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唯「ムギちゃんマジ天使!」
1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 21:24:33.81 ID:GSpKfhiU0 [1/67]
紬「あらあら~♪」
律「急に何口走ってんだー唯ー」
唯「だって律っちゃん!見てよホラ!天使の輪っか!!」
律「ほぉー、言われてみれば……」
澪「ムギの髪、ふわふわで綺麗だもんな」
紬「み、澪ちゃんの髪だって、綺麗な天使の輪っかになってるわ」
唯「澪ちゃんも綺麗だけどー、ムギちゃん髪の色も金だし!ふわふわだし!だからマジ天使ぃ!」ダキッ
紬「なんだか……恥ずかしいわぁ」
梓(確かに……、澪先輩のさらさらストレートも素敵だけど……)
梓(ムギ先輩のゆるふわヘアーも、可愛くていいなぁ……)
紬「あらあら~♪」
律「急に何口走ってんだー唯ー」
唯「だって律っちゃん!見てよホラ!天使の輪っか!!」
律「ほぉー、言われてみれば……」
澪「ムギの髪、ふわふわで綺麗だもんな」
紬「み、澪ちゃんの髪だって、綺麗な天使の輪っかになってるわ」
唯「澪ちゃんも綺麗だけどー、ムギちゃん髪の色も金だし!ふわふわだし!だからマジ天使ぃ!」ダキッ
紬「なんだか……恥ずかしいわぁ」
梓(確かに……、澪先輩のさらさらストレートも素敵だけど……)
梓(ムギ先輩のゆるふわヘアーも、可愛くていいなぁ……)
2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 21:25:28.81 ID:GSpKfhiU0
律「どしたー、梓?さっきからぼんやりしちゃって?」
梓「ふぇえ!?」
律「ははーん……、さてはムギの天使っぷりに見惚れてたなぁ?」ニヤリ
梓「ち、ちが……」
律「ムギ先輩ステキっ!でも私には、澪先輩という心に決めた人が……!!」
紬「あらあらまあまあ!」
唯「そうなのあずにゃん!?」
梓「何でですかっ!!」
律「ああっ、私には選べない……。神様、梓は悪い子で――
澪「いい加減にしろ!」ペシン
律「いちゃいぃ……」キュウ
澪「まったくもう」
紬「くすくす……。あ、お茶のお代わり淹れるわね?」
唯・律「わぁーい!」
3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 21:26:40.16 ID:GSpKfhiU0
帰り道
律「――で、カーテンの隙間から血走った眼が……ギロリと!!」
澪「ひいぃぃぃ!」ガクガク
唯「怖い、怖いよ律っちゃん!!」ブルブル
梓「文化祭のライブの話してたはずなのに……」ガタガタ
律「あははっ、みんな怖がりすぎだろー。なあムギ?」
紬「うふふ……♪あ、ごめんなさい、私今日、こっちに用事あるから」
律「ん、そっか。買い物?」
紬「うん、そんなとこ。それじゃあみんな、また明日ね」
梓「はい、また明日」
唯「じゃーねームギちゃーん!」
澪「また明日な!」
律「転ばないように気をつけろよぉ?」
紬「大丈夫~♪」スタタ
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 21:28:21.12 ID:GSpKfhiU0
唯「いやぁ……後ろ姿まで天使だねぇ……」
澪「うん……、本当に天使さんだな……」
梓「天使"さん"?」
澪「あぁいや!!これはっっ!!」
律「くぷぷ、澪ちゃん可ぁ愛いぃ~」
澪「うるっさい」ゴチン
律「あひゃうぅ……」
梓「あの……、ムギ先輩って、もしかしてハーフなんですか?」
唯「え~?どうだろぉ?どうしてあずにゃん」
梓「いや、すごく綺麗な金髪ですし……、瞳もうっすら青みがかってません?」
律「んー、確かに」
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 21:29:27.32 ID:GSpKfhiU0
唯「でも、ムギちゃんからそんな話聞いたことないよぉ?」
梓「そうなんですか?」
澪「そういえば、ムギは自分のこととか、あんまり話さないよな……」
律「そうだっけ?じゃさ、今度ムギに聞いてみようぜー」
唯「賛成ー!私もムギちゃんの中学時代のこととか、聞いてみたい!」
澪「本人が嫌がらなかったら、な」
梓(それにしても――)
梓「不思議な人だな……」
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 21:31:06.44 ID:GSpKfhiU0
唯「でも、ムギちゃんからそんな話聞いたことないよぉ?」
梓「そうなんですか?」
澪「そういえば、ムギは自分のこととか、あんまり話さないよな……」
律「そうだっけ?そんじゃさ、今度聞いてみようぜー」
唯「賛成ー!私もムギちゃんの中学時代のこととか、聞いてみたい!」
澪「本人が嫌がらなかったら、な」
梓(それにしても――)
梓「不思議な人だな……」
9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 21:31:37.00 ID:GSpKfhiU0
紬「…………」
紬(天使……かぁ)
紬「…………」
紬「きゃん!」ステーン!!
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 21:32:40.08 ID:GSpKfhiU0
翌日 音楽室
紬「みんなお待たせ~」
澪「や、ムギ」
梓「こんにちはです」
紬「こんにちは♪……律っちゃんと唯ちゃんは?」
澪「律は部長会議に参加してるから、遅れるって。唯は……なんか、憂ちゃんに話があるとか……」
梓「……『柿ピーを埋めて柿の木を育てよう』って、憂に熱弁してましたけど……」
澪「なにをやってるんだあいつは……」
紬「柿ピーから柿が育つのっ!?」
澪「ち、違うぞムギ!」
梓「育ちませんからね!!」
紬「そうなんだぁ……」シュン
梓(可愛いなこの人)
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 21:33:18.74 ID:GSpKfhiU0
梓「そういえばムギ先輩」
紬「どうしたの?」
梓「ムギ先輩の髪って、地毛なんですか?」
紬「え、えぇ?えっと……どうしたの急に?」
梓「いえ、結構明るい色なんで、染めてるのかなー、って気になって」
紬「あ、うん……いえ、じ、地毛なの、地毛。染めてないわよ?」
澪「ああ、じゃあやっぱり、ハーフとかクォーターとか」
紬「えっ……!?」ビクッ
12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 21:35:24.45 ID:GSpKfhiU0
澪「いや、地毛が金だから、外国の血筋がはいってるのかなぁ、って……ムギ?」
紬「ああ、な、なるほどねぇ!えっと……ど、どうだったかしらぁ?」アタフタ
澪「あー……、言いたくなかったら……ゴメンな、ムギ」
紬「ち、違うのよ澪ちゃん、なんていうか――」
ガチャ
律「おぃーっす!おまたー!!」
唯「あっっずにゃあーん!!!!」ダキッ
梓「ちょ、ちょっと唯先輩いぃ~~……」
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 21:36:03.96 ID:GSpKfhiU0
唯「聞いて聞いて!柿の種からは柿の木は育たないんだって~。がっかりだよねぇ~」
梓「そりゃそうですよ……」
唯「だからね、代わりに柿ピーのピーを埋めるの!」
梓「」
唯「来年にはピーナッツ食べ放題だよ!!」フンス
律「いや、唯……」
紬「すごいわね唯ちゃん!」
梓「違いますよ!?」
律「ピーナッツも育たないからな!!?」
唯「えぇー……」ショボン
紬「そうなんだぁ……」ショボン
律(可愛いなこいつら)
紬「今お茶淹れるわね~♪」
律・唯「わぁーい!!」
澪「…………」
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 21:37:45.60 ID:GSpKfhiU0
さらに翌日 放課後の職員室。唯と律がさわ子に叱られている。
さわ子「――もう、あなたたちも3年生なんだから、授業中に手紙回しなんてしないの!いいわね!?」
律・唯「ごめんなしゃい」
唯「律っちゃんがあんな面白いこと書くから……」
律「だからって、あんな爆笑したらバレるに決まってる――」
さわ子「あ・な・た・た・ち・~!?」
律・唯「ごみぇんなちゃい」
さわ子「まったくもう……」
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 21:41:31.07 ID:GSpKfhiU0
律(そういえば……)
律「ねぇねぇさわちゃん」
さわ子「せめて職員室では先生って呼んでよね……」
律「ムギってさぁ、ハーフだったりすんの?」
さわ子「えぇ?どうしてまた」
律「ん~、見た目でなんとなく……。あ、これってプライバシーシンガイ?」
さわ子「うーん……、でも私も聞いたことないから、分からないわぁ」
唯「じゃあじゃあ!さわちゃんがムギちゃんのおうち行ったとき、ムギちゃんのおうちの人とか見なかった!?」
さわ子「えぇ?いつの話よ、それ」
唯「ほら、とんちゃんの水槽をムギちゃんの家に取りに行ったとき……」
17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 21:42:26.85 ID:GSpKfhiU0
さわ子「あぁ、そんなこともあったわねー。でも、おうちの人は見なかったような……」
律「んじゃさ!家の中ってどんな感じだった!?」
さわ子「どうって……、すごかったけど……」
律「具体的にさぁー。ほら、庭が東京ドーム10個分だったー!とか、いかにも高そうな絵が沢山ー!とか」
さわ子「うぅん……、よく覚えてないし……。あら?」
さわ子「やだわ……ホントに思い出せない……、すごいって印象は強かったんだけど……」
律「……」
唯「さわちゃんそれって老化現しょ」
さわ子「あぁん!?」ギロリ
唯「な、なんでもありまひぇん……」
18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 21:44:00.86 ID:GSpKfhiU0
さわ子「っていうか!そんなに気になるなら本人に聞いたらいいじゃないの!」
唯「あぁ、それもそだね」
さわ子「分かったら、ほら。部活行ってらっしゃい」
唯「はーい!じゃあねさわちゃんー」
さわ子「やれやれ……。どうしたの、田井中さん?」
律「……へ?ああいや、別に何でも……」
唯「律っちゃーん!早く行こうよー!!」
律「待てよぉー!じゃ、じゃあねさわちゃん!」
さわ子「……?」
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 21:44:43.65 ID:GSpKfhiU0
音楽室
唯「んふぅぅぅ、おいひいよぉ~♪」モグモグ
紬「よかったわぁ」ニコニコ
律「そういえばムギー」
紬「なぁに?律っちゃん?」
律「ムギの家ってさ、どんな感じなの?」
紬「え……えっと」
唯「あぁ、そうそう!さっきさわちゃんに聞いたんだけどね、全然覚えてないって言うんだよ~。おかしいよね~さわちゃん~」
梓「でも、ムギ先輩のお宅っていったら、絶対豪邸ですよね……」
唯「東京23区の10倍!」
澪「いや、でかすぎだろ……」
唯「庭にキリンが放し飼い!」
律「サファリか」
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 21:46:41.57 ID:GSpKfhiU0
紬「え……えっと、そんな別に……普通の家よ?」
律「いや、ムギの普通はあてにならないぞぉ?庭にプールがついてるとか」
梓「お姫様ベッドとか」
唯「オオアリクイが放し飼い!」
律「だから何故サファリ」
澪「ムギ……あんまり家のこととか、話したくない?」
紬「そうじゃないんだけど……、ごめんなさい、うまく説明できないわ」
澪「そっか……。ごめんな、昨日といい」
紬「違うの澪ちゃん……、私の方こそ……。――あ、お茶のお代わり淹れてくるわね?」
ぎこちない動きで、紬が席を立つ。
律「……澪、昨日って?」ヒソヒソ
澪「あぁ、律が来る前に、ちょっと……。ほら、帰り道で話してた、ハーフとか、ってやつ」ヒソヒソ
律「聞いてみたんだ。それで?」
澪「今みたいに濁された……」
律「……」
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 21:50:03.68 ID:GSpKfhiU0
唯「ねえねぇ、何の話してるのー?」
律「ムギは謎多き美少女、って話だよ」
唯「おぉ!確かに!!」
梓「先輩たちも、ムギ先輩のこと良く知らないんですか?」
律「恥ずかしながら……」
紬「みんな~、お茶のお代わりいる~?」カチャカチャ
唯「ムギちゃん!」
紬「ひゃ!は……はいっ!」
唯「今からムギちゃんの独占インタビューをはじめます!」
紬「はい……え、え?」
律「スクープ!謎の美少女の真実に迫るぅ!!」
澪「おいおい……。ムギ、嫌だったら言ったほうがいいぞ?」
紬「えっとぉ……」
22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 21:51:25.24 ID:GSpKfhiU0
唯「第一問!ムギちゃんは中学生のとき、どんな子でしたか!?」
紬「えぇ……ふ、普通の子?」
律「ムギの中学校時代の同級生とか、この学校にいる?」
紬「ど、どうだろ……。いないかも……」
唯「ピアノをはじめたきっかけは!?」
紬「な、なんとなく……。よく覚えてない、かも……」
律「ムギの進路は!?」
紬「某女子大……だけど」
唯「……って、どこ?」
紬「……」
唯「……」
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 21:54:15.03 ID:GSpKfhiU0
梓「……ムギ先輩は、どうして軽音部に入ったんですか?」
紬「それは……」
律「そ、それはほら!私と澪がさぁ!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
紬「あのぉ、見学したいんですけど……」
律「おおぉ、軽音部の!?」
紬「いえ、合唱部の……」
律「澪!あのときの言葉は!嘘だったのかよ!!」
澪「その回想が嘘だ」
律「あり、そおだっけ?」
紬「ふふっ……くすくす……」
紬「なんだか楽しそうですねー」
紬「私でよければ、入部させてください」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 21:57:02.33 ID:GSpKfhiU0
律「――って」
紬「そうだったわねー……、懐かしい……」
梓「合唱部の、見学に?」
紬「え、えぇ、最初は……」
梓「合唱部の部室でもないのに?」
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 21:59:32.94 ID:GSpKfhiU0
紬「……」
澪「ムギ……」
唯「え、えとー……、インタビューはこの辺でー……」
紬「ご、ごめんなさい!なんだか、今日は熱っぽいみたいで……。うまく頭が回ってないのね!」
澪「そ、そっか!それはよくないな!」
律「あ……そう、そうだな!ムギ、今日は無理しないほうがいいんじゃないかな!」
紬「そ、そうね……。ごめんなさい、私先に帰らせてもらうわ」
唯「き、気をつけてね、ムギちゃん!」
澪「片付けとかは、私たちでやっておくから」
紬「ありがとう。それじゃあみんな、また……」
31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:00:37.33 ID:GSpKfhiU0
梓「ムギ先輩!あの……」
紬「梓ちゃん?」
梓「ごめんなさい、でした……」
紬「いいのよ、気にしないで」クスッ
ガチャ バタン
唯「……」
澪「……」
梓「……す、すみません……」
唯「あずにゃんは悪くないよ!私こそ、インタビューとか変なこと言っちゃったせいで……」ショボン
律「あー!もぉ!!暗くなってんじゃねーよー!」
澪「それよりも、ムギのやつ……」
梓「明らかにおかしかったですよね……」
33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:02:11.75 ID:GSpKfhiU0
律「別にいいだろ。誰にだって、言いにくいことの一つや二つあるさ」
澪「でも、あの態度……。秘密にしたい、っていうより……」
唯「どう答えたらいいか、分からないって感じっていうか……」
律「だからって、私たちが無理やり聞きだすことでもないだろ?」
唯「でももし、ムギちゃんが何か困っていて、私たちに言えないでいたら……」
律「それはあくまで、唯の推測だろ。仮定の話で、無理強いするのはよくないと思う」
唯「無理強いじゃなくても、私たちに何か、協力できることがないかくらいは、相談に乗りたいよ」
律「そのせいで、ムギが触れて欲しくないところに触れちゃうかもしれないだろ!」
唯「律っちゃんのそれも、仮定の話でしょ?ムギちゃんの――」
34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:03:03.55 ID:GSpKfhiU0
澪「唯!もうよせ!……律も!」
唯「……ごめん」
律「いや、私こそ……」
梓「……、……やっぱり、おかしいですよね」
澪「確かに、おかしい態度だったけど……」
梓「いえ、態度だけじゃなくて。なんというか、ムギ先輩自身が……、っていうか」
律「そんなこと……」
梓「だって、金髪美人でお金持ちのお嬢様、ってだけでも、そもそもありえないじゃないですか」
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:05:45.05 ID:GSpKfhiU0
梓「その上キーボードもうまくて、作曲までできて」
唯「そうそう、それで優しくて、いつもニコニコしてて……」
律「頭も超いいし、力持ちだし、手先もすげぇ器用だし……」
澪「手先?」
律「ほら、合宿のとき。浜辺でものすごい砂の城作ってたじゃん」
澪「そういえば……。なんか、とことん完璧超人だな……」
41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:07:15.36 ID:GSpKfhiU0
梓「そんな人が、私たちのために毎日お茶とお菓子用意してくれて、私たちのために曲を書いてきてくれて」
梓「私たちのために別荘を用意してくれて、私たちのために――」
律「それは、ムギが私たちの仲間だから――」
梓「でも私たち、誰もムギ先輩のことを良く知らない。おうちのことも、中学校のことも、進路のことも。ムギ先輩自身のことだって」
唯「あずにゃん……」
梓「まるで、軽音部のためだけに、いるみたいじゃないですか!まるで――」
唯「あずにゃん!」
梓「!」ビクッ
唯「ムギちゃんは、ムギちゃんだよ……」
梓「私……、ごめんなさい……」
43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:08:59.31 ID:GSpKfhiU0
律「やっぱり、明日ムギに聞いてみよう」
澪「律……?いいのか?」
律「ああ。やっぱりムギは何か、抱え込んじゃってるのかもしれない……」
律「もしムギが話したくないなら、この話は終了!すっぱり忘れて、また今までどおり接すること!」
律「聞いてみて、全然問題なければやっぱり今までどおり。もしムギが、何か問題を抱えているようなら……」
律「私たちでサクッと解決して、ハッピーエンドだ!」
45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:11:37.47 ID:GSpKfhiU0
唯「律っちゃん……さすがぁ!」
律「へへへ、だろぉー?」
梓「……たまにイケメンですよね、律先輩」
律「にゃにおー!」
澪「でも、そうだな……、律の言うとおり、すっきりさせておいた方がいいだろうな」
唯「それじゃ、明日だね!」
律「おう!」
46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:12:16.08 ID:GSpKfhiU0
その日の夜
紬「……はぁ」
紬(やっぱり、おかしいと思われてるよね……)
紬(迂闊だったわ……、すっかり気を抜いて……)
紬「どうしよう……」
紬(でも、なんとかしなくちゃ……)
紬(もう、手遅れかもしれないけど……)
紬(……それが私の……)
紬(みんなの……)
47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:13:21.90 ID:GSpKfhiU0
翌日の放課後、音楽室。ドアを力なく開ける紬
紬「みんな……、こんにちはぁ~……」
律「おー、待ってたぜムギー!」
唯「さぁムギちゃん、こっちこっち!お誕生日席座って!」
紬「え、お、お誕生日!?」
澪「今日は、私がお茶淹れてみたんだ!の、飲んでみてくれないかな……」
紬「澪ちゃんが?ぜひいただくわ~」
律「お菓子は私が用意したんだ!手作りなんだぜー!」
紬「すごいわー!美味しそうなシュークリーム!」
律「へへー。そうだろー」
49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:14:22.46 ID:GSpKfhiU0
澪「はい、お茶淹れたよ」
唯「ムギちゃん~、肩揉んであげるね~♪」
梓「じゃ、じゃあ私は足をお揉みするです!」
紬「唯ちゃん……、梓ちゃんまで……」
紬「みんな、今日はどうしたの……?」
唯「え、えへへ……」
澪「ムギに、聞いてほしいことがあって……」
梓「気分を悪くしないで聞いてほしいですけど……」
紬(あ……)
紬(やっぱり……)
律「なぁ、ムギ……」
52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:18:32.16 ID:GSpKfhiU0
律「お前……何者なんだ?」
紬「!!」
律「あ、変な聞き方してごめん!たださ、もしムギが何か悩んでるんなら……、私たちで、力になれないかなって……」
紬「あ……わた、私……っ」ビクッ
唯「ムギちゃん……?」
紬「……ご……ごめんな、さい……。みんな……やっぱり……言えない……」
梓「ムギ先輩……」
澪「そ、そっか……!」
紬「ごめん……みんな。……でも、お願い……気にしないで、ほしいの……。今までどおりに……」
53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:19:19.22 ID:GSpKfhiU0
律「……」
律「よっし分かった!おっけーこの話しゅうりょうー!おっしまーい!!」
唯「そうだねそうだね!じゃ、じゃあ!お茶にしようよ!」
澪「わ、私またお茶いれてくるよ!」
梓「あ、澪先輩手伝います!」
紬「じゃあ私も……」
律「いいっていいって、ムギは今日はどーんと構えて!」
唯「そうそうー、シュークリーム美味しいよぉ?」
紬「え、ええ……」
54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:20:48.55 ID:GSpKfhiU0
その日の夜
紬(――終わった)
紬(全体的に、終わった……)
紬(もう、今までの軽音部に戻れない……)
紬(私のせいで……)
紬「私の……」グスッ
紬(どうしよう……)
『お前……何者なんだ?』
紬(当然よね……)
紬(私、きっともう軽音部にいられない……)
紬(でも……、いかなくちゃ……)
紬(軽音部に……)
55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:25:22.06 ID:GSpKfhiU0
翌日 音楽室
ガチャ
律「ちょりーっす!」
唯「りーっす!……あ、ムギちゃん!!」
紬「!」ビクッ
紬「律っちゃん、唯ちゃん……。あ、あの……」
唯「いやぁ、今日も疲れたねぇ~」
律「だなー。ヘイ、ムギ!いつもの!」ビシッ
紬「あっ……」
56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:26:08.12 ID:GSpKfhiU0
唯「おぉ!いつものだって!律っちゃん何それカッコいい!!」キラキラ
律「だろぉー?通の頼み方だぜー♪」
唯「私も私もー!……ムギちゃん、いつもの!」
紬「……お、お待たせいたしました。紅茶でございます」
律・唯「わぁーい!」
律「なあなあムギー、今日のケーキは何ー?」
紬「えっと……、抹茶ティラミス……」
律「うんま」
唯「そー!!!!」キラキラ
紬「あ、あの……!」
ガチャ
澪「おーっす」
梓「こんにちはー」
唯「あ、澪ちゃん!あずにゃん!」
60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:34:39.54 ID:GSpKfhiU0
律「丁度良かった、今日は抹茶ティラミスだってよー」
澪「へぇ、美味しそうだな」
梓「ちょっと律先輩!今日こそ練習……」
唯「まあまぁあずにゃん~♪」
律「お前だって食べたいだろ?ティ・ラ・ミ・ス♪」
梓「うっ……、そりゃ……食べたいですけど……」
紬「あの……!あの!!」
澪「ん?」
唯「ムギちゃん?」
61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:35:50.09 ID:GSpKfhiU0
紬「みんな……どうして!どうして……何にもなかったみたいに……」
律「おっとー、そこから先は言わせないぜ、ムギー?」
紬「律っちゃん……」
律「何があろうと、ムギはムギ。……だろ?」
紬「!!」
紬(あぁ……)
澪「そうだな」
梓「そのとおりです!」
紬(私は……、この人たちに、嘘をつこうとしていたのか……)
63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:37:59.63 ID:GSpKfhiU0
唯「り、律っちゃん!その名言は私のだよ……!」
律「へへーん、言ったモン勝ちだよーん。それよりムギ、お茶を……」
紬(みんなを裏切るみたいなことして……)
紬(知られたら終わりだ、なんて……)
律「……ムギ?」
梓「ムギ先輩?」
紬(私は――)
紬「……っ、く……うっ……」
紬(大馬鹿だ――)
紬「っ……うわあぁぁぁぁぁん!!わああぁぁぁぁぁんんん!!!」
65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:40:50.11 ID:GSpKfhiU0
律「む、ムギ!?」
紬「ふわああぁぁぁぁぁん!!!うっ、うあっ、ああぁぁぁぁぁぁ!!!」ボロボロ
澪「ムギ!?大丈夫か!?」
唯「お、お腹痛い!?私のケーキあげよっか!?」
紬「ひっうっうぅ……ごべんなざ……ごめんなざいぃぃぃ!!うぇぇぇぇぇんん!!!」
唯「ムギちゃん……!」
66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:41:41.54 ID:GSpKfhiU0
澪「……、落ち着いたか、ムギ……」
紬「……うん、ありがとう、澪ちゃん……」
澪「ははっ、声がらがらだよ」
紬「恥ずかしいわぁ……、目もすごく真っ赤だし……」アセアセ
梓(泣きはらしても可愛い)
律(泣きはらしても可愛いとかマジ)
紬「……私、みんなにお話しなきゃいけないわね……」
律「おいムギ、私たちのことだったら、全然気にしなくていいんだぞ」
梓「そうですよムギ先輩、無理しなくても」
紬「ありがとう、律っちゃん、梓ちゃん……」
紬「でも、そんな貴方たちだからこそ……、ちゃんと話さないと、いけないと思うの……」
唯「ムギちゃん……」
68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:44:04.29 ID:GSpKfhiU0
紬「うまく、説明できるか分からないけど……」
紬「律っちゃん……、私に『何者だ?』って、聞いたよね?」
紬「……――うぅん、いいの。正しい質問だから」
紬「もう、分かってるのかもしれないけど……私は、みんなとは違うの」
紬「……よく分からない、よね。私自身、よく分かってないもの……」
紬「手っ取り早く言えば、『桜高軽音部のためだけの存在』」
紬「軽音部と、軽音部のみんなのためだけに、生きてるっていうか……」
紬「みんなに一つも悲しいことがないように」
紬「みんなが一つでも多く幸せになれるように……」
69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:45:26.20 ID:GSpKfhiU0
紬「……天使?ふふ……どうかしら。きっと違う。だって……神様なんて、会ったことないもの」
紬「それに、軽音部に入る前……、それまでも、琴吹紬は確かに存在していたわ」
紬「琴吹の家に生まれて、幼稚園……小学校……中学校とすごして」
紬「楽しいことも、悲しいこともたくさんあった……はず」
紬「……よく、思い出せないの。まるで、他人の人生を見ているみたいに、実感がなくて、作り物みたいで……」
73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:46:59.38 ID:GSpKfhiU0
紬「だから、私の『人生』は、軽音部に入ったときからなの」
紬「あの日、律っちゃんが私の手をギュッってしてくれた、あのときからが……」
紬「私の、本当の人生なの……」
紬「それから、すぐに気づいたわ。それまでの私の存在は、軽音部のためにあったんだって……」
紬「キーボードや作曲ができることも、お茶やお菓子が用意できることも……」
紬「裕福な『琴吹』の家に生まれたことも、みんなのためなんだ、って」
紬「コーヒーより紅茶が好きなのだって、きっと、みんなのティータイムのためなんだって思う……」
紬「私、変かしら……?おかしい、のかな……?」
74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:48:34.36 ID:GSpKfhiU0
紬「でも、私にははっきり理解できるの。自分の名前よりも、はっきりと」
紬「……私は、あらかじめ用意された存在……」
紬「軽音部のために。素敵なみんなのために……」
紬「……みんなのこと、本当に大事に思うの」
紬「律っちゃん、澪ちゃん、唯ちゃん、梓ちゃん……」
紬「みんな、大好き」
紬「でも――これが本当に私の気持ちなのか……、もう……分からない……」
76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:50:35.22 ID:GSpKfhiU0
紬「……」
律「……チョップ!」ペシン
紬「きゃうん!」
律「長い」
紬「えぇっ!?」ガーン
唯「よくわかんなーい」
紬「ええぇっ!!?」ガガーン
唯「……でも、ムギちゃんが私たちのこと、すっごく考えてくれてたってことは、分かったよ!」
紬「ゆ、唯ちゃん……!」
77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:53:08.82 ID:GSpKfhiU0
梓「そうです!それに私も、ムギ先輩のこと、だっ、だ、大好きですから!!」
紬「梓ちゃん……」
律「桜高軽音部を舐めるなよー?そんなことくらいで、私たちの結束はビクともしないぜ!」
紬「律っちゃん……」
澪「そうだな。それに、ムギがどう思おうと、ムギはムギなんだ。他の誰でもないよ」
紬「澪ちゃんも……」
澪「ムギ……ありがとう」
78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:53:55.58 ID:GSpKfhiU0
唯「ありがとぉ~!」
梓「ありがとうございます」
律「ありがとなぁー!」
紬「みんな……」
紬「っ……ぐす……、うぇぇぇぇぇん!!うわあぁぁぁぁぁぁん!!!」
唯「あはは、また泣いちゃったー」
梓「今日のムギ先輩は泣き虫さんです」
紬「あっ、あり……っ、ありが……ぐずっ……ふえぇぇぇぇぇぇ!!!」
81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 23:05:01.69 ID:GSpKfhiU0
その日の夜
梓の部屋。梓がベッドで寝そべりながら、携帯電話で憂と会話している。
梓「――そりゃ、憂は女らしいって感じするじゃん。胸とか胸とか」
憂『む、胸は関係ないよぉ……。でも、女らしくなりたいんだったら、軽音部はいい先輩いっぱいいるでしょ?紬さんとか……』
梓「ムギ先輩は……、だってもう、天使だもん……」
憂『なにそれぇ』クスクス
梓「内緒♪とにかく、ムギ先輩マジ天使、なの!」
憂『そうなの~?でも、本当に天使だったら、ちょっぴり残念かな?』
梓「どうして?」
憂『だって、天使は天国に住んでるんでしょ?だから、いつかは――』
82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 23:05:41.76 ID:GSpKfhiU0
律の部屋。律が携帯電話で澪と会話している。
律「――で、今日のことって?やっぱりムギのことか?」
澪『うん、そうなんだけどさ……』
律「もう綺麗さっぱり片付いたつもりでいたんだけど……。何か、気になるのか?」
澪『……ムギ、言ってただろ?自分は軽音部のためだけにいる、って』
律「あぁ……」
澪『だから、私たちが卒業しちゃって、それで……今の軽音部が、なくなったら?』
律「……え。いや、まさかそんな……」
澪『まさかとは思うよ。でも、そのときムギは、もしかしたら――』
84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 23:06:34.19 ID:GSpKfhiU0
唯の部屋。
唯「……Zzzz……Zzz」
唯「ムニャ……」
唯「これまでのあらすじ!」
唯「ムギちゃんの背中から分度器が生えました」
唯「すごい!」
紬「うふふ♪」
唯「ムギちゃん、分度器貸して~」
紬「ごめんね、唯ちゃん」パタパタ
唯「わあ、飛んだ」
85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 23:08:15.19 ID:GSpKfhiU0
紬「私、もう行かなきゃ……」パタパタ
唯「む、ムギちゃん!これじゃ角度が見えないよ~」
紬「唯ちゃん、これだけは覚えておいて?」パタパタ
唯「?」
紬「タクアンの角度は、180度よ」
唯「ムギちゃあぁーん!!!」
紬「しゃらんらしゃらんら~♪」パタパタ
唯「……、……うーんうーん……」
102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 23:30:14.03 ID:GSpKfhiU0
紬の部屋――ではない。
紬「……って、どこかしら、ここ」
?「ムギちゃん!ムギちゃーん!!」
紬「だ、誰……?」
俺「俺だよ、俺!!」
紬「ホントに誰!!」
俺「俺俺!俺だってば!分かんないかなぁ……?」
紬「……オレオレ詐欺?」
俺「古くね……?まあ仕方ないか。そもそも初対面だしね」
紬(不審者だ)
106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 23:30:53.12 ID:GSpKfhiU0
茜「どうしようかな……。じゃあ、俺のことは茜ってよんでよ!私は三浦茜!」
紬「え、お……女の子?」
茜「そうですよぉ、ムギ先輩。三浦茜、桜ヶ丘高校二年、17歳!172cm、45kgです」
紬「何そのスタイル」
茜「ちなみに3サイズは100/50/80」
紬「そ、そんな女子高生いない!」
茜「あはは、傷つく。っていうか、それをアナタがいいますか、ムギ先輩」
紬「あ……」
茜「いやまあ、軽音部の皆さん的には、ノープロブレムだったみたいですけどね。いやいや、一時はどうなることかと」
109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 23:31:35.53 ID:GSpKfhiU0
紬「あ、あなたは……」
茜「ノンノン!今は私のことより、ムギ先輩のことですよぉ~?」
紬「なんの……こと?」
茜「正確には、軽音部じゃなくなってからの、ムギ先輩のことですね」
紬「!!」
茜「今日のところは丸く収まった感じですけど……、みなさん多分、そろそろ気づいちゃってるんじゃないかなぁ~」
茜「卒業しちゃったら、」
茜「軽音部がなくなったら、」
茜「ムギ先輩も、いなくなるって」
紬「……」
112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 23:32:46.30 ID:GSpKfhiU0
茜「ムギ先輩も、なんとなく分かってはいましたよね?」
紬「……私、死ぬのかしら?」
茜「あー。ちょっと違いますね。何て言えばいいんでしょう……」
茜「人間だけは残って、人生は消えちゃう……みたいな?」
茜「哲学的ゾンビってご存知ですか?要はクオリアの問題なんですけど。内観の欠如というか」
紬「……よく分からないわ」
茜「ですよね。すみません。簡単に言えば……ムギ先輩の、気持ちだけが死にます」
紬「!!……それって!」
116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 23:34:12.13 ID:GSpKfhiU0
茜「卒業しても、社会に出ても、ムギ先輩は今までどおりですよ」
茜「みんなと仲良く過ごして、笑ったり、泣いたり」
茜「いつもニコニコみんなのムギちゃん、ってなもんですよ。いやもう、むぎゅううううう!ですよ」
茜「でも、そこにいるムギ先輩自身は、何も感じてない」
紬「そんな……」
茜「他人事みたいに実感のない、けれど実感がないという実感すら持てない」
茜「そんな毎日が死ぬまで続くだけです」
紬「……」
117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 23:35:33.31 ID:GSpKfhiU0
茜「それでも、軽音部のみなさんは、もう一生幸せですよ?ハッピーエンドの中にいるみたいに」
茜「唯先輩は幸せな家庭を築きますし、梓ちゃんは音楽修行のために、渡米するんですよー!」
茜「律先輩と澪先輩は、なんとプロデビューです!すごいですよねぇー!」
茜「それもこれも、ムギ先輩のおかげなんです」
茜「ただ……」
紬「ただ?」
茜「さっきも言いましたけど、気づいちゃったんですよねぇ、みなさん……」
茜「ムギ先輩がいなくなっちゃうことに……」
茜「それじゃあ、ムギ先輩がいくら頑張っても、みなさんがどんなに頑張っても、幸せにはなれないですよねぇ」
119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 23:41:11.61 ID:GSpKfhiU0
紬「どうにか……ならないのかしら」
紬「私は別に、どうなってもいい……。だから、軽音部のみんなが、どうか幸せに……」
茜「んふー、そう来ると思って、本日はご提案を用意させていただきましたー!」
茜「あ、やっと本題にたどり着いた。ふぃー、長かったですねぇー……」
紬「その……提案、って?」
茜「軽音部のみなさんの、ムギ先輩についての余計な記憶を消します」
紬「!!」
茜「まぁ、基本的には、数日前の関係に元通り、って感じですね」
茜「お望みとあらば、ムギ先輩自身の記憶も、一緒に消しちゃいますけど」
120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 23:42:11.60 ID:GSpKfhiU0
紬「茜ちゃん……、あなた一体……」
茜「だから、私のことはいいんですって~。言っておきますけど、神様とかじゃないですよ?」
茜「神様だったら、問答無用のハッピーエンド用意できますけど、そんなの私できないですし」
茜「私はただのナイスバデーな女子高生ですから」
茜「……さて、どうしますか?ムギ先輩」
紬「……それでみんなが、幸せになれるなら……」
茜「ですよねー。提案なんて言っておいてナンですけど、他に選択肢なんてないですよねー」
茜「なにせ、『みんなのムギちゃん』ですもんね」ニコッ
123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 23:44:51.11 ID:GSpKfhiU0
紬「でも……ごめんなさい。ひとつだけ、お願いがあるの」
茜「……何でしょう」
紬「1日だけ、時間をください。みんなに……私を受け入れてくれたみんなに、お礼が言いたいの」
紬「それから、いつかのために、先にさよならも――」
茜「どうせすぐ忘れちゃいますよ?」
紬「分かってる。ただの自己満足よ。……それでも……」
茜「んふ、いいですよぉ?ムギ先輩にそんな顔で頼まれたら、茜ちゃん断れないですよぉ」
124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 23:45:37.27 ID:GSpKfhiU0
紬「ありがとう」
茜「それじゃ、私はこの辺で消えますけど……、何か言い残したこととか、あります?」
紬「じゃあ、一つだけ」
茜「なんでそお」
紬「茜ちゃん……私、あなた大嫌い」ニッコリ
茜「ありゃりゃ……泣いちゃいますよ?」
紬「うふふ、ごめんね?」
茜「ま、しょうがないです。それじゃあ、また――いつ――――か――――――――
126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 23:48:00.04 ID:GSpKfhiU0
翌日
放課後、音楽室。ドアの前に紬がためらった様子で立ち尽くしている。
紬(さて……、何から言おうかしら……)
紬(ありがとうと、頑張ってねと、幸せにねと……)
紬(あと、ごめんなさいも……よね)
紬(でも、なんて言えば……)
紬「……もう!入ってから考えよう!」
ガチャ
紬「みんなお待た――」
律「確保ぉー!!」
127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 23:48:37.34 ID:GSpKfhiU0
紬「えぇぇ~~!!?」
唯「シンミョウにオナワにつけぇぇ!」
紬「唯ちゃんまで~!?」
ドタバタ
ドタバタ
律「よっしゃ~!ムギ確保!梓、時間取れ!」カシャ
梓「午後5時17分、容疑者ムギ先輩、逮捕!です!!」
紬「容疑者!?逮捕!?」
129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 23:50:59.96 ID:GSpKfhiU0
澪「……いつまでやってるんだ。梓まで巻き込んで……」
紬「澪ちゃん、これは一体……」
澪「ごめんな、ムギ。とりあえず座ってくれ」
律「これから秋山鬼警部の取調べだぁー!」
澪「誰が鬼警部だ!」ゴンッ
律「きゅふん……」
133 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 23:59:41.99 ID:GSpKfhiU0 [67/67]
唯「ムギちゃんから事情ちょーしゅするための、本格けーさつごっこだよ!!」
紬「ごっこっていうか……、手錠されちゃってるんだけど……」カチャカチャ
唯「本格だからね!」フンス
紬「こんなのどこから……」
律「さわちゃんが持ってた」
梓「深く触れない方がいいんです、きっと。それより……」
唯「ムギちゃん!勝手にどっか行っちゃうなんて、絶対ダメなんだからね!」
135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/27(火) 00:00:42.46 ID:xIuRuXuc0 [1/26]
紬「え……」
梓「そうですよ!黙っていなくなったりしたら、承知しないです!」
紬(……やっぱり、みんな気付いてるんだ。茜ちゃんの言ってたとおり……)
律「これだけは、きっちり確認しとかなきゃと思ってさ」
澪「ムギ……、軽音部を抜けちゃったら、ムギはどうなるんだ?」
紬「それは……」
137 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/27(火) 00:01:54.93 ID:xIuRuXuc0 [2/26]
紬(言えない……、本当のことは)
紬(明日には、みんな忘れちゃってるとしても……)
紬(本当のことを言えば、みんなきっと悲しむ……)
紬(みんなが悲しむのは、絶対嫌……)
紬「や、やだ~、どうにもならないわよぉ……」
梓「本当ですか!?」
紬「本当よ~。卒業してからも、私たちずっと一緒だもの。ずっと仲良しで、今までみたいに楽しくて……」
紬「だから、私はどこにもいかないし、みんなと一緒に、ずっと、たくさん幸せなの……」
139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/27(火) 00:03:15.57 ID:xIuRuXuc0 [3/26]
唯「ムギちゃん……」
紬(そこに私の心はいないけど……)
紬「だから、何も心配はいらな――」
律「ムギ……、前から思ってたんだけど……」
紬「え?」
律「ムギってさ、すぐ顔に出るよな……」
紬「え?あ……!えぇ……っ!?」アワアワ
141 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/27(火) 00:04:23.87 ID:xIuRuXuc0 [4/26]
梓「そんな捨てられた子犬みたいな顔して、『ずっと、たくさん幸せ』なんて言われても、誰も信じませんよ」
紬「う、嘘はついてないもの!みんな将来、今みたいに……ううん、今よりも毎日楽しくて、充実して……」
唯「それで、ムギちゃんは、幸せになるの?」
紬「う……」
唯「さっきからムギちゃん『みんな』って、自分のこと入ってないみたいに話してる……」
唯「そこにいるムギちゃんは、幸せじゃないのかな……?」
唯「一緒に、幸せになれないのかな……?」
144 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/27(火) 00:06:15.22 ID:xIuRuXuc0 [5/26]
唯「やだよ……、駄目だよ、そんなの……」
梓「唯先輩……」
律「唯……」
唯「私、どんなに楽しくても、どんなに幸せでも……」
唯「ムギちゃんが幸せじゃなきゃ、絶対やだもん……」
唯「ぜったい……うぅ、うっうぅぅぅ……」グスッ
澪「お、おい……泣くなよ唯」
唯「だってえぇぇぇぇ!ふぇぇぇぇぇんんん!!!」
澪「ああもう!鼻水飛ばすな!」
145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/27(火) 00:06:51.47 ID:xIuRuXuc0 [6/26]
梓「ムギ先輩……私たちみんな、唯先輩と同じ気持ちなんですよ?」
紬「どうして……」
律「あったりまえだろー?仲間だもん!」
唯「そぉだよおぉぉぉぉ!!ふぐっ……うっ、むえぇぇぇぇぇ!!」
紬「あ……」
紬(そっか……)
紬(何勘違いしてたんだろう、私……)
146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/27(火) 00:07:43.02 ID:xIuRuXuc0 [7/26]
紬(みんなと一緒にいる理由なんて、本当は全然関係ないのに)
紬(みんなのことが大好き。みんなと一緒にいたい)
紬(こんな、簡単なことなのに……)
紬(本当の自分の気持ちが分からない?)
紬(今、この瞬間……私がみんなのこと大好きって気持ちに真実がないなら……)
紬(何が真実だっていうの……!)
紬「澪ちゃん……」
澪「ん、どうした?」
147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/27(火) 00:08:39.07 ID:xIuRuXuc0 [8/26]
紬「あの、手錠とか……外してもらいたいんだけど……」
唯「まだ駄目!今外したらムギちゃん、どこか行っちゃうもん!絶対駄目!」
紬「大丈夫よ、唯ちゃん。私、どこにも行かないわ」
唯「ほ、本当に……?」
澪「じゃあ、ちょっと待ってな……」
148 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/27(火) 00:09:26.53 ID:xIuRuXuc0 [9/26]
カシャリ
澪「――外れたよ、ムギ」
紬「うん、ありがとう」
唯「……」
紬「……」ニッコリ
唯「……?」ニコッ
紬「……」
紬「……ムギダァーッシュ!!」ダッ
唯「あぁぁぁ!!」
梓「逃げた!ムギ先輩逃げた!」
澪「お、追うぞ!」
律「はえー!ムギダッシュ超はえぇー!!」
150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/27(火) 00:11:36.85 ID:xIuRuXuc0 [10/26]
二年教室
ダダダッ
紬「失礼しまーっす!」
憂「うわ!びっくりしたぁ……あれ、紬さん……?」
紬「はぁ……はぁ……、憂ちゃん……?あの、三浦茜ちゃんって子、知らないかしら……?」
憂「三浦……さん?さぁ……えっと……」
俺「茜ちゃんならさっき、トイレで見かけましたよ」
紬「あ、ありがとう!!」ダダッ
俺「うわ、紬先輩はやいなぁー……」
憂「……えっ」
俺「えっ」
157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/27(火) 00:25:44.59 ID:xIuRuXuc0 [11/26]
二年トイレ。鏡の前で茜が髪を整えている。
茜「~♪~~♪」
ドタン!! ガチャン!!!
紬「茜ちゃん!」
茜「んにゃ!?び、びっくりしたぁ~。ムギ先輩じゃないですかぁ」
紬「茜ちゃん、大事なお話があるの!」
茜「な、何ですか?もしかして……」
紬「昨夜言っていた、みんなの記憶を消すって提案……、あれ、やっぱりなしにして!」
茜「ぐぁー、やっぱりぃー……」ガクリ
158 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/27(火) 00:26:20.52 ID:xIuRuXuc0 [12/26]
茜「そんなこと言われてもムギ先輩、もうこっちは準備万端なんですよ?リハだって三回もやったし」
紬「なしなの!絶対なしなの!決定なの!!」
茜「横暴だぁ……、ムギ先輩なんかキャラ変わってるし……」
茜「それに、軽音部のみなさんのことは、どうするんですか」
茜「今のままじゃ、絶対納得してくれないでしょ」
紬「だから、茜ちゃん……。私から提案があるの」
茜「はい?」
紬「私を、普通の女の子にしてほしいの」
茜「……えぇーっと?」
160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/27(火) 00:34:08.47 ID:xIuRuXuc0 [13/26]
紬「『軽音部のためのムギちゃん』じゃなくて、みんなと同じように、……ただの琴吹紬に」
紬「そうすれば、軽音部を抜けちゃったあとでも、私は私のままなんでしょ?」
茜「理論的にはそうですけど……、言ってること、理解してます?」
茜「『軽音部のためのムギちゃん』がいるから、みんなキラキラハッピーなんですよ?」
茜「それを捨てちゃったら……ムギ先輩だけじゃなくて、みんなが幸せになれないんですよ?」
紬「『なれないかもしれない』でしょ?やってみなくちゃ、分からないわ」
162 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/27(火) 00:36:47.40 ID:xIuRuXuc0 [14/26]
紬「それに……、私だって、みんなと一緒にいたい」
紬「心から、みんなと笑いあっていたいから」
茜「……だから、誰かが不幸になっても後悔しない、と?」
茜「ずいぶん自分勝手なんですね……」
紬「そうね……、そう思うわ」
紬「でもね、茜ちゃん。私は自分の力で、幸せになりたい」
紬「そして、みんなのことも絶対に幸せにしてみせるわ」
紬「用意された幸せに頼らなくても……」
紬「そんなものよりずっと、最高の幸せを手にしてみせる」
紬「だから……!」
165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/27(火) 00:51:15.74 ID:xIuRuXuc0 [15/26]
茜「……」
茜「……はぁ。分かりました……」
紬「それじゃあ!」
茜「まぁ、いいですよ。私ムギ先輩のこと大好きですし。ゆーことなんでも聞いちゃいますもん」
そう言って茜は、懐から何かを取り出す。
茜「この楽器を使います」
紬「ユーフォニウム?」
茜「いや、ブブゼラ」
紬「ああ」
166 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/27(火) 00:53:17.14 ID:xIuRuXuc0 [16/26]
バイバイさるさんされまくって中々投稿できないです。ごめんなさい。
168 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/27(火) 00:54:22.31 ID:xIuRuXuc0 [17/26]
茜「――確認なんですけど。……普通のムギ先輩には、みなさんを幸せにする資格は、一切ありません」
紬「分かってるわ」
茜「都合よく楽しいことがあったり、問題なんてあっという間に解決したり」
茜「ライブが無条件で成功したりも、しません。二度と」
紬「……覚悟してる」
茜「そのときになって、茜ちゃん好き好き~♪なんて言っても、助けてあげられませんよ?」
紬「嫌いだから大丈夫よ」ニコッ
茜「あ、大嫌いからランクアップ。やったね茜ちゃん」
170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/27(火) 00:55:56.88 ID:xIuRuXuc0 [18/26]
茜「――それじゃあ、ちょっとブブゼラを覗き込んでもらっていいですか?」
紬「えっと……、こうしかしら?」ヒョイッ
ヴェェェェェェエエェェェェエエェエェェェエェェェエェェエェェ
紬「ふわああぁ!!!」
ヴェェェェェエェェェェェエエェエェェェェェェエエェエェェェ
紬「」
ヴェェェエエェェェエェェェェェ
ヴェェェェェェエエ
ゴエェェ――
175 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/27(火) 00:58:48.01 ID:xIuRuXuc0 [19/26]
音楽室
律「駄目だ、やっぱり見つからなかった……」
澪「どこ行っちゃったんだ、ムギのやつ……」
唯「うぅぅ……もしかして……、もう二度と戻ってこないんじゃあ……!」
梓「そ、そんなわけありません!絶対戻ってきます!ムギ先輩は――」
ガチャ
紬「みんな、お待たせぇー♪」
唯「!!ムギちゃ――おわ!」
澪「か、髪が……」
176 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/27(火) 00:59:39.78 ID:xIuRuXuc0 [20/26]
梓「ムギ先輩の髪が、真っ黒に……」
紬「うふふ♪」
紬「……私ねぇ、もう『軽音部のためのムギちゃん』じゃないんだぁ」
紬「だから、卒業しちゃっても……軽音部がなくなっちゃっても、ずっと、みんなと一緒――」
唯「ほんとに!?ほんとのほんと!?」
紬「本当よ?……でも、よかったのかなぁ、って……」
182 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/27(火) 01:01:16.77 ID:xIuRuXuc0 [21/26]
紬「私……みんなのために、何もしてあげられない……」
律「そんなことないって!」
紬「お茶もお菓子も、もう用意してあげられないの……」
梓「わ、私がやります!お茶の淹れ方だって練習するです!」
紬「合宿のために、別荘を用意したりもできないし……」
律「いいじゃん別に!安い民宿とかでも絶対楽しいって~♪」
紬「唯ちゃんが褒めてくれた髪だって……」
澪「私とお揃いで、嬉しいよ!それに、すごく似合ってると思うぞ、ムギ」
紬「今までみたいに、楽しく音楽できないかもしれない……、喧嘩だっていっぱいするだろうし、悲しいことだって――」
185 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/27(火) 01:02:21.23 ID:xIuRuXuc0 [22/26]
唯「ムギちゃん!!」
紬「唯ちゃ……」
唯「何があっても、ずっと、ずぅっと一緒だよっ!!」ダキッ
紬「…………うんっ!」
律「お、やぁっと笑ったなー?」
澪「やっぱりムギは、笑顔じゃないとな」
梓「暗い顔なんて、似合わないです!」
191 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/27(火) 01:06:47.91 ID:xIuRuXuc0 [23/26]
紬「みんなの……おかげよ」
紬「……私、みんなのこと大好き」
紬「これから、どうなるのか……先のことなんて、分からないけど……」
紬「みんなと一緒なら、きっとどんなことでも、乗り越えられるから……」
澪「私もそう思うよ」
律「ははっ、とーぜんだよなっ!」
梓「私だって、が、頑張りますから!」
唯「えへへ……みんなムギちゃんが大好きで」
唯「ムギちゃんもみんなが大好きで……」
唯「やっぱり、ムギちゃんは天使だね!」
193 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/27(火) 01:07:37.36 ID:xIuRuXuc0 [24/26]
唯律澪梓「ムギちゃんマジ天使!」
【終わり】
202 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/27(火) 01:11:24.33 ID:xIuRuXuc0 [25/26]
お読みいただいた皆さん、ありがとうございました。
猿除けしてくださった方々、本当に助かりました。ありがとうございます。
柿ピーのピーは育つって本当ですか?ごめんなさい。
ムギちゃんマジ天使。
196 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/27(火) 01:08:30.47 ID:ZIoXHU9nP [2/2]
で、眉毛も黒くなったのか?
205 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/07/27(火) 01:13:57.94 ID:xIuRuXuc0 [26/26]
>>196
眉毛も黒くなったことと思います。
律「どしたー、梓?さっきからぼんやりしちゃって?」
梓「ふぇえ!?」
律「ははーん……、さてはムギの天使っぷりに見惚れてたなぁ?」ニヤリ
梓「ち、ちが……」
律「ムギ先輩ステキっ!でも私には、澪先輩という心に決めた人が……!!」
紬「あらあらまあまあ!」
唯「そうなのあずにゃん!?」
梓「何でですかっ!!」
律「ああっ、私には選べない……。神様、梓は悪い子で――
澪「いい加減にしろ!」ペシン
律「いちゃいぃ……」キュウ
澪「まったくもう」
紬「くすくす……。あ、お茶のお代わり淹れるわね?」
唯・律「わぁーい!」
3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 21:26:40.16 ID:GSpKfhiU0
帰り道
律「――で、カーテンの隙間から血走った眼が……ギロリと!!」
澪「ひいぃぃぃ!」ガクガク
唯「怖い、怖いよ律っちゃん!!」ブルブル
梓「文化祭のライブの話してたはずなのに……」ガタガタ
律「あははっ、みんな怖がりすぎだろー。なあムギ?」
紬「うふふ……♪あ、ごめんなさい、私今日、こっちに用事あるから」
律「ん、そっか。買い物?」
紬「うん、そんなとこ。それじゃあみんな、また明日ね」
梓「はい、また明日」
唯「じゃーねームギちゃーん!」
澪「また明日な!」
律「転ばないように気をつけろよぉ?」
紬「大丈夫~♪」スタタ
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 21:28:21.12 ID:GSpKfhiU0
唯「いやぁ……後ろ姿まで天使だねぇ……」
澪「うん……、本当に天使さんだな……」
梓「天使"さん"?」
澪「あぁいや!!これはっっ!!」
律「くぷぷ、澪ちゃん可ぁ愛いぃ~」
澪「うるっさい」ゴチン
律「あひゃうぅ……」
梓「あの……、ムギ先輩って、もしかしてハーフなんですか?」
唯「え~?どうだろぉ?どうしてあずにゃん」
梓「いや、すごく綺麗な金髪ですし……、瞳もうっすら青みがかってません?」
律「んー、確かに」
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 21:29:27.32 ID:GSpKfhiU0
唯「でも、ムギちゃんからそんな話聞いたことないよぉ?」
梓「そうなんですか?」
澪「そういえば、ムギは自分のこととか、あんまり話さないよな……」
律「そうだっけ?じゃさ、今度ムギに聞いてみようぜー」
唯「賛成ー!私もムギちゃんの中学時代のこととか、聞いてみたい!」
澪「本人が嫌がらなかったら、な」
梓(それにしても――)
梓「不思議な人だな……」
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 21:31:06.44 ID:GSpKfhiU0
唯「でも、ムギちゃんからそんな話聞いたことないよぉ?」
梓「そうなんですか?」
澪「そういえば、ムギは自分のこととか、あんまり話さないよな……」
律「そうだっけ?そんじゃさ、今度聞いてみようぜー」
唯「賛成ー!私もムギちゃんの中学時代のこととか、聞いてみたい!」
澪「本人が嫌がらなかったら、な」
梓(それにしても――)
梓「不思議な人だな……」
9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 21:31:37.00 ID:GSpKfhiU0
紬「…………」
紬(天使……かぁ)
紬「…………」
紬「きゃん!」ステーン!!
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 21:32:40.08 ID:GSpKfhiU0
翌日 音楽室
紬「みんなお待たせ~」
澪「や、ムギ」
梓「こんにちはです」
紬「こんにちは♪……律っちゃんと唯ちゃんは?」
澪「律は部長会議に参加してるから、遅れるって。唯は……なんか、憂ちゃんに話があるとか……」
梓「……『柿ピーを埋めて柿の木を育てよう』って、憂に熱弁してましたけど……」
澪「なにをやってるんだあいつは……」
紬「柿ピーから柿が育つのっ!?」
澪「ち、違うぞムギ!」
梓「育ちませんからね!!」
紬「そうなんだぁ……」シュン
梓(可愛いなこの人)
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 21:33:18.74 ID:GSpKfhiU0
梓「そういえばムギ先輩」
紬「どうしたの?」
梓「ムギ先輩の髪って、地毛なんですか?」
紬「え、えぇ?えっと……どうしたの急に?」
梓「いえ、結構明るい色なんで、染めてるのかなー、って気になって」
紬「あ、うん……いえ、じ、地毛なの、地毛。染めてないわよ?」
澪「ああ、じゃあやっぱり、ハーフとかクォーターとか」
紬「えっ……!?」ビクッ
12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 21:35:24.45 ID:GSpKfhiU0
澪「いや、地毛が金だから、外国の血筋がはいってるのかなぁ、って……ムギ?」
紬「ああ、な、なるほどねぇ!えっと……ど、どうだったかしらぁ?」アタフタ
澪「あー……、言いたくなかったら……ゴメンな、ムギ」
紬「ち、違うのよ澪ちゃん、なんていうか――」
ガチャ
律「おぃーっす!おまたー!!」
唯「あっっずにゃあーん!!!!」ダキッ
梓「ちょ、ちょっと唯先輩いぃ~~……」
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 21:36:03.96 ID:GSpKfhiU0
唯「聞いて聞いて!柿の種からは柿の木は育たないんだって~。がっかりだよねぇ~」
梓「そりゃそうですよ……」
唯「だからね、代わりに柿ピーのピーを埋めるの!」
梓「」
唯「来年にはピーナッツ食べ放題だよ!!」フンス
律「いや、唯……」
紬「すごいわね唯ちゃん!」
梓「違いますよ!?」
律「ピーナッツも育たないからな!!?」
唯「えぇー……」ショボン
紬「そうなんだぁ……」ショボン
律(可愛いなこいつら)
紬「今お茶淹れるわね~♪」
律・唯「わぁーい!!」
澪「…………」
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 21:37:45.60 ID:GSpKfhiU0
さらに翌日 放課後の職員室。唯と律がさわ子に叱られている。
さわ子「――もう、あなたたちも3年生なんだから、授業中に手紙回しなんてしないの!いいわね!?」
律・唯「ごめんなしゃい」
唯「律っちゃんがあんな面白いこと書くから……」
律「だからって、あんな爆笑したらバレるに決まってる――」
さわ子「あ・な・た・た・ち・~!?」
律・唯「ごみぇんなちゃい」
さわ子「まったくもう……」
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 21:41:31.07 ID:GSpKfhiU0
律(そういえば……)
律「ねぇねぇさわちゃん」
さわ子「せめて職員室では先生って呼んでよね……」
律「ムギってさぁ、ハーフだったりすんの?」
さわ子「えぇ?どうしてまた」
律「ん~、見た目でなんとなく……。あ、これってプライバシーシンガイ?」
さわ子「うーん……、でも私も聞いたことないから、分からないわぁ」
唯「じゃあじゃあ!さわちゃんがムギちゃんのおうち行ったとき、ムギちゃんのおうちの人とか見なかった!?」
さわ子「えぇ?いつの話よ、それ」
唯「ほら、とんちゃんの水槽をムギちゃんの家に取りに行ったとき……」
17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 21:42:26.85 ID:GSpKfhiU0
さわ子「あぁ、そんなこともあったわねー。でも、おうちの人は見なかったような……」
律「んじゃさ!家の中ってどんな感じだった!?」
さわ子「どうって……、すごかったけど……」
律「具体的にさぁー。ほら、庭が東京ドーム10個分だったー!とか、いかにも高そうな絵が沢山ー!とか」
さわ子「うぅん……、よく覚えてないし……。あら?」
さわ子「やだわ……ホントに思い出せない……、すごいって印象は強かったんだけど……」
律「……」
唯「さわちゃんそれって老化現しょ」
さわ子「あぁん!?」ギロリ
唯「な、なんでもありまひぇん……」
18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 21:44:00.86 ID:GSpKfhiU0
さわ子「っていうか!そんなに気になるなら本人に聞いたらいいじゃないの!」
唯「あぁ、それもそだね」
さわ子「分かったら、ほら。部活行ってらっしゃい」
唯「はーい!じゃあねさわちゃんー」
さわ子「やれやれ……。どうしたの、田井中さん?」
律「……へ?ああいや、別に何でも……」
唯「律っちゃーん!早く行こうよー!!」
律「待てよぉー!じゃ、じゃあねさわちゃん!」
さわ子「……?」
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 21:44:43.65 ID:GSpKfhiU0
音楽室
唯「んふぅぅぅ、おいひいよぉ~♪」モグモグ
紬「よかったわぁ」ニコニコ
律「そういえばムギー」
紬「なぁに?律っちゃん?」
律「ムギの家ってさ、どんな感じなの?」
紬「え……えっと」
唯「あぁ、そうそう!さっきさわちゃんに聞いたんだけどね、全然覚えてないって言うんだよ~。おかしいよね~さわちゃん~」
梓「でも、ムギ先輩のお宅っていったら、絶対豪邸ですよね……」
唯「東京23区の10倍!」
澪「いや、でかすぎだろ……」
唯「庭にキリンが放し飼い!」
律「サファリか」
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 21:46:41.57 ID:GSpKfhiU0
紬「え……えっと、そんな別に……普通の家よ?」
律「いや、ムギの普通はあてにならないぞぉ?庭にプールがついてるとか」
梓「お姫様ベッドとか」
唯「オオアリクイが放し飼い!」
律「だから何故サファリ」
澪「ムギ……あんまり家のこととか、話したくない?」
紬「そうじゃないんだけど……、ごめんなさい、うまく説明できないわ」
澪「そっか……。ごめんな、昨日といい」
紬「違うの澪ちゃん……、私の方こそ……。――あ、お茶のお代わり淹れてくるわね?」
ぎこちない動きで、紬が席を立つ。
律「……澪、昨日って?」ヒソヒソ
澪「あぁ、律が来る前に、ちょっと……。ほら、帰り道で話してた、ハーフとか、ってやつ」ヒソヒソ
律「聞いてみたんだ。それで?」
澪「今みたいに濁された……」
律「……」
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 21:50:03.68 ID:GSpKfhiU0
唯「ねえねぇ、何の話してるのー?」
律「ムギは謎多き美少女、って話だよ」
唯「おぉ!確かに!!」
梓「先輩たちも、ムギ先輩のこと良く知らないんですか?」
律「恥ずかしながら……」
紬「みんな~、お茶のお代わりいる~?」カチャカチャ
唯「ムギちゃん!」
紬「ひゃ!は……はいっ!」
唯「今からムギちゃんの独占インタビューをはじめます!」
紬「はい……え、え?」
律「スクープ!謎の美少女の真実に迫るぅ!!」
澪「おいおい……。ムギ、嫌だったら言ったほうがいいぞ?」
紬「えっとぉ……」
22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 21:51:25.24 ID:GSpKfhiU0
唯「第一問!ムギちゃんは中学生のとき、どんな子でしたか!?」
紬「えぇ……ふ、普通の子?」
律「ムギの中学校時代の同級生とか、この学校にいる?」
紬「ど、どうだろ……。いないかも……」
唯「ピアノをはじめたきっかけは!?」
紬「な、なんとなく……。よく覚えてない、かも……」
律「ムギの進路は!?」
紬「某女子大……だけど」
唯「……って、どこ?」
紬「……」
唯「……」
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 21:54:15.03 ID:GSpKfhiU0
梓「……ムギ先輩は、どうして軽音部に入ったんですか?」
紬「それは……」
律「そ、それはほら!私と澪がさぁ!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
紬「あのぉ、見学したいんですけど……」
律「おおぉ、軽音部の!?」
紬「いえ、合唱部の……」
律「澪!あのときの言葉は!嘘だったのかよ!!」
澪「その回想が嘘だ」
律「あり、そおだっけ?」
紬「ふふっ……くすくす……」
紬「なんだか楽しそうですねー」
紬「私でよければ、入部させてください」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 21:57:02.33 ID:GSpKfhiU0
律「――って」
紬「そうだったわねー……、懐かしい……」
梓「合唱部の、見学に?」
紬「え、えぇ、最初は……」
梓「合唱部の部室でもないのに?」
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 21:59:32.94 ID:GSpKfhiU0
紬「……」
澪「ムギ……」
唯「え、えとー……、インタビューはこの辺でー……」
紬「ご、ごめんなさい!なんだか、今日は熱っぽいみたいで……。うまく頭が回ってないのね!」
澪「そ、そっか!それはよくないな!」
律「あ……そう、そうだな!ムギ、今日は無理しないほうがいいんじゃないかな!」
紬「そ、そうね……。ごめんなさい、私先に帰らせてもらうわ」
唯「き、気をつけてね、ムギちゃん!」
澪「片付けとかは、私たちでやっておくから」
紬「ありがとう。それじゃあみんな、また……」
31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:00:37.33 ID:GSpKfhiU0
梓「ムギ先輩!あの……」
紬「梓ちゃん?」
梓「ごめんなさい、でした……」
紬「いいのよ、気にしないで」クスッ
ガチャ バタン
唯「……」
澪「……」
梓「……す、すみません……」
唯「あずにゃんは悪くないよ!私こそ、インタビューとか変なこと言っちゃったせいで……」ショボン
律「あー!もぉ!!暗くなってんじゃねーよー!」
澪「それよりも、ムギのやつ……」
梓「明らかにおかしかったですよね……」
33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:02:11.75 ID:GSpKfhiU0
律「別にいいだろ。誰にだって、言いにくいことの一つや二つあるさ」
澪「でも、あの態度……。秘密にしたい、っていうより……」
唯「どう答えたらいいか、分からないって感じっていうか……」
律「だからって、私たちが無理やり聞きだすことでもないだろ?」
唯「でももし、ムギちゃんが何か困っていて、私たちに言えないでいたら……」
律「それはあくまで、唯の推測だろ。仮定の話で、無理強いするのはよくないと思う」
唯「無理強いじゃなくても、私たちに何か、協力できることがないかくらいは、相談に乗りたいよ」
律「そのせいで、ムギが触れて欲しくないところに触れちゃうかもしれないだろ!」
唯「律っちゃんのそれも、仮定の話でしょ?ムギちゃんの――」
34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:03:03.55 ID:GSpKfhiU0
澪「唯!もうよせ!……律も!」
唯「……ごめん」
律「いや、私こそ……」
梓「……、……やっぱり、おかしいですよね」
澪「確かに、おかしい態度だったけど……」
梓「いえ、態度だけじゃなくて。なんというか、ムギ先輩自身が……、っていうか」
律「そんなこと……」
梓「だって、金髪美人でお金持ちのお嬢様、ってだけでも、そもそもありえないじゃないですか」
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:05:45.05 ID:GSpKfhiU0
梓「その上キーボードもうまくて、作曲までできて」
唯「そうそう、それで優しくて、いつもニコニコしてて……」
律「頭も超いいし、力持ちだし、手先もすげぇ器用だし……」
澪「手先?」
律「ほら、合宿のとき。浜辺でものすごい砂の城作ってたじゃん」
澪「そういえば……。なんか、とことん完璧超人だな……」
41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:07:15.36 ID:GSpKfhiU0
梓「そんな人が、私たちのために毎日お茶とお菓子用意してくれて、私たちのために曲を書いてきてくれて」
梓「私たちのために別荘を用意してくれて、私たちのために――」
律「それは、ムギが私たちの仲間だから――」
梓「でも私たち、誰もムギ先輩のことを良く知らない。おうちのことも、中学校のことも、進路のことも。ムギ先輩自身のことだって」
唯「あずにゃん……」
梓「まるで、軽音部のためだけに、いるみたいじゃないですか!まるで――」
唯「あずにゃん!」
梓「!」ビクッ
唯「ムギちゃんは、ムギちゃんだよ……」
梓「私……、ごめんなさい……」
43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:08:59.31 ID:GSpKfhiU0
律「やっぱり、明日ムギに聞いてみよう」
澪「律……?いいのか?」
律「ああ。やっぱりムギは何か、抱え込んじゃってるのかもしれない……」
律「もしムギが話したくないなら、この話は終了!すっぱり忘れて、また今までどおり接すること!」
律「聞いてみて、全然問題なければやっぱり今までどおり。もしムギが、何か問題を抱えているようなら……」
律「私たちでサクッと解決して、ハッピーエンドだ!」
45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:11:37.47 ID:GSpKfhiU0
唯「律っちゃん……さすがぁ!」
律「へへへ、だろぉー?」
梓「……たまにイケメンですよね、律先輩」
律「にゃにおー!」
澪「でも、そうだな……、律の言うとおり、すっきりさせておいた方がいいだろうな」
唯「それじゃ、明日だね!」
律「おう!」
46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:12:16.08 ID:GSpKfhiU0
その日の夜
紬「……はぁ」
紬(やっぱり、おかしいと思われてるよね……)
紬(迂闊だったわ……、すっかり気を抜いて……)
紬「どうしよう……」
紬(でも、なんとかしなくちゃ……)
紬(もう、手遅れかもしれないけど……)
紬(……それが私の……)
紬(みんなの……)
47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:13:21.90 ID:GSpKfhiU0
翌日の放課後、音楽室。ドアを力なく開ける紬
紬「みんな……、こんにちはぁ~……」
律「おー、待ってたぜムギー!」
唯「さぁムギちゃん、こっちこっち!お誕生日席座って!」
紬「え、お、お誕生日!?」
澪「今日は、私がお茶淹れてみたんだ!の、飲んでみてくれないかな……」
紬「澪ちゃんが?ぜひいただくわ~」
律「お菓子は私が用意したんだ!手作りなんだぜー!」
紬「すごいわー!美味しそうなシュークリーム!」
律「へへー。そうだろー」
49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:14:22.46 ID:GSpKfhiU0
澪「はい、お茶淹れたよ」
唯「ムギちゃん~、肩揉んであげるね~♪」
梓「じゃ、じゃあ私は足をお揉みするです!」
紬「唯ちゃん……、梓ちゃんまで……」
紬「みんな、今日はどうしたの……?」
唯「え、えへへ……」
澪「ムギに、聞いてほしいことがあって……」
梓「気分を悪くしないで聞いてほしいですけど……」
紬(あ……)
紬(やっぱり……)
律「なぁ、ムギ……」
52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:18:32.16 ID:GSpKfhiU0
律「お前……何者なんだ?」
紬「!!」
律「あ、変な聞き方してごめん!たださ、もしムギが何か悩んでるんなら……、私たちで、力になれないかなって……」
紬「あ……わた、私……っ」ビクッ
唯「ムギちゃん……?」
紬「……ご……ごめんな、さい……。みんな……やっぱり……言えない……」
梓「ムギ先輩……」
澪「そ、そっか……!」
紬「ごめん……みんな。……でも、お願い……気にしないで、ほしいの……。今までどおりに……」
53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:19:19.22 ID:GSpKfhiU0
律「……」
律「よっし分かった!おっけーこの話しゅうりょうー!おっしまーい!!」
唯「そうだねそうだね!じゃ、じゃあ!お茶にしようよ!」
澪「わ、私またお茶いれてくるよ!」
梓「あ、澪先輩手伝います!」
紬「じゃあ私も……」
律「いいっていいって、ムギは今日はどーんと構えて!」
唯「そうそうー、シュークリーム美味しいよぉ?」
紬「え、ええ……」
54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:20:48.55 ID:GSpKfhiU0
その日の夜
紬(――終わった)
紬(全体的に、終わった……)
紬(もう、今までの軽音部に戻れない……)
紬(私のせいで……)
紬「私の……」グスッ
紬(どうしよう……)
『お前……何者なんだ?』
紬(当然よね……)
紬(私、きっともう軽音部にいられない……)
紬(でも……、いかなくちゃ……)
紬(軽音部に……)
55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:25:22.06 ID:GSpKfhiU0
翌日 音楽室
ガチャ
律「ちょりーっす!」
唯「りーっす!……あ、ムギちゃん!!」
紬「!」ビクッ
紬「律っちゃん、唯ちゃん……。あ、あの……」
唯「いやぁ、今日も疲れたねぇ~」
律「だなー。ヘイ、ムギ!いつもの!」ビシッ
紬「あっ……」
56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:26:08.12 ID:GSpKfhiU0
唯「おぉ!いつものだって!律っちゃん何それカッコいい!!」キラキラ
律「だろぉー?通の頼み方だぜー♪」
唯「私も私もー!……ムギちゃん、いつもの!」
紬「……お、お待たせいたしました。紅茶でございます」
律・唯「わぁーい!」
律「なあなあムギー、今日のケーキは何ー?」
紬「えっと……、抹茶ティラミス……」
律「うんま」
唯「そー!!!!」キラキラ
紬「あ、あの……!」
ガチャ
澪「おーっす」
梓「こんにちはー」
唯「あ、澪ちゃん!あずにゃん!」
60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:34:39.54 ID:GSpKfhiU0
律「丁度良かった、今日は抹茶ティラミスだってよー」
澪「へぇ、美味しそうだな」
梓「ちょっと律先輩!今日こそ練習……」
唯「まあまぁあずにゃん~♪」
律「お前だって食べたいだろ?ティ・ラ・ミ・ス♪」
梓「うっ……、そりゃ……食べたいですけど……」
紬「あの……!あの!!」
澪「ん?」
唯「ムギちゃん?」
61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:35:50.09 ID:GSpKfhiU0
紬「みんな……どうして!どうして……何にもなかったみたいに……」
律「おっとー、そこから先は言わせないぜ、ムギー?」
紬「律っちゃん……」
律「何があろうと、ムギはムギ。……だろ?」
紬「!!」
紬(あぁ……)
澪「そうだな」
梓「そのとおりです!」
紬(私は……、この人たちに、嘘をつこうとしていたのか……)
63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:37:59.63 ID:GSpKfhiU0
唯「り、律っちゃん!その名言は私のだよ……!」
律「へへーん、言ったモン勝ちだよーん。それよりムギ、お茶を……」
紬(みんなを裏切るみたいなことして……)
紬(知られたら終わりだ、なんて……)
律「……ムギ?」
梓「ムギ先輩?」
紬(私は――)
紬「……っ、く……うっ……」
紬(大馬鹿だ――)
紬「っ……うわあぁぁぁぁぁん!!わああぁぁぁぁぁんんん!!!」
65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:40:50.11 ID:GSpKfhiU0
律「む、ムギ!?」
紬「ふわああぁぁぁぁぁん!!!うっ、うあっ、ああぁぁぁぁぁぁ!!!」ボロボロ
澪「ムギ!?大丈夫か!?」
唯「お、お腹痛い!?私のケーキあげよっか!?」
紬「ひっうっうぅ……ごべんなざ……ごめんなざいぃぃぃ!!うぇぇぇぇぇんん!!!」
唯「ムギちゃん……!」
66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:41:41.54 ID:GSpKfhiU0
澪「……、落ち着いたか、ムギ……」
紬「……うん、ありがとう、澪ちゃん……」
澪「ははっ、声がらがらだよ」
紬「恥ずかしいわぁ……、目もすごく真っ赤だし……」アセアセ
梓(泣きはらしても可愛い)
律(泣きはらしても可愛いとかマジ)
紬「……私、みんなにお話しなきゃいけないわね……」
律「おいムギ、私たちのことだったら、全然気にしなくていいんだぞ」
梓「そうですよムギ先輩、無理しなくても」
紬「ありがとう、律っちゃん、梓ちゃん……」
紬「でも、そんな貴方たちだからこそ……、ちゃんと話さないと、いけないと思うの……」
唯「ムギちゃん……」
68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:44:04.29 ID:GSpKfhiU0
紬「うまく、説明できるか分からないけど……」
紬「律っちゃん……、私に『何者だ?』って、聞いたよね?」
紬「……――うぅん、いいの。正しい質問だから」
紬「もう、分かってるのかもしれないけど……私は、みんなとは違うの」
紬「……よく分からない、よね。私自身、よく分かってないもの……」
紬「手っ取り早く言えば、『桜高軽音部のためだけの存在』」
紬「軽音部と、軽音部のみんなのためだけに、生きてるっていうか……」
紬「みんなに一つも悲しいことがないように」
紬「みんなが一つでも多く幸せになれるように……」
69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:45:26.20 ID:GSpKfhiU0
紬「……天使?ふふ……どうかしら。きっと違う。だって……神様なんて、会ったことないもの」
紬「それに、軽音部に入る前……、それまでも、琴吹紬は確かに存在していたわ」
紬「琴吹の家に生まれて、幼稚園……小学校……中学校とすごして」
紬「楽しいことも、悲しいこともたくさんあった……はず」
紬「……よく、思い出せないの。まるで、他人の人生を見ているみたいに、実感がなくて、作り物みたいで……」
73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:46:59.38 ID:GSpKfhiU0
紬「だから、私の『人生』は、軽音部に入ったときからなの」
紬「あの日、律っちゃんが私の手をギュッってしてくれた、あのときからが……」
紬「私の、本当の人生なの……」
紬「それから、すぐに気づいたわ。それまでの私の存在は、軽音部のためにあったんだって……」
紬「キーボードや作曲ができることも、お茶やお菓子が用意できることも……」
紬「裕福な『琴吹』の家に生まれたことも、みんなのためなんだ、って」
紬「コーヒーより紅茶が好きなのだって、きっと、みんなのティータイムのためなんだって思う……」
紬「私、変かしら……?おかしい、のかな……?」
74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:48:34.36 ID:GSpKfhiU0
紬「でも、私にははっきり理解できるの。自分の名前よりも、はっきりと」
紬「……私は、あらかじめ用意された存在……」
紬「軽音部のために。素敵なみんなのために……」
紬「……みんなのこと、本当に大事に思うの」
紬「律っちゃん、澪ちゃん、唯ちゃん、梓ちゃん……」
紬「みんな、大好き」
紬「でも――これが本当に私の気持ちなのか……、もう……分からない……」
76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:50:35.22 ID:GSpKfhiU0
紬「……」
律「……チョップ!」ペシン
紬「きゃうん!」
律「長い」
紬「えぇっ!?」ガーン
唯「よくわかんなーい」
紬「ええぇっ!!?」ガガーン
唯「……でも、ムギちゃんが私たちのこと、すっごく考えてくれてたってことは、分かったよ!」
紬「ゆ、唯ちゃん……!」
77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:53:08.82 ID:GSpKfhiU0
梓「そうです!それに私も、ムギ先輩のこと、だっ、だ、大好きですから!!」
紬「梓ちゃん……」
律「桜高軽音部を舐めるなよー?そんなことくらいで、私たちの結束はビクともしないぜ!」
紬「律っちゃん……」
澪「そうだな。それに、ムギがどう思おうと、ムギはムギなんだ。他の誰でもないよ」
紬「澪ちゃんも……」
澪「ムギ……ありがとう」
78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 22:53:55.58 ID:GSpKfhiU0
唯「ありがとぉ~!」
梓「ありがとうございます」
律「ありがとなぁー!」
紬「みんな……」
紬「っ……ぐす……、うぇぇぇぇぇん!!うわあぁぁぁぁぁぁん!!!」
唯「あはは、また泣いちゃったー」
梓「今日のムギ先輩は泣き虫さんです」
紬「あっ、あり……っ、ありが……ぐずっ……ふえぇぇぇぇぇぇ!!!」
81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 23:05:01.69 ID:GSpKfhiU0
その日の夜
梓の部屋。梓がベッドで寝そべりながら、携帯電話で憂と会話している。
梓「――そりゃ、憂は女らしいって感じするじゃん。胸とか胸とか」
憂『む、胸は関係ないよぉ……。でも、女らしくなりたいんだったら、軽音部はいい先輩いっぱいいるでしょ?紬さんとか……』
梓「ムギ先輩は……、だってもう、天使だもん……」
憂『なにそれぇ』クスクス
梓「内緒♪とにかく、ムギ先輩マジ天使、なの!」
憂『そうなの~?でも、本当に天使だったら、ちょっぴり残念かな?』
梓「どうして?」
憂『だって、天使は天国に住んでるんでしょ?だから、いつかは――』
82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 23:05:41.76 ID:GSpKfhiU0
律の部屋。律が携帯電話で澪と会話している。
律「――で、今日のことって?やっぱりムギのことか?」
澪『うん、そうなんだけどさ……』
律「もう綺麗さっぱり片付いたつもりでいたんだけど……。何か、気になるのか?」
澪『……ムギ、言ってただろ?自分は軽音部のためだけにいる、って』
律「あぁ……」
澪『だから、私たちが卒業しちゃって、それで……今の軽音部が、なくなったら?』
律「……え。いや、まさかそんな……」
澪『まさかとは思うよ。でも、そのときムギは、もしかしたら――』
84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 23:06:34.19 ID:GSpKfhiU0
唯の部屋。
唯「……Zzzz……Zzz」
唯「ムニャ……」
唯「これまでのあらすじ!」
唯「ムギちゃんの背中から分度器が生えました」
唯「すごい!」
紬「うふふ♪」
唯「ムギちゃん、分度器貸して~」
紬「ごめんね、唯ちゃん」パタパタ
唯「わあ、飛んだ」
85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 23:08:15.19 ID:GSpKfhiU0
紬「私、もう行かなきゃ……」パタパタ
唯「む、ムギちゃん!これじゃ角度が見えないよ~」
紬「唯ちゃん、これだけは覚えておいて?」パタパタ
唯「?」
紬「タクアンの角度は、180度よ」
唯「ムギちゃあぁーん!!!」
紬「しゃらんらしゃらんら~♪」パタパタ
唯「……、……うーんうーん……」
102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 23:30:14.03 ID:GSpKfhiU0
紬の部屋――ではない。
紬「……って、どこかしら、ここ」
?「ムギちゃん!ムギちゃーん!!」
紬「だ、誰……?」
俺「俺だよ、俺!!」
紬「ホントに誰!!」
俺「俺俺!俺だってば!分かんないかなぁ……?」
紬「……オレオレ詐欺?」
俺「古くね……?まあ仕方ないか。そもそも初対面だしね」
紬(不審者だ)
106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 23:30:53.12 ID:GSpKfhiU0
茜「どうしようかな……。じゃあ、俺のことは茜ってよんでよ!私は三浦茜!」
紬「え、お……女の子?」
茜「そうですよぉ、ムギ先輩。三浦茜、桜ヶ丘高校二年、17歳!172cm、45kgです」
紬「何そのスタイル」
茜「ちなみに3サイズは100/50/80」
紬「そ、そんな女子高生いない!」
茜「あはは、傷つく。っていうか、それをアナタがいいますか、ムギ先輩」
紬「あ……」
茜「いやまあ、軽音部の皆さん的には、ノープロブレムだったみたいですけどね。いやいや、一時はどうなることかと」
109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 23:31:35.53 ID:GSpKfhiU0
紬「あ、あなたは……」
茜「ノンノン!今は私のことより、ムギ先輩のことですよぉ~?」
紬「なんの……こと?」
茜「正確には、軽音部じゃなくなってからの、ムギ先輩のことですね」
紬「!!」
茜「今日のところは丸く収まった感じですけど……、みなさん多分、そろそろ気づいちゃってるんじゃないかなぁ~」
茜「卒業しちゃったら、」
茜「軽音部がなくなったら、」
茜「ムギ先輩も、いなくなるって」
紬「……」
112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 23:32:46.30 ID:GSpKfhiU0
茜「ムギ先輩も、なんとなく分かってはいましたよね?」
紬「……私、死ぬのかしら?」
茜「あー。ちょっと違いますね。何て言えばいいんでしょう……」
茜「人間だけは残って、人生は消えちゃう……みたいな?」
茜「哲学的ゾンビってご存知ですか?要はクオリアの問題なんですけど。内観の欠如というか」
紬「……よく分からないわ」
茜「ですよね。すみません。簡単に言えば……ムギ先輩の、気持ちだけが死にます」
紬「!!……それって!」
116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 23:34:12.13 ID:GSpKfhiU0
茜「卒業しても、社会に出ても、ムギ先輩は今までどおりですよ」
茜「みんなと仲良く過ごして、笑ったり、泣いたり」
茜「いつもニコニコみんなのムギちゃん、ってなもんですよ。いやもう、むぎゅううううう!ですよ」
茜「でも、そこにいるムギ先輩自身は、何も感じてない」
紬「そんな……」
茜「他人事みたいに実感のない、けれど実感がないという実感すら持てない」
茜「そんな毎日が死ぬまで続くだけです」
紬「……」
117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 23:35:33.31 ID:GSpKfhiU0
茜「それでも、軽音部のみなさんは、もう一生幸せですよ?ハッピーエンドの中にいるみたいに」
茜「唯先輩は幸せな家庭を築きますし、梓ちゃんは音楽修行のために、渡米するんですよー!」
茜「律先輩と澪先輩は、なんとプロデビューです!すごいですよねぇー!」
茜「それもこれも、ムギ先輩のおかげなんです」
茜「ただ……」
紬「ただ?」
茜「さっきも言いましたけど、気づいちゃったんですよねぇ、みなさん……」
茜「ムギ先輩がいなくなっちゃうことに……」
茜「それじゃあ、ムギ先輩がいくら頑張っても、みなさんがどんなに頑張っても、幸せにはなれないですよねぇ」
119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 23:41:11.61 ID:GSpKfhiU0
紬「どうにか……ならないのかしら」
紬「私は別に、どうなってもいい……。だから、軽音部のみんなが、どうか幸せに……」
茜「んふー、そう来ると思って、本日はご提案を用意させていただきましたー!」
茜「あ、やっと本題にたどり着いた。ふぃー、長かったですねぇー……」
紬「その……提案、って?」
茜「軽音部のみなさんの、ムギ先輩についての余計な記憶を消します」
紬「!!」
茜「まぁ、基本的には、数日前の関係に元通り、って感じですね」
茜「お望みとあらば、ムギ先輩自身の記憶も、一緒に消しちゃいますけど」
120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 23:42:11.60 ID:GSpKfhiU0
紬「茜ちゃん……、あなた一体……」
茜「だから、私のことはいいんですって~。言っておきますけど、神様とかじゃないですよ?」
茜「神様だったら、問答無用のハッピーエンド用意できますけど、そんなの私できないですし」
茜「私はただのナイスバデーな女子高生ですから」
茜「……さて、どうしますか?ムギ先輩」
紬「……それでみんなが、幸せになれるなら……」
茜「ですよねー。提案なんて言っておいてナンですけど、他に選択肢なんてないですよねー」
茜「なにせ、『みんなのムギちゃん』ですもんね」ニコッ
123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 23:44:51.11 ID:GSpKfhiU0
紬「でも……ごめんなさい。ひとつだけ、お願いがあるの」
茜「……何でしょう」
紬「1日だけ、時間をください。みんなに……私を受け入れてくれたみんなに、お礼が言いたいの」
紬「それから、いつかのために、先にさよならも――」
茜「どうせすぐ忘れちゃいますよ?」
紬「分かってる。ただの自己満足よ。……それでも……」
茜「んふ、いいですよぉ?ムギ先輩にそんな顔で頼まれたら、茜ちゃん断れないですよぉ」
124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 23:45:37.27 ID:GSpKfhiU0
紬「ありがとう」
茜「それじゃ、私はこの辺で消えますけど……、何か言い残したこととか、あります?」
紬「じゃあ、一つだけ」
茜「なんでそお」
紬「茜ちゃん……私、あなた大嫌い」ニッコリ
茜「ありゃりゃ……泣いちゃいますよ?」
紬「うふふ、ごめんね?」
茜「ま、しょうがないです。それじゃあ、また――いつ――――か――――――――
126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 23:48:00.04 ID:GSpKfhiU0
翌日
放課後、音楽室。ドアの前に紬がためらった様子で立ち尽くしている。
紬(さて……、何から言おうかしら……)
紬(ありがとうと、頑張ってねと、幸せにねと……)
紬(あと、ごめんなさいも……よね)
紬(でも、なんて言えば……)
紬「……もう!入ってから考えよう!」
ガチャ
紬「みんなお待た――」
律「確保ぉー!!」
127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 23:48:37.34 ID:GSpKfhiU0
紬「えぇぇ~~!!?」
唯「シンミョウにオナワにつけぇぇ!」
紬「唯ちゃんまで~!?」
ドタバタ
ドタバタ
律「よっしゃ~!ムギ確保!梓、時間取れ!」カシャ
梓「午後5時17分、容疑者ムギ先輩、逮捕!です!!」
紬「容疑者!?逮捕!?」
129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 23:50:59.96 ID:GSpKfhiU0
澪「……いつまでやってるんだ。梓まで巻き込んで……」
紬「澪ちゃん、これは一体……」
澪「ごめんな、ムギ。とりあえず座ってくれ」
律「これから秋山鬼警部の取調べだぁー!」
澪「誰が鬼警部だ!」ゴンッ
律「きゅふん……」
133 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/26(月) 23:59:41.99 ID:GSpKfhiU0 [67/67]
唯「ムギちゃんから事情ちょーしゅするための、本格けーさつごっこだよ!!」
紬「ごっこっていうか……、手錠されちゃってるんだけど……」カチャカチャ
唯「本格だからね!」フンス
紬「こんなのどこから……」
律「さわちゃんが持ってた」
梓「深く触れない方がいいんです、きっと。それより……」
唯「ムギちゃん!勝手にどっか行っちゃうなんて、絶対ダメなんだからね!」
135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/27(火) 00:00:42.46 ID:xIuRuXuc0 [1/26]
紬「え……」
梓「そうですよ!黙っていなくなったりしたら、承知しないです!」
紬(……やっぱり、みんな気付いてるんだ。茜ちゃんの言ってたとおり……)
律「これだけは、きっちり確認しとかなきゃと思ってさ」
澪「ムギ……、軽音部を抜けちゃったら、ムギはどうなるんだ?」
紬「それは……」
137 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/27(火) 00:01:54.93 ID:xIuRuXuc0 [2/26]
紬(言えない……、本当のことは)
紬(明日には、みんな忘れちゃってるとしても……)
紬(本当のことを言えば、みんなきっと悲しむ……)
紬(みんなが悲しむのは、絶対嫌……)
紬「や、やだ~、どうにもならないわよぉ……」
梓「本当ですか!?」
紬「本当よ~。卒業してからも、私たちずっと一緒だもの。ずっと仲良しで、今までみたいに楽しくて……」
紬「だから、私はどこにもいかないし、みんなと一緒に、ずっと、たくさん幸せなの……」
139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/27(火) 00:03:15.57 ID:xIuRuXuc0 [3/26]
唯「ムギちゃん……」
紬(そこに私の心はいないけど……)
紬「だから、何も心配はいらな――」
律「ムギ……、前から思ってたんだけど……」
紬「え?」
律「ムギってさ、すぐ顔に出るよな……」
紬「え?あ……!えぇ……っ!?」アワアワ
141 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/27(火) 00:04:23.87 ID:xIuRuXuc0 [4/26]
梓「そんな捨てられた子犬みたいな顔して、『ずっと、たくさん幸せ』なんて言われても、誰も信じませんよ」
紬「う、嘘はついてないもの!みんな将来、今みたいに……ううん、今よりも毎日楽しくて、充実して……」
唯「それで、ムギちゃんは、幸せになるの?」
紬「う……」
唯「さっきからムギちゃん『みんな』って、自分のこと入ってないみたいに話してる……」
唯「そこにいるムギちゃんは、幸せじゃないのかな……?」
唯「一緒に、幸せになれないのかな……?」
144 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/27(火) 00:06:15.22 ID:xIuRuXuc0 [5/26]
唯「やだよ……、駄目だよ、そんなの……」
梓「唯先輩……」
律「唯……」
唯「私、どんなに楽しくても、どんなに幸せでも……」
唯「ムギちゃんが幸せじゃなきゃ、絶対やだもん……」
唯「ぜったい……うぅ、うっうぅぅぅ……」グスッ
澪「お、おい……泣くなよ唯」
唯「だってえぇぇぇぇ!ふぇぇぇぇぇんんん!!!」
澪「ああもう!鼻水飛ばすな!」
145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/27(火) 00:06:51.47 ID:xIuRuXuc0 [6/26]
梓「ムギ先輩……私たちみんな、唯先輩と同じ気持ちなんですよ?」
紬「どうして……」
律「あったりまえだろー?仲間だもん!」
唯「そぉだよおぉぉぉぉ!!ふぐっ……うっ、むえぇぇぇぇぇ!!」
紬「あ……」
紬(そっか……)
紬(何勘違いしてたんだろう、私……)
146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/27(火) 00:07:43.02 ID:xIuRuXuc0 [7/26]
紬(みんなと一緒にいる理由なんて、本当は全然関係ないのに)
紬(みんなのことが大好き。みんなと一緒にいたい)
紬(こんな、簡単なことなのに……)
紬(本当の自分の気持ちが分からない?)
紬(今、この瞬間……私がみんなのこと大好きって気持ちに真実がないなら……)
紬(何が真実だっていうの……!)
紬「澪ちゃん……」
澪「ん、どうした?」
147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/27(火) 00:08:39.07 ID:xIuRuXuc0 [8/26]
紬「あの、手錠とか……外してもらいたいんだけど……」
唯「まだ駄目!今外したらムギちゃん、どこか行っちゃうもん!絶対駄目!」
紬「大丈夫よ、唯ちゃん。私、どこにも行かないわ」
唯「ほ、本当に……?」
澪「じゃあ、ちょっと待ってな……」
148 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/27(火) 00:09:26.53 ID:xIuRuXuc0 [9/26]
カシャリ
澪「――外れたよ、ムギ」
紬「うん、ありがとう」
唯「……」
紬「……」ニッコリ
唯「……?」ニコッ
紬「……」
紬「……ムギダァーッシュ!!」ダッ
唯「あぁぁぁ!!」
梓「逃げた!ムギ先輩逃げた!」
澪「お、追うぞ!」
律「はえー!ムギダッシュ超はえぇー!!」
150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/27(火) 00:11:36.85 ID:xIuRuXuc0 [10/26]
二年教室
ダダダッ
紬「失礼しまーっす!」
憂「うわ!びっくりしたぁ……あれ、紬さん……?」
紬「はぁ……はぁ……、憂ちゃん……?あの、三浦茜ちゃんって子、知らないかしら……?」
憂「三浦……さん?さぁ……えっと……」
俺「茜ちゃんならさっき、トイレで見かけましたよ」
紬「あ、ありがとう!!」ダダッ
俺「うわ、紬先輩はやいなぁー……」
憂「……えっ」
俺「えっ」
157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/27(火) 00:25:44.59 ID:xIuRuXuc0 [11/26]
二年トイレ。鏡の前で茜が髪を整えている。
茜「~♪~~♪」
ドタン!! ガチャン!!!
紬「茜ちゃん!」
茜「んにゃ!?び、びっくりしたぁ~。ムギ先輩じゃないですかぁ」
紬「茜ちゃん、大事なお話があるの!」
茜「な、何ですか?もしかして……」
紬「昨夜言っていた、みんなの記憶を消すって提案……、あれ、やっぱりなしにして!」
茜「ぐぁー、やっぱりぃー……」ガクリ
158 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/27(火) 00:26:20.52 ID:xIuRuXuc0 [12/26]
茜「そんなこと言われてもムギ先輩、もうこっちは準備万端なんですよ?リハだって三回もやったし」
紬「なしなの!絶対なしなの!決定なの!!」
茜「横暴だぁ……、ムギ先輩なんかキャラ変わってるし……」
茜「それに、軽音部のみなさんのことは、どうするんですか」
茜「今のままじゃ、絶対納得してくれないでしょ」
紬「だから、茜ちゃん……。私から提案があるの」
茜「はい?」
紬「私を、普通の女の子にしてほしいの」
茜「……えぇーっと?」
160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/27(火) 00:34:08.47 ID:xIuRuXuc0 [13/26]
紬「『軽音部のためのムギちゃん』じゃなくて、みんなと同じように、……ただの琴吹紬に」
紬「そうすれば、軽音部を抜けちゃったあとでも、私は私のままなんでしょ?」
茜「理論的にはそうですけど……、言ってること、理解してます?」
茜「『軽音部のためのムギちゃん』がいるから、みんなキラキラハッピーなんですよ?」
茜「それを捨てちゃったら……ムギ先輩だけじゃなくて、みんなが幸せになれないんですよ?」
紬「『なれないかもしれない』でしょ?やってみなくちゃ、分からないわ」
162 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/27(火) 00:36:47.40 ID:xIuRuXuc0 [14/26]
紬「それに……、私だって、みんなと一緒にいたい」
紬「心から、みんなと笑いあっていたいから」
茜「……だから、誰かが不幸になっても後悔しない、と?」
茜「ずいぶん自分勝手なんですね……」
紬「そうね……、そう思うわ」
紬「でもね、茜ちゃん。私は自分の力で、幸せになりたい」
紬「そして、みんなのことも絶対に幸せにしてみせるわ」
紬「用意された幸せに頼らなくても……」
紬「そんなものよりずっと、最高の幸せを手にしてみせる」
紬「だから……!」
165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/27(火) 00:51:15.74 ID:xIuRuXuc0 [15/26]
茜「……」
茜「……はぁ。分かりました……」
紬「それじゃあ!」
茜「まぁ、いいですよ。私ムギ先輩のこと大好きですし。ゆーことなんでも聞いちゃいますもん」
そう言って茜は、懐から何かを取り出す。
茜「この楽器を使います」
紬「ユーフォニウム?」
茜「いや、ブブゼラ」
紬「ああ」
166 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/27(火) 00:53:17.14 ID:xIuRuXuc0 [16/26]
バイバイさるさんされまくって中々投稿できないです。ごめんなさい。
168 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/27(火) 00:54:22.31 ID:xIuRuXuc0 [17/26]
茜「――確認なんですけど。……普通のムギ先輩には、みなさんを幸せにする資格は、一切ありません」
紬「分かってるわ」
茜「都合よく楽しいことがあったり、問題なんてあっという間に解決したり」
茜「ライブが無条件で成功したりも、しません。二度と」
紬「……覚悟してる」
茜「そのときになって、茜ちゃん好き好き~♪なんて言っても、助けてあげられませんよ?」
紬「嫌いだから大丈夫よ」ニコッ
茜「あ、大嫌いからランクアップ。やったね茜ちゃん」
170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/27(火) 00:55:56.88 ID:xIuRuXuc0 [18/26]
茜「――それじゃあ、ちょっとブブゼラを覗き込んでもらっていいですか?」
紬「えっと……、こうしかしら?」ヒョイッ
ヴェェェェェェエエェェェェエエェエェェェエェェェエェェエェェ
紬「ふわああぁ!!!」
ヴェェェェェエェェェェェエエェエェェェェェェエエェエェェェ
紬「」
ヴェェェエエェェェエェェェェェ
ヴェェェェェェエエ
ゴエェェ――
175 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/27(火) 00:58:48.01 ID:xIuRuXuc0 [19/26]
音楽室
律「駄目だ、やっぱり見つからなかった……」
澪「どこ行っちゃったんだ、ムギのやつ……」
唯「うぅぅ……もしかして……、もう二度と戻ってこないんじゃあ……!」
梓「そ、そんなわけありません!絶対戻ってきます!ムギ先輩は――」
ガチャ
紬「みんな、お待たせぇー♪」
唯「!!ムギちゃ――おわ!」
澪「か、髪が……」
176 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/27(火) 00:59:39.78 ID:xIuRuXuc0 [20/26]
梓「ムギ先輩の髪が、真っ黒に……」
紬「うふふ♪」
紬「……私ねぇ、もう『軽音部のためのムギちゃん』じゃないんだぁ」
紬「だから、卒業しちゃっても……軽音部がなくなっちゃっても、ずっと、みんなと一緒――」
唯「ほんとに!?ほんとのほんと!?」
紬「本当よ?……でも、よかったのかなぁ、って……」
182 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/27(火) 01:01:16.77 ID:xIuRuXuc0 [21/26]
紬「私……みんなのために、何もしてあげられない……」
律「そんなことないって!」
紬「お茶もお菓子も、もう用意してあげられないの……」
梓「わ、私がやります!お茶の淹れ方だって練習するです!」
紬「合宿のために、別荘を用意したりもできないし……」
律「いいじゃん別に!安い民宿とかでも絶対楽しいって~♪」
紬「唯ちゃんが褒めてくれた髪だって……」
澪「私とお揃いで、嬉しいよ!それに、すごく似合ってると思うぞ、ムギ」
紬「今までみたいに、楽しく音楽できないかもしれない……、喧嘩だっていっぱいするだろうし、悲しいことだって――」
185 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/27(火) 01:02:21.23 ID:xIuRuXuc0 [22/26]
唯「ムギちゃん!!」
紬「唯ちゃ……」
唯「何があっても、ずっと、ずぅっと一緒だよっ!!」ダキッ
紬「…………うんっ!」
律「お、やぁっと笑ったなー?」
澪「やっぱりムギは、笑顔じゃないとな」
梓「暗い顔なんて、似合わないです!」
191 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/27(火) 01:06:47.91 ID:xIuRuXuc0 [23/26]
紬「みんなの……おかげよ」
紬「……私、みんなのこと大好き」
紬「これから、どうなるのか……先のことなんて、分からないけど……」
紬「みんなと一緒なら、きっとどんなことでも、乗り越えられるから……」
澪「私もそう思うよ」
律「ははっ、とーぜんだよなっ!」
梓「私だって、が、頑張りますから!」
唯「えへへ……みんなムギちゃんが大好きで」
唯「ムギちゃんもみんなが大好きで……」
唯「やっぱり、ムギちゃんは天使だね!」
193 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/27(火) 01:07:37.36 ID:xIuRuXuc0 [24/26]
唯律澪梓「ムギちゃんマジ天使!」
【終わり】
202 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/27(火) 01:11:24.33 ID:xIuRuXuc0 [25/26]
お読みいただいた皆さん、ありがとうございました。
猿除けしてくださった方々、本当に助かりました。ありがとうございます。
柿ピーのピーは育つって本当ですか?ごめんなさい。
ムギちゃんマジ天使。
196 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/27(火) 01:08:30.47 ID:ZIoXHU9nP [2/2]
で、眉毛も黒くなったのか?
205 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/07/27(火) 01:13:57.94 ID:xIuRuXuc0 [26/26]
>>196
眉毛も黒くなったことと思います。
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