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ハルヒ「東中出身、涼宮ハルヒ・・・只の」-2

ハルヒ「東中出身、涼宮ハルヒ・・・只の」
続きです
261 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 15:33:54.99 ID:jwdxxkSb0 [64/121]
岡部「・・・おい、説教は無しでいいぞ。お前達も、今日はもう帰りな。」

朝倉「はい、分かりました。・・・キョン君、行きましょう?」

キョン「・・・・・・。」

ハルヒ「キョン、しっかりしなさいよ!ねぇ、キョン!!!」
ガシッ
長門「・・・・・・涼宮さん、ダメ。あまり・・・その、責めちゃ・・・・・・」

ハルヒ「せ、責めてなんかいないわよ!只、あんまり落ち込むから・・・」

みくる「キョン君・・・・・・。」


新川、森は警察署に戻った。今回の騒動に関するお咎めは無いそうだ。・・・キョンは、
脳内から一つの可能性を消してしまっていた。世界が普通であるという事は、こういう
事であるのだという事を・・・世界は無慈悲であるという事を、彼は忘れていた。


・・・・・・どこかで、水滴が落ちる音が聞こえる。

266 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 15:43:54.83 ID:jwdxxkSb0 [65/121]
キョン「・・・・・・。」

頭の中で考える。古泉がいないとはどういう事か?
もしもこの世界があの消失世界と同じであるならば、鍵となるのはSOS団に違いない。
ハルヒ、長門、みくる、そして古泉。この4人と自分と、そしてあの文芸部室を合わせれば
鍵は全て揃い、元に戻る筈。・・・世界を、消失させたままにしないで済んだ筈。

しかし、古泉はいない。鍵は、揃わない。


キョン「・・・どうすれば良いんだよ、俺は・・・。長門、朝比奈さん、俺は・・・・・・。」

朝比奈さん(大)から受け取った、TPDDの力の片鱗は、本当に頭の中にあるのかと言いたい程
その存在は感じられなかった。いくら朝比奈さんがドジッ子でも、使い方を伝え忘れる・・・なんて
事は無いだろう。一応頭の中で関係がありそうな言葉を思い浮かべてみたりしたが、そのどれもが
発動には結びつかなかった。ならば、この未来の道具には頼れないという事だ。

長門には頼れない。ここには宇宙人は存在しない。そして機関も、今は只の警察や・・・その他の、
平凡な職に勤める人々でしか無い。

3年前、元の歴史では確実に生きていた時間帯に古泉は死んだ。特殊な時間断裂は、その歴史すらも
歪めてしまったのだろうか。自分があの世界に帰れない事以上に、元のSOS団に永遠にならない事
の方が・・・衝撃である。

268 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 15:57:08.08 ID:jwdxxkSb0 [66/121]
キョン「・・・・・・。」

SOS団のサイトを更新する。不思議な話を集めるだけでは無く、こちらからも
活動報告を上げる形でサイトを運営しているのだ。だが、今のその活動に意味は
無い。只の、義務でしか無いのだ。

みくる「キョ、キョン君。お茶飲みますか?」

キョン「あ、すみません朝比奈さん。一つ貰います。」

みくる「えぇ。・・・元気出して下さいね、おまじないをかけておきましょう。」

そう言って微笑みながら、みくるはポットからお湯を注ぎ始めた。キョンは立ち上がると、
サイトを閉じ伸びをする。視線を部屋の隅にやれば、そこには長門が座っていて、本を読んで
いた。難しそうな分厚い本だ・・・題名など、想像もしたくない。

ハルヒはまだ見えない。朝倉は家の用事だと言って今日は休みだ。



そして勿論、この部屋に居る男は・・・・・・彼一人である。

みくる「お茶を、どうぞ。」

269 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 16:05:56.81 ID:jwdxxkSb0 [67/121]
ハルヒ「キョンッ!!!」

キョン「お、ハルヒ。遅かったな。」ズズー

ハルヒ「呑気にお茶なんて啜っていないで、ちょっと手伝いなさいよ!どうせ
    あんた、ここ数日そんな感じでボケーッとしてるんでしょう?なら暇
    よね暇でしょ忙しいなんて言わせないわ!」

キョン「・・・何だよ、急に。何かまた厄介事か?」

ハルヒ「あんたにだけは言われたく無いわよ!それより、これよこれ!あんた、
    これ分かる?」

キョン「数学か、生憎だが俺の脳みそにはピンと来ないな。お前の宿題か?」

ハルヒ「違うわよ、私の家の近所に住む子が居てね、その子の宿題なのよ。まぁ、
    あんたに分かる訳も無いわよね。ねぇ、みくるちゃん、有希、これ分かる?」

みくる「うぇっ!?そ、そんな難しいの分かりませんよぉ。」
長門「・・・分かる。」

ハルヒ「本当!?お願い、この答え教えて!」

長門「・・・でも、それは宿題で・・・」

ハルヒ「良いのよ、別にあの子に教える訳じゃなくて、単に競争なの!あの子とどっちが
    早く解けるかっていうね!!!」

キョン「・・・でも、それじゃお前ズr「シャラップ、黙りなさい凡人確定。」

272 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 16:17:57.75 ID:jwdxxkSb0 [68/121]
朝倉「やっほー、ごめんごめん。遅くなっちゃったわねー。」

キョン「お前も持ち込み企画か、今度は何のゲームだ・・・バケツ?・・・カメか。」

朝倉「えぇ、この文芸部室で買えないかしら?やっぱり、湿気とか問題ある?私の
   知り合いの人がねー、高校の音楽室で飼っていたんだけど、そのカメが子供を
   産んだのよね。それで、私も一匹欲しいなっていって貰ってきたのよ。ねぇ
   トンちゃん2号!」

キョン「ネーミングセンス無いな、お前。」

朝倉「五月蝿いわよ、全く。それより、どこかに置く場所無いかしらね・・・あら涼宮さん、
   何してるの?」

ハルヒ「あ、朝倉さん!見てよこれ凄いわ、有希凄いのよ!こんなに難しい問題を、あっと
    いう間に解いちゃった!!!」

朝倉「へぇ、ちょっと見せてよ。・・・うっわぁ、何この計算式。」

長門「・・・昔タイムマシンを本気で作ろうとして、その時に物理を勉強したから出来た。」

キョン「長門は凄いなぁ。」

ハルヒ「・・・な、私だって凄いわよっ!?この間書いた論文、読んでみる!?難しくてキョンの
    頭なんかパーンよパーン!!!」

273 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 16:24:53.29 ID:jwdxxkSb0 [69/121]
朝倉「論文?何の?」

ハルヒ「まぁ、それは見てからのお楽しみって奴よ。一応ここ文芸部な訳だし、
    何か皆で小説でも書いてみるのも面白いと思ってね!その手本!!」

キョン「それで論文か?お前はやっぱり、少しズレているなぁ。どれ、見せてみろ」

ハルヒ「腰を抜かさないでよね、キョン!!!」


キョン「・・・ほぉ、結構面白いんじゃないか?少なくとも、長門とかはこういうの
    好みそうだな。ほら。」

長門「・・・見せて。」
ハルヒ「ほらちょっと凄いでしょう!?まだまだ未完成で穴だらけ、虫食い穴みたいな
理論だけれどね!」
朝倉「へぇ~涼宮さん字が綺麗ねぇ。」
みくる「私にも見せて下さいよぉ~。」


キョン「・・・・・・フフッ。」

キョンに、いつ振りかの笑顔が生まれた。微笑ましい光景を前に、少し心が軽くなった・・・
その時。

274 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 16:29:30.49 ID:jwdxxkSb0 [70/121]
ふと、頭の中に波紋が広がる。それは、

朝比奈みくるの入れた、お茶の表面であり。
難しい本を読む長門の、瞳の光であり。
朝倉涼子が連れて来た、可愛らしいカメの泳ぐ様であり。
どうしてだか分からないが、涼宮ハルヒの論文もそんなイメージだ。

キョン「・・・・・・くっ・・・。」

ハルヒ「・・・キョン?」
朝倉「キョン君?」

長門「・・・・・・・・・・・ぁっ!」
みくる「きゃっ!!!」


キョンは倒れ伏し、そのまま「かき消す様にその場から消えた」。


ある、夏も近い・・・・・・七月七日の事である。

276 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 16:38:10.57 ID:jwdxxkSb0 [71/121]
キョン「・・・・・・つぅ、ここは一体どこだ?外・・・?暗いし、何がどうなって・・・。」

キョン「・・・学校の校庭・・・・・うぅ・・・・・・。」

???「・・・ちょっとあんた、早く入りなさいよ!」

???「待て、俺はそんな、校門を飛び越えたりする真似は出来ないんだよ!」

キョン「・・・っ!?隠れた方が良さ気だな。」


???「ほら、ここに石灰があるわね。あんた、これ持って運動場で待ちなさい!私は
  あの壇上に立って指示するから!」
???「お前は楽な方かよ・・・」
???「何を言っているの!?私は頭脳であんたは手足!役割分担よ、ほらさっさと持って
  行きなさい、ありったけね!!!」

キョン「・・・何だか、随分と横暴な奴だな・・・。おっと、バレるバレる・・・。」

???「・・・ねぇ、今何か居なかった?」
???「猫だろ、ほら持ったぞ。早く行こうぜ。」
???「あんたが指示してどうするのよ!もう・・・ほら行くわよ!早く!!!」タタタタタタタタタッ・・・・・・
???「やれやれ・・・3年前から横暴な奴だ。」キコキコキコキコ・・・・・・

キョン「・・・3年前、あぁ、そうだ・・・俺にはやらなければならない事があるんだっ!えぇと、
    あぁ、でも・・・・・・」

キョン「俺は一体、誰なんだ?」

277 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 16:45:34.80 ID:jwdxxkSb0 [72/121]
キョン「何がどうなっている・・・この胸の焦燥感は何だ!?時間は・・・夜8時過ぎか。
    7月7日で、ここは・・・多分、中学校かな?・・・場所も分かる。でも、俺が
    誰だか分からない・・・・・・全く、何がどうなっていやがる!」

???「・・・やっぱり、あそこ何か居るわよ。ちょっと見てきてよ・・・」
???「別に、何も居ないだろう?それよりほら、早く指示しろよ。次はどこに線を・・・」


キョン「危ないな。何故だか知らんが、あいつらに見つかったらとんでもない事になる
    気がする。」

キョン「・・・とにかく、こっから離れよう。ここに居るだけでは解決しそうに無いしな。」



キョン「迷ったああああぁぁぁ・・・・・・。何処だよここはぁ~・・・。」

???「あの~・・・」

キョン「うわぁっ、さっきの人!違います別に私は怪しい人じゃないんです!さようなら!!
    アデュー!!!」

???「えっ!?あ、待って下さいねぇ、ちょっと!!!」

278 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 16:50:37.98 ID:jwdxxkSb0 [73/121]
???「ねぇ、ちょっと!待って!!」

キョン「うおおおおおおおおおおおおおおおっごめんなさい違うんです別に不法侵入したあなたを見た
    訳では!」

???「不法侵入って何!?ボク何かした!?」

キョン「・・・・・・・・・ボク?」クルッ

キョン「・・・あぁ、何だ・・・格好が似てるから分からなかった、君男の子か?」

???「うぅ・・・酷いですよ・・・。」

キョン「す、すまんすまん、泣かないでくれ・・・えぇと、俺は・・・お、俺はジョン!ジョン・スミスだ!!
    君の名前は何だい?」

???「ジョン?・・・外国の人なの?ボクは・・・」

キョン「あぁ、いや、まぁそんな所だな!別に怪しい者では無いさ。よしよし、泣き止んでくれ。泣き止んだら、
    俺の事は黙ってそのまま見逃してくれ。」

???「・・・ボクは、古泉。古泉、一樹だよ。」

280 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 16:58:30.72 ID:jwdxxkSb0 [74/121]
キョン「古泉君か、そうか、あまり遅くならない内に帰れよ!お母さんも心配しているぞ!」

古泉「・・・・・・心配なんか、していないよ。」

キョン「はぇ?」

古泉「お母さんも、お父さんも・・・ボクの事ばんか、じんぱい・・・しれ・・・くれないよ・・・」グスッ、ヒック

キョン(地雷踏んだか・・・)「お、おおおおおおおおおおおおおお兄さんにはどうしようも無いなそそりゃ。」

古泉「・・・・・・うん。それもそうだね、じゃぁねジョンさん。」


キョン「あぁ、じゃぁな・・・・・・何だ、この胸のざわめきは・・・。」

キョン「・・・・・・古泉君、ちょっと待ってくれないか?実はお兄さん、今とっても困っていてな。ちょっと手を
    貸してくれないか?」

古泉「!お金なら貸さないよ!?どうせ返してくれないんだ!そのまま取るんだ、不良なんだ!!!」ダッ

キョン「ちょ、ちょっと待ってくれ!古泉君!?いや、マジで違うから・・・」




   ググ・・・・・・                     グラグラグラグラグラッ!!!!!

281 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 17:08:47.26 ID:jwdxxkSb0 [75/121]
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ・・・

キョン「何だこの揺れは・・・地面が揺れてないのに、何かが揺れている様に感じる・・・
    あっ、あぁっ!!!??古泉君っ!?」

古泉「うわ・・・うわああああああああああああああああああああああああああああああああああ
   ああああああああああああああああああああっ!!!!!!」ズズズブッ・・・・・・ズズズズズ・・・・・・・・・

キョン「何だありゃ・・・体が消えて、いや何かに飲まれて・・・・・・・・・クソッ、待ってろ!今助けて
    やるからな!!!」

古泉「うわ・・・わああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!」


パキューーーーーーーーーーンッ   ・・・・・----ィィィイイイインッ!!!!!  どてっ!

キョン「痛っ!」
古泉「うわっ!!!」

キョン「・・・・・・やばい、目が見えない。入る時のあの光、何だ一体!?」
古泉「ぼ、ボクは目を瞑っていたから、何が何だか・・・・・・。何、これ・・・これは何っ!?」
キョン「えっ!?何?何だ!?」------------------------ォォォォォォオオオオオオオオン・・・・・・・・・。




古泉「青い・・・・・・・・・巨人?」

283 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 17:17:39.35 ID:jwdxxkSb0 [76/121]
キョン「うわぁっ!何だ!何か居る!!何か感じるぞ俺は!!!」

古泉「・・・涼宮ハルヒのストレスが実体化した存在・・・この灰色の世界は、彼女の力によって
   作られる、・・・そして少しずつ広がって、やがて世界を覆い・・・入れ替える!?」

キョン「この状況が分かるのか!?」

古泉「何でか知らないけれど・・・頭の中に浮かぶんだ!分かるんだ!ボクの中に・・・変な力が
   あるって!」


-----------------ォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!

古泉「う、うわぁあぁぁっ!!!」
キョン「うぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
    あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
    ああああああああああああああばばばばばばばばばばっ!!!!!」
青い巨人の腕が振るわれ、遠くにあるビルが成す術も無く崩れ落ちていく。よく見れば、周囲は一面灰色の
奇妙な町並みであり、明かりを漏らす家屋は一軒も無い。

また、巨人の拳が落ちた。家が崩壊し、瓦礫がこちらに飛んでくる。
古泉「えぇ・・・えぇと!」

古泉少年が、全身に力を込める。赤い渦が足元から生まれ、やがて彼の体を包み込む・・・少々小さな、赤い
球体となった。瓦礫がぶつかる。球体はそれを貫き、更に細かくなった瓦礫を周囲に弾き飛ばした。

キョン「おぉ・・・何が起きているか分からないが、何だか凄い事になっているのは分かるぞ!」

青い巨人が、その赤い光を目に止めた。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・足を大きく、振り上げる。

286 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 17:29:05.50 ID:jwdxxkSb0 [77/121]
古泉「わあああああああっ!わああああっ!!わああああああああああっ!!!」

古泉少年は、その足から必至に逃げ惑う。どうも巨人はその赤い点のみを見ているらしく、
更に近くに居るキョンには気づきもしない。しかし瓦礫は容赦なく飛び散り、やはり彼も
また、危険な状態にあるのだった。

キョン「うぉっ!また何か・・・近くに落ちてきた感じがするぞ!?うおっ!!!」ドシャァンッ
瞳は未だ暗闇になれず、まだ全快には数分かかる見通しだ。

古泉「うわぁっ、やだっ!助けてーーーーーーーーっ!誰かっ!!助けてーーーーーーーーーーーーっ!!!
   お姉ちゃーーーーーーーーーん!新川さーーーーーーーーーーーーーーーーーーーんっ!!!」

キョン「あ、新川!?・・・・・・聞いた事がある名前だな・・・って古泉君、結構ピンチじゃないのかアレ!?」

例え目は利かずとも、風の流れとうねりで感じられる。敵は数十メートルもあろうかという巨大な化物で、
少なくとも四足歩行では無さそうだ。そして古泉少年の声の位置から、彼は逃げ惑いつつも・・・逃げられない事が
分かる。

古泉「な、何だよ!この壁!!!」

・・・いわゆる、それは「世界の果て」だ。ゲームなどではお馴染みの、設計が成されていない故に入る事が出来ない
透明な壁。しかしこの世界のそれは灰色に輝く不気味な壁で、それも少しずつ広がっていた。

古泉「わっ、嫌だ、助けて・・・嫌だ、嫌だあああああああっ!!!」

古泉少年を包む赤い球が薄れる。少年の体から力が抜けるのと、それは同調している様だった。巨人の拳が振り上げ
られ、それが近くの建物をかする。現実世界ではきっと、誰かの家に相当するのだろう。

その家の瓦礫は、遠くに居る彼を救いに来た筈の男に、真っ直ぐと向かっていった。

288 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 17:40:19.81 ID:jwdxxkSb0 [78/121]
キョン「グヘァッ!!!」

瓦礫は男の後頭部に当たり、そのまま体を押し倒す。死んではいないが、限りなく死に近い状態だ。
古泉少年は、その姿をしっかりと眼に映してしまう。

古泉「あ・・・あぁ・・・・・・」

世界の壁と、青い巨人に挟まれて。古泉少年は、その体から完全に力を抜いてしまった。

古泉「えっ・・・あっ・・・・・・うわあああああああああああああああああお姉ちゃーーーーーーーーーーんっ!!!」

高度数十メートルの高さから、古泉少年の細く軽い体が落ちる。巨人はその姿を追いすらしない・・・赤く光らない
球体は、基本目に入らないのだ。破壊願望に任せて、適当に拳を振り落とす。・・・その先には、空中落下中の古泉
少年が居た。

古泉「あぁ・・・・・・。」

古泉少年は考える、この落下する刹那の間に。両親に見捨てられ、頼りの姉代わりと叔父さんは近くにいない。
訳の分からない少女の訳の分からない空間で、このまま巨人に潰されて蛙の様に死ぬのか。

古泉「あぁ・・・・・・」

地面に叩きつけられるその間際、視界の隅に入ったのはジョン・スミスと名乗る謎の男だ。瓦礫に頭を打ちつけて、
血を流して倒れている。その体は動かず、巨人が弾き飛ばした別の瓦礫が今正に彼の体を押し潰そうとしていた。


古泉「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!」

290 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 17:44:40.85 ID:jwdxxkSb0 [79/121]



・・・これは、実に陳腐な話しだ。よくある、少年漫画のつまらないストーリー。だが、


古泉「させない、させない、させない!!!殺させるもんか化物めえええええええええええええええええええっ!!!」




少年は、大好きな人々と・・・命の恩人の為に、立ち上がる物である。


『『『ゥゥウウウウウウウウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!』』』

そして、巨人はその全てを迎え撃つ。

赤く小さな球体が、その青い巨大な拳に突き刺さった。しかし拳は振りぬかれ、そのまま地面へと深く、深く
沈み込んでいく。

灰色の世界が、この世界に初めて生まれた世界の危機が、大きな轟きをあげて揺れた。灰色の土煙と青い巨人が
叫ぶ中、赤い光はどうしてもその姿を見る事が出来なかった。

291 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 17:53:32.27 ID:jwdxxkSb0 [80/121]
キョン「う~ん・・・うん?」

キョンが目覚める。と同時に口一杯に灰色の何かが詰まっており、それが酷く無味乾燥な味で
ある事に顔をしかめ・・・そして、

キョン「・・・古泉!古泉はどこだっ!?」

キョン。時空振動。3年前の七夕に、そして閉鎖空間。そして、あの弱々しい古泉少年。
彼の脳裏に、いくつかの記憶が戻る。未だ完全では無いが、しかし十分な記憶。

キョン「古泉ーーーーーーーーーッ!!!どこだぁーーーーーーーーーーっ!!!」

・・・ピシ、パキパキピシッ・・・・・・

キョン「これは・・・閉鎖空間の崩壊・・・っ!古泉は勝ったのか!!!!!」

灰色の世界の空が割れ、星が瞬く夜空が覗く何とも不思議な光景を前に、キョンをひと時の
静寂を感じた。世界の危機は少年の前に敗れ去り、無様に足元へと崩れ落ちていく。・・・やがて。
灰色の煙が収まり、世界が完全に元通りとなった時・・・・・・。

キョン「古泉!」

赤い少年の姿が、そこにはあった。赤い球体は存在しないのに・・・少年の体は、赤く染まっている。

キョン「古泉、古泉っ!?」

キョンの脳裏に浮かぶのは、新川の悲しそうな顔である。


「・・・・・・あの子は、3年前に死んだんだ・・・交通事故でな。」

293 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 18:00:54.96 ID:jwdxxkSb0 [81/121]
キョン「交通事故・・・交通事故って、こういう事かよっ!」

世界の危機を救った少年に対して、キョンは何も出来ない。少年の体はどんどん
赤く、そして黒く・・・肌は冷たく、青白くなっていく。

キョン「畜生・・・畜生!!!何も・・・また何も出来ないのか!!!!!」

これが本当の、世界の終わりか。そう、思わざるを得ない。助けを呼ぼうにも、彼は
今携帯電話を持たない。大声で叫ぼうにも、喉がかすれて助けも呼べない。体は全身
痛く、まともに動けない。

キョン「クソックソックソッ!!!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺の事はどうでも良い
    から・・・神様、この・・・・・・俺の友人だけでも、助けてくれ・・・っ!!!」

涙を浮かべ、天に懇願する。しかし神は、・・・・・・何も、答えてはくれなかった。



・・・・・・ョン君、キョン君!

297 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 18:12:26.93 ID:jwdxxkSb0 [82/121]
???「キョン君、聞こえますか?私です、朝比奈です!!大きい方ですよ!!!」

キョン「・・・えっ・・・朝比奈さん!?何処に居るんですか!?古泉が、古泉が死にそうなんです!」

朝比奈「えぇ、分かっています。落ち着いて聞いて下さいキョン君。今、私はそこに居ません。声だけ
    そちらに送っています。これはTPDDの持つ機能の一つ、「時空跳躍指令」による物です。」

キョン「な・・・こっちにはいない!?そんな・・・・・・」

朝比奈「キョン君、大丈夫。少しの間、キョン君の体を借りるわよ。・・・説明は後でするから、ごめんね!」

キョン「えっ!?ちょっ朝比奈さ・・・・・・」


調整員「・・・ジャック完了、これより古泉一樹の治療任務にあたります!」

朝比奈「治療班、準備して!」

治療員「はいっ!!!総員配置に付け・・・これが未来の命運を決めるのだ!!!」



・・・・・・未来の技術について、少し説明しなければなるまい。TPDDは正式名称「時間平面破壊装置」、いわゆるタイムマシンにあたる。
これにより朝比奈さん(大)その他未来人は過去へ未来へと行ける訳だが、その機能は一つとは限らないのだ。・・・・・・つまり、時間を
移動したり空間座標を調節する他にもう一つ、未来人が取るべき行動である「禁則事項」という奴だ。
禁則事項は厄介で、とても人間一人の努力で守りきれる物ではない。精密なコンピュータで計算した事象全てを完璧に守らなければなら
ないのだ。だから、ジャックするのだ。制御するのだ、人間の頭脳を・・・言葉を、行動を、「未来に居る人間が」!

朝比奈「一度は言ってみたい台詞なんですよねキョン君・・・『未来の技術をなめないで頂戴』!」

302 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 18:20:38.67 ID:jwdxxkSb0 [83/121]
治療員A「対象名「キョン」、骨・筋に異常無し!行動可能です!」
治療員B「痛覚遮断・・・・・・・・・完了!!!」

朝比奈「待っていてね古泉君、今助けてあげるから!」

・・・酷い話である。自分達では過去に飛ぶにリスクが高い為、少年一人を送り込み、
後からその行動を制御・操作し、高確率で重体となるであろう古泉少年を助けるの
だから。しかし、こうしなければならなかったのもまた事実。とりあえず今は・・・

朝比奈「治療装置展開!送り先はキョン君の傍へ!」
調整員「了解!!!」


・・・・・・未来人の、あまり無い活躍ぶりをご堪能頂くとしよう。






古泉「・・・う、うん?」

森「いっちゃん!?いっちゃん、大丈夫!?」

新川「良かった・・・目を覚ました!!!」
田丸「よっしゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
   よく頑張ったな古泉いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!!!」

古泉「・・・・・・お姉ちゃん。皆。」

304 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 18:31:58.98 ID:jwdxxkSb0 [84/121]
古泉「ねぇ、ジョン・スミスって知らない?」

森「だぁれそれ?外国の人?」

古泉「うん。・・・ボクを、助けてくれた人なんだ。」
森「まぁ本当?でも、そんな人全然見掛けないけれど・・・本当ならお礼がしたいわねぇ・・・はい、
  いっちゃん。林檎が剥けましたよー。」

古泉「・・・お姉ちゃん、一人でも食べられるよ。」

森「!あらそう、ほら、じゃぁここに置いておくね!     ・・・あ、田丸さん!どうです、伸展は・・・

田丸「ぜぇんぜんダメだなぁ、全く持って不可解だ。現場にゃ古泉の血痕が夥しく残っているって
   のに、まるで車の痕跡が見当たらないんだよ!ブレーキ痕どころか、破片の一つもだ!」

森「・・・そうですか・・・いっちゃんを轢いた犯人、絶対に許さないわ。いっちゃん、お姉ちゃんが必ず
 逮捕してあげるからね!」

古泉「お姉ちゃん、田丸さん、実は・・・・・・それの事なんだけど。」

森・田丸「「何?」」

古泉「信じられない様な話かも知れないけれど、聞いてくれる?」


・・・それは実に信じられない様な、壮大でそして恐ろしい話なのだが・・・しかし程なくして発生した
別の閉鎖空間を以てして、古泉は彼らに「超能力」の存在を知らしめ・・・・・・数ヵ月後には、「機関」の
前身となる組織が出来た。やがてそこに他の超能力者が集まり、警察や鶴屋家まで巻き込んだ大きな
騒動になるのだが・・・それはまた別の話。

307 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 18:44:11.42 ID:jwdxxkSb0 [85/121]
キョン「・・・なあ朝倉、その林檎を少し分けてくれないか?」

朝倉「嫌です、怪我人は病院食でも食べてなさい!・・・全く、この大事な時期に車に轢かれる
   なんて、とんでもない大ポカね!大事に至らないから良かった物の、下手してたら死んで
   いたわよ!?」プンプン!

キョン「うぅ・・・何てこった、朝比奈さんも長門もいないし、俺の癒しはどうしてくれよう・・・暇だぁ。」

ガラッ

ハルヒ「キョン!大ニュースよ大ニュース!!うちの学校に、転校生が来るのよ!しかもその転校生ってね、
    ボードゲームの世界チャンピオンらしいのよ!!!」

朝倉「それって・・・もしかして、例の古泉君!?あぁ、良かった、遂に見つかったのね!いやぁ、あんまりにも
   情報が見つからない物だから、もう死んだのかと思ったわよ!」

ハルヒ「よし、キョン!さっさとその傷を治して、あんたも部室に来なさい!あたし達は一足早く彼に会って、
    SOS団に勧誘してみるわ!!!」
朝倉「そうと決まれば善は急げよ!むしろ、学校に来る前から勧誘しておかないとね!他の部活に取られたら、
   そいつらをナイフの錆びにしないといけなくなる所だわっ!!!」
ハルヒ「じゃ、またねキョン!また来るから、その時まで大人しくしてなさいよっ!!!」

ガラッ ピシャッ!!!


キョン「・・・やれやれ、嵐の様な奴だな相変わらず。」

309 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 18:51:32.58 ID:jwdxxkSb0 [86/121]
キョン「・・・・・・・・・。」

キョン「・・・・・・・・・どうぞ、入ってくれ。」

???「お気遣い頂き済みません。あまりにも楽しそうな物で、ついやってきてしまいましたよ。」

キョン「・・・・・・よぉ、ようこそ・・・。この時期に、珍しい転校生だな?」

???「・・・えぇ、そうですね。ボクは、あなたの事を知っています。でも、それは3年前の話・・・その時と、
  全く姿形が変わらないんですね・・・「ジョン・スミス」さん。」

キョン「そうだな、ま、座れよ古泉。これから話す事は荒唐無稽で支離滅裂だ、「機関」とか「超能力」
    とか言われても、ピンと来ないだろうが・・・でも、お前が3年前の事を少しでも覚えているなら
    話は早いんだ。」

古泉「お付き合いしますよ、・・・いつまでも、ね。」


SOS団、これにて6人。最後の鍵は、懐かしきあの場所で。

310 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 18:53:48.12 ID:jwdxxkSb0 [87/121]
一旦休憩を取ります。今度は5時間パソコンの前に居た事になるのか!

ちなみに、一応説明。古泉が機関の事を知らないのは、この世界が歪曲された
消失世界に近い状態だからです。

314 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 19:20:16.18 ID:jwdxxkSb0 [88/121]
>>312
消失のハルヒ状態ですね。3年前の記憶はあるけれど、そこから先が歪められている。

後、過去に飛んだキョンは一応普通の服という設定ですが、しかしメイド服ってのも
面白いかなぁ・・・シリアス設定で・・・あの格好・・・。

315 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 19:24:19.50 ID:jwdxxkSb0 [89/121]
ハルヒ「・・・という訳で!我がSOS団に新しい団員が入りました!その名もっ」

古泉「古泉一樹、と申します。若輩者ですが、以後よろしくお願い致します。」

朝倉「あらイケメン♪」
みくる「私は朝比奈みくるです、よろしくお願いします!」
長門「・・・・・・長門、有希。」
キョン「改めて言う間でも無いが、言っておこう。キョンだ!」

ハルヒ「そして私がこのSOS団の超団長!涼宮ハルヒよ!!! じゃぁ、ま、各々自己紹介も
    済んだ所で!第一回!SOS団主催!!!」

   「 期 末 試 験 対 策 会 議 を行います!!!」


キョン・朝倉「ハァ・・・」
長門「・・・・・・」
みくる「あわわわわ・・・」
古泉「ふふっ」

キョン「何で古泉の晴れ舞台で、こんな湿気た事をせにゃならんのだ?」

ハルヒ「それは、今回のテストがマジでヤバいからよ!いつも真面目に授業をしている私でさえ
    お手軽なのよ!?あんたは本当に赤点取り捲るわ!」

キョン「お手上げだろう・・・本当に授業を受けているのか?」

古泉「ふふ、お気遣い有難うございます。しかし、皆で勉強というのも楽しい物ですよ。」

朝倉「さぁー頑張るぞー・・・あぁ、何よこのテスト範囲・・・物理的に不可能だわ。」

318 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 19:33:00.86 ID:jwdxxkSb0 [90/121]
長門「・・・・・・。」
みくる「長門さん?どうです、分かります?」
長門「・・・・・・ギリギリで可能。・・・・・・・・・・・・・・・・・・赤点にはならない。」
キョン「長門で赤点回避レベルなのか!?」

ハルヒ「はぁ、しかもここ最近はSOS団探しで少したるんでいたからねぇ・・・それを
    抜きにしても、このテストは酷いわよ!」

古泉「僕は進学クラスなのですが、いかんせんこれは・・・少なくとも、高校生の領分ではないでしょう。」

朝倉「あぁ~あ、こりゃぁ相当厳しい戦いになるわねぇ・・・・・・。」


コンコン

ハルヒ「?誰かしら」

喜緑「あの~・・・」

長門「江美里!どうしたの?」

古泉「お知り合いですか?」

キョン「長門もお前と同じ転校生でな、その学校での友達だ。・・・少し痛い子だけど、気にするなよ。」

古泉「はぁ・・・。」

長門「・・・・・・どうか、したの?」

喜緑「実は・・・・・・」

319 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 19:46:11.62 ID:jwdxxkSb0 [91/121]
ハルヒ「彼氏が行方不明・・・ねぇ。」

長門「江美里に彼氏・・・凄いね。どこで知り合ったの?」

喜緑「長門さんも、いつまでも堕天使と人間の合いの子だなんて妄想ふかしてないで
   もっと社交的になればすぐに会えるわよ。あんなノート、今すぐ欠片も残さず
   焼いちゃえば?」

長門「」

ハルヒ「うん、うん。そうよそれが良いわ・・・。」

古泉「・・・・・・っ・・・っイケマセンワラッテハイケマセン・・・・・・」プルプル

みくる「・・・。」←中学レディースだったのを思い出している。

キョン「で、その彼氏をうちに見つけて欲しいって事か?そんなの警察に頼めば良い
    じゃないか。そっちの方がよっぽど確立が・・・」

喜緑「警察はそう簡単に動かないわよ・・・全く連絡が取れなくなってから、もう半日も
   経つのに・・・・・・。」


ハルヒ・朝倉「へっ?」
みくる「?」
長門・古泉「・・・・・・;」

キョン(あ、古泉と二人でバニーボーイズってどうだろう・・・。)

322 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 19:56:36.41 ID:jwdxxkSb0 [92/121]
喜緑「だってもう半日も連絡付かないんですよっ!?一日百通くらいメール送っているのに
   返事が来るのは半分にも満たないし電話をかけても取らない事があるし仕方無いから
   家まで行ったら奥に引っ込んで出てこなくなっちゃうし遠距離恋愛だからせめて声だけ
   でも沢山聞きたいなと思って電話してもしてもしてもしてもして取らないし私の画像
   送ってもこの間確認したら全部消去されていたし浮気してないか不安だから探偵を
   雇っているだけなのに怒られるしあれはもうきっと浮気しているんだわそうよそうに
   決まっているわそうじゃなかったら私の事無視する筈なんて無いきっと誰かが誑かして
   いるのよだから今日ここに来たのここの学校の人が私の彼氏だから確かめに来たの
   ねぇあなた達何か知っているでしょうあの人の事何か知らない調べてくれないSOS
   団なんでしょうお願いよお願いお願いお願いお願いお願い・・・。」

ハルヒ「・・・キョン!レッツ パーリィナイッ!!!」パンパンッ
古泉「!?」ビクッ

突如文芸部室が暗くなり、ついでピンク色の光が辺りを照らした!そこにキョンの姿は無く、
やがてカーテンの外に一つのシルエットが現れる・・・

ププッピドゥプワァ~・・・ン ワワワワワワワァ~・・・ン

キョン「ちょっとだケッェッ」
朝倉「キモいわあああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!」

ドンガラガッシャーン!!!

みくる「キョン君と朝倉さんが外にっ!!!」

323 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 20:06:10.70 ID:jwdxxkSb0 [93/121]
ハルヒ「ちょっと朝倉さん!?何してるの!」
朝倉さん「私はあんな毒には毒みたいな解決法、認めませんからね!」

みくる「キョン君が!キョン君が白鳥ドレスのまま痙攣しています!!!」

古泉「・・・長門さん、あの・・・あの人、もしかして以前はあなたにベッタリでしたか?」
長門「そう。」
古泉「可能性は十分か・・・。」

喜緑「あぁそうよねここ確かSOS団ですものね確かこの隣にコンピュータ室があるそうだからきっと
   そこに居るんじゃないかしら私の彼氏絶対に逃がさないわ逃がしてなる物ですか必ず見つけて今度は
   胃袋から掴んであげるその為には良い奥さんにならなきゃ料理教室にいかないとね待っててダーリン
   もう私無しでは生きられない様にしてあげる・・・」ブツブツ

長門「江美里。・・・・・・いいえ、「キミちゃん」。」

喜緑「!?・・・何よ、長門さん。別に私はあなたに帰って来て欲しくなんかないんだからね!もうあなたは
   要らないの何が堕天使よ魔物よ戦う運命よ!あなたと一緒に居たいからずっと付き合ってたのにそれで
   それで用が済んだらポイなのね今度は私の方から捨ててあげるわそうよ私が」
長門「キミちゃん。」←指を喜緑の唇に当てる。

喜緑「ん・・・っにゃっ、にゃにを・・・・・・」

長門「・・・期末テストが終わったら、渡そうと思っていた。これ。」

喜緑「これ・・・携帯電話・・・何十万円もしたでしょう!?」

古泉(そんなにしねぇーよ!)

326 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 20:12:09.21 ID:jwdxxkSb0 [94/121]
長門「・・・出発五分前まで転校を告げなかった事は謝る。ごめんなさい」ペコリ

喜緑「う・・・」

長門「・・・伝書鳩がいなくなったから手紙をサボっていた事も謝る。ごめんなさい」ペコリ

喜緑「うう・・・・・・」

長門「・・・あなたの思いに気付かなかったのはすべて私の過失。本当に・・・」ダキッギュゥゥゥ「!」

喜緑「長門ざあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああん
   ごべんねぇぇええええええええええええええええええええええええっ!!!!!!!!!私が悪
   かった!私が悪かったわあああああああああああああああああああああああああっ!!!」

長門「うんうん、よしよし。」

喜緑「聖剣もノートも、実は大事に取ってあるのおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!」

長門「それはやめて。」


ハルヒ「・・・いい話よね」ホロリ
古泉「・・・長門さんって、意外と罪作りですよね。」
キョン「だろう。」
朝倉「何で生きているのよアンタ・・・。」

329 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 20:21:38.82 ID:jwdxxkSb0 [95/121]
喜緑「じゃ、じゃぁね!私はもう帰ります、お騒がせしました!!長門さん、早速帰ったら
   電話するからね!絶対絶対、電話するからね!」

長門「・・・」ブイ


キョン「いやぁそそっかしい奴だったな。まぁ、何はともあれ一件落着めでたしめでたし、と。」
朝倉「しかしあなた達いつの間にあんな仕掛けを部室に作ったの?ピンクライトとかはまだ分かるけれど、
   手を叩いたら反応する電気スイッチって・・・」
ハルヒ「新しい会長が話の分かる奴でね、まぁ色々優遇して貰っているのよ。あいつの過失を見逃す代わり
    にね。」
古泉「それ脅してませんか?」


岡部「コラァーッキョーーン朝倉ぁーーーーーーーっ!部室で着衣落下プレイとはいい度胸だ降りて
   来ぉーーーーーーーーーーーい!!!!!」
キョン・朝倉「・・・・・・やれやれ。」

------------------------------------------------------------------------------------------
<ジャァカエルネナガトサァーーーーーーン

コンピ「・・・よし、良くやってくれた長門さんっ!!!」

prrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr

コンピ「・・・・・・何だこの電話は・・・はい、もしもし?」


コンピ「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
    アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」

330 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 20:33:50.78 ID:jwdxxkSb0 [96/121]
キョン「・・・・・・」カタカタ。

古泉「お早うございます、精が出ますね。」

キョン「お前もな古泉。・・・もうそろそろ授業が始まるぜ。行くぞ。」

古泉「・・・あなたは、一体何を考えているのでしょうか?」

キョン「あ?」

古泉「この間から、随分と顔に余裕が無いのですが・・・また、何かありましたか?」

キョン「いや何も無いな。・・・何も無いから困っているんだよ。」

古泉「そうでしたね、・・・あなたは異世界人。SOS団を集めているのは元の世界に戻る為・・・
   しかし」

キョン「一向に・・・その気配が無いんだよなぁ・・・。」


キョンが見るパソコンの画面には、部員それぞれの個人フォルダとサイトのデータ、保存したり
取り込んだりした不思議なデータの数々。しかしその中には、どれにも・・・長門有希からの帰還
プログラムは含まれていなかった。

古泉「もしかしたら、その帰還プログラム自体が・・・」

キョン「・・・言うな。まだ時間はあるからな。」

元の世界で、長門有希が世界改変を生み出す日。恐らくは、それが彼に残された最後のタイムリミットなのだ。

331 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 20:54:36.09 ID:jwdxxkSb0 [97/121]
季節は過ぎ、夏が終わった。スポンサー付きの超能力者も、夏休みの終わりにケチを付ける
神様もいない世界では、SOS団の合宿も、夏休みもごく普通に終わったのだ。それは賑やか
な事限りないが、しかしまぁ、至って平凡な日常に入るだろう。元の世界との違いをあげる
ならば、朝倉涼子が居る事と合宿場所が普通のビーチキャンプになった事、そして夏休み最後
の日に皆で宿題をやり遂げる所まで、1回も時間をループしなかった事か。ハルヒにその事を
伝えた日には、何て勿体無い事をしているんだ私と言わんばかりの膨れ面をしてみせた。


・・・さて、季節巡って初秋の頃。やはりハルヒは力無くともハルヒなのか、ごく当然の様に
こんな事を言ってきた。

ハルヒ「さぁ皆!映画を撮るわよっ!!!」

朝倉「映画かぁ・・・面白そうね。」

古泉「機材はどうしましょうか、借りられるお店を探してみますね。」

長門「・・・・・・。」ソワソワ

ハルヒ「有希は私と一緒に台本作らない?面白いのが出来ると思うわよ!」

みくる「わ、私にも出来る事は・・・・・・。」

キョン「よぉし腕がなるぜ、今回こそ俺にも役をくれよなハルヒ!」

ハルヒ「ノン、それはありえないわ。何故なら今回の話は、血湧き肉踊るアクション冒険サスペンス
    ファンタジー、恋愛成分てんこ盛りバージョンだからよ!」

キョン「た、頼むハルヒ!本当にちょい役で良いからあああああああああああっ!!!」

332 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 21:02:34.56 ID:jwdxxkSb0 [98/121]
ハルヒ「何よ、これはもう決定なの!主役にみくるちゃんを添えて、有希と古泉君で
    脇を固めるの!朝倉さんもスペシャルゲスト出演よ!!!」

長門「役!」
古泉「これは光栄ですね・・・しかし涼宮さんも出たいでしょうし、そうなると彼一人
   のけ者と言う事になってしまうのでは無いでしょうか。」
みくる「それじゃキョン君が可哀想ですよぉ・・・」

キョン「・・・。」ウルウル

ハルヒ「・・・・・・一瞬でもあの消費者金融CMの子犬を連想した自分が腹立つわ。ダメ。
    却下!無し!!」

キョン「そんな殺生な!」

朝倉「・・・・・・涼宮さん、ちょっと位良いんじゃない?これも思い出よ思い出。今彼を
   入れなかったら、多分彼一生その事を言い続けるわいえ言うわ。」

ハルヒ「・・・しょうがないわねぇ、じゃぁ本当にちょっとだけよ?」

キョン「よっしゃあああああああああああああ有難うハルヒぃーーーっ!!!!!」



・・・・・・事態は、常に思ったよりも悪い物。朝比奈みちるの助言をしかし、この時彼は
思い出す事さえなかった。
そして。


     ・・・これが、”歪曲世界”における最後の思い出となる。

336 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 21:10:57.82 ID:jwdxxkSb0 [99/121]
撮影初日!

ハルヒ「さぁ皆、張り切って行くわよ!」

キョン「凄いなこの機材は、一体どこから強奪してきたんだ?」

ハルヒ「強奪したのはあんたでしょうが!!!こっちはちゃんとした交渉の末に手に入れたのよ!
    商店街のお店をみくるちゃんと有希と朝倉さんに宣伝して貰う代わりに、この道具一式を
    くれたの!!」

古泉「宣伝、ですか。どういった内容で?」

朝倉「皆でバニーになって、看板持って手を振っているだけよ。そんなに面白くは無いわね。」

キョン「後で見せてくれ。朝比奈さんと長門の所はブルーレイディスクに保存したい。」

朝倉「私は!?癪に障るけれど引用すれば、谷口の女子データ上位ランクよ!?」

キョン「ハハッ」

朝倉「鼻で笑うなぁああああああああああああああああああっ!!!!!」

古泉「その朝比奈さんと長門さんは、どちらにいらっしゃるのでしょうか?」

ハルヒ「そろそろの筈なんだけれど・・・・・・」

みくる「・・・あのぉ~・・・・・・」

341 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 21:20:30.31 ID:jwdxxkSb0 [100/121]
みくる「本当にっ」
長門「こんな格好をしなきゃ駄目・・・?」


キョン・古泉「」
朝倉「可愛いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!!!!!!」
ハルヒ「でしょ!?でしょ!?可愛いでしょおおおおっ!!!!!」

キョン「・・・俺、この世界・・・頑張って生きてきて良かった・・・・・・諦めないで良がっだ・・・・・・っ!!!」ボロボロボロボログスッ、ヒック・・・
   オウオウオウ・・・グッス

古泉「・・・天使、って・・・こういう事?お姉ちゃん・・・・・・。」     ビクッ>

朝倉「今ならあの喜緑ちゃんの気持ちも分かるわああああああああ男共が朝比奈さんに現を抜かす気持ちも
   分かるわああああああああああああああいやあああああ何このこそばゆい感じ!全身に鳥肌が立って
   きちゃう!私の事お姉さんって言っていいのよ!?」

ハルヒ「恋愛なんて・・・精神病の一種の筈なのに・・・・・・」


みくる「ふぇええええええ、み、見ないで下さぁあぁぁぁぁぁぁいっ!」

長門「                         」←フリーズ

344 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 21:27:55.07 ID:jwdxxkSb0 [101/121]
鶴屋「やぁやぁやっているね君達!みくるも長門もめがっさ可愛いにょろよ!」

キョン「ちゅ・・・ちゅるやしゃん・・・・・・この奇跡はもしかして、あなたが起こしたんですか・・・?」

鶴屋「奇跡だなんて嫌だなぁキョン君!・・・みくると有希んこ、この二人が揃っていれば・・・こんな事、
   奇跡でも何でもないにょろよ・・・?」

キョン「弟子入りさせて下さい!!!!」ズザザザーッ

古泉・朝倉「天使!天使!!」パシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャ

みくる「へぇぇぇん、やめてくださぁ~い・・・な、長門さん・・・・・・涼宮さん・・・・・・」

長門「                            エラー発生、エラー発生」

ハルヒ「ねぇ・・・・・・二人とも・・・後で、ちょっと・・・」トローン

みくる「ひええええええええええええええええええええっ!!!!!」

鶴屋「あーーーーーーーーはっはっはっはっはっ!大盛況で何よりにょろ!・・・でも、これじゃぁそもそも撮影に
   ならないね!みくる、有希んこ、着替えて来るっさ!」

「「「「えええええええええええええええええええええええええええええええっ!!!???」」」」

345 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 21:29:08.81 ID:jwdxxkSb0 [102/121]
>>343
俺も欲しいよ、クソッどこに置いたっけなぁ・・・・・・。

349 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 21:34:46.04 ID:jwdxxkSb0 [103/121]
キョン「あぁ・・・何だろう、あの時の記憶があんまり無いな・・・。」

古泉「あ、携帯カメラがブレてる・・・クソッ!」

朝倉「なーがとさん、ちょっともう一回だけ・・・もう一回だけで良いの!」

長門「・・・嫌。」トテチテター

朝倉「あぁっ逃げた!涼宮さん、そっち追って!涼宮さんっ!?」

ハルヒ「みくるちゃん!?どこ?どこに行ったのよ!!!!!」


鶴屋「・・・みくるはしばらくここに居るっさ、ハルにゃんの目が本気で血走っているにょろ。」

みくる「ふぇぇ~ん、怖いですぅ~」シクシク

キョン「長門おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
    ちょっと待ってくれええええええええええええええええええええええええっ!!!!!」
長門「いやあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ~・・・・・・・・・」


鶴屋「という訳にょろ。撮影は明日に延期っさ。ちょこーっとやり過ぎたかなって感じだね!」

森「そうですか・・・いっちゃんの演技見たかったなぁ・・・」

351 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 21:44:04.57 ID:jwdxxkSb0 [104/121]
翌日!

みくる「もう昨日の様な衣装は!」
長門「来ません。」ブーブー

ハルヒ「ぐぬぬぬぬ・・・しかし着せればもう撮影に参加しないという・・・仕方ないわね。ここは
    条件を飲むしか無いわ。」
古泉「残念至極ですが、まぁ嫌がる女性に対して無理矢理着せようというのも紳士の道には反
   しますしね。」
朝倉「長門さんを剥きかかったバカはそこで転がっているから安心して!」

キョン「やめて鶴屋さん!おいこら谷口!国木田!!離せ!!!離しやがれええええええ・・・
    待て離すなやめろ池に落ちる!!!」

鶴屋「みくるが機嫌を直さなかった時の為に撮影しておくっさ!題して「怪人ビキニパンツの最後」にょろ!」

谷口「興行収入ぶっちぎりで最下位になるな。」

国木田「「おっと谷口君、そこ気をつけるにょろ!キョン君が足に噛み付こうとしているよ!」


ハルヒ「・・・・・・では、そろそろ真面目に本題に入りましょう・・・もう撮影は一日遅れているのよ!序盤からテキパキと
    撮っていきましょう!皆、台本は読んだ!?」

「「「「「「「はーい」」」」」」」ニョロ

キョン「誰か起こしてくれえええええええええ二度と長門を襲わないからあああああああああっ!!!」

354 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 21:55:38.21 ID:jwdxxkSb0 [105/121]
・・・さて、こちらも話しはトントン拍子に進む。超監督ハルヒの滅茶苦茶な撮影スケジュールは
変わらないものの、みくるがビームを本当に撃つ羽目になったり季節はずれの珍事が町中で起こっ
たりしない為にさして気を囚われずに撮影へ集中出来るからだ。

みくる「わ、私は実は未来からき・・・来、た・・・戦うメイド戦士、ミラクルみくるなのです!」
鶴屋「そ、それは気付かなかったさ・・・何て・・・何て・・・何て・・・ごめんもう駄目にょろー!あーーー
   はっはっはっはっはっはっはっはっ!!!」

シャミセン「我輩は猫であるんだニャー」
キョン「喋ったああああああああああああああああああああああああああっ!?」
長門「・・・腹話術。」
キョン「すげぇっ!」

ハルヒ「う~ん・・・鳩が飛び立つシーンを取りたいけれど、そんなに都合良く鳩がいないのよねぇ・・・。」
朝倉「それなら、カラスが居る所でも良いんじゃない?悪役の不気味さがよく出ると思うわ!」

古泉「私は・・・・・・あなたを愛しています・・・・・・」(キリッ
みくる「えっ!?あっ・・・えぇ~と、はい、私も・・・」
ハルヒ「カットカットカットカットカットオオオオオオオオオオオオッ!!!」
朝比奈「本気で惚れさせる気か!」
キョン「古泉てめええええええええええええええええっ!!!」

長門「・・・・・・鶴屋さん?」
鶴屋「只の怪人のお姉さんにょろよ。さぁさぁ、有希んこもさっさと着替えて撮影に行くにょろ!」

みくる「あのぉ~、お弁当持ってきたんですけれど・・・」
ハルヒ「みくるちゃん!?今撮影中!もう一回!」
キョン「やっと上手く行ったのに・・・・・・」ボロッ
古泉「次は・・・TAKE548ですか・・・・・・。」ボロッ

359 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 21:58:01.60 ID:jwdxxkSb0 [106/121]
>>354
下から9番目、朝比奈を朝倉に変えてください。何でゴットゥーザ様になってんだよこの人・・・。

361 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 22:06:47.30 ID:jwdxxkSb0 [107/121]
撮影中盤!

ハルヒ「え~と、これで後は・・・谷口が鰐に食べられるシーンと、鶴屋さんが正体を
    明かすシーンと、最後のみらくるミクル対大魔法使いユッキーの決戦、それから
    古泉君の推理シーンね。」

朝倉「細かい調整を入れた方が良いシーンもあるわね、ほらここの朝比奈さんが長門さんを
   踏むシーン、もう少し怖い顔の方が良いと思うのよねぇ」ボリボリ

古泉「それなら、もしも許していただけるなら僕の出番の所で少し、やり直したい所があるん
   ですよ。もっと台詞をハッキリ言っておいた方が良いんじゃないかって所が・・・ここです。
   戦闘員の結婚式会場に爆弾を撃ち込む所。」モグモグ

みくる「ふぇ~大変ですねぇー。あ、長門さん、お茶お代わりどうです?」トポトポトポ・・・

長門「・・・・・・欲しい。喋りすっ・・・過ぎて、喉がカラカラ・・・」ゴクゴク!

キョン「ふぅ~。いやぁ、自分の台詞があるだけでも本当に変わるんだなぁ映画撮影も!」フキフキ

ハルヒ「何よ、今までの私には言わせて貰えなかった訳?」

キョン「いや、そうでも無いんだがな・・・あぁ、そうだハルヒ。お前の台詞はどうするんだ?」

ハルヒ「私の台詞?そんな物必要無いじゃない。出演していないんだから。」

鶴屋「だから、それをどうするかって話しにょろよ。」ハムッ

362 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 22:16:09.78 ID:jwdxxkSb0 [108/121]
ハルヒ「・・・別に良いわよ。出なくても」

キョン「俺は出ても良いと思うぜ。というか出ないと座りが悪い。何せ、準団員まで結構な
    役柄なのに、団長たるお前が1mmも映っていないんじゃなぁ。」

朝倉「涼宮さん、もしかして意外とシャイ?」
ハルヒ「そんな訳ないじゃない!私に演技をさせたら大した物よ?でもね、私は今団長じゃなくて
    監督なの!映画全体を把握して完成に導かなきゃならないのに、自分の役まで出来ないわよ。」

ハルヒ「それはまぁ、私自身が未熟ってのもあるだろうけれどね。だからはい、もうこの話はおしまい!
    それより、早く残りの分を撮影しちゃいましょ!その後で、さっき言っていた取り直しの分を
    やりましょうよ。」

鶴屋「そうだね、まだ時間はあるけれど、編集する時間を考えたらもう後1週間も撮影に使えないっさ。」

ハルヒ「でしょう?だからはい、休憩終わり!皆、撮影に行くわよ!」

「「「「「「「おーーーーーーーーーーっ」」」」」」」ニョロ


キョン「古泉、どうかしたのか?」
古泉「・・・いえ、何でもありません。只、涼宮さんも本当は役をやりたいのでは・・・と思っただけですよ。」
キョン「ふぅーん・・・・・・」


ハルヒ「はい、じゃぁ本番!谷口、死ぬ気で泳ぎなさいよ!!!その鰐本物だから!!!!!」

363 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 22:25:44.88 ID:jwdxxkSb0 [109/121]
キョン「古泉、ハルヒの台本ってどこにあるか分かるか?」

古泉「涼宮さんのですか?いつも鞄に入れて持ち帰っている様ですけれど・・・どうかしました?」

キョン「いやな、お前も言っていただろう?ハルヒも役をやりたがっているって。台本は最初の頃と
    比べて色んな修正が加えているけれど、その中から再利用出来るキャラとか、とにかく何でも
    あいつが参加出来る様な役を作れないかな、と思ってさ。」

古泉「それで涼宮さんの台本ですか。確かに、彼女の台本は色んなアイデアが途中からも書き加えられて
   いましたからね。」

キョン「あぁ。俺はまぁいつもアイツを振り回す役だからな、たまにはプレゼントってのも良いと思うんだ。
    撮影は順調だし、上手くすれば丸々3日はあいつの撮影に出来るだろう?「ちょい役だけど重要な役」
    を考え出せるかやってみるよ。」

古泉「上手く行くと良いですね・・・ついでにメモを取っておいて貰っても良いですか?その案、どうせなら皆で
   一枚噛ませて下さいよ。」

キョン「あぁ、それが良いな。・・・さて、じゃぁハルヒの足止めを頼む。」

古泉「えぇ、分かりました。ちょっと取り直しの件で話したい事もありましたしね。
   長くなりますよ~フフッ!」スタスタスタスタスタ・・・・・・


キョン「よし、俺も頑張るか。・・・えぇと、台本台本・・・と。」

364 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 22:34:05.00 ID:jwdxxkSb0 [110/121]
キョン「これかな?・・・・・・・・・いや、これだ。あったぞ台本。」


古泉「涼宮さん、実は少しお話したい事がありまして・・・あれ、それは台本ですか?」

ハルヒ「えぇ、そうよ、台本。随分ボロくなっちゃったわね。・・・でお話って何?」

古泉(失敗失敗・・・ま、台本を見る機会は他にもありましょう。)「えぇ、取り直しでやる僕の
   演技について、今の内にご指導頂けない物かと思いまして。」

朝倉「あら、演技指導?いいわね、私もやりたいわぁ。」

鶴屋「ハルにゃん!私達は先に帰るから、君達もあんまり暗くならない内に帰るっさ!」
みくる「お先に失礼しますー!」

ハルヒ「うん、じゃぁまたね!明日は朝一で撮影開始よ!!!皆、開門時間までには来る事!
    よし、始めましょう!!」
古泉「ご指導よろしくお願い致します。」
朝倉「古泉君ガンバレー!」

谷口「・・・・・・・・・死ぬかと、死ぬかと思った・・・・・・。」
長門「・・・途中まで送る。・・・少し、白髪が増えてない?」







キョン「これ、は・・・・・・何だ!?」

367 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 22:41:14.48 ID:jwdxxkSb0 [111/121]
撮影終盤!

ハルヒ「さぁ皆、今日の撮影開始よ!今回はいよいよ、最後の大詰め、最終決戦のシーンと
    鶴屋さんの正体明かしのシーンよ!そして、これで取り直し希望以外は全部取った
    事になるわ!」

朝倉「こうなると感慨深い物があるわねぇ・・・。」

鶴屋「よーっし今日は張り切るっさ、皆、よろしくね!」
みくる「頑張って下さいね、鶴屋さん!」

ハルヒ「じゃぁ鶴屋さんのシーンを撮影した後、午後と明日の朝に分けて
    決戦シーンを取りましょう。朝倉さんも着替えてね!」

朝倉「えっ私?」

ハルヒ「昨日から考えていたんだけど、朝倉さんがこのシーンには必要なの!早く!」

朝倉「分かったわ、任せて!!!」


古泉「さて、僕たちもカメラや小道具に回りましょうか。カメラ、今日はどっちが持ちます?」

キョン「・・・・・・。」

古泉「・・・・・・どうかなさいましたか?」

キョン「あ、いや、何でも無い。カメラは今日はお前がやってくれないか?」

古泉「?」

368 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 22:49:32.66 ID:jwdxxkSb0 [112/121]
ハルヒ「じゃぁ準備は良いかしら!?皆位置について、気合を入れて撮りなさい!それじゃぁ用意・・・
    アクション!」

鶴屋「・・・うっふっふっふっ、みくるもまだまだ甘いねぇ・・・こんなに近くに居ながら、この私の正体
   に気付かないとは・・・」

朝倉「な、何を言っているの?正体って、まさか・・・っ」

鶴屋「見て驚くっさ!これが鶴屋さんことこの私の真の姿・・・っ!!!」

ハルヒ「カーット!OK!OKよ素晴らしいわ二人共・・・正に迫真の演技ね!じゃぁ、次は早速鶴屋さんの
    変身シーンだから着替えて貰って、その間に朝倉さんの変身前のシーンを撮りましょう。」

朝倉「・・・ねぇ、もしかしてコレ、私噛ませ犬にならないかしら?」

ハルヒ「大丈夫大丈夫!格好良く戦って散るから!「あのアサクラゲを倒したのか」みたいな感じで!」

朝倉「・・・じゃぁ、それ以後の私の出番はどうするのよ?」

ハルヒ「アサクラゲ2の出番よ。後で台詞を差し替えるからね!」

朝倉「だ、大丈夫かしらそれ・・・。」



キョン「・・・長門、後で少し・・・話がしたいんだ。古泉も。」
古泉・長門「・・・?」

369 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 22:50:18.90 ID:jwdxxkSb0 [113/121]
ごめん、ちょっと休憩。手首が痛いんだ。

374 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 23:00:54.24 ID:jwdxxkSb0 [114/121]
>>372
コーヒー飲んできた。ちょっと待ってね。

379 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 23:10:49.02 ID:jwdxxkSb0 [115/121]
古泉「一体何ですか?今朝から様子がおかしいですけれど・・・」
長門「・・・問題?」

キョン「いや・・・実は、言おうかどうしようか迷っていたんだが・・・いや、やっぱりどうしようか・・・
    すまん、今もまだ悩んでいるんだ。」

古泉「とりあえず、核心に触れない程度に話して頂ければ有難いのですが・・・。」

キョン「あぁ・・・とりあえずそうしようか。実は昨日、ハルヒの鞄から台本を取って、読んでみたんだ。」

長門「台本?」

キョン「ハルヒにも何か役をやらせたくてな。そのヒントにならないかと思ったんだが・・・見てみると、な。
    全然、違うんだよ。話の内容が。今撮ってる冒険ファンタジーなんちゃらじゃなくて、もっと、こう・・・」


ハルヒ「うん、中々良く取れているわね。流石古泉君、褒めてあげるわ!」
朝倉「あ、何この構図エッチぃな。」
鶴屋「我ながら完璧な演技っさ!強いて難をあげるなら、迫真過ぎてちびっ子が泣く所だね!」



「もっと、こう・・・・・・愛を、テーマにした様な・・・そんな感じなんだ。」

古泉「なる程・・・自分のやりたいテーマでは上手く書けずに、それで悩んでいた・・・と。そういう事でしょうか?」

長門「・・・私の、趣味で大分SF要素を入れちゃった・・・のが悪かったのかな?」

382 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 23:21:23.67 ID:jwdxxkSb0 [116/121]
キョン「いや、長門のは関係無いだろう。あいつも結構ノリノリだったみたいだしな。」

古泉「ならば、問題は無いのではないでしょうか?初期の構想から外れても、結果面白ければ全て良し。
   僕の思う涼宮さんの性格というのは、そういう物ですよ。」

キョン「・・・そう、かもな。じゃぁ、俺の思い過ぎか・・・あいつがこの映画に心残りのあるまま完成させる
    のもどうかと思っていたんだが・・・」

長門「照れ臭かった可能性もある。・・・私も、あの恋愛シーンを書く時は恥ずかしかったから。だから、
   誤魔化して色んな要素を詰め込んだ、とか・・・。」

古泉「その可能性もありますね。ふふっ、ならば、次の映画はその恋愛物で行くというのはどうですか?
   涼宮さんだけじゃなくて、みんなでやりたい恋愛話を出していって、それから話を作るんです。」

長門「それは良い・・・私も、やりたい恋愛話がある。」

キョン「俺の場合はどうも推理物になりそうなんだが・・・まぁ、それも良いだろう。悪いな長門、古泉。要らん
    話をした。」

古泉「いえ、次の映画の方向性も決まった事ですし、有意義な時間でしたよ。我等が団長の可愛らしい一面を
   覗けた所で、そろそろ休憩が終わる時間です。後片付けに行きましょう。」

キョン「そうするか。・・・・・・」


先を歩く二人の背中を追いながら、キョンは考えざるを得ない。古泉の涼宮ハルヒに対する洞察力は、この世界でも
確実に生きているのだ。十中八九、ハルヒは自分のやりたい役が出来ない事に悩んでいる。・・・それは、その答えとなる
台本を見た自分が一番よく分かるのだ。だが、それをこの場であの二人に言えただろうか?

自分とハルヒらしき人物が、愛の言葉を囁き合う甘いラブロマンスを、彼女はやりたいのだ・・・と。

384 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 23:34:04.38 ID:jwdxxkSb0 [117/121]
昼。

ハルヒ「さて、じゃぁ・・・早速、お昼ご飯を食べて・・・と。」

みくる「涼宮さん、皆と一緒に食べましょうよ。今日は一杯おかずを作ってきたんですよ!」

ハルヒ「それはナイスよみくるちゃん!やっぱりあなたは良いお嫁さんになれるわ!!!
    保障する!」

鶴屋「それは食べてから言う台詞にょろよ!有希んこも早く食べて着替えるにょろ!
   でも食べ過ぎはめがっさ禁物だよ!何せ、次はハードなシーンだからね!!!」

長門「・・・・・・」コクン。

朝倉「男子連中は先に言ったわよ。私お腹ペコペコ、早く食べたいわー。」

ハルヒ「えぇ、先に言ってて!私もすぐに行くから!」


キョン「はぁ・・・しっかしまぁ、あいつがラブロマンスねぇ・・・。」

古泉「まだ言っているのですか?別に涼宮さんが恋愛物を好んでも・・・ん?」

キョン「お?」

朝倉・みくる「だ~れだ?」

386 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 23:43:23.38 ID:jwdxxkSb0 [118/121]
古泉「こっちは朝倉さんですね。」

キョン「って事は、こっちが朝比奈さんか。ははは、当てましたよ。」

長門「・・・ハズレ。私が正解。」

朝比奈「あははは、引っかかりましたね。やりましたよ朝倉さん!」

朝倉「ふふん、こんな単純な手に引っかかるとは男の子って単純よねー、古泉君も、そっちは
   鶴屋さんよ!」

鶴屋「作戦大成功っさ!駄目にょろねぇ二人とも、そんなんじゃいざ真っ暗闇の中で彼女の手を
   掴もうって時に、タイガーマスクの腕を掴む羽目になるにょろよ!」

キョン「タイガーマスクならむしろ握手して欲しい位ですが・・・ハルヒはどうしました?」

朝倉「何だか探し物みたい。小道具のステッキを昨日改良していたんですって。あの子、一体いつ
   寝ているのかしら?」

キョン「あいつは滅茶苦茶ですけれど、自分がやると決めた事には一直線ですからね。・・・ちょっと
    手伝ってきますよ。」

みくる「あ、私も行きま~しゅ。」トテトテ


朝倉「・・・キョン君に滅茶苦茶って言われる涼宮さんが可哀想だわ。」
古泉「それは言わないお約束ですよ。」
鶴屋「・・・有希んこ、初日のあの服、着るにょろか?」
長門「絶対に嫌。」

388 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 23:44:50.16 ID:jwdxxkSb0 [119/121]
>>385
ちょっと確認が甘くなって来たwwwでもめげないっにょろよ!!

394 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/09(日) 23:54:01.69 ID:jwdxxkSb0 [120/121]
キョン「さぁて朝比奈さん、昼休みもあまりありませんし急ぎましょうか。」

みくる「えぇ、キョン君。そうしましょう・・・あ、でもその前に・・・フフッ!誰が
    ラブロマンスをやりたいんですか?キョン君??」

キョン「・・・やっぱり聞いていたんですね。後ろに居ましたし。」

みくる「えぇ、キョン君が、ですか?うふふっ可愛いなぁ。」

キョン「いや、うん・・・まぁ、そんな所ですね。朝比奈さんは、何かやりたい話は
    ありますか?」

みくる「う~ん、そうですねぇ・・・私もやっぱり女の子ですし、今やっている冒険物も
    楽しいけれど、ラブロマンスも良いなぁ~って思いますぅ。」

キョン「例えばどんな?」

みくる「う~ん・・・こんな感じかなぁ?」


みくるがキョンの腕に腕を絡みつかせ、そっと頬ずりをした。二人の身長さも相俟って
その格好はとても自然であり、非常に似合っている。

キョン「わ、朝比奈さんっ!?」

みくる「うふふ、後は、こんな事もしてみたりして!」

そう言って、白い指でキョンの頬をつつく。

キョン「朝比奈さん、もう大胆ですねぇ・・・こんな所を谷口にでも見られたら何を言われるか・・・。」

397 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/10(月) 00:10:23.32 ID:uWqxIDg00 [1/14]
結果から言えば、谷口には見つからなかった。しかし、まだ彼に見つかった方がいくらかマシという物だろう。
長門と二人、夕暮れの教室で抱き合っていた事さえ・・・彼は、口外はしないのだから。


ハルヒ「・・・・・・何をやっているのよ。」

キョン「おっとハルヒ、お前を探していたんだよ・・・朝比奈さん、離れて下さい。動き辛いですよ。」

みくる「はーい♪」

ハルヒ「ふん、まぁ良いわ。で、探していたって何の用?」

キョン「お前、昨日も寝ずに小道具を作っていたんだってな。それで、体を労って手を貸しに来たんだよ。
    朝比奈さんもな。」

ハルヒ「・・・・・・ふ~ん、労りに来た人間がイチャイチャする物かしら?恋愛なんて、精神病の一種よ。」ジロジロ

みくる「うふふふふっそうでもないですよ?恋愛は良いものじゃないですか。あ、そうだ。じゃぁ、涼宮
    さんもやってみます?キョン君の腕をお貸ししましょう!」

ハルヒ「要らないわよ。さ、早く戻って。撮影するわよ。」

キョン「朝比奈さん、行きましょう。ハルヒ、そっちの荷物は俺が持つよ・・・って、おいハルヒ・・・もういない!?」

みくる「まさに風と共に去りぬです・・・。」

400 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/10(月) 00:28:57.55 ID:uWqxIDg00 [2/14]
ハルヒ「じゃぁ用意!・・・・・・アクション!!!」

長門「ついに・・・決着の時が来た様だな、メイド戦士ミラクルみくる・・・この大魔法使い、
   ユッキーが相手をしよう・・・。」
シャミセン「するんだにゃー」←腹話術

みくる「もうこの地球とこの学校では好きにさせません!みんみらくる・・・みっくるんるん!!!」


鶴屋「このシーン、今でも笑いそうになるっさ・・・」
朝倉「何で地球と学校が別なのかしらん?」
古泉「地球を守る為だけの戦士に自我が芽生えた、という感動の表現らしいですよ。帰る所が
   出来た、というのは現地の人々と心を通わせなければ出来ない事ですから・・・」

キョン(・・・撮影も、無事に済みそうだな。しかし、ついぞあいつの役は見つけられなかったな。
    何とかしてやりたい物だったんだが・・・。)

ハルヒ「カァーット!OKよ!ナイスよ有希、みくるちゃん!これは編集と合成のし甲斐があるわね!
    後二人とも、ちょっと次の撮影で使う小道具の説明するから、こっちに来て!」

みくる「はぁ~い。・・・・・・ふぅ、物凄く大変ですねぇ、緊張しちゃいますよ」

長門「・・・同感。悔いの残らない様にするのは、本当に大変・・・。」

ハルヒ「大丈夫よ二人とも、バッチリバッチリ。それに例えこの映画が不評でも、その次もまた超大作を
    取ってやれば良いのよ!」

みくる「そうですか?良かった~。・・・でも、次もまた同じジャンルってのも変ですよね。」

長門「・・・それに関しては大丈夫。もう、皆でジャンルを一つ決めた。後は涼宮さん、あなたの決定だけ。」

402 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/10(月) 00:43:38.72 ID:uWqxIDg00 [3/14]
ハルヒ「へっ?そうなの!何よ何何?面白い奴よね?」

長門「あなたも満足すると思う。・・・・・・だって、あなたのやりたい事だったから。」

ハルヒ「・・・・・・え?」


長門「ラブロマンス。・・・・・・彼が、キョン君が・・・そう言っていた。」


ハルヒ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ!!!!???」



古泉「涼宮さん、そろそろ次の撮影に行きましょう。あと少しで休み時間も終わりますし、
   きり良く戦闘の開始シーンまで撮影を・・・」

みくる「涼宮さん!?涼宮さん!!!」

朝倉「どうかしたの?」

長門「・・・・・・古泉君、ごめん。失態。・・・・・・・・・涼宮さんを、喜ばせるつもりだったのだけれど・・・。」

古泉「如何・・・なされたんです?」


キョン「んぁ?ハルヒ?・・・学校出て何してるんだ・・・。」

403 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/10(月) 00:54:54.24 ID:uWqxIDg00 [4/14]
キョン「撮影中止っ!?どういう事だよ!」

古泉「どうもこうも、そういう事です。涼宮さんが、確かにそう朝比奈さん達に言って
   出て行ってしまったのです。」

長門「・・・ごめんなさい。間違ってしまった。」

キョン「どういう事だ・・・?」

長門「例の話をした。・・・ラブロマンス、をやりたいと言う・・・」

朝倉「え?それで帰っちゃったの?どうして・・・!?」
鶴屋「それはおかしいにょろよー。有希んこ、他に何か言わなかったかい?」

長門「・・・他は、彼が提案した・・・という事を、伝えただけ。」

キョン「・・・・・・っ!」

古泉「やはり、台本を勝手に見た事に怒っているのでは無いでしょうか?それならば、僕にも
   責任はあります。一緒に謝りに行きましょう?」

鶴屋「ありゃりゃ、それは仕方がないね!今日は切り上げてさっさと謝りに行くっさ。こういうのは
   早い内が良いにょろ。」
朝倉「もう、勝手に見たって何よそれ!古泉君も、反省しなさい!」

古泉「面目次第もございません。」

キョン「・・・・・・いや、多分・・・怒っているんじゃなくて・・・・・・。」

「「「「「・・・・・・?」」」」」」

405 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/10(月) 01:07:23.55 ID:uWqxIDg00 [5/14]
結局、その日はハルヒを見つける事は出来なかった。携帯は切られており、家の
住所を知る者が誰もいなかった為だ。とはいえ、メンバーの危機感は薄かった。
何せ彼女は只の女性で、それも大した理由で怒っている訳では無いのだから・・・
それも、当然といえば当然だろう。

しかしキョンは違う。彼は、彼女が怒る・・・否、あの場から立ち去った原因をよく
知っている。

例えば、自らの恥ずかしい妄想を込めた黒歴史ノートを、他人に見られたらどうなる
だろうか。自分が堕天使と人のハーフだの、選ばれた伝説の勇者だの、テロリストを
一掃する無双の学生だの・・・。
彼女のあの台本は、それらと何ら変わりない。自分の恥ずかしい妄想をただひたすらに
書き続け、純粋極まりない・・・強気や弱気で隠されていない、本当の気持ちを書き綴った
ストーリー。主役は選ばれた自分、そして自分が選んだあの人。その二人と、世界の危機
にただ二人きりで閉じ込められたとしても、愛の言葉を囁いていく・・・なんて、愛に愛を
追求した物語を。

よりによって、好きな人に見られ。

自分の気持ちを知っているにも関わらず、他の女とイチャイチャしている姿など見せられた
日には・・・・・・


あてつけだと、思われても仕方あるまい。・・・・・・みじめな気持ちになっても、仕方あるまい。

キョンは、自分の馬鹿さ加減に嫌気が差した。最初から素直に、適当な名目をつけて台本を
借りれば良かった物を、サプライズしたいという欲求が先行して回りくどい方法を取ってしまった。
明日学校に行ったら、真っ先に謝ろう。もしも来ていなかったら、岡部担任に住所を聞いて家まで
行こう。・・・・・・あぁ、今にして思う。きっと自分は、彼女の事が・・・・・・
そこで、彼の意識は夢の中へと消えた。

406 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/10(月) 01:24:51.84 ID:uWqxIDg00 [6/14]
キョン「・・・・・・ん。」
目覚まし時計が鳴り、目を開ける。朝の眩しい光は入ってこない・・・空が曇っているらしい。
なんて事ない、日常の朝だ。そのまま身を起こし、目覚まし時計を止める。

キョン「・・・・・・・・・ん?音が止まらない・・・。」

何度スイッチを押しても止まらない。これでは近所迷惑である、困ったな・・・とここで、その
異常に気付く。・・・・・・この音は、頭の中で鳴り響いている!

キョン「何だこれは・・・TPDDか!!!」

そう思った瞬間、けたたましい音が途切れ柔らかい女性の声が入ってきた。しかしそれは、かなり
慌てている声らしかった。

朝比奈「キョン君!聞こえますか!?キョン君!!!」

キョン「朝比奈・・・みちるさんの方ですね。どうかしたんですか?こんな朝早くに・・・」
朝比奈「違うわキョン君、そっちはまだ午前2時位の筈。TPDDのバッチリアラームで目は覚めたでしょう!?」

キョン「便利ですねこれ・・・というか、まだ頭の中にあったんだな。で、何事です?」

朝比奈「時間が無いわ、とにかく窓を開けて、そこから確認して!」

キョン「はぁ・・・窓?」
ベッドに膝立ちし、カーテンを開ける。その窓ガラスごしには・・・


煌々と照る星空の下、破壊活動に勤しむ青い巨人の姿があった。・・・星は確かに、瞬いている。

409 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/10(月) 01:40:10.34 ID:uWqxIDg00 [7/14]
青い巨人の腕が振り下ろされ、下にある家を容赦なく叩き潰した。動きも咆哮も破壊力も
そのままに、背景が灰色の空で無い所だけが違っている。

キョン「・・・何だよ、これ・・・・・・っ!」

朝比奈「見ての通り、神人が暴れ回っているの・・・こちらでも、その現象を観測した時は
    驚いたわ。次々と時空の分かれ道が消えていって、色んな未来が消えているん
    ですもの・・・。」

キョン「これは・・・ハルヒが?いや、しかしこの世界のあいつは一般人の筈!」

朝比奈「そうね、でもその世界は普通じゃない。元の世界に上書きされて、そのまま捻れた
    歪曲世界よ。キョン君の様な特例的存在や、私みたいな未来人も存在した事がある、
    ね。・・・・・・その世界も、結局は普通じゃなかったのよ。普通であろうとする世界の
    力に涼宮さんの力が抑え込まれていて、でもついさっき・・・何かが原因で炸裂した、
    とかね・・・。」

キョン「そんな・・・流石の俺も、閉鎖空間から出た神人の倒し方なんて分かりませんよ・・・!?
    ここに元の世界の古泉が居ても、戦う事が出来るかどうか・・・」

朝比奈「そう。でも、一つだけ勝機はあるわ。・・・ってもう時間が無いわね、手短に言うわ。
    「Sleeping Beauty」・・・分かるでしょう、キョン君!」

キョン「・・・まるで、あの時と同じですね。」

朝比奈「・・・・・・そろそろ切れるわ。多分もうかけられない・・・最後に他の皆の言葉を伝えるわね!
    長門さんは、「私の過失。申し訳なく思う」・・・古泉君は、「健闘を祈ります」って・・・」

キョン「・・・朝比奈さん?朝比奈さん!朝比奈さんっ!!!」

412 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/10(月) 01:52:00.02 ID:uWqxIDg00 [8/14]
キョン「・・・これで、俺は完全に無能力者という事か・・・。」

TPDDは使えない。宇宙人も超能力者も傍にはいない。切り札であるジョン・スミスも
相手方に使われた後だ。眠り姫の魔法も、使えるかどうかは分からない。

キョン「・・・・・・ハルヒ・・・。」

キョンはベッドから降りると、外着に手早く着替えて玄関に向かう。遠くから悲鳴が
聞こえ始めた・・・最悪、どうやら人が居る様だ。

キョン「・・・・・・・・・。」

妹と両親が眠っているだろう方向へと顔を向け、そのまま外に出る。・・・次に巨人を
見た時、その目に宿るのは闘志。ユラユラと揺れる、揺るぎない炎。

キョン「待っていろハルヒいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!!!
    SOS団発進だああああああああああああああああああああっ!!!」

男は気合一発、北高目掛けて走り出した。理由は簡単である、そこがSOS団の活動場所であるからだ。

419 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/10(月) 02:04:18.11 ID:uWqxIDg00 [9/14]
流石に北高までの道のりは遠過ぎる。一旦戻って自転車に跨ると、遅れを取り戻さんと
全速力で漕ぎ出した。しばらく進むと、警察が道路を整理している・・・多くの人々が
脱出をしようと試みて、渋滞になっているのだ。幸い、その騒音にも巨人達は目を向けない。

キョン「あ、新川さん!」

一生懸命手信号で車の流れを整えている男に声をかけた。運よく交代だったらしく、若い新米
らしき警官と二言三言交わしてこちらに来た。

新川「君か、早く逃げなさい!」

キョン「その前に・・・あの、古泉をどこですか?SOS団の、他のメンバーも見掛けませんでしたか!?」

新川「古泉は、友人を助けに行くとか言って北高に向かったよ。まだあそこに生徒が居るのか!?」

キョン「えぇ・・・ちょっと、意地っ張りな奴が、泊まりで映画撮影をしていましてね。」

そういうとキョンは礼を述べ、そのまま北高への道を走っていく。


キョン「・・・!長門、朝倉!ここに居たのか!」
朝倉「キョン君!」
長門「・・・あなたも、北高へ?」

キョン「あぁ、乗りな!3人まとめて急ぎ足だ!」

420 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/10(月) 02:15:09.68 ID:uWqxIDg00 [10/14]
キョン「うおおおおおおおおおおおおおおおお重いぞなが・・朝倉ああああああああああああああっ!」
朝倉「何で言い直すかなぁ君はぁっ!?」

北高への坂道を、普段の数倍の速度で走り抜けていく。こんな体力があるならば、きっと体育ももっと
良い成績が取れそうな物だが、これが火事場の馬鹿力という奴か。

長門「・・・鶴屋さんと、朝比奈さんには連絡が取れない。」
朝倉「準団員共も無理ね!」
キョン「そうか・・・畜生、無事で居てくれよなぁっ!!!」

崖を登りきり、その頂きにある校門へ・・・我等が北高、その校庭へと入る。意外にも侵入には労を要さず、
そのまま学校の玄関口へと辿り着いた。

長門「・・・涼宮さんの、夢を見た。」

どうやって玄関戸を開けようかと試行錯誤しているキョンに向けて、長門が言う。

キョン「夢か・・・いや、言ってくれ長門。この非常事態だからな、どこにどんなヒントがあるか分からないんだ。」
長門「彼女は、この学校のどこかに居る。でも・・・多分、ここじゃない。」
朝倉「?学校に居たんでしょう?それで胸騒ぎがしたから、ここに来たって・・・。」


長門「学校に居たのは本当。・・・でも、彼女の居た学校は、全てが灰色だった。」

ォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン・・・・・・。

巨大な咆哮が響き、こちらを睨みつける。その目は赤く、赤く燃えていた。

422 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/10(月) 02:27:05.44 ID:uWqxIDg00 [11/14]
キョン「灰色・・・閉鎖空間かっ!?」
朝倉「何よそれ!」
キョン「元の世界で、ハルヒが度々発生させていた空間なんだ!この世界とは別の世界で、一面灰色の
    町並みで・・・そこでは、あの青い巨人が暴れている。んで、その巨人を倒さないと世界が滅ぶ。」
朝倉「・・・なんつーはた迷惑な能力なのよ・・・涼宮さんが可哀想だわ。」

長門「・・・古泉君の声。正門から来る。」

キョン「そうか、おーい古泉ーーーーっ!ここだー!」

・・・ブロロロロロロロロロロロ・・・・・・

高そうな車が乗り付け、中から鶴屋とみくるが顔を出した。ついで後部座席から古泉が降りる。・・・こんな
時でもなければ、それぞれの寝巻きが似合っているという感想を漏らしただろう。

古泉「涼宮さんはどちらに居ますか!?この巨人・・・彼女が関わっている気がしてならないんです!」

鶴屋「う、運転・・・怖いっさぁ~、もう手がびしょびしょだよ、私もまだまだにょろねぇ。」
みくる「あの、何が・・・何が起こっているんですか!?」

キョン「・・・・・・それは恐らく、俺が知っている何もかもでしょうよ・・・。」

キョンの脳内に警鐘が鳴る。時空移動も通信能力も使えないが、しかしTPDDは確かに脳内に残っている様だ。
そのTPDDが、あの不思議な揺れを感じ取っていた。時空振動、そして・・・・・・

青い巨人が見上げる。その上には赤い球を模した様な、巨大な塊が存在していた。超能力者達では無い。この
世界の、ある意味で産みの親である・・・・・・

情報生命体、そのまた別の種族。天蓋領域の登場である。

423 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/10(月) 02:39:03.92 ID:uWqxIDg00 [12/14]
---------------ォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!

かつて無い程巨大な赤い球体に、巨人の咆哮も一段と大きくなる。それに対峙する天蓋領域は、しかし何もしていない
かの様にどっしりと、そこに構えているだけであった。

長門「・・・何、あれ・・・。」
朝倉「お互いに睨み合っているわ・・・もう少しそうしていてくれないかしら?」

キョン「干渉したくても、出来ないんだよ。時空の断裂が滅茶苦茶過ぎて、お互いの攻撃が届かないんだ。」

彼が目覚ましを鳴らすまで起きなかったのも、恐らくは振動も音も時空の断裂に阻まれ、届かなかったからだろう。
という事は、家で寝ている妹や家族の下にあの巨人が行く事は出来ない筈だ。ホッとして、胸を撫で下ろす。

キョン「しかし、天蓋領域がここに来たって事は・・・情報統合思念体は、どうなったんだ?負けた・・・とか?」
あくまでもみちると立てた推測にしか過ぎないが、しかし高い確率で当たっているだろう宇宙人同士の戦争は、一体
どちらに軍配が上がったのだろうか。

古泉「脱出用ハンマーがありました、これでガラスを割りましょう。」

一人冷静に行動する古泉に、閉鎖空間内での彼を重ね合わせて・・・キョンは少し笑い、その言葉に頷いた。宇宙人も巨人も
動けないのなら、ここは・・・SOS団の独壇場だ。

時間平面に、ビリビリと振動が響き渡った。

424 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/10(月) 02:51:06.66 ID:uWqxIDg00 [13/14]
バリィンッ!窓ガラスを叩き割り、手を突っ込んで鍵を開けようとする。しかし内側もまた鍵で施錠する
タイプの扉らしく、仕方なく上下に分割されているガラスの下を割り、そこから潜り抜けた。

学校の内部はいつもの空間よりも静かにひんやりとしていて、何だか入り難い印象を浮かべる。・・・だが、
ここにはハルヒが居る。キョンの勘だけでは無い、長門の夢もそう言うのだ。事、情報戦において、彼女
程信じられる物が他にあるだろうか?

キョン「唯一のネックは、閉鎖空間内って事なんだよな・・・古泉、お前閉鎖空間が何を意味するか分かるか?」
古泉「いえ、あなたの話に出てきた単語であるという以外は、何一つとして。」

厄介である、神人は本物なのに肝心の超能力力者が出て来ない。

キョン「ハルヒ・・・お前は、本当に世界を滅ぼすつもりなのか・・・・・・?」

朝倉「私と長門さんで文芸部室を見てみるわ。」

鶴屋「じゃぁこっちはみくると一緒に昨日の撮影場所に行ってみるっさね!
   携帯電話は通じるから、それで連絡を取るにょろ!」

古泉「では、あなたは僕と共に・・・ですね。ふふっ、記憶にはありませんが、あなたから聞いた3年前の出来事が、
   何故だか思い出される様ですよ。」

三手に分かれる。


キョン「・・・・・・どこだ、ハルヒ・・・一体何処に居る!?」

目指すは、教室だ。何度席替えをしてもキョンの後ろ・・・彼女の定位置へ、二人は歩を進める。

426 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/10(月) 03:02:20.42 ID:uWqxIDg00 [14/14]
『駄目ね、こっちにはいないわ。』

携帯電話から、朝倉の声が響く。こちらも、返す言葉は大体同じだ。キョンと古泉は
教室に入ったが、期待空しくそこは無人のままであった。
一応中に入り机の中なども探すが・・・やはり、彼女に繋がる情報は無い。

古泉「打つ手がありませんね・・・せめて、僕にあなたの言う超能力でもあれば・・・。」
キョン「無い物は仕方無いぜ。何か方法は・・・方法は無いか・・・。」

宇宙人では無く、未来人でも無く、超能力者でも無い。只の凡人である自分に、一体何が
出来ようというのか?

キョン「唯一のヒントはコレだけか・・・"Sleeping Beauty"・・・・・・。どうすれば、どうすれば
    良い・・・っ!?古泉、何か分からないか・・・っ!?」

古泉「うーん・・・何とも・・・・・・眠り姫って意味しか分かりません。」

キョン「それは俺も知っているんだよなぁ・・・・・・。・・・・・・・・・うーん。」

prrrrrr

キョン「鶴屋さんか。何かあると良いけれど・・・」ピッ

『もしもしキョン君かい!?こっちには何もいなかったよ・・・んで、凄い悪い知らせがあるんさ・・・』

キョン「何ですか!?悪い知らせ?」

鶴屋「そう・・・巨人が、こっちに歩いて来るんさ・・・・・・。」


428 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/10(月) 03:15:06.89 ID:2ymrdjNE0 [1/20]
-----------------------ォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ・・・・・・・・・。

巨人の叫びが大きくなる。その音は、文芸部室の二人にも轟いていた。

長門「・・・朝倉さん・・・」
朝倉「長門さん、大丈夫よ。安心して・・・私が付いているから。」
長門「江美里は・・・無事かな?」
朝倉「・・・きっと無事よ。だから祈りましょう・・・せめて神様が聞いてくれる様に。」


キョン「うぅ、無能力者はこんな時に困るんだよなぁ・・・宇宙人も未来人も超能力者もずるいぜ・・・」

古泉「・・・あなたは、自分の事を異世界人だと言っていました。何か、異世界の魔法でも使えませんかね?」

キョン「異世界ってのは言葉の上での例えでな・・・俺自身は、特にこれと言った知識も経験も無いし・・・」
キョン「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・古泉、やっぱり・・・・・・お前はSOS団の副団長だよ!」
古泉「!何か分かりましたか?」

キョン「あぁ、分かったともさ!俺は異世界人だ。この世界の前の世界も、その前の世界も知っている・・・
    この空間はハルヒの閉鎖空間と、長門の世界改変が合わさった物なんだ。・・・三手になんて、分かれる
    べきじゃなかった・・・」

キョン「古泉、鶴屋さんに電話してくれ。俺は長門達にするから・・・」


ハルヒを救い出す言葉は、あの日の言葉で。
ならば、この状況を打破するのは・・・・・・あの日の選択・・・!!


「SOS団、文芸部室に全員集合!第1回、団長救出作戦を行う!」

430 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/10(月) 03:23:31.12 ID:2ymrdjNE0 [2/20]
キョン「・・・・・・。」

キョンは、文芸部室に揃った面々の顔を見渡す。北高に入学して早数ヶ月、この場に
足りないメンツはいない。

朝倉「キョン君、これで良いの?」

朝倉の声に、無言のまま頷く。今まで何度も何度も探してきて、そして見つからなかった物が・・・
一度は諦めかけた光景が、そこある。
長門有希、朝比奈みくる、古泉一樹。朝倉涼子と鶴屋が居るのはご愛嬌か。その面々の顔を
もう一度見渡してから、ゆっくりと声を吐き出す。

キョン「長門。パソコンの電源を付けてくれ。ちょっと見てみよう・・・。」

・・・長門が、パソコンの電源を入れその前から退く。静かに滑り込んだキョンは、マウスを
片手に目を画面上に走らせた。そして、直にそれを見つける。

文字化けしているけれど。しかし、アイコンは、立派なSOS団のトレードマークで・・・



・・・・・・・・・帰還プログラムが、読み通りそこに存在した。

431 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/10(月) 03:35:13.01 ID:2ymrdjNE0 [3/20]
キョン「・・・やっと・・・・・・見つけた・・・。」

クリックする。マウスを操作している実感すら無い程、滑らかに手首が動いた。
画面一杯にメッセージが映し出される。それは、あの日のメッセージと殆ど変わらない
そのままの文章だった。

朝倉「これが、帰還プログラム・・・?」

長門「・・・私の名前。」

キョン「向こうの世界の長門が作ったんだ。いくらか文字化けしているが、別に構わないよ・・・
    もう何度も見たからな。」

そのまま、下の起動ボタンまでカーソルを運ぶ。・・・・・・迷わず、起動ボタンの上に載せた。

キョン「・・・ん?」

が、しかし。そのカーソルが直前で止まる。ボタンの数がおかしい。1つはそのままプログラムを終了し、
消去するボタン。もう1つは、プログラム実行を行い世界を修正するボタン。そして、もう1つが・・・

キョン「・・・ここに来て、お前はややこしい事をするなぁ・・・。」



                   ↓
     [プログラム消去] [プログラム起動・実行] [涼宮ハルヒの憂鬱]

433 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/10(月) 03:41:48.23 ID:2ymrdjNE0 [4/20]
世界が眩しく光り、そしてグルグルと回る様に飛んで行く。











・・・・・・キョンは、そんな感覚の中、確かに皆の声を聞いた様な気がした・・・・・・




「涼宮さんを頼みます」と。 




SOS団は、これにて・・・真に、揃う事になる。

434 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/10(月) 03:49:04.93 ID:2ymrdjNE0 [5/20]
朝倉「・・・迷わず押しましたねー彼。」

長門「・・・・・・このボタンの意味は何・・・?」

鶴屋「いや、いっそここまで清々しくそのまんまの名前を使う所がハルにゃんらしいにょろ。」

古泉「僕はトラップでは無いかとヒヤヒヤしましたがね・・・疑り深いのも考え物です。」

みくる「キョ、キョン君は一体どこへ行ってしまったんですかー!?」




-------------------------------オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ・・・・・・・・・。

その場に残された全員が、窓ガラスから覗く赤い光を見た。青い巨人が、その身を最大限に屈ませて、文芸部室の
中を覗いている。しかし、全員が声を上げる訳でも無く、逃げ惑う訳でも無く・・・その巨人を見返していた。

朝倉「あら、やるのかしら?」チャキン
長門「・・・綺麗・・・。」
みくる「わぁ・・・・・・。」
鶴屋「・・・こんな物、一生に一度しか見れないね・・・。」
古泉「一生に一度で十分だと思いますよ僕は・・・・・・・・・さて。」



古泉は、パソコンの画面を覗いた。自分達の、これからの運命は全て・・・たった一人の、少年に託されたのである。

435 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/10(月) 03:55:31.35 ID:2ymrdjNE0 [6/20]
キョン「・・・ここは、・・・・・・そうか。閉鎖空間の中か・・・。」

キョン「お~いハルヒー、どこだー出て来ーい。早くしないと真面目に世界が滅んじまうんだよ・・・
    文芸部室にはいないのか?」


ガチャッ・・・キィィィ・・・・・・

キョン「・・・いきなり居たな、おてんば姫が。」

ハルヒ「何よ今更。別にあんたなんて待ってたんじゃないんだからね?」

キョン「帰るぞ。皆が待っている。」

ハルヒ「・・・嫌よ。帰らないわ。この世界はほら、見て。あの青い巨人が居る!こんな不思議な世界、
    さっさと出るなんて勿体無いわ!ご飯だってどうにかなるし、そんな気がするの。ねぇキョン、
    あんたも一緒にここにいない!?そしたら、きっともっと楽しい事があるわ!」

キョン「・・・ここに居るのは、俺達だけだ。SOS団の、他の皆はいない。」

ハルヒ「いいじゃない別に!二人も居れば十分よ!!ねぇ、ほら早く、不思議探索しに行きましょうよ!!!」

443 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/10(月) 04:16:55.38 ID:2ymrdjNE0 [7/20]
キョン「・・・ハルヒ。俺はジョン・スミスだ。」
ハルヒ「知っているわよ、そんなの!それがどうかしたの!?」
キョン「そうだろうな!だが、ジョン・スミスはもう一人居る、といったらどうする?
    古泉が会ってるんだけど。」コツ

ハルヒ「へっ?」

キョン「朝比奈さんには、大人バージョンが居るんだ。どうだ、これは知らなかったろう?」コツコツ

ハルヒ「何、何よ!いきなり!!」

キョン「長門が書いた小説読んでみたくないか?アレな、結構凄い事が書いてあるんだぞ。
    本人は絶対に見せてくれないけれどな。」コツコツコツ

ハルヒ「な、何よ・・・何よ、そんなの!な・・・」ガッ!

ハルヒ「あ・・・・・・」
キョン「・・・ハルヒ!俺は鈍感だ!!だから、何気ない事でお前を傷つけて、最後の最期まで気付かない
    事も多々あるだろう!それは正直すまん!だが許してくれ!!!長門に悪気は無くて、朝比奈さん
    には茶目っ気があっただけなんだ!ついでに言うと俺は馬鹿だった!本当にすまん!素直にお前に
    聞けば良かったんだよなぁ、「どんな役がやりたいのか」って!」

ハルヒ「な・・・あ、ちょっと・・・・・・・・・まさか・・・・・・っ」

キョン「さて・・・それでは久々に・・・・・・」ゴキッゴキッ・・・・・・

「うおおおおおおおおおおおおおおおおハルヒいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!!!」
ハルヒ「いやああああああああああああああああああああああああああああああっ!?」

446 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/10(月) 04:24:21.14 ID:2ymrdjNE0 [8/20]
キョン「はぁーんハルヒハルヒハルヒハルヒ可愛いぜええええええええええええええええええええ!!!!!!!
    よーしよしよしごめんなー変な勘違いさせてごめんなーっ!!!」ダキッギュウウッ!!!

ハルヒ「待ってちょっと待っていきなり何よそれ反則じゃないこういうのはもっと手順を踏むべきじゃない!?」

キョン「手順!?何言ってるんだ恋と戦争にルールは無いんだぜ!!!?ラブロマンスなんてのはぁやった者勝ち
    なんだよおおおおおっ!!!!」スリスリスリスリスリスリスリスリスリ

ハルヒ「い・・・いきゃああああああああああああああああああああああっ!!!」

キョン「うおおおおおおおおおおお俺の中のパトスが燃える!朝比奈さん(大)がけしかける!!!」

キョン「眠り姫なんてまどろっこしい事してないでさっさと押し倒せと轟叫ぶーーーーーーーーーーーっ!!!」

ハルヒ「もうちょっとマシな形で口説けないのあんたはあああああああああああああっ!?」

ハルヒ「待って待ってこのままじゃ本当にぃぃぃぃぃぃ」

キョン「ハルヒィーーーーーーーー実は俺ポニーテール萌えなんだぁーーーーーーーーっ!!!」スリスリスリスリスリスリスリスリスリ

ハルヒ「何だか重要そうな台詞をこんな時に言わないでええええええええええええええええええええええっ!!!」

448 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/10(月) 04:32:07.43 ID:2ymrdjNE0 [9/20]
キョン「・・・といのは置いといて、そろそろ真面目に話をしよう。」スッ

ハルヒ「・・・へぇっ・・・へ・・・・・・・・・・・・・・・えっ!?」

キョン「このままじゃぁ俺は只の変態じゃないか。長門や朝倉にそう思われるのは
    萌えの一部として考えられるが、朝比奈さんやお前にそう思われるのは
    心の一部にズシンと来る。という訳で、ほら正座。」

ハルヒ「は・・・あ、う、うん。」モジモジ・・・・・・


キョン「ハルヒ。俺は異常が大好きだ。非日常が大好きだ。宇宙人や未来人や超能力者に
    囲まれて、無自覚な神様と騒ぐのが大好きな異世界人だ。」

ハルヒ「う、うん・・・・・・うん!」

キョン「顔も成績も冴えないが、しかしお前の事を考えている時間なら誰にも負けない。
    だからどうか・・・・・・」



キョン「ポニーテールにしてくれんか?」

ハルヒ「」

453 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/10(月) 04:41:38.34 ID:2ymrdjNE0 [10/20]
ハルヒ「・・・・・・何よそれ、ラブロマンスのラの字も無いわ・・・」

キョン「それは現実でやるとしようぜ?こんな不思議だらけの世界じゃぁ、
    せっかくの愛も地味に見える。」

ハルヒ「・・・・・・・・・・・・ぁ・・・・・・・・・・・・・・・・っ」




ムー、チュッ。ニャー


キョン「ニャー?」

ガバッ

キョン「・・・・・・。」   ピピピッピピピッピピピッピピピッピピピッ・・・・・・


キョン「ハルヒの奴、キスする前に・・・・・・っ畜生!!!」

シャミセン「ニャー?」ゴロゴロ・・・・・・

455 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/10(月) 05:06:26.86 ID:2ymrdjNE0 [11/20]
キョン「長門、少し聞きたい事があるんだが・・・」

長門「・・・・・・あなたは72時間33分59秒間、この世界から消えていた。その間あなたが体験した事は、
   全てが事実。」

キョン「・・・・・・そうか。」




あの日から、丸一日。どうやら世界は本当に、元に戻ってくれたようだ。
長門のプログラムが優秀だったのか、それともハルヒの力が働いてくれたのか・・・あの奇妙なコマンドを
選択したのにも関わらず、きっちりと世界を元に戻しておいてくれていた。目覚めてから学校に行こうと
した時、その事に気付いたのだ。・・・・・・・・・・・・外を、チラチラと雪が舞っている事に。


長門「あなたが経験した事の、詳細をここに記している。」

キョン「うん?・・・表か。分かり易いな。・・・やはり天蓋領域のせいか。それで、俺はあの改変世界を更に
    歪めた様な世界に行っちまった訳だな?そしてハルヒの押さえつけられていた力が目覚める事で
    崩壊しかけたあの世界に、天蓋領域が侵入・・・しかし予想外の時空振動で何も出来ず撤退、そして
    ハルヒが目覚め、修正プログラムが起動して元に戻った・・・と。」

キョン「しかし、悪いな長門。ややっこしい事態の分析までやって貰って、本当に感謝するぜ。」

長門「・・・・・・ややこしくは無かった。事前情報はあった。」

キョン「どういう事だ?」

長門「・・・・・・つまり、こういう事。」

457 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/10(月) 05:17:52.22 ID:2ymrdjNE0 [12/20]
長門「あの世界は修正されるにあたって、少し厄介な問題を抱えていた。それは不完全な
   修正プログラムと、そして向こうの世界を望んだ向こうの涼宮ハルヒの力。」

長門「元に戻りたい、でも消えたくない。同じ強さを持つ二つの力が存在した結果・・・・・・コホン」

キョン「?」


長門「向こうの記憶も、こちらで併せ持ってしまった。と・・・そういう事・・・なの、キョン君。」


キョン「・・・・・・へっ!?」
長門「それも、SOS団のメンバー全員が。」

キョン「嘘。」
長門「嘘じゃないよ、キョン君。」

キョン「・・・・・・」
長門「キョン君。・・・・・・私の黒歴史の事は、なるべく言わないで欲しい。」

462 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/10(月) 05:25:23.38 ID:2ymrdjNE0 [13/20]
朝倉「あ、異世界人。」

キョン「・・・お前、この世界では存在しているんだな・・・。」

朝倉「いや、私はどういう訳か向こうの世界の記憶しか持っていないのよ。ねぇキョン君、
   説明してくれないかしら?私はカナダで暮らしている筈じゃなかったの?」

古泉「キョン君、お早うございます・・・えぇと、僕もかなり混乱していますが・・・・・・まぁ、
   長年の謎であったジョン・スミスの事が知られて良かったですよ。」

キョン「・・・そうか。ところで古泉、お前、実はボードゲーム滅茶苦茶強いだろう?」

古泉「さぁ、どうでしょうね・・・ふふっ!」

朝倉「ねぇキョーン君!?私はここで一体どうなっているのかしらぁーっ!!!?」


みくる「・・・・・・私、向こうの世界でもあんまり変わらなかったなぁー。」

鶴屋「みくるはどこの世界でも可愛いって事っさ!」ナデナデ

みくる「え、えへへへー。」

464 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/10(月) 05:29:47.52 ID:2ymrdjNE0 [14/20]
キョン「・・・・・・ところで古泉、朝倉。その・・・・・・・・・ハルヒは、どこだ?」

古泉「彼女なら、尋常ならざる顔で部室に居ますよ・・・声をかけるのも怖いです。」

キョン「・・・古泉、もし・・・俺が死んだら骨を拾ってくれるか?」



部室。








ハルヒ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

467 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/10(月) 05:41:41.67 ID:2ymrdjNE0 [15/20]
ハルヒ「・・・・・・・・・キョン。」

キョン「バレてたか。」キィッ・・・

ハルヒ「私、今すっごい混乱しているの。有希が未来人でみくるちゃんが超能力者で古泉君が宇宙人で、
    鶴屋さんも宇宙人で朝倉さんが凄く可愛いの。」

キョン「確かに混乱しているな。俺が知っているのとはまるで別だ。」

ハルヒ「・・・そしてね、あんたが凄い変。普通の筈のあんたが、私より変なの。私より普通を求めていて、
    私より・・・・・・冷静に行動していたの。凄く、辛い状況だったでしょうに。」


キョン「・・・ハルヒ、右手は痛くないか?」

ハルヒ「痛くないけど、むず痒いわね。ちょっと撫でてよ。」スッ・・・

キョン「そうか。・・・・・・傷は無いんだな、良かった。・・・なぁ、ハルヒ」

ハルヒ「言わなくて良いわ。この記憶が本当かどうかなんてどうでも良いから。有希もみくるちゃんも
    古泉君も、鶴屋さんも朝倉さんも皆私の友達で、大好きな人よ。だから、向こうの私がどれだけ
    絶望しても、私はこっちの世界の方が好き。」

キョン「・・・・・・。」スリスリスリ・・・・・・


お互いに、一度は絶望しかけたけれど。


           そのおかげで、今、こうして共にいられる。

468 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/10(月) 05:51:41.30 ID:2ymrdjNE0 [16/20]
ハルヒ「うーん、そういえば私、変な方のあんたに会うのは、初めてなのよねぇ・・・。」

キョン「向こうの俺からすれば、どっちも馴染み深い物なんだがな。」

ハルヒ「駄目ね。何だか落ち着かないわ。ここはけじめとして、きちんと挨拶を
    しておかないとね。」

キョン「あぁ、良いぞ。・・・俺の名はキョン。只の人間でも、面白い奴なら歓迎だ。
    以上!よろしく頼むよ!!」

ハルヒ「はい、どうも。えぇー、では改めまして・・・・・・」




   「東中出身、涼宮ハルヒ。只の・・・・・・」




     「end.」

473 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/10(月) 06:04:29.22 ID:2ymrdjNE0 [17/20]
[ちょっとおまけ]

長門「・・・・・・。」
喜緑「・・・・・・・・・・・・?」
長門「有難う、そのままのあなたでいて。」
喜緑「・・・どうしたの長門さん、エラーでも溜まりましたか?」


谷口「朝倉!カナダから帰って来ていたのか!会いたかったぜぇ!!!」
国木田「「私はそうでも無いけれどね!」


鶴屋「しっかし、せっかく撮ったビデオはこっちの世界には無いんだねー、
   こっちより凝って撮影したから、何だか勿体無いにょろ。」
みくる「私はあの写真がこっちに来なくて良かったですー。」
鶴屋「でも例の服は既に作ってあったりして・・・あーはっはっはっはっはっ!」
みくる「にょろっ!?」


古泉「王手飛車取りぃっ!」
キョン「うわっクソ!やっぱり実力を隠してやがったなぁ!?」
古泉「フフッ、いつかこの腕前を見せられる日を楽しみにしていたんですよ!フフフフフ
   フワーハッハッハッハッハッ!!!」
キョン「高笑いし過ぎだこの野郎ーーーーーーっ!!!」


ハルヒ
「来年は、ラブロマンスか・・・・・・♪」

[おまけ 終わり]

476 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/01/10(月) 06:07:53.10 ID:2ymrdjNE0 [18/20]
・・・と、いう訳で丸々一日以上の時間をお付き合い頂き、有難うございました。
ほんの思いつきで始めた為、行き当たりばったりで書き溜め無しという酷い状況に
加え、漢字間違いや分かり辛い文章などありますが、私の眠気の免じて許して下さい。

あぁ、一応聞いておいた方が良いかな?ここ分かりづらーいとか矛盾してるー、とか
あったら教えて下さい。何か無理矢理説明を加えます。

コメント

No title

最初はただのカオスかと思ったけど、あっという間に引き込まれた
最高だったわwww

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