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一方×あわきん
628 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[] 投稿日:2010/11/29(月) 02:19:37.23 ID:0Ew14d20 [1/6]
今更ながら残骸編を見てテンションがあがったので淡きんssを投下する
多分4レス
今更ながら残骸編を見てテンションがあがったので淡きんssを投下する
多分4レス
629 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[] 投稿日:2010/11/29(月) 02:21:06.53 ID:0Ew14d20 [2/6]
結標淡希には、許される言葉と許されない言葉が在る。
ある人が聞けば『年頃の少女ならば誰だって願うことよ』と慰めてくれるかもしれない。
ある人が聞けば『オマエみたいなヤツがコレ以上を望むなんて贅沢だ』と説教してくるかもしれない。
―――己は底辺で這いつくばって生きているクソ人間。
率直にそんな自己評価を下す結標は、ごく自然に、前者よりも後者の意見に同意する。
(………そう、これ以上を望むのは贅沢ってね)
ボロアパートの寝室。
珍しいことに、今夜は結標一人しかいない。
この家に厄介になるようになってから、真っ暗な夜を1人で明かすのは初めての経験だ。
家主兼結標の後見人(一応)である可愛らしい容姿を持つ同居人の教師は
こんな日に限って『残業なのですよー』という伝言を留守電に残し、未だに帰ってこない。
「…………っ」
ふっ、と微かな息が僅かにあいていた上唇と下唇の間から漏れる。
声にならない少女の小さな叫びが、空気の中へと溶けて辺りに漂いはじめた。
外の雑音すらも聞こえてこない密閉空間。
音もない光もない人の温もりもないソコ。
例えるならば、結標ただ一人だけを閉じ込める鳥籠にも似ていて。
包み込む空気はやけに冷たい。
「……寒ッ」
縮こませていた背中を更に丸めた。
身を守る様に被っていた毛布を頭の上まで手繰りよせる。
(わかってる。わかっているのよ)
何度も、何度も。
繰り返し、繰り返し。
何時になく押しつぶされそうになっている己の心に言い聞かせる。
結標は溢れだそうとする感情の入り口を過剰に塞ぐ。
許されない言葉を言ってしまわぬようにドアに鍵を施錠する。
(…………心配を、かけるだけだもの。重荷を、背負わせてしまうだけだもの)
結標の迎えを待っている、仲間たちに。
何を察していながら見守ってくれる、同居人に。
戦場において「大丈夫か」と心配性そうに手を差し伸べてくれる、愛しい少年に。
630 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[] 投稿日:2010/11/29(月) 02:23:52.93 ID:0Ew14d20 [3/6]
ミノムシ状態で自己防衛をする彼女は冷静に自覚していることがある。
それは、「それなり」に彼の中で自分は特別な立ち位置にいる、ということ。
簡素で狭いシングルベットで、何度も供に夜を明かし肌を重ね合った間柄だ。
俗に言う「はじめて」まで捧げてやったのに、
『だたの同僚ですゥー』と切り捨てられたら、さすがにたまったものじゃない。
結標と、
彼女が「はじめて」を捧げた相手・一方通行の距離感を現すのに
「それなり」という言葉が一番絶妙だ。
それなりに、信頼し合って仕事を行える。
それなりに、互いに不快に感じずに隣にいれる。
それなりに、「好きだ」と言いあう事ができる。
ある程度踏み込んでいるけど、ある程度は踏み込まない。
「それなり」の関係。「それなり」の距離感。「それなり」に大切な人。
(私は「それなり」に特別なだけ。……「それ以上に」特別ではない、もの……)
結標淡希は彼にとって、それなりに大切な人。
酷く不器用で愛想が無くて、
それでも誰よりも純粋で綺麗なもつ彼にとって、それ以上に大切な人は、あの子。
彼の中で光となった、彼の中で唯一の人となった、あの子なのだ。
だからこそ、結標淡希には、許される言葉と許されない言葉が在る。
(アイツの中の私の存在価値なんてわかってる)
久しく感じていなかった孤独な時間の重圧に、
少しでも気を抜いてしまうと耐えきれなくなりそうになる。
胸の奥から目尻へと押しあがってくる何かを感じながら、少女はギリッと奥歯を噛みしめる。
それでも、
(――――それでも、絶対に言っちゃいけない)
言ってしまえば、シンデレラの魔法が解けるように、夢が現実へと連れ戻されてしまう。
631 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[] 投稿日:2010/11/29(月) 02:25:54.20 ID:0Ew14d20 [4/6]
サ行一文字、カ行一文字。
合計二文字の愛の言葉。
彼の細い体躯に無我夢中にしがみつきながら、必死に必死に伝えた続けた、感情の名前。
「…………好きよ、一方通行」
それが、少女に紡ぐことが許された言葉。
吐きだしても大丈夫な言霊。
本当ならば無言のまま朝日が昇るまで耐えるつもりだった。
けれど、一度呟いてしまえば、止まらない。
結標は壊れたラジオのように同じフレーズを繰り返す。
「……好き」
「好きぃ……っ」
「好き、なの」
「……だい、好きよ」
「――――好き」
「……一方通行、好き」
繰り返す。
繰り返す。
結標淡希は繰り返す。ただ、「好き」だと繰り返す。
ジワジワと裂けていく心から背を向けるために、少女は小さな声で呟く。
その裏に、どうしても声に出して叫べない、救いの声を隠して。
本当は伝えたい思いは彼には届かない。
届けてはいけない。
(その感情を彼にぶつけていいのは、あの子だけ、だから……)
632 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[] 投稿日:2010/11/29(月) 02:30:22.64 ID:0Ew14d20 [5/6]
■■■
やけに静かな夜は背筋が凍ってしまうほど不気味に感じられた。
このような闇夜に怯えて震えているのは、自分だけではないはず。
そんなことを考えながら、年端のいかない幼い少女は愛用の枕を持参して、
ある人のベットの中への侵入を試みた。
「……オマエ、なにやってンの?」
「あ、起きたの? ってミサカはミサカは小声で尋ねてみたり」
「何処の誰かさンがごそごそとするンでね」
「いやーなんだか今日はシーンとしててお外が怖くて、なんだが寂しいから、ってミサカはミサカは伝えてみる」
「……どーせ、夕飯の後にみたホラー映画が怖くて一人じゃねれねェってオチだろ」
「そ、そそそそんなことはないんだよ、ってミサカはミサカは、は、反論してみたり!」
「夜中に大声出すな。ヨミカワ達が起きるだろォが」
「……むぅ、ってミサカはミサカは……」
「――――ったく。勝手にしろ」
「!」
「うるさくすンじゃねェぞ」
「はーい、ってミサカはミサカは返事をした後に、おやすみなさーいってミサカはミサカは伝えてみる」
こうして、
10歳程の少女は寂しさ漂う夜をともに過ごす相手を見つけ、安眠の権利を得た。
――――寂しいよ。
と、素直に彼の前で弱音を吐けるのが幼い少女の特権。
彼の光となった少女だからこそ、与えられている居場所。
この夜、とある少女がその場所に辿りつけることは、ついぞなかった。
633 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage] 投稿日:2010/11/29(月) 02:32:39.93 ID:0Ew14d20 [6/6]
終り、お邪魔しました
結標淡希には、許される言葉と許されない言葉が在る。
ある人が聞けば『年頃の少女ならば誰だって願うことよ』と慰めてくれるかもしれない。
ある人が聞けば『オマエみたいなヤツがコレ以上を望むなんて贅沢だ』と説教してくるかもしれない。
―――己は底辺で這いつくばって生きているクソ人間。
率直にそんな自己評価を下す結標は、ごく自然に、前者よりも後者の意見に同意する。
(………そう、これ以上を望むのは贅沢ってね)
ボロアパートの寝室。
珍しいことに、今夜は結標一人しかいない。
この家に厄介になるようになってから、真っ暗な夜を1人で明かすのは初めての経験だ。
家主兼結標の後見人(一応)である可愛らしい容姿を持つ同居人の教師は
こんな日に限って『残業なのですよー』という伝言を留守電に残し、未だに帰ってこない。
「…………っ」
ふっ、と微かな息が僅かにあいていた上唇と下唇の間から漏れる。
声にならない少女の小さな叫びが、空気の中へと溶けて辺りに漂いはじめた。
外の雑音すらも聞こえてこない密閉空間。
音もない光もない人の温もりもないソコ。
例えるならば、結標ただ一人だけを閉じ込める鳥籠にも似ていて。
包み込む空気はやけに冷たい。
「……寒ッ」
縮こませていた背中を更に丸めた。
身を守る様に被っていた毛布を頭の上まで手繰りよせる。
(わかってる。わかっているのよ)
何度も、何度も。
繰り返し、繰り返し。
何時になく押しつぶされそうになっている己の心に言い聞かせる。
結標は溢れだそうとする感情の入り口を過剰に塞ぐ。
許されない言葉を言ってしまわぬようにドアに鍵を施錠する。
(…………心配を、かけるだけだもの。重荷を、背負わせてしまうだけだもの)
結標の迎えを待っている、仲間たちに。
何を察していながら見守ってくれる、同居人に。
戦場において「大丈夫か」と心配性そうに手を差し伸べてくれる、愛しい少年に。
630 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[] 投稿日:2010/11/29(月) 02:23:52.93 ID:0Ew14d20 [3/6]
ミノムシ状態で自己防衛をする彼女は冷静に自覚していることがある。
それは、「それなり」に彼の中で自分は特別な立ち位置にいる、ということ。
簡素で狭いシングルベットで、何度も供に夜を明かし肌を重ね合った間柄だ。
俗に言う「はじめて」まで捧げてやったのに、
『だたの同僚ですゥー』と切り捨てられたら、さすがにたまったものじゃない。
結標と、
彼女が「はじめて」を捧げた相手・一方通行の距離感を現すのに
「それなり」という言葉が一番絶妙だ。
それなりに、信頼し合って仕事を行える。
それなりに、互いに不快に感じずに隣にいれる。
それなりに、「好きだ」と言いあう事ができる。
ある程度踏み込んでいるけど、ある程度は踏み込まない。
「それなり」の関係。「それなり」の距離感。「それなり」に大切な人。
(私は「それなり」に特別なだけ。……「それ以上に」特別ではない、もの……)
結標淡希は彼にとって、それなりに大切な人。
酷く不器用で愛想が無くて、
それでも誰よりも純粋で綺麗なもつ彼にとって、それ以上に大切な人は、あの子。
彼の中で光となった、彼の中で唯一の人となった、あの子なのだ。
だからこそ、結標淡希には、許される言葉と許されない言葉が在る。
(アイツの中の私の存在価値なんてわかってる)
久しく感じていなかった孤独な時間の重圧に、
少しでも気を抜いてしまうと耐えきれなくなりそうになる。
胸の奥から目尻へと押しあがってくる何かを感じながら、少女はギリッと奥歯を噛みしめる。
それでも、
(――――それでも、絶対に言っちゃいけない)
言ってしまえば、シンデレラの魔法が解けるように、夢が現実へと連れ戻されてしまう。
631 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[] 投稿日:2010/11/29(月) 02:25:54.20 ID:0Ew14d20 [4/6]
サ行一文字、カ行一文字。
合計二文字の愛の言葉。
彼の細い体躯に無我夢中にしがみつきながら、必死に必死に伝えた続けた、感情の名前。
「…………好きよ、一方通行」
それが、少女に紡ぐことが許された言葉。
吐きだしても大丈夫な言霊。
本当ならば無言のまま朝日が昇るまで耐えるつもりだった。
けれど、一度呟いてしまえば、止まらない。
結標は壊れたラジオのように同じフレーズを繰り返す。
「……好き」
「好きぃ……っ」
「好き、なの」
「……だい、好きよ」
「――――好き」
「……一方通行、好き」
繰り返す。
繰り返す。
結標淡希は繰り返す。ただ、「好き」だと繰り返す。
ジワジワと裂けていく心から背を向けるために、少女は小さな声で呟く。
その裏に、どうしても声に出して叫べない、救いの声を隠して。
本当は伝えたい思いは彼には届かない。
届けてはいけない。
(その感情を彼にぶつけていいのは、あの子だけ、だから……)
632 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[] 投稿日:2010/11/29(月) 02:30:22.64 ID:0Ew14d20 [5/6]
■■■
やけに静かな夜は背筋が凍ってしまうほど不気味に感じられた。
このような闇夜に怯えて震えているのは、自分だけではないはず。
そんなことを考えながら、年端のいかない幼い少女は愛用の枕を持参して、
ある人のベットの中への侵入を試みた。
「……オマエ、なにやってンの?」
「あ、起きたの? ってミサカはミサカは小声で尋ねてみたり」
「何処の誰かさンがごそごそとするンでね」
「いやーなんだか今日はシーンとしててお外が怖くて、なんだが寂しいから、ってミサカはミサカは伝えてみる」
「……どーせ、夕飯の後にみたホラー映画が怖くて一人じゃねれねェってオチだろ」
「そ、そそそそんなことはないんだよ、ってミサカはミサカは、は、反論してみたり!」
「夜中に大声出すな。ヨミカワ達が起きるだろォが」
「……むぅ、ってミサカはミサカは……」
「――――ったく。勝手にしろ」
「!」
「うるさくすンじゃねェぞ」
「はーい、ってミサカはミサカは返事をした後に、おやすみなさーいってミサカはミサカは伝えてみる」
こうして、
10歳程の少女は寂しさ漂う夜をともに過ごす相手を見つけ、安眠の権利を得た。
――――寂しいよ。
と、素直に彼の前で弱音を吐けるのが幼い少女の特権。
彼の光となった少女だからこそ、与えられている居場所。
この夜、とある少女がその場所に辿りつけることは、ついぞなかった。
633 名前:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[sage] 投稿日:2010/11/29(月) 02:32:39.93 ID:0Ew14d20 [6/6]
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