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唯「寅さん?寅さんなのね!」
1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 13:43:23.38 ID:QDSKHt+J0 [1/63]
わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です
帝釈天で産湯を使い、姓は車、名は寅次郎
人呼んでフーテンの寅と発します
わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です
帝釈天で産湯を使い、姓は車、名は寅次郎
人呼んでフーテンの寅と発します
2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 13:45:36.23 ID:QDSKHt+J0 [2/63]
律「よっしゃー練習終わりー」
澪「…」
紬「そうね」
梓「お疲れ様でした」
唯「…」
3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 13:49:13.38 ID:QDSKHt+J0
律「帰ろうぜ」
唯「あ、今日は寄る所があるから先に帰るね・・」
紬「・・うん」
澪「うん、お疲れ」
梓「お疲れ様でした」
澪「唯、最近元気ないな」
紬「そうね・・」
梓「何か悩みでもあるんでしょうか」
4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 13:53:44.83 ID:QDSKHt+J0
憂「お姉ちゃんお帰り」
唯「ただいま」
憂「ご飯もうすぐ出来るよ」
唯「ごめん、今日はいいや・・」
憂「お姉ちゃん…」
唯「ごめんね」
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 13:58:14.04 ID:QDSKHt+J0
唯の部屋
唯「決めた」
唯「明日家を出よう」
唯「お金があまり無いけど・・」
唯「なんとかなるよね」
唯「荷物をまとめて明日は早起きしないと」
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 14:01:08.53 ID:QDSKHt+J0
早朝
唯「こんなもんかな」
唯「あ、ギー太」
唯「よいしょっと」
ギー
バタン
唯「憂、ごめんね」
唯「とりあえず駅に行こうかな」
7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 14:05:29.42 ID:QDSKHt+J0
憂「お姉ちゃん起きてー」
憂「お姉ちゃん?」
憂「いない。あ、手紙」
カサ
憂「そんな…」
ピピピ
憂「電源切ってる…」
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 14:10:22.13 ID:QDSKHt+J0
梓「先輩!」
律「どうした梓?」
梓「憂から聞いたんですが唯先輩が家出したそうです!」
澪「え!」
紬「…」
梓「学校も辞めると書いてあったそうです」
梓「電話も通じません」
律「なんでだよ唯・・」
9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 14:18:29.52 ID:QDSKHt+J0
駅
唯「どこに行こうかな」
唯「うーん、よく分かんないな」
唯「とりあえずこれに乗っちゃえ」
ガタンゴトン
唯「新しい人生の始まりだぁ」
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 14:26:15.53 ID:QDSKHt+J0
唯「遠くまで来ちゃったなぁ」
唯「これから住む所と仕事探さなきゃ」
桜が丘高校
律「どこへ行ったんだよあいつ」
紬「そんなに遠くへは行けないと思うけど」
梓「えぇ」
澪「何が理由なんだろうな」
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 14:30:36.10 ID:QDSKHt+J0
夜
唯「全然駄目だよ・・」
唯「どこも雇ってくれないよ」
唯「これからどうしよう」
グー
唯「お腹へったな・・」
唯「ここの食堂安そうだね」
唯「ここで食べよう」
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 14:34:46.51 ID:QDSKHt+J0
「いらっしゃーい」
唯「ええと」
唯「・・サンマ定食ください」
パクパク
唯「どうしよう・・」
唯「お金もあまり無いし」ガク
唯「あー・・」グッタリ
「ねえちゃん」
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 14:40:39.78 ID:QDSKHt+J0
唯「あー」
「ねえちゃん?」
唯「え、あ、私?」
「あぁ、ねえちゃんだよ」
「浮かない顔してどうしたい?」
唯「え、色々あって・・」
「見たところ学生さんだろ?」
唯「え?、、はい・・」
「おばちゃん、この子にサイダーあげてくれ!」
唯「え?あ、悪いです」
「いいんだよ」
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 14:49:43.26 ID:QDSKHt+J0
「家出でもしたか?」
唯「な!なんで分かるんですか?」
「それくらい分かるよ」
「悪い事は言わねぇから早いとこ帰んな」
唯「・・帰れません」
「そうかい、あんたも色々あるんだな」
「だけどな、こんな所でウロウロしてたら変な奴に絡まれるぞ」
唯「え!そうなんですか?」
「あぁ、ねぇちゃん名前は?」
唯「唯です、平沢唯」
「唯ちゃんか、俺は寅次郎、車寅次郎だ」
唯「寅次郎さん・・」
寅次郎「寅さんでいいよ」
17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 15:00:42.51 ID:QDSKHt+J0
寅次郎「住む所はあるのかい?」
唯「これから探します・・」
寅次郎「もしどこにも行く所が無くなって困ったらな」
寅次郎「葛飾柴又の帝釈天にある「とらや」に行って寅次郎の知り合いだと言えば
そこにいる家族がきっと力になってくれるよ」
唯「葛飾柴又のとらやさん?」
寅次郎「あぁ、おばちゃん!この子の分と一緒に勘定だ!」
唯「えぇー悪いですそんなー!」
寅次郎「いいってことよ」
寅次郎「いいか?困ったらきっと訪ねるんだぞ」
唯「は、はい」
寅次郎「じゃあな」
唯「あ、ありがとうございました!寅さん!」
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 15:09:42.45 ID:QDSKHt+J0
次の日
唯「う・・憂、朝?」
唯「あ・・駅のベンチで寝ちゃったんだ・・」
唯「働く所探さないと」
・・・・・・・・
2日後
唯「やっぱり私だけじゃ駄目だよ・・」
唯「保護者がいないとどこも雇ってくれない」
唯「お金減ってきちゃったな」
唯「あぁ、どうしよう・・」
唯「…」
唯「・・葛飾柴又のとらやさん」
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 15:18:46.69 ID:QDSKHt+J0
唯「えーと、葛飾・・」
唯「結構遠いね」
唯「でも、もう当てがないし」
唯「駄目で元々だし行ってみよう・・」
ガタンゴトン
唯「グーグー」
唯「う、、!」
唯「あ、寝ちゃ駄目だ、乗り過ごしちゃうよ」
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 15:25:19.43 ID:QDSKHt+J0
柴又駅
唯「ふー やっと着いたよ」
唯「えーと、ここからどこへ行けばいいんだろう?」
唯「そこの店の人に聞いてみよう」
唯「すみませーん、とらやさんってどこか分かりませんか?」
・・・・・・
唯「とらやさんって団子屋さんなんだ」
唯「あ、あった とらや」
唯「ごめんくださーい!」
「はーい」
23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 15:32:52.56 ID:QDSKHt+J0
さくら「お団子ですか?」
唯「あ、いいえ、」
唯「こちらに寅次郎さんという方は?」
さくら「兄の知り合い?」
唯「妹さんですか、えぇ一応」
さくら「ちょうど一昨日帰ってきたのよ、ちょっと待ってね」
さくら「あ、お名前は?」
唯「唯です、平沢唯です」
さくら「お兄ちゃん」
26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 15:38:33.97 ID:QDSKHt+J0
寅次郎「あ?」
さくら「唯さんって女の子が訪ねてきてるわよ」
寅次郎「唯?」
寅次郎「あぁ!あの時の定食屋の娘か!」
ダダダ
唯「あ、寅さん・・」
寅次郎「唯ちゃんか?来たかー!」
唯「ごめんなさい、どうしようもなくなって・・」
寅次郎「いいんだいいんだ、座れ座れ!」
寅次郎「さくら!ラムネと団子出してやってくれ!」
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 15:46:56.11 ID:QDSKHt+J0
寅次郎「よく来たなぁ」
唯「ごめんなさい、どこにも行く所が無くなったの」グスン
寅次郎「おいおい、もう大丈夫だぞ!」
寅次郎「ここに住めばいいんだ、俺が面倒見てやる」
唯「グス、うう、、びえーーん!」
寅次郎「辛かったんだな可哀想に、もう大丈夫だ!」
唯「すみません、少しの間だけでいいのでお世話になります・・」グス
寅次郎「遠慮する事ぁねぇ、いつまでもいればいいんだよ」
29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 15:53:35.08 ID:QDSKHt+J0
寅次郎「さくら!今日からこの子うちで預かるぞ!」
さくら「え?」
さくら「唯ちゃん、と言ったわね、歳は?高校生?」
唯「はい、17歳です、でも学校は辞めるつもりです」
さくら「お兄ちゃん未成年よこの子」
寅次郎「そういう話は後だ後!」
寅次郎「疲れてるみたいだから俺の部屋で寝かせてやってくれ!」
さくら「…分かったわ」
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 16:02:49.34 ID:QDSKHt+J0
夜 食卓
さくら「余程疲れてるみたい、グッスリ眠ってるわ」
寅次郎「無理もねぇよ」
おばちゃん「しかし寅ちゃん、未成年だろ?」
博「ちょっとこのままじゃ問題ありますね」
寅次郎「なんだ?お前ら歓迎してやらねぇのか?」
おいちゃん「そうは言うがな寅、人様の娘なんだぞ」
さくら「そうよ、まだ学生よあの子」
寅次郎「あの歳で家出したって事ぁ、余程の事があったんだよ!」
寅次郎「このまま話も聞かずに帰せるかぃ!」
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 16:11:23.54 ID:QDSKHt+J0
寅次郎「今日はもう寝る」
寅次郎「明日よく話を聞いてみらぁ」
おいちゃん「あいつは次から次へと問題を背負い込んでくるなぁ」
翌日
唯「あ、寅さん、おはようございます」
寅次郎「おう!よく眠れたかい?」
唯「おかげさまで」
唯「朝食先に頂いてます」
寅次郎「俺も食うかな」
38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 16:22:22.25 ID:QDSKHt+J0
寅次郎「唯ちゃん、昼からちょっと付き合ってくれよ」
唯「はい?」
寅次郎「買物だよ、とりあえず住むためにいる物を買いに行くぞ」
唯「でも私お金・・」
寅次郎「そんなのは気にするこたぁねえんだ」
唯「ただでさえ迷惑かけてるのに」
寅次郎「迷惑じゃねえよ、じゃあ行くよ、表で待ってな」
寅次郎「さくら、2万ほど貸してくれ、すぐ返すから」
さくら「…」
42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 16:30:33.52 ID:QDSKHt+J0
夕方
寅次郎「ふうー、こんなもんか」
唯「こんなにお世話になって・・ありがとう寅さん・・」
寅次郎「気にすんなよ」
寅次郎「晩飯食って帰るぞ、何が食べたい?スパゲチィか?」
唯「なんでも食べます」
食堂
寅次郎「うまいかい?」
唯「うん、とってもおいしいよ!」
寅次郎「唯ちゃんよ、気が進まないかもしれねぇが何があったか聞かせてくんねぇかな」
唯「…はい」
43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 16:37:34.67 ID:QDSKHt+J0
唯「私は今妹と二人で暮らしています、両親は外国にいる事が多いので、、」
唯「妹はとても出来た子で私の身の回りの世話を全部してくれるんです
私はいつもグータラして今までずっとそれが当たり前だと思ってました」
唯「学校では軽音部に入ってました」
寅次郎「けいおんぶ?」
唯「あ、みんなで集まって楽器を演奏したりする音楽のクラブです
私はギターをやってました」
寅次郎「あの大きい荷物はギターだったのか」
唯「そのクラブでもわたしはダラダラしていました、少し前まではそれで良かったんですが・・」
44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 16:47:02.63 ID:QDSKHt+J0
唯「卒業が近づくに連れて段々不安になって来ました、みんな受験勉強で忙しくなって
なんだか取り残されたような気になりました」
唯「家でも学校でも駄目な私自身が怖くなったんです、
このままみんなに置いて行かれて私一人で・・」グス
唯「その前に自立して一人で生きてみようと決めたんです、
でも、そんなに甘くなくてこんな・・」グスン
唯「寅さんやとらやの方達にも迷惑かけてしまって・・
もうどうしたらいいか・・」グスグス
寅次郎「分かった、唯ちゃんよ?よーく分かったよ」
46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 16:53:12.02 ID:QDSKHt+J0
寅次郎「うちにいて唯ちゃんの気の済むようにしたらいい」
寅次郎「その気なら働く所も見つけてやる、気が済むまでうちにいたらいいよ」
唯「寅さん・・」
寅次郎「もう心配するこたぁねぇ、俺がついてるからな」
唯「ありがとう・・」
寅次郎「一応、妹さんにだけでも連絡して安心させてやったらどうだい?」
唯「あ、そうですね」
47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 16:59:23.70 ID:QDSKHt+J0
ピヒ
唯「あ・・憂?」
唯「・・ごめんね、うん、ごめん」
唯「私の事は心配しないで」
唯「うん、住む所も見つかったの、これからお仕事もするつもり」
唯「許してね、落ち着いたらまた合おう?」
唯「うん、ごめんね」
唯「みんなによろしくね、ごめんと伝えておいて」
唯「心配しないで、また電話するからね」
50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 17:08:19.26 ID:QDSKHt+J0
唯「寅さん、私働きたい」
唯「少しでも自分で出来る事をしないと」
寅次郎「よし!仕事は心当たりがあるから心配するな」
翌日
寅次郎「こっちだ」
唯「え?家の裏?」
寅次郎「ここだ」
唯「印刷工場?」
寅次郎「おう、博もここで働いてるんだ」
54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 17:15:40.32 ID:QDSKHt+J0
ガチャガチャ
唯「わー」
タコ「おう、寅さん」
タコ「君が唯ちゃんかい?」
唯「あ、はい!」
寅次郎「これが社長だ、タコみてぇな面してるが立派な社長だ」
タコ「君にはここで慣れるまで軽い作業をしてもらうけどいいかい?」
唯「あ!はい!これからよろしくお願いします!」
寅次郎「タコ!唯をあんまり扱き使うんじゃねぇぞ」
タコ「うるせぇよ!てめぇも働け!」
私の新しい生活が始まりました
56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 17:22:38.90 ID:QDSKHt+J0
夜
ジリリリ
タコ「よーし、今日はこれまでだ、ご苦労さん」
唯「ふぅ・・」
博「疲れたかい?」
唯「は、はい、今までグータラしてたので、あはは・・」
さくら「どう?頑張れそう?」
唯「はい!一生懸命頑張ります!」
寅次郎「良かったなぁ、唯」
唯「ありがとうね、寅さん」
57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 17:31:03.54 ID:QDSKHt+J0
唯「それでね、さわちゃん先生がね あ、担任でクラブの顧問の先生なんだけど~」
おばちゃん「なんだいその先生は(笑」
さくら「面白い先生ねー」
博「すっかり明るくなりましたね」
寅次郎「あぁ、元々気さくな子だったんだよ」
寅次郎「このまま上手くいってくれたらいいなぁ」
71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 19:14:57.32 ID:QDSKHt+J0
日曜日
ジャラーン ジャーン
唯「今わたしの願いごとが かなうならば翼がほしい」
「この青空に翼をひろげ 飛んでゆきたいよ」
「今 富とか名誉ならばいらないけど 翼がほしい」
「子供のとき夢見たこと 今も同じ夢に見ている」
「悲しみのない自由な空へ 翼はためかせ ゆきたい」
寅次郎「…」
さくら「さすがに上手いわねー」
唯「あ、このアコースティック博さんのですか?勝手に借りてごめんなさい」
寅次郎「唯、それはなんて歌だ?」
唯「翼をください」
唯「これは私の大切な歌なんだー」
唯「軽音部と出会って初めて聞いた曲、軽音部のみんなとの繋がりの切っ掛けになった曲」
寅次郎「いい歌だなぁ」
72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 19:28:30.72 ID:QDSKHt+J0
寅次郎「唯、どうだ?今の暮らしは」
唯「うん、とっても充実してるよ」
唯「みんなみんな優しくて親切にしてくれるし」
唯「全部寅さんのおかげだよ!」
寅次郎「よせやぃ・・」
寅次郎「唯、ここにずっといていいんだぞ」
唯「寅さんもここにいる?」
寅次郎「あぁ、いるさ」
唯「じゃあ居たいかなぁ、あはは」
73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 19:36:28.67 ID:QDSKHt+J0
寅次郎「そうか」
唯「うん!」
さくら「…」
・・・・・・
寅次郎「さくら!売に行ってくらぁ」
さくら「急にどうしたの?お兄ちゃん」
寅次郎「どうしたって、労働だよ 唯だって働いてんだから俺が寝て暮らすわけにはいかねぇだろ」
さくら「・・そうね、行ってらっしゃい」
74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 19:44:15.65 ID:QDSKHt+J0
ブロロロロ
「ここですね」
「そうみたいね」
おばちゃん「さくらちゃん、うちの前になんか大きな車が止まったよ」
さくら「外車みたいね」
「通行の邪魔になるから向こうで待ってて」
「はい」
「ごめんください」
78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 19:53:35.17 ID:QDSKHt+J0
さくら「はい」
さくら「なにかご用でしょうか?」
紬「初めまして、私は桜が丘高校3年の琴吹紬と申します」
さくら「もしかして、唯ちゃんのお友達?」
紬「はい、やはりこちらに 唯さんはご在宅でしょうか?」
さくら「唯ちゃんは今お仕事してるの、ちょっと待っててね」
紬「はい」
さくら「唯ちゃん」
唯「はーい」
さくら「お客様よ」
唯「…」
唯「でも仕事中だし」
80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 20:00:00.90 ID:QDSKHt+J0
博「いいよ、行ってきたら」
唯「はい・・ すぐ戻ってきます」
唯「あ、」
紬「唯ちゃん、久しぶりね・・」
唯「ムギちゃん・・」
さくら「上の部屋でお話ししたら?」
唯「はい」
83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 20:06:22.83 ID:QDSKHt+J0
紬「いきなりおしかけてごめんなさい」
紬「勝手に調査した事も悪いと思ってる」
唯「こっちこそ・・ 黙って出て来てごめん・・」
紬「お仕事してるみたいね」
唯「うん・・」
紬「辛くない?」
唯「辛くないよ、今の生活が好き・・」
紬「そう・・」
唯「あの・・ みんなは、怒ってる・・?」
紬「最初はね、怒ってたわ」
84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 20:12:04.55 ID:QDSKHt+J0
紬「でも唯ちゃんが悩んでたのに頼りにならなかった事でみんな自分を責めてる」
紬「もちろん私も」
紬「私達や憂ちゃんじゃ解決できない事なの?」
唯「…」
紬「・・戻ってきて欲しい」
紬「今は休学届けを出してあるから」
唯「ごめんムギちゃん、私仕事の途中なんだ」スッ
紬「待って!」
85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 20:20:26.05 ID:QDSKHt+J0
紬「もちろん軽音部の活動はみんな今も続けてるわ」
紬「勉強しながらも、みんなライブに向けて頑張ってる」
紬「唯ちゃんがリードギター前提にね」
唯「…」
紬「お仕事の邪魔をしてごめんなさい」
紬「待ってるからね唯ちゃん」
唯「…」
紬「突然お邪魔して申し訳ありませんでした」
おばちゃん「まぁまぁ、お茶も出さないで」
さくら「お話し出来たの?」
紬「はい・・唯ちゃんの事よろしくお願いします」
89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 20:27:00.64 ID:QDSKHt+J0
寅次郎「唯~! 寅さんが帰ってきたぞ~」
寅次郎「唯はどこだ?もう工場終っただろ?」
さくら「ちょっと散歩に行ってくるって」
さくら「・・お兄ちゃん、昼に唯ちゃんの高校の友達が訪ねてきたの」
おばちゃん「べっぴんさんでお嬢様みたいなのがさ、大きな車で」
さくら「唯ちゃん、ちょっと迷ってるみたい」
寅次郎「…」
92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 20:34:33.36 ID:QDSKHt+J0
寅次郎「探してくらぁ」
さくら「お兄ちゃん!」
寅次郎「おい、源公!唯見なかったか?」
源「へい、さっきまで河川敷にいやした」
寅次郎「よし!」ダッ
源「兄貴ぃ」
寅次郎「いやがった」ハァハァ
寅次郎「おーい唯!」
唯「寅さん?」
唯「どうしたの?」
94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 20:41:46.96 ID:QDSKHt+J0
寅次郎「あ、あぁ 一緒に晩飯を食いに行こうと思ってな」
唯「え?今から?」
寅次郎「おうよ、行くぞ」
唯「寅さん」
食堂
寅次郎「あー、んー 今日ダチが来たんだって?」
唯「!・・うん」
寅次郎「連れ戻しに来やがったのか?」
唯「…」
寅次郎「騙されるんじゃねぇぞ」
寅次郎「お前の気持ちも察しがつかなかった奴らだ」
唯「…寅さん、悪く言うのはやめて・・」
寅次郎「そんな奴らに今更お前を」
唯「やめて!」
96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 20:48:01.25 ID:QDSKHt+J0
唯「やめて、ね?」
寅次郎「…」
寅次郎「でもな、」
「おまちどう、サンマ定食とレバニラ定食」
寅次郎「…」
唯「寅さん」
寅次郎「ん?」
唯「寅さんと最初に出会った所でも食べたサンマ定食だよー」
唯「あ、あの時も、、寅さんがごちそうしてくれたよね」グス
寅次郎「…あぁ、そうだったな」
・・・・・・・・・・・
・・・・・・
98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 20:53:59.21 ID:QDSKHt+J0
さくら「唯ちゃんどう?」
博「うん、仕事は頑張ってるけど元気が無いな」
おいちゃん「あんなに明るい子だったのになぁ」
おばちゃん「やっぱり家に帰りたくなったんじゃないのかねぇ」
さくら「お兄ちゃんもすっかり大人しくなっちゃって」
99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 21:00:14.66 ID:QDSKHt+J0
ジャーン ジャラーン
唯「悲しみのない自由な空へ 翼はためかせ~」
寅次郎「唯」
唯「え?」
寅次郎「俺ゃあ明日から旅に出る事になったのよ」
唯「どうして・・?」
唯「わたしのせい!?」
寅次郎「関係ねぇよ」
寅次郎「俺ゃあ元々商売しながら渡り鳥みてぇに日本中を旅して回る渡世人よ」
唯「でも明日って急すぎる・・」
101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 21:07:16.58 ID:QDSKHt+J0
寅次郎「いつもそうなんだよ」
唯「どうしても行かないと駄目なの?」
唯「寅さんここにいるって言ったじゃない!」
寅次郎「…大人にゃあ色々都合ってモンがあるのよ」
寅次郎「お前もそのうち分かるよ」
唯「私のせいだ・・」グスグス
寅次郎「唯、お前が本当の顔を見せたのはギターを弾いてる時だけだった気がするよ」
唯「…」グス
寅次郎「後悔しないようにな、俺みてぇな大人になっちゃ駄目だぞ」
唯「寅さん!」
寅次郎「お休み」
102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 21:14:30.84 ID:QDSKHt+J0
朝、居間に行くと寅さんはもう旅立った後でした
さくら「唯ちゃん、気にしちゃ駄目よ」
さくら「お兄ちゃんはいつもこうなの、自分勝手でね」
さくら「あの人は一つの所へじっとしていられない性分なのよ」
唯「悲しみのない自由な空へ、か・・」
唯「さようなら、寅さん」
104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 21:25:50.81 ID:QDSKHt+J0
それから間も無く私は家に帰りました
とらや、や工場の皆さんには沢山お世話になりました
軽音部のみんなや憂や先生にも迷惑かけてしまって
それからはライブの練習と遅れてしまった勉強の毎日でした
時間は瞬く間に過ぎて行きます
さくら「お兄ちゃんの事をどう思ってた?」
さくらさんに最後に聞かれた事をよく思い出します
さくらさんはその後すぐに、「いいの、ごめんなさい」と濁したけど
わたしは・・
105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 21:31:32.72 ID:QDSKHt+J0
ライブの日がやってきました
梓「とうとう来ましたね」
澪「ううう」ガクガク
律「よーし、やってやるぜ!」
紬「おーー!」
唯「頑張ろうねみんな!」
三曲目が終った
最後の曲
「ふわふわ時間」
107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 21:41:35.75 ID:QDSKHt+J0
唯「キミを見てると~」
唯「夢の中なら二人の距離~」
(浮かない顔してどうしたい?)
唯「あぁ カミサマお願い~」
(ここに住めばいいんだ、俺が面倒見てやる)
唯「二人だけのDream Timeください」
(もう心配するこたぁねぇ、俺がついてるからな)
なぜか今、思い出す
涙が出そうになる
(唯、お前が本当の顔を見せたのはギターを弾いてる時だけだった気がするよ)
!
あの入り口の帽子の人!
109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 21:49:07.44 ID:QDSKHt+J0
寅さんだ!
唯「ふわふわ時間 ふわふわ時間」
ジャジャ ジャジャ ジャーン
終った・・
ごめんみんな!先に行くね!
澪「おい、唯!」
唯「寅さん?」
外に出る
確かにこっちを見て笑ってた
唯「寅さんどこ?」
「さっき歌ってた平沢唯さんですよね?」
唯「は、はい」
「これ男の人が渡してくれって」
110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 21:56:40.90 ID:QDSKHt+J0
唯「ありがとう・・」
唯「手紙・・」
「拝啓、ひらさわゆい様 お前の大切な歌やらなかったな、俺も好きだったのによ、
まぁいい、またいつかあれをききにくるぜ。 車寅次郎」
唯「寅さん!やっぱり寅さんだったんだ!」
絶対絶対いつか聴きに来てね、寅さん 大好きだよ
112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 22:01:42.37 ID:QDSKHt+J0
寅次郎「今、富とか名誉ならばいらないけど翼がほしい・・か」
「なんだそりゃ」
寅次郎「おめぇみてぇな無学な人間にゃあ理解できない芸術ってやつよ」
「ぬかせ、てめぇが芸術だと」
寅次郎「あぁ嫌だ嫌だ、下品な男にゃうんざりだ」
寅次郎「よし!商売だ!」
113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 22:04:01.43 ID:QDSKHt+J0
さて、いいかねお客さん!
角は一流デパート、赤木屋、黒木屋、白木屋さんで、紅、白粉つけたお姉ちゃんから下さい頂だいでいただきますと5千が6千、7千が8千、1万円はする品物だが、今日はそれだけ下さいとは言わない!
いいかいい! ハイ! ならんだ数字がまず一つ 物のはじまリが一ならば 国の始まりが大和の国 島の始まりが淡路島 泥棒の始まりが石川の五右衛門なら 助平の始まりがこのオジサンっての、ネ!
笑っちゃいけないよ 助平ってわかるんだから目つき見リや。
四谷赤坂麹町、チャラチャラ流れるお茶の水 粋な姐ちゃん立ち小便 白く咲いたか百合の花
四角四面は豆腐屋の娘 色は白いが水臭い 一度変われば二度変わる 三度変われば、
四度変わる 淀の川瀬の水車、誰を待つやらくるくると ゴホンゴホンと混さんが、口の浜辺でねえ、
あなた、私しゃあなたの妻じゃもの 妻は妻でも坂妻と来やがった。
どうホラ! これで買い手が無かったら あたし浅野内匠頭じゃないけど 腹切ったつもり、
だめか、えー チキショウー。
全くねぇ、今日はしょうがねえ、貧乏人の行列だ、まぁ、いいよ。
いいっていいって帰んなさい。みんないなくなっちゃったね。
どうおじいちゃん。
完
118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 22:11:34.74 ID:QDSKHt+J0 [62/63]
毎年この曜日のこの時間にはよく、男はつらいよTVでやってたのに
今じゃさっぱりやらないので寂しいです。
なんでやらないんだろうね、DVD買えって事かな?
最後の啖呵は某サイトから勝手に貼ってしまった。
見てくれてありがとう。
124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 23:27:06.78 ID:zevuj3dE0 [7/7]
唯たちが卒業した後、軽音部で一人になってしまった梓。
先輩達のいない寂しさに、
軽音部が終わるかもしれない焦りに、
受験勉強の忙しさに、打ち拉がれる日々。
そんなある日、桜高軽音部に絵はがきが届く。
『拝啓 平沢唯様』
それは唯が卒業したことを知らない寅次郎が送ったものだった。
「寅さん……か…… どんな人なんだろう……」
男はつらいよ 寅次郎と迷子の仔猫(あずにゃん)
が読みたいと思った俺のベストヒロインは榊原るみ
126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/05(月) 00:04:54.41 ID:QDSKHt+J0 [63/63]
>>124
榊原るみ良かったよな、あの知的障害者の役の話が1番好きだわ。
また見たくなってきたよ。
律「よっしゃー練習終わりー」
澪「…」
紬「そうね」
梓「お疲れ様でした」
唯「…」
3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 13:49:13.38 ID:QDSKHt+J0
律「帰ろうぜ」
唯「あ、今日は寄る所があるから先に帰るね・・」
紬「・・うん」
澪「うん、お疲れ」
梓「お疲れ様でした」
澪「唯、最近元気ないな」
紬「そうね・・」
梓「何か悩みでもあるんでしょうか」
4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 13:53:44.83 ID:QDSKHt+J0
憂「お姉ちゃんお帰り」
唯「ただいま」
憂「ご飯もうすぐ出来るよ」
唯「ごめん、今日はいいや・・」
憂「お姉ちゃん…」
唯「ごめんね」
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 13:58:14.04 ID:QDSKHt+J0
唯の部屋
唯「決めた」
唯「明日家を出よう」
唯「お金があまり無いけど・・」
唯「なんとかなるよね」
唯「荷物をまとめて明日は早起きしないと」
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 14:01:08.53 ID:QDSKHt+J0
早朝
唯「こんなもんかな」
唯「あ、ギー太」
唯「よいしょっと」
ギー
バタン
唯「憂、ごめんね」
唯「とりあえず駅に行こうかな」
7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 14:05:29.42 ID:QDSKHt+J0
憂「お姉ちゃん起きてー」
憂「お姉ちゃん?」
憂「いない。あ、手紙」
カサ
憂「そんな…」
ピピピ
憂「電源切ってる…」
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 14:10:22.13 ID:QDSKHt+J0
梓「先輩!」
律「どうした梓?」
梓「憂から聞いたんですが唯先輩が家出したそうです!」
澪「え!」
紬「…」
梓「学校も辞めると書いてあったそうです」
梓「電話も通じません」
律「なんでだよ唯・・」
9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 14:18:29.52 ID:QDSKHt+J0
駅
唯「どこに行こうかな」
唯「うーん、よく分かんないな」
唯「とりあえずこれに乗っちゃえ」
ガタンゴトン
唯「新しい人生の始まりだぁ」
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 14:26:15.53 ID:QDSKHt+J0
唯「遠くまで来ちゃったなぁ」
唯「これから住む所と仕事探さなきゃ」
桜が丘高校
律「どこへ行ったんだよあいつ」
紬「そんなに遠くへは行けないと思うけど」
梓「えぇ」
澪「何が理由なんだろうな」
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 14:30:36.10 ID:QDSKHt+J0
夜
唯「全然駄目だよ・・」
唯「どこも雇ってくれないよ」
唯「これからどうしよう」
グー
唯「お腹へったな・・」
唯「ここの食堂安そうだね」
唯「ここで食べよう」
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 14:34:46.51 ID:QDSKHt+J0
「いらっしゃーい」
唯「ええと」
唯「・・サンマ定食ください」
パクパク
唯「どうしよう・・」
唯「お金もあまり無いし」ガク
唯「あー・・」グッタリ
「ねえちゃん」
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 14:40:39.78 ID:QDSKHt+J0
唯「あー」
「ねえちゃん?」
唯「え、あ、私?」
「あぁ、ねえちゃんだよ」
「浮かない顔してどうしたい?」
唯「え、色々あって・・」
「見たところ学生さんだろ?」
唯「え?、、はい・・」
「おばちゃん、この子にサイダーあげてくれ!」
唯「え?あ、悪いです」
「いいんだよ」
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 14:49:43.26 ID:QDSKHt+J0
「家出でもしたか?」
唯「な!なんで分かるんですか?」
「それくらい分かるよ」
「悪い事は言わねぇから早いとこ帰んな」
唯「・・帰れません」
「そうかい、あんたも色々あるんだな」
「だけどな、こんな所でウロウロしてたら変な奴に絡まれるぞ」
唯「え!そうなんですか?」
「あぁ、ねぇちゃん名前は?」
唯「唯です、平沢唯」
「唯ちゃんか、俺は寅次郎、車寅次郎だ」
唯「寅次郎さん・・」
寅次郎「寅さんでいいよ」
17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 15:00:42.51 ID:QDSKHt+J0
寅次郎「住む所はあるのかい?」
唯「これから探します・・」
寅次郎「もしどこにも行く所が無くなって困ったらな」
寅次郎「葛飾柴又の帝釈天にある「とらや」に行って寅次郎の知り合いだと言えば
そこにいる家族がきっと力になってくれるよ」
唯「葛飾柴又のとらやさん?」
寅次郎「あぁ、おばちゃん!この子の分と一緒に勘定だ!」
唯「えぇー悪いですそんなー!」
寅次郎「いいってことよ」
寅次郎「いいか?困ったらきっと訪ねるんだぞ」
唯「は、はい」
寅次郎「じゃあな」
唯「あ、ありがとうございました!寅さん!」
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 15:09:42.45 ID:QDSKHt+J0
次の日
唯「う・・憂、朝?」
唯「あ・・駅のベンチで寝ちゃったんだ・・」
唯「働く所探さないと」
・・・・・・・・
2日後
唯「やっぱり私だけじゃ駄目だよ・・」
唯「保護者がいないとどこも雇ってくれない」
唯「お金減ってきちゃったな」
唯「あぁ、どうしよう・・」
唯「…」
唯「・・葛飾柴又のとらやさん」
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 15:18:46.69 ID:QDSKHt+J0
唯「えーと、葛飾・・」
唯「結構遠いね」
唯「でも、もう当てがないし」
唯「駄目で元々だし行ってみよう・・」
ガタンゴトン
唯「グーグー」
唯「う、、!」
唯「あ、寝ちゃ駄目だ、乗り過ごしちゃうよ」
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 15:25:19.43 ID:QDSKHt+J0
柴又駅
唯「ふー やっと着いたよ」
唯「えーと、ここからどこへ行けばいいんだろう?」
唯「そこの店の人に聞いてみよう」
唯「すみませーん、とらやさんってどこか分かりませんか?」
・・・・・・
唯「とらやさんって団子屋さんなんだ」
唯「あ、あった とらや」
唯「ごめんくださーい!」
「はーい」
23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 15:32:52.56 ID:QDSKHt+J0
さくら「お団子ですか?」
唯「あ、いいえ、」
唯「こちらに寅次郎さんという方は?」
さくら「兄の知り合い?」
唯「妹さんですか、えぇ一応」
さくら「ちょうど一昨日帰ってきたのよ、ちょっと待ってね」
さくら「あ、お名前は?」
唯「唯です、平沢唯です」
さくら「お兄ちゃん」
26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 15:38:33.97 ID:QDSKHt+J0
寅次郎「あ?」
さくら「唯さんって女の子が訪ねてきてるわよ」
寅次郎「唯?」
寅次郎「あぁ!あの時の定食屋の娘か!」
ダダダ
唯「あ、寅さん・・」
寅次郎「唯ちゃんか?来たかー!」
唯「ごめんなさい、どうしようもなくなって・・」
寅次郎「いいんだいいんだ、座れ座れ!」
寅次郎「さくら!ラムネと団子出してやってくれ!」
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 15:46:56.11 ID:QDSKHt+J0
寅次郎「よく来たなぁ」
唯「ごめんなさい、どこにも行く所が無くなったの」グスン
寅次郎「おいおい、もう大丈夫だぞ!」
寅次郎「ここに住めばいいんだ、俺が面倒見てやる」
唯「グス、うう、、びえーーん!」
寅次郎「辛かったんだな可哀想に、もう大丈夫だ!」
唯「すみません、少しの間だけでいいのでお世話になります・・」グス
寅次郎「遠慮する事ぁねぇ、いつまでもいればいいんだよ」
29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 15:53:35.08 ID:QDSKHt+J0
寅次郎「さくら!今日からこの子うちで預かるぞ!」
さくら「え?」
さくら「唯ちゃん、と言ったわね、歳は?高校生?」
唯「はい、17歳です、でも学校は辞めるつもりです」
さくら「お兄ちゃん未成年よこの子」
寅次郎「そういう話は後だ後!」
寅次郎「疲れてるみたいだから俺の部屋で寝かせてやってくれ!」
さくら「…分かったわ」
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 16:02:49.34 ID:QDSKHt+J0
夜 食卓
さくら「余程疲れてるみたい、グッスリ眠ってるわ」
寅次郎「無理もねぇよ」
おばちゃん「しかし寅ちゃん、未成年だろ?」
博「ちょっとこのままじゃ問題ありますね」
寅次郎「なんだ?お前ら歓迎してやらねぇのか?」
おいちゃん「そうは言うがな寅、人様の娘なんだぞ」
さくら「そうよ、まだ学生よあの子」
寅次郎「あの歳で家出したって事ぁ、余程の事があったんだよ!」
寅次郎「このまま話も聞かずに帰せるかぃ!」
37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 16:11:23.54 ID:QDSKHt+J0
寅次郎「今日はもう寝る」
寅次郎「明日よく話を聞いてみらぁ」
おいちゃん「あいつは次から次へと問題を背負い込んでくるなぁ」
翌日
唯「あ、寅さん、おはようございます」
寅次郎「おう!よく眠れたかい?」
唯「おかげさまで」
唯「朝食先に頂いてます」
寅次郎「俺も食うかな」
38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 16:22:22.25 ID:QDSKHt+J0
寅次郎「唯ちゃん、昼からちょっと付き合ってくれよ」
唯「はい?」
寅次郎「買物だよ、とりあえず住むためにいる物を買いに行くぞ」
唯「でも私お金・・」
寅次郎「そんなのは気にするこたぁねえんだ」
唯「ただでさえ迷惑かけてるのに」
寅次郎「迷惑じゃねえよ、じゃあ行くよ、表で待ってな」
寅次郎「さくら、2万ほど貸してくれ、すぐ返すから」
さくら「…」
42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 16:30:33.52 ID:QDSKHt+J0
夕方
寅次郎「ふうー、こんなもんか」
唯「こんなにお世話になって・・ありがとう寅さん・・」
寅次郎「気にすんなよ」
寅次郎「晩飯食って帰るぞ、何が食べたい?スパゲチィか?」
唯「なんでも食べます」
食堂
寅次郎「うまいかい?」
唯「うん、とってもおいしいよ!」
寅次郎「唯ちゃんよ、気が進まないかもしれねぇが何があったか聞かせてくんねぇかな」
唯「…はい」
43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 16:37:34.67 ID:QDSKHt+J0
唯「私は今妹と二人で暮らしています、両親は外国にいる事が多いので、、」
唯「妹はとても出来た子で私の身の回りの世話を全部してくれるんです
私はいつもグータラして今までずっとそれが当たり前だと思ってました」
唯「学校では軽音部に入ってました」
寅次郎「けいおんぶ?」
唯「あ、みんなで集まって楽器を演奏したりする音楽のクラブです
私はギターをやってました」
寅次郎「あの大きい荷物はギターだったのか」
唯「そのクラブでもわたしはダラダラしていました、少し前まではそれで良かったんですが・・」
44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 16:47:02.63 ID:QDSKHt+J0
唯「卒業が近づくに連れて段々不安になって来ました、みんな受験勉強で忙しくなって
なんだか取り残されたような気になりました」
唯「家でも学校でも駄目な私自身が怖くなったんです、
このままみんなに置いて行かれて私一人で・・」グス
唯「その前に自立して一人で生きてみようと決めたんです、
でも、そんなに甘くなくてこんな・・」グスン
唯「寅さんやとらやの方達にも迷惑かけてしまって・・
もうどうしたらいいか・・」グスグス
寅次郎「分かった、唯ちゃんよ?よーく分かったよ」
46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 16:53:12.02 ID:QDSKHt+J0
寅次郎「うちにいて唯ちゃんの気の済むようにしたらいい」
寅次郎「その気なら働く所も見つけてやる、気が済むまでうちにいたらいいよ」
唯「寅さん・・」
寅次郎「もう心配するこたぁねぇ、俺がついてるからな」
唯「ありがとう・・」
寅次郎「一応、妹さんにだけでも連絡して安心させてやったらどうだい?」
唯「あ、そうですね」
47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 16:59:23.70 ID:QDSKHt+J0
ピヒ
唯「あ・・憂?」
唯「・・ごめんね、うん、ごめん」
唯「私の事は心配しないで」
唯「うん、住む所も見つかったの、これからお仕事もするつもり」
唯「許してね、落ち着いたらまた合おう?」
唯「うん、ごめんね」
唯「みんなによろしくね、ごめんと伝えておいて」
唯「心配しないで、また電話するからね」
50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 17:08:19.26 ID:QDSKHt+J0
唯「寅さん、私働きたい」
唯「少しでも自分で出来る事をしないと」
寅次郎「よし!仕事は心当たりがあるから心配するな」
翌日
寅次郎「こっちだ」
唯「え?家の裏?」
寅次郎「ここだ」
唯「印刷工場?」
寅次郎「おう、博もここで働いてるんだ」
54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 17:15:40.32 ID:QDSKHt+J0
ガチャガチャ
唯「わー」
タコ「おう、寅さん」
タコ「君が唯ちゃんかい?」
唯「あ、はい!」
寅次郎「これが社長だ、タコみてぇな面してるが立派な社長だ」
タコ「君にはここで慣れるまで軽い作業をしてもらうけどいいかい?」
唯「あ!はい!これからよろしくお願いします!」
寅次郎「タコ!唯をあんまり扱き使うんじゃねぇぞ」
タコ「うるせぇよ!てめぇも働け!」
私の新しい生活が始まりました
56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 17:22:38.90 ID:QDSKHt+J0
夜
ジリリリ
タコ「よーし、今日はこれまでだ、ご苦労さん」
唯「ふぅ・・」
博「疲れたかい?」
唯「は、はい、今までグータラしてたので、あはは・・」
さくら「どう?頑張れそう?」
唯「はい!一生懸命頑張ります!」
寅次郎「良かったなぁ、唯」
唯「ありがとうね、寅さん」
57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 17:31:03.54 ID:QDSKHt+J0
唯「それでね、さわちゃん先生がね あ、担任でクラブの顧問の先生なんだけど~」
おばちゃん「なんだいその先生は(笑」
さくら「面白い先生ねー」
博「すっかり明るくなりましたね」
寅次郎「あぁ、元々気さくな子だったんだよ」
寅次郎「このまま上手くいってくれたらいいなぁ」
71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 19:14:57.32 ID:QDSKHt+J0
日曜日
ジャラーン ジャーン
唯「今わたしの願いごとが かなうならば翼がほしい」
「この青空に翼をひろげ 飛んでゆきたいよ」
「今 富とか名誉ならばいらないけど 翼がほしい」
「子供のとき夢見たこと 今も同じ夢に見ている」
「悲しみのない自由な空へ 翼はためかせ ゆきたい」
寅次郎「…」
さくら「さすがに上手いわねー」
唯「あ、このアコースティック博さんのですか?勝手に借りてごめんなさい」
寅次郎「唯、それはなんて歌だ?」
唯「翼をください」
唯「これは私の大切な歌なんだー」
唯「軽音部と出会って初めて聞いた曲、軽音部のみんなとの繋がりの切っ掛けになった曲」
寅次郎「いい歌だなぁ」
72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 19:28:30.72 ID:QDSKHt+J0
寅次郎「唯、どうだ?今の暮らしは」
唯「うん、とっても充実してるよ」
唯「みんなみんな優しくて親切にしてくれるし」
唯「全部寅さんのおかげだよ!」
寅次郎「よせやぃ・・」
寅次郎「唯、ここにずっといていいんだぞ」
唯「寅さんもここにいる?」
寅次郎「あぁ、いるさ」
唯「じゃあ居たいかなぁ、あはは」
73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 19:36:28.67 ID:QDSKHt+J0
寅次郎「そうか」
唯「うん!」
さくら「…」
・・・・・・
寅次郎「さくら!売に行ってくらぁ」
さくら「急にどうしたの?お兄ちゃん」
寅次郎「どうしたって、労働だよ 唯だって働いてんだから俺が寝て暮らすわけにはいかねぇだろ」
さくら「・・そうね、行ってらっしゃい」
74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 19:44:15.65 ID:QDSKHt+J0
ブロロロロ
「ここですね」
「そうみたいね」
おばちゃん「さくらちゃん、うちの前になんか大きな車が止まったよ」
さくら「外車みたいね」
「通行の邪魔になるから向こうで待ってて」
「はい」
「ごめんください」
78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 19:53:35.17 ID:QDSKHt+J0
さくら「はい」
さくら「なにかご用でしょうか?」
紬「初めまして、私は桜が丘高校3年の琴吹紬と申します」
さくら「もしかして、唯ちゃんのお友達?」
紬「はい、やはりこちらに 唯さんはご在宅でしょうか?」
さくら「唯ちゃんは今お仕事してるの、ちょっと待っててね」
紬「はい」
さくら「唯ちゃん」
唯「はーい」
さくら「お客様よ」
唯「…」
唯「でも仕事中だし」
80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 20:00:00.90 ID:QDSKHt+J0
博「いいよ、行ってきたら」
唯「はい・・ すぐ戻ってきます」
唯「あ、」
紬「唯ちゃん、久しぶりね・・」
唯「ムギちゃん・・」
さくら「上の部屋でお話ししたら?」
唯「はい」
83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 20:06:22.83 ID:QDSKHt+J0
紬「いきなりおしかけてごめんなさい」
紬「勝手に調査した事も悪いと思ってる」
唯「こっちこそ・・ 黙って出て来てごめん・・」
紬「お仕事してるみたいね」
唯「うん・・」
紬「辛くない?」
唯「辛くないよ、今の生活が好き・・」
紬「そう・・」
唯「あの・・ みんなは、怒ってる・・?」
紬「最初はね、怒ってたわ」
84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 20:12:04.55 ID:QDSKHt+J0
紬「でも唯ちゃんが悩んでたのに頼りにならなかった事でみんな自分を責めてる」
紬「もちろん私も」
紬「私達や憂ちゃんじゃ解決できない事なの?」
唯「…」
紬「・・戻ってきて欲しい」
紬「今は休学届けを出してあるから」
唯「ごめんムギちゃん、私仕事の途中なんだ」スッ
紬「待って!」
85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 20:20:26.05 ID:QDSKHt+J0
紬「もちろん軽音部の活動はみんな今も続けてるわ」
紬「勉強しながらも、みんなライブに向けて頑張ってる」
紬「唯ちゃんがリードギター前提にね」
唯「…」
紬「お仕事の邪魔をしてごめんなさい」
紬「待ってるからね唯ちゃん」
唯「…」
紬「突然お邪魔して申し訳ありませんでした」
おばちゃん「まぁまぁ、お茶も出さないで」
さくら「お話し出来たの?」
紬「はい・・唯ちゃんの事よろしくお願いします」
89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 20:27:00.64 ID:QDSKHt+J0
寅次郎「唯~! 寅さんが帰ってきたぞ~」
寅次郎「唯はどこだ?もう工場終っただろ?」
さくら「ちょっと散歩に行ってくるって」
さくら「・・お兄ちゃん、昼に唯ちゃんの高校の友達が訪ねてきたの」
おばちゃん「べっぴんさんでお嬢様みたいなのがさ、大きな車で」
さくら「唯ちゃん、ちょっと迷ってるみたい」
寅次郎「…」
92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 20:34:33.36 ID:QDSKHt+J0
寅次郎「探してくらぁ」
さくら「お兄ちゃん!」
寅次郎「おい、源公!唯見なかったか?」
源「へい、さっきまで河川敷にいやした」
寅次郎「よし!」ダッ
源「兄貴ぃ」
寅次郎「いやがった」ハァハァ
寅次郎「おーい唯!」
唯「寅さん?」
唯「どうしたの?」
94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 20:41:46.96 ID:QDSKHt+J0
寅次郎「あ、あぁ 一緒に晩飯を食いに行こうと思ってな」
唯「え?今から?」
寅次郎「おうよ、行くぞ」
唯「寅さん」
食堂
寅次郎「あー、んー 今日ダチが来たんだって?」
唯「!・・うん」
寅次郎「連れ戻しに来やがったのか?」
唯「…」
寅次郎「騙されるんじゃねぇぞ」
寅次郎「お前の気持ちも察しがつかなかった奴らだ」
唯「…寅さん、悪く言うのはやめて・・」
寅次郎「そんな奴らに今更お前を」
唯「やめて!」
96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 20:48:01.25 ID:QDSKHt+J0
唯「やめて、ね?」
寅次郎「…」
寅次郎「でもな、」
「おまちどう、サンマ定食とレバニラ定食」
寅次郎「…」
唯「寅さん」
寅次郎「ん?」
唯「寅さんと最初に出会った所でも食べたサンマ定食だよー」
唯「あ、あの時も、、寅さんがごちそうしてくれたよね」グス
寅次郎「…あぁ、そうだったな」
・・・・・・・・・・・
・・・・・・
98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 20:53:59.21 ID:QDSKHt+J0
さくら「唯ちゃんどう?」
博「うん、仕事は頑張ってるけど元気が無いな」
おいちゃん「あんなに明るい子だったのになぁ」
おばちゃん「やっぱり家に帰りたくなったんじゃないのかねぇ」
さくら「お兄ちゃんもすっかり大人しくなっちゃって」
99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 21:00:14.66 ID:QDSKHt+J0
ジャーン ジャラーン
唯「悲しみのない自由な空へ 翼はためかせ~」
寅次郎「唯」
唯「え?」
寅次郎「俺ゃあ明日から旅に出る事になったのよ」
唯「どうして・・?」
唯「わたしのせい!?」
寅次郎「関係ねぇよ」
寅次郎「俺ゃあ元々商売しながら渡り鳥みてぇに日本中を旅して回る渡世人よ」
唯「でも明日って急すぎる・・」
101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 21:07:16.58 ID:QDSKHt+J0
寅次郎「いつもそうなんだよ」
唯「どうしても行かないと駄目なの?」
唯「寅さんここにいるって言ったじゃない!」
寅次郎「…大人にゃあ色々都合ってモンがあるのよ」
寅次郎「お前もそのうち分かるよ」
唯「私のせいだ・・」グスグス
寅次郎「唯、お前が本当の顔を見せたのはギターを弾いてる時だけだった気がするよ」
唯「…」グス
寅次郎「後悔しないようにな、俺みてぇな大人になっちゃ駄目だぞ」
唯「寅さん!」
寅次郎「お休み」
102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 21:14:30.84 ID:QDSKHt+J0
朝、居間に行くと寅さんはもう旅立った後でした
さくら「唯ちゃん、気にしちゃ駄目よ」
さくら「お兄ちゃんはいつもこうなの、自分勝手でね」
さくら「あの人は一つの所へじっとしていられない性分なのよ」
唯「悲しみのない自由な空へ、か・・」
唯「さようなら、寅さん」
104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 21:25:50.81 ID:QDSKHt+J0
それから間も無く私は家に帰りました
とらや、や工場の皆さんには沢山お世話になりました
軽音部のみんなや憂や先生にも迷惑かけてしまって
それからはライブの練習と遅れてしまった勉強の毎日でした
時間は瞬く間に過ぎて行きます
さくら「お兄ちゃんの事をどう思ってた?」
さくらさんに最後に聞かれた事をよく思い出します
さくらさんはその後すぐに、「いいの、ごめんなさい」と濁したけど
わたしは・・
105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 21:31:32.72 ID:QDSKHt+J0
ライブの日がやってきました
梓「とうとう来ましたね」
澪「ううう」ガクガク
律「よーし、やってやるぜ!」
紬「おーー!」
唯「頑張ろうねみんな!」
三曲目が終った
最後の曲
「ふわふわ時間」
107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 21:41:35.75 ID:QDSKHt+J0
唯「キミを見てると~」
唯「夢の中なら二人の距離~」
(浮かない顔してどうしたい?)
唯「あぁ カミサマお願い~」
(ここに住めばいいんだ、俺が面倒見てやる)
唯「二人だけのDream Timeください」
(もう心配するこたぁねぇ、俺がついてるからな)
なぜか今、思い出す
涙が出そうになる
(唯、お前が本当の顔を見せたのはギターを弾いてる時だけだった気がするよ)
!
あの入り口の帽子の人!
109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 21:49:07.44 ID:QDSKHt+J0
寅さんだ!
唯「ふわふわ時間 ふわふわ時間」
ジャジャ ジャジャ ジャーン
終った・・
ごめんみんな!先に行くね!
澪「おい、唯!」
唯「寅さん?」
外に出る
確かにこっちを見て笑ってた
唯「寅さんどこ?」
「さっき歌ってた平沢唯さんですよね?」
唯「は、はい」
「これ男の人が渡してくれって」
110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 21:56:40.90 ID:QDSKHt+J0
唯「ありがとう・・」
唯「手紙・・」
「拝啓、ひらさわゆい様 お前の大切な歌やらなかったな、俺も好きだったのによ、
まぁいい、またいつかあれをききにくるぜ。 車寅次郎」
唯「寅さん!やっぱり寅さんだったんだ!」
絶対絶対いつか聴きに来てね、寅さん 大好きだよ
112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 22:01:42.37 ID:QDSKHt+J0
寅次郎「今、富とか名誉ならばいらないけど翼がほしい・・か」
「なんだそりゃ」
寅次郎「おめぇみてぇな無学な人間にゃあ理解できない芸術ってやつよ」
「ぬかせ、てめぇが芸術だと」
寅次郎「あぁ嫌だ嫌だ、下品な男にゃうんざりだ」
寅次郎「よし!商売だ!」
113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 22:04:01.43 ID:QDSKHt+J0
さて、いいかねお客さん!
角は一流デパート、赤木屋、黒木屋、白木屋さんで、紅、白粉つけたお姉ちゃんから下さい頂だいでいただきますと5千が6千、7千が8千、1万円はする品物だが、今日はそれだけ下さいとは言わない!
いいかいい! ハイ! ならんだ数字がまず一つ 物のはじまリが一ならば 国の始まりが大和の国 島の始まりが淡路島 泥棒の始まりが石川の五右衛門なら 助平の始まりがこのオジサンっての、ネ!
笑っちゃいけないよ 助平ってわかるんだから目つき見リや。
四谷赤坂麹町、チャラチャラ流れるお茶の水 粋な姐ちゃん立ち小便 白く咲いたか百合の花
四角四面は豆腐屋の娘 色は白いが水臭い 一度変われば二度変わる 三度変われば、
四度変わる 淀の川瀬の水車、誰を待つやらくるくると ゴホンゴホンと混さんが、口の浜辺でねえ、
あなた、私しゃあなたの妻じゃもの 妻は妻でも坂妻と来やがった。
どうホラ! これで買い手が無かったら あたし浅野内匠頭じゃないけど 腹切ったつもり、
だめか、えー チキショウー。
全くねぇ、今日はしょうがねえ、貧乏人の行列だ、まぁ、いいよ。
いいっていいって帰んなさい。みんないなくなっちゃったね。
どうおじいちゃん。
完
118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 22:11:34.74 ID:QDSKHt+J0 [62/63]
毎年この曜日のこの時間にはよく、男はつらいよTVでやってたのに
今じゃさっぱりやらないので寂しいです。
なんでやらないんだろうね、DVD買えって事かな?
最後の啖呵は某サイトから勝手に貼ってしまった。
見てくれてありがとう。
124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/04(日) 23:27:06.78 ID:zevuj3dE0 [7/7]
唯たちが卒業した後、軽音部で一人になってしまった梓。
先輩達のいない寂しさに、
軽音部が終わるかもしれない焦りに、
受験勉強の忙しさに、打ち拉がれる日々。
そんなある日、桜高軽音部に絵はがきが届く。
『拝啓 平沢唯様』
それは唯が卒業したことを知らない寅次郎が送ったものだった。
「寅さん……か…… どんな人なんだろう……」
男はつらいよ 寅次郎と迷子の仔猫(あずにゃん)
が読みたいと思った俺のベストヒロインは榊原るみ
126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/07/05(月) 00:04:54.41 ID:QDSKHt+J0 [63/63]
>>124
榊原るみ良かったよな、あの知的障害者の役の話が1番好きだわ。
また見たくなってきたよ。
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