スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
美琴「とある主人公(ヒーロー)の友情物語?」2
1 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/13(金) 22:25:06.41 ID:Yc8ARsg0 [1/4]
これまでのあらすじを各編形式で纏めてみました。
これまでのあらすじを各編形式で纏めてみました。
2 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/13(金) 22:27:51.69 ID:Yc8ARsg0 [2/4]
『再会編(プロローグ)』…夜の学園都市で「最強」と「最弱」は再び巡り会う
『日常・友好編』…一方通行は上条との今後の接し方について考える。美琴との和解もここで完了。最終的には上条の
そげぶで二人に友好が結ばれた。
『妹襲撃未遂編』…二人を慕う妹達が暴走しかけた珍事件。17600号と10032号のおかげで不発に終わった。
『復讐編』…気を操る医者のおかげで復活を果たした垣根帝督が美琴や一方通行に牙を剥く。
『入院編(1)』…垣根との戦いで負傷した一方通行は病院で半日ほど過ごすことに……。見舞いに来た御坂妹に一方通行は
ダブルデートを持ちかける。
『家出編』…昨日の敵は何とやら。急遽垣根と同居を余儀なくされた一方通行は頭を抱えた。その後、打ち止め関連で揉めて
家出してしまう。
『来客編』…上条の部屋へ転がり込んだ一方通行は上条にニ~三回は殴られる。その後、迎えに来た垣根とともに帰宅。
『二組交流(ダブルデート)編』…遊園地で美琴、上条、御坂妹、一方通行の四人は楽しい時を過ごす。が、その後禁書目録は……。
『誘拐編』…謎の男に禁書目録が攫われた。上条は魔術師を推測するが…?
『突入編』…禁書目録を攫った男のアジトへ乗り込む上条と一方通行。最強と最弱のタッグがここに結ばれた。※オリキャラ&オリ設定有り
『共闘編』…能力とも魔術とも違う未知の力に苦戦する上条と一方通行。しかし最後は黒翼を生やした一方通行が戦いを終わらせた。
『真相編』…グループメンバーが合流し、土御門から事の真相を告げられる。その後、一方通行は上条を見殺しにしかけた自分を責める。
『入院編(2)』…戦いで負傷した上条はいつもの病院へ。垣根が初春や美琴と再会したり一方通行が20000号に襲われかけたりと、
終始ドタバタ。この時から、複雑な人間関係へと後に発展してしまう事に気づく者は誰もいなかった…。
『各交際編』…上条・一方通行・垣根はそれぞれの相手(一部コブ付き)と仲良くお出かけ。その目的地はなんと同じ水族館……。
※元アイテムメンバーのその後も有り
3 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/13(金) 22:29:26.79 ID:Yc8ARsg0
『姉妹喧嘩編』…想いがすれ違った美琴と御坂妹はついに大喧嘩へと発展してしまう…。が、上条によって何とか治められた。
※美琴崩壊有り
『告白編』…美琴がついに上条へ想いを告げた。上条は答えを一時保留。その一方で垣根も……?
『苦悩編』…とうとう初春に正体を明かした垣根だが、いつの間にか彼女に惹かれていた自分に気づき、激しい苦悩に苛まれる。
上条と一方通行は事情を知り、何とかしてやろうと目論むが、その前に課題やれよ上条。
『作戦編』…垣根と初春。想いは同じなのにすれ違ったままの二人……そんな二人のために、友人達は立ち上がった。
過去スレ
美琴「とある主人公(ヒーロー)の友情物語?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1278237077/ 前スレ
一方通行「友達って最高だよなァ」上条「まぁな」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1277636346/l50 4スレ目
上条「ブラック苦ッッ!」一方通行「…」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1276074792/l50 3スレ目
一方通行「足引っ張ンなよ三下ァ」上条「おう!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1275384032/ 2スレ目
一方通行「友達になってやンよ」上条「ハイ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1273633562/l50 1スレ目
各編によって長さはバラバラですがご容赦を…。
荒らしの関係で6スレ目になっちゃいましたが、一応これが最終スレになります。
その他、矛盾やおかしい所てんこ盛りですがお許し下さい。
10 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/14(土) 18:30:32.81 ID:1F6NvRs0 [2/26]
――――黄泉川家
垣根「―――ただいまーっと…」
禁書「お邪魔するんだよ!」
玄関で靴を脱ぐのは垣根帝督と禁書目録。時刻は夕食には頃合いの時間だ。
禁書「かきね、ところでいつ電話するのかな?」
垣根「今日はやめとくよ。……昨日の今日だしな。彼女にも少し時間が必要だろ」
禁書「かきねはとうまと違って女の子の心を分かってるんだね! 私感動しちゃったかも」
垣根「明日の夜に電話する。何て言われても、覚悟は決まったからな。当たらずに潜るなら当たって砕けろってヤツさ」
禁書目録と話しながらリビングへ向かう垣根はサッパリとした良い表情をしていた。どうやらすっかり迷いは消えたようである。
もっとも、明日電話を掛ける前に再会を余儀なくされる未来はさすがに想定してはいないが……。
禁書「あー、お腹すいたんだよぉ。よみかわのご飯美味しいから早く食べたいな!」
―――で、何故禁書目録がさも当然のようにファミリーサイドの黄泉川家まで垣根と共に戻ってきたのか……それは三十分ほど前に一方通行から
来た着信音から始まる―――。
11 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/14(土) 18:32:16.21 ID:1F6NvRs0 [3/26]
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『~~~♪』
小萌に別れを告げてアパートを出た垣根と禁書目録は、そろそろ上条宅へ向かおうかと歩き出した。
垣根が一方通行に電話しようと携帯電話を取り出した…と同時に着信を告げるライトと音が携帯電話から発せられたのだ。
垣根「―――お? ちょうど来やがったか……」ピッ
迷うことなく通話ボタンを押して耳に当てた。
一方通行『おォ、メルヘン』
垣根「よう、かいわれ大根」
一方通行『ぶっ殺すぞ』
垣根「コッチのセリフだ」
一方通行『………へェ……ちったァ生気が戻ったみてェだな』
12 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/14(土) 18:34:31.61 ID:1F6NvRs0 [4/26]
垣根「まぁな、心配かけた」
一方通行『そンならイイ。ところでよォ、オマエ今シスターと一緒だよなァ?』
垣根「あぁ、そうだが……」
一方通行『そのままシスター連れて帰って家に泊めてやれ。俺は今日三下ン家に泊まっから帰ンねェし』
垣根「は? またイキナリな話だなオイ……」
一方通行『クソガキや黄泉川には適当に言っとけ。シスターがいるから寂しくはねェだろォ? ってなァ』
垣根「まぁ良いけどよぉ……。じゃあインデックスはウチに泊めるぞ?」
一方通行『おォ頼むわ。それともォひとつ』
垣根「何だ?」
一方通行『明日の十時半に○○公園に来い』
垣根「……なんで?」
一方通行『傷心中の残念なオマエに、明日はこの俺が直々に付き合ってやるっつゥンだよ。文句あンのかァ?』
垣根「はぁ………そんな誘い方があるかよ…」
13 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/14(土) 18:37:09.24 ID:1F6NvRs0 [5/26]
一方通行『グダグダ言ってンじゃねェよ。とにかく明日十時半な? ドタキャンなンざしやがったらブチ殺すぞ』
垣根「もう誘いじゃなくて脅迫になってんじゃねえか……。わぁーったよ。行きゃあ良いんだろ行きゃあ。ったく…」
一方通行『それでイイ。あと、時間ぴったしに来いよ。遅れたり早く着いたりしても殺す』
垣根「は!? おい何だそりゃあ!?」
一方通行『理由は簡単だ。オマエ如きがこの俺を待つなンざ百年早ェ。そしてこの俺がオマエ如きを待つ、なンてのも有り得ねェ。以上だァ』
垣根「以上だ、じゃねェェえええ!! 何だよそのジャイ○ン以上に滅茶苦茶なクソ理論は!?」
一方通行『うるせェ、とにかくそォいう事だ。逃げンじゃねェぞォ? カッキーさァン?』
垣根「(ブチッ)……テメェ………そーかそーか、喧嘩売ってんだな? そーなんだな!?」
一方通行『ハイ、せェかァァい♪ ま、怖くて来れないってンならそれも仕方ねェけどなァ。ひゃはっ』
垣根「んだとぉぉ……誰が」
一方通行『っつー訳だから、明日は時間通りに来いよォ? 垣根くゥン?』
垣根「わかった。明日の朝一にテメェのツラぁ吹き飛ばすわ」
一方通行『ほォー、そりゃあ楽しみだなァ。ンじゃ、明日よろしくゥ―――』プチッ、ツー、ツー…
垣根「……あんの野郎ぉぉ…」ピキキ
14 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/14(土) 18:39:58.01 ID:1F6NvRs0 [6/26]
久しぶりに携帯電話を握り潰しそうな程コメカミを揺らす垣根だったが、この携帯電話を今壊してしまう訳にはいかないので何とか堪えた。
禁書「かきね……?」
垣根「インデックス、今日は家に泊まろうかぁぁ…?」ピクピク
禁書「ひっ……」
引きつった顔で禁書目録の方を向く垣根。その作られた笑顔に禁書目録は思わず二~三歩ほど後ずさった……。
垣根(上等だ。こちとら吹っ切れてっからなぁ、……飾利に電話掛ける前に一方通行のクソ野郎と馬鹿みてぇに暴れておくのも悪くねぇ……)
垣根(なおかつ、ムカついた)
垣根(今度と言う今度はあの『かいわれ野郎』を頂点の椅子から下水道の底にまで叩き落してやる!!)
二つの目と全身に怒りの炎を宿す垣根。実はこれも全て一方通行の計算通りだった―――。
15 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/14(土) 18:42:33.70 ID:1F6NvRs0 [7/26]
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―――上条宅
一方通行「―――よし……こンなモンで良いだろォ」
上条「あぁ、大体オッケーだ。……けど、さっきの電話で大丈夫なのか?」
一方通行「ああでも言わねェと、あの馬鹿の事だ……まず時間通りには来ねェだろォぜ」
上条「そうか…?」
一方通行「多少遅れる分には構わねェが、早く出て来られでもしたら面倒だかンなァ。あそこまで挑発しときゃあ問題ねェ。
それによォ、シケタ気分で来られるよりは、少しでも熱くなった気分で来た方が成功率も跳ね上がるってモンだろォが」
上条「ま、まぁそうかもな…」(さすがルームメイト……性格を完全に把握してやがる…)
一方通行「さァて、そンじゃ俺らも『小道具』の買い出しに行くとすっかァ」
上条「おう、ついでに夕飯もな」
一方通行「晩飯どォすンだ?」
上条「スーパー行って食材買わねえと……」
16 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/14(土) 18:45:11.70 ID:1F6NvRs0 [8/26]
一方通行「今からじゃ時間掛かンだろォが。もォ外で済ませちまおォぜ? オマエは何が食いてェンだ? 夜は俺が奢ってやンよォ」
上条「……何でもいいの?」
一方通行「オマエ、誰に向かって遠慮してンだァ?」
上条「……上条さん、一度で良いからお寿司が食べてみたいんですが……」
一方通行「寿司か。まァたまには良いかもなァ。よし決まり。ならとっとと行くぞ」
上条「!?」
一方通行「ンだァそのツラはァ? まさかオマエ、寿司如きで感動するほど飢えてンのかァ?」
上条「い、一食に千円以上の贅沢が俺にできると思うか!?」
一方通行「……言ってて虚しくならねェか?」
上条「……うん」
一方通行「腹いっぱい食っとけ」
上条「………うん」
一方通行「今日はもォ遠慮すンな」
上条「―――ゴチになりますッッ!!」
こうして、上条当麻と一方通行は外に出かけて行った。……ちなみに、回転する寿司屋でなかった事に上条が
感動を覚えたのはまた別の話である。
17 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/14(土) 18:46:49.38 ID:1F6NvRs0 [9/26]
―――――
―――???
御坂妹「―――ここなら良さそうですね……とミサカは正直な感想を漏らします」
黒子「待ち合わせ予定場所からも近いですし、申し分ありませんわ」
御坂妹と白井黒子はとある廃屋に来ていた。近々取り壊し予定らしく、中は少々荒れているが、決戦場として不足はない。
美琴「―――お待たせー!」
倉庫裏の分電盤をいじっていた御坂美琴が姿を見せた。その表情は不敵な笑みを浮かべている……。
黒子「お姉様、どうでした?」
美琴「問題ないわね。さすがに電気は通ってなかったけど、私に掛かればチョロイチョロイ♪」
黒子「さっすがお姉様♪」
御坂妹「グッジョブですお姉様。とミサカは称賛の言葉を送ります」
美琴「へへへへ……」
18 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/14(土) 18:51:23.35 ID:1F6NvRs0 [10/26]
黒子「これで、『照明』の問題は解決ですわね」
美琴「そうね、ただ……ムードにはちょーっと欠けるかなぁ……」
黒子「贅沢も言えませんわね。この付近にはここ以上の場所はありませんでしたし…」
御坂妹「その辺は『照明』でカバーするしかありませんね。とミサカは意見します」
美琴「うん、あとは……明日ね。打ち合わせ通りに行けば良いけど」
黒子「絶対に成功させてみせますわ」
御坂妹「何だか燃えてきました。とミサカは武者震いが止まりません」
美琴「―――よぉし!! そんじゃ、いっちょ気合入れますかぁ!!」
『―――ファイト!! オー!!』
――薄暗い廃屋に若い少女達の元気な声が響いた。
美琴「さっきアイツ(上条)から『垣根さんの呼び出しは成功した』ってメールが来たから、後は佐天さんが初春さんを
呼び出すだけね。黒子、初春さんは明日大丈夫なの?」
黒子「えぇ、その心配は要りませんわ。幸いなことに明日はわたくしも初春も欠勤ですの」
19 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/14(土) 18:53:27.98 ID:1F6NvRs0 [11/26]
美琴「そう……」
黒子「ま、もっとも……初春のことですから、どうせ仕事なんて手についていないでしょうけど……」ニヤニヤ
美琴「安易に想像できるわね……」
黒子「今ごろ、生気の欠片も無い表情で黙々と処理業務をしている内に、うっかり飲み物でも零してしまっているのがオチですわ」
―――――
―――
―――風紀委員第一七七支部
初春「………」カタカタ
固法「あ、初春さん!」
初春「ふぇ……きゃっ!?」
黒子の予想通り、虚ろな顔で処理業務をしていた初春飾利はデスクから落ちかけたカップに気づかなかった。落ちたカップは音を立てて割れ、
中身のココアで床はビショビショに濡れる。そんな現状に唖然としている初春に先輩風紀委員の固法美偉は心配そうに声をかける。
20 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/14(土) 18:55:13.58 ID:1F6NvRs0 [12/26]
固法「大丈夫……?」
初春「す、すみません! すぐ拭きますから!」
我に返り、雑巾を取りに行こうと席を立つ初春を固法が止める。
固法「初春さん、やっぱり今日はもう帰っていいわよ?」
初春「そ、そうはいきませんよ!」
固法「ううん、今日は事件もないし……あとは私だけで平気だから」ニコッ
初春「で…でも!」
固法「今日の初春さん、見てて辛そうよ? ゆっくり休んだ方がいいわ」
初春「………」
『~~~♪』
それでも反論しようとした時、初春の携帯電話が鳴り出した。初春は「すいません」と断りを入れて電話に応じる。
21 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/14(土) 18:56:50.88 ID:1F6NvRs0 [13/26]
初春「――もしもし、佐天さん。私、今仕事中なんですけど…」
佐天『ゴメンゴメン、あのさ~…明日って暇?』
初春「え?……ゴメンなさい。明日も――」
固法「初春さん、貴女は明日お休みでしょう?」
初春「――えっ…?」
佐天『休みだよね? 初春?』
初春「こ、固法先輩!?」
携帯電話を耳から離して固法を見る初春。固法はひとさし指と親指で丸を作ってニコッと笑いながらウィンクした。
初春「先輩……」
固法の目は『良いから行ってこい』と告げていた。今日の自分の様子を見ていた固法がそう判断したのだ。と初春は思った。
初春は固法に申し訳なさそうな笑顔を向けて電話に戻る。
22 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/14(土) 18:58:48.19 ID:1F6NvRs0 [14/26]
初春「もしもし、……明日は大丈夫、になりました」
佐天『さっすが初春~♪ じゃあさ、明日の十時に○○公園集合で良い?』
初春「え? なんでですか?」
佐天『初春と行きたい場所がその近くなんだよね~。ダメ?』
初春「はぁ……良いですけど」
佐天『おっしゃ決まり! じゃあ明日ね?』
初春「十時に○○公園ですね……。わかりました」
佐天『あ、そうそう初春』
初春「何ですか?」
佐天『絶対遅れちゃダメだからね?』
初春「?……わ、わかってますよぉ」
佐天『うん、よろしい♪ んじゃ、明日ね~』ピッ
通話を終えた初春は怪訝な顔で携帯電話を見る。
23 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/14(土) 19:00:32.30 ID:1F6NvRs0 [15/26]
初春「いつも遅れて来るのは佐天さんの方なのに……変なの」
固法(白井さん……。これで良いのよね?)
そんな初春に気づかれないように、固法は眼鏡越しに目を光らせて笑った―――。
―――――
―――
―――常盤台女子寮
美琴「――あ! 佐天さんからメールだ。……『標的(ターゲット)の誘導に成功』だって。プッ……アハハ♪ ノリノリじゃない」
黒子「どうやら上手くいったようですわね。固法先輩には感謝しなければ……」
美琴「固法さんに悪い事しちゃったな……」
黒子「そうですわね……。けど、固法先輩も初春を心配してくれているからこそ協力してくれたんですの」
24 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/14(土) 19:02:42.82 ID:1F6NvRs0 [16/26]
美琴「……上手くいくといいね」
黒子「ここまでやったんですもの。今さら後には退けませんわ」
美琴「うん!」
コチラのお嬢様二人も、だいぶノってきたようだ。
『明日が待ちきれない!』 彼女達の表情はそう物語っていた―――。
―――――
―――
―――黄泉川家
夕食―――
黄泉川「―――で、あの馬鹿は今日は帰らないってか?」
芳川「あらあら、まさかあの子が友達の家に宿泊する日が来るとはね……」
打ち止め「ミサカに何も言わないなんてずるいよーっ! ってミサカはミサカはやけ食いしてみたり!」ガツガツ
25 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/14(土) 19:05:06.50 ID:1F6NvRs0 [17/26]
垣根「あ! そんないっぺんに食ったら……」
打ち止め「―――むぐぐぐ!!……み、水ぅぅ……ってミサカはミサカは……大ピンチを、迎えてッ…みたり…ッッ!!」
黄泉川「あー、垣根。お茶とってやんな。全くダメじゃんよー? いくらあの馬鹿がいないからって…」
垣根「ホラ打ち止め」スッ
打ち止め「ゴクゴク…ッ! ぷはー! ってミサカはミサカは九死に一生を得てみたり♪」
垣根「まったく……」
禁書「大丈夫? らすとおーだー」モグモグ
打ち止め「うん……」ジー
垣根「……どうした?」
打ち止め「ううん、お兄ちゃんが飲み物くれた時……あの人がこの家に帰って来てくれた日の事思い出しちゃって。
ってミサカはミサカはもの思いにフケってみたり」
黄泉川「あ~、確かあん時も打ち止めが食べ物喉に詰まらせたっけか…」
芳川「で、あの子が文句言いながらも飲み物を渡したのよね。ちょうど今の貴方みたいに…」
垣根「そう言や、あいつ……一度この家から居なくなったんすよね?」
黄泉川「そ、去年の十月入る前だっけか……脳に傷負った一方通行と打ち止めを家で引き取ったんだが、その後に
一方通行は打ち止め置いてさっさと出て行っちまったじゃん。書き置きのひとつもなしでな。で、代わり
に来たのは長点上機学園から転入手続き完了の紙切れ一枚だけじゃんよ」
垣根「…………」
26 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/14(土) 19:06:55.23 ID:1F6NvRs0 [18/26]
芳川「正直、もう帰って来ないと思ってたわ」
黄泉川「帰って来るって聞いた時は驚いたがな……一度引き取った以上、ここはあいつの家でもあるから、拒否なんて選択肢は無かったじゃん」
打ち止め「その時からかな……。あの人がミサカにすごく優しくなったの。ってミサカはミサカは思ってみたり」
黄泉川「確かに。あの馬鹿が帰って来た日は奮発してご馳走にしたんだけどさー、ずいぶん変わってたから驚いたじゃんよ~」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(回想)
一方通行「―――まァ……っつー訳でよォ、悪いがまた世話ンなるわ」
黄泉川「ハイハイ、もう硬い話はそんくらいにしてメシにするじゃん! と、その前に……おかえり! 一方通行」パン
一方通行「うお!?」
芳川「おかえりなさい」パン
打ち止め「おかえりー! ってミサカはミサカはアナタとまた一緒に暮らせる事に喜びを抑え切れなかったり!」パンパン
一方通行「おォ……っつかオマエら、クラッカーはちっと大げさ過ぎンじゃねェのか?」
27 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/14(土) 19:08:35.64 ID:1F6NvRs0 [19/26]
黄泉川「何言ってる? 今日はお前の帰宅記念じゃん」
一方通行「そりゃどォもォ……」
芳川「あら、照れてるの?」
一方通行「ンなわきゃねェだろ!」
打ち止め「熱っ!」
一方通行「あァ!? 何してンだクソガキィ! 煙出てるトコは熱いに決まってンだろォが! 火傷してねェか? 見せてみろ」
打ち止め「うぅ……」
一方通行「………大した事ァねェが、一応氷で冷やしとかねェとなァ……。オマエもォクラッカー使用禁止」
打ち止め「えぇー!? ってミサカはミサカはショックを受けてみたりぃ!」
黄泉川・芳川「……………」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―――――――
黄泉川「……いきなりあれだからな~。さすがに言葉が出なかったよ」
芳川「最初はあの子の皮被った偽者かとさえ思ったわ。顔は凶悪なままだったから余計不気味よね」
28 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/14(土) 19:10:42.16 ID:1F6NvRs0 [20/26]
垣根(あいつ……ロシアで何があったんだよ……)
禁書「それでそれで? 続き聞かせて欲しいかも!」
黄泉川「あぁ、その後さぁ―――」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(回想2)
一方通行「しっかしよォ、しばらく見ねェ内にずいぶンと料理のバリエーション増えたよなァ。炊飯器で作ったモンだなンて
普通なら絶対思わねェぞ……。っつか、一番使用率の高い家電が炊飯器ってのが未だに理解できねェ」
黄泉川「何言ってるじゃーん? 解凍や保温しかできない電子レンジに比べたらよっぽど優秀じゃんよー」
一方通行「………その比較の時点ですでにおかしくねェか?」
芳川「まぁ良いじゃないの。今さらこの食事文化(スタイル)を変えるのも何か違和感があるし」
打ち止め「ミサカもいつか『炊飯器料理』をヨミカワに教わるんだー。ってミサカはミサカは密かな野望を明かしてみたり」
一方通行「悪い事ァ言わねェ。それだけは止めとけ」
29 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/14(土) 19:12:27.06 ID:1F6NvRs0 [21/26]
黄泉川「えー、何でじゃーん?」
芳川「ま、これからは一緒なんだし、君もまたその内慣れるでしょう」
一方通行「まァ、味的には問題ねェから別に良いけどよォ……」パク
打ち止め「あ! これおいしー♪」パクパク
一方通行「オイ! そンないっぺンに食ったら……」
打ち止め「むぐぐぐ……苦しい……水っ、水ーっ! ってミサカ…はぁ……ミサカは……た、助けてぇぇ……」
一方通行「あァーあ、言わンこっちゃねェな、ったくよォ……。オラ、これ飲め」スッ
打ち止め「んぐんぐ……ぷはー! ミサカふっかーつ♪ ありがとー! ってミサカはミサカはアナタに体でお返しー♪」ピョン
一方通行「オマ……ッ! メシ食ってる時に飛びついて来ンなァ!! オイ黄泉川ァ! 俺がいねェ間にガキの躾くらいちゃンとしとけェ!」
黄泉川「あぁん? 黙って出てったお前に言えた義理かぁぁーー!?」バッ
一方通行「…って、なンでオマエまで飛び掛かって来ンだよォォおおお―――――!?」
――――ドンガラガッシャーン!!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
30 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/14(土) 19:14:04.06 ID:1F6NvRs0 [22/26]
―――――
黄泉川「―――とまぁ、そういう訳……。酒入ってつい悪ノリしちまったじゃんよ。結局あの後は大惨事……」
芳川「ホント、手荒い歓迎会になったものよね……」
黄泉川「ちゃっかり避難してた癖によく言うじゃん?」
禁書「ねぇ、あくせられーたは結局どこに行ってたの?」
黄泉川「転入した学校の寮にいたらしいんだけど、その寮が潰れて行くトコなくなったから仕方なく帰って来たとか言ってたじゃん。
ま、帰って来るのは大いに結構なんだけどね」
垣根(潰れた寮なんてねえっつの……。あのボケ)
芳川「シスターちゃん、おかわりいる?」
禁書「いらない訳がないんだよ」
黄泉川「桔梗~、あんた最近やけに家事に積極的じゃん。熱でも出たじゃんか?」
芳川「自分の料理を人に食べてもらうのって……悪くないわね」
打ち止め「え!? これヨシカワが作ったの!? ってミサカはミサカは仰天してみる」
黄泉川「七割が私で、三割がコイツ」
垣根「それでもすげぇ! 確実に進歩してるじゃないすか!」
31 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/14(土) 19:15:29.08 ID:1F6NvRs0 [23/26]
芳川「フ……まさか、私自身が進化することになるとは思ってもみなかったわ……」
垣根(……今のは渾身のギャグなのか……?)
打ち止め(笑っていいのかミサカはミサカは分からなかったり……)
禁書「おかわりー♪」
その後も黄泉川家の談笑は続く。
禁書目録のおかげでこの日の黄泉川家の炊飯器はイキイキと稼動を続けていた。……まさにそう、燃え尽きるほどに。
―――――
―――
―――上条宅
一方通行「ふゥ、……オイ三下ァ。風呂空いたぞォ」
上条「おーう」
―――買い物と夕食を終えて部屋に戻った二人はマッタリと時を過ごしていた……。
32 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/14(土) 19:17:26.28 ID:1F6NvRs0 [24/26]
やがて風呂から上がった上条は寝巻きに着替えて居間に戻る。
一方通行「…………」
コーヒーを啜りながらテレビをぼんやりと見つめる一方通行に上条が声をかける。
上条「考えてみたらさぁ……俺らがこうして二人なのって、今までなかったんじゃねえか?」
一方通行「ン? そォかァ…?」
顔を上条に向けて思い返す表情を作る一方通行。やがてすぐに賛同した。
家出した時も、デートの時も、入院した時も……日常を二人だけで過ごした事は今まで殆どなかったのだ。
禁書目録が誘拐された時は非日常で意識する暇もなかったし、だとしたらこうした男二人の時間を過ごすのは友達宣言した
あの日以来という事になる。
一方通行「……言われてみりゃあそォかもなァ。いつもはクソガキやらシスターやらがいたし、俺とオマエだけってのは
確かに今までなかったわ」
上条「たまには悪くねえよな」
33 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/14(土) 19:18:31.13 ID:1F6NvRs0 [25/26]
一方通行「たまには、ねェ……。つっても、俺もオマエもコブ付きだからなァ。こォいう機会は少ねェっちゃ少ねェか」
それに対し、「そうだな。良い機会だ…」と呟いた上条は唐突に表情を変えて切り出す。
上条「なぁ、お前ってさ……」
一方通行「……あァン?」
上条「美琴の事……どう思ってるんだ?」
一方通行「……は? ナニ言い出すンだ急に……」
上条「実は、前から聞きたかったんだ……。一方通行、お前……本当は―――」
一方通行「………?」ゴクゴク
「――――御坂美琴の事が……好きなんじゃねえのか?」
一方通行「――ブゥゥッッ!!!?」
冗談抜きの真顔で問う上条に、一方通行は目を丸くする。
飲んでいたコーヒーは喉を逆流し、彼の口から鯨の潮吹きの如く盛大に噴射された―――。
46 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/15(日) 19:52:48.43 ID:IPW8i9M0 [2/22]
―――――
「―――お前、御坂美琴が好きなんじゃねえのか?」
―――今、確かにそォ言ったよなァこの三下はァ……? と、一方通行はコーヒーで茶色く染まった口をポカンと開けて呆然とした。
思わず首元のスイッチを確認する……。うん、通常モードだ。うっかりスイッチが切れた訳ではなさそうだ。言語能力にも支障はない。
なら……単なる聞き間違いの可能性は?
上条「だ、大丈夫か一方通行……ほら、タオル」パサッ
一方通行「………」フキフキ
とりあえず落ち着こう……と、ぶちまけたコーヒーを拭きつつもう一度尋ねた。
一方通行「……なァ三下よォ、今言った事もォ一度復唱してくンないかなァ?」
上条「え? 聞いてなかったのか? ……だから、お前は美琴が好きなのか。って訊いたんだよ」
一方通行「…」
……何故? コイツはどこで道を踏み外した? 何故にそのような結論に至る?
47 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/15(日) 19:56:40.45 ID:IPW8i9M0 [3/22]
本気で分からなかったから、ここは素直に訊き返す事にした。
一方通行「あのよォ、………なンでそォなるンだ? 分かるよォに説明して欲しいンだけど…」
上条「は? なんでって……お前、美琴に惚れてんじゃ……」
一方通行「だからなンでそォなるンだって訊いてンだよコッチはァァああああ!!??」
上条「へっ?……何? どぉいう事……?」
一方通行「コッチが知りてェよ!! なンで俺が超電磁砲に惚れてる設定になってンだよォ!? そンなフラグ立てた覚え皆無
なンですけどォ!?」
上条「………違うの?」
一方通行「脳ゆすいでやろォか? 頭ン中洗濯機みてェに濯いでやろォかァ!?」
上条「………あれぇ?」ポリポリ
バツの悪そうな顔で頭を掻く上条に苛立った一方通行はさらに問い詰める。
一方通行「一体いつオマエはンな的外れの幻想を抱いたンだァ? 喋るまでは寝かさねェぞ?」
上条「……えーっと……遊園地の辺りから……」
一方通行「理由ゥ」
上条「えっ……って、……あ! まさか……」
48 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/15(日) 19:59:42.58 ID:IPW8i9M0 [4/22]
一方通行「あァ? どォした?」
上条「誘ったのお前だったから……俺、てっきりお前が美琴とデートしたいんじゃねーかって思ったんだ……」
一方通行「ハイ、でっかい×(バツ)を上条くンにプレゼントォ~」
上条「そうか……お前、まさか………俺の……ために…」
一方通行「べ、別にオマエのためとかそンな訳じゃねェンだからなァ!! ただオマエらのくっつきそォでくっつかねェラブコメ劇場に
イイ加減うンざりしただけなンだっつゥのォ!!」
上条「……お前ってヤツは…」
一方通行「………あァン? オイちょっと待て。オマエ、なンでそれに気づいた? 朴念仁街道一直線のオマエが一人で気づく訳がねェ事
くらい知ってンだぞォ?」
上条「―――ぎくっ!!」
一方通行「どォやらまだ眠るのは早いよォだなァ。上条くンよォ」ニヤニヤ
上条「……あはは」
一方通行「オマエ、何隠してンだァ!? 洗いざらい喋れ!」
上条「は、はいっ! じ……実はその―――」
結局、美琴から愛の告白を受けた事を自供した上条くんだった……。
49 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/15(日) 20:03:39.67 ID:IPW8i9M0 [5/22]
一方通行「―――ンだよ。超電磁砲のヤツに言われてよォやく気づいたってのかァ?」
上条「いや……実は、ちょっと前からそうなんじゃないかなー…とは思ってたんだ」
一方通行「どっちにしろ気づくのが遅せェンだよ!」
上条「いやぁ……返す言葉もない」
一方通行「それで、オマエは何て答えたンだァ?」
上条「………言いたくないんですが」
一方通行「よし、そンじゃまずは血流操作して神経全部破壊してから脳の切開を――」スッ…
上条「喋る!! 喋るからスイッチに手を掛けないで!!」
一方通行「正直に言えよォ。後で長電磁砲に確認すっからなァ。ウソ報告後は人肉加工売り場直通ルートだぜェ?」
上条「すまん! 俺……お前が美琴の事好きなんだと勘違いして……それで」
一方通行「それでェ?」
上条「………お前の気持ち確認しようと思って一時保留した」
一方通行「人肉決定~♪」カチッ
上条「ま、待て! 待って! 待って下さい!!」
50 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/15(日) 20:08:08.86 ID:IPW8i9M0 [6/22]
一方通行の白い顔が赤くなる…。
一方通行「フザっけンなよ三下ァァ!! オマエこの俺に気ィ遣ったってのかァ!?」
上条「そうじゃねえんだ! ただ、お前に何の報告も無しで美琴と付き合う訳にも……」
一方通行「なンでだよ!? オマエの問題だろォがァ!! そこでなンで俺の許可を求めンだよォ!?」
上条「だから……お前も美琴が好きなんじゃねーかって勘違いしてたんだよ!」
一方通行「……待てよ。オマエ、今、『お前も』って言ったか? って事ァ……」
上条「―――あぁ、俺は美琴が好きだ。ひとりの女として」キリッ
一方通行「………だったら、何の問題もねェじゃねェか。なンで俺に気なンか回す必要があンだよ?」
上条「確かに美琴は好きだ。けど、お前も大事な友達だ。どっちかを失わなきゃ得られない幸せなら、俺はそんなの要らねえよ!」
一方通行「………いつもいつも思うンだけどよォ、オマエ自分で言ってて恥ずかしくはなンねェの?」
上条「何のことだ?」
一方通行「……もォイイ。つまり、オマエと超電磁砲が両想いなのは分かった。ならそれで良かったじゃねェか」
上条「……一応訊くけど、お前、俺に気を遣って身を引くとか、そんな事は考えたりしてねえよな?」
51 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/15(日) 20:13:18.63 ID:IPW8i9M0 [7/22]
一方通行「……俺がそンな人間に見えるってかァ? 三下ァ。オマエなかなか面白ェ事言うじゃねェか」
上条「本音で言えよ。確かに、お前に変な気を遣ったのは悪かったと思ってる。だからって、お前が身を引くのは間違いだ」
一方通行「じゃあ、仮に俺が超電磁砲に惚れたっつったら……オマエはどォしたンだよ?」
上条「そん時は……決まってんだろ?」
一方通行「あァ?」
上条「恨みっこなしで勝負すんだよ。どっちが美琴と付き合っても後悔しないようにな」グッ
笑って拳を握る上条だが、一方通行は冷めた視線を向ける。
言ってることは格好良いが、このパターンには似合わないセリフだった…。
一方通行「超電磁砲がオマエに惚れてる時点で勝負はついてンじゃねェか」
上条「そういうハンデをなしにするために、まずは美琴が俺に抱いてるイメージ(幻想)をブチ殺せば良い」
一方通行「オマエってさァ……」
上条「ん?」
一方通行「……本っっ当に、馬鹿だよなァ」
上条「わ、分かってんだよそんな事ぁ! だって仕方ねぇじゃねーか! 一方的にどっちかを選べとか言われたって、どーせ俺にはそんなの
できっこねーんだから!」
52 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/15(日) 20:15:40.96 ID:IPW8i9M0 [8/22]
一方通行「……安心しろよ。オマエに気なンて遣わねェ。超電磁砲はタイプの女じゃねェしな」
上条「……………」
一方通行「さァ、もォこの話は終わりにしてさっさと寝ンぞォ。明日は早ェンだからなァ」
上条「美琴はタイプじゃない…ってことは、やっぱ打ち止めか……。いや、しかし年齢的にそれは…」ブツブツ
一方通行「あァ、寝る前にまだやる事あったわ」スクッ
二十秒後、とある無能力者のいつも以上に悲痛な断末魔が夜の学園都市に響き渡る。
男二人だけで過ごす初めての夜は、別の意味で血の滲む悲劇で喜劇な夜となったのだ。
こうして夜は更けて行き、遂に決戦(?)の朝を迎えたのだった―――。
――――――
―――
―――そして、翌朝(決行の日)…
53 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/15(日) 20:18:12.29 ID:IPW8i9M0 [9/22]
―――上条宅
「―――うわ……アンタどうしたのよ? その顔……」
「―――喧嘩でもしたんですか……?」
「―――言ったら悪いと思いますが、ますますサルへと近づきましたわね」
「―――見るも無残です……。とミサカは率直な感想を述べます」
上条「―――おう、皆よく来てくれたな。まぁ……上がってくれ」ボロボロ
時刻は集合予定の九時ちょっと前、上条が呼び鈴に反応して玄関のドアを開けた途端、少女達からそんな言葉を投げ掛けられた……。
ドアの前にいた御坂美琴、白井黒子、佐天涙子、御坂妹は応対した上条の顔を見た瞬間「げっ」という顔をした。そりゃそうだ。
上条の顔には無数のアザやら切り傷やらが付いているからだ。例えて言うならジャイ○ンにボコボコにされた直後のの○太と言ったところか……。
眠気眼にも不貞腐れているようにも見える顔で上条は居間へと少女達を上げた。
ちなみに、ボコッた張本人はベッドで未だ熟睡中である。
一方通行「Zzz…」
美琴「―――あ、結局一方通行泊まってたのね……ってまだ寝てんじゃない!」
54 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/15(日) 20:21:40.66 ID:IPW8i9M0 [10/22]
佐天「うわ~、超無防備ですよ……?」
黒子「こ、これがあの学園都市最強にして最恐の能力者、一方通行様ですの……? まるで別人ですわ……」
御坂妹「相変わらず可愛い寝顔ですね。とミサカは髪を撫でてみます」サラサラ
一方通行「Zzzzz…」
美琴「……わ、私も撫でていい? なんていうか……母性本能が……」キュン
御坂妹「どうぞ。とミサカは大人な対応をします」
黒子「お、お姉様、次はわたくしも……」キュン キュン
佐天「小犬みたい……やば、ちょっと可愛過ぎでしょこれは……」キュン キュン
少女達の目は完全に可愛い動物を見る目と化していた。
黒子「あらぁ、特に脱色してる訳ではありませんのね……」サラサラ
佐天「わ、ほっぺたスベスベ~……」サワサワ
美琴「あ、私も触りたい~!」
御坂妹「ちょっと! ミサカの番を抜かさないで下さい! とミサカは注意します」
一方通行「………」
55 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/15(日) 20:23:54.45 ID:IPW8i9M0 [11/22]
ナニヨ イイジャナイノ チョットクライ
ワタクシモホッペサワリタイデスノー
ヤワラカイー キレイー コノセイブツハホントニアノアクセラレータナノ?
――キャッ キャッ
ペタペタ サワサワ ツンツン
寝ているところを女子中学生達から良い様に弄くられる学園都市最強……。この光景に最も居心地の悪さを覚えたのは当然上条だった。
上条(え、絵的に良いのかコレは?………にしても一方通行…………羨ましい! 羨まし過ぎるぞォォおおおおおおおッッ!!!!!)ゴォォ
おや? 上条からは黒翼など生えないハズなのだが………。
そんなこんなで目が覚めるまでの五分間、一方通行は少女達の癒し道具として散々弄ばれまくったのだった―――。
―――――
―――
56 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/15(日) 20:27:17.61 ID:IPW8i9M0 [12/22]
―――――
上条「―――改めて皆! 本日はよくぞ集まってくれた!」
美琴「いや……アンタそれ何キャラよ?」
一方通行(なーンか妙に頬が温けェンだよなァ……)スリスリ
佐天「サー♪」
黒子「佐天さん? 今のは乗る所ですの?」
上条「御坂、現場の準備は?」
美琴「問題ないわ!」
上条「白井、空間移動のタイミングは?」
黒子「バッチリですの!」
上条「佐天さん、ルートは?」
佐天「完全記憶しました!」
上条「御坂妹、通信機は?」
御坂妹「ここに。とミサカは人数分の無線機を取り出します」ジャラ
上条「よし、でかした」
57 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/15(日) 20:29:35.05 ID:IPW8i9M0 [13/22]
一方通行「………携帯で良いンじゃねェのか?」
上条「気分だ気分! それに、携帯より無線機の方が通話しやすいだろ?」
一方通行「まァ……そォなのか……?」
上条「さぁ! 時間はまだある! 練習はしないつもりだったが、やっぱり怖いから一度だけ現地でリハーサルするぞー!」
一同『おーー』
上条「声が小さい! もう一度!」
一同『おォォォおおおおおおおおおおおっっ!!!!!』
上条「よーし! それじゃあ行くぞ! 絶対成功させようぜ―――!!」
一同『おォォォおおおおおおおおおおおおおっっ!!!!!』
――――こうして、作戦決行のために意気揚々と外へ出た上条達……。友のために練りに練った(?)作戦が今始まるのだった……。
上条「―――『垣春(垣根×初春)ラブラブゴールイン大作戦☆』の幕開けだぁぁっ!!」
美琴「………その作戦名、ダサイからやめない?」
一番燃えているせいか、それとも単にリーダーシップが強いだけなのか……妙にハイテンションな上条だった……。
58 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/15(日) 20:32:00.28 ID:IPW8i9M0 [14/22]
―――――
―――
~~~~~~~
…………カッキーさんの裏切り者…………
…………ずっと私を騙してたんですね…………
…………信じてたのに…………
初春『もう二度と私の前に姿を現さないでくださいっっ―――!!』
~~~~~~~
「――――ッッ!!?」ガバッ
勢いよく布団から跳ね起きた垣根帝督……。額には汗が滲んでいる。
「…………………クソッ、なんつー夢見てんだよ………はぁぁ……」
59 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/15(日) 20:35:49.46 ID:IPW8i9M0 [15/22]
溜息を思い切り吐きながら垣根は落ち着いていった。悪夢に魘されたのは久方ぶりだ。
「八時か……」
ふと時計を確認する。まだ時間的には少し余裕があった。
「…………ざけやがって、たかが夢如きでこの俺が臆してられっかよ!」
反動をつけてベッドから立ち上がる。隣りに居る筈の一方通行は上条宅へ外泊しているため、今はいない。
もっとも、あと二時間もすれば会えるだろうと垣根は思っていた。
「―――あの馬鹿には悪いが、態度次第じゃ八つ当たり確定だな…」
呟きながら部屋を出る。本日の主役にまだその自覚はないようだ――――。
60 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/15(日) 20:37:50.10 ID:IPW8i9M0 [16/22]
―――――
―――
「…………」
初春飾利はベッドで何やら考え込んでいた。何を考えていたのかは、言うまでもないだろう……。
「カッキー……さん……垣根……さん……」
ぼそぼそと交互に名前を呟く少女。彼女もまた、悪い夢に魘されて起きたのだ。
「………用意……しなくちゃ」
のそりと起き上がって洗面所へ向かう初春。顔を冷たい水でいくら洗っても、その表情は晴れなかった。
「こんな顔、佐天さんにはもう見せられない……」
61 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/15(日) 20:40:27.83 ID:IPW8i9M0 [17/22]
笑わなきゃ、と意識するが……初春は作った笑顔の方が逆に不気味だと思った。
(カッキーさんと話したいなぁ……。そうしたら……いくらでも自然に笑えるのに……)
たくさん泣いたつもりだったが、まだ枯れていないらしい……涙の流れかけた目をまた水で洗う。
(結局、昨日も電話できなかったなぁ………。私って、なんでいつも肝心なところで勇気出せないんだろう……)
垣根が聞いたら全力で否定しそうなことを心で呟いた……。パチン! と鏡の前で頬を叩き、表情を入れ替える。
「―――行きましょう! 佐天さんと思いっきり遊んで、勇気分けてもらわなきゃ……!」
気合の入った顔で洗面所を出た初春は、いそいそと出かける支度を始める。本日のお姫様はまさしく空元気だった―――。
――――――
―――
62 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/15(日) 20:44:29.17 ID:IPW8i9M0 [18/22]
おまけ
※ちょっとした通行止め(単なる気分転換です)
※本編とは(ry
※地の文なし
打ち止め「ねぇ、あの人とばっかりじゃなくてたまにはミサカとも遊んでよ。ってミサカはミサカはアナタの服を引いておねだりしてみる」クイクイ
一方通行「あァン? オマエ、いきなり何言ってやがンだァ?」
打ち止め「だってー! 最近あの人といっつも一緒に出かけて行くじゃん! で、ミサカは置いてけぼりじゃん! ミサカつまんなーい!
ってミサカはミサカは駄々をこねてみたりーっ!」
一方通行「あのなァ、今までオマエの遊びに何度付き合わされてると思ってンだァ?」
打ち止め「まさか……ミサカに飽きたの? ってミサカはミサカは捨てられることを危惧してみる…」
一方通行「ばっ……馬鹿な事言ってンじゃねェぞ! 俺がいつオマエを捨てるっつったンだよ!?」
打ち止め「だってぇ……」ウルウル
一方通行「オ、オイ泣くな! ………だァクソ! わァったよ! 今日はオマエと遊ンでやっから、目ェウルウルさせンな!」
打ち止め「ホント!? やったー♪ って、ミサカはミサカは飛び跳ねてみたりぃ!」
一方通行「……ったく、で? 何して遊びてェンだ?」
打ち止め「お馬さんゴッコ♪」
一方通行「は? この俺に四つン這いになれってかァ? 却下だ! 他にはねェのか?」
63 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/15(日) 20:47:37.13 ID:IPW8i9M0 [19/22]
打ち止め「うーんとね? ってミサカはミサカはシンキングターイム♪」
一方通行「…………」
打ち止め「あ! じゃあじゃあ、電車ゴッコ!」
一方通行「……それってまさか、並ンで縄引っ張りながら走っていくっつゥ……あれか?」
打ち止め「うーん、ちょっと違うかも。ってミサカはミサカは否定してみる」
一方通行「あン? じゃあ何だってンだよ?」
打ち止め「ちょっとそこに仰向けで寝そべって。ってミサカはミサカは諭してみる」
一方通行(何させる気だァこいつ……)
打ち止め「早くー! 早くしないと………ひくっ、ひくっ」(ってミサカはミサカは究極技の『ウソ泣き』を発動してみたり)
一方通行「あァァもォ! わァーった! わァーったから! …………ほらよ、これで良いかァ?」ゴロン
打ち止め「おーけー! では、レッツ乗車ー♪」ピョン ドシン
一方通行「―――ゲブゥッッ!!??」
打ち止め「あれ? お尻の下から潰れたカエルみたいな声が聞こえたけど、まぁいっか♪ ってミサカはミサカは気にしなーい!」
一方通行「俺が気にするわボケェ!! さっさとどけェ!! っつーか、これのどこが電車ゴッコなンだよォ!? ただオマエが
俺の腹にヒップドロップかましただけじゃねェか!!」
打ち止め「うん。だからアナタが『電車』で、ミサカがお客さーん! ってミサカはミサカは発車を促してみる」
一方通行「できるかァ!! ンなことより重ェから早くどけっつゥンだよ!!」
64 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/15(日) 20:49:22.05 ID:IPW8i9M0 [20/22]
打ち止め「ム、……お客さまに向かってまさかの暴言! これは許すまじ! ってミサカはミサカはお仕置きモード発動!」
一方通行「な!? ちょ、オイ! 上に来ンなァ! 何考えてンだコラァ!!」
打ち止め「演算切って好き放題ってのも良いけどぉ、むふふ♪ ってミサカはミサカは小悪魔的な顔でにじり寄ってみたり」
一方通行「……オイ馬鹿やめろ。な? いっそ演算切れ! そのほォがまだ――――ッ!!??」
打ち止め「どぉですか? 気持ち良いですか? ってミサカはミサカはショーフ(?)の真似をしつつ訊いてみたり」
一方通行「」
打ち止め「あれ……違ったのかな? ってミサカはミサカは首を傾げてみたり」
一方通行「」
垣根「―――あ、もしもし。警備員ですか? 幼女暴行現場を目撃したんで、すぐに来て下さい。えぇ、場所はファミリーサイドの…」
一方通行「―――だァァあああああ!!!! 通報してンじゃねェェェええええええええ!!!!!」
おわり フッ…って鼻で笑ってやって下さい。
75 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/17(火) 19:18:32.39 ID:RzYYEkw0 [2/15]
――――――
上条「――――よしっ! 完璧だ!」
一同がいるのは昨日美琴達が訪れた近々とり壊し予定の廃屋。
ちょうど今、簡単な打ち合わせ(リハーサル)及びセッティング確認を終えたところだった……。
時刻は九時半過ぎ。ちょうど良い時間だ。
美琴「何とか間に合いそうね」
御坂妹「もうすぐ本番なのですね……。とミサカは胸を躍らせます」
一方通行「ここまで来たら、後は上手くいくよォ願うだけだな」
佐天「ってか、もうすぐなんですよね。……何か緊張してきたよ~」
美琴「私も、ちょっとドキドキしてきたわ……」
上条「うっし! そんじゃ、緊張を吹き飛ばすためにいっちょ円陣でも組みますか!」
美琴「お、いいわね~!」
佐天「そうですね。……やりますか!」
76 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/17(火) 19:21:16.37 ID:RzYYEkw0 [3/15]
御坂妹「やりましょう。とミサカも賛同します」
黒子「ふふ、燃えますわね」
上条の誘いをきっかけに集まって輪を作り出す……。
御坂妹「ほら、あなたもですよ。とミサカは手招きします」
一方通行「……イヤ、俺は―――ィい!?」グイッ
拒否の言葉を言い切る前に引っ張られて輪に加えられてしまった……。そのまま全員が肩を組む。
一方通行「……………」
上条「よぉし、皆いいか?」
上条の問いに皆頷く。一方通行も観念したようだ。そして次の瞬間、息を大きく吸った上条が一気に叫んだ。
上条「絶対成功させるぞ!! 垣根と初春さんが結ばれない幻想なんて俺達でブチ壊してやるんだ!! そんじゃあ行くぞォォおお!!」
77 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/17(火) 19:22:50.63 ID:RzYYEkw0 [4/15]
「せーの!!」
全員「――――ファイトォッ!!! オーーーー!!!!!」
全員の目に魂が宿る。作戦決行の時間はすぐそこまで迫っていた。
―――――
御坂妹「―――では、ミサカは所定の場所へと向かいます。とミサカは皆様の御武運も祈りつつ席を立ちます」スクッ
上条「おう、頼んだぜ!」
御坂妹「はい、ミサカにお任せを。では―――」
上条達にVサインと笑みを見せてひと足先に立ち去る御坂妹を皆は手を振ったり「頑張ろうね」と声を掛けたりして見送った。
一方通行「オイ、俺らももォ行った方が良いンじゃねェか?」
上条「あぁ、そうだな」
78 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/17(火) 19:24:49.47 ID:RzYYEkw0 [5/15]
何かが入った紙袋を持って立ち上がる上条と一方通行。そんな二人に美琴が声を掛ける。
美琴「アンタ達も、上手くやんなさいよ?」
上条「あぁ、もちろんさ。……時間的にはもうそろそろってトコか……。白井、それじゃお前も頼むぞ?」
黒子「ええ、任せて下さい。では、わたくしも行って参りますわ。皆様、また後ほどに―――」シュン
―――黒子の姿はそこで消えた。
佐天「じゃ、私らも行きましょうか。待ち合わせ予定の公園へ―――」
上条「あぁ、じゃあ御坂。行ってくる」
美琴「オッケー、しっかりね。待ってるから…」
美琴を残して上条と一方通行、そして佐天の三人は廃屋を去っていった……。
―――――
―――
79 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/17(火) 19:26:10.55 ID:RzYYEkw0 [6/15]
―――○○公園
初春「―――あれ……佐天さんまだ来てないのかなぁ……。昨日は遅れるなって言ったくせにぃ……」
時刻は十時五分前、初春飾利が公園に姿を現した。初春はキョロキョロと周囲を見るが、待ってるハズの親友はどこにも見えなかった。
初春「電話してみよっかな……」
携帯電話を取り出して佐天の番号に掛ける。すぐに佐天は電話に出た。
佐天『―――初春ごっめーん! ちょっと遅れるけど、急いで行くから公園で待ってて!』
初春「わかりました。じゃあ待ってますね」――ピッ
仕方ないのでベンチに腰掛けてしばらく待つ………。
と、そこへ――――
??「あっれぇ? こんな時間にこんなところで何やってんの子猫ちゃん♪」
80 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/17(火) 19:30:10.24 ID:RzYYEkw0 [7/15]
初春「―――!?」
突然横から声を掛けられてビクッとする。見ると、ベンチのすぐ隣りで何やら怪しい風貌をした男が二人して初春を見下ろしていた。
一人は黒のダウンジャケットに帽子(ニューエラー)とサングラス、もう一人は白い変な模様入りのパーカーに深く被ったニット帽
といった、いかにもガラの悪いチンピラ風な格好だった……。ポケットに手を突っ込んでだらしなく立つ二人の男……。
当然、初春は警戒する。
男1「俺らさぁ、今すっごい暇してんだよね♪ どう? これから一緒に遊ばない?」
男2「怖がンなくて良いンだぜェ? 楽しい思い出作らせてやっから一緒に来いよォ」
初春「な……」
何故だか男の一人が放つもの凄いプレッシャーに怯んでしまう初春。
男1「君、カワイイねぇ? どう? お兄さん達と一緒に来ればきっと楽しいぜぇ?」
男2「ホラホラァ、どこ行きたいィ? どこだって連れてってあげれるよォ?」
初春「こ、困ります! これから友達と会う約束してるんです!」
81 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/17(火) 19:31:57.99 ID:RzYYEkw0 [8/15]
それでもキッパリと断るが、二人組は全く気にしていない。
男1「じゃあその友達来る前にさっさと連れてくか?」
男2「そォだなァ、ひゃはは」
初春「な、何を……するつもりですか…?」
嫌な予感を感じた初春は立ち上がって後ずさる……。その目はまるで熊にでも遭遇したかのように怯えていた。
男2「あァ? 何って、決まってンじゃねェか」
男1「無理矢理にでも付き合ってもらうんだよぉ。へへへ…」
いやらしく笑いながら近づく男1……。
初春「―――い、いやぁッッ!!」ダッ
恐怖のあまり逃げ出そうとするが、足がもつれて転んでしまう。
82 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/17(火) 19:34:47.73 ID:RzYYEkw0 [9/15]
初春「―――痛ッ!」ドテッ
男1「あっ! お、おい! 大丈夫か!?」
男2「――ッ!? バ、バカ!」
初春「ううう………?」
後ろで男達が何やら揉めているようだ。これはチャンス! とばかりに跳ね起きた初春は体の痛みを堪えてそのまま
公園内を逃げる。
男1「し、しまった!」
男2「チッ、何やってンだバカヤロォ! 早く追うぞ!」
男1「お、おう!」
二人組も慌てて後を追い始めた。
初春「―――ハァ、ハァ、ハァ…………」
83 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/17(火) 19:37:22.79 ID:RzYYEkw0 [10/15]
木の陰に隠れて乱れた息を整える初春。全くついてない。ここんところロクな目に合ってない気がする。何で自分がこんな目に…?
そう考えている途中で声が聞こえた。
男2「見ィーつけたァ。ぎゃは」
男1「俺達から逃げられると思ってんの?」
初春「―――ッ!?」
横から突然姿を見せた男達に初春の心臓が止まりかける。
初春「な、なんで………くっ―――!」ダダッ
再び逃亡する初春……だが、男達はさっきとは違い、どこか余裕そうだ。
男2「―――オイ、次は?」
何やら無線機のような機械を取り出して喋る男2…。すぐに機械についているスピーカーから声がした。
84 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/17(火) 19:40:12.64 ID:RzYYEkw0 [11/15]
『―――標的(ターゲット)は滑り台の下に隠れましたわ』
男2「オーケェ。引き続き見張れ。おっと、そろそろ『アイツ』に『出番だ』って連絡入れろ」
『―――了解ですの』ピッ
男1も同じ機械を取り出して誰かと通信を始めた。
男1「―――俺だ。ソッチは?」
『―――はい、こちらS小隊。標的2(ターゲット・ツー)の姿はまだ確認できません。引き続き監視に当たります』
男1「はは、了解。コッチがここを出る前に、もし姿が見えたらすぐに連絡してくれ」
『―――了解っ♪』ピッ
男2「オイ、ソイツのそのノリどォにかなンねェのか? 果てしなくうぜェ」
男1「まぁそう言うなって。いちおう彼女が来た方の出口へは追い込まないようにするぞ。鉢合わせなんてことになったら
全てパーだからな」
85 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/17(火) 19:48:23.24 ID:RzYYEkw0 [12/15]
男2「それは良いけどよォ……。っつーかオマエ、さっきはヒヤッとしただろォが。自分が今悪党だっての忘れてンじゃねェよ」
男1「す…すまん。つい癖で……気をつける」
男2「……あンましモタついてても仕方ねェ。『アイツ』が見えた時点で、とっとと公園から追い出すぞ」
男1「オーケー」
そんな会話をしながら機械をしまって歩く男二人組―――。
―――――
初春「―――ひゃっ!?」
来た方とは反対方向の出口付近でまたしてもあっさり発見される初春。何故自分の隠れ場所が分かるのだろうか? まさか能力者か?
と、初春は戦慄した……。
男1「へっへっへ……鬼ごっこはもう終わりかい? お嬢ちゃん」
男2「俺達から逃げよォなンざ五百年ばかし早ェンだよォ。イイ加減に観念したらァ? どォ足掻いたって無駄なンだからさァァ」
86 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/17(火) 19:50:31.40 ID:RzYYEkw0 [13/15]
初春(こうなったら、公園から一旦出て助けを呼ぼう!)ダッ
一気に公園出口に向かって駆け出す。
男1「オイオイ、逃げても無駄だぜぇ?」ダッ
男2「ひゃはは! さァァ、お次はどこに行くのかなァ? 哀れな子猫ちゃンよォォ!!」ダッ
男二人が凄まじい勢いで追いかけて来る。
初春「―――いやぁぁっ!!」
完全に捕まる―――と思ったその時!
「―――コッチです!」ギュッ
初春「―――!!??」
87 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/17(火) 19:53:52.77 ID:RzYYEkw0 [14/15]
マスクと帽子(キャップ)を身に付けた若い少女がどこからともなく現れ、初春の手を引いて走り出していた。
初春「―――あ、あのっ!」タッタッタッ
少女「………」タッタッタッ
彼女は何も答えず、ただ初春の手をぎゅっと握って走るだけだ。初春の顔を見ようともしなかった……。
公園から出た二人はそのまま逃げ続ける。少女は適当な隠れ場所を全てスルーして真っ直ぐ走り続けた。
初春が後ろを見ると、男二人はまだ追いかけて来ている。
男1「―――待てコラァァ!!」ダダダダ
男2「―――はっはァ!! 逃がさねェっつってンだろォォ!!」ダダダダ
まずは逃げ切るのが先決だと判断した初春は、見知らぬ少女とともに走った―――。
やがて、しばらく走った二人は一軒の廃屋へ逃げ込んだ。手を引いて先に走る少女が何の迷いもなくその建物に入った事を
初春は少し疑問に思ったが、すぐにそんな思考は追っ手の粗暴な声で消し飛ぶ。
男1「―――クソがぁぁあ!! いつまでも逃げ回ってんじゃねえぞぉ!?」
男2「―――手間掛けさせてくれた礼、高くつくぜェェ?」
93 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/18(水) 20:08:04.07 ID:Ds7BWos0 [2/17]
―――――
少女「………」
初春「………」
奥の部屋へ駆け込んだ二人の少女は暖炉の側にあるテーブルの下に隠れた。少女は指を手に当てて「シーッ」とだけ伝える。初春はそれに頷くだけで答えた。
遠くの方から男の声がする……。二人は身を低くしてジッと息を潜めた。
男1「隠れても無駄だぞぉ~? ここにはだぁれも住んでないんだからなぁ」
男2「つまり助けも来ねェってなァ! 諦めて早く出て来なよォ。たあっぷり可愛がってやるからさァ! ひゃは」
男二人組はどうやら自分達を捜しているようだ。聞こえてくる足音や声がやけに怖い……。
ドコニイッタノカナーァ?
ハヤクデテキタホウガミノタメダヨォー? アハギャハッ
初春(ひっ……)
94 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/18(水) 20:11:36.95 ID:Ds7BWos0 [3/17]
(うう……こんな誰もいないような所で見つかったりしたら……完全にアウトじゃないですかぁぁ!!)
心中でそう叫ぶ初春だが、少女は落ち着いたままだった。初春と違って体を振るわせる事もなく、ただじっと身を潜めている…。
(…………あれ? この人、どこかで見たような気が………でも、暗くて良く分からないや…)
少女の横顔は暗い中差し込む僅かな光で何とか見えるが、人物を特定させるまでには至らなかった。
(でも、この人が来てくれなかったら……私、間違いなく捕まってましたね……。誰だか知らないけど、きっと良い人です)
(不良達が出て行って安全になったらまず、お礼を言わないと。……それにしても怖いなぁ……足音と声が聞こえる
って事はまだ捜してるのかなぁ………もう、早くどっか行っちゃってくださいよぉ)ビクビク
しかし、初春の隣りで一緒に隠れている少女の方はと言うと……
(ふふふ……計 画 通 り とミサカは不敵な笑みを浮かべます)ニヤリ…
初春と謎の少女(?)。……今の立場は同じハズなのに、この二人の心境は全く正反対だった―――。
95 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/18(水) 20:13:52.32 ID:Ds7BWos0 [4/17]
――――――
―――
―――その頃、○○公園……
「………確かここだよな?」
誰もいなくなった公園で一人呟くのは垣根帝督。割りと広く、木々が生い茂る園内で待っている筈の人物を目で探すが、姿は何処にもない……。
「あの野郎……まさかバックレたんじゃねえだろぉな……?」
乱闘のつもりで意気揚々と来たのに、肝心の相手がいなければこの滾る気持ちは一体何処にぶつければ良いのか? 電話を掛けてみるものの、
呼び出した本人が電源を切っているのか、通信が繋がることはなかった……。
「……チッ、もう少しだけ待ってみるか」
96 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/18(水) 20:15:16.30 ID:Ds7BWos0 [5/17]
投下中すいません。急用できたんでちょっと出ます。
一時間ほどで戻ります。
98 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/18(水) 21:09:42.00 ID:Ds7BWos0 [6/17]
中断失礼しました!
戻ったので投下再開します。
99 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/18(水) 21:12:30.68 ID:Ds7BWos0 [7/17]
再度呟いて近くのベンチにでも腰を下ろそうと足を動かしかけた時―――。
??「――――す、すいませーんっ!!」
垣根「あん……?」
背後から聞こえた声に振り向くと、ひとりの少女が自分に向かって走ってくるのが見えた。垣根は「落し物でも届けてくれたのか?」と
一瞬思ったが、どうも様子が違う…。
??「―――た、助けてくださいっ!」
息を乱しながら走ってきた少女は目の前で立ち止まってそう言ったが、「何?」と訊き返す前に垣根は気づく。
垣根(こいつ……水族館で会った飾利の友達じゃねえか! 確か……佐天、だっけか?)
佐天「お願いです! 助けてください!」
100 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/18(水) 21:14:54.09 ID:Ds7BWos0 [8/17]
何か只事ではない様子の佐天に垣根は尋ねた。
垣根「……どうしたんだ?」
佐天「さっき、友達といるところを変な人達に襲われたんです! お願いします! 私の――――」
垣根が動き出すきっかけとなる決定的なセリフを、佐天は口に出して叫んだ。
「――――友達を………初春を助けてくださいっっ!!」
垣根「!!!?」
垣根の表情が分かりやすい程一気に変わっていく。ほぼ予想通り、垣根は佐天の両肩を掴んで問い詰めた。
垣根「―――おい! その友達は何処にいる!?」ガシッ
佐天「あ、案内しますからついてきてください!―――って、ちょっと!?」
101 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/18(水) 21:18:51.32 ID:Ds7BWos0 [9/17]
垣根「―――急げ! 早くしろっ!!」
肩から手を放したかと思ったら、もうすでに走り出していた垣根にやや遅れて佐天も走り出す。
佐天「ちょ!? ま、待ってください!」
垣根「何モタモタしてんだ!? 友達が危ねえんだろ!? ……クソッ、オイ! どっちだ!?」キョロキョロ
佐天「コ…コッチです。私についてきてください!」
垣根「―――ッ!」(飾利……ッッ!!)
(頼むっ!! 無事でいてくれ―――――!!)
公園を出た二人は再び走り出す。垣根はもう他の事など何も考えてはいない。今唯一彼の頭にあるのは勿論、危険に冒されている初春飾利
という少女を救う事だけだ―――。
――――――
―――
102 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/18(水) 21:22:53.18 ID:Ds7BWos0 [10/17]
―――廃屋…
男1「どっこかなぁ~? 子っ猫ちゃぁ~ん?」
男2「どォせ逃げられやしねェンだからさァ、とっとと出ておいでよォ」
同じ調子で初春を捜し回る二人組のチンピラ。
男1が途中の曲がり角に頭をぶつけた。
男1「―――イテッ!! ……ぐぉぉぉ……ふ、不幸だ…」ヒリヒリ
男2「こンな暗いトコでグラサンなンか掛けてっからだろォがよ。危なっかしいから外せ。―――あン?」
と、その時……男2が持つ無線機に通信が入る。
男2「―――ンだァ? どォした?」
『―――標的2(ターゲット・ツー)がそちらに向かいましたの!』
男2「あァン? オイオイ、予定よりちっと早くねェかァ?」
103 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/18(水) 21:27:40.33 ID:Ds7BWos0 [11/17]
『―――それが……話を聞くやいなや何の躊躇いもなく走って行かれましたの……。現在【プランC】通り、回り道をさせて
時間を稼がせてますわ』
男2「……分かった。ンじゃあコッチもそろそろ段階移るから、すぐにオマエも来い。『回収』のタイミングは外すなよォ?」
『―――承知しましたわ。それでは――』ピッ
男1「……俺の予定じゃ話を聞いて少し迷ったあげくに動き出すつもりだったんだがな…」
サングラスを外した男1がそう呟く。晒された彼の目は、どう見ても悪人の目つきとは異なっていた……。
男2「ったく、オマエじゃあるまいしよォ……。あのボケはいつから『考える前に動く』タイプの人間になったンだっつの」
男1「いちおう想定はしておいて良かったぜ。あとはアイツらが上手くタイミングを見計らってくれるハズだ。少し早いが、
俺らも予定通りに行くぞ」
男2「おォ」
二人組の男はクルッと踵を返し、初春と少女が隠れている部屋に真っ直ぐ向かって歩き出した――――。
―――――
104 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/18(水) 21:30:48.65 ID:Ds7BWos0 [12/17]
初春(―――ひっ!……コッチに近づいてくるぅ……)
心臓の音が急速に高鳴っていくのを感じながら、初春は入室してきた二人組をテーブル下の隙間から覗く。
テーブルには大きいクロスが脚に届くまで掛けられているため、姿は見えない筈なのだが……男は何の戸惑いもなくコチラへと
歩を進めて来た。
初春(………いや……ッッ!!)
公園内で隠れた時も何故かあっさり見つかっていた事を思い出したが……もう遅かった。
男2「―――かくれンぼはおしまァい。ってなァ! ひゃはっ!」
初春「―――ッ!!?」
言葉と同時にテーブルは退けられた。男2が蹴り飛ばしたテーブルは後ろの壁に激しい音を立てて激突する。
それは、初春の退路が完全に絶たれた事を意味していた。
男2「子猫ちゃンめェーっけ♪」
男1「こんなトコに隠れてやがったのかぁ。だが残念、これまでだぜぇ?」
105 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/18(水) 21:34:09.96 ID:Ds7BWos0 [13/17]
白々しく言いながら笑う男達。少女達の後ろは壁。部屋を出るために通らなければならないドアは男達の真後ろ。絶体絶命だった……。
実は初春の後ろにあるこの壁には一箇所だけ隠しドアがあるのだが、初春がそれに気づく筈もない。
そしてそのドアは、コチラからは絶対開かないように細工が施されていた……。
初春「――――あれ…?」
ふとそこで少女がいなくなってる事に気づく。自分を助けてくれたあの少女はすでに影も形もなく、忽然と姿を消していた。
男に目を向けていた………その僅かな間にだ。
初春「え?…………うそ………」
逃げ道は前方の男達が塞いでいるドアのみ。姿を消せるとしたら『空間移動』の能力者くらいしか思いつかない。あるいは……?
そこまで考えた途端、初春の顔が恐怖に歪んだ。
初春(まさか……ここは科学の発達した街ですよ……? そんな……)
この誰も住んでいなさそうな廃屋が余計に恐怖を誘う。もしそうだとしたら、少女がここまで自分を連れ込んだ辻褄も合ってしまう……。
しかし、この状況はそれについてじっくり考える暇もなさそうだった。むしろそんな事以上に大ピンチである。
106 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/18(水) 21:36:56.09 ID:Ds7BWos0 [14/17]
初春「いや………こ、来ないでください……」
壁に背をつき震える少女。もう逃げ場は何処にもない……これからこの『怖いお兄さん達』に何をされるのかと思うと、震えが止まらなかった。
男1「クククク、そんなに怖がんなよ。大丈夫だって……痛くはしねえからさ♪」
男2「ギャハハハァ! まァ、精々イイ声で鳴くよォに努力するンだなァ!」
じりっ…じりっ……と一歩ずつ、確実に近づいてくる魔手。「もう終わりだ」と初春は本気で思った。
初春(なんで、なんで私ばっかりこんな目に……ッッ!! 恨みますよカミサマッッッ―――!!!)ギュッ
観念するように……強く目を閉じた―――――瞬間!
「――――飾利ィィィいいいいいいいいいッッッ!!!!!」
107 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/18(水) 21:41:00.49 ID:Ds7BWos0 [15/17]
初春「―――――!!」
目を、見開く。
確かに……ハッキリと聞こえた。
彼女にとって、たったひとりだけの―――
王子様(ヒーロー)の声が―――――。
声が聞こえて間もなく、……ドアは勢いよく開いた。…というより破壊された。
男1・2「…………」
振り向いた二人組の視線の先にいたのは………もちろん―――
「―――間に合ったみてぇだな……」
108 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/18(水) 21:46:24.72 ID:Ds7BWos0 [16/17]
怒りを通り越したからか、初春が汚される前に駆けつける事ができたからか……どちらの意味とも取れる笑みを浮かべる垣根。
そして、初春にも彼の姿はハッキリと確認できた。彼女の震えは………そこで止んだ。
「もう大丈夫だ……。飾利」
垣根は唖然と自分を見つめる初春に優しい目を向ける。
「俺と関わったばっかりに……怖い思いばかりさせちまって、本当にゴメンな」
「けど、安心してくれ……」
「これからは俺が―――――」
「―――お前を守る!!!」
強い意志の込められた声を、古びた室内に響かせた―――。
115 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/19(木) 20:21:57.64 ID:ooLI8bM0 [2/14]
―――『これからは、俺がお前を守る!!!』―――
この発言に男二人も『意外』といった反応を見せた。
男1(マ……マジで!? ちょっと、思った以上の展開だぞこれは……)
男2(ンだァコイツ……オイオイ、一体何があったっつーンだ?)
垣根の強靭な意志を確かに聞いた初春。心に宿っていた『恐怖』が……今、ゆっくりと消えていく。
初春「………ッ」
初春の目に涙が溜まっていった……。もはや笑っているのか泣いているのか、よく分からない表情だ。
116 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/19(木) 20:25:05.38 ID:ooLI8bM0 [3/14]
もう、垣根には何の迷いもない。……それは、対峙している男二人にも明らかに分かるほどだった―――。
垣根「覚悟しろよ……テメェら―――」
表情に再び怒りを戻して、男達を見据える。
垣根「―――『俺の大事な女』に手ぇ出してくれた罪は重いぜ!?」ブァサッ
背中から生えた白い翼が放つ光で、薄暗い室内は眩しく輝いた。
男2(チッ……カッコつけてンじゃねェよクソメルヘンが)
男1(おい………ちょっとこれ、ヤバくないか?)ヒソヒソ
男2(あァ、何でか知らねェが、俺らの予想を完全に超える勢いで吹っ切れてやがるな……。チッ、最悪のアクシデントだ。オイ三下、
右手構えとけ。死ぬぞ?)ヒソヒソ
男1(えぇーー!?)
男二人組が密談を終えた直後、垣根は唐突に叫んだ。
117 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/19(木) 20:27:17.11 ID:ooLI8bM0 [4/14]
垣根「―――離れてろ飾利!!」
初春「―――は、はいっ!!」ダッ
初春が避難したのを音で確認した後、垣根が男二人に攻撃態勢をとった。
垣根「―――くたばれコラァァあああああっっ!!!」ブォン
男1「ちょっ、待―――ッッ!!??」サッ
男2「クソが―――ッッ!!」バッ
ドオオオオン!!!
―――次の瞬間、翼が床を叩きつける激しい音が部屋じゅうに響いた……。
―――――
118 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/19(木) 20:30:08.95 ID:ooLI8bM0 [5/14]
垣根「…………」
薄汚れた部屋の中、垣根はゆっくりと翼をしまった。衝撃で巻き起こった煙の向こうに男達の姿はなかった。何をしたのかは分からないが、
どうやら二人とも逃げてしまったらしい……。
しかし、そんな事はもうどうでもいい。それよりも―――
垣根「―――飾利っっ!!」
部屋の隅で縮こまっていた初春に駆け寄った。
垣根「大丈夫だったか!?」
初春「……はい。何とか………へへ…」ニコッ
その時初春が垣根に見せた表情には、恐怖も絶望も全く感じさせられない―――。
『カッキー』に向けた時と同じ……無邪気なあの笑顔だった―――。
――――――
―――
119 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/19(木) 20:33:04.26 ID:ooLI8bM0 [6/14]
―――作戦本部(勝手に借りた同廃屋内の隠し部屋)※初春達の今いる部屋の隠しドアから繋がってる。
上条「―――だはぁぁ………危なかったぁぁ。マジで死ぬかと思ったぜ………サンキュー白井ぃぃ、助かったよ…」グター
一方通行「―――あンの単細胞馬鹿がァ……。羽根まで出しやがって。殺す気かっつゥの」
黒子「―――フゥー……危機一髪でしたの………。まったく、上手くいき過ぎるというのも考えモノですわね……」
御坂妹「―――お疲れさまでした。とミサカは使命を終えたお二方及び、最高の裏方ぶりを見せた白井さんを労います」
―――垣根と初春が今居る部屋の映像モニターが付いたこの隠し部屋(上条曰く作戦本部)に居るのは上条当麻、一方通行、
白井黒子、御坂妹の四人だった。垣根の攻撃が来る瞬間、後ろの隠しドアを黒子が間一髪の所で開け、上条と一方通行はそこ
から何とか無事に逃げてきたという訳だ。
上条「あぁ、御坂妹もお疲れさん。『連れ込み役』ありがとな」
御坂妹「いえ、思ったより楽な配役でした。とミサカは自分のアクション(演技)を振り返ります」
一方通行「オマエも『回収』ご苦労だったな」
黒子「妹様の回収は割と大したことありませんでしたわ。初春の隙をついてテレポートするくらい朝飯前ですの」
120 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/19(木) 20:42:25.04 ID:ooLI8bM0 [7/14]
上条「けど、白井も御坂妹も佐天さんもいなかったら計画は成り立たなかったよ。ホントにサンキューな!」
一方通行「オイオイ、ひとり誰か忘れてねェか?」
上条「もっ、もちろん御坂もに決まってんだろ!? そんなん言うまでもねぇっての! …あ、ところでカメラ壊れてないよな……?」
御坂妹「どうやら無事のようですね。とミサカは映像と音声に支障がない事を確認して答えます」
上条「しかし……こんな忍者屋敷みたいな所良く見つけたよな…? ちゃっかりドアの改造とかカメラとか……いや、おかげで助かって
るんだから良いんだけどさ」
御坂妹「ふふふ、その道のプロに頼みましたからね……とミサカは仕事人の周到ぶりを称えます」
上条「是非その人に今度お礼を言いたいな」
御坂妹「いえ、むしろ向こうもあなたに感謝しているのでその必要はありません。とミサカは意見します」
一方通行「さて、予定とはちィとばかし形が変わったが、何にせよこれで状況は出来上がったな。っつーか、もォ結果は決まったみてェな
モンだが……」
上条「あぁ、ここで垣根が助けるだけで逃げるんじゃないかってのがこの作戦最大の壁だったんだが………」
全員がモニターの二人に注目する……。
上条「………どうやら取り越し苦労だったみたいだな」ホッ…
黒子「第二位の殿方は初春に二度と会わない覚悟ではなかったんですの?」
一方通行「そンなン俺に訊かれても知らねェよ。昨日と心境がまるで違うってこたァ何かあったンだろォが……よく分っかンねェなァ」
御坂妹「それにしても、お二人の演技力には大変驚かされました。とミサカはあなた方のチンピラ振りに率直な感想を告げます」
黒子「わたくしも思った以上の演技に正直ビックリしましたわ。第一位様はともかく、貴方の小悪党ぶりは見ていてかなり滑稽でしたが…」
121 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/19(木) 20:45:05.70 ID:ooLI8bM0 [8/14]
上条と一方通行に視線を向ける御坂妹と黒子。ちょうど二人は元の格好に戻った所だった。
上条「ん? あぁ、……慣れないセリフばっか吐いたからな。途中何度も噛みかけたよ」
一方通行「微妙に優しげなオブラートを包む辺りがオマエらしかったよなァ。それでも違和感だらけで傑作だったぜェ? やっぱオマエに
悪役は向いてねェわ」
上条「そういうお前こそ、ずいぶんノリノリだったじゃねえか。あれかなり『素』入ってただろ?」
一方通行「どォせやるンなら楽しまねェとよォ。それに、いちおうシナリオ通りにはなってただろォが」
上条「いやぁ、セリフ合わせの時より相当アドリブ入ってたけどな。………ん?」
――ガチャ
その時、部屋のドアが開いた。上条の目はそちらに移る。
佐天「―――お疲れさまで~す♪」
何かをやりきったかのような爽やか笑顔で入って来たのは佐天涙子だった。
122 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/19(木) 20:49:18.85 ID:ooLI8bM0 [9/14]
上条「おう、佐天さんもお疲れ。ナイスタイミングだったぜ」グッ
黒子「よく足止めしててくれましたわ。グッジョブですの佐天さん」グッ
佐天「いや~、垣根さん足速いしさっさと先行っちゃうしでホント大変でしたよ~。想定してて正解でしたね。さすが上条さん♪」
上条「ははは、俺だったら多分迷わず助けに行くからな……。いちおう考えておいたんだ」
黒子「時間調整も考えると……佐天さんの役割はかなり困難だったことでしょう。本当にお疲れ様ですの」
佐天「へへ、照れますね~……けど白井さんみたいに空間移動能力でもあったらもっと役に立てたんだろぉな~」
上条「そんな事言うなって。佐天さんは充分立派にやってくれたよ」
御坂妹「はい、充分に良いお仕事でしたよ。お疲れさまです。……とミサカは音声を聞き逃さないように注意しながら同意します」
佐天「どーも。妹さんもお疲れ♪」
一方通行「……で、今どンな感じだ?」
御坂妹「あれ以降、両者は依然沈黙状態です。とミサカは現状を監視しながら説明します」
――――――
垣根「……………」
初春「……………」
123 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/19(木) 20:51:56.11 ID:ooLI8bM0 [10/14]
二人を無言の空気が包む……。当然だ。確かに二人は再会を望んでいた。しかし、これは予期せぬというか……ハプニングだ。
心の準備もクソもない。突然過ぎるのだ。そりゃ言いたい事なんてすぐには出てこないだろう……。
初春はモジモジ状態だし、垣根も自分の立場を今把握したみたいだ。勢いというのは恐ろしいものだという事をまさに実感していた。
垣根・初春「―――あの(さ)……ッ!」
二人の声が見事にカブった。
垣根「………何だ?」
初春「いえ、ソッチから……どうぞ」
モニターから監視されている事など知る由もない彼等は、完全に二人だけの空間を作っていた……。
やがて先に口を開いたのは………垣根だった―――。
垣根「まず、……お前には謝らないとな………。騙していて、すまなかった」ペコ
開口と同時に頭を初春に向かって下げる。
124 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/19(木) 20:55:34.72 ID:ooLI8bM0 [11/14]
垣根「数ヶ月前、確かに俺はお前を殺そうとした……。お前が俺に怯えるのも仕方ねえと思う」
初春「……………」
垣根「最初は、適当に誤魔化す……だけのつもりだったんだ。……あの日、俺がお前を見つけたのも単なる偶然だった。でも……話している
内に、すげぇ後ろめたくなってきて………」
初春「……………」
垣根「怖かったんだ。……お前に恐怖を与えるのも、恐れた顔で見られるのも………ホント呆れちまうよな。自分で蒔いた種だってのによ…」
初春「……………」
垣根「俺はどうしようもねぇ屑野郎だ。今さらよくもヌケヌケと、って思うかもしれねぇ。俺のツラなんて見たくねぇのも充分に分かってる。
…………けど………それでも――――」
「――――俺は、もう一度お前に逢いたかった」
その一言が……初春の表情を変えた。
―――――
125 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/19(木) 20:58:01.33 ID:ooLI8bM0 [12/14]
―――隠し部屋・モニター前……一同はすっかり野次馬と化していた。
オレハ モウイチドオマエニアイタカッタ…
一方通行「うわ…………あの似非ホスト、どこまで頭ン中がメルヘンなンだよ………オイやべェ、鳥肌が止まンねェぞ。何とかしろ三下」ゾッ
上条「…………いや、無理」
佐天「やば/////……………垣根さん、カッコ良すぎでしょ…」
一方通行「はァ!? あンな歯の浮くセリフ、実際言われたらドン引きだろォ…」
佐天「う~ん……相手にもよりますかね…」
上条「……にしても、よくあんな照れ臭いこと真顔で言えるよな……。やっぱ垣根ってすげぇ…」
一方通行「三下にまで言われちゃあオシマイだな……」
黒子「リアルですわね……まさか類人猿を超える殿方がいらっしゃるとは……」
御坂妹(ミサカも一度でいいからあんな風に言われてみたい……あ、でも彼には似合わな過ぎて吐き気がするからやっぱりいいや……
とミサカは即座に却下します)
126 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/19(木) 20:59:36.78 ID:ooLI8bM0 [13/14]
―――――
―――倉庫裏
美琴「まだかしら………」ポツーン
決して忘れてなんかいないから、そんな悲しそうな顔をしないで下さい美琴サマ! By上条
―――――
135 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/20(金) 19:19:43.16 ID:uvbB81Y0 [2/19]
―――――
初春は、垣根の告白を黙って聞いていた……いや、言葉を途中で出せなかったと言った方が正しいか…。
垣根「………こんな形になっちまって、本当にすまねえ……」
もう一度、垣根は初春に頭を下げる。……そして、グッ…と何かを堪えるように堅く目を閉じた。
やがて開いた目は……どこか悲しみに耐えている風に見えた。
躊躇を消した垣根は、重い口を―――開いた…。
垣根「―――安心してくれ。もう……姿は見せねえから……さ…」
そう言って背を向けた―――。
『ありがとう』……と最後に告げて―――――。
136 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/20(金) 19:25:47.18 ID:uvbB81Y0 [3/19]
足取りは重く…それでも部屋を後にしようと、垣根はゆっくり歩き出す。彼は今、何を思っているのか―――。
(……こんな形になるとは正直思わなかったが、どの道同じだ……。それに言いたい事は言えたんだ……。だから悔いはない…)
(これでもう会えなくなるのは正直言って辛いが……ここで彼女の気持ちを考えないほど、俺は落ちちゃいねぇ…)
(それに、……最後に飾利が俺に見せてくれたのは……『笑顔』だった……)
(こんな俺みてぇなヤツに、また笑ってくれた………嬉しかったぜ―――)
(もう、それで充分だ―――)
垣根の足が、体が……初春を残して去ってしまう。
「………って……ください…―――」
しかし―――
「―――――待ってくださいっっ!!!」
137 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/20(金) 19:29:35.62 ID:uvbB81Y0 [4/19]
垣根が部屋の外に足を踏み出すと同時に、少女の悲痛な声が響き渡った―――。
垣根「―――!?」クルッ
声に驚いた垣根は足を止めて後ろを振り返る……。今にも泣きそうな顔の初春がそこにいた。
初春「どうしてそぉなるんですか!? どうしてそんな一方的なんですか!? 私の話も少しは聞いてくださいよぉっ!!」
垣根「…………でもよ、君はもう俺と関わりたくなんかねぇだろ?」
初春「なんでですかっっ!! 勝手に決めないでっっ!!!」
垣根「―――ッ!?」
初春「私の気持ちも聞かないで……自分だけ言いたい事言ってさっさと行こうとするなんて……ずる過ぎます! 私だって………
私だって! あなたに逢いたかったんですよ!? お礼も言わせてくれないなんて、そんなのってあんまりじゃないですか!!」
垣根「……………」
138 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/20(金) 19:32:20.23 ID:uvbB81Y0 [5/19]
少女の意外な言葉に困惑する垣根……。しかし、それでも……。
垣根「………俺は、君が知ってる『カッキー』じゃないんだぜ? 俺は―――」
初春「学園都市第二位の超能力者、垣根帝督さんでしょう!? 確かに知った時は驚きました! 正直、今でも信じられません!
けど、『それ』が何だって言うんですか!?」
垣根「え……?」
初春「第二位の超能力者だろうと何だろうと―――――」
「――――カッキーさんはカッキーさんじゃないですかぁぁっ!!!」
垣根「………ッッ!!」
―――――どんな顔してても、カッキーさんはカッキーさんですから―――――
あの時……少女の言った言葉が垣根の心に突き刺さった。
139 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/20(金) 19:36:39.60 ID:uvbB81Y0 [6/19]
垣根「―――飾……利………」
初春は、泣きそうになるのを堪えるような笑顔を作った。……いや、堪えられてなんかいない。目からポロポロと零れる涙がそれを
証明している……。
初春「私の……私の好きなカッキーさんなら――――ずっとここにいますよ?」
「私にとっての王子様は――――あなただけなんですから…」
「私は………垣根帝督さんが………いえ―――」
「―――――カッキーさんが、好きです」
垣根「!!!?」
一瞬、これが夢なのかと本気で思った………。
どうか、どうか夢なら……このまま醒めないで欲しい。………そう思いながら―――
140 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/20(金) 19:38:41.15 ID:uvbB81Y0 [7/19]
初春「―――!?」
―――ガバッ
垣根は初春に近づき、その小さな体を抱きしめていた―――――。
垣根「………本当に……いいのか? こんな俺なんかで……」
「はい」と初春は、濡れた目を閉じて答えた。
初春「カッキーさんじゃなきゃ、イヤですから……」
垣根「俺のこと……まだそう呼んでくれるのか……?」
初春「前に言ったの、もう忘れたんですか? カッキーさんはカッキーさんです」
垣根「あぁ……覚えてる」
141 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/20(金) 19:41:03.43 ID:uvbB81Y0 [8/19]
初春「なら、もう………離さないで―――」ギュッ…
「―――どこにも、行かないでください」
垣根の体に腕を絡めて懇願する初春に、垣根は答えた。
垣根「あぁ、誓うよ―――」ギュッ…
「―――もう、絶対に離さない」
昇り始めた日の光が、抱き合う二人を祝福するかのように………カーテンの僅かな隙間から射し込んだ―――。
142 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/20(金) 19:43:15.52 ID:uvbB81Y0 [9/19]
―――隠し部屋・モニター前
上条「………何とか、上手くいったみたいだな」
黒子「初春……良かったですわね…」ホロッ
佐天「あれぇ? 白井さん、もしかして泣いてるんですかぁ?」
黒子「そういう佐天さんの方こそ、泣いてるじゃありませんか」
佐天「え……あ、あれ…? あはは」ポロポロ
上条「本当に……良かったな」
黒子「ええ………」
佐天「うん………良かったね、おめでとう初春…」
モニター内で抱き合う二人。隠し部屋の空気は小さな感動に包まれていた……。
計画は、無事成功したのだ。少年少女たちの顔には、すでに達成感が表れている。
一方通行「とりあえず、無駄にはならなかったってかァ……」
御坂妹「あなたは泣かないのですか? とミサカはハンカチで目頭を抑えながら問います……」
143 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/20(金) 19:50:01.18 ID:uvbB81Y0 [10/19]
一方通行「アホか? 誰が泣くかっつの。……ってェか、オマエも泣いてンのかよ?」
御坂妹「本当に、良かったです。当初は遊び半分のつもりだったのですが、この作戦に参加できた事を今では誇りに思います。とミサカは
心境の変化を伝えます……」
一方通行「……そォかい。ソイツは良かったなァ」
御坂妹「あなたも、本当はそう思ってるのでは? とミサカは推測します」
一方通行「チッ―――」
目を逸らす一方通行。
一方通行「―――くっだらねェ……」
その口から出てくる言葉はやはり、彼らしかった。が、御坂妹は「ふふっ…」と笑って上条と一方通行に目を向ける。
御坂妹(あなた方が見返りを求めずに人を助けたいと思う気持ち……今ならよく分かります。とミサカはこの企画に
参加できた事を心から喜びます)
終わったような空気だが……実はまだ終わっていなかった。そう、まだ『演出』が残っている―――。
144 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/20(金) 19:52:33.49 ID:uvbB81Y0 [11/19]
上条「―――おっと、いけね……感動しててつい忘れかけてたぜ。ここでついに美琴の出番だな……」
そう言いながら無線機を取り出す上条。連絡を待っているであろう美琴の元へと電波を飛ばした。………が、
『―――くぉぉらァァああああッッ!!!』
上条「―――いぃっ!?」
スピーカーから聞こえた美琴の怒号に思わず上条は耳を塞いだ。どうやら相当ご立腹のようだ。
美琴『アンタはぁぁあああ!!! 一体いつまで待たせんのよ!? そろそろコッチから掛けてやろうと思ってたんだからね!!』
上条「す、すまなかった。おさえておさえて……」
美琴『………で、今どんな状況よ? っていうか、まだな訳?』
上条「あぁ、ちょうどそれで連絡入れたんだ」
美琴『って事は……上手くいったのね!?』
美琴の声が途端に明るくなる。
145 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/20(金) 19:54:57.46 ID:uvbB81Y0 [12/19]
上条「へへ、後で録画映像見せてやるよ。きっと泣くぜ?」
美琴『リアルタイムで見れなかったのがちょっと残念だけど……まぁ良いわ。そんじゃ、始めるわよ?』
上条「あぁ、頼む。…待たせてホント悪かったな……ゴメン」
美琴『べっ///別に良いわよそんなの! それじゃ切るからね!///―――』ピッ
上条「………さて」
御坂妹「やっと最終段階ですね。とミサカはこの後の展開にわくわくします」
―――――
美琴「―――よし、じゃあ行きますかっと! そりゃ!」ビリビリッ
分電盤に触れた美琴の手から祝福の電流が流れる。その瞬間、薄暗い廃墟が一転して綺麗な光に包まれた―――。
146 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/20(金) 19:56:58.31 ID:uvbB81Y0 [13/19]
―――――
垣根「な……なんで急に電気が復活したんだ……?」(やべ……か、顔近い……)
初春「さぁ……わ、分かりません……」(き、急に恥ずかしくなってきました……うぅぅぅぅ/////)
垣根(っつか、この照明と音楽はナニ……? ま、まさかここって……廃屋になる前はラブホテルとか!? ウソだろ!?)
初春(う~/////は、恥ずかし過ぎて死にそう……ふにゃぁぁぁ!!)
―――――
―――隠し部屋・モニター前
上条「お! 点いた点いた! ナイス御坂!」
黒子「さっすがお姉様ですの♪ さぁ初春! これで全ての準備は整いましたわ! 今ですの! すぐにそこで熱いベーゼを(ry」
佐天「ちょっと白井さんっ!/// けど親友の初キスとか……うわ、見たいような見たくないような……」ドキドキ
147 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/20(金) 20:03:10.19 ID:uvbB81Y0 [14/19]
上条「……なんか、俺らはアッチ向いてた方がよさそうだな」クルッ
一方通行「まァ、別に見たくもねェけどな」クルッ
御坂妹「それにしても、二人とも奥手ですね…。とミサカは若干イラつきます」
―――ガチャ
美琴「――――お疲れ~! 戻ったわ! んで、どう?」
上条「おう、御坂。お疲れ~」ヒラヒラ
黒子「おかえりなさいませお姉様! ちょうど今良いところですわよ!」
美琴「どれどれ? 私にも見せて! ……って、ちょっ!? 抱き合ってんじゃない!? う、初春さん……結構やるわね…」
佐天「………さっきから二人とも全然動きませんけどね」
御坂妹「……焦らすんじゃねーよ。とミサカは更にイラつきます」
黒子「あぁもうじれったい!! 何をやってるんですの!? さっさと押し倒してそこから(ry」
上条「まさかあそこまでムーディなヤツだとは……やっぱ試し点けしておくべきだったかな…」
一方通行「もォ遅せェよ。どの道そンな時間なかっただろォが。ま、この変態に頼ンだ時点でこォなるとは思ってたけどなァ」
148 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/20(金) 20:04:47.63 ID:uvbB81Y0 [15/19]
メシ食ってきます。今日はまだ続きますんで、しばしお待ちを。
150 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/20(金) 20:28:36.91 ID:uvbB81Y0 [16/19]
お待たせっす。では続き―――
美琴「ちょっ、黒子///……いくら何でもそれはマズイんじゃ……。ア、アンタ! 見たら殺すからね?」ギロ
上条「み、見ませんっ! 絶対見ませんから!」
……イコウカ?
……ハイ
佐天「……って、あ……あれ?……離れちゃいましたけど…」
黒子「ば、馬鹿な……ッッ!! 『お姉様と過ごす熱い夜』のために購入したわたくしのとっておきが……まさかの不発ですの!?……」
美琴「く・ろ・こぉ~……誰と熱い夜を過ごすってぇぇ……」
黒子「」
御坂妹「チッ……根性なしが。とミサカは第二位を非難します。まったく、学園都市の上位能力者は揃いも揃って……」ブツブツ
一方通行「……オマエ何ブツブツ言ってンだ?」
佐天「あ~……出てっちゃいました……」
黒子「お、お姉様! 誤解ですの! 黒子はただ初春たちで効果の程を試そうとしただけで、その効果次第であわよくばお姉様とぐふふ
だなんて事は決して考えてなどいませんわ! ただ、少しくらい乱れ合うのもよろしいかと……ぐふふ」
美琴「アンタ一人で乱れてろやぁぁーーー!!!」ビリビリビリ
黒子「おbbbbbbbbbbbbbbbb☆$◆△%~~~♪」ビクンビクン
151 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/20(金) 20:30:34.95 ID:uvbB81Y0 [17/19]
上条「………白井を信用した俺が間違ってたのかもしれねぇ…」
一方通行「あァ、それについては否定しねェな……」
ムード溢れる照明と官能度抜群なBGMのダブル攻撃で、抱き合っていた二人が一気に気まずくなってしまったのは誰も予想していなかった……。
ちなみに、この演出は黒子が急遽発案したもの。建前は美琴の出番を作るための優しい心遣いだったのだが、本心はやっぱりそこである……。
無言で廃屋を出た二人の姿は……最後の演出が心から余計なお世話である事を告げていた―――。
―――廃屋の外
垣根「……なぁ、さっきのヤツら……どこ行ったのか見たか?」
初春「いえ、目閉じてましたから……」
垣根「逃げ場なんてなかったのに、忽然と消えちまったんだよな……」(つか、暗くてよく見えなかったけど……あいつらどっかで…)
初春「――!! そ、そう言えば……あの人…」
垣根「ん?」
初春「実は……私、あそこに女の人と居たんです。危なかったところを助けてもらって一緒に逃げてきたんですけど……いつの間にか
その人も消えちゃって…」
垣根「まさか、あの空き家……心霊スポットとか?」
152 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/20(金) 20:33:06.53 ID:uvbB81Y0 [18/19]
初春「こ、怖いこと言わないでください! この学園都市に…そんなのあるワケないじゃないですかぁ! それに季節外れですよ?」
垣根「呪いはあるぞ……」
初春「へ?」キョトン
垣根「いや何でもねぇ。けど、本当に幽霊だったとしても……俺は感謝するぜ。今こうやって飾利と一緒に居られんのもソイツらのおかげ
みてぇなモンだからな」(あと……って、あれ? そう言えば佐天ってコは何処行ったんだ…? 気づいたらあのコもいねぇし……)
初春「………飾利…///」
垣根「あ……」
初春「『かざりん』より、ソッチの方が……何だか嬉しいですね…」
垣根「そ…そうか…」
垣根「…………」
初春「……///」
夕日……ではなく、まだ午前の木枯らしが吹く並木道を並んで歩く二人……。照れのせいか、目を合わせようとしない。だが―――
―――ギュッ…
しっかりと繋がっている二人の手は……いつまでも互いを離そうとしなかった――――。
―――余談だが、垣根と初春が待ち人達(ウソ)の存在を思い出したのは昼食の最中だったそうだ……。
153 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/20(金) 20:44:33.45 ID:uvbB81Y0 [19/19]
と、言う訳で『決行編』は終了です。
この後『打上編』『成就編』『不滅友情(ラスト・フレンズ)編』と続いて
『完結編(エピローグ)』で、この話もようやく終わりです。
上手く纏められる自信は正直ありませんが、最後まで頑張ります。
もう少しの間ですが、お付き合い頂ければ幸いです。
では、今日はこれにてまた明日。
『再会編(プロローグ)』…夜の学園都市で「最強」と「最弱」は再び巡り会う
『日常・友好編』…一方通行は上条との今後の接し方について考える。美琴との和解もここで完了。最終的には上条の
そげぶで二人に友好が結ばれた。
『妹襲撃未遂編』…二人を慕う妹達が暴走しかけた珍事件。17600号と10032号のおかげで不発に終わった。
『復讐編』…気を操る医者のおかげで復活を果たした垣根帝督が美琴や一方通行に牙を剥く。
『入院編(1)』…垣根との戦いで負傷した一方通行は病院で半日ほど過ごすことに……。見舞いに来た御坂妹に一方通行は
ダブルデートを持ちかける。
『家出編』…昨日の敵は何とやら。急遽垣根と同居を余儀なくされた一方通行は頭を抱えた。その後、打ち止め関連で揉めて
家出してしまう。
『来客編』…上条の部屋へ転がり込んだ一方通行は上条にニ~三回は殴られる。その後、迎えに来た垣根とともに帰宅。
『二組交流(ダブルデート)編』…遊園地で美琴、上条、御坂妹、一方通行の四人は楽しい時を過ごす。が、その後禁書目録は……。
『誘拐編』…謎の男に禁書目録が攫われた。上条は魔術師を推測するが…?
『突入編』…禁書目録を攫った男のアジトへ乗り込む上条と一方通行。最強と最弱のタッグがここに結ばれた。※オリキャラ&オリ設定有り
『共闘編』…能力とも魔術とも違う未知の力に苦戦する上条と一方通行。しかし最後は黒翼を生やした一方通行が戦いを終わらせた。
『真相編』…グループメンバーが合流し、土御門から事の真相を告げられる。その後、一方通行は上条を見殺しにしかけた自分を責める。
『入院編(2)』…戦いで負傷した上条はいつもの病院へ。垣根が初春や美琴と再会したり一方通行が20000号に襲われかけたりと、
終始ドタバタ。この時から、複雑な人間関係へと後に発展してしまう事に気づく者は誰もいなかった…。
『各交際編』…上条・一方通行・垣根はそれぞれの相手(一部コブ付き)と仲良くお出かけ。その目的地はなんと同じ水族館……。
※元アイテムメンバーのその後も有り
3 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/13(金) 22:29:26.79 ID:Yc8ARsg0
『姉妹喧嘩編』…想いがすれ違った美琴と御坂妹はついに大喧嘩へと発展してしまう…。が、上条によって何とか治められた。
※美琴崩壊有り
『告白編』…美琴がついに上条へ想いを告げた。上条は答えを一時保留。その一方で垣根も……?
『苦悩編』…とうとう初春に正体を明かした垣根だが、いつの間にか彼女に惹かれていた自分に気づき、激しい苦悩に苛まれる。
上条と一方通行は事情を知り、何とかしてやろうと目論むが、その前に課題やれよ上条。
『作戦編』…垣根と初春。想いは同じなのにすれ違ったままの二人……そんな二人のために、友人達は立ち上がった。
過去スレ
美琴「とある主人公(ヒーロー)の友情物語?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1278237077/ 前スレ
一方通行「友達って最高だよなァ」上条「まぁな」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1277636346/l50 4スレ目
上条「ブラック苦ッッ!」一方通行「…」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1276074792/l50 3スレ目
一方通行「足引っ張ンなよ三下ァ」上条「おう!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1275384032/ 2スレ目
一方通行「友達になってやンよ」上条「ハイ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1273633562/l50 1スレ目
各編によって長さはバラバラですがご容赦を…。
荒らしの関係で6スレ目になっちゃいましたが、一応これが最終スレになります。
その他、矛盾やおかしい所てんこ盛りですがお許し下さい。
10 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/14(土) 18:30:32.81 ID:1F6NvRs0 [2/26]
――――黄泉川家
垣根「―――ただいまーっと…」
禁書「お邪魔するんだよ!」
玄関で靴を脱ぐのは垣根帝督と禁書目録。時刻は夕食には頃合いの時間だ。
禁書「かきね、ところでいつ電話するのかな?」
垣根「今日はやめとくよ。……昨日の今日だしな。彼女にも少し時間が必要だろ」
禁書「かきねはとうまと違って女の子の心を分かってるんだね! 私感動しちゃったかも」
垣根「明日の夜に電話する。何て言われても、覚悟は決まったからな。当たらずに潜るなら当たって砕けろってヤツさ」
禁書目録と話しながらリビングへ向かう垣根はサッパリとした良い表情をしていた。どうやらすっかり迷いは消えたようである。
もっとも、明日電話を掛ける前に再会を余儀なくされる未来はさすがに想定してはいないが……。
禁書「あー、お腹すいたんだよぉ。よみかわのご飯美味しいから早く食べたいな!」
―――で、何故禁書目録がさも当然のようにファミリーサイドの黄泉川家まで垣根と共に戻ってきたのか……それは三十分ほど前に一方通行から
来た着信音から始まる―――。
11 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/14(土) 18:32:16.21 ID:1F6NvRs0 [3/26]
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『~~~♪』
小萌に別れを告げてアパートを出た垣根と禁書目録は、そろそろ上条宅へ向かおうかと歩き出した。
垣根が一方通行に電話しようと携帯電話を取り出した…と同時に着信を告げるライトと音が携帯電話から発せられたのだ。
垣根「―――お? ちょうど来やがったか……」ピッ
迷うことなく通話ボタンを押して耳に当てた。
一方通行『おォ、メルヘン』
垣根「よう、かいわれ大根」
一方通行『ぶっ殺すぞ』
垣根「コッチのセリフだ」
一方通行『………へェ……ちったァ生気が戻ったみてェだな』
12 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/14(土) 18:34:31.61 ID:1F6NvRs0 [4/26]
垣根「まぁな、心配かけた」
一方通行『そンならイイ。ところでよォ、オマエ今シスターと一緒だよなァ?』
垣根「あぁ、そうだが……」
一方通行『そのままシスター連れて帰って家に泊めてやれ。俺は今日三下ン家に泊まっから帰ンねェし』
垣根「は? またイキナリな話だなオイ……」
一方通行『クソガキや黄泉川には適当に言っとけ。シスターがいるから寂しくはねェだろォ? ってなァ』
垣根「まぁ良いけどよぉ……。じゃあインデックスはウチに泊めるぞ?」
一方通行『おォ頼むわ。それともォひとつ』
垣根「何だ?」
一方通行『明日の十時半に○○公園に来い』
垣根「……なんで?」
一方通行『傷心中の残念なオマエに、明日はこの俺が直々に付き合ってやるっつゥンだよ。文句あンのかァ?』
垣根「はぁ………そんな誘い方があるかよ…」
13 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/14(土) 18:37:09.24 ID:1F6NvRs0 [5/26]
一方通行『グダグダ言ってンじゃねェよ。とにかく明日十時半な? ドタキャンなンざしやがったらブチ殺すぞ』
垣根「もう誘いじゃなくて脅迫になってんじゃねえか……。わぁーったよ。行きゃあ良いんだろ行きゃあ。ったく…」
一方通行『それでイイ。あと、時間ぴったしに来いよ。遅れたり早く着いたりしても殺す』
垣根「は!? おい何だそりゃあ!?」
一方通行『理由は簡単だ。オマエ如きがこの俺を待つなンざ百年早ェ。そしてこの俺がオマエ如きを待つ、なンてのも有り得ねェ。以上だァ』
垣根「以上だ、じゃねェェえええ!! 何だよそのジャイ○ン以上に滅茶苦茶なクソ理論は!?」
一方通行『うるせェ、とにかくそォいう事だ。逃げンじゃねェぞォ? カッキーさァン?』
垣根「(ブチッ)……テメェ………そーかそーか、喧嘩売ってんだな? そーなんだな!?」
一方通行『ハイ、せェかァァい♪ ま、怖くて来れないってンならそれも仕方ねェけどなァ。ひゃはっ』
垣根「んだとぉぉ……誰が」
一方通行『っつー訳だから、明日は時間通りに来いよォ? 垣根くゥン?』
垣根「わかった。明日の朝一にテメェのツラぁ吹き飛ばすわ」
一方通行『ほォー、そりゃあ楽しみだなァ。ンじゃ、明日よろしくゥ―――』プチッ、ツー、ツー…
垣根「……あんの野郎ぉぉ…」ピキキ
14 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/14(土) 18:39:58.01 ID:1F6NvRs0 [6/26]
久しぶりに携帯電話を握り潰しそうな程コメカミを揺らす垣根だったが、この携帯電話を今壊してしまう訳にはいかないので何とか堪えた。
禁書「かきね……?」
垣根「インデックス、今日は家に泊まろうかぁぁ…?」ピクピク
禁書「ひっ……」
引きつった顔で禁書目録の方を向く垣根。その作られた笑顔に禁書目録は思わず二~三歩ほど後ずさった……。
垣根(上等だ。こちとら吹っ切れてっからなぁ、……飾利に電話掛ける前に一方通行のクソ野郎と馬鹿みてぇに暴れておくのも悪くねぇ……)
垣根(なおかつ、ムカついた)
垣根(今度と言う今度はあの『かいわれ野郎』を頂点の椅子から下水道の底にまで叩き落してやる!!)
二つの目と全身に怒りの炎を宿す垣根。実はこれも全て一方通行の計算通りだった―――。
15 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/14(土) 18:42:33.70 ID:1F6NvRs0 [7/26]
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―――上条宅
一方通行「―――よし……こンなモンで良いだろォ」
上条「あぁ、大体オッケーだ。……けど、さっきの電話で大丈夫なのか?」
一方通行「ああでも言わねェと、あの馬鹿の事だ……まず時間通りには来ねェだろォぜ」
上条「そうか…?」
一方通行「多少遅れる分には構わねェが、早く出て来られでもしたら面倒だかンなァ。あそこまで挑発しときゃあ問題ねェ。
それによォ、シケタ気分で来られるよりは、少しでも熱くなった気分で来た方が成功率も跳ね上がるってモンだろォが」
上条「ま、まぁそうかもな…」(さすがルームメイト……性格を完全に把握してやがる…)
一方通行「さァて、そンじゃ俺らも『小道具』の買い出しに行くとすっかァ」
上条「おう、ついでに夕飯もな」
一方通行「晩飯どォすンだ?」
上条「スーパー行って食材買わねえと……」
16 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/14(土) 18:45:11.70 ID:1F6NvRs0 [8/26]
一方通行「今からじゃ時間掛かンだろォが。もォ外で済ませちまおォぜ? オマエは何が食いてェンだ? 夜は俺が奢ってやンよォ」
上条「……何でもいいの?」
一方通行「オマエ、誰に向かって遠慮してンだァ?」
上条「……上条さん、一度で良いからお寿司が食べてみたいんですが……」
一方通行「寿司か。まァたまには良いかもなァ。よし決まり。ならとっとと行くぞ」
上条「!?」
一方通行「ンだァそのツラはァ? まさかオマエ、寿司如きで感動するほど飢えてンのかァ?」
上条「い、一食に千円以上の贅沢が俺にできると思うか!?」
一方通行「……言ってて虚しくならねェか?」
上条「……うん」
一方通行「腹いっぱい食っとけ」
上条「………うん」
一方通行「今日はもォ遠慮すンな」
上条「―――ゴチになりますッッ!!」
こうして、上条当麻と一方通行は外に出かけて行った。……ちなみに、回転する寿司屋でなかった事に上条が
感動を覚えたのはまた別の話である。
17 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/14(土) 18:46:49.38 ID:1F6NvRs0 [9/26]
―――――
―――???
御坂妹「―――ここなら良さそうですね……とミサカは正直な感想を漏らします」
黒子「待ち合わせ予定場所からも近いですし、申し分ありませんわ」
御坂妹と白井黒子はとある廃屋に来ていた。近々取り壊し予定らしく、中は少々荒れているが、決戦場として不足はない。
美琴「―――お待たせー!」
倉庫裏の分電盤をいじっていた御坂美琴が姿を見せた。その表情は不敵な笑みを浮かべている……。
黒子「お姉様、どうでした?」
美琴「問題ないわね。さすがに電気は通ってなかったけど、私に掛かればチョロイチョロイ♪」
黒子「さっすがお姉様♪」
御坂妹「グッジョブですお姉様。とミサカは称賛の言葉を送ります」
美琴「へへへへ……」
18 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/14(土) 18:51:23.35 ID:1F6NvRs0 [10/26]
黒子「これで、『照明』の問題は解決ですわね」
美琴「そうね、ただ……ムードにはちょーっと欠けるかなぁ……」
黒子「贅沢も言えませんわね。この付近にはここ以上の場所はありませんでしたし…」
御坂妹「その辺は『照明』でカバーするしかありませんね。とミサカは意見します」
美琴「うん、あとは……明日ね。打ち合わせ通りに行けば良いけど」
黒子「絶対に成功させてみせますわ」
御坂妹「何だか燃えてきました。とミサカは武者震いが止まりません」
美琴「―――よぉし!! そんじゃ、いっちょ気合入れますかぁ!!」
『―――ファイト!! オー!!』
――薄暗い廃屋に若い少女達の元気な声が響いた。
美琴「さっきアイツ(上条)から『垣根さんの呼び出しは成功した』ってメールが来たから、後は佐天さんが初春さんを
呼び出すだけね。黒子、初春さんは明日大丈夫なの?」
黒子「えぇ、その心配は要りませんわ。幸いなことに明日はわたくしも初春も欠勤ですの」
19 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/14(土) 18:53:27.98 ID:1F6NvRs0 [11/26]
美琴「そう……」
黒子「ま、もっとも……初春のことですから、どうせ仕事なんて手についていないでしょうけど……」ニヤニヤ
美琴「安易に想像できるわね……」
黒子「今ごろ、生気の欠片も無い表情で黙々と処理業務をしている内に、うっかり飲み物でも零してしまっているのがオチですわ」
―――――
―――
―――風紀委員第一七七支部
初春「………」カタカタ
固法「あ、初春さん!」
初春「ふぇ……きゃっ!?」
黒子の予想通り、虚ろな顔で処理業務をしていた初春飾利はデスクから落ちかけたカップに気づかなかった。落ちたカップは音を立てて割れ、
中身のココアで床はビショビショに濡れる。そんな現状に唖然としている初春に先輩風紀委員の固法美偉は心配そうに声をかける。
20 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/14(土) 18:55:13.58 ID:1F6NvRs0 [12/26]
固法「大丈夫……?」
初春「す、すみません! すぐ拭きますから!」
我に返り、雑巾を取りに行こうと席を立つ初春を固法が止める。
固法「初春さん、やっぱり今日はもう帰っていいわよ?」
初春「そ、そうはいきませんよ!」
固法「ううん、今日は事件もないし……あとは私だけで平気だから」ニコッ
初春「で…でも!」
固法「今日の初春さん、見てて辛そうよ? ゆっくり休んだ方がいいわ」
初春「………」
『~~~♪』
それでも反論しようとした時、初春の携帯電話が鳴り出した。初春は「すいません」と断りを入れて電話に応じる。
21 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/14(土) 18:56:50.88 ID:1F6NvRs0 [13/26]
初春「――もしもし、佐天さん。私、今仕事中なんですけど…」
佐天『ゴメンゴメン、あのさ~…明日って暇?』
初春「え?……ゴメンなさい。明日も――」
固法「初春さん、貴女は明日お休みでしょう?」
初春「――えっ…?」
佐天『休みだよね? 初春?』
初春「こ、固法先輩!?」
携帯電話を耳から離して固法を見る初春。固法はひとさし指と親指で丸を作ってニコッと笑いながらウィンクした。
初春「先輩……」
固法の目は『良いから行ってこい』と告げていた。今日の自分の様子を見ていた固法がそう判断したのだ。と初春は思った。
初春は固法に申し訳なさそうな笑顔を向けて電話に戻る。
22 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/14(土) 18:58:48.19 ID:1F6NvRs0 [14/26]
初春「もしもし、……明日は大丈夫、になりました」
佐天『さっすが初春~♪ じゃあさ、明日の十時に○○公園集合で良い?』
初春「え? なんでですか?」
佐天『初春と行きたい場所がその近くなんだよね~。ダメ?』
初春「はぁ……良いですけど」
佐天『おっしゃ決まり! じゃあ明日ね?』
初春「十時に○○公園ですね……。わかりました」
佐天『あ、そうそう初春』
初春「何ですか?」
佐天『絶対遅れちゃダメだからね?』
初春「?……わ、わかってますよぉ」
佐天『うん、よろしい♪ んじゃ、明日ね~』ピッ
通話を終えた初春は怪訝な顔で携帯電話を見る。
23 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/14(土) 19:00:32.30 ID:1F6NvRs0 [15/26]
初春「いつも遅れて来るのは佐天さんの方なのに……変なの」
固法(白井さん……。これで良いのよね?)
そんな初春に気づかれないように、固法は眼鏡越しに目を光らせて笑った―――。
―――――
―――
―――常盤台女子寮
美琴「――あ! 佐天さんからメールだ。……『標的(ターゲット)の誘導に成功』だって。プッ……アハハ♪ ノリノリじゃない」
黒子「どうやら上手くいったようですわね。固法先輩には感謝しなければ……」
美琴「固法さんに悪い事しちゃったな……」
黒子「そうですわね……。けど、固法先輩も初春を心配してくれているからこそ協力してくれたんですの」
24 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/14(土) 19:02:42.82 ID:1F6NvRs0 [16/26]
美琴「……上手くいくといいね」
黒子「ここまでやったんですもの。今さら後には退けませんわ」
美琴「うん!」
コチラのお嬢様二人も、だいぶノってきたようだ。
『明日が待ちきれない!』 彼女達の表情はそう物語っていた―――。
―――――
―――
―――黄泉川家
夕食―――
黄泉川「―――で、あの馬鹿は今日は帰らないってか?」
芳川「あらあら、まさかあの子が友達の家に宿泊する日が来るとはね……」
打ち止め「ミサカに何も言わないなんてずるいよーっ! ってミサカはミサカはやけ食いしてみたり!」ガツガツ
25 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/14(土) 19:05:06.50 ID:1F6NvRs0 [17/26]
垣根「あ! そんないっぺんに食ったら……」
打ち止め「―――むぐぐぐ!!……み、水ぅぅ……ってミサカはミサカは……大ピンチを、迎えてッ…みたり…ッッ!!」
黄泉川「あー、垣根。お茶とってやんな。全くダメじゃんよー? いくらあの馬鹿がいないからって…」
垣根「ホラ打ち止め」スッ
打ち止め「ゴクゴク…ッ! ぷはー! ってミサカはミサカは九死に一生を得てみたり♪」
垣根「まったく……」
禁書「大丈夫? らすとおーだー」モグモグ
打ち止め「うん……」ジー
垣根「……どうした?」
打ち止め「ううん、お兄ちゃんが飲み物くれた時……あの人がこの家に帰って来てくれた日の事思い出しちゃって。
ってミサカはミサカはもの思いにフケってみたり」
黄泉川「あ~、確かあん時も打ち止めが食べ物喉に詰まらせたっけか…」
芳川「で、あの子が文句言いながらも飲み物を渡したのよね。ちょうど今の貴方みたいに…」
垣根「そう言や、あいつ……一度この家から居なくなったんすよね?」
黄泉川「そ、去年の十月入る前だっけか……脳に傷負った一方通行と打ち止めを家で引き取ったんだが、その後に
一方通行は打ち止め置いてさっさと出て行っちまったじゃん。書き置きのひとつもなしでな。で、代わり
に来たのは長点上機学園から転入手続き完了の紙切れ一枚だけじゃんよ」
垣根「…………」
26 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/14(土) 19:06:55.23 ID:1F6NvRs0 [18/26]
芳川「正直、もう帰って来ないと思ってたわ」
黄泉川「帰って来るって聞いた時は驚いたがな……一度引き取った以上、ここはあいつの家でもあるから、拒否なんて選択肢は無かったじゃん」
打ち止め「その時からかな……。あの人がミサカにすごく優しくなったの。ってミサカはミサカは思ってみたり」
黄泉川「確かに。あの馬鹿が帰って来た日は奮発してご馳走にしたんだけどさー、ずいぶん変わってたから驚いたじゃんよ~」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(回想)
一方通行「―――まァ……っつー訳でよォ、悪いがまた世話ンなるわ」
黄泉川「ハイハイ、もう硬い話はそんくらいにしてメシにするじゃん! と、その前に……おかえり! 一方通行」パン
一方通行「うお!?」
芳川「おかえりなさい」パン
打ち止め「おかえりー! ってミサカはミサカはアナタとまた一緒に暮らせる事に喜びを抑え切れなかったり!」パンパン
一方通行「おォ……っつかオマエら、クラッカーはちっと大げさ過ぎンじゃねェのか?」
27 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/14(土) 19:08:35.64 ID:1F6NvRs0 [19/26]
黄泉川「何言ってる? 今日はお前の帰宅記念じゃん」
一方通行「そりゃどォもォ……」
芳川「あら、照れてるの?」
一方通行「ンなわきゃねェだろ!」
打ち止め「熱っ!」
一方通行「あァ!? 何してンだクソガキィ! 煙出てるトコは熱いに決まってンだろォが! 火傷してねェか? 見せてみろ」
打ち止め「うぅ……」
一方通行「………大した事ァねェが、一応氷で冷やしとかねェとなァ……。オマエもォクラッカー使用禁止」
打ち止め「えぇー!? ってミサカはミサカはショックを受けてみたりぃ!」
黄泉川・芳川「……………」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―――――――
黄泉川「……いきなりあれだからな~。さすがに言葉が出なかったよ」
芳川「最初はあの子の皮被った偽者かとさえ思ったわ。顔は凶悪なままだったから余計不気味よね」
28 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/14(土) 19:10:42.16 ID:1F6NvRs0 [20/26]
垣根(あいつ……ロシアで何があったんだよ……)
禁書「それでそれで? 続き聞かせて欲しいかも!」
黄泉川「あぁ、その後さぁ―――」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(回想2)
一方通行「しっかしよォ、しばらく見ねェ内にずいぶンと料理のバリエーション増えたよなァ。炊飯器で作ったモンだなンて
普通なら絶対思わねェぞ……。っつか、一番使用率の高い家電が炊飯器ってのが未だに理解できねェ」
黄泉川「何言ってるじゃーん? 解凍や保温しかできない電子レンジに比べたらよっぽど優秀じゃんよー」
一方通行「………その比較の時点ですでにおかしくねェか?」
芳川「まぁ良いじゃないの。今さらこの食事文化(スタイル)を変えるのも何か違和感があるし」
打ち止め「ミサカもいつか『炊飯器料理』をヨミカワに教わるんだー。ってミサカはミサカは密かな野望を明かしてみたり」
一方通行「悪い事ァ言わねェ。それだけは止めとけ」
29 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/14(土) 19:12:27.06 ID:1F6NvRs0 [21/26]
黄泉川「えー、何でじゃーん?」
芳川「ま、これからは一緒なんだし、君もまたその内慣れるでしょう」
一方通行「まァ、味的には問題ねェから別に良いけどよォ……」パク
打ち止め「あ! これおいしー♪」パクパク
一方通行「オイ! そンないっぺンに食ったら……」
打ち止め「むぐぐぐ……苦しい……水っ、水ーっ! ってミサカ…はぁ……ミサカは……た、助けてぇぇ……」
一方通行「あァーあ、言わンこっちゃねェな、ったくよォ……。オラ、これ飲め」スッ
打ち止め「んぐんぐ……ぷはー! ミサカふっかーつ♪ ありがとー! ってミサカはミサカはアナタに体でお返しー♪」ピョン
一方通行「オマ……ッ! メシ食ってる時に飛びついて来ンなァ!! オイ黄泉川ァ! 俺がいねェ間にガキの躾くらいちゃンとしとけェ!」
黄泉川「あぁん? 黙って出てったお前に言えた義理かぁぁーー!?」バッ
一方通行「…って、なンでオマエまで飛び掛かって来ンだよォォおおお―――――!?」
――――ドンガラガッシャーン!!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
30 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/14(土) 19:14:04.06 ID:1F6NvRs0 [22/26]
―――――
黄泉川「―――とまぁ、そういう訳……。酒入ってつい悪ノリしちまったじゃんよ。結局あの後は大惨事……」
芳川「ホント、手荒い歓迎会になったものよね……」
黄泉川「ちゃっかり避難してた癖によく言うじゃん?」
禁書「ねぇ、あくせられーたは結局どこに行ってたの?」
黄泉川「転入した学校の寮にいたらしいんだけど、その寮が潰れて行くトコなくなったから仕方なく帰って来たとか言ってたじゃん。
ま、帰って来るのは大いに結構なんだけどね」
垣根(潰れた寮なんてねえっつの……。あのボケ)
芳川「シスターちゃん、おかわりいる?」
禁書「いらない訳がないんだよ」
黄泉川「桔梗~、あんた最近やけに家事に積極的じゃん。熱でも出たじゃんか?」
芳川「自分の料理を人に食べてもらうのって……悪くないわね」
打ち止め「え!? これヨシカワが作ったの!? ってミサカはミサカは仰天してみる」
黄泉川「七割が私で、三割がコイツ」
垣根「それでもすげぇ! 確実に進歩してるじゃないすか!」
31 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/14(土) 19:15:29.08 ID:1F6NvRs0 [23/26]
芳川「フ……まさか、私自身が進化することになるとは思ってもみなかったわ……」
垣根(……今のは渾身のギャグなのか……?)
打ち止め(笑っていいのかミサカはミサカは分からなかったり……)
禁書「おかわりー♪」
その後も黄泉川家の談笑は続く。
禁書目録のおかげでこの日の黄泉川家の炊飯器はイキイキと稼動を続けていた。……まさにそう、燃え尽きるほどに。
―――――
―――
―――上条宅
一方通行「ふゥ、……オイ三下ァ。風呂空いたぞォ」
上条「おーう」
―――買い物と夕食を終えて部屋に戻った二人はマッタリと時を過ごしていた……。
32 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/14(土) 19:17:26.28 ID:1F6NvRs0 [24/26]
やがて風呂から上がった上条は寝巻きに着替えて居間に戻る。
一方通行「…………」
コーヒーを啜りながらテレビをぼんやりと見つめる一方通行に上条が声をかける。
上条「考えてみたらさぁ……俺らがこうして二人なのって、今までなかったんじゃねえか?」
一方通行「ン? そォかァ…?」
顔を上条に向けて思い返す表情を作る一方通行。やがてすぐに賛同した。
家出した時も、デートの時も、入院した時も……日常を二人だけで過ごした事は今まで殆どなかったのだ。
禁書目録が誘拐された時は非日常で意識する暇もなかったし、だとしたらこうした男二人の時間を過ごすのは友達宣言した
あの日以来という事になる。
一方通行「……言われてみりゃあそォかもなァ。いつもはクソガキやらシスターやらがいたし、俺とオマエだけってのは
確かに今までなかったわ」
上条「たまには悪くねえよな」
33 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/14(土) 19:18:31.13 ID:1F6NvRs0 [25/26]
一方通行「たまには、ねェ……。つっても、俺もオマエもコブ付きだからなァ。こォいう機会は少ねェっちゃ少ねェか」
それに対し、「そうだな。良い機会だ…」と呟いた上条は唐突に表情を変えて切り出す。
上条「なぁ、お前ってさ……」
一方通行「……あァン?」
上条「美琴の事……どう思ってるんだ?」
一方通行「……は? ナニ言い出すンだ急に……」
上条「実は、前から聞きたかったんだ……。一方通行、お前……本当は―――」
一方通行「………?」ゴクゴク
「――――御坂美琴の事が……好きなんじゃねえのか?」
一方通行「――ブゥゥッッ!!!?」
冗談抜きの真顔で問う上条に、一方通行は目を丸くする。
飲んでいたコーヒーは喉を逆流し、彼の口から鯨の潮吹きの如く盛大に噴射された―――。
46 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/15(日) 19:52:48.43 ID:IPW8i9M0 [2/22]
―――――
「―――お前、御坂美琴が好きなんじゃねえのか?」
―――今、確かにそォ言ったよなァこの三下はァ……? と、一方通行はコーヒーで茶色く染まった口をポカンと開けて呆然とした。
思わず首元のスイッチを確認する……。うん、通常モードだ。うっかりスイッチが切れた訳ではなさそうだ。言語能力にも支障はない。
なら……単なる聞き間違いの可能性は?
上条「だ、大丈夫か一方通行……ほら、タオル」パサッ
一方通行「………」フキフキ
とりあえず落ち着こう……と、ぶちまけたコーヒーを拭きつつもう一度尋ねた。
一方通行「……なァ三下よォ、今言った事もォ一度復唱してくンないかなァ?」
上条「え? 聞いてなかったのか? ……だから、お前は美琴が好きなのか。って訊いたんだよ」
一方通行「…」
……何故? コイツはどこで道を踏み外した? 何故にそのような結論に至る?
47 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/15(日) 19:56:40.45 ID:IPW8i9M0 [3/22]
本気で分からなかったから、ここは素直に訊き返す事にした。
一方通行「あのよォ、………なンでそォなるンだ? 分かるよォに説明して欲しいンだけど…」
上条「は? なんでって……お前、美琴に惚れてんじゃ……」
一方通行「だからなンでそォなるンだって訊いてンだよコッチはァァああああ!!??」
上条「へっ?……何? どぉいう事……?」
一方通行「コッチが知りてェよ!! なンで俺が超電磁砲に惚れてる設定になってンだよォ!? そンなフラグ立てた覚え皆無
なンですけどォ!?」
上条「………違うの?」
一方通行「脳ゆすいでやろォか? 頭ン中洗濯機みてェに濯いでやろォかァ!?」
上条「………あれぇ?」ポリポリ
バツの悪そうな顔で頭を掻く上条に苛立った一方通行はさらに問い詰める。
一方通行「一体いつオマエはンな的外れの幻想を抱いたンだァ? 喋るまでは寝かさねェぞ?」
上条「……えーっと……遊園地の辺りから……」
一方通行「理由ゥ」
上条「えっ……って、……あ! まさか……」
48 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/15(日) 19:59:42.58 ID:IPW8i9M0 [4/22]
一方通行「あァ? どォした?」
上条「誘ったのお前だったから……俺、てっきりお前が美琴とデートしたいんじゃねーかって思ったんだ……」
一方通行「ハイ、でっかい×(バツ)を上条くンにプレゼントォ~」
上条「そうか……お前、まさか………俺の……ために…」
一方通行「べ、別にオマエのためとかそンな訳じゃねェンだからなァ!! ただオマエらのくっつきそォでくっつかねェラブコメ劇場に
イイ加減うンざりしただけなンだっつゥのォ!!」
上条「……お前ってヤツは…」
一方通行「………あァン? オイちょっと待て。オマエ、なンでそれに気づいた? 朴念仁街道一直線のオマエが一人で気づく訳がねェ事
くらい知ってンだぞォ?」
上条「―――ぎくっ!!」
一方通行「どォやらまだ眠るのは早いよォだなァ。上条くンよォ」ニヤニヤ
上条「……あはは」
一方通行「オマエ、何隠してンだァ!? 洗いざらい喋れ!」
上条「は、はいっ! じ……実はその―――」
結局、美琴から愛の告白を受けた事を自供した上条くんだった……。
49 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/15(日) 20:03:39.67 ID:IPW8i9M0 [5/22]
一方通行「―――ンだよ。超電磁砲のヤツに言われてよォやく気づいたってのかァ?」
上条「いや……実は、ちょっと前からそうなんじゃないかなー…とは思ってたんだ」
一方通行「どっちにしろ気づくのが遅せェンだよ!」
上条「いやぁ……返す言葉もない」
一方通行「それで、オマエは何て答えたンだァ?」
上条「………言いたくないんですが」
一方通行「よし、そンじゃまずは血流操作して神経全部破壊してから脳の切開を――」スッ…
上条「喋る!! 喋るからスイッチに手を掛けないで!!」
一方通行「正直に言えよォ。後で長電磁砲に確認すっからなァ。ウソ報告後は人肉加工売り場直通ルートだぜェ?」
上条「すまん! 俺……お前が美琴の事好きなんだと勘違いして……それで」
一方通行「それでェ?」
上条「………お前の気持ち確認しようと思って一時保留した」
一方通行「人肉決定~♪」カチッ
上条「ま、待て! 待って! 待って下さい!!」
50 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/15(日) 20:08:08.86 ID:IPW8i9M0 [6/22]
一方通行の白い顔が赤くなる…。
一方通行「フザっけンなよ三下ァァ!! オマエこの俺に気ィ遣ったってのかァ!?」
上条「そうじゃねえんだ! ただ、お前に何の報告も無しで美琴と付き合う訳にも……」
一方通行「なンでだよ!? オマエの問題だろォがァ!! そこでなンで俺の許可を求めンだよォ!?」
上条「だから……お前も美琴が好きなんじゃねーかって勘違いしてたんだよ!」
一方通行「……待てよ。オマエ、今、『お前も』って言ったか? って事ァ……」
上条「―――あぁ、俺は美琴が好きだ。ひとりの女として」キリッ
一方通行「………だったら、何の問題もねェじゃねェか。なンで俺に気なンか回す必要があンだよ?」
上条「確かに美琴は好きだ。けど、お前も大事な友達だ。どっちかを失わなきゃ得られない幸せなら、俺はそんなの要らねえよ!」
一方通行「………いつもいつも思うンだけどよォ、オマエ自分で言ってて恥ずかしくはなンねェの?」
上条「何のことだ?」
一方通行「……もォイイ。つまり、オマエと超電磁砲が両想いなのは分かった。ならそれで良かったじゃねェか」
上条「……一応訊くけど、お前、俺に気を遣って身を引くとか、そんな事は考えたりしてねえよな?」
51 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/15(日) 20:13:18.63 ID:IPW8i9M0 [7/22]
一方通行「……俺がそンな人間に見えるってかァ? 三下ァ。オマエなかなか面白ェ事言うじゃねェか」
上条「本音で言えよ。確かに、お前に変な気を遣ったのは悪かったと思ってる。だからって、お前が身を引くのは間違いだ」
一方通行「じゃあ、仮に俺が超電磁砲に惚れたっつったら……オマエはどォしたンだよ?」
上条「そん時は……決まってんだろ?」
一方通行「あァ?」
上条「恨みっこなしで勝負すんだよ。どっちが美琴と付き合っても後悔しないようにな」グッ
笑って拳を握る上条だが、一方通行は冷めた視線を向ける。
言ってることは格好良いが、このパターンには似合わないセリフだった…。
一方通行「超電磁砲がオマエに惚れてる時点で勝負はついてンじゃねェか」
上条「そういうハンデをなしにするために、まずは美琴が俺に抱いてるイメージ(幻想)をブチ殺せば良い」
一方通行「オマエってさァ……」
上条「ん?」
一方通行「……本っっ当に、馬鹿だよなァ」
上条「わ、分かってんだよそんな事ぁ! だって仕方ねぇじゃねーか! 一方的にどっちかを選べとか言われたって、どーせ俺にはそんなの
できっこねーんだから!」
52 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/15(日) 20:15:40.96 ID:IPW8i9M0 [8/22]
一方通行「……安心しろよ。オマエに気なンて遣わねェ。超電磁砲はタイプの女じゃねェしな」
上条「……………」
一方通行「さァ、もォこの話は終わりにしてさっさと寝ンぞォ。明日は早ェンだからなァ」
上条「美琴はタイプじゃない…ってことは、やっぱ打ち止めか……。いや、しかし年齢的にそれは…」ブツブツ
一方通行「あァ、寝る前にまだやる事あったわ」スクッ
二十秒後、とある無能力者のいつも以上に悲痛な断末魔が夜の学園都市に響き渡る。
男二人だけで過ごす初めての夜は、別の意味で血の滲む悲劇で喜劇な夜となったのだ。
こうして夜は更けて行き、遂に決戦(?)の朝を迎えたのだった―――。
――――――
―――
―――そして、翌朝(決行の日)…
53 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/15(日) 20:18:12.29 ID:IPW8i9M0 [9/22]
―――上条宅
「―――うわ……アンタどうしたのよ? その顔……」
「―――喧嘩でもしたんですか……?」
「―――言ったら悪いと思いますが、ますますサルへと近づきましたわね」
「―――見るも無残です……。とミサカは率直な感想を述べます」
上条「―――おう、皆よく来てくれたな。まぁ……上がってくれ」ボロボロ
時刻は集合予定の九時ちょっと前、上条が呼び鈴に反応して玄関のドアを開けた途端、少女達からそんな言葉を投げ掛けられた……。
ドアの前にいた御坂美琴、白井黒子、佐天涙子、御坂妹は応対した上条の顔を見た瞬間「げっ」という顔をした。そりゃそうだ。
上条の顔には無数のアザやら切り傷やらが付いているからだ。例えて言うならジャイ○ンにボコボコにされた直後のの○太と言ったところか……。
眠気眼にも不貞腐れているようにも見える顔で上条は居間へと少女達を上げた。
ちなみに、ボコッた張本人はベッドで未だ熟睡中である。
一方通行「Zzz…」
美琴「―――あ、結局一方通行泊まってたのね……ってまだ寝てんじゃない!」
54 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/15(日) 20:21:40.66 ID:IPW8i9M0 [10/22]
佐天「うわ~、超無防備ですよ……?」
黒子「こ、これがあの学園都市最強にして最恐の能力者、一方通行様ですの……? まるで別人ですわ……」
御坂妹「相変わらず可愛い寝顔ですね。とミサカは髪を撫でてみます」サラサラ
一方通行「Zzzzz…」
美琴「……わ、私も撫でていい? なんていうか……母性本能が……」キュン
御坂妹「どうぞ。とミサカは大人な対応をします」
黒子「お、お姉様、次はわたくしも……」キュン キュン
佐天「小犬みたい……やば、ちょっと可愛過ぎでしょこれは……」キュン キュン
少女達の目は完全に可愛い動物を見る目と化していた。
黒子「あらぁ、特に脱色してる訳ではありませんのね……」サラサラ
佐天「わ、ほっぺたスベスベ~……」サワサワ
美琴「あ、私も触りたい~!」
御坂妹「ちょっと! ミサカの番を抜かさないで下さい! とミサカは注意します」
一方通行「………」
55 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/15(日) 20:23:54.45 ID:IPW8i9M0 [11/22]
ナニヨ イイジャナイノ チョットクライ
ワタクシモホッペサワリタイデスノー
ヤワラカイー キレイー コノセイブツハホントニアノアクセラレータナノ?
――キャッ キャッ
ペタペタ サワサワ ツンツン
寝ているところを女子中学生達から良い様に弄くられる学園都市最強……。この光景に最も居心地の悪さを覚えたのは当然上条だった。
上条(え、絵的に良いのかコレは?………にしても一方通行…………羨ましい! 羨まし過ぎるぞォォおおおおおおおッッ!!!!!)ゴォォ
おや? 上条からは黒翼など生えないハズなのだが………。
そんなこんなで目が覚めるまでの五分間、一方通行は少女達の癒し道具として散々弄ばれまくったのだった―――。
―――――
―――
56 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/15(日) 20:27:17.61 ID:IPW8i9M0 [12/22]
―――――
上条「―――改めて皆! 本日はよくぞ集まってくれた!」
美琴「いや……アンタそれ何キャラよ?」
一方通行(なーンか妙に頬が温けェンだよなァ……)スリスリ
佐天「サー♪」
黒子「佐天さん? 今のは乗る所ですの?」
上条「御坂、現場の準備は?」
美琴「問題ないわ!」
上条「白井、空間移動のタイミングは?」
黒子「バッチリですの!」
上条「佐天さん、ルートは?」
佐天「完全記憶しました!」
上条「御坂妹、通信機は?」
御坂妹「ここに。とミサカは人数分の無線機を取り出します」ジャラ
上条「よし、でかした」
57 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/15(日) 20:29:35.05 ID:IPW8i9M0 [13/22]
一方通行「………携帯で良いンじゃねェのか?」
上条「気分だ気分! それに、携帯より無線機の方が通話しやすいだろ?」
一方通行「まァ……そォなのか……?」
上条「さぁ! 時間はまだある! 練習はしないつもりだったが、やっぱり怖いから一度だけ現地でリハーサルするぞー!」
一同『おーー』
上条「声が小さい! もう一度!」
一同『おォォォおおおおおおおおおおおっっ!!!!!』
上条「よーし! それじゃあ行くぞ! 絶対成功させようぜ―――!!」
一同『おォォォおおおおおおおおおおおおおっっ!!!!!』
――――こうして、作戦決行のために意気揚々と外へ出た上条達……。友のために練りに練った(?)作戦が今始まるのだった……。
上条「―――『垣春(垣根×初春)ラブラブゴールイン大作戦☆』の幕開けだぁぁっ!!」
美琴「………その作戦名、ダサイからやめない?」
一番燃えているせいか、それとも単にリーダーシップが強いだけなのか……妙にハイテンションな上条だった……。
58 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/15(日) 20:32:00.28 ID:IPW8i9M0 [14/22]
―――――
―――
~~~~~~~
…………カッキーさんの裏切り者…………
…………ずっと私を騙してたんですね…………
…………信じてたのに…………
初春『もう二度と私の前に姿を現さないでくださいっっ―――!!』
~~~~~~~
「――――ッッ!!?」ガバッ
勢いよく布団から跳ね起きた垣根帝督……。額には汗が滲んでいる。
「…………………クソッ、なんつー夢見てんだよ………はぁぁ……」
59 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/15(日) 20:35:49.46 ID:IPW8i9M0 [15/22]
溜息を思い切り吐きながら垣根は落ち着いていった。悪夢に魘されたのは久方ぶりだ。
「八時か……」
ふと時計を確認する。まだ時間的には少し余裕があった。
「…………ざけやがって、たかが夢如きでこの俺が臆してられっかよ!」
反動をつけてベッドから立ち上がる。隣りに居る筈の一方通行は上条宅へ外泊しているため、今はいない。
もっとも、あと二時間もすれば会えるだろうと垣根は思っていた。
「―――あの馬鹿には悪いが、態度次第じゃ八つ当たり確定だな…」
呟きながら部屋を出る。本日の主役にまだその自覚はないようだ――――。
60 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/15(日) 20:37:50.10 ID:IPW8i9M0 [16/22]
―――――
―――
「…………」
初春飾利はベッドで何やら考え込んでいた。何を考えていたのかは、言うまでもないだろう……。
「カッキー……さん……垣根……さん……」
ぼそぼそと交互に名前を呟く少女。彼女もまた、悪い夢に魘されて起きたのだ。
「………用意……しなくちゃ」
のそりと起き上がって洗面所へ向かう初春。顔を冷たい水でいくら洗っても、その表情は晴れなかった。
「こんな顔、佐天さんにはもう見せられない……」
61 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/15(日) 20:40:27.83 ID:IPW8i9M0 [17/22]
笑わなきゃ、と意識するが……初春は作った笑顔の方が逆に不気味だと思った。
(カッキーさんと話したいなぁ……。そうしたら……いくらでも自然に笑えるのに……)
たくさん泣いたつもりだったが、まだ枯れていないらしい……涙の流れかけた目をまた水で洗う。
(結局、昨日も電話できなかったなぁ………。私って、なんでいつも肝心なところで勇気出せないんだろう……)
垣根が聞いたら全力で否定しそうなことを心で呟いた……。パチン! と鏡の前で頬を叩き、表情を入れ替える。
「―――行きましょう! 佐天さんと思いっきり遊んで、勇気分けてもらわなきゃ……!」
気合の入った顔で洗面所を出た初春は、いそいそと出かける支度を始める。本日のお姫様はまさしく空元気だった―――。
――――――
―――
62 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/15(日) 20:44:29.17 ID:IPW8i9M0 [18/22]
おまけ
※ちょっとした通行止め(単なる気分転換です)
※本編とは(ry
※地の文なし
打ち止め「ねぇ、あの人とばっかりじゃなくてたまにはミサカとも遊んでよ。ってミサカはミサカはアナタの服を引いておねだりしてみる」クイクイ
一方通行「あァン? オマエ、いきなり何言ってやがンだァ?」
打ち止め「だってー! 最近あの人といっつも一緒に出かけて行くじゃん! で、ミサカは置いてけぼりじゃん! ミサカつまんなーい!
ってミサカはミサカは駄々をこねてみたりーっ!」
一方通行「あのなァ、今までオマエの遊びに何度付き合わされてると思ってンだァ?」
打ち止め「まさか……ミサカに飽きたの? ってミサカはミサカは捨てられることを危惧してみる…」
一方通行「ばっ……馬鹿な事言ってンじゃねェぞ! 俺がいつオマエを捨てるっつったンだよ!?」
打ち止め「だってぇ……」ウルウル
一方通行「オ、オイ泣くな! ………だァクソ! わァったよ! 今日はオマエと遊ンでやっから、目ェウルウルさせンな!」
打ち止め「ホント!? やったー♪ って、ミサカはミサカは飛び跳ねてみたりぃ!」
一方通行「……ったく、で? 何して遊びてェンだ?」
打ち止め「お馬さんゴッコ♪」
一方通行「は? この俺に四つン這いになれってかァ? 却下だ! 他にはねェのか?」
63 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/15(日) 20:47:37.13 ID:IPW8i9M0 [19/22]
打ち止め「うーんとね? ってミサカはミサカはシンキングターイム♪」
一方通行「…………」
打ち止め「あ! じゃあじゃあ、電車ゴッコ!」
一方通行「……それってまさか、並ンで縄引っ張りながら走っていくっつゥ……あれか?」
打ち止め「うーん、ちょっと違うかも。ってミサカはミサカは否定してみる」
一方通行「あン? じゃあ何だってンだよ?」
打ち止め「ちょっとそこに仰向けで寝そべって。ってミサカはミサカは諭してみる」
一方通行(何させる気だァこいつ……)
打ち止め「早くー! 早くしないと………ひくっ、ひくっ」(ってミサカはミサカは究極技の『ウソ泣き』を発動してみたり)
一方通行「あァァもォ! わァーった! わァーったから! …………ほらよ、これで良いかァ?」ゴロン
打ち止め「おーけー! では、レッツ乗車ー♪」ピョン ドシン
一方通行「―――ゲブゥッッ!!??」
打ち止め「あれ? お尻の下から潰れたカエルみたいな声が聞こえたけど、まぁいっか♪ ってミサカはミサカは気にしなーい!」
一方通行「俺が気にするわボケェ!! さっさとどけェ!! っつーか、これのどこが電車ゴッコなンだよォ!? ただオマエが
俺の腹にヒップドロップかましただけじゃねェか!!」
打ち止め「うん。だからアナタが『電車』で、ミサカがお客さーん! ってミサカはミサカは発車を促してみる」
一方通行「できるかァ!! ンなことより重ェから早くどけっつゥンだよ!!」
64 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/15(日) 20:49:22.05 ID:IPW8i9M0 [20/22]
打ち止め「ム、……お客さまに向かってまさかの暴言! これは許すまじ! ってミサカはミサカはお仕置きモード発動!」
一方通行「な!? ちょ、オイ! 上に来ンなァ! 何考えてンだコラァ!!」
打ち止め「演算切って好き放題ってのも良いけどぉ、むふふ♪ ってミサカはミサカは小悪魔的な顔でにじり寄ってみたり」
一方通行「……オイ馬鹿やめろ。な? いっそ演算切れ! そのほォがまだ――――ッ!!??」
打ち止め「どぉですか? 気持ち良いですか? ってミサカはミサカはショーフ(?)の真似をしつつ訊いてみたり」
一方通行「」
打ち止め「あれ……違ったのかな? ってミサカはミサカは首を傾げてみたり」
一方通行「」
垣根「―――あ、もしもし。警備員ですか? 幼女暴行現場を目撃したんで、すぐに来て下さい。えぇ、場所はファミリーサイドの…」
一方通行「―――だァァあああああ!!!! 通報してンじゃねェェェええええええええ!!!!!」
おわり フッ…って鼻で笑ってやって下さい。
75 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/17(火) 19:18:32.39 ID:RzYYEkw0 [2/15]
――――――
上条「――――よしっ! 完璧だ!」
一同がいるのは昨日美琴達が訪れた近々とり壊し予定の廃屋。
ちょうど今、簡単な打ち合わせ(リハーサル)及びセッティング確認を終えたところだった……。
時刻は九時半過ぎ。ちょうど良い時間だ。
美琴「何とか間に合いそうね」
御坂妹「もうすぐ本番なのですね……。とミサカは胸を躍らせます」
一方通行「ここまで来たら、後は上手くいくよォ願うだけだな」
佐天「ってか、もうすぐなんですよね。……何か緊張してきたよ~」
美琴「私も、ちょっとドキドキしてきたわ……」
上条「うっし! そんじゃ、緊張を吹き飛ばすためにいっちょ円陣でも組みますか!」
美琴「お、いいわね~!」
佐天「そうですね。……やりますか!」
76 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/17(火) 19:21:16.37 ID:RzYYEkw0 [3/15]
御坂妹「やりましょう。とミサカも賛同します」
黒子「ふふ、燃えますわね」
上条の誘いをきっかけに集まって輪を作り出す……。
御坂妹「ほら、あなたもですよ。とミサカは手招きします」
一方通行「……イヤ、俺は―――ィい!?」グイッ
拒否の言葉を言い切る前に引っ張られて輪に加えられてしまった……。そのまま全員が肩を組む。
一方通行「……………」
上条「よぉし、皆いいか?」
上条の問いに皆頷く。一方通行も観念したようだ。そして次の瞬間、息を大きく吸った上条が一気に叫んだ。
上条「絶対成功させるぞ!! 垣根と初春さんが結ばれない幻想なんて俺達でブチ壊してやるんだ!! そんじゃあ行くぞォォおお!!」
77 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/17(火) 19:22:50.63 ID:RzYYEkw0 [4/15]
「せーの!!」
全員「――――ファイトォッ!!! オーーーー!!!!!」
全員の目に魂が宿る。作戦決行の時間はすぐそこまで迫っていた。
―――――
御坂妹「―――では、ミサカは所定の場所へと向かいます。とミサカは皆様の御武運も祈りつつ席を立ちます」スクッ
上条「おう、頼んだぜ!」
御坂妹「はい、ミサカにお任せを。では―――」
上条達にVサインと笑みを見せてひと足先に立ち去る御坂妹を皆は手を振ったり「頑張ろうね」と声を掛けたりして見送った。
一方通行「オイ、俺らももォ行った方が良いンじゃねェか?」
上条「あぁ、そうだな」
78 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/17(火) 19:24:49.47 ID:RzYYEkw0 [5/15]
何かが入った紙袋を持って立ち上がる上条と一方通行。そんな二人に美琴が声を掛ける。
美琴「アンタ達も、上手くやんなさいよ?」
上条「あぁ、もちろんさ。……時間的にはもうそろそろってトコか……。白井、それじゃお前も頼むぞ?」
黒子「ええ、任せて下さい。では、わたくしも行って参りますわ。皆様、また後ほどに―――」シュン
―――黒子の姿はそこで消えた。
佐天「じゃ、私らも行きましょうか。待ち合わせ予定の公園へ―――」
上条「あぁ、じゃあ御坂。行ってくる」
美琴「オッケー、しっかりね。待ってるから…」
美琴を残して上条と一方通行、そして佐天の三人は廃屋を去っていった……。
―――――
―――
79 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/17(火) 19:26:10.55 ID:RzYYEkw0 [6/15]
―――○○公園
初春「―――あれ……佐天さんまだ来てないのかなぁ……。昨日は遅れるなって言ったくせにぃ……」
時刻は十時五分前、初春飾利が公園に姿を現した。初春はキョロキョロと周囲を見るが、待ってるハズの親友はどこにも見えなかった。
初春「電話してみよっかな……」
携帯電話を取り出して佐天の番号に掛ける。すぐに佐天は電話に出た。
佐天『―――初春ごっめーん! ちょっと遅れるけど、急いで行くから公園で待ってて!』
初春「わかりました。じゃあ待ってますね」――ピッ
仕方ないのでベンチに腰掛けてしばらく待つ………。
と、そこへ――――
??「あっれぇ? こんな時間にこんなところで何やってんの子猫ちゃん♪」
80 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/17(火) 19:30:10.24 ID:RzYYEkw0 [7/15]
初春「―――!?」
突然横から声を掛けられてビクッとする。見ると、ベンチのすぐ隣りで何やら怪しい風貌をした男が二人して初春を見下ろしていた。
一人は黒のダウンジャケットに帽子(ニューエラー)とサングラス、もう一人は白い変な模様入りのパーカーに深く被ったニット帽
といった、いかにもガラの悪いチンピラ風な格好だった……。ポケットに手を突っ込んでだらしなく立つ二人の男……。
当然、初春は警戒する。
男1「俺らさぁ、今すっごい暇してんだよね♪ どう? これから一緒に遊ばない?」
男2「怖がンなくて良いンだぜェ? 楽しい思い出作らせてやっから一緒に来いよォ」
初春「な……」
何故だか男の一人が放つもの凄いプレッシャーに怯んでしまう初春。
男1「君、カワイイねぇ? どう? お兄さん達と一緒に来ればきっと楽しいぜぇ?」
男2「ホラホラァ、どこ行きたいィ? どこだって連れてってあげれるよォ?」
初春「こ、困ります! これから友達と会う約束してるんです!」
81 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/17(火) 19:31:57.99 ID:RzYYEkw0 [8/15]
それでもキッパリと断るが、二人組は全く気にしていない。
男1「じゃあその友達来る前にさっさと連れてくか?」
男2「そォだなァ、ひゃはは」
初春「な、何を……するつもりですか…?」
嫌な予感を感じた初春は立ち上がって後ずさる……。その目はまるで熊にでも遭遇したかのように怯えていた。
男2「あァ? 何って、決まってンじゃねェか」
男1「無理矢理にでも付き合ってもらうんだよぉ。へへへ…」
いやらしく笑いながら近づく男1……。
初春「―――い、いやぁッッ!!」ダッ
恐怖のあまり逃げ出そうとするが、足がもつれて転んでしまう。
82 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/17(火) 19:34:47.73 ID:RzYYEkw0 [9/15]
初春「―――痛ッ!」ドテッ
男1「あっ! お、おい! 大丈夫か!?」
男2「――ッ!? バ、バカ!」
初春「ううう………?」
後ろで男達が何やら揉めているようだ。これはチャンス! とばかりに跳ね起きた初春は体の痛みを堪えてそのまま
公園内を逃げる。
男1「し、しまった!」
男2「チッ、何やってンだバカヤロォ! 早く追うぞ!」
男1「お、おう!」
二人組も慌てて後を追い始めた。
初春「―――ハァ、ハァ、ハァ…………」
83 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/17(火) 19:37:22.79 ID:RzYYEkw0 [10/15]
木の陰に隠れて乱れた息を整える初春。全くついてない。ここんところロクな目に合ってない気がする。何で自分がこんな目に…?
そう考えている途中で声が聞こえた。
男2「見ィーつけたァ。ぎゃは」
男1「俺達から逃げられると思ってんの?」
初春「―――ッ!?」
横から突然姿を見せた男達に初春の心臓が止まりかける。
初春「な、なんで………くっ―――!」ダダッ
再び逃亡する初春……だが、男達はさっきとは違い、どこか余裕そうだ。
男2「―――オイ、次は?」
何やら無線機のような機械を取り出して喋る男2…。すぐに機械についているスピーカーから声がした。
84 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/17(火) 19:40:12.64 ID:RzYYEkw0 [11/15]
『―――標的(ターゲット)は滑り台の下に隠れましたわ』
男2「オーケェ。引き続き見張れ。おっと、そろそろ『アイツ』に『出番だ』って連絡入れろ」
『―――了解ですの』ピッ
男1も同じ機械を取り出して誰かと通信を始めた。
男1「―――俺だ。ソッチは?」
『―――はい、こちらS小隊。標的2(ターゲット・ツー)の姿はまだ確認できません。引き続き監視に当たります』
男1「はは、了解。コッチがここを出る前に、もし姿が見えたらすぐに連絡してくれ」
『―――了解っ♪』ピッ
男2「オイ、ソイツのそのノリどォにかなンねェのか? 果てしなくうぜェ」
男1「まぁそう言うなって。いちおう彼女が来た方の出口へは追い込まないようにするぞ。鉢合わせなんてことになったら
全てパーだからな」
85 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/17(火) 19:48:23.24 ID:RzYYEkw0 [12/15]
男2「それは良いけどよォ……。っつーかオマエ、さっきはヒヤッとしただろォが。自分が今悪党だっての忘れてンじゃねェよ」
男1「す…すまん。つい癖で……気をつける」
男2「……あンましモタついてても仕方ねェ。『アイツ』が見えた時点で、とっとと公園から追い出すぞ」
男1「オーケー」
そんな会話をしながら機械をしまって歩く男二人組―――。
―――――
初春「―――ひゃっ!?」
来た方とは反対方向の出口付近でまたしてもあっさり発見される初春。何故自分の隠れ場所が分かるのだろうか? まさか能力者か?
と、初春は戦慄した……。
男1「へっへっへ……鬼ごっこはもう終わりかい? お嬢ちゃん」
男2「俺達から逃げよォなンざ五百年ばかし早ェンだよォ。イイ加減に観念したらァ? どォ足掻いたって無駄なンだからさァァ」
86 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/17(火) 19:50:31.40 ID:RzYYEkw0 [13/15]
初春(こうなったら、公園から一旦出て助けを呼ぼう!)ダッ
一気に公園出口に向かって駆け出す。
男1「オイオイ、逃げても無駄だぜぇ?」ダッ
男2「ひゃはは! さァァ、お次はどこに行くのかなァ? 哀れな子猫ちゃンよォォ!!」ダッ
男二人が凄まじい勢いで追いかけて来る。
初春「―――いやぁぁっ!!」
完全に捕まる―――と思ったその時!
「―――コッチです!」ギュッ
初春「―――!!??」
87 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/17(火) 19:53:52.77 ID:RzYYEkw0 [14/15]
マスクと帽子(キャップ)を身に付けた若い少女がどこからともなく現れ、初春の手を引いて走り出していた。
初春「―――あ、あのっ!」タッタッタッ
少女「………」タッタッタッ
彼女は何も答えず、ただ初春の手をぎゅっと握って走るだけだ。初春の顔を見ようともしなかった……。
公園から出た二人はそのまま逃げ続ける。少女は適当な隠れ場所を全てスルーして真っ直ぐ走り続けた。
初春が後ろを見ると、男二人はまだ追いかけて来ている。
男1「―――待てコラァァ!!」ダダダダ
男2「―――はっはァ!! 逃がさねェっつってンだろォォ!!」ダダダダ
まずは逃げ切るのが先決だと判断した初春は、見知らぬ少女とともに走った―――。
やがて、しばらく走った二人は一軒の廃屋へ逃げ込んだ。手を引いて先に走る少女が何の迷いもなくその建物に入った事を
初春は少し疑問に思ったが、すぐにそんな思考は追っ手の粗暴な声で消し飛ぶ。
男1「―――クソがぁぁあ!! いつまでも逃げ回ってんじゃねえぞぉ!?」
男2「―――手間掛けさせてくれた礼、高くつくぜェェ?」
93 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/18(水) 20:08:04.07 ID:Ds7BWos0 [2/17]
―――――
少女「………」
初春「………」
奥の部屋へ駆け込んだ二人の少女は暖炉の側にあるテーブルの下に隠れた。少女は指を手に当てて「シーッ」とだけ伝える。初春はそれに頷くだけで答えた。
遠くの方から男の声がする……。二人は身を低くしてジッと息を潜めた。
男1「隠れても無駄だぞぉ~? ここにはだぁれも住んでないんだからなぁ」
男2「つまり助けも来ねェってなァ! 諦めて早く出て来なよォ。たあっぷり可愛がってやるからさァ! ひゃは」
男二人組はどうやら自分達を捜しているようだ。聞こえてくる足音や声がやけに怖い……。
ドコニイッタノカナーァ?
ハヤクデテキタホウガミノタメダヨォー? アハギャハッ
初春(ひっ……)
94 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/18(水) 20:11:36.95 ID:Ds7BWos0 [3/17]
(うう……こんな誰もいないような所で見つかったりしたら……完全にアウトじゃないですかぁぁ!!)
心中でそう叫ぶ初春だが、少女は落ち着いたままだった。初春と違って体を振るわせる事もなく、ただじっと身を潜めている…。
(…………あれ? この人、どこかで見たような気が………でも、暗くて良く分からないや…)
少女の横顔は暗い中差し込む僅かな光で何とか見えるが、人物を特定させるまでには至らなかった。
(でも、この人が来てくれなかったら……私、間違いなく捕まってましたね……。誰だか知らないけど、きっと良い人です)
(不良達が出て行って安全になったらまず、お礼を言わないと。……それにしても怖いなぁ……足音と声が聞こえる
って事はまだ捜してるのかなぁ………もう、早くどっか行っちゃってくださいよぉ)ビクビク
しかし、初春の隣りで一緒に隠れている少女の方はと言うと……
(ふふふ……計 画 通 り とミサカは不敵な笑みを浮かべます)ニヤリ…
初春と謎の少女(?)。……今の立場は同じハズなのに、この二人の心境は全く正反対だった―――。
95 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/18(水) 20:13:52.32 ID:Ds7BWos0 [4/17]
――――――
―――
―――その頃、○○公園……
「………確かここだよな?」
誰もいなくなった公園で一人呟くのは垣根帝督。割りと広く、木々が生い茂る園内で待っている筈の人物を目で探すが、姿は何処にもない……。
「あの野郎……まさかバックレたんじゃねえだろぉな……?」
乱闘のつもりで意気揚々と来たのに、肝心の相手がいなければこの滾る気持ちは一体何処にぶつければ良いのか? 電話を掛けてみるものの、
呼び出した本人が電源を切っているのか、通信が繋がることはなかった……。
「……チッ、もう少しだけ待ってみるか」
96 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/18(水) 20:15:16.30 ID:Ds7BWos0 [5/17]
投下中すいません。急用できたんでちょっと出ます。
一時間ほどで戻ります。
98 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/18(水) 21:09:42.00 ID:Ds7BWos0 [6/17]
中断失礼しました!
戻ったので投下再開します。
99 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/18(水) 21:12:30.68 ID:Ds7BWos0 [7/17]
再度呟いて近くのベンチにでも腰を下ろそうと足を動かしかけた時―――。
??「――――す、すいませーんっ!!」
垣根「あん……?」
背後から聞こえた声に振り向くと、ひとりの少女が自分に向かって走ってくるのが見えた。垣根は「落し物でも届けてくれたのか?」と
一瞬思ったが、どうも様子が違う…。
??「―――た、助けてくださいっ!」
息を乱しながら走ってきた少女は目の前で立ち止まってそう言ったが、「何?」と訊き返す前に垣根は気づく。
垣根(こいつ……水族館で会った飾利の友達じゃねえか! 確か……佐天、だっけか?)
佐天「お願いです! 助けてください!」
100 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/18(水) 21:14:54.09 ID:Ds7BWos0 [8/17]
何か只事ではない様子の佐天に垣根は尋ねた。
垣根「……どうしたんだ?」
佐天「さっき、友達といるところを変な人達に襲われたんです! お願いします! 私の――――」
垣根が動き出すきっかけとなる決定的なセリフを、佐天は口に出して叫んだ。
「――――友達を………初春を助けてくださいっっ!!」
垣根「!!!?」
垣根の表情が分かりやすい程一気に変わっていく。ほぼ予想通り、垣根は佐天の両肩を掴んで問い詰めた。
垣根「―――おい! その友達は何処にいる!?」ガシッ
佐天「あ、案内しますからついてきてください!―――って、ちょっと!?」
101 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/18(水) 21:18:51.32 ID:Ds7BWos0 [9/17]
垣根「―――急げ! 早くしろっ!!」
肩から手を放したかと思ったら、もうすでに走り出していた垣根にやや遅れて佐天も走り出す。
佐天「ちょ!? ま、待ってください!」
垣根「何モタモタしてんだ!? 友達が危ねえんだろ!? ……クソッ、オイ! どっちだ!?」キョロキョロ
佐天「コ…コッチです。私についてきてください!」
垣根「―――ッ!」(飾利……ッッ!!)
(頼むっ!! 無事でいてくれ―――――!!)
公園を出た二人は再び走り出す。垣根はもう他の事など何も考えてはいない。今唯一彼の頭にあるのは勿論、危険に冒されている初春飾利
という少女を救う事だけだ―――。
――――――
―――
102 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/18(水) 21:22:53.18 ID:Ds7BWos0 [10/17]
―――廃屋…
男1「どっこかなぁ~? 子っ猫ちゃぁ~ん?」
男2「どォせ逃げられやしねェンだからさァ、とっとと出ておいでよォ」
同じ調子で初春を捜し回る二人組のチンピラ。
男1が途中の曲がり角に頭をぶつけた。
男1「―――イテッ!! ……ぐぉぉぉ……ふ、不幸だ…」ヒリヒリ
男2「こンな暗いトコでグラサンなンか掛けてっからだろォがよ。危なっかしいから外せ。―――あン?」
と、その時……男2が持つ無線機に通信が入る。
男2「―――ンだァ? どォした?」
『―――標的2(ターゲット・ツー)がそちらに向かいましたの!』
男2「あァン? オイオイ、予定よりちっと早くねェかァ?」
103 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/18(水) 21:27:40.33 ID:Ds7BWos0 [11/17]
『―――それが……話を聞くやいなや何の躊躇いもなく走って行かれましたの……。現在【プランC】通り、回り道をさせて
時間を稼がせてますわ』
男2「……分かった。ンじゃあコッチもそろそろ段階移るから、すぐにオマエも来い。『回収』のタイミングは外すなよォ?」
『―――承知しましたわ。それでは――』ピッ
男1「……俺の予定じゃ話を聞いて少し迷ったあげくに動き出すつもりだったんだがな…」
サングラスを外した男1がそう呟く。晒された彼の目は、どう見ても悪人の目つきとは異なっていた……。
男2「ったく、オマエじゃあるまいしよォ……。あのボケはいつから『考える前に動く』タイプの人間になったンだっつの」
男1「いちおう想定はしておいて良かったぜ。あとはアイツらが上手くタイミングを見計らってくれるハズだ。少し早いが、
俺らも予定通りに行くぞ」
男2「おォ」
二人組の男はクルッと踵を返し、初春と少女が隠れている部屋に真っ直ぐ向かって歩き出した――――。
―――――
104 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/18(水) 21:30:48.65 ID:Ds7BWos0 [12/17]
初春(―――ひっ!……コッチに近づいてくるぅ……)
心臓の音が急速に高鳴っていくのを感じながら、初春は入室してきた二人組をテーブル下の隙間から覗く。
テーブルには大きいクロスが脚に届くまで掛けられているため、姿は見えない筈なのだが……男は何の戸惑いもなくコチラへと
歩を進めて来た。
初春(………いや……ッッ!!)
公園内で隠れた時も何故かあっさり見つかっていた事を思い出したが……もう遅かった。
男2「―――かくれンぼはおしまァい。ってなァ! ひゃはっ!」
初春「―――ッ!!?」
言葉と同時にテーブルは退けられた。男2が蹴り飛ばしたテーブルは後ろの壁に激しい音を立てて激突する。
それは、初春の退路が完全に絶たれた事を意味していた。
男2「子猫ちゃンめェーっけ♪」
男1「こんなトコに隠れてやがったのかぁ。だが残念、これまでだぜぇ?」
105 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/18(水) 21:34:09.96 ID:Ds7BWos0 [13/17]
白々しく言いながら笑う男達。少女達の後ろは壁。部屋を出るために通らなければならないドアは男達の真後ろ。絶体絶命だった……。
実は初春の後ろにあるこの壁には一箇所だけ隠しドアがあるのだが、初春がそれに気づく筈もない。
そしてそのドアは、コチラからは絶対開かないように細工が施されていた……。
初春「――――あれ…?」
ふとそこで少女がいなくなってる事に気づく。自分を助けてくれたあの少女はすでに影も形もなく、忽然と姿を消していた。
男に目を向けていた………その僅かな間にだ。
初春「え?…………うそ………」
逃げ道は前方の男達が塞いでいるドアのみ。姿を消せるとしたら『空間移動』の能力者くらいしか思いつかない。あるいは……?
そこまで考えた途端、初春の顔が恐怖に歪んだ。
初春(まさか……ここは科学の発達した街ですよ……? そんな……)
この誰も住んでいなさそうな廃屋が余計に恐怖を誘う。もしそうだとしたら、少女がここまで自分を連れ込んだ辻褄も合ってしまう……。
しかし、この状況はそれについてじっくり考える暇もなさそうだった。むしろそんな事以上に大ピンチである。
106 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/18(水) 21:36:56.09 ID:Ds7BWos0 [14/17]
初春「いや………こ、来ないでください……」
壁に背をつき震える少女。もう逃げ場は何処にもない……これからこの『怖いお兄さん達』に何をされるのかと思うと、震えが止まらなかった。
男1「クククク、そんなに怖がんなよ。大丈夫だって……痛くはしねえからさ♪」
男2「ギャハハハァ! まァ、精々イイ声で鳴くよォに努力するンだなァ!」
じりっ…じりっ……と一歩ずつ、確実に近づいてくる魔手。「もう終わりだ」と初春は本気で思った。
初春(なんで、なんで私ばっかりこんな目に……ッッ!! 恨みますよカミサマッッッ―――!!!)ギュッ
観念するように……強く目を閉じた―――――瞬間!
「――――飾利ィィィいいいいいいいいいッッッ!!!!!」
107 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/18(水) 21:41:00.49 ID:Ds7BWos0 [15/17]
初春「―――――!!」
目を、見開く。
確かに……ハッキリと聞こえた。
彼女にとって、たったひとりだけの―――
王子様(ヒーロー)の声が―――――。
声が聞こえて間もなく、……ドアは勢いよく開いた。…というより破壊された。
男1・2「…………」
振り向いた二人組の視線の先にいたのは………もちろん―――
「―――間に合ったみてぇだな……」
108 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/18(水) 21:46:24.72 ID:Ds7BWos0 [16/17]
怒りを通り越したからか、初春が汚される前に駆けつける事ができたからか……どちらの意味とも取れる笑みを浮かべる垣根。
そして、初春にも彼の姿はハッキリと確認できた。彼女の震えは………そこで止んだ。
「もう大丈夫だ……。飾利」
垣根は唖然と自分を見つめる初春に優しい目を向ける。
「俺と関わったばっかりに……怖い思いばかりさせちまって、本当にゴメンな」
「けど、安心してくれ……」
「これからは俺が―――――」
「―――お前を守る!!!」
強い意志の込められた声を、古びた室内に響かせた―――。
115 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/19(木) 20:21:57.64 ID:ooLI8bM0 [2/14]
―――『これからは、俺がお前を守る!!!』―――
この発言に男二人も『意外』といった反応を見せた。
男1(マ……マジで!? ちょっと、思った以上の展開だぞこれは……)
男2(ンだァコイツ……オイオイ、一体何があったっつーンだ?)
垣根の強靭な意志を確かに聞いた初春。心に宿っていた『恐怖』が……今、ゆっくりと消えていく。
初春「………ッ」
初春の目に涙が溜まっていった……。もはや笑っているのか泣いているのか、よく分からない表情だ。
116 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/19(木) 20:25:05.38 ID:ooLI8bM0 [3/14]
もう、垣根には何の迷いもない。……それは、対峙している男二人にも明らかに分かるほどだった―――。
垣根「覚悟しろよ……テメェら―――」
表情に再び怒りを戻して、男達を見据える。
垣根「―――『俺の大事な女』に手ぇ出してくれた罪は重いぜ!?」ブァサッ
背中から生えた白い翼が放つ光で、薄暗い室内は眩しく輝いた。
男2(チッ……カッコつけてンじゃねェよクソメルヘンが)
男1(おい………ちょっとこれ、ヤバくないか?)ヒソヒソ
男2(あァ、何でか知らねェが、俺らの予想を完全に超える勢いで吹っ切れてやがるな……。チッ、最悪のアクシデントだ。オイ三下、
右手構えとけ。死ぬぞ?)ヒソヒソ
男1(えぇーー!?)
男二人組が密談を終えた直後、垣根は唐突に叫んだ。
117 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/19(木) 20:27:17.11 ID:ooLI8bM0 [4/14]
垣根「―――離れてろ飾利!!」
初春「―――は、はいっ!!」ダッ
初春が避難したのを音で確認した後、垣根が男二人に攻撃態勢をとった。
垣根「―――くたばれコラァァあああああっっ!!!」ブォン
男1「ちょっ、待―――ッッ!!??」サッ
男2「クソが―――ッッ!!」バッ
ドオオオオン!!!
―――次の瞬間、翼が床を叩きつける激しい音が部屋じゅうに響いた……。
―――――
118 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/19(木) 20:30:08.95 ID:ooLI8bM0 [5/14]
垣根「…………」
薄汚れた部屋の中、垣根はゆっくりと翼をしまった。衝撃で巻き起こった煙の向こうに男達の姿はなかった。何をしたのかは分からないが、
どうやら二人とも逃げてしまったらしい……。
しかし、そんな事はもうどうでもいい。それよりも―――
垣根「―――飾利っっ!!」
部屋の隅で縮こまっていた初春に駆け寄った。
垣根「大丈夫だったか!?」
初春「……はい。何とか………へへ…」ニコッ
その時初春が垣根に見せた表情には、恐怖も絶望も全く感じさせられない―――。
『カッキー』に向けた時と同じ……無邪気なあの笑顔だった―――。
――――――
―――
119 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/19(木) 20:33:04.26 ID:ooLI8bM0 [6/14]
―――作戦本部(勝手に借りた同廃屋内の隠し部屋)※初春達の今いる部屋の隠しドアから繋がってる。
上条「―――だはぁぁ………危なかったぁぁ。マジで死ぬかと思ったぜ………サンキュー白井ぃぃ、助かったよ…」グター
一方通行「―――あンの単細胞馬鹿がァ……。羽根まで出しやがって。殺す気かっつゥの」
黒子「―――フゥー……危機一髪でしたの………。まったく、上手くいき過ぎるというのも考えモノですわね……」
御坂妹「―――お疲れさまでした。とミサカは使命を終えたお二方及び、最高の裏方ぶりを見せた白井さんを労います」
―――垣根と初春が今居る部屋の映像モニターが付いたこの隠し部屋(上条曰く作戦本部)に居るのは上条当麻、一方通行、
白井黒子、御坂妹の四人だった。垣根の攻撃が来る瞬間、後ろの隠しドアを黒子が間一髪の所で開け、上条と一方通行はそこ
から何とか無事に逃げてきたという訳だ。
上条「あぁ、御坂妹もお疲れさん。『連れ込み役』ありがとな」
御坂妹「いえ、思ったより楽な配役でした。とミサカは自分のアクション(演技)を振り返ります」
一方通行「オマエも『回収』ご苦労だったな」
黒子「妹様の回収は割と大したことありませんでしたわ。初春の隙をついてテレポートするくらい朝飯前ですの」
120 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/19(木) 20:42:25.04 ID:ooLI8bM0 [7/14]
上条「けど、白井も御坂妹も佐天さんもいなかったら計画は成り立たなかったよ。ホントにサンキューな!」
一方通行「オイオイ、ひとり誰か忘れてねェか?」
上条「もっ、もちろん御坂もに決まってんだろ!? そんなん言うまでもねぇっての! …あ、ところでカメラ壊れてないよな……?」
御坂妹「どうやら無事のようですね。とミサカは映像と音声に支障がない事を確認して答えます」
上条「しかし……こんな忍者屋敷みたいな所良く見つけたよな…? ちゃっかりドアの改造とかカメラとか……いや、おかげで助かって
るんだから良いんだけどさ」
御坂妹「ふふふ、その道のプロに頼みましたからね……とミサカは仕事人の周到ぶりを称えます」
上条「是非その人に今度お礼を言いたいな」
御坂妹「いえ、むしろ向こうもあなたに感謝しているのでその必要はありません。とミサカは意見します」
一方通行「さて、予定とはちィとばかし形が変わったが、何にせよこれで状況は出来上がったな。っつーか、もォ結果は決まったみてェな
モンだが……」
上条「あぁ、ここで垣根が助けるだけで逃げるんじゃないかってのがこの作戦最大の壁だったんだが………」
全員がモニターの二人に注目する……。
上条「………どうやら取り越し苦労だったみたいだな」ホッ…
黒子「第二位の殿方は初春に二度と会わない覚悟ではなかったんですの?」
一方通行「そンなン俺に訊かれても知らねェよ。昨日と心境がまるで違うってこたァ何かあったンだろォが……よく分っかンねェなァ」
御坂妹「それにしても、お二人の演技力には大変驚かされました。とミサカはあなた方のチンピラ振りに率直な感想を告げます」
黒子「わたくしも思った以上の演技に正直ビックリしましたわ。第一位様はともかく、貴方の小悪党ぶりは見ていてかなり滑稽でしたが…」
121 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/19(木) 20:45:05.70 ID:ooLI8bM0 [8/14]
上条と一方通行に視線を向ける御坂妹と黒子。ちょうど二人は元の格好に戻った所だった。
上条「ん? あぁ、……慣れないセリフばっか吐いたからな。途中何度も噛みかけたよ」
一方通行「微妙に優しげなオブラートを包む辺りがオマエらしかったよなァ。それでも違和感だらけで傑作だったぜェ? やっぱオマエに
悪役は向いてねェわ」
上条「そういうお前こそ、ずいぶんノリノリだったじゃねえか。あれかなり『素』入ってただろ?」
一方通行「どォせやるンなら楽しまねェとよォ。それに、いちおうシナリオ通りにはなってただろォが」
上条「いやぁ、セリフ合わせの時より相当アドリブ入ってたけどな。………ん?」
――ガチャ
その時、部屋のドアが開いた。上条の目はそちらに移る。
佐天「―――お疲れさまで~す♪」
何かをやりきったかのような爽やか笑顔で入って来たのは佐天涙子だった。
122 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/19(木) 20:49:18.85 ID:ooLI8bM0 [9/14]
上条「おう、佐天さんもお疲れ。ナイスタイミングだったぜ」グッ
黒子「よく足止めしててくれましたわ。グッジョブですの佐天さん」グッ
佐天「いや~、垣根さん足速いしさっさと先行っちゃうしでホント大変でしたよ~。想定してて正解でしたね。さすが上条さん♪」
上条「ははは、俺だったら多分迷わず助けに行くからな……。いちおう考えておいたんだ」
黒子「時間調整も考えると……佐天さんの役割はかなり困難だったことでしょう。本当にお疲れ様ですの」
佐天「へへ、照れますね~……けど白井さんみたいに空間移動能力でもあったらもっと役に立てたんだろぉな~」
上条「そんな事言うなって。佐天さんは充分立派にやってくれたよ」
御坂妹「はい、充分に良いお仕事でしたよ。お疲れさまです。……とミサカは音声を聞き逃さないように注意しながら同意します」
佐天「どーも。妹さんもお疲れ♪」
一方通行「……で、今どンな感じだ?」
御坂妹「あれ以降、両者は依然沈黙状態です。とミサカは現状を監視しながら説明します」
――――――
垣根「……………」
初春「……………」
123 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/19(木) 20:51:56.11 ID:ooLI8bM0 [10/14]
二人を無言の空気が包む……。当然だ。確かに二人は再会を望んでいた。しかし、これは予期せぬというか……ハプニングだ。
心の準備もクソもない。突然過ぎるのだ。そりゃ言いたい事なんてすぐには出てこないだろう……。
初春はモジモジ状態だし、垣根も自分の立場を今把握したみたいだ。勢いというのは恐ろしいものだという事をまさに実感していた。
垣根・初春「―――あの(さ)……ッ!」
二人の声が見事にカブった。
垣根「………何だ?」
初春「いえ、ソッチから……どうぞ」
モニターから監視されている事など知る由もない彼等は、完全に二人だけの空間を作っていた……。
やがて先に口を開いたのは………垣根だった―――。
垣根「まず、……お前には謝らないとな………。騙していて、すまなかった」ペコ
開口と同時に頭を初春に向かって下げる。
124 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/19(木) 20:55:34.72 ID:ooLI8bM0 [11/14]
垣根「数ヶ月前、確かに俺はお前を殺そうとした……。お前が俺に怯えるのも仕方ねえと思う」
初春「……………」
垣根「最初は、適当に誤魔化す……だけのつもりだったんだ。……あの日、俺がお前を見つけたのも単なる偶然だった。でも……話している
内に、すげぇ後ろめたくなってきて………」
初春「……………」
垣根「怖かったんだ。……お前に恐怖を与えるのも、恐れた顔で見られるのも………ホント呆れちまうよな。自分で蒔いた種だってのによ…」
初春「……………」
垣根「俺はどうしようもねぇ屑野郎だ。今さらよくもヌケヌケと、って思うかもしれねぇ。俺のツラなんて見たくねぇのも充分に分かってる。
…………けど………それでも――――」
「――――俺は、もう一度お前に逢いたかった」
その一言が……初春の表情を変えた。
―――――
125 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/19(木) 20:58:01.33 ID:ooLI8bM0 [12/14]
―――隠し部屋・モニター前……一同はすっかり野次馬と化していた。
オレハ モウイチドオマエニアイタカッタ…
一方通行「うわ…………あの似非ホスト、どこまで頭ン中がメルヘンなンだよ………オイやべェ、鳥肌が止まンねェぞ。何とかしろ三下」ゾッ
上条「…………いや、無理」
佐天「やば/////……………垣根さん、カッコ良すぎでしょ…」
一方通行「はァ!? あンな歯の浮くセリフ、実際言われたらドン引きだろォ…」
佐天「う~ん……相手にもよりますかね…」
上条「……にしても、よくあんな照れ臭いこと真顔で言えるよな……。やっぱ垣根ってすげぇ…」
一方通行「三下にまで言われちゃあオシマイだな……」
黒子「リアルですわね……まさか類人猿を超える殿方がいらっしゃるとは……」
御坂妹(ミサカも一度でいいからあんな風に言われてみたい……あ、でも彼には似合わな過ぎて吐き気がするからやっぱりいいや……
とミサカは即座に却下します)
126 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/19(木) 20:59:36.78 ID:ooLI8bM0 [13/14]
―――――
―――倉庫裏
美琴「まだかしら………」ポツーン
決して忘れてなんかいないから、そんな悲しそうな顔をしないで下さい美琴サマ! By上条
―――――
135 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/20(金) 19:19:43.16 ID:uvbB81Y0 [2/19]
―――――
初春は、垣根の告白を黙って聞いていた……いや、言葉を途中で出せなかったと言った方が正しいか…。
垣根「………こんな形になっちまって、本当にすまねえ……」
もう一度、垣根は初春に頭を下げる。……そして、グッ…と何かを堪えるように堅く目を閉じた。
やがて開いた目は……どこか悲しみに耐えている風に見えた。
躊躇を消した垣根は、重い口を―――開いた…。
垣根「―――安心してくれ。もう……姿は見せねえから……さ…」
そう言って背を向けた―――。
『ありがとう』……と最後に告げて―――――。
136 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/20(金) 19:25:47.18 ID:uvbB81Y0 [3/19]
足取りは重く…それでも部屋を後にしようと、垣根はゆっくり歩き出す。彼は今、何を思っているのか―――。
(……こんな形になるとは正直思わなかったが、どの道同じだ……。それに言いたい事は言えたんだ……。だから悔いはない…)
(これでもう会えなくなるのは正直言って辛いが……ここで彼女の気持ちを考えないほど、俺は落ちちゃいねぇ…)
(それに、……最後に飾利が俺に見せてくれたのは……『笑顔』だった……)
(こんな俺みてぇなヤツに、また笑ってくれた………嬉しかったぜ―――)
(もう、それで充分だ―――)
垣根の足が、体が……初春を残して去ってしまう。
「………って……ください…―――」
しかし―――
「―――――待ってくださいっっ!!!」
137 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/20(金) 19:29:35.62 ID:uvbB81Y0 [4/19]
垣根が部屋の外に足を踏み出すと同時に、少女の悲痛な声が響き渡った―――。
垣根「―――!?」クルッ
声に驚いた垣根は足を止めて後ろを振り返る……。今にも泣きそうな顔の初春がそこにいた。
初春「どうしてそぉなるんですか!? どうしてそんな一方的なんですか!? 私の話も少しは聞いてくださいよぉっ!!」
垣根「…………でもよ、君はもう俺と関わりたくなんかねぇだろ?」
初春「なんでですかっっ!! 勝手に決めないでっっ!!!」
垣根「―――ッ!?」
初春「私の気持ちも聞かないで……自分だけ言いたい事言ってさっさと行こうとするなんて……ずる過ぎます! 私だって………
私だって! あなたに逢いたかったんですよ!? お礼も言わせてくれないなんて、そんなのってあんまりじゃないですか!!」
垣根「……………」
138 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/20(金) 19:32:20.23 ID:uvbB81Y0 [5/19]
少女の意外な言葉に困惑する垣根……。しかし、それでも……。
垣根「………俺は、君が知ってる『カッキー』じゃないんだぜ? 俺は―――」
初春「学園都市第二位の超能力者、垣根帝督さんでしょう!? 確かに知った時は驚きました! 正直、今でも信じられません!
けど、『それ』が何だって言うんですか!?」
垣根「え……?」
初春「第二位の超能力者だろうと何だろうと―――――」
「――――カッキーさんはカッキーさんじゃないですかぁぁっ!!!」
垣根「………ッッ!!」
―――――どんな顔してても、カッキーさんはカッキーさんですから―――――
あの時……少女の言った言葉が垣根の心に突き刺さった。
139 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/20(金) 19:36:39.60 ID:uvbB81Y0 [6/19]
垣根「―――飾……利………」
初春は、泣きそうになるのを堪えるような笑顔を作った。……いや、堪えられてなんかいない。目からポロポロと零れる涙がそれを
証明している……。
初春「私の……私の好きなカッキーさんなら――――ずっとここにいますよ?」
「私にとっての王子様は――――あなただけなんですから…」
「私は………垣根帝督さんが………いえ―――」
「―――――カッキーさんが、好きです」
垣根「!!!?」
一瞬、これが夢なのかと本気で思った………。
どうか、どうか夢なら……このまま醒めないで欲しい。………そう思いながら―――
140 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/20(金) 19:38:41.15 ID:uvbB81Y0 [7/19]
初春「―――!?」
―――ガバッ
垣根は初春に近づき、その小さな体を抱きしめていた―――――。
垣根「………本当に……いいのか? こんな俺なんかで……」
「はい」と初春は、濡れた目を閉じて答えた。
初春「カッキーさんじゃなきゃ、イヤですから……」
垣根「俺のこと……まだそう呼んでくれるのか……?」
初春「前に言ったの、もう忘れたんですか? カッキーさんはカッキーさんです」
垣根「あぁ……覚えてる」
141 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/20(金) 19:41:03.43 ID:uvbB81Y0 [8/19]
初春「なら、もう………離さないで―――」ギュッ…
「―――どこにも、行かないでください」
垣根の体に腕を絡めて懇願する初春に、垣根は答えた。
垣根「あぁ、誓うよ―――」ギュッ…
「―――もう、絶対に離さない」
昇り始めた日の光が、抱き合う二人を祝福するかのように………カーテンの僅かな隙間から射し込んだ―――。
142 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/20(金) 19:43:15.52 ID:uvbB81Y0 [9/19]
―――隠し部屋・モニター前
上条「………何とか、上手くいったみたいだな」
黒子「初春……良かったですわね…」ホロッ
佐天「あれぇ? 白井さん、もしかして泣いてるんですかぁ?」
黒子「そういう佐天さんの方こそ、泣いてるじゃありませんか」
佐天「え……あ、あれ…? あはは」ポロポロ
上条「本当に……良かったな」
黒子「ええ………」
佐天「うん………良かったね、おめでとう初春…」
モニター内で抱き合う二人。隠し部屋の空気は小さな感動に包まれていた……。
計画は、無事成功したのだ。少年少女たちの顔には、すでに達成感が表れている。
一方通行「とりあえず、無駄にはならなかったってかァ……」
御坂妹「あなたは泣かないのですか? とミサカはハンカチで目頭を抑えながら問います……」
143 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/20(金) 19:50:01.18 ID:uvbB81Y0 [10/19]
一方通行「アホか? 誰が泣くかっつの。……ってェか、オマエも泣いてンのかよ?」
御坂妹「本当に、良かったです。当初は遊び半分のつもりだったのですが、この作戦に参加できた事を今では誇りに思います。とミサカは
心境の変化を伝えます……」
一方通行「……そォかい。ソイツは良かったなァ」
御坂妹「あなたも、本当はそう思ってるのでは? とミサカは推測します」
一方通行「チッ―――」
目を逸らす一方通行。
一方通行「―――くっだらねェ……」
その口から出てくる言葉はやはり、彼らしかった。が、御坂妹は「ふふっ…」と笑って上条と一方通行に目を向ける。
御坂妹(あなた方が見返りを求めずに人を助けたいと思う気持ち……今ならよく分かります。とミサカはこの企画に
参加できた事を心から喜びます)
終わったような空気だが……実はまだ終わっていなかった。そう、まだ『演出』が残っている―――。
144 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/20(金) 19:52:33.49 ID:uvbB81Y0 [11/19]
上条「―――おっと、いけね……感動しててつい忘れかけてたぜ。ここでついに美琴の出番だな……」
そう言いながら無線機を取り出す上条。連絡を待っているであろう美琴の元へと電波を飛ばした。………が、
『―――くぉぉらァァああああッッ!!!』
上条「―――いぃっ!?」
スピーカーから聞こえた美琴の怒号に思わず上条は耳を塞いだ。どうやら相当ご立腹のようだ。
美琴『アンタはぁぁあああ!!! 一体いつまで待たせんのよ!? そろそろコッチから掛けてやろうと思ってたんだからね!!』
上条「す、すまなかった。おさえておさえて……」
美琴『………で、今どんな状況よ? っていうか、まだな訳?』
上条「あぁ、ちょうどそれで連絡入れたんだ」
美琴『って事は……上手くいったのね!?』
美琴の声が途端に明るくなる。
145 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/20(金) 19:54:57.46 ID:uvbB81Y0 [12/19]
上条「へへ、後で録画映像見せてやるよ。きっと泣くぜ?」
美琴『リアルタイムで見れなかったのがちょっと残念だけど……まぁ良いわ。そんじゃ、始めるわよ?』
上条「あぁ、頼む。…待たせてホント悪かったな……ゴメン」
美琴『べっ///別に良いわよそんなの! それじゃ切るからね!///―――』ピッ
上条「………さて」
御坂妹「やっと最終段階ですね。とミサカはこの後の展開にわくわくします」
―――――
美琴「―――よし、じゃあ行きますかっと! そりゃ!」ビリビリッ
分電盤に触れた美琴の手から祝福の電流が流れる。その瞬間、薄暗い廃墟が一転して綺麗な光に包まれた―――。
146 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/20(金) 19:56:58.31 ID:uvbB81Y0 [13/19]
―――――
垣根「な……なんで急に電気が復活したんだ……?」(やべ……か、顔近い……)
初春「さぁ……わ、分かりません……」(き、急に恥ずかしくなってきました……うぅぅぅぅ/////)
垣根(っつか、この照明と音楽はナニ……? ま、まさかここって……廃屋になる前はラブホテルとか!? ウソだろ!?)
初春(う~/////は、恥ずかし過ぎて死にそう……ふにゃぁぁぁ!!)
―――――
―――隠し部屋・モニター前
上条「お! 点いた点いた! ナイス御坂!」
黒子「さっすがお姉様ですの♪ さぁ初春! これで全ての準備は整いましたわ! 今ですの! すぐにそこで熱いベーゼを(ry」
佐天「ちょっと白井さんっ!/// けど親友の初キスとか……うわ、見たいような見たくないような……」ドキドキ
147 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/20(金) 20:03:10.19 ID:uvbB81Y0 [14/19]
上条「……なんか、俺らはアッチ向いてた方がよさそうだな」クルッ
一方通行「まァ、別に見たくもねェけどな」クルッ
御坂妹「それにしても、二人とも奥手ですね…。とミサカは若干イラつきます」
―――ガチャ
美琴「――――お疲れ~! 戻ったわ! んで、どう?」
上条「おう、御坂。お疲れ~」ヒラヒラ
黒子「おかえりなさいませお姉様! ちょうど今良いところですわよ!」
美琴「どれどれ? 私にも見せて! ……って、ちょっ!? 抱き合ってんじゃない!? う、初春さん……結構やるわね…」
佐天「………さっきから二人とも全然動きませんけどね」
御坂妹「……焦らすんじゃねーよ。とミサカは更にイラつきます」
黒子「あぁもうじれったい!! 何をやってるんですの!? さっさと押し倒してそこから(ry」
上条「まさかあそこまでムーディなヤツだとは……やっぱ試し点けしておくべきだったかな…」
一方通行「もォ遅せェよ。どの道そンな時間なかっただろォが。ま、この変態に頼ンだ時点でこォなるとは思ってたけどなァ」
148 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/20(金) 20:04:47.63 ID:uvbB81Y0 [15/19]
メシ食ってきます。今日はまだ続きますんで、しばしお待ちを。
150 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/20(金) 20:28:36.91 ID:uvbB81Y0 [16/19]
お待たせっす。では続き―――
美琴「ちょっ、黒子///……いくら何でもそれはマズイんじゃ……。ア、アンタ! 見たら殺すからね?」ギロ
上条「み、見ませんっ! 絶対見ませんから!」
……イコウカ?
……ハイ
佐天「……って、あ……あれ?……離れちゃいましたけど…」
黒子「ば、馬鹿な……ッッ!! 『お姉様と過ごす熱い夜』のために購入したわたくしのとっておきが……まさかの不発ですの!?……」
美琴「く・ろ・こぉ~……誰と熱い夜を過ごすってぇぇ……」
黒子「」
御坂妹「チッ……根性なしが。とミサカは第二位を非難します。まったく、学園都市の上位能力者は揃いも揃って……」ブツブツ
一方通行「……オマエ何ブツブツ言ってンだ?」
佐天「あ~……出てっちゃいました……」
黒子「お、お姉様! 誤解ですの! 黒子はただ初春たちで効果の程を試そうとしただけで、その効果次第であわよくばお姉様とぐふふ
だなんて事は決して考えてなどいませんわ! ただ、少しくらい乱れ合うのもよろしいかと……ぐふふ」
美琴「アンタ一人で乱れてろやぁぁーーー!!!」ビリビリビリ
黒子「おbbbbbbbbbbbbbbbb☆$◆△%~~~♪」ビクンビクン
151 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/20(金) 20:30:34.95 ID:uvbB81Y0 [17/19]
上条「………白井を信用した俺が間違ってたのかもしれねぇ…」
一方通行「あァ、それについては否定しねェな……」
ムード溢れる照明と官能度抜群なBGMのダブル攻撃で、抱き合っていた二人が一気に気まずくなってしまったのは誰も予想していなかった……。
ちなみに、この演出は黒子が急遽発案したもの。建前は美琴の出番を作るための優しい心遣いだったのだが、本心はやっぱりそこである……。
無言で廃屋を出た二人の姿は……最後の演出が心から余計なお世話である事を告げていた―――。
―――廃屋の外
垣根「……なぁ、さっきのヤツら……どこ行ったのか見たか?」
初春「いえ、目閉じてましたから……」
垣根「逃げ場なんてなかったのに、忽然と消えちまったんだよな……」(つか、暗くてよく見えなかったけど……あいつらどっかで…)
初春「――!! そ、そう言えば……あの人…」
垣根「ん?」
初春「実は……私、あそこに女の人と居たんです。危なかったところを助けてもらって一緒に逃げてきたんですけど……いつの間にか
その人も消えちゃって…」
垣根「まさか、あの空き家……心霊スポットとか?」
152 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/20(金) 20:33:06.53 ID:uvbB81Y0 [18/19]
初春「こ、怖いこと言わないでください! この学園都市に…そんなのあるワケないじゃないですかぁ! それに季節外れですよ?」
垣根「呪いはあるぞ……」
初春「へ?」キョトン
垣根「いや何でもねぇ。けど、本当に幽霊だったとしても……俺は感謝するぜ。今こうやって飾利と一緒に居られんのもソイツらのおかげ
みてぇなモンだからな」(あと……って、あれ? そう言えば佐天ってコは何処行ったんだ…? 気づいたらあのコもいねぇし……)
初春「………飾利…///」
垣根「あ……」
初春「『かざりん』より、ソッチの方が……何だか嬉しいですね…」
垣根「そ…そうか…」
垣根「…………」
初春「……///」
夕日……ではなく、まだ午前の木枯らしが吹く並木道を並んで歩く二人……。照れのせいか、目を合わせようとしない。だが―――
―――ギュッ…
しっかりと繋がっている二人の手は……いつまでも互いを離そうとしなかった――――。
―――余談だが、垣根と初春が待ち人達(ウソ)の存在を思い出したのは昼食の最中だったそうだ……。
153 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage saga] 投稿日:2010/08/20(金) 20:44:33.45 ID:uvbB81Y0 [19/19]
と、言う訳で『決行編』は終了です。
この後『打上編』『成就編』『不滅友情(ラスト・フレンズ)編』と続いて
『完結編(エピローグ)』で、この話もようやく終わりです。
上手く纏められる自信は正直ありませんが、最後まで頑張ります。
もう少しの間ですが、お付き合い頂ければ幸いです。
では、今日はこれにてまた明日。
<<美琴「とある主人公(ヒーロー)の友情物語?」2-2 | ホーム | 神裂「な、なぜこれがここに!?」>>
コメント
コメントの投稿
トラックバック
| ホーム |