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とある二人の未来予想図

908 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/16(水) 22:20:50.22 ID:0eVGBYU0 [1/10]
>>894
なんというニヤニヤする通行止め……っ!!乙です!

俺も通行止めの流れに乗るぜーってことで、9レス程かります

910 名前:とある二人の未来予想図 1[sage] 投稿日:2010/06/16(水) 22:24:57.24 ID:0eVGBYU0 [2/10]

「ねぇねぇ、変なところはない? ってミサカはミサカはお姉様に確認してもらったり!」

「心配しなくていいわよ。どこもかしもこパーペキ、完璧。可愛い可愛い」

「……それならいいんだけどぉ、ってミサカはミサカは納得してみる」


納得してみる、と口にして置きながら、目の前の少女はまだ鏡の中の自分と睨めっこをしている。
アップにした髪に乱れはないか、新調した白のワンピースに汚れは無いか、
食い入るように隅々まで確認する彼女の姿が微笑ましくて、美琴からくすりと笑みがこぼれた。


「随分と気合いが入ってるわね、打ち止め」


全身が映る鏡の前で「むむむっ」と真剣な面持ちで最終チェックに余念がない打ち止めの隣へと美琴が近づく。
並ぶようにして立ってみれば、美琴と打ち止めと視線の高さは変わらないことに改めて気付かされる。
つい数年前まではあれほどちまっとした子供だったのに。
ワンピースからのびた手足、色香の漂ううなじが、子供だった彼女が一人前の女性へと変貌したのだと告げてくる。


「あの人が珍しくデートに誘ってくれたからね、ってミサカはミサカは惚気てみたり」

「それはよかったわね。あんの木偶の坊も偶には粋なコトするのねー」

「確かにちょっと積極性に欠けるかもだけど、木偶の坊は言いすぎよ、ってミサカはミサカは反論してみる」


美琴がついつい少女のデートのお相手の軽口を言うと、打ち止めが眉を潜めてやんわりと美琴を咎めた。
幼いころだったら「そんなことない!!」と大声で食って掛ってきただろうに、姉である美琴への対応まで大人びてきている。
手のをヒラヒラと動かし苦笑いで美琴が謝れば、打ち止めは優しい笑顔を返してくれた。


(十八ににもなれば、いっぱしのレディねぇ)


打ち止めがこの世に生を受けて八年、美琴達と出会って八年、一方通行と想いを交わして八年。
白い髪に赤眼の少年の腰ほどしかなかった打ち止めの背丈はぐっと伸び、しなやかな茶髪も腰まで伸びた。
可憐だった少女は、魅惑的な女性へと大人の階段をのぼりつつある。

911 名前:とある二人の未来予想図 2[sage] 投稿日:2010/06/16(水) 22:27:47.73 ID:0eVGBYU0 [3/10]

(……なんだか自分の元を巣立っていくようで寂しいわ)


溺愛する娘を嫁に送り出す父親の気持ちに似た感傷が美琴の心に湧き上がる。
そう遠くない未来、大切な大切な妹が自分の遠くに行ってしまう。
これは近い将来への予感だ。美琴の女の勘が、そう訴えてくる。


「よし、準備おっけー! お姉さま、今日はわざわざヘアメイクしてくれてありがとう、ってミサカはミサカは感謝の意を伝えてみたり!」

「いいのよ。今日は仕事も休みで暇だったしね。さぁさぁ、頑張って一方通行を悩殺しておいで~」

「もう、なんてこと言うの、お姉さまぁっ!!!」


顔を真っ赤にしながらわたわたと慌てる打ち止めが何か言おうと口を開いた時、ピーンポーンというチャイムの音が聞こえてきた。
「ほらほらダーリンのお迎えよ?」と更に美琴が茶化しながらウインクを一つする。
打ち止めは不満そうに美琴の顔を見るが、一分一秒でも早く愛しい人に会いたいのだろう、すぐさま玄関へと歩みを進めた。


「――――超電磁砲。少しの時間、コイツ借りてくぞォ」

「――――行ってきますお姉さま! ってミサカはミサカは元気にご挨拶!」


扉の向こうから美琴の元まで届いた男女の声に、美琴は「いってらっしゃ~い」とだけ答えた。


912 名前:とある二人の未来予想図 3[sage] 投稿日:2010/06/16(水) 22:30:08.02 ID:0eVGBYU0 [4/10]

一方通行愛用のスポーツカーに乗せられて到着したのは、学園都市屈指の超高層ビルの最上階にあるレストランだった。
レストランの売りにもなっている、開放的な作り窓から百八○度見渡せる美しい夜景に、打ち止めの心が躍る。
クラシックのBGMが流れる静かな店内で、興奮した少女の声が辺りに響いた。


「うわぁー! 夜景が凄くキレイだね、ってミサカはミサカは大感激!」

「そォかよ」


二人が通された席は店内の一番奥。
席の真横にある窓からは、学園都市の美しい夜景がこれでもかと広がっている。
風にゆれる風車、ビルとビルの間を縫うようにして走る列車、オレンジの明り灯る街灯。


「宝石箱みたい……ってミサカはミサカは感想を言ってみる。
 こんな素敵なレストランに連れてきてくれてありがとう! ってミサカはミサカは改めてアナタに伝えてみたり!」


さきほど美琴に見せた大人びた一面は奥へと引っ込んで、子供の時のようにはしゃぐ打ち止め。
キャッキャッと黄色い声をあげてはしゃぐ彼女の姿に一方通行はため息を一つ。


「オマエも、もう18になったんだ。少しはしおらしい仕草を心がけれねェのかよ」

「むー。ミサカはもう立派なレディなのよ? ってミサカはミサカは反論してみたり」

一方通行の言葉に頬を膨らませる打ち止め。
言葉の裏側に、いつまでも子供扱いはやめてほしい、という思いを暗に示した。


「ったく、このクソガキは図体だけでかくなりやがって」


この店にはドレスコードがある。
普段のシンプルな服装では流石に入店できないため、一方通行も珍しく黒のスーツを身にまとう。
首に絞めたうす暗い赤のネクタイが窮屈なのか、仕切りに右手で結び目をいじっている。

913 名前:とある二人の未来予想図 4[sage] 投稿日:2010/06/16(水) 22:32:40.42 ID:0eVGBYU0 [5/10]

「そのクソガキに惚れたのは何処の誰だったかな? ってミサカはミサカは意味ありげに返してみる」


打ち止めが浮かべた妖艶な笑みに一方通行の動きが止まる。
ネクタイの結び目に置かれていた右手が力なく宙きる。
珍しく無口のまま挙動不審に陥った男があまりにも面白くて、少女の口角がにんまりと上がる。

さぁ、次はどうしてあげようか、と打ち止めが考えていた矢先、店員が料理を運んできた。


「……おら、料理が運ばれてきたぞ」

「わーぉ、わかりやすい話題変換」


料理を運んできた店員を天の使いとでも言わんばかりの彼の態度に、打ち止めは呆れるしかなかった。


――


「美味しかったです。ごちそうさまでした」

「……ごっそさン」


コース料理の最後を飾ったデザートのアイスも、彼らの胃の中にすっかり収まった。
空になった食器類が下げられたテーブルの上には、料理とは別に注文したシャンパンのグラスが二つ鎮座している。
十八になったとはいえ打ち止めはまだ未成年。彼女が少しでも大人の気分を味わえるように、と一方通行が頼んだものだ。
最も、そんな本心を彼がわざわざ口にすることは無かったが。

914 名前:とある二人の未来予想図 5[sage] 投稿日:2010/06/16(水) 22:35:25.00 ID:0eVGBYU0 [6/10]

「えへへ~」

「あン? なに、締りのねェ顔で笑ってやがる」

「こうやってアナタとごちそうさまが出来るのはやっぱり嬉しいな、ってミサカはミサカは幸せを噛み締めてるの」

「…………」


グラスを両手で持ちながら、締りのない顔でにやけている打ち止めに、一方通行は返す言葉が見つからない。
『ご馳走さまっていうのもしてみたかったな……』と、
切れ切れの声で名残惜しそうに彼をみつめた彼女の横顔が脳裏に蘇る。
ごちそうさま、と一緒に言うのが当たり前になった今でも、彼女はそんな単純なことで喜んでくれるのか。

今も昔も、これかれも。
大輪の花のような笑みを向けてくれるこの少女を守り通したい。だから―――。


「さっきから黙り込んでどうしたの?」


先ほどから黙りこくってしまった一方通行の顔を打ち止めがのぞく。
一方通行はポケットの中に隠している小箱をギュッと握る。
すぅっと息を整えて決意を固めるが、額に汗がじわっと滲みでる。柄にもなく緊張しているのが自分でもわかる。


「……おィ、手ェだせ」

「え?」

「いーからさっさとだしやがれ」


肝心なことはまだ伝えてもいないのに、一方通行の喉はすでにカラカラだった。
視界の端にうつるシャンパンをがぶ飲みしたい衝動を抑えて、冷静を装って彼はたんたんと言葉を紡ぐ。
頭の中がいっぱいいっぱいだ。気を抜けばベクトル操作の能力が暴走して小箱を破壊してしまいそうで、手が震える。
彼の強固な自分だけの現実も、今この時ばかりはグラグラと揺れる。

916 名前:とある二人の未来予想図 6[sage] 投稿日:2010/06/16(水) 22:39:26.60 ID:0eVGBYU0 [7/10]

「……? はいってミサカはミサカは右手をアナタの前に出して――」

「違ェ。逆だ」


彼が差し出せと望むのは、永遠の愛を刻みつける左手の薬指。


「何度も言わせンな。おら、……左手だせ」


一方通行が言いたいことを察した打ち止めは顔を真っ赤に染めた。
信じられないとばかりに見開かれた彼女の瞳には、真珠よりも美しい滴が浮かぶ。
くいっと顎を動かして、もう一度打ち止めを催促する彼を待たせないように、少女はおずおずと己の左手を動かした。


「は、はいってミサカは、ミサカはぁ…っ」


一方通行の両手が、差し出された打ち止めの左手を優しく包む。
きれいに包装されていた小箱から取り出されたのは、細いシルバーリング。
店内の光を反射して煌びやかな輝きを放つ小さめのペリドットがあしらわれているソレを、一方通行はゆっくりと打ち止めのゆすり指へとはめた。

本来ならダイヤモンドなどが相場なのだろうが、一方通行は敢えてペリドットの指輪を選んだ。
二人が出会った八月の誕生石。
その宝石が持つ意味は「夫婦の幸福」。
淡いオレンジの色を放つペリドットの輝きは、学園都市の夜景を彩る街灯の色に良く似ている。


「馬子にも衣装ってとこか。――――似合ってンぞ、打ち止め」


照れくささも相まって、こんな時まで一方通行は素直になれなかった。
天邪鬼の専売特許を持つのは腐れ縁の男くらいなものだろうに、今日はその天邪鬼が彼の心にも住みついてしまったようだ。

917 名前:とある二人の未来予想図 7[sage] 投稿日:2010/06/16(水) 22:47:33.83 ID:0eVGBYU0 [8/10]

陶器のように白い打ち止めの指に、ペリドットの指輪はよく映えた。


「ぁ、ありがとう……」


耳元まで赤く染めた打ち止めは、声にならない声でそう言った。
声が震える原因は今でも様々な想いが涙とともに溢れ出てきてしまいそうだから。
嬉しい、嬉しい、嬉しい。彼女の心は彼から与えられる喜びで満杯になりそうだった。

ただ一つだけ。
もう一つだけ欲しいものがあって、打ち止めは勇気を振り絞る。


「あの、これってやっぱりそういう意味なのかな、ってミサカはミサカは確かめてみたり」

「まァ、そォだな」


そういう意味だ、と肯定する一方通行。
けれど、打ち止めはそんな曖昧な言葉がほしいのではない。


「……ちゃんとアナタの言葉で聞きたい」


アナタの言葉で、アナタの想いを伝えてほしい。
アナタの本心で、ミサカの心をもっと満たしてほしい――と、打ち止めは願うのだ。

一方通行の赤い瞳に愛しい少女が鏡のように映っている。
ドラマの台本のような気障な台詞は浮かんでこない。
女性にとっては一生の思い出となるこの舞台に相応しい言葉を、一方通行は思いつかない。

スポーツーで迎えに行って、夜景のきれいなレストランでのプロポーズ。
そこまでは事前に用意したシナリオ通りにことが進んだのに、最後の最後の詰めが甘かったようで。

けれども、健気にこちらを見つめる少女をコレ以上待たす訳にもいかず、
一方通行は一切飾り気のない言葉で、自身の想いを打ち止めへとぶちまけた。



「一生、手放してやるつもりはねェ。オマエは俺の隣で死ぬまで笑ってろ、打ち止め」




918 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/16(水) 22:49:16.43 ID:0eVGBYU0 [9/10]
えっとすいません7レスで事が足りました。
いや、実は切るところ間違ったという……。

Tag : とあるSS総合スレ

コメント

No title

なんと素晴らしい
ここが愛の通行止めか…

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