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最大教主の髪が長い訳
なつかしいwwwwwwww
皆さん乙ですのー!
誰もいなーい…投下するなら今のうち…。
ってことで4、5レスほどお借りします。
仕事をサボった上司を叱責し、必要な書類全てにサインをかかせ終えたステイル=マグヌスは、
「疲れたー」と偉そうに両腕を天へと伸ばしぐぐっと背伸びをしている上司の女へと声をかけた。
「……最大教主、つかぬ事をお聞きしますが」
「何かな、ステイル」
広めに作られている浴槽の端に腰かけた状態で膝下だけを湯につかり、ローラ=スチュアートは自慢の金の髪を手で梳かした。
修道服のスカートは巻くしあげられて、普段誰の目にも触れらない彼女の白い膝上が露出している。
ローラを初めてみた男性ならドキッとトキメキかねない場面だが、残念なことにステイルの興味の対象は年齢不詳の女の色香ではなかった。
「その、見てるこっちが息苦しくなる長い髪。
邪魔に感じることってないんですか?
宗教的にも魔術的にも重要な意味があるんでしょうけど」
「あぁ、この髪のことかしらー」
パチン、と銀の髪留めの留め具が外れる音が浴槽内に反響する。
銀の髪留めの戒めが解かれたローラの髪は、静かに波を打つように床に広がった。
ステイルが目をこらしてじっと観察しても枝毛一つも見つからない。
「ぶっちゃけ、邪魔に決まっておろう」
「あぁ、ですよね。それだけ長いと日常生活にも支障をきたしそうだ」
「というよりも、毎日のお手入れに時間がかかって仕方なきかしら。美容に苦労するは女の悲しき性かな」
足首の所で一度折り返し、頭の頂上の地点で再度折り返し、銀の髪留めで整える。
という普段のセットアップも面倒なことこの上なきにしもあらずなのよ、ともローラはステイルに愚痴った。
「……しかし。気ついたら、ここまで伸びてしまったか」
細くて柔らかそうな黄金の髪はゆうに二メートルを超え、ローラの身長の二・五倍にまで達する長さにまで伸びていた。
こめかみ付近の髪を一束と手にとって、人差指にクルクルと絡ませ彼女はしんみりと呟いた。
「凄い長いですよね。いつから伸ばし始めたんですか?」
「いつから髪を伸ばした、ねぇ……」
ステイルの問いに髪をいじっていた手が止まり、ほんの一瞬だけ、ローラの意識が過去へと向けられた。
972 名前:最大教主の髪が長い訳[sage] 投稿日:2010/06/11(金) 00:36:45.52 ID:eTOaBiI0 [3/6]
―
まだ、ローラが何者でもなくて、何にも染められていなかった少女の頃。
魔術と科学の対立も、英国清教零教区『必要悪の教会』も、最大教主という立場も。
当時のローラには無関係のものばかりで、少女はただ慎ましく暮らし神に祈りをささげる日々を過ごしていた。
「やだっ! もう教会のミサの時間?」
その日も、短めの金髪を無理やり後ろでまとめた小さな少女が、神への祈りのために近くの教会へと足を進めていた。
目の前に見える十字路を角を曲がれば、日頃から通い詰めている教会の十字架が見えてくる。
早く急がなければと小走りでローラが角を曲がると、
「おはよう」
とパン屋の奥さんの一声が聞こえてきた。
「おはようございます、おばさま!」
ローラは首だけを奥さんへと動かして挨拶を返した。
きれいに整備されていない、でこぼこの石畳から注意がそれてしまう。
微かな段差にブーツのつま先が引っかかる。バランスを崩したローラの身体はそのまま前方へと傾いた。
「ひぁっ!!?」
突然のことにローラは驚愕し上手く身動きをとる事が出来ない。真下には固い石畳。
(ぶつかる!)
ギュッと目を瞑り次の瞬間に生じるであろう衝撃に身構えたローラだったが、1秒2秒…、10秒経っても何も起きない。
「―――っと、怪我はないかい? 小さいお嬢さん」
よく通るテナーボイスが少女の頭の上から降って来た。
困惑しながら閉じていた瞳をパチパチと動かすローラが、今の状況を理解できるするのは十数秒後。
どうやら、石畳とファーストキスをしてしまう前に、テナーボイスの持ち主がローラを助けてくれたらしい。
「す、すみません……っ!」
抱きすくめられる様にして助けられたのだ、と理解するやいなやローラは頬を真っ赤に染めた。
知らず知らずの内に顔を埋めていた助け人の胸元からすぐさま逃れる。
そろそろ女性として一人前になる年齢になるのに、他人からおてんば娘と思われたのなら、これほど恥ずかしい恥ずかしいことはない。
973 名前:最大教主の髪が長い訳[sage] 投稿日:2010/06/11(金) 00:43:13.10 ID:eTOaBiI0 [4/6]
「ぁぁああの、ぁ、ありがとうございましたっ!!」
呂律の回らない口であわあわとお礼の言葉を紡いだローラの姿をみて、テナーボイスの持ち主がクスリと笑った。
(やっぱり、おてんば娘とかじゃじゃ馬とかと思われたんだ……っ!)
くすくすと微かに聞こえる笑い声に、さらに顔を真っ赤に染めたローラは拗ねるように口を尖らせた。
「その元気ならあるなら無事なようだ。あまり、せっかちにならないほうがいい、小さいお嬢さん」
ふわっ、と柔らかな風が吹き抜ける。風の優しい感触にローラが顔をあげた。
ローラより遙かに長身の助け人の白に近い銀色の長い髪が、風のイタズラでさらりと宙を舞い、そのうちの一房が少女の頬を優しく撫でる。
穏やかな顔をローラに向ける目の前の人は、男とも女とも、若者にも老人にも、人間にも天使にも見える不思議な人だった。
「ほう、見事な金の御髪だ」
くしゃりと大きな手に頭を撫でられて、無理やり後ろで結んでいた髪が解かれた。
鎖骨にも届かないローラの髪は緩やかな風になびくことはなかった。
「金の髪が風になびく姿が見られないのは残念だな」
その人はローラの髪を一撫でした後、
「足元には気をつけなさい」
と、その一言だけを残してローラが目指していた教会とは反対側の道へと去っていった。
「…………」
不思議な出会いに、少女の心はここにあらずと言った状態だった。
あんなに熱心に通っていた教会のミサの存在すら忘却の彼方へと旅立った。
ローラの心は白に近い銀の髪をもつ人の事で満たされてしまったから。
ぽうっと呆けるだけで、思考を停止させてしまった少女に聞こえてくるものは、
トクン、トクンと高鳴る心臓の脈打つ音と、
「金の髪が風になびく姿がみられないのは残念だな」と呟いたあの人の言葉。
―
974 名前:最大教主の髪が長い訳[sage] 投稿日:2010/06/11(金) 00:55:16.63 ID:eTOaBiI0 [5/6]
魔術的意義や権威保持の手段と化している長髪も、伸ばし始めたきっかけは可愛らしい理由だったのだとローラは振り返る。
結局その後、あの時出会った不思議な人と再会するまでに様々なことがあり、今に至る。
イギリス清教最大教主となり科学側の代表とはじめて面識をもった時、ローラは密かに目を見開いたが、それだけだった。
モニター越しでは頭を撫でられることも、風で髪がなびくこともなかったのだから。
「……遠ぉーい昔の話過ぎて、忘れてしまったことかしらー」
止まっていた手を再度動かしトボケてみせたローラだが、珍しく自身の動揺を隠しきれていない。
少しだけ挙動不審に声が震えたローラを、物珍しげにステイルが見つめていた。
「まぁ、理由なんて大したことなかったりしますからね」
彼女が動揺する理由が気にならない訳ではないが、ステイルはそっとしておくことにした。
(こんなクソ上司でも、女性には優しくしないと英国紳士の名が廃るからね)
目の前で十代の少女のような女が、一体いつの頃から生きているのかステイルにもわからない。
ただ確実に言えることは、ステイルが物心つけた時に、ローラはすでに英国清教派のトップの座にいた。
それだけ長い年月の中を生き抜いてきている彼女にも、淡い幼い事の記憶の一つや二つくらいはあるのだろうか、とステイルは思案する。
「――――まぁ、どうでもいいことに変わりはないのよ」
ステイルがコレ以上深いつっこみを入れないように、ローラは釘をさす様に言葉を続けた。
975 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[sage] 投稿日:2010/06/11(金) 00:56:52.41 ID:eTOaBiI0 [6/6]
以上です。
俺得が書けて超満足。おじゃましました。
Tag : とあるSS総合スレ
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