スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
唯「りっちゃん隊員の帰還!」
1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/11(木) 20:19:01.58 ID:QmP4fcS40 [1/2]
純「あずさー、今日も部活?」
梓「うん、そうだけど……」
純「そっか」
梓「何で?」
純「あ、いや!最近どこにも行ってないし!ジャズ研もちょうど休みだし遊びたいなあと!」アワアワ
梓「そうなんだ。ごめん」
梓「(そうしたいのは山々なんだけどね……)」
憂「梓ちゃん!」
梓「へ?」
憂「あ、あの……!お姉ちゃんがね、大丈夫だよって!律さん、きっと見付かるからって」
梓「……うん」
純「あずさー、今日も部活?」
梓「うん、そうだけど……」
純「そっか」
梓「何で?」
純「あ、いや!最近どこにも行ってないし!ジャズ研もちょうど休みだし遊びたいなあと!」アワアワ
梓「そうなんだ。ごめん」
梓「(そうしたいのは山々なんだけどね……)」
憂「梓ちゃん!」
梓「へ?」
憂「あ、あの……!お姉ちゃんがね、大丈夫だよって!律さん、きっと見付かるからって」
梓「……うん」
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/11(木) 20:27:39.76 ID:ejYca+2A0 [2/22]
高校生最後の一年も、あと半分になっていた。
四人の先輩から受け継いだ軽音部を、なんとか一人で存続させてはいた梓が、
「そろそろ本当に新しい部員、集めなきゃ」と考えていた頃、それは起こった。
律が行方不明になったのだという。
大学の登山サークルに誘われ、山に登っている途中、足を滑らせたそうだ。
丁度崖を登っていたそうで、転落したまま行方がわからなくなっているらしい。
そんな報せを唯から受けて数日が経つ。
流石の梓も心配で、受験前の大切なこの時期に、授業だって上の空なのだから
純たちが心配するのも無理はなかった。
今日は別のことで上の空だったのだが。
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/11(木) 20:30:02.88 ID:ejYca+2A0 [3/22]
警察も消防も出動しているのに、未だに律は見付かっていない。
持参していた食糧だって、もって一週間程度のものだったらしく、生きての
救出はほとんど諦められていた――はずだった。
ガチャリ
「おーっす、梓!」
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/11(木) 20:35:36.89 ID:ejYca+2A0 [4/22]
梓「(良かった、まだいた)」ホッ
律「部活開始のチャイムが鳴ってだいぶ経つんだぞー。部長がそんなんでどうするー」
梓「す、すいません……っていうか」
律「うん?」
梓「何で律先輩がここにいるんですかっ!?」クワッ
律「それ朝も聞いたから!っていうか落ち着け梓!近い、近いから!」
梓「あ、あぁ、すいません」スッ
思わず身を乗り出していた梓は、慌てて律から離れた。
律は困ったように頭を掻くと、小さく溜息を吐く。
梓「(溜息を吐きたいのはこっちなんですけどっ!)」
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/11(木) 20:46:41.95 ID:ejYca+2A0 [5/22]
.
今日の朝。
珍しく早く学校に着いてしまった梓は、朝練でもしようと部室に来ていた。
「ふわふわたーいむ♪」
梓「」
誰かの歌声が漏れてくる部室の扉を開くと、そこには律がいた。
律「お、梓。早いんだな」
梓「……何で律先輩がここにいるんですかっ!?」
律「何でって……。それはだな」
キーンコーンカーンコーン
律「あ、チャイム」
梓「(ど、ど、ど、どうしよう!?教室に行く!?それとも律先輩の無事を皆に
知らせることが……!)」
律「梓、行かなくていいの?授業」
梓「で、でも……」
律「大丈夫だって。私は逃げねーし。あと、私のことは誰にも言うなよ」
梓「え?」
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/11(木) 20:52:53.56 ID:ejYca+2A0 [6/22]
律「言ったら呪ってやるからなー?」
梓「……う」
梓「(今のは冗談だとはいえ、さっきの言葉は本気っぽかったし……。もしかして何か
事情でもあるのかな。だとしたら、今は黙っておいた方がいいよね……)」
律「ほら、梓。授業遅れるぞ!」
梓「絶対、絶対放課後まで待っててくださいね!」
律「へいへい」
.
そして今。
実際律はちゃんと、梓の前にいるわけなのだが。
14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/11(木) 20:58:02.87 ID:ejYca+2A0 [7/22]
律「なあ梓、喉渇いた」
梓「へ?あ、お茶淹れましょうか?」
律「おう。へえ、ムギの奴、ティーセット全部置いてったんだ」
梓「ムギ先輩から聞いてなかったんですか?」
律「まあなー。大学入ってからは、昔のメンバーで一緒に居ることも少なくなっちゃったし」
梓「はあ……」コポコポ
梓「(……あれ?)」
律「何でだろうなー、大学じゃあ高校の話とかも全然しないんだよな。あ、もちろん梓の
こととかは色々言ってるけど。主に唯が」
梓「想像できます、主に何言われてるか」コトッ
梓「(……なんか)」
律「お、サンキュー」グビグビ
梓「話、逸らしてません?」
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/11(木) 21:06:30.51 ID:ejYca+2A0 [8/22]
律「……う」
梓「……まだ律先輩のこと、誰にも言ってないです。だから……」
律「わーったよ」ハァ
一気に梓の淹れたお茶を飲み干すと、律は面倒臭そうな表情で
空になったカップを机に置いた。
律「しかし私の大冒険劇のどこからどこまでを話せばいいのかわからないというかだな」
梓「そういうのはいいです。簡潔に、何で律先輩は行方不明のはずなのにここにいるのか
答えてください」
律「とは言われてもなあ……。私もよくわかんないんだよ」
梓「どういうことです?」
律「なんかさー、知らない間にここにいて。私が行方不明になってたことは知ってん
だけど。ていうか、私が何で今生きてるのかすら不思議なんだけど」
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/11(木) 21:15:04.31 ID:ejYca+2A0 [9/22]
梓「はあ……?」
律「正直よく覚えてないんだよな。崖から落ちたのは覚えてるんだけど、それ以降の
記憶が全く無い。頭を勢いよく打って私もう死ぬんだなって思ってたら、いつのまにか
部室に居た」
梓「……そんな非常識なこと、私が信じると思います?」
律「思わない。自分でも信じられねーもん」
梓「もういいです……。とりあえず律先輩、よくわかりませんけど無事なんですから
早く皆さんに知らせないと」
律「だからそれが出来たら苦労はしねー」
梓「……はい?」
律「よくわかんないけど……私、部室から出られない」
18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/11(木) 21:36:02.35 ID:ejYca+2A0 [10/22]
梓「……もうそろそろ、本気で冗談はやめてください」
律「本気の本気。本気と書いてマジと読む!」
梓「……」
律「そんな目で見んな。っていうかほんとにほんとなんだよ」
そういうと、律は座っていた椅子から立ち上がった。
何をするのかと見ていると、律は部室の扉を開けようとしたまま手を上げて
動かなくなった。
梓「先輩?何してるんですか?早く開けてみてくださいよ」
律「……動けない」
梓「……まさか」
律「ほんと。梓が授業行ってるときとかも何度も試したけど、ドア開けようとしたり、
一か八かで窓から出ようとしても、その前に行くと身体が動かなくなるんだよ」
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/11(木) 21:43:16.04 ID:ejYca+2A0 [11/22]
梓「じゃあそこからこっち戻ってくるにはどうするんです?」
律「ほい」スッ
律「戻ろうと思えば戻れるんだ。不思議不思議」
梓「……能天気に笑ってられるとこですか。それで、出られないのはわかりました。
先輩が演技してるって可能性もありますけど」
律「いい加減信じてくれ!」
梓「……それはまあ置いといて」
律「おいぃ!」
梓「どうして誰かに先輩がここにいることを知らせたくないんです?皆心配
してるのに……。唯先輩とか、凄い落ち込んでたんですよ!」
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/11(木) 21:50:21.99 ID:ejYca+2A0 [12/22]
律「だって、よく考えてみろよ。もしここに私がいたとすると、警察とか消防とか
一気に部室に来るだろ?そしたら色々問題が起こるかもしんねーじゃん。折角細々とでも
続いてる軽音部が、今度こそ廃部とかになっちゃうかも知れないし!」
梓「……よくそこまで頭が回りますね」
律「……他に考えることもなかったからなー、ここにいる間」
梓「何でそんなマイナス方面にしか考えられないんですか」
律「この状況からプラスに考えること、出来るか?」
梓「……できませんよね、普通」
律「第一、信じてくれるわけないだろ。梓の説明聞いたって」
梓「それはそうですけど……。あ、本人が連絡すればいいんじゃないですか!」
律「どっちにしても、私がここにワープらしきことをしたことは何も説明できないし、
できたとしても信じてもらえない。そしたらどうだ?私の捜索願を出した大学とか、
私の友達が信用を失うことになる」
梓「……でも、せめてご家族くらいには……!」
律「よけいに心配させてどうするよ」
梓「そうですけど……」
ピリリリリリ♪
22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/11(木) 22:01:23.44 ID:ejYca+2A0 [13/22]
梓「あ、電話……」
『着信:唯先輩』
梓「もしもし?」
唯『あずにゃん?久しぶり~』
梓「昨日も電話してきたじゃないですか」
唯『うん、そうなんだけど……。りっちゃんのことでなんだか気持ちが落ち着かない
っていうか……』
律「誰?唯?」コソコソ
唯『りっちゃん!?』
梓・律「えっ!?」
26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/11(木) 22:05:57.81 ID:ejYca+2A0 [14/22]
梓「(なんという地獄耳!)」
唯『ねえあずにゃん、りっちゃんいるの!?』
梓「えーっと……」チラッ
律「!」ブルブル
梓「気のせい、じゃないですか?」
唯『そんなことないよ!今、りっちゃんの声が……!あずにゃん、どこにいるの!?部室!?』
梓「あ、はい……って、唯先輩!?」
ツー、ツー、ツー
梓「……切れちゃった」
律「唯の奴、まさか部室に来るつもり……」
ガチャッ
唯「りっちゃん!」
律・梓「早ッ!」
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/11(木) 22:18:58.57 ID:ejYca+2A0 [15/22]
唯「……ってほんとにりっちゃんが!?」
梓「と、とりあえず唯先輩、落ち着いてください!」
唯「う、うん……」ハァハァ
律「ほら、唯。お茶でも淹れてやるから……」
唯「本物!?偽者!?お化け!?」
律「」
梓「律先輩、とりあえず唯先輩が落ち着くまで何もしないで下さい」
律「……へーい」
.
29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/11(木) 22:31:33.73 ID:ejYca+2A0 [16/22]
律たちの話を聞きながら梓の淹れたお茶を飲んでやっと落ち着いた唯は、
改めてといったように部室の中を見回した。
それから、何も変わっていないことを確認すると、梓達のほうに向き直った。
唯「……えっと、りっちゃん、あずにゃん」
梓「はい?」
律「なに?」
唯「いくら私だからって、さすがにそんな話……」
梓「で、ですよねー」
律「……ハハッ」
唯「でも、りっちゃんが無事なのは確かなんだよね?」
律「うん、まあな。たぶん」
唯「それじゃあ澪ちゃんとムギちゃんにも連絡しなきゃ!」
ピッ、ピッ
律「えっ、ちょ!」
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/11(木) 22:39:01.49 ID:ejYca+2A0 [17/22]
梓「唯先輩、それはまだ!」
唯「へ?」
カチャン
唯「もうメール送っちゃったよ?」
律・梓「」
唯「あ、あれ!?なんかだめだった!?」
梓「だめだったというか……」
律「唯たちも巻き込むつもりはなかったのに……!」
梓「“も”ってことは、私は巻き込んでも良かったんですか」
律「……」テヘ
梓「」
ガチャッ
澪「唯、どういうことだ!?」
紬「りっちゃん、無事なの!?」
31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/11(木) 22:42:17.40 ID:ejYca+2A0 [18/22]
律「おー、きたきた」
梓「お久し振りです、澪先輩、ムギ先輩!」
唯「あ、えっとえっと!」
澪「律!本当に無事、なんだな!?」
律「お、おう」
紬「良かった……!それで、どういうことなの!?どうしてりっちゃんが部室に!?」
律「ムギ、澪もあと唯も落ち着け!ちゃんと説明するから!」
.
33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/11(木) 22:46:40.42 ID:ejYca+2A0 [19/22]
律「……というわけでだな」
もう一度、改めて梓や唯も交えて一通り説明する。
みんなの反応はもちろん、律自身でさえ、信じられないといった顔をしている。
澪「……なんか怖い」ブルブル
紬「いくらりっちゃんでも、こんな大掛かりな冗談はしないわよね?」
律「私の扱い酷くね!?」
唯「でも、もし本当ならそれってすごいことだよね!?りっちゃんワープ少女として
一躍有名人に!?」
律「だから言っただろ。こっから出られないし、私自身、自分が生きてるのかどうか
すらわかんないんだって」
34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/11(木) 22:48:06.91 ID:ejYca+2A0 [20/22]
>>32
本文には書いてないけど、唯は元々学校の近くにいたから早くて、
澪たちも同じだと思っといて欲しい。
36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/11(木) 22:53:34.90 ID:ejYca+2A0 [21/22]
澪「でも実際、私たちには律の姿も見れてるし話も出来る。だから……、ヘンなこと
言うなよお!」
律「別に死んでるとは言ってないだろ!?ただ自分の身体がないように思えて……」
紬「自分の身体がない?」
梓「ムギ先輩、何かわかったんですか?」
紬「わかったというか……。昔、聞いたことがあるの。何かがきっかけで、
違う場所とかにワープしちゃうんだけど、身体は元居た場所にあるっていうの。
何かの小説だったかも知れないけど……。結局、その身体は持主が戻らないから
朽ち果てちゃうんだけど」
律「それってやばくね!?」
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/11(木) 22:59:34.50 ID:ejYca+2A0 [22/22]
唯「でもムギちゃん!りっちゃんの身体、ちゃんとあるよ!」
紬「えぇ、だけど……。その話も、身体はちゃんと見えるし動かせるし、至って
何も変わらないんだけど、ワープした場所から出られなくなっちゃうの」
澪「それって、今の律とまったく同じ……!」
梓「でもあくまで小説の中の話なんですよね?そんなことって……」
律「実際、私の身に起きてる」
梓「……はい」
紬「その話は、主人公の身体が朽ち果てて、主人公も死んじゃうところで終わるんだけど」
唯「何か、助かる方法とかないの!?」
紬「私の想像なんだけどね?りっちゃんの本当の身体をここに持ってこればいいんじゃ
ないかしら?」
56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 16:16:05.59 ID:9Zwm29dl0 [1/10]
澪「それって……」
律「山の中にあるはずの私の身体を捜すのか!?」
紬「えぇ。早くしなきゃ、ほんとにりっちゃんが死んじゃう。やるだけやってみましょう」
唯「でも危なくない?」
梓「それは警察に任せた方が……」
紬「警察に任せたら、りっちゃんの身体を部室に持って来れないでしょ?」
梓「あ……」
紬「大丈夫、うちの家も総力を上げて協力させてもらうわ」
58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 16:30:04.20 ID:9Zwm29dl0 [2/10]
律「でも、やっぱりそんなことさせられないって!あの山、色々危険だし。
それにどうせ、たぶん私死んでたんだろうし……」
澪「行く」
律「……えっ?」
澪「律がそれで、本当に無事に私たちのところに帰って来られるんなら、私は
行きたい!」
唯「……私も!」
梓「私もです、受験とか色々ありますけど」
紬「それじゃあ決定ね!」
律「お前等……。で、でもさ!私はこっから出られないし何も出来ないんだぞ!?」
紬「えぇ。だけど、電話なら出来るんじゃないかしら?」
律「山の中なんて、電波届かねえだろ!?」
59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 16:58:01.91 ID:9Zwm29dl0 [3/10]
唯「ほいほい!それならさ、りっちゃん、ワープできたんならほかの事だって出来るかもよ!」
律「例えば?」
唯「離れてても頭の中で会話できるとか!」
律「いや、無理だろ」
唯「わかんないよ!やってみようよ!りっちゃん、目瞑って何か言ってみてよ!
あ、声に出さないでね!」
律「だから無理だって」ハァ
紬「とりあえずやってみようよ!」ワクワク
律「はいはい」
律「(ゆーいー、聞こえるわけないよなー、バーカ)」
唯「りっちゃんがバカって言った!」
律「ほえ!?」
60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 17:01:31.62 ID:9Zwm29dl0 [4/10]
紬「ほんとに当たった!?」
梓「そんな馬鹿な」
澪「り、律、本当に唯にバカって言ったのか?」ガクブル
律「……」コクコク
澪「けど、それだけじゃわからないし、今度は会話してみたら!?」
唯「りっちゃん、どんどん罵って!」
律「それはいい」
62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 17:33:58.39 ID:9Zwm29dl0 [5/10]
律「(唯、本当に聞こえるのか?)」
唯「(おぉ!本当に聞こえた!)」
律「(さっきのはなんだよ!?……しかしマジで会話できるんだな……なんかすげー)」
唯「(まだあんまり信じられないけど、ワープしたことも本当みたいだよね……)」
澪「唯、律、どうだ?」
律「聞こえたしちゃんと会話できた」
紬「なんだかすごいねえ!私たちにも出来るかしら?」
律「やってみようか?」
律「(ムギ、聞こえる?)」
紬「すごい、聞こえたっ」
梓「……ということは、私と澪先輩にも聞こえるんでしょうか?」
澪「こんなこと、おかしいよ……私、夢でも見てるのか?」
律「少なくとも私は現実」
紬「私もね。でも、これでりっちゃんと連絡取れることがわかったし、りっちゃんは
部室にいたまま、私たちにどのあたりに落ちたのかとか教えて欲しいの」
63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 18:02:59.62 ID:9Zwm29dl0 [6/10]
律「……いいけど、でもやっぱ!」
唯「りっちゃん、もうぐだぐだ言っても仕方ないよ!それに時間もないんだし」
澪「これが夢ならどんなにいいか」
梓「とりあえず、早くその山に向かいましょう!……ってムギ先輩?」
紬「……えぇ、それじゃあ」ピッ
紬「家に連絡したわ。ヘリコプターで、りっちゃんの行った山まで行きましょう。
それから、山へ下りてりっちゃんの身体を探そう」
――――― ――
65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 18:42:50.38 ID:9Zwm29dl0 [7/10]
梓(……で、ほぼ勢いで来てみたのはいいけど)
唯「なんていうか……神々しい山だねえ」
澪「こんな山なら律がワープとか出来たことも不思議じゃない」
紬「(りっちゃん、本当にここで合ってる?こんな山、登っていいの?)」
律『(合ってると思うよ。見えないからわかんねーけど。私も最初、本当に
こんな山登るのか!?って焦ったし。頂上に神社とかありそうだよなあ)』
紬「(とりあえず、合ってるのね?)」
紬「斉藤、ヘリを下ろして」
斉藤「はっ」
66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 18:48:59.32 ID:9Zwm29dl0 [8/10]
ブルルルルルル
唯「うわー、なんかスーパーマンとかになった気分!」
澪「ムギ、本当にドラマとかみたいに、この一本の縄に掴まって下に下りるの?」
梓「高い……」
紬「大丈夫よ」
ヘリコプターが停止する場所がないので、山の中腹あたりの少し拓けた場所で、
下のほうに垂らされた一本の細い縄を伝って地上へ下りる。
何とか全員終わると、紬は携帯を確認した。
紬「本当ね、ここからは電波が届かないみたい」
澪「う、うん……」
澪(怖かったあ)
紬「それじゃあ皆、早くりっちゃんの身体を捜しに行きましょうか。うちの家の者も
数人、護衛のために着いて来てくれるから、危険なことがあったりしたら頼みましょう」
護衛「何なりとお申し付けを!」ビシッ
67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 19:03:40.33 ID:9Zwm29dl0 [9/10]
唯「おぉ、頼もしい!」
梓「……それにしても、なんかここ、空気がひんやりしてません?何か出そうな雰囲気……」
澪「うわあああああ!やめてくれえ!」
梓「あっ、すいません!」
紬「なんだか霧も出てきたわね……。急いだ方がいいかも」
唯「(りっちゃん、聞こえる?)」
律『(おう、バッチリだぜ!あと、お前等の会話も丸聞こえだ。けどこれは一人としか
会話出来ないのかな……)』
68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 19:04:24.47 ID:9Zwm29dl0 [10/10]
唯「(そうなのかも!それでりっちゃん、今ね、凄い拓けた場所にいるんだけど、
どこ行けばいいかわかる?)」
律『(拓けた場所?あ、もしかしたら昼ご飯食べたとこかも。そんなら、上に行く方の道が
三本、別れてるだろ?)』
確かに、律の言う通り頂上へ向かう道が三本あった。
唯は確認し終えると、頷く。
澪「唯?律と話してるのか?」
唯「ん、ちょっと待ってね」
律『(わかった?で、そこの真ん中の道を通ったと思うんだ。たぶんだけど)』
唯「(真ん中だね?わかった)」
69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 19:41:26.16 ID:khyic0Ir0 [1/12]
紬「唯ちゃん、りっちゃんなんて?」
唯「あのね、ほら、あそこに三本の別れ道あるでしょ?」
梓「ありますね」
唯「そこの真ん中の道を通ったらしいから、私たちも行ってみよう」
澪「まあ律の通った道辿るのが一番手っ取り早いしな」
口々にそう言うと、歩き出す。
真ん中の道は、木が茂りすぎて霧がなくても空なんて殆ど見えなかった。
澪「……本当に律の奴、この道と負ったのか?嘘のこと教えたんじゃ……」
梓「いくら律先輩でもこういうときにそんなことはしないですよ」
律『(まるで普通のときなら平気で嘘を言うみたいな言い方だなあ、梓?)』
梓「聞こえてたんですか!」
紬「え?」
梓「あ、いえ……」
律『(ぷっ、恥ずかしい奴)』
梓「(うっさいです!)」
70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 19:42:55.01 ID:khyic0Ir0 [2/12]
あれ、またID違ってる……。
本人です。
72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 20:03:17.76 ID:khyic0Ir0 [3/12]
律『(で、梓。今どの辺り?結構歩いたんじゃない?)』
梓「(あ、はい。まだまだ先は長そうですけど)」
律『(ちょっと思い出してきた。えっとな、左側に雪がかかったみたいに白い
葉をつけた木が立ってるはずなんだけど……)』
梓「(雪みたいに白い葉、ですか?今霧でよく前が……)」
唯「お、何これ!」
澪「どうしたんだ、唯?」
紬「わあ、真っ白い木!」
律『(あっただろ?)』
梓「(はあ……ありましたね。ますます幻想的な)」
律『(で、その木に近付いて……)』
唯「この葉っぱ持って帰ろう!」タタタッ
73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 20:09:12.33 ID:khyic0Ir0 [4/12]
紬「唯ちゃん、危ないっ!」
唯「へっ!?」ズリッ
ズズズ、ズッドーン
木の下に近付いた唯は、逞しく育っていた不思議な木の根に躓いて転び、
急斜面を転げ落ちていった。
唯「……ってて……!」
澪「ゆいー、大丈夫か!?」
律『(あちゃー、私と同じ失敗しちゃったか。言おうと思ってたのに。私も
高く売れそうだなーとか思って近付いたら落ちちゃったんだよなあ。他の人も
一緒に落ちてくれたけど)』
梓「(卑しい人……だからバチ当たったんじゃないですか)」
律『(うっ……)』
75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 20:20:08.85 ID:khyic0Ir0 [5/12]
>>73
ミス。
クエスチョンマークが抜けていた。
梓「(卑しい人……だからバチ当たったんじゃないですか?)」
77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 20:26:42.27 ID:khyic0Ir0 [6/12]
紬「あなたたち、何してるの!早く唯ちゃんを助けなさい!」
護衛「す、すいません、お嬢様!」
梓「あ、待って下さい!」
紬「どうしたの、梓ちゃん?」
梓「律先輩も唯先輩と同じとこに落ちたらしいです。それから、ここまで上らないで
違うルートから歩いていったって……」
律『(よくわかんねえけど、まだその辺りは危険な場所とかないから、私たちの行ったほうを
行く方がいいと思う。わざわざ唯を助けて私たちが行った場所と違うとこに出て何かあったら
大変だしさ)』
紬「(わかったわ)」
紬「あなたたち!私を落としなさい!」
澪・護衛「えぇ!?」
80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 20:40:23.21 ID:khyic0Ir0 [7/12]
護衛「し、しかしお嬢様……」
澪「いや、ムギ、あの……」
梓「普通に下りればよくないですか?」シレッ
ズッズズズ
まるでスキーでもしているかのように、斜面を滑り降りる。
下りてきた梓に、唯が泣きついた。
唯「あずにゃあん、来てくれてよかったよお!」
梓「皆さんも早く来てくださーい!」
紬「梓ちゃん、すごいわっ……!」ゴクッ
澪(ムギが落としてとか言うから混乱しちゃったけど……普通に下りればよかったのか……
でも……この斜面急じゃないか!お、お、落ちたらどうなる……!?)アワアワ
律『(血がドバーッと!ってなあ!)』
澪「うわあああああああああ!」
81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 20:46:03.11 ID:khyic0Ir0 [8/12]
梓「澪先輩!?」
律『(すっげー悲鳴……澪ー、冗談だってー。私も落ちて怪我しなかったし、唯だって
無事だろ?つーか早くしなきゃ皆に置いてかれて一人っきりでその場所に取り残され……)』
澪「(やーめーろー!下りればいいんだろ下りれば!)」
憤りながら、澪は足を踏み出した。
と、先ほどの唯のように、逞しい木の根に足を躓かせた澪。
澪「……え?」ズリッ
ズズズ
澪「……わあああああああああ!」
ズッドーン
紬「澪ちゃんもやるわね!よーし、私だって!」ズリッ
護衛「お嬢様あ!」
ズズズ
紬「いいわあああああああああ!」
スットーン
83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/11/12(金) 21:36:30.03 ID:khyic0Ir0 [9/12]
梓「」
律『(……大丈夫か?澪とムギ。ムギは違う意味の悲鳴が聞こえたけど)』
梓「(大丈夫、だと思います)」
唯「わわっ、澪ちゃんムギちゃん大丈夫!?」
澪「うぅ……」
紬「全然平気よ!」
唯「そ、そう?」
梓「それじゃあ先に進みましょう。霧が濃くなってきちゃいましたし。澪先輩、
大丈夫ですか?」
澪「う、うん……」
澪(律のためにも頑張らなきゃ……)
84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 21:43:02.55 ID:khyic0Ir0 [10/12]
律『(なあ梓)』
梓「(はい!)」
律『(……なんかこれ、楽しいな。モニターとかはないけど探検隊の司令官とか
してるみたい)』
梓「(どうでもいいです。それより早く、次どこ行ったらいいか教えてください)」
律『(梓酷い……。次はな、ちょっと待って。思い出せない)』
梓「(思い出したんじゃないんですか?もう……。とりあえず真直ぐ行ってみますね)」
律『(おう)』
唯「この山、本当に危ないねえ……」
梓「そうですね。先輩方、前に進んでいきましょう」
澪「わかった……!」
紬(それにしても……。りっちゃん、まだその辺りは危険な場所ないって言ってたけど……
もしかしたら、どこかもっと危ない場所があるのかしら……?)
86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 21:58:21.07 ID:khyic0Ir0 [11/12]
梓「(律先輩、何か思い出せましたか?)」
律『(急かすなよ……。で、梓たちは今どんなところにいるわけ?)』
梓「(霧が濃くって周りがよく見えないんです。ただ、さっきから水の流れる音が
聞こえてくるので川が近いのかも……っていうか山に川って……)」
律『(川!)』
梓「(何か思い出しました!?)」
律『(川の向こう岸に渡った気がする)』
梓「向こう岸に渡ったって……」
突然視界が開け、見えた光景に思わず梓たちは足を止めた。
目の前には、今にも溢れそうに氾濫した川があった。
87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 22:10:12.56 ID:khyic0Ir0 [12/12]
唯「うわあ……やっぱり違う道探そうか……」
梓「でも唯先輩、律先輩はこの川を渡ったらしいです」
律『(私のときはこんなに氾濫してなかったけど……)』
唯「(どうしても渡らなくちゃだめかな?)」
律『(どんな状況かはよくわかんないけど、その辺り、ほかに道はないだろ?)』
唯「(ほんとだ……わかったりっちゃん!私やるよ!)」フンスッ
澪「え、唯!?」
やる気充分に、唯はいざ濁流に呑み込まれんと川の中へ入っていった。
流されそうになるのを、必死に近くにあった岩に掴まり堪える。
唯「皆も早く!」
111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/13(土) 11:33:13.35 ID:Ap9PSEqq0 [1/23]
紬「わ、わかったわ!」ザブン
梓「……仕方ないです、制服濡れちゃうけど!」ザブン
澪「(律、本当にこれで合ってるんだな!?)」ザブーン
律『(う、うん)』
唯「こっからどうやって向こう岸まで……」
澪「手を繋いだら!?」
紬「そうね、手を繋いで流されないようにしながら唯ちゃんから順番に進もう!」
唯「わかった!」
律『(唯、あんまり無理するなよ!?)』
唯「(大丈夫!)」
113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/13(土) 11:45:20.37 ID:Ap9PSEqq0 [2/23]
手を繋ぎながら、唯は川の中を進んでいく。
何とか向こう岸まで着くと、水から上って今度は梓の手を引っ張り上げる。
梓は紬を、紬が澪を引っ張り上げ、全員無事に川を渡った。
澪(全員……?)
梓「ムギ先輩、護衛の人たちは?」
紬「心配しないで。少し違う道を探らせてからこっちに……」
唯「来てないよね」
紬「……うん。けど大丈夫よ!先に進みましょう」
紬「(りっちゃん、川を渡ったけど次はどこに行けば?)」
律『(……)』
紬「(りっちゃん?)」
律『(え?あ、あぁごめん。川、渡れたのか?)』
紬「(えぇ、案外簡単に。それよりどうかした?)」
114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/13(土) 11:56:41.36 ID:Ap9PSEqq0 [3/23]
律『(いや、何でもない!)』
澪「うわあ、服びしょびしょだ……」
梓「私もです。でも、霧は少し晴れてきましたね!」
唯「あ、本当だ」
紬「(りっちゃん、今周りを見回してみたんだけど、人一人通るのが精一杯みたいな
細い道しか、進めそうな場所がないわ。そこを行けばいいかしら?)」
律『(うん、確かそう……だったと思う。ただムギ、そこから先は気をつけてくれ)』
紬「(?……わかった)」
唯「ムギちゃん、やっぱりこの細い道通ったって?」
紬「そうみたい。皆、ここから先はあまり離れないで歩こう」
澪「え、どうして?」
紬「りっちゃんが気をつけてって言ったから、何か罠とかあるのかも」
115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/13(土) 12:06:11.78 ID:Ap9PSEqq0 [4/23]
梓「罠って……。確かに何かありそうですけど、この山」
紬「そうよ、梓ちゃん!だから気をつけなきゃ」
唯「でも具体的に何があるのかとかわかんないし、気をつけようもないよね」サクサク
紬「それもそうだけど。あ、唯ちゃん、先頭は私!」タタタッ
澪「……なんかもう。ムギ、楽しんでない?」トコトコ
梓「そうですね」トトト
澪「……にしても、本当になんなんだ、この山は。山の名前、なんだっけ?」
梓「えーっと……あれ?何でしたっけ……?」
唯「まさか地図にも存在しない幻の山ー、だったりして!」
澪「えぇ!?」
紬「だったら面白いなあ!」
梓「いやいや」
117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/13(土) 12:18:18.62 ID:Ap9PSEqq0 [5/23]
澪「冗談はやめてくれよ、ただでさえ怖いのに……。しかもまた暗くなってきて
ないか?」
唯「あ、曇ってきちゃってる!」
紬「大変!早くりっちゃんの身体探して帰らなきゃ、雨降ったらよけいに危険だわ!」
梓「先輩方、向こうのほう、洞窟がありますよ!」
唯「とりあえずそこに入ろう!他に道もないし、中から通り抜けられるかも知れないし!」
――――― ――
119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/13(土) 12:25:03.76 ID:Ap9PSEqq0 [6/23]
唯「ふう……。山に洞窟って、なんかわくわくするねえ」
紬「ねー!」
澪「もう……子どもじゃないんだから」ハァハァ
梓「それに、早く先に、進まなきゃ、律先輩が、死んじゃう、かも知れませんよ!」ゼイゼイ
澪(だめだ、大学入ってから全然運動して無いからキツい……!)
梓(体育適当にやっとくんじゃなかった……!何で唯先輩とムギ先輩は全力で走って
平気なの!?)
唯「そ、そうだった!この洞窟、結構先まで続いててどうなってるかわかんないね……」
澪「それに暗くてよく見えない……」
紬「ふふっ、こういうときのためにマッチを用意してきました!」ジャーン
梓「……湿ってて使えないんじゃ?」
121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/13(土) 12:29:05.95 ID:Ap9PSEqq0 [7/23]
紬「そんな!」ポスッ、ポスッ
紬「……うぅ、本当だ」
梓「ま、まあまあ」
澪「(律?)」
律『(……)』
澪(あれ……?他の人と話してるのかな……?)
唯「けどここを進む以外、行き止まりみたいだし進んでみよ!皆で進めば怖くない!」
紬「おー!」
梓(何か……、先輩たちが高校に居たころに戻ったみたいだな)
123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/13(土) 12:42:01.54 ID:Ap9PSEqq0 [8/23]
唯「そういえばさっきからりっちゃん隊員と全然話せないんだけど、誰かりっちゃんと
話してる?」
紬「え、私もよ?何度も呼びかけてるんだけど反応が無いの」
梓「私もです」
澪(皆も……?)
澪「ま、まさか何かあったんじゃ……、それとも律の本当の身体が死んじゃった……」
唯「澪ちゃん、それは言っちゃだめ!」
紬「大丈夫よ、きっと!」
そうは言うものの、皆頭に浮かんだ最悪の光景を打ち消そうと、
自然と早足になる。
と、突然先頭の唯が立ち止まった。
唯「何か……いる」
127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/11/13(土) 12:51:24.47 ID:Ap9PSEqq0 [9/23]
梓「えっ、何かってなんですか……?」
唯「わ、わかんない……っ、けど何かいるよ……!」
確かに、奥のほうから微かな息遣いと気配が感じられた。
それも、いくつも。
獰猛そうな唸り声が暗闇を引き裂いた。
グルルルルルッ
紬「狼っ!?」
澪「いや、ない、絶対ないから!だって、日本に野生の狼なんているはず……!」
「お嬢、様……!」
紬「え、斉藤!?」
128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/13(土) 12:52:32.07 ID:Ap9PSEqq0 [10/23]
>>125>>126
ワロタwww
129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/13(土) 13:02:04.79 ID:Ap9PSEqq0 [11/23]
唯「斉藤さん!?」
梓「ヘリコプターで待機だったんじゃ……!」
斉藤「申し訳、御座いません、お嬢様方……!突然、ヘリが墜落してしまい……」
暗闇に慣れてきた四人の目に、血だらけになった斉藤や、
なんとさっき消えた護衛の姿が映った。
そして、灰色の毛を持つ、狼の姿まで。
紬「どうなってるの、これは!?」
護衛「……お嬢様、のご命令で、別の道を探っていたところ、この洞窟に辿り着き……狼共が!」
澪「うっ、血の匂いが……」フラッ
梓「澪先輩!」
斉藤「今直ぐ、お逃げ、ください、お嬢様!」
132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/13(土) 13:23:30.63 ID:Ap9PSEqq0 [12/23]
唯「だけど……!」
紬「戻ったってりっちゃんのところにたどり着く道がないの!」
澪「無茶苦茶だよこんなの……!どうなってるんだよお!」
梓「(律先輩が言ってた危険ってこういうことなんですか!?)」
律『(……)』
梓(やっぱり返事が返ってこない……!)
狼「ウゥゥ……」
不吉な唸り声を上げ、一匹の狼が唯たちを襲ってきた。
間一髪避けると、別の狼達も次々に唯たちを襲う。
唯「……お、狼さん、怖くない怖くない!」
梓「唯先輩、手懐けなくていいですから!」
134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/13(土) 13:52:08.84 ID:Ap9PSEqq0 [13/23]
澪「いや、唯だって手懐けてないだろ!」
唯「ひぃ!」
紬「皆、とりあえずこの場はダッシュよ!よくゲームであるじゃない、勝ち目のない
戦いは逃げるのが一番!」
澪「これゲームじゃないから、現実だから!」
澪(あれ、現実?現実なのか、夢なのか!?寧ろ夢であってほしい……!律が行方不明に
なったところから全部!)
狼「グゥルウルルル……」フゥフゥ
澪「……。よし、逃げよう!」ダダダッ
唯・梓「え」
紬「れっつらんにんぐ!」タタタッ
唯・梓「どうして英語!?」
143 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/13(土) 14:09:02.81 ID:Ap9PSEqq0 [15/23]
斉藤「お嬢様、どうかご無事で……!」
紬「斉藤、りっちゃんを見つけたら絶対戻るわ、絶対よ!」
梓「む、ムギ先輩っ!狼さんたちが追ってきてますよ!」
唯「狼さあああああああん、来ないでええええええ!」
澪「なぜ狼“さん”!?」
律『(……か!)』
澪(え?)
律『(……れか、誰か聞こえるか!?)』
澪「(律!)」
147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/13(土) 14:17:21.28 ID:Ap9PSEqq0 [17/23]
律『(澪……か!……で、消え……んだ!)』
澪「(何、律!?聞こえない!)」
律『(……消えそう、なんだ!)』
澪「(消える……!?消えるって何がだよ!?)」
律『(――……)』
澪「律!?りつ!」
紬「澪ちゃん、りっちゃん何か言ってたの!?」
澪「それがよく聞こえなくて……」
唯「あ、出口!」
狼に追われながら、ギリギリで出口に辿り着いた。
外では、さっきの曇り空が泣いていた。
皆が洞窟から一歩外へ足を踏み出した途端、聞こえていた唸り声や足音が聞こえなくなった。
梓「狼さんが……!」
紬「……消えた?」
150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/13(土) 14:31:33.97 ID:Ap9PSEqq0 [18/23]
唯「ほ、ほんとだ……、どこにもいない」
澪「いや、唯。それで中まで入って確かめようとしなくていいから」
唯「だ、だって……」
紬「それより澪ちゃん、さっきの続き」
澪「あ、そうだった。私もよくわかんないんだけど、消えそうなんだって……」
梓「消えそう、って……狼が?」
澪「いや、違うだろ」
梓「ですよね。でも、違うとしたら……」
紬「りっちゃんが消えちゃう、ってこと……?」
152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/13(土) 14:40:07.36 ID:Ap9PSEqq0 [19/23]
唯「そんな……」
紬「……よくよく考えてみたら、この山、おかしいことばかりよね」
澪「よくよく考えてみなくてもおかしいのはわかるよ」
紬「澪ちゃん酷い」
梓「……」
梓(ムギ先輩が律先輩に重なって見えてきた……)
澪「え、ごめん」
紬「別にいいけど。それでね、思ったんだけどこの山、不思議な力でもあるんじゃ
ないかしら?さっき澪ちゃんたち、この山の名前思い出せなかったよね?」
梓「あ、はい」
紬「私もなの。たぶん、唯ちゃんもそうだよね?」
唯「記憶力が悪いもんですから……」
紬「たぶん、記憶力の問題じゃないわ。この山は実際存在しない 山なんだと思う、
唯ちゃんが言ったみたいに」
157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/13(土) 15:08:13.01 ID:Ap9PSEqq0 [22/23]
澪「……そんな非科学的なこと」
紬「でも私たちの目の前で起こったこと全部非科学的だよね」
唯「確かに……」
梓「それならどうなるんですか、私たちや律先輩は!それに幻の山なんだとしたら……!」
紬「梓ちゃん、大丈夫だから落ち着いて」
梓「す、すいません……」
紬「あくまで私の推測よ。りっちゃんが警察や消防の捜索でも見付からない
のは、ここが存在しない山だから。りっちゃんたちは、別の山に行こうとしてここに来てしまった。
何でここに来たのかはわからないけど……」
澪「そんなことって、ありえるのか……?」
紬「わからないけど……。誰かを山に呼び寄せ生贄にして大きくなる、人食い山の
類じゃないかしら」
梓「人食い山って、またすごい名前の……」
紬「想像上のものだけどね。でも、それが実際存在するんだとすると、りっちゃんはその
生贄にされたことになる」
168 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/13(土) 19:11:16.49 ID:2MKs2iEy0 [1/6]
唯「ってことは、りっちゃんがこの山に食べられちゃったの!?」
紬「ううん、少なくともまだ食べられたわけじゃないと思う。人食い山はね、
生贄が死んだらその屍を糧にして大きくなるんだけど、生贄が死ぬまでは、この世界に
現れて普通の人もこの山を見ることができるし、中に入ることが出来る」
梓「要するに、律先輩はまだ生きてると」
紬「そう。だけど、さっき消えた狼さんたちがこの山の作り出した幻だとすると、
もうすぐ山自体が消えちゃうかも知れない」
澪「……律が、死に掛けてる、のか?」
唯「――早くりっちゃんのところに行かなきゃ!」バッ
170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/13(土) 19:48:28.52 ID:2MKs2iEy0 [2/6]
梓(……ムギ先輩の言葉どおりだとすると、どうして律先輩が部室にいたの?
普通なら、この山の存在を気付かせないようにするはず……。まさか)
梓「待って下さい、唯先輩!」パシッ
唯「あ、あずにゃん……?」
梓「おかしいですよ!もしかしたら、全部罠なんじゃないですか!?」
紬「どういうこと?」
梓「普通、山で遭難したんなら助けに来ようとします、助けに来られたら生贄が
いなくなる、そうですよね?」
澪「……梓は、律が私たちを道連れにしようとしてると?」
171 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/13(土) 20:00:57.59 ID:2MKs2iEy0 [3/6]
梓「そういうわけじゃないですけど……」
紬「でも、確かにそうよね……。私たち全員を食べようとしているのかも」
唯「……りっちゃんはそんなこと、しないよ!」
紬「唯ちゃん……」
唯「きっと何かあったんだよっ、もしかしたら山に操られてるのかも知れないし!
それに、りっちゃん、言ってたよ!私たちを巻き込みたくなかったって」
律『唯たちも巻き込むつもりはなかったのに』
確かに、律はそう言っていた。梓はそれを思い出して、少しでも律を
疑ってしまった自分の中で自己嫌悪に陥った。
梓(私、最低だ……)
唯「それにね、私、りっちゃんと約束したんだもん!りっちゃんが山に行く前、
電話で絶対無事に帰ってくるって!」
.
172 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/13(土) 20:07:34.19 ID:2MKs2iEy0 [4/6]
唯『そういえばりっちゃん、明日から登山サークルの人たちと一緒に山に登りに
行くんだったよね?』
律『ん、そうそう。結構すげえ山らしくてさー』
唯『へえ』
律『結構遭難者とかも出てるみたい。そんな危険な山にりっちゃん隊員は向かうのである!』
唯『おぉ!でもでも、そんな危ない山なんだったら無茶しちゃだめだよー?』
律『わかってるってー。ぜーったい無事に帰るし!つーかまだ死にたくないし!』
唯『えへへ、だよね~。じゃあ約束だよ、りっちゃん隊員!』
律『おう、唯隊員!りっちゃん隊員は絶対無事に帰還するっ!』
唯『……なんか高校生に戻ったみたい!』プッ
律『だな』ククッ
.
176 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/11/13(土) 21:00:47.92 ID:2MKs2iEy0 [5/6]
紬「……ごめんね、私」
唯「へっ!?べ、別に謝る必要はないよ!?」
澪「梓も、ほら。そんな顔してないで」スッ
梓「……先輩?」
澪「気にしなくていいよ、疑ったこととか。それにあいつの日ごろの行いが悪いのがいけない。な?」
梓「……そうですね」プッ
唯「ここにりっちゃんがいたら絶対怒られちゃうよ、あずにゃん」クスクス
紬「でも、りっちゃんも私たちも助かるためにはどうすればいいのかしら……?」
唯「山自体を破壊する!」
澪「いや、無理だろ」
紬「それじゃあやっぱり早くりっちゃんを探し出して脱出するしか……」
梓「この山がさせてくれるかどうかわかりませんけど、そうするしか……!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
一同「!?」
178 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/13(土) 21:29:24.04 ID:2MKs2iEy0 [6/6]
突然、地面が揺れ始めた。
雨の勢いもますます強まり、風も吹いてきた。
澪「ど、どうなって……!?」
紬「澪ちゃん、危ない!」バッ
澪「えっ!?」
ズサーン!
地震のせいで揺れていた木が、澪のすぐ横で大きな音を立てて倒れてきた。
唯「だ、大丈夫!?」
澪「う、うん、なんとかムギのおかげで……って、ムギ!?なあ、ムギ!」
倒れた木から澪を庇って飛び出した紬が、澪のすぐ傍で倒れていた。
気付いた澪が必死に揺らすが、返答が無い。足が木に挟まったままだった。
梓「澪先輩、頭を打っちゃったのかも!あんまり動かさない方が……!」
澪「で、でもムギが……!」
181 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 21:56:27.50 ID:2MKs2iEy0
『助かりたいwwwww?ねえ、助かりたいwwwww?』
澪「!?」
唯「え、なに、今の誰!?」
梓「……山?山自体が話してるの……?」
山『正解っwwwwwwwよく出来ましたあwww』
梓「うわ、うっざ……」
澪「いやいやいや!」
唯「揺れてる揺れてる!このお山さん怒ってるから!」
山『まあいいけどねえwww全員生贄にしてあげるんだからwww』
唯「ねえお山さん、りっちゃんはどこにいるの!?」
山『もうすぐ死んじゃうよ、あの女の子wwwそしてね、今そこに倒れてる沢庵ちゃんも
もうすぐ私の生贄になるのよwww』
澪「ムギまで……!?」
山『あのカチューシャのデコちゃんはねえ、あんたたちを生贄にしてでも自分は
助かりたいって願ったのwwwもうほんっと最低だよねえ?www』
182 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 22:15:53.50 ID:2MKs2iEy0
ゴゴゴゴゴゴゴッ
山『あー、信じられないって顔してるなあ?wwwwwwwそれなら見せてあげよう、
その時のことをwwwwwwwwww』
急に、唯たちの目の前が真っ暗になった。
―――――
崖から転落した律は、目を覚ました。
そこは全く光のない、暗闇の世界だった。
律『な、なんだよここ……』
山『助かりたいwwwww?ねえ、助かりたいwwwww?』
律『だっ、誰だ!?』
山『あらやだwww山よ山www』
183 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 22:17:48.02 ID:2MKs2iEy0
律『山……?』
山『あんたの登ってたお山さんwwwそれで、あんたはこれから私の生贄になるのwww』
律『生贄ってなんだよ!?』
山『死んで、私の体の一部になるのよwww光栄に思うといいわwww』
律『誰が光栄に思うかよ!っていうか意味わかんねーし!何でもいいけど私は早く
帰んなきゃ……!』
山『できるものならやってみなさいよwwwどちらにしても、あなたはもう死んじゃうんだからww
あんな崖から転落して生きてる人間なんてそういないもんねwwwwww』
律『……!』
山『どうしても助かりたいんなら助けてあげてもいいけどーwwwwww?』
律『本当か!?』
山『ただし、新しい生贄を持ってこられるんならねwww』
184 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 22:23:20.40 ID:2MKs2iEy0
律『新しい、生贄……?』
山『あんたの代わりに死ぬ奴を探してここに連れて来いってことwwwwww
簡単でしょwwwwwww?』
律『……わかった!』
山『それじゃあ決定ねwwwwwwwwあんたを一番大切な場所に戻してあげるww
ただし、新しい生贄が死んじゃうまであんたはその場所から出られないけどねwww』
律『えっ!?ちょっ待て……!』
ポンッ!
律の姿が消えた。
そこはもう、誰もいない、真っ暗な空間が広がっているだけだった。
―――――
186 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 22:36:59.58 ID:2MKs2iEy0
山(ま、初めからデコちゃんも逃がすつもりなかったけどねwwwwwwwww)
梓「……今の映像……」
山『全部本当よwwwwwあのデコちゃんは、あんたたちを裏切ったのwwwww
許せないwwwwwww?ねえ、許せないでしょwwwwwwwwww?』
唯「許せないんじゃなくて許すっ!」
山『え?www』
唯「当たり前だよ、りっちゃんだって怖かったんだよ、きっと!だから仕方ないよ!」
山『うざwwwwwwww果てしなくうざいなこの子wwwwwwwww』
唯「なっ!」グラッ
ゴゴゴゴゴゴゴッ
梓「ゆっ、唯先輩!」
澪「うわっ」グララッ
梓「澪先輩!?」
187 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 22:45:24.49 ID:2MKs2iEy0
揺れる地面がひび割れ、唯たちが立っていた地面が真っ二つになった。
思わず咄嗟に飛び出していた澪が唯と左側に、梓と意識の無い紬が右側になる。
山『ふっふふふふふふwwwwwwwwwwwwwwwwwwww怖いwwwww?
ねえ怖い?wwwwwwwwwwwwwwww』
澪「ひっ……!」ビクッ
唯「わ、私たちは絶対生きて帰るって約束したんだもんっ、だから……!」
山『いい子ぶって、さっきからほんとうっぜーわこの似非天然がwwwwww』
唯「!?」
ゴロゴロゴロ……
山『雷に打たれて死んじゃえーwwwwwwwwwwww』
ガラガラビッシャーン!
188 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 22:55:35.03 ID:2MKs2iEy0
―――――
唯「……ん?ここ、どこ……?」
山『目をお覚ましーwwwwwwww?ここはねえ、どこだと思うwwwww?』
唯「お、お山さんっ!」
山『私はお山さんだけどー、場所は違うのよねえwwwまあどこでもいいけどww』
澪「……んっ……」
唯「え、澪ちゃん!?」
澪「あれ、唯……?」
189 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 22:57:32.74 ID:2MKs2iEy0
山『あっれーwwwそっちの黒髪ちゃんも一緒に死んじゃったのwwwwww?
かわいそうにwwwwwwwww』
澪「死んだ……!?」
山『そうよ、あんたたちは死んだのよーwww正確にはまだだけどねーwww私が
現実世界から消えたらあんたたちは完全に死ぬのwwwで、私ったら優しいから、
私のために死んでくれるあんたたちの最期の願いを一つだけ、聞いてあげるのwww』
唯「や、やだ、死にたくない!」
山『あ、そのお願いは無しねwwwわかんないんならそうねえwwwあのデコちゃんや
沢庵ちゃんと一緒のお願いにするwww?あの子たちはねえ、最期にけいおんぶってところに
戻りたいんですってwwwぷぷっ、戻って何するのか知らないけどねえwww』
唯たちの前に、明るい扉が現れる。
それが開かれ、懐かしい光景が唯たちの目に映った。
唯と澪は、何かにとり憑かれたように、ふらふらとした足取りでその扉をくぐった。
―――――
191 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 23:11:17.58 ID:2MKs2iEy0
梓「唯先輩、澪先輩!」
目の前で、よくテレビで見るような稲妻が唯たちのいる場所を襲った。
遠い場所にいた梓にも、唯たちが真っ黒に焼け焦げ倒れたのが見えた。
梓「そん、な……」
山『うふふwwwwwwwwwさ、最後はあんたねwww』
梓「や、やだ……!」
山『あらあらさっきまでの強がりはどこかしらーwwwでもデコちゃんも沢庵ちゃんも、
似非天然も黒髪ちゃんも死んじゃったもんねwww可哀そうwwwだから早くあんたも
生贄になればいいのwww直に楽にしてあげるwww』
ゴゴゴゴゴゴゴッ
192 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 23:14:00.50 ID:2MKs2iEy0
梓「!」ガクンッ
山『どうwww?立ってるのが辛いほどでしょwww?』
梓「う……!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ
グラッ
梓の立っていた場所が、傾き始める。
梓(どうしよう、このままじゃ……!)
ガシッ
梓「え、ムギ先輩!?」
194 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 23:17:29.97 ID:2MKs2iEy0
返事はなかった。
だが、傾いた地面から落ちそうになっていた梓の手を、紬の手がしっかりと握っていた。
梓(どういうこと!?ムギ先輩はまだ生きて……!)
山『(チッ、面倒臭い奴だなwwwwwwwww)』
ズンッ
梓「!?」
―――――
196 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 23:26:51.76 ID:2MKs2iEy0
いつのまにか、さっき山が頭の中に流した映像に映っていた真っ暗な空間に、
梓はいた。
梓(何これ、どういうこと……!?)
山『助かりたいwwwww?ねえ、助かりたいwwwww?』
梓(またこの声!)
山『助けてあげてもいいけどwwwwwwww』
梓「じゃあ助けてください」
山『もちろん、ただでってわけにはいかないのよねえwww』
梓「じゃあいいです」
山『(やりにくっwwwwwwww)』
山『まあまあそう言わずwwwwwwwほら、あんたもみんなと同じ場所に行きたくない?』
梓「!!」
198 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 23:29:10.84 ID:2MKs2iEy0
いつもの放課後。
いつもの部室。
西日の差し込む音楽室に、紅茶の温かな湯気が立ち上る。
梓(先輩たちが、いる……)
202 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 00:47:12.44 ID:f8gpW0L30
唯「あー、りっちゃんそれ私の!」
律「へへーん、早い者勝ちだっつーの!」
澪「お茶の時くらい静かにしてくれ……」
紬「あらあらうふふ」
皆いつもどおりなのに、梓には何か違うように見えた。
それなのに、足が勝手に唯たちのほうに進んでいく。
山『どうwwwwwwww?戻りたくなあいwwwwwwww?この世界にwww』
206 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 00:57:13.61 ID:f8gpW0L30
それを煽るかのような山の声。
梓(嫌だ、だってこんなの、違う……!)
山『何が違うwwwwwww?これはあんたの心の奥でずっと求めていた光景
なのにwwwwwwww何が違う?wwwwwwwwwwww』
唯「今日は何だか退屈だねえ」
律「ん、そうだな」
澪「……ん」
紬「お茶、もう一杯如何?」
梓(あぁ、そうだ……。皆楽しそうじゃないから……、こんなの、私の軽音部じゃない!)
207 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 01:02:20.38 ID:f8gpW0L30
梓「私はこんな世界なら戻りたくないっ!」
山『……は?wwwwwwwwwwwww』
梓「こんな軽音部なんて、求めてない!」
山『……折角上手く事が運びそうだったのになあwwwwwwwwww』
梓「!?」
ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
梓(空間が崩れてく……!)
―――――
210 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 01:21:32.23 ID:f8gpW0L30
山『あんたに逃げられたら私オワリなのwwwwwwwwwww逃がすわけには
いかないから、やっぱり殺しちゃいましょうかwwwwwwww』
梓「……!」
目を開けると、今まで自分が見ていた暖かな光景は消え失せ、その代わりに
荒れた山が映っていた。
山『皆殺すのは最後までお楽しみだったのになあwwwwwwwwwww』
コズッゴゴゴゴゴゴゴッゴ
今までで一番酷い地響きが、辺りに響き渡る。
梓の手を掴んでいた紬の手が、離れそうになる。
梓(落ちる……!)
213 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 01:27:50.61 ID:f8gpW0L30
―――――
律(この世界、やっぱり何か違う……)
唯「変な気分だなあ」
律(帰らなきゃ)
澪「うん……」
律(……どこに?)
紬「何だか別の世界に居るみたい」
律(――そうだ、元の世界に!)
―――――
215 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 01:30:33.16 ID:f8gpW0L30
ガシッ
梓「!?」
紬「梓ちゃん……!」
梓「ムギ、先輩!?」
グイッ
山『う、嘘でしょ!?wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
なんで目を覚ましたの!?wwwwwwwwwwwwwwwww』
216 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 01:37:02.88 ID:f8gpW0L30
唯「あずにゃああああああん!」
澪「梓、大丈夫か!?」
梓「唯先輩、澪先輩まで……!」
山『どういうこと!?どういうこと!?wwwwwwwwwwwwwwwww
私の造った偽者の世界を満喫させてあげてたのに!wwwwwwwwwwww』
唯「あんな世界、全然違うもん!」
澪「律が、教えてくれた!」
紬「それで、あっちの世界で必ず帰るって!」
ググッ
紬「約束したから!」
梓の身体を持ち上げ、傾いてはいるが、安全な地面の上に立たせる。
山は動揺したように、地面を揺らすことを止めた。
否、もうそんな力は殆ど残っていないようだった。
217 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 01:48:01.30 ID:f8gpW0L30
山『ハハッwwwwwwwwwwwwハハハッwwwwwwwwwwwwww
何が約束よwwwwwwwww馬鹿馬鹿しいwwwwwwwwwwww人間なんて
そんなのすぐに破っちゃうのよwwwwwwwwww』
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ
山の中心が、ゆっくりと崩れていく。
山『人間なんて最低なのよwwwwwwwwwwwwwwwww私はねえ、そんな
あんたたちより大きくなろうとしただけなのにwwwwwwwwwwwwww』
唯「お山さん……」
山『あのデコちゃんだけでも生贄にしたかったのに私の夢想世界を壊しちゃうなんてww
ほんとありえないwwwwwwwwwwwww』
梓「そうだっ、律先輩は!?律先輩はどこに!?」
山『デコちゃんならもう……』
――――― ――
220 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 01:51:50.52 ID:f8gpW0L30
「……さっ!……ずさ!あずさったら!」
何度も名前を呼ばれ、梓ははっと起き上がった。
そこは見慣れた部室だった。
梓の顔を覗きこんでいた純の額と自分の額をぶつける。
梓「……ったあ!」
純「もう、何してんのよ……」
梓「あ、あれ!?お山さんは!?律先輩たちは!?」
221 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 01:58:28.73 ID:f8gpW0L30
純「お、お山……?何寝ぼけてんのよ」
梓「じゃ、じゃああれは、夢……?」
純「さっき澪先輩から梓が電話に出ないから、って言って電話くれたからわざわざ
教えに来たのにまさか寝てるとは」
梓「だ、だって……!」
純「律先輩」
梓「え?」
純「無事見付かって救助されたって」ニッ
梓「……!」パアアアア
純「あと梓、制服凄い汚れてるし頭に葉っぱが一杯ついてるんだけど、どうしたの?」
222 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 02:12:25.55 ID:f8gpW0L30
――――― ――
後から梓が聞いた話によれば、あの山は生贄を一人でも逃がせば崩れる運命に
あったらしい。
律「二兎追う者一兎も得ずだな」
大怪我を負っていた律は、別の山の麓に倒れていたところを発見され、病院へ
運ばれ、今は日常生活に支障をきたさない程度に回復している。
斉藤や、琴吹家の護衛も律と同じ場所に倒れていたが、これは琴吹家の財力で
報道されないように揉み消したらしい。
澪「あの山、一体何がしたかったんだろうな……」
223 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 02:18:01.26 ID:f8gpW0L30
律「……最後に言った通りなんじゃねえの?」
一度死んだはずの澪たちは、山の存在が消えたことでその事実も
消えてしまったのか、それとも実際は生きていたのかはわからないが、怪我もなく、
普段どおりに学校へ通っている。
唯「私ね、あのお山さんの見せてくれた昔の軽音部に釣られちゃった」
紬「うん。私も」
律「……私もだ。恋しかったのかもなあ、部室が」
紬「そうかも」クスッ
224 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 02:36:00.95 ID:f8gpW0L30
律「あ、そうだ。梓」
梓「へ?」ビクッ
黙って聞いていたのに、突然話を振られて梓は思わずびくっとした。
そんな梓を見て、ベッドの上で白い包帯を巻かれた律が苦笑する。
律「なーに怖がってんだよ」
梓「怖がってはいません!」
律「ふーん。で……」
梓「なんです?」
律「ごめんな?今回の件。巻き込んじゃってさ。梓はまだ高校生だし」
梓「先輩方と一つしか変わらないです!」
律「けど……」
225 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 02:37:10.67 ID:f8gpW0L30
梓「大体、部室が恋しいとかなんなんですか!」
唯「え?」
梓「卒業したからって、来てもいいんですよ!遠慮することなんかないじゃないですか!
別に私は寂しくなんてないですけど!先輩方はいつだって来て下さいっ、部長である
私が許可しますっ!」
紬「……梓ちゃん」プッ
唯「もうちょっと素直になったらいいのに」ププ
律「うーん、そうだな、あそこは私の場所だからな!」
澪「“私たちの”だろ?」
律「そうだな。なんつーか……色々やばかったけど、お山さんが忘れてたことを
思い出させてくれたな!」
梓「いい話風に纏めようとしないで下さい」
律「う……。とりあえず!」スッ
唯「りっちゃん隊員、帰還だね!」
終わる。
226 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 02:38:15.16 ID:f8gpW0L30
長い間ぐだぐだと進めてしまいすいませんでした。
こんなものを最後まで見てくださった方、ありがとうございました!
高校生最後の一年も、あと半分になっていた。
四人の先輩から受け継いだ軽音部を、なんとか一人で存続させてはいた梓が、
「そろそろ本当に新しい部員、集めなきゃ」と考えていた頃、それは起こった。
律が行方不明になったのだという。
大学の登山サークルに誘われ、山に登っている途中、足を滑らせたそうだ。
丁度崖を登っていたそうで、転落したまま行方がわからなくなっているらしい。
そんな報せを唯から受けて数日が経つ。
流石の梓も心配で、受験前の大切なこの時期に、授業だって上の空なのだから
純たちが心配するのも無理はなかった。
今日は別のことで上の空だったのだが。
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/11(木) 20:30:02.88 ID:ejYca+2A0 [3/22]
警察も消防も出動しているのに、未だに律は見付かっていない。
持参していた食糧だって、もって一週間程度のものだったらしく、生きての
救出はほとんど諦められていた――はずだった。
ガチャリ
「おーっす、梓!」
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/11(木) 20:35:36.89 ID:ejYca+2A0 [4/22]
梓「(良かった、まだいた)」ホッ
律「部活開始のチャイムが鳴ってだいぶ経つんだぞー。部長がそんなんでどうするー」
梓「す、すいません……っていうか」
律「うん?」
梓「何で律先輩がここにいるんですかっ!?」クワッ
律「それ朝も聞いたから!っていうか落ち着け梓!近い、近いから!」
梓「あ、あぁ、すいません」スッ
思わず身を乗り出していた梓は、慌てて律から離れた。
律は困ったように頭を掻くと、小さく溜息を吐く。
梓「(溜息を吐きたいのはこっちなんですけどっ!)」
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/11(木) 20:46:41.95 ID:ejYca+2A0 [5/22]
.
今日の朝。
珍しく早く学校に着いてしまった梓は、朝練でもしようと部室に来ていた。
「ふわふわたーいむ♪」
梓「」
誰かの歌声が漏れてくる部室の扉を開くと、そこには律がいた。
律「お、梓。早いんだな」
梓「……何で律先輩がここにいるんですかっ!?」
律「何でって……。それはだな」
キーンコーンカーンコーン
律「あ、チャイム」
梓「(ど、ど、ど、どうしよう!?教室に行く!?それとも律先輩の無事を皆に
知らせることが……!)」
律「梓、行かなくていいの?授業」
梓「で、でも……」
律「大丈夫だって。私は逃げねーし。あと、私のことは誰にも言うなよ」
梓「え?」
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/11(木) 20:52:53.56 ID:ejYca+2A0 [6/22]
律「言ったら呪ってやるからなー?」
梓「……う」
梓「(今のは冗談だとはいえ、さっきの言葉は本気っぽかったし……。もしかして何か
事情でもあるのかな。だとしたら、今は黙っておいた方がいいよね……)」
律「ほら、梓。授業遅れるぞ!」
梓「絶対、絶対放課後まで待っててくださいね!」
律「へいへい」
.
そして今。
実際律はちゃんと、梓の前にいるわけなのだが。
14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/11(木) 20:58:02.87 ID:ejYca+2A0 [7/22]
律「なあ梓、喉渇いた」
梓「へ?あ、お茶淹れましょうか?」
律「おう。へえ、ムギの奴、ティーセット全部置いてったんだ」
梓「ムギ先輩から聞いてなかったんですか?」
律「まあなー。大学入ってからは、昔のメンバーで一緒に居ることも少なくなっちゃったし」
梓「はあ……」コポコポ
梓「(……あれ?)」
律「何でだろうなー、大学じゃあ高校の話とかも全然しないんだよな。あ、もちろん梓の
こととかは色々言ってるけど。主に唯が」
梓「想像できます、主に何言われてるか」コトッ
梓「(……なんか)」
律「お、サンキュー」グビグビ
梓「話、逸らしてません?」
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/11(木) 21:06:30.51 ID:ejYca+2A0 [8/22]
律「……う」
梓「……まだ律先輩のこと、誰にも言ってないです。だから……」
律「わーったよ」ハァ
一気に梓の淹れたお茶を飲み干すと、律は面倒臭そうな表情で
空になったカップを机に置いた。
律「しかし私の大冒険劇のどこからどこまでを話せばいいのかわからないというかだな」
梓「そういうのはいいです。簡潔に、何で律先輩は行方不明のはずなのにここにいるのか
答えてください」
律「とは言われてもなあ……。私もよくわかんないんだよ」
梓「どういうことです?」
律「なんかさー、知らない間にここにいて。私が行方不明になってたことは知ってん
だけど。ていうか、私が何で今生きてるのかすら不思議なんだけど」
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/11(木) 21:15:04.31 ID:ejYca+2A0 [9/22]
梓「はあ……?」
律「正直よく覚えてないんだよな。崖から落ちたのは覚えてるんだけど、それ以降の
記憶が全く無い。頭を勢いよく打って私もう死ぬんだなって思ってたら、いつのまにか
部室に居た」
梓「……そんな非常識なこと、私が信じると思います?」
律「思わない。自分でも信じられねーもん」
梓「もういいです……。とりあえず律先輩、よくわかりませんけど無事なんですから
早く皆さんに知らせないと」
律「だからそれが出来たら苦労はしねー」
梓「……はい?」
律「よくわかんないけど……私、部室から出られない」
18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/11(木) 21:36:02.35 ID:ejYca+2A0 [10/22]
梓「……もうそろそろ、本気で冗談はやめてください」
律「本気の本気。本気と書いてマジと読む!」
梓「……」
律「そんな目で見んな。っていうかほんとにほんとなんだよ」
そういうと、律は座っていた椅子から立ち上がった。
何をするのかと見ていると、律は部室の扉を開けようとしたまま手を上げて
動かなくなった。
梓「先輩?何してるんですか?早く開けてみてくださいよ」
律「……動けない」
梓「……まさか」
律「ほんと。梓が授業行ってるときとかも何度も試したけど、ドア開けようとしたり、
一か八かで窓から出ようとしても、その前に行くと身体が動かなくなるんだよ」
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/11(木) 21:43:16.04 ID:ejYca+2A0 [11/22]
梓「じゃあそこからこっち戻ってくるにはどうするんです?」
律「ほい」スッ
律「戻ろうと思えば戻れるんだ。不思議不思議」
梓「……能天気に笑ってられるとこですか。それで、出られないのはわかりました。
先輩が演技してるって可能性もありますけど」
律「いい加減信じてくれ!」
梓「……それはまあ置いといて」
律「おいぃ!」
梓「どうして誰かに先輩がここにいることを知らせたくないんです?皆心配
してるのに……。唯先輩とか、凄い落ち込んでたんですよ!」
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/11(木) 21:50:21.99 ID:ejYca+2A0 [12/22]
律「だって、よく考えてみろよ。もしここに私がいたとすると、警察とか消防とか
一気に部室に来るだろ?そしたら色々問題が起こるかもしんねーじゃん。折角細々とでも
続いてる軽音部が、今度こそ廃部とかになっちゃうかも知れないし!」
梓「……よくそこまで頭が回りますね」
律「……他に考えることもなかったからなー、ここにいる間」
梓「何でそんなマイナス方面にしか考えられないんですか」
律「この状況からプラスに考えること、出来るか?」
梓「……できませんよね、普通」
律「第一、信じてくれるわけないだろ。梓の説明聞いたって」
梓「それはそうですけど……。あ、本人が連絡すればいいんじゃないですか!」
律「どっちにしても、私がここにワープらしきことをしたことは何も説明できないし、
できたとしても信じてもらえない。そしたらどうだ?私の捜索願を出した大学とか、
私の友達が信用を失うことになる」
梓「……でも、せめてご家族くらいには……!」
律「よけいに心配させてどうするよ」
梓「そうですけど……」
ピリリリリリ♪
22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/11(木) 22:01:23.44 ID:ejYca+2A0 [13/22]
梓「あ、電話……」
『着信:唯先輩』
梓「もしもし?」
唯『あずにゃん?久しぶり~』
梓「昨日も電話してきたじゃないですか」
唯『うん、そうなんだけど……。りっちゃんのことでなんだか気持ちが落ち着かない
っていうか……』
律「誰?唯?」コソコソ
唯『りっちゃん!?』
梓・律「えっ!?」
26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/11(木) 22:05:57.81 ID:ejYca+2A0 [14/22]
梓「(なんという地獄耳!)」
唯『ねえあずにゃん、りっちゃんいるの!?』
梓「えーっと……」チラッ
律「!」ブルブル
梓「気のせい、じゃないですか?」
唯『そんなことないよ!今、りっちゃんの声が……!あずにゃん、どこにいるの!?部室!?』
梓「あ、はい……って、唯先輩!?」
ツー、ツー、ツー
梓「……切れちゃった」
律「唯の奴、まさか部室に来るつもり……」
ガチャッ
唯「りっちゃん!」
律・梓「早ッ!」
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/11(木) 22:18:58.57 ID:ejYca+2A0 [15/22]
唯「……ってほんとにりっちゃんが!?」
梓「と、とりあえず唯先輩、落ち着いてください!」
唯「う、うん……」ハァハァ
律「ほら、唯。お茶でも淹れてやるから……」
唯「本物!?偽者!?お化け!?」
律「」
梓「律先輩、とりあえず唯先輩が落ち着くまで何もしないで下さい」
律「……へーい」
.
29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/11(木) 22:31:33.73 ID:ejYca+2A0 [16/22]
律たちの話を聞きながら梓の淹れたお茶を飲んでやっと落ち着いた唯は、
改めてといったように部室の中を見回した。
それから、何も変わっていないことを確認すると、梓達のほうに向き直った。
唯「……えっと、りっちゃん、あずにゃん」
梓「はい?」
律「なに?」
唯「いくら私だからって、さすがにそんな話……」
梓「で、ですよねー」
律「……ハハッ」
唯「でも、りっちゃんが無事なのは確かなんだよね?」
律「うん、まあな。たぶん」
唯「それじゃあ澪ちゃんとムギちゃんにも連絡しなきゃ!」
ピッ、ピッ
律「えっ、ちょ!」
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/11(木) 22:39:01.49 ID:ejYca+2A0 [17/22]
梓「唯先輩、それはまだ!」
唯「へ?」
カチャン
唯「もうメール送っちゃったよ?」
律・梓「」
唯「あ、あれ!?なんかだめだった!?」
梓「だめだったというか……」
律「唯たちも巻き込むつもりはなかったのに……!」
梓「“も”ってことは、私は巻き込んでも良かったんですか」
律「……」テヘ
梓「」
ガチャッ
澪「唯、どういうことだ!?」
紬「りっちゃん、無事なの!?」
31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/11(木) 22:42:17.40 ID:ejYca+2A0 [18/22]
律「おー、きたきた」
梓「お久し振りです、澪先輩、ムギ先輩!」
唯「あ、えっとえっと!」
澪「律!本当に無事、なんだな!?」
律「お、おう」
紬「良かった……!それで、どういうことなの!?どうしてりっちゃんが部室に!?」
律「ムギ、澪もあと唯も落ち着け!ちゃんと説明するから!」
.
33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/11(木) 22:46:40.42 ID:ejYca+2A0 [19/22]
律「……というわけでだな」
もう一度、改めて梓や唯も交えて一通り説明する。
みんなの反応はもちろん、律自身でさえ、信じられないといった顔をしている。
澪「……なんか怖い」ブルブル
紬「いくらりっちゃんでも、こんな大掛かりな冗談はしないわよね?」
律「私の扱い酷くね!?」
唯「でも、もし本当ならそれってすごいことだよね!?りっちゃんワープ少女として
一躍有名人に!?」
律「だから言っただろ。こっから出られないし、私自身、自分が生きてるのかどうか
すらわかんないんだって」
34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/11(木) 22:48:06.91 ID:ejYca+2A0 [20/22]
>>32
本文には書いてないけど、唯は元々学校の近くにいたから早くて、
澪たちも同じだと思っといて欲しい。
36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/11(木) 22:53:34.90 ID:ejYca+2A0 [21/22]
澪「でも実際、私たちには律の姿も見れてるし話も出来る。だから……、ヘンなこと
言うなよお!」
律「別に死んでるとは言ってないだろ!?ただ自分の身体がないように思えて……」
紬「自分の身体がない?」
梓「ムギ先輩、何かわかったんですか?」
紬「わかったというか……。昔、聞いたことがあるの。何かがきっかけで、
違う場所とかにワープしちゃうんだけど、身体は元居た場所にあるっていうの。
何かの小説だったかも知れないけど……。結局、その身体は持主が戻らないから
朽ち果てちゃうんだけど」
律「それってやばくね!?」
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/11(木) 22:59:34.50 ID:ejYca+2A0 [22/22]
唯「でもムギちゃん!りっちゃんの身体、ちゃんとあるよ!」
紬「えぇ、だけど……。その話も、身体はちゃんと見えるし動かせるし、至って
何も変わらないんだけど、ワープした場所から出られなくなっちゃうの」
澪「それって、今の律とまったく同じ……!」
梓「でもあくまで小説の中の話なんですよね?そんなことって……」
律「実際、私の身に起きてる」
梓「……はい」
紬「その話は、主人公の身体が朽ち果てて、主人公も死んじゃうところで終わるんだけど」
唯「何か、助かる方法とかないの!?」
紬「私の想像なんだけどね?りっちゃんの本当の身体をここに持ってこればいいんじゃ
ないかしら?」
56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 16:16:05.59 ID:9Zwm29dl0 [1/10]
澪「それって……」
律「山の中にあるはずの私の身体を捜すのか!?」
紬「えぇ。早くしなきゃ、ほんとにりっちゃんが死んじゃう。やるだけやってみましょう」
唯「でも危なくない?」
梓「それは警察に任せた方が……」
紬「警察に任せたら、りっちゃんの身体を部室に持って来れないでしょ?」
梓「あ……」
紬「大丈夫、うちの家も総力を上げて協力させてもらうわ」
58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 16:30:04.20 ID:9Zwm29dl0 [2/10]
律「でも、やっぱりそんなことさせられないって!あの山、色々危険だし。
それにどうせ、たぶん私死んでたんだろうし……」
澪「行く」
律「……えっ?」
澪「律がそれで、本当に無事に私たちのところに帰って来られるんなら、私は
行きたい!」
唯「……私も!」
梓「私もです、受験とか色々ありますけど」
紬「それじゃあ決定ね!」
律「お前等……。で、でもさ!私はこっから出られないし何も出来ないんだぞ!?」
紬「えぇ。だけど、電話なら出来るんじゃないかしら?」
律「山の中なんて、電波届かねえだろ!?」
59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 16:58:01.91 ID:9Zwm29dl0 [3/10]
唯「ほいほい!それならさ、りっちゃん、ワープできたんならほかの事だって出来るかもよ!」
律「例えば?」
唯「離れてても頭の中で会話できるとか!」
律「いや、無理だろ」
唯「わかんないよ!やってみようよ!りっちゃん、目瞑って何か言ってみてよ!
あ、声に出さないでね!」
律「だから無理だって」ハァ
紬「とりあえずやってみようよ!」ワクワク
律「はいはい」
律「(ゆーいー、聞こえるわけないよなー、バーカ)」
唯「りっちゃんがバカって言った!」
律「ほえ!?」
60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 17:01:31.62 ID:9Zwm29dl0 [4/10]
紬「ほんとに当たった!?」
梓「そんな馬鹿な」
澪「り、律、本当に唯にバカって言ったのか?」ガクブル
律「……」コクコク
澪「けど、それだけじゃわからないし、今度は会話してみたら!?」
唯「りっちゃん、どんどん罵って!」
律「それはいい」
62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 17:33:58.39 ID:9Zwm29dl0 [5/10]
律「(唯、本当に聞こえるのか?)」
唯「(おぉ!本当に聞こえた!)」
律「(さっきのはなんだよ!?……しかしマジで会話できるんだな……なんかすげー)」
唯「(まだあんまり信じられないけど、ワープしたことも本当みたいだよね……)」
澪「唯、律、どうだ?」
律「聞こえたしちゃんと会話できた」
紬「なんだかすごいねえ!私たちにも出来るかしら?」
律「やってみようか?」
律「(ムギ、聞こえる?)」
紬「すごい、聞こえたっ」
梓「……ということは、私と澪先輩にも聞こえるんでしょうか?」
澪「こんなこと、おかしいよ……私、夢でも見てるのか?」
律「少なくとも私は現実」
紬「私もね。でも、これでりっちゃんと連絡取れることがわかったし、りっちゃんは
部室にいたまま、私たちにどのあたりに落ちたのかとか教えて欲しいの」
63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 18:02:59.62 ID:9Zwm29dl0 [6/10]
律「……いいけど、でもやっぱ!」
唯「りっちゃん、もうぐだぐだ言っても仕方ないよ!それに時間もないんだし」
澪「これが夢ならどんなにいいか」
梓「とりあえず、早くその山に向かいましょう!……ってムギ先輩?」
紬「……えぇ、それじゃあ」ピッ
紬「家に連絡したわ。ヘリコプターで、りっちゃんの行った山まで行きましょう。
それから、山へ下りてりっちゃんの身体を探そう」
――――― ――
65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 18:42:50.38 ID:9Zwm29dl0 [7/10]
梓(……で、ほぼ勢いで来てみたのはいいけど)
唯「なんていうか……神々しい山だねえ」
澪「こんな山なら律がワープとか出来たことも不思議じゃない」
紬「(りっちゃん、本当にここで合ってる?こんな山、登っていいの?)」
律『(合ってると思うよ。見えないからわかんねーけど。私も最初、本当に
こんな山登るのか!?って焦ったし。頂上に神社とかありそうだよなあ)』
紬「(とりあえず、合ってるのね?)」
紬「斉藤、ヘリを下ろして」
斉藤「はっ」
66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 18:48:59.32 ID:9Zwm29dl0 [8/10]
ブルルルルルル
唯「うわー、なんかスーパーマンとかになった気分!」
澪「ムギ、本当にドラマとかみたいに、この一本の縄に掴まって下に下りるの?」
梓「高い……」
紬「大丈夫よ」
ヘリコプターが停止する場所がないので、山の中腹あたりの少し拓けた場所で、
下のほうに垂らされた一本の細い縄を伝って地上へ下りる。
何とか全員終わると、紬は携帯を確認した。
紬「本当ね、ここからは電波が届かないみたい」
澪「う、うん……」
澪(怖かったあ)
紬「それじゃあ皆、早くりっちゃんの身体を捜しに行きましょうか。うちの家の者も
数人、護衛のために着いて来てくれるから、危険なことがあったりしたら頼みましょう」
護衛「何なりとお申し付けを!」ビシッ
67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 19:03:40.33 ID:9Zwm29dl0 [9/10]
唯「おぉ、頼もしい!」
梓「……それにしても、なんかここ、空気がひんやりしてません?何か出そうな雰囲気……」
澪「うわあああああ!やめてくれえ!」
梓「あっ、すいません!」
紬「なんだか霧も出てきたわね……。急いだ方がいいかも」
唯「(りっちゃん、聞こえる?)」
律『(おう、バッチリだぜ!あと、お前等の会話も丸聞こえだ。けどこれは一人としか
会話出来ないのかな……)』
68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 19:04:24.47 ID:9Zwm29dl0 [10/10]
唯「(そうなのかも!それでりっちゃん、今ね、凄い拓けた場所にいるんだけど、
どこ行けばいいかわかる?)」
律『(拓けた場所?あ、もしかしたら昼ご飯食べたとこかも。そんなら、上に行く方の道が
三本、別れてるだろ?)』
確かに、律の言う通り頂上へ向かう道が三本あった。
唯は確認し終えると、頷く。
澪「唯?律と話してるのか?」
唯「ん、ちょっと待ってね」
律『(わかった?で、そこの真ん中の道を通ったと思うんだ。たぶんだけど)』
唯「(真ん中だね?わかった)」
69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 19:41:26.16 ID:khyic0Ir0 [1/12]
紬「唯ちゃん、りっちゃんなんて?」
唯「あのね、ほら、あそこに三本の別れ道あるでしょ?」
梓「ありますね」
唯「そこの真ん中の道を通ったらしいから、私たちも行ってみよう」
澪「まあ律の通った道辿るのが一番手っ取り早いしな」
口々にそう言うと、歩き出す。
真ん中の道は、木が茂りすぎて霧がなくても空なんて殆ど見えなかった。
澪「……本当に律の奴、この道と負ったのか?嘘のこと教えたんじゃ……」
梓「いくら律先輩でもこういうときにそんなことはしないですよ」
律『(まるで普通のときなら平気で嘘を言うみたいな言い方だなあ、梓?)』
梓「聞こえてたんですか!」
紬「え?」
梓「あ、いえ……」
律『(ぷっ、恥ずかしい奴)』
梓「(うっさいです!)」
70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 19:42:55.01 ID:khyic0Ir0 [2/12]
あれ、またID違ってる……。
本人です。
72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 20:03:17.76 ID:khyic0Ir0 [3/12]
律『(で、梓。今どの辺り?結構歩いたんじゃない?)』
梓「(あ、はい。まだまだ先は長そうですけど)」
律『(ちょっと思い出してきた。えっとな、左側に雪がかかったみたいに白い
葉をつけた木が立ってるはずなんだけど……)』
梓「(雪みたいに白い葉、ですか?今霧でよく前が……)」
唯「お、何これ!」
澪「どうしたんだ、唯?」
紬「わあ、真っ白い木!」
律『(あっただろ?)』
梓「(はあ……ありましたね。ますます幻想的な)」
律『(で、その木に近付いて……)』
唯「この葉っぱ持って帰ろう!」タタタッ
73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 20:09:12.33 ID:khyic0Ir0 [4/12]
紬「唯ちゃん、危ないっ!」
唯「へっ!?」ズリッ
ズズズ、ズッドーン
木の下に近付いた唯は、逞しく育っていた不思議な木の根に躓いて転び、
急斜面を転げ落ちていった。
唯「……ってて……!」
澪「ゆいー、大丈夫か!?」
律『(あちゃー、私と同じ失敗しちゃったか。言おうと思ってたのに。私も
高く売れそうだなーとか思って近付いたら落ちちゃったんだよなあ。他の人も
一緒に落ちてくれたけど)』
梓「(卑しい人……だからバチ当たったんじゃないですか)」
律『(うっ……)』
75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 20:20:08.85 ID:khyic0Ir0 [5/12]
>>73
ミス。
クエスチョンマークが抜けていた。
梓「(卑しい人……だからバチ当たったんじゃないですか?)」
77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 20:26:42.27 ID:khyic0Ir0 [6/12]
紬「あなたたち、何してるの!早く唯ちゃんを助けなさい!」
護衛「す、すいません、お嬢様!」
梓「あ、待って下さい!」
紬「どうしたの、梓ちゃん?」
梓「律先輩も唯先輩と同じとこに落ちたらしいです。それから、ここまで上らないで
違うルートから歩いていったって……」
律『(よくわかんねえけど、まだその辺りは危険な場所とかないから、私たちの行ったほうを
行く方がいいと思う。わざわざ唯を助けて私たちが行った場所と違うとこに出て何かあったら
大変だしさ)』
紬「(わかったわ)」
紬「あなたたち!私を落としなさい!」
澪・護衛「えぇ!?」
80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 20:40:23.21 ID:khyic0Ir0 [7/12]
護衛「し、しかしお嬢様……」
澪「いや、ムギ、あの……」
梓「普通に下りればよくないですか?」シレッ
ズッズズズ
まるでスキーでもしているかのように、斜面を滑り降りる。
下りてきた梓に、唯が泣きついた。
唯「あずにゃあん、来てくれてよかったよお!」
梓「皆さんも早く来てくださーい!」
紬「梓ちゃん、すごいわっ……!」ゴクッ
澪(ムギが落としてとか言うから混乱しちゃったけど……普通に下りればよかったのか……
でも……この斜面急じゃないか!お、お、落ちたらどうなる……!?)アワアワ
律『(血がドバーッと!ってなあ!)』
澪「うわあああああああああ!」
81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 20:46:03.11 ID:khyic0Ir0 [8/12]
梓「澪先輩!?」
律『(すっげー悲鳴……澪ー、冗談だってー。私も落ちて怪我しなかったし、唯だって
無事だろ?つーか早くしなきゃ皆に置いてかれて一人っきりでその場所に取り残され……)』
澪「(やーめーろー!下りればいいんだろ下りれば!)」
憤りながら、澪は足を踏み出した。
と、先ほどの唯のように、逞しい木の根に足を躓かせた澪。
澪「……え?」ズリッ
ズズズ
澪「……わあああああああああ!」
ズッドーン
紬「澪ちゃんもやるわね!よーし、私だって!」ズリッ
護衛「お嬢様あ!」
ズズズ
紬「いいわあああああああああ!」
スットーン
83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/11/12(金) 21:36:30.03 ID:khyic0Ir0 [9/12]
梓「」
律『(……大丈夫か?澪とムギ。ムギは違う意味の悲鳴が聞こえたけど)』
梓「(大丈夫、だと思います)」
唯「わわっ、澪ちゃんムギちゃん大丈夫!?」
澪「うぅ……」
紬「全然平気よ!」
唯「そ、そう?」
梓「それじゃあ先に進みましょう。霧が濃くなってきちゃいましたし。澪先輩、
大丈夫ですか?」
澪「う、うん……」
澪(律のためにも頑張らなきゃ……)
84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 21:43:02.55 ID:khyic0Ir0 [10/12]
律『(なあ梓)』
梓「(はい!)」
律『(……なんかこれ、楽しいな。モニターとかはないけど探検隊の司令官とか
してるみたい)』
梓「(どうでもいいです。それより早く、次どこ行ったらいいか教えてください)」
律『(梓酷い……。次はな、ちょっと待って。思い出せない)』
梓「(思い出したんじゃないんですか?もう……。とりあえず真直ぐ行ってみますね)」
律『(おう)』
唯「この山、本当に危ないねえ……」
梓「そうですね。先輩方、前に進んでいきましょう」
澪「わかった……!」
紬(それにしても……。りっちゃん、まだその辺りは危険な場所ないって言ってたけど……
もしかしたら、どこかもっと危ない場所があるのかしら……?)
86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 21:58:21.07 ID:khyic0Ir0 [11/12]
梓「(律先輩、何か思い出せましたか?)」
律『(急かすなよ……。で、梓たちは今どんなところにいるわけ?)』
梓「(霧が濃くって周りがよく見えないんです。ただ、さっきから水の流れる音が
聞こえてくるので川が近いのかも……っていうか山に川って……)」
律『(川!)』
梓「(何か思い出しました!?)」
律『(川の向こう岸に渡った気がする)』
梓「向こう岸に渡ったって……」
突然視界が開け、見えた光景に思わず梓たちは足を止めた。
目の前には、今にも溢れそうに氾濫した川があった。
87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/12(金) 22:10:12.56 ID:khyic0Ir0 [12/12]
唯「うわあ……やっぱり違う道探そうか……」
梓「でも唯先輩、律先輩はこの川を渡ったらしいです」
律『(私のときはこんなに氾濫してなかったけど……)』
唯「(どうしても渡らなくちゃだめかな?)」
律『(どんな状況かはよくわかんないけど、その辺り、ほかに道はないだろ?)』
唯「(ほんとだ……わかったりっちゃん!私やるよ!)」フンスッ
澪「え、唯!?」
やる気充分に、唯はいざ濁流に呑み込まれんと川の中へ入っていった。
流されそうになるのを、必死に近くにあった岩に掴まり堪える。
唯「皆も早く!」
111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/13(土) 11:33:13.35 ID:Ap9PSEqq0 [1/23]
紬「わ、わかったわ!」ザブン
梓「……仕方ないです、制服濡れちゃうけど!」ザブン
澪「(律、本当にこれで合ってるんだな!?)」ザブーン
律『(う、うん)』
唯「こっからどうやって向こう岸まで……」
澪「手を繋いだら!?」
紬「そうね、手を繋いで流されないようにしながら唯ちゃんから順番に進もう!」
唯「わかった!」
律『(唯、あんまり無理するなよ!?)』
唯「(大丈夫!)」
113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/13(土) 11:45:20.37 ID:Ap9PSEqq0 [2/23]
手を繋ぎながら、唯は川の中を進んでいく。
何とか向こう岸まで着くと、水から上って今度は梓の手を引っ張り上げる。
梓は紬を、紬が澪を引っ張り上げ、全員無事に川を渡った。
澪(全員……?)
梓「ムギ先輩、護衛の人たちは?」
紬「心配しないで。少し違う道を探らせてからこっちに……」
唯「来てないよね」
紬「……うん。けど大丈夫よ!先に進みましょう」
紬「(りっちゃん、川を渡ったけど次はどこに行けば?)」
律『(……)』
紬「(りっちゃん?)」
律『(え?あ、あぁごめん。川、渡れたのか?)』
紬「(えぇ、案外簡単に。それよりどうかした?)」
114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/13(土) 11:56:41.36 ID:Ap9PSEqq0 [3/23]
律『(いや、何でもない!)』
澪「うわあ、服びしょびしょだ……」
梓「私もです。でも、霧は少し晴れてきましたね!」
唯「あ、本当だ」
紬「(りっちゃん、今周りを見回してみたんだけど、人一人通るのが精一杯みたいな
細い道しか、進めそうな場所がないわ。そこを行けばいいかしら?)」
律『(うん、確かそう……だったと思う。ただムギ、そこから先は気をつけてくれ)』
紬「(?……わかった)」
唯「ムギちゃん、やっぱりこの細い道通ったって?」
紬「そうみたい。皆、ここから先はあまり離れないで歩こう」
澪「え、どうして?」
紬「りっちゃんが気をつけてって言ったから、何か罠とかあるのかも」
115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/13(土) 12:06:11.78 ID:Ap9PSEqq0 [4/23]
梓「罠って……。確かに何かありそうですけど、この山」
紬「そうよ、梓ちゃん!だから気をつけなきゃ」
唯「でも具体的に何があるのかとかわかんないし、気をつけようもないよね」サクサク
紬「それもそうだけど。あ、唯ちゃん、先頭は私!」タタタッ
澪「……なんかもう。ムギ、楽しんでない?」トコトコ
梓「そうですね」トトト
澪「……にしても、本当になんなんだ、この山は。山の名前、なんだっけ?」
梓「えーっと……あれ?何でしたっけ……?」
唯「まさか地図にも存在しない幻の山ー、だったりして!」
澪「えぇ!?」
紬「だったら面白いなあ!」
梓「いやいや」
117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/13(土) 12:18:18.62 ID:Ap9PSEqq0 [5/23]
澪「冗談はやめてくれよ、ただでさえ怖いのに……。しかもまた暗くなってきて
ないか?」
唯「あ、曇ってきちゃってる!」
紬「大変!早くりっちゃんの身体探して帰らなきゃ、雨降ったらよけいに危険だわ!」
梓「先輩方、向こうのほう、洞窟がありますよ!」
唯「とりあえずそこに入ろう!他に道もないし、中から通り抜けられるかも知れないし!」
――――― ――
119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/13(土) 12:25:03.76 ID:Ap9PSEqq0 [6/23]
唯「ふう……。山に洞窟って、なんかわくわくするねえ」
紬「ねー!」
澪「もう……子どもじゃないんだから」ハァハァ
梓「それに、早く先に、進まなきゃ、律先輩が、死んじゃう、かも知れませんよ!」ゼイゼイ
澪(だめだ、大学入ってから全然運動して無いからキツい……!)
梓(体育適当にやっとくんじゃなかった……!何で唯先輩とムギ先輩は全力で走って
平気なの!?)
唯「そ、そうだった!この洞窟、結構先まで続いててどうなってるかわかんないね……」
澪「それに暗くてよく見えない……」
紬「ふふっ、こういうときのためにマッチを用意してきました!」ジャーン
梓「……湿ってて使えないんじゃ?」
121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/13(土) 12:29:05.95 ID:Ap9PSEqq0 [7/23]
紬「そんな!」ポスッ、ポスッ
紬「……うぅ、本当だ」
梓「ま、まあまあ」
澪「(律?)」
律『(……)』
澪(あれ……?他の人と話してるのかな……?)
唯「けどここを進む以外、行き止まりみたいだし進んでみよ!皆で進めば怖くない!」
紬「おー!」
梓(何か……、先輩たちが高校に居たころに戻ったみたいだな)
123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/13(土) 12:42:01.54 ID:Ap9PSEqq0 [8/23]
唯「そういえばさっきからりっちゃん隊員と全然話せないんだけど、誰かりっちゃんと
話してる?」
紬「え、私もよ?何度も呼びかけてるんだけど反応が無いの」
梓「私もです」
澪(皆も……?)
澪「ま、まさか何かあったんじゃ……、それとも律の本当の身体が死んじゃった……」
唯「澪ちゃん、それは言っちゃだめ!」
紬「大丈夫よ、きっと!」
そうは言うものの、皆頭に浮かんだ最悪の光景を打ち消そうと、
自然と早足になる。
と、突然先頭の唯が立ち止まった。
唯「何か……いる」
127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/11/13(土) 12:51:24.47 ID:Ap9PSEqq0 [9/23]
梓「えっ、何かってなんですか……?」
唯「わ、わかんない……っ、けど何かいるよ……!」
確かに、奥のほうから微かな息遣いと気配が感じられた。
それも、いくつも。
獰猛そうな唸り声が暗闇を引き裂いた。
グルルルルルッ
紬「狼っ!?」
澪「いや、ない、絶対ないから!だって、日本に野生の狼なんているはず……!」
「お嬢、様……!」
紬「え、斉藤!?」
128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/13(土) 12:52:32.07 ID:Ap9PSEqq0 [10/23]
>>125>>126
ワロタwww
129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/13(土) 13:02:04.79 ID:Ap9PSEqq0 [11/23]
唯「斉藤さん!?」
梓「ヘリコプターで待機だったんじゃ……!」
斉藤「申し訳、御座いません、お嬢様方……!突然、ヘリが墜落してしまい……」
暗闇に慣れてきた四人の目に、血だらけになった斉藤や、
なんとさっき消えた護衛の姿が映った。
そして、灰色の毛を持つ、狼の姿まで。
紬「どうなってるの、これは!?」
護衛「……お嬢様、のご命令で、別の道を探っていたところ、この洞窟に辿り着き……狼共が!」
澪「うっ、血の匂いが……」フラッ
梓「澪先輩!」
斉藤「今直ぐ、お逃げ、ください、お嬢様!」
132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/13(土) 13:23:30.63 ID:Ap9PSEqq0 [12/23]
唯「だけど……!」
紬「戻ったってりっちゃんのところにたどり着く道がないの!」
澪「無茶苦茶だよこんなの……!どうなってるんだよお!」
梓「(律先輩が言ってた危険ってこういうことなんですか!?)」
律『(……)』
梓(やっぱり返事が返ってこない……!)
狼「ウゥゥ……」
不吉な唸り声を上げ、一匹の狼が唯たちを襲ってきた。
間一髪避けると、別の狼達も次々に唯たちを襲う。
唯「……お、狼さん、怖くない怖くない!」
梓「唯先輩、手懐けなくていいですから!」
134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/13(土) 13:52:08.84 ID:Ap9PSEqq0 [13/23]
澪「いや、唯だって手懐けてないだろ!」
唯「ひぃ!」
紬「皆、とりあえずこの場はダッシュよ!よくゲームであるじゃない、勝ち目のない
戦いは逃げるのが一番!」
澪「これゲームじゃないから、現実だから!」
澪(あれ、現実?現実なのか、夢なのか!?寧ろ夢であってほしい……!律が行方不明に
なったところから全部!)
狼「グゥルウルルル……」フゥフゥ
澪「……。よし、逃げよう!」ダダダッ
唯・梓「え」
紬「れっつらんにんぐ!」タタタッ
唯・梓「どうして英語!?」
143 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/13(土) 14:09:02.81 ID:Ap9PSEqq0 [15/23]
斉藤「お嬢様、どうかご無事で……!」
紬「斉藤、りっちゃんを見つけたら絶対戻るわ、絶対よ!」
梓「む、ムギ先輩っ!狼さんたちが追ってきてますよ!」
唯「狼さあああああああん、来ないでええええええ!」
澪「なぜ狼“さん”!?」
律『(……か!)』
澪(え?)
律『(……れか、誰か聞こえるか!?)』
澪「(律!)」
147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/13(土) 14:17:21.28 ID:Ap9PSEqq0 [17/23]
律『(澪……か!……で、消え……んだ!)』
澪「(何、律!?聞こえない!)」
律『(……消えそう、なんだ!)』
澪「(消える……!?消えるって何がだよ!?)」
律『(――……)』
澪「律!?りつ!」
紬「澪ちゃん、りっちゃん何か言ってたの!?」
澪「それがよく聞こえなくて……」
唯「あ、出口!」
狼に追われながら、ギリギリで出口に辿り着いた。
外では、さっきの曇り空が泣いていた。
皆が洞窟から一歩外へ足を踏み出した途端、聞こえていた唸り声や足音が聞こえなくなった。
梓「狼さんが……!」
紬「……消えた?」
150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/13(土) 14:31:33.97 ID:Ap9PSEqq0 [18/23]
唯「ほ、ほんとだ……、どこにもいない」
澪「いや、唯。それで中まで入って確かめようとしなくていいから」
唯「だ、だって……」
紬「それより澪ちゃん、さっきの続き」
澪「あ、そうだった。私もよくわかんないんだけど、消えそうなんだって……」
梓「消えそう、って……狼が?」
澪「いや、違うだろ」
梓「ですよね。でも、違うとしたら……」
紬「りっちゃんが消えちゃう、ってこと……?」
152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/13(土) 14:40:07.36 ID:Ap9PSEqq0 [19/23]
唯「そんな……」
紬「……よくよく考えてみたら、この山、おかしいことばかりよね」
澪「よくよく考えてみなくてもおかしいのはわかるよ」
紬「澪ちゃん酷い」
梓「……」
梓(ムギ先輩が律先輩に重なって見えてきた……)
澪「え、ごめん」
紬「別にいいけど。それでね、思ったんだけどこの山、不思議な力でもあるんじゃ
ないかしら?さっき澪ちゃんたち、この山の名前思い出せなかったよね?」
梓「あ、はい」
紬「私もなの。たぶん、唯ちゃんもそうだよね?」
唯「記憶力が悪いもんですから……」
紬「たぶん、記憶力の問題じゃないわ。この山は実際存在しない 山なんだと思う、
唯ちゃんが言ったみたいに」
157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/13(土) 15:08:13.01 ID:Ap9PSEqq0 [22/23]
澪「……そんな非科学的なこと」
紬「でも私たちの目の前で起こったこと全部非科学的だよね」
唯「確かに……」
梓「それならどうなるんですか、私たちや律先輩は!それに幻の山なんだとしたら……!」
紬「梓ちゃん、大丈夫だから落ち着いて」
梓「す、すいません……」
紬「あくまで私の推測よ。りっちゃんが警察や消防の捜索でも見付からない
のは、ここが存在しない山だから。りっちゃんたちは、別の山に行こうとしてここに来てしまった。
何でここに来たのかはわからないけど……」
澪「そんなことって、ありえるのか……?」
紬「わからないけど……。誰かを山に呼び寄せ生贄にして大きくなる、人食い山の
類じゃないかしら」
梓「人食い山って、またすごい名前の……」
紬「想像上のものだけどね。でも、それが実際存在するんだとすると、りっちゃんはその
生贄にされたことになる」
168 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/13(土) 19:11:16.49 ID:2MKs2iEy0 [1/6]
唯「ってことは、りっちゃんがこの山に食べられちゃったの!?」
紬「ううん、少なくともまだ食べられたわけじゃないと思う。人食い山はね、
生贄が死んだらその屍を糧にして大きくなるんだけど、生贄が死ぬまでは、この世界に
現れて普通の人もこの山を見ることができるし、中に入ることが出来る」
梓「要するに、律先輩はまだ生きてると」
紬「そう。だけど、さっき消えた狼さんたちがこの山の作り出した幻だとすると、
もうすぐ山自体が消えちゃうかも知れない」
澪「……律が、死に掛けてる、のか?」
唯「――早くりっちゃんのところに行かなきゃ!」バッ
170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/13(土) 19:48:28.52 ID:2MKs2iEy0 [2/6]
梓(……ムギ先輩の言葉どおりだとすると、どうして律先輩が部室にいたの?
普通なら、この山の存在を気付かせないようにするはず……。まさか)
梓「待って下さい、唯先輩!」パシッ
唯「あ、あずにゃん……?」
梓「おかしいですよ!もしかしたら、全部罠なんじゃないですか!?」
紬「どういうこと?」
梓「普通、山で遭難したんなら助けに来ようとします、助けに来られたら生贄が
いなくなる、そうですよね?」
澪「……梓は、律が私たちを道連れにしようとしてると?」
171 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/13(土) 20:00:57.59 ID:2MKs2iEy0 [3/6]
梓「そういうわけじゃないですけど……」
紬「でも、確かにそうよね……。私たち全員を食べようとしているのかも」
唯「……りっちゃんはそんなこと、しないよ!」
紬「唯ちゃん……」
唯「きっと何かあったんだよっ、もしかしたら山に操られてるのかも知れないし!
それに、りっちゃん、言ってたよ!私たちを巻き込みたくなかったって」
律『唯たちも巻き込むつもりはなかったのに』
確かに、律はそう言っていた。梓はそれを思い出して、少しでも律を
疑ってしまった自分の中で自己嫌悪に陥った。
梓(私、最低だ……)
唯「それにね、私、りっちゃんと約束したんだもん!りっちゃんが山に行く前、
電話で絶対無事に帰ってくるって!」
.
172 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/13(土) 20:07:34.19 ID:2MKs2iEy0 [4/6]
唯『そういえばりっちゃん、明日から登山サークルの人たちと一緒に山に登りに
行くんだったよね?』
律『ん、そうそう。結構すげえ山らしくてさー』
唯『へえ』
律『結構遭難者とかも出てるみたい。そんな危険な山にりっちゃん隊員は向かうのである!』
唯『おぉ!でもでも、そんな危ない山なんだったら無茶しちゃだめだよー?』
律『わかってるってー。ぜーったい無事に帰るし!つーかまだ死にたくないし!』
唯『えへへ、だよね~。じゃあ約束だよ、りっちゃん隊員!』
律『おう、唯隊員!りっちゃん隊員は絶対無事に帰還するっ!』
唯『……なんか高校生に戻ったみたい!』プッ
律『だな』ククッ
.
176 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/11/13(土) 21:00:47.92 ID:2MKs2iEy0 [5/6]
紬「……ごめんね、私」
唯「へっ!?べ、別に謝る必要はないよ!?」
澪「梓も、ほら。そんな顔してないで」スッ
梓「……先輩?」
澪「気にしなくていいよ、疑ったこととか。それにあいつの日ごろの行いが悪いのがいけない。な?」
梓「……そうですね」プッ
唯「ここにりっちゃんがいたら絶対怒られちゃうよ、あずにゃん」クスクス
紬「でも、りっちゃんも私たちも助かるためにはどうすればいいのかしら……?」
唯「山自体を破壊する!」
澪「いや、無理だろ」
紬「それじゃあやっぱり早くりっちゃんを探し出して脱出するしか……」
梓「この山がさせてくれるかどうかわかりませんけど、そうするしか……!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
一同「!?」
178 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/11/13(土) 21:29:24.04 ID:2MKs2iEy0 [6/6]
突然、地面が揺れ始めた。
雨の勢いもますます強まり、風も吹いてきた。
澪「ど、どうなって……!?」
紬「澪ちゃん、危ない!」バッ
澪「えっ!?」
ズサーン!
地震のせいで揺れていた木が、澪のすぐ横で大きな音を立てて倒れてきた。
唯「だ、大丈夫!?」
澪「う、うん、なんとかムギのおかげで……って、ムギ!?なあ、ムギ!」
倒れた木から澪を庇って飛び出した紬が、澪のすぐ傍で倒れていた。
気付いた澪が必死に揺らすが、返答が無い。足が木に挟まったままだった。
梓「澪先輩、頭を打っちゃったのかも!あんまり動かさない方が……!」
澪「で、でもムギが……!」
181 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 21:56:27.50 ID:2MKs2iEy0
『助かりたいwwwww?ねえ、助かりたいwwwww?』
澪「!?」
唯「え、なに、今の誰!?」
梓「……山?山自体が話してるの……?」
山『正解っwwwwwwwよく出来ましたあwww』
梓「うわ、うっざ……」
澪「いやいやいや!」
唯「揺れてる揺れてる!このお山さん怒ってるから!」
山『まあいいけどねえwww全員生贄にしてあげるんだからwww』
唯「ねえお山さん、りっちゃんはどこにいるの!?」
山『もうすぐ死んじゃうよ、あの女の子wwwそしてね、今そこに倒れてる沢庵ちゃんも
もうすぐ私の生贄になるのよwww』
澪「ムギまで……!?」
山『あのカチューシャのデコちゃんはねえ、あんたたちを生贄にしてでも自分は
助かりたいって願ったのwwwもうほんっと最低だよねえ?www』
182 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 22:15:53.50 ID:2MKs2iEy0
ゴゴゴゴゴゴゴッ
山『あー、信じられないって顔してるなあ?wwwwwwwそれなら見せてあげよう、
その時のことをwwwwwwwwww』
急に、唯たちの目の前が真っ暗になった。
―――――
崖から転落した律は、目を覚ました。
そこは全く光のない、暗闇の世界だった。
律『な、なんだよここ……』
山『助かりたいwwwww?ねえ、助かりたいwwwww?』
律『だっ、誰だ!?』
山『あらやだwww山よ山www』
183 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 22:17:48.02 ID:2MKs2iEy0
律『山……?』
山『あんたの登ってたお山さんwwwそれで、あんたはこれから私の生贄になるのwww』
律『生贄ってなんだよ!?』
山『死んで、私の体の一部になるのよwww光栄に思うといいわwww』
律『誰が光栄に思うかよ!っていうか意味わかんねーし!何でもいいけど私は早く
帰んなきゃ……!』
山『できるものならやってみなさいよwwwどちらにしても、あなたはもう死んじゃうんだからww
あんな崖から転落して生きてる人間なんてそういないもんねwwwwww』
律『……!』
山『どうしても助かりたいんなら助けてあげてもいいけどーwwwwww?』
律『本当か!?』
山『ただし、新しい生贄を持ってこられるんならねwww』
184 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 22:23:20.40 ID:2MKs2iEy0
律『新しい、生贄……?』
山『あんたの代わりに死ぬ奴を探してここに連れて来いってことwwwwww
簡単でしょwwwwwww?』
律『……わかった!』
山『それじゃあ決定ねwwwwwwwwあんたを一番大切な場所に戻してあげるww
ただし、新しい生贄が死んじゃうまであんたはその場所から出られないけどねwww』
律『えっ!?ちょっ待て……!』
ポンッ!
律の姿が消えた。
そこはもう、誰もいない、真っ暗な空間が広がっているだけだった。
―――――
186 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 22:36:59.58 ID:2MKs2iEy0
山(ま、初めからデコちゃんも逃がすつもりなかったけどねwwwwwwwww)
梓「……今の映像……」
山『全部本当よwwwwwあのデコちゃんは、あんたたちを裏切ったのwwwww
許せないwwwwwww?ねえ、許せないでしょwwwwwwwwww?』
唯「許せないんじゃなくて許すっ!」
山『え?www』
唯「当たり前だよ、りっちゃんだって怖かったんだよ、きっと!だから仕方ないよ!」
山『うざwwwwwwww果てしなくうざいなこの子wwwwwwwww』
唯「なっ!」グラッ
ゴゴゴゴゴゴゴッ
梓「ゆっ、唯先輩!」
澪「うわっ」グララッ
梓「澪先輩!?」
187 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 22:45:24.49 ID:2MKs2iEy0
揺れる地面がひび割れ、唯たちが立っていた地面が真っ二つになった。
思わず咄嗟に飛び出していた澪が唯と左側に、梓と意識の無い紬が右側になる。
山『ふっふふふふふふwwwwwwwwwwwwwwwwwwww怖いwwwww?
ねえ怖い?wwwwwwwwwwwwwwww』
澪「ひっ……!」ビクッ
唯「わ、私たちは絶対生きて帰るって約束したんだもんっ、だから……!」
山『いい子ぶって、さっきからほんとうっぜーわこの似非天然がwwwwww』
唯「!?」
ゴロゴロゴロ……
山『雷に打たれて死んじゃえーwwwwwwwwwwww』
ガラガラビッシャーン!
188 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 22:55:35.03 ID:2MKs2iEy0
―――――
唯「……ん?ここ、どこ……?」
山『目をお覚ましーwwwwwwww?ここはねえ、どこだと思うwwwww?』
唯「お、お山さんっ!」
山『私はお山さんだけどー、場所は違うのよねえwwwまあどこでもいいけどww』
澪「……んっ……」
唯「え、澪ちゃん!?」
澪「あれ、唯……?」
189 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 22:57:32.74 ID:2MKs2iEy0
山『あっれーwwwそっちの黒髪ちゃんも一緒に死んじゃったのwwwwww?
かわいそうにwwwwwwwww』
澪「死んだ……!?」
山『そうよ、あんたたちは死んだのよーwww正確にはまだだけどねーwww私が
現実世界から消えたらあんたたちは完全に死ぬのwwwで、私ったら優しいから、
私のために死んでくれるあんたたちの最期の願いを一つだけ、聞いてあげるのwww』
唯「や、やだ、死にたくない!」
山『あ、そのお願いは無しねwwwわかんないんならそうねえwwwあのデコちゃんや
沢庵ちゃんと一緒のお願いにするwww?あの子たちはねえ、最期にけいおんぶってところに
戻りたいんですってwwwぷぷっ、戻って何するのか知らないけどねえwww』
唯たちの前に、明るい扉が現れる。
それが開かれ、懐かしい光景が唯たちの目に映った。
唯と澪は、何かにとり憑かれたように、ふらふらとした足取りでその扉をくぐった。
―――――
191 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 23:11:17.58 ID:2MKs2iEy0
梓「唯先輩、澪先輩!」
目の前で、よくテレビで見るような稲妻が唯たちのいる場所を襲った。
遠い場所にいた梓にも、唯たちが真っ黒に焼け焦げ倒れたのが見えた。
梓「そん、な……」
山『うふふwwwwwwwwwさ、最後はあんたねwww』
梓「や、やだ……!」
山『あらあらさっきまでの強がりはどこかしらーwwwでもデコちゃんも沢庵ちゃんも、
似非天然も黒髪ちゃんも死んじゃったもんねwww可哀そうwwwだから早くあんたも
生贄になればいいのwww直に楽にしてあげるwww』
ゴゴゴゴゴゴゴッ
192 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 23:14:00.50 ID:2MKs2iEy0
梓「!」ガクンッ
山『どうwww?立ってるのが辛いほどでしょwww?』
梓「う……!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ
グラッ
梓の立っていた場所が、傾き始める。
梓(どうしよう、このままじゃ……!)
ガシッ
梓「え、ムギ先輩!?」
194 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 23:17:29.97 ID:2MKs2iEy0
返事はなかった。
だが、傾いた地面から落ちそうになっていた梓の手を、紬の手がしっかりと握っていた。
梓(どういうこと!?ムギ先輩はまだ生きて……!)
山『(チッ、面倒臭い奴だなwwwwwwwww)』
ズンッ
梓「!?」
―――――
196 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 23:26:51.76 ID:2MKs2iEy0
いつのまにか、さっき山が頭の中に流した映像に映っていた真っ暗な空間に、
梓はいた。
梓(何これ、どういうこと……!?)
山『助かりたいwwwww?ねえ、助かりたいwwwww?』
梓(またこの声!)
山『助けてあげてもいいけどwwwwwwww』
梓「じゃあ助けてください」
山『もちろん、ただでってわけにはいかないのよねえwww』
梓「じゃあいいです」
山『(やりにくっwwwwwwww)』
山『まあまあそう言わずwwwwwwwほら、あんたもみんなと同じ場所に行きたくない?』
梓「!!」
198 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/13(土) 23:29:10.84 ID:2MKs2iEy0
いつもの放課後。
いつもの部室。
西日の差し込む音楽室に、紅茶の温かな湯気が立ち上る。
梓(先輩たちが、いる……)
202 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 00:47:12.44 ID:f8gpW0L30
唯「あー、りっちゃんそれ私の!」
律「へへーん、早い者勝ちだっつーの!」
澪「お茶の時くらい静かにしてくれ……」
紬「あらあらうふふ」
皆いつもどおりなのに、梓には何か違うように見えた。
それなのに、足が勝手に唯たちのほうに進んでいく。
山『どうwwwwwwww?戻りたくなあいwwwwwwww?この世界にwww』
206 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 00:57:13.61 ID:f8gpW0L30
それを煽るかのような山の声。
梓(嫌だ、だってこんなの、違う……!)
山『何が違うwwwwwww?これはあんたの心の奥でずっと求めていた光景
なのにwwwwwwww何が違う?wwwwwwwwwwww』
唯「今日は何だか退屈だねえ」
律「ん、そうだな」
澪「……ん」
紬「お茶、もう一杯如何?」
梓(あぁ、そうだ……。皆楽しそうじゃないから……、こんなの、私の軽音部じゃない!)
207 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 01:02:20.38 ID:f8gpW0L30
梓「私はこんな世界なら戻りたくないっ!」
山『……は?wwwwwwwwwwwww』
梓「こんな軽音部なんて、求めてない!」
山『……折角上手く事が運びそうだったのになあwwwwwwwwww』
梓「!?」
ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
梓(空間が崩れてく……!)
―――――
210 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 01:21:32.23 ID:f8gpW0L30
山『あんたに逃げられたら私オワリなのwwwwwwwwwww逃がすわけには
いかないから、やっぱり殺しちゃいましょうかwwwwwwww』
梓「……!」
目を開けると、今まで自分が見ていた暖かな光景は消え失せ、その代わりに
荒れた山が映っていた。
山『皆殺すのは最後までお楽しみだったのになあwwwwwwwwwww』
コズッゴゴゴゴゴゴゴッゴ
今までで一番酷い地響きが、辺りに響き渡る。
梓の手を掴んでいた紬の手が、離れそうになる。
梓(落ちる……!)
213 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 01:27:50.61 ID:f8gpW0L30
―――――
律(この世界、やっぱり何か違う……)
唯「変な気分だなあ」
律(帰らなきゃ)
澪「うん……」
律(……どこに?)
紬「何だか別の世界に居るみたい」
律(――そうだ、元の世界に!)
―――――
215 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 01:30:33.16 ID:f8gpW0L30
ガシッ
梓「!?」
紬「梓ちゃん……!」
梓「ムギ、先輩!?」
グイッ
山『う、嘘でしょ!?wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
なんで目を覚ましたの!?wwwwwwwwwwwwwwwww』
216 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 01:37:02.88 ID:f8gpW0L30
唯「あずにゃああああああん!」
澪「梓、大丈夫か!?」
梓「唯先輩、澪先輩まで……!」
山『どういうこと!?どういうこと!?wwwwwwwwwwwwwwwww
私の造った偽者の世界を満喫させてあげてたのに!wwwwwwwwwwww』
唯「あんな世界、全然違うもん!」
澪「律が、教えてくれた!」
紬「それで、あっちの世界で必ず帰るって!」
ググッ
紬「約束したから!」
梓の身体を持ち上げ、傾いてはいるが、安全な地面の上に立たせる。
山は動揺したように、地面を揺らすことを止めた。
否、もうそんな力は殆ど残っていないようだった。
217 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 01:48:01.30 ID:f8gpW0L30
山『ハハッwwwwwwwwwwwwハハハッwwwwwwwwwwwwww
何が約束よwwwwwwwww馬鹿馬鹿しいwwwwwwwwwwww人間なんて
そんなのすぐに破っちゃうのよwwwwwwwwww』
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ
山の中心が、ゆっくりと崩れていく。
山『人間なんて最低なのよwwwwwwwwwwwwwwwww私はねえ、そんな
あんたたちより大きくなろうとしただけなのにwwwwwwwwwwwwww』
唯「お山さん……」
山『あのデコちゃんだけでも生贄にしたかったのに私の夢想世界を壊しちゃうなんてww
ほんとありえないwwwwwwwwwwwww』
梓「そうだっ、律先輩は!?律先輩はどこに!?」
山『デコちゃんならもう……』
――――― ――
220 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 01:51:50.52 ID:f8gpW0L30
「……さっ!……ずさ!あずさったら!」
何度も名前を呼ばれ、梓ははっと起き上がった。
そこは見慣れた部室だった。
梓の顔を覗きこんでいた純の額と自分の額をぶつける。
梓「……ったあ!」
純「もう、何してんのよ……」
梓「あ、あれ!?お山さんは!?律先輩たちは!?」
221 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 01:58:28.73 ID:f8gpW0L30
純「お、お山……?何寝ぼけてんのよ」
梓「じゃ、じゃああれは、夢……?」
純「さっき澪先輩から梓が電話に出ないから、って言って電話くれたからわざわざ
教えに来たのにまさか寝てるとは」
梓「だ、だって……!」
純「律先輩」
梓「え?」
純「無事見付かって救助されたって」ニッ
梓「……!」パアアアア
純「あと梓、制服凄い汚れてるし頭に葉っぱが一杯ついてるんだけど、どうしたの?」
222 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 02:12:25.55 ID:f8gpW0L30
――――― ――
後から梓が聞いた話によれば、あの山は生贄を一人でも逃がせば崩れる運命に
あったらしい。
律「二兎追う者一兎も得ずだな」
大怪我を負っていた律は、別の山の麓に倒れていたところを発見され、病院へ
運ばれ、今は日常生活に支障をきたさない程度に回復している。
斉藤や、琴吹家の護衛も律と同じ場所に倒れていたが、これは琴吹家の財力で
報道されないように揉み消したらしい。
澪「あの山、一体何がしたかったんだろうな……」
223 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 02:18:01.26 ID:f8gpW0L30
律「……最後に言った通りなんじゃねえの?」
一度死んだはずの澪たちは、山の存在が消えたことでその事実も
消えてしまったのか、それとも実際は生きていたのかはわからないが、怪我もなく、
普段どおりに学校へ通っている。
唯「私ね、あのお山さんの見せてくれた昔の軽音部に釣られちゃった」
紬「うん。私も」
律「……私もだ。恋しかったのかもなあ、部室が」
紬「そうかも」クスッ
224 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 02:36:00.95 ID:f8gpW0L30
律「あ、そうだ。梓」
梓「へ?」ビクッ
黙って聞いていたのに、突然話を振られて梓は思わずびくっとした。
そんな梓を見て、ベッドの上で白い包帯を巻かれた律が苦笑する。
律「なーに怖がってんだよ」
梓「怖がってはいません!」
律「ふーん。で……」
梓「なんです?」
律「ごめんな?今回の件。巻き込んじゃってさ。梓はまだ高校生だし」
梓「先輩方と一つしか変わらないです!」
律「けど……」
225 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 02:37:10.67 ID:f8gpW0L30
梓「大体、部室が恋しいとかなんなんですか!」
唯「え?」
梓「卒業したからって、来てもいいんですよ!遠慮することなんかないじゃないですか!
別に私は寂しくなんてないですけど!先輩方はいつだって来て下さいっ、部長である
私が許可しますっ!」
紬「……梓ちゃん」プッ
唯「もうちょっと素直になったらいいのに」ププ
律「うーん、そうだな、あそこは私の場所だからな!」
澪「“私たちの”だろ?」
律「そうだな。なんつーか……色々やばかったけど、お山さんが忘れてたことを
思い出させてくれたな!」
梓「いい話風に纏めようとしないで下さい」
律「う……。とりあえず!」スッ
唯「りっちゃん隊員、帰還だね!」
終わる。
226 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/14(日) 02:38:15.16 ID:f8gpW0L30
長い間ぐだぐだと進めてしまいすいませんでした。
こんなものを最後まで見てくださった方、ありがとうございました!
<<男「俺はなんで君と結婚したんだろう」 | ホーム | 唯「君を繋ぎとめるための」>>
コメント
コメントの投稿
トラックバック
| ホーム |