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男「あの日言えなかった、君への想いを」
1 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/27(金) 21:14:04.00 ID:CcGhAh+80 [1/23]
男「久しぶり、だね」
女「…来てくれたのね」
男「元気にしてる??」
男「って言うのも、変か」
女「ええ、おかげさまで、元気よ」
男「あれからもう2年に、なるんだね」
女「早いわねえ」
男「君の好きだった花を買って来たよ」
女「あら、ありがとう」
女「よく覚えていてくれたわね」
女「この香り、大好きなの」
男「久しぶり、だね」
女「…来てくれたのね」
男「元気にしてる??」
男「って言うのも、変か」
女「ええ、おかげさまで、元気よ」
男「あれからもう2年に、なるんだね」
女「早いわねえ」
男「君の好きだった花を買って来たよ」
女「あら、ありがとう」
女「よく覚えていてくれたわね」
女「この香り、大好きなの」
3 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/27(金) 21:17:19.18 ID:CcGhAh+80
男「あと、これ」
女「和菓子??」
男「このお菓子、おいしいんだってさ」
男「ここに置いとくね」
女「ありがとう」
女「でもあなたって、そんなまめな人だったかしら」
男「…」
女「私とデートしてくれた時は、いっつも気の利かない人だったけれど」
男「…」
女「責めてるんじゃないわよ」
女「ただ、おかしくって」
5 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/27(金) 21:20:27.07 ID:CcGhAh+80
男「あの頃は、二人でよく一緒に出かけたよね」
女「2年も前だけれどね」
男「楽しかったよ」
女「私もよ」
男「君と付き合ってた3年間は、最高の思い出だったよ」
女「…うん」
男「でももう、あの頃には戻れないんだね」
女「…仕方ないわよね」
女「ごめんね」
6 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/27(金) 21:25:06.64 ID:CcGhAh+80
男「来るのが遅くなって、ごめんね」
女「まったくだわ」
男「本当は、もっと早く会いに来たかったんだけど」
男「ここ2年、ずっと会社のプロジェクトが忙しくって」
女「付き合ってた時も、よくそう言ってたわね」
女「真面目な人だもの、仕方がないわよね」
男「それに、ここに来るのがつらかったから」
女「正直な人ね」
男「あの頃もっと、時間を作って、たくさん会って」
男「君との時間を大事にしていれば、よかったと思うよ」
女「そうね」
7 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/27(金) 21:32:17.24 ID:CcGhAh+80
男「そういえば、僕らが初めてのデートで行った水族館ね」
男「来月取り壊されるんだってさ」
女「あら、残念ね…」
男「思い出がなくなるみたいで、ちょっと寂しいよ」
女「…でも、思い出が消えるわけじゃないわ」
男「ペンギン、可愛かったよね」
女「あなたって本当に、可愛いものに目がないんだから」
男「でも本当は君の方が可愛いよって、言いたかったんだけどね」
男「勇気が足りなかった」
女「言わなくって正解だったわね」
8 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/27(金) 21:38:43.18 ID:CcGhAh+80
男「僕が初めて君に好きだって伝えられたのは、次のデートだったかな」
男「気合い入れて、店とか予約してね」
女「すごく頑張ってくれたよね」
女「緊張したけど、そうやって頑張ってくれたことが嬉しかったわ」
男「飲めもしないワインとか頼んでね」
女「あなた、すぐに赤くなったわよね」
女「お酒、弱いくせに無理するからよ」
男「もう時効かな」
女「何が??」
9 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/27(金) 21:47:03.62 ID:CcGhAh+80
男「あのデートプランね、本当は友達に考えてもらったんだ」
女「そうなの」
女「でも、そんなに大したことじゃないわね」
男「それだけじゃない」
男「君のお母さんにも、考えるの手伝ってもらったんだ」
女「え」
男「友達と、君のお母さんが仲良かったみたいだから」
女「それは…初耳だわ」
男「君の好きな食べ物、店の雰囲気、言葉遣い」
男「どんな服装で行くべきか、待ち合わせはどんなふうに、奢るべきか割り勘か…」
男「いっぱい聞いたんだ」
男「ごめんね」
女「恥ずかしいわ」
女「お母さん、あなたに変なこと言ってないでしょうね」
10 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/27(金) 21:53:52.48 ID:CcGhAh+80
男「最初のデートは、自分で決めちゃって、空回った気がしたから」
女「そんなことないのに」
女「マンボウ可愛かったわよ」
男「どこで『好き』って言うかまで、決めてたんだ」
女「え」
男「あ、さすがにこれは、君のお母さんには相談してないからね」
女「…そう」
男「自分でちゃんと考えたんだけど…」
11 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/27(金) 22:02:15.96 ID:CcGhAh+80
男「でも予定通りうまく言えなくって」
女「…」クスクス
男「だから帰り際、あんな風になっちゃって…」
女「駅前で叫んでくれたわね」
男・女『す、すごい好きだから!!』
男「あはは」
女「…」クスクス
男「その日にちゃんと言えてよかったよ」
女「そういう問題??」
女「こっちはすごく恥ずかしかったんだから」
12 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/27(金) 22:07:35.17 ID:CcGhAh+80
男「あれでなんか吹っ切れて、緊張せずに君と付き合えていけたな」
女「そうね」
男「下の名前で呼べるようになって」
女「そうそう」
男「手もつなげるようになって」
女「歩道側を歩いてくれるようになったし」
男「君の好みもわかっていったね」
女「あなたの好みは分かりやすかったけれどね」
13 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/27(金) 22:26:57.00 ID:CcGhAh+80
男「僕は、手をつなぐの、すごく好きだった」
女「そう」
男「君の体温が感じられて」
女「体温高いのよ、私」
女「知ってるでしょ」
男「それに君の小さい肩に、僕の肩がぶつかるのも好きだったな」
女「距離が近く感じられたわね、確かに」
15 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/27(金) 22:33:29.76 ID:CcGhAh+80
男「君は意外とシンプルなものが好きだったよね」
女「そうね」
男「可愛らしいものや、カラフルなものはそんなに好きじゃなかったね」
女「そういうものが好きだったのは、あなたの方でしょ」
男「そういうところは、なんか、さばさばしていたというか」
女「悪かったわね」
男「あ、でも悪い意味で言ったんじゃないよ」
男「そういうところも素敵だった」
男「ある意味気楽に、一緒にいれたからね」
16 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/27(金) 22:40:43.49 ID:CcGhAh+80
女「あなたはひっつくのが好きだったわね」
女「それに、ベタな恋愛が好きだった」
女「そこは少し私とは合わなかったけど、でも楽しかったわ」
男「最初の頃は、初々しかったなあ」
女「お互いにね」
男「一日中部屋でゴロゴロしてた時も、あったね」
女「テレビつけて、ベッドでずーっとひっついて、ね」
女「ちょっと距離が近すぎて恥ずかしいこともあったけど」
17 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/27(金) 22:44:47.77 ID:CcGhAh+80
男「やっぱりデートって緊張するから、ああいう感じが僕には合ってたんだろうな」
女「うんうん」
女「のんびりするのは、私も好きだったわ」
男「こんな僕と一緒にいてくれて、本当にありがとう」
女「お礼なんて言わないで」
女「私も楽しかったのよ」
女「私の方こそ、ありがとうと言わせて」
18 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/27(金) 22:49:20.97 ID:CcGhAh+80
男「あれ、覚えてるかな」
女「あれって??」
男「あの、プラネタリウム」
女「ああ、大学の頃の??」
男「君に告白した、プラネタリウム」
女「もちろん覚えてるわ」
男「最近、あの頃のことばかり、思い出すんだ」
男「プラネタリウムというか、あの頃のことを、ね」
女「5年くらい前かしらね」
19 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/27(金) 22:59:44.11 ID:CcGhAh+80
男「君と出会って」
女「大学で知り合ったのよね、私たち」
男「少しずつ話すようになって」
女「大学の頃のあなたは、星の話ばかりしてたわね」
女「私もあなたにつられて天文サークルに入っちゃったけど」
男「星のことばかり話す僕は、君にどう思われているんだろう」
男「そうやって、僕は人と接する方法を、覚えていったのかもしれないな」
男「少しずつ、君が興味を持つような話の振り方ができるようになっただろう??」
女「私のおかげね」
男「君のおかげだ」
女「うふふ」
男「ふふ」
20 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/27(金) 23:05:26.64 ID:CcGhAh+80
男「あのときも言ったけれど、僕は君を見て一目惚れしてしまって」
女「うん」
男「なんとかして同じ天文サークルで活動できないかと、毎日頭を悩ませたよ」
女「うふふ」
女「おかしかったなあ、あの頃のあなた」
男「ちょっとずつ、君が星に興味を持つようにいろいろ細工したんだけれど」
女「全部お見通しだったわ」
女「でも、あなたのそんな一生懸命さに惹かれたのも事実よ」
21 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/27(金) 23:15:54.25 ID:CcGhAh+80
男「星座占いの、詳しい奴とかを教えてみたり」
男「天文雑誌を目につくように置いたり」
女「うふふ」
男「カラオケでは意識して、星の出てくる歌を歌ってたっけ」
女「そうだったわね」
男「君が天文サークルに入ってくれたときは、すごく嬉しかった」
男「大学に行けば、授業が終われば、君と一緒にいれるんだから」
女「うふふ」
男「毎日が楽しかったな、本当に」
女「私も楽しかったわ」
女「刺激的だった、というか、ね」
22 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/27(金) 23:29:39.28 ID:CcGhAh+80
男「それにしても、よく勇気を出して告白できたと思うよ」
女「でも、その時『好き』だとは言ってくれなかったわね」
男「『付き合ってください』」
男「ただ一言が、とても大変だった」
女「周りにお客さんがいたのに、ね」
女「聞かれてないか、本当にドキドキしちゃって」
女「恥ずかしくって返事どころじゃなくて…」
男「でも頑張ったんだ、僕なりに」
23 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/27(金) 23:37:53.54 ID:CcGhAh+80
男「君は真っ赤になって、すごく時間が経って」
男「プラネタリウムはとっくに終わったのに、2人残って」
男「だいぶ経ってから、小さくうなずいてくれて」
男「舞い上がっちゃったなあ」
女「だから恥ずかしかったんだってば」
女「待たせて悪いとは思ったけど…仕方ないじゃない」
男「あの緊張感は、一生で一番じゃないかな」
女「大げさねえ」
女「まあ私も、同じようなものだけれど」
24 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/27(金) 23:43:05.06 ID:CcGhAh+80
男「あの後のことは、あんまり覚えてないんだ」
男「自分が、世界で一番の幸せ者だと思ってて」
男「君の言葉も耳に入ってなかったくらいだから」
女「私は覚えてるわよ」
女「とっくに明るくなったプラネタリウムから出るとき」
女「受付のお姉さんがこっちを見ながらにやにやしてたんだから」
女「恥ずかしいったらなかったわ」
25 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/27(金) 23:50:44.56 ID:CcGhAh+80
男「まだ、若かったな」
女「今でも十分若いじゃない」
男「若くて、青くて」
女「…」
男「世間のことなんか全然わかってなくて」
男「自分の幸せで、精一杯だった」
男「君のことより、自分のことで精一杯だった」
男「人生で初めての、告白だったから」
26 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/27(金) 23:57:47.67 ID:CcGhAh+80
女「私だってそうよ」
女「あなたの告白を聞いて、舞い上がってたんだから」
女「本当に起こったことなのか信じられなくて」
女「何度ほっぺをつねってみようと思ったか」
女「人生で初めてだからね、告白されたのは」
女「初めてどうし」
女「青春ってやつね」
女「…」
女「自分で言ってて恥ずかしくなったわ」
27 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/28(土) 00:02:46.44 ID:UV9AvrFZ0 [1/24]
男「君に言ったことがあったよね、僕の一番好きな星の話」
女「ええ、覚えてるわ」
男・女『北極星』
男「いつも人を導く、夜空の中心にいる北極星が好きで好きで、そして」
男「君を、僕の北極星だと言ったことも、覚えてるかな」
女「もちろん」
女「とってもクサイ台詞だったけれど、私には大切な言葉だったわ」
28 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/28(土) 00:09:54.22 ID:UV9AvrFZ0 [2/24]
男「あれは、とっさの思いつきだったけれど」
男「だからこそ僕の本心が出たと思うんだ」
女「星に例えるあたりが、あなたらしいと思ったわ」
男「北極星ってね、一年中ずっと頭の上に輝いていて」
男「しかもほとんど動かないだろ」
男「理想、高嶺の花、夜空の中心」
男「君と同じだと思ったんだ」
女「その話は、もう聞いたわ」
30 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/28(土) 00:20:30.55 ID:UV9AvrFZ0 [3/24]
男「あの頃の僕の生活の中心は君だった」
男「ずっと近づきたいと、手を伸ばしてた」
男「いつだって、すぐに会いたいと思っていて」
男「会えば離れたくないと思っていた」
女「でも北極星は、数千年ごとに別の星に変わるのよ」
男「…」
女「あなたの北極星は、今は誰なのかしらね」
男「…」
女「ふふ、意地悪なこと、聞いちゃったわね」
31 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/28(土) 00:28:42.87 ID:UV9AvrFZ0 [4/24]
男「北極星は、もう輝かなくなってしまった…」
女「…」
男「なんて言うと、違うかな」
男「でも、そんな気分なんだ」
女「…」
男「いや、ごめん」
男「この話はやめよう」
女「もう」
35 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/28(土) 00:39:59.52 ID:UV9AvrFZ0 [5/24]
女「あなたって本当に優柔不断なんだから」
男「…」
女「私に告白してくれたくせに、他の女の子ばっかり見ていたわ」
男「あの頃、君以外に好きな人なんていなかったよ」
男「自分はずっと一途だって、思ってた」
女「本当かしら」
男「あれからも、君のことを忘れたことなんてなかったよ」
女「…本当かしら」
36 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/28(土) 00:44:08.22 ID:UV9AvrFZ0 [6/24]
男「ごめん、話があっちこっちにいってるね」
女「…」
男「最近思いだしたんだ」
女「何を??」
男「君は、僕の前で泣いたことは、なかったよね」
女「そうね」
男「今思うと、すごく強い女性だったんだなって感じるよ」
女「そんなんじゃないのよ」
37 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/28(土) 00:52:40.53 ID:UV9AvrFZ0 [7/24]
女「涙は女の武器っていうじゃない」
女「その武器を使って、可憐な女性を演じたくはなかったのよ」
男「…」
女「ただ自分らしく素直でいただけ」
女「別に泣くのを我慢していたわけでもないのよ」
女「それに、それを言うなら、あなたはずいぶん涙腺の緩い人だったじゃない」
38 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/28(土) 00:59:00.24 ID:UV9AvrFZ0 [8/24]
男「君と違って、僕は泣いてばかりだったね」
女「映画を見ては泣き、ドラマを見ては泣き…」
男「けんかしたとき家で泣いたこともあった」
女「それは知らなかったわ」
男「泣き虫だったなあ、僕は」
女「それだけ感情が豊かなのよ」
男「でもそれは、君と付き合ってからだよ」
女「私のせいだって言うの??」
男「君のおかげだ」
女「はいはい、私のせいね」
39 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/28(土) 01:10:25.70 ID:UV9AvrFZ0 [9/24]
男「今は桜が満開だね」
女「きれいでしょう」
男「君が、2番目に好きだった花」
女「そうそう」
男「ここは交通の便が悪いけど、景色は最高だね」
女「でしょう」
女「私は毎日、桜が見れるのよ♪」
男「…桜、か」
男「2年前の今頃は、雨が多かったね」
女「…」
男「桜が散ってしまったのも、今年より早かった気がするな」
女「そうね…」
40 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/28(土) 01:18:09.26 ID:UV9AvrFZ0 [10/24]
男「2年前のあの日、君に会えていれば、言いたかったことがあるんだ」
女「…」
男「聞いてくれるかな」
男「あの日言えなかった、君への想いを」
女「…」
男「あの頃僕は、どうしようもないくらい幸せで」
女「…」
男「君が好きで、君への想いでいっぱいで」
女「…」
男「でも、仕事との両立に悩んでいて」
女「…」
男「どうしようもないくらい、どうすればいいのかわからなかったんだ」
女「…」
41 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/28(土) 01:22:38.46 ID:UV9AvrFZ0 [11/24]
女「よく喧嘩もしたわね」
男「…」
女「たいていは私が怒ってた」
女「私との時間をもっと大切にしてよって、ね」
男「…」
女「仕事のことはわかってるの」
女「私のことを好きでいてくれてるのも、理解してたの」
男「…」
女「でも『付き合う』ということが、あなたの負担になってるように思ったのよ」
43 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/28(土) 01:31:00.76 ID:UV9AvrFZ0 [12/24]
男「君が僕をどう思っているのか、心配だった」
男「恋人ではあったけれど、本当に僕のことを好きでいてくれてるのかなって」
女「…好きだったわ、とても」
男「あの日待ち合わせに、3時間も遅れてしまって」
男「もちろん君はいなくて」
女「…」
男「いつも待ち合わせにルーズだった僕に、いい加減愛想を尽かせてしまったんだと思った」
女「…仕事、だったんでしょう」
女「怒ってないわよ」
男「本当にごめん」
女「…」
45 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [>>42最後まで行きますよ] 投稿日:2010/08/28(土) 01:37:55.05 ID:UV9AvrFZ0 [13/24]
男「あの日、僕は君に結婚を申し込もうと思っていたんだ」
女「っ!!」
男「指輪も買ってあったんだ」
女「…」
男「本当は早く会社を出るつもりだったんだけど、帰る寸前に問題が…」
男「いや、やめよう。また僕は言い訳してるね」
女「…」
男「とにかく、結婚を申し込んで、君の正直な気持ちを聞きたかった」
男「困った顔をされたら、冗談で済ませようと思ってた」
男「でも僕は、一生君の傍にいたいと、本気で思ってたよ」
女「…」
女「…嬉しい」
47 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/28(土) 01:41:49.64 ID:UV9AvrFZ0 [14/24]
男「今更、だけれど」
男「2年も前の気持ちだけれど」
男「今日、言おうと思ってた」
女「ありがとう」
男「あの日、言えないままにしてしまったから」
女「あなたのせいじゃないわ」
女「私も悪いのよ」
男「ごめんね」
女「…ごめんね」
48 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/28(土) 01:47:48.75 ID:UV9AvrFZ0 [15/24]
女「その前の日、喧嘩してたわよね、私たち」
男「…」
女「だから、てっきり別れ話かと思って、待ってたの」
男「…」
女「待つのはつらかった」
女「あなたがなかなか来ないから、さらにつらかったわ」
男「…」
女「そして、結局あなたは来なかった」
男「…」
50 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [>>49二人っきりだね///] 投稿日:2010/08/28(土) 01:52:10.07 ID:UV9AvrFZ0 [16/24]
女「もう少し早く来れていたら、ってあなたは自分を責めるでしょうね」
男「…」
女「でも、あなたは悪くないの」
女「仕方なかったの」
女「運命だったの」
男「…」
女「自分を責めないでね」
54 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [人いたww] 投稿日:2010/08/28(土) 01:58:19.13 ID:UV9AvrFZ0 [17/24]
男「あのさ」
女「ん」
男「僕、今度ね」
女「うん…」
男「…結婚することになった」
女「!!」
女「そ、それは…」
女「…おめでとう」
56 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/28(土) 02:04:20.88 ID:UV9AvrFZ0 [18/24]
男「君に、報告しておきたくて」
女「律義ね」
男「だから今日、来たんだ」
女「…律義ね」
男「でも、結婚するからって」
男「君のことを忘れたわけじゃないんだ」
女「わかってる」
男「君のこととは全然違う話で」
女「わかってるわよ」
58 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/28(土) 02:09:09.81 ID:UV9AvrFZ0 [19/24]
男「上司の娘さんでね」
女「…」
男「まあ、お見合い結婚なんだけれど」
男「僕にはもったいないくらいのいいお嬢さんで、ね」
女「よかったわね」
男「今年の夏、結婚することになった」
女「本当におめでとう、ね」
男「ごめんね」
女「謝る必要なんか、ないじゃない」
男「…」
61 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/28(土) 02:14:03.11 ID:UV9AvrFZ0 [20/24]
女「結婚、か」
男「…」
女「どんどんあなたが、遠くに行ってしまうような感じだわ」
男「…」
女「少し寂しいけれど、あなたが幸せでいてくれたら、私…」
男「…」
女「…」グス
男「…」
女「幸せに…なってね…絶対」グス
64 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/28(土) 02:20:37.22 ID:UV9AvrFZ0 [21/24]
男「また、ここに来るよ」
女「うん」
男「今年は少しでも、この桜が長く咲いていればいいな」
女「そうね」
男「君にもこの景色が、よく見えるだろうから」
女「そうすればこの気持ちも、少しは安らぐかしらね」
男「ここに来ると、本当に君と話しているような気分になるよ」
女「私もよ」
男「…」
女「…」
65 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/28(土) 02:25:07.76 ID:UV9AvrFZ0 [22/24]
男「じゃあ、僕はもう、行くね」
女「うん」
男「また来年、ここに来るよ」
男「君の、命日に」
女「ええ。また来年ね」
男「さよなら」
女「さよなら」
★おしまい
68 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/28(土) 02:29:37.57 ID:UV9AvrFZ0 [23/24]
見てくれたありがとうございました
ID:hSURgWV40にバレたのはショックだったが、やっぱわかりやすかったかなorz
よろしければこちらもどうぞ(作者さんブログ)
http://hamham278.blog76.fc2.com/
69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/28(土) 02:33:05.49 ID:O89NhMTX0 [3/4]
>>68
女は死?
70 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/28(土) 02:43:24.96 ID:UV9AvrFZ0 [24/24]
>>69
2年前、男が約束に遅れたため(突っ込んだ車により)事故死
ショックで葬儀も出ず1年前の命日も墓参りせず
というイメージですが、まあ好きに想像してください
男「あと、これ」
女「和菓子??」
男「このお菓子、おいしいんだってさ」
男「ここに置いとくね」
女「ありがとう」
女「でもあなたって、そんなまめな人だったかしら」
男「…」
女「私とデートしてくれた時は、いっつも気の利かない人だったけれど」
男「…」
女「責めてるんじゃないわよ」
女「ただ、おかしくって」
5 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/27(金) 21:20:27.07 ID:CcGhAh+80
男「あの頃は、二人でよく一緒に出かけたよね」
女「2年も前だけれどね」
男「楽しかったよ」
女「私もよ」
男「君と付き合ってた3年間は、最高の思い出だったよ」
女「…うん」
男「でももう、あの頃には戻れないんだね」
女「…仕方ないわよね」
女「ごめんね」
6 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/27(金) 21:25:06.64 ID:CcGhAh+80
男「来るのが遅くなって、ごめんね」
女「まったくだわ」
男「本当は、もっと早く会いに来たかったんだけど」
男「ここ2年、ずっと会社のプロジェクトが忙しくって」
女「付き合ってた時も、よくそう言ってたわね」
女「真面目な人だもの、仕方がないわよね」
男「それに、ここに来るのがつらかったから」
女「正直な人ね」
男「あの頃もっと、時間を作って、たくさん会って」
男「君との時間を大事にしていれば、よかったと思うよ」
女「そうね」
7 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/27(金) 21:32:17.24 ID:CcGhAh+80
男「そういえば、僕らが初めてのデートで行った水族館ね」
男「来月取り壊されるんだってさ」
女「あら、残念ね…」
男「思い出がなくなるみたいで、ちょっと寂しいよ」
女「…でも、思い出が消えるわけじゃないわ」
男「ペンギン、可愛かったよね」
女「あなたって本当に、可愛いものに目がないんだから」
男「でも本当は君の方が可愛いよって、言いたかったんだけどね」
男「勇気が足りなかった」
女「言わなくって正解だったわね」
8 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/27(金) 21:38:43.18 ID:CcGhAh+80
男「僕が初めて君に好きだって伝えられたのは、次のデートだったかな」
男「気合い入れて、店とか予約してね」
女「すごく頑張ってくれたよね」
女「緊張したけど、そうやって頑張ってくれたことが嬉しかったわ」
男「飲めもしないワインとか頼んでね」
女「あなた、すぐに赤くなったわよね」
女「お酒、弱いくせに無理するからよ」
男「もう時効かな」
女「何が??」
9 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/27(金) 21:47:03.62 ID:CcGhAh+80
男「あのデートプランね、本当は友達に考えてもらったんだ」
女「そうなの」
女「でも、そんなに大したことじゃないわね」
男「それだけじゃない」
男「君のお母さんにも、考えるの手伝ってもらったんだ」
女「え」
男「友達と、君のお母さんが仲良かったみたいだから」
女「それは…初耳だわ」
男「君の好きな食べ物、店の雰囲気、言葉遣い」
男「どんな服装で行くべきか、待ち合わせはどんなふうに、奢るべきか割り勘か…」
男「いっぱい聞いたんだ」
男「ごめんね」
女「恥ずかしいわ」
女「お母さん、あなたに変なこと言ってないでしょうね」
10 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/27(金) 21:53:52.48 ID:CcGhAh+80
男「最初のデートは、自分で決めちゃって、空回った気がしたから」
女「そんなことないのに」
女「マンボウ可愛かったわよ」
男「どこで『好き』って言うかまで、決めてたんだ」
女「え」
男「あ、さすがにこれは、君のお母さんには相談してないからね」
女「…そう」
男「自分でちゃんと考えたんだけど…」
11 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/27(金) 22:02:15.96 ID:CcGhAh+80
男「でも予定通りうまく言えなくって」
女「…」クスクス
男「だから帰り際、あんな風になっちゃって…」
女「駅前で叫んでくれたわね」
男・女『す、すごい好きだから!!』
男「あはは」
女「…」クスクス
男「その日にちゃんと言えてよかったよ」
女「そういう問題??」
女「こっちはすごく恥ずかしかったんだから」
12 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/27(金) 22:07:35.17 ID:CcGhAh+80
男「あれでなんか吹っ切れて、緊張せずに君と付き合えていけたな」
女「そうね」
男「下の名前で呼べるようになって」
女「そうそう」
男「手もつなげるようになって」
女「歩道側を歩いてくれるようになったし」
男「君の好みもわかっていったね」
女「あなたの好みは分かりやすかったけれどね」
13 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/27(金) 22:26:57.00 ID:CcGhAh+80
男「僕は、手をつなぐの、すごく好きだった」
女「そう」
男「君の体温が感じられて」
女「体温高いのよ、私」
女「知ってるでしょ」
男「それに君の小さい肩に、僕の肩がぶつかるのも好きだったな」
女「距離が近く感じられたわね、確かに」
15 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/27(金) 22:33:29.76 ID:CcGhAh+80
男「君は意外とシンプルなものが好きだったよね」
女「そうね」
男「可愛らしいものや、カラフルなものはそんなに好きじゃなかったね」
女「そういうものが好きだったのは、あなたの方でしょ」
男「そういうところは、なんか、さばさばしていたというか」
女「悪かったわね」
男「あ、でも悪い意味で言ったんじゃないよ」
男「そういうところも素敵だった」
男「ある意味気楽に、一緒にいれたからね」
16 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/27(金) 22:40:43.49 ID:CcGhAh+80
女「あなたはひっつくのが好きだったわね」
女「それに、ベタな恋愛が好きだった」
女「そこは少し私とは合わなかったけど、でも楽しかったわ」
男「最初の頃は、初々しかったなあ」
女「お互いにね」
男「一日中部屋でゴロゴロしてた時も、あったね」
女「テレビつけて、ベッドでずーっとひっついて、ね」
女「ちょっと距離が近すぎて恥ずかしいこともあったけど」
17 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/27(金) 22:44:47.77 ID:CcGhAh+80
男「やっぱりデートって緊張するから、ああいう感じが僕には合ってたんだろうな」
女「うんうん」
女「のんびりするのは、私も好きだったわ」
男「こんな僕と一緒にいてくれて、本当にありがとう」
女「お礼なんて言わないで」
女「私も楽しかったのよ」
女「私の方こそ、ありがとうと言わせて」
18 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/27(金) 22:49:20.97 ID:CcGhAh+80
男「あれ、覚えてるかな」
女「あれって??」
男「あの、プラネタリウム」
女「ああ、大学の頃の??」
男「君に告白した、プラネタリウム」
女「もちろん覚えてるわ」
男「最近、あの頃のことばかり、思い出すんだ」
男「プラネタリウムというか、あの頃のことを、ね」
女「5年くらい前かしらね」
19 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/27(金) 22:59:44.11 ID:CcGhAh+80
男「君と出会って」
女「大学で知り合ったのよね、私たち」
男「少しずつ話すようになって」
女「大学の頃のあなたは、星の話ばかりしてたわね」
女「私もあなたにつられて天文サークルに入っちゃったけど」
男「星のことばかり話す僕は、君にどう思われているんだろう」
男「そうやって、僕は人と接する方法を、覚えていったのかもしれないな」
男「少しずつ、君が興味を持つような話の振り方ができるようになっただろう??」
女「私のおかげね」
男「君のおかげだ」
女「うふふ」
男「ふふ」
20 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/27(金) 23:05:26.64 ID:CcGhAh+80
男「あのときも言ったけれど、僕は君を見て一目惚れしてしまって」
女「うん」
男「なんとかして同じ天文サークルで活動できないかと、毎日頭を悩ませたよ」
女「うふふ」
女「おかしかったなあ、あの頃のあなた」
男「ちょっとずつ、君が星に興味を持つようにいろいろ細工したんだけれど」
女「全部お見通しだったわ」
女「でも、あなたのそんな一生懸命さに惹かれたのも事実よ」
21 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/27(金) 23:15:54.25 ID:CcGhAh+80
男「星座占いの、詳しい奴とかを教えてみたり」
男「天文雑誌を目につくように置いたり」
女「うふふ」
男「カラオケでは意識して、星の出てくる歌を歌ってたっけ」
女「そうだったわね」
男「君が天文サークルに入ってくれたときは、すごく嬉しかった」
男「大学に行けば、授業が終われば、君と一緒にいれるんだから」
女「うふふ」
男「毎日が楽しかったな、本当に」
女「私も楽しかったわ」
女「刺激的だった、というか、ね」
22 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/27(金) 23:29:39.28 ID:CcGhAh+80
男「それにしても、よく勇気を出して告白できたと思うよ」
女「でも、その時『好き』だとは言ってくれなかったわね」
男「『付き合ってください』」
男「ただ一言が、とても大変だった」
女「周りにお客さんがいたのに、ね」
女「聞かれてないか、本当にドキドキしちゃって」
女「恥ずかしくって返事どころじゃなくて…」
男「でも頑張ったんだ、僕なりに」
23 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/27(金) 23:37:53.54 ID:CcGhAh+80
男「君は真っ赤になって、すごく時間が経って」
男「プラネタリウムはとっくに終わったのに、2人残って」
男「だいぶ経ってから、小さくうなずいてくれて」
男「舞い上がっちゃったなあ」
女「だから恥ずかしかったんだってば」
女「待たせて悪いとは思ったけど…仕方ないじゃない」
男「あの緊張感は、一生で一番じゃないかな」
女「大げさねえ」
女「まあ私も、同じようなものだけれど」
24 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/27(金) 23:43:05.06 ID:CcGhAh+80
男「あの後のことは、あんまり覚えてないんだ」
男「自分が、世界で一番の幸せ者だと思ってて」
男「君の言葉も耳に入ってなかったくらいだから」
女「私は覚えてるわよ」
女「とっくに明るくなったプラネタリウムから出るとき」
女「受付のお姉さんがこっちを見ながらにやにやしてたんだから」
女「恥ずかしいったらなかったわ」
25 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/27(金) 23:50:44.56 ID:CcGhAh+80
男「まだ、若かったな」
女「今でも十分若いじゃない」
男「若くて、青くて」
女「…」
男「世間のことなんか全然わかってなくて」
男「自分の幸せで、精一杯だった」
男「君のことより、自分のことで精一杯だった」
男「人生で初めての、告白だったから」
26 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/27(金) 23:57:47.67 ID:CcGhAh+80
女「私だってそうよ」
女「あなたの告白を聞いて、舞い上がってたんだから」
女「本当に起こったことなのか信じられなくて」
女「何度ほっぺをつねってみようと思ったか」
女「人生で初めてだからね、告白されたのは」
女「初めてどうし」
女「青春ってやつね」
女「…」
女「自分で言ってて恥ずかしくなったわ」
27 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/28(土) 00:02:46.44 ID:UV9AvrFZ0 [1/24]
男「君に言ったことがあったよね、僕の一番好きな星の話」
女「ええ、覚えてるわ」
男・女『北極星』
男「いつも人を導く、夜空の中心にいる北極星が好きで好きで、そして」
男「君を、僕の北極星だと言ったことも、覚えてるかな」
女「もちろん」
女「とってもクサイ台詞だったけれど、私には大切な言葉だったわ」
28 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/28(土) 00:09:54.22 ID:UV9AvrFZ0 [2/24]
男「あれは、とっさの思いつきだったけれど」
男「だからこそ僕の本心が出たと思うんだ」
女「星に例えるあたりが、あなたらしいと思ったわ」
男「北極星ってね、一年中ずっと頭の上に輝いていて」
男「しかもほとんど動かないだろ」
男「理想、高嶺の花、夜空の中心」
男「君と同じだと思ったんだ」
女「その話は、もう聞いたわ」
30 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/28(土) 00:20:30.55 ID:UV9AvrFZ0 [3/24]
男「あの頃の僕の生活の中心は君だった」
男「ずっと近づきたいと、手を伸ばしてた」
男「いつだって、すぐに会いたいと思っていて」
男「会えば離れたくないと思っていた」
女「でも北極星は、数千年ごとに別の星に変わるのよ」
男「…」
女「あなたの北極星は、今は誰なのかしらね」
男「…」
女「ふふ、意地悪なこと、聞いちゃったわね」
31 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/28(土) 00:28:42.87 ID:UV9AvrFZ0 [4/24]
男「北極星は、もう輝かなくなってしまった…」
女「…」
男「なんて言うと、違うかな」
男「でも、そんな気分なんだ」
女「…」
男「いや、ごめん」
男「この話はやめよう」
女「もう」
35 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/28(土) 00:39:59.52 ID:UV9AvrFZ0 [5/24]
女「あなたって本当に優柔不断なんだから」
男「…」
女「私に告白してくれたくせに、他の女の子ばっかり見ていたわ」
男「あの頃、君以外に好きな人なんていなかったよ」
男「自分はずっと一途だって、思ってた」
女「本当かしら」
男「あれからも、君のことを忘れたことなんてなかったよ」
女「…本当かしら」
36 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/28(土) 00:44:08.22 ID:UV9AvrFZ0 [6/24]
男「ごめん、話があっちこっちにいってるね」
女「…」
男「最近思いだしたんだ」
女「何を??」
男「君は、僕の前で泣いたことは、なかったよね」
女「そうね」
男「今思うと、すごく強い女性だったんだなって感じるよ」
女「そんなんじゃないのよ」
37 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/28(土) 00:52:40.53 ID:UV9AvrFZ0 [7/24]
女「涙は女の武器っていうじゃない」
女「その武器を使って、可憐な女性を演じたくはなかったのよ」
男「…」
女「ただ自分らしく素直でいただけ」
女「別に泣くのを我慢していたわけでもないのよ」
女「それに、それを言うなら、あなたはずいぶん涙腺の緩い人だったじゃない」
38 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/28(土) 00:59:00.24 ID:UV9AvrFZ0 [8/24]
男「君と違って、僕は泣いてばかりだったね」
女「映画を見ては泣き、ドラマを見ては泣き…」
男「けんかしたとき家で泣いたこともあった」
女「それは知らなかったわ」
男「泣き虫だったなあ、僕は」
女「それだけ感情が豊かなのよ」
男「でもそれは、君と付き合ってからだよ」
女「私のせいだって言うの??」
男「君のおかげだ」
女「はいはい、私のせいね」
39 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/28(土) 01:10:25.70 ID:UV9AvrFZ0 [9/24]
男「今は桜が満開だね」
女「きれいでしょう」
男「君が、2番目に好きだった花」
女「そうそう」
男「ここは交通の便が悪いけど、景色は最高だね」
女「でしょう」
女「私は毎日、桜が見れるのよ♪」
男「…桜、か」
男「2年前の今頃は、雨が多かったね」
女「…」
男「桜が散ってしまったのも、今年より早かった気がするな」
女「そうね…」
40 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/28(土) 01:18:09.26 ID:UV9AvrFZ0 [10/24]
男「2年前のあの日、君に会えていれば、言いたかったことがあるんだ」
女「…」
男「聞いてくれるかな」
男「あの日言えなかった、君への想いを」
女「…」
男「あの頃僕は、どうしようもないくらい幸せで」
女「…」
男「君が好きで、君への想いでいっぱいで」
女「…」
男「でも、仕事との両立に悩んでいて」
女「…」
男「どうしようもないくらい、どうすればいいのかわからなかったんだ」
女「…」
41 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/28(土) 01:22:38.46 ID:UV9AvrFZ0 [11/24]
女「よく喧嘩もしたわね」
男「…」
女「たいていは私が怒ってた」
女「私との時間をもっと大切にしてよって、ね」
男「…」
女「仕事のことはわかってるの」
女「私のことを好きでいてくれてるのも、理解してたの」
男「…」
女「でも『付き合う』ということが、あなたの負担になってるように思ったのよ」
43 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/28(土) 01:31:00.76 ID:UV9AvrFZ0 [12/24]
男「君が僕をどう思っているのか、心配だった」
男「恋人ではあったけれど、本当に僕のことを好きでいてくれてるのかなって」
女「…好きだったわ、とても」
男「あの日待ち合わせに、3時間も遅れてしまって」
男「もちろん君はいなくて」
女「…」
男「いつも待ち合わせにルーズだった僕に、いい加減愛想を尽かせてしまったんだと思った」
女「…仕事、だったんでしょう」
女「怒ってないわよ」
男「本当にごめん」
女「…」
45 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [>>42最後まで行きますよ] 投稿日:2010/08/28(土) 01:37:55.05 ID:UV9AvrFZ0 [13/24]
男「あの日、僕は君に結婚を申し込もうと思っていたんだ」
女「っ!!」
男「指輪も買ってあったんだ」
女「…」
男「本当は早く会社を出るつもりだったんだけど、帰る寸前に問題が…」
男「いや、やめよう。また僕は言い訳してるね」
女「…」
男「とにかく、結婚を申し込んで、君の正直な気持ちを聞きたかった」
男「困った顔をされたら、冗談で済ませようと思ってた」
男「でも僕は、一生君の傍にいたいと、本気で思ってたよ」
女「…」
女「…嬉しい」
47 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/28(土) 01:41:49.64 ID:UV9AvrFZ0 [14/24]
男「今更、だけれど」
男「2年も前の気持ちだけれど」
男「今日、言おうと思ってた」
女「ありがとう」
男「あの日、言えないままにしてしまったから」
女「あなたのせいじゃないわ」
女「私も悪いのよ」
男「ごめんね」
女「…ごめんね」
48 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/28(土) 01:47:48.75 ID:UV9AvrFZ0 [15/24]
女「その前の日、喧嘩してたわよね、私たち」
男「…」
女「だから、てっきり別れ話かと思って、待ってたの」
男「…」
女「待つのはつらかった」
女「あなたがなかなか来ないから、さらにつらかったわ」
男「…」
女「そして、結局あなたは来なかった」
男「…」
50 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [>>49二人っきりだね///] 投稿日:2010/08/28(土) 01:52:10.07 ID:UV9AvrFZ0 [16/24]
女「もう少し早く来れていたら、ってあなたは自分を責めるでしょうね」
男「…」
女「でも、あなたは悪くないの」
女「仕方なかったの」
女「運命だったの」
男「…」
女「自分を責めないでね」
54 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [人いたww] 投稿日:2010/08/28(土) 01:58:19.13 ID:UV9AvrFZ0 [17/24]
男「あのさ」
女「ん」
男「僕、今度ね」
女「うん…」
男「…結婚することになった」
女「!!」
女「そ、それは…」
女「…おめでとう」
56 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/28(土) 02:04:20.88 ID:UV9AvrFZ0 [18/24]
男「君に、報告しておきたくて」
女「律義ね」
男「だから今日、来たんだ」
女「…律義ね」
男「でも、結婚するからって」
男「君のことを忘れたわけじゃないんだ」
女「わかってる」
男「君のこととは全然違う話で」
女「わかってるわよ」
58 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/28(土) 02:09:09.81 ID:UV9AvrFZ0 [19/24]
男「上司の娘さんでね」
女「…」
男「まあ、お見合い結婚なんだけれど」
男「僕にはもったいないくらいのいいお嬢さんで、ね」
女「よかったわね」
男「今年の夏、結婚することになった」
女「本当におめでとう、ね」
男「ごめんね」
女「謝る必要なんか、ないじゃない」
男「…」
61 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/28(土) 02:14:03.11 ID:UV9AvrFZ0 [20/24]
女「結婚、か」
男「…」
女「どんどんあなたが、遠くに行ってしまうような感じだわ」
男「…」
女「少し寂しいけれど、あなたが幸せでいてくれたら、私…」
男「…」
女「…」グス
男「…」
女「幸せに…なってね…絶対」グス
64 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/28(土) 02:20:37.22 ID:UV9AvrFZ0 [21/24]
男「また、ここに来るよ」
女「うん」
男「今年は少しでも、この桜が長く咲いていればいいな」
女「そうね」
男「君にもこの景色が、よく見えるだろうから」
女「そうすればこの気持ちも、少しは安らぐかしらね」
男「ここに来ると、本当に君と話しているような気分になるよ」
女「私もよ」
男「…」
女「…」
65 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/28(土) 02:25:07.76 ID:UV9AvrFZ0 [22/24]
男「じゃあ、僕はもう、行くね」
女「うん」
男「また来年、ここに来るよ」
男「君の、命日に」
女「ええ。また来年ね」
男「さよなら」
女「さよなら」
★おしまい
68 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/28(土) 02:29:37.57 ID:UV9AvrFZ0 [23/24]
見てくれたありがとうございました
ID:hSURgWV40にバレたのはショックだったが、やっぱわかりやすかったかなorz
よろしければこちらもどうぞ(作者さんブログ)
http://hamham278.blog76.fc2.com/
69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/28(土) 02:33:05.49 ID:O89NhMTX0 [3/4]
>>68
女は死?
70 名前:HAM ◆HAM/FeZ/c2 [] 投稿日:2010/08/28(土) 02:43:24.96 ID:UV9AvrFZ0 [24/24]
>>69
2年前、男が約束に遅れたため(突っ込んだ車により)事故死
ショックで葬儀も出ず1年前の命日も墓参りせず
というイメージですが、まあ好きに想像してください
<<とある英雄の性癖被り | ホーム | こなた「おおっ、かがみ来てくれたの?」>>
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