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梓「一体何が起きているの……?」

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 16:12:29.15 ID:oQgXtHgi0 [1/51]
      『最後の願い』

        一、

夏休み。

中野梓は平沢家を訪れた。

冷たいものでも用意するからちょっと待っててね、
という憂の言葉に従い、リビングくつろいでいたところ、
鈍器のような物で頭を殴られた。

それは梓にとって全く予期しなかった出来事であり、
背後からの襲撃だったことも併せて防ぐことが出来なかった。

梓はなんとか意識を保つために目を開けようとしたが、
結局は無駄な努力に終わった。

彼女にとって気絶するのは始めての経験だった。

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 16:18:10.50 ID:oQgXtHgi0
……。


それからどれだけ時間が過ぎたのか、梓には分からない。
強烈な頭痛に耐えながら重いまぶたを開けると、
飢えた獣のような顔をした先輩の姿があった。


「目が覚めたの?」

「……」

梓は無言だった。

というより話す余裕がないのだ。
なにより今は考える時間が欲しかった。

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 16:24:05.67 ID:oQgXtHgi0
梓が周囲を見渡して分かったことは、目の前でいやらしい
笑みを浮かべているのクソ女が平沢唯だということ。

それとここは唯の部屋ということだ。


「あずにゃん。ごめんね、こんなことして」

「……?」

梓が疑問に思ったのは、唯の言葉に全く
誠意がないように感じられたからだった。

唯が何を企んでいるのかは知らないが、
無性に腹が立った。

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 16:30:12.80 ID:oQgXtHgi0
「どうしてこんなことするの?」

梓は唯をきつく睨みながら聞いた。
怒りで唇がわずかに震えている。

「うふふふ。それは内緒」

唯は涼しい顔で答えた。

梓は唯が少しでもひるんでくれることを
期待していたのだが、無駄だったようだ。

唯の顔は普段のけいおん部で見せるものではなく、
冷たくて無機質な印象を感じさせるものだった。


7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 16:36:29.68 ID:oQgXtHgi0
「答えてよ。どうして私にこんなことするの!?」

梓の言葉に敬語は含まれてなかった。
憎い相手を敬う必要はないと判断したのである。

「……私があずにゃんのことが好きだからだよ」

唯は唇を醜くゆがめた。

「今日は大好きなあずにゃんと一緒にいたくて、家に連れてきたんだぁ」

「……一緒にいるのに拘束する意味はあるの?」

梓は両手をばんざいする形で縛られていた。

ベッドで仰向けに寝かされている梓に、
唯がのしかかるように馬乗りになっている。

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 16:42:17.95 ID:oQgXtHgi0
唯が梓の耳元で囁いた。

「だって、こうしないとあずにゃんが逃げちゃうじゃない」

「そうね。できれば今すぐ逃げたいわ。
 その前にあんたを殺してからだけどね」

「殺す……? 私のことそんなに嫌いなの?」

「大嫌い。今すぐ死んでよ。このクサレ池沼女」


遠慮のない梓の言葉に、唯は切れた。

「……言ってくれるね」

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 16:48:18.99 ID:oQgXtHgi0
「ぐ……!!」

梓が発したのはくぐもった悲鳴のようなものだ。
それが唯に首を絞められた状態で出した精一杯の声だった。


「全く酷い子だね。どうして……そんなこと言うの?
 そんなこと言う子じゃなかったのにねぇ」


唯が心の中で悲鳴をあげながら両手に力をこめていた。

その病人のようにうつろな目は、梓の顔を見ておらず、
空中をさまよっていた。

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 16:54:33.08 ID:oQgXtHgi0
「う……ぐ……!!」


梓は絶望の真っ只中で歯軋りした。

どうせ拘束されているのだから、せめてもの抵抗と
して唯を罵倒したのが失敗に終わった。


呼吸ができないというのは、思っていた以上に苦痛だった。

底知れない恐怖と不安で、死がすぐそばにあるように感じられた。


このままでは本当に殺されるかもしれないと梓が
思ったとき、唯の手から開放された。

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 17:00:09.84 ID:oQgXtHgi0
「う、ゲホッ……ゲッホ……ゴホ…!!」

梓は涙目で激しく咳き込んだ

唯は梓に寄り添うように抱きしめながら眺めていた。


「うふふふふふふ。苦しんでいるあずにゃんも可愛いね」


唯はペットを観察するような目で梓を見ていた。

やがて呼吸を落ち着かせた梓が唯を睨むが、
唯はそれを受け流したかのようにニコニコと笑っていた。

梓の中で憎悪の炎が燃え上がる。

(この女……!! 人を殺そうとしておいて!!)

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 17:06:09.02 ID:oQgXtHgi0
梓は口を大きく開けて、唯に吼えた。


「くたばっちまえ、この池沼女!!」


「……ふーん。今のはちょっとカチンときちゃったなぁ」


唯が舌打ちし、その顔に狂気が宿った。

唯は梓のツインテールの片方を掴んで持ち上げた。


「__痛い!!」

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 17:12:09.25 ID:oQgXtHgi0
梓は涙目で激痛に耐えていた。
髪の毛を思いっきり引っ張られたため、
頭が枕から持ち上がってしまった。

まるで毛髪が引き千切られるような痛みは
耐え難いものだった。

唯は人の苦しんでいる姿を見るのが好きなのか、
極上の笑みで梓を観察していた。


「どうかな、髪の毛を引っ張れてた感触は?
 すんごく痛いでしょ? 目に涙がたまってるよ」

「い、痛い……!! 髪の毛が千切れちゃうよ……!!」

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 17:19:41.56 ID:oQgXtHgi0
「ほら、ごめんなさいは? 許してもらいたかったら、
 ちゃんと謝らないと駄目でしょ?」


しかし、梓は維持でも謝りたくなかった。

梓は悪いことなど何もしていないという自信があるからだ。

謝ってしまえばすぐに開放されるにしても、目の前で微笑んでいる
悪魔に魂を売るつもりはなかった。

地獄の苦しみを味わっていても、人間としてのプライドは
捨てていないのだ。

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 17:25:13.52 ID:oQgXtHgi0
「……く……誰が……誰が言うもんか!!」


それは理不尽な暴力に決して屈しないという誓いだった。


「うふふふふふ。強情だね。それじゃ、お仕置きだよ?」


唯の顔がさらに醜くゆがんだ。

まるで梓のその言葉を待っていたかのように思えた。


22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 17:31:10.09 ID:oQgXtHgi0
「そーれ」


短い掛け声と共に、唯は平手打ちを食らわした。

思い切り振りかぶって遠心力をつけた一撃だった。


「ひゃ!」

梓は叩かれた反動でベッドに倒れるが、唯が馬乗りになり、
さらにビンタを展開する。

「いくよ~」

唯の往復ビンタで梓の顔は右へ左へと次々に叩かれ、
頬が真っ赤に染まっても攻撃は続けられた。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 17:35:50.95 ID:oQgXtHgi0
「やめ…!」

梓は両手が拘束されているため、唯の暴挙を防げない。

抵抗する術を持たず、一方的に暴力を振るわれるのは
恐ろしい経験だった。

まして相手は得体の知れない怪物なのだ。


「どんどんいくよ~」


唯は、表面上は子供のような無邪気な声で梓の顔を叩き続けた。

部屋には梓が殴られる乾いた音だけが響いた。

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 17:41:11.98 ID:oQgXtHgi0
「………………!!」


梓はもう頬の感覚がなくなってきた。

こんなに人に殴られたのは初めての経験だった。
友達と殴り合いの喧嘩などしたことがないからだ。




「ち……ちくしょう……!! くやしい……!!
 どうして私が……」


永遠に続くと思われた拷問に梓が泣き出してしまうと、
唯は攻撃を止めた。

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 17:47:13.69 ID:oQgXtHgi0
「泣き虫だねぇあずにゃん。泣くほど痛かったの?
 その顔、とってもかわいいよぉ?
 うふふふふふふふふふふふふふ。いひひひひひひ」


その顔は地獄の底からやってきた悪魔のようだった。


「ひぐっ……平沢唯……ころして……やるからね……絶対に…!!」


例えどんな苦痛を与えられても、
梓は鋼の精神で耐えてみせるつもりだった。

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 17:53:16.72 ID:oQgXtHgi0
「ふーん。まだ生意気な口を聞く余裕があるのかな?」

唯は恐ろしい目つきで梓を見下ろした。

そして梓の太ももを思い切りつねった。


「あああああああ!!」


たまらず梓が叫んでしまう。

握りつぶすような力でつねられたのだ。

まるで万力で締め付けられているのではないかと
錯覚してしまうほどだった。

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 17:58:24.78 ID:oQgXtHgi0
「うあああああああああ!!」

梓は痛みに耐えながら冷や汗をかいていた。

「ほら。ごめんなさいは?」

唯が鍵を回すように指を捻った。

梓の太ももの痛みが倍増する。


「ぎゃああああああああああああああああああ!!」

「ごめんなさいは? 早く言わないともっと酷いことするよ?」

「嫌だ……!! あんたなんかに……絶対に言うものか……!!」

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 18:03:21.90 ID:oQgXtHgi0
梓は顔中に嫌な汗をかきながら荒い呼吸をしていた。

絶対にこの悪魔に屈したくない。
その誓いは今でも変わらなかった。

「君は本当に強情な女の子だね。賞賛に値するよ。
 まあ、そういうところも好きなんだけど……」

唯は責めを中断し、扉の方を向いて叫んだ。

「憂~!! 入ってきなさい!」

「は、はい。お姉ちゃん」

憂がびくびくしながら入室してきた。

タイミミングが良いのは、憂が部屋の前で
待機していたからだろうか。

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 18:08:06.20 ID:oQgXtHgi0
「梓の奴が言うことを聞かなくて困ってるんだぁ。
 ちょっと道具を持ってきくれる?」

「え? あれを使うつもりなの?」

「そうよ。いいから早く持って」

「で……でも、それじゃ梓ちゃんが……」


憂が恐縮した様子で反対しようとするが、
唯にすごい顔で睨まれた。


「…………憂。あんたも口答えする気なのかな?」

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 18:13:16.93 ID:oQgXtHgi0
「は、はい!! すぐに用意します!!」

憂は駆け足で部屋から去っていった。

唯は口を尖らせながら愚痴をこぼす。

「ったく、すぐに言うことを聞けばいいのにね。
 憂はいつまでたってもグズでノロマまんだから。
 そう思わないあずにゃん?」


「……」


梓はそっぽを向きながら無視した。


37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 18:19:11.91 ID:oQgXtHgi0
「ねえってば。無視する気? 感じ悪いなぁ」

「…………話しかけないで。池沼女」


梓にできる唯一の反撃が暴言を吐くことだった。

無論、それは唯を激怒させることになるだろう。


それが分かっていても、梓は唯にやられたままで
いるのは我慢できなかった。


「…………はい。私カチンときちゃいましたぁ。
 お仕置きタイムでーす!!」

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 18:25:15.20 ID:oQgXtHgi0
案の定というべきか、唯は苛立ったようだ。

彼女は勢いよくベッドから飛び降り、机の引き出しを開けた。

そしてあるものを取り出し、それを片手に持って
梓の足の裏にあてた。


「ひゃあ!?」

「くすぐったいでしょ? こちょこちょ~~~」

唯が猫じゃらしを上下左右に揺らした。

じゃらしの先端のやらわかい部分が触れると、
信じられないほどくすぐったい感触がして狂ってしまいそうだった。

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 18:31:13.73 ID:oQgXtHgi0
「く!!  んんんんんんん!!」


梓は唇をきつく閉じて声を出さないようにしていた。
ここで笑ってしまっては唯を楽しませるだけだと思ったのだ。


「ほーら。どんどんくすぐっちゃうよ♪」

「………あは……ひゃひゃ……んん!!…ん」

「足を暴れさせたって無駄だよ?」


梓は苦痛から逃れるために足を暴れさせたが、
足首を唯につかまれていた。

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 18:36:28.02 ID:oQgXtHgi0
こうなってしまっては唯にされるがままだ。
唯は梓の反応を楽しみながらじゃらしを動かした。

「ほらほら」

「くうううううう!!……あははははははっはははははははは!!」

耐え切れなくなったのか、梓は笑い始めた。


「もっと笑ってごらん?」

「あはあはははははははあははは…!! ……やめ……やめて!!」

顔は笑っているが、梓は死んでしまいたいほどの苦痛だった。

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 18:40:44.33 ID:oQgXtHgi0
笑い続けているため、息を吸うタイミングが見つからず、
窒息死してしまいそうだった。

「ねえあずにゃん。私ね、池沼って言われるのが大嫌いなんだ。
 本当はあなたのこと八つ裂きにしたいくらいムカついてるんだけど、
 特別にお仕置きするだけで許してあげてるんだよ?」


「ひゃっひゃひゃひゃひゃあひゃはy!!」


唯が言っていることなど梓の頭に入っていなかった。

息を吐き続けているため腹筋にすごい力がかかり、視界が
だんだんとぼやけていった。

もう我慢するのは限界に近かった。

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 18:46:05.49 ID:oQgXtHgi0
「もう二度と私のことを池沼って呼ばないって約束できるかな?
 約束できたらくすぐるのをやめてあげる」

「あはyはひゃはやはyはやひゃはや!! わかりました!!
 二度と……二度と言いませんから!!」


「…よし。いい子だね。ご褒美にキスしてあげるよ」


唯は猫じゃらしを投げ捨てて梓にキスした。


「……きゃ!?」

「ぶちゅ~」

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 18:52:10.24 ID:oQgXtHgi0
梓にとってその強引な接吻は暴力のように感じられた。

(き、気持ち悪い……!! こいつ、どうして女同士でこんな
 ことが平気でできるの!?)

梓は信じられないものを見てしまった顔で唯を見ていた。


「ん……く……苦し………!!」

「ちゅ~」

「い……き……できな……!!」

唇は唯に塞がれたままだ。

梓は息が苦しくて顔をゆがめた。

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 19:55:01.95 ID:oQgXtHgi0
先程のくすぐり攻撃とは違う種類での苦しさだった。

唯の吐息が口腔に入ってくるのが気色悪かった。

そんな梓を知ってか知らずか、唯は舌をからめてきた。

「ちょ………やめ……!!」

ぬるぬるした唯の舌が気持ち悪くて、梓は吐いて
しまいそうになる。同性同士のキスなど、梓の
望む所ではなかった。

いっそのこと唯の舌を噛み切ってしまおうかと
思ったが、その後のことを考えると怖くて
実行できなかった。

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 20:01:37.25 ID:oQgXtHgi0
「__ぷはぁ」

唯はようやく唇を離した。

互いの口に唾液がしたたり、細い糸のように
銀色に光る液体の橋ができた。

梓はますます気持ち悪くなって、我慢できずに
悪態をついてしまった。

「この大バカの変態!! どうして女同士で
 こんなことができるのよ!! 本当に気持ち悪い!!」

梓の怒鳴り声はいままでで最大のものだった。
もし縄で拘束されていなければ、唯を殺してやりたいほどだった。

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 20:09:25.68 ID:oQgXtHgi0
「ふーん。せっかくのキスが台無しにされた気分だよ。
 そこまで言うからには……覚悟はできてるんだろうね?」

唯の覚悟はできているんだろうね、という部分に
抑揚がついていなかった。


部屋の空気が寒気がするくらいに張り詰めた。


梓は自分の置かれた立場を再認識させられた。


唯を怒らせれば最悪の場合、殺されてもおかしくはないのだ。


57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 20:15:23.50 ID:oQgXtHgi0
梓は全身に走る悪寒に耐えながら、自らの失言に
後悔する。

梓には唯が怒れる魔獣のように思えた。

「厳しいお仕置きといきたいところだけど、
 その前に憂が持ってきてくれる道具がないとね」

唯は壁にかけてある時計を見上げた。

「それにしても遅いなぁ。憂のバカたれ。
 いつになったら持ってきてくれるのかな?」

唯が愚痴をこぼすのも無理はなかった。

憂が部屋を出て行ってから、
それなりに時間が経過していた。

58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 20:21:07.56 ID:oQgXtHgi0
もしかしたら、妹になにかあったのかもしれない。

そう判断した唯がドアを開けて様子を見に行った。




部屋には、梓1人が残された。


(今の内に早くなんとかしないと……!!)


梓は顔面蒼白になりながら脱出の方法を考えた。

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 20:27:07.50 ID:oQgXtHgi0
現状では両手を縛られている。
縄はベッドに固定されており、頑丈のようだが、
幸いというべきか足は拘束されていない。


せめて近くに刃物のようなものでもあれば、
縄を切ることができるかもしれないが、
そんなものはどこにもない。


あるいは電話のような連絡手段があればいいのだが、
残念なことにこれも見当たらなかった。


(どうしよう。このままじゃ唯が帰ってきちゃうよ……!!)


60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 20:34:09.91 ID:oQgXtHgi0
壁掛けの時計を見ると、唯が出て行ってから五分が
過ぎようとしていた。


(ど、どうすればいいの!?)


あせる気持ちが、やがて絶望に変わろうとしていた。

そういえば憂は何をしているのだろうと梓は考えた。
いまごろ唯にお仕置きをされている最中かもしれない。

何しろ唯の言いつけを守らず、最悪の場合は
命令違反を犯しているかもしれないからだ。

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 20:40:12.17 ID:oQgXtHgi0
あのキチガイの姉に逆らうなど万死に値する行為だろうに。


梓はそう思いながら、時計の針が時を刻んでいくのを
ぼーっと眺めていた。


時計の秒針が動くとともに、
死神が行進してくる様子が頭に浮かんでいた。


62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 20:45:40.90 ID:oQgXtHgi0
ダンダンダン



「!?」



梓は体を緊張させた。


誰かが階段を勢いよく昇っている音が聞こえたからだ。


63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 20:50:06.72 ID:oQgXtHgi0
ダンダンダン


ダン



その足音は部屋の前で止まった。


そしてゆっくりと扉が開かれる。



(神様…………私は……助からないのでしょうか)

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 21:26:43.46 ID:oQgXtHgi0
梓は大粒の涙を流しており、扉の方など見ていなかった。

できるのは目をつむって自身の運命を呪うことだけだった。

「大丈夫か、梓」

耳に入った声は唯でも憂のものでもなかった。

驚いた梓が顔を勢いよく目を開けると、
そこにいたのは秋山澪だった。

「澪……先輩……!?」

「ああ、もう大丈夫だぞ。憂ちゃんから話は聞いている。
 ここから脱出しよう」

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 21:32:11.93 ID:oQgXtHgi0
澪が梓の拘束を解いていった。

久しぶりに自由になった両手の感触を確かめながら、
梓の心に希望の光が宿り始めた。

「せ、先輩……脱出するにしても、唯はどうしているんですか?」

「私が倒したよ」

「え?」

「不意をついて唯に襲い掛かかった。
 今頃、唯は気絶しているはずだ」

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 21:38:11.49 ID:oQgXtHgi0
「そうなんですか…」

「とにかく、長話してもしょうがないから早く行こう」

「はい!」


梓は澪と手をつなぎながら部屋を出た。

まるで魔界のように感じられるこの家の廊下を恐る恐る歩く。

すると、階段の少し手前に人が倒れている姿が見えた。

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 21:44:11.18 ID:oQgXtHgi0
「ひ!」

梓が脅えて声を出した。

倒れているのは平沢唯のようだ。
うつ伏せの状態で頭から血を流している。

梓は他人の流血している様子を見るのは初めてだったので
ひどく動揺したが、表に出さないようにした。

しかし、唯の不気味な姿はまるで死体のように感じられた。

まさか本当に死んでないだろうかと不安になり、
梓が澪に聞いてみると、

「バットで頭を強く打ったからな。
 血は出ているけど死んではいないと思うよ」

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 21:50:06.76 ID:oQgXtHgi0
「それならいいですけど……」

澪の答えに少し疑問を抱きつつも、梓は階段を下りた。
階段を下りてすぐのところに玄関がある。

ようやくここから脱出できるのだと梓が考えていると、
澪が急に立ち止まった。


「?」


梓が不審に思い、澪にどうかしましたかと尋ねた。

「いや、一つ気になったことがあって。
 梓の顔……赤く腫れているよ」

74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 21:56:20.55 ID:oQgXtHgi0
「え? あ……これは唯にぶたれたんですよ。
 あれは痛かったなぁ。力いっぱい叩かれました」

「……そうなんだ」

「そんなことはどうでもいいですから、早く外に出ましょうよ」


しかし、澪は一歩も動こうとしなかった。

平沢家は不気味な静寂に包まれている。


「あ、あの、どうしましたか先輩?」

梓は不安になりかけてきた。

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 22:02:34.49 ID:oQgXtHgi0
直感で分かるのは、澪の様子が普通ではないということだった。

梓は澪の無言が怖くて、足が震えていた。


「…………うらやましい」


澪が呟いた。


「え?」


76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 22:08:21.14 ID:oQgXtHgi0
現在、梓には澪の後姿しか見えていない。

ずっと澪に手を引かれながらここまで歩いてきたのだ。

気のせいか、澪のロングヘアーが震えている気がした。

梓は恐る恐る話しかけた。

「あの……大丈夫ですか?」

「私は大丈夫だよ。ただ、どうしても我慢できないことがあるんだ」

「な……なにがですか?」

77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 22:14:06.10 ID:oQgXtHgi0
「聞きたい?」

そう言って澪は振り向いたが、梓は悲鳴をあげた。


「ひ!」


澪の目は血走っていて人間のそれではなかった。

しかし、梓はその恐ろしい目に見覚えがあった。


唯の目である。

梓に暴行を加えた時の唯もこのような目をしていた。

78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/12(月) 22:20:08.74 ID:oQgXtHgi0 [51/51]
「やっぱり唯だけずるいよな。梓を独り占めするなんて。
 本当は私だって『あずにゃん』をいじめたいんだよ?」

「いやああああああ!! こないでええええ!!」


梓は両手を突き出して澪を突き飛ばそうとしたが、
がっちりと両手をつかまれてしまった。


「無駄な抵抗はするなよ。
 これから楽しいことをしてあげるから」


澪の獣のような吐息が梓にかかる。


続きます

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