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鶴屋さん「キョンくんっ、愛してるよっ!」 7

139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/20(土) 19:48:37.19 ID:BgQph/eG0
>>138

それもそうですね……わかりました、再開します。

八時から始めたいと思います。
それまで準備をば。

140 名前:40-1[] 投稿日:2010/03/20(土) 20:02:54.63 ID:BgQph/eG0

なんだかんだで結局その日は鶴屋さんの家に泊まってしまった。

確か日が昇るまでは起きていたと思うのだが、
その後で思いっきり寝てしまったらしい。

まぶたを開くと鶴屋さんが隣に寝ていた。
最後に終えた後崩れた布団を直して並んで寝たのだから
当たり前ではあるんだが。

ただ前と違って壮絶な寝返りを打たれることもなく安眠できたことには驚きだった。
この人もフツーに寝れるんだなと感心したが、思えばそれは当たり前の話で、
おそらくこっちが鶴屋さん本来の寝相なのだろう。
俺をしばきまくっていた鶴屋さんもあれで案外無理をしていたのかもしれない。

おそらく今がきっと、一番自然な関係なんだろうな。
そんな風に思った。

なんともおしとやかになってしまったお姫様を起こさないように
そっと立ち上がろうとしたのだがいつの間にか俺の腕やら足やらは
その姫様にがっちりとホールドされてしまっていた。ほとんど身動きが取れない。

前言撤回、やっぱり鶴屋さんは鶴屋さんだった。
安らかに眠るその頬をふにふにと二三回つつくも一向に起きる気配はなかった。

なんかもうどうしようもない。
仕方なく俺は鶴屋さんを自分ごと布団にくるんだまま抱え上げた。

お姫様だっこ、と行きたいところだったが
さらすわけにもいかなかったのです巻きを小脇に抱えるような形になってしまった。

141 名前:40-2[sage] 投稿日:2010/03/20(土) 20:05:44.07 ID:BgQph/eG0

雰囲気もムードも余韻もまるごと台なしにしたまま
当のご本人はいまだに夢の中で戯れていらっしゃる。

マジでどうすればいいやらわからなかった。
仕方がないので一応服だけは着せておくことにした。

一晩最初が一番大変だったのだがまぁなんとかなった。
ハタから見れば完全に犯罪者で逆回しにすればすごいことになっていようとも、
それはそれで笑えるからまぁいいかとも思えた。人には絶対見せられんが。

一通り着せ終わったので自分の着替えに取り掛かる。
着たきりのシャツに若干嫌な匂いを覚えるもののすぐに慣れた。

慣れてはいけなかった気もするのだが仕方がない。
家人のものを借りるのはさすがにためらっちまうからな。

くぅくぅと寝息を立てる和装娘さんを今度こそお姫様風に抱え上げた俺は
障子戸を開いて朝の光の中に踏み出した、
と思ったのだが朝どころか思いっきり昼の太陽だった。

天頂からそそぐ光は縁側いっぱいを照らし出していた。
どうりで部屋の中に届く光が弱いと思った。真上から射していたわけだ。

思いっきり学校には遅刻どころの話じゃないが、不思議と気にはならなかった。

142 名前:40-3[sage] 投稿日:2010/03/20(土) 20:08:42.89 ID:BgQph/eG0

そのまま俺はお姫様だっこをされている鶴屋さんを
気をつけてゆっくりと下ろしながら自分の膝の上、
というか縁側に投げ出した両足の太ももに鶴屋さんを寝かせ、
ようと思ったのだがいまいち据わりが悪かったので仕方なく膝の間に座らせることにした。

くたっと俺の首元にもたれかかった頭を支えながら
そのまま鶴屋さんが起きるのを待った。

ここはやはりあれをやっておくべきなのだろうか。
日当りのいい縁側の陽光注ぐ陽だまりの中ですやすやと眠るこの人を起こすには
あれしかないのだろうか。

というか単に俺がそうしたいだけなのだが
まぁバレなきゃいいというかバレても多目に見てもらえるだろうからかまいやしない。
いざ、実行の時。

そんな不埒なことを考えていると突然大きく跳ねた鶴屋さんの後頭部が
俺の顎先に強かに命中した。

「おふんっ」と奇妙な呻き声を上げたまま俺は背後にぶっ倒れた。
痛む顎をさすりながら見下ろすと鶴屋さんはまだすやすやと眠っていた。

俺の腹の上でもそもそと寝返りを打とうとしている。
どうやらその寝返りの一撃を運悪く食らってしまったらしい。

寝相はいいと思ってたんだがな……。
思いっきり推理を誤った俺はそれでもまぁ当然かと思い直す。
今の俺は探偵ではない。
ましてやさ迷ってなんか絶対いない。

143 名前:40-4[sage] 投稿日:2010/03/20(土) 20:12:13.11 ID:BgQph/eG0

ただ俺は俺として。ジャストライクザットな俺として。
この人の下敷きになって寝具の代わりをつとめている。

さっきのは俺の不埒への罰みたいなもんだろう。
その裁きを受けたなら、俺はもう犯人でもない。

幸いにしてこの世は有限責任だった。
罰を受けて償いを終えた巨大な悪は、それでもまだ受け入れてもらえた。

この人の傍にいることが許された。そうして罪を重ねながら。罰を受けながら。
この人のそばに居続けようと俺は決めた。

迷探偵でも真犯人でもないただの俺として。
この人のそばに。
鶴屋さんのそばに。

そんなことを思っていると一際大きく伸びをした鶴屋さんは俺の腹の上から
ムクッと起き上がると寝ぼけ眼を指でこすった後で元気一杯に朝の、
もとい昼の挨拶をしてくる。

鶴屋さん「おっすっ! おはようキョンくんっ!
      今日も爽やかでいい朝だねっ、にゃははっ♪」

キョン「おはようございます、鶴屋さん。
    というかもう昼ですけど、爽やかなのは間違いないですね」

鶴屋さん「ありゃっ、そーなのかいっ。
      それだと学校の方には思いっきり遅刻だね!」

145 名前:40-5[sage] 投稿日:2010/03/20(土) 20:16:32.18 ID:BgQph/eG0

キョン「ですね、今から出たら思いっきり放課後ですよ」

鶴屋さん「まーいーじゃんっ!
      放課後でもあの子達はまだ残ってるはずだしさっ、
      行こーよ! きっとみんな心配してくれてるにょろっ」

そう言って俺の腹の上で少しだけ上体を起こした鶴屋さんは
腹ばいのまま胸の上まで昇ってくると俺の頬に手をそっと添えた。

そのまま優しく撫で上げてくる。
なんともこそばゆい心地の中で見る鶴屋さんの瞳はとろんとしていて、
愛しそうに俺を見上げる表情の柔らかさに吸い込まれそうになる。

俺がその瞳に見とれているといつの間にか顔を近づけてきた
鶴屋さんは覆いかぶさる体勢のまま唇を重ねてきた。

ほとんど強引に奪われるような形になった。
そのまま目いっぱい深くまで舌を挿し入れられる。

そうしてたっぷりと俺の口腔に自分の唾液を注ぎ込んでから
口を離した鶴屋さんは一仕事終えたようなさっぱりとした表情で
俺の額を一発叩いて起きるように促すとそのまま奥の方へと歩いていった。

ふすまを開けながら俺を手招きする。

鶴屋さん「ほらっ、早く着替えないと夜になっちゃうよっ!
      キョンくん、きびきび動くっさね!」


146 名前:40-6[sage] 投稿日:2010/03/20(土) 20:21:11.99 ID:BgQph/eG0

若干厳しい口調になるのは本当に時間が推しているからで、
鶴屋さんはおそらくここから学校までの長距離を毎朝毎日
送迎車など頼りにせず徒歩で通っているのだろう。

鶴屋さんが見立てる到着時間には
俺のスタミナも考慮に入れられているのだろうから
本当の本当に時間がないのだ。

俺は慌てて起き上がると思いのほか力の入らない昨日とはまた違う意味で
けだるい足を引きずりながら促されるままに鶴屋さんの寝室へと戻り
自分の上着を回収した。

着替えの邪魔をしちゃあならんと部屋を出ようとしたところで
帯を外して着物を床に落としていた鶴屋さんの裸、
というか下着姿が目に飛び込んできた。

上は何もつけていないので下に一枚だけという
凄まじく扇情的な姿に俺は思わず目を手で覆い隠して
「すいません!」を連発してしまった。

今更何がすいませんなのか。それは俺にもわからない。

それでもなんだか、申し訳ない気がするのはおそらく忠犬根性というか、
飼い主の許しが出ていないのに餌に口をつけた飼い犬が
叱られるのを覚悟するような心地なのである。

卑屈なまでに自分の立場を貶める俺を面白いものでも見るように
興味深々な顔をした鶴屋さんはまたまた良からぬことを思いついたらしい。
あぁ、またか。と俺が後悔した直後、予想通りの言葉が飛んできた。

147 名前:40-7[sage] 投稿日:2010/03/20(土) 20:25:00.99 ID:BgQph/eG0

鶴屋さん「当然、キョンくんはあたしの着替えを手伝ってくれるんだよね?」

そう言って嬉しそうにタンスの中から自分の制服を取り出し、
どういうわけだかスカートの方を俺に放り投げて寄越してくる。

キョン「いや、逆でしょう! 普通は────」

と言ったところではたと気づいた。
この人は普通じゃぁ、ないんだと。

というか俺が「普通」という立場に立ち続ける限り、
俺の周囲に居る人間はすべてが自動的にアブノーマラーであり、
それ即ち俺が俺自身であることが原因なのである。
そんな今更なる歴然な事実に肩の力が抜けてしまう。
俺の間抜け面を受けて鶴屋さんが、

鶴屋さん「今更過ぎるよキョンくんっ! 気づくの遅すぎっ!」

とその間抜けをたしなめるようにキツイ言葉を投げかけてくる。
そして俺が後悔をすることもできずに呆然とつっ立っていると
いつの間にか制服の上を着ていた鶴屋さんが、

鶴屋さん「ほら、これもっ♪ 着替えさせてくれたみたいだからさっ……?」

そう言って下の布に指をかけると横に引っ張って少しだけずらすような仕草をした。

とんでもないことをしながらもその表情はなんとも楽しげで、
瞬時に距離を詰めてスカートを差し出した俺に
「重畳っ!」と言うや否やその場で片足を上げ俺に履かせるように仕向けてくる。

149 名前:40-8[sage] 投稿日:2010/03/20(土) 20:28:55.92 ID:BgQph/eG0

「マジで勘弁してください……」と言う俺の精一杯の赦宥の言葉を無視して
鼻息一つでその悲痛な訴えを踏みにじる。

目を瞑ったままスカートを差し出すも上手く鶴屋さんの足に通らない。
というかわざと外されているのではないだろうか。悪意を、悪意を感じる。
この上ない邪悪な悪意を感じる。

いつぞやこの人を惑星に例えて優しい女神だったらいいなどと思っていたが
とんでもない、とんでもない暴虐の女神である。
思えば神というのはそういうものなのかもしれない。
きっと俺が困って困って困り倒している姿を見て楽しんでいるのだ。
なんという、なんという恐ろしい女神だろうか。
それはそれで愛されてるってことなのかもしれないが。

おそるおそる目を開くとまぁ、なんだ。
にんまりと笑みを浮かべて嬉しそうな鶴屋さんと、
あとその下腹部の下に素晴らしい眺望が広がっていたわけで、
当然ながら見ずに履かせるというのは土台無理な話なわけで、
自信満々の鶴屋さんにたっぷりと見せつけられながらも
俺はなんとか神の指令を果たした。

鶴屋さん「よくできましたっ♪」

そんな労いの言葉さえ俺の精神に負担をかける。
心臓が、俺の心臓が持たない。
こうすることもいつか気にならなくなる時が来るのかもしれないが、
それでも今こうして困っている俺を見て嬉しがる鶴屋さんのいじめっ子モードが
俺にどれだけの被虐耐性を与えようとそれを容易に上回る準備が
この人にはあるように思えた。強く生きよう。そう思った。

150 名前:40-9[sage] 投稿日:2010/03/20(土) 20:33:16.26 ID:BgQph/eG0

一方俺の着替えはというとブレザーを羽織るだけで済んでしまった。
なんだか物足りなさそうな鶴屋さんの視線が突き刺さり背筋に寒気が走る。

いかん、このままここにつっ立っていると強引に脱がされるんじゃないか。
とまで考えた俺の不安は見事に的中せず、俺が持ってきた
あのパチもんくさい置き時計で時間を確認した鶴屋さんは
俺の手を取って強引に引っ張りながら屋敷の廊下を突っ走り始めた。

ガタガタバタバタと板が軋む盛大な音を立てながら
廊下を駆け抜けて門口をくぐるや否や九十度ターンし
垣根の通りを俊足で駆け抜けて行く。

俺は必死で体勢を崩さないよう気をつけながら
その手に引かれるままに付いて走った。

息が切れる中で何をそんなに急いでいるのかと尋ねると、
鶴屋さんは底抜けに明るい笑顔で答える。

鶴屋さん「ずっと二人っきりってのもいいけどさっ、
      それでも、みんなでワイワイやりたいときもあるじゃんっ♪
      キョンくんだって、みんなに会いたいって、思うにょろっ!」

それはそう、俺だってそう。俺とこの人の違いはというと、
それを即座に実行に移すか否かなのだということを俺はハッキリと実感した。

151 名前:40-10[sage] 投稿日:2010/03/20(土) 20:35:27.22 ID:BgQph/eG0

ともすれば狭くなりがちな俺の生活圏をこの人は広げてくれる。

訪れたことのない場所の、見たことのない景色の、

感じたことのない感傷と、抱いたことのない想いを含めて。

この人は俺に何かを感じさせてくれるのだ。

そこから受ける悲しみも、苦しさも、憤りも、切なさも。

すべてが大切な感情のように思えた。

そこで抱く楽しみも、喜びも、愛しさも、恋しさも。

すべてが貴重な体験のように感じた。

得難いものを得て居るような。そんな充足感と幸福感に浸らせてくれる。
それはとても難しいことでいて、とても簡単なようでいて。

奇跡のような確率の中でこの人と出会って、好き合って、愛し合って。
そこから生まれ、また続いていくこの瞬間の繋がりが、
思い出が宝物のように思える。

こうして、楽しい思い出も、苦しい想い出も、全部ひっくるめて積み重ねていけたら。

続いていくことができたら。忘れられない夜を重ねることができたなら。

生まれてきたことを感謝せざるを得ないないような、
そんな幸福を感じることができる。

152 名前:40-11end[] 投稿日:2010/03/20(土) 20:37:39.10 ID:BgQph/eG0

そんな期待と楽観を含めて、
俺を支えて引っ張ってくれる鶴屋さんの優しさと力強さに魅かれながら。

頑張ろう、ではなく。頑張りたいと思う自分がいることに驚いた。

そうしてたどり着いた未来ならばきっと、胸を張って誇れるのだ。

自分自身に、この人に。俺自身に、鶴屋さんに。

駆け抜けて行くこの時間は、とても、とても大切な。


俺たちだけの時間なのだから。



154 名前:41-1[sage] 投稿日:2010/03/20(土) 20:40:55.93 ID:BgQph/eG0

学校にたどり着いた俺と鶴屋さんはまず職員室へと出向いた。

俺の失態、というか一連の暴挙を一緒に謝ってくれるらしい。
少なくとも校舎内の追走劇に関しては自分にも落ち度があるのだから
謝らなきゃいけないと、明るい表情とは裏腹に責任を感じているようだった。

職員室には一年の時担任だった岡部が居た。
どうやら二年になっても俺のクラスの担任らしい。

俺の姿を認めるや否や椅子を回してこちらに来るよう促してきた。
その前まで歩み寄って俺は頭を下げる。
隣で鶴屋さんも一緒に頭を下げてくれていた。

その後がどうなったのかはわからないが、
どんな処分でも俺は甘んじて受けるつもりだった。
古泉はなんとかしてくれると言っていたが、結局俺の態度が悪いままでは何にもならない。

そうして精一杯の謝罪することだけが俺にできる唯一のことだった。
しかし次に岡部の口から語られた言葉に俺は呆気に取られた。

なんで頭を下げるんだ、と聞き返されてしまった。
呆然とする俺と鶴屋さんを交互に見るや一つ咳払いをした岡部はこんなことを言ってきた。

若いのは結構なことだが春休みに少し喧嘩して気まずくなったくらいで
学校中を走り回ることはないんじゃないのか、
おまけにそれをからかってきたクラスメイトを殴り飛ばすこともないだろう、
そのまま運悪く足を滑らせ机の角に頭をぶつけて怪我をさせたのはお前も悪いが、
相手の方も謝ってきているので大事にするつもりはない、
そして結局は学生同士の痴情のもつれとして処理されたのだという。

155 名前:41-2[sage] 投稿日:2010/03/20(土) 20:44:11.02 ID:BgQph/eG0

顔中を真っ赤にした俺と鶴屋さんを交互に見るや、
珍しく頬を吊り上げて机に向き直って言う。

岡部「ところで古畑任三郎の新しいシリーズが始まるそうだが、お前たちは知ってるか?」

なんでも今朝から校内はその話でもちきりだという。
俺たちの追走劇などはとっくのとっくにすっ飛んで今は誰も話題にすらしないらしい。
なんとも言えない妙な感覚である。

おそらくは長門と古泉の合わせ技というか合体ツープラトンというか、
二重の隠蔽工作の末にこうなったのだろう。

しかし俺達の追走劇のせいで新シリーズまで始まっちまうとは。
驚き半分、楽しみ半分である。いや、楽しみ全部かもしれない。

案外隠れファンが多いらしく、俺もその一人で、
もちろんのこと宇宙人のお済みつきなのできっといいシリーズになることだろう。

隣を見ると鶴屋さんも嬉しそうに笑みを浮かべている。
あぁ、きっとこの人もファンだったんだろうな、となんだか妙に安心したような
不思議な心地になる。探偵ものは、いついつの世でも面白い。
この場合は刑事だが、まあいいか。似たようなもんだ。根っこは同じ、そう、同じだ。

別にいいよな、俺が探偵で、鶴屋さんが助手で、ハルヒや長門や朝比奈さんや古泉が刑事だって。

同じことだ。仲間外れなんかじゃ、ないんだよな。
なんとなくそんな風に感慨に浸っていると鶴屋さんが俺の手に自分の手を重ねてきた。
指と指を絡めてしっかりと、恋人同士がするそれのように。
放課後だがまだ人の気配が多く残る校内でも構わずに。

156 名前:41-3[sage] 投稿日:2010/03/20(土) 20:48:50.19 ID:BgQph/eG0

堂々と俺の手を握ってくる。
そして嬉しそうに恥ずかしそうに笑いながら俺を見上げてくれる。

俺もいい加減、このしまらない苦笑いを卒業する時がきたのかもしれない。

自然に、ナチュラルに。
俺は頬と目元を柔らかくして鶴屋さんに微笑み返す。鶴屋さんも笑ってくれた。

どうやら俺の今の顔は、単なるニヤケ面ではないらしい。
鏡で確認して覚えておきたかったが、残念。

俺のこの表情はきっと俺の記憶にも残らずに、鶴屋さんだけのものになったのだ。

不意に伸ばされた繋がれていない方の手で俺に
「よしよしっ♪」をした鶴屋さんが俺の手を引く。俺たちは部室棟へと歩き始めた。

歩きながら、俺は携帯を取り出して谷口にメールをする。
渡り廊下の途中で立ち止まり鶴屋さんに待ってもらいながら俺は谷口の返事を待った。

机に叩きつけたことが周囲の記憶から消えたとしても
俺があいつを怪我させたという事実には変わりがなく、
それを脇に置いたままにしておくことはできなかった。

そうして一分ほど待っているとやがて返事が届く。
文面には一行、「なんのことだ?」とだけ書かれていた。
驚いた俺はそのまま谷口の電話に発信をかける。
が、1コールも続くことなく切断されてしまった。

呆然としていると二通目のメールが届いた。

157 名前:41-4[sage] 投稿日:2010/03/20(土) 20:51:32.62 ID:BgQph/eG0

そこにはこう書かれていた。

[女に振られて辛い気持ちはよーくわかる けど殴ることないだろ?
 許してやらないでもないがその代わり俺が振られた時は
  お前を殴らせてもらうからな そん時を覚悟しておけ]

これには思わず笑ってしまった。
そのぐらいは当然の権利で、俺の義務だよなと思いながらも
よからぬことを思いついてしまった俺はこう返す。

[それじゃぁ俺はあと何回殴られればいいんだ?]

すると三十秒も経たない内にたった一言 [るせぇ!] と返事が来た。

次いで [当然その回数分だ] と続けて届く。

俺は [周りに机のない場所ならな] と返す。

すると間もなく [じゃぁ椅子のある場所にしておいてやるよ] と帰ってきた。

椅子のある場所には普通机もあるもんじゃないのか?
などというくだらないツッコミは返さないでおいた。

なんだか無粋な気がしたし、
なにより放ったらかしにされている鶴屋さんの機嫌がよろしくないからだ。

どうもメールを打っている俺の横顔が楽しそうに見えて仕方がなかったらしい。
自分ではかなり苦い顔をしていたと思うのだが、
そうは見えなかったようだった。

158 名前:41-5[sage] 投稿日:2010/03/20(土) 20:55:14.54 ID:BgQph/eG0

自分にはそういう顔をしてくれないとでも言いたげな
不満の浮かぶ表情でじとっと横目で睨まれてしまう。

なぜにそんな寂しそうな表情をなさるのか、とかつての俺ならそう思っていただろうが、
今ならもう少しマシな言葉をかけられる。そのぐらいの智恵は身についていた。
主に鶴屋さんに鍛え上げられることによって。

キョン「鶴屋さんとメールしてたときは、
    きっともっと面白い顔をしてたと思いますよ」

俺がそう言うと瞳を数回ぱちくりさせた鶴屋さんは
片手を頭の後ろに回して「たっはーっ!」と盛大な声を上げると
自分にも思い当たる節があったらしく「面目ないっ!」と謝ってきた。

キョン「や、鶴屋さん、そんなに謝らなくてもいいんですけど」

鶴屋さん「それもそーだねっ、待ってたのはあたしだしっ」

そう言ってあっけらかんと事実を述べて見せる鶴屋さんに睨まれて、
若干調子に乗っていた自分を反省しつつ今度は俺の方から手を差し出した。

その手を取って満足げに胸を張った鶴屋さんの偉そうで尊大な態度に
精一杯卑屈な笑みを浮かべて返すと、
鶴屋さんは後ろ向きのまま俺の手を引いて後退し始める。

あんよが上手、とでもされているような気分だったが、
ステップらしきものを踏もうとしている鶴屋さんのそれに合わせていると
それなりに様になっている気がしてきた。

159 名前:41-6[sage] 投稿日:2010/03/20(土) 20:59:00.29 ID:BgQph/eG0

片手を離してその場でくるりと半回転、
俺の隣に並び立った鶴屋さんは満足げな表情を浮かべて
腕に抱きついてもたれかかってくる。

俺がわざとらしくため息のようなものを吐くとクスクス笑いが聞こえてきた。

本当に、嬉しいときは嬉しそうに笑う人だな、と思いながら
俺はなんとなく納得するような感覚を胸に抱きつつ歩みを進めた。

時折俺の顔をのぞきこんでクスクス笑う鶴屋さんの声に耳をくすぐられる。

そうして気持ちよく収まった鶴屋さんは階段を登る時以外はずっとそうしていた。

踊り場を横切るたびに抱きつかれているんだか体当たりされてるんだか
わからないような時はあったもののなんとか無事に
SOS団の部室の前まで到着できた。

このタイミングで階段から滑り落ちるなんていう
あんまりにもあんまりな珍事を回避した俺は内心で安堵していた。

腕に抱きつかれる感覚が引くように去って俺は鶴屋さんの方へと向き直る。

鶴屋さんは理由はわからないが居心地悪そうにしていた。
先程までの底抜けの明るさからは一転、迷いのような感情も伺える。

それもなんとなくわかる気がした。俺が動かずに後悔する人間なのだとしたら、
鶴屋さんは動いてから後悔する人なのだろう。

たとえどんなに根が明るかろうと後悔しない人間などいない。

161 名前:41-7[] 投稿日:2010/03/20(土) 21:03:02.32 ID:BgQph/eG0

それが俺から見た俺の知っている鶴屋さんに似合わなくても、
ありのままの鶴屋さんを見るならばそれは間違いなく
鶴屋さんらしさなのだと言える。

かつて鶴屋さんが言った「あたしらしさって何?」という言葉。

それはある意味では俺にも言えるし、もちろん鶴屋さんにだって、誰にだって言える。

似合わない涙を流したり、似合わない言葉を口走ってみたり。

一人ならばそれは問題のないことなのかもしれない。
ただ誰かと共に過ごして行く中である瞬間にそうした境界が揺らいでしまうのは
仕方がないことだ。たとえ俺が俺自身としていついつまでも変わらない俺でいたとしても、
鶴屋さんと一緒にいるときの俺っていう奴は、
鶴屋さんのそばに居るときだけの存在なのだ。

その時だけに感じられる新しい自分自身なのだ。
だからこそ、鶴屋さんは今揺らいでいる。

それがわかるようになるくらい俺は鶴屋さんからたくさんの感情をもらったし、
同時にそのらしさって奴をを揺らがせるくらい
鶴屋さんに多くの感情を与えてきた。

言いにくそうにしながらも鶴屋さんは怖ず怖ずと口を開く。

俺は黙ってそれを聞く。
待つことも、促すこともなく。

離れては繋がる言葉の境界に息を合わせて。

163 名前:41-8[sage] 投稿日:2010/03/20(土) 21:06:26.71 ID:BgQph/eG0

鶴屋さん「キョンくんっ、あたしはさっ……
      キョンくんがあたしのこと好きだって言ってくれたことが、
      本当に嬉しかったんだよっ! ほんとさっ!
      もう、この後どうなってもいいって思えるくらい、すっごく嬉しかったんだよっ!」

普段なら何気なく言えることでも言い辛い時間と場所はある。
一生懸命に言葉をつなぐ鶴屋さんを見つめながら俺は黙って胸の内に受け入れる。

悔しそうに、言葉をつなぐ鶴屋さんのその想いの一つ一つを。

言葉の合間と合間に照れ笑いをはさみながら鶴屋さんは続ける。

鶴屋さん「でも、あたしはやっぱダメさっ……
      今、ここに堂々と正面から入るってのはさ……無理っぽい感じだよっ……
      やっぱもちょっと離れたとこからじゃないとさ……
      なんか、調子狂っちゃってさ……ダメなんだよね……ごめんっ……!」

上手く答えられない俺も辛いが、
一番辛いのは目の前のこの人なのだと自分に言い聞かせて次の言葉を待つ。

俺が覆した鶴屋さんの今までの立ち位置と、これからの新しい立ち位置の。

今はその境界線上なのだ。
時と場にも、気持ちの上にも。不安にならないわけがなかった。

鶴屋さん「でもね……キョンくんのそばには、居られるよっ!
      そんでできれば……この先もっ……ずっと……ずっとさっ……」

切なげに言葉を選ぶ鶴屋さんを見ていると俺の方までたまらなくなってくる。

165 名前:41-9[sage] 投稿日:2010/03/20(土) 21:09:46.08 ID:BgQph/eG0

それでも今は聞き役に徹する時で、
それになんとなく鶴屋さんが言わんとしていることがわかってきた。

その一言を返す時は目いっぱい真剣に、
そして笑える表情を浮かべておくといいだろう。

鶴屋さん「そんでさっ、キョンくんが困った時は……
      また遠慮なくあたしを頼ってよ! 全力でサポートすっからさっ!
      あたしにできることだったら……なんでもすっからさ……
      ほんとだよっ……」

そう言って切なげ笑う鶴屋さんに、俺は冗談みたいに真剣な言葉を返す。

もちろん、そこに込めた感情は冗談なんかではなく、
期待と願望と、淡い下心と。

ついでに溢れる若さも込めて。


キョン「鶴屋さん……結婚してください」

そう言い放った次の瞬間、鶴屋さんの表情が大変なことになった。

その場でバタバタと悶え始める鶴屋さんは
その顔が俺から伺えないように両腕を交差させて隠して、

鶴屋さん「ちょっ! な、なんてこと言うのさっ! ま、まだ早いよっ」

などと必死で否定しながらもやがて恐る恐る腕の隙間から眼を覗かせて言う。

169 名前:41-10[sage] 投稿日:2010/03/20(土) 21:14:42.65 ID:BgQph/eG0

鶴屋さん「その……一年くらいっ……だっけ?」

俺は思わず口元を手で隠しながら笑ってしまった。
それでもやはり目元の緩みだけはどうしようもない。

なんだか鶴屋さんの剣呑な視線が突き刺さっているような気がする。
すっかり開き直った俺は自分の誕生日から計算するまでもなくありきたりな答えを返す。

キョン「そのぐらいですね。
    そしたら俺はもう、完全に鶴屋さんから逃げられませんね」

鶴屋さんは顔の前で交差していた腕を胸元まで下ろし
「そんなつもりないくせにっ!」と言いたげな瞳で責めるように俺を見る。

だがその口元は緩んでいて、そんな睨みながらも嬉しそうな表情を見ていると
俺の首にかけられた手綱が根差すのはそうした契約でも、
まぁその、なんだ。体の関係でもなく。

ただ単純にこの人自身なのだと思うと
背中の真ん中らへんがこそばゆくなる思いでいっぱいだった。

鶴屋さん「キョンくんっ……あ、あたしのこと……あ、愛してるっ……のかなっ!?」

恥ずかしさでちゃんと眼を開いて言えない鶴屋さんはうっすらと目元を潤ませながら
精一杯の勇気を振り絞って半目がちになりつつ俺に尋ねてきた。

唇をきつく結んでうーとかぅーとうなりながら恥ずかしそうにしている。
放っておけばこのまま泣き出しそうでそんな鶴屋さんも見てみたい、などと不埒なことを
考えるまでもなくそれ以前にボコボコにのされるだろうことに思い至れる俺の頭脳は別の手段を考える。

170 名前:41-11[sage] 投稿日:2010/03/20(土) 21:18:57.09 ID:BgQph/eG0

それを言うのは何度目か、と思ったが今の今まで俺は一度も
その”あ”から始まる言葉を口にしていないことに思い至った。

しかしそれを言うにはなんだかとってもはばかられるというか気恥ずかしいというか、
それを堂々と言える鶴屋さんの肝はなんと据わっているんだろうか、などと
自分に言い訳をしながらもとりあえずこれが俺の精一杯。

キョン「当たり前です……」

80点、いや、60点と言ったところか。
鶴屋さんの若干微妙に睨んでいるような喜んでいるような複雑な表情から見るに
ぎりぎり落第点はクリアーしたというところだ。

昨日はこれが百点の解答だったはずなんだがなぁ。
問題文に不正があったんじゃないか?
などと愚痴をこぼしながらもそんな不出来な答えでも
内心とても喜んでくれていたらしい鶴屋さんは恥ずかしそうに微笑みかけてくれる。

そして何かを宣言するかのように姿勢を正すと元気一杯に大きな声で叫ぶように言う。

鶴屋さん「てっへへっ……キョンくんはっ、ほんとにほんとにっ、しょうがない子だねっ!
      もう、ほっとけないったらないっさ! と、いうわけでさっ!
      あたしはこれからも君を、キョンくんを観察し続けるって誓うよ!
      今日も明日もこれからも、絶対に!」

ニカッと八重歯を覗かせて笑う鶴屋さんのその笑顔がどれだけまぶしくとも
俺はもうたじろがない。単に姿勢のことではでなく、気持ちの部分で。

今なら恥ずかしがらずに見れる。この人の笑顔をまっすぐに。

172 名前:41-12[sage] 投稿日:2010/03/20(土) 21:21:10.56 ID:BgQph/eG0

また明日。絶対に。

そのフレーズは今この時でも息づいていた。
俺と鶴屋さんが春休みに何度も交わした、あの大切な約束は。

まだ生きているのだ。そしてそれは恐らく、この先もずっと変わらずにそこにある。

今日も、明日も、その先も。
絶対に。

たとえたまに無理曜日で、来れないデーがあったとしても。
そうした絆が俺達を支えてくれる。互いを想う気持ちが支えてくれる。

俺達の関係を。俺達の未来を。
それがこの先も続いていくのだと確かに感じさせてくれるのだ。

鶴屋さん「ほっとけないからっ! ほっとけないからさっ!
      だからあたしのものになっちゃいなよ!
      さぁっ、どうなんだいっ! キョンくん!」

そう言って力強く手を差し出してくる。
責めるようで命令するようで、
それでいてこれ以上ないくらい下手に出る鶴屋さんの姿に俺は思わず笑ってしまった。

そんな俺の反応を受けて鶴屋さんは顔を真っ赤にして押し黙る。
それでも差し出した手は引っ込めずに、
本当に真っ赤な顔のまま唇を結んで恥ずかしさに耐えている。
鶴屋さんに尻尾があったらきっと今頃盛大に左右に振れていることだろう。
そんなやかましさは今この場には、とてもお似合いなのだった。

173 名前:41-13[sage] 投稿日:2010/03/20(土) 21:25:14.68 ID:BgQph/eG0

キョン「俺の手綱、離さないでくださいね」

差し出すその手を取った時、ついに俺は逃げられなくなった。

鶴屋さん「そんなの……当たり前さっ!」

そのまま強引に引き寄せられ、体勢を崩しつんのめった俺を受け止めると
鶴屋さんはそのまま自分の唇を俺のそれに重ねてきた。

まるでマーキングでもされているような気分だった。
所有権を主張するように強く強く俺を抱き寄せる鶴屋さんに負けないくらい、
俺も鶴屋さんを抱き寄せた。

舌が絡み合い粘膜と粘膜が触れ合う度に唾液が糸を引いた。
時折漏れる熱を帯びた息遣いが耳を、喉を、肌をくすぐってくる。
甘い香りがした、とまで感じたのは俺の頭が沸騰しているからなのかもしれないが、
とにかくいい香りがした。

それは鶴屋さんの髪の毛に鼻をくすぐられたからかもしれないし、
吐息なのかもしれないし、
艶やかな肌のそれなのかもしれない。

手を添えたうなじのサラリとした肌触りと、重ねる唇の柔らかさと、
耳をくすぐる口づけの音と、なんとも言えないこの滑らかな舌触りと。

耳の裏、首筋に添えた手を動かすたびに
鶴屋さんが俺を抱き寄せる手が深く絡みついてくる。
息をするのも忘れそうになるくらい、喉の奥から熱い息がこみ上げてくる。
互いの舌を滑らせるように絡め合わせる。

174 名前:41-14[sage] 投稿日:2010/03/20(土) 21:27:47.70 ID:BgQph/eG0

そうしてたっぷりと互いの味覚を堪能していると背後で突然ドアが開くような音がした。
それもゆっくりではなく一気に開かれたような激しい音が。

驚いた俺達が振り返るとハルヒが思いっきりこちらを見ていた。
俺の額を冷や汗が伝う。

なんだかまずい場面を見られたような気がして思わず変な顔になってしまう。
鶴屋さんはというと困ったような恥ずかしがるような表情で
「こ、こんちわっ、ハルにゃん! たっはは……」などと笑ってごまかしている。

なんつうか、やっちまったって感じだ。
こう、わりとお約束の展開ではあるのだが
いざ自分の身に降り懸かるとめちゃくちゃ心臓に悪い。

蛇に睨まれた蛙のようにすくみあがってしまう。
頭の中は完全に鶴屋さんと二人きりのモードになっているので
まったくもって状況に対応できない。頭脳は即座にオーバーフローしていとも容易くショートする。
自分の頭のめぐりが今ほど悪いと思ったことはなく、鶴屋さんも似たような感じだった。

そうしながらもその場でしっかりと抱き合ったままの俺達を見るや
ハルヒは大きくため息を一つ吐くと顔を真っ赤にしてまくし立てる。

ハルヒ「あんたらさっきからうっさいのよ! 中までまる聞こえだったんだからね!
     あ、鶴屋さんはいいの、気にしないでね。問題はコイツよ、バカキョン!」

そう言ってハルヒは俺を睨みつける。

その気迫に思うも思わずもたじろいでしまいなんとなく親に叱られているような気分になる。
気まずい、逆らえない、反論の仕方がわからない、って俺は小学生か。

175 名前:41-15[sage] 投稿日:2010/03/20(土) 21:31:58.79 ID:BgQph/eG0

そんな残念な感じの大きな子供をジロリと睨みつけた我らが団長様は
俺の眉間に向けてズビッと人差し指を突き出すと死刑でも宣告するように言う。

ハルヒ「キョン、今ここでハッキリ言葉に出して誓いなさい。
     鶴屋さんを自分の命よりも一生をかけて大切にしますってね。
     そんでもって苦労も絶対させないこと! 浮気なんてもっての他よ! いい!?」

ハルヒの剣幕に気圧されるも俺だって言い返したいことぐらいある。

「お前に言われんでも、じゃない、なぜにお前に命令されにゃならんのだハルヒ!」とは
声に出さずに心の中で反論しておいた。
俺の真実の言葉というか喉をついて出る音はヒューとかコホーとかいう
かすれた呼吸音だけである。微妙にしゃっくりが出そうな感じさえする。

そんな情けない俺を放ったらかしにしてハルヒは自分の言いたいことを言いたいだけ言う。

ハルヒ「約束しなさい、キョン! そしたら、このあたしが公認してあげてもいいわ。
     あんたと鶴屋さんが幸せになれるように祈ってやってもいいわよ。ただし!
     団の活動に支障をきたさないよう慎むべきときは慎みなさい!
     今のさっきみたいに部室の前でイチャコラされたらたーまったもんじゃないわよ! 馬鹿!」

鶴屋さんが申し訳なさそうに頭の後ろをかく。
俺はというとまともにハルヒの顔を見られないまま額に手を当てて唸るのだった。
何はともあれハルヒの公認を得るというのは凄まじいことである。
頼もしいなんてもんではない。

神のお済み付きを得たような心強さすら感じる。これ以上ない味方をつけてしまった。
本当に後戻りできないなこれは。そんなつもりは元々ないが。


176 名前:41-16[sage] 投稿日:2010/03/20(土) 21:35:10.09 ID:BgQph/eG0

鶴屋さん「まーっ、でもっ!」

いつの間にか正体を取り戻していた鶴屋さんが不意に何かを言い始める。

鶴屋さん「あたしは別にキョンくんとずぅっと一緒に居られれば、
      後はキョンくんが誰とどうなろうとかまわないにょろよっ?」

俺とハルヒは驚いて同時に鶴屋さんの方を見る。
俺がそんなことをしないとわかりきっている鶴屋さんがからかうつもりで……
言ったのではないようだ。

あっけらかんと笑う鶴屋さんは威厳に満ちているというか、
余裕に満ちてしゃくしゃくであるというか、どっしり構えて不動なること雲山の如し、
というかマジで真実本気の堂々たる目つきである。うっすらと笑みさえたたえていらっしゃる。

どうやら真実本気に冗談ではないようだ。
鶴屋さん、あなたどんだけ懐深いんですか、深すぎますよ鶴屋さん、ねぇ!

というかこの御方は一体俺みたいな俗人の何歩先をお往きなさってらっしゃるんだろうか。
既に神仙の領域である。やっぱり鶴屋さんは普通でも俺と同じでもなんでもなかった。
ある意味宇宙人未来人超能力者神、ついでに迷探偵を超えるほどの
特別で強烈なパーソナリティーを持ってらっしゃるんじゃないだろうか。

内面から滲み出すその凄みに気圧されながらも頭の片隅に可愛いなどというワードを
ふわふわと漂わせているあたり俺の惚気っぷりも仙人クラスなのだった。

俺がそんなことを思っている間にハルヒがあんぐり呆然と我を失っている間に、
いつの間にか姿勢を崩して人刺し指を立てて空気をくるくるとかき混ぜながら
眼をつむった鶴屋さんが暗唱するように言い放つ。

178 名前:41-17[sage] 投稿日:2010/03/20(土) 21:40:29.19 ID:BgQph/eG0

鶴屋さん「それでもっ! 一番乗りはあたしっかな~♪」

そう言って珍しく間延びした声を出す。

それは鶴屋さんが何か企んでいるときの、
もとい言葉に裏があるときに発する上ずりである。

鶴屋さん「ま、この辺がね、慎み切れないかもしれないけど許して欲しいっさ!」

そう言って前のめりになりながらお腹を抱えて笑ってみせる。

俺もハルヒもさっきからずっと開いた口が塞がらなかった。

そして鶴屋さんは固まって動かない俺の耳元に口を寄せると
俺にだけ聞こえるよう小さな声でそっと囁く。

鶴屋さん「春休みの……十三日目っ!
      あの日がなんの日だったかじっくり推理してみるといいっさっ♪
      きっと、すぐにわかってもらえると思うっからさっ!
      ねっ……たんてぇーくんっ♪」

最後の方はいつもの大声になり言いたい放題言い切った鶴屋さんは
ハルヒのもとへ駆け寄るやそのまま体当たりするように抱き着いて
動揺するハルヒを後ずらさせながら部室へと突入していった。あの日何の日、ふっふーじゃねぇ、
真面目に考えて時間の自浄作用って奴が記憶だけを操作したんであれば、
まぁ、その、なんだ。つまり既成事実は消えてないってことだ。
あのまま俺まで忘れてたら素敵にえらいこっちゃになってたんじゃないだろうか?
いや、確実にそうなってただろう。
約半年後ぐらいにそれはそれは愉快な珍事になっていたことだろう。

180 名前:41-18[sage] 投稿日:2010/03/20(土) 21:43:34.71 ID:BgQph/eG0

まさかそこまで見越して、ということはないだろうが、
いやしかしなんというか、ただでは転ばない人だなほんとに。

砂を噛んでも立ち上がる、そんなバイタリティもまたこの人の無敵さを支える一柱で、
たまらない魅力の一つなのだった。

それにしてもさっきまで遠慮するだのどうだの言っていた人と
同一人物だとはまったく思えない。
しかしそれがとっても鶴屋さんらしい姿なのだからどう異議の挟みようもない。
やっぱりこの人は、なんだ。すげえっていうよりは。

面白い人だな、と。素直にそう思った。

俺が部室に入ると鶴屋さんは朝比奈さんと、
もとい朝比奈さんをハグハグしたまま全身をまさぐっている最中だった。

その耽美かつびあ~んな花香る桜の園に
俺は内心「ほ~ぅ」と感嘆しつつ顎に手を添えて唸った。

おまけにそこに負けじとハルヒが加わるもんだから現場は一層悲惨なことになった。

みくる「た、助けてキョンくん、鶴屋さんダメ、涼宮さんも~ふえぇ~」

と必死で俺に助けを求める朝比奈さんの悲鳴を無碍にしつつ
春爛漫の素晴らしい光景を堪能しているとどちらかというと夏の男、
紅色の脳細胞ならぬ紅色のなんか光る丸い玉、もとい古泉が話しかけてきた。
そしてその隣に長門が……長……長門さん?
不思議なことに、まったくどういうわけか長門は
もじゃもじゃヘアーのカツラではなくデコっパゲのカツラをかぶっていた。

184 名前:41-19[sage] 投稿日:2010/03/20(土) 21:46:27.95 ID:BgQph/eG0

いや、それは、さすがにどうだろう。
なんとなく残念な心地になった俺はその額をピシャリとはたき、はせずに
両手を添えてそっとカツラを持ち上げた。

俺も残念そうな顔をしていると思うが、
長門の方もとても残念そうな顔をしていた。

キョン「こっちは、ダメだ……お兄さんとの約束だぞ……」

そう力なく言う俺に長門は黙って小さく頷いた。
隣で古泉が苦笑いを浮かべている。

宇宙人の突然の豹変ぶりに驚いているのかもしれないが、
お前の口元にだってわけのわからない口ひげがくっついてるぞ。
どれ、むしり取ってやる。かしてみろ。

俺がそう言って手を伸ばすと「遠慮しておきます」と丁寧に辞退した古泉は
自ら付け髭をあっさりすっきりパリッと簡単に剥がしたのだった。

ちっ、皮膚ごと剥がしてやろうと思ったんだがな。
俺のそんな悪態を受けても古泉は笑みを絶やさない。
次いで真面目な表情に変わると本題に移る。

古泉「ここから続いていく時間というものにはまったく保障はありません。
   何が、どうなっても、世界が滅んでも、誰と誰が手を取り合っても、
   何もかもが予期しえぬ世界です。僕たちの組織は頓着しませんが、
   未来人達は困っているかもしれませんね。
   それでも鶴屋さんがああいうことを言う人ですから、
   ひょっとするとあんまり変わらないのかもしれません」

185 名前:41-20[sage] 投稿日:2010/03/20(土) 21:48:36.12 ID:BgQph/eG0

キョン「浮気すんなよって言われたりしても気にしないって言われたり、
    こっちとしてはえらいことなんだが……」

古泉「それは自分を嫌いになるな、という命令みたいなものではないでしょうか。
    彼女なりにあなたに気を使っているんだと思いますよ。
    そして、変えてしまった未来に対しても」

キョン「未来……か」

俺はなんとなく朝比奈さんの方を見る。
朝比奈さんは相変わらずハルヒと鶴屋さんにもみくちゃにいじくり回されていた。

朝比奈さんが未来人でも、いついつどの時代の人間でも。
鶴屋さんにとっては大切な親友で、かけがえのない人の一人なんだ。

そう思えばわかるような気がした。
この人がどうして、あんなにも思い悩んで苦しんだのか。

そして鶴屋さんのそんな優しさに、俺は頭が下がる思いで一杯だった。

次いで長門が口を開く。
その口から話される内容はとても真面目で、真剣な話だった。

長門「実際的無限と可能性無限の境界に我々は常に立っている。
   そこが反復を繰り返す地平面上だとしても常に上昇を続けていく。
   その先がどんな未来で結末だったとしても。
   貴方達は前に進まなければいけない。これは、義務」

義務。つまり法則っていうか、そうせざるを得ない運命ってことか?

186 名前:41-21[sage] 投稿日:2010/03/20(土) 21:51:00.49 ID:BgQph/eG0

その運命って奴は俺たちを傷つけもするし、また何かを気づかせもする。

鶴屋さんとのあの激しい戦いの中で学んだこと。
それは辛さ乗り越えて勇気を振り絞って、
目の前の壁を飛び越えなければ何も得られないのだということ。

そしてそれは飛び越えてしまえば、
新しい発見を俺たちに与えてくれるのだと。

無理だダメだ、それはいけないことだと思っていても。
超えてしまえば案外、それはそれで俺たちの今までいた世界と変わらずに、
超えたという事実そのものが俺たちの過去の積み重ねで礎になっていくのだと、
そう納得できた。

俺はなんとなく長門の頭を撫でたくなってそこにぽんと手を置いた。

長門は何を言うでもなく俺を見上げていた。

キョン「今の俺は、どういう風に見える?」

何気なく尋ねた言葉に長門は、

長門「今のあなたも。とてもユニーク」

といつか聞いた言葉を返した。今も、今までも、か。

キョン「ありがとな、長門。春休みの間も裏でハルヒの面倒を見ててくれてよ。助かったぜ」

長門「気にしないで。あなたはただ私に見せてくれればいい」

187 名前:41-22[] 投稿日:2010/03/20(土) 21:54:18.13 ID:BgQph/eG0

キョン「何をだ……?」

長門「───を」

突然のハルヒの叫び声でかき消されたそれを俺は確かに理解した。
音は聞こえなくとも唇の動きでわかった。
特徴的な口使いで始まる単語。”も”で始まるその言葉。

口元を緩ませながら俺は、「あぁ」と、短く答えた。
それで十分だった。

視線を鶴屋さんハルヒ朝比奈さんに戻すと
いつの間にか桜の園の主役は鶴屋さんになっていて、
その場でハルヒが鶴屋さんに何かを言わせようとしていた。

真っ赤になって恥ずかしがる鶴屋さんに朝比奈さんが後ろから声援を送っている。
そんな朝比奈さんのエールを受けてうっすら涙を浮かべた鶴屋さんが朝比奈さんを抱きしめる。

そして「みくるがあたしのお嫁さんになってくれたらいいのにっ!」などととんでもないことを口走った。
「いっそキョンくんと二人でうちに婿入りと嫁入りしないかいっ!?」とこれまた
大胆かつ破天荒な提案をする。
春休みに俺にコーヒーカップを投げつけたときのあれはなんだったのだろうか。
実は鶴屋さん、ホントにそのケがあるんじゃないのか?
俺に真実を言い当てられて狼狽した部分もあったんじゃないのか。

もしかすると鶴屋さんはとてつもない天然の女たらしなのかもしれない。
男子が好意を抱く云々以前に鶴屋さんに想いを寄せる女子達の妨害を受けるのかも。
そう考えると俺のしたことと言うのはその女子達からしてみれば
極刑クラスの暴挙なのではないだろうか。一気に背筋が寒くなった。

188 名前:41-23[] 投稿日:2010/03/20(土) 21:56:28.17 ID:BgQph/eG0

ついさっきまで手をつないで校内を練り歩いてしまったではないか。
明日からマジで謎の暗殺者に狙われるかもしれない。
Gでも、バーコードでも、弾道を曲げるアレでもない生身の人間に背後から
襲われるかもしれないというリアルな恐怖に戦慄しながら俺は鶴屋さんの言葉を待った。

そうしてハルヒと朝比奈さんに押し出されながら鶴屋さんは怖ず怖ずと口を開く。

らしくない不安を眉根に浮かべながら、それでも最後には、
やっぱりいつもの鶴屋さんに戻るのだった。

元気いっぱいに、高らかに、ハキハキと。

気持ちのいい風を吹かせるのだ。

心地好い春風を。一年中、いついつどの時でも。

鶴屋さん「えっと……その……キョ、キョンくんっ!
       あっ……愛してる……にょ、にょろっ!」

それでも言い終わる頃にはすっかり顔中を真っ赤にさせてよろめいて、
朝比奈さんやハルヒに支えられてしまうあたりまだまだ不慣れな感情なのだなぁと
その初々しさに感じ入りながらも、それに返す俺の答えだって当然ながら決まっている。

俺はその場にいる全員を一回ずつ視界に収めてその姿を脳裏に焼き付けてから向き直る。
ハルヒ、長門、朝比奈さん、古泉、最後は鶴屋さん。

鶴屋さんは顔中を真っ赤にしたまま俺の答えを待っている。
さっきのはきっと鶴屋さんの精一杯の勇気というか、負けん気というか。
それが人前でも内心を正直に白状させたのだろう。

189 名前:41-24[sage] 投稿日:2010/03/20(土) 21:59:22.15 ID:BgQph/eG0

その頑張りに敬意を表して、俺も応える。

鶴屋さんに、目の前で涙を浮かべて真っ赤になっている
偉大で可愛い先輩に。

キョン「鶴屋さん……愛してます」

俺の言葉を受けて目をまん丸に見開いた直後、
うつむいてしまった鶴屋さんはふるふると肩を震わせる。

ハルヒや朝比奈さんが心配そうに顔を覗き込むも、
次いでその表情が困ったような表情になった。

しょうがない、とでも言いたげな表情でハルヒと朝比奈さんが俺の方を見る。
鶴屋さんが一体どんな表情をしていたのかは、
ハルヒと、朝比奈さんと、鶴屋さんの。三人だけの秘密なのだった。

そんな俺の心配を余所に次の瞬間、顔を上げて目いっぱい
元気いっぱいのいつもの笑顔を浮かべた鶴屋さんは俺の言葉にこう答えてきた。

鶴屋さん「うんっ! 知ってるっさっ!」

そう言ってあっけらかんと言い放つ鶴屋さんの笑顔はまぶしくて、
見たことがないくらい晴れやかで、そして何よりキュートだった。

そうして駆け寄ってきた鶴屋さんに抱きしめられるのかと思った矢先、
照れ臭紛れの右ストレートがみぞおちに飛び込んでくる。
「おふんっ」と奇妙な呻き声を上げながらもなんとかその場に
身体を残した俺に鶴屋さんは追い打ちの二撃三撃を叩き込む。

190 名前:41-25[sage] 投稿日:2010/03/20(土) 22:02:00.80 ID:BgQph/eG0

ただそれはまったく痛くなく、まったく手加減されていて、
ぜんぜん痛くも痒くもなかった。むしろくすぐったいぐらいだった。

そうしてひとしきり俺にじゃれついて満足したのか、
鶴屋さんは堂々たる威厳をまとって俺に言い放つ。

鶴屋さん「キョンくんっ、愛してるよっ! これからもずっと、ずっとさっ!
      あたしからは絶対に逃げられないんだからね!
      覚悟するっさ! にゃははっ♪」

そうして俺を力いっぱいに抱きしめる鶴屋さんのいい香りに包まれて。

人目もはばからずに交わされた口づけの甘ったるさと言ったらなかった。

やれやれと言った表情で俺を見るあいつらのため息が聞こえる。

俺を引き寄せて離さない鶴屋さんを、
俺もしっかりと抱きしめ返して応えれば見える気がする。

ここから始まる、俺と鶴屋さんの物語を。

ここから始められる、俺たちの明るい未来の時間を。

唇を離しても、そこから交わされる言葉で俺たちは繋がることができる。

いついつでも、その気持ちを、言葉にして伝えることができる。

耳をくすぐる吐息に混じって愛を囁くことなんて。

191 名前:41-26end[sage] 投稿日:2010/03/20(土) 22:04:38.24 ID:BgQph/eG0

とても容易くできるんだ。

勇気があれば、できるんだ────。


鶴屋さん「めがっさっ、大好きっ!」

この時既に俺の頭の中も目の前も、鶴屋さんの笑顔で一杯だった。

鼻をこすりあわせながら額をくっつけ合った俺と鶴屋さんは、
そのまま指と指を絡め合わせて。

宇宙人、未来人、超能力者、神に見守られながら。


キョン、鶴屋さん「愛してる……」



そう囁き合うことができたんだ。







fin.

193 名前:都留屋シン ◆wScl9LyheA [] 投稿日:2010/03/20(土) 22:06:58.48 ID:BgQph/eG0

長い時間、お付き合いいただいて本当にありがとうございます。

まだもう少しここに残っているので
質問などがあれば答えていきたいと思います。
なにかありましたらお気軽にどうぞ。

196 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/20(土) 22:10:53.84 ID:BgQph/eG0
>>194
エピローグはありませんが、即興で書くぐらいならできます。
ご希望があればやります

198 名前:都留屋シン[sage] 投稿日:2010/03/20(土) 22:15:04.85 ID:BgQph/eG0

わかりました、

リアルタイムだと遅れがちになると思いますが。

最後までお付き合いいただけると幸いです。

200 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/20(土) 22:25:15.75 ID:BgQph/eG0
>>199
キョン「朝起きたら鶴屋さんが隣で寝ていた」
というのを書きました。

検索すればまとめが出ると思いますよ。

205 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/20(土) 22:42:18.00 ID:BgQph/eG0

>>203 >>204
「ストーリー」を和訳してください。

ぼちぼち書き溜まってきたので空気を読んで投稿していきたいと思います。


206 名前:エピローグ[sage] 投稿日:2010/03/20(土) 22:58:20.81 ID:BgQph/eG0

鶴屋さん「キョンくん、あたしたちがさっ、
      ずっと一緒に居られることってすっごいレアなんだよね?」

下校途中、何気なく発された一言に俺ははたと立ち止まる。
なぜにこの人はそんなことをお尋ねになるのか。

意図は見えないまでも不安を感じていることはわかった。

キョン「えぇ、まぁ。それはもうレアリティが高いらしいですよ」

鶴屋さん「やっぱそっか……そうなんだよね……」

キョン「何か気になることでも……?」

鶴屋さん「いやね、なんかね。……不安になるのは仕方がないっていうか、
      どうしてもっていうか、二人っきりになると思うにょろ。
      その……あたし達はさ、これから何に寄って立てばいいのかな……?
      何か支えになるもんがないとさ……その……不安でさっ……」

それはそうだろうな、と俺は思う。

207 名前:2[sage] 投稿日:2010/03/20(土) 23:07:32.29 ID:BgQph/eG0

確たる足場を俺たちは持たない。何者からも切り離された自由な存在だとしても、
時には休む場所が必要なのだ。

どうしようもなく傷ついたときに身を託せる場所が。

これから俺たちが向かう場所。それは何を隠そう俺の家で、
そんでもってその後は鶴屋さんの家に直行なのだった。

とっくのとっくで肉体関係を結んでいた俺達がいい加減これから
巻き込むことになるであろう人達に対してできることはというと、結果報告。

誰が仰天して飛び上がってひっくり返ろうが後の祭り、
既に来年の祭りの準備が始まっているのである。

鶴屋さんの不安の正体というのも俺にはわかる。

気持ちの問題は時間が癒せるかもしれないが、
身体の方はというとそうはいかず。
わけのわからない組織や存在が背後にうごめく世界に
直接さらされることになった鶴屋さんの胸の内はおそらく、
俺が最初に感じた戸惑いと同じものなのかもしれない。

鶴屋さんは強い。強いからこそ、立ち向かおうとする。
そして今全力で怖がっている最中なのだ。

そうした恐怖の中で俺がしてやれることと言ったら、
そうしたことに一年先輩、
いわば超常現象二年生の俺として新一年生たる鶴屋さんに
アドバイスできることと言ったらたった一つしかない。

210 名前:3[sage] 投稿日:2010/03/20(土) 23:19:28.27 ID:BgQph/eG0

キョン「普通にしてればいいんです。普通にね」

普通にする、というよりは普通にしておく、と言った方が正しいかもしれない。

不満そうな表情を作った鶴屋さんは
それでも納得できないと言いたげな表情で俺のことを睨む。

それだけじゃないんだぞ、とでも言いたげだ。実際それだけじゃないんだろうな。

まともじゃない世界で自分を、普通さって奴を保つのは相当な根気がいる。
気が触れたっておかしくないくらいのストレスにさらされて、
それでも自分を保たなきゃいけない。

不安も、恐怖も、俺がスーパーなんちゃらに変身して
取り去ってあげられればいいんだが、そういうわけにもいかなかった。

鶴屋さん「キョンくん……あたしはさっ、たださっ!
      一緒にいられればいいって言ったけど……それでもさっ、
      怖いって思っちゃうのは、なんでなのかな……
      こういうのは初めてだからわかんないんだよね……
      どしてもさ、不安になっちゃうんだよ……」

弱いままでは、生き続けていくことはできない。
にも関わらず、誰かを好きになる度に俺は弱さを抱えていくし、当然ながら鶴屋さんだって。
心がなく、誰にも気持ちを開かず、ざっくばらんで居続けられたなら。

もしそうなら傷つくことなんてないのかもしれないし、
深い絶望に打ちひしがれることもないのかもしれない。

212 名前:4[sage] 投稿日:2010/03/20(土) 23:36:53.36 ID:BgQph/eG0

抱き寄せるだけでは済まない、そんなためらいもある。

無機的な世界に感情だけが取り残されていくような感覚がするのは仕方がないことだった。

キョン「鶴屋さんの部屋で俺が毎日寝起きするってのは、
     どうですか? 安心できますか?」

顔を赤らめて苦い表情を作りつつ唇を結んだ鶴屋さんは責めるように俺を見る。

鶴屋さん「そ、そーいうことでもなくてっ! ……も、もーいいよっ、
      あたしがしっかりしてれば済むことなんだからさっ!
      キョンくんには頼らないからねっ! いーっだ!」

俺に頼りにして欲しがる先輩は俺を頼りにするつもりはないらしい。
そりゃ俺は頼りにならないこと請け合いではあるが、
それでもこのままこの人に無理をさせるわけにもいかない。

鶴屋さんの無敵さにひたすら甘え続けられるほど俺の神経も太くはない。
俺だけが居心地のいい関係というのは、全然気持ちよくなんてないんだ。

鶴屋さんが俺たちの関係をよくしようと頑張ってくれるなら、
俺はそれ以上に頑張らなくては。
そうするうちに鶴屋さんの半歩でも先を歩けるようになったなら。
きっと鶴屋さんだって俺のことを頼りにしてくれるに違いなかった。

213 名前:5[sage] 投稿日:2010/03/20(土) 23:44:51.79 ID:BgQph/eG0

キョン「鶴屋さん、そりゃぁないんじゃないですかっ!
    俺だっていろいろ頑張ってるんですから、
    ちっとは褒めてくれたっていいじゃないですかっ」

わざとムキになった振りをするのはゲーム開始の合図であり、
当然ながら受けて立たないわけにもいかない鶴屋さんとの間で
ついに戦いの火蓋が切って落とされた。

キョン「春休みにもけっこーひどいこと言ってくれましたよね。
    あたしの何を知ってるんだとか勝手なことを。
    鶴屋さんだって俺の名前すら知らなかったくせに!」

鶴屋さん「だ、だからそれは……で、でもキョンくんが、
      キョンくんがアホすぎるからいけないのさっ!
      キョンくんがもちょっと賢かったらあたしもあんな風にならなくてよかったにょろっ!
      全部キョンくんのせい! 絶対そうさ!」

キョン「それにしたって鶴屋さん、
    もう少しホントのことを俺に教えてくれたっていいじゃないですか。
    秘密主義っていうのは誤解を招くものなんですよ。
    そういう意味では俺に負けないくらい鶴屋さんだってアホです!」

鶴屋さん「な、なにさなにさ! あ、あたしだって、あたしだってさ!
      もっと早く仲良くなりたかったさ! もっといろいろしたかったさ!
      なにさ! いいじゃん別にっ、上手くできなかったことぐらいさっ────!」

そこまで言ってようやくハタと気づいたのか、
涙を流しつつスカートを握りしめていた鶴屋さんは
うつむいていた表情を再び俺に向き直らせる。

217 名前:6[sage] 投稿日:2010/03/20(土) 23:57:14.22 ID:BgQph/eG0

なんだかとても居心地がよかったのだが、
鶴屋さんはというとバツが悪そうに視線を落としてしまう。

この人の強さってのは、また弱さでもある。
優しい、強い、激しい、明るい。

それはすべて鶴屋さん自身がそうしていたいという姿であって、
そうでない自分が受け入れられてもらえるのか、安心できるのか。

そこまで慣れるにはまだまだ時間がかかりそうだった。

これは俺の問題であると同時に、鶴屋さんの問題でもあって。

そうして抱えた問題に、俺たちはまだ一年生だった。
たとえ鶴屋さんが俺の上級生で、
俺が鶴屋さんより一年長く超常現象を体験していようとも。

俺たち二人のこれからはまだ始まったばかりなんである。

キョン「残念な子なのは、俺だけじゃないみたいですね」

鶴屋さん「キョンくんが……あたしをこんな風にしたんじゃんっ……
      責任取るにょろっ!」

キョン「責任なんか取れません」

俺の言葉に失望するように鶴屋さんは再び唇をきつく結んで押し黙ろうとする。
俺はそんな鶴屋さんに拳を一つ、えいやっとは言わないまでも優しく小さく、
その胸にトンと添える。

219 名前:7[sage] 投稿日:2010/03/21(日) 00:00:11.23 ID:0EgrYtKD0

驚いたような表情で見上げてくる鶴屋さんに言うべきことはというと、
さっぱりすっぱり俺の本心なのだった。

キョン「そのままの鶴屋さんが、俺は好きなんです。
    ダメな子でも、残念な子でも、明るい子でも……激しい鶴屋さんでも」

鶴屋さんの瞳がまん丸に見開かれる。
珍しいものでも見るように、俺のことを見上げてくる。

その視線のくすぐったさといったらなかったが、
それはさておき、締めの句が残っていた。

キョン「俺がどんなにダメな奴でも、ずっと、鶴屋さんの味方です。
    ダメな残念なままの俺でも。鶴屋さんの味方でいます。
    だから、俺と。タッグを結成しませんか?
    辛い立場の、普通人間同盟って奴を」

味方です、の当たりで止めて置いて欲しかったのか、
最後の普通人間同盟を聞いたあたりで鶴屋さんは驚くのをやめて
責めるように俺を睨んできた。それを俺が気にしないかというと、
そんなことはなかった。まだ締めの句は途中なんである。

キョン「不安なのは、同じです。俺だっていついつでも不安げです。
    でもところがどっこい、俺には今心強い味方が居るんです。
    何を隠そうそれが貴女で、そんでもって、
    そんな人がいつか俺を頼りにしてくれたらって思うと。
    胸が踊るような気がします」

鶴屋さん「じゃあさ……一つ約束してよ……」

220 名前:8[sage] 投稿日:2010/03/21(日) 00:10:37.25 ID:0EgrYtKD0

キョン「なんですか?」

鶴屋さん「敬語……やめよ……?」

今度は俺の方が目を丸くしてしまった。
そんな俺の表情の変化に戸惑いながら鶴屋さんはしどろもどろに言葉を続ける。

鶴屋さん「その、あの、なんていうのかな……えっとさ……
      もっと、気さくな感じで、ざっくばらんな感じで!
      その……男らしい感じに……してもらってもいっかなっ……?
      なんか、後ろからついていきたくなる感じでさ……」

ああ、と俺は頭をはたく。
どうも俺は今のいまだに鈍い自分を卒業できていないようだった。

なんとなく不安だが、ここは一つ気を引き締めるしかない。
鶴屋さんの不安の正体というのは結局、
俺の心が揺らがないかどうかという不安なのだ。

不安げな鶴屋さんの表情に向き直って、俺は言う。

キョン「俺たちは……ひょっとしたら。ずっと一緒にいられないかもしれません。
     不安を抱えたまま、続けていくことって……きっと難しいことなんですよね」

222 名前:9[sage] 投稿日:2010/03/21(日) 00:18:02.30 ID:0EgrYtKD0

鶴屋さん「キョンくんをさ、独り占めしたいっていうのは、
      ほんとにあたしの、ただのわがままだからさ……
      まだそういうとこがあるのは自分でもわかってるよ……
      でもさ、お願いだよ……キョンくん……」

ともすれば嗚咽になりがちな息遣いの中で、鶴屋さんは声を搾り出すように言う。

鶴屋さん「あたしと居るときは……あたしだけのキョンくんでさ……
      居てほしいのさ……じゃないと……不安になっちゃうにょろ……
      怖いんだよ……キョンくんと居るのが……でも、でもさ……」

次いで語られた言葉は、この人がずっと抱えてきた本心だと思えた。
それぐらい一生懸命に、鶴屋さんは言葉を選び出していた。

鶴屋さん「一緒に……居たいよっ……すごく、怖いけど……
      そんなの関係ないって……思わせてよ……
      じゃないとまた……逃げ出しそうになるっから……さ……」

まるで別人のように言葉を吐き出す鶴屋さんの、
その胸の内に去来するものは苦痛でも、重過ぎる誓いでもなく、
自分に勇気を与えて欲しいというそれだけの願いだった。

鶴屋さん「そしたら、そしたらさっ! ……な、なんだってできる気がするのさっ!
      なんだってできるって思えるのさ……だ、だからさ、キョンくんっ!
      あたしに勇気を分けて! お願いっ!」

そうして差し出してくる手をすぐさま握り返して、
強引に引き寄せた俺は鶴屋さんをしっかりと抱きしめる。
苦しそうに嗚咽を漏らす鶴屋さんの口を吐いて出る言葉は、とても悲観的なもので。

224 名前:10[sage] 投稿日:2010/03/21(日) 00:21:35.71 ID:0EgrYtKD0

とても悲しい言葉を口にする鶴屋さんの、
すべての不安が胸にしみこんでくる。

それでも俺たちが離れられないことはわかりきっていた。
一度知ってしまった温もりから、逃れられないことぐらい。
鶴屋さんにだってわかってるハズだ。
どれだけ辛かろうと、怖かろうと、悲しかろうと。

離れられない、忘れられない温もりがそこにあるなら。
どれだけ喧嘩をしても、最後にはそこに行きつくと思えるなら。

俺達は今この時を精一杯、守っていかなきゃいけないんだと。
理想を脇に置いてまで守りたいものがあるのだと、そう思えた。

鶴屋さん「……キョンくんっ、お願いだよ……
      一つだけ、叶えて欲しい約束があるのさっ……」

キョン「……なんですか……?」

鶴屋さん「あたしのさ……家族になるって……今誓って欲しいのさ……
      そうすればさ、きっと、きっと不安なのも忘れられると思うにょろっ、
      そーすればさ……信じられる……気がするさっ……」

どうやら恋人気分で居られるのはここまでのようだった。
ここからは、どうやら俺は違う責任を果たさなければいけないらしい。
何を今更、というまでもなく、その為にどこそこ誰の家に向かっているのかは関係なく。

鶴屋さんが俺になって欲しい特別な存在というのは最愛の恋人でも、
便りになる男前でもなかったようだ。

225 名前:11[sage] 投稿日:2010/03/21(日) 00:26:57.33 ID:0EgrYtKD0

ただ単に、家族。それだけだった。

恋人同士を続けていく自信がなくなった鶴屋さんが
唯一続けられると確信するもの。

その答えならとっくに出していたような気もするのだが、
改めて俺は誓いを立てる。

キョン「誓います……そんときは、父親とでも、旦那とでも、なんとでも呼んでください」

泣き出しそうな鶴屋さんの表情がようやく安心したそれに変わる。

そのままきつく抱きしめ返してくる俺と鶴屋さんが歩いていく時間。

それは恐らく、甘ったるいだけの恋人関係なんかではなく、
きっともっと厳しいものになる。

やらなきゃいけないことが山積みで、辛いこともたくさんあるかもしれない。

ただその契約の中に居る限り、俺たちは安心することができる。楽にしていることができる。

その為なら多少の窮屈さは、むしろ気持ちのいいもんだと思えた。

鶴屋さん「そいじゃ、あなたって呼んでも、いっかな?」

楽し気に嬉しげに話す鶴屋さんの表情の晴れやかさと言ったらなかったが、
そこはそれ、一応は呼び慣れた方にしておいてもらった。つまらなそうに唇をとんがらせた後、

鶴屋さん「ま、いいよっ! そのぐらいは譲歩してあげてもさっ♪」

226 名前:12[sage] 投稿日:2010/03/21(日) 00:32:10.93 ID:0EgrYtKD0

そう機嫌をよくしてついに念願の座を勝ち取った実感を得たらしい
鶴屋さんは小さくガッツポーズを取った。

自分の立ち位置を究極的に確かなものとして、
安心しきった鶴屋さんが俺にすることなど決まりきっていた。

照れくさ紛れの殴る蹴る。
さんざん浴びせられながらも、
何もかもが緩みきった鶴屋さんの一撃がそう重いハズもなく。

ぽすぽすと間抜けな音をさせながら
嬉しそうにじゃれついてくる鶴屋さんを見ていると
首にくくられた手綱が手に周り、足に周り、腰に周り、
胴に回って身動きが取れなくなったとしてもそれはそれ、
居るべき場所に居続けられているんだからいいじゃないかという実感が持てた。

時が勝手に進んで行って世界がどれだけ変わろうとも、
変えたくないものがそこにあるなら変えないでいることもできる。
ゆるがせたくない想いがあるのなら、
壁を一つ飛び越えた頼りない足場の上にだって築いていける気がした。

明日の礎を、投げ出すことなく。
二人手を取り合いながら。

そうして歩いていくうちにやがて俺の家の前にまで到着した。
いい加減不安がる時間的余裕もなくなってしまっていた。

キョン「さぁ、鶴屋さん。覚悟はいいですか。二連戦の初戦ですよ。
    ここで慣れておけばきっとあとが楽です」

230 名前:13[sage] 投稿日:2010/03/21(日) 00:43:33.76 ID:0EgrYtKD0

鶴屋さん「そ、そうだね……い、妹ちゃんだって居るし、
      そうさねっ、勝手知ったる我が家だと思えばいいんだからね! あっはっは!
      ところでキョンくん、あたしの髪の毛、乱れてないかな?」

キョン「別に乱れてないですけど」

鶴屋さん「ちょっとこの辺見てくれるにょろ?」

そう言って額の生え際の辺りを指さしている。
俺は少しだけ身を屈めて覗きこむ。

キョン「なにもおかしくないですけど……」

鶴屋さん「もっとよく見て! ほら、この辺とか! ほら!」

キョン「いえ、別に何もな────」

俺がさらにかがんで頭の高さがそう変わらなくなった所で
不意に唇が奪われた。数十秒ほどそうした後で、
新しい俺たちが交わした初めての口づけは
鶴屋さんの「ぷはっ!」というなんとも間抜けな声と共に終わりを迎えた。

キョン「……もうちょっとムードがあってもよかったんじゃないですか?
    不意打ち以外の選択肢もあるでしょうに」

鶴屋さん「いーのっ! これぐらいでっ!
      じゃないと、恥ずかしくってさ! おかしくなっちゃうからね!
      というわけで、キョンくんっ! 気合入れていくっさー!」


234 名前:14[sage] 投稿日:2010/03/21(日) 00:58:27.24 ID:0EgrYtKD0

そう叫びながら戦車のように突撃していく鶴屋さんが
取手に手をかけ勢いよく開こうとした瞬間、
ガチンと金属同士がぶつかる盛大な音がした。

フツーに鍵が閉まっていたようだ。

そのあんまりな惨状で鶴屋さんが発した
「キョンく~ん……」というSOSを受けて
俺はズボンのポケットから自宅の鍵を探り出す。

キョン「後先考えてくださいね、ホントに」

鶴屋さん「たはは……面目ない……」

そんな風に鶴屋さんに謝られつつ鍵を差し込んだところで
突然ドアが勢いよく開かれる。

鍵が開くような音とほとんど同時に飛び出してきた扉を
思いっきり頭にぶつけられた俺はそのまま仰向けにぶっ倒れた。

唖然と俺を見下ろす鶴屋さんの隣、
扉の影から驚きの表情で同じく俺を見下ろしている奴。
何を隠そう残念な俺のそう残念ではない妹だった。

キョン「いきなりドアを開くな……このままだといつか俺は死ぬぞ……」

妹ちゃん「ごめんねキョンくんっ、あ、目の下が黒くない! なんか元に戻ってる!
      よかったねっ、あ、それとお父さんとお母さんがカンカンだったよ!
      どこほっつきあるんてるんだーってさ」

235 名前:15[sage] 投稿日:2010/03/21(日) 01:06:39.69 ID:0EgrYtKD0

鶴屋さん「キョンくん……いつもこんな目に遭ってるのかいっ……?」

キョン「いえ、そんなこともないと、思いますけど……多分……」

妹ちゃん「あ! 鶴屋さんだ! どーして鶴屋さんがここにいるのっ、ねぇねぇ!」

いつぞや雪山で楽しく雪だるまを作りっこした相手、
優しい美人のお姉さんこと鶴屋さんを妹は忘れてはいなかったようだ。

らんらんと瞳を輝かせて俺のことを放ったらかしにしたままはしゃぎ始める。

鶴屋さんの方はというとすっかり懐かしい気分に浸っているのか
妹とそう変わらないテンションで飛びかかってくる我が妹を抱き閉めてくるくると周り始める。
なんとも楽しげで幸せそうな二人を見上げながらなんとも心細いような気分になる。

誰かが間に挟まる限り
こういう邪見にされる日々が待ち構えているような、そんな予感がした。
強く生きざるを得ないくらい、盛大に放っておかれるような待遇が
容易に想像できて俺は痛む頭をそっと撫でた。

まぁそれでも、それはそれでいい風景なんじゃないだろうか。
こうしてなんだかんだで巻き込まれつつ、
今後一切しっとりとしたムードが訪れないのだとしても、
いやまぁそんなことはないだろうが、夜とか夜とか、夜とか。

まぁいいんじゃないか、こういうせわしない感じのほうが。
無駄に腹を探り合うより、絶えず相手を気にかけるより。

ずっと楽で、続けやすいものなんじゃないかと。なんとなくそう感じた。

238 名前:16[sage] 投稿日:2010/03/21(日) 01:16:38.86 ID:0EgrYtKD0

こんな感じで明日が続いていけばいい。
そうだな、これなら無理をしなくてもいい気がする。
どっちが頼るとか関係なく、当たり前のようにそこに存在することができる。

そういう時間と空間を、俺は手に入れたのだ。

朝起きたら鶴屋さんが隣で寝ていることが当たり前になるような、
そんな時間と空間を。そういうことなら俺ももう少し、肩肘張らずにいられるかもな。
無理せず、楽にしたままでよ。

鶴屋さん「キョンくんっ、ぼさっとしてないで早く起きるっさっ、
      なんでも妹ちゃんが一風変わったチーズをご馳走してくれるそうだよっ
      楽しみだねっ♪」

それはおそらく父親の酒のつまみだとは思うのだが、言わないでおいた。
鶴屋さんがなんか気に入りそうな気がしたからだ。理由はわからない。
ただなんとなく予感がしただけだ。

キョン「それ多分スモークチーズじゃないでしょうか。チーズを煙でいぶした奴です」

鶴屋さん「そうかいっ、それは楽しみだねっ! あ、ところでキョンくんっ」

俺に言葉をかけた後で家の中を覗き込み妹が近くに居ないことを確認し、
そっと小声で囁くように鶴屋さんが俺に尋ねて来る。

鶴屋さん「ところでさっ、あたしが好きな人って、誰だか知ってるにょろっ?」

俺は呆気に取られてキョトンとしてしまう。
いついつだったかあの時の、あの質問の答えが今、明かされようとしていた。

240 名前:17[sage] 投稿日:2010/03/21(日) 01:26:02.43 ID:0EgrYtKD0

鶴屋さん「あたしが好きな人は────キョンくんさっ! 知ってたかいっ?
      にゃっははっ♪」

そう言って笑いながら扉の影へとひっこんでしまう。
そんな風に言われたら、笑ってしまう他ない。追いかける他ない。

扉をくぐって限界に出た俺を誘うように、
招くようにスキップを踏む鶴屋さんの後を追いかけて、
嬉しそうに振り返って俺に笑いかけてくれるその向日葵みたいな笑顔に誘われて。

追いかける俺から逃げるように飛び跳ねる鶴屋さんの軽快さに翻弄されながら。

たまらなくくすぐったそうにする鶴屋さんをようやく捕またと思ったらまた逃げられて。

そうしてキッチンでようやく鶴屋さんを抱きしめたときに
不意に俺の目に飛び込んできた妹のキョトンとした瞳。

勝ち誇ったような邪悪さを含んだ笑い声を上げて、

鶴屋さん「まっ、そーゆーことさ! よろしくねっ、妹ちゃんっ!」

と改めて挨拶をした鶴屋さんは見せつけるように俺に額をすりよせてきた。

妹の顔がみるみるうちに赤くなっていく。
肉親のこういうシーンを見るというのがどれだけ気まずいもんなのか、
一体全体どういう心地なのだろうか。

俺にはまだわからない感情である。妹がもうちょっと成長したころには
わかるのかもしれないが、今の俺にはとてもわかってやれそうもない。

244 名前:18[sage] 投稿日:2010/03/21(日) 01:39:21.58 ID:0EgrYtKD0

キョン「まぁ、そういうことだ……」

どういうことだ、までは言わないが、
結果だけは理解したらしい妹はこくこくと数回首を縦に振る。
おれがおかしかった理由も春休み中に何度も出かけた理由に納得してもらえたようだった。

余計な説明の手間が省けたのはよかったが、さてどうしたもんだろう。

ゴロゴロと甘えてくる鶴屋さんは、
自分の親の前でもこんなテンションで居るつもりなのだろうか。

それはそれは恐ろしい光景が広がるのか、あらあらまぁまぁと
微笑ましい光景が広がるのかは未知数であるものの、
まぁなんとかなるんじゃないだろうか。鶴屋さんの親なんだ。
どーせちゃらんぽらんに決まっている。

鶴屋さん「でさっ、キョンくん……も一ついいこと教えておいてあげるねっ
      あたしの親は実はすっげー厳しいからさっ、覚悟しておいた方がいいにょろっ」

とんでもない事実をさらりと告げられて額に油汗が浮かんでくる。
そんな俺の反応を見て「にししっ♪」と嬉しそうに笑った鶴屋さんが、

鶴屋さん「嘘だよっ! うちの親はむちゃくちゃちゃらんぽらんなのさ!
      きっとキョンくんのことも気にいってくれって! なははっ♪」

という言葉にまともに返事も返すことができないまま、あぁとかうぅとか呻きながら
想いを馳せた未来の景色。鶴屋さんが居る世界。俺の隣に居る世界。

朝起きたら鶴屋さんが隣で寝ていることが当たり前の世界。

246 名前:19[sage] 投稿日:2010/03/21(日) 01:54:24.02 ID:0EgrYtKD0

それを思い描くだけで俺の不安は吹き飛ぶのだった。
少々の困難ぐらい、むしろ上等だとさえ思える。

ただ締めるべきところは締めておかないとな。

俺は鶴屋さんの額をぴしゃりと軽くはたいて
「うにゃっ!」と声をあげた鶴屋さんが額をさすりながら
責めるような視線を送ってくるのも構わずに俺は言う。

キョン「もうちょっと、やさしく扱っていただけませんか?
    そこだけです、俺があなたに望むのは」

そんな俺の言葉を受けて「ごめんごめんっ」と調子に乗っていた自分を
素直に反省した鶴屋さんは呟くように言う。

鶴屋さん「じゃっ、あたしのこともそーしてもらおっかなっ、
      その為にはほらっ、態度で示さないとね」

そうして肩手を自分の腰の回したまま唇を数回指先で打つ。
妹が目を丸くして硬直しているのも構わずに、
ねだられたなら応えるしかない俺は大人しくそうする。

そうして重ね合わせた唇の甘ったるさと言ったらなく、そして、
重ね続けている限りは囁くことができない言葉のもどかしさったらなかった。
唇を話した鶴屋さんが開口一番俺に言い放った言葉。

鶴屋さん「キョンくんっ、愛してるよっ!」

それに俺が同じ言葉を重ねたのは、ねだられたからでもなく。

247 名前:20[sage] 投稿日:2010/03/21(日) 01:58:52.67 ID:0EgrYtKD0

気遣う為でも、ましてや手段や犯行としてなんかではなく。
俺の正直な想いとして、伝えるのだった。

キョン「俺も、愛してます」

「百二十点!」と叫んだ鶴屋さんが俺に抱きついてくる。

なんとも気まずそうなに困ったような表情を浮かべる妹を気の毒に思いながら、

何度も何度も同じシーンを繰り返しながら。

こうし続けていれば見られるかもしれないな。


いつか、夢の続きを。

俺と鶴屋さんが並んで立った、春休みのあの日々の。

250 名前:21end[sage] 投稿日:2010/03/21(日) 02:08:37.76 ID:0EgrYtKD0

夢のような日々の続きを────。



鶴屋さん「めがっさおつかれっ! キョンくんっ!」

きつく抱きしめねぎらってくれる鶴屋さんのいい香りと、深い優しさと。

惜しげもない愛情に包まれながら、俺は。


そんな風に思った。










tomorrow is for ever. look inside now.

252 名前:都留屋シン[sage] 投稿日:2010/03/21(日) 02:13:25.64 ID:0EgrYtKD0

長々とエピローグをつづってしまいましたがここで一旦幕引きにしたいと思います。
なんだかんだで方向を見失いつつも
この場で追記できて良かったと思っています。
もうちょっと居ますので何かおっしゃりたいことがあればなんなりと。
できるだけお答えしていこうと思います。

257 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/21(日) 02:25:39.97 ID:0EgrYtKD0

>>254
それは想像するだけで笑えるシーンですがw
その場合人物を創作することになるのでまーちょっとややこしいことになりますw
原作でもあえて触れられていない部分だと思いますので
ちょっと手を出しにくい感じです。やれるにはやれますが、一応寝る時間なので。

これで2chに投稿最後にするつもりでしたがなんだかんだでまだやれそうな自分がいるのが恐ろしいです。

259 名前:都留屋シン[sage] 投稿日:2010/03/21(日) 02:37:18.82 ID:0EgrYtKD0
mixiやらpixivなんかでもあんま熱心にやってないですが
基本同名で活動してますのでハンドルでググったら普通に検索で出ると思います。
何やってるかちょっと観察してみたい、という方は探していただけると
すぐ見つかると思います。ほとんどまだ何もやってない状態ですけど。
それでもよければぜひ。
ではまたいつかノシ ありがとうございました。

270 名前:都留屋シン[sage] 投稿日:2010/03/21(日) 07:59:31.28 ID:0EgrYtKD0
朝っぱらながら目が覚めてしまったのでちょこちょこレスをば

272 名前:都留屋シン[sage] 投稿日:2010/03/21(日) 08:51:40.87 ID:0EgrYtKD0
>>271
実は裏テーマというか大量の仕込みをしていたのですが、
なんとなく言わないままの方がいいかなーとは思って
たんですが言わないでおいた答えをざっと書き込んでみます。
ともすれば散漫になりがちな文章ですのでまとめるまで少し時間をください。
あとアニメを、今、見ているので、すいませ(ry


以下その他のレスをば

>>268
今日書けて良かったです、
ありがとうございました。行ってらっしゃいませノシ

>>269
鶴屋さんの可愛さは正義w
まぁそうですね、会話の端でも見えれば
そこから読み取れるものもあるんですけどw


他にももうちょっと考えたいレスがあるのでまた

275 名前:都留屋シン[sage] 投稿日:2010/03/21(日) 09:22:10.36 ID:0EgrYtKD0

散漫な文章ですがつらつらと思ったことを書き上がった順に投稿していきます。

なぜに二次創作でこの分量で、
なぜにキョンと鶴屋さんで、
探偵もので恋愛ものかと言いますと。

前回、作品を書き終わって胸の内に去来した感情が発端となっています。
この物語に先はあるのか? と。文脈上あることにはなっていますが、
際限なくあの続きを書くことはありえないわけで、
物語が進めば進むほどに敷居が上がって行ってしまう構造にもやるせなさを感じていました。
このままだとデータの海に沈んでいったそれこそ単なる過去ログに過ぎず、
なら別の形でそこに価値を与えることができるのではないかと思い
純粋に自分が書いてみたいというアイデアの後押しもあって
反転構造を意識しながら描きました。当然ながら恋愛ものとしての筋は通したままで。

文章にすれば
前回は 鶴屋さんがキョンを好きになった物語 で、
今回は キョンが鶴屋さんを好きになる 物語 です。
「好きに」という目的部分を残したまま意思決定の主体や時系列を入れ替えました。

そうすることで場面に説得力が生まれればいいと。
あの時間の輪という設定はそのまま二次創作という
活動に対する昔からの疑問から生まれました。

パラレルワールドは=ここだけの話。 記憶改竄は=ここまでの話。
というように解釈していただきたいです。当て馬に関しては
恋愛ものにありがちな主人公を忘れて別の人を好きになる、もとい作者が
そうさせるある種の回避行動、とまで言うのは酷でしょうが見えざる神の余計なお世話のことです。
つづく

276 名前:都留屋シン[sage] 投稿日:2010/03/21(日) 09:36:47.83 ID:0EgrYtKD0
>>274 モチーフに関しては実は、ないんです。まったく。
何かを参考にすることもありませんでしたし、
ただ結末まで必要な過程を盛り込んで行く上で物語の原型として
同じ道筋を辿ったのかもしれません。

匂い、肌触り、味覚をプッシュしまくったのは無機性と有機性を区別する為で、
容姿や言葉という普遍的な要素、感情に因らない無機的な要素と
それを土台として表現される有機的な要素をどうしても含みたかったからで、
性描写にまで踏み込んだのもそれ故なのだと今振り返ると思う次第です。

最初の一回目は単純に前回要望があったからなのですが、
二回目は物語上の必然として意識しながら書きました。
肉体的な接触の後で精神的な繋がりを取り戻す過程に
キョンが暮らす灰色の世界=無機的な物質の世界の上に
深緑色=鶴屋さんの感情を乗せることが欠かせなかったんです。
つづく

277 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/03/21(日) 09:42:18.64 ID:0EgrYtKD0

恋愛ものの類型、一人主人公対多数ヒロインのシチュエーションの中では
必ず報われない結末というのがあって、それは最初に提示された

作品単位のヒロイン と
物語単位のヒロイン の相違が生み出しがちな軋轢、

例えば作品全体(シリーズ)を通してのヒロインはハルヒですが、
物語単体(ストーリー)として例えば消失のヒロインが長門であるように、

潜在的な欲求、誰とだれが結ばれて欲しいという願いと
作品の前提として作者と読者の間で結ばれる約束事、
誰がヒロインであるかと読者の欲求の相違、それが最大の障壁でもありました。

279 名前:都留屋シン[sage] 投稿日:2010/03/21(日) 09:51:33.09 ID:0EgrYtKD0
鶴屋さんの罪悪感というのは物語の枠の上ではそれで、
現実世界を含めれば単純に
「自分の想いが報われると大切な誰かの気持ちを踏みにじるのではないか」
といういろんなヒロインを支持する人達のジレンマというか、やるせなさを代弁すると同時に、
鶴屋さん自身が持つ常識的な感覚と抑えられないほどの欲求がぶつかることで生じる変化。
そのテーマを正面から見据えない限り絶対自分は納得し切れない。その一念を抱き続けることで
鶴屋さんとキョンの直接対決という難しいシーンも乗り越えられた気がします。
あれは本当に大変でした。ながらも向き合う価値のあるテーマでした。

280 名前:都留屋シン[sage] 投稿日:2010/03/21(日) 10:02:33.71 ID:0EgrYtKD0

普遍性に関しては意識しています。
だからこそ前回、自分の趣味を全面に出したことを反省するというか
補完する意味もあって鶴屋さんが好きな人だけでなく
そうじゃない人達にも支持してもらえるような、
そういう激しい山と誰にでも起こりうる問題を乗り越えることで
新しい可能性を提示することが今回の最大の狙いでした。

そして、それは二次創作という媒体の中でできうる限界というか
どこまでやっていいのかという限界意識との戦いでもあったわけで。

キャラクターに歩み寄ってもらった前回の反転、
今回はどれだけキャラクターに歩み寄れるか、それもテーマの一つでした。

281 名前:都留屋シン[sage] 投稿日:2010/03/21(日) 10:10:26.73 ID:0EgrYtKD0
いろんな作品を見て行くことで抱えていく疑問、
サブヒロインを好きになる度に抱えて行くやるせなさ、
どうして許されないのか どうして許され”ていない”のか。
そういう疑問に対して一つの答えを出すことが目標でしたが、
これはやはり永遠のテーマなのだなと痛感させられることもありました。
それでも一方、際限なく傷ついていく中でどうしても失ってはいけない感情があり。
好きだという純粋無垢な気持ちを傷つき倒れていく中でも持ち続けることができるのか。
憎しみや狂気に走ることなくどれだけ誠実でいられるか。キョンが怪人になりかけたのにはそういった意味があります。

282 名前:都留屋シン[sage] 投稿日:2010/03/21(日) 10:18:24.05 ID:0EgrYtKD0
守り守られる関係の中で対等になれればきっと乗り越えられるだろうと思い、
その一つの答えとして家族という結末に至りました。
即興のエピローグを通してその答えに至ってから鶴屋さんが突然生き生きし始めたのには
その答えが間違っていないと思わせてくれるくらい書いている自分でも驚きを感じました。
安心できる場所があれば、きっとなんとかなるんだと思います。
そうした感傷と感情を込めて、結末の後に導き出せた答えに私自身安心感を覚えます。
結末を描き切ってもなんだかんだでまだ物足りなかったわけです。
そうして描くことができて本当によかったと思います。

283 名前:都留屋シン[sage] 投稿日:2010/03/21(日) 10:28:58.86 ID:0EgrYtKD0
前回と同じ山を違った道順で、
時には険しい道筋を辿りましたが、
頂上に着いた後はゆっくりと身体を休めて、
そして坂を下って元々暮らす場所に帰っていって。

最初に時間の輪が閉じた時点を見ていただけるとわかる通り、
視点の時系列をズラして部分的に切り取るなら、
ハッピーエンドがバッドエンドになり、
バッドエンドがハッピーエンドになり、
そうした永遠に続くであろうやるせなさの循環の輪から
抜け出してキョンと鶴屋さんが自分たちだけの世界を
築くことができたことが救いなのだと、
今改めて意識しているところです。

それができてようやく、パワーバランスを超えた絆というものが築けるのだと。
うつろっていく時間の中で唯一変わらない関係を築くことができるのだと思います。

284 名前:都留屋シン[sage] 投稿日:2010/03/21(日) 10:34:35.75 ID:0EgrYtKD0
まだ語っていないことはありますが、
一番言いたいことは言えたのでこの場で置いておきたいと思います。
自分も身体を休める番だと思いますので。
この場限りで終わってしまうのは残念ですが、
興味がありましたら名前で検索してみてください。
きっとこの名前を使い続けると思いますので。

286 名前:都留屋シン[sage] 投稿日:2010/03/21(日) 10:39:52.30 ID:0EgrYtKD0

そんな感じで、
いろんな機会を築いていけたらいいと思っています。

一応どこぞに投稿しようかと思っていた一次創作の方も
推しに推してますので(汗

まぁなんとか、します。がんばって、無理でも次もまたやります。

そんな感じでいろんなことが続いていけばいいと思っています。

私のまとめは以上です、
読んでいただいてありがとうございましたノシ

まだ答えていないレスはもちょっとまとめてからしっかりしたいと思います。
落ちるまではちょこちょこ覗いていますので、何かありましたらどうぞ。ではノシ

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