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令嬢「この人が」
1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 20:04:54.94 ID:OBt8FAB+0 [1/65]
令嬢「今年も春一番がやってきましたね」
「……また、あの時期ですか」
コンコン
令嬢「……はい」
ガチャ
令嬢父「娘よ」
「去年お前は言ったな」
「自分の相手は自分で見つけたい、と」
令嬢「……はい」
令嬢父「見つかったか」
令嬢「……いいえ」
令嬢父「よろしい」
「ならばお見合いだ」
令嬢「今年も春一番がやってきましたね」
「……また、あの時期ですか」
コンコン
令嬢「……はい」
ガチャ
令嬢父「娘よ」
「去年お前は言ったな」
「自分の相手は自分で見つけたい、と」
令嬢「……はい」
令嬢父「見つかったか」
令嬢「……いいえ」
令嬢父「よろしい」
「ならばお見合いだ」
2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 20:06:11.64 ID:OBt8FAB+0
令嬢「お父様。わたくしは」
令嬢父「お前ももう十七になる」
「よき相手を見つけて然るべき年頃だ」
「候補者を募った結果がこのクリップだ」
「さぁ、選ぶがよい」
令嬢「……時間をください」
令嬢父「いいだろう」
「じっくり考えるのだな」
バタン
令嬢「わたくしは……」
3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 20:08:34.45 ID:OBt8FAB+0
令嬢兄「……またあの話ですか」
令嬢父「うむ」
令嬢兄「相当嫌がってましたけど。あの子」
令嬢父「何事も早めの行動が肝心なのだ」
「鉄は熱い内に打て」
「枯れぬ花はないのだからな」
令嬢兄「まだ十七ですよ」
令嬢父「まだ平気だ、まだ大丈夫だ」
「などと言っている間に時は過ぎる」
「年を重ねた頃には気付いてくれるはずだ」
「父の愛を」
令嬢兄「そんなものですか」
4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 20:11:14.76 ID:OBt8FAB+0
学校
キーンコーンカーンコーン
男友「よっし、帰ろうぜー」
女「おー」
男「あー悪い、今日日直だから先帰ってて」
女「手伝ってあげようか?」
男「時間かかりそうだからいい」
男友「んじゃ、先行ってる」
男「おう」
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 20:14:13.38 ID:OBt8FAB+0
男「ふー」
「すっかり遅くなっちまったなー」
「帰ろ」
テクテク
男「腹減ったしなー」
「ちょっと寄り道でもしてこうか」
テクテク
…ッダ
テクテク
ダッダッダッ
テクテク
ダダダダダ
バンッ
男「あたっ」
令嬢「…っ!」
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 20:16:58.83 ID:OBt8FAB+0
令嬢「ちょっと貴方!」
男「えっ、いやあの、すみません」
令嬢「口裏を合わせてくださいまし!」ダキッ
男「え?」
タッタッタッ
執事「お嬢様!」
「お相手の方がお待ちなのですぞ」
「お車にお戻りください」
令嬢「お断りですわ!」
男「え?え?」
7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 20:21:03.15 ID:OBt8FAB+0
令嬢「そうです、お見合いなんてまっぴら御免こうむります」
「なぜなら」
「なぜなら!」
「この人が、わたくしと将来を誓ったお人なのですから!」
男「??」ドーン
令嬢「お願いしますっ話を合わせて!」ボソ
男「う、うん、分かった」ボソ
執事「何を仰られるのです…!」
「そんなどこの馬の骨とも知れぬ平民など」
令嬢「わたくしたちはあの時誓ったのです!」ドン
男「そ、そうだね、あの時ね、あの時」
令嬢「大きくなったら必ず二人、一緒になろうと…!」バン
男「そうだそうだー、そんな気がするぞー」
執事「まことですかお嬢様…?」
令嬢「大マジでございますわっ」
9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 20:26:12.88 ID:OBt8FAB+0
令嬢「そういうわけですから」
「お相手の方にはよろしくお伝えくださいませ」
「行きましょう、」
「え、えっと」ボソ
男「俺?男っていう」ボソ
令嬢「行きましょう、男さん!」ズンズンズン
男「え?あ、えっと、え?」ズルズル
執事「そ、そんな」
「お嬢様ぁ……」
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 20:31:09.14 ID:OBt8FAB+0
男家
令嬢「と、いった事情でして…」
男「そ、そっか、大変だったんだな」
妹「……」ブスゥ
男母「あらあら」ニコニコ
男「その相手の人が、そんなに嫌だったの?」
「すごいおじさんだったりとか」
令嬢「いいえ、同い年らしく」
男「すごい化け物じみてるとか」
令嬢「写真を見る限り、二枚目でしたわ」
男「すごい性格が悪かったりとか」
令嬢「とても純粋なお方だと聞き及んでおります」
妹「じゃあ何が不満なんだよ」
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 20:36:09.70 ID:OBt8FAB+0
令嬢「わたくしはこれまで」
「お父様の言うことには何でも従ってまいりました」
「ですが!」
「自由に恋をすることは、乙女の権利だと思うのです!」ドーン
妹「………」
男母「あらあら」ニコニコ
男「相手を無理強いされるのが嫌ってこと?」
令嬢「はいっ」コクコク
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 20:41:32.40 ID:OBt8FAB+0
令嬢「男さん」
「本日は助けていただき、ありがとうございました」
「何かお礼をしたく」
男「ん、いやいいよ別に」
令嬢「そうですか…」
「それでは、わたくしはこれにて」
男母「待って?」
「あなた、お家に帰りづらいんじゃないかしら」
令嬢「う」
男母「よかったら、ほとぼりが冷めるまで家で」
妹「ちょっ、ママ!」
男母「ゆっくりしていってね?」
令嬢「………、」
「では、お言葉に甘えて…」
妹「……チッ」
14 名前:社長とは限らないらしい[] 投稿日:2010/06/22(火) 20:49:00.37 ID:OBt8FAB+0
夜
男父「……ふぅん」
「いいんじゃないか」
妹「パパまでそんなこと言う…」
男「いいじゃねーか、困ってるって言うんだし」
男母「うふふ」
「若いっていいわねぇ」
「私だって若い頃はやんちゃしたものよ?」
男父「…お母さんはまだ、若いよ」
男母「…お父さん」
チュッチュ
妹「ええい、子の前でベタベタするなっ」
令嬢「……クスッ」
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 20:57:43.87 ID:OBt8FAB+0
男母「じゃあ、令嬢ちゃんは妹ちゃんの部屋使って?」
妹「えぇー」
「しょうがないなぁ」
令嬢「助かります」
「お世話になりますの」ペコリ
妹「……部屋、案内してやる。来い」クイッ
令嬢「はいっ」
男「妹ー、令嬢ちゃんいじめたらダメだぞー」
妹「知らん」スタスタ
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 21:04:28.89 ID:OBt8FAB+0
男家・妹の部屋
妹「別にさぁ」
「相手に不満はないんだろ?」
「お見合い、顔を出すだけでも出してやれば」
「相手もかわいそうなもんだ」
令嬢「……社交界に伝わる伝説があるのです」
『あるところに、たいそうな名家のお嬢様がおりました
彼女には、同じくたいそうな名家の許婚がおり
成功する未来が約束されておりました
しかし、あるとき彼女は平民と恋におちてしまいます
彼女は、地位も財産も何もかもを投げ出して
平民とともに、駆け落ちしてゆきました』
妹「………」
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 21:12:27.52 ID:OBt8FAB+0
令嬢「ロマンティックですよね!素敵ですよね!」キラキラ
妹「はいはい」
「どうしてもシチュエーションが気に入らねーのな」
令嬢「はいっ」コクコク
妹「っと、もうこんな時間か」
「寝る。電気消すよ」
令嬢「わかりましたの」
妹「………」
「あんたさ、一つだけいいこと言ったよ」
「『自由に恋をすることは、乙女の権利だ』、か」
令嬢「……スヤ」
妹「寝てるし…」
(………)
(おにぃ……)チク
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 21:19:17.73 ID:OBt8FAB+0
私の家は、ある落ち目の財閥だった。
父が家の再興のため考えた手段は、
政略結婚。
父は晩婚で、私は一人娘だったから、
今まで蝶よ華よと育てられてきた。
父は私の言うことを何でも聞いてくれたし、
私も父の言うことは何でも聞いた。
こんなご時世だったから、
政略結婚なんて、当たり前のように行われていた。
だから、父がお見合いの話を持ちかけてきたときも、
私は特に断る理由は、なかった。
22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 21:25:34.59 ID:OBt8FAB+0
翌日
男母「そう、はじめはゆっくりでいいの」
令嬢「こ、こうでしょうか」
男母「その調子よ」
「そっと、優しく、なでるように」
令嬢「はい……」
男母「どうかしら?」
令嬢「ごめんなさい、ちょっと戸惑って」
「うちではこんなこと、したことなかったから…」
男「……何やってんの?」
令嬢「ひゃっ」パリン
男母「あらあら」
令嬢「“さらあらい”ですわ」
「お世話になる以上、お手伝いをと思いまして」
男「あ、さいで」
23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 21:31:13.48 ID:OBt8FAB+0
令嬢「じー」
男「……何か」
令嬢「いえ」
「よく考えるとわたくし、同じ年頃の殿方と会うのは初めてで」
男「そ、そうなんだ」
令嬢「じー」
「さわっても、いいですか?」ペタペタ
男「え、まぁ」
「……楽しい?」
令嬢「それなりに」ペチペチ
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 21:34:08.97 ID:OBt8FAB+0
男母「男ー、令嬢ちゃーん」
「お買い物行って来てくれないかしら?」
男「めんどくさ」
「妹は?」
男母「部活があるって」
男「仕方ない、行くよ」
令嬢「お任せくださいまし」
「さぁ、参りましょう」ズンズン
男「ちょ、ちょっと」
26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 21:37:20.54 ID:OBt8FAB+0
街中
令嬢「ふんふんふふーん」
男「機嫌いいね」
「何かいいことあったの?」
令嬢「いえ、」
「“おかいもの”ってしたこと、なかったから」
「楽しみですの」
男「そっか」
「別に大したこと」
執事「見つけましたよお嬢様!」バッ
男「うお」
令嬢「へ」
27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 21:40:44.22 ID:OBt8FAB+0
執事「こちらです」
御曹司「………」スッ
令嬢「あ、貴方は」
御曹司「会いたかった…令嬢さん…」
「写真からでもわかる気品…優雅さ…」
「あぁ…実物は尚も増して美しい…」
令嬢「は、はぁ」
御曹司「申し遅れました、ボクは御曹司」ファサ
「貴方のお見合い相手です」
男(……!)
(イケメンだなおい)
(気障な台詞がよく似合ってやがる)
29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 21:43:27.45 ID:OBt8FAB+0
令嬢「執事、これは一体どういうことです」
「お断り申し上げたはずです」
執事「ですがお嬢様」
「旦那様がお認めになろうはずも御座いません」
「さ、改めて見合いの席に」
令嬢「嫌ですのっ」
御曹司「令嬢さん…」
「一体、ボクの何が至らないというのでしょう」
「お聞かせ願えませんか…!」
令嬢「貴方が物足りないなどとは思っておりませんわ」
「ですが」
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 21:47:15.30 ID:OBt8FAB+0
ガバッ
令嬢「わたくしには、将来を誓い会ったお人がいるのです!」
男「え、急に話振らないで」
令嬢「腕組みなんかしちゃう仲なのです!」グイグイ
男(ちょ、当たってますー!)
御曹司「そ、そんな」
「………」キッ
「君、名前は?」
男「男、だけど」
御曹司「どこの家柄だ!」ス
「家業は!」スタスタ
「資産は!」スタスタスタ
男「ご、ごくふつーのサラリーマンの家だけど」
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 21:51:10.22 ID:OBt8FAB+0
御曹司「認められません」グイッ
「令嬢さん」グ
「ボクの方がきっと、貴方を幸せに出来る…!」グググ
男「離せよ…くるし…」
パァン!
御曹司「―――!」ヒリ
令嬢「やめてください」
「男さんに…ひどいこと、しないで」
御曹司「……くっ」
「ボクとしたことが」
「少々、頭に血を上らせました」ス
「……いずれまた、日を改めて」スタスタ
執事「え、あ、えっと、その」
「お、御曹司さん!」タッタッタッ
33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 21:54:16.35 ID:OBt8FAB+0
令嬢「……ごめんなさい」
「わたくしのせいで」
男「あー、いいからいいから」
「嫌なんだろ?」
「だったら無理しなくていいじゃん」
令嬢「……でも」
男「買い物」
「行こっか」
令嬢「……はい」
35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 21:58:07.40 ID:OBt8FAB+0
テクテク
令嬢(………)チラ
男「で、そこのスーパーが一番近いんだ」
令嬢(きっと…、怒ってますの…)
男「定期的に特売なんかやってるから」
令嬢(やっぱり、これ以上ご迷惑を…)
男「……どうしたの?」
令嬢「……その、」フルフル
男「………」
ヒシ…
男「怖い思い、させたか?」
令嬢「え?」
男「ごめんな、助けてもらって」
「手、痛む?」
令嬢「そ、そうではなく」
36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 22:01:20.47 ID:OBt8FAB+0
令嬢「あの」
「どうして」
「見ず知らずのわたくしに、親切になさってくれるんですの?」
男「もう知り合いだし」
「それに」
「親父がいつも言っててな」
「困った人がいたら助けてやれ、って」
「な?」
令嬢「~~~っ」
「あ、ありがとう…ござい、ます」ボソ
スタスタスタ
男「あ、ちょっと、待ってって」タッタッタッ
「そっち、道、違うから!」
38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 22:04:26.76 ID:OBt8FAB+0
それは、小さな商店街の片隅にある、寂れた書店だった。
古ぼけた扇風機が、生温い風をかき回していたことを憶えている。
店番の老婆の眠たげな顔を窺いながら、私は店内の死角となる場所を探した。
そっと、棚に手を伸ばした。
どんな本でも構わなかった。本でなくても構わなかった。
静かに抜き取ったハードカバーを、手提げに忍ばせようとして、
『やめた方がいい』
『癖になってしまうよ』
その人に、後ろから声をかけられたのだった。
39 名前:妹スレにはならないのでご注意を[] 投稿日:2010/06/22(火) 22:08:58.44 ID:OBt8FAB+0
週明け・学校
教師「あー、急な話だが今日から転校生が来ることになった」
「この子だ」
令嬢「みなさま、初めまして」
「わたくし、令嬢と申します」
「お見知りおきくださいませ」ニコ
ザワザワガヤガヤアノコカワイー
教師「女の隣が空いてるなー。そこ座れー」
令嬢「よろしくお願いします」ニコ
女「うん、よろしくねー」
教師「連絡は以上だー。一限めの用意をしとけー」ガラガラバタン
男(そんなこんなで、彼女を交えた新たな生活が始まった)
41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 22:11:42.03 ID:OBt8FAB+0
令嬢「……ポケー」ジー
女「……ん?」
令嬢「……ポケー」ジー
女(何見てるんだろう)チラ
男「でさー」
男友「まじかよ」
令嬢「……ポケー」ジー
女(……ふうん)ニヤ
42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 22:15:02.29 ID:OBt8FAB+0
女「ね」
令嬢「……ポケー」ジー
女「ねぇ、ちょっと」
令嬢「……あ、はははひっ」
女「さっきからずっと男見てるね」
令嬢「……え、えぇ」
女「知り合い?」
令嬢「それはもう」
「同じ屋根の下で暮らす」
「将来を誓い合った仲ですわ!」ドーン
ドーン
ザワ…ザワ…
女「男くーん?」
男「いや!違うぞ!合ってるけど違う!」
43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 22:18:43.30 ID:OBt8FAB+0
女「誓い合ってるんだ?」
男「そうじゃなくて!」
女「じゃ」
「同じ屋根の下なんだ?」
男「それ」
女「つまり家族公認?」
男「親父もお袋も了承してくれたよ」
ザワ…ザワ…
女「男くーん?」
男「……はっ!」
「だから違うんだってえええええええええ!」
44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 22:21:29.17 ID:OBt8FAB+0
シカクイムーブ
男「というわけだ」
令嬢「ですの」
女「ふーん」
「令嬢さん」
令嬢「はい?」
女「何かあったらいつでも相談してね」
「何か起こしたくなってもいつでも相談にのるよー」
令嬢「ありがとうございますの」
男「おい」
男友「男なんかほっといて俺なんかどうよ」
女「はいはい」
男「はいはい」
46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 22:24:27.19 ID:OBt8FAB+0
キーンコーンカーンコーン
妹友「妹ちゃん、お昼食べよー」
妹「おう」
「ん?」チラ
令嬢「――」テクテク
男「――」テクテク
妹(あいつ……!)ゴゴゴゴゴ
「ごめん」ゴゴゴゴゴ
「今日は外で食うわ」ドドドドド
妹友「妹ちゃんっ」
「え、えっとー」キョロキョロ
ポツン
妹友「妹ちゃぁん…」オロオロ
47 名前:>>45 ごめんなさい[] 投稿日:2010/06/22(火) 22:27:34.94 ID:OBt8FAB+0
令嬢「いい天気ですわね」テクテク
男「そうだな」テクテク
令嬢「この木の下など、如何でしょう」
男「いい感じだな。よし」
「飯、食うかー」パカ
令嬢「はい」パカ
男「弁当、令嬢も手伝ってくれたんだって?」
令嬢「ですの」
「と言いましても、箱に詰めたりしただけですけれど」
男「気持ちの問題」
「ありがと」
令嬢「いえいえ」
49 名前:カクカクシカジカシカクイムーブ[] 投稿日:2010/06/22(火) 22:31:04.52 ID:OBt8FAB+0
男「……モグモグ」
令嬢「………」ジー
「……あのー」
「はい、あーん」ズイ
男「……ング!」
「……ゲッホゲッホ」
「どこで覚えたの、そんなこと」
令嬢「女さんに教えていただきましたの」
「こうすると殿方は喜ぶ、と」
男「う、うん、まぁ嬉しいけど」
51 名前:同じ名前が並びまくってもあれかなーと[] 投稿日:2010/06/22(火) 22:35:45.60 ID:OBt8FAB+0
令嬢「あーん」ズイ
男「あ、あーん」パク
(恥ずかしいな)モグモグ
令嬢「はい、あーん」ズイ
男「ペース速い」
「ってかそれ」
「プチトマト先生じゃん」
令嬢「へぇ、プチトマトセンセイって言うんですかこれ」
男「俺、それ嫌いだから食べていいよ」
「口の中でぶちゅって潰れる感じが嫌」
「普通の大きいトマトは好きなんだけどな」
令嬢「そうでしたか」パク
「……モグモグ」
「おいしいのに」
ドサッ
52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 22:38:40.54 ID:OBt8FAB+0
妹「邪魔するぞ。お二人さん」パカッ
男「妹じゃん」
「珍しいな、お前が外で食べるの」
妹「不愉快な光景が見えたからついな」
令嬢「不愉快な光景?」
妹「はい、あーん」ズイ
男「は?」
「何急にってかそれプチトマト」
妹「令嬢から『あーん』されて鼻の下伸ばしてただろうが…」ジト
「食えよオラ!あたしのトマトが食えねぇってのか!」ズイズイ
男「いひゃいひゃい」ゴリゴリ
「お前、自分がプチトマト食べたくないだけだろ!」
令嬢「あ、あの、喧嘩はその、よくないかなぁ、なんて」オズ
妹「黙ってろ」ギッ
令嬢「ひゃい!」
54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 22:41:39.01 ID:OBt8FAB+0
うだるような熱気がおさまりきらない夕暮れの公園で、
私はその人とお話をした。
家のこと。
自分のこと。
その人は聞き上手だったから、私は初対面にも関わらず、
胸のわだかまりを打ち明けることが出来た。
『君はきっと』
『不安なんじゃないかな』
一体何を不安だと感じるのだろう。分からない。
『分からないから』
『結婚してからの自分や環境の変化が』
その人は話し上手ではなかったけど、親身になって、
私のわだかまりと向き合ってくれた。
またお話ししよう。
その日は、少し晴れやかな気分で家に帰ることが出来た。
55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 22:44:58.08 ID:OBt8FAB+0
数日後・学校
教師「あー、急な話だが今日も転校生が来ることになった」
「この子だ」
御曹司「令嬢さん」
「貴方と同じ学び舎に通いたく参上いたしました」
「御曹司です」ファサ
ザワザワガヤガヤアノヒトカッコイー
御曹司「あぁ…今日も美しいそのお姿」ズズイ
令嬢「あ、貴方は」
「どなた様でしたっけ?」
御曹司「そんな!」
教師「男友の隣が空いてるなー。そこ座れー」
御曹司「君、席を変わってくれないか」
女「めんどくさいから嫌」
教師「連絡は以上だー。一限めの用意をしとけー」ガラガラバタン
56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 22:47:18.76 ID:OBt8FAB+0
男「………」
令嬢「……ポケー」ジー
御曹司「……ギッ」ゴゴゴゴゴ
教師「この一文から読み取れるようにー」
男「………」
令嬢「……ポケー」ジー
御曹司「……ギッ」ゴゴゴゴゴ
男(何だろう、視線を感じる)
58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 22:50:15.25 ID:OBt8FAB+0
キーンコーンカーンコーン
御曹司「お昼の時間ですね…!」
「令嬢さん!ご一緒に」
令嬢「はい、あーん」
男「教室は恥ずかしいって」
御曹司「………」バキッ
女「あいつら大体こんな感じだよ」
男友「お前面白いな」ポン
御曹司「……トホホ」
59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 22:53:14.84 ID:OBt8FAB+0
キーンコーンカーンコーン
男「放課後だなー」
令嬢「ですの」
御曹司「男くん!」
「ボクと決闘していただきたい!」
男「え?」
「どうして」
御曹司「どうしてもです!」
男「何すんの」
御曹司「紳士のスポーツ…テニスは嗜みますか?」
男「ん、まぁ」
御曹司(フフ…)
(令嬢さんの前で無様な姿を晒すがいい)
(そして)
61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 22:56:47.79 ID:OBt8FAB+0
学校・テニスコート
妹「面白そうなので来た」
男「おう、妹」
「ラケット貸してくれ」
妹「ほい」
「審判してやろう」
男「さんきゅー」
御曹司「フッ」
「準備はいいですか?男くん」
男「おう」
令嬢「男さん、頑張ってくださいね!」
御曹司(令嬢さん、この決闘であなたをボクに振り向かせてみせる)
「ふっ、ふふっ、ふふふふふふふ」
妹(大丈夫かコイツ)
63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 22:59:34.69 ID:OBt8FAB+0
御曹司「サーブ、先どうぞ」
「社交テニス界のサラブレッドと呼ばれたこのボクの実力」
「見せてあげましょう!」メラメラ
男「よっし、じゃ」
「サー!」ドゴォ
ギュオオオオオオ
バンッ
ダンッ…ダンダン…
妹「フィフティーンラブ」
御曹司「え?」
男「あ、ごめん」
「久々だから加減が」
妹(おにぃ、テニスだけは超強ぇーからなぁ)
御曹司「え?」
64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 23:02:14.95 ID:OBt8FAB+0
妹「……セット、マッチウォンバイおにぃ」
御曹司「……くっ!」
「力及ばず…か…!」
男「なぁ」
御曹司「フッ」
「ボクの負けだ。負け犬なり何なりと罵るがいいさ」
男「お前、やるな」
「楽しかったぜ!」スッ
御曹司「……!」
スッ
ギュッ
御曹司「負けたよ」
「完敗だ」
(テニスでも…器でも負けた…)
男(……っ痛)ズキン
65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 23:05:33.03 ID:OBt8FAB+0
男(やっぱ、ダメかな…)ズキン
令嬢「すごかったですわ!」
男「いやぁ」
妹「当然の結果だ」
御曹司(今のボクではかなわなかった)
(しかし)
「諦めませんよ……!」
「ボクはもっと、令嬢さんに相応しいオトコになります!」
妹「あ。あんたさ」
「負けたからコート整備やって」
御曹司「え?」
「………」
「諦めませんよ!ボクは!」ザッザッザッ
66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 23:08:36.61 ID:OBt8FAB+0
男「ラケットさんきゅ」
妹「ほい」
令嬢「帰りましょう、男さん」
男「おう」
妹「……!」
妹友「あ、妹ちゃん」
「今から部活、ペア練しよっ」
妹「ごめん」ゴゴゴゴゴ
「今日は帰るわ」ダッ
妹友「妹ちゃんっ」
「え、えっとー」キョロキョロ
ポツン
妹友「妹ちゃぁん…」オロオロ
67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 23:11:50.05 ID:OBt8FAB+0
男「びっくりしたなー、御曹司が来るなんて」
令嬢「お知り合いだったのですか?」
男「え?う、うん」
妹(おにぃから離れろ馴れなれしいんだよその不愉快な脂肪の塊を強調するな顔が近い)
男(しかし)
(御曹司は令嬢に会いに学校に転校してきたって言ったな)
(ってことは)
70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 23:14:24.02 ID:OBt8FAB+0
令嬢家
執事「お嬢様の居候先が判明いたしました」
「これがその家の身辺調査結果のレポートで御座います」ドサッ
令嬢父「………」ピラ
執事「御命令とあらば、今すぐにでも」
令嬢父「………」ピラ
(これは……)ピラ
(単なる偶然かもしれんが……)
執事「…旦那様?」
令嬢父「しばらく様子を見させろ」
執事「はっ」
令嬢父(まさか、な)
72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 23:17:21.21 ID:OBt8FAB+0
街角の喫茶店で、繁華街のファミレスで、
私はその人と、何度も何度も会った。
私が喋って、その人が聞いて。
いつもそんな風に時間を過ごしていて、
そんな風な時間がとても楽しかった。
心が弾んだ。
その人は私のことをどう思っているのだろうか?
『どうかしたかい』
何でもないと、私は取り繕ってしまった。
さりげなく、話題に切り出せばいいだけなのに、
私は何故だか言い出せないでいた。
73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 23:20:37.20 ID:OBt8FAB+0
男家
男母「令嬢ちゃんも、大分手つきが慣れてきたわね?」
令嬢「男母さんが、優しく教えてくださいましたから」
男母「一人で、してみる?」
令嬢「はい……」
「でも、ちゃんと見ていてくださいね……?」
男母「えぇ、信じて?」
令嬢「はいっ」
「では、」
「今晩のおかずは、わたくしが作りますわ!」
74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 23:23:19.91 ID:OBt8FAB+0
学校
キーンコーンカーンコーン
御曹司「放課後になりましたね」
「令嬢さん、帰りご一緒しませんか?」ファサ
令嬢「ごめんなさい」
「用事がありますので」タッタッタッ
御曹司「………」
男友「一緒に帰ろう、な?」ポン
女「諦めたら?」
男「ほら、行くぞー」
75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 23:26:14.90 ID:OBt8FAB+0
男友「Aカップ Bカップ Cカップ Dカップ Eカップ Fカップ Gカップ Hカップ」
「8組のバストを選ぶとしたら、君ならどれが好きー?」
御曹司「何ですかその下品な歌は」
男友「君ならどれが好きー?」
御曹司「あ、あのですねぇ」
女「こいつ、そういう奴だから」
男友「うん」
御曹司「バストのサイズなんて関係ありませんよ」
「ボクは令嬢さん一筋ですから」ファサ
男友「令嬢さんはEカップだな」
男「ほう」
御曹司「何で知っているんですか!」
男友「見たら分かる」
女「こいつ、そういう奴だから」
男友「うん」
76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 23:29:20.66 ID:OBt8FAB+0
スーパー
令嬢「今日は特売の日でしたか」
ドドドドド
令嬢「はー」
「ここは…戦場ですわね…」
「えーっと」
「男母さんからいただいたメモは、と」
78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 23:32:20.92 ID:OBt8FAB+0
男友「女はCカップだな」
「普通すぎてつまらん」
女「それはそれで傷つくんだけど」
男友「妹ちゃんはBカップだな」
「ツンギレブラコンロリ妹とは羨ましいぞ男」
女「デレ要素はどこに」
男友「妹おおおお!俺だあああああ!おにぃちゃんって呼んでくれぇえええ!」
男「中学入るまではそれだったな」
男友「ちなみに男母はまさかのGカップだ」
男「変なこと考えるなよ…?」
男友「で」
「男はどれが好きー?」
男「え、お俺?」
「あ、えーっと」
79 名前:>>77 分かりません[sage] 投稿日:2010/06/22(火) 23:35:28.58 ID:OBt8FAB+0
令嬢「そういえば、あの赤いのの種類に好き嫌いがあるみたいでした」
「えーっと、何と言いましたっけ、あれ」
『酢豚の材料メモ
豚肉
トマト
ピーマン
パイナップル
片栗粉』
「パ行で始まって、長い感じの」
「カタカナの名前だった気がするのです」
「とりあえず、聞いてみましょう」
prrrrr
80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 23:38:26.76 ID:OBt8FAB+0
prrrrr
男(ナイスタイミング…!)
「もしもし」
令嬢『あ、男さん、わたくしです』
『少々おたずねしたいことがありまして』
男「うん、何?」
令嬢『大きいのと小さいの、どちらがお好みですか?』
男「え、何の話かな!?」ドキッ
令嬢『熟れた丸い果実の話です』
『ほら、食感でどちらが好きだと前お話しされていた』
男「え、えっと、触感?」バクバク
令嬢『頬張るとぷにゅってなる』
『えーっと、確かパイ』
男「わー!わー!」
82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 23:41:28.70 ID:OBt8FAB+0
令嬢「ど、どうかなさいましたか?」
男『いいから!わかったから言わないで!』
『大きいのが好きです!ごめんなさい!』
令嬢「そうでしたか、ありがとうございます」
「わたくし、男さんに美味しく味わっていただけるよう頑張りますので」
「今晩のおかず、楽しみにしててくださいね!」
男『……パクパク』
令嬢「精をつけていただかないと」
「それでは、失礼いたします」
ツーツーツー
令嬢「さぁ、参りますわよ!」ドドドドド
83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 23:44:27.59 ID:OBt8FAB+0
ツーツーツー
男「………」
男友「………」
御曹司「………」
女「男くーん?」
男「いや、これは、何だ」
男友「貴様令嬢ちゃんとあーんなことやこーんなことを!」
男「その」
御曹司「見損ないましたよ男くん!」
男「いやね?俺も何がなんだか」
女「さいってー」
男「うわあああああああああああああ」
84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 23:47:17.57 ID:OBt8FAB+0
男家・夜
男(トマトの話だったんだ……)
(ちょっと残念だな)
(って!俺は何を考えているんだぁあああああ)モンモン
令嬢「はいっ、お待ちどおさまです」コト
男「………」
男父「………」
妹「なぁ」
「これは食い物の姿じゃない」
87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 23:50:27.17 ID:OBt8FAB+0
男母「まぁまぁ」
「せっかく令嬢ちゃんが作ってくれたんだから」
「ね?」
妹「ね?って言われてもこれは」
男「……っ」ソロー
(ええい、ままよ)パクッ
「……おいしい」
妹「え」
令嬢「まぁ、よかった」パアァ
男母「愛情は最高のスパイスとはよく言ったものね」
男父「………」コク
男「ん、何か言った?」
男母「いいえ何も」ニコ
妹「えぇー…?」
89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 23:53:44.43 ID:OBt8FAB+0
好きだったのだ、と気付いたときには、
私はもう自身の気持ちをどうにも出来ないでいた。
自身の気持ちをどうにかその人に伝えたいと、
私は必死で言葉を探した。
『君の気持ちは嬉しいけれど』
その人は悲しそうな表情で言った。
『君にはお見合い相手がいるのだろう』
それでも、と私は言い募った。
私はあなたと居たいのです、と。
90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 23:56:23.47 ID:OBt8FAB+0
男家・深夜
令嬢「ろうしたんれすの…こんな夜更けに」
妹「ガールズトークをしよう」
令嬢「…はい?」
妹「今夜は寝かさん」
令嬢「れも、明日もらっこうあ」
妹「おにぃをどう思ってる」
令嬢「…えっと」
妹「あんたは見合いが嫌だからおにぃを利用した」
「それだけだろ?」
令嬢「………」
「はじめは」
「でも、今は」
妹「………」
91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 23:59:15.73 ID:OBt8FAB+0
学校
教師「では、この問題がわかるものはー」
御曹司「はいっ!」シュバッ
「3xです」ファサ
(どうですか令嬢さん!男くん!ボクのこの知性を)
令嬢「……スヤ」
男「……グゥ」
御曹司「って寝てるうううううううう?!」
「男くんはともかく令嬢さんまで!」
教師「間違ってるぞー」
「御曹司ー、廊下に立ってろー」
ガラガラバタン
御曹司(おのれぇええええ)ギッ
(ま、まさか)
(昨晩あんなことやこんなことを…!)ゴゴゴゴゴ
92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/23(水) 00:02:44.35 ID:ZObXecIA0 [1/23]
妹(……眠)
(さっさと授業終わんねーか)
(な)チラ
御曹司「――」ゴゴゴゴゴ
妹(あいつ、確か)
教師「余所見とは余裕だな。妹」
妹(……ふぅん)
教師「廊下に立ってろ」
妹(使えるかも)
教師「聞いてるか」
「……なぁ」
妹友「妹ちゃんっ」チョンチョン
妹「ん?」
教師「………」
妹「ごめん。何?」
93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/23(水) 00:05:25.59 ID:ZObXecIA0 [2/23]
キーンコーンカーンコーン
御曹司「お昼の時間ですね…!」
「令嬢さん!ご一緒に」
令嬢「はい、あーん」
男「教室は恥ずかしいって」
御曹司「………」バキッ
女「またこのパターンか」
男友「元気出せよ」ポン
御曹司「……トホホ」
妹「おい、お前」ガラガラ
御曹司「む」
「君は確か」
95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/23(水) 00:08:41.21 ID:ZObXecIA0 [3/23]
妹「妹だ」
「あんたに話があって来た」
御曹司「話?」
妹「あたしとあんた、気が合いそうだと思ってな」
御曹司「そうですか?」
「ボクは別に」
男「――」デレデレ
令嬢「――」キャッキャッ
妹「な」
御曹司「なるほど」スッ
スッ
ガシィ
96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/23(水) 00:11:18.55 ID:ZObXecIA0 [4/23]
妹「確認するぞ」
「あたしはおにぃと買い物に行く」
「学校から東のデパート」
御曹司「ボクは令嬢さんと映画を観に行く」
「学校から西のシネマ」
妹「方向は別」
御曹司「鉢合わせはない」
妹「健闘を祈る」
御曹司「お互いに」
妹「クッ、ククク」
御曹司「フフッ、フフフ」
妹「クハハハハハハ!」
御曹司「あーっはっはっは!」
男友「なんだ、あいつら」
女「さぁねぇ」
97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/23(水) 00:14:15.59 ID:ZObXecIA0 [5/23]
私が父にその話を持ち出したとき、
父は激昂した。
恩知らず。淑女の行いではない。家紋に泥を塗るつもりか。
概ねそういった意味合いの罵声を浴びせられたよう記憶している。
私には、父に反論するつもりはなく、
父を説得するつもりもなかった。
もう、心に決めていたのだから。
黙って出て行っても、よかった。
そうしなかったのは、
今にして思えば、遅くやってきた反抗期だったのだろう。
98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/23(水) 00:17:29.86 ID:ZObXecIA0 [6/23]
デパート内喫茶
男「はぁ」
「令嬢と一緒に映画館、行きたかったな…」
「家族サービスも大事か…」
「しかし」
「一緒に家出たらよかったのに何で待ち合わせなんか」
妹「お・ま・た・せ」
男「おー」
妹「うふ」ロリッ
男「お?」
「な、何その気合入ったカッコ」
妹「喜ぶかな、って思って」
「お、」
「おにぃちゃん…が」
男「……!」
99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/23(水) 00:20:20.80 ID:ZObXecIA0 [7/23]
シネマ
御曹司「いやぁ、映画館って一度来てみたかったんですよ」ファサ
令嬢「はぁ」
御曹司「さ、何見ましょうか」
令嬢(……わたくしも)
(男さんたちと買い物、行きたかったな…)
御曹司「そんな顔をなされても仕方がないでしょう」
「妹さんが」
「どーぉしても男くんと二人で行きたいって言ってたんですから」
令嬢「はぁ」
御曹司「これ見ましょう。ホラー映画」
令嬢「はぁ」
御曹司「ポップコーンにコーラは如何ですか?」
(ふっ、ふふ、ふふふふふふふ)
100 名前:sageksk[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 00:23:05.43 ID:ZObXecIA0 [8/23]
デパート
妹「らんららんららーん」テクテク
男「恥ずかしくないのか…その格好…」テクテク
妹「わ、わりと」
「でも我慢するよ!」
男「そ、そっか」
妹「………」
「あのさ」
「どうしてテニス、止めちゃったの」
男「……ん」
「お前も知っての通りだ」
「ヒジ、痛めたから」
妹「でもさ、まだ好きなんでしょ」
「御曹司とやってたとき、すごく楽しそうだった」
男「好きだよ」
102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 00:23:56.97 ID:ZObXecIA0 [9/23]
シネマ
映画『ヴォオオオオオ』
御曹司「……ガクガク」ヒシッ
令嬢「あのー」
御曹司「はははひっ」ビックゥ
令嬢「やっぱり、他の観ません?」
御曹司「ななな何を言います令嬢さん」ブルブル
「ここkっ怖かったですか?」
「だ、大丈夫、ボクがついてますから」ファサ
令嬢「いえ、貴方が」
御曹司「ぜぜん!へへ平気で」
映画『キャァアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
御曹司「きゃぁああああああああああああああああ!」
103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 00:24:59.85 ID:ZObXecIA0 [10/23]
デパート
男「だから、続けられないんだ」
妹「どうして」
男「好きで好きでたまらないのに」
「思うように動かないんだ。腕が」
「それって結構、精神的にキてな」
妹「………」
男「あー、分かりにくかったかも」
妹「分かるよ」
「よく分かる」
「好きで好きでたまらないのに、どうにもならないこと」
男「……妹?」
妹「あたしね」
「おにぃちゃんのこと、好きだったの。ずっと」
男「………」
104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 00:25:48.26 ID:ZObXecIA0 [11/23]
シネマ
映画『嫌だ!俺を置いて逝かないでくれ!』
御曹司「……!」ウルウル
令嬢「………」ドキドキ
映画『私はもう十分生きたわ…ピエール』
御曹司「……グスッ」
令嬢「………」ワクワク
映画『最後に貴方に会えてよかった…』
御曹司「グスッ、エッグ」
令嬢「………」ハラハラ
映画『マリアアアアアアアアアアアンヌ!』
御曹司「まりあああああああああああんぬ!」
観客「「「うるさい!」」」
令嬢「す、すみませんっ外へ出しますので!」グイッ
御曹司「まりあんぬが!まりあんぬが!」ズルズル
105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 00:26:37.31 ID:ZObXecIA0 [12/23]
デパート
妹「部活でテニス始めたのもね」
「おにぃちゃんと一緒に、したかったから」
「いつかダブルスとか組んだり、さ」
男「……妹」
「その気持ちには、答えられない」
「……ごめんな」
妹「…ううん」
「分かってたから」
「でも、言っておきたかったの」
「満足した」
男「………」
妹「じゃ、アクセ買いたいから選ぶの付き合ってよ」
「おにぃ」
男「……おう」
106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 00:27:23.63 ID:ZObXecIA0 [13/23]
郊外にある小さな教会が、私たちの挙式場だった。
私は、婚姻届けを役所に提出すればいい、
とだけ考えていたのだが、
『儀式が必要だから』
言って、笑うその人の、たっての頼みだった。
腰の曲がりがちな神父が祝福の言葉を贈る最中、
ギィ、と、教会の扉が開いた。
薄暗い式場に、光が差した。
父だった。
逆行を浴び、息をせき切らしたその姿は、
私にはさながら鬼が、
地獄から呼び戻しにきたかのよう思われたのだ。
107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 00:28:05.02 ID:ZObXecIA0 [14/23]
令嬢家
令嬢父「解せぬ」
「数週間、様子を見てきたが…」
「学もない」
「教養もない」
「運動には些か心得があるようだが」
「それだけだ」
(令嬢は一体、あの者の何に入れ込んでいるというのだ…?)
「執事」
執事「は」
令嬢父「車を用意しろ」
執事「では」
令嬢父「令嬢を、かえしてもらおう」
108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 00:28:45.64 ID:ZObXecIA0 [15/23]
街中
令嬢「ふんふんふふーん」テクテク
男「機嫌いいね」
「何かいいことあったの?」
令嬢「いえ、」
「わたくしは男さんと一緒に居るだけで」
「楽しくなりますの」ニコ
男「そ、そう」カー
「俺も、」
執事「見つけましたよお嬢様!」バッ
男「うお」
令嬢「へ」
109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 00:29:26.30 ID:ZObXecIA0 [16/23]
執事「こちらです」
令嬢父「………」スッ
令嬢「お……」
「お父、さ…ま……」
令嬢父「久しいな」
「娘よ」
男「……!」
令嬢父「男とやら」
「娘が世話をかけたな」ドサッ
男「……何ですか、その袋は」
令嬢父「礼だ」
「令嬢。帰るぞ」
令嬢「嫌ですわ…!」
120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 01:06:01.20 ID:ZObXecIA0 [17/23]
令嬢父「それが若いと言っている」
「男女が結ばれるという関係は」
「お前たちの思っているほど軽くはない」
男母「貴方の思う愛がその程度、ってだけよ」
「愛は障害だって乗り越えられるわ」
令嬢父「お前が愛を貫いた結果」
「父君はどうなったのだったかな」
男母「……!」
令嬢父「何をもたもたしている」
「車に入れ」
令嬢「……よく、分かりました」
121 名前:超嬉しい[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 01:07:42.76 ID:ZObXecIA0 [18/23]
令嬢「どうしても」
「どうしても、男さんとの縁を認めてくださらないとあれば」
「わたくし、この場で舌を噛み切って」
「死にましゅ!」
男(噛んだ)
執事(噛んだ)
男母(噛んだ)
御曹司(噛んだ)
令嬢父「………」
令嬢「本気ですのよ!」キリッ
令嬢父「……ふん」
「ならば仕方ない」
「かわいい娘に死なれてはかなわん」
「……許しゅ」
令嬢「お父様……!」
122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 01:08:48.03 ID:ZObXecIA0 [19/23]
私の内心を知ってか知らずか、
父は大股に式場を縦断すると、
席の最前列に腰掛けた。
穏やかな表情で、拍手を送ってよこした。
ふと、肩に手を回され、振り向くと、
その人は、悪戯っぽく笑っていた。
私が見合いの話を台無しにした以上、
父の財閥が復権することはもう、なかっただろう。
それでも父は、
微笑んで祝福してくれたから、
だから私は、
泣いた。
123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 01:09:47.43 ID:ZObXecIA0 [20/23]
ゴーン ゴーン
教会
神父「新郎」
「汝、病めるときも、健やかなるときも」
「共に歩み、他の者に依らず」
「死が二人を分かつまで」
「愛を誓い、妻のみに添うことを」
「神聖なる婚姻の契約のもとに」
「誓いますか?」
男「……誓います」
124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 01:10:35.48 ID:ZObXecIA0 [21/23]
神父「新婦」
「汝、病めるときも」
令嬢「誓いますわ!」
神父「………」
令嬢「………」ニコニコ
神父「健やかなるときも」
令嬢「みなさま!」クルリ
「本日は、わたくしどもの式にお集まり下さりありがとう御座いますの」フワ
「紹介します!」
「この人が」
「この人が、わたくしの運命の人ですわ!」
fin.
125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 01:11:49.87 ID:ZObXecIA0 [22/23]
以上です
お付き合い、ありがとうございました
126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/23(水) 01:12:41.45 ID:asETrSva0
回想みたいなのは母か?
127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/23(水) 01:12:59.99 ID:SYK+QQpv0 [4/4]
もっと山場があっても良かった気がする
乙
129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 01:16:23.38 ID:ZObXecIA0 [23/23]
>>126
はい。しょっぱなの方だと確かにとても分かりにくかったと反省を
>>127
やっぱり肉付けが足りなかったかー
令嬢「お父様。わたくしは」
令嬢父「お前ももう十七になる」
「よき相手を見つけて然るべき年頃だ」
「候補者を募った結果がこのクリップだ」
「さぁ、選ぶがよい」
令嬢「……時間をください」
令嬢父「いいだろう」
「じっくり考えるのだな」
バタン
令嬢「わたくしは……」
3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 20:08:34.45 ID:OBt8FAB+0
令嬢兄「……またあの話ですか」
令嬢父「うむ」
令嬢兄「相当嫌がってましたけど。あの子」
令嬢父「何事も早めの行動が肝心なのだ」
「鉄は熱い内に打て」
「枯れぬ花はないのだからな」
令嬢兄「まだ十七ですよ」
令嬢父「まだ平気だ、まだ大丈夫だ」
「などと言っている間に時は過ぎる」
「年を重ねた頃には気付いてくれるはずだ」
「父の愛を」
令嬢兄「そんなものですか」
4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 20:11:14.76 ID:OBt8FAB+0
学校
キーンコーンカーンコーン
男友「よっし、帰ろうぜー」
女「おー」
男「あー悪い、今日日直だから先帰ってて」
女「手伝ってあげようか?」
男「時間かかりそうだからいい」
男友「んじゃ、先行ってる」
男「おう」
5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 20:14:13.38 ID:OBt8FAB+0
男「ふー」
「すっかり遅くなっちまったなー」
「帰ろ」
テクテク
男「腹減ったしなー」
「ちょっと寄り道でもしてこうか」
テクテク
…ッダ
テクテク
ダッダッダッ
テクテク
ダダダダダ
バンッ
男「あたっ」
令嬢「…っ!」
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 20:16:58.83 ID:OBt8FAB+0
令嬢「ちょっと貴方!」
男「えっ、いやあの、すみません」
令嬢「口裏を合わせてくださいまし!」ダキッ
男「え?」
タッタッタッ
執事「お嬢様!」
「お相手の方がお待ちなのですぞ」
「お車にお戻りください」
令嬢「お断りですわ!」
男「え?え?」
7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 20:21:03.15 ID:OBt8FAB+0
令嬢「そうです、お見合いなんてまっぴら御免こうむります」
「なぜなら」
「なぜなら!」
「この人が、わたくしと将来を誓ったお人なのですから!」
男「??」ドーン
令嬢「お願いしますっ話を合わせて!」ボソ
男「う、うん、分かった」ボソ
執事「何を仰られるのです…!」
「そんなどこの馬の骨とも知れぬ平民など」
令嬢「わたくしたちはあの時誓ったのです!」ドン
男「そ、そうだね、あの時ね、あの時」
令嬢「大きくなったら必ず二人、一緒になろうと…!」バン
男「そうだそうだー、そんな気がするぞー」
執事「まことですかお嬢様…?」
令嬢「大マジでございますわっ」
9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 20:26:12.88 ID:OBt8FAB+0
令嬢「そういうわけですから」
「お相手の方にはよろしくお伝えくださいませ」
「行きましょう、」
「え、えっと」ボソ
男「俺?男っていう」ボソ
令嬢「行きましょう、男さん!」ズンズンズン
男「え?あ、えっと、え?」ズルズル
執事「そ、そんな」
「お嬢様ぁ……」
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 20:31:09.14 ID:OBt8FAB+0
男家
令嬢「と、いった事情でして…」
男「そ、そっか、大変だったんだな」
妹「……」ブスゥ
男母「あらあら」ニコニコ
男「その相手の人が、そんなに嫌だったの?」
「すごいおじさんだったりとか」
令嬢「いいえ、同い年らしく」
男「すごい化け物じみてるとか」
令嬢「写真を見る限り、二枚目でしたわ」
男「すごい性格が悪かったりとか」
令嬢「とても純粋なお方だと聞き及んでおります」
妹「じゃあ何が不満なんだよ」
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 20:36:09.70 ID:OBt8FAB+0
令嬢「わたくしはこれまで」
「お父様の言うことには何でも従ってまいりました」
「ですが!」
「自由に恋をすることは、乙女の権利だと思うのです!」ドーン
妹「………」
男母「あらあら」ニコニコ
男「相手を無理強いされるのが嫌ってこと?」
令嬢「はいっ」コクコク
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 20:41:32.40 ID:OBt8FAB+0
令嬢「男さん」
「本日は助けていただき、ありがとうございました」
「何かお礼をしたく」
男「ん、いやいいよ別に」
令嬢「そうですか…」
「それでは、わたくしはこれにて」
男母「待って?」
「あなた、お家に帰りづらいんじゃないかしら」
令嬢「う」
男母「よかったら、ほとぼりが冷めるまで家で」
妹「ちょっ、ママ!」
男母「ゆっくりしていってね?」
令嬢「………、」
「では、お言葉に甘えて…」
妹「……チッ」
14 名前:社長とは限らないらしい[] 投稿日:2010/06/22(火) 20:49:00.37 ID:OBt8FAB+0
夜
男父「……ふぅん」
「いいんじゃないか」
妹「パパまでそんなこと言う…」
男「いいじゃねーか、困ってるって言うんだし」
男母「うふふ」
「若いっていいわねぇ」
「私だって若い頃はやんちゃしたものよ?」
男父「…お母さんはまだ、若いよ」
男母「…お父さん」
チュッチュ
妹「ええい、子の前でベタベタするなっ」
令嬢「……クスッ」
15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 20:57:43.87 ID:OBt8FAB+0
男母「じゃあ、令嬢ちゃんは妹ちゃんの部屋使って?」
妹「えぇー」
「しょうがないなぁ」
令嬢「助かります」
「お世話になりますの」ペコリ
妹「……部屋、案内してやる。来い」クイッ
令嬢「はいっ」
男「妹ー、令嬢ちゃんいじめたらダメだぞー」
妹「知らん」スタスタ
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 21:04:28.89 ID:OBt8FAB+0
男家・妹の部屋
妹「別にさぁ」
「相手に不満はないんだろ?」
「お見合い、顔を出すだけでも出してやれば」
「相手もかわいそうなもんだ」
令嬢「……社交界に伝わる伝説があるのです」
『あるところに、たいそうな名家のお嬢様がおりました
彼女には、同じくたいそうな名家の許婚がおり
成功する未来が約束されておりました
しかし、あるとき彼女は平民と恋におちてしまいます
彼女は、地位も財産も何もかもを投げ出して
平民とともに、駆け落ちしてゆきました』
妹「………」
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 21:12:27.52 ID:OBt8FAB+0
令嬢「ロマンティックですよね!素敵ですよね!」キラキラ
妹「はいはい」
「どうしてもシチュエーションが気に入らねーのな」
令嬢「はいっ」コクコク
妹「っと、もうこんな時間か」
「寝る。電気消すよ」
令嬢「わかりましたの」
妹「………」
「あんたさ、一つだけいいこと言ったよ」
「『自由に恋をすることは、乙女の権利だ』、か」
令嬢「……スヤ」
妹「寝てるし…」
(………)
(おにぃ……)チク
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 21:19:17.73 ID:OBt8FAB+0
私の家は、ある落ち目の財閥だった。
父が家の再興のため考えた手段は、
政略結婚。
父は晩婚で、私は一人娘だったから、
今まで蝶よ華よと育てられてきた。
父は私の言うことを何でも聞いてくれたし、
私も父の言うことは何でも聞いた。
こんなご時世だったから、
政略結婚なんて、当たり前のように行われていた。
だから、父がお見合いの話を持ちかけてきたときも、
私は特に断る理由は、なかった。
22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 21:25:34.59 ID:OBt8FAB+0
翌日
男母「そう、はじめはゆっくりでいいの」
令嬢「こ、こうでしょうか」
男母「その調子よ」
「そっと、優しく、なでるように」
令嬢「はい……」
男母「どうかしら?」
令嬢「ごめんなさい、ちょっと戸惑って」
「うちではこんなこと、したことなかったから…」
男「……何やってんの?」
令嬢「ひゃっ」パリン
男母「あらあら」
令嬢「“さらあらい”ですわ」
「お世話になる以上、お手伝いをと思いまして」
男「あ、さいで」
23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 21:31:13.48 ID:OBt8FAB+0
令嬢「じー」
男「……何か」
令嬢「いえ」
「よく考えるとわたくし、同じ年頃の殿方と会うのは初めてで」
男「そ、そうなんだ」
令嬢「じー」
「さわっても、いいですか?」ペタペタ
男「え、まぁ」
「……楽しい?」
令嬢「それなりに」ペチペチ
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 21:34:08.97 ID:OBt8FAB+0
男母「男ー、令嬢ちゃーん」
「お買い物行って来てくれないかしら?」
男「めんどくさ」
「妹は?」
男母「部活があるって」
男「仕方ない、行くよ」
令嬢「お任せくださいまし」
「さぁ、参りましょう」ズンズン
男「ちょ、ちょっと」
26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 21:37:20.54 ID:OBt8FAB+0
街中
令嬢「ふんふんふふーん」
男「機嫌いいね」
「何かいいことあったの?」
令嬢「いえ、」
「“おかいもの”ってしたこと、なかったから」
「楽しみですの」
男「そっか」
「別に大したこと」
執事「見つけましたよお嬢様!」バッ
男「うお」
令嬢「へ」
27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 21:40:44.22 ID:OBt8FAB+0
執事「こちらです」
御曹司「………」スッ
令嬢「あ、貴方は」
御曹司「会いたかった…令嬢さん…」
「写真からでもわかる気品…優雅さ…」
「あぁ…実物は尚も増して美しい…」
令嬢「は、はぁ」
御曹司「申し遅れました、ボクは御曹司」ファサ
「貴方のお見合い相手です」
男(……!)
(イケメンだなおい)
(気障な台詞がよく似合ってやがる)
29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 21:43:27.45 ID:OBt8FAB+0
令嬢「執事、これは一体どういうことです」
「お断り申し上げたはずです」
執事「ですがお嬢様」
「旦那様がお認めになろうはずも御座いません」
「さ、改めて見合いの席に」
令嬢「嫌ですのっ」
御曹司「令嬢さん…」
「一体、ボクの何が至らないというのでしょう」
「お聞かせ願えませんか…!」
令嬢「貴方が物足りないなどとは思っておりませんわ」
「ですが」
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 21:47:15.30 ID:OBt8FAB+0
ガバッ
令嬢「わたくしには、将来を誓い会ったお人がいるのです!」
男「え、急に話振らないで」
令嬢「腕組みなんかしちゃう仲なのです!」グイグイ
男(ちょ、当たってますー!)
御曹司「そ、そんな」
「………」キッ
「君、名前は?」
男「男、だけど」
御曹司「どこの家柄だ!」ス
「家業は!」スタスタ
「資産は!」スタスタスタ
男「ご、ごくふつーのサラリーマンの家だけど」
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 21:51:10.22 ID:OBt8FAB+0
御曹司「認められません」グイッ
「令嬢さん」グ
「ボクの方がきっと、貴方を幸せに出来る…!」グググ
男「離せよ…くるし…」
パァン!
御曹司「―――!」ヒリ
令嬢「やめてください」
「男さんに…ひどいこと、しないで」
御曹司「……くっ」
「ボクとしたことが」
「少々、頭に血を上らせました」ス
「……いずれまた、日を改めて」スタスタ
執事「え、あ、えっと、その」
「お、御曹司さん!」タッタッタッ
33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 21:54:16.35 ID:OBt8FAB+0
令嬢「……ごめんなさい」
「わたくしのせいで」
男「あー、いいからいいから」
「嫌なんだろ?」
「だったら無理しなくていいじゃん」
令嬢「……でも」
男「買い物」
「行こっか」
令嬢「……はい」
35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 21:58:07.40 ID:OBt8FAB+0
テクテク
令嬢(………)チラ
男「で、そこのスーパーが一番近いんだ」
令嬢(きっと…、怒ってますの…)
男「定期的に特売なんかやってるから」
令嬢(やっぱり、これ以上ご迷惑を…)
男「……どうしたの?」
令嬢「……その、」フルフル
男「………」
ヒシ…
男「怖い思い、させたか?」
令嬢「え?」
男「ごめんな、助けてもらって」
「手、痛む?」
令嬢「そ、そうではなく」
36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 22:01:20.47 ID:OBt8FAB+0
令嬢「あの」
「どうして」
「見ず知らずのわたくしに、親切になさってくれるんですの?」
男「もう知り合いだし」
「それに」
「親父がいつも言っててな」
「困った人がいたら助けてやれ、って」
「な?」
令嬢「~~~っ」
「あ、ありがとう…ござい、ます」ボソ
スタスタスタ
男「あ、ちょっと、待ってって」タッタッタッ
「そっち、道、違うから!」
38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 22:04:26.76 ID:OBt8FAB+0
それは、小さな商店街の片隅にある、寂れた書店だった。
古ぼけた扇風機が、生温い風をかき回していたことを憶えている。
店番の老婆の眠たげな顔を窺いながら、私は店内の死角となる場所を探した。
そっと、棚に手を伸ばした。
どんな本でも構わなかった。本でなくても構わなかった。
静かに抜き取ったハードカバーを、手提げに忍ばせようとして、
『やめた方がいい』
『癖になってしまうよ』
その人に、後ろから声をかけられたのだった。
39 名前:妹スレにはならないのでご注意を[] 投稿日:2010/06/22(火) 22:08:58.44 ID:OBt8FAB+0
週明け・学校
教師「あー、急な話だが今日から転校生が来ることになった」
「この子だ」
令嬢「みなさま、初めまして」
「わたくし、令嬢と申します」
「お見知りおきくださいませ」ニコ
ザワザワガヤガヤアノコカワイー
教師「女の隣が空いてるなー。そこ座れー」
令嬢「よろしくお願いします」ニコ
女「うん、よろしくねー」
教師「連絡は以上だー。一限めの用意をしとけー」ガラガラバタン
男(そんなこんなで、彼女を交えた新たな生活が始まった)
41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 22:11:42.03 ID:OBt8FAB+0
令嬢「……ポケー」ジー
女「……ん?」
令嬢「……ポケー」ジー
女(何見てるんだろう)チラ
男「でさー」
男友「まじかよ」
令嬢「……ポケー」ジー
女(……ふうん)ニヤ
42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 22:15:02.29 ID:OBt8FAB+0
女「ね」
令嬢「……ポケー」ジー
女「ねぇ、ちょっと」
令嬢「……あ、はははひっ」
女「さっきからずっと男見てるね」
令嬢「……え、えぇ」
女「知り合い?」
令嬢「それはもう」
「同じ屋根の下で暮らす」
「将来を誓い合った仲ですわ!」ドーン
ドーン
ザワ…ザワ…
女「男くーん?」
男「いや!違うぞ!合ってるけど違う!」
43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 22:18:43.30 ID:OBt8FAB+0
女「誓い合ってるんだ?」
男「そうじゃなくて!」
女「じゃ」
「同じ屋根の下なんだ?」
男「それ」
女「つまり家族公認?」
男「親父もお袋も了承してくれたよ」
ザワ…ザワ…
女「男くーん?」
男「……はっ!」
「だから違うんだってえええええええええ!」
44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 22:21:29.17 ID:OBt8FAB+0
シカクイムーブ
男「というわけだ」
令嬢「ですの」
女「ふーん」
「令嬢さん」
令嬢「はい?」
女「何かあったらいつでも相談してね」
「何か起こしたくなってもいつでも相談にのるよー」
令嬢「ありがとうございますの」
男「おい」
男友「男なんかほっといて俺なんかどうよ」
女「はいはい」
男「はいはい」
46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 22:24:27.19 ID:OBt8FAB+0
キーンコーンカーンコーン
妹友「妹ちゃん、お昼食べよー」
妹「おう」
「ん?」チラ
令嬢「――」テクテク
男「――」テクテク
妹(あいつ……!)ゴゴゴゴゴ
「ごめん」ゴゴゴゴゴ
「今日は外で食うわ」ドドドドド
妹友「妹ちゃんっ」
「え、えっとー」キョロキョロ
ポツン
妹友「妹ちゃぁん…」オロオロ
47 名前:>>45 ごめんなさい[] 投稿日:2010/06/22(火) 22:27:34.94 ID:OBt8FAB+0
令嬢「いい天気ですわね」テクテク
男「そうだな」テクテク
令嬢「この木の下など、如何でしょう」
男「いい感じだな。よし」
「飯、食うかー」パカ
令嬢「はい」パカ
男「弁当、令嬢も手伝ってくれたんだって?」
令嬢「ですの」
「と言いましても、箱に詰めたりしただけですけれど」
男「気持ちの問題」
「ありがと」
令嬢「いえいえ」
49 名前:カクカクシカジカシカクイムーブ[] 投稿日:2010/06/22(火) 22:31:04.52 ID:OBt8FAB+0
男「……モグモグ」
令嬢「………」ジー
「……あのー」
「はい、あーん」ズイ
男「……ング!」
「……ゲッホゲッホ」
「どこで覚えたの、そんなこと」
令嬢「女さんに教えていただきましたの」
「こうすると殿方は喜ぶ、と」
男「う、うん、まぁ嬉しいけど」
51 名前:同じ名前が並びまくってもあれかなーと[] 投稿日:2010/06/22(火) 22:35:45.60 ID:OBt8FAB+0
令嬢「あーん」ズイ
男「あ、あーん」パク
(恥ずかしいな)モグモグ
令嬢「はい、あーん」ズイ
男「ペース速い」
「ってかそれ」
「プチトマト先生じゃん」
令嬢「へぇ、プチトマトセンセイって言うんですかこれ」
男「俺、それ嫌いだから食べていいよ」
「口の中でぶちゅって潰れる感じが嫌」
「普通の大きいトマトは好きなんだけどな」
令嬢「そうでしたか」パク
「……モグモグ」
「おいしいのに」
ドサッ
52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 22:38:40.54 ID:OBt8FAB+0
妹「邪魔するぞ。お二人さん」パカッ
男「妹じゃん」
「珍しいな、お前が外で食べるの」
妹「不愉快な光景が見えたからついな」
令嬢「不愉快な光景?」
妹「はい、あーん」ズイ
男「は?」
「何急にってかそれプチトマト」
妹「令嬢から『あーん』されて鼻の下伸ばしてただろうが…」ジト
「食えよオラ!あたしのトマトが食えねぇってのか!」ズイズイ
男「いひゃいひゃい」ゴリゴリ
「お前、自分がプチトマト食べたくないだけだろ!」
令嬢「あ、あの、喧嘩はその、よくないかなぁ、なんて」オズ
妹「黙ってろ」ギッ
令嬢「ひゃい!」
54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 22:41:39.01 ID:OBt8FAB+0
うだるような熱気がおさまりきらない夕暮れの公園で、
私はその人とお話をした。
家のこと。
自分のこと。
その人は聞き上手だったから、私は初対面にも関わらず、
胸のわだかまりを打ち明けることが出来た。
『君はきっと』
『不安なんじゃないかな』
一体何を不安だと感じるのだろう。分からない。
『分からないから』
『結婚してからの自分や環境の変化が』
その人は話し上手ではなかったけど、親身になって、
私のわだかまりと向き合ってくれた。
またお話ししよう。
その日は、少し晴れやかな気分で家に帰ることが出来た。
55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 22:44:58.08 ID:OBt8FAB+0
数日後・学校
教師「あー、急な話だが今日も転校生が来ることになった」
「この子だ」
御曹司「令嬢さん」
「貴方と同じ学び舎に通いたく参上いたしました」
「御曹司です」ファサ
ザワザワガヤガヤアノヒトカッコイー
御曹司「あぁ…今日も美しいそのお姿」ズズイ
令嬢「あ、貴方は」
「どなた様でしたっけ?」
御曹司「そんな!」
教師「男友の隣が空いてるなー。そこ座れー」
御曹司「君、席を変わってくれないか」
女「めんどくさいから嫌」
教師「連絡は以上だー。一限めの用意をしとけー」ガラガラバタン
56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 22:47:18.76 ID:OBt8FAB+0
男「………」
令嬢「……ポケー」ジー
御曹司「……ギッ」ゴゴゴゴゴ
教師「この一文から読み取れるようにー」
男「………」
令嬢「……ポケー」ジー
御曹司「……ギッ」ゴゴゴゴゴ
男(何だろう、視線を感じる)
58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 22:50:15.25 ID:OBt8FAB+0
キーンコーンカーンコーン
御曹司「お昼の時間ですね…!」
「令嬢さん!ご一緒に」
令嬢「はい、あーん」
男「教室は恥ずかしいって」
御曹司「………」バキッ
女「あいつら大体こんな感じだよ」
男友「お前面白いな」ポン
御曹司「……トホホ」
59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 22:53:14.84 ID:OBt8FAB+0
キーンコーンカーンコーン
男「放課後だなー」
令嬢「ですの」
御曹司「男くん!」
「ボクと決闘していただきたい!」
男「え?」
「どうして」
御曹司「どうしてもです!」
男「何すんの」
御曹司「紳士のスポーツ…テニスは嗜みますか?」
男「ん、まぁ」
御曹司(フフ…)
(令嬢さんの前で無様な姿を晒すがいい)
(そして)
61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 22:56:47.79 ID:OBt8FAB+0
学校・テニスコート
妹「面白そうなので来た」
男「おう、妹」
「ラケット貸してくれ」
妹「ほい」
「審判してやろう」
男「さんきゅー」
御曹司「フッ」
「準備はいいですか?男くん」
男「おう」
令嬢「男さん、頑張ってくださいね!」
御曹司(令嬢さん、この決闘であなたをボクに振り向かせてみせる)
「ふっ、ふふっ、ふふふふふふふ」
妹(大丈夫かコイツ)
63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 22:59:34.69 ID:OBt8FAB+0
御曹司「サーブ、先どうぞ」
「社交テニス界のサラブレッドと呼ばれたこのボクの実力」
「見せてあげましょう!」メラメラ
男「よっし、じゃ」
「サー!」ドゴォ
ギュオオオオオオ
バンッ
ダンッ…ダンダン…
妹「フィフティーンラブ」
御曹司「え?」
男「あ、ごめん」
「久々だから加減が」
妹(おにぃ、テニスだけは超強ぇーからなぁ)
御曹司「え?」
64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 23:02:14.95 ID:OBt8FAB+0
妹「……セット、マッチウォンバイおにぃ」
御曹司「……くっ!」
「力及ばず…か…!」
男「なぁ」
御曹司「フッ」
「ボクの負けだ。負け犬なり何なりと罵るがいいさ」
男「お前、やるな」
「楽しかったぜ!」スッ
御曹司「……!」
スッ
ギュッ
御曹司「負けたよ」
「完敗だ」
(テニスでも…器でも負けた…)
男(……っ痛)ズキン
65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 23:05:33.03 ID:OBt8FAB+0
男(やっぱ、ダメかな…)ズキン
令嬢「すごかったですわ!」
男「いやぁ」
妹「当然の結果だ」
御曹司(今のボクではかなわなかった)
(しかし)
「諦めませんよ……!」
「ボクはもっと、令嬢さんに相応しいオトコになります!」
妹「あ。あんたさ」
「負けたからコート整備やって」
御曹司「え?」
「………」
「諦めませんよ!ボクは!」ザッザッザッ
66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 23:08:36.61 ID:OBt8FAB+0
男「ラケットさんきゅ」
妹「ほい」
令嬢「帰りましょう、男さん」
男「おう」
妹「……!」
妹友「あ、妹ちゃん」
「今から部活、ペア練しよっ」
妹「ごめん」ゴゴゴゴゴ
「今日は帰るわ」ダッ
妹友「妹ちゃんっ」
「え、えっとー」キョロキョロ
ポツン
妹友「妹ちゃぁん…」オロオロ
67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 23:11:50.05 ID:OBt8FAB+0
男「びっくりしたなー、御曹司が来るなんて」
令嬢「お知り合いだったのですか?」
男「え?う、うん」
妹(おにぃから離れろ馴れなれしいんだよその不愉快な脂肪の塊を強調するな顔が近い)
男(しかし)
(御曹司は令嬢に会いに学校に転校してきたって言ったな)
(ってことは)
70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 23:14:24.02 ID:OBt8FAB+0
令嬢家
執事「お嬢様の居候先が判明いたしました」
「これがその家の身辺調査結果のレポートで御座います」ドサッ
令嬢父「………」ピラ
執事「御命令とあらば、今すぐにでも」
令嬢父「………」ピラ
(これは……)ピラ
(単なる偶然かもしれんが……)
執事「…旦那様?」
令嬢父「しばらく様子を見させろ」
執事「はっ」
令嬢父(まさか、な)
72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 23:17:21.21 ID:OBt8FAB+0
街角の喫茶店で、繁華街のファミレスで、
私はその人と、何度も何度も会った。
私が喋って、その人が聞いて。
いつもそんな風に時間を過ごしていて、
そんな風な時間がとても楽しかった。
心が弾んだ。
その人は私のことをどう思っているのだろうか?
『どうかしたかい』
何でもないと、私は取り繕ってしまった。
さりげなく、話題に切り出せばいいだけなのに、
私は何故だか言い出せないでいた。
73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 23:20:37.20 ID:OBt8FAB+0
男家
男母「令嬢ちゃんも、大分手つきが慣れてきたわね?」
令嬢「男母さんが、優しく教えてくださいましたから」
男母「一人で、してみる?」
令嬢「はい……」
「でも、ちゃんと見ていてくださいね……?」
男母「えぇ、信じて?」
令嬢「はいっ」
「では、」
「今晩のおかずは、わたくしが作りますわ!」
74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 23:23:19.91 ID:OBt8FAB+0
学校
キーンコーンカーンコーン
御曹司「放課後になりましたね」
「令嬢さん、帰りご一緒しませんか?」ファサ
令嬢「ごめんなさい」
「用事がありますので」タッタッタッ
御曹司「………」
男友「一緒に帰ろう、な?」ポン
女「諦めたら?」
男「ほら、行くぞー」
75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 23:26:14.90 ID:OBt8FAB+0
男友「Aカップ Bカップ Cカップ Dカップ Eカップ Fカップ Gカップ Hカップ」
「8組のバストを選ぶとしたら、君ならどれが好きー?」
御曹司「何ですかその下品な歌は」
男友「君ならどれが好きー?」
御曹司「あ、あのですねぇ」
女「こいつ、そういう奴だから」
男友「うん」
御曹司「バストのサイズなんて関係ありませんよ」
「ボクは令嬢さん一筋ですから」ファサ
男友「令嬢さんはEカップだな」
男「ほう」
御曹司「何で知っているんですか!」
男友「見たら分かる」
女「こいつ、そういう奴だから」
男友「うん」
76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 23:29:20.66 ID:OBt8FAB+0
スーパー
令嬢「今日は特売の日でしたか」
ドドドドド
令嬢「はー」
「ここは…戦場ですわね…」
「えーっと」
「男母さんからいただいたメモは、と」
78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 23:32:20.92 ID:OBt8FAB+0
男友「女はCカップだな」
「普通すぎてつまらん」
女「それはそれで傷つくんだけど」
男友「妹ちゃんはBカップだな」
「ツンギレブラコンロリ妹とは羨ましいぞ男」
女「デレ要素はどこに」
男友「妹おおおお!俺だあああああ!おにぃちゃんって呼んでくれぇえええ!」
男「中学入るまではそれだったな」
男友「ちなみに男母はまさかのGカップだ」
男「変なこと考えるなよ…?」
男友「で」
「男はどれが好きー?」
男「え、お俺?」
「あ、えーっと」
79 名前:>>77 分かりません[sage] 投稿日:2010/06/22(火) 23:35:28.58 ID:OBt8FAB+0
令嬢「そういえば、あの赤いのの種類に好き嫌いがあるみたいでした」
「えーっと、何と言いましたっけ、あれ」
『酢豚の材料メモ
豚肉
トマト
ピーマン
パイナップル
片栗粉』
「パ行で始まって、長い感じの」
「カタカナの名前だった気がするのです」
「とりあえず、聞いてみましょう」
prrrrr
80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 23:38:26.76 ID:OBt8FAB+0
prrrrr
男(ナイスタイミング…!)
「もしもし」
令嬢『あ、男さん、わたくしです』
『少々おたずねしたいことがありまして』
男「うん、何?」
令嬢『大きいのと小さいの、どちらがお好みですか?』
男「え、何の話かな!?」ドキッ
令嬢『熟れた丸い果実の話です』
『ほら、食感でどちらが好きだと前お話しされていた』
男「え、えっと、触感?」バクバク
令嬢『頬張るとぷにゅってなる』
『えーっと、確かパイ』
男「わー!わー!」
82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 23:41:28.70 ID:OBt8FAB+0
令嬢「ど、どうかなさいましたか?」
男『いいから!わかったから言わないで!』
『大きいのが好きです!ごめんなさい!』
令嬢「そうでしたか、ありがとうございます」
「わたくし、男さんに美味しく味わっていただけるよう頑張りますので」
「今晩のおかず、楽しみにしててくださいね!」
男『……パクパク』
令嬢「精をつけていただかないと」
「それでは、失礼いたします」
ツーツーツー
令嬢「さぁ、参りますわよ!」ドドドドド
83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 23:44:27.59 ID:OBt8FAB+0
ツーツーツー
男「………」
男友「………」
御曹司「………」
女「男くーん?」
男「いや、これは、何だ」
男友「貴様令嬢ちゃんとあーんなことやこーんなことを!」
男「その」
御曹司「見損ないましたよ男くん!」
男「いやね?俺も何がなんだか」
女「さいってー」
男「うわあああああああああああああ」
84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 23:47:17.57 ID:OBt8FAB+0
男家・夜
男(トマトの話だったんだ……)
(ちょっと残念だな)
(って!俺は何を考えているんだぁあああああ)モンモン
令嬢「はいっ、お待ちどおさまです」コト
男「………」
男父「………」
妹「なぁ」
「これは食い物の姿じゃない」
87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 23:50:27.17 ID:OBt8FAB+0
男母「まぁまぁ」
「せっかく令嬢ちゃんが作ってくれたんだから」
「ね?」
妹「ね?って言われてもこれは」
男「……っ」ソロー
(ええい、ままよ)パクッ
「……おいしい」
妹「え」
令嬢「まぁ、よかった」パアァ
男母「愛情は最高のスパイスとはよく言ったものね」
男父「………」コク
男「ん、何か言った?」
男母「いいえ何も」ニコ
妹「えぇー…?」
89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 23:53:44.43 ID:OBt8FAB+0
好きだったのだ、と気付いたときには、
私はもう自身の気持ちをどうにも出来ないでいた。
自身の気持ちをどうにかその人に伝えたいと、
私は必死で言葉を探した。
『君の気持ちは嬉しいけれど』
その人は悲しそうな表情で言った。
『君にはお見合い相手がいるのだろう』
それでも、と私は言い募った。
私はあなたと居たいのです、と。
90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 23:56:23.47 ID:OBt8FAB+0
男家・深夜
令嬢「ろうしたんれすの…こんな夜更けに」
妹「ガールズトークをしよう」
令嬢「…はい?」
妹「今夜は寝かさん」
令嬢「れも、明日もらっこうあ」
妹「おにぃをどう思ってる」
令嬢「…えっと」
妹「あんたは見合いが嫌だからおにぃを利用した」
「それだけだろ?」
令嬢「………」
「はじめは」
「でも、今は」
妹「………」
91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/22(火) 23:59:15.73 ID:OBt8FAB+0
学校
教師「では、この問題がわかるものはー」
御曹司「はいっ!」シュバッ
「3xです」ファサ
(どうですか令嬢さん!男くん!ボクのこの知性を)
令嬢「……スヤ」
男「……グゥ」
御曹司「って寝てるうううううううう?!」
「男くんはともかく令嬢さんまで!」
教師「間違ってるぞー」
「御曹司ー、廊下に立ってろー」
ガラガラバタン
御曹司(おのれぇええええ)ギッ
(ま、まさか)
(昨晩あんなことやこんなことを…!)ゴゴゴゴゴ
92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/23(水) 00:02:44.35 ID:ZObXecIA0 [1/23]
妹(……眠)
(さっさと授業終わんねーか)
(な)チラ
御曹司「――」ゴゴゴゴゴ
妹(あいつ、確か)
教師「余所見とは余裕だな。妹」
妹(……ふぅん)
教師「廊下に立ってろ」
妹(使えるかも)
教師「聞いてるか」
「……なぁ」
妹友「妹ちゃんっ」チョンチョン
妹「ん?」
教師「………」
妹「ごめん。何?」
93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/23(水) 00:05:25.59 ID:ZObXecIA0 [2/23]
キーンコーンカーンコーン
御曹司「お昼の時間ですね…!」
「令嬢さん!ご一緒に」
令嬢「はい、あーん」
男「教室は恥ずかしいって」
御曹司「………」バキッ
女「またこのパターンか」
男友「元気出せよ」ポン
御曹司「……トホホ」
妹「おい、お前」ガラガラ
御曹司「む」
「君は確か」
95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/23(水) 00:08:41.21 ID:ZObXecIA0 [3/23]
妹「妹だ」
「あんたに話があって来た」
御曹司「話?」
妹「あたしとあんた、気が合いそうだと思ってな」
御曹司「そうですか?」
「ボクは別に」
男「――」デレデレ
令嬢「――」キャッキャッ
妹「な」
御曹司「なるほど」スッ
スッ
ガシィ
96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/23(水) 00:11:18.55 ID:ZObXecIA0 [4/23]
妹「確認するぞ」
「あたしはおにぃと買い物に行く」
「学校から東のデパート」
御曹司「ボクは令嬢さんと映画を観に行く」
「学校から西のシネマ」
妹「方向は別」
御曹司「鉢合わせはない」
妹「健闘を祈る」
御曹司「お互いに」
妹「クッ、ククク」
御曹司「フフッ、フフフ」
妹「クハハハハハハ!」
御曹司「あーっはっはっは!」
男友「なんだ、あいつら」
女「さぁねぇ」
97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/23(水) 00:14:15.59 ID:ZObXecIA0 [5/23]
私が父にその話を持ち出したとき、
父は激昂した。
恩知らず。淑女の行いではない。家紋に泥を塗るつもりか。
概ねそういった意味合いの罵声を浴びせられたよう記憶している。
私には、父に反論するつもりはなく、
父を説得するつもりもなかった。
もう、心に決めていたのだから。
黙って出て行っても、よかった。
そうしなかったのは、
今にして思えば、遅くやってきた反抗期だったのだろう。
98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/23(水) 00:17:29.86 ID:ZObXecIA0 [6/23]
デパート内喫茶
男「はぁ」
「令嬢と一緒に映画館、行きたかったな…」
「家族サービスも大事か…」
「しかし」
「一緒に家出たらよかったのに何で待ち合わせなんか」
妹「お・ま・た・せ」
男「おー」
妹「うふ」ロリッ
男「お?」
「な、何その気合入ったカッコ」
妹「喜ぶかな、って思って」
「お、」
「おにぃちゃん…が」
男「……!」
99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/23(水) 00:20:20.80 ID:ZObXecIA0 [7/23]
シネマ
御曹司「いやぁ、映画館って一度来てみたかったんですよ」ファサ
令嬢「はぁ」
御曹司「さ、何見ましょうか」
令嬢(……わたくしも)
(男さんたちと買い物、行きたかったな…)
御曹司「そんな顔をなされても仕方がないでしょう」
「妹さんが」
「どーぉしても男くんと二人で行きたいって言ってたんですから」
令嬢「はぁ」
御曹司「これ見ましょう。ホラー映画」
令嬢「はぁ」
御曹司「ポップコーンにコーラは如何ですか?」
(ふっ、ふふ、ふふふふふふふ)
100 名前:sageksk[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 00:23:05.43 ID:ZObXecIA0 [8/23]
デパート
妹「らんららんららーん」テクテク
男「恥ずかしくないのか…その格好…」テクテク
妹「わ、わりと」
「でも我慢するよ!」
男「そ、そっか」
妹「………」
「あのさ」
「どうしてテニス、止めちゃったの」
男「……ん」
「お前も知っての通りだ」
「ヒジ、痛めたから」
妹「でもさ、まだ好きなんでしょ」
「御曹司とやってたとき、すごく楽しそうだった」
男「好きだよ」
102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 00:23:56.97 ID:ZObXecIA0 [9/23]
シネマ
映画『ヴォオオオオオ』
御曹司「……ガクガク」ヒシッ
令嬢「あのー」
御曹司「はははひっ」ビックゥ
令嬢「やっぱり、他の観ません?」
御曹司「ななな何を言います令嬢さん」ブルブル
「ここkっ怖かったですか?」
「だ、大丈夫、ボクがついてますから」ファサ
令嬢「いえ、貴方が」
御曹司「ぜぜん!へへ平気で」
映画『キャァアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
御曹司「きゃぁああああああああああああああああ!」
103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 00:24:59.85 ID:ZObXecIA0 [10/23]
デパート
男「だから、続けられないんだ」
妹「どうして」
男「好きで好きでたまらないのに」
「思うように動かないんだ。腕が」
「それって結構、精神的にキてな」
妹「………」
男「あー、分かりにくかったかも」
妹「分かるよ」
「よく分かる」
「好きで好きでたまらないのに、どうにもならないこと」
男「……妹?」
妹「あたしね」
「おにぃちゃんのこと、好きだったの。ずっと」
男「………」
104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 00:25:48.26 ID:ZObXecIA0 [11/23]
シネマ
映画『嫌だ!俺を置いて逝かないでくれ!』
御曹司「……!」ウルウル
令嬢「………」ドキドキ
映画『私はもう十分生きたわ…ピエール』
御曹司「……グスッ」
令嬢「………」ワクワク
映画『最後に貴方に会えてよかった…』
御曹司「グスッ、エッグ」
令嬢「………」ハラハラ
映画『マリアアアアアアアアアアアンヌ!』
御曹司「まりあああああああああああんぬ!」
観客「「「うるさい!」」」
令嬢「す、すみませんっ外へ出しますので!」グイッ
御曹司「まりあんぬが!まりあんぬが!」ズルズル
105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 00:26:37.31 ID:ZObXecIA0 [12/23]
デパート
妹「部活でテニス始めたのもね」
「おにぃちゃんと一緒に、したかったから」
「いつかダブルスとか組んだり、さ」
男「……妹」
「その気持ちには、答えられない」
「……ごめんな」
妹「…ううん」
「分かってたから」
「でも、言っておきたかったの」
「満足した」
男「………」
妹「じゃ、アクセ買いたいから選ぶの付き合ってよ」
「おにぃ」
男「……おう」
106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 00:27:23.63 ID:ZObXecIA0 [13/23]
郊外にある小さな教会が、私たちの挙式場だった。
私は、婚姻届けを役所に提出すればいい、
とだけ考えていたのだが、
『儀式が必要だから』
言って、笑うその人の、たっての頼みだった。
腰の曲がりがちな神父が祝福の言葉を贈る最中、
ギィ、と、教会の扉が開いた。
薄暗い式場に、光が差した。
父だった。
逆行を浴び、息をせき切らしたその姿は、
私にはさながら鬼が、
地獄から呼び戻しにきたかのよう思われたのだ。
107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 00:28:05.02 ID:ZObXecIA0 [14/23]
令嬢家
令嬢父「解せぬ」
「数週間、様子を見てきたが…」
「学もない」
「教養もない」
「運動には些か心得があるようだが」
「それだけだ」
(令嬢は一体、あの者の何に入れ込んでいるというのだ…?)
「執事」
執事「は」
令嬢父「車を用意しろ」
執事「では」
令嬢父「令嬢を、かえしてもらおう」
108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 00:28:45.64 ID:ZObXecIA0 [15/23]
街中
令嬢「ふんふんふふーん」テクテク
男「機嫌いいね」
「何かいいことあったの?」
令嬢「いえ、」
「わたくしは男さんと一緒に居るだけで」
「楽しくなりますの」ニコ
男「そ、そう」カー
「俺も、」
執事「見つけましたよお嬢様!」バッ
男「うお」
令嬢「へ」
109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 00:29:26.30 ID:ZObXecIA0 [16/23]
執事「こちらです」
令嬢父「………」スッ
令嬢「お……」
「お父、さ…ま……」
令嬢父「久しいな」
「娘よ」
男「……!」
令嬢父「男とやら」
「娘が世話をかけたな」ドサッ
男「……何ですか、その袋は」
令嬢父「礼だ」
「令嬢。帰るぞ」
令嬢「嫌ですわ…!」
120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 01:06:01.20 ID:ZObXecIA0 [17/23]
令嬢父「それが若いと言っている」
「男女が結ばれるという関係は」
「お前たちの思っているほど軽くはない」
男母「貴方の思う愛がその程度、ってだけよ」
「愛は障害だって乗り越えられるわ」
令嬢父「お前が愛を貫いた結果」
「父君はどうなったのだったかな」
男母「……!」
令嬢父「何をもたもたしている」
「車に入れ」
令嬢「……よく、分かりました」
121 名前:超嬉しい[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 01:07:42.76 ID:ZObXecIA0 [18/23]
令嬢「どうしても」
「どうしても、男さんとの縁を認めてくださらないとあれば」
「わたくし、この場で舌を噛み切って」
「死にましゅ!」
男(噛んだ)
執事(噛んだ)
男母(噛んだ)
御曹司(噛んだ)
令嬢父「………」
令嬢「本気ですのよ!」キリッ
令嬢父「……ふん」
「ならば仕方ない」
「かわいい娘に死なれてはかなわん」
「……許しゅ」
令嬢「お父様……!」
122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 01:08:48.03 ID:ZObXecIA0 [19/23]
私の内心を知ってか知らずか、
父は大股に式場を縦断すると、
席の最前列に腰掛けた。
穏やかな表情で、拍手を送ってよこした。
ふと、肩に手を回され、振り向くと、
その人は、悪戯っぽく笑っていた。
私が見合いの話を台無しにした以上、
父の財閥が復権することはもう、なかっただろう。
それでも父は、
微笑んで祝福してくれたから、
だから私は、
泣いた。
123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 01:09:47.43 ID:ZObXecIA0 [20/23]
ゴーン ゴーン
教会
神父「新郎」
「汝、病めるときも、健やかなるときも」
「共に歩み、他の者に依らず」
「死が二人を分かつまで」
「愛を誓い、妻のみに添うことを」
「神聖なる婚姻の契約のもとに」
「誓いますか?」
男「……誓います」
124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 01:10:35.48 ID:ZObXecIA0 [21/23]
神父「新婦」
「汝、病めるときも」
令嬢「誓いますわ!」
神父「………」
令嬢「………」ニコニコ
神父「健やかなるときも」
令嬢「みなさま!」クルリ
「本日は、わたくしどもの式にお集まり下さりありがとう御座いますの」フワ
「紹介します!」
「この人が」
「この人が、わたくしの運命の人ですわ!」
fin.
125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 01:11:49.87 ID:ZObXecIA0 [22/23]
以上です
お付き合い、ありがとうございました
126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/23(水) 01:12:41.45 ID:asETrSva0
回想みたいなのは母か?
127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/06/23(水) 01:12:59.99 ID:SYK+QQpv0 [4/4]
もっと山場があっても良かった気がする
乙
129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/23(水) 01:16:23.38 ID:ZObXecIA0 [23/23]
>>126
はい。しょっぱなの方だと確かにとても分かりにくかったと反省を
>>127
やっぱり肉付けが足りなかったかー
<<紬「唯ちゃん、5万円でどう?」 | ホーム | 梓「軽音部がこの先生きのこるにはどうすればよいのか」>>
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