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唯「ただひたすら穴を掘ったりする話」
1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/01(日) 00:15:50.92 ID:DCdYK0LC0 [1/25]
律「この……円錐形で段々に溝の掘られたうさん臭い銀色のフォルム」
律「――間違いなく、ドリルだ」
銀色のドリルの刃。
ごく普通の高校にはあまりにも似つかわしくない存在が、軽音部部室の中央に置かれていた。
傍らには深緑色の四角い機械もある。サイズはゲームキューブより二回りほど大きい程度だろうか。
機械には色んなボタンと、バイクのハンドルのような取っ手が付いていた。
律「この……円錐形で段々に溝の掘られたうさん臭い銀色のフォルム」
律「――間違いなく、ドリルだ」
銀色のドリルの刃。
ごく普通の高校にはあまりにも似つかわしくない存在が、軽音部部室の中央に置かれていた。
傍らには深緑色の四角い機械もある。サイズはゲームキューブより二回りほど大きい程度だろうか。
機械には色んなボタンと、バイクのハンドルのような取っ手が付いていた。
2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/01(日) 00:17:56.28 ID:DCdYK0LC0 [2/25]
律「この四角い機械に、ドリルの刃をセットすればいいんだ」 カチッ
律「……どれかのボタンを押すと動きだし、あとはハンドル持って真下を掘って掘って掘りまくれ、と……そんなとこか」
律「誰が持ってきたんだろ。さわちゃんか?」
ドリルを覗き込むと、表面には鏡のように自分の顔が映っている。
つまり機械部分とは対照的に、刃部分は律の光るおでこと比肩しうるほどに磨き抜かれていた。
手入れがされているのか、あるいは新品なのか。
3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/01(日) 00:18:39.36 ID:DCdYK0LC0 [3/25]
唯「あれ? りっちゃんどしたの?」
律「おぉ、唯か。これを見ろ」
唯「……そ、それは~~~~ッッ!」
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/01(日) 00:21:35.66 ID:DCdYK0LC0
唯「ドリルだね! ぎゅいんぎゅいん穴という穴を掘り尽くすんだよね!?」
律「ああドリルだ! コイツの通った後にはペンペン草も生えやしねぇ!」
唯「まるでりっちゃんのおでこみたいだね!」ぺしぺし
律「やかましいっ!」ベシンッッ
唯「痛いよぉ……」
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/01(日) 00:23:10.25 ID:DCdYK0LC0
律「……悪い。最近ドリル分が不足してたせいで気が立ってたみたいだ」
唯「それじゃあ仕方ないね。げんだいじんには不足しがちだもんね」
律「ひょっとしたらこのドリルは、それを見越したさわちゃんの『イキなハカライ』かもな」
唯「さすがさわちゃん!」
律「まあ、こまけぇ御託は抜きだ! とにかく掘るぞ、唯隊員!」
唯「掘りましょう、りっちゃん隊員!」
唯・律「おー!!」
他の部員のことなど蚊ほども気に掛けることなく、二人はドリルを手に外へ飛び出していった。
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/01(日) 00:25:28.89 ID:DCdYK0LC0
―校庭―
唯「似合ってるよ、りっちゃん」
律「あんまり嬉しくないけどなー。こんな黄色いヘルメット、今日び工事現場のおっちゃんしか持ってないぞ」
唯「えへへ、でも何だか楽しいよね」
律「あぁ……他の連中にゃぁ悪いけど、このドリルは先に見つけたあたしらのもんだぜ」
唯「あっ、りっちゃん隊員! どりるんがビクンビクン反応しております!」
律「すげぇ、何かランプが光ってる。このドリル……もとい、どりるん? こんな機能もついてんのか」
唯「きっと、穴という穴をほじくり返したくていきり立ってるんだよ!」
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/01(日) 00:28:37.99 ID:DCdYK0LC0
律「よし、唯。あたしはこれから穴を掘る。こういう豪快な機械は、きっとあたし向きだ」
唯「お任せしました!」
律「ほいじゃ、軽音部の輝かしい未来のために」
唯「未来のために!」
律「日輪の力を借りて!」
唯「今、ひっさつの!」
律「ドリル・アタッ……うわぁぁあぁぁああああああぁあ!!?」
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/01(日) 00:29:38.05 ID:DCdYK0LC0
唯「りっちゃんがどりるんと一緒にものすごいぎゅいんぎゅいん回転しながら土の中に潜ってっちゃった……」
唯「でもりっちゃんなら大丈夫だよね」
唯「いっつも澪ちゃんにぶたれてるけどすぐにたんこぶ引っ込むもんね」
12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/01(日) 00:31:24.45 ID:DCdYK0LC0
梓「何か騒がしいと思って来てみたら、何やってるんですか? 唯先輩」
唯「あ、あずにゃんだー」むぎゅー
梓「わぁっ、いきなり抱きつかないでください!」
唯「すごいんだよー。今ね、りっちゃんがどりるんでぎゅいんぎゅいんのかわぐちひろし探検隊なの」
梓「……はい?」
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/01(日) 00:34:53.55 ID:DCdYK0LC0
唯「かくかくしかじか」
梓「……それはまずいことになりましたね」
唯「なんでー? ああ、部活ならりっちゃんが帰ってきてからちゃんとやるよ?」
梓「いえ、そうじゃなくて……あ、いや、それもありますけど……あのドリルは危険です」
唯「あれ? あずにゃん、どりるん知ってるの?」
梓「何ですかその名前かわいいですね」キュン
14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/01(日) 00:36:53.54 ID:DCdYK0LC0
梓「……ごほん。あのドリルはムギ先輩が用意したモノです」
唯「え、ムギちゃんが? いくら穴という穴をぺろぺろむちゃむちゃしゅるべりずべりするのが好きなムギちゃんでもドリルプレイじゃお嫁に行けなくなっちゃうよ」
梓「すごい出力のドリルだそうですよ。何に使うかは知らないですけど、琴吹家謹製だそうです」
唯「あちゃー。勝手に使っちゃまずかったんだねー」
梓「当たり前ですよ。勝手にドリル持ってって穴掘ってる女子高生なんて聞いたことないです」
唯「でも、もうりっちゃんはふじおかひろし探検隊だし……」
梓「……」
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/01(日) 00:40:45.69 ID:DCdYK0LC0
唯「そうだ! あずにゃん、この穴に入って追いかけてきてよ!」
梓「な、何言ってるんですか! 死んじゃいますよ! 大体追いつけるわけないですって」
唯「大丈夫、あずにゃんは色んな意味でものすごい生命力っていう後付け設定できてるから。スピードもすごいんだよ~」
梓「む、無理なものは無理です! 」
唯「りっちゃん、おやつの時間だよ~って言えばすぐに戻ってくるからさ」
梓「じゃあ、3時になれば自動的に帰ってくるんじゃないですか? 今ちょうど2時59分ですけど」
唯「あ、そだね。じゃあいいか」
梓「はい」
17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/01(日) 00:44:02.40 ID:DCdYK0LC0
うわあぁぁあぁぁあああぁぁぁあぁあぁあああ!!
唯「!?」
梓「!?」
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/01(日) 00:47:12.76 ID:DCdYK0LC0
律「あっぷしあらはすこっぷあああああああああああああああああ!!」
唯「ぎゃあああああああああああああああああああ!!」
梓「ぬおああああおああああああああああああああ!!」
ドガッシャーンッッッ
唯「……りっちゃんがどりるんと一緒にものすごいぎゅいんぎゅいん回転しながら地上に飛び出してきちゃった……」
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/01(日) 00:50:17.65 ID:DCdYK0LC0
梓「ちょ、ちょっと律先輩大丈夫なんですか!?」
律「……うう」
唯「案ずるでないぞあずにゃん
唯「これくらいでくたばるようなおなごが軽音部を率いようなど、しょうしせんばん」
律「おうよ……よく言っ、た、唯……」バタッ
梓「虫の息ー!!」
22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/01(日) 00:53:05.07 ID:DCdYK0LC0
律「へへ……このあたしが、放課後ティータイムのドラマーであるあたしが、そう簡単にくたばるかっての」
唯「りっちゃんかっこいいー!」
梓「なんか頭が痛くなってきました……」
唯「それで、土の中には何があったの? 財宝ザックザク? トンちゃんのふるさとは? 伝説のギー太の生き別れの兄弟見つかった?」
律「そんなもんねえよ」
梓「竜宮城のことを言いたいんでしょうか」
23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/01(日) 00:56:02.29 ID:DCdYK0LC0
律「……そんなもんじゃねえんだ。あれは……あれは、人の言葉で語り尽くせるカテゴリーを逸脱している」
唯・梓「え?」
律「どりるんの回転についていけなくなりそうになった時、あたしは手を離しかけた」
24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/01(日) 01:00:34.41 ID:DCdYK0LC0
律「でも……一年以上も放課後ティータイムでドラムスティックを握り続けてきたあたしの指は、それを許さなかった」
律「こんなところで、あたしは諦めていいのかって。そんな弱々しい腕で、これからもドラムを叩き続けて……」
律「唯の強い歌声に、澪が書く詞に、ついていけるのかって」
律「ムギの誰よりも優しい心に、あずにゃんの音楽テクニックに……あたしは、負けてしまうような気がした」
梓「先輩……」
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/01(日) 01:04:02.72 ID:DCdYK0LC0
律「その時だ。負けるもんかって思った瞬間、白い光が見えたんだ。同時に、どりるんのやかましい回転音がプッツリ途絶えた」
律「すごく暖かかった。『お前の強さは分かった。お前のいるべき場所に帰れ』って言われた気がしたよ」
律「気がついたらここにいた。あれは……何だったんだろうな」
唯・梓「……」
誰からともなく、かたわらで土にまみれたどりるんに目を向けた。
物言わぬ無骨な工具が、何だか少しだけ大きく見えた。
26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/01(日) 01:07:09.05 ID:DCdYK0LC0
唯「りっちゃん」
律「ん?」
唯「おかえりなさいっ!!」むぎゅー
律「うわぁっ、ちょ、こら、何だいきなり!」
唯「りっちゃんはすごいよ。りっちゃんの強さは私が……私達が誰よりも知ってるよ!」
梓「唯先輩の言う通りです。こんな無茶苦茶やって帰ってこられる先輩なんて、律先輩くらいのものですよ」
律「……はは」
27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/01(日) 01:09:48.33 ID:DCdYK0LC0
唯「ドリルは、男のロマンって言うんだよね」
律「ああ」
唯「男の人は、ドリルから色んなことを学ぶんだって。その『何か』を、どりるんはりっちゃんにおすそ分けしてくれたんだよ」
律「そうか。なら、感謝しないとな」
梓「穴掘りも良いですけど、今度は、放課後ティータイムのドラマーとして……律先輩、お願いしますよ」
梓「律先輩くらいじゃないと、こんな部活のドラマーなんて、絶対務まりませんから」
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/01(日) 01:12:19.56 ID:DCdYK0LC0
律「おう、なんか嬉しいけどちょっと照れ臭いな。ギターだって、お前ら二人じゃなきゃダメだぜ?」
梓「はい!」
律「……うっし、何だか疲れたはずなのに、体が軽くなった気がする。ドリル分たっぷり補給したしなぁ!」
唯「それじゃ、部室に戻ろ!」
梓「はい! 戻って早速れんしゅ――」
唯「レッツ・ムギちゃんのケーキタイム!」
律・梓「結局それかいっ!」
29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/01(日) 01:15:14.27 ID:DCdYK0LC0
―部室―
澪「なあムギ、人生ってさ、生きてればきっと色々あると思うんだよな」
澪「辛いことも悲しいこともさ。でもさ、それを助け合ってこそ友達だろ?」
澪「私、お前のこと親友だと思ってるよ。大切な親友なんだ。同じ部活の仲間だよ」
澪「……だからさ」
紬「はい?」
澪「私の手足を縛り付けてるこの鎖を解いてくれよおおおおお!!」ガチャガチャ
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/01(日) 01:20:23.15 ID:DCdYK0LC0
紬「ふふふ。まあ、一番大きいドリルは誰か持ってっちゃったみたいだから、この小さい片手用ドリルしか使えないのよね。残念」
澪「聞けよおおおおお!!」
紬「大丈夫よ澪ちゃん。女の子の穴は丈夫なの。ドリルの一本や二本で壊れやしないわ……ハァ、ハァ」
紬「二人で楽しいこと、しましょ……」
ギュイィィィン……
澪「いやああああああああああああああ!! 誰か助けてええええええええええええええええええええ!!」
唯「ただひたすら穴を掘ったりする話」 ―完―
律「この四角い機械に、ドリルの刃をセットすればいいんだ」 カチッ
律「……どれかのボタンを押すと動きだし、あとはハンドル持って真下を掘って掘って掘りまくれ、と……そんなとこか」
律「誰が持ってきたんだろ。さわちゃんか?」
ドリルを覗き込むと、表面には鏡のように自分の顔が映っている。
つまり機械部分とは対照的に、刃部分は律の光るおでこと比肩しうるほどに磨き抜かれていた。
手入れがされているのか、あるいは新品なのか。
3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/01(日) 00:18:39.36 ID:DCdYK0LC0 [3/25]
唯「あれ? りっちゃんどしたの?」
律「おぉ、唯か。これを見ろ」
唯「……そ、それは~~~~ッッ!」
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/01(日) 00:21:35.66 ID:DCdYK0LC0
唯「ドリルだね! ぎゅいんぎゅいん穴という穴を掘り尽くすんだよね!?」
律「ああドリルだ! コイツの通った後にはペンペン草も生えやしねぇ!」
唯「まるでりっちゃんのおでこみたいだね!」ぺしぺし
律「やかましいっ!」ベシンッッ
唯「痛いよぉ……」
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/01(日) 00:23:10.25 ID:DCdYK0LC0
律「……悪い。最近ドリル分が不足してたせいで気が立ってたみたいだ」
唯「それじゃあ仕方ないね。げんだいじんには不足しがちだもんね」
律「ひょっとしたらこのドリルは、それを見越したさわちゃんの『イキなハカライ』かもな」
唯「さすがさわちゃん!」
律「まあ、こまけぇ御託は抜きだ! とにかく掘るぞ、唯隊員!」
唯「掘りましょう、りっちゃん隊員!」
唯・律「おー!!」
他の部員のことなど蚊ほども気に掛けることなく、二人はドリルを手に外へ飛び出していった。
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/01(日) 00:25:28.89 ID:DCdYK0LC0
―校庭―
唯「似合ってるよ、りっちゃん」
律「あんまり嬉しくないけどなー。こんな黄色いヘルメット、今日び工事現場のおっちゃんしか持ってないぞ」
唯「えへへ、でも何だか楽しいよね」
律「あぁ……他の連中にゃぁ悪いけど、このドリルは先に見つけたあたしらのもんだぜ」
唯「あっ、りっちゃん隊員! どりるんがビクンビクン反応しております!」
律「すげぇ、何かランプが光ってる。このドリル……もとい、どりるん? こんな機能もついてんのか」
唯「きっと、穴という穴をほじくり返したくていきり立ってるんだよ!」
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/01(日) 00:28:37.99 ID:DCdYK0LC0
律「よし、唯。あたしはこれから穴を掘る。こういう豪快な機械は、きっとあたし向きだ」
唯「お任せしました!」
律「ほいじゃ、軽音部の輝かしい未来のために」
唯「未来のために!」
律「日輪の力を借りて!」
唯「今、ひっさつの!」
律「ドリル・アタッ……うわぁぁあぁぁああああああぁあ!!?」
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/01(日) 00:29:38.05 ID:DCdYK0LC0
唯「りっちゃんがどりるんと一緒にものすごいぎゅいんぎゅいん回転しながら土の中に潜ってっちゃった……」
唯「でもりっちゃんなら大丈夫だよね」
唯「いっつも澪ちゃんにぶたれてるけどすぐにたんこぶ引っ込むもんね」
12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/01(日) 00:31:24.45 ID:DCdYK0LC0
梓「何か騒がしいと思って来てみたら、何やってるんですか? 唯先輩」
唯「あ、あずにゃんだー」むぎゅー
梓「わぁっ、いきなり抱きつかないでください!」
唯「すごいんだよー。今ね、りっちゃんがどりるんでぎゅいんぎゅいんのかわぐちひろし探検隊なの」
梓「……はい?」
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/01(日) 00:34:53.55 ID:DCdYK0LC0
唯「かくかくしかじか」
梓「……それはまずいことになりましたね」
唯「なんでー? ああ、部活ならりっちゃんが帰ってきてからちゃんとやるよ?」
梓「いえ、そうじゃなくて……あ、いや、それもありますけど……あのドリルは危険です」
唯「あれ? あずにゃん、どりるん知ってるの?」
梓「何ですかその名前かわいいですね」キュン
14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/01(日) 00:36:53.54 ID:DCdYK0LC0
梓「……ごほん。あのドリルはムギ先輩が用意したモノです」
唯「え、ムギちゃんが? いくら穴という穴をぺろぺろむちゃむちゃしゅるべりずべりするのが好きなムギちゃんでもドリルプレイじゃお嫁に行けなくなっちゃうよ」
梓「すごい出力のドリルだそうですよ。何に使うかは知らないですけど、琴吹家謹製だそうです」
唯「あちゃー。勝手に使っちゃまずかったんだねー」
梓「当たり前ですよ。勝手にドリル持ってって穴掘ってる女子高生なんて聞いたことないです」
唯「でも、もうりっちゃんはふじおかひろし探検隊だし……」
梓「……」
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/01(日) 00:40:45.69 ID:DCdYK0LC0
唯「そうだ! あずにゃん、この穴に入って追いかけてきてよ!」
梓「な、何言ってるんですか! 死んじゃいますよ! 大体追いつけるわけないですって」
唯「大丈夫、あずにゃんは色んな意味でものすごい生命力っていう後付け設定できてるから。スピードもすごいんだよ~」
梓「む、無理なものは無理です! 」
唯「りっちゃん、おやつの時間だよ~って言えばすぐに戻ってくるからさ」
梓「じゃあ、3時になれば自動的に帰ってくるんじゃないですか? 今ちょうど2時59分ですけど」
唯「あ、そだね。じゃあいいか」
梓「はい」
17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/01(日) 00:44:02.40 ID:DCdYK0LC0
うわあぁぁあぁぁあああぁぁぁあぁあぁあああ!!
唯「!?」
梓「!?」
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/01(日) 00:47:12.76 ID:DCdYK0LC0
律「あっぷしあらはすこっぷあああああああああああああああああ!!」
唯「ぎゃあああああああああああああああああああ!!」
梓「ぬおああああおああああああああああああああ!!」
ドガッシャーンッッッ
唯「……りっちゃんがどりるんと一緒にものすごいぎゅいんぎゅいん回転しながら地上に飛び出してきちゃった……」
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/01(日) 00:50:17.65 ID:DCdYK0LC0
梓「ちょ、ちょっと律先輩大丈夫なんですか!?」
律「……うう」
唯「案ずるでないぞあずにゃん
唯「これくらいでくたばるようなおなごが軽音部を率いようなど、しょうしせんばん」
律「おうよ……よく言っ、た、唯……」バタッ
梓「虫の息ー!!」
22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/01(日) 00:53:05.07 ID:DCdYK0LC0
律「へへ……このあたしが、放課後ティータイムのドラマーであるあたしが、そう簡単にくたばるかっての」
唯「りっちゃんかっこいいー!」
梓「なんか頭が痛くなってきました……」
唯「それで、土の中には何があったの? 財宝ザックザク? トンちゃんのふるさとは? 伝説のギー太の生き別れの兄弟見つかった?」
律「そんなもんねえよ」
梓「竜宮城のことを言いたいんでしょうか」
23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/01(日) 00:56:02.29 ID:DCdYK0LC0
律「……そんなもんじゃねえんだ。あれは……あれは、人の言葉で語り尽くせるカテゴリーを逸脱している」
唯・梓「え?」
律「どりるんの回転についていけなくなりそうになった時、あたしは手を離しかけた」
24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/01(日) 01:00:34.41 ID:DCdYK0LC0
律「でも……一年以上も放課後ティータイムでドラムスティックを握り続けてきたあたしの指は、それを許さなかった」
律「こんなところで、あたしは諦めていいのかって。そんな弱々しい腕で、これからもドラムを叩き続けて……」
律「唯の強い歌声に、澪が書く詞に、ついていけるのかって」
律「ムギの誰よりも優しい心に、あずにゃんの音楽テクニックに……あたしは、負けてしまうような気がした」
梓「先輩……」
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/01(日) 01:04:02.72 ID:DCdYK0LC0
律「その時だ。負けるもんかって思った瞬間、白い光が見えたんだ。同時に、どりるんのやかましい回転音がプッツリ途絶えた」
律「すごく暖かかった。『お前の強さは分かった。お前のいるべき場所に帰れ』って言われた気がしたよ」
律「気がついたらここにいた。あれは……何だったんだろうな」
唯・梓「……」
誰からともなく、かたわらで土にまみれたどりるんに目を向けた。
物言わぬ無骨な工具が、何だか少しだけ大きく見えた。
26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/01(日) 01:07:09.05 ID:DCdYK0LC0
唯「りっちゃん」
律「ん?」
唯「おかえりなさいっ!!」むぎゅー
律「うわぁっ、ちょ、こら、何だいきなり!」
唯「りっちゃんはすごいよ。りっちゃんの強さは私が……私達が誰よりも知ってるよ!」
梓「唯先輩の言う通りです。こんな無茶苦茶やって帰ってこられる先輩なんて、律先輩くらいのものですよ」
律「……はは」
27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/01(日) 01:09:48.33 ID:DCdYK0LC0
唯「ドリルは、男のロマンって言うんだよね」
律「ああ」
唯「男の人は、ドリルから色んなことを学ぶんだって。その『何か』を、どりるんはりっちゃんにおすそ分けしてくれたんだよ」
律「そうか。なら、感謝しないとな」
梓「穴掘りも良いですけど、今度は、放課後ティータイムのドラマーとして……律先輩、お願いしますよ」
梓「律先輩くらいじゃないと、こんな部活のドラマーなんて、絶対務まりませんから」
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/01(日) 01:12:19.56 ID:DCdYK0LC0
律「おう、なんか嬉しいけどちょっと照れ臭いな。ギターだって、お前ら二人じゃなきゃダメだぜ?」
梓「はい!」
律「……うっし、何だか疲れたはずなのに、体が軽くなった気がする。ドリル分たっぷり補給したしなぁ!」
唯「それじゃ、部室に戻ろ!」
梓「はい! 戻って早速れんしゅ――」
唯「レッツ・ムギちゃんのケーキタイム!」
律・梓「結局それかいっ!」
29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/01(日) 01:15:14.27 ID:DCdYK0LC0
―部室―
澪「なあムギ、人生ってさ、生きてればきっと色々あると思うんだよな」
澪「辛いことも悲しいこともさ。でもさ、それを助け合ってこそ友達だろ?」
澪「私、お前のこと親友だと思ってるよ。大切な親友なんだ。同じ部活の仲間だよ」
澪「……だからさ」
紬「はい?」
澪「私の手足を縛り付けてるこの鎖を解いてくれよおおおおお!!」ガチャガチャ
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/08/01(日) 01:20:23.15 ID:DCdYK0LC0
紬「ふふふ。まあ、一番大きいドリルは誰か持ってっちゃったみたいだから、この小さい片手用ドリルしか使えないのよね。残念」
澪「聞けよおおおおお!!」
紬「大丈夫よ澪ちゃん。女の子の穴は丈夫なの。ドリルの一本や二本で壊れやしないわ……ハァ、ハァ」
紬「二人で楽しいこと、しましょ……」
ギュイィィィン……
澪「いやああああああああああああああ!! 誰か助けてええええええええええええええええええええ!!」
唯「ただひたすら穴を掘ったりする話」 ―完―
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