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唯「天下統一するよ」【番外編】

75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/26(火) 12:45:36.07 ID:ofkw7ePGO
【番外編】


「いくら梓ちゃんでも、これだけは譲れないよ」
天下を統一し、律より征夷大将軍の職の禅譲を受けた唯は新たに幕府を開くことになった。
しかしここに火種が生じる。
大坂を本拠とする梓は大坂への開府を主張。
江戸を本拠とする憂は江戸への開府を主張したのだ。
「まぁまぁ、憂ちゃんも梓も落ち着こう、なぁ?」
二人の剣呑な雰囲気を察し、律が慌てて止めに入るも、
「律先輩は黙っててください!」
と梓に一喝されてしまう。
「澪ぉ……梓が黙ってろって……」
律が助けを求めた先の澪も困り顔だ。
「くっ、こうなったら唯に止めてもらうしか……」
澪が頼りにならないと見た律は唯の方を向く。
「ほら、唯ちゃん。新しいお菓子があるのぉ」
「っておいムギ! 唯をどこに連れて行くんだ!」
「あら、見つかっちゃったわ……。でもおいしいお菓子があるのは本当よ、唯ちゃん。それに私、女の子を巡って女の子同士が争うのを見るのが夢だったの。じゃあそういうことだから後は任せたわ、りっちゃん!」

87 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/26(火) 21:40:12.37 ID:ofkw7ePGO
「やっぱり唯先輩は大坂に来るべきです!」
「何言ってるの梓ちゃん。大坂に行ってお姉ちゃんが怪我したら大変。だからお姉ちゃんは江戸に来るべきなんだよ」
「意味わからないって憂……。大坂は京都も近いし、海も近いから政治の中心地になるのは当然なんだって」
「そんなことよりお姉ちゃんが怪我でもしたら大変だよ」
「いや、だから意味わかんないよ憂……」
その後も梓と憂は結局互いに譲らず、唯の裁断を仰ぐこととなった。
「というわけで、唯先輩は大坂に来るべきなんです!」
「お姉ちゃん、江戸には美味しいアイスがあるよ!」
二人にすごまれ困ったのは唯である。
「う~ん……。どうしたらいいと思う、和ちゃん?」
「そうね。戦って決めたらいいんじゃないかしら?」
「ダ、ダメだよ和ちゃん! 喧嘩はよくないよ!」
「喧嘩じゃないわ、戦争よ」
「もっとダメだよ!」
「そんなこと言っても解決できそうにないし、軍事演習って体にしたらいいんじゃないかしら」
そんな和の発言を聞いて熱がこもったのは梓と憂である。
「やってやるです!」
「梓ちゃん、めっ!」
「あ、あずにゃん……? う、憂……?」唯の心配をよそに、日の本六十余州を二分する大戦がここに始まろうとしていた。


89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/26(火) 21:52:27.15 ID:ofkw7ePGO
午前6時。
関ヶ原。
霧が立ちこめる中、中野梓率いる西軍。
平沢憂率いる東軍の布陣が完了する。
ここ関ヶ原は東西南北を山に囲まれ、中山道、北陸街道の交わる東西交通の要所である。
梓は近江側に本陣、松尾山に純、南宮山にムギを配置し、東から迫る憂の軍勢を鶴翼の陣で待ち受けた。
一方の憂は、西軍美濃大垣を立つとの知らせを聞き、関ヶ原へと兵を進めた。
布陣から見れば、梓が憂の正面を、松尾山の純が側面を、南宮山のムギが背面を包囲するかたちになる。
「憂には悪いけど……」
梓はまだ霧は晴れず戦場の全景は見えずにいたが、自らの包囲網に憂がまんまとかかったことにほくそ笑んだ。


91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/26(火) 22:03:16.04 ID:ofkw7ePGO
午前9時。
憂率いる東軍の先陣であった律が、梓の本陣をめがけて突撃を開始する。
「まったく、律の奴……」
憂と本陣にいた澪は、律の暴走に呆れた様子を見せる。
余談にはなるが、本能寺の変の後、秋山澪は出家をする。
一部からは禿げたと言われるが、そうではない。
単に前髪を少し剃髪しただけである。
また、落馬時に縞パンを衆目にさらし、縞パン宰相の異名をとるようになったのだが、本人が嫌がる呼び名とあるので、ここでは引き続き澪と表記することにした。

さて、憂の当面の懸念は背後のムギと、側面の純である。
ムギには不戦の約束を取り付けてはいるが、東軍不利と見ればいつ背後を襲われるかわからない。
また純には寝返りを取り付けてはいるが、こちらも戦が長引けばどうなるかわからない状況である。
「梓ちゃん、お姉ちゃんは渡さないよ……」
憂は前方で始まった戦況を見ながらそう呟いた。


92 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/26(火) 22:09:05.11 ID:ofkw7ePGO
南宮山。
ムギは戦が始まったことに興奮していた。
もちろん戦に興奮したわけではない。
「唯ちゃんを巡って2人の女の子が争う……。それも片方は血のつながった憂ちゃん! 面白くなりそうね」
一応憂には不戦の約束をしたが、それも好奇心から。
すなわち、憂と梓の女の戦いを見ていたいが為に、戦闘には参加しないというだけである。
あとは恍惚とした表情をするだけのムギについて、ここで殊更記す必要もないだろう。

93 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/26(火) 22:17:36.00 ID:ofkw7ePGO
さて、同じく西軍についた松尾山の純は迷っていた。
憂に味方すべきか、梓に味方すべきか。
憂も梓も大切な友達である。
憂がどんなにお姉ちゃんを好きかも知っているし、梓がどれだけ唯先輩を慕っているかも知っている。
「どうしよう、どうしよう……」
ちなみに今、純が気にしているのは髪型である。
今朝は霧が立ちこめるような天気なので、頭が爆発しているのだ。
しかし今気にすべきは髪型ではない。
「はっ! そうだった。梓と憂は」
純は麓の様子を眺める。
戦況は一進一退。
もともと鶴翼に部隊を展開させた梓は迎撃側である。
攻め疲れた憂の本陣を背後のムギと側面の純で突く。
これが大まかな作戦であった。


95 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/26(火) 22:35:25.27 ID:ofkw7ePGO
「浮きます」
「こら唯、食べ物で遊んじゃダメよ」
唯と和は京都にいた。
唯は親指からミカンを取り、皮をむきはじめる。
目の前にケーキがあるのだが、先にケーキを食べてしまうと後でミカンを食べたときに酸っぱく感じてしまう。
だから先にミカンから食べ始めたのだ。
「和ちゃんのケーキも、美味しそうだね」
「いいわよ、一口食べても」
「ホントにぃ! じゃあ私のも一口あげるよ!」
「悪いわよ」
「いいっていいって」
「それじゃあ一口貰うわね」


96 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/26(火) 22:45:30.08 ID:ofkw7ePGO
関ヶ原、西軍本陣。
梓は憂の猛攻にじれていた。
「なにしてるのよ、純は!」
総攻撃の狼煙をあげても、松尾山の純は東軍に攻めかかる様子もない。
今ここで西軍本陣に肉迫する憂の脇腹をつけば、東軍は総崩れになるだろう。
しかし純には動く様子がなかった。

もちろん東軍の憂も
じれていた。
「純ちゃん、早く動いて……」
ここで純が東軍に味方し、西軍に攻めかかれば今度は西軍が総崩れになる。
今やこの戦のキャスティングボードは純の手に握られていたのだ。

さて、その松尾山の純はといえば。
「どうしよう……梓……憂……どうしよう……」
純は迷っていた。
梓につくべきか、憂につくべきか。
未だ決めかねていた。
まさか自分の手にこのような重大な決断が委ねられることになるとは。
純には思いもよらぬことだったからである。


97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/26(火) 22:53:09.59 ID:ofkw7ePGO
「和ちゃんがあんな人だとは思わなかったよ!」
「ゆ、唯先輩!?」

「唯はイチゴくらいで何故あんなに怒ったのかしら」
「の、和さん!?」

西軍、東軍のそれぞれ本陣は思いもよらぬ人物の来訪を受けた。

関ヶ原西軍本陣。
「あずにゃん、指揮変わって!」
「え!? ゆ、唯先輩!? あの、えっと……」
「和ちゃんがね、一口あげるって言ったら私のケーキのイチゴを食べちゃったんだよ!」
「……どうでもいいです……」
「どうでもよくないよ! イチゴだよ!? イチゴなんだよ!?」
「今はそれより、憂との……」
「そんなことより、今はケーキのイチゴの方が大事なんだよ、あずにゃん!」
「だからそれはどうでもいいんですって……」
「よくないんだよ。和ちゃんにどんなにケーキのイチゴが大切かを教えてあげないと!」


98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/26(火) 23:02:36.36 ID:ofkw7ePGO
関ヶ原東軍本陣。
「それでお姉ちゃんが……」
「ええ。イチゴの大切さを戦場で教えてあげるって言って」
こちらは西軍の唯と違って落ち着いた様子ではある。
しかし、そこは和と言うべきか。
唯に「和ちゃんは東軍の指揮だよ。私が和ちゃんにイチゴの大切さを教えてあげるから!」と言われ、無理やりつれてこられた割に、真面目に指揮をとり始めた。
「憂、あの松尾山の軍は全く動かないの?」
「純ちゃんですか? 動かないみたいですね」
「そう、なら鉄砲を撃ち込みましょう」

西軍本陣。
「あずにゃん、あの山に鉄砲を撃ち込もうよ! 督戦だよ、督戦! イチゴの大切さを和ちゃんに教えるんだよ!」
「いや、イチゴはもういいですから……」

この動きに驚いたのは松尾山にいた純である。
先ほどまでは出陣の催促が来る程度だったのに、突然の銃撃。
しかも東西両軍から。
「え!? ええっ!?」
純は慌てて松尾山を駆け下りる。
もちろん戦場とは反対の方向へ……。


103 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/27(水) 00:54:30.80 ID:aQ1XPjqVO
この戦は意外な決着を見ることになる。
「そろそろお茶にしましょう」
ムギがそう言うと、あっさりと両軍(主に唯と律)が引いた。

もちろん、これに納得がいかないのは梓と憂である。
「唯先輩、私のイチゴをあげます」
「お姉ちゃん、私のイチゴもあげる」
「わぁ、ありがとう、あずにゃん、憂!」
「唯先輩、大坂に来たらもっとイチゴをあげますよ!」
「お姉ちゃん、江戸は栃木が近いからイチゴがたくさんあるよ!」
「う~ん。やっぱり私、イチゴショートもいいけど、モンブランも捨てがたいんだよ!」
「唯……先輩?」
「お姉……ちゃん?」
「いや、でもやっぱりフルーツタルトも……」
「唯先輩!」
「お姉ちゃん!」
「結局どっちに来るんですか!?」
「どっちに来るの、お姉ちゃん!?」

こうして東西に分裂した戦は決着を見ないまま決着した。
「あらあら、唯ちゃんはモテモテね」
ムギがこう言ったかどうか知らないが、その後も梓と憂の唯を巡る対立は続いたとか続かないとか。

「あら唯。イチゴが3つもあるじゃない。1つもらうわね」
「え!? の、和ちゃん!? イチゴだよ!? イチゴなんだよ!?」
唯と和のイチゴを巡る戦いも、もう少しかかりそうである。


105 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/27(水) 01:36:17.45 ID:aQ1XPjqVO
梓「そういえば、純」
純「何、梓」
梓「何でそんな髪型になったの?」
純「けっこう言いにくいことをズバッとくるね……」
梓「で、何で?」
純「話せば長いんだけどね……。昔、私、憂のお姉ちゃんに無謀をしたことあったじゃん?」
梓「あったっけ、そんなこと?」
純「……まぁ、あったんだよ……。それでさ、憂のお姉ちゃんに負けて、私がドーナツを差し出したら命だけは助けてあげるって言われたんだ」
梓「あぁ、唯先輩らしいね……」
純「でも私、まだ一口も食べてなかったから渡したくなかったの」
梓「そういう問題?」
純「で、もったいないからドーナツの中心部に火薬をつけて、頭に乗せて爆発したんだ」
梓「よく生きてたね……」
純「で、爆発したら髪の毛も爆発してたってわけ」
梓「いろいろとすごいね……。何かごめん、変なこと聞いて……」
純「いいよ、別に。それにドーナツ美味しいよ」
梓「今の話聞いて食欲なくなったからまた今度ね……」
純「甘いものは別腹だよ」
梓「そういう問題じゃないんだ、今は……」


125 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/27(水) 23:50:33.71 ID:aQ1XPjqVO
せっかくなので、使わなかった本能寺別パターンを書いて終わろうと思います。


京都本能寺。
敵は本能寺にあり。
本能寺周辺は、秋山澪の軍勢に囲まれていた。

「お姉ちゃん、澪さんが……!」
憂は慌てた様子で、姉、平沢唯の元へ駆け込む。
「……憂……あと5分……むにゃむにゃ」
「お、お姉ちゃん! 起きて、ねぇ起きてってば!」
「大丈夫だよ、憂……今日は休みだよ……」
「違うよ、お姉ちゃん! 謀反だよ、謀反!」
「……ごはん……? はっ! 憂、ご飯はおかずなんだよ!」
「お、お姉ちゃん……?」
「憂ぃ~、お腹空いた……」
「お姉ちゃん、今はご飯じゃないよ。それにさっき食べたばかりでしょ?」
「じゃあ、お菓子を」
「って、そうじゃないんだよ、お姉ちゃん!」
憂は唯に周辺の様子、そして澪が謀反をおこしたことを懸命に伝える。
「そっかぁ……。是非も無しだね、憂」
「お、お姉ちゃん……?」
憂は目に涙を浮かべながら、姉に寄り添った。

127 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/28(木) 00:14:49.87 ID:aJeKJIDqO
おそらく澪のことだ。
謀反をおこした以上、唯を本能寺から逃がすことはまずあるまい。
「憂、ここはお姉ちゃんにまかせて!」
「お、お姉ちゃん……?」
「憂は逃げるんだよ」
「ダ、ダメだよ! 私も一緒にいる!」
「大丈夫、私に任せてよ!」
そう唯は務めて明るく言ったが、唯にもこの包囲を突破し外に出ることは容易ではないことなどわかりきっていた。
それでも姉として。
頼りない姉ではあったが、最期くらい良い姉として迎えたいではないか。
「……よしよし、大丈夫だよ、憂」
唯は穏やかな顔で、憂の頭をなでる。
「……お姉ちゃん……」
「ほら憂。あとはお姉ちゃんにまかせて、憂は……」
おそらくもう会うことはできまい。
そう思うと、憂は姉のぬくもりがいっそう恋しく離れがたいものがあった。
しかし唯は強引に憂を突き放すと、「じゃあね」とこの場には不似合いな笑顔だけを残し、燃え始めた扉の向うへと消えていった。
それがどんなに憂にとって非情なことであっただろうか。
唯はけっして頼れる姉ではなかったが、そのぬくもりで常に憂をつつんでくれていた。
そのぬくもりが無くなってしまったら、今後何でその身を温めればいいというのだろうか。
止めどなく流れる涙は、まるで燃えさかる炎の蜻蛉のように憂の視界を激しく揺らし続けた。


128 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/28(木) 00:25:33.48 ID:aJeKJIDqO
翌朝、備中高松にいた梓の陣で一人の密偵が捕らえられる。
「平沢唯、京都本能寺で討たれる」
その密偵は、にわかには信じがたい密書を携えていた。
開いた梓の顔がとたんに白くなる。
「どうしたの梓、ますます日本人形みたいな顔になってるよ」
純の問いかけにも、
「唯先輩が……唯先輩が……」
と梓はひたすら繰り返すばかりであった。
「憂のお姉ちゃんって面白いよね」
そう言った純だったが、呆け続ける梓のただならぬ様子に肩をぎゅっとつかむ。
「梓! 梓ってば!」
「……あ、純……」
まるでそこに純がいたことを今気付いたかのような呆けた梓の返事。
「どうしたの梓」
「……唯先輩が……」
「憂のお姉ちゃんはわかったから」
「……唯先輩が討たれた……どうしよう、純!」
「え!? 討たれたって憂のお姉ちゃんが!?」
「そう……」
「いやいやいや、ありえないでしょう」
否定する純に、梓は先ほどの密書を差し出した。


129 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/28(木) 00:27:40.43 ID:aJeKJIDqO
梓はかつて自分を拾ってくれた唯のことを思い出していた。
もしあの時唯先輩に出会っていなければ、どこかでのたれ死にをしていたか……。
今はこうやってひとかどの武将としてやっているが、仕えたのが唯先輩でなければ……。
「じゃあ、あずにゃんだね!」
そう言っておぶってくれた時の。
「あずにゃ~ん!」
墨俣築城のおり、唯先輩がそう言ってほおずりをしてくれた時の。
唯先輩のそれぞれのぬくもりを思い出す。
「……唯先輩……もう抱きついてきても怒りませんから……唯先輩……」
梓は肩をふるわせながら、こぼれ落ちるままに涙を大地へと染み込ませ続けた。


130 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/28(木) 00:29:51.99 ID:aJeKJIDqO
「梓、今度は梓が天下を狙う番だよ……」
純は未だ泣き止まぬ梓に静かに告げた。
それがどんなに残酷な言葉であるのか、純にもわかっていた。
「梓の番」、すなわち梓の慕った唯の死を認めることになるのだから……。
「梓、泣いていてもしょうがないよ……。ま、私はどっちでもいいんだけどさ、ほら、唯先輩との夢がさ……」
そんな純の言葉に梓の目にようやく涙以外の光がともる。
「純……」
それからの梓の動きは速かった。
まさに疾風迅雷。
備中の陣を引き払うと、昼夜を問わずひたすらに京を目指した。


132 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/28(木) 00:44:30.41 ID:aJeKJIDqO
どうやってここまで来たかは思い出せない。
気付いたら越前は北ノ庄城の広間に通されていたのだ。
「あら憂ちゃん、久しぶりね。唯ちゃんは元気?」
未だ本能寺での出来事を知らないムギは微笑みながら憂に話しかける。
「待ってて、今、お茶の用意をするから」
憂の疲れ切った様子。
泣きはらしたであろう赤い目。
所々に返り血と泥の付いた着物。
ただならぬ様子ではないことはムギにもわかった。
しかし今の憂はまるで魂の抜け落ちた人形のようで、話ができる状態ではないだろう。
まずはお茶を飲んで、それから。
「はい、ハーブティーとケーキよ。きっと落ち着くわ」
そうムギが言っても返事はない。
いつも礼儀正しい憂らしからぬ態度である。
「……あのね、憂ちゃん……」
ムギは湯気の消えた碗を見ながら、とうとう憂に話を切り出した。
「何があったのか、話してもらってもいいかしら」
「……お姉ちゃん……」
憂はそう言ったと同時に、体面も気にせず嗚咽し始めた。
これは最早異常事態と言っていい。
ムギも平静ではいられず、
「唯ちゃんがどうしたの!?」
と、思わず憂の様子も鑑みず詰問するように前へ出た。


133 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/28(木) 00:57:49.81 ID:aJeKJIDqO
どのくらい経っただろうか、唯が本能寺で澪に討たれたこと。
そして唯が憂だけでも逃がそうとしたこと。
一通り憂から聞き終える頃には、ムギの目も赤く腫れていた。
「……そう、唯ちゃんが……」
焦点の定まらない目で、ようやく口をつけた憂の碗を見ながらムギは噛み締めるように言った。
今すぐにでも唯の仇を討ちたい。
しかしその唯を討ち取ったのは澪なのだ。
ムギの気持ちは振り子のように左右に揺れる。
気付けば深い沼に飲み込まれるように、何が現実なのか、これは悪い夢で、唯はまだ生きているのではないのか。
ムギの思考は、川の一点を見つめ続けた時のように流動的停止状態に陥っていた。


「申上げます」
一人の兵がムギと憂のいる広間へと駆け込んでくる。
中野梓、山崎にて秋山澪を討ち取る。
ついては清洲で唯亡き後の平沢家の今後を決めるので、ムギにもその会議に出席して欲しいとのことだった。
「……そう、梓ちゃんが……」
ムギは気のない返事をしながら、呆然とする心を抑えるように立ち上がった。


136 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/28(木) 01:26:39.49 ID:aJeKJIDqO
尾張国、清洲城。
久しぶりに、和、梓、ムギ、そして憂が会す。
だが。
本来その中心にいるべき唯の姿は無い。
空席となった上座に、自然と一同の目が集まる。
もちろん唯が現われるわけもないのだが、あれだけ泣きはらしたというのにこうして改めて唯のいない空間を見ると何だか無性に虚しく、そして悲しくなるのが不思議でもあり、当然であるようにも思えた。
「今日集まってもらったのは他でもありません……」
そんな中、梓がおもむろに立ち上がる。
再び流れ出そうになった涙を振り切るように一拍おいてから、力強く告げた。
「唯先輩の後を誰が継ぐか、です」
あけすけに言えば、平沢家当主である唯が討たれたので誰が次期当主になるのか、という話である。
だが梓はそこで、思いもよらぬ名を告げた。
「私はギー太がいいと思います!」
ギー太とは、南蛮の宣教師から唯が買った今で言うギターのことである。
もちろんギターとは楽器であって、人ではない。
そんなものが家督を継ぐなどという前例はあり得ないし、おこりえないことだと言っていい。
順当に平沢家の家督を継ぐとすれば、それは憂のはずだった。
「あ、梓ちゃん!? じょ、冗談……よね?」
ムギが声をあげる。
「いいえ、ムギ先輩。冗談ではありません。私はギー太こそ唯先輩の後を継ぐのに相応しいと思います」



137 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/28(木) 01:28:30.92 ID:aJeKJIDqO
梓の言い分はこうである。
唯先輩は唯先輩であって、唯先輩の代わりはいない。
だからここはひとまず当主の座を空位にしてでも、私達で唯先輩の意志を継ぐ。
すなわち唯先輩の意志を殺してしまわない為にも、当主は空位とする。
幸いムギ先輩を始め優秀な家臣も多くいるので、当主不在であっても困ることはないだろう。
というものであった。
「……そうね、それがいいかも知れないわ……」
思わぬ和が梓に賛同する。
「の、和ちゃん……?」
ムギとしては憂の悲しみを見ていただけに、憂を当主に唯の後を継いでもらえればと思っていた。
しかし、唯の仇を討ったのは梓であるし、まして和が賛同するのであれば、ムギとてその意を覆すことは難しい。
何より肝心の憂が……。
ムギは未だ精気の戻らぬ憂を見ながら、唯を失ったことの大きさを噛み締めた。


138 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/28(木) 02:01:03.05 ID:aJeKJIDqO
清洲での会議からしばらく後。
梓は京で大々的に唯の葬儀を執り行うなど、家中での発言力を徐々に高める。
もちろん梓の心中は唯の宿願を叶えることで占められてはいたのだが、その為には手段を選ばず、唯に近かった和ですら次第に政権中枢から遠ざけられていった。
このことに危惧を抱いたのは、本能寺の一件以降、ふさぎ込んでいた憂を少しでも慰めようと頻繁に岐阜の憂の元に通っていたムギであった。
憂は徐々に以前の元気を取戻しつつあったが、実質家中を掌握した梓に封(ふう)じられる。
自らを逃がすために死んだ姉のために何もできないことがますます憂を苦しめた。
「……憂ちゃん……」
そんな憂の様子を見かねたムギは、とうとう梓のもとに何とかならないかと向かった。

139 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/28(木) 02:03:27.77 ID:aJeKJIDqO
「お久しぶりです、ムギ先輩」
「ええ、久しぶりね、梓ちゃん」
久しぶりの対面だというのに、梓は書面からほとんど顔を上げなかった。
「……あのね、梓ちゃん……」
「はい?」
「憂ちゃんのことなんだけど……」
「憂がどうかしましたか?」
あまりにそっけない態度である。
「あのね、梓ちゃん……。梓ちゃんが唯ちゃんを慕っていたことは知ってるわ。それに唯ちゃんが果たせなかったことを今梓ちゃんが果たそうと頑張っていることも……。でもね……」
ムギはここで一旦言葉を区切る。
そして、梓が書面から顔を上げていることを見てから続けた。
「……今の梓ちゃんがしていることを見て、唯ちゃんはどう思うかしら?」
「……どういう、意味ですか?」
梓はにらむようにムギを見る。
「梓ちゃん。唯ちゃんが本当に成し遂げたかったことって、天下統一なのかしら? ううん、私はそうは思わない。唯ちゃんが本当に成し遂げたかったのは……」
「ムギ先輩に唯先輩の何が分かるんですかっ!?」
ムギの言葉を遮るように梓は立ち上がり、怒気をあらわにする。
そして。
「ムギ先輩、出て行ってください……。憂にも、唯先輩のことは私がちゃんと後を引き継ぐから余計なことはしないでと伝えてください」
と、淡々と告げ、ムギを一切その視界から外し、黙り込んでしまった。


142 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/28(木) 02:59:29.58 ID:aJeKJIDqO
北ノ庄へと帰ったムギは悩んでいた。
「……梓ちゃん……」
梓が唯の後を継ごうと、その小さな肩で耐えていることもわかる。
しかし。
「ねぇ、唯ちゃん。唯ちゃんならどうするかしら……」
ムギには梓のやり方が、唯のそれに反するものに思えた。
だが、梓の気持ちもわかる。
それが一層ムギの気持ちを暗いものにしていた。


「ムギ先輩を討ちます!」
とうとう梓は近江に向け、姫路より大軍を発する。
今や梓にとってムギは、唯の夢を。
唯と梓の宿願を邪魔する存在となっていた。
「ねぇ、梓ぁ。本当にいいの?」
純は梓に尋ねた。
「いいも何も、唯先輩の邪魔をするんだよ? いくらムギ先輩でも、それだけは許せない……。やってやるです!」
純への返答というよりは、自身の決意と言うべきだろうか。
梓は目前にまで迫ったその時を前に、一層引き締めた。


梓、近江へ向け兵を発す。
北ノ庄にいたムギの元にも、その報せはすぐに届いた。
「梓ちゃん……」
今の梓は以前の梓ではない。
唯の為しえなかった天下統一を実現するのが目的と化し、今やムギはおろか、誰の声すらも梓の耳には届かなくなっていた。
「……もし唯ちゃんがいたら」
ムギはそう思うも、それは詮無きこと。
こうなったら自分が梓を止めるしかない。
ムギはここに出兵を決意した。


143 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/28(木) 03:02:18.29 ID:aJeKJIDqO
決戦の地は賤ヶ岳。
両軍共ににらみ合う形で始まったが、焦れたムギが先に仕掛ける形で戦端が開かれる。
一時は賤ヶ岳砦を落とす勢いだったムギだったが、その後梓に押し返され、本拠北ノ庄への退却を余儀なくされる。
「負け……ね……」
北ノ庄を梓の軍勢に包囲されたムギは、ゆっくりと本丸天守へと昇った。
今や梓に敵う勢力はほとんど残っていないことだろう。
もはや梓が天下統一をするのは目前。
「ごめんね、憂ちゃん……。梓ちゃん、止められなかったわ」
ムギはそういうと、天守に火を放つ。
「唯ちゃん、私も唯ちゃんのところに行けるかしら?」
ムギは居住まいを正すと、静かに目を閉じた。


145 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/28(木) 03:19:18.18 ID:aJeKJIDqO
ムギが北ノ庄で討たれて後。
梓はいよいよ総仕上げへと入る。
大坂に巨大な城を築くと、自らが唯の後継者である旨を喧伝して回った。
しかし、ここで憂が立つ。
最も近くで姉である唯を支えてきた憂にとって、今の梓が目指すものは到底受け入れがたいものであったからだ。
憂、清洲に入る。
その報せを受けた梓は怒りをあらわにする。
「憂まで唯先輩の邪魔をするの!?」
憂にとって梓の目指すものが唯の目指したそれと違うと思ったように、梓にとっても憂が唯の邪魔をする存在に思えたのだ。


146 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/28(木) 03:21:31.44 ID:aJeKJIDqO
清洲に入った憂は、その後小牧山へと軍を進める。
清洲、そして小牧山。
唯が通った天下への階である。
「お姉ちゃん……」
あの日唯は、なぜ憂を逃がしたのか。
そしてなぜ自分は生き続けているのか。
憂はずっとその理由を問い続けてきた。
梓が唯の後を追うように天下への道を歩み始めたとき、憂はそれを応援しようと思った。
それがなぜ今こうして梓に立ちはだかっているのか。
憂にもその理由はわからない。
ただ、誰かが梓を止めなければならない。
「私はみんながゴロゴロして過ごす世の中を造りたいんだよ!」
「……唯、あなた、根っからのニート気質ね……」
以前に唯と和と、こんな会話をしたことを憂は思い出す。
ゴロゴロして過ごす世の中。
何とも唯らしい発想である。
だが、安心してゴロゴロできる世の中。
唯が生きた時代はそんな世とは程遠い、いつ寝首をかかれるかわからない時代であった。
「梓ちゃん……お姉ちゃんは安心してゴロゴロ過ごせる時代、そう言ったんだよ?」
憂は静かに呟く。
安心してゴロゴロ過ごせる世の中。
誰かの命令のもと、右向け右、左向け左をする世ではない。
誰もが自由に暮らせる世。
自分で自分のやりたいことが見つけられて、それに一生懸命になれる時代。
唯の希求したものは、単なる天下の統一ではない。
今梓が成し遂げようとする、画一化された天下の統一ではない。
「梓ちゃん、やっぱり……間違ってるよ」
憂は梓が大坂より発したとの報告を聞きながら、姉の意志を継ぐことを決意した。


148 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/28(木) 03:55:11.04 ID:aJeKJIDqO
大坂より総勢10万を超す大軍を発した梓は、憂の籠もる小牧山城攻略を目指し羽黒に着陣する。
小牧山はすぐそこにある。
「憂。憂は唯先輩にはなれないよ……」
梓はまるで唯が清洲から小牧山、そして岐阜へと城を移したように、清洲、小牧山へと兵を進める憂に向かってそう呟いた。
夜半、梓はいよいよ小牧山攻略を命ずる。
目指す小牧山には、唯とそっくりな憂の、平沢家の家紋が靡いている。
「唯先輩。唯先輩の為しえなかった天下の一統。今私が必ず成し遂げて見せます」


149 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/28(木) 03:57:20.14 ID:aJeKJIDqO
梓の攻撃は熾烈を極めた。
だが小牧山は落ちない。
唯の目指したものが眼前にある。
焦る梓をあざ笑うかのように、平沢家の家紋が勢いを増す。
「どうして!?」
戦っている相手は憂である。
唯ではない。
しかし今の梓には、その旗が唯のものであるかのように立ちふさがっていた。
「私、何か間違ってましたか?」
梓が尋ねるも、返事はない。
そんなはずはない。
そんなはずはない。
必至に否定するも、梓はざわめきたった。
天下統一は唯が語った言葉だ。
それなのに今。
あと一歩というところまで来た今。
唯がまるで行く手をふさぐかのように立ちふさがっている。
違う、あれは憂なのだ。
唯先輩じゃない。
梓は何度も何度も繰り返した。


151 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/28(木) 04:35:24.32 ID:aJeKJIDqO
しかし梓は小牧山で敗北する。
そこで一度軍勢を立て直すべく、長久手へと陣を移した。

「梓、大丈夫……?」
心配する純を他所に、梓はいよいよ決戦を意気込む。
「やってやるです!」
そう、あれは憂なのだ。
断じて唯先輩ではない。
唯先輩の夢を邪魔する存在なのだ。

「まさか、そんな……!?」
長久手を俯瞰する色金山に現れた姿を見て、梓は驚愕する。
「あれは……」
梓の目に映ったのは、唯の姿だった。
あり得ない!
絶対にあり得ない!!
唯先輩は本能寺で討たれたのだ。
ここにいるわけがない。
そう、あれは唯先輩の恰好をした憂なのだ。
なぜ憂が唯先輩の恰好をしているのか。
きっと私を動揺させるため。
そうに決まっている。
そうとしか考えられないっ!
梓は振り切るように大きく首を振る。
今や畿内を掌握し、周辺大名も梓に臣従を誓い始めつつある。
憂よりも多くの兵も集めた。
負けるはずがない。
負ける要素はどこにも見あたらない。
見あたらないはずなのだ。


152 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/28(木) 04:37:25.40 ID:aJeKJIDqO
だが――。
――もし唯先輩なら。
唯先輩が相手だとするなら……。
この戦、勝てるだろうか?
唯先輩のすごさは、常識が通用しないところにある。
きっとあの人は、何も見えていない。
見えていないからこそ、見えるのだ。
ただ一点だけを見つめ続けるからこそ、そこに見える何かがあるのだ。
今ならばなぜ澪先輩が謀反をおこしたのか、わかる気がした。
「唯先輩……。自分を見失いそうです……」
梓はここで初めて自らが今まで為してきたことを振り返ったのだった。


153 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/28(木) 04:39:29.38 ID:aJeKJIDqO
後に小牧・長久手の戦いと呼ばれるようになるこの合戦は梓の勝利に終わる。
だが、梓は勝ったとは思えなかった。
眼前には、血まみれになった憂の姿。
そう、唯先輩の恰好をした憂の姿。
「梓ちゃん……」
憂は最期の力を振り絞るように言った。
「……お姉ちゃん、何て言ってたか覚えてる?」
憂が何を言おうとしているのかわからない。
だから梓は首を横に振る。
「……あのね、お姉ちゃん、みんながゴロゴロ過ごせる世の中を、って言ってたんだよ」
ゴロゴロ過ごせる世の中?
ああ、唯先輩は確かにそう言っていた。
あの時は唯先輩の怠け癖がまた出たと聞き流していたが。
唯先輩はそう言っていたのだ。
「……梓ちゃん……」
「何、憂……?」
梓は血が付くのもかまわず、地べたに跪き憂を抱きかかえる。
「憂? 憂?」
梓の涙を受け、優しく微笑んだ憂は最期にこういった。
「大丈夫だよ、あずにゃんならきっとできるよ……。あとは任せたよ、あずにゃん」


154 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/28(木) 05:00:40.28 ID:aJeKJIDqO
この後。
梓は諸大名を従え、関白宣下を受ける。
ここに応仁の乱より続いた戦乱は終結を向かえた。
「梓、どうしたのゴロゴロばっかりして? 何か梓っぽくないよ?」
「あ、純?」
梓は畳から起き上がり。
「うん、何かねぇ。こうやってたら唯先輩の考えてたことがわかるかなぁって思ってさ」
「梓はホント憂のお姉ちゃんのことが好きだね」
と、純が茶化すので、
「そ、そんなことないもん!」
と応えはしたが、内心では唯のことを考えていた。
「唯先輩。私、とにかく一生懸命頑張ります!」
純が出て行くと梓は再び畳の上をゴロゴロしながら、力強くそう宣言するのだった。


156 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/28(木) 05:16:59.45 ID:aJeKJIDqO
「という夢を見ました」
「あ、あずにゃん?」
唯は今朝見たという夢を唐突に語り出した梓を呆然と見ていた。
「唯先輩っ!」
「は、はひ!?」
「ぜーーーーーーーったい本能寺には行かないでください!」
「え? 今のところ行く予定はないよ?」
「いいですか、絶対、ですよ!?」
「う、うん、わかったよ、あずにゃん」
一通り語り終えたのか、梓はひとまず安心といった表情を浮かべる。
しかし今度は唯の表情が変わる。
「あずにゃん、私を心配してくれるんだね!」
「うわっぷ!」
梓は急に抱きつかれ、大きな瞳をますます大きくする。
「べ、別に心配してるわけじゃありません! ただ……唯先輩がいなくなったら憂が心配するかなぁって……」
「いい子いい子」
「ちょ、唯先輩! 頭をなでなでしないでください!」
「ああん、あずにゃん。もっとあずにゃん分を補給させてよぉ」
「い、いい加減にしてください!」
「ちぇっ、あずにゃんのいけずぅ……」


157 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/28(木) 05:19:05.51 ID:aJeKJIDqO
一応これで終わりです。

鬱展開が嫌いな方は>>125から>>156をお好みで
>>14から>>34の間に入れてください。

気にされない方はどうぞそのまま。


長くなりましたが、ここまでお付きあいいただき改めてありがとうございました!


コメント

一人何役やらすんだ

唯=織田信長
憂=織田信行 織田信忠 織田信雄 徳川家康
梓=羽柴秀吉 石田三成
和=平手長政 丹羽長秀
律=足利義輝 足利義昭
澪=細川藤孝 明智光秀
紬=今川義元 柴田勝家
純=斎藤義竜 斎藤竜興 松永久秀 羽柴秀長 石田三成

こんなとこかな…?

う~ん

オレとしては、さわちゃんの本願寺顕如を出して欲しかった…

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