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澪「神は死んだ!」

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 02:53:14.37 ID:SvrY/++fP [1/63]
澪「唯は死んだ…。」

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 03:01:36.56 ID:SvrY/++fP [2/63]
第一部!

序説!

澪は永い永い間、ムギに借りた山奥の別荘で、自らの智慧と音楽を愛し、孤独を楽しんでいた。
しかしついに彼女の心が変わる時が来た。

ある朝、澪は暁とともに目を覚まし、太陽の前に立ってこう語りかけた。

澪「唯よ!もしあなたの光を浴びる者たちがいなかったなら、あなたは幸福と言えるだろうか?」

澪「あなたの笑顔はハニースウィート♪あなたからあふれるその愛の恵みを私は受け取ってきた。」

澪「今私は、私の智慧を人々に伝えたい。」

澪「そうだ!行為するという直感こそが世界を生成し、私を私たらしめ!唯を唯たらしめるのだ!」

澪「澪は、再び人間になろうとしているのです!」

こうして澪の没落は始まった。

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 03:04:13.30 ID:SvrY/++fP [3/63]
澪はひとり山をくだって行ったが誰にも出会わなかった。
しかし森の中に入った時に、ひとりの金髪の美しい女が、ふいに澪の目の前にあらわれた。

紬「澪ちゃんじゃない!!なんか目が輝いてるわ♪表情も晴れ晴れとしているし、まるで舞踊者のような足取りだわ♪」

紬「澪ちゃんは変わった!幼子のようよ!澪ちゃんは目覚めたんだわ!!」

澪「あ、ありがとう///」

紬「澪ちゃんは今、眠っている者たちのところへ行って何をしようとするの?」

澪「何って…、」

紬「まるでそう、海中に住むように、澪ちゃんは孤独の中に生きた。そして海水は澪ちゃんを支えたんだわ。」

澪「うん…。」

紬「陸に上がろうって言うの?再び重たくなってしまうわ!」

澪「私は、人間を愛してるんだよ。」


5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 03:08:50.68 ID:SvrY/++fP
紬「でも!!」

澪「!?」

紬「今私が愛するのは人間じゃなくて唯ちゃんよ!人間はあまりにも不完全すぎるもの!」

澪「いや…、」

紬「人間への愛は、私を滅ぼしてしまうわ!」

澪「ああ。なんで『愛している』なんて言ってしまったんだろう…。」

澪「ムギはここで何をしているんだ?」

紬「私は歌を作り、歌うわ。歌を作る時、私は笑い、泣き、唸るのよ。」

澪「そうなんだ…。」

紬「そうして私は唯ちゃんをたたえるの…。」

そういうと、二人は幼子の様な笑顔で笑いながら別れたのであった。

…………

澪「とんでもない!!ムギは一人森の中にいて、まだ何も聞いていないんだ!」

澪「『唯(神) が 死 ん だ』ということを!」

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 03:11:43.73 ID:SvrY/++fP
森のはずれにある最初の街に入った時、澪は広場に多くの人だかりができているのを見つけた。
綱渡りショーが開催されるからである。

澪「私があなた方に超人を教えよう!人間は克服されねばならないものなのだ!」

街の人「はあ?」

澪「わたしはあなた方に願う!現実と言う大地に忠実であれと!」

澪「地上を超えた世界や、形而上学的な観念を説く者を信用するなと!」

子供「お母さんあれなに?」

母「見ちゃだめよ!」

澪「超人こそ、大地の意義であれ!!」

おじさん「わかったよ、お嬢ちゃん。じゃあ綱渡りやってみてくれよ!」

観衆「」わはははは

澪「……。」


12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 08:39:28.63 ID:SvrY/++fP
すみません。投下中に眠ってしまいました…。

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 08:48:44.18 ID:SvrY/++fP
おじさんの叫び声を聞いて、綱渡り師である梓は、自分が呼ばれたのだと勘違いして、綱渡りを始めた。

梓「あ、早くしないと!」あせあせ


澪は綱を眺めながら言った。

澪「人間は、動物と超人の間に張られる一本の綱なんだ!」

澪「渡るのも危険、途中にいるのも危険、振り返るのも危険、身震いして足を止めるのも危険なんだよ!」

おじさん「そりゃ綱渡りは危険だわ。」ははは

澪「自己でありながら変化していくという、絶対矛盾的自己同一の中にあって人は世界を!意味を!自分を見出していく!!」

おばさん「だれかお医者さん呼んであげたら?」ヒソヒソ

澪「人が偉大なのは、自分自身が自己目的ではなく!変化していくこと!意味を見出していくことにあるんだ!!」

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 08:51:16.60 ID:SvrY/++fP
観衆「もう放っておこうぜ。」ガヤガヤ

澪「(彼らは立っている。彼らは笑っている。彼らは私の言うことを理解しない…。)」

澪「それではもっとも軽蔑すべき者たちのことを話してやろう!『おしまいの人間たち』のことだ!」

子供「おしまい~?」

母「しっ!」

澪「おしまいの人間たちは、自ら価値を見出そうとしなくなる!」

澪「ときどき少しの毒(酒)を飲めば気持ちのいい夢を見られるという。最期にはたくさんの毒を飲み、気持ちよく死んでいく。」

澪「おしまいの人間たちは働く。労働は彼らの心の慰みになるから。しかし体を害することのないように適度に適度に働く。」

澪「おしまいの人間たちは、誰かとぶつかることを避けながら、安全に安全に生きていく。」

澪「おしまいの人間たちは、与えられた倫理観、価値観に満足して、『自分は幸せだ』と思いこむ!!」

すると観衆たちは叫んだ。

おばさん「ぜひ私たちをその『おしまいの人間』にしてちょうだい!」あはははは

おじさん「『超人』とやらの方はお嬢ちゃんにあげるからさ!」あはははは

澪「(彼らは笑っている。しかし笑いながらも、私を憎んでいる…。)」

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 09:16:02.75 ID:SvrY/++fP
そのときである!全ての者が目を見張る出来事が起こった!

というのは、澪が話している間に、さきほどの綱渡り師はすでに綱の上の歩みを進めていたのである。

梓「怖いよお…。」

梓がちょうど真ん中、観衆の頭上のあたりに差し掛かったころ、
五色の衣装をまとった、道化師と思しき少女が、早い歩調で綱を渡りながら追いかけてきたのである!

憂「梓ちゃん!早く前に進んで!」

梓「え…、待ってよ…。」

憂「やめておけばよかったんだよ!臆病者!お姉ちゃんは渡さないんだから!」

一言ごとに憂は歩みを進める。

梓「え!え?」

憂「そりゃああ!!」

悪魔の様な声を上げながら、憂は梓の上を飛び越えた!

梓「え…、え…、」ガクガクブルブル

狼狽し震える梓は、真っ逆さまに墜落してしまった!

観衆たちは我先にと逃げて行った!

澪だけが一人逃げずにその場にじっと立っていた。

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 09:19:12.43 ID:SvrY/++fP
地面に叩きつけられ、むざんにうち砕かれたものの、梓はまだ死んでいなかった。
しばらくすると梓に意識が戻った。そして澪が目の前で膝をついて座っているのを見た。

梓「澪先輩…、私はいずれ悪魔によって地獄に引きずり込まれるんだって分かっていました。」

澪「誓って言おう。梓、そんなもんないよ。悪魔も、地獄も天国も、そんなもの存在しない…。」

梓「……。」

澪「梓の肉体が朽ちる前に、梓の魂が死んでしまうから大丈夫だよ。」

梓「あはは。だとすれば、私の命が亡くなったって大したことではないですね。」

梓「私はもともと、わずかな餌と鞭で芸を仕込まれるゴキブリ以上のものではありませんから…。」

澪「いや!それは違う!!梓は危険を生業として、梓の人生を精一杯生きた!」

澪「それに報いるためにも、私が梓を丁重に葬るよ!」

梓は返事をしなかった。
しかし梓は手を動かした。それは感謝のために澪の手を探しているようだった…。

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 09:26:17.68 ID:SvrY/++fP
日は暮れ、広場は闇に包まれた。民衆はどこかに去って行った。

澪「結構な収獲だ!人間を得ることはできず、死体をゲットしてしまった!」

澪「人間たちの存在は不気味で、依然として意味がない。私は彼らに存在の意味を教えよう。」

澪「それは超人であり、人間という暗雲から発する稲妻なのだ!」

梓「……。」

澪「しかし、わたしはまだ彼らから遠いところにある。私の詩は彼らには届かない…。」

澪「夜は暗い、澪の道程は暗い。」

澪「さあ、冷たく硬直した梓よ!あなたを葬ることのできるところまで、連れて行ってあげよう!」

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 09:36:33.45 ID:SvrY/++fP
澪「よいしょ!」

澪は梓を背負い、歩いて行った。しかししばらく歩くと、
一人の女が澪の近くに歩みより、話しかけてきた。

それは先ほどの道化師、憂であった。

憂「澪さん。」

澪「なんだよ…。」

憂「ここではあまりにも多くの人が澪さんを恨んでいます。」

澪「……。」

憂「『善くて正しい人たち』が澪さんを恨んでいます。」

憂「宗教を、政治を、常識を、そしてお姉ちゃんを『正しく』信仰する人たちがあなたを恨んでいます。」

憂「この街から、出ていってください。でないと、明日は、あなたが梓ちゃんと同じ目にあうことになる…。」

澪「分かってるよ…。」

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 09:43:43.52 ID:SvrY/++fP
街の門のあたりで、澪は墓掘り人たちに出会った。

信代「澪がゴキブリの死体をかついで行くよ!あはは。いいことだね!」ガサゴソ

澪「……。」

信代「私の手はきれいすぎてそんなゴキブリの死体を扱えないからね!二人揃って悪魔に食べられてしまわないようにね!」はははは

澪はこれらの声にひとことも答えることなく、自分の道を歩いて行った。

森と池のほとりを二時間ほど歩いていた時、空腹な野犬が吠えるのをしきりに聞いたので、澪も空腹になった。

澪「突然お腹がすいたりするんだよな…。」

梓「……。」

澪は明かりのともる一つの家に立ちよった。

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 09:51:02.64 ID:SvrY/++fP
澪は家の戸をたたいた。

さわ子「だあれ~?せっかく寝てたのに~。」

澪「ひとりの生きた人間とひとりの死んだ人間です。食べ物と飲み物をください。」

さわ子はその場を去ったがすぐに戻ってきて、澪にワインとパンを持ってきた。

澪「(未成年なんだけどな…。)」

さわ子「梓ちゃんにも食べるように勧めてあげてくれる?あなたよりも疲れてそうじゃない。」

澪「梓は死んでいるから勧めても無駄だと思います。」

さわ子「わたしの酒が飲めないって言うの~?」

澪「え…、いや…。」



23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 09:57:16.30 ID:SvrY/++fP
それから澪はまた二時間ほど歩いた。
道まかせ、星の光まかせであったが、それは澪がすべての眠ったものを眺めるのが好きであったからである。

澪「星の光はコンペイトウ☆眠れるあなたに歌いかけるの♪」

梓「……。」

澪「梓も意外と重いな…。」

朝が白みはじめたとき、澪は自分が深い森の中にいることに気付いた。

そこで澪は梓を木の空洞の中の安全な場所に隠し、自分は苔の生えた地面に横になって、眠った。

身体は疲れていたが、澪の魂は安らかであった。


24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 10:08:36.66 ID:SvrY/++fP
澪は長い間眠っていた。日が昇り、すでにお昼になっていた。

そしてついに目を覚ましたのである。

澪「ふぁあ~~。」のび

澪は森の中を見わたし、自分の心の中を見わたした。

澪「ああーー!!」

澪は突然喜びの声をあげた。なぜなら澪はひとつの新しい真理を見たからである!

澪「わかった!私は友達が、弟子が欲しいんだ!それも生きた友達だ!死体の友達じゃない!」

梓「……。」

澪「分からず屋の民衆に語るんじゃなくて、そういう弟子や友達に語るべきだったんだよ!」

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 10:14:13.58 ID:SvrY/++fP
澪「じゃあな。梓。時が来たんだ!」

澪は梓の死体を木の洞窟の中に巧みに葬った。

そのとき、太陽は正午の空に輝いていた。

澪「あっ!」

澪が見上げた空には、首に蛇を巻きつけた、鷲であった。-太陽の下でもっとも賢い動物と、太陽の下でもっとも誇り高い動物-

澪「私が元気にしてるか、確かめに来てくれたんだ!」

澪は動物に囲まれるよりも、人間に囲まれる方が危険であることを知った。

澪「動物さんたち、私を導いて!」

澪「蛇のようにどこまでも賢くありたい!私の誇りが、私の賢さといつもともにあるように願おう!」

澪「いつか私の賢さが私を見捨てるなら!私の誇りが、そのときは、私の愚かさとともに空を翔けてくれるようにと」


こうして澪の没落は始まった。以上が序説である。

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 10:26:11.54 ID:SvrY/++fP
徳の講壇!

生徒会長が眠りと生活習慣について話をするというので、澪も見に行った。

生徒A「和先輩のお話だよ~。」

生徒B「いつも分かりやすいもんね~。私も和先輩みたいに頭よくなりた~い。」

生徒達は目を輝かせながら生徒会長の講話を聞いていた。

和「受験勉強で効率を上げるためにも、しっかり眠るということは非常に重要です。」

和「それから、これから長期休暇に入りますが、深夜の外出は控えてください。非行の始まりです。」

和「夜しっかり眠るためには、昼間勉強や部活を精一杯努力することが重要です。」

和「お昼寝したくなるのを我慢するのは、少し辛いかと思いますが、自分に負けなければ夜は気持ちよく眠れます。」

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 10:42:18.35 ID:SvrY/++fP
和「それから人に対してイライラしてしまうことは、夜の眠りを妨げると言われています。」

和「過剰な欲も眠りを妨げます。慎ましく、道徳的にすごすことで、よく眠ることができ、良い生活を送ることができます。」

生徒達「」ぱちぱちぱち


澪「あははは。」

澪は、ありふれた固定観念に縛られている和は阿呆だと思った。

澪「しかしこんなんで満足して気持ちよく寝ていられる人たちもまた幸せなんだろうな。」

澪「『よく眠るために起きていろ』っていうことか。じゃあ生きていることに何の意味もないじゃないか。あははは。」

澪「でもよく考えてみればいわゆる『道徳』って言うやつは全部こんなもんだよな。」

澪「きょう日語られている『道徳』っていうやつも、よく眠るためのものにすぎない。」

澪「それじゃあもうずーーっと眠り続けていてくれよ!」あはは


澪かく語りき

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 10:49:30.21 ID:SvrY/++fP
世界の背後を説く者!

澪「じつは私もかつて、唯の様な神的存在が世界の背後にあると思っていたんだよ。」

純「そうだったんですか!」

澪「苦悩にさいなまされた唯(神)がいて、世界はその唯による作りものだと思っていた。」

純「はあ。」

澪「世界って言うのは、不満に満ちた唯による夢のようなものだと思っていた。」

澪「快も不快も、あなたも、わたしも。唯による色とりどりの煙だと思っていた。」

純「インド思想ですね。」

澪「この世界は陶酔に似た喜びであり、忘我であり、唯が自分自身の苦悩から目をそらすために作ったものだと信じてたんだよ。」

ヤージナヴァルキア「……。」

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 10:52:50.36 ID:SvrY/++fP
澪「しかしこの神は、唯は、人間の妄想だったんだな!」

純「なるほど。」

澪「すべての形而上学的な、観念論的な概念と同じようにさ!」

純「うーん。」

澪「現実っていうのは複雑だからさ、それに耐えれなくなって人間は神とか、唯とか、観念を作りだした!」

純「はい。」

澪「人間の心の弱さが作りだした『作品』だったんだな。」

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 10:58:01.61 ID:SvrY/++fP
澪「でもあらゆるものの中でもっとも奇妙なものが、もっともよく証明されてるんじゃないかな?」

純「!?」

澪「それはこの『自我』だよ!」

ヤージナヴァルキア「ふむ!」

澪「矛盾し、混乱した姿をしているとはいえ、その存在があることについては極めて誠実に物語っているとはいえないか?」

純「ああ、確かに。」

澪「この自我こそが、創造し、意欲し、評価し、価値を見出すことができる!」

澪「そしてこの自我は、遠くにあるのではなく、大地の上に立つこの身体にこそ備わっているんだ!」


澪かく語りき

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 11:10:30.74 ID:SvrY/++fP
喜びの情熱と苦しみの情熱!


いちご「わたし…、無愛想って言われるし、良いところなんてないから…。」

澪「そんなことないよ!」

いちご「じゃあ…、私の良いところってなに…?」

澪「確かに自分の徳を言葉で言い表して、誰かに自慢したり、自分で納得したくなったりするだろうよ!」

いちご「……。」

澪「でも言葉にできたならばそれは、ありふれたものってことになる!」

いちご「……。」

澪「ときにはそれがいちごを苦しめたり、喜ばせたりするかもしれない。」

澪「でもそれもいちごがいちごである証しなんだよ!」

いちご「……。」


澪かく語りき

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 11:19:03.64 ID:SvrY/++fP
山上の木!

あるひの夕方、澪が桜ケ丘(五色の花弁)の街のはずれにある山を歩いていると、
ひとりの少女を目にした。

少女は一本の木の幹に寄りかかり、疲れた目をして遠くを見つめていた。


澪「私がこの木を両手で揺さぶろうとしてもできないよな。」

律「……。」

澪「でも目に見えないはずの風は、この木を苦しめて、曲げることができてしまう。」

澪「私たちは目に見えないものによって苦しめられてしまうんだよな。」

律「澪!澪じゃないか!ちょうど澪のことを考えていたんだよ!」

律は突然立ち上がった。

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 11:26:45.54 ID:SvrY/++fP
澪「人間っていうのは木と同じようなものだよな。」

律「ん?」

澪「高いところへ、明るいところへ自分を伸ばそうと思えば思うほど、その根は力強く地の中へ伸びていく。」

律「……。」

澪「下の方へ、暗黒の中へ、深みの中へ、悪の中へ!」

律「そうなんだよ、悪の中なんだ!!」

律「どうして私の心の中が分かったんだ?」

澪「私も同じような経験をしているからさ…。」

澪はほほ笑んだ。

律「澪の言う通りなんだよ!高みを目指そうとして以来、私は自分自身を信じられなくなった。」

律「そして誰も私を信じてくれない!どうしてなんだ!?」

澪「『高みを目指す人間』って言うのは孤独だからな…。」


35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 11:42:13.86 ID:SvrY/++fP
律「私はどんどん変わっていく。今日の私は、昨日の私を否定する!」

澪「そうだな。」

律「上を目指して、階段を飛び越えようとしてみる。でもどの階段も、飛び越えてはいけないらしい。」

澪「一歩づつのぼらなきゃならないんだ。」

律「上にのぼってしまえば、いつも私はひとりぼっちだ!孤独の冷気に震えてしまう!」

澪「うん。」

律「高みに達して、私は何をしたいって言うんだろう!!」

律「……。」

そういうと、律は黙ってしまった。

澪は木を眺めながら言った。

澪「この木は、山の中にひとりさびしく立っているよな…。」

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 11:48:18.02 ID:SvrY/++fP
澪「この木は、人間と動物を超えて、高々と成長した。」

律「……。」

澪「もしこの木が語ったとしても、誰もこの木の言うことを理解できないだろう。」

澪「それほどまでにこの木は高々と成長してしまったんだ!」
 
律「……。」

澪「この木は待ちに待っている。いったい何を待っているんだろう?」

律「……。」

澪「この木はおそらく、イナズマに打たれることを待っているんだ!!」

律「そうなんだよ澪!澪の言うとおりだ!!」

律は激しく身震いした。

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 11:52:02.16 ID:SvrY/++fP
律「私が高みを目指したとき、私は私の破壊を求めていたんだ!!」

澪「うん。」

律「そして澪こそが、私の待っていたイナズマなんだよ!!」

そういうと、律は激しく泣いた。

澪は律の肩を抱いて、そしてふたりで歩いて行った。

しばらくいっしょに歩いた後、澪は語りだした。

澪「律はまだ自由ではない。自由を求めている。」

律「うん…。」

澪「律はまだ、自由を空想して、捕らわれている人にすぎない。」

律「……。」

澪「おまえの言葉にもまして、おまえのその眼が、おまえの危うさを物語っている。」

律「……。」

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 11:56:12.19 ID:SvrY/++fP
澪「律はまだ誇りを失っていない。周りの人間にもそれが分かっている。」

律「……。」

澪「『善人(笑)』にとっては、誇り高い人間は邪魔ものなのだ!」

律「!?」

澪「誇り高い人間は、新しいものを求め、一つの新しい徳を創造しようとする!」

律「うん。」

澪「『善人(笑)』は古い固定観念を愛し、与えられた価値観に満足するんだ!」

律「……。」

澪「わたしの愛と希望の名において切願する!おまえの魂の中にある誇りを投げ捨てるな!!」


澪かく語りき


39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 11:59:35.50 ID:SvrY/++fP
死の説教者!

澪「生きることを否定するやつっているよな。」

律「うん。」

澪「で、実際『生きるのをやめよ』とか言われて満足する人もいっぱいいる。」

律「そうだな。」

澪「地球は人口が増えすぎてて困ってるんだからさ、そんなやつらは『永遠の命(笑)』に誘われてみんな死ねばいいのにな。」

律「言うね。」

澪「彼らにとっては『快楽』か『自虐』の選択肢しかない。」

澪「『快楽』って言ったって結局は『自虐』なんだけどさ。」

律「ほお。」

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 12:01:40.44 ID:SvrY/++fP
澪「彼らはまだ人間として生きることすら受け入れてないんだよ。」

律「そうだな。」

澪「そんなに人生を否定したいんなら早く死んでくれないかな。」

律「毒舌ですね…。」

澪「あいつらの頭の中は倦怠と諦念でいっぱいだ。しまいには『いずれ死ぬんだから生きていても意味がない』とか言い出す始末だ。」

律「いるいる。」

澪「自分から見出さなかったら当たり前だろ?」

律「そうだな。」

澪「『人生は意味がない』とかいうやつも、『永遠の命(笑)』を説くやつも、結局おんなじだ。」

律「はい。」

澪「みんなまとめて死ねばいい。」


澪かく語りき

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 12:06:41.57 ID:SvrY/++fP
戦争と戦士!

澪「良い『好敵手』がいたらさ、手加減はされたくないよな。」

律「そうだな。」

澪「人生は戦いなんだよ!」

律「はあ。」

澪「私はそういった敵を“愛している”!」

律「うん。」

澪「彼らは彼らの『思想』のために戦わなきゃならないはずだ!」

澪「自分が持っている『思想』が敗北したとしても、自らの『思想』に対しては誠実であるべきだろ?」

律「うん。」

澪「安易な『平和』なんて求めるなよ!そんなもの自らの『思想』に対して、『好敵手』に対しての不誠実に他ならないだろ!」

律「確かに。」

澪「だから、私は律たちのことも“いたわらない”!徹底的に“愛する”」!

澪かく語りき


43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 12:11:43.85 ID:SvrY/++fP
新しい偶像!

朝の駅で通勤ラッシュを目にして。

澪「『国家』ってなんだろうな…。」

律「どうした、急に。」

澪「国家っていうのはさ、借り物の法律、借り物の権力、借り物の警察、暴力をもって私たちを縛る怪物に過ぎない!!」

警官「…。」

律「澪、お巡りさん困ってるから…。」

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 12:14:01.86 ID:SvrY/++fP
澪「見ろよ。あまりにもたくさんの『どうでもいい人たち』がいる。人がゴミのようだ。」

通勤客「」ガヤガヤ…

澪「『国家』っていうのはあいつらのために“発明”されたんだ!」

澪「『宗教』の呪縛から解かれたのに!今度は『国家』っていう新しい偶像に仕えたがる!」

律「ああ、確かに。」

澪「あいつらは借り物の知識を頭に詰め込んで『教養』だと言い張る!」

律「…。」

澪「もはや病気だよ!お金を求めて『勝ち組(笑)』になろうとする!」

律「お金は欲しいけどな…。」

澪「私にはお互い蹴落として、『勝ち組(笑)』に登ろうとする猿にしか見えないな!」


45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 12:15:35.41 ID:SvrY/++fP
通勤客「」ガヤガヤ…

澪「おめえらくっせえーんだよ!!」

通勤客「ん!?」

律「や、やめろ…。」

澪「貧乏最高ー!!大いなる大地には、自由な生活が開かれている!海の香りが漂っている!」

律「うん。」

澪「富に、お金に、国家に縛られないで満たされるとき、人は本当に自由になれる。」

澪「国家が終わるときに!彼方を見よ!あの虹!超人へのかけ橋が見えるはずさ!」

澪かく語りき

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 12:20:27.76 ID:SvrY/++fP
大胆な解釈、アレンジを加えているのでおかしなところとかあったら、
ご指摘いただけるとありがたいです。

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 12:26:08.69 ID:SvrY/++fP
市場の蠅!

ショッピングモールにて

澪「もうさ、孤独に生きた方がいいよ。」

律「んあ?」

澪「マーケットなんていうのはさ、ド派手な演出をするペテン師がいて、そいつを信仰し、群がる蠅どもの集まりなんだよ。」

律「なんだそれ。」

澪「ペテン師はずるがしこいからさ、流行を次から次から生みだす。」

律「うん。」

澪「で、蠅どもはそれを信仰する。踊らされる。マーケットも新しい宗教だわ。」

律「なるほどな。」

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 12:27:43.47 ID:SvrY/++fP
澪「深い井戸の底にものが落ちるときは、ゆっくりゆっくり落ちるよな。」

律「うん。」

澪「そういった繊細な心にしか届かない真実は、蠅どもには『どうでもいいこと』なんだってよ。」

律「そうだろうな。」

澪「金、流行、ド派手なもの。全くうるさくて仕方ないよ。」

客「」ガヤガヤ…

澪「でも蠅たたきはしないほうが良いよ。」

律「なんで?」

澪「こいつら、叩いても叩いても湧いてくるから。ほらそこら中にいるじゃん。」

客「」ガヤガヤ

律「…。」

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 12:30:20.78 ID:SvrY/++fP
澪「律は深い人間だ。蠅どもに傷つけられたことを思い悩む。」

律「ああ…。」

澪「お前が崇高であればある程、蠅どもはお前を傷つける。」

律「うん。」

澪「蠅どもは崇高な人間を見ていると、自分がつまらない存在に思えて耐えられないからだ。」

律「…。」

澪「じゃあ、いっそ孤独であれ!ひきこもりでもなんでもいいから!」

律「澪、ケーキ買わなくていいのか?」

澪「買う!」

澪かく語りき

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 12:42:13.82 ID:SvrY/++fP
>>50
なるほど。

どっちみち比喩が多いから能動的に読んでいかなきゃいけなくなりますよね。

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 12:43:29.35 ID:SvrY/++fP
>>52
そうです。
今回は書きためがあるのでキリの良いところまで書いて完結させます。

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 12:45:22.98 ID:SvrY/++fP
友!

澪「私はいつも私を相手に対話している。」

澪「しかし私以外のもう一人の者、友がいなかったらたえられないだろうな。」

律「」すやすや

澪「間抜けな寝顔…。やはり人間とは超えられるべきものなのだ!」

澪「友を持とうと思うなら…、私は律のために闘えなければならない!ということは、だれかの敵になれなくてはならない!」

澪「そして律の中にも敵を見出して、それを敬わなくてはならない!」

律「」すやすや

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 12:46:27.66 ID:SvrY/++fP
澪「律の前で裸になりたいと思うだろうか?」脱ぎ脱ぎ

律「」すやすや

澪「ありのままの私を見てもらいたい…。ちょっと思うけど…。」

澪「『ありのまま』を見せることは律をがっかりさせる!なぜなら私は完璧ではないから!」

澪「『神々』のような完璧な存在なら、『ありのまま』を見せてもいいのかもしれない。」

澪「私はそうではない!着飾ったっ方がいい!」

律「」すやすや

澪「律にとって私は、超人への憧れであるべきなんだ!」

律「」すやすや

澪「はたしてこいつはまた、『同情』を求めているだろうか?」

澪「安易な『同情』でできあがるのは、『友情』ではなく依存関係だ!」

律「」すやすや

澪「友を持つ…。簡単そうで簡単ではない。」

澪かく語りき


57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 13:04:29.05 ID:SvrY/++fP
千の目標と一つの目標!

澪「私は今まで多くの国と多くの民族を見てきた。」

律「うん。」

澪「そして民族によって異なる『善悪』があることを見てきた。」

律「そうだな。」

澪「そしてこの『善悪』ほど人にとって影響力のあるものはない!」

澪「善悪の評価は、宗教や倫理…、様々な形で行われるが、他の民族とは異なるものになっている。」

律「うん。」

澪「ある民族にとって善であるものが、他の民族では軽蔑の対象となる。」

律「確かにな…。」

58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 13:10:09.04 ID:SvrY/++fP
澪「そしてその『善悪』は天や誰かから与えられたものではない!」

澪「各民族の人間が自分自身で創造したものだ!」

律「そうだな。」

澪「人間が、自己を維持するために、『価値』という評価基準が必要だったんだ!」

澪「創造するものよ!」

律「え?わ、私?」

澪「そうだ。そして今、価値の創造は『個人』にたくされた!」

律「!?」

澪「千の『善悪』があった!善悪とは、千の首を持った化け物のようなものだ!」

律「ああ。」

澪「千の首を束ねる一つの目標を、人類はまだ持たない!」

澪「目標がないということは、人類もまだ未熟だってことじゃないか!?」

澪かく語りき


60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 13:26:50.03 ID:SvrY/++fP
>>59
やべえwwwww

やっぱこの手紙意味があったんじゃないかと思ってしまうんですが。

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 13:32:37.56 ID:SvrY/++fP
隣人への愛!

澪「『隣人愛』って言うけどさ…」

律「ああ。」

澪「要するに自分を愛せないから逃げてるだけだろ。」

律「そうかもな。」

憂「私は誰かと仲良くしようと思うと、心を痛めてしまいます。」

澪「それで良いんだよ、憂いちゃん。」

澪「私は、未来の人間、遠くの人間を愛せることの方が素晴らしいと思うね。」キリッ

律「というと?」

澪「隣人愛、隣人愛言ってるから近くにいない人間は仲間外れにする。戦争とかする。」

律「なるほどな。」

澪「『遠人愛』を進めるよ。遠くの人、そして未来の自分、超人への愛を!」

澪かく語りき

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 13:51:22.45 ID:SvrY/++fP
>>62
確か発狂した後の手紙なんですよね。

ありがとうございます。

またお暇な時にお読みください。

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 13:53:32.06 ID:SvrY/++fP
創造者の道!

澪「律、おまえも孤独への道を、自分自身への道をたどろうとするのか?」

律「ああ。」

澪「よく聞いてくれ、探し求める人っていうのは、道を踏み外すこともある。律がどれほど本気なのか、私に見せてくれ!」

律「私は、自由だ!!」

澪「何からの自由だ?『どんな考えにも縛られない』とか言って、自分の思想を、価値観を投げ出しちゃだめだよ!」

律「あ、はい…。」

澪「律自身の『善悪』の評価基準を、律自身に与えられなくちゃいけないんだよ!」

律「そうか…。」

澪「そしてまた、律が高尚になればなるほど、群衆は律に嫉妬して、不当な評価をすることも忘れちゃいけない。」

律「…。」

澪「自分自身を破壊しろ!超えろ!新たに創造しろ!」

澪「そうやって孤独に生きるうちに、『律は正しかった!』ということが、あとからついてくるよ!」

澪かく語りき


66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 14:15:09.85 ID:SvrY/++fP
>>65
たぶん私のルサンチマンがそうさせてしまうのではないかと…。

原作が秀逸過ぎて難しいです。

67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 14:30:56.70 ID:SvrY/++fP
蝮のかみ傷!

ある日のこと、暑かったので、澪はいちじくの木陰で居眠りをしていた。

すると信代が出てきて澪の首筋に噛みついた。

澪「痛っ!」

信代「あ、澪っ!」

澪「逃げなくていいよ。良い時に起こしてくれた。」

信代「澪、あんた私の毒で死んじゃうよ…。」

澪「信代の毒ごときで死ぬないよ。でもこの毒を取り返しな!信代は私に『贈り物』をするほど裕福ではないだろ?」

信代はもう一度澪の首に飛びつき、その毒を吸った。

68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 14:32:54.07 ID:SvrY/++fP
………

純「ど、どういうことですか?澪先輩。」

澪「敵が行った『悪』の行為に対して、正論で報いるなっていうこと。敵が恥ずかしい思いをするからな。」

純「なるほど。」

澪「むしろ敵がいいことをしてくれたんだっていう風にしてしまえば良いっていうことなんだよ。」

純「ああ。はい。」

澪「常に正論が成り立つわけではない。正論ばかり言うのは好きではない。」

澪かく語りき


71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 15:24:44.29 ID:SvrY/++fP
自由な死!

澪「多くの者は無駄に長生きし、少数の者は早死にする。」

律「うん。」

澪「私はあえて言いたい。ふさわしい時に死ねと!」

律「おお!」

澪「なんにも考えてないやつらでも、『死』のこととなると大騒ぎするよな。」

律「そりゃそうだ。死ぬの嫌だもん。」

澪「『死』は重大視されているのに、いまだ『死』をお祝いするということには至っていない!」

純「『死』をお祝い…。」

澪「ふさわしい時に、祝福されて死ぬべきなんだよ!」

律「ふさわしい時ね…。」

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 15:25:41.17 ID:SvrY/++fP
澪「唯は、キリストは、あまりに早く死にすぎた!」

律「ああ。」

澪「もっと長生きできていたなら、彼女らは生きること、この現実という大地に生きることを学んだかもしれない!」

律「そうかもな。」

澪「自らの教えを撤回したかもしれない!それほど唯もキリストも高貴な人間ではあったんだよ!でも彼女たちは未熟な人間だった。」

澪「ふさわしい時に死ね!」

純「はい!」

澪「私が見たいのは、みんなが超人に向かって歩み始めることだ!それまでは、私が生きることを許せ!」

澪かく語りき

76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 15:39:48.15 ID:SvrY/++fP
憎悪と軽蔑。指摘されてはっとしたところがありました。
読み違えてはいけないところだと思ったので注を入れさせてください。

言葉尻だけ取り上げても原作では「畜群」、「余計な人々」と様々な表現を巧みに使って
表現しているのに対して、私の表現では「こいつら」、「なんにも考えてないやつら」と
若干身も蓋もない表現になっています。

それでも「ツァラツストラ」からも憎悪が読みとれないわけでもありませんが、ご指摘の通り、
ツアラツストラは既成概念や群衆を憎悪しているわけではなく、飽くまでも関心は『超人』に
あるということだと思います(『蠅たたきをしても無駄』からも分かるように、敵とすら考え
いてないのだと思います)。

77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 15:42:57.30 ID:SvrY/++fP
>>73
>>74
おもしろそうですね。支援するのでぜひ読みたいです。

>>75
何部でしたっけ?

79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 15:47:55.53 ID:SvrY/++fP
贈り与える徳!

澪は街に別れを告げようとしていた。
五色の桜の丘という名前を持つ、澪の心にかなった街である。
後輩や友人たち、多くの者が見送りに来ていた。

澪「ここからは一人で行きたい。私は一人で行くのが好きだから。」

律「そんなこと言っちゃってだいじょぶか?。」

純「澪先輩、これ。」

澪「ベース…?」

ベースには金の装飾が施され、蛇が太陽に巻きついていた。

澪「ありがとう。」ニコッ

80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 15:50:10.38 ID:SvrY/++fP
>>78
だいぶ先だwww

81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 15:51:40.34 ID:SvrY/++fP
澪はベースを手にとって構え、友人たちにこう言った。

澪「どうして金は喜ばれるんだろうな。」

澪「金は希少で、実用的ではなくて、でも柔和な光を放っている。金はいつも贈り物として与えられる。」

澪「『最高の徳』も同じなんだ。」

一同「ん!?」

澪「ありふれてなくて、実用的でなくて、でも柔和な光を放っている。最高の徳は、贈り与えられる徳なんだよ。」

澪「私は知ってるよ。みんなが『贈り与える徳』にいたろうと努力していること。」

澪「みんなの徳はひとつの新しい『善悪』になるべきなんだ!」

澪「新しい徳-輝く金色の太陽の周りを、認識の蛇-賢さの象徴が取り巻いているよ!」

83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 17:09:27.26 ID:SvrY/++fP
ここで澪は口をつぐみ、穏やかな目で友達を見つめた。

澪「みんな…、」

澪が再び語りだした。声色を変えて。

澪「私が望むのは、みんながその徳をもって、大地という現実に生きること!」

澪「観念や空想の世界に逃げないで!」

律「おう!」

澪「人間の歴史の中で、今までに百度も、千度も、精神や徳は、この現実という大地から飛び立とうとして、失敗したんだ!」

澪「みんなは、その翼を無駄にはばたかせて、大地を打ち付けるようなことはしないでくれ!」

純「はい!」

澪「大地という現実に忠実であってくれ!みんなが新たに万物の『価値』を創造するんだ!そのためには、みんなは戦わなくてならないかもしれない。」

律「うん!」

澪「すでに大地には、新しい香りが、新しい希望が漂っている!」


84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 17:15:19.42 ID:SvrY/++fP
澪は再び口をつぐんだが、まだ最後の言葉を言っていないようであった。

しばらくしたあと、おもむろにベースを弾きながら、こう語った。

澪「みんなそろそろ行くよ。今はみんなも別れて、一人で行った方がいい。」

澪「私のことなんか忘れた方がいい!!」

澪「私のことなんか信仰したってしょうがないよ!みんな、『自分自身』を探し求めてくれ!」

澪「みんなが、「澪のことなんて知らない」って言ったとき、再びみんなに会いに来るよ。」

律「澪…。」

85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 17:17:11.40 ID:SvrY/++fP [62/63]
澪「そしてみんなと同じ一つの希望を持てる日が来る!そのときは、大いなる正午を祝おう!」

純「はい!」

澪「大いなる正午というのは、人間が動物から超人にいたろうとする中間点だ!」

澪「夜という死に向かっていく自分を、最高の希望として祝えるときであり、それは新しい朝に向かう道でもある!」

澪「そのとき、認識の太陽は真上に!天空の中心に輝いているはずだ!」

澪『すべての神々、唯は死んだ!今や私たちは超人が生まれることを願う!!』

澪「これを、大いなる正午が来たときの、私たちの遺言にしよう。」

純「はい!」

律「そうだな!」

そういって澪は旅立って行った。

86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/11(火) 17:22:27.52 ID:SvrY/++fP [63/63]
以上が第一部なので、ここで一旦締めさせてください。

支援してくださった方、読んでくださった方、本当に、本当にありがとうございます。

二部以降を誰かほかの方に書いていただきたいとも思っているのですが、如何でしょうか?

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