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オッレルス「世界でも珍しい原石の君を攫ってヤツに俺の意図を示す」姫神「えっ。」

482 名前:オッレルス「世界でも珍しい原石の君を攫ってヤツに俺の意図を示す」姫神「えっ。」[sage] 投稿日:2010/05/30(日) 19:57:43.51 ID:2rt2yTUo [7/13]
誰もいない投下するなら今のうちって事で
数スレお借りします。

原石編 その2 です。

483 名前:オッレルス「世界でも珍しい原石の君を攫ってヤツに俺の意図を示す」姫神「えっ。」 2の1[] 投稿日:2010/05/30(日) 19:58:49.35 ID:2rt2yTUo [8/13]
>>394から

一〇月 第二金曜日

窓の無いビル。
静寂の中、二つの人影があった。

「……で、どうするアレイスター?」

土御門が沈黙を破る。
その視線の先には、培養液のようなものの中にさかさまに浮かぶ一人の『人間』がいる。
その、『人間』は喜んでいるのか怒っているのか分からない微笑を浮かべた。

「どうするもこうするもない。あれらは私が持っている超能力の一つだ。それだけだろう?」

それは、その二人がどうなろうと知った事ではない、というニュアンスが含まれていた。

「……本気か?」

土御門は思わず声色に嫌悪感を露わにした。

魔術側の大半を敵にまわして、今まで生き延びてきた魔神になり損ねた男。
そいつが世界最大の原石と『不死身の吸血鬼を[ピーーー]』少女を手に入れたらどうなるか。

「……荒れるぞ。」

その魔神になりかけた男が今現在『兵器』にひとしい二人を持っている。
彼の真意はともかく、彼のその「原石を思ったお人よしの行動」のせいで魔術側にいらぬ緊張を走らせる事だろう。

それを汲んでか、魔術側の頂点であった目の前の人間は口を再び開く。
まるで、子供になんでもない事を諭すかのように。

「この結果、プラン304から349を省略できる。利用するだけだが。」

先程から表情一つ崩さず、淡々と告げるアレイスター。
本当に彼にとってはその『兵器』すらも『道具』にすぎないのだろう。

かたや世界最大の原石、削板軍覇。
かたや存在するかどうかも分からなかった吸血鬼を[ピーーー]、姫神秋沙。

それがどれだけ利益を生み出すかも、全て知った上で、だ。

(……全て掌の上、という訳か。アレイスター)

その言葉を噛み殺し心の中で吐いた。

484 名前:オッレルス「世界でも珍しい原石の君を攫ってヤツに俺の意図を示す」姫神「えっ。」 2の2[] 投稿日:2010/05/30(日) 19:59:31.45 ID:2rt2yTUo [9/13]
魔神になり損ねた男、オッレルスはアパートの玄関前で悩んでいた。

片手で第七位を抱え、後ろにジャパニーズスタイルな巫女少女を侍らすという何とも異様な光景だ。

(さて、どうするか。)

別に彼がホームレスな訳ではない。実際このアパートに住んでいる訳だから。
問題は同居人。
イギリスの近衛侍女であり聖人であるシルビア。

この間何十人もの子供を人身売買組織から救い出して連れてきた時、怒ってたよなぁ……と五か月前の事を思い返す。
そして彼は後ろにいる保護した(というか傍から見ると拉致した)少女と今抱えてる少年と比較する。


(……はっ、また香港映画並の蹴りやらパンチやらを繰り出されるッ!?)

ビクブルゥ!と思わず震え上がる魔神(なりそこない)。
そのナンバーセブンを一瞬で倒した姿との差に疑問を持つ姫神。

「何を。震えてるの?」

抵抗するのは無駄だと散々思い知っているので、ここは素直に従う事にしていたのだ。

「ふふ。これから俺がボロ雑巾のように追い出されるとなるんだろうな……憂鬱だよまったく。」

不穏そうな事を口走りながらオッレルスは意を決してドアを開ける。
ガチャリ、と開いたアパートの中から一人の女性が出てきた。

「遅かったな大馬鹿者……ん?」

その女性は怪訝そうにオッレルスが手に抱えてる削板と、後ろにいる姫神を見た。

「や、やぁ……シルビア」

ぎこちなく笑うオッレルスを。
全てを悟ったのか、そこからのシルビアの行動は素早かった。

まずオッレルスの腹に聖人の力で殴りかかりオッレルスを宙に浮かせ、
そのオッレルスの腕から離れた削板をもう片方の腕で回収し、
後ろにいる姫神をオッレルスを殴った方の腕で掴んで家の中に入れ、
宙に浮かんだオッレルスを蹴りあげて外に放り出し、

最後にバアアアン!と思い切りドアを閉めた。

「ちょ、まって!話ぐらい聞いてよ!」とドアの向こう側から情けない声が聞こえたが無視をする事に決めるシルビア。
その様子を見て姫神はこのアパートの上下関係をその日のうちに理解した。


リビングまで来ると抱えていた削板をソファに置き、姫神を近くのテーブルの椅子に座るように勧めるシルビア。
……時折外から「開けてくれー」と聞こえるその様はまるで、『まるで駄目な夫に、愛想を尽かした妻』のようだった。

485 名前:オッレルス「世界でも珍しい原石の君を攫ってヤツに俺の意図を示す」姫神「えっ。」 2の3[] 投稿日:2010/05/30(日) 20:00:00.61 ID:2rt2yTUo [10/13]


「……さてと、どうするか」

シルビアが忌々しげに玄関の方を睨み、頭を抱えた。

「……邪魔なら。ナンバーセブンを連れて帰るけど。」

「お金は?多分その様子だとそのまま拉致られたんでしょ」

「うっ……。」

言葉を詰まらせる姫神。
それを見てやはりそうかと確信するシルビア。

「とりあえず今日は遅いから泊った方がいいと思う……。明日イギリス行きの飛行機のチケット買っておくよ、それを経由して帰りな。」

「……ありがとう。」

「いいのよこっちだってあの馬鹿野郎のせいで迷惑かけたみたいだから。 今から絞めてくる」

気にするな、という風に手を振りつつサラリと怖い事を吐いたシルビアが玄関の方に向かう。
すぐさまそこから夫婦喧嘩とかそういう域ではない、すさまじく暴力的な音と叫び声が聞こえる事になる。

「誰が子供拉致ってきていいっつたああああ!!?」

「ひいいいい!だからそういうつもりじゃなくて……痛い痛い痛い!」

……あの情けない男が、目の前のソファの少年を完膚無きまで叩きのめしたかと思うと、
運命は残酷だ、と姫神は内心思う。


しばらくするとオッレルスが自身が宣言していた通りボロ雑巾になってアパートに入ってきた。

「……そこの吸血殺しは監禁までされてたから、得体のしれない実験に使われてるのかと思って」

「……だからといって攫っていい訳がないだろ…」

486 名前:オッレルス「世界でも珍しい原石の君を攫ってヤツに俺の意図を示す」姫神「えっ。」 2の4[] 投稿日:2010/05/30(日) 20:00:28.31 ID:2rt2yTUo [11/13]

学園都市第七学区

最近出来たローマ建築の本格カフェでパンがうまいと評判の、『カフェテッラ』とやらに来てみる上条当麻とインデックス。
上条は今日、美琴に襲われないし不良に絡まれないし久々に不幸じゃないー!という事で若干機嫌がよかったのだ。
ずずず、と砂糖が入った普通のコーヒーを飲みながら、

「……最近姫神みないなぁ」
とつぶやく上条。

「私もあいさ見てないんだよ……。はっ!まさか影がなくなって……!」

「いやそれはないと思うぞ?うん、さすがに上条さんでもそれはないと思いたい。」

わなわなと恐ろしい想像に震えるインデックスを、それとなく落ちつかせる上条。

(しっかし、昨日学校休んでたし、実際問題どうなんだろうか?)

土御門も学校休んでいたし、もしやまた事件に……と考える。
実際その発想はあってたのだが、まさか第七位ともども攫われてるなんて事は考えつかなかった。

~~

487 名前:オッレルス「世界でも珍しい原石の君を攫ってヤツに俺の意図を示す」姫神「えっ。」 2の5[] 投稿日:2010/05/30(日) 20:00:58.40 ID:2rt2yTUo [12/13]
シルビアが夕飯の支度を終え、姫神がそれをテーブルに並べる。

気絶から覚めたはいいがオッレルスに骨の髄まで痛めつけられた削板は今だにソファであおむけにぐったりしていた。
根性が命な彼は時折「あー…根性無しにやられるなんてー…」と愚痴っている。

その当の根性無しことオッレルスは、アパートの外でおしおきを受けている。
彼曰く、『家庭で出来る簡単三角木馬(全身漆の刑付!)』だそうだ。

「あのオッレルスって人。一体何の能力を使ってるの?」

姫神が皿を並べながら、シルビアに尋ねる。

「んー……学園都市の能力者にはまず『魔術』から説明しないといけないかな」

そういいながらテッラの手作りパンとやらを盛り付けるシルビア。

「いや。魔術師や錬金術師については。ある程度なら。」

三沢塾の一件、学園都市に侵入して取引を行おうとした魔術師等、一般では考えられない事件に関わってる姫神は、そこらの学生よりは魔術について理解もしているつもりだった。

「話がはやいな。ざっくり説明するとだな……」


すっかり日も落ち、風が少しばかり冷たくなってきた頃。

「いやいや、本当に近所の目が痛かったよ……夜まで放置なんてひどい……。」

漆まみれでかゆそうにしながら、オッレルスがアパートに入ろうとした。
が、目の前に立ったナンバーセブンがそれを許さない。

「何勝手に切り上げてるんだこの野郎……!」

「へ?な、何を言って……」

「こんの………根性無しがああああ!!」

「ぐふぉ!?」

すっかりベストコンディションになった削板が、オッレルスの鳩尾に蹴りを入れる。
バタン!とそのまま勢いよく床に身体がぶつかる。

どうやら削板は、「おしおき」に耐えられなくなって戻ってきたらしいと思ったらしい。
その後外に削板の手によって投げ出される。

姫神秋沙に発見され、アパートの中に回収されるまで、
オッレルスは再び放置プレイを受ける事になった。

488 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[] 投稿日:2010/05/30(日) 20:03:14.16 ID:2rt2yTUo [13/13]
という訳で オッレルス「世界でも珍しい原石の君を攫ってヤツに俺の意図を示す」姫神「えっ。」ひと段落つけました。

近日中に続き書けたらなと思ってます。
こんな扱いだけど削板とオッレルスは禁書キャラでも一番好きです……。

次はイギリス経由と学園都市ェ………。

Tag : とあるSS総合スレ

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