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劇場版けいおん!同時上映「お姉ちゃんの引越し前夜」

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/08(土) 00:16:37.18 ID:P8s+IDB10 [1/17]





       いつの間にか私は一人で宿題が出来るようになった


       一人で起きて学校へ遅刻せずにも行けるようになった


          でも、私は本当に変わったのかな?


               ねぇ、憂


            私は明日引越しするよ……





3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/08(土) 00:17:37.61 ID:P8s+IDB10 [2/17]
唯「はぁ~、美味しかった! ごちそうまさでした!」

憂「お粗末さまでした」

唯「この憂のご飯も当分食べられなくなっちゃうね~」

憂「そうだね」

唯「……」

憂「……」

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/08(土) 00:18:26.78 ID:P8s+IDB10
唯「ねぇ、憂……」

憂「じゃあ、私洗い物するね!」

唯「う、うん……」

憂「……」

唯「手伝おうか?」

憂「お姉ちゃんは明日の引越しに備えてゆっくりしてて」

唯「で、でも……」

憂「それに、まだ荷物整理終わってないでしょ? 今日中に終わらせなきゃ駄目だよ」

唯「わかった……」

憂「お風呂ももう少しで沸くと思うから先に入っててね」

唯「うん」

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/08(土) 00:19:47.02 ID:P8s+IDB10
 唯の部屋

唯「よし、だいたいは片付いたかな」

唯「あとはこの辺の小物を……」ピラッ

唯「あっ、この紙は……」

唯「U&Iの歌詞……」

唯「私……憂無しでやっていけるかな……」

唯「……」

唯「駄目だ! 私がいるから憂が家事に縛り付けられちゃって、憂が好きなことが出来ないんだ!」

唯「だから……これを機会にひとり暮らしするって……決めたんだから……」

唯「……」

唯「そういえば、私まだ憂にいままでのお礼を言ってないや」

唯「うん。ありがとうって伝えなきゃ」

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/08(土) 00:21:05.54 ID:P8s+IDB10
 リビング

唯「ねぇ、うい……」

憂「うっ……お姉ちゃん……なんで行っちゃうの……。ううっ……」

唯「!?」

憂「嫌だよ……お姉ちゃん……」

唯「憂っ!!」

憂「お、お姉ちゃん!?」

唯「私、引越しするのやめる!!」

憂「だ、駄目だよ! めっ!!」

唯「だって、私が引っ越しちゃったらこんな広い家に憂独りっきり」

唯「そんなの可哀相すぎるよ!」

憂「それは……そうだけど……。でも、たまにはお父さんお母さん帰ってくるから大丈夫……」

唯「ううん、違うの。憂が寂しいとかそういうのじゃなくって……」

唯「私が、私がもっと憂と一緒にいたいんだよ!」

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/08(土) 00:23:10.76 ID:P8s+IDB10
唯「これまでずぅ~っとご飯作ってくれたり、起こしてくれたり……」

唯「それなのに、私は……私からは憂になにもしてあげられてないよ……」

憂「そんなことないよ、お姉ちゃん」

憂「お姉ちゃんは私に素晴らしい贈り物を残してくれてるよ」

唯「贈り物? 私が?」

憂「そうだよ。それも数えきれないほどの」

憂「最初の贈り物は、お姉ちゃんが私のお姉ちゃんとして生まれてきてくれたこと」

憂「私の中のお姉ちゃんの一番古い記憶は、幼稚園のお遊戯発表会で一生懸命カスタネットを叩いていた姿」

憂「私はそのとき、お姉ちゃんには音楽の才能があるって子供心に思ったんだ」

憂「実際、桜高の学祭で何人もの人を感動させちゃったんだから」

唯「え、えへへ」

憂「そのお遊戯会では一生懸命過ぎて周りは微かに白けていたけど、お姉ちゃんの頭の中はお星様で一杯だったもんね」

憂「そのお姉ちゃんの頭の中の宇宙は誰にも理解されないファンタジー溢れる世界」

憂「そう思うと無闇に感動しちゃって笑いが……ううん。涙が止まらなかったよ」

唯(あれ? 微妙に馬鹿にされてるのかな……)

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/08(土) 00:25:08.96 ID:P8s+IDB10
憂「それからの毎日」

憂「楽しかった日、満ち足りた日の思い出こそお姉ちゃんからの最高の贈り物だったんだよ」

憂「少しぐらい寂しくても、思い出があたためてくれるよ」

憂「だから、お姉ちゃんも私のことは気にせずにひとり暮らしを楽しんでくれればいいんだよ」

唯「憂……」

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/08(土) 00:28:14.47 ID:P8s+IDB10
唯「私、実は不安なんだ……。上手くやっていけるのかな、って」

憂「大丈夫だよ、お姉ちゃん」

憂「澪さんや律さん、紬さんを信じていれば」

憂「みなさんと同じ大学を選んだお姉ちゃんの判断は正しかったと思うよ」

唯「確かに……みんなとだったらやっていけそう」

憂「お姉ちゃんは自分の幸せを願い、自分の不幸をストレートに悲しむことのできる人だよ」

憂「そして何よりも、他人に寄生することをまったく恥じようとしない」

唯「……」

憂「ある意味、それが一番人間にとって大事なことなんだよ」

憂「軽音部のみなさんなら、間違いなくお姉ちゃんを幸せに甘えさせてくれると信じているよ」

唯「そう……だね……」

唯(なに? このブラック憂は……)

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/08(土) 00:33:50.14 ID:P8s+IDB10
憂「だからね、お姉ちゃん」

唯「な、なにかな?」

憂「今晩一晩だけは、私が甘えても……いい?」

唯「憂……」

唯「いいよ、おいで。今晩は一緒に寝よ」

憂「お姉ちゃん……」

唯「よしよし、憂だって本当は甘えたかったんだよね。ごめんね、駄目なお姉ちゃんで」ナデナデ

憂「ううっ……」クスン

唯(憂だってこんなに寂しい思いをしてるにも関わらず、私を送り出そうとしてくれた)

唯(あえて私を小馬鹿にしたような言い草は憂なりの叱咤激励だったんだ)

唯(……たぶん、……きっと)

唯(このままじゃ私は駄目になるっていう憂からのメッセージなんだ)

唯(……おそらく、……願わくば)

憂「お姉ちゃん……お姉ちゃん……」

唯(こんなに泣いて……。それでも、私のことを一番に考えてくれてて……)

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/08(土) 00:37:15.68 ID:P8s+IDB10
唯「ねぇ、憂」

憂「ぐすっ……。なに、お姉ちゃん」

唯「私、もし憂が止めてくれたら、ひとり暮らしはやめにしようかなって思ってたんだ」

唯「って言うよりも、憂がとめてくれるのを待っていたのかも……」

唯「でも、憂が私に何を伝えたかったのか。それがわかったから、私明日行くね」

憂「うん……」

唯「そして、一人で部屋を掃除して、一人で洗濯物もして、一人でちゃんとご飯も作って」

唯「憂には追いつけないだろうけど、憂と同じようなことが出来るようになったら」

唯「今度は憂を私の部屋にご招待しておもてなしするよ」

唯「とても時間はかかると思うけど……。待っててくれる?」

憂「うん、お姉ちゃん。私、楽しみに待ってるね」

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/08(土) 00:40:18.68 ID:P8s+IDB10
唯「ふふっ。さっきまでの泣き顔が、もう笑顔になってるね」

憂「だって、お姉ちゃんが頑張るっていうから。私一人泣いてなんかいられないよ」

唯「そっか~、うん。私、憂の期待に応えられるように一生懸命家事頑張る!」

憂「でも、どのくらいかかりそうかな?」

唯「憂がやってるのをずっと側で見てたからチョチョイのチョイだよ」

憂「せめて私がお嫁に行くまでにはお姉ちゃんに御呼ばれされたいな」

唯「さすがに、そんなには時間はかからないよ~」

憂「冗談だよ、お姉ちゃん」

唯「もう、憂ったら」

憂「ふふふっ」

唯「えへへっ」

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/08(土) 00:45:28.42 ID:P8s+IDB10
唯「ねぇ、憂」

憂「ん?」

唯「いままでありがとね」

憂「……うん」

唯「そして……」

唯「これからもよろしくね」

憂「……」






憂「うん!」






こうして、お姉ちゃんは家を出ました

優しくあたたかな約束を残して

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/08(土) 00:53:02.18 ID:P8s+IDB10
お姉ちゃんが出て行った後、当分の間いつもの癖でお弁当を2人分作ったりしちゃったけど
今では純ちゃんが「じゃあ、これからは私のために作ってきて」
と相変わらずの厚顔無恥っぷりを発揮して、学校でそのお弁当を食べてくれています

だけど正直いうと助かってるんだ
1人分だけ作るのって意外とロスが出たりして考えて作らなきゃいけないから難しいんですよね
ポリシーとして冷凍食品を使うのは負けた気がするし……
せっかくだからもう一つ作って梓ちゃんにも食べてもらおうかな

純ちゃんは今日もいつもどおりの面白い顔で「美味しい、美味しい」と食べてくれていますが
お姉ちゃんが美味しそうに食べてくれている顔ほどの満足感を得ることは出来ません
やっぱりお姉ちゃんの「憂、美味しいよ」の一言はこの世の何ものにも勝る言葉です

今の楽しみは、お姉ちゃんが私にご馳走してくれるっていう約束を待っていること
そして、もう一つは卒業するときに純ちゃんと梓ちゃんに食べた分のお弁当代を唐突に請求してやることです
2人ともどんな顔するかな?
そう思うとお肉だって国産物を、野菜だって有機野菜を、調味料類だってトップバリューじゃなくて
メーカー品のワンランク上の物を惜しみなく使っちゃいます
キッコーマンの普通の醤油じゃなく特選丸大豆醤油を使っちゃいます
これでお姉ちゃんのいない家での家事のストレスも多少軽減されるというものです

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/08(土) 00:58:08.17 ID:P8s+IDB10
 そして、田植えも始まり、暖かな風が吹き抜ける頃…

  prrrrrrr…

憂「あ、お姉ちゃんだ!」

憂「もしもし?」

唯『あ、もしもし? 憂? 元気~?』

憂「うん、元気だよ。お姉ちゃんは?」

唯『私? 私はちょっと舌が荒れちゃってさ~』

憂「お姉ちゃん、昨日は何食べた?」

唯『……食後にアイスかな』

憂「その食後のアイスの前は?」

唯『……アイス』

憂「えっ?」

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/08(土) 01:01:53.81 ID:P8s+IDB10
唯『……昨日は講義も無かったから家でゴロゴロしてて三食アイスでした』

憂「それじゃあ、荒れて当然だよ……」

唯『だってね、ご飯作ってもそれをよそうお茶碗やお皿がないんだよ』

憂「でも、結構余分に持っていったよね?」

唯『それが、洗うたびになぜかだんだんと減っていくんだ』

憂「割っちゃったんだ……」

唯『全滅です……』

憂「慣れるまではプラスチックのお皿にしようね」

唯『はい……』

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/08(土) 01:08:24.36 ID:P8s+IDB10
唯『って、うわぁ~~~~~っ!!』

憂「ど、どうしたの!? お姉ちゃん!!」

唯『洗面所から泡が攻めて来た!!』

憂「あ、泡!?」

唯『洗濯機からどんどんと生産されている模様です!』

憂「今、洗濯物洗ってるの?」

唯『人類への不満を溜め込んだ家電の反乱だっ!!』

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/08(土) 01:12:39.78 ID:P8s+IDB10 [17/17]
憂「お姉ちゃん洗剤はどのくらい入れたの?」

唯『いや~、結構溜め込んじゃってて、タオルも湿ったまま脱いだ着替えと洗濯物カゴの中に
  一緒にしてたらなんか嫌な臭いがしてたからさ~』

唯『洗剤に入ってるスプーンで20杯は入れたよ!』

憂「お姉ちゃんそれ入れすぎだよ!」

唯『だって、いっぱい入れた方が綺麗になると思って……』

憂「ちゃんと決められた容量を守らなきゃ……」

唯『なんせお姉ちゃんはロッカーだから! 型にはめられるなんざまっぴらごめんだぜ!』

憂「……」

 お姉ちゃんの御呼ばれはもう少し……いえ、かなり先になりそうです

 おしまい

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