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>>181様 特攻服は袴に勝てない
181 :sage]:2008/05/07(水) 17:22:22 ID:h9D3/2Ui
秀吉と明久のが出来たんで投下するよ
組み合わせが組み合わせなので駄目な人はタイトルをNG登録して下さい
秀吉と明久のが出来たんで投下するよ
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182 :特攻服は袴に勝てない[sage]:2008/05/07(水) 17:23:57 ID:h9D3/2Ui
「召喚獣を操作したい?」
「うむ」
今日の授業も終わり、僕こと吉井明久と坂本雄二が帰る準備を始めたところに、
クラスメイトの木下秀吉が持ち掛けてきたのは、召喚獣に関する話だった。
「もっと細かく動かせるようになりたいんじゃよ。
雄二、お主の白金の腕輪なら、召喚フィールドを作り出せるじゃろう?」
「まあな。だけどこの時期にか? もうじきテスト週間だってのに」
確かに。周りを見回しても生徒はもうほとんど残っていない。
テスト前だけあってみんなも真面目になっているのだろう。
……普段の馬鹿騒ぎに使う時間と勉学に励む時間、
F組の面々ではその二つに差があるのか、正直、悩むところではあるけれど。
「だからこそじゃ。腕輪を使うと点数を消費するのじゃろう。
今なら多少の無駄使いを乞うても許されるのではと考えてな」
「でもさ、テストが近いなら僕らも召喚獣より勉強を優先するべきじゃないの?」
「「……………………」」
「え? なに、その世界の終わりを見るような顔」
「いや……正論だな……ああ、きっと……多分……」
「すまぬ……言われてみれば……少々無茶な頼みだったかもしれん」
目の前の二人は言う。強い戸惑いの陰に凄まじい悔しさを滲ませて。
どうして二人ともダメージを負っているんだろう。
そしてその姿に僕の心も傷ついている気がするのはなんでだろう。
「なんて、いくらなんでも今日の残り時間を勉強だけして過ごすのは流石に辛いしね。
僕は雑用でよく出してるから慣れっこだけど、二人には息抜きになるんじゃない?」
「……ああ!
そうして今日も勉強しませんでしたってオチなんだよな、全部分かってるぜ俺は!」
「そうじゃな! 勉強など無駄と断じるその性根、それでこそワシの知る明久じゃ!」
雄二と秀吉に笑顔が戻る。あはは、僕まで嬉しくなっちゃうな。
「あれ? だけど召喚フィールドが必要なだけなら僕は必要ないのか」
「…………待て」
と、背後から袖を引っ張るのはムッツリーニ。僕らの話を聞いていたらしい。
「…………今日は用事がある」
「うん? それなら僕もムッツリーニと先にかえ……」
「…………明久まで帰ったら、秀吉は雄二と二人っきりになる」
「………………」
僕は一瞬でムッツリーニの言わんとしていることを理解した。
雄二の言動には、未だに秀吉を『秀吉』と認識しているとは言い難い面が見受けられる。
友人が無自覚のセクハラ行為に及ばないよう、僕には二人を見守る義務があるのだ。
「助言をありがとうムッツリーニ……浅はかだった僕を許してくれとは言わない、
その代わりきっちりと役目を全うしてみせるよ……!」
「…………(コクリ)」
「なにやってんだ明久。とりあえず空き教室に行くぞ」
雄二からお呼びが掛かる。臨むところ、アイツの不埒な真似は一切として許さない!
無言で見送るムッツリーニに、僕は親指を立ててその場を後にした。
183 :特攻服は袴に勝てない[sage]:2008/05/07(水) 17:24:42 ID:h9D3/2Ui
「騒ぎさえ起こさなければ教師に捕まることもないだろ……よし、起動」
召喚フィールドが展開された。
早速秀吉が試獣召喚と唱え、召喚獣が現れる。やっぱり本人に似て綺麗だなぁ。
「どうじゃ明久、お主もやってみんか?」
「僕も?」
「二重召喚はあまり経験がなかろう」
二重召喚。それについては秀吉の言うとおりだ。
そうだよなぁ……雑用を任されても二体呼び出す機会はそうないだろうし。
細かな操作が利くというせっかくの利点、二重召喚でも活かしたい。
「いいんじゃねぇの? 何か減るでもなし、使ってみろよ」
「うん。それじゃ……二重召――――」
「……見つけた」
「げっ! 翔――――がっ!?」
僕の召喚獣が現れようとしたそのとき、召喚フィールドが揺れて消えた。
「え……えええ!?」
そして異変。
僕の白金の腕輪が突如として発光を始める。な、なにこれ……!?
「なんじゃ、どうしたのじゃ!」
「わ、分からない、初めてだよこんな現象……は、ぁぁ……!」
心臓が高鳴り、その震えに同期するように意識が遠のいた。
何が起きようとしているんだ……僕、どうなっちゃうんだ……?
「明久? 明久っ!」
感覚の鈍くなった僕の身体に、秀吉の腕が添えられる。
すると途端にその顔が苦痛に歪んだ。まさか巻き込んでいるのか!?
「ひ、秀吉、離れ……っ」
「これは……一体……っ――――」
「……今日は一緒に帰るって約束した」
「そうだったか!? いつもそんなこと言って俺を追いかけ回してるような――――
いだだっ! そうだった!
約束してたから離せ、この頭蓋骨に食い込む指先を離して下さいお願いします!」
「……逃げられないようにこのままお持ち帰り」
「男女揃って色気のない帰り道だなおい! 悪い二人とも、俺先に帰痛い痛い痛い!」
腕輪から漏れる光が強くなかったせいか、
それともあちらの取り込み具合もこちらに負けていなかったからか、
二人は僕らの異変に気付かずに騒ぎながら教室を出て行った。
……でも仕方なかったのかもしれない。
僕らは大怪我を負ったわけでもなく、ただ二人そこに立ち尽くしていただけなのだから。
雄二と霧島さんが去ってしばらく後、僕と秀吉の身体は静かに崩れ落ちた。
まるで糸の切れた人形のように、身体を床に沈ませる。
僕は、僕の意識はそれを見ていた。
自分たちが気を失って倒れる一部始終を、普段よりも低い視点で。
「…………そんな」
自分の腕を、服装を見る。制服ではない、しかし見慣れた特攻服。
信じられないけど、間違いない。僕は今、自分の召喚獣になっていた。
「……あき、ひさ?」
そう、秀吉と、一緒に。
184 :特攻服は袴に勝てない[sage]:2008/05/07(水) 17:25:20 ID:h9D3/2Ui
「あるんじゃな……こんなことが」
自分の身体をまじまじと見つめながら秀吉は呟いた。
僕も驚きだった。まさか召喚獣と一体化してしまうなんて。
過去に類を見ない体験だけど、口を利けるのはありがたい。秀吉と状況分析ができるし。
「目の前に身体があるのにね。完全に意識を失ってるみたいだ」
慣れ親しんだ『吉井明久』の頬を叩いてみても、何の反応も返さない。
さすがに死体ではないみたいだけど。
未だに光の収まらない白金の腕輪が少しだけ不気味だった。
「とりあえず先生を呼んでこようか。秀吉、ちょっと待っててね」
「ああ、すまぬな」
「それじゃ―――― ぶへっ」
都合良く廊下を先生が歩いていればいいけど、居なかったら職員室かな。
そう思って歩き出した僕は、しかし突然見えない壁にぶつかった。
パントマイムのように手で探る。一見虚空のそこには、やはり透明の何かがあった。
「何をしておるんじゃ? …………うむ、これは……」
僕の様子を訝しがった秀吉も、それに触れて顔をしかめた。
僕らの本体を見ながら、見えない壁をなぞって歩く。
「……どうやらお主の白金の腕輪を中心に、召喚フィールドが形成されているようじゃ」
「えぇ! 雄二の腕輪じゃなくて僕の腕輪から!?」
「原理その他諸々についてはさっぱりじゃが、一種の暴走かもしれぬ。
召喚獣になってしまったワシらは、そこから出ることができないらしい。
……本来の召喚獣のように消えてしまうよりは良かったが、ううむ、これでは……」
「助けを呼べない、のか」
「理解が早くて助かるのぉ」
だって人を呼ぼうとした矢先にこれだもの。僕にだって分かるさ。僕に、だって……。
「うむ? 難しい顔をしておるがどうしたのじゃ?
しかしこの状況を第三者に伝える方法はないものかの……そういえば」
「まぁここは学校なんだし、そうそう悪いことは起きないでしょ。
誰かが通り掛かったら叫んだりなんだりすれば、すぐに助けて貰えるよ」
眠ったままの本体に悪さをするような人もいないだろうし、
仮に眠る秀吉に良からぬことを企むヤツが現れたら、召喚獣の力で撃退してやるさ。
そう思って変態面をした仮想敵(何故か見覚えのあるソフトモヒカンをしていた)
をイメージして素振りを行う。よし、気概は十分だ!
「……それも、そうじゃな」
少し考える素振りを見せたけど、秀吉も僕の考えに賛同してくれたみたいだった。
185 :特攻服は袴に勝てない[sage]:2008/05/07(水) 17:26:04 ID:h9D3/2Ui
「だけど変なことになっちゃったね。どう秀吉、召喚獣は上手く動かせる?」
「今や自分の身体じゃからな。しかしこれでは普段の操作とまったく違うのぉ……」
屈伸運動をしながら呟く。
うーん、もともと秀吉が予定していたであろう展開からは大きく外れちゃったしなぁ。
せっかくの召喚獣体験なんだし何か実になることがあればいいんだけど……。
「しいて言えば頭身がおかしいせいで頭上に手が回らんのがな」
「それは体格的に無理だよ。何? 頭を掻きたいの?」
かゆいところに手が届かないのは地味に嫌なものだ。
「ちょっとしゃがんで。触ってあげる」
「いや、そういう訳では……」
なかなか首を曲げてくれない。仕方ないのでつま先立ちで頭頂部に触れる。
「む、う……む」
「秀吉?」
「すまぬ……この身体のせいか、なんとも言い得ぬ感覚じゃのぉ……」
わ、耳がぴこぴこ動いてる。
ぴこぴこって表現も変かもしれないけど、そんな音がしそうな動作ということでひとつ。
「……ん」
「…………」
……待って。断じて変な気分にはなっていないよ?
さっきから心をくすぐられているようだったり、小さく漏れた声にどきりとしたり、
ああもう召喚獣になっても可愛過ぎるよ抱き締めちゃおうかなんて、これっぽっちしか!
「も、もうよいぞ明久、十分たんの―― 気持―― すっきりしたでな!」
あ、残念。秀吉は僕から逃げるように距離を取ってしまった。
だけど今、口に出し掛けたのは、キモ……じゃないよね? よね?
「ならいいけど。それじゃ話でもしながら時間を潰そうか」
「うむ、そうするかの……」
そう言って秀吉はその場に座り……と思ったら、
途中まで曲げた膝をそのままに僕を一瞥すると、
おぼつかない足取りでこちらに来て、僕の隣に座った。
なんだろう今の不自然な動き。召喚獣だからやっぱり勝手が違うのだろうか?
「もし具合が悪かったら言ってね。大したことはできないと思うけど」
「それはない。安心せい」
目を逸らしながら言われても判断に困る台詞だけど。
でも演劇塊の魂……逆だった、の秀吉が見るからにおかしいというのは、
やっぱりただごとじゃないのでは……横目で秀吉の様子を窺う。
「……明久!? 鼻から血が噴出しておるぞ!」
「ごめんねごめんね心配してたんだけどほんとごめんね」
袴! 袴の側面の隙間から、白衣に隠れた太ももがちらりと!
くっ、正気を保つんだ僕! 秀吉の足ならプールでじっくりと舐めるように見ただろう!
おまけに今は召喚獣だ、この頭身に欲情するってどうなのよ人間として!
「そういう問題じゃないんだ、秀吉にこの衣装は反則なんだぁぁぁぁ!!!」
「しっかりせい! さっきから何の話をしておるのかさっぱり分からんぞ!」
この子悪魔! 無自覚に僕を誘惑しようとしてもそうはいかないぞ!
せめて十秒……否、十五秒は耐えてみせる!
「だから今すぐ結婚しよう! その格好で神道的にバージンロードだ!」
「とにかくお主が何かに負けたのは察したのじゃ―――― !?」
なんて馬鹿騒ぎの最中、僕が秀吉に詰め寄ったのがいけなかったのだろう。
背後に反った秀吉は、普段と違う体格のためか、体勢を崩して後ろに倒れた。
咄嗟に右手で僕の襟を、左手で肩を掴んで。
お互いの召喚獣の力は比べるまでもない。僕らは仲良くその場に倒れ込んだ。
186 :特攻服は袴に勝てない[sage]:2008/05/07(水) 17:26:56 ID:h9D3/2Ui
「あのぅ……秀吉?」
「…………」
どうしよう、何も言わない。
頭を打ったりはしていないと思うけど。僕の腕を挟み込んだから。
しかし今の姿勢、まるで僕が秀吉を押し倒したみたいだよなぁ……不謹慎かな。
「のう、明久」
「は、はい! 何でしょう!?」
「……疚しいことを考えておったな」
うぅ、見抜かれてる。
この緊急事態においても逞しい僕の下心だ、呆れるのも当然か。
そして秀吉は僕の身体を離さずにぎゅっと―――― あれ? ぎゅっ?
「明久……」
耳元で名前を囁かれて、一気に血が昇る。
なななんだっだっててんだええぃ……! 落ち着け素数を数えるんだでも素数って何!?
「召喚獣になったからか、ワシも何処かおかしいらしい……」
「お、おかしい? ……具合が悪いってこと?」
「さてな……具合か、理性かもしれん」
ちゅっと乾いた音が頬から鳴った。
……………………ああ事故か、事故だよね?
何を取り乱しているんだ僕は。こんなの事故事故事故事故事故事ちゅっガはっ!
「ひぃ、ひでよっし! 待って待ってストップフリーズここが夢見た理想郷!?」
「……止めて欲しいと? ……無理じゃよ、精神的にも物理的にものぉ。
諦められなければ古典8点の力で抗って見るがよい。すぐに結果が見えよう」
……あれ? その点数、秀吉に教えていたっけ? 前回に輪をかけて悪かったのに。
「白金の腕輪の上にぼんやりと浮かんでおった。
ワシとの戦力差、聞いておきたいかのぉ?」
言って唇で頬骨をなぞり首筋に来ると、より一層強く吸い付かれた。
肩にあった秀吉の腕は、いつの間にか僕の背中に回り完全に拘束している。
それら事実が僕の心臓に火をつけて血を焼いて―――― 頭がぼおっとする。
「……したい」
「ひ、秀吉」
「お主と、疚しいことがしたいのじゃ」
もう頭身が何だと言っていた僕は忘却の彼方にあり、文字通り悩殺された僕が残る。
目の前に居るのは僕の友人木下秀吉の、だけど記憶の何処にもない蠱惑的な態度。
知らない世界に、気が狂いそうだ。
「それでも嫌なら、どうしても嫌なら、ワシにこうさせた今までを全て否定するのじゃ。
可愛いと、嫁や婿やと言った今までの言動を否定して……本当のことを言うんじゃ」
「…………」
「何もかも冗談じゃったと。実際に近付けば、触られてみれば、本当は、
本当は本当は本当は―――― 木下秀吉は気持ち悪いと、口にするんじゃ明久……!」
「いやだ」
自然と口に出していた。何も考えていなかったのに、それだけは考えられなかった。
泣き声を含んだ言葉尻を哀れに思ってとか、同情も憐憫も一切として関係なく、
僕は、秀吉の言葉が全く以って見当外れだったから、当たり前のように否定していた。
「……ならば、ワシは過去に倣いお主を諌めたりはせん」
背中に回した腕の先で僕の後頭部を掴んで、もう片腕で顎を固定して、
「お主の全てに木下秀吉という名の傷をつけよう。普段のワシの苦労を思い知るが良い」
にこりと凶暴に笑うと、噛み付くような口付けが始まった。
187 :特攻服は袴に勝てない[sage]:2008/05/07(水) 17:27:34 ID:h9D3/2Ui
「はぅ……む、ん……」
吐息が流れ込んでくる。匂いなんてない筈なのに、どうしてか甘いと感じてしまう。
「……塩の味がするのう」
「ええっ! 僕の食生活って召喚獣にまで反映されてるの!?」
「嘘じゃよ。ただ本物ならそうなのじゃろうかと想像しただけじゃ。
ワシも仮初の身体じゃからの。変な匂いがしないと安心できるのは嬉しいことじゃ」
「……なんとなく、するけど」
「なんと! 何処からじゃ、ワシの何処がどう匂う!?」
「うん、そこはかとなくジャガイモの芽の匂いが」
「……この期に及んで、でまかせも大概にせんか!」
キスが再開された。
今度は啄ばむように唇が動いて、その度にちゅっちゅっと音が響く。
顎に添えられていた秀吉の指は、今では僕の背中を這っていた。
……ていうか、どのタイミングで服の中に侵入したんだ……気付かなかった。
「ん……えっとさ、秀吉」
「うんっ……どうしたのじゃ?」
「僕も秀吉の身体、触っていい?」
「…………」
ぴたりと指先が止まる。予想以上の反応だった。
いつも男としての扱いを希望している秀吉だから、
もしかしたら何の抵抗もないかと思っていたけど。
「やっぱりダメ?」
「ま、待て……あらためて許可を問われるとな、返答に困るのじゃ」
「恥ずかしがるのは新鮮だね。大抵は無頓着だったから」
「……男同士でも、素手で身体をべたべたとは触るまい」
そりゃそうだ。
でも秀吉が先に触っていたのは蒸し返さないでおくべきだな。気持ち良かったし。
「つまりわざわざ尋ねるのは羞恥プレイみたいで反則だってことだね?」
「どうしてそうな……いや、あながち外していないかもしれんが」
「じゃ、勝手に触る」
「――――っ!?」
白衣の内側に手を入れて、左手を背中に回し背骨をなぞってみる。
必然的に僕から見て秀吉の左上半身が外気に晒された。
今回はじっと見てもいいよね……ムッツリーニ、死ななくて良かったなぁ。
「明久、そうとっくり見つめられると恥ずかしいのじゃが」
「えっ、僕だと嫌なの!?」
「お、おおお主だから、意味合いが違ってくるというか」
……これは僕にもっと見て欲しいというメッセージに違いない。
よって見る。穴が開きそうなほどに見る。見て見て見て―――― 舐める。
「ひっ!? ……っ!」
「くすぐったかった?」
「こういうことをされるとは思ってたんじゃがっ……ふ……むっ……!」
胸の辺りに舌を這わせる。
くすぐったがってるのか感度が良いのかは分からないけど、反応が可愛いから止めない。
ついでに甘噛みをしてみた。背中で跳ねた。と、突然だったから驚いた。
「やはり鬼畜じゃ…………お主に掴まりたくても、
頭を拘束してそこから動いてくれなくなったら本末転倒……どうすれば……」
どうやらここを舐められるのは辛いらしい。名残惜しいけど仕方ないか。
188 :特攻服は袴に勝てない[sage]:2008/05/07(水) 17:28:21 ID:h9D3/2Ui
口を離して秀吉と目線を合わせる。
「じゃあさ、またキスをしよう」
秀吉は息を呑むと、顔を逸らしつつも頷いてくれた。
今度は僕から唇を重ね―――― ようとしたところで、身体が半回転する。
「いたっ……!」
手首を床に押さえつけられた僕の上には、秀吉が覆い被さっていた。
はだけた白衣と震える指、半開きの口と荒い息、僕を凝視する猛禽類の如く鋭い目で。
今は真正面に顔があった。今までとは様子が変わっていた。
「明久……これは見聞のみのゆえ、真似にも限界があろう、だが……」
「秀吉……?」
「これ以上は、ワシが持たんのじゃ――――!」
「ふぐっ!?」
秀吉からの口付けは、舌を伴ってのものだった。
一気に口内の奥まで突き刺さると、そこで粘膜を容赦なく掻き乱す。
骨越しに響く水音。秀吉から流れ込んできた唾液が、喉の奥に溢れ返る。
息が詰まり堪らず嚥下するが、秀吉の襲撃は収まらない。
僕の背中に爪を立てて、逃げないように固定化する。
その間も蠢き続ける秀吉の舌は、ただただ乱暴で単純で無茶苦茶だった。
僕の内側の隅々まで舐めきって絡まって絞り尽くして、それでも暴走は終わらない。
「むぐ……あきひ、さ……んむぅ……!」
蛇のようなそれに巻き付かれた僕の舌は、秀吉の口内に連れて行かれる。
その中の痴態に脳が麻痺する。不思議な味覚に神経が焼ける。
まるで口を介して秀吉と一つになったようだった。
このまま水飴のように溶けてしまいそうな一体感に酔い痴れる。
いつしか自由になっていた両腕で、眼前の華奢な身体を抱き締めた。
秀吉は止まらない。僕の舌から、口から搾取したものを一心不乱に飲み干す。
その度に震える喉が、喉を通る水の音がいやらしくて、僕は両腕により力を込めた。
お互いの身体が寄り添い合って―――― 僕はやっと気付くに至る。
「んぐっ……ひで、よし……ぅんむ……」
「はぁっ……後生じゃ、見ないでくれ……あむっ……」
秀吉は、腰を揺らしていた。
僕の手首を捕まえていた手が途中で消えたのは、これを慰めていたのだろう。
だけど僕らの距離がゼロになった今、秀吉の局部もまた、僕の局部と重なっていた。
腰の振動が直に伝わる。秀吉の熱い吐息が僕の肺に満ちて、袴と特攻服越しの熱もまた。
触れ合う素肌が汗を混じらせて、僕らの体温が共有されていく。
果実を頬張るように秀吉の口内を蹂躙し、お返しとばかりに僕の口内が陵辱されて。
秀吉を犯しているようだった。秀吉もまた、僕を犯しているようだった。
キスは性行為の疑似体験。ほんとよく言ったもんだ。
「はぁ……一緒に、いきたいっ、あきひさぁ……!」
「うん……っ……僕も、もう、ひで、よし……っ!」
絶え絶えの息が重なり合って、相手の口を貪り尽くして、
「「あああああああっっっ!!!」」
最後に叫びも一つになった。
189 :特攻服は袴に勝てない[sage]:2008/05/07(水) 17:29:57 ID:h9D3/2Ui
ことが終わって、僕らは床に大の字で寝そべっていた。
掻いた汗はもう酷いことに。僕の場合服装が服装だから、中は水溜りも同然だし。
「上着を脱げばいいではないか」
「うん……うわぁ、べたべたして気持ち悪い……」
「ワシはまだ平和な方じゃがのう」
それでも白衣の襟をぱたぱたと扇ぐところを見ると扇情的、じゃなくて暑いのだろう。
頭が真っ白になっていたから体感時間はさっぱり当てにならなかったけど、
気付けば窓の外も薄暗くなっていた。どうも三、四十分は絡み合っていたらしい。
「あぁ、今日の出来事は刺激的過ぎて、頭が追いつかないや……」
「後悔しておるか?」
「…………」
「そう怖い顔をして睨むでない、言ってみただけじゃ」
「違うよ、秀吉。怒ってるんじゃなくて」
ん? とこちらに顔を向けた、そこに唇を押し当てた。
散々やった行為なのにちっとも飽きないな。今回はこれだけで離れるけど。
「……明久は、ずるいのじゃ」
「え。ずるいって、ずっと前から知ってると思ってた」
これは割と本気で。
「気付かなんだ、お主、ワシにだけは優しかったからのう」
秀吉の頭が傾いて僕の胸に納まる。
……なんだこれ。この重くゆっくりとくるものは何だ。海亀が産卵でもしに来たのか?
柔らかい秀吉の肩を如何にして自然に抱き寄せるか、思考回路を全力で働かせていると、
秀吉は深く息を吐いて、視線を下に向けながら呟いた。
「ワシは少し悔しいぞい」
「悔しい? 何が?」
「……元々の体格のせいか、お主の方が……少々……」
後から少々と加えたのは、秀吉の最後のプライドなのかもしれない。
……見立てでは3、4ぐらいは差があったと思うけど。
「秀吉は性別がそもそも違うんだから、男と比べても詮無いことだと思うけどね」
「ここで『詮無い』とらしくない言葉を使われるのがより一層腹立たしいが……」
機嫌を損ねてしまったらしい。どうすれば直ってくれるかな。
「まぁ良い。ならばこそ立つ名分もある」
「名分って、何の話?」
「ワシが攻める方が負担も少なかろう、という話じゃよ」
「秀吉見て! 何故が分からないけど僕の全身に鳥肌が立ってるよ!?」
「―――― ならば逆が好みかの?」
言うと秀吉は前に腕を突き、四つん這いの姿勢で顔を後ろの僕に向けた。
「この召喚獣、耐久力も点数を反映しておるのじゃろう。
苦痛を抑えられるのなら、この又とないであろう機会に試してみるのも一興じゃ」
「……は、い?」
「おそらく病気も貰わないで済むじゃろうて。
どうする明久、ワシから申し出た酔狂、きっとこの時限りじゃぞ?」
真面目な秀吉には珍しい、からかいを含んだ笑顔と一緒に、青い袴が僅かに揺れた。
190 :特攻服は袴に勝てない[sage]:2008/05/07(水) 17:31:46 ID:h9D3/2Ui
☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆
―――― 気付いたとき、僕らは保健室のベッドの上に居た。
なんでも空き教室に二人揃って倒れていたらしい。
日も暮れた後、見つけてくれた鉄人に今日だけは感謝だった。
「うーん、しかし変な夢を見てたような……見てなかったような……」
うろ覚えの記憶が断片的に蘇る。まだ完全な覚醒には至っていないのかもしれない。
はっきりしているのは、途中まで一緒に居た筈の雄二が何処にも居ないということ。
霧島さんが連れ帰ったのでは、という予想も立ててはいるんだけど。
「うぅん…………明、久?」
「良かった秀吉、目が覚めたんだね」
「あ……うむ」
「まだ体調が優れなかったら後でいいんだけどさ。
あの空き教室で僕らに何があったか覚えてる? 二人して倒れてたらしいんだよ」
「む……すまぬ。ワシもはっきりとは……何かあった気はするんじゃが」
「そっか。気にしないで、僕もそんな感じでさ。
じゃあ今頃霧島さんと取り込み中かもしれないけど、雄二に聞いてるみるか」
携帯電話を取り出す。と、秀吉の顔に少しだけ動揺が見えた。
「秀吉、僕の携帯電話がどうかしたの?」
「何故じゃろうか……これは、罪悪感か……?」
「僕の携帯、別に何処もおかしくなってないけど。
あ、ここ電波状況悪いや。ちょっと廊下に行くね、すぐに戻って来るから」
首を傾げる秀吉を背中に、僕は雄二の電話番号を出して保健室を後にした。
―― 明久の背中を見送ると、ワシは再びベッドに沈んだ。
何かがあった。それは確かなのに、それが何だったのか、どうしても明瞭としない。
しかし横になった理由は違った。それを思い返して、つい力任せにシーツを握り締める。
なにゆえそのような不埒なことを考えたのか、恥ずかしくて明久をまともに見れなくて、
だけど目は勝手にそれを追って、その事実に居た堪れず顔が赤く染まるのが分かって――
「……美味そうな唇じゃったな」
もう一度、思ったことを今度は口にして、自分の唇をなぞりながら目を瞑った。
―――― 静かに一人、夢の続きを夢見ながら。
……ちなみに次の日の空き教室にて、
ムッツリーニの変わり果てた姿(出血多量により一週間入院)が見つかるのだけど、
それはまた別のお話ということで……でも、何の音を再生していたんだろう……?
191 :特攻服は袴に勝てない[sage]:2008/05/07(水) 17:33:19 ID:h9D3/2Ui
投下終了です。お疲れさまっした
「召喚獣を操作したい?」
「うむ」
今日の授業も終わり、僕こと吉井明久と坂本雄二が帰る準備を始めたところに、
クラスメイトの木下秀吉が持ち掛けてきたのは、召喚獣に関する話だった。
「もっと細かく動かせるようになりたいんじゃよ。
雄二、お主の白金の腕輪なら、召喚フィールドを作り出せるじゃろう?」
「まあな。だけどこの時期にか? もうじきテスト週間だってのに」
確かに。周りを見回しても生徒はもうほとんど残っていない。
テスト前だけあってみんなも真面目になっているのだろう。
……普段の馬鹿騒ぎに使う時間と勉学に励む時間、
F組の面々ではその二つに差があるのか、正直、悩むところではあるけれど。
「だからこそじゃ。腕輪を使うと点数を消費するのじゃろう。
今なら多少の無駄使いを乞うても許されるのではと考えてな」
「でもさ、テストが近いなら僕らも召喚獣より勉強を優先するべきじゃないの?」
「「……………………」」
「え? なに、その世界の終わりを見るような顔」
「いや……正論だな……ああ、きっと……多分……」
「すまぬ……言われてみれば……少々無茶な頼みだったかもしれん」
目の前の二人は言う。強い戸惑いの陰に凄まじい悔しさを滲ませて。
どうして二人ともダメージを負っているんだろう。
そしてその姿に僕の心も傷ついている気がするのはなんでだろう。
「なんて、いくらなんでも今日の残り時間を勉強だけして過ごすのは流石に辛いしね。
僕は雑用でよく出してるから慣れっこだけど、二人には息抜きになるんじゃない?」
「……ああ!
そうして今日も勉強しませんでしたってオチなんだよな、全部分かってるぜ俺は!」
「そうじゃな! 勉強など無駄と断じるその性根、それでこそワシの知る明久じゃ!」
雄二と秀吉に笑顔が戻る。あはは、僕まで嬉しくなっちゃうな。
「あれ? だけど召喚フィールドが必要なだけなら僕は必要ないのか」
「…………待て」
と、背後から袖を引っ張るのはムッツリーニ。僕らの話を聞いていたらしい。
「…………今日は用事がある」
「うん? それなら僕もムッツリーニと先にかえ……」
「…………明久まで帰ったら、秀吉は雄二と二人っきりになる」
「………………」
僕は一瞬でムッツリーニの言わんとしていることを理解した。
雄二の言動には、未だに秀吉を『秀吉』と認識しているとは言い難い面が見受けられる。
友人が無自覚のセクハラ行為に及ばないよう、僕には二人を見守る義務があるのだ。
「助言をありがとうムッツリーニ……浅はかだった僕を許してくれとは言わない、
その代わりきっちりと役目を全うしてみせるよ……!」
「…………(コクリ)」
「なにやってんだ明久。とりあえず空き教室に行くぞ」
雄二からお呼びが掛かる。臨むところ、アイツの不埒な真似は一切として許さない!
無言で見送るムッツリーニに、僕は親指を立ててその場を後にした。
183 :特攻服は袴に勝てない[sage]:2008/05/07(水) 17:24:42 ID:h9D3/2Ui
「騒ぎさえ起こさなければ教師に捕まることもないだろ……よし、起動」
召喚フィールドが展開された。
早速秀吉が試獣召喚と唱え、召喚獣が現れる。やっぱり本人に似て綺麗だなぁ。
「どうじゃ明久、お主もやってみんか?」
「僕も?」
「二重召喚はあまり経験がなかろう」
二重召喚。それについては秀吉の言うとおりだ。
そうだよなぁ……雑用を任されても二体呼び出す機会はそうないだろうし。
細かな操作が利くというせっかくの利点、二重召喚でも活かしたい。
「いいんじゃねぇの? 何か減るでもなし、使ってみろよ」
「うん。それじゃ……二重召――――」
「……見つけた」
「げっ! 翔――――がっ!?」
僕の召喚獣が現れようとしたそのとき、召喚フィールドが揺れて消えた。
「え……えええ!?」
そして異変。
僕の白金の腕輪が突如として発光を始める。な、なにこれ……!?
「なんじゃ、どうしたのじゃ!」
「わ、分からない、初めてだよこんな現象……は、ぁぁ……!」
心臓が高鳴り、その震えに同期するように意識が遠のいた。
何が起きようとしているんだ……僕、どうなっちゃうんだ……?
「明久? 明久っ!」
感覚の鈍くなった僕の身体に、秀吉の腕が添えられる。
すると途端にその顔が苦痛に歪んだ。まさか巻き込んでいるのか!?
「ひ、秀吉、離れ……っ」
「これは……一体……っ――――」
「……今日は一緒に帰るって約束した」
「そうだったか!? いつもそんなこと言って俺を追いかけ回してるような――――
いだだっ! そうだった!
約束してたから離せ、この頭蓋骨に食い込む指先を離して下さいお願いします!」
「……逃げられないようにこのままお持ち帰り」
「男女揃って色気のない帰り道だなおい! 悪い二人とも、俺先に帰痛い痛い痛い!」
腕輪から漏れる光が強くなかったせいか、
それともあちらの取り込み具合もこちらに負けていなかったからか、
二人は僕らの異変に気付かずに騒ぎながら教室を出て行った。
……でも仕方なかったのかもしれない。
僕らは大怪我を負ったわけでもなく、ただ二人そこに立ち尽くしていただけなのだから。
雄二と霧島さんが去ってしばらく後、僕と秀吉の身体は静かに崩れ落ちた。
まるで糸の切れた人形のように、身体を床に沈ませる。
僕は、僕の意識はそれを見ていた。
自分たちが気を失って倒れる一部始終を、普段よりも低い視点で。
「…………そんな」
自分の腕を、服装を見る。制服ではない、しかし見慣れた特攻服。
信じられないけど、間違いない。僕は今、自分の召喚獣になっていた。
「……あき、ひさ?」
そう、秀吉と、一緒に。
184 :特攻服は袴に勝てない[sage]:2008/05/07(水) 17:25:20 ID:h9D3/2Ui
「あるんじゃな……こんなことが」
自分の身体をまじまじと見つめながら秀吉は呟いた。
僕も驚きだった。まさか召喚獣と一体化してしまうなんて。
過去に類を見ない体験だけど、口を利けるのはありがたい。秀吉と状況分析ができるし。
「目の前に身体があるのにね。完全に意識を失ってるみたいだ」
慣れ親しんだ『吉井明久』の頬を叩いてみても、何の反応も返さない。
さすがに死体ではないみたいだけど。
未だに光の収まらない白金の腕輪が少しだけ不気味だった。
「とりあえず先生を呼んでこようか。秀吉、ちょっと待っててね」
「ああ、すまぬな」
「それじゃ―――― ぶへっ」
都合良く廊下を先生が歩いていればいいけど、居なかったら職員室かな。
そう思って歩き出した僕は、しかし突然見えない壁にぶつかった。
パントマイムのように手で探る。一見虚空のそこには、やはり透明の何かがあった。
「何をしておるんじゃ? …………うむ、これは……」
僕の様子を訝しがった秀吉も、それに触れて顔をしかめた。
僕らの本体を見ながら、見えない壁をなぞって歩く。
「……どうやらお主の白金の腕輪を中心に、召喚フィールドが形成されているようじゃ」
「えぇ! 雄二の腕輪じゃなくて僕の腕輪から!?」
「原理その他諸々についてはさっぱりじゃが、一種の暴走かもしれぬ。
召喚獣になってしまったワシらは、そこから出ることができないらしい。
……本来の召喚獣のように消えてしまうよりは良かったが、ううむ、これでは……」
「助けを呼べない、のか」
「理解が早くて助かるのぉ」
だって人を呼ぼうとした矢先にこれだもの。僕にだって分かるさ。僕に、だって……。
「うむ? 難しい顔をしておるがどうしたのじゃ?
しかしこの状況を第三者に伝える方法はないものかの……そういえば」
「まぁここは学校なんだし、そうそう悪いことは起きないでしょ。
誰かが通り掛かったら叫んだりなんだりすれば、すぐに助けて貰えるよ」
眠ったままの本体に悪さをするような人もいないだろうし、
仮に眠る秀吉に良からぬことを企むヤツが現れたら、召喚獣の力で撃退してやるさ。
そう思って変態面をした仮想敵(何故か見覚えのあるソフトモヒカンをしていた)
をイメージして素振りを行う。よし、気概は十分だ!
「……それも、そうじゃな」
少し考える素振りを見せたけど、秀吉も僕の考えに賛同してくれたみたいだった。
185 :特攻服は袴に勝てない[sage]:2008/05/07(水) 17:26:04 ID:h9D3/2Ui
「だけど変なことになっちゃったね。どう秀吉、召喚獣は上手く動かせる?」
「今や自分の身体じゃからな。しかしこれでは普段の操作とまったく違うのぉ……」
屈伸運動をしながら呟く。
うーん、もともと秀吉が予定していたであろう展開からは大きく外れちゃったしなぁ。
せっかくの召喚獣体験なんだし何か実になることがあればいいんだけど……。
「しいて言えば頭身がおかしいせいで頭上に手が回らんのがな」
「それは体格的に無理だよ。何? 頭を掻きたいの?」
かゆいところに手が届かないのは地味に嫌なものだ。
「ちょっとしゃがんで。触ってあげる」
「いや、そういう訳では……」
なかなか首を曲げてくれない。仕方ないのでつま先立ちで頭頂部に触れる。
「む、う……む」
「秀吉?」
「すまぬ……この身体のせいか、なんとも言い得ぬ感覚じゃのぉ……」
わ、耳がぴこぴこ動いてる。
ぴこぴこって表現も変かもしれないけど、そんな音がしそうな動作ということでひとつ。
「……ん」
「…………」
……待って。断じて変な気分にはなっていないよ?
さっきから心をくすぐられているようだったり、小さく漏れた声にどきりとしたり、
ああもう召喚獣になっても可愛過ぎるよ抱き締めちゃおうかなんて、これっぽっちしか!
「も、もうよいぞ明久、十分たんの―― 気持―― すっきりしたでな!」
あ、残念。秀吉は僕から逃げるように距離を取ってしまった。
だけど今、口に出し掛けたのは、キモ……じゃないよね? よね?
「ならいいけど。それじゃ話でもしながら時間を潰そうか」
「うむ、そうするかの……」
そう言って秀吉はその場に座り……と思ったら、
途中まで曲げた膝をそのままに僕を一瞥すると、
おぼつかない足取りでこちらに来て、僕の隣に座った。
なんだろう今の不自然な動き。召喚獣だからやっぱり勝手が違うのだろうか?
「もし具合が悪かったら言ってね。大したことはできないと思うけど」
「それはない。安心せい」
目を逸らしながら言われても判断に困る台詞だけど。
でも演劇塊の魂……逆だった、の秀吉が見るからにおかしいというのは、
やっぱりただごとじゃないのでは……横目で秀吉の様子を窺う。
「……明久!? 鼻から血が噴出しておるぞ!」
「ごめんねごめんね心配してたんだけどほんとごめんね」
袴! 袴の側面の隙間から、白衣に隠れた太ももがちらりと!
くっ、正気を保つんだ僕! 秀吉の足ならプールでじっくりと舐めるように見ただろう!
おまけに今は召喚獣だ、この頭身に欲情するってどうなのよ人間として!
「そういう問題じゃないんだ、秀吉にこの衣装は反則なんだぁぁぁぁ!!!」
「しっかりせい! さっきから何の話をしておるのかさっぱり分からんぞ!」
この子悪魔! 無自覚に僕を誘惑しようとしてもそうはいかないぞ!
せめて十秒……否、十五秒は耐えてみせる!
「だから今すぐ結婚しよう! その格好で神道的にバージンロードだ!」
「とにかくお主が何かに負けたのは察したのじゃ―――― !?」
なんて馬鹿騒ぎの最中、僕が秀吉に詰め寄ったのがいけなかったのだろう。
背後に反った秀吉は、普段と違う体格のためか、体勢を崩して後ろに倒れた。
咄嗟に右手で僕の襟を、左手で肩を掴んで。
お互いの召喚獣の力は比べるまでもない。僕らは仲良くその場に倒れ込んだ。
186 :特攻服は袴に勝てない[sage]:2008/05/07(水) 17:26:56 ID:h9D3/2Ui
「あのぅ……秀吉?」
「…………」
どうしよう、何も言わない。
頭を打ったりはしていないと思うけど。僕の腕を挟み込んだから。
しかし今の姿勢、まるで僕が秀吉を押し倒したみたいだよなぁ……不謹慎かな。
「のう、明久」
「は、はい! 何でしょう!?」
「……疚しいことを考えておったな」
うぅ、見抜かれてる。
この緊急事態においても逞しい僕の下心だ、呆れるのも当然か。
そして秀吉は僕の身体を離さずにぎゅっと―――― あれ? ぎゅっ?
「明久……」
耳元で名前を囁かれて、一気に血が昇る。
なななんだっだっててんだええぃ……! 落ち着け素数を数えるんだでも素数って何!?
「召喚獣になったからか、ワシも何処かおかしいらしい……」
「お、おかしい? ……具合が悪いってこと?」
「さてな……具合か、理性かもしれん」
ちゅっと乾いた音が頬から鳴った。
……………………ああ事故か、事故だよね?
何を取り乱しているんだ僕は。こんなの事故事故事故事故事故事ちゅっガはっ!
「ひぃ、ひでよっし! 待って待ってストップフリーズここが夢見た理想郷!?」
「……止めて欲しいと? ……無理じゃよ、精神的にも物理的にものぉ。
諦められなければ古典8点の力で抗って見るがよい。すぐに結果が見えよう」
……あれ? その点数、秀吉に教えていたっけ? 前回に輪をかけて悪かったのに。
「白金の腕輪の上にぼんやりと浮かんでおった。
ワシとの戦力差、聞いておきたいかのぉ?」
言って唇で頬骨をなぞり首筋に来ると、より一層強く吸い付かれた。
肩にあった秀吉の腕は、いつの間にか僕の背中に回り完全に拘束している。
それら事実が僕の心臓に火をつけて血を焼いて―――― 頭がぼおっとする。
「……したい」
「ひ、秀吉」
「お主と、疚しいことがしたいのじゃ」
もう頭身が何だと言っていた僕は忘却の彼方にあり、文字通り悩殺された僕が残る。
目の前に居るのは僕の友人木下秀吉の、だけど記憶の何処にもない蠱惑的な態度。
知らない世界に、気が狂いそうだ。
「それでも嫌なら、どうしても嫌なら、ワシにこうさせた今までを全て否定するのじゃ。
可愛いと、嫁や婿やと言った今までの言動を否定して……本当のことを言うんじゃ」
「…………」
「何もかも冗談じゃったと。実際に近付けば、触られてみれば、本当は、
本当は本当は本当は―――― 木下秀吉は気持ち悪いと、口にするんじゃ明久……!」
「いやだ」
自然と口に出していた。何も考えていなかったのに、それだけは考えられなかった。
泣き声を含んだ言葉尻を哀れに思ってとか、同情も憐憫も一切として関係なく、
僕は、秀吉の言葉が全く以って見当外れだったから、当たり前のように否定していた。
「……ならば、ワシは過去に倣いお主を諌めたりはせん」
背中に回した腕の先で僕の後頭部を掴んで、もう片腕で顎を固定して、
「お主の全てに木下秀吉という名の傷をつけよう。普段のワシの苦労を思い知るが良い」
にこりと凶暴に笑うと、噛み付くような口付けが始まった。
187 :特攻服は袴に勝てない[sage]:2008/05/07(水) 17:27:34 ID:h9D3/2Ui
「はぅ……む、ん……」
吐息が流れ込んでくる。匂いなんてない筈なのに、どうしてか甘いと感じてしまう。
「……塩の味がするのう」
「ええっ! 僕の食生活って召喚獣にまで反映されてるの!?」
「嘘じゃよ。ただ本物ならそうなのじゃろうかと想像しただけじゃ。
ワシも仮初の身体じゃからの。変な匂いがしないと安心できるのは嬉しいことじゃ」
「……なんとなく、するけど」
「なんと! 何処からじゃ、ワシの何処がどう匂う!?」
「うん、そこはかとなくジャガイモの芽の匂いが」
「……この期に及んで、でまかせも大概にせんか!」
キスが再開された。
今度は啄ばむように唇が動いて、その度にちゅっちゅっと音が響く。
顎に添えられていた秀吉の指は、今では僕の背中を這っていた。
……ていうか、どのタイミングで服の中に侵入したんだ……気付かなかった。
「ん……えっとさ、秀吉」
「うんっ……どうしたのじゃ?」
「僕も秀吉の身体、触っていい?」
「…………」
ぴたりと指先が止まる。予想以上の反応だった。
いつも男としての扱いを希望している秀吉だから、
もしかしたら何の抵抗もないかと思っていたけど。
「やっぱりダメ?」
「ま、待て……あらためて許可を問われるとな、返答に困るのじゃ」
「恥ずかしがるのは新鮮だね。大抵は無頓着だったから」
「……男同士でも、素手で身体をべたべたとは触るまい」
そりゃそうだ。
でも秀吉が先に触っていたのは蒸し返さないでおくべきだな。気持ち良かったし。
「つまりわざわざ尋ねるのは羞恥プレイみたいで反則だってことだね?」
「どうしてそうな……いや、あながち外していないかもしれんが」
「じゃ、勝手に触る」
「――――っ!?」
白衣の内側に手を入れて、左手を背中に回し背骨をなぞってみる。
必然的に僕から見て秀吉の左上半身が外気に晒された。
今回はじっと見てもいいよね……ムッツリーニ、死ななくて良かったなぁ。
「明久、そうとっくり見つめられると恥ずかしいのじゃが」
「えっ、僕だと嫌なの!?」
「お、おおお主だから、意味合いが違ってくるというか」
……これは僕にもっと見て欲しいというメッセージに違いない。
よって見る。穴が開きそうなほどに見る。見て見て見て―――― 舐める。
「ひっ!? ……っ!」
「くすぐったかった?」
「こういうことをされるとは思ってたんじゃがっ……ふ……むっ……!」
胸の辺りに舌を這わせる。
くすぐったがってるのか感度が良いのかは分からないけど、反応が可愛いから止めない。
ついでに甘噛みをしてみた。背中で跳ねた。と、突然だったから驚いた。
「やはり鬼畜じゃ…………お主に掴まりたくても、
頭を拘束してそこから動いてくれなくなったら本末転倒……どうすれば……」
どうやらここを舐められるのは辛いらしい。名残惜しいけど仕方ないか。
188 :特攻服は袴に勝てない[sage]:2008/05/07(水) 17:28:21 ID:h9D3/2Ui
口を離して秀吉と目線を合わせる。
「じゃあさ、またキスをしよう」
秀吉は息を呑むと、顔を逸らしつつも頷いてくれた。
今度は僕から唇を重ね―――― ようとしたところで、身体が半回転する。
「いたっ……!」
手首を床に押さえつけられた僕の上には、秀吉が覆い被さっていた。
はだけた白衣と震える指、半開きの口と荒い息、僕を凝視する猛禽類の如く鋭い目で。
今は真正面に顔があった。今までとは様子が変わっていた。
「明久……これは見聞のみのゆえ、真似にも限界があろう、だが……」
「秀吉……?」
「これ以上は、ワシが持たんのじゃ――――!」
「ふぐっ!?」
秀吉からの口付けは、舌を伴ってのものだった。
一気に口内の奥まで突き刺さると、そこで粘膜を容赦なく掻き乱す。
骨越しに響く水音。秀吉から流れ込んできた唾液が、喉の奥に溢れ返る。
息が詰まり堪らず嚥下するが、秀吉の襲撃は収まらない。
僕の背中に爪を立てて、逃げないように固定化する。
その間も蠢き続ける秀吉の舌は、ただただ乱暴で単純で無茶苦茶だった。
僕の内側の隅々まで舐めきって絡まって絞り尽くして、それでも暴走は終わらない。
「むぐ……あきひ、さ……んむぅ……!」
蛇のようなそれに巻き付かれた僕の舌は、秀吉の口内に連れて行かれる。
その中の痴態に脳が麻痺する。不思議な味覚に神経が焼ける。
まるで口を介して秀吉と一つになったようだった。
このまま水飴のように溶けてしまいそうな一体感に酔い痴れる。
いつしか自由になっていた両腕で、眼前の華奢な身体を抱き締めた。
秀吉は止まらない。僕の舌から、口から搾取したものを一心不乱に飲み干す。
その度に震える喉が、喉を通る水の音がいやらしくて、僕は両腕により力を込めた。
お互いの身体が寄り添い合って―――― 僕はやっと気付くに至る。
「んぐっ……ひで、よし……ぅんむ……」
「はぁっ……後生じゃ、見ないでくれ……あむっ……」
秀吉は、腰を揺らしていた。
僕の手首を捕まえていた手が途中で消えたのは、これを慰めていたのだろう。
だけど僕らの距離がゼロになった今、秀吉の局部もまた、僕の局部と重なっていた。
腰の振動が直に伝わる。秀吉の熱い吐息が僕の肺に満ちて、袴と特攻服越しの熱もまた。
触れ合う素肌が汗を混じらせて、僕らの体温が共有されていく。
果実を頬張るように秀吉の口内を蹂躙し、お返しとばかりに僕の口内が陵辱されて。
秀吉を犯しているようだった。秀吉もまた、僕を犯しているようだった。
キスは性行為の疑似体験。ほんとよく言ったもんだ。
「はぁ……一緒に、いきたいっ、あきひさぁ……!」
「うん……っ……僕も、もう、ひで、よし……っ!」
絶え絶えの息が重なり合って、相手の口を貪り尽くして、
「「あああああああっっっ!!!」」
最後に叫びも一つになった。
189 :特攻服は袴に勝てない[sage]:2008/05/07(水) 17:29:57 ID:h9D3/2Ui
ことが終わって、僕らは床に大の字で寝そべっていた。
掻いた汗はもう酷いことに。僕の場合服装が服装だから、中は水溜りも同然だし。
「上着を脱げばいいではないか」
「うん……うわぁ、べたべたして気持ち悪い……」
「ワシはまだ平和な方じゃがのう」
それでも白衣の襟をぱたぱたと扇ぐところを見ると扇情的、じゃなくて暑いのだろう。
頭が真っ白になっていたから体感時間はさっぱり当てにならなかったけど、
気付けば窓の外も薄暗くなっていた。どうも三、四十分は絡み合っていたらしい。
「あぁ、今日の出来事は刺激的過ぎて、頭が追いつかないや……」
「後悔しておるか?」
「…………」
「そう怖い顔をして睨むでない、言ってみただけじゃ」
「違うよ、秀吉。怒ってるんじゃなくて」
ん? とこちらに顔を向けた、そこに唇を押し当てた。
散々やった行為なのにちっとも飽きないな。今回はこれだけで離れるけど。
「……明久は、ずるいのじゃ」
「え。ずるいって、ずっと前から知ってると思ってた」
これは割と本気で。
「気付かなんだ、お主、ワシにだけは優しかったからのう」
秀吉の頭が傾いて僕の胸に納まる。
……なんだこれ。この重くゆっくりとくるものは何だ。海亀が産卵でもしに来たのか?
柔らかい秀吉の肩を如何にして自然に抱き寄せるか、思考回路を全力で働かせていると、
秀吉は深く息を吐いて、視線を下に向けながら呟いた。
「ワシは少し悔しいぞい」
「悔しい? 何が?」
「……元々の体格のせいか、お主の方が……少々……」
後から少々と加えたのは、秀吉の最後のプライドなのかもしれない。
……見立てでは3、4ぐらいは差があったと思うけど。
「秀吉は性別がそもそも違うんだから、男と比べても詮無いことだと思うけどね」
「ここで『詮無い』とらしくない言葉を使われるのがより一層腹立たしいが……」
機嫌を損ねてしまったらしい。どうすれば直ってくれるかな。
「まぁ良い。ならばこそ立つ名分もある」
「名分って、何の話?」
「ワシが攻める方が負担も少なかろう、という話じゃよ」
「秀吉見て! 何故が分からないけど僕の全身に鳥肌が立ってるよ!?」
「―――― ならば逆が好みかの?」
言うと秀吉は前に腕を突き、四つん這いの姿勢で顔を後ろの僕に向けた。
「この召喚獣、耐久力も点数を反映しておるのじゃろう。
苦痛を抑えられるのなら、この又とないであろう機会に試してみるのも一興じゃ」
「……は、い?」
「おそらく病気も貰わないで済むじゃろうて。
どうする明久、ワシから申し出た酔狂、きっとこの時限りじゃぞ?」
真面目な秀吉には珍しい、からかいを含んだ笑顔と一緒に、青い袴が僅かに揺れた。
190 :特攻服は袴に勝てない[sage]:2008/05/07(水) 17:31:46 ID:h9D3/2Ui
☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆
―――― 気付いたとき、僕らは保健室のベッドの上に居た。
なんでも空き教室に二人揃って倒れていたらしい。
日も暮れた後、見つけてくれた鉄人に今日だけは感謝だった。
「うーん、しかし変な夢を見てたような……見てなかったような……」
うろ覚えの記憶が断片的に蘇る。まだ完全な覚醒には至っていないのかもしれない。
はっきりしているのは、途中まで一緒に居た筈の雄二が何処にも居ないということ。
霧島さんが連れ帰ったのでは、という予想も立ててはいるんだけど。
「うぅん…………明、久?」
「良かった秀吉、目が覚めたんだね」
「あ……うむ」
「まだ体調が優れなかったら後でいいんだけどさ。
あの空き教室で僕らに何があったか覚えてる? 二人して倒れてたらしいんだよ」
「む……すまぬ。ワシもはっきりとは……何かあった気はするんじゃが」
「そっか。気にしないで、僕もそんな感じでさ。
じゃあ今頃霧島さんと取り込み中かもしれないけど、雄二に聞いてるみるか」
携帯電話を取り出す。と、秀吉の顔に少しだけ動揺が見えた。
「秀吉、僕の携帯電話がどうかしたの?」
「何故じゃろうか……これは、罪悪感か……?」
「僕の携帯、別に何処もおかしくなってないけど。
あ、ここ電波状況悪いや。ちょっと廊下に行くね、すぐに戻って来るから」
首を傾げる秀吉を背中に、僕は雄二の電話番号を出して保健室を後にした。
―― 明久の背中を見送ると、ワシは再びベッドに沈んだ。
何かがあった。それは確かなのに、それが何だったのか、どうしても明瞭としない。
しかし横になった理由は違った。それを思い返して、つい力任せにシーツを握り締める。
なにゆえそのような不埒なことを考えたのか、恥ずかしくて明久をまともに見れなくて、
だけど目は勝手にそれを追って、その事実に居た堪れず顔が赤く染まるのが分かって――
「……美味そうな唇じゃったな」
もう一度、思ったことを今度は口にして、自分の唇をなぞりながら目を瞑った。
―――― 静かに一人、夢の続きを夢見ながら。
……ちなみに次の日の空き教室にて、
ムッツリーニの変わり果てた姿(出血多量により一週間入院)が見つかるのだけど、
それはまた別のお話ということで……でも、何の音を再生していたんだろう……?
191 :特攻服は袴に勝てない[sage]:2008/05/07(水) 17:33:19 ID:h9D3/2Ui
投下終了です。お疲れさまっした
Tag : エロパロ板
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