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男「クリスマスか……」

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[代行] 投稿日:2010/12/24(金) 13:47:12.56 ID:QYgNQfEG0 [1/3]
男「彼女いない歴=年齢の俺には関係ないや
さて、VIPでもやるか……ん?」


4:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします

この速さで俺にアンカーをうっかりつけちゃった奴は
今年の冬はロングブーツを履いたすきとおるような肌の黒髪ショートの美少女と
クリスマスにデートすることになってしまう強力な呪いがかかるからくれぐれも気をつけろ
あり得ないと思うかもしれないけど、きっかけなんてこんなもんだ


男「……くだらねー。このコピペ貼ってる奴まだいたんだ……」

カチカチ――カタカタ、カタカタ……タン!

以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします

>>4
いつまでそんなことやってんだよ 馬鹿か


男「これでよしと」

7 名前:>>1 THX! ◆1IahjnNtgQ [] 投稿日:2010/12/24(金) 13:54:02.90 ID:ZJJoeNId0 [1/48]
男「さてさて、明日がクリスマスか。どうせ今年もなーんも無いからとっとと寝るか」

男「現実逃避して夢に逃げるって訳じゃないぞ……うん……」

………………………………………………………………………………

男「ふぁ……あー良く寝た。今何時だー?」

?「えっと、朝の七時ですね」

男「おー、何気に早く起きたな――って、えっ?」

?「?」

男「……誰?」

?「あ……自己紹介がまだでしたね」

?「はじめまして。女って言います」

男「……はい?」

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 13:56:17.54 ID:ZJJoeNId0 [2/48]
男「えーっと」

女「どうかなさいました?」

男「いや、どうして俺の部屋に君が?俺、君みたいな子と知り合った記憶がないんだけど……」

女「あ、それはですね――。…………?」

男「どしたの」

女「えっと……なんでだろ?」

男「えっ」

女「そもそも、自分の名前と男さんの事以外なにも知りませんね、私って……」

男「……えっ」

女「……どうしましょう」

男(いやいやいや……それは俺の台詞だってばよ……。何これ何これ)

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 13:58:37.60 ID:ZJJoeNId0 [3/48]
男「……軽く質問するよ?」

女「あ、はい。どうぞ」

男「君の名前は?」

女「女ですね」

男「どこに住んでるの?」

女「……………………あれ、わからない……」

男「……年齢は?」

女「ん、んーと……十八、かな?たぶんですけど」

男(どう見ても十五、六くらいにしか見えないっつーの……)

男「どうやって俺の部屋に?」

女「えっと……それもわからないです……」

男「分からない?」

女「気付いたらここに居たんです」

男「いったいどういうことだ……?」

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 14:01:54.60 ID:ZJJoeNId0 [4/48]
男「えーっと、要約すると」

男「自分と俺の名前、それ以外はほとんど何も憶えていない」

男「まるで異次元から飛ばされてきたみたいに気付いたらここに居た、と――」

男「ああ、そうか成程」

女「ほえ?」

男「女さん、ちょっといいかな」

女「あ、はい。なんでしょうか?」

男「ちょっと俺を思いっきり殴ってみて」

女「……ええ!?」

女「い、いきなりどうしたんですか!」

男「いやー、これって俺の夢以外なんでもないとしか思えないのよ」

男「普段から俺ってエロゲーとVIPしかしてなくてさ。こんな妄想タラタラ流しながら彼女欲しいなーって思ってたのよねーあっはっは」

男「だから、今の俺にはこれが現実とは思えないわけ。というか夢なら夢でとっとと醒めたい……主に心が痛くなる前に……」

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 14:04:16.66 ID:ZJJoeNId0 [5/48]
男(どう考えてもこれって現実じゃないしな)

女「えっと、あのその」

男(それにしても、この子すんごい可愛いな……)

女「ホント、大丈夫なんですか?」

男(粉雪みたいに透き通った白い肌。黒髪のさらさらショート)

女「じゃ、じゃあいきますよ?」

男(……ん?あれ、これって――)

女「え、えーい――ってはわぁあ!!?」

ゴヂッ――ン!

男「ごはぁ!!」

男「いてえ!頭超いてえ!!って痛い!夢じゃないだと!?」

男「……あれ、女さん?」

女「きゅ~……」

男「頭にタンコブ作って目回してるよ……」

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 14:07:04.38 ID:ZJJoeNId0 [6/48]
男「よいしょ……。起きるまで俺の布団で我慢してもらうか」

男「……さて、確認してみよう」

男(昨日のスレ……これか)

男(これの4っと。あった)

4:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします

この速さで俺にアンカーをうっかりつけちゃった奴は
今年の冬はロングブーツを履いたすきとおるような肌の黒髪ショートの美少女と
クリスマスにデートすることになってしまう強力な呪いがかかるからくれぐれも気をつけろ
あり得ないと思うかもしれないけど、きっかけなんてこんなもんだ

男「…………」

男(これ以外原因思いつかねえ……)

男(けどさ、これってただのコピペだろ?なんでこんな事になってんだ?)

女「う~……」

男(やべっ起きた。Jane落とさなきゃ)

女「いたたた……。あれ……私なんで寝てるんだろ?」

男(さすがにエロゲー板とか卑猥単語乱発のスレタイ見られるのはきついわ……)

20 名前:>>14>>16-17もっと!!!もっと罵ってくれぇぇえぇぇええええ!!![] 投稿日:2010/12/24(金) 14:10:58.85 ID:ZJJoeNId0 [7/48]
女「えーと……はれ?」

男「ど、どうしたの?」

女「足滑ってからの記憶が無い……。けど頭がすっごいズキズキする……」

男「あーんー……俺の頭と君の頭が盛大に喧嘩をしてね。俺の頭は大ダメージ。君の頭は敗北を喫したって所かな」

女「あうぅ……ごめんなさい……」

男「まあまあ。俺が殴れって言ったんだし、夢じゃないって事が発覚したんだし、謝ることはないさ」

女「そうですか……」

男「うんうん、それでOKなの」

女「なんだか納得しにくいですが……分かりました」

男「うむ。素直でよろしい」

男「それで、さ。君はこれからどうするの?」

女「ほえ?」

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 14:14:27.94 ID:ZJJoeNId0 [8/48]
女「どうする、とは?」

男「……簡単に言うと、君は世間一般的に記憶喪失って事になるよね?」

女「えーっと、はい」

男「だからここで選択肢」

男「一つは警察に行って保護してもらう」

男「二つ目は俺と一緒に街を廻って、手掛かりを色々探してみる」

男「三つ目はこのまま俺と一緒に住んじゃう」

男「どれがいい?」

女「ん……個人的には二番目がいいんですけど、一つ聞いてもいいですか?」

男「うん?何?」

女「どうして、身元不明で不法侵入してる私にここまでできるんですか?」

女「正直、警察に通報するのが正しいと私は思うんですけれど」

男「いやー……確かにそうだけど……」

女「なぜ、男さんはそのように振舞えるのでしょうか」

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 14:16:46.45 ID:ZJJoeNId0 [9/48]
男「まあ、そりゃあ……別に俺に迷惑掛けてる訳じゃないし」

男(現状、信じたくはないけどあのスレのコピペが原因としか思えない)

男「記憶喪失の人をいきなり街に放り出す事もできない」

男(だとしたら、この子は本当に『独り』なんだ)

男「かといって、俺は警察がそんな信用できる機関とは思っていない」

男(戸籍も知り合いも無いなんて、寂しすぎる)

男「それだったら、俺はこの子と一緒に過ごそうと思う」

女「……ほえ?」

男「あー、いや、俺は三番目の選択肢をって意味」

女「ああ、なるほど」

男(あっぶねえ……心に思ってた事を口に出すとは……)

女「…………」

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 14:19:33.96 ID:ZJJoeNId0 [10/48]
男「それが俺の答えだけど、おかしいかな」

女「そんな事ないですよ」

女「……むしろ、冷静で思いやりがあるって思いました」

男「いやはや、そんな事ないさ。俺は結構冷たい人間だぞ?」

女「……貴方みたいな人となら、私は一緒に居たいですね」

男「え?」

女「あ、えっと……そのままの意味でいいですってはうぅ……!?」

女「えーっとですね!一緒に居たいって言うのは男さんの言った選択肢の事であってですね!」

女「決してあのえと、ずっと一緒に居たいっていう意味ではなくて!」

男「えーと……」

女「あ、あぅ……」

男(素直に可愛いな……)

男「まあ落ち着こうか?」

女「くすん……はい……」

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 14:22:04.28 ID:ZJJoeNId0 [11/48]
男「とりあえず朝飯でも食うか。頭に栄養が回れば何か良い案も思い浮かぶだろ」

女「はい。あ、私が作りますよ」

男「あー……見てもらったら分かると思うんだけど、たぶん無理」

女「ほえ?」

男「冷蔵庫開けてみ」

女「……?はい」

ガチャッ

女「…………」

男「刻みネギとプリンだけで料理なんてできないでしょ」

女「た、確かに」

男「だから、これしかなくてさ」

女「カップラーメン……毎日ですか?」

男「まあ……ね……」

25 名前:そろそろ書き溜めが切れう[] 投稿日:2010/12/24(金) 14:24:45.95 ID:ZJJoeNId0 [12/48]
女「材料、買いに行きませんか?」

男「え、今から?」

女「はい!インスタントばかりでは身体に悪すぎます!」

男「いやまあそうだけど……」

女「じゃあ決まりですね。行きましょう!」

男(手を差し出してる……。手にとっていいのかな)

男「ん、そうしよっか」

女「すぐに作れるとしたら、パンとかの洋食ですね。構いませんか?」

男「オーケーだよ」

男(もしかして、女の子に自分から触ったのって初めてかもしれん……)

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 14:29:40.55 ID:ZJJoeNId0 [13/48]
女「~♪」

男(心底楽しそうな顔してるなぁ)

男(ロングブーツに白いロングコート)

男(会って一時間も経ってないけど、この子の心と同じように純白で似合ってるよな)

女「あ、聞き忘れてましたけど、苦手な食べ物ってありますか?」

男「んー?あー、特に無いよ」

女「あら、じゃあ何を作っても大丈夫ですね」

男「うん。楽しみだよ」

女「じゃあ、卵を乗っけてもいいし、ジャムとかマーガリンとかでもいいかな……」

女「でも、サラダを乗せた方が――って、この時間で空いてるのはコンビニくらいだし、野菜が無いからちょっと無理かしら……」

男(パンってそのまま食うものじゃなかったんだ……)

28 名前:>>27おい私を罵れよ。罵る相手を間違ってるぞおい[] 投稿日:2010/12/24(金) 14:34:02.70 ID:ZJJoeNId0 [14/48]
店員「いらっせー」

店員(何あの子。超美人)

女「男さん、六枚切りと五枚切りのどっちがいいですか?」

男「えーと……じゃあ六枚切りの方で。ってああ、俺が持つよ」

女「あ、お願いしますね。ありがとうです!」

店員(ちくしょう。いちゃつくんじゃねえよ。こちとらクリスマスイヴだってのに働いてんだぞksg)

店員(あれ、この手前の肉まん、破れてんじゃねーか)

店員(あのクソ阿呆が……見た目に問題あるヤツは出すなって言ったのに……)

女「あとは卵と……調味料はたしかあったからいいとして……あれ、レタスとかキュウリも置いてあるんだ」

男(調味料とかいつの間に確認したんだろ)

女「ん、これでいいですね」

店員(しゃあねえ。廃棄すっか)

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 15:09:49.09 ID:ZJJoeNId0 [15/48]
女「すいません、これお願いします」

店員「っと、ありがとうごzあっつぅ!?」

店員(うはwwww肉まん乗せてる網に直に触れたwwww不意打ちクソパネエwwあちいwww)

女「あ、あの、大丈夫ですか?」

店員「あー、大丈夫ですよww慣れてますからwww」

女「えと、レジは後でいいので、先に手の方を冷やしておいた方が……」

店員(おいおい、なんちゅう希少種なおにゃのこなんだよ……笑わずに心配とか……)

男(優しいなぁ女さんって……俺だったらVIPに書き込むために注視するわ……)

店員「あー……ありがとうございます……」

女「火傷、してないといいですね」

チクチク

男(なんだこのチクチク感は……すげえ居心地が悪い……)

31 名前:>>29仕事の話をしてたすまん[] 投稿日:2010/12/24(金) 15:11:58.99 ID:ZJJoeNId0 [16/48]
店員「ありがとうございました。またお越し下さいませ」

店員(マジでまた来て欲しいわ……普通に惚れた……)



男「財布持ってたきてなかったとは……」

女「まあまあ。最初から私が出すつもりでしたから」

男「いやね、なんかこう情けない気持ちになりまして……」

女「あぅ……で、でも!お荷物持って貰ってますし!」

男「言い換えたらそれしかしてないんだよね……」

女「ぅー……どうすれば治りますか……?」

男「あー、君が抱きついてくれたら治るかもねー」

女「ほえ?」

男「ってなんてなー。無視していいk――!?」

女「こんな事でいいなら、いくらでもしますよ?」

男(ギュッってされた……横からギュッて抱き締められた……)

33 名前:書き溜め終了[] 投稿日:2010/12/24(金) 15:14:28.65 ID:ZJJoeNId0 [17/48]
男(発育途中の胸よりも大きめの、ふわっとした柔らかい双丘が俺の身体にっ!!)

女「んー……」

男「ど、どどどどしたの?」

女「えっと……たしか男の人って胸の大きい女の子が好きなんですよね?」

男「い、一般的には」

男(俺は大きいよりも控えめの方が大好きだが……女さんくらいのがちょうどクリーンヒット過ぎる……)

女「男さんは、もっとおっきい子の方が良かったですか?」

男「え、えっとあの?それはそのなんというか……」

女「正直に答えてくださいよ……?」

男(若干苦しいくらい強く抱きしめた上に、じわって涙を溜めて上目遣いしないでええ!!)

男(死んじゃうから!!俺、萌え殺されちゃうからあああ!!!)

男(どうしようどうしよう。抱き締め返していいのこれ?)

女「…………」ヂー

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 15:24:53.53 ID:ZJJoeNId0 [18/48]
男「あー……なんというか、控えめな方が好きです、はい」

女「嘘じゃないですよね?」

男「そ、それは勿論」

女「……はい、信じます」

女「それでは、男さんの家に帰りましょうか」スッ

男「あ、はい」

男(名残惜しいなんて口が裂けても言えない……)

女「そういえば、私って男さんの事を何も知りませんね」

男「ん?」

女「もっと、色々と知りたいなって思いまして――って、ダメだったでしょうか?」

男「構わないけど、何を知りたいの?」

女「んーと……好きな食べ物とか苦手な食べ物……は、無いんでしたっけ。あとは年齢とかですね」

男「好きな食べ物は……なんだろう。たぶんそれも無いかな。あと、年齢はたぶん二十歳だね」

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 15:30:54.14 ID:ZJJoeNId0 [19/48]
女「たぶん、ですか?」

男「実は年齢とか結構どうでも良いって思ってるから憶えてなくて……」

女「な、なんというか……珍しい人ですね」

男「よく言われるんだけど、成人してるかどうかさえ憶えてたらいいやーってならない?」

女「なりませんよ……」

男「やっぱり俺の感覚ってずれてるのか……」

女「で、でも!ほら、ナンバーワンよりもオンリーワンって言いますし、良いと思いますよ?」

男「あ、それはいつも疑問に思うんだけど、競争意識がなくなるからダメな言葉だと思うんだ」

女「えーとえーと……こ、個性と言った方が……?」

男「ん、それなら嬉しいかも」

女「あは。良かったっ」

男(……ほーんと、笑顔が眩しいなぁ)

女「――――?どうかしましたか?」

男「ん、なんでもない」

女「?」

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 15:38:35.93 ID:ZJJoeNId0 [20/48]
――男宅 朝食

女「はい、どうぞ」

男「ん、ありがと。いただきまーす」ムグムグ

男「……へぇ、サラダを焼いたパンに乗せるのも案外美味しいんだね」

女「サラダの種類にもよりますが、基本的にサンドイッチと同じですから」ハムッ

男「ああ、なるほど」

男(そういや、最後に手料理を食ったのっていつだったかな)

女「あ、あの……」

男「ん?ほうひたの?」

女「えっと……お口に合いませんでしたでしょうか?」

男「ングッ――。どうして?」

女「いえ……何やら難しそうな顔をしてましたのでそうなのかなって……」

男「ああ、違うから安心していいよ。ただ単に最後に食べた手料理っていつだったかなって考えてただけ」

女「そんなに久し振りなのですか?」

男「結構久し振りだと思うけど、よくは分かんないや」

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 15:45:57.66 ID:ZJJoeNId0 [21/48]
男「いやー、ここまで来ると記憶障害でもあるんじゃないかなって思ってくるよ」

女「え、えーと……」

男「あ、いや……ここは笑ってくれた方が……」

男「……まあいいや。それで、ご飯を食べ終わったら街を歩いてみよっか?」

女「あ、はい!是非!」

男「えらく喜んでるけど、そんなに楽しみなの?」

女「だって、さっきのすぐ近くのコンビニまででも新しいモノがたくさん見れましたから」

男「ああ、なるほど」

男(そういや、記憶が無いんだっけ……)

女「~♪」ワクワク

男(……俺、ちゃんとエスコートできるのかな)

男(って待てや。これって世間一般的に『デート』って言わないか?)

男(あーダメだ。自信無くなった)

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 15:52:43.82 ID:ZJJoeNId0 [22/48]
――街

男「さて、行きますか」

女「はい!」

男「まずはどこにするかな……。女さんは『こんな場所が好き』とかある?」

女「えーと……街を見るのとか結構好きかもしれませんね」

男「結構曖昧だね」

女「あ、あはは……」

男(って、早速ミスしちまったよ……。この子は記憶が無いんだった……)

男「えっと……じゃあ、まずはテキトーに歩き回ってみようか」

女「……はい」

男(ああああ……どうすりゃいいんだよこれ……)

女「――あれ?」

男「ん?」

女「今、猫の鳴き声がしませんでした?」

男「猫?」

41 名前:>>40よし、罵ってくれ[] 投稿日:2010/12/24(金) 16:02:53.58 ID:ZJJoeNId0 [23/48]
ニャー

男「あ、本当だ。でも、そんな珍しい事じゃないと――ってうわっ!?」

女「あら、足元に居たんですね」

男「びっくりしたぁ……」

猫「みゃー」

女「……首輪が付いていないのに、なんだか人懐っこいですね?」

男「んー……近所の人達が餌でもあげてたんじゃないのか……いや、それにしては毛並みは良いし、どっかから逃げ出したのかな」

女「そうかもしれませんね……。ごめんね?私達、食べ物を持ってないの」

猫「にゃ?」

男「飼い主も探してるかもしれないし、早く帰れよー」

女「そうですよ、猫さん?」

猫「……にゃー」トコトコ

女「な、なんか言葉が分かってるみたいな気がするのは私だけでしょうか?」

男「いや……俺もそう思う……」

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 16:13:27.32 ID:ZJJoeNId0 [24/48]
男「それにしても寂れた町だよな、ここって」

女「そ、それを男さんが言いますか?男さんってこの近くに住んでるのに……」

男「住んでるからこそ、かな。活気付いた町でもないし、何か特別な名物がある訳でもないしね」

女「でも、こんな感じのって私、好きですよ?」

男「そう?なんだか死にかけみたいで俺は好きになれないな」

女「だって、なんだか特別になれた気がしませんか?」

女「人が少ない町で、自由気ままに歩けるのって良いじゃないですか」

男「確かにそうだけど、俺はちょっとうるさいくらいが良いかな。なんだか生きた心地がしなくてさ」

女「生きた心地、ですか?」

男「そ。ただなんとなくで生きてるだけの俺にとってはさ、毎日が何も変わらないんだよ」

男「周りが死んだように静かだと、なんだか俺も死んでるような錯覚に陥るって言えばいいのかな。そんな感じになるんだ」

男「だから少しうるさくても、毎日違った声が聞こえてくる方が、俺は好きだ」

男「って、ああごめん。暗い話を――」

女「ふむ……そんな意見もあるのですね……」

男(なんだか調子が狂うなー……)

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 16:21:23.78 ID:ZJJoeNId0 [25/48]
女「確かに、毎日違った声が聞こえてきたら安心しますね」

男「お、分かってくれるの?」

女「はい。だって、毎日違った声が聞こえるって事は、それだけ沢山の人が居るって事ですから」

男「うんうん。分かってくれるのは君だけだよ」

女「他の人は納得しなかったのですか?」

男「友達って何それ美味しいの?」

女「え、えーっと……あの……」

男「……ごめん、スルーして……」

女「は、はい……」

男(……あれ?俺ってなんでこんなに自然と喋ってるんだろ)

男(どこの誰かも分からない、そもそもちゃんとした人なのかどうかも分からないのに、こんなに話せるなんて……)

男(あるぇー……?)

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 16:26:42.90 ID:ZJJoeNId0 [26/48]
女「あ、男さん。あれってなんですか?」

男「ん?……なんだあれ」

女「あれ、男さんも知らないんですか?」

男「二日前にここは通ったけど、あんな露天みたいなのって無かったよ。というか、生まれて初めて見た」

女「ちょっと見に行ってみませんか?」

男「ふむ……時間はたっぷりあるし、ちょっと見てみるか」

女「はいっ」ニコ

男「ぉー……」

女「?」

男「いや、こっちの話。まあ見てみよっか」

女「…………?は、はい」

男「何やってるんだろな?」

男(なんなんだろね、この感情って)



47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 16:41:37.59 ID:ZJJoeNId0 [27/48]
女「わぁー……アクセサリーで一杯だぁ」

店主「おや、興味があるのかい?」

男「ちょっと気になりましてね。この露天――ですかね?まあ、開いたのって最近なんですか?」

店主「そうそう。僕は恥ずかしながらこういう物を作るのが好きでね。とある家に厄介になりながらこうやって売っているのさ」

女「これって自作なんですか!?」

男「すっげぇ……普通に売れますよこれ……」

店主「なに。見ての通り不人気だよ。チラホラと見ていってはくれるが、実際に買っていった人は片手で数えれる程度さ」

女「こんなに凄く綺麗なのに、不思議ですね……」

店主「人が疎らというのも原因の一つだろうけど、何よりも金銭を支払う為の価値を見出せないというのが一番の要因だと僕は思うよ」

男「いやいやいや……今まで見た装飾品のどれよりも綺麗だと俺は思いますよ……」

店主「言葉は受け取っておこう。褒めてくれるのは素直に嬉しいからね」

男「それにしても、これって一ついくらなんですか?」

店主「実は決めていないのだよ。自分の実力がどの程度かというのが知りたくてね。最低額を千円にして、気持ちの分だけ貰うようにしているのさ」

男「それが一番の原因だと思います……」

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 16:50:27.78 ID:ZJJoeNId0 [28/48]
店主「ふむ……?なぜかな」

男「やっぱり、プレッシャーが掛かるんじゃ?」

店主「プレッシャー……僕ってそんなに見た目や雰囲気に問題があるのか」

男「いやいや……純粋に、物の価値を相手に委ねてるから手を出しにくいんじゃないのかと」

店主「ふむ……そういうものなのか。不思議なものだ」

男(不思議なのはアンタだと思うよ……)

店主「では、参考にしたい。君達から見て、これらはどのくらいの価値があると思う?」

男「俺はこういうのに疎いから参考になるかは分かりませんが、大体2500円くらいはするんじゃないかな」

女「私は3000円かな?」

店主「驚いた。予想以上の金額だよ」

男「……ど、どのくらいだと思っていたんですか?」

店主「1000円、もしくは500円といった所だと感じていたのだが……」

男「いやいやいや……それは流石に安すぎる……」

女「……」コクコク

店主「ふむ……これは認識を改める必要があるな……」

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 17:16:19.34 ID:ZJJoeNId0 [29/48]
男「特にこの小さいのにすっごい細かいネックレスなんて、樋口さん位の価値はあると思いますよ?」

店主「……これなんかは売る価値すらあるのかどうか迷ったんだが」

女「ど、どうしてですか?こんなに細かくて大変そうなのに……」

店主「僕は細かく作る方が楽だったりするのだよ。それで、僕が我を忘れて黙々と作ってしまったのがこれという訳さ」

店主「細かすぎてごちゃごちゃしてるとは思われてしまいそうなのだが、違うのかな?」

女「いえ、逆に見とれちゃいますよこれ?」

店主「本当に不思議なものだな……」

女(どっちが不思議なのでしょうか……)

店主「ふむ……なるほど、なかなか参考になったよ」

店主「お礼として、これを君達にあげよう」

女「え、えええええ!?」

男「それは流石に悪いんじゃ……」

店主「なに。僕としては売れるとは思っていなかったものさ。ならば君達にあげても何も変わらないだろう?」

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 17:30:53.43 ID:ZJJoeNId0 [30/48]
男「いや……それでも――」

店主「それに、僕としては君達にこれらを受け取って欲しいと思っているんだが――っと、すまない。君達の迷惑になるなら止めておこう」

男「くれるのはすっごい嬉しいんですけど、なんだか悪い気がしてならないんですよ……」

女「……」コクコク

店主「まったくもって不思議な人達だな君達は……」

男・女(その言葉、そのままお返しします……)

店主「ならば、こういうのでどうかな?『僕は君達に鑑定をしてもらった。その対価としてこれを支払う』これで君達も納得するかな?」

店主「ああ、直接的な金銭の方が良いのならそっちでも僕は構わないよ」

男「なんというか……思ったよりも頑固な人なんですね」

店主「……やはりそうなのか。同居人にも会っていきなり言われたからもしやとは思っていたが……」

男(その同居人さんも大変そうだな……)

店主「それで、どちらにする?」

男「じゃ、じゃあ……ネックレスの方で」

女「私もそれでお願いします」

店主「了解した。押し付けるようになってしまってすまないね」

54 名前:>>52NTRは嫌いなので基本的に書かないよ。期待してたのなら540°回転する事をお勧めする[] 投稿日:2010/12/24(金) 17:38:58.21 ID:ZJJoeNId0 [31/48]
店主「ありがとう。実に有意義な時間だったよ。気が向いたらまた来てくれるとありがたいかな」

………………………………………………………………………………………………………………

男「なんというか……一番高そうなのを貰っちまったな……」

女「はい……ホントに良かったのでしょうか……」

男「ま、まあ、本人が納得してたんだし、良いんじゃないかな?それに、すっごい良い笑顔だったしさ」

女「む。それってどういう意味ですか?」

男「へ?――あ、いやその……」

女「むー……」

男「ごめんなさい……」

女「……………………抱き締めてくれたら、許してあげてもいいです、よ?」

男「……へ?」

女「だ、だからその……抱き締めてくれたら……許します……」

男(ほ、本当に良いのかな……)

女「…………」ヂー

男「わ、分かった。分かりました……」

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 17:47:44.45 ID:ZJJoeNId0 [32/48]
ギュ……

女「わ……」

男「あ、痛かった?」

女「……いえ、丁度良いです」キュ

男「……………………」

女「……………………」

男「え、えーと……いつまでしていれば良いのでしょうか……?」

女「あ、え――あぅ……」

男「ほら、落ち着いて」ポンポン

女「あ……。くす……はい……」

女「では……もう少しこのままで居させて下さい……」

女(できれば、ずっと……)

女(…………?なんでしょうか、この感覚……)

女(嬉しい反面、チクチクと刺さるような痛み……?)

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 18:04:56.14 ID:ZJJoeNId0 [33/48]
女(なんでしょうか……何か大事な事を忘れてるような……)

…………………………………………………………………………………………

男「さて、時間も良い具合だし昼飯でも食いに行くか」

女「はい……」

女(結局、あれが何なのか分かりませんでした……。一体、なんだったのでしょうか……)

男「えっと……ここら辺にファミレスとか――って、大丈夫?」

女「ふにゃ!?あ、え、えーとダイジョブです、よ?」

男(本当に大丈夫なのかな……)

女「その、えっと……お任せしても構いませんか?」

男「ん、分かった」

女「…………」チャリッ

女(お揃いのネックレス……)チラッ

女(嬉しいのに、悲しいのはなぜ……?)

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 18:15:48.15 ID:ZJJoeNId0 [34/48]
男「ん、ここなんかどうだ?なんかクリスマスセールとかやってるみたいだし」

女「クリスマスセール……何をやるのかちょっと気になりますね」

男「じゃあ、ここにするか」

カラン――

ウェイトレス「いらっしゃいませ――あ。あちらの奥の席へどうぞ」

男「え?あ、はい」スタスタ

男(なんだこの席……ほとんど個室じゃないか……)

女「なぜこの席なんでしょうかね?」

男「さあ……」

ガラッ

男(しかも引き戸……。なんか即興で組み立てた感じだな)

男(しかしなんでまたこんな……)

コンコン

ウェイトレス「失礼します。こちら、特別メニューですのでどうぞ」

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 18:33:07.33 ID:ZJJoeNId0 [35/48]
男「え……は、はぁ」

ウェイトレス「それでは、御注文がお決まりになりましたらそちらのベルをどうぞ」カラッパタ……

男「特別……ねえ……って、なんだこりゃ?全部カップルの為にあるようなメニューしか――」

男(ってうぉおおぉぉい!!クリスマスセールってこういう事かよ!!)

女「わぁー、色んなのがある」

男(おお……普通のメニューもあって良かった……。今のうちに隠して――)

女「あ、そっちのも後で見せてくださいね?」

男(――おけなかった……。もうどうにでもなーれっ)

男「……じゃあ、俺はこのスパゲティで」

女「えっと……私はこのカルボナーラにします」

女「あと、そっちのメニューはどんなのですか?」

男「……はい、どうぞ」

女「んーと――わ、わぁ!すっごい美味しそう!」

男(あ、そっちか……良かった……)

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 18:47:21.49 ID:ZJJoeNId0 [36/48]
女「一つ頼んでみませんか?このパフェとか」

男(お、なんだ普通のもあるじゃん)

男「じゃあ、それも頼んでおくか」

……………………………………………………………………

ウェイトレス「お待たせしました。スパゲティとカルボナーラです」

ウェイトレス「それでは」カラッパタッ――

男「おお、存外にうまそうだ」

女「そうですね。では、いただきましょうっ」

男(……ああ、味は普通だな。やっぱり見た目だけか)

女「おいしーっ!」

男(……なーんでこっちも美味しく感じるのかな。これってほとんどが解凍しただけなのに)

女「あれ?男さん食べないんですか?」

男「あ、ああ。ちゃんと食べるよ」

男(やっぱり調子が狂うなぁ……)

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 19:00:20.16 ID:ZJJoeNId0 [37/48]
男「あー食った食った」

女「……」ソワソワ

男「ん?ああ、あの二人用のパフェ?そろそろ来る頃だとは思うけど――」

コンコン

ウェイトレス「失礼します。どうぞ、こちらが特別メニューのチョコパフェです」

ウェイトレス「それで――」

男「ちょちょちょ!?待って下さい!」

ウェイトレス「?はい、どうかなさいましたでしょうか」

男「あのー……スプーンは?」

ウェイトレス「……?お皿に乗せていますが……」

男「一つ……ですよね……?」

ウェイトレス「はい。特別メニューですので」

男(ぬかったああああああぁぁぁぁぁぁ……っ!そういう事だったのか……)

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 19:17:37.23 ID:ZJJoeNId0 [38/48]
……………………………………………………………………………………

男「…………」

女「…………」ワクワク

男(ああ……全然気にしてないよこの子……)

女「た、食べていいですか?」

男「……どうぞ」

女「では……」パクッ

女「~~~~~~~っ!!」

男(おお……喜んでる喜んでる)

女「男さんっ。男さんもどうぞ!はいっ」

男「え、あの……」

女「……」キラキラ

男(ああ……純粋なのが眩しいよ……。間接キスとか一切考えてない目だわこれは……)

67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 19:32:37.78 ID:ZJJoeNId0 [39/48]
男「じゃ、じゃあ……」パク……

女「どうですか?」

男「ああ……甘いね……」

男(このクリームも甘いし……雰囲気もなんかすっごく甘いよ……)

女「♪」モキュモキュ

女「はいっどうぞ」

男「……」パクリ

……………………………………………………………………………………

ウェイトレス「ありがとう御座いました。またのお越しをお待ちしております」

女「とってもおいしかったですね♪」

男「あ、ああ……美味しかったね」

男(よくよく考えてみたら、男なら誰もが憧れるシチュエーションだったんじゃ?)

男(やべ……本当に美味しいものだったわ……。まあ、問題は――)

女「はぅ……また食べたいかも……」

男(この子がおっそろしいくらい気付いてないと言う事かな……)

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 20:06:46.73 ID:ZJJoeNId0 [40/48]
――夕方

男「時間も丁度良いし、そろそろ帰るかな」

女「そうですね。時間ってあっという間ですよね……」

男(…………)

男「この町は気に入った?」

女「え?は、はい。すっごく気に入りました」

男「ならさ――」

…………………………………………………………………………………………

女「はひぃ……っひぅ……」

男「もうそろそろだからがんばれー」

女「けれどっ……なぜっ……こんなにっ……急な階段が……あるのですか……はぅぁ……」

男「無駄だとは思ってたけど、今ならあって良かったって思うかな」

女「はぇ……?」

男「はい、ここだよ」

女「ふぃゆ……はう……――――わぁ……」

71 名前:>>68>>70鬱というか、私が書くのは毎回トゥルーエンド……?ハッピーエンドとかも書くよ[] 投稿日:2010/12/24(金) 20:27:54.14 ID:ZJJoeNId0 [41/48]
少女の目に映ったのは、夕闇により翳る町並み。その中で主張する人工的な光は、確かに彼女にも届いた。

女「とっても綺麗です……」

男「良かった。ここまで来た甲斐があったよ」

女「………………………………」

男(なんでかなぁ……)

女「………………………………」

男(なんでそんな寂しい顔、するのかな)

女「はふぅ……」ガクリ

男「!?」

女「足……疲れました……」

男「ああ……なるほど……」

男「おぶろうか?」

女「お願いします……」

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 20:42:44.97 ID:ZJJoeNId0 [42/48]
男「よいしょ……はい、これで見える?」

女「えへへー、これってラクチンですね。それに、こんな綺麗な景色も見れてすごく良いですっ」

男「それは良かった」

女「♪」ギュー

男(……あれ?なんでこんなにナチュラルに背負ってるの?今日初めて会ったはずだよね?)

女「あ、今あそこで電気が付きました!」

男「よ、よく分かるなそんな事まで……」

男(まあ……)

女「ほら、今度は向こうが!あ、こっちも――」

男(この子が喜んでるなら、いいかな?)

74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 21:05:23.91 ID:ZJJoeNId0 [43/48]
記憶が無い――。
一般的な知識はあるのに、自分がどこの誰で、なんで今の場所に居るのかも分からない。
知っていたのは、
『自分の名前』
『あの人の名前と存在』
だけ……。
私にあったのは、たった二つのそれだけだった。
だからって訳じゃないけれど、けど……。

男「どうしたの?」

あの柔らかい微笑みは、何もかもどうでも良くしてくれる。
今この場を楽しませてくれる。
自分がなんなのかなんて、そんなちっぽけな事に思い悩むのすら馬鹿馬鹿しくなるくらい。

女「なんでもないよ」

だから、私はこう答えれる。
こう答えれるようにしてくれる。
悩みとかそんなの、全部掻き消してくれる。
笑顔にしてくれる。
私が『私』で居られるようにしてくれる。
悲しまないようにしてくれる。
この気持ちは分からない。
分からないけれど、悪いものじゃないと思う。
この人と一緒に居ると、とても心が落ち着く。
この人を抱き締めると、とても心がドキドキする。
この人と、ずっと一緒に居たいと思う。
そう。ずっと一緒に――。

77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/24(金) 21:37:22.22 ID:ZJJoeNId0 [44/48]
女「ちょっと疲れました」

男「ん。じゃあ、帰ろっか」

女「はい。よろしくお願いしますね?」

男「はいよ」

女「あ、晩御飯の事を忘れてました。今日は何が良いですか?」

男「んー……何が作れるかにもよるかも」

女「結構困りますね……自分でも何が作れないのかって良く分からないので……」

男「なら……中華?」

女「ふふっ――。クリスマスのイヴに中華って不思議な人ですね」

男「不思議な人はあの露天の人だろう」

女「あ、確かにそれは思いました。口調が独特ですっごく頭も固いのに、とってもとっても良い人でしたよねっ」

男「うんうん。それで、こんなにも綺麗なネックレスもくれるしね」

女「本当に綺麗ですよね、これって……」



79 名前:ごっはーん[] 投稿日:2010/12/24(金) 21:59:15.10 ID:ZJJoeNId0 [45/48]
女「これと同じものを作る事は無いらしいので、完全につがいのネックレスですね……」

男「つ、つがいって……」

女「つがい、です。世界でたった一組の、つがいですから」

男「……言ってて恥ずかしくないのか?」

女「勿論恥ずかしいですよ?でも――」

男「でも?」

女「それ以上に、幸せですから……」

男(こ、この子は……っ!!)

男「あー、あんまりそういう事を男に言わない方が良いと思うぞ?」

女「え、ぇえ!?だ、ダメだったのでしょうか……」

男「……勘違いする人も居るだろ?」

女「なんだ、そんな事ですか」

男「……え?」

80 名前:シチューんめえ[] 投稿日:2010/12/24(金) 22:38:09.85 ID:ZJJoeNId0 [46/48]
女「……歓迎しますよ」

男「え、いや……あの?」

女「男さんとなら……いくらでも……」

女「だって……こんなにもドキドキさせてくれて……一緒に居たいって思わせてくれます……から……」

男「お、女さん……?」

女「くー……くー……」

男「……寝言?いや、会話してたし……」

男「…………」

男「ドキドキして、一緒に居たいって思う……か……」

男「俺……この子が好きなのかな……」

男「……そりゃそうだよな。だって――」

男「夢にまで見た、理想の女の子なんだから……」


男「クリスマスか……」女「はい、クリスマスですよ」
3 名前: ◆Spl2FlXkt34J [sage] 投稿日:2010/12/25(土) 19:37:42.25 ID:Wg/aVi6b0 [1/19]
そろそろお前の役目は終わりそうだな。

女(……誰ですか?)

何だ?忘れてしまったのか?

女(忘れた……?私は、何を忘れたんですか?)

何かイレギュラーな事でも発生したのかな。まあいいか。

女(どういう事なんですか!?私は何を忘れてるんですか!?)

すぐに思い出す。だから、少しの間待っておけ。

………………………………………………………………………………………………

4 名前:>>1マジサンクス!  これで完結できる!! そして鳥間違えた ◆1IahjnNtgQ [] 投稿日:2010/12/25(土) 19:50:32.71 ID:Wg/aVi6b0 [2/19]
――十二月二十五日 二十時

男「女さん、起きないなぁ……」

男(どうしたんだろ。普通に寝てるようにしか見えないけど、何かあったのかな……)

男(……まさか、クリスマスが終わろうとしてるから、消えかかってるとか!?)

男(有り得る。というか、こんな非日常な事が起こったんだ。何が起きてもおかしくなんかない)

男(もし消えるとするなら、どうしよう……)

男(俺のできる事……それってなんだろ……)

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/25(土) 20:09:20.51 ID:Wg/aVi6b0 [3/19]
男(俺が出来る事なんて、たかが知れている……。その中で俺が出来ることといえば――)

男「楽しませる事くらい、だよな……」

男(逆に言えば、それ位しか出来ない……)

男(無力がこんなにも歯痒いなんて、初めてだ。今まで何も思わなかったのにな……。恋は人を狂わせるってのは本当みたいだ……)

男(……さて、時間も遅いけど行ってくるか!)

……………………………………………………………………………………………………………………………………………………

――コンビニ

男(スーパーとかに行くと時間がかかるからここになったけど、あるのかな……)

店員「いらっさっせー」

店員(あ。あん時の美少女を連れてた彼氏。……なんで一人なんだ?)

男「お、あったあった。なら、あとは……」ブツブツ

店員(……こんな時間にケーキを見てどうするんだ?時間的にはぴったりだろうけど、ちょっと無計画すぎんだろ)

店員(……………………………………………………クリスマスなのに働いてる俺が言っても仕方ねーか)

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/25(土) 20:21:39.42 ID:Wg/aVi6b0 [4/19]
~♪

店員「――あ、いらっしゃいま……どうしたんだ?」

少女「何。雪がチラッと降ってきたからね。君と一緒に見たいと思ってここまで足を運んできたんだ。ついでに冷えた身体も温めれるから一石二鳥だろう?」

店員「まあそりゃそうだが、一人とはいえお客さんが居るんだから迷惑になるような事をするな」ヒソ

少女「……随分と僕は信用されていないようだね。それとも、僕は見ず知らずの人に迷惑を掛けるような人に見えるのかい?」

店員「今現在進行形でしてるだろうが。店員がくっちゃべってたらお客さんからのイメージが悪いっつーの……」ヒソ

少女「その点なら問題ないよ」

店員「……一応聞いておこう」

少女「なに。簡単な事さ」トコトコ

男(これって酒っぽく見えるけどこんな所に陳列して大丈夫なのか……?ああ、ちゃんとジュースって書いてる)

少女「やあ、昨日ぶりだね」

男「――ん、あれ?昨日の不思議な人さん」

少女「……随分な呼び方じゃないか。僕はそんなに珍妙かな?」

男「あ!いえ、その……すいません」

少女「まあ、昨日のお陰で今日は客足が良かったからね。それで許してあげようじゃないか」

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/25(土) 20:33:54.16 ID:Wg/aVi6b0 [5/19]
少女「とまあ、こういう事さ」クルッ

男「?」

店員「いや、全然解決してねーよ……まあいいか」スタスタ

男「えっと……同居人さんですか?」

店員「ええ、そうです。昨日はこいつがお世話になったようで、ありがとうございました」

男「いえいえ、俺は特別何かした訳じゃ……それどころか、こんな綺麗な物をくれたのでお世話になったのは俺の方ですよ」

少女「ところで、これからパーティをするような物ばかり選んでいるが、彼女さんの為にかな?」

男「あ……えっと、そんな所です」

店員(やっぱ彼女か……)

少女「何を残念がってるのかな?僕というものがありながら失礼じゃないか?」

店員「……なんの事だ」

少女「顔を見れば分かるよ。それとも、僕が分からないとでも思ってるのかい?」

店員「ち」

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/25(土) 20:53:16.26 ID:Wg/aVi6b0 [6/19]
少女「それに……昨日は二人であんなに激しくしたじゃないか……」モジモジ

男「…………」

店員「おい止めろ馬鹿。どう考えても誤解されるような発言をすんな。ただ単にイヴのパーリィしただけだろうが」

少女「なに。イタズラ心というものが芽生えてね。さっきのお仕置きだよ」

店員「心臓に悪いわ!」

男「な、仲が宜しいようで……」

少女「君達も相当に仲が良いように見えたよ。正直、羨ましくなるくらいのものだったね」

少女「そうそう、もうキスやその次の事はしたのかい?」

男「ぶふぉう!!?」

店員「てめえいきなり何クソ笑えねえもんを真面目な面で聞いてんだ!!すいませんすいません!許してください!!てめえも謝れ!!」

少女「いや、これはかなり真剣に聞いているよ。こんなに胸がざわついたのは久し振りだからね」

店員「……あれか」

男「え、えーと……一体どういう事なんですか?」

少女「僕は危険や息災が僅かながら予知できるという変な特技があってね。それが君から感じられたんだよ」

男「は、はぁ……」

10 名前:>>9店主にすると店員と一緒に会話に加わることになるから変更しました[] 投稿日:2010/12/25(土) 21:09:18.47 ID:Wg/aVi6b0 [7/19]
少女「信じられないとは思うが、近い内に君達は何かしら辛い事が起きる。だから、それまでの間にやりたい事はきっちりとやっておくと良い」

男「それは信じるとして……なぜキスとかの話になったんですか?」

少女「そこは女の勘かな。彼女はきっと待っていると思うよ」

男「……そうですか」

少女「さて、そろそろ帰る方が良いかもしれないね。彼女さんを大切に、ね」

…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………

店員「ありがとうございました」

少女「……ふむ。もう一つ言わなければならない事があるようだ」

男「はい?」

少女「帰る時は最短のルートを通らず、ここから三つ目……いや、二つ目の信号から迂回して帰ると良い。それと、何が起きても足を止めずに帰る事だ。」

少女「これは注意ではなく、警告だよ」

男「……はい」

~♪

少女「…………」

店員「…………」

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/25(土) 21:22:53.31 ID:Wg/aVi6b0 [8/19]
店員「……お前は出来る限りの事をした」ポン

少女「……何を言ってるのかな?頭に手を乗せるなんて、君らしくないじゃないか」

店員「そんな辛そうな顔をしてたら、こうするに決まってるだろ」

店員「何はともあれ、あれ以上の事はお前にはできねえよ。後者はともかく、前者のはどうしようもない事なんだろ?」

少女「…………」

店員「……ほら、胸貸してやるからいくらでも泣け」ギュ

少女「――――ぅ、あ……ひっく……。君、は……ずるい、人だ――うあぁ……」

店員「本当に……変な風に頑固だよなお前って」

……………………………………………………………………………………………………………………………………

男(二つ目の信号から迂回して……か)

男(何かあるのかなんて知らないけど、とりあえず言う事を聞いておくか)

男(…………………………………………………………………………………………?)

男(何か、悲鳴が聴こえたような?なんだろう――)

少女『何が起きても足を止めずに帰る事だ』

男(……いや、帰ろう)

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/25(土) 21:33:31.93 ID:Wg/aVi6b0 [9/19]
――男宅

ガチャ――。

男「ただいまー」バタン

…………。

男(まだ起きてないのか……)スタスタ

男「――――!」

女「…………」ボー

男「女さん!」

女「…………あ」

男「良かった、起きたんだね!」

女「……え、私……?――――!!」

女「今!!今は何日の何時ですか!?」

男「え……今は夜の九時半過ぎだけど……二十五日の」

女「もうそんなに……」

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/25(土) 21:56:16.14 ID:Wg/aVi6b0 [10/19]
男「女さん、どうしたの?」

女「……………………………………………………」

男「…………?」

女「………………………………………………………………思い出したんです、全部」

女「私がここに居る理由――私が生まれた理由――私の存在している理由が……」

男「女さん……?」

女「私は、強い想いが集まって生まれた存在です。……厳密には人間ではない、という事になりますね」

女「神様や創造主、と言えば分かりやすいでしょうか。そのような存在がありまして、それに届いた願いが反映されるんです」

女「詳細は分かりませんが、クリスマスとイヴの日に強力な呪いとも呼べる程の願いが私を創り出した原因の一つでしょう」

女「なぜこの二日だけ桁違いなのかは分からないです。むしろお正月とかの方が強い願いが集まりそうなんですけれど……」

男(本当に呪いかもね……特に俺みたいな非リア充なら……)

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/25(土) 22:45:18.84 ID:Wg/aVi6b0 [11/19]
女「さらに不思議な事に、私の使命は『男さんとイヴとクリスマスの二日間一緒に居る』というものでした」

女「なぜ、この二日間なのか……もっと長くても――いえ、ずっと一緒に居てもいいのに……」

『クリスマスにデートすることになってしまう強力な呪いがかかるからくれぐれも気をつけろ』

男「…………」

女「私は……ずっと一緒に居たかったです……」

男「……俺も、一緒に居たいって思ってる」

女「……男さん。私は男さんに何かしてあげたいです。消える前に、何か……」

少女『そうそう、もうキスやその次の事はしたのかい?』

男「…………」

少女『それまでの間にやりたい事はきっちりとやっておくと良い』

男「……女さん」

女「はい……」

男「今日が最後ならさ――」




男「思いっきり楽しもう?ほら、パーティとかしてさ」ガサッ

19 名前:>>17すまん。ちょっとリアル用事で席外してた。  追記:リア充爆発しろ[] 投稿日:2010/12/25(土) 22:56:31.54 ID:Wg/aVi6b0 [12/19]
男「嫌な事とか全部忘れちゃうくらいにさ」

女「……えへ。はいっ!」

男「よっし!じゃあまずはケーキとか食べようケーキ!」

女「いきなりメインに走りますか……」

女(ちょっとだけ、期待していたんですけどね……でも)

男「うわー……甘そう……いかん涎が――」

女(こういうのも、充分楽しいですよね♪)

男「女さん、どうしたの?」

女「いえ、なんでもないですよっ」

女(私の悩みとか、全部掻き消してくれる。だから、私はこう答えれるんです)

女「お皿持ってきますね」

男「あ、いやいいよ」

女「?」

男「……昨日のパフェみたいに一緒に食べよう?」

女「!……はいっ!」

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/25(土) 23:07:50.90 ID:Wg/aVi6b0 [13/19]
男「はい、女さんどうぞ」

女「はいっ――んくっ」モクモク

女「~~~~~~っ♪」

男「女さんって甘いものが好きだよね」

女「はい!大好きです!」

女「でも、これだけ美味しく食べれるのは、男さんが居るからですよ?」

男「は、恥ずかしいなそれ……」

女「えへへー」

……………………………………………………………………………………

男「さあ、罰ゲームで五つを一口で食べてもらおうか」

女「…………っ」パクッ

女「に゙ゃあ゙ぁああ!!?!辛い!!!辛いのです!!!ジュース!ジュース!!」ゴクゴク

男「あ、それ炭酸……」

女「~~~~~~っっ!!?!?!」プルプル

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/25(土) 23:19:45.65 ID:Wg/aVi6b0 [14/19]
男「…………」ドキドキ

カチ――ビヨーン

男「黒髭ぇぇぇええ!!!」

女「はい、十二本刺さってるので十二回空気を入れてくださいね」

男「もう爆発しそうなくらい膨れてるよねこの風船……」

シュ……シュ……シュ……シュ……シュ……シ――バァンッ!!

男「ぎやああっ!!」

女「やったーっ♪」

…………………………………………………………………………

女「はぅー……一通り遊び終わりましたね」

男「ソ、ソウダネ……フーセンコワイフーセンコワイフーセンコワイ」

女「……あと一時間もしない内に日付が変わりますね」

男「……そうだね」

女「あ、そうだ。最後に行きたい場所があるんですけど」

男「うん?」

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/25(土) 23:31:26.73 ID:Wg/aVi6b0 [15/19]
――町を見渡せる高台

女「やっぱりここから見る町って綺麗ですよねー」

男「うん……綺麗だって思えるようになった」

女「あれ、前は思ってなかったんですか?」

男「前にも言ったと思うけど、生きる理由が俺には無かったんだ」

男「金だけあって親も友人も知人も居ない俺は、ずっとあの部屋で引き篭もってた。それで、ただなんとなくで生きてた」

男「どうでも良かったんだよね、何もかも。だけど、女さんが来てからそれが崩れた」

男「楽しいっても思ったし、ご飯とかも美味しいって思えた。――何より、初めて人を好きになった」

男「たった一日で好きになるなんてありえないって今まで思ってたけど、実際に好きになれた」

男「なんで好きになったかなんて分からない。たぶん、好きになったから好きになったんだと思う」

女「……好きになったから好き、ですか?」

男「そ。理屈や理由なんて無いよ。言葉通り、好きだから好きなんだ」

女「……その気持ち、なんとなくですが分かります」

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/25(土) 23:37:51.04 ID:Wg/aVi6b0 [16/19]
女「私も男さんが好きですけど、それの理由は?って聞かれたらちょっと悩んじゃいます」

女「男さんは優しくて、どこの誰かも分からない私に良くしてくれて、そして私の悩みとかを全部吹き飛ばしてくれちゃいます」

女「でも、それで好きになったかって言われたら違うと思うんです。確かに魅力ではありますが、男さんを好きになった理由がそれとは思いにくいです」

女「なんで男さんを好きになったかなんて、私にも分かりません……」

女「でも、私のこの想いは本物です。『私は男さんを好きになった』というのは確かなのですから」

男「……ありがとう」

女「お礼を言うのは私の方です」

女「こんな私を好きになってくれて、ありがとう……」

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/25(土) 23:42:07.51 ID:Wg/aVi6b0 [17/19]
女「……最後に言わなくちゃいけないことがあるんです」

男「何?」

女「私って、実はすごくズルイんですよ?」

男「またまた。とてもそう思えないよ」

女「ふふ――本当なんですよね、これ」

男「まあ、俺はそう思えないから信じないけどね」

女「ホントですか?」

男「うん、本当」

女「……えへへ」

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/25(土) 23:56:17.61 ID:Wg/aVi6b0 [18/19]
女「……つがいのネックレス、大事にして下さいね?」

男「そりゃ勿論」

女「絶対ですよ?」

男「信用ならないかな……」

女「ふふっ……信じてても聞きたくなるのが女の子なんですっ」

男「……ずっと、ずっとずっと大事にするよ」

女「はい……約束です」

男「うん、約束だ」

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/25(土) 23:59:59.21 ID:Wg/aVi6b0 [19/19]
女「男さん」

男「何……?――――っ!?」

女「ん……ちゅ……」

女「……初めてで最後の、ファーストキスです」

女「私はたった二日という、確かに少ない人生でした。でも、私は幸せです」

女「初めて触れてくれた人が好きな人で――私が消えちゃう瞬間まで触れてくれているのも好きな人……――」

女「こんなに幸せな事って、他に無いと思いますよ?」

女「だから、私は世界で一番幸せ者です……」

女「こんな重い枷を押し付けちゃう……そうして、男さんの目を私だけに止めちゃう」

女「だから、私はズルイんで、す……」

男「女、さん……」

女「最後、なんで……すから……ぐすっ――泣か、ないで、ひっく……だ――いよ……。笑って、送ってくださいっ!」

女「ありがとう――そして」

女「さようなら……大好きな男さん」

カチ――。
十二月二十六日午前零時――。

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 00:02:18.51 ID:7OwLfO900 [1/11]
男「……女さん?」

…………。

男「ねえ……女さん……?」

…………。

男「…………」チャリ……

この場所には、俺がただ一人だけ立ってた。

34 名前: ◆1IahjnNtgQ [] 投稿日:2010/12/26(日) 00:08:00.61 ID:7OwLfO900 [2/11]
ニャー

男「…………?」

猫「にゃー」

男「お前……この間の……?」

猫「にゃ」コク

男「どうしたんだよお前……こんな時間に……。もしかして、飼い主が居ないのか?」

猫「にゃっにゃっ」コク

男「……そっか。なら、ウチに来い」

猫「みゃ!」ピョン

男「わっと……どうしたんだよいきなり肩なんかに」

猫「……」ペロッ

男「……慰めてくれてるのか?」

猫「にゃ」ペロペロ

男「……ありがとな」

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 00:18:19.61 ID:7OwLfO900 [3/11]
――翌日 朝

カチコチカチコチカチコチカチコチ

男「…………」

カチコチカチコチカチコチカチコチ

男「…………」キョロ

カチコチカチコチカチコチカチコチ

男「そりゃ……居る訳ないよな……」

猫「にー……ぁ?」

……………………………………………………………………

男「テレビ、何も面白くないな……」

次のニュースです――昨夜午後九時過ぎに無差別殺人事件が――

男「……残ったお菓子。勿体無いな」

――目の交差点で――……が突っ込み、近くに居た住民を――

男「…………」モグモグ

男「……不味い」

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 00:27:11.66 ID:7OwLfO900 [4/11]
――犯人はトラックから降り……ナイフを使って、駆けつけてきた人々を――

男「昨日はあんなに美味しかったのに……」

犯行理由は現在警察が――プツン

男「……外に出よう」

………………………………………………………………………………………………

男「……あ」

少女「おや」

店員→男性「お」

少女「やあおはよう」

男性「おはようさん」

男「……おはようございます」

男性「あれ、彼女はどうしたんだ?」

少女「…………」ゲシッ

男性「いって!何する――いや、悪かった……」

男「いえ……」

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 00:34:43.30 ID:7OwLfO900 [5/11]
…………………………………………………………………………………………

男性「そっか……遠い所に引っ越しちまったのか……」

男「はい……」

少女「…………」

男性「…………」

男「あ、えっと……今日は二人で露店ですか?」

少女「あ、ああ。そうだよ」

男性「俺も休みだったからな。正直、こいつ一人だと心配なんだよ」

少女「まったく心配性なんだから……」

男性「あん?心配して何が悪いんだ?それに――」

男(…………)

男(……俺と女さんも、形は違えどこんな感じだったのかな)

少女「ほら、ムキになるってことは――」

男(幸せそうだ……)

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 00:38:32.61 ID:7OwLfO900 [6/11]
男(当たり前だけど、二十六日になったらクリスマスの文字が無くなったな……)

男「……あれ?」

男(珍しいな……クリスマスセールが今日までの所もあるんだ……)

男「…………はぁ」

男「クリスマスか……」

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 00:40:48.76 ID:7OwLfO900 [7/11]
女「はい、クリスマスですよ」

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 00:44:54.56 ID:7OwLfO900 [8/11]
男「――え?」

女「あそこに書いてるのですよね?」

男「え、あれ……え?」

女「どうしたんですか?」

男(女さんのそっくりさん……?いやでも――)

女「?」チャリ……

男(あのつがいのネックレスは――)

女「珍しいですよね、二十六日までクリスマスセールをするなんて」

男「――――」

女「……男さん?」

男「どうして――」

女「……なんででしょうかね。私にも分かりません」

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 00:54:09.44 ID:7OwLfO900 [9/11]
女「あ、でも今この場で分かってる事はありますよ」

男「――――?」

女「……ただいま、です」

男「……………………おかえり……女さん」

…………………………………………………………………………………………

男「奇跡、なのかな」

女「何がですか?」

男「女さんがこうやって戻ってきたのって」

女「奇跡……あ、すごく良い例えですね」

男「?」

女「今回、私が生まれたのは人々の願いによる奇跡です」

女「奇跡は昔では良く起きていました。雨を呼んだり巨大な妖怪を倒したり、と」

女「今では個人の願いの強さが弱いのでそうそうに奇跡なんて起きませんが、昔は一人でも起こす人が居ました」

女「なので、誰かが私の存在し続けて欲しいと願ったから、私はこうして戻ってきたのかもしれません」

女「これって、ちゃんと同じ奇跡ですよ」

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 01:00:06.69 ID:7OwLfO900 [10/11]
女「私自身、消える直前まで残りたいって強く願ってました。そして――」

女「男さんも、今の今まで無意識でも願ってくれてたんじゃないですか?」

男「…………えだよ」

ガバッ。

女「――きゃっ」

男「当たり前……だよ……っ!」ギュゥ

女「…………えへ」

女「やっぱり……私は幸せ者ですね……」

男「もう……どこにも行かないで……」

女「ふふ――」

女「勿論ですよ」

女「大好きな男さんの願いですもの……」








45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/12/26(日) 01:02:47.94 ID:7OwLfO900 [11/11]
終わったああああああ!!
やっと終わったよおおおおおおお!!!

読んでる人はすげえ少なかったけど、最後まで読んでくれた方々、ありがとう御座います!


HPにもちんまりと乗せてますので良かったらどうぞ。
http://setsusetsu.web.fc2.com/



なんか質問とかあったら受け付けます。


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