の間に何かがあったのよね」

律「まぁ、そう考えるのが自然だろうな、梓、何か知らないのか?」

梓「え? 知りませんよ へっへwww」

律「中野、何か知らないのか?」

梓「あ、え、し、しりませ……」

律「ん? よく聞こえないな」

紬「梓ちゃん?」ニッコォォ

梓「実はですね!」

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/21(金) 18:11:32.05 ID:X/cVYk7b0

梓「あれは……日曜日の昼のこと……平沢家に遊びに行ったときのことです」

梓「このときはまだ、唯先輩に呪いというものにはかかっていませんでした」

律「ふむふむ」

梓「それで、三人で平沢家の近くの神社にお参りに行こうという話になったわけです」

梓「わたしたちはそれぞれ思い思いの願い事をして、がらがら鳴らしました」

紬「それで?」

梓「唯先輩と憂のちゅっちゅを見続けられたらなぁって、ちょっと切実に願っただけなのに……」

律「お前じゃねえか!!!」

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/21(金) 18:19:59.66 ID:X/cVYk7b0
梓「でも、見てくださいよ、誰も困ってませんよ?」

唯「ういぃー……ちゅー」

憂「んっ……おねえちゃあん……」

梓「ほら」ハァハァ

律「いや、けいおん部的にはめちゃくちゃ困る」

澪「お、オカルトか! オカルトなのか!」

紬「澪ちゃんおちついて!」

和「やれやれ……まぁ、いつものことだけど」

律「いつものことなのかこれ」

きーんこーんかーんこーん……

律「あー、授業始まる……、各自問題解決のために案を考えておくこと! 解散!」

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/21(金) 18:30:46.59 ID:X/cVYk7b0
ガラッ

さわ子「はーいみんな座ってー」

さわ子「……なんで憂ちゃんと梓ちゃんがいるの……?」

唯「どうぞお構いなくー♪ んーちゅーっ」

憂「は、恥ずかしいよう……ちゅう……///」

梓「もっとやれい」クチュクチュ

さわ子「とりあえず梓ちゃんは手を止めて」

梓「ハイ」フキフキ

さわ子「二人とも、早く自分の教室に戻りなさいね、全く……」

和「あの、山中先生」

さわ子「何? 真鍋さん」

和「唯と憂は梓ちゃんの前でキスをしていないと死んでしまう呪いにかかってしまったそうです」

さわ子「何を言ってるのこの子」

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/21(金) 18:40:18.31 ID:X/cVYk7b0

さわ子「真鍋さん、疲れてるんじゃないかしら? 呪いなんてあるわけないでしょう」

和「……///」

律「(和、すまん……!!)」

和「そうなんだじゃあわたし生徒会行くねええええッ!」ガタッダダダ!

律「和あぁぁああッ!!!」

頭から窓を破り、そのままの勢いを持って和の身体は中空に投げ出された。
ガラス窓が砕け散り割れたガラス片が太陽光をまぶしく反射させる。
そして、どさり、と。
少女の落ちる音が、
間もなくして聞こえた。

わたしはその様子を、目で追うことしか出来なかった。

律「バッカ野郎……ッ! そっちは……生徒会室じゃねーての……!!」

――真鍋 和 再起不能

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/21(金) 18:47:02.32 ID:X/cVYk7b0
さわ子「とにかく、早く梓ちゃんと憂ちゃんは自分の教室に戻りなさい!」

唯「ひ、ひどいよさわちゃん、和ちゃんが言ってたことは本当なんだよお!」

憂「本当にそうなんです! お姉ちゃんはわたしとキスしてなきゃ死んじゃうんです!」

さわ子「しゃらーぷ!」

唯「ひぇっ!」ビックゥ!

さわ子「ほら! 馬鹿なこと言ってないですぐ離れる!」

律「(ムギ……)」チラッ

紬「(えぇ、りっちゃん、このままじゃ……)」コクッ

澪「(和のこと助けに行かなくていいのかな……)」

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/21(金) 18:53:57.28 ID:X/cVYk7b0
紬「あの、さわ子先生、梓ちゃんと憂ちゃんのことはどうにかこうにか見逃してもらえないでしょうか?」

律「信じられないかもしれないけど、本当らしいんだよ! な! さわちゃん! どうにかこうにか!」

さわ子「あのねぇ、こういう時上に怒られるのはわたしなのよ? ……もう」

律「っち……、さわちゃんも、やっぱりそうなのかよ……」

紬「き、きたない大人ばっかりよね、り、りっちゃん!」

律「そうだそうだ! 責任とか立場ばっかり気にして! わたしたちのこと、まともに見てもくれない!」

紬「さわ子先生のこと信じてたのに!!」

律「いつからそんなに汚い大人になっちまったんだよ! なぁ!!」

いちご「律、うるさい」

律「は、はぁいお姫さまぁ///」

澪「(っあぁん?)」

しずか「ムギちゃん、授業中なんだから、しずかにしよ?」

紬「しずかにしまーす///」

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/21(金) 19:05:08.33 ID:X/cVYk7b0

さわ子「はぁ、教師としての威厳ゼロね……」

梓「さわ子先生、では実際にわたしの前で二人がちゅっちゅをやめて、唯先輩が死に掛かるところを見たら信じますか?」

さわ子「……まぁ、ありえないと思うけど……そうね」

梓「じゃあわたしが席を外しましょう」ガタッ

姫子「(やっと座れる……)」

唯「あ、あずにゃん、イヤだよう……いかないでぇ……ちゅう……」

憂「梓ちゃん……んむっ……」

梓「ごめんなさい、唯先輩、でも少しの辛抱です……」

ガラッ ピシャッ

唯「う、う、う……あずにゃんが……いっちゃったぁ……」

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/21(金) 19:09:58.47 ID:X/cVYk7b0

唯「い、いきが」

憂「あぁ! お姉ちゃん! おねえちゃあん!!」

唯「くる」

唯「し」

さわ子「ちょ、ちょっと唯ちゃん!? 悪ふざけもいい加減に……!」

唯「かゆ」

唯「うま」

澪「ひええええバイオハジャアー!!?!!?」しょおおお・・・・

さわ子「梓ちゃん戻ってきてええーッ!!!」

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/21(金) 19:15:41.41 ID:X/cVYk7b0

ガラッ

梓「いったでしょう? 本当だって……」

唯憂「ちゅっちゅぺろぺろ」

さわ子「悪かったわね……でもこんなこと始めから信じられるほうがおかしいわよ」

梓「まぁそうですけど……、あ、ごめんなさいそこ座らせてください。人命がかかってるんで」

姫子「う、うん……」

唯憂「れろれろごっくん」

梓「もっとやれい」クチュクチュ

姫子「(椅子って交換してもらえるのかな……)」

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/21(金) 19:29:42.00 ID:X/cVYk7b0

ほうかご!

律「我々は――真鍋和という誇り高き同志を失った」

律「先の戦、山中の変は、梓の機転によってどうにか切り抜けることが出来たが、事態は全く好転していない」

律「ということで……この閉塞した状況を打破するみなから解決案を提案してもらいたいと思う、いいな?」

紬「えと……」

律「どうすりゃいいってんだよなぁ……」

唯憂「はむはむちゅっちゅ」

梓「はぁはぁ」ハァハァ

律「三人は使い物にならないし澪は漏らして早退したし……、ムギぃ、お前だけが頼りだ……!」

紬「えっとあの、よくわからないけど、お祓い、とか?」

律「なるほど……お祓い、試してみる価値はあるな……、さっそく行ってみよう」

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/21(金) 19:46:12.76 ID:X/cVYk7b0

じんじゃ!

律「通りすがりの目が痛々しかったぜ……」

梓「そうですか? 興奮しますよ」クチュクチュ

律「お前は黙れ、な?」

梓「ハイ」

紬「あの、すいません、お祓いとかって……」

神主「御祓いですか……」

紬「あの、呪いにかかってしまって……そこの二人が」

唯憂「ぺろれろれるえろ」

神主「beautiful...」シュッシュッ

律「帰ろう」

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/21(金) 19:53:01.71 ID:X/cVYk7b0
ひらさわけ!

律「振り出しに戻ったな……」

紬「唯ちゃんたち、あそこの神主さんには近づかないほうがいいわよ」

唯「ふぇ? もういいよ、もう家に引きこもってずーっとういとちゅっちゅしてるもん!」

憂「実は、気づいたんですよ。わたしたち、呪いにかかってからお互いの唾液しか飲んでないのに、お腹も減らないし、眠くもならないんです」

律「なんだって?」

梓「わたしはもうずっと指が止まりません」クチュクチュ

紬「腱鞘炎になるわよ」


34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/21(金) 19:58:46.07 ID:X/cVYk7b0

唯「これはもう、一生ニートしててもいいってことだよね! 憂とちゅっちゅしてるだけで生きられるんだもん!」

憂「わたしもずっとお姉ちゃんのそばにいられるし///」

唯「ういー、だいすき、ちゅ……」

憂「おねえひゃあん……//」

律「……いいわけ、ねえだろ……!」ギリッ

紬「え? ……りっちゃん?」


35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/21(金) 20:09:29.63 ID:X/cVYk7b0

律「唯! お前の呪いを解くために! 犠牲になった和はどうなるんだよ!」

唯「和ちゃん……いたね、そんな子も」

律「テメェ……!」

憂「全てはわたしたちの計画通りです」

梓「わたしたちの手のひらの上で弄ばれる皆さんの姿はとても滑稽でしたよ」クチュクチュ

律「お前が手のひらの上で弄んでたのはクリトリスだろ」

梓「ハイ」フキフキ

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/21(金) 20:18:07.35 ID:X/cVYk7b0

唯「実は呪いなんか無かったのだー!」

律紬「な、なんだってー!」

憂「和さんが窓から飛び出したのは完全に誤算でした……」

梓「犠牲者はなるべく出したくなかったのですが……」

唯「人類の発展に犠牲はつき物なんだよ……」

和「そうなんだ、じゃあ私おしおきするね」

唯「えっ」

和「よいしょ」ガッシ

唯「ちょ、の、のどかちゃん、やめっ」

ぺろんっ

和「おしおきだべー!」

ぺちーん!

唯「ひゃんっ!///」

ぺちーんぺちーん!

唯「ひゃっ、いたい! ごめんなさああああああい!!!」

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/21(金) 20:22:55.34 ID:X/cVYk7b0
和「全くもう……」

唯「あう……ごめんなしゃい……」

和「次は憂よ」ガッシ

憂「えっ」

ぺろんっ

和「おしおきだべー!」

ぺちーん!

憂「きゃっ!///」

和「ほどよい弾力ね! 憂!」

ぺちーんぺちーん!!

憂「あうっ/// ひゃっ///」

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/21(金) 20:31:56.22 ID:X/cVYk7b0
和「叩きがいがあったわ……」

憂「いたいよう……///」ヒリヒリ

和「次は梓ちゃんね」

梓「バッチこいです!」

和「やめとくわ」

梓「そ、そんな! きてくださいよ! ほらほら!」ぷりんっ

和「じゃあ私交番行くね」

梓「ちょっとおおおおおお!」

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/21(金) 20:43:54.75 ID:X/cVYk7b0
―――――
―――
――

紬「梓ちゃん、捕まっちゃったね……」

律「ああ……」

唯「あずにゃんがつかまっちゃった……ういぃ……」

憂「お姉ちゃん、どうしよう……」

律「まぁ、その、なんだ、あいつの自業自得だと思うぞ」

紬「……これって、ものすごい不祥事なんじゃないかしら……?」

律「あ」

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/21(金) 21:06:01.60 ID:X/cVYk7b0
 翌日、私たち軽音部員はさわちゃんに指導室に呼ばれた。
 理由は、梓のことだ。
 公然わいせつで梓は警察に逮捕された。
 幸い初犯だったので、罰金刑か起訴猶予のどちらかで、懲役を食らうことはおそらくないらしい。

 しかし、犯罪が犯罪である。

 万引きの噂ぐらいなら私たちも聞いたりするが、女子高で、よりによって公然わいせつだ。

 当然、大きな問題になる。
 その場に居合わせた主なメンバーが軽音部関係者であることもあり、責任の矛先は、私たちに向いた。

さわ子「ほんっとうに、頭が痛いわ……」

 聞くと、朝から電話が鳴りっぱなし、らしい。
 いつになく険しい顔つきのさわちゃんが、本当に参ったように漏らした。

さわ子「あなたたち……、多分、予想はついてるだろうけど……、部活動停止よ、残念だけど」

 逮捕者がでたんだ。何も、言い返せはしなかった。

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/21(金) 21:10:06.53 ID:X/cVYk7b0
ご飯食べてきます

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/21(金) 21:49:08.01 ID:X/cVYk7b0
 さわちゃんから聞かされたのは、「部活動停止」の一言だけだった。
 言いたいことはほどあるのだろう。だけれどさわちゃんは、それ以上何もいわず、黙って席を立った。
 きっと、全部、飲み込んで。
 私にも、さわちゃんほどの器量があれば、こんな事態にはならなかっただろうか。


 さわちゃんが退室してから、どれくらい時間がたっただろうか。
 いつもならば私がボケて、唯が乗っかって、ムギが悪乗りして……澪がツッコんで――四人がいれば姦しいくらいに盛り上がるはずのに。

澪「……なんでだよ……!」

 沈黙を破ったのは、澪だった。

 澪は今回の件に全くといっていいほど関与していない。
 ただ澪は怯えて、小便を漏らしただけだ。

澪「なんだよ……部活動停止って……なぁ……!」

 澪が涙目でこちらを睨みつけてくる。
 私は目を合わせることができなかった。

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/21(金) 22:02:28.19 ID:X/cVYk7b0
紬「あ、あの、みんな、お茶にしない? いったん、部室に行って」

澪「その部室に、もういけないんだろ……! お前たちのせいで!」

律「お、おい、澪、落ち着けって」

 これが落ち着いていられるか、と澪が言ったところで、もう一度私たちは全員黙り込んだ。
 澪は相変わらず私たちを睨みつけている。その視線が唯に移ったところで、唯が泣き出してしまった。

唯「ごめん……わたしが、わたしが変ないたずら思いついたせいで……ごめんねえ……」

 狭く冷たい指導室に、悲痛なすすり泣く声だけが響く。
 もう、わたしは見てられなかった。わたしも泣き出してしまいたかった。

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/21(金) 22:22:32.35 ID:X/cVYk7b0

律「そういう澪は、どうなんだよ」

 唯の泣き顔を見ていられなかった私は、口走った。泥沼化確実であろうことを。
 ダメだとわかってても、私は饒舌に口を動かしてしまう。

律「そういう澪はどうなんだよ、お前は、何かしたのか?
  何もしていない。昨日の状況を見ても、何もしようとしなかったじゃないか。
  お前はただ、唯の発作のフリを見て、怖がっておもらしをしただけだろう。
  そんなお前が、どうして私たちを責められる? おい、言ってみろよ。なぁ!」

 言い切ったあとで、背中を針で刺されたような後悔が私を襲った。
 いつの間にか私は立ち上がっていて、澪をきつく見下ろしていた。

澪「そ、そんなこと……」

 澪は反論しかかって、目を逸らした。
 私は今、そんなに怖い表情をしているのだろうか。鏡で見てみたい。

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/21(金) 22:47:17.28 ID:X/cVYk7b0

紬「もう、こんなのイヤだ……」

 ムギの口からこんな台詞を聞く日が来るとは思っても見なかった。
 全く何をしているのだろう。最低だ。頭を冷やさなくちゃいけない。

律「……すまん澪、いいすぎた。いったんここから出ようぜ、ここは空気が悪い」

 随分と肺が重苦しい。酸素が足りないような気がして、部屋から逃げだしたくなった。

 いつもよりも重たく感じるドアノブをひねり、ドアを開けた。
 室内よりも少し気温が低い。
 鼻から吸い込む空気は新鮮な気がしたが、胸のもやもやが晴れることは無かった。

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/21(金) 23:09:51.14 ID:X/cVYk7b0
 私たちは、帰り道を歩いていた。
 途方も無く、言葉も無く、歩いていた。
 
 もう少しで、いつもの分かれ道につく。
 唯とムギはここでお別れで、私と澪は、二人きりだ。

 ……気まずい。

 あぁ、そもそもなぜこんなことになってしまったんだろう。
 唯が梓の前で憂ちゃんとキスし続けないと死んじゃう呪いにかかったとか、
 それで、和が飛び降りたんだ。
 梓の提案で、唯がさわちゃんを騙して、澪が漏らして……。

 きっかけは小さなことだったんだ。
 ちょっとしたことが大きな変化につながる。こういうことをなんというんだったか。
 確か映画のタイトルで――、いや、忘れた。
 思い出している暇があるならば、この空気を何とかしなくちゃいけない。

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/21(金) 23:32:40.14 ID:X/cVYk7b0
 そしてついに私たちは二人きりになった。
 今は険悪なムードになっている場合じゃないのに。
 共に軽音部の危機に立ち向かわなきゃいけない時なのに。

 どちらかが先に話しかけなければ、きっとこのまま家までついてしまう。

 だから私は、意を決して澪のほうを向いた。
 すると偶然、澪と目があってしまう。

 なんだ。

 少し照れくさくなって、一度目を逸らして、そして今度はしっかりと、澪の目を見据えた。

律「これから、どうする?」

澪「そうだな、とりあえず、みんなで話し合おう。今度は、あんな雰囲気にならないように、な」

 それがいい。
 明日にでも集まって、話し合おう。
 部活が無くたって、私たちは仲間だから。なにも問題はないじゃないか。

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/01/21(金) 23:52:19.68 ID:X/cVYk7b0 [33/33]
澪「おい、律。準備はいいか?」

律「おう、澪こそ。緊張してるんじゃないのかー?」

 半年後。私たち軽音部は、たくさんの苦難を乗り越え、今、このステージに立っている。

唯「いつでもいけるよ! りっちゃん!」

紬「わたしも!」

梓「だいじょうぶです!」

 今ではみんな一回りも二回りも成長して、頼もしく、部長として鼻が高い限りである。
 ステージ脇の和に目で合図をすると、ゆっくりとうなづいてくれた。

 スティックを握り、高々と上げる。

 さぁ、私たちの、最後のライブだ。


「ワン・ツー・スリー・フォー!」


       "唯「憂とちゅっちゅしないと生きていけない呪いを掛けられた…。」" is the END.

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