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天戯弥勒「グラナ、海の家を開くぞ」 グラナ「寝言は寝てから言え」前半

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 00:04:27.10 ID:L57rGArvP [1/61]
弥勒「この前は不覚を取ったが今回こそ上手く行く」

グラナ「お前が言ったって説得力が無いけどな」

弥勒「フ……心配するな。前回のは姉さんが無かったことにしてくれた」

グラナ「すげえな歴史改編。いや、お前の姉」

弥勒「姉さんに土下座して頼んだ甲斐があったというものだ」

グラナ(でもどうせまた失敗するんだろうなぁ)

弥勒「む。“また失敗するだろうな”と思っているだろう? 顔に描いてあるぞ」

グラナ「察してるなら止めてくれ。お前の気紛れで毎度貧乏くじを引かされるのは俺達なんだからな?」

弥勒「そこを何とかするのが星将たるお前らの役目だ。そうだろう?」

グラナ「ハァ……。言うだけ無駄か」

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 00:05:40.60 ID:L57rGArvP
PSYRENまとめwiki
http://www23.atwiki.jp/psy_ren/pages/1.html

PSYREN-サイレン- ジャンプ公式サイト
http://www.shonenjump.com/j/rensai/psyren/index.html

VOMIC
http://vomic.shueisha.co.jp/psyren/

小説版PSYREN-サイレン- another call1 紅蓮の聖誕 (JUMP j BOOKS)
http://j-books.shueisha.co.jp/book/book146.html

wiki
http://ja.wikipedia.org/wiki/PSYREN_-%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%AC%E3%83%B3-


コミックス派の人はバレ注意
こまけぇこたぁドラゴンウィングで


4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 00:07:50.94 ID:L57rGArvP
グラナ「……んで、今度は何をするんだ? まーたハローワークに行けばいいのか?」

弥勒「いや。今回はW.I.S.E総出で海の家を営業してもらう」

グラナ「は?」

弥勒「メンバーは自由に使っていいぞ」

グラナ「いや、ちょっと待てよ。どう考えてもシーズン過ぎてるだろ。お前一人でやれ」

弥勒「今年は残暑が厳しいからまだいける。都心では未だに熱帯夜の連続だ。
   それにW.I.S.E首領の俺が熱中症で倒れたらどうする? お前らが稼いで来い。というわけでグラナ、海の家を開くぞ」

グラナ「寝言は寝てから言え。ってかまたこの展開かよ……」

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 00:11:56.33 ID:L57rGArvP
グラナ「――ってなわけなんだがな」

シャイナ「またですか」

グラナ「またなんですよ」

遊坂「まーたはじまったか」

グラナ「まーたはじまったんだよ」

ジュナス「ま――」

グラナ「3回も同じこと言わせんな。もう分かってんだろ?」

ジュナス(自分からノったくせに……)

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 00:17:35.80 ID:L57rGArvP
カプリコ「ジュナスー」グイグイ

ジュナス「?」

カプリコ「うんめえーのいえってなあに?」

ジュナス「運命の家じゃない。海の家だ」

カプリコ「うみ? うみにいえをたてるの?」

ジュナス「ああ。そんなものだ。そんなもの……だよな?」チラッ

グラナ「……ジュナス、お前も海の家ってどんなのかよく分かってねえだろ」

ジュナス「グリゴリで生まれ育った俺が一般常識を知ってるわけが無いだろう?
     アンタの方が長く生きているし外の世界のことを良く知っている。いわば先輩だ。違うか?」

グラナ「都合のいいときだけ後輩ヅラしやがってこのヤロー……」

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 00:21:09.59 ID:L57rGArvP
遊坂「まあ大体の話は分かったけどよ。肝心のボスはどこに行ったんだ?」

グラナ「弥勒か? あいなら『俺にはやるべきことがある』とか言ってどっか行ったぜ」

ジュナス「……またパチンコに行ってるとかじゃあないだろうな?」

グラナ「その時はお前を星将総出でぶっ潰す。……と、予め釘を刺しておいたから大丈夫だろ、多分」

シャイナ「ホントに懲りてるんですかねえ、あの人」

グラナ「さあな。一応点呼とるぞー。ジュナスー」

ジュナス「いる」

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 00:25:40.94 ID:L57rGArvP
グラナ「03号ー」

シーン……

グラナ「んん? アイツはどうした? おい、誰か見なかったか?」キョロキョロ

ヴィーゴ「ウ、ウラヌスなら……過労で倒れたぞ。今頃ミスラがアストラル・ナーヴァ(仮)で看病してるはずだ」

グラナ「あァ? 何で倒れたんだよ。まさか熱中症になったとかか?」

ジュナス「このクソ暑い中でもマフラーをしてたからな。ありえる話だ」

ヴィーゴ「ち、違う。ここのところ一日中、弥勒がウラヌスをクーラー代わりにしていたんだ……。きっとその疲れで倒れたんだろう」

グラナ「またあのゴクツブシの糞シスコンのせいか。ホントにロクでもねえヤツだ」

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 00:33:24.98 ID:L57rGArvP
グラナ「俺、ジュナス、シャイナ、ヴィーゴ、カプリコ、遊坂……よし、今はこれで全員か」

シャイナ「……あれ? 誰か足りませんか?」

グラナ「ん? ああ。03号はぶっ倒れてミスラはその看病だってヴィーゴが言ってたろ。ちゃんと聞いておけよ」

シャイナ「いえ、そうじゃなくてですね……誰かもう一人誰か居たような気がするんですよ。星将って確か7人くらい居たような……?」

カプリコ「あなたつかれてるのよー、シャイナー」

シャイナ「……人をモルダーのように呼ばないでください」

ジュナス「忘れてしまうようなヤツならどうでもいいヤツってことだろ。気にするな」

グラナ「おーい、置いていくぞー! 早く来いー」

シャイナ(誰だっけかなー……うーん……)

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 00:38:15.27 ID:L57rGArvP
―海岸―

グラナ「ここで海の家を営業しろってさ」

シャイナ「……海水浴場にしては狭くないですか、ここ」

グラナ「弥勒の話じゃ、ここの海水浴場は向こうにある海水浴場より規模も小さくてな。人もあっちより少ないんだと」

ジュナス「何故あえて人の少ない方を選ぶんだ? 理解できんな」

グラナ「こういうのニッチ戦略だかって言うらしいぜ。
    客が少ない代わりに、競合店も少ないから上手くやれば客を独占できるんだとか」

ジュナス「なるほど」

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 00:39:41.96 ID:L57rGArvP
グラナ「……で、遊坂。あとはどうすればいいんだ?」ポリポリ

遊坂「? 普通に営業の準備をすればいいんじゃないのか? ってか何で急に俺に振るんだよ?」

グラナ「いや。何ていうかさ……お前の日焼け具合を見てると、こういうのに詳しいのかなって思って。何となくな」

遊坂「……もしかして俺がしょっちゅう海に来るような男だとでも思っていたのか?」

グラナ「あァ? お前、アウトドア派じゃねーのか? そんなに色黒なのに? どう見てもアウトドア派のワイルド系なんだが」

遊坂「これは日焼けして黒くなったんじゃない。俺は元々色黒だったし」

グラナ「なん……だと……」

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 00:42:26.01 ID:L57rGArvP
遊坂「つーか俺の仕事を考えてみろよ。自衛隊の基地の中で白衣ながら働いてる研究員だぜ?
   どう考えても外でモリモリ筋肉使うガテン系じゃなく、室内でシコシコ頭使うデスク系の仕事だろうが」

グラナ「……うかつだったぜ」

ジュナス「そうか。じゃあそれは薬で焼けて黒くなったのか。……想像すると笑える話だな」ププッ

遊坂「おい、何笑ってやがんだよ」

ジュナス「まるで酒焼けを起こしたアル中みたいだ」ククッ

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 00:47:09.42 ID:L57rGArvP
遊坂「一般常識は知らないって行ったクセに、何でアル中だのそんな無駄な言葉を知ってるんだよおい。
    しかもさっきから地味に嘲笑ってんじゃねえぞ、この真性ロリペドやろ――」

ビュッ!! カツッ カツッ

遊坂「す、すいませんでした……。そのナイフしまってください……」

ジュナス「……」クルクル スポッ

カプリコ「ジュナスつっよい!」

ヴィーゴ(ジュナスにロリコンやペドは禁句だな……)ゴクリ

遊坂(こんの糞ペド野郎が……! 覚えてやがれ……!!)

36 名前:※各届出をして受理されてないと営業してはいけません[] 投稿日:2010/09/28(火) 00:56:06.69 ID:L57rGArvP
シャイナ「あのー。まずは海の家を建てるための場所を確保しておくべきではないでしょうか?」

グラナ「……だな」

シャイナ「既にある店を強制撤去してもいいんでしょうけどね。何なら僕がここら一帯を掃除しましょうか?」

グラナ「しれっと物騒な事言ってんじゃねえ。先に言っておくがな、また前みたいな騒ぎは起こすなよ? 分かったな?」

シャイナ「あれ? 僕たち何か悪いことしましたっけ?」

グラナ「これだよこれ」

天戯弥勒「サイレン塔すら建てられん」

グラナ「お前ら↑で犯罪者になったりブタ箱行きになってただろ」

遊坂「あー……。そんなこともあったな。でも全部無かったことにされたんだろ? だったら気にすることは無いんじゃないのか?」

グラナ「バカヤロー、それじゃ同じ轍を踏むハメになるだろうが。歴史の強制力ナメんな」

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 00:59:04.85 ID:L57rGArvP
シャイナ「……あ! そうだ!! 思い出しました!!」

グラナ「? 何をだ?」

シャイナ「ドルキさんですよドルキさん! さっき僕が言ってた忘れてた人って!」

遊坂「ああ、そんなヤツも居たっけな。爆塵者の」

ヴィーゴ「い、今なにしてるんだろうな……アイツ……」

シャイナ「もしかしたらホームレスになっててゴミ漁りでもしてるかもしれませんね」ププッ

ジュナス「のたれ死ぬどころか、もう土に還って骨すら消えてればいいのにな」

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 01:05:36.79 ID:L57rGArvP
―工事現場―

作業員「社長ー!! 運搬終わりました!!」

ドルキ「よぉし休憩だお前ら! メシ食うぞー! 事務所に入れー!」

作業員一同「うーっす!!」

ドルキ「ちゃんと水分と塩分して、冷房で身体冷やしておけよ。昼過ぎからはもっと暑くなるからな」

作業員一同「うぃー」

ガチャ

後輩「ひゃー、涼しくて生き返りますね。クーラー最高♪」

ドルキ「ったく、今年の夏はどうなってやがんだかな。一向に涼しくなりやがらねえ」

後輩「でもこの暑さを吹っ飛ばすくらいに爆塵者は絶好調ッスね。これだとまた重機の出番がねえや」

ドルキ「当然だ。俺を誰だと思ってやがる。日本イクスプロジア工業の社長……ドルキ様だぜ?」

後輩「ユンボルも真っ青ッスね。まるでバル・クロウ……いや、ゲンバー大王みたいッス」

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 01:09:59.43 ID:L57rGArvP
後輩「でもドルキさん、あんま早く終わらせちゃうと相手側に日数と予算を削られちゃうんじゃ……」

ドルキ「その辺は上手く調整できるだろ。それより……勤務中はドルキさんじゃなく社長って呼べって言ってるだろ?」

後輩「そうでした。すいません社長、お弁当です」スッ

ドルキ「おう。……ってもまぁ、社員総数20人にも満たない小さな会社だからな。王様気取りになるにはまだ早えか」パカッ

後輩「そんなことは……。あ、麦茶もどうぞ」トポトポ

ドルキ「まあ、前の会社からたんまり賠償金をふんだくって金はある。会社の規模を広げようと思えばいつでも広げられるんだよ」モグモグ

後輩「そうなんですか? それなら今のうちに広げて一気に攻勢に出れば――」

ドルキ「フン。豊富な資金や優秀な社員らを抱えててもな、会社を一流にするためにはもう一つ……大事なモンがあるんだよ」

後輩「資金と社員以外の……大事なものですか?」

ドルキ「分からねえか? 社の実績と信頼だ」

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 01:18:40.61 ID:L57rGArvP
ドルキ「俺がこの会社……“日本イクスプロジア工業”を立ち上げてまだ日が浅い。
    いかにウチの会社に潤沢な資本金があろうとも、いかにウチの会社に優秀な社員が揃っていたとしても、だ。
    会社の規模に実績と信頼が伴わないんじゃ、先は見えてこねーんだよ」ゴクゴク

後輩「でも、ドルキさんの爆塵者を見れば誰だって――」

ドルキ「見れば、な。だがお前は名前も知らないような、ちっぽけな企業の仕事を逐一見物に来るか?」

後輩「それは……」

ドルキ「実績や信頼が無い曖昧な企業に大きな事業を任せると思うか?」

後輩「……任せられるわけ無いッスね」

ドルキ「だろう? 実績も信頼もない俺達が評価されるためにはな、例え小さな依頼でも完璧な仕事を積み重ねていく必要があるんだよ」

後輩「まさかドルキさんはそこまで見据えて……!?」

ドルキ「お前らにはクソつまらねえ小さな仕事ばかりに見えるかもしれねえがな。これも次に繋げるための大事な仕事だ」

後輩「……! ナマ言ってすいませんでした! ドルキさん、俺……俺! 感動したっス!」ジーン

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 01:22:12.29 ID:L57rGArvP
ドルキ「フ……。全てはここから始まるんだからな。お前らにも期待してるぞ?」スッ

後輩「はい!」

ドルキ「今はまだ創世記(ベレーシス)。初期段階に過ぎない。そのうち綺麗事だけじゃ済まされない仕事も来るようになるだろう。
    だがそれは避けては通れない道だ。そうやって生き残った企業だけがのし上がれる世界だからな……」

後輩「……」ゴクリ

ボムッ!

ドルキ「そしてゆくゆくは日本一、いや! 世界一の解体企業に登り詰めてやるぜ!!」スパー

後輩「地獄の底までお供するっス!! ドルキさん!!」

ドルキ「ククク……! 今日はいい天気だぜ……!!」

後輩(そしていずれは俺がナンバー2の座に!!)ワクワク

ドルキ(でも何か大事なことを忘れてる気がするんだよなぁ……。何だっけか?)

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 01:38:09.47 ID:L57rGArvP
―海岸―

グラナ「まあ、ドルキのことはひとまず置いといて。まずはシャイナの言うとおり海の家を建てる場所の確保しないと」

シャイナ「そう言うと思って、確保作業は始めておきましたよ?」ギギギギ……

グラナ「あァ?」

ギギギ……

グラナ「んん……? 何だ? このギギギって音――」

ギギギギギ!!

シャイナ「ここ狭いですし、一旦空間を壊して広げちゃいましょう。海岸のゴミは全部次元の狭間に放り込んじゃえばいいんです」ニコッ

バキン!!

グラナ「」

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 01:40:38.95 ID:L57rGArvP
シャイナ「このまま放っておけばすぐに辺り一体が全部綺麗になりま――」

ポカッ

シャイナ「いたッ! な、何で叩くんですかグラナさん!?」

グラナ「さっき問題起こすなって言ったばかりだろうが! さっさと戻せ!! お前のそれ危ねえだろ!!」

シャイナ「やだなぁ、グラナさん。ほんの冗談ですよ。冗談」

グラナ「冗談で済まされるか! 下手したら俺らまで巻き込まれるだろうがよ!」

シャイナ「……ちっ」

シュウン

グラナ「……え? 今の舌打ちなに? 俺が悪いの? ねえ、シャイナ君、俺なんか悪いこと言った? 俺のせいなの? ねえ?」ネチネチ

ジュナス(うわぁ……。めんどくさい人だなぁ……)

83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 18:37:58.94 ID:L57rGArvP
遊坂「海の家はアンタがテレキネシスで組上げればいいんじゃないか? すげえ立派なヤツをよ」

グラナ「あー、それやっちゃうとなァ。面倒な場面になったら“全部お前がやれ”って言われそうで……」

遊坂「? 誰にだよ?」

グラナ「お前らにだ。……ま、今回は俺が組んでおくわ」パチッ


ゴゴゴゴゴゴ……!! ガゴン!! ガランガガガ……!!


グラナ「ふぅ。建築完了」

遊坂「早ッ!?」

ヴィーゴ「だが砂浜に似合わない酷いデザインだ……。これじゃあまるで神経制御塔みたいで最低だ」

グラナ「奇をてらってデザイナーズ風を意識してみたんだけどダメか。ちょっと組み直すわ」パチッ

ゴゴゴゴゴ……ガコンガコン……

グラナ「まぁこんなもんか」キュッキュッ

ジュナス「一瞬で組み直すなんて相変わらずとんでもねえテレキネシスだな」

84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 18:39:32.73 ID:L57rGArvP
グラナ「へへへ。こんなのだったら3秒もあれば1軒組み上がるぜ?」カキカキ

ヴィーゴ「建材はどこから持ってきたんだ……? 周りには何も無かったんじゃ――」

グラナ「こまけぇこたぁ日輪天墜!」ユラァッ

キュオオオオオオオ……

遊坂「! やめろ!! 何か空が暗くなってきてる!!」

グラナ「冗談だよ」カキカキ

シャイナ(さっきは僕の冗談に対してゲンコツで応えたくせに……。自分勝手な人だなぁ)イラッ

86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 18:44:17.23 ID:L57rGArvP
グラナ「~♪」キュッキュッ

ヴィーゴ「? さっきから何を書いてるんだ?」

グラナ「店の看板だよ。これが無いとな。……よっと、これでよし」パンパン

キラン

グラナ「海の家“わいず”完成だ!」

カプリコ「おー!」パチパチ

遊坂「へえ。そこそこ良い店構えじゃねえか」

グラナ「中に入ってみな」

87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 18:46:44.98 ID:L57rGArvP
ガチャ

遊坂「おっ、店内もなかなか洒落てて小奇麗じゃん」

ジュナス「テーブル、電気、ガス、水道、トイレ、テレビ、更衣室、ロッカー、シャワールーム……かなり充実してるな」

グラナ「あんま大きい声じゃ言えないけどな……。実は電気とかは他所から引っ張ってきてんだよ」

ヴィーゴ「だが、このテレビとかはどこから……?」

グラナ「んん? ああ。近くにあるの引き寄せて借りただけだ」

ジュナス「……バレたら本末転倒じゃないか?」

グラナ「まぁ、大丈夫だろ多分。あくまで借りてるだけだし」

シャイナ(自分が問題行動をするのはお構いなしですか。そうですか)イライラ

91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 18:55:20.34 ID:L57rGArvP
コンコン

遊坂「ん? おい、誰か来たみたいだぜ」

ガチャ

グラナ「悪いなお客さん。この店はまだオープンしてな――」

ザッ

弥勒「ほう……。これはグラナが組んだのか?」

グラナ「何だ、弥勒かよ」

弥勒「何だとは挨拶だな。せっかくいいものを作って持ってきてやったというのに」

グラナ「あァ? 何持ってきたんだ?」

弥勒「フ……。これだ」スッ

ジュナス「これは……。メニュー表か」

ペラッ

93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 18:58:18.30 ID:L57rGArvP
グラナ「カキ氷、各種ソフトドリンク、アルコール飲料、アイスクリーム……ヤキソバ、タコヤキ、ヤキトリ……ほうほう」

遊坂「オーソドックスに決めてきたな。バリエーションも豊富だし、海の家にしては値段も良心的だな」

シャイナ「でも材料の仕入れはどうするんですか? このメニュー数だとスーパーの転売だけじゃ赤字になっちゃいますよ?
     値段も低めに設定してるみたいですし……これじゃ相当な数を売らないと利益が」

弥勒「そこでお前と遊坂を借りに来た。これから俺達で卸業者の連中と直接交渉しに行く」

遊坂「え? 俺も? 一体何をするってんだ?」

弥勒「それは移動しながら話そう。シャイナと遊坂を借りていっても構わないな、グラナ?」

グラナ「ああ。もってけ」

94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 19:02:32.46 ID:L57rGArvP
弥勒「では……お前たちにはこっちを頼もうか」ガシッ

ドサッ

グラナ「あン? こりゃあ……ビラか?」

弥勒「明日のオープンに合わせて俺が作った。これを今日中に近隣区域の住宅全てに配ってくれ。けっこうな数だがお前らならできるだろう」

グラナ「お、おう……」

弥勒「シャイナ、瞬間移動を頼む」

シャイナ「はい」

キュウン シュウン

95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 19:14:55.49 ID:L57rGArvP
グラナ「……」

ジュナス「? どうした? 何をそんなに目を丸くしている」

グラナ「弥勒ってさ、あんなにしっかり者だったっけかなぁと思ってよ……。随分と仕事熱心になってなかったか?」

ジュナス「いい加減ヤツも心を入れ替えたんだろう。いつも口先だけで足を引っ張るしか能の無い男だったからな」

グラナ「! そうか……!! やっと目が覚めて真人間、いや、真サイキッカーになったのか……。くうっ、目頭が熱くなるぜ……!!」ジーン

ヴィーゴ「お、おい。グラナ、ジュナス。ちょっといいか?」

グラナ「何だよヴィーゴ、人が感動してるとこに水差すんじゃ……」

ヴィーゴ「いつの間にかカプリコが居なくなってる」

ダダッ ガチャッ

96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 19:18:56.83 ID:L57rGArvP
グラナ「何だそんなことか。別に大丈夫だろ」

ヴィーゴ「? どうしてそんな事が言える? カプリコ一人だけじゃあ……」

グラナ「見ろよ、さっきまでお前の横に突っ立ってた“保護者”も居なくなってるだろ?」

ヴィーゴ「は、早いなジュナス……。もう探しに行ったのか」

グラナ「そういうことだ。ちょっとしたらすぐに見つけて――」

ガチャ

カプリコ「うーにー?」

グラナ「え? あれ!? カプリコ、お前……外に行ってたんじゃなかったのか?」

カプリコ「ほえ? 違うよー。おべんじょ見てただけ」

ヴィーゴ「……」

グラナ「……まあ、そのうち帰ってくるだろ」

97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 19:23:32.29 ID:L57rGArvP
ジュナス「額に傷跡のある黒髪の女の子を見なかったか?」

サーファーA「え? いや、俺は見てないなぁ。お前は?」

サーファーB「さあねえ。でも見覚えが無いってことは、こっちには来てないんじゃないかな」

ジュナス「……そうか」

ダッ

サーファーA「ちっ、今日の波はショボイのしかねえなぁ」

サーファーB「もうちょっとやってデカいのが来なかったら帰ろうぜ」

サーファーA「だな。もうこう……ドッパーって波こねえかなあ」

100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 19:34:08.36 ID:L57rGArvP
ジュナス「おい。額に傷跡のある黒髪の女の子を見なかったか?」

海の家店長「女の子? さて……見たような見てないような」

ジュナス「! 本当か、どこで見た?」

海の家店長「うーん、あっちの方に歩いて行ったかなぁ。それよりお兄さん、お腹減ってない? 焼きもろこしどう?」

ジュナス「……!」ダッ


海の家店員「今の人はあっちにできた出店の関係者みたいですよ。誰か探してたみたいですが」

海の家店長「ああ。だから適当なこと言ったんだよ。ヘッヘッヘ。ざまあみやがれ」

海の家店員「でもあっちの店、何か急にできたみたいでしたが……」

海の家店長「んなワケねえだろ。さっさと持ち場に戻れ」

101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 19:36:39.08 ID:L57rGArvP
ジュナス「さっきのヤツの話だとこの辺りに理子が……」

ザッパーン!!

ジュナス「! 波が激しい! 加えてこの足場の悪さか……。理子! すぐに助ける!!」バッ

ドッポーン

ジュナス(理子! どこだ理子……!!)ザバザバ

ゴボゴボ……

ジュナス(クッ、水中では思うように動けん……こうなったら!!)ザパッ

タッ

103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 19:39:10.64 ID:L57rGArvP
グラナ「ひいふうみい……何枚あるんだよこのビラ。ジュナスが戻ったら早いとこ配りに行かないと――」

ヴィーゴ「な、なあグラナ。あれを見てくれ」グイグイ

グラナ「ん? どうした? サメでも見つけたか?」

ヴィーゴ「違う。ジュナスだ……。ほら、あそこにいる」

グラナ「あ……ジュナスだな。あんな高く跳んで何してんだアイツ?」


ジュナス「辺り一体の海水を全部退けてしまえば……!!」

ヴオン!!

グラナ(? 何だ? あいつの手に光が……?)

104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 19:40:25.88 ID:L57rGArvP
ジュナス「神刃最大出力!!」ドッ……!!

ガツッ!! ズガガガガガガガガ!!!

グラナ「な……ッ!」

ドッパァァァァァァァァァァァン!!!!

グラナ「何やってんだアイツはぁぁぁぁ!?」

ズドドドドドドド!!

ジュナス「理子! この辺には居ないのか!? チイッ!!」バッ!

106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 19:45:52.69 ID:L57rGArvP
ズゴゴゴゴゴゴゴゴ……

サーファーA「ん……? わ! わわわわわ!!」ザプーン

サーファーB「え!? 何だこの高波がごああああ!!」ガボガボガボ……


グラナ「あんのバカヤロウが! 何を血迷ってやがるんだ!?」


海の家店員「うわあああああ! つ、津波だああああ!!!」

海の家店長「お、おい待て逃げるな! 店が流されてダメになったらオーナーに殺されるぞ! 店を守――」ザッパーン


ヴィーゴ「お、おい! 波がこっちにも来るぞ……!!」

ドドドドドド……

107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 19:49:28.08 ID:L57rGArvP
グラナ「俺が波を割って戻す!! ヴィーゴ! お前は家と同化して踏ん張れ!! 流されるなよ!!」

ヴィーゴ「分かった」ゴポッ

グラナ「カプリコ! 柱か何かにしっかりつかまってろ!!」

カプリコ「ほーい」

ガチャッ

グラナ「ったく、あのヤロー……。とんでもないことしてくれたなァ」

ゴゴゴゴゴ……!!

グラナ「かあァァッ!!」ゴオッ

ザパッ!! ゴゴゴゴゴゴ……ドッパーン!!

108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 19:53:41.19 ID:L57rGArvP
パシャパシャパシャ……

グラナ「ふう……ッ」

ヴィーゴ「や、やった……のか?」

カプリコ「グラナすっごい!!」パチパチパチ

グラナ「……ヴィーゴ、お前はカプリコ連れて外に出てろ。俺はちょっくらここにジュナス連れてくるからよ。
    あの野郎、カプリコの事となると見境がねえ。一度厳しく説教してやるわ」

ズプププ……

ヴィーゴ「わ、分かった。あっちの方に磯溜まりがあるからな。あっちに行こうかカプリコ」

カプリコ「うん」

109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 20:00:36.03 ID:L57rGArvP
ジュナス「理子……! 理子……!!」

ダッ

グラナ「ジュナス! お前何やってんだよ!?」

ジュナス「グラナ……!! 理子がまだ見つからない!! お前とヴィーゴも早く探せ!! まさか……溺れたとかじゃあ……!!」ブンブン

スパッ シュピッ

グラナ「ちょっ! 神刃を振り回すな!! 落ち着けって! 俺の話を聞け! カプリコはもう見つけてるっての!!」

ジュナス「何!? どこだ!? 理子はどこだ!?」

グラナ「カプリコはな、外に出てたんじゃなく最初から海の家の中に居たんだよ。だから――」

ジュナス「ヴィーゴめ……!! よくも俺を騙しやがって……!!」ダッダッダッ

グラナ「……こりゃあ、説教だけじゃどうしようもねえほど重傷だな。俺の手には負えねえ、末期だ」

111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 20:10:27.58 ID:L57rGArvP
―磯溜まり―


ダッダッダッダッ

ジュナス「! 理子! 無事か!?」

ヴィーゴ「ジュ、ジュナス……!!」ビクッ

ジュナス「ヴィーゴ!! キサマさえ嘘を言わなければ俺は……!!」ギリッ

ヴィーゴ「う、嘘はついていない! ただ勘違いしただけだ!!」

カプリコ「ジュナスジュナスー、おもしろいの見つけたよー」

ヴィーゴ「それよりカプリコが呼んでるぞ、ほら」

118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 21:38:27.29 ID:L57rGArvP
ジュナス「何か面白いものを見つけたのか、理子?」

カプリコ「うん! ほいこれ」スッ

ジュナス「……?」チラッ

ナマコ「ウニョウニョ」

ウミウシ「ウネウネ」

ジュナス「う……ッ!」ゾワッ

119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 21:39:41.18 ID:L57rGArvP
カプリコ「うにうに見つけたから、持ちかえっていいよね?」

ジュナス(!? このゲテモノどもを持ち帰るだと!? 馬鹿な!? 飼う気なのか!?)

カプリコ「こっちはギーガー。ギガちゃんって呼ぶの」

ジュナス「……!!」ワナワナ

カプリコ「でね、こっちはね。んーと……マグマグ! マグマグにする!」キャッキャッ

ジュナス「理子、後ろの磯だまりにも面白そうなのがいっぱい居るぞ。ほら」

カプリコ「ほえ?」クルッ

ジュナス「……」スウッ ピッ! ピピッ!!

ブチュッ ズバシュッ

ジュナス(死ね! 死に絶えろ!! ゲテモノどもが!!)

120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 21:40:43.94 ID:L57rGArvP
ヴィーゴ「……」ジー

ジュナス「……」ギロッ

ヴィーゴ「……!」ビクッ

ジュナス(チ・ク・っ・た・ら)スッスッ

ヴィーゴ「……?」

ジュナス(殺・す・ぞ)ピッピッ

ヴィーゴ「……!!」コクコク

カプリコ「? 何もいないよジュナスー」クルッ

122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 21:42:57.94 ID:L57rGArvP
ジュナス「俺の気のせいだったな。すまない」

カプリコ「……? あれ? ギーガーとマグマグもいなくなっちった」

ジュナス「海に帰ったんだろう。生き物は自然のまま生かしておく方がいい。
     他人に閉じ込められて飼われる命など……辛く、苦しいものだ。……お前なら分かるだろう?」

カプリコ「うーにー……」ショボーン

ジュナス(あんなグロいナマモノどもを理子に飼わせるわけにはいかんからな)

ヴィーゴ(ひ、酷い過保護っぷりだ。これじゃあ10年後のカプリコがあまりに不憫だ……!!)

123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 21:46:19.79 ID:L57rGArvP
ガチャ

カプリコ「ただいまー!」

グラナ「……」

ジュナス「? どうした。えらく不機嫌そうだな?」

グラナ「……ジュナスよお、いくら何でもカプリコに対して過保護すぎるぞ?」

ジュナス「何を言う。友達一号として当然の務めだ」

カプリコ「かほごってなーにー?」

ジュナス「蚊を保護することだ」

グラナ「カプリコにウソ知識教えんなコラ。それよりもこっから外を見てみろや」

ジュナス「外……?」チラッ

125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 21:49:06.48 ID:L57rGArvP
ジュナス「まるで台風が通ったような惨状だな。何があった?」

グラナ「……さっきお前が神刃で暴れたせいだろ」ムスッ

ヴィーゴ「パ、パトカーや救急車まで来てたぞ。どうするんだ」

ジュナス「後悔はしていないし反省もしていない。そして俺のせいでもない。巻き込まれたヤツらの運が悪いだけだ」キリッ

グラナ「このヤロー……!! あれだけ暴れて反省のひとつも無しか……。いい加減にしねえとなァ……!!」ビキビキ

ゴゴゴゴゴゴゴ!! グラグラグラ……ッ

ジュナス「!!」

ヴィーゴ「お、落ち着くんだグラナ……! お前が暴れたらここが無くなる!」

126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 21:53:16.68 ID:L57rGArvP
グラナ「……! そうだったな。俺としたことがついカッとなっちまったぜ」

ジュナス「今は過ぎたことをネチネチ語るよりも、ビラ配りを優先するべきだと思うが……」

グラナ「」ブチッ

ガシッ!!

ヴィーゴ「グ、グラナ! 待て! ジュナスを殴っても何も解決しない!!」ググググ……

グラナ「……あ、ああ。そうだったな」

128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 21:56:29.03 ID:L57rGArvP
カプリコ「ビラビラくばりー」

ジュナス「理子、人前で卑猥な言葉を使うもんじゃない」

カプリコ「うーにー? ひわいってなに? ビラビラ?」

ジュナス「……何でもない。さあ、行くぞ。モタモタしてると配り終わる前に日が暮れてしまうぞ」

カプリコ「ほーい」

ジュナス「とりあえずさっきの津波で流されて、その辺で伸びてるヤツらに貼っておくか」ペタッ

グラナ(自分が原因で津波起こしたことを理解してやがる!! こいつッ!!)

ヴィーゴ(前途多難は必至だな……)

――――
――

海の家店主「うぐぐぐ……! 海の家……わいず……め……ッ!」ガクッ

135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 23:34:24.47 ID:L57rGArvP
―海沿いのマンション―


グラナ「んじゃあ、まずはここにしようか。俺らの店から近場にあるし世帯数も多そうだし」

ジュナス「……?」

グラナ「? どうした?」

ジュナス「おかしい。大体のマンションには入ってすぐのところに集合型の郵便受けがあるはずなんだが……どこにも見当たらない」

グラナ「犯罪や迷惑行為予防のためにエントランスの中にポストが置かれてたりするタイプもあるんだぞ?
    都心や近郊型のマンションにはけっこう多いけどな」

ジュナス「……ドアも開かない。どうなってるんだ」ガシガシ

グラナ「エントランスもオートロック付きか」

ヴィーゴ「い、入り口前に管理人の詰め所があるはずだ……。そこで話をつければ……」

グラナ「なるほど」

138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 23:38:38.04 ID:L57rGArvP
グラナ「おーい」コンコン

ガラッ

蝉谷「はいはい、何か用け?」

グラナ「これをそこのポストに配りたいんだけど……。ここ開けてくれねえか?」

蝉谷「ああ? 何やねんこれ?」ピラッ

グラナ「チラシだよ」

蝉谷「……あー、ビラはアカンなぁ。そういうのアカンのよココ」

グラナ「いいじゃねえか。これだって郵便物みたいなもんだろ?」

蝉谷「んなアホなことしたらワシの責任になるからアカンて」

グラナ「そこをなんとか」

蝉谷「だからアカンて。これでワイが首になったらどないすんねん? あんちゃんが面倒みてくれんのか?」

グラナ「それは……」

139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 23:40:53.88 ID:L57rGArvP
グラナ「ダメだったわ。仕方ないから別のとこ探して――」

ジュナス「……」ヴオン

ポカッ

ジュナス「いたッ」

グラナ「おいコラ。今、ドアを壊すか管理人を脅して開けさせようとか考えてたろ?」

ジュナス「何故叩く。根拠の無い言いがかりは止せ」ヒリヒリ

140 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 23:42:16.71 ID:L57rGArvP
グラナ「じゃあなんで神刃を発動させてんだ?」

ヴヴヴヴヴ……

ジュナス「これは……。……手が滑ったんだ」

グラナ「手が滑って発動するバーストってどんなのだよ。しかも両手で発動してんじゃねえか」

ジュナス「実力行使で何か問題でも?」

グラナ「大ありだよ!! すぐそこの浜にも警察が居ただろうが! 余計に騒ぎがでかくなるだろ!!
    つーか最初に騒ぎは起こすなって言っただろ!? さっきお前が起こした津波だって本当ならなぁ――」

ジュナス「……ちっ」

シュウン

グラナ「……え? 今の舌打ちなに? 俺が悪いの? ねえ、ジュナス君。俺なんか悪いこと言った? 俺のせいなの? ねえ?」ネチネチ

ジュナス(いちいちめんどくさい奴だな……)

142 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 23:45:30.00 ID:L57rGArvP
ヴィーゴ「こういうときは俺の出番だな。任せろ」ズズズ……

グラナ「え? ちょっと待て。おい、ヴィーゴ」

ヴィーゴ「ビラを持って……よし。じゃ、じゃあ……行ってくる」

グラナ「待てって。俺の話を聞いて――」

トプン

カプリコ「いっちゃったー」

ジュナス「? うずくまってどうした? 具合でも悪いのか?」

グラナ(ぐぐぐ……!! 急に胃が痛くなってきやがった……!)キリキリ

144 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 23:49:11.76 ID:L57rGArvP
ヴィーゴ(満たされぬポスト。良質なビラであればあるほど配布したときに商業的価値が生まれる……。意味の有る配達は久しぶりだ)

ズズズ……

ヴィーゴ「潜航師・傀儡」ギュアッ

ガゴンガゴンガゴンガゴン……

蝉谷「んー?」

ガゴッ バコン

蝉谷「? 何の音――」チラッ

バコンバコン……

蝉谷「!? う!! うわあああああ!! 手が!! ポストから手があああああああ!!!」ガタッ

ガシャーン!!

蝉谷「ひい! ひいいい!! おばけ!! おばけえええええ!!!」ダッダッダッ

ジュナス「……ヴィーゴが何かやらかしたみたいだな」

グラナ「あああああああ!!! うがああああああああああ!!!」キリキリキリ……

145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 23:54:14.78 ID:L57rGArvP
ズズズズズ……

ヴィーゴ「た、ただいま」

グラナ「……何を……やらかして……きたんだ……?」

ヴィーゴ「ビ、ビラを……全部のポストに入れてきただけ……。何でそんな死んだ魚のような目で睨むんだ……?」トポン

ジュナス「嘘をつけ。さっき管理人が慌てて外に逃げてきたぞ」

ヴィーゴ「嘘じゃない。マンションと同化して……ポストの近くで腕を生やしてビラを入れただけ。
     それを見られて驚かれた……ただそれだけ……」

グラナ「……え? じゃあ本当にもうここ全部に配ったのか?」

ヴィーゴ「お、俺は嘘をつかない。信じろ」

グラナ「おおおお! よくやったヴィーゴ!! 俺はてっきりお前が勝手に行動して問題を起こしたんじゃないかと心配してたんだが」

ヴィーゴ「誰も傷つけてないし殺してない。大丈夫……。我慢した」

グラナ「そうか!! 疑ってすまん。お前はジュナスより役に立つ男だ!!」

ジュナス「……何故俺を比較対象にする。元は管理人と上手く交渉できなかったお前の失態だろう」

146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/28(火) 23:59:14.31 ID:L57rGArvP [61/61]
グラナ「カプリコ、お前もヴィーゴを褒めてやれ。ジュナスよりカッコいい、ってな」

カプリコ「ヴィーゴかっこいい! ジュナスよりかっこいい!」

ジュナス「理子……!?」ガーン

ヴィーゴ「くく……。ジュナスに勝った……」ニヤニヤ

ジュナス「……」ズーン

グラナ「よし。色々とスッキリしたことだしさっさとズラかるとするか。さっきのオッサンが警察を呼びに行ったかも知れねえし」

ヴィーゴ「お、俺は警官が嫌いだ」

グラナ「そういやお前は猟奇殺人で指名手配されてる容疑者だったもんな」

149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 00:05:12.01 ID:bI/hzVw4P [1/50]
―某社応接室―

担当者「うーん、いくら何でもこの数字じゃちょっと……」

弥勒「そこを何とか」

担当者「いやいや、熱意は十分伝わりましたけどね。ウチも商売なんで」

弥勒「……」チラッ

遊坂「……」コクッ

担当者「これじゃウチが完全に赤字なんですよ」

遊坂(ボスが気を引いてる今のうちに……)ブスッ ジュワワワワ……

モモモモ……

担当者「ん? あ、あれ? 何か変な匂いがしませんか?」クンクン

弥勒「いいえ。特には」

担当者「お酒のような匂いが」クンクン

弥勒「僕は感じませんね。それよりこっちの――」ニヤニヤ

150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 00:06:37.45 ID:bI/hzVw4P [2/50]
弥勒「――もう一度考え直してもらえますか?」

担当者「う、う~ん? いいよ~……。ヒック……」トローン

弥勒「! そうですか、ではこちらの書面にサインをお願いします」

担当者「んん~? ああ。ここね……ふぁーい……」カリカリ……

遊坂(酔わせて契約書を書かせるなんて考えたな)ヒソヒソ

弥勒(だがまだ終わりではない。工場に直行するようシャイナに伝えておけ)ヒソヒソ

152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 00:09:01.49 ID:bI/hzVw4P [3/50]
――――
――

ガゴン

グラナ「ふぅ、これでビラは全部配り終わったな」

カプリコ「ちかれたー」クテー

ジュナス「……! おんぶしてやろうか? 遠慮はするな」

カプリコ「うん!」

ヴィーゴ「じゃ、じゃあ俺も。だっこでいい……」

ジュナス「お前はアスファルトと同化して漂ってろ。俺に近寄るな」シッシッ

153 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 00:15:13.49 ID:bI/hzVw4P [4/50]
グラナ「さて。こっちの仕事は終わったこったし、一度弥勒に連絡してみて――」

prrrr……

グラナ「っと、ウワサをすれば弥勒……ってな」

ピッ

弥勒『グラナ、そっちの首尾はどうなった?』

グラナ「ヴィーゴが頑張ってくれたおかげでな。もう全部配り終わったよ」

弥勒『ご苦労。俺が予定していたよりも早く終わったな』

グラナ「早いつってももうすぐ夕方だぞ。で、あとは何をすればいい?」

弥勒『しばらく休憩しててくれ。こっちが片付いたらまた折り返し連絡を――』

グラナ「わかった」

ピッ

155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 00:19:33.53 ID:bI/hzVw4P [5/50]
グラナ「弥勒の方はもう少し時間かかるらしい。あっちから連絡来るまで俺らはしばらく休憩だとよ」

カプリコ「きゅうけー!」

ヴィーゴ「の、喉が渇いたな……。ファミレスか喫茶店にでもいこう……」

ジュナス「喫茶店はダメだ。理子に副流煙を吸わせたくない」

ヴィーゴ「そんなに気にすることは――」

ジュナス「たばこの煙は主流煙より副流煙の方が有害物質が多く含まれている。
     発癌性の高いジメチルニトロスワミンは主流煙が5.3から43ナノグラムであるのに対して副流煙では680から823ナノグラム。
     キノリンの副流煙にいたっては主流煙の11倍、およそ1万8千ナノグラム含まれている。
     つまり、実際は吸う人間よりも周りの人間の方が害は大きい。……理子をそんな危険な環境に晒す気か?」ギロリ

ヴィーゴ「わ、分かった。分かったから落ち着け。神刃を俺に向けるな」

グラナ「んじゃ、ファミレスで一休みと行きますか」

159 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 00:33:01.23 ID:bI/hzVw4P [6/50]
―ファミレス―

カラン

店員「いらっしゃいませー、4名様ですか?」

ジュナス「禁煙席に案内してくれ。子供がいるんだ。席が無いのであれば帰る」

店員「当店は終日、全席禁煙ですのでご安心ください。こちらへどうぞー」

ジュナス「……良い店だ」

グラナ「一つ気付いたことがあるんだが……W.I.S.Eは喫煙者が少ないよな」

ヴィーゴ「たしかに」

ジュナス「あんなもの百害あって一利なしだ。W.I.S.E内でも全面禁煙を推進するべきだ。今すぐにでも」

カプリコ「ジュナスはタバコきらいなの?」

ジュナス「ああ。俺はタバコを吸ってる人間は総じてクズだ。その証拠にタバコを吸う人間はドルキやあのヤクザのようにロクな連中が――」クドクド

グラナ(よっぽど喫煙家が嫌いなんだなぁ……こいつ……)

160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 00:34:54.39 ID:bI/hzVw4P [7/50]


   レジ・トイレ

    グ ヴ 
 通 ┏━━━┓ 窓
 路 ┗━━━┛ 側
    ジ カ

    壁壁壁


ジュナス「席順は↑だ。異論は認めん」

グラナ「はいはいっと……。ヴィーゴ、ちょいと詰めてくれ」

ヴィーゴ「指をか?」

グラナ「ボケなくていいからさっさと奥に詰めろや」

161 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 00:37:00.91 ID:bI/hzVw4P [8/50]
店員「ご注文はお決まりでしょうか?」

カプリコ「おむらいすー!」

ヴィーゴ「コ、コーヒーがいい」

グラナ「俺はアイスティーにするわ。ガムシロップとミルクもつけてくれ。ジュナス、お前は?」

ジュナス「――フェ」ボソッ

グラナ「あァ? 何だって? カフェか?」

ジュナス「……チョコレートパフェ」

グラナ「!?」

164 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 01:00:21.55 ID:bI/hzVw4P [9/50]
グラナ「……え? えぇ?」

ジュナス「俺はただ食べたいものを注文しただけだ。何がおかしい?」

ヴィーゴ「……」プルプル

グラナ「いや、なんていうかさ。ちょっと意外で驚いたわ」

ヴィーゴ「……プッ」

ジュナス「! ヴィーゴ。今笑ったな?」ビキビキ

ヴィーゴ「わ、笑ってない。……くくっ」

ジュナス「……いい度胸だ」ギロッ

ヴィーゴ「やめろ。爪楊枝なんか取って何をする気だ。やめ――」

ヒュッ!!

ヴィーゴ「!」

165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 01:02:13.64 ID:bI/hzVw4P [10/50]
ズプッ ズズズ…

ジュナス「!?」

ヴィーゴ「くく……。そう来ると思って同化の準備をしてたんだ。第二星将がチョコレートパフェなんてな……。くくく……」

ジュナス「……ッ!!」ガタッ

グラナ「はいはいそこまでな。座れジュナス。ヴィーゴ、今のはお前も悪い」

店員「あ、あのー。ご注文は以上でよろしいでしょうか?」

グラナ「おっと。それで頼むわ。全部一緒に持ってきてくれ」

店員「かしこまりました。ドリンクバーはおかわり自由となっておりますが、おかわりの際はセルフでお願いします。ごゆっくりどうぞ……」カタッ

167 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 01:09:19.97 ID:bI/hzVw4P [11/50]
――――
――

店員「お待たせしましたー。オムライスとチョコレートパフェです」

カチャ カチャ

店員「こちらはアイスティーとコーヒーです」

コトッ

店員「ご注文は以上でよろしいでしょうか?」

グラナ「ああ」

店員「こちら注文伝票です。お会計時にレジまでご持参ください。ごゆっくりどうぞー」ビリッ

ヴィーゴ「……」ニヤニヤ

ジュナス「ジロジロ見るな。ニヤニヤ笑うな。スプーンで目玉を抉るぞ」

グラナ「だとよ。放っておいてやれ」

168 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 01:13:41.55 ID:bI/hzVw4P [12/50]
プリコ「おっーおっー♪ おっむらいっすー」カチャ

ヴィーゴ「そ、そうだカプリコ……。そのオムライスにイイことしてやろう」スッ

カプリコ「いいこと?」

ヴィーゴ「こうやって……ケチャップで俺の天才的アートを……」ペチャペチャ

カプリコ「うーにー?」

ヴィーゴ「ここに……牙と耳をつければ……」ピュッ

カプリコ「……あ! 狼ウサギのアンドリューだ!!」

ヴィーゴ「正解」

グラナ「ほお。絵描くの上手いな。さすが芸術家」

カプリコ「ヴィーゴありがとう!」

ヴィーゴ「くく……」ニヤニヤ

ジュナス「……」パクパクモグモグ

169 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 01:21:54.60 ID:bI/hzVw4P [13/50]
ヴィーゴ「じゃあ今度は……」

トロトロトロ……

ヴィーゴ「爪楊枝でこうして……」ツツツツ……

グラナ「お、もしかしてコーヒーアートか?」

カプリコ「こーひーあーと?」

ヴィーゴ「ラテ・アートとも言うんだ。……できた」

カプリコ「うーにー? これは何?」ワクワク

ヴィーゴ「みえるひとっていう漫画の……地蟲っていうキャラクター。豚みたいな顔をしている。お化けみたいなものだ」

カプリコ「おっおー。ヴィーゴすっごい!!」

ジュナス「……」パクパクモグモグ

173 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 01:27:44.41 ID:bI/hzVw4P [14/50]
グラナ「漫画のキャラなのか。ブサ可愛いってヤツかこれ?」

ヴィーゴ「この世界には陰魄と呼ばれる悪い幽霊たちがいてな……人間を襲ってその魂を喰らうんだ。
     奴らは一方的に人間に干渉出来るが、普通の人間は触ることさえできない……。恐ろしい存在だ……」

グラナ「フゥン。で、このチコってのもそのインハクなのか?」

ヴィーゴ「いや、これは陰魄じゃない。みえるひとは俺も認める名作漫画だ……。詳しいことが知りたければ買って読め。
     全部で7巻ある。だが俺は……これを打ち切りにした編集部が未だに憎い」

グラナ「みえるひと……ねえ」

ジュナス「……」パクパクモグモグ

176 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 01:36:42.67 ID:bI/hzVw4P [15/50]
カプリコ「うーにー……」

グラナ「? どうした?」

カプリコ「こーひーあーとがくずれちった……」ショボーン

ヴィーゴ「コーヒーじゃなく醤油にミルクを注ぐと混ざらなくて綺麗に作れる……。見せてやろう」ドボドボドボ

グラナ「! 何やってんだよお前。グラスに醤油注ぐなよ!」

ヴィーゴ「大丈夫……。グラナならこれを一気飲みできるから……」

グラナ「いくら俺でもできることとできねえことがあるだろ。常識的に考えろよ」

ヴィーゴ「も、勿体無い精神と桁外れのテレキネシスがあれば大丈夫……。さあ……遠慮なく飲め……」ズイッ

グラナ「いやいや、醤油とテレキネシス関係ねーし。それ以上悪ふざけすんなら俺も悪ふざけの天墜でお前を灰にしちまうかもな?」

177 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 01:45:15.27 ID:bI/hzVw4P [16/50]
カプリコ「またこーひーあーと見たいのにー」

グラナ「だったら俺がもっとイイのを見せてやるよ」

カプリコ「?」

グラナ「よく見とけ。これをこうやってな。混じっちまったコーヒーからミルクだけを取り出して……」ズズズズ……

キュポン

グラナ「ほれ、クリーム球のできあがりだ。すごいだろ?」シュルルルル……

カプリコ「おっおー! グラナかっこいい!」キラキラ

ヴィーゴ「テ、テレキネシスを使うのはズルいぞ……!」

ジュナス「……」パクパクモグモグ

178 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 01:49:27.68 ID:bI/hzVw4P [17/50]
ジュナス「……ごちそうさま」カラン

グラナ「ん? もう食ったのか?」

ジュナス「ああ。……ちょっとトイレに行ってくる」チラッ

ヴィーゴ「めだま、めだま♪」

カプリコ「まじん、まじん♪」キャッキャッ

ジュナス「カプ――」

グラナ「あァ? どうした? トイレはあっちだぜ?」

180 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 02:00:30.08 ID:bI/hzVw4P [18/50]
ジュナス「分かってる。……何でもない」

グラナ「?」

ヴィーゴ「くろいばらは♪」

カプリコ「ひにつよい♪」キャッキャッ

ジュナス「……ハァ」

コツ……コツ……

グラナ(んん? カプリコがヴィーゴにばっかり懐くもんだからイジけてやがったのか?)

211 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 19:37:26.89 ID:bI/hzVw4P [21/50]
――――
――

ジュナス(ヴィーゴと遊んでる時の理子の笑顔は……俺と遊んでるときよりもいい笑顔をしていたな……)ジャバジャバ

ガチャッ

ジュナス(理子は俺のことよりもヴィーゴの方が……)

コツ……コツ……

カプリコ「くー……すぴー……」zzz……

ジュナス「――! 理子?」

グラナ「疲れて寝ちまったみてえだぜ。まだ弥勒から連絡こねえし、ここで寝かしてていいんじゃねえか?」

ジュナス「……ああ」

212 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 19:38:50.77 ID:bI/hzVw4P [22/50]
―日本イクスプロジア工業事務所―

黒滝「……では、契約成立ですね。しっかり頼みましたヨ?」

ドルキ「お任せを。爆破迅速、火薬無用がモットーの我が爆塵……我が社の実力をとくと味わ……ご覧ください」

黒滝「フフフ。社長のお手並みを拝見させていただきますワ。ではワタクシはこれで失礼します」スッ

バタン

後輩「ドルキさん、今の女性は?」

ドルキ「今回の取引先……濁業會のお偉いさんだ。今度ウチにデカい仕事が入る事になったんだが……これを見てみろ」ピラッ

後輩「見てもいいんスか? 失礼します」

213 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 19:40:32.80 ID:bI/hzVw4P [23/50]
後輩「……! これだけの規模の工事をたった一週間で解体から運搬までしろって……!? こりゃあふざけてるとしか」

ドルキ「他のとこが蹴ってた仕事をウチで引き受けた。濁業會って言えば大小多数の仕事を取り仕切ってる有力企業だからな。
    そいつらに俺達の力を存分に見せ付けることができれば……」

後輩「デカい仕事をウチに降ろすように……ってことッスね?」

ドルキ「そういうことだ。実績と知名度を上げるためにせいぜい利用させてもらおうじゃないか。……難しいがこの仕事、絶対にしくじるんじゃねえぞお前ら!!」

社員一同「了解!!」

ドルキ「今回は解体だけだから引き受けたが……建築に関してはな。早めにアイツが欲しいところだな」ボソッ

後輩「アイツ? アイツって……誰です?」

ドルキ「フ……。俺の戦友(とも)とでも言っておこうか。俺が世界一の解体屋ならアイツは世界一の建築屋だ」

216 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 19:48:23.14 ID:bI/hzVw4P [24/50]
―ファミレス―

prrrr……

ジュナス「鳴ってるぞ。グラナのか?」

グラナ「だな。……ああ、弥勒からだ」スッ

ピッ

弥勒『こちらも作業が終わった。そろそろ合流しよう。場所は――』

グラナ「おう。わかった。……おう」

ピッ

217 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 19:52:29.25 ID:bI/hzVw4P [25/50]
グラナ「そろそろ弥勒らと合流するぞ。帰る準備しな」

ヴィーゴ「分かった」スッ

グラナ「起きろカプリコ。起きないと置いて行くぞー」ユサユサ

カプリコ「うー……にー……?」zzz……

ジュナス「! 無理に起こすな。理子は無理に起こそうとするとグズるんだ。こういう時はおんぶしてやって自然に目を覚ますまで――」ベラベラ

グラナ「ヘッ……」ニヤリ

ジュナス「? 何がおかしい?」

グラナ「やっぱ、カプリコの世話はお前にしかできねーなと思ってよ」

ヴィーゴ「そ、そうだな……。カプリコの世話をできるのはジュナス……お前だけだ」

ジュナス「……! 当然だ。俺はカプリコの友達1号だからな」

218 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 19:57:52.56 ID:bI/hzVw4P [26/50]
―レジ―


店員「ご利用ありがとうございます。全部で1638円です」

グラナ「おっと、悪いな姉ちゃん。こいつを使わせてくれや」スッ

店員「ドリンク割引券ですね、ありがとうございます。それですとお会計は――」

ジュナス「……意外とセコいな」

グラナ「経済観念がしっかりしてると言ってくれ」

カラン

店員「ありがとうございましたー。またお越しくださいませー」

グラナ「さて、この分は手待ち時間だったわけだし……弥勒には経費で落としてもらわないとな。自腹なんざ絶対ゴメンだぜ」

220 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 20:02:02.46 ID:bI/hzVw4P [27/50]
カプリコ「ジュナスー……」zzz……

ジュナス「理子? ……何だ、寝言か」

カプリコ「大事な友達……くぴー……だいすき……ジュナス……」zzz……

ジュナス「!! 理子……!!」ジーン

グラナ「カプリコの中じゃヴィーゴよりもお前の方が大事なみてえだぜ? よかったじゃねえか」

ヴィーゴ「く、悔しいな。ジュナスに負けた」

ジュナス「当然だ。俺はカプリコの友達1号だからな。“友達1号”だから、な」フン

221 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 20:03:01.35 ID:bI/hzVw4P [28/50]
カプリコ「うに……?」パチ

ジュナス「! 起きたか理子」

カプリコ「ふぁぁ……。どこに行くのー?」

ジュナス「弥勒のところだ。あっちに着くまで俺がおんぶしててやろう。しっかりつかまってろ」

カプリコ「うん!」ギュッ

ジュナス「……」ニヤ

ヴィーゴ(もう完全に機嫌が直ったみたいだ)ヒソヒソ

グラナ(狸寝入りしてるのがバレるかと少し不安だったが……カプリコのヤツ、なかなかの役者だな)ヒソヒソ

ジュナス「? 何をひそひそと話している? さっさと行くぞ」

225 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 20:16:46.66 ID:bI/hzVw4P [29/50]
―アストラル・ナーヴァ(仮)―

ピクッ

ウラヌス「うッ……? ここは……?」ムクッ

ミスラ「気がついたかい? キミは過労で倒れてたんだよ」

ウラヌス「全部覚えている。……他の連中は?」

ミスラ「弥勒の指示でそれぞれ活動中だ」

ウラヌス「そうか。だったら俺もいつまでも休んでいられないな」スッ

ミスラ「先ほど弥勒から召集がかかったんだけど……行けるかい?」

ウラヌス「問題ない。動ける」

227 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 20:19:40.40 ID:bI/hzVw4P [30/50]
―集合場所―


弥勒「来たか」

グラナ「何だ、お前らも来てたのかよ?」

ミスラ「お疲れ様」

グラナ「お前ももう動けるのか? 03号」

ウラヌス「問題ない。アンタにばかり仕事を取られちゃ癪だからな」

グラナ「……ヘッ。その生意気な口が利けるならもう大丈夫みてえだな」

弥勒「では今晩からまた仕事をやろうウラヌス。俺が寝るまで間クーラーを……」

ウラヌス「いいだろう。今日からはグラシアルウォールでそのまま冷凍保存にしてやる。南極の深海にある氷よりも分厚く硬い氷の中に、な」

弥勒「……たまには汗をかいて寝るのも一興か」

230 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 20:29:00.63 ID:bI/hzVw4P [31/50]
グラナ「んで、わざわざこんなとこに全員集めたのには何か理由があるんだよな?」

弥勒「あれを見ろ」スッ

ジュナス「……? 灯りが……? あそこで何をしているんだ?」

弥勒「今日は花火大会があってな。商店街を使ってお祭も開催されている」

グラナ「なるほど。で? 今日の労いとして俺達に祭を楽しめってのか? ちゃんと小遣い銭は出してくれよ、自腹だったら帰るからな」

弥勒「何を勘違いしているんだ? ここは稼ぐチャンスだろう」

グラナ「は? 稼ぐっつったって何の準備も無しに、一体どうやって――」

弥勒「心配するな。俺が全て準備を進めておいた。お前たちは俺が用意した仕事をしてくれればいい」

グラナ「弥勒……! お前、本当にマジメになったんだなァ……。嬉しいぜ俺はよお」ジーン

弥勒「向こうで遊坂とシャイナが待機している。ついてこい」

231 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 20:34:27.95 ID:bI/hzVw4P [32/50]
遊坂「おっ、ボス一向の到着だ」

弥勒「準備は?」

シャイナ「万端です」

弥勒「よし。今からお前たちにはここで働いてもらう」

グラナ「ここ? ……って、何だこりゃ?」

弥勒「本当に恐ろしい!! オバケ迷路屋敷“ウロボロス”だ」

ジュナス「この商店街内で迷路をやるにはスペースが狭すぎるだろう。無理だ」

弥勒「その心配はいらん。今からこのオバケ屋敷の説明をしよう」

ジュナス「?」

233 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 21:00:35.98 ID:bI/hzVw4P [33/50]
弥勒「まず客がこのドアの中に入る。客が中に入ったらドアを閉めて……シャイナが送り込む」

グラナ「送り込むって? どっかに瞬間移動させるのか?」

シャイナ「えっとですね、実はここにあるのはこの扉だけなんです。これ以上奥には何もありません」コンコン

弥勒「ここから少し離れた場所に本物の廃墟があってな。そこに客を送り込むというわけだ」

シャイナ「というわけで、スペースの問題は全く生じないんですよ」

弥勒「さらにステージとなる廃墟にはヴィーゴを同化させる。こうすれば内部を好きに弄れて都合がいい」

グラナ「おま……、そこまで頭まわるヤツだったっけ……? 何か不気味さすら感じるぞ……」

弥勒「シャイナ、ヴィーゴ、お前ら二人は特に重要な役目だ。きっちり頼むぞ」

234 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 21:06:35.65 ID:bI/hzVw4P [34/50]
グラナ「俺達は何をすればいいんだ?」

弥勒「これからすぐにスタッフとして客を驚かせる作業についてもらう」

グラナ「なるほど」

弥勒「だがあくまで客商売だという事を忘れるな。客に怪我なんかさせたら大変なことになるからな」

グラナ「分かってるよ。この中で心配そうなのは――」チラッ

遊坂「……ん?」

ヴィーゴ「な、なにを」

ジュナス「見ているんだ?」

カプリコ「うーにー?」

グラナ(……半数以上が心配そうな連中だったな)ズーン

――――
――

フレデリカ「あーあ。どこの出店も似たようなのばっかで退屈ねー。どこかに面白そうな店とか無いのかしら」キョロキョロ

235 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 21:12:31.24 ID:bI/hzVw4P [35/50]
カイル「射的も金魚すくいもイマイチで飽きちまったよなあ。タコヤキ食ったし、りんご飴も食ったし……あー、花火が始まるまで暇だぜ」ウズウズ

シャオ「飽きるのが早すぎる。花火が始まるまであと1時間以上はあるのに」

フレデリカ「なによ。直前に行くと混むっていってたのはシャオじゃないの」

シャオ「本当に混むんだよ。嘘は言ってない」

マリー「まあまあ。落ち着いて少し待ってようよ。ね?」

ヴァン「うー」

カイル「見ろよー。ヴァンだって暇だって言ってるじゃん」

ヴァン「うー」

フレデリカ「暇すぎて死にそうって言ってるわね」

シャオ(本当に分かって言ってるのかなぁ……)

237 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 21:18:24.93 ID:bI/hzVw4P [36/50]
フレデリカ「とにかく。ただ待ってるだけなんて退屈だわ。何か面白くて時間の潰せそうな――……あ!」ピタッ

ドンッ

カイル「いてっ! 急に止まるなよフー!」

フレデリカ「ねえ、あれってもしかして……」タッタッタッ

マリー「あ! フーちゃん! 1人じゃ危ないよ!」タッタッタッ

カイル「? 何か面白いものでも見つけたのかな?」

ヴァン「うー?」

カイル「俺達も行こうぜ、シャオ、ヴァン」

シャオ「やれやれ」

240 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 21:24:50.59 ID:bI/hzVw4P [37/50]
サイレン塔すら~の時に出したかな
後日談でちょこっとだけ

241 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 21:29:07.38 ID:bI/hzVw4P [38/50]
――――
――

カイル「うほー、でっけえ看板」

シャオ「ここは何だ?」

フレデリカ「オバケ屋敷ですって」ニヤッ

マリー「え……! お、おばけ屋敷……? それって怖いあれ……!?」ビクッ

カイル「おおー! 面白そうじゃん!」ワクワク

シャオ「本当に恐ろしい!! オバケ迷路屋敷“ウロボロス”……ねえ」

カイル「こっちの看板にも何か書いてあるぜー」

243 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 21:32:35.95 ID:bI/hzVw4P [39/50]
フレデリカ「なになに……? クリアできたら賞金1万円、上限5名様まで……? ふふふ。ちょうどいいじゃないの」

マリー「や、やめようよぅ……こんなとこ……」

フレデリカ「賞金持ち帰ってババ様に話してあげましょ。ね? カイル」

カイル「ったりめーだぜ! 逆に俺達エルモア・チルドレンの恐ろしさをオバケ共に教えてやる!」パシッ!

シャオ「オバケっていってもオバケの役をしてる人がいるだけだぞ」

244 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 21:37:18.69 ID:bI/hzVw4P [40/50]
フレデリカ「当然アンタも参加すんのよ、マリー」

マリー「ええ~!? わ、私は外で待ってるからみんなで――」

ガシッ

マリー「うー! うー!!」バタバタ

フレデリカ「ダーメ、敵前逃亡は銃殺よ。みんなでここに入りましょ」

カイル「おう!」

マリー「むぐ……! むぐうう~!!」ジタバタ

245 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 21:40:42.97 ID:bI/hzVw4P [41/50]
フレデリカ「ハイ! 今から多数決とります!! この中に入りたい人!!」ビシッ

カイル「もっちろんだぜ!」ビシッ

ヴァン「……」コクリ

シャオ「仕方ないなぁ。どうしてもっていうなら僕も」

フレデリカ「4対1ね……。ふっふっふ。もう決まったわよ、マリー?」パッ

マリー「ぷはっ! そ、そんなぁ~! せめていつも通りジャンケンにしようよ~!」ウルウル

フレデリカ「イヤよ。そんなことしたらアンタ1人で4タテしちゃうでしょ」

247 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 22:00:38.70 ID:bI/hzVw4P [42/50]
カイル「あれ? 珍しく乗り気じゃんシャオ。いつもなら『そんなくだらないことに~』とか言って説教するのに」

シャオ「ま、まあ、たまにはこういうのもいいんじゃないかと思って……さ」

カイル「そうか!」

シャオ(ここでマリーにいいところを見せてやれば……!)グッ

フレデリカ「こういう時のシャオって下心あんのよね。何かやましい事でも考えてたんじゃない?」

シャオ「し、失礼な! 僕は決して良いとこ見せようだとか――」アタフタ

フレデリカ(図星ね……)

248 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 22:02:05.85 ID:bI/hzVw4P [43/50]
フレデリカ「さ、行くわよ」グイッ

マリー「いやぁ……」フルフル

フレデリカ「エルモア・ウッドの一員なら潔く諦めなさいマリー。これで少し度胸をつけるのよ」グイッ

マリー「あう……あうぅ……」ズルズル……

カイル「すみませーん!!」

シャイナ「はい。いらっしゃいませー。入場希望ですか?」

フレデリカ「そう。子供5人分ね」

シャイナ「お子様5名様ですね。入場料は500円です」ニコニコ

フレデリカ「……ずいぶんと安い料金ね。何か裏があるんでしょ?」

シャイナ「裏……というか、まぁ、ペナルティですね。もし途中でギブアップした場合は1人あたり1000円のペナルティが発生します」

フレデリカ「フゥン。なるほどね」

249 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 22:05:52.02 ID:bI/hzVw4P [44/50]
ヴァン「……」ジー

シャイナ「ん……? どうかしましたか? 僕の顔に何かついてます?」

フレデリカ「前にアンタとどっかで会ったような気がしてならないのよね。どっかで会った?」

シャオ「僕もそう思ってたんだけど……」

シャイナ「ははは。他人の空似ですよ。きっと」

シャオ「……そうかな」

シャイナ「それよりも本当に良いんですね? 一度開始するとすぐには戻れませんし、途中でギブアップするとペナルティが発生しますよ?」

フレデリカ「上等」

250 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 22:10:32.45 ID:bI/hzVw4P [45/50]
シャイナ「ではこちらの扉の中へお進みください。扉が閉まってから10秒数えたら外に出てスタートです」

マリー「うぅ……」ブルブル

カイル「ひゃっほー!! クリアして1万円ゲットしてやるぜ!」グッ

シャオ「はしゃぎすぎてオバケ役の人達に怪我させるなよ、カイル」

カイル「大丈夫! ヴァンがいるから! なー、ヴァン!」

ヴァン「……」

シャオ「だからそういう問題じゃないって」

ギイイ……バタン

ピッ

シャイナ「シャイナです。今からお客様をそちらに送ります。はい。……はい、子供が5人。はい、そうです。分かりました」

ピッ

シャイナ「六方転晶系(ヘキサゴナル・トランスファー・システム)」スウッ

キュウン

263 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 23:42:33.28 ID:bI/hzVw4P [48/50]
フレデリカ「8……9……10! よし! 行くわよ!!」

ギイイ……

カイル「あッ! 待てよフー! 先頭はエルモア・ウッドの切り込み隊長である俺の役目だぞー!」

マリー「……うう」

スッ

シャオ「オ、オレが近くにいるから大丈夫だよ」ボソッ

マリー「えっ?」

シャオ「いや、あの! な、何でもない!! 何でもないんだ……うん」ポリポリ

ヴァン「……」ジー

シャオ「な、なんだよヴァン! そんな目で見つめるなよッ!」

264 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 23:49:38.39 ID:bI/hzVw4P [49/50]
ギシ……ギシ……

カイル「ふーん。雰囲気はけっこう良い感じじゃんか」キョロキョロ

フレデリカ「まるで本当の廃屋みたいね。このホコリっぽさといい、ジメっぽさといい」

マリー「うん……。本物みたいで……何か薄気味悪い……」ギュッ

シャオ「なかなか凝った作りだなぁ。外から見た感じだとこんなに広くなかったのに」

カイル「なーシャオ、風導八卦白蛇(ホワイト・フーチ)でどこに人が隠れてるか探してくれよー」

シャオ「そんな事したらつまらな……いや、お化け役の人たちに迷惑になるだろ」

カイル「ちぇー。脅かしに来たら逆に脅かしてやろうと思ったのによー」

シャオ(でも……さっきから誰かに見られてるような気がする……?)

ヴィーゴ「……」

ズズズズ……

266 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/29(水) 23:56:36.00 ID:bI/hzVw4P [50/50]
―モニタールーム―

弥勒「子供たちが動いた。まずは小手調べといこうか。ミスラ」

ミスラ《わかったよ》


ボウッ……フワフワ……

カイル「おッ! 見ろよあれ!!」

マリー「きゃっ!! ひ、火の玉……!?」

フレデリカ「火の玉くらい何よ。いつも私のパイロクイーンで火の玉を見てるじゃないの」

マリー「あ……。そ、そうだったね。えへへ……」

カイル「よし! どんな仕掛けなのか俺が調べてやるぜ!」ダッダッダッ

フッ……

カイル「あーッ! 消えた! クッソー! この辺か!? この辺に人が隠れてるのか!? ていっ! 出て来い!!」ガンガン

シャオ「壊れるからやめな」

267 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 00:01:18.37 ID:NdYaZf4hP [1/70]
ミスラ《……まったく物怖じしてないようだね》

弥勒「子供とはいえ大人数になるとそう簡単にはいかんか。次を頼む」


カイル「さっきの火の玉なんかじゃ全然怖くないよなぁ。あれだったらフレデリカの方がよっぽど怖いぜ」

フレデリカ「そうそうアタシの……って、怖いのはアタシじゃなくアタシの火でしょ!?」

シャオ「どっちもどっちだと思うけどな」

フレデリカ「シャオまで……むきー!!」バタバタ

ヴァン「うー!」バタバタ

マリー「フ、フーちゃん落ち着いて……。ヴァン君も真似しなくていいから……」


遊坂(来たなガキどもめ。ここで泣かせてやるぜ)ドスッ ブシュウウウウ……

ウラヌス(……地味な作業だ。思っていたのと違う……)ピキピキピキ……

268 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 00:07:52.62 ID:NdYaZf4hP [2/70]
カイル「んあ……」クンクン

マリー「どうかしたの? カイル君」

カイル「何かさ。さっきから変な匂いがしねえか?」クンクン

フレデリカ「……うッ! ホントだわ。何か腐ったような匂いね。それにちょっと肌寒い気が……」

マリー「風……が吹いているみたい」

シャオ「……!」ピタッ

カイル「? どうしたシャオー」

シャオ「やっぱり誰かに見られてる。さっきから視線を感じるんだ」

カイル「な、何だよそれ……?」

マリー「……」ゴクリ

ヴァン「うー……」


弥勒「ヴィーゴ、建物内部を揺らせ。床や壁を軋ませろ」

272 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 00:15:46.10 ID:NdYaZf4hP [3/70]
ギシッ!! ギシギシギシ……

マリー「ひッ!!」ビクッ

カイル「い、今、何か向こうで変な音がしたよな……? 何だろう……?」

ギシッ!! ギシギシギシ……ガガガガ……ガタン!!

カイル「ま、まただ!」

フレデリカ「ちょ、ちょっと先に行って様子を見てきなさいよ……」

カイル「えッ!? おっ、俺がかよ!?」ドキン

フレデリカ「エルモア・ウッドの切り込み隊長なんでしょ? さ、さっさと行きなさいよ……アタシらはここで待ってるから」

カイル「う……」

274 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 00:26:13.41 ID:NdYaZf4hP [4/70]
カイル(何もでませんように……何も出ませんように……!!)ドキドキドキ

ギシ……ギシ……

カイル「……!」ゴクリ

フレデリカ「どう? 何かあった?」

カイル「……? いや、特に何にもな――」

ゴゴゴゴ……

カイル「わッ!?」

フレデリカ「えッ!? なっ……何コレ!? 地震!?」ビクッ

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……

シャオ「で、でかい! みんな! 気をつけろ!!」

275 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 00:33:50.96 ID:NdYaZf4hP [5/70]
ゴゴゴゴ……パラパラパラ……

フレデリカ「お、おさまった……の?」

カイル「これも誰かが揺らしたとか……だよな……?」ゴクリ

フレデリカ「い、今のは偶然地震が起きただけよ、きっと」

マリー「本当に人がいるのかなここ……」ボソッ

シャオ「! マ、マリーがそう言うなら仕方ないなぁ! 風導八卦白蛇(ホワイト・フーチ)」

マリー「え? あの、別に私はそういう意味で言ったんじゃないけど……」

シャオ「……え? あ、あれ? ま、まあいいじゃないか。ハハハ……」

キュウン

フレデリカ(マリーに対しては調子いいんだからまったく……)

276 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 00:37:49.04 ID:NdYaZf4hP [6/70]
ツツツツ……

シャオ「! ちょっと待て、これは……!?」

フレデリカ「? どうしたのシャオ」

シャオ「……フーチが機能していない!?」

カイル「え!?」

シャオ「いや、機能はしている……のか? でもこれは……?」

フレデリカ「もったいつけないで言いなさいよ! 何!? 何なの!?」

277 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 00:40:53.97 ID:NdYaZf4hP [7/70]
シャオ「……信じられない話かも知れないけど、この建物そのものに生命反応がある」

フレデリカ「え? ええ!? ど、どういうことよそれ!?」

カイル「ってことは……本当に怪奇現象起きてるってことなのか……!?」ゴクリ

シャオ「初めてだ、こんなことって……」

マリー「もしかしてここは本当のお化け屋敷なんじゃ……」ウルッ

シャオ(! しまった!! マリーを安心させてやろうと思ったのに……これじゃ逆効果だ!)

281 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 01:00:46.37 ID:NdYaZf4hP [8/70]
フレデリカ「こ、こここ、こんなところで引き下がるわけには行かないのよ! さっきの地震や変な音だってただの仕掛けよ仕掛け!!」

カイル「だ、だったら特別に先頭をゆずってやるぜフー! 今日はお前が切り込み隊長だ!」グイグイ

フレデリカ「えッ!? あッ! ちょっとヤダ! やめて!! 押さないでよ!!」ググググ……

スッ

カイル「!」

シャオ「……ここはオレが先頭に立つ」

フレデリカ「シャオ~」

283 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 01:05:05.47 ID:NdYaZf4hP [9/70]
シャオ(しかし分からない。何故フーチがうまく機能しないんだ……? まさか、この建物そのものが生きているとでも――)

……プチッ

シャオ(……? 何か踏ん――)チラッ

カサカサカサ……

シャオ「ッ!? うわッ!」バッ

カイル「お、おい。シャオ……どうし――」

シャオ「何かが……居る!!」ゾワッ

284 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 01:10:45.88 ID:NdYaZf4hP [10/70]
カイル「え!? 何が居るって――」

シャオ「ライト! 早く!!」

マリー「は、はい!」スッ

ピカッ

シャオ「虫……ッ! 大量の……虫だ!!」

カサカサカサ……ピョンピョン

カイル「ゴ、ゴゴゴゴ!! ゴキブリじゃん! ゲジゲジも! それに……カマドウマ!! う、うわああああ!?」

マリー「いやあああああ!!! こっちこないでえええ!!」バタバタ

フレデリカ「」プチーン


遊坂(俺がガスで作った偽物とも気付かずにビビッてやがる。都会っ子どもが、いい気味だぜ)ニヤニヤ

286 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 01:16:22.57 ID:NdYaZf4hP [11/70]
カサカサカサ……

フレデリカ「……ええで」ブチッ

シャオ「! カイル!!」

カイル「え? ……あぁ!」

フレデリカ「ええでお前ら……そんなに死にたいんなら……!!」

マリー「フーちゃん! ちょっと待っ――」

フレデリカ「灰になるまで燃やしつくしたるわ! ゴミ虫どもォ!!」ボワッ!!

カイル「わわわッ! 虫見たショックでフーがキレやがった! あちッ!」

フレデリカ「クックックッ!! 燃え尽きろォ!!」ボウッ!!

シャオ「ヤバイ!! みんな! フーから離れろ!!」

288 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 01:22:50.84 ID:NdYaZf4hP [12/70]
ボボボボ……

遊坂《なッ!? おい! 緊急事態だ!!》

弥勒「どうした?」

遊坂《ガキの中にパイロキネシス使いが混じってた! そいつが火を放ってやがる!!
   俺のガスは不燃性の物で作ってるから引火や爆発はしないが……建物が燃やされるぞ!!》

弥勒「ヴィーゴ、カメラを回せ。正面から見たい」

ウィーン

弥勒「……! ほう、誰かと思ったら……この子たちだったのか」

ヴィーゴ《知り合いか?》

弥勒「ああ。サイキッカーの子供たちだ。俺とは浅からぬ因縁のようなものが……な。ウラヌス、何とか心霊現象っぽくみせて火を消せ」

ウラヌス《世話が焼ける。……ディープフリーズ》キュウウウ……

289 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 01:28:00.09 ID:NdYaZf4hP [13/70]
バキバキバキバキ……ブオオッ

カイル「寒ッ!! 何だ、いきなり寒くなったぞ!?」

ピキピキピキ……

シャオ「見ろ! 地面が……凍ってきている!!」

ビキビキビキ……プシュー……

フレデリカ「!! アタシの放った火が消されて……!?」

291 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 01:34:01.06 ID:NdYaZf4hP [14/70]
ウラヌス(燃え移っていた火は消せたか。もう十分だな)スッ

ピキピキピキ……ピタッ シュワワワ……

カイル「!? え、ええ!? 今度は氷が消えていってる!!」

シャオ「溶けるんじゃなく消える氷だなんて……! まるで意思を持ったような氷なんて聞いた事……いや、まさか……。
    でも……確かにこれは……氷が溶けずに跡形も無く消え去るなんて考えにくい……」ブツブツ

マリー「や、やっぱりここ……本物の幽霊が出るとこなんじゃ……」グスッ

フレデリカ「こ、こんなことくらいで泣かないでよ! 泣いちゃダメよマリー!!」

ヴァン「……」ボー


弥勒「いい具合に混乱し始めたな。いけ、ヴィーゴ、ジュナス」

293 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 01:39:49.43 ID:NdYaZf4hP [15/70]
フレデリカ「きっとさっきの虫だって作り物よ! 地震だってあの時、偶然に――」

シャオ「……でも、この建物の中でオレの風導八卦白蛇(ホワイト・フーチ)がうまく機能しなかったのも事実だ。
    それに、地面を急激に凍らせられるような仕掛けなんて聞いたこともない。溶けずに跡形もなく消える氷って……考えられるか?」

フレデリカ「そ、それもきっと何か特殊な――」

ガシッ!!

フレデリカ「!? キャアア!!」ビクッ!!

シャオ「!!」ビクッ!!

カイル「おわぁッ!? 何だよフー!? 急に大きな声出すなよ!!」

フレデリカ「ち、ちょっと!! いきなり後ろから肩を掴まないでよマリー!! ビックリしたじゃない!!」ドキドキ

マリー「え? え? 私、ここからじゃフーちゃんの背中をつかめないよ……?」オロオロ

フレデリカ「……え?」

294 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 01:44:37.80 ID:NdYaZf4hP [16/70]
カイル「お、おいフー……!! そ、その手ってもしかして……!!」サー……

フレデリカ「アタシの正面にマリー、カイル、シャオ、ヴァンが立っている……ってことは……」サー……

ニョキニョキ……

フレデリカ「!!! ギャー!!!!」ドタドタドタ

カイル「う、ううう、腕が地面から生えてきてる!? ヒイィ!!」

ワサワサワサ……

シャオ「こっちに来る! みんな逃げろ!!!」ダッ

296 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 01:49:26.02 ID:NdYaZf4hP [17/70]
パリン!! パリン!! ガシャン!!

マリー「!? キャアアアア!!」

ズガガガガガガ!!!

シャオ「床が……!!」

ジリリリリリリリリリリリリリ!!!!

フレデリカ「な、何よぉ……!! 何なのよここぉ……!!」ウルウル……

シャオ「みんな走れ!! 早く!!! ここを離れるんだ!!」

298 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 02:00:11.85 ID:NdYaZf4hP [18/70]
ミスラ《すごい悲鳴だね。何をしたんだい?》

弥勒「ヴィーゴに潜航師・傀儡で義手を作らせて子供たちを驚かし、ジュナスには神刃でガラスと床を切らせただけだ。あとは非常ベルも起動させたか」

ミスラ《なるほど。なかなかいい演出だ》

ジリリリリリリリリリリリリ!!!

ギャー!!

ウワー!!

弥勒「……そろそろだな。畳み掛けろ。カプリコ、シャイナ」

カプリコ《らぁじゃ!》カキカキ

シャイナ《了解》

299 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 02:05:25.18 ID:NdYaZf4hP [19/70]
カプリコ《でーきた!》

ズズズ……

シャイナ《では、転送します。……黒髪の男の子のところが面白そうだ》ニヤッ

カプリコ《ごーごー!》

シャイナ《いきますよ。六方転晶系(ヘキサゴナル・トランスファー・システム)》

キュウン

300 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 02:11:01.55 ID:NdYaZf4hP [20/70]
カイル「ハァ……ハァ……。な、何とか逃げれたのかな……?」ゼー……ゼー……

マリー「えぐっ……ぐすっ……」シクシク

フレデリカ「……」ガタガタ

シャオ(みんなもう限界だ……! ここはオレが何とかしないと……!)

ヴァン「うー」

シャオ「……落ち着けみんな。確かに怪奇現象みたいな事が起きているように見えるかもしれない。
    でも、ここはあくまで作り物のお化け屋敷なんだ。そのことを考えれば本物の幽霊なんてものは存在するはずが――」

キュウン

ベチャ……ズルッ……

シャオ「!? うわッ!? な、何だ!? 何かオレの頭に……!?」ビクッ!!

302 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 02:16:22.07 ID:NdYaZf4hP [21/70]
フレデリカ「! ひっ!! シャオ! ア、アンタの頭のうえ……うえっ!! にっ……!!」ガクガク

シャオ「……え? これ……なに……?」ヌルッ

まじん「オボアァ……」ドチャッ

シャオ「」

フレデリカ「きゃああああああああああああ!!!」

マリー「いやああああああああああああ!!」

カイル「めだまのおばけだああああああああ!!!」ダッダッダッ


弥勒「仕上げだ。子供たちが逃げられないように内部通路を作り変えろ。ヴィーゴ」

ヴィーゴ《了解した……》

ズズズズズズ……

304 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 02:21:25.71 ID:NdYaZf4hP [22/70]
ズズズズズ……

カイル「!? いッ! 行き止まり!? 何で!? さっきまで道が――」

ドチャ……ドチャ……

まじん「グボホァ……」ズルッ……

カイル「わあッ!」

まじん「アブフォッ……」ブシュー……

フレデリカ「ギャー!!!!」


弥勒「……? 子供たちが二人しかいないぞ」

ヴィーゴ《ほ……他の二人は別の道へ逃げた。黒髪の子供は立ったまま気絶しているな、白目をむいてる》

305 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 02:27:05.12 ID:NdYaZf4hP [23/70]
フレデリカ「……もう……いやぁ……」ガタガタ

カイル「リ! リリ、リタイヤッ! もうリタイヤするうううう!! 誰でもいいから助けてええええええ!!」ガンガンガン!!


弥勒「……よし。子供たちからリタイヤ宣言が出た。シャイナ、ゲーム終了だ」

シャイナ《分かりました》

キュウン

カイル「!?」

シャイナ「リタイヤですねー。お疲れ様でしたー」

339 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 19:08:14.82 ID:NdYaZf4hP [26/70]
カイル「……!? え!? ええ!?」

シャイナ「僕たちが急に出てきたから驚いてるんですか? 今のはテレポート……瞬間移動したんですよ」

カイル「テレポート!? ってことは……PSI……!?」

ウラヌス「やっと終わったか。地味な作業だった」パキッ

遊坂「ま、ガキどもにしては頑張った方だな」プシュー……

まじん「オボァ……」ボロボロボロ……

フレデリカ「崩れて消えてく……。もしかしてこれも!?」

遊坂「ああ。ここで起きたことは全部PSIの力さ。さっきの虫なんか全部俺が作ったんだぜ? お前らもサイキッカーなんだろ?」

カイル「えええー!?」


弥勒「気絶したままの子供も起こしてやれ」

シャイナ《わかりました》

340 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 19:11:47.84 ID:NdYaZf4hP [27/70]
――――
――

シャオ「オ、オレはフレデリカの悲鳴のせいで気絶したんだぞ! 別に怖かったとかじゃないからな!」

フレデリカ「人のせいにするなんてサイッテー……。マリーが戻ったら言いつけてやるんだから」

シャオ「な! ちょ、ちょっと待てよ! それとこれじゃ話が別で――」

カイル「はー……。それよりマリーとヴァンは?」

シャイナ「今、スタッフに探させています。ちょっと待ってくださいね」


弥勒「ヴィーゴ、残りの子供らはまだ見つからないのか?」

ヴィーゴ《み、見つからないな。それよりも弥勒……。大変だ……》

弥勒「? どうした?」

ヴィーゴ《外から何かが入ってきた》

弥勒「なに!?」

342 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 19:16:16.51 ID:NdYaZf4hP [28/70]
弥勒「侵入者か?」

ヴィーゴ《分からない。外の出入り口の鍵は確かに閉めてあったんだが……まるですり抜けるように》

弥勒(すり抜けた……? サイキッカーの可能性も考えられるな)

ミスラ《どうしますか?》

弥勒「変質者が入ってきた可能性もある。しかもヴィーゴの話から察するにサイキッカーや異能者の類と見ていいだろう。
   子供らの安全を確保しつつ侵入者を排除しろ。ただし殺すな。営業妨害で金をふんだくってやる。
   あと子供らと接してなるべく懐柔しておけ。いざという時に有利な証言を引き出すぞ」

ミスラ(言ってることがメチャクチャだ。だいたいここの建物自体、無断で使用してるというのに……)

弥勒「俺も動きたいとこだが……俺は子供たちに面が割れてるからな。あの子供らにいらぬ誤解を与えかねない。一段落してから会うことにしよう」

344 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 19:22:27.57 ID:NdYaZf4hP [29/70]
カイル「そっかー……。まさかみんなサイキッカーだったなんてなぁ」

フレデリカ「あの虫も化物も作り物だったなんて……。ホントに幽霊かと思ったわ」

シャオ「消える氷や揺れる建物……確かに、PSIの力によるものだったら納得できたんだ」

遊坂「カブトムシとかクワガタも作れるんだぞ。見せてやろうか?」

カイル「え? マジ!? カブトムシが見てーなー。今年捕まえそこねたんだ」

遊坂「じゃあ見せてやるか。ほら、手を出せよ。カブトムシ……」スッ

カイル「おおー!」ワクワク

346 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 19:27:32.43 ID:NdYaZf4hP [30/70]
ボトッ ウネウネウネ……

遊坂「……の幼虫だ。とびっきり特大サイズのな」ニヤリ

カイル「うわあああッ!?」ポイッ ベチャ ブシュー…

遊坂「他人を信じすぎると痛い目にあうぜ? よく覚えておくんだな。ハハハハ……」

グラナ「あまり遊んでる暇はねえぞ。この屋敷内にははぐれた子供2人と……正体不明の侵入者が残ってんだからな」

シャイナ「そうですね。君達は元の場所に転送してあげるので、後は僕たちに任せて――」

フレデリカ「何言ってんのよ。アタシたちもマリーとヴァンを探すに決まってるじゃない。アタシらが居た方が都合がいいんじゃない?」

シャイナ「えっ……しかしそれでは」

347 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 19:33:26.85 ID:NdYaZf4hP [31/70]
ウラヌス「……いや、ここはこの子供たちに一緒に来てもらうべきだ。
     パニックを起こした子供たちに、見ず知らずの俺達が接触したら余計にパニックを起こす可能性が高い」

グラナ「03号の言うとおりだな。シャイナ、お前は弥勒のいるモニタールームで待機していろ。
    そうすればちょうど俺達が3人、子供達も3人だ。ペアを組むのにはちょうどいい。
    それにお前が動きまわってると戻るときに足並みが揃わないからな」

シャイナ「了解です。あなた方なら何ら問題は無いとは思いますが――念のため注意してください」

グラナ「……カプリコとジュナスはどこに行った?」

遊坂「カプリコは俺が守るとか言ってボスのとこに篭ったぞ」

グラナ「そうか。あいつらは下手に出回ってない方が好都合だ。シャイナ、ジュナスとカプリコは部屋の外に出すなよ」

シャイナ「分かってますよ。ご心配なく」

348 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 19:39:47.78 ID:NdYaZf4hP [32/70]
グラナ「よし、じゃあここでペアを作って三手に分かれよう。俺はこの……色黒の少年、金髪の少女、黒髪の少年。
    この3人のうち誰と組めばいいと思う? お前の意見を聞かせてくれや>>349」

350 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 19:43:34.73 ID:NdYaZf4hP [33/70]
グラナ「ってワケだ。俺とペアでいいな?」

フレデリカ「構わないわ」

グラナ「よし。まずは子供たちの保護を最優先。次いで侵入者の発見、捕縛だ」

ウラヌス「了解した」

グラナ「行くぞ!」

351 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 19:48:34.99 ID:NdYaZf4hP [34/70]
ダッダッダッ

グラナ「――なるほどな。お前たちは天樹院エルモアってバーさんに引き取られて育てられてるってわけか」

フレデリカ「そうなるわね。私たちはみんなそんな感じ。ババ様はアタシたちにとって育ての親よ」

グラナ「……本当の親じゃねえとはいえ、まともに育ててもらえるってのは少し羨ましいな」

フレデリカ「え……?」

グラナ「ちゃんと育ててくれた人間が居るってのは羨ましいなって言ったんだよ」

フレデリカ「? アンタには親が居ないの?」

グラナ「居ることには居る……んだろうな。だが俺は生みの親の顔なんて見たことはない」

フレデリカ「それじゃあアンタはもしかして……ずっと1人で?」

グラナ「ああ、いや、なんていうかな、俺の場合はちょっと特殊でな……
    ちっ、こんな話するつもりじゃなかったんだが……ま、ちょっとだけ俺の話に付き合ってくれや」

352 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 20:00:20.81 ID:NdYaZf4hP [35/70]
グラナ「俺はな、とあるサイキッカーの実験施設で生まれたんだ。そこに関わる人間どもの欲望を満たすために俺は作られたんだ。
    人為的に選出された卵子と精子を人工授精、遺伝子操作をされて試験管から誕生したサイキッカー……それがこの俺だ」

フレデリカ「まさか……! 人造サイキッカー……!?」

グラナ「まあ平たく言えばそうなるわな。実験体の俺は胎児の段階から何度も精神操作や調整、投薬を受けて育ったらしい」

フレデリカ「ひどい……」

グラナ「物心ついたころにはいつも実験ばかりの毎日だったぜ。毎日、毎日毎日、同じような実験ばかりだ。
    得体の知れねえ、でっかい装置を頭に被せられてな。……頭ん中、グチャグチャにされるんだよ。俺はずっとヤツらの玩具だったんだ」

フレデリカ「……アンタは親を恨んでるの?」

グラナ「生まれの親をか? それとも育ての親をか? ……まあ、どちらにせよ恨む親が誰かすら分からねえんだから恨みようがねえな。
    だが――この俺に生と力を授けてくれた連中には感謝してるぜ」

フレデリカ「……」

グラナ「ま、散々俺で遊んでくれた礼に俺を作り出した連中は施設ごと潰してやったさ。俺の手で全てを清算した。
    生憎俺は感情が乏しかったもんでな。命乞いしてるヤツに何をしても感じるものなんてこれっぽっちも無かった」

フレデリカ「……そっか」

353 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 20:04:44.87 ID:NdYaZf4hP [36/70]
フレデリカ「アタシは逆にアンタが羨ましいわ」

グラナ「あァ? こんな生い立ちの化物がか?」

フレデリカ「アンタにはもう恨む相手も恨まれる相手もいないからよ。アタシなんて……あの日からママにずっと――」

グラナ(母親……?)

フレデリカ「いつもいつも……私だけ……!!」グッ……

グラナ「……別に無理に言わなくてもいいぜ」

フレデリカ「え?」

355 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 20:10:48.17 ID:NdYaZf4hP [37/70]
グラナ「俺はお前の傷痕を見せろとは言ってねえ。俺の暗い過去を聞いたから自分の暗い過去を話さなきゃいけねえなんてルールなんてのも無い」

フレデリカ「でも、それじゃ――」

グラナ「さっきのは俺のは独り言だ。そうだろ? いや、そういうことにしておけ……。な?」

フレデリカ「……! ……うん」コクリ

グラナ「さーて、さっさと全員探し出さねえとな」

フレデリカ「待って。……アンタの名前は?」

グラナ「天修羅のグラナ。実験体だった頃は別の名前で呼ばれてたがな。今はグラナだ」

フレデリカ「アタシは天樹院フレデリカ。魅惑の女スパイ、セクシー・ローズのフレデリカよ」

グラナ「魅惑……? セクシー……? ……え?」チラッチラッ

フレデリカ「なッ! 何よその反応は! これからグングン成長すんのよ! これから!! きっと10年後にはすごいことになるんだからッ!!」

グラナ「まぁ、期待しないで待っててやるよ。せいぜいがんばりなフー。ハハハハ」

フレデリカ「アンタ何となくだけどアゲハに似ててムカつくわ……!! それと気安くフーって呼ぶなぁ!」

360 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 20:23:47.73 ID:NdYaZf4hP [38/70]
弥勒「行方不明の子供たちは?」

ヴィーゴ《さっきエリアCの第1カメラを通った……間違いない。二人で移動している》

弥勒「そうか。今の位置だと……グラナ、お前らが一番近いな。急行しろ」

グラナ《了解した》

フレデリカ《マリーたちが見つかったの!?》

グラナ《だいたいの場所をつかんだ。急ぐぞ!》

363 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 20:34:44.28 ID:NdYaZf4hP [39/70]
――――
――

マリー「みんな……どこに行ったんだろう……」トボトボ

ヴァン「うー?」

ダッダッダッ

フレデリカ「いた! グラナ! あそこよ!!」

グラナ「でかしたぞ!! おい、お前たち!!」

フレデリカ「マリー!! ヴァン!!」

ザッ

マリー「フーちゃん!! ……と、だ、誰……?」ビクッ

364 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 20:47:15.00 ID:NdYaZf4hP [40/70]
フレデリカ「大丈夫。アタシ達の味方よ。それよりマリー、よく聞きなさい。今、このオバケ屋敷には変なヤツが侵入してるの」

マリー「えっ、変なヤツって……?」

グラナ「とりあえず俺達の方が一歩早かったみてえだな」


グラナ《弥勒、朗報だ。子供らを無事に確保したぞ》

弥勒「ご苦労。そのまま侵入者を探し出して――」

グラナ《……!! いや、その手間は省けたみてえだ》

弥勒「なんだと?」

グラナ《フレデリカ、マリーとヴァンを連れて下がってな》

368 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 20:55:23.09 ID:NdYaZf4hP [41/70]
ズズズズズズ……

不審者「ケ……ケケケ」

グラナ「……テメェか。ここに入ってきた不審者ってのは」ギロッ


ヴィーゴ《み、弥勒》

弥勒「どうした、侵入者を見つけたか?」

ヴィーゴ《違う。別の侵入者だ》

弥勒「何だと!? また誰かが侵入してきたのか!?」

ヴィーゴ《今度はすり抜けたんじゃない。ドアを壊して入ってきた。……どうする?》

弥勒「そっちはお前が足止めしろ。殺すなよ」

369 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 21:02:30.66 ID:NdYaZf4hP [42/70]
グラナ「おい。テメエは何者だ? 答えろ」

不審者「なにやら強い波動を感じると思ったが……お前らか」スウッ

グラナ「そこで止まれ。それ以上こっちに近寄るな」

不審者「クク、俺に挑むつもりか。これは面白いヤツを見つけたな、久しぶりだ」ニタニタ

グラナ(何を言ってるんだコイツ――)

不審者「そうだ、俺が何者かって聞いてたな? いいだろう、特別に教えてや――」

ヒュッ!! ドゴッ!!

グラナ「……警告はした」

不審者「か……ッ!!」

グラナ「不意打ちみてえな真似して悪いな。だが警告を無視したテメェが悪い。大人しくそこで寝てやがれ」

フレデリカ「え? も、もう終わったの? 今、すごい勢いで板切れをぶつけた……?」

グラナ「ああ。俺の得意技はテレキネシスだからな。これくらいチョロイもんだぜ。後はコイツをふん縛って戻ればいいだけだ」クルッ

371 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 21:09:10.18 ID:NdYaZf4hP [43/70]
グラナ「んー、縛れる縄として使えそうなもんがねえなぁ。しょうがねえ、ソイツが気絶している間に運んじまうかァ」ガサゴソ

スウッ

フレデリカ「グラナ! 後ろ!!」

グラナ「!? なに――」

ブンッ!! バコッ!!

グラナ「……ッ!?」ヨロッ

侵入者「雑魚が……!! オレに不意打ちなんかかましやがって……!!」

フレデリカ「グラナ!!」

372 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 21:13:47.44 ID:NdYaZf4hP [44/70]
グラナ「……ってーな、このヤロー。人の頭を思いっきり殴りやがって」ギロッ

不審者「!!」

グラナ「あァ……? おかしいな。さっき確かにそこの板切れをぶつけて気絶させたと思ったんだが……何しやがった?」

不審者「今のが全然効いてないのかよお前ッ!?」

グラナ「質問してるのは俺の方だ。答えろ。俺の攻撃をどうやってかわした?」

不審者「かわしただと? 何を言ってるんだお前は? 俺はかわしてなんか――」

グラナ「……」クイッ

ヒュッ!! ガスッ!!

グラナ「へっ、同じ手に2回もひっかかるなんてマヌケな奴だ。……今度こそ終わりだ」

375 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 21:20:18.70 ID:NdYaZf4hP [45/70]
不審者「……」ニヤッ

フレデリカ「えっ!?」

不審者「ヒヒヒヒ、何が終わりだって?」

グラナ(! コイツ――!?)

ズズ……

グラナ(今のは直撃だったはずだ。俺の攻撃が外れたんじゃねえ、コイツが俺の攻撃を……すり抜けやがったのか?)

不審者「驚いてるな。考えてるな? まあ無理もないか、ケケケ」ニヤニヤ

グラナ「なるほど、透過能力を持ったサイキッカーか。それなら合点が行くぜ。だがなァッ!」ダッ

不審者「!!」

グラナ「俺のライズについて来れねえんじゃ相手にはならねえな」

不審者(一瞬で俺の懐に……ッ!?)

グラナ「……この間合いだ、諦めな」ブンッ

376 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 21:26:54.61 ID:NdYaZf4hP [46/70]
スカッ

グラナ「!? なにッ!?」

不審者「ハハハハハハ!! どこを殴っている!? キサマごときが俺に触れるとでも思ったのか!?」

グラナ(今のは完全に虚を突いてた! すり抜けたワケじゃないのか!? ヴィーゴの潜航師と似てるようなものかと思ったが……別系統の能力か――!)

不審者「今度はこっちから行くぞッ!」

ボッ

フレデリカ「炎……! パイロキネシス!?」

380 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 21:34:17.55 ID:NdYaZf4hP [47/70]
ボッ

グラナ「!」バッ

ボウウウ……

不審者「かわしたか。意外と身軽だな」

グラナ「フン。どんなものかと思ったが随分とチャチな火種だな。そんなんじゃ何万発当ててもこの俺は殺れねーよ」

不審者「なにをッ!!」ギリッ

グラナ(本人が意識していなくとも常時透過可能な能力だとしたら厄介だ。そうだとするとスタミナ切れを狙うしかねえ)

ボウッ!!

グラナ(……いや。だがまだ断定するには早すぎるな。能力を探っていることを悟られずに様子見するのが賢明か)

382 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 21:44:46.01 ID:NdYaZf4hP [48/70]
不審者「雑魚が減らず口を叩きやがって!! 望み通り灰にしてやる!」ボッ!!

グラナ「ハッ! んな遅いのにあたるかよ!!」バッ

不審者「!!」

グラナ「っせい!」ブンッ

スカッ

グラナ「……! また空ぶったか!」

不審者「こんなにも簡単に……!! 俺の炎がこんなヤツに……ッ!」ワナワナ

グラナ(ヤツめ……。『こっちからは触れないがあっちからは触れる能力』……だとしたら随分と都合のいい能力だな。
    あとは『俺が見ているのは奴の幻影で本体は別のところに隠れてる』……そんな能力もありえる、か)

不審者「クソッ! 屈辱だ……! 俺がこんな……!!」

グラナ(ともかくダメージを与えられないんじゃ倒しようがねえ。もうしばらくは様子見か)

386 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 22:00:09.56 ID:NdYaZf4hP [49/70]
コツ……コツ……

???「うへー。こりゃあ、いかにも出ますってフンイキだなあ……」

ズズズズズ

???「なんだ!?」

ヴィーゴ「ま、待て。そこの黒いヤツ」

???「誰だ、アンタ?」

ヴィーゴ「俺は鬼瀬鋭二。今は……ヴィーゴだ……」

???「壁から沸いて出る人間なんて初めて見たなぁ。……で? そのB5さんとやらが俺に何の用だ?」

387 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 22:03:21.93 ID:NdYaZf4hP [50/70]
ヴィーゴ「B5じゃなくヴィーゴだ……。俺はお前を足止めしたい。それだけ……」チャキッ

???「! あっちゃー。初対面の人間相手にいきなり光物を抜くのかアンタ。こりゃあまたヤバそうな奴と出会っちまったぜ。……ったく」スッ

ヴィーゴ「だが殺すなと言われている。大丈夫、動けなくなるよう切るだけ。痛くないよ……我慢……」

???「……? 殺すなと『言われてる?』だと……? 誰にだ? 俺は誰かに恨まれるようなことをした覚えがまったくないんだが」

ヴィーゴ「それを答える必要は……無い!」シャッ!!

???「っと! あぶねーあぶねー。……どうも話し合いで解決できるような雰囲気じゃなさそーね」

391 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 22:16:25.59 ID:NdYaZf4hP [51/70]
ガゴッ!!

不審者「火がダメならこのまま殴り殺してやる!!」ブンッ

ガッ!! ガスッ!!

グラナ(パイロキネシス……透過能力……普通は同時に使えるようなPSIじゃねえ。だが……炎、光を利用して幻影でも作ってるってんなら別か)

不審者「ハハハ! どうした!? ガードしてるだけじゃジリ貧だぞ!? 打ってこいよ!!」

グラナ(……! もしかしたら攻撃する瞬間だけこいつもろもろが実体化するんじゃ? だったら……)

不審者「この腰抜けめ!!」ブンッ

グラナ(奴の打撃に合わせて、カウンターを――)グオッ

不審者「!!」

ゴシャッ!!

392 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 22:20:05.02 ID:NdYaZf4hP [52/70]
グラナ「……ぺっ。口ん中、切っちまったぜ」ペッ 

不審者「当たった! お前の顔面に直撃だぁ……! ヒヒヒヒ」

フレデリカ(こいつの……さっきのパイロキネシスっぽいけど……何かが違う……?)

グラナ「ちっ、結局これも違うのかよ。んなら――」バッ

ゴゴゴゴゴゴ……

グラナ「お前ら! 伏せてろ!!」

フレデリカ「!! マリー! ヴァン!! 伏せて!!」バッ

グラナ「かああああッ!!」ドドドドドド!!!

ブオッ!! ブオッ!! ズガガガガガガ!!!!

不審者「なんだッ!?」

ドガガガガガガガ!!!

マリー「きゃあッ!!」

397 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 22:27:26.25 ID:NdYaZf4hP [53/70]
シャッ!!

???「あぶねえッ!」サッ

ヴィーゴ「う……動くな。手元が狂って……変なところを切ってしまう」チャキッ

???「ハイそーですかと棒立ちになって切られるほど俺は優しかねーんだよ」

ヴィーゴ「……」トプン

???「何!? 地面に沈んだ……!? どこへ……!?」

ザバッ

???「!! 下かッ!」

ヴィーゴ「足に決めた」シャッ

???「ち……!!」バッ

401 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 22:34:49.64 ID:NdYaZf4hP [54/70]
ヒュンッ!!

ヴィーゴ「!? 今の移動速度は……何だ?」

???「いやあ、今のは危なかったわマジで。なあ、ホントにどけてくれない? 俺も怪我したくねーし、アンタも怪我したくねーだろ?」

ヴィーゴ「断る。ここから先に行きたければ……俺を倒してから行け」

???「はぁ……。やっぱダメか。アンタも普通の人間じゃ無いみたいだし……いっちょやるとしますか!!」スッ

ビリッ

ヴィーゴ「……ん? ま、待て……それは……?」

???「? 何だよ?」ピタッ

ヴィーゴ「その口調、その格好、その構え……そしてそれは……!! お、お前は……!! まさか――!!」カラン

???「んん?」

404 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 22:41:33.22 ID:NdYaZf4hP [55/70]
パラパラパラ……

グラナ「……けっ、これでもダメか」

不審者「ククク。何をやっても無駄だ」

グラナ(仮に本体がどこかに隠れてるのであれば今の攻撃で何かしらのリアクションはあるはず……。
    だが、ヤツに変化はない。ってことは、そこら辺に隠れてて俺に幻影を見せるような能力ではないってことだ)

不審者「しかし、棒切れを操って飛ばすとは妙な術を使う奴だ」

グラナ「あァ? 術だと? なに言ってんだテメー」

不審者「ん? その口ぶりからすると術ではないのか。そうか……」ブツブツ

グラナ(テレキネシスを知らない? まさかコイツ、サイキッカーじゃない……?)

405 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/09/30(木) 22:43:01.18 ID:NdYaZf4hP [56/70]
不審者「まぁそんなことはどうでもいいか。いい加減、悪足掻きは止めて俺に大人しく魂を食わせろ……。クヒヒ」

グラナ「魂を食うだと? さっきから何ワケのわかんねえことほざいてやがんだ? 寝ぼけてんのか?」

不審者「寝ぼける? 寝ぼけてるのはお前の方だろう? まさかお前、生者のクセに魂が無いとか言うんじゃないだろうな?」

グラナ「ふざけんなよ。人間にんなもんあるわけねえだろうが」

不審者「ク……! ハハハハハ!!」

グラナ「何がおかしい?」

不審者「魂の存在も知らないのか! 今時の人間は!! これは傑作だ!!」ゲラゲラゲラ

グラナ「魂だなんて、そんな与太話なんざ――」

ピクッ

グラナ(いや待て……! 魂を食う……? 魂の存在……?)


――――――

ヴィーゴ「この世界にはインハクと呼ばれる悪い幽霊たちがいてな……。人間を襲ってその魂を喰らうんだ。
     奴らは一方的に人間に干渉出来るが、普通の人間は触ることさえできない……」

――――――


グラナ(ありえない……と思いたいがこれは……)


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